(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-23
(54)【発明の名称】カメラベースの害虫管理噴霧器
(51)【国際特許分類】
A01M 7/00 20060101AFI20220516BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220516BHJP
【FI】
A01M7/00 E
G06T7/00 640
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557195
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2020058438
(87)【国際公開番号】W WO2020193666
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521381967
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・アグロ・トレードマークス・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】オレ・ヤンセン
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン・キーペ
(72)【発明者】
【氏名】ミルワエス・ワハブザダ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ヨーネン
【テーマコード(参考)】
2B121
5L096
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121CB02
2B121CB69
2B121CC02
2B121EA26
2B121FA04
2B121FA14
5L096FA53
5L096GA51
5L096GA53
5L096HA09
(57)【要約】
植生圃場の害虫処理のための方法、植生圃場の害虫処理を制御するための制御用装置、および前記制御用装置を有する処理装置であり、処理は、有害昆虫個体群および有益昆虫個体群を考慮するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植生圃場の害虫処理のための方法であって、
前記植生圃場(300)の植生の所定の範囲(310)からの画像(10)を取り込むステップ(S10)と、
前記所定の範囲の前記取り込まれた画像(10)上のアイテム(20)を認識するステップ(S20)と、
前記認識されたアイテム、および昆虫個体群のサンプル(931、932、…939)が格納されたデータベース(90)に基づいて、昆虫個体群の1つまたは複数のパターン(31、32、…39)を識別するステップ(S30)と、
前記識別されたパターンに基づいて、昆虫個体数の大きさを決定するステップ(S40)と、
決定された前記昆虫個体数に基づいて、処理装置(200)の処理構成(60)を制御するステップ(S50)と
を含み、
処理構成(60)を制御するステップ(S50)が、第1のタイプ(931、932)および/または第2のタイプ(933、934)の有害昆虫の数が所定のしきい値(tp)を超過した場合に処理ユニット(61、62、63)を起動するステップ(S60)、ならびに特定のタイプの有益昆虫(936、937)の数が所定のしきい値(tb)を超過した場合に処理ユニット(61、62、63)が起動されるのを阻止するステップを含む、方法。
【請求項2】
処理構成(60)を制御するステップ(S50)が、有害昆虫個体数と有益昆虫個体数との関係と、それぞれの関係に割り振られる処理ユニット(61、62、63)の、それぞれの定量的起動グレードとが格納された、ルックアップテーブルに基づいて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
取り込まれた画像(10)上のアイテム(20)を認識するステップ(S20)が、少なくとも1つの画素のスペクトル検出、特に少なくとも1つの画素の赤色-緑色-近赤外RGNIR検出に基づいて行われ、パターン(31、32、…39)が、少なくとも1つの検出された前記画素の、色空間における、特にRGNIR色空間における位置に基づく、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
昆虫個体群の1つまたは複数のパターン(31、32、…39)を識別するステップ(S30)が、前記データベース(90)の昆虫個体群の格納されたサンプル(931、932、…939)によって供給されるアルゴリズムに基づく、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
昆虫個体群の識別されたパターン(31、32、…39)が、昆虫個体群のサンプル(931、932、…939)として前記データベース(90)内に格納される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
アイテム(20)を認識するステップ(S20)が、複数の所定の範囲(310、320、330)に対して同時に行われ、昆虫個体群の1つまたは複数のパターン(31、32、…39)を識別するステップ(S30)が、前記複数の所定の範囲に対してそれぞれ行われ、昆虫個体数の大きさを決定するステップ(S40)が、前記複数の所定の範囲に対してそれぞれ行われ、処理装置(200)の処理構成(60)を制御するステップ(S50)が、前記複数の所定の範囲(310、320、330)のそれぞれに割り振られた1つまたは複数の処理ユニット(61、62、63)について行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記画像(10)上のアイテム(20)を認識するステップ(S20)が、特定のタイプの昆虫の形状(21)の認識、特定のタイプの昆虫の羽ばたき周波数の認識、および、特に特定のタイプの昆虫のRGNIR色空間における、特定のタイプの昆虫のスペクトル特性(22)の認識のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記格納されたサンプル(931、932、…939)が、一匹の有害昆虫(931、933)もしくは複数の有害昆虫の集団(932、934)、特に一匹のコロラドハムシもしくは複数のコロラドハムシの集団(931、932)、一匹のポーレンビートルもしくは複数のポーレンビートルの集団(933、934)、もしくは、これらの組合せ(935)を表し、および/または前記格納されたサンプルが、一匹の有益昆虫(936)もしくは複数の有益昆虫の集団(937)、特に一匹のミツバチもしくは複数のミツバチの集団を表す、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記格納されたサンプルが、
一匹の有害昆虫または複数の有害昆虫の集団、特に一匹のコロラドハムシもしくは複数のコロラドハムシの集団および/または一匹のポーレンビートルもしくは複数のポーレンビートルの集団と、
一匹の有益昆虫または複数の有益昆虫の集団、特に一匹のミツバチまたは複数のミツバチの集団と
の組合せ(938、939)を表す、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
