(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(54)【発明の名称】低い熱膨張を有する充填剤含有ポリカーボネート組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20220513BHJP
C08L 33/24 20060101ALI20220513BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L33/24
C08K5/49
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557483
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(85)【翻訳文提出日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2020057719
(87)【国際公開番号】W WO2020193386
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520204744
【氏名又は名称】コベストロ・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・アンド・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フンガーラント ティム
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BG122
4J002CG011
4J002DJ016
4J002DL006
4J002EW018
4J002EW067
4J002FA046
4J002FA086
4J002FD016
4J002FD037
4J002FD038
4J002GN00
4J002GP00
(57)【要約】
本発明は、A)芳香族ポリカーボネートと、B)Ba)強化繊維、及び/又はBb)第3主族、第4主族及び/又は第4遷移族の金属又はメタロイドの酸化物の球状粒子とを含む熱可塑性組成物に関する。該組成物はまた、C)PMMIコポリマーと、D)ホスファイト安定剤及び/又はホスフィン安定剤とを含む。さらに、それぞれの場合に組成物の総重量に対して、B)の割合は、35重量%以上から40重量%以下であり、かつC)の割合は、0.1重量%超である。さらに、本発明は、基材層と、基材層とは異なる、基材層を少なくとも部分的に覆う反射層とを含み、反射層が380nm~750nmの波長範囲の光を少なくとも部分的に反射する層配列物、光源と反射体とを備え、光源によって放射された光の少なくとも一部が反射体によって反射されるように反射体が配置されている照明装置、及び成形品を製造する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)芳香族ポリカーボネートと、
B)Ba)強化繊維、及び/又はBb)第3主族、第4主族及び/又は第4遷移族の金属又はメタロイドの酸化物の球状粒子と、
を含む熱可塑性組成物であって、
前記組成物は、
C)PMMIコポリマーと、
D)ホスファイト安定剤及び/又はホスフィン安定剤と、
を更に含み、
さらに、それぞれの場合に前記組成物の総重量に対して、B)の割合は、35重量%以上から60重量%以下であり、かつC)の割合は、0.1重量%超であることを特徴とする、熱可塑性組成物。
【請求項2】
前記芳香族ポリカーボネートA)は、ビスフェノールAに基づくホモポリカーボネート、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンに基づくホモポリカーボネート、モノマーのビスフェノールA及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンに基づくコポリカーボネート、又は上述のポリマーの少なくとも2種の混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分B)として使用されるのは、Bb)それぞれの場合にISO 13320:2009に従って決定される、3μm以上から5μm以下の平均直径d
50及び10μm以上から15μm以下の平均直径d
98を有する球状石英、及び/又はBa)2mm以上から5mm以下の切断長さ及び1以上:1~2以下:1の断面比を有するガラス繊維である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
さらに、C)の割合は、前記組成物の総重量に対して、0.5重量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
DIN EN ISO 11357-2:2014-07に従って20℃/分の加熱速度で決定される前記PMMIコポリマーC)のガラス転移温度は、120℃以上から170℃以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
D)は、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリフェニルホスフィン、又は上述の化合物の少なくとも1種を含む混合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
D)の割合は、前記組成物の総重量に対して、0.01重量%以上から0.5重量%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、前記球状粒子Bb)を含み、かつDIN 53752:19080-12に従って決定され、かつ23℃~60℃の温度範囲内で測定される、20ppm/K以上から50ppm/K以下の線形熱膨張係数(CLTE)を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の総重量に対して、
