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特表2022-525866粘膜癌の処置のための、単独の、またはI型IFNインデューサーと組み合わせた、キトサンポリプレックスベースのIL-12の局部発現
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(54)【発明の名称】粘膜癌の処置のための、単独の、またはI型IFNインデューサーと組み合わせた、キトサンポリプレックスベースのIL-12の局部発現
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/722 20060101AFI20220513BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220513BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220513BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20220513BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220513BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20220513BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220513BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220513BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220513BHJP
   C12N 15/24 20060101ALN20220513BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220513BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220513BHJP
【FI】
A61K31/722
A61K31/7088
A61K48/00
A61K47/54
A61P35/00
A61P13/10
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 N
C12N15/24 ZNA
C12N15/12
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555295
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 IB2020000178
(87)【国際公開番号】W WO2020183239
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】62/818,425
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/923,403
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/924,131
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510082868
【氏名又は名称】エンジーン,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】ラジェッシュ クリシュナン ゴパラクリシュナ パニッカー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ベイルー
(72)【発明者】
【氏名】ペイ リエン マー
(72)【発明者】
【氏名】ナタリー チン ムン タム
(72)【発明者】
【氏名】カルロス フリート
(72)【発明者】
【氏名】アントニー チュン
(72)【発明者】
【氏名】ショーナ ドーフィニー
(72)【発明者】
【氏名】シーミン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼ ローラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD43
4C076DD51
4C076DD67
4C076EE59
4C076FF34
4C084AA13
4C084AA22
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA81
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA14
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086EA23
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、がん免疫療法で使用される、好ましくは、IFN-1アクチベーター/インデューサーと組み合わせた、粘膜組織におけるIL-12の局所発現のための、方法及び組成物に関する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導体化キトサン核酸ポリプレックスを含む組成物であって、アミノ官能基化キトサン及びインターロイキン12(IL-12)をコードする少なくとも1つの治療用核酸構築物を含み、前記誘導体化キトサン核酸ポリプレックスが、さらに、少なくとも1つのポリアニオン性アンカー領域及び少なくとも1つの親水性テール領域を有する1つ以上のポリアニオン含有ブロックコポリマーを含む可逆的なコーティングを含む、前記組成物。
【請求項2】
前記アミノ官能基化キトサンが、さらに、親水性ポリオールを含むか、またはそれで官能基化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アミノ官能基化キトサンが、アルギニンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記親水性ポリオールが、グルコースまたはグルコン酸である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリアニオン含有ブロックコポリマーが、線状二元ブロックまたは三元ブロックコポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリプレックスが、さらに、IFN-1アクチベーター及び免疫チェックポイント阻害薬からなる群より選択される追加の免疫刺激分子をコードする核酸を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記治療用核酸構築物が、さらに、IFN-1アクチベーター及び免疫チェックポイント阻害薬からなる群より選択される追加の免疫刺激分子をコードする核酸を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記IFN-1アクチベーターが、RIG-Iアゴニスト、STINGアゴニスト、及びTLR7/9アゴニストからなる群より選択される、請求項6または7に記載の組成物。
【請求項9】
前記RIG-Iアゴニストが、eRNA11a、VA RNA1、eRNA41H、MK4621、SLR10、SLR14、及びSLR20からなる群より選択され、より好ましくは、eRNA41HまたはeRNA11aからなる群より選択される、請求項8に記載の方法の組成物。
【請求項10】
前記治療用核酸構築物が、gWIZ、pVAX、NTC8685、またはNTC9385Rからなる群より選択されるプラスミド内に含まれ、任意に、前記治療用核酸構築物が、さらに、CMV、EF1a、CMV/EF1a、CAG、及びCMV/EF1a/HTLVプロモーターからなる群より選択される発現制御エレメントを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記治療用核酸構築物が、さらに、合成β-グロビンベースのイントロンを含み、任意に、前記治療用核酸構築物が、さらに、HTLV-IRを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記治療用核酸構築物が、さらに、カナマイシン選択またはスクロースベースの選択エレメントを含み、任意に、前記治療用核酸構築物が、さらに、pUCまたはR6K複製起点を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
IL-12をコードする前記治療用核酸構築物が、配列番号7を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
方法を必要とする患者の粘膜組織におけるIL-12の局所発現のための方法であって、請求項1~13のいずれか1項に記載の治療的有効量の医薬組成物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
方法を必要とする患者の粘膜癌細胞の成長を抑制するための方法であって、請求項1~13のいずれか1項に記載の治療的有効量の医薬組成物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項16】
方法を必要とする患者の膀胱癌を処置するための方法であって、請求項1~13のいずれか1項に記載の治療的有効量の医薬組成物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
さらに、IFN-1アクチベーター及び免疫チェックポイント阻害薬からなる群より選択される追加の免疫刺激分子の同時または逐次投与を含む、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記IFN-1アクチベーターが、RIG-Iアゴニスト、STINGアゴニスト、及びTLR7/9アゴニストからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記IFN-1アゴニスト及び/または前記免疫チェックポイント阻害薬が、同じまたは異なる治療用核酸構築物によりコードされる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記IFN-1アゴニスト及び/または前記免疫チェックポイント阻害薬が、別々に投与される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
前記IFN-1アゴニストが、RIG-Iアゴニストであり、好ましくは、前記RIG-Iアゴニストが、eRNA11a、VA RNA1、eRNA41H、MK4621、SLR10、SLR14、及びSLR20からなる群より選択され、より好ましくは、eRNA41HまたはeRNA11aからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記免疫チェックポイント阻害薬が、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、及び/またはペムブロリズマブからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
カチオン性ポリマー及び/または脂質を含む核酸ポリプレックス、インターロイキン-12(IL-12)をコードする治療用核酸構築物、ならびに少なくとも1つのRIG-Iアゴニストをコードする核酸を含む治療用核酸構築物を含む組成物であって、IL-12及びRIG-Iをコードする前記治療用核酸構築物が、同じまたは異なる核酸構築物である、前記組成物。
【請求項24】
前記RIG-Iアゴニストが、eRNA11a、VA RNA1、eRNA41H、MK4621、SLR10、SLR14、及びSLR20からなる群より選択され、より好ましくは、eRNA41H、eRNA11aからなる群より選択される、請求項23に記載の方法の組成物。
【請求項25】
前記カチオン性ポリマーが、ポリエチレンイミン(PEI)、PAMAM、ポリリジン(PLL)、ポリアルギニン、キトサン、及びそれらの誘導体からなる群より選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記カチオン性ポリマーが、誘導体化キトサン、好ましくは、アミノ官能基化キトサンを含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記アミノ官能基化キトサンが、アルギニンを含み、さらに、親水性ポリオール、例えば、グルコン酸またはグルコースを含むか、またはそれで官能基化されている、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記核酸ポリプレックスが、さらに、少なくとも1つのポリアニオン性アンカー領域及び少なくとも1つの親水性テール領域を有する1つ以上のポリアニオン含有ブロックコポリマーを含む可逆的コーティングを含み、好ましくは、前記ポリアニオン含有ブロックコポリマーが、線状二元ブロッグ及び/または三元ブロッグコポリマーである、請求項25~27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
IL-12をコードする前記治療用核酸構築物が、配列番号Xを含む、請求項23~28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
方法を必要とする患者の粘膜組織におけるIL-12の局所発現のための方法であって、請求項23~29のいずれか1項に記載の治療的有効量の組成物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項31】
方法を必要とする患者の粘膜癌細胞の成長を抑制するための方法であって、請求項23~29のいずれか1項に記載の治療的有効量の組成物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項32】
方法を必要とする患者において膀胱癌を処置するための方法であって、請求項23~29のいずれか1項に記載の治療的有効量の組成物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2019年3月14日に出願された米国仮出願第62/818,425号、2019年10月18日に出願された同第62/923,403号、及び2019年10月21日に出願された同第62/924,131号の優先権の利益を主張し、全体が参照により及びあらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の分野
本開示は、がん免疫療法で使用される、好ましくは、I型IFN(IFN-1)アクチベーター/インデューサーと組み合わせた、粘膜組織におけるIL-12の局所発現のための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
Th1 T細胞は、サイトカインIFN-γ、GM-CSF、IL-2、及びリンホトキシン(LT、TNF-β)の産生により慣行に従って定義される。Th1細胞を産生する重要な決定は、細胞内細菌、真菌、及びウイルスによる感染に対する自然免疫応答に依存している。これらの病原体による感染は、TLRシグナル伝達の活性化、それに続く、樹状細胞及びNK細胞によるTh1発生に重要なサイトカインの産生をもたらす。Th1の極性化及び分化は、IL-12、IL-18、IFN-γ、及び1型インターフェロンにより促進されるが、IL-4、IL-10、及びTGF-βにより抑制される。
【0004】
成熟樹状細胞により産生されるIL-12は、Th1コミットメントと関連する重要な因子と考えられる。T細胞の活性化及びSTAT1シグナルは、IL-12Rβの発現をもたらし、これは、IL-12と結合する際に、Jak-2及びTyk-2を介して、STAT4を活性化するようにシグナル伝達する。STAT4は、核に入り、TbetなどのTh1系統特異的転写因子の発現を誘発する。Tbetは、IFN-γ及びIL-12Rβ2の発現を促進することにより、Th1表現型を強化するのに役立つ。次に、IFN-γは、Tbetの産生を刺激するために、IFN-γ受容体の下流のSTAT1シグナル伝達を介してTh1分化を促進する。NK細胞及び予めコミットされたTh1細胞などの様々な細胞は、IFN-γの重要な初期の供給源である。対照的に、IL-18は、Th1コミットメントを促進し、完全に分化したTh1細胞によるIFN-γ産生を誘発することにより、Th1機能において二重の役割を果たす。
【0005】
NK細胞の活性化及びナイーブCD4+細胞のTh1細胞への分化による、自然及び適応免疫応答の両方における不可欠な役割を考えると、IFN-γの強力な刺激因子として作用するので、IL-12は、腫瘍免疫療法の潜在的な候補と長く考えられている。IL-12は、in vitroで抗腫瘍活性を示すことが示され(Kobayashi et al.,J.Exp.Med.170:827-845(1989)及びStern et al.,PNAS 87:6808-6812(1990))、IL-12誘導性腫瘍退縮及びマウス腫瘍モデルの低減を示す初期の動物研究は、有望であるように思われた。IL-12の全身投与の研究は、Brunda et al.,(J.Exp.Med.,178:1223-1230(1993))を含み、これは、IL-12のマウスへの腹腔内投与が、B16F10黒色腫の実験的肺転移または皮下成長の著しい低減を示したことを示した。IL-12投与への応答は、用量依存的であり、生存期間の延長をもたらした。同様の活性は、実験的肝転移及び確立された皮下M5076細網肉腫及びRenca腎細胞腺癌腫瘍で実証された。同様に、Teicher et al.,(Int.J.Cancer,65(1):80-84(1996))は、IL-12が、B16メラノーマ、ルイス肺癌、及び腎細胞癌の3種類の固形マウス組織において活性な抗腫瘍薬であることを報告したが、Kozar et al,(Clin.Can.Res.,9(8):3124-3133(2003))は、IL-12の毎日注射または投与で処置されたL1210白血病細胞またはB16F10メラノーマ細胞を接種させたマウスが、腫瘍の中程度の低減を示したことを示した。
【0006】
これらの動物研究は、明らかな毒性はほとんどまたはまったく報告されなかった。これにより、IL-12がさらなる臨床開発にとって魅力的な分子となる。残念ながら、初期のヒト臨床試験では、有効性の低下及び毒性の増加が見られた。最初の第1相用量漸増研究では、進行性固形腫瘍(黒色腫、腎癌、及び結腸癌を含む)を有する40人の患者にIL-12をI.V.投与すると、黒色腫患者において唯一の完全奏効及び腎癌患者において部分的奏効が得られる(Atkins et al.,Clin.Cancer Res.,3:409-17(1997))。重大な全身毒性が、この研究で見られ、4人の患者のうち3人が、最高投薬量のIL-12(1000ng/kg)で処置されて、口内炎及び/または肝機能障害を呈した。Bajetta et al.,(Clin.Cancer Res.,4:75-85(1998))により、転移性黒色腫患者10人に0.5ug/kgのIL-12を皮下注射するパイロット研究では、100%の患者にインフルエンザ様症候群、90%の患者に発熱、60%の患者に一過性の高トランスアミナーゼ血症、80%の患者に高トリグリセリド血症が現れた。さらなるタイプの毒性が、研究患者の10~20%で見られた。部分奏効または完全奏効が観察されなかった。但し、10人の参加者のうち3人に腫瘍退縮が見られた。最も顕著なのは、Genetics Instituteにより実施された第II相治験では、連日IL-12を静脈内投与すると、登録された17人の患者のうちの12人が入院し、2人の患者が死亡した(Leonard et al.,Blood,90(7):2541-2548(1995))。
【0007】
全身投与で見られる毒性を回避するために、IL-12の局所送達を使用して、研究を行った。これらの研究は、全身研究よりもIL-12の投与と関連する毒性が少ないことを示したが、局所送達は、腫瘍の除去にほとんど効果がなかった。Lenzi et al.(Clin.Cancer Res.,8:3686-3695,(2002))は、第1相試験で、腹膜カテーテルを介して、卵巣癌及び様々な腹部癌に起因する腹膜癌腫症に罹患する29人の患者に、3ng/kgから600ng/kgまで範囲の用量でIL-12を投与した。治験では、生命を脅かす毒性は見られなかったが、登録された29人の患者のうち2人だけが完全奏効を呈し、8人が安定性疾患を有し、残りの19人が、進行性疾患を有していた。同様に、Weiss et al.(J.Immunother.,26(4):343-348(2003))は、膀胱の表在性移行上皮癌患者にIL-12を膀胱内投与すると、中等度、重度、または生命を脅かす毒性はもたらされなかったが、患者が、また、抗腫瘍または免疫学的効果の臨床的に関連する証拠を示さなかったことを示した。
【0008】
がん処置のためのIL-12のアジュバントとしてのキトサンの使用が報告されている。マウスにおける、膀胱癌の処置の膀胱内免疫療法(Zaharoff et al.,Cancer Res.69(15):6192-6199(2009))、ならびに、結腸直腸及び膵臓腫瘍に対する腫瘍内注射(Zaharoff et al,J.immunotherapy,33(7):697-705(2010))、ならびに、乳癌に対する腫瘍内注射(Vo et al.,Oncoimmunology,3912):e968001(2015))のために、IL-12との共製剤の一部としてキトサンを使用した。処置部位からのIL-12の拡散を低減させ、系内のIL-12の拡散に起因する起こり得る毒性を回避するために、治療薬として、キトサンに共有結合しているIL-12分子を使用することも検討されている(Zaharoff et al.、U.S.20170106092)。しかし、残念ながら、IL-12ベースの治療の臨床的応用は、致死性炎症性症候群の急速な進行に起因する問題が残っており、IL-12媒介性毒性を克服する方策の改善が依然として必要とされる。Wang et al.,Nature Communications 8,Article 1395(2017)。
【0009】
従って、IL-12の効果的な局所発現ではあるが、毒性が低く、効能が改善された、新しい組成物及び方法に対するニーズが残っている。理想的には、これらは、腫瘍微小環境におけるがん免疫療法を強化するために、追加の免疫刺激方策と組み合わせて使用することができる。IL-12併用療法に関する現在の知識ベースは、かなり限られているが、主に、IL-2、IL-7、IL-15、IL-18、及びIL-21などの追加の免疫調節サイトカインとのIL-12の同時投与及び/または共発現に集中している。例えば、Weiss et al.,Expert Opin Biol Ther.7:1705-1721(2007)を参照のこと。特に、IL-12と代替の自然免疫及び/または適応免疫刺激方策との間の潜在的な相乗的相互作用は、ほとんど調査されていない。
【0010】
パターン認識受容体(PRR)は、保存された病原体関連核酸(NA)配列を認識する自然免疫系の別の要素を含む。ヌクレオチドリガンドによるPRR活性化は、I型インターフェロン(IFN)及び炎症性サイトカインの産生を誘導し、これは、ウイルス及び微生物感染の防御の第一線として機能する。Iwasaki and Medzhitov,Science 327:291-95(2010)。これらのNA感知PRRは、エンドソームのToll様受容体(TLR)ファミリー(Majer et al.,Curr.Opin.Immunol.44:26-33(2017))、細胞質ゾルDNAセンサーAIM2及び環状GMP-AMPシンテターゼ(cGAS)、インターフェロンのcGAS刺激因子(STING)経路の一部(Chen et al.,Nat.Immunol.17:1142-49 (2016))、及びサイトゾルRNAセンサーレチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)様受容体ファミリー(Schlee,Immunobiology,218:1322-35(2013))を含む。興味深いことに、IL-12及びRIG-Iの両方を評価する参考文献は非常に少なく、2つの間に重要な相互作用を示さない参考文献は少ない。Jiang et al.(J.Exp.Med.216:2854-68(2019))は、中和抗体により、in vivoで内因性IL-12を排除しても、誘導されたRIG-I応答に影響がないことを示したが、Kong et al.の初期の研究(Cell Host & Microbe 6:150-61(2009))は、RIG-Iのレベルを変更しても、細胞ベースのアッセイではIL-12の発現に影響がないことを示した。そのようなものであるから、特に、IL-12及びRIG-Iの組み合わせは、役に立たないように思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、腫瘍内または腫瘍の近位に存在する粘膜組織の強力なトランスフェクションのために、ポリアニオン含有ブロックコポリマーで可逆的にコーティングされた誘導体化キトサンポリプレックスを用いて、IL-12の効果的な局所発現に対する当該技術分野で未だ満たされていないニーズを解消する。さらに、最初に本明細書に提示されるように、本組成物及び方法を用いて得られたIL-12の効果的な局所発現は、さらに、腫瘍に対する細胞傷害性免疫応答を増強するために、有利には、1つ以上の自然及び/または適応的免疫刺激方策と組み合わせることができる。好ましい実施形態では、本発明によるIL-12発現は、I型インターフェロン(IFN-1)アクチベーター/インデューサー、例えば、RIG-Iアゴニスト、STINGアゴニスト、及び/またはTLR7/9アゴニスト、の同時または逐次投与及び/または発現と組み合わされる。いくつかの実施形態では、本方法及び組成物は、少なくとも1つのRIG-IアゴニストとのIL-12の共発現を含む。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様では、本発明は、アミノ官能基化キトサンを含む誘導体化キトサン核酸ポリプレックス及びIL-12をコードする治療用核酸構築物を含む組成物を提供し、該誘導体化キトサン核酸ポリプレックスは、さらに、少なくとも1つのポリアニオン性アンカー領域及び少なくとも1つの親水性テール領域を有する1つ以上のポリアニオン含有ブロックコポリマーを含む可逆的コーティングを含む。
【0013】
好ましい実施形態では、ポリアニオン含有ブロックコポリマーは、線状二元ブロック及び/または三元ブロックコポリマーである。好ましい実施形態では、アミノ官能基化キトサンは、さらに、親水性ポリオールを含む。いくつかの実施形態では、アミノ官能基化キトサンは、アルギニンを含む。いくつかの実施形態では、親水性ポリオールは、グルコースまたはグルコン酸である。
【0014】
いくつかの実施形態では、治療用核酸構築物は、gWIZ、pVAX、NTC8685、またはNTC9385Rからなる群より選択されるプラスミド内に含まれる。いくつかの実施形態では、治療用核酸構築物は、さらに、CMV、EF1a、CMV/EF1a、及びCAG、ならびにCMV/EF1α/HTLVからなる群より選択される発現制御エレメントを含む。いくつかの実施形態では、治療用核酸構築物は、合成βグロビンベースのイントロンを含む。いくつかの実施形態では、治療用核酸構築物は、HTLV-IRを含む。いくつかの実施形態では、治療用核酸構築物は、カナマイシンまたはスクロースベースの選択エレメントを含む。いくつかの実施形態では、治療用核酸構築物は、pUCまたはR6K複製起点を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、本治療用核酸構築物は、さらに、少なくとも1つのさらなる追加の自然免疫及び/または適応免疫刺激分子をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、免疫刺激分子は、I型インターフェロン(IFN-1)アクチベーター/インデューサー、例えば、RIG-Iアゴニスト、STINGアゴニスト、及び/またはTLR7/9アゴニストを含む。好ましい実施形態では、治療用核酸構築物は、さらに、少なくとも1つのRIG-Iアゴニスト、例えば、eRNA11a、アデノウイルスVA RNA1、eRNA41H、MK4621、SLR10、SLR14、及び/またはSLR20、さらにより好ましくは、eRNA11aまたはeRNA41H、をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、免疫刺激分子は、免疫チェックポイント阻害薬のモジュレーターである。
