(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-23
(54)【発明の名称】抗酸化活性及び美白効果を有するフレキシブル金属パッチとその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20220516BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20220516BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20220516BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q19/02
A61K8/27
A61K8/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555559
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(85)【翻訳文提出日】2021-09-14
(86)【国際出願番号】 KR2020003333
(87)【国際公開番号】W WO2020189944
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0030701
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518358859
【氏名又は名称】ラブンピープル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LABNPEOPLE CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】チョ,スンヨン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB441
4C083AC621
4C083AD011
4C083CC02
4C083DD12
4C083EE16
(57)【要約】
本発明は、下記化学式1で表される生体分解性金属を含む、抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチに関するもので、DPPHフリーラジカル消去活性を持つため抗酸化及び美白機能性に有用であり、特に、これは、他の抽出物や化合物を並行しなくても、フレキシブル金属パッチ自体が抗酸化活性及び美白機能性を発揮することができるので、その使用が簡便で、目元及び目の下などの局所部位に適用が容易であって、効果的な抗酸化及び美白機能性化粧品を提供することができるフレキシブル金属パッチを提供する。
化学式1
MgaXb
(化学式1中、a及びbは、各成分の重量%であって、a+b=100重量%、5<a<100であり、Xは、Zn、Ca、Fe、Mn、Si、Na、Zr、Ce、Ag及びPよりなる群から選ばれる単独またはこれらの組み合わせである。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表示される生体分解性金属を含む、抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチ。
[化学式1]
Mg
aX
b
(化学式1中、a及びbは、各成分の重量%であって、a+b=100重量%、5<a<100であり、Xは、Zn、Ca、Fe、Mn、Si、Na、Zr、Ce、Ag及びPよりなる群から選ばれる単独またはこれらの組み合わせである。)
【請求項2】
前記生体分解性金属は、化学式1において90≦a<100を満足することを特徴とする、請求項1に記載の抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチ。
【請求項3】
前記生体分解性金属は純度95%以上のMgであることを特徴とする、請求項1に記載の抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチ。
【請求項4】
前記生体分解性金属は、2以上の金属相(phase)がガルバニック回路を生成して分解速度が加速化されることを特徴とする、請求項1に記載の抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチ。
【請求項5】
前記生体分解性金属はMg
2Ca相を含むことを特徴とする、請求項4に記載の抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチ。
【請求項6】
前記生体分解性金属はMgZn相を含むことを特徴とする、請求項4に記載の抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチ。
【請求項7】
前記生体分解性金属はCa
2Mg
6Zn
3相を含むことを特徴とする、請求項4に記載の抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチ。
【請求項8】
