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特表2022-525986内視鏡の挿入部からスパイラルチューブに回転力を伝達するためのローラレスチューブ状コネクタ
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  • 特表-内視鏡の挿入部からスパイラルチューブに回転力を伝達するためのローラレスチューブ状コネクタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(54)【発明の名称】内視鏡の挿入部からスパイラルチューブに回転力を伝達するためのローラレスチューブ状コネクタ
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20220513BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
A61B1/00 612
G02B23/24 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557249
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2020013853
(87)【国際公開番号】W WO2020196798
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】16/367,657
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】ロバート イー. アイリンガー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ゲートリー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー エス. カルローネ
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040CA03
2H040DA03
2H040DA22
2H040DA42
2H040DA55
2H040DA56
2H040DA57
2H040GA02
4C161AA04
4C161CC06
4C161DD03
4C161FF24
4C161GG22
4C161JJ01
4C161LL02
(57)【要約】
内視鏡の挿入部上に使用されるスパイラルチューブとともに使用されるチューブ状コネクタである。チューブ状コネクタは、外表面と、内表面と、内表面から径方向内方に突出するように内表面に周方向に間隔をあけた複数のカムとを備え、複数のカムは、チューブ状コネクタの長手方向に延び、複数のカムの各々は、回転部材と噛み合ってスパイラルチューブを回転するように構成された1つ以上のカム面を備えている。あるいは、複数のカムは、スパイラルチューブの内表面に直接形成されていてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイラルチューブとともに使用するためのチューブ状コネクタであって、
該チューブ状コネクタは、
外表面と、
内表面と、
該内表面から径方向内方に突出するように前記内表面に周方向に間隔をあけて配置された複数のカムであって、前記チューブ状コネクタの長さ方向に延びる複数のカムとを備え、
該複数のカムの各々が、回転部材に噛み合って前記スパイラルチューブを回転するよう構成された1つ以上のカム面を有するチューブ状コネクタ。
【請求項2】
前記複数のカムが、前記チューブ状コネクタの他の部分を形成する材料とは異なる材料により形成されている請求項1に記載のチューブ状コネクタ。
【請求項3】
前記複数のカムの少なくとも前記1つ以上のカム面が、前記チューブ状コネクタの他の部分を形成する材料とは異なる材料でコーティングされるよう構成されている請求項1に記載のチューブ状コネクタ。
【請求項4】
前記複数のカムの少なくとも前記1つ以上のカム面が、前記複数のカムの他の部分を形成する材料とは異なる材料によって形成されるよう構成されている請求項1に記載のチューブ状コネクタ。
【請求項5】
回転部材を有する内視鏡の挿入部とともに使用されるスパイラルチューブであって、
チューブと、
該チューブの外表面に配置されたスパイラルフィンと、
前記チューブの内表面から径方向内方に突出するように周方向に間隔をあけた複数のカムであって、チューブ状コネクタの長さ方向に延びる複数のカムとを備え、
該複数のカムの各々が、前記回転部材に噛み合って前記スパイラルチューブを回転するよう構成された1つ以上のカム面を有するスパイラルチューブ。
【請求項6】
