(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(54)【発明の名称】温度制限装置を備えた熱システム
(51)【国際特許分類】
H05B 3/00 20060101AFI20220513BHJP
G05D 23/19 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
H05B3/00 310D
G05D23/19 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559876
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(85)【翻訳文提出日】2021-11-10
(86)【国際出願番号】 US2020027405
(87)【国際公開番号】W WO2020210445
(87)【国際公開日】2020-10-15
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501162454
【氏名又は名称】ワットロー・エレクトリック・マニュファクチャリング・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワリンガー、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】マイケルセン、ジュリアン
【テーマコード(参考)】
3K058
5H323
【Fターム(参考)】
3K058AA94
3K058CA03
3K058CA04
3K058CA05
3K058CA23
3K058CB02
5H323BB11
5H323BB12
5H323CB02
5H323DA03
5H323DB06
5H323EE01
5H323FF03
5H323KK05
5H323MM02
(57)【要約】
熱システムの温度制限装置は、熱システムの2線式ヒータに接続するように構成されたモジュラーユニットを含む。具体的には、モジュラーユニットは、熱システムの2線式ヒータに接続するように構成されたヒータインターフェースと、電力を受けるために電源に接続するように構成された電力インターフェースと、センサ回路を含むコントローラとを含む。センサ回路は、電圧、電流、又はそれらの組み合わせを含む、2線式ヒータの電気的特性を測定するように構成されている。コントローラは、測定された電気的特性に基づき熱システムの温度を計算し、その温度が温度設定値よりも高いかどうかを判断するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱システムのための温度制限装置であって、
モジュラーユニットは、
前記熱システムの2線式ヒータに接続するように構成されたヒータインターフェースと、
電力を受けるため電源に接続するように構成された電力インターフェースと、
センサ回路を含むコントローラと、を具備し、
前記センサ回路は、前記2線式ヒータの電気的特性を測定するように構成されており、前記電気的特性は、電圧、電流、又はそれらの組み合わせを含み、
前記コントローラは、前記測定された電気的特性に基づき前記熱システムの温度を計算し、前記温度が温度設定値よりも高いかどうかを判断するように構成されている温度制限装置。
【請求項2】
前記モジュラーユニットは、前記熱システムの電源スイッチに接続するための電源スイッチインターフェースをさらに備え、
前記コントローラは、前記熱システムの温度が前記温度設定値よりも高いことに応答して、前記ヒータへの電力をオフにするように前記電源スイッチを操作するように構成されている、請求項1に記載の温度制限装置。
【請求項3】
前記モジュラーユニットは、前記電力インターフェースと前記ヒータインターフェースとの間に電気的に結合され、前記ヒータへの電力を制御するため、前記コントローラによって動作可能な電源スイッチをさらに備える請求項1に記載の温度制限装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記熱システムの温度が前記温度設定値よりも高いことに応答して、前記電源スイッチを介して前記ヒータへの電力をオフにするように構成されている請求項3に記載の温度制限装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記2線式ヒータの温度値と前記2線式ヒータの性能特性の測定値とを関連付ける予め定義されたヒータ情報を記憶しており、前記コントローラは、前記測定された電気特性に基づき性能特性を決定するように構成され、
前記コントローラは、前記決定された性能特性と前記予め定義されたヒータ情報に基づき、前記熱システムの温度として、前記2線式ヒータの温度、前記2線式ヒータで加熱される負荷の温度、又はそれらの組み合わせを決定するように構成されている請求項1に記載の温度制限装置。
【請求項6】
前記2線式ヒータは、抵抗の温度係数が変化し、前記性能特性は、ある温度における前記ヒータの抵抗値である請求項5に記載の温度制限装置。
【請求項7】
前記ヒータインターフェースは、前記ヒータでの温度感知ジャンクションを規定する温度感知パワーピンを介して前記2線式ヒータに接続され、前記センサ回路は、前記温度感知ジャンクションでの電圧を測定し、前記性能特性は、前記温度感知ジャンクションでの電圧の変化である請求項5に記載の温度制限装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記熱システムの温度として、前記2線式ヒータの温度、前記2線式ヒータによって加熱される負荷の温度、又はそれらの組み合わせを計算するように構成される請求項1に記載の温度制限装置。
【請求項9】
熱システムであって、
2つの端子を含む2線式ヒータと、
1つ又は複数のディスクリートセンサからのデータに基づき前記2線式ヒータの熱性能を制御するように構成されたプロセスコントローラと、
前記プロセスコントローラからの制御信号に基づき前記2線式ヒータに電力を供給するように動作可能な電源スイッチと、
前記プロセスとは別の温度制限装置とを具備し、
モジュラーユニットは、
前記熱システムの2線式ヒータに接続するように構成されたヒータインターフェースと、
電力を受けるため電源に接続されるように構成された電力インターフェースと、
センサ回路を含むコントローラと、を具備し、
前記センサ回路は、前記2線式ヒータの電気的特性を測定するように構成され、前記電気的特性は、電圧、電流、又はそれらの組み合わせを含み、
前記コントローラは、前記測定された電気的特性に基づき前記熱システムの温度を計算し、前記温度が温度設定値よりも高いかどうかを判断するように構成され、
前記コントローラは、前記熱システムの前記温度が前記温度設定値よりも高いことに応答して、前記ヒータへの電力をオフにするように前記電源スイッチを操作するように構成されている、
前記温度制限装置を具備する熱システム。
【請求項10】