前記生体分解性金属は、金属の表面に異なる種類の第2の金属、ポリマーまたはセラミックがコーティングされたことを特徴とする、請求項1に記載の抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチ。
【請求項9】
前記第2の金属は、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、鉄、ニッケル、亜鉛、ガリウム、セレン、ストロンチウム、ジルコニウム、モリブデン、ニオブ、タンタル、チタン、ケイ素、銀、金、マンガン及びカルシウムよりなる群から選ばれる1種以上の金属であることを特徴とする、請求項8に記載の抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチ。
【請求項10】
フレキシブル金属パッチは、マイクロニードルを含むパッチである、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチ。
【請求項11】
請求項1に記載のフレキシブル金属パッチ;及び
チロシナーゼ活性抑制ないしメラミン生成抑制効果を有する化合物を含む化粧品的剤形からなる、抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチを含む化粧品パッケージ。
【請求項12】
チロシナーゼ活性抑制ないしメラミン生成抑制効果を有する化合物は、トラネキサム酸(tranexamic acid)を含むことを特徴とする、請求項11に記載の抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチを含む化粧品パッケージ。
【請求項13】
請求項1に記載のフレキシブル金属パッチを皮膚に付着させるステップを含む、抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチの使用方法。
【請求項14】
フレキシブル金属パッチを付着させる前または付着させた後、チロシナーゼ活性抑制ないしメラミン生成抑制効果を有する化合物を含む化粧品的剤形を塗布するステップを含む、請求項13に記載の抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチの使用方法。
【請求項15】
チロシナーゼ活性抑制ないしメラミン生成抑制効果を有する化合物はトラネキサム酸(tranexamic acid)を含むことを特徴とする、請求項14に記載の抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化活性及び美白効果を有するフレキシブル金属パッチに係り、より詳細には、生体分解性金属を用いた抗酸化活性及び美白機能性パッチに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚美白は、美しさの象徴であって、引き続き関心の対象となってきた。このような関心として、皮膚美白製品に対する需要は着実に増加しており、関連化粧品産業は高付加価値産業に成長している。
【0003】
一方、しみ、そばかす、荒い肌、斑点、アトピー性皮膚炎などは、活性酸素の過剰による皮膚症状といっても過言ではない。酸素は、呼吸によって体内で生命体を維持するエネルギーを発生させて人間の生命を保存させる役割を果たす。体内に入ってきた酸素の一部が化学反応により「活性酸素」に変わり、これは、体内に入ってきた細菌や物質を撃退させ、白血球の手に入った武器の役割を担う有益物質でもある。しかし、この活性酸素が過剰に発生すると、正常細胞までも無差別に攻撃して細胞を殺したり傷つけたりする。したがって、反応性酸素代謝物による生体内フリーラジカル反応を抑制させる抗酸化物質は、老化関連疾患を予防する一種の薬物になることができる。このような抗酸化能確認実験でDPPHラジカル消去作用などを利用する。
【0004】
このようなDPPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)フリーラジカル消去活性及び抗酸化、美白活性機能を有する化粧品に関連して様々な技術が存在するが、これは、様々な植物性エキスベースのもの(例えば、韓国登録特許10-1811411号、同10-1351187号、同10-1885224など)、及び特異的な化合物の組み合わせベースのもの(韓国登録特許10-1219520など)などを挙げることができる。
【0005】
一方、本発明者は、生分解性Mg-Ca-Zn系合金骨移植材の生体適合性及び強度維持に関連して研究したことがある(Cho SY, Chae S-W, Choi KW, Seok HK, Kim YC, Jung JY, Yang SJ, Kwon GJ, Kim JT, Assad M. 2012. Biocompatibility and strength retention of biodegradable Mg-Ca-Zn alloy bone implants. J Biomed Mater Res Part B 2012:00B:000-000)。具体的には、Mg-Ca-Zn合金骨スクリューについて生体適合性と強度保持力を評価したが、その結果、ウサギ移植モデルを用いた組織病理学的分析において、Mg-Ca-Zn合金は、インプラント周囲の組織に炎症細胞が全く見えない或いは殆ど見えない結果を示した。また、血液学と血清生化学的検査で移植前と後の許容基準範囲と立証されたとともに、インプラントからの金属元素の放出は正常組織レベルでいずれの有意な影響も及ぼさないことが分かった。このような観点から、Mg-Ca-Zn系合金は、整形外科用生分解性高分子の優れた代案であることを確認した。
