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特表2022-526213疾患及び状態の予防及び処置のための構造的に修飾されたオピオイド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(54)【発明の名称】疾患及び状態の予防及び処置のための構造的に修飾されたオピオイド
(51)【国際特許分類】
   C07C 225/16 20060101AFI20220517BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20220517BHJP
   C07D 221/28 20060101ALI20220517BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 31/222 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 31/14 20060101ALI20220517BHJP
   C07D 207/09 20060101ALI20220517BHJP
   C07D 209/14 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20220517BHJP
   C07D 233/64 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 31/4174 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20220517BHJP
   C07D 211/00 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 31/4453 20060101ALI20220517BHJP
   C07D 295/135 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 31/5375 20060101ALI20220517BHJP
   C07D 319/06 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 31/357 20060101ALI20220517BHJP
   C07D 317/58 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 31/36 20060101ALI20220517BHJP
   C07D 333/22 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20220517BHJP
   C07D 317/28 20060101ALI20220517BHJP
   C07D 207/04 20060101ALI20220517BHJP
   C07C 229/34 20060101ALI20220517BHJP
   C07C 323/29 20060101ALI20220517BHJP
   C07C 225/18 20060101ALI20220517BHJP
   C07C 219/22 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
C07C225/16
A61K31/485
C07D221/28 CSP
A61P25/04
A61K31/137
A61K31/222
A61K31/14
C07D207/09
C07D209/14
A61K31/40
A61K31/4045
C07D233/64 105
A61K31/4174
A61K31/197
C07D211/00
A61K31/4453
C07D295/135
A61K31/5375
C07D319/06
A61K31/357
C07D317/58
A61K31/36
C07D333/22
A61K31/381
C07D317/28
C07D207/04
C07C229/34
C07C323/29
C07C225/18
C07C219/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544895
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(85)【翻訳文提出日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 US2019055590
(87)【国際公開番号】W WO2020159587
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】62/798,709
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516195454
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ パドヴァ
(71)【出願人】
【識別番号】521338684
【氏名又は名称】エムジージーエム・エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】511017287
【氏名又は名称】インスティテュート・フォー・リサーチ・イン・バイオメディシン
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE FOR RESEARCH IN BIOMEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・エル・マンフレーディ
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・イー・イントゥリッシ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・マッタレイ
(72)【発明者】
【氏名】サラ・デ・マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヤコポ・ズグリニャーニ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・カヴァリ
【テーマコード(参考)】
4C069
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C069AA07
4C069AA30
4C069BA01
4C069BB34
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA12
4C086BA13
4C086BA14
4C086BB02
4C086BC07
4C086BC13
4C086BC21
4C086BC27
4C086BC38
4C086BC73
4C086GA07
4C086GA12
4C086GA16
4C086NA14
4C086ZA08
4C206AA02
4C206AA03
4C206FA09
4C206FA41
4C206FA42
4C206FA44
4C206KA17
4C206NA14
4C206ZA08
4H006AA01
4H006AB20
4H006AB21
4H006BJ10
4H006BJ20
4H006BJ30
4H006BJ50
4H006BM10
4H006BM30
4H006BM71
4H006BM72
4H006BM73
4H006BN10
4H006BN30
4H006BP30
4H006BR10
4H006BR20
4H006BR30
4H006BT12
4H006BT32
4H006BU26
4H006BU32
4H006BU50
4H006TA04
4H006TC22
(57)【要約】
本発明の態様は、NMDARでの調節活性の改善、及びNMDAR調節活性を有する既存の薬物よりも改善されたPK及びPDパラメータをもたらす構造的に修飾されたオピオイド(SMO)を目的とする。SMOをもたらすオピオイド又はオピオイドエナンチオマーの構造修飾は、デノボ合成プロセスを開始することによって;ラセミ体又は1つのエナンチオマーの合成中の任意の中間工程でオピオイドの合成プロセスを改変することによって;又は合成後にオピオイド又はオピオイドエナンチオマーの構造を修飾することによって、得ることができる。硝酸エステル置換は、特に重水素化置換及び/又はハロゲン置換に関連する場合に、特に関連性がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iによるデキストロメタドンに類似の構造を有する化合物:
【化1】
(式中、
R1は、アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR1は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR2は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R2は、水素、重水素であるか、又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
R4は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
nには1~4の間が含まれる)。
【請求項2】
式IIによるレボプロポキシフェンに類似の構造を有する化合物:
【化2】
(式中、
R1は、アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR1は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR2は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R2は、水素、重水素であるか、又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
R4は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
nには1~4の間が含まれる)。
【請求項3】
式IIIによるデキストロイソメタドンに類似の構造を有する化合物:
【化3】
(式中、
R1は、アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR1は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR2は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R2は、水素、重水素であるか、又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
R4は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
nには1~4の間が含まれる)。
【請求項4】
式IVによるレボモラミドに類似の構造を有する化合物:
【化4】
(式中、
NR1R2は、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルを介して任意選択で環化され、該C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
NR1R2が環化されていない場合、R1は、アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されている。R2は、水素、重水素であるか、又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR1は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR2は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、水素であるか;又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
NR4R5は、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルを介して任意選択で環化され、該C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
NR1R2が環化されていない場合、R1は、アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されている。R2は、水素、重水素であるか、又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
nには1~4の間が含まれる)。
【請求項5】
式VによるN-メチル-デキストロメタドンに類似の構造を有する化合物:
【化5】
(式中、
R1は、アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR1は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR2は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R2は、水素、重水素であるか、又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
R4は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
R5は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
X-は窒素対イオンであり;
nには1~4の間が含まれる)。
【請求項6】
式VIによるレボルファノールに類似の構造を有する化合物:
【化6】
(式中、
R1は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R2は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R4は、水素であるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されている)。
【請求項7】
式VIIによるデキストロメトルファン又はデキストロルファンに類似の構造を有する化合物:
【化7】
(式中、
R1は、水素、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R2は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R4は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R5は、水素であるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されている)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月30日出願の米国特許仮出願番号第62/798,709号に対する優先権及びその出願日の利益を主張するものであり、その開示は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、種々の疾患及び状態の予防及び処置のための構造的に修飾されたオピオイドの開発に関する。
【背景技術】
【0003】
このセクションは、以下に説明及び/又は請求される、本発明の種々の態様に関連し得る技術の種々の態様を読者に紹介することを意図している。この考察は、本発明の種々の態様のより良好な理解を容易にするための背景情報を読者に提供するのに役立つと考えられる。したがって、これらの記述は、この観点から読まれ、先行技術の承認としてではないことが理解されるべきである。
【0004】
本発明者らは、臨床的に関連するオピオイドアゴニスト活性が最小又は全くないものを含む、オピオイド及びオピオイドエナンチオマーに現在分類されているある特定の医薬化合物が、単独で、又はオピオイドアンタゴニストを含む他の薬物と組み合わせられて、ある特定の疾患及び状態の処置に対して有用であり得ることを以前に開示している(米国特許第6,008,258号、米国特許第9,468,611号、及び国際特許出願番号PCT/US2018/016159を参照のこと)。
【0005】
N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)は、遺伝的又は環境的要因、或いは遺伝的な要因と環境的要因の組み合わせ(G+E)によって引き起こされる多数のヒト疾患の潜在的な治療標的として認識されることが増加している。しかし、単一のNMDARアンタゴニスト/修飾薬は、NMDAR機能障害に関係する多数の疾患には有効でない可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,008,258号
【特許文献2】米国特許第9,468,611号
【特許文献3】国際特許出願番号PCT/US2018/016159
【特許文献4】米国特許第5593876A号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hansen KB、Yi F、Perszyk RE、Furukawa H、Wollmuth LP、Gibb AJ、Traynelis SF。Structure, function, and allosteric modulation of NMDA receptors. J Gen Physiol. 2018年Aug 6;150(8):1081-1105. doi: 10.1085/jgp.201812032. Epub 2018年Jul 23. Review
【非特許文献2】Zanos P、Moaddel R、Morris PJ、Riggs LM、Highland JN、Georgiou P、Pereira EFR、Albuquerque EX、Thomas CJ、Zarate CA Jr、Gould TD。Ketamine and Ketamine Metabolite Pharmacology: Insights into Therapeutic Mechanisms. Pharmacol Rev. 2018年Jul;70(3):621~660頁
【非特許文献3】Ahmed A.ら、Pseudobulbar affect: prevalence and management. Therapeutics and Clinical Risk Management 201年3;9:483~489頁
【非特許文献4】Zhou SF. Polymorphism of human cytochrome P450 2D6 and its clinical significance: part II. Clin Pharmacokinet. 48:761~804頁, 2009年
【非特許文献5】Bernstein G、Davis K、Mills C、Wang L、McDonnell M、Oldenhof J、nturrisi C、Manfredi PL、Vitolo OV。Characterization of the Safety and Pharmacokinetic Profile of D-Methadone, a Novel N-Methyl-D-Aspartate Receptor Antagonist in Healthy, Opioid-Naive Subjects: Results of Two Phase 1 Studies J Clin Psychopharmacol. 2019年May/Jun;39(3):226~237頁
【非特許文献6】Jie Du、Xiao-Hui Li、Yuan-Jian Li. Glutamate in peripheral organs: Biology and pharmacology. European Journal of Pharmacology 784 (2016) 42~48頁
【非特許文献7】Chian-Ming Low及びKaren Siaw-Ling WeeNew Insights into the Not-So-New NR3 Subunits of N-Methyl- D-aspartate Receptor: Localization, Structure, and Function. Mol Pharmacol 78:1~11頁、2010年
【非特許文献8】Zanosら、2018; (Huei-Sheng Vincent Chen及びStuart A. Lipton. The chemical biology of clinically tolerated NMDA receptor antagonists. Journal of Neurochemistry, 2006年、97, 1611~1626頁)
【非特許文献9】Patrizi A、Picard N、Simon AJ、Gunner G、Centofante E、Andrews NA、Fagiolini M。Chronic Administration of the N-Methyl-D-Aspartate Receptor Antagonist Ketamine Improves Rett Syndrome Phenotype. Biol Psychiatry. 2016年May 1;79(9):755~64頁。doi: 10.1016/j.biopsych.2015年08.018. Epub 2015年Aug 24
【非特許文献10】Frank RAW1、Zhu F2、Komiyama NH2、Grant SGN2。Hierarchical organization and genetically separable subfamilies of PSD95 postsynaptic supercomplexes. J Neurochem. 2017年Aug;142(4):504~511年。doi: 10.1111/jnc.14056. Epub 2017年Jul 25
【非特許文献11】Codd EE、Shank RP、Schupsky JJ、Raffa RB。Serotonin and norepinephrine uptake inhibiting activity of centrally acting analgesics: structural determinants and role in antinociception. J Pharmacol Exp Ther. 1995年Sep;274(3):1263~70頁
【非特許文献12】Horrigan FT1、Gilly WF。Methadone block of K+ current in squid giant fiber lobe neurons. J Gen Physiol. 1996年Feb;107(2):243~60頁
【非特許文献13】Bernstein G、Davis K、Mills C、Wang L、McDonnell M、Oldenhof J、Inturrisi C、Manfredi PL、Vitolo OV。Characterization of the Safety and Pharmacokinetic Profile of D-Methadone, a Novel N-Methyl-D-Aspartate Receptor Antagonist in Healthy, Opioid-Naive Subjects: Results of Two Phase 1 Studies J Clin Psychopharmacol. 2019年May/Jun;39(3):226~237頁
【非特許文献14】Banerjee A、Larsen RS、Philpot BD、Paulsen O。Roles of Presynaptic NMDA Receptors in Neurotransmission and Plasticity. Trends in Neurosciences, 2015年Volume 39, Issue 1
