(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(54)【発明の名称】超粒子製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/16 20060101AFI20220513BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220513BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220513BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20220513BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220513BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220513BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220513BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K45/00
A61K47/42
A61K38/22
A61K47/36
A61K47/02
A61K47/10
A61P27/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556581
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(85)【翻訳文提出日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 AU2020050260
(87)【国際公開番号】W WO2020186304
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519044955
【氏名又は名称】ザ・バイオニクス・インスティテュート・オブ・オーストラリア
(71)【出願人】
【識別番号】504348389
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー オブ メルボルン
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF MELBOURNE
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ワイズ
(72)【発明者】
【氏名】ユーティエン・マ
(72)【発明者】
【氏名】フランク・カルソ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ビョルンマルム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA31
4C076BB26
4C076CC10
4C076DD21P
4C076DD25P
4C076DD37
4C076DD37P
4C076EE30H
4C076EE36P
4C076EE41H
4C076FF31
4C084AA17
4C084AA19
4C084DB59
4C084MA41
4C084MA56
4C084NA12
4C084ZA34
4C084ZC75
(57)【要約】
本開示は、高レベルのペイロードを担持し、制御されたペイロード放出プロファイルを有する超粒子に関する。特に、メソポーラスシリカナノ粒子からなり、アルギン酸をエレクトロスプレーされ、その後、生分解性材料で被覆または製剤化される超粒子を開示する。かかる超粒子は、様々な治療用途に使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超粒子を含む組成物であって、前記超粒子は、少なくとも1.5μgのペイロードを含み、生分解性コーティングで被覆される、前記組成物。
【請求項2】
生分解性製剤及び超粒子を含む組成物であって、前記超粒子は、少なくとも1.5μgのペイロードを含み、前記超粒子は、前記生分解性製剤に分散される、前記組成物。
【請求項3】
前記超粒子が、少なくとも2μgのペイロードを含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記超粒子が、1.5μg~10μgのペイロードを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記超粒子が、少なくとも60nmの直径を有する細孔を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記超粒子が、少なくとも50~100nmの直径を有する細孔を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記超粒子が、不規則な細孔構造を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記超粒子が、二峰性の細孔構造を有するナノ粒子からなる、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ナノ粒子の二峰性の細孔構造が、30nm超の大きな細孔径を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記生分解性製剤または前記生分解性コーティングが、ゲルまたはフォームである、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記生分解性製剤または前記生分解性コーティングが、タンパク液を含む。請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記タンパク液が、フィブリンまたはその前駆体を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記その前駆体がフィブリノゲンである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
トロンビンを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記ペイロードが、神経栄養因子である、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記神経栄養因子が、ニューロトロフィンである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記超粒子が、少なくとも2つのペイロードを含み、1つのペイロードが神経栄養因子である、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個の超粒子を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
異なるペイロードを備えた超粒子を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記超粒子が、持続放出プロファイルによって特徴づけられる、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記超粒子が、実質的に直線的な放出プロファイルによって特徴づけられる、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記超粒子が、固体の出現として前記生分解性製剤に分散される、請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記超粒子が、フィブリンまたはキトサンで被覆される、請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記超粒子が、ナノ粒子及びアルギン酸またはその多糖誘導体を含む組成物を、ジカチオン性水溶液にエレクトロスプレーすることにより製造される、請求項1~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
アルギン酸[(C
6H
8O
6)
n]またはその多糖誘導体を含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
アルギン酸ナトリウム塩[Na(C
6H
8O
6)
n]またはその多糖誘導体を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
持続放出システムを含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記持続放出システムが、ヒドロゲルである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記持続放出システムが、アルギネートヒドロゲルを含む、請求項27または請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記アルギネートヒドロゲルが、alg-CaCO3ヒドロゲルである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記持続放出システムが、チタン-ポリフェノールゲルまたはフィブリン接着剤を含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項32】
前記超粒子が、直接被覆される、請求項27~31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
疾患または障害を治療するための薬剤の製造における、請求項1~32のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項34】
前記障害が、聴力損失である、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記聴力損失が、感音性難聴(SNHL)、老人性難聴または騒音性難聴として特徴づけられる、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
疾患または障害の治療のために使用される際の、請求項1~32のいずれか1項に記載の組成物を含むキット。
【請求項37】
前記障害が、聴力損失である、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
さらに、蝸牛インプラントを含む、請求項37に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高レベルのペイロードを担持し、制御されたペイロード放出プロファイルを有する超粒子に関する。かかる超粒子は、様々な治療用途に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
メソポーラスシリカは、極めて大きな表面積を有する多孔質材料であり、様々な化合物を封入するため及び多様なナノ構造物質の鋳型合成に広く使用されている。このタイプの多孔質材料は、様々な用途、例えば、薬物送達において重要であるが、様々な問題が依然として未解決のままである。例えば、高い初期放出プロファイルまたはバースト放出挙動が課題である。場合によっては、治療薬物送達効率の向上、投与頻度の低減及び/または治療薬の高レベルの初期放出による潜在的副作用の低減等の結果を達成するために、放出の制御及び/または初期バースト放出の低減が必要であり得る。これらの結果を達成するため、ナノ担体の構造の修飾及び薬物とナノ担体を共有結合を介してコンジュゲートすること等、様々なアプローチが研究されてきた。
【0003】
極めて大きな表面積を有する新たな多孔質材料を提供することが望ましく、該新材料は、多くの興味深い特性を有し得ることが期待される。
【0004】
従って、改良された超粒子が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超粒子からのペイロード放出の時間的制御における現在の課題は、ペイロードの初期の急速な放出(すなわち、「バースト」放出)であり、これが持続放出を制限し、投与頻度を高くし、薬物の長期有効性の低下をもたらす。バースト放出はまた、ペイロードのバイオアベイラビリティの急速な増加のため、対象に毒性の問題を引き起こす場合もある。毒性の問題は、超粒子が高レベルのペイロードを担持した場合に拡大される場合がある。本発明者らは、驚くべきことに、生分解性コーティングで超粒子を被覆することで、高レベルのペイロードを超粒子が担持している場合であっても、超粒子からのペイロードの初期のバースト放出を劇的に低減することができることを確認した。従って、第一の態様では、本開示は、超粒子を含む組成物に関し、該超粒子は、少なくとも1.5μgのペイロードを含み、生分解性コーティングで被覆される。ある例では、該超粒子は、直接被覆される。別の例では、本開示は、生分解性製剤及び超粒子を含む組成物に関し、該超粒子は、少なくとも1.5μgのペイロードを含み、ここで、該超粒子は、生分解性製剤に分散される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある例では、該超粒子は、少なくとも2μgのペイロードを含む。別の例では、該超粒子は、1.5μg~10μgのペイロードを含む。別の例では、該超粒子は、少なくとも60nmの直径を有する細孔を含む。別の例では、該超粒子は、少なくとも50~100nmの直径を有する細孔を含む。別の例では、該超粒子は、不規則な細孔構造を有する。別の例では、該超粒子は、二峰性の細孔構造を有するナノ粒子からなる。ある例では、該ナノ粒子の二峰性の細孔構造は、30nm超の大きな細孔径を有する。
【0007】
ある例では、該生分解性製剤またはコーティングは、ゲルまたはフォームである。別の例では、該生分解性製剤またはコーティングは、タンパク液を含む。別の例では、該タンパク液は、フィブリンまたはその前駆体を含む。ある例では、その前駆体は、フィブリノゲンである。ある例では、前駆体を含む組成物は、さらに、生分解性コーティングまたはその一部への該前駆体の変換を触媒する酵素触媒を含み得る。従って、ある例では、本明細書に開示する組成物は、トロンビンを含み得る。ある例では、本開示によって包含される組成物は、フィブリノゲン及びトロンビンを包含する。
【0008】
ある例では、該ペイロードは、神経栄養因子である。例えば、該神経栄養因子は、ニューロトロフィンであり得る。ある例では、該ニューロトロフィンは、BDNFまたはNT-3である。ある例では、該ニューロトロフィンは、BDNFである。別の例では、該ニューロトロフィンは、NT-3である。別の例では、該超粒子は、少なくとも2つのペイロードを含み、1つのペイロードは、神経栄養因子である。
【0009】
別の例では、本明細書に開示する組成物は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個の超粒子を含む。この例では、該超粒子は、異なるペイロードを担持し得る。
【0010】
別の例では、本開示によって包含される超粒子は、持続放出プロファイルを有する。別の例では、本開示によって包含される超粒子は、実質的に直線的な放出プロファイルを有する。別の例では、本開示によって包含される超粒子は、直線的な放出プロファイルを有する。
【0011】
別の例では、本開示によって包含される超粒子は、固体の出現として生分解性製剤に分散される。この例では、該生分解性製剤は、該超粒子を被覆する。
【0012】
別の例では、超粒子は、フィブリンまたはキトサンで被覆される。
【0013】
本発明者らは、本開示の被覆された超粒子をヒドロゲル系と組み合わせ、該超粒子の外科的送達のしやすさを改善すること及び/またはさらに薬物放出速度を制御することができることもまた確認した。従って、ある例では、本開示は、本明細書に開示する被覆された超粒子及びヒドロゲル系または持続放出システムを含む組成物を包含する。ある例では、該超粒子は、直接被覆される。ある例では、該持続放出システムは、アルギネートを含む。ある例では、該持続放出システムは、アルギネートヒドロゲルを含む。例えば、該アルギネートヒドロゲルは、alg-CaCO3ヒドロゲルであり得る。別の例では、該持続放出システムは、チタン-ポリフェノールゲルまたはフィブリン接着剤を含む。
【0014】
ある例では、超粒子は、ナノ粒子及びアルギン酸またはその多糖誘導体を含む組成物を、ジカチオン性水溶液にエレクトロスプレーすることにより製造される。ある例では、該アルギン酸は、[(C6H8O6)n]またはその多糖誘導体である。別の例では、該アルギン酸のナトリウム塩は、[Na(C6H8O6)n]またはその多糖誘導体である。
【0015】
別の例では、本開示は、疾患または障害の治療のための薬剤の製造における、本明細書に開示する超粒子または組成物の使用に関する。ある例では、該障害は、聴力損失である。ある例では、該聴力損失は、感音性難聴(SNHL)、老人性難聴または騒音性難聴として特徴づけられる。
【0016】
別の例では、本開示は、本明細書に開示する疾患または障害の治療のために使用される際の、本明細書に開示する超粒子または組成物を含むキットに関する。ある例では、該障害は、聴力損失である。別の例では、該キットは、さらに、蝸牛インプラントを含む。
【0017】
本明細書における任意の例は、特に明記しない限り、任意の他の例に準用すると解釈されるものとする。
【0018】
本開示は、本明細書に記載の特定の例によって範囲を限定されない。このような特定の例は、例示のために意図されているに過ぎない。機能的に同等の製品、組成物及び方法は、本明細書に記載されるように、明らかに本開示の範囲内である。
【0019】
本明細書全体を通じて、特に明記しない限り、または文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単一のステップ、組成物、ステップの群または組成物の群への言及は、これらのステップ、組成物、ステップの群または組成物の群の1つ及び複数(すなわち、1つ以上)を包含すると解釈されるものとする。
【0020】
本開示を、以下の非限定的な実施例により、及び添付の図面を参照して以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】異なるpH値の関数としてのMS-SPのゼータ電位。ゼータ電位の測定は、10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4)、10mMのリン酸緩衝液(pH6)、10mMのHEPES緩衝液(pH8)及び10mMの重炭酸ナトリウム緩衝液(pH10)で行った。
【
図3】FITC-リゾチーム(緑)を担持したMS-SPの共焦点顕微鏡画像。a、b)異なる倍率でのMS-SP。c)FITC-リゾチームを担持した崩壊したMS-SPの内部。
【
図4】異なるFITC-リゾチーム担持時濃度を使用した3日間(72時間)のインキュベーション時間後の薬物担持。a)FITC-リゾチーム担持時濃度に対する、非多孔性MS-SP
alg(黒丸)、小孔MS-SP
alg(青四角)及びMS-SP
alg(赤三角)へのFITC-リゾチームの吸着量。b)FITC-リゾチーム担持時濃度に対する、非多孔性MS-SP(黒丸)、小孔MS-SP(青四角)及びMS-SP(赤三角)へのFITC-リゾチームの吸着量。c)MS-SP
alg及びd)MS-SPにおけるFITC-リゾチーム担持効率。示したデータは、3回の反復の平均であり、各々5個のSPを使用し、エラーバーは標準偏差を表す。
【
図5】直径が異なるMS-SPからのFITC-リゾチーム担持及び放出挙動。a)FITC-リゾチーム担持量、b)インビトロFITC-リゾチーム放出プロファイル、c)各時点で放出されたFITC-リゾチームの値、d)直径が200、550、650、1000μmのMS-SPからのインビトロFITC-リゾチーム放出の検量線。
【
図6】異なる数のMS-SPとともに48時間インキュベートしたヒト脳神経膠芽腫細胞(U87MG細胞株)の細胞生存率。インサートでエタノールを加えた細胞は、陰性(細胞毒性)対照として調製し、未処理の細胞は、100%の生存率を表す。示したデータは、4つのサンプルの平均であり、エラーバーは標準偏差を表す。
【
図7】インビトロ累積薬物放出プロファイル。a).MS-SP(赤丸)、及びMS-SP
alg(黒三角)からインビトロで放出されたFITC-リゾチーム(0.2mg・mL
-1、薬物担持3日間)。示したデータは、3回の反復の平均であり、各々10個のSPを使用し、エラーバーは標準偏差を表す。b)MS-SPからインビトロで放出されたFITC-リゾチーム(1.0mg・mL
