(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(54)【発明の名称】弾性パリレン
(51)【国際特許分類】
C08G 83/00 20060101AFI20220513BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220513BHJP
A61L 27/34 20060101ALI20220513BHJP
A61L 31/10 20060101ALI20220513BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
C08G83/00
C08J5/18 CEZ
A61L27/34
A61L31/10
H05K1/03 610H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559825
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(85)【翻訳文提出日】2021-12-07
(86)【国際出願番号】 US2020027553
(87)【国際公開番号】W WO2020210550
(87)【国際公開日】2020-10-15
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593040841
【氏名又は名称】スペシャルティ、コーティング、システムズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】グライナー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】クマール,ラケシュ
(72)【発明者】
【氏名】モス,トビアス
【テーマコード(参考)】
4C081
4F071
4J031
【Fターム(参考)】
4C081AB05
4C081AB17
4C081AC03
4C081AC16
4C081BA17
4C081BB02
4C081BB03
4C081CA032
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4F071AA69
4F071AA86
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4F071AF21Y
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4F071AH19
4F071BB12
4F071BB13
4F071BC01
4F071BC12
4J031BA04
4J031BB01
4J031BC07
4J031BD03
(57)【要約】
化学蒸着重合(CVDP)を介して基材上で生成された弾性パリレンフィルムが、開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的に架橋した、弾性パリレンまたはポリ(パラキシリレン)(PPX)ポリマーフィルム。
【請求項2】
ポリマーフィルムのビニル含有量が約5%以下である、請求項1に記載のパリレンポリマーフィルム。
【請求項3】
ポリマーフィルムのビニル含有量が、約2.5%以下、例えば、約0.5%~約1.25%の範囲内、例えば、約1%である、請求項1または2に記載のパリレンポリマーフィルム。
【請求項4】
ポリマーフィルムが約0.01GPa~約0.05GPaの間のヤング率を有する、請求項1から3のいずれかに記載のパリレンポリマーフィルム。
【請求項5】
ポリマーフィルムが約0.02GPa~約0.04GPaの間のヤング率を有する、請求項1から4のいずれかに記載のパリレンポリマーフィルム。
【請求項6】
ポリマーフィルムが、向上した耐溶媒性、例えば、向上した耐有機溶媒性を有する、請求項1から5のいずれかに記載のパリレンポリマーフィルム。
【請求項7】
ポリマーフィルムが約350℃以下の熱寸法安定性を有する、請求項1から6のいずれかに記載のパリレンポリマーフィルム。
【請求項8】
ポリマーフィルムが約100%、150%、200%、300%または350%以下の破断点伸び値を有する、請求項1から7のいずれかに記載のパリレンポリマーフィルム。
【請求項9】
ポリマーフィルムが1サイクル当たり少なくとも約100%の伸びの繰返し歪み試験値を有する、請求項1から8のいずれかに記載のパリレンポリマーフィルム。