【0006】
本発明者は、このようなMg-Ca-Zn系合金の優れた生体適合性を確認し、これに対して様々な分野への融合を試みてきた、その一例として、これをマイクロキャリアとして活用しようとしたことがある。これに関連して、本発明者は、MgまたはZn単独、またはMg-Zn-Ca系合金など、MgまたはZn系金属を含むマイクロキャリアに対して既に出願したことがある(韓国公開特許第2017-0115449号)。このようなマイクロキャリアに対してPNK皮膚臨床研究センター(株)に依頼して人体適用試験を行った。具体的には、目元のしわ、皮膚弾力、真皮緻密度及び皮膚厚さの測定はもとより、その安定性の評価を行ってその効能効果を確認したことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、本発明者の研究からその生体適合性が確認されたことのあるMg金属またはマグネシウム金属の合金を含む生体分解性金属を用いて、抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチを提供しようとする。
【0008】
特に、本発明は、生体分解性金属自体がDPPHフリーラジカル消去活性を発現することを確認して、抗酸化活性及び美白機能性を有するフレキシブル金属パッチを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記化学式1で表される生体分解性金属を含む、抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチを提供する。
【0010】
[化学式1]
【0011】
MgaXb
【0012】
化学式1中、a及びbは、各成分の重量%であって、a+b=100重量%、5<a<100であり、Xは、Zn、Ca、Fe、Mn、Si、Na、Zr、Ce、Ag及びPよりなる群から選ばれる単独またはこれらの組み合わせである。
【0013】
本発明の一実施形態による抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチにおいて、前記生体分解性金属は、化学式1において90≦a<100を満足することができる。
【0014】
本発明の一実施形態による抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチにおいて、前記生体分解性金属は、純度95%以上のMgであることができる。
【0015】
本発明の一実施形態による抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチにおいて、前記生体分解性金属は、2以上の金属相(phase)がガルバニック回路を生成して分解速度が加速化されることができる。
【0016】
本発明の一実施形態による抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチにおいて、前記生体分解性金属は、Mg2Ca相を含むことができる。
【0017】
本発明の一実施形態による抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチにおいて、前記生体分解性金属は、MgZn相を含むことができる。
【0018】
本発明の一実施形態による抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチにおいて、前記生体分解性金属は、Ca2Mg6Zn3相を含むことができる。
【0019】
本発明の一実施形態による抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチにおいて、前記生体分解性金属は、金属の表面に異なる種類の第2の金属、ポリマーまたはセラミックがコーティングされることができる。
【0020】
本発明の一実施形態による抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチにおいて、前記第2の金属は、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、鉄、ニッケル、亜鉛、ガリウム、セレン、ストロンチウム、ジルコニウム、モリブデン、ニオブ、タンタル、チタン、ケイ素、銀、金、マンガン及びカルシウムよりなる群から選ばれる1種以上の金属であることができる。
【0021】
本発明の好適な一実施形態による抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチは、マイクロニードルを含むパッチであることができる。
【0022】