【非特許文献15】Huei-Sheng Vincent Chen及びStuart A. Lipton。The chemical biology of clinically tolerated NMDA receptor antagonists. Journal of Neurochemistry, 2006年、97, 1611~1626頁
【非特許文献16】Tomohiro Nakamura及びStuart A. Lipton。Protein S-Nitrosylation as a Therapeutic Target for Neurodegenerative Diseases. Trends in Pharmacological Sciences, January 2016年、Vol. 37, No. 1
【非特許文献17】Inturrisi、CE. NMDA receptors, nitric oxide and opioid tolerance. Regulatory Peptides, 1994年、Volume 54, Issue 1
【非特許文献18】Ming-Chak Lee; Ka Ka Ting; Adams Seray。Characterisation of the Expression of NMDA Receptors in Human Astrocytes. PLoS One, 11/2010年、Volume 5, Issue 11
【非特許文献19】Inturrisi, CE. NMDA receptors, nitric oxide and opioid tolerance. Regulatory Peptides, 1994年、Volume 54, Issue 1
【非特許文献20】Lowe、Stephen L、Wong、Conrad J、Witcher、Jennifer。Safety, tolerability, and pharmacokinetic evaluation of single - and multiple - ascending doses of a novel kappa opioid receptor antagonist. The Journal of Clinical Pharmacology, 09/2014, Volume 54, Issue 9
【非特許文献21】Wulff H、Castle NA、Pardo LA。Voltage-gated potassium channels as therapeutic targets. Nat Rev Drug Discov 2009年Dec;8(12):982~1001頁
【非特許文献22】Brachman RA、McGowan JC、Perusini JNら。Ketamine as a Prophylactic Against Stress-Induced Depressive-like Behavior. Biol Psychiatry. 2015年;79(9):776~786頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある特定の例示的な態様を以下に記載する。これらの態様は、本発明がとり得るある特定の形態の簡単な概要を読者に提供するためだけに提示され、これらの態様は、本発明の範囲を限定することを意図しないことを理解すべきである。実際、本発明は、以下に明示的に記載されていない場合がある様々な態様を包含し得る。
【0009】
本発明の一態様では、本発明者らは、オピオイド薬及びそれらのエナンチオマーの構造を修飾することにより、新規薬物(本明細書では構造修飾オピオイド又はSMOと呼ばれる)を設計及び合成することができ、これらの新規薬物は、場合により安全かつ有効な治療作用を備えた独自の薬物動態(PK)及び薬力学(PD)特性を有し、種々の疾患及び状態の処置及び予防のための、NMDARを含むグルタメート受容体での作用を含み、NMDARサブタイプでの特異な作用を含み、認知及び社会技能を向上させるための新規薬物を含むことをここに開示する。
【0010】
本発明の別の態様では、オピオイド又はオピオイドエナンチオマーの構造修飾を:(a)デノボ(de novo)合成プロセスを開始することによって;(b)ラセミ体又は1つのエナンチオマーの合成中の任意の中間工程でオピオイドの合成プロセスを改変することによって;又は(c)合成後にオピオイド又はオピオイドエナンチオマーの構造を修飾することによって、得ることができる。
【0011】
NMDARは、本明細書に記載されたSMOの潜在的な治療標的であり得る。その点で、NMDARは、遺伝的又は環境的要因、或いは遺伝的な要因と環境的要因の組み合わせ(G+E)によって引き起こされる多数のヒト疾患の潜在的な治療標的として認識されることが増加している。更に、上記のように、単一のNMDARアンタゴニスト/修飾薬は、NMDAR機能障害に関係する多数の疾患には有効でない可能性が高い。しかし、新たに設計された分子(SMO)は、優先的に選択された細胞集団、細胞部位、脳領域、特定の疾患、病期、状態、及び対象の寿命の選択された期間を標的とすることによって、選択された疾患及び状態に有用であり得ることが、本発明者らによって現在開示されている。薬物動態(PK)パラメータ(選択された脳領域及び/又は選択された受容体サブタイプ及びCNSにおける受容体部位に到達するための最適な脂質溶解度等)、又は選択された患者集団における半減期を含む、薬物半減期を変更し得る代謝パラメータの変化に対して、SMOを最適化することができる。更に、選択されたNMDARドメイン及び部位(NMDARの膜貫通ドメイン及びPCP部位、及び/又はNMDARの細胞外ドメイン及びNO部位等)での作用等の薬力学的(PD)パラメータに対して、SMOを最適化することができる。また、SMOを、ある特定のNMDARサブタイプ(例えば、以下に詳述するNR1、NR2A~D、NR3A~B)に対して最適化することができ、場合により、以下に詳述するさまざまな受容体(NMDAR以外)及びトランスポーターでの他の選択された作用に対して最適化することができる。
【0012】
本発明の他の態様は、以下の式I~VIIの化合物等の化合物を含み得るか、又はそれらを目的とし得る。
【0013】
式Iによるデキストロメタドンに類似の構造を有する化合物:
【0014】
【化1】
【0015】
(式中、
R1は、アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR1は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR2は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R2は、水素、重水素であるか、又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
R4は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
nには1~4の間が含まれる)。
【0016】
式IIによるレボプロポキシフェンに類似の構造を有する化合物:
【0017】
【化2】
【0018】
(式中、
R1は、アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR1は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR2は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R2は、水素、重水素であるか、又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
R4は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
nには1~4の間が含まれる)。
【0019】
式IIIによるデキストロイソメタドン(dextroisomethadone)に類似の構造を有する化合物:
【0020】
【化3】
【0021】
(式中、
R1は、アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR1は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR2は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R2は、水素、重水素であるか、又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
R4は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
nには1~4の間が含まれる)。
【0022】
式IVによるレボモラミドに類似の構造を有する化合物:
【0023】
【化4】
【0024】
(式中、
NR1R2は、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルを介して任意選択で環化され、該C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
NR1R2が環化されていない場合、R1は、アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されている。R2は、水素、重水素であるか、又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR1は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR2は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、水素であるか;又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
NR4R5は、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルを介して任意選択で環化され、該C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
NR1R2が環化されていない場合、R1は、アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されている。R2は、水素、重水素であるか、又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
nには1~4の間が含まれる)。
【0025】
式VによるN-メチル-デキストロメタドンに類似の構造を有する化合物:
【0026】
【化5】
【0027】
(式中、
R1は、アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、及びヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR1は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR2は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R2は、水素、重水素であるか、又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
R4は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
R5は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
X-は窒素対イオンであり;
nには1~4の間が含まれる)。
【0028】
式VIによるレボルファノールに類似の構造を有する化合物:
【0029】
【化6】
【0030】
(式中、
R1は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R2は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R4は、水素であるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されている)。
【0031】
式VIIによるデキストロメトルファン又はデキストロルファンに類似の構造を有する化合物:
【0032】
【化7】
【0033】
(式中、
R1は、水素、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R2は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R4は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R5は、水素であるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されている)。
【0034】
そのような化合物の一般的な例としては、フルオロ-デキストロメタドンを含むデキストロメタドンフルオロ誘導体(-F);ニトロ-デキストロメタドンを含むデキストロメタドンニトロ誘導体(-NO2);フルオロ-ニトロ-デキストロメタドンを含むデキストロメタドンフルオロ-ニトロ誘導体;及びデキストロメタドンについて上記のように修飾された重水素化デキストロメタドン誘導体(フルオロ-デキストロメタドンを含む重水素化デキストロメタドンフルオロ誘導体(-F);ニトロ-デキストロメタドンを含む重水素化デキストロメタドンニトロ誘導体(-NO2);及びフルオロ-ニトロ-デキストロメタドンを含む重水素化デキストロメタドンフルオロ-ニトロ誘導体)も挙げられる。
【0035】
そのような化合物の一般的な例としては、デキストロイソメタドン誘導体も挙げることができ、例えば、フルオロデキストロイソメタドン(fluoro-dextroisomethadone)を含むデキストロイソメタドンフルオロ誘導体;ニトロデキストロイソメタドンを含むデキストロイソメタドンニトロ誘導体;フルオロニトロデキストロメタドンを含むデキストロメタドンフルオロニトロ誘導体;及びデキストロイソメタドンについて上記のように修飾された重水素化デキストロイソメタドン誘導体、が含まれる。
【0036】
そのような化合物の一般的な例としては、N-メチル-デキストロメタドン誘導体も挙げることができ、例えば、フルオロ-N-メチル-デキストロメタドンを含むN-メチル-デキストロメタドンフルオロ誘導体;ニトロ-N-メチル-デキストロメタドンを含むN-メチル-デキストロメタドンニトロ誘導体;フルオロ-ニトロ-N-メチル-デキストロメタドンを含むN-メチル-デキストロメタドンフルオロ-ニトロ誘導体;及びN-メチル-デキストロメタドンについて上記のように修飾された重水素化N-メチル-デキストロメタドン誘導体、が含まれる。
【0037】
そのような化合物の一般的な例としては、レボモラミド誘導体も挙げることができ、例えば、フルオロ-レボモラミドを含むレボモラミドフルオロ誘導体;ニトロ-レボモラミドを含むレボモラミドニトロ誘導体;フルオロ-ニトロ-レボモラミドを含むレボモラミドフルオロ-ニトロ誘導体;及びレボモラミドについて上記のように修飾された重水素化レボモラミド誘導体、が含まれる。
【0038】
そのような化合物の一般的な例としては、レボプロポキシフェン誘導体も挙げることができ、例えば、フルオロ-レボプロポキシフェンを含むレボプロポキシフェンフルオロ誘導体;ニトロ-レボプロポキシフェンを含むレボプロポキシフェンニトロ誘導体;フルオロ-ニトロ-レボプロポキシフェンを含むレボプロポキシフェンフルオロ-ニトロ誘導体;及びレボプロポキシフェンについて上記のように修飾された重水素化レボプロポキシフェン誘導体、が含まれる。
【0039】
そのような化合物の一般的な例としては、レボルファノール誘導体も挙げることができ、例えば、フルオロ-レボルファノールを含むレボルファノール-フルオロ-誘導体;ニトロ-レボルファノールを含むレボルファノール-ニトロ誘導体;フルオロ-ニトロ-レボルファノールを含むレボルファノールフルオロ-ニトロ-誘導体;及びレボルファノールについて上記のように修飾された重水素化レボルファノール誘導体、が含まれる。
【0040】
そのような化合物の一般的な例としては、デキストロメトルファン及びデキストロルファン誘導体も挙げることができ、例えば、フルオロ-デキストロメトルファン及びニトロ-デキストロルファンを含むデキストロメトルファン及びデキストロルファン-フルオロ-誘導体;ニトロ-デキストロメトルファン及びニトロ-デキストロルファンを含むデキストロメトルファン及びデキストロルファン-ニトロ誘導体;フルオロデキストロメトルファン及びフルオロ-ニトロ-デキストロルファンを含む、デキストロメトルファン及びデキストロルファンフルオロ-ニトロ-誘導体;及びデキストロメトルファン及びデキストロルファンについて上記のように修飾された重水素化デキストロメトルファン及び重水素化デキストロルファン誘導体、が含まれる。
【0041】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を例示し、上記の本発明の一般的な説明及び以下に示される実施形態の詳細な説明とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】強制水泳試験(「FST」)における不動(immobility)、よじ登り(climbing)及び水泳(swimming)計数に対するケタミン及びd-メタドンの効果を示す。データは平均±SEMを表す。不動に関して:ANOVAにより、ビヒクル群と比較して、ケタミンの場合は*p=0.0034、d-メタドン10mg/kgの場合は0.0007、d-メタドン20及び40mg/kgの場合は<0.0001。よじ登りに関して:ビヒクルに対してd-メタドン40mg/kgの場合は*p<0.05。水泳に関して:ANOVAにより、ビヒクルに対して、ケタミン及びd-メタドン10mg/kgの場合は*p<0.05、d-メタドン20mg/kgの場合は<0.0001、及びd-メタドン40mg/kgの場合は0.0003。
図2A】雌の尿におい嗅ぎ試験(Female Urine Sniffing Test)(「FUST」)及び新奇抑制性摂食試験(Novelty Suppressed Feeding Test)(「NSFT」)に対するd-メタドン及びケタミンの影響を示す。図2Aには、ラットの投与及び試験のスケジュールが示され、このスケジュールにより、d-メタドン又はケタミンが投与され、その後、種々の試験に供された。
図2B】雌の尿におい嗅ぎ試験(Female Urine Sniffing Test)(「FUST」)及び新奇抑制性摂食試験(Novelty Suppressed Feeding Test)(「NSFT」)に対するd-メタドン及びケタミンの影響を示す。図2Bは、24時間後にFUSTにおいて試験されたラットを示す。結果は,平均±S.E.M. FUST:1元配置ANOVA、F3,42=3.26、p=0.031;フィッシャーのLSD法:Veh x Met、p=0.025;Veh x Ket、p=0.046;n=9~12/群。
図2C】雌の尿におい嗅ぎ試験(Female Urine Sniffing Test)(「FUST」)及び新奇抑制性摂食試験(Novelty Suppressed Feeding Test)(「NSFT」)に対するd-メタドン及びケタミンの影響を示す。図2Cは、2日後に自発運動(LMA)について試験されたラットを示す。
図2D】雌の尿におい嗅ぎ試験(Female Urine Sniffing Test)(「FUST」)及び新奇抑制性摂食試験(Novelty Suppressed Feeding Test)(「NSFT」)に対するd-メタドン及びケタミンの影響を示す。図2Dは、72時間後にNSFTについて試験されたラットを示す。結果は,平均±S.E.M. NSFT:1元配置ANOVA、F3,27=4.87、p=0.008;フィッシャーのLSD法:Veh x Met、p=0.035;Veh x Ket、p=0.005;n=7~8/群。
図2E】雌の尿におい嗅ぎ試験(Female Urine Sniffing Test)(「FUST」)及び新奇抑制性摂食試験(Novelty Suppressed Feeding Test)(「NSFT」)に対するd-メタドン及びケタミンの影響を示す。また、図2Eは、ホームケージ給餌を表している。
図3A】単一用量のD-メタドンが、慢性予測不可能ストレス(Chronic Unpredictable Stress)(「CUS」)曝露によって誘発される抑うつ行動を予防することを示している。図3Aは、CUSプロトコル、薬物投与、及び行動分析の時間経過を示す。
図3B】単一用量のD-メタドンが、慢性予測不可能ストレス(Chronic Unpredictable Stress)(「CUS」)曝露によって誘発される抑うつ行動を予防することを示している。D-メタドン及びケタミンは、図3B[スクロース嗜好性試験(SPT)(F3,45=2.99)]において、CUSの行動への影響を予防した。結果は、平均±S.E.M.、n=9~15/群である。P<0.05、一元配置ANOVA及びダンカン事後検定(Duncan posthoc test)。
図3C】単一用量のD-メタドンが、慢性予測不可能ストレス(Chronic Unpredictable Stress)(「CUS」)曝露によって誘発される抑うつ行動を予防することを示している。図3C[FUST(F3,46=5.43)]において、CUSの行動への影響を予防した。水のにおい嗅ぎに差は見られなかった。結果は、平均±S.E.M.、n=9~15/群である。P<0.05、一元配置ANOVA及びダンカン事後検定。
図3D】単一用量のD-メタドンが、慢性予測不可能ストレス(Chronic Unpredictable Stress)(「CUS」)曝露によって誘発される抑うつ行動を予防することを示している。図3D[NSFT(F3,46=6.79)]において、CUSの行動への影響を予防した。結果は、平均±S.E.M.、n=9~15/群である。P<0.05、一元配置ANOVA及びダンカン事後検定。
図3E】単一用量のD-メタドンが、慢性予測不可能ストレス(Chronic Unpredictable Stress) (「CUS」)曝露によって誘発される抑うつ行動を予防することを示している。ホームケージ餌の消費量に差は見られなかった。
図4図4A及び4Bは、mTORC1シグナル伝達及びシナプスタンパク質に対するd-メタドンの影響を示す。ラットにd-メタドンを投与し、mTORC1シグナル伝達タンパク質及びシナプスタンパク質のレベルを、PFC及び海馬において調査した。
図5】2、6及び10日目に、MAD研究の25mgコホートからの脳由来神経栄養因子(BDNF)血漿レベルを、処置前及びd-メタドン25mg(6人の患者)又はプラセボ(2人の患者)の投与の4時間後に試験したことを示す。d-メタドン処置群では、6人中6人の対象が、処置前のレベルと比較してd-メタドン処置後のBDNFレベルの増加を示し、処置後10日目のBDNF血漿レベルは、処置前のBDNFレベルの2倍~17倍の範囲であった。対照的に、2人のプラセボ対象では、BDNF血漿レベルは変化しないままであった。2日目及び10日目に測定された血漿BDNFレベルは、プラセボ対象が分析に含まれている場合、d-メタドンの血漿レベルと有意に相関していた。2日目ではp=0.028、6日目ではP=0.043、10日目ではp=0.028;すべて処置前のBDNF血漿レベルに対する。
図6】NMDARアゴニストであるL-グルタメート単独で、又はNMDARアンタゴニストであるMK-801及びデキストロメタドンと組み合わせて処理した後のARPE-19細胞の細胞生存率を示す。デキストロメタドンは、本明細書では「REL-1017」と称されてもよい。より具体的には、図6は、NMDARアゴニストであるL-グルタメート単独(1mM L-Glu)で、又はNMDARアンタゴニストであるMK-801(1mM L-Glu+MK-801)及びREL-1017(1mM L-Glu+REL-1017)と組み合わせて処理した後のARPE-19細胞の細胞生存率を示す。ビヒクルに対し**P<0.01(一元配置ANOVAとそれに続くダネットの事後検定)。すべての実験におけるデキストロメタドン(Rel-1017)の濃度は、30マイクロモルである。
