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特表2022-525847霧状化水粒子と空気を利用した調理方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(54)【発明の名称】霧状化水粒子と空気を利用した調理方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   F24C 1/00 20060101AFI20220513BHJP
【FI】
F24C1/00 340A
F24C1/00 310B
F24C1/00 320B
F24C1/00 340Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549906
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(85)【翻訳文提出日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 US2020023118
(87)【国際公開番号】W WO2020197848
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】16/367,854
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521375427
【氏名又は名称】エイエイチエイ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100081352
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 章一
(72)【発明者】
【氏名】ヘーター,ロバート
(57)【要約】
霧状化した水と圧縮空気とを用いたオーブンの加熱方法および装置。該方法は、オーブンの調理室の外部に配置された貯液容器に収容された水を、貯液容器内の水を水ヒーターを通して移送することにより加熱して沸点より低い所望の終点温度に到達させ、貯液容器の水中に没している空気ヒーターを通して圧縮空気を送ることにより圧縮空気を加熱し、加熱された水と加熱された圧縮空気をネブライザーに搬送し、加熱された水をネブライザーで霧状化して加熱された水粒子にし、加熱された水粒子を加熱された圧縮空気を介して調理室に導入する工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記手順を含む、オーブンの加熱方法:
前記オーブンの調理室の外部に配置された貯液容器に収容された水を加熱して、沸点より低い所望の終点温度に到達させ;
前記貯液容器の水中に没している空気ヒーターを通して圧縮空気を加熱し;
加熱された水と加熱された圧縮空気をネブライザーに搬送し;
加熱された水をネブライザーで霧状化して加熱された水粒子にし;そして
この加熱された水粒子を加熱された圧縮空気を介して前記調理室に導入する。
【請求項2】
前記貯液容器に入っている水の加熱を、この貯液容器内の水を、水ヒーターコイルを通して移送することにより行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
貯液容器からの加熱された水をネブライザーに搬送する前に、この加熱された水を第2の水ヒーターコイルに通して移送することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ネブライザーからの過剰の加熱された水を前記貯液容器に再循環することをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
加熱された水と加熱された圧縮空気を第2のネブライザーに搬送し;
加熱された水をネブライザーで霧状化して加熱された水粒子にし;そして
加熱された水粒子を加熱された圧縮空気を介して前記調理室の分割された区画室内に導入する;
ことをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
下記を含むオーブンの冷却方法:
前記オーブンの調理室の外部に配置された貯液容器に収容された水を冷却して、約-1.1℃から10℃(30~50°F)の範囲内の所望の終点温度に到達させ;
前記貯液容器の水中に没している空気冷却器を通して圧縮空気を冷却し;
冷却された水と冷却された圧縮空気をネブライザーに搬送し;
冷却された水をネブライザーで霧状化して冷却された水粒子にし;そして
この冷却された水粒子を冷却された圧縮空気を介して前記調理室に導入する。
【請求項7】
冷却された水と冷却された圧縮空気を第2のネブライザーに搬送し;
