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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(54)【発明の名称】血管圧迫用医療装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/132 20060101AFI20220513BHJP
【FI】
A61B17/132
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571491
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(85)【翻訳文提出日】2021-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2020054189
(87)【国際公開番号】W WO2020169573
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】P.428964
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521365026
【氏名又は名称】シンプリカルディアック・エスピー.ゼットオー.オー.
【氏名又は名称原語表記】SIMPLICARDIAC SP.Z O.O.
【住所又は居所原語表記】Rostafinskich St 4,Warzawa,02-593 Poland
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】クルク、マリウス
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD06
4C160DD33
4C160DD43
(57)【要約】
本発明は、局所止血を達成するために患者の肢に適用される血管圧迫のための医療装置に関する。本発明の圧迫装置は、圧迫領域の遠位に圧迫制御機構を装備し、これは、患者の肢に装置を取り付けるために使用されるストラップの張力を調節することによって、患者の肢への装置の圧迫を制御する。装置は、患者の肢に適用されたときに、装置がその位置を変えることを防止する、安定化支持体を更に備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肢用の血管圧迫装置であって、
略管状の空間(23)を画定し且つ前記略管状の空間(23)によってアクセス可能である長手方向基部(26)と実質的に環状の内表面とを有する中空本体(2)と、
前記長手方向基部(26)の外表面に位置する圧迫領域(24)と、
前記血管圧迫装置によって加えられる圧迫を調整するための圧迫制御機構(3)と、ここで、前記圧迫制御機構は、前記圧迫領域(24)及び前記長手方向基部(26)に対して遠位且つ反対側の前記中空本体(2)上に位置しており、
前記血管圧迫装置を前記肢に固定し、その上に圧迫を行うためのストラップ(4)と、ここで、前記ストラップは、前記長手方向基部(26)において前記中空本体(2)に取り付けられており、前記略管状の空間(23)を遮ることなく、前記圧迫制御機構(3)を取り外し可能に取り付け可能であり且つ前記圧迫制御機構(3)によって調節可能であり、
前記血管圧迫装置を安定させるための支持体(20)と、ここで、前記支持体は、前記長手方向基部(26)に隣接して位置し、前記長手方向基部(26)と平行な長手方向に延在するものであり、
を備える血管圧迫装置。
【請求項2】
前記長手方向基部(26)は、前記中空本体(2)の前記実質的に環状の内表面を部分的に形成する平坦な表面である、請求項1に記載の血管圧迫装置。
【請求項3】
前記圧迫制御機構(3)は、ねじ及びナット機構である、請求項1又は2に記載の血管圧迫装置。
【請求項4】
前記ねじ及びナット機構は、
-前記圧迫領域(24)に垂直な回転軸を有する、ねじの形態の雄ねじ付き要素(21)と、ここで、前記雄ねじ付き要素には、前記雄ねじ付き要素(21)の前記回転軸に平行な複数のねじ切り案内スロット(27)が設けられており、
-前記雄ねじ付き要素(21)上に係合するように嵌合される、ナット状の形態のつまみ(31)と、
-前記つまみ(31)上に配置された締付具(30)と、ここで、前記締付具(30)は、ハウジング(300)と、前記ハウジング(300)から前記圧迫領域(24)の方向へ且つ前記圧迫領域(24)に垂直に突出するつまみ支持要素(301)及び案内要素(302)とを備え、ここで、前記つまみ支持要素(301)及び前記案内要素(302)は、前記雄ねじ付き要素(21)の前記案内スロット(27)によって受容されるものであり、
を備える、請求項3に記載の血管圧迫装置。
【請求項5】
前記雄ねじ付き要素(21)には、前記雄ねじ付き要素(21)上に対称的に配置された4つの前記案内スロット(27)が設けられており、前記締付具(30)には、前記つまみ支持要素(301)及び案内要素(302)の2つの対応する対が設けられており、前記つまみ支持要素(301)及び前記案内要素(302)の各対は、互いに対向して配置された1対の案内スロット(27)によって受容される、請求項4に記載の血管圧迫装置。
【請求項6】
前記支持体(20)は、波型断面の湾曲したフィンの形態であり、その自由端において脚(200)が設けられており、前記支持体(20)の前記脚(200)のみが、前記圧迫領域(24)と同一平面上にある、請求項1~5のいずれか一項に記載の血管圧迫装置。
【請求項7】
前記圧迫制御機構(3)は、調節時に可聴クリックを発するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の血管圧迫装置。
【請求項8】
クリック音生成手段が、
-締付具(30)のハウジング(300)内に固定され、且つつまみ(31)に向かって延在する少なくとも1つの突起部(320)を有するリングばね(32)と、
-前記締付具(30)の近接において前記つまみ(31)の周縁部に沿って等間隔に配置された歯(310)と、を備え
前記つまみ(31)の回転時に、前記突起部(320)は、前記歯(310)のうちの1つと係合し、それによって、クリック音を生成するものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の血管圧迫装置。
【請求項9】