【請求項10】
ポリマーフィルムが約20%~30%の間の繰返し歪み試験形状シフト値を有する、請求項1から9のいずれかに記載のパリレンポリマーフィルム。
【請求項11】
ポリマーフィルムが実質的に不溶性である、請求項1から10のいずれかに記載のパリレンポリマーフィルム。
【請求項12】
ポリマーフィルムが低いガラス転移温度を有する、請求項1から11のいずれかに記載のパリレンポリマーフィルム。
【請求項13】
基材上で共重合した、置換パラシクロファンおよびビニル官能化パラシクロファンを含む、請求項1から12のいずれかに記載のパリレンポリマーフィルム。
【請求項14】
置換パラシクロファンがジアルキル官能化パラシクロファン、例えば、ジブチル官能化パラシクロファンである、請求項1から13のいずれかに記載のパリレンポリマーフィルム。
【請求項15】
置換パラシクロファンが4,12-ジブチル[2,2]パラシクロファンである、請求項1から14のいずれかに記載のパリレンポリマーフィルム。
【請求項16】
ビニル官能化パラシクロファンが4-ビニル[2.2]パラシクロファンである、請求項1から15のいずれかに記載のパリレンポリマーフィルム。
【請求項17】
ポリマーフィルムが、UV、プラズマ、e-ビーム架橋、または温度で処理される、例えば、アニールされる、請求項1から16のいずれかに記載のパリレンポリマーフィルム。
【請求項18】
ポリマーフィルムが約0.5μm超の厚さを有する、請求項1から17のいずれかに記載のパリレンポリマーフィルム。
【請求項19】
化学的に架橋した弾性パリレンまたはポリ(パラキシリレン)(PPX)ポリマーフィルムを調製する方法であって、
置換パラシクロファンおよびビニル官能化パラシクロファンを混合して、混合物を形成すること、および
化学蒸着重合(CVDP)プロセスを介して混合物を基材上で共重合させて、化学的に架橋した弾性ポリマーフィルムを形成すること
を含む方法。
【請求項20】
置換パラシクロファンが低いガラス転移温度を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
置換パラシクロファンがジアルキル官能化パラシクロファン、例えば、ジブチル官能化パラシクロファンである、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
置換パラシクロファンが4,12-ジブチル[2,2]パラシクロファンである、請求項19から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
ビニル官能化パラシクロファンが4-ビニル[2.2]パラシクロファンである、請求項19から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
ビニルパラシクロファンと置換パラシクロファンとの比が約1:500~1:10の間、好ましくは約1:200~1:100の間である、請求項19から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
化学的に架橋した弾性ポリマーフィルムが約5%以下のビニル含有量を有する、請求項19から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
化学的に架橋した弾性ポリマーフィルムが約2.5%以下のビニル含有量を有する、請求項19から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
化学的に架橋した弾性ポリマーフィルムが約0.5%~約1.25%、例えば、約1%のビニル含有量を有する、請求項19から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
CVDPプロセスが約500℃の熱分解温度を含む、請求項19から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
CVDPプロセスが約300℃の輸送温度を含む、請求項19から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
CVDPプロセスが約10℃の蒸着温度を含む、請求項19から29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
