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特表2022-526235末梢インターベンションのためのリアルタイム潅流ガイド標的を提供するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(54)【発明の名称】末梢インターベンションのためのリアルタイム潅流ガイド標的を提供するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/026 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
A61B5/026 120
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021554647
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(85)【翻訳文提出日】2021-11-10
(86)【国際出願番号】 IB2020052173
(87)【国際公開番号】W WO2020183401
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】62/816,805
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
2.ブルートゥース
3.FIREWIRE
4.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】520269514
【氏名又は名称】ペドラ、テクノロジー、プライベート、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PEDRA TECHNOLOGY PTE LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100207907
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 桃子
(74)【代理人】
【識別番号】100217294
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 尚和
(72)【発明者】
【氏名】カリーン、ルーイ
(72)【発明者】
【氏名】ポール、ヘイズ
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA11
4C017AB01
4C017AB05
4C017AB08
4C017AB10
4C017AC26
4C017BC11
4C017BD04
4C017DD14
4C017DD17
4C017FF05
(57)【要約】
拡散スペックルコントラスト分析(DSCA)を用いて血液潅流の特徴を測定すること、好または不良見込みの患者転帰を予測する血液潅流および血管健康指数を決定すること、およびディスプレーなどを用いてオペレーターにその転帰を伝達することを含み得る、患者の血行再建術および/または創傷治癒の成功を決定するためのコンピューターにより実現されるリアルタイムシステムおよび方法が本明細書に開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血行再建術および/または患創傷治癒の成功の決定のためのコンピューターにより実現されるリアルタイム法であって、
拡散スペックルコントラスト分析(DSCA)を用いて血液潅流の特徴を測定する工程と、
第1の時点で血液潅流指数(BPI)を決定する工程と、
第2の時点で血液潅流指数(BPI)を決定する工程と、
前記BPIから、第2の時点のBPIを第1の時点のBPIで割ることによって血液潅流指数(BPI)比を決定する工程と、
前記BPI比を追加の患者特徴に関して分析する工程と、
前記BPI比および良好または不良見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
追加の患者特徴がBPIの絶対値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
BPI比が約1より大きい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力することを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
BPI比が約2より大きい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
BPI比が約1より小さい場合に不良見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第1の時点が血行再建術の最初の血管形成術の試みの5分以内でガイドワイヤ配置後である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第2の時点が血行再建術の完了5分以内である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
BPI比が約1.1より大きい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力することを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
BPI比が約1.2より大きい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力することを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
BPI比が約0.9より小さい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力することを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
BPI比が約0.8より小さい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力することを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
測定が患者の皮膚表面でなされる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
測定および決定が患者上の対象とする場所で行われ、
追加の患者特徴が、
患者上の対象とする場所とは異なる血管系により潅流される場所に患者上の参照場所を特定すること、
前記参照場所において拡散スペックルコントラスト分析(DSCA)を用いて血液潅流の特徴を測定すること、
前記参照場所において第1の時点の血液潅流指数(BPI)を決定すること、
前記参照場所において第2の時点の血液潅流指数(BPI)を決定すること、
前記BPIから、第2の時点のBPIを第1の時点のBPIで割って、参照血液潅流指数(BPI)比を決定すること、
により決定され、
BPI比を分析することが、参照BPIに少なくとも部分的に基づいて対象とする場所のBPI比を調整することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
患者上の参照場所が患者の腕、前腕、または胴の上である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
患者の血行再建術および/または創傷治癒の成功を決定するためのコンピューターにより実現されるリアルタイムシステムであって、
レーザー光源と、
検出器と、
以下のこと、すなわち、
拡散スペックルコントラスト分析(DSCA)を用いて対象とする場所から測定された血液潅流の特徴を検出器から受け取ること、
第1の時点の血液潅流指数(BPI)を決定すること、
第2の時点の血液潅流指数(BPI)を決定すること、
前記BPIから、第2の時点のBPIを第1の時点のBPIで割ることによって血液潅流指数(BPI)比を決定すること、
前記BPI比を追加の患者特徴に関して分析すること、および
BPI比および良好または不良見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力し、電子的に表示すること
を電子的に行うように構成されたプロセッサーと
を含む、システム。
【請求項16】
追加の患者特徴がBPIの絶対値を含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
プロセッサーが、BPI比が約1より大きい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力するように構成された、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
プロセッサーが、BPI比が約2より大きい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力するように構成された、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
プロセッサーが、BPI比が約1より小さい場合に不良見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力するように構成された、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
プロセッサーが、BPI比が約1.1より大きい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力するように構成された、請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
プロセッサーが、BPI比が約1.2より大きい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力するように構成された、請求項15に記載のシステム。
【請求項22】
プロセッサーが、BPI比が約0.9より小さい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力するように構成された、請求項15に記載のシステム。
【請求項23】
プロセッサーが、BPI比が約0.8より小さい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力するように構成された、請求項15に記載のシステム。
【請求項24】
プロセッサーがさらに、患者上の参照場所からの血液潅流の特徴を受け取り、参照場所における第1および第2の時点の参照BPI比を決定し、その参照BPIに少なくとも部分的に基づいて対象とする場所のBPI比を調整するように構成された、請求項15に記載のシステム。
【請求項25】
血行再建術の必要性を決定するためのコンピューターにより実現されるリアルタイム法であって、
拡散スペックルコントラスト分析(DSCA)を用いて血液潅流の特徴を測定する工程と、
設定期間の血液潅流指数(BPI)を決定工程と、
BPIデータから血管健康指数(VHI)を導く工程と、
前記VHIを追加の患者特徴に関して分析する工程と、
前記VHIおよび血行再建術の必要見込みの表示をディスプレーに出力する工程と
を含む、方法。
【請求項26】
追加の患者特徴がBPIの絶対値を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
VHIが約20より小さい場合に血行再建術の必要見込みの表示ディスプレーに出力することを含む、請求項25~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
VHIが約15より小さい場合に血行再建術の必要見込みの表示をディスプレーに出力することを含む、請求項25~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
外来患者の状況で決定される、請求項25~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
血行再建術の必要性を決定するためのコンピューターにより実現されるリアルタイムシステムであって、
レーザー光源と、
検出器と、
以下、すなわち、
拡散スペックルコントラスト分析(DSCA)を用いて血液潅流の特徴を測定すること、
設定期間の血液潅流指数(BPI)を決定すること、
BPIデータから血管健康指数(VHI)を決定すること、
VHIを追加の患者特徴に関して分析すること、および
前記VHIおよび血行再建術の必要見込みの表示をディスプレーに出力すること
のうち1つまたは複数を行うように構成されたプロセッサと
を含む、システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて2019年3月11日に出願された米国仮出願第62/816,805号の非仮出願としての利益を主張するものであり、この出願は全体として引用することにより本明細書の一部とされる。
【0002】
分野
本開示は、組織中の血流の測定、特に、足部または他の末梢部内の血流の測定に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
先進国での急速に高齢化が進む人口が末梢動脈疾患および2型糖尿病などの老化関連変性疾患の罹患率増加につながっている。これらの症状には、組織虚血、慢性創傷および糖尿病性足部潰瘍が含まれ、この場合、適当な治療の欠如により感染症、壊疽および、足部虚血の場合、一方または両方の足部の部分的または完全な切断につながる可能性がある。
【0004】
末梢動脈疾患(Peripheral arterial disease)(PAD)は、動脈が狭くなったり閉塞したりすることにより四肢への血流が減少する進行性疾患である。PADは、アテローム性動脈硬化症、狭窄、塞栓、または血栓形成につながる炎症過程によって生じる可能性があり、喫煙、糖尿病、脂質異常症、および高血圧症と関連している。PADは、未治療の場合、組織損傷が続いて起こり、結果として四肢の潰瘍、壊疽または喪失を生じるような程度まで四肢(通常は脚部および足部)への血流が低下する重症虚血肢(critical limb ischemia)(CLI)を引き起し得る。また、PADを有する患者は、これらの状態の結果として心筋梗塞および卒中のような他の心血管疾患や死の危険性が不釣合いに高い。糖尿病の発生率が世界的に増加していることから、CLIの治療ならびにCLIに起因する障害および四肢喪失の予防は重大な健康の優先事項になっている。
【0005】
血管内(低侵襲)インターベンション、観血的手術またはそれら2つの組合せを用いた末梢血管インターベンション処置は、現在、PADを有する患者において四肢への潅流を回復させるために利用できる唯一の方法である。医学的管理は、たとえ行ったとしても、疾患の進行を遅らせるためにしか役立たない可能性がある。しかしながら、臨床医は、現在、インターベンション処置の行為を確実に誘導するために、リアルタイムで、通常、足部内の、罹患組織中の潅流を適切に評価する手術中のツールを有していない。血液潅流を測定する既存の技術としては、皮膚潅流圧(skin perfusion pressure)(SPP)、デュプレックス超音波(duplex ultrasound)(DUX)、および経皮的酸素モニタリング(transcutaneous oxygen monitoring)(TCOM)が挙げられる。これらの技術の各々は、1つ以上の欠点がある。SPPは、皮膚真皮レベルでの潅流データを提供するだけであり、皮膚温度を44℃に正規化する必要があり、皮膚色素沈着によって影響を受け、浮腫を有する患者に関して信頼性が低い。また、SPPは、圧力カフを使用することも必要であり、末梢血管インターベンション中のリアルタイム潅流評価ツールとしての有用性がさらに制限される。DUXでは、組織潅流は評価されないがその代わりに大血管(>1.5mm)中の血流が測定される。TCOMは、患者を高圧酸素状態に置く必要があり、その患者はカテーテル検査室/手術室に適合しなくなる。さらに、TCOMは、測定値が平衡に達するのに約4~6週間かかるため、リアルタイム血行再建データを提供しない。
