(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-23
(54)【発明の名称】炭水化物および炭水化物混合組成物パターンの自動化高性能同定のための先進的方法、ならびにそのためのシステム、ならびに新しい蛍光色素に基づく、そのための多波長蛍光検出システムの較正のための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/447 20060101AFI20220516BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20220516BHJP
C09B 19/00 20060101ALI20220516BHJP
C09B 57/00 20060101ALI20220516BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20220516BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20220516BHJP
G01N 30/74 20060101ALI20220516BHJP
C08B 37/02 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
G01N27/447 315K
C09B67/20 F
C09B19/00
C09B57/00 Z
G01N21/64 F
G01N30/88 N
G01N30/74 F
C08B37/02
G01N27/447 331E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542185
(86)(22)【出願日】2019-01-21
(85)【翻訳文提出日】2021-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2019051351
(87)【国際公開番号】W WO2020151799
(87)【国際公開日】2020-07-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598165611
【氏名又は名称】マックス-プランク-ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】ラップ,エルトマン
(72)【発明者】
【氏名】ライヒル,ウド
(72)【発明者】
【氏名】ヘニッヒ,ルネ
(72)【発明者】
【氏名】ヘル,シュテファン・ヴェー
(72)【発明者】
【氏名】ベロフ,ウラジーミル
(72)【発明者】
【氏名】ビショッフ,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】マイネケ,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ローラ
(72)【発明者】
【氏名】コルマコフ,キリル
(72)【発明者】
【氏名】ミトロノーワ,ギュゼル
(72)【発明者】
【氏名】サビチェワ,エリザベータ
【テーマコード(参考)】
2G043
4C090
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043AA04
2G043BA14
2G043BA16
2G043CA03
2G043DA02
2G043EA01
2G043EA18
2G043EA19
2G043FA03
2G043FA07
2G043KA02
2G043KA09
4C090AA02
4C090AA08
4C090BA12
4C090BB12
4C090BB32
4C090BB36
4C090BB55
4C090BB62
4C090BB63
4C090BB64
4C090BB65
4C090BB77
4C090BB92
4C090DA12
4C090DA40
(57)【要約】
本発明は、例えば、複合炭水化物混合物からの炭水化物組成物の同定のため、ならびに新規蛍光色素を、(レーザー誘起)蛍光検出などの高感度検出を用いたキャピラリー(ゲル)電気泳動(C(G)E)または(超)高速液体クロマトグラフィー(U)HPLCなどの高速分離技術と組み合わせて使用して、正確かつ高度に再現可能な移動および保持時間の指標を決定するための、先進的な内部標準に基づく炭水化物混合組成物パターンの(例えば、グリコシル化パターンの)決定のための改善された(つまり、単純化された/より簡易な、より頑強かつより再現可能な)方法に関する。第一の態様では、本発明は、炭水化物および/または炭水化物混合組成物パターンプロファイリングの自動化された決定および/または同定のための方法、ならびに移動/保持時間アラインメント標準およびそれぞれ試料または様々な試料を標識するための少なくとも第1および第2の蛍光標識の使用に基づく自動化された炭水化物混合組成物パターンプロファイリングのための方法であって、その蛍光色素のうちの少なくとも1種が本明細書で定義される化合物である、方法に関する。さらに、本発明は、多波長蛍光検出システムの較正のための方法に関し、較正システムまたは較正標準および較正に好適な新しい化合物が記載される。本発明は、炭水化物混合組成物パターンを決定または同定するためのキットまたはシステム、ならびに炭水化物混合組成物パターンを決定および/または同定するためのキットまたはシステムにさらに関する。さらに、本発明による方法に使用するための、本明細書で定義される色素を含む炭水化物色素コンジュゲートが提供される。炭水化物色素コンジュゲートの色素は下記式AおよびBを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭水化物および/または炭水化物混合組成物パターンプロファイリングの自動化された決定および/または同定のための方法であって、以下のステップ:
a)少なくとも1種の炭水化物を含有する試料を得るステップと、
b)前記炭水化物を第1の蛍光標識で標識するステップと、
c)第2の蛍光標識で標識された既知組成の標準を用意するステップと、
d)動電/クロマトグラフィー分離技術を蛍光またはレーザー誘起蛍光検出と組み合わせて使用して、前記炭水化物および既知組成の標準の移動/保持時間を決定するステップと、
e)移動/保持時間を、標準の所与の標準移動/保持時間の指標に基づく移動/保持時間の指標にアラインするステップと、
f)炭水化物のこれらの移動/保持時間の指標をデータベースからの標準移動/保持時間の指標と比較するステップと、
g)炭水化物および/または炭水化物混合組成物パターンを同定または決定するステップと
を含み、
標準組成物が、未知の炭水化物および/または炭水化物混合組成物を含有する試料に添加され、第1の蛍光標識および第2の蛍光標識が異なり、第1の蛍光標識または第2の蛍光標識が、好ましくは、以下の一般式AおよびBの化合物:
【化1】
[式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5は、互いに独立しており、
H、CH
3、C
2H
5、直鎖状もしくは分枝状C
3~C
12、好ましくはC
3~C
6アルキルもしくはペルフルオロアルキル基、ホスホニル化アルキル基(CH
2)
mP(O)(OH)
2(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状もしくは分枝状アルキル鎖を有する)、(CH
2)
nCOOH(式中、n=1~12、好ましくは1~5)、または(CH
2)
nCOOR
6(式中、n=1~12、好ましくは1~5であり、R
6は、アルキル、特に、C
1~C
6、CH
2CN、ベンジル、フルオレン-9-イル、ポリハロゲノアルキル、ポリハロゲノフェニル、例えば、テトラもしくはペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、2-および4-ニトロフェニル、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリルもしくは他の潜在的に求核反応性の脱離基であってもよい)、スルホン酸アルキル((CH
2)
nSO
3H)もしくは硫酸アルキル((CH
2)
nOSO
3H)(式中、n=1~12、好ましくは1~5であり、いずれの(CH
2)
n中のアルキル鎖も直鎖状または分枝状であってもよい);
ヒドロキシアルキル基(CH
2)
mOHまたはチオアルキル基(CH
2)
mSH(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状もしくは分枝状アルキル鎖を有する)、リン酸化ヒドロキシアルキル基(CH
2)
mOP(O)(OH)
2(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状もしくは分枝状アルキル鎖を有する)を表してもよく;R
1またはR
2基のうちの一方は、(CH
2)
mOCOOR
7またはCOOR
7のカーボネートまたはカルバメート誘導体(式中、m=1~12、R
7=メチル、エチル、tert-ブチル、ベンジル、フルオレン-9-イル、CH
2CN、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリル、フェニル、置換フェニル基、例えば、2-または4-ニトロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル、2-ピリジル、4-ピリジル、ピリミド-4-イル);
(CH
2)
mNR
aR
b(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有し;R
a、R
bは、互いに独立しており、水素および/またはC
1~C
4アルキル基を表す)、ヒドロキシアルキル基(CH
2)
mOH(式中、m=2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する)、リン酸化ヒドロキシアルキル基(CH
2)
mOP(O)(OH)
2(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する);
アルキルアジド(CH
2)
mN
3(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する)であってもよく;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5は、末端アルキルオキシアミノ基(CH
2)
mONH
2(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有し、これは、1つまたは複数のアルキルアミノ(CH
2)
mNHまたはアルキルアミド(CH
2)
mCONH基を、すべての可能な組合せで含み得、m=0~12である);
(CH
2)
nCONHR
8(式中、n=1~12、好ましくは1~5;R
8=H、C
1~C
6アルキル、(CH
2)
mN
3または(CH
2)
m-N-マレイミド、(CH
2)
m-NH-COCH
2X(式中、X=BrまたはI)(m=1~12、好ましくは、2~6であり、(CH
2)n、(CH
2)
mおよびR
8中に直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する);
好ましくはR
1、R
2またはR
3として、アリールヒドラジンを形成する第一級アミノ基;
好ましくはR
2またはR
3として、アリールヒドロキシルアミンを形成するヒドロキシ基
を含有してもよく;
さらに、残基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5のうちの1つは、CH
2-C
6H
4-NH
2、COC
6H
4-NH
2、CONHC
6H
4-NH
2またはCSNHC
6H
4-NH
2(C
6H
4は、1,2-、1,3-または1,4-フェニレンである)、COC
5H
3N-NH
2またはCH
2-C
5H
3N-NH
2(C
5H
3Nは、ピリジン-2,4-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,6-ジイルまたはピリジン-3,5-ジイルである)を表してもよく;
さらに、R
2---R
3(R
4---R
5)は、4、5、6もしくは7員環、または第一級アミノ基NH
2、第二級アミノ基NHR
aを有するもしくは有さない4、5、6もしくは7員環(式中、R
a=この環の炭素原子の1つに結合したC
1~C
6アルキル、ヒドロキシル基OHまたはリン酸化ヒドロキシル基-OP(O)(OH)
2)を形成してもよく;
場合により、R
2---R
3(R
4---R
5)は、4、5、6または7員複素環(この複素環にはO、NまたはSなどのさらに1~3個のヘテロ原子が含まれる)を形成してもよく;
さらに、R
1は、非置換フェニル基、OH、SH、NH
2、NHR
a、NR
aR
b、R
aO、R
aS(式中、R
aおよびR
bは、互いに独立しており、直鎖状または分枝状炭素鎖を有するC
1~C
6アルキル基であってもよい)の組から選択される1つまたはいくつかの電子供与体置換基を有するフェニル基、NO
2、CN、COH、COOH、CH=CHCN、CH=C(CN)
2、SO
2R
a、COR
a、COOR
a、CH=CHCOR
a、CH=CHCOOR
a、CONHR
a、SO
2NR
aR
b、CONR
aR
b(式中、R
aおよびR
bは、互いに独立しており、Hまたは直鎖状もしくは分枝状炭素鎖を有するC
1~C
6アルキル基であってもよい)の組から選択される1つまたはいくつかの電子受容体を有するフェニル基を表してもよく;
またはR
1は、複素芳香族基を表してもよく;
ただし、上記式Aのすべての化合物において、塩基性条件、すなわち7<pH<14で、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3、4、5または6つの負荷電基が存在し、これらの負荷電基は、以下:SH、COOH、スルホン酸残基SO
3H、第一リン酸基OP(O)(OH)
2、第二リン酸基OP(O)(OH)R
a(式中、R
a=C
1~C
4アルキルまたは置換C
1~C
4アルキル)、第一ホスホン酸基P(O)(OH)
2、第二ホスホン酸基P(O)(OH)R
a(式中、R
a=C~C
4アルキルまたは置換C
1~C
4アルキル)から選択されるイオン性基の少なくとも部分的に脱プロトン化された残基を表し;
式Aの化合物は、塩、溶媒和物および水和物として存在し得、塩、溶媒和物および水和物として、好ましくは、Na
+、Li
+、K
+を含むアルカリ金属カチオンおよび有機アンモニウムまたは有機ホスホニウムカチオンとの塩として使用されてもよい];
【化2】
[式中、
R
1および/またはR
2は、互いに独立しており、
H、CH
3、C
2H
5、直鎖状もしくは分枝状C
3~C
12アルキルもしくはペルフルオロアルキル基、または置換C
2~C
612アルキル基;特に、(CH
2)
nCOOR
3(式中、n=1~12、好ましくは1~5であり、R
3は、H、アルキル、特にC
1~C
6、CH
2CN、ベンジル、フルオレン-9-イル、ポリハロゲノアルキル、ポリハロゲノフェニル、例えば、テトラ-またはペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、2-および4-ニトロフェニル、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリルまたは他の潜在的に求核反応性の脱離基であってもよく、(CH
2)
n中のアルキル鎖は直鎖状または分枝状であってもよい)を表してもよく;
R
1---R
2は、さらなる第一級アミノ基NH
2、第二級アミノ基NHR
aを有する4、5、6または7員非芳香族炭素環(式中、R
a=この環の炭素原子の1つに結合したC
1~C
6アルキル、またはヒドロキシル基OH)を形成してもよく;場合により、R
1---R
2は、4、5、6または7員非芳香族複素環(この複素環にはO、NまたはSなどのさらなるヘテロ原子が含まれる)を形成してもよく;
ヒドロキシアルキル基(CH
2)
mOH(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する);R
1またはR
2基のうちの一方は、カーボネートまたはカルバメート誘導体(CH
2)
mOCOOR
4またはCOOR
4(式中、m=1~12、R
4=メチル、エチル、2-クロロエチル、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリル、フェニル基または置換フェニル基、例えば、2-および4-ニトロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、2,3,5,6-テトラフルオロ-フェニル、2-ピリジルまたは4-ピリジル);
(CH
2)
mNR
aR
b(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有し;R
a、R
bは、互いに独立しており、Hまたは置換されていてもよいC
1~C
4アルキル基であってもよい)であってもよく、特にR
1またはR
2基のうちの一方は、アルキルアジド基(CH
2)
mN
3(式中、m=2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する)であってもよく;R
1またはR
2基のうちの一方は、(CH
2)
nSO
2NR
5NH
2(式中、n=1~12であり、置換基R
5は、H、アルキル、ヒドロキシアルキルまたはペルフルオロアルキル基C
1~C
12によって表されてもよい)であってもよく;
R
1またはR
2基のうちの一方は、アリールヒドラジンAr-NR
6NH
2(式中、Arは式Bの全ピレン残基であり、R
6=Hまたはアルキルである)を形成する第一級アミノ基であってもよく;
R
1またはR
2基のうちの一方は、アリールヒドロキシルアミンAr-NR
7OH(式中、Arは式Bの全ピレン残基であり、R
7=Hまたはアルキルである)を形成するヒドロキシ基であってもよく;
R
1またはR
2基のうちの一方は、末端アルキルオキシアミノ基(CH
2)
nONH
2(式中、n=1~12であり、これはすべての可能な組合せでの1つまたは複数のアルキルアミノ(CH
2)
mNH、アルキルアミド(CH
2)
mCONH、アルキルエーテルまたはエステル基を介して結合されていてもよく、m=0~12である)を含有してもよく;
R
1またはR
2基のうちの一方は、CO(CH
2)
nCOOR
8(式中、n=1~5であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖(CH
2)
nを有し、R
8は、H、直鎖状または分枝状C
1~C
6アルキル、CH
2CN、2-および4-ニトロフェニル、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾ-トリアゾリルから選択される)であってもよく;
さらに、R
1またはR
2のうちの一方は、(CH
2)
nCONHR
9(式中、n=1~5、R
9=H、C
1~C
6アルキル)、(CH
2)
mN
3、(CH
2)
m-N-マレイミド、(CH
2)
m-NHCOCH
2X(式中、X=BrまたはI)(m=2~6であり、(CH
2)nおよびR
9中に直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する)であってもよく;
または、R
1もしくはR
2のうちの一方は、CH
2-C
6H
4-NH
2、COC
6H
4-NH
2、CONHC
6H
4-NH
2もしくはCSNHC
6H
4-NH
2(C
6H
4は、1,2-、1,3-もしくは1,4-フェニレンである)、COC
5H
3N-NH
2もしくはCH
2-C
5H
3N-NH
2(C
5H
3Nは、ピリジン-2,4-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,6-ジイルもしくはピリジン-3,5-ジイルである)を表してもよく;またはR
1もしくはR
2のうちの一方は、アルキルアジド(CH)N
3もしくはアルキン、特にプロパルギルであってもよく;
リンカーLは、少なくとも1個の炭素原子を含み、任意の出現において、C
1~C
12の範囲の長さの直鎖状または分枝状の、アルキル、ヘテロアルキル、特にアルキルオキシ、例えば、CH
2OCH
2、CH
2CH
2O CH
2CH
2OCH
2、アルキルアミノまたはジアルキルアミノ、特にジエタノールアミンまたはN-メチル(アルキル)モノエタノールアミン部分、例えば、N(CH
3)CH
2CH
2O-およびN(CH
2CH
2O-)
2、単一または複数のジフルオロメチル(CF
2)などのペルフルオロアルキル、アルケンまたはアルキン部分を、任意の組合せで含んでもよく;
リンカーLはまた、アミド基の一部としても、カルボニル(CH
2CO、CF
2CO)部分を含んでもよく;
リンカーLはまた、1,3,5-トリアジンの残基を含むまたは含有して、したがって、基Xへの2つの結合点を提供してもよく;
Xは、特に、ヒドロキシアルキル(CH
2)
nOH、チオアルキル((CH
2)
nSH)、カルボキシアルキル((CH
2)
nCO
2H)、スルホン酸アルキル((CH
2)
nSO
3H)、硫酸アルキル((CH
2)
nOSO
3H)、リン酸アルキル((CH
2)
nOP(O)(OH)
2)もしくはホスホン酸アルキル((CH
2)
nP(O)(OH)
2)(式中、nは、0~12の範囲の整数である)、またはその類似体を含む群から選択される部分からなるまたはそれらを含む可溶化および/またはイオン性アニオン提供部分を示し、CH
2基の1つまたは複数がCF
2によって交換されており、
さらに、アニオン提供部分は、非芳香族O、NおよびS含有複素環、例えば、ピペラジン、ピペコリンによって結合されていてもよく、または代替的に基Xのうちの1つは、基R
1およびR
2について上で列挙した部分のうちの任意のものを、また基Lについて列挙した任意の種類の結合と共に、他の置換基とは独立して有していてもよく、
式Bの化合物は、塩、溶媒和物および水和物として存在し得、塩、溶媒和物および水和物として、好ましくは、Na
+、Li
+、K
+を含むアルカリ金属カチオンおよび有機アンモニウムとの塩として使用されてもよく、
ただし、式Bによって表されるすべての化合物において、塩基性条件下、すなわち7<pH<14で、式Bの残基Xに3または6つの負荷電基が存在し、これらの負荷電基は、以下:SH、COOH、SO
3H、OP(O)(OH)
2、OP(O)(OH)R
a(式中、R
a=C
1~C
4アルキルまたは置換C
1~C
4アルキル)、P(O)(OH)
2、P(O)(OH)R
a(式中、R
a=C
1~C
4アルキルまたは置換C
1~C
4アルキルがもたらされる)から選択されるイオン性基の少なくとも部分的に脱プロトン化された残基を表し;
式Bの化合物は、塩、溶媒和物および水和物として存在し得、塩、溶媒和物および水和物として、好ましくは、Na
+、Li
+、K
+を含むアルカリ金属カチオンおよび有機アンモニウムまたは有機ホスホニウムカチオンとの塩として使用されてもよい]
からなる群から選択される、好ましくは多重イオン性および/または負荷電基を有する蛍光色素である、方法。
【請求項2】
既知組成の標準が、標準塩基対ラダーおよび/または既知の炭水化物混合組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
自動化された炭水化物混合組成物パターンプロファイリングのための方法であって、以下のステップ
a)第1の炭水化物混合組成物を含有する第1の試料を用意するステップと、
b)前記炭水化物混合組成物を第1の蛍光標識で標識するステップと、
c)第2の蛍光標識で標識された第2の炭水化物混合組成物を含有する第2の試料を用意するステップであり、第2の試料を場合により前記第1の試料に添加してもよいステップと、
d)動電/クロマトグラフィー分離技術を蛍光またはレーザー誘起蛍光検出と組み合わせて使用して、前記試料の炭水化物混合組成物の電気泳動図/クロマトグラムを生成するステップと、
e)第1および第2の試料の炭水化物混合組成物パターンプロファイルの同一性および/またはそれらの間の差を分析するステップと
を含み、
第1の試料の第1の蛍光標識が、第2の試料の第2の蛍光標識とは異なり、第1の蛍光標識および第2の蛍光標識のうちの少なくとも1種が、請求項1に定義される蛍光色素である、方法。
【請求項4】
以下のステップ
a)第1の炭水化物混合組成物を含有する試料を用意するステップと、
b)前記炭水化物混合組成物を第1の蛍光標識で標識するステップと、
c)比較しようとする、第2の炭水化物混合組成物を含有する第2の蛍光標識で標識された第2の試料を用意するステップと、
d)動電/クロマトグラフィー分離技術を蛍光またはレーザー誘起蛍光検出と組み合わせて使用して、第1および第2の試料の炭水化物混合組成物の電気泳動図/クロマトグラムを生成するステップと、
e)第1の試料および第2の試料の得られた電気泳動図/クロマトグラムから計算した標準移動/保持時間の指標を比較するステップと、
f)第1および第2の試料の炭水化物混合組成物パターンプロファイルの同一性および/またはそれらの間の差を分析するステップと
を含み、試料中に存在する炭水化物の標準移動/保持時間の指標が、第3の蛍光標識で標識された既知組成の内部標準に基づいて計算され、第1または第2の蛍光標識のうちの1種が、請求項1に定義される蛍光色素である、請求項3に記載の自動化された炭水化物混合組成物パターンプロファイリングのための方法。
【請求項5】
少なくとも2つの直交標準が、試料に添加され、直交クロスアラインメントが、少なくとも2つの直交標準の所与の標準移動/保持時間の指標に基づいて実施される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
試料が、炭水化物の混合物を含有する、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
試料が、グリカンの抽出物であり、方法が、グリコシル化パターンプロファイルの同定を可能にする、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
糖タンパク質のグリコシル化パターンが同定される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
炭水化物混合物の成分が、定量的に決定される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
アクリドンおよび/またはピレン系蛍光色素を用いた多波長蛍光検出システム、特に、キャピラリーゲル電気泳動システムの較正のための方法であって、アクリドンおよび/またはピレン系蛍光色素が、場合により炭水化物を含む基質部分とのコンジュゲートとして存在してもよく、
方法が、好ましくは以下のスキームに示される化合物:APTS、6-R、8-H、15、19、20、23または23b:
【化3】
のうちの少なくとも1種を含む、異なる波長で発光する追加の蛍光色素およびその炭水化物コンジュゲートと一緒に、請求項1に定義される式AまたはBによる化合物のうちの少なくとも1種を検出することを含む、方法。
【請求項11】
場合により炭水化物を含む基質部分とのコンジュゲートとして存在してもよいアクリドンおよび/またはピレン系色素が、APTS、6-H、19および20、またはAPTS、6-Me、19および20、または15、6-Me、19および20、またはAPTS、15、19および20、またはAPTS、15、6-Meおよび20、またはAPTS、8-H、6-Meおよび19、またはAPTS、8-H、6-Meおよび20、またはAPTS、8-H、19および20、またはAPTS、23、19および20、またはAPTS、15、6-Meおよび19、またはAPTS、23、6-Meおよび19、またはAPTS、23、6-Meおよび20、または23、6-Me、19および20、またはAPTS、8-H、6-Me、20および19、またはAPTS、15、6-Me、20および19、またはAPTS、23、6-Me、20および19、またはAPTS、8-H、6-H、20および19、またはAPTS、15、6-H、20および19、またはAPTS、23、6-H、20および19の組合せを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
式Bの蛍光色素が、以下の式C(式中、n=0~12)
【化4】
[式中、
R
1および/またはR
2は、互いに独立しており、
H、CH
3、C
2H
5、直鎖状もしくは分枝状C
3~C
12、好ましくはC
3~C
6アルキル基、または置換C
2~C
12、好ましくはC
2~C
6アルキル基;特に、(CH
2)
nCOOR
3(式中、n=1~12、好ましくは1~5であり、R
3は、H、CH
2CN、2-および4-ニトロフェニル、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリルであってもよく、(CH
2)
n中のアルキル鎖は、直鎖状または分枝状であってもよい)を表してもよく;
R
1---R
2は、さらなる第一級アミノ基NH
2、第二級アミノ基NHR
aを有する4、5、6または7員非芳香族炭素環(式中、R
a=この環の炭素原子の1つに結合したC
1~C
6アルキル、またはヒドロキシル基OH)を形成してもよく;場合により、R
1---R