前記ストラップ(4)は、接着剤(5)によって前記圧迫領域(24)において前記中空本体(2)に取り付けられており、この取り付けは、前記圧迫領域(24)全体にわたって形成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の血管圧迫装置。
【請求項10】
前記圧迫領域(24)及び前記支持体(20)の脚(200)には、弾性インセットが設けられている、請求項1~9のいずれか一項に記載の血管圧迫装置。
【請求項11】
前記血管圧迫装置の構成要素の全てが、透明プラスチック材料から作製されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
出血血管の近接において他の血管を通る血流を維持しながら、患者の肢における前記血管の局所止血を達成する方法であって、
-前記中空本体(2)の前記圧迫領域(24)を出血血管部位に対して手動で押し付けることによって、請求項1~11のいずれか一項に記載の医療装置(1)を、前記出血血管部位において適用するステップと、
-前記ストラップ(4)を前記患者の肢の周り及び前記圧迫制御機構(3)上に適用することによって、前記医療装置を前記患者の肢に固定し、従って、前記患者の肢への前記医療装置の圧迫を行うステップと、
-前記圧迫制御機構(3)によって、前記ストラップ(4)の張力を変更することによって、前記患者の肢への前記医療装置の圧迫を調節するステップと、
を備える方法。
【請求項13】
前記ストラップ(4)の張力は、前記圧迫制御機構(3)のつまみ(31)が回転されて、前記圧迫領域(24)から離れるか又は前記圧迫領域(24)に向かうように移動するときに変更される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記患者の肢への前記医療装置の圧迫は、前記つまみ(31)が前記圧迫領域(24)から離れるように移動するにつれて増大し、前記ストラップ(4)の張力は増大する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記患者の肢への前記医療装置の圧迫は、前記つまみ(31)が前記圧迫領域(24)に向かうように移動するにつれて低減し、前記ストラップ(4)の張力は低減する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記血管は、カテーテル又はカニューレが除去される橈骨動脈である、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記血管は、カテーテル又はカニューレが除去される尺骨動脈である、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、局所止血を達成するために患者の肢に適用される血管圧迫のための医療装置に関する。特に、本開示の装置は、侵襲的心臓病学及び放射線医学において、心臓カテーテル法、冠動脈造影法、又は血管アクセスポートを必要とする他の血管内処置及び介入の後、患者の血管から血管用シースを除去する際に血管を圧迫するために使用される。
【背景技術】
【0002】
多くの異なる血管圧迫装置が先行技術において知られている。例えば、WO2013060883には、傾斜末端部を有する管状の形状の本体と、本体の外面に取り付けられたストラップの形態の保持要素と、を有する動脈圧迫バンドが開示されている。この医療装置は、本体を出血血管部位に対して手動で押し付け、続いて、保持要素を患者の肢の周りに適用することによって、本体を患者の肢上で固定することにより、出血血管部位、特に、カテーテル又はカニューレが除去された動脈(橈骨又は尺骨)の出血部位において適用される。装置は、保持要素上に位置し得る面ファスナなどの締結手段によって患者の肢に固定される。本明細書に開示される装置は、製造が極めて簡単であり、患者の肢に適用するためのものである。とりわけ、それは、装置を患者の肢に装着する際に、血管圧迫の手動制御を提供し、即ち、医療従事者(例えば、医師又は看護師)は、中空本体の内側を把持しながら、血管へのカテーテル又はカニューレ浸入の部位に本体を適用し、カテーテル又はカニューレを除去し、それと同時に、血管に必要な圧迫を加え、中空本体の内側を依然として保持しながら、患者の肢の周り及び装置の本体上にストラップを適用することによって、本体を患者の肢に固定し得る。
【0003】
しかしながら、一旦患者の肢に適用されると、この装置は、横転することによって、又は位置を変えること若しくは滑ることによってのいずれかで、偶発的なずれを起こしやすい。これは、血管に加えられる圧迫力、又は装置が適用された後の、肢に対する圧迫適用部位にさえも影響を及ぼし、その主要目的において、装置の効果を低下させる。更に、装置が患者の肢に固定された後、装置は、特に、装置が患者に装着された後、圧迫を徐々に低減させる必要があるときに、圧迫レベルの十分な制御を提供しない。圧迫は、ストラップの位置決めによって、又は本体の断面寸法又は形状を調節する手段によってのみ制御される。しかしながら、最初のケースでは、ストラップの調節が必要となり、これは、非常に不便であり、医療スタッフが保持手段を外し、それを新しい位置で締め直すことを必要とし、出血をもたらし得る装置のずれのリスクを伴う。後者のケースでは、本体の構造は、非常に複雑になり、圧迫調節のレベルも非常に制限される。
【0004】
圧迫止血装置における十分な圧迫制御を確実にするために、ねじ及びナットシステムが、患者の肢に圧力を加えるために使用され得る。US20100280541には、回転可能な部材と、回転可能な部材の回転が圧迫パッドの回転配向に影響を及ぼさないように適合された圧迫パッドと、を含む橈骨動脈圧迫装置が開示されている。回転可能な部材の回転は、橈骨動脈圧迫装置の本体に対する圧迫パッドの伸長又は収縮をもたらし、従って、患者の橈骨動脈への圧迫をそれぞれ増大又は低減する。従って、このような装置では、ねじ及びナットシステムは、圧迫パッドを直接駆動し、従って、精確な圧迫制御を可能にする。同様の装置が、US20120191127に記載されている。しかしながら、このケースでは、ねじ及びナットシステムはまた、装置の基部に取り付けられた圧迫パッドの直径の外側に位置し得る。このケースでは、圧迫レベルは、基部全体の撓みによって制御される。
【0005】