【0006】
従って、血管の大きさの範囲内でかつこれらの血管によって供給される組織中での血液潅流の非侵襲的リアルタイム測定が必要である。具体的には、インターベンション処置の進行とともに確実に行うことができ、その処置中に意思決定を知らせるために使用することができる、足部内の血液潅流の非侵襲的リアルタイム測定が必要である。
【0007】
虚血は、組織への血液供給が制限されることによって酸素およびグルコースの不足が引き起される状態であり、結果として、組織に不可逆的な損傷が生じる。発見が遅すぎた場合、血栓を溶解するかまたは手術する、様々な治療の選択肢による血液の再潅流は、組織の救済に対して、組織への損傷をさらに増加させるだけである。例えば、最も一般的な虚血部位の1つは足部である。この場合、損傷が不可逆的なものになる前に、危険にさらされている虚血足部の早期検出および診断が必須である。現在、虚血足部を診断するための最も一般的な方法は、腕の血圧を足関節での血圧と比較するABI(足関節上腕血圧比(Ankle Brachial Index))である。ABI測定値0.9未満は、いくつかの場合では、虚血足部の指標である。しかしながら、ABI測定値は、オペレーターのプロトコールに依存するところが大きい、すなわち、測定値を座位もしくは仰臥位の被験者で得る場合、またはオペレーターが異なる測定プロトコール/機器を使用する場合には、異なる値が得られる可能性がある。また、ABIは、糖尿病を有するか、血液透析を受けているか、または足関節から下に広範な遠位動脈病変がある場合の患者の石灰化した血管では、誤って上昇した測定値を示す(Yamada et al, J Vasc Surg 2008; 47: 318-23)。
【0008】
慢性創傷は、4週間後に改善をほとんどもしくは全く示さないかまたは8週間で治癒しない非治癒創傷である。実際には、患者は、1年以上も開いたままの慢性創傷を呈することがある。世界中には、主に下肢において、3700万人が慢性創傷に苦しんでいる。米国だけで、慢性創傷は650万人の患者が罹患し、2010年の支出で14億ドルと報告されている。慢性創傷は糖尿病や肥満などの老化の疾患に関連しているため、先進国の高齢者人口の上昇とともに、慢性創傷管理のためのヘルスケアの必要性が高まっている。下肢の慢性虚血性創傷の早期診断は、保守的創傷管理(例えば、包帯法および湿潤ドレッシング法)が十分であるかどうか、または結果的に切断になる可能性があるさらなる創傷の悪化を未然に防ぐためにより積極的な療法が必要であるかどうかを判定する際に大きな影響を与えるため、特に重要である。
【0009】
創傷の保守的療法(例えば、包帯法、湿潤ドレッシング法)は、創傷組織の周囲の血液潅流が、受動的な治癒が起こるための最小閾値を越えて障害が生じていないならば、創傷治癒を促進するために十分であり得る。しかしながら、潅流に障害が生じている場合、保守的創傷療法の不適切な使用により、臨床状況における創傷の最初の呈示から有効な療法の間で創傷状態の重大性に応じた時間の遅れが生じる。
【0010】
創傷での組織生存能力の1つの最も重要な決定因子はその血液供給である。創傷床周囲の血液潅流を評価する能力により、(a)組織が生存可能である場合の保守的療法の継続または、(b)保守的療法の成功のために血液潅流にあまりにも重く障害が生じ、初期に、化学的創傷清拭剤のようなより先進的な創傷ケア製品、もしくは局所陰圧、高圧酸素療法(hyperbaric oxygen therapy)(「HBOT」)などのような先進的創傷療法に進むことができないかどうかのいずれかに関して臨床判断を下すことが可能になる。適切な場合には、患者を末梢インターベンション処置による血行再建術へ導くことができる。従って、保守的創傷療法か積極的創傷療法かに患者が早期に流れるように進むことを容易にすることができる血液潅流モニターが非常に望ましい。
【0011】
HBOTは、高圧室で海面の2~2.5倍のレベルでの酸素の投与を含む。患者には、慢性創傷組織への酸素の送達を最大にするために、HBOTを最大40セッション、典型的には週に3~4セッションで処方し得る。このような療法は高価であり、危険性がないわけではない;その副作用には耳や副鼻腔の圧外傷、副鼻腔(ear and sinus barotrauma, paranasal sinuses)および中枢神経系の酸素毒性が含まれる (Aviat Space Environ Med. 2000;71(2):119-24) 。さらに、1144名の患者の遡及研究(Wound Rep Reg 2002; 10:198-207)により、慢性創傷患者の24.4%はそれからの恩恵を受けていないことが示された。従って、慢性創傷治療でのHBOTの成功をより適切に予測するための診断デバイスは、不必要で役に立たない療法を回避するのに役立ち、ヘルスケアシステムにおいて大幅なコスト削減を達成する。
【0012】
切断が必要とされる足部虚血の場合では、切断創傷治癒の潜在的な成功を予測することにより、切断レベルに関する決定をより適切に導くことができる新しい診断ツールが必要である。切断は、一般に、血管再建手術で治療することができない重度の虚血肢を有する患者、糖尿病性足部潰瘍または静脈性潰瘍を有する患者に対して行われる。先進国での下肢切断のおよそ85~90%は末梢血管疾患を原因とし、創傷治癒不良は切断から生じる合併症例の70%を占める。切断治癒を予測するための最適なツールがないことから、医師は最良の切断部位を主観的に判断しなければならず、最大限に四肢を温存することがバイアスであるため、最初の切断創傷が治癒できなかった場合には、患者は脚部のより高位でのその後の切断を必要とすることは珍しくない。下腿切断の治癒率は30~92%の間の範囲であり、再切断率は最大30%である。よって、医師が、修正切断の外傷およびコストを回避しながら最大の四肢温存につながる切断部位をより正確に決定するのを支援するために、切断治癒の成功を予測するための正確なツールが必要である。
【0013】
一般的に、外科的処置、特に、形成再建手術では、創傷欠陥をカバーするために組織皮弁が使用される。これらは、有茎皮弁(すなわち、皮弁に血液を供給するそれら独自の血管茎を有する)または十分な血液供給を確保するために被移植部との微小血管の接続を必要とする遊離皮弁のいずれかであり得る。どちらのタイプの皮弁も、皮弁が生存するためにそれらの中の血液潅流に決定的に依存している。皮弁潅流は、特に、再建処置から最初の数時間~数日で緊密なモニタリングが必要であり、潅流の損失の早期検出は皮弁生存力の継続を確保するために、必要に応じて、さらなる外科的処置へ患者を導くために役立つ。よって、診断ツールは、術後期に皮弁の血液潅流を連続的にモニタリングし、皮弁虚血の検出の遅れによる皮弁喪失を防ぐために、潜在的に使用することができるならば、有用なものとなる。
【0014】
現在、創傷ケア市場での診断デバイスとしては、デュプレックス超音波(例えば、EP0814700 A1に記載されている通りである)、経皮的酸素モニタリング(TCOMまたはTcPO)(例えば、WO1980002795 A1に記載されている通りである)、および皮膚潅流圧(SPP)(例えば、CA2238512 Cに記載されている通りである)が挙げられるが、これらの各々には、慢性創傷患者へ適切な療法を行った際にそれらの有効性を制限する深刻な欠点がある。デュプレックス超音波は、大血管(>1.5mm)中の血流を測定するだけである。TCOM測定値は、創傷の状態と最適に相関していない(Wounds 2009;21(11):310‐316)。これは、特に、TCOMの測定が、局所浮腫、解剖学的局在性、表皮角質層の厚さ、および脚部依存性を含む多くの要因の影響を受けるためである(Figoni et al, J. Rehab Research Development 2006; 43 (7) 891-904)。加えて、試験結果は、水分および温度レベルによって大きな影響を受ける(Podiatry Today 2012; 25(7) 84-92)。Lo et al. (Wounds 2009:21(11) 310-316)は、皮膚潅流圧(レーザードプラーにより測定)が、TcPOに対してより正確な創傷治癒の予測因子であると考えられることを報告している;しかしながら、SPPは、限られた深度でのデータを提供することができるだけであり、皮膚温度を44℃に正規化する必要があり、皮膚色素沈着の影響を受けやすく、浮腫に関して信頼性が低い。
【0015】
ごく最近では、拡散スペックルコントラスト分析(diffuse speckle contrast analysis)(DSCA)の使用が、最大2センチメートル(2cm)の組織深度でリアルタイム血液潅流を絶対的BFI(「血流指数(blood flow index)」)(本明細書ではBPI(「血液潅流指数」)とも呼ばれ得る)単位で測定するために開発されている。本開示は、いくつかの実施形態において、虚血および他の病態の処置において臨床判断を予測する、および臨床決定を導くことができる指数を生成するように構成されたハードウエアまたはソフトウエアプロセッサーを介したDSCAの使用を中心とする。本明細書に開示されるようなシステムおよび方法は、Lee et al.に対する米国特許第9,636,025号およびにLee et al.対する米国特許第2015/0073271A1号(両方とも全体として引用することにより本明細書の一部とされる)とともに使用することができるまたはそれとともに使用するために改良することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
いくつかの実施形態では、患者の血行再建術および/または患創傷治癒の成功の決定のためのコンピューターにより実現されるリアルタイム法であって、拡散スペックルコントラスト分析(DSCA)を用いて血液潅流の特徴を測定する工程、第1の時点で血液潅流指数(BPI)を決定する工程;第2の時点で血液潅流指数(BPI)を決定する工程、前記BPIから、第2の時点のBPIを第1の時点のBPIで割ることによって血液潅流指数(BPI)比を決定する工程、前記BPI比を追加の患者特徴に関して分析する工程、BPI比および良好または不良見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力する工程のうちのいくつかを含む方法が本明細書に開示される。
【0017】
いくつかの構成において、追加の患者特徴は、BPIの絶対値を含む。
【0018】
いくつかの構成において、この方法はまた、BPI比が約1より大きい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力することを含む。
【0019】
いくつかの構成において、この方法はまた、BPI比が約2より大きい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力することを含む。
【0020】
いくつかの構成において、この方法はまた、BPI比が約1より小さい場合に不良見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力することを含む。
【0021】
いくつかの構成において、第1の時点は、血行再建術の最初の血管形成術の試み5分以内でガイドワイヤ配置後である。
【0022】
いくつかの構成において、第2の時点は、血行再建術の完了5分以内である。
【0023】
いくつかの構成において、この方法はまた、BPI比が約1.1より大きい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力することを含む。
【0024】
いくつかの構成において、この方法はまた、BPI比が約1.2より大きい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力することを含む。
【0025】
いくつかの構成において、この方法はまた、BPI比が約0.9より小さい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力することを含む。
【0026】
いくつかの構成において、この方法はまた、BPI比が約0.8より小さい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力することを含む。
【0027】
いくつかの構成において、測定は患者の皮膚表面でなされる。
【0028】
いくつかの構成において、測定および決定が患者上の対象とする場所で行われ、追加の患者特徴が、患者上の対象とする場所とは異なる血管系により潅流される場所に患者上の参照場所を特定すること、前記参照場所において拡散スペックルコントラスト分析(DSCA)を用いて血液潅流の特徴を測定すること、前記参照場所において第1の時点の血液潅流指数(BPI)を決定すること、前記参照場所において第2の時点の血液潅流指数(BPI)を決定すること、前記BPIから、第2の時点のBPIを第1の時点のBPIで割って、参照血液潅流指数(BPI)比を決定することにより決定され、BPI比を分析することが、参照BPIに少なくとも部分的に基づいて対象とする場所のBPI比を調整することをさらに含む。
【0029】
いくつかの構成において、患者上の参照場所は、患者の腕、前腕、または胴である。
【0030】
本明細書にはまた、いくつかの実施形態において、患者の血行再建術および/または創傷治癒の成功を決定するためのコンピューターにより実現されるリアルタイムシステムも開示される。このシステムは、レーザー光源と、検出器と、以下、すなわち、拡散スペックルコントラスト分析(DSCA)を用いて対象とする場所から測定された血液潅流の特徴を検出器から受け取ること、第1の時点の血液潅流指数(BPI)を決定すること、第2の時点の血液潅流指数(BPI)を決定すること、前記BPIから、第2の時点のBPIを第1の時点のBPIで割ることによって血液潅流指数(BPI)比を決定すること、前記BPI比を追加の患者特徴に関して分析すること、およびBPI比および良好または不良見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力し、電子的に表示することのうち1つまたは複数を電子的に行うように構成されたプロセッサーとを含むことができる。
【0031】
いくつかの構成において、追加の患者特徴は、BPIの絶対値を含む。
【0032】
いくつかの構成において、プロセッサーは、BPI比が約1より大きい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力するように構成される。
【0033】
いくつかの構成において、プロセッサーは、BPI比が約2より大きい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力するように構成される。
【0034】
いくつかの構成において、プロセッサーは、BPI比が約1より小さい場合に不良見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力するように構成される。
【0035】
いくつかの構成において、プロセッサーは、BPI比が約1.1より大きい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力するように構成される。
【0036】
いくつかの構成において、プロセッサーは、BPI比が約1.2より大きい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力するように構成される。
【0037】
いくつかの構成において、プロセッサーは、BPI比が約0.9より小さい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力するように構成される。
【0038】
いくつかの構成において、プロセッサーは、BPI比が約0.8より小さい場合に良好見込みの患者転帰の表示をディスプレーに出力するように構成される。
【0039】
いくつかの構成において、プロセッサーはさらに、患者上の参照場所からの血液潅流の特徴を受け取り、参照場所における第1および第2の時点の参照BPI比を決定し、その参照BPIに少なくとも部分的に基づいて対象とする場所のBPI比を調整するように構成される。
【0040】