2は、4、5、6または7員非芳香族複素環(この複素環にはO、NまたはSなどのさらなるヘテロ原子が含まれる)を形成してもよく;
ヒドロキシアルキル基(CH
2)
mOH(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する);R
1またはR
2基のうちの一方は、カーボネートまたはカルバメート誘導体(CH
2)
mOCOOR
4またはCOOR
4(式中、m=1~12、R
4=メチル、エチル、2-クロロエチル、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリル、フェニル基または置換フェニル基、例えば、2-および4-ニトロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、2,3,5,6-テトラフルオロ-フェニル、2-ピリジルまたは4-ピリジル);
(CH
2)
mNR
aR
b(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有し;R
a、R
bは、互いに独立しており、Hまたは置換されていてもよいC
1~C
4アルキル基であってもよい)であってもよく、特にR
1またはR
2基のうちの一方は、アルキルアジド基(CH
2)
mN
3(式中、m=2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する)であってもよく;
R
1またはR
2基のうちの一方は、(CH
2)
nCOOR
5(式中、n=1~5であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖(CH
2)
nを有し、R
5は、H、直鎖状または分枝状C
1~C
6アルキル、CH
2CN、2-および4-ニトロフェニル、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、スルホ-N-スクシンイミジル、N-スクシンイミジル、または1-オキシベンゾトリアゾリルから選択される)であってもよく;
さらに、R
1もしくはR
2のうちの一方は、(CH
2)
nCONHR
6(式中、n=1~12、好ましくは1~5、R
6=H、C
1~C
6アルキル、(CH
2)
mN
3、(CH
2)
m-N-マレイミド、(CH
2)
m-NHCOCH
2X(式中、X=BrまたはI)(m=2~6であり、(CH
2)nおよびR
6中に直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する)であってもよく;またはR
1もしくはR
2のうちの一方は、CH
2-C
6H
4-NH
2、COC
6H
4-NH
2、CONHC
6H
4-NH
2もしくはCSNHC
6H
4-NH
2(C
6H
4は、1,2-、1,3-もしくは1,4-フェニレンである)、COC
5H
3N-NH
2もしくはCH
2-C
5H
3N-NH
2(C
5H
3Nは、ピリジン-2,4-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,6-ジイルもしくはピリジン-3,5-ジイルである)を表してもよく;
R
1またはR
2基のうちの一方は、アリールヒドラジンAr-NR
6NH
2(式中、Arは式Cの全ピレン残基であり、R
7=Hまたはアルキル)を形成する第一級アミノ基であってもよく;
R
1またはR
2基のうちの一方は、アリールヒドロキシルアミンAr-NR
8OH(式中、Arは式Cの全ピレン残基であり、R
7=Hまたはアルキル)を形成するヒドロキシ基であってもよく;
R
1またはR
2基のうちの一方は、末端アルキルオキシアミノ基(CH
2)
nONH
2(式中、n=1~12であり、これは、すべての可能な組合せで1つまたは複数のアルキルアミノ(CH
2)
mNH、アルキルアミド(CH
2)
mCONH、アルキルエーテルまたはアルキルエステル基を介して結合されていてもよく、m=0~12である)を含有してもよく;
式BのSO
2断片と残基X間の(CH
2)n-CH
2リンカー(式中、n=1~5)は、2~6個の炭素原子を有する直鎖、分枝状または環式基を表してもよく;
X=SH、COOH、SO
3H、OP(O)(OH)
2、OP(O)(OH)R
a(式中、R
a=置換されていてもよいC
1~C
4アルキル)、P(O)(OH)
2、P(O)(OH)R
a(式中、R
a=置換されていてもよいC
1~C
4アルキル)であり;
ただし、式Cによって表されるすべての化合物において、塩基性条件下、すなわち7<pH<14で、式Bの残基Xに3または6つの負荷電基が存在し、これらの負荷電基は、以下:SH、COOH、SO
3H、OP(O)(OH)
2、OP(O)(OH)R
a(式中、R
a=C
1~C
4アルキルまたは置換C
1~C
4アルキル)、P(O)(OH)
2、P(O)(OH)R
a(式中、R
a=C
1~C
4アルキルまたは置換C
1~C
4アルキル)から選択されるイオン性基の少なくとも部分的に脱プロトン化された残基を表し;
式Cの化合物は、塩、溶媒和物および水和物として存在し得、塩、溶媒和物および水和物として、好ましくは、Na
+、Li
+、K
+を含むアルカリ金属カチオンおよび有機アンモニウムまたは有機ホスホニウムカチオンとの塩として使用されてもよい]
を有する色素である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
式Bの蛍光色素が、以下の式D
【化5】
[式中、
R
1および/またはR
2は、互いに独立しており、H、CH
3、C
2H
5または直鎖状もしくは分枝状の置換されていてもよいC
3~C
12、好ましくはC
3~C
6アルキル基;特に、(CH
2)
nCOOR
4(式中、n=1~12、好ましくは1~5であり、R
4は、H、CH
2CN、2-および4-ニトロフェニル、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリルであってもよく、(CH
2)
n中のアルキル鎖は、直鎖状または分枝状であってもよい)を表してもよく;
R
1---R
2は、さらなる第一級アミノ基NH
2、第二級アミノ基NHR
aを有する4、5、6または7員非芳香族炭素環(式中、R
a=この環の炭素原子の1つに結合した、置換されていてもよいC
1~C
6アルキル、またはヒドロキシル基OHである);または場合により、R
1---R
2は、4、5、6または7員非芳香族複素環(この複素環にはO、NまたはSなどのヘテロ原子が含まれる)を形成してもよく;
R
1および/またはR
2は、
ヒドロキシアルキル基(CH
2)
mOH(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状の置換されていてもよいアルキル鎖を有する)をさらに表してもよく;R
1またはR
2基の一方は、カーボネートまたはカルバメート誘導体(CH
2)
mOCOOR
5またはCOOR
5(式中、m=1~12、R
5=メチル、エチル、2-クロロエチル、CH
2CN、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリル、フェニル基または置換フェニル基、例えば、2-および4-ニトロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロ-フェニル、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル、2-ピリジル、4-ピリジル);
(CH
2)
mN
3(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する);
(CH
2)
nCONHR
6(式中、n=1~12、好ましくは1~5、R
6=H、置換または非置換C
1~C
6アルキル、(CH
2)
mN
3、(CH
2)m-N-マレイミド、(CH
2)m-NHCOCH
2Y(Y=Br、I)(m=1~12、好ましくは2~6であり、(CH
2)nおよびR
6中に直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する)であってもよく;
R
1またはR
2基のうちの一方は、アリールヒドラジンAr-NR
7NH
2(式中、Arは式Dの全ピレン残基であり、R
7=Hまたはアルキル)を形成する第一級アミノ基であってもよく;
R
1またはR
2基のうちの一方は、アリールヒドロキシルアミンAr-NR
8OH(式中、Arは式Dの全ピレン残基であり、R
8=Hまたはアルキル)を形成するヒドロキシ基であってもよく;
R
1またはR
2基のうちの一方は、末端アルキルオキシアミノ基(CH
2)
nONH
2(式中、n=1~12であり、これは、m=0~12のすべての可能な組合せの1つまたは複数のアルキルアミノ(CH
2)
mNH、アルキルアミド(CH
2)
mCONH、アルキルエーテルまたはアルキルエステル基を介して結合されていてもよい)を含有してもよく;
さらに、R
1またはR
2は、CH
2-C
6H
4-NH
2、COC
6H
4-NH
2、CONHC
6H
4-NH
2またはCSNHC
6H
4-NH
2(C
6H
4は、1,2-、1,3-または1,4-フェニレンである)、COC
5H
3N-NH
2またはCH
2-C
5H
3N-NH
2(C
5H
3Nは、ピリジン-2,4-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,6-ジイルまたはピリジン-3,5-ジイルである)を表してもよく;
R
3=H、(CH
2)
qCH
2X、C
2H
5、直鎖状または分枝状C
3~C
6アルキル基、C
mH
2mOR(式中、m=2~6であり、直鎖状または分枝状アルカン-ジイル鎖C
mH
2mを有し、R=H、CH
3、C
2H
5、C
3H
7、CH
3(CH
2CH
2O)
kCH
2CH
2(k=1~12)であり;一方、(CH
2)
qCH
2リンカーは、2~6個の炭素原子を有する直鎖、分枝状または環式基を表してもよい)であり;
式Dにおいて、スルホンアミド断片SO
2Nと残基X間の(CH
2)
n-CH
2リンカー(式中、n=1~12、好ましくは1~5)は、2~6個の炭素原子を有する直鎖、分枝状または環式基を表してもよく;
X=SH、COOH、SO
3H、OP(O)(OH)
2、OP(O)(OH)R
a(式中、R
a=置換または非置換C
1~C
4アルキル)、P(O)(OH)
2、P(O)(OH)R
a(式中、R
a=置換または非置換C
1~C
4アルキル)であり;
ただし、式Dによって表されるすべての化合物において、塩基性条件下、すなわち7<pH<14で、式Cの残基Xに3、6、9または12個の負荷電基が存在し、これらの負荷電基は、以下:SH、COOH、SO
3H、OP(O)(OH)
2、OP(O)(OH)R
a(式中、R
a=C
1~C
4アルキルまたは置換C
1~C
4アルキル)、P(O)(OH)
2、P(O)(OH)R
a(式中、R
a=C
1~C
4アルキルまたは置換C
1~C
4アルキル)から選択されるイオン性基の少なくとも部分的に脱プロトン化された残基を表し;
式Dの化合物は、塩、溶媒和物および水和物として存在し得、塩、溶媒和物および水和物として、好ましくは、Na
+、Li
+、K
+を含むアルカリ金属カチオンおよび有機アンモニウムまたは有機ホスホニウムカチオンとして使用されてもよい]
を有する色素である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
式BまたはDのR
1および/またはR
2が、H、重水素、アルキルまたは重水素置換アルキル(アルキル基の1個、いくつかまたはすべてのH原子は、重水素原子によって交換されていてもよい)、特に、1~12個のC原子、好ましくは1~6個のC原子を有するアルキルまたは重水素アルキル、4,6-ジハロ-1,3,5-トリアジニル(C
3N
3X
2)(ハロゲンXは、好ましくは、塩素である)、2-、3-または4-アミノベンゾイル(COC
6H
4NH
2)、N-[(2-、N-[(3-またはN-[(4-アミノフェニル)ウレイド基(NHCONHC
6H
4NH
2)、N-[(2-、N-[(3-またはN-[(4-アミノフェニル)チオウレイド基(NHCSNHC
6H
4NH
2、または一般式(CH
2)
m1COOR
3、(CH
2)
m1OCOOR
3(CH
2)
n1COOR
3もしくは(CO)
m1(CH
2)
m2(CO)
n1(NH)
n2(CO)
n3(CH
2)
n4COOR
3の結合カルボン酸残基およびその反応性エステル(整数m1、m2およびn1、n2、n3、n4は、独立して、それぞれ1~12および0~12の範囲であり、鎖(CH
2)
m/nは、直鎖状、分枝状、飽和、不飽和、部分もしくは完全重水素化であるおよび/またはN、OもしくはSを含有する炭素環もしくは複素環に含まれ、R
3は、H、Dまたは求核反応性脱離基であり、好ましくは、これらに限定されないが、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリル、シアノメチル、ポリハロゲノアルキル、ポリハロゲノフェニル、例えば、テトラ-またはペンタフルオロフェニル、2-または4-ニトロフェニルを含む)を表す、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
式A~Dの化合物が、
【化6】
もしくは7-R(R=H、Me)、13a、13b、16、18、23および23bの化合物
【化7】
またはその塩から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
炭水化物混合組成物パターンを決定および/または同定するためのキットまたはシステムであって、不揮発性メモリを有するデータ処理ユニットを含み、前記メモリがデータベースを含有し、前記データベースが、炭水化物のアラインされた移動/保持時間および/またはアラインされた移動/保持時間の指標を含有し、前記移動/保持時間および/または移動/保持時間の指標が、炭水化物の自動化された決定および/もしくは同定ならびに/または炭水化物の同定ならびに/または炭水化物混合組成物パターンプロファイリングによって得られ、炭水化物の自動化された決定および/もしくは同定ならびに/または炭水化物の同定ならびに/または炭水化物混合組成物パターンプロファイリングが、以下のステップ:
a)少なくとも1種の炭水化物を含有する試料を得るステップと、
b)前記炭水化物を第1の蛍光標識で標識するステップと、
c)第2の蛍光標識で標識された既知組成の標準を用意するステップと、
d)動電/クロマトグラフィー分離技術を蛍光またはレーザー誘起蛍光検出と組み合わせて使用して、前記炭水化物および既知組成の標準の移動/保持時間を決定するステップと、
e)移動/保持時間を、標準の所与の標準移動/保持時間の指標に基づく移動/保持時間の指標にアラインするステップと、
f)炭水化物のこれらの移動/保持時間の指標をデータベースからの標準移動/保持時間の指標と比較するステップと、
g)炭水化物および/または炭水化物混合組成物パターンを同定または決定するステップと
を含み、
標準組成物が、未知の炭水化物混合組成物を含有する試料に添加され、第1の蛍光標識および第2の蛍光標識が異なり、第1の蛍光標識または第2の蛍光標識が、好ましくは、請求項1および12から15のいずれか一項に定義される一般式A~Dの化合物からなる群から選択される複数のイオン性および/または負荷電基を有する蛍光色素、ならびに請求項1および12から15のいずれか一項に定義される蛍光色素である、キットまたはシステム。
【請求項17】
自動化された炭水化物混合組成物パターンプロファイリングのためのキットまたはシステムであって、不揮発性メモリを有するデータ処理ユニットを含み、前記メモリがデータベースを含有し、前記データベースが、炭水化物のアラインされた移動/保持時間および/またはアラインされた移動/保持時間の指標を含有し、前記移動/保持時間および/または移動/保持時間の指標が、炭水化物の自動化された決定および/もしくは同定ならびに/または炭水化物の同定ならびに/または炭水化物混合組成物パターンプロファイリングによって得られ、炭水化物の自動化された決定および/もしくは同定ならびに/または炭水化物の同定ならびに/または炭水化物混合組成物パターンプロファイリングが、以下のステップ:
a)未知の炭水化物混合組成物を含有する第1の試料を用意するステップと、
b)前記炭水化物混合組成物を第1の蛍光標識で標識するステップと、
c)第2の蛍光標識で標識された既知の炭水化物混合組成物パターンを有する第2の試料を前記第1の試料に添加するステップと、
d)動電/クロマトグラフィー分離技術を蛍光またはキャピラリーゲル電気泳動レーザー誘起蛍光などのレーザー誘起蛍光検出と組み合わせて使用して、前記試料の炭水化物混合組成物の電気泳動図/クロマトグラムを生成するステップと、
e)第1および第2の試料の炭水化物混合組成物パターンプロファイルの同一性および/またはそれらの間の差を分析するステップと
を含み、
第1の試料の第1の蛍光標識が、第2の試料の第2の蛍光標識とは異なり、第1の蛍光標識および第2の蛍光標識のうちの少なくとも1種が、請求項1および12から15のいずれか一項に定義される蛍光色素、ならびに請求項1および12から15のいずれか一項に定義される蛍光色素である、キットまたはシステム。
【請求項18】
キャピラリーゲル電気泳動-レーザー誘起蛍光装置をさらに含み、特に、キャピラリーゲル電気泳動-レーザー誘起蛍光装置が、キャピラリーDNAシーケンサーである、請求項16または17に記載のキットまたはシステム。
【請求項19】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法に使用するための、請求項1および12から15のいずれか一項に定義される蛍光色素を含む炭水化物色素コンジュゲート。
【請求項20】
色素が、以下の式の化合物
【化8】
から選択される、請求項19に記載の炭水化物色素コンジュゲート。
【請求項21】
請求項1および12から15のいずれか一項に定義される色素のうちの1種もしくは複数、または請求項19もしくは20に記載の炭水化物色素コンジュゲートのうちの1種もしくは複数を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法に使用するためのキットまたは組成物。
【請求項22】
炭水化物とコンジュゲートしていてもよい、式A、B、CまたはDによる蛍光色素を含み、場合により、化合物19、20のうちの少なくとも1種をさらに含む、オリゴ糖標準などの較正標準。
【請求項23】
請求項22に記載の較正標準および場合により使用説明書を含有する、キット。
【請求項24】
式20
【化9】
を有する化合物。
【請求項25】
式AまたはBによる蛍光色素、特に式CもしくはDの蛍光色素または式A~Dの異なる色素で標識された化合物で構成される標準組成物。
【請求項26】
式AまたはBによる蛍光色素、特に式CもしくはDの蛍光色素または式A~Dの異なる色素で標識された炭水化物で構成される、請求項25に記載の標準組成物。
【請求項27】
蛍光色素が、6-H、6-Me、8-R、15、13a、13b、16、18、23および23bから選択される少なくとも1種の色素である、請求項25または26に記載の標準組成物。
【請求項28】
特に、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法に使用するための、請求項25から27のいずれか一項に記載の標準組成物、および場合により使用説明書を含有するキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複合炭水化物混合物からの炭水化物組成物の同定のため、ならびに新規蛍光色素を、(レーザー誘起)蛍光検出などの高感度検出を用いたキャピラリー(ゲル)電気泳動(C(G)E)または(超)高速液体クロマトグラフィー(U)HPLCなどの高性能分離技術と組み合わせて使用して、正確かつ高度に再現可能な移動時間および保持時間の指標を決定するための、先進的な内部標準に基づく炭水化物混合組成物パターンの(例えば、グリコシル化パターンの)決定のための改善された(つまり、単純化された/より簡易な、より頑強かつより再現可能な)方法に関する。
【0002】
第一の態様では、本発明は、炭水化物および/または炭水化物混合組成物パターンプロファイリングの自動化された決定および/または同定のための方法、ならびに移動/保持時間アラインメント標準およびそれぞれ試料または様々な試料を標識するための少なくとも第1および第2の蛍光標識の使用に基づく自動化された炭水化物混合組成物パターンプロファイリングのための方法であって、その蛍光色素のうちの少なくとも1種が本明細書で定義される化合物である、方法に関する。
【0003】
さらに、本発明は、多波長蛍光検出システムの較正のための方法に関し、較正システムまたは較正標準および較正に好適な新しい化合物が記載される。
本発明は、炭水化物混合組成物パターンを決定または同定するためのキットまたはシステム、ならびに炭水化物混合組成物パターンを決定および/または同定するためのキットまたはシステムにさらに関する。さらに、本発明による方法に使用するための、本明細書で定義される色素を含む炭水化物色素コンジュゲートが提供される。
【背景技術】
【0004】
多くの生物学的プロセスにおけるグリコシル化の重要性は一般に認められており、数十年にわたる議論は文献中にある。グリコシル化は、真核細胞におけるタンパク質の一般的で高度に多様な翻訳後修飾である。種々の細胞プロセスは、タンパク質表面の炭水化物に関して記載されてきた。タンパク質安定性、タンパク質フォールディングおよびプロテアーゼ抵抗性におけるグリカンの重要性は、文献において実証されている。さらに、細胞シグナル伝達、制御および発生プロセスにおけるグリカンの役割は、当技術分野において実証されている。
【0005】
炭水化物は、キシロース アラビノース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、フコース、N-アセチルグルコースアミン、シアル酸などの単糖;ラクトース、スクロース、マルトース、セロビオースなどの(ホモまたはヘテロ)二糖;グリカン(例えば、N-およびO-グリカン)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、フラクトオリゴ糖(FOS)、ミルクオリゴ糖(MOS)またはさらには糖脂質の糖部分などの(ホモまたはヘテロ)オリゴ糖;ならびにアミロース、アミロペクチン、セルロース、グリコーゲン、グリコサミノグリカンまたはキチンなどの多糖類に関する総称である。オリゴ糖および多糖は、直鎖状または(多)分枝状のいずれであってもよい。
【0006】
複合糖質は、炭水化物(グリコン)が非炭水化物部分(アグリコン)に結合した化合物である。典型的には、アグリコンは、タンパク質または脂質のいずれかであり、したがって、複合糖質は、それぞれ、糖タンパク質または糖脂質と呼ばれる。より一般的な意味では、複合糖質とは、タンパク質、ペプチド、脂質またはさらには糖類を含む任意の他の化学実体に共有結合した炭水化物を意味する。
【0007】
複合糖質は、自然界における構造的および機能的に最も多様な分子に相当する。ヌクレオチドおよび単一糖部分で構成される単純な複合糖質に始まり、並外れて複雑な複数回グリコシル化されたタンパク質まで。複合糖質中の最も一般的な炭水化物部分は、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、マンノース、ガラクトース、フコース、グルコースならびにキシロースおよびシアル酸およびリン酸化または硫酸化された変形を含むその変形を含むごくわずかな単糖で濃縮され、構造多様性は、タンパク質またはDNAの構造多様性よりもはるかに大きいと考えられる。
【0008】
この多様性の理由は、アノマーの存在、および単糖が分枝して異なるグリコシル結合を構築できることである。したがって、比較的短鎖長のオリゴ糖は、多数の構造異性体を有し得る。テンプレートとしてRNAに基づくタンパク質生合成とは対照的に、ゲノムからグライコームへの情報の流れは、複雑であることに加え、テンプレート駆動型のプロセスではない。例えば、グリカン生合成におけるタンパク質の同時翻訳修飾および翻訳後修飾は、酵素反応に基づく。グリカン生合成に起因して、グリカンの複雑さおよび構造多様性の劇的な増加が存在する。特に、「グリカン」という用語は、用語グリコンと同義に使用され、いずれも複合糖質の炭水化物部分を指す。
【0009】
さらに、グリカン、オリゴ糖および多糖という用語は、同義に使用されて、「ある数(中程度から多数)のグリコシド結合した単糖の部分を有する化合物」を指す。タンパク質において、オリゴ糖は、N-(Asnを介した)またはO-(SerもしくはThrを介した)グリコシド結合のいずれかによって、主にタンパク質主鎖に結合し、一方、N-グリコシル化は、糖タンパク質に見出されるより一般的な型を表す。グリコシル化部位の占有度の変動(マクロ不均質性)、および1つのグリコシル化部位に結合したこれらの複合糖残基の変動(ミクロ不均質性)の結果、異なるタンパク質グリコフォームの組が生じる。これらは、異なる物理および生化学特性を有し、その結果、糖タンパク質のさらなる機能多様性をもたらす。例えば、哺乳動物細胞培養物における治療タンパク質の製造において、マクロおよびミクロ不均質性はタンパク質の特性に影響することが示された。例えば、モノクローナル抗体の治療プロファイルへのグリコシル化プロファイルの関連性は、十分研究されている。中でも、グリカン構造、特にN-グリカン構造はまた、基質レベルおよび他の培養条件などの製造プロセスの間の種々の因子に依存する。したがって、糖タンパク質製造は、宿主細胞のグリコシル化機序だけでなく、培養条件および細胞外環境などの外部パラメーターに依存する。さらに、培養物生成におけるグリコシル化を行うパラメーターとしては、温度、pH、通気、基質の供給またはアンモニアおよびラクテートなどの副生成物の蓄積が挙げられる。例えば、医薬の分野において、調整の理由に起因して薬物のグリコシル化プロファイルが決定されなくてはならないため、グリコシル化プロファイルは、特に関心の対象である。
【0010】
食品および医薬品産業においてもまた、様々な種類の複合糖質の有益な効果、つまり、栄養学的効果および/または生物学的効果を有することへの関心が高まっている。今日、合成により、または植物もしくはヒト乳もしくは動物乳などの天然源から得られる、複合可溶性炭水化物混合物だけでなくオリゴマーおよび/またはポリマー炭水化物混合物が、栄養添加剤として、または医薬品において使用されている。これらの複合天然炭水化物内でのシアル酸またはシアル酸誘導体の出現、およびリン酸基、硫酸基またはカルボキシル基を有する単糖の出現は、その複雑度をさらに増加させている。この複雑度のために、栄養学的効果および/または生物学的効果を有し得る、中性または酸性ガラクト-オリゴ糖、長鎖フルクト-オリゴ糖または(ヒト)ミルクオリゴ糖((H)MOS)などのプレバイオティックオリゴ糖または多糖への関心が、食品および医薬品産業において高まっている。
【0011】
特定の条件下で細胞が生成する遊離炭水化物および複合糖質の完全な組を意味するグライコームの構造特徴を説明し、その機能、ならびにDNAおよびタンパク質機序とのその対の役割を理解するために、分析技術による高速、頑強かつ高分解能が利用できなくてはならない。
【0012】
糖タンパク質、グリコペプチドおよび放出されるN-グリカンまたはO-グリカンを含む複合糖質を分析するための広範囲の戦略および分析技術が確立されている。例えば、多種多様なオリゴ糖を含有する複合試料は、クロマトグラフィー技術または動電技術によって分離できる。これらの技術としては、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)および逆相イオン対クロマトグラフィー(RPIPC)、ならびに多孔質黒鉛化炭素クロマトグラフィー(PGC)などのクロマトグラフィー技術が挙げられる。さらに、複合糖質から誘導された炭水化物を含む複合分子の構造データは、質量分析(MS)または核磁気共鳴分光(NMR)のいずれかによって分析され、これらは、一般に、試料調製およびデータ解釈に関して、面倒で時間を要する技術である。例えば、液体クロマトグラフィー(LC)とNMRもしくはMSの組合せ、またはキャピラリー電気泳動(CE)とMSもしくはNMRの組合せなどのいくつかの技術の組合せが、多くの場合適用される。典型的には、グリコシル化パターンは、前記グリカンの特徴的特性、例えば、保持時間または移動時間を同定する炭水化物混合組成物パターンとして得られ、また同定される。未知の試料から得られたデータを決定されたパラメーターと比較することによって、未知の試料の迅速なスクリーニングおよび評価を実施できる。
【0013】
これらの技術の各々は、利点および欠点を有する。所与の問題について、これらの方法のうちのそれぞれ1つ、1組を選択することは、時間および労力を要する作業になることがある。例えば、NMRは、詳細な構造情報を提供するが、比較的感度の低い方法(nmol)であり、高スループットの方法として使用することはできない。MSの使用は、NMRよりも感度が高い(fmol)。しかしながら、定量化は困難であり得、モノマー糖化合物の結合の位置指定のない特定されない構造情報のみが得られることがある。いずれの技術も、対応するスペクトルの評価を可能にするために、多大な試料調製およびまた分析前の複合グリカン混合物の分画が必要とされる。さらに、これらの2つの技術が適切に実施され得ることを確実にするためには、高度に熟練した科学技術者が必要とされる。