上述の装置は、圧迫レベルのより精確な制御を提供するが、それらを適用するのは、あまり容易ではない。それらは、WO2013060883に記載された装置と同様に、適用時に手動制御を提供しない。回転可能な部材には、患者の肢に装置を装着する際に、装置の圧力を制御する医療従事者の指又は親指を受容し得る凹部が設けられているが、この凹部は、回転可能な部材の上からしかアクセスされることができないので、把持にはあまり適当ではない。更に、前記凹部には透明な床が設けられているが、カテーテル又はカニューレの浸入部位の視界は、ねじ及びナットシステム要素によって依然として大幅に遮られている。最後に、US20100280541及びUS20120191127の両方の装置において、保持手段又は基部は、患者の前腕の橈骨側と直接接触している。このような設計は、装置が適用されるときに患者に不快感を与えるだけでなく、隣接する血管、特に、腕静脈又は尺骨動脈における血流にも影響を及ぼし、これは、いくらかの圧迫が、本体及びストラップを通じて意図せずに加えられるからである。選択された血管を圧迫するための装置、例えば、隣接する血管内の血流を維持しながら橈骨動脈を圧迫する、より正確な圧迫が有用であるが、先行技術からは明らかではない。
【0006】
肢上で所定位置にしっかりと固定され得、且つ特定の正確な血管圧迫を提供する装置が、依然として必要であることが主張されている。更に、装置が、その構造の単純さ又は人間工学的設計を損なうことなく、その圧迫を精確に制御することができれば、有利である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、下記を備える、肢用の血管圧迫装置を提供する:
-略管状の空間を画定し且つ略管状の空間によってアクセス可能である長手方向基部と実質的に環状の内表面とを有する中空本体と、
-基部の外表面に位置する圧迫領域と、
-装置によって加えられる圧迫を調整するための圧迫制御機構と、ここにおいて、機構は、圧迫領域及び基部に対して遠位且つ反対側の本体上に位置しており、
-装置を肢に固定し、その上に圧迫を行うためのストラップと、ストラップは、基部において本体に取り付けられており、管状の空間を遮ることなく、圧迫制御機構を取り外し可能に取り付け可能であり且つ圧迫制御機構によって調節可能であり、
-装置を安定させるための支持体、支持体は、基部に隣接して位置しており、基部と平行な長手方向に延在する。
【0008】
損傷した血管に適用されるとき、本明細書に開示される医療装置の実施形態は、止血を確立することを目的として、血管圧迫、特に、橈側圧迫を提供する。本発明の血管圧迫装置は、人間工学的に設計されており、従って、それは患者の肢に容易に取り付けられ、医療従事者が使用するのに非常に便利である。本発明の装置が患者の肢に適用されるとき、それは安定しており(即ち、滑ったり、横転したりしにくい)、十分な圧迫制御を提供する。本発明の装置はまた、患者の前腕の橈骨側の圧迫が、本質的にカテーテル又はカニューレの血管浸入部位に限定されるので、患者の快適性の向上をもたらす。本発明の装置の設計はまた、血管アクセスポートを有する血管以外の血管の圧迫を防止する。本発明の装置は、その要素がプラスチック射出成形によって製造が容易であるように構築される。装置の設計中に、本発明者らは、射出成形用金型の形状を検討して、それらが単純な構造を有すること、及び、射出成形によって製造された要素が金型から容易に取り出され得ることを確実にした。
【0009】
好ましい実施形態では、本発明の装置の圧迫制御機構は、ねじ及びナットシステムに基づく。また好ましくは、実施形態では、圧迫領域の近傍において(即ち、圧迫制御機構に対して中空本体の反対側で)中空本体に取り付けられているストラップは、装置を患者の肢に適用する際に、ストラップの張力を調節することによって装置の圧迫を調整する圧迫制御機構にわたって且つその上を案内される。
【0010】
また、この実施形態では、中空本体は、傾斜末端部を有する円筒状の形状を有する。より好ましくは、中空本体内部の管状の空間は、貫通孔によって形成されている。この実施形態では、即ち、中空本体内部の管状の空間が両側からアクセスされ得る場合は常に、本発明による血管圧迫装置は、患者の両方の前腕に対して、及び異なる血管を圧迫するために使用され得る。
【0011】
本発明の実施形態では、圧迫制御機構は、つまみと締付具とを備え、つまみは、圧迫領域に対して中空本体の反対側に位置する、中空本体の雄ねじ付き要素の上に嵌合され、締付具を支持する。本発明の装置が患者の肢に取り付けられ、つまみが回転されると、それは中空本体の雄ねじ付き要素に沿って移動し、締付具の垂直位置を変化させる。締付具が垂直位置において移動されるとき、それは水平方向には回転しないので、ストラップに対する支持を提供する。つまみ及び締付具が中空本体の中央から離れるように移動する(即ち、圧迫領域から離れる)につれて、締付具は、ストラップに押し付けられ、その張力を増大させ、従って、患者の肢に対する装置の圧迫を増大させる。つまみが反対方向に回転されると、それは、中空本体の雄ねじ付き要素に沿って、中空本体の中央に向かって(即ち、圧迫領域に向かって)移動する。締付具は、つまみの移動に追従し、従って、ストラップの張力及び患者の肢に対する中空本体の圧迫を低減させる。
【0012】
ストラップの張力を調節する圧迫制御機構は、患者の肢に対する装置の圧迫の精確な制御を可能にする。また、ストラップが中空本体の周りに案内されるという事実により、それは、患者の前腕の橈骨側を圧迫せず、従って、他の血管の圧迫を排除し、同時に、それは、中空本体の管状の空間へのアクセスを妨げず、従って、中空本体の前記管状の空間において受容される医療従事者の指又は親指で、中空本体の圧迫領域を押圧することによって、本発明の装置の快適な把持を可能にする。中空本体、圧迫制御機構及びストラップは、好ましくは、透明な材料で作製され、血管圧迫領域の視界を遮らない。これは、カテーテル又はカニューレの血管浸入部位を、その除去時又は除去後に視覚的に制御することを可能にする。従って、止血が達成されたかどうかを決定すること、又は損傷した血管からの出血を検出することが可能である。
【0013】
好ましい一実施形態では、安定化支持体は、その圧迫領域の近接において中空本体から突出する。加えて、好ましい実施形態では、本体を安定化させるための支持体は、湾曲したフィンの形態であり、中空本体に取り付けられた縁部と反対側のその縁部は、中空本体の圧迫領域と同一平面上にあり、従って、中空本体のための支持を提供し、一方、支持体の残りの部分は、圧迫領域の平面よりも高くなっている。安定化支持体のこのような形状は、本発明の装置の患者の肢との接触を最小限にし、従って、患者の快適さを増大させ、穿刺された血管の部位以外の患者の肢の領域への装置の圧迫を低減させる。このようにして、血管アクセスポイントを提供する血管以外の血管の圧迫を最小限にする。従って、本発明の装置は、隣接する血管における血流が影響を受けないように維持しながら、選択された血管への精確な圧迫制御を提供するように設計される。