いくつかの実施形態において、血行再建術の必要性を決定するためのコンピューターにより実現されるリアルタイム法であって、拡散スペックルコントラスト分析(DSCA)を用いて血液潅流の特徴を測定する工程と、設定期間の血液潅流指数(BPI)を決定工程と、BPIデータから血管健康指数(VHI)を導く工程と、前記VHIを追加の患者特徴に関して分析する工程と、前記VHIおよび血行再建術の必要見込みの表示をディスプレーに出力する工程を含む方法が本明細書に開示される。
【0041】
いくつかの構成において、追加の患者特徴は、BPIの絶対値を含む。
【0042】
いくつかの構成において、この方法はまた、VHIが約20より小さい場合に血行再建術の必要見込みの表示をディスプレーに出力することを含む。
【0043】
いくつかの構成において、この方法はまた、VHIが約15より小さい場合に血行再建術の必要見込みの表示をディスプレーに出力することを含む。
【0044】
いくつかの構成において、この方法は、外来患者の状況で決定される。
【0045】
いくつかの実施形態ではまた、血行再建術の必要性を決定するためのコンピューターにより実現されるリアルタイムシステムであって、レーザー光源と、検出器と、以下、すなわち、拡散スペックルコントラスト分析(DSCA)を用いて血液潅流の特徴を測定すること、設定期間の血液潅流指数(BPI)を決定すること、BPIデータから血管健康指数(VHI)を決定すること、VHIを追加の患者特徴に関して分析すること、および前記VHIおよび血行再建術の必要見込みの表示をディスプレーに出力することのうち1つまたは複数を行うように構成されたプロセッサーとを含むシステムが本明細書に開示される。
【0046】
いくつかの実施形態では、システムは、本開示に示されるような特徴のいくつかを含み得るか、含まないか、から本質的になり得るか、またはからなり得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、方法は、本開示に示されるような特徴のいくつかを含み得るか、含まないか、から本質的になり得るか、またはからなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、DSCA技術を含むポータブルシステムを示す。
図1AA】DSCAプロセスの図を図1AAに示す。
図1A図1Aは、足アンギオソームを示している。
図1B図1Bは、足部上の5つの測定ポイントを示している。各々は、図1Aに示したアンギオソームの1つに対応する。
図1C図1Cは、足アンギオソームに供給する動脈の分岐を示している。
図1D-H】図1D~1Hは、図1Bの5つの測定位置の各々におけるディフューズオプティカルフロー(DOF)センサーを用いた測定を示している。
図2図2は、混濁媒体の測定フローシステムのブロック図である。
図3図3は、多層組織における拡散光の透過および検出の概略図である。
図4図4は、異なる流速についての自己相関関数のグラフである。
図5A図5Aは、カフ閉塞プロトコール中の2つの血流指数(blood flow indices)(BFI、BPIとしても知られる)のグラフである。
図5B図5Bは、図5Aの2つのBFI(BPI)の導出を示す自己相関関数のグラフである。
図6図6は、カフ閉塞プロトコール中の2つのBFI(BPI)のグラフである。
図7図7は、いくつかの実施形態による、潅流モニタリングシステムの様々な要素を示している。
図7A図7Aは、DSCA潅流モニターコンソールおよび計装ボックスの実施形態を示している。
図7B図7Bは、薄型センサーの実施形態を示している。
図8A図8Aは、2名の個体の足の内側足底部で測定した未加工BFI(BPI)データ(未加工の時系列BFIデータ)を示し、1名は健常であるのに対し、1名は虚血肢を示している。
図8B図8Bは、同じ個体の対応するパワースペクトルデータを示している(未加工時系列BFIデータのフーリエ変換。
図9A図9Aは、支持構造体の実施形態を示している。
図9B図9Bは、支持構造体の実施形態を示している。
図9C図9Cは、支持構造体の実施形態を示している。
図10図10は、支持構造体の実施形態を示している。
図11図11は、患者の足に取り付けられた複数のDOFセンサー1000を示している。
図12図12は、時系列BFIに関するフロー変換レベル(The Flow Transform Level)(FTL)、例えば、強度を60Hzのフレームレートで測定した場合の、時系列DSCA血流指数(BFI)データからのFTLの導出を示している。
図13】1Hzおよび2Hzでサンプリングした内側足底部BFIデータの5分の標準偏差を計算し、得られたROC曲線を図13Aおよび13Bに示している。図13Aは、BFI @ 1Hzの標準偏差のROCを示し、図13Bは、BFI @ 2Hzの標準偏差のROCを示している。
図14A-C】踵部および腕部のBFIの標準偏差もまた、健常患者と虚血患者の間で有意差を示しているが、内側足底部の場合のように強くはない。3つの位置のp値を図14A~14Cで比較している。これらの図は、それぞれ、内側足底部、踵部、および腕部の領域のFTLのボックスプロットである。
図14D図14Dは、健常および虚血の患者集団を含む複数の患者についてのFTL値を示している。
図14E-F】健常患者と臨床的に診断されたPADまたはCLIを有する患者の試験から以下のAUCグラフが得られ、図14Eおよび14Fに示される。
図14G】1つの試験において、20名の患者のベースラインVHIを図14Gに示されるように以下の通りに分析した。
図14H】同じ患者に関する、同じ5分の期間の平均BPI値の中央値(平均BPIの視覚的評価を5分チャート外とする)を図14Hに示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
ディフューズオプティカルフローセンサー
複数の技術が血流(本明細書において血液潅流と呼ぶこともできる)を特徴づけるために存在し、光の拡散の測定に依存する。そのような技術としては、拡散相関分光法(DCS)および拡散スペックルコントラスト分析(DSCA)が挙げられる。DCSおよびDSCAはどちらも、相対的および/または絶対的な血流を測定するために使用することができる。他の技術は、光の拡散の測定に依存して、生化学的組成、オキシヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビンの濃度などの組織の他の特性などを検出する。そのような技術としては、拡散光分光法(Diffuse Optical Spectroscopy)(DOS)、拡散光断層撮影法(Diffuse Optical Tomography)(DOT)、および近赤外分光法(Near-Infrared Spectroscopy)(NIRS)が挙げられる。
【0050】
本明細書において使用されるように、「ディフューズオプティカルセンサー」には、拡散光の測定を介して組織中の血液の特性を特徴づけるように構成された任意のセンサーが含まれる。従って、ディフューズオプティカルセンサーとしては、DCS、DSCA、DOS、DOT、およびNIRSのセンサーが挙げられる。本明細書において使用されるように、用語「ディフューズオプティカルフローセンサー」には、組織中の血流を特徴づけるように構成された任意のセンサーが含まれる。従って、ディフューズオプティカルフロー(DOF)センサーとしては、DCSおよびDSCAのセンサーの両方が挙げられる。
【0051】
近赤外拡散相関分光法(Near-infrared diffuse correlation spectroscopy)(DCS)は、生物学的組織中の血流の非侵襲的連続測定のための新たな技術である。この十年ほどで、脳、筋肉、および乳房などの深部組織血管系における血流情報を非侵襲的に検知するために、DCS技術は開発された。陽電子放射断層撮影法(positron emission tomography(PET)、単一光子放射コンピューター断層撮影法(single photon emission computed tomography)(SPECT)、およびキセノン造影コンピューター断層撮影法(xenon-enhanced computed tomography)(XeCT)などのいくつかの他の血流測定技術とは対照的に、DCSは非電離放射線を使用し、造影剤を全く必要としない。DCSは、ペースメーカーや金属インプラントなどの一般的に使用される医療機器に干渉しない。そのため、DCSは、臨床状況における癌療法モニタリングおよびベッドサイドモニタリングにおいて可能性を有する。
【0052】
DCSシステムは、長コヒーレンス長のレーザーなどの光源と、光子計数アバランシェフォトダイオード(a photon-counting avalanche photodiode)(APD)または光電子増倍管(photomultiplier tube)(PMT)などの検出器と、自己相関器とを含むことができる。様々な実施形態では、自己相関器は、ハードウェアまたはソフトウェアの形態をとり得る。DCSシステムの中心的な構成要素の1つとして、自己相関器は、検出器から得られた光強度の時間変動の自己相関関数を計算する。
【0053】
しかしながら、DCSは、長い積分時間、高コスト、および同時測定の低チャネル数の点で不利であり得る。これらの制限に寄与する要因の1つは、強く影響を受ける光検出器とその後の自己相関計算への依存である。拡散スペックルコントラスト分析(DSCA)は、高速時系列データに関する自己相関解析に依存する必要がない統計解析を用いて費用効果の高いリアルタイム測定を可能にする改良された流量測定システムを提供するより新しい技術である。この統計解析は、マルチピクセルイメージセンサーを使用して空間領域内で、または低速カウンターを使用して時間領域内で実施することができる。また、マルチピクセルイメージセンサーは、単独または複数のピクセルが個々の検出器として機能を果たすように、時間領域解析にも使用することができ、マルチチャネルアプリケーションに特に好適である。様々な実施形態では、このアプローチは、血流を、絶対値、相対値、またはその両方であろうと、測定するために使用することができる。
【0054】
DSCAは、空間領域および時間領域の両方で実施することができる。空間DSCA(spatial DSCA)(sDSCA)では、サンプル表面からスペックル原画像が最初に得られる。スペックル原画像は、まず、なめらかな強度バックグラウンドによって正規化し得、複数のスペックル画像にわたって平均化することができる。スペックルコントラスト、Kは、多くの検出器またはピクセルにわたる平均強度に対する標準偏差の比として定義される、K=σ/<I>(式中、下付文字のsは、時間的変化と対照する空間的変化を指す)。量Kは、以下のように、フィールド自己相関関数g(τ)と関係している:
【数1】
【0055】
(式中、Vは画像全体の強度の分散であり、Tはイメージセンサーの露光時間である)。半無限媒体における相関拡散方程式の既知の解を用いることによって、流速とKとの間の規則的な関係を導出することができる。流れと1/K との間の関係は、身体組織中で見られる流れの範囲では実質的に線形であると分かり、1/K は流速の増加とともに増加する。
【0056】
流量測定のためにこのスペックルコントラスト原理を実施するもう1つの方法は、一定の時間にわたって積分することによって得られた時系列データに関する統計解析を使用することである。この時間領域解析は本明細書においてtDSCAと呼ぶ。tDSCAでの積分時間は、sDSCAでのイメージセンサーの露光時間と類似していると考えることができる。tDSCAの場合、積分回路を有する中位感度の検出器を使用することができる。例えば、CCDチップ上の各ピクセルをこの目的に使用することができるが、この理由は各CCDピクセルが所定の露光時間の間光電子を蓄積し続けるためである。従って、複数の単一モードファイバーを、単一のCCDチップ上のいくつかの位置に直接位置付けることができ、時間分解能を全く失うことなくマルチチャネルtDSCAシステムが結果として生じる。チャネル数は、CCDチップサイズ、ピクセルサイズ、および各ファイバー先端の面積によってのみ制限される。いくつかの実施形態では、tDSCAでは、高感度検出器、例えば、アバランシェフォトダイオード(APD)および/または光電子増倍管(PMT)などを、低速カウンター、例えば、USB接続によりDAQカード内に含まれるカウンターなどとともに使用することができるが、この実施形態のマルチチャネル機器へのスケーリングは、コストがかかり、バルキーである。いずれかの方法によって測定される時系列データは、反復測定により得ることができ、例えば、25回の測定を逐次的に行うことができ、その後、流速を決定するためにデータを統計的に解析することができる。露光時間1msでの設定では、一方の流動指数は25msごとに得られ、およそ40Hzの操作となる。
【0057】
時系列データの統計解析は、統計(平均強度および強度の標準偏差)が空間領域よりもむしろ時間領域内で計算されることを除いて、sDSCAに関して上に記載したことと実質的に同一であり得る。結果として、tDSCAは、sDSCAよりも低い時間分解能を提供し得る。しかしながら、tDSCAでの検出器領域は、sDSCAの場合よりも著しく小さい可能性がある。空間領域対応解析と同様に、tDSCAは、従来のDCS技術よりも大幅に簡単で、計算集約的でない計装および解析によるアプローチを提供する。従って、いくつかの実施形態では、深部組織における末梢血流特徴の評価のためのシステムは、以下のうちいくつかを含み得る:患者の解剖学的構造に配置されるように構成された支持構造体;支持構造体によって保持され患者の解剖学的構造の皮膚表面と光通信状態に置かれるように構成された少なくとも1つのディフューズオプティカルセンサー;コヒーレントレーザー光源;少なくとも1つのディフューズオプティカルセンサーと作動可能なように接続された光検出器;支持構造体が患者の四肢の上に位置付けられたときにディフューズオプティカルセンサー付近の位置において絶対的および/または相対的な血解析するように構成されたハードウエアまたはソフトウエアプロセッサー(このハードウエアまたはソフトウエアプロセッサーは、強度変動から空間的スペックルコントラスト比Kまたは時間的スペックルコントラスト比Kおよび1/K または1/K を決定し、1/K または1/K 値を血流と相関させることによって患者の血管系における血液潅流の特徴を決定するように構成されている);およびハードウエアまたはソフトウエアプロセッサーによって決定された絶対的および/または相対的な血流を示すシグナルを提供するように構成されたフィードバックデバイス。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのディフューズオプティカルセンサーは、組織中に拡散して散乱し、例えば約5mm~50mm、約5mm~約100mm、約5mm~約200mmの透過深度で伝達された光を捕捉
するように構成されている。いくつかの実施形態では、患者の解剖学的構造は、四肢(例えば、腕、前腕、または手;足、上肢もしくは下肢)、胴、腹部、前頭、耳、あるいは例えば、血管もしくは非血管体腔、または臓器を含む、体内の場所であり得る。
【0058】
DCSおよびDSCAの技術はどちらも、リアルタイムベースで、足部内の絶対的および/または相対的な血流を評価するために使用することができ、それによって、インターベンショナルラジオロジストや足部内の虚血を治療する血管外科医のための重要なツールが提供される。手術室での現在のツールでは、医師は通常、X線透視検査を介して、バルーン血管形成術処置などのインターベンションが、四肢動脈を広げ、開存性を達成することに成功したかどうかを評価することができる。しかしながら、臨床経験により、透視検査によって観察される構造開存性は、潰瘍傷、虚血組織(例えば、黒くなった足指)または他の臨床症状がある足部の局所解剖学的領域の再潅流の成功についての信頼性のある指標ではないこととなっている。動脈開存性に関する透視検査データを補うために、DCSまたはDSCAシステムのいずれかで使用される複数のDOFセンサーを足部の異なる局所解剖学的領域に位置付けて、それらの異なる領域内の絶対的および/または相対的な血流を評価することができる。例えば、局所解剖学的領域は、異なる足アンギオソームに対応し得る。
