(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(54)【発明の名称】BTN2に対する特異性を有する抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220513BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220513BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220513BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220513BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220513BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220513BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220513BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220513BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220513BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220513BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61P31/00
A61K39/395 N
A61P43/00 105
C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556522
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(85)【翻訳文提出日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2020057794
(87)【国際公開番号】W WO2020188086
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520098187
【氏名又は名称】イムチェック セラピューティクス エスエーエス
【氏名又は名称原語表記】IMCHECK THERAPEUTICS SAS
(71)【出願人】
【識別番号】511074305
【氏名又は名称】インセルム(インスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】520098202
【氏名又は名称】インスティテュート ジャン パオリ アンド イレーヌ カルメット
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT JEAN PAOLI & IRENE CALMETTES
(71)【出願人】
【識別番号】515267792
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ エクス-マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE AIX-MARSEILLE
【住所又は居所原語表記】58 Boulevard Charles Livon F-13284 Marseille Cedex 07 France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】フーシェ, エティエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】カノ, カルラ
(72)【発明者】
【氏名】ル, キュー スオン
(72)【発明者】
【氏名】パセロ, クリスティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】オリーヴ, ダニエル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC15
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA40
4H045CA42
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、BTN2Aに対する特異性を有する抗体、及び特に、がんの処置のためのその使用に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の機能:
i.単球の、M2マクロファージへの分極を阻害する機能、
ii.M2マクロファージの、抗腫瘍性M1マクロファージへの復帰を誘導する機能、
iii.NK細胞の活性化を、直接誘発する機能、
iv.NK細胞媒介性細胞傷害作用を増強する機能
のうちの少なくとも1つを有することにおいて特徴づけられる抗ブチロフィリン2A(BTN2A)抗体。
【請求項2】
BTN2A1への結合について、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照抗体である、mAb 107G3、又は
(i)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、(ii)配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照抗体である、mAb 101G5
と競合する、請求項1に記載の抗BTN2A抗体。
【請求項3】
配列番号17の65、68、69、72、78、84、85、95、97、及び100位に位置する残基を含むエピトープに結合する、請求項1又は2に記載の抗BTN2A抗体。
【請求項4】
配列番号17の212、213、218、220、224、及び229位に位置する残基を含むエピトープに結合する、請求項1又は2に記載の抗BTN2A抗体。
【請求項5】
ヒトBTN3アイソフォームと交差反応しない、及び/又はカニクイザルBTN2A1オーソログと交差反応する、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗BTN2A抗体。
【請求項6】
配列番号3を含む、重鎖可変領域であるCDR1、配列番号4を含む、重鎖可変領域であるCDR2、配列番号5を含む、重鎖可変領域であるCDR3、配列番号6を含む、軽鎖可変領域であるCDR1、配列番号7を含む、軽鎖可変領域であるCDR2、及び配列番号8を含む、軽鎖可変領域であるCDR3、又は
配列番号21を含む、重鎖可変領域であるCDR1、配列番号22を含む、重鎖可変領域であるCDR2、配列番号23を含む、重鎖可変領域であるCDR3、配列番号24を含む、軽鎖可変領域であるCDR1、配列番号25を含む、軽鎖可変領域であるCDR2、及び配列番号26を含む、軽鎖可変領域であるCDR3
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗BTN2A抗体。
【請求項7】
配列番号1のアミノ酸配列との、少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列との、少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域、又は
配列番号19のアミノ酸配列との、少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号20のアミノ酸配列との、少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗BTN2A抗体。
【請求項8】
以下の機能:
i.Vγ9Vδ2 T細胞による、細胞溶解性分子の分泌を活性化させる機能、
ii.Vγ9Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を活性化させる機能、及び/又は
iii.Vγ9Vδ2 T細胞の増殖を活性化させる機能
のうちの少なくとも1つをさらに有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗BTN2A抗体。
【請求項9】
BTN2A1への結合について、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照マウス抗体である、mAb 107G3と競合する、請求項8に記載の抗BTN2A抗体。
【請求項10】
配列番号3を含む、重鎖可変領域であるCDR1、配列番号4を含む、重鎖可変領域であるCDR2、配列番号5を含む、重鎖可変領域であるCDR3、配列番号6を含む、軽鎖可変領域であるCDR1、配列番号7を含む、軽鎖可変領域であるCDR2、及び配列番号8を含む、軽鎖可変領域であるCDR3、又は
配列番号1のアミノ酸配列との、少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列との、少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域、又は
配列番号1のアミノ酸配列との、少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列との、少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項8又は9に記載の抗BTN2A抗体。
【請求項11】
ヒトBTN2A1アイソフォームに対する特異性をさらに有する、請求項8~10のいずれか一項に記載の抗BTN2A抗体。
【請求項12】
ヒト抗体、キメラ抗体、又はヒト化抗体である、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗BTN2A抗体。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載の抗BTN2A抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸分子。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項15】
治療における使用のための、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗BTN2A抗体。
【請求項16】
がん又は感染性疾患の処置における使用のための、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗BTN2A抗体。
【請求項17】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗BTN2A抗体と、少なくとも1つの薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BTN2A1に結合し、マクロファージ集団を、抗腫瘍性M1マクロファージへとシフトさせ、NK細胞を直接活性化させるほか、がん細胞に対する細胞傷害作用を有する抗BTN2A1活性化抗体に関する。代替的に、又は組合せにおいて、前記抗体は、Vγ9/Vδ2 T細胞を活性化させうる。このような抗体は、がんの処置に、特に、有用である。
【背景技術】
【0002】
マクロファージは、古典的な活性化M1型から、代替的なM2型の範囲にわたる、可変的な表現型を呈する。LPS(多糖)など、細菌性由来の生成物のほか、IFNγなど、感染症と関連するシグナルにより活性化されるM1マクロファージは、遊走の後、単球から急速に分化する。M1マクロファージは、高度に食作用性で殺菌性の潜在力を伴い、高度に炎症性である。M1マクロファージは、TNFα、IL-1、IL-6、及びIL-12など、重要な炎症促進性サイトカインのほか、反応性の酸素分子種を分泌する。これに対し、M2マクロファージは、顆粒化組織形成を生じる、治癒過程の後期に存在し、炎症応答をアンタゴナイズするので、治癒の開始を可能とする。これらの抗炎症性細胞は、線維芽細胞を動員し、血管新生促進性因子を放出して、内皮前駆細胞を動員し、筋線維芽細胞へと分化するようにそれらを活性化させ、新たな血管形成を可能とする。これは、鍵となる抗炎症性サイトカインであるIL-4、IL-10、及びIL-13の分泌を介して生じ、また、ROS、一酸化窒素(NO)、及びTNFαの産生の減少とも関連する過程である。
【0003】
腫瘍微小環境(TME)は、とりわけ、がん処置から復帰する腫瘍の場合、マクロファージをM2様表現型へと強く分極させる。この分極は、高度に血管新生促進性であるだけでなく、また、免疫抑制性でもある。したがって、大半の固形がんでは、腫瘍関連マクロファージ(TAM)による浸潤の増大は、かなり前から、患者の予後不良と関連付けられており、がんにおける潜在的な診断的バイオマーカー及び予後診断的バイオマーカーとしての、それらの価値を強調する。
【0004】
したがって、M2マクロファージの再プログラム化及び選択的殺滅は、有望な治療戦略として示唆されている(Zhu Yら、Cancer Res、2014)。
【0005】
さらに、自然免疫細胞として、ナチュラルキラー(NK)細胞は、がんに対する免疫による監視において、枢要的機能を果たす。NK細胞は、様々な異常細胞又はストレス細胞を、事前の感作を伴わずに消失させ、さらに幹様細胞又はがん幹細胞を優先的に死滅させることが可能である。標的細胞との免疫学的シナプスを形成すると、NK細胞は、細胞溶解を誘導することが機能である、パーフォリン及びグランザイムを含む、あらかじめ形成された細胞溶解性顆粒を放出する。
【0006】
この仮定に基づき、いくつかの研究が、多様な腫瘍、とりわけ、血液悪性腫瘍に対する、NK細胞の養子移入を利用することに成功した。しかし、がんは、多様な戦術を用いて、抗腫瘍免疫を遅延させるか、変更するか、なお又は停止させ、腫瘍増殖に対するコントロールの失敗をもたらす。NK細胞の抗腫瘍応答はまた、多くの限界にも直面している。特に、腫瘍微小環境(TME)は、NK細胞の有効性にとって、大きな障壁であり続けており、とりわけ、養子移入NK細胞の有効性にとって、大きな障壁であり続けている。例えば、樹状細胞(DC)などの腫瘍浸潤免疫細胞、抑制性マクロファージ又は寛容原性マクロファージ、及び調節性T(Treg)細胞のほか、細胞外マトリックスに埋まっている、がん関連線維芽細胞は、免疫抑制性サイトカインの分泌を介して、又は受容体発現に干渉することにより、NK細胞の活性化に介入しうる。例えば、TMEでは、TGF-β(とりわけ、M2分極マクロファージにより分泌される)は、NK細胞の数及び抗転移機能を制限する、NK細胞の主要な阻害性サイトカインとして認識される。
【0007】
したがって、i)腫瘍環境の免疫抑制効果を阻害すること、及びii)NK細胞の活性化、及びNK細胞媒介性細胞傷害作用を、直接誘発することの両方により、抗腫瘍性活性を刺激しうるツールを有することは、治療的観点から、極めて貴重であろう。
【0008】
ブチロフィリンは、ブチロフィリン(BTN)、BTN様(BTNL)タンパク質、及びSKINT(selection and upkeep of intraepithelial T cell)タンパク質を含む、膜貫通タンパク質のファミリーを構成する(Arnett及びViney、Nat Rev Immunol、2014)。ブチロフィリンの細胞外部分は、B7共刺激分子の対応するドメインに対する相同性を呈する、IgV様ドメイン及びIgC様ドメインを含有する(Arnett及びViney、2014)ので、ブチロフィリンは、拡張B7スーパーファミリー又はIgスーパーファミリーのメンバーであると考えられる。
【0009】
遺伝子のブチロフィリン(BTN)ファミリーは、ヒトにおいて、13の遺伝子から構成され、8つの別個の群を形成する(Abeler-Dornerら、Trends Immunol、2012;Afracheら、Immunogenetics、2012)。7つのヒトBTN遺伝子は、第6染色体の、MHCクラスI領域において、クラスター化され、系統発生関連群を形成する、3つのサブファミリー:BTN1、BTN2及びBTN3へと分けられる。BTN1サブファミリーが、原型的な単一コピーのBTN1A1遺伝子だけを含有するのに対し、BTN2及びBTN3サブファミリーは各々、それぞれ、BTN2A1、BTN2A2、及びBTN2A3(偽遺伝子である)、BTN3A1、BTN3A2、及びBTN3A3という、3つずつの遺伝子を含有する。BTN遺伝子ファミリーメンバーについて、高血圧症、慢性腎不全、封入体筋炎、1型糖尿病及び2型糖尿病、又はHCV感染を含む、異なる疾患と関連する、いくつかの遺伝子多型が記載されている(Chenら、Int J Clin Exp Pathol、2015;Horibeら、Am J Hypertens、2011及び2014;Milmanら、Clin Respir、2011;Murakataら、Biomed Rep、2014;Oguriら、J Med Genet、2013;Pachecoら、Orphanet J Rare Dis、2016)。BTNL2、BTN2A1、BTN3A2、及びBTN3A3についての、一塩基多型バリアントのほか、BTNL3及びBTNL8が関与する有害なコピー数変動についても記載されている(Aignerら、BMC Genet、2013)。
【0010】
同定された、最初のブチロフィリンである、BTN1A1は、乳脂肪球の形成、分泌、及び安定化に要求される(Oggら、Proc Natl Acad Sci、2004)。次いで、B7遺伝子と、MHCクラスI遺伝子及びMHCクラスII遺伝子とは、共通の祖型遺伝子を有し、T細胞の活性化など、類似する機能に関与するタンパク質をコードしうることが提起されている(Rhodesら、Genomics、2001;HarlyCら、Blood、2012)。BTN2A1タンパク質アイソフォーム及びBTN2A2タンパク質アイソフォームは、IgV及びIgCの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、並びに特徴的な細胞内B30.2ドメインを呈し、BTN3A1及びBTN3A3と類似するが、BTN3A2とは類似しない。マウスでは、BTN2A2は、単一コピー遺伝子であり、ヒトBTN2A2遺伝子のオーソログである。組換えヒトBTN2A1-Fcタンパク質は、BTN2A1の特定の糖型が、樹状細胞(DC)において見出されるレクチン分子であるDC-SIGNに結合することを明らかにした。BTN2A1の、DC-SIGNへの結合は、腫瘍細胞により発現される場合、タンパク質の、高マンノース型グリコシル化に依存する(Malcherekら、J Immunol、2007)。
【0011】
増殖しつつある証拠は、その後、ブチロフィリンが、免疫系において、多様な役割を果たすことを示唆した。Genotype-Tissue Expression Project(GTEx Consortium、2013)に由来する53例のヒト組織試料からのRNA-seqは、正常組織における、BTN2A1転写物の、遍在的な発現を示す。Gene Expression Profiling Interactive Analysis(Tang,Z.ら、Nucleic Acids Res、2017)を使用する、GTExからのRNA-Seqデータと、Cancer Genome Atlas(TCGA)データベースに由来するデータとの比較は、子宮頸部扁平上皮がん及び子宮頸部腺癌、肺小細胞癌、卵巣癌、膵臓がん、並びに子宮内膜癌を含むいくつかのがんにおける、BTN2A1転写物発現のモジュレーションを指し示す。
【0012】
前出(国際公開第2019057933号)では、BTN2Aの両方のアイソフォームを認識する抗体が報告されているが、前記抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞によるIFN-γ及び/又はTNF-αの産生を阻害する、及び/又は活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を阻害する、及び/又は活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖を阻害する。
【0013】
Vγ9/Vδ2 T細胞は、免疫的防御の、重要なエフェクターである。Vγ9/Vδ2 T細胞は、病原体感染細胞又は異常細胞を、直接溶解させる。加えて、Vγ9/Vδ2 T細胞は、樹状細胞(DC)の成熟のほか、アイソタイプスイッチング、及び免疫グロブリンの産生を誘導することによっても、免疫応答を調節する。この免疫系の重要な細胞プラットフォームは、表面受容体、ケモカイン、及びサイトカインにより、厳密に調節される。Vγ9/Vδ2 T細胞は、pAg(phosphoagonist)と称される、非ペプチド性のリン酸化イソプレノイド経路代謝物により活性化される。
【0014】
BTN2A1をターゲティングし、免疫細胞、とりわけ、マクロファージ、NK細胞、及び/又はγδ T細胞、特に、Vγ9/Vδ2 T細胞などの1つを超える免疫細胞コンパートメントを活性化させる抗体の開発は、とりわけ、がん治療において特に重要な場合があり、感染性疾患の処置のために、特に、重要でありうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示は、初めて、BTN2A(とりわけ、BTN2A1アイソフォーム(例えば、ヒトBTN2A1ポリペプチド)に結合する)に結合する抗体であって、以下の特性:
i.単球の、M2マクロファージへの分極を阻害する特性、
ii.M2マクロファージの、抗腫瘍性M1マクロファージへの復帰を誘導する特性、
iii.NK細胞の活性化を、直接誘発する特性、
iv.NK細胞媒介性細胞傷害作用を増強する特性
のうちの少なくとも1つを呈する抗体を提示する。
【0016】
特に、本開示の抗体は、特性i)及びii)のうちの少なくとも1つ、並びに特性iii)及びiv)のうちの少なくとも1つを呈し、より特定すると、本開示の抗体は、特性i)~iv)を呈する。
【0017】
したがって、本開示に従うこのような抗体は、
マクロファージの表現型及び機能性を、炎症促進性M1マクロファージへとシフトさせることにより、抗腫瘍性微小環境を優先的にもたらすことから、炎症促進性サイトカインの分泌をもたらすこと、及び/又は
NK細胞の活性化を、直接誘発し、これにより、それらの細胞溶解活性を、さらに強化すること
が可能である。
【0018】
したがって、本開示に従う、このような抗体は、がん治療のための多様な戦略において使用されうる、強力なツールを表す。
【0019】
詳細な実施形態では、本開示の抗BTN2A抗体は、BTN2Aへの結合について、
(i)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、(ii)配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照マウス抗体である、mAb 101G5、又は
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照マウス抗体である、mAb 107G3
のうちのいずれか1つと競合する。
【0020】
一部の実施形態では、本開示の抗BTN2A抗体は、
配列番号17の65、68、69、72、78、84、85、95、97、100位、又は
配列番号17の212、213、218、220、224、229位
に位置するアミノ酸残基を含むエピトープ
に結合する。
【0021】
詳細な実施形態では、本開示の抗BTN2A抗体は、
配列番号3を含む、重鎖可変領域であるCDR1、配列番号4を含む、重鎖可変領域であるCDR2、配列番号5を含む、重鎖可変領域であるCDR3、配列番号6を含む、軽鎖可変領域であるCDR1、配列番号7を含む、軽鎖可変領域であるCDR2、及び配列番号8を含む、軽鎖可変領域であるCDR3、又は
配列番号21を含む、重鎖可変領域であるCDR1、配列番号22を含む、重鎖可変領域であるCDR2、配列番号23を含む、重鎖可変領域であるCDR3、配列番号24を含む、軽鎖可変領域であるCDR1、配列番号25を含む、軽鎖可変領域であるCDR2、及び配列番号26を含む、軽鎖可変領域であるCDR3
を含む。
【0022】
詳細な実施形態では、本開示の抗BTN2A抗体は、
配列番号1のアミノ酸配列との、少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列との、少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域、又は
配列番号19のアミノ酸配列との、少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域、及び20のアミノ酸配列との、少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0023】
詳細な実施形態では、本開示の抗体は、以下の特性:
Vγ9Vδ2 T細胞からの、細胞溶解性分子の分泌を活性化させる特性、
Vγ9Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を活性化させる特性、及び/又は
Vγ9Vδ2 T細胞の増殖を活性化させる特性
のうちの少なくとも1つをさらに呈する。
【0024】
最も特定すると、このような実施形態に従う抗BTN2A抗体は、典型的に、BTN2Aへの結合について、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照マウス抗体である、mAb 107G3と競合しうる。
【0025】
より詳細には、このような抗BTN2A抗体は、
配列番号3を含む、重鎖可変領域であるCDR1、配列番号4を含む、重鎖可変領域であるCDR2、配列番号5を含む、重鎖可変領域であるCDR3、配列番号6を含む、軽鎖可変領域であるCDR1、配列番号7を含む、軽鎖可変領域であるCDR2、及び配列番号8を含む、軽鎖可変領域であるCDR3、又は
配列番号1のアミノ酸配列との、少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列との、少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域、又は
配列番号1のアミノ酸配列との、少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列との、少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域
を含みうる。
【0026】
本開示についての一部の実施形態では、本開示の抗体は、BTN2A1に対する特異性を有する。
【0027】
詳細な実施形態では、本開示の抗BTN2A抗体は、ヒト抗体、キメラ抗体、又はヒト化抗体である。
【0028】
本開示はまた、上記で記載された抗BTN2A抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸分子も包含する。
【0029】
本開示はまた、特に、上記で記載された抗BTN2A抗体のうちのいずれか1つの製造における使用のための、このような核酸を含む宿主細胞にも関する。
【0030】
本開示の別の態様は、治療、とりわけ、がん又は感染性疾患の処置における使用のための、上記で記載した抗BTN2A抗体に関する。
【0031】
典型的に、本開示に従うがんは、扁平上皮がん及び子宮頸部腺癌などの子宮頸癌、卵巣癌、扁平上皮がん及び黒色腫を含む皮膚がん、肺小細胞癌を含む肺がん、前立腺癌、結腸がん、膵がん、及び子宮内膜癌であり、より詳細には、扁平上皮がんであり、子宮頸部腺癌、扁平上皮がん、卵巣癌、肺小細胞癌、前立腺癌、結腸がん、膵がん、及び子宮内膜癌を含む血液がん及び固形がんを含む。
【0032】
本開示はまた、上記で記載した抗BTN2A抗体と、少なくとも1つの薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物にも関する。
【0033】
本開示は、対象における免疫応答を活性化させるための方法であって、対象へと、有効量の、本明細書で開示される抗BTN2Aを投与するステップを含む方法をさらに提示する。
【0034】
[発明の詳細な説明]
定義
本明細書で使用される、「BTN2」という用語は、当技術分野における、その一般的な意味を有し、配列番号17のBTN2A1又は配列番号18のBTN2A2を含む、ヒトBTN2ポリペプチドを指す。
【0035】
配列番号17:BTN2Aアイソフォーム1前駆体(ヒト(Homo sapiens)):
MESAAALHFSRPASLLLLLLSLCALVSAQFIVVGPTDPILATVGENTTLRCHLSPEKNAEDMEVRWFRSQFSPAVFVYKGGRERTEEQMEEYRGRTTFVSKDISRGSVALVIHNITAQENGTYRCYFQEGRSYDEAILHLVVAGLGSKPLISMRGHEDGGIRLECISRGWYPKPLTVWRDPYGGVAPALKEVSMPDADGLFMVTTAVIIRDKSVRNMSCSINNTLLGQKKESVIFIPESFMPSVSPCAVALPIIVVILMIPIAVCIYWINKLQKEKKILSGEKEFERETREIALKELEKERVQKEEELQVKEKLQEELRWRRTFLHAVDVVLDPDTAHPDLFLSEDRRSVRRCPFRHLGESVPDNPERFDSQPCVLGRESFASGKHYWEVEVENVIEWTVGVCRDSVERKGEVLLIPQNGFWTLEMHKGQYRAVSSPDRILPLKESLCRVGVFLDYEAGDVSFYNMRDRSHIYTCPRSAFSVPVRPFFRLGCEDSPIFICPALTGANGVTVPEEGLTLHRVGTHQSL
【0036】
配列番号18:BTN2Aアイソフォーム2前駆体(ヒト(Homo sapiens)):
MEPAAALHFSLPASLLLLLLLLLLSLCALVSAQFTVVGPANPILAMVGENTTLRCHLSPEKNAEDMEVRWFRSQFSPAVFVYKGGRERTEEQMEEYRGRITFVSKDINRGSVALVIHNVTAQENGIYRCYFQEGRSYDEAILRLVVAGLGSKPLIEIKAQEDGSIWLECISGGWYPEPLTVWRDPYGEVVPALKEVSIADADGLFMVTTAVIIRDKYVRNVSCSVNNTLLGQEKETVIFIPESFMPSASPWMVALAVILTASPWMVSMTVILAVFIIFMAVSICCIKKLQREKKILSGEKKVEQEEKEIAQQLQEELRWRRTFLHAADVVLDPDTAHPELFLSEDRRSVRRGPYRQRVPDNPERFDSQPCVLGWESFASGKHYWEVEVENVMVWTVGVCRHSVERKGEVLLIPQNGFWTLEMFGNQYRALSSPERILPLKESLCRVGVFLDYEAGDVSFYNMRDRSHIYTCPRSAFTVPVRPFFRLGSDDSPIFICPALTGASGVMVPEEGLKLHRVGTHQSL