昆虫個体数の大きさを決定するステップ(S40)が、特定の第1のタイプの有害昆虫(931、932)、特にコロラドハムシの数、特定の第2のタイプの有害昆虫(933、934)、特にポーレンビートルの数、および/または特定の第3のタイプの有益昆虫(936、937)、特にミツバチの数のうちの少なくとも1つを決定するステップ(S41)を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
決定するステップ(S40)が、前記識別されたパターンに基づく、昆虫個体数の大きさのオンラインでの決定を含み、特に圃場通過時に、画像および/またはスキャン画像が捕捉され、情報が収集され、画像化および/またはスキャンされたアイテムに応じて局所的な施与が実行され、画像捕捉および/またはスキャン画像捕捉が、通過時のスピードとそれが相互に関係するように計時される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
植生圃場(300)の害虫処理のための処理装置、特にスマート噴霧器(200)用の制御用装置であって、
画像インターフェース(110)と、
処理制御インターフェース(160)と、
データベースインターフェース(190)と、
前記画像インターフェースから受領される画像(10)上のアイテム(20)を認識するように適合された画像認識ユニット(120)と、
前記画像認識ユニットの出力、および害虫個体群のサンプル(931、932、…939)が格納されたデータベース(90)から前記データベースインターフェース(190)を介して受領される昆虫個体群のサンプル(931、932、…939)に基づいて、昆虫個体群の1つまたは複数のパターン(31、32、…39)を識別するように適合された識別ユニット(130)と、
前記識別されたパターン(31、32、…39)に基づいて、昆虫個体数の大きさを決定するように適合された決定ユニット(140)と、
前記決定された昆虫個体数の大きさに基づいて、処理装置(200)の処理構成(60)のための制御用信号を生成するように、および前記制御用信号を前記処理制御インターフェース(160)に出力するように適合された制御ユニット(150)と
を備え、
前記制御ユニット(150)が、第1のタイプ(931、932)および/または第2のタイプ(933、934)の有害昆虫の数が所定のしきい値(tp)を超過した場合に処理ユニット(61、62、63)のための起動用信号を生成するように、および特定のタイプの有益昆虫(936、937)の数が所定のしきい値(tb)を超過した場合に処理ユニット(61、62、63)を停止するための阻止信号を生成するように適合された、制御用装置。
【請求項13】
前記画像認識ユニット(120)が、複数の所定の範囲(310、320、330)に対して同時にアイテム認識を行うように適合され、前記識別ユニット(130)が、前記複数の所定の範囲に対してそれぞれ、昆虫個体群の1つまたは複数のパターン(31、32、…39)を識別するように適合され、前記決定ユニット(140)が、前記複数の所定の範囲に対してそれぞれ、昆虫個体数の大きさを決定するように適合され、前記制御ユニット(150)が、前記複数の所定の範囲(310、320、330)のそれぞれに割り振られた1つまたは複数の処理ユニット(61、62、63)について、処理装置(200)の処理構成(60)を制御するように適合された、請求項12に記載の制御用装置。
【請求項14】
植生圃場(300)の害虫処理のための処理装置であって、
植生圃場(300)の植生の所定の範囲(310)からの画像(10)を取り込むように適合された画像捕捉装置(220)と、
1つまたは複数の処理ユニット(61、62、63)を有する処理構成(60)と、
前記画像捕捉装置(220)によって捕捉された画像(10)を、請求項12または13に記載の制御用装置(100)に提供するように適合された画像インターフェース(210)と、
請求項11または12に記載の制御用装置(100)から処理制御信号を受領するように適合された処理制御インターフェース(260)と
を備え、
前記処理装置(200)の前記画像インターフェース(210)が、請求項11または12に記載の制御用装置(100)の画像インターフェース(110)に接続可能であり、
前記処理装置(200)の前記処理制御インターフェース(260)が、請求項12または13に記載の制御用装置(100)の処理制御インターフェース(160)に接続可能であり、
前記処理装置(200)が、請求項12または13に記載の制御用装置(100)から、前記処理装置(200)の前記処理制御インターフェース(260)を介して受領される信号に基づいて、前記処理構成(60)の処理ユニット(61、62、63)のそれぞれを起動するように適合された、処理装置。
【請求項15】
前記画像捕捉装置(220)が、特に前記処理装置(200)のブーム上に、1つまたは複数のカメラ(220、230、240)を備え、前記画像認識ユニット(120)が、昆虫および/または植生を、赤色-緑色-青色RGBデータおよび/または近赤外NIRデータを使用して認識するように適合された、請求項14に記載の処理装置。
【請求項16】
請求項12または13に記載の制御用装置(100)をさらに備え、前記処理装置(200)が、スマート噴霧器として設計され、前記処理構成が、ノズル構成(60)であり、1つまたは複数の前記処理ユニットが、1つまたは複数のノズル(61、62、63)である、請求項14または15に記載の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された効率、および有益個体群に関する持続可能性を有する、植生圃場(plantation field)の害虫処理のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、害虫個体群に対する植生の処理の一般的な手法は、農薬を一様に施与するものであり、農薬は例えば、圃場全体にわたって植生上に一様に噴霧される。農業従事者は、圃場の植生を眺めることがあり、個別の植生スポットを検査すると、どの農薬を施与すべきか、およびどれだけの投与量の農薬を妥当と考えることができるかを評価することがある。しかし、害虫管理にはますます圧力がかけられており、というのは、殺虫剤または農薬の副作用が重大となるおそれがあり、圃場内の生物多様性を許容できない程度まで低減させるおそれがあるためである。殺虫剤または農薬の量を低減させる場合、その結果として収穫量損失が重大となるおそれがあり、害虫管理が適切に行われない場合、それにより生産性損失が生じるおそれがある。農業従事者らは、セイヨウアブラナまたはジャガイモの植生においてこの影響を目にしている。さらに、圃場において農薬および殺虫剤を低減させることにより、有益昆虫がより良好に保護される。しかし、農薬または殺虫剤の適切な投与量を見いだすことは困難である。一部の害虫ターゲットは植物上に容易に見つかるが、農業従事者らが、有害昆虫個体群に関しておそらく異なる状況にある可能性のある全ての圃場エリアを考慮できるとは限らない。
【0003】
