(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵装置用防爆ケーシング及びエネルギー貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/143 20210101AFI20220517BHJP
H01G 9/12 20060101ALI20220517BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20220517BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20220517BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20220517BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20220517BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20220517BHJP
H01M 50/133 20210101ALI20220517BHJP
H01M 50/148 20210101ALI20220517BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20220517BHJP
【FI】
H01M50/143
H01G9/12 A
H01G2/10 Z
H01G11/78
H01M50/342 101
H01M50/545
H01M50/131
H01M50/133
H01M50/148
H01M50/119
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555395
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(85)【翻訳文提出日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 CN2019082962
(87)【国際公開番号】W WO2020199249
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】201910263232.9
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201920441653.1
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521417473
【氏名又は名称】チャンチョウ マイクロバット テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,グオ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ジャウェン
(72)【発明者】
【氏名】シュエ,ユンフェン
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H012
5H043
【Fターム(参考)】
5E078HA12
5E078HA14
5E078HA24
5E078HA26
5H011AA13
5H011BB03
5H011CC06
5H011KK01
5H011KK02
5H012AA01
5H012AA07
5H012BB02
5H012DD03
5H012EE05
5H012FF01
5H012JJ10
5H043AA04
5H043BA12
5H043BA15
5H043BA16
5H043BA19
5H043CA03
5H043CA04
5H043DA03
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】本出願は、エネルギー貯蔵装置用防爆ケーシング、及びエネルギー貯蔵装置を開示する。この防爆ケーシングは、貫通孔を有する筐体本体と、防爆素子と、を備え、前記防爆素子は、中心部と、前記中心部の周りに配置される環状の圧力解放部と、を含み、前記圧力解放部は、前記貫通孔内に配置され、前記貫通孔に密封接合され、前記圧力解放部は、前記筐体本体内の圧力が第1設定値に到達すると、前記筐体本体の変形により、クラックを生じるとともに、前記圧力解放部と前記筐体本体との間に隙間を生じ、圧力が第2設定値に到達すると、前記筐体本体から脱落することができるように構成され、前記第2設定値は、前記第1設定値より大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する筐体本体と、