55重量%以上から65重量%以下のA)と、
35重量%以上から45重量%以下のB)と、
0.2重量%以上から0.5重量%以下のC)と、
0.01重量%以上から0.1重量%以下のD)と、
を含み、前記重量%割合は合計して100重量%以下となる、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
基材層と、前記基材層とは異なる、前記基材層を少なくとも部分的に覆う反射層とを含み、前記反射層が380nm~750nmの波長範囲の光を少なくとも部分的に反射する層配列物であって、
前記基材層は、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を含むことを特徴とする、層配列物。
【請求項11】
前記反射層は、金属層である、請求項10に記載の層配列物。
【請求項12】
前記反射層は、10nm以上から100nm以下の厚さを有する、請求項10又は11に記載の層配列物。
【請求項13】
前記層配列物は、平坦ではない、請求項10~12のいずれか一項に記載の層配列物。
【請求項14】
光源と反射体とを備え、前記光源によって放射された光の少なくとも一部が前記反射体によって反射されるように前記反射体が配置されている照明装置であって、
前記反射体は、請求項10~13のいずれか一項に記載の層配列物を含むことを特徴とする、照明装置。
【請求項15】
熱可塑性組成物を熱の作用下で成形して成形品を得ることで、成形品を製造する方法であって、
前記熱可塑性組成物は、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物であることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A)芳香族ポリカーボネートと、B)Ba)強化繊維、及び/又はBb)第3主族、第4主族及び/又は第4遷移族の金属又はメタロイドの酸化物の球状粒子とを含む熱可塑性組成物に関する。さらに、本発明は、基材層と、基材層とは異なる、基材層を少なくとも部分的に覆う反射層とを含み、反射層が380nm~750nmの波長範囲の光を少なくとも部分的に反射する層配列物、光源と反射体とを備え、光源によって放射された光の少なくとも一部が反射体によって反射されるように反射体が配置されている照明装置、及び成形品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(コ)ポリカーボネート組成物は、射出成形によって加工可能であるため、例えば反射面又はレンズ等の光学素子(optical element:光学部材)用の支持体の製造に関心が持たれている。このような用途では、慎重に開発された系の光学的特性が動作中の熱膨張のせいで打ち消されないようにするために、部品の寸法安定性が特に重要である。
【0003】
支持体材料は、低くて理想的には等方性の熱膨張(線形熱膨張係数、CLTE)を有する必要がある。これは球状充填剤を使用して実現され得る。
【0004】
高充填剤含有ポリカーボネート系における更なる部類の充填剤は強化繊維である。これらを使用して、材料に更なる有利な機械的特性を与えることができる。熱的挙動は、一次元又は二次元での変形の低減が起こるようなものであることが望ましい。このような強化ポリカーボネート系の用途は、とりわけ電子部品用の軽量ハウジングである。
【0005】
さらに、支持体材料は、その有利な特性が射出成形プロセスによって低下しないように良好な加工安定性を示す必要がある。
【0006】
特許文献1は、高い表面品質を有する熱可塑性成形品、並びに熱可塑性成形材料及び成形品を製造する方法を開示している。熱可塑性組成物は、A)30.0重量部~100.0重量部の少なくとも1種の芳香族ポリカーボネートと、B)0.0重量部~50.0重量部のゴム変性グラフトポリマー及び/又はビニルコポリマーと、C)0.00重量部~50.00重量部のポリエステルと、D)5.0重量部~50.0重量部の球状/立方体状、管状/円盤状、及び平板状の形状を含む群から選択される粒子形態を有する少なくとも1種の無機充填剤と、E)0.00重量部~5.00重量部の更なる慣用の添加剤とを含み、ここで、成分A)~成分E)の重量部は合計して100重量部となる。
【0007】
特許文献2は、配合の間のタルク含有ポリカーボネート組成物中の芳香族ポリカーボネートの分子量低下を減らすための少なくとも1種のPMMIコポリマーの使用に関する。特許請求の範囲に記載される1つの組成物は、A)少なくとも68重量%の芳香族ポリカーボネートと、B)10重量%~30重量%のタルクと、C)0.2重量%~6重量%のPMMIコポリマーと、D)任意に、難燃剤、アンチドリップ剤、耐衝撃性改良剤、成分Bとは異なる充填剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、カーボンブラック、滑沢剤及び/又は離型剤、熱安定剤、ブレンドパートナー(blend partners)、相溶化剤、UV吸収剤及び/又はIR吸収剤からなる群より選択される1種以上の更なる添加剤とからなる。しかしながら、ホスファイト安定剤の使用はここには記載されていない。
【0008】