一部の処理、例えばキャノーラにいるポーレンビートル(pollen beetle)またはジャガイモにいるコロラドハムシ(potato beetle)は、個人が目にした幾匹かの昆虫/害虫に基づくしきい値に基づいて行われる。今日、農業従事者らは、これらの決定を圃場レベルで下しているものの、ゾーンレベルでは下しておらず、しかし、害虫密度は時折、圃場にわたって大いにばらつくことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、この欠点を克服しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、独立請求項による、植生圃場の害虫処理のための方法、害虫処理のための制御用装置、および植生圃場の害虫処理のための処理装置を提供するものであり、一方で、さらなる実施形態が従属請求項に組み込まれている。
【0006】
第1の態様によれば、植生圃場の害虫処理のための方法であって、植生圃場の植生の所定の範囲の画像を取り込むステップと、所定の範囲の取り込まれた画像上のアイテムを認識するステップと、認識されたアイテム、および昆虫個体群のサンプルが格納されたデータベースに基づいて、昆虫個体群の1つまたは複数のパターンを識別するステップと、識別されたパターンに基づいて、昆虫個体数(quantity of insect population)の大きさを決定するステップと、決定された昆虫個体数に基づいて、処理装置の処理構成を制御するステップとを含み、処理構成を制御するステップが、第1のタイプおよび/または第2のタイプの有害昆虫の数が所定のしきい値を超過した場合に処理ユニットを起動するステップ、ならびに特定のタイプの有益昆虫の数が所定のしきい値を超過した場合に処理ユニットが起動されるのを阻止するステップを含む、方法が提供される。
【0007】
したがって、本方法は、認識および識別された昆虫個体群に基づいて、有害昆虫個体群ならびに有益昆虫個体群を考慮して、処理ユニットを起動すべきか否かについて自動判定を行うことができる。この点で、本方法は、植生圃場の植生の所定の範囲からの画像を取り込むことを含み、その画像は、例えばカメラのような画像捕捉用装置から取り込まれてよい。画像捕捉は、空間分解検出を可能にする静止画を取り込むことを含むだけでなく、時間分解画像化、例えば植生のビデオ系列またはレーザスキャンも含んでよく、それにより時間分解画像化が可能になり得ることに留意されたい。画像捕捉は、可視光ならびに赤外光に敏感であってよい。画像捕捉は、運動のパターンや周波数のような特定のパラメータの光学的検出を含んでもよい。画像は、例えば、植生圃場の周りを飛行することのできるUAV(無人航空機)、または植生圃場の周りを移動し、イメージを取得するロボット陸上車両によって、取得されてもよい。この画像が提供され、それによって、提供された画像に基づいて本方法を実行することができる。この点で、画像を取り込むことは、カメラの実際の動作を必ず含まなければならないのではなく、すでに生成された画像を例えば画像データ用のデータ入力インターフェースを介して取り込むことも意味し得ることを理解されたい。次いで、本方法は、提供された画像上のアイテムを認識し、認識されたアイテムを使用して、昆虫個体群のパターンを識別する。識別は、認識されたアイテム、ならびにデータベース内の昆虫個体群の格納されたサンプルに基づいて行われてよい。データベース内の格納されたサンプルは、例えばパターンとすることができ、それを、認識されたアイテムと比較し、それによって、データベースから昆虫個体群を結論付けることができる。それに基づいて、本方法は、識別されたパターンに基づいて、昆虫個体数の大きさを決定することを含む。この決定は、例えば、何匹の昆虫が統計的に葉の表面上または葉の裏面上にいるかという割合またはパーセンテージを提供する統計的データのような追加情報も考慮してよく、それによって、たとえ画像が例えば葉の表面しか描いていなくても、この比率から合計で何匹の昆虫が葉の上にいるかを結論付けることができることに留意されたい。昆虫個体群が有害昆虫個体群であろうと有益昆虫個体群であろうと、その昆虫個体数の大きさを決定した後で、決定された昆虫個体数に基づいて、処理装置の処理構成が制御され得る。処理構成を制御することは、例えば処理装置のノズルの即座の起動を必ず意味しなければならないのではなく、遠隔の処理構成または処理装置に信号または命令を提供し、それによって、たとえ認識、識別、決定、および制御が遠隔サイトにおいてキャリーされても、現地の処理構成または処理装置がその信号または命令に基づいて例えば噴霧器のノズルの起動または停止を実行できるようにすることも意味し得ることに留意されたい。この点で、上で概説した本方法は、遠隔の制御用装置上で実行することができ、遠隔の制御用装置は、圃場上の処理装置上に設ける必要はないことを理解されたい。具体的には、本方法はサービスプロバイダ側で実行することができ、サービスプロバイダ側は、例えば圃場上でカメラによって取り込まれ、遠隔サービスプロバイダにサブミットされた画像を受領し、その際、サービスプロバイダは、本方法を実行して信号または命令を提供し、それが圃場上の遠隔処理装置に送出されると、例えばノズル構成のような処理構成の起動または停止が実行される。本方法によれば、処理構成を制御することは、第1のタイプ(例えばポーレンビートル)および/または第2のタイプ(例えばコロラドハムシ)の有害昆虫の数が所定のしきい値を超過した場合に処理ユニット、例えばノズルを起動することを含む。さまざまなタイプの有害昆虫について別々のさまざまな所定のしきい値があってよいことを理解されたい。所定のしきい値が超過したと判定された場合、本方法は、処理装置の処理構成、例えばノズルを起動することを決定する。しかし、この起動は、有益昆虫が達成されない場合にのみ行われるべきである。したがって、上述した起動は、有益昆虫が検出されないかまたはほんの少数の有益昆虫が検出された場合にのみ行われ、そうでない場合、本方法は、処理構成の起動を阻止する。したがって、有益昆虫に害が及ぶことが予想されない場合にのみ害虫処理が行われることを実現することが可能である。起動割合(パーセンテージ)が昆虫数に関係し得ることにも留意されたい。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、処理構成を制御するステップは、一方では有害昆虫個体数と有益昆虫個体数との関係と、他方では処理ユニットのそれぞれの定量的起動グレードとが格納された、ルックアップテーブルに基づいて行われ、処理ユニットはそれぞれの関係に割り振られる。
【0009】
したがって、起動および停止は、スイッチオン/スイッチオフのデジタル式の起動であるだけでなく、有害昆虫個体数および有益昆虫個体数に応じた特定の起動グレードを含んでもよい。一般に、例えばノズルのような処理ユニットの定量的起動グレードは、検出された有害昆虫数が多いと高くなり、有益昆虫個体数の増加に基づいて減少する。有益昆虫が識別されないならば、検出された有害昆虫量が処理ユニットの定量的起動グレードに直接関係し得る。しかし、定量的起動グレードは、ほんのごく少数の検出された有益昆虫に基づいて大幅に低減されてよく、というのも、有益昆虫による収穫量は、有害昆虫による悪化に比べてずっと高くなり得るためである。この点で、ルックアップテーブルは、有害昆虫数と有益昆虫数と処理装置または処理ユニットの対応する定量的起動グレードとの複数の組合せを含んでよい。そのようなルックアップテーブルは、離散値と関係とが格納された数値ルックアップテーブルとすることができるが、(さまざまなタイプの)有害昆虫個体群のパラメータと、(さまざまなタイプの)有益昆虫個体群のパラメータと、起動グレードのパラメータとを含んでよい特定のアルゴリズムとすることもできることに留意されたい。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、取り込まれた画像上のアイテムを認識するステップは、少なくとも1つの画素のスペクトル検出、特に赤色-緑色-近赤外(Red-Green-Near InfraRed)RGNIR検出に基づいて行われ、パターンが、少なくとも1つの検出された画素の、RGNIR色空間における位置に基づく。