【0016】
別の態様では、方法を必要とする患者の粘膜組織におけるIL-12の局所的発現のための方法が提供され、方法は、アミノ官能基化キトサン及びIL-12をコードする治療用核酸構築物を含む誘導体化キトサン核酸ポリプレックスを含む治療的有効量の医薬組成物を該患者に投与することを含み、該誘導体化キトサン核酸ポリプレックスは、さらに、少なくとも1つのポリアニオン性アンカー領域及び少なくとも1つの親水性テール領域を有する1つ以上のポリアニオン含有ブロックコポリマーを含む可逆的コーティングを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、方法は、さらに、IFN-1アクチベーター/インデューサー及び/または免疫チェックポイント阻害薬の共発現を含む。いくつかの実施形態では、IFN-1アクチベーター/インデューサー及び/または免疫チェックポイント阻害薬は、同じまたは異なる治療用核酸構築物からのIL-12と共発現される。好ましい実施形態では、治療用核酸構築物は、一本鎖のhIL-12と少なくとも1つのRIG-Iアゴニスト、例えば、eRNA11a、VA RNA1、eRNA41H、MK4621、SLR10、SLR14、及びSLR20、さらにより好ましくは、eRNA11aまたはeRNA41Hをコードする核酸を含む。例示的な実施形態では、一本鎖hIL-12をコードする核酸は、配列番号7を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、IFN-1アクチベーター/インデューサー及び/または免疫チェックポイント阻害薬は、別々に投与される。好ましい実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、及び/またはペンブロリズマブコからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、IFN-1アクチベーター/インデューサーは、MK4621/JetPEIである。
【0019】
別の態様では、方法を必要とする患者の粘膜癌を処置するための方法が提供され、方法は、アミノ官能基化キトサン及びIL-12をコードする治療用核酸を含む誘導体化キトサン核酸ポリプレックスを含む治療的有効量の医薬組成物を該患者に投与することを含み、該誘導体化キトサン核酸ポリプレックスは、さらに、少なくとも1つのポリアニオン性アンカー領域及び少なくとも1つの親水性テール領域を有する1つ以上のポリアニオン含有ブロックコポリマーを含む可逆的コーティングを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、方法は、さらに、IFN-1アクチベーター/インデューサー及び/または免疫チェックポイント阻害薬の共発現を含む。いくつかの実施形態では、IFN-1アクチベーター/インデューサー及び/または免疫チェックポイント阻害薬は、同じまたは異なる治療用核酸構築物からのIL-12と共発現される。好ましい実施形態では、治療用核酸構築物は、一本鎖のhIL-12と少なくとも1つのRIG-Iアゴニスト、例えば、eRNA11a、VA RNA1、eRNA41H、MK4621、SLR10、SLR14、及びSLR20、さらにより好ましくは、eRNA11aまたはeRNA41Hをコードする核酸を含む。例示的な実施形態では、一本鎖hIL-12をコードする核酸は、配列番号7を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、IFN-1アクチベーター/インデューサー及び/または免疫チェックポイント阻害薬は、別々に投与される。好ましい実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、及び/またはペンブロリズマブコからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、IFN-1アクチベーター/インデューサーは、MK4621/JetPEIである。
【0022】
好ましい実施形態では、ポリアニオン含有ブロックコポリマーは、線状二元ブロック及び/または三元ブロックコポリマーである。好ましい実施形態では、アミノ官能基化キトサンは、さらに、親水性ポリオールを含む。いくつかの実施形態では、アミノ官能基化キトサンは、アルギニンを含む。いくつかの実施形態では、親水性ポリオールは、グルコースまたはグルコン酸である。
【0023】
別の態様では、本発明は、カチオン性ポリマーならびにIL-12及び少なくとも1つのRIG-Iアゴニストをコードする治療用核酸構築物を含む核酸ポリプレックスを含む医薬組成物を提供する。好ましい実施形態では、治療用核酸構築物は、一本鎖hIL-12分子ならびにeRNA11a、VA RNA1、eRNA41H、MK4621、SLR10、SLR14、及びSLR20からなる群より選択され、さらにより好ましくは、eRNA11aまたはeRNA41Hからなる群より選択される、少なくとも1つのRIG-Iアゴニストをコードする。例示的な実施形態では、一本鎖hIL-12をコードする核酸は、配列番号7を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、カチオン性ポリマーは、ポリアミン、ポリ有機アミン、ポリ(アミドアミン);ポリアミノ酸ポリエチレンイミンセルロース、多糖類、キトサン、及びそれらの誘導体を含む群より選択される。いくつかの実施形態では、カチオン性ポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)、PAMAM、ポリリジン(PLL)、ポリアルギニン、キトサン、及びそれらの誘導体からなる群より選択される。
【0025】
好ましい実施形態では、カチオン性ポリマーは、誘導体化キトサンを含む。本明細書で例示される特に好ましい実施形態では、誘導体化キトサンは、アミノ官能基化キトサンであり、より好ましくは、アルギニン及び親水性ポリオール、例えば、グルコン酸またはグルコースを含む二重誘導体化キトサンである。いくつかの実施形態では、核酸ポリプレックスは、さらに、少なくとも1つのポリアニオン性アンカー領域及び少なくとも1つの親水性テール領域を有する1つ以上のポリアニオン含有ブロックコポリマーを含む可逆的コーティングを含む。好ましい実施形態では、ポリアニオン含有ブロックコポリマーは、線状二元ブロック及び/または三元ブロックコポリマーである。
【0026】
いくつかの実施形態では、治療用核酸構築物は、gWIZ、pVAX、NTC8685、またはNTC9385Rからなる群より選択されるプラスミド内に含まれる。いくつかの実施形態では、治療用核酸構築物は、さらに、CMV、EF1a、CMV/EF1a、及びCAG、ならびにCMV/EF1α/HTLVからなる群より選択される発現制御エレメントを含む。いくつかの実施形態では、治療用核酸構築物は、合成βグロビンベースのイントロンを含む。いくつかの実施形態では、治療用核酸構築物は、HTLV-IRを含む。いくつかの実施形態では、治療用核酸構築物は、カナマイシンまたはスクロースベースの選択エレメントを含む。いくつかの実施形態では、治療用核酸構築物は、pUCまたはR6K複製起点を含む。
【0027】
別の態様では、方法を必要とする患者の粘膜組織におけるIL-12の局所発現のための方法が提供され、方法は、カチオン性ポリマーと、IL-12及び少なくとも1つのRIG-Iアゴニストをコードする治療用核酸構築物を含む核酸ポリプレックスを含む治療的有効量の医薬組成物を該患者に投与することを含む。好ましい実施形態では、治療用核酸構築物は、一本鎖hIL-12分子ならびにeRNA11a、VA RNA1、eRNA41H、MK4621、SLR10、SLR14、及びSLR20からなる群より選択され、さらにより好ましくは、eRNA11aまたはeRNA41Hからなる群より選択される、少なくとも1つのRIG-Iアゴニストをコードする。例示的な実施形態では、一本鎖hIL-12をコードする核酸は、配列番号7を含む。
【0028】
別の態様では、方法を必要とする患者の粘膜癌を処置するための方法が提供され、方法は、カチオン性ポリマーと、IL-12及び少なくとも1つのRIG-Iアゴニストをコードする治療用核酸を含む核酸ポリプレックスを含む治療的有効量の医薬組成物を該患者に投与することを含む。好ましい実施形態では、治療用核酸構築物は、一本鎖hIL-12分子ならびにeRNA11a、VA RNA1、eRNA41H、MK4621、SLR10、SLR14、及びSLR20からなる群より選択され、さらにより好ましくは、eRNA11aまたはeRNA41Hからなる群より選択される、少なくとも1つのRIG-Iアゴニストをコードする。例示的な実施形態では、一本鎖hIL-12をコードする核酸は、配列番号7を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、カチオン性ポリマーは、ポリアミン、ポリ有機アミン、ポリ(アミドアミン);ポリアミノ酸ポリエチレンイミンセルロース、多糖類、キトサン、及びそれらの誘導体を含む群より選択される。いくつかの実施形態では、カチオン性ポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)、PAMAM、ポリリジン(PLL)、ポリアルギニン、キトサン、及びそれらの誘導体からなる群より選択される。
【0030】
好ましい実施形態では、カチオン性ポリマーは、誘導体化キトサンを含む。本明細書で例示される特に好ましい実施形態では、誘導体化キトサンは、アミノ官能基化キトサンであり、より好ましくは、アルギニン及び親水性ポリオール、例えば、グルコン酸またはグルコースを含む二重誘導体化キトサンである。いくつかの実施形態では、核酸ポリプレックスは、さらに、少なくとも1つのポリアニオン性アンカー領域及び少なくとも1つの親水性テール領域を有する1つ以上のポリアニオン含有ブロックコポリマーを含む可逆的コーティングを含む。好ましい実施形態では、ポリアニオン含有ブロックコポリマーは、線状二元ブロック及び/または三元ブロックコポリマーである。
【0031】
定義
別途定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記法、及び他の科学用語は、本発明が関係する当業者らにより一般に理解される意味を有することを意図する。いくつかの場合では、一般に理解される意味を有する用語は、明確にするために及び/またはすぐに参照できるように本明細書中で定義され、本明細書にそのような定義の包含は、必ずしも、当該技術分野において一般に理解されているものを超える差を表すように解釈されるべきではない。本明細書に記載または参照される手法及び手順は、一般によく理解され、当業者らにより、従来の方法論、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd ed.(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYに記載の広く利用される分子クローニング方法論、を使用して一般に用いられる。必要に応じて、市販のキット及び試薬の使用を含む手順は、別途記載のない限り、一般に、製造者が定義したプロトコール及び/またはパラメーターに従って実施される。
【0032】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0033】
「約」という用語は、示された値及びその値の上下範囲を示し、包含する。特定の実施形態では、「約」という用語は、指定された値±10%、±5%、または±1%を示す。特定の実施形態では、示されている場合、「約」という用語は、指定された値±その値の1標準偏差を示す。
【0034】
「それらの組み合わせ」という用語は、その用語が参照する要素の全ての可能な組み合わせを含む。
【0035】
任意の疾患または障害の「処置すること」または「処置」は、特定の実施形態では、対象に存在する疾患または障害を改善することを指す。別の実施形態では、「処置すること」または「処置」は、対象により識別できない可能性がある少なくとも1つの物理的パラメーターを改善することを含む。さらに別の実施形態では、「処置すること」または「処置」は、物理的(例えば、識別可能な症状の安定化)または生理学的(例えば、物理的パラメーターの安定化)あるいはその両方のいずれかで、疾患または障害を和らげることを含む。さらに別の実施形態では、「処置すること」または「処置」は、疾患または障害の発症を遅延または予防することを含む。例えば、例示的な実施形態では、「がんを処置すること」という表現は、がん細胞増殖の抑制、がん拡散(転移)の抑制、腫瘍成長の抑制、がん細胞数もしくは腫瘍成長の低減、がんの悪性度(例えば、分化の増加)の減少、またはがん関連症状の改善を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「治療的有効量」または「有効量」という用語は、対象に投与される場合に、疾患または障害を処置するのに有効である本組成物の量を指す。例えば、例示的な実施形態では、「有効量」という表現は、「治療的有効量」または「治療的有効用量」などと互換的に使用され、がんを処置するために有効である治療薬の量を意味する。本明細書で提供される組成物の有効量は、病状、年齢、性別、動物の体重などの要因によって変化してもよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「対象」または「個体」という用語は、哺乳動物対象を意味する。例示的な対象としては、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ラクダ、トリ、ヤギ、及びヒツジが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、がん、自己免疫疾患もしくは状態、及び/または本明細書で提供される抗体で処置することができる感染症を有する。いくつかの実施形態では、対象は、がん、自己免疫疾患もしくは状態、及び/または感染症を有することが疑われるヒトである。
【0038】
「キトサン」は、N-アセチルグルコサミンのポリマーである、キチンの部分的または完全に脱アセチル化された形態である。脱アセチル化度が50%を超えるキトサンが本発明では使用される。
【0039】
キトサンは、脱アセチル化部位の遊離アミノ基を官能基化することにより誘導体化されてもよい。本明細書に記載の誘導体化キトサンは、以下を含む、核酸送達ビヒクルに有利な多数の特性を有する:負荷電核酸に効果的に結合及び複合体化すること、制御可能なサイズのナノ粒子に形成することができること、細胞により取り込まれ得ること、ならびに、細胞内に適切な時間で核酸を放出し得ること。1%~50%の任意の程度の官能基化を有するキトサン。(パーセント官能基化は、官能基化の前または官能基化のない状態でのキトサンポリマー上の遊離アミノ部分の数と比較して決定される。)脱アセチル化度及び官能基化度は、官能基化キトサン誘導体に特定の電荷密度を与える。
【0040】
本発明によるポリオールは、3、4、5、6、または7つの炭素骨格を有してもよく、少なくとも2つのヒドロキシル基を有してもよい。そのようなポリオール、またはそれらの組み合わせは、カチオン部分(例えば、リジン、オルニチンなどのアミノ基を含む分子、グアニジニウム基、アルギニンを含む分子、またはそれらの組み合わせ)で官能基化されているキトサンなどのキトサン骨格へのコンジュゲートに有用であり得る。
【0041】
本明細書で使用される「C-Cアルキレン」という用語は、任意に1つ以上の炭素-炭素多重結合を含有する線状または分枝状の二価炭化水素ラジカルを指す。誤解を避けるために、本明細書で使用される「C-Cアルキレン」という用語は、アルカン、アルケン、及びアルキンの二価ラジカルを包含する。
【0042】
本明細書で使用される場合、別途指示のない限り、「ペプチド」及び「ポリペプチド」という用語は、交換可能に使用される。
【0043】
「ポリペプチド」という用語は、従来のポリペプチド(すなわち、LまたはD-アミノ酸を含有する短いポリペプチド)、ならびに所望の機能的活性を保持するペプチド同等物、ペプチドアナログ、及びペプチド模倣物を指すように最も広い意味で使用される。ペプチド同等物は、1つ以上のアミノ酸を関連有機酸、アミノ酸などで置き換えること、または側鎖もしくは官能基を置換または修飾することにより、従来のペプチドとは異なり得る。
【0044】
ペプチド模倣物は、当該技術分野で知られているように、代替の結合により置き換えられた1つ以上のペプチド結合を有してもよい。当該技術分野で知られているように、ペプチド骨格の一部または全部は、機能的アミノ酸側鎖の可動性を制限するために、立体配座的に拘束された環状アルキルまたはアリール置換基で置き換えることもできる。
【0045】
本発明のポリペプチドは、当該技術分野で周知である組み換え及び合成方法などの認識された方法により生成されてもよい。ペプチド合成の手法は周知であり、Merrifield,J.Amer.Chem.Soc.85:2149-2456(1963),Atherton,et al.,Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press(1989),and Merrifield,Science 232:341-347(1986)に記載されるものを含む。
【0046】
本明細書で使用される場合、「線状ポリペプチド」は、構成アミノ酸側鎖に共有結合している分岐基を欠くポリペプチドを指す。本明細書で使用される場合、「分岐ポリペプチド」は、構成アミノ酸側鎖に共有結合している分岐基を含むポリペプチドを指す。
【0047】
本明細書で使用されるカチオンまたはポリオールの「最終的官能基化度」は、それぞれ、カチオン(例えば、アミノ)基またはポリオールで官能基化されたキトサン骨格上のカチオン(例えば、アミノ)基のパーセンテージを指す。従って、「α:β比」、「最終官能基化度比」(例えば、アルギニンの最終官能基化度:ポリオールの最終官能基化度の比)などは、「モル比」または「数比」という用語と互換的に使用され得る。
【0048】
分散系は、連続媒体全体に分布した分散相として知られる粒子物質で構成される。キトサン核酸ポリプレックスの「分散液」は、水和キトサン核酸ポリプレックスを含む組成物であり、ポリプレックスは媒体全体に分布している。
【0049】
本明細書で使用される場合、「予備濃縮された」分散液は、濃縮された分散液を形成するための濃縮プロセスを受けていないものである。
【0050】
本明細書で使用される場合、ポリプレックス沈殿物を「実質的に含まない」は、組成物が、目視検査で観察することができる粒子を本質的に含まないことを意味する。
【0051】
本明細書で使用される場合、生理学的pHは、6~8のpHを指す。
【0052】
「キトサン核酸ポリプレックス」またはその文法上の同等物は、複数のキトサン分子及び複数の核酸分子を含む複合体を意味する。好ましい実施形態では、(例えば、二重)誘導体化キトサンは、該核酸と複合体化される。
【0053】
本明細書で使用される「ポリエチレングリコール」(「PEG」)という用語は、-(CH2CH2-O)-の繰り返し単位及びHO-(CH2CH2-O)n-Hの一般式を有するエチレンオキシドのポリマーを意味することが意図される。
【0054】
本明細書で使用される「モノメトキシポリエチレングリコール」(「mPEG」)という用語は、-(CH2CH2-O)-の繰り返し単位及びCH3O-(CH2CH2-O)n-Hの一般式を有するエチレンオキシド、例えば、一端がメトキシ基でキャップされたPEG、のポリマーを意味することが意図される。
【0055】
本開示は、添付の図面を参照して開示される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】MB49細胞に目的のプラスミドをin vitroトランスフェクトした後のルシフェラーゼレポーター遺伝子(Luc2)の用量依存的な酵素活性を示す。
【0057】
図2A】in vivoでのトランスフェクション効率(レポーター遺伝子のmRNAコピー数)に基づく目的のベクターバックボーンのランク付けを示す。
【0058】
図2B】in vivoでのトランスフェクション効率(レポーター遺伝子の酵素活性)に基づく目的のベクターバックボーンのランク付けを示す。
【0059】
図2C】トランスフェクトされた組織のmRNAコピー数に基づいたin vivoでの目的のベクターバックボーンのランク付けを示す。
【0060】
図2D】in vivoで発現されたタンパク質のレベルに基づいた目的のベクターバックボーンのランク付けを示す。
【0061】
図3A】目的のプロモーター/エンハンサー配列を含むプラスミドでトランスフェクトされたMB49細胞を使用したin vitroでのGFP発現レベルを示す。
【0062】
図3B】MB49細胞におけるGFPのin vitro発現に基づくプロモーター/エンハンサー配列のランク付けを示す。
【0063】
図4A】目的のプロモーター/エンハンサー配列を含むプラスミドでトランスフェクトされたヒト初代膀胱上皮細胞のin vitroでのGFP蛍光結果を示す。
【0064】
図4B】in vitroでのヒト初代膀胱上皮細胞の活性に基づくプロモーター-エンハンサー配列のランク付けを示す。
【0065】
図5A】細菌成分を除去するように改良された目的のプラスミドでヒト初代膀胱上皮細胞をin vitroでトランスフェクトした後のGFP発現の用量-応答を示す。
【0066】
図5B】in vitroでのヒト初代膀胱上皮細胞の活性に基づいた改良プラスミドのランク付けを示す。
【0067】
図6】in vivoでの膀胱トランスフェクションに対するPEG化の影響を示す。
【0068】
図7】A及びBは、2つの異なる濃度でのin vivoでの+/-PEG化におけるヒトPD-L1-FcのmRNA発現を示す。
【0069】
図8】in vivoでPEG-DDXでトランスフェクトすることにより媒介されたタンパク質発現のレベルを示す。
【0070】
図9A】ポリプレックスの安定性に対するPEG化の影響を比較する;膀胱内で1時間インキュベートした後に排尿されたPEG化及び非PEG化ポリプレックスの外観。
【0071】
図9B】膀胱内で1時間インキュベートした後の排尿後のPEG化及び非PEG化ポリプレックスの動的光散乱アッセイの結果を示す。
【0072】
図10】in vivoでのhPD-L1-Fc産生に対するDDX-1(DDX)及びDDX-II(RXG)の影響を示す。
【0073】
図11】マウス膀胱にRXG(DDX-II、PEG化及び非PEG化)製剤を投与した後のヒトPD-L1-Fcタンパク質発現のレベルを示す。
【0074】
図12A】RIG-Iアゴニストカセットを含まない及び含む、マウスIL-12を含むプラスミドDNA構築物を示す。さらに、短いエラスチンリンカーにより結合された単一のオープンリーディングフレームにp40及びp35遺伝子を含むmIL-12導入遺伝子を示す。
【0075】
図12B】RIG-Iアゴニストカセットを含まない及び含む、マウスIL-12を含むプラスミドDNA構築物を示す。本発明による医薬組成物の臨床的実施形態の概略図を示す。
【0076】
図13A】プラスミド産生mIL-12で刺激された脾細胞のIFNγ産生を示す。
【0077】
図13B】NTC9385Rプラスミドバックボーンから発現されたヒトIL-12p40p35の機能的活性を示す。
【0078】
図13C】IL-12応答性レポーター細胞株(HEKBlue)からのマウス媒介性SEAP産生を示す。
【0079】
図14A】空のプラスミド(図14A) 対 RIG-Iアゴニストカセットを含む及び含まないIL-12遺伝子を有するプラスミド(図14B)でトランスフェクトした後の培養された膀胱癌上皮細胞のIFNβレベルを比較する。
【0080】
図14B】空のプラスミド(図14A) 対 RIG-Iアゴニストカセットを含む及び含まないIL-12遺伝子を有するプラスミド(図14B)でトランスフェクトした後の培養された膀胱癌上皮細胞のIFNβレベルを比較する。
【0081】
図15】in vivoでのトランスフェクションの4、24、48、72、及び96時間後のIL-12 mRNAのレベルを示す。
【0082】
図16A】本発明のDDX/DNAナノ粒子を合成するための二重誘導体化キトサンRXG(DDX II)構造及びプロセスを示す。
【0083】
図16B】本発明のDDX/DNAナノ粒子を合成するための二重誘導体化キトサンRXG(DDX II)構造及びプロセスを示す。
【0084】
図16C】PEG-b-PLEの化学構造を提供する。
【0085】
図17】DDX-DNA製剤の物理化学的特性に関するデータを示す。
【0086】
図18A】in vitroポリマースクリーニングアッセイの結果を示す。
【0087】
図18B】in vitroポリマースクリーニングアッセイの結果を示す。
【0088】
図18C】in vitroポリマースクリーニングアッセイの結果を示す。
【0089】
図19】DDX対RXG(DDX-II)ベースのポリプレックスを比較するマウスの膀胱内投与後のin vivoタンパク質発現を示す。
【0090】
図20A】ヒトIL-12を含むポリプレックスの膀胱内投与後の非ヒト霊長類のIL-12 mRNAを比較する。
【0091】
図20B】ヒトIL-12を含むポリプレックスの膀胱内投与後の非ヒト霊長類のIL-12 タンパク質を比較する。
【0092】
図21】0.0625mg/mL(c62.5)、0.25mg/mL(c250)、及び1mg/mL(c1000)のhIL-12及びRIG-Iアゴニスト(EG-70)、ならびに1mg/mL(c1000)のノンコーディング対照(RXG-PEG-N9)を含むポリプレックスに曝露されたNHP膀胱のeRNA11a発現を示す。
【0093】
図22】0.0625mg/mL(c62.5)、0.25mg/mL(c250)、及び1mg/mL(c1000)のhIL-12及びRIG-Iアゴニスト(EG-70)、ならびに1mg/mL(c1000)のノンコーディング対照(RXG-PEG-N9)を含むポリプレックスに曝露されたNHP膀胱のVA1発現を示す。
【0094】
図23】mEG-70プロトタイプナノ粒子の単回投与後のマウス膀胱におけるIl12p40p35のコドン最適化mRNA発現の動態を示す。
【0095】
図24】mEG-70プロトタイプナノ粒子の単回投与後のマウス膀胱におけるマウスIL12p70タンパク質発現を示す。
【0096】
図25】mEG-70プロトタイプナノ粒子の単回投与後のマウス膀胱におけるマウスIL-12p70タンパク質発現の用量応答を示す。
【0097】
図26】マウスIL-12p70タンパク質のPEG化ナノ粒子の発現 対 非PEG化ナノ粒子の発現を比較する。
【0098】
図27】Aは、マウスモデルにおける膀胱癌の処置のためのmEG-70(mIL-12及びRIG-Iアゴニスト)の有効性を評価するためのアッセイプロトコールを提供する。Bは、研究のエンドポイントでの対照及び処置された動物の膀胱重量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0099】
本発明は、好ましくは、追加の自然及び/または適応免疫刺激と組み合わせられた、粘膜組織中のIL-12の局所発現を企図する。非経口及び静脈内経路のタンパク質療法は、粘膜組織での十分な生物学的利用能がなく及び全身毒性がある。粘膜組織での局所遺伝子療法、例えば、膀胱への膀胱内投与及び胃腸管(GIT)への経口剤形は、望ましくない全身性副作用を最小限にしながら、タンパク質の局所発現を促進する魅力的なアプローチを提示する。しかし、残念ながら、ウイルス送達ベクターの臨床使用は、反復投与後に有効性を減少させ得るウイルスの免疫原性、粘膜バリアの非効率的な浸透;ベクター産生のコスト、及び臨床実装と関連する物流の複雑化(例えば、バイオセーフティ封じ込め及びコールドチェーンストレージ)により制限される。本発明は、これらの限界を克服するために、粘膜組織、例えば、膀胱、のための安全で効率的な非ウイルスベクタープラットフォームを提供する。
【0100】