図7】ARPE-19細胞におけるROS産生を示す。処理は、L-グルタメート(1mM L-Glu)を用いて実施し、前処理は、MK-801(1mM L-Glu+MK-801)及びREL-1017(1mM L-Glu+REL-1017)を用いて実施した。
図8】L-グルタメート(1mM L-Glu)を用いての処理、及びMK-801(1mM L-Glu+MK-801)及びREL-1017(1mM L-Glu+REL-1017)を用いての前処理後の、ARPE-19のp65の免疫蛍光を示す。細胞核はDAPIでマークされている。図8A~Dでは、マークされた細胞核は白く現れ、一方、p65の免疫蛍光はグレースケールで現れる。
図9】免疫細胞化学実験におけるp65(A)及び共局在化p65-DAPI(B)の蛍光強度のグラフ表示を示す。処理は、L-グルタメート(1mM L-Glu)を用いて実施し、前処理は、MK-801(1mM L-Glu+MK-801)及びREL-1017(1mM L-Glu+REL-1017)を用いて実施した。蛍光強度及びp65と核マーカーDAPIとの間の共局在化の程度を示すピアソンrを、ImageJソフトウェアを使用して計算した。ビヒクルに対し*P<0.05(一元配置ANOVA検定とそれに続くダネットの事後検定)。
図10】以下の処理条件後のARPE-19細胞におけるNMDAR1遺伝子発現の相対的定量化を示す:L-グルタメート(1mM L-Glu)、前処理は、MK-801(1mM L-Glu+MK-801)又はREL-1017(1mM L-Glu+REL-1017)を用いて実施した。ビヒクルに対し****P<0.0001(一元配置ANOVAとそれに続くダネットの事後検定)。
図11】以下の処置条件に供されたARPE-19細胞におけるp65遺伝子発現の相対的定量化を示す。処理は、L-グルタメート(1mM L-Glu)を用いて実施し、前処理は、MK-801(1mM L-Glu+MK-801)及びREL-1017(1mM L-Glu+REL-1017)を用いて実施した。ビヒクルに対し*P<0.05(一元配置ANOVA検定とそれに続くダネットの事後検定)。散布図では、ビヒクル処理細胞とREL-1017処理細胞間の比較。ビヒクルに対し**p<0.01(対応のないデータに対するスチューデントのt検定)。
図12】以下の処理条件に供されたARPE-19細胞におけるTNF-α遺伝子発現の相対的定量化を示す。L-グルタメート(1mM L-Glu)、前処理は、MK-801(1mM L-Glu+MK-801)及びREL-1017(1mM L-Glu+REL-1017)を用いた。ビヒクルに対し**p<0.01(一元配置ANOVA検定とそれに続くダネットの事後検定)。
図13】以下の処理条件に供されたARPE-19細胞におけるIL-6遺伝子発現の相対的定量化を示す。L-グルタメート(1mM L-Glu)、前処理は、MK-801(1mM L-Glu+MK-801)及びREL-1017(1mM L-Glu+REL-1017)を用いた。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の1つ又は複数の特定の実施形態を以下に説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を提供するために、実際の実装のすべての特徴が本明細書に記載されていない場合がある。任意のエンジニアリング又は設計プロジェクトと同様に、このような実際の実装の開発では、システム関連及びビジネス関連の制約への準拠等、開発者の特定の目標を達成するために、実装固有の多数の決定を行う必要があり、これらの決定は、実装ごとに異なる場合があることを理解すべきである。更に、そのような開発努力は複雑かつ時間がかかる可能性があるが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する当業者にとって、設計、製作、及び製造の定型的業務であることを理解すべきである。
【0044】
本開示の目的のために、本発明者らは、「疾患」を、前臨床段階から進行段階までの異なる段階におけるヒト及び動物の疾患及び状態(例えば前駆症状及び疾患の他の所見等の、疾患の症状及び徴候を含む)、並びに老化(例えば環境要因、毒素、薬物、食品、並びに栄養素及びビタミンの不足等、物理的及び化学的要因による老化の加速や疾患を含む)、として定義する。
【0045】
本開示の目的のために、本発明者らは、「状態」を、個体の可能性及び目標に対する認知機能低下、並びに個体の可能性及び目標に対する社会技能の欠陥、及び個体の可能性及び目標に対する特殊感覚の欠陥として定義する。
【0046】
本開示の目的のために、本発明者らは、「処置」を、疾患及び状態の処置及び予防及び改善として定義する。
【0047】
本開示の目的のために、本発明者らは、本開示の組成物対象である「構造的に修飾されたオピオイド」(SMO)を、例えば、オピオイド合成の任意の中間工程での分子の修飾等、オピオイドの構造修飾から設計された又は誘導された新しい活性医薬成分として定義する。
【0048】
本開示の目的のために、本発明者らは、例えばアゴニスト、部分アゴニスト及びアンタゴニスト等、オピオイド受容体に結合する合成及び天然薬物を、「オピオイド」として定義し、これには、オピオイドエナンチオマーが含まれ、特に、他の薬理学的作用、例えば、NMDAR調節を発揮する用量では臨床的に関連するオピオイドアゴニスト活性が最小限であるか又は全くない、オピオイド及びオピオイドエナンチオマーが含まれ、特に、例えばN-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)及び他のイオンチャネルの修飾薬等、特に、イオンチャネル調節活性を有するエナンチオマーが含まれ、特に、他の神経系(NS)受容体及びトランスポーターで作用する、臨床的に関連するオピオイド活性が最小限であるか又は全くない、オピオイド及びオピオイドエナンチオマーが含まれ、セロトニン、NE、DA、GABA等の神経伝達物質の変化、又はBDNF等の神経栄養因子の変化、又はPD95、GluR1、シナプシン、NMDAR1等のシナプスタンパク質の変化、をもたらすものが含まれ、特に、NMDARと一酸化窒素経路の両方で作用する新規化合物が含まれる。
【0049】
上記のように、本発明の一態様では、本発明者らは、オピオイド薬及びそれらのエナンチオマーの構造を修飾することにより、新規薬物(本明細書では構造修飾オピオイド又はSMOと呼ばれる)を設計及び合成することができ、これらの新規薬物は、場合により安全かつ有効な治療作用を備えた独自の薬物動態(PK)及び薬力学(PD)特性を有し、種々の疾患及び状態の処置並びに予防のための、NMDARを含むグルタメート受容体での作用を含み、NMDARサブタイプでの特異な作用を含み、認知及び社会技能を向上させるための薬物を含むことをここに開示する。
【0050】
本発明の別の態様では、オピオイド又はオピオイドエナンチオマーの構造修飾を:(a)デノボ合成プロセスを開始することによって;(b)ラセミ体又は1つのエナンチオマーの合成中の任意の中間工程でオピオイドの合成プロセスを改変することによって;又は(c)合成後にオピオイド又はオピオイドエナンチオマーの構造を修飾することによって、得ることができる。
【0051】
NMDARは、本明細書に記載されたSMOの潜在的な治療標的であり得る。その点で、NMDARは、遺伝的又は環境的要因、或いは遺伝的な要因と環境的要因の組み合わせ(G+E)によって引き起こされる多数のヒト疾患の潜在的な治療標的として認識されることが増加している。更に、上記のように、単一のNMDARアンタゴニスト/修飾薬は、NMDAR機能障害に関係する多数の疾患には有効でない可能性が高い。しかし、新たに設計された分子(SMO)は、優先的に選択された細胞集団、細胞部位、脳領域、特定の疾患、病期、状態、及び対象の寿命の選択された期間を標的とすることによって、選択された疾患及び状態に有用であり得ることが、本発明者らによって現在開示されている。薬物動態(PK)パラメータ(選択された脳領域及び/又はCNSにおける選択された受容体部位に到達するための最適な脂質溶解度等)、又は選択された患者集団における半減期を含む、薬物半減期を変更し得る代謝パラメータの変化に対して、SMOを最適化することができる。更に、選択されたNMDARドメイン及び部位(NMDARの膜貫通ドメイン及びPCP部位、及び/又はNMDARの細胞外ドメイン及びNO部位等)での作用等の薬力学的(PD)パラメータに対して、SMOを最適化することができる。また、SMOを、ある特定のNMDARサブタイプ(例えば、以下に詳述するNR1、NR2A~D、NR3A~B)に対して最適化することができ、場合により、以下に詳述するさまざまな受容体(NMDAR以外)及びトランスポーターでの他の選択された作用に対して最適化することができる。
【0052】
その四量体形態のNMDARは、3000を超えるアミノ酸によって形成されている。タンパク質複合体は、細胞外培地、細胞質、及び細胞膜に囲まれている[NMDARの領域/ドメインに応じて:アミノ末端ドメイン(AMT)、アゴニスト結合ドメイン(ABD)、膜貫通ドメイン(TMD)、カルボキシル末端ドメイン(CTD)]。この四量体アロステリック系の複雑な構造、及びそれが伴う変数の多様性、例えばNMDARのサブユニットのバリエーション等[遺伝的及び後成的バリアンスを有する7つの異なる遺伝子によってコード化されている、NR1、NR2A-D、NR3A-Bであって、選択的スプライシングバリアント(NR1は8つの異なるスプライシングバリアントアイソフォームを含む)、及びサブユニットのSNPを含むもの]によって、NMDARは多数の疾患の潜在的な原因及び多数の異なる薬物に対する標的となっている。空間的(脳の領域及び回路、並びにニューロン亜集団及び星状細胞等の非ニューロン細胞、或いはNMDARを発現するCNS外細胞集団でも)、及び時間的(年齢に関連する)NMDAR及びNMDARサブタイプの発現の違い、細胞膜上のNMDARの位置(シナプス前及び/又はシナプス後並びにシナプス及び/又はシナプス外)、細胞膜上のNMDARの絶対数(患者間、及び疾患及び/又は状態間で、及び進展中及び患者の寿命及び疾患経過全体において変化する)、所定時間における開口及び閉鎖NMDAチャネルの数、生理学的活動中、病理学的活動中、及び毒素又は薬物によって引き起こされる遮断中の開状態及び閉状態のタイミング、生理学的状態、病理学的状態中の活性化又は非活性化後にチャネルが開状態又は閉状態に留まる時間の長さ(プロトン及びpHによる調節効果を含み、アゴニスト/共アゴニストへの長期曝露による脱感作を含み、Mg2+、Zn2+、Ca2+、NO等によって媒介される受容体への効果を含む、又は薬物若しくは内因性毒素(例えば、キノリン酸)等の毒素若しくは食品(例えば、ポリアミンが豊富な食品、アルコール)、過剰量の神経伝達物質(例えばグルタメート)等、による調節後の、特定の細胞膜領域における及び特定のニューロン及び星状細胞集団内及び脳の特定の領域(又はCNS外でも)内における、その開状態及び閉状態の異なる効果、並びにサブユニットにおける空間的(特定の脳領域内又は脳の外側でも)機能的(異なる細胞集団内)及び時間的(年齢関連)変動、並びにアゴニスト(グルタメート/NMDA)、共アゴニスト(グリシン及びd-セリン)及び修飾薬[(Mg及びNOプロトン、Zn2+(遮断薬)、及びポリアミン(活性剤)]、及び薬物(アミノグリコシド、シスプラチン)及び毒素(ドモイン酸)及び抗体(NMDAR脳炎)に対する受容体四量体複合体上の結合部位の多様性、最小限のイベントを含む、NMDAR活性に影響を与える電気的イベント(膜電位の変化)、及びそれらの生化学的病理学的及び生理学的結果、及びイオン電流、特にCa2+によって媒介されるイベント(生化学的イベントを含む)の多様性及び変動性は、新薬になる可能性がある、NMDARの調節のために特異的に設計及び最適化された新しい化学物質(SMO)によって、すべて特異な影響を受ける可能性がある。
【0053】
これらの潜在的な薬物(SMO)は、異なる細胞集団において異なる効果(活動亢進性又は低活性であり、うつ病又はレストレスレッグス症候群等の疾患、及び神経発達疾患又は神経変性疾患等の他の疾患において役割を果たす場合がある、ある特定のニューロン間の抑制機能の制御を含む)を有する可能性が高く、並びに、受容体における個体間の遺伝的に決定された変動性、又は生理学的及び病理学的状態(神経発達疾患)における変動性、又はある特定の環境要因の存在下でのある特定の疾患の単純な素因(G+E)、受容体の分子構造の変動性、及び最後に、病理学的状態下でのNMDARの制御不全及び損傷(CNS変性疾患を含むヒトの疾患、例えば環境要因(毒素)、医学的処置、老化、更には食品、例えばポリアミンが豊富な食品やアルコール、又はある特定の栄養素及びビタミンの不足によって引き起こされる疾患等)に基づく異なる効果、を有する可能性が高く、Ca2+等のNMDA受容体細孔を通るイオン電流の変化によって引き起こされる、膜電位、酵素カスケード及びRas-ERKのようなシグナル伝達カスケード及びこれらの結果を含む生化学的応答、における結果として生じる変化を伴う。これらはすべて、生理学的及び病理学的状態におけるNMDARの役割の多様性及び複雑さを強調するだけでなく新しい安全かつ有効な薬物、特に、特定の疾患に対して選択的又は単により安全かつ/又はより効果的であり得る、独自のPK及びPD特性を備えた新規薬物の実行可能な治療標的になるための重要性及び可能性も強調する要因である。(Hansen KB、Yi F、Perszyk RE、Furukawa H、Wollmuth LP、Gibb AJ、Traynelis SF。Structure, function, and allosteric modulation of NMDA receptors. J Gen Physiol. 2018年Aug 6;150(8):1081-1105. doi: 10.1085/jgp.201812032. Epub 2018年Jul 23. Review)。
【0054】
チャネル細孔遮断薬
例えば、アマンタジン及びメマンチン又はPCP及びケタミン等の、NMDARの同じドメイン(膜貫通ドメイン)及び部位(PCP部位)で作用する薬物間の構造的違いを含む、異なるNMDAR遮断薬/修飾薬間の微妙な構造的違いでさえも、受容体サブタイプでの特異な活性を含む、それらの薬物動態(PK)及びそれらの薬物力学的(PD)特性を変化させる場合があり、したがって、新規薬物(薬物SMO、すなわちオピオイド及びオピオイドエナンチオマーと比較して類似しているが同一ではない化学構造を有する薬物を含む)は、選択された疾患及び状態並びに選択された患者集団に潜在的な利点を提供する場合がある。これらの利点(又は欠点)は、非常に類似した分子内の微妙な構造の違いに起因する場合もある。これらの構造的分子修飾は、PK及びPDにおける変化をもたらす場合があり(したがって、例えば、上記のNMDAR変数のいずれかに対する効果を変化させる)、患者の亜集団に有利な効果をもたらす場合がある。
【0055】
アマンタジンはパーキンソン病に対してFDA承認されており、一方メマンチンは構造的にアマンタジンと非常に類似しているが、NR1-NR2Aサブタイプと比較してNR1-NR2B NMDARサブタイプに対してより高い親和性を有し、アルツハイマー病(進行期及び後期のみ)に対してFDA承認されており;デキストロメトルファン(キニジンと組み合わせて、半減期が非常に短いことによるPKの欠点を相殺する)は、偽性球麻痺に続発する情緒不安定の患者に対してFDA承認されており;ケタミンは麻酔薬として承認されており、ハーバード大学医学部と提携しているクリニックを含む、米国の多くの専門クリニックにおいてうつ病の処置に現在使用されている。ケタミンのレボエナンチオマーであるエスケタミンは、最近、うつ病における使用に対してFDAの承認を受けた。これらの薬物はすべて、機能不全の活動亢進受容体のNMDAR調節を通じて、上記の非常に特異的な疾患及び状態に対して治療効果を発揮すると考えられている。同様のマイクロモル親和性による、NMDARの共通ドメイン及び部位(膜貫通ドメイン及びPCP部位)での推定作用にもかかわらず、これらの薬物は異なるPK及びPDプロファイルを示し、これは非常に類似した構造を有する薬物、例としてメマンチン及びアマンタジン又はPCP及びケタミンにも当てはまる。これらのPK/PDの違いは、メマンチンがアルツハイマー病の処置に使用された場合に見られるように、同じ疾患の特定の段階であって別の段階ではない場合における有効性を含む、NMDAR機能不全に関連する、ある疾患又は適応症であって別の疾患又は適応症ではないものに対するそれらの選択された有効性を説明する可能性が高い。
【0056】
更に、現在臨床で使用されているNMDARアンタゴニストの中で(パーキンソン病にはアマンタジン、アルツハイマー病にはメマンチン、偽性球麻痺にはデキストロメトルファン、並びに麻酔及びうつ病にはケタミン)-これらはすべて、NMDARの内部チャネル内の同じ(又は互いに非常に近接している)部位で、Mg2+部位に近接して、NMDARの膜貫通部分内に位置し、いわゆるPCP部位で作用して、マイクロモル範囲で同様の親和性を有するように見える-適応症は大きく異なっている。機能不全のNMDARは、上記の疾患及び国際特許出願番号PCT/US2018/016159に列挙されている疾患等、多数の疾患に存在する場合があるが、機能不全の程度、特定の細胞集団及び回路及び脳領域(又は上記の変数のいずれか)内の細胞膜上のNMDARの位置、細胞型は、異なる疾患の間で実質的に異なる可能性があり、異なる薬物によって異なる影響を受ける可能性があり;同じ適応症の中でも、疾患の段階が同じ薬物の有効性又は有効性の欠如を決定する場合がある(上に示すように、メマンチンは中等度から重度のアルツハイマー病に対して承認されているが、軽度のアルツハイマー病に対しては有効性を示さなかった)。また、アマンタジンとメマンチンは構造的に非常に類似しているが、それらの適応症及び効果は異なっている。同様に、PCP分子由来のケタミンの修飾、及びこれら2つの薬物間の「トラッピング、オンセット、オフセット」の違いにより、ケタミンの臨床的有用性及びPCPの臨床的適応症の欠如及び毒性が決定される(Zanos P、Moaddel R、Morris PJ、Riggs LM、Highland JN、Georgiou P、Pereira EFR、Albuquerque EX、Thomas CJ、Zarate CA Jr、Gould TD。Ketamine and Ketamine Metabolite Pharmacology: Insights into Therapeutic Mechanisms. Pharmacol Rev. 2018年Jul;70(3):621~660頁)。
【0057】
したがって、NMDAR複合体は、受容体の異なる結合部位で作用する薬物によって特異な影響を受ける可能性があるだけでなく、類似であるが同一ではない機構及び親和性、オンセット/オフセット/トラッピングの違い、及び特定のNMDARサブタイプに対し特異な親和性を有する、推定上の同じ部位(PCP部位)で又は非常に近接して作用する薬物によっても特異な影響を受ける可能性がある。
【0058】
新規分子に特異的な独自のPK及びPD特性が細胞に対して異なる作用及び効果をもたらすので、この前提は、新規NMDARアンタゴニストの発見の分野における大きな可能性を強調している。したがって、これらの作用及び効果(例えば、NMDARでの作用の遮断/調節)は、それらの機構(例えば、非競合的)を含めて、特定の疾患及び病期を標的とするのに有益であることが場合により証明され得る。更に、本発明者らによって開示されたある特定の新規薬物(SMO)は、デキストロメタドンの場合のように、NMDARとは異なる部位で他の効果を発揮する可能性が高く、これらの効果はまた、特定の疾患及び患者に有益な場合がある(デキストロメタドンの「その他の効果」は、SMOの潜在的な「その他の効果」の例として以下に詳述されている)。
【0059】
オピオイドファミリーの選択された薬物によるNMDAR調節の可能性
選択されたオピオイド及びそれらのエナンチオマーは、NMDAR調節効果を有し、特許出願番号PCT/US2018/016159で発明者によって開示されるように、NMDAR機能不全に関連する特定の疾患及び状態を潜在的に標的とし得る。ラセミ体のラセミメトルファンのd-異性体であるデキストロメトルファンは、現在、特定の神経学的適応症、偽性球麻痺における情緒不安定の処置のために、キニジンと組み合わせてFDA承認された、NMDAR遮断作用及び弱い又は臨床的に無視できるオピオイド作動性活性を有するオピオイドエナンチオマーの唯一の例である。非常に特定の適応症(偽性球麻痺における情動不安定性)に対するキニジン(以下に詳述するいくつかの欠点を伴う薬物)と組み合わせたデキストロメトルファンの開発及び承認は、特定の適応症に対する特定のNMDAR修飾薬の臨床的有用性の例であり、選択された疾患を標的とするために、臨床的に許容されるNMDAR調節効果並びに好ましいPK及びPDプロファイルを備えた薬物のライブラリーに対する満たされていない必要性を強調している。合成オピオイドは、オピオイド受容体の最適な標的化のために設計及び合成されている。選択されたオピオイド薬の構造を修飾することにより、本発明者らは、NMDAR及びNMDARサブタイプを標的とするためのオピオイド薬の構造をここで初めて最適化する。オピオイド受容体によって媒介されるオピオイド作動薬の影響を回避又は最小化するために、オピオイド活性がほとんど又はまったくないオピオイドエナンチオマーが、NMDARアンタゴニストとして開発するために以前に選択された(米国特許第6,008,258号;米国特許第9,468,611号;国際特許出願番号PCT/US2018/016159を参照のこと)。オピオイド効果は立体特異的であるように見えるが、NMDARブロッキング効果は一般に立体特異的ではないため、特定の疾患に対する新規の潜在的なNMDAR修飾薬として開発するためにオピオイド作動性の低いエナンチオマーを選択できる。オピオイドとオピオイドアンタゴニストとの組み合わせはまた、NMDAR調節効果を維持しながらオピオイド効果を遮断するために、レボルファノール等のNMDARアンタゴニズムを伴うオピオイド作動薬に提案されている(国際特許出願番号PCT/US2018/016159)。選択されたオピオイド及びオピオイドエナンチオマー薬は、NMDAR機能不全によって引き起こされる疾患を、場合により標的し得るが、それらの構造の新規修飾(SMOに対する本出願において提案されている)は、特定の疾患、状態、及び/又は患者集団に有利である、好ましいPKパラメータ(例えば、強化された脂溶性又は好ましい代謝パラメータ)及びPDパラメータ(例えば、NMDARでのSARの最適化)を表示しながら、ある特定のNMDAR調節特性を維持する新しい分子実体をもたらす可能性がある。
【0060】