【0014】
動電およびクロマトグラフィー分離に基づく分析方法は、より容易かつより安価であり、したがって、より一般的である。蛍光検出を用いた親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC-FLR)、蛍光検出を用いた逆相液体クロマトグラフィー(RPLC-FLR)などのクロマトグラフィーによる糖分析技術が、最も一般的に併用される。それらは、高速または超高速液体クロマトグラフィー(HPLCまたはUHPLC)として操作され得るが、現在まで、保持時間アラインメントのための外部標準(すなわち、内部標準のように同じ実行および分離カラム内の試料と一緒ではない)によってのみであり、したがって、(長期間)再現性が制限される(Kobata Aら、Methods Enzymology 1987、138、84~94。Tomiya Nら、Analytical Biochemistry 1988、171、73~90。Guile GRら、Analytical Biochemistry 1996、240、210~226。
【0015】
キャピラリーゲル電気泳動などのキャピラリー電気泳動原理に基づく分離技術が、複合炭水化物分離に関して当技術分野、例えば、Callewaert,N.ら、Glycobiology 2001、11、275~281、WO01/92890、Callewaert,N.ら、Nat.Med.2004、10、429~434、Hennig Rら、Biochimica et Biophysica Acta - General Subjects 2016、1860、1728~1738、Ruhaak LRら、Journal of Proteome Research 2010、9、6655~6664、EP2112506A1において以前に考察されたが、自動化された高スループットの炭水化物分析を可能にする信頼性の高い高速システムへの必要性がなお存在している。
【0016】
動電分離技術の例は、キャピラリー電気泳動(CE)およびキャピラリーゲル電気泳動(CGE)である。これらの技術は、高分解能、高速分離、およびまた定量化を可能にする。例えば、レーザー誘起蛍光検出(xCGE-LIF)を用いた多重キャピラリーゲル電気泳動は、糖分析のためのとりわけ強力なツールであることか示されている。多重キャピラリーアレイ設定の利点は、分離の並列化に起因した非常に高いスループットの分析の可能性である。xCGE-LIFを使用する別の理由は、LIF検出に起因した非常に高い感度である。CGEは、「キャピラリーが架橋ゲル(ポリマー)で満たされた特別な場合のキャピラリー篩分け電気泳動」として定義される。
【0017】
化合物の電気泳動移動度は質量対電荷比に依存し、例えばCGEを用いる場合、ゲルの篩分け効果に起因して、分子形状にさらに依存する。一般に、天然炭水化物は、シアル酸、グルクロン酸またはスルホン化もしくはリン酸化部分などの電荷残基を含有するものを除き、その大部分が電気的中性であるため、それらの質量対電荷比によって分離できない。しかしながら、ゲルのエージングに起因した、例えばCGEにおける、移動時間の(長期間)再現性のCEの問題が、キャピラリーに存在する。したがって、現在まで、移動時間アラインメントのための内部標準(炭水化物試料の色素(例えば、APTS)とは異なる波長で発光する蛍光タグを有するDNA塩基対(bp)ラダーなど)を使用する場合でさえ、同等の質量対電荷比(m/z)(mおよびzの両方は、bpアラインメント標準および炭水化物試料について大きく異なる)にも関わらず、その有用性はいくらかの制限を有する。EP2112506A1を参照されたい。したがって、マトリックス(例えば、塩、溶媒、ゲルなどの含有量および組成)だけでなく、温度および時間(これはまた、ゲルのエージングに起因して、マトリックスの変化を引き起こす)は、再現性およびしたがって有用性が減少している。
【0018】
Sangerが1977年にDNAの配列決定のための連鎖停止反応方法を発見したため、配列決定スループットが増加する大きな進歩があった。最初の改善は、DNA断片の放射標識を蛍光色素での標識によって置き換えることによって、80年代半ばになされた。個々の蛍光色素(別個の励起および発光波長を含む)で各DN塩基を標識することによって、4つすべての反応混合物を、スラブゲルの1レーンに投入し、同時に分析することができる。光学フィルターを備えるレーザースキャンシステムは、4種すべての色素(それぞれすべてDNA塩基)からの蛍光発光の波長分解検出を別々に可能にした。デジタル信号への変換は、ABI PRISM 377遺伝子分析器などの自動化されたDNA配列の開発への道を開く。
【0019】
従来のスラブゲル電気泳動システムにおいて、複数の試料が、多くの個々のレーンで薄いゲル中で分離される。残念ながら、ゲル中で熱が生じるために電場強度が増加され得ないことによって分離速度が制限されるため、スループットを増加させることは困難であった。さらに、検出速度は、データ点当たり1~最大数秒に制限される。
【0020】
この問題を克服するために、たった10~50μmの直径のいくつかの並行キャピラリーチューブ(キャピラリーアレイ)を備えるキャピラリー電気泳動(CE)システムが開発された。その体積当たりの大きな表面に起因して、より良好な熱伝達が達成され、より高い電場強度およびはるかに速い分離が可能になった。並行キャピラリーに対して横方向にアラインされたレーザービームを備えたこれらのマルチキャピラリーCEシステム内部の最適化された光学素子により、すべてのキャピラリー内部のすべての蛍光標識された分析物の同時励起が可能になった。これらのレーザー誘起蛍光(LIF)検出は、検出の最下限を提示した。検出の間、発光された蛍光は、バーチャルフィルターセット(観察ウィンドウ)でフィルタリングされ、続いて、所定の個々のチャネルからの蛍光シグナルがCCDカメラによって捕捉される(多波長検出)。
【0021】
図32:多波長検出を用いたマルチキャピラリーCEシステムの検出モード。
蛍光色素発光スペクトルは、常にかなり幅広く、重なっている(スキーム1に示される通り)ため、バーチャルフィルターは較正される必要がある。これに関して、CCDアレイでの発光プロファイルの重なりを最小にするのではなく、その最大における発光を収集することは意図されない。しかしながら、中間蛍光色素に関してスキーム1に示される通り、スペクトルの重なりがなおある程度起こり、ある特定のクロストークが常に存在する。
【0022】
DNA配列決定のために、4つのヌクレオチドの各々が1種の蛍光色素で標識される。配列決定の間常に、カラーチャネル中の最も顕著なピークが、選択され、ヌクレオチドを定義する。隣接色素チャネルからのより小さなクロストークシグナルは考慮されないため、スペクトルクロストークの問題は、DNA配列決定に関してそれほど重要ではない。
【0023】
複数/多重CE(xCE)システムによるオリゴ糖の分析に関して、他の要求が完全に満たされることになる。一般に、1種の蛍光色素で標識された未知の試料は、別の蛍光色素で標識されたアラインメント標準と同時注入および同時分離される。この内部標準は、続いて、未知の試料の移動時間のアラインメントに使用される。このアラインメントによって、試料組成物の自動化された決定および/または同定が可能である。
【0024】
適切な分析のために、2つの色素チャネル間(未知の試料対アラインメント標準)にスペクトルクロストークが存在しないことが必要である。例えば、未知の試料(複合オリゴ糖混合物)の電気泳動図は、数桁の大きさで変動する強度を有するピークを含有する。アラインメント標準のチャネルから「漏れた」シグナルは、さらなるピークを生じ、未知の試料の組成を変化させ、したがって、分析の負荷となると考えられる。色素チャネル間のクロストークを排除するために、多重CEシステムを再較正することが必須である。
【0025】
天然炭水化物は、分光法によって十分に検出可能ではない。200nm未満の波長のUV光でのみ検出が可能である。この欠点を克服するために、放出されたN-グリカンを、(クロマトグラフィーまたは動電)分離の前に蛍光タグで標識することで、UV、VIS、FLRおよびLIF検出器で十分検出可能になる。
【発明の概要】
【0026】
図1は、分離に基づくグリカン分析の主ステップを示している。手順は、以下のステップ:試料調製、蛍光検出を用いたクロマトグラフィーまたは動電分離、およびデータ評価に分けることができる。グリカンの標識および標識生成物の検出は、当技術分野において記載される。炭水化物の蛍光標識に使用される還元的アミノ化の基本的な反応機序が、スキーム2に示される。
【0027】
以下のスキーム2は、炭水化物の還元的アミノ化の基本的な反応順序を示している(N.Volpi、Capillary electrophoresis of carbohydrates. From monosaccharides to complex polysaccharides、Humana Press、New York、2011、1~51頁を参照されたい)。
【0028】
【0029】
還元的アミノ化の最初のステップは、アミン窒素の孤立電子対がその開鎖形態の炭水化物残渣(1b)の求電子アルデヒド炭素原子を攻撃する求核付加反応を含む。中間体2から酸触媒により水を排除すると、イミン(3a)が得られる。イミン形成は可逆的であるため、イミンは、水酸化物源(スキーム2の還元剤)による不可逆的酸触媒還元を介して2級アミン(4)に変換される必要がある。イミニウムイオン3bのみが還元される必要があり、一方、炭水化物R2CHO(1b)は、還元に対して非反応性のままである必要がある(それらは、蛍光タグを表すアミンR3NH2とのみ反応する)ため、還元剤の性質が重要である。
【0030】
スキーム2に示される反応順序は、アルデヒドとは反応しない(またはアルデヒドを非常にゆっくり還元する)が、酸性条件下ではイミニウムイオン(3b)を容易に還元する、特別な還元剤(ボラン)の利用可能性および十分な反応性に基づく。酢酸(pKa=4.76)、マロン酸(pK1a=2.83)またはクエン酸(pK1a=3.13)などの弱酸または中程度の強酸が、不可逆的で迅速な還元を達成するためにpH=3~6でしばしば使用される(K.R.Anumula、Anal.Biochem.2006、350、1~23)。
【0031】
したがって、適用されるアミン(R3NH2)は、弱塩基である必要がある(スキーム2において非プロトン化アミンのみがアルデヒド1bと反応できるため)。タンパク質では、リジンの脂肪族アミノ基、ヒスチジンの求核窒素原子およびアルギニン残基は、pH=3~6でプロトン化され、スキーム2による炭水化物とは反応しない。したがって、3~5のかなり低pKa値(これらは、共役酸についての値である)の芳香族アミンのみが必要とされ、これは、天然グリカンの還元的アミノ化ための分析試薬として幅広く使用されている。還元的アミノ化、コンジュゲートのクロマトグラフィーまたは動電分離、および蛍光による高感度検出を介したグリカンの標識に適用可能な3種の市販の芳香族アミンが以下に示される。
【0032】
【0033】
3-アミノピレン-1,6,8-トリスルホン酸(APTS)、2-アミノベンズアミド(2-AB)および2-アミノ安息香酸(2-AA)は、現在、CE(APTS)およびLC(2-ABおよび2-AA)に基づく分析のための炭水化物の標識に最も幅広く使用されている試薬である。とりわけ、3つの強酸残基(スルホン酸基)を有するAPTSは、非常に幅広いpH範囲(pH>2)で3つの負電荷を導入し、柔軟かつ頑強な分析を可能にする。
【0034】
【0035】
アルキルオキシアミノ(スキーム4a)およびヒドラジド(スキーム4b)基もまた、炭水化物の標識のための簡便な化学選択的方法を提供する。ヒドラジド基は、遊離炭水化物の還元末端との反応において、主に環式β-アノマー型の生成物を形成する(スキーム4bを参照されたい)。反応条件の範囲は、高温で、酸性から、中性を越えて塩基性pHまでである。例えばルシファーイエローの典型的なヒドラジド標識反応(スキーム3を参照されたい)は、pH7、70℃で1時間実施され得る。
【0036】
【0037】
さらに、反応性カルバメート化学物質は、スキーム5に示される通り、炭水化物の標識に使用できる。この標識反応のために、炭水化物は、そのグリコシルアミン形態(放出された炭水化物は、PNGase Fによる酵素放出後に、複合糖質、例えば、N-グリカンを形成する)である必要がある。この反応は、反応性カルバメートが、例えばタンパク質の他の利用可能なアミン(アミノ酸リジン)と反応し得るため、むしろ非特異的である。N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)カルバメートのグリコシルアミンとの典型的な反応は、室温においてたった数分で生じる。
【0038】
炭水化物の還元的アミノ化は、実に特異的かつ完全であるため、この反応は、現在、炭水化物標識手順に最も幅広く使用されている。
随意の精製(タンパク質、過剰の電解質、過剰の色素、標識試薬などを除去するため)後、標識試料は、それぞれクロマトグラフィー用カラム、動電キャピラリーに注入され、分離が実施される(
図1を参照されたい)。それらの異なる特性(疎水性、質量/電荷、形状など)に起因して、異なる炭水化物は、それぞれそれらの特徴的な保持時間、移動時間に従って検出器に到達する(
図2~22を参照されたい)。
【0039】
標識炭水化物が蛍光検出器に到達すると、共有結合した蛍光色素が励起され、発光シグナルが検出される。
今日、グリカンの分析は、例えば、2-ABまたは2-AAでそれらを標識した後、蛍光検出器を備える市販の(U)HPLCシステムで実施される(スキーム3を参照されたい)が、標識グリカンの「現実の」高スループット分析は、市販の多重CGEシステムでのみ実施できる。これらのxCGE-LIF機器は、荷電分析物(例えば、APTS標識グリカン)の分離のための多重キャピラリーゲル電気泳動ユニット、レーザーおよび蛍光検出器を含有する。
【0040】
【0041】
APTS以外の他の色素およびそれらの誘導体が、炭水化物の分離に基づく分析ための蛍光タグとして使用され得る(例えば、色素2-AB、2-AAおよびルシファーイエロー、スキーム3、ならびにN.V.ShilovaおよびN.V.Bovinによる概説、Russ.J.Bioorg.Chem.2003、29(4)、339~355を参照されたい。さらなる例は、WO2002/099424A3およびWO2009/112791A2に記載されるアクリドン色素であり、これは、7-アミノアクリドン-2-スルホンアミドではない。WO2012/027717A1は、官能基置換された1,6,8-トリスルホンアミド-3-アミノピレン(APTS誘導体)、分析物反応性基、切断可能アンカーおよび多孔質固相を含む系を記載している。WO2010/116142A2は、各種のフルオロフォアおよび蛍光センサー化合物を記載しており、これは、アミノピレン系色素も包含する。しかしながら、これらの色素のいずれも、特に炭水化物とのコンジュゲートとして、APTSと比較して優れたスペクトル特性および電気泳動性を有することは示されておらず、提案もされていない。
【0042】
炭水化物の分離技術および分析、ならびにグリコシル化パターンプロファイリングは、当技術分野において記載されている。例えば、Callewaert Nら、Glycobiology 2001、11、275~281、WO01/92890、Callewaert N.ら、Nat.Med.、2004、10、429~439またはKhandurinaら、Electrophoresis、2004、25、3122~2127は、炭水化物分析のための方法を特定する。Domannら、Practical Proteomics、2007、7、70~76は、2DHPLCプロファイリング、質量分光およびレクチン親和性クロマトグラフィーを特定する。
【0043】
さらなる開発は、本発明者らによってEP2112506A1およびUS2009/0288951A1に記載されている。そこに記載される技術は、成功裡に適用された。
しかしながら、グリカンプロファイルの評価に関する主な欠点は、好適な色素の利用可能性が制限されることである。つまり、これまで、公知の色素のいずれも、特に炭水化物とのコンジュゲートとして、優れたスペクトル特性または電気泳動性を有することは提案されておらず、現在の標準はAPTSの使用である。
【0044】
したがって、APTSと比較して、より高い電気泳動移動度および/またはより高い輝度などの改善された特性を有する蛍光色素への必要性が存在する。これらの特性は、蛍光検出とは別に、それぞれ動電分離、クロマトグラフィー分離に基づく炭水化物分析のための蛍光タグからの要求が高く、優れた性能が可能になる。さらに、APTSを含む公知の色素と組み合わせて使用でき、したがって、同じ実行およびしたがってそれぞれ移動時間、保持時間の内部アラインメント内で2つの異なる色を検出できる蛍光色素への必要性が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明による炭水化物分析のワークフローを示す図である。
【
図2】19(I)、20(II)、6-H標識マルトトリオース(6-H
a、III)およびAPTS標識マルトテトラオース(APTS
a、IV)の、これらの4種の色素の特定の較正混合物へのxCGE-LIF機器のスペクトル較正前(A)および後(B)の、スペクトル較正混合物を示す図である。
【
図3】19、20、6-H
aおよびAPTS
aへのxCGE-LIF機器のスペクトル較正前(A)および後(B)の6-H標識マルトースラダーを示す図である。BにおけるVB9163標識マルトースラダーは、測定前に水中で1:2希釈した。示されるピークは、13.2分でマルトース、15.3分でマルトトリオース、17.2分でマルトテトラオース、19分でマルトペンタオース、20.8分でマルトヘキサオース、22.2分でマロトヘプタオース、23.9分でマルトオクタオースなどである。
【
図4】15標識マルトトリオース(15
a;I)、19(I)、20(IV)、6-Me標識マルトトリオース(6-Me
a;V)およびAPTS標識マルトテトラオース(APTS
a)の、5種の色素の特定の較正混合物へのxCGE-LIF機器のスペクトル較正前(A)および後(B)のスペクトル較正混合物を示す図である。
【
図5】xCGE-LIF機器の15
a、19、20、6-Me
aおよびAPTS
aへのスペクトル較正前(A)および後(B)のAPTS標識デキストランラダー(APTS
b)を示す図である。示されるピークは、14.1分でデキストラントリマー、16.2分でデキストランテトラマー、18.3分でデキストランペンタマー、20.9分でデキストランヘキサマー、23分でデキストランヘプタマーなどである。
【
図6】15
a、19、20、6-Me
aおよびAPTS
aへのxCGE-LIF機器のスペクトル較正前(A)および後(B)の15標識デキストランラダー(15
b)を示す図である。示されるピークは、9.8分でデキストラントリマー、11分でデキストランテトラマー、12分でデキストランペンタマー、13.1分でデキストランヘキサマー、14.2分でデキストランヘプタマーなどである。
【
図7】15
a、19、20、6-Me
aおよびAPTS
aへのxCGE-LIF機器のスペクトル較正前(A)および後(B)の6-Me標識デキストランラダー(6-Me
b)を示す図である。示されるピークは、14.9分でデキストラントリマー、16.3分でデキストランテトラマー、18.2分でデキストランペンタマー、20.1分でデキストランヘキサマー、22分でデキストランヘプタマーなどである。
【
図8】15
a、19、20、6-Me
aおよびAPTS
aへのxCGE-LIF機器のスペクトル較正後(
図7を参照されたい)の、APTS標識クエン酸血漿由来のN-グリカン(522nmトレース)、15標識炭水化物標準(554nmトレース)および6-Me標識炭水化物標準(575nmトレース)のオーバーレイを示す図である。522nm、554nmおよび575nmチャネルは、ここで、スペクトル較正の成功を示す他のチャネルとのスペクトルクロストークを示す。
【
図9】異なるアラインメント標準の電気泳動図である。A - GeneScan 500 LIZサイズ標準。B - アクリドン系蛍光色素(6-Me)標識炭水化物標準。印を付けたピークを使用して、アラインメント手順への多項式フィットを計算した(
図11を参照されたい)。
【
図10】塩基対サイズ標準(A)または直交炭水化物標準によって微細化した塩基対サイズ標準(B)へのアラインメント後のヒトクエン酸血漿由来N-グリカンのフィンガープリントを示す図である。相対ピーク高さ比(PHP)は、15個の選択したピークの合計に対するフィンガープリントのシグナル強度標準化である。ポリマー1および2は、異なる製造日付/バッチのものである。1~9日目は、ポリマーを室温に置いた日数である。
【
図11】塩基対サイズ標準(A)またはアクリドン蛍光色素標識炭水化物標準(6-Me
b)(B)へのアラインメント後のヒトクエン酸血漿由来N-グリカンのフィンガープリントを示す図である。相対ピーク高さ比(PHP)は、15個の選択したピークの合計に対するフィンガープリントのシグナル強度標準化である。ポリマー1および2は、異なる製造日付のPOP7ポリマーである。1~9日目は、POP7ポリマーを室温に置いた日数である。
【
図12A】異なるアラインメント手順についての内部標準の多項式フィットを示す図である。A - 塩基対サイズ標準へのアラインメントのための2次多項式フィット。
図9Aに示される通り、13個のピークを選択した。B - 4つの内部オリゴ糖ピークを使用して、2回目のアラインメントステップによって調整した、塩基対サイズ標準へのアラインメントのための2次多項式フィット。C - アクリドン系蛍光色素(6-Me)標識炭水化物標準へのアラインメントのための2次多項式フィット。
図9Bに示される通り、16個のピークを選択した。
【
図12B】異なるアラインメント手順についての内部標準の多項式フィットを示す図である。A - 塩基対サイズ標準へのアラインメントのための2次多項式フィット。
図9Aに示される通り、13個のピークを選択した。B - 4つの内部オリゴ糖ピークを使用して、2回目のアラインメントステップによって調整した、塩基対サイズ標準へのアラインメントのための2次多項式フィット。C - アクリドン系蛍光色素(6-Me)標識炭水化物標準へのアラインメントのための2次多項式フィット。
図9Bに示される通り、16個のピークを選択した。
【
図12C】異なるアラインメント手順についての内部標準の多項式フィットを示す図である。A - 塩基対サイズ標準へのアラインメントのための2次多項式フィット。
図9Aに示される通り、13個のピークを選択した。B - 4つの内部オリゴ糖ピークを使用して、2回目のアラインメントステップによって調整した、塩基対サイズ標準へのアラインメントのための2次多項式フィット。C - アクリドン系蛍光色素(6-Me)標識炭水化物標準へのアラインメントのための2次多項式フィット。
図9Bに示される通り、16個のピークを選択した。
【
図13】異なるアラインメント標準の電気泳動図である。A - 塩基対サイズ標準。B - ピレン系蛍光色素(15)標識炭水化物標準。印を付けたピークを使用して、アラインメント手順への多項式フィットを計算した(
図16を参照されたい)。
【
図14】塩基対サイズ標準(A)、塩基対サイズ標準+ピレン蛍光色素標識炭水化物標準(B)またはピレン蛍光色素(15)標識炭水化物標準(15
b)(C)へのアラインメント後のヒトクエン酸血漿由来N-グリカンのフィンガープリントを示す図である。相対ピーク高さ比(PHP)は、15個の選択したピークの合計に対するフィンガープリントのシグナル強度標準化である。ポリマー1および2は、異なる製造日付のPOP7ポリマーである。1~9日目は、POP7ポリマーを室温に置いた日数である。
【
図15】15
a、19、20、6-Me
aおよびAPTS
aへのxCGE-LIF機器のスペクトル較正後(
図7を参照されたい)の、APTS標識クエン酸血漿由来のN-グリカン(522nmトレース)、15標識炭水化物標準(554nmトレース)および塩基対標準(655nmトレース)のオーバーレイを示す図である。522nmおよび554nmチャネルは、ここで、スペクトル較正の成功を示す他のチャネルとのスペクトルクロストークを示す。655nmチャネルはbp色素に対してスペクトル較正しなかったため、小さなスペクトルクロストークが、595nmおよび575nmチャネルと共に655nmチャネルを含有する塩基対サイズ標準で観察できる。
【
図16A】異なるアラインメント手順についての内部標準の多項式フィットを示す図である。A - 塩基対サイズ標準へのアラインメントのための2次多項式フィット。
図13Aに示される通り、13個のピークを選択した。B - ピレン系蛍光色素(15)標識炭水化物標準へのアラインメントのための2次多項式フィット。
図13Bに示される通り、22個のピークを選択した。
【
図16B】異なるアラインメント手順についての内部標準の多項式フィットを示す図である。A - 塩基対サイズ標準へのアラインメントのための2次多項式フィット。
図13Aに示される通り、13個のピークを選択した。B - ピレン系蛍光色素(15)標識炭水化物標準へのアラインメントのための2次多項式フィット。
図13Bに示される通り、22個のピークを選択した。
【
図17】異なる機器、および塩基対サイズ標準(A)、塩基対サイズ標準+オリゴ糖再アラインメント(B)、塩基対サイズ標準+ピレン蛍光色素(23)標識炭水化物標準再アラインメント(C)またはピレン蛍光色素(23)標識炭水化物標準(D)へのアラインメントにより測定したAPTS標識クエン酸血漿由来N-グリカンのフィンガープリントのオーバーレイを示す図である。3130_1 - 50cmの4キャピラリーアレイを備える第1のABI DNA遺伝子分析器3130(シリアル番号:21363-yyy)、3130_2 - 50cmの4キャピラリーアレイを備える第2のABI DNA遺伝子分析器3130(シリアル番号:1521-yyy)、3130xl_1 - 50cmの16キャピラリーアレイを備える第1のABI DNA遺伝子分析器3130xl(シリアル番号:19248-yyy)、3130xl_2 - 50cmの16キャピラリーアレイを備える第2のABI DNA遺伝子分析器3130xl(シリアル番号:1208-yyy)、3500 - 50cmの8キャピラリーアレイを備えるThermo Scientific DNA分析器3500(シリアル番号:21106-yyy)、3730 - 50cmの48キャピラリーアレイを備えるABI DNA 遺伝子分析器3730(シリアル番号:18124-yyy)。すべての測定は、POP7で実施した。
【
図18】異なる電場強度、および塩基対サイズ標準(A)またはピレン蛍光色素(23)標識炭水化物標準(B)へのアラインメントにより測定したAPTS標識クエン酸血漿由来N-グリカンのフィンガープリントのオーバーレイを示す図である。測定は、glyXpop_fast充填50cmキャピラリーアレイを備えたABI DNA遺伝子分析器により、300V/cm(「…」曲線、15kV)、200V/cm(「---」曲線、10kV)または100V/cm(「-」曲線、5kV)の電場強度で実施した。
【
図19】異なる実行温度、および塩基対サイズ標準(A)またはピレン蛍光色素(23)標識炭水化物標準(B)へのアラインメントにより測定したAPTS標識クエン酸血漿由来N-グリカンのフィンガープリントのオーバーレイを示す図である。測定は、POP7充填50cmキャピラリーアレイを備え、45℃(「…」曲線)、30℃(「---」曲線)または18℃(「-」曲線)の実行温度で動作するABI DNA遺伝子分析器で実施した。
【
図20】異なるキャピラリーアレイ長さ、および塩基対サイズ標準(A)またはピレン蛍光色素(23)標識炭水化物標準(B)へのアラインメントにより測定したAPTS標識クエン酸血漿由来N-グリカンのフィンガープリントのオーバーレイを示す図である。測定は、POP7充填50cmキャピラリーアレイ(「…」曲線)、36cmキャピラリーアレイ(「---」曲線)または22cmキャピラリーアレイ(「-」曲線)を備えるABI DNA遺伝子分析器で実施した。
【
図21A】異なる分離ポリマーで測定したAPTS標識クエン酸血漿由来N-グリカンのフィンガープリントのオーバーレイを示す図である。アラインされていない電気泳動図は、分で示され(A)、塩基対サイズ標準へのフィンガープリントアラインメントは、塩基対で示され(B)、ピレン蛍光色素(23)標識炭水化物標準にアラインされたフィンガープリントは、オリゴ糖単位で示される(C)。測定は、50cmキャピラリーアレイを備え、POP7(Thermo Scientific;黒色の曲線)、nanoPOP7(MCLAB;灰色の曲線)、nimaPOP7(Nimagen;明灰色の曲線)、POP6((Thermo Scientific;黒色の「---」曲線)またはglyXpop_fast(glyXera GmbH製実験用ポリマー;黒色の「…」曲線)を充填したABI DNA遺伝子分析器で実施した。
【