-1、薬物担持3日間)。b)の挿入図は、6日目から始まるインビトロFITC-リゾチーム放出プロファイルである。c)MS-SPからのインビトロBDNF放出(1.0mg・mL
-1、薬物担持3日間)。BDNF ELISA(Abcam)をBDNF濃度の測定に使用した。
【
図8】MS-SP
alg及びMS-SP(担持条件:0.2mg・mL
-1のFITC-リゾチーム100μLを担持、担持時間3日間)に関して各時点で放出されたFITC-リゾチームの値。示したデータは、3回の反復の平均であり、各々10個の超粒子を使用し、エラーバーは標準偏差を表す。
【
図9】MS-SP(担持条件:1.0mg・mL
-1のFITC-リゾチーム100μLを3日間にわたって担持)に関して各時点で放出されたFITC-リゾチームの値。薬物担持は、超粒子あたり6.49±0.48μgであった。示したデータは、3回の反復の平均であり、各々10個のSPを使用し、エラーバーは標準偏差を表す。
【
図10】インビトロBDNF薬物試験(担持条件:1.0mg・mL
-1のBDNFを3日間にわたって担持)に関する各時点での絶対値。示したデータは、3回の反復の平均であり、各々1個のMS-SPを使用し、エラーバーは標準偏差を表す。
【
図11】MS-SPからのBDNFの測定のためのMicroBCAアッセイ。b)MS-SPを使用した各時点で放出されたBDNFの値。薬物担持は、超粒子あたり6.82μgである。示したデータは、3回の反復の平均であり、エラーバーは標準偏差を表す。
【
図12】a)PF127ヒドロゲル系でのMS-SP(赤丸)、及びMS-SP
alg(黒四角)のインビトロFITC-リゾチーム放出プロファイル。b)図(a)の各時点で放出されたFITC-リゾチームの値(0.2mg・mL
-1のFITC-リゾチーム100μLを担持)。薬物担持は、MS-SP及びMS-SP
algにおいて、それぞれ、超粒子あたり1.89±0.08μg及び超粒子あたり1.93±0.03μgである。示したデータは、3回の反復の平均であり、各々10個の超粒子を使用し、エラーバーは標準偏差を表す。
【
図13】50%担持(3.65μg/SP)時のインビトロ放出プロファイル。
【
図14】150日間のインビトロ薬物放出試験後のMS-SPの分解。a)PBS(pH7.4)中、37℃での150日間のインキュベーション後のMS-SPのSEM画像。b、c)PBS(pH7.4)中、37℃での150日間のインキュベーション後のMS-SPの表面構造のSEM画像。
【
図15】ニューロトロフィン-3の量(担持量に対する%)及びμg単位での合計を示す。対象の内耳内への移植の1週間後、各SPは、初期担持量のうち約2ugのニューロトロフィン-3(約40%)を含んでいた。
【
図16】Si-SP及び
FSi-SPの特徴。(a)Si-SPのSEM画像。(b)Si-SPの表面を示す高解像度SEM。(c)
FSi-SPのSEM画像。(d)
FSi-SPの表面を示す高解像度SEM。(e)
FSi-SPの元素分布。(f)Si-SP及び
FSi-SPのFTIRスペクトル。
【
図17】(a)低倍率及び(b)高倍率でのCaCO
3粒子のSEM画像。
【
図18】
図2のa及びbにおける
FSi-SPのインビトロFITC-リゾチーム放出プロファイルに関するインビトロ薬物放出の検量線。
【
図19】BDNFに関するインビトロ放出の検量線。
【
図20】alg-CaCO
3ヒドロゲルにおける
FSi-SPのインビトロFITC-リゾチーム放出プロファイルに関するインビトロ薬物放出の検量線。
【
図21】異なる濃度のフィブリノゲン及びトロンビンで被覆する前のSi-SPにおけるFITC-リゾチームの薬物担持量。
【
図22】Si-SPならびに異なる濃度のフィブリノゲン(2mg・mL
-1、20mg・mL
-1及び40mg・mL
-1で1.72mg・mL
-1のトロンビン、それぞれ、
2F1.72Si-SP、
20F1.72Si-SP、及び
40F1.72Si-SPと示す)にてフィブリンで被覆した
FSi-SPからの所与の時点で放出されたFITC-リゾチームの割合。示したデータは、3連の平均であり、エラーバーは、標準偏差を示し、各々10個のSPを使用した。
【
図23】Si-SPならびに異なる濃度のトロンビン(0.1mg・mL
-1、0.5mg・mL
-1、1.72mg・mL
-1及び5mg・mL
-1で20mg・mL
-1のフィブリノゲン、それぞれ、
20F0.1Si-SP、
20F0.5Si-SP、
20F1.72Si-SP及び
20F5Si-SPと示す)にてフィブリンで被覆した
FSi-SPから放出されたFITC-リゾチームの割合。示したデータは、3連の平均であり、エラーバーは、標準偏差を示し、各々10個のSPを使用した。
【
図24】インビトロ累積放出プロファイル。(a).Si-SPならびに異なる濃度のフィブリノゲン(2mg・mL
-1、20mg・mL
-1及び40mg・mL
-1で1.72mg・mL
-1のトロンビン、それぞれ、
2F1.72Si-SP、
20F1.72Si-SP、及び
40F1.72Si-SPと示す)にてフィブリンで被覆した
FSi-SPから放出されたFITC-リゾチーム。(b).Si-SPならびに異なる濃度のトロンビン(0.1mg・mL
-1、0.5mg・mL
-1、1.72mg・mL
-1及び5mg・mL
-1で20mg・mL
-1のフィブリノゲン、それぞれ、
20F0.1Si-SP、
20F0.5Si-SP、
20F1.72Si-SP及び
20F5Si-SPと示す)にてフィブリンで被覆した
FSi-SPから放出されたFITC-リゾチーム。Si-SP及び
FSi-SPからの(c)BDNF及び(d)NT-3の放出プロファイル。(a~d)に示したデータは、3連の平均であり、エラーバーは、標準偏差を示し、各々、(a)及び(b)では10個のSPから、(c)及び(d)では1個のSPからの放出を測定した。
【
図25】ELISAを使用して測定した、所与の時点でのSi-SP及び
FSi-SPから放出されたBDNFの割合。示したデータは、3連の平均であり、エラーバーは、標準偏差を示し、各々1個のSPを使用した。
【
図26】ELISAを使用して測定した、所与の時点でのSi-SP及び
FSi-SPから放出されたNT-3の割合。示したデータは、3連の平均であり、エラーバーは、標準偏差を示し、各々1個のSPを使用した。
【
図27】PBS(pH7.4)中、37℃にて、(a)3日間、(b)2週間、(c)3週間、(d)6週間、(e)10週間分解後のSi-SPのSEM画像。(f)は、PBS(pH7.4)中、37℃で10週間インキュベーション後のSi-SPの表面構造を示す。ここで、
図16bと(f)を比較すると、劇的な変化が観察される。
【
図28】PBS(pH7.4)中、37℃にて、(a)3日間、(b)2週間、(c)3週間、(d)6週間、及び(e)10週間インキュベーション後の
FSi-SPのSEM画像。(e)の挿入図は、PBS(pH7.4)中、37℃で10週間インキュベーション後の
FSi-SPの表面構造を示す。インキュベーション前の
FSi-SPの代表的な画像を
図16に示し、分解されたSi-SPの画像を
図27に示す。(f)10週間にわたってSi-SP及び
FSi-SPから放出されたSiを定量化するためのICP-OES分析。
FSi-SPは、20mg・mL
-1のフィブリノゲン及び1.72mg・mL
-1のトロンビンを使用して調製した。
【
図29】
FSi-SP(20mg・mL
-1のフィブリノゲン及び1.72mg・mL
-1をフィブリンコーティングに使用した)からのフィブリンのインビトロ累積分解割合。フィブリンの量は、MicroBCAタンパク質アッセイキットを使用して測定した。
【
図30】各時点でのSiの放出を、超粒子の最初のSi量の割合として測定した。
【
図31】無菌条件下、最大77日間、細胞培地中でインキュベートした2個、5個、10個または15個の
FSi-SPからの分解産物を含む細胞培地に48時間曝露した後のヒト脳神経膠芽腫細胞の細胞生存率。各点は、3連ウェルの平均を表し、エラーバーは、標準偏差を示す。未処理細胞(すなわち、標準培地にのみ曝露した細胞)を使用して100%の生存率を定義した。
【
図32】(a)低倍率及び(b)高倍率での凍結乾燥alg-CaCO
3ヒドロゲル(2重量%のアルギネート溶液及び1.5mgのCaCO
3粒子を使用して合成したもの)の断面のSEM画像。(c).凍結乾燥alg-CaCO
3ヒドロゲルの表面構造のSEM画像。(d).凍結乾燥alg-CaCO
3ヒドロゲル内の
FSi-SPの断片。(e).alg-CaCO
3ヒドロゲル内のSi-SP、
FSi-SP及び
FSi-SP(
FSi-SPは、20mg・mL
-1のフィブリノゲン及び20mg・mL
-1のトロンビンをフィブリンコーティングに使用して合成した)からのインビトロFITC-リゾチームの放出割合。(f).PBS(pH7.4)中、37℃での42日間にわたるalg-CaCO
3ヒドロゲルの分解。示したデータは、3連の平均であり、エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図33】(a)のインビトロFITC-リゾチーム放出プロファイル。異なる量のCaCO
3粒子、すなわち、1mg、4.5mgまたは9mgと、2重量%のアルギネート溶液で調製したalg-CaCO
3ヒドロゲル中でのSi-SP、それぞれ、Si-SP@
2alg-
1CaCO
3ヒドロゲル、Si-SP@
2alg-
4.5CaCO
3ヒドロゲル及びSi-SP@
2alg-
9CaCO
3ヒドロゲルとして示す。緑の線は、ヒドロゲルなしのインビトロSi-SP放出プロファイルである。(b)異なる濃度のアルギネート溶液、すなわち、1重量%、2重量%または3重量%と、1.5mgのCaCO
3粒子で調製したalg-CaCO
3ヒドロゲル中でのSi-SP、それぞれ、Si-SP@
1alg-
1.5CaCO
3ヒドロゲル、Si-SP@
2alg-
1.5CaCO
3ヒドロゲル及びSi-SP@
3alg-
1.5CaCO
3ヒドロゲルとして示す。緑の線は、ヒドロゲルなしのSi-SP放出プロファイルである。(c)最初の42日間の(a)からのインビトロ薬物放出プロファイル、(d)最初の42日間の(b)からのインビトロ薬物放出プロファイル。図c及びdは、alg-CaCO
3ヒドロゲルが、Si-SPからのFITC-リゾチームのバースト放出を28日目まで遅らせることができることを示す。
【
図34】
ChiSi-SP(0.1重量%のキトサン及びアルギネート溶液でSi-SPを被覆する。Si-SPは、キトサン及びアルギネートの1層、2層または3層で被覆されている)からのインビトロFITC-リゾチーム放出プロファイル。
【
図35】Si-SP及び
ChiSi-SP(0.1重量%のキトサン及びアルギネート溶液での2サイクルでのSi-SP被覆)からのインビトロBDNF放出プロファイル。
【
図36】Si-SP及び
ChiSi-SP(0.1重量%のキトサン及びアルギネート溶液での2サイクルでのSi-SP被覆)からのインビトロNT-3放出プロファイル。
【
図37】
ChiSi-SP(1重量%のキトサン及びアルギネート溶液でSi-SPを被覆、1サイクルでのキトサン及びアルギネート被覆)からのインビトロFITC-リゾチーム放出プロファイル。
【発明を実施するための形態】
【0022】
一般的技術及び選択的定義
特に明記しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当該分野(例えば、生理学、臨床研究、分子生物学、高表面積分子、エレクトロスプレー及び生化学)の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有すると解釈されるものとする。
【0023】
特に明記しない限り、本開示で使用される技術は、当業者に周知の標準的な手順である。かかる技術は、J.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley and Sons(1984)、J.Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989)、T.A.Brown(editor),Essential Molecular Biology:A Practical Approach,Volumes 1 and 2,IRL Press(1991)、D.M.Glover and B.D.Hames(editors),and F.M.Ausubel et al.(editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までのすべての改訂を含む),Ed Harlow and David Lane(editors)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory,(1988)、及びJ.E.Coligan et al.(editors)Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons(現在までのすべての改訂を含む)等の資料の全体を通して記載及び説明されている。
【0024】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される、単数での用語及び単数形の例えば、「a」、「an」及び「the」は、その内容が明らかに他を指示しない限り、任意に複数の指示対象を含む。従って、例えば、「超粒子(a supraparticle)」への言及は、任意に、複数の超粒子を含む。
【0025】
本明細書で使用される、「約」という用語は、反対の記載がない限り、指定値の+/-10%、より好ましくは+/-5%、より好ましくは+/-1%を指す。
【0026】
「及び/または」という用語、例えば、「X及び/またはY」は、「X及びY」または「XまたはY」のいずれかを意味すると理解されるものとし、両方の意味またはいずれかの意味を明示的に支持するものと解釈されるものとする。
【0027】
本明細書を通して、単語「含む(comprise)」または変化形、例えば、「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」は、記載される要素、整数もしくはステップ、または要素群、整数群もしくはステップ群を包含することを意味するが、任意の他の要素、整数もしくはステップ、または要素群、整数群もしくはステップ群を除外することを意味するものではないことが理解されよう。
【0028】
本明細書で使用される、「治療」という用語は、臨床的病理の経過中に治療される個体または細胞の自然経過を改変するように設計された臨床的介入を指す。例示的な望ましい治療効果としては、治療される障害と関連する症状の軽減が挙げられる。聴力損失の治療との関連で、望ましい治療効果としては、聴力損失の速度の減少及び聴力損失の改善または緩和が挙げられる。例えば、障害と関連する1つ以上の症状が軽減または排除される場合に、ある個体は、良好に「治療」される。
【0029】
「治療有効量」は、特定の障害の測定可能な改善をもたらすために必要な少なくとも最小量を指す。治療有効量はまた、対象の障害に測定可能な改善をもたらすために必要な少なくとも最小量を含むこともできる。治療有効量は、1回以上の投与で提供され得る。該治療有効量は、治療される障害の重症度に応じて、また、治療される対象の体重、年齢、人種的背景、性別、健康及び/または身体状態に応じても変化し得る。通常、該有効量は、比較的広い範囲(例えば、「用量」範囲)に含まれ、これは、医師によって繰り返される試験及び実験を通して決定され得る。該治療有効量は、単回投与で施される場合もあれば、治療期間にわたって1回または数回繰り返される投与で施される場合もある。
【0030】
ペイロード
超粒子は、本開示によれば、様々なペイロードを含むことができる。「ペイロード」は、障害を治療するのに有用な任意の薬剤でよい。薬剤の例としては、生物学的製剤、例えば、ポリヌクレオチド、抗体、モノクローナル抗体、抗体断片、抗体薬物複合体、タンパク質、生物活性タンパク質、融合タンパク質、組み換えタンパク質、ペプチド、ポリペプチド、合成ポリペプチド、ワクチン、治療血清、ウイルス、ポリヌクレオチド、細胞、例えば、幹細胞またはその一部、及び小分子が挙げられる。
【0031】
例示的なウイルスペイロードは、適切に改変されたレトロウイルス、アデノウイルス(AdV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)または組み換え型、例えば、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ならびにその誘導体、例えば、自己相補的AAV(scAAV)及び非組み込み型AVを含み得る。他の例示的なウイルス性の治療用ペイロードは、単純ヘルペスウイルス(HSV)、レンチウイルス、ワクシニア及び水疱性口内炎ウイルス(VSV)を含み得る。例えば、該ウイルス性の治療用ペイロードは、AAVを含み得る。様々なAAV血清型が知られており、適切なウイルスペイロードであり得る。ある例では、該AAVは、血清型2である。別の例では、該AAVは、血清型1である。他の例では、該AAVは、血清型3、4、7、8、9、10、11、12または13である。
【0032】
ある例では、該小分子は、神経伝達物質である。「神経伝達物質」という用語は、本開示の文脈においては、シグナル(複数可)を、化学シナプスを越えて、ある細胞から別の細胞へ伝達する物質を指すために使用される。一般に、神経伝達物質は、シグナル(複数可)を、化学シナプスを越えて、あるニューロンから標的細胞、例えば、別のニューロン、筋細胞または腺細胞へ伝達する。別の例では、該小分子は、受容体アゴニストである。「アゴニスト」という用語は、本開示の文脈においては、受容体と組み合わされた際に生理反応を開始する物質を指すために使用される。別の例では、該小分子は、受容体アンタゴニストである。「アンタゴニスト」という用語は、本開示の文脈においては、受容体の生理作用を妨害または阻害する物質を指すために使用される。
【0033】
例示的なポリヌクレオチドとしては、アンチセンスポリヌクレオチド、二本鎖DNA(dsDNA)または二本鎖RNA(dsRNA)が挙げられる。1つの例では、該dsDNAまたはdsRNAは、アプタマーである。別の例では、該dsRNAは、siRNA、miRNA、またはshRNAである。
【0034】
例示的な抗体及びその断片としては、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体または単一ドメイン抗体が挙げられる。ある例では、該抗体は、二重特異性でも、抗体薬物複合体でも、バイオシミラー抗体でもよい。他の例示的なポリペプチドとしては、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン及び血液凝固因子が挙げられる。ある例では、該ポリペプチドは、酵素である。例示的な酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、アスパラギナーゼ、リプロタマーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、コラゲナーゼ、グルタミナーゼ、ヒアルロニダーゼ、ストレプトキナーゼ、ウリカーゼ、ウロキナーゼまたはヌクレアーゼ、例えば、プログラマブルヌクレアーゼが挙げられる。ある例では、該酵素は、DNAメチルトランスフェラーゼであり得る。ある例では、該酵素は、遺伝子改変を遺伝子またはその調節領域に導入することを目的としたプログラマブルヌクレアーゼであり得る。例えば、該プログラマブルヌクレアーゼは、RNA誘導改変ヌクレアーゼ(RGEN)であり得る。ある例では、RGENは、古細菌ゲノムに由来するか、またはその組み換え型であり得る。別の例では、RGENは、細菌ゲノムに由来し得るか、またはその組み換え型である。別の例では、RGENは、I型(CRISPR)-cas(CRISPR-associated)システムに由来する。別の例では、RGENは、II型(CRISPR)-cas(CRISPR-associated)システムに由来する。別の例では、RGENは、III型(CRISPR)-cas(CRISPR-associated)システムに由来する。ある例では、該ヌクレアーゼは、クラスIのRGENまたはクラスIIのRGENに由来する。
【0035】
別の例では、該治療用ペイロードは、DNAメチル化阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤またはヒストンデアセチラーゼ阻害剤である。