本発明者らの国際特許出願第PCT/US2018/016159に以前に開示されたように、デキストロメトルファンは非常に短い半減期を有し、単剤として使用される場合、多くの障害及び患者亜集団に対して効果がない場合がある。しかし、デキストロメトルファンをキニジンと組み合わせると、デキストロメトルファン単独の非常に短い半減期を回避し、偽性球麻痺に有効であることがわかった(Ahmed A.ら、Pseudobulbar affect: prevalence and management. Therapeutics and Clinical Risk Management 201年3;9:483~489頁)。そのため、米国食品医薬品局(FDA)は、デキストロメトルファンHBr及び硫酸キニジン20mg /10mgカプセル(Nuedexta(登録商標); Avanir Pharmaceuticals、Inc社)を、情動調節障害(PBA)の最初の処置として承認した。残念ながら、キニジンは不整脈及び血小板減少症の潜在的に致命的なリスクを伴い、このことによりNuedexta(登録商標)は他の障害の処置のためのさらなる開発の弱小候補になっている。加えて、デキストロメトルファンは活性代謝物を有し、CYP2D6遺伝子多型の影響を受け、集団内でさまざまな薬物動態及び反応をもたらす。(Zhou SF. Polymorphism of human cytochrome P450 2D6 and its clinical significance: part II. Clin Pharmacokinet. 48:761~804頁, 2009年)。これらは、デキストロメタドンと比較して、場合によりNMDARアンタゴニズムを有するその誘導体と比較して、及び国際特許出願第PCT/US2018/016159に開示されている他のオピオイド薬及びそれらの誘導体、例えば本出願に開示されているSMO等、及び例えば構造修飾デキストロメタドン分子等、と比較して不利であり:デキストロメトルファン分子の修飾によって、SMOについて以下に概説する修飾と同様に、そのPK及びPDプロファイルが変更され、新しい修飾薬が選択された状態に対して安全かつ効果的になる場合がある。
【0061】
上に開示したように、本発明者らは、20年以上にわたって、ラセミメタドン及びその異性体を用いて、特にデキストロメタドンを用いて前臨床(インビトロ及びインビボ)及び臨床開発研究を実施してきた。デキストロメタドン[d-メタドン;(+)-メタドン);S-メタドン]は、ラセミ体である、dl-メタドン(メタドン)の2つのオピオイドエナンチオマーのうちの1つである。メタドンラセミ体であるdl-メタドンは、疼痛及びオピオイド依存症の処置のために60年を超えて臨床的に使用されてきた。新規NMDAアンタゴニストであるデキストロメタドンは、現在、多数の臨床適応症のために開発中であり、第1相臨床試験で発明者によって発見されたように、(Bernstein G、Davis K、Mills C、Wang L、McDonnell M、Oldenhof J、nturrisi C、Manfredi PL、Vitolo OV。Characterization of the Safety and Pharmacokinetic Profile of D-Methadone, a Novel N-Methyl-D-Aspartate Receptor Antagonist in Healthy, Opioid-Naive Subjects: Results of Two Phase 1 Studies J Clin Psychopharmacol. 2019年May/Jun;39(3):226~237頁)、及び国際特許出願番号PCT/US2018/016159に開示されているように、臨床的に無視できるオピオイド効果並びに好ましいPK及びPDプロファイルを有する。デキストロメタドンは、それ自体1つ又は複数の疾患の処置に有用であることが証明される場合があるが、デキストロメタドン分子の1つ又は複数の構造修飾、及び本出願に開示されている他の選択されたオピオイドの構造修飾(SMO)により、得られた新しい化学物質のPK/PDパラメータが、特定の疾患及び状態に対しより好ましいものになり、デキストロメタドン及び他の利用可能なNMDARアンタゴニストに勝るPK及びPDの利点を提供し、さまざまな患者集団及び選択された疾患に有用であり得る。
【0062】
グルタメート興奮毒性を含むNMDAR機能不全
興奮毒性は、過剰な細胞外グルタメート(主な興奮性アミノ酸)によって引き起こされる細胞損傷であり、NMDAR(及びAMPA受容体及びカイネート受容体等の他のイオンチャネル型グルタメート活性化膜受容体)の過剰な活性化をもたらす。重要なことに、NMDARがグルタメートではなく、例えば内因性毒素(キノリン酸等)又は外因性毒素によって過剰に刺激された場合、NMDAR活動亢進は正常なグルタメートレベルの存在下でも発生する可能性がある(アミノグリコシド毒性は、選択された細胞集団の、内耳における有毛細胞の損傷、及び結果として生じる生理学的グルタメートレベルでの有毛細胞の喪失及び難聴を助長するNMDARの過剰刺激の例である;食品に含まれるポリアミンもNMDAR過剰刺激を引き起こす場合がある)。NMDAR脳炎における場合のように、自己抗体を含む他の毒素は、生理学的グルタメートレベルの存在下でNMDAR過刺激を引き起こすことがあり、場合によっては、選択されたニューロン集団及びニューロン回路に毒性を引き起こすことがあり、正常及び/又は遺伝的に脆弱な患者に疾患を引き起こすことがある。これは、NMDARの機能不全が多数の疾患に関係していることを考えるときに考慮すべき点である。疾患が明らかに遺伝的又は散発的な遺伝子変異によって引き起こされている場合でも、細胞損傷の機構は、生理学的グルタメートレベルであるにもかかわらず、NMDARの過剰活性化である可能性がある。したがって、SMOは多数の疾患の潜在的な処置となる場合があり、選択されたSMOは、ある特定の遺伝性疾患に対して及び/又は環境要因によって引き起こされる疾患(例えば、医学的処置を含む毒素への曝露によって引き起こされる疾患、又は選択された栄養素の不足によって引き起こされる疾患も)に対して、又はおそらくより一般的には遺伝的要因(NMDAR毒性に対する素因)+環境要因(毒素又は選択された栄養素の欠如)によって引き起こされる疾患、したがって、上記のG+Eパラダイムに分類される疾患に対して選択的であり得る。
【0063】
その最も穏やかな形態では、過剰なグルタメートによって又は別の原因によって引き起こされるNMDAR活動亢進は、一時的なシナプス機能不全又は樹状突起喪失又は他の軽微な異常(例えば、樹状突起刈り込み欠陥)に限定される場合があり、これは可逆的状態を表す場合がある。可逆的NMDAR関連毒性のこの概念は、ニューロン集団の正常な老化等の状態、又はうつ病、ADHD、PTSD、SADを含む不安障害、RLS、一時的な認知障害、及びニューロンの不可逆的な損傷又は死は、場合により重篤な形態で存在するが、推進要因ではない場合があるその他の多くの疾患及び状態等の状態に対して重要な治療的及び予防的意味を有する。これらは、実際のニューロンの喪失がより顕著に見える疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS等)とは対照的に、ニューロン機能又はニューロン回路の変化が主な発症機序として優勢な疾患である。前述のように、場合により「可逆的」なNMDAR関連毒性でも、例として多数の神経発達及び神経変性疾患におけるように、不可逆的なニューロンの損傷及び死を伴うアポトーシスカスケードの誘発に向けて進行する場合もあり、疾患及び状態の二次予防におけるNMDAR修飾薬の可能性を強調している。
【0064】
古典的な興奮毒性パラダイムでは、外傷及び虚血等の急性状態との関係において、過剰なグルタメートの突然の放出は、周囲の組織に興奮毒性を引き起こし、一次事象からの急性壊死及び細胞死を増幅する可能性がある。グルタメートは最も重要な興奮性神経伝達物質であり、ニューロン間興奮性伝達の90%超を担っている。グルタメートは主に細胞内にあり、シナプス小胞に内在している。脳は、およそ10mMolの細胞内グルタメート及び0.6マイクロMの細胞外グルタメートを含有する。興奮性神経伝達中の生理学的細胞外濃度は1mM程度の高さになる場合があるが、この高い細胞外濃度は生理学的状態下で数ミリ秒間しか持続しない。グルタメートによって生理学的状態下で引き起こされるNMDARの活性化(チャネルの開口)は、グルタメートからのパルス刺激よりも長く、数十~数百ミリ秒持続する。換言すれば、NMDARチャネルは、細胞外グルタメートが安静時レベルに減衰するのにかかる時間よりも長く開いたままである。細胞外グルタメートの有毒な細胞外濃度は、曝露が長くなると2~4マイクロM程度の低さになる可能性があり、したがって、安静時シナプスの生理学的濃度(0.6マイクロM)は、細胞にとって有毒な濃度に近く、一方、細胞内のグルタメートは非常に高く(10mM)「保持される」。細胞内グルタメート含有量のこの非常に高い含有量は、グルタメートの過剰放出(興奮毒性)の場合に周囲のニューロンの損傷の可能性が高くなる。上記のように、脳のグルタメートが生理学的レベルにある場合、NMDARは過剰に活性化する可能性があり、したがって、グルタメートが生理学的濃度にあり、NMDARが過剰なグルタメート以外の理由(例えば、選択された毒素)で制御不全である場合、NMDAR遮断薬及び修飾薬はまた、治療的である可能性がある。
【0065】
グルタメート媒介生理学的ニューロン活動は、多くの感覚、運動及び連合の生理学的ニューロン経路に介入し、したがって、感覚(視覚、聴覚、嗅覚及び味覚等の特殊感覚を含む)及び運動活動を含む正常なNS機能に不可欠である。更に、NMDAR及び他のイオンチャネル型グルタメート受容体(AMPA及びカイネート受容体)によって媒介されるニューロン可塑性に介入することにより、グルタメートはLTP、LTD、経験によって決定されるシナプスの精密化に不可欠であり、これらは、適切な発達、したがって記憶形成、学習、気分設定、及び最終的には思考と行動に不可欠である。最後に、例えば、本発明者らによって以前に示されたように、BDNFの調節又はシナプスタンパク質の調節を介して、又は他の機構によって、ニューロンの活動及び生存に影響を与えることによって、NMDARはまた、神経系の機能、栄養及び老化だけでなく、すべての器官及び系の栄養及び老化に影響を与える可能性が高く、これは、適切なニューロン機能が、神経支配を通じて他のすべての組織、器官及び系の機能、栄養、老化に影響を与えるからである。更に、NMDARは、CNS外細胞における重要な機能も果たしており、神経系の一部ではない細胞におけるNMDAR機能障害に続発する疾患の処置に影響を与える(Jie Du、Xiao-Hui Li、Yuan-Jian Li. Glutamate in peripheral organs: Biology and pharmacology. European Journal of Pharmacology 784 (2016) 42~48頁)。CNS浸透がほとんどないか又はまったくない新しい分子(本開示の場合、新しいSMO)、例えば、血液脳関門を通過することができず、したがって潜在的なCNS効果がない分極した又はより大きな分子を意図的に設計することによって、CNS外のNMDARの機能不全によって引き起こされる障害の処置のための新薬の開発が助長される場合がある。
【0066】
本発明者らは、網膜上皮色素細胞上のNMDARの存在を実証する実験を実施した。次に、本発明者らは、グルタメート誘発毒性及び炎症性メディエーターからの毒性に対するこれらの細胞の感受性を実証し、最後に、本発明者らは、NMDAR修飾薬デキストロメタドンがこれらの細胞における毒性を予防することを示した(以下の実施例のセクションを参照のこと)。これらの新しいデータは、CNS外に位置する機能不全のNMDARに起因する疾患を処置するためのSMOの可能性を強調している。
【0067】
NMDARは、アゴニスト(グルタメート)、共アゴニスト(グリシン又はd-セリン)、Zn+、NO、プロトン(pH)、ポリアミン等の調節因子の均衡した結合、及び適切に機能するための制御生理学的チャネル遮断薬(Mg2+)の寄与を必要とする、正のアロステリック系である。
【0068】
NMDAR四量体複合体は、7つの異なるタンパク質サブタイプから組織化されている。NR1は必須であり、膜発現に必要であり;NR2 A~D、及びNR3 A~Bは他のサブタイプである。これらの7つのタンパク質は、領域的(異なる脳領域、ニューロン集団、ニューロン回路における異なるNMDAサブタイプ)、及び時間的要因(例えば、NR3Aの発現は若い年齢で比較的高く、成人期に向かって減少し、一方、NR3Bの発現は発達とともに徐々に増加する。NR1タンパク質は、異なる年齢にわたってあまり変動せず;NR2A及びNR2Bも、発達の異なる段階で差次的発現を呈する)、に応じて発現が差次的である7つの異なる遺伝子によってコードされている。更に、NR2Bはシナプス外の位置でより顕著になる場合があり、したがってその存在により細胞が興奮毒性に対してより脆弱にされる場合がある(この受容体サブタイプ、NR1-NR2B複合体のメマンチンによる優先的遮断によって、この薬物は、ある特定の疾患における興奮毒性の予防に特に適したものになり得る)。NR2CとNR2D及びNR3AとNR3Bを発現するNMDARは、マグネシウム遮断に対してより耐性がある場合があり、したがって、ニューロンが、NR1-NR2A、及びNR1-NR2B、及びAMPARを介して媒介される活性化(チャネル細孔の開口)のためにMg2+の電位依存性排出を必要とするトリヘテロテトラマーNR1-NR2A-NR2B複合体と比較して、過分極状態にある場合でも活性(開口チャネル)であり得る。マグネシウム遮断に耐性があり、Ca2+の透過性が低い、NR3 NMDARサブタイプは、最小限のシナプスイベント中に介入し、樹状突起タンパク質の制御に影響を与え、したがってシナプス可塑性に影響を与える場合がある。更に、グリシンのみがNR3 NMDARの活性化に必要であり、グルタメート及びNMDAはこれらの受容体でアゴニストとして作用しないため、MR3(NR3)含有受容体は、他のNMDARサブタイプとの構造的類似性のためにNMDARに分類されるが、NMDAによる活性化の欠如、Mg2+遮断に対する耐性、及びCa2+に対する相対的な不浸透性のために、機能的には異なっている。また、MK-801及びメマンチンはNR2サブユニットを含有するチャネルを遮断する際の活性と比較してNR3A~Bでの活性が低い。(Chian-Ming Low及びKaren Siaw-Ling WeeNew Insights into the Not-So-New NR3 Subunits of N-Methyl- D-aspartate Receptor: Localization, Structure, and Function. Mol Pharmacol 78:1~11頁、2010年)。ほとんどのSMOはNR2サブユニットを有するNMDARで作用する可能性が高いが、選択されたSMOが代わりにNR3A~Bサブユニット又は混合NR1-NR2/NR3トリヘテロテトラマーサブタイプを有するNMDARを標的にすることもあり、したがってそれらは、場合により疾患における、及びSMOの治療標的としてのN3A~B/NR3A~B受容体サブタイプの役割を定義するのに場合により役立つことがある。
【0069】
広範にわたるNMDARの存在、及び事実上すべての生理学的NS活動(及び多くの神経系外活動)におけるそれらの不可欠な役割のために、競合アゴニスト及び共アゴニストが、あまりにも強く及び/又は広く、予測できないほどに、正常な生理学的活動に干渉し、したがってこれらを副作用のために臨床的に許容することができないことは、驚くべきことではない。競合アゴニスト及び共アゴニストが、選択された疾患の治療のために予測及び調整(調節)することができないNMDAR効果をもたらすことも、驚くべきことではない。高親和性NMDAチャネル遮断薬はまた、チャネル内にトラップされたままになり、持続的な遮断をもたらして重篤な副作用をもたらす可能性があるため、治療剤としての候補として不十分である。デザイナードラッグMK-801(ジゾシルピン)は昏睡を誘発する場合があり;違法薬物フェンシクリジン(PCP;「エンジェルダスト」)は幻覚を引き起こす。PCPに由来するFDA承認の麻酔薬であるケタミンは、低親和性のNMDAR非競合的アンタゴニストであり、ジゾシルピン及びPCPと比較して「オフレート」が速く、したがって「トラッピング」が少なくなる;しかし、ケタミンは、麻酔薬の適応症又は選択された精神医学の適応症以外の臨床的忍容性のために、チャネル内に少し長くなり過ぎてとどまっている可能性が高い。実際、ケタミンは鎮静及び解離等の臨床効果を決定し、このことは、麻酔の適応症に有利であり得る(麻酔の場合、ケタミンはうつ病に使用される用量と比較して高用量で使用される)。しかし、これらのケタミン効果(鎮静及び解離)は、適応症が例えば大うつ病性障害であり、麻酔ではない場合、例えば治療抵抗性うつ病の重症例等の選択された症例では、望ましくないままであり、鎮静及び解離は、ある特定のうつ病患者に対してFDAによって最近承認された、鼻腔内エスケタミンを用いる場合のように短命である場合、許容できる副作用となり得る。NMDARアンタゴニスト/修飾薬が受容体内の標的結合部位に結合すると、NMDAR複合体の細孔にトラップされることなく、その後すぐに放出されるべきであり、したがって、この放出は妥当な時間内-「オフレート」(オフセット)-に発生するべきであり、そうでなければ、NMDARアンタゴニスト/修飾薬はチャネル内に長く留まり、生理学的活動(学習、
記憶形成等)に干渉し、鎮静及び精神異常発現の副作用を引き起こす。MK-801、PCP、及びケタミンは、100%MK-801、98%PCP、及び86%ケタミンの減少率で「トラッピング」の影響を受ける(Zanosら、2018)。NMDARアンタゴニストが開口チャネルに入るタイミングも考慮すべきポイントである:例えば、記憶形成中及び学習中のLTPの場合、通常の相性生理学的活動中にチャネルが数ミリ秒だけ開く場合、薬物が開口チャネルに入らないようにする必要があるため、薬物が開口チャネルに入るのにかかる時間である「オンレート」(オンセット)は、生理学的活動のタイミングである数十ミリ秒ではなく、1秒により近い(数百ミリ秒)必要がある。したがって、NMDAR修飾薬は、「オンレート」-(オンセット)-[速すぎる(副作用)べきではない、又は遅すぎる(効果がない)べきではない]と、「オフレート」-オフセット-[速すぎる(効果がない、マグネシウム様の遮断)べきではない、又は遅すぎる(副作用、MK-801及びPCPタイプの遮断)べきではない]の両方に対する狭いウィンドウを有する。用量及び血清薬物レベル(麻酔及びうつ病に対するケタミンの異なる投与量によって例示される)、及び臨床的適応症、並びに同じ臨床的適応症内の病期(例えば、メマンチンは、中等度から高度のアルツハイマー病には効果的であるが、軽度のアルツハイマー病には効果がない)等の、他の要因も関係する場合がある。麻酔のための高用量及びうつ病のための低用量のケタミンは、狭い治療ウィンドウ内でも、異なる適応症のための同じ薬物の異なる臨床使用の例である。狭い治療ウィンドウのもう1つのあまり一般的ではない形態は、投与量ではなく病期に関係している場合がある:メマンチンのNMDA受容体遮断特性-オンレートが1秒、オフレートが5秒に近い-によって、この薬物は、中等度から重度のアルツハイマー病に有用なものになるが、その作用は軽度のアルツハイマー病には有効でないことが分かり、オンセット作用とオフセット作用がわずかに異なる薬物が代わりに有効な場合がある。
【0070】
理想的なNMDAR修飾薬候補は、異なる疾患に対して異なる薬物である可能性が高く、同じ疾患の異なる段階に対しても異なる薬物である可能性が高く、特定の患者亜集団においても患者の年齢によっても異なる場合がある。各新規SMO薬は、異なるPK及びPD特性を提供することにより、特定の疾患及び状態及び患者集団に利点を提供する場合がある。より親油性の薬物は、超複合体の部分等、到達がより困難なNMDARを優先的に標的とする可能性があり(以下の詳細を参照)、したがって、この出願で開示されるSMOの中で、トリハロゲン化合物又はフルオロ誘導体は、超複合体が影響を受けるある特定の疾患又は患者の亜集団において特に有利であり得る。特定のSMOに対する特定の適応症の選択は、他の機能の中でも特に、薬物の極性、及び血液脳関門(BBB)通過の分子サイズ、及び選択した脳領域の優先的標的化、及びNMDARの特定のSARも考慮に入れなければならない、新規な独自の化学式の設計から始まる、新薬の開発の初期段階から十分に明確になることが増加する可能性が高い(これは、「NMDAR調節活性を有する構造的に修飾されたオピオイドの設計、分子モデリング、合成、及び試験」として考察及び記載されている新たに設計された化合物のライブラリーにおいて以下に見ることができる)。
【0071】
NMDAR調節活性を有する構造的に修飾されたオピオイドの設計、分子モデリング、合成、及び試験
機能不全のNMDARが誘発し、維持し、又は悪化させる特定の疾患及び状態を標的とするために優先的に調節又は遮断され得るNMDARサブタイプでの特異な活性を含む、NMDARでのSMOの活性に対しSMOの化学構造を最適化するために、本発明者らは、選択されたオピオイド薬の既知のNMDAR親和性に基づいて、NMDARとの構造活性相関(SAR)に対し最適化された、新しい化学物質であるSMOの第1のセットを設計し、新たに設計されたSMOのインシリコ試験を継続している。NMDARとのSARに関連するPDパラメータに加えて、SMOは、脂溶性の向上等のPKパラメータに関し最適化されている。NMDAR遮断の潜在的な追加部位の新しい機構も、SMOの設計において考慮されており、例えば、オピオイド及びオピオイドエナンチオマーのニトロ誘導体の場合、特にデキストロメタドンのニトロ誘導体の場合:本出願に記載されるようなSMOニトロ-誘導体は、NMDA受容体のアミノ末端ドメインと相互作用することにより、追加のNMDA調節作用を有することができる。次に、本発明者らは、NMDARの推定PCP結合部位に対する親和性について、NMDAR膜貫通ドメインのアドホック開発された新しい計算モデル(インシリコ静的+動的モデリング)でのこれらの化合物の試験に進んだ。インシリコランキング(静的及び動的)は、さらなる試験用に指定されたSMOの合成の優先順位付けを支援する推定リガンド/受容体親和性を決定することにより、SMOを直接選択することに加えて、SARに関する情報を生成し、したがって、また、NMDARチャネルブロッキング活性に関して最適化された追加のSMOの設計に役立つ。
【0072】
異なる親油性勾配は、ほぼアクセス可能であり得るCNS NMDARへの異なる結合を決定し、例えば、超複合体の一部であるNMDARは、親油性の低い分子へのアクセスが困難な場合がある。注目すべきことに、デキストロメタドンは、うつ病のラットモデルにおいてPD95レベルを増加させ(以下及び図4Bに詳述);PD95タンパク質は、NMDARを含有する超複合体の形成に不可欠である。本発明者らはまた、CNSに位置するNMDARを意図的に控えながら、末梢NMDARを標的とするためにBBBを通過しない化合物を設計した。これらの化合物は、機能不全のNMDARが主にCNS外に位置している臨床的適応症について試験される。親油性勾配以外に、SMOの分子量、それらの合成の実現可能性、及びそれらの推定安定性はすべて、これらの新しい分子(SMO)の設計において、及び選択的NMDAR活性に対し最適化された新しい臨床的に安全なSMOの開発計画において考慮された。
【0073】
前述のように、及び本出願全体を通して、SMOのサブセットは、そのN-末端(又はNMDARの細胞外アミノドメイン)上のシステイン残基のスルフヒドリル基のS-ニトロシル化によってNMDA受容体活性を場合により調節するために、ニトロ-SMOをもたらすニトロエステル基を導入するように設計された。上記のように、これは、デキストロメタドン及び他の非ニトロ-SMOの場合のように、NMDARの膜貫通ドメインのみよりもむしろ、細胞外ドメインにおけるNMDARの開口チャネルのレベルで特異なPD効果をもたらす可能性がある。ニトロシル化はまた、本出願において上記のように反応性窒素種(RNS)に対する保護を提供することができ、したがって、NMDARの開口チャネルに対する作用以外に、細胞保護の追加の手段を提供し、したがって追加の治療特性を提供することができる。
【0074】
インシリコ結果に基づいて選択されたSMOの合成作業が行われると、各化合物のNMDAR遮断活性についての情報提供以外に、NMDARサブタイプに対する特異な親和性を含む、SMOの異なるセットからの電気生理学的研究からの結果はまた、NMDAR遮断に最も関連するSMOの分子のセクションを更に改変することにより、NMDAR遮断薬のフォローアップ世代を設計するために、追加の新しい薬剤のSARに対する追加の洞察を提供する。