本発明の他の一実施形態は、前記一実施形態によるフレキシブル金属パッチ、及びチロシナーゼ活性抑制ないしメラミン生成抑制効果を有する化合物を含む化粧品的剤形からなる、抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチを含む化粧品パッケージを提供する。
【0023】
好適な一実施形態による抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチを含む化粧品パッケージにおいて、チロシナーゼ活性抑制ないしメラミン生成抑制効果を有する化合物は、トラネキサム酸(tranexamic acid)を含むことができる。
【0024】
本発明の別の一実施形態は、前記一実施形態によるフレキシブル金属パッチを皮膚に付着させるステップを含む、抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチの使用方法を提供する。
【0025】
抗酸化及び美白活性の相乗効果を得ることができる観点から、好適な一実施形態によるフレキシブル金属パッチの使用方法は、フレキシブル金属パッチを付着させる前または付着させた後、チロシナーゼ活性抑制ないしメラミン生成抑制効果を有する化合物を含む化粧品的剤形を塗布するステップを含むことができる。
【0026】
この時、チロシナーゼ活性抑制ないしメラミン生成抑制効果を有する化合物は、トラネキサム酸(tranexamic acid)を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の生体分解性金属または金属化合物を含むフレキシブル金属パッチは、DPPHフリーラジカル消去活性を持つため抗酸化及び美白機能性に有用であり、特に、これは他の抽出物又は化合物を並行しなくても、フレキシブル金属パッチ自体が抗酸化及び美白機能性を発揮することができるので、その使用が簡便であり、目元及び目の下などの局所部位に適用が容易であって、効果的な抗酸化及び美白機能性化粧品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明によるフレキシブル金属パッチの抗酸化活性及び美白機能性評価に提供された純度95%のマグネシウムからなるフレキシブル金属パッチ試験片の写真である。
【0029】
【
図2】本発明によるフレキシブル金属パッチに対するメタノール溶液の濃度別DPPHラジカル消去活性度(%)グラフであって、3つのウェル(well)に対するそれぞれの結果グラフである。
【0030】
【
図3】本発明によるフレキシブル金属パッチに対するDPPHラジカル消去活性度評価において陽性対照群として用いられたL-アスコルビン酸のメタノール溶液に対する濃度別DPPHラジカル消去活性度(%)グラフであって、3つのウェル(well)に対するそれぞれの結果グラフである。
【0031】
【
図4】本発明によるフレキシブル金属パッチの美白機能性評価において、対照群として用いられたパッチとアンプル併用試験群に対する臨床試験結果における皮膚明るさ改善度の結果グラフである。
【0032】
【
図5】本発明によるフレキシブル金属パッチの美白機能性評価において、パッチ単独試験群に対する臨床試験結果における皮膚明るさ改善度の結果グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を添付図面に基づいてさらに詳細に説明する。
【0034】
本発明者は、上述したように、マグネシウム金属単独またはこれを含む合金に関連して、その生体適合性と適用用途別の効能効果について研究し、それらの結果物を論文又は特許出願の形で既に提示したことがある。
【0035】
本発明は、このような研究を基に多角的な研究を行い続けた結果として得られたもので、当該生体分解性金属がDPPHフリーラジカル消去活性を有することを解明することにより、このような生体分解性金属を含むフレキシブル金属パッチの抗酸化機能性及び美白機能性としての新しい用途を案出したものである。
【0036】
本発明において、生体分解性金属自体がDPPHラジカル消去能を有する、機能的な構成で単独作用することを解明する。
【0037】
本発明では、マグネシウムを単独素材とした生体分解性金属と、前記金属に亜鉛やカルシウムなどの異なる種類の金属を混合した生体分解性金属をフレキシブル金属パッチの形態で製造し、これらのDPPHラジカル消去活性(Blois, M.S. 1958. Antioxidant determination by the use of a stable free radical. Nature 26, 1199-1200.)について評価した。その結果、マグネシウムを単独素材にして製造された生体分解性金属、または前記金属に異なる種類の金属が特定の範囲で混合された合金は、その自体がDPPHラジカル消去活性を有することを確認することができた。
【0038】
したがって、本発明は、一態様において、下記化学式1で表される生体分解性金属を含有する、抗酸化及び美白機能性フレキシブル金属パッチを提供する。
【0039】
[化学式1]
【0040】
MgaXb
【0041】
化学式1中、a及びbは、各成分の重量%であって、a+b=100重量%、5<a<100であり、Xは、Zn、Ca、Fe、Mn、Si、Na、Zr、Ce、Ag及びPよりなる群から選ばれる単独またはこれらの組み合わせである。
