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特表2022-526170ヒトの眼の改変された網膜領域に関心のあるパターンを投射するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-23
(54)【発明の名称】ヒトの眼の改変された網膜領域に関心のあるパターンを投射するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
A61F9/007 190A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557522
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2020058875
(87)【国際公開番号】W WO2020193798
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/057967
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515328853
【氏名又は名称】ピクシウム ビジョン エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】バスティアン・デュルバン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-バティスト・フロデラー
(72)【発明者】
【氏名】マクシム・デネフル
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ドテール
(57)【要約】
本発明は、関心のあるパターン(6)をヒトの眼の改変された網膜領域(5)に投射するための方法であって、パルス入力光ビーム(20)を準備する工程と、前記パルス入力光ビーム(20)を、前記関心のあるパターン(6)に基づく変調されたパルスサブビーム(40)の変調されたパルス光パターンに変調及び分割する工程とを含み、前記変調された光パターンが、前記関心のあるパターン(6)を反射するパルス出力ビーム(4)を形成し、前記出力ビーム(4)を形成する前記変調された個々のサブビーム(40)の変調デューティサイクル(32)の個々のパルス幅変調を行う方法、及びそれに対応して適合された装置に関する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心のあるパターン(6)をヒトの眼の改変された網膜領域(5)に投射するための方法であって、
-パルス入力光ビーム(20)を準備することと、
-前記パルス入力光ビーム(20)を、前記関心のあるパターン(6)に基づく変調されたパルスサブビーム(40)の変調されたパルス光パターンに変調及び分割することとを含み、
前記変調された光パターンが、前記関心のあるパターン(6)を反射するパルス出力ビーム(4)を形成し、
前記出力ビーム(4)を形成する前記変調された個々のサブビーム(40)の変調デューティサイクル(32)の個々のパルス幅変調を行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記入力光ビーム(20)が一定のピーク放射照度(23)を含む、及び/又は前記入力光ビーム(20)が実質的にパルス波の形態を含む、及び/又は前記入力光ビーム(20)が一定の周期(21)を含む、及び/又は前記入力光ビーム(20)が一定のデューティサイクル(22)を含む又は前記入力光ビーム(21)のデューティサイクル(22)が制御される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
変調周期(31)が、前記パルス入力光ビーム(20)の前記周期(21)と同期される請求項1から2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記個々のサブビーム(4)の最大の個々の変調デューティサイクル(32)が、前記パルス入力光ビーム(20)のデューティサイクル(22)に対応する請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記パルス入力光ビーム(20)の前記デューティサイクル(22)が、前記パルス入力光ビーム(20)の前記周期(21)に対して0.5以下、好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.3以下である、及び/又は前記サブビーム(40)の最大の可能な変調デューティサイクルが、前記パルス入力光ビーム(20)の前記周期(21)に対して0.5以下、好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.3以下である請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記関心のあるパターン(6)が、視覚情報、好ましくは画像を捕捉し、捕捉した前記視覚情報を、前記関心のあるパターン(6)を形成する画素のパターンに分割することによって得られ、前記視覚情報内に存在する場合、前記画素は、少なくとも、異なる輝度値を反射する請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
関心のあるパターン(6)をヒトの眼の改変された網膜領域(5)に投射するための装置(1)であって、
-パルス入力光ビーム(20)を提供するための光源(2)と、
-前記パルス入力光ビーム(20)を変調及び分割して、変調されたパルスサブビーム(40)の変調された光パターンにするための変調マイクロミラーアレイ(3)とを含み、
前記マイクロミラーアレイ(3)のマイクロミラー(30)のそれぞれの配向は、前記サブビームが、前記関心のあるパターン(6)を反射する前記パルス出力ビーム(4)を形成するように、前記関心のあるパターン(6)に基づいて個別に制御可能であり、
前記装置(1)は、前記個々のマイクロミラー(30)の変調デューティサイクル(32)を個別に制御することによって、前記出力ビーム(4)を形成する前記サブビーム(40)の個別のパルス幅変調を行うように形成及び適合されることを特徴とする装置(1)。
【請求項8】
前記マイクロミラー(30)の配向制御の変調周期(31)が、前記パルス入力光ビーム(20)の前記周期(21)と同期されるように更に適合される請求項7に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記マイクロミラー(30)の最大の個々の変調デューティサイクル(32)が、前記パルス入力光ビーム(20)のデューティサイクル(22)に対応する請求項7から8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記パルス入力光ビーム(20)の前記デューティサイクル(22)が、前記パルス入力光ビーム(20)の前記周期(21)に対して0.5以下、好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.3以下である、及び/又は前記サブビーム(40)の最大の可能な変調デューティサイクル(32)が、前記パルス入力光ビーム(20)の前記周期(21)に対して0.5以下、好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.3以下である請求項7から9のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項11】
視覚情報、好ましくは画像を捕捉するためのカメラ、及び/又は捕捉した前記視覚情報を、前記関心のあるパターン(6)を形成する画素のパターンに分割するための処理ユニットを更に含み、前記視覚情報内に存在する場合、前記画素は、少なくとも、異なる輝度値を反射する請求項7から10のいずれかに記載の装置(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その感光特性を回復させるために、例えば、網膜インプラントの移植を介して、改変されたヒトの網膜の領域に関心のあるパターンを投射するための方法、及び対応する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特に変性網膜疾患によって引き起こされる網膜の機能不全は、視覚障害又は失明の主因である。
【0003】
患者の視覚機能を少なくとも部分的に回復させるために、例えば、網膜インプラント、換言すれば人工網膜を利用することによって、ヒトの眼の網膜領域の改変を利用することが知られている。これに関して、異なる動作原理に基づくいくつかの異なるタイプの網膜インプラントが知られている。
【0004】
網膜インプラントは、通常、患者の眼の網膜下、網膜上、又は脈絡膜上に配置されるため、損傷した光受容体に実質的に置き換わることができるという共通点を有する。これに関して、視覚的場面に関する情報は、カメラで捕捉され、網膜に埋め込まれた電極アレイに送信される。
【0005】