【0075】
フルオロ誘導体、ニトロ誘導体及びフルオロ-ニトロ誘導体、並びに重水素化フルオロ誘導体、重水素化ニトロ誘導体及び重水素化フルオロ-ニトロ誘導体は、PKパラメータの改善(特にフルオロ誘導体の場合)の可能性のため及び追加のNMDAR調節機構及びRNS細胞損傷の予防(特にニトロ誘導体の場合)のため、NMDARとのSARの最適化にとって特に興味深い。本発明者らは、選択された重水素化デキストロメタドン分子が選択されたNMDAR受容体サブタイプ(GluN1-GluN2B四量体)で優先的に作用し得り、デキストロメタドンがNMDARを含有するシナプス後肥厚で超複合体の必須成分であるPD95を増加させることをすでに示した。本発明者らはまた、デキストロメタドンがインビボでGluR1(図4B)を増加させ、インビトロでNMDAR1のmRNAを増加させること(図10)を示した。したがって、AMPARとNMDARの両方の受容体の発現は、場合によりデキストロメタドンによって調節される。フルオロ誘導体、ニトロ誘導体及びフルオロニトロ誘導体に加えて、重水素化をフルオロ及びニトロ誘導体と組み合わせることによって得られる分子は、本開示にとって特に興味深い。
【0076】
デキストロメタドンに関する広範な研究に加えて、本開示はまた、目的の他のオピオイドエナンチオマー、例としてデキストロイソメタドン、レボモラミド、レボプロポキシフェン、レボルファノール、デキストロメタドン及びN-メチル-デキストロメタドンに、NMDARの膜貫通ドメインの新たに開発されたアドホック分子モデルでこれらの化合物のNMDAR親和性を特徴づけることによって、及びこれらのオピオイドの構造修飾を設計し、更にインシリコ試験を行った後、デキストロメタドンについて上記で概説した開発計画を進めることによって(SARの定義を改善したさらなるインシリコ試験、分子の合成、電気生理学的試験、インビトロ及びインビボ試験、並びに再度、SARの定義の改善及び追加の新しい分子の設計)、焦点を当てる。
【0077】
したがって、一般に、以下の式(以下の式I~VII)は、本発明に関連して新たに設計された化合物の例である。それらの化合物を、以下のように示す:
【0078】
式Iによるデキストロメタドンに類似の構造を有する化合物:
【0079】
【化8】
【0080】
(式中、
R1は、アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR1は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR2は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R2は、水素、重水素であるか、又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
R4は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
nには1~4の間が含まれる)。
【0081】
式IIによるレボプロポキシフェンに類似の構造を有する化合物:
【0082】
【化9】
【0083】
(式中、
R1は、アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR1は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR2は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R2は、水素、重水素であるか、又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
R4は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
nには1~4の間が含まれる)。
【0084】
式IIIによるデキストロイソメタドンに類似の構造を有する化合物:
【0085】
【化10】
【0086】
(式中、
R1は、アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、及びヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR1は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR2は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R2は、水素、重水素であるか、又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
R4は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
nには1~4の間が含まれる)。
【0087】
式IVによるレボモラミドに類似の構造を有する化合物:
【0088】
【化11】
【0089】
(式中、
NR1R2は、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルを介して任意選択で環化され、該C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
NR1R2が環化されていない場合、R1は、アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されている。R2は、水素、重水素であるか、又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR1は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR2は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、水素であるか;又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
NR4R5は、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルを介して任意選択で環化され、該C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
NR1R2が環化されていない場合、R1は、アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されている。R2は、水素、重水素であるか、又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
nには1~4の間が含まれる)。
【0090】
式VによるN-メチル-デキストロメタドンに類似の構造を有する化合物:
【0091】
【化12】
【0092】
(式中、
R1は、アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、及びヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR1は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
AR2は、アリール又はヘテロシクリルからなる群から選択され、該アリール又はヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R2は、水素、重水素であるか、又はアルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アリール、C3~C12シクロアルキル、若しくはヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
R4は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
R5は、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステルによって任意選択で置換されているアルキルであり;
X-は窒素対イオンであり;
nには1~4の間が含まれる)。
【0093】
式VIによるレボルファノールに類似の構造を有する化合物:
【0094】
【化13】
【0095】
(式中、
R1は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R2は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R4は、水素であるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されている)。
【0096】
式VIIによるデキストロメトルファン又はデキストロルファンに類似の構造を有する化合物:
【0097】
【化14】
【0098】
(式中、
R1は、水素、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R2は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R3は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R4は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、硝酸エステルであるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されており;
R5は、水素であるか、又はアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルからなる群から選択されるものであり、該アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリルのいずれも、1つ又は複数の位置で重水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ニトロ、硝酸エステルによって任意選択で置換されている)。
【0099】
更に、式I~VIIにより上に列挙されたものを含むすべてのSMO及び記載されたすべての置換について、硝酸エステル置換は、特に重水素化置換及び/又はハロゲン置換に関連する場合に関連性がある。
【0100】
【表1A】
【0101】
【表1B】
【0102】
【表1C】
【0103】
【表1D】
【0104】
【表1E】
【0105】
【表1F】
【0106】
【表1G】
【0107】
【表1H】
【0108】
【表1I】
【0109】
【表1J】
【0110】
【表1K】
【0111】
【表1L】
【0112】
【表1M】
【0113】
【表1N】
【0114】
【表1O】
【0115】
【表2A】
【0116】
【表2B】
【0117】
【表2C】
【0118】
【表2D】
【0119】
【表2E】
【0120】
これらの分子の設計に続いて、次の工程は、最良の候補を選択するために、これらのデザイナー分子のインシリコでの試験(アドホックに開発された新規分子モデルの詳細及び試験の結果は、以下の、「閉状態のNMDA受容体GluN1-GluN2Bテトラマーサブタイプの膜貫通部位に結合する選択されたSMOの分子モデリング調査」というラベルの付いたセクションで議論される)、及び選択された分子の合成、その後の、NMDAR活性に関するより高度で特異的なインビトロ及びインビボ試験、例えば、相対的親和性を特徴づけるための、NMDARの電気生理学的試験等(国際特許出願番号PCT/US2018/016159に記載されている方法)、及び遮断の機構の試験(例えば、非競合型遮断作用を有する薬物は、生理学的活性を有する部位ではなく、NMDAR機能不全の部位でのそれらの選択的作用のために、より安全でより効果的である可能性が高い)、であった。本発明者らは、インビトロでの興奮毒性保護の検証をすでに開始しており、インビトロ実験モデルにおける安全性及び活性について選択されたSMOを評価している。最後に、開発の臨床段階に入った後、本発明者らは、本発明者らが現在、治療抵抗性うつ病及びRLSの第2相臨床開発におけるデキストロメタドンプログラムにより行っているように、最初に健康なボランティアで、次に特定の疾患及び状態の患者で、ヒト試験において忍容性及び有効性を確認する。
【0121】
閉状態のNMDA受容体GluN1-GluN2Bテトラマーサブタイプの膜貫通部位に結合する選択されたSMOの分子モデリング調査
最近まで、NMDARの膜貫通タンパク質の発現及び精製の両方における技術的制限のため、NMDARの膜貫通ドメインの構造は、原子レベルで特徴付けられていなかった。2014年、Gouaux及び共同研究者らは、X線結晶学によってアフリカツメガエルGluN1-GluN2B NMDA受容体の構造を解明した(Lee、Luら、2014年)。この構造は、部分アゴニストであるRo25-6981、及びイオンチャネル遮断薬であるMK-801の存在下で得られ、NMDARの閉状態を表している。この構造とヒトの配列との類似性が高いことから、本発明者らは、本発明者らの計算研究の出発点として、タンパク質構造データバンク(Protein Data Bank)(PDB)コード4TLMによって識別される構造を使用した。本発明者らは、Table 2c(表5)に示される以下の薬物を調査した:(a)推定NMDARアンタゴニスト:レボモラミド、d-イソメタドン、レボプロポキシフェン、N-メチルd-メタドン;(b)確立されたNMDARアンタゴニストであるデキストロメタドン、現在いくつかの適応症について臨床開発中である;(c)陽性対照(ケタミン、メマンチン、デキストロメトルファン、アマンタジン、MK-801、PCP)すべて既知のNMDA開口チャネル遮断薬であって、膜貫通ドメインのPCP部位で作用し、既知の親和性及び既知の臨床効果を有する;最初の4つの薬物は臨床で使用されているが、PCPはスケジュールI薬であり、MK-801はその臨床使用を妨げる重篤な副作用を伴う高親和性アンタゴニストである;(d)NMDAR活性が無視できる薬物であるモルヒネも、陰性対照として試験した。Table 2(表3、表4、表5)に見られるように、ドッキングスコア及び動的スコアは、確立されたNMDARチャネル遮断薬と同様の範囲にある。本発明者らは、モルヒネ、ナロキソン及びナルトレキソン(これらはすべてNMDARに対して無視できる親和性を有する)は水素供与体基を有するが、デキストロメトルファン及びメタドン(低マイクロモル濃度範囲においてNMDARに対して臨床的に関連する既知の親和性を有する)は水素供与体基を有していないことを観察した。この元の観察結果は、付録2に示されているインシリコ試験の新規な結果及び計画されたパッチクランプ研究とともに、NMDARに対するSARが改善された新しいSMOの設計に大いに役立っている。
【0122】
Table 2c(表5)に示される情報とは別に、Table 2a(表3)は、新たに設計されたSMOの第1のシリーズのドッキング結果を示す。また、Table 2b(表4)は、新たに設計されたSMOの第2のシリーズのドッキング結果を示す。
【0123】
現在臨床使用されている受容体の膜貫通ドメインで作用するNMDARアンタゴニストは、開口NMDARに結合することによってそれらの効果を発揮すると考えられるが、この計算モデルの目的のために、本発明者らは、チャネルの閉鎖配座への結合を研究した:臨床的に有効なNMDARアンタゴニスト薬はまた、閉状態でPCP部位に結合し(Zanosら、2018)、閉状態でそれらの「トラッピング」インデックスに結合し、これは、作用の「オンセット」時間と「オフセット」時間の関係を反映しており、臨床的忍容性及び有効性の指標となる可能性がある(Zanosら、2018;(Huei-Sheng Vincent Chen及びStuart A. Lipton. The chemical biology of clinically tolerated NMDA receptor antagonists. Journal of Neurochemistry, 2006年、97, 1611~1626頁))。したがって、有効なNMDAR修飾薬は、長時間の「トラッピング」を回避しながら、開口チャネルに結合するだけでなく、閉鎖チャネルに短時間(数ミリ秒)結合する(「フットインザドア」の概念)必要がある。ドッキング計算では、リガンドはホスティング結合部位の内部に構築されるため、閉鎖型配座は、リガンド/部位の相互作用を評価する傾向がある:結合部位へのリガンドの軌道はドッキング計算では考慮されない。
【0124】
このインシリコ試験のために構築された計算によるNMDARサブタイプは、2つのGluN1サブユニット及び2つのGluN2Bサブユニットによって構成されるGluN1-GluN2B四量体である。N2Bサブユニットは、NMDARを含む超複合体の形成に不可欠である。本出願で詳述されているように、本発明者らは、デキストロメタドンがインビボでPD95、GluR1のレベルを増加させること(図4B)、及びインビトロでデキストロメタドンがNMDAR1のmRNAを増加させること(図10)を発見し、このことによりデキストロメタドンのPD及び神経可塑性の可能性に関する追加の洞察を提供する。GluN2Bのカルボキシ末端の細胞質内テールは、本出願において上述したように、PD95-PD93サブユニットとともにNMDA超複合組織体に不可欠である。
【0125】
本発明者らの計算の計算効率を改善するために、PCP結合部位が位置し、FDA承認されかつ臨床的に許容されるNMDAアンタゴニスト(デキストロメトルファン、ケタミン/エスケタミン、アマンタジン、メマンチン)も作用し、本発明者らが、本開示の対象である推定NMDAアンタゴニストであるオピオイドエナンチオマー及びそれらのSMOが作用すると仮定する、受容体の膜貫通領域のみが、シミュレートされたモデルに含まれていた。本発明者らの研究のこの計算部分の目標は、NMDARの膜貫通ドメインへの結合に重要なそれらの構造の選択された部分を修飾することによって選択されたオピオイドの構造を最適化して、細孔チャネルの制御が、選択された疾患を予防又は処置するために必要である場合に、細孔チャネルの遮断を達成することである。各SMOは、選択された疾患に有利であり得る、本出願で説明されているような、NMDARサブタイプ及びバリアンス(variance)に対して固有のオンセット/オフセット/トラッピング及び固有の作用を有する以外に、固有のPK特性も有し、これはまた、選択された疾患に利点をもたらす場合がある。
【0126】
受容体の調製
最初に、受容体を、分子モデリングのために、New York、 NYのSchrodinger社(https://www.schrodinger.com/)製のSchrodinger suiteで利用可能な「タンパク質調製ウィザード」手順によって調製した。
【0127】
この手順は、正しいプロトン化状態を自動的に割り当て、欠落している側鎖又は小領域を完成させ、正しい名称を原子に割り当てる。次に、Orientations of Proteins in Membranesデータベース(OPM)データベースで利用可能なデータを考慮して(Lomizeら、2012)、受容体モデルを1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)分子によって形成された膜モデルに浸漬した。
【0128】
既知の薬物のドッキング
X線研究から直接導出された受容体配座の内部を調査するために分子をドッキングする最初の試みは、Glideソフトウェア(New York、NYのSchrodinger社から入手可能)(https://www.schrodinger.com/glide)を使用して行われた。ドッキング手順中に、薬物を配置することができるタンパク質領域を手動で定義した。
【0129】
この場合、共結晶化リガンドが欠如していたため、この領域は、Dougherty及び共同研究者らによってメマンチン結合に重要であると同定された残基を考慮して定義された(Limapichatら、2013)。
【0130】
本発明者らは、分子の受容体へのより「柔軟な」適応を可能にするために、分子のファンデルワールス(VdW)半径を減少させた。
【0131】
レボプロポキシフェンのドッキング計算は成功し、レボプロポキシフェンの潜在的なNMDAR遮断活性を確認しながら、薬物受容体複合体のモデルを生成した。
【0132】
次に、薬物結合により好適な部位の生成を可能にするために、膜に浸漬されたレボプロポキシフェン受容体複合体を、分子動力学(MD)シミュレーションによって250n秒の間シミュレートした。
【0133】
次に、受容体の最終的な配座を使用して、最初に適用されたのと同じ装置で新しいドッキング計算を実行した。
【0134】
計算は成功し、薬物受容体複合体の構造が、試験された薬物について得られた。
【0135】
受容体薬物複合体の分子動力学(MD)シミュレーション
次に、薬物、受容体、及び膜によって構成される系を、MDによって1μ秒間シミュレートした。本発明者らは、l-モラミド、d-イソメタドン、レボプロポキシフェン、デキストロメタドン、メマンチン、ケタミン、アマンタジン、デキストロメトルファン、PCP、MK-801、モルヒネとの複合体の軌道を生成した。N-メチルd-メタドンを使用したシミュレーションは不安定であり、構造を修飾せずにこの分子を結合するのが難しい可能性があることを示唆している。
【0136】
仮想事前スクリーニング
次に、l-モラミド、d-イソメタドン、レボプロポキシフェン、デキストロメタドン、メマンチン、ケタミン、アマンタジン、デキストロメトルファン、PCP、MK-801、モルヒネをドッキングするために使用される、得られた受容体モデルを使用して、新たに設計されたSMOの第1のセット、次にSMOの第2のセットを事前スクリーニングした。この目的のために、分子の2D化学構造を、すべての可能なプロトン化状態が計算された3Dモデルに変換した。すべてのリガンドを受容体の内部にドッキングさせ、それらの親和性をGlideScore-New York、NYのSchrodinger社のGlideソフトウェアに基づく、薬物-タンパク質相互作用の特定のスコアリング関数(https://www.schrodinger.com/glide )によってスコア付けし、Table 2a(表3)(SMOの第1のセット)、Table 2b(表4)(SMOの第2のセット)、及びTable 2c(表5)(選択された分子の最初のセット)に示した。
【0137】
【表3A】
【0138】
【表3B】
【0139】
【表3C】
【0140】
【表3D】
【0141】
【表3E】
【0142】
【表3F】
【0143】
【表3G】
【0144】
【表3H】
【0145】
【表3I】
【0146】
【表3J】
【0147】
【表3K】
【0148】
【表3L】
【0149】
【表3M】
【0150】
【表3N】
【0151】
【表3O】
【0152】
【表3P】
【0153】
【表3Q】
【0154】
【表3R】
【0155】
【表3S】
【0156】
【表3T】
【0157】
【表3U】
【0158】
【表3V】
【0159】
【表3W】
【0160】
【表3X】
【0161】
【表4A】
【0162】
【表4B】
【0163】
【表4C】
【0164】
【表5】
【0165】
次に、SMOの第1のセットについてランクの最高の10%でスコア付けされた薬物/受容体複合体を、MDシミュレーションによって10n秒の間シミュレーションした。最後に、受容体へのそれらの結合エネルギーを、MM-GBSAによって推定し、Table 3(表6)に報告した。
【0166】
有効な結合イベントは、結合状態と非結合状態との間の自由エネルギー(デルタG)の負の差によって常に特徴付けられる(すなわち、複合体の自由エネルギーは、単離されたリガンド及び標的について計算されたものよりも低い)。
【0167】