前記温度制限装置の前記コントローラは、前記2線式ヒータの温度値と前記2線式ヒータの性能特性の測定値とを関連付ける予め定義されたヒータ情報を記憶し、前記コントローラは、前記測定された電気特性に基づき性能特性を決定するように構成され、
前記コントローラは、前記決定された性能特性と前記予め定義されたヒータ情報とに基づき、前記熱システムの温度として、前記2線式ヒータの温度、前記2線式ヒータによって加熱される負荷の温度、又はそれらの組み合わせを決定するように構成されている請求項9に記載の熱システム。
【請求項11】
前記2線式ヒータは、抵抗の温度係数が変化し、前記性能特性は、前記2線式ヒータの温度における抵抗値である請求項10に記載の熱システム。
【請求項12】
前記2線式ヒータの2つの端子は、温度検知ジャンクションを定義する温度検知パワーピンを含み、
前記センサ回路は、前記温度検知ジャンクションでの電圧を測定するように構成され、前記性能特性は、前記温度検知ジャンクションでの電圧の変化である請求項10に記載の熱システム。
【請求項13】
前記温度制限装置は、前記電源スイッチと並列に配置され、前記ヒータの電気的特性を検出する請求項9に記載の熱システム。
【請求項14】
前記モジュラーユニットは、前記電源スイッチを含む請求項9に記載の熱システム。
【請求項15】
前記2線式ヒータは、その中に流れる流体を加熱するインラインヒータであり、
前記電源スイッチは、前記インラインヒータに配置され、前記インラインヒータ内を流れる前記流体に熱を伝達するために前記インラインヒータと一体化されており、
前記温度制限装置は、前記2線式ヒータ及び前記電源スイッチとは別に配置され、前記モジュラーユニットは、前記電源スイッチに接続するための電源スイッチインターフェースを含む請求項9に記載の熱システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本出願は、2019年4月9日に出願された米国仮出願番号62/831,619の優先権を主張するものである。上記出願の開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、2線式ヒータの電力を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
本項の記述は、単に本開示に関連する背景情報を提供するものであり、先行技術を構成するものではない。
【0004】
抵抗性ヒータは、負荷に熱を提供するために様々な用途で使用される。そのようなヒータは、層状ヒータ、管状ヒータ、カートリッジヒータ、又は他の適切なヒータを含むが、これらに限定されない。ヒータの適切な温度を決定するため、熱電対などのディスクリート温度センサがヒータの上又は近くに設置される。ヒータとその環境に個別の温度センサを追加すると、コストがかかり、加熱システム全体が複雑になる。
【発明の概要】
【0005】
本項は、本開示の一般的な概要を提供するものであり、その全範囲又はその特徴の全てを包括的に開示するものではない。
【0006】
本開示は、熱システムの温度制限装置を提供する。温度制限装置は、モジュラーユニットを具備する。モジュラーユニットは、熱システムの2線式ヒータに接続するように構成されたヒータインターフェースを含む。モジュラーユニットは、電力を受け取るために電源に接続するように構成された電力インターフェースを含む。モジュラーユニットは、センサ回路を含むコントローラを含む。センサ回路は、2線式ヒータの電気的特性を測定するように構成されており、電気的特性は、電圧、電流、又はそれらの組み合わせを含む。コントローラは、測定された電気的特性に基づき熱システムの温度を計算し、温度が温度設定値よりも高いかどうかを判断するように構成される。
【0007】
いくつかの形態において、モジュラーユニットは、熱システムの電源スイッチに接続するための電源スイッチインターフェースをさらに含み、コントローラは、熱システムの温度が温度設定値よりも大きいことに応答して、2線式ヒータへの電力をオフにするように電源スイッチを操作するように構成される。
【0008】
いくつかの形態において、モジュラーユニットは、電力インターフェースとヒータインターフェースとの間に電気的に結合され、2線式ヒータへの電力を制御するため、コントローラによって動作可能な電源スイッチをさらに備える。
【0009】
いくつかの形態において、コントローラは、熱システムの温度が温度設定値よりも大きいことに応答して、電源スイッチを介して2線式ヒータへの電力をオフにするように構成される。
【0010】
いくつかの形態において、コントローラは、2線式ヒータの温度値と2線式ヒータの性能特性測定値とを関連付ける予め定義されたヒータ情報を記憶しており、コントローラは、測定された電気特性に基づき性能特性を決定するように構成される。いくつかの形態において、コントローラは、決定された性能特性及び予め定義されたヒータ情報に基づき、熱システムの温度として、2線式ヒータの温度、2線式ヒータによって加熱される負荷の温度、又はそれらの組み合わせを決定するように構成される。
【0011】
いくつかの形態において、2線式ヒータは、抵抗の温度係数が変化し、性能特性は、ある温度における2線式ヒータの抵抗値である。
【0012】
いくつかの形態において、ヒータインターフェースは、ヒータでの温度感知ジャンクションを定義する温度感知パワーピンを介して2線式ヒータに接続され、センサ回路は温度感知ジャンクションでの電圧を測定し、性能特性は温度感知ジャンクションでの電圧の変化である。
【0013】
いくつかの形態において、コントローラは、熱システムの温度として、2線式ヒータの温度、2線式ヒータによって加熱される負荷の温度、又はそれらの組み合わせを計算するように構成される。
【0014】
本開示はまた、2つの端子を含む2線式ヒータを含む熱システムを提供する。熱システムは、1つ又は複数のディスクリートセンサからのデータに基づき2線式ヒータの熱性能を制御するように構成されたプロセスコントローラを含む。熱システムは、プロセスコントローラからの制御信号に基づき、2線式ヒータに電力を供給するように動作可能な電源スイッチを含む。熱システムは、プロセスコントローラとは別の温度制限装置を含み、温度制限装置は、モジュラーユニットを含む。モジュラーユニットは、熱システムの2線式ヒータに接続するように構成されたヒータインターフェースを含む。モジュラーユニットは、電力を受け取るため電源に接続するように構成された電力インターフェースを含む。モジュラーユニットは、センサ回路を含むコントローラを含む。センサ回路は、2線式ヒータの電気的特性を測定するように構成され、電気的特性は、電圧、電流、又はそれらの組み合わせを含む。コントローラは、測定された電気的特性に基づき熱システムの温度を計算し、温度が温度設定値よりも高いかどうかを判断するように構成される。コントローラは、熱システムの温度が温度設定値よりも高いことに応答して、2線式ヒータへの電力をオフにするように電源スイッチを操作するように構成される。
【0015】