前記複数のカムを有するチューブ状コネクタをさらに備え、
該チューブ状コネクタが、前記チューブの前記内表面に固定されている請求項5に記載のスパイラルチューブ。
【請求項7】
前記複数のカムが、前記チューブ状コネクタの他の部分を形成する材料とは異なる材料により形成されている請求項6に記載のスパイラルチューブ。
【請求項8】
前記複数のカムの少なくとも前記1つ以上のカム面が、前記チューブ状コネクタの他の部分を形成する材料とは異なる材料でコーティングされるよう構成されている請求項6に記載のスパイラルチューブ。
【請求項9】
前記複数のカムの少なくとも前記1つ以上のカム面が、前記複数のカムの他の部分を形成する材料とは異なる材料によって形成されるよう構成されている請求項6に記載のスパイラルチューブ。
【請求項10】
細長い挿入部を有する内視鏡であって、前記挿入部が回転部材を有する内視鏡と、
前記挿入部に回転可能に配置されたスパイラルチューブとを備え、
該スパイラルチューブが、
チューブと、
該チューブの外表面に配置されたスパイラルフィンと、
前記チューブの内表面から径方向内方に突出するように周方向に間隔をあけた複数のカムであって、チューブ状コネクタの長さ方向に延びる複数のカムとを備え、
該複数のカムの各々が、前記回転部材に噛み合って前記スパイラルチューブを回転するよう構成された1つ以上のカム面を有する内視鏡システム。
【請求項11】
前記複数のカムを有するチューブ状コネクタをさらに備え、
該チューブ状コネクタが、前記チューブの前記内表面に固定されている請求項10に記載の内視鏡システム。
【請求項12】
前記複数のカムが、前記チューブ状コネクタの他の部分を形成する材料とは異なる材料によって形成されている請求項11に記載の内視鏡システム。
【請求項13】
前記複数のカムの少なくとも前記1つ以上のカム面が、前記チューブ状コネクタの他の部分を形成する材料とは異なる材料でコーティングされるよう構成されている請求項11に記載の内視鏡システム。
【請求項14】
前記複数のカムの少なくとも前記1つ以上のカム面が、前記複数のカムの他の部分を形成する材料とは異なる材料によって形成されるよう構成されている請求項11に記載の内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、回転力伝達コネクタに関し、特に、内視鏡の挿入部から、挿入部に回転可能に配置されたスパイラルチューブに回転力を伝達するためのローラレスチューブ状コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、内視鏡のような挿入装置の挿入部は、例えば、内腔に挿入される。内腔に挿入されるそのような内視鏡の公知の一形式は、自走式挿入装置である。
【0003】
そのような回転式の自走式挿入装置には、薄肉のチューブに螺旋状のフィン(スパイラルフィン)が形成された、スパイラルチューブと呼ばれる、回転する筒状体が設けられている。スパイラルチューブは、内視鏡の挿入部の外周面上に回転可能に配置されている。スパイラルチューブが回転すると、スパイラルフィンが内腔の内壁面に接触し、これにより、推進力が発生する。この推進力によって、挿入部は、挿入方向または取り出し方向に推進される。
【0004】
従来のスパイラルチューブは、内視鏡の挿入部回りに回転される2組のローラを用いる。第1組のローラはモータによって駆動され、内視鏡の挿入部に対して内側にある。第2組のローラはスパイラルチューブの内部に設けられ、第1組のローラと噛み合い、モータおよび第1組のローラの回転力を第2組のローラに伝達して、スパイラルチューブを回転させる。第1組のローラと第2組のローラとの間には、内視鏡挿入部における水密状態を維持するよう、水密カバーが配置され、内視鏡挿入部に取り付けられている。そのような第2組のローラは、スパイラルチューブの内表面、または、スパイラルチューブの内表面に固定されたコネクタの内表面のいずれかに直接設けられている。第2組のベアリングは、一般に、機械加工された鋼製のローラベアリングであり、ローラを配置するための精密成形されたベアリング保持カラー、関連する検査および組立コストが必要であり、一般に使い捨て部品であるスパイラルチューブのトータルのコストを大きく増大させてしまう。
【発明の概要】
【0005】
したがって、スパイラルチューブとともに使用するためのチューブ状コネクタが提供される。チューブ状コネクタは、外表面と、内表面と、内表面に周方向に間隔をあけて配置され、内表面から径方向内方に突出する複数のカムとを備え、複数のカムの各々が、スパイラルチューブを回転させる回転部材に噛み合うよう構成された1以上のカム面を有する。
【0006】
