IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ランダ ラブズ (2012) リミテッドの特許一覧

特表2022-525931組成物とそれから作られた保護コーティング
<>
  • 特表-組成物とそれから作られた保護コーティング 図1
  • 特表-組成物とそれから作られた保護コーティング 図2
  • 特表-組成物とそれから作られた保護コーティング 図3
  • 特表-組成物とそれから作られた保護コーティング 図4
  • 特表-組成物とそれから作られた保護コーティング 図5A
  • 特表-組成物とそれから作られた保護コーティング 図5B
  • 特表-組成物とそれから作られた保護コーティング 図5C
  • 特表-組成物とそれから作られた保護コーティング 図5D
  • 特表-組成物とそれから作られた保護コーティング 図6
  • 特表-組成物とそれから作られた保護コーティング 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(54)【発明の名称】組成物とそれから作られた保護コーティング
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/06 20060101AFI20220513BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220513BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20220513BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
C09D183/06
C09D5/02
C09D7/40
B41J2/01 101
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556503
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(85)【翻訳文提出日】2021-10-27
(86)【国際出願番号】 IB2020052502
(87)【国際公開番号】W WO2020188509
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】1903769.6
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512048354
【氏名又は名称】ランダ ラブズ (2012) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】ベンジョン ランダ
(72)【発明者】
【氏名】メイル ソリア
(72)【発明者】
【氏名】オメル アシェケナジ
(72)【発明者】
【氏名】サージ アブラモヴィッチ
【テーマコード(参考)】
2C056
4J038
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056FA13
2C056FD13
2C056HA33
2C056HA46
4J038DL051
4J038JA03
4J038JA17
4J038JC32
4J038JC39
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA06
4J038MA08
4J038MA10
4J038MA14
4J038MA15
4J038NA05
4J038NA11
4J038NA12
4J038PA06
4J038PA19
4J038PB11
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC08
(57)【要約】
油中油型エマルションの形態の縮合硬化性コーティング組成物が開示されており、コーティング組成物は、それでコーティングされた表面を、それに接触する材料による望ましくない汚染から保護することができる。コーティング組成物によってそのように保護される表面は、硬化すると、例示として、印刷システムの一部であり得、そのような表面と接触する材料は、インク画像またはその残留物であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされる表面を濡らすことができる縮合硬化性コーティング組成物であって、前記組成物は、
a)シラノール部分を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)であって、前記シラノール部分が、0.1~8.0重量%の重量当たりの重量で前記PDMS中に存在する、PDMSと、
b)シラノール部分を有するシリコーン樹脂であって、前記シラノール部分が、0.5~10.0重量%の重量当たりの重量で前記シリコーン樹脂中に存在する、シリコーン樹脂と、
c)液体担体と、を含み、
前記PDMSおよび前記シリコーン樹脂は、互いに実質的に非混和性であり、その結果、前記縮合硬化性コーティング組成物が、油中油型エマルションを形成する、縮合硬化性コーティング組成物。
【請求項2】
シラノール部分を有する前記PDMSが、シラノール末端PDMSである、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
シラノール部分を有する前記PDMSが、以下の構造的特徴:
a)前記PDMSが、400g/mol~20,000g/molの平均分子量を有する;
b)前記PDMSが、15mPa・s~1,000mPa・sの粘度を有する;
c)前記PDMSが、1重量%~5重量%のシラノール基を含む;および
d)前記PDMSが、30重量%~45重量%のシリコーン原子を含む;
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1または2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記シリコーン樹脂が、以下の構造的特徴:
a)前記シリコーン樹脂が、500g/mol~300,000g/molの分子量を有する;
b)前記シリコーン樹脂が、溶媒の存在下で5mPa・s~2,000mPa・sの粘度を有する;
c)前記シリコーン樹脂が、固体樹脂の0.5重量%~5重量%のシラノール基を含む;
d)前記シリコーン樹脂が、固体樹脂の30重量%~45重量%のシリコーン原子を含む;
e)前記シリコーン樹脂が、2以下の置換度のR/Siを有する;および
f)前記シリコーン樹脂が、2.8以下のフェニル/メチル比を有する;
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記PDMSが、全組成物の重量の20重量%~80重量%、30重量%~70重量%、または40重量%~60重量%の量で前記組成物中に存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記シリコーン樹脂が、全組成物の重量の10重量%~60重量%、20重量%~50重量%、または30重量%~40重量%の固体材料の量で前記組成物中に存在し、
ただし、固体材料に基づく前記PDMSと前記シリコーン樹脂の合計量は、全組成物の重量の100重量%を超えない、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記PDMSと前記シリコーン樹脂の重量対重量比が、1:0.4~1:3.5、1:0.4~1:2.5、または1:0.4~1:1.25である、請求項1~6のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記PDMSと前記シリコーン樹脂からのシラノールの合計量が、硬化剤が存在しない場合の前記組成物の重量の0.5重量%~10重量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記PDMSと前記シリコーン樹脂からのケイ素原子の合計量が、硬化剤が存在しない場合の前記組成物の重量の10重量%~40重量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
架橋剤および触媒から選択される少なくとも1つの硬化剤をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの硬化剤が、架橋剤であり、前記架橋剤が、前記PDMSの重量の0.1重量%~15重量%の量で前記組成物中に存在する、請求項10に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの硬化剤が、触媒であり、前記触媒が、前記PDMSの重量の0.01重量%~3重量%の量で前記組成物中に存在する、請求項10または11に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
前記油中油型エマルションが、250nm~10μm、500nm~7.5μm、または750nm~5μmの平均直径D50を有する液滴を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のコーティング組成物でコーティングされた少なくとも1つの表面を有する物品であって、前記組成物が、前記表面上で完全に硬化している、物品。
【請求項15】
前記物品が、圧胴、圧プレート、両面印刷シリンダー、転写シリンダー、グリッパー、クランパー、ガイドプレート、ガイドローラー、ガイド突起、駆動ローラーおよび張力ローラーを含む群から選択される印刷システムの一部である、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
前記硬化コーティング組成物でコーティングされた前記物品の前記表面が、前記物品に対して剥離可能に取り付け可能であり、前記剥離可能に取り付け可能な表面は、任意に、交換可能なシリンダージャケットである、請求項14または15に記載の物品。
【請求項17】
前記硬化コーティング組成物が、前記コーティングされた表面上に、1μm~10μmの厚さを有する均一な保護コーティングを形成している、請求項14~16のいずれか一項に記載の物品。
【請求項18】
請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の組成物でコーティングされた少なくとも1つの表面を有する物品を含む印刷システムであって、
前記組成物が、前記表面上で完全に硬化しており、
前記物品が、任意に、請求項14~請求項17のいずれか一項に記載の物品である、印刷システム。
【請求項19】
縮合硬化性コーティング組成物を調製するためのキットであって、前記キットは、
I-シラノール部分を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む第1の区画であって、前記シラノール部分が、0.1~8.0重量%の重量当たりの重量で前記PDMS中に存在し、前記第1の区画が、任意に、少なくとも1つの硬化剤をさらに含み、ただし、前記PDMSが、非反応性PDMSである、第1の区画と;
II-シラノール部分を有するシリコーン樹脂を含む第2の区画であって、前記シラノール部分が、0.5~10.0重量%の重量当たりの重量で前記シリコーン樹脂中に存在する、第2の区画と;
III-前記第1および第2の区画の内容物を混合することによって形成される混合物をさらに分散させるための液体を含む第3の区画と;
任意に、
IV-少なくとも1つの硬化剤を含む第4の区画と;
を含み、
前記第1の区画の前記PDMSおよび前記第2の区画の前記シリコーン樹脂は、互いに実質的に非混和性であり、その結果、前記縮合硬化性コーティング組成物が、それらの混合時および前記第3の区画の前記液体担体内での分散時に油中油型エマルションを形成する、キット。
【請求項20】
請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の縮合硬化性コーティング組成物の調製に適合している、請求項19に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷システムの一部(特に圧胴または両面印刷胴上を含む)へのインクおよびその残留物の有害な蓄積など、物品の表面への望ましくない汚染物質の蓄積を防止することができるコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷プロセス(デジタルかどうかに関係なく)は、直接印刷と間接印刷に分けられる。直接印刷では、インク材料(例えば、液体または固体)が目的の印刷基材(例えば、個々のシートまたは連続ウェブの形の紙またはプラスチック箔など)に直接堆積される。家庭用インクジェットプリンターは、このカテゴリーの一例である。間接印刷では、インク材料は中間転写部材(ITM)に堆積され、そこで形成された初期インク画像が任意に変質し得る(例えば、液体インクの担体が蒸発したり、固体インクが柔らかくなり得る)。次に、「変質したインク画像」(この用語は、ITMを介して単に通過する変質していないものをさらに含む)は、そのインク画像が基材に接触して付着する圧ニップで、目的の印刷基材に1つ以上のステップで転写することができる。圧ニップは、一般に、圧力シリンダーと圧胴から形成され、印刷装置が作動しているときに、可撓性ITMとそれに供給される基材をそれらの間を通過させることをさらに含み得、圧力シリンダーと圧胴は、ITM上の変質したインク画像と基材との間のニップでの接触を促す。
【0003】
間接印刷プロセスのインク画像は、理想的には、印刷基材に完全に転写するのに十分に変質された圧ニップに到達し、きれいなITM(例えば、印刷ブランケットまたはエンドレスベルト)を残すように想定されるが、常にそうであるとは限らない。転写を改善する試みは、一般に、その2つが圧ニップで互いに接触するときに、変質した画像がITMよりも基材に対して優先的な親和性を示す時間を延ばすことに基づいている。そのような転写を達成することができるニップに到達するインク画像は、「粘着性」(完全に転写可能であり、必ずしも触れて粘着性であるとは限らないという意味)であると定義される。転写性を高めることは、インク画像の「オープンタイム」を増大させることと考えられ、「閉鎖」は、完全に転写された画像がしっかりと完全に基材に付着することとみなされる。しかしながら、この延びた「粘着性」(すなわち、接触する表面間で画像が転写する能力)は、次に、圧ニップの下流に新たな問題を引き起こし得る。例えば、印刷基材に転写されたインク画像は、印刷基材の印刷経路に沿って印刷システムの一部に逆に付着するのに十分に「オープンな」(十分な粘着性を保持する)ままであることがある。これにより、画像がにじむ可能性があり、そのような部分が後で後続の基材と接触すると、にじんだインクが1つの印刷基材から別の基材に「伝播」することがある。場合によっては、基材上に乗ったとたん、印刷機の表面のそのような意図しない汚染を引き起こすインク画像の能力は、印刷基材の特性(例えば、インク画像での実際のパターンにおけるある印刷基材に付着する特定のインクの能力)に完全に起因するわけではない。明らかに、印刷システムの動作条件(例えば、速度、温度、圧力など)もまた、そのような結果に不利に寄与し得る。当然のことながら、高い速度、温度および/または圧力は、その問題を悪化させ得る。
【0004】
特に、印刷基材のインク画像側が、そのインク画像が「閉じられる」前に、下流の表面(例えば、両面印刷シリンダーとしても知られる、基材の第2の面に印刷するための圧胴)と接触する場合、転写されたインク画像の一部がその表面に付着して、その同じ表面に接触する後続の基材またはその一部に望ましくない寄生残留物を生じ得る。前述のように、この問題は、インク画像に適用される比較的高い圧力(1平方センチメートルあたり最大750ニュートン-N/cm)によって悪化し、例えば、両面印刷シリンダーは、その印刷技術と具体的な装置に応じて通常、50~700N/cmの範囲の圧力で動作する。さらに、印刷基材の第2の面上の第2の画像の転写は、ITMからその第2の面への第2の画像の転写を容易にするために高温を必要とし得るので、そのような温度は、本質的に基材を横切り、現在、両面印刷シリンダーの表面に面している第1の画像によって知覚され得る。したがって、第1の画像が周囲温度で閉じられたとしても、より高い温度は、それを十分に「再オープン」してそれと接触する表面を汚染することがある。追加の要因として速度を考慮すると、印刷装置の速度を上げること(例えば、B1様式の場合は数十枚/時から18,000枚/分まで、または、ウェブ基材の場合は1m/分から400m/分まで)は、次に、両面印刷シリンダーと圧力ローラーによって形成されたニップで圧力および/または温度を上げる必要がある場合があり、その有害な影響は繰り返す必要がないことは容易に理解できる。上の説明では、両面印刷シリンダーは、第1のインク画像が基材の第1の側に転写される第1の圧ステーションの下流の第2の圧ステーションとして説明したが、これは必ずしもそうである必要はない。一部の印刷装置では、基材を裏返し、その第2の面を同じ圧胴に供給することができる(あるいは、「第1の側」の圧胴および「第2の側」の圧胴として機能し、したがって両面印刷シリンダーとして機能する)。
【0005】
印刷基材を輸送する表面(例えば、圧または両面印刷シリンダーの表面)がますます均一になるにつれて、インク画像の蓄積の残留物として、その後の転写は、ITM上の変質した画像と基材との間の接触が減少し、および/または不安定な接触で実行され、さらに印刷品質を低下させ得る。極端な場合、印刷プロセス中に基材の輸送に関与する表面に蓄積した望ましくない汚染物質が「紙詰まり」を引き起こし、それが中断を引き起こし、印刷システムの動作効率を低下させることがある。したがって、不十分に閉じられたインク画像(例えば、十分に乾燥されていない)および/または活発な(再オープン)動作条件にさらされたインク画像がそのような表面に付着する能力、を低下させる必要がある。
【発明の概要】
【0006】