いくつかの形態において、温度制限装置のコントローラは、2線式ヒータの温度値と2線式ヒータの性能特性測定値とを関連付ける予め定義されたヒータ情報を記憶し、コントローラは、測定された電気特性に基づき性能特性を決定するように構成されている。いくつかの形態において、コントローラは、決定された性能特性及び予め定義されたヒータ情報に基づき、熱システムの温度として、2線式ヒータの温度、2線式ヒータによって加熱される負荷の温度、又はそれらの組み合わせを決定するように構成される。
【0016】
いくつかの形態において、2線式ヒータは、抵抗の温度係数が変化し、性能特性は、2線式ヒータのある温度における抵抗値である。
【0017】
いくつかの形態において、2線式ヒータの2つの端子は、温度感知ジャンクションを規定する温度感知パワーピンを含み、センサ回路は、温度感知ジャンクションでの電圧を測定するように構成され、性能特性は、温度感知ジャンクションでの電圧の変化として測定される。
【0018】
いくつかの形態において、温度制限装置は、プロセスコントローラ及び電源スイッチと直列に接続され、温度制限装置は、プロセスコントローラから電源スイッチに制御信号を転送するように構成されている。
【0019】
いくつかの形態において、温度制限装置は、2線式ヒータの電気的特性を検出するために、電源スイッチと並列に配置される。
【0020】
いくつかの形態において、モジュラーユニットは、電源スイッチを含む。
【0021】
いくつかの形態において、2線式ヒータは、その中に流れる流体を加熱するインラインヒータである。いくつかの形態において、電源スイッチは、インラインヒータに配置され、インラインヒータ内を流れる流体に熱を伝達するためにインラインヒータと一体化されている。いくつかの形態において、温度制限装置は、2線式ヒータ及び電源スイッチとは別に配置され、モジュラーユニットは、電源スイッチに接続するための電源スイッチインターフェースを含む。
【0022】
いくつかの態様において、熱システムは、2線式ヒータへの電力線に結合されたリレーを含む温度遮断回路を含む。いくつかの態様において、熱システムは、ディスクリートセンサを含む。2線式ヒータは、抵抗発熱層を有する層状ヒータである。ディスクリートセンサは、ヒータの温度を測定するように構成されている。温度遮断回路は、ヒータの温度が遮断温度設定値よりも大きい場合、リレーを介して2線式ヒータへの電力をオフにするように構成されている。
【0023】
本開示は、熱システムの温度制限装置を提供する。温度制限装置は、モジュラーユニットを含む。モジュラーユニットは、熱システムの2線式ヒータに接続するように構成されたヒータインターフェースを含む。モジュラーユニットは、電源に接続して電力を受け取るように構成された電力インターフェースを含む。モジュラーユニットは、2線式ヒータへの電力を制御するために、ヒータインターフェースとパワーインターフェースの間に配置された電源スイッチを含む。モジュラーユニットは、センサ回路を含むコントローラを含み、センサ回路は、2線式ヒータの電気的特性を測定するように構成され、電気的特性は、電圧、電流、又はそれらの組み合わせを含む。コントローラは、測定された電気的特性及び予め定義されたヒータ情報に基づき熱システムの温度を計算し、温度が温度設定値よりも高いかどうかを判断し、熱システムの温度が温度設定値よりも高いことに応答して、電源スイッチを介して2線式ヒータへの電力をオフにするように構成される。
【0024】
いくつかの形態において、コントローラは、2線式ヒータの温度、2線式ヒータによって加熱される負荷の温度、又はそれらの組み合わせを、熱システムの温度として計算するように構成される。
【0025】
いくつかの形態において、コントローラは、熱システムの温度が温度設定値よりも高いときに2線式ヒータへの電力をオフにする温度制限モードで動作し、熱システムの温度を温度制御設定値に制御するために電源スイッチを介して2線式ヒータに電力を選択的に印加する温度制御モードで動作するように構成される。
【0026】
適用可能なさらなる領域は、本明細書で提供される説明から明らかになるであろう。説明及び特定の例は、説明のみを目的としており、本開示の範囲を制限することを意図していないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本開示がよく理解されるように、例として与えられたその様々な形態を、添付の図面を参照して説明する。
【0028】
【
図1】
図1は、本開示の教示に従って、2線式ヒータのための温度制限装置を有する熱システムの第1の形態を示す。
【0029】
【
図2】
図2は、本開示の教示に従って、熱遮断装置及び
図1の温度制限装置を有する熱システムの第2の形態を示す。
【0030】
【
図3】
図3は、本開示の教示に従って、外部電源スイッチに接続され、カスケードされたプロセスコントローラ及び温度制限装置を有する熱システムの第3の形態を示す。
【0031】
【
図4】
図4は、本開示の教示に従って、インラインヒータに設けられた電源スイッチを有するインラインヒータを示す。
【0032】
【
図5】
図5は、本開示の教示に従って、組合せプロセスコントローラ及び温度制限装置を備えた電源スイッチを有する熱システムの第4の形態を示す。
【0033】
【
図6A】
図6Aは、2線式コントローラ及び電源スイッチを有する温度制限装置のブロック図である。
【0034】
【
図6B】
図6Bは、2線式コントローラを有する温度制限装置のブロック図である。
【0035】
【
図7】
図7は、温度感知パワーピンを有するカートリッジヒータの一例である。
【0036】
本明細書に記載されている図面は、説明を目的としたものであり、本開示の範囲をいかなる形でも限定することを意図していない。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の説明は、本質的に単に例示的なものであり、本開示、適用、又は用途を制限することを意図していない。図面全体を通して、対応する参照数字は、同様の又は対応する部品及び特徴を示すことを理解すべきである。
【0038】
2線式熱システムは、熱を生成するためにヒータの抵抗発熱体に電力を供給するだけでなく、抵抗発熱体の性能特性(例えば、電流、電圧、抵抗、電力、及び/又は温度)を測定するために2本のワイヤ(すなわち、2本の電力線)を使用する2線式ヒータを含む。一形態において、「2線式」ヒータは、抵抗が温度によって変化する材料によって定義された1つ又は複数の抵抗発熱体を含む。材料の抵抗の温度係数(TCR)は既知であり、信頼性の高い測定を可能にするために、広い温度範囲及び負荷サイクルに亘って大きく安定している必要がある。このような2線式システムは、本願と共通に所有する米国特許第7,196,295号に開示されており、その内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる。このシステムは、ヒータの設計と、電力、抵抗、電圧、電流を組み込んだ制御とを融合させた適応型サーマルシステムであり、カスタマイズ可能なフィードバック制御システムにおいて、これらのパラメータ(すなわち、電力、抵抗、電圧、電流)の1つ以上を制限しながら、他のパラメータを制御する。