【0011】
したがって、特定の色スペクトルに関する有害昆虫および有益昆虫の特定の特性が、特定のタイプの昆虫の識別に使用されてよい。例えば、RGNIR色空間のような特定の色空間において、特定のタイプの昆虫が有害昆虫であろうと有益昆虫であろうと、その特定のタイプの昆虫が一意のスペクトルパターンを有する場合、これにより、そのような昆虫を例えばやはり取り込まれた画像上に示されている残りの植生または土壌にわたって明確に識別することが可能になる。スペクトル解析は、カメラベースの画像化に基づいて実行されてよく、その場合、画像は、画像化されたアイテムの色および/またはスペクトル情報を担持することができる。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、昆虫個体群の1つまたは複数のパターンを識別するステップは、データベースの(特定のタイプの)昆虫個体群の格納されたサンプルによって供給されるかまたはそれをベースとしたアルゴリズムに基づく。
【0013】
したがって、昆虫個体群が有害昆虫であるかそれとも有益昆虫であるかの識別は、データベース内に格納されている昆虫個体群のサンプルをベースとすることのできる特定のアルゴリズムの基礎となることができる。このため、自己学習特性を有するシステムをもたらすことができ、それによって、本方法が数シーズンにわたって適用された後に、識別が時間の経過とともに向上することが可能である。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、昆虫個体群の識別されたパターンが、昆虫個体群のサンプルとしてデータベース内に格納される。
【0015】
したがって、昆虫個体群が有害昆虫個体群であろうと有益昆虫個体群であろうと、識別された昆虫個体群パターンを利用して、データベースを更新または拡張することが可能である。この手順は、データベースの自己学習手順と見なすことができ、したがって、データベースは、ますます多くのパターンサンプルを包含し、そのことが、上で概説した識別プロセスに役立ち得る。パターン解析は、カメラベースの画像化に基づいて実行されてよく、その場合、画像は、画像化されたアイテムの、特に有害昆虫または有害昆虫個体群の、形状情報を担持することができる。パターン解析は、レーザスキャンプロセスに基づいて実行されてもよく、その場合、レーザスキャンされたパターンは、画像化されたアイテムの、特に有害昆虫または有害昆虫個体群の、形状情報を担持することができる。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、アイテムを認識するステップは、複数の所定の範囲に対して同時に行われ、昆虫個体群の1つまたは複数のパターンを識別するステップは、この複数の所定の範囲に対してそれぞれ行われ、昆虫個体数の大きさを決定するステップは、この複数の所定の範囲に対してそれぞれ行われ、処理装置の処理構成を制御するステップは、この複数の所定の範囲のそれぞれに割り振られた1つまたは複数の処理ユニットについて行われる。
【0017】
したがって、圃場の分解能は、処理装置のトラック幅、例えば噴霧器装置のブームの長さに限定されるのではなく、処理装置のトラック幅をサブトラックに分割することによって向上させることができる。処理装置のトラックは、処理装置が植生を同時に処理することのできるラインの幅と理解されたい。範囲のサイズは、処理装置の単一のノズルによって処理される処理スポットのサイズまで低減できることを留意されたい。この場合、本方法は、所定の範囲または処理スポットのそれぞれに対して別々に行うことができる。たとえ本方法が2つ以上の所定の範囲について単一の画像に基づいていても、より大きな画像を、認識および識別するためのベースとなるそれぞれの範囲に分割することもできることに留意されたい。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、画像上のアイテムを認識するステップは、特定のタイプの昆虫の形状の認識、特定のタイプの昆虫の羽ばたき周波数の認識、および、特定のタイプの昆虫のスペクトル特性(spectral signature)、特にRGNIR色空間におけるスペクトル特性の認識のうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
したがって、昆虫個体群のパターンを認識および識別に考慮することができるだけでなく、一匹の昆虫の形状、昆虫の特定のパターンの形状、特に昆虫の裏側のパターンの形状、または昆虫個体群の特定のパターンも、認識および識別に考慮することができる。その代わりとしてまたはそれに加えて、昆虫の羽ばたき周波数を検出し、決定し、特定のタイプの昆虫の識別に使用することもできる。羽ばたき周波数は、例えば植生をレーザスキャンし、検出された周波数スペクトルを評価することによって、検出することができる。スペクトル内の特定の特徴が、特定のタイプの昆虫を示すことができる。その代わりとしてまたはそれに加えて、特定のタイプの昆虫に一意であり得る昆虫の特定の光学スペクトル特性が、識別に使用されてもよい。光学スペクトル特性は、昆虫が別個のものであり、異なる処置、例えば異なる農薬または殺虫剤を必要とすることがあるものの、類似の形状または類似の個体群パターンを有することのある昆虫のタイプの区別を可能にすることができることに留意されたい。これは、羽ばたきスペクトル解析にも当てはまる。光学スペクトル特性または羽ばたき周波数スペクトル特性を使用するとき、農薬または殺虫剤のより調整された施与を適用することが可能である。この点で、赤色-緑色-近赤外RGNIR色空間における光学スペクトル特性は、赤色-緑色-青色RGB色空間におけるスペクトル特性よりも良好な区別を示すことがあり、というのも、昆虫および植生はしばしば、青色に寄与しないためである。有害昆虫ならびに有益昆虫の運動は、レーザスキャンプロセスに基づいて実行されてよく、その場合、レーザスキャンされた運動は、スキャンされたアイテムの、特に有害昆虫、有害昆虫個体群、有益昆虫、および/または有益昆虫個体群の、特徴的な運動を担持することができる。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、格納されたサンプルが、一匹の有害昆虫もしくは複数の有害昆虫の集団、特に一匹のコロラドハムシもしくは複数のコロラドハムシの集団、一匹のポーレンビートルもしくは複数のポーレンビートルの集団、もしくは、これらの組合せを表し、および/または格納されたサンプルが、一匹の有益昆虫もしくは複数の有益昆虫の集団、特に一匹のミツバチもしくは複数のミツバチの集団を表す。
【0021】