理論に束縛されるものではないが、本発明の方法による粘膜組織におけるIL-12経路の活性化は、エフェクターCD4+及びCD8+エフェクター細胞に作用して、強力な抗腫瘍ならびに抗血管新生機能がもたらされるが、RIG-I経路の同時または逐次的な刺激により、I型インターフェロン及びIFN刺激遺伝子の誘導がもたらされ、CD8+細胞傷害性T細胞への腫瘍抗原の交差提示の改善がもたらされる。本明細書に記載及び例示の好ましい実施形態では、これらの協調した生物学的機序が、RIG-Iアゴニストによる自然免疫系の刺激を適応免疫応答のIL12媒介性刺激に結びつける、強力で耐久性のある抗腫瘍免疫応答を引き起こす強力な炎症性応答を生じるように組み合わされる。
【0101】
組成物
ポリアニオン含有ブロックコポリマー、例えば、二元ブロック及び/または三元ブロックコポリマーコーティングと複合体化されたキトサン誘導体核酸ナノ粒子(ポリプレックス)を含むキトサン組成物が本明細書で提供され、個々のポリマー分子は、負荷電アンカー領域及び1つ以上の非荷電親水性尾部領域を含む。本発明の方法及び組成物において有用な例示的なポリマー分子は、ポリエチレングリコール(PEG)部分及びポリアニオン(PA)部分を含む「PEG-PA」ポリマー分子である。
【0102】
1.1.キトサン
キトサン誘導体核酸ナノ粒子のキトサン構成成分は、カチオン官能基及び/または親水性部分で官能基化することができる。2つの異なる官能基で官能基化されたキトサンは、二重誘導体化キトサン(DD-キトサン)と呼ばれる。例示的なDD-キトサンは、親水性部分(例えば、ポリオール)及びカチオン官能基(例えば、アミノ基)の両方で官能基化される。例示的なキトサン誘導体は、例えば、米国特許第2007/0281904号、及び米国特許第2016/0235863号(それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる)にも記載される。
【0103】
一実施形態では、本明細書に記載の二重誘導体化キトサンは、脱アセチル化度が少なくとも50%であるキトサンを含む。一実施形態では、脱アセチル化度は、少なくとも60%、より好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、最も好ましくは、少なくとも95%である。好ましい実施形態では、本明細書に記載の二重誘導体化キトサンは、脱アセチル化度が少なくとも98%であるキトサンを含む。
【0104】
本明細書に記載のキトサン誘導体は、中性及び生理学的pHで可溶性である幅広い平均分子量を有し、本発明の目的のために、3~110kDaの範囲の分子量を含む。本明細書に記載の実施形態は、誘導体化キトサンのより低い平均分子量(25kDa未満、例えば、約5kDa~約25kDa)を特徴とし、これは、望ましい送達及びトランスフェクション特性を有し得、サイズが小さく、良好な溶解性を有する。低平均分子量の誘導体化キトサンは、一般に、高分子量のものよりも溶解性が高く、前者は、核酸をより容易に放出し、細胞のトランスフェクションを増加させる核酸/キトサン複合体を生成する。多くの文献が、キトサンベースのデリバリーシステムのためのこれらパラメーターの全ての最適化に専念している。
【0105】
キトサンが、式Iの構造(式中、nは、任意の整数であり、各R1は、独立して、アセチルまたは水素から選択され、水素から選択されるR1の程度は、50%~100%である)を有する複数の分子を指すことを、通常の当業者は、理解するであろう。また、例えば、3kD~110kDの平均分子量を有するものと呼ばれるキトサンは、一般に、例えば、それぞれ、3kD~110kDの重量平均分子量を有する複数のキトサン分子を指し、キトサン分子のそれぞれは、異なる鎖長であってよい(n+2)。「n-merキトサン」と呼ばれるキトサンは、必ずしも、式Iのキトサン分子(式中、各キトサン分子は、n+2の鎖長を有する)を含むとは限らないこともよく認識される。むしろ、本明細書で使用される「n-merキトサン」は、複数のキトサン分子を指し、これらのそれぞれは、異なる鎖長を有してもよく、多くは、鎖長がnであるキトサン分子と実質的に同等または等しい平均分子量を有する。例えば、24-merのキトサンは、複数のキトサン分子を含んでもよく、それぞれは、例えば、7~50、の範囲に及ぶ異なる鎖長を有するが、これは、鎖長が24のキトサン分子と実質的な同等または等しい重量平均分子量を有する。
【0106】
本発明の二重誘導体化キトサンは、また、ポリオール、またはポリオールなどの親水性官能基で官能基化されてもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、ポリオールなどの親水性基による官能基化が、キトサン(アルギニン-キトサンを含む)の親水性を増加させるのに役立ち得、及び/またはヒドロキシル基を供与し得ると仮定される。いくつかの実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子の親水性官能基は、グルコン酸であるか、またはそれを含む。例えば、WO2013/138930を参照のこと。いくつかの実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子の親水性官能基は、グルコースであるか、またはそれを含む。追加的または代替的に、親水性官能基は、ポリオールを含むことができる。例えば、US2016/0235863を参照のこと。キトサンの官能基化のための例示的なポリオールは、さらに、以下に記載される。
【0107】
本明細書に記載の官能基化キトサン誘導体は、二重誘導体化キトサン化合物、例えば、カチオン-キトサン-ポリオール化合物、を含む。一般に、カチオン-キトサン-ポリオール化合物は、アミノ含有部分、例えば、アルギニン、リジン、オルニチン、もしくはグアニジニウムを含む分子、またはそれらの組み合わせ、で官能基化される。特定の実施形態では、カチオン-キトサン-ポリオール化合物は、式Iの以下の構造を有する:
【化1】
(I)
式中、nは、1~650の整数であり、
αは、カチオン部分(例えば、リジン、オルニチン、グアニジニウム基を含む分子、アルギニン、またはそれらの組み合わせなどのアミノ基を含む分子)の最終官能基化度であり、
βは、ポリオールの最終官能基化度であり、
各Rは、独立して、水素、アセチル、カチオン(例えば、アルギニン)、及びポリオールから選択される。
【0108】
好ましくは、本発明の二重誘導体化キトサンは、カチオンアミノ酸であるアルギニンで官能基化されてもよい。
【0109】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、1%、2%、4%、7%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、またはそれ以上の最終官能基化度でグルコン酸と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、1%、2%、4%、7%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、またはそれ以上の最終官能基化度でグルコースと結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約1%~約25%の最終官能基化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%~約40%の最終官能基化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。
【0110】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%~約35%の最終官能基化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約20%~約35%の最終官能基化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約25%~約35%の最終官能基化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約25%~約30%の最終官能基化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。
【0111】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約15%~約40%の最終官能基化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約15%~約35%の最終官能基化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約15%~約30%の最終官能基化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約15%~約28%の最終官能基化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。
【0112】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%~約35%の最終官能基化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%~約30%の最終官能基化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%~約28%の最終官能基化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約28%の最終官能基化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。
【0113】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約2%~約30%、約5%~約30%、約7.5%~約30%、約5%~約25%、約5%~約22%、約5%~約20%、約5%~約15%、または約5%~約10%の最終官能基化度でグルコン酸と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約7.5%~約25%、約7.5%~約20%、約7.5%~約15%、または約7.5%~約12%の最終官能基化度でグルコン酸と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%の最終官能基化度でグルコン酸と結合したキトサンを含む。
【0114】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約2%~約30%、約5%~約30%、約7.5%~約30%、約5%~約25%、約5%~約22%、約5%~約20%、約5%~約15%、または約5%~約10%の最終官能基化度で親水性ポリオールと結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約7.5%~約25%、約7.5%~約20%、約7.5%~約15%、または約7.5%~約12%の最終官能基化度で親水性ポリオールと結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%の最終官能基化度で親水性ポリオールと結合したキトサンを含む。
【0115】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約2%~約30%、約5%~約30%、約7.5%~約30%、約5%~約25%、約5%~約22%、約5%~約20%、約5%~約15%、または約5%~約10%の最終官能基化度でグルコースと結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約7.5%~約25%、約7.5%~約20%、約7.5%~約15%、または約7.5%~約12%の最終官能基化度でグルコースと結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%の最終官能基化度でグルコースと結合したキトサンを含む。
【0116】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約2%~約40%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約2%~約30%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約5%~約40%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約5%~約25%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約7.5%~約40%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約7.5%~約20%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%~約40%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約7.5%~約15%、または約10%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。
【0117】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約2%~約35%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約2%~約30%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約5%~約35%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約5%~約25%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約7.5%~約35%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約7.5%~約20%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%~約35%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約7.5%~約15%、または約10%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。
【0118】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%~約30%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約2%~約30%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約12%~約30%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約5%~約25%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約14%~約30%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約7.5%~約20%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約15%~約30%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約7.5%~約15%、または約10%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。
【0119】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約25%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約7.5%~約15%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約28%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約7.5%~約15%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約25%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約5%~約20%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約28%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約5%~約20%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。
【0120】
好ましい実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約14%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約10%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。好ましい実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約15%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約12%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。別の好ましい実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約14%の最終官能基化度でアルギニンと結合したキトサン及び約10%の最終官能度でグルコースと結合したキトサンを含む。別の好ましい実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約15%の最終官能基化度でアルギニンと結合したキトサン及び約12%の最終官能度でグルコースと結合したキトサンを含む。
【0121】
好ましい実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約28%の最終官能基化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約10%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。別の好ましい実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約28%の最終官能基化度でアルギニンと結合したキトサン及び約10%の最終官能度でグルコースと結合したキトサンを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、必要に応じて、DD-キトサンは、DD-キトサン誘導体、例えば、追加の官能基化を組み込んだDDキトサン、例えば、結合したリガンドを有するDD-キトサン、を含む。「誘導体」は、共有結合的に修飾されたN-アセチル-D-グルコサミン及び/またはD-グルコサミンユニットを含むキトサン系ポリマー、ならびに他のユニットを組み込むかまたは他の部分に結合したキトサン系ポリマー、の幅広い分類を含むと理解されるであろう。誘導体は、多くの場合、アルギニン官能基化キトサンで行われるように、グルコサミンのヒドロキシル基またはアミン基の修飾に基づく。キトサン誘導体の例としては、トリメチル化キトサン、チオール化キトサン、ガラクトシル化キトサン、アルキル化キトサン、PEI組み込みキトサン、ウロン酸修飾キトサン、グリコールキトサンなどが挙げられるが、これらに限定されない。キトサン誘導体に関するさらなる教示について、例えば、pp.63-74 of “Non-viral Gene Therapy”,K.Taira,K.Kataoka,T.Niidome(editors),Springer-Verlag Tokyo,2005,ISBN 4-431-25122-7;Zhu et al.,Chinese Science Bulletin,December 2007,vol.52(23),pp.3207-3215;及びVarma et al.,Carbohydrate Polymers 55(2004)77-93を参照のこと。
【0123】
1.2.キトサン核酸ポリプレックス
キトサン誘導体ナノ粒子組成物は、一般に、少なくとも1つの核酸分子、好ましくは、複数のそのような核酸分子を含む。代表的な核酸分子は、例えば、複数のホスホジエステルまたはその誘導体(例えば、ホスホロチオアート)の形態で、核酸骨格の構成成分としてリンを含む。カチオン官能基化キトサン誘導体対核酸の比は、カチオン(+)対リン(P)モル比を特徴とすることができ、(+)は、カチオン官能基化キトサン誘導体のカチオンを指し、(P)は、核酸骨格のリンを指す。通常、(+):(P)モル比は、キトサン-誘導体-核酸複合体が、ポリアニオン含有ブロックコポリマーの可逆的コーティングの非存在下で正電荷を有するように選択される。従って、(+):(P)モル比は、一般に、1より大きい。好ましい実施形態では、(+):(P)モル比は、1.5超、少なくとも2、または2超である。特定の好ましい実施形態では、(+):(P)モル比は、2より大きい。
【0124】
一部の場合では、(+):(P)モル比は、3:1であるか、または約3:1である。一部の場合では、(+):(P)モル比は、4:1であるか、または約4:1である。一部の場合では、(+):(P)モル比は、5:1であるか、または約5:1である。一部の場合では、(+):(P)モル比は、6:1であるか、または約6:1である。一部の場合では、(+):(P)モル比は、7:1であるか、または約7:1である。一部の場合では、(+):(P)モル比は、8:1であるか、または約8:1である。一部の場合では、(+):(P)モル比は、9:1であるか、または約9:1である。一部の場合では、(+):(P)モル比は、10:1であるか、または約10:1である。
【0125】
一部の場合では、(+):(P)モル比は、1超~約20:1以下、約2~約20:1以下、または約2~約10:1以下である。一部の場合では、(+):(P)モル比は、約2超~約20:1以下、または約2超~約10:1以下である。一部の場合では、(+):(P)モル比は、約3~約20:1以下、約3~約10:1以下、約3~約8:1以下、または約3~約7:1以下である。一部の場合では、(+):(P)モル比は、約3~20:1以下、約3~10:1以下、約3~8:1以下、または約3~7:1以下である。
【0126】
特定の実施形態では、(+):(P)モル比は、100:1、好ましくは、100:1未満である。例えば、特定の実施形態では、(+):(P)モル比は、1超~100:1以下であり得る。一部の場合では、(+):(P)モル比は、2超~100:1以下であり得る。一部の場合では、(+):(P)モル比は、3以上~100:1以下であり得る。一部の場合では、(+):(P)モル比は、5以上~100:1以下であり得る。一部の場合では、(+):(P)モル比は、7以上~100:1以下であり得る。一部の場合では、(+):(P)モル比は、2超~50:1以下であり得る。一部の場合では、(+):(P)モル比は、3以上~50:1以下であり得る。一部の場合では、(+):(P)モル比は、5以上~50:1以下であり得る。一部の場合では、(+):(P)モル比は、7以上~50:1以下であり得る。一部の場合では、(+):(P)モル比は、2超~25:1以下であり得る。一部の場合では、(+):(P)モル比は、3以上~25:1以下であり得る。一部の場合では、(+):(P)モル比は、5以上~25:1以下であり得る。一部の場合では、(+):(P)モル比は、7以上~25:1以下であり得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子のカチオン官能基は、アミノ基であるか、またはアミノ基を含む。そのようなアミノ官能基化キトサン誘導体ナノ粒子の例としては、グアニジニウムもしくはグアニジニウム基を含む分子、リジン、オルニチン、アルギニン、またはそれらの組み合わせで官能基化されるキトサンを含有するものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、カチオン官能基は、アルギニンである。アミノ官能基化キトサン誘導体対核酸の比は、アミノ(N)対リン(P)モル比を特徴とすることができ、(N)は、アミノ官能基化キトサン誘導体中のアミノ基の窒素原子を指し、(P)は、核酸骨格のリンを指す。通常は、N:Pモル比は、キトサン誘導体-核酸複合体が、PEG-PAポリマー分子の非存在下で、生理学的に関連するpHで正電荷を有するように選択される。従って、N:Pモル比は、一般に、1より大きくなる。好ましい実施形態では、N:Pモル比は、1.5超、少なくとも2、または2超である。特定の好ましい実施形態では、N:Pモル比は、2より大きい。
【0128】
一部の場合では、N:Pモル比は、3:1であるか、または約3:1である。一部の場合では、N:Pモル比は、4:1であるか、または約4:1である。一部の場合では、N:Pモル比は、5:1であるか、または約5:1である。一部の場合では、N:Pモル比は、6:1であるか、または約6:1である。一部の場合では、N:Pモル比は、7:1であるか、または約7:1である。一部の場合では、N:Pモル比は、8:1であるか、または約8:1である。一部の場合では、N:Pモル比は、9:1であるか、または約9:1である。一部の場合では、N:Pモル比は、10:1であるか、または約10:1である。
【0129】
一部の場合では、N:Pモル比は、1超~約20:1以下、約2~約20:1以下、または約2~約10:1以下である。一部の場合では、N:Pモル比は、約2超~約20:1以下、または約2超~約10:1以下である。一部の場合では、N:Pモル比は、約3~約20:1以下、約3~約10:1以下、約3~約8:1以下、または約3~約7:1以下である。一部の場合では、N:Pモル比は、約3~20:1以下、約3~10:1以下、約3~8:1以下、または約3~7:1以下である。
【0130】
特定の実施形態では、N:Pモル比は、100:1、好ましくは、100:1未満である。例えば、特定の実施形態では、N:Pモル比は、1超~100:1以下であり得る。一部の場合では、N:Pモル比は、2超~100:1以下であり得る。一部の場合では、N:Pモル比は、3以上~100:1以下であり得る。一部の場合では、N:Pモル比は、5以上~100:1以下であり得る。一部の場合では、N:Pモル比は、7以上~100:1以下であり得る。一部の場合では、N:Pモル比は、2超~50:1以下であり得る。一部の場合では、N:Pモル比は、3以上~50:1以下であり得る。一部の場合では、N:Pモル比は、5以上~50:1以下であり得る。一部の場合では、N:Pモル比は、7以上~50:1以下であり得る。一部の場合では、N:Pモル比は、2超~25:1以下であり得る。一部の場合では、N:Pモル比は、3以上~25:1以下であり得る。一部の場合では、N:Pモル比は、5以上~25:1以下であり得る。一部の場合では、N:Pモル比は、7以上~25:1以下であり得る。
【0131】
好ましい実施形態では、本ポリプレックスは、2~100、例えば、2~50、例えば、2~40、例えば、2~30、例えば、2~20、例えば、2~5、のアミン対リン酸塩(N/P)比を有する。好ましくは、N/P比は、キトサンの分子量に反比例し、すなわち、小さい分子量の(例えば、二重)誘導体化キトサンは、より高いN/P比を必要とし、逆もまた同様である。
【0132】