【0042】
前記生体分解性金属は、マグネシウムを少なくとも5重量%で含むことが、DPPHラジカル消去活性を有意に発現する観点から好ましい。このような観点から、好ましくは、前記生体分解性金属は、化学式1において90≦a<100を満足することが良い。
【0043】
本発明による生体分解性金属は、皮下または上皮に付着または挿入された後、吸収及び分解されて金属イオン及び分解産物を体内に放出する特性を有する金属であって、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)などは、アルカリ土類金属系の生体分解性金属であって、下記反応式1乃至3で表したように、水と反応して水素ガスを放出するメカニズムを持つ。
【0044】
[反応式1]
【0045】
Mg+2H2O→Mg(OH)2+H2(ガス)
【0046】
[反応式2]
【0047】
Ca+2H2O→Ca(OH)2+H2(ガス)
【0048】
[反応式3]
【0049】
Zn+2H2O→Zn(OH)2+H2(ガス)
【0050】
【0051】
本発明において、前記生体分解性金属は、マグネシウム(Mg)を単独素材にして製造されることが、生体適合性に優れ且つ正常細胞や組織で毒性を示さない観点から好ましいことができる。ここで、マグネシウム単独素材は、それぞれの金属生産過程で発生する不可避的不純物を含むこと以外に、純度95%以上の純マグネシウムを意味する。
【0052】
一方、前記化学式1で表される生体分解性金属は、ポテンシャルが異なる金属間化合物を含ませることにより、その分解速度を制御することができるが、例えば2以上の金属相(phase)がガルバニック回路を生成して分解速度が加速化できる。
【0053】
具体的に、生体分解性金属は、Mg2Ca相、MgZn相、またはCa2Mg6Zn3相を含む生体分解性金属を含むことができる。
【0054】
分解速度を制御することができる他の方案としては、前記化学式1で表される生体分解性の金属表面に、異なる種類の第2の金属、ポリマーまたはセラミックがコーティングされることができる。この時、第2の金属は、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、鉄、ニッケル、亜鉛、ガリウム、セレン、ストロンチウム、ジルコニウム、モリブデン、ニオブ、タンタル、チタン、ケイ素、銀、金、マンガン、カルシウムなどを例示することができるが、これに限定されるものではない。この時、前記鉄(Fe)を含む場合、特にステンレス機能をするクロム(Cr)、ニッケル(Ni)が含まれてはならない。ここで、ポリマーとしては、PLA(Poly lactic acid)、PGA(Poly glycolic acid)、PCL(Poly caprolactone)、PDO(Polydioxanone)またはこれらの重合体などを挙げることができる。一方、セラミックは、酸化マグネシウム(Magnesium oxide)、水酸化マグネシウム(Magnesium hydroxide)、ヒドロキシアパタイト(Hydroxylapatite)またはベータ-三リン酸カルシウム(Tricalcium phosphate、Beta-TCP)などを挙げることができる。
【0055】
【0056】
このような本発明の生体分解性金属は、その自体がDPPHフリーラジカル消去活性を有する。本発明者は、マグネシウムを単独素材にした生体分解性金属または前記金属に亜鉛、カルシウムなどの異なる種類の金属を混合した生体分解性金属を、フレキシブル金属パッチとして製造し、これらのDPPHラジカル消去活性を評価した。その結果、マグネシウムを単独素材にして製造された生体分分解性金属、または前記金属に異なる種類の金属が特定の範囲で混合された合金は、その自体がDPPHラジカル消去活性を有することを確認した。
【0057】
上記及び以下の記載において、フレキシブル金属パッチは、その形状的制限があるのではなく、一例として、本発明者によって既に出願されて登録された韓国登録特許10-1947624号(マルチ型マイクロニードル)、及び本発明者によって既に出願されて公開された韓国公開特許第10-2017-0115449号(生体分解性金属を用いたマイクロニードル)などに記載された形態を含むマイクロニードル型パッチであることができる。
【0058】
【0059】
一方、本発明の他の一実施形態では、上述したように抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチの抗酸化及び美白活性の相乗効果を実現するための化粧品パッケージを提供することができる。
【0060】
具体的には、前記一実施形態によるフレキシブル金属パッチ;及びチロシナーゼ活性抑制ないしメラミン生成抑制効果を有する化合物を含む化粧品的剤形からなる、抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチを含む化粧品パッケージであることができる。
【0061】