複数のカムは、チューブ状コネクタの他の部分を形成する材料とは異なる材料によって形成されていてもよい。
【0007】
複数のカムの少なくとも1以上のカム面は、チューブ状コネクタの他の部分を形成する材料とは異なる材料でコーティングされるよう構成されていてもよい。
【0008】
複数のカムの少なくとも1以上のカム面は、複数のカムの他の部分を形成する材料とは異なる材料によって形成されるよう構成されていてもよい。
【0009】
また、回転部材を有する内視鏡挿入部とともに使用するためのスパイラルチューブも提供される。スパイラルチューブは、チューブと、チューブの外表面に配置されたスパイラルフィンと、チューブの内表面から径方向内方に突出するよう周方向に間隔をあけた複数のカムとを備え、複数のカムがチューブ状コネクタの長さ方向に延び、複数のカムの各々が、スパイラルチューブを回転させる回転部材に噛み合うように構成された1以上のカム面を有する。
【0010】
スパイラルチューブは、複数のカムを有するチューブ状コネクタをさらに備え、チューブ状コネクタはチューブの内表面に固定されていてもよい。複数のカムは、チューブ状コネクタの他の部分を形成する材料とは異なる材料によって形成されていてもよい。複数のカムの少なくとも1以上のカム面は、チューブ状コネクタの他の部分を形成する材料とは異なる材料でコーティングされるよう構成されていてもよい。複数のカムの少なくとも1以上のカム面は、複数のカムの他の部分を形成する材料とは異なる材料によって形成されるよう構成されていてもよい。
【0011】
また、細長い挿入部を有する内視鏡であって、挿入部が回転部材を有する内視鏡と、挿入部に回転可能に配置されたスパイラルチューブとを備え、スパイラルチューブが、チューブと、チューブの外表面に配置されたスパイラルフィンと、周方向に間隔をあけて、チューブの内表面から径方向内方に突出する複数のカムであって、チューブ状コネクタの長さ方向に延びる複数のカムとを備え、複数のカムの各々が、回転部材に噛み合ってスパイラルチューブを回転するよう構成された1つ以上のカム面を有する内視鏡システムがさらに提供される。
【0012】
内視鏡システムは、さらに、複数のカムを有するチューブ状コネクタを備え、チューブ状コネクタがチューブの内表面に固定されていてもよい。複数のカムは、チューブ状コネクタの他の部分を形成する材料とは異なる材料によって形成されていてもよい。複数のカムの少なくとも1以上のカム面は、チューブ状コネクタの他の部分を形成する材料とは異なる材料でコーティングされるよう構成されていてもよい。複数のカムの少なくとも1以上のカム面は、複数のカムの他の部分を形成する材料とは異なる材料によって形成されるよう構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
この発明の、これらのおよび他の特徴、側面および利点は、以下の詳細な記述を、添付の図面を参照して読むことにより、よりよく理解することができるであろう。全ての図面を通して、同じ符号は同じ部分を示している。
【0014】
図1】内視鏡の挿入部に回転可能に配置されたスパイラルチューブを有する内視鏡システムを概略的に示す図である。
図2図1に示される内視鏡の操作部の側面を示す図である。
図3】挿入部からスパイラルチューブに回転力を伝達するためのコネクタを含む縦断面図である。
図4図3の線A-Aに沿う横断面図である。
図5図1のスパイラルチューブの内表面において使用されるコネクタを示す斜視図である。
図6A図4のカム面の他の形態を示す図である。
図6B図4のカム面の他の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
開示された実施形態は、挿入部から、内視鏡の挿入部に回転可能に配置されたスパイラルチューブに回転力を伝送するという使用のための特別な有用性を有し、同じ内容に関して以下に記述されているが、ここに開示された装置および方法はそのように限定されるものではなく、一の部材から他の部材に、チューブ状コネクタによって回転力を伝達するための他の形式のチューブ状コネクタにも有用である。
【0016】
図1は、内視鏡11と、内視鏡11の挿入部16に回転可能に配置されたスパイラルチューブ100とを有する内視鏡システム10を備える内視鏡装置1を示している。内視鏡11は、挿入対象(例えば、大腸および小腸のように蛇行した腸管)に挿入される。スパイラルチューブ100は、挿入対象への内視鏡11の挿入を補助する。内視鏡システム10は、内視鏡11と、コントローラ12と、光源13と、入力デバイス14と、ディスプレイ15とを備えている。
【0017】
