(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(54)【発明の名称】マルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステム及びその伝送方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/70 20130101AFI20220517BHJP
H04J 14/04 20060101ALI20220517BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20220517BHJP
G02B 6/036 20060101ALI20220517BHJP
H04L 9/12 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H04B10/70
H04J14/04
G02B6/02 461
G02B6/036
H04L9/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538491
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(85)【翻訳文提出日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 CN2019129498
(87)【国際公開番号】W WO2020140853
(87)【国際公開日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】201811651240.2
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521287175
【氏名又は名称】広東尤科泊得科技発展有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG INCUBATOR TECHNOLOGY DEVELOPMENT CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room A105, First Floor, Elevator A, No. 11, Banlv Road, Science Town, Hi-Tech Industrial Development Zone, Guangzhou, Guangdong, 510660, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】郭 邦紅
(72)【発明者】
【氏名】張 倩琳
【テーマコード(参考)】
2H250
5K102
【Fターム(参考)】
2H250AC66
2H250AD19
2H250AE12
2H250AE14
2H250AE15
2H250AH27
2H250AH46
5K102AA06
5K102AA11
5K102AA12
5K102AB11
5K102AD01
5K102AH13
5K102AH26
5K102PB01
5K102PH33
5K102PH49
(57)【要約】
マルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステムであって、OLT側と、MDM-ODNと、ONU側と、を備え、OLT側、MDM-ODN及びONU側は、光ファイバを介して順次接続され、MDM-ODNはモードマルチプレクサと、モードデマルチプレクサと、を備え、MCFを介して互いに接続され、MCFが異種トレンチアシスト7コアファイバであり、OLT側は古典的な信号送信機と、N個のDV-QKDユニットと、N+1個のOLT側のモードコンバータと、を備え、N+1個のモードコンバータの一端が前記古典的な信号送信機と接続し、他端がMDM-ODNのモードマルチプレクサと接続し、ONUはN個のDV-QKD受信機と、古典的な信号受信機と、N+1個のONU側のモードコンバータと、2N+1個のPD及び1個のONU側のOCと、を備え、N個のDV-QKD受信機はそれぞれPDを介してモードデマルチプレクサと接続し、N+1個のONU側のモードコンバータはデマルチプレクサと接続し、ここでN個のONU側のモードコンバータがそれぞれPDを介して古典的な信号受信機と接続し、残りの1個のONU側のモードコンバータが1個のPD及びONU側のOCを介してそれぞれ各古典的な信号受信機と接続する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステムであって、OLT側と、MDM-ODNと、ONU側と、を備え、前記OLT側、前記MDM-ODN及び前記ONU側は、光ファイバを介して順次接続され;