防爆素子と、を備えるエネルギー貯蔵装置用防爆ケーシングであって、
前記防爆素子は、
中心部と、
前記中心部の周りに配置される環状の圧力解放部と、を含み、
前記圧力解放部は、前記貫通孔内に配置され、前記貫通孔に密封接合され、
前記圧力解放部は、
前記筐体本体内の圧力が第1設定値に到達すると、前記筐体本体の変形により、クラックを生じるとともに、前記圧力解放部と前記筐体本体との間に隙間を生じ、
圧力が第2設定値に到達すると、前記筐体本体から脱落することができるように構成され、
前記第2設定値は、前記第1設定値より大きい、エネルギー貯蔵装置用防爆ケーシング。
【請求項2】
前記筐体本体と前記中心部とは導体材料であり、前記筐体本体と前記中心部とは、それぞれエネルギー貯蔵装置の2つの電極として機能する、請求項1に記載の防爆ケーシング。
【請求項3】
前記圧力解放部の径方向に沿う寸法を幅と定義し、軸方向に沿う寸法を高さと定義すると、前記幅と前記高さとの比が≧0.5である、請求項1又は2に記載の防爆ケーシング。
【請求項4】
前記圧力解放部は円環状であり、前記圧力解放部の軸方向に沿う寸法を高さと定義すると、前記圧力解放部の外周の直径と高さとの比が≧1である、請求項1から3のいずれか1項に記載の防爆ケーシング。
【請求項5】
前記圧力解放部は矩形環状であり、前記圧力解放部の軸方向に沿う寸法を高さと定義すると、前記圧力解放部の対角線の長さと高さとの比が≧1である、請求項1から4のいずれか1項に記載の防爆ケーシング。
【請求項6】
前記圧力解放部は楕円環状であり、前記圧力解放部の軸方向に沿う寸法を高さと定義すると、前記圧力解放部の長軸の寸法と高さとの比が≧1である、請求項1から5いずれか1項に記載の防爆ケーシング。
【請求項7】
前記貫通孔は筒体をなすように延在し、前記圧力解放部は、前記筒体内に位置する、請求項1から6のいずれか1項に記載の防爆ケーシング。
【請求項8】
前記筒体の前記筐体本体との連結部分を根元と定義すると、前記根元の外側には、外面取りが形成される、請求項1から7のいずれか1項に記載の防爆ケーシング。
【請求項9】
前記筒体の筐体本体との連結部分を根元と定義すると、前記根元の内側には、内面取りが形成され、前記圧力解放部は、前記内面取りに囲まれた領域内に充填される、請求項1から8のいずれか1項に記載の防爆ケーシング。
【請求項10】
前記筐体本体は、端部に位置するカバープレートを含み、前記カバープレートには、前記貫通孔が設けられる、請求項1から9のいずれか1項に記載の防爆ケーシング。
【請求項11】
前記カバープレートの厚さは0.1mm~1mmである、請求項1から10のいずれか1項に記載の防爆ケーシング。
【請求項12】
前記筐体本体はキャビティを囲み、
前記カバープレートは、前記キャビティに近接する内面と、前記内面と反対の外面とを有し、
前記内面と前記外面とが平面であり、
前記防爆素子は、前記キャビティに近接する下端面と、前記下端面と反対の上端面とを有し、
前記下端面と前記内面とが揃っており、
前記上端面と前記外面とが揃っている、請求項1から11のいずれか1項に記載の防爆ケーシング。
【請求項13】
前記圧力解放部の径方向に沿う寸法を幅と定義し、軸方向に沿う寸法を高さと定義すると、前記幅が0.1mm~5mmであり、前記高さが0.2mm~5mmである、請求項1から12のいずれか1項に記載の防爆ケーシング。
【請求項14】
前記中心部は、キャビティに近接する第1端面と、前記第1端面と反対の第2端面とを有し、
前記第1端面及び/又は前記第2端面は、前記圧力解放部の少なくとも一部を覆う延在部を形成するように、径方向に延在する、請求項1から13のいずれか1項に記載の防爆ケーシング。
【請求項15】
前記筐体本体の表面が凹んで、ストライプ状の溝を形成し、前記溝の延長線が前記防爆素子を通過する、請求項1から14のいずれか1項に記載の防爆ケーシング。
【請求項16】
前記溝は複数であり、複数の前記溝は、前記防爆素子の中心を中心に放射状をなす、請求項1から15のいずれか1項に記載の防爆ケーシング。
【請求項17】
前記圧力解放部は無機非金属材料である、請求項1から16のいずれか1項に記載の防爆ケーシング。
【請求項18】
前記圧力解放部の材質はガラス又はセラミックである、請求項1から17のいずれか1項に記載の防爆ケーシング。