印刷システムの部品の表面は様々な材料(例えば、金属、合金、セラミック、プラスチックなど)からなり得るので、表面への広範囲の望ましくない残留物(その残留物はまた、おそらく異なるタイプのインク画像および画像の形成に役立ったインクに起因する)の付着を低減し、好ましくは防止する一方で、様々な表面をコーティングすることができる「普遍的な」組成物を開発することが有利であろう。あるいは、そのような保護組成物は、それから保護コート、スリーブまたはジャケットを調製して表面を覆ったり包んだりして、組成物の中間支持体として機能させることができる一群の材料に特異的であり得る。
【0007】
理想的には、コーティング組成物は、コーティングされる部分の表面全体にわたって均一で(例えば、連続的、均一な特性を有するなど)、コーティングされた部分に強く付着する完成したコーティングは、コーティングされた部品が使用される印刷装置の動作条件に対して耐性があるコーティングの形成を提供するべきである。簡単にするために、以下の説明は、汚染物質の望ましくない蓄積から保護されるように表面に直接塗布されるコーティング組成物の場合を考慮しているが、これは限定的であると解釈されるべきではない。コーティング組成物は、同様に、保護される表面に別個に取り付けられた中間支持体に適用することができ、したがって、組成物は、表面に「間接的に」適用される。例えば、圧胴の外面に取り外し可能に固定されているジャケットに直接塗布されたコーティング組成物は、交換可能なジャケットが固定される圧胴に間接的に塗布されたと考えることができる。
【0008】
本開示は、望ましくない汚染から表面を保護し得るコーティング組成物に対する前述の必要性に答えることを目的としている。そのような保護組成物は、印刷の分野で観察される制限を克服するように説明および設計されているが、それらの使用は、この特定の産業に限定されない。
【0009】
以下の説明では、圧要素(胴またはプレート)の場合をより詳細に検討するが、印刷システムのこの部分は、通常、そのようなシステムで発生し得る最高レベルの圧力にさらされるが、コーティング組成物は、同様に、それから利益を得る可能性のある他の任意の物品またはその一部に適用することができる。当業者は、比較的高い圧力下での転写の結果としての汚染物質の蓄積を低減または防止できる保護コーティングが、比較的低い圧力下での転写の結果としての汚染物質の蓄積をより容易に低減または防止できることを容易に理解できる。本明細書に開示されるコーティング組成物によって適切にコーティングされ得る物品としては、これらに限定されないが、圧プレート、圧胴、および両面印刷胴などの圧要素;転写胴およびグリッパーなどの支持体輸送コンベヤー;ガイドプレート、ガイドローラー、ガイド突起、駆動ローラー、テンションローラーなどのITM接触要素;インク画像、転写されたインク画像または転写されたインク画像と意図的にまたは接触しない可能性のある印刷システムの同様の部分などが挙げられる。さらに、インクは、本発明のコーティング組成物が結果的に有用であり得る印刷システムの文脈において可能な「汚染物質」と考えられてきたが、これは限定的であると解釈されるべきではない。保護コーティングは、同様に、印刷以外の業界で使用される可能性のある塗料、ワニスまたはその他の着色組成物による汚染を防止または低減することができる。
【0010】
第1の態様では、本開示は、添付の特許請求の範囲で請求され、本明細書でさらに詳述される、縮合硬化性(または架橋性)コーティング組成物を提供する。
【0011】
第2の態様では、本開示は、添付の特許請求の範囲に記載され、本明細書でさらに詳述される縮合硬化性コーティング組成物でコーティングされた少なくとも1つの表面またはその一部を有する物品を提供し、コーティング組成物は、物品に保護コーティングを提供するように硬化される。
【0012】
第3の態様では、本開示は、物品(例えば、圧板または回転可能な圧胴)を含む印刷システムを提供し、物品の外面の少なくとも一部は、添付の特許請求の範囲で特許請求に記載され、本明細書でさらに詳述される縮合硬化性コーティング組成物でコーティングされ、コーティング組成物は、印刷システムの動作中に物品に保護コーティングを提供するように硬化される。
【0013】
さらなる態様では、本開示は、添付の特許請求の範囲で請求され、本明細書でさらに詳述される縮合硬化性コーティング組成物を調製するための部品のキットを提供する。
【0014】
さらなる態様では、本開示は、添付の特許請求の範囲で請求され、本明細書でさらに詳述される縮合硬化性コーティング組成物を調製する方法を提供する。
【0015】
さらなる態様では、本開示は、添付の特許請求の範囲で請求され、本明細書でさらに詳述される縮合硬化性コーティング組成物で表面をコーティングする方法を提供する。
【0016】
さらなる態様では、本開示は、添付の特許請求の範囲で請求され、本明細書でさらに詳述される縮合硬化性コーティング組成物を硬化する方法を提供し、組成物は表面に塗布される。
【0017】
さらなる態様では、本開示は、添付の特許請求の範囲で請求され、本明細書でさらに詳述されるコーティング組成物の成分の反応生成物を提供する。
【0018】
本開示のこれらおよび追加の利点および特徴は、図面および非限定的な例と併せて以下の詳細な説明を参照することによって、よりよく理解されるであろう。
【0019】
次に、本開示のいくつかの実施形態を、例として、添付の図を参照してさらに説明する。ここで、同様の参照番号または文字は、対応するまたは同様の構成要素を示す。説明は、図とともに、本開示のいくつかの実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。これらの図は、説明のためのものであり、本開示の基本的な理解に必要な以上に、実施形態の構造の詳細を示す試みはなされていない。明確さと簡便さのために、図に示されている物体の中には、必ずしも一定の縮尺で示されているわけではないものがある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態によるコーティング組成物を使用することができる印刷システムの概略図である。
図2図2は、本発明の実施形態によるコーティング組成物によってコーティングされ得る圧胴の概略図である。
図3図3は、本発明の実施形態によるコーティング組成物によってコーティングされ得る別の圧胴の概略図である。
図4図4は、本発明の実施形態によるコーティング組成物によってコーティングされ得る、さらに別の圧胴の概略図である。
図5A図5Aは、本発明の一実施形態による、圧胴に塗布された保護コーティングの概略図である。
図5B図5Bは、本発明の別の実施形態による、圧胴に代替的に適用される保護コーティングの概略図である。
図5B図5Bは、本発明の別の実施形態による、圧胴にさらに代替的に適用される保護コーティングの概略図である。
図5A図5Aは、本発明の別の実施形態による、圧胴にさらに代替的に適用される保護コーティングの概略図である。
図6図6は、本発明の様々な実施形態による、本明細書に記載の様々な方法のフローチャートを示している。
図7図7は、テストジョブとして機能する可能性のあるインクイメージと、そのようなテストイメージに繰り返し接触する表面に汚染物質がどのように蓄積するかを概略的に示している。
【発明の詳細な説明】
【0021】
・印刷システムの概要
ここで図面を参照すると、図1は、本発明の実施形態を実施することができる間接印刷用の印刷システム100の概略図である。システム100は、間接印刷に適しており、それは(a)ここで可撓性エンドレスベルトとして示されている中間転写部材(ITM)110を含む。そのようなITMは、本明細書で詳述する必要はなく、簡潔にするために、剥離層(例えば、インク画像を形成するインクを受け取り、印刷基材への転写によって後でそれを剥離することができる)でコーティングされた本体(例えば、補強層または支持層を含む)を含むと考えられる。
【0022】
ITM110は、複数のガイドおよび/または駆動ローラー112a、112b、112c、114および116上に取り付けることができる。この図は、本発明の議論に関連する特定の構成の態様を示し、示された構成は、提示されたローラーの数と配置や形状と相対的な寸法に限定されない。これらはすべて、システム要素を明確に説明するためにここに示されている。図1の例では、ITM110は、矢印1010によって示されるように、図面に対して時計回りの方向に回転する。この方向は、「印刷方向」と呼ばれることもある。
【0023】
印刷システム100は、さらに以下を備える。
(b)この図では、4つの印刷バー122a~122d(それぞれ、C-シアン、M-マゼンタ、Y-黄色およびK-黒のいずれかと指定されている)を含む画像形成ステーション120。画像形成ステーション120は、ITM110の表面(例えば、その剥離層)上にインク画像50(そのうちのいくつかのみが示されている)を形成するように構成される。インク画像は、考慮されている印刷システムに適合された任意の方法によって形成することができ、例えば、ITM表面上にインク液滴を堆積(例えば、インク噴射)することによって形成することができる。
(c)インク画像を乾燥させるための乾燥ステーション130;および
(d)インク画像50が、ITMおよび基材を互いに押し付けることによって、ITM110の表面から基材170に転写される圧ステーション140。
【0024】
基材170は、紙またはカートン製品などのシートフィード基材として示されているが、それはあるいは、連続フィード(ウェブ)基材であり得る。印刷基材に転写されたインク画像は50’と呼び、そのような転写像が付着した基材、すなわち「印刷された基材」は170’と呼ぶことがある。基材を供給端から送達端に運ぶ基材輸送システムは、図には示されていない。
【0025】
図1の特定の非限定的な例では、圧ステーション140は、圧胴160と、圧力シリンダー152、および任意に圧力シリンダーの少なくとも円周の大部分の周りに配置された圧縮性ブランケット154を含む圧力シリンダーアセンブリ150とを備える。圧胴160は、矢印1011によって示される方向に回転可能である。圧力シリンダー152は、圧胴160と同期して回転することができるが、矢印1012によって示されるように反対方向に回転することができる。この技術分野では周知のように、圧ステーションを形成する胴(例えば、160および152)は、対応するシリンダー上のギアおよび/またはベアラーを使用することによって同期させることができる。圧ステーションのシリンダーが互いに係合している(互いに押し付けられている)場合、2つの間の接触線は「圧ニップ」と呼ばれることがある。離脱は、例えば、圧力アセンブリ150を持ち上げることによって、シリンダーの回転軸間の距離を増大させることによって達成され得る。あるいは、シリンダーの回転軸は、接触を可能にする同じ間隔のままであり得るが、少なくともシリンダーの1つは、外側のシリンダー表面にギャップまたはくぼみを備えているため、ギャップがニップに達すると、対向するシリンダーの周囲(またはその中のくぼみ)と接触できなくなる。
【0026】
当業者は、図1に示されるすべての構成要素が必要とされるわけではないことを理解するであろう。また、そのような印刷システムは、例えば、前述のステーション内の異なる数の要素(例えば、単一のプリントバーから8つのプリントバーまで、それぞれが同じ色または異なる色のインクを付着させることができるなど、画像ステーション内の異なる数のプリントバー)などの追加の機能および要素を含むことができることを理解されたい。印刷システムが二重印刷(すなわち、第1の面に印刷された基材の第2の面に第2の画像を印刷すること)を実行するように適合される場合、システムは、基材の反対側がインク画像に接触し得るように、基材を圧ステーションに供給することを可能にする追加の基材輸送システムを含み得る。あるいは、印刷システムは、その目的のために第2の圧ステーション(したがって、第2の(「両面印刷」)圧胴)を含み得る。
【0027】
代替的または追加的に、印刷システムは、必要に応じて、ITMの表面をそれぞれ処理、冷却または洗浄するための調整ステーション、冷却ステーションまたは洗浄ステーションなどの追加のステーション、またはインク画像をそこに転写する前に基材を前処理する、もしくは印刷された基材を仕上げる(例えば、ニス塗り、折り目付け、折り畳み、ステープル留めなどの活動によって)、ステーションを含み得る。ITM110またはそれに関連する任意の特性を変更するように適合された任意のステーションは、破線のボックス180によって概略的に表される。インク画像50の転写前に、基材170またはそれに関連する任意の特性を変更するように適合された任意のステーションは、基材前処理ステーション190によって概略的に表される。印刷された基材170’を変更するように適合された任意のステーションは、仕上げステーション200によって概略的に表されている。
【0028】
ここで図2を参照すると、圧胴260が概略的に描かれ、斜視図で示されている。印刷システム100の動作中、圧胴は、矢印1011によって示される反時計回り方向にその長手方向軸の周りを回転することができる。その円周が途切れのない円であるそのような圧胴260は、ITMから連続基材への画像インクの転写に適し得る。それは、例えば、ロール・ツー・ロール基材輸送システムによって前記圧胴を含む圧ステーション140に供給される紙またはプラスチック箔ウェブへの圧に適合される。260で示されるような圧胴は、本明細書では「連続圧胴」と呼ぶこともある。
【0029】
本教示によるコーティング組成物は、連続圧胴260の表面に直接適用することができ、またはITMおよび/または印刷基材と接触する表面を覆うように、圧胴に取り付けられた任意の連続スリーブ(図には示されていない260’)の表面に適用することができる。それぞれ260または260’の外面へのコーティング組成物のそのような直接的または間接的な塗布は、任意の適切なコーティング方法(例えば、スプレー、ナイフコーティング、スクイージング、ロール、塗装、ブラッシング、浸漬、印刷など)によって行うことができる。必要に応じて、あまり好ましくないが、その上に取り付けられた圧胴260またはスリーブ260’の表面は、最初にプライミング組成物でコーティングされ得、次に本発明のコーティング組成物でコーティングされ得、プライミング組成物は、下にあるシリンダー表面へのコーティング組成物の接着を任意に促進する。あるいは、表面のコーティングの前に、コーティング塗布が適用される表面の物理的処理を行うことができる。例えば、表面は、紙やすりで磨くことによって、エッチングによって、または炎によって前処理することができる。
【0030】
以下のセクションで詳述するように、コーティングは、塗布されたコーティング組成物が塗布された直後またはその硬化中に流れないように、十分に高い粘度を有する組成物を塗布することによって形成することができる。同時に、コーティング組成物の粘度は、コーティングおよび/またはコーティングされる表面上の組成物のセルフレベリングのために選択された方法による容易な塗布を可能にするために十分に低くなければならない。次に、塗布方法および下にある表面に関係なく、組成物を硬化させて保護コーティングを形成することができる。
【0031】
ここで図3を参照すると、本発明のいくつかの実施形態による保護組成物でコーティングすることができる圧胴360が、追加の詳細とともに示されている。圧胴260とは対照的に、シリンダー360は、シリンダーギャップ320を含む。印刷業界で知られているように、シリンダーギャップまたは凹部は、ギャップ内に補助装置を収容および/または固定するための印刷シリンダーの周囲の不連続部である。例えば、シリンダーギャップ320は、基材を印刷するためのグリッパー、またはクランパーなどのシリンダーを保護するジャケットを取り外し可能に取り付ける手段など、物品をシリンダーの表面に固定するための手段を含み得る。典型的には、ギャップの後縁と同じギャップの前縁との間、または第2のギャップのシリンダー円周の残りの部分は、連続的で滑らかである(前述の圧胴260の全円周として)。本明細書で使用される「前縁」および「後縁」などの用語は、印刷システムの動作中に特定の移動方向を有する参照フレームワーク内で使用され、この場合、これらの用語は、シリンダーの回転方向1011を参照して使用される。
【0032】
360で示されるような圧胴は、本明細書では「不連続圧胴」と呼ばれることもある。不連続圧胴は、その外側のシリンダー表面に1つ以上のシリンダーギャップまたは凹部を含み得、任意の2つの同じまたは異なるギャップ間の表面は、通常、その上に運ばれる基材の寸法に対応する。説明のために、B1紙(707×1000mm)のシートと、基材の長さに対応するために1メートルを超える長さの圧胴を想定すると、ギャップ間表面は、少なくとも基板の幅にほぼ対応することができる(すなわち、この場合、シートの周りのマージンを考慮して、707mm×数ミリメートルより大きい)。
【0033】
図3に示されるシリンダー360は、第1のシリンダーギャップ320および第2のシリンダーギャップ320を有する。シリンダーギャップ320間の滑らかな表面(「ギャップ間」表面とも呼ばれる)は、基材170が圧ニップに供給されるときに基板170を運ぶことができ、そこで、それは、ITM110から転写されたインク画像50を受け取る。
【0034】
印刷業界で知られているように、グリッパーを使用して、とりわけ圧胴上の基材170のシートをつかむことができる。グリッパー、またはシリンダーギャップ320内に収容および/または固定された他の補助装置は、シリンダーがこのセグメントにギャップを欠いている場合、圧胴の円周を超えて実質的に延在または突出しないように、ギャップ内に実質的に凹んでいる(つまり、本開示では、完全に凹んでいるか、少なくとも90%凹んでいるか、または少なくとも80%凹んでいる)。グリッパーを例にとると、それらは、周囲に配置された基材の前縁をつかむために、圧胴の表面からわずかに突き出る必要がある場合がある(たとえば、それらの高さの20%または10%以下)。
【0035】