特許文献3は、配合の間の第3主族、第4主族及び/又は第4遷移族の金属又はメタロイドの1種以上の酸化物を含むポリカーボネート組成物中の芳香族ポリカーボネートの分子量低下を減らすための少なくとも1種のPMMIコポリマーの使用に関する。特許請求の範囲に記載される1つの組成物は、A)少なくとも60重量%の芳香族ポリカーボネートと、B)10重量%~30重量%の第3主族又は第4主族又は第4遷移族の金属又はメタロイドの1種以上の酸化物と、C)0.2重量%~6重量%のPMMIコポリマーと、D)任意に、難燃剤、アンチドリップ剤、耐衝撃性改良剤、充填剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、カーボンブラック、滑沢剤及び/又は離型剤、熱安定剤、ブレンドパートナー、相溶化剤、UV吸収剤及び/又はIR吸収剤からなる群より選択される成分B及び成分Cとは異なる1種以上の更なる添加剤とからなる。ここでも、ホスファイト安定剤の使用は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2013/079555号
【特許文献2】出願番号PCT/EP2018/084599号及び2017年12月20日の優先日を有する国際特許出願(現在、国際公開第2019/121253号として公開されている)
【特許文献3】出願番号PCT/EP2018/084543号及び2017年12月20日の優先日を有する国際特許出願(現在、国際公開第2019/121229号として公開されている)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、熱応力に2回曝された(配合及び射出成形)後でも可能な限り少ない分子量低下しか示さない、高含有量の球状充填剤又は強化繊維(所望の熱膨張挙動に応じて)を有する熱可塑性成形材料を提供することである。これは特に、ポリカーボネートの場合に格別に高い、特に280℃~300℃、好ましくは290℃~300℃、任意に更に330℃~350℃の高充填剤含有成形材料の加工を容易にする射出成形溶融温度に当てはまる。本発明の更なる課題は、これらの成形材料に基づく下流製品及び対応する製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明によれば、
A)芳香族ポリカーボネートと、
B)Ba)強化繊維、及び/又はBb)第3主族、第4主族及び/又は第4遷移族の金属又はメタロイドの酸化物の球状粒子と、
を含む熱可塑性組成物であって、
上記組成物は、
C)PMMIコポリマーと、
D)ホスファイト安定剤及び/又はホスフィン安定剤と、
を更に含み、
さらに、それぞれの場合に組成物の総重量に対して、B)の割合は、35重量%以上から60重量%以下であり、かつC)の割合は、0.1重量%超である、熱可塑性組成物によって解決される。
【0012】
これは、このような組成物を含む基材層と、基材層とは異なる、基材層を少なくとも部分的に覆う反射層とを含み、反射層が380nm~750nmの波長範囲の光を少なくとも部分的に反射する層配列物の構成要素であり得る。このような層配列物は、光源と反射体とを備え、光源によって放射された光の少なくとも一部が反射体によって反射されるように反射体が配置されており、反射体が上記の層配列物を含む照明装置の構成要素であり得る。請求項15に記載される製造方法は本発明による組成物を使用する。このような製造方法は、熱可塑性組成物を熱の作用下で成形品へと成形することで成形品を製造するのに使用される。有利な発展形態は従属請求項に含まれている。文脈から逆のことが明らかでない限り、所望であればそれらを組み合わせることができる。
【0013】
驚くべきことに、高含有量の球状充填剤及び/又は強化繊維を有するポリカーボネート組成物において、或る特定の最小含有量のPMMIコポリマーとホスファイト安定剤及び/又はホスフィン安定剤の群から選択される含リン安定剤との組合せが存在する場合に、配合後の射出成形工程の間でさえも、加工安定性を高めることができることが判明した。
【0014】
ポリカーボネートホモポリマーの良好な加工安定性についての基準は、特に、ポリカーボネートの数平均分子量Mwが(充填剤含有成形材料を製造する)配合前であるが射出成形する前に開始状態と比較して5%未満低いと同時に、射出成形後に開始状態と比較して7%未満低い場合であり得る。
【0015】
例えば、モノマーのビスフェノールA及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンに基づくコポリカーボネート等のポリカーボネートコポリマーの場合に、2つ目の基準は「射出成形前に開始状態と比較して10%未満低いこと」になる。
【0016】
成分A
成分A)は、少なくとも1種の芳香族ポリカーボネートである。したがって、成分A)として混合物を使用することも可能である。本発明の目的のために、ポリカーボネートはホモポリカーボネート又はコポリカーボネートのいずれかであり、ポリカーボネートは、既知のように線状又は分岐状であり得る。ポリカーボネートは、既知のようにジヒドロキシアリール化合物、炭酸誘導体、並びに任意に連鎖停止剤及び分岐剤から製造される。
【0017】
好ましいジヒドロキシアリール化合物は、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ジメチルビスフェノールA、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの群からの少なくとも1種から選択される。
【0018】
適切な炭酸誘導体の例は、ホスゲン又は炭酸ジフェニルである。本発明により使用されるポリカーボネートの製造に使用され得る適切な連鎖停止剤はモノフェノールである。適切なモノフェノールは、例えばフェノール自体、クレゾール、p-tert-ブチルフェノール、クミルフェノール等のアルキルフェノール及びそれらの混合物である。適切な分岐剤は、ポリカーボネート化学で知られている三官能性又は四官能性以上の化合物、特に3個又は4個以上のフェノール性OH基を有する化合物である。