メラニンは、黒い色素とタンパク質との複合体であり、ヒトの髪と肌色をなす色素の一つであって、その量が多ければ、肌色が黄褐色乃至黒褐色を帯び、少ないほど色が薄くなり、皮膚を保護する肯定的な面を持っているが、その過剰生成は、しみ、そばかす、皮膚の斑点などを誘発し、メラニン前駆物質の毒性に起因する細胞のアポトーシス及び皮膚がんの生成が促進されることもある。メラニンは、表皮の基底層の間や基底層の下の毛包などで主に観察されるメラニン細胞から合成され、細胞質突起を介して角質形成細胞に運ばれて表皮メラニン単位を形成する。メラニン細胞内のメラノソーム(melanosome)で生成されたメラニン色素は、メラノソームの樹状突起を介して付近に隣接している角質細胞(keratinocyte)へ移動し、角質細胞が外皮に浮上しながら肌色として現れる。メラノソームは、正常なメラニンを合成するのに必要な特異的酵素を含有している。これらの酵素の中で最もよく知られているものとして、チロシナーゼ(tyrosinase)、チロシナーゼ関連タンパク質-1(tyrosinase related protein-1(TRP-1))及びチロシナーゼ関連タンパク質-2(tyrosinase related protein-2(TRP-2))などがある。その中でも、チロシナーゼ(tyrosinase)は、メラニン合成の速度決定段階である初期反応に作用する酵素であって、チロシナーゼ(Tyrosinase)は、メラニン生合成の律速(rate-limiting)酵素であって、L-チロシン(L-tyrosine)を3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(3,4-dihydroxyphenylalanine(L-DOPA))に変換し、L-DOPAをDOPAquinoneに変換してメラニンを生合成する。
【0062】
このため、このようなメカニズムを確認して様々な化合物がチロシナー活性抑制ないしメラミン生成抑制効果を有することが知られてきたが、本発明では、その自体で抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチを単独で使用する効果に加えて、その相乗効果を図る観点から、このようなチロシナーゼ活性抑制ないしメラミン生成抑制効果を有する化合物を含む化粧品的剤形を組み合わせて、化粧品パッケージの形で提供することができる。
【0063】
特に好ましくは、チロシナーゼ活性抑制ないしメラミン生成抑制効果を有する化合物は、トラネキサム酸(tranexamic acid)を含むものであることができるが、トラネキサム酸は、抗線維素溶解剤であって、しみ及び紫外線による炎症後過色素沈着(UV-induced PIH)に対して治療的効果を有することが知られている。また、トラネキサム酸は、有機酸であり、食用医薬品であるしみ阻害剤として使われている。
【0064】
もともと皮膚を保護するために生じるメラニン色素は、過多に生成される場合、しみや色素沈着が生じるおそれがある。チロシナーゼ(Tyrosinase)酵素が過度に刺激を受けると、メラニン色素が過剰に分泌されるが、このとき、プロスタグランジン(prostaglandin)がそのチロシナーゼを刺激するのに重要な役割を果たす。トラネキサム酸は、プロスタグランジンの生成を抑制する物質であって、これにより、しみに効果があると知られている化合物である。
【0065】
通常、トラネキサム酸は、しみの治療後に食べる或いは塗る薬として開発されたが、食べる薬の場合は、吸収率と到達率が低下して塗る薬として開発された。ところが、トラネキサム酸は、水溶性であって皮膚に吸収されない問題があった。ところが、本発明で提供する抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチと組み合わせて使用する場合、フレキシブル金属パッチがその自体的な抗酸化及び美白活性を発現するのはもとより、これがトラネキサム酸を皮膚の中に効果的に送達させてトラネキサム酸の皮膚吸収を図る二重的な効果を発揮することができる。
【0066】
ここで、トラネキサム酸など、チロシナーゼ阻害活性ないしメラミン生成抑制活性を有する化合物を含む化粧品的剤形は、その化粧品的剤形に限定があるのではなく、様々な公知の剤形を含むことができる。一例として、トラネキサム酸を含むアンプル剤形であり得るが、これに制限されない。
【0067】
【0068】
また、本発明は、前記一実施形態によるフレキシブル金属パッチを皮膚に付着させるステップを含む、抗酸化及び美白活性を有するフレキシブル金属パッチの使用方法を提供する。
【0069】
本発明によるフレキシブル金属パッチは、マグネシウムが持つ特有の特性(弾性係数40~45GPa)によりフレキシブルであって皮膚の曲面に沿って付着が容易である。ここで、付着は、フレキシブル金属パッチ自体への付着、及び粘着性材料を用いた付着だけでなく、マイクロニードルの形態で製作されてその自体的に付着する場合をすべて含むことができる。
【0070】
上述したように抗酸化活性及び美白活性の相乗効果を考慮して、フレキシブル金属パッチを付着させる前または付着させた後、チロシナーゼ活性抑制ないしメラミン生成抑制効果を有する化合物を含む化粧品的剤形を塗布するステップを含むことができる。
【0071】