CVDPプロセスが約125℃の昇華温度を含む、請求項19から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
ビニル官能化パラシクロファンを合成することをさらに含む、請求項19から31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
化学的に架橋した弾性ポリマーフィルムを、さらなる熱処理、UV照射、プラズマコンディショニング、またはe-ビーム架橋に供することをさらに含む、請求項19から32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
さらなる熱処理が、約1分~約30分、例えば、約5分の期間、約100℃~約350℃、例えば、約300℃のアニール温度をかけることを含む含む、請求項19から33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
基材が可撓性基材である、請求項19から34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
可撓性基材がプリント回路基板(PCB)または医療機器に付属している、請求項19から35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
請求項19から36のいずれかに記載の方法によって製造される、化学的に架橋した弾性パリレンまたはポリ(パラキシリレン)(PPX)ポリマーフィルム。
【請求項38】
先行する請求項のいずれかに記載のパリレンポリマーフィルムで被覆された可撓性基材を含む、機器。
【請求項39】
可撓性基材がプリント回路基板(PCB)に付属している、請求項38に記載の機器。
【請求項40】
可撓性基材が医療機器、例えば、移植可能機器に付属している、請求項38または39に記載の機器。
【請求項41】
医療機器が、心臓弁、ステント、除細動器、またはペースメーカーを含む、請求項38から40のいずれかに記載の機器。
【請求項42】
医療機器が、人工関節、ディスク、ねじ、または他の整形外科器具を含む、請求項38から41のいずれかに記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
態様は、一般に、パリレン(Parylene)フィルムに関し、より詳細には、可撓性基材上にコーティングとして使用するための弾性パリレンフィルムおよびそれらの付着の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(パラキシリレン)(PPX)(商品名Parylene(パリレン))は、コーティング材料として商業的に使用されるポリマーである。PPXは、生体適合性、不溶性、高温安定性、並外れた電気絶縁性、およびバリア性に関係する独特の一連の性質を提供し、これらは医療機器、エレクトロニクス、MEMS、人口遺物の保存、およびバリアコーティングに関連する実用的な用途にとって興味深い。
【0003】
PPXは化学蒸着重合(chemical vapor deposition polymerization:CVDP)によって生成され得、ピンホールフリーのコンフォーマル(絶縁保護)フィルムをもたらす。前駆体[2,2]パラシクロファンは、一般に減圧下で蒸発し、次に高温で熱分解して、実際のモノマーである対応する1,4-キノジメタンとなり、これは30℃未満で基材上で凝結し、PPXフィルムを同時に形成しながら自発的に重合する。このフィルムは、特定のPPX組成に応じて破断することなくある程度まで延伸され得るが、可撓性基材に関連して使用するのに必用な弾性ではない。この弾性の不足は、PPXコーティングの剥離および/または破損をもたらし得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つまたは複数の態様によれば、化学的に架橋した弾性パリレンまたはポリ(パラキシリレン)(PPX)ポリマーフィルムが開示される。
1つまたは複数の態様によれば、化学的に架橋した弾性パリレンまたはポリ(パラキシリレン)(PPX)ポリマーフィルムを調製する方法が開示される。この方法は、置換パラシクロファンおよびビニル官能化パラシクロファンを混合して混合物を形成することと、化学蒸着重合(CVDP)プロセスを介して混合物を基材上で共重合させて、化学的に架橋した弾性ポリマーフィルムを形成することとを含み得る。
【0005】