【0019】
ポリカーボネートA)は、ビスフェノールAに基づくホモポリカーボネート、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンに基づくホモポリカーボネート、モノマーのビスフェノールA及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンに基づくコポリカーボネート、又は上述のポリマーの少なくとも2種の混合物であることが好ましい。
【0020】
成分B
本発明によれば、上記組成物は、成分Baとして強化繊維を含み、及び/又は成分Bbとして第3主族又は第4主族又は第4遷移族の金属又はメタロイドの少なくとも1種の酸化物を含む。適切な強化繊維は、例えばガラス繊維若しくは炭素繊維又はそれらの混合物である。これらの繊維は、好ましくは、2mm以上から5mm以下の切断長さ、及び/又は1以上:1から2以下:1の断面比を有する。
【0021】
第3主族又は第4主族又は第4遷移族の金属又はメタロイドの酸化物は、単独で又は混合物で使用され得る。好ましくは、二酸化チタン、二酸化ケイ素及び/又は酸化アルミニウム、特に好ましくは二酸化チタン及び/又は二酸化ケイ素、非常に特に好ましくは、二酸化チタンは、特に、二酸化チタン被覆及び/又は二酸化ケイ素被覆を除いて、第3主族又は第4主族又は第4遷移族の金属又はメタロイドの更なる酸化物なしで使用される。したがって、成分Bbは、好ましくはこの上述の限定された群から選択される。
【0022】
成分Bは、成分Ba及び成分Bbの割合の合計である。成分Bは、Ba単独、Bb単独、又はBaとBbとの混合物を含み得る。成分Bは、好ましくは、本発明による組成物中に、それぞれの場合に組成物全体に対して36重量%以上から55重量%以下、より好ましくは37重量%以上から50重量%以下、更により好ましくは38重量%以上から45重量%以下、特に好ましくは39重量%以上から40重量%以下の量で存在する。
【0023】
二酸化ケイ素は、好ましくは、天然に存在する又は合成で製造された石英若しくは溶融シリカである。
【0024】
本発明による組成物中で使用される粒子は球状粒子形態を有する。本発明において、「球状」という用語は、理想的な球形態だけでなく、共通の原点を起点として空間に向けられた等長軸線によって記述され、これらの軸線が全ての空間方向の粒子半径を画定し、それぞれ互いに独立して理想的な状態の球から最大20%(好ましくは最大10%)の軸線長さの偏差を有することができる粒子を包含すると理解されるべきである。
【0025】
石英は、好ましくは、ISO 13320:2009に従って決定される、2μm~10μm、より好ましくは2.5μm~8.0μm、更により好ましくは3μm~5μmの中央直径d50によって特徴付けられ、ここで、ISO 13320:2009に従って決定される、相応して6μm~34μm、より好ましくは6.5μm~25.0μm、更により好ましくは7μm~15μm、特に好ましくは10μmの最大直径d95が好ましい。
【0026】
石英は、好ましくは、ISO 9277:2010に従って窒素吸着により決定される、0.4m2/g~8.0m2/g、より好ましくは2m2/g~6m2/g、特に好ましくは4.4m2/g~5.0m2/gのBET比表面積を有する。
【0027】
より好ましい石英は、3重量%以下の二次成分しか含まず、ここで、それぞれの場合に石英又はケイ酸塩の総重量に対して、Al2O3の含有量が2.0重量%未満であり、Fe2O3の含有量が0.05重量%未満であり、(CaO+MgO)の含有量が0.1重量%未満であり、かつ(Na2O+K2O)の含有量が0.1重量%未満である場合が好ましい。
【0028】
水性懸濁液中でISO 10390:2005に従って測定される、6~9、より好ましくは6.5~8.0の範囲内のpHを有する石英を使用することが好ましい。
【0029】
上記石英は、好ましくは、DIN EN ISO 787-5:1995-10による、好ましくは20g/100g~30g/100gの吸油量を有する。
【0030】
好ましい実施の形態において、成分Bbは、鉄を含まない粉砕とそれに続く後処理された石英砂からの気流分級とによって製造された微細な石英粉から選択される。
【0031】
溶融して再固化された二酸化ケイ素である溶融シリカ、すなわち溶融石英を成分Bbとして使用することが特に好ましい。
【0032】
表面にコーティング(size)を有する石英又は溶融石英を使用することができ、その際、エポキシ変性されたシラン化合物、ポリウレタン変性されたシラン化合物、及び変性されていないシラン化合物、メチルシロキサン並びにメタクリロイルシランのコーティング、又は上述のシラン化合物の混合物を使用することが好ましい。エポキシシランのコーティングが特に好ましい。二酸化ケイ素のコーティング処理(sizing)は、当業者に知られる一般的な方法によって行われる。
【0033】
しかしながら、本発明による組成物に使用される二酸化ケイ素はコーティング処理されていない場合が好ましい。
【0034】
適切な二酸化チタンは、好ましくは、塩化物法によって製造され、疎水化され、特別に後処理された、ポリカーボネートでの使用に適したもの、例えば、市販製品のKronos 2230(Kronos Titan)である。
【0035】
二酸化チタンの可能な表面変性としては、無機変性及び有機変性が挙げられる。これらの表面変性としては、例えばアルミニウム又はポリシロキサンに基づく表面変性が挙げられる。無機被覆は0重量%~5重量%の二酸化ケイ素及び/又は酸化アルミニウムを含み得る。有機系の変性は0重量%~3重量%の疎水性湿潤剤を含み得る。