前記MDM-ODNは、モードマルチプレクサと、モードデマルチプレクサと、を備え、MCFを介して互いに接続され、前記MCFが異種トレンチアシスト7コアファイバであり;
前記OLT側は、古典的な信号送信機と、N個のDV-QKDユニットと、N+1個のOLT側のモードコンバータと、を備え、前記N+1個のモードコンバータの一端が前記古典的な信号送信機と接続し、他端がMDM-ODNのモードマルチプレクサと接続し;
前記ONUは、N個のDV-QKD受信機と、古典的な信号受信機と、N+1個のONU側のモードコンバータと、2N+1個のPD及び1個のONU側のOCと、を備え、前記N個のDV-QKD受信機はそれぞれPD(光検出器)を介してモードデマルチプレクサと接続し、前記N+1個のONU側のモードコンバータはデマルチプレクサと接続し、ここでN個のONU側のモードコンバータがそれぞれPDを介して古典的な信号受信機と接続し、残りの1個のONU側のモードコンバータが1個のPD及びONU側のOCを介してそれぞれ各古典的な信号受信機と接続し;
前記古典的な信号送信機が送信したN+1個の古典的な信号は、モードコンバータを介して基本モードから異なり、互いに直交するモードに変換された後、前記N個のDV-QKDユニットが送信したN個の量子信号と共に、モードマルチプレクサに入り、前記MCF伝送に適したモードに変換し、前記MCFを介して前記モードデマルチプレクサに送信して、独立したN+1個の古典的な信号及びN個の量子信号に分解し、分解後の前記各古典的な信号は各々モードコンバータを介して基本モードに変換され、接続されたPDを介して古典的な信号受信機に送信し、前記量子信号が接続されたPDを介してDV-QKD受信機に送信される、
ことを特徴とする、マルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステム。
【請求項2】
前記古典的な信号送信機は、レーザダイオードと、ビームスプリッターと、N個の強度変調器と、を備え、ここでN個のOLT側のモードコンバータが各々前記強度変調器を介してビームスプリッターと接続し、残りの1個のOLT側のモードコンバータがビームスプリッターと直接接続し;
前記N+1個の古典的な信号は、1個のパイロット信号及びN個のOOK信号を含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載のマルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステム。
【請求項3】
前記PDは、ガイガーモードで動作するInGaAsアバランシェフォトダイオードを用いることを特徴とする、請求項2に記載のマルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステム。
【請求項4】
前記MCFが伝送している時、前記量子信号は、1550nmの波長通信路を用い、前記古典的な信号が上り1490nmの波長通信路又は下り1310nmの波長通信路を用いることを特徴とする、請求項3に記載のマルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステム。
【請求項5】
前記モードマルチプレクサ及び前記モードデマルチプレクサは、カスケードモード選択カプラーで構成されることを特徴とする、請求項4に記載のマルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステム。
【請求項6】
前記DV-QKDユニットは、おとり状態非対称BB84プロトコルに基づいて量子信号を生成するDV-QKDユニットであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のマルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステム。
【請求項7】
前記MCFのコア半径は、5μmであり、前記MCFのコア外側に屈折率のトレンチが設けられ、前記屈折率のトレンチの厚さが3μmで、前記MCFのコア間隔が42μmであることを特徴とする、請求項6に記載のマルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステム。
【請求項8】