【請求項19】
前記筐体本体の前記圧力解放部との密封接合部の材質は、タンタル、ニオブ、モリブデン、タングステン、チタン、白金、銅、アルミニウム、炭素鋼、コバール合金又はステンレス鋼である、請求項1から18のいずれか1項に記載の防爆ケーシング。
【請求項20】
前記中心部の熱膨張係数は、前記圧力解放部の熱膨張係数と等しく、前記筐体本体の熱膨張係数は、前記圧力解放部の熱膨張係数以上である、請求項1から19のいずれか1項に記載の防爆ケーシング。
【請求項21】
エネルギー変換素子と、請求項1から20のいずれか1項に記載の防爆ケーシングと、を備える、エネルギー貯蔵装置。
【請求項22】
前記エネルギー貯蔵装置は電池又はコンデンサである、請求項1から21のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、エネルギー変換の技術分野に関し、さらに具体的には、エネルギー貯蔵装置用防爆ケーシング及びエネルギー貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の電解コンデンサ、一次電池、二次電池、例えば、ハードパックリチウムイオン電池、ニッケル水素電池など、既存のほとんどのエネルギー貯蔵装置において、内部の製造欠陥またはユーザーの乱用によって、内部熱暴走により内圧が上昇して爆発することを避けるために、一般的に、爆発防止・圧力解放機構を配置することで、これらのエネルギー貯蔵装置が長期間の使用中又は熱暴走中に、内部気圧が過度に上昇した際に速やかに圧力を解放させることを可能にし、人身・財産の安全を確保する。
【0003】
通常の爆発防止・圧力解放構造には、以下の2種類がある。
(1)ダイヤフラム型爆発防止・圧力解放構造
この圧力解放構造では、一般的に、極限強さの低い材料を用いながら、材料の厚さを小さくしてダイヤフラムを形成し、内圧が上昇するとき、ダイヤフラムにひずみが発生し、ひずみがある程度に達すると、自動的に又は突き刺し機構によって破裂させることで、圧力解放の目的を果たす。これらのダイヤフラムの材料は、一般的に柔らかくて薄いため、意図しない損傷によるエネルギー貯蔵デバイスの不具合を防ぐために、一般的に、上下カバー保護機構、挟持又はカシメ機構、場合によってさらに突き刺し機構が配置される。構造が相対的に複雑であり、部品が多く、組み立てるのに手間がかかり、高さに占める空間も大きい。
(2)ノッチ型爆発防止・圧力解放構造
この圧力解放構造では、一般的に、筐体の表面に溝が形成されており、溝の材料を薄くして、そこの強度を低下させることで、エネルギー貯蔵デバイスにおける内圧が設計値まで上昇すると、溝である弱いところからガスが放出されて、圧力を解放させる。このような圧力解放構造では、溝の加工精度への要求が非常に高く、また、例えば、アルミニウム合金などのような硬度が低く且つ延性が良好な金属を使用する溝加工のみに適用される。一方、硬度の高い炭素鋼、ステンレス鋼又は他の合金では、破裂圧力を低く維持しながら信頼性の高い溝加工を行うことが困難である。さらに、溝では、強度が弱いため、製造中又は使用中に防爆弁の意図しない損傷が発生して、エネルギー貯蔵デバイスの不具合を引き起こすことが度々ある。
【0004】
そのため、上記の技術的課題を解決するために、新しい技術方案を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願は、エネルギー貯蔵装置用防爆ケーシングに関する新しい技術方案を提供することを一目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の第1の態様によれば、エネルギー貯蔵装置用防爆ケーシングが提供される。この防爆ケーシングは、貫通孔を有する筐体本体と、防爆素子と、を備え、前記防爆素子は、中心部と、前記中心部の周りに配置される環状の圧力解放部と、を含み、前記圧力解放部は、前記貫通孔内に配置され、前記貫通孔に密封接合され、前記圧力解放部は、前記筐体本体内の圧力が第1設定値に到達すると、前記筐体本体の変形により、クラックを生じるとともに、前記圧力解放部と前記筐体本体との間に隙間を生じ、圧力が第2設定値に到達すると、前記筐体本体から脱落することができるように構成され、前記第2設定値は、前記第1設定値より大きい。
【0007】
任意的に、前記筐体本体と前記中心部は導体材料であり、前記筐体本体と前記中心部は、それぞれエネルギー貯蔵装置の2つの電極として機能する。
【0008】