本発明の核酸は、一般に、ホスホジエステル結合を含有することになるが、いくつかの場合では、様々な目的、例えば、安定性及び保護、のいずれかのために組み込まれる代替の骨格または他の修飾または部分を有し得る核酸アナログが含まれる。企図される他のアナログ核酸は、非リボース骨格を有するものを含む。加えて、天然に存在する核酸、アナログ、及びその両方の混合物を作成することができる。核酸は、一本鎖または二本鎖であっても、二本鎖または一本鎖配列の両方の部分を含有してもよい。核酸としては、DNA、RNA、及びハイブリッドが挙げられるが、これらに限定されず、核酸は、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドの任意の組み合わせ、ならびにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンタニン、ヒポキサンタニン、イソシトシン、イソグアニンなどを含む塩基の任意の組み合わせを含有する。核酸は、任意の形態のDNA、三重鎖、二本鎖、または一本鎖、アンチセンス、siRNA、リボザイム、デオキシリボザイム、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、キメラ、マイクロRNA、及びそれらの誘導体を含む任意の形態のRNAを含む。核酸は、限定されないが、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴ(PMO)、ロックされた核酸(LNA)、グリコール核酸(GNA)、及びトレオース核酸(TNA)を含む人工核酸を含む。リンを含まない人工核酸の場合、(+):PまたはN:P比の同等の測定値は、ヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)塩基の数により近似することができることが理解されるであろう。
【0133】
好ましい実施形態では、組成物のポリプレックスは、官能基化前の110kDa未満、より好ましくは、65kDa未満、より好ましくは、50kDa未満、より好ましくは、40kDa未満、最も好ましくは、30kDa未満の平均分子量を有するキトサン分子を含む。いくつかの実施形態では、組成物のポリプレックスは、官能基化前の15kDa未満、10kDa未満、7kDa未満、または5kDa未満の平均分子量を有するキトサンを含む。
【0134】
好ましい実施形態では、ポリプレックスは、平均して、680グルコサミンモノマー単位未満、より好ましくは、400グルコサミンモノマー単位未満、より好ましくは、310グルコサミンモノマー単位未満、より好ましくは、250グルコサミンモノマー単位未満、最も好ましくは、190グルコサミンモノマー単位未満を有するキトサン分子を含む。いくつかの実施形態では、ポリプレックスは、平均して、95グルコサミンモノマー単位未満、65グルコサミンモノマー単位未満、45グルコサミンモノマー単位未満、または35グルコサミンモノマー単位未満を有するキトサン分子を含む。
【0135】
キトサン、及び(例えば、二重)誘導体化キトサン核酸ポリプレックスは、限定されないが、本明細書に記載のものを含む、当該技術分野で既知の任意の方法で調製されてもよい。
【0136】
1.2.1.核酸
上記のように、キトサンポリプレックスは、複数の核酸を含有し得る。一実施形態では、核酸構成成分は、治療用核酸を含む。本(例えば、二重に)誘導体化キトサン核酸ポリプレックスは、例えば、ホルモン、酵素、サイトカイン、ケモカイン、抗体、有糸分裂誘発因子、成長因子、分化因子、細胞アポトーシスに影響を与える因子、炎症に影響を与える因子、免疫応答に影響を与える因子(例えば、免疫刺激因子)などの治療用タンパク質をコードする核酸を含む、当該技術分野で既知の任意の治療用核酸の使用に適する。
【0137】
治療用核酸は、欠損遺伝子の置き換えもしくは増強として役立つことによる遺伝子治療を行うために、または、治療用産物をコードすることにより、特定の遺伝子産物の欠如を補償するために、使用されてもよい。治療用核酸は、また、内因性遺伝子の発現を抑制してもよい。治療用核酸は、翻訳産物の全てまたは一部をコードしてもよく、細胞中にすでに存在するDNAと再結合して、それにより、遺伝子の欠陥部分を置換することにより機能してもよい。それは、また、タンパク質の一部をコードし、遺伝子産物の共抑制によりその効果を発揮してもよい。
【0138】
いくつかの実施形態では、核酸構成成分は、治療用核酸構築物を含む。治療用核酸構築物は、治療効果を発揮することが可能な核酸構築物である。治療用核酸構築物は、治療用タンパク質をコードする核酸、ならびに治療用RNAである転写物を産生する核酸を含んでもよい。
【0139】
本明細書に記載及び例示される好ましい実施形態では、治療用核酸構築物は、IL-12をコードする核酸を単独で、または追加の免疫刺激分子(複数可)と組み合わせて含み、IL-12は、4つのα-ヘリックスバンドル構造を有するヘテロ二量体1型サイトカインである。IL-12 p70としても既知の活性なヘテロダイマーは、IL-12A(p35をコードする)及びIL-12B(p40をコードする)の2つの別々の遺伝子によってコードされる2つのサブユニットを含む。IL-12Aの少なくとも6つのスプライス変異体転写産物がある(ENST00000305579.6、ENST00000466512.1、ENST00000480787.5、ENST00000468862.5、ENST00000496308.1、及びENST00000480088.1)。ヒトIL-12Aアイソフォーム1前駆体の核酸及びペプチド配列は、例えば、それぞれ、NM_000882.4、NM_001354582.2、NM_001354583.2、及びNP_000873.2、NP_001341511.1、及びNP_001341512.1である。マウスIL12aの核酸及びペプチド配列は、それぞれ、例えば、NM_001159424.2及びNP_001152896.1である。ヒトIL-12Bゲノム配列、転写産物、及びペプチド配列は、それぞれ、例えば、NG_009618.1、NM_002187.3、及びNP_002178.2である。マウスIL-12Bの核酸及びペプチド配列は、例えば、NM_001303244及びNP_001290173.1である。
【0140】
いくつかの実施形態では、一本鎖IL-12タンパク質は、短いアミノ酸リンカー配列を介してp40サブユニットをp35サブユニットに融合することによって生成することができる。2つのサブユニットは、p40-リンカー-p35またはp35-リンカー-p40のいずれかの方向で結合することができる。タンパク質は、リンカーのサブユニット5’からのシグナルペプチドの包含の結果として分泌することができるが、シグナルペプチドは、リンカー配列の下流のサブユニットから除去される。好ましい実施形態では、リンカー配列は、ウシエラスチンに由来する10アミノ酸配列を含み、バリン(V)、プロリン(P)、及びグリシン(G)残基からなる(VPGVGVPGVG)。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、(GGGGS)nなどのG及び/またはセリン(S)残基を含有してもよい。他の実施形態では、リンカー配列は、G、Sと、限定されないが、P、アルギニン(R)、リジン(K)、スレオニン(T)、及びグルタミン酸(E)を含む追加のアミノ酸を含有してもよい。例示的な実施形態では、リンカーは、GSGSSRGGSGSGGSGGGGSK、GSTSG(A/S)GKSSEGKG(配列番号1)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号2)、GGGGGGS(配列番号3)、またはGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号4)からなる群より選択される。
【0141】
例示的な実施形態では、hIL-12p40p35をコードする核酸配列は、以下を含む:
atgtgccatcagcaacttgtcatctcctggttctccctcgtgttcctggcctcccctcttgtcgcgatttgggagctgaagaaagatgtgtacgtcgtggaactcgactggtacccggacgcccccggggaaatggtggtgctcacttgtgatactcccgaagaggatggaattacctggaccctcgatcagtcctccgaggtcttgggatccggcaaaactctgaccatccaagtcaaggaattcggcgacgcggggcagtacacctgtcacaagggcggagaagtgctgtcgcactcactcctgctccttcacaaaaaggaggacggcatctggtcgaccgacatcctgaaggaccagaaggaacccaagaacaagacctttctgcgctgcgaggccaagaactattcgggaaggttcacctgttggtggctgactaccatctccaccgacctgactttctccgtgaagtcctctcggggttcgagcgacccgcagggtgttacgtgcggtgctgcaaccctgtccgcggagagagtgcggggggacaacaaggaatacgagtactcagtggaatgccaggaagatagcgcctgccctgccgccgaagagtccctgccgattgaagtcatggtggacgcagtgcataagttgaaatatgagaactacacctcgtcgttcttcatccgggacatcatcaagcctgacccccctaagaatctgcagctcaagcccctcaagaactccagacaggtcgaagtgtcctgggagtacccagatacgtggagcacaccgcactcgtacttctccttgaccttctgcgtccaagtgcagggaaagtccaaacgggagaagaaggaccgcgtgttcactgataagacttccgctactgtgatctgccgcaaaaacgccagcatcagcgtgcgcgcgcaagatagatactactcaagctcttggtccgaatgggcgtccgtgccatgctcggtgcccggcgtgggcgtgcctggagtgggagcccggaacttgccggtggccacccctgaccccggaatgttcccttgcctgcaccactcccaaaaccttctgagggctgtgtccaacatgctgcagaaggctcggcagaccctggaattctacccctgcacctccgaggagatcgaccacgaagatattaccaaggacaagacctcaaccgtggaagcctgcctgcccctggaactgaccaagaacgaatcgtgcctgaatagccgggaaacctccttcatcaccaacggctcctgcctggcctcacgaaagaccagctttatgatggccctgtgcctgagctcgatctacgaggacctgaagatgtaccaggtcgagttcaagactatgaacgccaagctgctgatggatccgaagcggcagatcttcttggaccagaatatgctggcagtgatcgacgagctgatgcaggccctcaacttcaactccgagactgtgccgcaaaagtcgagcctggaggaaccggacttctacaagaccaagatcaagttatgtattctcctgcacgcgtttaggattcgcgccgtgaccattgatagagtgatgtcctacctgaacgccagctga(配列番号5)。
【0142】
例示的な実施形態では、hIL-12p40p35アミノ酸配列は、以下を含む:
MCHQQLVISWFSLVFLASPLVAIWELKKDVYVVELDWYPDAPGEMVVLTCDTPEEDGITWTLDQSSEVLGSGKTLTIQVKEFGDAGQYTCHKGGEVLSHSLLLLHKKEDGIWSTDILKDQKEPKNKTFLRCEAKNYSGRFTCWWLTTISTDLTFSVKSSRGSSDPQGVTCGAATLSAERVRGDNKEYEYSVECQEDSACPAAEESLPIEVMVDAVHKLKYENYTSSFFIRDIIKPDPPKNLQLKPLKNSRQVEVSWEYPDTWSTPHSYFSLTFCVQVQGKSKREKKDRVFTDKTSATVICRKNASISVRAQDRYYSSSWSEWASVPCSVPGVGVPGVGARNLPVATPDPGMFPCLHHSQNLLRAVSNMLQKARQTLEFYPCTSEEIDHEDITKDKTSTVEACLPLELTKNESCLNSRETSFITNGSCLASRKTSFMMALCLSSIYEDLKMYQVEFKTMNAKLLMDPKRQIFLDQNMLAVIDELMQALNFNSETVPQKSSLEEPDFYKTKIKLCILLHAFRIRAVTIDRVMSYLNASストップ(配列番号6)。
【0143】
治療用核酸は、環状二本鎖DNAプラスミド、ミニサークルDNA(Science Report 6:2315,2016)またはクローズドエンド線形二本鎖DNA(Li et al,PLoS One 8(8):e69879,2013)の形態の治療用DNAも含む。
【0144】
治療用核酸は、哺乳動物細胞において治療効果を発揮することが可能なRNA分子である治療用RNAも含む。治療用RNAは、メッセンジャーRNA、アンチセンスRNA、siRNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、及び酵素RNAを含むが、これらに限定されない。治療用核酸は、三重分子を形成するように意図される核酸、タンパク質結合核酸、リボザイム、デオキシリボザイム、及び小さいヌクレオチド分子を含むが、これらに限定されない。多くのタイプの治療用RNAが、当該技術分野で既知である。例えば、Meng et al.,A new developing class of gene delivery:messenger RNA-based therapeutics,Biomater.Sci.,5,2381-2392,2017;Grimm et al.,Therapeutic application of RNAi is mRNA targeting finally ready for prime time ? J.Clin.Invest.,117:3633-3641,2007;Aagaard et al.,RNAi therapeutics:Principles,prospects and challenges,Adv.Drug Deliv.Rev.,59:75-86,2007;Dorsett et al.,siRNAs:Applications in functional genomics and potential as therapeutics,Nat.Rev.Drug Discov.,3:318-329,2004を参照のこと。これらは、二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)を含む。
【0145】
1.2.1.1.発現制御領域
好ましい実施形態では、本発明のポリプレックスは、コード領域に作動可能に連結された発現制御領域を含む治療構築物である治療用核酸を含む。治療用構築物は、治療用核酸を生成し、これは、それ自体で治療的であっても、治療用タンパク質をコードしてもよい。
【0146】
いくつかの実施形態では、治療構築物の発現制御領域は、構成的活性を有する。多くの好ましい実施形態では、治療構築物の発現制御領域は、構成的活性を有さない。これは、治療用核酸の動的発現を提供する。「動的」発現とは、経時的に変化する発現を意味する。動的発現は、検出可能な発現の期間で隔てられた発現が低いまたは存在しない、いくつかのそのような期間を含んでもよい。多くの好ましい実施形態では、治療用核酸は、調節可能なプロモーターに作動可能に連結される。これは、治療用核酸の調節可能な発現を提供する。
【0147】
発現制御領域は、プロモーター及びエンハンサーなどの調節ポリヌクレオチド(場合により、本明細書ではエレメントと呼ばれる)を含み、これらは、作動可能に連結された治療用核酸の発現に影響を及ぼす。
【0148】
本明細書に含まれる発現制御エレメントは、細菌、酵母、植物、または動物(哺乳動物もしくは非哺乳動物)由来であり得る。発現制御領域は、全長プロモーター配列、例えば、ネイティブプロモーター及びエンハンサーエレメント、ならびに完全なまたは非変異体機能の全部または一部を保持する(例えば、ある程度の栄養調節または細胞/組織特異的発現を保持する)部分配列またはポリヌクレオチド変異体を含む。本明細書で使用される場合、「機能的」及びその文法的変形という用語は、核酸配列、部分配列、またはフラグメントに関して使用される場合、その配列が、天然の核酸配列の1つ以上の機能(例えば、非変異体または非修飾配列)を有することを意味する。本明細書で使用される場合、「変異体」という用語は、配列の置換、欠失、もしくは付加、または他の修飾(例えば、ヌクレアーゼに耐性のある修飾形態などの化学誘導体)を意味する。
【0149】
本明細書で使用される場合、「作動可能な連結」という用語は、それらが意図された方法で機能することを可能にするように記載された構成要素の物理的並置を指す。核酸と作動可能に連結された発現制御エレメントの例では、関係は、制御エレメントが核酸の発現を調節するようなものである。通常、転写を調節する発現制御領域は、転写された核酸の5’末端付近(すなわち、「上流」)に並置される。発現制御領域は、また、転写された配列の3’末端(すなわち、「下流」)または転写物内(例えば、イントロン内)に位置することができる。発現制御エレメントは、転写された配列から離れた距離に位置することができる(例えば、核酸から100~500、500~1000、2000~5000以上のヌクレオチド)。発現制御エレメントの具体例は、プロモーターであり、これは、通常、転写された配列の5’に位置する。発現制御エレメントの別の例は、転写された配列の5’もしくは3’、または転写された配列内に位置することができるエンハンサーである。
【0150】
いくつかの発現制御領域は、動作可能に連結された治療用核酸に調節可能な発現を与える。シグナル(場合により、刺激と呼ばれる)は、そのような発現制御領域に作動可能に連結された治療用核酸の発現を増加または減少させ得る。シグナルに応答して発現を増加させるそのような発現制御領域は、多くの場合、誘導性と呼ばれる。シグナルに応答して発現を減少させるそのような発現制御領域は、多くの場合、抑制性と呼ばれる。通常、そのようなエレメントにより与えられる増加または減少の量は、存在するシグナルの量に比例し、シグナルの量が多い程、発現の増加または減少が大きくなる。
【0151】
多数の調節可能なプロモーターが、当該技術分野で既知である。好ましい誘導性発現制御領域には、小分子化学化合物で刺激される誘導性プロモーターを含むものを含む。一実施形態では、発現制御領域は、経口的に送達可能であるが、通常は、食品には見られない化学物質に応答する。特定例は、例えば、米国特許第5,989,910号;同第5,935,934号;同第6,015,709号;及び同第6,004,941号に見出すことができる。
【0152】
特定の目的のプロモーター/エンハンサー配列は、以下のものを含む:
【表1】
【0153】
本発明のいくつかの実施形態では、治療構築物は、起点、マルチクローニング部位、及び選択可能なマーカーを含むプラスミド内に含まれる。いくつかの実施形態では、10kb未満のプラスミドが望ましい。いくつかの実施形態では、使用されるプラスミドは、ヒト患者における遺伝子治療に適し、及び/または哺乳動物組織における高レベルの一過性遺伝子発現のために操作される。好ましい実施形態では、プラスミドは、Nanoplasmid(商標)(例えば、NTC9385プラスミド、NTC9385R、NTC9385R-RIG-I、NTC9385R(3CpG)、NTC9385R-eRNA41H-CpG、NTC8685プラスミド(Nature Technology)、gWIZプラスミド(Genlantis)、またはpVAX1プラスミド(Thermofisher Scientific)からなる群より選択される。例えば、米国特許第US6,027,722号、同第US6,287,863号、同第US6,410,220号、同第US6,573,091号、同第US9,012,226号、同第US9,017,966号、同第US9,018,012号、同第US9,109,012号、同第US9,487,788号、同第US9,487,789号、同第US9,506,082号、同第US9,550,998号、同第US9,725,725号、同第US9,737,620号、同第US9,950,081号、同第US10,047,365号、同第US10,144,935号、及び同第US10,167,478号を参照のこと。いくつかの実施形態では、プラスミドは、抗生物質選択剤を除去するために、及び/または発現レベルを増加させるために、「改良」されている。
【0154】
さらなる教示については、WO2008/020318(全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる)を参照のこと。一実施形態では、(例えば、二重)誘導体化キトサン核酸ポリプレックスの核酸は、人工核酸である。
【0155】
一実施形態では、DD-キトサン核酸ポリプレックスの核酸は、治療用核酸である。一実施形態では、治療用核酸は、治療用RNAである。好ましい治療用RNAとしては、アンチセンスRNA、siRNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、及び酵素RNAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
一実施形態では、治療用核酸は、DNAである。
【0157】
一実施形態では、治療用核酸は、治療用タンパク質をコードする核酸配列を含む。
【0158】
1.3.ポリオール
キトサン誘導体ナノ粒子は、ポリオールで官能基化することができる。一般に、本発明で有用なポリオールは、通常、親水性である。いくつかの場合では、キトサン誘導体ナノ粒子は、アミノ基などのカチオン構成成分及びポリオールで官能基化される。アミノ基及びポリオールなどのカチオン部分で官能基化されたそのようなキトサン誘導体ナノ粒子は、「二重誘導体化キトサンナノ粒子」と呼ばれる。
【0159】
いくつかの実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、式IIのポリオールを含む:
【化2】
II
(式中、
は、H及びヒドロキシルから選択され、
は、H及びヒドロキシルから選択され、
Xは、1つ以上のヒドロキシル置換基で任意に置換されたC-Cアルキレンから選択される)。
【0160】
いくつかの実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、式IIのポリオール(式中、Rは、H及びヒドロキシルから選択され;Rは、H及びヒドロキシルから選択され;Xは、1つ以上のヒドロキシル置換基で任意に置換されたC-Cアルキレンから選択される)で官能基化される。
【0161】
いくつかの実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、式IIIのポリオールを含む:
【化3】
III
(式中、
-----Yは、=Oまたは-Hであり、
は、H及びヒドロキシルから選択され、
は、H及びヒドロキシルから選択され、
Xは、1つ以上のヒドロキシル置換基で任意に置換されたC-Cアルキレンから選択され、
【化4】
は、ポリオール及び誘導体化キトサン間の結合を示す)。
【0162】
一実施形態では、3~7つの炭素を有する本発明によるポリオールは、1つ以上の炭素-炭素多重結合を有し得る。好ましい実施形態では、本発明によるポリオールは、カルボキシル基を含む。さらに好ましい実施形態では、本発明によるポリオールは、アルデヒド基を含む。本発明によるポリオールがアルデヒド基を含む場合、そのようなポリオールが、開鎖コンフォメーション(アルデヒド)及び環状コンフォメーション(ヘミアセタール)の両方を包含することを、当業者は認識するであろう。
【0163】
ポリオールの非限定例としては、グルコン酸、トレオン酸、グルコース、及びスレオースが挙げられる。カルボキシル基及び/またはアルデヒド基を有し得るか、または糖類もしくはその酸形態であり得るそのような他のポリオールの例は、米国特許第10,046,066号でさらに詳細に記載されており、その開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。ポリオールが特定の立体化学に限定されないことを、当業者は認識するであろう。
【0164】
好ましい実施形態では、ポリオールは、2,3-ジヒドロキシルプロパン酸、2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロキシルヘプタナール;2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシルヘキサナール;2,3,4,5-テトラヒドロキシルヘキサナール;及び2,3-ジヒドロキシルプロパナールからなる群より選択されてもよい。
【0165】
好ましい実施形態では、ポリオールは、D-グリセリン酸、L-グリセリン酸、L-グリセロ-D-マンノヘプトース、D-グリセロ-L-マンノヘプトース、D-グルコース、L-グルコース、D-フコース、L-フコース、D-グリセルアルデヒド、及びL-グリセルアルデヒドからなる群より選択され得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、ポリオールは、式IVまたは式Vの化合物であってよい:
【化5】
(IV) (V)。
【0167】
好ましい実施形態では、ポリオールは、式IVの化合物である。いくつかの場合では、式IVのポリオールは、還元的アミノ化によりキトサンに結合されている。
【0168】
カルボキシル基を有する親水性ポリオールは、キトサンまたはアミン官能基化キトサンなどのカチオン官能基化キトサン(例えば、Arg結合キトサン(Arg-キトサン))に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、ポリオールは、6.0±0.3の反応pHで結合される。このpHでは、求核置換反応機構に従って、親水性ポリオールのカルボン酸基が、キトサン骨格上の非結合アミンにより攻撃され得る。
【0169】
Arg-キトサンにそのような親水性ポリオールを結合させる場合、少量の親水性ポリオールが、同じ機構を介してArgのアミン基と共有結合を形成し得ることも可能であるが、求核置換反応が、主にキトサン骨格のアミン基で生じる可能性があると、当業者は理解するであろう。
【0170】
天然糖である親水性ポリオールは、還元的アミノ化とそれに続くNaCBHまたはNaBHによる還元を使用して、キトサン、カチオン官能基化キトサン、例えば、アミン官能基化キトサン(例えば、Arg結合キトサン(Arg-キトサン))に結合されてもよい。
【0171】
1.4.ポリマー:ポリプレックス組成物
キトサンポリプレックスは、複数のポリマーと混合することができ、ポリマーは、親水性非荷電部分、及び負荷電(アニオン)部分を含む。上記のように、キトサンポリプレックスは、アニオン部分含有ポリマーとの複合体化がない、または複合体化前に正電荷を有するように製剤化される。従って、好適な条件下で、ポリマー構成成分は、キトサン誘導体核酸ポリプレックスと可逆的な電荷:電荷複合体を形成するであろう。いくつかの実施形態では、ポリマー構成成分のポリマーは、非分岐状である。いくつかの実施形態では、ポリマーは、分岐状である。一部の場合では、ポリマー構成成分は、分岐ポリマー及び非分岐ポリマーの混合物を含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、ポリマー構成成分は、投与後、細胞に入った後、及び/またはエンドサイトーシス後に、キトサンポリプレックスから放出される。理論に拘束されることを望むものではないが、ポリプレックス及びアニオン部分含有ポリマーの複合体化することにより、このように形成されたポリプレックス:ポリマー組成物は、トランスフェクション効率を実質的に妨げることなく、in vitro、溶液中、及び/またはin vivo安定性の改善を提供し得ると仮定される。いくつかの実施形態では、このように形成されたポリプレックス:ポリマー組成物は、例えば、別途、ポリマー構成成分のない同一のポリプレックスと比較して、粘膜接着特性の低減を提供し得る。
【0173】
好ましい実施形態では、ポリプレックス:ポリマー組成物は、生理学的pHで、低い正味の正のゼータ電位、正味の中性のゼータ電位、または正味の負のゼータ電位を有する(約+10mV~約-20mV)。そのような組成物は、生理学的条件での凝集の減少、及びin vivoでの遍在するアニオン構成成分への非特異的結合の低減を示し得る。該特性は、細胞と接触して核酸の細胞内放出の増強をもたらすように、そのような組成物の移動を増強(例えば、粘液で拡散の増強)させ得る。
【0174】