内視鏡11は、内腔内に挿入される挿入部16と、挿入部16の基端側に設けられた操作部17とを備えている。挿入部16は、内視鏡の先端側における細長い管状体であり、長手軸方向に延びている。挿入部16は、先端硬質部18と、先端硬質部18の基端側に設けられた湾曲部19と、湾曲部19の基端側に設けられた軟性チューブ部20とを備えている。先端硬質部18には、図示しない照明光学システム、観察システムおよびイメージセンサ等が収容されている。湾曲部19は、操作部17を操縦するユーザによって所望の方向に曲げられる。軟性チューブ部20は、湾曲自在であり、例えば、挿入部16が挿入される内腔内の湾曲形状に沿って湾曲する。さらに、挿入部16の内部には、以下に説明されるドライブシャフト51を挿入するためのチャネル21が延びている。
【0018】
操作部17は、ストッパ22によって軟性チューブ部20に接続されている。挿入部16の内部を操作部まで横切って、先端が先端硬質部18の照明光学システムに接続された光ファイバおよび先端が先端硬質部18のイメージセンサに接続された電気ケーブル等が延びている。光ファイバおよび電気ケーブルは操作部17の基端側から延びるユニバーサルコード23内に収容されている。ユニバーサルコード23の基端には、スコープコネクタ24が設けられている。ユニバーサルコード23は、スコープコネクタ24によって、コントローラ12および光源13に接続されている。また、操作部17には、挿入部16内部のチャネル21に連絡する駆動源取付ポート25が設けられている。
【0019】
コントローラ12は、内視鏡11、光源13、入力デバイス14およびディスプレイ15に電気的に接続されている。コントローラ12は、内視鏡11および内視鏡11に接続された周辺デバイス(例えば、光源13および後述する駆動源40)の動作を制御する。また、コントローラ12は、イメージプロセッサ(図示略)を備えている。光源13は、先端硬質部18に配置された照明光学システムに、光ファイバを経由して照明光を供給する。入力デバイス14は、内視鏡11等に種々の指示を入力するためにユーザによって使用される。ディスプレイ15は、先端硬質部18のイメージセンサによって取得され、コントローラ12によって処理された画像、および、内視鏡の稼働情報等を表示する。
【0020】
図2は、図1に示される側面とは反対側の、内視鏡11の操作部17の側面を示す側面図である。操作部17は、挿入部16内に延びる処置具チャネル(図示略)に連絡する処置具挿入ポート26を備えている。処置具挿入ポート26は、図1に示される駆動源取付ポート25と並んで配置されている。超音波プローブまたは生検鉗子のような処置具は、処置具挿入ポート26に挿入される。
【0021】
図2に示されるように、操作部17の側面には、湾曲部19を所望の方向に湾曲させるための操作が入力される湾曲操作ノブ27が設けられている。操作部17の内部には、湾曲部19を湾曲させるための湾曲ワイヤ(図示略)の基端が、湾曲操作ノブ27に接続されたシャフトに接続されている。湾曲ワイヤの先端は湾曲部19の先端部に接続されている。ユーザが湾曲操作ノブ27を回転させると、湾曲操作ノブ27に接続された湾曲ワイヤが引っ張られ、湾曲部19が湾曲させられる。
【0022】
操作部17には、空気供給/水供給スイッチ、吸引スイッチ、撮影スイッチ、他の所定の機能を切り替えるための切替スイッチ等の種々のスイッチ28,29,30,31が設けられている。さらに、操作部17には、挿入部16の中心軸A1回りにスパイラルチューブ100を回転させるための信号をコントローラ12に出力する回転操作入力スイッチ32が設けられている。回転操作入力スイッチ32は、ユーザが、例えば、参照符号32aによって示される位置を押圧したときに、スパイラルチューブ100を第1方向(例えば、時計回り)に回転させる信号を出力し、参照符号32bによって示される位置が押圧されたときに、第1方向とは反対の第2方向(例えば、反時計回り)にスパイラルチューブ100を回転させる信号をコントローラ12に出力する。
【0023】
図1を再度参照して、駆動源取付ポート25には、スパイラルチューブ100を中心軸A1回りに回転および駆動する駆動源40が取り付けられている。駆動源40は、回転シャフトを有するモータ本体41と、モータ本体41から延びるモータケーブル42とを備えている。モータ本体41の外周面は、保持リング(図示略)によって駆動源取付ポート25に保持されている、モータ本体41の回転シャフトは、以下に説明されるドライブシャフト51に接続されている。モータケーブル42の基端はコントローラ12に電気的に接続されている。
【0024】
図1を参照して、スパイラルチューブ100を以下に説明する。