図21B】異なる分離ポリマーで測定したAPTS標識クエン酸血漿由来N-グリカンのフィンガープリントのオーバーレイを示す図である。アラインされていない電気泳動図は、分で示され(A)、塩基対サイズ標準へのフィンガープリントアラインメントは、塩基対で示され(B)、ピレン蛍光色素(23)標識炭水化物標準にアラインされたフィンガープリントは、オリゴ糖単位で示される(C)。測定は、50cmキャピラリーアレイを備え、POP7(Thermo Scientific;黒色の曲線)、nanoPOP7(MCLAB;灰色の曲線)、nimaPOP7(Nimagen;明灰色の曲線)、POP6((Thermo Scientific;黒色の「---」曲線)またはglyXpop_fast(glyXera GmbH製実験用ポリマー;黒色の「…」曲線)を充填したABI DNA遺伝子分析器で実施した。
【
図21C】異なる分離ポリマーで測定したAPTS標識クエン酸血漿由来N-グリカンのフィンガープリントのオーバーレイを示す図である。アラインされていない電気泳動図は、分で示され(A)、塩基対サイズ標準へのフィンガープリントアラインメントは、塩基対で示され(B)、ピレン蛍光色素(23)標識炭水化物標準にアラインされたフィンガープリントは、オリゴ糖単位で示される(C)。測定は、50cmキャピラリーアレイを備え、POP7(Thermo Scientific;黒色の曲線)、nanoPOP7(MCLAB;灰色の曲線)、nimaPOP7(Nimagen;明灰色の曲線)、POP6((Thermo Scientific;黒色の「---」曲線)またはglyXpop_fast(glyXera GmbH製実験用ポリマー;黒色の「…」曲線)を充填したABI DNA遺伝子分析器で実施した。
【
図22】ピレン蛍光色素(23)標識炭水化物標準にアラインされたAPTS標識ヒトIgG由来N-グリカンのフィンガープリントのオーバーレイを示す図である。測定は、50cmキャピラリーアレイを備え、POP7ポリマーを充填したABI DNA遺伝子分析器で実施した。測定は、ポリマー齢D1~D52(POP7ポリマーを室温で機器の内部に置いた日数)の同じ試料の再注入によって実施した。
【
図23】DNA配列決定に使用した色素の発光スペクトル(いくつかの可能な組のうちの1つが示される)およびバーチャルフィルターの対応するセットを示す図である。5-FAM:5’-カルボキシ-フルオレセイン;JOE:2,7-ジメトキシ-3,4-ジクロロフルオレセイン6’-カルボキシ異性体;NEDは、TMRよりも明るい色素であり(未知の構造を有する);これは、それぞれ546nmおよび575nmで吸収極大および発光極大を有する。ROXは、キサンテンフルオロフォアに組み込まれた2つのジュロリジン断片(および5’-または6’-カルボキシル基)を有するローダミンである。蛍光配列決定の過程で、これらの(または類似の)色素は、4色のトレース、例えば、シトシンについて青色、アデニンについて緑色、チミンについて赤色およびグアニンについて黄色をもたらす。
【
図24A】水性トリエチルアミン-炭酸水素緩衝液(pH8)中でのリン酸化アミノアクリドン色素6-Hおよび6-Meの標準化された吸収および発光スペクトルを示す図である。
【
図24B】水性トリエチルアミン-炭酸水素緩衝液(pH8)中での三リン酸化アミノピレン色素8-Hおよび15の標準化された吸収および発光スペクトルを示す図である。
【
図25】APTS標識マルトースラダー(背景)と共に、2種の色素:三リン酸化アミノピレン8-HおよびAPTSの電気泳動図の概略を示す図である。8-Hの保持時間は、APTSの保持時間よりも長いが、8-Hのm/z比(144)は、APTSのm/z比(151)よりも低い。APTSでは、荷電基(スルホン酸残基)は、フルオロフォアに直接結合される。8-H中のN-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)リンカーの存在は、色素の流体力学比を増加させ、これは、遊離色素8-Hのより長い保持時間を説明する。
【
図26】8-HおよびAPTSのピークの拡大図を示す図である。この図は、標準DNAシーケンサーの色較正により得た。「伝統的な」フィルターセットの5色のチャネルが存在する:522nm(フルオレセイン、APTS)、554nm(例えば、VIC色素またはローダミン6G)、575nm(例えば、NED色素またはTMR)、595nm(例えば、PET色素またはROX)および650nm(追加の「第5の」色としてLIZ色素)。APTSカラーチャネルとの強いクロストークに起因して(図の上部に示される)、色素8-H(およびおそらくそのグリカンとのコンジュゲート)は、任意の分析アッセイにおいてAPTSと一緒には使用できない。同じことは、三リン酸化ピレン色素15(
図24Bに示される8-Hおよび15の発光スペクトルを比較)に関して真である。したがって、APTSおよび三リン酸化ピレン色素8-Hおよび15に寄与する発光チャネル間のクロストークを減少させる、または可能な場合、完全に排除するために、DNAシーケンサーの新しい色較正が必要であった。
【
図27】スペクトル較正前の、マルトトリオースおよび色素15(15
a)から得られた還元的アミノ化生成物の電気泳動図を示す図である。
【
図28】スペクトル較正後の、マルトトリオースおよび色素15から得られた還元的アミノ化生成物の同じ電気泳動図(
図27)を示す図である。
【
図29A】炭水化物「デキストラン1000」(29A)および「デキストラン5000ラダー」(29B)および色素15の混合物から得られたコンジュゲートの電気泳動図を示す図である。「1000」および「5000」は、デキストランオリゴマーの平均分子質量に対応する。ピーク間の時間の差は、およそ1分である。APTSの場合、ピーク間の時間の差は、およそ2.3分であり(
図25「---」曲線を参照されたい);グルコース単位の添加の結果、マルトース単位についての移動時間がおよそ同じだけ増加する)。ピーク間時間の差は、より少ないほど有利である(線形アラインメント曲線フィットの支持点がより多い)。
【
図29B】炭水化物「デキストラン1000」(29A)および「デキストラン5000ラダー」(29B)および色素15の混合物から得られたコンジュゲートの電気泳動図を示す図である。「1000」および「5000」は、デキストランオリゴマーの平均分子質量に対応する。ピーク間の時間の差は、およそ1分である。APTSの場合、ピーク間の時間の差は、およそ2.3分であり(
図25「---」曲線を参照されたい);グルコース単位の添加の結果、マルトース単位についての移動時間がおよそ同じだけ増加する)。ピーク間時間の差は、より少ないほど有利である(線形アラインメント曲線フィットの支持点がより多い)。
【
図30A】スペクトル較正前の、マルトトリオースならびに色素6-Hおよび6-Meから得られたコンジュゲート(還元的アミノ化生成物)の電気泳動図を示す図である。両方の色素、6-Hおよび6-Meについて、APTSチャネル(522nm)および「595nmチャネル」(6-Hおよび6-Meについても有効)間のクロストークはごく小さく;色素15の場合よりも小さい(
図27)。色素6-Hについて、クロストークはおよそ7.8%であり、色素6-Meについて、およそ3.4%である。しかしながら、クロストークは(存在しない分析物の)偽陽性同定を引き起こし得るため、標準および観察チャネル間の小さなクロストークさえ認められない。
【
図30B】スペクトル較正前の、マルトトリオースならびに色素6-Hおよび6-Meから得られたコンジュゲート(還元的アミノ化生成物)の電気泳動図を示す図である。両方の色素、6-Hおよび6-Meについて、APTSチャネル(522nm)および「595nmチャネル」(6-Hおよび6-Meについても有効)間のクロストークはごく小さく;色素15の場合よりも小さい(
図27)。色素6-Hについて、クロストークはおよそ7.8%であり、色素6-Meについて、およそ3.4%である。しかしながら、クロストークは(存在しない分析物の)偽陽性同定を引き起こし得るため、標準および観察チャネル間の小さなクロストークさえ認められない。
【
図31A】スペクトル較正後の、「デキストラン1000」および「デキストラン5000」ラダーおよび色素6-Meから得られたコンジュゲートの電気泳動図を示す図である。スペクトル較正は、マルトトリオースとコンジュゲートした色素6-Hおよび6-Meの使用に基づいた(それぞれ
図2、
図4を参照されたい)。それらのスペクトル特性およびそれらのコンジュゲートの特性は、実に類似している。APTSカラーチャネル(522nm)および「新しい」575nmチャネル間にクロストークは存在しない。
【
図31B】スペクトル較正後の、「デキストラン1000」および「デキストラン5000」ラダーおよび色素6-Meから得られたコンジュゲートの電気泳動図を示す図である。スペクトル較正は、マルトトリオースとコンジュゲートした色素6-Hおよび6-Meの使用に基づいた(それぞれ
図2、
図4を参照されたい)。それらのスペクトル特性およびそれらのコンジュゲートの特性は、実に類似している。APTSカラーチャネル(522nm)および「新しい」575nmチャネル間にクロストークは存在しない。
【
図32】多波長検出を用いたマルチキャピラリーCEシステムの検出モード。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の目標は、少なくとも2種の異なる蛍光色素を使用して、高度に再現可能な動電/クロマトグラフィー分離と後続の蛍光検出またはレーザー誘起蛍光検出とを可能にする、内部標準への保持/移動時間アラインメントに基づいて、炭水化物および/または炭水化物混合組成物パターンプロファイリングを決定および/または同定するための新しい方法を提供することである。異なる波長で発光する少なくとも2種の好適な蛍光色素を有する炭水化物試料および炭水化物標準の標識は、そのような内部移動/保持時間アラインメントに必要不可欠であり、高い長期間再現性および以下で議論されるマトリックス/試料の独立性を可能にする。
【0047】
第一の態様では、炭水化物および/または炭水化物混合組成物パターンプロファイリングの自動化された決定および/または同定のための方法であって、以下のステップ:
a)少なくとも1種の炭水化物を含有する試料を得るステップと、
b)前記炭水化物を第1の蛍光標識で標識するステップと、
c)第2の蛍光標識で標識された既知組成の標準を用意するステップと、
d)動電/クロマトグラフィー分離技術を蛍光またはレーザー誘起蛍光検出と組み合わせて使用して、前記炭水化物および既知組成の標準の移動/保持時間を決定するステップと、
e)移動/保持時間を、標準の所与の標準移動/保持時間の指標に基づく移動/保持時間の指標にアラインするステップと、
f)炭水化物のこれらの移動/保持時間の指標をデータベースからの標準移動/保持時間の指標と比較するステップと、
g)炭水化物および/または炭水化物混合組成物パターンを同定または決定するステップと
を含み、
標準組成物が、未知の炭水化物および/または炭水化物混合組成物を含有する試料に添加され、第1の蛍光標識および第2の蛍光標識が異なり、第1の蛍光標識または第2の蛍光標識が、以下の一般式AおよびBの化合物:
【0048】
【0049】
[式中、
R1、R2、R3、R4、R5は、互いに独立しており、
H、CH3、C2H5、直鎖状もしくは分枝状C3~C12、好ましくはC3~C6アルキルもしくはペルフルオロアルキル基、リン酸化アルキル基(CH2)mP(O)(OH)2(式中、m=1~12、好ましくはm=2~6であり、直鎖状もしくは分枝状アルキル鎖を有する)、(CH2)nCOOH(式中、n=1~12、好ましくはn=1~5)、または(CH2)nCOOR6(式中、n=1~12、好ましくはn=1~5であり、R6は、アルキル、特に、C1~C6アルキル、CH2CN、ベンジル、フルオレン-9-イル、ポリハロゲノアルキル、ポリハロゲノフェニル、例えば、テトラもしくはペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、2-および4-ニトロフェニル、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾールもしくは他の潜在的に求核反応性の脱離基であってもよい)、スルホン酸アルキル((CH2)nSO3H)もしくは硫酸アルキル((CH2)nOSO3H)(式中、n=1~12、好ましくはn=1~5であり、いずれの(CH2)n中のアルキル鎖も直鎖状または分枝状であってもよい);
ヒドロキシアルキル基(CH2)mOHまたはチオアルキル基(CH2)mSH(式中、m=1~12、好ましくはm=2~6であり、直鎖状もしくは分枝状アルキル鎖を有する)、リン酸化ヒドロキシアルキル基(CH2)mOP(O)(OH)2(式中、m=1~12、好ましくはm=2~6であり、直鎖状もしくは分枝状アルキル鎖を有する)を表してもよく;R1またはR2基のうちの一方は、カーボネートまたはカルバメート誘導体(CH2)mOCOOR7またはCOOR7(式中、m=1~12、R7=メチル、エチル、tert-ブチル、ベンジル、フルオレン-9-イル、CH2CN、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリル、フェニル、置換フェニル基、例えば、2-または4-ニトロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル、2-ピリジル、4-ピリジル、ピリミド-4-イル);
(CH2)mNRaRb(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有し;Ra、Rbは、互いに独立しており、水素および/またはC1~C4アルキル基を表す)、ヒドロキシアルキル基(CH2)mOH(式中、m=2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する)、リン酸化ヒドロキシアルキル基(CH2)mOP(O)(OH)2(m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する);
アルキルアジド(CH2)mN3(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する)であってもよく;
R1、R2、R3、R4、R5は、末端アルキルオキシアミノ基(CH2)mONH2(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する);
(CH2)nCONHR8(式中、n=1~12、好ましくは1~5;R8=H、C1~C6アルキル、(CH2)mN3または(CH2)m-N-マレイミド、(CH2)m-NH-COCH2X(X=BrまたはI)(式中、m=1~12、好ましくは、2~6であり、(CH2)n、(CH2)mおよびR6中に直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する)を含有してもよく;
基R1、R2、R3、R4、R5、好ましくは、R1、R2、R3は、アリールヒドラジンAr-NHNH2(Arは、アリールアミノ基およびリンカーを含む式Aの色素残基を示す)を形成する第一級アミノ基;
ヒドロキシル基によって表されてもよく、好ましくはR2またはR3は、アリールヒドロキシルアミンAr-NH2OH(Arは、アリールアミノ基およびリンカーを含む式Aの色素残基を示す)を形成するヒドロキシ基であり、
さらに、残基R1、R2、R3、R4、R5のうちの1つは、CH2-C6H4-NH2、COC6H4-NH2、CONHC6H4-NH2またはCSNHC6H4-NH2(C6H4は、1,2-、1,3-または1,4-フェニレンである)、COC5H3N-NH2またはCH2-C5H3N-NH2(C5H3Nは、ピリジン-2,4-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,6-ジイルまたはピリジン-3,5-ジイルである)を表してもよく;
さらに、R2---R3および/または(R4---R5)は、4、5、6もしくは7員環、または第一級アミノ基NH2、第二級アミノ基NHRaを有するもしくは有さない4、5、6もしくは7員環(式中、Ra=この環の炭素原子の1つに結合したC1~C6アルキル、ヒドロキシル基OHまたはリン酸化ヒドロキシル基-OP(O)(OH)2)を形成してもよく;
場合により、R2---R3および/または(R4---R5)は、4、5、6または7員複素環(この複素環にはO、NまたはSなどのさらに1~3個のヘテロ原子が含まれる)を形成してもよく;
さらに、R1は、非置換フェニル基、OH、SH、NH2、NHRa、NRaRb、RaO、RaS(RaおよびRbは、互いに独立しており、直鎖状または分枝状炭素鎖を有するC1~C6アルキル基であってもよい)の組から選択される1つまたはいくつかの電子供与体置換基を有するフェニル基、NO2、CN、COH、COOH、CH=CHCN、CH=C(CN)2、SO2Ra、CORa、COORa、CH=CHCORa、CH=CHCOORa、CONHRa、SO2NRaRb、CONRaRb(式中、RaおよびRbは、互いに独立しており、Hまたは直鎖状もしくは分枝状炭素鎖を有するC1~C6アルキル基であってもよい)の組から選択される1つまたはいくつかの電子受容体を有するフェニル基を表してもよく;
またはR1は、複素芳香族基を表してもよく;
式Aの化合物は、塩、溶媒和物および水和物として存在し得、塩、溶媒和物および水和物として、好ましくは、Na+、Li+、K+を含むアルカリ金属カチオンおよび有機アンモニウムとの塩として使用されてもよく;
ただし、上記式Aのすべての化合物において、塩基性条件下、すなわち7<pH<14で、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3、4、5または6つの負荷電基が存在し、これらの負荷電基は、以下:SH、COOH、スルホン酸残基SO3H、第一リン酸基OP(O)(OH)2、第二リン酸基OP(O)(OH)Ra(Ra=C1~C4アルキルまたは置換C1~C4アルキル)、第一ホスホン酸基P(O)(OH)2、第二ホスホン酸基P(O)(OH)Ra(Ra=C~C4アルキルまたは置換C1~C4アルキル)から選択されるイオン性基の少なくとも部分的に脱プロトン化された残基を表す];
【0050】
【0051】
[式中、
R1および/またはR2は、互いに独立しており、
H、CH3、C2H5、直鎖状もしくは分枝状C3~C12アルキルもしくはペルフルオロアルキル基、または置換C2~C612アルキル基;特に、(CH2)nCOOR3(式中、n=1~12、好ましくは1~5であり、R3は、H、アルキル、特にC1~C6、CH2CN、ベンジル、2-および4-ニトロフェニル、フルオレン-9-イル、ポリハロゲノアルキル、ポリハロゲノフェニル、例えば、テトラ-またはペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリルまたは他の潜在的に求核反応性の脱離基であってもよく、(CH2)n中のアルキル鎖は直鎖状または分枝状であってもよい)を表してもよく;
R1---R2は、さらなる第一級アミノ基NH2、第二級アミノ基NHRaを有する4、5、6または7員非芳香族炭素環(式中、Ra=この環の炭素原子の1つに結合したC1~C6アルキル、またはヒドロキシル基OH)を形成してもよく;場合により、R1---R2は、4、5、6または7員非芳香族複素環(この複素環にはO、NまたはSなどのさらなるヘテロ原子が含まれる)を形成してもよく;
ヒドロキシアルキル基(CH2)mOH(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する);R1またはR2基のうちの一方は、カーボネートまたはカルバメート誘導体(CH2)mOCOOR4またはCOOR4(式中、m=1~12、R4=メチル、エチル、2-クロロエチル、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリル、フェニル基または置換フェニル基、例えば、2-および4-ニトロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、2,3,5,6-テトラフルオロ-フェニル、2-ピリジルまたは4-ピリジル);
(CH2)mNRaRb(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有し;Ra、Rbは、互いに独立しており、Hまたは置換されていてもよいC1~C4アルキル基であってもよい)であってもよく、特にR1またはR2基のうちの一方は、アルキルアジド基(CH2)mN3(式中、m=2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する)であってもよく;R1またはR2基のうちの一方は、(CH2)nSO2NR5NH2(式中、n=1~12であり、置換基R5は、H、アルキル、ヒドロキシアルキルまたはペルフルオロアルキル基C1~C12によって表されてもよい)であってもよく;
R1またはR2基のうちの一方は、アリールヒドラジンAr-NR6NH2(式中、Arは式Bの全ピレン残基であり、R6=Hまたはアルキルである)を形成する第一級アミノ基であってもよく;
R1またはR2基のうちの一方は、アリールヒドロキシルアミンAr-NR7OH(式中、Arは式Bの全ピレン残基であり、R7=Hまたはアルキルである)を形成するヒドロキシ基であってもよく;
R1またはR2基のうちの一方は、末端アルキルオキシアミノ基(CH2)nONH2(式中、n=1~12であり、これは、すべての可能な組合せで1つまたは複数のアルキルアミノ(CH2)mNHまたはアルキルアミド(CH2)mCONH基を介して結合されていてもよく、m=0~12である)を含有してもよく;
R1またはR2基のうちの一方は、CO(CH2)nCOOR8(式中、n=1~5であり
、直鎖状または分枝状アルキル鎖(CH2)nを有し、R8は、H、直鎖状または分枝状C1~C6アルキル、CH2CN、2-および4-ニトロフェニル、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、N-スクシンイミジルから選択される)であってもよく;
さらに、R1またはR2のうちの一方は、(CH2)nCONHR9(式中、n=1~5、R9=H、C1~C6アルキル)、(CH2)mN3、(CH2)m-N-マレイミド、(CH2)m-NHCOCH2X(X=BrまたはI)(式中、m=2~6であり、(CH2)nおよびR9中に直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する)であってもよく;
または、R1もしくはR2のうちの一方は、CH2-C6H4-NH2、COC6H4-NH2、CONHC6H4-NH2もしくはCSNHC6H4-NH2(C6H4は、1,2-、1,3-もしくは1,4-フェニレンである)、COC5H3N-NH2もしくはCH2-C5H3N-NH2(C5H3Nは、ピリジン-2,4-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,6-ジイルもしくはピリジン-3,5-ジイルである)を表してもよく;またはR1もしくはR2のうちの一方は、アルキルアジド(CH)N3もしくはアルキン、特にプロパルギルであってもよく;
リンカーLは、少なくとも1個の炭素原子を含み、任意の出現において、C1~C12の範囲の長さの直鎖状または分枝状の、アルキル、ヘテロアルキル、特にアルキルオキシ、例えば、CH2OCH2、CH2CH2O CH2CH2OCH2、アルキルアミノまたはジアルキルアミノ、特にジエタノールアミンまたはN-メチル(アルキル)モノエタノールアミン部分、例えば、N(CH3)CH2CH2O-およびN(CH2CH2O-)2、単一または複数のジフルオロメチル(CF2)などのペルフルオロアルキル、アルケンまたはアルキン部分を、任意の組合せで含んでもよく;
リンカーLはまた、カルボニル(CH2CO、CF2CO)部分も含んでもよく;
Xは、特に、ヒドロキシアルキル(CH2)nOH、チオアルキル((CH2)nSH)、カルボキシアルキル((CH2)nCO2H)、スルホン酸アルキル((CH2)nSO3H)、硫酸アルキル((CH2)nOSO3H)、リン酸アルキル((CH2)nOP(O)(OH)2)もしくはホスホン酸アルキル((CH2)nP(O)(OH)2)(式中、nは、0~12の範囲の整数である)、またはその類似体を含む群から選択される部分からなるまたはそれらを含む可溶化および/またはイオン性アニオン提供部分を示し、CH2基の1つまたは複数がCF2によって交換されており、
さらに、アニオン提供部分は、非芳香族O、NおよびS含有複素環、例えば、ピペラジン、ピペコリンによって結合されていてもよく、または代替的に基Xのうちの1つは、基R1およびR2について上で列挙した部分のうちの任意のものを、また基Lについて列挙した任意の種類の結合と共に、他の置換基とは独立して有していてもよく;
式Bの化合物は、塩、溶媒和物および水和物として存在し得、塩、溶媒和物および水和物として、好ましくは、Na+、Li+、K+、NH4
+を含むアルカリ金属カチオンおよび有機アンモニウムまたは有機ホスホニウムカチオンとの塩として使用されてもよい]
からなる群から選択される複数のイオン性およびまたは負荷電基を有する蛍光色素である、方法。
【0052】
より特定の実施形態では、本発明による蛍光色素塩は、負荷電酸基、特に、スルホン酸基および/もしくはリン酸基、ならびに無機もしくは有機カチオンから選択される対イオン、好ましくはアルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオンもしくは有機アンモニウムのカチオンもしくはホスホニウム化合物のカチオン(例えば、トリアルキルアンモニウムカチオン)を含み得、ならびに/または正荷電基もしくは式A~Dの色素の窒素部位N(R1)R2で形成された電荷移動錯体、および特に強鉱酸、有機酸もしくはルイス酸のアニオンから選択される対イオンを含み得る。
【0053】
ただし、式Bによって表されるすべての化合物において、塩基性条件下、すなわち7<pH<14で、式Bの残基Xに3または6つの負荷電基が存在し、これらの負荷電基は、以下:SH、COOH、SO3H、OP(O)(OH)2、OP(O)(OH)Ra(式中、Ra=C1~C4アルキルまたは置換C1~C4アルキルである)、P(O)(OH)2、P(O)(OH)Ra(式中、Ra=C1~C4アルキルまたは置換C1~C4アルキル)から選択されるイオン性基の少なくとも部分的に脱プロトン化された残基を表す。
【0054】
別の態様では、自動化された炭水化物混合組成物パターンプロファイリングのための方法であって、以下のステップ:
a)第1の未知の炭水化物混合組成物を含有する第1の試料を用意するステップと、
b)前記炭水化物混合組成物を第1の蛍光標識で標識するステップと、
c)第2の蛍光標識で標識された第2の炭水化物混合組成物を含有する第2の試料を用意するステップであり第2の試料を場合により前記第1の試料に添加してもよいステップと、
d)動電/クロマトグラフィー分離技術を蛍光またはレーザー誘起蛍光検出と組み合わせて使用して、前記試料組成物の炭水化物混合組成物の電気泳動図/クロマトグラムを生成するステップと、
e)第1および第2の試料の炭水化物混合組成物パターンプロファイルの同一性および/またはそれらの間の差を分析するステップと
を含み、
第1の試料の第1の蛍光標識が、第2の試料の第2の蛍光標識とは異なり、第1の蛍光標識および第2の蛍光標識のうちの少なくとも1種が、以下に定義される一般式CまたはDなどの、一般式AまたはBの上で定義される蛍光色素である、方法。
【0055】
さらなる態様では、自動化された炭水化物混合組成物パターンプロファイリングのための方法であって、以下のステップ:
a)第1の炭水化物混合組成物を含有する試料を用意するステップと、
b)前記炭水化物混合組成物を第1の蛍光標識で標識するステップと、
c)比較しようとする、第2の炭水化物混合組成物を含有する第2の蛍光で標識された第2の試料を用意するステップと、
d)動電/クロマトグラフィー分離技術を蛍光またはレーザー誘起蛍光検出と組み合わせて使用して、第1および第2の試料組成物の炭水化物混合組成物の電気泳動図/クロマトグラムを生成するステップと、
e)第1の試料および第2の試料の得られた電気泳動図/クロマトグラムから計算した標準移動/保持時間の指標を比較するステップと、
f)第1および第2の試料の炭水化物混合組成物パターンプロファイルの同一性および/またはそれらの間の差を分析するステップと
を含み、試料中に存在する炭水化物の標準移動/保持時間の指標が、第3の蛍光標識で標識された既知組成の内部標準に基づいて計算され、
第1および第2の蛍光標識のうちの1種が、以下で定義される式CまたはDなどの、一般式AまたはBの構造を有する上で定義される蛍光色素である、方法。
【0056】
自動化された炭水化物混合組成物パターンプロファイリングのための上記方法の一実施形態では、第2の炭水化物混合組成物は、既知のパターンプロファイルを有する既知の炭水化物混合組成物である。
【0057】
本発明は、炭水化物の決定および/または同定を可能にする方法であって、少なくとも1種の炭水化物を含有する、分析される標識試料が、前記未知の炭水化物混合物に添加される標準組成物と合わされる、方法を提供することを目的とする。未知の炭水化物(混合物)および標準組成物の両方を含有する試料は、第1の蛍光標識および第2の蛍光標識で標識される。前記蛍光標識のうちの少なくとも1種は、以下に定義される一般式CまたはDなどの、一般式AまたはBの、本明細書に記載の新しい蛍光色素である。
【0058】