好ましい実施形態では、ポリプレックス:ポリマー粒子組成物は、1000nm未満、より好ましくは、500nm未満、最も好ましくは、200nm未満の平均流体力学的直径を有する。特定の実施形態では、ポリプレックス:ポリマー粒子組成物は、50nm~1000nm以下、好ましくは、50nm~500nm以下、最も好ましくは、50nm~200nm以下の平均流体力学的直径を有する。特定の実施形態では、ポリプレックス:ポリマー粒子組成物は、50nm~175nm以下、好ましくは、50nm~150nm以下の平均流体力学的直径を有する。特定の実施形態では、ポリプレックス:ポリマー粒子組成物は、75nm~1000nm以下、好ましくは、75nm~500nm以下、最も好ましくは、75nm~200nm以下の平均流体力学的直径を有する。特定の実施形態では、ポリプレックス:ポリマー粒子組成物は、75nm~175nm以下、好ましくは、75nm~150nm以下の平均流体力学的直径を有する。特定の実施形態では、ポリプレックス:ポリマー粒子組成物は、100nm超且つ175nm未満の平均流体力学的直径を有する。
【0175】
一実施形態では、ポリプレックス:ポリマー組成物は、80%、少なくとも80%、または好ましくは90%、より好ましくは、少なくとも90%の%スーパーコイルDNA含有量を有する。
【0176】
一実施形態では、ポリプレックス:ポリマー組成物は、生理学的pHで+10mV~-10mV、最も好ましくは、生理学的pHで+5mV~-5mVの平均ゼータ電位を有する。
【0177】
ポリプレックス:ポリマー組成物は、好ましくは、粒径に関して均質である。従って、好ましい実施形態では、組成物は、低い平均多分散度指数(「PDI」)を有する。特に好ましい実施形態では、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散液は、0.5未満、より好ましくは、0.4未満、より好ましくは、0.3未満、さらにより好ましくは、0.25未満、最も好ましくは、0.2未満のPDIを有する。
【0178】
いくつかの場合では、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散液は、1回以上の凍結融解サイクル後の上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒径(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1つ以上を示す。いくつかの場合では、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散液は、溶液中4℃少なくとも48時間保存した後の上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒径(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1つ以上を示す。いくつかの場合では、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散液は、溶液中、4℃で少なくとも1または2週間以上保存した後の上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒径(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1つ以上を示す。
【0179】
いくつかの場合では、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散液は、凍結乾燥及び再水和後の上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒径(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1つ以上を示す。いくつかの場合では、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散液は、噴霧乾燥及び再水和後の上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒径(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1つ以上を示す。いくつかの場合では、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散液は、少なくとも250μg/mLの核酸濃度に(例えば、タンジェンシャルフロー濾過などの限外濾過で)濃縮された場合の上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒径(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1つ以上を示す。いくつかの場合では、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散液は、125μg/mL~約1,000μg/mLの核酸濃度に濃縮された場合の上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒径(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1つ以上を示す。いくつかの場合では、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散液は、125μg/mL~約25,000μg/mLの核酸濃度に濃縮された場合の上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒径(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1つ以上を示す。いくつかの場合では、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散液は、125μg/mL~約2,000μg/mLの核酸濃度に濃縮された場合の上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒径(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1つ以上を示す。いくつかの場合では、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散液は、125μg/mL~約5,000μg/mLの核酸濃度に濃縮された場合の上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒径(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1つ以上を示す。いくつかの場合では、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散液は、125μg/mL~約10,000μg/mLの核酸濃度に濃縮された場合の上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒径(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1つ以上を示す。
【0180】
一般に、本明細書に記載のポリプレックス:ポリマー組成物は、まさに、賦形剤、例えば、凍結保護剤、抗凍結剤、界面活性剤、再水和または湿潤剤などがない状態での、良好な溶液の挙動(例えば、安定性及び/または非凝集)(PDIまたは平均粒径で測定)を示す。いくつかの場合では、本明細書に記載のポリプレックス:ポリマー組成物は、生理液または人工生理液中で、好ましい溶液挙動(例えば、安定性及び/または非凝集(PDIまたは平均粒径で測定)を示す。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリプレックス:ポリマー組成物は、人工腸液中で、哺乳動物の尿中で、及び/または哺乳動物の膀胱に保存された(例えば、尿と接触した)場合に安定である。
【0181】
上記のように、本明細書に記載のポリプレックス:ポリマー組成物は、好ましくは、組成物において実質的にサイズ安定である。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、平均直径が、6時間、より好ましくは、12時間、より好ましくは、24時間、最も好ましくは、48時間室温で、100%未満、より好ましくは、50%未満、最も好ましくは、25%未満増加するポリプレックス:ポリマー粒子を含む。特に好ましい実施形態では、本発明の組成物は、平均直径が少なくとも24時間または少なくとも48時間室温で、25%未満増加するポリプレックス:ポリマー粒子を含む。
【0182】
本組成物のポリプレックス:ポリマー粒子は、好ましくは、冷却条件下で実質的にサイズ安定である。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、平均直径が、6時間、より好ましくは、12時間、より好ましくは、24時間、最も好ましくは、48時間、2~8℃で、100%未満、より好ましくは、50%未満、最も好ましくは、25%未満増加するポリプレックス:ポリマー粒子を含む。
【0183】
本組成物のポリプレックス:ポリマー粒子は、好ましくは、凍結融解条件下で実質的にサイズ安定である。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、平均直径が、-20~-80℃で解凍後6時間、より好ましくは、12時間、より好ましくは、24時間、最も好ましくは、48時間室温で、100%未満、より好ましくは、50%未満、最も好ましくは、25%未満増加するポリプレックスを含む。
【0184】
好ましい実施形態では、組成物は、0.5mg/mlを超える核酸濃度を有し、沈殿ポリプレックスを実質的に含まない。より好ましくは、組成物は、少なくとも0.6mg/ml、より好ましくは、少なくとも0.75mg/ml、より好ましくは、少なくとも1.0mg/ml、より好ましくは、少なくとも1.2mg/ml、最も好ましくは、少なくとも1.5mg/mlの核酸濃度を有し、沈殿ポリプレックスを実質的に含まない。別の好ましい実施形態では、組成物は、2mg/mlを超える核酸濃度を有し、沈殿ポリプレックスを実質的に含まない。より好ましくは、組成物は、少なくとも2.5mg/ml、より好ましくは、少なくとも5mg/ml、より好ましくは、少なくとも10mg/ml、より好ましくは、少なくとも15mg/ml、最も好ましくは、約25mg/mlの核酸濃度を有し、沈殿ポリプレックスを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、組成物は、0.5mg/mL~約25mg/mLの核酸濃度を有し、沈殿ポリプレックスを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、組成物は、約25mg/mL以下の核酸濃度を有し、沈殿ポリプレックスを実質的に含まない。組成物を水和させることができる。好ましい実施形態では、組成物は、複合体を形成していない核酸を実質的に含まない。
【0185】
好ましい実施形態では、ポリプレックス:ポリマー粒子の組成物は、等張である。ポリプレックスの安定性を維持しながら等張性を達成することは、医薬組成物を製剤化するのに非常に望ましく、これらの好ましい組成物は、医薬製剤及び治療用途に十分に適する。
【0186】
特定の実施形態では、ポリプレックス:ポリマー粒子組成物は、pHを低下させることにより、例えば、PEGの全部または一部を放出させるためにポリマーコートを脱コートすることが可能である。特定の実施形態では、ポリマーコートは、ポリマーのポリアニオンアンカー領域のpKaよりも低いpH条件下で粒子をインキュベートすることにより放出される。例えば、ポリマーコートがポリグルタマートである場合、ポリマーコートは、粒子をポリグルタマートのpKaより低いpH、例えば、約4.25未満のpH、でインキュベートすることにより放出することができる。特定の実施形態では、ポリマーコートは、ポリマーコートのポリアニオンアンカー領域のpKaより低い、少なくとも0.25pH単位または少なくとも0.5pH単位下であるpH条件下で粒子をインキュベートすることにより放出することができる。
【0187】
特定の実施形態では、ポリプレックス:ポリマー粒子組成物は、粒子を高いイオン強度にかけることにより、例えば、PEGの全部または一部を放出させるためにポリマーコートを脱コートすることが可能である。
【0188】
理論に拘束されることを望むものでないが、特定の生理学的条件が、本明細書に記載の可逆的にPEG化されているキトサンDNAポリプレックスの部分的な(例えば、5%超)、実質的な(50%超)、広範囲の(例えば、90%超)、または完全な(100%)脱コートを促進し得ると仮定される。例えば、特定の細胞内区画(例えば、エンドソーム、初期エンドソーム、後期エンドソーム、またはリソソーム)の低pH条件は、ポリマーコートの放出を促進し得る。別の例として、特定の細胞外条件は、本明細書に記載の可逆的にPEG化されているキトサンDNAポリプレックスの部分的な(例えば、5%超)、実質的な(50%超)、広範囲の(90%超)、または完全な(100%)脱コートを促進し得る。いくつかの場合では、通常、消化管の特定の位置で見られる高いイオン強度及び/または酸性pH条件は、本明細書に記載の可逆的にPEG化されているキトサンDNAポリプレックスの部分的な(例えば、5%超)、実質的な(50%超)、広範囲の(90%超)、または完全な(100%)脱コートを促進し得る。
【0189】
特定の実施形態では、本明細書に記載のPEG化ポリプレックスは、細胞、組織、または身体区画(例えば、腸、小腸、大腸、結腸、肺、または膀胱)への送達のために製剤化され、その結果、ポリプレックスがPEG化されているままであり、それにより、標的細胞へのトランスフェクションを容易にする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のPEG化ポリプレックスは、細胞内環境への侵入後または侵入中に、部分的に(例えば、5%超)、実質的に(50%超)、広範囲に(例えば、90%超)、または完全に(100%)ポリマーコートを放出する。特定の実施形態では、本明細書に記載のPEG化ポリプレックスは、細胞、組織、または身体区画(例えば、腸、小腸、大腸、結腸、肺、または膀胱)への送達のために製剤化され、その結果、本明細書に記載のPEG化ポリプレックスは、細胞、組織、または身体区画(例えば、腸、小腸、大腸、結腸、肺、または膀胱)への送達時に、ポリマーコートを、部分的に(例えば、5%超)、実質的に(50%超)、広範囲に(例えば、90%超)、または完全に(100%)放出する。
【0190】
ポリマーのアニオンアンカー領域のアニオン電荷密度及び/またはpKaは、意図された条件下で放出を促進または抑制するように調整することができることができることが理解されるであろう。同様に、pH、容積、及びイオン強度、ならびに製剤の他の条件は、意図された条件下での放出を促進または抑制するように調整することができると理解されるであろう。例えば、低pHの胃の環境を介して腸に送達するために、ペグ化ポリプレックス製剤は、胃の環境のpHを増強させるために、緩衝剤中で腸溶コーティング及び/または送達することができる。最適化された可逆的にPEG化された粒子の組成物は、本明細書に記載のアッセイを使用して安定性及びトランスフェクション効率をアッセイすることにより同定することができる。
【0191】
アニオン部分含有ポリマーと複合体化されたキトサンポリプレックスを含む組成物は、「(+):(-)モル比」と称される、(例えば、二重)誘導体化キトサンポリプレックス(+)のカチオン官能基 対 ポリマー(-)のアニオン部分の比を特徴とすることができる。この(+):(-)モル比は、約1:100~約10:1未満で変化し得る。
【0192】
特定の実施形態では、(+):(-)モル比は、約1:75超~約8:1未満であり得る。いくつかの場合では、(+):(-)モル比は、1:10超~10:1未満であり得る。いくつかのケースでは、(+):(-)モル比は、1:10または約1:10~10:1または約10:1であり得る。いくつかのケースでは、(+):(-)モル比は、1:8または約1:8~8:1または約8:1であり得る。特定の実施形態では、(+):(-)モル比は、1:50超~約10:1未満であり得る。いくつかの場合では、(+):(-)モル比は、1:25超~約10:1未満であり得る。いくつかの場合では、(+):(-)モル比は、1:10超~約7:1未満であり得る。いくつかの場合では、(+):(-)モル比は、1:8超~約7:1未満であり得る。いくつかの場合では、(+):(-)モル比は、1:8超~約6:1未満であり得る。
【0193】
カチオン官能基(例えば、二重)誘導体化キトサンポリプレックスがアミノ部分である特定の実施形態では、アニオン部分含有ポリマーと複合体化されたキトサンポリプレックスを含む組成物は、「N:Aモル比」と呼ばれる、(例えば、二重)誘導体化キトサンポリプレックスのアミノ基(N) 対 ポリマーのアニオン(A)部分の比を特徴とすることができる。このN:Aモル比は、約1:100超~約10:1未満で変化し得る。
【0194】
特定の実施形態では、N:Aモル比は、約1:75超~約8:1未満であり得る。いくつかの場合では、N:Aモル比は、1:10超~10:1未満であり得る。いくつかのケースでは、N:Aモル比は、1:10または約1:10~10:1または約10:1であり得る。いくつかのケースでは、N:Aモル比は、1:8または約1:8~8:1または約8:1であり得る。特定の実施形態では、N:Aモル比は、1:50超~約10:1未満であり得る。いくつかの場合では、N:Aモル比は、1:25超~約10:1未満であり得る。いくつかの場合では、N:Aモル比は、1:10超~約7:1未満であり得る。いくつかの場合では、N:Aモル比は、1:8超~約7:1未満であり得る。いくつかの場合では、N:Aモル比は、1:8超~約6:1未満であり得る。
【0195】
追加的または代替的に、アニオン部分含有ポリマーと複合体化されたキトサンポリプレックスを含む組成物は、「(+):P:(-)モル比」と呼ばれる、(例えば、二重)誘導体化キトサンポリプレックスのカチオン官能基(+) 対 核酸のリン原子(P) 対 ポリマーのアニオン部分(-)の3構成成分比を特徴とすることができる。
【0196】
(+):Pが少なくとも2:1~20:1以下である特定の実施形態では、(+):(-)のモル比は、少なくとも1:40~約40:1で変化し得る。(+):Pが少なくとも2:1~20:1以下である特定の実施形態では、(+):(-)のモル比は、少なくとも1:40~約1:10で変化し得る。(+):Pが少なくとも2:1~20:1以下であるいくつかの実施形態では、(+):(-)のモル比は、少なくとも1:25~約25:1で変化し得る。(+):Pが少なくとも2:1~20:1以下であるいくつかの実施形態では、(+):(-)のモル比は、少なくとも1:25~約1:10で変化し得る。(+):Pが少なくとも2:1~20:1以下であるいくつかの場合では、(+):(-)のモル比は、少なくとも1:20~約20:1で変化し得る。(+):Pが少なくとも2:1~20:1以下であるいくつかの場合では、(+):(-)のモル比は、少なくとも1:20~約1:10で変化し得る。(+):Pが少なくとも2:1~20:1以下であるいくつかの場合では、(+):(-)のモル比は、少なくとも1:10~約10:1で変化し得る。(+):Pが少なくとも2:1~20:1以下であるいくつかの場合では、(+):(-)のモル比は、少なくとも1:25~約2:1で変化し得る。(+):Pが少なくとも2:1~20:1以下であるいくつかの場合では、(+):(-)のモル比は、少なくとも1:20~約1:1で変化し得る。
【0197】
特定の好ましい実施形態では、(+):P:(-)は、3:1:3.5~3:1:17.5である。特定の好ましい実施形態では、(+):P:(-)は、5:1:3.5~5:1:17.5である。特定の好ましい実施形態では、(+):P:(-)は、7:1:3.5~7:1:17.5である。特定の好ましい実施形態では、(+):P:(-)は、約3:1:3.5、3:1:7、3:1:10、3:1:15、3:1:17.5、または3:1:20である。特定の好ましい実施形態では、(+):P:(-)は、約5:1:3.5、5:1:7、5:1:10、5:1:15、5:1:17.5、または5:1:20である。特定の好ましい実施形態では、(+):P:(-)は、約7:1:3.5、7:1:7、7:1:10、7:1:15、7:1:17.5、または7:1:20である。特定の好ましい実施形態では、(+):P:(-)は、約10:1:10、10:1:15、10:1:20、10:1:25、10:1:30、または10:1:40である。
【0198】
アニオン部分含有ポリマーと複合体化したアミノ官能基化キトサンポリプレックス粒子が、「N:P:Aモル比」と称される、(例えば、二重)誘導体化キトサンポリプレックス(N)のアミノ官能基 対 核酸(P)のリン原子 対 ポリマー(A)のアニオン部分の3構成成分比を特徴とすることができることを、当業者は理解するであろう。N:Pが少なくとも2:1~20:1以下である特定の実施形態では、P:Aのモル比は、少なくとも1:40~約40:1で変化し得る。
【0199】
N:Pが少なくとも2:1~20:1以下である特定の実施形態では、P:Aのモル比は、少なくとも1:40~約1:10で変化し得る。N:Pが少なくとも2:1~20:1以下である特定の実施形態では、P:Aのモル比は、少なくとも1:25~約25:1で変化し得る。N:Pが少なくとも2:1~20:1以下である特定の実施形態では、P:Aのモル比は、少なくとも1:25~約1:10で変化し得る。N:Pが少なくとも2:1~20:1以下であるいくつかの場合では、P:Aのモル比は、少なくとも1:20~約20:1で変化し得る。N:Pが少なくとも2:1~20:1以下であるいくつかの場合では、P:Aのモル比は、少なくとも1:20~約1:10で変化し得る。N:Pが少なくとも2:1~20:1以下であるいくつかの場合では、P:Aのモル比は、少なくとも1:10~約10:1で変化し得る。N:Pが少なくとも2:1~20:1以下であるいくつかの場合では、P:Aのモル比は、少なくとも1:25~約2:1で変化し得る。N:Pが少なくとも2:1~20:1以下であるいくつかの場合では、P:Aのモル比は、少なくとも1:20~約1:1で変化し得る。
【0200】
特定の好ましい実施形態では、N:P:Aは、3:1:3.5~3:1:17.5である。特定の好ましい実施形態では、N:P:Aは、5:1:3.5~5:1:17.5である。特定の好ましい実施形態では、N:P:Aは、7:1:3.5~7:1:17.5である。特定の好ましい実施形態では、N:P:Aは、10:1:10~10:1:40である。特定の好ましい実施形態では、N:P:Aは、約3:1:3.5、3:1:7、3:1:10、3:1:15、3:1:17.5、または3:1:20である。特定の好ましい実施形態では、N:P:Aは、約5:1:3.5、5:1:7、5:1:10、5:1:15、5:1:17.5、または5:1:20である。特定の好ましい実施形態では、N:P:Aは、約7:1:3.5、7:1:7、7:1:10、7:1:15、7:1:17.5、または7:1:20である。特定の実施形態では、N:P:Aは、約10:1:10、10:1:15、10:1:20、10:1:25、10:1:30、または10:1:40である。
【0201】
1.4.1.親水性非荷電部分
ポリマーの親水性非荷電部分は、ポリアルキレンポリオールもしくはポリアルキレンオキシポリオール部分、またはそれらの組み合わせであり得るか、またはそれらを含み得る。ポリマーの親水性非荷電部分は、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレンオキシグリコール部分であり得るか、またはそれらを含み得る。特定の実施形態では、ポリアルキレングリコール部分は、ポリエチレングリコール部分及び/またはモノメトキシポリエチレングリコール部分であるか、またはそれらを含む。特定の好ましい実施形態では、ポリマーの非荷電部分は、ポリエチレングリコールであるか、またはそれを含む。ポリマーの親水性非荷電部分は、ポリ乳酸などの他の生物学的に適合性のあるポリマー(複数可)であり得るか、またはそれを含み得る。
【0202】
PEGに加えて、いくつかの親水性の非荷電実体が当該技術分野で既知である。例えば、Lowe et.al.,Antibiofouling polymer interfaces:poly(ethyleneglycol)and other promising candidates,Polym.Chem.,6,198-212,2015、及びKnop et.al.,Poly(ethylene glycol)in Drug Delivery:Pros and Cons as Well as Potential Alternatives.Angewandte Chemie International Edition,49(36),6288-6308,2010を参照のこと。ポリマーの親水性非荷電部分の例は、ポリ(グリセロール)、ポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、ポリ(スルホベタインメタクリラート)、及びポリ(カルボキシベタインメタクリラート)、ポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、及びポリ(ビニルピロリドン)であるが、これらに限定されない。
【0203】
親水性部分は、約500Da~約50,000Daの重量平均分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、親水性部分は、約1,000Da~約10,000Daの重量平均分子量を有する。特定の実施形態では、親水性部分は、約1,500Da~約7,500Daの重量平均分子量を有する。特定の実施形態では、親水性部分は、約3,000Da~約5,000Daの重量平均分子量を有する。いくつかの場合では、親水性部分は、5,000Daまたは約5,000Daの重量平均分子量を有する。
【0204】
1.4.2.アニオンポリマー部分
ポリマーのアニオンポリマー部分は、生理学的pHで負電荷を有する複数の官能基を含み得る。多種多様なアニオンポリマーは、本明細書に記載の方法及び組成物での使用に適する。但し、そのようなアニオンポリマーは、親水性非荷電ポリマー部分を有するポリマーの構成成分として提供することができ、正荷電(例えば、二重)誘導体化キトサン-核酸ナノ粒子との(例えば、可逆的)電荷:電荷複合体を形成可能である。
【0205】
例示的なアニオンポリマーとしては、生理学的pHで正味の負電荷を有するポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの場合では、ポリペプチドまたはその一部は、生理学的pHで負荷電側鎖を有するアミノ酸からなる。例えば、ポリマーのアニオンポリマー部分は、ポリグルタマートポリペプチド、ポリアスパラタートポリペプチド、またはそれらの混合物であり得る。追加のアミノ酸またはその模倣物は、ポリアニオンポリペプチドに組み込むことができる。例えば、グリシン及び/またはセリンアミノ酸は、柔軟性を増加させるか、または2次構造を低減させるために組み込むことができる。
【0206】
いくつかの場合では、アニオンポリマーは、アニオン炭水化物ポリマーであるか、またはそれを含み得る。例示的なアニオン炭水化物ポリマーとしては、生理学的pHで負電荷を有するグリコサミノグリカンが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアニオングリコサミノグリカンとしては、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヒアルロン酸、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、ポリマーのアニオンポリマー部分は、ヒアルロン酸であるか、またはヒアルロン酸を含む。
【0207】
追加または代替のアニオン炭水化物ポリマーは、デキストラン硫酸を含むポリマーを含み得る。
【0208】
いくつかの場合では、ポリアニオン部分は、ポリメタクリル酸及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、メタクリル酸のコポリマー及びその塩、ならびにアクリル酸及び/またはメタクリル酸のコポリマー及びその塩、例えば、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリル酸コポリマーからなる群より選択されるポリアニオンであるか、またはそれを含む。