前記MCFのコア屈折率は、1.4457であり、前記MCFのコアとMCFのクラッドとの間の屈折率差が0.003であり、前記屈折率のトレンチとMCFのクラッドとの間の屈折率差が0.003であることを特徴とする、請求項7に記載のマルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のマルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステムの伝送方法であって、以下のステップ:
S1:OLT側がレーザーパルストレインを発射する場合において、システムノイズをテストし、SN比が設定されたSN比のプリセット値よりも高いかどうかを判断し、SN比が設定されたSN比のプリセット値よりも高い場合、ステップS2及びS2’に進み、SN比が設定されたSN比のプリセット値よりも低い場合、プロンプトメッセージを生成するシステムノイズテストステップと;
S2:DV-QKDユニットは、おとり状態非対称BB84プロトコルに従って量子状態を準備し、量子信号を生成する量子状態準備ステップと;
S2’:古典的な信号送信機は、ビームスプリッターを介して古典的な信号をN+1個に分け、うちの1つをパイロット信号とし、他のN個が強度変調器を介してN個のOOK信号に変調され、この時古典的な信号はパイロット信号及びN個のOOK信号を含むOOK変調ステップと;
S2’.1:ステップS2’で得られた各古典的な信号が、モードコンバータによってモード変換を実施するモード変換ステップと;
S3:ステップS2及びS2’.1で得られた各信号は、モードマルチプレクサを経由してMCFに入り、多重伝送後モードデマルチプレクサに到達してマルチパス信号に分解するモード多重伝送ステップと;
S4:各古典的な信号が、モードコンバータを介して基本モード信号に変換されるモード変換ステップと;
S5:各OOK信号について自己ホモダイン検出を実施する自己ホモダイン検出ステップと;
S6:ONU側が、DV-QKDフィルタリングコードの一部をランダムに選択して符号誤り率を検出し、測定して得られた符号誤り率の値がおとり状態の理論計算値と等しいか又は大きい場合、ステップS2及びS2’に戻り、測定して得られた符号誤り率の値がおとり状態の理論計算値よりも小さい場合、安全な通信を確立する符号誤り率検出ステップと、
を含むことを特徴とするマルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステムの伝送方法。
【請求項10】
SN比のプリセット値は、20dBであり、おとり状態の理論計算値が11%であることを特徴とする、請求項9に記載のマルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステムの伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子情報分野に関し、特に、マルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステム及びその伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
古典のFTTH(Fiber To The Home、ファイバ・トゥ・ザ・ホーム)エンドユーザーは、データの安全性の解決が急務になっており、QC(Quantum Cryptography、量子暗号)は理論的に無条件安全性が実現できるとして注目されている。QC、QKD(Quantum Key Distribution、量子鍵配送)の無条件保護プロトコルは、リモート2ユーザー間のランダムビット分布の情報理論的安全性を確保できる。近年、QKDシステムは、機器の互換性及びコストにより、普遍的な実用化のエンドツーエンド量子通信ネットワーク応用への実現には程遠い。QKDネットワーク応用のコストを削減するため、従来のFTTHネットワークを利用してQKDを従来の光通信と統合することで、敷設及び運営の費用を最小限に抑えることができる。
【0003】
量子と古典の融合を実現する慣用技術は、WDM(Wavelength Division Multiplexing、波長分割多重)であり、例えば2015年、Wei Sunらによって提案された波長分割多重に基づく量子鍵分配とギガビット受動光ネットワークの統合実験である。ただし、光ファイバの非線形効果と高速伝送光信号対雑音比の要件を考えると、シングルモードファイバを用いるWDM技術は、容量の限界に近く、かつ回線上には追加の機器が必要となり、余分なクロストーク及び損失が引き起こし、最終的な安全性を損なう可能性があり、新しい多重化技術を用いて光伝送容量を増やし、スペクトル効率を向上し、増え続ける容量要件を満たすことが急務となっている。MDM(Mode Division Multiplexing、モード分割多重)とSDM(Space Division Multiplexing、空間分割多重)技術は、伝送容量の問題を解決することが望まれていた。