【0059】
図1は、DSCA技術を含むポータブルシステムを示している。このシステムは、潅流評価中に患者の足上の好適な場所に貼付されたセンサーに接続されたコンパクトな計装コンソールを含み得る。いくつかの実施形態では、このデバイスはEM放射を低減するために金属ボックスに収容することができる。切開の必要はない。単に皮膚を接触させるだけで、このデバイスは、最大約5、5.5、6、6.5、7、7.5、8mm、もしくはそれを超える、または少なくとも約約5、5.5、6、6.5、7、7.5、8mm、もしくはそれを超える深度で組織潅流をモニタリングすることができる。このデバイスは皮膚に容易に接着取り付けができるローフラット型のセンサーヘッドを含み得る。モニターコンソールは、コヒーレント赤外光源、光検出器、およびディスプレー/コントロール電子機器を含む光電子工学装置を含み得る。このセンサーは、コンソールから患者へ赤外光を伝達し、患者から再びコンソールへ散乱光を中継する受動光ファイバーコンジットを含み得る。
【0060】
これらのセンサーは、ファイバーをサンプルとの光通信状態におくことができる平板DOFセンサーを含み得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの光学的に透明な層を含む光学的に透明な無菌バリアは、ファイバーとサンプルの間に配置され得る。少なくとも1つの光学的に透明な層は、サンプル/組織の表面上に平板DOFセンサーの取り付けを容易にするための粘着性コーティングを有するように構成されてもよい。例えば、サージカルテープは、その上にDOFセンサーを受容し、DOFセンサーとサンプルをつなぐように構成された支持体を含み得る。
【0061】
図9A~9Cは、3Dプリントを用いて製造した支持体の一実施形態を示し、支持体は、患者/組織と光ファイバーの間に配置された接着剤層を含む。図9Aおよび9Bは、支持部材902を示し、図9Cおよび9Dは、患者の皮膚とファイバーの間に配置するためにサージカル粘着テープ912の層を用いて準備したセンサーヘッド900の上面図および底面図をそれぞれ示している。図9Cおよび9Dでは、反射パッド908およびファイバー906の先端は、サージカルテープ912の接着性ライナーによって覆い隠されている。他の実施形態では、少なくとも1つの光学的に透明な層は、接着性コーティングを有していなくてもよく、その際、平面DOFセンサーは、サージカルテープ、機械的クランプ、調節可能なストラップ、または他の手段の適用によりサンプルに取り付けられ得る。
【0062】
図11は、患者の足部に取り付けられた複数のDOFセンサー1000を示している。健常ヒト足部上で光源-検出器間隔約1.5cmの場合、動脈カフ閉塞プロトコール観察により典型的な血液潅流変化が表示される-例えば、閉塞中の急激な減少およびプラトー到達と、カフ圧解放後の急激なオーバーシュートおよびその後のベースライン値への回復。
【0063】
アンギオソームは、動脈源によって供給され、その伴行静脈によって排出される組織の三次元部分である。アンギオソームは、皮膚、筋膜、筋肉、または骨を含むことができる。足アンギオソームは図1Aに示している。膝から下には、3つの主要な動脈:前脛骨動脈、後脛骨動脈、および腓骨動脈がある。後脛骨動脈は、少なくとも3つの別々の分枝:踵骨動脈、内側足底動脈、および外側足底動脈を与え、これらはそれぞれ、足部の異なる部分に供給する。前脛骨動脈は、前距腿に供給し、足背動脈として続き、これにより足背の大半に供給する。腓骨動脈踵骨枝は、踵の外側および足底に供給する。腓骨動脈の前貫通枝は、足首の外側前部上方に供給する。結果として、足アンギオソームには、内側足底動脈のアンギオソーム、外側足底動脈のアンギオソーム、後脛骨動脈踵骨枝のアンギオソーム、腓骨動脈踵骨枝のアンギオソーム、足背動脈のアンギオソームが含まれる。腓骨動脈の前貫通枝に対応する別の第6の足アンギオソームが存在するかどうかについてはいくつかの議論がある。
【0064】
図1Bは、足部上の5つの測定ポイントを示している。各々は、図1Aで確認される足アンギオソームに対応する。これらの各位置において血流を検出することにより、種々な動脈からの血流を独立に評価することができる。例えば、ポイントA(図1D参照)における血流の測定値は、足背動脈、さらに前脛骨動脈からの血流を示す。同様に、ポイントB(図1E参照)における血流の測定値は、内側足底動脈に対応し、一方、ポイントC(図1F参照)は、外側足底動脈に対応し、ポイントD(図1G参照)は、後脛骨動脈踵骨枝に対応し、ポイントE(図1H参照)は腓骨動脈踵骨枝に対応する。
【0065】
図1Cは、足アンギオソームに供給する動脈の分岐図である。血流測定ポイントA~Eは、それぞれの動脈枝の末端として示されているが、実際には、測定ポイントはそれぞれの動脈の最遠位端である必要はない。上記のように、ポイントA~Eのいずれかでの測定値は局所潅流に関する有益な臨床情報を提供し得る。
【0066】
局所解剖学に基づく末梢血管インターベンション、例えば、アンギオソームに向けられた末梢血管インターベンションなどは、比較的最近開発され、従来のインターベンションと比較して、特に、改善された救肢率に関して、有望な性能を示す。複数のDOFセンサーを使用するシステムは、インターベンショナルラジオロジストまたは血管外科医が標的動脈における特定のインターベンションによって、潰瘍傷、虚血組織または他の臨床症状がある足部の標的とする局所解剖学的領域への十分な血液潅流の回復に成功したかどうかを直ちに評価し得るように、足部内、例えば、アンギオソームごとの異なる局所解剖学的部位の潅流の変化に関してリアルタイムのフィードバックを提供することができる。

図2は、混濁媒体の測定フローシステムのブロック図である。サンプル102は、その中に異質マトリックスを含む。このマトリックス内には、ランダムに並んだ微小循環チャネルを有する埋め込まれた流動層があり、これらのチャネルを通って、小粒子207は不規則に移動する。例えば、いくつかの実施形態では、サンプルは、身体組織であり得、末梢細動脈および毛細血管の複雑なネットワークを有する。光源108は、サンプル102へ光を入射する。検出器110は、微小循環チャネル内の移動中の粒子207によって散乱された光を検出することができる。検出器110は、光源からサンプル内へ入りそのサンプルを通って拡散する光を受信するように位置付けることができる。いくつかの実施形態では、検出器は、単一モード光ファイバーによってサンプルと結合することができる。いくつかの実施形態では、検出器は、サンプルの領域を画像化するために使用される、マルチピクセルイメージセンサー、例えば、CCDカメラであり得る。他の実施形態では、検出器は、光子計数アバランシェフォトダイオード(APD)または光電子増倍管(PMT)であり得る。粒子はランダムな方向に流れるため、光源108からの光の散乱は様々であり、そのため、検出器110によって強度変動が検出されることになる。アナライザー112は、検出器110と結合され、検出器110からシグナルを受信するように構成される。アナライザー112は、検出器110によって受信された光の時間強度自己相関関数を測定する自己相関器を含んでなり得る。自己相関関数は、サンプル102中を流れる小粒子の散乱および流動特性を得るために使用することができる。時間に依存した強度変動は、小粒子207の時間に依存した密度変動を反映し、それに応じて、サンプル102内での流速を決定するために自己相関関数を使用することができる。いくつかの実施形態では、ハードウェア自己相関器を採用し得る一方で、他の実施形態では、ソフトウェア自己相関器を使用することができる。アナライザー112によって決定された流速または他の特性は、ディスプレイ114に出力し得る。そのため、測定された量は、ディスプレイ114を介してオペレーターに提供し得る。様々な実施形態では、オペレーターは、臨床医、診断医、外科医、外科助手、看護師、または他の医療関係者であり得る。いくつかの実施形態では、測定値は、実質的にリアルタイムでディスプレイ114を介して提供し得る。いくつかの実施形態では、測定値は、測定から約1秒以内にディスプレイ114を介して提供し得る、例えば、検出器によって散乱光が検出される約1秒の時間内に、ディスプレイ114を介して測定値を提供し得る。様々な実施形態では、測定値は、約10分未満内で、約5分未満内で、約1分未満内で、約30秒未満内で、約10秒未満内で、または検出から約1秒未満内で提供し得る。
【0067】
図3は、多層組織における拡散光の透過および検出の概略図である。図に示すように、光源202および検出器204はどちらも組織206のある部分に隣接して位置付けられる。上記のように、いくつかの実施形態では、光ファイバーは、光源および検出器の一方または両方を組織と結合するために使用し得る。組織206は、流動のない上層208および流動のある深層210を含む多層である。複数の光散乱粒子212は、流動層210中の毛細血管内を流れ、それらの粒子には、例えば、赤血球が含まれ得る。光214は、光源202から放出されると、組織206に浸透するように拡散する。図に示すように、光214の一部は、検出器204に入射するように拡散される。光214は、光源202から検出器204までほぼ三日月形の経路をたどり得る。検出器204によって検出される光214の浸透深度は、光源と検出器との間の間隔に依存する。距離が増加するにつれて、浸透深度は、一般的に増加する。様々な実施形態では、分離距離は、約0.5cm~約10cmの間、またはいくつかの実施形態では、約0.75cm~約5cmの間であり得る。好ましくは、他の実施形態では、分離距離は、約1cm~約3cmの間であり得る。様々な実施形態では、分離距離は、約10cm未満、約9cm未満、約8cm未満、約7cm未満、約6cm未満、約5cm未満、約4cm未満、約3cm未満、約2cm未満、約1cm未満、約0.9cm未満、約0.8cm未満、約0.7cm未満、約0.5cm未満、約0.4cm未満、約0.3cm未満、約0.2cm未満、または約0.1cm未満であり得る。浸透深度は変動し得、例えば、いくつかの実施形態では、センサーの浸透深度は、約0.5cm~約5cmの間、またはいくつかの実施形態では、約0.75cm~約3cmの間であり得る。好ましくは、他の実施形態では、浸透深度は、約5mm~約1.5cmの間であり得る。当然、様々な層の組織光学特性もまた、光源の強度、波長、または他の特性と同じように、光の浸透深度に寄与する。これらの変化は、分析する身体の部分、特定の患者、または他の考慮事項に基づいた測定の深度の調整を可能にする。検出器204によって得られた測定値は、その後、自己相関関数を計算するために処理し、解析し得る。図4に見られるように、自己相関関数は、組織中の流速を決定するために使用し得る。
【0068】
図4は、異なる流速についての自己相関関数のグラフであり、自己相関曲線の減少が急勾配であるほどは流速が速いことを示している。グラフでは、自己相関曲線を片対数目盛でプロットしている。当技術分野で一般的に知られているように、血流データは、各自己相関曲線をモデル、上記の半無限多層拡散モデルにフィッティングすることにより解析することができる。その後、フィッティングを行った自己相関曲線により相対血流速度を提供することができ、これを通常、バルーン血管形成術もしくは外科手術などの末梢インターベンション処置中に、または診断ツールとして適用することができる。いくつかの実施形態では、システムおよび方法は、自己相関が利用されないように構成される。
【0069】
ディフューズオプティカルフロー(DOF)センサー(上記のように、DCSおよびDSCAのセンサーの一方または両方を含むことができる)は、微小循環を測定することにおいて、例えば、足部内の血液潅流を測定することにおいて特に有用であり得る。この技術は、足の局所解剖学(pedal topography)の概念を採用することによってさらに改良することができる。足部内の血流の局所解剖学的分析の一例は、上記のように、足アンギオソームの概念を組み込んでいる。
【0070】
システムおよび方法は、2つの定量的指数:(a)血液潅流指数(「BPI」)(本明細書の他所で血流指数(「BFI」)とも呼ばれる);および(b)血管健康指数(「VHI」)(本明細書の他所で低周波振動指数(「LFI」とも呼ばれる)を計算するためにDSCAを含み得る。BPIは、定量的スケールで測定されるようなリアルタイム組織潅流を表し、一方、VHIは、本明細書の他所に記載されるアルゴリズムを受けた5分の未加工BPIデータから生成される誘導指数(derivative index)である。
【0071】
DSCAプロセスの図を図1AAに示す。DSCAは、コヒーレント光がソースファイバーから患者の組織に伝播する際にそれが血液細胞により散乱されるという原理で働く。検出器ファイバーにおいて収集された光シグナルは、多数の異なる散乱軌道で患者の組織を通過した光子の凝集体である。任意のある瞬間において、検出器ファイバーに到達している光子の平均光路長は、これらの光子が(互いに)構築的様式で干渉するか破壊的が様式で干渉するかを決定する。この正味の結果は、経時的に検出される光の強度変動またはフリッカー、およびそれが起こる割合は患者の組織の血液細胞の数および速度の指標となるということである。要するに、検出されるシグナルのフリッカー率が高いほど、患者の潅流/BPI高い。
【0072】
レーザードップラーおよびスペックルイメージングなどのそれより古い技術が何十年も存在し続けていた。これらは単回の散乱事象を受ける光子を解析し、結果的に、皮膚深度を超える潅流を評価する能力を限定する。これに対し、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、複数の散乱事象にわたって光子を解析するために有利な工学システムを使用することができる。これにより、レーザードップラーまたはスペックルイメージングの場合よりもおよそ10倍大きい深度まで組織潅流測定を可能とする。
【0073】
本明細書に開示されるようなシステムおよび方法のもう一つの利点は、ドップラー超音波およびパルスオキシメトリとは異なり、その技術は拍動性の血流に依存しないということである。これらのより古い技術は、1.1mmより大きい血管に対してのみ使用されるように設計されており、それらの光学システムは、微小血管/毛細血管組織床における血液細胞の動きを検出/分析することはできない。この違いは臨床上重要であり得、ドップラー超音波に頼るABIがなぜ足に拍動流のない糖尿病患者で検出できないことが多いかの理由の1つである。
【0074】
本明細書に開示されるようなDSCAシステムおよび方法は、有利には血管流における比較的小さな変化を拾うことができる。この一例は、血管造影が行われる場合のBPIにおける小さいが目立つ増加である。造影剤ボーラスは高い割合で血液細胞を毛細血管へ押しやり、BPIは簡単に急上昇し、その後、造影剤(血液細胞を含まない)が足の毛細血管床を通過した際に降下する。もう1つの例は、IRチームが処置後に遠位足の脈拍を触診し、圧迫する際のBPIの降下である。
【0075】
本明細書に開示されるようなシステムおよび方法は、それらのインターべーション時にほぼ即時のフィードバックを提供することができる。いくつかの手順は血流および潅流の改善という点で明白な利益を有するが、臨床医の経験は、複雑な末梢疾患パターンを有する、特に糖尿病性病変を有するますます多くの患者において、血管造影誘導だけで手順の成功を確認することは困難であり得るということであった。従って、発明のシステムおよび方法は、さらなるインターべーションをいつ行うべきか、また、いつIRが十分に達成されたかについて有用な指針を提供し得る。さらに、システムおよび方法は、ワークフローに及ぼす影響が無視でき、放射線透過性センサーは足のイメージングに干渉しない。さらなる利点は、開示されるシステムおよび方法は、経皮組織酸素モニター(TcPO)に比べてはるかに使用は容易であるということである。経皮酸素モニターは、あまりロバストではなく、時間がかかると評価されており、例えば、このデバイスは、患者は、記録している間、20分間静止している必要があった。従って、開示されるシステムおよび方法は、はるかにより迅速かつより簡単な測定プロトコールを提供し得る。
【0076】