【0039】
別の形態において、2線式ヒータは、2線式ヒータの抵抗発熱体に電力を供給し、また、温度感知パワーピンによって定義される熱電対を介して温度を測定する温度感知パワーピンを含んでもよい。温度検知用パワーピンの詳細は以下の通りである。以下では、2線式ヒータは、“R-Tヒータ”と称されることもある変化する抵抗-温度相関を有するヒータとして構成されてもよいし、“TSPPヒータ”と称されることもある温度感知パワーピンを有するヒータとして構成されてもよい。
【0040】
一態様において、本開示は、2線式ヒータの性能特性及び/又は熱システムの温度に基づき、2線式ヒータへの電力を制御するための温度制限装置を記載している。本開示の温度制限装置は、2線式ヒータを有する既存及び新規の熱システムで使用することができる適応可能な制御装置であるように構成される。温度制限装置は、以下のように構成される。2線式ヒータの温度が閾値を超えた場合に2線式ヒータへの電力をオフにすることと、ヒータへの電力のオン/オフを選択的に行うことにより、ヒータの温度を制御された温度設定値に制御することと、ヒータの1つ以上の性能特性がそれぞれの閾値を超えているかどうかを判断し、閾値を超えている場合に修正措置を行う診断制御を行うことと、二次安全機構と連携して安全関連装置として動作することと、既知のヒータ-負荷オフセットを用いて2線式ヒータで加熱されている負荷の温度を推定することと、クローズドループ制御を行うプロセスコントローラと共に動作し、熱システムの温度が閾値を超えた場合にヒータへの電力を遮断することと、ヒータと共に配置された温度制限装置によって動作可能な電源スイッチを有し、電源スイッチを冷却し、ヒータを流れる流体を加熱すること。特定の動作が挙げられているが、温度制限装置は、本明細書にさらに記載されているように、他の動作を行ってもよい。
【0041】
図1を参照すると、熱システム100は、温度制限装置102と、負荷108を加熱するための1つ又は複数の抵抗発熱体106を有する2線式ヒータ104とを含んでいる。一形態において、温度制限装置102は、温度制限装置102及び2線式ヒータ104に電力を供給する電源110(例えば、230VAC)に接続されている。温度制限装置102は、2線式コントローラ(TWC)112と、2線式ヒータ104への電力を遮断するためにTWC112によって操作可能な電源スイッチ114とを含んでいる。一態様において、電源スイッチ114は、サイリスタ(例えば、TRIAC)であってもよい。本明細書で提供されるように、電源スイッチ114は、
図1に示されるように、温度制限装置102の一部として配置され、統合されてもよい。あるいは、電源スイッチ114は、温度制限装置102の外部に配置されてもよい。
【0042】
一態様において、TWC112は、電流及び/又は電圧などの抵抗発熱体106の電気的特性に基づき、熱システム100の温度を監視するように構成される。一態様において、熱システム100の温度は、2線式ヒータ104(すなわち、抵抗発熱体106)の温度、及び/又は、負荷108の温度を含んでもよい。一態様において、抵抗発熱体106の電気特性及び予め定義されたヒータ情報に基づき、TWC112は、抵抗発熱体106(すなわち、2線式ヒータ104)の性能特性を決定するように構成され、これは、次に、熱システム100の温度に決定するために使用される。予め定義されたヒータ情報は、2線式ヒータ104の温度値と2線式ヒータ104の性能特性測定値とを関連付ける情報を含む。例えば、R-Tヒータのための性能特性は、抵抗及び/又は温度を含み、ヒータ情報は、計算された抵抗、抵抗発熱体106を定義する材料のTCR、及び/又は予め定義されたアルゴリズムに基づき、2線式ヒータ104の温度を決定するためのR-T曲線/ルックアップテーブルを含んでもよい。TSPPヒータの場合、TWC112によって決定される性能特性は、電圧及び/又は電圧変化を含み、ヒータ情報は、電圧/電圧変化と2線式ヒータ104の温度とを関連付ける情報を含む。
【0043】
負荷108の温度を決定するために、ヒータ情報は、熱オフセットをさらに含んでもよい。すなわち、抵抗発熱体106又は2線式ヒータ104の表面の温度は、典型的には負荷108の温度よりも高い。この2つの温度の差は、熱オフセットとして提供され、これは、様々な制御された実験に基づき予め定義され、熱システム100の温度として、負荷108の温度を決定するために使用され得る。熱オフセットが提供される場合、TWC112は、2線式ヒータ104の計算された温度から熱オフセットを減算することによって、負荷108の温度を推定してもよい(すなわち、TL=TH-TO、TLは熱負荷温度、THはヒータ温度、TOは熱オフセット)。したがって、一態様において、TWC112は、ヒータ温度及び/又は熱負荷温度に基づき、2線式ヒータ104への電力をオフにしてもよい。
【0044】
一例として、R-Tヒータの場合、TWC112は、抵抗発熱体106に印加される電圧及び/又は電流を、電気特性として測定するように構成されている。測定された電気的特性と、抵抗発熱体106の予め定義された抵抗-温度情報とに基づき、TWC112は、性能特性として、抵抗発熱体106の抵抗値を決定し、次に温度を決定する。温度制限処理の一環として、TWC112は、その後、抵抗発熱体106の温度が温度設定値(すなわち、温度制限設定値)を超えているかどうかを判断する。そうであれば、TWC112は、電源スイッチ114を介して、抵抗発熱体106への電力をオフとする。そうでなければ、温度制限装置102は、抵抗発熱体106への電力供給を継続する。あるいは、TWC112は、予め定義されたサーマルオフセットに基づき負荷108の温度を判断し、負荷108の温度に基づき2線式ヒータ104への電力を制御してもよい。これにより、温度制限装置102は、2線式ヒータ104の異常な性能(例えば、2線式ヒータ104の損傷を抑制するために設定された閾値より高い又は低い温度)が発生した場合、2線式ヒータ104の損傷を抑制又は低減するための安全機構として動作する。以下では、本明細書で説明する温度制限処理を行うことで、TWC112は温度制限モードで動作する。
【0045】
一態様において、TWC112は、TWC112が2線式ヒータ104の温度が制御された温度設定値に維持する温度制御プロセス(すなわち、温度制御モードでの動作)を実行するように構成される。このような構成において、TWC112は、上述したように熱システム100の温度を決定し、温度が制御された温度設定値を超えたときに抵抗発熱体106への電力をオフにするが、熱システム100の温度を定常的に監視する。例えば、R-Tヒータの場合、TWC112は、正の正弦波における抵抗発熱体106の抵抗値を算出するように構成されている。抵抗値と予め定義されたヒータ情報(例えば、R-T曲線/ルックテーブル、TCR特性)を用いて、TWC112は、抵抗発熱体106の温度を決定し、制御された温度設定値と比較する。抵抗発熱体106の温度が温度制御設定値を超えると、VACのゼロクロスで2線式ヒータ104への電力がオフとされる。温度が制御された温度設定値より低い値になると、TWC112は抵抗発熱体106に電力を印加して熱を発生させる。