【0037】
本明細書で使用される、「抗体」又は「免疫グロブリン」という用語は、同じ意味を有し、本開示では、同義に使用されるであろう。
【0038】
本明細書で使用される、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫活性部分、すなわち、抗原に免疫特異的に結合する抗原結合性部位を含有する分子を指す。このように、「抗体」という用語は、全抗体分子だけでなく、また、抗体断片のほか、抗体及び抗体断片のバリアント(誘導体を含む)も包含する。
【0039】
本明細書で使用される、「抗体」という用語はまた、二特異性分子又は多特異性分子も含む。抗体は、少なくとも2つの、異なる結合性部位又は標的分子に結合する二特異性分子を作出するように、誘導体化される場合もあり、別の機能的分子、例えば、別のペプチド又はタンパク質(例えば、別の抗体、又は受容体に対するリガンド)へと連結される場合もある。実のところ、抗体は、2つを超える、異なる結合性部位及び/又は標的分子に結合する多特異性分子を作出するように、誘導体化される場合もあり、1つを超える他の機能的分子へと連結される場合もあり;このような多特異性分子もまた、本明細書で使用される、「二特異性分子」という用語により包含されることが意図される。二特異性分子を創出するために、本発明の抗体は、二特異性分子が結果として得られるように、別の抗体、抗体断片、ペプチド、又は結合模倣体など、1つ又は複数の、他の結合性分子へと、機能的に連結されうる(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合的会合により、又は他の形で)。加えて、二特異性分子が、多特異性である実施形態では、分子は、第1の標的エピトープ及び第2の標的エピトープに加えて、第3の結合特異性をさらに含みうる。一実施形態では、本明細書で開示される二特異性分子は、結合特異性として、少なくとも1種の抗体、又は、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ユニボディー若しくは単鎖Fvを含む、その抗体断片を含む。抗体はまた、軽鎖二量体若しくは重鎖二量体、又はLadnerら、米国特許第4,946,778号に記載されているFv構築物若しくは単鎖構築物など、その任意の最小断片でもありうる。
【0040】
本明細書で開示される二特異性分子において用いられうる他の抗体は、マウスmAb、キメラmAb、及びヒト化モノクローナル抗体(mAb)である。
【0041】
本開示の二特異性分子は、当技術分野で公知の方法を使用して、結合特異性の構成要素をコンジュゲートすることにより調製されうる。例えば、各構成要素は、互いとコンジュゲートされる。結合特異性が、タンパク質又はペプチドである場合、様々なカップリング剤又は架橋剤が、共有結合的コンジュゲーションのために使用されうる。架橋剤の例は、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチルチオ酢酸(SATA)、5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)、及びスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-l-カルボン酸(sulfo-SMCC)(Karpovskyら、1984;Liuら、1985)を含む。他の方法は、Brennanら、1985;Glennieら、1987;Paulus、1985において記載されている方法を含む。代替的に、いずれの結合特異性も、同じベクターにおいてコードされ、同じ宿主細胞において、発現され、アセンブルされる場合もある。この方法は、二特異性分子が、mAb×mAb、mAb×Fab、Fab×F(ab’)2、又はリガンド×Fab融合タンパク質である場合に、特に、有用である。本開示の二特異性分子は、1つの単鎖抗体及び結合決定基を含む単鎖分子の場合もあり、2つの結合決定基を含む単鎖二特異性分子の場合もある。二特異性分子の、それらの特異的な標的への結合は、例えば、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(REA)、FACS解析、バイオアッセイ(例えば、増殖阻害及びアポトーシス)、又はウェスタンブロットアッセイにより確認されうる。これらのアッセイの各々は、一般に、目的の複合体に特異的な、標識付け試薬(例えば、抗体)を用いることにより、特に目的のタンパク質-抗体複合体の存在を検出する。
【0042】
天然抗体では、2つの重鎖は、互いと、ジスルフィド結合により連結され、各重鎖は、軽鎖へと、ジスルフィド結合により連結される。ラムダ(λ)鎖及びカッパ(κ)鎖の、2種類の軽鎖が存在する。抗体分子の機能活性を決定する、5つの主要な重鎖クラス(又はアイソタイプ):IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEが存在する。各鎖は、顕著に異なる配列ドメインを含有する。軽鎖は、可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)である、2つのドメインを含む。重鎖は、可変ドメイン(VH)、及び3つの定常ドメイン(CHと総称される、CH1、CH2、及びCH3)である、4つのドメインを含む。軽(VL)鎖及び重(VH)鎖の両方の可変領域は、抗原に対する結合認識及び結合特異性を決定する。軽(CL)鎖及び重(CH)鎖の定常領域ドメインは、抗体鎖の会合、分泌、経胎盤移動性、補体への結合、及びFc受容体(FcR)への結合などの、重要な生物学的特性を付与する。
【0043】
Fv断片とは、免疫グロブリンのFab断片のN末端部分であり、1つの軽鎖の可変部分と、1つの重鎖の可変部分とからなる。抗体の特異性は、抗体の結合性部位と、抗原決定基との、構造的相補性に存する。抗体の結合性部位は、主に、超可変領域又は相補性決定領域(CDR)に由来する残基から構成される。場合によって、非超可変領域又はフレームワーク領域(FR)に由来する残基が、抗体の結合性部位に参与するか、又は全体的なドメイン構造に影響を及ぼし、これにより、結合性部位に影響を及ぼす場合がある。相補性決定領域又はCDRとは、天然の免疫グロブリンの結合性部位のうちの、天然のFv領域の、結合アフィニティー及び結合特異性を、併せて規定するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は各々、それぞれが、L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、及びH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と名指される、3つのCDRを有する。したがって、抗原結合性部位は、典型的に、重鎖V領域及び軽鎖V領域の各々に由来するCDRセットを含む、6つのCDRを含む。「フレームワーク領域」(FR)とは、CDRの間に挿入されたアミノ酸配列を指す。したがって、軽鎖及び重鎖の可変領域は、典型的に、以下の順序:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の、4つのフレームワーク領域及び3つのCDRを含む。
【0044】
抗体可変ドメインにおける残基は、従来、Kabatらにより考案されたシステムに従い番号付けされている。このシステムは、Kabatら、1987、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、US Department of Health and Human Services、NIH、USA(本明細書の後出では、「Kabatら」と称する)において明示されている。本明細書では、この番号付けシステムが使用される。Kabatによる残基呼称は、配列番号による配列におけるアミノ酸残基の直鎖状の番号付けと、常に直接対応するわけではない。実際の直鎖状のアミノ酸配列は、基礎的な可変ドメイン構造の、フレームワークであれ、相補性決定領域(CDR)であれ、構造的構成要素の短縮、又はこれへの挿入に対応する、厳密なKabatによる番号付けより少ないアミノ酸を含有する場合もあり、より多くのアミノ酸を含有する場合もある。残基に対する、正しいKabat番号付けは、所与の抗体について、抗体配列において相同性を有する残基の、「標準的な」Kabat番号付け配列とのアライメントにより決定されうる。重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムに従う、残基31~35(H-CDR1)、残基50~65(H-CDR2)、及び残基95~102(H-CDR3)に配置されている。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムに従う、残基24~34(L-CDR1)、残基50~56(L-CDR2)、及び残基89~97(L-CDR3)に配置されている。
【0045】
詳細な実施形態では、本明細書で提示される抗体は、抗体断片であり、より特定すると、本明細書で開示される抗体の抗原結合性ドメインを含む、任意のタンパク質である。抗体断片は、Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、及びダイアボディーを含むがこれらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用される「単離抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、BTN2A1に特異的に結合する単離抗体は、BTN2A以外の抗原に特異的に結合する抗体を、実質的に含まない)。しかし、BTN2に特異的に結合する単離抗体は、他の種に由来する、類縁のBTN2分子など、他の抗原との交差反応性を有しうる。さらに、単離抗体は、他の細胞素材及び/又は化学物質を、実質的に含まない場合がある。
【0047】
抗体のアフィニティーとは、抗体が、その抗原結合性部位(パラトープ)を介して、本開示におけるBTN2A1などの抗原に提示されたエピトープに結合する強度を指す。アフィニティーは、Kd値の評価に基づき評価されうる。
【0048】
本明細書で使用される、「KD」という用語は、koffのkonに対する比(すなわち、koff/kon)から得られ、モル濃度(M)と表される、平衡解離定数を指すことが意図される。KD値は、抗体の濃度(特定の実験に必要とされる抗体の量)に関するので、低KD値(低濃度)に関し、したがって、抗体の高アフィニティーに関する。抗体についてのKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定されうる。mAbのKD値を決定するために好ましい方法は、それらの参考文献が、参照により全体において本明細書に組み込まれる、Harlowら、「Antibodies: A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1988」、Coliganら編、「Current Protocols in Immunology」、Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience、N.Y.、1992、1993、及びMuller、Meth Enzymol、1983において見出されうる。抗体のKDを決定するための方法は、表面プラズモン共鳴を使用することによる方法、又はビアコア(Biacore)(登録商標)(アフィニティー評価に関する詳しい情報についてはまた、Rich RL、Day YS、Morton TA、Myszka DG、「High-resolution and high-throughput protocols for measuring drug/human serum albumin interactions using BIACORE(R)」、Anal Biochem 2001も参照されたい)、又はオクテット(Octet)(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用することによる方法である。オクテット(登録商標)プラットフォームは、バイオレイヤー干渉法(BLI)技術に基づく。BLI技術の原理は、2つの表面(固定化タンパク質層及び内部参照層)から反射される白色光の、光学的干渉パターンに基づく。バイオセンサーチップ表面に固定化されたリガンドと、溶液における解析物との結合は、バイオセンサーチップにおける光学的厚さの増大をもたらし、これは、ナノメートル単位で測定される、干渉パターンのシフトを結果としてもたらす。波長のシフト(Δλ)は、生物学的層の光学的厚さの変化の直接的な測定値であり、このシフトが、時間経過にわたり測定され、その大きさが、時間の関数としてプロットされると、古典的な会合/解離曲線が得られる。この相互作用は、リアルタイムで測定され、結合特異性、会合速度、及び解離速度、並びに濃度のモニタリングを可能とする(Abdicheら、2008を参照されたいが、また、「結果」における詳細も参照されたい)。アフィニティー測定は、典型的に、25℃で実施される。
【0049】
本明細書で使用される、「kassoc」若しくは「ka」、又は「kon」という用語は、特定の抗体-抗原間相互作用の会合速度を指すことが意図されるのに対し、「kdis」若しくは「kd」、又は「koff」という用語は、特定の抗体-抗原間相互作用の解離速度を指すことが意図される。
【0050】
本明細書で使用される、「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、分子組成が単一である抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、単一の結合特異性、及び特定のエピトープに対するアフィニティーを呈する。
【0051】
本明細書で使用される、「特異性」という用語は、本開示におけるBTN2Aアイソフォーム(BTN2A1及びBTN2A2を含む)など、抗原に提示されたエピトープに、検出可能に結合する抗体の能力を指す。「特異性」という用語は典型的に、ヒトBTN2A、とりわけ、BTN2A1に、10nM若しくはこれ未満、5nM、1nM若しくはこれ未満、100pM若しくはこれ未満、又は10pM又はこれ未満のKDで結合する抗体又はタンパク質を指すことが意図される。典型的に、KDは、10-3pM~10nMの間、とりわけ、0.1pM~10nMの間、とりわけ、0.1pM~5nMの間、又は1pM~10nMの間、とりわけ、1pM~5nM又は10pM~5nMの間から構成される。典型的に、本開示の抗体は、BTN2A1、又はBTN2A1及びBTN2A2の両方に特異的であり、上記で規定されたKDを有する。一部の実施形態では、特異性はまた、BTN2A1を、細胞株(例えば、HEK-293T細胞株)において発現させ、トランスフェクト細胞を、漸増濃度(例えば、5ng/mL~75μg/mLの範囲の)の、本明細書で開示される精製抗BTN2A1 mAb、又はその対照アイソタイプなどの陰性対照で染色することによっても評価されうる。平均値蛍光強度データについての非線形回帰分析は、最大蛍光の50%が観察されるmAb濃度としてのEC50を決定することを可能とする。典型的に、本開示に従う、BTN2A1に特異的な抗体は、BTN2A1に、50μg/mL未満、とりわけ、40μg/mL未満(実施例節を参照されたい)、とりわけ、0.1μg/mL~50μg/mLの間、又は0.5μg/mL~20μg/mLの間のEC50で結合する。
【0052】
本明細書では、「抗原を認識する抗体」及び「抗原に対する特異性を有する抗体」は、「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と互換的に使用される。
【0053】
「選択的に結合すること」とは、典型的に、抗体が、それが特異的であるエピトープなどの標的に、別の標的への結合と比較して、より強く結合することを意味する。抗体は、第1の標的に対する、そのアフィニティーが、第2の標的に対する、そのアフィニティーより大きい場合に、第1の標的に、第2の標的と比較して、より強く結合する。典型的に、抗体は、それが、第1の標的に、前述の通り、第2の標的に対する平衡解離定数(KD)又はEC50より小さな平衡解離定数又はEC50で結合する場合に、第1の標的に、第2の標的と比較して、より強く結合する。最も詳細には、薬剤は、第2の標的に適度に結合することは全くない。本出願の一部の実施形態では、抗体は、BTN2Aに選択的であり、最も特定すると、BTN2A1に選択的である。選択性はまた、他の関連しない分子への非特異的結合と対比した、特異的な抗原への結合における、例えば、約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、10.000:1、又はこれを超えるアフィニティー比によってもさらに呈される(例えば、特異的抗原は、BTN2Aポリペプチド、とりわけ、BTN2A1であり、他の「関連しない分子」は、例えば、BTN3アイソフォームでありうる)。
【0054】
本明細書で開示される抗体の選択性は、意図される標的タンパク質(BTN2Aアイソフォーム)と比較される近縁の他のタンパク質(例えば、BTN3アイソフォーム)へと、交差反応アッセイを適用して調べられうる。このような交差反応性が検出されない一方で、これと同時に、且つ、同じ抗体希釈率で、意図される標的の、強いシグナルをもたらす場合、抗体は、典型的に、選択的であると考えられる(
図3に対応する実施例において詳述された結果を参照されたい)。「抗原と交差反応する」抗体とは、この抗原に、10nM若しくはこれ未満、1nM若しくはこれ未満、又は100pM若しくはこれ未満のK
Dで結合する抗体を指すことが意図される。「特定の抗原と交差反応しない」抗体とは、この抗原に、100nM若しくはこれを超えるK
D、又は1μM若しくはこれを超えるK
D、又は10μM若しくはこれを超えるK
Dで結合する抗体を指すことが意図される。ある特定の実施形態では、抗原と交差反応しない、このような抗体は、標準的な結合アッセイ(典型的に、表3又は
図3Aを参照されたい)において、これらのタンパク質に対して、本質的に検出不能な結合を呈する。
【0055】
詳細な実施形態では、本開示の抗BTN2A1抗体は、下記:
MQRQFSKASRPCLPWVLMEPAAALHFSLPASLILLLLLLRLCALVSAQFTVVGPTDPILAMVGENTTLRCHLSPEKNAEDMEVRWFRSQFSPAVFVYKGGRERTEEQMEEYRGRTTFVSKDISRGSVALIIHNVTAQENGTYRCYFQEGRSYDEAILHLMVAGLGSKPLVEMRGHEDGGIRLECISRGWYPKPLTVWRDPYGRVVPALKEVFPPDTDGLFMVTTAVIIRDKSMRNMSCSISDTLLGQKKESVIFIPESFMPSVSPCVVALPIIVVFLMIIIAVCIYWINRLQKETKILSGEKESERKTREIAVKELKKERVQKEKELQVKEQLQEELRWRRTVLHAVDVVLDPDTAHPDLLLSEDRRSVRRCPLGHLGESVPDNPERFNSEPCVLGRESFASGKHYWEVEVENVIEWTVGVCRDSVERKEEVLLRPRNGFWTLEMCKGQYRALSSPKRILPLKESLCRVGVFLDYEAGDVSFYNMRDRSHIYTCPRLAFSVPVRPFFRIGSDDSPIFICPALTGASGITVPEEGLILHRVGTNQSLMPVGTRCYGHGMRPTGFIRMREERGIHRTTREEREPDMQNFDLGAHWSNNLPSARSREFLNSDLVPDHSLESPVTPGLANKTGEPQAEVTCLCFSLPSSELRAFPSTATNHNHKATALGSDLHIEVKGYEDGGIHLECRSTGWYPQPQIQWSNTKGQHIPAVKAPVVADGVGLYAVAASVIMRGSSGEGVSCIIRNSLLGLEKTASISITDPFFRNAQPWIAALAGTLPISLLLLAGASYFLWRQQKEKIALSRETEREREMKEMGYAATKQEISLRGGEKSLAYHGTHISYLAAPERWEMAVFPNSGLPRCLLTLILLQLPKLDSAPFDVIGPPEPILAVVGEDAELPCRLSPNASAEHLELRWFRKKVSPAVLVHRDGREQEAEQMPEYRGRATLVQDGIAEGRVALRIRGVRVSDDGEYTCFFREDGSYEEALVHLKVAALGSDPHISMQVQENGEIWLECTSVGWYPEPQVQWRTSKGEKFPSTSESRNPDEEGLFTVAASVIIRDTSVKNVSCYIQNLLLGQEKEVEIFIPG
で規定される、配列番号35の配列を有する、カニクイザルBTN2A1オーソログ(cynoBTN2A1;NCBIref.XP_015304392.1)と交差反応する。
【0056】
これらの実施形態の一部では、本明細書で開示される抗体は、cynoBTN2A1の細胞外ドメインに、huBTN2A1において得られる対応するEC50と同等(これを10%超えるか又は下回る)であるEC50で結合する。
【0057】
「同一性」という用語は、2つのポリペプチド分子の間、又は2つの核酸分子の間における、配列類似性を指す。比較される配列の両方における位置が、同じ塩基又は同じアミノ酸残基により占有される場合、それぞれの分子は、この位置において同一である。2つの配列の間の同一性百分率は、2つの配列により共有される、マッチする位置の数を、比較される位置の数で除して、100を乗じた数に対応する。一般に、比較は、2つの配列が、最大の同一性をもたらすようにアライメントされた場合になされる。同一性は、例えば、GCG(Genetics Computer Group、Program Manual for the GCG Package、Version 7、Madison、Wisconsin)の累積プログラム、又はBLAST、FASTA、若しくはCLUSTALWなどの配列比較アルゴリズムのうちのいずれかを使用するアライメントにより計算されうる。
【0058】
本開示に従う参照分子の機能的バリアントは、参照分子(例えば、107G3 mAb)の、対応する機能的特性と、実質的に同等であるか、又はこれより優れた機能的特性を呈する。本明細書では、「実質的に同等である」ことにより、前記機能的バリアントが、参照分子の、対応する機能的特性の、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%を保持することが意図される。
【0059】
一態様では、本開示は、上記で規定された、BTN2A1に対する特異性を有する抗体に関する。典型的に、このような抗体は、上記で規定された通り、ヒトBTN2A1に、10nM又はこれ未満のKDで結合することにおいて特徴づけられる。
【0060】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、BTN3アイソフォームと交差反応しない。
【0061】
BTN2Aに対する特異性を有する抗体であるが、とりわけ、本発明に従うBTN2A1はまた、典型的に、以下の特性:
i.単球の、M2マクロファージへの分極を阻害する特性、
ii.M2マクロファージの、抗腫瘍性M1マクロファージへの復帰を誘導する特性、
iii.NK細胞の直接的な活性化を誘発する特性、
iv.NK細胞媒介性細胞傷害作用を増強する特性
のうちの少なくとも1つを有することにおいても、さらに特徴づけられる。
【0062】
好ましくは、本開示の抗体は、特性i及びiiのうちの少なくとも1つ、並びに特性iii及びivのうちの少なくとも1つを呈し、ほぼ確実に、特性i~ivを呈する。
【0063】
このような有利な特性を有する、本開示の抗BTN2A抗体は、例えば、実施例節で詳述されるアッセイを使用して、抗BTN2A抗体の間でスクリーニングされうる。前記アッセイ及びそれらの実施については、下記で略述される。
【0064】
マクロファージ分極アッセイでは、M2マクロファージは、当該分野で、従来なされてきた通り、抗BTN2A抗体、とりわけ、前出で規定された抗BTN2A1抗体の存在下で、又はその対照アイソタイプなどの陰性対照の存在下で、マクロファージから発生させられる。M2分化の阻害についての対照としての、M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)誘導性M2分極時に、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)及びIFN-γが、単球へと添加されうる。逆に、GM-CSFの存在下で分極させられたM1マクロファージもまた、典型的に、表現型対照として使用されうる。分極の後、細胞膜における、M1関連マーカー及びM2関連マーカーの発現が、結果として得られるマクロファージにおいて、フローサイトメトリーにより評価されうる。
【0065】
本開示に従い、簡便に検出されうるM1マーカーは、限定せずに述べると、PDL1、CD86、CD40、CD80、及び/又はSOCS3を含む。典型的には、PDL1及び/又はCD86が検出される。本開示に従い、簡便に検出されうるM2マーカーは、限定せずに述べると、CD14、CD163、CD206、及びCD209を含み、CD14及び/又はCD163が、典型的に検出される。
【0066】
典型的に、単球の、M2マクロファージへの分極の阻害は、
M2マクロファージが、その対照アイソタイプと比較して、本開示の抗BTN2A抗体の存在下で発生させられる場合に、少なくとも1つのM1マーカーの著明な増大が観察される場合;及び/又は
M2マクロファージが、その対照アイソタイプなど、その陰性対照と比較して、抗BTN2A抗体の存在下で発生させられる場合に、少なくとも1つのM2マーカーの著明な減少が観察される場合
に、本開示の抗BTN2Aにより誘導される。
【0067】
さらに、典型的に、適切な市販のキット(例えば、ELISA様キット)を使用することにより、M1マクロファージと、M2マクロファージとの間で特徴的な弁別機能である、サイトカイン分泌プロファイル(とりわけ、M2関連抗炎症性IL-10サイトカインと、M1関連炎症促進性TNFαサイトカインとを含む)が、培養物上清中で定量されうる。M1マクロファージ又はM2マクロファージ表現型を特徴づけるように、これらもまた、容易に検出されうる、さらなるサイトカインは、M1関連サイトカインについての、IL-1、IL-6、IL-12、及びIL-23、並びにM2関連サイトカインについてのTGFβ及びIL-10を含む。
【0068】
したがって、一部の実施形態では、単球の、M2マクロファージへの分極の阻害もまた、
M2マクロファージが、その対照アイソタイプなどの陰性対照と比較して、本開示の抗BTN2A抗体の存在下で培養される場合に、少なくとも1つのM2関連サイトカインの分泌の著明な減少が、観察される場合、及び/又は
M2マクロファージが、その対照アイソタイプなどの陰性対照と比較して、本開示の抗BTN2A抗体の存在下で培養される場合に、少なくとも1つのM1関連サイトカインの分泌の著明な増大が、観察される場合
に、本開示の抗BTN2A抗体の作用から生じると考えられうる。
【0069】
典型的に、本開示に従う抗BTN2A抗体は、M2関連マーカー(CD14及び/又はCD163など)の発現の減少、及び/又はM2関連サイトカイン(IL-10など)の分泌の減少により評価される通り、単球の、M2マクロファージへの分極を、用量依存的に阻害しうる。前記少なくとも1つのM2関連サイトカインの分泌、又は前記少なくとも1つのM2関連マーカーの発現に関する、このような抗体の50%阻害濃度(IC50)は、実施例節で詳述される用量反応曲線において決定されうる。一部の詳細な実施形態では、本発明の抗BTN2A抗体は、
M2関連マーカー(典型的に、CD14及び/又はCD163)の発現について、0.05μg/mL、とりわけ、0.1μg/mL~100μg/mL、とりわけ、50μg/mLの範囲のIC50、及び/又は
M2関連サイトカイン(典型的に、IL-10)の分泌について、0.01μg/mL、とりわけ、0.05μg/mL~100μg/mL、とりわけ、50μg/mL、最も特定すると、0.1~20μg/mLの範囲のIC50
を呈する。
【0070】
加えて、又は代替的に、本開示に従う抗BTN2A抗体は、M1関連マーカー(CD86及び/又はPDL1など)の発現の増大、及び/又はM2関連サイトカイン(IL-10など)の分泌の減少により評価される通り、M2促進刺激にもかかわらず、単球の分極を、M1マクロファージへと、用量依存的に偏らせうる。前記少なくとも1つのM1関連サイトカインの分泌、又は前記少なくとも1つのM1関連マーカーの発現に関する、このような抗体の50%効果濃度(EC50)は、実施例節で詳述される、用量反応曲線において決定されうる。一部の詳細な実施形態では、本発明の抗BTN2A抗体は、
M1関連マーカー(典型的に、CD86及び/又はPDL1)の発現について、0.01μg/mL、とりわけ、0.1μg/mL~100μg/mL、とりわけ、50μg/mL、最も特定すると、1~50μg/mLの範囲のEC50、及び/又は
M1関連サイトカイン(典型的に、TNFα)の分泌について、0.01μg/mL、とりわけ、0.05μg/mL~100μg/mL、とりわけ、50μg/mL、最も特定すると、0.1~10μg/mLの範囲のEC50
を呈する。
【0071】
M2マクロファージ復帰アッセイでは、典型的に、M-CSFの存在下で、単球から発生させられるM2マクロファージが、抗BTN2A抗体(最も特定すると、前出で規定された、抗BTN2A1抗体)、又はその対照アイソタイプなどの陰性対照の存在下で、多糖(LPS)を伴うか、又は伴わずに培養されうる。M2復帰についての陽性対照として、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)及びIFN-γが、M2培養物へと添加されうる。GM-CSFの存在下で分極させられたM1マクロファージは、典型的に、表現型対照として使用されうる。復帰実験の後、LPSの非存在下で復帰させられたマクロファージが、上記で記載した通りに、フローサイトメトリーにより、M1関連マーカー又はM2関連マーカーの発現について解析されうる。サイトカインの分泌もまた、上記で記載した通りに定量されうる。