したがって、データベース内の格納されたサンプルは、多数のさまざまな昆虫が有害昆虫であろうと有益昆虫であろうと、その多数のさまざまな昆虫を表してよい。昆虫は、コロラドハムシ、ポーレンビートル、またはミツバチに限定されるのではなく、異なる処理を必要とすることのある追加のタイプの昆虫あるいは上述したタイプの昆虫のバリエーションでさえあってもよいことに留意されたい。格納されたサンプルは、その特定の昆虫の身体の形状もしくはその特定の昆虫の個体群の形状を含む形状情報、その特定の昆虫の特徴的な羽ばたき周波数もしくは周波数スペクトル、および/またはその特定の昆虫もしくは昆虫個体群の特徴的な光学スペクトルを含んでよい。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、格納されたサンプルは、一方では一匹の有害昆虫または複数の有害昆虫の集団、特に一匹のコロラドハムシもしくは複数のコロラドハムシの集団および/または一匹のポーレンビートルもしくは複数のポーレンビートルの集団と、他方では一匹の有益昆虫または複数の有益昆虫の集団、特に一匹のミツバチまたは複数のミツバチの集団との組合せを表す。
【0023】
したがって、単一のタイプの昆虫の形状、個体群パターン、または光学スペクトル特性もしくは羽ばたき周波数スペクトル特性がパターンまたはサンプルとしてデータベース内に格納されてよいだけでなく、これらの組合せも格納されてよく、それによって、さまざまなタイプの昆虫の集団も本方法によって認識および識別することができる。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、昆虫個体数の大きさを決定するステップは、特定の第1のタイプの有害昆虫、特にコロラドハムシの数、特定の第2のタイプの有害昆虫、特にポーレンビートルの数、および/または特定のタイプの有益昆虫、特にミツバチの数のうちの少なくとも1つを決定するステップを含む。
【0025】
したがって、さまざまなタイプの昆虫が有害昆虫であろうと有益昆虫であろうと、そのさまざまなタイプの昆虫の集団からでさえ、それぞれに対応する昆虫個体数を決定することが可能である。さまざまなタイプの昆虫は、葉の表面上の昆虫と葉の裏面上の昆虫との間の関係を意味する可視と不可視の個体群のさまざまな比率を有することがあること、またこれらのさまざまな比率が、提供された画像から真の昆虫個体数を決定するために考慮されてよいことに留意されたい。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、決定するステップは、識別されたパターンに基づく、昆虫個体数の大きさのオンラインでの決定を含み、特に圃場通過時に、画像および/またはスキャン画像が捕捉され、情報が収集され、画像化および/またはスキャンされたアイテムに応じて局所的な施与が実行され、画像捕捉および/またはスキャン画像捕捉は、通過時のスピードとそれが相互に関係するように計時される。
【0027】
したがって、植生の処理は、その場で捕捉されたそのそれぞれの植生の情報に基づいて、実時間で実行することができる。
【0028】
本発明の第2の態様によれば、植生圃場の害虫処理のための処理装置、特にスマート噴霧器用の制御用装置であって、画像インターフェースと、処理制御インターフェースと、データベースインターフェースと、画像インターフェースから受領される画像上のアイテムを認識するように適合された画像認識ユニットと、画像認識ユニットの出力、ならびに害虫個体群および/または有益昆虫個体群のサンプルが格納されたデータベースからデータベースインターフェースを介して受領される昆虫個体群のサンプルに基づいて、昆虫個体群の1つまたは複数のパターンを識別するように適合された識別ユニットと、識別されたパターンに基づいて、複数の昆虫個体群の大きさを決定するように適合された決定ユニットと、決定された昆虫個体数の大きさに基づいて、処理装置の処理構成のための制御用信号を生成するように、および制御用信号を処理制御インターフェースに出力するように適合された制御ユニットとを備え、制御ユニットが、第1のタイプおよび/または第2のタイプの有害昆虫の数が所定のしきい値を超過した場合に処理ユニットのための起動用信号を生成するように、および特定のタイプの有益昆虫の数が所定のしきい値を超過した場合に処理ユニットを停止するための阻止信号を生成するように適合された、制御用装置が提供される。
【0029】
制御用装置については、上で概説した方法の場合と同じ説明が当てはまる。特に起動用信号および阻止信号は、特定の信号伝達パターンを前もって決めつけるものではなく、機能的な信号伝達と理解できることに留意されたい。この点で、制御ユニットは、有害昆虫しきい値が超過したまたは有益昆虫しきい値が超過したか、否かに応じて、起動用信号と阻止信号のどちらかを出力してよい。その限りにおいて、起動用信号および阻止信号は、論理信号伝達と理解されなければならず、有害昆虫および有益昆虫のそれぞれの数は、例えばそれぞれのノズルのような処理ユニットの起動または停止のためのベースと理解されなければならない。制御用装置は、例えばユニバーサルシリアルバス(USB)、物理ケーブル、Bluetooth、または別の形態のデータ接続を介して圃場データを受領することの可能な、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、中央処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)などのデータ処理要素のことを指してよい。制御用装置は、各処理装置について設けられてよい。あるいは、制御用装置は、圃場内の複数の処理装置を制御するための中央の制御用装置、例えばパーソナルコンピュータ(PC)とすることも可能であり、遠隔に位置するサーバ上に実装されることも可能である。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、画像認識ユニットは、複数の所定の範囲に対して同時にアイテム認識を行うように適合され、識別ユニットは、この複数の所定の範囲に対してそれぞれ、昆虫個体群の1つまたは複数のパターンを識別するように適合され、決定ユニットは、この複数の所定の範囲に対してそれぞれ、昆虫個体数の大きさを決定するように適合され、制御ユニットは、この複数の所定の範囲のそれぞれに割り振られた1つまたは複数の処理ユニットについて、処理装置の処理構成を制御するように適合される。
【0031】
したがって、制御用装置は、殺虫剤または農薬の施与を複数の所定の範囲に基づいて制御することが可能である。これにより、噴霧器のような処理装置のトラック幅およびそのそれぞれのブーム長よりも狭い圃場内の、処理の異なるエリアの分解能を上げることが可能になる。
【0032】
本発明の第3の態様によれば、植生圃場の害虫処理のための処理装置であって、植生圃場の植生の所定の範囲からの画像を取り込むように適合された画像捕捉装置と、1つまたは複数の処理ユニットを有する処理構成と、画像捕捉装置によって捕捉された画像を、上述した制御用装置に提供するように適合された画像インターフェースと、上述した制御用装置から処理制御信号を受領するように適合された処理制御インターフェースとを備え、処理装置の画像インターフェースが、上述した制御用装置の画像インターフェースに接続可能であり、処理装置の処理制御装置が、上述した制御用装置の処理制御インターフェースに接続可能であり、処理装置が、上述した制御用装置から処理装置の処理制御インターフェースを介して受領される信号に基づいて、処理構成の処理ユニットのそれぞれを起動するように適合された、処理装置が提供される。
【0033】