【0046】
一態様において、TWC112は、温度、電圧、電流、電力、及び/又は抵抗を含む1つ又は複数の性能特性に基づき、2線式ヒータ104への電力を制御する診断プロセスを実行するように構成される。具体的には、決定された性能特性がそれぞれの診断閾値を超えた場合、TWC112は、2線式ヒータ104の性能が異常であると判断し、2線式ヒータ104への電力をオフにする。例えば、2線式ヒータ104の電圧及び/又は電流が関連する診断閾値を超えた場合、温度制限装置102は、修正補正として、2線式ヒータ104への電力をオフにする。それぞれの性能特性に対する診断閾値(複数可)は、単一の予め定義された値であってもよいし、実行されるプロセスに基づき設定されてもよい。例えば2線式ヒータ104がウォームアップ中の定常バーズで動作しているときに、異なる診断閾値を設定してもよい。このように、TWC112は、温度制限モードに加えて、又は温度制限モードに代えて、上述の動作を実行する診断モードを含んでもよい。温度制限モード及び温度制御モードと同様に、診断モードは、ユーザが利用可能かつ選択可能な標準モードであってもよい。さらに、温度制限モード、温度制御モード、及び診断モードで使用される様々な設定値/閾値は、同じであっても異なっていてもよい。
【0047】
一態様において、TWC112は、ユーザがヒューマン・マシン・インタフェース(例えば、コンピューティングデバイス)を介してTWC112と通信してヒータ情報を較正する較正プロセス(すなわち、較正モードでの動作)を実行するように構成される。具体的には、TWC112に提供されるヒータ情報は、新しいヒータ情報をTWC112にアップロードすることによって、又はTWC112に提供されるヒータ情報を手動で較正することによって更新されてもよい。一例では、手動校正のために、赤外線カメラなどのディスクリート温度センサを使用して、2線式ヒータ104の温度、より具体的には、2線式ヒータ104の表面温度を測定する。TWC112は、上述のようにヒータの温度を算出し、算出した温度とディスクリート温度センサで測定された温度とを比較する。TWC112は、このような動作を1つ又は複数の温度校正設定値に対して行ってもよい。具体的には、TWC112は、2線式ヒータ104に電力を供給し、2線式ヒータ104の温度を計算する。温度が選択された温度較正設定値と等しくなると、TWC112は、ディスクリート温度センサによって測定された温度を取得する。温度の差に基づき、TWC112は、温度を決定するために使用されるR-T曲線又はTCR特性を更新するなど、ヒータ情報を調整する。
【0048】
上記のように、TWC112は、温度制限モード、温度制御モード、診断モード、及び/又は較正モードを含む1つ又は複数の動作モードを含むように構成されてもよい。一変形例において、TWC112は、動作中に、温度制限プロセス及び温度制御プロセスの両方を実行するように構成されてもよい。別の変形例において、TWC112は、1つ以上のモードを動作させるように構成されてもよく、複数のモードが利用可能な場合、ユーザは、温度制限装置102と通信するヒューマン・マシン・インタフェースを介して、実行するモードを選択してもよい。
【0049】
本開示の温度制限装置102は、温度制限装置102が抵抗発熱体106の温度を直接測定して制限するため、ディスクリートセンサを有する熱システムと比較して、2線式ヒータ104への電力を遮断するための応答時間を改善することができる。逆に、ディスクリートセンサを有する熱システムでは、センサ・データがプロセスコントローラによって処理されることが依然として必要であり、これによって電源遮断が遅れる可能性がある。さらに、温度制限装置102は、熱ループ全体が知られていない、あるいは詳細に定義されていないアプリケーションにおいても、高ワット密度、高性能の発熱体を使用することができる。すなわち、2線式ヒータが実装されているときに、既存のプロセスコントローラを交換する代わりに、本開示の温度制限装置102を既存の熱システム100にプラグインすることができる。温度制限装置102が厳しい条件/故障(例えば火災)を抑制するための安全関連装置として使用される場合、温度制限装置102は、二次安全機構などの特別な要件を満たすための追加のハードウェア及び/又はソフトウェアを含んでもよい。
【0050】
二次安全機構を含む熱システムの一例が、
図2に提供されている。一態様において、熱システム200は、温度制限装置102と、ヒータ202と、熱遮断(TCO)装置204とを含んでいる。一態様において、ヒータ202は、1つ又は複数の抵抗発熱体206を定義する抵抗加熱層と、センサ装置208を定義するセンサ層とを有する層状ヒータである。このような層状ヒータは、本願と共通に譲渡され、その内容が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,078,293号に記載されている。このような層状ヒータの場合、センサ装置208は、500ppm/℃などの比較的低い値から10,000ppm/℃などの比較的高い値までのTCRを有する材料からなるセンサ層として設けられ、負荷210の温度を測定するために使用される。また、グラファイトなどの負のTCRを有する材料を使用してもよいことを理解すべきである。センサ装置208は、抵抗発熱体206及び/又は負荷210の温度を測定するように構成されてもよい。センサ層の代わりに、センサ装置208は、熱負荷及び/又はヒータ202の温度を測定するための、熱電対、抵抗温度検出器、又は赤外線画像などのディスクリート温度センサであってもよい。
【0051】
TCO装置204は、センサ装置208に結合されており、センサ装置208によって測定された温度が定義された温度閾値を超えた場合に、ヒータ202への電力をオフにし、この温度閾値は、温度制限装置102によって制御される温度設定値と同じであっても異なっていてもよい。一態様において、TCO装置204は、米国特許9,078,293号に記載されている過温検出回路であり、ヒータ202への電力をオフにするための分圧回路(divider circuit)とリレーを含むものである。別の例において、TCO装置204は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせを用いて実装され、負荷/ヒータの温度を測定し、温度を閾値と比較し、温度閾値を超えた場合にリレーを動作させるようにしてもよい。したがって、本開示の温度制限装置102及びTCO装置204により、熱システム200は、2つの安全機構を含むように構成される。
【0052】
本開示の温度制限装置は、様々なタイプの熱システムに適応可能であり、いくつかの形態において、熱システムに設けられた既存の電源スイッチを利用してもよい。具体的には、