本発明者らの計算において、デキストロメタドンを含む-いくつかの分子は、負のデルタG値を有すると予測された。特に、試験された多くの新しい化合物のリガンド/受容体結合親和性-デルタG値で表される-は、FDAが承認した麻酔の臨床適応症を伴うNMDARでの活性で知られる薬物であるケタミンに対して得られた値と類似しているか、より負の値であった。開発されたタンパク質モデルで試験された異なる化合物について得られた、ケタミン及び他の参照分子に関する、より負のデルタG値は、薬物受容体相互作用における潜在的な違い、異なるオンセット/オフセット及びトラッピング値、並びにより有効な結合親和性を示唆しており、結果として異なる臨床効果を伴い、最終的には1つ又は複数の疾患により好適であり得る。SMOを用いた実験が進むにつれて、本発明者らは、選択された疾患及び状態に有利であることが証明され得る固有のPD及びPKパラメータを用いて各新しい分子を特徴付けることができる可能性が高い。
【0168】
【表6】
【0169】
前述のように、インビトロで興奮毒性保護モデルにおいて合成及び試験を受けるための新しい化合物を選択するために、本発明者らは、新しいインシリコNMDARモデルを開発し、MK-801(対照)、デキストロメタドン、及び新たに合成されたSMO(上記のTable 1a(表1)、Table 1b(表2)、Table 2a(表3)、Table 2b(表4)、及びTable 2c(表5)に記載及び示されているものを含む)を使用して予備検証研究を実施した。新たに設計及び試験されたインシリコSMOは、現在、インビボ実験試験の前に、合成及びインビトロでのさらなる試験を受けている。
【0170】
本発明者らがデキストロメタドンについて以下で論じるように、NMDAR調節以外の他の作用機序の寄与もまた有用であり得る。上述のように、NMDAR複合体での吸収、分布、代謝、排泄(PK)及び差次的作用の特定のPD特性(結合部位への親和性、「オンセット」-「オフセット」レート、及びトラッピングインデックス、-受容体薬物動態-及び結合機構-不競合的及び/又は非競合的、を含む)、並びにNMDAR遮断以外の薬物の他の作用機序は、非常に類似した薬物の最小限の分子構造修飾の後でも変化する可能性が高く、したがって、これらの小さな修飾は、同じ疾患の中で-疾患の異なる段階を含む-、又は細胞の老化を含む異なる疾患及び状態に対して特定の利点を提供する場合がある。この概念はほとんどの薬物に当てはまり得るが、本開示全体で概説されている複雑さ、例えば、複数の作用を有する薬物、例としてデキストロメタドン(以下に概説)及び同じファミリー内の他の薬物(オピオイド薬及びオピオイドエナンチオマー、例えばSMO等)等の複雑さ等のため、及び例えばこれらの遍在性で複雑なイオンチャネルの機能不全を伴う疾患及び状態の多様性等のため、並びに本発明者らによって以前に開示されたように、BDNFのアップレギュレーション等の細胞プロセスに対するデキストロメタドン及びおそらくSMOによって制御される他の機構の影響等のため、NMDARアンタゴニスト及び修飾薬に特に関係がある。NMDAR調節以外の機構の重要性を強調するために、実験モデル及びヒトの研究で抗うつ活性が実証されている既知のNMDARアンタゴニストであるケタミンは、オピオイドアンタゴニストと併用するとうつ病に効果がないことが最近判明し、このことは、ケタミンが、NMDAR及びドーパミン系の他に、オピオイド受容体も調節し得ること、及びケタミンがその抗うつ効果を発揮するためには、オピオイド系が機能している必要があることを意味している。
【0171】
現在、NMDARが制御不全である1つ又は複数の疾患の処置のための理想的なNMDAR修飾薬は、受容体が過剰に刺激される場合、したがってチャネルが数十ミリ秒より長く開いたままである場合-生理学的状態下で受容体の機能を維持するために、より顕著に(又は排他的に)、効果的であるが短命の開口チャネル遮断を提供する必要があり、したがって低い親和性、比較的遅い「オンレート」(通常の活動に干渉しないように)、及びトラッピングを回避するため、比較的速い「オフレート」(MK-801の場合のように副作用を引き起こさないように)を有するべきである、と思われる。理想的なNMDAR修飾薬は、非競合的アンタゴニズムによって作用する必要がある(受容体の過剰刺激が増加するとチャネル遮断が増加する、-換言すれば、例えばLTP、学習、記憶形成中に、NMDARの過剰刺激のレベルが増加すると、一定レベルの薬物がより活性になり、一方でNMDARの生理学的神経伝達への干渉を最小限に抑える)。ある特定の疾患では、受容体の細胞位置(シナプス、シナプス周囲、又はシナプス外)又は神経伝達経路に沿った受容体の位置(シナプス前又はシナプス後)と同様に、特定の受容体サブタイプに対する優先的活性も有用な場合がある。他の疾患の場合、特定の薬物が特定のニューロン亜集団又はニューロン回路上で特に活性を示す場合があり、MNDARは疾患のために活動亢進する場合があり、これにより薬物の疾患選択性が高まる。デキストロメタドンは、好ましいPKと安全性及び忍容性を含む、理想的なNMDARアンタゴニストを特徴付ける基本的な特徴を有するように見えるが、異なる疾患及び同じ疾患の異なる段階は、デキストロメタドン分子の特定の構造変化から又は他のオピオイド及びそれらのエナンチオマーの構造変化から恩恵を受け、したがってデキストロメタドンの作用と類似しているが同一ではない作用を有する新規の化学物質をもたらす場合があり:これらの構造変化により、選択された疾患及び患者の亜集団に対する安全性及び有効性のプロファイルが改善される場合がある。
【0172】
したがって、上で詳述したように、選択された疾患及び患者変数に関連するいくつかの特定の状況下で、現在承認されているNMDARアンタゴニストよりも優れた治療剤であることが証明される可能性のあるNMDAR調節効果を有するデキストロメタドン様薬物(SMO)のプラットフォームを開発することは、場合により有用である。これらの新規分子は、デキストロメタドン又は他のオピオイド及びそれらのエナンチオマーといくつかの構造的特徴を共有する場合があるが、デキストロメタドン開発プログラムとは別に、新しい化学式の設計から始まり、新しい分子モデリングアッセイでの試験、新しい合成方法の開発及び分子の合成、並びにインビトロ及び次にインビボの新しい一連の実験作業、及びその後第1相安全性試験から始まる完全な臨床フェーズが続く、完全な医薬品開発プログラムによって特徴付けられる必要がある、異なるPK及びPD特性を有する、事実上の新しい分子実体であることを理解する必要がある。
【0173】
述べたように、NMDARアンタゴニストは、多様な疾患の治療剤としてのそれらの大きな可能性について認識されることが増加している。アマンタジンはパーキンソン病に効果的であり;構造的にアマンタジンに類似しているメマンチンは、中等度から重度のアルツハイマー病に効果的であり;デキストロメトルファンは、偽性球麻痺における情緒不安定を制御するのに効果的であり;ケタミンは麻酔薬として及びうつ病の実験モデルにおいて効果的であり、エスケタミンは治療抵抗性うつ病の患者のためにFDAによって承認されていることが知られている。
【0174】
ケタミン及びメマンチンは、シナプスタンパク質合成に影響を及ぼし、実験環境においてある特定のニューロン集団におけるシナプスの数を増加させることが示されており、したがって、これらの薬物は、ニューロンの可塑性において役割を果たす可能性が高い。これらの効果は、ある特定の疾患に有益な場合があり:例として、ケタミンは、重度の発達障害であるレット症候群の実験モデルで効果的であることが最近証明された(Patrizi A、Picard N、Simon AJ、Gunner G、Centofante E、Andrews NA、Fagiolini M。Chronic Administration of the N-Methyl-D-Aspartate Receptor Antagonist Ketamine Improves Rett Syndrome Phenotype. Biol Psychiatry. 2016年May 1;79(9):755~64頁。doi: 10.1016/j.biopsych.2015年08.018. Epub 2015年Aug 24)。
【0175】
デキストロメタドンはまた、うつ病のラットモデルにおいてGluR1及びPSD95のレベルを増加させることが見出され(これに関するデータは、「うつ病及び他のCNS障害の処置のためのNMDARアンタゴニストd-メタドンの開発」と題され、以下のセクションに示されている)、これらの効果は、本開示の対象となる選択されたSMOによって、さまざまなレベルの活性で場合により共有され得る。
【0176】
うつ病及び他のCNS障害の処置のためのNMDARアンタゴニストd-メタドンの開発
その点に関して、NMDA受容体(NMDAR)修飾薬は、米国特許第9,468,611号、国際特許出願番号PCT/US2018/016159において発明者によって以前に開示されたように、大うつ病性障害を含むいくつかの中枢神経系(CNS)障害の処置のための潜在的な薬剤である。更に、ラセミメタドン並びにその立体異性体であるl-メタドン及びd-メタドンは、確立されたNMDARアンタゴニストと同様の親和性でNMDARに結合するが、l-メタドン及びラセミメタドンのみが高い親和性でオピオイド受容体に結合する。D-メタドンは、そのNMDARアンタゴニズムによって媒介される治療用量で、臨床的に有意なオピオイド効果を有さないことが本発明者らによって見出された(以下の「臨床研究」という題されたセクションで詳述されるSAD及びMAD研究)。
【0177】
その背景を念頭に置いて、本発明者らは、抗うつ活性を評価するために一般的に使用される異なる行動動物モデルにおけるd-メタドン及びケタミンの効果を比較するいくつかの前臨床研究を実行した。これらには、強制水泳試験、雌の尿におい嗅ぎ試験、及び新奇抑制性摂食試験が含まれる。本発明者らはまた、慢性予測不可能ストレス(CUS)プロトコルに曝露されたラットに対するd-メタドン及びケタミンの両方の効果の行動分析を実施した。
【0178】
前述の試験のすべてにおいて、ケタミンのように、d-メタドンは、ビヒクル処置動物に対する薬物処置動物において有意な改善をもたらした。加えて、本発明者らは、シナプス可塑性に決定的に関与するシナプスタンパク質及び受容体の発現に対する正の効果を観察した。これらの生化学的効果にはまた、電気生理学の好ましい変化が並行していた。
【0179】
図1は、FSTにおける不動、よじ登り及び水泳計数に対するケタミン及びd-メタドンの効果を示す。データは平均±SEMを表す。不動の場合:ANOVAにより、ビヒクル群と比較して、ケタミンの場合は*p=0.0034、d-メタドン10mg/kgの場合は0.0007、d-メタドン20及び40mg/kgの場合は<0.0001。よじ登りの場合:ビヒクルに対してd-メタドン40mg/kgの場合は*p<0.05。水泳の場合:ANOVAにより、ビヒクルに対して、ケタミン及びd-メタドン10mg/kgの場合は*p<0.05、d-メタドン20mg/kgの場合は<0.0001、及びd-メタドン40mg/kgの場合は0.0003。
【0180】
図2A図2Eは、雌の尿におい嗅ぎ試験(「FUST」)及び新奇抑制性摂食試験(「NSFT」)に対するd-メタドン及びケタミンの影響を示す。図2Aには、ラットの投与及び試験のスケジュールが示され、このスケジュールにより、d-メタドン又はケタミンが投与され、その後、種々の試験に供された。図2Bは、24時間後にFUSTにおいて試験されたラットを示す。図2Cは、2日後に自発運動(LMA)について試験されたラットを示す。図2Dは、72時間後にNSFTについて試験されたラットを示す。また、図2Eは、ホームケージ給餌を表している。結果は,平均±S.E.M.FUST:1元配置ANOVA、F3,42=3.26、p=0.031;フィッシャーのLSD法:Veh x Met、p=0.025;Veh x Ket、p=0.046;n=9~12/群。NSFT:1元配置ANOVA、F3,27=4.87、p=0.008;フィッシャーのLSD法:Veh x Met、p=0.035;Veh x Ket、p=0.005;n=7~8/群。
【0181】
図3A~3Eは、単一用量のD-メタドンが、慢性予測不可能ストレス(「CUS」)曝露によって誘発される抑うつ行動を予防することを示している。図3Aは、CUSプロトコル、薬物投与、及び行動分析の時間経過を示す。D-メタドン及びケタミンは、図3B[スクロース嗜好性試験(SPT)(F3,45=2.99)]、図3C[FUST(F3,46=5.43)]、及び図3D[NSFT(F3,46=6.79)]において、CUSの行動への影響を予防した。水のにおい嗅ぎ又は(図3E)ホームケージ餌の消費量に差は見られなかった。結果は、平均±S.E.M.、n=9~15/群である。P<0.05、一元配置ANOVA及びダンカン事後検定。
【0182】
図4A及び図4Bは、mTORC1シグナル伝達及びシナプスタンパク質に対するd-メタドンの影響を示す。ラットにd-メタドンを投与し、mTORC1シグナル伝達タンパク質及びシナプスタンパク質のレベルを、PFC及び海馬において調査した。
【0183】
リン酸化タンパク質のレベルは総タンパク質に対して標準化され、シナプスタンパク質のレベルはGAPDHに対して標準化された。結果は、平均±S.E.M.、n=10~12/群である。ビヒクルと比較してP<0.05(スチューデントのt検定)。
【0184】
臨床研究
国際特許出願番号PCT/US2018/016159に詳述されているように、本発明者らはまた、2つの第1相二重盲検、ランダム化、プラセボ対照、単一及び複数用量漸増(SAD及びMAD)研究において健康なオピオイド未経験の志願者におけるd-メタドンの安全性、忍容性及び薬物動態(PK)プロファイルを調査した。
【0185】
単一用量漸増(SAD)研究は、並行群、二重盲検、プラセボ対照設計を含んでいた。この研究の目的は、単一用量投与のPK、PD、及び安全性を確立することであった。投与には、5、20、60、100、150、200mg及びN=42のコホートが含まれていた。SAD試験の結論は、以下の通りであった:(1)最大耐量(MTD)=150mg(単一用量);(2)PKは、Cmax及びAUC0,1if対用量の線形比例を実証した。(3)150mgまでのデキストロメタドンの臨床的に有意なオピオイド効果はない。
【0186】
複数用量漸増(MAD)研究の目的は、PK、PD、及び1日1回、10日間投与の安全性を確立することであった。投与には、25、50、75mg及びN=24のコホートが含まれていた。MAD試験の結論は、以下の通りであった:(1)1日あたり75mgまでの用量は十分に許容され、(2)1日目に単一用量パラメータCmax及びAUCtauに対し、10日目に定常状態パラメータCmax、AUCtau、及びCssに対して用量比例性が実証された。
【0187】
したがって、d-メタドンは、ほとんどの単一用量及び複数用量パラメータに対して用量比例性を伴う線形PKを示した。150mgまでの単一用量及び75mgまでの10日間の1日用量は、ほとんどが軽度の処置緊急有害事象で十分に許容され、重篤又は重大な有害事象はなかった。試験された用量で、d-メタドンは、解離性又は精神異常性の有害事象、臨床的に関連するオピオイド効果、及び突然の中止による離脱の兆候又は症状を引き起こさなかった。
【0188】
2、6及び10日目に、MAD研究の25mgコホートからの脳由来神経栄養因子(BDNF)血漿レベルを、処置前及びd-メタドン25mg(6人の患者)又はプラセボ(2人の患者)投与の4時間後に試験した。図5A及び図5Bを参照すると、d-メタドン処置群では、6人中6人の対象が、処置前のレベルと比較してd-メタドン処置後のBDNFレベルの増加を示し、処置後10日目のBDNF血漿レベルは、処置前のBDNFレベルの2倍~17倍の範囲であった。対照的に、2人のプラセボ対象では、BDNF血漿レベルは変化しないままであった。2日目及び10日目に測定された血漿BDNFレベルは、プラセボ対象が分析に含まれている場合、d-メタドンの血漿レベルと有意に相関していた。これらのデータは、国際特許出願番号PCT/US2018/016159にも詳細に示されていた。
【0189】
要約すると、これまでに収集された証拠は、うつ病及びNMDAR調節が潜在的な処置のための有効な作用機序となり得る他のCNS状態におけるd-メタドンの開発を支持し続けている。
【0190】
上記の「うつ病及び他のCNS障害の処置のためのNMDARアンタゴニストd-メタドンの開発」の情報に加えて、MK-801ではなくデキストロメタドンが、NMDAR1をコードするmRNAの発現を増加させることが見出された(以下の実施例と図10を参照のこと)。神経可塑性イベントは、これら2つの薬物、すなわちケタミン及びd-メタドンの共有NMDARアンタゴニスト活性の下流効果である可能性が高いが、ヒト脳内のオピオイド薬(SMO)に由来する異なるNMDARアンタゴニストによって誘発される神経可塑性の程度及び結果及び部位はこの群のさまざまな化学物質間で異なる可能性が高く、したがって、場合により1つの特定のNMDARアンタゴニスト/修飾薬のみ(及びこの開示の目的のために、開示された多くのSMOの中で1つの特定の新しい化学物質のみ)が、1つ又は複数の選択された疾患及び状態に対する有効な薬物として効果的かつ完全な開発を証明し得る。
【0191】
最近の論文(Frank RAW1、Zhu F2、Komiyama NH2、Grant SGN2。Hierarchical organization and genetically separable subfamilies of PSD95 postsynaptic supercomplexes. J Neurochem. 2017年Aug;142(4):504~511年。doi: 10.1111/jnc.14056. Epub 2017年Jul 25)は、シナプスプロテオーム内のNMDARの超分子組織、およそ1000のタンパク質で構成されるシナプス後肥厚について説明している。NMDAR複合体はそのイオンチャネルサブユニットによってのみ形成される0.8MDaのヘテロ四量体であるが、NMDAR超複合体は、例えば他のイオンチャネル、受容体、接着タンパク質、シグナル伝達タンパク質、足場タンパク質等、約50の異なるタンパク質に結合したNMDAR受容体を含む1.5MDaの集合体である。興味深いことに、NMDAR複合体はジヘテロテトラマー(GluN1-GluN2A及びGluN1-GluN2B)又はトリヘテロテトラマー(GluN1-GluN2A-GluN2B)であり得るが、NMDAR超複合体は、GluN2Bジヘテロテトラマー及びトリヘテロテトラマーのみを含有する(GluN2Bのカルボキシ末端細胞質内テールは、PD95-PD93サブユニットとともにNMDA超複合体会合に不可欠である)。NMDARジヘテロテトラマーGluN1-GluN2Aに対してより選択的である薬物は、NMDA超複合体に影響を与える可能性が低く、したがって、アマンタジンと比較したメマンチンのように、及びデキストロメタドンと比較した重水素化デキストロメタドン(国際特許出願番号PCT/US2018/016159)のように、GluN2Bサブユニットと会合したNMDARに対してより活性な薬物と比較して、特異なPD効果を有する。
【0192】
更に、上記の「うつ病及び他のCNS障害の処置のためのNMDARアンタゴニストd-メタドンの開発」に記載されたデータは、デキストロメタドンが、GluR1の増加以外に、うつ病のラットモデルにおいてPSD95を増加させることを示した。これらの知見は、デキストロメタドン及び場合により他のSMOの作用がNMDAR複合体に限定されず、AMPA受容体にも影響を及ぼし、NMDAR超複合体にも関与することを示唆している。PSD95は、PSD93及びGluN2Bとともに、超複合体内のNMDARのサブセットの組織化を説明する3者間法則のプレーヤーであり(Frank RAW及びGrant SGN、2017)、したがって、本発明者らによって開示されたデキストロメタドン処置ラットで見られるPD95のこの増加、及びデキストロメタドンによって誘発されるNMDAR1をコードするmRNAの発現の増加に関するインビトロデータ(以下の実施例及び図10を参照)は、デキストロメタドンのような薬物の生化学的結果及び神経可塑性の可能性、並びに本開示の対象であるSMOの群における新しい化学物質の神経可塑性の可能性に追加の洞察を提供し、最終的には、本出願で定義されているように、疾患及び状態の処置に場合により有効な薬物へと開発するためのNMDARアンタゴニスト(SMO)のこの新規ライブラリーの可能性をより良好に定義する。
【0193】
デキストロメタドンは、現在、うつ病、レット症候群、レストレスレッグス症候群、筋萎縮性側索硬化症、眼疾患、及び他の潜在的な適応症を含むいくつかの適応症について前臨床及び臨床試験を受けている。デキストロメタドンはこれらの適応症の1つ又は複数に有効であることが証明される場合があるが、1つの適応症にのみ有効である可能性がある。デキストロメタドン分子の構造修飾又はNMDAR活性を有する別のオピオイド又はオピオイドエナンチオマーの構造修飾(SMO)は、NMDAR又は他の部位でも追加の特異な効果を場合により提供するための選択肢であり(以下の「SMOのための他の治療標的」を参照のこと)、デキストロメタドンと比較して、さまざまな疾患及び患者集団に対する潜在的な治療効果がある。
【0194】
SMOのための他の治療標的
列挙された特許及び特許出願において発明者によってすでに開示されている、NMDA受容体でのその活性、並びに本出願で提示されたデータによって示された、AMPA受容体、NMDAR1、PD95等のシナプスタンパク質のアップレギュレーションを含むその下流の結果以外に、デキストロメタドンは選択された疾患に対し治療的である場合がある他の作用も発揮する:デキストロメタドンは、ノルエピネフリントランスポーター(「NET」)系及びセロトニントランスポーター(「SERT」)系を阻害する(Codd EE、Shank RP、Schupsky JJ、Raffa RB。Serotonin and norepinephrine uptake inhibiting activity of centrally acting analgesics: structural determinants and role in antinociception. J Pharmacol Exp Ther. 1995年Sep;274(3):1263~70頁);デキストロメタドンは、脳由来神経栄養因子(「BDNF」)等の神経栄養因子に影響を与えてアップレギュレートし、テストステロン等の生殖ホルモンを調節する(International Patent Application No. PCT/US2018/016159);それは、K+、Ca2+及びNa+細胞電流に対する作用を発揮する(Horrigan FT1、Gilly WF。Methadone block of K+ current in squid giant fiber lobe neurons. J Gen Physiol. 1996年Feb;107(2):243~60頁);デキストロメタドンは、ヒトの血圧及び場合により血糖値をダウンレギュレートする(国際特許出願番号PCT/US2018/016159)。したがって、デキストロメタドンは、1つ又は複数のNS、内分泌、代謝、栄養及び老化のプロセスの処置に潜在的な役割を果たす。最後に、デキストロメタドンは、さまざまなオピオイド受容体サブタイプで軽度のオピオイド作動活性を発揮し(Coddら、1995)、これらの効果は、オピオイドの副作用に関しては軽度でありかつ有意ではないが、代わりに疾患特異的利点を提供する場合があり(Bernstein G、Davis K、Mills C、Wang L、McDonnell M、Oldenhof J、Inturrisi C、Manfredi PL、Vitolo OV。Characterization of the Safety and Pharmacokinetic Profile of D-Methadone, a Novel N-Methyl-D-Aspartate Receptor Antagonist in Healthy, Opioid-Naive Subjects: Results of Two Phase 1 Studies J Clin Psychopharmacol. 2019年May/Jun;39(3):226~237頁)、例えば、オピオイド効果は、ケタミンで見られたように、オピオイドアンタゴニストを併用して投与した場合、抗うつ作用を発揮できないうつ病等のある特定の疾患の場合、又は弱いオピオイド効果でも治療上の利点を表すことがある疼痛性障害の場合、重要であり得る。