【0014】
装置が橈骨動脈を圧迫するために使用される場合、安定化支持体は、尺骨動脈の位置に対応する患者の前腕領域の表面よりも高くなっているので、尺骨動脈は圧迫されない。従って、装置が尺骨動脈を圧迫するために使用される(即ち、それが反対方向において肢に適用される)場合、橈骨動脈は圧迫されない。とりわけ、装置の設計、特に、患者の肢とのその接触が限定される安定化支持体の設計により、装置は、隣接する静脈を圧迫しない。従って、手からの静脈流出は、患者の肢に対する装置の圧迫によって妨げられず、静脈鬱血が回避される。これは、患者の快適さを増大させるだけでなく、肢の圧迫及びカテーテル法に関連付けられた副作用のリスクを低減させる。
【0015】
中空本体に連結された縁部とは反対側の安定化支持体の縁部のみが患者の前腕と接触しているにもかかわらず、本発明の装置全体に対する所望の安定性が提供される。安定化支持体は、本発明の装置が患者の肢に取り付けられている間、横転すること又は滑ることによる、本発明の装置のずれを防止する。最も好ましい実施形態では、安定化支持体は、波型断面を有する湾曲したフィンの形態であり、中空本体に連結された縁部と反対側の支持体の縁部には、支持脚が設けられている。この支持脚は、本発明の装置が患者の肢に取り付けられたときに、患者の快適さを増大させる。
【0016】
好ましい実施形態では、本発明の装置のストラップは、滑り止め材料で作製されている。好ましくは、ストラップは、本発明の装置を患者の肢に保持するために、追加の締結手段を必要としない材料で作製されている。具体的には、ストラップが患者の肢の周りに固定され、ストラップの外面と内面とが接触するとき、ストラップの一方の面、即ち外面が、ストラップの反対側の面、即ち内面に接着する。代替の実施形態では、ストラップには、接着剤(例えば、係止用ステッカーの形態)、締め付けバックル、フック、スナップファスナ(例えば、オリフィス及び対応するラグ)、又はVelcro(登録商標)などの面ファスナを含む群から選択される、装置を患者の肢上の所望の位置に保持するための追加の締結手段が設けられ得る。いくつかの好ましい実施形態では、締結手段は、ストラップの対向表面上に位置している2つの部分を備え、これらは、本発明の装置が患者の肢に取り付けられたときに接触する。好ましい実施形態では、締結手段は、ストラップの自由端、即ち、中空本体の基部に連結されているストラップ端部とは反対側のストラップの端部において設けられている。
【0017】
実施形態では、本発明の装置は、雄ねじ付き要素上のつまみの回転を示すクリック機構を装備している。このようにして、圧迫調節の音響的制御が可能である。好ましい実施形態によるクリック機構は、締付具内に固定されたリングばねを備え、前記リングばねは、締付具に最も近いつまみ周縁部の近傍に位置する等間隔に配置された歯と係合する下方突起部を備える。このようにして、つまみが回転されるたびに、リングばねの突起部は、歯間の1つの空間から別の空間まで変位され、変位時に、それは歯と係合し、クリック音を生成する。つまみ上の要素と係合する突起部を有するリングばねで構成されるシステムは、非常に空間効率が良い。従って、本発明の装置全体のサイズを増大させることなく、本発明の装置のクリック機能が導入され得る。更に、クリック機構の設計は、いかなる複雑な射出成形の型も必要としないので、その製造方法を極めて単純にする。
【0018】
以下、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1a図1aは、折り畳まれた形態で示される、本発明の好ましい実施形態による血管圧迫装置の斜視図を示す。
図1b図1bは、折り畳まれていない形態において、図1aに示された装置の側面図を示す。
図2a図2aは、図1a及び図1bからの本発明の血管圧迫装置の分解図を示す。
図2b図2bは、図2aからの分解図Aの拡大部分を示す。
図2c図2cは、図2aからの分解図Bの拡大部分を示す。
図3a図3aは、本発明の血管圧迫装置の中空本体を斜視図(図3a)で示す。
図3b図3bは、本発明の血管圧迫装置の中空本体を正面図(図3b)で示す。
図3c図3cは、本発明の血管圧迫装置の中空本体を側面図(図3c)で示す。
図3d図3dは、本発明の血管圧迫装置の中空本体を底面図(図3d)で示す。
図4a図4aは、本発明の血管圧迫装置の締付具を底から見た斜視図(図4a)で示す。
図4b図4bは、本発明の血管圧迫装置の締付具をリングばねと共に底面図(図4b)で示す。
図4c図4cは、本発明の血管圧迫装置の締付具を上面図(図4c)で示す。
図4d図4dは、本発明の血管圧迫装置の締付具を側面図(図4d)で示す。
図4e図4eは、本発明の血管圧迫装置の締付具を側面図(図4e)で示す。
図5a-5b】図5a及び図5bは、本発明の圧迫装置のつまみを、底から見た斜視図(図5a)及び上から見た斜視図(図5b)で示す。
図5c図5cは、本発明の圧迫装置のつまみを上面図(図5c)で示す。
図5d図5dは、図5cに示されたつまみのA-A線に沿った断面図(図5d)を示す。
図6図6は、本発明の血管圧迫装置におけるリングばねの斜視図及び平面図を示す。
図7図7は、本発明の血管圧迫装置のストラップの底面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、血管圧迫装置1に関する。
【0021】
装置1又はその要素に関して、「底(bottom)」又は「下(below)」又は「真下(underneath)」という用語への参照が本明細書で行われる場合は常に、装置1が圧迫されることが望ましい肢に適正に取り付けられたときに、患者及び前記肢の近位にある装置1の部分を意味する。「下方(downwards)」という用語もまた、患者の肢に向かう方向を意味する。
【0022】
装置1又はその要素に関して本明細書で使用される「上(top)」又は「上方(above)」という用語は、装置1が患者の肢に適正に取り付けられたときに、前記肢から遠位に位置する装置1の部分を指す。「上方(upwards)」という用語は、患者の肢から遠位の方向を指す。
【0023】
本発明の装置1は、損傷した血管からの出血を防止するために、肢の特定の領域に適正な圧迫力を加えるように設計されている。同時に、装置1は、患者の肢の他の主要な血管には力を加えない。
【0024】