図3を参照すると、熱システム300は、プロセス温度コントローラ306と電源スイッチ308とでカスケードされたTWC304を含む温度制限装置302を含む。熱システムは、さらに、ヒータ202及びTCOデバイス204を含んでいる。
【0053】
一態様において、プロセス温度コントローラ306は、1つ又は複数のディスクリートセンサからのデータに基づき、ヒータ202の熱性能を制御するように構成される。ディスクリートセンサは、ヒータ202に設けられた温度センサ310のように、熱システム300全体に設けられ得る。熱性能は、抵抗発熱体206及び/又は負荷210の温度、ヒータ202の熱プロファイル、及び/又はヒータ202の冷却速度及び/又は加熱速度を制御することを含み得るが、これに限定されない。一態様において、プロセス温度コントローラ306は、温度センサ310を含むディスクリートセンサからのデータを使用して、ヒータ202及び/又は負荷210の温度を決定する比例積分微分(PID)コントローラである。制御ループの状態及び制御パラメータに応じて、プロセス温度コントローラ306は、制御信号(例えば、0~10V、0~20mA、スイッチドDC、オープンコレクタなど)を出力し、この信号はTWC304に供給される。TWC304は、制御信号を電源スイッチ308に転送し、温度制限装置302を介して供給される供給電圧(すなわち、電源110からの電力)上の制御信号を変調する。
【0054】
TWC304は、TWC112と同様に動作して、熱システム300の温度を測定するように構成されている。TWC304は、熱システムの温度が温度設定値よりも高いことに応答して、ヒータ202への電力をオフにするために、プロセスコントローラからの制御信号の代わりに、電源スイッチに電力制御信号を提供するように構成される。
【0055】
温度制限装置302は、電源スイッチを有する熱システムと適応可能である。具体的には、温度制限装置302は、プロセス温度コントローラ306によって実行されている制御ループに干渉しない。しかし、温度設定値を超えた場合、温度制限装置302は、ヒータ202、ひいては抵抗発熱体206への電力をオフにし、それによって高限界コントローラとして機能する。
【0056】
図3の熱システム300において、温度制限装置302は別個のコンポーネントであり、したがって、閉ループ制御を実行する既存のプロセス温度コントローラ306をアップグレードするために使用することができる。温度制限装置302が別個のコンポーネントであることにより、プロセス温度コントローラ306とTWC304との間の制御信号は互換性があるべきであり、電源スイッチ308は、抵抗発熱体206から導出される電圧-電流要件と互換性があるべきである。
【0057】
温度制限装置102と同様に、温度制限装置302は、抵抗発熱体(単数又は複数)206の温度を直接測定し、したがって、ディスクリートセンサを有するシステムと比較して、温度制限装置302の応答時間を増加させる。さらに、温度制限装置302は、厳しい状態/故障(例えば、火災)を抑制するための安全関連装置として使用される。温度制限モードに加えて、温度制限装置302は、上述したように、較正モード及び/又は診断モードを含むように構成されてもよい。
【0058】
一変形例において、温度制限装置302及び別個の電源スイッチ308の代わりに、熱システム300は、上述の温度制限装置102を含んでもよい。別の変形例において、熱システム300は、二次安全機構を提供するためのTCOデバイス204及びセンサデバイス208を含まなくてもよい。さらに別の変形例において、
図1及び
図2の熱システム100及び200は、それぞれ、温度制限装置302及び別の電源スイッチ308を含んでもよい。そのような構成において、TWC304は、電源スイッチ308に電源制御信号を送信して、ヒータ202への電力を活性化又は非活性化する。さらに、TWC304は、TWC112に関して上述した温度制御スキームを含んでもよい。
【0059】
一態様において、電源スイッチは、ヒータと一体化していてもよい。より具体的には、
図4を参照すると、点線で表すように、1つ又は複数の抵抗発熱体(図示せず)を含むインラインヒータ400が、ヒータ400を流れる流体を加熱するように構成されている。電源スイッチ(PS)402は、インラインヒータ400に配置され、インラインヒータ400内を流れる流体に熱を伝達するためにインラインヒータ400と一体化されている。TCO装置のためのセンサ装置404がインラインヒータ400に設けられている。
【0060】
一態様において、電源スイッチ402は、インラインヒータ400の入口金具に設けられている。流体の流れは、電源スイッチ402を冷却し、したがって、追加のヒートシンクの必要性を低減する。すなわち、電源スイッチ402の熱損失は、電源スイッチ402を冷却するだけではなく、インラインヒータ400を通る流体を予熱するために取り入れられる。
【0061】
一態様において、熱システム300の一部としてヒータ400及び電源スイッチ402を使用する際に、プロセス温度コントローラ306は、ヒータ400の流路に沿って及び/又は出口に配置された温度センサ310などのディスクリートセンサを使用して、インラインヒータ400を流れる流体(液体又は気体)の温度を測定する。制御ループの状態及び制御パラメータに応じて、プロセス温度コントローラ306は、TWC304に提供される制御信号(例えば、0~10V、0~20mA、スイッチドDC、オープンコレクタなど)を出力する。TWC304は、熱システム300の温度を監視し、温度限界設定値を超えていなければ、TWC304は、制御信号を電源スイッチ402に転送し、電源スイッチ402は、供給電圧上のこの信号を変調する。
【0062】
一態様において、本開示の温度制限装置は、プロセスコントローラ及び電源スイッチがユニットとして提供され、温度制限装置は、ヒータへの電力線に電気的に結合され、電源スイッチと並列に配置される熱システムでの使用に適応可能である。より具体的には、
図5は、プロセスコントローラ504及び電源スイッチ506によって形成された第1ユニット502と、2線式ヒータ104、抵抗発熱体106、及びディスクリートセンサ508によって形成された第2ユニット507と、温度制限装置512によって形成された第3ユニット510とを含む熱システム500を示している。第1ユニット502、第2ユニット507、及び第3ユニット510は、概して点線で識別される。
【0063】
プロセスコントローラ504は、ディスクリートセンサ508などのディスクリートセンサからのデータに基づき制御信号を決定するために、プロセス温度コントローラ306と同様の方法で構成される。プロセス温度コントローラ306とは異なり、プロセスコントローラ504は、温度制限装置512によって操作可能なスイッチ514を介して、制御信号を電源スイッチ506に送信する。一態様において、スイッチ514は、通常は閉状態になるように構成されたトランジスタ又はリレーであり、温度制限装置512によって動作可能であり、プロセスコントローラ504と電源スイッチ506とを切り離して制御信号の送信を阻止する。
【0064】