一般的な網膜インプラントのうち、皮膚貫通ワイヤを含むインプラントが知られている。これらのワイヤは、感染及び瘢痕化のリスクを有する。したがって、より最近のインプラントは、例えば、誘導コイルを介して電力と視覚情報を送達することによって、様々な無線技術を使用している。更に、電力を誘導的に送達し且つ視覚情報を瞳孔を通して光学的に送達すること、又は視覚情報と電力の両方を光学的に送達することが知られている。
【0006】
網膜インプラントへの特に有益なタイプの無線情報伝達は、好ましくは赤外光の刺激パターンを眼に投射することに基づいている。視線方向が、インプラントの一部がパターンの一部によって照射される方向である場合、インプラントは、信号の当該部分を電流に変換し、それに応じて網膜を刺激する。
【0007】
網膜インプラントは、刺激電極又は画素から構成されるアレイである。各画素は、ビジュアルプロセッサから送達された光を捕捉し、それを刺激用電流に変換する1以上のフォトダイオードを有する。
【0008】
いくつかのインプラントアレイは、網膜下腔、通常は、中心窩領域内又はその近傍に配置することができる。
【0009】
或いは、オプトジェネティクスとして知られるアプローチが提案されており、これは、遺伝子治療により残存網膜細胞を処置し、その感光性挙動を回復させる。オプトジェネティクスとは、生体組織の特定細胞内で明確に定義された事象を制御するための遺伝学と光学との組合せを意味する。オプトジェネティクスは、(i)細胞膜における外因性光反応性タンパク質の発現によってそれらを光に対して感受性にするために、標的細胞を遺伝子改変すること、及び(ii)前記光反応性タンパク質に光を提供することができる照明装置を提供することである。
【0010】
本特許の以下の段落において、ヒトの眼の人工網膜の移植又はオプトジェネティクスによる改変によって感光性挙動を回復するように改変されたヒトの眼の網膜領域を、「改変された網膜領域」と称する。
【0011】
光又は光ビームをそれぞれヒトの眼に投射するために、拡張現実ゴーグルなどのプロジェクタ装置を使用することが知られている。プロジェクタ装置のプロジェクタユニット、例えば、プロジェクタ光学系は、パルス光ビームをヒトの眼に、少なくとも部分的に投射する。即ち、送信される画像は、眼の瞳孔を通って眼に入り、網膜に向かう。
【0012】
それにより、関心のある照射パターンを患者に提供することが可能であるものの、照射はパルス光ビームの各パルスごとに一定であるので、患者は単一の明暗コントラストを感知することができるに過ぎない。
【0013】
それにもかかわらず、安全性の問題は、係るプロジェクタ装置の使用に関連している。例えば、プロジェクタ装置及び使用方法は、網膜への照射が特定のデューティサイクル、例えば、0.5未満であることを確実にする必要があり、これは、改変された網膜領域、例えば、網膜インプラントの適切な安全性を確保するために、例えば、インプラントのパルス電気機能及び電気パルス間の適切な放電を保証するために要求されることがある。
【0014】
同様に、平均光放射照度が安全閾値に達しないことを保証するために、網膜への照射がデューティサイクルを重視していることを確実にするプロジェクタ装置及び使用方法も、光学的安全性に必要とされ得る。そのようにすれば、十分に低いデューティサイクルで変調された場合、高い光放射照度を許容することができる。これは、コマンドを光源に提供して、特定のデューティサイクルで、パルス間で定期的にシャットダウンさせることにより行うことができる。また、特定のデューティサイクルのパルス間でマイクロミラーが定期的にオフになっていることを確実にすることによっても行うことができる。しかし、医療用途の場合、通常、単一の障害状態でも安全性及びそれに関連するデューティサイクルを確保する必要がある。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、関心のあるパターンをヒトの眼の改変された網膜領域に投射するための方法、及び関心のあるパターンを、この改変された網膜領域に投射するための対応する装置を提供することである。
【0016】
前記目的は、請求項1の特徴を含む、関心のあるパターンをヒトの眼の改変された網膜領域に投射するための方法によって解決される。更に好ましい実施形態は、従属請求項、明細書、及び図面に示される。
【0017】