図1a及び図1b、並びに図2a、図2b及び図2cに示されるように、装置1は、4つの主要な要素、即ち、中空本体2と、締付具30及びつまみ31を備える圧迫制御機構3と、ストラップ4とを備える。中空本体2は、装置1の中心的な要素を形成する。ストラップ4は、中空本体2、特に、中空本体2の基部26に、しっかりと取り付けられている。これにより、ストラップ4は、通常の使用時に、それが著しい力を受けたときに、中空本体2に取り付けられたままであることを確実にする。この実施形態では、ストラップ4は、接着剤5によって圧迫領域24に取り付けられており、ストラップ4と中空本体2との間の接触領域は、中空本体2の圧迫領域24全体に対応する。この大きい接触領域は、ストラップ4が中空本体2に十分に固定されることを確実にするだけでなく、装置が患者の肢に取り付けられたときに、装置1に追加の安定性を提供し、特に、装置が適用されるとき又は圧迫力が調節されるときに、装置1が横滑りすることを防止する。
【0025】
ストラップ4の取り付け部位の反対側、即ち、上部において、装置1には、締付具30とつまみ31が設けられており、これらの両方が、中空本体2、特に、中空本体2の雄ねじ付き要素21と、ボルト-ナット可動連結状態にある。締付具30は、つまみ31によって支持され、これは、締付具30の真下に位置する。装置1が組み立てられた後、締付具30及びつまみ31は、中空本体2の雄ねじ付き要素21に沿って、中空本体2に対して共に移動する。中空本体2に対する締付具30の移動は、患者の肢への装置1の圧迫の制御を提供する。
【0026】
図3a~図3dに示されるように、中空本体2は、一体化された要素として形成されている。この実施形態では、中空本体2は、扁平な円形の断面を有する短い管の形態である。特に、中空本体2の基部26は、患者の肢とのより良好な接触を提供するために、平坦にされている。しかしながら、それは、医療従事者に中空本体2の基部26を介して圧迫領域24への好適なアクセスを提供するように構成されるその他任意の形状で形成され得る(即ち、医療従事者が中空本体2の底部26に力を加えるために彼又は彼女の指を挿入し得、その結果、装置1を患者の肢に適用する際に、医療従事者が損傷した血管に手動で力を加え得る、本体2内の管状の空間23)。実施形態では、中空本体2は、その長軸に沿って対称であり、従って、本発明の装置を両方の手で操作可能にしている。更に、本体2の選択された形状は、中空本体2内の管状の空間23の上方に配置された締付具30及びつまみ31を収容する必要がある。例えば、本体2は、半パイプの形状であり得、その壁は、締付具30及びつまみ31を受容する雄ねじ付き要素21によって連結されている。この説明されている好ましい実施形態では、中空本体2の中央部分を形成する管は、長手方向基部26を有し、これは、装置1が適正に適用されたときに、患者の肢の方に向けられる。基部26は、側壁22によって、雄ねじ付き要素21に連結されている。管の基部26は、管の側壁22よりも幅が広く、側壁22よりも大きい表面積を有する。中空本体2の基部26の外面は、圧迫領域24を提供し、これは、装置1が適用されるときに、患者の肢と接触するように構成されている。本実施形態では、圧迫領域24は、ストラップ4を圧迫領域24に連結する接着剤5で覆われている。従って、圧迫領域24は、ストラップ4及び接着剤5を通じて患者の肢と接触している。更に、圧迫領域24は、好ましくは、患者の肢上での装置1の位置決めを容易にする印25を備える。患者の肢に適用されるとき、位置決め印25は、血管アクセスポートの部位に配置されるべきである。好ましい実施形態では、中空本体2は、その一体化された要素と共に、透明プラスチック材料で形成されている。透明な材料の使用は、患者の肢上のカテーテル又はカニューレの浸入部位の視覚的な制御を確実にする。この実施形態では、本体2は、射出成形によってポリカーボネートで作製されている。加えて、中空本体2の縁部は、患者の快適さを増すために丸められている。
【0027】
実施形態では、中空本体2には、支持体20が設けられており、これは、中空本体2の一体化された部分であり得る。支持体20は、中空本体2の側面から(即ち、中空本体2の基部26の近くの、中空本体2の側壁22から)、及び圧迫領域24から離れるように延在する。
【0028】
好ましい実施形態では、支持体20は、波型断面を有する湾曲したフィンの形態である。最初に、支持体20の湾曲したフィンは、それが中空本体2から離れるように延在するにつれて、その向きが圧迫領域24の平面に向かうように変化する変曲点までは、上方を向いている。支持体20は、中空本体2の基部26の平面を越えて延在しない。更に、その自由端(即ち、支持体20が中空本体2の側壁22に連結されている部位とは反対側)において、支持体20は、支持脚200を装備している。装置が患者の肢に適用されるとき、支持体20は、圧迫領域24から一定の距離を置いて患者の肢と接触している。支持体20の接触は、本実施形態に示されるように、その自由端によってのみ、又は支持体20の脚200によってのみ提供される。このようにして、装置1は、医療処置を受けている血管の近傍にある他の主要な血管を圧迫しない。従って、圧迫領域24と、支持体20の支持脚200との間の距離は、医療処置において圧迫されることが意図されていない他の血管における乱れのない血流をもたらす、圧迫なしの空間を提供する。従って、患者の前腕の掌側の表面との装置1の接触は、最小限に制限され、即ち、圧迫領域24と、支持体20の自由端又は支持体20の自由端において存在する場合には脚200とに限定され、従って、装置1が適用されるときの患者の不快レベルを低減させる。
【0029】
患者の肢へのその限定された接触にもかかわらず、支持体20は、装置1に追加の支持を提供する。従って、支持体20の機能は、患者の肢上で中空本体2を安定させ、その結果、それが患者の肢に固定された後の、装置1のいかなる望ましくない移動も防止することである。支持体20がなければ、装置は、ストラップ4によって加えられる力により、横に倒れやすくなるであろう。好ましくは、支持体20は、図3a及び図3bに示されるように、波型形状を有する。支持体20の他の形状も想定されるが、波型形状が最も効果的であり、医学的要件と審美的要件の両方を満たす。加えて、支持体20の自由端又は支持脚200には、好ましくは弾性材料で作製されたインセット(inset)が設けられており、これは、患者の肢と直接接触する、支持脚200の表面又は支持体20の表面に適用される。これもまた、装置1が適用されるときの患者の快適さを増大させることを目的とする。
【0030】
この説明されている実施形態では、管の形態である中空本体2は、側壁22を含み、これらは、基部26から円周方向に延在し、雄ねじ付き要素21によって、上部において連結されている。管の内側で、基部26と、側壁22と、雄ねじ付き要素21との間(即ち、側壁22と、基部26と、雄ねじ付き要素21とによって形成される周辺部(periphery)内)には、管状の空間23が存在する。管状の空間23は、医療従事者の指又は親指を受容するように設計されており、医療従事者は、装置を患者の肢上に適用する際に、中空本体2の基部26を押圧することによって、圧迫領域24に初期圧迫を加える。中空本体2の基部26へのより良好なアクセスを提供するために、側壁22の幅は、それらが上方に延在するにつれて低減する(即ち、壁は、徐々に狭くなる)。中空本体2は、管状の空間23が中空本体2の両側からアクセスされ得るように設計されている(即ち、中空本体2を形成する管は、両端で開口している)。このようにして、装置は、患者の左右両方の前腕で使用するのに適している。これにより、装置のユニバーサル特性が確保される。
【0031】
側壁22は、中空本体2の上部、即ち、中空本体2の一体化された部分を形成する雄ねじ付き要素21に対する支持を提供する。本実施形態では、雄ねじ付き要素21は、中空本体2の管の軸に垂直に配置された回転軸を有する中空ねじの形状を有する。雄ねじ付き要素21の回転軸はまた、中空本体2の基部26の表面に垂直である。このねじ付き要素21は、案内スロット27と呼ばれる複数の溝を有し、それらは、雄ねじ付き要素21の回転軸に平行に延在する。この実施形態では、雄ねじ付き要素21上に対称的に位置する4つの案内スロット27が存在する。案内スロット27は、回転軸に沿って、且つ雄ねじ付き要素21のねじ山に垂直に位置している。装置1が組み立てられるとき、案内スロット27は、締付具30のつまみ支持要素301及び案内要素302を受容する。このようにして、中空本体2と締付具30は、互いに係合する。互いに対向して位置し、締付具30の案内要素302を受容する、案内スロット27のうちの2つには、上部において阻止突起270が設けられている。締付具30が上方に移動すると、これらの阻止突起270は、締付具30の案内要素302の自由端と係合し、従って、それらの更なる上方移動を阻止し、締付具30が中空本体2から外れることを防止する。同じく互いに対向して位置する他方の対の案内スロット27は、締付具30のつまみ支持要素301を受容する。
【0032】
装置1の組み立てられた形態の中空本体2は、締付具30と係合し、これは、中空本体2の上方に配置される。図4は、本発明の装置の締付具30の好ましい実施形態を示す。締付具30は、ハウジング300と、つまみ支持要素301と、案内要素302と、ストラップ案内部304とを備える。締付具30は、圧迫装置1の上部(即ち、患者の肢とは反対側)に位置する。締付具30は、ストラップが中空本体2及び患者の肢の周りに装着されたときに、ストラップ4への張力を調節することによって、装置1の圧迫調整のための手段として機能する。ストラップ案内部304は、ストラップ4を受容するための支持体として、締付具30の上部に形成されている。ストラップ案内部304は、好ましくは、ストラップ4の受容される部分の幅に等しい距離だけ互いに分離された長手方向リブ305内に、ストラップ4の一部を受容するための溝として形成された長手方向部分を有する。ストラップ案内部304内の長手方向リブ305間の領域には、滑り止めインセット33が配置されている。それは、プラスチック材料、より好ましくは、透明プラスチック材料のシート片として形成されており、その目的は、図1aに示されるように、ストラップ4の受容された部分を固定することである。滑り止めインセット33にはまた、装置1の圧迫を増大又は低減させるために、つまみ31が回転される必要がある方向に関する情報を医療従事者に提供するために、滑り止めインセット33上に直接印刷された、又は滑り止めインセット33上に配置される別個のステッカー上に印刷された、図1aに示されるような、「+」及び「-」並びに矢印などの記号が設けられている。
【0033】
滑り止めインセット33は、ストラップ案内部304の長手方向リブ305間で、患者の肢の周りに延在し且つ中空本体2及び締付具30上を案内されるストラップ4と係合する。ストラップ4は、中空本体2の管の軸に垂直な方向に延在し、且つ中空本体2の内側の管状の空間23へのアクセスを妨げないように、中空本体2の上方及びその向こう側へと導かれる。好ましい実施形態によれば、図4に示されるように、締付具30のストラップ案内部304は、互いに隔てられた2つの平行なリブ305を有する溝として成形されている。リブ305は、アーチ形状を有し、互いに平行に整列している。ストラップ案内部304の下には、一体的に連結されたハウジング300が存在する。このハウジング300は、円形基部を有する扁平なドーム形状を有している。ハウジング300の底縁部は、ストラップ案内部304のリブ305と整列している。ハウジング300は、リングばね32を受容する覆われた領域を提供する。ハウジング300のドームの真下から、2つのつまみ支持要素301及び2つの案内要素302が、下方に突出している。これらの要素は、互いに対向して配置されている、2つの支持要素301の対と、2つの案内要素302の対とにおいて配置されている。それらは、ハウジング300の円形基部の周囲に対して及び互いに対して対称的に離間されている。この実施形態では、支持要素301及び案内要素302は、円形ハウジング300の周縁部から離れて配置されており、それらの空間的配置は、中空本体2の案内スロット27に対する配置に対応する。これらの要素(即ち、支持要素301及び案内要素302)は、装置1が組み立てられたときに、中空本体2の雄ねじ付き要素21の案内スロット27内へと摺動し、従って、これらの構成要素の係合をもたらすだけでなく、中空本体2に関して締付具30の回転なしの往復運動も確保する。前記支持要素301及び案内要素302は、好ましくは、ハウジング300ドームの内側から(ドームの上部から)延在する突出梁又は直方体として形成される。支持要素301及び案内要素302は、それらの自由端(即ち、それらが取り付けられているハウジング300の反対側)で曲げられて、脚型支持体を形成している。つまみ支持要素301の脚型支持体は、ハウジング300の中軸から離れるように曲げられて、この脚型支持体とつまみ31の底縁部との係合を確実にし、つまみ31と共に締付具30の移動に影響を及ぼす。案内要素302の脚型支持体は、ハウジング300の中軸に向かって曲げられ、この脚型支持体と、中空本体2の雄ねじ付き要素21の案内スロット27の阻止突起270との係合を確実にする。ハウジング300にはまた、突起の形態のスタッド303が設けられており、これは、ハウジング300のドームの上部から下方に延在する。それらは、リングばね32を、組み立てられた装置1内にそれが存在する場合に、保持するように設計されている。