より具体的には、温度制限装置512は、2線式ヒータ104に供給される電力線に電気的に結合され、2線式ヒータ104の電気特性を測定するTWC516を含む。TWC516は、熱システム500の温度に基づき2線式ヒータ104への電力をオフにする温度制限装置として構成されている。例えば、熱システム500の温度が温度制限設定値を超えると、TWC516は、スイッチ信号(例えば、5V)を介してスイッチ514を動作させ、電源スイッチ506への制御信号の送信を阻止する。
【0065】
一変形例において、スイッチ514の代わりに、TWC516は、プロセスコントローラ504に通信可能に結合され、熱システム500の温度が温度制限設定値を超えていること、及び2線式ヒータ104への電力を停止することをプロセスコントローラ504に通知する。別の変形例では、温度制限装置512を2線式ヒータ104に備えることができる。したがって、スイッチ514へのスイッチ制御信号や、プロセスコントローラ504への通知は、既存のシステム構成要素(例えば、第1ユニット502)に適合するように構成されている。熱システム500は、温度制限装置512の一部として統合された電源スイッチを必要とせず、したがって、温度制限装置512のコスト及び複雑さを低減する。
【0066】
図6A及び
図6Bを参照すると、温度制限装置の例示的なブロック図が示されている。
図6Aは、TWC602と、TWC602によって動作可能な電源スイッチ604とを含むモジュラーユニット601を含む温度制限装置600を示している。モジュラーユニット601は、熱システムのヒータ(例えば、2線式ヒータ104、202、又は400)とのインターフェースに適応可能な構成要素である。一態様において、モジュラーユニット601は、ヒータインターフェース606、電力インターフェース608、及び入力/出力(I/O)インターフェース610を含んでいる。ヒータインターフェース606は、2線式ヒータに接続するように構成され、電力インターフェース608は、2線式ヒータのための電力及びモジュラーユニット601内の電子機器のための電力を受け取るために、電源に接続するように構成される。
【0067】
TWC602は、I/Oインターフェース610を介して、プロセッサコントローラ(例えば、プロセス温度コントローラ306)、1つ又は複数のヒューマン・マシン・インタフェース(HMI(s))などの外部デバイスと通信するように構成される。HMIは、ユーザがTWC602と通信することを可能にし、キーボード、コンピューティングデバイス(例えば、ラップトップ、タブレット、スマートフォンなど)、マウス、及び/又はディスプレイを含むことができるが、これらに限定されない。HMI(複数可)によって、ユーザは、例えば、温度制限装置600の動作モード(例えば、温度制御モード又は温度制限器モード)を選択し、ヒータ情報を提供し、及び/又はヒータ情報の較正などの他のタスクを実行することができる。TWC602は、熱システムのHMI(複数)及び/又はプロセスコントローラと通信する必要がないことを容易に理解すべきである。さらに、外部装置との通信が必要でない場合、モジュラーユニット601は、I/Oインターフェース610を含まなくてもよい。
【0068】
一態様において、TWC602は、マイクロプロセッサ612と、マイクロプロセッサ612によって実行可能なソフトウェアプログラム(すなわち、コンピュータ読み取り可能命令)を格納するメモリ614と、上述したように、熱システムの温度及び/又はヒータの性能特性を決定するために使用されるヒータ情報618を格納するデータベース616とを含むように構成される。メモリ614は、TWC602を温度制御モードで動作させるための温度(temp.)制御プロセス620Aと、TWC602を温度制限モードで動作させるための温度制限プロセス620Bと、TWC602を較正モードで動作させるための較正プロセス620Cと、TWC602を診断モードで動作させるための診断プロセス620Dとを含む。TWC602は、プロセス620A~620Dの全てを含む必要はなく、本明細書に記載されたプロセスの1つ以上を含むようにカスタマイズ可能であることを容易に理解すべきである。
【0069】
TWC602はさらに、ヒータインターフェース606を介してヒータに電気的に結合され、ヒータの電気的特性、より詳細には抵抗発熱体の電気的特性を測定するセンサ回路620を含む。一態様において、ヒータがR-Tヒータである場合、センサ回路620は、抵抗発熱体に印加される電流及び電圧を測定するための電流センサ及び/又は電圧センサを含んでもよい。ヒータがTSPP-ヒータである場合、センサ回路620は、温度感知ジャンクションにおける電圧の変化を測定するための電圧センサを含んでもよい。したがって、センサ回路は、2線式ヒータに基づき様々な適切な方法で構成されてもよい。
【0070】
温度制限装置600は、TWC602からの信号に基づき、ヒータへの電力を制御する統合された電源スイッチ604を含んでいる。一態様において、電源スイッチ604は、ヒータインターフェース606と電力インターフェース608との間に配置される。温度制限装置102は、温度制限装置600として構成されてもよい。
【0071】
図6Bは、TWC654、I/Oインターフェース610、ヒータインターフェース606、及び電力インターフェース608を含むモジュラーユニット652を含む温度制限装置650を示す。ここでは、温度制限装置650は、外部のスイッチ(例えば、電源スイッチ308、電源スイッチ402、スイッチ514)を介して、ヒータへの電力を制御する。一態様において、TWC654は、I/Oインターフェース610の一部、又はヒータインターフェース606及び電力インターフェース608と同様の個別のインターフェースとすることができる電源スイッチインターフェースを介して、外部スイッチと通信するように構成される。したがって、TWC654は、プロセスコントローラと外部電源スイッチ(例えば、
図5の熱システム500)及び/又は外部電源スイッチ(例えば、
図3の熱システム300又は熱システム300と
図4の電源スイッチ402との組み合わせ)との間の通信を制御するためのスイッチとも通信することができる。このように、温度制限装置302及び512は、温度制限装置650として構成されてもよい。
【0072】
ヒータが独立して制御される複数の加熱素子を含む場合、モジュラーユニット601、652は、本明細書に記載された動作を実行するための複数のヒータインターフェース606、電源スイッチ604、及びセンサ回路620を含んでもよい。さらに、温度制限モードの間、TWC602、654は、全ての発熱体への電力をオフにするか、又はそれぞれの閾値を超える発熱体だけへの電力をオフにするように構成されてもよい。特定の構成要素が提供されているが、モジュラーユニット601及び652は、新規及び既存の熱システムに設置可能な適応型デバイスを提供するための他の構成要素を含んでもよい。例えば、モジュラーユニット601は、1つ又は複数のハウジング、配線、及び/又は回路などを含んでもよい。一態様において、モジュラーユニット601及び652は、モジュラーユニット内の電子部品のための電源から電力を低減するための電力回路を含んでもよい。