凹型補助装置(例えば、グリッパー)を備えた設計を選択する理由の1つは、ITM110が圧ステーション140を横切るときの損傷または過度の摩耗を回避するためであり得る。別の理由は、ITM110および下にある圧力シリンダーアセンブリ150との同じ遭遇(すべての回転中)からの補助装置の損傷またはミスアライメントを回避するためである可能性がある。シリンダーギャップ内に収容および/または固定された補助装置は、一般に、同じシャフトまたは異なる対応する個々のシャフトまたはピボットの周りを回転することができる複数の個体から構成される。図3に、第1のシリンダーギャップ320に対して凹んだ第1の複数の補助装置330と、第2のシリンダーギャップ320に対して凹んだ第2の複数の補助装置330を示す。複数の個体(例えば330/または330)は、それぞれのシャフトおよび/またはシリンダーギャップの長さに沿って必ずしも等間隔に配置されているとは限らない。同じ原則が、印刷基材のグリッパーまたは交換可能なシリンダージャケットの固定手段にも当てはまる可能性がある。
【0036】
印刷業界で知られているように、シリンダージャケットは、圧胴および両面印刷シリンダーなどの基材輸送シリンダーを含む、シリンダーの表面を覆うために提供することができる。図4は、シリンダーの片側にジャケット400が取り付けられ、シリンダーギャップ320と320との間の1つの滑らかな円周面でシリンダー表面を覆っている圧胴460の別の図を示す。図3では、330と330で概略的に示されているシリンダーギャップに埋め込まれた複数の補助装置は、シート基材用のグリッパーを表しているのに対し、図4では、440および440で概略的に示されているシリンダーギャップに埋め込まれた複数の補助装置は、交換可能なシリンダージャケット400の固定手段を表している。図示したように、シリンダージャケット400は、前縁410および後縁420を有し、これらのそれぞれは、折り畳まれて(曲がり/内向きに回転)、それぞれのシリンダーギャップ320および320に挿入され得、それぞれのジャケット固定手段-複数の4401および4402の手段によって、ジャケットの折りたたまれた端をシリンダーギャップの内壁の一部への取り外し可能な取り付けを確実にすることができる。ジャケット400の折り畳み可能な前縁410および後縁420は、中実のストリップである必要はなく、代わりに、タブと同様の複数の部分を含むことができる。ジャケット固定装置は、本明細書で詳細に説明する必要はないが、例示のために、ジャケットがシリンダーに固定されたときにシリンダーの外面を超えて突出しないように窪み内に取り付け可能であり、交換可能なジャケットの縁がレバーと窪みの側壁との間にクランプされるクランプ位置と、レバーが窪みの側壁、磁石(例えば、クランプ位置にレバーを保持するために提供される)から離間している取り外し位置との間の窪み内に配置されたシャフトの周りで回転可能なクランプレバーを含むことができる。
【0037】
図5の図面は、本発明によるコーティング組成物を塗布し得る印刷システムのシリンダー(例えば、圧胴、両面印刷シリンダー、または任意の他の基材輸送シリンダー)の表面を概略的に示している。本発明は、図の異なるパネルに示されている形状および相対的寸法に限定されず、これらはすべて、保護コーティングの配置を明確に示すためにここに示されている。
【0038】
図5Aは、コーティング組成物を連続シリンダー260の全周に適用して、保護コーティング510を形成する(硬化すると)方法を示す。図5Bは、コーティング組成物が、連続シリンダー260に取り付けられたスリーブ260’の全周にどのように塗布され得、硬化した組成物が保護コーティング520を形成するかを示す。図5Cは、コーティング組成物が、シリンダー360のシリンダーギャップ320と320とこの図に示されていないギャップ内に収容および/または固定されている補助装置の間の滑らかな表面にどのように塗布され得るかを示す。そのような表面上で硬化されたコーティング組成物は、保護コーティング530を形成する。コーティング組成物は、シリンダーギャップの内壁にも適用できるが、これは、接触の結果による汚染の防止に関して求められる効果に必須ではないことは容易に理解できる。図5Dは、シリンダーギャップ320および320内に収容および/または固定された複数の固定手段440および440(図示せず)によってシリンダー460に固定されたジャケット400にコーティング組成物をどのように塗布できるかを示す。そのような表面上の硬化したコーティング組成物は、保護コーティング540を形成する。前述のように、プライミング組成物(図には示されていない)は、いくつかの実施形態では、上記のように前述の表面にコーティング組成物を塗布する前に塗布することができる。
【0039】
図5Dに示される構成は、交換可能なジャケット400がシリンダー460に固定される前に有利に実行することができる。例えば、コーティング組成物は、平面(曲げられていない)形態(その前縁および後縁は、シリンダーギャップ320への挿入を容易にするために任意にすでに事前に折り畳まれている)である間にジャケット400に塗布され、次いで硬化され、その後、シリンダーに取り付けるだけであり得る。さらに、ジャケットを使用すると、必要に応じて、保護コーティングの保守または交換が容易になる場合がある。同様に、そのような表面が単一の計画を形成しないとしても、スリーブに適用されるコーティング組成物について考慮が有効である可能性がある。
【0040】
・コーティング組成物
コーティング組成物およびそれから生じる完成したコーティングから必要とされる可能性のある特性に戻ると、例えば、コーティングされた部品が高温(例えば、少なくとも40℃、少なくとも60℃、少なくとも80℃、少なくとも100℃、少なくとも120℃、または少なくとも140℃)で動作する場合、コーティングはそのような温度に耐性(例えば、機能性、化学的安定性、寸法安定性など)がある必要がある。そのような場合、コーティングは、好ましくは、コーティングされた表面の熱膨張係数以上である、それらの下にある支持体に適合した(例えば、同様の)熱膨張係数を示すべきである。コーティングはさらに、(例えば、印刷)装置の動作中にコーティングが受けるであろう機械的応力に耐えることができたほうがよい。例えば、コーティングされた部品は、システムが動作している間、印刷基材によって頻繁にまたは継続的に接触され得るので、コーティングは、コーティングの外側接触面の摩耗、引っかき傷、または他のそのような変形に対して耐性が必要である。コーティングはさらに、印刷装置の操作中にコーティングが受ける化学的応力に耐えることができたほうがよい。例えば、コーティングされた部品は、印刷プロセスから生じる化学環境、特にインク画像およびインク、またはプロセスで使用される他の化学組成物にさらされるため、コーティングは、その外面に接触し得るすべての形態の組成物(洗浄液を含む)に対して不活性(例えば、非反応性および耐性)である必要がある。前述の例は非限定的であり、印刷業界の当業者は、特定の印刷プロセスの特定の部分の特定のコーティングから要求され得る追加の品質を容易に理解することができる。
【0041】
さらに、本目的のために、コーティングは、さらにインク画像、インク、またはそれらの残留物のその外面への付着を防止または低減することができたほうがよい。言い換えれば、コーティングの外面は、インク画像およびそのすべての部分の剥離を促進する方がよく、その結果、インク画像を有する印刷基材がそのようなコーティングに接触すると、インク画像は完全に基材上に残り、コーティング上に残留物を形成しない。同様に、インクまたはその残留物が、基材の存在を欠く表面に意図せずに堆積する場合(例えば、正しいレジストレーションの欠如が、基材の被覆範囲外のマージンへの部分的なインクの移動につながる)、そのような蓄積は、好ましくは容易に除去可能である方がよい。そのような有利なコーティング(インク画像またはインクの残留物の望ましくない付着を防止または低減する)は、「非粘着性コーティング」と呼ばれることがある。
【0042】
一部の用途では、保護コーティングの厚さを特に制限する必要はないが(例えば、1mm以下、または100μm以下)、一部の用途では、比較的薄いコーティングが好ましい。例えば、対向面との間隔のばらつきに対する許容度が比較的低い(および/または、例えば圧力シリンダー上の圧縮性ブランケットおよび/またはITM構造内の圧縮性層によって、わずかな変動を補償する比較的低い圧縮率)ニップで保護コーティングを使用する場合、保護コーティング(完全に硬化した形)の厚さが50μmを超えないことが有利であり得る。いくつかの実施形態では、硬化した保護コーティングは、20μm以下、または10μm以下、または8μm以下の厚さを有する。いくつかの実施形態では、硬化した保護コーティングは、1μm以上、または2μm以上、または3μm以上の厚さを有する。
【0043】
上記のデシデラタの1つ以上を提供する市販の組成物が存在する場合があるが、すべてではなく、必ずしも関連する表面をコーティングする必要はなく、印刷システムの商用設定と互換性のある期間はめったにない。それぞれが別個の特性または特性のサブセットを提供する組成物を組み合わせると、すべての所望の特性を有する混合物が得られると信じられるかもしれないが、これは必ずしもそうではない。2つの異なる組成物の混合物を例にとると、第1の組成物から第2の特性を有する第2の組成物への第1の特性の「添加」は、組み合わされた特性が減少した混合物をもたらし得、一方の組成物は他方の効力を損なう、または両方がお互いを全滅させる。これは、例えば、混合物を形成する異なる組成物が互いに反応し、結果として生じる生成物が「不活性」であるか、またはその構成要素のいずれかよりも効力が低い場合に起こり得る。同様に、異なる組成物が別個の相にある場合(例えば、それぞれが液体または固体として別々に)、および/または互いに非混和性である場合(例えば、それぞれが別々に水相または油相にある場合、またはそれぞれが別々の油相コンパートメントにある場合)、混合物は、各成分によってもたらされると思われる特性の組み合わせから予想されるよりも効力が低い可能性がある。
【0044】
そのような二相混合物は、コーティング組成物の調製に追加の障害を課すことに留意されたい。すなわち、それとともに形成される完成したコーティングが特定の印刷プロセスに適合することを確実にするために望まれる追加の特性に関係なく、任意のコーティング組成物の基本的な側面は、コーティング組成物がコーティングされる表面上に均一な層を形成する能力である。言い換えれば、コーティング組成物は、コーティングされる表面を濡らすことができなければならない(例えば、その上に均一に広がるために)。表面上にビーズ状になる組成物(またはそれらの混合物)は、表面上に連続的/均一な層を形成することができるとは期待されない。同様に、二相性組成物(例えば、液体中の固体粒子の分散(例えば、水中油型O/W、油中水型W/Oまたは油中油型O/O))は、単相湿潤組成物よりも均一なコーティングを達成する可能性が低い(例えば、表面張力が劣る疎水性表面に塗布された疎水性液体)。本明細書で使用される場合、「二相性」という用語は、正確に2つの異なる相を含む組成物を表現することを意図しないが、より一般的には、その構成要素の少なくとも2つが互いに実質的に混和性ではない組成物、そのため、組成物全体が、少なくとも2つの別個の相(例えば、分散液またはエマルション)または同様の相の2つの別個の区画(例えば、油中油型エマルション)に見出される。特定の理論に拘束されることを望まないが、二相性組成物は、物理的(例えば、厚さ)および機能的(例えば、組成物の各構成要素によって提供される特性は、おそらく異なる相にわたってランダムに分布している)の両方のコーティングの均一性に関してより不安定であると予想される。コーティング組成物のそのような起こり得る不均一性は、完成したコーティングにおいて生じる。
【0045】
印刷システムが要求の厳しい条件(例えば、高スループット)で動作している場合、均一なコーティングを形成するという重要な要求をさらに満たす一方で、「機械的に堅牢な」コーティングの必要性(例えば、耐摩耗性)と非粘着性コーティングの要望など、コーティングに望ましい上記の特性のバランスを十分にとることは、特に困難な場合がある。
【0046】
本発明者らは、特定の混合物が適切なコーティング組成物を提供し得ることを発見した。いくつかの実施形態では、本教示によるコーティング組成物は、硬化することができる(言い換えれば、組成物の構成要素の関連部分の間を架橋することによって三次元ネットワークを形成することができる)反応性コーティング組成物である。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、縮合硬化性組成物である。いくつかの実施形態では、縮合硬化性組成物は、25℃~250℃の範囲の少なくとも1つの温度、または50℃~250℃の範囲の少なくとも1つの温度、または100℃~250℃の範囲の少なくとも1つの温度、または150℃~250℃の範囲の少なくとも1つの温度、または200℃~250℃の範囲の少なくとも1つの温度で硬化可能である(または硬化される)。いくつかの実施形態では、縮合硬化性組成物は、30%~90%の範囲、または30%~80%の範囲、または30%~70%の範囲、または40%~60%の範囲の相対湿度(RH)で硬化可能である(または硬化される)。相対湿度は硬化温度で適切な機器を使用して測定される。
【0047】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、組成物に含まれる2つ以上の化合物上に存在するシラノール基の縮合によって硬化可能である。シラノール基(Si-O-H接続性を有する)は、シラノール部分またはシラノール官能基と呼ばれることもある。シラノールを含む化合物は、しばしば水に敏感であると考えられ、この部分の制御されない加水分解は、最終的には早期の自己硬化につながり、それらは、したがって、通常、空気が不足した雰囲気または不活性雰囲気下で密閉された状態で供給される。したがって、1つ以上の異なるシラノール官能性化合物間の反応(例えば、縮合硬化)は、湿気に敏感であると考えられる。
【0048】
いくつかの実施形態では、縮合硬化性組成物は、反応性ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むまたは含む。いくつかの実施形態では、反応性PDMSは、シラノール末端ポリジメチルシロキサンである。
【0049】
いくつかの実施形態において、シラノール末端PDMSは、少なくとも400g/mol、または少なくとも700g/mol、または少なくとも2,000g/mol、または少なくとも4,000g/mol、または少なくとも10,000g/molの平均分子量(MW)を有する。いくつかの実施形態では、シラノール末端PDMSは、20,000g/mol以下、または5,000g/mol以下、または3,500g/mol以下、または1,500g/mol以下、または700g/mol以下の平均分子量(MW)を有する。いくつかの実施形態において、シラノール末端PDMSは、400~20,000g/mol、または400~4,000g/mol、または400~2,000g/mol、または700~3,500g/mol、または700~1,500g/mol、または1,500~3,500g/mol、または3,500~5,500g/mol、または5,000~10,00g/mol、または10,000~20,000g/molの範囲の平均分子量(MW)を有する。
【0050】
いくつかの実施形態において、シラノール末端PDMSは、その分子中に、少なくとも0.1重量%、または少なくとも0.5重量%、または少なくとも1重量%、または少なくとも2重量%、または少なくとも3重量%、または少なくとも4重量%の重量パーセント(重量%)のシラノール基を有する。いくつかの実施形態において、シラノール末端PDMSは、8重量%以下、または5重量%以下、または2重量%以下、または1重量%以下のシラノール含有量を有する。いくつかの実施形態において、シラノール末端PDMS中のシラノール含有量は、0.1~8.0重量%、0.5~7.5重量%、0.5~5.0重量%、1.0~5.0重量%、2.0~5.0重量%、2.0~4.0重量%、3.0~4.0重量%、または3.0~7.5重量%の範囲である。
【0051】
いくつかの実施形態において、シラノール末端PDMSは、30.0重量%以上、32.5重量%以上、35.0重量%以上、または37.5重量%以上のケイ素(Si)含有量を有する。いくつかの実施形態では、シラノール末端PDMSは、45重量%以下、40重量%以下、または38重量%以下のケイ素(Si)含有量を有する。いくつかの実施形態では、シラノール末端PDMSは、30重量%~45重量%、または35重量%~40重量%、35重量%~38重量%、35重量%~37重量%、36重量%~38重量%、または36.5重量%~37.5重量%の範囲のケイ素(Si)含有量を有する。
【0052】
コーティング組成物の粘度は、とりわけ、その成分の粘度およびそれらの相対的比率に依存するので、最終コーティング組成物中のその絶対濃度(例えば、重量%)に応じて、シラノール末端PDMSは、幅広い粘度を示し得る。いくつかの実施形態では、シラノール末端PDMSの粘度は、1,000ミリパスカル-秒(mPa・s)以下、750mPa・s以下、500mPa・s以下、200mPa・s以下、100mPa・s以下、50mPa・s以下、または35mPa・s以下である。いくつかの実施形態において、シラノール末端PDMSの粘度は、15mPa・s以上、35mPa・s以上、または45mPa・s以上、90mPa・s以上、120mPa・s以上、200mPa・s以上、または700mPa・s以上である。いくつかの実施形態において、シラノール末端PDMSの粘度は、15mPa・s~1,000mPa・s、15mPa・s~800mPa・s、20mPa・s~500mPa・s、または20mPa・s~200mPa・s、30mPa・s~150mPa・s、または30mPa・s~100mPa・sの範囲である。
【0053】