さらに、いくつかの実施形態は、単純なボックス設計およびセンサーを含み、事前の測定較正の必要は無い。経皮モニターは、各使用の前に較正するために数分を必要とし、十分な結果を保証するためには異常な読み取りがあった場合にはセンサーの再較正が必要となるためにセンサーは評価中に能動的モニタリングを必要とする。TcPOセンサーの固定デバイスは常に皮膚に接着しているわけではなく、接着が外れ、モニタリングを再開しなければならない場合があり、これがさらに測定時間を引き延ばしていた。コストの面でも同様であり、経皮酸素モニターは膜および固定プローブの購入を要し、これらは定期的に購入しなければならない。膜および固定プローブが使用できなければ、不正確な値となる。
【0077】
ABIおよびTBIの評価は、非圧縮性血管のために信頼できない、誤って高い値となる傾向があるとして、主流の臨床的見解を反映した。有意な数の患者が、カフ疼痛不耐性と見られたことからこれらの手順を受けることができなかった。これに対して、本明細書に開示されるようなシステムおよび方法は無痛であり得、全ての患者に十分な忍容性があり、デバイスおよびセンサーの使用により引き起こされる皮膚損傷または刺激作用を生じない。
【0078】
多くの場合、血管インターベンションの前に、インターベンショナルラジオロジストまたは血管外科医は、例えば、透視検査、コンピューター断層撮影、超音波、または他の画像化技術を用いて、対象となる血管系を画像化する。そのような画像化によって、いくつかの潜在的な閉塞または病変を識別し得る。末梢インターベンション、例えば、バルーン血管形成術、アテローム切除術、または外科的バイパス手術/移植などは、足部の罹患領域への潅流を回復させる目的で、識別された閉塞または病変(「標的病変」)の1つ以上を再開通するために採用することができる。これらの末梢インターベンションによって救肢に成功するためには、血液潅流は、足部創傷の治癒を可能にする十分なレベルに達しなければならない。リアルタイム潅流モニターがない場合、医師には、インターベンションによって創傷治癒に十分な潅流の改善が達成されたかどうかを確実に知る方法はなく、または全くない。本明細書において記載するように、足部の様々な局所解剖学的部位において血液潅流のリアルタイム測定を用いることにより、この問題に対処する。これによりリアルタイムで客観的定量的潅流データが提供されるため、医師は、標的病変における特定のインターベンションによって、創傷がある足部の局所解剖学的領域への潅流の回復に成功したかどうかを確実に知ることができる。所望の局所解剖学的領域における許容レベルの潅流が達成されたと判断された場合、医師は、さらなるインターベンションに伴う追加的な危険性を回避し、その処置を終わらせることができる。あるいは、標的病変における特定のインターベンションによって、リアルタイム潅流モニターにより測定される潅流改善が得られなかった場合、医師は、それによって、二次標的病変に進むという追加的な危険性を引き受けるように教え導かれる。従って、リアルタイム潅流モニターの使用は、所望の潅流改善を達成する前に末梢インターベンション処置が途中終了される状況を防ぐ。また、その使用によって、医師は、(血行再建する場合に)どの標的病変によって最大の潅流改善が足部の所望の局所解剖学的領域にもたらされるかに関して教え導かれる。このリアルタイムでの認識により、次には、前記病変がある血管の開存性を延長するための薬剤溶出バルーンまたは他の手段の使用に最適な配置に関して医師に知らせることになる。
【0079】
潅流の変化は自己相関関数の形状の変化から直接見ることができるが、本明細書において血液潅流指数(blood perfusion index)(BPI)と呼ぶこともできる血流指数(BFI)を定義するための潜在的により有用な方法が開発されている。図5Aは、カフ閉塞プロトコール中のそのような2つのBFIの経時的グラフである。縦の破線は、カフ膨張の開始および停止の時間を示す。上のチャートは、自己相関曲線の垂直交差から算出したBFIを示し、一方、下のチャートは、自己相関曲線の水平交差から算出したBFIを示している。図5Bは、これら2つの異なるBFI算出方法を示すグラフである。実線は、血流ゼロの基準データを表し、一方、点線は、リアルタイム自己相関データを表す。垂直交差指標は、所定の時間におけるリアルタイム自己相関データと基準データのy軸値(g)を比較する。例えば、第1の指標は、1/gまたは1.5-gとして計算することができる。水平交差指標は、所定の流速における自己相関データと基準データとの間の時間差を比較する。例えば、第2の指標は、log(t2/t1)として計算することができる。
【0080】
図5Aに示すようなチャート、または他のそのような血流表示は、聴覚的、視覚的、または触覚的なフィードバックを介してリアルタイムでオペレーターに表示することができる。それによって、医師に、末梢インターベンションの有効性に関して実質的にリアルタイムのフィードバックが提供され得る。例えば、バルーン血管形成術中に、医師は、足部の特定の位置において測定されたBFIをモニタリングすることができる。BFIは、バルーンが膨張している間減少し、収縮後増加する。血管形成術を行うためにバルーンの膨張を繰り返した後、BFIは、血管形成術前のベースラインと比べて増加するはずであり、血管形成術処置によって標的足部組織に潅流の改善がもたらされたことを示す。血管形成術前のベースラインと比べて増加していないBFIは、バルーン血管形成術によって潅流の回復に成功しなかったことを示す。このようなフィードバックのリアルタイムでの提供は、血管インターベンションを行う医師にとって莫大な利益である。潅流が改善されているかどうかを決定するために、術後に数時間または数日間待機し、その時間の間に、足部が切断を必要とする程度まで悪化し得るよりは、血管形成術処置中に選択した足の位置においてDOFセンサーを使用することによって、即時のフィードバックを提供することができ、医師により、必要に応じて処置を継続、変更、または終了することが可能になるほうがよい。上記のように、様々な実施形態において、フィードバックは、いくつかの場合で、測定から約10分未満内で、約5分未満内で、約1分未満内で、約30秒未満内で、約10秒未満内で、または約1秒未満内で提供され得る。いくつかの実施形態では、血行再建術処置の成功は、処置前のBFI値と比較したおよそまたは少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、またはそれ以上のBFIの増加によって示すことができる。図6は、カフ閉塞プロトコール中の2つのBFIのグラフである。図7は、いくつかの実施形態に従う潅流モニタリングの様々な要素を示している。図7Aは、DSCA潅流モニターコンソールおよび計装ボックスの実施形態を示している。図7Bは、薄型センサーの実施形態を示している。図8Aは、2名の個体の足の内側足底部で測定した未加工BFIデータ(未加工の時系列BFIデータ)を示し、1名は健常であるのに対し、1名は虚血肢を示しており、図8Bは、同じ個体の対応するパワースペクトルデータを示している(未加工時系列BFIデータのフーリエ変換。
【0081】
上記の例はバルーン血管形成術に関するが、足部内の血流(相対値、絶対値、またはその両方に関わらない)を評価するためのDOFセンサーの使用は、複数の異なるインターベンションの前に、その間に、またはその後に適用することが有利であり得る。例えば、DOFセンサーは、インターベンション、例えば、回転アテローム切除術、限定されるものではないがtPAを含む溶解物質の送達、バイパス処置、ステントおよび/もしくは移植片の配置、または任意の他のインターベンションなどを支援するために使用することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、システムは、シグナルを受け取り、絶対的BPI値および/またはBPI比(第2のその後の時点(例えば、血行再建術の終了)のBPIを、第1の最初の時点(例えば、処置前のベースライン、血行再建術の開始、または手術中ベースライン)のBPIで割った商として定義される)を計算するするように構成されたハードウエアまたはソフトウエアプロセッサーを含み得る。手術中ベースラインは、いくつかの場合において、血管手順の最初の血管形成術の直前、例えば、5分、4分、3分、2分、1分、30秒、15秒、10秒またはそれより短い時間内であり得る。手術中ベースラインは、いくつかの場合において、ガイドワイヤが配置された後、最初のバルーン形成またはその他のインターべーションが行われる前であり得る。いくつかの実施形態では、手術中ベースラインは、対照の活性化の際に自動的に採取され、その後、バルーンを自動的に膨らませ、かつ/または手術中ベースラインを取得した後、所定の時間内にその手順の別のアクションを行うことができる。いくつかの実施形態では、このシステムは、例えば、バルーンの収縮後の所定の時点で第2の測定を自動的に行うように較正することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、BPI指数は必ずしも比である必要はなく、例えば第2のその後の時点のBPIから第1の最初の時点のBPを差し引くことによって計算することもできる。
【0084】
いくつかの実施形態では、BPI指数(例えば、比、2つの値の差し引き、またはその他の指数)は、約、少なくとも約、または多くて約5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分、90分、120分、150分、180分、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、24時間、36時間、2日、3日、4日、5日、6日、7日、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、または2以上の前記値を含む範囲を含むより長いもしくはより短い期間だけ時間的に離れた2以上の値を含み得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、BPI比は、術前ベースラインBPI(例えば、患者の入院時に診療所でまたは手順前短期間のうちに採取)に対する放出BPIの%変化と比較することができる(例えば、36時間以内に採取、多くの場合、手順後12時間前後)。
【0086】
いくつかの実施形態では、約1、1.1、1.2、1.25、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.75、1.8、1.9、2、2.5、3、もしくはそれを超える値より大きい、または前記の値のうちいずれか2つを含む範囲の手術中BPI比を含むBPI比は、この手順から得られる正の潅流変化%を予測する能力を有する可能性があり、また、良好な患者転帰も示す。このような潜在的予測値の試験からのデータを含む表1を以下に示す。この変換は、足上の1以上のセンサーにおいて約1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、またはそれより小さい値より小さいBPI比が%BPIのフラットな/負の変化および混合型の/不良な患者転帰を示し得るという点で真である。理論によって限定されるものではないが、他の指数の中でも、%BPI(またはVHI)において決定された比較的に小さな変化が以外にも、予期しないことに、患者転帰と相関があることが判明した。従って、システムおよび方法のいくつかの実施形態は、完了したインターべーションに対する応答を予測し、および/または患者が表上にある場合には、十分に満足のいく結果が達成されたか、または逆にさらなるインターべーションステップが必要とされるかをリアルタイムで決定するために使用可能である。同じまたは他の実施形態は、完了したインターべーションが良好に臨床効果を有する見込みがあるかないかを評価するため、または患者の臨床状態に関すインターべーション前の推奨および/もしくは予測を提供するために使用可能である。いくつかの実施形態では、システムおよび方法は、BPI比、%BPI、VHI、またはその他の指数をディスプレー、音声通信などに基づく推奨および/または予測をオペレーターまたは第三者に伝達することができる。いくつかの実施形態では、システムまたは方法は、数字の比および/またはシェードバーもしくはカラーバーまたは数字の比の他の測定基準を電子的に表示することができる。例えば、所定の閾値、例えば、一例としてBPI比1より小さい比は赤などの第1の色で示し、所定の閾値、例えば、BPI比1より大きい比は緑などの第2の色で示すことができる。例えば、表1に示される場合、足にそれぞれ2つのセンサーを有した35名の患者の試験では、BPI比>1(BPI比>1は良好な転帰を予測し、BPI比<1は不良な転帰を予測し、ただし、より高いBPI比を必要とした極めて低いBPI術前ベースラインは除く)の使用は、臨床転帰と91%の相関を示した。この試験で、これは好適に、TcPO2における変化の評価に基づけばわずか33%;ABIにおける変化の評価に基づけば52%;TBIにおける変化の評価に基づけば67%;および血管造影マーカー(一般に標準基準と考えられる)における変化の評価に基づけば77%に匹敵した。
【0087】
【表1】
【0088】
患者の形成術前の絶対的BPIが異常に低い、例えば、約20、15、10、5未満、またはさらに低い場合に潜在的警告が当てはまり得る。このような場合、約2より大きいBPI比または本明細書に記載されるようなその他の値がより適当な最小潅流目標として役立つ可能性があり、および/または低い値のPTA前BPIが与えられた場合には、予測値に必要とされる場合がある。
【0089】
理論によって限定されるものではないが、血行再建のためのリアルタイム潅流目標としての例えば、1またはそれを超える値より大きいBPI比の使用は、リアルタイム判断を行う上で医師を大きく補助し得る。例えば、より接近しやすい目標病変を開口した後に約1より小さいBPI比が見られれば、特に、創傷アンギオソームに配置したセンサーによって表示されれば、より難しい標的病変を開口するより積極的な処置の考慮に想到するはずである。これにより有利には再入院および/または過度な組織喪失をコスト的に回避することができる。
【0090】
いくつかの場合では、このBPIシグナルのスムージングアルゴリズムがリアルタイムの潅流変化を反映して生じるのは約1分といったわずかな遅延であり得、変化が著しければより短くなる。場合によっては、最終の形成術後に早すぎて、BPIを測定しその手順を終わられる前に一定の時間、例えば、約30秒、1分、2分、またはそれを超える時間、待機することが有用であることもある。
【0091】
いくつかの実施形態では、遠位の足のBPIシグナルは、近位流動が妨げられる場合(例えば、反対側の腸骨シース、手順の後期に初めて処置された複数のSFA狭窄、ならびに見過ごされ未処置で残っていた極めて強固なSFA狭窄、より大きなシースの導入、または極めて強固な静脈グラフト狭窄へのカテーテルおよびワイヤの通過を含む問題によって引き起こされる)に、不明瞭または低感度となり得る。従って、場合によっては、まず近位病変に取り組み、ワイヤの留置後、最初の形成術を試みる前に初めて術中ベースラインも採り得ることが有益であり得る。
【0092】
上記のBPI比分析に加え、術前および解除時BPIの絶対値、ならびに/または前者を超える後者のパーセンテージ変化、創傷治癒潅流閾値または例えば本明細書に記載されるようなその他の臨床測定基準を決定する上で有用であり得る。下表2は、明らかに良好な転帰およびBPI変化との相関が存在した症例を選択したものを示している。
【0093】
【表2】
【0094】