【0036】
二酸化チタンは、好ましくは、DIN EN ISO 787-5:1995-10に従って決定される、12g/100g(二酸化チタン)~18g/100g(二酸化チタン)、より好ましくは13g/100g(二酸化チタン)~17g/100g(二酸化チタン)、特に好ましくは13.5g/100g(二酸化チタン)~15.5g/100g(二酸化チタン)の吸油量を有する。
【0037】
DIN EN ISO 591-1:2001-8のパート1による標準名称R2を有する、アルミニウム及び/又はケイ素化合物で安定化され、かつ少なくとも96.0重量%の二酸化チタン含有量を有する二酸化チタンが特に好ましい。このような二酸化チタンは、Kronos(商標)2233及びKronos(商標)2230の商品名で入手可能である。
【0038】
酸化アルミニウムが成分Bbとして使用される場合に、これは、好ましくは、水性懸濁液中でISO 10390:2005に従って測定される、7.0~7.4のpHを有する。酸化アルミニウムは、好ましくはコーティング処理されていない。
【0039】
それぞれの場合の成分Bbについての量の指定は、あらゆるコーティング/表面変性を含む使用される酸化物の総重量に対するものである。
【0040】
好ましくは、成分B)として使用されるのは、Bb)それぞれの場合にISO 13320:2009に従って決定される、3μm以上から5μm以下の平均直径d50及び10μm以上から15μm以下の平均直径d98を有する球状石英、及び/又はBa)2mm以上から5mm以下の切断長さ及び1以上:1~2以下:1の断面比を有するガラス繊維である。
【0041】
成分C
成分CはPMMIコポリマーから選択される。PMMIコポリマーは、部分的にイミド化されたメタクリルポリマーである熱可塑性プラスチックである。PMMIコポリマーは、特に、反応器内で分散液中又は溶融物中でPMMAとメチルアミンとを反応させることによって得られる。適切な方法は、例えば独国特許出願公開第1077872号に記載されている。イミド構造は、ポリマー鎖に沿って生成され、反応の程度に応じて、メタクリル酸無水物及び遊離メタクリル酸官能基も形成される。コポリマー中のイミド官能基の割合によってその耐熱性が決まる。反応の程度は狙い通りに調整可能である。
【0042】
PMMIコポリマーは、メチルメタクリレート単位(MMA)、メチルメタクリルイミド単位(MMI)、メチルメタクリル酸単位(MMS)及びメチルメタクリル酸無水物単位(MMAH)を有する。好ましくは、PMMIコポリマーの総重量に対して、少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%のPMMIコポリマーは、MMA単位、MMI単位、MMS単位、及びMMAH単位から選択される。PMMIコポリマーがこれらの単位のみからなる場合が特に好ましい。
【0043】
PMMIコポリマー中の単位及びそれらの割合は、特に、定量的1H NMR分光法によって、R’シグナルの一義的な化学シフトに基づいて決定され得る。酸モノマー単位及び無水物モノマー単位のシグナルは一義的に割り当てることができないため、これらの単位を集合的に考慮することが推奨される。
【0044】
PMMIコポリマーは、好ましくは、PMMIコポリマーの総重量に対して、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも35重量%、より好ましくは35重量%~96重量%、特に好ましくは36重量%~95重量%のMMIのMMI割合を有する。
【0045】
コポリマーのMMA含有量は、好ましくは、PMMIコポリマーの総重量に対して、3重量%~65重量%、好ましくは4重量%~60重量%、特に好ましくは4.0重量%~55重量%である。
【0046】
MMS及びMMAHの割合は合計で、PMMIコポリマーの総重量に対して、好ましくは最大15重量%、より好ましくは最大12重量%、特に好ましくは0.5重量%~12重量%である。
【0047】
DIN 53240-1:2013-06に従って決定されるPMMIコポリマーの酸価は、好ましくは15mgKOH/g~50mgKOH/g、より好ましくは20mgKOH/g~45mgKOH/g、更により好ましくは22mgKOH/g~42mgKOH/gである。
【0048】
非常に特に好ましいPMMIコポリマーは、それぞれの場合にPMMIコポリマーの総重量に対して、かつ1H NMR分光法により決定される、36.8重量%のMMI割合、51.7重量%のMMA割合、及び11.5重量%のMMS+MMAH割合を有し、かつDIN 53240-1:2013-06により決定される、22.5mgKOH/gの酸価を有する。
【0049】
代替として、非常に特に好ましいPMMIコポリマーは、それぞれの場合にPMMIコポリマーの総重量に対して、かつ1H NMR分光法により決定される、83.1重量%のMMI割合、13.6重量%のMMA割合、及び3.3重量%のMMS+MMAH割合を有し、かつDIN 53240-1:2013-06により決定される、22.5mgKOH/gの酸価を有する。
【0050】
同様に代替として、非常に特に好ましいPMMIコポリマーは、それぞれの場合にPMMIコポリマーの総重量に対して、かつ1H NMR分光法により決定される、94.8重量%のMMI割合、4.6重量%のMMA割合、及び0.6重量%のMMS+MMAH割合を有し、かつDIN 53240-1:2013-06により決定される、41.5mgKOH/gの酸価を有する。
【0051】
適切なPMMIは、例えば、Evonik Industries AGから「PLEXIMID(商標)」ブランドとして入手可能である。
【0052】