任意的に、前記圧力解放部の径方向に沿う寸法を幅と定義し、軸方向に沿う寸法を高さと定義すると、前記幅と前記高さとの比が≧0.5である。
【0009】
任意的に、前記圧力解放部は円環状であり、前記圧力解放部の軸方向に沿う寸法を高さと定義すると、前記圧力解放部の外周の直径と高さとの比が≧1である。
【0010】
任意的に、前記圧力解放部は矩形環状であり、前記圧力解放部の軸方向に沿う寸法を高さと定義すると、前記圧力解放部の対角線の長さと高さとの比が≧1である。
【0011】
任意的に、前記圧力解放部は楕円環状であり、前記圧力解放部の軸方向に沿う寸法を高さと定義すると、前記圧力解放部の長軸の寸法と高さとの比が≧1である。
【0012】
任意的に、前記貫通孔は筒体をなすように延在し、前記圧力解放部は、前記筒体内に位置する。
【0013】
任意的に、前記筒体の前記筐体本体との連結部分を根元と定義すると、前記根元の外側には、外面取りが形成される。
【0014】
任意的に、前記筒体の筐体本体との連結部分を根元と定義すると、前記根元の内側には、内面取りが形成され、前記圧力解放部は、前記内面取りに囲まれた領域内に充填される。
【0015】
任意的に、前記筐体本体は、端部に位置するカバープレートを含み、前記カバープレートには、前記貫通孔が設けられる。
【0016】
任意的に、前記カバープレートの厚さは0.1mm~1mmである。
【0017】
任意的に、前記筐体本体はキャビティを囲み、前記カバープレートは、前記キャビティに近接する内面と、前記内面と反対の外面とを有し、前記内面と前記外面とが平面であり、前記防爆素子は、前記キャビティに近接する下端面と、前記下端面と反対の上端面とを有し、前記下端面と前記内面とが揃っており、前記上端面と前記外面とが揃っている。
【0018】
任意的に、前記圧力解放部の径方向に沿う寸法を幅と定義し、軸方向に沿う寸法を高さと定義すると、前記幅が0.1mm~5mmであり、前記高さが0.2mm~5mmである。
【0019】
任意的に、前記中心部は、キャビティに近接する第1端面と、前記第1端面と反対の第2端面とを有し、前記第1端面及び/又は前記第2端面は、前記圧力解放部の少なくとも一部を覆う延在部を形成するように、径方向に延在する。
【0020】
任意的に、前記筐体本体の表面が凹んで、ストライプ状の溝を形成し、前記溝の延長線が前記防爆素子を通過する。
【0021】
任意的に、前記溝は複数であり、複数の前記溝は、前記防爆素子の中心を中心に放射状をなす。
【0022】
任意的に、前記圧力解放部は無機非金属材料である。
【0023】
任意的に、前記圧力解放部の材質はガラス又はセラミックである。
【0024】
任意的に、前記筐体本体の前記圧力解放部との密封接合部の材質は、タンタル、ニオブ、モリブデン、タングステン、チタン、白金、銅、アルミニウム、炭素鋼、コバール合金又はステンレス鋼である。
【0025】
任意的に、前記中心部の熱膨張係数は、前記圧力解放部の熱膨張係数と等しく、前記筐体本体の熱膨張係数は、前記圧力解放部の熱膨張係数以上である。
【0026】
本開示の別の実施形態によれば、エネルギー貯蔵装置が提供される。この装置は、エネルギー変換素子と、上記の防爆ケーシングと、を備える。
【0027】
任意的に、前記エネルギー貯蔵装置は電池又はコンデンサである。
【発明の効果】
【0028】
本開示の一実施形態によれば、圧力解放部にクラック及び隙間が生じると、防爆ケーシング内のガスは、クラック及び隙間により形成された圧力解放通路を介して放出され得る。圧力解放部が脱落すると、防爆ケーシング内のガスは、貫通孔から速やかに放出される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下、図面を参照しながら本出願の例示的な実施形態について詳細に説明することで、本出願の他の特徴及びその利点は明らかになる。
明細書に組み込まれ、明細書の一部をなす図面は、本出願の実施形態を示すものであり、その説明とともに本出願の原理を解釈するために用いられる。
【
図1】本開示の一実施形態に係る防爆ケーシングの一部断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る第2の防爆ケーシングの一部断面図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る第3の防爆ケーシングの一部断面図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る第4の防爆ケーシングの一部断面図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る第5の防爆ケーシングの一部断面図である。