【0004】
1982年、MDMは、S.BerdagueとP.Facqから初めて提案され、彼らは空間フィルタを利用してグレーデッドインデックスマルチモードファイバの2つの低次モードの励起を選択して伝送し、10メートルの伝送後、2つのモード間クロストークが-20dB未満であり、これにより短距離伝送でのモード分割多重の実現可能性を証明した。ただし、用いたマルチモードファイバには、モード分散、モード間クロストーク及び大きな損失等の一連の問題が存在している。本出願で用いるマルチコアファイバは、モード分散を効果的に低減させることができ、異種トレンチ型構造でモード間クロストーク及び非線形損失をさらに減らすことができる。MDMとは、光ファイバ内の光ファイバ内の互いに直交する各モードを独立した通信路として情報を伝送する多重化方式を意味し、本質的には光の多入力多出力過程である。MDMは、技術概念によると渦ファイバのOAM(Orbital Angular Momentum、軌道角運動量)、少数モードファイバ及びマルチコアファイバのモード分割多重に分けることができる。
【0005】
OAMモードの円環状分布により、各モード間で互いに干渉しない性質を維持させるが、運ぶ光ビームが外部環境の影響を受けやすく、渦ファイバ等の特殊な光ファイバ内でのみ伝搬できる。多くの学者は、少数モードファイバでモード分割多重を実施することを提案し、例えば2015年Yuanxiang Chenらが提案した自体の非線形検出を利用した新型MDM-PON(Passive Optical Network:受動光ネットワーク)スキームを高速/容量アクセスネットワークに使用する。少数モードファイバは、少数モードを励起するだけでモード分散を効果的に低減し、大きなモードフィールド半径が非線形効果を効果的に抑制できるが、強いモード間分散とモード結合効果の存在が避けられない。
【0006】
本出願は、モード分割多重技術を介してQKDとFTTHの融合を実現し、その他のスキームと比較して、伝送容量の拡張と安全性の向上を踏まえ、異種トレンチアシスト7コアファイバを用いてモード間結合をさらに低減し、モードフィールド有効面積を増大する。
【0007】
「従来技術(特許文献1)は、量子鍵配送とPON機器コファイバー伝送のシステムを提供したが、コファイバー伝送がシングルモードファイバに基づく波長分割多重技術を使用しているため、通信容量が限界に近づく。
【0008】
「従来技術(特許文献2)は、モード分割多重技術を用いてFTTHの通信容量を増やしているが、QKD技術を使用していないため、安全性が不足している。」
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許番号第CN208015742U号
【特許文献2】中国特許番号第CN108028718A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、通信容量及び安全性を向上するマルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTH(QKDとFTTHの融合を表す)システム及び方法を提供する。異種トレンチアシスト7コアファイバを用いてモード分割多重を実施すると、通信容量を拡大するだけではなく、物理的に隔離された構造により弱い量子信号が受ける古典的な信号による干渉は、その他のスキームよりも小さく、量子信号と古典的な信号の同時伝送時より良好な量子鍵配送性能が得られ、かつトレンチアシスト構造はモード間クロストークを効果的に低減し、光学効果の有効モードフィールド面積を増大することができる。
【0011】
本発明は、おとり状態非対称BB84プロトコルに基づくQKD技術(DV-QKD)を用いる。BB84プロトコルにおいて、送信者Aliceは非直交基底ベクトルの下での二組の単一光子をランダムに送信し、受信者Bobが基底ベクトルをランダムに選択して測定する。理想的には、両者が同じ基底ベクトルを使用する時、双方は安全かつ一致の鍵を得る。非対称性は、この二組の非直交基底ベクトルが選択される確率の違いに反映し、選択される確率の大きな基底が鍵の生成に使用され、選択される確率の小さい基底が安全検出に使用され、このような方法はより高い最終鍵レートを実現できる。実際のQKDシステムの多光子パルス及び通信路損失によってもたらされるセキュリティ脆弱性を解決するため、本発明はPNS(Photon Number Splitting,光子数分割)攻撃を検出するためにのみ使用されるおとり状態を導入し、すなわち送信者は異なる強度の光源(信号状態及びおとり状態)を選択して受信者に送信する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の技術的効果を奏するために講じた本発明の技術的手段は、次の通りである。
マルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステムであって、OLT側(Optical Line Terminal、光回線終端)と、MDM-ODN(Mode Division Multiplexing-Optical Distribution Network、モード分割多重-光分配ネットワーク)と、ONU側(Optical Network Unit、光ネットワークユニット)と、を備え、OLT側、MDM-ODN及びONU側は、光ファイバを介して順次接続され;
MDM-ODNは、モードマルチプレクサと、モードデマルチプレクサと、を備え、MCF(Multi Core Fiber、マルチコアファイバ)を介して互いに接続され、MCFが異種トレンチアシスト7コアファイバであり;
OLT側は、古典的な信号送信機と、N個のDV-QKD(Discrete Variable-Quantum Key Distribution、離散変数-量子鍵配送)ユニットと、N+1個のOLT側のモードコンバータと、を備え、N+1個のモードコンバータの一端が前記古典的な信号送信機と接続し、他端がMDM-ODNのモードマルチプレクサと接続し;
ONUは、N個のDV-QKD受信機と、古典的な信号受信機と、N+1個のONU側のモードコンバータと、2N+1個のPD及び1個のONU側のOCと、を備え、N個のDV-QKD受信機はそれぞれPD(光検出器)を介してモードデマルチプレクサと接続し、N+1個のONU側のモードコンバータはデマルチプレクサと接続し、ここでN個のONU側のモードコンバータがそれぞれPDを介して古典的な信号受信機と接続し、残りの1個のONU側のモードコンバータが1個のPD及びONU側のOC(ビームスプリッター)を介してそれぞれ各古典的な信号受信機と接続し;
古典的な信号送信機が送信したN+1個の古典的な信号は、モードコンバータを介して基本モードから異なり、互いに直交するモードに変換された後、N個のDV-QKDユニットが送信したN個の量子信号と共に、モードマルチプレクサに入り、MCF伝送に適したモードに変換し、MCFを介してモードデマルチプレクサに送信して、独立したN+1個の古典的な信号及びN個の量子信号に分解し、分解後の各古典的な信号は各々モードコンバータを介して基本モードに変換され、接続されたPDを介して古典的な信号受信機に送信し、量子信号が接続されたPDを介してDV-QKD受信機に送信される。
【0013】
好ましくは、古典的な信号送信機は、レーザダイオードと、ビームスプリッターと、N個の強度変調器と、を備え、ここでN個のOLT側のモードコンバータが各々強度変調器を介してビームスプリッターと接続し、残りの1個のOLT側のモードコンバータがビームスプリッターと直接接続し;
N+1個の古典的な信号は、1個のパイロット信号及びN個のOOK(On-Off Keying,オンオフキーイング)信号を含む。
【0014】
より好ましくは、PDは、ガイガーモードで動作するInGaAsアバランシェフォトダイオードを用いる。
【0015】
MCFが伝送している時、量子信号は、1550nmの波長通信路を用い、古典的な信号が上り1490nmの波長通信路又は下り1310nmの波長通信路を用いる。
【0016】
より好ましくは、モードマルチプレクサ及びモードデマルチプレクサは、カスケードモード選択カプラーで構成される。
【0017】
上記のDV-QKDユニットは、おとり状態非対称BB84プロトコルに基づいて量子信号を生成するDV-QKDユニットである。
【0018】
さらに、MCFのコア半径は、5μmであり、MCFのコア外側に屈折率のトレンチが設けられ、屈折率のトレンチの厚さが3μmで、MCFのコア間隔が42μmである。
【0019】
さらに、MCFのコア屈折率は、1.4457であり、MCFのコアとMCFのクラッドとの間の屈折率差が0.003であり、屈折率のトレンチとMCFのクラッドとの間の屈折率差が0.003である。
【0020】
マルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステムの伝送方法は、次のステップを含む:
システムノイズテストステップS1:OLT側がレーザーパルストレインを発射する場合において、システムノイズをテストし、SN比が設定されたSN比のプリセット値よりも高いかどうかを判断し、SN比が設定されたSN比のプリセット値よりも高い場合、ステップS2及びS2’に進み、SN比が設定されたSN比のプリセット値よりも低い場合、プロンプトメッセージを生成し;