1つまたは複数の態様によれば、化学的に架橋した弾性パリレンまたはポリ(パラキシリレン)(PPX)ポリマーフィルムは、本明細書に開示されるいずれかの方法によって調製される。
【0006】
1つまたは複数の態様によれば、可撓性基材を含む機器が開示される。可撓性基材は、本明細書に開示されるいずれかのパリレンポリマーフィルムで被覆される。
これらの例示的な態様および実施形態のさらに他の態様、実施形態、および利点が、以下で詳細に議論される。本明細書に開示される実施形態は、本明細書に開示される少なくとも1つの原理と一致するいずれかの方式で、他の実施形態と組み合わせてもよく、「一実施形態」、「一部の実施形態」、「代わりの実施形態」、「様々な実施形態」、「1つの実施形態」またはこれに類するものへの言及は、必ずしも相互に排他的ではなく、記述される特定の特徴、構造、または特性は、少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを示すと意図される。本明細書におけるこうした用語の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態を指すとは限らない。
【0007】
少なくとも1つの実施形態の様々な態様が、付随する図を参照して以下で議論されるが、これらの図は縮尺通りに描かれることを意図していない。図は、様々な態様および実施形態について、例およびさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部に組み込まれ、それを構成するが、本発明の範囲を限定する意図ではない。技術的特徴の後に参照符号が続く場合、参照符号は、図および記述の明瞭度を増加させる唯一の目的のために含まれる。図において、様々な図で示される各々同一またはほぼ同一の構成要素は、同様な数字によって表される。明瞭にするため、すべての図で、すべての構成要素が標識されるとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】付随する実施例で議論されるデータを示すグラフである。
【
図2】付随する実施例で議論されるデータを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つまたは複数の実施形態によれば、弾性パリレンまたはPPXコーティングが開示される。様々な実施形態によれば、弾性パリレンまたはPPXコーティングは、化学蒸着重合(CVDP)を介して生成され得る。
【0010】
弾性の付与は、一般に、個々の高分子の架橋と組み合わせて、使用温度未満での固体ポリマーの軟化を含む。CVDPを介するPPXの生成は、しかしながら、典型的には、試薬が約500℃~約700℃の熱分解ゾーンを通過することを伴い、これは通常架橋に使用される官能基を劣化させる。
【0011】
1つまたは複数の実施形態によれば、弾性パリレンコーティングは、一般に、一般的なパリレンポリマーシリーズのいずれか、またはその変種で作られている。パリレンポリマーの選択は、大部分は意図した用途を考慮した所望の性質に基づき得る。
【0012】
1つまたは複数の実施形態によれば、置換パラシクロファン、ならびに反応性および/または架橋性基、例えば、ビニルまたはエチニルを有するパラシクロファンの混合物を使用して、CVDPを介した弾性PPXフィルムを生成し得る。
【0013】
1つまたは複数の実施形態によれば、置換パラシクロファンおよびビニルパラシクロファンの混合物を使用して、CVDPを介した弾性PPXフィルムを生成し得る。ビニルパラシクロファンの量は、得られる弾性の程度に関して重要であると考慮され得る。過剰のビニルパラシクロファンは、脆いコーティングをもたらす可能性があり、一方少なすぎると架橋をもたらさない可能性がある。
【0014】
1つまたは複数の実施形態によれば、化学的に架橋したPPXポリマーフィルムを調製する方法は、置換パラシクロファンおよびビニル官能化パラシクロファンを混合して、混合物を形成することを含む。混合物は、化学蒸着重合(CVDP)プロセスを介して基材上で共重合され、化学的に架橋したPPXポリマーフィルムを形成し得る。置換パラシクロファンおよびビニル官能化パラシクロファンは、一般に、CVDPプロセスの前に、またはその途中に混合され得る。
【0015】
1つまたは複数の実施形態によれば、他のパラシクロファンに対するビニルパラシクロファンの最適化重量分率は、PPXフィルムの最適化弾性をもたらし得る。