【0195】
SMOは、デキストロメタドンについて上記に列挙された効果のうちのあるものは保持するが、他のあるものは保持しない場合があり、又は完全に異なる効果を有する場合があり、これは、薬物開発プログラムの一部として完全に明らかにされ、これらの効果は、1つ又は複数の疾患の処置に選択的に有益な場合がある。
【0196】
実際、NMDAR複合体を調節することによって治療効果を発揮することができる多数の臨床適応症のためにすでに臨床使用されている他の薬物もあり得るが、この作用機序はこれらの薬物についてまだ認識されておらず、それらの臨床効果は他の機序に起因する場合がある。アマンタジンは、さまざまな機序で治療作用を発揮する可能性が高いNMDARアンタゴニストである。一例として、長年にわたり、パーキンソン病におけるアマンタジンの作用機序はドーパミン作動性又は抗コリン作動性であると考えられており;現在、NMDARアンタゴニズムは、アマンタジンの抗パーキンソン効果の重要な機序として認識されている。アマンタジンのNMDAR効果はパーキンソン病での有効性にとって重要であり得るが、その「その他の」効果であるドーパミン作動性又は抗コリン作動性を完全に無視することはできず、複数の作用機序がパーキンソン病に対するアマンタジンの治療利益に寄与する可能性がある。
【0197】
治療標的としてのNMDARに影響を与える変数
以下は、あるSMOであって別のSMOではないものによって優先的に標的とされる可能性があり、したがって、1つ又は複数の疾患及び状態に対して使用するためのある特定の新規薬物であって別の新規薬物ではないものに対して好ましい治療プロファイルをもたらす可能性のある、場合により好ましい変数のリストである。この以下の変数のリストは、オピオイド及びオピオイドエナンチオマー(本出願で開示されているSMO)に由来する場合により安全かつ有効なNMDAR修飾薬のライブラリーに対する、本出願で対処される、満たされていない臨床的必要性を強調している:
(a)シナプス前NMDAR遮断対シナプス後遮断:どちらか一方に対してより選択的な薬物は、非常に異なる効果を及ぼす(Banerjee A、Larsen RS、Philpot BD、Paulsen O。Roles of Presynaptic NMDA Receptors in Neurotransmission and Plasticity. Trends in Neurosciences, 2015年Volume 39, Issue 1)。
(b)シナプス対シナプス外遮断:優先的なシナプス外遮断は、シナプス又はその近くで発生する生理学的ニューロン活動への干渉が少なく、興奮毒性をより良好に予防することができるため、シナプス遮断よりも有利な場合がある。一例として、メマンチンは、好ましくは、シナプス外NMDARを標的とし得る(Huei-Sheng Vincent Chen及びStuart A. Lipton。The chemical biology of clinically tolerated NMDA receptor antagonists. Journal of Neurochemistry, 2006年、97, 1611~1626頁)。
(c)イオンチャネル遮断の機構:例えば、非競合的対不競合的遮断:不競合的遮断によって、薬物が安定な濃度を維持している間、過剰刺激の増加とともに遮断を増加させることが可能になる。一例として、メマンチン(Chen及びLipton、2006)及びデキストロメタドンは、このタイプの遮断を発揮する可能性が高い。
(d) 選択されたニューロン集団の細胞膜上及び細胞膜の異なる領域上の、AMPA受容体を含むNMDAR及び他のグルタメート受容体の数及び位置(発現)(デキストロメタドンは、うつ病のラットモデルでGluR1を増加させ、網膜細胞でNMDAR1をコードするmRNAを増加させる):ある特定のニューロン集団及びある特定のニューロン回路に対して、さまざまな薬物がより選択的であり得る(Hansenら、2018)。
(e)特定の瞬間における開口型及び閉鎖型イオンチャネルの相対数及び活動亢進(興奮毒性を誘発するリスクがある)NMDAチャネルの数及び位置(Hansenら、2018)。
(f)薬物が受容体をオン及びオフするタイミング(オンセット、オフセット、トラッピング、及び「フットインザドア」の概念)、また、開状態又は閉状態におけるNMDAR及び他のイオンチャネル型グルタメート受容体(glutamate inotropic receptors)の相対数に関連するもの。
(g)受容体に対する薬物の親和性。親和性の改善により、トラッピングに関連していない場合、より少ない、より良好な許容される用量が可能になる場合がある。
(h)NMDARサブタイプを含む受容体に対する薬物の選択性、更にはNR1、NR2A-D、NR3A-B等のサブタイプ内の遺伝的及び後成的に決定されたバリアンス(Low及びWee、2010)。受容体サブユニット組成に基づいてNMDAR活性を調節する薬物の活性レベルの改変は、患者が特定の年齢である間に有効な薬物を設計する上で重要であり、子供対成人のADHDにおけるその潜在的な有効性を変化させる可能性がある。更に、超複合体において組織化したNMDARの優先遮断(超複合体において組織化したNMDARにはNR2Bが必要である-三者間の法則)も、選択された疾患に有利である可能性がある。PD95超複合体のおよそ3%にNMDARが含まれている(Frankら、2017)。発見されたデキストロメタドン誘発性のPD95の増加(上記の「うつ病及び他のCNS障害の処置のためのNMDARアンタゴニストd-メタドンの開発」からのデータ、並びに図1図5、及び特に図4B)は、超複合体の一部であるNMDARに対するデキストロメタドンの特異的効果を示唆している。超複合体内のNMDARに対する薬物の活性も、そのPKパラメータの因子である場合があり、例えば、有利な分配係数を有する薬物(デキストロメタドンのフルオロ誘導体等)は、超複合体のNMDAR部分に到達する能力が高い場合がある。
(i)遺伝的、環境的、又は遺伝的+環境的トリガーによって引き起こされる活動亢進NMDARを伴う選択されたニューロン集団及び回路に対する薬物の活性。
(j)選択された脳領域、ニューロン亜集団、脳回路における薬物の活性。
(k)中等度及び重度のアルツハイマー病の処置のためであり、初期のアルツハイマー病のためではない、メマンチンの使用によって例示されるような、同じ疾患の異なる段階を含む、選択された病理学的状態における薬物の活性。
(l)選択された疾患に有益であることが証明され得る、吸収、分布、代謝、排泄における改変。
(m)NMDAR以外の標的に対する特定の新規薬物の活性によって、この新規薬物は、パーキンソン病に対するアマンタジン、及び場合によりうつ病の処置のためのデキストロメタドンにより例示されるような、ある特定の疾患に対するより良い処置選択肢となる可能性がある。
(n)適切に設計及び実行された薬物開発プログラムの進歩のみが、場合により治療的NMDAR修飾作用を有するオピオイド薬に適用された特定の構造修飾が、PK及びPDの利点をもたらし、より具体的には特定の疾患に有利であることが証明され得る新薬とNMDAR間の相互作用の変化をもたらすかどうかを最良に特徴付けることができる[他の修飾の中でも、デキストロメタドン及び場合により他のSMO等の、NMDAチャネル細孔を標的とする薬のニトロ誘導体は、PCP部位の外部機構、例えばNMDARサブユニットのS-ニトロシル化、によって追加のNMDA調節を発揮する場合がある(Tomohiro Nakamura及びStuart A. Lipton。Protein S-Nitrosylation as a Therapeutic Target for Neurodegenerative Diseases. Trends in Pharmacological Sciences, January 2016年、Vol. 37, No. 1 ; Stamlerら、米国特許第5593876A号; Inturrisi、CE. NMDA receptors, nitric oxide and opioid tolerance. Regulatory Peptides, 1994年、Volume 54, Issue 1)。しかし、SMOを含むNMDARアンタゴニスト薬のニトロ誘導体が、それ自体特定の疾患に有効であることが証明された場合、この治療効果は上記の理論的機構[NO誘発チャネル閉鎖を伴う過活性NMDARのタンパク質チャネル(NMDARサブユニット)S-ニトロシル化]に由来する場合があること、又はそれは、完全に別の理由、S-ニトロシル化とは無関係のNMDA受容体細孔チャネルでのオンセット/オフセットの改善を含む、本開示全体で概説されている複数の理由の1つである可能性があること、を考慮すべきである。本発明者らには、チャネル遮断のレベルを単に上昇させることが必ずしも治療上有利であるとは限らないことがすでに分かっている(MK-801、PCP及びケタミンは、不利な副作用をもたらす「より強力な」「トラッピング」NMDAR遮断を提供する薬物の例である)。一方、PK及びPD機能の変化を決定する選択されたオピオイド薬の分子構造の変化は、選択された疾患に有利であることが証明される場合があり、したがって、オピオイドの他の可能な構造修飾の中でも、フルオロ誘導体及びニトロ誘導体の合成により、新規の場合により有効なNMDARが生じる場合がある。更に、反応性ラジカル、活性酸素種(ROS)及びRNSは細胞代謝の正常な成分であるが、これらのタイプのラジカルの過剰産生によって、細胞がそれらを制御できなくなり、このことは酸化還元の不均衡及び酸化ストレスの形成につながる。NMDAR活性、したがってNMDARに対する指向性を有するオピオイド薬のニトロ誘導体は、これらの反応性ラジカルの生成を制御し、細胞の損傷を予防又は減少させる場合がある。
(o)上記で概説したCNS外のNMDARでの活性、及びBBBを通過せず、PNS内のニューロン(感覚ニューロン又は自律神経ニューロン等)上、又はNMDARの調節が治療的又は予防的利益をもたらす場合がある膵臓細胞若しくは心臓細胞等の非ニューロン細胞上で活性となり得るSMOの設計への影響。
【0198】
本発明者らは、フルオロ誘導体及びニトロ誘導体及びフルオロ-ニトロ誘導体並びにそれらの重水素化形態をもたらす構造修飾等の構造修飾(SMO)の後、ベースラインNMDAR調節能を有する選択オピオイド薬が、上記の理由及び機構のうちの1つ又は複数のために、NMDAR機能不全によって悪化した特定の疾患及び状態に対する医薬品開発プログラムの潜在的な候補であることを開示する。したがって、膜貫通ドメイン及び/又は細胞外ドメインを含む、NMDARでの潜在的な調節作用を有するSMOの設計及びPK及びPDの特徴決定が、本開示の目的である。
【0199】
星状細胞及びNMDAR:星状細胞の形態及び遺伝子発現は、場所、局所的な接触、及び微小環境に応じて大きく異なる。星状細胞は、双方向及び一方向のトランスポーターを介してシナプスのグルタメート濃度の重要な制御を提供する。星状細胞はまた、グルタメート作動性及びGABA作動性介在ニューロンを含むニューロンと接続し、神経伝達物質レベルを制御することによってニューロンの活動を制御する。更に、星状細胞はギャップ結合を介してネットワーク内で互いに接続している。デフォルトモードネットワーク及び最終的には意識等の複雑な脳活動は、逆ではなく、ニューロン活動の星状細胞による制御に関連している場合がある。更に、星状細胞はNMDARの7つのサブタイプすべてを発現する(Ming-Chak Lee; Ka Ka Ting; Adams Seray。Characterisation of the Expression of NMDA Receptors in Human Astrocytes. PLoS One, 11/2010年、Volume 5, Issue 11)。カルシウム流入研究は、グルタメートとキノリン酸の両方が星状細胞のNMDARを過剰に活性化し、細胞へのCa2+の流入及び機能不全、更には星状細胞の死をもたらす可能性があることを示している。グルタメート及びキノリン酸からの興奮毒性は、NMDARアンタゴニスト(MK-801及びメマンチン)により予防された。星状細胞NMDARは、CNSでのグリアシグナル伝達を促進する上でも重要な役割を果たす場合があるため、機能不全にならないことが重要である。それらのサブタイプを含む機能不全の星状細胞NMDARの調節は、場合により多数の疾患の処置に対する可能性を伴う治療標的を表す。NMDAR及びNMDARサブタイプに対する特異な活性、NMDAR遮断のオンセット/オフセット/トラッピングの違いを含む固有のPK及びPD、並びにニューロン又は星状細胞のNMDARの優先的遮断の潜在的な違い、並びに活動の時空間的違い(細胞、細胞集団、回路及び脳領域)、を伴うSMOは、ニューロンだけでなく星状細胞の機能不全のNMDARによって引き起こされる多数の疾患及び状態の処置に、場合により有用な新薬の開発のためのプラットフォームを提供する。
【0200】
神経可塑性:神経可塑性は、適切な発達、記憶形成及び学習に不可欠であり、最終的には、個人の認知機能、性格、行動及び気分を決定する。散発的又は遺伝的な遺伝性疾患は、通常の感覚刺激及び経験によって生成される異常な神経可塑性によって引き起こされる場合がある。異常な神経可塑性の一例は、レット症候群の実験モデルによって与えられる。このマウスモデルでは、発達の初期に、通常の視覚刺激が視力に悪影響を及ぼし(Patriziら、2016)、NMDARアンタゴニストであるケタミンがこれらの悪影響を予防し得る。遺伝的又は散発的な神経系の遺伝性疾患以外に、さまざまな毒素を含む1つ又は複数の特定の環境要因に関連して、ある特定の疾患に対する遺伝的に決定された素因(上記のG+E概念)が、異常なCNS可塑性を促進し、神経精神病を引き起こす可能性が高い。重度の遺伝性疾患(例えば、上述したレット症候群の動物モデル)が存在する場合、「有毒な」環境要因は、通常の感覚的経験(視覚刺激)である可能性がある。代わりに、対象に1つ又は複数の環境障害(environmental insults)に対する感受性の増強を示す遺伝的素因がある場合、これらの障害は、内因性毒素(例えば、キノリン酸)、又は食品(例:ポリアミンが豊富な食品、アルコール);又は薬物(例えば、アミノグリコシド及びシスプラチン)、又はグルタメートによって促進される興奮毒性の場合のように過剰量の神経伝達物質、又はNMDARに対する自己抗体等のように非常に多様であり得る。更に、これらの環境要因は、上記のように既知であり得るか、又は未知でもあり、まだ定義されていない、遺伝的素因の存在下でのみNMDARを介して神経可塑性に影響を与える要因であり得る。有毒物質による障害が十分に深刻な場合、それはほとんどの「正常な」個体における異常な神経回路を決定する。一部の神経精神病の場合、素因のある個体において引き金となる要因は、化学的又は物理的要因ではない場合があるが、PTSDの患者及びうつ病及び不安の一部の患者の場合のように、特にストレスの多い(有毒な)「生活経験」である可能性もある。
【0201】
細胞機能不全の引き金が何であれ、この機能不全がNMDAR及び/又はNO経路を介して媒介される場合、ニトロ-デキストロメタドン様の薬物は、臨床的に有用であることが証明され得る。本出願の発明者の1人であるCharles Inturrisiは、彼の1994年の論文(Inturrisi, CE. NMDA receptors, nitric oxide and opioid tolerance. Regulatory Peptides, 1994年、Volume 54, Issue 1)において、モルヒネの投与がどのように耐性及び痛覚過敏をもたらすか、及びNMDAR及びNO経路がモルヒネのこれらの副作用の発症にどのように関与するかを予測した。本発明者らは、本開示に示される新規のインシリコ試験結果に基づいて、及びNO又は硝酸エステル置換等の、オピオイドに適用される特定の構造分子修飾のために、潜在的なNMDARアンタゴニスト作用を有する新しい分子(SMO)のライブラリーをここに提示し、これらのSMOは、NMDAR及びNO経路に対して調節作用を有する場合がある。したがって、これらの新規分子は、NMDAR活性の調節及び/又はNO経路の調節が疾患及び状態の病態生理学的機構に関与している疾患の処置において、場合により役割を果たす。これらには、国際特許出願番号PCT/US2018/016159に開示されているすべての疾患及び状態、並びに本出願の最初の段落で定義されているすべての疾患及び状態が含まれる。
【0202】
本出願を通じて提示された新規の解釈に照らして、モルヒネ耐性及び痛覚過敏は、毒素(この場合はモルヒネ)によって誘発される異常な神経可塑性の所見として見ることができる。他の多くの化学物質(例えば、アミノグリコシド、シスプラチン、ドモイック酸、ポリアミン、キノリン酸等)又は物理的要因、例えば外傷若しくは脳放射線療法、又は電気けいれん療法(ECT)、更には音及びその他の感覚刺激、並びに多くの疾患及び状態等、例えば、NMDARの機能不全又はNO経路の機能不全によって引き起こされるか若しくは悪化する神経精神病等は、したがってデキストロメタドンニトロ誘導体によって改善される可能性がある。感受性の高い個体に異常な神経可塑性及び異常なNS回路をもたらす「有毒な生活経験」も、うつ病、不安神経症、PTSD、ADHD、統合失調症等の神経精神疾患に基づく又は寄与する場合がある(Chen及びBaran、2016)。
【0203】
オピオイド及びそれらのエナンチオマーのニトロ誘導体等の、NMDAR及びNO経路での調節活性を有する新しい化学物質(SMO)は、「毒性経験」又は上記の化学的若しくは物理的いずれかの要因によって引き起こされるか又は維持される、多数の神経精神障害の基礎になり得るこれらの異常な回路を予防又は改善し得る。本発明者らは、デキストロメタドンがヒトのBDNFレベルを増加させることを以前に発見し(国際特許出願番号PCT/US2018/016159)、本申請において、本発明者らは、デキストロメタドンがデキストロメタドンによって誘発されるNMDAR1をコードするmRNAの発現を増加させることを開示する(以下の実施例、及び図10を参照のこと)。NO経路の調節の可能性を伴うデキストロメタドン分子の構造修飾、例えば、デキストロメタドンニトロ誘導体は、親分子の神経可塑性の可能性を更に高め、したがって、1つ又は複数の疾患及び状態の処置のためのデキストロメタドンの治療的可能性を拡大する。
【0204】
更に、本出願に開示される新規化合物、特にデキストロメタドンニトロ誘導体、及びデキストロメタドンを含む一般的なNMDARアンタゴニストは、電気けいれん療法(ECT)を受けている患者に投与される場合に特に有用であり得る。ECTは、うつ病又はその他の神経精神疾患の症状を有する患者に現れる、異常な神経可塑性によって生成される異常な神経回路を中断し得る。これらの新規化合物であるSMOは、単独療法として、又は他の薬物、ECT、或いは心理療法と組み合わせて投与された場合、正常な回路を回復して保存するのに役立つ場合がある。オピオイドニトロ誘導体を含むSMO、及びECTに加えて、心理療法は、ECT又は他の形態の治療中及び治療後の健康な神経回路の回復及び保存においてSMOを支援する可能性があるため、第3の有用な処置群となり得る。
【0205】
現在の開示の申請者の1人であるCharles Inturrisiによる1994年の声明、「全体として、これらの結果は、ミュー耐性がNMDA受容体又はNOSのいずれか(又は両方)で調節される可能性があり、これら2つのシステムが新薬の開発に使用される標的であり得ることを示唆する。」(Inturrisi, CE. NMDA receptors, nitric oxide and opioid tolerance. Regulatory Peptides, 1994, Volume 54, Issue 1)は、本出願全体で提示された新しいデータによって裏付けられ、ここで、オピオイドニトロ誘導体を含む、SMOに対して、モルフィン誘発性の異常な神経可塑性によって引き起こされるミューオピオイド耐性だけでなく、多数の疾患及び状態に対して、適用できるようになった。したがって、デキストロメタドンニトロ誘導体を含むSMOは、NMDAR機能障害及び/又は多数の原因による異常な神経可塑性を標的とし得る。
【0206】
オピオイド及びSMOのオンターゲット、オフターゲット、及び混合オン/オフターゲット効果
本出願に記載されるようなNMDAR及びそれらのサブタイプ及びバリアンスの多様性、並びに一酸化窒素経路、並びに本出願全体に詳述される他の受容体及び系における作用を標的とすること以外に、本発明者らはまた必要に応じて、各SMOの関連するオフターゲット部位での作用を決定及び特徴付けする。特に、本発明者らは、それらのオピオイド受容体活性の観点からSMOを検討し、これらの受容体に対してより低い親和性を有する分子、又はいろいろなオピオイド受容体サブタイプに対しより特異的な活性を含む、場合により好ましい部分アゴニスト又は混合アゴニストアンタゴニスト活性を有する分子を選択し、強力なミューオピオイドアゴニストと比較して好ましい臨床的忍容性プロファイル、及び更には有効性を改善する可能性を追求し:例えば、新しいSMOが、NMDAR開口チャネル遮断薬として機能する以外に、カッパオピオイドアンタゴニストでもある場合、うつ病の処置に追加の治療効果を提供し得る(Lowe、Stephen L、Wong、Conrad J、Witcher、Jennifer。Safety, tolerability, and pharmacokinetic evaluation of single - and multiple - ascending doses of a novel kappa opioid receptor antagonist. The Journal of Clinical Pharmacology, 09/2014, Volume 54, Issue 9)。
【0207】
オピオイド受容体以外に、カリウムチャネルは、開発プログラム中に研究される別の潜在的なオフターゲット作用部位を提示する:QT延長に関連するカリウムチャネルを遮断する可能性がより少ないSMOが、開発プログラムに好ましい場合がある。しかし、デキストロメタドンについての国際特許出願番号PCT/US2018/016159に概説され、Wulffら、2009年(Wulff H、Castle NA、Pardo LA。Voltage-gated potassium channels as therapeutic targets. Nat Rev Drug Discov 2009年Dec;8(12):982~1001頁)に記載されているように、例えば、カリウムチャネル遮断効果が心臓病を引き起こさず、代わりに他の治療上の利点を提供する場合、オピオイド受容体と同様に、カリウムチャネルも標的作用部位を提示する可能性がある。
【0208】
SMOプログラム
University of Padova (Italy)及びthe Swiss Italian University (Switzerland)のthe Institute of Bioresearchと協力して、選択された適応症に最も適している可能性がある特定のPK及びPD特性を有する新規の安全かつ有効なNMDAR調節薬のライブラリーを開発する目的で、申請者らは、オピオイド受容体に対する親和性が低く、NMDARアンタゴニストの可能性があるオピオイドエナンチオマーを含む、SMOに由来する新しい化学式の設計を含む医薬品開発プログラムを実行した。NMDARでの潜在的な活性のために、及び/又はNO経路を標的とするために設計された新しい化学物質の第1のセットを、この出願に提示する(Table 1(表1))。次に、新たに設計された分子(SMO)を、NMDARの膜貫通ドメインの新しい静的及び動的インシリコモデルで試験した(Table 2a~c(表3~表5)及びTable 3(表6))。