【0072】
典型的に、M2マクロファージの、M1マクロファージへの復帰は、
M2マクロファージが、その対照アイソタイプと比較して、前記抗BTN2A抗体の存在下で培養される場合に、M1マーカーの著明な増大が観察される場合、及び/又は
M2マクロファージが、その対照アイソタイプなどの陰性対照と比較して、前記抗BTN2A抗体の存在下で培養される場合に、M2マーカーの著明な減少が観察される場合
に、本開示の抗BTN2A抗体により誘導される。
【0073】
ナチュラルキラー(NK)細胞の活性化は、IL-2及び/又はIL-15の添加を伴うか、又は伴わずに、NK細胞(典型的に、健常ドナーに由来する)を、本明細書で規定される抗BTN2A抗体、又は陰性対照のための対照アイソタイプと共に培養することにより評価されうる。次いで、少なくとも48時間後、とりわけ、少なくとも4日後、NK細胞は、CD69及び/又はCD25など、それらの活性化マーカーについて、細胞外で表現型解析されうる。典型的に、NK細胞の活性化は、CD69及び/又はCD25など、NK細胞の活性化マーカーの著明な増大が、前記抗BTN2Aの存在下で(IL-2及び/又はIL-15による、さらなる活性化を伴うか、又は伴わない)、そのアイソタイプ対照などの陰性対照と比較して観察される場合に、本開示の抗BTN2A抗体により誘導されたと考えられる。本明細書で提示される結果は、本発明の抗体が、NK細胞の直接的な活性化を誘発することを、明確に裏付ける。
【0074】
NK細胞による細胞傷害作用の増強は、in vitroにおいて、NK細胞の脱顆粒を評価することにより、さらに評価されうる。このような機能アッセイでは、白血病細胞株(骨髄性白血病)又は癌腫(例えば、結腸癌、乳腺癌、又は肺腺癌)細胞株などのがん細胞株が、上記で記載されたNK細胞(上記で記載された通りに、抗BTN2A抗体又はその陰性対照で、あらかじめ活性化された)の存在下、並びにIL-2及び/又はIL-15の存在下又は非存在下で共培養される。NK細胞の脱顆粒は、典型的に、フローサイトメトリーにおける、CD107陽性NK細胞の百分率(IL-2及び/又はIL-15の存在下又は非存在下における)により評価されうる。
【0075】
典型的に、NK細胞による細胞傷害作用は、NK細胞の脱顆粒(例えば、CD107陽性NK細胞の百分率)が、前記抗BTN2A抗体による、NK細胞の活性化の後で、その対照アイソタイプなど、その陰性対照と比較して、著明に増大した場合に、抗BTN2A抗体により誘導されたと考えられる。典型的に、本開示の抗BTN2A抗体はまた、NK細胞の脱顆粒(とりわけ、前出で記載された、多様ながん細胞株に対する)も、用量依存的に誘導する。NK細胞の脱顆粒に関する、このような抗体の50%効果濃度(EC50)は、実施例節で詳述される、用量反応曲線で決定されうる。
【0076】
参照抗体である、101G5及び/又は107G3は、上記で記載された機能アッセイにおいて、陽性対照として使用されうる。
【0077】
一部の実施形態では、本開示の抗BTN2A抗体は、下記で十分に記載される通り、参照抗体である、mAb 101G5又はmAb 107G3と実質的に同等であるか、又はこれより優れたレベルへと、単球の、M2マクロファージへの分極を阻害する、M2マクロファージの、抗腫瘍性M1マクロファージへの復帰を誘導する、NK細胞の直接的な活性化を誘発する、及び/又はNK細胞媒介性細胞傷害作用を増強する。本明細書では、「参照抗体と実質的に同等であるか、又はこれより優れたレベルへと、単球の、M2マクロファージへの分極を阻害する、M2マクロファージの、抗腫瘍性M1マクロファージへの復帰を誘導する、NK細胞の直接的な活性化を誘発する、及び/又はNK細胞媒介性細胞傷害作用を増強する」により、被験抗BTN2A1抗体による、被験機能活性の、参照mAbである、107G3又は101G5のうちのいずれか1つと比較した、20%未満、とりわけ、15%未満、とりわけ、10%未満の変動であり、典型的に、5%未満の変動が観察されることが意図される。
【0078】
本開示はまた、
1)BTN2Aに対する特異性を有し、とりわけ、前出で規定された通り、BTN2A1に対する特異性を有する抗体、特に、以下の特性:
典型的に、細胞株、例えば、実施例で記載される通りに、ヒトBTN2A1をコードするプラスミドをトランスフェクトされた、HEK293T細胞株で発現される、ヒトBTN2A1に結合する、より詳細には、50μg/mLを下回り、より詳細には、40μg/mLを下回るEC50で結合するか、又はBTN2A1に、10nM若しくはこれ未満のKDで結合する、及び/或いは約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、10.000:1、又はこれを超える、BTN2A1への結合アフィニティーの、非特異的結合と対比した比を有する特性;
BTN3と交差反応しない特性
のうちの少なくとも1つを有する抗体;
並びに
2)さらに、又は代替的に、機能的特性:
Vγ9/Vδ2 T細胞による、細胞溶解性分子(とりわけ、IFN-γ)の産生を活性化させる特性、及び/又は
Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を活性化させる特性、及び/又は
Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖を活性化させる特性
のうちの1つ又は複数を呈する抗体も包含する。
【0079】
Vγ9/Vδ2 T細胞による、増殖、細胞溶解機能、及び細胞溶解性分子(とりわけ、IFN-γ)の産生は、典型的に、本明細書で開示される抗体により達成される、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞により達成されることが理解される。
【0080】
このような有利な特性を有する、本開示の抗BTN2A1抗体は、実施例で記載される細胞アッセイを使用して、抗BTN2A1抗体の中からスクリーニングされる場合があり、特に、Vγ9/Vδ2 T細胞によるIFNγ分泌についての、ELISAベースの評価によりスクリーニングされうる、及び/又はDaudi細胞株、Jurkat細胞株、L-IPC細胞株、又はMDA-MB-134細胞株など、多様ながん細胞株におけるCD107脱顆粒アッセイによりスクリーニングされうる。
【0081】
本開示に従う細胞傷害性分子は、典型的に、IFNγサイトカイン又はTNFαサイトカインに存在する。
【0082】
本明細書で使用される、「細胞溶解性分子の産生を活性化させること」(典型的に、IFNγ/又はTNFαの産生)とは、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞による、少なくとも、IFNγ又はTNFαの産生の著明な増大が、対照の活性化Vγ9/Vδ2 T細胞(対照としてのIgG1又はハイブリドーマ培養培地により活性化させた)と比較した場合に観察され、この場合、前記Vγ9/Vδ2 T細胞は、標的細胞株(Daudi細胞株、Jurkat細胞株、L-IPC細胞株、又はMDA-MB-134細胞株)との共培養、又はpAg(phosphoantigen)により活性化されることを意味する。典型的に、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞による、IFNγ又はTNFαの産生の活性化は、フローサイトメトリーにおいて評価される、IFNγ又はTNFαに対する抗体を伴う細胞内標識化による細胞アッセイにおいて、又はそれらの培養培地において、Vγ9/Vδ2 T細胞により分泌された、IFNγ又はTNFαの、ELISAベースの量により測定されうる。このようなアッセイについては、下記の実施例(「材料及び方法」節を参照されたい)において、より詳細に記載される。
【0083】
本明細書で使用される、「活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を活性化させること」とは、活性化ヒトVγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能の著明な増大が、対照の活性化ヒトVγ9/Vδ2 T細胞(対照としてのIgG1又はハイブリドーマ培養培地により活性化させた)と比較した場合に観察され、この場合、前記ヒトVγ9/Vδ2 T細胞は、標的細胞株(Daudi細胞株、Jurkat細胞株、L-IPC細胞株、又はMDA-MB-134細胞株)との共培養、又はpAg(phosphoantigen)により活性化されることを意味する。典型的に、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能の活性化は、陽性の脱顆粒Vγ9/Vδ2 T細胞を検出するための脱顆粒マーカーとして、CD107aと、CD107bとを、併せて使用して、標準的な細胞株に対する、Vγ9/Vδ2 T細胞脱顆粒の誘導の活性化の測定に従い測定されうる。イオノマイシンを伴う、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)による、Vγ9/Vδ2 T細胞の処理は、典型的に、Vγ9/Vδ2 T細胞の活性化についての陽性対照として使用されうる。このようなアッセイについては、下記の実施例において、より詳細に記載される。
【0084】
本明細書で使用される、「活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖を活性化させること」とは、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖の著明な増大が、対照としてのIgG1により活性化させたVγ9/Vδ2 T細胞の増殖と比較した場合に観察され、この場合、前記Vγ9/Vδ2 T細胞は、標的細胞株(Daudi細胞株、Jurkat細胞株、L-IPC細胞株、又はMDA-MB-134細胞株)との共培養、又はpAg(phosphoantigen)により活性化されることを意味する。典型的に、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖は、末梢血から精製されたVγ9/Vδ2 T細胞に対する、CFSE染色又はCell Trace violet染色及びフローサイトメトリーによる細胞アッセイにおいて、又は刺激を伴うか、若しくは伴わない、末梢血単核細胞内の、Vγ9/Vδ2 T細胞コンパートメントの拡大をモニタリングすることにより測定されうる。
【0085】
一部の実施形態では、本開示の抗BTN2A1抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を、下記で記載される参照抗体である、mAb 107G3と実質的に同等であるか、又はこれより優れたレベルへと活性化させる。本明細書では、「参照抗体と実質的に同等なレベルへと、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を活性化させること」により、被験抗BTN2A1抗体による、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能の、参照mAbである、107G3と比較した、15%未満、とりわけ、10%未満の変動であり、典型的に、5%未満の変動が観察されることが意図される。
【0086】
一部の実施形態では、本開示の抗BTN2A1抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞による、細胞溶解性分子(すなわち、少なくとも、IFNγ又はTNFα)の産生を、下記で記載される参照抗体である、mAb 107G3と実質的に同等であるか、又はこれより優れたレベルへと活性化させる。本明細書では、「参照抗体と実質的に同等なレベルへと、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞による、少なくとも、IFNγ又はTNFαの産生を活性化させること」により、被験抗BTN2A1抗体による、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞による、細胞溶解性分子の産生の、参照mAbである、107G3と比較した、15%未満、とりわけ、10%未満の変動であり、典型的に、5%未満の変動が観察されることが意図される。
【0087】
一部の実施形態では、本開示の抗BTN2A1抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を、下記で記載される参照抗体である、mAb 107G3と実質的に同等であるか、又はこれより優れたレベルへと活性化させる。本明細書では、「参照抗体と実質的に同等なレベルへと、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を活性化させること」により、被験抗BTN2A1抗体による、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能の、参照mAbである、107G3と比較した、15%未満、とりわけ、10%未満の変動であり、典型的に、5%未満の変動が観察されることが意図される。
【0088】
参照抗体である、mAb 101G5、mAb 107G3、及びこれらのバリアント
本明細書で開示される抗体は、参照モノクローナル抗体である、それぞれ、配列番号19及び20で規定される、それぞれのVH領域及びVL領域を含むmAb 101G5と、それぞれ、配列番号1及び2で規定される、それぞれのVH領域及びVL領域を含むmAb 107G3とを含む。
【0089】
本開示の他の抗体は、それぞれ、配列番号1及び2で規定されるVH領域及びVL領域、又はそれぞれ、配列番号19及び20で規定されるVH領域及びVL領域と、少なくとも90%、とりわけ、少なくとも、95、96、97、98、99、又は100パーセントの同一性を有する抗体を含む。
【0090】
特定の実施形態では、本開示に従う抗BTN2A抗体、典型的に、ヒト化抗BTN2A1抗体は、配列番号3を含む、重鎖可変領域であるCDR1、配列番号4を含む、重鎖可変領域であるCDR2、配列番号5を含む、重鎖可変領域であるCDR3、配列番号6を含む、軽鎖可変領域であるCDR1、配列番号7を含む、軽鎖可変領域であるCDR2、及び配列番号8を含む、軽鎖可変領域であるCDR3を含む。本明細書で開示される抗体についての、詳細な実施形態では、6つのCDR領域は、配列番号3~8で規定される、参照mAbである107G3の6つのCDR領域と100%同一である。
【0091】
他の詳細な実施形態では、本開示に従う抗BTN2A1抗体、典型的に、ヒト化抗BTN2A1抗体は、配列番号21を含む、重鎖可変領域であるCDR1、配列番号22を含む、重鎖可変領域であるCDR2、配列番号23を含む、重鎖可変領域であるCDR3、配列番号24を含む、軽鎖可変領域であるCDR1、配列番号25を含む、軽鎖可変領域であるCDR2、及び配列番号26を含む、軽鎖可変領域であるCDR3を含む。
【0092】
本明細書で開示される抗体についての、詳細な実施形態では、6つのCDR領域は、配列番号21~26で規定される、参照mAbである、101G5の、6つのCDR領域と100%同一である。本明細書で開示される他の抗体は、アミノ酸の欠失、挿入、又は置換により変異させられているが、CDR領域において、参照mAbである、101G5のCDR領域との、少なくとも60、70、80、90、95、96、97、98、99、又は100パーセントの同一性を、なおも有するアミノ酸を有する抗体を含む。典型的には、本開示に従い、抗体は、配列番号21~26で規定される、参照抗体である、mAb 107G3のCDR配列と比較して、1つ又は複数のCDRにおける、1つ、2つ、3つ、又は4つの間のアミノ酸の変動(欠失、挿入、又は置換を含む)を有しうる。
【0093】
本明細書で開示される抗体についての、他の詳細な実施形態では、6つのCDR領域は、配列番号3~8で規定される、参照mAbである107G3の6つのCDR領域と100%同一である。本明細書で開示される他の抗体は、アミノ酸の欠失、挿入、又は置換により変異させられているが、CDR領域において、参照mAbである、107G3のCDR領域との、少なくとも60、70、80、90、95、96、97、98、99、又は100パーセントの同一性を、なおも有するアミノ酸を有する抗体を含む。典型的には、本開示に従い、抗体は、配列番号3~8で規定される、参照抗体である、mAb 107G3のCDR配列と比較して、1つ又は複数のCDRにおける、1つ、2つ、3つ、又は4つの間のアミノ酸の変動(欠失、挿入、又は置換を含む)を有しうる。
【0094】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、参照mAbである、101G5又は107G3のそれぞれの、対応する6つのCDR領域と100%同一である、6つのCDR領域を有するmAb 101G5又はmAb 107G3の変異体バリアントであり、この場合、前記変異体バリアント抗体は、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのアミノ酸が、対応する参照抗体の、対応するフレームワーク領域と比較された場合に、FR1領域、FR2領域、FR3領域、及びFR4領域における、アミノ酸の欠失、挿入、又は置換により変異させられた、変異体アミノ酸配列を含む。
【0095】
機能的バリアント抗体
実施例で提示される実験データにより示される通り、参照mAbである、107G3は、ヒトBTN2A1の65、68、69、72、78、84、85、95、97、100位における残基に結合する。したがって、本開示は、配列番号17の60~100位に位置するアミノ酸残基を含むコンフォメーションエピトープに結合し、最も特定すると、配列番号17の65、68、69、72、78、84、85、95、97、100位におけるアミノ酸残基を含むコンフォメーションエピトープに結合し、前出で規定され、下記でさらに想起される機能的特性のうちの1つ又は複数を有する、特に、参照mAbである、107G3の機能的特性のうちの1つ又は複数を有するmAbを包含する。
【0096】
これもまた、実施例で提示される実験データにより示される通り、参照mAbである、101G5は、BTN2A1の212、213、218、220、224、229位における残基に結合する。したがって、本開示は、配列番号17の210~230位に位置するアミノ酸残基を含むコンフォメーションエピトープに結合し、最も特定すると、配列番号17の212、213、218、220、224、229位における残基を含むコンフォメーションエピトープに結合し、前出で規定され、下記でさらに想起される機能的特性のうちの1つ又は複数を有する、特に、参照mAbである、101G5の機能的特性のうちの1つ又は複数を有するmAbを包含する。
【0097】
さらに他の実施形態では、本開示の機能的バリアント抗体は、上記で記載した参照抗体である、mAb 101G5又はmAb 107G3のうちのいずれか1つの、対応するアミノ酸配列と相同であるか、又は、より詳細には、同一である、全長の重鎖アミノ酸配列及び全長の軽鎖アミノ酸配列、又は可変領域の重鎖アミノ酸配列及び可変領域の軽鎖アミノ酸配列、若しくは6つのCDR領域全てのアミノ酸配列を有し、この場合、このような機能的バリアント抗体は、前記参照抗体の、所望の機能的特性を保持する。
【0098】
参照mAbである、101G5抗体、又は参照抗体である、mAb 107G3の機能的バリアント、とりわけ、本開示のモノクローナル抗体の文脈で使用される、VL、VH、又はCDRの機能的バリアントは、抗体が、親抗体(例えば、mAb 101G5又はmAb 107G3)に対して、少なくともかなりの比率(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%)のアフィニティー(典型的に、典型的に、25℃で実施される、表面プラズモン共鳴(SPR)により、又はバイオレイヤー干渉法(BLI)技術に基づく、オクテット(登録商標)プラットフォームを使用することにより、測定されるKDにより評価される)、及び/又は選択性をやはり保持することを可能とし、場合によって、本開示の、このようなモノクローナル抗体は、親Ab(例えば、mAb 101G5又はmAb 107G3)より大きなアフィニティー、選択性、及び/又は特異性と関連しうる。
【0099】
参照mAbである、101G5若しくは107G3、又は本明細書で開示される、前記参照抗体のバリアントの、所望の機能的特性は、
i.BTN2A1に対する特異性、特に、細胞株、例えば、実施例で記載される通りに、ヒトBTN2A1をコードするプラスミドをトランスフェクトされたHEK-293T BTN2 KO細胞において発現されるヒトBTN2A1への結合の特性、より詳細には、50μg/mLを下回り、より詳細には、40μg/mLを下回るEC50、或いは表面プラズモン共鳴(SPR)(典型的に、25℃で)、又はLuminexアッセイ(実施例で例示される)若しくはオクテット(登録商標)(Abdicheら、2008)により測定される、10nM又はこれ未満のKDを伴う特性、及び/或いは約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、10.000:1、又はこれを超えるBTN2A1への結合アフィニティーの、非特異的結合と対比した比を有する特性;並びに/或いは
ii.典型的に、実施例節で例示される通りに評価される、単球の、M2マクロファージへの分極の阻害、及び/又は
iii.典型的に、実施例節で例示される通りに評価される、M2マクロファージの、抗腫瘍性M1マクロファージへの復帰の誘導、及び/又は
iv.典型的に、実施例節で例示される通りに評価される、NK細胞活性化の直接的な誘発、及び/又は
v.典型的に、実施例節で例示される通りに評価される、NK細胞媒介性細胞傷害作用の増強
からなる群から選択されうる。
【0100】
一部の、より詳細な実施形態では、参照mAbである107G3、又は本明細書で開示される、前記参照抗体のバリアントの、所望の機能的特性は、
vi.典型的に、実施例で例示される通りに評価される、Vγ9/Vδ2 T細胞からの、細胞溶解性分子(例えば、IFNγ又はTNFα)の産生の活性化、
vii.典型的に、実施例で例示される通りに評価される、Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能の活性化;及び/又は
viii.典型的に、実施例で例示される通りに評価される、Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖の活性化
からなる群からさらに選択されうる。
【0101】
典型的に、参照mAbである101G5又は107G3の機能的バリアントの、上記の点(ii)~(v)に従う機能的特性は、上記で記載した、対応する参照抗体である、mAb 101G5又は107G3の、対応する機能的特性と、実質的に同等であるか、又はこれより優れている。本明細書では、「実質的に同等である」ことにより、機能的バリアントが、参照mAbである、107G3の、対応する機能的特性の、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を保持することが意図される。
【0102】
典型的に、参照mAbである107G3の機能的バリアントの、上記の点(vi)~(viii)に従う機能的特性は、上記で記載した参照抗体である、mAb 107G3の、対応する機能的特性と、実質的に同等であるか、又はこれより優れている。本明細書では、「実質的に同等である」ことにより、機能的バリアントが、参照mAbである、107G3の、対応する機能的特性の、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を保持することが意図される。
【0103】
例えば、本開示は、参照mAbである、101G5の、機能的バリアント抗体であって、CDR配列、すなわち、6つのCDR領域である、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号21~26で規定される、参照抗体であるmAb 101G5の、対応するCDR配列に対する、少なくとも60、70、90、95、又は100パーセントの配列同一性を共有する、可変重鎖(VH)配列及び可変軽鎖(VL)配列を含み、BTN2Aに特異的に結合し、以下の機能的特性i)~iv):
i.単球の、M2マクロファージへの分極を阻害する特性、
ii.M2マクロファージの、抗腫瘍性M1マクロファージへの復帰を誘導する特性、
iii.NK細胞の直接的な活性化を誘発する特性、
iv.NK細胞媒介性細胞傷害作用を増強する特性
のうちの少なくとも1つを呈する、機能的バリアント抗体に関する。
【0104】
好ましくは、抗体は、特性i)及びii)のうちの少なくとも1つ、並びに特性iii)及びiv)のうちの少なくとも1つを呈し、最も好ましくは、抗体は、特性i)~iv)を呈する。
【0105】
本開示はまた、参照mAbである、107G3の、機能的バリアント抗体であって、CDR配列、すなわち、6つのCDR領域である、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号3~8で規定される、参照抗体であるmAb 107G3の、対応するCDR配列に対する、少なくとも60、70、90、95、又は100パーセントの配列同一性を共有する、可変重鎖(VH)配列及び可変軽鎖(VL)配列を含み、BTN2A1に特異的に結合し、以下の機能的特性:
i.単球の、M2マクロファージへの分極を阻害する特性、
ii.M2マクロファージの、抗腫瘍性M1マクロファージへの復帰を誘導する特性、
iii.NK細胞の直接的な活性化を誘発する特性、
iv.NK細胞媒介性細胞傷害作用を増強する特性、
v.Vγ9/Vδ2 T細胞による、IFNγ又はTNFαの産生を活性化させる特性、
vi.Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を活性化させる特性、
vii.Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖を活性化させる特性
のうちの少なくとも1つを呈する、機能的バリアント抗体にも関する。
【0106】
好ましくは、前記機能的バリアントは、機能活性i)~iv)のうちの少なくとも1つ(好ましくは、少なくとも活性i)及び/又はii)、並びにiii)及び/又はiv))、及び機能活性v)~vii)のうちの少なくとも1つを呈する。
【0107】
本開示は、参照mAbである、101G5の、機能的バリアント抗体であって、それぞれ、配列番号19及び20で規定される、前記参照抗体である、mAb 101G5の、対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域と、少なくとも80%、90%、又は少なくとも95、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、BTN2に特異的に結合し、以下の機能的特性:
i.単球の、M2マクロファージへの分極を阻害する特性、
ii.M2マクロファージの、抗腫瘍性M1マクロファージへの復帰を誘導する特性、
iii.NK細胞の直接的な活性化を誘発する特性、
iv.NK細胞媒介性細胞傷害作用を増強する特性
のうちの少なくとも1つを呈する、機能的バリアント抗体にさらに関する。
【0108】
好ましくは、機能的バリアント抗体は、特性i)及びii)のうちの少なくとも1つ、並びに特性iii)及びiv)のうちの少なくとも1つを呈し、最も好ましくは、抗体は、特性i)~iv)を呈する。
【0109】
本開示は、参照mAbである、107G3の、抗体であって、それぞれ、配列番号1及び2で規定される、前記参照抗体である、mAb 107G3の、対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域と、少なくとも80%、90%、又は少なくとも95、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、BTN2Aに特異的に結合し、以下の機能的特性:
i.単球の、M2マクロファージへの分極を阻害する特性、
ii.M2マクロファージの、抗腫瘍性M1マクロファージへの復帰を誘導する特性、
iii.NK細胞の直接的な活性化を誘発する特性、及び/又は
iv.NK細胞媒介性細胞傷害作用を増強する特性、
v.Vγ9/Vδ2 T細胞による、細胞溶解性分子(IFNγ又はTNFα)の産生を活性化させる特性、
vi.Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を活性化させる特性、及び/又は、
vii.Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖を活性化させる特性
のうちの少なくとも1つを呈する、機能的バリアント抗体にさらに関する。
【0110】
一部の実施形態では、前記機能的バリアントは、機能活性i)~iv)のうちの少なくとも1つ(とりわけ、少なくとも活性i)及び/又はii)、並びにiii)及び/又はiv))、及び機能活性v)~vii)のうちの少なくとも1つを呈する。
【0111】
一部の実施形態では、前記機能的バリアントは、1つ又は複数の機能活性i)~iv)、又は、1つ又は複数の機能活性v)~vii)を呈する。
【0112】
典型的に、参照mAbである101G5又は107G3の機能的バリアントの、上記の点(i)~(iv)に従う機能的特性は、上記で記載した、対応する参照抗体である、mAb 101G5又は107G3の、対応する機能的特性と、実質的に同等であるか、又はこれより優れている。本明細書では、「実質的に同等である」ことにより、機能的バリアントが、参照mAbである107G3の、対応する機能的特性の、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を保持することが意図される。
【0113】
多様な実施形態では、抗体は、上記で論じられた、所望の機能的特性のうちの1つ又は複数を呈しうる。
【0114】
抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体でありうる。典型的に、抗体又はタンパク質は、ヒト化抗体、より詳細には、ヒト化サイレント抗体である。
【0115】
本明細書で使用される、「サイレント」抗体という用語は、標的細胞の細胞溶解を測定する、in vitro ADCC活性アッセイで測定される通り、ADCC活性を呈さないか、又は低ADCC活性を呈する抗体を指す。