冷却された水をネブライザーで霧状化して冷却された水粒子にし;そして
冷却された水粒子を冷却された圧縮空気を介して前記調理室の分割された区画室内に導入する;
ことをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記オーブンの調理室の外部に配置された第2の貯液容器に収容された水を加熱して沸点より低い所望の終点温度に到達させ;
前記第2の貯液容器の水中に没している空気ヒーターを通して圧縮空気を加熱し;
加熱された水と加熱された圧縮空気をネブライザーに搬送し;
加熱された水をネブライザーで霧状化して加熱された水粒子にし;そして
この加熱された水粒子を加熱された圧縮空気を介して前記調理室に導入する、
ことをさらに含む、請求項6~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
加熱された水及び冷却された水と加熱された空気及び冷却された空気を第2のネブライザーに搬送し;
加熱された水及び冷却された水をネブライザーで霧状化して加熱された水粒子及び冷却された水粒子にし;
加熱された水粒子及び冷却された水粒子を加熱された圧縮空気及び冷却された圧縮空気を介して調理室の分割された区画室内に導入する;
ことをさらに含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
下記から構成されるオーブン:
前記オーブン内に配置された調理室;
前記調理室に取付けられたネブライザー;
前記調理室の外部に配置された水の貯液容器、ここで、前記水の貯液容器はこの貯液容器の水中に没している空気ヒーターを備え、この空気ヒーターはエアコンプレッサーに接続する第1の端部と前記ネブライザーに接続する第2の端部とを備え;
第1の水ヒーター、この水ヒーターはその第1及び第2の端部を備え、この第1の水ヒーターの第1及び第2の端部は前記貯液容器の水中に没しており;
ポンプを含んでいる配管、ここで、この配管の一端は前記貯液容器の水中に没していて、該配管の他端は前記ネブライザーに接続している。
【請求項11】
前記第1の水ヒーターがガラスセラミックチューブ内を通る銅線を備え、この銅線とガラスセラミックスチューブがコイル巻きされた銅チューブにより包囲されている、請求項10に記載のオーブン。
【請求項12】
前記貯液容器と前記ネブライザーとの間で前記配管に配置された第2の水ヒーターをさらに備える、請求項10~11のいずれか1項に記載のオーブン。
【請求項13】
前記空気ヒーターが銅コイルから構成される請求項10~12のいずれか1項に記載のオーブン。
【請求項14】
前記ネブライザーから前記貯液容器への再循環ラインをさらに備える、請求項10~13のいずれか1項に記載のオーブン。
【請求項15】
オーブンの調理室の分割された区画室に取付けられた第2のネブライザーをさらに備える、請求項10~14のいずれか1項に記載のオーブン。
【請求項16】
前記調理室の外部に配置された第2の水の貯液容器と、ポンプを含んでいる第2の配管とをさらに備え、ここで、第2の貯液容器はこの第2の貯液容器の水中に没している空気クーラーを備え、この空気クーラーは第1の端部と第2の端部を備え、空気クーラーの第1の端部は前記エアコンプレッサーに接続し、空気クーラーの第2の端部は前記ネブライザーに接続し、前記第2の配管の一端は前記第2貯液容器の水中に没していて、他端は前記ネブライザーに接続している、請求項10~15のいずれか1項に記載のオーブン。
【請求項17】
前記ネブライザーから前記第2の貯液容器への再循環ラインをさらに備える、請求項16に記載のオーブン。
【請求項18】
前記第2の貯液容器がペルティエブロックの上部に位置する、請求項16~17のいずれか1項に記載のオーブン。
【請求項19】
前記調理室の底部に配置されたトラフを備えた空気コンデンサー回路をさらに備えており、ここで前記トラフはコンデンサーコイルとドレーンとを備え、このコンデンサーコイルの両端が冷却された水の第2の貯液容器に接続されている、請求項10~18のいずれか1項に記載のオーブン。
【請求項20】
食品を精密な所望最終温度に加熱調理する道具としての請求項10に記載のオーブンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーブン、より具体的には、食品を所望の最終温度で加熱調理(クック)するための霧状化(nebulized)水粒子と空気とを利用したオーブンの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