従って、例えば、ソフトウエアまたはハードウエアプロセッサーにより決定されディスプレーに出力された、BPI値の絶対的な上昇および/またはパーセンテージの上昇は、手順の成功および/または創傷治癒の予測の指針となり得る。例えば、少なくとも約20、25、30、35、またはそれを超えるBPIの潅流レベルは、非糖尿病患者における良好な創傷治癒には十分であり得るが、糖尿病での創傷治癒には、少なくとも約30、35、40、45、50、またはそれを超えるBPIなどのより高い潅流が必要とされ得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、システムおよび方法は、インターべーションを保証する虚血の患者診断を提供することができる。例えば、プロセッサーは、VHI(血管健康指数、本明細書ではFTLとも呼ばれる)と呼ばれる第2の指数が得られるように構成することができ、これは未加工BPIデータ(例えば、0.5Hz、1Hz、1.5Hz、2Hz、2.5Hz、3Hzまたはその他の周波数で採取)の5分ログの潅流変動を解析するアルゴリズムを介して得られることから、いくつかの場合で、有利には外来患者により良好な診断曲線をもたらし得る。その性質によって、それは、生理学的潅流における秒毎の変化を反映するリアルタイムBPIシグナル変動の極値による影響の少ない、より安定な計算より導出される指数となり得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、術前および解除時VHIの絶対値、および/または前者を超える後者のパーセンテージ変化(例えばVHI比)は、創傷治癒潅流閾値を決定する上で有用であり得る。下表3は、明らかに良好な転帰およびVHIとの相関が存在した症例を選択したものを示している。
【0097】
【表3】
【0098】
いくつかの実施形態では、システムおよび方法は、測定される各場所のBPI指数(例えばBPI比)およびVHI比を計算し、所定の閾値を上回るまたは下回るBPIおよび/またはVHI指数を考慮するように構成されたプロセッサーを含むことができる。例えば、上記の表2および3に示されるように、明確に良好な転帰が見られた症例のサブセットでは、VHIおよびBPIの両方に有意に大きな上昇が確認された。いくつかの実施形態では、プロセッサーは、血流特徴に関する測定基準を解析し、治癒/改善の質的および/もしくは量的な見込みを予測し、かつ/または改善の限定もしくは改善のより低い見込みによる迅速な医学的経過観察を示唆するように較正することができる。これらの推奨は、従前に記載したようにディスプレーなどの出力デバイスに電子的に送達されて、テキストまたはグラフィック形式にされ得る。
【0099】
虚血の外来検出のために、VHIは有利には、健常な足から臨床的に虚血の足を識別するための診断ツールとして使用することができる。健常な患者と臨床的にPADまたはCLIと診断された患者の試験により、図14Eおよび14Fに示される以下のAUCグラフが作成された。
【0100】
上記の図14Eの左のグラフに示されるように、全ての患者でVHIはABIより高性能である。図14Fの右のグラフに示されるように、ABI>1.1の患者では、VHIは、ABIとは異なってその感度を維持している。
【0101】
これらの結果は、VHIは、足虚血の検出において、特に、ABIの読み取りが>1.1である場合には、ABIよりもはるかに優れている可能性があることを示している。このような場合、石灰化の高い非圧縮性足首血管の可能性のために、ABIは健常組織と重度の虚血組織を識別できないが、VHIはカルシウム沈着により影響を受けないのでその制度を維持する。
【0102】
ある試験において、20名の患者のベースラインVHIを、図14Gに示されるように、また、以下のように解析した。
【0103】
これらの20名の患者の40指数の足ベースライン測定において、85%が≦15VHIであり、92.5%が≦20VHIであった。VHI中央値は9.3であった。
【0104】
上記に示したように、VHIは、健常な足とインターべーションを要する臨床的に虚血の足を識別するために使用することができる。
【0105】
同じ患者に関して、同じ5分間の平均BPI値の中央値(平均BPIの視覚的評価を5分チャート外とする)を図14Hに示す。
【0106】
これらの20名の患者の40指数の足ベースライン測定において、77.5%が≦30 BPIであり、92.5%が≦40BPIであった。BPI中央値は19.0であった。
【0107】
VHI中央値分析に対するBPI中央値分析の一貫性が見て取ることができ、VHI数値は、それらのBPI対応物のおよそ半分である。
【0108】
従って、約25、20、15、10、もしくはさらに低い値よりも小さいなどのVHI閾値レベル、および/または45、40、35、30、25、もしくはさらに低い値のBPI閾値レベルを決定するように構成されたプロセッサーは、四肢救済のためにより適時のインターべーションに向かうという点でより良い診断試験に患者を導くための第一選択において使用することができる。
【0109】
システムおよび方法はまた、アンギオソーム特異性のために較正することもでき、例えば、足の異なる局所解剖学的領域の潅流変化を追跡するように構成することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなシステムおよび方法を用いる潅流モニタリングを使用した術中モニタリングは、手順の終了時にフラットなまたは低下したBPIが得られた場合に、困難な病変/CTOに取り組むためのより積極的な手順的戦略を提供し得る。これは救急再入院または繰り返しの切断の回避をもたらし得る。さらに、リアルタイム潅流フィードバックにより誘導される積極的な再潅流戦略は、繰り返しの血行再建に関連したコスト(費用と患者転帰の両観点)を削減する助けとなり得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、術後潅流モニタリングは、それらが下方スパイラルの事象を引き起こす前に軟血栓問題を阻止するためにさらなるインターべーションまたは抗凝固薬/血栓溶解薬の必要について臨床医に警告を出すために使用することができる。本明細書に開示されるものなどの指数を決定するように構成されたシステムおよび方法を用いる早期追跡は、潅流の低下または変化がないことを決定することができ、これは、インターべーションを繰り返すかどうかを含む、さらなる臨床処置を決定する場合に臨床チームにより考慮され得る。
【0112】
手術室での血液潅流の上記のリアルタイムモニタリングに加えて、DCSまたはDSCAを介してもたらされた未加工血液潅流データに基づく誘導指数(derivative indices)はまた、末梢部(例えば、足部)内の血液潅流を測定することにより、例えば、患者の組織潅流レベルに基づいて適当な創傷もしくは潰瘍の療法を導くために、または末梢動脈疾患の臨界閾値についてスクリーニングするために、入院患者または外来患者の状況でのツールとして役割を果たすことができる。このような誘導指数としては、足親指指数(the Foot Thumb Index)(「FTI」)、低周波振動指数(「LFI」)およびその2つのパラメーター「LFI」および「LFI」、ならびにサポートベクターマシン指数(the Support Vector Machines Index)(「SVM」)およびフロー変換レベル(「FTL」)が挙げられる。これらの誘導指数は下に記載し、一緒に「誘導指数」と呼ぶ。いくつかの実施形態では、誘導指数の1つ以上における時間参照の機能は、例えば、約15秒~約15分の間、約30秒~約5分の間、約30秒~約2分の間、もしくは約30秒、45秒、1分、1.5分、2分、2.5分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、または前述の値の任意の2つを含む範囲であり得る。
【0113】
BFIシグナルの統計解析:
いくつかの実施形態では、BFI(BPI)シグナルの統計パラメーターもまた、識別指標として使用することができる。フロー変換レベル「FTL」は、2Hzで計算されたBFIシグナルの標準偏差である。図12は、時系列BFIに関するFTL導出方法、例えば、強度を60Hzのフレームレートで測定した場合の、時系列DSCA血流指数(BFI)データからのFTLの導出を示している。他のフレームレート、例えば、30Hzなども選択する継続時間に応じて利用することができる
【0114】
1Hzおよび2Hzでサンプリングした内側足底部BFIデータの5分の標準偏差を計算し、得られたROC曲線を図13Aおよび13Bに示している。図13Aは、BFI @ 1Hzの標準偏差のROCを示し、図13Bは、BFI @ 2Hzの標準偏差のROCを示している。本明細書の他の場所に述べたように、サンプリングする時間データの量は、例えば、約30秒、45秒、1分、75秒、90秒、105秒、2分、3分、4分、5分、または別の時間間隔など、所望の臨床結果に応じて選択することができる。1Hzまたは2Hz以外の他の周波数、例えば、約0.5Hz~約10Hzの間、または約1Hz~約10Hzの間の周波数なども同様に利用することができる。
【0115】
2HzでのBFIの標準偏差に着目し、データセットを短縮し、解析する場合、2分に至るまでにAUCのゆっくりとした低下と、1分での急激な低下を観察することができる。この結果を表2に示す。
【0116】
【表4】
【0117】
踵部および腕部のBFIの標準偏差もまた、健常患者と虚血患者の間で有意差を示しているが、内側足底部の場合のように強くはない。3つの位置のp値を図14A~14Cで比較している。これらの図は、それぞれ、内側足底部、踵部、および腕部の領域のFTLのボックスプロットである。
【0118】
結果の評価
ROC曲線のAUCおよそ0.75またはそれ以上は相当な識別力を示し、AUCが0.90を超えると、いくつかの実施形態では優れていると考えられる。比較として、Figoni et al (J. Rehab Res Dev 2006: 43 (7) 891-904)には、健常被験者と、虚血患者(下肢虚血のために片側下腿切断が差し迫っているかまたは予定されている将来の候補として同定される)を識別するには、tcPOではAUC 0.82であることが報告されている。しかしながら、Figoniの研究での虚血患者群は、TcPO測定部位よりもずっと上のレベルでの切断の決定が既になされていたという点で極度の虚血を患っていた。いくつかの実施形態では、解析された患者は、外来患者では一般的な患者であり、試験時に誰も切断を必要としていなかった。図14Dは、Y軸に健常および虚血の患者について1つの研究で得られたFTL値と、X軸に患者数値識別名を示すグラフを示している。
【0119】
Figoniの研究に対して被験者の間で虚血の程度が違っていたにもかかわらず、LFIを用いた1次元AUCは、Figoniの研究と類似していることがあり、TcPOと比べてはるかに高い、虚血の程度の微妙な違いを区別するLFIの能力を示唆している。本発明者らのSVMに複数のパラメーターを利用する場合、tcPO2について報告された性能を大きく上回る、0.969またはより良好なAUCを達成することができる。
【0120】
FTL(BFI @ 2Hzの標準偏差)を用いて、内側足底部に位置する単一センサーから単一パラメーターでのAUC 0.9645を達成することができる。これにより、いくつかの場合では、測定が非常に簡単になり、臨床診断用途および/またはスクリーニング用途での技術実装の有用性および容易性を高めることができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、約10未満、9.75、9.5、9.25、9、8.75、8.5、8.25、8、7.75、7.5、7.25、7、6.75、6.5、6.25、6、5.75、5.5、5.25、5、4.75、4.5、4.25、4、3.75、3.5、3.25、3、2.75、2.5、2.25、2、またはそれより小さいFTL値は、第1の集団と第2の集団の間での識別力のある所定のカットオフ値となり得、特性または疾患特性、例えば、虚血、例えば、重度の虚血などの危険因子を示し、例えば、聴覚的、視覚的、または他のシグナルを引き起こすことにより、例えば、ディスプレイ上で視覚的に、臨床医に通知する。
【0122】
いくつかの実施形態はまた、測定または計算されたデータ(例えば、限定されるものではないが、BFI/BPI、BPI比、VHI、未加工DOFシグナルなど)を格納するメモリー、および少なくとも1つのウェブサイト/データベースへ/から測定または計算されたデータを伝送/受信する容量を含み得る。少なくとも1つのウェブサイト/データベースは、患者および臨床医が測定または計算されたデータにアクセスすることを可能にし、そのデータを処理/解析し、臨床医および/または患者へ通知することができる。これらの通知は、限定されるものではないが、患者が医師の診察を受ける必要がある場合のアラート、再検討のために新規患者データが利用可能である臨床医への最新情報の提供などを含み得る。データは、病院および糖尿病/足病/高齢者/地域のケアセンターの電子健康記録に適用可能な方法で格納することができ、適用可能な規格に準拠することができる。このようなシステムは、臨床医、介護者、および家族が患者を遠隔でモニタリングすることを可能にすることができ、臨床ケアセンターへのアクセスおよび移動が制限されかつ/または困難である資源の乏しい地域に特に関連があり得る。患者の健康状態を遠隔で評価することによって、確実に必要な移動だけを行うことにより臨床ケアを向上させることが可能となる。
【0123】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するシステムおよび構成要素は、1つ以上のネットワークを経由して1つ以上のコンピューターシステムおよび/または1つ以上のデータソースと通信しているコンピューターシステムの形態をとることができる。コンピューターシステムは、本明細書に記載するシステムおよび方法の1つ以上を実装するために使用し得る。コンピューターシステムおよび構成要素を示す様々な実施形態を本明細書に記載するが、コンピューターシステムの構成要素およびモジュール(本明細書においてエンジンと呼ぶこともできる)に提供される機能は、より少数の構成要素およびモジュールに統合し得るしまたは追加の構成要素およびモジュールにさらに分割し得ることは認識される。例えば、通信エンジンは、画像診断モダリティと通信している第1のモジュールおよび宛先モダリティと通信している第2のモジュールを含み得る。モジュールは、例として、構成要素、例えば、ソフトウェア構成要素、オブジェクト指向ソフトウェア構成要素、クラス構成要素およびタスク構成要素など、プロセス、ファンクション、属性、プロシージャ、サブルーチン、プログラムコードのセグメント、ドライバー、ファームウェア、マイクロコード、回路構成、データ、データベース、データ構造、テーブル、アレイ、および変数を含むことができる。いずれのモジュールも1つ以上のCPUによって実行することができる。
【0124】
ソフトウェアモジュールは、コンパイルし、実行可能プログラムにリンクし、ダイナミックリンクライブラリーにインストールし得るし、または例えば、ベーシック(BASIC)、パール(Perl)、もしくはパイソン(Python)などのインタープリタ型プログラミング言語で記述し得る。ソフトウェアモジュールは、他のモジュールからもしくはそれら自体から呼び出し可能であり得かつ/または検出されたイベントもしくは割り込みに応答して呼び出し得ることは理解されるであろう。ソフトウェア命令は、EPROMなどのファームウェア中に埋め込み得る。ハードウェアモジュールは、ゲートおよびフリップフロップなどの連結論理ユニットから構成し得かつ/またはプログラム可能なゲートアレイもしくはプロセッサーなどのプログラム可能なユニットから構成し得ることはさらに理解されるであろう。本明細書に記載するモジュールは、ソフトウェアモジュールとして実装することができるだけでなく、ハードウェアまたはファームウェアでも表し得る。一般的に、本明細書に記載するモジュールは、それらの物理的構成または記憶にかかわらず、他のモジュールと組み合わせ得るかまたはサブモジュールに分割し得る論理モジュールを指す。加えて、本明細書に記載する総ての方法は、CPUの命令として実行し得、データの操作または変換をもたらし得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、本システムのハードウェア構成要素は、1つ、2つ、またはそれ以上の従来のマイクロプロセッサーを含み得るCPUを含む。本システムは、メモリー、例えば、情報の一時記憶のためのランダムアクセスメモリー(random access memory)(「RAM」)および情報の固定記憶のための読み出し専用メモリー(a read only memory)(「ROM」)など、ならびに大容量記憶装置、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュドライブ、ディスケット、または光媒体記憶装置などをさらに含む。典型的には、本システムのモジュールは、規格に準拠したバスシステムを用いて接続される。異なる実施形態では、規格に準拠したバスシステムは、例えば、周辺構成要素相互接続(Peripheral Component Interconnect)(「PCI」)、マイクロチャネル、小型コンピューターシステムインタフェース(Small Computer System Interface)(「SCSI」)、業界標準アーキテクチャー(Industrial Standard Architecture)(「ISA」)および拡張ISA(Extended ISA)(「EISA」)アーキテクチャーであり得る。