量子状態準備ステップS2:DV-QKDユニットは、おとり状態非対称BB84プロトコルに従って量子状態を準備し、量子信号を生成し;
OOK変調ステップS2’:古典的な信号送信機は、ビームスプリッターを介して古典的な信号をN+1個に分け、うちの1つをパイロット信号とし、他のN個が強度変調器を介してN個のOOK信号に変調され、この時古典的な信号はパイロット信号及びN個のOOK信号を含み;
モード変換ステップS2’.1:ステップS2’で得られた各古典的な信号は、モードコンバータによってモード変換を実施し;
モード多重伝送ステップS3:ステップS2及びS2’.1で得られた各信号は、モードマルチプレクサを経由してMCFに入り、多重伝送後モードデマルチプレクサに到達してマルチパス信号に分解し;
モード変換ステップS4:各古典的な信号は、モードコンバータを介して基本モード信号に変換され;
自己ホモダイン検出ステップS5:各OOK信号について自己ホモダイン検出を実施し;
符号誤り率検出ステップS6:ONU側は、DV-QKDフィルタリングコードの一部をランダムに選択して符号誤り率を検出し、測定して得られた符号誤り率の値がおとり状態の理論計算値と等しいか又は大きい場合、ステップS2及びS2’に戻り、測定して得られた符号誤り率の値がおとり状態の理論計算値よりも小さい場合、安全な通信を確立する。
【0021】
好ましくは、SN比のプリセット値は、20dBであり、おとり状態の理論計算値が11%である。
【発明の効果】
【0022】
従来技術と比較して、本発明の技術的技術の有利な効果を有する。
1)モード分割多重技術を用いてQTTH技術を実現し、以前に提案されたシングルモードファイバWDM/TDM等に基づく多重化技術は、伝送容量限界が近づき、かつ回線上に追加の機器が必要になり、余分な損失及びクロストークがもたらされて最終安全性を損なう可能性がある。本発明のモード分割多重は、互いに直交するモードを用いて多重化し、光通信の伝送容量及び最終的な安全性を向上させることができる。
【0023】
2)異種トレンチアシストマルチコアファイバを用いてモード分割多重を実現し、マルチコアファイバは物理的に隔離された構造により強い古典的な信号及び弱い量子信号が同時伝送される時に極めて優れたSN比及びコア間の隔離を有させ、システムのより高い安定性及び堅牢性を確保し、同じ光ファイバを厳密かつ独立した通信路として伝送できるようになる。異種トレンチアシスト構造を用いると、弱い量子信号に対する強い古典的な信号の干渉を効果的に低減し、光ファイバの有効モードフィールド面積を増大し、異なるモード間のクロストークを減らすことができ;
自己ホモダイン検出技術を利用してレーザ位相雑音を効果的に抑制でき、偏光補償及びパイロット位相補正の多入力多出力DSP(デジタル信号処理)を必要なしで、独立したOOK信号を直接検出できる。
【0024】
3)MCFの2つのコアを利用して相互不偏基底を生成し、おとり状態非対称BB84プロトコルを用いて量子信号を生成する。この方法は、PNS攻撃に効果的に抵抗できるだけでなく、鍵生成レート、安全性を向上させ、伝送距離を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明のマルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステムの全体構造ブロック図である。
【
図2】本発明のマルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステムの異種トレンチアシスト7コアファイバ横断面図である。
【
図3】本発明のマルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステムの異種トレンチアシスト7コアファイバ屈折率分布図である。
【
図4】本発明のマルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステムの信号分配図である。
【
図5】本発明のマルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステムの伝送方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施例中の技術的手段を詳細に説明するが、説明する実施例は本発明の一部の実施例であり、全ての実施例でないことは言うまでもない。本発明中の実施例に基づいて、当業者により創造性の活動をしない前提で得られた全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0027】