したがって、第1の態様において、関心のあるパターンをヒトの眼の改変された網膜領域に投射するための方法又は関心のあるパターンを投射するために本明細書に記載の装置を操作する方法が提案され、前記方法は、パルス入力光ビーム、好ましくはコヒーレント光又はインコヒーレント光及び/又は好ましくは近赤外場の波長を有する光を含むパルス入力光ビームを準備する工程と、前記パルス入力光ビームを、前記関心のあるパターンに基づく変調されたパルスサブビームの変調されたパルス光パターンに変調及び分割する工程とを含み、前記変調された光パターンが、関心のあるパターンを反射するパルス出力ビームを形成する方法である。前記方法は、出力ビームを形成する変調された個々のサブビームの変調デューティサイクルの個々のパルス幅変調を行う工程によって特徴付けられる。
【0018】
個々のサブビームの個々のパルス幅変調により、各サブビームの変調デューティサイクルを個々別々に調整することができるので、各サブビームの照射持続時間を個別に制御することができる。即ち、パルス出力ビームの各周期ごとに、出力ビームが向けられる網膜インプラントでの照射持続時間は、各サブビームが個々のデューティサイクルを含み得るので、出力ビーム内で変化し得る。したがって、網膜インプラントのフォトダイオードは、異なる照射持続時間に曝露されることがあり、これは、網膜に、異なる刺激電流及び/又は異なる刺激持続時間をもたらす。これにより、出力ビームを介して照射された投射パターンのグレーレベルの知覚(grey level perception)を達成することができる。換言すれば、1パルス周期内で、異なる知覚グレーレベルに変換されるパターンで網膜を照射することが可能であり得る。したがって、対応する感光性網膜インプラントを提供された患者は、少なくとも基本的なグレースケール画像を感知又は知覚することができ得る。後者は、患者の向き(orientation)を改善又は容易にし、視覚能力を高め得る。
【0019】
ここで、関心のあるパターンは、捕捉され、投射される画像(picture or image)に基づくことができ、画像は、異なる輝度値を含む暗い領域及び明るい領域、好ましくは画素を含むことができる。
【0020】
好ましくは、改変された網膜領域は、網膜補綴の移植を介して提供され得る。
【0021】
更なる例示的な実施形態によれば、入力光ビームは、一定のピーク放射照度を含む。これにより、網膜インプラントに当たる放射照度を正確に特定、決定、及び/又は計算することができる。したがって、網膜インプラントの高信頼性の操作と、未知の過剰放射照度による網膜の損傷の防止の両方が達成され得るからである。
【0022】
代替的に又は追加的に、入力光ビームは、実質的にパルス波の形態を含むことができる。その理由は、そのように形成された光ビームは、各デューティサイクル中に実質的に一定の照射強度であるという利点を有し得る。
【0023】
好ましくは、入力光ビームは、一定の周期を含む。
【0024】
別の好ましい実施形態によれば、入力光ビームは、一定のデューティサイクルを含む。或いは、入力光ビームのデューティサイクルが制御される。
【0025】
更に別の好ましい実施形態によれば、変調周期がパルス入力光ビームの周期と同期している場合、出力ビーム内のグレースケール分布の最適な適応を達成することができる。換言すれば、変調周期に対応するパルス幅変調の周期、延いてはサブビームの周期は、パルス入力光ビームの周期と同期している。
【0026】
別の好ましい実施形態によれば、個々のサブビームの最大の個々の変調デューティサイクルが、パルス入力光ビームのデューティサイクルに対応するという点で、前記方法を最適化することができる。
【0027】
過度の照射による網膜での損傷を防ぐために、好ましくは、パルス入力光ビームのデューティサイクルは、パルス入力光ビームの周期の0.5以下、好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.3以下であることができ、及び/又は好ましくは、サブビームの最大の可能なデューティサイクルは、パルス入力光ビームの周期の0.5以下、好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.3以下であることができる。
【0028】
別の好ましい実施形態によれば、関心のあるパターンは、視覚情報、好ましくは画像を捕捉し、捕捉した視覚情報、好ましくは捕捉した画像を、関心のあるパターンを形成する画素のパターンに分割することによって得られ、前記視覚情報内、好ましくは前記画像内に存在する場合、前記画素は、少なくとも、異なる輝度値を反射する。
【0029】
好ましくは、捕捉した画像の任意の画像処理を行った後、処理された画像の画素又は領域に輝度値を割り当てる。
【0030】
前記目的は、請求項7の特徴を含むヒトの眼の、好ましくは網膜インプラントを含む改変された網膜領域に、関心のあるパターンを投射するための装置によって更に解決される。更に好ましい実施形態は、従属請求項、明細書、及び図面に示される。