一部の実施形態では、置換パラシクロファンは、低いガラス転移温度を有し得る。一部の特定の実施形態では、置換パラシクロファンは、ジアルキル官能化パラシクロファン、例えば、ジブチル官能化パラシクロファンであり得る。一部の特定の非限定実施形態では、置換パラシクロファンは、4,12-ジブチル[2,2]パラシクロファンである。他のパラシクロファン、例えば、2、3、5、または6個の炭素原子を有する、例えば、側鎖の、直鎖の、または分岐鎖のアルキル鎖を有するものが、使用され得る。一部の実施形態では、一置換パラシクロファンが使用され得る。
【0016】
一部の特定の非限定的実施形態では、ビニル官能化パラシクロファンは、4-ビニル[2.2]パラシクロファンであり得る。ビニルパラシクロファンと置換パラシクロファンとの比は、およそ約1:500~1:10の間、好ましくは約1:200~1:100の間であり得る。
【0017】
様々な置換基に関して、様々な異性体またはこれらの混合物が使用され得る。
1つまたは複数の実施形態によれば、架橋は物理的または化学的プロセスであり得る。架橋は、外部刺激、すなわち、熱、照射、光、例えば、UV光、またはプラズマによって開始される、高分子の反応性基の分子間反応に由来し得る。一部の実施形態では、追加の開始剤が実施され得る。
【0018】
少なくとも一部の実施形態では、PPXポリマーフィルムは、Specialty Coating Systems社から商業的に入手できるパリレン付着システムにおいて生成され得る。当業者に通常的に公知な様々なCVDP方法が、実施され得る。一部の実施形態では、同時に起こる熱分解および付着が、本開示のPPXポリマーフィルムをもたらし得る。一部の非限定的な実施形態では、前駆体の混合物が、CVDP装置の昇華チャンバーに入れられ得る。置換パラシクロファンおよびビニル官能化パラシクロファンの混合物は、付着のためのCVDP装置へ導入され得る。
【0019】
1つまたは複数の実施形態によれば、パリレンコーティングは、ガス状モノマーから形成され得る。パリレンコーティングは、中間の液体段階なしで形成され得る。パリレンコーティングは、真空蒸着装置を用いて周囲温度で適用され得る。フィルムは、パリレンポリマーの付着が分子レベルで起こるにつれて、経時的に成長し得る。パリレンコーティングは、一般に、室温の真空チャンバーにおいて、蒸着重合プロセスを介して適用され得る。被覆される基材は、コーティングチャンバー内に入れられ得る。固体で、顆粒状の二量体原料は、真空下で加熱され、二量体のガスへ蒸発され得る。置換パラシクロファンおよびビニル官能化パラシクロファンの混合物は、二量体としてCVDP装置へ導入され得る。一部の非限定的な実施形態では、蒸発は約150℃および約1.0トルで行われ得る。次に、ガスは熱分解され、二量体をそのモノマー形態へ開裂し得る。一部の非限定的な実施形態では、熱分解は約680℃および約0.5トルで行われ得る。モノマーガスは、付着チャンバーにおいて周囲温度で、基材上にポリマーフィルムとして付着され得る。モノマーは、所望の基材の表面を打ち、基材上で連続的なフィルムへ自発的に重合し得る。フィルムは、意図した用途に基づいて所望の薄さまたは厚さであり得、実質的に透明であり得る。一部の実施形態では、厚さは、数百オングストローム~数ミリメートルの範囲であり得る。少なくとも一部の実施形態では、典型的な厚さはミクロンの範囲にあり得る。
【0020】
温度および圧力を含む、標準的なパリレン付着のプロセス条件は、1つまたは複数の実施形態により実施され得る。少なくとも一部の実施形態では、CVDP装置は複数の加熱帯を含み得る。1つまたは複数の特定の非限定的実施形態によれば、CVDPプロセスは、約500℃の熱分解温度を特徴とし得る。CVDPプロセスは、約300℃の輸送温度を特徴とし得る。CVDPプロセスは、約10℃の蒸着温度を特徴とし得る。CVDPプロセスは、約125℃の昇華温度を特徴とし得る。いずれか1つまたは複数のプロセス温度または他のプロセスパラメータが、プロセス最適化のために制御され得る。蒸着温度の戦略的制御により、より少ないモノマー残渣および最適化された架橋含有量が有益にもたらされ得る。
【0021】