(実施例1)
マルチコアファイバモード分割多重に基づくQTTHシステムであって、
図1に示すように、OLT側と、MDM-ODNと、ONU側と、を備え、OLT側、MDM-ODN及びONU側は、光ファイバを介して順次接続される。
【0028】
MDM-ODNは、モードマルチプレクサと、モードデマルチプレクサと、を備え、モードマルチプレクサ及びモードデマルチプレクサがカスケードモード選択カプラーで構成され、MCFを介して互いに接続され、MCFが低クロストーク及び大きなモードフィールド面積という利点を有する異種トレンチアシスト7コアファイバである。なお、カスケードモード選択カプラーは、位相整合原理に基づいており、基本モードと高次モードが位相整合に達した時、エバネッセント場結合が発生し、異なるポートで異なるモードのモード分離機能を実現できるため、モードのマルチプレクサ及びデマルチプレクサに効果的に充てることができ、かつ製造しやすく、ファイバとの互換性が高く、モードクロストークが低い等の利点を有する。
【0029】
OLT側は、古典的な信号送信機と、N個のDV-QKDユニットと、N+1個のOLT側のモードコンバータと、を備え、N+1個のモードコンバータの一端が前記古典的な信号送信機と接続し、他端がMDM-ODNのモードマルチプレクサと接続し;
ONUは、N個のDV-QKD受信機と、古典的な信号受信機と、N+1個のONU側のモードコンバータと、2N+1個のPD及び1個のONU側のOCと、を備え、N個のDV-QKD受信機はそれぞれPDを介してモードデマルチプレクサと接続し、N+1個のONU側のモードコンバータはデマルチプレクサと接続し、ここでN個のONU側のモードコンバータがそれぞれPDを介して古典的な信号受信機と接続し、残りの1個のONU側のモードコンバータが1個のPD及びONU側のOCを介してそれぞれ各古典的な信号受信機と接続し;
古典的な信号送信機が送信したN+1個の古典的な信号は、モードコンバータを介して基本モードから異なり、互いに直交するモードに変換された後、N個のDV-QKDユニットが送信したN個の量子信号と共に、モードマルチプレクサに入り、MCF伝送に適したモードに変換し、MCFを介してモードデマルチプレクサに送信して、独立したN+1個の古典的な信号及びN個の量子信号に分解し、分解後の各古典的な信号は各々モードコンバータを介して基本モードに変換され、接続されたPDを介して古典的な信号受信機に送信し、量子信号が接続されたPDを介してDV-QKD受信機に送信される。
【0030】
ここで、PDは、ガイガーモードで動作するInGaAsアバランシェフォトダイオードを用いる。
【0031】
具体的に、古典的な信号送信機は、レーザダイオードと、ビームスプリッターと、N個の強度変調器と、を備え、ここでN個のOLT側のモードコンバータが各々強度変調器を介してビームスプリッターと接続し、残りの1個のOLT側のモードコンバータがビームスプリッターと直接接続し、N+1個の古典的な信号は1個のパイロット信号及びN個のOOK信号を含む。古典的な信号送信機を介してパイロット信号を生成する利点は、受信側でコヒーレント検波を使用してスペクトル効率及びネットワークカバレッジを高めるだけではなく、ONUでの狭帯域の局部発振(LO)の使用等にもたらされる関連コストを削減し、OOK信号が自動検出によって独立して受信することができるよう反映する。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
上記のすべての式を加算して次の式を得た。
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
これから電力結合係数がマルチコアファイバのクロストークに非常に大きな影響を与えることが分かる。電力結合モード理論でマルチコアファイバ内の異なるランダム誤差下でのクロストークを計算し、コア間の直径の差が大きくなると、クロストークが減少することを見出し、これにより異種マルチコアファイバがモード間クロストークを効果的に抑制することを証明している。非トレンチ構造と比較して、トレンチ構造を採用すると、クロストークがまた全体的に20~30dB程度を低減し、トレンチ内径を大きくし、トレンチ外径を小さくしトレンチとクラッドの屈折率差を減らしてモードフィールド面積を増大し、非線形損傷をさらに軽減する。これにより、異種トレンチ構造の7コアファイバは、それぞれのコアで光波を伝搬させ、コア間の結合を大幅に低減できるため、モード分割多重に使用されることを証明している。
【0042】
【0043】
【0044】
より具体的には、