【
図8】本開示の別の一実施形態に係るエネルギー貯蔵装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本出願の様々な例示的な実施形態について詳細に説明する。特に断りがない限り、これらの実施形態に記載された部材、工程の相対的な配置、数値表現式、及び数値は、本出願の範囲を限定するものではないことに留意されたい。
【0031】
以下、少なくとも1つの例示的な実施形態に対する説明は単に例示的なものにすぎず、決して本出願及びその適用又は使用を何ら制限するものではない。
【0032】
当業者にとって公知の技術、方法、装置に対して詳細に説明しないことがあるが、場合によっては、前記技術、方法、装置は明細書の一部と見なされるべきである。
【0033】
ここで示され検討される全ての例において、具体的な数値は全て、限定的なものではなく、例示的なもののみとして解釈されるべきである。したがって、例示的な実施形態の別の例において異なる値を有してもよい。
【0034】
なお、以下の図面において、類似の符号及び文字は類似の項目を表すので、ある項目は1つの図面において定義されると、以降の図面においてさらに説明する必要がないことに留意されたい。
【0035】
本開示の一実施形態によれば、エネルギー貯蔵装置用防爆ケーシングが提供される。この防爆ケーシングは、
図1に示すように、筐体本体と防爆素子とを備える。筐体本体は円柱形状、楕円柱形状、直方体形状などを呈する。筐体本体は、頂部と、底部25と、頂部と底部25との間の側壁24とを含む。
【0036】
例えば、頂部にはカバープレート11が配置される。底部25と側壁24とが一体に成形されるか、又は頂部と底部25の両方にカバープレート11が配置される。カバープレート11はレーザー溶接又は電気抵抗溶接によって側壁24に溶接される。
【0037】
筐体本体の内部にはキャビティが形成される。キャビティは、エネルギー変換素子23を収容するために用いられる。
【0038】
貫通孔は、キャビティと外部空間とを連通する。貫通孔の形状は円形状、楕円形状、矩形状、又は他の形状である。
【0039】
防爆素子は、中心部13と、中心部13の周りに配置される圧力解放部12とを含む。圧力解放部12は環状であり、例えば、円環状、矩形環状、楕円環状などである。圧力解放部12は、貫通孔内に配置され、貫通孔に密封接合される。中心部13は、圧力解放部12により貫通孔中に封着される。
【0040】
例えば、貫通孔はカバープレート11又は側壁24に位置する。貫通孔は1つでも複数でもよい。それに対応して、防爆素子は1つ又は複数である。
【0041】
圧力解放部12は、筐体本体内の圧力が第1設定値に到達すると、筐体本体の変形により、クラックを生じるとともに、前記圧力解放部12と前記筐体本体との間に隙間を生じ、圧力が第2設定値に到達すると、筐体本体から脱落することができるように構成される。第2設定値は、第1設定値より大きい。
【0042】
圧力解放部12において、クラック及び隙間が生じると、防爆ケーシング内のガスがクラック及び隙間により形成された圧力解放通路を介して放出され得る。圧力解放部12が脱落すると、防爆ケーシング内のガスは貫通孔から速やかに放出される。
【0043】
例えば、エネルギー貯蔵装置の内部の気圧が上昇すると、筐体本体の下面は気圧により曲げ変形する。変形量は、加えられた気圧の大きさに依存する。気圧が大きいほど、変形量が大きくなり、気圧が小さいほど、変形量が小さくなる。その際、圧力解放部12と中心部13は、筐体本体の変形に従って、平行に移動する。圧力解放部12自体の許容変形量が小さいため、筐体本体と圧力解放部12との接合部分に応力集中が発生して、解放部12と筐体本体との接合界面の上半分に径方向への引張作用が発生し、接合界面の下半分に径方向への圧縮作用が発生する。
【0044】
筐体本体に加えられた気圧の増加に連れて、筐体本体の変形量が徐々に増加し、圧力解放部12と筐体本体との接合界面における径方向への引張効果がますます強くなる。圧力が第1設定値に到達すると、上半分における引張応力が接合界面における接合強度より大きくなり、接合界面に隙間が生じ始め、下半分における圧縮応力が圧力解放部12の圧縮強度より大きくなり、圧力解放部12自体にクラックが生じる。上半分における隙間と下半分におけるクラックが互いに連通すると、圧力解放通路が形成される。圧力解放部12と筐体本体との封着の気密性が低下し始める。エネルギー貯蔵装置の内部の高圧のガスが圧力解放通路を介して外部へ排出される。