いくつかの実施形態では、シラノール末端PDMSは、Gelestから供給されるDMS-S12(16~32mPa・sの粘度を有する)、DMS-S14(35~45mPa・sの粘度を有する)、DMS-S15(45~85mPa・sの粘度を有する)、DMS-S21(90~120mPa・sの粘度を有する)、およびDMS-S27(700~800mPa・sの粘度を有する);SigmaAldrichからCAS番号70131-67-8で供給されるPDMS481939(15~35mPa・sの粘度を有する)、PDMS 481955(55~90mPa・sの粘度を有する)、およびPDMS 481963(約750mPa・sの粘度を有する);同様の粘度を有するエボニックのポリマーOHシリーズの化合物;Nanjingから供給されるSiSiB(登録商標)OF0025流体(粘度20~30mPa・sを有する)、SiSiB(登録商標)OF0156A流体(粘度60~70mPa・sを有する)、SiSiB(登録商標)OF0156B流体(粘度95~105mPa・sを有する)およびSiSiB(登録商標)PF1070-750(約750mPa・sの粘度を有する);および当技術分野で周知の市販または合成手順を使用して合成されるであろうすべての同等のシラノール末端PDMSからなる群から選択される少なくとも1つのPDMSである。
【0054】
いくつかの実施形態では、シラノール末端PDMSは、全組成物の重量の20重量%以上、30重量%以上、または40重量%以上の量でコーティング組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、シラノール末端PDMSは、全組成物の重量の80重量%以下、70重量%以下、または60重量%以下の量で存在する。いくつかの実施形態において、シラノール末端PDMSは、全組成物の重量の20重量%~80重量%、30重量%~70重量%、または40重量%~60重量%の範囲で存在する。
【0055】
いくつかの実施形態では、縮合硬化性コーティング組成物は、架橋剤および触媒のうちの少なくとも1つである硬化剤をさらに含むかまたは含み、硬化剤は、縮合硬化性組成物を硬化してコーティングを提供するように選択および適合される。
【0056】
いくつかの実施形態では、本教示による縮合硬化性コーティング組成物に適した架橋剤、言い換えれば、本明細書に開示されるPDMSと樹脂との化学反応(架橋)をすることができる2つ以上の官能基を含む架橋剤は、メチルシリケート(テトラメトキシシラン、CAS番号681-84-5、Si(OCH);エチルシリケート(テトラエトキシシラン、CAS番号78-10-4、Si(OC);ポリメチルシリケート;ポリエチルシリケート;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0057】
「ポリメチルシリケート」とは、式(CHO)Si-[O-Si(OCH-OCHを有する、メチルシリケートのオリゴマーを意味し、mは1~15の間の整数であり、好ましくはmは、1~10の間の整数である。「ポリエチルシリケート」とは、式(CO)Si-[O-Si(OC-OCを有する、エチルシリケートのオリゴマーを意味し、mは、3~20の間の整数であり、好ましくはmは、5~15の間の整数である。市販されている適切なそのような架橋剤としては、PSI-023およびPSI-026(Gelest)およびエチルシリケート48およびメチルシリケート51(Colcoat)が挙げられるが、市販されているか、または当技術分野で周知の合成手順を使用して合成される他の同等の化合物も適切だろう。
【0058】
いくつかの実施形態では、架橋剤は、シラノール末端PDMSの重量の約0.1重量%~約15重量%の量のテトラエトキシシランおよび/またはポリエチルシリケートから本質的になる。
【0059】
いくつかの実施形態において、本教示による縮合硬化性コーティング組成物は、硬化性ポリマー組成物の架橋を触媒するのに適した触媒、好ましくは縮合硬化性触媒をさらに含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、縮合硬化性コーティング組成物は、単一タイプの触媒を含む。いくつかの実施形態では、縮合硬化性コーティング組成物は、少なくとも2つの異なる触媒の組み合わせを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、本教示による縮合硬化性コーティング組成物に適した触媒は、スズ触媒、チタネート触媒、亜鉛触媒、鉄触媒、キレートチタン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0062】
いくつかの実施形態では、縮合硬化触媒は、スズ触媒である。いくつかのそのような実施形態において、縮合硬化スズ触媒は、ジブチルスズビス(アセチルアセトナート)(CAS番号22673-19-4)、ジオクチルスズジラウレート(CAS番号77-58-7)、オクタン酸第一スズ(CAS番号301-10-0)、ジオクチルスズビス(アセチルアセトナート)(CAS番号54068-28-9)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。このようなスズ触媒は、例えば、Sigma Aldrichから製品番号520586(CAS番号22673-19-4)、製品番号291234(CAS番号77-58-7)、製品番号S3252(CAS番号301-10-0)として;または、TIB ChemicalsからTK223ジオクチルスズビス(アセチルアセトナート)(CAS番号54068-28-9)として市販されている。いくつかの実施形態において、縮合硬化触媒は、例えば、Sigma Aldrichから製品番号205273として市販されているテトライソプロピルチタネート(CAS番号546-68-9)、例えば、Sigma Aldrichから製品番号244112として市販されているテトラブチルチタネート(CAS番号5593-70-4)、およびテトラオクチルチタネート(CAS番号3061-42-5)のようなテトラアルキルチタネートなどのアルキルチタネート触媒を含むチタネート、または、例えば、GerestからAKT855として市販されているジイソプロポキシド(ビス-2,4-ペンタンジオネート)(CAS番号17927-72-9)、および例えば、GerestからAKT853として市販されているチタンジ-n-ブトキシド(ビス-2,4-ペンタンジオネート)(CAS番号16902-59-3)などのキレートチタン触媒である。
【0063】
いくつかの実施形態において、縮合硬化触媒は、例えば、TIB ChemicalsからそれぞれTibKat(登録商標)620、TibKat(登録商標)616、TibKat(登録商標)623として市販されているオクタン酸亜鉛(CAS番号136-53-8)、ネオデカン酸亜鉛(CAS番号27253-29-8)、ビス(ペンタン-2,4ジオナト)亜鉛(CAS番号14024-63-6)およびそれらの組み合わせなどの亜鉛触媒である。縮合硬化触媒の特定の例が本明細書に提供されているが、市販されているか、または当技術分野で周知の合成手順を使用して合成される他の同等の化合物が適切であろう。
【0064】
いくつかのそのような実施形態では、縮合硬化性コーティング組成物は、シラノール末端PDMSの重量の約0.01重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2.5重量%、約0.1重量%~約1.6重量%、約0.5重量%~約1.8重量%、または約0.8重量%~約1.2重量%の量の触媒を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、前述のシラノール末端PDMSおよび任意の硬化剤に加えて、シリコーン樹脂をさらに含むか、または含む。いくつかの実施形態では、シリコーン樹脂は、少なくとも500、または少なくとも1,000、または少なくとも2000、または少なくとも20,000、または少なくとも200,000g/molの平均分子量(MW)を有する。いくつかの実施形態では、シリコーン樹脂は、300,000以下、または70,000以下、または7,000g/mol以下の平均分子量(MW)を有する。いくつかの実施形態において、シリコーン樹脂は、500~300,000、500~8,000、1,000~10,000、または2,000~7,000、または20,000~300,000、または200,000~300,000の範囲の平均分子量(MW)を有する。
【0066】
いくつかの実施形態において、シリコーン樹脂は、低度のR/Si置換を有し、ここで、Rは、シリコーン骨格に結合した有機基(例えば、アルキルまたはアリール基)を表し、Siは、樹脂分子中のケイ素原子の数を表し、そのためより高い架橋密度を達成することができる。ポリマーマトリックスのより高い架橋密度は、比較的低い架橋密度を有するポリマーマトリックスと比較して、マトリックスに対する増大した機械的抵抗を提供すると予想される。いくつかの実施形態において、シリコーン樹脂の置換度は、R/Siが2.0以下、1.8以下、1.6以下、1.4以下、1.2以下、または1.0以下であるようになっている。
【0067】
いくつかの実施形態において、シリコーン樹脂は、0.5重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、または3重量%以上のシラノール含有量を有する。いくつかの実施形態において、シリコーン樹脂は、10重量%以下、8重量%以下、または6重量%以下のシラノール含有量を有する。いくつかの実施形態において、シリコーン樹脂は、0.5重量%~10重量%、または2重量%~8重量%、2重量%~6重量%、2重量%~4重量%、0.5重量%~2.5重量%、または1.5重量%~3.5重量%の範囲のシラノール含有量を有する。
【0068】
いくつかの実施形態では、シリコーン樹脂は、10重量%以上、15重量%以上、16重量%以上、または17重量%以上のケイ素(Si)含有量を有する。いくつかの実施形態では、シリコーン樹脂は、45重量%以下、35重量%以下、25重量%以下、または20重量%以下のケイ素(Si)含有量を有する。いくつかの実施形態では、シリコーン樹脂は、10重量%~45重量%、または15重量%~30重量%、15重量%~25重量%、17重量%~25重量%、17重量%~20重量%、または18重量%~20重量%の範囲のケイ素(Si)含有量を有する。
【0069】
いくつかの実施形態において、シリコーン樹脂は、低いフェニル/メチル比を有する。樹脂分子中の低いフェニル/メチル比は、比較的高いフェニル/メチル比を有する樹脂分子を含むポリマーマトリックスと比べて、インクに見られる可能性のある有機溶媒に関して、マトリックスに対する増大した化学的耐性を提供すると予想される。いくつかの実施形態において、シリコーン樹脂のフェニル/メチル比は、2.8:1.0以下、2.4:1.0以下、2.0:1.0以下、1.6:1.0以下、1.2:1.0以下、0.8:1.0以下、0.6:1.0以下、0.4:1.0以下、または0.2:1.0以下である。
【0070】
最終コーティング組成物に望まれる粘度および最終コーティング組成物中のシリコーン樹脂の絶対濃度に応じて、樹脂は広範囲の粘度を示し得る。シリコーン樹脂は、通常、溶媒に溶解して、または液体担体に分散して提供され、以下の粘度値が、溶解/分散した樹脂に適用される。いくつかの実施形態において、シリコーン樹脂の粘度は、2000mPa・s以下、1,000mPa・s以下、100mPa・s以下、75mPa・s以下、または50mPa・s以下である。いくつかの実施形態において、シリコーン樹脂の粘度は、5mPa・s以上、10mPa・s以上、または20mPa・s以上である。いくつかの実施形態において、シラノール末端PDMSの粘度は、5mPa・s~2,000mPa・s、5mPa・s~1,000mPa・s、10mPa・s~50mPa・s、20mPa・s~200mPa・s、または200mPa・s~1,000mPa・sの範囲である。
【0071】
いくつかの実施形態において、シリコーン樹脂は、特に、Dowsil(商標)RSN-0431、Dowsil(商標)RSN-0804、およびDowsil(商標)RSN-0805(Dow Chemical Companyによって供給される);Bluesil Res6405およびBluesil Res 6407(Elkem Siliconesから供給される)を含む溶媒ベースの樹脂などのシラノール官能性シリコーン樹脂;および市販されているまたは当技術分野で周知の合成手順を使用して合成されるであろうすべての同等のシラノール官能性シリコーン樹脂からなる群より選択される。
【0072】
いくつかの実施形態において、シラノール官能性シリコーン樹脂は、組成物全体の10重量%以上、20重量%以上、または30重量%以上の量でコーティング組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、シリコーン樹脂は、組成物全体の60重量%以下、50重量%以下、または40重量%以下の量で存在する。いくつかの実施形態では、シリコーン樹脂は、組成物の総重量で、10重量%~60重量%、20重量%~50重量%、または30重量%~40重量%の範囲で存在する。シリコーン樹脂のこれらの量は、溶媒または液体担体がない場合の固体材料に基づいて計算される。
【0073】
シラノール末端PDMSおよびシラノール官能性シリコーン樹脂の量は、(固体材料に基づいて)互いに組み合わされたときに、合計が全組成物の100重量%を超えないような量である。いくつかの実施形態では、PDMSとシリコーン樹脂の固体材料の合計量は、全組成物の95重量%、90重量%、または85重量%を超えない。いくつかの実施形態では、PDMSとシリコーン樹脂の固体材料の合計量は、全組成物の少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%である。100重量%への補足は、例えば、硬化剤および/または補助剤の存在から生じ得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、シラノール末端PDMSおよびシラノール官能性シリコーン樹脂は、1:0.4以上、1:1以上、または1.25:1以上の重量対重量比でコーティング組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、PDMSおよびシリコーン樹脂は、1:3.5以下、1:2.5以下、または1:2以下の重量対重量比で存在する。いくつかの実施形態では、PDMSおよびシリコーン樹脂は、1:0.4~1:3.5、1:0.4~1:2.5、または1:0.4~1:1.25の範囲の重量対重量比で存在する。上記のシラノール末端PDMSで重量比を計算するためのシリコーン樹脂の量は、溶媒または液体担体がない場合の固体材料に基づいて計算される。
【0075】
いくつかの実施形態では、縮合硬化性コーティング組成物は、シラノール末端PDMSに加えて、シラノール官能性シリコーン樹脂、および任意の硬化剤、ポット寿命延長剤、防腐剤(例、殺菌剤、殺菌剤)、酸化防止剤、pH調節剤、レオロジー調節剤、乳化剤、消泡剤、脱気剤、レベリング剤、湿潤剤、分散剤、電荷調節剤、補強性充填剤などの、硬化性組成物の特性を強化する、および/または下にある表面へのその塗布または硬化を容易にする、および/またはそれから生じる硬化コーティングを改善する材料を含む群から選択される1つ以上の補助剤をさらに含むか、または含む。いくつかの実施形態では、縮合硬化性コーティング組成物は、硬化コーティングの存在および/またはその上の欠陥の検出を支援し得る着色剤をさらに含むか、または含む。好ましくは、そのような補助剤は、硬化コーティングの所望の特徴に寄与する程度まで、その使用中にコーティング中に実質的に留まるべきである。言い換えれば、そのような補助剤は、組成物の硬化層から移動または浸出しないように選択および適合される。そのような添加剤は、それらが使用され得る量を含めて当業者に知られているので、本明細書でさらに詳述しない。
【0076】
いくつかの実施形態において、全組成物中のシラノール部分の合計量は、既知および/または添加された溶媒または液体担体の非存在下での組成物の重量の0.5重量%以上、1.0重量%以上、2.0重量%以上、または3.0重量%以上である。いくつかの実施形態において、全組成物中のシラノール部分の合計量は、既知および/または添加された溶媒または液体担体の非存在下での組成物の重量の10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、または4重量%以下である。いくつかの実施形態において、全組成物中のシラノール部分の合計量は、既知および/または添加された溶媒または液体担体の非存在下での組成物の重量の0.5重量%~10重量%、1重量%~8重量%、2重量%~8重量%、2重量%~6重量%、または2.5重量%~4.5重量%の範囲にある。
【0077】
いくつかの実施形態では、前組成物中のケイ素(Si)原子の合計量は、既知および/または添加された溶媒または液体担体の非存在下での組成物の重量の10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、または25重量%以上である。いくつかの実施形態では、組成物全体中のケイ素(Si)原子の合計量は、既知および/または添加された溶媒または液体担体の非存在下での組成物の重量の40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、27重量%以下、または25重量%以下である。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコーティング組成物は、1つ以上の溶媒を含み得、その溶媒中ではシラノール末端PDMSおよびシラノール官能性シリコーン樹脂は、実質的に混和性ではない(例えば、化合物の1重量%未満が溶媒に溶解する)またはその中のそれぞれの濃度で完全に混和しない。したがって、そのような溶媒は液体担体と見なすこともでき、以下では2つの用語を同じ意味で使用することができる。溶媒は、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール;メチルアミルケトンまたはメチルエチルケトンなどのケトン;パラフィンなどの炭化水素溶媒;トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、n-メチルピロリドンなどの芳香族溶媒を含む有機溶媒から選択できる。理論に拘束されることを意図するものではないが、溶媒は、硬化前の分散ビヒクルとして有効であり、適切な粘度を達成するのを助け、所望の表面へのコーティング組成物の塗布を容易にすることができると考えられる。いくつかの実施形態では、溶媒は、コーティング組成物による表面の濡れを助けることができる。しかしながら、コーティング組成物が硬化した後、残留溶媒はないと予想することができる。