本発明によれば、PMMIコポリマーC)の割合は0.1重量%超であることが規定されている。さらに、PMMIコポリマーC)の割合は、好ましくは、組成物の総重量に対して0.5重量%以下である。C)の割合は、好ましくは、組成物の総重量に対して0.2重量%以上から0.5重量%以下である。
【0053】
DIN EN ISO 11357-2:2014-07に従って20℃/分の加熱速度で決定されるPMMIコポリマーC)のガラス転移温度が、120℃以上から170℃以下、好ましくは130℃以上から150℃以下である場合が好ましい。したがって、PMMIコポリマーは、高温安定性ポリカーボネートコポリマーを含むポリカーボネートに慣用の加工条件下で安定である。
【0054】
成分D
ホスファイト安定剤及び/又はホスフィン安定剤は、単独で又は混合物の一成分として使用され得る。D)がトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos(商標)168)、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Doverphos(商標)S-9228)、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(ADK STAB PEP-36)、トリフェニルホスフィン又は上述の化合物の少なくとも1種を含む混合物である場合が好ましい。
【0055】
D)の割合が、組成物の総重量に対して、0.01重量%以上から0.5重量%以下である場合が好ましい。この含有量は、好ましくは0.04重量%以上から0.1重量%以下である。
【0056】
本発明による組成物は、成分Eとして、難燃剤、アンチドリップ剤、耐衝撃性改良剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、カーボンブラック、滑沢剤及び/又は離型剤、ブレンドパートナー、相溶化剤、UV吸収剤、IR吸収剤等のような更なる慣用の添加剤を含み得る。
【0057】
更なる実施の形態において、上記組成物は、球状粒子Bb)を含み、かつDIN 53752:1980-12に従って決定され、かつ23℃~60℃の温度範囲内で測定される、20ppm/K以上から50ppm/K以下の線形熱膨張係数(CLTE)を有する。試験片の縦方向におけるCLTE値は、試験片の横方向におけるCLTE値から、好ましくは4ppm/Kより大きく、より好ましくは3ppm/Kより大きく偏差していない。
【0058】
更なる実施の形態において、上記組成物は、強化繊維Ba)を含み、かつDIN 53752:1980-12に従って決定され、かつ23℃~60℃の温度範囲内で繊維の縦方向に対応する試験片の方向において測定される10ppm/K以上から30ppm/K以下の線形熱膨張係数(CLTE)を有する。繊維の縦方向に対応する試験片の方向におけるCLTEが50ppm/K以上から70ppm/K以下である場合が好ましい。
【0059】
更なる実施の形態において、上記組成物は、組成物の総重量に対して、55重量%以上から65重量%以下、好ましくは54.79重量%から64.79重量%のA)と、35重量%以上から45重量%以下のB)と、0.2重量%以上から0.5重量%以下のC)と、0.01重量%以上から0.1重量%以下のD)とを含み、重量%割合は合計して100重量%以下となる。
【0060】
上記組成物は、好ましくは、組成物の総重量に対して、
A)55重量%以上から65重量%以下、好ましくは54.79重量%~64.79重量%の、ビスフェノールAに基づくホモポリカーボネート、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンに基づくホモポリカーボネート、モノマーのビスフェノールA及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンに基づくコポリカーボネート、又は上述のポリマーの少なくとも2種の混合物と、
B)35重量%以上から45重量%以下の、Bb)それぞれの場合にISO 13320:2009に従って決定される、3μm以上から5μm以下の平均直径d50及び10μm以上から15μm以下の平均直径d98を有する球状石英、及び/又はBa)2mm以上から5mm以下の切断長さ及び1以上:1~2以下:1の断面比を有するガラス繊維と、
C)0.2重量%から0.5重量%以下の、DIN EN ISO 11357-2:2014-07に従って20℃/分の加熱速度で決定される、120℃以上から170℃以下のガラス転移温度を有するPMMIコポリマーと、
D)0.01重量%以上から0.1重量%以下の、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリフェニルホスフィン、又は上述の化合物の少なくとも1種を含む混合物と、
を含み、ここで、重量%割合は合計して100重量%以下となる。難燃剤、アンチドリップ剤、耐衝撃性改良剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、カーボンブラック、滑沢剤及び/又は離型剤、ブレンドパートナー、相溶化剤、UV吸収剤、IR吸収剤の群から選択される更なる添加剤に加えて、更なる成分が存在しない場合がより好ましい。本発明による組成物が成分A)~成分D)及び任意に離型剤のみからなる場合が好ましい。
【0061】