【0036】
別の例では、該治療用ペイロードは、対象における免疫応答を刺激する抗原であり得る。例示的な抗原としては、タンパク質、ペプチド、多糖もしくはオリゴ糖(遊離またはタンパク質担体にコンジュゲートしたもの)またはそれらの混合物が挙げられる。他の例示的な抗原としては、細胞もしくはその一部またはウイルス粒子もしくはその一部が挙げられる。
【0037】
ある例では、該治療用ペイロードは、抗腫瘍薬である。
【0038】
他の例示的な治療用ペイロードとしては、内耳の膜受容体に対するアゴニストまたはアンタゴニストが挙げられる。かかる治療用ペイロードは、神経伝達を調節し得る。別の例では、該治療用ペイロードは、1つ以上の神経障害、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、てんかんまたは多発性硬化症の治療に有用な神経学的薬剤である。
【0039】
ある例では、該ペイロードは、「神経栄養因子」である。神経栄養因子という用語は、本開示の文脈においては、聴覚系由来の細胞を含めた任意の細胞の増殖または生存可能性を高める分子を指すために使用される。例えば、本開示によって包含される神経栄養因子は、内耳、中耳もしくは前庭器官に位置する聴覚系由来の細胞またはそれらのシナプス結合の増殖または生存を高めることができる。例示的な細胞としては、蝸牛神経節ニューロン(SGN)、内耳及び外耳の有毛細胞を含めた有毛細胞、蝸牛グリア細胞及びシュワン細胞が挙げられる。例示的なシナプス結合としては、有毛細胞、有毛細胞とSGNまたは上記の他のニューロン間の結合が挙げられる。他の例としては、ローゼンタール管もしくはそれらのシナプス結合における神経細胞体、上部中蝸牛領域のニューロンまたはシナプス結合及び/または骨らせん板の神経線維が挙げられる。
【0040】
例示的な神経栄養因子としては、聴覚系由来の細胞及び/またはそれらのシナプス結合の生存を直接または間接的に向上させることが既知の治療効果がある上記の薬剤を挙げることができる。
【0041】
ある例では、該神経栄養因子は、神経栄養ペプチドである。例示的な神経栄養ペプチドとしては、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、毛様体神経栄養因子(CNTF)ファミリーのメンバー、例えば、CNTF、白血病抑制因子(LIF)、インターロイキン-6(IL-6)、グリア成熟因子(GMF)、インスリン成長因子-1(IGF-1)、ニューレグリン1、ニューレグリン2、ニューレグリン3及びニューレグリン4、血管内皮成長因子(VEGF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)ファミリーのメンバー、例えば、GDNF、ニュールツリン(NRTN)、アルテミン(ARTN)、及びパーセフィン(PSPN)、エフリン、例えば、A1、A2、A3、A4、A5、B1、B2及びB3、インスリン成長因子-1(IGF-1)ならびにインターロイキン、例えば、IL-11が挙げられる。
【0042】
ある例では、該神経栄養因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)及びIL-11からなる群から選択される。
【0043】
蝸牛神経節ニューロン変性の1つの原因は、ニューロトロフィンの内因性供給の不足である。従って、ある例では、該神経栄養因子は、ニューロトロフィンである。「ニューロトロフィン」という用語は、本開示の文脈においては、ニューロン及び/またはそれらのシナプス結合の生存、発達及び/または機能を誘導するタンパク質を指すために使用される。例示的なニューロトロフィンは、上記で論じられており、BDNF、神経成長因子、ニューロトロフィン-3及びニューロトロフィン-4を含む。従って、ある例では、該超粒子は、BDNFを含む。別の例では、該超粒子は、神経成長因子を含む。別の例では、該超粒子は、ニューロトロフィン-3を含む。別の例では、該超粒子は、ニューロトロフィン-4を含む。ある例では、超粒子は、少なくとも2種の異なるニューロトロフィンを含み得る。他の例では、超粒子は、少なくとも3種または4種の異なるニューロトロフィンを含み得る。
【0044】
治療効果は、複数の異なる治療用ペイロードを含む超粒子を投与することによって改善され得る。従って、ある例では、超粒子は、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種の異なる治療用ペイロードを含み得る
【0045】
例えば、超粒子は、少なくとも2種の異なる神経栄養因子を含み得る。他の例では、超粒子は、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種の異なる神経栄養因子を含み得る。これらの例では、様々な神経栄養因子、例えば、ニューロトロフィンの組み合わせが企図される。例示的な神経栄養因子の組み合わせとしては、BDNFと神経成長因子、BDNFとニューロトロフィン-3、BDNFとニューロトロフィン-4、BDNFとCNTF、BDNFとGDNF、BDNFとIL-11、ニューロトロフィン-3とニューロトロフィン-4、ニューロトロフィン-3とCNTF、ニューロトロフィン-3とCNTF、ニューロトロフィン-3とGDNF、ニューロトロフィン-3とIL-11、ニューロトロフィン-4とCNTF、ニューロトロフィン-4とGDNF、ニューロトロフィン-4とIL-11、CNTFとGDNF、CNTFとIL-11、GDNFとIL-11、BDNF、ニューロトロフィン-3とニューロトロフィン-4、BDNF、ニューロトロフィン-3とCNTF、BDNF、ニューロトロフィン-3とGDNF、BDNF、CNTFとGDNF、BDNF、CNTFとIL-11、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4とCNTF、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4とGDNF、ニューロトロフィン-3、CDNFとGDNF、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4とIL-11、ニューロトロフィン-4、CNTFとGDNF、ニューロトロフィン-4、CNTFとIL-11、BDNF、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4とCNTF、BDNF、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4とGDNF、BDNF、ニューロトロフィン-3、CNTFとGDNF、BDNF、ニューロトロフィン-4、CNTFとGDNF、BDNF、BDNF、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4とIL-11、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、CNTFとGDNF、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、CNTFとIL-11が挙げられる。
【0046】
様々な耳の治療介入、例えば、外科処置及び聴力装置の移植は、副作用、例えば、中耳及び内耳の組織の損傷、炎症及び/または感染を引き起こす場合がある。かかる副作用に対する生物反応(複数可)は、聴覚系由来の細胞及び/またはそれらのシナプス結合の増殖もしくは生存可能性に間接的に影響を与え得る。従って、ある例では、神経栄養因子は、組織の修復を助け、炎症を低減し、及び/または感染を低減する。従って、さらなる例示的な神経栄養因子としては、ステロイドまたは抗酸化剤が挙げられる。他の例示的な神経栄養因子としては、抗体または他の結合タンパク質、例えば、抗トロポミオシン受容体キナーゼ(TrK)B、抗TrK Cもしくはp75ニューロトロフィン受容体と相互作用する結合タンパク質が挙げられる。例えば、p75ニューロトロフィン受容体アンタゴニスト。別の例では、神経栄養因子としては、核酸が挙げられる。例えば、神経栄養因子は、遺伝子療法、サイレンシングRNA、例えば、siRNAまたはmiRNA、発現構築物、例えば、目的の核酸を含むDNAプラスミドを含み得る。ある例では、該神経栄養因子は、オプシン(複数可)をコードする核酸を含む発現構築物である。
【0047】
さらなる例示的な神経栄養因子の組み合わせとしては、ステロイド、抗酸化剤、抗体または核酸と、少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種の異なる神経栄養因子が挙げられる。例えば、超粒子は、ステロイド、例えば、デキサメタゾンまたはプレドニゾロンならびにBDNF、神経成長因子、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4及びGDNFのうちのいずれか1つ以上を含み得る。別の例では、超粒子は、オプシンならびにBDNF、神経成長因子、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4及びGDNFのうちのいずれか1つ以上を含む発現ベクターを含み得る。別の例では、超粒子は、抗体、例えば、抗トロポミオシン受容体キナーゼ(TrK)Bまたは抗TrK CならびにBDNF、神経成長因子、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、GDNF及びIL-11のうちのいずれか1つ以上を含み得る。
【0048】
ある例では、超粒子は、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種の異なる治療用ペイロードを含むことができ、この場合、少なくとも1種の治療用ペイロードが神経栄養因子である。例えば、超粒子は、少なくとも3種の異なる治療用ペイロードを含むことができ、この場合、2種の治療用ペイロードが神経栄養因子である。別の例では、超粒子は、少なくとも4種の異なる治療用ペイロードを含むことができ、この場合、3種の治療用ペイロードが神経栄養因子である。これらの例では、該治療用ペイロードは、聴覚系由来の細胞の増殖または生存可能性を向上させる必要はなく、別の治療的有用性をもたらすことができる。例えば、該治療用ペイロードは、超粒子の投与後の対象の免疫系を抑制してもよい。別の例では、超粒子は、聴覚系由来の細胞またはそれらのシナプス結合の生存を低減するペイロード及び神経栄養因子(複数可)を含み得る。この例では、該神経栄養因子は、該治療用ペイロードによってもたらされる聴覚系由来の細胞またはそれらのシナプス結合の生存の低減を緩和し得る。ある例では、超粒子は、シスプラチンまたは関連化合物を含めた抗腫瘍薬、アミノグリコシド、例えば、トブラマイシンまたは関連化合物を含めた抗生物質、ループ利尿薬、例えば、フロセミド、代謝拮抗物質、例えば、メトトレキサート、サリシレート、例えば、アスピリンまたは放射性部分及び神経栄養因子(複数可)を含む。超粒子は、抗生物質ならびにBDNF、神経成長因子、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、GDNF及びIL-11のうちのいずれか1つ以上を含むことができる。
【0049】
投与部位によっては、該ペイロードは、中耳から内耳または前庭器官に拡散することが必要な場合がある。これは、正円窓または卵円窓を越えた該ペイロードの拡散を介して生じ得る。従って、ある例では、超粒子は、正円窓及び卵円窓を越えた内耳及び/または前庭器官への該ペイロードの拡散を助ける分子(複数可)を含み得る。
【0050】
ある例では、該ペイロードは、7を超える等電点を有する。別の例では、該ペイロードは、8を超える等電点を有する。別の例では、該ペイロードは、9を超える等電点を有する。別の例では、該ペイロードは、10を超える等電点を有する。別の例では、該ペイロードは、7~10の等電点を有する。別の例では、該ペイロードは、7~9の等電点を有する。別の例では、該ペイロードは、8~10の等電点を有する。別の例では、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。
【0051】
ペイロードを含む超粒子は、本開示の文脈においては、担持超粒子と呼ばれる場合がある。担持超粒子を生成する方法は、得られる超粒子が少なくとも1.5μgのペイロードを担持し得る限り、特に限定されない。好ましくは、得られる超粒子は、対象の耳に該ペイロードを送達することができる。例示的な担持方法は、Wang et al.(2009)J.Mater.Chem.19, 6451に概説されており、ペイロードの封入及び取り込みを含む。1つの非限定的な例では、超粒子は、該超粒子を、該ペイロードの水溶液と接触させ、その後一定期間インキュベーションを続けることにより担持し得る。該ペイロード溶液は、該超粒子に担持されるペイロードの量を超えて含むことができ、インキュベーションは、室温で行うことができる。該超粒子及び該ペイロードを含む溶液の攪拌を使用して、該ペイロードの担持を高めることができる。
【0052】
当業者には、必要なペイロードのレベルが、ペイロード自体及び本開示に従って治療される適応症によって影響を受ける可能性が高いことが理解されよう。
【0053】
超粒子
「超粒子」(「SP」)という用語は、本開示の文脈においては、細孔のネットワークを含む凝集粒子を指すために使用される。細孔のネットワークは、ペイロードを担持するための大きな細孔容積及び表面積を備えた超粒子を提供する。大きな細孔容積及び表面積は、超粒子によって担持され得るペイロードの量を高めることができるため、有利である。ある例では、本開示の超粒子は、凝集ナノ粒子である。
【0054】
ある例では、本開示の超粒子は、少なくとも1.5μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも2.0μgのペイロードを含む。
【0055】
別の例では、本開示の超粒子は、少なくとも2.5μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも2.6μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも2.7μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも2.7μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも2.8μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも2.9μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも3.0μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも3.1μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも3.2μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも3.3μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも3.4μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも3.5μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも3.6μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも3.7μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも3.8μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも3.9μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも4.0μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも4.5μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも5.0μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも5.5μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも6.0μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも6.5μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも7.0μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも7.5μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも8.0μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも8.5μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも9.0μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも9.5μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも10μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも10.5μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも11μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも11.5μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも12μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも15μgのペイロードを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも20μgのペイロードを含む。
【0056】
例えば、超粒子は、少なくとも6μgのペイロードを含み得る。別の例では、超粒子は、約2.5~10μgのペイロードを含み得る。別の例では、超粒子は、約3~10μgのペイロードを含み得る。別の例では、超粒子は、約4~10μgのペイロードを含み得る。別の例では、超粒子は、約5~10μgのペイロードを含み得る。別の例では、超粒子は、約6~10μgのペイロードを含み得る。別の例では、超粒子は、約5~15μgのペイロードを含み得る。別の例では、超粒子は、約5~20μgのペイロードを含み得る。別の例では、超粒子は、約8~20μgのペイロードを含み得る。別の例では、超粒子は、約8~15μgのペイロードを含み得る。
【0057】
例えば、超粒子は、約6~8μgのペイロードを含み得る。
【0058】
ある例では、本開示の超粒子は、少なくとも1.5μgの神経栄養因子を含む。別の例では、超粒子は、少なくとも2.0μgの神経栄養因子を含む。
【0059】
別の例では、超粒子は、少なくとも2.5μgの神経栄養因子を含む。別の例では、超粒子は、少なくとも3.0μgの神経栄養因子を含む。別の例では、超粒子は、少なくとも3.5μgの神経栄養因子を含む。別の例では、超粒子は、少なくとも4.0μgの神経栄養因子を含む。別の例では、超粒子は、少なくとも5.0μgの神経栄養因子を含む。別の例では、超粒子は、少なくとも6.0μgの神経栄養因子を含む。別の例では、超粒子は、少なくとも7.0μgの神経栄養因子を含む。別の例では、超粒子は、少なくとも8.0μgの神経栄養因子を含む。別の例では、超粒子は、少なくとも9.0μgの神経栄養因子を含む。別の例では、超粒子は、少なくとも10μgの神経栄養因子を含む。別の例では、超粒子は、少なくとも10.5μgの神経栄養因子を含む。別の例では、超粒子は、少なくとも11μgの神経栄養因子を含む。別の例では、超粒子は、少なくとも11.5μgの神経栄養因子を含む。別の例では、超粒子は、少なくとも12μgの神経栄養因子を含む。別の例では、超粒子は、少なくとも15μgの神経栄養因子を含む。別の例では、超粒子は、少なくとも20μgの神経栄養因子を含む。
【0060】