本発明の一実施形態では、単一の試料は、標準組成物以外に、分析される少なくとも2つの異なるプローブ、すなわち、2つの異なって標識された炭水化物または炭水化物混合組成物を含有し得る。つまり、本明細書に記載の新しい蛍光色素は、単一の実行で単一の試料中の異なる炭水化物を決定またはプロファイリングまたは同定することを可能にする。特に、本発明による多波長蛍光検出システムの較正のための方法を最初に適用する場合、少なくとも3種以上、例えば少なくとも4種の異なる蛍光色素の使用が可能である(表2および3を参照されたい)。
【0059】
新しい蛍光色素は、複数の負荷電残基およびフルオロフォアに結合した、例えば、そのイオン化(脱プロトン化)形態においてアルゴンイオンレーザーにより励起可能である芳香族アミノまたはヒドラジン基を特徴とする。
【0060】
つまり、本発明による色素は、スループットおよび感度の増加を可能にする。本明細書に記載の新しい色素を使用する一実施形態は、分析される試料が、分析される2つの異なるプローブを含有し、その一つは、例えば、APTSで標識され、一方、他方のプローブは新しい色素で標識される、実施形態を含む。さらに、新しい色素で標識された標準、例えば、炭水化物標準または塩基対標準が提供される。さらなる実施形態は、本発明による新しい色素で標識された標準と一緒に、検出される3つの異なるプローブを含有する試料を含む。試料中に存在する3つのプローブは、1つのAPTS標識プローブ、および本発明による色素で標識された2つのプローブを含み、前記色素は、それらが互いに発光プロファイルを干渉しないように選択される。さらなる実施形態は、1つはAPTSで標識され、他のプローブは、発光スペクトルが異なる2つの異なる新しい色素で標識された3つのプローブ、および同様に新しい色素で標識されたアラインメント標準である標準を含有する試料を指す。さらなる実施形態は、塩基対標準などの標準と組み合わせて、決定される4つのプローブを含有する試料を含み、つまり、1つのプローブはAPTS標識されており、一方、他の3つのプローブは、異なる新しい色素で標識される。
【0061】
色素は、波長間のクロストークを最小にするように選択される。好適な組合せは以下に記載される。
試料中の分析されるプローブ中に存在する炭水化物を標識するための、本明細書に記載の色素の使用は、感度の増加を可能にする。本明細書に記載の色素は、機器のスペクトル較正および1つの試料中に存在する分析される化合物またはプローブの増加に関して有利である。前記試料は1つのキャピラリーで分析できる。したがって、キャピラリーの数を低減すること、ならびに感度およびアラインメント特性を増加させることが可能である。
【0062】
さらに励起波長をより大きな波長にシフトすること(赤色シフト)によって、前記色素で標識された試料の感度は増加し得る。さらに、本明細書に記載の色素は、APTSと比較してより良好な量子収率を有し、したがって、感度がさらに増加する。
【0063】
さらに、感度の増加および波長間のクロストークの減少に起因して、方法は、より頑強で、長期間でもより再現可能で、より正確であり、実行パラメーター、試料、試料-マトリックス、機器、操作者、研究室ならびに場所および時点により依存しない。これは特に、キャピラリーおよびゲルのエージングに関して真である。長期間だけでなく短期間または中期間にわたる実行間の差を、記載の通りの内部標準によって補うことができる。さらに、本明細書に記載の較正方法に基づき、新しい色素と組み合わせて、より正確なアラインメントが可能である。したがって、キャピラリーおよびカラムをより長い時間にわたって使用し、典型的には試料の移動/保持時間を変化させるエージングの問題を克服することが可能である。さらに、キャピラリー/カラム自体は、アラインされた移動/保持時間を変化させることなく変化され得る(例えば、短縮され、したがって、同様に分析時間も短縮される)。
【0064】
さらに、異なる機器および温度、電圧などの異なる実行パラメーター条件下で、キャピラリーの試料を実行することが可能である。これは、以下の試料において実証される。まとめると、新しい色素は、増加したスループットおよび感度を可能にし、また移動時間および保持時間のための内部アラインメントの使用を可能にする。本明細書に記載の動電および/またはクロマトグラフィー分離に基づく糖分析法は、システム、操作者、マトリックスなどの環境因子に依存しないアラインされた移動/保持時間を可能にする普遍的(炭水化物に基づく)アラインメント標準の使用を可能にする。
【0065】
特に、本明細書で定義される色素は、APTS標識類似体の最大から大きくシフトした最大を有する光を発する色素を表す。したがって、両方の蛍光色素の同時検出が、前記色素間での互いの干渉なしに可能であり、またはさらには本発明者らの異なる蛍光色素のうちの3種の同時検出が、前記色素間での最小の干渉で可能である。本明細書に記載の蛍光色素は、典型的には、複数の正味負電荷色素であり、これは、-4および-6の負電荷を有するリン酸化誘導体においてとりわけ高く、複合糖質とコンジュゲートされた場合、APTS複合糖質と比較して、色素のより高い電気泳動移動度をもたらす。
【0066】
本発明において、「炭水化物」という用語は、キシロース アラビノース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、フコース、N-アセチルグルコースアミン、N-アセチルガラクトサミン、シアル酸などの単糖;ラクトース、スクロース、マルトース、セロビオースなどの(ホモまたはヘテロ)二糖;グリカン(例えば、N-およびO-グリカン)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、フラクトオリゴ糖(FOS)、ミルクオリゴ糖(MOS)またはさらには糖脂質の糖部分などの(ホモまたはヘテロ)オリゴ糖;ならびにアミロース、アミロペクチン、セルロース、グリコーゲン、グリコサミノグリカン(GAG)またはキチンなどの多(ホモまたはヘテロ)多糖を指す。オリゴ糖および多糖は、直鎖状または(多)分枝状のいずれであってもよい。
【0067】
「複合糖質」という用語は、本明細書で使用される場合、炭水化物部分を含有する化合物を意味し、複合糖質の例は、糖タンパク質、グリコペプチド、プロテオグリカン、ペプチドグリカン、糖脂質、GPIアンカー、リポ多糖である。
【0068】
「炭水化物混合組成物パターンプロファイリング」という用語は、本明細書で使用される場合、混合物中に存在する異なる炭水化物の数、混合物中に存在する前記炭水化物の相対量および混合物中に存在する炭水化物の種類に基づいて試験炭水化物混合組成物に特有のパターンを確立し、例えば、それぞれ電気泳動図、クロマトグラムなどの図またはグラフにおいて前記パターンをプロファイリングすることを意味する。したがって、例えば、アラインされた電気泳動図/クロマトグラム、グラフまたは図の形態で示されるフィンガープリントが得られる。例えば、フィンガープリントに基づくグリコシル化パターンプロファイリングは、前記用語の範囲に入る。これに関連して、「フィンガープリント」という用語は、本明細書で使用される場合、炭水化物または炭水化物混合物に特有の図またはグラフであるアラインされた電気泳動図および/またはクロマトグラムを指す。
【0069】
「定量決定」または「定量分析」という用語は、炭水化物の相対的および/または絶対的定量化を指す。相対的定量化は、各化合物の個々のピーク高さを介して簡単に行うことができ、これは、その濃度に線形に(FLRおよび/またはLIF検出器の線形ダイナミックレンジ内で)対応する。相対的定量化は、組成物または標準中に存在する1種の炭水化物化合物の各々の別の炭水化物化合物との比を概説する。さらに、絶対的(半)定量分析が可能である。
【0070】
既知組成の内部炭水化物標準は、例えば、最大40mer(またはそれ以上)直鎖状および/または分枝状のモノマー、ダイマー、トリマー、テトラマーおよび/またはペンタマーの組であり得、これらは、分析される炭水化物試料のフィンガープリントの全範囲を通して溶出/移動するが、炭水化物試料とは別のタグで蛍光標識されており、別のタグは、別の波長を発光し、したがって試料トレース/チャネルに現れないため、別の波長トレース/チャネルにおいて検出される。例は、
a. n=1~40(またはそれよりも大きい)の長さで、α1-2(マンノースオリゴ糖)、α1-4(例えば、マルトース、デンプン)、α1-5(アラビノ-オリゴ糖)、α1-6(例えば、デキストラン、プルラン、デンプン)、α1-3(例えば、デキストラン、プルラン)、β1-3(例えば、セロビオシル-グルコース)、β1-4(例えば、セルロース、マンナン、キシロ-オリゴ糖、キトサン)およびβ1-6にグリコシド結合を有する、ペントース(キシロースまたはアラビノースなど)、ヘキソース(グルコース、ガラクトースまたはマンノースなど)およびヘキソサミン(グルコサミン、ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミンまたはN-アセチル-ガラクトサミンなど)を含む炭水化物系ホモポリマー
b. ヘミセルロース、アラビノキシラン、アラビノガラクタン、フルクタンなどのヘテロオリゴ-ポリマー
c. N-グリカン
d. O-グリカン
e. 糖脂質
f. ミルクオリゴ糖(MOS)
である。
【0071】
本発明は、EP2112506A1、US2009/0288951A1およびその対応物に記載の方法のさらなる開発を表す。特に、本明細書において同定される新しい色素により、試料と同一または類似の(内部)標準を、いずれも、それぞれ同じまたは類似の特性(例えば、サイズ、質量、電荷、親水性、疎水性など)を有し、したがって、環境、例えば、異なるマトリックス(例えば、塩、溶媒、ゲルなどの含有量および組成)だけでなく、温度および時間(これらはまた、例えばゲルのエージングに起因して、マトリックスの変化を引き起こす)の変化に伴って、それぞれ同じ、類似の挙動を示す、それぞれ新しい炭水化物、炭水化物混合物として、使用することが可能である。したがって、高度に再現可能かつ正確にアラインされた移動/保持時間は、炭水化物およびそれらそれぞれのアラインされた移動/保持時間を含有するそれぞれのデータベースを介した移動/保持時間の一致により炭水化物の高度に信頼性の高い同定を可能にする。
【0072】
これは、未知の炭水化物および未知のグリコシル化パターンプロファイルをより高い感度および特異性で同定することを可能にする。これは特に、複合炭水化物配合物およびグリコシル化パターンに関して真である。
【0073】
「置換された」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、1つまたは複数の置換基、特に、直鎖状または分枝状アルキル、特にC1~C4アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル;イソアルキル、例えば、イソプロピル、イソブチル(2-メチルプロピル);2級アルキル基、例えば、sec-ブチル(ブタ-2-イル);tert-アルキル基、例えば、tert-ブチル(2-メチルプロピル)を含む群から選択される置換基の存在を指す。さらに、「置換された」という用語は、ここで、水素原子の代わりに少なくとも1つの重水素、フルオロ、クロロもしくはブロモ置換基を有するアルキル基、またはメトキシ、エトキシ、2-(アルキルオキシ)エチルオキシ基(AlkOCH2CH2O)、およびより一般的な場合には、art Alk(OCH2CH2)nOCH2CH2-(Alk=CH3、C2H5、C3H7、C4H10、n=1~23)のオリゴ(エチレングリコール)残基を指し得る。
【0074】
「芳香族複素環式基」または「複素芳香族基」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、5~10個の環原子を有し、少なくとも1個の環原子は、S、OおよびNから選択される非置換または置換環式芳香族基(残基)を指し;基は、環原子のうちの任意のものを介して分子の残部に結合している。限定されない代表例は、フリル、チエニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、キノリニルおよびイソキノリニルである。
【0075】
上記一般構造式Aの化合物は、アクリドン色素であり、上記式Bの化合物は、ピレン色素である。
より具体的には、IUPAC規則に従うと、以下のスキームの基本構造式AおよびBに示される通り、式Aの化合物は、7-アミノアクリドン-2-スルホンアミドであり、一方、式Bの化合物は、3、6、8位に官能基置換されたスルホニル基を有する1-アミノピレン色素、すなわち、(官能基置換された)1,6,8-トリスルホニル-3-アミノピレンである。
【0076】
【0077】
本発明の新規蛍光色素は、以下のいくつかの好都合な特性を示す:
・ 例えばpH約2~5における効率的かつ清潔な還元的アミノ化または炭水化物との直接縮合のための芳香族アミノ(NH2)、ヒドラジン(NRNH2)、ヒドラジド(CONRNH2)、ヒドロキシルアミン(NROH)、反応性カルバメート(NHCOOR)またはアルコキシアミノ基(RONH2);好ましくは、芳香族アミノ基は、第一級アミノ基であるが、第二級アミノ基であってもよい;構造については上記のスキームを参照
・ コンジュゲート中の大きな正味電荷 -- pH少なくとも7~14において-3~-12の範囲
・ 広範囲のpHにおける水性媒体への非常に良好な溶解性;
・ 高輝度(これは、蛍光量子収率および消光の全体的な結果である)
・ 例えばボラン系試薬による還元に対する色素コアの例外的な安定性
・ スペクトルの完全一致および高い蛍光量子収率でアルゴンイオンレーザー(488および514nmで発光)により励起され得ること
・ およそ520nmにおける最小発光
・ 色素は、99%までの精製が可能である。
【0078】
本発明の新規蛍光タグは、非常に長い移動時間の「重」グリカンの検出さえ可能にする。これらの長い移動時間およびピーク広幅化に起因して、そのような「重」グリカンは、とりわけ蛍光タグとしてAPTSが使用される場合、動電検出することが非常に困難である。
【0079】
以下において、本発明のより特定の実施形態が記載される。
上記式Aにおいて、NR1および/またはN(R2)R3は、好ましくは、カルボニルまたは求核反応性基を含む。R1、R2およびR3は、H、直鎖状または分枝状アルキル、ヒドロキシアルキルまたはペルフルオロアルキル基によって表されてもよい。置換基R3、R4およびR5は、好ましくは、可溶化および/またはアニオン提供基、特に、ヒドロキシアルキル((CH2)nOH)、チオアルキル((CH2)nSH)、カルボキシアルキル((CH2)nCO2H)、スルホン酸アルキル((CH2)nSO3H)、硫酸アルキル((CH2)nOSO3H)、リン酸アルキル((CH2)nOP(O)(OH)2)またはホスホン酸アルキル((CH2)nP(O)(OH)2)(nは、1~12の範囲の整数である)を含む。
【0080】
あるいは、置換基R1、R2、R3、R4およびR5は、求核反応性基として、カルボン酸残基(CH2)nCOOH(n=1~12)およびその反応性エステル(CH2)nCOOR6によって表されてもよい。R6は、H、アルキル、(tert-ブチルを含む)、ベンジル、フルオレン-9-イル、ポリハロゲノアルキル、CH2CN、ポリハロゲノフェニル(例えば、テトラ-またはペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル)、2-および4-ニトロフェニル、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリルまたは他の潜在的に求核反応性の脱離基であってもよい。アルキル鎖(または主鎖)(CH2)nは、直鎖状であっても分枝状であってもよい。
【0081】
さらに、式Aのアリールアミノ基(NR1およびNR2R3)は、(ポリ)メチレン、カルボニル、窒素または硫黄含有直鎖状または分枝状リンカー、特に、(CH2)mCON(R7)、CO(CH2)mN(R7)、CO(CH2)mS(CH2)n、(CH2)mS(CH2)nCO、CO(CH2)mSO2(CH2)n、(CH2)mSO2(CH2)nCO、それらの組合せを介して分析物-反応性基に連結していてもよく、または窒素含有非芳香族複素環(例えば、ピペラジン、ピペコリン、オキサゾリン)の一部として結合していてもよく;mおよびnは、0~12または1~12の範囲の整数である。置換基R7は、上記のR1、R2、R3、R4およびR5に関して列挙した官能基のうちの任意のものによって表されてもよい。
【0082】
式Aの置換基R1、R2およびR3はまた、第一級アミノ基によって表されてもよく、したがって、カルボニル反応性アリールヒドラジンを含み、(R2=H、R1もしくはR3=NH2、またはR1=NH2、R2、R3=アルキル、ペルフルオロアルキルもしくはアルキル)、これは、R4およびR5についての可能な候補として列挙されている、可溶化および/またはアニオン提供部分、特に:ヒドロキシアルキル(CH2)nOH、チオアルキル((CH2)nSH)、カルボキシアルキル((CH2)nCO2H)、スルホン酸アルキル((CH2)nSO3H)、硫酸アルキル((CH2)nOSO3H)、リン酸アルキル((CH2)nOP(O)(OH)2)またはホスホン酸アルキル((CH2)nP(O)(OH)2)(式中、nは、0~12または1~12の範囲の整数である)とコンジュゲートされておりまたはそれにより置換されている。あるいは、ヒドラジン誘導体は、スルホニルヒドラジド(R4=NH2であり、一方、R5は、アルキル、パーフルオロアルキルまたは上述の種類の可溶化および/またはアニオン提供基で装飾されたアルキル基である)によって表されてもよい。
【0083】
あるいは、式Aのアリールアミノ基(NR1および/またはNR2R3)は、アシルヒドラジンまたはアルキルヒドラジン部分にリンカーを介して間接的に連結していてもよく、したがって、それぞれヒドラジド(ZCONHNH2)またはヒドラジン(ZNHNH2)を含む。ここで、Zは、式Aの色素残基を示し、これは、アリールアミノ基およびリンカーを含む。特に、R1およびR2は、(CH2)mCON(R7)、CO(CH2)mN(R7)、CO(CH2)mS(CH2)n、(CH2)mS(CH2)nCO、CO(CH2)mSO2(CH2)n、(CH2)mSO2(CH2)nCOおよびその組合せによって表されてもよく;mおよびnは、0~12の範囲の整数である。置換基R7は、官能基R1~R5の候補として上で列挙されるR1、R2、R3、R4およびR5に関する官能基のうちの任意のもの、特に、ヒドロキシアルキル(CH2)nOH、チオアルキル((CH2)nSH)、カルボキシアルキル((CH2)nCO2H)、スルホン酸アルキル((CH2)nSO3H)、硫酸アルキル((CH2)nOSO3H)、リン酸アルキル((CH2)nOP(O)(OH)2)またはホスホン酸アルキル((CH2)nP(O)(OH)2)(式中、nは、0~12または1~12の範囲の整数である)によって表されてもよい。リンカーはまた、非芳香族O、NおよびS含有複素環(例えば、ピペラジン、ピペコリン)によって表されてもよい。
【0084】
さらに、R1、R2およびR3は、CH2-C6H4-NH2、COC6H4-NH2、CONHC6H4-NH2またはCSNHC6H4-NH2(C6H4は、1,2-、1,3-もしくは1,4-フェニレン、COC5H3N-NH2またはCH2-C5H3N-NH2であり、C5H3Nは、ピリジン-2,4-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,6-ジイル、ピリジン-3,5-ジイルである)によって表されてもよい。
【0085】
R1、R2、R3、R4およびR5の可変の位置における分析物反応性基は、直接またはヒドラジン誘導体(n=1~12である)に関して列挙したカルボニル、アミド、窒素、酸素もしくは硫黄含有リンカーを介して間接的に連結した、芳香族もしくは複素環式アミン、カルボン酸、カルボン酸のエステル(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミジルもしくは別のアミノ反応性エステル)によって表されてもよく;またはアルキルアジド(CH2)nN3、アルキン(プロパルギル)、アミノ-オキシアルキル(CH2)nONH2、マレイミド(求核反応性二重結合を有するC4H3NO2)もしくはハロゲノケトン官能基(COCH2X;X=Cl、BrおよびI)、ならびにハロゲノアミド基(NRCOCH2X、R=H、C1~C6アルキル、X=Cl、Br、I)によって表されてもよい。
【0086】
本発明の一部のより好ましい実施形態によると、上記式Aの置換基R1は、以下の通り定義される:
式AのR1は、水素、低級アルキル基(C1~C4)、非置換フェニル基、OH、SH、NH2、NHRa、NRaRb、RaO、RaS、OP(O)(ORa)(ORb)(式中、RaおよびRbは、互いに独立しており、直鎖状または分枝状鎖を有するC1~C12、好ましくはC1~C6アルキル基であってもよい)の組から選択される1つまたはいくつかの電子供与置換基を有するフェニル基、NO2、CN、COH、COOH、CH=CHCN、CH=C(CN)2、SO2Ra、SO3Ra、CORa、COORa、CH=CHCORa、CH=CHCOORa、CONHRa、SO2NRaRb、CONRaRb、P(O)(ORa)(ORb)(式中、RaおよびRbは、互いに独立しており、Hまたは直鎖状もしくは分枝状炭素鎖を有するC1~C6アルキル基であってもよい)の組から選択される1つまたはいくつかの電子受容体を有するフェニル基を表し;
あるいは、R1は、芳香族複素環式基、特に、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-チエニル、3-チエニル、ピリミジン-4-イル、ピリミジン-2-イル、ピリミジン-5-イルまたは芳香族複素環から誘導される他の電子受容体基、例えば、4-ピリジル-N-オキシド、N-アルキルピリジニウム塩またはベタイン、特に、N-(ω-スルホアルキル)-4-ピリジニウム、N-(ω-スルホアルキル)-2-ピリジニウム、N-(1-ヒドロキシ-4,4,5,5-テトラフルオロ-シクロペンタ-1-エン-3-オン-2-イル)-4-ピリジニウム、N-(1-ヒドロキシ-4,4,5,5-テトラフルオロシクロペンタ-1-エン-3-オン-2-イル)-2-ピリジニウムを表してもよい。
【0087】
特に、R1は、7-アミノアクリドン-2-スルホンアミド主鎖を有する2-ピリジル、3-ピリジルまたは4-ピリジル前駆体およびアルキル化剤(例えば、ハロゲン化アルキル、スルホン酸アルキル、アルキルトリフレート、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン)または求電子剤(例えば、パーフルオロシクロペンテン)から誘導される正荷電複素環式基を表してもよい。
【0088】
以下の式のうちの1つを有する上記構造式Aのアミノアクリドン含有化合物がとりわけ好ましい。
【0089】
【0090】
式Bにおいて、Lは、色素コアと可溶化および/またはイオン性部分を連結し、またスペクトル特性を調整する2価リンカーである。
典型的には、その存在の結果、APTS色素タグ(断片Lは存在せず、基XはOHである)と比較して、488nm市販レーザーとのより良好な一致を伴い、大きく深蛍光シフトおよび深色シフトする。
【0091】
リンカーLは、少なくとも1個の炭素原子を含むまたはそれからなり、任意の出現において、C1~C12の範囲の長さの直鎖状または分枝状の、アルキル、ヘテロアルキル(例えば、アルキルオキシ:CH2OCH2、CH2CH2O CH2CH2OCH2)、ジフルオロメチル(CF2)、アルケンまたはアルキン部分を、任意の組合せで、表してもよい。リンカーはまた、カルボニル(CH2CO、CF2CO)を含み得、スルホンアミドは、Lがアルキルアミノまたはジアルキルアミノ基、特に、ジエタノールアミンまたはN-メチル(アルキル)モノエタノールアミン部分(すなわち、N(CH3)CH2CH2O-およびN(CH2CH2O-)2)である場合であり、これは、可溶化および/またはイオン性部分Xへのさらなる接続を可能にする。本発明のある特定の実施形態は、式(CH2)3OP(O)(OH)2およびN(CH3)(CH2)2OP(O)(OH)2による部分LおよびXの組合せを表す。したがって、この種類のスルホンアミドは、一般式SO2NR3R4(R3およびR4は、互いに独立しており、H、C1~C12の範囲の長さの直鎖状または分枝状であり、また末端OH基を有する、アルキル、ヘテロアルキル(例えば、アルキルオキシ:CH2OCH2、CH2CH2O、CH2CH2OCH2)、ジフルオロメチル(CF2)の任意の組合せによって表されてもよい)を有する。
【0092】
式BのN(R1)R2は、好ましくは、カルボニルまたは求核反応性基を含む。置換基R1およびR2は、互いに独立しており、いずれも水素によって表されてもよい。これらのうちの1つは、直鎖状または分枝状アルキル(ペルフルオロアルキル)基C1~C12であってもよい。同時に、R1およびR2のうちの一方は、カルボン酸残基(CH2)nCOOHおよびその通常のまたは反応性エステル(CH2)nCOR5(式中、nは、1~12の範囲の整数である)によって表されてもよい。残基R5は、H、アルキル、(tert-ブチルを含む)、ベンジル、フルオレン-9-イル、ポリハロゲノアルキル、CH2CN、ポリハロゲノフェニル(例えば、テトラ-またはペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル)、2-および4-ニトロフェニル、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジルまたは他の潜在的に求核反応性の脱離基である。アルキル鎖(または主鎖)(CH2)nは、直鎖状であっても分枝状であってもよい。特に、式は、Z-NR1(CH2)nCOR5として示され得、ここで、Zは、基LおよびXも含む式Bの分子の残部である。
【0093】
さらに、求核反応性基COR5は、(ポリ)メチレン、オキシメチレン(CH2OCH2、CH2CH2OCH2、PEG)カルボニル、カーボネート、ウレタン、窒素または硫黄含有リンカー(スペーサー)(分枝状または直鎖状)、特に(CH2)mCON(R6)、CONH(CH2)n、(CH2)mOCONH(CH2)n、CO(CH2)n、CO(O)NR6、(CH2)mSO2mN(R6)、CO(CH2)mS(CH2)n、(CH2)mS(CH2)nCO、CO(CH2)mSO2(CH2)n、(CH2)mSO2NR6およびその組合せ(式中、mおよびnは、0~12の範囲の整数である)を介してアリールアミノ基N(R1)R2に連結されていてもよい。反応性基R5は、非芳香族O、NおよびS含有複素環(例えば、ピペラジン、ピペコリン、オキサゾリン)によって結合されてもよい。置換基R6は、H、アルキル、ヒドロキシアルキルまたはペルフルオロアルキル基C1~C12によって表されてもよい。
【0094】
式Bの置換基R1およびR2のうちの一方は、第一級アミノ基によって表されてもよく、したがって、カルボニル反応性アリールヒドラジン(R1=NH2、R2=アルキル、ペルフルオロアルキル)を含み、またはアリールオキシム(ArNHOH)を形成するヒドロキシル基によって表されてもよい。あるいは、式Bのアルキルヒドラジンまたはオキシム反応性部分は、反応性基R4に関して上で列挙したリンカーを介してアリールアミノ基N(R1)R2に連結していてもよい。スルホニルヒドラジドは、R1またはR2=(CH2)nSO2NR6NH2(式中、n=1~12)であり、置換基R6が、H、アルキル、ヒドロキシアルキルまたはペルフルオロアルキル基C1~C12によって表されてもよい特別な場合を構成する。スルホニルアミド(スルホンアミド、スルファミド)基はまた、反応性基R3、R4およびR5の場合に関して上で列挙した多様なリンカーを介して結合していてもよい。
【0095】
さらに、R1およびR2は、CH2-C6H4-NH2、COC6H4-NH2、CONHC6H4-NH2またはCSNHC6H4-NH2(C6H4は、1,2-、1,3-もしくは1,4-フェニレンである)、COC5H3N-NH2またはCH2-C5H3N-NH2(C5H3Nは、ピリジン-2,4-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,6-ジイル、ピリジン-3,5-ジイルである)によって表されてもよい。
【0096】
置換基R1およびR2はまた、直接またはカルボニル、アミド、ヒドラジン誘導体に関して列挙した窒素もしくは硫黄含有リンカーを介してのいずれかで連結したアルキルアジド(CH2)nN3、アルキン(プロパルギル)、マレイミド(求核反応性二重結合を有するC4H3NO2)またはハロゲノ-ケトン官能基(COCH2X;X=Cl、BrおよびI)(n=1~12)によって表されてもよい。
【0097】
式Bの基Xは、可溶化および/またはイオン性アニオン提供部分、特に、向上した電気泳動移動度をもたらすものを示す。基Xは、ヒドロキシアルキル(CH2)nOH、チオアルキル((CH2)nSH)、カルボキシアルキル((CH2)nCO2H)、スルホン酸アルキル((CH2)nSO3H)、硫酸アルキル((CH2)nOSO3H)、リン酸アルキル((CH2)nOP(O)(OH)2)またはホスホネート((CH2)nP(O)(OH)2)(nは、0~12の範囲の整数である)を含み得る。あるいは、CH2基は、CF2によって交換されていてもよい。アニオン提供部分はまた、非芳香族O、NおよびS含有複素環(例えば、ピペラジン、ピペコリン)によって結合されてもよい。あるいは、基Xのうちの1つは、基R1およびR2に関して列挙したカルボニルまたは求核反応性部分を、また基Lに関して列挙した任意の種類の結合と共に、他の置換基とは独立して有してもよい。式Bの化合物は、塩の形態で存在し得、塩の形態で適用されてもよく、塩の形態は、すべての可能な種類のカチオン、好ましくはNa+、K+、Li+、またはトリアルキルアンモニウムを含む。