【0116】
一実施形態では、「ADCC活性を伴わないか、又はADCC活性が低度である」という用語は、サイレント抗体が、対応する野生型(非サイレント)抗体、例えば、野生型ヒトIgG1抗体により観察されるADCC活性の、50%を下回る、例えば、10%を下回るADCC活性を呈することを意味する。典型的に、サイレント抗体によるin vitro ADCC活性アッセイでは、対照Fab抗体と比較して、検出可能なADCC活性が観察されない。
【0117】
エフェクター機能のサイレンシングは、抗体のFc定常部分における変異により得られ、当技術分野:Strohl、2009(LALA及びN297A);Baudino、2008、D265A(Baudinoら、J.Immunol.2008、Strohl、CO Biotechnology、20、2009)において記載されている。サイレントIgG1抗体の例は、IgG1 Fcのアミノ酸配列の、234、235、及び/又は331位(EU番号付け)における、ADCCを低減する変異を含む。別のサイレントIgG1抗体は、グリコシル化抗体又は非グリコシル化抗体を結果としてもたらす、N297A変異を含む。
【0118】
CDRバリアントの配列は、保存的置換により、親抗体配列のCDRの配列と異なる場合があり;例えば、バリアントにおける、少なくとも9つ、8つ、7つ、6つ、5つ、4つ、3つ、2つ、又は1つなど、少なくとも10の置換は、保存的なアミノ酸残基の置きかえである。本開示の文脈では、保存的置換は、以下:
脂肪族残基:I、L、V、及びM
シクロアルケニル会合残基:F、H、W、及びY
疎水性残基:A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、W、及びY
負帯電残基:D及びE
極性残基:C、D、E、H、K、N、Q、R、S、及びT
正帯電残基:H、K、及びR
小型残基:A、C、D、G、N、P、S、T、及びV
極小型残基:A、G、及びS
ターンの形成に関与する残基:A、C、D、E、G、H、K、N、Q、R、S、P、及びT
可撓性の残基:Q、T、K、S、G、P、D、E、及びR
の通りに反映されたアミノ酸クラス内の置換により規定されうる。さらなる保存的置換の群分けは、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、及びアスパラギン-グルタミンを含む。バリアントCDRでは、疎水性/親水性特性及び残基の重量/サイズに関する保存もまた、mAb1~mAb6のうちのいずれか1つのCDRと比較して、実質的に保持される。当技術分野では、タンパク質に対する、相互作用的生物学的機能の付与における、アミノ酸の疎水性指数の重要性が、一般に理解されている。アミノ酸の相対疎水性特徴は、結果として得られるタンパク質の二次構造に寄与し、これが、タンパク質の、他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を規定することが受容されている。各アミノ酸は、それらの疎水性及び電荷特徴に基づき、疎水性指数を割り当てられており、これらは、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタメート(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リシン(-3.9);及びアルギニン(-4.5)である。類似する残基の保持はまた、又は代替的に、BLASTプログラム(例えば、標準設定:BLOSUM62、Open Gap=11、及びExtended Gap=1を使用する、NCBIから入手可能な、BLAST 2.2.8)の使用により決定される、類似性スコアによっても測定されうる。適切なバリアントは、典型的に、親ペプチドに対する、少なくとも約80%の同一性を呈する。本開示に従い、第2のアミノ酸配列と、少なくとも約70%の同一性を有する、第1のアミノ酸配列とは、第1の配列が、第2のアミノ酸配列と、70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;又は100%の同一性を有することを意味する。本開示に従い、第2のアミノ酸配列と、少なくとも約50%の同一性を有する、第1のアミノ酸配列とは、第1の配列が、第2のアミノ酸配列と、50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;又は100%の同一性を有することを意味する。
【0119】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、キメラ抗体、典型的に、マウス/ヒトキメラ抗体である。「キメラ抗体」という用語は、非ヒト動物に由来する抗体のVHドメイン及びVLドメインと、ヒト抗体のCHドメイン及びCLドメインとを含む、モノクローナル抗体を指す。非ヒト動物として、マウス、ラット、ハムスター、ウサギなど、任意の動物が使用されうる。特に、前記マウス/ヒトキメラ抗体は、参照抗体である、mAb 101G5又はmAb 107G3のうちのいずれか1つの、VHドメイン及びVLドメインを含みうる。
【0120】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、ヒト化抗体である。詳細な実施形態では、本開示の抗体は、参照抗体である、mAb 101G5又はmAb 107G3のうちのいずれか1つの、6つのCDRを含む、ヒト化抗体である。本明細書で使用される、「ヒト化抗体」という用語は、フレームワーク領域(FR)が、親免疫グロブリン(例えば、マウスCDR)のFRと比較して、異なる種(例えば、ヒト種)のドナー免疫グロブリンに由来するFRを含むように修飾された抗体を指す。
【0121】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、Fab、F(ab’)2、Fab’、及びscFvからなる群から選択される。本明細書で使用される、「Fab」という用語は、IgGを、プロテアーゼであるパパインで処置することにより得られる断片のうち、約50,000の分子量と、抗原結合活性とを有し、H鎖N末端側の約半分と、L鎖の全体とが、ジスルフィド結合を介して、一体に結合された抗体断片を表す。「F(ab’)2」という用語は、約100,000の分子量と、抗原結合活性とを有し、IgGを、プロテアーゼであるペプシンで処置することにより得られる断片のうち、ヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合されるFabより、やや大型の抗体断片を指す。「Fab’」という用語は、約50,000の分子量と、抗原結合活性とを有し、F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することにより得られる抗体断片を指す。単鎖Fv(「scFv」)ポリペプチドとは、通例、ペプチドコードリンカーにより連結された、VH及びVLをコードする遺伝子を含む、遺伝子融合体により発現される、共有結合的に連結されたVH:VLヘテロ二量体である。本開示のヒトscFv断片は、典型的に、遺伝子組換え法を使用することにより、適切なコンフォメーションに保持されたCDRを含む。
【0122】
変異体アミノ酸配列を伴う、機能的バリアント抗体は、コード核酸分子の変異誘発(例えば、部位指向変異誘発又はPCR媒介性変異誘発)に続く、本明細書で記載される機能アッセイを使用する、保持された機能(すなわち、上記で明示された機能)について変更された、コードされる抗体についての試験により得られうる。
【0123】
参照101G5 mAb又は参照107G3 mAbと交差競合する抗体
本明細書で開示される参照mAbである、101G5、又は参照mAbである、107G3の、類似する有利な特性を伴う、さらなる抗体は、標準的なBTN2A1結合アッセイにおいて、上記で記載した、前記参照mAbである、107G3と、統計学的に有意に交差競合する(例えば、この結合を、競合的に阻害する)それらの能力に基づき同定されうる。
【0124】
被験抗体はまず、BTN2A1に対する、それらの結合アフィニティーについて、典型的に、実施例(「材料及び方法」節を参照されたい)で評価される通りに、例えば、ファージディスプレイ技術を使用して、例えば、ヒト組換え抗体ライブラリーから、又はBTN2A1抗原で免疫化されたヒト可変領域抗体を発現するトランスジェニックマウスからスクリーニングされうる。
【0125】
別の実施形態では、本開示は、上記で記載した、少なくとも参照mAbである、107G3、又は参照mAbである、101G5が結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗体を提示する。例節で例示される通り、参照mAbである、101G5及び107G3は、BTN2A1における、同じエピトープに結合しない。
【0126】
本開示の抗体の、ヒトBTN2A1への結合と交差競合するか、又はこれを阻害する、被験抗体の能力は、被験抗体が、ヒトBTN2A1への結合について、この抗体と競合しうることを裏付け、非限定的な理論に従い、このような抗体は、ヒトBTN2A1において、それが競合する抗体と同じであるか、又は類似の(例えば、構造的に類似するか、又は空間的に近位の)エピトープに結合する。
【0127】
例えば、以下の試験は、抗BTN2A1抗体を、参照抗体である、mAb 107G3と交差競合する、その能力についてスクリーニングする、及び/又は抗BTN2A1抗体を、前記参照抗体と同じエピトープに結合する、その能力についてスクリーニングするのに使用されうる:ヒトBTN2A1をトランスフェクトされたBTN2KO細胞(典型的に、実施例で記載される、HEK293T)を、飽和濃度(例えば、10μg/mL)の参照抗体である、mAb 107G3で染色することができる。次いで、異なる用量の被験抗BTN2A1 mAbを、参照抗体である、mAb 107G3との、それらの潜在的な競合可能性について調べることができる。このような参照抗体の存在下では、参照抗体と競合するmAbは、BTN2A1を認識することが不可能であろう。データは、平均値蛍光強度として表すことができる。代替的に、競合アッセイは、実施例節で記載される、ビニングアッセイにおいて実施されうる。典型的に、ビニング実験は、組換えヒトBTN2A1を、Biosensorに固定し、参照抗体に続き、競合抗体を提示することにより実施されうる。
【0128】
選択された抗体は、特に、前出で詳述された、mAb 101G5又はmAb 107G3の有利な特性について、さらに調べられうる。
【0129】
したがって、一実施形態では、本開示は、BTN2A1への結合について、参照mAbである、101G5又は参照mAbである、107G3と競合する単離抗体であって、
i.BTN2A1に対する特異性を有する、特に、細胞株、例えば、実施例で記載される通りに、ヒトBTN2A1をトランスフェクトされたHEK-293T BTN2 KO細胞において発現されるヒトBTN2A1に結合する、より詳細には、50μg/mLを下回り、より詳細には、40μg/mLを下回るEC50、或いは表面プラズモン共鳴(SPR)、又はLuminexアッセイ(実施例で例示される)若しくはオクテット(登録商標)アッセイにより測定される、10nM又はこれ未満のKDで結合する、及び/或いは約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、10.000:1、又はこれを超える、BTN2A1への結合アフィニティーの、非特異的結合と対比した比を有する(さらなる詳細についてはまた、上記も参照されたい);並びに/或いは
ii.単球の、M2マクロファージへの分極を阻害する、
iii.M2マクロファージの、抗腫瘍性M1マクロファージへの復帰を誘導する、
iv.NK細胞の直接的な活性化を誘発する、及び/又は
v.NK細胞媒介性細胞傷害作用を増強する
単離抗体を提示する。
【0130】
代替的に、又はさらに、前記抗体は、
vi.典型的に、実施例で例示される通りに評価される、Vγ9/Vδ2 T細胞による、細胞溶解性分子(例えば、IFNγ又はTNFα)の産生を活性化させる;及び/又は
vii.典型的に、実施例で例示される通りに評価される、Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を活性化させる;及び/又は
viii.典型的に、実施例で例示される通りに評価される、Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖を活性化させる。
【0131】
このような実施形態において、より詳細には、前記抗体は、BTN3と交差反応しない。
【0132】
典型的に、BTN2A1への結合について、参照mAbである、101G5又は107G3と競合する抗体の、上記の点(iii)~(v)に従う機能的特性は、上記で記載した、参照抗体である、mAb 101G5又はmAb 107G3の、対応する機能的特性と、実質的に同等であるか、又はこれより優れている。本明細書では、「実質的に同等である」ことにより、機能的バリアントが、参照mAbである、101G5又は107G3の、対応する機能的特性の、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%を保持することが意図される。
【0133】
典型的に、本開示に従う、BTN2A1への結合について、参照mAbである、107G3と競合する抗体は、参照抗体(例えば、mAb 107G3)に対して、少なくともかなりの比率(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%)のアフィニティー及び/又は選択性を、やはり保持し、場合によって、参照抗体(例えば、mAb 107G3)より大きなアフィニティー、選択性、及び/又は特異性と関連しうる。
【0134】
ある特定の実施形態では、交差遮断抗体、又はBTN2A1への結合について、参照mAbである、101G5若しくは107G3と競合する抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト組換え抗体である。
【0135】
モノクローナル抗体を作製するトランスフェクトーマの作出
本開示の抗体は、限定せずに述べると、単独で、又は組合せによる、任意の化学法、生物学法、遺伝子法、又は酵素法など、当技術分野で公知の、任意の技法により作製される。典型的に、所望の配列のアミノ酸配列を知れば、当業者は、ポリペプチドを作製するための標準的な技法により、前記抗体を、たやすく作製することができる。例えば、本開示の抗体は、周知の固相法を使用して、典型的に、市販のペプチド合成装置(Applied Biosystems、Foster City、California製のペプチド合成装置など)を使用し、製造元の指示書に従い合成されうる。代替的に、本開示の抗体は、当技術分野で周知の組換えDNA法により合成されうる。例えば、抗体は、抗体をコードするDNA配列の、発現ベクターへの組込み、及び所望の抗体を発現させる、適切な真核宿主又は原核宿主への、このようなベクターの導入の後における、DNA発現産物としてとして得られ、周知の技法を使用して、これらの宿主から単離されうる。
【0136】
したがって、本開示のさらなる目的は、本明細書で開示される抗体をコードする核酸分子に関する。より特定すると、核酸分子は、本開示の抗体の重鎖又は軽鎖をコードする。より特定すると、核酸分子は、参照抗体である、mAb 107G3の重鎖可変領域(VH領域)又は軽鎖可変領域(VL)をコードする、対応する核酸に対する、少なくとも70%、80%、90%、95%、又は100%の同一性を有する領域をコードするVH又はVLを含む。
【0137】
典型的に、前記核酸は、プラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージ、又はウイルスベクターなど、任意の適切なベクターに組み入れられうる、DNA分子又はRNA分子である。本明細書で使用される、「ベクター」、「クローニングベクター」、及び「発現ベクター」という用語は、宿主を形質転換し、導入された配列の発現(例えば、転写及び翻訳)を促進するように、DNA配列又はRNA配列(例えば、外来遺伝子)が、宿主細胞へと導入されうる媒体を意味する。したがって、本開示のさらなる目的は、本明細書で開示される核酸を含むベクターに関する。このようなベクターは、対象への投与において、前記抗体の発現を引き起こすか、又は方向付けるように、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどの調節エレメントを含みうる。動物細胞のための発現ベクターにおいて使用されうる、プロモーター及びエンハンサーの例は、SV40の初期プロモーター及び初期エンハンサー、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーター及びLTRエンハンサー、免疫グロブリンH鎖のプロモーター及びエンハンサーなどを含む。ヒト抗体のC領域をコードする遺伝子が、挿入され、発現されうる限りにおいて、動物細胞のための任意の発現ベクターが使用されうる。適切なベクターの例は、pAGE107、pAGE103、pHSG274、pKCR、pSG1ベータd2-4などを含む。他のプラスミドの例は、複製起点を含む複製プラスミド、又は例えば、pUC、pcDNA、pBRなどの組込みプラスミドを含む。他のウイルスベクターの例は、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、及びAAVベクターを含む。このような組換えウイルスは、パッケージング細胞にトランスフェクトすること、又はヘルパープラスミド若しくはウイルスの一過性トランスフェクションによるなど、当技術分野で公知の技法により作製されうる。ウイルスパッケージング細胞の典型的な例は、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞などを含む。このような複製欠損組換えウイルスを作製するための、詳細なプロトコールは、例えば、国際公開第95/14785号、国際公開第96/22378号、米国特許第5,882,877号、米国特許第6,013,516号、米国特許第4,861,719号、米国特許第5,278,056号及び国際公開第94/19478号において見出されうる。
【0138】
本開示のさらなる目的は、上記で記載された核酸及び/又はベクターによりトランスフェクトされるか、感染させられるか、又は形質転換された宿主細胞に関する。本明細書で使用される、「形質転換」という用語は、「外来」(すなわち、外因性又は細胞外)の、遺伝子配列、DNA配列、又はRNA配列の、宿主細胞への導入であって、宿主細胞が、導入された遺伝子又は配列を発現して、所望の物質、典型的に、導入された遺伝子又は配列によりコードされるタンパク質又は酵素を産生するような導入を意味する。導入されたDNA又はRNAを受容し、発現する宿主細胞は、「形質転換され」ている。
【0139】
本明細書で開示される核酸は、適切な発現系において、本開示の抗体を作製するのに使用されうる。「発現系」という用語は、例えば、ベクターにより運ばれ、宿主細胞へと導入された外来DNAによりコードされるタンパク質の発現に適切な条件下にある、宿主細胞及び適合性のベクターを意味する。一般的な発現系は、大腸菌(E.coli)宿主細胞及びプラスミドベクター、昆虫宿主細胞及びバキュロウイルスベクター、並びに哺乳動物宿主細胞及びベクターを含む。宿主細胞の他の例は、限定せずに述べると、原核細胞(細菌など)及び真核細胞(酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など)を含む。詳細な例は、大腸菌、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)の酵母、哺乳動物細胞株(例えば、HEK-293細胞、Vero細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞など)のほか、初代哺乳動物細胞培養物又は確立された哺乳動物細胞培養物(例えば、リンパ芽球、線維芽細胞、胚細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞などから作製された培養物)を含む。例はまた、マウスSP2/0-Ag14細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63-Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(本明細書の後出では、「DHFR遺伝子」と称される)が欠損しているCHO細胞(Urlaub Gら、1980)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL1662;本明細書の後出では、「YB2/0細胞」と称される)なども含む。
【0140】
本開示はまた、本明細書で開示される抗体を発現する組換え宿主細胞を作製する方法であって、(i)in vitro又はex vivoにおいて、上記で記載した組換え核酸又はベクターを、コンピテント宿主細胞へと導入するステップと、(ii)in vitro又はex vivoにおいて得られた組換え宿主細胞を培養するステップと、(iii)任意選択で、前記抗体を発現する、及び/又は分泌する細胞を選択するステップとを含む方法にも関する。このような組換え宿主細胞は、本開示の抗体を作製するのに使用されうる。
【0141】
本開示の抗体は、例えば、プロテインAセファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーなど、従来の免疫グロブリン精製手順により、培養培地から、適切に分離される。
【0142】
一部の実施形態では、本開示のヒトキメラ抗体は、前出で記載されたVLドメイン及びVHドメインをコードする核酸配列を得、それらを、ヒト抗体のCH及びヒト抗体のCLをコードする遺伝子を有する動物細胞のための発現ベクターへと挿入することにより、ヒトキメラ抗体発現ベクターを構築し、発現ベクターを、動物細胞へと導入することにより、コード配列を発現させることにより作製されうる。ヒトキメラ抗体のCHドメインについては、ヒト免疫グロブリンに属する任意の領域でありうるが、IgGクラスのCHドメインが適し、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4など、IgGクラスに属するサブクラスのうちのいずれか1つを使用してもよい。ヒトキメラ抗体のCLドメインについても、Igに属する任意の領域でありうるが、カッパクラス又はラムダクラスのCLドメインを使用してもよい。キメラ抗体を作製するための方法は、従来の組換えDNAを伴い、当技術分野では、遺伝子トランスフェクション法が周知である(Morrison SL.ら(1984)、並びに特許文書である、米国特許第5,202,238号及び米国特許第5,204,244号を参照されたい)。
【0143】
本開示のヒト化抗体は、前出で記載されたCDRドメインをコードする核酸配列を得、それらを、(i)ヒト抗体と同一である、重鎖定常領域及び重鎖可変フレームワーク領域、並びに(ii)ヒト抗体と同一である、軽鎖定常領域及び軽鎖可変フレームワーク領域をコードする遺伝子を有する動物細胞のための発現ベクターへと挿入することにより、ヒト化抗体発現ベクターを構築し、発現ベクターを、適切な細胞株へと導入することにより、遺伝子を発現させることにより作製されうる。ヒト化抗体の発現ベクターは、抗体の重鎖をコードする遺伝子と、抗体の軽鎖をコードする遺伝子とが、別個のベクターに存在する型の場合もあり、両方の遺伝子が、同じベクターに存在する型(タンデム型)の場合もある。ヒト化抗体発現ベクターの構築の容易さ、細胞株への導入の容易さ、及び細胞株における、抗体のH鎖とL鎖との間の、発現レベルの均衡の点において、タンデム型のヒト化抗体発現ベクターが好ましい。タンデム型ヒト化抗体発現ベクターの例は、pKANTEX93(国際公開第97/10354号)、pEE18などを含む。
【0144】
当技術分野では、抗体をヒト化するための方法であって、従来の組換えDNA法及び遺伝子トランスフェクション法に基づく方法が周知である(例えば、Riechmann L.ら、1988;Neuberger MS.ら、1985を参照されたい)。抗体は、例えば、CDRグラフティング(欧州特許第239,400号;PCT国際公開第91/09967号;米国特許第5,225,539号;同第5,530,101号;及び同第5,585,089号)、ベニヤ化又は再表面形成(欧州特許第592,106号;欧州特許第519,596号;Padlan EA(1991);Studnicka GMら(1994);Roguska MA.ら(1994))、及び鎖シャフリング(米国特許第5,565,332号)を含む、当技術分野で公知の様々な技法を使用してヒト化されうる。このような抗体を調製するための、一般的な組換えDNA技術もまた、公知である(欧州特許第125023号及び国際特許出願公開第96/02576号を参照されたい)。
【0145】
本開示のFabは、抗ミュラー管ホルモンと特異的に反応する抗体を、プロテアーゼであるパパインで処置することにより得られうる。Fabはまた、抗体のFabをコードするDNAを、原核細胞発現系のためのベクター、又は真核細胞発現系のためのベクターへと挿入し、ベクターを、原核細胞又は真核細胞(必要に応じて)へと導入して、Fabを発現させることによっても作製されうる。
【0146】
本開示のF(ab’)2は、抗ミュラー管ホルモンと特異的に反応する抗体を、プロテアーゼであるペプシンで処置して得られうる。F(ab’)2はまた、下記で記載される通り、チオエーテル結合又はジスルフィド結合を介して、Fab’を結合させることによっても作製されうる。
【0147】
本開示のFab’は、抗ミュラー管ホルモンと特異的に反応するF(ab’)2を、還元剤であるジチオトレイトールで処置して得られうる。Fab’はまた、抗体のFab’断片をコードするDNAを、原核細胞のための発現ベクター、又は真核細胞のための発現ベクターへと挿入し、ベクターを、原核細胞又は真核細胞(必要に応じて)へと導入して、その発現を行うことによっても作製されうる。
【0148】
本開示のscFvは、前出で記載された通りに、VHドメイン及びVLドメインをコードするcDNAを得、scFvをコードするDNAを構築し、DNAを、原核細胞のための発現ベクター、又は真核細胞のための発現ベクターへと挿入し、次いで、発現ベクターを、原核細胞又は真核細胞(必要に応じて)へと導入して、scFvを発現させることにより作製されうる。
【0149】
ヒト化scFv断片を作出するために、相補性決定領域(CDR)を、ドナーscFv断片から選択するステップと、それらを、ヒトscFv断片による、公知の三次元構造のフレームワークへとグラフティングするステップとを伴う、CDRグラフティングと呼ばれる、周知の技術が使用されうる(例えば、国際公開第98/45322号;同第87/02671号;米国特許第5,859,205号;米国特許第5,585,089号;米国特許第4,816,567号;欧州特許第0173494号を参照されたい)。
【0150】
本開示の操作抗体は、例えば、抗体の特性を改善するように、VH内及び/又はVL内のフレームワーク残基へと、修飾がなされた抗体をさらに含む。典型的に、このようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を低下させるようになされる。例えば、1つの手法は、1つ又は複数のフレームワーク残基を、対応する生殖細胞系列配列へと「復帰変異させる」ことである。より詳細には、体細胞変異を受けた抗体は、抗体が由来する生殖細胞系列配列と異なるフレームワーク残基を含有しうる。このような残基は、抗体のフレームワーク配列を、抗体が由来する生殖細胞系列配列と比較することにより同定されうる。フレームワーク領域の配列を、それらの生殖細胞系列の構成へと戻すために、体細胞変異は、例えば、部位指向変異誘発又はPCR媒介性変異誘発により、生殖細胞系列の配列へと「復帰変異させられ」うる。このような「復帰変異」抗体もまた、本開示により包含されることが意図される。フレームワーク修飾の別の種類は、T細胞エピトープを除去して、これにより、抗体の潜在的免疫原性を低減するように、フレームワーク領域内の1つ若しくは複数の残基、なお又はCDR領域内の1つ若しくは複数の残基を変異させることを伴う。この手法はまた、「脱免疫化」とも称され、Carrらによる米国特許公開第20030153043号により、さらに詳細に記載されている。
【0151】
Fc操作
本明細書で開示される抗体は、上記で記載した態様の、機能的特徴又は構造的特徴のうちの1つ又は複数により特徴づけられる場合もあり、選択された機能的特徴及び構造的特徴の任意の組合せにより特徴づけられる場合もある。
【0152】
本明細書で開示される抗体は、任意のアイソタイプの抗体でありうる。アイソタイプの選出しは、典型的に、ADCCのサイレンシングなど、所望のエフェクター機能により導かれるであろう。例示的なアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4である。ヒト軽鎖定常領域のうちのいずれかである、カッパ領域使用される場合もあり、ラムダ領域使用される場合もある。所望の場合、本開示の抗体のクラスは、公知の方法により切り替えられうる。典型的なクラススイッチング法は、1つのIgGサブクラスを、別のIgGサブクラスへと転換する、例えば、IgG1を、IgG2へと転換するのに使用されうる。したがって、本開示の抗体のエフェクター機能は、例えば、多様な治療的使用のために、アイソタイプスイッチングにより、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体、IgD抗体、IgA抗体、IgE抗体、又はIgM抗体へと変化させられうる。一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体は、全長抗体である。一部の実施形態では、全長抗体は、IgG1抗体である。一部の実施形態では、全長抗体は、IgG4抗体である。一部の実施形態では、BTN2A特異的IgG4抗体は、安定化IgG4抗体である。適切な安定化IgG4抗体の例は、Kabatら、前出の、EUインデックスにおいて指し示される、ヒトIgG4の、重鎖定常領域の409位におけるアルギニンが、リシン、スレオニン、メチオニン、若しくはロイシン、典型的に、リシンで置換された抗体(国際公開第2006033386号において記載されている)、及び/又はヒンジ領域が、Cys-Pro-Pro-Cys配列を含む抗体である。他の適切な安定化IgG4抗体については、国際公開第2008145142号において開示されている。