例えば、超粒子は、少なくとも6μgの神経栄養因子を含み得る。別の例では、超粒子は、約2.5~10μgの神経栄養因子を含み得る。別の例では、超粒子は、約5~10μgの神経栄養因子を含み得る。別の例では、超粒子は、約6~10μgの神経栄養因子を含み得る。例えば、超粒子は、約6~8μgの神経栄養因子を含み得る。別の例では、超粒子は、約5~15μgの神経栄養因子を含み得る。別の例では、超粒子は、約5~20μgの神経栄養因子を含み得る。別の例では、超粒子は、約8~20μgの神経栄養因子を含み得る。別の例では、超粒子は、約8~15μgの神経栄養因子を含み得る。
【0061】
ある例では、本開示の超粒子は、少なくとも1.5μgのニューロトロフィンを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも2.0μgのニューロトロフィンを含む。
【0062】
別の例では、超粒子は、少なくとも2.5μgのニューロトロフィンを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも3.0μgのニューロトロフィンを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも3.5μgのニューロトロフィンを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも4.0μgのニューロトロフィンを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも5.0μgのニューロトロフィンを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも6.0μgのニューロトロフィンを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも7.0μgのニューロトロフィンを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも8.0μgのニューロトロフィンを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも9.0μgのニューロトロフィンを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも10μgのニューロトロフィンを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも10.5μgのニューロトロフィンを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも11μgのニューロトロフィンを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも11.5μgのニューロトロフィンを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも12μgのニューロトロフィンを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも15μgのニューロトロフィンを含む。別の例では、超粒子は、少なくとも20μgのニューロトロフィンを含む。
【0063】
例えば、超粒子は、少なくとも6μgのニューロトロフィンを含み得る。別の例では、超粒子は、約2.5~10μgのニューロトロフィンを含み得る。別の例では、超粒子は、約5~10μgのニューロトロフィンを含み得る。別の例では、超粒子は、約6~10μgのニューロトロフィンを含み得る。例えば、超粒子は、約6~8μgのニューロトロフィンを含み得る。別の例では、超粒子は、約5~15μgのニューロトロフィンを含み得る。別の例では、超粒子は、約5~20μgのニューロトロフィンを含み得る。別の例では、超粒子は、約8~20μgのニューロトロフィンを含み得る。別の例では、超粒子は、約8~15μgのニューロトロフィンを含み得る。
【0064】
ある例では、本開示の超粒子は、少なくとも1.5μgのペイロードを含み、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、少なくとも2.0μgのペイロードを含み、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。
【0065】
別の例では、超粒子は、少なくとも2.5μgのペイロードを含み、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、少なくとも3.0μgのペイロードを含み、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、少なくとも3.5μgのペイロードを含み、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、少なくとも4.0μgのペイロードを含み、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、少なくとも5.0μgのペイロードを含み、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、少なくとも6.0μgのペイロードを含み、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、少なくとも7.0μgのペイロードを含み、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、少なくとも8.0μgのペイロードを含み、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、少なくとも9.0μgのペイロードを含み、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、少なくとも10μgのペイロードを含み、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、少なくとも10.5μgのペイロードを含み、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、少なくとも11μgのペイロードを含み、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、少なくとも11.5μgのペイロードを含み、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、少なくとも12μgのペイロードを含み、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、少なくとも15μgのペイロードを含み、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、少なくとも20μgのペイロードを含み、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。
【0066】
例えば、超粒子は、少なくとも6μgのペイロードを含むことができ、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、約2.5~10μgのペイロードを含むことができ、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、約5~10μgのペイロードを含むことができ、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、約6~10μgのペイロードを含むことができ、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。例えば、超粒子は、約6~8μgのペイロードを含むことができ、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、約5~20μgのペイロードを含むことができ、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、約5~15μgのペイロードを含むことができ、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、約8~20μgのペイロードを含むことができ、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。別の例では、超粒子は、約8~15μgのペイロードを含むことができ、この場合、該ペイロードは、9~10の等電点を有する。例えば、該ペイロードは、9~10の等電点を有するニューロトロフィンであり得る。
【0067】
ある例では、上記のペイロードを有する超粒子は、アルギネートヒドロゲル中で提供され得る。例えば、該アルギネートヒドロゲルは、alg-CaCO3ヒドロゲルであり得る。
【0068】
本開示の超粒子は、上記に例示されるペイロードを担持することができ、以下に論じる例から選択される細孔径を有することができる。ある例では、超粒子は、ミクロポーラスである。「ミクロポーラス」という用語は、本開示の文脈においては、約2nm未満の細孔径を有する粒子を指すために使用される。例えば、ミクロポーラス超粒子は、約0.5nm~約2nmの細孔径を有し得る。他の例では、ミクロポーラス超粒子は、約1nm~約2nm、約1.5nm~約2nmの細孔径を有する。別の例では、超粒子は、メソポーラスである。「メソポーラス」という用語は、本開示の文脈においては、直径約2nm~約50nmの細孔を有する粒子を指すために使用される。例えば、メソポーラス超粒子は、約2nm~約50nmの細孔径を有し得る。他の例では、メソポーラス超粒子は、約2nm~約40nm、約2nm~約30nmの細孔径を有する。別の例では、超粒子は、マクロポーラスである。「マクロポーラス」という用語は、本開示の文脈においては、約50nm超の細孔径を有する粒子を指すために使用される。例えば、マクロポーラス超粒子は、約50nm~約500nmの細孔径を有し得る。他の例では、マクロポーラス超粒子は、約50nm~約250nm、約50nm~約150nm、約50nm~約100nmの細孔径を有する。
【0069】
ある例では、超粒子は、ミクロポーラスナノ粒子からなる。ある例では、超粒子は、約0.5nm~約2nmの細孔径を有するナノ粒子からなる。他の例では、超粒子は、約1nm~約2nm、約1.5nm~約2nmの細孔径を有するナノ粒子からなる。別の例では、超粒子は、メソポーラスナノ粒子からなる。ある例では、超粒子は、約2nm~約50nmの細孔径を有するナノ粒子からなる。他の例では、超粒子は、約2nm~約40nm、約2nm~約30nmの細孔径を有するナノ粒子からなる。別の例では、超粒子は、マクロポーラスナノ粒子からなる。ある例では、超粒子は、約50nm~約95nmの細孔径を有するナノ粒子からなる。他の例では、超粒子は、約50nm~約85nm、約50nm~約75nm、約50nm~約65nmの細孔径を有するナノ粒子からなる。
【0070】
別の例では、超粒子は、二峰性の細孔構造を有するナノ粒子からなる。「二峰性」という用語は、本開示の文脈においては、複数の細孔径、通常は、小さい方の細孔径及び大きい方の細孔径を含む粒子を指すために使用される。例えば、超粒子は、メソ孔及びマクロ孔を有するナノ粒子を含むことができる。ある例では、かかる超粒子は、2nm~95nmの細孔を有するナノ粒子からなる。別の例では、超粒子は、10nm~95nmの細孔を有する二峰性のナノ粒子からなる。別の例では、超粒子は、15nm~95nmの細孔を有する二峰性のナノ粒子からなる。
【0071】
他の例では、超粒子は、1nm~200nmの細孔径からなり得る。他の例では、超粒子は、小さい方の細孔径約1nm~約5nm及び大きい方の細孔径約10nm~約50nmを有する二峰性のナノ粒子からなる。別の例では、超粒子は、小さい方の細孔径約2nm~約4nm及び大きい方の細孔径約15nm~約40nmを有する二峰性のナノ粒子からなる。別の例では、超粒子は、小さい方の細孔径約2nm~約3nm及び大きい方の細孔径約4nm~約40nmを有する二峰性のナノ粒子からなる。他の例では、超粒子は、小さい方の細孔径約10nm~約50nm及び大きい方の細孔径約70nm~約95nmを有する二峰性のナノ粒子からなる。別の例では、超粒子は、小さい方の細孔径約15nm~約40nm及び大きい方の細孔径約80nm~約95nmを有する二峰性のナノ粒子からなる。
【0072】
ある例では、超粒子は、ミクロ粒子からなる。別の例では、超粒子は、ミクロポーラスミクロ粒子からなる。ある例では、超粒子は、約0.5nm~約2nmの細孔径を有するミクロ粒子からなる。他の例では、超粒子は、約1nm~約2nm、約1.5nm~約2nmの細孔径を有するミクロ粒子からなる。別の例では、超粒子は、メソポーラスミクロ粒子からなる。ある例では、超粒子は、約2nm~約50nmの細孔径を有するミクロ粒子からなる。他の例では、超粒子は、約2nm~約40nm、約2nm~約30nmの細孔径を有するミクロ粒子からなる。別の例では、超粒子は、マクロポーラスミクロ粒子からなる。ある例では、超粒子は、約50nm~約500nmの細孔径を有するミクロ粒子からなる。他の例では、超粒子は、約50nm~約250nm、約50nm~約150nm、約50nm~約100nmの細孔径を有するミクロ粒子からなる。
【0073】
別の例では、超粒子は、二峰性の細孔構造を有するミクロ粒子からなる。例えば、超粒子は、メソ孔及びマクロ孔を有するミクロ粒子を含むことができる。ある例では、かかる超粒子は、2nm~500nmの細孔を有するミクロ粒子からなる。別の例では、超粒子は、10nm~250nmの細孔を有する二峰性のミクロ粒子からなる。別の例では、超粒子は、15nm~150nmの細孔を有する二峰性のミクロ粒子からなる。
【0074】
他の例では、超粒子は、小さい方の細孔径約1nm~約5nm及び大きい方の細孔径約10nm~約50nmを有する二峰性のミクロ粒子からなる。別の例では、超粒子は、小さい方の細孔径約2nm~約4nm及び大きい方の細孔径約15nm~約70nmを有する二峰性のミクロ粒子からなる。別の例では、超粒子は、小さい方の細孔径約2nm~約3nm及び大きい方の細孔径約15nm~約65nmを有する二峰性のミクロ粒子からなる。他の例では、超粒子は、小さい方の細孔径約10nm~約30nm及び大きい方の細孔径約15nm~約200nmを有する二峰性のミクロ粒子からなる。別の例では、超粒子は、小さい方の細孔径約15nm~約40nm及び大きい方の細孔径約15nm~約150nmを有する二峰性のミクロ粒子からなる。別の例では、超粒子は、小さい方の細孔径約20nm~約30nm及び大きい方の細孔径約100nm~約120nmを有する二峰性のミクロ粒子からなる。
【0075】
別の例では、超粒子は、少なくとも3μgの上記ペイロードを担持し、小さい方の細孔径約2nm~約4nm及び大きい方の細孔径約15nm~約40nmを有する二峰性ナノ粒子からなる。別の例では、超粒子は、少なくとも5μgの上記ペイロードを担持し、小さい方の細孔径約2nm~約4nm及び大きい方の細孔径約15nm~約40nmを有する二峰性ナノ粒子からなる。
【0076】
別の例では、超粒子は、少なくとも8μgの上記ペイロードを担持し、小さい方の細孔径約2nm~約4nm及び大きい方の細孔径約15nm~約40nmを有する二峰性ナノ粒子からなる。別の例では、超粒子は、少なくとも10μgの上記ペイロードを担持し、小さい方の細孔径約2nm~約4nm及び大きい方の細孔径約15nm~約40nmを有する二峰性ナノ粒子からなる。これらの例では、該超粒子は、アルギネートヒドロゲル中で提供され得る。例えば、該アルギネートヒドロゲルは、alg-CaCO3ヒドロゲルであり得る。
【0077】
別の例では、超粒子は、ミクロ粒子及びナノ粒子からなる。この例では、ミクロ粒子及びナノ粒子は、上記の細孔径(複数可)を有し得る。例えば、超粒子は、二峰性の細孔構造を有するミクロ粒子及びナノ粒子からなり得る。
【0078】
ある例では、超粒子は、実質的に均一な細孔径を有し得る。別の例では、超粒子は、様々な細孔径からなる。この例では、細孔径は様々でよいが、特定の径範囲に入り得る。例えば、超粒子は、大部分メソポーラスであり得る。別の例では、超粒子は、大部分マクロポーラスであり得る。別の例では、超粒子は、実質的に均一な細孔径を有するナノ粒子からなる。別の例では、超粒子は、実質的に均一な小孔径及び大孔径を有する二峰性のナノ粒子からなる。別の例では、超粒子は、実質的に均一な細孔径を有するミクロ粒子からなる。別の例では、超粒子は、実質的に均一な小孔径及び大孔径を有する二峰性のミクロ粒子からなる。
【0079】
ある例では、上記の超粒子は、規則的な細孔構造を有し得る。これらの超粒子は、規則的な3次元間隔の細孔を有する。別の例では、上記の超粒子は、不規則な細孔構造を有し得る。これらの超粒子は、不規則な3次元間隔の細孔を有する。別の例では、超粒子は、規則的な細孔構造と不規則な細孔構造の両方の組み合わせを有する。
【0080】
当業者には、超粒子の細孔径が、例えば、透過型電子顕微鏡法(TEM)、走査型電子顕微鏡法(SEM)及びX線コンピュータ断層撮影法によって測定され得ることが理解されよう。当業者には、上記に例示した細孔径を有する超粒子を、それらの3次元構造の最も広い点の幅を測定することによって特定することができる。ある例では、最も広い点または細孔は、当該超粒子の表面に存在し得る。
【0081】
本開示の超粒子は、それら粒子間の距離によって特徴づけられる場合がある。ある例では、粒子間の平均距離は、約80nm~約400nmに及び得る。別の例では、コロイド粒子間の平均距離は、約90nm~約300nm、約100nm~に及ぶ。
【0082】
ある例では、超粒子の細孔は連結している。例えば、超粒子は、一連の相互連結した細孔を含み得る。別の例では、超粒子の細孔は連結していない。別の例では、超粒子は、連結した細孔及び連結していない細孔の両方の組み合わせを有する。
【0083】
本開示の超粒子は、それらの細孔の容積によって特徴づけられる場合がある。ある例では、超粒子の細孔容積は、約0.5mLg-1~約10mLg-1に及ぶ。別の例では、超粒子は、約0.8mLg-1~約5mLg-1、約1mLg-1~約2.5mLg-1、約1.5mLg-1~約2mLg-1の細孔容積を有する。
【0084】
本開示の超粒子は、中空コアを有する場合もあれば、トロイダルコアを有する場合もある。ある例では、該超粒子のコアの内部容積は、該超粒子の全体積の少なくとも約45%、少なくとも約55%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%である。中空コアの超粒子を生成する例示的な方法としては、酸コア法、例えば、US4,468,498に記載のもの及びエステルコア法、例えば、US5,157,084及び5,521,253に記載のものが挙げられる。
【0085】
本開示の超粒子は、それらの構造の表面積によって特徴づけられる場合がある。ある例では、超粒子の表面積は、約500m2g-1~約1500m2g-1に及ぶ。別の例では、超粒子は、約5500m2g-1~約1250m2g-1、約600m2g-1~1000m2g-1、約600m2g-1~700m2g-1の表面積を有する。ある例では、超粒子の表面積は、約600m2g-1である。ある例では、超粒子の表面積は、約620m2g-1である。
【0086】
本開示の超粒子は、特定のインビトロ放出プロファイルによって特徴づけられる場合がある。ある例では、超粒子は、ペイロードを少なくとも50日間放出する。ある例では、超粒子は、ペイロードを少なくとも100日間放出する。ある例では、超粒子は、ペイロードを少なくとも150日間放出する。ある例では、被覆された超粒子は、実質的に直線的な放出プロファイルを有する。当業者には、様々な方法を用いて超粒子のインビトロ放出プロファイルを測定することができる。かかる方法の例は、以下の実施例7に論じる。例えば、本明細書に開示する超粒子は、標識されたペイロード、例えば、FITC-リゾチームを担持することができ、その後、PBS等の溶液中でインキュベートされ得る。間欠蛍光測定を用いて、経時的に放出されるペイロードのレベル(例えば、μg)を測定することができる。当業者には、経時的にペイロードの放出を図にすること及び検量線を適合させることによって容易にバースト放出を識別すること及び/または放出プロファイルが実質的に直線的であるかどうかを特定することが可能であろう。ある例では、実質的に直線的な放出プロファイルは、R2>0.9の直線的な検量線を有する。別の例では、実質的に直線的な放出プロファイルは、R2>0.92の直線的な検量線を有する。別の例では、実質的に直線的な放出プロファイルは、R2>0.95の直線的な検量線を有する。別の例では、実質的に直線的な放出プロファイルは、R2>0.97の直線的な検量線を有する。別の例では、実質的に直線的な放出プロファイルは、R2>0.98の直線的な検量線を有する。別の例では、実質的に直線的な放出プロファイルは、R2>0.99の直線的な検量線を有する。別の例では、実質的に直線的な放出プロファイルは、R2が0.9~0.99の直線的な検量線を有する。別の例では、実質的に直線的な放出プロファイルは、R2が0.92~0.99の直線的な検量線を有する。別の例では、実質的に直線的な放出プロファイルは、R2が0.95~0.99の直線的な検量線を有する。