スパイラルチューブ100は、円筒状の本体110を備えている。チューブ本体110は、挿入部16の外周面に、着脱可能に取り付けられる使い捨てチューブである。チューブ本体110は、長手軸A2に沿って延びている。長手軸A2は、チューブ本体110が挿入部16に取り付けられたときには、上述した回転中心軸A1と同軸である。チューブ本体110には、全長にわたって挿入部16が挿入される孔111が設けられている。
【0025】
チューブ本体110は、ポリウレタンのような樹脂材料によって形成された柔軟なチューブである。チューブ本体110の少なくとも一部の外周面には、基端方向に見て時計回りに、螺旋状に設けられたスパイラルフィン112が形成されている。スパイラルフィン112は、チューブ本体110に接着または溶接等によって固定され、または、チューブ本体110と一体に形成されており、チューブ本体110の外周面から径方向に突出している。スパイラルフィン112は、例えば、ポリウレタン、TPE、シリコーン等によって形成されている。
【0026】
駆動力の伝達機構70に関するスパイラルチューブ100のチューブ本体110の挿入部16(軟性チューブ部20)への取り付けは、スパイラルチューブ100のチューブ本体110を回転および長手軸方向に駆動するための駆動力伝達機構70を含む縦断面を示す図3を参照して以下に説明される。図4は、図3における線A-Aに沿う横断面図である。図3に示されるように、軟性チューブ部20は、第1の軟性チューブ部20aと、第1の軟性チューブ部20aよりも軟性チューブ部20の基端側に近接する第2の軟性チューブ部20bとを備えている。第1の軟性チューブ部20aおよび第2の軟性チューブ部20bは、それらの間に配置された剛性のあるベース部33によって接続されている。ベース部33は、挿入部16において、内部に空洞34を形成している。
【0027】
ベース部33の外周面には、ストッパ部材35が設けられている。ストッパ部材35には、チューブ本体110の基端部が突き当たる受け面36が形成されている。これにより、チューブ本体110が挿入部16に取り付けられたときに、チューブ本体110が基端側に移動することが防止される。さらに、ベース部33の外周面には、環状の溝38が形成された環状の係合部材37が設けられている。チューブ本体110には、溝38に噛み合う爪113が設けられている。チューブ本体110が挿入部16に取り付けられるときには、溝38に爪113を噛み合わせることにより、チューブ本体110の長手方向への移動が規制される。
【0028】
内視鏡11の挿入部16には、柔軟なドライブシャフト51、回転ギヤ52、内面ギヤ53、および周面を有する内部ローラ54(回転部材)が設けられている。図4には、6個の内部ローラ54が示されている。しかしながら、ローラの数は6個に限定されるものではない。
【0029】
図1に示されるように、ドライブシャフト51の基端は、モータ本体41の回転シャフトに接続されている。ドライブシャフト51は、挿入部16の内部に延びるチャネル21に設けられている。ドライブシャフト51は、例えば、金属ワイヤを筒状の網形状に編み込むことによって得られる重なる多層によって得られ、または、右巻きのワイヤロッドと左巻きのワイヤロッドとを重ねることにより得られる多層のワイヤによって形成され、モータ本体41に対する回転流動性を有している。
【0030】
ドライブシャフト51の先端には、回転ギヤ52が設けられている。回転ギヤ52は、ベース部33の空洞34内に配置され、ドライブシャフト51に取り付けられた基端側と、支持部材55によってベース部33に取り付けられた先端側とをそれぞれ有している。長手軸回りの回転力がドライブシャフト51の基端に加えられると、ドライブシャフト51は回転ギヤ52を回転させる。回転ギヤ52の外周面には、ベース部33を覆い、ベース部33の外周に取り付けられた内面ギヤ53が配置されている。回転ギヤ52の外歯は、内面ギヤ53の内歯に噛み合っている。内面ギヤ53は、ベース部33に対して、回転軸である長手軸回りに回転可能である。内面ギヤ53には、内部ローラ54のシャフト56が取り付けられている。
【0031】
駆動源40のモータ本体41からの駆動力がドライブシャフト51に伝達されると、回転ギヤ52が回転し、回転ギヤ52に噛み合う内面ギヤ53が、周方向に回転する。内面ギヤ53が周方向に回転すると、内部ローラ54は周方向に回転する。
【0032】
挿入部16の外周においては、内面ギヤ53および内部ローラ54が、ゴムで形成されたような、柔軟性を有するカバー部材であるカバー60によって覆われている。言い換えると、カバー60は、その軸線回りの筒状に形成される。カバー60は、(例えば、糸巻接着により)、長手軸方向の両端において、カバー固定部材61によってベース部33に固定されている。カバー60は、挿入部16の内部に配置された内面ギヤ53、内部ローラ54および他の部材を、外部環境から保護する(体腔内部からの液体、水、または他の液体が侵入することを防止する)ためのバリアまたはシールを提供する防水カバー部材であり、挿入部16の外部被覆を構成する。カバー60は、内視鏡11の挿入部16の内部を水密に維持することができる。