【0031】
したがって、第2の態様において、関心のあるパターンをヒトの眼の改変された網膜領域に投射するための装置が提案され、前記装置は、パルス入力光ビーム、好ましくはコヒーレント光又はインコヒーレント光、好ましくは近赤外場の波長を有する光の好ましくは光ビームを提供するための光源と、パルス入力光ビームを変調及び分割して、変調されたパルスサブビームの変調された光パターンにするための変調マイクロミラーアレイとを含み、マイクロミラーアレイのマイクロミラーのそれぞれの配向は、サブビームが、関心のあるパターンを反射するパルス出力ビームを形成するように、関心のあるパターンに基づいて個別に制御可能である。装置は、更に、個々のマイクロミラーの変調されたデューティサイクルを個別に制御することによって、出力ビームを形成するサブビームの個別のパルス幅変調を行うように形成及び適合される。
【0032】
前記装置によって、前記方法に関して記載された効果及び利点を達成することができる。
【0033】
好ましい実施形態によれば、装置は、更に、マイクロミラーの配向制御の変調周期が、パルス入力光ビームの周期と同期するように適合される。
【0034】
マイクロミラーアレイ及び入力光ビームパルスによる変調の同期のために、マイクロミラーの最大の個々の変調デューティサイクルは、好ましくは、パルス入力光ビームのデューティサイクルに対応することができる。
【0035】
出力光ビームによる網膜での損傷を防ぐために、好ましくは、パルス入力光ビームのデューティサイクルは、パルス入力光ビームの周期に対して0.5以下、好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.3以下に設定することができ、及び/又は好ましくは、サブビームの最大の可能なデューティサイクルは、パルス入力光ビームの周期に対して0.5以下、好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.3以下であることができる。
【0036】
別の好ましい実施形態によれば、前記装置は、更に、視覚情報、好ましくは画像を捕捉するためのカメラ、及び/又は捕捉した前記視覚情報、好ましくは捕捉した前記画像を、関心のあるパターンを形成する画素のパターンに分割するための処理ユニットとを含み、前記視覚情報内、好ましくは前記画像内に存在する場合、前記画素は、少なくとも、異なる輝度値を反射する。
【0037】
更に、プロジェクタ装置などのウェアラブル電子機器の場合、電池又は電力充電の間のランタイムを最大にするために、電池寿命をできる限り長くする必要があることに留意することが重要である。したがって、所定の妥当な電池サイズの場合、装置の消費電力を最小限に抑える必要がある。有利なことに、本発明に係る提案された光源変調は、パルス間で光源を定期的にシャットダウンさせることを可能にし、その消費電力を大幅に低減する。更に、ごく僅かな時間しか動作していない場合には、例えば、ペルチェ素子又はファン動作を介して、レーザー光源の冷却に要する電力消費を制限する。したがって、特定のデューティサイクルでレーザー光源をパルスすると、電池寿命が大幅に延びる。
【0038】
本開示は、以下の添付の図面に関連して検討される場合、以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、ヒトの眼の感光性の改変された網膜領域に、関心のあるパターンを投射するための装置を概略的に示す。
図2図2は、改変された網膜領域の被照射領域である、図1の関心のあるパターンの詳細図を概略的に示す。
図3図3は、パルス波の形状及び対応する変調されたパルスサブビームを含むパルス入力光ビームを概略的に示す。
図4図4は、実質的にパルス波の形態を有する別の入力光ビームと、結果として3つの異なるサブビームが得られる3つの異なるマイクロミラーに対する対応するマイクロミラーパルスを概略的に示す。
図5図5は、図5のサブビームを介して網膜インプラントに投射された、関心のあるパターンの領域の例を概略的に示す。
【0040】
好ましい実施形態の詳細な説明
以下、添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。図面では、同一の要素には同一の参照符号が付され、冗長な記載を避けるために、その繰り返し記載を省略することがある。
【0041】
図1は、関心のあるパターン6をヒトの眼の改変された網膜領域5に投射するための装置1を概略的に示す。装置1は、近赤外場の波長を有する光を含むパルス入力光ビーム20を提供する光源2を含む。
【0042】