【0045】
筐体本体に加えられた気圧が増加し続けるに連れて、圧力解放部12と筐体本体との接合界面における隙間、及び圧力解放部12自体におけるクラックが増加し続ける。圧力解放部12と筐体本体との接合強度が内部の気圧に耐えられなくなる(即ち、圧力が第2設定値に到達する)場合、圧力解放部12と中心部13は、この気圧下で押し出される。これにより、筐体本体では速やかに圧力を解放するための迅速排気通路が形成され、エネルギー貯蔵装置の爆発が効果的に防止される。
【0046】
例えば、圧力解放部12は、中心部13ごと脱落してもよく、圧力解放部12の一部が脱落してもよい。
【0047】
当業者は、筐体本体の厚さ、筐体本体の材料強度、圧力解放部12の幅、高さなどのパラメータを設定することにより、異なる型式のエネルギー貯蔵装置それぞれの圧力解放の要求を満たすように、第1設定値と第2設定値を調整することができる。
【0048】
さらに、防爆素子の構造が簡単で、軸方向に占める空間が小さく、節約された空間はエネルギー変換素子23の数を増やすために用いられる。
【0049】
さらに、この防爆ケーシングは、材料自体の破壊限界によって圧力を解放し、圧力解放の精度が高いという特徴を有する。
【0050】
さらに、この防爆ケーシングの外観が良好である。
【0051】
他の例において、クラック及び隙間は、それぞれ軸方向に延びて、圧力解放通路を形成してもよい。この場合でも、圧力を解放する役割を果たすことができる。
【0052】
一例において、圧力解放部12は絶縁材料である。例えば、無機非金属材料である。このような材料は、靭性が小さく、脆性が大きく、クラックが入りやすいという特徴があるので、筐体本体の内部圧力が設定値に到達すると、速やかに圧力を解放することができる。
【0053】
一例において、圧力解放部12はガラス又はセラミックである。製作する時に、ガラス又はセラミックのグリーン体を貫通孔にセットする。中心部13をグリーン体に嵌合する。次いで、グリーン体を仮焼し、構造強度を得るとともに、圧力解放部12を貫通孔と中心部13とに密封接合(即ち、封着)させる。
【0054】
例えば、ガラス材質を選んで用いる場合、圧力解放部12はガラスセラミックス、ホウケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、又は他の特殊ガラスである。ガラスは、解放圧力の要求を満たす限り、中実構造、中空構造、又は透かし彫り構造のいずれかとしてもよい。
【0055】
中心部13と筐体本体は導体材料である。中心部13と筐体本体は、それぞれエネルギー貯蔵装置の2つの電極として働く。例えば、中心部13は、エネルギー変換素子23の正極に接続される。筐体本体は、エネルギー変換素子23の負極に接続される。
【0056】
或いは、中心部13は、エネルギー変換素子23の負極に接続され、筐体本体は、エネルギー変換素子23の正極に接続される。
【0057】
一例において、圧力解放部12の径方向に沿う寸法を幅と定義し、軸方向に沿う寸法を高さと定義する。幅と高さとの比が≧0.5である。径方向は、
図1の矢印xで表され、軸方向は、
図1の矢印yで表される。幅は、
図1のwで表され、高さは、
図1のhで表される。
【0058】
幅が大きいほど、圧力解放部12に加えられた気圧が大きくなり、解放圧力(即ち、第1設定値及び第2設定値)が小さくなり、逆に、幅が小さいほど、解放圧力が小さくなる。高さが大きいほど、圧力解放部12の構造強度が高くなり、解放圧力が大きくなり、逆に、高さが小さいほど、解放圧力が小さくなる。この比例の範囲内で、解放圧力が適切になる。
【0059】
一例において、圧力解放部12の軸方向に沿う寸法を高さと定義すると、圧力解放部12の外周(図のdで表される)の直径と高さとの比が≧1である。外周の直径が大きいほど、圧力解放部12の構造強度が低くなり、解放圧力(即ち、第1設定値及び第2設定値)が小さくなり、逆に、外周の直径が小さいほど、解放圧力が大きくなる。高さが大きいほど、圧力解放部12の構造強度が高くなり、解放圧力が大きくなり、逆に、高さが小さいほど、解放圧力が小さくなる。この比例の範囲内で、解放圧力が適切になる。
【0060】