食べ物の調理にはいくつかの種類のオーブンなどの器具を含む、数多くの調理器具及び手法が知られている。公知の調理器具の1例は、米国特許第2,931,882号に開示されているような乾式加熱オーブンである。乾式加熱オーブンは一般的に使用されているが、その使用には多くの問題点が付随する。例えば、調理済みの食品は、見かけが悪くなり、栄養素及びビタミン類が低下し、乾熱による食品の加熱で起こる著しい水分量減少によりかなり縮んでしまうのが普通である。従って、乾式加熱オーブンは、必然的に起こる食品からの実質的な水分減少を補償するのに過剰な熱が必要となるため、効率的ではない。
【0003】
別の周知の食品調理器具及び手法は、米国特許第5,494,690号に示されているような水蒸気オーブンを包含する。しかし、水蒸気オーブンの使用にも多くの問題点が付随する。例えば、調理サイクル時に使用される多量の水が、加熱調理時に食品からしみ出てくるアルブミン、脂肪及び他の浸出物で汚染されてしまうことがよくある。その結果、当該ユニットの底部から多量の汚染水を排液しなければならない。
【0004】
さらに別の食品調理器具及び手法としては、米国特許第8,704,128号及び米国特許第7,867,534号に開示されているような、オーブンの加熱調理キャビティ中にスチームを導入する自動化スチーム発生システムが挙げられる。しかし、スチームオーブンにも欠点はある。例えば、スチームがより低温のオーブン内壁の表面に触れて凝縮することにより、この種のオーブンでは「汗」が発生する。この「汗」が集まり、たまって、加熱調理パンの側面上を流れることにより、オーブン内面には掃除しにくい食品皮膜を生じてしまうことがよくある。さらに、高温のスチーム温度は加熱調理される食品の栄養価に非常に有害な影響を及ぼし、さらには華氏212°(=100℃)を超えて加熱された水蒸気によりユーザーには火傷又はその手前の熱気が必然的に付与されるので、本来的に危険である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第2,931,882号
【特許文献2】米国特許第5,494,690号
【特許文献3】米国特許第8,704,128号
【特許文献4】米国特許第7,867,534号
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、水蒸気及び高速空気の精密発生を活用したオーブンを発明することにより、既存のオーブンシステムに伴う問題点に対する解決策を見いだした。本発明者らは、食品の加熱調理に使用する水が驚くほど少量で、従って水蒸気の放出がより精密で、オーブンのエネルギー効率がより高い方法を見いだした。従って、本発明者らは、過剰スチームの凝縮によるオーブン壁面又は床面上の水の「ドリップ」又は「たまり」を生じない食品の加熱調理方法を見いだした。さらに、本発明者らは華氏212°(100℃)より低温に保持された水蒸気を利用する手法を見いだした。従って、このオーブンはより安全で、よりユーザーフレンドリーであり、かつ食品はその味と栄養価を保つ。
【0007】
本発明の1実施態様は、米国食品医薬品局(FDA)の食品安全性指針にすべて従ったオーブンの加熱方法を含む。この方法は、前記オーブンの調理室の外部に配置された貯液容器(リザバー)に収容された水を加熱して沸点より低い所望の終点温度に到達させ、前記貯液容器の水中に没している空気ヒーターを通して圧縮空気を加熱し、加熱された水と加熱された圧縮空気をネブライザー(噴霧器)に搬送し、加熱された水をネブライザーで霧状化して加熱された水粒子にし、この加熱された水粒子を加熱された圧縮空気を介して前記調理室に導入することを含む。
【0008】
この実施態様は、前記オーブン内に配置された調理室、前記調理室に取付けられたネブライザー、前記調理室の外部に配置された水の貯液容器、第1の水ヒーター、及びポンプを備えた配管を含み、ここで、前記水の貯液容器はこの貯液容器の水中に没している空気ヒーターを備え、この空気ヒーターはエアコンプレッサー(空気圧縮器)に接続する第1の端部と前記ネブライザーに接続する第2の端部とを備え、前記第1の水ヒーターはその第1及び第2の端部を備え、この第1の水ヒーターの第1及び第2の端部は前記貯液容器の水中に没しており、前記配管の一端は前記貯液容器の水中に没していて、前記配管の他端は前記ネブライザーに接続している。
【0009】
別の実施態様は、オーブンの冷却又は冷まし方法を含み、この方法は、前記オーブンの調理室の外部に配置された貯液容器に収容された水を冷却して、約華氏30°(-1.1℃)から華氏50°(10℃)の範囲内の所望の終点温度に到達させ、前記貯液容器の水中に没している空気冷却器(エアチラー)を通して圧縮空気を冷却し、冷却された水と冷却された圧縮空気をネブライザーに搬送し、冷却された水をネブライザーで霧状化して冷却された水粒子にし、この冷却された水粒子を冷却された圧縮空気を介して前記調理室に導入することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】霧状化水粒子と圧縮空気とを用いた加熱調理用オーブンの加熱方法の概要図である。