【0126】
いくつかの実施形態によれば、システムは、例えば、電子カルテ(an electronic medical record)(「EMR」)などの宛先モダリティに動作可能なようにつなぎ得る。EMRは、電子医療データを保存し、そのデータにアクセスすることを可能にするように構成された任意のソフトウェアまたはハードウェア-ソフトウェアシステムであり得る。様々な実施形態によれば、EMRは、電子カルテ、電子健康記録などの少なくとも1つであり得る。いくつかの実施形態では、システムおよびそれらの構成要素は、電子メールまたは他のメッセージングモダリティ;SAMBA、Windows、または他のファイル共有モダリティ;FTPまたはSFTPサーバーモダリティ;VPN;プリンター;などであり得る宛先モダリティに動作可能なようにつなぐことができる。
【0127】
いくつかの実施形態によれば、システムは、1つ、2つ、またはそれ以上のソフトウェアモジュール、論理エンジン、数多くのデータベースならびに、本明細書に記載する様々なモダリティおよび/またはEMRにユーザーがアクセスすることを可能にするように構成されたコンピューターネットワークを含んでなり得る。システムは、患者データ、または患者データがないことがシステムによって記録されるように構成し得る。そのシステムは、既存の処理システムのアップグレードまたは再構成を意図し得るが、既存のデータベースおよびビジネス情報システムツールへの変更は必ずしも必要ではない。システムは、EMRシステムへの変更を行わずに、EMRなどの既存のヘルスケア情報管理システムに実装または統合し得、モダリティの通信システムへの変更を行わずに、他のモダリティとインターフェースで接続し得る。
【0128】
いくつかの実施形態によれば、システムは、ソフトウェアまたはハードウェア-ソフトウェアシステムであり得る。例えば、システムは、診断医療情報を患者のEMRの保存に好適な形式にするように構成された情報変換装置に動作可能なようにつながれた医療情報を受信および伝送するように構成された通信エンジンと;EMRに入力された、医療診断モダリティでユーザーが選択可能な指示からユーザーが選択可能なタスクリストを作成するように構成されたワークリストエンジンと;システムによって実行されるデータ伝送および/またはデータ変換のトランザクションおよび/またはエラーの、ユーザーが選択可能なレコードで作成されるイベントログとを含むことができる。
【0129】
いくつかの実施形態によれば、通信エンジンは、データを受信および/または伝送するように構成された任意のソフトウェアまたはハードウェアソフトウェア-システムであり得る。通信エンジンは、有線および無線のネットワークまたはそれらの組合せを含む多様なネットワークインターフェース上で、例えば、イーサネット(Ethernet)、802.11x、ブルートゥース(Bluetooth)、ファイアワイヤ(FireWire)、GSM、CDMA、LTEなどを介してなど、データを伝送および受信するように構成し得る。通信エンジンはまた、TCP/IPなどのファイル転送プロトコール、ならびに例えば、WEP、WPA、WPA2、および/または同様のものなどの様々な暗号化プロトコールを用いてデータを伝送および/または受信するように構成し得る。
【0130】
さらに、いくつかの実施形態では、通信エンジンは、能動的または受動的なモジュールとして構成し得る。通信エンジンが受動的である場合、それは、より大きなヘルスケア管理システムの様々な要素によって発見可能であるように構成し得る。このように、通信エンジンが、EMRへ要請を伝送し、EMRから特定の患者についての患者データを受信し、EMRから医療診断モダリティへ患者データを転送し得るように、通信エンジンは、医療診断モダリティから、ユーザーが選択した患者についてのコマンドまたは要請を受信するように構成し得る。従って、通信エンジンは、データを受信および伝送するように構成されるだけである。いくつかの実施形態では、通信エンジンは、EMRまたは医療診断モダリティのいずれかからデータを収集し、取り込みまたは利用するように構成されていない。
【0131】
臨床用途
DSCAの誘導指数の実施形態は、患者における微小血管運動の直接評価を与える。糖尿病によって起こる内皮機能不全(Kolluru et al、Intl J of Vascular Med 2012)は、正常な血管運動を弱らせ、血管リモデリングおよび創傷治癒の遅れにつながる。従って、誘導指数は、いくつかの実施形態では、(糖尿病および非糖尿病の両方の)患者の治癒力をより適切に評価するための手段を提供することができ、そのため、創傷ケア療法の最適な使用を指示することができる。誘導指数のさらなる使用は、例えば、末梢血管疾患について患者をスクリーニングすること、血行再建術処置、例えば、バイパス、ステント、移植、血管形成術、または他の処置などの有効性を、術中または術後のいずれかに判定すること、HBOTなどの先進的創傷療法に対する反応を予測すること、および四肢切断の最適な部位を決定することを目的とすることができる。この技術の他の用途としては、例えば、組織生存可能性についての形成外科移植片または皮弁の評価が挙げられる。いくつかの実施形態では、DOFセンサーは、足部、足関節、腓腹部、大腿部、手部、腕部、頸部、または他の解剖学的部位における血流を評価するために使用することができる。いくつかの実施形態では、DOFセンサーは、血流を評価するために、例えば、体内に、例えば、食道、胃、小腸、結腸、または子宮などの自然孔内に位置付けることができる。様々なこのような実施形態では、DOFセンサーは、アンギオソーム理論に従って配置することができる。
【0132】
虚血足部のスクリーニング
虚血足部について、特に、糖尿病患者についてスクリーニングためのツールとして、1つ、2つ、またはそれ以上の誘導指数を使用し得る。この場合、糖尿病に関係のある疾患進行の一部として神経障害があることは、跛行が、基礎にある末梢動脈疾患の重症度についての信頼性のある症状ではないことが多いということ、例えば、患者は、アテローム性動脈硬化症が存在しないことからではなくむしろ糖尿病性神経障害のために痛みを感じないということを意味する。
【0133】
スクリーニングツールは、理想的には、小型で、コンパクトで、安価で、広く展開可能であり、最小限の訓練を受けた医員によって利用される必要があるため、いくつかの実施形態では、虚血足部をスクリーニングするためのシステムは、例えば、10秒~10分の測定期間中に患者の足部に取り付けられる単一センサーを含んでなる、小型で、バッテリー式で、移動可能な、血液潅流モニターコンソールを使用して実装し得る。記録された時系列の血液潅流は、次に、内部プロセッサーを介してパワースペクトルに加工することができる。また、時系列データは、処理のために分散型計算ネットワークに遠隔測定し得る。計算された1つ以上の誘導指数の結果は、次に、さらなるフォローアップのために医院または介護者に直接報告することができる。また、介護者または臨床医は、インターネット、スマートフォン、または他の電気通信機器を介して結果に遠隔でアクセスし得る。内皮機能不全および/または虚血を呈する患者は、その後、より多くの管理された評価および療法のためにプライマリーケアセンターへ紹介することができる。
【0134】
糖尿病性足病変(Diabetic foot)はまた、虚血、足部内の生体力学的変化からの高足底圧ならびに神経障害の組合せから潰瘍の危険にさらされている。実際の臨床では、これら3つの要因の組合せは、潰瘍の危険にさらされている糖尿病性足病変(a diabetic foot at risk of ulceration(「DFAR」)の診断につながる。このように、毎年、糖尿病患者の25%は、潰瘍の危険にさらされているという診断を受け、そのような診断を受けた患者の50%は、その後、足部組織の大切断または小切断を受ける。
【0135】
いくつかのアプローチは、3つの診断指標を別個に評価する-足関節上腕血圧比(「ABI」)は、虚血を測定するために使用することができる一方、プレッシャーフットプレート(a pressure footplate)は、足底圧を測定するために使用することができ、所定の圧力で曲がるが患者による使用の影響を受けない感圧性モノフィラメントは、神経障害を診断するために使用することができる。これらのアプローチには複数の欠点があり、以下のことを含む。(a)ABIの測定値は手順プロトコールに応じて大きく変動し、そのプロトコールは病院ごとに異なる。足関節収縮期血圧は体位の影響を受けるため、患者の位置は非常に強い影響を与える-足関節が心臓から1インチ低くなるごとに1mmHg高くなる。(b)糖尿病性足病変での石灰化した血管の存在はABIの誤って高い読取値を生み出す可能性がある。(c)個々の場合に応じて、虚血、足底圧、および神経障害についての3つの異なる報告を主観的に解釈して、危険にさらされている糖尿病性足病変を決定するために、医学的に資格のある医師を必要とするため、臨床のワークフローは医師のデスクで輻輳状態になる可能性がある。典型的には、医師がこれらの検査を実施し、診断の決定を行うのに30分以上かかる。
【0136】
本明細書に記載するいくつかの実施形態は、1つ、2つ、またはそれ以上のフローセンサー、例えば、1つ、2つ、またはそれ以上の対象となる解剖学的領域、例えば、足部または手部などに動作可能なように接続することができる、血流に関連する1つ、2つ、またはそれ以上のパラメーターを測定するように構成されたディフューズオプティカルフロー(DOF)センサーなどを含む。センサーは、本明細書の他の場所に記載するように、センサーからパラメーターを受信し、所定の計算を行うように構成されたハードウェアコンソールユニットと操作中有線または無線通信している。本明細書に記載するいくつかの実施形態は、1つ以上の誘導指数に基づいて測定を行うために患者の足部のアンギオソームまたは他の局所解剖学的部位と光通信する少なくとも1つのディフューズオプティカルフロー(DOF)センサーヘッドが埋め込まれた感圧性フットプレートと、任意選択で、FTIの計算用の基準読取値を得るために患者の好適な位置、例えば、親指または耳たぶなどに適用することができる少なくとも1つのDOF基準センサーヘッドを含んでなる。そのデバイスは、絶対的BFIおよび/またはFTIおよび/または任意の他の誘導指数だけでなく足底圧について足部ごとの定量的読み出しを作成し得、各々は、足部にさらなるドクターレビューおよび治療的または先制的インターベンションが必要かどうかを示すための客観的限界基準を有する。そのデバイスは、オペレーター間の変動をなくしおよび複数の検査を回避するように、潰瘍の危険にさらされている糖尿病性足病変を診断する簡単で、客観的かつ直感的な方法に相当する。いくつかの実施形態では、関連データの報告を作成するために、患者はフットプレートデバイス上に短時間、例えば、およそ30秒立つ必要があることだけであり、接着センサーヘッドは一方の親指または他の基準ポイントに貼付される。このような簡単な外来患者ツールは、危険にさらされている糖尿病性足病変により効率的に優先順位をつけ、それによって世界中の多くの高齢化社会での医師の慢性的な不足によって起こるワークフローの輻輳を緩和にするために、糖尿病または足病のケアコミュニティーにおいて看護師、臨床技師、理学療法士などが容易に使用することができる。
【0137】
創傷管理の指針
創傷治癒能力を評価するために利用される現在の技術は、最適とはいえない。TcPO測定値は、HBOTの成果についての不良な予測因子であることが示されている(Fife et al, Wound Rep Reg 2002; 10: 198-207)。皮膚潅流圧は、実際には、TcPOよりも良好な創傷治癒の予測因子である(Lo et al、Wounds 2009)が、SPPカットオフ値<30mmHgでは診断精度は80%未満である(Castruonuovo et al、JVS 1997)。
【0138】
TcPOおよびSPPは、どちらも測定が皮膚深部のみであるという事実によって制限されるため、臨床コミュニティーが要求する診断精度の最高レベルに到達することは決してないと考えられる。Rucker et al (Rucker et al、Am J Physiol Heart Circ, 2000)による研究により、危険な潅流状態下では、それは、皮膚、皮下組織および骨膜のような周辺組織への栄養機能を維持する骨格筋での、この維持機構の能力がない、血管運動および流動運動であることが示された。加えて、糖尿病で見られる内皮機能不全障害は、直接血管運動機能を低下させ(Kolluru et al、Intl J of Vascular プロMed 2012)、血管リモデリングおよび創傷治癒の遅れにつながる。従って、単に酸素分圧(TcPO)または皮膚潅流圧単独(SPP)のいずれかの測定値は、下層組織における虚血の重大性を反映しておらず、それゆえ、よくても部分的な創傷治癒の指標/予測因子を提供するということになる。
【0139】
これに対して、誘導指数は、皮膚よりずっと大きな深度(最大2cm)で組織の血管運動機能を直接評価し、それによって、創傷治癒の優れた予測因子であり、創傷治癒のために適当な療法を導くための強力なツールである可能性を有する。いくつかの実施形態では、血流は、約2mmより大きい、4mm、6mm、8mm、10mm、12mm、14mm、16mm、18mm、20mm、またはそれ以上の深度で測定することができる。
【0140】
創傷の保守的療法(例えば、包帯法、湿潤ドレッシング法)は、創傷組織の周囲の血液潅流が、受動的な治癒が起こるための最小閾値を越えて障害が生じていないならば、創傷治癒を促進するために十分であり得る。しかしながら、それと共に潅流に障害が生じている場合、保守的創傷療法の不適切な使用により、臨床状況における創傷の最初の呈示から有効な療法の間で創傷状態の重大性に応じた時間の遅れが生じる。創傷ケアのTIME(組織生存能力、感染制御、水分、上皮形成)(Tissue viability, Infection control, Moisture, Epithelialization)モデルは、創傷の組織生存能力またはその他の早期診断の必要性を強調しており、この診断によりその後療法は創傷治癒の方へ向かうことになる。創傷での組織生存能力の1つの最も重要な決定因子はその血液供給である。創傷床周囲の血液潅流を評価する能力により、(a)組織が生存可能である場合の保守的療法の継続または、(b)保守的療法の成功のために血液潅流にあまりにも重く障害が生じ、化学的創傷清拭剤のようなより先進的な創傷ケア製品、もしくは局所陰圧、高圧酸素療法などのような先進的創傷療法に進むことができないかどうか、のいずれかに関して臨床判断を下すことが可能になる。より深刻なケースでは、患者を末梢インターベンション処置による血行再建術へ導くことができる。
【0141】
切断レベルの指針
誘導指数は、切断治癒の成功の予測においても役割を有し得る。切断は、一般に、血管再建手術で治療することができない重度の虚血肢を有する患者、糖尿病性足部潰瘍または静脈性潰瘍を有する患者に対して行われる。先進国での下肢切断のおよそ85~90%は末梢血管疾患を原因とし、創傷治癒不良は切断から生じる合併症例の70%を占める。切断レベルを評価するために最新技術を使用しているにもかかわらず、下腿切断の治癒率は30~92%の間の範囲であり、再切断率は最大30%である。切断後の創傷は、切断レベルでの血液潅流が創傷治癒を支援するのに不十分である場合、治癒することができない。これが起こると、手術創は、多くの場合、感染がさらに加わり壊れ、脚部をより高いレベルで切断する修正切断、または患者リハビリテーションおよび義肢装着の相当な遅れとして患者の病的状態を増やすことがある。1つ以上の誘導指数を用いて血液潅流を測定する能力は、医師が切断対象の脚部の異なるレベルでの切断治癒の成功をより適切に予測することを可能にし得る。これにより、医師は、切断の適当なレベルに関する客観的基準によって、四肢温存を最大にしながら患者の痛みや苦しみを最小限にするように導かれる。