【0033】
カバー60の径方向外方には、各内部ローラ54に対応するカム114が設けられ、各々のカム114が対応する内部ローラ54に噛み合って、駆動力伝達機構70を構成している。カム114は、挿入部16の外周面に取り付けられたチューブ本体110の内周面に設けられている。カム114は、チューブ本体110の内面に一体的に形成されていてもよく、または、図5に示されるように、チューブ本体110の内面に、超音波溶接、接着、締まり嵌め等の方法によって固定されたチューブ状コネクタ200に設けられていてもよい。チューブ状コネクタ200およびチューブ状コネクタ200に取り付けられたスパイラルチューブ100は、図1に示されるように、挿入部16の外側に固定される。
【0034】
図5に示されるように、コネクタ200は、超音波溶接、接着および締まり嵌めのような公知の方法によってスパイラルチューブ100の内面に固定される外表面202を備えている。また、コネクタ200は、内孔204を有し、内孔204は、内面から径方向内方に突出するカム114を有している。カム114の数は、内部ローラ54の数に一致している。カム114は、内部ローラ54と噛み合うカム面114a,114bを備えている。スパイラルチューブの時計回り回転方向に、カム面114a,114bの一方が内部ローラ54に噛み合う一方、スパイラルチューブの反時計回り回転方向には、カム面114a,114bの他方が内部ローラ54に噛み合う。
【0035】
カム114は、コネクタ200の壁面206と一体的に形成されてもよく、または、別々に形成されて壁面206に形成された対応する溝208に挿入されてもよい。そのような別々に形成されたカム114は、インサート成形、超音波溶接、接着または締まり嵌めのような公知の方法によって溝208に固定されてもよい。
【0036】
図4において、6個の内部ローラ54および6個のカム114が内孔204の周方向にほぼ等間隔をあけて配置され、1つの内部ローラ54が、図4に示されるように、カバー60を間に挟んで対応するカム114と接触している状態が示されている。言い換えると、カバー60の内面が内部ローラ54に接触し、カバー60の外面がカム114に接触している。
【0037】
駆動源40が駆動されると、駆動力が駆動源40からドライブシャフト51、回転ギヤ52および内面ギヤ53を経由して伝達され、それによって、内部ローラ54が、回転軸A1回りに回転させられる。内部ローラ54はカバー60上を転がる(回転する)一方、カム114はカバー60上を滑る。カバー60は、カバー固定部材61によってベース部33に固定されているので、カバー60は挿入部16に対して回転しない。しかしながら、内部ローラ54からの内面ギヤ53の回転動作は、カバー60を介して内部ローラ54に接触している、対応するカム114に伝達される。したがって、駆動源40からの駆動力は、駆動力伝達機構70(ドライブシャフト51、回転ギヤ52、内面ギヤ53、内部ローラ54、カバー60およびカム114)からスパイラルチューブ100に伝達され、スパイラルチューブ100は回転軸A1回りに回転および駆動させられる。例えば、小腸あるいは大腸のような湾曲した臓器を観察するときには、スパイラルチューブ100が、回転しているチューブ本体110のスパイラルフィン112を押し当てている腸壁の壁面を、挿入部16の基端側に押圧する間に前進し、挿入部16が湾曲した臓器の奥へ挿入されることを補助する。
【0038】
このように、内視鏡装置1には、挿入部の外周面に取り付けられたスパイラルチューブ100を挿入部16の軸回りに回転させる駆動力伝達機構70が設けられる。駆動力伝達機構70は、駆動源40に接続され、駆動源40からの駆動力によって、所定の軸(ここでは、挿入部16の長手軸)回りに周方向に移動させられる第1部分(内部ローラ54または内部ローラ54のシャフト56の支持部分)を備えている。また、駆動力伝達機構70は、第1部分が移動させられるときに第1部分と接触させられることにより、所定の軸線回りに周方向に移動および所定の軸方向に移動することができる第2部分(カム114)を備えている。カバー60は、第1部分と第2部分との間に配置されている。
【0039】