【0034】
案内要素302は、締付具30を回転なしの往復運動において案内するだけでなく、案内要素302の下部分が中空本体2の雄ねじ付き要素21の上周縁部に到達したときに、移動を止めることによって、締付具30の移動を所定の範囲内に制限する。つまみ支持要素301は、締付具30を回転なしの往復運動において案内するだけでなく、締付具30を、雄ねじ付き要素21のねじ山に沿って回転されるつまみ31と共に、特に下の方向に移動させる。上方移動中、つまみ31は、締付具30がつまみ31の上に配置されているので、締付具30を上昇させる。
【0035】
締付具30の全ての要素、すなわち、ハウジング300、支持要素301及び案内要素302、並びにストラップ案内部304は、プラスチック材料から一体化された要素として形成されている。好ましくは、プラスチック材料は透明であり、これはこの要素を非常に審美的にするだけでなく、それが、患者の肢、特に、血管穿刺部位の視界を妨げないので、この構成要素の医療的用途においても有用である。最も好ましい実施形態では、締付具30は、射出成形によってポリカーボネートで作製されている。その構造のおかげで、締付具30は、射出成形金型から容易に離型される。
【0036】
締付具30の移動、従って、装置1の圧迫制御は、締付具30とつまみ31との両方を備えるシステムにより可能となる。図5に示されるつまみ31は、好ましくは、一端の外径がハウジング300のドームの円形基部の直径のそれに対応する回転ナットとして形成されている。つまみ31は、内部開口部を備え、その表面には、雌ねじ312が設けられており、これは、装置が組み立てられたときに、中空本体2の雄ねじ付き要素21のねじ山と係合する。つまみ31の外壁は、円周方向に均等に配置されたポインタ311によって覆われている。ポインタ311は、つまみ31の回転に割り当てられた値を示す。数値がまた、ポインタ間に表示されて、装置1の圧迫力に関する追加の情報を提供し得る。つまみ31は、既に説明されたように、突出するつまみ支持要素301を通じて、締付具30と可動に係合する。つまみ31は、つまみ支持要素301及び案内要素302の全てが、つまみ31の開口部内に位置するように配置される。加えて、つまみ支持要素301は、つまみ31が締付具30から外れるのを防止し、一方、案内要素302は、中空本体2の雄ねじ付き要素の案内スロット27の阻止突起270と係合することによって、締付具30とつまみ31の両方が中空本体2から抜け落ちるのを防止する。
【0037】
つまみ31は、回転運動と往復運動の両方を行い、つまみ31の往復運動は、締付具30の往復運動を生じさせる。この往復運動は、患者の肢への装置1の圧迫力を調節する、圧迫制御機構3の移動である。つまみ31がその雌ねじ312でそれに対してねじ留めされる、中空本体2の雄ねじ付き要素21の雄ねじとの係合による、つまみ31の回転運動は、肢に対して垂直な圧迫制御機構3の往復運動を強いる。圧迫制御機構3のこのような移動は、装置1に対するストラップ4の圧迫を調節し、従って、患者の肢への装置1の圧迫を調整する。更に、つまみ31は、その上部領域において、周方向に位置する溝を有する。この溝には、歯310が設けられており、これは、好ましくは、歯車の歯のように形成されており、即ち、歯310は、凹部によって分離された突起部である。歯310は、締付具30のハウジング300内に配置されたリングばね32と相互作用し、つまみ31の回転時にクリック音を生成する。このクリック音は、つまみ31の回転が行われたことの音での確認であり、これは、装置1の圧迫に関する情報に更に対応する。
【0038】
装置1の他の要素と同様に、つまみ31の全ての縁部は、審美的な目的のためだけでなく、患者へのいかなる損傷も防止するために丸められている。更に、好ましい実施形態によれば、つまみ31は、プラスチック材料から形成されている。より好ましくは、それは、ポリ(エチレンテレフタレート)などの透明プラスチック材料から射出成形によって形成されている。この要素の透明性は、装置1の他の構成要素について既に説明したものと同じ理由で、有利である。
【0039】
橈側圧迫装置1には、締付具30とつまみ31とで構成された圧迫調整要素が設けられている。本発明の好ましい実施形態によれば、装置1には、圧迫制御を容易にするために、締付具30とつまみ31との変位を示すための手段が設けられている。本発明の好ましい実施形態では、つまみ31上に位置するポインタ311及び値インジケータとは別に、装置には、つまみ31の回転を示すための音の手段が設けられている。その目的のために、リングばね32が設けられている。リングばね32は、図6に示されるように、2つのセットの突出部、即ち、突起部320と阻止舌片321とを備える、リングの形状を有する。突起部320は、リングに沿って周方向に互いに対向して位置する。各突起部320は、リングを含む平面に対して垂直方向に延在する。リングばね32の突起部320は、つまみ31の歯310間の凹部と係合する。この係合は、つまみ31がいずれかの方向に回転されたときに、所望の可聴クリックを提供する。つまみが回転されると、回転の方向又は速度にかかわらず、突起部320は、つまみ31上の1つの凹部から別の凹部へと変位され、その際にクリック音が発せられる。第2のセットの突出部、即ち、阻止舌片321は、つまみ31が回転されたときに、リングばね32が回転するのを防止する。阻止舌片321は、リングの内径に沿って周方向に配置されている。本実施形態では、それらは、リングの平面内に位置し、リングばね32によって画定される円の中央に向かって延在する。図4bに示されるように、リングばね32は、締付具30のハウジング300内で、締付具30とつまみ31との間に配置され、2つのセットの突出部320、321によって両方と係合する。突起部320は、歯310間の凹部内でつまみ31と係合し、一方、阻止舌片321は、締付具30のハウジング300内で下方に突出するスタッド303間に配置されている。2つの隣接するスタッド303間の距離は、対応する阻止舌片321の幅に対応する。
【0040】