【0098】
式Bの蛍光色素は、塩、溶媒和物または水和物、特にNa+、K+、Li+、NH4
+および有機アンモニウムを含むカチオンまたは有機ホスホニウムカチオンとの塩の形態で存在し得る。
【0099】
本発明の特定の一実施形態によると、アニオン提供基Xは、請求項3の式Bにおいて用語(SO3H)n(n=1~4)によって示される通り、式Bの各出現において、リンカー基Lに結合した1~4つの基SO3Hを表してもよい。
【0100】
本発明の特定の実施形態によると、上記構造式Bの化合物は、式C
【0101】
【0102】
(式中、
R1および/またはR2は、互いに独立しており、
H、CH3、C2H5、直鎖状もしくは分枝状C3~C12アルキル基、好ましくはC3~C6アルキル基、または置換C2~C12アルキル基、好ましくはC2~C6アルキル基;特に、(CH2)nCOOR3(式中、n=1~12、好ましくは1~5であり、R3は、H、CH2CN、2-および4-ニトロフェニル、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリルであってもよく、(CH2)n中のアルキル鎖は、直鎖状または分枝状であってもよい)を表してもよく;
R1---R2は、さらなる第一級アミノ基NH2、第二級アミノ基NHRaを有する4、5、6または7員非芳香族炭素環(式中、Ra=この環の炭素原子の1つに結合したC1~C6アルキル、またはヒドロキシル基OH)を形成してもよく;場合により、R1---R2は、4、5、6または7員非芳香族複素環(この複素環にはO、NまたはSなどのさらなるヘテロ原子が含まれる)を形成してもよく;
ヒドロキシアルキル基(CH2)mOH(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する);R1またはR2基のうちの一方は、カーボネートまたはカルバメート誘導体(R1またはR2基のうちの一方は、(CH2)mOCOOR4またはCOOR4(式中、m=1~12、R4=メチル、エチル、2-クロロエチル、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリル フェニル基または置換フェニル基、例えば、2-および4-ニトロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、2,3,5,6-テトラフルオロ-フェニル、2-ピリジルまたは4-ピリジル);
(CH2)mNRaRb(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有し;Ra、Rbは、互いに独立しており、Hまたは置換されていてもよいC1~C4アルキル基であってもよい)であってもよく、特にR1またはR2基のうちの一方は、アルキルアジド基(CH2)mN3(式中、m=2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する)であってもよく;
R1またはR2基のうちの一方は、(CH2)nCOOR5(式中、n=1~5であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖(CH2)nを有し、R5は、H、直鎖状または分枝状C1~C6アルキル、CH2CN、2-および4-ニトロフェニル、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、スルホ-N-スクシンイミジル、N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリルから選択される)であってもよく;
さらに、R1もしくはR2のうちの一方は、(CH2)nCONHR6(式中、n=1~12、好ましくは1~5、R6=H、C1~C6アルキル、(CH2)mN3、(CH2)m-N-マレイミド、(CH2)m-NHCOCH2X(X=BrまたはI)(式中、m=2~6であり、(CH2)nおよびR6中に直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する)であってもよく;またはR1もしくはR2のうちの一方は、CH2-C6H4-NH2、COC6H4-NH2、CONHC6H4-NH2もしくはCSNHC6H4-NH2(C6H4は、1,2-、1,3-もしくは1,4-フェニレンである)、COC5H3N-NH2もしくはCH2-C5H3N-NH2(C5H3Nは、ピリジン-2,4-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,6-ジイルもしくはピリジン-3,5-ジイルである)を表してもよく;
式BのSO2断片と残基X間の(CH2)n-CH2リンカー(式中、n=1~5)は、2~6個の炭素原子を有する直鎖、分枝状または環式基を表してもよく;
X=SH、COOH、SO3H、OP(O)(OH)2、OP(O)(OH)Ra(式中、Ra=置換されていてもよいC1~C4アルキル)、P(O)(OH)2、P(O)(OH)Ra(式中、Ra=置換されていてもよいC1~C4アルキル)であり;
ただし、式Cによって表されるすべての化合物において、塩基性条件下、すなわち7<pH<14で、式Bの残基Xに3または6つの負荷電基が存在し、これらの負荷電基は、以下:SH、COOH、SO3H、OP(O)(OH)2、OP(O)(OH)Ra(式中、Ra=C1~C4アルキルまたは置換C1~C4アルキル)、P(O)(OH)2、P(O)(OH)Ra(式中、Ra=C1~C4アルキルまたは置換C1~C4アルキル)から選択されるイオン性基の少なくとも部分的に脱プロトン化された残基を表す)
のアルキルスルホニル誘導体である。
【0103】
本発明のより特定の実施形態によると、本発明の蛍光色素は、式C(式中、Xは、各出現において、SO3Hであり、nは、1~12、好ましくは1~6である)またはその塩によって表される。
【0104】
本発明の別の特定の実施形態によると、上記構造式Bの化合物は、式D
【0105】
【0106】
(式中、
R1および/またはR2は、互いに独立しており、H、CH3、C2H5または直鎖状もしくは分枝状の置換されていてもよいC3~C12アルキル基、好ましくはC3~C6アルキル基;特に、(CH2)nCOOR4(式中、n=1~12、好ましくは1~5であり、R4は、H、CH2CN、2-および4-ニトロフェニル、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリルであってもよく、(CH2)n中のアルキル鎖は、直鎖状または分枝状であってもよい)を表してもよく;
R1---R2は、さらなる第一級アミノ基NH2、第二級アミノ基NHRaを有する4、5、6または7員非芳香族炭素環(式中、Ra=この環の炭素原子の1つに結合した、置換されていてもよいC1~C6アルキル、またはヒドロキシル基OHである);または場合により、R1---R2は、4、5、6または7員非芳香族複素環(この複素環にはO、NまたはSなどのヘテロ原子が含まれる)を形成してもよく;
R1および/またはR2は、
ヒドロキシアルキル基(CH2)mOH(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状の置換されていてもよいアルキル鎖を有する)をさらに表してもよく;R1またはR2基の一方は、カーボネートまたはカルバメート誘導体(CH2)mOCOOR5またはCOOR5(式中、m=1~12、R5=メチル、エチル、2-クロロエチル、CH2CN、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリル、フェニル基または置換フェニル基、例えば、2-および4-ニトロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロ-フェニル、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル、2-ピリジル、4-ピリジル);
(CH2)mNRaRb(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有し;Ra、Rbは、互いに独立しており、水素および/または置換されていてもよいC1~C4アルキル基を表す);
(CH2)mN3(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する);
(CH2)nCONHR6(式中、n=1~12、好ましくは1~5、R6=H、置換または非置換C1~C6アルキル、(CH2)mN3、(CH2)m-N-マレイミド、(CH2)m-NHCOCH2Y(Y=Br、I)(式中、m=1~12、好ましくは2~6であり、(CH2)nおよびR6中に直鎖状または分枝状アルキル鎖を有する)をさらに表してもよく;
R1またはR2基のうちの一方は、アリールヒドラジンAr-NR7NH2(式中、Arは式Dの全ピレン残基であり、R7=Hまたはアルキル)を形成する第一級アミノ基であってもよく;
R1またはR2基のうちの一方は、アリールヒドロキシルアミンAr-NR8OH(式中、Arは式Dの全ピレン残基であり、R8=Hまたはアルキル)を形成するヒドロキシ基であってもよく;
R1またはR2基のうちの一方は、末端アルキルオキシアミノ基(CH2)nONH2(式中、n=1~12であり、これは、すべての可能な組合せで1つまたは複数のアルキルアミノ(CH2)mNH、アルキルアミド(CH2)mCONH、アルキルエーテルまたはアルキルエステル基を介して結合されていてもよく、m=0~12である)を含有してもよく;
さらに、R1またはR2は、CH2-C6H4-NH2、COC6H4-NH2、CONHC6H4-NH2またはCSNHC6H4-NH2(C6H4は、1,2-、1,3-または1,4-フェニレンである)、COC5H3N-NH2またはCH2-C5H3N-NH2(C5H3Nは、ピリジン-2,4-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,6-ジイルまたはピリジン-3,5-ジイルである)を表してもよく;
R3=H、(CH2)qCH2X、C2H5、直鎖状または分枝状C3~C6アルキル基、CmH2mOR(式中、m=2~6であり、直鎖状または分枝状アルカン-ジイル鎖CmH2mを有し、R=H、CH3、C2H5、C3H7、CH3(CH2CH2O)kCH2CH2(k=1~12)であり;一方、(CH2)qCH2リンカーは、2~6個の炭素原子を有する直鎖、分枝状または環式基を表してもよい)であり;
式Dにおいて、スルホンアミド断片SO2Nと残基X間の(CH2)n-CH2リンカー(式中、n=1~12、好ましくは1~5)は、2~6個の炭素原子を有する直鎖、分枝状または環式基を表してもよく;
X=SH、COOH、SO3H、OP(O)(OH)2、OP(O)(OH)Ra(式中、Ra=置換または非置換C1~C4アルキル)、P(O)(OH)2、P(O)(OH)Ra(式中、Ra=置換または非置換C1~C4アルキルである)であり;
ただし、式Dによって表されるすべての化合物において、塩基性条件、すなわち7<pH<14で、式Cの残基Xに3、6、9または12個の負荷電基が存在し、これらの負荷電基は、少なくとも部分的に、以下:SH、COOH、SO3H、OP(O)(OH)2、OP(O)(OH)Ra(式中、Ra=C1~C4アルキルまたは置換C1~C4アルキル)、P(O)(OH)2、P(O)(OH)Ra(式中、Ra=C1~C4アルキルまたは置換C1~C4アルキル)から選択されるイオン性基の脱プロトン残基を表す)
のスルファミド誘導体である。
【0107】
本発明の好ましい実施形態によると、上記式B、CおよびDの置換基R1およびR2は、以下の通り定義される:
式BのR1および/またはR2は、H、CH3、(CH2)nCOOR3(式中、n=1~4であり、R3は、H、CH2CN、2-または4-ニトロフェニル、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリルであってもよく、(CH2)n(n=1~12)中のアルキル鎖は直鎖状である)を表す。
【0108】
式CおよびDの化合物は、塩の形態で存在し得、塩の形態で適用されてもよく、塩の形態は、すべての可能な種類のカチオン、好ましくは、Na+、K+またはトリアルキルアンモニウムカチオンを含む。
【0109】
上記一般構造式B、CおよびDのとりわけ好ましいアミノピレン含有化合物は、以下の式のうちの1つを有する。
【0110】
【0111】
本発明の好ましい一実施形態は、上記式A~BまたはA~Dの化合物に関し、負電荷は、いくつかの第一リン酸基、特に、二重O-リン酸化7-アミノアクリドン-2-スルホンアミド(2つのリン酸基)、三重O-リン酸化1,6,8-トリス[(ω-ヒドロキシアルキル)スルホニル]-ピレン-3-アミン(3つのリン酸基)および1,6,8-トリス[N-(ω-ヒドロキシアルキル)スルホニルアミド]ピレン-3-アミンによってもたらされる。これらの化合物は、APTSと比較して優れた輝度、および大幅により良好な電気泳動移動度を有し、グリカンの標識およびレーザー誘起蛍光(LIF)による検出を用いたキャピラリーゲル電気泳動(CGE)によるコンジュゲートの分析に成功裡に適用された。
【0112】
本発明の別の好ましい実施形態は、式B、CまたはDの化合物(R1および/またはR2は、H、重水素、アルキルまたは重水素置換アルキル、特に、1~12C原子、好ましくは1~6C原子を有するアルキルまたは重水素置換アルキル(式中、アルキル基の1個、いくつかまたはすべてのH原子は、重水素原子によって交換されていてもよい)、4,6-ジハロ-1,3,5-トリアジニル(C3N3X2)(式中、ハロゲンXは、好ましくは塩素である)、2-、3-または4-アミノベンゾイル(COC6H4NH2)、N-[(2-、N-[(3-またはN-[(4-アミノフェニル)ウレイド基(NHCONHC6H4NH2)、N-[(2-、N-[(3-またはN-[(4-アミノフェニル)チオウレイド基(NHCSNHC6H4NH2、または一般式(CH2)m1COOR3、(CH2)m1OCOOR3(CH2)n1COOR3もしくは(CO)m1(CH2)m2(CO)n1(NH)n2(CO)n3(CH2)n4COOR3(整数m1、m2およびn1、n2、n3、n4は、独立して、それぞれ1~12および0~12の範囲であり、鎖(CH2)m/nは、直鎖状、分枝状、飽和、不飽和、部分もしくは完全重水素化であるおよび/またはN、OもしくはSを含有する炭素環もしくは複素環に含まれ、R3は、H、Dまたは求核反応性脱離基であり、好ましくは、これらに限定されないが、N-スクシンイミジル、スルホ-N-スクシンイミジル、1-オキシベンゾトリアゾリル、シアノメチル、ポリハロゲノアルキル、ポリハロゲノフェニル、例えば、テトラ-またはペンタフルオロフェニル、2-または4-ニトロフェニルを含む)を表す)に関する。
【0113】
本発明の新規化合物は、小さな分子サイズを有し、好ましい実施形態では、劇的に増加した高い正味負電荷(z)がもたらされる(例えば、少なくとも、リン酸化アクリドンについてz=-4およびリン酸化ピレン色素について少なくともz=-6)。これらの2つの要件は、それぞれ、低い流体力学半径および低い質量対電荷比(m/z)と等価である。結果として、高速および良好な分析的分解能における高速分離が、これらの化合物および対応する標識炭水化物に関する動電測定において達成され得る。
【0114】
負電荷は、塩基性またはさらに中性媒体中で脱プロトン化され得る酸性基によってもたらされる。第一級アルキルホスフェート(R-OPO3H2)は、第1および第2の酸性プロトンについてそれぞれ1~2および6~7の範囲のpKa値を有するため、リン酸基はこの目的のために好ましい。その結果、単一のリン酸基は、塩基性条件下で緩衝溶液に2つの負電荷を導入し得る(例えば、pH8超では、R-OPO3
2-が存在する)。-4の負電荷を達成するためには、2つのリン酸基の結合が必須であるなどである。しかしながら、特に、上記式A~Bにおいて定義される基Xから選択される他の酸性基もまた、好適である。
【0115】
一般に、上記式A~Bの化合物は、アミノ酸、ペプチド、一次および二次抗体、単一ドメイン抗体、ドセタキセル、アビジン、ストレプトアビジンおよびそれらの変形を含むタンパク質、アプタマー、ヌクレオチド、核酸、毒素、脂質、2-デオキシ-2-アミノグルコースおよび他の2-デオキシ-2-アミノアミノピラノシド、グリカン、グルカンを含む炭水化物、ビオチンならびに他の低分子、例えば、ジャスプラキノリドおよびその変形のための蛍光標識として使用するのに好適かつ有利である。
【0116】
化合物7-R(R=H、Me)、13a、13b、16および18(以下のスキーム7を参照されたい)は、遊離ヒドロキシル基を有し、一般式Bのリン酸化ピレン色素を得るための前駆体として好適である。特に、化合物7-R(R=H、Me)は、リン酸化し、色素8-R(R=H、Me)を得た。化合物13a、bおよび18は、同様にリン酸化した。したがって、例えば、前駆体色素13aおよび13bの両方は、(反応混合物の塩基性後処理後に)化合物15をもたらした。化合物16は、生体共役反応の反応中心として使用され得る遊離カルボキシル基を有する。したがって、化合物16は、アミノ酸、ペプチド、一次および二次抗体、単一ドメイン抗体、ドセタキセル、アビジン、ストレプトアビジンおよびそれらの変形を含むタンパク質、アプタマー、修飾ヌクレオチド、アミノ基を含有する修飾核酸、毒素、脂質、2-デオキシ-2-アミノグルコースおよび他の2-デオキシ-2-アミノアミノピラノシドを含む炭水化物、変形ビオチン(例えば、ビオシチン)および他の低分子のための蛍光標識を表す。
【0117】
【0118】
本発明の例示的なアミノピレン含有化合物およびその前駆体
その結果、本発明の密接に関連する態様は、広範囲の分析物へのコンジュゲーションのための蛍光試薬としての構造式A~Dの化合物の使用であって、コンジュゲーションが、任意の化学実体、ペプチド、タンパク質、炭水化物、核酸、毒素および脂質とカップリングした化学実体または物質、例えば、アミン、カルボン酸、アルデヒド、アルコール、芳香族化合物、複素環、色素、アミノ酸、アミノ酸残基との少なくとも1つの共有化学結合または少なくとも1つの分子錯体の形成を含む、使用に関する。
【0119】
特許請求される化合物は、標的分子の蛍光標識および検出のための方法に好適であり、それに使用され得る。典型的には、そのような方法は、上記式A~Dのいずれか1つによる化合物を、アミノ酸、ペプチド、一次および二次抗体、単一ドメイン抗体、ドセタキセル、アビジン、ストレプトアビジンおよびそれらの変形を含むタンパク質、アプタマー、(修飾)ヌクレオチド、(修飾)核酸、毒素、脂質、2-デオキシ-2-アミノグルコースおよび他の2-デオキシ-2-アミノアミノピラノシド、グリカン、グルカンを含む炭水化物、(修飾)ビオチン(例えば、ビオシチン)、ならびに他の低分子(例えば、ジャスプラキノリドおよびその変形)を含む群から選択される標的分子と反応させることを含む。標識の後に、クロマトグラフィー技術および/または動電技術による標識蛍光誘導体の分離、検出、定量および/または単離が続く。
【0120】
本発明者らは、すべて蛍光またはレーザー誘起蛍光検出を用いた、クロマトグラフィー分離技術(例えば、すべての可能な規模(ナノから分析規模までおよびそれよりも大規模)の逆相または親水性相互作用(U)HPLC、および動電分離技術(電気泳動、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、キャピラリーゲル電気泳動またはキャピラリーエレクトロクロマトグラフィー)が、炭水化物および炭水化物混合物の自動化された高性能プロファイリング、同定および/または決定のための記載の改善された方法に十分好適であることを見出した。特に、レーザー誘起蛍光検出(xCGE-LIF)を用いた多重キャピラリーゲル電気泳動を使用することにより、炭水化物および/または炭水化物混合組成物パターン(例えば、糖タンパク質のグリコシル化パターン)の迅速だが頑強で信頼性の高い分析および同定が可能になる。糖タンパク質分析の文脈において使用される本発明による方法は、質量分析計またはNMR機器などの非常に高価で複雑な装置を排除しながら、炭水化物の構造分析を含む炭水化物-混合組成物(例えば、糖タンパク質のグリカンプール)を視覚化することを可能にする。他の分離技術と比較して、その優れた分離性能および効率に起因して、キャピラリー電気泳動技術、特にキャピラリーゲル電気泳動が、複合炭水化物分離に関してこれまでに検討されたが、前記方法を使用した場合にもたらされと考えられる欠点に起因して、前記技術は、当技術分野において推奨されなかった。例えば、Domannら、またはWO2006/114663を参照されたい。しかしながら、本発明による方法を適用する場合、xCGE-LIFの技術は、炭水化物構造の高感度かつ信頼性の高い決定および同定を高性能で可能にする。特に、キャピラリーDNAシーケンサー(例えば、4-キャピラリーシーケンサー:3100-Avant遺伝子分析器、3130遺伝子分析器、SeqStudio and Spectrum Compact;16-キャピラリーシーケンサー:3100遺伝子分析器および3130xl遺伝子分析器;48-キャピラリーシーケンサー:3730 DNA分析器;96-キャピラリーシーケンサー:3730xl DNA分析器、Applied Biosystems製、8-キャピラリーシーケンサー:3500遺伝子分析器;24-キャピラリーシーケンサー:3500xl遺伝子分析器およびPromega Spectrum)は、高性能の本発明による方法を可能にする。本発明の先進的な/改善された方法は、試料を既知の炭水化物混合組成物と比較する場合、炭水化物「フィンガープリント」アラインメントによって直接、複雑な構成の天然または合成炭水化物混合物の変種のより容易かつより正確な特徴決定および炭水化物混合組成物パターン(例えば、タンパク質グリコシル化パターン)の特徴決定を可能にする。
【0121】
本発明による方法は、さらに単純化され、より頑強であるにも関わらず、高感度かつ再現可能な、高分離性能の糖分析方法である。
とりわけ、本発明に包含される上述の機器の、最大96の並行キャピラリーおよびソフトウェア/データベースツールとの組合せは、自動化された現実の高スループット分析を可能にする。
【0122】
この態様のさらに特定の実施形態は、式A~Dの色素による炭水化物の蛍光標識のための方法であって、少なくとも以下のステップ:
a)0.5~4M水性有機酸中の色素、特に、請求項5に示される式6-H、6-Me、8-H、15、23または23bの色素の1~400mM溶液を調製するステップと、
b)DMSO、水、メタノール、エタノール、ジグリム、テトラヒドロフランまたはこれらの溶媒の混合物中の0.05~3Mボラン溶液を調製するステップと、
c)上記ステップa)およびb)で調製した溶液ならびに炭水化物含有分析物溶液を、反応容器中で混合するステップと、
d)反応混合物を、10~90℃で0.1~48時間インキュベートするステップと、
e)水および水混和性の有機溶媒の混合物を、1:10~10:1の範囲の有機溶媒:水の比で、反応混合物に添加し、反応容器中の内容物をかき混ぜて、ステップd)の反応を停止させ、反応生成物を溶解させるステップと、
f)場合により、ステップe)から得られた混合物をボルテックスにかけるステップと、
g)場合により、ステップf)から得られた混合物を電気泳動にかけるステップと
を含む、方法に関する。
【0123】
より具体的には、有機溶媒は、アセトニトリル、エタノール、メタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、酢酸、ジオキサン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ニトロメタン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、ジグリム、メチルセロソルブを含む群から選択され、好ましくは、有機溶媒はアセトニトリルである。
【0124】
さらに、本発明はまた、上記式A~BまたはA~Dによる蛍光色素を含む炭水化物-色素コンジュゲートを包含する。
より具体的には、前記コンジュゲート、特に炭水化物コンジュゲート中の色素は、以下のスキーム8に示される式6-H、6-Me、8-H、15、23、23bの化合物から選択される。
【0125】
それらの反応性基(芳香族アミノ(NH2)、ヒドラジン(NRNH2)、ヒドラジド(CONRNH2)、ヒドロキシルアミン(NROH)、反応性カルバメート(NHCOOR)またはアルコキシアミノ(RONH2)に起因して、上記式A~Dの化合物は、遊離形態もしくは保護形態の、例えばセミアセタールとしての、アルデヒド基またはアミノ基を有する適した炭水化物による、還元的アミノ化または直接縮合反応(スキーム2~6および8に示される通り)における使用に好適かつ有利である。
【0126】
その結果、本発明の密接に関連する態様は、この使用、ならびに還元的アミノ化または直接縮合のための方法であって、上記式A~Dの化合物を、遊離形態もしくはセミアセタールとしてのアルデヒド基、またはアミノ基を有する適した炭水化物と、還元的アミノ化を行うのに十分な時間、反応させるステップ、ならびに標識蛍光誘導体のクロマトグラフィーまたは動電分離に続いて、場合により、蛍光検出および/または質量分析による検出を含む光学分光による分析物の検出を含む、方法に関する。色素-コンジュゲート構造の例は、スキーム8に示される。
【0127】
式A~Dの化合物およびこれを含む炭水化物-色素コンジュゲートは、C(G)E-システムに一般に使用されるため、蛍光検出器、特にレーザー誘起蛍光(LIF)の検出用検出器のスペクトル較正に使用するのに、とりわけ好適かつ有利である。
【0128】
【0129】
新しい色素のスペクトル特性
色素のスペクトル特性は、以下の表1に示される。
【0130】
【0131】
【0132】
表1の構造特徴およびデータは、二重リン酸化アミノアクリドン6-Hおよび6-Me、三重リン酸化ピレン色素8-H、8-Meおよび15が、上で定義した蛍光タグの基準を満たすことを示す。さらに、それらが、グリカンの還元的アミノ化に使用され得るか、およびそれらのコンジュゲートの発光が、APTSで標識されたグリカン(構造およびスペクトルデータについては、スキーム7~12および表1を参照されたい)の発光に干渉しないかを明らかにする必要があった。例えば、化合物6-R(R=H、Me)は、それぞれ、134および138に等しいm/z比を有する(APTSはm/z=151を有する)。それらは、いくつかの吸収極大を有し、橙色光を発光する(485nmおよび585nmでの2つの発光極大、ならびにおよそ1:2の相対強度を有する;
図22Aを参照されたい)。488nmでのその吸収は比較的低いが、赤色発光は、特筆すべき特徴であり、およそ160nmのストークスシフトに対応する。化合物6-Rに関する蛍光量子収率の絶対値は、5~6%である。したがって、比較的低い輝度にも関わらず、赤色発光色素6-Rでさえ(ピレン色素8-Rおよび15はより明るい)は、その比較的低い正味電荷(-3)を有するAPTSおよびAPTS標識で装飾された「重」炭水化物の低い移動度によって提示される制限に起因して未だ検出することができない「重」および「外来」グリカンを含むグリカンの標識に使用され得る新しいタグを表す。実際、4つの負電荷の存在および極度に低いm/z比に起因して、ここで導入されるリン酸化色素は、コンジュゲートのより良好な電気泳動移動度をもたらすことができ、その移動時間を低減し、したがって、嵩高で大きな炭水化物を明らかにし、強調する。
【0133】
表1に列挙されるすべてのピレン色素は、非常に蛍光性である。非リン酸化ピレン7-R(R=H、Me)、13b、16および18は、より高い精度で吸光係数を推定することを可能にする。最長波長バンドの吸光係数は、18000~23000の範囲であり、一方、最大の位置は、465~507nmで変動する。したがって、蛍光は、488nmで発光するアルゴンイオンレーザーによって容易に誘起され得る。発光極大は、535~563nmの範囲であることが見出され、蛍光量子収率は、常に高い(71~97%)。したがって、スルホン化1-アミノピレンは、2-スルホンアミド-7-アミノアクリドンよりもはるかに明るい色素を表す。輝度は、吸光係数(488nmでの)と蛍光量子収率の積に比例する。本発明者らは、アクリドン色素について、この値がおよそ1500×0.06=90であり、ピレンについて、20000×0.9=18000であると仮定できる。この概算推定は、トリスルホン化1-アミノピレンが、2-スルホンアミド-7-アミノアクリドンよりもおよそ200倍明るい色素であることを意味する。この特性により、本発明のピレン色素は、2-スルホンアミド-7-アミノアクリドンおよびAPTSよりも優れたタグになる。APTSコンジュゲートについて、極大(457nm)での吸光係数が19000であり(スキーム6)、488nmでの吸収が典型的にはおよそ457nmでの吸収極大のおよそ35%であると仮定すると、6000の相対輝度(同じ蛍光量子収率を仮定)を得る。したがって、本発明の色素は、(グリカンとのコンジュゲート中)APTSよりもおよそ3倍明るい。本発明のピレン色素、特に、化合物8-H、15、23、および23bは、APTSによって提示されるその比較的低い正味電荷(-3)および低い輝度の制限に起因して未だ検出することができない「重」および「外来」グリカンを含むグリカンの標識に使用され得る新しいタグを表す。