図2】水中に没した空気ヒーターコイルを備えた水の貯液容器、水ヒーターコイル、空気コンプレッサー、及びネブライザーを具備した霧状化水粒子を用いた加熱調理用オーブンを示す。
図3】貯液容器とネブライザーとの間に追加の水ヒーターコイルを備えた図2のオーブンの第2の実施態様を示す。
図4】冷却された空気及び水成分による霧状化水粒子と圧縮空気とを用いた調理用の図2のオーブンの第3の実施態様を示す。
図5図2のオーブンに係る水ヒーターコイルの正面図である。
図6図2のオーブンに係るネブライザーの正面斜視図である。
図7図2のオーブンの第4の実施態様の背面斜視図である。
図8図2のオーブンの第4の実施態様の開いた正面斜視図である。
図9図2のオーブンの第4の実施態様の開いた正面斜視図である。
図10図2のオーブンの第5の実施態様の開いた側面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、図2に示したような、霧状化水粒子と圧縮空気とを用いた加熱調理用オーブン(10)の加熱方法の1実施態様の概要図である。この実施態様において、本方法は、図2に示すように、調理室(12)の外部に配置されている水の貯液容器(14)を加熱することを含む。この水貯液容器は、貯液容器内に存在する水を、貯液容器の外から水ヒーターコイル(20)を通してポンプ搬送することにより加熱される。水をオーブンシステムのどこにでもポンプ搬送するのに利用されるポンプ(複数でよい)は任意の形態の水ポンプでよいが、小型で、精密かつ単純であることから、好ましくはペリスタルティック(蠕動運動)ポンプである。その上、ペリスタルティックポンプはスイッチを切った時にポンプが閉じたバルブとして作用するので、交差汚染(クロスコンタミネーション)と背圧を阻止する。さらに、これらの水ポンプは、ヒーター、貯液容器、ネブライザー及びコンデンサー(凝縮器)回路への、及び/又はこれらからの非加圧水の移動を行う。これらのポンプは水を効率的にポンプ搬送するためにオーブンシステムのどこにでも配置される。
【0012】
本実施態様では、水ヒーターは、図2、3、4、5及び7に示したように、水ヒーターコイル(20)であり、これは銅線又はコイル巻きニクロム線のような抵抗線(22)を備え、これがガラスセラミックのチューブ(24)内を通り抜け、この抵抗線とガラスセラミックチューブの周囲がさらにコイル巻き銅チューブ(26)で包囲される。ガラスセラミックチューブをさらに銅スリーブで包囲し、コイル巻き銅チューブがこの銅スリーブを包囲するようにしてもよい。有利には、コイル巻きニクロム線を、線の直径(太さ)及び全長の両方を制御することにより正確な所望温度範囲に精密に較正することができる。
【0013】
この水の加熱方法が有利であるのは、ニクロム線とガラスセラミックチューブの急速加熱が銅の優れた熱伝導性とあいまってオーブンの動作に必要な少量の水をほぼ瞬時に加熱するからである。従って、水は所望の最終温度にすばやく加熱され、著しく効率のよいオーブン及び加熱調理方法になる。
【0014】
水ヒーターの別の実施態様では、水を加熱するためのハロゲン光電球又はセラミックガラスチューブ内に納められたある長さのカンタル線(kanthal)を備える。この水ヒーターコイルの新たな設備は、多量の水を加熱するためのカロッド線(cal-rod)の使用を回避する。カロッド線の使用は、従来技術で実証されているように、加熱速度が遅く、目的温度を飛び越え、従って、食品の調理しすぎになる。さらに、オーブン(10)は、例えば、オーブンの扉を開けている時に、温度及び蒸気回収速度もずっと速い。これは、オーブンが所望温度で加熱された水蒸気を連続的に作り出し、これを加圧下で調理室に連続的に導入するからである。
【0015】