同様に、本発明は、基材層と、基材層とは異なる、基材層を少なくとも部分的に覆う反射層とを含み、反射層が380nm~750nmの波長範囲の光を少なくとも部分的に反射する層配列物であって、基材層は、本発明による組成物を含む、層配列物に関する。これは、好ましくは、基材層の部分領域が又はそれどころか基材層全体さえも本発明による組成物から製造されることを意味する。基材層が本発明による組成物のみからなる場合が好ましい。したがって、反射層は可視光を反射し、他の波長の光(UV、IR)は排除されない。基材層は、好ましくは、球状粒子Bb)を含む本発明による組成物を含む又は該組成物である。基材層は、より好ましくは、DIN 53752:1980-12に従って決定される、20ppm/K以上から50ppm/K以下の線形熱膨張係数(CLTE)を有する。基材層において、CLTE値の決定用の試験片の縦方向におけるCLTE値が、試験片の横方向におけるCLTE値から、好ましくは4ppm/Kより大きく、より好ましくは3ppm/Kより大きく偏差していない場合が更により好ましい。
【0062】
層配列物の一実施の形態において、反射層は金属層である。金属層は、例えばアルミニウム層又は貴金属層であり得る。該層は、化学的プロセス、特に化学蒸着(CVD)若しくは電気メッキによって、又は物理的プロセス、特に物理蒸着(PVD)若しくはスパッタリングによって適用され得る。
【0063】
層配列物の更なる実施の形態において、反射層は10nm以上から100nm以下、好ましくは30nm以上から80nm以下の厚さを有する。
【0064】
層配列物は平坦であり得るため、単純なミラーとして機能し得る。しかしながら、更なる実施の形態において、層配列物は平坦ではない。その際、層配列物は集束ミラー又は発散ミラーとして機能し得る。層配列物は、例えば回転放物面の形態であり得る。
【0065】
本発明は、光源と反射体とを備え、光源によって放射された光の少なくとも一部が反射体によって反射されるように反射体が配置されている照明装置であって、反射体は、本発明による層配列物を含む、照明装置を更に提供する。そのような照明装置の一例は、自動車におけるフロントライトとして使用されるようなヘッドライトである。
【0066】
本発明はさらに、熱可塑性組成物を熱の作用下で成形して成形品を得ることで、成形品を製造する方法であって、熱可塑性組成物は、本発明による組成物である、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0067】
本発明を以下の実施例を参照してより具体的に解説するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
ポリマー:
A1:19cm3/10分(300℃/1.2kg、ISO 1133-1:2011)のMVR及び145℃の軟化温度(VST/B 120;ISO 306:2013)を有するビスフェノールAに基づく市販のポリカーボネート(Covestro Deutschland AGのMakrolon(商標)2408)である。分子量Mwは、およそ23887g/molであった。
【0069】
A2:18cm3/10分(330℃/2.16kg、ISO 1133-1:2011)のMVR及び183℃の軟化温度(VST/B 120;ISO 306:2013)を有するビスフェノールA及びビスフェノールTMCに基づく市販のコポリカーボネート(Covestro Deutschland AGのApec(商標)1895)である。分子量Mwは、およそ27855g/molであった。
【0070】
充填剤:
B1:Amosil FW600(D50=4μm、D98=13μm、コーティング処理されていない)の商品名で入手可能であるQuarzwerke GmbH(ドイツ、フレッヒェン50226)製の球状溶融石英である。これは、約1.5μm/10μmのD10/D90比及びDIN ISO 9277(DIN-ISO 9277:2014-01)に従って決定される、約6m2/gの比表面積を有する焼成二酸化ケイ素である。
【0071】
B2:CSG 3PA-830の商品名で入手可能である日東紡績株式会社(日本、〒102-8489東京都千代田区麹町2-4-1)製のガラス繊維である。これは3mmの切断長さ及び1.4の断面比を有する平坦ガラス繊維である。
【0072】
安定剤:
C1:130℃の軟化温度(VST/B 50;ISO 306:2013)を有するポリメタクリロイルメチルイミドに基づく市販のコポリマー(Pleximid(商標)8803)である。
【0073】
C2:150℃の軟化温度(VST/B 50;ISO 306:2013)を有するポリメタクリロイルメチルイミドに基づく市販のコポリマー(Pleximid(商標)TT50)である。
【0074】
D1:ADK-Stab-Pep36の商品名で入手可能なAdeka製のホスファイト(CAS番号80693-00-1;ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト)である。
【0075】
D2:BASF製のトリフェニルホスフィン(CAS番号603-35-0)。
【0076】
D3:Irganox B900の商品名で市販されているBASF(ルートヴィヒスハーフェン)製の安定剤混合物(80%のIrgafos 168;D4を参照+20%のIrganox 1076;フェノール系酸化防止剤;CAS番号2082-79-3)である。
【0077】
D4:Irgafos 168の商品名で入手可能なBASF製のホスファイト(CAS番号31570-04-4)である。
【0078】
D5:Doverphos S9228の商品名で入手可能なDover Chemical Corporation製のホスファイト(CAS番号154862-43-8)である。
【0079】
離型剤:
E1:PETS(ペンタエリスリトールテトラステアレート)。
【0080】
製造条件:
方法A:BUSSニーダー、溶融温度:280℃~300℃、速度:350rpm、スループット:75kg/h、トルク:30%、側方押出機(side extruder)を介した充填剤の添加。