カム114の材料は、駆動源40にかかる摩擦抵抗を最小限にし、かつ、駆動力伝達機構70を動作させるのに必要なトルクを最小限にするように選択される。使用中のカム114の摩耗および内視鏡11のカバー60の累積摩耗を最小限にするために、摩擦および摩耗特性を最小化するカム114の材料が選択される。しかしながら、機械的な保全および組立も、選択される材料のために考慮される必要がある。例えば、フッ素ポリマー群、または、低摩擦ポリエステル群から、材料が選択されてもよい。HDPEのような材料は、カム114およびスパイラルチューブ100またはコネクタ200の他の部分についての上述した全ての要求をバランスさせることができる。一の態様では、スパイラルチューブ100は、LDPEによって形成されてもよく、コネクタ200はHDPEによって形成されてもよい。これにより、コネクタ200をスパイラルチューブ100に、超音波溶接することができる。そのような材料は、スパイラルチューブ100およびコネクタ200を内視鏡11の溝38にロックするために噛み合う適切な爪にも提供される。
【0040】
スパイラルチューブ100またはコネクタ200の一体的なカム114は、成形されてもよく、従来の機械加工された鋼製のローラベアリング、精密成形されたベアリング保持カラーのコストのみならず部品検査および組立時間をなくすことができる。さらに、伝達効率は、従来のベアリング設計と同程度であり、上述したように、部品、組立および検査コストを大幅に低減することができる。
【0041】
図5を参照して上述したように、外側のカム114はコネクタ200の壁面206とは別に形成されてもよく、コネクタ200の材料とは異なる材料であってもよい。これに代えて、図6Aに示されるように、カバー60と接触する内部カム114のカム面114a,114bのみに、低摩擦かつ/または良好な摩耗特性を有する他の材料114c,114dを採用する一方、スパイラルチューブ100またはコネクタ200の他の部分についての要求は、低延伸性材料、製造容易な公差および/または材料、および/またはより強度の高い材料を用いるなど、最大化してもよい。スパイラルチューブ100またはコネクタ200は、引張荷重がかかった状態で挿入部の対応する溝38にスパイラルチューブ100を確実に保持するための爪113におけるように、ロック構造における剛性が必要である。この場合には、高強度エンジニアリングポリマーまたは強化ポリマーのような材料が使用される。しかしながら、そのような材料は、スパイラルチューブ100またはコネクタ200のカム114に要求される摩擦特性としては貧弱な摩擦特性を有する傾向にある。
【0042】
カム114または図6Aに示されるようにカム面114a,114bのみに使用される低摩擦かつ/または良好な摩耗特性を有する材料は、カム114の他の部分とは異なる材料114c,114dを有していてもよい。そのような材料は、フッ素ポリマー群、または、低摩擦ポリエステル群から選択してもよく、カム114および/またはカム面114a,114bをスパイラルチューブ100またはコネクタ200の残りの部分とは異ならせるために、ツーショット成形またはインサート成形プロセスのような任意の公知の方法によってカム114のカム面114a,114bを形成してもよい。これにより、他の部分の所望の材料を維持しながら、摩擦ポイントに好ましい材料を用いることができる。カム面114a,114bのための異なる材料114c,114dは、所定の場所に簡易に固定(スナップ)され、超音波溶接され、または締まり嵌めによって圧入されてもよい。
【0043】
さらに、図6Bに示されるように、カム面とカバー60との間に潤滑剤の膜を保持するために、カム面114a,114bに表面処理および/またはパターン210が追加されてもよい。これは、従来の成形仕上げ技術または成形後のエンボス加工によって達成されてもよい。そのような表面処理および/またはパターン210は、上述したインサート、または、スパイラルチューブ100またはコネクタ200の残りの部分と一体的に形成されるカム114のカム面材料114c,114dに使用されてもよい。
【0044】
他の実施形態において、カム面114a,114bは、多孔質に構成され、使用中に水に晒されたときに流出する水溶性の潤滑材が注入されていてもよい。この多孔質性は、例えば、追加の製造方法によって生成されてもよい。
【0045】
以上、好ましい実施形態と考えられる事項が図示され説明されたが、この発明の精神から逸脱することなく、形態または詳細に種々の変更または調整を容易に行うことができることは当然に理解される。したがって、発明は、記述され図示された形態そのものに限定されるものではなく、添付された請求項の範囲内における全ての変更を包含するよう構成されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
【国際調査報告】