【0087】
ある例では、バースト放出は、ペイロード放出の顕著な増加と、その後のさらに持続する放出プロファイルによって識別される。バースト放出の例を、以下の図に示す。ある例では、バースト放出は、最初の7日間にわたる約30~75%のペイロードの放出を特徴とする。別の例では、バースト放出は、最初の7日間にわたる約30~70%のペイロードの放出を特徴とする。別の例では、バースト放出は、最初の7日間にわたる約35~65%のペイロードの放出を特徴とする。別の例では、バースト放出は、最初の7日間にわたる約40~60%のペイロードの放出を特徴とする。当然のことながら、バースト放出の割合は、ペイロードのタイプに左右される。例えば、リゾチームのバースト放出は、最初の7日間にわたる約55~75%のペイロードの放出を特徴とし得る。別の例では、BDNFのバースト放出は、最初の7日間にわたる約35~70%のペイロードの放出を特徴とし得る。
【0088】
ある例では、本開示によって包含される持続放出プロファイルは、最初の7日間にわたる約3~25%のペイロードの放出を特徴とする。別の例では、本開示によって包含される持続放出プロファイルは、最初の7日間にわたる約5~25%のペイロードの放出を特徴とする。
【0089】
別の例では、本開示によって包含される持続放出プロファイルは、最初の7日間にわたる約5~15%のペイロードの放出を特徴とする。別の例では、本開示によって包含される持続放出プロファイルは、最初の7日間にわたる約5~10%のペイロードの放出を特徴とする。これらの例では、該ペイロードは、ニューロトロフィンであり得る。
【0090】
この場合もやはり、持続放出の割合は、ペイロードのタイプに左右される。例えば、リゾチームの持続放出は、最初の7日間にわたる約15~40%のペイロードの放出を特徴とし得る。別の例では、BDNFまたはNT-3の持続放出は、最初の7日間にわたる約5~10%のペイロードの放出を特徴とし得る。
【0091】
ある例では、上記の持続放出プロファイルもまた、実質的に直線的なペイロード放出の検量線と関連し得る。
【0092】
ある例では、ペイロードの遅延放出が、本開示によって包含される超粒子で認められる。例えば、ペイロードの放出は、当該超粒子のコーティングが十分に生分解するまで、実質的にまたは完全に阻害され得る。例えば、被覆された超粒子からのペイロードの放出は、投与後の最初の数日間、実質的にまたは完全に阻害され得る。ある例では、被覆された超粒子からのペイロードの放出は、少なくとも2日間、実質的にまたは完全に阻害され得る。別の例では、被覆された超粒子からのペイロードの放出は、少なくとも3日間、実質的にまたは完全に阻害され得る。別の例では、被覆された超粒子からのペイロードの放出は、少なくとも4日間、実質的にまたは完全に阻害され得る。別の例では、被覆された超粒子からのペイロードの放出は、少なくとも5日間、実質的にまたは完全に阻害され得る。別の例では、被覆された超粒子からのペイロードの放出は、3~5日間、実質的にまたは完全に阻害され得る。
【0093】
ある例では、本開示の超粒子は、約1nm~100nmの直径を有するナノ粒子から生成される。別の例では、超粒子は、約0.1μm~100μmの直径を有するミクロ粒子から生成される。別の例では、超粒子は、ナノ粒子及びミクロ粒子から生成される。
【0094】
本開示の超粒子を形成する例示的な粒子としては、有機粒子、無機粒子、金属粒子またはそれらの組み合わせが挙げられる。例示的な有機粒子としては、ポリマー粒子、例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(エタクリル酸)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)、ポリアミド、ポリ-2-ヒドロキシブチレート(PHB)、ゼラチン、ポリカプロラクトン(PCL)、及びポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)が挙げられる。例示的な無機粒子としては、鉱物充填剤、例えば、重充填剤または高密度充填剤、顔料、クレー及び他の合成粒子が挙げられる。他の例示的な無機粒子としては、高密度鉱物、例えば、バライト、ヘマタイト、酸化マグネシウム、無機酸化物、すなわち、二酸化チタン、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化セリウム、二酸化ジルコニウム、及び二酸化ケイ素等が挙げられる。ある例では、該材料は、二酸化ケイ素(すなわち、シリカ)である。従って、ある例では、該超粒子は、シリカ超粒子と呼ばれ得る。例示的な金属粒子としては、金、銀、及び銅が挙げられる。1つの例では、超粒子は、同じ粒子を含み得る。例えば、超粒子は、実質的にシリカ粒子からなり得る。別の例では、超粒子は、異なる粒子、例えば、シリカ及びクレー粒子を含み得る。他の例では、超粒子は、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種の異なる粒子を含むことができる。
【0095】
ある例では、超粒子は、高分子電解質または高分子電解質材料を含む。かかる超粒子の例は、WO2006/037160に開示されている。この例では、該高分子電解質は、正荷電高分子電解質(または正荷電能力を有する)の場合もあれば、負荷電高分子電解質(または負荷電能力を有する)の場合も、正味荷電がゼロの場合もある。
【0096】
本開示の超粒子は、様々な形状を有し得る。例えば、超粒子は、球状の形状を有することができる。例示的な球状の形状としては、球及び卵形が挙げられる。別の例では、超粒子は、非球形の形状を有する。例示的な非球形の形状としては、ダンベル、半球、ディスク、四面体、繊維、球面円柱及び不規則形状が挙げられる。ある例では、超粒子は、規則的な構造を有し得る。例えば、超粒子は、秩序配列を含み得る。
【0097】
本開示の球状超粒子は、それらの直径によって特徴づけられる場合がある。例えば、本開示の超粒子は、100μmを超える直径を有する。例えば、本開示の超粒子は、少なくとも約150μm、約200μm、約250μm、約300μm、約350μm、約400μm、約450μm、約500μm、約550μm、約600μm、約650μm、約700μm、約750μm、約800μm、約850μm、約900μm、約950μm、約1000μmの直径を有し得る。例えば、超粒子は、約550μmの直径を有し得る。この直径の超粒子は、高薬物担持を可能にしながら、カニューレを介して内耳への送達を容易にするために有利である。他の例では、超粒子は、約150μm~約1000μm、約200μm~約900μm、約300μm~約800μmの直径を有し得る。別の例では、超粒子は、約400μm~約600μmの直径を有し得る。別の例では、超粒子は、約450μm~約550μmの直径を有し得る。別の例では、超粒子は、約520μm~約580μmの直径を有し得る。別の例では、超粒子は、約460μm~約540μmの直径を有し得る。別の例では、超粒子は、約470μm~約530μmの直径を有し得る。別の例では、超粒子は、約480μm~約520μmの直径を有し得る。別の例では、超粒子は、約490μm~約510μmの直径を有し得る。他の例では、超粒子は、それらの3次元構造の最も広い点の幅によって特徴づけられる場合がある。例えば、超粒子は、上記に例示した直径と一致する幅を有し得る。
【0098】
別の例では、該超粒子の表面は、官能基の付加によってペイロードの担持を高めるように修飾される。任意の数の官能基を超粒子の表面に付加してもよく、官能基の選択は、担持されるペイロードを補足するように選択される。ある例では、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)等の部分が、シリカ超粒子の表面にグラフトされる。これにより、ペイロードに存在する任意のカルボキシル基と相互作用することができるアミン官能基が導入される。別の例では、該超粒子は、ペイロードの担持を高める全体としての正味荷電を有するように修飾される(Tan et al.Adv.Mater.(2012)24, 3362-3366)。例えば、該超粒子の表面は、全体としての正味の正電荷を有するように修飾される場合があり、その結果、全体としての正味の負電荷を有するペイロードの担持が高まる。別の例では、該超粒子の表面は、全体としての正味の負電荷を有するように修飾され、その結果、全体としての正味の正電荷を有するペイロードの担持が高まる。
【0099】
本開示の超粒子はまた、架橋された官能基を含んでもよい。例えば、官能基は、化学反応を介して架橋され得る。ある例では、ポリグリコール酸(PGA)分子は、PGA分子とシスタミンの化学反応により架橋される(Tan et al.Adv.Mater.(2012)24, 3362-3366)。
【0100】
生分解性コーティング
ある特定の実施形態では、生分解性コーティングを使用して、本明細書に開示する超粒子からのペイロードの初期のバースト放出を低減または排除する場合がある。従って、ある例では、本開示は、生分解性コーティングで被覆された本明細書に記載のペイロードを含む超粒子を包含する。
【0101】
「生分解性」という用語は、本開示の文脈においては、経時的に、特に、対象への投与後に分解するコーティングを描写するために使用される。この例では、該コーティングの分解は、該超粒子からのペイロードの該対象への放出と同時に起こる。例えば、本開示によって包含される生分解性コーティングは、対象の内耳への投与後に分解し得る。別の例では、本開示によって包含される生分解性コーティングは、対象の蝸牛への投与後に分解し得る。
【0102】
「コーティング」という用語は、本開示の文脈においては、本明細書に開示する超粒子及びそのペイロードの表面に塗布されるまたはそれらを封入する組成物の少なくとも1層を指すために使用される。ある例では、該超粒子の少なくとも一部が被覆される。別の例では、超粒子は、実質的に被覆される。
【0103】
ある例では、コーティングは、本明細書に開示する超粒子の表面に塗布されるか、または形成される。「直接被覆」という用語は、該コーティングが、表面に直接塗布されるか、または形成される超粒子を描写するために使用され得る。例として、直接被覆超粒子は、当該超粒子の表面にコーティングを直接形成するため、前駆体物質で被覆された後、触媒で処理され得る。
【0104】
本開示によって包含される被覆された超粒子の他の例としては、ゲル製剤またはフォーム製剤等の製剤で提供される超粒子が挙げられる。これらの例では、該製剤は生分解性であるとともに、例えば、生分解性ゲルまたはフォームを含むことができる。例えば、固体の出現として製剤中に提供される超粒子は、本開示の文脈においては、被覆されていると見なされる。この例では、該超粒子は、生分解性製剤全体に分散され得る。
【0105】
本開示によって包含されるコーティングは、超粒子のペイロードと適合し(例えば、ペイロードを分解しない)、対象に生物学的に許容され、本明細書に開示する超粒子からのペイロードの放出を減速させる限り、特に限定されない。従って、例えば、米国特許第4,434,153号に記載されている様々な生分解性有機及び無機ポリマーを、本開示の文脈においてコーティングとして使用してもよい。該特許は、様々なセルロース系材料、ポリビニルポリマー等を開示しており、これらは、そのコーティングまたは封入材料及びその厚さに応じて最初の投与後数分からその後数時間まで変化し得る時点で、溶解または生分解し、それらの内容物を放出する。他の例示的なコーティング材料としては、天然及び合成の両材料、例えば、(a)動物由来の構造タンパク質及び親水コロイド、(b)植物由来の多糖及び他の親水コロイド、ならびに(c)合成ポリマーが挙げられる。これらのマトリックス材料の一部は、その天然型で適するが、他のもの、特に親水コロイドは、化学修飾、または物理的な修飾、例えば、配向、放射線架橋等のいずれかによる不溶化を必要とする。第一類の例は、天然及び修飾コラーゲン、筋タンパク質、エラスチン、ケラチン、レジリン及びフィブリンである。多糖及び植物親水コロイドの例は、アルギン、ペクチン、カラゲニン、キチン(またはキトサン)、ヘパリン、コンドロイチン硫酸塩、寒天、グアー、ローカストビーンガム、アラビアガム、カラヤガム、トラガカント、ガティガム、デンプン、オキシスターチ、リン酸デンプン、カルボキシメチルデンプン、スルファエチル(sulfaethyl)デンプン、アミノエチルデンプン、アミドエチルデンプン、デンプンエステル、例えば、デンプンマレエート、スクシネート、ベンゾエート及びアセテート、ならびにデンプンとゼラチンの混合物、セルロース及びその誘導体、例えば、修飾セルロース系、例えば、綿をエチレンオキシドで処理することによって得られる部分的にヒドロキシエチル化された綿、または綿を苛性及びクロロ酢酸で処理することによって得られる部分的にカルボキシメチル化された綿である。合成ポリマーの例としては、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリ(ホスフェート)、合成ポリペプチド、ポリビニルアルキルエーテル、ポリアルキルアルデヒド、非架橋ヒドロキシアルキルアクリレート及びメタクリレートの水溶性親水性ポリマー、ポリアルキレンカーボネート、ポリフェノールコーティング等が挙げられる。
【0106】
ある例では、該生分解性コーティングは、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、キトサン-グリセロリン酸ヒドロゲル、ポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲル、ポリ酪酸(PLA)ヒドロゲル、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)ヒドロゲル、アルギネートヒドロゲル、ジブロックコポリペプチドヒドロゲル(DCH)のうちの1つ以上を含む。
【0107】
ある例では、該生分解性コーティングは、フィブリンまたはその誘導体を含む。別の例では、該生分解性コーティングは、フィブリンまたはその誘導体である。ある例では、該フィブリンは、フィブリノゲンから生成される。フィブリンは、天然材料であり、いくつかの生物医学的応用に関して報告されている。フィブリンゲルは、多くの組織に結合するその能力及び創傷治癒におけるその天然の役割のため、シーラントとして使用されている。当業者には、フィブリンが、フィブリノゲンを重合させるプロテアーゼトロンビンを介して生成され得ることが理解されよう。ある例では、該トロンビンは、少なくとも800単位/mgの活性を有する。別の例では、該トロンビンは、少なくとも900単位/mgの活性を有する。別の例では、該トロンビンは、少なくとも1,000単位/mgの活性を有する。別の例では、該トロンビンは、800~1200単位/mgの活性を有する。
【0108】
ある例では、該フィブリンコーティングは、第XIII因子及びCa2+を使用して安定化され得る。
【0109】
フィブリン誘導体の例としては、フィブリンモノマー、フィブリンダイマー、フィブリンポリマーまたは架橋フィブリンポリマーが挙げられる。別の例では、該生分解性コーティングは、フィブリンマトリックスまで架橋されたバイドメインペプチドを含む。
【0110】
別の例では、該生分解性コーティングは、キチンまたはキチンから生成される産物、例えば、キトサンを含む。ある例では、該コーティングは、キトサンである。ある例では、該キトサンは、キチンから生成される。例えば、当業者には、キトサンが、キチンの脱アセチル化によって生成され得ることが理解されよう。ある例では、キトサンは、キチンを、水酸化ナトリウム等のアルカリ性物質で処理することによって生成される。
【0111】
ある例では、該コーティングは、本明細書に開示する超粒子の表面に塗布される。ある例では、少なくとも1層のコーティング(または層)が、超粒子の表面に塗布される。別の例では、少なくとも2層、少なくとも3層、少なくとも4層または少なくとも5層のコーティング(または層)が、超粒子の表面に塗布される。従って、ある例では、本明細書に開示する超粒子は、少なくとも2層のコーティングを含むことができる。別の例では、本明細書に開示する超粒子は、少なくとも3層のコーティングを含むことができる。別の例では、本明細書に開示する超粒子は、2~5層のコーティングを含むことができる。別の例では、本明細書に開示する超粒子は、2層または3層のコーティングを含むことができる。他の例では、本開示によって包含される組成物は、様々な数のコーティングを有する超粒子を含む。例えば、該組成物中のいくつかの超粒子が1層のコーティングを含む場合があると同時に、他は2層のコーティングを含む。ある例では、組成物は、1層のコーティングを有する超粒子及び2層のコーティングを有する超粒子を含む。他の例では、該組成物中の超粒子の一部は被覆され、残りの超粒子は被覆されていない。これらの例では、該超粒子は、同じペイロードを担持し得る。例えば、BDNFを担持し、2層のコーティングで被覆された超粒子は、BDNFを担持し、3層のコーティングで被覆された超粒子とともに提供され得る。別の例では、異なる数のコーティングで被覆された超粒子は、異なるペイロードを担持する。例えば、BDNFを担持し、2層のコーティングで被覆された超粒子は、NT-3を担持し、3層のコーティングで被覆された超粒子とともに提供され得る。
【0112】
ある例では、本明細書に開示する超粒子は、当該超粒子の直径の約5%のコーティング膜厚を有する。別の例では、コーティング膜厚は、該超粒子の直径の5%未満である。別の例では、コーティング膜厚は、該超粒子の直径の4%未満である。別の例では、コーティング膜厚は、該超粒子の直径の3%未満である。別の例では、コーティング膜厚は、該超粒子の直径の2%未満である。別の例では、コーティング膜厚は、該超粒子の直径の1%未満である。別の例では、コーティング膜厚は、該超粒子の直径の0.5%未満である。別の例では、コーティング膜厚は、該超粒子の直径の0.2%未満である。別の例では、コーティング膜厚は、該超粒子の直径の0.2%~5%である。
【0113】
他の例では、本明細書に開示する超粒子は、当該超粒子の直径の約0.5%のコーティング膜厚を有する。別の例では、コーティング膜厚は、該超粒子の直径の約0.15%である。別の例では、コーティング膜厚は、該超粒子の直径の約0.1%である。別の例では、コーティング膜厚は、該超粒子の直径の0.5%~0.1%である。別の例では、コーティング膜厚は、該超粒子の直径の0.3%~0.1%である。別の例では、コーティング膜厚は、該超粒子の直径の0.2%~0.1%である。これらの例では、該超粒子の直径は、450~550μMであり得る。別の例では、該超粒子の直径は、500μMであり得る。ある例では、直接被覆された超粒子は、それらのコーティング膜厚によって定義され得る。
【0114】
様々な方法が、超粒子の表面にコーティングを「塗布」するのに適しており、最適な方法は、通常、塗布されるコーティングによって決まる。ある例では、超粒子は、本明細書に開示するコーティング材料を含む製剤中でインキュベートされ得る。フィブリンで被覆された超粒子との関連では、本明細書に開示する超粒子は、フィブリノゲンとともにインキュベートされ、その後のトロンビンとの接触により、該超粒子表面のフィブリンコーティングへのフィブリノゲンの変換を促進することができる。ある例では、この過程を繰り返し、超粒子表面に複数のコーティングを塗布することができる。例えば、本明細書に開示する超粒子は、少なくとも2層、3層、4層、5層またはそれ以上のフィブリンコーティングで被覆することができ、各コーティングは、超粒子をフィブリノゲンとともにインキュベートし、その後のトロンビンとの接触により、該超粒子表面のフィブリンコーティングへのフィブリノゲンの変換を促進することによって塗布される。別の例では、本明細書に開示する超粒子は、少なくとも2層、3層、4層、5層またはそれ以上のキトサンコーティングで被覆され、各コーティングは、超粒子をキトサンとともにインキュベートし、その後の硬化期間の後、その過程を繰り返すことによって塗布される。