【0153】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)を誘導するFc部分を含まない。「Fcドメイン」、「Fc部分」、及び「Fc領域」という用語は、抗体重鎖のC末端断片、例えば、ヒトガンマ重鎖、又は他の種類の抗体重鎖(例えば、ヒト抗体について、α鎖、δ鎖、ε鎖、及びμ鎖)、若しくはその天然に存在するアロタイプにおけるその対応配列の、アミノ酸(aa)230近傍~aa 450近傍を指す。そうでないことが指定されない限りにおいて、本開示を通して、一般に受容されている、免疫グロブリンについての、Kabatによるアミノ酸の番号付けが使用される(Kabatら(1991)「Sequences of Protein of Immunological Interest」、5版、United States Public Health Service、National Institute of Health、Bethesda、MDを参照されたい)。一部の実施形態では、本開示の抗体は、FcgRIIIA(CD16)ポリペプチドに、実質的に結合することが可能なFcドメインを含まない。一部の実施形態では、本開示の抗体は、Fcドメイン(例えば、CH2ドメイン及び/又はCH3ドメインを欠く)を欠くか、又はIgG2アイソタイプ若しくはIgG4アイソタイプのFcドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗体は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、ダイアボディー、単鎖抗体断片、又は複数の異なる抗体断片を含む多特異性抗体からなるか、又はこれらを含む。一部の実施形態では、本開示の抗体は、毒性部分へと連結されない。一部の実施形態では、抗体が、C2qへの結合を変更されている、及び/又は補体依存性細胞傷害作用(CDC)を低減されるか、若しくは消失させられているように、アミノ酸残基から選択される、1つ又は複数のアミノ酸が、異なるアミノ酸残基で置きかえられうる。この手法については、米国特許第6,194,551号において、さらに詳細に記載されている。
【0154】
本明細書で想定されている、本明細書における抗体の別の修飾は、PEG化である。抗体は、例えば、抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を延長するようにPEG化されうる。抗体をPEG化するために、抗体又はその断片は、典型的に、PEGの反応性のエステル又はアルデヒド誘導体など、ポリエチレングリコール(PEG)と、1つ又は複数のPEG基が、抗体又は抗体断片と接合される条件下で反応させられる。PEG化は、反応性のPEG分子(又は類似する反応性の水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応により実行されうる。本明細書で使用される、「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1~C10)アルコキシポリエチレングリコール又はアリールオキシポリエチレングリコール又はポリエチレングリコールマレイミドなど、他のタンパク質を誘導体化するのに使用されているPEGの形態のうちのいずれかを包含することが意図される。一部の実施形態では、PEG化される抗体は、非グリコシル化抗体である。当技術分野では、タンパク質をPEG化するための方法が公知であり、本開示の抗体へも適用されうる。例えば、Nishimuraらによる欧州特許第0154316号、及びIshikawaらによる欧州特許第0401384号を参照されたい。
【0155】
本明細書で想定される抗体の別の修飾は、結果として得られる分子の半減期を延長するための、本開示の抗体の、少なくとも抗原結合性領域の、ヒト血清アルブミン又はその断片など、血清タンパク質へのコンジュゲート又はタンパク質融合である。
【0156】
一部の実施形態では、本開示はまた、多特異性抗体も提示する。本開示の多特異性抗体分子のための、例示的なフォーマットは、(i)1つの抗体が、BTN2Aに対する特異性を伴い、別の抗体が、第2の抗原に対する特異性を伴う、化学的ヘテロコンジュゲーションにより架橋された、2つの抗体;(ii)2つ異なる抗原結合性領域を含む、単一の抗体;(iii)付加的ペプチドリンカーにより、インタンデムに連結された、2つの異なる抗原結合性領域、例えば、2つのscFvを含む単鎖抗体;(iv)各軽鎖及び各重鎖が、2つずつの可変ドメインを、短いペプチド連結を介する、タンデムで含有する、二重可変ドメイン抗体(DVD-Ig)(Wuら、「Generation and Characterization of a Dual Variable Domain Immunoglobulin(DVD-Ig(TM))Molecule」:「Antibody Engineering」、Springer Berlin Heidelberg、2010);(v)化学連結された二特異性の(Fab’)2断片;(vi)2つの単鎖ダイアボディーの融合体であることの結果として、標的抗原の各々に対して、2つずつの結合性部位を有する、四価の二特異性抗体もたらす、Tandab;(vii)scFvの、ダイアボディーとの組合せであることの結果として、多価分子もたらす、フレキシボディー;(viii)Fabへと適用されると、異なるFab断片へと連結された、2つの同一なFab断片からなる、三価の二特異性結合性タンパク質をもたらしうる、プロテインキナーゼAにおける「二量体/ドッキングドメイン」に基づく、いわゆる、「ドックアンドロック」分子;(ix)例えば、ヒトFabアームの両末端へと融合された、2つのscFvを含む、いわゆるScorpion分子;並びに(x)ダイアボディーを含むがこれらに限定されない。二特異性抗体のための、別の例示的なフォーマットは、ヘテロ二量体を強いる、相補性のCH3ドメインを伴う、IgG様分子である。このような分子は、例えば、Triomab/Quadroma技術(Trion Pharma/Fresenius Biotech)、KIH(Knob-into-Hole)技術(Genentech)、CrossMAb技術(Roche)及び静電マッチ技術(Amgen)、LUZ-Y技術(Genentech)、Strand Exchange Engineered Domain body技術(SEEDbody)(EMDSerono)、Biclonic技術(Merus)、及びDuoBody技術(GenmabA/S)として公知の技術など、公知の技術を使用して調製されうる。一部の実施形態では、二特異性抗体は、典型的に、DuoBody技術を使用する、制御型Fabアーム交換を介して得られるか、又は得ることが可能である。制御型Fabアーム交換により、二特異性抗体を作製するためのin vitro法については、国際公開第2008119353号及び国際公開第2011131746号(いずれも、Genmab A/Sによる)において記載されている。国際公開第2008119353号において記載されている、1つの例示的な方法では、二特異性抗体は、還元条件下のインキュベーションにおける、両方が、IgG4様CH3領域を含む、2つの単一特異性抗体の間の「Fabアーム」交換又は「半分子」交換(重鎖と、接合された軽鎖とのスワッピング)により形成される。結果として得られる生成物は、異なる配列を含みうる、2つのFabアームを有する、二特異性抗体である。国際公開第2011131746号において記載されている、別の例示的な方法では、本開示の二特異性抗体は、以下のステップ:a)免疫グロブリンのFc領域を含み、前記Fc領域が、第1のCH3領域を含む、第1の抗体を用意するステップと;b)免疫グロブリンのFc領域を含み、前記Fc領域が、第2のCH3領域を含む、第2の抗体を用意するステップであって、前記第1のCH3領域と、第2のCH3領域とのヘテロ二量体相互作用が、前記第1のCH3領域及び第2のCH3領域の、ホモ二量体相互作用の各々より強くなるように、前記第1のCH3領域の配列と、第2のCH3領域の配列とが異なるステップと;c)前記第1の抗体を、前記第2の抗体と併せて、還元条件下でインキュベートするステップと;d)前記二特異性抗体を得るステップであって、第1の抗体が、本開示の抗体であり、第2の抗体が、異なる結合特異性を有するか、又はこの逆であるステップとを含み、第1の抗体及び第2の抗体のうちの少なくとも1つが、本開示の抗体である方法により調製される。還元条件は、例えば、2-メルカプトエチルアミン、ジチオトレイトール、及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンから選択される還元剤を、例えば、添加することによりもたらされうる。ステップd)は、例えば、脱塩による、例えば、還元剤の除去により、条件を、非還元条件又は低度の還元条件へと回復させることをさらに含みうる。典型的に、第1のCH3領域の配列と、第2のCH3領域の配列とは、前記第1のCH3領域と、第2のCH3領域とのヘテロ二量体相互作用が、前記第1のCH3領域及び第2のCH3領域の、ホモ二量体相互作用の各々より強くなるように、少数の、かなりの程度において保存的な、非対称的変異だけを含み、異なる。これらの相互作用についてのさらなる詳細、及びこれらの相互作用がどのようにして達成されうるのかについては、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、国際公開第2011131746号において提示されている。以下は、任意選択で、Fc領域の一方又は両方が、IgG1のアイソタイプである、対称的変異などの組合せについての、例示的な実施形態である。
【0157】
したがって、本開示は、本明細書で記載される抗BTN2A抗体を含む、二特異性抗体又は多特異性抗体(また、二特異性分子又は多特異性分子とも命名される)を提起する。したがって、本開示は、BTN2Aに対する、少なくとも1つの第1の結合特異性、例えば、本明細書で開示される抗体の、1つの抗原結合性部分と、第2の標的エピトープに対する、第2の結合特異性とを含む二特異性分子を含む。例えば、本開示に従う二特異性分子は、少なくとも、
配列番号3を含む、重鎖可変領域であるCDR1、配列番号4を含む、重鎖可変領域であるCDR2、配列番号5を含む、重鎖可変領域であるCDR3、配列番号6を含む、軽鎖可変領域であるCDR1、配列番号7を含む、軽鎖可変領域であるCDR2、及び配列番号8を含む、軽鎖可変領域であるCDR3、又は
配列番号21を含む、重鎖可変領域であるCDR1、配列番号22を含む、重鎖可変領域であるCDR2、配列番号23を含む、重鎖可変領域であるCDR3、配列番号24を含む、軽鎖可変領域であるCDR1、配列番号25を含む、軽鎖可変領域であるCDR2、及び配列番号26を含む、軽鎖可変領域であるCDR3
を含む、1つの抗原結合性部分を含みうる。
【0158】
一実施形態では、二特異性分子は、BTN3に対する、第2の結合特異性を含む。より詳細には、二特異性分子は、BTN3Aに特異的に結合する、抗BTN3A活性化抗体の抗原結合性部分をさらに含む場合があり、Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を活性化させうる。
【0159】
加えて、二特異性分子が、多特異性である実施形態では、分子は、第1の標的エピトープ及び第2の標的エピトープに加えて、第3の結合特異性をさらに含みうる。
【0160】
一実施形態では、本明細書で開示される二特異性分子は、結合特異性として、少なくとも1種の抗体、又は例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ユニボディー若しくは単鎖Fvを含む、その抗体断片を含む。抗体はまた、軽鎖二量体若しくは重鎖二量体、又はLadnerら、米国特許第4,946,778号に記載されているFv構築物若しくは単鎖構築物など、その任意の最小断片でもありうる。
【0161】
本明細書で開示される二特異性分子において用いうる他の抗体は、マウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、及びヒト化モノクローナル抗体である。
【0162】
医薬組成物
別の態様では、本開示は、組成物、例えば、薬学的に許容できる担体と併せて製剤化される、本明細書で開示される、少なくとも1種の抗体を含有する医薬組成物を提示する。このような組成物は、上記で記載した抗体のうちの1つ又は組合せ(例えば、2つ又はこれを超える異なる抗体)を含みうる。本明細書で開示される医薬組成物はまた、組合せ療法で、すなわち、他の薬剤と組み合わせても投与されうる。
【0163】
例えば、本発明の抗体は、典型的に、少なくとも1つの抗ウイルス剤、抗炎症剤、又は別の抗増殖剤と組み合わされうる。組合せ療法で使用されうる治療剤の例については、下記の、本開示の抗体の使用についての節で、より詳細に記載される。
【0164】
本明細書で使用される、「薬学的に許容できる担体」は、生理学的に適合性の担体など、任意の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、及び抗真菌剤、等張剤、及び吸収遅延剤、並びにこれらの担体の全てを含む。担体は、静脈内投与、筋内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄内投与、又は表皮投与(例えば、注射又は注入による)に適するものとする。一実施形態では、担体は、皮下経路に適するものとする。
【0165】
投与経路に応じて、活性化合物、すなわち、抗体は、化合物を、酸、及び化合物を不活化させる、他の天然の条件の作用から保護する材料でコーティングされうる。医薬組成物の形態、投与経路、投与量、及び投与レジメンは、当然ながら、処置される状態、疾病の重症度、患者の年齢、体重、及び性別などに依存する。
【0166】
本開示の医薬組成物は、局所投与、経口投与、非経口投与、鼻腔内投与、静脈内投与、筋内投与、皮下投与、又は眼内投与などのために製剤化されうる。
【0167】
本発明の使用及び方法
本開示の抗体は、in vitro及びin vivoにおける、診断的有用性及び治療的有用性を有する。例えば、これらの分子は、様々な障害を処置、防止、又は診断するように、例えば、in vitro、ex vivo、又はin vivoにおいて、培養物における細胞へと投与される場合もあり、例えば、in vivoの対象において投与される場合もある。
【0168】
本開示の抗体は、単球の、表現型、サイトカイン分泌、及び/又はT細胞阻害特性との関係における、腫瘍促進性M2マクロファージへの分化を阻害する抗BTN2A1抗体である。
【0169】
代替的に、又は、好ましくは、加えて、本開示の抗体は、NK細胞の細胞膜におけるBTN2A(とりわけ、BTN2A1)に直接結合し、それらの活性化、及びがん細胞に対する細胞傷害作用を誘発する。
【0170】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能、サイトカイン産生、及び増殖をさらに活性化させうる。
【0171】
したがって、本開示の抗体は、がん患者において観察され、慢性感染症時にも観察される、免疫抑制機構を克服するのに使用されうる。
【0172】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、腫瘍環境の免疫抑制作用を低減するのに使用されうる。
【0173】
本明細書で開示される抗BTN2A抗体はまた、NK細胞及び/又はTh1細胞の両方を、腫瘍微小環境に対して作用させ(M1への分極及び/又はM2の阻害を介して)、NK細胞コンパートメントにも直接作用させることにより、これらの両方の細胞傷害効果も強化しうる。
【0174】
一部の実施形態では、本開示の抗体(本明細書で記載される107G3抗体及びそのバリアントなど)は、Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能、サイトカイン産生、及び増殖をさらに活性化させる。したがって、このような抗体は、3つの免疫細胞コンパートメント:NK細胞、マクロファージ、及びγδ T細胞に対して、併せて作用する可能性を有し、したがって、がん処置のための、とりわけ、充実性腫瘍の処置のための強力なツールを表す。
【0175】
前臨床研究は、NK細胞が、骨髄系統白血病性細胞を死滅させうることを、堅固に裏付けている。しかし、CMLでは、例えば、NK細胞は、疾患の進行と共に数が減少し、刺激に対する応答が低下し、細胞溶解活性の低減を呈する。AMLでは、NK細胞の、高度の細胞溶解活性はまた、診断及び寛解の両方において、患者の良好な長期転帰も予測する(Carlsten M、Jaras M、「Natural Killer Cells in Myeloid Malignancies:Immune Surveillance,NK Cell Dysfunction,and Pharmacological Opportunities to Bolster the Endogenous NK Cells」、Front Immunol.、2019)。したがって、一部の実施形態では、NK細胞活性化特性を呈する本発明の抗体は、NK細胞の機能を回復させる養子移入NK細胞療法、及び/又はそれらの細胞傷害作用を誘発若しくは改善する養子移入NK細胞療法などのNK細胞療法と組み合わせて使用されうる。特に、本出願の抗体は、通例、NK細胞による殺滅に対して耐性である、充実性腫瘍の処置において使用されうる。本明細書で使用される、「がん」、「過剰増殖性」、及び「新生物性」という用語は、自己増殖に対する能力、すなわち、急速増殖性の細胞増殖により特徴づけられる、異常な段階又は状態を有する細胞を指す。過剰増殖性状態及び新生物性疾患状態は、病理学的状態、すなわち、疾患状態を特徴づけるか、又は構成する状態として類別される場合もあり、非病理学的状態、すなわち、正常状態からの逸脱ではあるが、疾患状態とは関連しない状態として類別される場合もある。用語は、浸潤性の組織病理学的種類又は組織病理学的段階に関わらず、がん性増殖若しくは発がん性過程、転移性組織、又は悪性形質転換細胞、悪性形質転換組織、若しくは悪性形質転換臓器の全ての種類を含むことが意図される。
【0176】
「がん」又は「新生物」という用語は、肺、乳腺、甲状腺、リンパ系、消化器、及び生殖泌尿器に影響を及ぼす悪性腫瘍など、多様な臓器系の悪性腫瘍のほか、大半の結腸がん、肺扁平上皮がん、皮膚がん又は膣がん、腎細胞がん、前立腺がん及び/又は精巣腫瘍、肺非小細胞がん、肺小細胞癌、子宮内膜癌、卵巣癌、子宮頸部腺癌、膵がん、小腸がん、並びに食道がんなどの悪性腫瘍を含む腺癌、並びに、一般に、前記がんを患う対象における、γδ T細胞の、活性化及び/又は増殖に対する、in vivoにおける刺激により処置されうる、任意のがんを含む。
【0177】
がんの例は、B細胞リンパ系新生物、T細胞リンパ系新生物、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B-NHL、T-NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、NK-細胞リンパ系新生物、及び急性骨髄性白血病を含む骨髄細胞系統新生物などの血液悪性腫瘍を含むがこれらに限定されない。
【0178】
非血液がんの例は、結腸がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、脳がん、前立腺癌、頭頸部がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸直腸がん、骨がん、子宮頸がん、肝がん、口腔がん、食道がん、甲状腺癌、腎がん、胃がん、精巣がん、及び皮膚がんを含むがこれらに限定されない。
【0179】
慢性感染症の例は、慢性肝炎、肺感染症、下気道感染症、気管支炎、インフルエンザ、肺炎、及び性感染疾患など、ウイルス感染症、細菌感染症、寄生虫感染症、又は真菌感染症を含むがこれらに限定されない。
【0180】
したがって、本開示は、それを必要とする対象における、上記で開示された障害のうちの1つを処置するための方法であって、治療有効量の、上記で開示された、抗BTN2A1抗体を含む方法に関する。
【0181】
上記で開示された使用のための抗体は、唯一の有効成分として投与される場合もあり、例えば、サイトカイン、抗ウイルス剤、抗炎症剤、又は細胞傷害剤、抗増殖剤、化学療法剤若しくは抗腫瘍剤、細胞療法生成物(例えば、γδ T細胞組成物又はNK細胞組成物)、例えば、前述の疾患の処置又は防止のための、他の薬物と共に、例えば、これらへのアジュバントとして、又はこれらと組み合わせて投与される場合もある。
【0182】
例えば、上記で開示された使用のための抗体は、細胞療法、特に、γδ T細胞療法、NK細胞療法、化学療法、抗新生物剤、又は免疫療法剤と組み合わせて使用されうる。
【0183】
本明細書で使用される、「細胞療法」という用語は、in vivoにおける、少なくとも治療有効量の細胞組成物の、それを必要とする対象への投与を含む治療を指す。患者へと投与される細胞は、同種細胞の場合もあり、自家細胞の場合もある。「γδ T細胞療法」という用語は、細胞組成物が、有効成分として、γδ T細胞、特に、Vγ9/Vδ2 T細胞(養子γδ T細胞移入、又はキメラ抗原受容体発現γδ T細胞など)を含む細胞療法を指す。「NK細胞療法」という用語は、細胞組成物が、有効成分として、養子NK細胞移入又はキメラ抗原受容体発現NK細胞(CAR-NK)などのNK細胞を含む細胞療法を指す。
【0184】
細胞療法生成物とは、前記患者へと、治療目的で投与される細胞組成物を指す。前記細胞療法生成物は、治療有効用量の細胞と、任意選択で、さらなる賦形剤、アジュバント、又は他の薬学的に許容できる担体とを含む。
【0185】
適切な抗新生物剤は、限定せずに述べると、アルキル化剤(シクロホスファミド、メクロレタミン、クロランブシル、メルファラン、ニトロソウレア、テモゾロミドなど)、アントラサイクリン(ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシンなど)、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセルなど)、エポチロン、I型トポイソメラーゼの阻害剤(イリノテカン又はトポテカンなど)、II型トポイソメラーゼの阻害剤(エトポシド、テニポシド、又はタフルポシドなど)、ヌクレオチド類似体及びヌクレオチド前駆体の類似体(アザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メルカプトプリン、メトトレキサート、又はチオグアニンなど)、ペプチド抗生剤(カルボプラチン、シスプラチン及びオキサリプラチンなど)、レチノイド(トレチノイン、アリトレチノイン、ベキサロテンなど)、ビンカアルカロイド及び誘導体(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビンなど)、キナーゼ阻害剤(イブルチニブ、イデラリシブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブ、ビスモデジブなど)、プロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブ、カルフィルゾミブなど)、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(ボリノスタット又はロミデプシンなど)などのターゲティング療法を含みうる。
【0186】
免疫療法剤の例は、限定せずに述べると、pAg(phosphoantigen)(例えば、ゾレドロン酸又は他のビスホスホネート)、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体、及びサイトカイン(インターロイキン2(IL-2など)(Choudhry Hら、2018、Biomed Res Int.)、インターロイキン15(IL-15)(Patidar Mら、Cytokine Growth Factor Rev.、2016)、インターロイキン21(IL-21)(Caccamo N.ら、PLoS ONE.、2012)、又はインターロイキン33(IL-33)(Duault Cら、J Immunol.、2016))、又はリンパ球の活性(例えば、増殖又はサイトカイン産生又は代謝の変化)を誘導することが可能な、これらの組換え形態及びこれらの誘導体、又は任意のサイトカインを含む。「誘導体」という用語は、PEG化(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)鎖へのコンジュゲーション)、アミノ酸の欠失、置換、若しくは挿入などの変異、又は強化剤との会合(例えば、IgG1 Fcへと融合された、IL15/IL15Ra複合体であって、加えて、IL-15が、この複合体を、IL-2及びIL-15Rβγのスーパーアゴニストとする生物学的活性を、さらに増大させる変異(asn72asp)がなされる複合体)(Rhode PRら、Cancer Immunol Res.、2016)(Barroso-Sousa Rら、Curr Oncol Rep.、2018)に依拠しうる、任意のサイトカイン修飾について使用される。
【0187】
「IL-2」という用語は、その一般的な意味を有し、ヒトインターロイキン2を指す。IL-2は、IL-2受容体に結合することにより、主に、リンパ球活性を調節する。
【0188】
「IL-15」という用語は、その一般的な意味を有し、ヒトインターロイキン15を指す。IL-2と同様に、IL-15は、IL-2/IL-15受容体ベータ鎖(CD122)と、共通ガンマ鎖(ガンマ-C、CD132)とから構成される複合体に結合し、これを介してシグナル伝達する。IL-15は、T及びナチュラルキラー(NK)細胞の活性化及び増殖を調節する。
【0189】
「IL-21」という用語は、その一般的な意味を有し、ヒトインターロイキン21を指す。IL-21は、NK細胞及びCD8+ T細胞による細胞傷害作用を増強すること、形質細胞分化をモジュレートすること、Treg細胞を阻害することを含むがこれらに限定されない、多面的な特性の一因とされている。
【0190】
「IL-33」という用語は、その一般的な意味を有し、ヒトインターロイキン33を指す。組織ストレス又は組織損傷において放出されるアラーミンと考えられるIL-33は、IL-1ファミリーのメンバーであり、ST2受容体に結合する。IL-33は、TH1免疫細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、iNKT細胞、及びCD8 Tリンパ球の有効な刺激因子として公知である。
【0191】
「PD-1」という用語は、当技術分野における、その一般的な意味を有し、プログラム死1受容体を指す。「PD-1」という用語はまた、CD28、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)、ICOS(inducible costimulator)、及びBTLA(B- and T-lymphocyte attenuator)(Greenwald RJら、2005、Riley JLら、2005)を含む、受容体のCD28-B7シグナル伝達ファミリーに属する、I型膜貫通タンパク質も指す。
【0192】
「抗PD-1抗体」又は「抗PD-L1」という用語は、当技術分野における、その一般的な意味を有し、PD-1又はPD-L1のそれぞれに対する結合アフィニティー、及び、PD-1に対するアンタゴニスト活性を伴い、すなわち、PD-1と関連するシグナル伝達カスケードを阻害し、PD-1のリガンド(PD-L1;PD-L2)への結合を阻害する抗体を指す。このような抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体は、それぞれ、受容体のCD28-B7シグナル伝達ファミリーの、他の亜型又はアイソフォーム(CD28;CTLA-4;ICOS;BTLA)とのその相互作用より大きなアフィニティー及び効力で、PD-1を優先的に不活化させる。化合物が、PD-1アンタゴニストであるのかどうかを決定するための試験及びアッセイは、Greenwaldら、2005;Rileyら、2005などにおいて記載されている通り、当業者により周知である。
【0193】
このような抗PD1抗体の例は、限定せずに述べると、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、又はアテゾリズマブを含む。
【0194】
前出に従い、なおさらなる態様では、本開示は、
治療有効量の、本開示の抗BTN2A1抗体、及び少なくとも1つの第2の原薬の、例えば、共時的であるか、又は逐次的である共投与を含み、前記第2の原薬が、例えば、上記で指し示された、抗ウイルス剤若しくは抗増殖剤若しくは免疫療法剤、又はサイトカイン若しくは細胞療法生成物(γδ T細胞など)である、上記で規定された方法
を提示する。
【0195】
一実施形態では、本開示の抗体は、可溶性BTN2A1のレベル、又はBTN2A1を発現する細胞のレベルを検出するのに使用されうる。これは、例えば、抗体と、BTN2A1(細胞の表面において発現されるBTN2A1、又は例えば、血液試料中の可溶性BTN2A1)との複合体の形成を可能とする条件下で、試料(in vitro試料など)及び対照試料を、抗BTN2A1抗体と接触させることにより達成されうる。試料及び対照において、抗体とBTN2A1との間で形成される、任意の複合体が、検出及び比較される。本開示の組成物を使用して、例えば、ELISAアッセイ及びフローサイトメトリーアッセイなど、当技術分野で周知の、標準的な検出法が実施されうる。
【0196】
したがって、一態様では、本開示は、試料における、BTN2A1(例えば、ヒトBTN2A1抗原)の存在を検出するか、又はBTN2A1の量を測定するための方法であって、抗体又はその部分と、BTN2A1との複合体の形成を可能とする条件下で、試料及び対照試料を、BTN2A1に特異的に結合する、本開示の抗体若しくはタンパク質、又はその抗原結合性領域と接触させるステップを含む方法をさらに提示する。次いで、複合体の形成が検出され、この場合、対照試料と比較した試料における、複合体形成の差違は、試料におけるBTN2A1の存在を指し示す。
【0197】