1つまたは複数の実施形態によれば、化学的に架橋したPPXポリマーフィルムは、さらなる処理に供され得る。さらなる処理は、一般に、温度、UV照射、e-ビーム架橋、およびプラズマコンディショニングの1つまたは複数の適用を伴い得る。弾性パリレンフィルムの機械的性質は、結晶化度に影響を与える、架橋をさらに促進する、かつ/または低分子量不純物を除去することができる、追加の温度処理によってさらに改善され得る。一部の実施形態では、結晶化度は、さらなる熱処理、UV照射、プラズマコンディショニング、および/またはe-ビーム架橋を介して低減され得る。一部の実施形態では、パリレンフィルムは、高温でアニールされ得る。例えば、さらなる熱処理は、約100℃~約350℃、例えば、約300℃のアニール温度の、約1~約30分間、例えば、5分間の適用を特徴とし得る。
【0022】
1つまたは複数の実施形態によれば、1種または複数の前駆体材料が合成され得る。例えば、ビニル官能化パラシクロファンが合成され得る。
1つまたは複数の実施形態によれば、化学的に架橋したPPXポリマーフィルムは、約5%以下のビニル含有量を有し得る。一部の実施形態では、化学的に架橋したPPXポリマーフィルムは、約2.5%以下のビニル含有量を有し得る。例えば、化学的に架橋したPPXポリマーフィルムは、約0.5~約1.25%のビニル含有量を有し得る。一部の特定の実施形態では、架橋したPPXポリマーフィルムは、約1%のビニル含有量を有し得る。
【0023】
1つまたは複数の実施形態によれば、弾性パリレンフィルムは、低い軟化点、高められた耐溶媒性および/または熱寸法安定性を特徴とし得る。一部の実施形態では、PPXフィルムは、溶媒、例えば、有機溶媒、例えば、THFまたはクロロホルムに対する向上した耐性を特徴とし得る。少なくとも一部の実施形態では、PPXフィルムは、少なくとも約350℃以下の熱寸法安定性を特徴とし得る。
【0024】
1つまたは複数の実施形態によれば、PPXフィルムは実質的に不溶性である。
1つまたは複数の実施形態によれば、PPXフィルムは低いガラス転移温度を有し得る。
【0025】
1つまたは複数の実施形態によれば、PPXフィルムは、約0.01GPa~約0.05GPaの間のヤング率を有し得る。一部の非限定的な実施形態では、PPXフィルムは、約0.02GPa~約0.04GPaの間のヤング率を有し得る。
【0026】
1つまたは複数の実施形態によれば、PPXフィルムは、約100%、150%、200%、300%、または350%以下の破断点伸び値を特徴とし得る。PPXフィルムは、1サイクル当たり少なくとも約100%の伸びの繰返し歪み試験値を特徴とし得る。PPXフィルムは、繰返し歪み試験の後に著しい損傷を示さない可能性があるが、そのもとの形状に回復しない可能性もある。PPXフィルムは、約20~30%の間の繰返し歪み試験の形状シフト(shape shift)値を特徴とし得る。
【0027】
1つまたは複数の実施形態によれば、パリレンコーティングは薄膜コーティングであり得る。コーティングは、基材にわたって連続的であり、実質的に均一であり得る。一部の非限定的な実施形態では、少なくとも約数千オングストローム以上の、制御された厚さのパリレンコーティングが達成され得る。少なくとも約数ミリメートル以下の、制御された厚さのパリレンコーティングも達成され得る。厚さは一般的に、少なくともプラスマイナス約10%に制御され得る。一部の非限定的な実施形態では、PPXフィルムは、約0.5μm超の厚さを有し得る。
【0028】
パリレンコーティングは、基材の表面、端部および隙間に関してコンフォーマルであり得、実質的にピンホールフリーであり得る。多層浸透が達成され得る。一部の実施形態では、パリレンコーティングは、クリティカルで、重量に敏感な部品に、最小の寸法または質量を加え得る。パリレンコーティングは光学的に透明であり得る、または識別を促進するために蛍光剤などの標識化合物が組み込まれ得る。パリレンコーティングは、好ましい水蒸気移行速度に関連し得る。
【0029】
一部の実施形態では、パリレンコーティングは、実質的に生体安定性であり生体適合性であり得る。コーティングは、ISO-10993の生物学的試験要件に準拠し得る。コーティングは、USPクラスVIプラスチックの生物学的試験要件に準拠し得る。コーティングは、ヒト細胞型の増殖を促進し得る。一部の実施形態では、パリレンコーティングは、例えば、流体、湿気、化学物質および一般的なガスから基材を保護し得るなどのバリア性を示し得る。生物流体および生物ガスからの保護が、提供され得る。パリレンコーティングは高い絶縁耐力を示し得る、かつ/または基材に乾燥塗膜潤滑性を付与し得る。パリレンコーティングは、腐食、変色および汚染物質取り込みに対して保護し得る。パリレンコーティングは、誘電体バリアとして貢献し得る。一部の実施形態では、パリレンコーティングは、可撓性であり、表面粘着性を阻止し、摩擦係数を低減し得る。パリレンコーティングは、静的観察のためのASTM D1894によって測定される、様々な好ましい摩擦係数を有し得る。一部の実施形態では、パリレンコーティングは、熱安定性および/またはUV安定性を示し得る。