したがって、圃場の処理を可能にする処理装置が提供される。本方法は、処理装置から遠隔で行うことができ、また上述した制御用装置は、処理装置から遠隔に位置することができるが、制御用装置は処理装置のサイトに設けることもでき、それによって、圃場上の処理装置に完全なインテリジェンスが配置され得る。たとえ制御用装置が圃場上の処理装置に配置されても、画像捕捉は例えば、例えば十分な分解能を有する無人航空機または人工衛星のような遠隔装置によって行われてよく、またデータベースは遠隔に設けられてよく、複数の制御用装置のために集中化されてよく、大量のデータおよびデータ更新手順にとってそれは合理的となり得、データ更新手順は、圃場上の処理装置上で実行されない場合のほうがはるかに容易である、ということに留意されたい。
【0034】
画像捕捉装置は、たとえ処理装置から遠隔にあっても、処理装置に対応付けられてよく、画像捕捉装置は例えば、処理装置にワイヤレスに接続される無人航空機とすることができることに留意されたい。たとえ1つの画像が捕捉されても、この画像は、上述した所定のサブ範囲の処理のためにサブ画像に分割できることに留意されたい。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、画像捕捉装置は、特に処理装置のブーム上に、1つまたは複数のカメラを備え、画像認識ユニットは、昆虫および/または植生を、赤色-緑色-青色RGBデータおよび/または近赤外NRIデータおよび/またはRGNIRデータを使用して認識するように適合される。したがって、画像認識は、認識すべき対象物、特に植生または昆虫に従って選択されてよい適切なカラールーム(color room)上で実行することができる。植生のタイプまたは予想される昆虫のタイプに応じて、必要なら、さまざまなカラールームを選択することもでき、適合させることもでき、組み合わせることさえもできることに留意されたい。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、処理装置は、上述した制御用装置をさらに備え、処理装置は、スマート噴霧器として設計され、特定の処理構成が、例えばノズル構成であり、1つまたは複数の処理ユニットが、例えば1つまたは複数のノズルである。
【0037】
本発明から逸脱することなく、上述したさまざまな実施形態を組み合わせることができ、および、上述したさまざまな実施形態が、上述した別々の実施形態の効果にまたがる相乗効果をもたらすこともできる、ということに留意されたい。さらなる例示的実施形態および例について、添付の図に関して説明し、それらの図については以下で説明する。
【0038】
以下では、以下の図を参照して例示的実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】一例示的実施形態による方法に関する概略概要を示す図である。
【
図2】一例示的実施形態による処理に関する概略決定木を示す図である。
【
図3】別の実施形態による例示的決定木を示す図である。
【
図4】一例示的実施形態による画像、その上のアイテム、およびパターンを示す図である。
【
図5】一例示的実施形態による圃場または作物キャノピー(crop canopy)上の状況に関する概略概要を示す図である。
【
図6】本発明の一例示的実施形態による制御用装置を示す図である。
【
図7】本発明の一例示的実施形態による処理装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、方法の一例示的実施形態を示す。
図1によれば、本方法は、画像を取り込むステップS10、その画像上のアイテムを認識するステップS20、アイテムに基づいてパターンを識別するステップS30、それに基づいて昆虫個体数の大きさを決定するステップS40、特定のタイプの有害昆虫またはあるタイプの有益昆虫の数を決定するステップS41、処理構成を制御するステップS50、ならびに処理ユニットを起動または停止するステップS60を含む。
【0041】
本方法によって使用することのできる画像を取り込むことは、いくつかの画像捕捉用装置、例えば人工衛星、無人航空機、有人航空機、または圃場運転装置(field driving device)上に取り付けられたカメラによって行うことができる。この画像、あるいは単一の画像もしくは画像の部分にマージされてよい複数の画像さえもが、害虫処理のための本方法のベースとなることができる。画像は、画像、画像データなどの形態で提供され、画像上または画像データ内のアイテムを認識するためのベースとして本方法に役立ち得る。画像を、所定の圃場範囲に関して評価することができ、その場合、所定の圃場範囲の画像のこの部分は、圃場の特定の部分のことを指し、植生、植生上の昆虫、土壌、土壌上の昆虫、または他の構造物を示す。S20において認識された、認識されたアイテムは、昆虫個体群の1つまたは複数のパターンを識別S30するためのベースとなる。昆虫個体群は、有害昆虫個体群または有益昆虫個体群とすることができる。識別S30することは、昆虫個体数の大きさを決定S40するために、識別されたパターン、および昆虫個体群のサンプルが格納されたデータベースを使用する。昆虫個体群の大きさを決定S40することは、特定のタイプの昆虫の数、特に特定のタイプの有害昆虫の数を決定S41することを含んでよい。昆虫個体数の大きさを決定することは、特定の統計的データ、例えば葉の表面上のある量の昆虫と葉の裏面上の幾匹かの昆虫の統計的な量との比率も考慮してよく、それによって、葉の表面の画像から、合計昆虫個体数を結論付けることができることに留意されたい。そのようなバックグラウンドデータは、そのような比率に限定されず、昆虫個体数の大きさを決定することに役立ち得る他の経験的データを含んでよいことに留意されたい。決定された昆虫個体数が、合計の有害昆虫のうちの特定のタイプの昆虫に従って特定されたものであろうと、特定のタイプの有益昆虫または合計の有益昆虫に従って特定されたものであろうと、これらの組合せに従って特定されたものであろうと、その決定された昆虫個体数に基づいて、処理構成が制御S50される。制御することは、処理ユニットを起動または停止することのできる特定の信号が提供されることを意味する。本方法は、例えばサービスプロバイダによって圃場から遠隔で行われてよいため、特に処理ユニットの実際の起動または停止それ自体は、必ずしも本方法の一部ではないことを理解されたい。本方法がサービスプロバイダの側において行われる場合、処理構成を制御するための信号としての信号が提供されてよく、その場合、この信号は処理構成によって解釈され、それによって、例えば噴霧器装置のノズルのような個々の処理ユニットが制御されてよい。
【0042】
図2は、処理ユニットの起動がそれに基づいて行われるかまたは行われない意思決定を示す。昆虫個体数の、特に有害昆虫個体数および有益昆虫個体数の大きさを決定した後で、有害昆虫数がある特定のしきい値tpを上回るかどうかが判定される。有害昆虫個体数がしきい値tpを下回る場合、処理ユニットの起動は行われない。この特定のループ内で本方法は終了する。しかし、有害昆虫数がある特定のしきい値tpを上回る場合、有益昆虫数が考慮される。有益昆虫数がある特定のしきい値tbを上回る場合、有益昆虫を保護するために、殺虫剤または農薬を施与することは望ましくないと決定される。この場合、本方法はこのループ内で終了する。しかし、有益昆虫数がある特定のしきい値tbを下回る場合、処理ユニットの起動S60が行われる。しきい値tpおよびしきい値tbは、互いにある特定の依存関係を有するしきい値とすることができることに留意されたい。これは、しきい値tbが高くなるならば、しきい値tpが高くなることを意味する。この点で、さまざまなレベルのtpおよびtbと、それに基づいて特定の起動グレードとを考慮に入れた、ルックアップテーブルが提供されてよい。これは、起動でも、オン/オフのデジタル式の起動ではなく、決定された有害昆虫数および有益昆虫数に応じて特定の起動グレード、例えば10%、30%、または70%とすることができることを意味する。さらに、本方法は、後続の植生範囲について反復されることに留意されたい。本方法は、統計的偏差をなくすように1つの植生範囲について数回適用することもできる。