【0115】
他の例では、本明細書に開示する超粒子は、少なくとも2層、3層、4層、5層またはそれ以上の生分解性コーティングで被覆され得る。ある例では、すべてのコーティングは同じである。別の例では、異なる生分解性コーティングが使用される。例えば、超粒子は、1層以上のフィブリンで被覆された後、1層以上のキトサンで被覆される場合もあれば、逆の場合もある。
【0116】
固体の出現に関して上記で参照した通り、ある例では、超粒子は、本明細書に開示するコーティングとして作用する製剤中に提供される。例えば、超粒子は、上記のコーティングを含む製剤中に提供され得る。ある例では、超粒子は、上記の材料、例えば、フィブリンまたはキトサンを含む製剤中に提供され得る。
【0117】
別の例では、超粒子は、フィブリノゲン等のフィブリン前駆体及び重合触媒を含む製剤中に提供され得る。フィブリノゲンがフィブリンに重合される過程は、先に述べた。簡潔には、プロテアーゼが、ダイマーのフィブリノゲン分子を2つの対称部位で切断する。トロンビン、ペプチダーゼ、及びプロテアーゼIIIを含め、フィブリノゲンを切断することができるプロテアーゼ触媒がいくつか考えられ、各々、異なる部位でこのタンパク質を切断する。フィブリノゲンが切断されると、自己重合ステップが生じ、ここでは、フィブリノゲンモノマーが集合し、非共有結合的に架橋されたポリマーゲルを形成する。この自己組織化は、プロテアーゼ切断が生じた後に、結合部位が露出するために生じる。それらが露出されると、分子の中心のこれら結合部位が、ペプチド鎖の末端に存在するフィブリノゲン鎖の他の部位に結合することができる。このようにして、ポリマーネットワークが形成される。
【0118】
従って、別の例では、超粒子は、フィブリノゲンを含む製剤中に提供され得る。この例では、該フィブリノゲンを、トロンビン(EC3.4.21.5)等の適切なプロテアーゼと接触させ、対象への投与の前に、フィブリノゲンのフィブリンへの変換を促進することができる。例えば、トロンビンは、対象への投与の前に当該製剤に加えてもよい。
【0119】
上記のように、上記材料中で超粒子を被覆することで、超粒子からのペイロードのバースト放出を減速させることができる。本発明者らはまた、ヒドロゲルの存在が、放出速度をさらに減じることも見出した。従って、本開示によって包含される被覆された超粒子は、ヒドロゲル中に提供され得る。ある例では、該ヒドロゲルは、アルギネートヒドロゲルである。例えば、該アルギネートヒドロゲルは、alg-CaCO3ヒドロゲルであり得る。他の例としては、フィブリン接着剤(例えば、TisseelとしてBaxterから市販されている)及びチタン-ポリフェノールゲル、例えば、Rahim et al.(2016)Angew.Chem.Int.Ed.55, 13803)に記載のものが挙げられる。
【0120】
ある例では、本開示に従ってヒドロゲル中に超粒子を提供することによって、それらの取り扱いを容易にすることもできる。例えば、該ヒドロゲルは、超粒子の容易な移植を助け、及び/または標的(例えば、鼓膜、卵円窓もしくは正円窓または蝸牛)での該超粒子の局在化を支援することができる。他の例では、ヒドロゲル中に超粒子を提供することによって、対象の耳内の膜、例えば、鼓膜、卵円窓または正円窓を越える拡散も高まる。
【0121】
別の例では、被覆された超粒子は、持続放出または標的化送達システムに組み込むことができる。かかる持続放出システムとしては、局所投与用のフォーム、ゲル、ドロップ及びスプレーまたは注射もしくは注射カニューレ用のデポーを挙げることができる。例示的な持続放出システムとしては、ポリマーマトリックス、リポソーム、及びミクロスフェアが挙げられる。ポリマーマトリックスとしては、超粒子が多孔質ポリマーコーティングに囲まれるリザーバ系のシステム(Yang and Pierstorff(2012)JALA.17, 50-58)及び超粒子がポリマーマトリックスに埋め込まれるモノリシックマトリックスシステム(Langer R(1990)Science.249, 1527-1533)が挙げられる。リポソームは、生分解性及び両親媒性の薬物送達システムでよく、リン脂質及びコレステロールを使用して製剤化され得る。ミクロスフェアは、生分解性及び生体適合性ポリマーを使用して製剤化され得る。別の例では、該持続放出システムは、多糖に基づく場合がある。例えば、超粒子製剤は、アニオン性多糖を含むことができる。ある例では、該多糖は、アルギン酸またはその誘導体であり得る。例えば、該超粒子は、アルギネートヒドロゲルを含み得る。様々なアルギン酸誘導体が当技術分野で知られている。例としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム及びアルギン酸カルシウムが挙げられる。他の例としては、アルギン酸バリウム及びアルギン酸ストロンチウムが挙げられる。ある例では、該アルギン酸は、アルギン酸ナトリウムである。従って、ある例では、本開示は、上記の超粒子及びアルギン酸ナトリウムを含む製剤を包含する。アルギネートは、様々なソースから得ることができる(例えば、Sigma、FMC Health and Nutrition)。別の例では、該多糖は、非分岐多糖、例えば、グリコサミノグリカンである。例えば、該多糖は、ヒアルロン酸であり得る。
【0122】
製剤
超粒子は、対象への投与に適した医薬組成物として製剤化され得る。例示的な医薬組成物は、超粒子を単独で提供する場合もあれば、医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて提供する場合もある。これらの組成物では、超粒子は、対象に対して治療有効量のペイロードを送達するのに十分な量で提供される。特定の投与経路に応じて、当技術分野で既知の様々な許容可能な担体を使用してもよく、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.N.J.USA,1991)に記載の通りである。
【0123】
例示的な医薬組成物はまた、医薬的に許容される滅菌水溶液または非水溶液、分散液、懸濁液、またはエマルションを含んでもよく、また、滅菌注射剤または分散剤に使用の直前に再構成するための滅菌粉末を含んでもよい。適切な水性及び非水性担体、希釈剤、溶媒または媒体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、及びそれらの適切な混合物、植物油、ならびに注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティング材料の使用によって、分散液の場合には要求される粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。かかる組成物はまた、アジュバント、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤または抗細菌剤及び抗真菌剤を含んでもよい。
【0124】
別の例では、超粒子は、持続放出または標的化送達システムに組み込むことができる。例えば、本発明者らは、本明細書に開示する超粒子を、アルギネートヒドロゲルとともに提供することによって、当該超粒子からのペイロードの放出が遅くなることを確認した。かかる持続放出システムとしては、局所投与用のフォーム、ゲル、ドロップ及びスプレーまたは注射もしくは注射カニューレ用のデポーを挙げることができる。ある例では、本明細書に開示する直接被覆された超粒子は、持続放出システムで提供される。
【0125】
例示的な持続放出システムとしては、ポリマーマトリックス、リポソーム、及びミクロスフェアが挙げられる。ポリマーマトリックスとしては、超粒子が多孔質ポリマーコーティングに囲まれるリザーバ系のシステム(Yang and Pierstorff(2012)JALA.17, 50-58)及び超粒子がポリマーマトリックスに埋め込まれるモノリシックマトリックスシステム(Langer R(1990)Science.249, 1527-1533)が挙げられる。リポソームは、生分解性及び両親媒性の薬物送達システムでよく、リン脂質及びコレステロールを使用して製剤化され得る。ミクロスフェアは、生分解性及び生体適合性ポリマーを使用して製剤化され得る。別の例では、該持続放出システムは、多糖に基づく場合がある。例えば、超粒子製剤は、アニオン性多糖を含むことができる。ある例では、該多糖は、アルギン酸またはその誘導体であり得る。例えば、本明細書に開示する被覆された超粒子は、アルギネートヒドロゲル中に分散され得る。様々なアルギン酸誘導体が当技術分野で知られている。例としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム及びアルギン酸カルシウムが挙げられる。他の例としては、アルギン酸バリウム及びアルギン酸ストロンチウムが挙げられる。ある例では、該アルギン酸は、アルギン酸ナトリウムである。従って、ある例では、本開示は、上記の超粒子及びアルギン酸ナトリウムを含む製剤を包含する。アルギネートは、様々なソースから得ることができる(例えば、Sigma、FMC Health and Nutrition)。別の例では、該多糖は、非分岐多糖、例えば、グリコサミノグリカンである。例えば、該多糖は、ヒアルロン酸であり得る。
【0126】
ある例では、上記の持続放出システム(複数可)を含む製剤は、直接被覆された超粒子及び被覆されていない超粒子を含むことができる。この例では、超粒子は、同じペイロードを含む場合もあれば、異なるペイロードを含む場合もある。この例の利点は、個々の超粒子に関する放出プロファイルが、必要に応じて調整され得ることである。
【0127】
別の例では、超粒子は、対象の耳内の膜、例えば、鼓膜、卵円窓または正円窓を越える拡散を高める製剤中に提供される。例えば、超粒子製剤は、人工外リンパを含み得る。別の例では、超粒子製剤は、正円窓膜との接触時間を最大化する。例えば、接触時間は、被覆されていない超粒子と比較して延長され得る。
【0128】
別の例では、超粒子は、対象と適合し、対象に有害ではない産物に分解する足場内に組み込まれるか、または埋め込まれる。これらの足場は、対象に移植される超粒子を収容する。
【0129】
様々な異なる足場が、本開示の実施において良好に使用され得る。例示的な足場としては、生物学的な分解性足場が挙げられるが、これらに限定されない。天然の生分解性の足場としては、コラーゲン、フィブロネクチン、及びラミニンの足場が挙げられる。適切な足場としては、ポリグリコール酸の足場または合成ポリマー、例えば、ポリ無水物、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸が挙げられる。
【0130】
治療及び投与
本開示は、本明細書で定義される超粒子を投与することを含む、疾患または障害の治療方法を包含する。従って、ある例では、本開示の超粒子を含む組成物は、対象に対して、該対象における疾患または障害を治療するのに有効な量で投与される。ある例では、該疾患または障害は、聴力損失である。「聴力損失」という用語は、本開示の文脈においては、音を検出または処理する対象の能力の任意の低下を指すために使用される。従って、聴力損失への言及は、部分的な聴覚欠損または完全に聞くことができないことを包含する。
【0131】
ある例では、該聴力損失は、感音性難聴(SNHL)として特徴づけられる。SNHLは、本開示の文脈においては、蝸牛内の繊細な感覚有毛細胞の損傷、もしくはそれらの蝸牛神経節ニューロン(SGN)とのシナプス結合の損失、または蝸牛シュワン細胞の機能不全に由来する聴力損失を指すために使用される。ある例では、該聴力損失は、老人性難聴として特徴づけられる。別の例では、該聴力損失は、騒音性難聴である。別の例では、該聴力損失は、疾患誘発性または遺伝性である。別の例では、該聴力損失は、オトトキシン(ototoxin)、例えば、アミノグリコシドへの曝露によって誘発される。
【0132】
ある例では、該対象は、哺乳類である。1つの例では、該対象は、ヒトである。例えば、該ヒト対象は、成人であり得る。ある例では、該ヒト対象は、小児である。他の例示的な哺乳類対象としては、コンパニオンアニマル、例えば、イヌもしくはネコ、または家畜、例えば、ウマもしくはウシが挙げられる。「対象」、「患者」、または「個体」等の用語は、文脈上、本開示では同義で使用され得る用語である。
【0133】
ある例では、本開示の超粒子は、腹腔内に投与される。本開示はまた、対象の細胞、組織または器官に、耳を介してペイロードを送達する方法を包含し、該方法は、対象の耳に対して、本開示の超粒子を投与することを含む。この例では、該方法は、対象の内耳、中耳、及び/または前庭器官から細胞に対してペイロードを送達し得る。別の例では、該方法は、対象の神経細胞、神経組織または脳に対して治療用ペイロードを送達する。
【0134】
ある例では、組成物は、鼓膜に投与される。この例では、組成物は、局所投与用に製剤化され得る(例えば、ドロップ、ゲル、フォーム、スプレー)。
【0135】
別の例では、組成物は、「中耳」腔に投与される。「中耳」という用語は、本開示の文脈においては、鼓膜と内耳の間の空間を指すために使用される。従って、中耳は、すべての内耳組織の外側にある。例えば、組成物は、鼓膜を通した注射を介して中耳に投与され得る。この例では、超粒子は、デポー注射として投与され得る。別の例では、治療を行う医師によって鼓膜に開口が形成され、組成物の中耳へのアクセスを容易にすることができる。中耳に組成物を投与する際、組成物は、正円窓及び/または卵円窓に投与され得る。
【0136】
別の例では、超粒子は、内耳に投与される。例えば、超粒子は、蝸牛に投与され得る。ある例では、超粒子は、蝸牛の基底回転に投与され得る。蝸牛または内耳の他の構造にアクセスするための外科技術は、当技術分野では既知である。ヒト蝸牛に外科的にアクセスする例示的な技術は、例えば、Clark GM,et al.,“Surgery for an improved multiple-channel cochlear implant”,Ann Otol Rhinol Laryngol 93:204-7, 1984、及びClark GM,et al.,“Surgical and safety considerations of multichannel cochlear implants in children”,Ear and Hearing Suppl.12:15S-24S,1991に記載されている。
【0137】
超粒子と耳の治療介入の組み合わせは、上記で論じられている。これらの例では、耳の治療介入は、超粒子の投与と同時に行われ得る。例えば、蝸牛装置は、超粒子と同時に移植され得る。しかしながら、蝸牛神経節ニューロンの生存の増加により、蝸牛インプラントの効用が改善されることがある。従って、超粒子が投与された後に、蝸牛装置を移植することが望ましい場合がある。例えば、蝸牛装置は、超粒子が投与された後約1か月、約2か月、約3ヶ月、約6か月で移植され得る。これらの例では、さらなる超粒子を該蝸牛装置とともに投与することができる。
【0138】
ある例では、超粒子の最初の投与は、対象の蝸牛に施され、超粒子の少なくとも2回目の投与は、当該対象の正円窓及び/または卵円窓に施される。
【0139】
ある例では、治療有効量が、該対象の耳に投与される。ある例では、複数の超粒子が、該対象の耳に投与される。例えば、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも20個の超粒子が、該対象の耳に投与され得る。別の例では、約1~10個の超粒子が投与される。他の例では、約2~9個、約3~8個、約4~7個、約5~6個の超粒子が、該対象の耳に投与される。これらの例では、超粒子は、同じペイロードを含み得る。代替的に、別の例では、超粒子は、異なるペイロードを担持する。例えば、神経栄養因子を担持した超粒子及びステロイドを担持した超粒子が投与され得る。別の例では、神経栄養因子を担持した超粒子及び抗生物質を担持した超粒子が投与され得る。別の例では、神経栄養因子を担持した超粒子が、抗生物質とともに投与される場合がある。
【0140】
組成物/キット
本開示の超粒子は、キットまたはパックで提供され得る。例えば、本明細書に開示する組成物は、内耳の障害を治療するための取扱説明書とともに、適切な容器に包装され得る。ある例では、組成物は、単回投与容器、例えば、点耳器またはプレフィルドシリンジに提供され得る。
【0141】
1つの例では、該キットは、内耳の障害の治療法に使用される本開示の超粒子を含む。別の例では、該キットは、聴力損失の治療法に使用される本開示の超粒子を含む。ある例では、該聴力損失は、SNHLである。別の例では、該聴力損失は、騒音性難聴である。ある例では、本開示のキットは、さらに、補聴器またはインプラントを含む。従って、ある例では、該キットは、超粒子及び人口内耳を含み得る。
【0142】
製造
本開示の超粒子の製造の例は、以下の通りであり、以下の実施例の節にも提供されている。ある例では、該超粒子は、ナノ粒子及びアルギン酸またはその多糖誘導体を含む組成物から製造され得る。様々なナノ粒子の例は、上記に提供されている。ある例では、該ナノ粒子は、二峰性の細孔構造を有する。ナノ粒子は、様々な方法を使用して生成され得る。1つのかかる方法は、Cui et al.2015,ACS Nano,9, 1571-1580に記載されている。
【0143】
別の例では、本開示の超粒子は、エレクトロスプレーによって生成される。エレクトロスプレーの例は、Jaworek A.,2007 Powder Technology 1, 18-35に概説されている。エレクトロスプレーの例は、以下にも例示されている。ある例では、本開示は、超粒子の製造方法を包含する。該方法は、ナノ粒子及びアルギン酸またはその多糖誘導体を含む組成物を、ジカチオン性水溶液にエレクトロスプレーすることを含む。
【0144】
当業者には、エレクトロスプレーのパラメータは、エレクトロスプレーに使用される溶液のタイプに基づいて最適化され得ることが理解されよう。例えば、電圧及び流量を最適化し、所望のサイズの超粒子を得ることができる。ある例では、該流量は、約6~10mLh-1である。別の例では、該流量は、約7~9mLh-1である。別の例では、該流量は、約8mLh-1である。ある例では、該電圧は、約10~25KVである。別の例では、該電圧は、約11~20KVである。別の例では、該電圧は、約12~14KVである。別の例では、該電圧は、約13KVである。
【0145】
ある例では、超粒子は、ナノ粒子溶液をエレクトロスプレーすることにより生成される。ある例では、溶液中のナノ粒子の濃度は、約20mg/mlである。ある例では、溶液中のナノ粒子の濃度は、約30mg/mlである。ある例では、溶液中のナノ粒子の濃度は、約40mg/mlである。ある例では、溶液中のナノ粒子の濃度は、約50mg/mlである。ある例では、溶液中のナノ粒子の濃度は、約60mg/mlである。
【0146】
別の例では、超粒子は、アルギン酸またはその誘導体を含むナノ粒子溶液を、エレクトロスプレーすることにより生成される。ある例では、該ナノ粒子溶液は、5mg・mL-1のアルギン酸溶液から調製される。ある例では、該ナノ粒子溶液は、10mg・mL-1のアルギン酸溶液から調製される。ある例では、該ナノ粒子溶液は、20mg・mL-1のアルギン酸溶液から調製される。ある例では、該ナノ粒子溶液は、30mg・mL-1のアルギン酸溶液から調製される。別の例では、該ナノ粒子溶液は、5mg・mL-1~30mg・mL-1のアルギン酸溶液から調製される。別の例では、該ナノ粒子溶液は、10mg・mL-1~30mg・mL-1のアルギン酸溶液から調製される。別の例では、該ナノ粒子溶液は、20mg・mL-1~30mg・mL-1のアルギン酸溶液から調製される。
【0147】
ある例では、該ナノ粒子溶液は、5mg・mL-1のアルギン酸水溶液から調製される。ある例では、該ナノ粒子溶液は、10mg・mL-1のアルギン酸水溶液から調製される。ある例では、該ナノ粒子溶液は、20mg・mL-1のアルギン酸溶液から調製される。ある例では、該ナノ粒子溶液は、30mg・mL-1のアルギン酸水溶液から調製される。別の例では、該ナノ粒子溶液は、5mg・mL-1~30mg・mL-1のアルギン酸水溶液から調製される。別の例では、該ナノ粒子溶液は、10mg・mL-1~30mg・mL-1のアルギン酸水溶液から調製される。別の例では、該ナノ粒子溶液は、20mg・mL-1~30mg・mL-1のアルギン酸水溶液から調製される。
【0148】