【0079】
いくつかの実施形態において、もし縮合硬化性コーティング組成物中にあれば、溶媒は、シラノール末端PDMS(比較的非極性)とシラノール官能性シリコーン樹脂(PDMSよりも比較的極性が高い)との混和性を引き起こすのに不十分な量で存在する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの溶媒は、全組成物の40重量%以下、30重量%以下、または20重量%以下の量でコーティング組成物中に存在する。コーティング組成物中に2つ以上の溶媒が存在するいくつかの実施形態では、すべての溶媒の量の合計は、全組成物の50重量%以下、40重量%以下、または30重量%以下である。
【0080】
前述のように、存在する場合でも、溶媒は、本コーティング組成物の主な特徴の1つ、すなわち、そのシラノール末端PDMSおよびシラノール官能性シリコーン樹脂成分が本質的に互いに非混和性であるという事実を変更しないほうがよい。これらの特定の成分が特定の絶対量および/または相対重量比で存在する場合、わずかな混和性を排除することはできないが、本明細書に開示されるコーティング組成物は、前記化合物に関して実質的に二相性である。
【0081】
エマルションは、2つ以上の相互に不溶性または難溶性の液体からなる分散系である。液体の1つは、通常過剰に存在し、連続相または外相と呼ばれ、その中に分散した液体は、分散相、不連続相、または内相と呼ばれる。連続相が水で構成され、分散相が鉱油などの有機液体で構成されている場合、水中油型(O/W)エマルションという用語が使用される。水が有機液体または非水性液体に細かく分散している場合、油中水型(W/O)エマルションが生成される。2つの非水性液体が互いに乳化する場合、油中油型(O/O)エマルションまたは分散液という用語が使用され、両方の相が本質的に非極性であるO/Oエマルションは比較的まれである。そのような定義における「油」という用語は、一般に、水と混和しない不揮発性液体化合物に関連している。したがって、本明細書で使用されるシラノール末端PDMSおよびシラノール官能性シリコーン樹脂は、油と見なすことができる。いくつかの実施形態において、本発明の縮合硬化性コーティング組成物は、O/Oエマルションであるか、またはそれの適切な均質化の際にO/Oエマルションを形成することができる成分を含む。特定の理論に拘束されることを望まないが、シラノール官能性シリコーン樹脂は連続相または外相を構成し、シラノール末端PDMSは不連続相または内相を構成すると考えられている。
【0082】
エマルションの調製に適した方法および機器は知られており、典型的には、非限定的な例として、撹拌機;ミキサー(例:プラネタリーミキサー);メディアミル、ロールミル、およびコロイドミルなどのミル;高せん断、高速および高圧ホモジナイザーなどのホモジナイザー;マイクロフルイダイザー;ディゾルバー;ソニケーター;および物理的せん断によって分散相を連続的にまたはバッチで粉砕することができる他の装置が含まれる。乳化手段に関係なく、前述のように、エマルションは、例えば、操作条件を変えて同じ装置を使用することによって、またはそれぞれが所望のステップ結果を達成するように操作される一連の異なる装置を使用することによって、複数のステップで調製することができる。説明のために、第1の乳化器具を使用して、例えば高速撹拌機を使用して、分散液滴がまだ比較的大きい予備エマルションを調製することができ、次に第2の乳化器具を使用して、例えば高せん断ホモジナイザーを使用して、それらの意図した範囲まで液滴のサイズをさらに小さくすることができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、不連続相は、少なくとも250ナノメートル(nm)、少なくとも500nm、または少なくとも750nmの平均直径を有する液滴として連続相に分散する。いくつかの実施形態では、コーティング組成物を形成するO/Oエマルションの分散液滴は、10μm以下、7.5μm以下、または5μm以下の平均直径を有する。液滴の平均直径は、任意の適切な方法、例えば、顕微鏡法および光学顕微鏡または極低温透過型電子顕微鏡(クライオTEM)によって捕捉された画像の分析によって測定することができる。そのような方法は当業者に知られており、さらに詳細にする必要はない。便利なことに、液滴の直径は、動的光散乱(DLS)技術を使用した日常的な実験によって決定することができ、サイズは流体力学的直径として表される。DLS方法論は、液滴の母集団のより統計的な分析を容易にし、流体力学的直径は、液滴のサイズ分布評価を可能とする、母集団の90%(D90)、母集団の50%(D50)、および母集団の10%(D10)で報告されることがよくある。このような分析は、例えば、調査中の母集団内の液滴の数(D)または液滴の体積(D)の観点から行うことができる。いくつかの実施形態では、液滴の平均直径は、DLSを使用するD50の測定によって推定される。
【0084】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物を形成するO/Oエマルションの液滴は、比較的狭い粒子サイズ分布を有する。いくつかの実施形態では、内相の液滴のサイズ分布は、(a)液滴の90%の流体力学的直径および液滴の10%の流体力学的直径との間の差と、(b)液滴の50%の流体力学的直径との単位のない比が、2.0以下、1.5以下、または1.0以下である場合、狭いと言われる。サンプリングされた母集団の液滴数に基づく測定を考慮すると、前の文は数学的に次のように表すことができる:(DN90-DN10)/DN50≦2.0など。
【0085】
DLSを使用してコーティング組成物エマルション内の液滴のサイズ分布を評価する場合、サンプリングされた母集団の液滴サイズの不均一性は、サンプルの多分散度指数(PDI)によって評価できる。微粒子(例えば液滴)の場合、そのサイズのPDIは、0~1の範囲であり、国際規格ISO 22412:2017およびASTME2490-09に記載されているように計算できる。一部のDLS機器は、母集団の特定の割合の液滴の流体力学的直径に加えて、サンプルのPDIを提供する場合がある。 PDIが0.7以下、特にPDIが0.4以下のエマルションは、PDIが0.7~1.0のエマルションよりも安定している(および多分散性が低い)と考えられる。いくつかの実施形態において、本教示によるコーティングエマルションは、0.2以下のPDIを有する比較的中程度の多分散、または0.1以下、0.09以下、0.08以下、または0.07以下のPDIを有する比較的適度な単分散である。
【0086】
O/Oエマルションを介した(またはその硬化から生じるコーティングを介した)光透過が望まれる場合、散乱を最小限に抑えるために、連続相の屈折率を液滴の屈折率に実質的に一致させる(例えば、±0.3以内)ことが推奨され得る。いくつかの実施形態では、光透過が問題ではない場合、連続相と分散相は異なる屈折率を有し、その結果、コーティング組成物を形成するO/Oエマルションは濁った外観を有する。組成物の濁度は、通常、肉眼で見える/検出可能であるが、標準的な手順に従って濁度計を使用して定量的に測定することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、縮合硬化性コーティング組成物はキットとして提供され、シラノール末端PDMSはキットの第1の部分にあり、シラノール官能性シリコーン樹脂は第2の部分にあり、第1の部分および第2の部分は互いに混和していない。キットの前述の第1の部分および第2の部分のそれぞれを含む区画は、好ましくは、湿気によって誘発される硬化を低減または防止するためにしっかりと密封されている。いくつかの実施形態において、架橋剤は、シラノール末端PDMSを含む部分内に存在し得る。いくつかの実施形態では、キットは、他の2つの部分の構成要素に適した触媒を含む、第3の部分をさらに含み得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、保護コーティング(硬化後)は、比較的硬い外面(例えば、十分な耐摩耗性を有する)を提供する。保護コーティングは、好ましくは、耐久性のある動作をするのに十分に硬い(例えば、その剥離を引き起こす可能性のある機械的応力に抵抗する)。しかし、それは過度に硬い必要はなく、特にコーティングがその後に曲げられる表面に塗布される場合、コーティングが硬すぎたり柔軟性がなくなったりする可能性がある。
【0089】
いくつかの実施形態では、保護コーティング(硬化後)は、比較的高い光沢を有し、光沢計で20°の角度で測定した場合、70~100光沢単位(GU)、または80~100GU、または85~95GUの光沢値を有する。金属表面などの光沢のある表面に塗布すると、より高い光沢値が報告され得る。例えば、ステンレス鋼の表面は、約250GUの光沢を示し得、コーティングは、それに応じて増加した値を有する比較的高い光沢を有する。
【0090】
いくつかの実施形態では、保護コーティング(硬化後)は、1μm以下、800nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、または300nm以下の平均表面粗さSaを有する。いくつかの実施形態では、保護コーティングの平均表面粗さSaは、50nm以上、100nm以上、または200nm以上である。いくつかの実施形態では、保護コーティングの平均表面粗さSaは、50nm~800nm、50nm~600nm、50nm~500nm、100nm~400nm、200nm~400nm、または250nm~350nmである。このような測定は、レーザー走査型共焦点顕微鏡または任意の標準的な技術を使用して行うことができる。有利には、コーティングの粗さは、コーティングされる表面の粗さを、支持体の粗さの最大の10倍または500nm以下のデルタ粗さによって、好ましくは2つの値のうちの最小のものによって超えない。説明のために、平均表面粗さSaが約300nmであるコーティングされていないステンレス鋼箔の場合、コーティングの表面は、平均表面粗さSaが3.3μm(11×300nm)を超えず、好ましくは約800nm(300nm+500nm)以下であるべきである。
【0091】
図6は、本発明の実施形態による、本明細書に記載の様々な方法のフローチャートを示す。第1のステップS01において、例えば、本明細書でさらに詳述されるように調製されることによって、縮合硬化性コーティング組成物が提供される。任意の第2のステップS02において、コーティングされる表面を、洗浄して、汚染物質(例えば、グリース、ほこりなど)を実質的に除去し得る。コーティングされる表面が十分にきれいに供給されている場合、このステップを実行する必要はない。ステップS02は、ステップS01の前に(例えば、コーティング組成物を使用する準備ができている場合)、またはステップS01と並行して(例えば、コーティング組成物の調製を含む場合)実行することができる。必要に応じて、ステップS03の前にステップS02が実行される。第3のステップS03において、縮合硬化性コーティング組成物は、均一な層(例えば、均一な厚さを有し、不連続性、ボイド、パターン、隆起、オレンジピール効果などの表面欠陥がない)を形成するようにきれいな表面に塗布される。コーティングステップS03は、縮合硬化性コーティング組成物のポット寿命の間(それが機能しうる間)に実行される。通常、コーティング組成物は、塗布される前に均質化される。コーティング組成物の塗布は、本明細書でさらに詳述されるものを含む、任意の適切なコーティング方法によることができる。次に、表面上に形成された縮合硬化性コーティング組成物の層は、第4のステップS04で硬化される。硬化は、コーティング組成物およびその下にある表面に適した任意の条件下で実施することができる。例えば、熱を加えることによって硬化が行われる場合、硬化は複数の温度で行われ得、それを超えると不可逆的に劣化し得る材料の耐熱温度を超えてはならない。温度は、本明細書でさらに詳述されるものを含めて、適切であると見なされ得るように、いくつかのステップで連続的に上昇され得る。硬化ステップは、硬化性コーティング組成物が完全に硬化するまで実行され、その時点で、表面および保護コーティングが室温まで冷却される。コーティングされた表面がその表面がコーティングされる物品と一体ではない限り、コーティングされた表面は、任意選択の第5のステップS05において、その希望の物品に(例えば、取り付けられ、好ましくは剥離可能な方法で)取り付けられ得る。例えば、上記の方法は、交換可能なジャケットをコーティングするために使用でき、その後、印刷システムの一部(例えば、圧胴またはプレート、または印刷または印刷された基材と接触する可能性のある他の物品)に固定される。コーティングと硬化のステップを除いて、すべてのステップが必ずしも同じ構成要素によって、および/または同じ施設で実行される必要はない。例えば、別個の物品に取り付け可能な表面のコーティングは、第1の施設の第1の構成要素によって行うことができ、一方、コーティングおよび硬化された表面の取り付けは、第2の施設の第2の構成要素によって行うことができる。
【0092】
以下の実施例では、いくつかのコーティング組成物およびその硬化バージョンでコーティングされた表面を説明するものとする。
【実施例
【0093】
・例1:コーティング用組成物
この例では、適切な場合、縮合硬化性架橋剤および触媒の存在下で、異なる比率のシラノール末端PDMSおよびシリコーン樹脂を含む一連の組成物を調製した。DMS-S14(CAS番号70131-67-8、Gelestから供給)は、適切なシラノール末端PDMSを表し、Dowsil(商標)RSN 0804(Dow Chemical Companyから供給)は、シリコーン樹脂を例示した。エチルシリケート48(Colcoatから供給されるCAS番号68412-37-3)として市販されているポリエチルシリケート、およびTib Kat(登録商標)223(Tibから供給されるCAS番号54068-28-9)として市販されているジオクチルスズジネオデカノエートは、それぞれ架橋剤および触媒として機能した。
【0094】
表1に従って、7つの組成物を調製した。DC804は、Dowsil(商標)RSN 0804を表し、ET48は、エチルシリケート48を表し、TK223は、Tib Kat(登録商標)223を表す。表で報告された量は、「供給された」材料のグラム(g)を表し、希釈された形で供給された場合、材料の実際の量を超える可能性がある。例えば、DC804は、トルエン中の60重量%の固体樹脂として供給されるので、100gのDC804は、実際には60gのシリコーン樹脂に対応する。他のすべての材料は希釈せずに供給され、少量の賦形剤および/または不純物の存在を除いて、組成物に添加された量が100重量%であると見なされる。
【0095】
【表1】
【0096】
表からわかるように、組成物番号1および番号7は、シラノール末端PDMSおよびシリコーン樹脂のいずれか1つを含む参照であり、他のすべての組成物(番号2~6)は、さまざまな比率のその2つのブレンドである。
【0097】
組成物は以下のように調製した。第1のステップでは、DMS-S14とDC804を表1に示すそれぞれの量で互いに添加した。この第1のブレンドを室温(RT、約23℃)で30秒間、自転公転ミキサーで2,000rpmで混合した。そのミキサーは、Thinky CorporationのThinky Mixer ARE-250である。次に、触媒(TK223)を表に示した量に従って第1のブレンドに添加して、第2のブレンドを形成し、これもまた、前述のように、2000rpmで30秒間混合した。最後に、架橋剤(ET48)を添加し、その最終ブレンドを同じ条件下で混合して、コーティング組成物として試験する組成物を得た。
【0098】
シラノール末端PDMSとシリコーン樹脂の様々な比率を含む組成物番号2~6は、様々な程度の「乳白色」の外観を示し、単一の均質相におけるこれら2つの材料の混和性の欠如を裏付けている。その組成物は、一般に硬化性であり、硬化性ポリマーマトリックスの当業者によって容易に理解され得るように、それらのさらなる処理は、それらの作業性(例えば、粘性が高すぎない)を可能にする時間枠の間に行われた。
【0099】
・例2:コーティングおよび硬化
この例では、例1に従って調製した一連の組成物を試験表面に塗布した。最初の実行では、コーティングされる表面は、3/4硬度のステンレス鋼301(ビッカース硬度数が370-390HB(すなわち、ロックウェルC硬度が約38-41 HRC)のオーステナイト鋼、厚さ0.05mm(50μm)、幅1050mm、Zhanzhi Groupからコイルとして供給される)の箔であった。その箔(16重量%を超えるクロムを含み、簡単にするためにステンレス鋼と呼ぶ)をヘキサン(テクニカルグレード)で洗浄し、柔らかく非研磨性のセルロースファイバーワイパーで拭き取り、次いで、イソプロピルアルコールでも拭き取った。これらの溶媒は、コーティングされる表面の有機デポーを排除することが期待されていた。洗浄した箔を、通常、ほこりの堆積を減らすために、洗浄後(溶剤が完全に蒸発した後)10分以内に使用した。
【0100】
例1の組成物を、例えば、100×100mmの箔の一端に約5gの組成物を堆積させ、きれいなステンレス鋼箔の断片に塗布し、次いで、RK Print Coat InstrumentsのコントロールコーターK202を使用して、ワイヤーロッドで箔の表面を横切って組成物を引くことによって、25μmの湿潤厚さコーティングを提供した。組成物を、最後の混合ステップから60分以内にコーティングしたが、コーティングされる表面に塗布される前に、それらをボルテックス(Scientific InductyのVortex2)によって数秒間簡単に混合した。
【0101】