入力光ビーム20は、複数のマイクロミラー30を含む変調マイクロミラーアレイ3に向けられ、マイクロミラー30のそれぞれの向きを個別に調整及び/又は制御することができるように個別に操作することができる。この特定の実施形態に係る変調マイクロミラーアレイ3は、それ自体公知のデジタルマイクロミラー装置の形態で提供される。
【0043】
マイクロミラーアレイ3によって、入力光ビーム20が反射されて、出力ビーム4を形成する。出力ビーム4は、複数のサブビーム40からなり、マイクロミラーアレイ3の個々のマイクロミラー30に当たると、入力ビーム20はサブビーム40に分割される。マイクロミラー30の向きは、改変された網膜領域5に投射される関心のあるパターン6が、複数のサブビーム40によって反射されるように、個別に調整される。
【0044】
これに関して、関心のあるパターン6は、画素のデジタルパターンに処理された、カメラ(図示せず)によって捕捉された画像に基づき、前記画素は、画像のそれぞれの領域の輝度値に対応するグレースケール値を含む。係るデータ処理は、それ自体公知である。
【0045】
即ち、所定の閾値を超える輝度値を有する画素に対応するマイクロミラー30のみが、入力光ビーム20を反射するように制御され、所定の閾値を下回る輝度値を有する画素に対応するマイクロミラー30は、出力ビーム4の形成に寄与しないように配向される。
【0046】
任意に、改変された網膜領域5は、網膜インプラント、好ましくは感光性網膜インプラントを含み得る。
【0047】
したがって、出力ビーム4は、関心のあるパターン6を実質的に反射する。出力ビーム4が改変された網膜領域5に当たると、網膜インプラントを含む改変された網膜領域5の該当部分のみが、出力ビーム4又は特にサブビーム40によって照射される。サブビーム40は、網膜インプラントで関心のあるパターンを反射する。その結果、網膜インプラントの該当する感光性ダイオードのみが、光を電流に変換する。これらは、関心のある投射パターン6に配置される。したがって、網膜インプラントを有する者は、関心のあるパターン6を知覚することができる。
【0048】
図2は、改変された網膜領域5の被照射領域である、関心のあるパターン6の詳細図を概略的に示す。
【0049】
入力光ビーム20は、例えば図3から読み取れるように、パルス波の形状を含む波形を有するようにパルス化される。光ビーム20は、一定の照射23を含んで、光源2によってパルス化される。これは、光ビーム20の波の各周期21の各デューティサイクル22の間に照射される。
【0050】
したがって、出力ビーム4は本質的に入力ビーム20に基づくので、出力ビーム4もパルス化され、出力ビーム4の周期及び出力ビーム4のデューティサイクルも、一般に、入力光ビーム20の周期21及びデューティサイクル22に対応する。したがって、関心のあるパターン6は、図2に示されるように、その表面全体に亘って均一な照射を含む。
【0051】
グレースケール情報も出力ビーム4に提供する能力を達成するために、装置1は、更に、サブビーム40のそれぞれについて個別にパルス幅変調を行うように形成され及び適合される。後者は、個々のマイクロミラー30のそれぞれの変調デューティサイクル32を個別に制御することによって達成される。
【0052】
換言すれば、マイクロミラー30のそれぞれが、入力光ビーム20を反射して、出力ビーム4に寄与するサブビーム40を提供するような位置に向けられる時間は、各マイクロミラー30ごとに、それぞれのマイクロミラー30と相関する関心のあるパターン6の画素の対応するグレースケールレベルに応じて、個別に異なるように設定することができる。
【0053】
これに関して、パルス幅変調は、各マイクロミラーパルスサイクルごとに、変調デューティサイクル32が個別に調整され得るように行われる。即ち、カメラが絶えず画像を捕捉し続ける場合、画素の輝度レベルの変化は、変調デューティサイクル32の変化をもたらすこがある。したがって、輝度レベルが上昇すると、変調デューティサイクル32もそれに応じて上昇し、反対に、輝度レベルが低下すると、変調デューティサイクル32もそれに応じて低下する。
【0054】
好ましくは、図3に示されるように、出力ビーム周期41に対応するマイクロミラーパルス33の変調周期31は、入力光ビーム20の周期21と同期される。更に、任意に、マイクロミラー30の可能な最大の変調デューティサイクル32は、入力光ビーム20の一定のデューティサイクル22に対応するように設定される。
【0055】
それにより、光源2が照射しないときは、マイクロミラー30が動作しないことが達成され得る。これにより、装置1の安全な動作電力を得ることができる。