【0073】
上で提供したように、ヒータ104、202、400は、電力を供給し、ヒータの温度を測定するための温度感知パワーピンを有してもよい。例えば、
図7を参照すると、ヒータは、2つの端部704、706を有する抵抗発熱体702を含むカートリッジヒータ700であってもよい。一態様において、抵抗発熱体702は、例示的にニクロム材料などの金属線の形態であり、シース709によって囲まれた非導電性部分(又はコア708)の周りに巻かれているか、又は配置されている。コア708は、近位端710及び遠位端712を規定し、さらに、少なくとも近位端710を通って延びる第1及び第2開口部714及び716を規定する。
【0074】
カートリッジヒータ700は、第1導電材料で作られた第1電源ピン718と、第1電源ピン718の第1導電材料とは異種の(すなわち、第1及び第2導電材料は異なるゼーベック係数を有する)第2導電材料で作られた第2電源ピン720とをさらに備える。さらに、抵抗発熱体702は、第1及び第2電源ピン718、720の第1及び第2導電材料とは異なる材料で作られており、端部704で第1電源ピン718との第1接合部722を形成し、その他端部706で第2電源ピン720との第2接合部724を形成する。抵抗発熱体702は、第1接合部722では第1電源ピン718とは異なる材料であり、第2接合部724では第2電源ピン720とは異なる材料であるため(すなわち、第1及び第2導電材料は抵抗発熱体とは異なるゼーベック係数を有する)、熱電対接合が効果的に形成される。したがって、第1及び第2接合部722、724における電圧の変化が検出され、別個/個別の温度センサを使用することなく、カートリッジヒータ700の平均温度が決定される。
【0075】
温度感知パワーピンに関する追加の詳細は、2015年5月29日に出願され、“RESISTIVE HEATER WITH TEMPERATURE SENSING POWER PINS”と題された米国シリアル番号14/725,537と、2018年4月11日に出願され、“RESISTIVE HEATER WITH TEMPERATURE SENSING POWER PINS AND AUXILIARY SENSING JUNCTION”と題された米国シリアル番号15/950,358と、を有する出願人の共同係属中の出願に記載されている。これらの出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれており、抵抗発熱体の温度を測定するための熱電対感知ピンとして機能するパワーピンに接続された1つ以上の抵抗発熱体を有するヒータを開示している。したがって、TSPPヒータの場合、温度制限装置102、302、512のTWC112、304、516は、ヒータの抵抗発熱体とパワーピンによって形成される接合部の電圧(mV)の変化を測定し、抵抗発熱体の平均温度を計算するように構成されている。例えば、ルックアップテーブル及び/又は予め定義されたアルゴリズムを使用して、TWC112、304、516は、熱カップル変換(mV to Temp.)、及び/又は冷接点補償を実行して、発熱体の温度を決定してもよい。温度が閾値を超えた場合、TWC112、304、516は、本明細書に記載された様々な方法を用いて、発熱体への電力をオフにすることができる。温度感知パワーピンは、流体ラインヒーター(複数可)、流体浸漬ヒータ(複数可)、又は他の適切なヒータなどの他のヒータで使用されてもよく、カートリッジヒータに限定されるべきではない。
【0076】
本開示のプロセスコントローラは、PIDコントローラとして説明されているが、コントローラは、モデルベースコントローラ、オープンループコントローラなどの他の適切なコントローラとして構成されてもよい。モデルベースコントローラとして構成される場合、プロセスコントローラは、電力、レート制御、熱プロファイル、ヒータ-負荷相関を用いたブースト制御、及び他の適切なパラメータなどで、これらに限定されない様々なパラメータに基づき、ヒータの動作を制御する。
【0077】
本開示の説明は、本質的に単なる例示的なものであり、したがって、本開示の実質から逸脱しない変形は、本開示の範囲内であることが意図される。そのような変形は、本開示の精神及び範囲から逸脱するものとはみなされない。
【0078】
本明細書では、特に明示しない限り、機械的/熱的特性、組成割合、寸法及び/又は公差、又はその他の特性を示す全ての数値は、本開示の範囲を説明する際に、「約」又は「およそ」という言葉で変形されたものとして理解される。この変形は、産業上の慣習、製造技術、及び試験能力を含む様々な理由から望まれる。
【0079】
本明細書で使用されるように、A、B、及びCのうちの少なくとも1つというフレーズは、非排他的な論理的ORを使用して、論理的(A OR B OR C)を意味するように解釈されるべきであり、“Aのうちの少なくとも1つ、Bのうちの少なくとも1つ、及びCのうちの少なくとも1つ”を意味するように解釈されるべきではない。
【0080】
図において、矢印の方向は、矢尻によって示されるように、一般的に、図解の関心事である情報(データ又は命令など)の流れを示している。例えば、要素Aと要素Bが様々な情報を交換するが、要素Aから要素Bに送信される情報が図に関連する場合、矢印は要素Aから要素Bを指してもよい。この一方向矢印は、要素Bから要素Aに他の情報が送信されないことを意味するものではない。さらに、要素Aから要素Bに送信される情報について、要素Bはその情報の要求又は受信確認を要素Aに送信してもよい。
【0081】
本願では、「コントローラ」という用語を「回路」という用語に置き換えてもよい。コントローラは、その一部であってもよいし、以下のものを含んでもよい。ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、デジタル、アナログ、又はアナログ/デジタル混在のディスクリート回路、デジタル、アナログ、又はアナログ/デジタル混在の集積回路、組合せ論理回路、FPGA(Field Programmable Gate Array)、コードを実行するプロセッサ回路(共有、専用、又はグループ)、プロセッサ回路によって実行されたコードを格納するメモリ回路(共有、専用、又はグループ)、記載された機能を提供する他の適切なハードウェアコンポーネント、又はシステムオンチップのような上記のいくつか又は全ての組み合わせ。
【0082】
コードという用語は、ソフトウェア、ファームウェア、及び/又はマイクロコードを含み、プログラム、ルーチン、関数、クラス、データ構造、及び/又はオブジェクトを指すことがある。メモリ回路という用語は、コンピュータ読み取り可能媒体という用語のサブセットである。本明細書で使用されるコンピュータ読み取り可能媒体という用語は、(搬送波上などの)媒体を伝搬する一過性の電気信号又は電磁信号を包含せず、したがって、コンピュータ読み取り可能媒体という用語は、有形かつ非一過性のものと考えられる。
【国際調査報告】