特に、皮膚塗布の際にその吸収率が低下するトラネキサム酸を含む化粧品的剤形を塗布してその皮膚吸収を図る効果を一緒に得ることができる使用用法を提供することができる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されない。
【0073】
【0074】
<実施例1>
【0075】
本発明の生体分解性金属に対するDPPHフリーラジカル消去活性を評価するために、韓国化学融合試験研究院に試料を提供して、次の方法で試験を行った。
【0076】
(1)材料(Materials)
【0077】
a.試験物質
【0078】
-純度95%以上のマグネシウムパッチ(
図1と同様。マイクロニードルの形態を実現したが、ニードルを曲げていない状態のもの)
【0079】
-試験に使用された試料は、製造時に発生する不可避的不純物を含む、純度95%以上のMgを用いてシートを製作(規格2.6×2.4mm、厚さ0.1t)したものであって、
図1の写真と同じ形態のものを使用した。
【0080】
b.陽性対照物質
【0081】
-L-アスコルビン酸(L-Ascorbic acid):Sigma-Aldrich Corporation Lot No.SLBR2586V
【0082】
c.その他
【0083】
-2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(DPPH):Sigma-Aldrich Corporation Lot No.STBH0044
【0084】
-メタノール:JINSEI Lot No.2016G2012
【0085】
(2)試験方法(Test method)
【0086】
a.試験物質の調製:提供した試験物質を純度換算せずに利用した。メタノールを用いて当該濃度について調製した。
【0087】
b.陽性対照物質の調製
【0088】
L-アスコルビン酸を秤量した後、メタノールを用いて当該濃度で調製した。
【0089】
c.試験物質分析試験依頼者と協議して、試験物質の安定性及び均質性に対する分析は別途行わなかった。
【0090】
d.DPPH調製
【0091】
メタノールを用いて0.2mMの濃度で調製した。
【0092】
e.試験群の構成
【0093】
下記表1に示すように、試験群を構成した。
【0094】
【0095】
f.物質の適用
【0096】
96ウェルプレートに各濃度別調製物と0.2mM DPPH及びメタノールを1:1で混合した。
【0097】
g.試料液反応及び吸光度測定
【0098】
室温で30分間遮光状態にて反応させて遠心分離することにより上澄み液を取った後、517nm波長で吸光度を測定した。
【0099】
h.結果算出
【0100】
DPPHのフリーラジカル消去活性率(DPPH radical scavenger activity、%)は、下記式1を用いて算出した。
【0101】
<式1>
【0102】
DPPHラジカル消去活性率(%)=1-(A/B)×100
【0103】
式中、Aは試験物質の吸光度であり、Bは供試料の吸光度である。
【0104】
【0105】
i.統計処理
【0106】
各実験結果は、3回繰り返し測定して平均と標準偏差を示した。SPSS統計プログラム(Ver.19.0)を用いて統計分析を行った。まず、Levene’s testを行った後、one way ANOVA testを行い、実験群間の有意性が確認されると、分散の同質性有無に応じて事後検定(分散が同質な場合にはDuncan’s多重検定、分散が異質な場合にはDunnett’s T3)を行った。
【0107】
【0108】
(3)結果(Result)
【0109】
a.DPPHフリーラジカル消去活性率(%)
【0110】
下記表2と
図2及び
図3に示すように、試験物質であるマグネシウムパッチを用いた試験群(G1)を濃度別(それぞれ1%、2.5%、5%及び10%)に処理してDPPHフリーラジカル消去活性度を測定した結果、11.58%、13.73%、27.69%及び27.55%の活性を示した。
【0111】
【0112】
【0113】
前述したように、マグネシウムパッチに対する抗酸化効果を評価するために、2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(DPPH)法を用いたフリーラジカル消去活性試験を介して、試験物質であるマグネシウムパッチを1%、2.5%、5%及び10%の濃度で測定した結果、それぞれ11.58%、13.73%、27.69%及び27.55%の活性を示した。陽性対照物質は、0.0005%、0.001%、0.0015%及び0.002%の濃度で20.96%、40.38%、65.57%及び83.24%の抗酸化効果を示し、IC50(50%活性率を示す濃度)を算出した結果、、0.0012%の濃度と算出された。
【0114】
以上の結果から、DPPHフリーラジカル消去活性測定試験で試験物質であるマグネシウムパッチは5%以上の濃度で抗酸化効果を示すことが確認される。
【0115】
【0116】
<実施例2>
【0117】
本発明の生体分解性金属に対する美白機能性を評価するために、PNK皮膚臨床研究センターに依頼して、次の方法で臨床評価を行った。