【0056】
図3には、個々のマイクロミラー30、延いてはサブビーム40のための2つのサブシーケンスマイクロミラーパルスサイクルが示される。第1に示される変調デューティサイクル32は、第2に示される変調デューティサイクル32’よりも小さく、放射照度42は、各変調デューティサイクル32,32’ごとに一定である。したがって、網膜インプラントを有する患者は、画像の各領域がより明るくなることを知覚する。
【0057】
同図で更に理解されるように、両方の変調デューティサイクル32,32’は、デューティサイクル22よりも短い。したがって、患者は、可能な最大の知覚可能な輝度よりも低い輝度レベルを知覚する。安全性の理由から、デューティサイクル22は、周期21の30%に制限し、これにより、過度の照射による網膜の損傷を防ぐ。
【0058】
重複した安全システムを提供するために、マイクロミラー30のデューティサイクル32も、周期21又は変調周期31の30%に制限される。したがって、光源が誤って一定の光ビームを照射する場合、出力ビーム4の可能な最大のデューティサイクルは、マイクロミラー30のデューティサイクル32に制限される。したがって、光源2の安全設定が失敗していたとしても、過度の放射照度が網膜に当たらないことが達成され得る。更に、マイクロミラー30がパルスに失敗する、及び/又は「オン」位置でスタックする場合も、ソースパルスは、出力光ビーム4のパルス持続時間をソースパルス持続時間よりも長くする、即ち、デューティサイクル22よりも長くすることがないようにする。
【0059】
図4は、一定の光源放射照度23、パルス24の一定のデューティサイクル22、及び一定の周期21を含むパルス波の形態を実質的に有する入力光ビーム20の波形の例示的な実施形態を示す。
【0060】
入力光ビーム20の波形の下に、3つの異なるマイクロミラー30ごとにマイクロミラーパルス33,33’,33”が示され、その結果、3つの異なるサブビーム40,40’,40”が生じる。
【0061】
マイクロミラーパルス33,33’,33”は、対応するパルス34,34’,34”のデューティサイクル32,32’,32”が異なるという点で、相互に区別される。
【0062】
即ち、サブビーム40,40’,40”のそれぞれの放射パワーは、他と区別され、第1のサブビーム40は、第2及び第3のサブビーム40’,40”よりも低い放射パワーを有し、第2のサブビーム40’は、第3のサブビーム40”よりも低い放射パワーを有する。
【0063】
その結果、例えば、関心のあるパターン6の第1の領域61がサブビーム40に対応するサブビームで照射される場合、網膜インプラントを有する患者は、サブビーム40’に対応するサブビームで照射される第2の領域62、及びサブビーム40”に対応するサブビームで照射される第3の領域63よりも暗いグレースケール値を知覚し、後者は、最も明るいグレースケール値を含む。
【0064】
網膜インプラントを含む改変された網膜領域5に投射された関心のあるパターン6の前記領域61,62,63の例は、図5から読み取ることができる。
【0065】
したがって、前記装置1及び対応する方法によって、感光性網膜インプラントを有する患者に、異なるグレーレベルを有するパターンを提供することができる。
【0066】
更に、前述した通り、前記方法を行うための、及び/又は装置1の動作のための電力消費を削減及び/又は最適化することができる。その理由は、光源をパルス間でオフに切り替えることができ、したがって、エネルギー消費がパルス間でより少なくなって、電力を低減することができるからである。
【0067】
これらの実施形態及び項目は、複数の可能性の例を記述しているに過ぎないことは、当業者に明らかである。したがって、ここに示されている実施形態は、これらの特徴及び構成の限定を形成するものと理解されるべきではない。記載された特徴の任意の可能な組合せ及び構成を、本発明の範囲にしたがって選択することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 装置
2 光源
20 入力光ビーム
21 周期
22 デューティサイクル
23 放射照度
24 パルス
3 マイクロミラーアレイ
30 マイクロミラー
31 変調周期
32 変調デューティサイクル
33 マイクロミラーパルス
34 パルス
4 出力ビーム
40 サブビーム
41 出力ビーム周期
42 放射照度
5 関心のある改変された網膜領域6のパターン
61 第1の領域
62 第2の領域
63 第3の領域

図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】