図4に示すように、MCFの異種トレンチアシスト7コアファイバでは、コア1及びコア3がDV-QKD信号を伝送し、コア2がパイロットを伝送し、コア4及びコア5が上り信号を伝送し、コア6及びコア7が下り信号を伝送する。
【0045】
好ましくは、MCFが伝送している時、量子信号は1550nmの波長通信路を用い、古典的な信号が上り1490nmの波長通信路又は下り1310nmの波長通信路を用いて、ラマン散乱ノイズの影響を低減する。
【0046】
システムノイズテストステップS1:OLT側、MDM-ODN及びONU側の機器が正常に作動できるかどうかを検査し、初期条件を設定し、OLT側がレーザーパルストレインを発射する場合において、システムノイズをテストし、SN比が設定されたSN比のプリセット値よりも高いかどうかを判断し、SN比が設定されたSN比のプリセット値よりも高い場合、ステップS2及びS2’に進み、SN比が設定されたSN比のプリセット値よりも低い場合、プロンプトメッセージを生成する。ここで、テストシステムのSN比は、次の式を用いる。
【0047】
モード変換ステップS2.1:ステップS2’で得られた各古典的な信号は、モードコンバータによってモード変換を実施し、基本モードにある古典的な信号がモードコンバータを介して異なり互いに直交するモードに変換させ、量子信号がモードを必要とせず、基本モードの形式で伝送され;
量子状態準備ステップS2’:DV-QKDユニットは、おとり状態非対称BB84プロトコルに従って量子状態を準備し、量子信号を生成し、具体的なステップは次のステップS2’.1~ステップS2’.2を含み、
ステップS2’.2:Aliceは、古典的な通信路(AliceとBobとの間に通信用の独立した古典的な通信路を設ける)これらの状態のどれが信号状態でどれがおとり状態であるかをBobに伝え;
モード多重伝送ステップS3:ステップS2.1及びS2’.1で得られた各信号は、モードマルチプレクサを経由してMCFに入り、多重伝送後モードデマルチプレクサに到達してマルチパス信号に分解し;
モード変換ステップS4:各古典的な信号は、モードコンバータを介して基本モード信号に変換され、量子信号に変換の必要がなく、この時古典的な信号及び量子信号がいずれも基本モードにあり、シングルモードファイバを介して伝送されることができ;
信号検出ステップS5:各信号は、光検出器で検出される。ここで検出器はガイガーモードで動作するInGaAsアバランシェフォトダイオードを使用し、アバランシェフォトダイオードの動作モードが線形モード及びガイガーモードに分けられ、線形モードで動作するアバランシェフォトダイオードは強い古典的な光信号のみに応答できるが、量子の弱い単一光子信号には応答できず、ガイガーモードで動作するアバランシェフォトダイオードは2つの信号に応答でき;
自己ホモダイン検出ステップS6:すべての信号が受信機に各々到着して情報の伝送を完了し、局部発振器の代わりにパイロットが各OOK信号に対して自己ホモダイン検出を実行し、ここで複雑なDSPの必要がなく;
符号誤り率検出ステップS7:OLT側は、フィルタリングコードの一部をランダムに選択して符号誤り率を検出し、測定して得られた符号誤り率の値がおとり状態の理論計算値と等しいか又は大きい場合、ステップS2及びS2’に戻って、新しいラウンドの通信を再開し、測定して得られた符号誤り率の値がおとり状態の理論計算値よりも小さい場合、安全な通信を確立し、ここでおとり状態の理論計算値は11%であり、具体的にステップS7.1~S7.3を含み、
ステップS7.1:Bobは、測定基底をランダムに選択して測定し、自分が採用した測定基底及び受信したどの周期内の量子状態を表明し;
ステップS7.2:Alice及びBob側は、フィルタリングコードとして基底ベクトル照合の正しい部分を残して、信号状態及びおとり状態のカウントレート及び符号誤り率をそれぞれ計算し、信号状態が一部のみを抽出して符号誤り率を計算し;
ステップS7.3:Alice及びBob側は、上記データに基づいて符号誤り率検出を実行し、盗聴の有無を判断し、盗聴がある場合、鍵を破棄して通信を中止し、盗聴がない場合、誤り訂正及び秘匿性増幅等を実施する。
【0048】
上記実施例は、本発明の技術的手段を説明するためにのみ使用されるものであり、本発明はこれに限定されない。本発明は、前述の実施形態を参照して詳細に説明されたが、当業者が前述の実施例に記載された技術的手段を依然として修正できるか、又はこの中の技術的特徴の一部を均等範囲内で置き換えることができることに理解されたい。これらの修正又は置換は、対応する技術的手段の本質を本発明の実施例の技術的手段の精神及び範囲から逸脱するものではない。
【国際調査報告】