【0118】
(1)試験方法
【0119】
1)評価項目
【0120】
a.機械的評価-皮膚明るさの測定(CM-700d、Konica Minolta製、日本)
【0121】
b.有効性評価アンケート調査(Global Assessment of Efficacy)-試験対象者の評価
【0122】
c.安全性評価
【0123】
各アンケートの際に試験製品使用部位に対する研究者肉眼評価結果と試験対象者アンケート結果を総合して研究者が評価する
【0124】
d.その他の調査(観察)項目
【0125】
-人口学的調査:人体適用試験開始前の性別、生年月日、年齢調査
【0126】
-バイタルサイン調査:人体適用試験開始前の肉眼評価による身体検査
【0127】
-病歴調査:人体適用試験開始前の主症状、発症日、検査及び治療履歴に対して調査
【0128】
-製品嗜好度調査:アンケート資料を用いた製品の嗜好度を調査
【0129】
【0130】
2)訪問日程:5回訪問とする
【0131】
a.訪問1:試験対象者の選定、試験対象者の同意、使用前測定、試験製品の交付
【0132】
b.訪問2:使用2週間後の皮膚測定、異常反応の評価
【0133】
c.訪問3:使用4週間後の皮膚測定、異常反応の評価
【0134】
d.訪問4:使用8週間後の皮膚測定、異常反応の評価、試験製品の回収
【0135】
e.訪問5:使用中止2週間後の皮膚測定、異常反応の評価、試験対象者による有効性アンケート調査及び嗜好度調査
【0136】
【0137】
3)1次有効性評価変数:試験製品の使用前、使用2週間後、使用4週間後、使用8週間後、使用中止2週間後の目の下の皮膚明るさの改善に対する測定値
【0138】
【0139】
4)2次有効性評価変数:
有効性評価アンケート調査(Global Assessment of Efficacy)の結果
【0140】
5)安全性評価:試験製品の使用後に現れる異常症状について評価
【0141】
【0142】
(2)試験結果
【0143】
本試験は、万29乃至55歳の女性を対象に、「
図1に示したようなマグネシウムパッチ(ただし、ニードルを曲げた形態で適用、すなわちマグネシウムマイクロニードルパッチ)」を8週間使用し、2週間使用中止した後、目の下部位の皮膚明るさの改善を測定した。顔の左側は、マグネシウムマイクロキャリアマルチケアパッチ(仮称)とアンプルを使用し、顔の右側は、マグネシウムマイクロキャリアマルチケアパッチを単独で使用するようにした。試験終了後、有効性及び嗜好度アンケート評価を完了した。
【0144】
1)本試験を終了した試験対象者
【0145】
22名(中途脱落者2人を除く)は、すべて女性であって、平均年齢は万45.23歳であった。選定された試験対象者は、特別な皮膚症状はなかった。試験に影響を与えるおそれのある疾患及び薬物服用歴はなかった。
【0146】
2)試験製品使用後の皮膚明るさを確認した結果、マグネシウムマイクロニードルパッチとアンプルを併用した顔の左側は、製品使用前と比較して使用8週間後に有意に増加(p<0.05)し、製品使用8週間後と比較して使用中止2週間後に有意な差(p<0.05)を示さなかった。一方、マグネシウムマイクロニードルパッチを単独で使用した顔の右側は、製品の使用前と比較して使用4週間後、使用8週間後に有意に増加(p<0.05)し、製品の使用8週間後と比較して使用中止2週間後に有意な差(p<0.05)を示さなかった。
【0147】
具体的な評価結果とは、下記表3の通りである。下記表3の結果値は「標準±標準偏差」の値に示したものである。
【0148】
【0149】
上述したような結果値に対して群内比較有意確率を計算して、その結果を下記表4に示した。
【0150】
【0151】
(注)*:p<0.05 by repeated measures ANOVA、post hoc Bonferroni correction
【0152】
【0153】
以上の結果をグラフで示した結果は、それぞれ
図4及び
図5のとおりである。
一方、試験製品に対する有効性評価アンケート調査の結果、皮膚明るさ改善項目に対して、試験対象者の100.00%が普通以上と評価した。また、試験対象者が試験製品を使用する期間の間、特別な皮膚異常反応に対する報告はなかった。皮膚科専門医による理学的検査上も、異常所見は観察されなかった。
【0154】
【0155】
以上の結果から、本発明による一実施例として、マグネシウムマイクロニードルパッチは、パッチを単独で使用した顔の右側の目の下部位に8週間の使用で皮膚明るさの改善に役立つ結果、8週間の使用後、2週間の未使用で皮膚明るさの改善維持に役立つ結果を示したことが分かる。
【0156】
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の生体分解性金属または金属化合物を含むフレキシブル金属パッチは、抗酸化及び美白機能性素材として有用であり、特に、これは、他の抽出物や化合物を並行しなくても、フレキシブル金属パッチ自体が抗酸化及び美白機能性を発揮することができるので、その使用が簡便で、目元及び目の下などの局所部位への適用が容易であって、効果的な抗酸化及び美白機能性化粧品の製造に有用である。
【国際調査報告】