【0209】
より有望な分子を選択した後、及び選択された分子の合成作業の完了後、本発明者らは、場合により臨床的に有用なNMDAR作用及び他の標的作用、並びに疾患の処置に場合により有用なオフターゲット作用を伴う、新しい分子の潜在的な安全性並びにPK及びPD特性を完全に特徴付け、定義するために、インビトロ及びインビボ実験作業を進めている。これらの新しい化学物質及び潜在的な新規薬物には、デキストロメタドン誘導体及びその他のオピオイド誘導体(SMO)が含まれる。
【0210】
インシリコ及びインビトロで潜在的に有利なNMDARサブタイプ結合親和性をもたらす構造修飾はまた、構造活性相関(SAR)について情報を与え、したがって、これによりさらなるインシリコモデルの改善及び新しい分子(SMO)の選択の改善が可能になる。このプログラムが進むにつれて、特定のNMDARサブタイプでトランスフェクトされた細胞の電気生理学的試験によりNMDARサブタイプでの特異な作用を定義しながら、本発明者らは、CNS細胞、並びに網膜細胞及び他の特殊な細胞を含む、他の細胞を含む興奮毒性及びイオンチャネル活動亢進の細胞モデルでのSMOの生物学的活性を確認している。本発明者らは、それらの疾患に関連する細胞特異的効果についての前臨床インビトロ試験のための特定の疾患を同定し(炎症性メディエーターにより処置された網膜細胞に関するインビトロデキストロメタドン研究-以下の実施例を参照のこと)、その後前臨床疾患モデルが続き(上記の「うつ病及び他のCNS障害の処置のためのNMDARアンタゴニストd-メタドンの開発」からのデータ、及び図1図5を参照のこと)、その後、最終的に、より有望な分子の開発の臨床段階に到達する(例えば、進行中の治療抵抗性うつ病におけるデキストロメタドンの第2相臨床研究)。これらのSMOは、デキストロメタドン及び現在利用可能な他のNMDARアンタゴニストよりも、PK及びPDの利点を提供する可能性があり、NMDAR、NMDARサブタイプ、脳領域、ニューロン及び星状細胞の亜集団、並びに疾患や状態の影響を受けるCNS回路に対する選択性の改善を提供する可能性があり、上で詳述したように、最終的に疾患特異的な利点をもたらす空間的又は時間的又は全体的な受容体親和性の利点を提供する可能性がある。ニューロン集団とは別に、SMOの効果は、本出願に記載されているように、ニューロン外細胞集団及び回路において有用であり得る。
【0211】
本発明者らは、ある特定の重水素化デキストロメタドン分子が、デキストロメタドン及び他のNMDARアンタゴニストによって示される親和性とは異なる、NMDARサブタイプに対する親和性を場合により有しており(国際特許出願番号PCT/US2018/016159)、特に、パッチクランプ研究におけるNR2B受容体サブタイプに対するD9の親和性は、NR2Aに対する親和性と比較して2倍であったことを示し、及び以前に開示しており(国際特許出願番号PCT/US2018/016159)、したがって、上記で概説したように、重水素化及び他の構造修飾は、デキストロメタドン及びある特定の適応症用の他のNMDARアンタゴニストと比較して、場合により有利な薬物プロファイルをもたらすことがあり得る。デキストロメタドン分子のこの比較的小さな修飾(重水素化)により、本発明者らは、受容体サブタイプ(NR1-NR2A対N1-NR2B四量体複合体)に対するデキストロメタドンの相対的親和性に影響を与えることができ、本発明者らはまた、インビトロでPKパラメータを修飾することができた:本発明者らは、インビトロ代謝アッセイにおいてデキストロメタドン及び重水素化デキストロメタドンを試験し、重水素化が個々のインビトロ代謝アッセイの結果をどのように変化させるかを示した。本発明者らはまた、これらの結果を、デキストロメタドン及び重水素化デキストロメタドン(D9、D10、D16)と比較して有意に短い半減期を示したデキストロメトルファンを用いた同様の試験(国際特許出願番号PCT/US2018/016159)と比較した。デキストロメタドン及び/又はその重水素化及びトリチウム誘導体の構造を更に修飾することにより、本発明者らは、デキストロメタドン及び重水素化デキストロメタドンよりも、並びに他のオピオイド薬及び他のNMDARアンタゴニストよりも、選択された疾患に有益であることが証明され得るPK及びPD特性の改善の可能性を有する分子を設計及び試験している。この同じ原理(重水素化SMOは、潜在的なPK及びPDの利点を備えた新しい分子を生成することができる)は、フルオロ誘導体及びニトロ誘導体及びフルオロ-ニトロ誘導体、並びに重水素化フルオロ誘導体及びニトロ誘導体及びフルオロニトロ誘導体を含む、以下に開示するより実質的な構造修飾に、場合により更に大きく関連する。
【0212】
更に、本発明者らは、NMDA受容体のデキストロメタドンと同じ部位又はその近接(PCP部位)で作用する異なるNMDARアンタゴニスト(ケタミン、メマンチン、PCP)が、デキストロメタドン及びその重水素化誘導体と比較して、異なる受容体サブユニット複合体(例えば、NR1-NR2A又はNR1-NR2B、したがって他のサブユニットとの他の可能な組み合わせ)に対する異なる親和性を包含する、類似しているが異なる親和性でそれらの作用を発揮することを示した(国際特許出願番号PCT/US2018/016159)。
【0213】
NMDAR遮断の「トラッピング」、オンセット及びオフセットの違いは、PCPと比較して、PCPの構造修飾が、より低いトラッピング活性を有する薬物であるケタミンをもたらす(Zanosら、2018)ことで示されるように、並びにアマンタジンの構造修飾が、メマンチンにおいてNR1-NR2Bと比較してNR1-NR2Aに対する親和性がより低い薬物をもたらすことで示されるように、SMOにおいても予想される。NMDARのこの特異な遮断は、本開示の目的である各SMOに対して予想される。異なるSMO間のNMDARに対するこれらの特異な親和性は、場合により治療上の影響を有する。
【0214】
CNS疾患の負担は莫大であり、処置は少なく、多くの場合部分的にしか有効でない。選択された疾患に対する潜在的な治療上の利点を備えた新規の安全かつ有効なNMDAR修飾薬は、高度な満たされていない医学的必要性を代表している。
【0215】
上記に記載され、発明者らによって国際特許出願第PCT/US2018/016159に及びこの出願全体にわたって、若干詳細に示されているように、NMDAR修飾薬から利益を得る可能性のある文字通り数百の疾患があるが、FDAが承認したのは、NMDARの機能不全を共通の薬物標的として共有する疾患に対して、NMDARの膜貫通ドメインを標的とする4種類の薬物のみであり、そのうちの1つは併用薬である:アマンタジン、メマンチン、エスケタミン、及びデキストロメトルファン+キニジンの併用薬。FDAが承認した5番目のNMDAR修飾薬であるケタミンは、麻酔用に承認されているが、疾患及び状態の処置用には承認されていない。
【0216】
本発明者らは、新たに設計されたSMOが、国際特許出願番号PCT/US2018/016159に開示された疾患及び状態並びに本出願において定義されている疾患及び状態を包含する、NMDAR遮断又は調節が有益であり得る疾患及び状態を含む、1つ又は複数の特定の疾患及び状態に対する安全性及び有効性の可能性を有することを開示する。
【0217】
上記の「うつ病及び他のCNS障害の処置のためのNMDARアンタゴニストd-メタドンの開発」に記載されているFST、FUST、NFST、CUS及び免疫組織化学的及び形態学的及び電気生理学的データからの結果に基づいて-ケタミンと同様のデキストロメタドンの抗うつ効果及び神経可塑性効果を示唆し、デキストロメタドン及びSMOが、例えばあらゆる形態のうつ病、あらゆる形態の不安、PTSD、習慣性行動、薬物中毒等の精神疾患及び症状の処置に有用であり得るだけではなく、ストレスを予測して投与された場合、又は精神疾患若しくは症状の発症前のストレスの間に投与された場合、場合によりこれらの疾患及び症状を予防することができることを示唆する。神経可塑性を促進することによって、及びNMDAR、SERT、NET、及びBDNFの調節等の他の機構によって、デキストロメタドン及びSMOは、ストレスの多いイベント(CNS毒性の経験)に悩まされている生活期間に投与された場合、又はストレスの多いイベントが予測される場合、精神疾患及び症状の発症に対する回復力を高めることができ、したがって、デキストロメタドン及びSMOは、例えば、社会的ストレス、悲しみ、病気、経済的損失や死別を含む損失、夫婦や家族に関連するストレス、戦争、自然災害等の多数の原因による精神的ストレスによって引き起こされるものを含む、精神疾患及び症状の予防に有用であり得る。これは、Brachmanらによるケタミンの実験結果によっても裏付けられている。(Brachman RA、McGowan JC、Perusini JNら。Ketamine as a Prophylactic Against Stress-Induced Depressive-like Behavior. Biol Psychiatry. 2015年;79(9):776~786頁。
【0218】
開示された化合物のいくつかは、NO経路での活性を有する臨床的に許容されるNMDARアンタゴニストを得るという目的で、及び/又はCNS及びCNS外の選択された領域における特異な作用に基づく選択された疾患及び状態に対する特定の治療作用のそれらの可能性のために、特定のPKパラメータ(例えば、フルオロ誘導体、例えばDMD35、LMA9、DIMD6、LPP6、NMeDMD9及び上記の化合物の他の例に関する脂溶性、及びハロゲン化合物、例えばDAN-DMD38、DMD63、DMD41の脂溶性)のため、又はPDパラメータ(例えば、受容体サブタイプに対する潜在的な特異な作用及び親和性を含む、NMDARに対する特異な作用及び親和性のため、最適化された。-例えば、本明細書に開示されるSMOは、ニトロ誘導体、例えば、重水素化フルオロ及びニトロ誘導体を含む、ニトロDMD1、LMA8、DIMD8、NMeDMD8、の場合のように、NMDARでの追加の遮断作用及び追加の神経保護作用の可能性、或いは、さまざまな受容体及びトランスポーターでの追加の作用の可能性を有するものを含み、セロトニン及びNE、オピオイド及びDA及びGABA経路等の神経伝達物質の変化、BDNF等の神経栄養因子の変化、PD95等のシナプスタンパク質の変化をもたらし、したがって超複合体での特異な作用、又はGluR1及びNMDAR1での作用並びにその結果としての神経可塑性効果をもたらすものを含む。
【0219】
本発明者らは、ヒト及び動物の疾患及び状態の処置並びに予防のために、その塩を包含する、以下に概説する化合物であって、特に、NMDARサブタイプに対する特異な親和性を含む特定のPK及びPD特性を備えた、RNSに対する作用を含む、臨床的に許容され、有効なNMDAR修飾薬及びNO経路修飾薬が有益であり得るNMDAR機能不全又はNO経路での機能不全によって引き起こされる場合の、環境要因又は医学的治療によって引き起こされる加速老化の予防及び処置を含む、認知及び社会的機能の改善及び抗老化使用のためのものを含む、化合物を開示する。
【0220】
Table 1(表1、表2)に示される分子は、潜在的なNMDAR調節作用のために設計された。
【0221】
Table 2a(表3)及びTable 2b(表4)に示される分子は、NMDAR受容体NR2Bサブタイプでの潜在的活性を評価するための静的モデルにおいて、インシリコNMDAR親和性を示した。設計された各分子は、NMDAR及びその他の受容体での作用等、疾患の処置に場合により有用である独自のPK及びPD特性を有する。これらの化合物をTable 2a(表3)、Table 2b(表4)に示す。
【0222】
Table 3(表6)に示される分子は、NMDAR受容体NR2Bサブタイプでの潜在的活性を評価するための静的モデル及び動的モデルにおいて、インシリコNMDAR親和性を示した。設計された各分子は、NMDAR及びその他の受容体での作用等、疾患の処置に場合により有用である独自のPK及びPD特性を有する。これらの化合物を表3に示す。
【0223】
最後に、本発明者らは、本発明の種々の態様の原理による化合物の例として、以下の化合物を開示する:フルオロ-デキストロメタドンを含むデキストロメタドンフルオロ誘導体(-F);ニトロ-デキストロメタドンを含むデキストロメタドンニトロ誘導体(-NO2);フルオロ-ニトロ-デキストロメタドンを含むデキストロメタドンフルオロ-ニトロ誘導体;及びデキストロメタドンに対し上記のように修飾された重水素化デキストロメタドン誘導体(フルオロ-デキストロメタドンを含む重水素化デキストロメタドンフルオロ誘導体(-F);ニトロ-デキストロメタドンを含む重水素化デキストロメタドンニトロ誘導体(-NO2);及びフルオロ-ニトロ-デキストロメタドンを含む、重水素化デキストロメタドンフルオロ-ニトロ誘導体)。
【0224】
そのような化合物の一般的な例としては、デキストロイソメタドン誘導体も挙げることができ、例えば、フルオロ-デキストロイソメタドンを含むデキストロイソメタドンフルオロ誘導体;ニトロ-デキストロイソメタドンを含むデキストロイソメタドンニトロ誘導体;フルオロ-ニトロ-デキストロメタドンを含むデキストロメタドンフルオロ-ニトロ誘導体;及びデキストロイソメタドンについて上記のように修飾された重水素化デキストロイソメタドン誘導体、が含まれる。
【0225】
そのような化合物の一般的な例としては、N-メチル-デキストロメタドン誘導体も挙げることができ、例えば、フルオロ-N-メチル-デキストロメタドンを含むN-メチル-デキストロメタドンフルオロ誘導体;ニトロ-N-メチル-デキストロメタドンを含むN-メチル-デキストロメタドンニトロ誘導体;フルオロ-ニトロ-N-メチル-デキストロメタドンを含むN-メチル-デキストロメタドンフルオロ-ニトロ誘導体;及びN-メチル-デキストロメタドンについて上記のように修飾された重水素化N-メチル-デキストロメタドン誘導体、が含まれる。
【0226】
そのような化合物の一般的な例としては、レボモラミド誘導体も挙げることができ、例えば、フルオロ-レボモラミドを含むレボモラミドフルオロ誘導体;ニトロ-レボモラミドを含むレボモラミドニトロ誘導体;フルオロ-ニトロ-レボモラミドを含むレボモラミドフルオロ-ニトロ誘導体;及びレボモラミドについて上記のように修飾された重水素化レボモラミド誘導体、が含まれる。
【0227】
そのような化合物の一般的な例としては、レボプロポキシフェン誘導体も挙げることができ、例えば、フルオロ-レボプロポキシフェンを含むレボプロポキシフェンフルオロ誘導体;ニトロ-レボプロポキシフェンを含むレボプロポキシフェンニトロ誘導体;フルオロ-ニトロ-レボプロポキシフェンを含むレボプロポキシフェンフルオロ-ニトロ誘導体;及びレボプロポキシフェンについて上記のように修飾された重水素化レボプロポキシフェン誘導体、が含まれる。
【0228】
そのような化合物の一般的な例としては、レボルファノール誘導体も挙げることができ、例えば、フルオロ-レボルファノールを含むレボルファノール-フルオロ誘導体;ニトロ-レボルファノールを含むレボルファノール-ニトロ誘導体;フルオロ-ニトロ-レボルファノールを含むレボルファノールフルオロ-ニトロ-誘導体;及びレボルファノールについて上記のように修飾された重水素化レボルファノール誘導体、が含まれる。
【0229】
そのような化合物の一般的な例としては、デキストロメトルファン及びデキストロルファン誘導体も挙げることができ、例えば、フルオロ-デキストロメトルファン及びニトロ-デキストロルファンを含むデキストロメトルファン及びデキストロルファン-フルオロ-誘導体;ニトロ-デキストロメトルファン及びニトロ-デキストロルファンを含むデキストロメトルファン及びデキストロルファン-ニトロ誘導体;フルオロデキストロメトルファン及びフルオロ-ニトロ-デキストロルファンを含む、デキストロメトルファン及びデキストロルファンフルオロ-ニトロ誘導体;及びデキストロメトルファン及びデキストロルファンについて上記のように修飾された重水素化デキストロメトルファン及び重水素化デキストロルファン誘導体、が含まれる。
【実施例
【0230】
ARPE-19生存率に対するNMDARアンタゴニズムの効果
この実験により、本発明者らは、MK-801及びデキストロメタドン(REL-1017)によるNMDAR受容体の阻害が、ARPE-19のL-グルタメート誘発細胞生存率低下を救済するかどうかを確認する。図6に示すように、1mM L-グルタメートとインキュベートした細胞では細胞生存率が低下しており(p<0.01)、これは、L-グルタメート処理前に細胞を2つのNMDA受容体アンタゴニストMK-801及びデキストロメタドン(REL-1017)で前処理した場合はほとんど無視できるものであり、これらの化合物が細胞生存率に保護効果があることを示している。
【0231】
活性酸素種(ROS)の産生に対するNMDARアンタゴニズムの効果
NMDAR活性化後のROSの産生の増加は、ニューロン細胞においてインビトロで広く実証されている。NMDARの活性化及び遮断がROS産生にどのように影響するかを検証するために、この研究を、網膜細胞株ARPE-19でも実行した。図7に示すように、1mM L-グルタメートで処理した細胞ではROSの産生に有意な増加はない。NMDA受容体アンタゴニスト(1mM L-Glu+30μM MK-801、1mM L-Glu+30μM REL-1017)に曝露された細胞では減少する傾向が観察できたが、統計的有意性には到達することができなかった。
【0232】
炎症性転写因子p65の発現及び核移行に対するNMDARアンタゴニズムの効果
NMDAR受容体のグルタミン酸作動性刺激によって与えられる興奮毒性が、網膜細胞における炎症機構の活性化を誘発するか又はそれに干渉するかどうかを確認するために、本発明者らは、NF-kBファミリーに属するタンパク質であるp65を染色することにより、共焦点顕微鏡と組み合わせた免疫蛍光を実施した。転写因子p65の核移行が炎症誘発性応答に関与する分子の合成の増加につながることは周知されている。更に、このタンパク質の発現及び移行に対する受容体アンタゴニストMK-801及びデキストロメタドン(REL-1017)の使用の影響も評価した。
【0233】
図8A図8Dに示すように、L-グルタメートに曝露された細胞におけるp65の発現の増加を、ビヒクルに関して観察することができた(p<0.05)が、細胞が2つのNMDAR受容体アンタゴニストで前処理された場合、p65関連の蛍光の減少がある。p65は核に移行すると転写因子として作用し、炎症誘発性遺伝子の発現を促進するため、L-グルタメートに応答したp65の核移行も評価した。p65と核マーカーDAPIとの間の共局在化の程度を、2つの変数間の相関指数を表すピアソンr係数によって決定した。この係数は-1から1まで変化し、正の値に近づくほど、p65とDAPIが同じ(核)局在化を有する。図9A及び図9Bは、p65タンパク質の核発現が、L-グルタメートでの処理後に増加し(p<0.05)、NMDARアンタゴニストで前処理した後に減少し、ビヒクル処理細胞のp65タンパク質の核発現に相当することを示す。この実験は、p65の核移行の増加によって証明される炎症反応の確立におけるグルタミン酸作動性刺激後のNMDA受容体活性化の関与を実証する。
【0234】
標的遺伝子NMDAR1、p65、IL-6、TNF-αの発現に対するNMDARアンタゴニズムの効果
p65の核移行に対するNMDARアンタゴニストの効果を検証した後、それらの抗炎症効果を確認するために、本発明者らは、炎症誘発性サイトカインIL-6(インターロイキン-6)及びTNF-α、転写因子p65、及びNMDA受容体の遺伝子発現レベルの変化を調査した。
【0235】
相対的NMDAR mRNA発現レベルの定量化
遺伝子発現のレベルが評価された最初の遺伝子は、NMDAR受容体二量体の1Aサブユニット(NMDAR1として知られている)である。
【0236】
図10は、L-グルタメートによるNMDA受容体刺激が、おそらくネガティブフィードバック機構によって、この受容体の基礎遺伝子発現のわずかな減少をもたらすことを示しているが、この減少は統計的に有意ではなかった。逆に、受容体の活性化がアンタゴニストであるデキストロメタドン(REL-1017)によって遮断されると、ビヒクル処理細胞の発現レベルと比較した場合、細胞はその発現を最大9倍まで有意に増加させる(p<0.0001)。NMDAR1遺伝子発現におけるこの増加は、MK-801をアンタゴニストとして使用した場合にわずかだけ明らかである。
【0237】
相対的なp65 mRNA発現レベルの定量化
p65において実行された遺伝子発現分析(図11A及び図11B)は、アゴニストであるL-グルタメートによるNMDA受容体の活性化によって、その遺伝子発現の有意な増加(p<0.05)がもたらされることを実証しているが、受容体アンタゴニストであるデキストロメタドン(REL-1017)で前処理された細胞では、p65の遺伝子発現が減少する(p<0.01)。これらのデータは、免疫細胞化学的分析において観察されたものと一致している。更に、本発明者らは、L-グルタメートが炎症反応を引き起こし、それに対してデキストロメタドン(REL-1017)が特有の保護的役割を有すると結論付けることができる。
【0238】
最後に、炎症誘発性サイトカインの遺伝子発現レベルを、異なる実験条件において調査した。
【0239】
TNF-α及びIL-6 mRNA発現レベルの定量化
図12は、L-グルタメートで処理されたTNF-α遺伝子発現細胞の有意な増加(p<0.01)があるのに対し、この炎症誘発性サイトカインの発現は、受容体アンタゴニストMK-801及びデキストロメタドン(REL-1017)が加えられた場合、正常レベルに戻ることを示す。TNF-α遺伝子発現レベルの低下は、MK-801と比較した場合、デキストロメタドンで前処理された試料においてわずかにより明白である。
【0240】
図13は、NMDA受容体がグルタメートによって刺激されると、IL-6遺伝子発現が増加する傾向があり、一方、細胞を受容体アンタゴニストMK-801及びデキストロメタドンで前処理すると減少する傾向があることを示す。MK-801及びデキストロメタドン(REL-1017)による受容体アンタゴニズムを受けた試料間における発現の減少に実質的な違いはない。対照的に、IL-6は、L-グルタメートによるNMDA受容体の活性化、又はMK-801及びデキストロメタドン(REL-1017)による阻害の後、遺伝子発現レベルに有意な変化を起こさない。これらのデータは、MK-801及びデキストロメタドン(REL-1017)によるNMDAR活性化の阻害がTNF-αの遺伝子発現の低下に有意な影響を与えるため、TNF-αが、グルタミン酸作動性刺激後の細胞毒性及び炎症に関与する主要なサイトカインであるように見えることを示す。NMDAR活性化関連興奮毒性後のTNF-α遺伝子発現レベルの上昇は、NF-κB転写複合体の活性化及びその結果としてのp65の核への移行と一致している。実際、TNF-αは、網膜細胞におけるNF-κBの活性化を促進する役割を実証している。これらの知見はまた、TNF-αが視神経変性を誘発し、遅発性の網膜ニューロン細胞死を伴う可能性があり、視神経におけるp65の発現の増加がTNF-α誘発性軸索変性と関連している場合があるという観察と一致している。
【0241】
本明細書で引用された本発明の実施形態は、単に例示的であることが意図されており、当業者は、本発明の意図から逸脱することなく、それに対する多くの変形及び改変を作ることができるであろう。上記にかかわらず、ある特定の変形及び改変は、最適とは言えない結果を生成するが、それでも十分な結果を生成する場合がある。そのようなすべての変形及び改変は、本明細書に添付された特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあることが意図されている。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】