貯液容器(14)内の水の加熱プロセスは、水が沸点より低い所望の終点温度に達するまで繰り返される。この所望の終点温度は、オーブン(10)のユーザーが、所望の最終温度を手動で入力するか、又はに予め決めたクッキングプログラムを選択することで、ユーザによって決められる。水の貯液容器内に存在するのは、貯液容器内の水温を検知して、この温度データをプログラマブルロジックデバイス(programmable logic device, PLD)にリレーする温度プローブ又はセンサー(図示せず)である。PLD類は新規ではなく、オーブン温度を監視し、制御し、変更するデジタル回路を構築するのに使用される電子部品として本技術分野では周知である。オーブン(10)の各機構内部の温度が正しくない場合、個々のPLDは、オーブンのそれぞれのヒーター回路への投入量(インプット)を監視して変更する一連のサーモスタット・コントローラーにより温度の調整、再調整、および微調整(ファインチューニング)を行うことができる。例えば、貯液容器温度センサーは貯液容器内の内部温度についてのデータを貯液容器PLDにリレーする。その温度があるべき温度ではない場合、PLDは自動的に水ヒーターコイルの温度を調整して、断熱された貯液容器内部の水温が食品を所望の最終温度に加熱調理するのに必要な正しい温度となるように確保する。
【0016】
貯液容器(14)は任意の材料から作製できるが、貯液容器内の水温をより確実に一貫して保つように断熱材料が好ましい。例えば、鶏まる1羽を165°F(74℃)の内部温度に加熱調理するのに必要な水の量は8液量オンス(240ml)の水である。これは、オーブンシステム内の損失熱を頻繁に過剰補償しなくてすむので、オーブン(10)のエネルギー効率をより高める点で有利である。有利には、オーブンは、240vの継電器(リレー)ではなく120vの継電器で動作することができ、それによりオーブンのエネルギー効率は従来のオーブンに比べてさらにずっと高くなる。
【0017】
図2に示した第1の実施態様では、貯液容器(14)内の水が水ヒーターコイル(20)を通って再循環している間又はその後に、この貯液容器の水中に没している空気ヒーターコイル(32)を通して空気を移送する。この実施態様では、空気は空気ヒーターコイルを通る配管で移送されるが、別の実施態様としては、ポンプのような別の空気移送手段も挙げられる。貯液容器内の水が所望の終点温度に加熱されると、銅のような熱誘導性材料から作製されている空気ヒーターコイルは、貯液容器内の水の具体的な所望最終温度に必然的に熱せられる。この実施態様では、空気ヒーターはコイルからなり、これはコイル内を流れる時に空気を最も効率よく加熱する点で有益である。しかし、空気ヒーターは任意の形状又は形態として、任意の材料から作製することができる。従って、空気が空気ヒーターコイル内をパイプ搬送されると、空気はオーブンのユーザーが最初に選択した所望の最終温度に加熱される。
【0018】
この実施態様では、空気は、もともとは貯液容器の外部に配置されたエアコンプレッサー(30)からパイプ搬送される。従って、予め選択した速度の圧縮空気が空気ヒーターコイルを通ってポンプ搬送される。エアコンプレッサー(空気圧縮器)は、例えば、空気を滅菌する機能をさらに有するピストン型エアコンプレッサーでよい。エアコンプレッサーから空気ヒーターコイル(32)を通ってネブライザー(36)内、そして調理室(12)内へとポンプ搬送される空気の圧力は、圧縮空気PLDにより制御される。必要な空気の圧力は、調理室の容積、オーブン(10)全体にポンプ搬送される水の量の相対サイズ、及びオリフィスサイズといった多くの因子に応じて変動する。
【0019】
この実施態様では、貯液容器(14)内の水の温度が、加熱調理用の所望の最終温度に達したら、図2に示すように、水が貯液容器からネブライザー(36)にポンプ搬送される。ネブライザーは調理室(12)の裏側に配置することが好ましい。本システムは、動作にわずかな量の水しか必要としないので、加熱された水は正確な温度制御と共にほぼ瞬時にネブライザーに送りこむことが有利である。このことは、食品の加熱調理には非常に重要であり、食品を所望温度に加熱調理する際の細かい制御と正確で反復可能な一貫性の両方を可能にすることから、従来の方法及びオーブンに比べた利点となる。さらに、このオーブン(10)から大いに利益を得る多くの低温調理テクニック及びレシピが存在する。例えば、パン生地やパンの発酵、又はチーズケーキなどのウェットなペーストリーやデザートの焼き(ベーキング)では、本オーブンが利用する熱と水蒸気のユニークな組み合わせによって、より正確に調理される。さらに本オーブンは、フードサービス産業であろうと、個人の家庭内での使用のためであろうと、あらゆるエリアで使用できる。
【0020】
本オーブン(10)の第2の実施形態では、図3に示すように、貯液容器(14)からの加熱水(加熱された水)をネブライザー(36)に向かう途中で追加の水ヒーターコイル(42)を通してポンプ搬送する。この追加の水ヒーターコイルは、加熱水に対する二次的な熱源として作用し、加熱水が所望の最終温度でネブライザーに到達するのを確実にすることができる。この第2の水ヒーターコイルはまた、加熱水がネブライザー(36)へのその移動の結果としてその温度低下が生じないことも確保する。この第2の水ヒーターは、貯液容器中の予め加熱された水の温度を微調整する「トリミング」ヒーターとして使用される。