また、本明細書で開示される組成物(例えば、ヒト化抗体、コンジュゲート抗体、及び多特異性分子)と、使用のための指示書とからなるキットも、本開示の範囲内にある。キットは、少なくとも1つのさらなる試薬、又は1つ若しくは複数の、さらなる抗体若しくはタンパク質をさらに含有しうる。キットは、典型的に、キットの内容物の、意図される使用を指し示す表示を含む。表示という用語は、キットにおいて、若しくはキットと共に供給されるか、又は他の形でキットに付随する、任意の書面又は記録素材を含む。キットは、患者が、上記で規定された、抗BTN2A1抗体処置に応答する群に属するのかどうかについて診断するためのツールをさらに含みうる。
【0198】
別の治療戦略は、ヒト対象の試料から単離されたNK細胞を選択的に活性化させる、本明細書で開示されるヒト化抗体の、薬剤としての使用に基づく。
【0199】
したがって、本開示は、それを必要とする対象を処置するための方法であって、
(a)NK細胞を含む血液細胞、例えば、PBMCを、対象の血液試料から単離するステップと、
(b)NK細胞、任意選択で、他の腫瘍細胞又はアクセサリー細胞を、in vitroの、本明細書で開示される抗BTN2A1の存在下で拡大するステップと、
(c)拡大されたNK細胞を回収するステップと、
(d)任意選択で、拡大されたNK細胞を製剤化し、治療有効量の、前記NK細胞を、対象へと投与するステップと
を含む方法に関する。
【0200】
本開示は、本明細書で開示されるヒト化抗体の、キメラ抗原受容体(CAR)NK細胞を、選択的に活性化させる、薬剤としての使用にさらに関する。CAR NK細胞、及び養子NK細胞がん免疫療法におけるそれらの使用については、例えば、Rezvani,Kら、「Adoptive cell therapy using engineered natural killer cells」(Bone Marrow Transplant、2019)において記載されている。
【0201】
本開示はまた、典型的に、がんを患う、それを必要とする対象の、in vivoの、NK細胞療法における強化剤としての使用のための、本明細書で開示される抗BTN2A1抗体にも関する。
【0202】
本明細書で使用された、NK細胞療法という用語は、それを必要とする対象への、少なくとも有効量のNK細胞の投与を含む治療を指す。このようなNK細胞は、同種の場合もあり、自家の場合もある。詳細な実施形態では、NK細胞は、特異的な遺伝子の、欠失又はノックアウトにより遺伝子操作される場合もあり、挿入又はノックインにより遺伝子操作される場合もある。詳細な実施形態では、前記NK細胞は、キメラ抗原受容体を発現するNK細胞を含む。NK細胞は、ex vivoにおいて、拡大及び/又は精製されている場合がある。代替的に、NK細胞はまた、他の血液細胞を含み、例えば、免疫系の他の細胞を含む細胞組成物にも組み入れられうる。γδ T細胞療法に関する参考文献については、Rezvani,K、Bone Marrow Transplant、2019を参照されたい。
【0203】
したがって、本開示は、がん、例えば、血液悪性腫瘍、特に、急性骨髄性白血病などの白血病を患い、腫瘍細胞、例えば、血液腫瘍細胞を有する対象を処置する方法であって、
(i)前記対象において、有効量の、本明細書で開示される抗BTN2A1抗体を投与するステップと、
(ii)前記対象において、有効量のNK細胞組成物を投与するステップと、
を含み、前記有効量の抗BTN2A1抗体が、前記NK細胞組成物により媒介される、前記腫瘍細胞に対する、抗腫瘍細胞溶解を強化する能力を有する方法に関する。本開示はまた、それを必要とする対象を処置するための方法であって、NK細胞、例えば、CAR NK細胞と、本明細書で開示されるヒト化抗体との組合せ(共時的又は逐次的)投与を含む方法にも関する。
【0204】
代替的実施形態又はさらなる実施形態では、治療戦略はまた、ヒト対象の試料から単離されたVγ9/Vδ2 T細胞を、選択的に拡大及び/又は活性化させる、本明細書で開示されるヒト化抗体の、薬剤としての使用にも基づきうる。
【0205】
したがって、本開示は、それを必要とする対象を処置するための方法であって、
(a)Vγ9/Vδ2 T細胞を含む血液細胞、例えば、PBMCを、対象の血液試料から単離するステップと、
(b)Vγ9/Vδ2 T細胞、任意選択で、他の腫瘍細胞又はアクセサリー細胞を、in vitroの、本明細書で開示される抗BTN2A1の存在下で拡大するステップと、
(c)拡大されたVγ9/Vδ2 T細胞を回収するステップと、
(d)任意選択で、拡大されたVγ9/Vδ2 T細胞を製剤化し、治療有効量の、前記Vγ9/Vδ2 T細胞を、対象へと投与するステップと
を含む方法に関する。
【0206】
本開示は、本明細書で開示されるヒト化抗体の、キメラ抗原受容体(CAR)Vγ9Vδ2 T細胞を、選択的に拡大する、薬剤としての使用にさらに関する。CAR γδ T細胞、及び養子T細胞がん免疫療法におけるそれらの使用については、例えば、Mirzaeiら、Cancer Lett、2016において記載されている。
【0207】
本開示の抗体はまた、人工T細胞受容体(また、キメラT細胞受容体、又はキメラ抗原受容体(CAR)としても公知である)を調製するのにも使用されうる。例えば、抗体の可変領域は、スペーサーを介して、TCRの、膜貫通ドメイン及びシグナル伝達細胞内ドメインへと連結され、T細胞の表面において産生される、Fab又はscFvを形成するのに使用されうる。このようなCARは、養子移入療法において、例えば、増殖性障害を処置するために使用されうる。
【0208】
本開示はまた、典型的に、がんを患う、それを必要とする対象の、in vivoの、γδ T細胞療法における強化剤としての使用のための抗BTN2A1抗体にも関する。
【0209】
本明細書で使用される、γδ T細胞療法という用語は、それを必要とする対象への、少なくとも有効量のγδ T細胞の投与を含む治療を指す。このようなγδ T細胞は、同種の場合もあり、自家の場合もある。詳細な実施形態では、γδ T細胞は、特異的な遺伝子の、欠失又はノックアウトにより遺伝子操作される場合もあり、挿入又はノックインにより遺伝子操作される場合もある。詳細な実施形態では、前記γδ T細胞は、キメラ抗原受容体を発現するγδ T細胞を含む。γδ T細胞は、ex vivoにおいて、拡大及び/又は精製されている場合がある。代替的に、γδ T細胞はまた、他の血液細胞を含み、例えば、免疫系の他の細胞を含む細胞組成物にも組み入れられうる。γδ T細胞療法に関する参考文献については、Pauza CD.ら、Front Immunol.、2018;J Saudemont A.ら、Frontiers Immunol、2018を参照されたい。
【0210】
実際、いかなる特定の理論にも束縛されずに述べると、本開示の抗BTN2A1抗体について提起される作用方式は、腫瘍細胞の表面において発現されるBTN2A1へのその結合が、Vγ9Vδ2 T細胞におけるそのカウンター受容体へのそのシグナル伝達を可能とするコンフォメーション変化を誘発することである。
【0211】
したがって、本開示は、がん、例えば、血液悪性腫瘍、特に、急性骨髄性白血病などの白血病を患い、腫瘍細胞、例えば、血液腫瘍細胞を有する対象を処置する方法であって、
(i)前記対象において、有効量の、本明細書で開示される抗BTN2A1抗体を投与するステップと、
(ii)前記対象において、有効量のγδ T細胞組成物を投与するステップと、
を含み、前記有効量の抗BTN2A1抗体が、前記γδ T細胞組成物により媒介される、前記腫瘍細胞に対する、抗腫瘍細胞溶解を強化する能力を有する方法に関する。本開示はまた、それを必要とする対象を処置するための方法であって、CAR T細胞、例えば、CAR γδ T細胞と、本明細書で開示されるヒト化抗体との組合せ(共時的又は逐次的)投与を含む方法にも関する。
【0212】
本発明は、以下の図面及び例によりさらに例示される。しかし、これらの例及び図面は、いかなる形であれ、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【
図1】抗BTN2A1 107G3 mAb同定を示す図である。A.マウスの免疫化から、mAbのシーケンシングまでの、抗BTN2A1 mAbのスクリーニングカスケードである。B.棒グラフは、一次ヒット選択時に、Luminexにおいて測定される、アフィニティー(K
D)範囲1つ当たりのクローンの数を示す。C.積上げ棒グラフは、一次ヒットスクリーニング(第1ラウンド)及び二次ヒットスクリーニング(第2ラウンド)時に、Vγ9/Vδ2 T細胞によるIFN-γ産生をモジュレートするそれらの能力に従い、中性(グレー)、アンタゴニスト(白)、又はアゴニスト(黒)と分類されたクローンの数を示す。
【
図2】抗BTN2A1 107G3 mAbが、Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を増強することを示す図である。Vγ9/Vδ2 T細胞を、3例の健常ドナーのPBMC(「材料及び方法」を参照されたい)から拡大し、表示の抗体を伴うか、又は伴わない、抗CD107a/b抗体及びGolgi stopの存在下で、1:1のエフェクター:標的(E:T)比を使用して、標的細胞と共に、37℃で共培養した。4時間後、細胞を回収し、固定し、フローサイトメトリーにおいて解析した。Aでは、抗BTN2A1 107G3上清、又は対照ハイブリドーマ培養培地を伴うか、又は伴わずに、Daudi(バーキットリンパ腫)、Jurkat(急性T細胞白血病)、L-IPC(膵腺癌)、及びMDA-MB-134(乳腺癌腫)を含む、異なる標的細胞株を使用した。棒グラフは、Vγ9/Vδ2 T細胞脱顆粒を描示する、CD107+細胞の百分率を示す。Bでは、Daudi細胞を、表示濃度の、精製抗BTN2A1 107G3 mAb、又はアイソタイプ対照としての、関連しないマウスIgG1の存在下で、標的細胞として使用した。グラフは、EC
50の計算を可能とする、用量反応曲線を示す。
【
図3】抗BTN2A1 107G3 mAbが、BTN2A1を認識するが、BTN3を認識しないことを示す図である。HEK-293T BTN2 KO細胞に、BTN2A1-CFP融合タンパク質をコードするプラスミドを、一過性にトランスフェクトした。A.ヒストグラムは、精製抗BTN2A1 107G3 mAb(上、黒線)、精製抗BTN3 103.2mAb(下、黒線)、又はmIgG1対照若しくはIgG2a対照(破線)で染色された、表示の細胞及びトランスフェクト細胞についての重合せ図を示す。トランスフェクト細胞については、CFP+細胞についてのゲーティングの後の染色を示す。B.グラフは、BTN2A1-CFPをコードするプラスミドをトランスフェクトされた、HEK-293T BTN2 KO細胞における、精製抗BTN2A1 107G3 mAbの結合についての用量反応曲線を示す。全ての染色は、CFP+細胞についてのゲーティングの後で解析した。
【
図4A】NK細胞及び単球におけるBTN2Aの発現、並びに単球からM2マクロファージへの分極に対する、参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAbの影響を示す図である。(A)フローサイトメトリーにより評価される、非刺激HD-PBMCに由来するNK細胞及び単球における、対照アイソタイプ(グレー)と対比したBTN2A1及びBTN2A2の発現(白)についての代表的ヒストグラムである。
【
図4B】(B)in vitroの、M-CSFの存在下における、M1/M2マクロファージ、又は101G5及び107G3 mAbが誘導したマクロファージについての、代表的な、CD14/CD163ドットプロットプロファイルである。分化の5日後、CD14及びCD163ドットプロットを、フローサイトメトリー解析により作成する。
【
図5-1】参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAbが、M2マクロファージ分極を、用量依存的に阻害することを示す図である。M1、M2、GM-CSF及びIFNγによる復帰M2、及びM-CSF誘導性マクロファージを、異なる濃度の101G5 mAb又は107G3 mAb(又はこれらのアイソタイプ対照)の存在下で、5日間にわたり分極させ、LPSで、さらに2日間にわたり、刺激するか、又は刺激せずにおいた。CD14(A)及びCD163(B)の発現を、フローサイトメトリーにより、非刺激細胞において解析した。結果を、それらの対応するアイソタイプ対照を差し引いた蛍光強度中央値(MFI)で表す。
【
図5-2】PDL1(C)及びCD86(D)の発現を、フローサイトメトリーにより、非刺激細胞(C)又はLPS刺激細胞(D)において解析した。結果を、それらの対応するアイソタイプ対照を差し引いた蛍光強度中央値(MFI)で表す。
【
図5-3】IL-10(E)及びTNFα(F)を、LPS刺激マクロファージ上清において、ELISAにより定量した。結果を、pg/mL単位で表す。
【
図6-1】参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAbが、単球からの「M2+IL-4」誘導性分極を阻害することを示す図である。M1、M2、「M2+IL4」、GM-CSF及びIFNγによる復帰M2、及びM-CSF+IL-4誘導性マクロファージを、10μg/mLの101G5 mAb又は107G3 mAb(又はこれらのアイソタイプ対照)の存在下で、5日間にわたり発生させ、LPSで、さらに2日間にわたり、刺激するか、又は刺激せずにおいた。CD14(A)、CD163(B)、PDL1(C)、DC-SIGN(D)の発現を、フローサイトメトリーにより、非刺激細胞(A~D)において解析した。結果を、それらの対応するアイソタイプ対照を差し引いた蛍光強度中央値(MFI)で表す。
【
図6-2】参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAbが、単球からの「M2+IL-4」誘導性分極を阻害することを示す図である。M1、M2、「M2+IL4」、GM-CSF及びIFNγによる復帰M2、及びM-CSF+IL-4誘導性マクロファージを、10μg/mLの101G5 mAb又は107G3 mAb(又はこれらのアイソタイプ対照)の存在下で、5日間にわたり発生させ、LPSで、さらに2日間にわたり、刺激するか、又は刺激せずにおいた。CD86(E)の発現を、フローサイトメトリーにより、LPS刺激細胞(E)において解析した。結果を、それらの対応するアイソタイプ対照を差し引いた蛍光強度中央値(MFI)で表す。IL-10(F)及びTNFα(G)を、LPS刺激マクロファージ上清において、ELISAにより定量した。結果を、pg/mL単位で表す。
【
図7】参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAbが、がん細胞誘導性M2分極を阻害することを示す図である。M1、M2、PANC-1条件付け培地誘導性M2、GM-CSF及びIFNγによる復帰M2、及びPANC-1条件付け培地誘導性マクロファージを、10μg/mLの101G5 mAb又は107G3 mAb(又はこれらのアイソタイプ対照)の存在下で、5日間にわたり発生させ、LPSで、さらに2日間にわたり、刺激するか、又は刺激せずにおいた。CD14(A)、CD163(B)の発現を、フローサイトメトリーにより、非刺激細胞において解析した。結果を、それらの対応するアイソタイプ対照を差し引いた蛍光強度中央値(MFI)で表す。IL-10(C)及びTNFα(D)を、LPS刺激マクロファージ上清において、ELISAにより定量した。結果を、pg/mL単位で表す。
【
図8-1】参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAbが、M2マクロファージを、炎症促進性M1マクロファージへと復帰させること:表現型及びサイトカイン分泌を示す図である。M1、M2を、単球から、5日間にわたり発生させた。5日後、10μg/mLの101G5 mAb若しくは107G3 mAb(又はアイソタイプ対照)、又はIFNγを、M2マクロファージに、2日間にわたり添加し、LPSで、さらに2日間にわたり、刺激するか、又は刺激せずにおいた。CD14(A)、CD163(B)、PDL1(C)の発現を、フローサイトメトリーにより、非刺激細胞(A~C)において解析した。結果を、それらの対応するアイソタイプ対照を差し引いた蛍光強度中央値(MFI)で表す。
【
図8-2】参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAbが、M2マクロファージを、炎症促進性M1マクロファージへと復帰させること:表現型及びサイトカイン分泌を示す図である。M1、M2を、単球から、5日間にわたり発生させた。5日後、10μg/mLの101G5 mAb若しくは107G3 mAb(又はアイソタイプ対照)、又はIFNγを、M2マクロファージに、2日間にわたり添加し、LPSで、さらに2日間にわたり、刺激するか、又は刺激せずにおいた。CD86(D)の発現を、フローサイトメトリーにより、LPS刺激細胞(D)において解析した。結果を、それらの対応するアイソタイプ対照を差し引いた蛍光強度中央値(MFI)で表す。IL-10(E)及びTNFα(F)を、LPS刺激マクロファージ上清において、ELISAにより定量した。結果を、pg/mL単位で表す。
【
図8-3】参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAbが、M2マクロファージを、炎症促進性M1マクロファージへと復帰させること:表現型及びサイトカイン分泌を示す図である。
【
図9-1】参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAbが、T細胞増殖に対する、M2媒介性阻害及びIFNγの分泌を解放することを示す図である。分化M1、分化M2、又は101G5及び107G3 mAb(又はこれらのアイソタイプ対照)の存在下で誘導されたマクロファージを、同種OKT3活性化CTV標識付けCD3+ T細胞と共に、5日間にわたり共培養した。共培養の後、細胞を、PMA/イオノマイシン及びGolgiStopタンパク質阻害剤で、5時間にわたり刺激し、CD3+ T細胞の数(A及びB)、細胞内IFNγの産生(C及びD)を、フローサイトメトリーにより定量した。増殖を、CTV色素(ベースラインとしての、0日目におけるCTVシグナル)の希釈率により定量した。結果は、CountBright absolute counting beadsにおいて較正された、CD3+ T細胞の絶対数(B)、又はCD3+ T細胞の百分率(C及びD)である。
【
図9-2】参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAbが、T細胞増殖に対する、M2媒介性阻害及びIFNγの分泌を解放することを示す図である。分化M1、分化M2、又は101G5及び107G3 mAb(又はこれらのアイソタイプ対照)の存在下で誘導されたマクロファージを、同種OKT3活性化CTV標識付けCD3+ T細胞と共に、5日間にわたり共培養した。共培養の後、細胞を、PMA/イオノマイシン及びGolgiStopタンパク質阻害剤で、5時間にわたり刺激し、細胞内IFNγの産生(E及びF)、及び増殖(CellTrace Violet、CTV dim)(G~J)を、フローサイトメトリーにより定量した。増殖を、CTV色素(ベースラインとしての、0日目におけるCTVシグナル)の希釈率により定量した。結果は、CountBright absolute counting beadsにおいて較正された、CD3+ T細胞の絶対数(E、F、I、及びJ)、又はCD3+ T細胞の百分率(G及びH)である。
【
図10-1】参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAbの、精製NK細胞の活性化及び細胞傷害作用に対する効果を示す図である。(A~B)精製NK細胞を、参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAb(又は対照アイソタイプ)と共に、IL-2又はIL-2/IL-15による刺激を伴い、5日間にわたり培養した。NK細胞の活性化は、非刺激NK細胞内、及びIL-2/IL-15刺激NK細胞内の、CD69(A)及びCD25(B)の発現(MFI)を、表示のmAb又は対照アイソタイプの存在下で評価することにより査定した。
【
図10-2】参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAbの、精製NK細胞の活性化及び細胞傷害作用に対する効果を示す図である。(C~D)精製NK細胞を、IL-2/IL-15刺激の存在下又は非存在下で、参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAb(又は対照アイソタイプ)と共に、一晩にわたりプレインキュベートし、次いで、ヒト腫瘍細胞株と共に、4時間にわたり共培養した。NK細胞の脱顆粒を、フローサイトメトリーにより、表示のmAb又は対照アイソタイプの存在下における、各腫瘍細胞株に対する、非刺激NK細胞内(C)、及びIL-2/IL-15刺激NK細胞(D)内の、CD107αβの百分率として評価した。
【
図10-3】参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAbの、精製NK細胞の活性化及び細胞傷害作用に対する効果を示す図である。(E)参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAb(又は対照アイソタイプ)を、共培養物の4時間前に、NK細胞又は標的細胞に加えて、あらかじめプレインキュベートした場合の、A549細胞株に対する、NK細胞の脱顆粒を、プレインキュベーションを伴わずに、共培養物へと添加されたmAbと比較して示す。
【
図11】参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAbが、NK細胞の脱顆粒、及び腺癌細胞株に対する殺滅を増強することを示す図である。(A)精製NK細胞を、IL-2/IL-15刺激の存在下又は非存在下で、参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAb(又は対照アイソタイプ)と共に、一晩にわたりプレインキュベートし、次いで、DU-145細胞株と共に、4時間にわたり共培養した。NK細胞の脱顆粒を、フローサイトメトリーにより、CD107αβ+細胞の百分率として評価した。Prismソフトウェアにおいて、4パラメータの用量反応曲線を使用して、NK細胞の脱顆粒の増強についてのEC
50を、表示のmAbについて計算した。(B)精製NK細胞を、参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAb(又は対照アイソタイプ若しくはIL-2/IL-15刺激)と共に、一晩にわたりプレインキュベートし、次いで、HL-60及びA549細胞株と共に、4時間にわたり共培養した。NK細胞媒介性がん細胞死は、カスパーゼ3/7+細胞の百分率を、表示のmAb又は対照アイソタイプの存在下で評価することにより査定した。
【
図12-1】BTN2A1に対する参照mAbである、抗BTN2A1 101G5 mAb、及び抗BTN2A1 107G3 mAbについてのビニング実験を示す図である。ビニング実験は、バイオレイヤー干渉(BLI)技術に基づくシステムである、Octet Red96プラットフォームにおいて実施した。107G3及び101G5を、rhBTN2A1-Hisタンパク質に対する、対応のあるコンビナトリアル方式で調べた。A.107G3は、飽和mAbであり、101G5は、競合mAbである。
【
図12-2】BTN2A1に対する参照mAbである、抗BTN2A1 101G5 mAb、及び抗BTN2A1 107G3 mAbについてのビニング実験を示す図である。ビニング実験は、バイオレイヤー干渉(BLI)技術に基づくシステムである、Octet Red96プラットフォームにおいて実施した。107G3及び101G5を、rhBTN2A1-Hisタンパク質に対する、対応のあるコンビナトリアル方式で調べた。B:101G5は、飽和mAbであり、107G3は、競合mAbである。C:mAbの結合対及び自己遮断対についての、任意単位による測定である。
【
図13-1】トリプシン、キモトリプシン、ASP-N、エラスターゼ、及びテルモリシンによる、BTN2A1ペプチドを示す図である。配列のうちの96.37%は、同定されたペプチドによりカバーされている。
【
図13-2】トリプシン、キモトリプシン、ASP-N、エラスターゼ、及びテルモリシンによる、BTN2A1ペプチドを示す図である。配列のうちの96.37%は、同定されたペプチドによりカバーされている。
【
図14】参照mAbである、107G3及び101G5の、ヒトBTN2A1との相互作用を示す図である。A.107G3/BTN2A1である。B.101G5/BTN2A1である。
【
図15】BTN2A1/107G3間の相互作用を示す図である。BTN2A1のPDB構造である、4F9Pを、エピトープ部位において、グレーで着色した。青で着色された、BTN2A1のアミノ酸は、提示されたBTN2A1配列の、65~78(RWFRSQFSPAVFVY)、及び84~100(RTEEQMEEYRGRTTFVS)に対応している。A、B、C、D、E:前面図(A);後面図(B)、側面
図1(C)、側面
図2(D)、及び上面図(E)についてのリボン/表面表示である。F、G、H、I、J:前面図(F);後面図(G)、側面
図1(H)、側面
図2(I)、及び上面図(J)についてのリボン表示である。
【
図16】BTN2A1/101G5間の相互作用を示す図である。BTN2A1のPDB構造である、4F9Pを、エピトープ部位において、グレーで着色した。青で着色された、BTN2A1のアミノ酸は、提示されたBTN2A1配列の、212~229(KSVRNMSCSINNTLLGQK)に対応している。A、B、C、D、E:前面図(A);後面図(B)、側面
図1(C)、側面
図2(D)、及び上面図(E)についてのリボン/表面表示である。F、G、H、I、J:前面図(F);後面図(G)、側面
図1(H)、側面
図2(I)、及び上面図(J)についてのリボン表示である。
【
図17】カニクイザルBTN2A1オーソログに対する参照mAbである、抗BTN2A1 101G5 mAb、及び抗BTN2A1 107G3 mAbの交差反応性についての評価を示す図である。ELISAプレートをコーティングする組換えヒトBTN2A1-Fc融合タンパク質、又は組換えカニクイザルBTN2A1-Fc融合タンパク質に結合する、107G3及び101G5についての、ELISAベースの測定である。グラフは、傾き可変モデルを使用する非線形回帰によるEC50の計算を可能とする、用量反応曲線を描示する。
【実施例】
【0214】
材料及び方法
細胞培養物、単球及びNK細胞の分取:
末梢血単核細胞(PBMC)は、地域の血液バンク(Etablissement Francais du Sang(EFS)、Marseille、France)により提供される、健常ドナー(HD)に由来するEDTA(エチレンジアミン四酢酸)バフィーコートから得、密度勾配における遠心分離(Eurobio)により単離した。採取したてのPBMCを、37℃で、5%CO2、10%のウシ胎仔血清(FBS)及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)を補充した、Roswell Park Memorial Institute培地1640(RPMI;Lonza)において培養した。
【0215】
製造元の指示書に従い、イージーセップ(EasySep)(商標)Human NK Cell Enrichmentキット(StemCell Technologies)を使用する陰性選択により、ナチュラルキラー(NK)細胞を、採取したてのPBMCから分取した。製造元の指示書に従い、CD14+マイクロビーズキット(Miltenyi)を使用することにより、ヒトCD14+単球を分取した。1%L-グルタミン、100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン、1mMのピルビン酸ナトリウム、10mMのHEPES、0.1mMの非必須アミノ酸、及び10%のFBS(全て、Thermofisher製)を補充したRPMIに、1mL当たりの細胞106個の密度、37℃で、5日間にわたり、単球を培養した。10%のFBSを補充したRPMIにおいて、膵腺癌細胞株である、PANC-1を培養した。90%のコンフルエンシーまで増殖したら、培養培地を廃棄し、細胞を、1倍濃度のPBSですすいだ。次いで、PANC-1細胞を、5%のFBSを補充したRPMIにおいて、さらに24時間にわたり培養した(上清を濃縮させるために、175cm2のフラスコ1本当たり30mL)。次いで、PANC-1条件付け培地を回収し、濾過し(0.2μM)、使用まで、-20℃で保管した。他のヒト細胞株、及びそれらの対応する培養培地を、下記の表1にまとめる。
【0216】
【0217】
以下のヒト細胞株:Daudi(バーキットリンパ腫)、Jurkat(急性T細胞白血病)、MDA-MB-134(乳管癌腫)、及びHEK-293T(胎児腎臓)は、American Type Cuture Collectionから得た。ヒト膵腺癌細胞株L-IPC(PDAC087T)は、Juan IOVANNA博士から恵与された。Daudi及びJurkat細胞のほか、PBMCを、10%ウシ胎仔血清(FCS)、1%のピルビン酸Na、1%のL-グルタミン(全て、Life Technologies製)を補充した、RPMI 1640培地において培養した。BTN2の全てのアイソフォームの、CRISPR-Cas9媒介性不活化により、HEK-293T BTN2 KO細胞を発生させた(データは示さない)。MDA-MB-134、L-IPC、HEK-293細胞、及びHEK-293T BTN2 KO細胞を、10%のFCSを伴うDMEM培地(Life Technologies)において培養した。ハイブリドーマを、DMEM/Ham’s F12(1:1)(ThermoFisher Scientific)、4%のFetalClone I(Hyclone)、Chemically Defined Lipid Concentrate(1:250)、1%のグルタミン、1%のピルビン酸ナトリウム、及び100μg/mLのPenStrep(全て、ThermoFisher Scientific製)において培養した。ハイブリドーマ上清を回収するために、ハイブリドーマを、Fetalcloneを伴わずに、4~5日間にわたり培養した。