【0030】
1つまたは複数の実施形態によれば、パリレンコーティングは基材に適用され得る。付着方法と併せて、接着促進技術が使用され得る。基材は、一般に、バリアまたは機能性層などのコーティングを適用することが望ましい可能性がある、いずれかの材料、機器または部品であり得る。パリレンコーティングは、金属、エラストマー、プラスチック、ガラス、セラミックおよび紙を含む、事実上すべての表面材に適用され得る。パリレンコーティングは、医療機器、エレクトロニクス、自動車、軍事、航空宇宙、LED、およびエラストマーを含む様々な産業において用途を見出し得る。
【0031】
一部の実施形態では、基材は可撓性基材であり得る。一部の非限定的な実施形態では、可撓性基材は、プリント回路基板(PCB)または医療機器に付属し得る。
一部の実施形態では、基材は、エレクトロニクス、プリント回路基板、プリント回路アセンブリ、センサー、検出器、LED、MEMS、キャパシタ、ウエハ、フェライト磁心、燃料電池、デジタル表示、金属部品に関連し得る。他の実施形態では、基材は、ガスケットまたはシールであり得る。さらに他の実施形態では、基材は医療機器であり得る。基材は、パリレン付着前に前処理され得る。接触点を最小化し、領域のコーティングが被覆されずに残ることを回避するために、固定技術およびマスキング技術が使用され得る。
【0032】
1つまたは複数の実施形態によれば、パリレンコーティングは、移植可能または非移植可能な医療機器に適用され得る。医療機器、限定されるものではないが、例えば、心臓弁、冠状動脈ステント、大脳ステント、除細動器およびペースメーカーを含む心臓病患者補助装置、電気外科ツール、人工耳、眼球インプラント、マンドレル、金型、カテーテル、エラストマーシール、針、硬膜外プローブ、人工関節、ディスク、ねじ、他の整形外科器具、または医療用エレクトロニクス、例えば、可撓性医療用エレクトロニクスは、パリレンで被覆され得る。パリレンコーティングは、金型、およびワイヤーマンドレルなどの成形装置の離型剤としても使用され得る。パリレンコーティングは、組織接触のための許容できる表面を提供し得、医療機器および関連部品を保護し得る。一部の実施形態では、パリレンコーティングは、例えば、ヒト移植用のパリレン被覆金属冠状動脈ステントに薬剤含有コポリマーが適用された、薬剤溶出ステント上への表面プライマーとして機能し得る。パリレンコーティングは、様々な薬剤とポリマーとの組み合わせの統合を可能にし得る。
【0033】
少なくとも一部の実施形態では、弾性パリレンコーティングは、ハロゲンフリーまたは実質的にハロゲンフリーである。例えば、本開示の弾性パリレンコーティングは、塩素フリーであることを特徴とし得る。
【0034】
1つまたは複数の実施形態によれば、抗菌性を有する弾性パリレンコーティングが提供され得る。一部の実施形態では、方法は、パリレン付着プロセス中に、抗菌性を有する材料をパリレンフィルムの中へ導入し得る。1つまたは複数の実施形態によれば、コーティングは、パリレン材料と該パリレン材料上に固定化された抗菌剤とを含み得る。
【0035】
これらおよび他の実施形態の機能および利点は、以下の非限定的な実施例からより完全に理解されるであろう。実施例は、本質的に例示的であるように意図され、本明細書で議論される実施形態の範囲を限定すると見なされるべきではない。
【実施例】
【0036】
4-ビニル[2.2]パラシクロファンおよび4,12-ジブチル[2.2]パラシクロファンの同時に起こる熱分解および付着を使用して、それぞれ、0~2.5%の間のビニルの変動する含有量を有する、1組の架橋したPPXコポリマーを合成した。
【0037】
IRスペクトルの比較は、大きな違いを示さなかった。コポリマーのTGA測定も、わずかにしか変動しなかった。すべてのコポリマーは、約200℃で最初の分解段階、および約465℃でポリマーが分解する第2の主要段階を示した。
【0038】