【0209】
いくつかの場合では、ポリアニオン部分は、アルギナート、カラギーナン、ファーセレラン、ペクチン、キサンタン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、セルロース、酸化セルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロース、ペンダントカルボキシル基を含有する合成ポリマー及びコポリマー、リン酸基または硫酸基、主に負電荷のポリアミノ酸、ならびに生体適合性ポリフェノール材料からなる群より選択されるポリアニオンであるか、またはそれらを含む。
【0210】
ポリマーのアニオン部分は、約500Da~約5,000Daの重量平均分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、アニオン部分は、約500Da~約3,000Daの重量平均分子量を有する。特定の実施形態では、アニオン部分は、約500Da~約2,500Daの重量平均分子量を有する。特定の実施形態では、アニオン部分は、約500Da~約2,000Daの重量平均分子量を有する。特定の実施形態では、アニオン部分は、約500Da~約1,500Daの重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、アニオン部分は、約1,000Da~約5,000Daの重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、アニオン部分は、約1,000Da~約3,000Daの重量平均分子量を有する。特定の実施形態では、アニオン部分は、約1,000Da~約2,500Daの重量平均分子量を有する。特定の実施形態では、アニオン部分は、約1,000Da~約2,000Daの重量平均分子量を有する。いくつかの場合では、アニオン部分は、1,500Daまたは約1,500Daの重量平均分子量を有する。
【0211】
本明細書で使用される場合、「ブロックコポリマー」、「ブロックコ-ポリマー」などは、別個のホモポリマー領域を含有するコポリマーを指す。二元ブロックコポリマーは、2つの異なるホモポリマー領域を含有する。三元コポリマーは、3つの異なるホモポリマー領域を含有する。3つの異なる領域が、それぞれ、異なり(例えば、AAAA-BBBB-CCCC)得るか、または2つの領域が、同じ(例えば、AAAA-BBBB-AAAA)、類似(例えば、AAAA-BBBB-AAA)であり得、「A」、「B」、及び「C」は、コポリマーを形成する異なるモノマーサブユニットが含まれることを表す。例えば、「A」は、ポリエチレングリコールのホモポリマーのエチレングリコールモノマーサブユニットを表し得、Bは、ポリグルタミン酸ホモポリマーのグルタミン酸サブユニットを表し得る。ブロックコポリマーは、線状(例えば、二元または三元)ブロックコポリマーであり得る。本発明で使用される線状二元ブロック及び三元ブロックコポリマーの例示的な実施形態としては、以下の限定的なリストに列挙されているものが挙げられる。
【表2-1】
【表2-2】
*K:kDa単位のPEGの分子量
##サブユニットの数
【0212】
一実施形態では、ブロックコポリマーは、以下の構造を有するPEG-ポリグルタミン酸ポリマーであるか、またはそれを含む:
【化6】
【0213】
一実施形態では、ブロックコポリマーは、以下の構造を有するPEG-ポリアスパラギン酸ポリマーであるか、またはそれを含む:
【化7】
【0214】
一実施形態では、ブロックコポリマーは、以下の構造を有するPEG-ヒアルロン酸ポリマーであるか、またはそれを含む:
【化8】
【0215】
1.5.代替カチオン性ポリマー及び脂質
本発明の核酸ポリプレックスは、ヌクレオチドを凝縮し、酵素分解からヌクレオチドを保護するように機能する。キトサン及びその誘導体に加えて、この目的のためにも有利に使用することができる代替材料は、他の正荷電(すなわち、カチオン性)ポリマー及び/または脂質を含む。
【0216】
本開示の治療用核酸構築物とともにポリプレックスを形成することができるカチオン性ポリマーの例としては、ポリアミン;ポリ有機アミン(例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエチレンイミンセルロース、及びそれらの誘導体);ポリ(アミドアミン)(PAMAM及びその誘導体);ポリアミノ酸(例えば、ポリリジン(PLL)、ポリアルギニン、及びそれらの誘導体);多糖類(例えば、セルロース、デキストラン、DEAEデキストラン、デンプン);スペルミン、スペルミジン、ポリ(ビニルベンジルトリアルキルアンモニウム)、ポリ(4-ビニル-N-アルキル-ピリジウム)、ポリ(アクリロイル-トリアルキルアンモニウム)、及びTatタンパク質が挙げられる。例えば、Samal et al.,Cationic polymers and their therapeutic potential,Chem Soc Rev.41:7147-94(2012)を参照のこと。
【0217】
正荷電脂質の例としては、ホスファチジン酸とアミノアルコールとのエステル、例えば、ジパルミトイルホスファチジン酸またはジステアロイルホスファチジン酸とヒドロキシエチレンジアミンとのエステルが挙げられる。正荷電脂質のより具体的な例としては、3β-[N--(N’,N’-ジメチルアミノエチル)カルバモイル)コレステロール(DC-chol);N,N’-ジメチル-N,N’-ジオクタシルアンモニウムブロミド(DDAB);N,N’-ジメチル-N,N’-ジオクタシルアンモニウムクロリド(DDAC);1,2-ジオレオイルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムクロリド(DORI);1,2-ジオレオイルオキシ-3-[トリメチルアンモニオ]-プロパン(DOTAP);N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);1,2-ジオクタデシルオキシ-3-[トリメチルアンモニオ]-プロパン(DSTAP);及び、例えば、Martin et al.,Current Pharmaceutical Design 2005,11,375-394に記載のカチオン性脂質が挙げられる。
【0218】
任意の濃度及び任意の比の脂質及びポリマーのブレンドを使用することもできる。様々なグレードを使用して種々の比で種々のポリマータイプをブレンドすると、寄与するポリマーのそれぞれから取り入れる特性がもたらされ得る。様々な末端基化学物質を採用することもできる。
【0219】
1.6.作成方法
上記のように、本発明のポリプレックス:ポリマー粒子が、様々な方法で生成され得ることを、当業者は理解するであろう。例えば、ポリプレックス粒子を生成し、その後、ポリマーと接触させることができる。例示的な非限定的な実施形態では、ポリプレックス粒子は、官能基化キトサン及びヌクレオチド原料を提供及び組み合わせることにより調製される。原料濃度は、様々なアミノ対リン酸塩(N/P)比、混合比、及び標的ヌクレオチド濃度に適応するように調整されてもよい。いくつかの実施形態、特に小さなバッチ、例えば、2mL未満のバッチでは、官能基化キトサン、及びヌクレオチド原料は、容器をボルテックスしながら、官能基化キトサン原料にヌクレオチド原料を徐々に滴下することにより混合されてもよい。他の実施形態では、官能基化キトサン及びヌクレオチド原料は、2つの流体流をインライン混合することにより混合されてもよい。他の実施形態では、得られるポリプレックス分散液は、限外濾過(例えば、タンジェンシャルフロー濾過(TFF))または溶媒蒸発(例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥)などの当該技術分野で既知の手段で濃縮されてもよい。ポリプレックス形成のための好ましい方法は、WO2009/039657(全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる)に開示される。
【0220】
同様に、ポリプレックス粒子原料(例えば、ポリプレックス組成物を含む水溶液)は、提供し(例えば、上記の反応混合物から単離し)、ポリマー原料(例えば、ポリマーを含む水溶液)と混合することができる。原料濃度は、様々なアミノ対アニオン(N/A)比、アミノ対リン(N:P)比、N:P:A比、混合比、及び標的ヌクレオチド濃度に適応するように調整されてもよい。いくつかの実施形態、特に小さなバッチ、例えば、2mL未満のバッチでは、原料は、容器をボルテックスしながら、第2の原料(例えば、ポリマー)に第1の原料(例えば、ポリプレックス)を徐々に滴下することにより、混合されてもよい。他の実施形態では、原料は、2つの流体流をインライン混合することにより混合されてもよい。他の実施形態では、得られるポリプレックス:ポリマー複合体分散液は、限外濾過(例えば、タンジェンシャルフロー濾過(TFF))または溶媒蒸発(例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥)などの当該技術分野で既知の手段により濃縮されてもよい。
【0221】
2.粉末製剤
本発明のポリプレックス:ポリマー組成物は、粉末を含む。好ましい実施形態では、本発明は、乾燥粉末ポリプレックス:ポリマー組成物を提供する。好ましい実施形態では、乾燥粉末ポリプレックス:ポリマー組成物は、本発明のキトサン-核酸ポリプレックス分散液の脱水(例えば、噴霧乾燥または凍結乾燥)により生成される。
【0222】
3.医薬製剤
本発明は、また、本発明のポリプレックス:ポリマー組成物を含む「薬学的に許容される」または「生理学的に許容される」製剤を提供する。そのような製剤は、処置方法を実施するために、対象にin vivoで投与することができる。
【0223】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」及び「生理学的に許容される」という用語は、好ましくは、過度の有害な副作用(例えば、悪心、腹痛、頭痛など)を生じさせることなく、対象に投与することができる担体、希釈剤、賦形剤などを指す。投与のためのそのような調製物は、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液、及び乳濁液を含む。液体製剤は、懸濁剤、溶剤、シロップ剤、及びエリキシル剤を含む。液体製剤は、固体の再構成により調製されてもよい。
【0224】
医薬製剤は、対象への投与と適合性のある担体、希釈剤、賦形剤、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などから作製することができる。そのような製剤は、錠剤(コーティングされたまたはコーティングされていない)、カプセル剤(ハードまたはソフト)、マイクロビーズ、エマルション剤、散剤、顆粒剤、結晶剤、懸濁剤、シロップ剤、またはエリキシル剤に含有することができる。他の添加剤の中で、補助的な活性化合物及び防腐剤もまた、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスなどが存在し得る。
【0225】
賦形剤は、塩、等張剤、血清タンパク質、緩衝剤もしくは他のpH調整剤、酸化防止剤、増粘剤、非荷電ポリマー、防腐剤、または抗凍結剤を含み得る。本発明の組成物に使用される賦形剤は、さらに、等張剤及び緩衝液または他のpH制御剤を含んでもよい。これらの賦形剤は、好ましい範囲のpH(約6.0~8.0)及び浸透圧(約50~400mmol/L)を得るために添加されてもよい。好適な緩衝液の例は、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、及びスルホン化有機分子緩衝液である。そのような緩衝液は、0.01~1.0%(w/v)の濃度で組成物中に存在し得る。等張剤は、当該技術分野で既知のもの、例えば、マンニトール、デキストロース、グルコース、及び塩化ナトリウム、または他の電解質のいずれかから選択されてもよい。好ましくは、等張剤は、グルコースまたは塩化ナトリウムである。等張剤は、それが導入される生物学的環境の浸透圧と同じまたは同様の浸透圧を組成物に与える量で使用されてもよい。組成物中の等張剤の濃度は、使用される特定の等張剤の性質に依存し、約0.1~10%の範囲であってよい。グルコースが使用される場合、それは、好ましくは、1~5%w/v、より詳細には、5%w/v、の濃度で使用される。等張剤が塩化ナトリウムである場合、それは、好ましくは、最大1%w/v、特に、0.9%w/vの量で用いられる。本発明の組成物は、さらに、防腐剤を含有してもよい。防腐剤の例としては、ポリヘキサメチレン-ビグアニジン、塩化ベンザルコニウム、安定したオキシクロロ錯体(Purite(登録商標)として知られているもの)、フェニル酢酸塩、クロロブタノール、ソルビン酸、クロルヘキシジン、ベンジルアルコール、パラベン、及びチメロサールである。通常は、そのような防腐剤は、約0.001~1.0%の濃度で存在する。さらに、本発明の組成物は、凍結保存剤も含んでもよい。好ましい凍結保存剤は、100,000g/モル未満の好ましい分子量のデキストラン、グルコース、スクロース、マンニトール、ラクトース、トレハロース、ソルビトール、コロイド状二酸化ケイ素、100,000g/モル未満の分子量のグリセロール及びポリエチレングリコール、またはそれらの混合物である。最も好ましいのは、グルコース、トレハロース、及びポリエチレングリコールである。通常は、そのような凍結保存剤は、約0.01~10%の濃度で存在する。
【0226】
医薬製剤は、意図された投与経路と適合性のあるように製剤化することができる。例えば、経口投与のために、組成物は、賦形剤とともに組み込まれ、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、例えば、ゼラチンカプセル剤、またはコーティング、例えば、腸溶性コーティング(Eudragit(登録商標)またはSureteric(登録商標))の形態で使用される。医薬的に適合性のある結合剤、及び/または補助材料は、経口製剤に含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分のいずれか、もしくは同様の性質の化合物を含有し得る:結合剤、例えば、微結晶性セルロース、トラガカントガム、もしくはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプンもしくはラクトース;崩壊剤、例えば、アルギン酸、プリモゲル、もしくはコーンスターチ;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくは他のステアリン酸塩;滑剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味料、例えば、スクロースもしくはサッカリン;または、着香剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、もしくは香味料。
【0227】
製剤は、インプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤など、身体からの急速な分解または排除から組成物を保護するための担体も含み得る。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を単独で、またはワックスと組み合わせて用いられてもよい。
【0228】
坐剤及び他の直腸投与可能な製剤(例えば、浣腸により投与可能なもの)もまた企図される。さらに、直腸送達に関して、例えば、Song et al.,Mucosal drug delivery:membranes,methodologies,and applications,Crit.Rev.Ther.Drug.Carrier Syst.,21:195-256,2004;Wearley,Recent progress in protein and peptide delivery by noninvasive routes,Crit.Rev.Ther.Drug.Carrier Syst.,8:331-394,1991を参照のこと。
【0229】
投与のための適切な追加の医薬製剤は、当該技術分野で既知のであり、本発明の方法及び組成物に適用可能である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)18th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.;The Merck Index(1996)12th ed.,Merck Publishing Group,Whitehouse,N.J.;及びPharmaceutical Principles of Solid Dosage Forms,Technonic Publishing Co.,Inc.,Lancaster,Pa.,(1993))。
【0230】
4.投与
一実施形態では、ポリプレックス:ポリマー組成物の使用は、生理学的pHでのポリプレックスの長期安定性を提供する。これは、有効な粘膜投与を提供する。
【0231】
粘膜細胞または組織に接触させる多数の投与経路のうちのいずれかが可能であり、特定の経路の選択は、部分的に標的粘膜細胞または組織に依存するであろう。注射器、内視鏡、カニューレ、挿管チューブ、カテーテル、ネブライザー、吸入器、及び他の物品は、投与に使用されてもよい。
【0232】
化学療法薬の膀胱内投与は、いくつかの膀胱癌の標準治療である。要約すると、膀胱内療法は、尿道カテーテルの挿入を介して直接膀胱に治療薬を点滴注入することを含む。いくつかの実施形態では、本組成物は、尿中の安定性を高め、それにより、局所発現を改善する。
【0233】
対象を処置するための用量または「有効量」は、好ましくは、測定可能または検出可能な範囲に状態の症状のうちの1つ、いくつか、または全てを改善させるのに十分である。但し、障害もしくは状態または症状の進行または悪化の予防または抑制は、申し分のない転帰である。従って、標的組織において治療用核酸を発現することにより処置可能な状態または障害の場合、本発明の方法により処置可能な状態を改善するための治療用RNAまたは産生される治療用タンパク質の量は、状態及び所望の転帰に依存することになり、当業者により容易に確認することができる。適切量は、処置される状態、望まれる治療効果、及び個々の対象(例えば、対象内の生物学的利用能、性別、年齢など)に依存するであろう。有効量は、関連する生理学的効果を測定することで確認することができる。
【0234】
獣医の用途もまた、本発明により企図される。従って、一実施形態では、本発明は、非ヒト哺乳動物を処置する方法を提供し、これは、処置を必要とする非ヒト哺乳動物に本発明のポリプレックス:ポリマー組成物を投与することを含む。本発明の組成物は、また、粘膜に投与されてもよい。例えば、組成物は、限定されないが、小腸及び/または大腸の粘膜細胞または組織を含む胃腸管の粘膜細胞または組織に投与することができる。他の標的粘膜細胞または組織としては、眼、気道上皮、肺、膣、及び膀胱の細胞または組織が挙げられるが、これらに限定されない。
【0235】
この目的のための代表的な製剤としては、液剤、ゲル剤、ヒドロゲル剤、溶剤、クリーム剤、フォーム剤、フィルム剤、インプラント、スポンジ、繊維剤、散剤、及びマイクロエマルション剤を含む。
【0236】
本発明の化合物は、鼻腔内または吸入により、通常は、好適な噴射剤の使用に関係なく、ドライパウダー吸入器からの乾燥粉末の形態で(単独で、混合物として、例えば、ラクトースとの乾燥ブレンドで、もしくは混合構成成分粒子として)、または加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、もしくはネブライザーからのエアロゾルスプレー噴霧として、粘膜に投与することができる。
【0237】
吸入器または通気器で使用されるカプセル剤、発泡剤、及びカートリッジは、本発明の化合物、ラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末ベース、及びI-ロイシン、マンニトール、またはステアリン酸マグネシウムなどの性能修飾剤の粉末混合物を含有するように製剤化されてもよい。
【0238】
吸入/鼻腔内投与用の製剤は、即時放出及び/または調節放出になるように製剤化されてもよい。放出調節製剤は、遅延放出、徐放性、パルス放出、制御放出、標的放出、及びプログラム放出を含む。
【0239】
本発明の化合物は、例えば、坐剤、ペッサリー、または浣腸の形態で、直腸または膣に投与されてもよい。ココアバターは、従来の坐剤ベースであるが、様々な代替品が必要に応じて使用されてもよい。
【0240】
直腸/膣内投与用の製剤は、即時放出及び/または調節放出になるように製剤化されてもよい。放出調節製剤は、遅延放出、徐放性、パルス放出、制御放出、標的放出、及びプログラム放出を含む。
【0241】
本発明の化合物は、また、通常は、滴の形態で、眼または耳に直接投与されてもよい。眼及び耳投与に適する他の製剤としては、軟膏剤、生分解性(例えば、吸収性ゲルスポンジ、コラーゲン)及び非生分解性(例えば、シリコーン)インプラント、ウェーハ、レンズ、及び粒子系が挙げられる。製剤は、また、イオントフォレーゼで送達されてもよい。
【0242】
眼/耳投与用の製剤は、即時放出及び/または調節放出になるように製剤化されてもよい。放出調節製剤は、遅延放出、徐放性、パルス放出、制御放出、標的放出、またはプログラム放出を含む。
【0243】
粘膜投与
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、粘膜に投与される。例えば、組成物は、限定されないが、小腸及び/または大腸及び/または結腸の粘膜細胞または組織を含む膀胱及び胃腸管の粘膜細胞または組織に投与することができる。他の標的粘膜細胞または組織としては、眼、気道上皮、肺、膣、及び膀胱の細胞または組織が挙げられるが、これらに限定されない。
【0244】
この目的のための代表的な製剤としては、液剤、ゲル剤、ヒドロゲル剤、溶剤、クリーム剤、フォーム剤、フィルム剤、インプラント、スポンジ、繊維剤、散剤、及びマイクロエマルション剤を含む。
【0245】
膀胱粘膜の例示的な実施形態では、本明細書に記載の化合物は、膀胱内療法を使用して投与することができる。膀胱内療法は、尿道カテーテルの挿入を介して直接膀胱に治療薬を点滴注入することを含む。薬剤は、0.5~6時間の期間にわたって膀胱内に放置される。それは、膀胱癌の化学療法の標準的な投与経路である。それは、膀胱の疾患部位への直接の薬物送達に利用可能な外部の解剖学的アクセスを利用し、それにより、身体の他の箇所の健常組織への、点滴注入された薬物の望ましくない曝露を回避する。
【0246】
膀胱投与用の製剤は、即時放出及び/または調節放出になるように製剤化されてもよい。放出調節製剤は、遅延放出、徐放性、パルス放出、制御放出、標的放出、またはプログラム放出を含む。
【0247】
本発明の化合物は、鼻腔内または吸入により、通常は、好適な噴射剤の使用に関係なく、ドライパウダー吸入器からの乾燥粉末の形態で(単独で、混合物として、例えば、ラクトースとの乾燥ブレンドで、もしくは混合構成成分粒子として)、または加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、もしくはネブライザーからのエアロゾルスプレー噴霧として、粘膜に投与することもできる。
【0248】
吸入器または通気器で使用されるカプセル剤、発泡剤、及びカートリッジは、本発明の化合物、ラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末ベース、及びI-ロイシン、マンニトール、またはステアリン酸マグネシウムなどの性能修飾剤の粉末混合物を含有するように製剤化されてもよい。
【0249】
吸入/鼻腔内投与用の製剤は、即時放出及び/または調節放出になるように製剤化されてもよい。放出調節製剤は、遅延放出、徐放性、パルス放出、制御放出、標的放出、及びプログラム放出を含む。
【0250】
本発明の化合物は、例えば、坐剤、ペッサリー、または浣腸の形態で、直腸または膣に投与されてもよい。ココアバターは、従来の坐剤ベースであるが、様々な代替品が必要に応じて使用されてもよい。
【0251】
直腸/膣内投与用の製剤は、即時放出及び/または調節放出になるように製剤化されてもよい。放出調節製剤は、遅延放出、徐放性、パルス放出、制御放出、標的放出、及びプログラム放出を含む。
【0252】
本発明の化合物は、また、通常は、滴の形態で、眼または耳に直接投与されてもよい。眼及び耳投与に適する他の製剤としては、軟膏剤、生分解性(例えば、吸収性ゲルスポンジ、コラーゲン)及び非生分解性(例えば、シリコーン)インプラント、ウェーハ、レンズ、及び粒子系が挙げられる。製剤は、また、イオントフォレーゼで送達されてもよい。
【0253】
眼/耳投与用の製剤は、即時放出及び/または調節放出になるように製剤化されてもよい。放出調節製剤は、遅延放出、徐放性、パルス放出、制御放出、標的放出、またはプログラム放出を含む。
【0254】
治療的応用
本発明での使用が企図される治療用タンパク質は、多種多様な活性を有し、多種多様な障害の処置での使用を見出す。本発明の治療用タンパク質の活性化の以下の記載、及び治療用タンパク質で処置可能な適応は、例示的であり、網羅的であることが意図されない。「対象」という用語は、哺乳動物が好ましく、ヒトが特に好ましい、動物を指す。治療用の実施形態の特定の非限定例が以下に記載される。いくつかの場合では、治療的実施形態は、非粘膜標的組織、細胞、または器官に作用することが意図される。治療効果が非粘膜のものである場合、本明細書に記載のポリプレックス:ポリマー組成物が接触する細胞または組織は粘膜であり、治療作用が粘膜標的の近位にあることが理解される。例えば、粘膜細胞は、IL-12及び/または別の免疫刺激分子を産生及び分泌するようにトランスフェクトすることができる。
【0255】
一実施形態では、本発明のポリプレックス:ポリマー組成物は、治療的処置に使用されてもよい。そのような組成物は、本明細書では、場合により、治療用組成物と呼ばれる。上述されたように、本組成物及び方法は、主に、IL-12をコードする治療用核酸を単独で、または追加の自然及び/または適応免疫刺激分子と組み合わせて用いる。いくつかの実施形態では、治療用核酸は、さらに、例えば、RIG-Iアゴニスト、STINGアゴニスト、TLR7/9アゴニスト、及び/または他のパターン認識受容体アゴニストなどのIFN-1アクチベーター/インデューサーをコードする。例えば、Vasou et al.,Viruses 9:186(2017)を参照のこと。いくつかの実施形態では、治療用核酸は、さらに、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM3、B7-H3、B7-H4、LAG-3、KIR、及びそれらのリガンドからなる群より選択される免疫チェックポイント分子のモジュレーターをコードする。
【0256】
好適なIFN-1アクチベーター/インデューサーとしては、RIG-Iアゴニスト(例えば、eRNA11a、アデノウイルスVA RNA1、eRNA41H、MK4621(Merck)、SLR10、SLR14、及びSLR20)、STING(すなわち、インターフェロン遺伝子の刺激因子)アゴニスト(例えば、CDN、すなわち、環状ジヌクレオチド)、PRRago(例えば、CpG、Imiquimod、またはPoly I:C)、ならびにTRL7及びTLR9、ならびにRLR刺激因子(例えば、RIG-I、Mda5、またはLGP2刺激因子)を含むTLRアゴニスト(例えば、CPG-1826、GS-9620、AED-1419、CYT-003-QbG10、AVE-0675、またはPF-7909)が挙げられる。いくつかの実施形態では、IFN-1アクチベーター/インデューサーは、樹状細胞、T細胞、B細胞、及び/またはT濾胞ヘルパー細胞を誘導する。
【0257】