コーティングした箔を室温で1時間硬化させ、その時点でコーティングは十分に安定しており、箔を強制対流オーブン(JSR-強制対流オーブンのJSOFシリーズ)に移し、そこで温度を100℃に上げ、さらに1時間硬化させ、次に温度をさらに150℃に上げてさらに1時間硬化させた。次に、ホイルとその部分的に熱硬化したコーティングを、新しい予熱した強制対流オーブン(MRCのCarbolite RF60-FC)に移し、200℃で2時間インキュベートした。すべてのステップは、30%を超える相対湿度で実行した。この一連の硬化段階後、得られた保護コーティングは「完全に硬化した」と見なした。
【0102】
「完全に硬化した」とは、コーティングを形成するポリマーマトリックスが時間の経過とともに変化しなくなったことを意味し、言い換えれば、それ以上の架橋が起こらないことを示唆している。例えば、とりわけシラノール基の縮合から生じるポリマーマトリックスは、それがコーティング組成物中に形成できるシロキサン結合の数、および適用可能な硬化条件下で、または逆に結合せずに残るシラノール基の数の場合、時間の経過とともに実質的に変化しない場合、完全に硬化したであろう。硬化したポリマー中のシロキサン結合および/またはシラノール基の数は、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法などの日常的な分析方法によって評価できる。硬化性材料(例えば、縮合硬化性シリコーン)の当業者によって容易に理解されるように、「完全硬化」は、限定として解釈される必要のない、前に例示された硬化段階の完了前に到達し得る。
【0103】
硬化したコーティングの厚さは、光学的厚さ測定ゲージ(イギリスのElcometer製のElcometer(登録商標)415)を使用して測定され、通常は10μm未満であることがわかった。それらの面積粗さSaを、共焦点顕微鏡によって測定し、それらが塗布および硬化されたステンレス鋼箔のベースライン粗さと比較した。ステンレス鋼支持体は平均して約225nmに等しいSaの粗さを示したが、本教示の硬化コーティングはより高い粗さを示し、硬化した組成物番号4のSa粗さは、例えば、その塗布および硬化の方法の下で約539nmであった。コーティングされた表面の粗さは、コーティングされていない表面の粗さよりも約300nm高いが、硬化したコーティングの絶対粗さは、依然として比較的滑らかな表面(例えば、Sa≦1μm)を示していることに留意されたい。
【0104】
・例3:硬化コーティングの評価
この例では、例2に従って調製した硬化したコーティングを、3つの主な特性について評価した:a)コーティングされる表面(例えば、ステンレス鋼基材)に十分に付着するそれらの能力;b)その上に形成される可能性のあるデポ(例えばインク)を十分に放出する能力;およびc)それらの耐摩耗能力(例えば、印刷基材との繰り返しの接触から生じる可能性がある)。
【0105】
下にある表面への接着は、クロスハッチ接着テスター(イギリスのElcometer、Elcometer(登録商標)107)を使用して試験した。簡潔に言えば、硬化したコーティングの実質的に全体厚さ(すなわち約10μm)を貫通することを可能にする寸法(長さ18mmおよび深さ1mm)を有する10枚のブレードを有するカッターが、硬化したコーティングの表面を所定の間隔(約1.5mmのピッチを有する)で一連の平行カットを行った。次に、サンプルを90°回転させ、同じ処理を行った結果、約1.5mmのエッジを有する81個の正方形を含む垂直線の格子を形成した。次に、カットされた正方形のネットワークを、緩く取り付けられた正方形を切り離すために、激しくブラッシングした。圧縮空気ジェットによって破片を除去し、得られたパターンを(任意で拡大鏡下で)格子の微細な正方形の剥離について調査した。結果は、以下の基準に従って、0(最高の接着)と5(最低の接着)の間のISO基準に従って等級分けした。
0:カットのエッジは完全に滑らかで、格子の正方形はどれも切り離されていなかった。
1:格子の総面積の5%未満で正方形のわずかな剥離が観察された。
2:剥離した面積が、格子の総面積の5%~15%であった。
3:剥離した面積が、格子の総面積の15%~35%であった。
4:剥離した面積が、格子の総面積の35%~65%であった。
5:剥離した面積が、格子の総面積の65%を超えていた。
【0106】
硬化したコーティングの剥離性は、コーティングの表面に以前に貼り付けられた粘着テープ(Elcometer(登録商標)99)を除去するために必要な剥離力(ニュートン単位)を測定することによって試験した。Nexygenソフトウェアを使用したLlyod機器により、20ニュートンセルを使用して張力計で測定を行った。粘着テープをコーティング表面から400mm/分の速度で剥がし、テープがコーティングから完全に分離する力を記録した。粘着テープを剥がすのに比較的低い力を必要とするコーティングは、同じことを達成するために比較的高い剥離力を必要とするコーティングよりも高い剥離性を有すると考えられる。
【0107】
硬化したコーティングが摩耗に耐える能力は、コーティングを摩擦試験にかける前後のコーティングの光沢を測定することによって評価した。BYKの光沢計Haze Glossを60oで使用して光沢を測定し、サンプルをプレートホルダーに取り付け、アルミニウムブロックで支えられた紙(レーザー印刷用紙)で覆い、Dongguan Zhongli InstrumentTechnologyのPrinting Ink Rub TesterZL-2301を使用してコーティングの上を紙で500回前後に擦った。光沢の損失を、最初の光沢と摩擦試験後に測定した光沢との差のパーセンテージとして計算した。光沢の損失が比較的少ない(例えば、%Δ光沢が20%以下、15%以下、10%以下、または5%以下)場合は、耐摩耗性が比較的高いことを示す。
【0108】
この例で評価した各硬化コーティングについて、試験を少なくとも3回繰り返し、報告された結果はこれらの繰り返しの数学的平均を表している。結果は表2に報告し、便宜上、試験したコーティングの調製に使用した組成物中のシラノール末端PDMSおよびシリコーン樹脂のそれぞれの量(グラム単位)も含まれている。NAは、結果が得られなかったことを意味する。
【0109】
【表2】
【0110】
上記の表からわかるように、参照組成物は、試験したシリーズの中で最も極端な挙動を示した。すなわち、シリコーン樹脂のみからなるコーティングは、ステンレス鋼表面への非常に良好な接着(すなわち、格子の正方形のいずれも剥離していない)、良好な耐摩耗性(すなわち、低い%Δ光沢)を提供したが、粘着テープを剥がすには、シリーズの中で最も高い剥離力が必要であった(つまり、剥離性が悪い)。もう一方の端では、本質的にシラノール末端PDMSからなり、その硬化剤を含むコーティングは、粘着テープを除去するために必要な剥離力は最小(つまり、良好な剥離性)であったが、ステンレス鋼表面への非常に劣った接着力(格子の総面積の65%超えが表面から剥離した)と、比較的低い耐摩耗性(%Δ光沢が約25%)を提供した。
【0111】
コーティング組成物番号4は、このシリーズで最もバランスの取れた結果を提供した。前述のように、これらの材料は互いに適合性がなく、コーティング組成物の「乳白色」(濁度)は、それでコーティングさえ形成できないことを示唆したので、この結果は驚くべきものである。DC804はトルエン中の60重量%の固体樹脂として供給されるのに対し、DMS-S14は本質的に100重量%のシラノール末端PDMSとして供給されるため、各市販製品の同じ重量を含むコーティングは、実際には、それぞれの分子の重量で、1のシラノール末端PDMS対0.6のシリコーン樹脂の比率に対応する。この特定のコーティングでは、架橋剤(表1のET48)は、シラノール末端PDMSの1:10の重量比で存在し、一方、触媒(表1のTK223)は、同じシラノール末端PDMSの1:50の重量比で存在した。
【0112】
別の接着試験では、微細な正方形の格子を激しくブラッシングする代わりに、接着テープ(ASTM D 3359接着テープ)を使用して、表面へのコーティングの付着を評価した。格子を前述のように準備し、小さな破片を取り除くために軽くブラシをかけた。テープの内側の回転から約8cmの粘着テープを切り取り、最大限の粘着力を確保し、格子の中心に配置した。テープをしっかりとこすり(例えば、柔らかい布を使用して)、コーティングとの密接な接触を確実にした。貼り付けてから5分以内に、テープを表面に対して60°の角度で引き離し、約1秒かかる1回の滑らかな動作でテープを取り外した。結果は以前に詳述したように等級付けし、組成物番号1および4から調製したコーティングも等級0を達成した(表面から剥離した正方形がない)。
【0113】
ステンレス鋼は、コーティングに関する限り、特に難しい表面であることに注意することが重要である。ステンレス鋼は、鉄、クロムおよびニッケルの含有率が最も高い鋼(鉄)合金である。クロムは、通常、合金の少なくとも10重量%を提供し、耐食性と低接着性ないし無接着性に寄与する。表面コーティングの退化は利点と見なすことができ、ステンレス鋼を家庭での使用に最適な材料(調理器具など)にするが、一部の産業環境ではむき出しの表面が問題になる場合がある。印刷システムの特定の場合の産業用途の説明のために、ステンレス鋼の表面は、印刷システムの動作条件下で腐食しやすい表面に対し有利であると予想される。しかし、そのような材料は部品の腐食を遅らせたり、減らしたり、防いだりするかもしれないが、それと接触する特定の化学物質とも相互作用する可能性がある。相互作用は、有害であるために共有結合である必要はなく、特定の理論に拘束されることを望まないが、ステンレス鋼は非共有結合によってインク残留物を保持する可能性があると考えられている。そのような場合、そのような望ましくない相互作用を防止または低減するためにステンレス鋼をコーティングすることが強く推奨される。しかしながら、当業者が理解されるように、ステンレス鋼のコーティングは、要求の厳しいプロセスであり得る。したがって、この例では16重量%を超えるクロムを含む、この比較的問題のある表面に付着する本教示による組成物の能力は、組成物が要求のより少ない材料に適している可能性があることを示唆している。
【0114】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物を使用して、鉄金属、非鉄金属、およびそれらの合金;セラミック;またはプラスチック(接着力を高めるためにコロナまたはプラズマで処理)をコーティングすることができる。
【0115】
さらに、コーティングが塗布された今回の基材は、比較的柔軟であったことに留意されたい。それでも、ステンレス鋼の折り目や巻き付けは、比較的「折りたたまれている」領域で最高の性能を発揮する硬化コーティングの連続性/均一性に影響を与えなかった。折り線の近くに亀裂と裂け目は、視覚的に検出されなかった。さらに、この現象が発生する可能性が高まると予想される箔の端では、硬化コーティングの裂け目は、観察されなかった。したがって、本教示によるコーティング組成物は、可動または不動の物品の一部である、柔軟性が低い/より剛性の高い表面に同等の成功を収めて塗布されることが期待される。ステンレス鋼は比較的非多孔質の材料であるが、より多孔質の材料をコーティングするための本組成物の適合性が考えられる。
【0116】
・例4:接触角の特性評価
例3の結果は、シラノール末端PDMSとシリコーン樹脂との比が、それから生じるコーティングの性能に比較的高い影響を与えることを示唆したので、この例の目的は、そのような比が硬化コーティングの親水性または疎水性に影響し得るかを調査することであった。この表面特性は、接触角測定によって評価した。
【0117】
簡単に説明すると、2μlの蒸留水の液滴を試験対象の表面に堆積し、液滴と表面の間の前進接触角を、接触角アナライザーKruss(商標)「EasyDrop」を使用して室温で測定した。各表面に対して少なくとも3回の繰り返しが実行され、表3に報告した結果は、これらの繰り返し測定の平均、標準偏差(SD)および各コーティングによって与えられた相対偏差(表面の平均値に対するSDのパーセンテージを意味する)に対応する。参考のために2つの表面を調査に含めた。1つ目は、さまざまなコーティング組成物を塗布したコーティングされていないステンレス鋼箔の表面であり、2つ目は、単相二成分付加硬化シリコーンポリマー(MomentiveのLSR 2530、製造元の指示に従って硬化)であった。試験する表面を調製するのに役立った組成物中のシラノール末端PDMSおよびシリコーン樹脂のそれぞれの重量(グラム単位)を再度示す。
【0118】
【表3】
【0119】
接触角が90°以下の表面は、親水性(水滴がその上に広がる傾向がある)と見なされ、接触角が90°以上の表面は、疎水性(水滴がその上でビーズ状になる傾向がある)と見なされる。上記の表からわかるように、全てのコーティングはステンレス鋼支持体の親水性を低下させたが、本質的にシラノール官能性シリコーン樹脂(組成物番号1)からなるコーティングは、境界線の結果(90.9°±0.71°)達成したのみであった。コーティング組成物中のシラノール末端PDMSの相対量を増やすと、表面の特性がさらに疎水性にシフトした。保護コーティングの相対的な疎水性は、そのようなコーティングの表面への望ましくない付着のリスクを低減することが期待される。
【0120】
接触角の測定は、通常、表面の疎水性/親水性を評価することを目的としているが、そのような測定はまた、表面の均一性を示し得ることに留意されたい。前述のように、接触角の測定は通常、表面上の少なくとも3つの異なるポイントで実行され、提供される結果はこれらの測定値の平均である。測定間のばらつき(例えば、標準偏差または標準誤差)が比較的小さい場合、例えば、平均値の±20%以内の場合、結果は通常、代表的なものと見なされる。サンプリングされるポイントの数を少なくとも5ポイント、少なくとも10ポイント、または少なくとも15ポイント、または少なくとも20ポイントに増やすことにより、ポイント間の変動自体が有益になる可能性がある。比較的低い変動(すなわち、測定値の比較的高い再現性)は、そのような結果を提供する表面がより均一である(例えば、滑らかで、平らで、実質的に欠陥がない-表面に欠陥(例えば、気泡、ピンホール、オレンジピールなどの表面の欠陥によって引き起こされた突起またはクレーター、および/または汚染物質によって引き起こされた欠陥)が実質的にない)ことを示し得る。平均値の±20%以内の一連の測定値の標準偏差(SD)または標準誤差(SE)は、平均結果の再現性に関して満足のいくものと見なされるが、より狭い範囲内(例えば、±10%以内または±5%以内)にあるSDおよび/またはSEは、表面の比較的高い均一性を示唆している。
【0121】
統計分析は行わなかったが、表3の結果は、本教示に従って調製した保護コーティングが2つの参照表面よりも比較的均一であることを示唆している。組成物番号1、4、および7は、それぞれの平均から約1.2%ずれた平均SD値を示したが、コーティングされていない表面または別のコーティングでコーティングされた表面は、平均で2.6%の2倍高い結果を示した。本発明によるコーティングのこの比較的高い均一性は、油相の別個の区画に存在する材料を混合することによって達成されたという事実(組成物番号4を参照)を考慮して言及する価値があり、したがって、もしあれば、不均一な結果をもたらすと予想される。
【0122】
・例5:PDMSのMWの影響
この例では、平均分子量が異なるシラノール末端PDMSを試験した。
【0123】
そのように試験した材料(すべてGelestから購入)を表4に示す。ここでは、参照を容易にするために、シラノール末端PDMSの製造元から受け取った情報も報告している。
【0124】
【表4】
【0125】
試験する各材料は、組成物番号4に関して例1に記載したように、同じ重量でDowsil(商標)RSN 0804と混合した。得られた組成物は、この例では異なるPDMSの名前で呼ばれ、きれいなステンレス鋼箔をコーティングするために使用され、例2で説明したように硬化した。硬化コーティングの特性を例3に従って評価し、結果を表5に報告する。
【0126】
【表5】
【0127】
上記の表からわかるように、2つの反対の傾向が見られる。一方では、シラノール末端PDMSの分子量を増加させると、コーティングの表面から粘着テープを剥がすのに必要な力が減少し、コーティングの外面の剥離性が増大することを示す。他方では、シラノール末端PDMSのMwを増加させると、接着不良の発生が増大し、下にある支持体へのコーティングの内面の接着が減少することを示す。さらに、シラノール末端PDMSのMwを増やすと、摩擦後のコーティングの光沢の損失も増えるため、硬化コーティングの耐摩耗性が低下する。
【0128】
この調査は、シラノール末端PDMSと特定のシリコーン樹脂の重量間の単一の比率で行ったため、この特定の比率で、および/またはこの特定のシリコーン樹脂で所望の特性を達成するには不十分または逆に過剰であるとみなされるMWを有するPDMS材料が、別の比率および/または別のシリコーン樹脂と組み合わせたときにMWの適切な範囲内にあることを排除することはできない。
【0129】
同様に、この結果は、ステンレス鋼支持体へのコーティングの付着に関するものであり、この特定の支持体への適切な付着を達成するのに不十分または逆に過剰であるとみなされるMWを有するPDMS材料が、別の材料で作られた支持体について、MWの範囲適切な範囲内にあることを排除することはできない。これに関連して、ステンレス鋼は比較的親水性であるが、本教示によるコーティング組成物は比較的疎水性であることを想起するべきである。前述のように、ステンレス鋼は、特にこの例のように、比較的大量のクロムを含む場合、コーティングが比較的難しい表面を表す。
【0130】
それでも、この調査の結果は、本教示によるコーティング組成物の調製に関与する材料の分子量が、そのような組成物を設計する際に考慮されるべきであることを示唆している。
【0131】
・例6:シリコーン樹脂の影響
この例では、シラノール官能性シリコーン樹脂のタイプが、組成物およびそれから生じる保護コーティングに及ぼす影響を試験した。
【0132】
1つ目の段階では、下にある表面への接着について、様々な樹脂を単独で(硬化剤の存在下で)試験した。組成物は、組成物番号1に関して例1に記載したように調製し、例2に記載したようにステンレス鋼箔上にコーティングおよび硬化し、例3に記載したように試験した。