【0021】
前記第1の実施態様では、図2に示したように、加熱水は慣用のネブライザー技術を用いてネブライザー(36)内で霧状化されて加熱水粒子になる。ネブライザーは任意の形態のネブライザーとすることができるが、例えば、使い捨てでプラスチック製のPhilips Respironics HS 860 SideStream ネブライザーである。この種のネブライザーはユニークな5つ穴のデザインで、粒子の80%が5ミクロン未満のサイズの霧状化粒子の流れを作り出すベンチュリポートを備える。しかし、ネブライザーは任意の材料から作製することができる。
【0022】
この実施態様では、図2に示すように、エアコンプレッサー(30)から空気ヒーターコイル(32)を経て所望の最終温度に加熱された空気はネブライザー(36)にパイプ搬送される。ネブライザーで発生した加熱水粒子は、ネブライザー内の加熱された圧縮空気を介してオーブンの調理室(12)中に導入される。霧状化された加熱水粒子は食品を所望最終温度に加熱調理し、この加熱水粒子が加熱圧縮空気を介して調理室(12)内に連続的に導入される。
【0023】
ネブライザー(36)の別の実施態様としては、図6に示すようなフィードボウル(feed bowl)(38)が挙げられる。ネブライザーのフィードボウルは、ネブライザー内部の水位を検知するフロートスイッチ(40)を備える。この水位が予め決めたレベルを超えて上昇した場合、フロートスイッチが吸込みラインを作動させる。この吸い込みラインは、過剰の加熱水をネブライザーから吸い出し、この水をさらなる加熱とオーブン内の再循環のために貯液容器(14)に戻すように再循環させる。このフロートスイッチの作動レベルは、過充満を避けるようにネブライザーへの正確な水送給レベルを確保するよう正確に設定される。さらに、ネブライザー(36)は、図6に示すように、温度プローブ(39)を備える。これらの温度プローブはネブライザー中の水の温度を感知する。感知した温度が食品の加熱調理に必要な所望の終点温度でない場合には、オーブンは細かい微調整を行う。
【0024】
図2のオーブンの別の実施態様では、ネブライザー(36)からの過剰の加熱水が、貯液容器へのその到達前に、追加の水ヒーターコイル(図示せず)を通してポンプ搬送される。これは、ネブライザーから吸込みラインを通ってポンプ搬送される過剰の水が、所望の終点温度に加熱されてから貯液容器に到達する点で有利である。それにより、水温が再循環プロセス全体を通して所望の終点温度にとどまるので、水の再加熱に過大な時間を必要としないエネルギー効率のよいシステムになる。
【0025】
第1の実施態様では、オーブン(10)の調理室(12)は乾球温度プローブ(図示せず)を備える。この乾球温度プローブは、調理室内に配置されているニクロムリボンワイヤー赤外ブロイラープレートのような放射加熱要素(44)により放射される温度を部分的に感知する。この放射加熱要素はオーブンの乾球周囲空気温度を上昇させ、湿球温度と乾球温度との所望の温度差を生起させるように独立して制御することができる。さらに、この放射加熱要素は、例えば、食品の典型的には望ましい褐色化した又はパリッとした表面を作り出すことにより、食品の見栄えのよい仕上げを助ける。
【0026】
この実施態様では、調理室(12)は、加熱調理中の食品中に挿入しうる湿球温度プローブ(図示せず)を備える。これらの湿球温度プローブと乾球温度プローブは、オーブンが予め選択した温度を維持するのを確実にするように湿球及び乾球の温度差を連続的に感知する。感知された湿球及び乾球温度は次いで、それぞれのヒーター回路へのインプットを監視及び変更する一連のサーモスタットコントローラーによる再調整のために、それぞれ対応する湿球及び乾球PLDにリレーされる。さらに、一度に2つ以上の食品を加熱調理するのを助けるために、調理室は、食品を保持する、取り外し可能なラックを備える。これらのラックは、調理室内のラックスロット(54)に差し込まれて水平に固定される。オーブン(10)は、対流ファンのようなファン(50)を備えることにより、温度制御された水蒸気と圧縮空気が食品の表面全体に行き渡り、水蒸気と周囲空気とを混合するのを確実にしてもよい。
【0027】
第3の実施態様では、図4に示すように、オーブン(10)は、冷却又は冷蔵要素を備え、ここで、ネブライザー(36)にポンプ搬送される加熱された空気(加熱空気)及び加熱された水(加熱水)とは別個に単独で、又はこれらに加えて、冷却された空気及び水がネブライザーに送り込まれる。この実施態様では、空気は空気ヒーターコイルを通してパイプで送り込まれるが、別の実施態様では空気を移送するためのポンプのような別の手段を備える。