好ましい実施形態では、IFN-1アクチベーター/インデューサーは、RIG-Iアゴニストである。RIG-I(レチノイン酸誘導性遺伝子I、Ddx58によりコードされる)は、RNAセンサーとして作用する細胞質ゾルの抗ウイルスヘリカーゼであり、これにより、細胞質内のウイルスRNAの認識時に検出及び活性化される。パターン認識受容体であるRIG-Iは、RNAヘリカーゼドメイン及び2つのN末端カスパーゼ動員ドメイン(CARD)を含有し、これらは、シグナルを下流のシグナル伝達アダプターMAVS(ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達タンパク質)に伝達する。MAVSを介したRIG-Iシグナル伝達は、TBK1及びIRF7/8を介した、IFNα及びIFNβを含む、I型IFN応答の誘導、ならびにカスパーゼ-8依存性アポトーシスの活性化を含む、様々な応答をもたらす。それらは、がん細胞を含む、ほとんどの組織に見られる(Kato et al.,Immunol.Rev.243(1):91-98(2011))。
【0258】
応答を誘発したRIG-Iは、細胞間で異なる。メラノサイト及び線維芽細胞などの正常な健康な細胞は、RIG-I誘導性アポトーシスに非常に耐性があるが、腫瘍細胞は、RIG-I誘導性細胞死に非常に感受性がある(Besch et al.,2009;Kubler et al.,2010)。RIG-Iの天然リガンドは、5’三リン酸または二リン酸(5’pppまたは5’pp)を含有する二重鎖RNAのウイルスの短い平滑末端である。RIG-I特異的リガンドは、現在、がんの免疫療法のために開発されている(Duewell et al.,2014,2015;Ellermeier et al.,2013;Schnurr & Duewell,Oncoimmunology,2(5):e24170(2013)and,2014)。RIG-Iリガンドの強力な抗腫瘍活性の部分は、CD8T細胞への抗原の交差提示を促進し、細胞傷害活性を誘導する下流の能力である(Hochheiser et al.,2016)。RIG-Iリガンドは、また、インフルエンザなどのウイルス感染モデルで強力な治療活性を示す(Weber-Gerlach & Weber、2016年)。
【0259】
RNAポリメラーゼIIIプロモーターからRIG-Iリガンドを発現するプラスミドベクターバックボーンは、強力な合成RIG-Iリガンドを同定するために使用されている(Luke et al.,J.Virol.85(3):1370-1383)。三リン酸で修飾されたステムループRNAは、本発明でアゴニストとして特に有用である。これらは、(i)収束転写により発現される免疫刺激dsRNAであるeRNA11aを、(ii)アデノウイルスVA RNAI、SLR20、二本鎖、5’三リン酸配列で修飾された三リン酸化20塩基対ステムループRNA(Elion et al.,Cancer Res.78(21):6183-6195(2018))、ならびに一端に安定したテトラループを含むポリリン酸化RNAであるSLR10及びSLR14(Jiang et al.,J.Exp.Med.216:2854-68(2019))と組み合わせるeRNA41Hを含むが、これらに限定されない。
【0260】
本明細書に記載の組成物及び方法において有利な使用を見出す追加のRIG-Iアゴニストは、RIG-I及びヌクレオチド結合オリゴマー化ドメイン2経路の活性化を介して作用する広域スペクトルの抗ウイルス先天的なセンサーアゴニストであるSB-9200(Jones et al.J.Med.Virol.89:1620-1628(2017))、MK4621(RGT100,Merck)、インフルエンザウイルスのパンハンドルプロモーターの構造を模倣した合成RIG-I特異的アゴニストであるCBS-13-BPS(Lee et al.Nucleic Acids Res.46:10553(2018));IVT-B2 RNA(Lien et al.Molecular Therapy 24:135-45(2016))、SeV DVGs(Xu et al.,mBio 65:e01265-15(2015))、99ヌクレオチドのヘアピンを有するウリジンリッチ配列を有する5’ppp RNA(M8)(Chiang et al.J.Virol.89:8011-25(2015))、及び3pRNAを含む。
【0261】
上述の実施形態によれば、本組成物及び方法におけるIL-12との共発現に適するRIG-Iアゴニストとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:RIG-I DNAワクチン、プラスミドにコードされたRNAポリメラーゼIIIが発現したRNAベースのRIG-Iアゴニスト、例えば、Ellermeier et al.,Cancer Research(2013)73(6)に開示される、RIG-I DNA、例えば、eRNA11a、アデノウイルスVA RNA1、eRNA41H(Nature Technology Corp)、GFP2、Lamin A/C及びLamin VSV、tri-GFP、SAD ΔPLp、Tri-G-AC-U、Flu vRNA、RNaseLフラグメント、pppRVL、pppVSVL、ppp-shRNA-luc3VA1、5’ppp-dsRNA、3p-hpRNA、MK4621(Merck)、SLR10、SLR14、SLR20、CBS-13-BPS、IVT-B2 RNA、SeV CVG、SB-9200、ならびにsiRNA。同様に、IL-12との共発現に適するSTINGアゴニストは、DDX41を含むDExD/Hヘリカーゼを含むが、これらに限定されず、TLRアゴニストは、例えば、CpG-1826(ODN1826、Invivogen)などのCpGジヌクレオチドを含むが、これらに限定されない。
【0262】
上述の実施形態によれば、本組成物及び方法におけるIL-12との共発現に適する免疫チェックポイント分子のモジュレーターは、例えば、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM3、B7-H3、B7-H4、LAG-3、及びKIRのうちの1つ以上に向けられた単一ドメイン抗体(sdAb)(例えば、KN035(Ablynx/Sanofi);Inhibrix 105)(例えば、Wan et al.,Oncol.Rep.(2018);Hosseinzadeh et al.,Rep.Biochem & Mol.Bio.,(2017);Dougan et al.,Can.Imm.Res.(2016);Ingram et al.,PNAS(2018),及びWO2017198212);ドミナントネガティブPD-1分子(例えば、Atara Therapeutics)、PD-L1に対して高い親和性を有するPD-1変異体(例えば、競合的アンタゴニスト)(Maute、PNAS(2015));ならびにCD28への結合が増加するCD80変異体(複数可)(例えば、WO2017/181152)も参照のこと)を含む。
【0263】
いくつかの場合では、該IFN-1アゴニスト及び/または該免疫チェックポイント阻害薬は、以下によってコードされる:
-該誘導体化キトサン核酸ポリプレックス中の該治療用核酸構築物、
-該誘導体化キトサン核酸ポリプレックス中の異なる治療用核酸構築物、
-異なる誘導体化キトサン核酸ポリプレックス中の治療用核酸構築物(例えば、IL-12をコードする構築物を含まない)、
-治療用核酸構築物(例えば、PEIまたはカチオン性脂質製剤などの代替の核酸送達製剤で製剤化)。
【0264】
IL-12をコードする治療用核酸構築物、及び該IFN-1アゴニスト及び/または該免疫チェックポイント阻害薬をコードする治療用核酸構築物は、同時または逐次投与することができる。一部の場合では、該IFN-1アゴニスト及び/または該免疫チェックポイント阻害薬をコードする治療用核酸構築物は、単一の製剤で、または単一の、例えば、混合された、2つの異なる製剤の組み合わせを同時投与される。一部の場合では、IL-12をコードする治療用核酸構築物、及び該IFN-1アゴニスト及び/または該免疫チェックポイント阻害薬をコードする治療用核酸構築物が逐次投与される。
【0265】
本発明の免疫刺激分子は、腫瘍細胞または他の過剰増殖性細胞の成長または維持と関与するタンパク質(複数可)を抑制するように設計されたshRNA(短いヘアピンRNA)分子もコードしてもよい。プラスミドDNAは、治療用タンパク質及び1つ以上のshRNAを同時にコードしてもよい。さらに、該組成物の核酸は、また、プラスミドDNA及び、センスRNA、アンチセンスRNA、またはリボザイムを含む合成RNAとの混合物であってよい。
【0266】
処置の方法
過剰増殖性疾患
本組成物及び方法は、過剰増殖性障害の処置において有利な使用を見出す。特に興味深いのは、粘膜組織または粘膜組織の近位の組織の過剰増殖性障害を処置するための組成物及び方法である。本発明の方法及び組成物は、限定されないが、口腔癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、結腸直腸癌、及び直腸癌を含む、胃腸癌の処置に使用されてもよい。本発明の方法及び組成物により処置され得る鼻癌及び肺癌は、副鼻腔癌、口腔咽頭癌、気管癌、及び肺癌を含むが、これらに限定されない。本発明の方法及び組成物により処置され得る泌尿生殖器癌は、膀胱癌、尿路上皮癌、尿道癌、精巣癌、腎臓癌、前立腺癌、陰茎癌、副腎癌、子宮癌、子宮頸癌、及び卵巣癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0267】
上で提供される方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、方法は、さらに、非核酸ベースの免疫刺激分子を(例えば、全身または腫瘍の部位に局所)投与することを含む。
【0268】
いくつかの実施形態では、免疫刺激分子は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM3、B7-H3、B7-H4、LAG-3、KIR、及びそれらのリガンドからなる群より選択される免疫チェックポイント分子のモジュレーターである。いくつかの実施形態では、免疫調節薬は、PD-L1またはPD-L1の阻害薬である。いくつかの実施形態では、PD-1の阻害薬は、ペムブロリズマブまたはニボルマブなどの抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態では、免疫調節薬は、CTLA-4の阻害薬である。いくつかの実施形態では、CTLA-4の阻害薬は、イピリムマブまたはトレメリムマブなどの抗CTLA-4抗体である。いくつかの実施形態では、PD-L1の阻害薬は、アテゾリズマブなどの抗PD-L1抗体である。
【0269】
いくつかの実施形態では、免疫調節薬は、IFN-1アゴニスト、例えば、RIG-Iアゴニスト、STINGアゴニスト、またはTLR7/9アゴニストである。同時投与に適するRIG-Iアゴニストとしては、短いポリI:C及びポリAU組成物(例えば、ポリ(I:C)/LyoVec複合体(Invivogen));RGT100(MK4621、Merck)SLR20(Elion et al.;SLR10 & SLR14(Jiang et al.);及びUS8871799、US8895608、US8927561、US9,073,946、US9458492、US9555106、US9884876、US9956285、US9775894、US9861574、US9937247、US10167476、US10350158、US10434064、US10273484、US9381208B2、US9738680B2、US9790509、US10059943、US9109012B2、US9937247B2、US9816091B2、US9133456B2、US9409941B2、US9340789B2、US9040234B2、US20200071316、US20200063141A1、US20200061097A1、US20200055871A1、US20200016253A1、US20190076463A1、US20180195063A1、US20160287623A1に開示のアゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。
【0270】
IL-12と組み合わせた同時投与に適するSTINGアゴニストとしては、c-Di-AMPナトリウム塩、c-Di-GMPナトリウム塩、2’,3’-cGAMPナトリウム塩、3’,3’-cGAMPナトリウム塩、10-カルボキシメチル-9-アクリダノン(CMA)、DMXAA(Tocris Bioscience、InvivoGen、Nimbus Therapeutics)、G10、α-Mangostin、CRD100(Curadev)、cAIMP、2’2’-c-GAMP、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Sp)、2’3’-c-di-AMP、c-di-IMP、c-di-UMP、5,6-ジメチルキサンテン-4-酢酸(DMXAA),MK-1454(Merck)ML RR-S2 CDG、ML RR-S2 CDA(ADU-S100)、SB11285(Springbank Pharmaceuticals)、MAVU(AbbVie)、DiABZI、二ナトリウムジチオ-(Rp1Rp)-[環状[A(2’5’)pA(3’5’)p]][Rp,Rp]-環状9アデノシン-(2’5’)-モノホスホロチオアート-アデノシン-(3’5’)-モノホスホロチオエート)、二ナトリウム(RR-S2 CDA、ADU-S100、MIW815)(Corrales et al.、2016)、ならびに、U.S.10,176,292、U.S.9,724,408、U.S.10,011,630、U.S.10,435,469、U.S.10,414,747、U.S.10,413,612、U.S.10,131,686、U.S.10,106,574、U.S.10,047,115、U.S.10,045,961、U.S.10,011,630、U.S.9,994,607、U.S.9,937,247、U.S.9,840,533、U.S.9,770,467、U.S.9,724,408、U.S.9,718,848、及びU.S.9,642,830に開示の組成物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0271】
IL-12との同時投与に適するTLR7及びTLR9アゴニストとしては、レシキモド及びイミキモド(Aldara)を含むイミダゾキノリン及びそれらのアナログ、ヒドロキシクロロキン、クロロクワイア、ブロピリミン、ロキソリビン、イサトリビン、CpGオリゴヌクレオチド、安定化免疫調節RNA(SIMRA)AST-008(Exicure)、MEDI9197、ならびに、U.S.434,064、U.S.10,413,612、U.S.10,407,431、U.S.10,370,342、U.S.10,364,266、U.S.10、208,037、U.S.10,202,386、U.S.9,944,649、U.S.9,902,730、U.S.9,868,955、U.S.9,359,360、U.S.9,295,732、U.S.9,243,050、U.S.9,228,184、U.S.9,216,192、U.S.9,2206,430、U.S.8,735,421、U.S.8,728,486、U.S.8,399,423、及びU.S.8,242,106に開示の組成物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0272】
いくつかの実施形態では、非核酸ベースの免疫調節薬及び本組成物は、例えば、同じ組成物中で、同時投与される。いくつかの実施形態では、非核酸ベースの免疫調節薬及び本組成物は、逐次投与される。
【0273】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される膀胱癌を処置するための方法は、さらに、少なくとも1つの追加の治療薬を対象に投与することを含む。さらなる実施形態では、追加の治療薬は、化学療法薬または放射線治療薬である。いくつかの実施形態では、化学療法薬は、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、メトトレキサート、イホスファミド、オキサリプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、テモゾロミド、ゲムシタビン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、ペメトレキセド、ペントスタチン、チオグアニン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、エニポシド、コルヒチン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、及びビノレルビンを含むが、これらに限定されない。例示的ながん特異的薬剤及び抗体としては、アファチニブ、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アクシチニブ、ベリムマブ、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブレンツキシマブベドチン、カボザンチニブ、カナキヌマブ、カルフィルゾミブ、セツキシマブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、デノスマブ、エルロチニブ、エベロリムス、ゲフィチニブ、イブリツモマブチウキセタン、イブルチニブ、イマチニブ、イピリムマブ、ラパチニブ、ニロチニブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、パゾパニブ、ペルツズマブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、リツキシマブ、ロミデプシン、ルキソリチニブ、シプレウセル-T、ソラフェニブ、テムシロリムス、トシリズマブ、トファシチニブ、トシツモマブ、トラメチニブ、トラスツズマブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、ビスモデギブ、ボリノスタット、ジブーアフリベルセプト、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、免疫複合体の投与前、投与と同時、または投与後に対象に投与される。いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、全身投与される。例えば、いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、静脈内注射により投与される。
【0274】
さらに、現在米国で承認されている従来の膀胱癌処置は、尿道内桿菌カルメットゲランワクチンである。この抗原性ワクチンは、膀胱細胞を刺激してインターフェロンを発現させると考えられており、これは、順番に、患者の自然免疫系を動員して、がん細胞表面抗原をより認識し、がん細胞を攻撃する。しかし、事例の3分の1以上では、ワクチンは、効果がない。同様に、外因的に製造されたインターフェロンポリペプチドの膀胱内点滴注入も試験されているが、効果的ではなかった。本組成物及び方法は、また、免疫応答を増強及び改善するためのこれらのより慣習的なアプローチと組み合わせて有利に用いることができる。
【0275】
本明細書に記載の実施例は、本開示のいくつかの実施形態を示すが、いかなる方法でも本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0276】
実施例1
in vitroでのプラスミドトランスフェクション効果の測定。
【0277】
NTC9385-Luc2、gWiz-Luc2、またはpVax-Luc2プラスミドでトランスフェクトされる前に、MB49細胞を96ウェルプレート(35,000細胞/ウェル)に播種した。リポフェクタミン2000(Thermofisher)及び漸増用量のプラスミドDNA(20~300ng)を使用して、トランスフェクションを実施した。トランスフェクションの24時間後に、細胞をルシフェラーゼ細胞培養溶解試薬(IX、Promega)で溶解させた。ルシフェリン酵素基質を細胞溶解物に添加した直後に、生物発光をEnvisionプレートリーダー(Perkin-Elmer)で測定した。図1に見られるように、NTC9358Rがトランスフェクトされた細胞は、in vitroで最高の効率を示した。
【0278】
実施例2
in vivoでのプラスミドトランスフェクション効果の測定。
JetPEI及びアミン対リン(NP)比6の最適化Luc2を含む候補プラスミド20μgを混合することにより、JetPEI-プラスミドDNAポリプレックスを調製した。ポリプレックスを室温で最低15分間インキュベートし、4時間以内に使用した。雌マウス(12~16週間)に、イソフルランを用いる麻酔下、曝露時間60分間で膀胱内点滴注入により、80μlのJet PEI-DNA製剤を投与した。投与の24時間後、膀胱組織を採取し、mRNA発現及びルシフェラーゼ酵素活性アッセイを使用して、トランスフェクション効果を評価した。溶解緩衝液(Qiagen RNeasy)中で均質化した後、採取された膀胱組織からRNAを抽出した。1μgの投入RNA及びLuc2を認識するTaqManプライマー/プローブを使用して、RT-qPCRを実施した。Luc2 RNAの標準曲線を使用して、絶対定量を実施した。図2Aに見られるように、RNAアッセイの結果は、in vitroルシフェラーゼ活性アッセイの結果と一致しており、NTC9385Luc2は、絶対コピー数に基づいてトランスフェクション後に最高のmRNAレベルを示した。ルシフェラーゼアッセイのために、ルシフェラーゼ細胞培養溶解試薬(IX、Promega)の存在下で均質化することにより、採取された膀胱組織を溶解させた。酵素基質であるルシフェリンを、組織溶解物に添加し、生物発光を、EnVisionプレートリーダー(Perkin-Elmer)で直ちに測定した。図2Bに見られるように、gWIZ-Luc2及びNTC9385Luc2-プラスミドの両方が、pVAX-Luc2プラスミドよりもin vivoで非常に高いルシフェラーゼ酵素活性を示した。
【0279】
in vivoで目的の遺伝子を送達する候補プラスミドの有効性を評価するために、hPD-L1-Fcを有するプラスミドを用いて、トランスフェクション及びトランスフェクション後のmRNA及びタンパク質発現アッセイを実施した。RT-qPCRアッセイのために、投与の24時間後に、膀胱組織を採取し、溶解緩衝液中で均質化し、RNAを抽出した(Qiagen RNeasyキット)。1μgの投入RNA及びコドン最適化ヒトPD-L1-Fcを認識するTaqManプライマー/プローブを使用して、RT-qPCRを実施した。ヒトPD-L1-FcRNAの標準曲線を使用して、絶対定量を実施した。投与の24時間後の3つの異なるベクターを使用して、hPD-L1-Fc mRNA発現に統計的に有意な差は観察されなかった(図2C)。hPD-L1-Fcタンパク質の発現のために、膀胱組織を、投与の24時間後に採取し、プロテアーゼ阻害薬を含む溶解緩衝液中で均質化することにより、組織を溶解させた。カスタム設計のイムノアッセイ(Mesoscale Discovery)を使用して、ヒトPD-L1-Fcタンパク質を定量した。データは、溶解物中のpg/mLのタンパク質として表される。図2Dに見られるように、NTC9385Rは、最も変動が少ない発現を示し、プラスミドによってのみ、試験された全てのマウスにおいて定量可能なhPDL1-Fcがもたらされる。
【0280】
実施例3
in vitroでのマウス膀胱上皮細胞株におけるプロモーター/エンハンサースクリーニング
様々なプロモーター/エンハンサー配列を含有するプラスミドの一団でマウス尿路上皮細胞株をin vitroでトランスフェクトした後に、緑色蛍光レポーター遺伝子(GFP)の用量依存的発現を測定することにより、プロモーター/エンハンサーの組み合わせの有効性を評価した。アッセイで使用されたプロモーター/エンハンサー配列は、CAG、EF1a、CMV/EF1a/HTLV、CMV/UbC、EF1a/HTLV、2xCMV/EF1a、CMV、UbC、CMV/EF1a、CMV/UbB、PGK、UbB、及びCBAであった。SnapFastバックボーン(pSF)の示されたプラスミドでトランスフェクトする24時間前に、MB49細胞(マウス膀胱細胞)を96ウェルプレートに播種した(35000細胞/ウェル)。
【0281】
リポフェクタミン2000(Thermofisher)及び漸増用量のプラスミドDNAを使用して、トランスフェクションを実施した。トランスフェクションの48時間後に、Envisionプレートリーダーで、蛍光を測定した。AlamarBlue Cell Viability Reagent(Invitrogen)を使用して、細胞生存率を測定した。データは、細胞生存率に対して正規化されたGFP相対蛍光単位(RFU)として表される(図3A)。4つの独立した実験にわたってプラスミドのそれぞれについて、総蛍光強度をランク付けした(図3B)。高レベルの発現は、CAG、EF1a、及びCMVベースのプロモーター/エンハンサーを含むプラスミドで見られた。
【0282】
実施例4
in vitroでの初代ヒト細胞(HBIEpC)におけるプロモーター/エンハンサースクリーニング
ヒト初代膀胱上皮細胞のin vitroでのトランスフェクトした後の緑色蛍光レポート遺伝子(GFP)の用量依存的発現を測定することにより、プロモーター/エンハンサーの組み合わせの有効性を評価した。SnapFastバックボーン(pSF)の代替プロモーター/エンハンサーの組み合わせを含有するプラスミドでトランスフェクトする24時間前に、ヒト初代膀胱上皮細胞(ATCC)を96ウェルプレート(25,000細胞/ウェル)に播種した。研究されたプロモーター/エンハンサーの組み合わせは、CAG、UbB、EF1a、CMV-EF1a-HTLV、2XCEF、PGK、CBA、CMV-Ubb、EF1a-HTLV、CMV、CEF、及びUBCを含んでいた。Avalanche Transfection Reagent(EZ Biosystems)及び漸増用量のプラスミドDNAを使用して、トランスフェクションを実施した。トランスフェクションの24時間後に、Envisionプレートリーダーで、蛍光を測定した。AlamarBlue Cell Viability Reagent(Invitrogen)を使用して、細胞生存率を測定した。データは、細胞生存率に対して正規化されたGFP相対蛍光単位(RFU)として表される。図4Aに見られるように、MB49細胞株で良好に実施されたプロモーター/エンハンサーの組み合わせは、また、ヒト初代細胞でも高レベルの発現を示す。同様に、MB49細胞株における低い発現体は、初代細胞においても低い発現を示す。2つの独立したアッセイにわたってプラスミドのそれぞれについて、総蛍光強度をランク付けした(図4B)。EF1a/HTLV、CAG、及び2xCMV/EF1aを含むプラスミドは、最高レベルの発現を示し、UBB及びPGKプロモーター/エンハンサーを含むプラスミドは、ヒト膀胱細胞で最低の発現を示した。
【0283】
実施例5
初代ヒト膀胱上皮細胞における改造プラスミドの測定
蛍光ベースのアッセイを使用して、細菌成分を除去するように改変された(「改良された」)プラスミドのトランスフェクション効果を評価した。要約すると、細菌成分を除去するように改良されたプラスミドの一団でヒト初代膀胱上皮細胞をin vitroトランスフェクトした後に、緑色蛍光レポーター遺伝子(GFP)の用量依存的発現を測定した。ヒト初代膀胱上皮細胞(Cell Applications)を、示されたプラスミド(Nature Technology Corp)でトランスフェクトする24時間前に、96ウェルプレート(25000細胞/ウェル)に播種した。Avalanche Transfection Reagent(EZ Biosystems)及び漸増用量のプラスミドDNAを使用して、トランスフェクションを実施した。トランスフェクションの24時間後に、Envisionプレートリーダーで、蛍光を測定した。AlamarBlue Cell Viability Reagent(Invitrogen)を使用して、細胞生存率を測定した。データは、細胞生存率に対して正規化されたGFP相対蛍光単位(RFU)として表される(図5A)。2つの独立した実験にわたってプラスミドのそれぞれについて、総蛍光強度をランク付けした(図5B)。NPプラスミドは、ヒト初代膀胱上皮細胞において最も高い発現体であり、pVAX及びgWIZ(未修飾)は、最も低い発現体である。NTC9385Rプラスミドは、アッセイされたプラスミドの最高の発現レベルを示した。
【0284】
実施例6
インキュベーション期間後にポリプレックスの排尿がある場合及びない場合のin vivoでの膀胱トランスフェクション効率に対するPEG化の影響