【0133】
2つ目の段階では、DMS-S14(硬化剤の存在下)を使用して、さまざまな樹脂を1:1の重量比で試験した。組成物は、組成物番号4に関して例1に記載したように調製し、例2に記載したようにステンレス鋼箔上にコーティングおよび硬化し、例3に記載したように試験した。
【0134】
そのように試験した材料(全てThe Dow Chemical Company製)を表6に示す。ここでは、参照を容易にするために、シリコーン樹脂の製造元から受け取った情報も、調査の様々な段階の結果と共に報告している。簡単にするために、この例では、異なるシリコーン樹脂の名前で結果を参照する。
【0135】
【表6】
【0136】
上記の表からわかるように、シラノール末端PDMSを欠くコーティングに使用した場合、すべての樹脂は下にあるステンレス鋼箔に接着したが、「樹脂のみ」のコーティングの表面から粘着テープを剥がすのに必要な比較的高い力によって示されるように、すべてが低い剥離性を示した。すべてが良好な耐摩耗性を提供し、10%未満の%Δ光沢を示す。
【0137】
コーティング組成物中の樹脂へのシラノール末端PDMSの添加は、何よりもまず、剥離性に関してこれらの結果を修正した。上記の表からわかるように、樹脂とPDMSのブレンドは、コーティングの表面から粘着テープを剥がすのに必要な力を劇的に減らした(平均で7.2N超えから0.07N未満)。しかし、そのような添加は、使用されるシリコーン樹脂に応じて、接着のために費用がかかる。
【0138】
この調査は、単一のタイプの支持体上で、特定のシラノール末端PDMSと様々なシリコーン樹脂の重量間の単一の比率で行ったため、この特定の比率および/またはこの特定のPDMSおよび/またはこの特定の支持体(すなわち、比較的親水性のステンレス鋼)で不適切と見なされる樹脂が、別の比率で、および/または異なるシリコーン樹脂と組み合わせた場合および/または別の表面に塗布した場合に適切である可能性があることを排除することはできない。
【0139】
同様に、この結果は、ステンレス鋼支持体へのコーティングの付着に関するものであり、この特定の支持体への適切な取り付けを達成するのに不十分または逆に過剰であるとみなされるMWを有するPDMS材料は、別の材料で作られた支持体のMWの適切な範囲内にあるだろう(特に比較的大量のクロムを含む場合、コーティングに関する限り、ステンレス鋼は特に要求が厳しい)。これに関連して、ステンレス鋼は比較的親水性であるが、本教示によるコーティング組成物は比較的疎水性であることを想起されるべきである。
【0140】
それでも、この調査の結果は、本教示によるコーティング組成物の調製に関与するシリコーン樹脂のフェニル/メチル比が、そのような組成物を設計する際に考慮されるべきであることを示唆している。
【0141】
・例7:PDMSの反応性の影響
前の例のコーティング組成物において、PDMSは、存在する場合、反応性材料であった(とりわけ、そのシラノール末端を介した縮合によって硬化することができる)。この例の目的は、PDMSとシリコーン樹脂のブレンドから生じるコーティングに対するこの反応性の役割を評価することであった。
【0142】
PDMSの平均分子量がコーティングの性能に影響を与える可能性があることを示唆する例5の結果を考慮して、2つの非反応性PDMS化合物を互いに混合して、反応性シラノール末端PDMSのMWを「模倣」した。報告されたMWが700~1,500のDMS-S14、同様の平均MWを生成するために1:1の重量比で混合された非反応性PDMSは、DMS-T07(MWが950)およびDMS-T11(MWが1,250)だった。すべてのPDMS化合物(反応性および非反応性)は、Gerestから購入した。反応性PDMSおよび非反応性ブレンドは、それぞれ1:1の重量比でDowsil(商標)RSN 0804と混合し、例1の組成物番号4に従って調製した。さらに、対照組成物は、組成物番号4で使用したような硬化剤なしで調製した。4つのコーティング組成物をステンレス鋼の箔に塗布し、例2に記載のように硬化させ、硬化コーティングの性能を、測定されなかった耐摩耗性を除いて、例3に記載のように評価した。結果を表7に報告し、正の符号「+」は、コーティング組成物中のあるタイプの材料の存在を示し、負の符号「-」はそれがないことを示している。
【0143】
【表7】
【0144】
上記の表からわかるように、PDMSの反応性(組成物IおよびIIを参照)は、下にある支持体へのコーティングの高い接着性およびその外面の高い剥離性(低い剥離力)に寄与する。非反応性PDMSは、接着性と剥離性が低いコーティングを生成した。これに関連して、非反応性PDMSを含む「硬化」コーティングはかなり油性に見えたため、イソプロピルアルコールでコーティングを洗浄した後、粘着テープを剥離する能力を再度確認した。洗浄した表面は、さらに減少した剥離性を示した。組成物IIIから調製した洗浄したコーティングは、1.300Nではなく2.970Nの剥離力を必要とし、組成物IVから調製した洗浄コーティングは、0.770Nではなく3.030Nの剥離力を必要とする。表面をやや穏やかに洗浄すると、下にある支持体への洗浄した表面の接着も緩んだ。
【0145】
驚くべきことに、前述の分析は、反応性PDMSが本教示によるコーティング組成物に好ましいはずであることを示しているが、PDMSの反応性によって可能になる硬化をさらに促進すると予想される硬化剤の存在は必須ではない。組成物IとIIとの比較から分かるように、組成物IIにおける硬化剤の欠如は、この調査の結果を実質的に変更しない。
【0146】
・例8:希釈剤の影響/相数
前述のように、前の例の結果は、少なくとも本教示によるコーティング組成物が、互いに反応することができる成分が油相の別個の区画に分離される二相組成物をもたらす限りにおいて、驚くべきものである。この分離は、混合物が効率的に反応して均一に硬化する能力を低下させると予想されるため、この例は、単一相で反応種を「融合」することができる希釈剤(溶媒または共溶媒)をさらに含む同様の組成物の特性を試験するように設定した。
【0147】
これまでに試験したシリコーン樹脂はトルエンで希釈したものを購入したため、この有機溶媒を最初に選択して、独自の「油」相内でシラノール末端PDMSの混和性を実現した。他の溶媒(または購入した樹脂にトルエンが固有に存在することを考慮した共溶媒)には、酢酸ブチル、キシレン、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)、およびデカメチルシクロペンタシロキサンが含まれていた。組成物は、追加の溶媒を含むように変更した組成物番号4に関して例1に記載したように調製し、次いで、例3に記載したようにステンレス鋼箔上にコーティングおよび硬化した。
【0148】
最大100グラムのHMDSまたは最大100グラムのD5を添加しても単相組成物が得られなかったため、得られたコーティングをさらに分析しなかった。簡単にするために、この例では、組成物番号4に添加した溶媒の量(グラム単位)で結果を参照する。組成物番号4(組成物Aと呼ばれる)と比べて、各サンプルの相数と、溶解したサンプルがステンレス鋼箔を濡らす能力を比較し、表8に報告する。
【0149】
【表8】
【0150】
上記の表からわかるように、単相組成物(組成物B~Eを参照)は参照二相組成物(組成物A)の不均一性を減少させると予想されたが、言い換えれば、得られるコーティングの均一性を増大させると予想されたが、反対の現象が観察された。すなわち、本発明のコーティング組成物の構成要素を単相にすることにより、ステンレス鋼支持体を均一に濡らす組成物の能力が劇的に低下した。上記の表では、コーティングが連続していない場合(例えば、クレーターと同様に、完全に硬化する前に十分に収縮してコーティングされていないボイドが残る場合)、濡れは「悪い」と見なされた。場合によっては、コーティングの表面(存在する場合)が不均一な外観(例えばピンホール、オレンジピール)を提供するなど、追加の障害が観察された。
【0151】
まとめると、組成物を実験室の設定で試験したこの例の結果は、2つのタイプの材料(一方は良好な剥離を提供し、他方は良好な機械的特性を提供する)の単なる混合は、特性の組み合わせを得るのに十分ではない。まず、2つの材料は互いに反応して、組成物の異なる相/区画に存在するにもかかわらず、相互貫入ネットワークを生成し、次に、材料間の比率とそれぞれの特性を、所望の保護レベルに合わせて調整する必要がある。さらに、コーティング組成物は、満足のいく接着を達成するために、下にある表面と相互作用する必要がある。当業者によって容易に理解されるように、コーティング組成物の構成要素に見出されるシラノール部分は、互いに相互作用するだけでなく、支持体上のヒドロキシル基と共有結合し得る。
【0152】
・例10:間接デジタル印刷機
実験室設定で本発明によるコーティング組成物の効力を確立したので、この例の目的は、スケールアップされた商業設定での適合性の確認を得ることであった。これは、両面印刷モードで動作するLanda CorporationのS10P Nanographic Printing(登録商標)印刷機で実行し、この印刷機では、同じインク画像が紙シートの第1面、次に第2面に順次適用された。
【0153】
例1に記載したように組成物番号4に対応するコーティング組成物および組成物番号1に対応する対照を調製し、それぞれを前の例でコーティングされた箔サンプルと同じステンレス鋼で作られた圧胴ジャケットに塗布した。平面寸法が約100×120cmのステンレス鋼箔を、イソプロピルアルコール、次に水と洗剤、次にヘキサン、最後にイソプロピルアルコールすすぎで洗浄した。洗浄したホイルを、連続気泡フォームロールを有するペイントローラーでコーティングした。例3に記載のように硬化を実施し、硬化コーティングの厚さを以前に詳述したように測定し、約10μmであることがわかった。硬化した組成物でコーティングされた箔からジャケット(平面寸法が約83.2×103cm)をレーザーカットし、その前縁と後縁を折り曲げて、圧胴の外面のくぼみに挿入できるようにした。次に、調査中の組成物でコーティングされたジャケットを圧胴に取り付け、硬化コーティングを外側に向けた。圧胴はステンレス鋼材料製の外面を有するが、ジャケット保護もコーティングもなしで、参照として用いた。
【0154】
C、M、Y、およびKの色で構成され、100%および200%のインクに対応する2つのレベルのインクカバレッジ(したがって、各色に2つずつ、8つの長方形を含む)を有するテストジョブが、一連の所定のサイクル数で実行され、インク画像は、B1フォーマットのシート基材(厚さ100μmの光沢コート紙)の両面に転写される。デジタル印刷機は1時間あたり6,500B1シートの速度で動作し(つまり、二重印刷シートの場合はこの速度の半分)、圧ニップに加えられる圧力は約100N/cm(1メガパスカル、MPaに相当)であった。転写部材(例えば、図1の110として概略的に示されているような)について転写が行われた温度は、約120℃であり、圧力および圧胴(例えば、図1において150および160として概略的に示されているような)は、周囲温度である(積極的に加熱も冷却もされていない)。
【0155】
印刷実行の開始時に、圧胴の表面またはシリンダージャケットの保護コーティングの表面を調べて、それぞれの初期状態、およびそれぞれ最大500サイクルの両面印刷のステップに続いて、前のステップの結果に応じて、後続のステップの数を確立した。図7は、例によるテストジョブから得られた画像700を概略的に示し、汚染物質710が圧胴またはジャケットの外面720にどのように蓄積するかを示している。明確にするために、図7に示す要素は縮尺どおりではなく、さらに、汚染物質は通常、図よりも規則的な形状ではなく、一般にスミアが徐々に減少しているように見える。それでも、インクの量が比較的多い(200%)カラーストライプは、比較的インク量が少ない(100%)カラーストライプよりも、インク画像と接触する表面に「プロセス由来の汚れ」のより大きなおよび/またはより長いスミアパッチを生成することが一般的に観察された。両面印刷中の望ましくない転写は、主に表面の前縁で観察され、汚染物質の蓄積の程度は、必ずしもではないが、一般に、表面の後縁に向かって減少する。目に見える汚染の兆候を表面が示した後のサイクル数を表9に報告する。
【0156】
【表9】
【0157】
上記の表からわかるように、ジャケットがない場合、ステンレス鋼の外面を有する圧胴は、その外面に微量のインク残留物を急速に蓄積する可能性がある。この実験の厳しい条件下で、圧胴は、50サイクル未満の両面印刷でその表面の汚染を示した。特定の理論に拘束されることを望まないが、この比較的急速な汚染物質の蓄積は、インク残留物と圧胴のステンレス鋼表面との間の相互作用に起因する可能性がある。
【0158】
組成物番号1でコーティングしたジャケットは、150サイクル未満、ジャケット表面を保護したが、それでもコーティングされていない表面より2~3倍優れていた。組成物番号4でコーティングしたジャケットは、少なくとも9,000の両面印刷を維持した(より高いサイクル数はテストしていない)。したがって、組成物4の硬化から生じる保護コーティングは、むき出しの圧胴と比較して、汚染物質が現れるまでのサイクル数を2桁以上劇的に増加させた。これにより、圧胴(またはその上のジャケット)の表面のクリーニングが必要になるまで印刷システムが動作できる時間が、大幅に延長される。これらの実験値は、テストジョブのインク画像で比較的大量のインク(少なくとも100%)を使用して取得した。当業者は、汚染物質の量およびそれらが表面に蓄積するのにかかる可能性がある時間は、調査中の表面に接触する可能性がある画像内のインクの量に依存する可能性があることを容易に理解できる。したがって、インク被覆率が比較的低い(100%未満)画像は、目に見える表面汚染が発生する前に、比較的長いサイクル数で二重印刷され得る。
【0159】
さらに、圧胴またはそのジャケット上の汚染物質の出現は、印刷品質に直接の影響を及ぼさないことに留意されたい。説明のために、プロセスに由来する汚れは100サイクル未満でシリンダーに蓄積する可能性があるが、そのような汚れは200サイクル以上後にのみ後続の印刷基材をさらに汚染する可能性がある。それでも、そのような汚染物質は、印刷品質に目に見える影響を与える前に、シリンダーの表面(またはその保護コーティング)から除去することが好ましい。したがって、本教示に従って調製した保護コーティングは、満足のいく印刷品質を確保するために圧胴の表面の維持が必要になるまでに必要な時間を延長する可能性がある。このようなクリーニングは、任意の2つの印刷ジョブ間の印刷システムの標準メンテナンスの一部である可能性があるため、保護コーティングは、このような標準メンテナンスが実行されるまで、コーティングされた表面の操作性(信頼性の高い機能)を延長し、単一の印刷ジョブの実行中の中断を防ぐ。
【0160】
本発明による保護コーティングの有益な効果は特定のデジタル印刷機で実証されたが、印刷分野の当業者は、そのような設定が限定的ではなく、本教示がデジタル(つまり、基材上に形成される画像が最初に「仮想支持体」から派生する場合-コンピュータベースの画像ファイル)であるか否か(つまり、基材上に形成される画像が最初に「実際の支持体」から派生する場合-印刷版)にかかわらず他の任意の印刷システムで実施できることを容易に理解できる。非デジタル印刷技術には、例えば、リソグラフィー、フレキソ印刷、グラビア、および活版印刷が含まれる。
【0161】
さらに、上記の例示された印刷システム100では、印刷システムの画像形成ステーションは、(適切なインクジェット装置によって)ITMの選択された領域に液体インク材料を堆積させることによってインク画像を形成することができるが、インク材料はあるいは固体インクであり得る。一例として、印刷システムの画像形成ステーションは、ITM上に堆積されたインク材料を選択的に活性化することによってインク画像を形成することができる。例えば、画像形成ステーションは、乾燥インク材料を選択的に軟化させて、圧ステーションで転写可能な所望のインク画像を形成することができる。いくつかのそのような実施形態では、画像形成ステーションは、乾燥インクの粒子がITM上に堆積されるコーティングステーションと、堆積された粒子にエネルギーを選択的に印加する画像ステーションとを含むことができる。そのような一実施形態では、印加されるエネルギーは、電磁放射の形態である。そのような一実施形態では、インクは熱可塑性材料からなり、粒子は「熱可塑性粒子」と呼ばれることもある。そのような一実施形態では、エネルギーは、インクが堆積されたITMの側から熱可塑性粒子に加えられ、この第1の側は「前面」とも呼ばれる。代替的または追加的に、エネルギーは、前側とは反対側のITMの側から熱可塑性粒子に加えることができ、この第2の側は「後側」とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、画像ステーションは、熱プリントヘッドまたはレーザー要素を含み、プリントヘッドおよびレーザー要素は、粒子を選択的に活性化し、圧ステーションで選択的に活性化された粒子の移動を可能にするために、ITM上の粒子に十分なエネルギーを加えることができる。
【0162】
・例11:硬化保護コーティングの検出
この例では、本教示に従って縮合硬化性コーティング組成物から調製した保護コーティングを同定する手段が提供される。そのような特性は、本開示に基づいて、化学および材料分析の当業者によって推定することができる。したがって、以下に提供される方法は例示的なものであり、追加の方法を使用して、同様の特性を達成することができる。一部の方法はコーティングに対して「非破壊的」である場合があるが、他の方法では、分析を可能にするために材料の変換(例えば、抽出、溶融など)が必要な場合がある。
【0163】