【0134】
発光バンドを赤色スペクトル領域にシフトするために、N-メチル化誘導体8-Meを調製した。この色素は、N-メチルアミノ基を有し、したがって、グリカンおよび親色素8-Hから形成された還元的アミノ化の生成物と非常に類似した(スキーム9の化合物6と比較して)フルオロフォアを表す。吸収極大は、赤色にシフトしている(+37nm;8-H→8-Me)が、発光極大は、「たった」19nmの深蛍光シフトを受けた(表1を参照されたい)。したがって、ストロークスシフトは、79nmから61nmに低下した。
【0135】
芳香族蛍光色素の系列において深色シフトおよび深蛍光シフトを増加させるための別のツールが存在するが、ただし、それらは、それらの間にいわゆる「プッシュ-プル」電子相互作用(直接極性コンジュゲーション)を有する電子供与体および電子受容体基を有する。1-アミノピレン色素の場合、供与体基は固定される(その電子供与特性は強化され得ない)が、3、6および8位の電子吸引基は変動し得る。特に、アルキルスルホン基(R-SO2、化合物13b、15、16、18、23および23bに存在する)は、スルホンアミド部分(化合物7-H、7-Me、8-H、8-Me中に存在する;スキーム7を参照されたい)よりもさらに強力な受容体であることが明らかになった。しかしながら、化合物8-Hおよび15を調製し、水溶液中でそのスペクトル特性(表1)を比較した後、予想通り、深色シフトは12nmであるが、発光極大の位置およびバンド形状は変化しなかったことが決定された。このことについての最も単純な説明は、単一アミノ基(供与体として)が「その限界にあり」、それらがいかに強力であっても、3つの非常に強力な受容体基で装飾されたπ-系により高い電子密度をもたらすことが可能ではないという仮定に基づく。幸運なことに、窒素原子の還元的アルキル化(スキーム2を参照されたい)の際に、さらなる深色シフトおよび深蛍光シフトが起こり(上で議論した化合物8-Hおよび8-Meについてスペクトルデータを比較)、化合物15は、APTS検出チャネルとのクロストークがないことを特徴とする、グリカンとの明るいコンジュゲートをもたらした。
【0136】
本発明は、xCGE-LIF技術を利用して、例えば、試験試料混合物の各単一化合物の内部標準化されたCGE移動時間のデータベース一致を介した分離された炭水化物の自動構造分析である、炭水化物組成物パターンのフィンガープリントの生成を可能にするキャピラリーDNA-シーケンサーを使用して、前記炭水化物混合物(例えば、グリカンプール)を分離および検出することに基づく。本明細書で特許請求される方法は、合成または天然源の炭水化物混合組成物プロファイリング、例えば、糖タンパク質のグリコシル化パターンプロファイリングを可能にする。移動時間の指標への炭水化物の移動時間の先進的な内部標準化は、試料と類似であるが、試料標識とは別の波長での発光を有する新規蛍光色素で標識された内部炭水化物標準の組の利用に基づく。既知の組成の前記内部炭水化物標準は、例えば、最大100mer(またはそれ以上)の直鎖状および/または分枝状のモノマー、ダイマー、トリマー、テトラマーおよび/またはペンタマーの組であり得、これらは、分析される炭水化物試料のフィンガープリントの全範囲を通して溶出/移動するが、炭水化物試料とは別のタグで蛍光標識されており、したがって別の波長を発光し、試料トレースに現れないため、別のトレース/チャネルにおいて検出される。分析される炭水化物試料のフィンガープリントの全移動/保持時間範囲を通して溶出/移動するが、別の波長トレースにおいては検出されるこの先進的な内部炭水化物標準は、移動/保持時間の非常に正確かつ再現可能な「先進的な」内部標準化のために使用され得る。それらは、その曲率/形状、y軸区切りおよびその勾配に関して非常に正確な較正曲線の作成のために使用される。
【0137】
移動時間の指標のこの改善された決定は、試料の種類および由来、分析の時点、研究室、機器ならびに操作者に依存せず、炭水化物の極度に正確かつ完全再現可能な分析を可能にする。
【0138】
システムと組み合わせた前記方法の使用はまた、前記炭水化物混合組成物を定量的に分析することを可能にする。したがって、本発明による方法およびシステムは、複雑な構造研究の必要なしに、タンパク質のグリコシル化パターンなどの炭水化物混合組成物の変動をモニタリングするための強力なツールを表す。蛍光標識された炭水化物について、LIF-検出は、検出の限界をアトモル範囲まで低下させることを可能にする。
【0139】
各実行のアラインメントに必要な標準は、別個の試料中に存在してもよく、または分析される炭水化物試料中に含有されてもよい。
炭水化物を標識するために使用される蛍光標識のうちの1種は、例えば、蛍光標識である、9-アミノピレン-1,4,6-トリスルホン酸(APTS)とも呼ばれる8-アミノ-1,3,6-ピレントリスルホン酸または他の好ましくは多重荷電蛍光色素であり、他の蛍光標識は、一般式AまたはBの色素のうちの1種である。
【0140】
標準の存在に基づいて、定性的および定量的分析を行うことができる。相対的定量化は、各化合物の個々のピーク高さを介して容易に行うことができ、これは、その濃度に線形に(LIF-検出器の線形ダイナミックレンジ内で)対応する。
【0141】
本発明は、クロマトグラフィー、質量分析およびNMRなどの炭水化物分析において公知の他の方法の欠点を解決する。NMRおよび質量分析は、時間および労力を要する技術である方法を代表する。さらに、前記方法を実施するために、高価な機器が必要である。さらに、前記方法の大部分は、NMR技術などの高スループット方法に大規模化することができない。質量分析を使用すると、高感度が可能になる。しかしながら、構成は困難であり得、モノマー糖化合物の結合の位置指定された特定されない構造情報のみが得られることがある。HPLCはまた、検出器に依存して実に高感度であり、同様に定量化を可能にする。しかし上述の通り、現実の高スループット分析は、HPLCシステムおよび溶媒の費用のかかる大量の作業によってのみ可能である。
【0142】
当技術分野で公知の他の技術は酵素処理に基づき、これは、非常に高感度であり、詳細な構造情報がもたらされるが、HPLC、MSおよびNMRなどの他の方法との組合せが必要である。当技術分野で公知のさらなる技術は、主に所与の決定的な構造情報を含まないデータのみをもたらすレクチンまたはモノクローナル抗体親和性に関する。
【0143】
本発明による方法は、未知の組成を有する炭水化物混合物の高スループット同定、または炭水化物混合組成物パターン(例えば、糖タンパク質のグリコシル化パターン)の高スループット同定もしくはプロファイリングを可能にする。特に、本発明は、炭水化物混合組成物の成分を定量的に決定することを可能にする。
【0144】
本発明の方法は、複合混合組成物でさえ高速かつ信頼性の高い測定を可能にし、したがって、使用される装置に依存せずアラインされた移動時間(移動時間の指標)のみに関して、炭水化物および/または炭水化物混合組成物パターン(例えば、グリコシル化パターン)を決定および/または同定することを可能にする。
【0145】
本発明は、多様な分野での適用が可能である。例えば、方法は、哺乳動物細胞培養物由来の分子のグリコシル化、例えば、組換えタンパク質、抗体またはウイルスもしくはウイルス構成体、例えば、インフルエンザAウイルス糖タンパク質を分析するのに使用され得る。前記化合物のグリコシル化パターンの情報は、食品および医薬品のために特に重要なものである。1D/2Dゲル電気泳動による複合タンパク質混合物の分離を始めとし、本発明の方法は、任意の他の複合糖質のグリカン分析にも使用できる。さらに、例えば、クロマトグラフィーまたは親和性捕捉による予備精製糖タンパク質は、本発明による方法によるのと同様に取り扱うことができ、タンパク質および酵素沈殿後に継続するゲル分離およびゲル中脱グリコシル化ステップを溶液中脱グリコシル化で置き換える。最後に、今日では重要な栄養添加剤/代替物であり、または医薬品においてもしくは医薬品として使用される、合成によりまたは天然源から得られた複合可溶性オリゴマーおよび/またはポリマー糖混合物が分析できる。
【0146】
したがって、2つの種類の分析が、炭水化物混合物に対して実施され得る。一方では、グリコシル化パターンプロファイリングなどの炭水化物混合組成物パターンプロファイリングが実施されてもよく、他方、炭水化物移動時間の指標とデータベースからのデータとの一致に基づく炭水化物同定が可能である。
【0147】
したがって、本発明による方法の広範囲の適用可能性は、生産および/または品質制御から、糖タンパク質のグリコシル化パターンの変化を生じる、引き起こすまたはそれによって引き起こされる疾患の初期診断までの範囲で示される。
【0148】
特に、医学診断、例えば、タンパク質のグリコシル化パターンの変化が疾患の強力な指標である慢性炎症認識または初期がん診断において、方法が適用され得る。グリコシル化パターンの変動は、ピーク数、高さおよび移動時間に関して得られたフィンガープリントを比較することによって単純に同定され得る。したがって、類似のプロテオミクスアプローチにおいて記載されるため、疾患マーカーが同定され得る。これは、個体のプロテオームを連続する時点で比較することと同様であり、個体のグライコームは、疾患またはリスク患者の同定の指標として分析され得る。
【0149】
一実施形態では、本発明による方法は、蛍光色素が、以下の式C
【0150】
【0151】
を有する色素である、方法である。
別の実施形態では、蛍光色素は、式Dの式
【0152】
【0153】
を有する色素である。
好ましい実施形態では、式A~Dの化合物は、
【0154】
【0155】
または7-R(R=H、Me)、13a、13b、16および18の化合物
【0156】
【0157】
から選択される。
別の態様では、本発明は、アクリドンおよび/またはピレン系蛍光色素を用いた多波長蛍光検出システム、特にキャピラリーゲル電気泳動システムの較正のための方法であって、アクリドンおよび/またはピレン系蛍光色素が、場合により炭水化物を含む基質部分とのコンジュゲートとして存在してもよく、方法が、好ましくは以下に示される化合物APTS、化合物19または化合物20
【0158】
【0159】
のうちの少なくとも1種を含む、異なる波長で発光するさらなる蛍光色素と一緒に、化合物CまたはDを含む、請求項1に定義される式AまたはBによる化合物のうちの少なくとも1種を検出することを含む、方法に関する。
【0160】
実施例において実証される通り、記載の通りの色素を用いた多波長蛍光検出システムの較正は、機器の感度を増加させ、本発明による方法を、操作者、機器などにより依存することなく実施することを可能にする。
【0161】
特に、実施例においてさらに議論される通り、システムまたは機器の較正は、記載の通りの方法の感度、したがって、適合性および有用性を増加させる。
本発明による較正のための方法の一実施形態では、スペクトル較正に利用されるアクリドンおよび/またはピレン系色素ならびにそれらの組合せが、それぞれ実施例2、実施例3中の表2および表3に示される。
【0162】
さらに、本発明によると、本発明による方法における使用のための本発明による蛍光色素を含む炭水化物色素コンジュゲートが、開示される。一実施形態では、本発明による色素コンジュゲートは、以下の式の化合物
【0163】
【0164】
から選択される色素である。
さらなる態様では、較正標準が提供される。つまり、例えば、本明細書に記載の較正のための方法に有用な較正標準は、炭水化物とコンジュゲートしていてもよい式A、B、CまたはDによる蛍光色素のうちの少なくとも1種を含む蛍光色素を含み、場合により化合物19または20のうちの少なくとも1種さらに含む炭水化物標準である。
【0165】
較正標準の典型例は、波長較正のための方法と関連して記載される。
別の態様では、本発明は、式AまたはBによる蛍光色素、特に式CもしくはDの蛍光色素または式A~Dの異なる色素で標識された化合物で構成される標準組成物に関する。一実施形態では、標準組成物は、前記色素で標識された炭水化物で構成され、あるいは、化合物は、DNA塩基対ラダーまたは類似の核酸塩基標準である。さらに、色素は、好ましくは、6-H、6-Me、8-R、15、13a、13b、16、18、23および23bのうちの少なくとも1種である。前記標準組成物は、本発明による方法、特に、決定される炭水化物の移動/保持時間のアラインメントに有用である。
【0166】
さらに、式20の化合物
【0167】
【0168】
が開示される。
さらなる態様では、本発明は、炭水化物混合組成物パターンを決定および/または同定するためのキットまたはシステムであって、不揮発性メモリ(non-transient memory)を有するデータ処理ユニットを含み、前記メモリがデータベースを含有し、前記データベースが、炭水化物のアラインされた移動/保持時間および/またはアラインされた移動/保持時間の指標を含有し、前記移動/保持時間および/または移動/保持時間の指標が、炭水化物の自動化された決定および/もしくは同定ならびに/または炭水化物の同定ならびに/または炭水化物混合組成物パターンプロファイリングによって得られ、炭水化物の自動化された決定および/もしくは同定ならびに/または炭水化物の同定ならびに/または炭水化物混合組成物プロファイリングが、以下のステップ:
a)少なくとも1種の炭水化物を含有する試料を得るステップと、
b)前記炭水化物を第1の蛍光標識で標識するステップと、
c)第2の蛍光標識で標識された既知組成の標準を用意するステップと、
d)例えば、キャピラリーゲル電気泳動-レーザー誘起蛍光を使用して、前記炭水化物および本明細書に記載の既知組成の標準の移動/保持時間を決定するステップと、
e)移動/保持時間を、標準の所与の標準移動/保持時間の指標に基づく移動/保持時間の指標にアラインするステップと、
f)炭水化物のこれらの移動/保持時間の指標をデータベースからの標準移動/保持時間の指標と比較するステップと、
g)炭水化物および/または炭水化物混合組成物パターンを同定または決定するステップと
を含み、
標準組成物が、未知の炭水化物混合組成物を含有する試料に添加され、第1の蛍光標識および第2の蛍光標識が異なり、第1の蛍光標識または第2の蛍光標識が、一般式A~Dの化合物からなる群から選択される複数のイオン性およびまたは負荷電基を有する蛍光色素である、キットまたはシステムに関する。
【0169】
別の態様では、本発明は、炭水化物混合組成物パターンプロファイリングを決定および/または同定するためのキットまたはシステムであって、不揮発性メモリを有するデータ処理ユニットを含み、前記メモリがデータベースを含有し、前記データベースが、炭水化物のアラインされた移動/保持時間および/またはアラインされた移動/保持時間の指標を含有し、前記移動/保持時間および/または移動/保持時間の指標が、炭水化物の自動化された決定および/もしくは同定ならびに/または炭水化物の同定ならびに/または炭水化物混合組成物パターンプロファイリングによって得られ、炭水化物の自動化された決定および/もしくは同定ならびに/または炭水化物の同定ならびに/または炭水化物混合組成物パターンプロファイリングが、以下のステップ:
a)炭水化物混合組成物を含有する試料を用意するステップと、
b)前記炭水化物混合組成物を第1の蛍光標識で標識するステップと、
c)比較しようとする、既知の炭水化物混合組成物パターンを有する蛍光標識で標識された第2の試料を用意するステップと、
d)本明細書に開示の方法に記載される第1および第2の試料の炭水化物混合組成物の電気泳動図/クロマトグラムを、例えば、キャピラリー(ゲル)電気泳動-レーザー誘起蛍光またはクロマトグラフィーを使用して、生成するステップと、
e)第1の試料および第2の試料の得られた電気泳動図/クロマトグラムから計算した標準移動/保持時間の指標を比較するステップと、
f)第1および第2の試料の炭水化物混合組成物パターンプロファイルの同一性および/またはそれらの間の差を分析するステップと
を含み、試料中に存在する炭水化物の標準移動/保持時間の指標が、第2の蛍光標識で標識された既知組成の内部標準に基づいて計算され、第1または第2の蛍光標識のうちの1種が、一般式AまたはBの本発明による蛍光色素である、キットまたはシステムに関する。
【0170】
さらに、本発明は、さらなる態様において、自動化された炭水化物混合組成物パターンプロファイリングのためのキットまたはシステムであって、不揮発性メモリを有するデータ処理ユニットを含み、前記メモリがデータベースを含有し、前記データベースが、炭水化物のアラインされた移動/保持時間および/またはアラインされた移動/保持時間の指標を含有し、前記移動時間および/または移動/保持時間の指標が、炭水化物の自動化された決定および/もしくは同定ならびに/または炭水化物の同定ならびに/または炭水化物混合組成物パターンプロファイリングによって得られ、炭水化物の自動化された決定および/もしくは同定ならびに/または炭水化物の同定ならびに/または炭水化物混合組成物パターンプロファイリングが、以下のステップ:
a)未知の炭水化物混合組成物を含有する第1の試料を用意するステップと、
b)前記炭水化物混合組成物を第1の蛍光標識で標識するステップと、
c)第2の蛍光標識で標識された既知の炭水化物混合組成物パターンを有する第2の試料を前記第1の試料に添加するステップと、
d)前記試料の炭水化物混合組成物の電気泳動図/クロマトグラムを、キャピラリー(ゲル)電気泳動-レーザー誘起蛍光またはクロマトグラフィーを使用して、生成するステップと、
e)第1および第2の試料の炭水化物混合組成物パターンプロファイルの同一性および/またはそれらの間の差を分析するステップと
を含み、
第1の試料の第1の蛍光標識が、第2の試料の第2の蛍光標識とは異なり、第1の蛍光標識および第2の蛍光標識のうちの少なくとも1種が、本発明による一般式AまたはBによる蛍光色素である、キットまたはシステムに関する。
【0171】
一実施形態では、本発明によるキットまたはシステムは、キャピラリー(ゲル)電気泳動-レーザー誘起蛍光装置をさらに含む。例えば、この装置は、当技術分野で公知のキャピラリーDNA-シーケンサーであり得る。
【0172】
さらなる態様では、本発明による方法における使用のための、本明細書に記載の炭水化物とコンジュゲートした本明細書で定義される蛍光色素を含む炭水化物色素コンジュゲートが開示される。
【0173】
一実施形態では、炭水化物色素コンジュゲートは、色素が、以下の式の化合物
【0174】
【0175】
から選択される、コンジュゲートである。
上述の特定の化合物の一部の実施形態では、色素は、炭水化物色素コンジュゲートとして存在し、それにより色素に結合した炭水化物を同定する。
【0176】
本発明は、より詳細に本発明を例示する実施例によってさらに記載されるが、本発明がそれに限定されることはない。
【実施例】
【0177】
一般材料および方法
炭水化物の還元的アミノ化
本発明の化合物を使用する炭水化物の還元的アミノ化のために、2015年にMethods Molecular BiologyにおいてHennig R、Rapp Eらによって公開された、例えば、8-アミノピレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム塩(APTS)および還元剤によるN-グリカンの蛍光標識のための従来技術のプロトコルを、わずかな修正を加えて使用した。
【0178】
元のプロトコルは、中程度の強酸(例えば、一水和物としてクエン酸;CA)ならびに溶媒であるジメチスルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル(ACN)および水(H2O)が必要である。主ステップは、1.2~3.6M水性CA中の10~80mM色素溶液(溶液A)およびDMSO中のボラン系還元剤溶液(溶液B)の調製を含む。次いで、等体積(1~4μL)の溶液A、Bおよび試料(遊離炭水化物または放出後複合糖質の炭水化物部分)の3つの成分を混合し、37℃で3~16時間インキュベートすることが必要である。還元的アミノ化の完了後、ACN-水混合物(80:20、v/v)を添加する。例えば、2μLの溶液A、2μLの溶液Bおよび2μLの分析物試料を使用し、次いで、50μLの水性ACNを添加し、混合した。この操作により、透明な溶液がもたらされ、これは、動電および/またはクロマトグラフィー分離に基づく糖分析にかけることができる。
【0179】
ヒドラジド標識
本発明の化合物を使用したヒドラジド標識は、pH6~8、60℃~80℃で1時間~6時間実施した。10~80mM色素溶液を、等体積(1~4μL)で試料と混合した。反応の完了後、50μLのACN-水混合物(80:20、v/v)を添加した。標識混合物の希釈物を、動電および/またはクロマトグラフィー分離に基づく糖分析にかけた。
【0180】
反応性カルバメート化学
本発明の化合物によるグリコシルアミンのジスクシンイミジルカーボネートまたはNHSエステル補助標識を、わずかに塩基性のpHにおいて、室温で10~60分間実施した。試料を、Hennig R、Rapp Eら、2015によって公開された通り、HILIC-SPEによって精製した。精製試料を、動電および/またはクロマトグラフィー分離に基づく糖分析にかけた。
【0181】
実施例1
大きな正味負電荷および必要なスペクトル特性を有する選択された蛍光色素(スキーム13および表1も参照されたい)
【0182】
【0183】
構造20の複数のイオン性基を有する赤色発光ローダミン色素を、K.KolmakovらによってChem.Eur.J.2012、18、12986~12998において以前に記載の化合物19(別のリン酸化ローダミン色素、上記スキーム6および11を参照されたい)(特性およびリン酸化詳細についてはその化合物7-Hを参照されたい)と同様に、対応するヒドロキシル置換ローダミン前駆体のリン酸化によって得、単離した。化合物20のヒドロキシル置換前駆体を、K.Kolmakovら(Chem.Eur.Journal、2013、20、146~157;その化合物14-Etを参照されたい)に従って合成した。リン酸化の後に、記載の通りの日常的な手順を介したエチルエステル基の鹸化が続いた。
【0184】
化合物20の純度および同一性を、以下の分析データによって確認した:
【0185】
【0186】
HPLC:tR=3.9分(Kinetex EVO C-18カラム、0.02M水性Et3N(A)および3% MeCN(B)、均一濃度流0.5mL/分、254nmで検出)。TLC:Rf=0.25(シリカゲルプレート、MeCN/H2O 5:1+0.2% Et3N)。HR-MS(ESI):C35H35N2O13P2
-([M-H]-)について計算値753.1614、実測値753.1672。UV-VIS(PBS緩衝液、pH=7.4)λmax.abs.=582nm、λmax.fl.=609nm。
【0187】
実施例2
本明細書に記載の4種のアクリドンおよびピレン系蛍光色素の組への多波長蛍光検出システムのスペクトル較正。
【0188】
本実施例について、手順は、修正した市販のDNA遺伝子分析器310、3100、3130(xl)、3730(xl)および3500(すべてApplied Biosystems、現Thermo Scientificによって製造)について例示的に示される。しかし、検出のモードに依存して、ここで提示される再較正はまた、他の製造業者の機器でも可能である。使用される市販の遺伝子分析器は、レーザー誘起蛍光検出(LIF)を用いた多重キャピラリーゲル電気泳動(xCGE)ユニットを含有し、これは、(機器および操作ソフトウェアに依存して)、別個の色素チャネルの最大6つの異なる蛍光シグナルを同時に検出することができる。
【0189】
製造業者に従って、機器のバーチャルフィルターは、F、D(いずれも4つの検出ウィンドウ)またはG5(5つの検出ウィンド)などの種々の事前定義した色素に較正できる。オリゴ糖の分析のためのデフォルトスペクトル較正として、事前定義した色素の組G5を使用する[EP2112506B1、Ruhaak 2010、Reusch 2015、Feng 2017]。G5は、色素6-Fam(商標)(522nm色素トレース内部で記録)、VIC(登録商標)(554nm)、NED(商標)(575nm)、PET(登録商標)(595nm)およびLIZ(登録商標)(655nm)を含有するDS-33マトリックス標準に較正される。この較正により、APTS標識オリゴ糖は、6-Fam(商標)色素トレース(522nm)内で、アラインメント標準GeneScan 500 LIZ(商標)は、LIZ(登録商標)色素トレース(655nm)内で記録される。残念ながら、
図2Aにおいて16.3分でのAPTS標識マルトテトラオースに関して示される通り、G5スペクトル較正APTSを使用すると、すべての他の色素トレースでシグナルが生じる。この大きなクロストークは、APTSおよび6-Fam(商標)の異なるスペクトル特性によって引き起こされる。APTSからのクロストークシグナルに影響を及ぼすことなく移動時間アラインメントの実施を可能にするために、GeneScan 500 LIZ(商標)(LIZ500)を使用し、これはLIZがAPTSチャネルから可能な限り光を発する色素トレース内で記録されるためである。
【0190】
LIZ500とは異なるアラインメント標準の使用を可能にするため、およびスペクトルクロストークを低減するために、xCGE-LIF機器を、例示的に、APTSおよび本発明の3種の新しい色素を含む4種の色素の組に較正した。スペクトル較正前に、すべての蛍光色素(それぞれそのオリゴ糖誘導体)は、複数の色素トレース/チャネルで蛍光シグナルを示した(
図2A)。とりわけ、6-H標識炭水化物は、
図2Aのマルトトリオースおよび
図3Aのマルトースラダーに関して示される通り、すべての色素チャネルと大きなスペクトルクロストークを示した。その結果、内部アラインメント標準の使用は、APTSチャネル(522nm)内に他の色素からの蛍光シグナルがまったく存在しないことを必要とするため、例えば、内部アラインメント標準として6-H標識マルトースラダーの使用は、機器の事前スペクトル較正なしには可能ではない。xCGE-LIF機器の19、20、6-H標識マルトトリオース(6-H
a)およびAPTS標識マルトテトラオース(APTS
a)へのスペクトル較正は、スペクトルクロストークを完全に排除できた(
図2Bおよび3Bを参照されたい)。
【0191】
xCGE-LIF機器のこのスペクトル較正後、6-H標識マルトースラダーは、APTS標識炭水化物の内部アラインメントに使用できた。したがって、6-H標識マルトースラダーを、APTS標識炭水化物と同時注入し、APTS標識炭水化物と同じ試料バックグラウンドを感知させた。
【0192】
副作用として、より良好なフィッティングのスペクトル較正により、6-H標識ラダーの増加したシグナル強度がもたらされる(
図3)。13.2分における6-H-マルトースピークのシグナル強度は、1.5倍増加する(約2000RFUから約3000RFU)。同じ作用が、
図2、16.3分でのピークIVにおいて、APTS
aに関して観察できた。
【0193】
4種の蛍光色素の組への多波長システムのスペクトル較正は、表2に示される通り、本明細書において発明の色素の大きな変動が可能である。
【0194】
【0195】
実施例3
本明細書に記載の5種のアクリドンおよびピレン系蛍光色素の組への多波長蛍光検出システムのスペクトル較正。
【0196】
本実施例について、手順は、修正した市販のDNA遺伝子分析器310、3100、3130(xl)、3730(xl)および3500(すべてApplied Biosystems、現Thermo Scientificによって製造)について例示的に示される。しかし、検出のモードに依存して、ここで提示される再較正はまた、他の製造業者の機器でも可能である。使用される市販の遺伝子分析器は、レーザー誘起蛍光検出(LIF)を用いた多重キャピラリーゲル電気泳動(xCGE)ユニットを含有し、これは、(機器および操作ソフトウェアに依存して)、別個の色素チャネルの最大6つの異なる蛍光シグナルを同時に検出することができる。
【0197】
これらの機器のバーチャルフィルターは、E5、G5またはDなどの種々の事前定義した色素の組に較正され得る。それによって、色素の組E5およびG5は、5種の異なる蛍光色素の5つの検出ウィンドウを定義し、一方、色素の組Dは、4種の異なる蛍光色素の4つの検出ウィンドウを定義する。オリゴ糖の分析のために、事前定義した色素の組G5が使用され、色素6-Fam(商標)(522nm色素トレース内部で記録)、VIC(登録商標)(554nm)、NED(商標)(575nm)、PET(登録商標)(595nm)およびLIZ(登録商標)(655nm)を含有するDS-33マトリックス標準に較正される[EP2112506B1、Ruhaak 2010、Reusch 2015、Feng 2017]。続いて、APTS標識オリゴ糖によって発された光は、色素トレース522nm(Fam(商標)色素トレース)内で記録され、アラインメント標準GeneScan 500 LIZ(商標)(LIZ500)によって発された光は、色素トレース655nm内で記録される。機器は、APTS色素に特異的に較正されないため、APTS標識マルトテトラオースについて
図4A、16.3分のピークVにおいて示される通り、APTS標識オリゴ糖は、いくつかの色素トレースに光を発する。2つの色素トレース間にスペクトルクロストークが存在しないことは、適切な分析のために必須であるため、この大きなクロストークは、低減される必要があった。さらに、15、6-H、6-Me、8-Hまたは23などのここで発明の蛍光色素で標識されたオリゴ糖に基づくアラインメント標準を使用するために、スペクトル較正は、これらの色素に個別化される必要があった。