【0081】
方法B:Berstorff製のZE 25 AX 40D-UTX二軸スクリュー押出機、押出機の溶融温度:300℃(ポリマーA2の場合は320℃)、押出機の速度:225rpm、スループット:20kg/h、トルク:50%~60%、ハウジング5(9個中)にある側方押出機を介した充填剤の添加。
【0082】
手順:
ポリカーボネート組成物の製造を、BUSSニーダー(方法A)又は二軸スクリュー押出機(方法B)のいずれかを使用して実施した。装置に応じて、加工温度は225分-1又は350分-1の速度で280℃~300℃の間であった。側方押出機を介して使用される充填剤を供給し、主供給物を介してポリカーボネート及び更なる全ての添加剤を含む粉末予備混合物を添加した。
【0083】
造粒物を十分に乾燥させた後に、290℃~330℃の溶融物の加工温度で、そしてApec(商標)含有成形材料の場合は310℃~350℃の溶融物の加工温度で射出成形することによって試験片を製造した。
【0084】
10mm×10mm×4mmの寸法を有する試験片において室温から60℃の間の範囲内でのDIN 53752:1980-12による熱機械分析(TMA)によって、CLTE値を決定した。
【0085】
分子量Mwを以下の通りに決定した:溶離液としてジクロロメタンを使用してビスフェノールAポリカーボネート標準に対して較正されたゲル浸透クロマトグラフィー。PSS Polymer Standards Service GmbH(ドイツ)製の既知のモル質量分布の(ビスフェノールA及びホスゲンから形成された)線状ポリカーボネートによる較正、Currenta GmbH & Co. OHG(レバークーゼン)の方法2301-0257502-09D(2009年、ドイツ語)による較正。溶離液はジクロロメタンである。架橋スチレン-ジビニルベンゼン樹脂のカラム組合せ。分析カラムの直径:7.5mm;長さ:300mm。カラム材料の粒子サイズ:3μm~20μm。溶液の濃度:0.2重量%。流速:1.0ml/分、溶液の温度:30℃。注入容量:100μl。UV検出器による検出。
【0086】
報告された組成物には連番が付けられている。「V」は比較例を示し、「E」は本発明による実施例を示す。
【0087】
ホスファイト/PMMIを用いた方法Aによる配合及びその後の射出成形の実験:
【0088】
【0089】
表1からは、最初に、D1の含有量が増加しても(組成物1~組成物3)、配合プロセスにおいてポリカーボネートの分子量はあまり大幅に減少しないことが明らかである。しかしながら、成分D1が0.15%を上回ると、もはや大きな違いはなくなる。加工安定剤としてのD2を省いても、分子量には影響はない(V-3/V-4を参照)。C1の添加により、配合の間の分子量低下が減少する(E-5とV-2とを参照)。C1含有量を高めることによって、ホスファイトの量を更に減らすことができる(E-6とV-1とを参照)。別の慣用の加工安定剤(D3)の使用により、はるかにより大きな分子量低下が示される(V-7とV-1と及びV-8とV-3とを参照)。
【0090】
下流プロセス(射出成形)での加工安定性に関しては、違いは更により明確である。したがって、ホスファイトとPMMIとの両方を含む組成物E-6は、ホスファイトのみを含む組成物V-3よりも分子量低下に対して顕著により安定している。この材料に関連する非常に広い温度範囲にわたって安定性が実証されている(充填剤含有量が高いと、流動性を保証するためにより高い溶融温度が必要となる)。
【0091】
したがって、これらの結果は、ホスファイトとPMMIとの相乗効果を示している。
【0092】
ホスファイト/PMMIを用いた方法Bによる配合及びその後の射出成形の実験:
【0093】
【0094】
表2におけるデータから、加工安定化に関して、ホスファイト/ホスフィンとPMMIとの相乗効果があることが明らかである。これは一連の種々のリン系熱安定剤に当てはまる(活性リン種の分子量により判断すると、D4が最も高い効果を示す)。0.2重量%の含有量のC1での違いは小さいが、特に、PMMIが存在しないと、5.9%から11.3%へのΔMwの著しい悪化が引き起こされることが分かる(例えば、V-13とE-9とを参照)。押出後の分子量を比較すると、ホスファイトとPMMIとの両方を含む組成物は、組成物V-13及び組成物V-14と比べて殆ど大きな損害を被らないことが明らかになる。したがって、V-14についてMwのパーセンテージの減少は同様であるにもかかわらず、それぞれの加工温度での最終値は本発明の組成物の場合よりも低い。さらに、ホスファイト含有量を増加させると(V-15)、興味深いことにV-13に比べて著しい悪化が引き起こされる。
【0095】
PMMI濃度の影響の調査:
【0096】
【0097】
表3におけるデータから、C1/C2の濃度を高めると、加工安定性(ΔMw)に関して顕著な改善がもたらされることが明らかである。0.5重量%のPMMI含有量では、ポリカーボネート化合物の分子量は1%しか低下しなかった(最適な上限は0.5重量%である)。この効果は、E-18の例でC2を使用した場合にも明らかである。
【0098】
充填剤含有量の影響:更なる充填剤(ガラス繊維、30%~50%のSiO2)の添加;方法Bによる製造:
【0099】
【0100】
コポリカーボネートにおける効果:
【0101】
【0102】
A2(Apec(商標))において効果は同様に明確に分かる。安定剤D1の含有量を増加させると、350℃の加工温度での分子量低下に僅かな改善(V-31及びV-30を参照)しか示されないが、依然として上記低下はE-29の場合よりも著しく高い。
【国際調査報告】