【0142】
いくつかの実施形態では、システムおよび方法は、限定されるものではないが、四肢または他の標的場所の潅流のモニタリングおよび;入院患者の状況(例えば、集中治療室、救急救命室、手術室、および他の領域);外来患者の状況(例えば、診療所、外来外科センター、高度介護施設、および家庭環境)での全体的な患者の健康のモニタリング;手術直後の所望の期間での監視、例えば、動脈バイパス後一晩;きつく巻かれた圧迫包帯が下肢静脈潰瘍を有する患者にどのように適用されているかのモニタリング;圧迫潰瘍に関する早期警告としての皮膚損傷の評価;外傷後の患者の四肢潅流のモニタリング;非切断性の整形外科的インターべーション前の皮膚健康の評価;手術/コンパートメント症候群の発生の際の虚血発生のモニタリング;実質臓器移植のモニタリング;術後に患者の心臓をモニタリングするための移植可能な心筋センサー;虚血性脳卒中および/または血行再建術のモニタリングのための移植可能な脳組織センサーなどを含む、多様な適応に使用可能である。
【0143】
潅流センサーは、所望の臨床結果に応じて、いくつかの場合において、経皮(transcutaneous)型(例えば、移植可能な成分を含まない)、経皮(percutaneous)型、または移植型であり得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、システムは、第1のセンサーと、異なる解剖学的場所において第1のセンサーから離した第2のセンサーを少なくとも含み得る。第2のセンサーは、第1のセンサーによって測定されたものとは異なる組織の潅流を測定する参照センサーであり得る。理論によって限定されるものではないが、潅流の変化は、例えば末梢血管疾患により引き起こされるものなどの局部的効果を、ならびに自律神経系、薬理剤、流動状態の変化などによって引き起こされる血管拡張または血管収縮を含むより全身的な変化含む多因子であり得る。このような全身性の変化は、第1のセンサーによって測定される組織に必ずしも関連しない交絡変数を導入することができ、潅流の変化が例えばインターべーションに関連するのかまたはむしろまさに全身性の効果に関連するのかを不明確にする。
【0145】
従って、システムに1つ、2つ、またはそれを超える参照センサーを含むことは、有利には、例えば、このシステムに非局部的効果に関して補正することを可能とする末梢血管疾患などの第1の解剖学的場所に存在するいずれの局部的条件によっても影響を受けないまたは実質的に影響を受けない部位からコントローラーにデータを供給し得る。いくつかの実施形態では、潅流指数は参照センサーからの入力に基づいて補正され得る。例えば、コントローラーは、第1のセンサーおよび参照センサーからの入力を受け取り、限定されるものではないが、割り算(例えば、第1のセンサー値を参照センサー値で割った商)、引き算(例えば、参照センサー値から第1のセンサー値を差し引く)などを含む所定のアルゴリズムに基づいて補正された指数(例えば、BPI比、VHI、また本明細書に開示されるものを含むはその他の指数)を計算することができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、参照センサーは、第1のセンサーとは異なる身体部位、例えば、第1のセンサーにより測定されるものとは異なる血管分布の場所にあり得る。例えば、第1のセンサーは下肢、例えば足に配置されてよく、第2の参照センサーは腕、前腕、胴、前頭、または他の望ましい場所に配置されてい。別の限定されない例として、第1のセンサーは、第1の下肢に配置されてよく、第2のセンサーは第2の下肢に配置されてよい。いくつかの実施形態では、参照センサーは、身体の第1のセンサーと反対側または同側に配置されてよい。いくつかの実施形態では、システムは、2つ以上の参照センサー(例えば、腕、および胴に)を含むことができる。
【0147】
高圧酸素療法についてのスクリーニング
慢性非治癒創傷の治癒を支援するための高圧酸素療法は、現在、100%酸素の投与の前後の創傷床周囲の皮膚でのTcPOの測定によって管理されている。HBOTは、特別室で海面の2~2.5倍のレベルでの酸素の投与を含む。長期にわたる療法としてのHBOTの投与は高価であるだけでなく、耳や副鼻腔の圧外傷、副鼻腔(ear and sinus barotrauma, paranasal sinuses)および中枢神経系の酸素毒性などの多くの望ましくない副作用も伴う。(Aviat Space Environ Med. 2000;71(2):119-24.)さらに、1144名の患者の遡及研究(Wound Rep Reg 2002; 10:198-207)により、HBOTを受けた慢性創傷患者の24.4%はそれからの恩恵を得ていないことが示された。従って、任意の個体についてのHBOTの成功をより適切に予測する必要がある。誘導指数の測定は、皮膚レベルよりはるかに下の組織深度で行われるため、それは、HBOTが恐らく適していないであろう患者を同定する能力についての可能性を有する。
【0148】
外科的皮弁の評価
実際の臨床での誘導指数のさらなる使用は、外科的処置、特に(particular)、創傷欠陥をカバーするために有茎または遊離組織皮弁が使用される形成再建手術にある。外傷、腫瘍のための外科手術、感染症または先天性疾患から生じ得る組織欠損を再構築するために、皮膚弁、筋皮弁、筋膜筋皮弁(fascio-myocutaneous)および骨筋皮弁(osseomyocutaneous flaps)が使用される。これらの皮弁は、それら独自の血管からまたはそれらの生存のためのレシピエント組織層付近の血管を含む微小血管の再建からのいずれかの血液供給に依存する。どちらのタイプの皮弁も(有茎および遊離)、皮弁が生存するためにそれらの中の血液潅流に決定的に依存している。皮弁潅流は、特に、再建処置から最初の数時間~数日で緊密なモニタリングが必要であり、潅流の損失の早期検出は皮弁生存力の継続を確保するために、必要に応じて、さらなる外科的処置へ患者を導くために役立つ。表面センサーまたは皮弁組織内のセンサーのいずれかによってこれらの皮弁の潅流をモニタリングすることにより、皮弁の生存力を継続することができる早期インターベンションに向けて医師を導き得る。誘導指数は、術後期に皮弁の血液潅流を連続的にモニタリングし、皮弁虚血の検出の遅れによる皮弁喪失を防ぐために、潜在的に使用することができる。
【0149】
様々な療法のための決定を導くのに使用する血管内および/または管腔内組織プローブ
別の実施形態では、血流評価、例えば、血管内使用のためのDOFセンサーは、それらの遠位端で光シグナルを放出/受信するように構成された少なくとも2つのファイバーを含んでなり、このセンサーは経皮的および/または経管腔的手段を介して、少なくとも2つのファイバーと光通信している組織体積における血液潅流のDCSまたはDSCA測定を可能にする器官または組織層内に送達される。このような血管内センサーは、約0.01から約0.04インチの間(または約250ミクロン~約1mm)のガイドワイヤに類似する小さな断面を有するように構成し得る。血管内センサーは、送達中にそれを保護し、標的組織内へのプローブの挿入を容易にする柔軟性のあるシース内に配置し得、標的組織では、シースが部分的に引っ込められるかまたはプローブの遠位端がシースの端を越えて部分的に延びて、少なくとも2つのファイバーの遠位端を潅流測定対象の組織と光通信状態で配置し得る。
【0150】
血管内および/または管腔内組織プローブは、内臓器官または組織における血液潅流のリアルタイム測定を可能にし、癌療法および血管奇形の現在の治療プロトコールを含む様々な医学療法での決定を導くことができる。これらの例は以下でより詳細に記載する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示するシステムおよび方法は、一過性脳虚血発作および急性虚血性脳卒中(および神経インターベンション血行再建術処置、例えば、血管形成術またはステント配置などの有効性)、虚血腸、肺塞栓、心筋梗塞、および他のものを含む多種多様な適応症についての様々な治療的インターベンションの有効性の診断および評価のために利用することができる。いくつかの実施形態では、システムおよび方法はまた、活動性出血(GI出血など)およびその停止の確認を推測することができる。他の適応症は以下に記載する。
【0151】
(a)腫瘍血管分布の測定および光線力学療法に及ぼすその影響ならびに高周波アブレーション前の腫瘍感作測定
以下の論文は、放射線療法、化学療法および光線力学療法の管理において腫瘍血流を評価する必要性に言及しており、それらは全体として引用することにより本明細書の一部とされる。(Int. J. Radiation Oncology Biol. Phys 2003 V 55, No 4, pp 1066-1073、“Nitric oxide-mediated increase in tumor blood flow and oxygenation of tumors implanted in muscles stimulated by electric pulses”、B.F. Jordan, Bernard Gallez et al; The Oncologist 2008, 13:631-644 “Use of H2 15O-PET and DCE-MRI to Measure tumor blood flow”、Adrianus J de Langen et al,; Radiat Res 2003 Oct 160 (4) 452-9 “Blood flow dynamics after photodynamic therapy with verteporfin in the RIF-1 tumor” Chen B Poque, et al)簡潔にいえば、化学療法の成功の可能性は十分に潅流されている腫瘍では高くなる。この予備知識は、処置によく反応する可能性が高い患者を同定し、そのような患者を化学療法処置についてより高い信頼性で流れるように動かせるために使用することができる。腫瘍血流の定量的測定値はまた、特に、化学療法薬を管腔内または血管内手段によって腫瘍内に直接送達する場合、送達させる化学療法薬の用量の計算に役立ち得る。これは、腫瘍の血管分布が不良であることにより処置から恩恵を受ける可能性が低い患者の不必要で痛みを伴う化学療法を回避するのに役立つ。
【0152】
潅流はまた、放射線療法および光線力学療法などの温熱治療の成功に重要な役割を果たしていることも示されている。腫瘍中の酸素欠乏は、放射線療法および化学療法などの非外科的処置モダリティに対する応答(repose)を低減することが示されている。この酸素欠乏は、腫瘍潅流の減少(拡散に関連する低酸素症)または赤血球流動の変化(急性低酸素症)によって引き起こされる可能性がある。血管作用薬の使用、カルボゲン呼吸および腫瘍血流を増加させるための腫瘍周囲の骨格筋の電気刺激などの様々な方法による腫瘍潅流の増加は、放射線増感効果を有することが実験的に示されている。光線力学療法(Photo-dynamic therapy)(PDT)は、腫瘍血管系への損傷を与え、腫瘍虚血にする、すなわち、腫瘍から血液供給を奪う特定波長の光の原理を利用する。よって、PDTの成功はこの虚血が達成される程度によって評価される。血管内手段または管腔内手段のいずれかによって腫瘍血流を測定する能力は、腫瘍反応を増強するかまたはこれらの非外科的療法に対する腫瘍反応を評価するために、これらの方法の使用を指示するのに役立てることができる。
【0153】
(b)血管奇形の処置中に硬化剤および塞栓剤の注入を導くための血管内および/または組織内プローブ
血管奇形(Vascular malformations)(「VM」)、例えば、動静脈奇形などは、自発的に形成されるかまたは先天的にもしくは外傷後に発生して、動脈、静脈および毛細血管の間の血流の代替の導管を生み出し、動脈から発生する正常な血流を器官または組織の毛細血管床を通って、そこから静脈へバイパスを形成する異常な小血管のネットワークである。VMの処置のための臨床徴候としては、VM部位での痛みの局所症状、出血または潰瘍、およびこれらの病変内を流れる多量の血液による重大な心臓の歪み(高拍出性心不全を含む)が挙げられる。表在性VMは、同様に美容上の理由で処置が必要な場合がある。
【0154】
VMの処置は、血管に対して毒性があり、VM内の小血管を塞ぐ硬化または瘢痕化を引き起こす、無水アルコールまたはテトラデシル硫酸ナトリウムなどの硬化剤の血管内マイクロカテーテルによる注入を含む。これは、唯一の処置であり得るしまたは外科的切除の前にVM内を流れる血液の量を減少させる外科的処置の一部としてあり得る。硬化剤の過剰な注入は正常な血管への溢流につながる可能性があり、皮膚壊死、四肢喪失、急性肺高血圧症、あるいは死亡などの重大な損傷をもたらすため、この処置中は注意が必要である。医師の課題は、VMを完全に塞ぐのに十分な硬化剤であるが、硬化剤が漏れ、他の場所で深刻な損傷を引き起こすほど多くではない硬化剤を注入し、間でバランスを取る必要があることである。VMのリアルタイム潅流モニタリングは、血流がVM内で停止したまたは血液の著しい損失なく外科的切除を可能にするために十分に減少したときにシグナル送信することができる。これは、医師に十分な硬化剤が注入されたことを知らせ、また、さらなる注入を回避し、それによって、有害転帰の危険性を減少させ得る。
【0155】
様々な他の変更形態、適応形態、および代替設計は、上記の教示に照らして当然可能です。従って、添付の特許請求の範囲内で、本発明は本明細書に具体的に記載した以外の方法で実施し得ることはこの時点で理解されるべきである。上に開示した実施形態の特定の特徴および態様の様々な組合せまたは部分的組合せは作成し得、依然として、本発明の1つ以上に入ることが考えられる。さらに、ある実施形態に関連する任意の特定の特徴、態様、方法、性質、特性、品質、属性、要素などについての本明細書における開示は、本明細書において記載する他の実施形態総てにおいて使用することができる。従って、開示した発明の様々なモードを形成するために、開示した実施形態の様々な特徴および態様を相互に組み合わせまたは置き換えることができることは理解されるべきである。従って、開示した本明細書における本発明の範囲は上記の特定の開示した実施形態によって限定されるべきではないことが意図される。さらに、本発明は様々な変更が可能であるが、代替形態、それらの特定の実施例を図面に示し、本明細書に詳細に記載している。しかしながら、本発明は、開示した特定の形態または方法に限定されないことは理解されるべきであり、本発明は、記載した様々な実施形態および添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲に入る総ての変更形態、等価物、および代替形態を包含するものである。本明細書に開示する任意の方法は記載した順序で行う必要はない。本明細書に開示する方法は、従事者によって行われる特定の行為を含むが、それらはまた、任意の第三者の行為の指示を、明示的にまたは黙示的に含むことができる。例えば、「2つの集団の識別」などの行為は、「2つの集団の識別の指示」を含む。本明細書に開示する範囲はまた、ありとあらゆる重複、部分範囲、およびそれらの組合せも包含する。「最大」、「少なくとも」、「超える」、「未満」、「間」などのような用語は記載した数を含む。本明細書において使用される「およそ」、「約」、および「実質的に」などの用語が前に付いた数は、記載した数(例えば、約10%=10%)を含み、また、所望の機能を依然として果たすかまたは所望の結果を達成する記載量に近い量も表す。例えば、用語「およそ」、「約」、および「実質的に」とは、記載した量の、10%未満内、5%未満内、1%未満内、0.1%未満内、および0.01%未満内である量を指し得る。

図1
図1AA
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【国際調査報告】