【0218】
抗BTN2A1 mAbの特異性を評価するために、製造元の指示書に従い、Lipofectamine 3000試薬(Thermofisher Scientific)を使用して、HEK-293T BTN2 KO細胞に、BTN2A1及びBTN2A2 CFP(Nter)融合タンパク質をコードするpcDNA3-Zeo-BTN2A1-CFPプラスミドを、独立にトランスフェクトした。
【0219】
参照抗BTN2A1 mAb 107G3の同定
6種の異なるMHCの組合せを保有する、48匹のマウスを、組換えヒトBTN2A1-Fc融合タンパク質で免疫化することにより、マウス抗ヒトBTN2A1抗体を作出した。21日後に、マウスから採血し、Luminexアッセイを介して、BTN2A1特異的ポリクローナル抗体の血清力価を決定した。最高のBTN2A1特異的抗体力価を呈するマウスを安楽死させた。陽性選択を介して、脾臓B細胞を単離し、ハイブリドーマを作出するために、骨髄腫細胞とのPEG誘導性融合を施した。
【0220】
ハイブリドーマを、限界希釈によりクローニングし、ハイブリドーマ上清に、標的特異性及びVγ9Vδ2-T細胞の脱顆粒を誘導するそれらの能力について、2ラウンドにわたるスクリーニングを施し(
図1C及び
図2)、参照mAbである、107G3の同定をもたらした。これらのサブクローンのVH領域及びVL領域のシーケンシングを実施した(表1を参照されたい)。
【0221】
Vγ9Vδ2-T細胞の拡大
エフェクターVγ9/Vδ2-T細胞は、0日目に始めて、HVに由来するPBMCを、ソレドロネート(Sigma、1μM)、及び組換えヒト(rh)IL-2(プロロイキン、200IU/mL)の存在下で培養することにより確立した。5日目から、rhIL-2を、隔日で補給し、合計15日間にわたり、細胞密度を、1mL当たり1.15×106に保った。最終日に、Vγ9/Vδ2-T細胞の純度を、フローサイトメトリーにより査定した。80%より高値の、Vγ9/Vδ2-T細胞純度に到達した細胞培養物だけを、機能試験において使用される細胞培養物として選択した。精製Vγ9/Vδ2-T細胞は、使用まで凍結させた。
【0222】
Luminexアッセイ
COOH磁気ビーズ(Biorad)を、製造元の指示書に従い、rhBTN2A1タンパク質(R&D)へとコンジュゲートし、ビーズは、使用まで、保管緩衝液(Biorad)において、-20℃で保管した。マウス血清の滴定のために、Luminexアッセイ緩衝液(Nanotool)において、1:50から始めて、希釈段階を1:4とする血清希釈系列を作り、100μLのビーズ懸濁液を、100μLの血清希釈液と混合し、RTで、1時間にわたりインキュベートし、この後、ビーズを、洗浄緩衝液において、3回にわたり洗浄し、Luminexアッセイ緩衝液に、1μg/mLのビオチニル化ヤギ抗マウスIgG-Fcと共にインキュベートし、Luminexアッセイ緩衝液における、さらに3回にわたる洗浄を行った。最後に、ビーズを、Luminexアッセイ緩衝液に、1μg/mLのストレプトアビジンPEと共に、1時間にわたりインキュベートしてから、Luminexリード緩衝液(Nanotool)における、3回にわたる最終的な洗浄を行った。ビーズを、Luminexリード緩衝液に再懸濁させ、Luminex 100/200システムにおいて、データを収集した。ヒットの同定のために、30μLの上清を、96ウェルプレートへと移し、90μLのLuminexアッセイ緩衝液を添加した。100マイクロリットルのビーズ懸濁液を、100μLの上清希釈液と混合し、RTで、16時間にわたりインキュベートしてから、上記で記載したプロトコールへと進んだ。ヒットの同定のために、標的に対するアフィニティーが最高であり、関連しない対照タンパク質(Rank-Fc)に対するアフィニティーが最低であるビーズ懸濁液を選択した。アフィニティー/Kdの計算のために、Luminexアッセイ緩衝液における、40.000pMで始め、希釈段階を1:4とする系列希釈を、ハイブリドーマ上清に施し、上記で記載した通りに解析した。Kdは、対応する結合曲線の中点に対応する。
【0223】
フローサイトメトリー
FlowJo 10.5.3ソフトウェア(FlowJo)を使用する、BD LSRFortessa(BD Biosciences)、CytoFlex LX、又はCytoFlex S(Beckman Coulter)における解析の前に、精製Vγ9Vδ2-T細胞(T細胞又は細胞株)であるPBMCを、指定のmAbと共にインキュベートした。Vγ9Vδ2-T細胞脱顆粒アッセイに使用された抗体は、抗CD107a-FITC(BD Biosciences)、抗CD107b-FITC(BD Biosciences)、抗CD3-PeVio700(Miltenyi)、抗PanTγδ-PE(Miltenyi)、live/dead near IR(Thermofisher)であった。全ての免疫染色は、FcR Block試薬(Miltenyi)、ヤギ抗マウス-PE 1:100(Jackson Immunoresearch)、及びlive/dead near IR(Thermofisher)の存在下で、10μg/mLの精製mAbを使用して実施した。マウス抗ヒトCD277(また、BTN3Aとしても公知である;IgG2aアイソタイプを伴うクローン103.2)については、既に開示された(国際公開第2012/080351号)。抗BTN2A1 mAbの特異性を評価するために、トランスフェクションの24時間後、HEK-293T BTN2 KO細胞(試料1例当たり5×104個)を回収し、上記で記載した通り、表示濃度(5ng/mL~75μg/mL)の抗ヒトBTN2A1 107G3 mAbで染色した。マウスIgG1抗体(Miltenyi)を、染色についてのアイソタイプ対照として使用した。
【0224】
Vγ9/Vδ2-T細胞についての機能アッセイ
HVから精製されたVγ9/Vδ2-T細胞を、rhIL-2(200UI/mL)において、一晩にわたり培養した。次いで、Vγ9/Vδ2-T細胞を、37℃で、以下のmAb(表示の通りの、50μLのハイブリドーマ上清又は10μg/mlの精製mAb):抗BTN2A1 mAb、mIgG1(アイソタイプ対照抗体)又はハイブリドーマ培養培地を伴うか、又は伴わずに、表示の標的細胞株(エフェクター:標的(E:T)比を1:1とする)と共に共培養した。イオノマイシン(1μg/mL)を伴う、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA、20ng/mL)を、Vγ9/Vδ2-T細胞の活性化についての陽性対照として使用した。第1ラウンドのハイブリドーマ上清スクリーニングのために、培養物上清を、4時間後に回収し、Human IFNγ ELISA set(BD Biosciences)を使用して、Vγ9/Vδ2-T細胞の活性化の指標としての、それらのIFNγ含量について調べた。第2ラウンドのハイブリドーマ上清の特徴づけのために、Vγ9/Vδ2-T細胞脱顆粒を、GolgiStop(BD Biosciences)及び可溶性CD107(a&b)-FITCの存在下における、4時間にわたるインキュベーションにより評価した。4時間後、細胞を回収し、PBSに2%のパラホルムアルデヒドにおいて固定し、FlowJo 10.5.3ソフトウェア(FlowJo)を使用する、CytoFlex LX(Beckman Coulter)において解析した。
【0225】
Vγ9/Vδ2-T細胞の増殖
抗TCRγδマイクロビーズキット(Miltenyi Biotec)を使用して、Vγ9/Vδ2-T細胞を、健常ドナーのPBMCから単離した。フローサイトメトリーにより評価された、γδ-T細胞の純度は、80%より大きかった。γδ-T細胞を、CellTrace Violetにより、37℃で、20分間にわたり標識付けした。次いで、CellTrace標識付け細胞5×105個を、pAgを伴うか、又は伴わず、精製抗BTN2A1 107G3抗体(10μg/ml)を伴うか、又は伴わない、IL-2(200UI/ml)の存在下にある、96ウェル丸底プレートにおいて培養した。培養の5日後、FlowJo 10.5.3ソフトウェア(FlowJo)を使用する、CytoFlex LX(Beckman Coulter)において、フローサイトメトリーにより、CellTraceの希釈率を査定した。
【0226】
統計学的解析:
Vγ9/Vδ2-T細胞脱顆粒について、結果は、平均値±SEMとして表す。精製抗BTN2A1 mAbの、BTN2A1トランスフェクトHEK-293T BTN2 KO細胞に対するEC50は、傾き可変モデルに従う非線形回帰の後における、log(用量)反応曲線に基づき決定した。全ての解析は、GraphPad Prism 7.04ソフトウェア(GraphPad)を使用して実施した。
【0227】
参照抗BTN2A mAb 101G5の同定
VH及びVLのシーケンシングの後、上記で記載した、マウスハイブリドーマの作出から得られた、23種の抗BTN2A mAbを、キメラIgG1フォーマット下で作製した。略述すると、マウス抗BTN2A mAbのVH配列及びVK配列を、in vitroにおいて合成し、PrimeSTAR Max DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社)を使用するPCRにより増幅した。In Fusionシステム(Clontech)を使用して、PCR生成物を、重鎖及び軽鎖の発現ベクター(MI-mAb)にクローニングし、プラスミドにより、Stellar competent cell(Clontech)を形質転換した。抗BTN2A mAbをバリデーションするために、ベクターシーケンシング(MWG Eurofins)を実施してから、さらなるトランスフェクションのためのプラスミドの、大スケール(maxi)の調製を行った。各抗BTN2Aクローンについて、マッチさせた軽鎖及び重鎖をコードするベクターを、重鎖/軽鎖の比を1:1.2として、HEK-293細胞に、一過性にトランスフェクトし(1mL当たりの細胞2.9×106個)、18時間後に、培地を交換した。トランスフェクションの7日後、mAbの精製のために、培養物上清を採取した。抗体のアフィニティー精製は、Protein A Sepharose Fast Flow(GE Healthcare)により、44℃で、一晩にわたり実施した。結合緩衝液は、0.5Mのグリシン、3MのNaCl、pH8.9であった。溶出は、以下の緩衝液:0.1Mのクエン酸pH3により実施した。1Mのトリス-HCl、pH9(10% v/v)による溶出の直後に、試料を中和した。最後に、キメラ抗BTN2A mAbを、1倍濃度のPBSへと透析し、0.22μMのフィルター(Millex GV hydrophilic PVDF、Millipore)を通して濾過した。キメラ抗BTN2A mAb濃度は、抗体の減衰係数を考慮に入れて、Nanodrop 2000 Spectrophotometer(ThermoScientific)において決定した。mAb単量体の画分により規定される純度は、Acquity UPLC-HClass Bio(Waters)を、Acquity UPLC Protein-BEH-200A、1.7μm、4.6×50mmカラム(Waters)と共に使用する、UPLC-SECにより決定した。抗体の質量は、逆相カラム(PLRP-S 4000 A、5μm、50×2.1 mm(Agilent technologies)を使用する、Xevo G2-S Q-Tof質量分析計(Waters)において決定した。全ての試料は、37℃で、PNGase F glycosidase(New England Biolabs)による脱グリコシル化の後で解析した。予測外の質量が見出された場合は、バイオインフォマティックスツールを使用して、一次アミノ酸配列を解析して、Fab領域内の、推定グリコシル化部位を同定した。精製抗体に対するSDS-PAGEは、無染色型のMini protean TGX gel 4-15(Biorad)による、最終素材の断片化及び/又は凝集の検出を可能とした。内毒素レベルは、ClarioStar分光光度計(BMG Labtech)を使用する、Chromogenic LAL Limulus Amebocyte lysate kineticアッセイ(Charles River Endosafe)を使用して決定した。
【0228】
in vitroマクロファージ分極アッセイ:
M1マクロファージ又はM2マクロファージを、健常ドナーから分取された単球から分極させた。この目的で、分取された単球を、GM-CSF又はM-CSF(40ng/mL;Miltenyi)の存在下で培養して、それぞれ、M1マクロファージ又はM2マクロファージを発生させた。5日後、結果として得られるマクロファージを、表現型解析のために回収するか、又はLPS(200ng/mL)で、さらに2日間にわたり刺激した。一部の実験では、4日目に、IL-4(20ng/mL)を、M2マクロファージへと添加したところ、これは、「M2+IL-4」マクロファージの発生を結果としてもたらした。一部の実験では、M-CSFの補充を伴わずに、PANC-1がん細胞で条件付けされた培地(0日目及び3日目に、培養培地において、30% v/vに希釈された)の存在下で、単球を培養することにより、M2マクロファージを発生させた。本出願では、結果として得られるM2マクロファージを、「Tum-ind-M2」と呼ぶ。抗BTN2A mAbを、M2分化をモジュレートする、それらの能力についてスクリーニングするために、上記で記載した通り、表示の濃度で、キメラ抗BTN2A mAb、又はそれらのアイソタイプ対照(ヒトIgG1;Sigma)を伴うか、又は伴わずに、単球から、M2マクロファージを発生させた。全てのmAbをウェットコーティングした(1倍濃度のPBSにおいて、RTで一晩にわたり)。M2分化の阻害についての対照として、GM-CSF(40ng/mL)及びIFNγ(100ng/mL、BioTechne)を、M-CSF誘導性M2分極時の、単球へと添加した。GM-CSFの存在下で分極させたM1マクロファージを、表現型対照として使用した。分極の後、結果として得られるマクロファージ、及びそれらの培養物上清を回収し、細胞膜における、M1関連マーカー及びM2関連マーカーの発現を、フローサイトメトリーにより評価した。加えて、製造元の指示書に従い、IL-10 and TNFα ELISA kit(ThermoFisher Scientific)を使用して、培養物上清におけるサイトカイン含量を定量した。
【0229】
in vitro M2マクロファージ復帰アッセイ:
M2マクロファージを、上記で記載した通り、参照mAbの非存在下、M-CSFの存在下で、単球から発生させた。M2マクロファージを回収し、LPSを伴うか、又は伴わずに、10μg/mLの参照抗体、又はそれらの対照アイソタイプmAb(Sigma製のヒトIgG1)で、一晩にわたり、あらかじめウェットコーティングされた培養ウェルにおいて、2日間にわたり培養した。M2復帰の対照として、GM-CSF(40ng/mL)及びIFNγ(100ng/mL)を、M2マクロファージ培養物へと、2日間にわたり添加した。GM-CSFの存在下で分極させたM1マクロファージを、表現型対照として使用した。復帰実験の後、LPSの添加を伴わずに復帰させられたマクロファージを、フローサイトメトリーによる表現型解析のために回収した。LPS刺激により復帰させられたマクロファージからの培養物上清を、ELISAを使用するサイトカイン定量のために採取した。
【0230】
T細胞増殖及びIFNγ産生に対する、M2マクロファージ媒介性阻害についてのin vitroアッセイ
上記で記載した通り、参照抗体、又はそれらのアイソタイプ対照mAbの添加を伴うか、又は伴わずに、M1マクロファージ及びM2マクロファージを発生させた。製造元の指示書に従い、CD3+マイクロビーズキット(Miltenyi)を使用することにより、CD3+ T細胞を、健常ドナーPBMCから分取し、共培養まで凍結させた。活性化CD3+ T細胞は、以下の通りに作出した:CD3+ T細胞を、5μMのCellTrace Violet色素(ThermoFisher Scientific)で染色し、次いで、このような細胞105個を、1μg/mLの抗CD3 mAb(クローンOKT3、BD biosciences)であらかじめコーティングされた96ウェル平底プレートにおいて、20U/mLのIL-2(Miltenyi)、LPS(200ng/mL)、及びCountBright absolute counting beads(ウェル1つ当たり5×103個、ThermoFisher Scientific)を補充されたX-Vivo 10培地において培養した。マクロファージとの共培養のために、同種の、M1マクロファージ、M2マクロファージ、又はM-CSF及び参照mAb若しくはそれらの対照アイソタイプの存在下で分極させられたマクロファージ2×104個を、同種の活性化CD3+細胞へと添加した。共培養の5日後、サイトカイン産生を増強するために、GolgiStopタンパク質輸送阻害剤の存在下で、5時間にわたり、20ng/mLのPMA及び0,5μg/mLのイオノマイシンを、共培養物へと添加した。次いで、細胞を、フローサイトメトリーによる表現型解析のために回収した。CellTraceの希釈率を、CD3+ T細胞増殖の指標として使用した。表現型及び増殖の結果は、1mL当たりの百分率又は絶対細胞数で表した(absolute counting beadsによる較正の後で)。
【0231】
参照抗BTN2A1 mAbによるナチュラルキラー(NK)チャレンジ:
健常ドナーから分取されたナチュラルキラー(NK)細胞を標識付けし、次いで、IL-15(10ng/mL)刺激を伴うか、又は伴わずに、10%のFBS及び1%のP/S、IL-2(50UI/mL)を補充されたRPMIにおいて、5%CO
2、37℃で培養した。0日目に、参照抗BTN2A mAb又は対照アイソタイプ(10μg/mL)を、培養物へと添加した。5日後、NK細胞を、活性化マーカーの発現について、細胞外表現型解析にかけた。NKの活性化を、CD69発現及びCD25発現(百分率及び蛍光強度中央値MFI)の誘導により評価した。NK細胞についてのゲーティング戦略を、
図4に示す。NK細胞による細胞傷害作用の測定のために、3例の健常ドナーから分取されたNK細胞を、IL-2(50UI/mL)及びIL-15(10ng/mL)を伴うか、又は伴わずに、RPMI、10%のFBS、及び1%のP/Sにおいて、5%CO
2、37℃で培養した。参照抗BTN2A mAb又は対照アイソタイプ(10μg/mL)を、非刺激NK細胞、又はIL-2/IL-15で刺激されたNK細胞に、一晩にわたり添加した。翌日、NK細胞を、表示の血液又は癌腫細胞株と、1:1の比で共培養し、FITCで標識付けされた抗CD107a mAb及び抗CD107b mAb(全て、BD Biosciences製)を、共培養物へと添加し、4時間にわたりインキュベートした。NK細胞の脱顆粒を、フローサイトメトリーにより、CD107αβ+細胞非刺激NK細胞、又はIL-2/IL-15刺激NK細胞における百分率として評価した。NK細胞の脱顆粒増強についてのEC
50の計算のために、参照抗BTN2A mAb、及びそれらのアイソタイプ対照mAbを、0.005nM~300nMの範囲の濃度で使用した。がん細胞における、NK細胞媒介性殺滅を評価するために、精製NK細胞を、10%のFBS及び1%のP/Sを補充したRPMIにおいて、5%CO
2、37℃で、10μg/mLの、参照mAbである、101G5 mAb及び107G3 mAb、又は対応するIgG1対照と共に、一晩にわたりプレインキュベートした。IL-2(50UI/mL)及びIL-15(10ng/mL)を、陽性対照として使用した。翌日、NK細胞を、表示の、CellTraceで標識付けされたがん細胞株と共に、1:1の比で、4時間にわたり共培養した。がん細胞の死は、腫瘍細胞株において、セルイベント(CellEvent)(商標)Caspase-3/7 Green Detection reagent(Thermofisher Scientific)を使用して、カスパーゼ3/7+細胞の百分率を評価することにより査定した。
【0232】
フローサイトメトリー:
染色の前に、PBMC/NK細胞及び単球/マクロファージを、Fc受容体を飽和させるために、ヒトFcブロック(Miltenyi)又はヒトIgG1(Sigma)と共に、10分間にわたりインキュベートした。使用された標識付けmAbは、以下:CD14-FITC及びCD14-APC-Vio770(Miltenyi)、CD163-VioBlue(Miltenyi)、DC-SIGN-PE-Vio770(Miltenyi)、CD80-PE(BD Biosciences)、PDL1-APC(BD Biosciences)、CD3-PE-CF594(BD Biosciences)及びCD3-BV605(Biolegend)、CD56-PE-Vio770(Miltenyi)及びCD56-BV605(BD Biosciences)、CD69-BV421(BD Biosciences)、CD25-APC(BD Biosciences)の通りであった。細胞を、抗体カクテルと共に、4℃で、30分間にわたりインキュベートした。「生」ゲートを規定するのに、live/dead near IR dye(ThermoFisher Scientific)を使用して、死細胞を除外した。細胞内IFNγ染色のために、Intracellular Fixation & Permeabilization Buffer Set(eBioscience)を使用して、細胞外染色細胞を、固定及び透過化し、APC-labelled anti-IFNγ(BD Biosciences)と共にインキュベートした。収集は、FlowJo 10ソフトウェアを使用する、Fortessaフローサイトメーター(BD Biosciences)において実施した。BTN2A1及びBTN2A2についての表現型解析のために、精製抗BTN2A1特異的抗体(mAb5)及び抗BTN2A2特異的抗体(mAb17)を、10μg/mLで使用し、PE-labelled anti-IgG(H+L)(Jackson Immunoresearch)により表現型を明示した。NK細胞は、単一細胞の選択後における、「生」ゲート内の、CD45+ CD14- CD3- CD56+細胞であった。単球は、単一細胞の選択後における、「生」ゲート内の、CD45+ CD19- CD3- CD56- CD14+細胞であった。収集は、Cytoflex LSフローサイトメーター(Beckman Coulter)、iQue Screenerフローサイトメーター(Intellicyt)又はFortessaフローサイトメーター(BD Biosciences)において実施し、データは、FlowJo 10ソフトウェアを使用して解析した。結果は、対応する染色対照により得られた値を差し引いた後の蛍光強度中央値(MFI)として表す。
【0233】
Octetベースの、BTN2A1エピトープに対するアフィニティーの測定、及びビニングアッセイ:
キメラIgG1フォーマットにおける、参照抗BTN2A抗体の作出の後、この標的の、2つの異なるアイソフォーム(BTN2A1及びBTN2A2)に対するアフィニティーを、査定し、競合アッセイを実施して、これらのmAbが、BTN2A1の、同じエピトープ領域を認識したのかどうかを決定した。アフィニティー実験及びビニング実験を、バイオレイヤー干渉(BLI)技術に基づくシステムである、Octet Red96プラットフォーム(Fortebio/PALL)において実施した。アフィニティー実験のために、製造元の指示書に従い、EZリンク(EZ-Link)(商標)NHS-PEG4ビオチニル化キットを使用して、組換えヒト(rh)BTN2A1-Fc(GTP)をビオチニル化させ、ビオチニル化rhBTN2A2-Fcを、R&D Systemsから購入した。BTN2A1アフィニティーアッセイの場合、ビオチニル化rhBTN2A1-Fcを、ストレプトアビジン(SA)バイオセンサー(ForteBio)へとロードし、Kinetic Buffer 1X(ForteBio)において、約1nmのローディング標的レベルへと希釈し、キメラ抗BTN2A抗体を、解析物として使用した。BTN2A2アフィニティーアッセイのためには、キメラ抗BTN2A抗体を、上記で記載した通りに、FAB2Gセンサー(抗ヒトCH1;Fortebio)へとロードし、ビオチニル化rhBTN2A2-Fcを、解析物として使用した。いずれの場合にも、解析物は、溶液において維持し、それらの作業濃度は、Kinetic Buffer 10X(ForteBio)において希釈した。1回目の試行には、標準的な作業濃度は、200~3.125nMの範囲にわたった。2回目の試行に必要な場合は、作業濃度を、80~1.25nMに調整した。全ての試行(ローディング、平衡化、センサーの、解析物への会合/浸漬、解離、及び再生を含む)は、1000rpmの振盪を伴う、30℃で実施した。解析は、良好な当てはめ計算を可能とする、Octetソフトウェアにより計算される、1:1又は2:1のラングミュアモデル(BTN2A1又はBTN2A2のそれぞれについて)を使用して実施した。ビニング実験のために、Hisタグ付けBTN2A1(rhBTN2A-His)を、R&D Systemsから購入した。参照抗BTN2A抗体を、BTN2A1に対して、対応のある形で調べた。ビニング実験は、以下の「インタンデム」フォーマットにより実施したが、これは、rhBTN2A-Hisを、バイオセンサー(抗Penta-His「HIS1K」バイオセンサー;ForteBio/PALL)に固定化し、2種の競合抗体へと、連続ステップで提示したことを意味する。この反応速度スクリーニングでは、rhBTN2A-Hisの、HIS1K(シグナル強度:1nm)へのローディングに続き、10μg/mLの抗体との、3分間にわたる会合ステップ、次いで、3分間にわたる解離ステップを行った。rhBTN2A1-His活性は、ビニングアッセイと同じフォーマット(センサーにおけるリガンド/捕捉物質としてのBTN2A1、及び解析物としての抗体)で実施される、反応速度スクリーニングアッセイを介して確認した。全ての抗体(飽和mAb又は競合mAb)を、Kinetic Buffer 1Xにおいて希釈される、10μg/mLで使用した。この反応速度スクリーニングでは、rhBTN2A1-Hisの、HIS1K(シグナル強度:1nm)へのローディングに続き、抗体との、3分間にわたる会合ステップ、次いで、3分間にわたる解離ステップを行った。アッセイステップは、以下の通り:「インタンデム」スキームに従う、ベースライン→抗原の捕捉→ベースライン→飽和抗体→ベースライン→競合抗体→再生であった。ビニングデータは、Octet Data Analysis HT 11.1を使用する、エピトープビン計算を使用して解析した。
【0234】
参照mAbである、107G3及び101G5についてのエピトープマッピング
BTN2A1と、参照mAbである、107G3及び101G5との相互作用を、BTN2A1単独、又は107G3若しくは101G5を伴うBTN2A1のペプチドマスフィンガープリントについての示差的評価により評価した。エピトープマッピングを開始する前に、CovalX製のHM4相互作用モジュール(CovalX)を装備したAutoflex II MALDI ToF質量分析器(Bruker)を使用して、それらの完全性及び凝集レベルを検証するために、rhBTN2A1-Fcタンパク質(GTP Technologies)に対して、高質量MALDI解析を実施し、これにより、BTN2A1の非共有結合的凝集物又は多量体が、試料中に存在しないことを確認した。BTN2A1を特徴づけ、BTN2A1/107G3及びBTN2A1/101G5のエピトープを決定するために、本発明者らは、試料を、トリプシン、キモトリプシン、Asp-N、エラスターゼ、及びテルモリシンによるタンパク質分解に続く、nLC Ultimate 3000-RSLCシステムを、LTQ-Orbitrap質量分析器(Thermo Scientific)と連結して使用する、nLC-LTQ-Orbitrap MS/MS解析にかけた。BTN2A1/107G3複合体及びBTN2A1/101G5複合体については、タンパク質複合体を、重水素化架橋剤と共にインキュベートしてから、多酵素切断にかけた。架橋ペプチドのエンリッチメントの後で、試料をアッセイし、XQuest 2.0ソフトウェア及びStavrox 3.6ソフトウェアを使用して、生成されたデータを解析した。試料調製のために、還元アルキル化は、以下の通りに実施した:室温で、180分間にわたるインキュベーション時間の前に、BTN2A1(4.04μM)を、DSS d0/d12(2mg/mL;DMF)と混合した。インキュベーション後、室温で、1時間にわたるインキュベーションの前に、1μLの重炭酸アンモニウム(20mMの最終濃度)を添加することにより、反応を停止させた。次いで、SpeedVacを使用して、溶液を乾燥させてから、H2Oに8Mの尿素に懸濁させた(10μL)。混合の後、1μLのDTT(500mM)を、溶液へと添加した。次いで、混合物を、37℃で、1時間にわたりインキュベートした。インキュベーションの後、暗所、室温で、1時間にわたるインキュベーション時間の前に、1μlのヨードアセトアミド(1M)を添加した。インキュベーション後、100μlのタンパク質分解緩衝液を添加した。トリプシン緩衝液は、50mMのAmbic pH 8.5、5%のアセトニトリルを含有し、キモトリプシン緩衝液は、100mMのトリスHCl、10mMのCaCl2 pH7.8を含有し、ASP-N緩衝液は、50mMのリン酸緩衝液pH7.8を含有し、エラスターゼ緩衝液は、50mMのトリスHCl pH 8.0を含有し、テルモリシン緩衝液は、50mMのトリスHCl、0.5mMのCaCl2 pH9.0を含有する。トリプシンによるタンパク質分解のために、100μLの還元/アルキル化BTN2A1を、1μLのトリプシン(Roche Diagnostic)と、1/100の比で混合した。タンパク質分解混合物を、37℃で、一晩にわたりインキュベートした。キモトリプシンによるタンパク質分解のために、100μLの還元/アルキル化BTN2A1を、0.5μLのキモトリプシン(Roche Diagnostic)と、1/200の比で混合した。タンパク質分解混合物を、25℃で、一晩にわたりインキュベートした。ASP-Nによるタンパク質分解のために、100μLの還元/アルキル化BTN2A1を、0.5μLのASP-N(Roche Diagnostic)と、1/200の比で混合した。タンパク質分解混合物を、37℃で、一晩にわたりインキュベートした。エラスターゼによるタンパク質分解のために、100μLの還元/アルキル化BTN2A1を、1μLのエラスターゼ(Roche Diagnostic)と、1/100の比で混合した。タンパク質分解混合物を、37℃で、一晩にわたりインキュベートした。テルモリシンによるタンパク質分解のために、100μLの還元/アルキル化BTN2A1を、2μLのテルモリシン(Roche Diagnostic)と、1/50の比で混合した。タンパク質分解混合物を、70℃で、一晩にわたりインキュベートした。消化の後、最終濃度を1%とするギ酸を、溶液へと添加した。タンパク質分解の後、タンパク質分解により作出された、10μLのペプチド溶液を、以下の設定:A:95/05/0.1 H2O/ACN/HCOOH v/v/v;B:20/80/0.1 H2O/ACN/HCOOH v/v/v、勾配:35分間で、注入容量10μLにおけるBを、5~40%とする、プレカラム内径:300μm×5mmC18ペップマップ(PepMap)(商標)、プレカラム流量:20μL/分、カラム内径:75μm×15cmC18 PepMapRSLC、カラム流量:200nL/分で、ナノ液体クロマトグラフィーシステム(Ultimate 3000-RSLC)へとロードした。