【0028】
この第3の実施態様では、図4に示すように、オーブン(10)の調理室(12)の外部に配置された冷却された貯液容器(60)が設けられる。この冷却貯液容器には、例えば、冷たい水タンクから設定された温度で冷却貯液容器にポンプ搬送される水が入っている。この水を公共水源から冷却貯液容器に手動で入れるかポンプ搬送する場合には、冷却貯液容器の下側にペルティエ熱電気ブロック、プレート又はクーラー(70)を配置する。ペルティエ熱電気ブロックは、熱電気学的冷却用の良く知られた構造である。冷蔵の実施態様に対しては、USDA(米国農務省)の食品安全指針を満たすために、冷却水(冷却された水)の水温は約華氏40°(4.4℃)以下とするが、冷却水の温度は必要ないかなる温度とすることもできる。冷却水の水温は約華氏30°(-1.1℃)から50°(10℃)の範囲内である。例えば、ペルティエブロックを、冷却用水を35°F(1.6℃)に冷却する特定の調節可能な温度にセットし、その温度で霧状化された水を導入することができよう。この所望の終点温度は、オーブンのユーザーが所望の終点温度を手動で入力するか、又は予め設定されたクッキングプログラムを選択するときに、ユーザーにより決められる。水の冷却貯液容器内に存在するのが温度プローブ(図示せず)であって、これは冷却貯液容器内の水温を感知して、この温度データをPLDにリレーし、PLDはペルティエブロックの温度を制御することにより冷却貯液容器内の水温を微調整する。冷却貯液容器には、冷却貯液容器の冷却された水中に没したコイル巻き銅コイルのような空気冷却用コイル(66)が収容されている。この空気冷却用コイルは冷却貯液容器内の水温を保持しているので、空気冷却用コイルを通ってポンプ搬送される空気が所望の最終温度に設定されるようになる。空気のポンプ搬送は、空気ヒーターコイル(32)に用いたのと同じコンプレッサー(30)からでもよく、或いは別のコンプレッサーからでもよい。
【0029】
冷却貯液容器(60)内の水が所望の最終温度になったら、図4に示すように、冷却水(冷却された水)と冷却空気(冷却された空気)をネブライザー(36)にポンプ搬送する。この実施態様では、冷却空気と冷却水は、加熱空気及び加熱水と同じネブライザーにポンプ搬送される。従って、ネブライザーは、加熱水及び冷却水を霧状化して、加熱水粒子及び冷却水粒子にする。これらの加熱水粒子及び冷却水粒子は、加熱空気及び冷却空気を介して調理室(12)に導入される。この実施態様では、加熱空気コイルからと冷却空気コイルからとで別々の空気ラインが存在し、それらがYスプリット(68)で合流する。Yスプリットはネブライザーへの到達前に空気温度の混合を助ける点で有利である。この実施態様では、ネブライザーは、その特定のネブライザーがどちらの回路を利用しているかに応じて、水を加熱水貯液容器(14)又は冷却水貯液容器に戻すように再循環させるために再循環ライン(56)を備える。それに代えて、再循環ラインは、混合された冷却水と加熱水を、加熱水の貯液容器を通して再循環させる前に所望の終点温度に戻るように加熱する第3の水ヒーターコイル(図示せず)を備える。さらに、過剰の水を冷却水貯液容器(60)に再循環させる冷却水再循環ライン(57)を設ける。
【0030】
別の実施態様では、冷却水を、加熱水及び加熱圧縮空気用とは別のネブライザー(図示せず)に送給する。このネブライザーは、冷却水を冷却水粒子になるよう霧状化する標準的な霧状化技法を使用する。生成した冷却水粒子は冷却された圧縮空気を介して調理室(12)に導入される。この実施態様では、ネブライザーは、ネブライザー内の水位を検出するフロートスイッチ(図示せず)を含んでいる。水位が予め決めたレベルを超えて上昇したら、フロートスイッチが吸込みラインを作動させる。この吸込みラインは過剰の冷却水を吸い出して、この冷却水をオーブン(10)全体の再循環のために冷却水貯液容器に戻るように再循環させる。
【0031】
第4の実施態様では、図7及び図8に示すように、分かれたレベルの調理(スプリットレベルクッキング)を助けるために、調理室(12)の背面に2以上のネブライザーが存在しうる。この実施態様では、調理室は、個々に独立して制御及び監視される、変動するサイズの複数の異なる区画室(コンパートメント)を有する。有利には、複数のネブライザー(36、37)のサイズは、2以上のネブライザーをオーブン(10)に取付けることができるよう十分に小さくコンパクトである。従って、各ネブライザーは、加熱水と加熱空気のみ又は冷却水と冷却空気のみを受け入れるか、或いは加熱水と冷却水及び加熱空気と冷却空気の両方を受け入れるかのいずれであろうと、個々の独立した調理室中にそれぞれの水粒子を独立して散布する。