組み立てられた装置1において、リングばね32は、それがハウジング300の周壁に隣接するように、ハウジング300のドーム内に配置され、阻止舌片321は、ハウジング300の隣接するスタッド303間に挿入され、突起部320は、つまみ31の歯310の間の凹部に向かって下方に延在する。好ましい実施形態では、リングばね32は、突起部320を装備したその部分が、ばねリング32の平面からつまみ31の方向に突出するように曲げられている。更に、リングばね32は、プラスチック材料から形成されている。好ましい実施形態では、プラスチック材料は、リングばね32の所望の可撓性を確保するために弾性である。最も好ましい実施形態では、リングばね32は、ポリエーテルイミドで作製され、これは、リングばね32の可撓性及び耐久性の両方を提供する。リングばね32の使用は、それがクリック機構を提供すると同時に、装置1の寸法を増大させない(即ち、クリック機構が著しく小型化されている)ので、非常に有利である。
【0041】
上記で説明されたように、締付具30とつまみ31とを備える前述の圧迫制御機構3の移動は、患者の肢と締付具30との周りに延在するストラップ4を締め付ける又は緩めることを担う。このようにして、装置1は、肢の血管に加えられる圧迫力の容易な制御を提供する。つまみ31が回転されている間、それは、肢の表面に垂直な方向における圧迫制御機構3の往復運動を提供する。締付具30が上方移動すると、増大する張力がストラップ4に加えられ、それは順に、患者の肢への中空本体2の増大された圧迫を生成する。
【0042】
ストラップ4は、一体化された要素であり、即ち、それは、プラスチック材料の単一片から形成されている。好ましい実施形態では、ストラップ4はまた、滑り止め特性を有し、即ち、接触したときにその表面が互いに対して摺動しない。これはまた、装置1が患者の肢に適用されたとき、装置1の安定性を増大させる。好ましくは、ストラップ4は透明であり、即ち、それは、患者の肢の視界を妨げない。同時に、ストラップ4は弾性であり、患者の肢の周り及び装置1の上部にわたって巻き付けられ得る。図7に示されるように、ストラップ6は、1つのセクションから別のセクションへと移行する、3つのセクションに分割され得、即ち、ストラップ4の自由端から始まる幅の狭いストラップ部分41と、ストラップ4の中間部分を形成する幅の広いストラップ部分42と、中空本体2へのストラップ4の取り付けを提供する連結ストラップ部分43である。装置1が患者の肢に適用されるとき、幅の狭いストラップ部分41は、締付具30上に延在し、再び患者の肢の周りに巻き付けられる。従って、幅の狭いストラップ部分41の幅は、締付具30のストラップ案内部304の幅に対応する。幅の狭いストラップ部分41には、オプションで、ストラップ4の自由端の近傍に係止用ステッカー40が設けられており、これは、ストラップ4を折り畳まれた位置に固定するのに役立つ。
【0043】
幅の狭いストラップ部分41は、幅の広いストラップ部分42へと、好ましくは徐々に広がる。装置が患者の肢に適用されたとき、幅の広いストラップ部分42は、患者の肢の背側と接触する。このセクションにおけるストラップ4の増大された幅は、装置が肢に適用されるときに、患者の快適さ及び装置の安定性を増大させる。幅の広いストラップ部分42には、好ましくは、2つの案内縁部44が設けられ、これは、ストラップ4の縦方向に延在し、溝を形成している。案内縁部44間の距離は、装置1が肢に適用されるときに、案内縁部44間に形成された溝に受容される幅の狭いストラップ部分41の幅に対応する。案内縁部44は、ストラップ4が患者の肢の周りに巻き付けられたときに、幅の狭いストラップ部分41が、所定の位置に保持されることを確実にする。
【0044】
ストラップ4は、連結ストラップ部分43によって、中空本体2に連結されている。ストラップ4と中空本体2との間の連結は、それが締付具30の上方移動によって生成される張力に関連付けられた力に耐えるので、耐久性がある。本実施形態では、連結ストラップ部分43は、接続ストラップ部分43と、中空本体2の圧迫領域24との間に配置された接着剤5によって、中空本体2に連結されている。加えて、連結ストラップ部分43の接着剤5とは反対側の表面には、圧迫インセット45が設けられている(即ち、圧迫インセット45は、患者の肢に面している)。圧迫インセット45は、好ましくは、弾性材料から形成され、肢の所望の領域に追加の圧迫を提供する。
【0045】
好ましい実施形態による血管圧迫装置1は、図1a及び図1bに示されるように、中空本体2の主要な圧迫領域24を、圧迫を必要とする適切な血管上に配置することによって、肢に適用される。圧迫される血管又は本発明の装置が装着される肢にかかわらず、装置の適正な支持及びその位置を固定することを提供する安定化支持体20は、常に手首の中央に面する。例えば、装置が左手首に取り付けられ、橈骨動脈が圧迫される場合、支持体20は、手首中央の方向に突出する。装置は、中空本体2の管状の空間23によって、中空本体2を押圧することによって(例えば、管の基部26の内面を押圧することによって)肢に適用され、ストラップ4を肢の周り及び装置1自体の周りにも巻き付けることによって、固定及び締結される。ストラップ4の端部は、固定されており、その結果、ストラップ4の巻き戻りが防止される。好ましくは、ストラップ4の端部は、係止用ステッカー40などの接着剤によって固定される。このようにして、圧迫のいかなる偶発的な解除も防止される。
【0046】
要素のリスト:
1-血管圧迫装置
2-中空本体/管
20-支持体
200-支持体の支持脚
21-雄ねじ付き要素
22-中空本体の側壁
23-管状の空間
24-圧迫領域(即ち、長手方向基部の外面)
25-位置決め印
26-長手方向基部
27-案内スロット
270-阻止突起
3-圧迫制御機構
30-締付具
300-ハウジング
301-つまみ支持要素
302-案内要素
303-スタッド
304-ストラップ案内部
305-ストラップ案内部の長手方向リブ
31-つまみ
310-歯
311-ポインタ
312-雌ねじ
32-リングばね
320-突起部
321-阻止舌片
33-滑り止めインセット
4-ストラップ
40-ストラップの自由端における係止用ステッカー
41-幅の狭いストラップ部分
42-幅の広いストラップ部分
43-連結ストラップ部分
44-案内縁部
45-主圧迫インセット
5-ストラップを中空本体に固定するための接着剤
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図5a-5b】
図5c
図5d
図6a
図6b
図7
【国際調査報告】