【0235】
ヒトBTN2A1と、カニクイザルBTN2A1との交差反応性についてのELISAアッセイ
BLAST検索の後、ヒトBTN2A1アミノ酸配列を使用して、カニクイザルBTN2A1オーソログ配列(XM_015448906.1)を同定し、EcoRI/EcoRV制限部位を使用して、その細胞外ドメインを、pFUSE-hIgG1FC2ベクター(InvivoGen)へとクローニングした。製造元の指示書に従う、エクスパイフェクタミン(ExpiFectamine)(商標)293(ThermoFisher)による、エクスパイ293F(Expi293F)(商標)細胞への、結果として得られるpFUSE-hIgG1FC2-cynoBTN2A1プラスミドのトランスフェクションにより、組換えcynoBTN2A1-Fc融合タンパク質を作製した。6日目に回収した細胞培養物上清を、アフィニティー精製カラムを通した精製のために使用した。精製cynoBTN2A1-Fcタンパク質を、分子量及び純度の測定のための、SDS-PAGE及びウェスタンブロット法により解析した。cynoBTN2A1-Fcタンパク質の濃度は、BSAを標準物質とするブラッドフォードアッセイにより決定した。ELISAのために、プレートを、cynoBTN2A1-Fcタンパク質、又は組換えヒトBTN2A1-Fc(huBTN2A1-Fc;GTP Technologies)(1倍濃度のPBSに、5μg/mL)により、4℃で、一晩にわたりコーティングした。PBSにおける、3回にわたる洗浄の後、プレートを、PBSに2% v/vのBSAにより、室温で、1時間にわたり飽和させ、次いで、飽和mAb緩衝液を廃棄した。参照mAbである、101G5及び107G3、又は対照ヒトIgG1を、PBSに2%のBSAにおいて、1μMから始めて、1pMまでの10倍希釈カスケードで希釈し、ウェル1つ当たりの各希釈液100μLを添加し、プレートシェーカーにおいて、室温で90分間にわたりインキュベートした。Goat anti-mouse IgG HRP(Jackson ImmunoResearch;PBSに2%のBSAにおける、1:10000の希釈率)の添加、及び室温で、1時間にわたるインキュベーションの前に、全てのウェルを、PBSにおいて、3回にわたり洗浄した。次いで、全てのウェルを、PBSにおいて、3回にわたり洗浄し、Spark分光計(Tecan)において、405nmの吸光度により評価される結合を明らかにするために、1-step ABTS solution(ThermoFisher)を添加した。全ての試料を、二連で評価した。
【0236】
結果:
参照抗体である、抗BTN2A1 107G3の同定
参照抗BTN2A1 107G3抗体は、以下の通りに同定した:マウスを、BTN2A1-Fc抗原で免疫化し、BTN2A1特異的血清の最高力価を呈するマウスに由来する脾臓細胞を回収し、骨髄腫細胞株と融合させて、ハイブリドーマを得た。BTN2A1に対する、最高のアフィニティー提示する、ハイブリドーマ培養物上清を、Vγ9/Vδ2-T細胞によるIFN-γの分泌をモジュレートする、それらの能力に基づく、第1ラウンドのスクリーニングのために選択した。この第1ラウンドのスクリーニングから選択されたクローンを、サブクローニングし、IFN-γ分泌及びVγ9/Vδ2-T細胞脱顆粒を誘導する、それらの能力、とりわけ、Vγ9Vδ2-T細胞の脱顆粒を誘導するそれらの能力について調べ(
図1C及び
図2)、参照mAbである、107G3の同定をもたらした。これらのサブクローンのVH領域及びVL領域のシーケンシングを実施した(下記の表2を参照されたい)。
【0237】
抗BTN2A1 107G3抗体は、異なるがん細胞株標的に対して、Vγ9Vδ2-T細胞の脱顆粒を誘導する
精製Vγ9/Vδ2 T細胞を、健常ドナーのPBMCから拡大し、抗BTN2A1 107G3ハイブリドーマ培養物上清を伴うか、又は伴わずに、標的細胞としての、Daudi(バーキットリンパ腫)細胞、Jurkat(急性T細胞白血病)細胞、L-IPC(膵腺癌)細胞、及びMDA-MB-134(乳腺癌腫)細胞を含む、異なるがん細胞株と共に共培養した。
図2及び表3に示される通り、抗BTN2A1 107G3ハイブリドーマ上清の添加は、CD107+脱顆粒細胞の百分率により測定される、Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能の、標的細胞単独を伴う共培養物、又は対照ハイブリドーマ培養培地の存在下にある共培養物と比較した誘導をもたらす。Vγ9/Vδ2 T細胞の、PMA/イオノマイシンによる処理は、予測される通り、標的細胞に依存しない、それらの細胞溶解機能の、最大の誘導をもたらす。
【0238】
抗BTN2A1 107G3ハイブリドーマ上清により誘導されるCD107+細胞の百分率は、対照ハイブリドーマ培養培地を伴う共培養物における、それぞれ、24.9±4.7%及び4.9±0.4%と対比した、Daudi細胞における71.1±7.4%~MDA-MB-134細胞における17.1±2.9%の範囲にわたった。Vγ9/Vδ2 T細胞の、標的としての、被験がん細胞株の全てとの共培養物では、抗BTN2A1 107G3は、対照ハイブリドーマ培養培地の存在下にある、同じ共培養物と比較して、2倍~8倍の間の、Vγ9/Vδ2 T細胞脱顆粒を誘導した。
【0239】
精製抗BTN2A1 mAb 107G3は、標的としてのDaudi細胞と、漸増濃度(0~18μg/ml)の抗BTN2A1 107G3 mAbの存在下で共培養された、CD107+細胞の百分率により描示される、Vγ9/Vδ2 T細胞脱顆粒の誘導について、0.77μg/mL(95%IC:0.32~13.22μg/mL)のEC
50を呈した(
図2B)。
【0240】
【0241】
抗BTN2A1 107G3抗体は、BTN2A1を認識するが、BTN3を認識しない
抗BTN2A1 mAb 107G3の、BTN2A1アイソフォームだけに対する特異性を確立するために、両方のBTN2アイソフォームに対する、CRISPR-Cas9媒介性不活化を保有する、HEK-293T BTN2 KO細胞に、BTN2A1をCFP融合タンパク質としてコードするプラスミドを、一過性にトランスフェクトした。
図3Aに示される通り、精製抗BTN2A1 mAb 107G3による染色は、BTN2A1をコードするプラスミドをトランスフェクトされたHEK-293T BTN2 KO細胞だけで検出され、HEK-293T BTN2 KO細胞単独では検出されなかった。
【0242】
全てのBTN3アイソフォームを認識する、抗BTN3 mAb 103.2は、HEK-293T BTN2 KO細胞におけるBTN3の発現を、たやすく検出した。よって、抗BTN2A1 107G3は、BTN2A1アイソフォームに特異的であり、BTN3と交差反応しない。
【0243】
細胞内における、抗BTN2A1 107G3 mAbの、BTN2A1に対するアフィニティー
抗BTN2A1 107G3 mAbの、その標的に対するアフィニティーを測定するために、BTN2A1をコードするプラスミドをトランスフェクトされたHEK-293T BTN2 KO細胞を、漸増濃度(5ng/mL~75μg/mL)の精製抗BTN2A1 107G3 mAb又は対照mIgG1で染色した(
図3B)。平均値蛍光強度データについての非線形回帰分析は、抗BTN2A1 107G3 mAbについて、0.32μg/mL(95%IC:0.21~0.46μg/mL)のEC
50を見出した。
【0244】
キメラ抗BTN2A mAbの作製、アフィニティーの測定、及びBTN2Aアイソフォームに対する特異性:
23種のモノクローナル抗体を、HEK-293T細胞において、一過性に作製し、異なる範囲の生産性を達成した。大半の抗BTN2A抗体は、高レベル(>100mg/Lであり、且つ、最大で430mg/L)で産生された。1種の抗体である、抗BTN2A mAb3(表3)は、HEK-293T細胞における、6~8mg/Lの範囲の、極めて低度の産生を呈した。アミノ酸配列解析は、そのFab部分内における、Nグリコシル化部位を、そのVHのCDR1において明らかにした。他の2種の抗体である、抗BTN2A mAb9及び抗BTN2A mAb11もまた、それらのFab領域内において(mAb9についての、CDR1_VH、及びmAb11についての、CDR1_VLにおいて)、Nグリコシル化部位を呈した。6種の抗体は、低純度レベル(<95%が単量体である)を呈したが、抗BTN2A mAb1及び抗BTN2A mAb3だけは、純度レベルが<90%(それぞれ、86%及び75%)であった。全ての最終精製抗BTN2A mAbは、極めて低レベル(0.1EU/mgの範囲)の細胞内毒素を呈した。mAb3だけは、他の抗体より高度の細胞内毒素レベル(0.73EU/mg)を有したが、なおも、許容基準(<1EU/mg)内にあった。ビオチニル化組換えFc融合可溶性タンパク質を使用する、Octet技術を使用することにより、23種の抗BTN2AキメラmAbのアフィニティー定数(KD、kon、及びkoff)を、BTN2A1アイソフォーム及びBTN2A2アイソフォームについて決定した。表4は、各抗BTN2A mAbについて、KD定数を再掲する。mAb6及びmAb9について、KDの計算は、測定時に観察される解離の非存在(koff<10-7/秒)のために、可能でなかったが、これは、それらの標的からの解離を緩徐化させる、これらの抗体のアビディビィー効果により説明されるであろう。8種の抗BTN2A mAbは、BTN2A1アイソフォーム(mAb2、mAb3、mAb4、mAb5、mAb6、mAb8、mAb9、及びmAb10)に結合することが見出され、8種の抗BTN2A mAbは、BTN2A2アイソフォーム(mAb16、mAb17、mAb18、mAb19、mAb20、mAb21、mAb22、及びmAb23)に結合することが見出され、7種のmAbは、両方のアイソフォーム(mAb1、mAb7、mAb11、mAb12、mAb13、mAb14、及びmAb15)に結合することが見出された。
【0245】
【0246】
BTN2A1及びBTN2A2の、単球及びNK細胞の細胞膜における発現:
本発明者らは、抗BTN2A mAbが、末梢血の非Vγ9Vδ2 T細胞コンパートメント、すなわち、単球及びNK細胞を、治療目的でターゲティングしうるのかどうかを決定しようと試みた。このため、本発明者らは、本発明者らのオクテットアッセイにおいて、BTN2A1又はBTN2A2だけに結合することが見出された、mAb5及びmAb17のそれぞれを、末梢血に由来する、単球及びNK細胞の表現型解析に使用した。
図4に示される通り、抗BTN2A1 mAb5だけが、単球及びNK細胞の両方の細胞膜を染色したが、単球において、より強いシグナルが観察された。よって、単球及びNK細胞の細胞膜では、BTN2A1は検出されたが、BTN2A2は検出されなかったことから、BTN2A1を認識するmAbを、これらの免疫細胞コンパートメントの免疫機能をモジュレートする、それらの能力についてスクリーニングすることに対する根拠が与えられる。
【0247】
単球から、マクロファージへの分極をモジュレートする、それらの能力についての、抗BTN2A mAbのスクリーニング
それらの微小環境からのシグナルに応答して、単球は、M1マクロファージ又はM2マクロファージへと分極させられうる。M1マクロファージが、炎症促進性及び抗腫瘍性特性を伴って存在するのに対し、M2マクロファージは、抗炎症性特性を有し、腫瘍の発症と関連する。単球の細胞膜では、BTN2A1アイソフォームだけが見出されることを踏まえ、BTN2A1アイソフォームだけ、又はBTN2A1/BTN2A2アイソフォームの両方を認識する抗BTN2A mAbを、in vitroの、M-CSFの存在下で、単球の、M2マクロファージへの分極に干渉する、それらの能力について査定した。いずれも、mAbを伴わずに、GM-CSF(CD14+/- CD163-)の存在下で発生するM1マクロファージ、及びM-CSFの存在下で発生するM2(CD14+ CD163+)マクロファージを、マクロファージ分極についての対照として使用した。in vitroにおける、5日間にわたる分極の後、抗BTN2A mAb又はそれらの対照IgG1の存在下で分極させられた、M1マクロファージ、M2マクロファージ、及びM-CSF誘導性マクロファージの細胞膜における、CD14及びCD163の発現を、フローサイトメトリーにより評価した(表4)。予測される通り、M1細胞が、低CD14発現及び検出不能なCD163発現を呈した(表5及び
図4)のに対し、M2マクロファージは、両方のマーカーの高発現を呈した。興味深いことに、後出では101G5と呼ばれる、抗BTN2A mAb1は、M-CSFの存在下で、CD14及びCD163の発現の、最も強力な低減を誘導し、M-CSF誘導性マクロファージ分極を、M1様表現型へと偏らせた(表4及び
図4B)。M-CSF誘導性M2マクロファージ分極の、第2の最良の阻害剤は、107G3である、mAb2であった(表5及び
図4B)。これは、M-CSF及び対照IgG1の存在下で得られるマクロファージの、非処理M2マクロファージと類似する表現型と対照的である。
【0248】
【0249】
図5は、CD14及びCD163の発現阻害との関係で、アイソタイプ対照と比較した、参照101G5 抗BTN2A mAb及び参照107G3抗BTN2A mAbの、M2阻害効果の用量依存性(
図5A及び5B)のほか、M1表現型に特徴的な、PDL1及びCD86の発現の増大(
図5C及び5D)を示す。サイトカイン分泌プロファイルはまた、M2マクロファージとM1マクロファージとを弁別する特徴でもある。よって、IL-10(抗炎症性、M2関連)及びTNFα(炎症促進性、M1関連)の、参照抗BTN2A mAbを伴うか、又は伴わない、M-CSF誘導性マクロファージ培養物上清からの分泌を、LPS刺激の後におけるELISAにより評価した。
図5E及び5Fに示される通り、参照抗BTN2A mAbは、IL-10の分泌を、用量依存的に阻害し、TNFαの分泌を、アイソタイプ対照とは対照的に、用量依存的に増大させた。これらの観察は、101G5及び107G3が、M1様表現型へと偏らせることにより、表現型及びサイトカイン分泌との関係で、M-CSF誘導性の、単球のM2マクロファージへの分極を阻害することを確認する。さらに、101G5及び107G3のこれらの効果は、用量依存的である。各mAbのIC
50及びEC
50を、表6に示す。PD-L1以外の、全てのパラメータについて、107G3と比較した101G5により、最低のIC
50及びEC
50が得られたことが注目される。
【0250】
【0251】
腫瘍微小環境からの他の刺激も、M2マクロファージ分極を誘導することが記載されている(Mosser及びEdwards、Nat Rev Immunol、2008;Mantovani及びAllavena、J Exp Med、2015)。M-CSFに加えて、M2分極を誘導するのに最も一般的に使用される刺激のうちの1つは、IL-4である。本発明者らは、101G5及び107G3の、M-CSF及びIL-4による刺激の後、単球から発生する、いわゆる、腫瘍促進性「M2+IL-4」マクロファージの分化に対する影響を決定した。このような条件下で、5日間にわたる培養の後、101G5及び107G3は、「M2+IL-4」関連マーカーの発現(CD14、CD163、及びDC-SIGN;
図6A、6B、及び6D)、及びIL-10の分泌(
図6F)を阻害する一方で、M1関連マーカー(CD86、PDL1)の発現、及びTNFαの分泌を増大させた(
図6C、6E、及び6G)。したがって、腫瘍促進環境下(M-CSF及びIL-4)で、101G4及び107G3は、「M2+IL-4」分化を阻害し、炎症促進性M1マクロファージ分化を増強する。
【0252】
加えて、101G5及び107G3の、単球からの、がん細胞誘導性M2分極に対する効果を、分取された単球を、PANC-1(膵腺癌細胞株)で条件付けされた培養物上清の存在下で培養することにより評価した。101G5又は107G3を、この状況下で添加したところ、M2関連マーカー(CD14、CD163)の発現、及びIL-10の分泌の減少(
図7A~7C)、並びにM1関連炎症促進性TNFαの発現の増大(
図7D)により示される通り、M2分極は阻害された。
【0253】
参照mAbである、抗BTN2A mAb 101G5及び抗BTN2A mAb 107G3の、M2マクロファージの、M1への再プログラム化に対する効果
M2分極マクロファージを、M1表現型へと復帰させる、参照mAbである、101G5 mAb及び107G3 mAbの潜在的可能性について評価した。この目的で、M-CSFの存在下で、5日間にわたり分極させられた、前出のM2マクロファージを、101G5 mAb及び107G3 mAbでコーティングされた、前出のウェルに播種し、2又は4日間にわたり、さらに培養した。M2マクロファージの、IFNγによる処理を、M2→M1復帰についての陽性対照として用いた。
図8に示される通り、101G5及び107G3の存在下で培養されたM2マクロファージは、IFNγ処理と同様の、M1様表現型を獲得した。実際、M2マクロファージの、参照mAbである、101G5 mAb及び107G3 mAbによる処理は、CD14発現(
図8A)及びCD163発現(
図8B)の減少、並びにCD86発現の増大(
図8C)を結果としてもたらした。101G5又は107G3のそれぞれによる処理の後、PDL1の、微弱な上方調節~上方調節の非存在が観察された(
図8D)。さらに、101G5及び107G3による、M2マクロファージの処理は、IL-10の分泌を阻害し(
図8E)、TNFαの分泌を増強した(
図8F)ことから、M1の表現型を指し示す。
【0254】
図8G~8Iは、CD163発現阻害との関係で、アイソタイプ対照と比較した、参照mAbである、101G5 mAb及び107G3 mAbonM2マクロファージの、M1マクロファージへの再プログラム化に対する効果の用量依存性(
図8G)、IL-10の減少、及びTNFαの分泌の増大(
図8H及び8I)を示す。各mAbのIC
50及びEC
50を、適切な特異的M1/M2マーカーについて、表7に示すが、ここで、抗BTN2A 101G5 mAbは、M2マクロファージの、M1マクロファージへの再プログラム化に対して、最良の活性を示す。
【0255】
【0256】
参照抗BTN2A mAb 101G5及びmAb 107G3は、T細胞増殖に対する、M2媒介性阻害を解放する
M2マクロファージの機能、すなわち、T細胞増殖に対する、M2媒介性阻害に影響を及ぼす、参照mAbである、101G5 mAb及び107G3 mAbの能力について、探索した。この目的で、あらかじめ活性化させた同種CD3+ T細胞を、M1、M2、又はmAbの存在下で発生したM2と共に共培養した。予測される通り、従来のM2マクロファージとの共培養は、M1マクロファージと比較した、CD3+ T細胞数の減少のほか、T細胞増殖の減少(CTVの希釈率により評価される)、及びIFNγの産生を結果としてもたらした(
図9A、9C、9G、9E、及び9I)。これに対し、対照IgG1の存在下で発生したM2マクロファージの培養物と比較した、CD3+ T細胞の高百分率及び高絶対数により示される通り、101G5及び107G3の存在下で発生したM2マクロファージは、T細胞増殖を阻害しないと考えられた(
図9B、9H、及び9J)。さらに、IFNγ産生T細胞の百分率及び数もまた、対照IgG1と比較した、101G5及び107G3の存在下で発生したマクロファージを含有する共培養物において高値であった(
図9D及び9F)。
【0257】
よって、M-CSF単独により誘導されるM2マクロファージと対照的に、M-CSFに加えて、101G5又は107G3の存在下で発生するマクロファージは、M1マクロファージと同様の、同種CD3+ T細胞の増殖及びTh1機能(IFNγの産生)を可能とする。
【0258】
参照抗BTN2A mAb 101G5及びmAb 107G3は、NK細胞の活性化及び細胞傷害作用を誘発する
BTN2A1は、NK細胞の細胞膜において見出されたので、101G5及び107G3が、NK細胞の活性化をモジュレートする潜在的能力について探索した。健常ドナーに由来する精製NK細胞を、さらなる活性化(それぞれ、IL-2及びIL-15、又はIL-2だけ)を伴うか、又は伴わない、101G5又は107G3の存在下で、5日間にわたり培養した。
図10に示される通り、101G5及び107G3のいずれも、全ての被験条件下のNK細胞の細胞膜において、CD69の発現を増強した(
図10A)。加えて、101G5及び107G3はまた、NK細胞の、IL-2及びIL-15による処理により誘導される、CD25の発現も増強した(
図10B)。101G5及び107G3は、精製NK細胞を活性化させることが可能であったので、本発明者らは、これらのmAbがまた、NK細胞による細胞傷害作用も増強しうるのかどうかについて探索した。よって、がん細胞株である、HL-60(骨髄性白血病)、HT-29(結腸癌)、MDA-MB-231(乳腺腺癌)、及びA549(肺腺癌)に対する、NK細胞の脱顆粒(CD107+細胞の%)を、IL-2及びIL-15による刺激を伴うか、又は伴わない、101G5又は107G3の存在下で評価した。予測される通り、対照IgG1の存在下で、HL-60細胞だけが、NK細胞の脱顆粒を誘発し(
図10C)、これは、IL-2及びIL-15を伴う刺激により増強された(
図10D)。充実性腫瘍細胞株である、HT-29、MDA-MB-231、及びA549に対する、適度なNK細胞の脱顆粒はまた、対照IgG1及びIL2+IL-15の存在下でも観察された。表8は、これらの被験がん細胞株及び他の被験がん細胞株(Raji、HCT116、DU-145)に対する、NK細胞の脱顆粒についてまとめる。興味深いことに、参照mAbである、101G5及び107G3は、IL-2+IL-15による刺激を伴わずに、充実性腫瘍細胞株である、MDA-MB-231及びA549に対する、NK細胞の脱顆粒を増強し、HT-29に対しては低度に増強した。IL-2及びIL-15の添加は、MDA-MB-231細胞、A549細胞、及びDU145細胞における、101G5及び107G3の効果を強調した(表8)。HL-60血液がん細胞株及びRaji血液がん細胞株について、参照101G5 mAb又は参照107G3 mAbの添加により、このような増強が観察されることはなかった(表8及び
図10C及び10D)。加えて、参照mAbである、101G5及び107G3は、mAbを、共培養物へと、さらに添加せずに、共培養の前に、NK細胞と共にプレインキュベートされた場合に、A549細胞に対して、NK細胞の脱顆粒を誘発することが可能であった(
図10E)。これは、がん細胞に対する細胞傷害作用を誘発するNK細胞への直接的な結合による、参照mAbである、107G3 mAb及び101G5 mAbの直接的な効果を示唆する。さらに、前立腺腺癌DU-145細胞株に対する、NK細胞の脱顆粒の増強における、101G5及び107G3の用量依存性について評価した。実際、101G5及び107G3は、DU-145細胞に対する、NK細胞の脱顆粒を、用量依存的に増強した(101G5及び107G3について、それぞれ、EC
50(no stim)=0.14及び0.54nM;EC
50(IL-2+IL-15)=0.08及び0.2nM)。
【0259】
【0260】
最後に、本発明者らは、精製NK細胞の、白血病細胞株HL-60又は肺腺癌細胞株A459との共培養の後における、カスパーゼ3/7細胞の百分率を評価することにより、がん細胞に対するNK細胞媒介性殺滅を増強する、101G5及び107G3の能力について調べた。
図11に示される通り、101G5及び107G3は、腺癌A549細胞に対するNK細胞媒介性殺滅を増強した(約2倍)が、HL-60白血病細胞に対するNK細胞媒介性殺滅は増強しなかった。まとめると、これらの観察は、101G5及び107G3が、充実性腫瘍に由来するがん細胞に対する、NK細胞の細胞傷害作用を優先的に増強することを指し示す。
【0261】
参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAbは、BTN2A1の、異なるエピトープを認識する
101G5及び107G3のいずれも、BTN2A1に結合し、M2マクロファージ分極を阻害し、NK細胞の活性化及び細胞傷害作用を増強する能力を共有する。よって、本発明者らは、これらのmAbが、BTN2A1タンパク質における、同じエピトープ領域を認識したのかどうかについて探索した。そこで、「インダンテム」状況を使用して、101G5と107G3とが、BTN2A1への結合について競合する、オクテットベースのビニング実験を実施した。
図12に示される通り、101G5と、107G3とは、互いのBTN2A1への結合を遮断しなかったことから、これらの2つのmAbは、BTN2A1における、同じエピトープ領域に結合しないことを指し示す。
【0262】
参照mAbである、101G5及び107G3についてのエピトープマッピング
BTN2A1を特徴づけるために、本発明者らは、試料を、トリプシン、キモトリプシン、Asp-N、エラスターゼ、及びテルモリシンによるタンパク質分解に続く、nLC-LTQ-Orbitrap MS/MS解析にかけた。トリプシンによるタンパク質分解の後、BTN2A1の配列に、配列のうちの79.84%をカバーする、32のペプチドを同定し;キモトリプシンによるタンパク質分解の後、BTN2A1配列のうちの94.76%をカバーする、27のペプチドを同定し;ASP-Nによるタンパク質分解の後、BTN2A1配列のうちの12.50%をカバーする、2つのペプチドを同定し;エラスターゼによるタンパク質分解の後、BTN2A1配列のうちの89.11%をカバーする、33のペプチドを同定し;テルモリシンによるタンパク質分解の後、BTN2A1配列のうちの78.23%をカバーする、29のペプチドを同定した。得られた結果に基づき、トリプシン、キモトリプシン、ASP-N、エラスターゼ、及びテルモリシンによるペプチドについての重複マッピングをデザインした(
図13)。トリプシン、キモトリプシン、Asp-N、エラスターゼ、及びテルモリシンによるタンパク質分解ペプチドを組み合わせて、BTN2A1配列のうちの96.37%をカバーした。BTN2A1/107G3複合体及びBTN2A1/101G5複合体のエピトープを、高分解能で決定するために、タンパク質複合体を、重水素化架橋剤と共にインキュベートしてから、多酵素切断にかけた。タンパク質複合体である、BTN2A1/107G3に対する、トリプシン、キモトリプシン、ASP-N、エラスターゼ、及びテルモリシンによるタンパク質分解の後、nLC-orbitrap MS/MS解析は、BTN2A1と、抗体である107G3との間に、17の架橋ペプチドを検出した。
【0263】
【0264】
よって、本発明者らの解析は、BTN2A1と107G3 mAbとの相互作用が、BTN2A1における、以下のアミノ酸:65、68、69、72、78、84、85、95、97、100を含むことを指し示す。これらの結果を、
図14A及び
図15に例示する。
【0265】
タンパク質複合体である、BTN2A1/101G5に対する、トリプシン、キモトリプシン、ASP-N、エラスターゼ、及びテルモリシンによるタンパク質分解の後、nLC-orbitrap MS/MS解析は、BTN2A1と、抗体である101G5との間に、14の架橋ペプチドを検出した。
【0266】
【0267】
よって、本発明者らの解析は、BTN2A1と101G5との相互作用が、BTN2A1における、以下のアミノ酸:212、213、218、220、224、229を含むことを指し示す。これらの結果を、
図14B及び
図16に例示する。
【0268】
参照抗BTN2A 101G5 mAb及び参照抗BTN2A 107G3 mAbは、カニクイザルBTN2A1オーソログとの交差反応性を呈する
BTN2A1オーソログは、カニクイザル(cynomolgus)(カニクイザル(Macaca fascicularis))を含む、大半の非ヒト霊長動物において存在する。参照mAbである、101G5及び107G3の、カニクイザルBTN2A1オーソログ(cynoBTN2A1;NCBI参照番号:XM_015448906.1、ヒトBTN2A1に対する、93.31%の同一性)との交差反応性を決定するために、本発明者らは、cynoBTN2A1の細胞外ドメインを含有する組換えFc融合タンパク質(cynoBTN2A1-Fc)を作出し、本発明者らは、参照mAbの、このタンパク質への結合について評価するためのELISAアッセイを実施した。本発明者らはまた、参照mAbのアフィニティーを、ヒトBTN2A1オーソログと、カニクイザルBTN2A1オーソログとの間で比較するために、組換えヒトBTN2A1-Fcタンパク質を使用するELISAも実施した。
図13に示される通り、101G5及び107G3のいずれも、cynoBTN2A1の細胞外ドメインに、huBTN2A1(それぞれ、0.82及び0.56nM)において得られる、対応するEC
50と同等である、それぞれ、0.60及び0.57nMのEC
50で結合することが可能であった。
【0269】
【0270】
参考文献:
本出願を通して、多様な参考文献は、本発明が関係する技術分野の最新技術について記載する。これらの参考文献の開示は、参照により本開示へと組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】