分子分析のレベルでは、保護コーティングは、FTIR、ラマン分光法、または熱重量-赤外(TG-IR)分光法によって、ケイ素原子および/またはシラノール基の存在によって特徴付けることができ、いくつか例を挙げると、各方法は、特定の波数またはその近傍で各化学基または原子に特徴的なバンドを提供する。実際、前の例に従って調製した硬化コーティング中のケイ素原子の存在は、FTIR分析によって確認した。さらに、前に説明したように、本組成物およびコーティングの調製に適したシリコーン系化合物は、好ましくは、分子の特定の基/部分の間(例えば、フェニル部分とメチル部分の間)の特定の比率を満たすべきである。そのような好ましい比率は、硬化コーティングにおいて生じると予想される。
【0164】
コーティングが適切な触媒の存在下での縮合硬化によって調製された範囲で、工業環境で一般的に好ましいように、本コーティングは、触媒またはその金属痕跡の存在によってさらに識別され得る。スズまたは亜鉛触媒が主に使用されるため、これらの金属の存在は、例えば、検出する元素に適したEDS検出器を備えた走査型電子顕微鏡(SEM)によって検出できる。
【0165】
本コーティングの物理的特性に関して、それらは、任意の適切な方法、例えばナノインデンテーションによって決定することができるように、シリコーンエラストマーに基づく従来のコーティングと比較して比較的硬いと考えられる。それらは、意味のある期間にわたって意図された保護効果を提供するのに十分に硬いはずである。そのような保護効果は、以前に詳述された寄生転写の防止に加えて、機械的応力の吸収、コーティングの亀裂および下にある支持体からの欠けの防止をさらに含み得る。それにもかかわらず、本保護コーティングは、それらの剛性支持体と比較して比較的「柔らかい」可能性があり、コーティングされた表面に「クッション」効果を提供し得る。組成物番号4を用いて作製した硬化コーティングの硬度を、直径約94μmのサファイア球を用いて評価し、コーティングされていないステンレス鋼基材の硬度と比較した。支持体は最大インデント154nmで26.3MPaの硬度を示したが、約10μmの保護コーティングを施した表面は、最大インデント1.58μmで0.88MPaの硬度を示した。
【0166】
この相対的な硬度は、コーティングの追加の特徴、例えば、耐摩耗性を提供する。耐摩耗性は、例えば、例3に示されるように当業者に知られているいくつかの方法によって決定することができる。この特定の手順に従って、本教示に従って調製したコーティングの耐摩耗性は、20%未満、15%未満、10%未満、8%未満、または6%未満の光沢の損失を示すことができる。
【0167】
本コーティングの別の態様は、硬化性組成物が調製される方法、すなわち油中油型エマルションとして調製される方法に由来する。例2に示したように、巨視的レベルで、本コーティングは、それらがコーティングされる基材に塗布されたときにそれらの反応性成分の一部が互いに分離されたという事実にもかかわらず、比較的滑らかであることが見出された。しかし、測定値からの偏差を考慮すると、面積粗さSaの標準偏差は、コーティングされていないベースラインよりもコーティングされた表面の方が高いことが観察された。例として硬化組成物番号4に戻ると、約539nmの平均Sa粗さからの標準偏差は15.8%であったが、ステンレス鋼支持体の平均Sa粗さからの標準偏差は225nmからわずか3.8%であった。コーティングされた表面の平均粗さからの標準偏差は、コーティングされていない表面の平均粗さからの標準偏差よりも高いが、この場合、パーセンテージベースで約4倍であり、ナノメートルの場合、硬化コーティングの測定された偏差は、依然として比較的均一な表面を示している(例えば、標準偏差≦20%)。
【0168】
微視的レベルでは、油中油型エマルションは、特定の状況下で、硬化すると特定のパターンを提供する可能性があると予想される。例えば、液体がコーティングから消えるときにエマルションの液滴が完全に合体する前に硬化が起こる場合、隣接する接触する液滴間のネックが観察される状況を「凍結」することが期待できる。
そのようなネックは、唯一の相で作られた組成物から調製されたコーティングには必然的に存在しないであろう。硬化した保護コーティングの厚さ全体にわたるそのような微細パターンは、FIB顕微鏡法によって評価することができる。
【0169】
本開示は、例示のみを目的として提示された様々な特定の実施形態に関して説明されてきたが、そのような具体的に開示された実施形態は、限定的であると見なされるべきではない。本明細書における出願人の開示に基づいて、そのような実施形態の多くの他の代替、修正、および変形が当業者に生じるであろう。したがって、そのようなすべての代替案、修正、およびバリエーションを包含し、開示の精神および範囲、ならびにそれらの意味および同等の範囲内に入る変更によってのみ拘束されることが意図されている。
【0170】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で説明される本開示の特定の特徴もまた、単一の実施形態で組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される本開示の様々な特徴はまた、別個に、または任意の適切なサブコンビネーションで、または本開示の他の任意の説明された実施形態で適切なものとして提供され得る。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは動作しない場合を除いて、それらの実施形態の本質的な特徴と見なされるべきではない。
【0171】
本開示の説明および特許請求の範囲では、動詞「含む」、「含む」および「有する」のそれぞれ、ならびにそれらの共役は、動詞の1つ以上の目的語が必ずしも特徴、要素、ステップ、構成要素、要素、または動詞の主語の一部の完全なリストではないことを示すために使用される。
【0172】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、複数形の参照を含み、文脈が明確に別段の指示をしない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。AおよびBの少なくとも1つは、AまたはBのいずれかを意味することを意図しており、いくつかの実施形態では、AおよびBを意味し得る。
【0173】
特に明記されていない限り、選択任意のリストの最後の2つの要素間で「および/または」という表現を使用することは、リストされた任意の1つ以上の選択が適切であり、実行できることを示す。
【0174】
特に明記しない限り、本技術の実施形態の特徴に関する範囲の外側境界が本開示に記載されている場合、実施形態において、特徴の可能な値は、注記された外側境界および記載されている外側の境界間の値を含み得ることを理解されたい。
【0175】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、本技術の実施形態の1つ以上の特徴の状態または関係特性を変更する「実質的に」、「およそ」および「約」などの形容詞は、条件または特性は、それが意図される用途のための実施形態の動作に許容できる許容範囲内、または実行される測定および/または使用される測定機器から予想される変動内に定義される。「約」および「およそ」という用語が数値の前にある場合、それは+/-15%、または+/-10%、または+/-5%のみ、場合によっては正確な値を示すことを意図している。さらに、特に明記しない限り、本開示で使用される用語(例えば、数字)は、そのような形容詞がなくても、関連用語の正確な意味から逸脱する可能性があるが、本発明またはその関連部分を可能にする公差を有し、説明されたように、そして当業者によって理解されたように動作および機能すると解釈されるべきである。
【0176】
本開示の開示を理解または完了するために必要な範囲で、本明細書に記載のすべての刊行物、特許、および特許出願(特に出願人の出願を含む)は、完全に記載されているかのように、参照によりその全体が明示的に組み込まれる。
【0177】
本書で参照されている特定の商標は、コモンローまたは第三者の登録商標である可能性がある。これらの商標の使用は一例であり、説明的であると解釈されたり、この開示の範囲をそのような商標のみに関連する資料に限定したりするものではない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされる表面を濡らすことができる縮合硬化性コーティング組成物であって、前記組成物は、
a)シラノール部分を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)であって、前記シラノール部分が、0.1~8.0重量%の重量当たりの重量で前記PDMS中に存在する、PDMSと、
b)シラノール部分を有するシリコーン樹脂であって、前記シラノール部分が、0.5~10.0重量%の重量当たりの重量で前記シリコーン樹脂中に存在する、シリコーン樹脂と、
c)液体担体と、を含み、
前記PDMSおよび前記シリコーン樹脂は、互いに実質的に非混和性であり、その結果、前記縮合硬化性コーティング組成物が、油中油型エマルションを形成する、縮合硬化性コーティング組成物。
【請求項2】
シラノール部分を有する前記PDMSが、シラノール末端PDMSである、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
シラノール部分を有する前記PDMSが、以下の構造的特徴:
a)前記PDMSが、400g/mol~20,000g/molの平均分子量を有する;
b)前記PDMSが、15mPa・s~1,000mPa・sの粘度を有する;
c)前記PDMSが、1重量%~5重量%のシラノール基を含む;および
d)前記PDMSが、30重量%~45重量%のシリコーン原子を含む;
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1または2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記シリコーン樹脂が、以下の構造的特徴:
a)前記シリコーン樹脂が、500g/mol~300,000g/molの平均分子量を有する;
b)前記シリコーン樹脂が、溶媒の存在下で5mPa・s~2,000mPa・sの粘度を有する;
c)前記シリコーン樹脂が、固体樹脂の0.5重量%~5重量%のシラノール基を含む;
d)前記シリコーン樹脂が、固体樹脂の30重量%~45重量%のシリコーン原子を含む;
e)前記シリコーン樹脂が、2以下の置換度のR/Siを有する;および
f)前記シリコーン樹脂が、2.8以下のフェニル/メチル比を有する;
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記PDMSが、全組成物の重量の20重量%~80重量%、30重量%~70重量%、または40重量%~60重量%の量で前記組成物中に存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記シリコーン樹脂が、全組成物の重量の10重量%~60重量%、20重量%~50重量%、または30重量%~40重量%の固体材料の量で前記組成物中に存在し、
ただし、固体材料に基づく前記PDMSと前記シリコーン樹脂の合計量は、全組成物の重量の100重量%を超えない、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記PDMSと前記シリコーン樹脂の重量対重量比が、1:0.4~1:3.5、1:0.4~1:2.5、または1:0.4~1:1.25である、請求項1~6のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記PDMSと前記シリコーン樹脂からのシラノールの合計量が、硬化剤が存在しない場合の前記組成物の重量の0.5重量%~10重量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記PDMSと前記シリコーン樹脂からのケイ素原子の合計量が、硬化剤が存在しない場合の前記組成物の重量の10重量%~40重量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
架橋剤および触媒から選択される少なくとも1つの硬化剤をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの硬化剤が、架橋剤であり、前記架橋剤が、前記PDMSの重量の0.1重量%~15重量%の量で前記組成物中に存在する、請求項10に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの硬化剤が、触媒であり、前記触媒が、前記PDMSの重量の0.01重量%~3重量%の量で前記組成物中に存在する、請求項10または11に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
前記油中油型エマルションが、250nm~10μm、500nm~7.5μm、または750nm~5μmの平均直径D50を有する液滴を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のコーティング組成物でコーティングされた少なくとも1つの表面を有する物品であって、前記組成物が、前記表面上で完全に硬化している、物品。
【請求項15】
前記物品が、圧胴、圧プレート、両面印刷シリンダー、転写シリンダー、グリッパー、クランパー、ガイドプレート、ガイドローラー、ガイド突起、駆動ローラーおよび張力ローラーを含む群から選択される印刷システムの一部である、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
前記硬化コーティング組成物でコーティングされた前記物品の前記表面が、前記物品に対して剥離可能に取り付け可能であり、前記剥離可能に取り付け可能な表面は、任意に、交換可能なシリンダージャケットである、請求項14または15に記載の物品。
【請求項17】
前記硬化コーティング組成物が、前記コーティングされた表面上に、1μm~10μmの厚さを有する均一な保護コーティングを形成している、請求項14~16のいずれか一項に記載の物品。
【請求項18】
請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の組成物でコーティングされた少なくとも1つの表面を有する物品を含む印刷システムであって、
前記組成物が、前記表面上で完全に硬化しており、
前記物品が、任意に、請求項14~請求項17のいずれか一項に記載の物品である、印刷システム。
【請求項19】
縮合硬化性コーティング組成物を調製するためのキットであって、前記キットは、
I-シラノール部分を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む第1の区画であって、前記シラノール部分が、0.1~8.0重量%の重量当たりの重量で前記PDMS中に存在し、前記第1の区画が、任意に、少なくとも1つの硬化剤をさらに含み、ただし、前記PDMSが、非反応性PDMSである、第1の区画と;
II-シラノール部分を有するシリコーン樹脂を含む第2の区画であって、前記シラノール部分が、0.5~10.0重量%の重量当たりの重量で前記シリコーン樹脂中に存在する、第2の区画と;
III-前記第1および第2の区画の内容物を混合することによって形成される混合物をさらに分散させるための液体を含む第3の区画と;
任意に、
IV-少なくとも1つの硬化剤を含む第4の区画と;
を含み、
前記第1の区画の前記PDMSおよび前記第2の区画の前記シリコーン樹脂は、互いに実質的に非混和性であり、その結果、前記縮合硬化性コーティング組成物が、それらの混合時および前記第3の区画の前記液体担体内での分散時に油中油型エマルションを形成する、キット。
【請求項20】
請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の縮合硬化性コーティング組成物の調製に適合している、請求項19に記載のキット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態によるコーティング組成物を使用することができる印刷システムの概略図である。
図2図2は、本発明の実施形態によるコーティング組成物によってコーティングされ得る圧胴の概略図である。
図3図3は、本発明の実施形態によるコーティング組成物によってコーティングされ得る別の圧胴の概略図である。
図4図4は、本発明の実施形態によるコーティング組成物によってコーティングされ得る、さらに別の圧胴の概略図である。
図5A図5Aは、本発明の一実施形態による、圧胴に塗布された保護コーティングの概略図である。
図5B図5Bは、本発明の別の実施形態による、圧胴に代替的に適用される保護コーティングの概略図である。
図5C図5は、本発明の別の実施形態による、圧胴にさらに代替的に適用される保護コーティングの概略図である。
図5D図5は、本発明の別の実施形態による、圧胴にさらに代替的に適用される保護コーティングの概略図である。
図6図6は、本発明の様々な実施形態による、本明細書に記載の様々な方法のフローチャートを示している。
図7図7は、テストジョブとして機能する可能性のあるインクイメージと、そのようなテストイメージに繰り返し接触する表面に汚染物質がどのように蓄積するかを概略的に示している。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
最終コーティング組成物に望まれる粘度および最終コーティング組成物中のシリコーン樹脂の絶対濃度に応じて、樹脂は広範囲の粘度を示し得る。シリコーン樹脂は、通常、溶媒に溶解して、または液体担体に分散して提供され、以下の粘度値が、溶解/分散した樹脂に適用される。いくつかの実施形態において、シリコーン樹脂の粘度は、2000mPa・s以下、1,000mPa・s以下、100mPa・s以下、75mPa・s以下、または50mPa・s以下である。いくつかの実施形態において、シリコーン樹脂の粘度は、5mPa・s以上、10mPa・s以上、または20mPa・s以上である。いくつかの実施形態において、シリコーン樹脂の粘度は、5mPa・s~2,000mPa・s、5mPa・s~1,000mPa・s、10mPa・s~50mPa・s、20mPa・s~200mPa・s、または200mPa・s~1,000mPa・sの範囲である。
【国際調査報告】