【0043】
図3は、2つの異なるタイプの有害昆虫を考慮する決定のさらなる実施形態を示す。
図3に示す決定は、2つのタイプの昆虫にのみ限定されるのではなく、それに応じて3つ以上のタイプの有害昆虫間、さらには2つ以上のタイプの有益昆虫間を区別するように適合されてよく、それに応じて当業者により適合されることを考慮されたい。
図3の目的で、第1のタイプの有害昆虫の昆虫個体数、第2のタイプの有害昆虫の昆虫個体数、および有益昆虫数を含む、昆虫個体数の大きさを決定した後で、第1のタイプの有害昆虫の数がある特定のしきい値tp1を上回るまたは第2のタイプの有害昆虫の数がある特定のしきい値tp2を上回るかどうかが判定される。この問いに対する回答がNOである場合、本方法はこのループについて終了する。しかし、しきい値tp1とtp2のどちらかが超過した場合、有益昆虫数が考慮され、有益昆虫数がある特定のしきい値tbを上回る場合、本方法は終了する。しかし、有益昆虫数がしきい値tbを下回る場合、処理構成の起動が行われる。
図2および
図3は、Yes/No判定に基づく決定の例示であるが、いくつかのしきい値tp1、tp2、およびtbは、ステップS50またはS60における起動グレードを表現するアルゴリズムによって表されてもよいことに留意されたい。
図2および
図3には、処理ユニットの起動S60が示されているが、
図2および
図3では、遠隔側の処理構成を制御するための命令または信号の出力をもたらし、それによって、命令または起動/停止信号または起動グレード信号が処理構成によって解釈されて、ノズルのような処理ユニットが起動/停止され得るようにすることもできることを理解されたい。
【0044】
図4は、画像10上のアイテム20を認識する手順を示す。本方法を適用するために提供されてよく、制御用装置(制御用装置については以下で説明する)によって使用されてよい画像10は、特定のアイテム20を含む。認識されたアイテム20に基づいて、1つまたは複数のパターン31、32、…、39が識別され、一方、データベース90(ここでは図示せず)内に格納されたサンプルが、この識別のベースとなることができる。画像10上の認識されたアイテム20は、特定のタイプの昆虫の形状21を含んでもよく、特定のタイプの昆虫のスペクトル特性22であってもよい。形状21とスペクトル特性はどちらも、特定のタイプの昆虫が有害昆虫であろうと有益昆虫であろうと、その特定のタイプの昆虫の識別に使用されてよい。スペクトル特性には、光学スペクトル、ならびに羽ばたき周波数の周波数スペクトルが含まれてよい。この目的で、データベースはサンプル931、932、…、939を提供してよく、これらのサンプルは、例えばサンプル931内に統合されている、第1のタイプの有害昆虫の特定のパターン31と、特定の形状21と、スペクトル特性22と、さらなる追加情報との間の相互関係を示す。格納されたサンプルは、その特定の昆虫の身体の形状もしくはその特定の昆虫の個体群の形状を含む形状情報、その特定の昆虫の特徴的な羽ばたき周波数もしくは周波数スペクトル、および/またはその特定の昆虫もしくは昆虫個体群の特徴的な光学スペクトルを含んでよい。同じことが、データベース内に格納された他のサンプルにも当てはまる。これらのアイテムに基づいて、パターン31、32、…、39が識別され、パターン31、32、…、39は、特定のタイプの昆虫ならびに昆虫個体数をデータベースのサンプル931、932、…、939に基づいて識別するために使用される。したがって、画像上の認識されたアイテムに基づいて、特定のタイプの昆虫の数が決定されることが可能であり、その結果、決定された昆虫個体数に基づいて、処理構成の制御が行われることが可能である。サンプルは、特定のタイプの一匹の昆虫を表してよいが、個体群、すなわち特定のタイプの複数の昆虫を表してもよく、さまざまなタイプの昆虫の集団を表してもよい。
【0045】
図5は、圃場の状況の一般的なセットアップを示す。植生圃場または作物キャノピー300は、植生圃場の複数の所定の範囲310、320、330の集団と見なすことができる。画像を取り込むこと、または少なくとも認識および識別することは、植生圃場の所定の範囲310、320、330に基づいて行われてよい。画像捕捉装置220、230、240によって取り込まれた画像は、植生圃場300全体の大きな画像または植生圃場300のより大きな部分であってもよく、またサブ画像に分割されてよく、次いでそれが、認識および識別プロセスに役立ち得ることが理解できよう。例示を目的として、
図5では、特定の画像捕捉装置220、230、240が、植生圃場の特定の所定の範囲310、320、330に割り振られている。
図5に示す実施形態では、画像捕捉用装置がそれぞれ画像を取り込み、それが認識および識別プロセスに使用される。認識S20すること、および識別S30すること、ならびに決定S40することに基づいて、処理構成60の一部としての処理ユニット61、62、63が、特定のタイプの昆虫の数の決定に基づき起動または停止される。噴霧器のノズルとすることのできる単一の処理ユニット61、62、63によってカバーされ得るスポットを、最小処理スポットと見なすことができることに留意されたい。しかし、
図5に示すように、複数の処理ユニット61が植生圃場の特定の所定の範囲310に割り振られてもよい。画像捕捉および/またはスキャンは、植物のレベルまであるいは葉のレベルまでさえも行われることが可能であり、それは、特定の植物上の状況あるいは特定の葉上の状況さえもが検出され得ることを意味することに留意されたい。同じことが処理にも当てはまり、したがって、ノズルの数および密度は、単一の植物あるいは葉をさえも処理するようであってよい。この目的で、ノズルは移動および傾動されてよく、さらには特定の植物あるいは特定の葉にさえも焦点を当てるために、ロボットアーム上に構成されてもよい。画像捕捉用装置は、カメラまたはレーザスキャナとすることができることに留意されたい。画像捕捉用装置は、空間分解画像を取り込むだけでなく、時間分解画像、例えばビデオ系列も取り込むように適合されてよい。画像捕捉用装置は、例えば運動パターンや周波数のような特定の昆虫の時間分解パラメータを光学的に検出するように適合されてもよい。その代わりとしてまたはそれに加えて、昆虫の羽ばたき周波数を検出し、特定のタイプの昆虫の識別に使用することもできる。羽ばたき周波数は、例えば植生をレーザスキャンし、検出された周波数スペクトルを評価することによって、検出することができる。スペクトル内の特定の特徴が、特定のタイプの昆虫を示すことができる。
【0046】
図6は、画像インターフェース110および処理制御インターフェース160を有する制御用装置100を示す。画像インターフェース110は、