破断点伸び値の比較は、1%のビニル含有量を有するコポリマーに対して最大195%を示した。1.25%のビニルを有するコポリマーだけが、190%と同等の値を達成した。最低の伸びは、2.5%のビニル部分を有するコポリマーに対して得られた。すべての試料の決定されたヤング率は、0.025~0.037GPaの間の値で低かったが、ビニル含有量とヤング率との間の傾向は観察できなかった。繰返し歪み試験は、すべての試料に対して、最初の伸びの後に25~30%の間の形状シフトを示した。次のサイクルでは、形状はほぼ同じに維持された。
【0039】
図1は、0%~2.5%の間のビニル含有量を有するPPXブチルコポリマーの、破断点伸び値およびヤング率のグラフ的要約を示す。
付着したままの試料は、未反応のビニル基および低分子量化合物を示した。これらの低重量化合物は、可塑剤として作用すると考慮された。半結晶質コポリマーを、次に熱処理して架橋密度を増加させ、それらの結晶化度を低下させた。とりわけ、PPXブチルコポリマーを真空下において350℃で5分間アニールした。付着後の架橋に加えて、この処理は、低分子量化合物の除去および結晶化度の減少につながった。
【0040】
それに応じて、より硬いコポリマーが得られ、そのため破断点伸び値およびヤング率は増加した。不溶性コポリマー(1%のビニル含有量を有するコポリマー)は、340%以下の破断点伸び値を示した。繰返し歪み試験は、100%への繰返しの伸びでは、試料に大きな損傷をもたらさないことを示した。試料の初期形状は、繰返し歪みによって影響を受け、そのためある程度の伸長が維持された。
【0041】
図2は、0%~2.5%の間のビニル含有量を有するPPXブチルコポリマーの、アニール段階後の破断点伸び測定の図による要約を示す。(下の)表1は、0%~2.5%の間のビニル含有量を有するPPXブチルコポリマーの、アニール段階後の機械的性質の要約を示している。
【0042】
【0043】
改善された安定性は、ステントのコーティングおよび拡大によってさらに実証された。1%のビニル含有量を有するコポリマーコーティングを選択し、さらなる温度処理の後に、被覆されたステントを3回拡大および圧縮した。比較のために、別のステントをPPX-Cで被覆し、3回同様に処理した。ステント上へのコーティングは、PPX-Cと比較して拡大後のコポリマーの安定性を示した。
【0044】
2つのステントのSEM画像は、PPXブチルコポリマーコーティングに対して観察できる、より平滑な表面を示した。ステントの接合部で、PPX-C層は機械的応力を通して損傷を示し、そのためステントの金属表面が現われた。コポリマーを被覆したステントでは、これらの損傷を観察することができず、そのため、このコーティングにより細胞接着のリスクが最小化される。
【0045】
結果は、化学的に架橋したPPXポリマーが、要求の厳しい用途に対する有望なコーティング材料であることを示している。
当業者は、本明細書に記述される様々なパラメータおよび構成が、例示的であることを意味し、実際のパラメータおよび構成は、本開示が使用される特定の用途に依存するであろうことを容易に認識するであろう。当業者は、せいぜい型通りの実験を使用して、本明細書で記述する特定の実施形態への多くの等価物を、認識するまたは確認することができるであろう。従って、前述の実施形態は例としてのみ提示され、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内で、本開示のコーティングおよび付着方法は、限定的に記述された以外の方法で実施され得ることを理解すべきである。本コーティングおよび本技術は、本明細書に記述される各個別の特徴または方法を対象とする。加えて、2つまたはそれ以上のこうした特徴、装置または方法の任意のいずれの組み合わせも、こうした特徴、装置または方法が相互に矛盾しない場合、本開示の範囲内に含まれる。
【0046】
本開示の例示的実施形態を開示してきたが、多くの修正、追加、および削除は、以下の特許請求の範囲に規定する、本開示およびその等価物の趣旨および範囲から逸脱することなく、その中でなされ得る。様々な変更、修正および改善は、当業者に容易に思い浮かぶと認識すべきである。こうした変更、修正および改善は、この開示の一部であると意図され、本開示の趣旨および範囲の内にあると意図される。例えば、既存のコーティング、付着装置または付着方法は、本開示の任意の1つまたは複数の態様を利用するまたは組み込むために、変更され得る。従って、一部の場合に、実施形態は、弾性を提供するように、既存のプロセスまたは装置を構成することを伴い得る。従って、前の記述は、一例に過ぎない。
【国際調査報告】