【0198】
例示的に、xCGE-LIF機器のスペクトル較正を、
図4に示される通り、5種の色素の組に実施した。(APTSおよび本発明の4種の新しい色素、それぞれそのオリゴ糖誘導体への)スペクトル再較正の前に、複数の色素トレース/チャネルの大きなクロストークが、すべての使用した蛍光色素(
図4A)に関して観察できる。とりわけ、15標識(ピークI)および6-Me標識炭水化物(ピークIV)は、
図4A、6Aおよび7Aに示される通り、すべての他の色素トレースにおいて大きなスペクトルクロストークを示した。内部アラインメント標準の使用は、APTSチャネル(522nm)内にその蛍光シグナルが完全にないことを必要とするため、機器のスペクトル較正が必要である。19、15標識マルトトリオース(15
a)、20、6-Me標識マルトトリオース(6-Me
a)およびAPTS標識マルトテトラオース(APTS
a)へのスペクトル較正後、
図4B、5B、6Bおよび7Bに示される通り、スペクトルクロストークは完全に排除できた。
【0199】
さらに、色素誘導体15
aおよび6-Me
aへのスペクトル較正は、
図8に示される通り、アラインメント性能の比較のための2種の異なる炭水化物に基づく標準の同時使用を可能にする。トレース522nm(APTS)、554nm(15)および575nmトレース(6-Me)間にクロストークは、まったく存在しない。
【0200】
5種の蛍光色素の組への多波長システムのスペクトル較正は、表3に示される通り、本明細書において発明の色素の大きな変動が可能である。
【0201】
【0202】
実施例4
内部移動時間アラインメントのための本発明によるアクリドン蛍光色素誘導体の利用。
本実施例は、修正した市販のDNA遺伝子分析器310、3100、3130(xl)、3730(xl)および3500(すべてApplied Biosystems、現Thermo Scientificによって製造)の使用を含む。それにもかかわらず、ここで提示される炭水化物に基づくアラインメント標準はまた、他の製造業者の(単一または複数のキャピラリーの)CE/CGE機器または(U)HPLC機器と組み合わせて使用できる。
【0203】
一般に、DNA断片サイズ(例えば、ショートタンデムリピート(STR)または制限断片長多型(RFLP)分析のためのゲノム科学において使用される)、ならびにCE/CGEおよびxCGEにおける炭水化物の移動時間アラインメントは、
図9Aに例示的に示される通り、塩基対サイズ標準の使用によって現在実現されている(EP2112506A1)。この目的のために、未知の試料の移動時間は、同時注入された塩基対サイズ標準にアラインされる。オリゴヌクレオチド(DNA/RNA)について、同時注入された塩基対標準へのこの内部移動時間アラインメントは、試料バックグラウンドが、同じように未知の試料および標準の移動時間に影響を及ぼすため、高い再現性を特徴とする。試料および標準は、異なる蛍光色素で印を付けられ、両方の波長分解同時検出が可能になる。
【0204】
未知のDNA断片のDNAに基づく塩基対サイズ標準への長期間アラインメント品質は非常に良好である一方、オリゴ糖の塩基対サイズ標準への長期間アラインメント品質はそれほど良好ではない。炭水化物の塩基対サイズ標準へのアラインされた移動時間は、より長時間にわたって、および異なるポリマーロットについていくらかの変動を示す(
図10Aを参照されたい)。アラインメント品質を改善するために、
図10Bに示される通り、ブラケティング炭水化物標準(US2009/028895A1)の添加を使用して、追加の(第2の)直交アラインメントステップを導入した。
【0205】
しかしながら、第2の(直交)アラインメントステップは、炭水化物についても、長期間のこれらの変動の完全ではないが、大部分を補う。長期間におけるあまり良好ではないアラインメント力の理由は、塩基対標準および標識炭水化物の異なる物理化学特性である。例えば、360塩基対長の断片(
図9Aのピーク10)は、360個の負電荷を有する360ヌクレオチド(デオキシリボース+リン酸+窒素塩基)を含有する一方、類似の移動時間を有する蛍光標識炭水化物ピーク(360塩基対でのピーク、
図10A)は、約3つの負電荷を有する10(単)糖のみを含有する。その結果、比較的低荷電の低分子は、高荷電の大分子にアラインされる。それらは質量対電荷比が類似であるため、アラインメントが可能である。しかし、測定条件の変更は、両方の分子に異なった影響を及ぼす。結果として、炭水化物の移動時間は、
図10Aに示される通り、塩基対アラインメント後、長期間可変である。
【0206】
ここで提示される発明は、炭水化物の移動時間アラインメントのための炭水化物に基づく標準混合物の使用を可能にする。新しい蛍光色素の完全な組は、オリゴ糖試料および/またはこれらの炭水化物標準/混合物を標識するために開発された。新しい開発された蛍光色素は、未知の試料の標識に使用される蛍光色素とは異なるスペクトル特性を有する。これにより、蛍光標識炭水化物アラインメント標準と一緒に蛍光標識試料の同時注入、および
図8に示される通り、異なる色素/波長トレースの両方の分析物の同時検出が可能になる。塩基対サイズ標準と比較すると、新しい炭水化物に基づく標準は、試料の物理化学特性に近い/同一の物理化学特性を含む。類似の質量対電荷比を除き、試料の炭水化物と比較して、炭水化物に基づくサイズ標準は、類似の絶対電荷および質量を有する。これは、
図11Bと比較して
図11Aに示される通り、移動時間アラインメントの長期間再現性を驚くほど改善する。
【0207】
ここで提示される実施例について、本明細書に記載の色素を使用して、Hennigら、2016に記載の通り、ヒトクエン酸血漿N-グリカンをxCGE-LIFによって分析した。簡潔に述べると、クエン酸血漿タンパク質を、変性および直線化させた。N-グリカンを、PNGase Fによって酵素放出させ、8-アミノピレン-1,3,6-トリスルホン酸(APTS)で標識した。HILIC-SPE精製後、APTS標識N-グリカンを、Applied Biosystems(登録商標)3130遺伝子分析器を使用して、レーザー誘起蛍光検出(xCGE-LIF)を用いた多重キャピラリーゲル電気泳動によって分析した。内部移動時間アラインメントのために、APTS標識試料を、6-Me標識炭水化物に基づくアラインメント標準(6-Me
b)、
図11Aを参照またはGeneScan(商標)500 LIZ(商標)色素サイズ標準(LIZ500)、
図11Bを参照と同時注入した。
【0208】
15
a、19、20、6-Me
aおよびAPTS
aへの機器のスペクトル較正を、実施例3に記載の通りに実施した。APTS試料は522nm、6-Me
bは575nm、LIZ500は655nm色素トレースで記録した。LIZ500移動時間アラインメントについて、
図9Aに示される通り、13個の標準ピークを選択した。
図12Aに示される通り、2次較正曲線を移動時間アラインメントのために使用した(EP2112506A1)。改善された移動時間アラインメントについて(US2009/028895A1)、4つの追加のスパイクインブラケティング炭水化物標準ピークを選択し、
図12Bに示される通り、2次較正曲線を調整した。6-Me
bへの移動時間アラインメントについてのみ、
図9Bに示される通り、16個の標準ピークを選択した。2次較正曲線を、
図12Cに示される通り計算し、アラインメントを使用した。
【0209】
US8,293,084に記載の通り、LIZ500アラインメントの直交調整を実施することによって、改善された移動時間アラインメントが達成され得る(
図12Bを参照されたい)。この改善は、
図12Cに示される通り、炭水化物に基づくサイズ標準6-Me
bの使用によってのみさらに強化され得た。その優れた長期間再現性は、
図11に示される。LIZ500にアラインされたクエン酸血漿N-グリカンはポリマーロットおよび測定日に依存して異なる移動時間を示す一方、6-Me
bへのアラインメントだけは、ほぼ完全なオーバーレイを示す。これをより詳細に評価するために、アラインされた電気泳動図の15の最大ピークを選択し(
図10Bおよび11Bに示される通り)、その二乗平均平方根誤差(RMSE)を、表4に示される通りに計算した。直交第2アラインメント(直交二重アラインメント)は、RMSEを4分の1に低減できた(3.151%から0.727%)一方、6-Me
bへのアラインメントのみが、RMSEをほぼ10分の1に低減できた(3.151%から0.359%)。これは、移動時間アラインメントへの6-Me
bの使用のみが、それぞれ、変動の10分の1の低減、精度の10倍の増加をもたらしたことを意味する。最小RMSEは、単一荷電N-グリカンについて0.236%で達成できた。しかし、二重荷電および中性N-グリカンもまた、それぞれ、0.391%、0.357%と、この単一荷電N-グリカンに実に近いRMSDを示した。したがって、6-Me
bなどのアクリドン色素標識炭水化物(のみ)に基づくアラインメント標準は、例えば、IgGなどのヒトタンパク質または組換え生成されたモノクローナル抗体(mAb)において見出され得るため、中性および低荷電オリゴ糖について最良の再現性をもたらす[Reusch 2015]が、それらはまた、より高荷電のオリゴ糖にも作用する。ポリマー齢およびロットに依存しない移動時間のこの高精度および頑強さにより、本発明による方法は、大幅に改善され、より広範囲に適用可能であり、特許US2009/028895A1に記載の追加の直交アラインメントステップなしに移動時間一致によるピークの注解のためのそれぞれのデータベースの構築および使用が可能である。
【0210】
【0211】
実施例5
内部移動時間アラインメントのための本発明によるピレン蛍光色素誘導体の利用。
DNA断片サイズならびにCE/CGEおよびxCGEにおける炭水化物の移動時間アラインメントは、
図13Aに例示的に示される通り、塩基対サイズ標準の使用によって現在実現されている(EP2112506A1)。この目的のために、未知の試料の移動時間は、同時注入された塩基対サイズ標準にアラインされる。オリゴヌクレオチド(DNA/RNA)について、同時注入された塩基対標準へのこの移動時間アラインメントは、試料および標準の移動時間が、同じ試料バックグラウンドによって同じように影響を受けるため、高い再現性を特徴とする。試料および標準は、異なる蛍光色素で印を付けられ、両方の波長分解同時検出が可能になる。
【0212】
DNAに基づく塩基対サイズ標準への未知のDNA断片の長期間アラインメント品質は非常に良好である一方、塩基対サイズ標準への炭水化物の長期間アラインメント品質はそれほど良好ではない。塩基対サイズ標準にアラインされたオリゴ糖の移動時間は、数日間にわたって、および異なるポリマーロットについていくらかの変動を示す(
図14Aを参照されたい)。アラインメント品質を改善するために、炭水化物に基づくアラインメント標準が必要である。したがって、炭水化物の標識のための新しい蛍光色素の完全な組が開発された。これらの新しく開発された蛍光色素は、APTS(試料の標識に使用される)およびそれぞれLIZ、ROX標識塩基対サイズ標準とは異なるスペクトル特性を含む。15
a、19、20、6-Me
aおよびAPTS
aへの機器のスペクトル較正(実施例3に記載の通り)は、
図15に示される通り、同時注入された標識炭水化物試料、15標識炭水化物に基づくアラインメント標準(15
b)およびLIZ 500塩基対標準の同時検出を可能にする。APTS標識試料は522nmで記録し、15標識炭水化物標準およびLIZ500塩基対標準は、それぞれ554nm、655nmで同時に記録した。このようにして、両方の内部標準LIZ500および15
bは、移動時間アラインメントに使用でき、互いに直接比較できる。LIZ500へのアラインメントについて、
図13Aに示される通り、13個の標準ピークを選択した。15
bへの移動時間アラインメントについて、LIZ500標準と類似の移動時間範囲をカバーする22個のピークを選択した(
図13Bを参照されたい)。
図16に示される通り、選択したピークの2次多項式フィットを実施した。15標識炭水化物標準を使用することによって大幅に改善された移動時間アラインメントが、
図14BおよびCに示される。塩基対に基づくサイズ標準と比較すると、新しい炭水化物に基づくサイズ標準は、試料の物理化学特性と同一の物理化学特性を含む。類似の質量対電荷比のほか、炭水化物に基づくサイズ標準は、類似の絶対電荷および類似の絶対質量を有する。その結果、15
bなどの炭水化物に基づく標準の使用は、N-グリカン、O-グリカン、糖脂質、ヒトミルクオリゴ糖、グリコサミノグリカンならびに還元および/またはグリコシルアミン末端を有する他のオリゴ糖などの炭水化物のより正確かつ再現可能な移動時間アラインメントを可能にする。
【0213】
炭水化物に基づくサイズ標準15
bへのアラインメント後、
図14Cに示される通り、改善された長期間再現性が達成できた。塩基対に基づくLIZ500標準へのアラインメント(
図14A)が、ポリマーロットおよび測定日に依存してすべてのピークについて変動する移動時間を示した一方、塩基対に基づくLIZ500標準+15
bへのアラインメントは、改善されたアラインメントを示す(
図14B)。最良の結果は、15
bへのアラインメントによって達成でき、ほぼ完全なオーバーレイが示された(
図14C)。より詳細な評価のために、
図14Cに示される通り、15個の最大ピークをすべての試料内で選択した。すべての測定におけるこれらの15個のピークの二乗平均平方根誤差(RMSE)を、表5に示される通り計算した。両方のアラインメントを比較すると、15
bアラインメントは、LIZ500アラインメント後の3.151%(平均の%)のRMSEよりも5分の1小さい0.627%のRMSEのものであった。最小RMSEは、0.236%の三重荷電N-グリカンについて達成でき、高荷電オリゴ糖はヒトまたは組換え生成されたエリスロポエチン(rhEPO)で見出され得る[Meininger 2016]ため、15
bアラインメントが高荷電オリゴ糖について最高の再現性をもたらすことが示されたが、15
bアラインメントはまた、より低荷電および/または中性オリゴ糖にも作用する。したがって、15
bアラインメントによる移動時間の改善された精度および頑強性により、ポリマー齢およびロットに依存せず、US2009/028895A1において実施される追加のアラインメントなしに、移動時間一致によるピーク注解のためのオリゴ糖データベースの構築および使用が可能になる。
【0214】
このようにして、本発明による方法は、ポリマー齢に依存せず、移動時間の高精度および頑強性で有意に広範囲に適用可能である。
この改善されたアラインメント手順はまた、キチン、セルロース、マルトース、プルラン、グリコサミノグリカンなどの他のオリゴ糖ラダーの使用によって、ならびに糖脂質の糖部分、O-グリカン、N-グリカンおよびミルクオリゴ糖(例えば、ラクトース、ラクト-N-テトラオース、ラクト-N-ヘキサオースならびにそれらのフコースおよび/またはラクトース伸長)などの複合炭水化物の使用によって、実施できる。
【0215】
【0216】
提示される例について、本明細書に記載の色素を使用して、Hennigら、2016に記載の通り、ヒトクエン酸血漿N-グリカンをxCGE-LIFによって分析した。簡潔に述べると、クエン酸血漿タンパク質を、60℃でSDSとのインキュベーションによって変性および直線化させた。N-グリカンを、PNGase Fによって酵素放出させ、8-アミノピレン-1,3,6-トリスルホン酸(APTS)で標識した。HILIC-SPE精製後、APTS標識N-グリカンを、Applied Biosystems(登録商標)3130遺伝子分析器を使用して、レーザー誘起蛍光検出(xCGE-LIF)を用いた多重キャピラリーゲル電気泳動によって分析した。15a、19、20、6-MeaおよびAPTSaへの機器のスペクトル較正を、実施例3に記載の通りに実施した。
【0217】
実施例6
普遍的アラインメント標準としてのピレンおよび/またはアクリドン標識炭水化物。
本実施例は、修正した市販のDNA遺伝子分析器310、3100、3130(xl)、3730(xl)および3500(すべてApplied Biosystems、現Thermo Scientificによって製造)の使用を含む。それにもかかわらず、ここで提示される炭水化物に基づくアラインメント標準はまた、他の製造業者のCE/CGEおよび(U)HPLC機器(単一または複数のキャピラリー)と組み合わせて使用できる。
【0218】
一般に、DNA断片ならびに(x)CE/(x)CGEにおける炭水化物の移動時間アラインメントは、塩基対サイズ標準の使用によって現在実現されている(EP2112506A1)。この目的のために、未知の試料の移動時間は、同時注入された塩基対サイズ標準にアラインされる。実施例2および3に示される通り、塩基対サイズ標準に基づくアラインメントがDNAについて良好な結果を示す一方、炭水化物試料のアラインされたものは大きな変動を示す。この変動は、異なる:
・機器(
図17および表6)
・電場強度(
図18)または実行温度(
図19)などの実験設定
・キャピラリー長さ(
図20)、ポリマーの種類(
図21)、ポリマー齢(
図22および表6)およびポリマーロット(表6)などの機器パラメーター
を使用した場合により明らかである。この負荷試験の間、これらのパラメーターを変更し、アラインメント手順(塩基対対炭水化物標準)を比較した。すべての実施例について、炭水化物アラインメント手順は、優れた性能を示した。例えば異なるキャピラリー長さについて示される通り、大部分の変動について、安定な移動時間が達成できた。これは、炭水化物アラインメント手順を使用することによって、実験設定、機器パラメーターまたは機器が変更される場合でも、包括的炭水化物データベースが使用できることを意味する。これは、塩基対に基づくアラインメント標準では不可能である。
【0219】
【0220】
実施例7
本発明による蛍光アクリドンおよびピレン色素の新しい組を使用したDNAシーケンサーの再較正
市販のCE-システムは、多波長検出器、およびしたがっていくつかのカラーチャネルを有し得る。
【0221】
これらのシステムにはいわゆる「バーチャル光フィルター」が存在し、ソフトウェアが、異なる色素からの蛍光発光の収集のためのある特定の波長領域を定義する。
これらの領域は、バーチャルフィルターと呼ばれる。それらの各々は、1種の色素によってのみ発される比較的狭い範囲の可視光に関連する(
図23)。DNAシーケンサーからの主データセットは、4つのヌクレオチドに対応する4つのカラートレースを有する(
図23)。実際、フィルターは単純にCCDアレイ上のソフトウェア指定部位であるため、任意数のバーチャルフィルターが存在し得る。色素の発光プロファイルは常にかなり広く、その一部はその発光極大を収集することを目的とするもの以外のバーチャルフィルターによって登録される。CCDアレイでの発光プロファイルの重なりを最小にするために、各組の色素は、広く間隔の空いた発光極大を有するように選択される。しかしながら、スペクトルの重なりがなおある程度起こり、ある特定のクロストークが常に存在する。他方、DNA配列の各位置は4つのヌクレオチドのうちの1種のみを有し、配列決定の過程で、それらの各々はそれ「自体」のカラーチャネルで検出される。したがって、DNA配列決定の4つのレーンは類似の強度のピークを含有し、1つのカラートレースのみがある特定の位置に顕著なピークを有するため、クロストークの問題は、DNA配列決定に関しては、グリカン分析の場合よりもはるかに重要性が低い。
【0222】
重要なことに、APTS色素およびグリカンとのそのコンジュゲートの発光は、常に、最短波長のチャネルに現れ、参照チャネルとのクロストークが存在しないことが必須である。APTSでの標識後、複合グリカン混合物の電気泳動図は、強度が数桁の大きさで変動するピークを含有する。したがって、APTSチャネルの蛍光シグナルは、参照チャネルから「漏れた」発光をまったく含まない必要がある。参照試料は、別の蛍光色素で標識され、分析される試料と同時に注入される混合物を含有する。観察チャネル(APTS色素またはその代替物)および参照チャネル間にクロストークが「まったく」存在しないというこの要件は、容易に満たされると思われるが、両方の色素は、同じ光源で励起されなくてはならず、それらの発光スペクトルが重なる場合はそうではない。現在まで、LIZ色素(グリカン分析の内部アラインメント標準として使用される「DNAラダー」に結合した)が、655nm観察チャネルの追加の色として使用された。LIZ色素の検出のために、バーチャルフィルターセットG5(6-Fam(商標)、VIC(登録商標)、NED(商標)、PET(登録商標)およびLIZ(登録商標)を含む)を、ABI 3100 DNAシーケンサー(ABIユーザーマニュアル)において使用する。この色素は、供与体色素であるFRET対および受容体色素からなる。供与体色素は緑色光により効果的に励起され、受容体にエネルギーを移動させ、後者は赤色光のみを発光するため、この組合せ(非常に大きなストロークスシフトの色素に類似)により、クロストークは存在しなくなる。しかしながら、完全エネルギー移動、複数の負電荷および芳香族アミノ基を有するFRET対は、非常に複雑であり、したがって、合成により得ることが困難である。したがって、本発明は、拡大されたストロークスシフトを有する蛍光色素を提供する。内部アラインメント標準の代替物として、これらの色素は、APTS(観察)チャネルにおいて発光を示さない。
【0223】
APTSチャネルとのクロストークを排除するために、蛍光色素の他の組を使用して市販のDNAシーケンサー(Applied Biosystemsによって製造)を再較正することが必要であった。製造業者により、任意数の(種々の)バーチャルフィルター(観察ウィンドウ)が存在し得る。したがって、新しい検出チャネルが示され得る。例えば、5種の任意の蛍光色素の発光極大は、5つの(新しい)検出ウィンドウ(フィルター)を定義する。クロストークを最小にするために、新しい参照色素の吸収極大は、500nm~655nmの範囲に大なり小なり均一に広がらなくてはならない。CCDアレイの発光色間の「クロストーク」(重なり)は、ソフトウェアのマトリックスファイルによって修正される。この手順は周知であり、「線形不混合」と呼ばれる(T.Zimmermannら、Methods Mol.Biol.2014、1075、129~148)。
【0224】
マトリックスファイルは別々の「マトリックス」実行から生成され、参照色素またはその誘導体がキャピラリー電気泳動にかけられ、個々のピークに分離され、それらの発光スペクトルが全スペクトル範囲に登録される。マトリックスファイルは、ある特定のフィルターに入る発光(ある特定の観察ウィンドウ内で検出される)への個々の色素の入力に関する情報を含有する。各フィルター(検出ウィンドウ)について、1種の色素の入力は最大であるが、特定のフィルターを通過する全シグナルに「夾雑する」他の色素からの寄与も存在する。
【0225】
図25において、色素8-H(三リン酸化アミノピレン)およびAPTS(三硫酸化アミノピレン)の比較が示される。スパイクインAPTS標識マルトースラダー(両方の試料への)は、時間配向をもたらす。8-Hの保持時間は、APTSの保持時間よりも長いが、8-Hのm/z比(144)は、APTSのm/z比(151)よりも小さい。APTSでは、荷電基(スルホン酸残基)は、フルオロフォアに直接結合される。8-H中のN-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)リンカーの存在は、色素の流体力学比を増加させ、これは、遊離色素8-Hのより長い保持時間を説明する。
【0226】
図26は、8-HおよびAPTSのピークの拡大を示す。この図は、スペクトル較正前に得た。APTSカラーチャネルとの8-Hの強いクロストーク(522nm;
図26Aの黒色)に起因して、色素8-Hは、いずれの分析アッセイにおいてもAPTSと一緒には使用できない。同じことは、
図27に示される三リン酸化ピレン色素15、ならびに
図30に示される二リン酸化アクリドン色素6-Meおよび6-Hに関して真である。したがって、APTSおよび三リン酸化ピレン色素6-H、6-Meまたは8-Hおよび15に寄与する発光チャネル間のクロストークを減少させる、または可能な場合、完全に排除するために、DNAシーケンサーの新しい色較正が必要である。
【0227】
そのため、負荷電蛍光色素19、20、6-Rおよび15(下記を参照されたい)を選択し、DNA配列決定デバイスに組み込まれる電気泳動ユニットのスペクトル較正のための新しい組においてAPTSと一緒に使用した。これらの色素により、新しいマトリックスファイルが生成され、スペクトルの重なりを修正するのに使用した。
【0228】
【0229】
表7は、ローダミン19および20(K.Kolmakovら、Chem.Eur.J.2012、18、12986~12998およびK.Kolmakovら、Chem.Eur.Journal、2013、20、146~157)、6-Rおよび15、ならびにマルトース単位からなるオリゴ糖とのそれらのコンジュゲートを含む蛍光色素の特性を示す。注目すべきことに、色素8-Hのマルトヘキサオースとのコンジュゲートは、マルトテトラオース(16.5分)から得られたAPTS誘導体よりもはるかに短い保持時間(13.1分)を有する。色素8-Hおよび15の流体力学比は、APTSの流体力学比よりも大きいが、これらの色素中の6つの負電荷の存在(APTSの3つに対して)は、電場におけるそれらの電気泳動移動度を強く増加させる。
【0230】
【0231】
実際、一方で
図24のカラーチャネル、および表7のカラーチャネルの発光極大を比較した場合、これらが非常に類似していると結論できる。発光極大の小さな差が「575nmチャネル」について、およびさらにより小さな差が「595nmチャネル」についてのみ存在する。「575nmチャネル」(
図27対28)の定義に役立つ新しい発光バンドは、非常に幅広い。「新しい595nmチャネル」の発光極大は、わずかに赤色シフト(595nmからおよそ607nmに)される。しかしながら、これらの小さな差により、クロストークを完全に排除することが可能であった。
【0232】
図29に示されるカラートレースを得るために、5つの新しいバーチャルフィルターをDNAシーケンサーに設定した(表3)。最短の波長チャネルは、すべてのAPTSコンジュゲート(522nm)に、次のものはピレン15-マルトトリオースコンジュゲートの発光極大(554nm;色素15のすべてのコンジュゲートに有効)に、「緑色」のものは還元糖とのアクリドン色素6-Hおよび6-Meのすべてのコンジュゲート(575nm)に対応し、別のものは、遊離色素20(595nm、
図4)の発光極大に対応し、最後に「赤色」チャネルを、色素19の発光(655nm;
図4)に従って選択した。この選択によって、APTSチャネル(522nm)および554nmチャネル間、ならびにAPTSチャネル(522nm)および575nm(緑色)チャネル間のいずれの種類のクロストークも排除された(
図29および31を参照されたい)。
【0233】
図29AおよびBは、炭水化物(「デキストラン1000」A)および「デキストラン5000(B)ラダー」)および色素15の混合物から得られたコンジュゲートの電気泳動図を示し;「1000」および「5000」は、デキストランオリゴマーの平均分子質量に対応する。ピーク間の時間の差は、およそ1分である。APTSの場合、ピーク間の時間の差は、およそ2.3分である(
図25を参照されたい;グルコース単位の添加の結果、マルトース単位についての移動時間はおよそ同じだけ増加する)。蛍光色素が新しい内部標準混合物の生成を目的とする場合、ピーク間の時間の差が小さいほど有利である。
【0234】
図30AおよびBは、色較正前の、マルトトリオースならびに色素6-H(A)および6-Me(B)から得られたコンジュゲート(還元的アミノ化生成物)の電気泳動図を示す。両方の色素、6-Hおよび6-Meについて、APTSチャネル(522nm)および「595nmチャネル」間のクロストーク(6-Hおよび6-Meについても有効)はごく小さく;色素15の場合よりも小さい(
図27)。色素6-Hについて、クロストークはおよそ7.8%であり、色素6-Meについて、およそ3.4%である。しかしながら、クロストークは、(存在しない分析物の)偽陽性同定を引き起こし得るため、標準および観察チャネル間の小さなクロストークさえ認められない。
【0235】
図31AおよびBは、スペクトル較正後の、「デキストラン1000」(A)および「デキストラン5000」(B)ラダー、ならびに色素6-Meから得られたコンジュゲートの電気泳動図を示す(実施例3を参照されたい)。新しい色較正は、マルトトリオースとコンジュゲートした色素6-Hおよび6-Meの使用に基づいた。それらのスペクトル特性およびそれらのコンジュゲートの特性は、実に類似している。APTSチャネル(522nm)および「新しい」575nmチャネル間にクロストークは存在しない。
【0236】
色素6-Me(および6-H)について、ピーク間の時間の差はおよそ1.5分であり、これは、色素残基の4つの負電荷に対応する。
図31の右側は、最大60分以上の移動時間のピークを示し;これらは、色素6-Me(および6-H、データは類似しているため示さない)が、APTS(
図25)と好ましく比較され得ることを示す。
【0237】
参考文献
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【国際調査報告】