別の例では、超粒子は、アルギン酸を含むナノ粒子溶液を、エレクトロスプレーすることにより生成される。
【0149】
アルギン酸誘導体は、規定の温度でゲルを形成する限り、特に限定されない。ある例では、該アルギン酸誘導体は、多糖誘導体である。アルギン酸誘導体としては、様々なアルギン酸塩の形態が挙げられる。例としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム及びアルギン酸カルシウムが挙げられる。他の例としては、アルギン酸バリウム及びアルギン酸ストロンチウムが挙げられる。ある例では、該アルギン酸は、アルギン酸ナトリウムである。別の例では、超粒子は、アルギン酸を含むナノ粒子溶液を、エレクトロスプレーすることにより生成される。
【0150】
様々な粘度のアルギネートを使用して、超粒子の所望のサイズ及び形状に応じた本開示の超粒子が生成され得る。例えば、約20~300mPa*sの粘度を有するアルギネートが使用され得る。別の例では、該アルギネートは、約20~200mPa*sの粘度を有する。ある例では、該アルギネートは、20mPa*sの粘度を有する。別の例では、該アルギネートは、100mPa*sの粘度を有する。別の例では、該アルギネートは、200mPa*sの粘度を有する。
【0151】
ある例では、超粒子は、ナノ粒子を含む組成物を、水溶液にエレクトロスプレーすることにより生成される。ある例では、これは、ジカチオン性水溶液である。例示的なジカチオン性成分としては、Ca2+及びBa2+が挙げられる。例えば、該水溶液は、塩化カルシウムを含み得る。別の例では、該水溶液は、塩化バリウムを含む。
【0152】
ある例では、超粒子は、組成物をエレクトロスプレーすることにより生成され、ここで、該組成物中のアルギネートの濃度は、5mg・mL-1~30mg・mL-1であり、該組成物中のナノ粒子の濃度は、20mg・mL-1~50mg・mL-1であり、該電圧は、10kV~25kVである。別の例では、超粒子は、組成物をエレクトロスプレーすることにより生成され、ここで、該組成物中のアルギネートの濃度は、10mg・mL-1~30mg・mL-1であり、該組成物中のナノ粒子の濃度は、30mg・mL-1~50mg・mL-1であり、該電圧は、11kV~21kVである。別の例では、超粒子は、組成物をエレクトロスプレーすることにより生成され、ここで、該組成物中のアルギネートの濃度は、20mg・mL-1~30mg・mL-1であり、該組成物中のナノ粒子の濃度は、35mg・mL-1~45mg・mL-1であり、該電圧は、12kV~14kVである。これらの例では、該流量は、8mLh-1であり得る。
【0153】
別の例では、超粒子は、組成物をエレクトロスプレーすることにより生成され、ここで、該組成物中のアルギネートの濃度は、30mg・mL-1であり、該組成物中のナノ粒子の濃度は、40mg・mL-1であり、該電圧は、13kVであり、該流量は、8mLh-1である。
【0154】
ある例では、本明細書に定義する方法を使用して製造される超粒子を焼成に供して、アルギン酸またはその誘導体を除去する。ある例では、焼成は、約500℃で行われる。別の例では、焼成は、約550℃で行われる。別の例では、焼成は、約600℃で行われる。別の例では、焼成は、約650℃で行われる。別の例では、焼成は、約700℃で行われる。ある例では、焼成は、約6~30時間行われる。別の例では、焼成は、約10時間行われる。別の例では、焼成は、約20時間行われる。別の例では、焼成は、約30時間行われる。
【実施例】
【0155】
実施例1-ナノ粒子の生成
メソポーラスシリカナノ粒子(MS-NP)を、Cui et al.2015,ACS Nano,9, 1571-1580に記載の方法に基づく方法を使用して生成した。1.1gのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)を、50mlのMilli-Qに攪拌しながら完全に溶解した。4.3gのポリ(アクリル酸)溶液(PAA、Mw=250kDa、35重量%水溶液)を続いて加え、透明な溶液が得られるまで室温(25℃)にて20分間激しく攪拌した。3.5mlの水酸化アンモニウム溶液(28~30%)をその後その溶液に加えて激しく攪拌し、乳状懸濁液を得た。次いで、4.46mlのテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を、20分間攪拌した後に加えた。その溶液をさらに15分間攪拌し、その後その混合物をテフロン(登録商標)でシールされたオートクレーブに移し、これを90℃で48時間放置した。
【0156】
合成時のMS-NPをエタノールで1回、水で2回及びエタノールで2回洗浄し、最後に90℃で乾燥した。有機鋳型を550℃で30時間焼成して除去した。
【0157】
実施例2-超粒子製造プロセスの開始-プロセスA
メソポーラスシリカ(MS)ナノ粒子を、Wang et al.(2010)Chem Mater.22, 3829-3831に従って調製した。MSナノ粒子を、粒子濃度5重量%でMilli-Q水に分散し、短時間超音波処理して安定したコロイド懸濁液を形成した。その後、0.5~2.0μLのMSナノ粒子分散液のアリコートを、パラフィンフィルムで予め覆った平らな表面に塗布した。これらの液滴を気流下で乾燥し、MSナノ粒子を、毛細管力の作用を介してメソポーラスシリカ超粒子(毛細管力MS-SP)へと組織化させた。毛細管力MS-SPのサイズは、液滴に用いたナノ粒子分散液の体積によって制御した。
【0158】
毛細管力下、MSコロイドは自己組織化し、MS-SPを形成する緻密な構造になった。毛細管力MS-SPをその後パラフィンフィルムから外し、セラミック容器に移し、923Kでアニールして、毛細管力MS-SPの機械的安定性を高めた。毛細管力MS-SPにその後ペイロードを担持させた。粒子あたり約1.33μgのタンパク質を担持させた。この毛細管力MS-SPは、二峰性の細孔構造(2~3nm及び15~30nm)及び毛細管力MS-SP内にマクロ孔を有することを示し、高密度に充填されたナノ粒子間の空間は、100~200nmであった。
【0159】
実施例3-修正製造プロセス-プロセスB
80mgのMS-NP粉末を、2mlのアルギン酸ナトリウム塩溶液(30mg・mL-1水溶液)に加えた。得られた溶液を、MS-NPがアルギン酸ナトリウム塩溶液に均一に分布するまで1時間超音波処理した。
【0160】
大孔径のMS-SP(
LMS-SP)を形成するため、超音波処理した溶液を3mLのプラスチックシリンジに加えてシリンジポンプに配置し、液体を塩化カルシウム溶液浴(1重量%で水中に調製)に、約8mLh
-1の流量を用いてエレクトロスプレーした(エレクトロスプレーの設定は
図1に示す)。液滴のサイズは、チューブの端と塩化カルシウム溶液の間に電界を印加することによって制御した。アルギネートビーズMS-SP(
LMS-SP
alg)をこの塩化カルシウム浴から回収し、これにペイロードを担持させた。これらの粒子(
LMS-SP)では、プロセスAで生成されたものと比較して、薬物担持性能の有意な向上、すなわち、粒子あたり約7.8μgのタンパク質と、機械的安定性の改善が認められた。
【0161】
実施例4-修正製造プロセス-プロセスC
MS-SP(LMS-SPalg)を、実施例3に記載の方法を使用して生成した。アルギン酸ナトリウム塩を650℃で30時間焼成することにより除去した。このステップで、すべての有機成分が除去され、メソポーラスシリカナノ粒子(MS-SP)ならびに微量のカルシウム及び塩化ナトリウムのみが残った。MS-SPにその後ペイロードを担持させた。これらの粒子では、プロセスAで生成されたものと比較して、薬物担持性能の有意な向上、すなわち、粒子あたり約7.8μgのタンパク質が認められた。
【0162】
細孔を有さないナノ粒子(非多孔性NMS-SPalg、NMS-SPalg)及び細孔径<2nmのナノ粒子(小孔径MS-SSPalg、SMS-SPalg)からも超粒子を作製した。これらの超粒子からアルギネートを除去した場合、薬物担持性能は有意に低下した(表1)。
【0163】
プロセスB及びプロセスCで生成したMS-SPの最大薬物担持量を表1に要約する。
【表1】
【0164】
実施例5-超粒子の放出特性
リゾチーム
滅菌したSPを100μLのFITC-リゾチーム溶液(0.2mg・mL-1のMilli-Q水溶液)とともにインキュベートすることにより、FITC-リゾチームを担持したSPをインビトロ放出試験用に調製した。リゾチームは、同様の物理化学的特性を共有することから、ニューロトロフィンであるBDNFを模倣するのに良好なモデルタンパク質である(リゾチームは安価であり、入手が容易であるが、BDNFは高価である)(リゾチーム、Mw=14.3±0.5KDa、RH=18.9±0.25Å及びpI=11、BDNF、Mw=13KDa、RH=24.0±3.2Å及びpI=10)。
【0165】
リゾチームを担持したMS-SPのインビトロ放出プロファイルを
図4のパートa)及びb)ならびに
図7のパートa)に示す。プロセスA及びCで生成したMS-SPの放出プロファイルは同様である。しかし、プロセスCで生成したMS-SPは、有意に高レベルの標識リゾチームを担持する。ペイロードの放出は、プロセスA及びCで生成したMS-SPと比較して、プロセスBで生成したMS-SPで有意に減少した。
【0166】
ゼータ電位
MS-SPに、その後フルオレセイン標識リゾチーム(FITC-リゾチーム)を担持させた。
図2に示すように、MS-SPは、pH値が4から10に増加するにつれて、約-7.6mV~約33.9mVの負のゼータ電位を示した。従って、静電的原動力の助けを借りて、正荷電リゾチーム及びBDNFをMS-SPに担持させることができる。共焦点顕微鏡画像(
図3a、b)は、MS-SPの表面に担持されたFITC-リゾチームを示した。しかしながら、これらのMS-SPのサイズは極めて大きい(直径数百マイクロメートル)ため、標準的なレーザー走査型共焦点顕微鏡法は、これらのSPの内部構造の画像化には適さない。しかしながら、外科用メスでこれらのMS-SPを破壊すると、その内部を画像化することができ、FITC-リゾチームが、これらのMS-SPの多孔質内部構造でも認められることが分かった(
図3c)。
【0167】
担持能力のさらなる評価
次に、異なるタイプのSPの担持能力を、FITC-リゾチームを異なる担持時濃度で3日間のインキュベーション時間を用いて調べた(
図4)。一般に、FITC-リゾチームの濃度が増加するにつれ、薬物担持量が増加した。これらの結果は、アルギネートを含む
NMS-SP
alg、
SMS-SP
alg及び
LMS-SP
algは、アルギネートを除去した
NMS-SP、
SMS-SP及び
LMS-SP(同等の濃度)より高い担持能力を有したことを示す。これは、中性pH値付近での正荷電FITC-リゾチームと負荷電アルギネート間の静電相互作用の増加に起因し得る。さらに、低FITC-リゾチーム担持時濃度(<0.4mg・mL
-1)では、
LMS-SP
algは、非多孔性MS-SP
alg及び
SMS-SP
algと同様の薬物担持能力を有したが、その濃度が高い場合(>0.4mg・mL
-1)、
NMS-SP
alg及び
SMS-SP
algと比較して、多くのFITC-リゾチームを、
LMS-SP
algに担持させることができた。アルギネートを除去したMS-SPで同様の傾向が認められた。
LMS-SPは、
NMS-SP及び
SMS-SPより多くのFITC-リゾチームを担持することができた。これらの結果は、大きな細孔構造(
LMS-SP及び
LMS-SP
algにおける)は、薬物担持を改善するための重要な要因であり、恐らくは、さらなる表面を提供すること及びそれにより、粒子の外表面及び粒子内の領域(SP構造の中)が、薬物で完全に飽和された場合の担持及び能力を与えることによることを示す。さらに、この担持能力はまた、MS-SPの直径に依存し、大きいMS-SP(1000μm)は、小さいMS-SP(200μm)よりも大きな担持能力を有した(
図5)。
【0168】
実験的に測定したNMS-SP及びSMS-SPalgへのFITC-リゾチームの最大担持量は、それぞれ、SPあたり約3μg及びSPあたり2μgであり、これらは、SPあたり約15μgのLMS-SPより有意に低かった(FITC-リゾチーム濃度は1.5mg・mL-1であり、担持期間は3日間であった)。さらに、実験的に測定したNMS-SP及びSMS-SPへのFITC-リゾチームの最大担持量は、それぞれ、SPあたり約2μg及びSPあたり1μgであり、これらもまた、SPあたり約10μgのLMS-SPより劇的に低かった(FITC-リゾチーム濃度は5.0mg・mL-1であり、担持期間は3日間であった)。
【0169】
6種の異なるSPの薬物担持効率を
図4c及び4dに示す。FITC-リゾチームの担持時濃度が増加するにつれ、より多くのFITC-リゾチームをSPに担持させることができた。
【0170】
BDNF
MS-SPを、100μlのエタノール(80vol/vol%)に4時間浸漬して滅菌した後、100μlのMilli-Q水で6回すすいだ。MS-SPを、15μlのBDNF(Geneway,BDNF Human Protein,カタログ番号10-663-45078)溶液(1mg/mlのBDNF)を含むエッペンドルフチューブに入れ、それらを室温で3日間、不定期に手動で振盪してインキュベートすることにより担持させた。意外にも、約10μgのBDNFの担持が達成された。
【0171】
実施例6-薬物動態
インビボ試験を行い、薬物ペイロード及び耳に移植された超粒子で送達されたニューロトロフィンのクリアランスを、移植の4時間、3日及び7日後に測定した。目的は、経時的に蝸牛に残るニューロトロフィン量を測定することであった。
【0172】
放射性標識ニューロトロフィン-3を含む1個のSPを各蝸牛に移植した。4時間(n=5)、3日(n=7)または7日(n=4)後に、蝸牛を採取した。蝸牛全体のガンマカウントを測定し、経時的なニューロトロフィン-3のクリアランスを決定した。残ったニューロトロフィン-3の量(担持量に対する%)及びμg単位での合計を
図15に示す。移植の1週間後、各SPは、初期担持量のうち約2ugのニューロトロフィン-3(約40%)を含んでいた。
【0173】
さらなる実験(n=2)を行い、正円窓への送達後のニューロトロフィン-3のクリアランスを調べた。移植の3日後、蝸牛全体の測定を再度用いて、正円窓膜からのニューロトロフィン-3のクリアランスを決定した。蝸牛内送達部位と比較すると、正円窓を用いて同様のレベルのクリアランスが認められた(正円窓への送達後、47.4%のニューロトロフィン-3が残っていたのに対し、蝸牛内送達では56%であった)。
【0174】
これらのデータは、ニューロトロフィン-3の持続放出が、1週間の治療後でも依然として利用可能な高ニューロトロフィン-3レベルで達成することができることを示す。
【0175】
実施例7-方法
超粒子の組織化
フィブリンで被覆されたシリカ超粒子(FSi-SP)を、上記の通りに組織化させたSi-SPから調製した。Si-SPを、100μLの80%(v/v)エタノールで室温(約22℃)にて4時間滅菌した。これらのSi-SPを次に滅菌Milli-Q水で6回洗浄した。その後、50mMのTris緩衝食塩水(TBS、50mM Tris、150mM NaCl、pH7.2に調整)に溶解した20mg・mL-1のフィブリノゲン50μLを、Si-SPに加え、4℃で終夜(約16時間)インキュベートした。翌日、その上清を吸引し、Si-SPを、40mMのCaCl2を含む50mMのTBSの1.72mg・mL-1のトロンビン溶液50μLとともに室温(約22℃)で1時間インキュベートした。最後に、その上清を吸引し、Si-SPをMilli-Q水で3回洗浄した。
【0176】
フィブリンの分解
FSi-SPからのフィブリンの分解を、
FSi-SPを100μLのPBS(pH7.4)とともに37℃でインキュベートすることにより評価した(各サンプルに10個の
FSi-SP)。特定の時間間隔で(最大42日)、95μLの上清を回収し、さらなる分析用に-20℃で保存し、その後95μLの新鮮なPBSで置き換えた。分解したフィブリンの上清中での濃度を、MicroBCAタンパク質アッセイキットを製造業者のプロトコルに基づいて使用して定量化した。フィブリンの分解割合を以下により計算した:
【数1】
ここで、m
0は、SP上のフィブリンの元の量(全量)であり、m
nは、時点nでの上清中のフィブリン量である。
【0177】
ヒドロゲル系の合成方法
CaCO3粒子を調製するため、最初に、5gのPSS(MW70kDa)を、500mLのMilli-Q水に完全に溶解し、10mg・mL-1のPSS溶液を生成した。次に、1mLの1M Na2CO3、0.5mLの10mg・mL-1PSS、及び3.5mLのMilli-Q水からなる「前駆体溶液」を調製した。別のフラスコに、10mg・mL-1のPSS溶液20mLを、175mLのMilli-Q水に加え、激しく攪拌した。1分間攪拌した後、5mLの1M Ca(NO3)2溶液を加えて2分間激しく攪拌した。前駆体溶液(5mL)を次いで加え、得られた混合物を1分間激しく攪拌し、その後、攪拌機を止め、その混合物を3分間静置し、続いてさらに1分間激しく攪拌した。合成時のCaCO3粒子を80℃のオーブン内で終夜乾燥し、乳鉢と乳棒を用いて粉砕して、乾燥粉末中の大きな粒子を崩した。この微細なCaCO3粉末を次いで723Kの気流で2時間焼成し、すべての有機物を除去した。
【0178】
ヒドロゲルを調製するため、20mg・mL
-1のアルギネートのMilli-Q水溶液1mLを、100mg・mL
-1のCaCO
3粒子(粒径約1.8μm、
図17参照)15μLと混合した。これに、100mg・mL
-1のD-グルコノ-δ-ラクトン(GDL)53.4μLを加えてCaCO
3粒子とGDLのモル比を1:2にし、中性pH値のヒドロゲルを生成した。このヒドロゲルのゲル化時間及び特性は、アルギネート溶液の濃度及びCaCO
3粒子の使用量を調節することによって調整することができる。
【0179】
alg-CaCO
3ヒドロゲルの分解性を調べるため、ヒドロゲルの質量(乾燥重量)を経時的に観察した。PBS(500μL、pH7.4)をこのヒドロゲル(20mg・mL
-1のalg-CaCO
3ヒドロゲル500μL)に加え、37℃でインキュベートした。様々な時点(0日、3日、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間)で、このPBSを除去し、残ったヒドロゲルサンプルをMilli-Qで洗浄し(5回)、その後、分析するまで-20℃で凍結保存した。より長い時点用に、PBSを500μLの新鮮なPBSで置き換え、次の時点まで37℃のインキュベータに戻した。残りのすべてのサンプルを凍結乾燥し、そのヒドロゲルの乾燥重量を測定した。重量の減少率を以下により計算した:
【数2】
ここで、m
0は、時点0でのヒドロゲルの全重量であり、m
nは、時点nでのヒドロゲルの重量である。
【0180】
Si-SP、FSi-SP及びCaCO3粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、Philips XL30電界放射型走査型電子顕微鏡(Philips,Netherlands)を使用し、作動電圧5kVで撮影した。これらSPのSEMサンプルは、導電性カーボンテープにそれらを付着させ、スパッタコーティングによりそれらを20nmの金で被覆することによって作製した。FSi-SPのSEM-EDXマッピングは、Philips XL30電界放射型走査型電子顕微鏡(Philips,Netherlands)により、エネルギー分散型X線分光法(EDX)で行った。alg-CaCO3ヒドロゲルのSEMサンプルの調製に関しては、上記の方法を用いて最初にヒドロゲルを合成し、その後終夜凍結乾燥した。その凍結乾燥サンプルを導電性カーボンテープに直接配置した後、画像化用に金コーティング(スパッタリングによる)した。Si-SP及びFSi-SPのフーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルは、FTIR分光光度計(Bruker,Australia)を用いて測定した。
【0181】
インビトロ放出試験
インビトロ放出試験をモデル薬物FITC-リゾチームまたはニューロトロフィン(BDNFもしくはNT-3)のいずれかを使用して行った。滅菌後、10個のSi-SPまたは10個の
FSi-SPを100μLのFITC-リゾチーム溶液(1mg・mL