このことは、ユーザーが別々の調理温度及び調理時間を必要とする複数の異なる食品を調理しているなら有利である。例えば、分かれたレベルの調理のための別の実施態様では、図8及び図9に示すように、ユーザーは分割用プレート(51)をオーブン(10)の調理室(12)内の分割用スロット(52)中に滑り入れる。図9に示すように、分割用プレートは、それ自体の放射加熱要素(53)、乾球温度センサー(図示せず)、コンデンサー回路(図示せず)及び湿球温度センサー(図示せず)を備えていてもよい。この分割用プレートには、プレートの全側面に適当なガスケット材料が設けてあり、このプレートにより作られた新たな細分化された調理室がオーブンの他の領域とは別のそれ自体の環境を持つようにすることができる。湿球及び乾球温度センサーの接続は、プレートの後部に設けた、プレートを所定位置に装着すると接続を達成する接点により行われる。これにより、ユーザーはその1つのオーブン内の複数のスペースを使って、異なる食品(食物、食材)を別々の制御可能な温度及び出来上がりになるように調理することができる。例えば、ターキー(七面鳥)を華氏165°(74℃)の終点温度に調理しながら、同時にマッシュポテトが入った皿とキャセロール料理が入った別の皿を華氏135°(57℃)の所望終点温度に調理することができる。この分割状態のオーブンは、これらの皿をずっと華氏135°(57℃)に保持して皿内の食材の加熱し過ぎが起こらないようにすると同時に、別の分割されたキャビティ内のターキーは華氏165°(74℃)で調理して保持することができる。
【0032】
第5の実施態様では、図10に示すように、オーブンはさらに、調理室の底面に配置されたトラフ(樋形桶)(77)を備えた空気コンデンサー(空気凝縮器)回路(75)を含み、ここで前記トラフはコンデンサーコイル(78)およびドレーン(76)を備え、ここでコンデンサーコイルの両端は冷却水の第2の貯液容器に接続されている。例えば、このコンデンサー回路の1実施態様は、ペルティエブロック(70)で冷却される同じ冷却水貯液容器(60)を利用してもよいが、別の実施態様は、別個の冷却水貯液容器(図示せず)を用いてもよい。この第5の実施態様では、冷却水は、空気コンデンサーコイルを通してポンプ搬送されるが、このコイルは好ましくは銅製の金属チューブのコイルであり、調理室の後ろ側でオーブン床面に装着される。このコンデンサーコイルは、調理室の床に置かれた凹部を持つトラフ内に配置される。トラフはその一端にドレーン穴を有し、ドレーン穴に向かう排液を助長するようにドレーン穴に向かって下がるようにトラフは角度をつけて設置してもよい。冷却された水(冷却水)が銅のコンデンサーコイルを通ってポンプ搬送されるので、調理室(12)内のより暖かな霧状化された空気はこのコンデンサーコイルのより冷たい表面によって急速に凝縮される。コイルの表面上で凝縮した水はトラフ内のドレーン中に集まって滴りおち、冷却水貯液容器を通って戻るようにポンプ搬送される。この実施態様では、ある特定温度に加熱された既に霧状化された水蒸気が調理室からすばやく効率的に除去され、異なる温度の霧状化された水蒸気を調理室内に直ちに導入することができる。
【0033】
本書に開示したものに対する予見可能な別の実施態様も本開示に含まれることは当業者にはよく認識されるところである。以上の開示は、開示した実施態様に制限するか、そのような他の実施態様、翻案、改変、変更及び均等なアレンジを排除するように解されることを意図するものではない。
【符号の説明】
【0034】
オーブン10
調理室12
水の貯液容器14
貯液容器温度プローブ(図示せず)
貯液容器フロートスイッチ(図示せず)
第1水ヒーターコイル20
抵抗線22
ガラスセラミックチューブ24
コイル巻き銅チューブ26
空気コンプレッサー30
空気ヒーターコイル32
銅コイル34
ネブライザー36
第2ネブライザー37
フィードボウル38
ネブライザー温度プローブ39
フロートスイッチ40
第2水ヒーターコイル42
第3水ヒーターコイル(図示せず)
放射加熱要素44
乾球温度プローブ(図示せず)
湿球温度プローブ(図示せず)
ファン50
分割用プレート51
分割用スロット52
放射加熱要素53
ラックスロット54
再循環ライン56
冷却水再循環ライン57
水ポンプ58
冷却水貯液容器60
冷却水貯液容器フロートスイッチ(図示せず)
冷却水貯液容器温度プローブ(図示せず)
冷却空気コイル66
Yスプリット68
ペルティエブロック70
第4水ヒーター72
第2空気ヒーターコイル74
コンデンサー回路75
ドレーン76
コンデンサーコイル78
トラフ77
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】