マウス膀胱にDDX及びPEG化DDX製剤を投与した後に、ヒトPD-L1-FcのmRNA発現をアッセイした。7:1:17.5(PEG-DDX)または7:1:7(PEG-DDX)または7:1:0(DDX対照)のNPA比で、ポリプレックスを調製した。雌マウス(12~16週間)に、イソフルランを用いる麻酔下、膀胱内点滴注入(曝露時間=60分)により、80μLのポリプレックス(20μgのプラスミドDNA)を投与した。ポリプレックスへの曝露後及び麻酔から覚醒前に膀胱から排尿させるか(尿道を通してシリンジ及びカテーテルを使用)、または排尿させなかった。投与の24時間後に、膀胱組織を採取し、溶解緩衝液中で組織を均質化した後、RNAを抽出した(Qiagen RNeasyキット)。1μgの投入RNA及びコドン最適化ヒトPD-L1-Fcを認識するTaqManプライマー/プローブを使用して、RT-qPCRを実施した。ヒトPD-L1-FcRNAの標準曲線を使用して、絶対定量を実施した。データは、RNAコピー数で表される(図6)。
【0285】
実施例7
種々のプラスミド濃度でのPEG対非PEGを使用したin vivoでのmRNA発現の評価
ヒトPD-L1-Fcを含むDDX及びPEG-DDXポリプレックスを、7:1:9(PEG-DDX)または7:1:0(DDX)のNPA比で調製した。雌マウス(12~16週間)に、イソフルランを用いる麻酔下、膀胱内点滴注入(曝露時間=60分)により、80μLのポリプレックス(0.25mgのDNA/mL=20μgのプラスミドDNA;1.0mgのDNA/mL=80μgのプラスミドDNA)を投与した。投与の24時間後に、膀胱組織を採取し、溶解緩衝液中で組織を均質化した後、RNAを抽出した(Qiagen RNeasyキット)。1μgの投入RNA及びコドン最適化ヒトPD-L1-Fcを認識するTaqManプライマー/プローブを使用して、RT-qPCRを実施した。ヒトPD-L1-FcRNAの標準曲線を使用して、絶対定量を実施した。データは、RNAコピー数で表される(図7A)。2番目の実験では、示されたポリプレックスを、7:1:3.5(PEG-DDX)または7:1:0(DDX対照)のNPA比で調製した。雌マウス(12~16週間)を同じレジメンにかけた:イソフルランを用いる麻酔下、膀胱内点滴注入(曝露時間=60分)による、80μLのポリプレックスの投与(0.25mgのDNA/mL=20μgのプラスミドDNA;1.0mgのDNA/mL=80μgのプラスミドDNA)。投与の24時間後に、膀胱組織を採取し、溶解緩衝液中で組織を均質化した後、RNAを抽出した(Qiagen RNeasyキット)。1μgの投入RNA及びコドン最適化ヒトPD-L1-Fcを認識するTaqManプライマー/プローブを使用して、RT-qPCRを実施した。ヒトPD-L1-FcRNAの標準曲線を使用して、絶対定量を実施した。データは、RNAコピー数で表される(図7B)。0.25mgのDNA/mlを投与されたものよりも、1.0mg/DNA/mlを投与された動物で、より高い発現が見られた。PEG化により、非PEG化製剤と比較して、投与の24時間後に、膀胱でのmRNA発現が減少しなかった。
【0286】
実施例8
マウス膀胱にPEG化DDX製剤を投与した後のヒトPD-L1-Fcの発現
PEG-DDXポリプレックスを7:1:3.5のNPA比で調製した。雌マウス(12~16週間)に、イソフルランを用いる麻酔下、膀胱内点滴注入(曝露時間=60分)により、80μLのポリプレックス(0.125mgのDNA/mL=10μgのプラスミドDNA)を投与した。投与の48時間後に、膀胱組織を採取し、タンパク質溶解緩衝液及びプロテアーゼ阻害薬の存在下で均質化することにより、組織を溶解させた。カスタム設計のイムノアッセイ(Mesoscale Discovery)を使用して、ヒトPD-L1-Fcタンパク質を定量した。データは、溶解物中のpg/mLのタンパク質として表される(図8)。PEG-DDX(商標)ポリプレックスの膀胱内点滴注入により、膀胱内での強力な定量可能なタンパク質発現が得られた。
【0287】
実施例9
マウス膀胱内の尿中のポリプレックス安定性に対するPEG化の影響。
80μLの非PEG化(NPA 7:1:0)ならびにPEG化(NPA 7:1:7及び7:1:17.5)DDX/DNAポリプレックス製剤を、0.25mgのDNA/mL(n=4)でマウス膀胱に投与した。分析のために(膀胱の内容物を収集する)膀胱排尿の前に、製剤を膀胱内で1時間インキュベートした。外観(図9A)及び動的光散乱(図9B)によるナノ粒子のサイジングについて試料を試験した。非PEG化ポリプレックスは、排尿後に大幅に凝集し、凝集を示さなかったPEG化ポリプレックスと比較して、目に見える白い凝血塊があった。
【0288】
実施例10
in vivoでのhPD-L1-Fc産生に対するDDX-I対DDX-IIの影響
雌マウス(12~16週間)に、イソフルランを用いる麻酔下、膀胱内点滴注入(曝露時間=60分)により、80μLのポリプレックス(1.0mgのDNA/mL=80μgのプラスミドDNA)を投与した。投与の48時間後に、膀胱組織を採取し、プロテアーゼ阻害薬を含有するタンパク質溶解緩衝液の存在下で均質化することにより、組織を溶解させた。カスタム設計のイムノアッセイ(Mesoscale Discovery)を使用して、ヒトPD-L1-Fcタンパク質を定量した。データは、溶解物中のpg/mLのタンパク質として表される。データは、平均+/-SD;*p<0.05;**p<0.005-Kruskal-Wallis検定を用いる一元ANOVAである。ポリプレックスを、(示されるように)10:1または30:1のNP比及び1.0mg/mLのDNA濃度で調製した。DDX-Iの組成は、14%のR及び3%のGAであった。DDX-II(RXG)の組成は、(示されるように)13%のR/13%のGまたは28%のR/9%のGであった。図10に示されるように、DDX-II(RXG)は、DDX-Iよりもin vivoで有意に高いタンパク質発現をもたらす。
【0289】
実施例11
RXG製剤をマウス膀胱に投与した後のタンパク質発現の動態
ポリプレックスを、10:1:5(PEG化)または20:1:0(非PEG化)のNPA比で調製した。PEG化製剤を、5%のトレハロース+5%のマンニトールで行った。非PEG化製剤を、5%のトレハロースで行った。%R及び%GのRXG(DDX-II)組成が示される。雌マウス(12~16週間)に、イソフルランを用いる麻酔下、膀胱内点滴注入(曝露時間=60分)により、80μLのポリプレックス(1.0mgのDNA/mL=80μgのプラスミドDNA)を投与した。投与の24、48、72、及び96時間後の時点で、膀胱組織を採取し、プロテアーゼ阻害薬を含有するタンパク質溶解緩衝液の存在下で均質化することにより、組織を溶解させた。カスタム設計のイムノアッセイ(Mesoscale Discovery)を使用して、ヒトPD-L1-Fcタンパク質を定量した。データは、溶解物中のpg/mLのタンパク質として表される(図11)。タンパク質の発現は、高く(ng/mlの範囲内)、投与の96時間後まで持続する。
【0290】
実施例12
RIG-Iアゴニストカセットを含まない及び含む、マウスIL-12を含むプラスミドDNA構築物
RIG-Iアゴニストカセットを含まない、マウスIL-12を含むプラスミド構築物(図12A)及びRIG-Iアゴニストカセットを含む、マウスIL-12を含むプラスミド構築物(図12B)。マウスIL-12導入遺伝子は、短いエラスチンリンカーを含むIL-12 p40及びp35サブユニットの遺伝子の単一のオープンリーディングフレームを含む(図12A)。mIL-12導入遺伝子を含有するプラスミドでHEK293T細胞にトランスフェクトし、上清をトランスフェクションの48時間後に採取した。イムノアッセイにより細胞の上清中のマウスIL-12p40p35を定量した。構築物は、生物活性IL-12を生じ(図13A)、脾細胞を96ウェルプレートに播種し、漸増用量のmIL-12を含有する上清とともに、抗CD3及び抗CD28で刺激した。刺激の48時間後に、ELISAにより、脾細胞培養上清中のIFNγを測定した(図13A)。HEKBlue細胞を96ウェルプレートに播種し、mIL-12を含有する漸増用量の上清で刺激した。組み換えSEAPの標準曲線と比較して、HEKBlue上清中のIL-12媒介性SEAP産生を定量し、データを細胞数に対して正規化した。
【0291】
実施例13
RIG-Iアゴニストを含むプラスミドでトランスフェクトされた膀胱癌上皮細胞におけるin vitroでのIFNβ産生。(図14A及び14B)
RIG-Iアゴニストを含むまたは含まないプラスミド(NTC9385R-mIL12)でトランスフェクトする前に、MB49細胞を96ウェルプレート(35,000細胞/ウェル)に播種した。リポフェクタミン2000(Thermofisher)及び漸増用量のプラスミドDNAを使用して、トランスフェクションを実施した。トランスフェクションの48時間後に、細胞培養上清を回収し、IFNβ産生をELISAで測定した。データは、総細胞タンパク質に対して正規化され、pg IFNβ/mgの総タンパク質として表された。
【0292】
実施例14
マウス膀胱にRXG製剤を投与した後のin vivoでのmRNA発現
コドン最適化配列を有する一本鎖マウスIL-12p40p35オープンリーディングフレームを、NTC9385RまたはNTC9385R-eRNA41Hベクターバックボーンにクローニングし、MB49細胞においてin vitroで発現を確認した(データは示さず)。RXGポリマーを使用して、ポリプレックスを調製した(NP20、非PEG化;25%のR、10%のG、賦形剤として5%のトレハロース)。
【0293】
雌マウス(12~16週間)に、イソフルランを用いる麻酔下、膀胱内点滴注入(曝露時間=60分)により、80μLのポリプレックス(1.0mgのDNA/mL=80μgのプラスミドDNA)を投与した。投与の4、24、48、72、及び96時間の時点で、膀胱組織を採取し、溶解緩衝液中で組織を均質化した後、RNAを抽出した(Qiagen RNeasyキット)。500μgの投入RNA及びコドン最適化マウスIL-12p40p35を認識するTaqManプライマー/プローブを使用して、RT-qPCRを実施した。in vitro転写により生成されたマウスIL-12p40p35 RNAの標準曲線を使用して、絶対定量を実施した。データは、RNAコピー数で表される。図15に見られるように、IL-12 mRNAの発現は、高く、96時間持続した。RIG-Iアゴニストを含んでも、IL-12 mRNAの発現が減少しなかった。
【0294】
実施例15
ポリマー構造及びポリプレックス形成
凍結、または凍結乾燥のために、後続のタンジェンシャルフロー濾過(TFF)濃度に対し様々な安定剤中で、3~30のアミン対リン酸塩(N:P)比でpDNAとDDXを複合体化することにより、ポリプレックスを形成した。二重誘導体化キトサン(DDX)の構造:Σ(q+p+n)=1、q=0.03~0.35、p=0.12~0.28(図16)。
【0295】
実施例16
DDX-DNA製剤の物理化学的特性
12~28%のアルギニン及び3~35%のポリオールとコンジュゲートされたDDXを使用して、ポリプレックスを3~30の範囲のN:P比で調製した。10mMのNaCl中、動的光散乱(DLS)により、ポリプレックス流体力学的直径(Z平均)及び多分散度指数(PDI)を測定した。100Vに1時間かけられた、pH8(0.5XのTBE)の0.8%アガロースゲルでのポリプレックスからのDNA放出の視覚的評価により、DNA捕捉を決定した。過剰な競合するポリアニオン(ポリ-(α,β)-DL-アスパラギン酸)とのインキュベーションによるポリプレックスからのDNA放出に続いて、アガロースゲル電気泳動(Quantity One v4.6.7、Bio-Rad Laboratories)により、DNAスーパーコイルを定量した。ポリプレックスのゼータ電位は、また、レーザードップラー速度計で測定された(図17)。
【0296】
実施例17
ポリマーのin vitroスクリーニング
in vitroスクリーニングを使用して、DDX(3%ポリオール、14%アルギニン(R))と比較してトランスフェクション効果が改善された新規ポリマー。示された製剤を用いるトランスフェクションの24時間前に、マウス尿路上皮癌細胞(MB49)を96ウェルプレートに播種した(35000細胞/ウェル)。示されているように、漸増用量のプラスミドDNAで、トランスフェクションを実施した。トランスフェクションの48時間後に、Envisionプレートリーダーで、蛍光を測定した。AlamarBlue Cell Viability Reagentを使用して、細胞生存率を測定した。データは、細胞生存率に対して正規化されたGFP相対蛍光単位として表される(図18A)。B.ヒートマップは、DDX(3%のポリオール、14%のR)に対する最大発現の倍数変化を表す(図18B)。DDXのハイコンテントイメージングにより、GFP陽性細胞のパーセンテージを決定し、最大効果と比較した(図18C)。
【0297】
実施例18
DDXのIVI投与後のin vivoでのタンパク質発現
雌マウス(12~16週間)に、イソフルランを用いる麻酔下、膀胱内点滴注入(曝露時間=60分)により、80μLのポリプレックス(c1000=80μgのプラスミドDNA)を投与した。投与の48時間後に、膀胱組織を採取し、プロテアーゼ阻害薬を含有するタンパク質溶解緩衝液の存在下で均質化することにより、組織を溶解させた。カスタム設計のイムノアッセイ(Mesoscale Discovery)を使用して、ヒトPD-L1-Fcタンパク質を定量した。データは、溶解物中のpg/mLのタンパク質として表される。IVI投与を介してマウス膀胱にDDX(12%のポリオール、15%のR)を投与した後、タンパク質発現の改善がマウスで見られた(図19)。
【0298】
実施例19
非ヒト霊長類におけるヒトEG-70の膀胱内投与
非ヒト霊長類に、麻酔下、膀胱内点滴注入(曝露時間=60分)により、IL-12p40p35を含む0.25mg/mlのEG-70を投与した。動物は、10mlまたは20mLのEG-70または20mLの空ベクター対照を含有するポリプレックスを投与される(n=1/群、雌(EG-70)または雄(空ベクターDNAを含むポリプレックス))。投与の48時間後に、膀胱組織を採取し、RNA抽出に使用される緩衝液(図20A)またはプロテアーゼ阻害薬を含有するタンパク質溶解緩衝液(図20B)の存在下で均質化することにより、組織を溶解させた。1μgの投入RNA及びコドン最適化ヒトIL-12p40p35を認識するTaqManプライマー/プローブを使用して、RT-qPCRを実施した。in vitro転写により生成されたヒトIL-12p40p35 RNAの標準曲線を使用して、絶対定量を実施した(図20A)。市販のヒトIL-12p70イムノアッセイ(Mesoscale Discovery)を使用して、ヒトIL-12タンパク質を定量した。データは、溶解物中のpg/mLのタンパク質として表される(図20B)。検出可能なレベルのmRNA及びタンパク質は、10ml及び20mlの処置の膀胱内投与の両方で見られた(それぞれ、2.5mgまたは5mgのプラスミドDNAに対応)。個々のデータポイントは、個々の動物内の膀胱組織の割合を示す。
【0299】
実施例20
非ヒト霊長類におけるeRNA11a及びVA1の発現
非ヒト霊長類に、麻酔下、膀胱内点滴注入(曝露時間=60分)により、IL-12/eRNA11a/VA1を含む20mlのC250 EG-70ポリプレックス、または空ベクター対照DNAを含有するポリプレックスを投与した。動物は、0.0625mg/mL、0.25mg/mL、もしくは1mg/mL(それぞれ、c62.5、c250、もしくはc1000)のEG-70、または、1mg/mL(c1000)の対照ナノ粒子(RXG-PEG-N9;n=1/群、雌(EG-70、低用量及び中用量)または雄(EG-70、高用量もしくは空ベクターDNAを含むポリプレックス))の投与を受けた。投与の48時間後に、膀胱組織を採取し、RNA抽出緩衝液の存在下で均質化することにより、組織を溶解させた。1μgの投入RNA及びeRNA11aまたはVA1を認識するTaqManプライマー/プローブを使用して、RT-qPCRを実施した。in vitro転写により生成されたヒトeRNA11a RNAの標準曲線(図21)、及びヒトVA1 RNA(図22)を使用して、絶対定量を実施した(個々のデータポイントは、個々の動物内の膀胱組織画分を示す)。
【0300】
実施例21
膀胱癌のマウスモデルにおける抗腫瘍活性の評価
mEG-70プロトタイプナノ粒子の抗腫瘍活性を評価するために、マウス膀胱癌の同所性モデルを使用した。要約すると、表在性尿路上皮層の落屑を促進し、がん細胞の着床を促進するために、ポリ-L-リジンでマウスの膀胱を前処理することにより、疾患を確立した。続いて、ルシフェラーゼ遺伝子(MB49-Luc)を安定して過剰発現する尿路上皮癌細胞をマウス膀胱に点滴注入し(マウス1匹当たり100,000細胞)、in vivoイメージングシステム(IVIS)を使用して、点滴注入後12日目に、ルシフェラーゼ発現を確認した。生物発光シグナルの強度を使用して、動物を処置群にランダム化した。さらに、陽性の生物発光シグナルを有しない動物を研究から除外した。マウスは、点滴注入後の13日目及び20日目に、週次で2回のナノ粒子の膀胱内投与を受けた。この投与レジメンを、タンパク質発現動態の評価に基づいて選択した。動物の追加の群は、ナノ粒子ビヒクル、トレハロース(5%)の投与によるシャム手順を受けた。膀胱内の腫瘍量の関数として膀胱重量を測定するために、実験を29日目に終了した。
【0301】
図27A及び27Bに示されるように、シャム処置された担腫瘍動物は、約75mgの平均膀胱重量を示したが、20μgの用量のプラスミドDNAのmEG-70プロトタイプで処置された動物は、ナイーブ動物とほとんど区別ができない膀胱重量(約20mg)を有していた。
【0302】
実施例22
マウス膀胱におけるマウスIL-12 mRNA発現の動態
マウス膀胱におけるコドン最適化マウスIl12p40p35遺伝子発現の動態を評価するために、健常雌C57Bl/6Jマウス(12~16週間)は、麻酔下、膀胱内点滴注入(曝露時間=60分)により、IL-12/eRNA11a/VA1を含むRXGナノ粒子、または空ベクター対照DNAを含有するポリプレックスの1回の膀胱内点滴注入(IVI)を受けた。動物は、0.25mg/mL、c250でmEG-70プロトタイプまたは対照ナノ粒子(RXG-PEG-N9)の投与を受けた。投与後の指示時間に、膀胱組織を採取し、RNA抽出緩衝液の存在下で均質化することにより、組織を溶解させた。1ugの投入RNA及びコドン最適化mIL-12p40p35を認識するTaqManプライマー/プローブを使用して、RT-qPCRを実施した。in vitro転写により生成されたマウスIl12p40p35 RNAの標準曲線を使用して、絶対定量を実施した(図23)。
【0303】
図23に示されるように、膀胱組織におけるマウスIl12p40p35 mRNAレベルは、早ければ投与の4時間後に検出可能であり、mEG-70プロトタイプナノ粒子を投与されているマウスにおいて、発現は、投与の96時間後まで持続した。予想通り、IL-12導入遺伝子を含まないプラスミドを含有するナノ粒子(N9、陰性対照)を投与されたマウスは、いかなる検出可能なIl12p40p35 mRNA(2コピー未満)も有しなかった。
【0304】
実施例23
マウス膀胱におけるマウスIL-12p70タンパク質発現の動態
マウス膀胱におけるマウスIL12p70タンパク質発現の動態を評価するために、健常雌C57Bl/6Jマウス(12~16週間)は、20μgのmEG-70プロトタイプナノ粒子の単回IVIを受けた。膀胱組織を指示時間で採取し、Mesoscale Discovery(MSD)プラットフォーム上で、マウスIL12p70のイムノアッセイのために組織溶解物を調製した。
【0305】
図24に示されるように、1回のIVIのmEG-70プロトタイプナノ粒子を投与されたマウスは、早ければ投与の24時間後に検出可能なレベルのIL-12p70タンパク質を示した。タンパク質発現は、48時間で最高であり、遅くとも投与の96時間後には検出された。N9プラスミドDNA(陰性対照)を含有するナノ粒子の投与を受けていたマウスの膀胱組織に、検出可能なIL-12p70はなかった。
【0306】
実施例24
マウス膀胱におけるマウスIL-12p40p35タンパク質発現の用量応答
マウス膀胱におけるマウスIL12p70タンパク質発現の用量依存的発現があるかどうかを評価するために、健常雌C57Bl/6Jマウス(12~16週間)は、0.1~80μgのプラスミドDNAの用量でmEG70プロトタイプナノ粒子の単回IVIを受けた。陰性対照は、最大20μg投与された。投与の48時間後に膀胱組織を採取し、MSDプラットフォームでのマウスIL12p70イムノアッセイのために組織溶解物を調製した。
【0307】
図25に示されるように、1回のIVIのmEG-70プロトタイプナノ粒子を投与されたマウスは、最低用量のN9-m12-R(0.1μg)でIL-12p70タンパク質の低いレベル及び頻度(25%のマウス)を示した。180μgの範囲の全ての用量に対して同等のレベルで、タンパク質の発現を検出した。N9プラスミドDNA(陰性対照)を含有するナノ粒子の投与を受けていたマウスの膀胱組織に、検出可能なIL-12p70はなかった。
【0308】
実施例25
in vivoでのPEG化ナノ粒子の発現
マウスIL-12p70タンパク質発現に対するPEG化のいかなる潜在的な影響も評価するために研究を行った。要約すると、雌C57Bl/6Jマウス(12~16週間)は、20μgのプラスミドDNAを含有するナノ粒子の単回投与を受けた。マウスは、mEG-70またはmEG-70プロトタイプナノ粒子の単回IVIを受けた。投与の24時間後から7日後までに膀胱組織を採取し、イムノアッセイによるIL 12p70タンパク質の定量のために組織タンパク質溶解物を得た。
【0309】
図26に示されるように、mEG-70プロトタイプまたはmEG-70のいずれかの単回IVIを受けたマウスは、マウスIL-12p70タンパク質発現の同等のレベル及び動態を示した。
【0310】
実施例26
NMIBCにおけるヒト臨床研究
膀胱癌は、米国(US)の男性及び女性で、それぞれ、4番目及び10番目に最も一般的な悪性腫瘍である(American Cancer Society 2019)。非筋肉浸潤性膀胱癌(NIMBC)は、通常、再発率を35%低減させるために、外科的切除(TURBT)で、続いて、多くの場合、24時間以内の膀胱内化学療法(ゲムシタビンまたはマイトマイシン)の単回投与により、管理される(Sylvester et al、2016)。
【0311】
病理学から膀胱癌の存在を確認した後、医師は、多くの場合、BCG療法を含む継続的な処置計画を作成した。重大な副作用及び30%~40%の失敗率にもかかわらず、BCGによる膀胱内免疫療法は、高グレード(Ta以上)NMIBC患者において再発及び/または進行を防止するために使用される主力処置である。BCGは、多くの場合、無病状態を達成するために、2回目の維持コースで与えられるが、BCGに応答しないNMIBC患者は、BCGを含むさらなる治療から恩恵を受ける可能性が非常に低く、それ故、新しい治療法の研究のためのユニークな個体群を代表する(Jarow et al、2015)。
【0312】
薬理学的介入または膀胱切除術がない状態で、疾患の切除の有無に関わらず、BCG非応答性NMIBCは、持続及び進行するであろう。現在まで、多くの場合、TURBT後に投与されるゲムシタビン及びマイトマイシンが効果的な救済薬ではないので、BCGに失敗した患者に利用可能な効果的な治療法はない。それ故、BGC非応答性疾患(BCGが難治性または再発性であるかどうかに関係なく)の処置は、全ての腫瘍を外科的に切除し、無病生存を確保する根治的膀胱切除術である。NMIBCで利用可能な処置の選択肢がほとんどなく且つ患者が初期段階の疾患のために根治的臓器摘出を続けているという事実は、本当に大きな満たされていない医学的ニーズを表している。難治性の患者に有効なより効果的な処置が、NMIBCで切実に必要とされる。
【0313】
本発明の例示的な実施形態では、治療用核酸は、以下の表に記載の、スクロースに基づく抗生物質不含選択マーカー(RNA-OUT)を有するNTC9385Rバックボーン上の構成的活性なサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターと連結されている、opt-hIL-12と呼ばれるコドン最適化ヒトインターロイキン-12遺伝子(配列番号7)からなる4156bpのプラスミドDNA(pDNA)を含む。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0314】
R6Kの複製起点は、プラスミドの複製を、大腸菌(E.coli)の特定の株に制限する。opt-hIL12遺伝子は、サイトカインタンパク質IL-12の2つのサブユニット(p40及びp35)をコードする。サブユニットの1:1化学量論を確実にするために、単一のオープンリーディングフレーム(ORF)を含有するように、EG-70プラスミドを設計して、短い繰り返しエラスチンリンカー配列の追加により、p40からp35をモノマー化した。プラスミドは、また、eRNA11a(免疫刺激二本鎖リボ核酸[dsRNA])及びアデノウイルスVA RNA1の遺伝子からなる。これらの遺伝子の2つのRNA産物は、RIG-I経路を刺激し、これにより、より多くの免疫細胞が局所組織に動員される。さらなる実施形態では、この治療用核酸は、医薬組成物EG-70を形成するために、アルギニン及びグルコースで官能基化された二重誘導体化キトサンポリマー中にパッケージされ、分離可能なPEG-b-PLE賦形剤でコーティングされる。組成物は、1%w/wのマンニトール溶液中の水性ナノ粒子分散液として製剤化され、フィルター滅菌され、凍結乾燥されて乾燥粉末になり、4℃で保存される。ナノ粒子分散液の平均粒子サイズは、75~175ナノメートルの範囲である。
【0315】
この研究は、EG-70の膀胱内投与の安全性及びBCG療法に失敗し且つ根治的膀胱切除術が控えているNMIBC患者の膀胱腫瘍に対する影響を評価する。研究は、各コホートの3人の患者が処置される代表的な用量漸増治験であろう。EG-70の初期用量は、非臨床毒性データ、ならびに非臨床有効性データに基づくことになり、GLP-毒性研究において見られる最小の毒性用量の少なくとも1/5であろう。予測される第I相用量漸増は、用量制限毒性(DLT)なしで処置された連続コホートで最大1/2log増分になるであろう。
【0316】
等価物
本明細書に記載の全ての刊行物、特許、及び特許出願は、全体が、あらゆる目的のために、それぞれ個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれることが具体的且つ個別に示されるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。上記の開示は、独立した有用性を有する複数の別個の発明を包含し得る。これらの発明のそれぞれが、好ましい形態(複数可)で開示されているが、本明細書に開示及び例示されたその特定の実施形態は、多数の変形が可能であるので、限定的な意味で考慮されるべきではない。本発明の主題は、本明細書に開示の様々な要素、特徴、機能、及び/または特性の全ての新規且つ非自明な組み合わせ及び副組み合わせを含む。以下の特許請求の範囲は、特に、新規且つ非自明であるとみなされる特定の組み合わせ及び副組み合わせを指摘する。特徴、機能、要素、及び/または特性の他の組み合わせ及び副組み合わせで実行される発明は、本出願で、本出願の優先権を主張する出願で、または関連出願で特許請求されてもよい。そのような特許請求の範囲もまた、異なる発明に関するものであれ、同じ発明に関するものであれ、元の特許請求の範囲と比較して範囲が広くとも、狭くとも、等しくとも、または異なっていてようとも、本開示の発明の主題内に含まれるものとみなされる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図16C
図17
図18A
図18B
図18C
図19
図20A
図20B
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【配列表】
2022525866000001.app
【国際調査報告】