図5に関して説明した画像捕捉用装置によって捕捉された画像を受領する役割を果たす。この画像または画像データは、それぞれの画像上のアイテム20を認識するための画像認識ユニット120に提供される。識別ユニット130が、画像認識ユニット120の認識されたアイテム、およびデータベースインターフェース190を介して制御用装置100に提供されるデータベース90のパターン931から939に基づいて、1つまたは複数のパターンを識別する役割を果たす。識別されたパターンは、決定ユニット140において昆虫個体数の大きさを決定するために使用され、次いでその大きさが、制御ユニット150において処理構成を制御する役割を果たす。制御ユニット150は、命令または起動/停止信号、あるいは起動グレードをさえも出力してよく、次いでそれが、処理制御インターフェース160に供給される。制御用装置100は、処理装置から遠隔に設けられてよく、データベース90からも遠隔に設けられてよいことに留意されたい。たとえ処理装置に画像捕捉用装置120、130、140が設けられていても、これらの画像または画像データが、遠隔制御装置100に転送されてよく、制御用装置100の画像インターフェース110によって受領されてよい。次いで、命令信号または起動/停止信号が、処理制御インターフェース160を介して発行され、複数のノズル61、62、63を備えた噴霧器とすることのできる処理装置に転送される。制御用装置は、他の場所に位置してよいこと、また画像データのデータ転送ならびに起動/停止信号のデータ転送は、広範な距離にわたって実行されてよいことに留意されたい。同じことが、やはり他の場所に位置してよいデータベース90のサンプルデータの転送にも当てはまる。
【0047】
図7は、制御用装置100が実装された処理装置200を示す。
図7は、制御用装置100を処理装置の一部として示しているが、制御用装置は、処理装置200に対して遠隔に位置付けられてよいことを理解されたい。この場合、制御用装置100のインターフェース110、160から、処理装置200のそれぞれの相手方インターフェース(counter-interface)210、260の間の通信は、広範な距離にわたってワイヤレス通信を介して行われてよい。データベース90は、処理装置200内に設けられてよいが、処理装置200から遠隔に位置してもよく、それについては
図7に、データベースの2つの代替案によって示されている。処理装置200内により小型のデータベースが設けられてよく、一方、より複雑なデータベース90が処理装置200の遠隔に設けられてよいことに留意されたい。中央位置に複雑なデータベースを設けるほうが容易であり、それによって、他の処理装置でさえデータベース90にアクセスできるようになり、それは、データベースを処理装置200内にのみ設けたときにはより困難である、ということに留意されたい。制御用装置100の詳細については、
図6に関して説明されており、その詳細はそれに応じて適用される。画像捕捉用装置220、230、240については、
図5に関して図示および説明されており、
図5はそれに応じて適用される。捕捉された画像は、処理装置200の画像インターフェース210を介して制御用装置の画像インターフェース110に提供される。制御用装置100内で本方法を実行した後で、命令または起動/停止信号または起動グレードが処理制御インターフェース160に提供され、処理制御インターフェース160は、それぞれの命令/データを処理装置200の処理制御インターフェース260を介して処理構成60に転送する。処理構成60はそれぞれの処理ユニット61、62、63に分割されてよく、その応用は
図5に関して図示されている。
【0048】
本方法のいくつかのステップおよび部分については、
図1に関して連続した順番で説明されているが、特に本方法がループの形で実行される場合に、異なるシーケンスまたは並列処理が行われてよく、それによって、例えば識別S30することまたは決定S40することが、本方法の後続のループの認識S20するステップと並列に行われてよいことに留意されたい。
図2および
図3に関して説明した意思決定は、
図2および
図3に示すように、しきい値tpに関する問いを次々に、またしきい値tbに関する別の問いを、連続して判定することに限定されないことも理解されたい。決定がルックアップテーブルに基づくならば、起動グレードが得られるように有害昆虫数と有益昆虫数との間の対応付けされた関係が提供される。同じことが、
図3によるさまざまなタイプの有害昆虫についてのさまざまなしきい値にも、図示していないがさまざまなタイプの有益昆虫にも当てはまる。
図4に関するパターンの数およびさまざまなタイプの識別子は、図示のものに限定されないことに留意されたい。
【符号の説明】
【0049】
10 画像
20 画像上の(認識された)アイテム
21 特定のタイプの昆虫の形状
22 特定のタイプの昆虫の光学スペクトル特性または運動スペクトル特性
31 一匹の第1のタイプの有害昆虫/コロラドハムシのパターン
32 第1のタイプの有害昆虫/コロラドハムシの集団のパターン
33 一匹の第2のタイプの有害昆虫/ポーレンビートルのパターン
34 第2のタイプの有害昆虫/ポーレンビートルの集団のパターン
35 一匹の第1および第2のタイプの有害昆虫/第1および第2のタイプの有害昆虫の集団の組合せのパターン
36 一匹の有益昆虫/ミツバチのパターン
37 有益昆虫/ミツバチの集団のパターン
38 有害昆虫と有益昆虫の組合せのパターン
39 有害昆虫と有益昆虫の組合せのパターン
60 処理構成、ノズル構成
61 処理ユニット、ノズル
62 処理ユニット、ノズル
63 処理ユニット、ノズル
90 データベース
100 制御用装置
110 制御用装置の画像インターフェース
120 画像認識ユニット
130 識別ユニット
140 決定/評価ユニット
150 制御ユニット
160 処理制御インターフェース
190 データベースインターフェース
200 処理装置、噴霧器、スマート噴霧器
210 処理装置の画像インターフェース
220 画像捕捉装置、第1のカメラ/スキャナ
230 画像捕捉装置、第2のカメラ/スキャナ
240 画像捕捉装置、第3のカメラ/スキャナ
260 処理制御インターフェース
300 植生圃場、作物圃場
310 所定の範囲の植生圃場
320 所定の範囲の植生圃場
330 所定の範囲の植生圃場
931 一匹の第1のタイプの有害昆虫/コロラドハムシのサンプル
932 第1のタイプの有害昆虫/コロラドハムシの集団のサンプル
933 一匹の第2のタイプの有害昆虫/ポーレンビートルのサンプル
934 第2のタイプの有害昆虫/ポーレンビートルの集団のサンプル
935 一匹の第1および第2のタイプの有害昆虫/第1および第2のタイプの有害昆虫の集団の組合せのサンプル
936 一匹の有益昆虫/ミツバチのサンプル
937 有益昆虫/ミツバチの集団のサンプル
938 有害昆虫と有益昆虫の組合せのサンプル
939 有害昆虫と有益昆虫の組合せのサンプル
S10 画像を取り込む
S20 アイテムを認識する
S30 パターンを識別する
S40 昆虫個体数の大きさを決定する
S41 特定のタイプの有害昆虫の数を決定する
S50 処理構成を制御する
S60 処理ユニットの起動
tp 有害昆虫の所定のしきい値
tp1 第1のタイプの有害昆虫の所定のしきい値
tp2 第2のタイプの有害昆虫の所定のしきい値
tb 有益昆虫の所定のしきい値
【国際調査報告】