-1のMilli-Q水溶液)とともにインキュベートした。3日間のインキュベーション後、その上清を吸引した。特定の時間間隔で(150日以上)、95μLの上清を回収し(分析するまで-20℃で保存し)、95μLの新鮮なPBSで置き換えた。回収したサンプルの蛍光を、Infinite M200マイクロプレートリーダー(Tecan,Switzerland)を使用して測定し、その上清中のFITC-リゾチームの濃度は、FITC-リゾチームの検量線を使用して計算した(
図18)。担持
FSi-SPからのFITC-リゾチームの放出もまた、フィブリノゲン濃度(2mg・mL
-1、20mg・mL
-1及び40mg・mL
-1のフィブリノゲンで一定1.72mg・mL
-1のトロンビン、それぞれ、
2F1.72Si-SP、
20F1.72Si-SP及び
40F1.72Si-SPと示す)の関数、ならびにトロンビン濃度(0.1mg・mL
-1、0.5mg・mL
-1、1.72mg・mL
-1及び5mg・mL
-1のトロンビンで一定20mg・mL
-1のフィブリノゲン、
20F0.1Si-SP、
20F0.5Si-SP、
20F1.72Si-SP及び
20F5Si-SPと示す)の関数として評価した。
【0182】
ニューロトロフィン(BDNFまたはNT-3)の担持に関しては、4個の滅菌SP(Si-SPまたは
FSi-SP)を、30μLのBDNFまたはNT-3溶液(1.0mg・mL
-1のMilli-Q水溶液)とともにインキュベートした。3日間のインキュベーション後、その上清を取り出し、各SPを新たな1.7mLの微小遠心チューブに入れた(チューブあたり1個のSP)。その後、100μLのPBS(pH7.4)を各チューブに加え、37℃でインキュベートした。特定の時点で(40日以上)95μLの上清を回収し(分析するまで-20℃で保存し)、95μLの新鮮なPBSで置き換えた。このサンプリング法を、放出試験の間、各時点で繰り返した。Si-SP及び
FSi-SPから放出されたBDNFまたはNT-3の量を、BDNFまたはNT-3特異的酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用し、BDNFまたはNT-3の検量線を使用して、製造業者のプロトコルの通りに測定した(例えば、
図19)。
【0183】
ヒドロゲルに埋め込まれた
FSi-SPからのFITC-リゾチームの放出を、以下の通りに測定した。アルギネート溶液を、上記の通り、CaCO
3粒子と混合した。ゲル化前に、10個の
FSi-SP(FITC-リゾチームを予め3日間担持させたもの)をこのalg-CaCO
3混合物に加えた。ゲル化を誘導するため、GDLを、上記と同じ濃度及び体積で加えた。約2分後、ヒドロゲルが生じた。PBS中での放出を調べるため、100μLのPBS(pH7.4)を加え、そのサンプルを37℃でインキュベートした。特定の時点で(110日以上)95μLの上清を回収し(分析するまで-20℃で保存し)、新鮮なPBSで置き換えた。回収したサンプルの蛍光を、Infinite M200マイクロプレートで測定し、対応するFITC-リゾチームの濃度を、検量線を使用して決定した(
図20)。
【0184】
インビトロ分解試験
Si-SPを、最初に室温(約22℃)にて100μLのエタノール(80%v/v)で4時間滅菌し、その後滅菌Milli-Q水で4回洗浄した。その後、FSi-SPを上記のように調製した。超粒子の分解は、Si-SPまたはFSi-SP(各サンプル中に20個のSP)を、37℃にて10mMのPBS(pH7.4)1mLに浸漬することにより調べた。特定の時点で(70日以上)1mLの上清を回収し、1mLの新鮮なPBSで置き換えた。この上清中でのシリカの分解産物の存在を、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP-OES)を使用して測定した。水酸化ナトリウム(8M、500μL)を、回収した各上清500μLに加え、シリカの断片をすべて溶解した。これらのサンプルを95℃で30分間インキュベートした後、30分間超音波処理した。それらサンプルをその後37℃で終夜インキュベートした。溶解したサンプル1mLを、4mLのMilli-Q水と混合し、回収した元の上清から10倍希釈のサンプルを得た。各サンプルのケイ素の量(SPから放出されたケイ素に対応する)を、ケイ素の検量線を使用して、ICP-OESにより測定した。これらの測定に加えて、PBS中での長期のインキュベーション後のSi-SP及びFSi-SPのモルフォロジーをSEM画像化により観察した。
【0185】
インビトロ細胞毒性試験
最初に、Si-SPを室温(約22℃)にて100μLのエタノール(80%v/v)で4時間滅菌し、続いて洗浄を滅菌Milli-Q水(3回)、次に細胞培地(3回)で行った。SPの分解産物の細胞毒性を特定するため、1mLの細胞培地(10%のウシ胎仔血清、100単位mL-1のペニシリン、100mg・mL-1のストレプトマイシンを含むDMEM培地)を、多数のSi-SP及びFSi-SPに加えた。特定の時間間隔で、すべての細胞培地を吸引し(後の細胞分析のために-20℃で保存し)、新鮮な細胞培地で置き換えた。
【0186】
脳由来のU87MG神経膠芽腫細胞を、加湿したインキュベータ内(37℃、5%CO2)で、10%のウシ胎児血清を含むDMEM中に維持した。U87MG細胞を96ウェルのプレートに、ウェル当たり2×104細胞で100μLの培地中に播種し、終夜インキュベートした。続いて、100μLのサンプル(細胞培地でインキュベートし、上記の通り異なる時点で回収したSi-SP及びFSi-SPからの分解産物)を、各ウェルに加え、インキュベートした(37℃、5%CO2)。48時間のインキュベーション後、細胞培地を完全に吸引し、細胞生存率を測定するために100μLのXTT/PMS溶液を各ウェルに加えた。4時間のインキュベーション後、その溶液の吸光度をInfinite M200マイクロプレートリーダーを使用して、波長475nm及び参照波長675nmで測定した。差吸光度は、675nmでの吸光度を475nmでの吸光度から差し引くことにより計算した。XTT/PMS溶液は、2mMのPMSのDPBS溶液135μLを、10.8mgのXTTを含む、10%のウシ胎児血清を添加した54mLのDMEMと混合することによって調製した。培地のみを含むサンプル(すなわち、細胞なし)のウェルを、吸光度測定のバックグラウンド対照として使用した。DMEM培地にのみ曝露した細胞を、未処理対照と呼び、細胞毒性の正規化に使用した。
【0187】
実施例8-フィブリン被覆シリカ超粒子の合成
FITC-リゾチームを担持した、ゲル媒介エレクトロスプレー組織化により合成したSi-SPは、高い担持能力を有し、110日以上の持続薬物放出を達成することができる。しかしながら、これら超粒子からは、約60%のFITC-リゾチームが、最初の3日間にわたって放出された。フィブリンで被覆されたシリカ超粒子(
FSi-SP)は、このバースト放出を減速させる。Si-SPをフィブリノゲンに続いて酵素トロンビンとともにインキュベートすることにより、そのSi-SP表面で、フィブリノゲンのフィブリンのメッシュへの酵素的変換が生じる。フィブリンは、繊維状の非球状タンパク質であり、血液凝固の過程に関与する。走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、フィブリンコーティング後の超粒子の表面超微細構造を調べた。低解像度では、Si-SPと
FSi-SPの間にはモルフォロジーの差がほとんどないが、高解像度では、Si-SPのもの(
図16b)と比較した
FSi-SPの表面モルフォロジー(
図16d)は、明らかに、フィブリンでの被覆により、超粒子及び細孔の表面構造が良好に覆われることを示している。SEM-EDX元素マッピングにより、
FSi-SPが、予想通り、ケイ素(Si)、酸素(O)、カルシウム(Ca)及び窒素(N)元素を、
FSi-SP表面に均一に分布して含むことが示された(
図16)。Si-SPのFTIR分光法により、Si-O-Siの1071cm
-1での伸縮振動、O-Si-Oの793cm
-1での曲げ振動及びSi-O-Siの455cm
-1でのロッキング振動を伴うSi-O-Si結合の存在が確認され(
図16f)、Si-SPが、主にシリカからなることが示された。962cm
-1のピークは、さらに、Si-O-Ca振動モードに帰属する可能性があり、アルギン酸カルシウムを足場として、ゲル媒介エレクトロスプレー組織化を使用したSi-SPの合成手順に起因する可能性がある。これらのデータは、Si-SPの良好な調製及びフィブリンコーティングが形成されたことを示す。
【0188】
実施例9-インビトロ薬物放出
モデルタンパク質治療薬(FITC-リゾチーム)をSi-SPに予め担持させ、その後、緻密なフィブリン層で被覆することが、
FSi-SPからの薬物放出を減速させると仮定した。
FSi-SPからのFITC-リゾチーム放出プロファイルを特定するため、FITC-リゾチームを担持した
FSi-SPを、PBS(pH7.4)中、37℃でインキュベートし、タンパク質含量の分析のため、その上清を様々な時点で回収した。以下を含む
FSi-SP合成のパラメータの範囲を調べた。すなわち、異なる濃度のフィブリノゲンを使用して調製した(2mg・mL
-1、20mg・mL
-1及び40mg・mL
-1のフィブリノゲンで一定濃度のトロンビン(1.72mg・mL
-1)、それぞれ、
2F1.72Si-SP、
20F1.72Si-SP及び
40F1.72Si-SPと示す)
FSi-SP及び異なる濃度のトロンビンを使用して調製したもの(0.1mg・mL
-1、0.5mg・mL
-1、1.72mg・mL
-1及び5mg・mL
-1のトロンビンで一定濃度のフィブリノゲン(20mg・mL
-1)、それぞれ、
20F0.1Si-SP、
20F0.5Si-SP、
20F1.72Si-SP及び
20F5Si-SPと示す)。FITC-リゾチームを、Si-SPに担持させたところ(室温で3日間インキュベーション)、SPあたり約7μgの平均担持量となった。異なるフィブリノゲン及びトロンビン濃度下でのフィブリンコーティング前のSi-SPの個々のチューブすべてに関するFITC-リゾチームの担持量を
図21に示す。これらのSPから各時点で放出されたFITC-リゾチームの割合を
図22及び23に示す。
図24a及び
図24bに示すように、持続したFITC-リゾチームの放出が、110日間にわたってSi-SP及び
FSi-SPから検出された。しかしながら、
FSi-SPに使用したフィブリンコーティングは、初期の放出を遅らせた。未被覆の超粒子では、3日以内に>60%のタンパク質放出が観察された。比較すると、2mg・mL
-1のフィブリノゲン及び1.72mg・mL
-1のトロンビンを使用して被覆した超粒子では、放出速度は遅く、同じ放出量に至るまで>20日を要した。より高濃度のフィブリノゲン(20mg・mL
-1及び40mg・mL
-1)を使用して被覆したSi-SPでは、>60%のタンパク質放出に至るまでの時間は、さらに28日まで延長された(
図24a)。異なる濃度のトロンビンを加えることで、
FSi-SPからのFITC-リゾチームの放出を同様に減速させることができる。すなわち、未被覆粒子では、60%のタンパク質放出が3日後に観察されたが、被覆粒子では、これには約28日を要し、異なる濃度内で大きな差はなかった(
図24b)。
【0189】
図24a及び24bでは、累積薬物放出量は、恐らくは長期間にわたるFITCの光退色のために100%未満であるが、Si-SPに堅く吸着したタンパク質の存在を除外することはできない。それでもなお、フィブリンコーティングは、Si-SPからのモデルカーゴであるFITC-リゾチームの初期のバースト放出を実質的に低下させ、より均一に分布した放出プロファイルを与えることができるという明らかな証拠がある。
【0190】
この試験を、臨床的に意義のあるニューロトロフィンであるBDNF及びNT-3に拡張し、内耳へのニューロトロフィン送達へのSi-SPの潜在用途を評価した。BDNFまたはNT-3をSi-SPに担持させたところ(室温で3日間インキュベーション)、平均担持量7.3μg・SP
-1となった。20mg・mL
-1のフィブリノゲン及び1.72mg・mL
-1のトロンビンを使用して、これらBDNF及びNT-3を担持したSi-SPのフィブリンでの被覆を行った。これらのパラメータは、それらが、FITC-リゾチーム試験でバースト放出を最適に減速したことから選択された。
図24c及びdは、Si-SP及び
FSi-SPからの、PBS(pH7.4)中、37℃でのBDNF及びNT-3の放出プロファイルを示している。
FSi-SPからのBDNF及びNT-3の放出は、未被覆のSi-SPからの放出と比較して、ほぼ直線的な放出プロファイルをたどるように見える。21日目には、未被覆のSi-SPからは担持したBDNFまたはNT-3の約60%が放出されているのに対し、
FSi-SPからは約10%であり、このフィブリンコーティングの戦略もまた、ニューロトロフィンの放出を減速させることを示している。各時点でSi-SP及び
FSi-SPから放出されたBDNF及びNT-3の割合を
図25及び26に示す。フィブリンのゲル化時間の増加もまた、経時的な薬物放出の減少と関連していた(ゲル化時間10分[軟]に対してゲル化時間2時間[硬])。
【0191】
実施例10-フィブリン被覆シリカ超粒子の分解
インビトロ分解試験を、Si-SP及び
FSi-SPをPBS(pH7.4、37℃)中でインキュベートすることによって行った。SEM分析から、Si-SP(
図27)及び
FSi-SP(
図28a~e)のサイズは、時間とともに段階的に減少し、これら超粒子のモルフォロジーから、6週間のインキュベーション後、亀裂が入り崩壊したように見える明らかな分解の証拠があった。PBS中、37℃での10週間のインキュベーション後、
FSi-SPの直径は約40%減少し、3日目の
FSi-SPと10週での
FSi-SPを比較すると、超粒子のモルフォロジーにおける実質的な変化は明らかである。10週間後の
FSi-SP表面のより高倍率での画像化で、同様に崩壊したように見える下層のシリカミクロ粒子の外観が分かり、フィブリンコーティングの分解性を確認した。これは、
FSi-SPに残るフィブリン量を測定することによって確認した(
図29)。この測定で、6週間のインキュベーション後のほぼ完全なフィブリンの分解が示された。担持したFITC-リゾチームの60%を放出するのに必要な時間であった28日目に、
FSi-SPには約5%のフィブリンが残っているのみであり、その後は、Si-SPと
FSi-SPの間の放出プロファイルは同様になった。
【0192】
超粒子からのSiの放出を定量化するため、これら放出試験(
図28f)の異なる時点(3日、7日、14日、21日、28日、42日及び70日)で回収したサンプルを使用してICP-OESを行い、Si濃度を測定した。PBS中、37℃での70日間のインキュベーション後、約30%のSiがSi-SP及び
FSi-SPの両方から放出された。最初の1週間のSiの分解は、Si-SPより
FSi-SPで緩やかであった(
図30)。14日後、
FSi-SP及びSi-SPの分解速度は、同じプロファイルをたどる。これは、14日後には、
FSi-SP上に約25%のフィブリンが残っているのみであり、それ故、シリカミクロ粒子のほとんどがPBSに直接曝露される(すなわち、未被覆である)ためであると予想される。
【0193】
これらのデータは、フィブリン等の生分解性コーティングを用いて、Si-SPからの治療薬の持続放出を容易にすることができることを示す。
【0194】
実施例11-インビトロ細胞毒性
細胞毒性実験を、Si-SP及び
FSi-SPから長時間スケールで放出された任意の毒性成分を測定するために行った。
FSi-SPの分解産物のインビトロ細胞毒性は、U87MG細胞を使用して調べた。2個、5個、10個または15個の
FSi-SPから、11週間にわたって回収した、崩壊したSi及びフィブリンコーティングを含む上清を、細胞に直接加え、これらの細胞の生存率を2日間のインキュベーション後に測定した(
図31)。これらの結果は、
FSi-SPの数が2個から最大15個まで増えた場合でも、
FSi-SPの分解産物に起因する細胞毒性がないことを示している。Si-SPでも同様の結果が認められた。これは、Si及びフィブリン、ならびにそれらの対応する分解産物の生体適合性を支持する。
【0195】
実施例12-Alg-CaCO3ヒドロゲルに封入されたFSi-SPのインビトロ薬物放出
アルギネートとCa2+イオンの架橋により生じたヒドロゲルを、Si-SPからのタンパク質治療薬の放出のさらなる制御を達成するアプローチとして調べた。アルギネートは、生体適合性の高い天然多糖であり、様々な生物医学的応用に広く研究されており、長期間の移植で内耳に生体適合性があることが示されている。D-グルコノ-δ-ラクトン(GDL、一般的な食品添加物)の添加時にカルシウムイオンを放出するCaCO3粒子(約1.6μm径)を使用して、アルギネートをヒドロゲルまで架橋するためのCa2+イオンを提供した。これらの成分が組み合わさって、遅延/誘発alg-CaCO3ヒドロゲルプラットフォームが生じ、それにより、薬物を担持したSi-SPを、アルギネート及びCaCO3粒子との混合物にて液状で投与することができ、続いてすぐにGDLを添加し、そのヒドロゲルを所定の位置で凝固させる。多孔質CaCO3粒子の表面積が大きいこと及びGDLに関連する穏やかな加水分解条件により、ゲル化は、GDLの添加後約2分以内に生じる。
【0196】
FITC-リゾチームを担持した
FSi-SPを、alg-CaCO
3ヒドロゲル内に封入し、PBS(pH7.4)中、37℃でインキュベートした際のFITC-リゾチームの放出を測定した(
図32e)。生分解性フィブリンコーティングは、すでに上記でバースト放出を減速させることが示されたが、
図32eは、ヒドロゲルの存在が、放出速度をさらに低下させ、40日間で60%のFITC-リゾチームが放出されることを示す。
FSi-SPを使用したこれらの結果に加えて、alg-CaCO
3ヒドロゲル中でのSi-SPのインビトロ放出プロファイルも同様に、異なる量のCaCO
3粒子及び異なる濃度のアルギネート溶液を使用して調べた(
図33)。調べた様々なCaCO
3粒子量及びアルギネート濃度では、Si-SPからのFITC-リゾチームの放出プロファイルに大きな差は認められなかった。総合すれば、これらの結果は、堅牢な放出プロファイルを有する、薬物を担持した超粒子を封入することができるalg-CaCO
3ヒドロゲル系の誘発ゲル化(GDL添加時)を示す。使用例は、臨床医または外科医が、その薬物送達システムを目的の場所、例えば、中耳または内耳に配置することができる単純な2成分の「ミックスアンドインジェクト」システムとしての使用である。
【0197】
実施例13-キトサン被覆超粒子
Si-SPを、上記の通りゲル媒介エレクトロスプレー組織化により合成し、これに、リゾチーム、BDNFまたはNT-3を担持させた。担持させたSi-SPを次いで1層、2層、または3層のキトサン及びアルギネート(0.1重量%のキトサン及びアルギネート溶液)で被覆した。インビトロ薬物放出を、その後経時的に追跡した(
図34、35及び36)。リゾチームを担持したSi-SPを、次に1層の1重量%のキトサン及びアルギネート溶液で被覆し、その後リゾチームを経時的に追跡した(
図37)。
【0198】
当業者には、広く記載される本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく、多くの変更及び/または修正が、特定の実施形態に示される本開示になされ得ることが理解されよう。従って、本実施形態は、すべての点で例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。
【0199】
本出願は、2019年3月19日に出願されたAU2019900910の優先権を主張するものであり、その開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0200】
上記のすべての刊行物は、全体として本明細書に組み込まれる。
【0201】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、装置、物品等のいかなる説明も、本開示の文脈を提供することのみを目的としている。これらの事項のいずれかまたはすべては、先行技術の基礎の一部を形成すると認めると見なされるべきではなく、本出願の各請求項の優先日前に存在していたために、本開示に関連する分野共通の一般知識であったと認めると見なされるべきでもない。
【0202】
参考文献
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