一例において、前記圧力解放部は矩形環状であり、前記圧力解放部の軸方向に沿う寸法を高さと定義すると、前記圧力解放部の対角線の長さと高さとの比が≧1である。この比例の範囲内で、解放圧力が適切になる。
【0061】
一例において、前記圧力解放部は楕円環状であり、前記圧力解放部の軸方向に沿う寸法を高さと定義すると、前記圧力解放部の長軸の寸法と高さとの比が≧1である。この比例の範囲内で、解放圧力が適切になる。
【0062】
一例において、
図7に示すように、貫通孔は筒体をなすように延在する。例えば、筐体本体は、筒体をなすように、貫通孔において厚さ方向に沿って片側又は両側に延在する。筒体と筐体本体とが一体に成形される。
【0063】
圧力解放部12は筒体内に位置する。筒体と圧力解放部12との接触面積がより大きくなり、圧力解放部12と貫通孔との接合強度がより高くなる。これにより、筐体本体の他の部分の厚さが効果的に低減される。解放圧力を変更せず、筐体本体をより薄くでき、エネルギー貯蔵装置の小型化、軽薄化の発展の趨勢に適合している。
【0064】
さらに、筐体本体の厚さが小さくなり、小さい内部圧力で大きな変形が発生することが可能になり、これにより、エネルギー貯蔵装置の解放圧力がより小さくなり、安全性がより良好になる。
【0065】
もちろん、他の例では、筐体本体の厚さが十分であれば、筒体を設ける必要がなく、圧力解放部12を貫通孔に充填すればよい。
【0066】
筒体の筐体本体との連結部分を根元と定義する。根元が直角になればなるほど、根元に応力集中が発生しやすくなる。筐体本体の変形により、根元に大きな応力が発生し、根元の塑性変形を引き起こす。これにより、筐体本体の変形によって筒体が横方向に移動することがなく、即ち、筐体本体の変形が筒体に伝達されず、筒体により圧力解放部12を押圧したり引っ張ったりすることがなく、隙間やクラックが生じることがない。エネルギー貯蔵装置の防爆素子の弁開放圧力が大きくなる。
【0067】
この技術的課題を解決するために、一例において、筒体では、根元の外側には、外面取り(
図7のR1で表される)が形成される。外面取りは根元に発生する応力集中を効果的に低減させることができ、これにより、筐体本体の変形を速やかに筒体に伝達させることができる。その場合、筒体の上半分により圧力解放部12を押圧し、下半分により圧力解放部12を引っ張ることで、圧力解放通路の形成がより容易になる。
【0068】
なお、圧力解放部12の高さが小さすぎると、強度が低くなって割れやすくなり、例えば、加工、輸送、使用中に破損し、絶縁密封の効果が失われることがある。
【0069】
一例において、筒体では、根元の内側には、内面取りが形成される(
図7のR2で表される)。圧力解放部12は、内面取りに囲まれた領域内に充填される。圧力解放部12は、直線段(
図7のbで表される)と湾曲段とを含む。直線段と筒体との間に有効な密封接合が形成される。
【0070】
圧力解放部12の有効高さ、即ち直線段の寸法は、解放圧力を決定的に左右する。直線段の長さが大きいほど、解放圧力が大きくなり、逆に、直線段の長さが小さいほど、解放圧力が小さくなる。一方、圧力解放部12の、内面取りに囲まれた領域内に位置する部分(即ち、湾曲段)は、解放圧力への影響が少ない。内面取りを設けることで、直線段と筒体15との封着面積を効果的に低減させることができ、圧力解放部12の有効高さが小さくなる。
【0071】
これにより、圧力解放部12全体の高さが0.5mm又はそれ以上であっても、湾曲段による解放圧力に対する影響が小さいため、圧力解放部12の有効高さを0.2mm、0.3mm、0.4mm、又はそれ以下にすることができる。これにより、防爆素子はより低い解放圧力を有し、小型エネルギー貯蔵装置、例えば、ピン電池又はボタン電池の使用上の要求を満たす。
【0072】
一例において、
図8に示すように、カバープレート11に貫通孔が設けられる。側壁24に貫通孔を開けることより、カバープレート11が平坦になり、貫通孔を開ける難度が低くなり、貫通孔の寸法が正確になる。カバープレート11の厚さは、例えば、0.1mm~1mmである。この寸法の範囲では、カバープレート11がより変形しやすくなり、エネルギー貯蔵装置では、低い解放圧力下で圧力が解放され、また、エネルギー貯蔵装置の軽薄化の発展の趨勢に適合している。
【0073】
一例において、
図1、8に示すように、カバープレート11は、キャビティに近接する内面と、内面と反対の外面とを有する。内面と外面とは平面である。防爆素子は、キャビティに近接する下端面と、下端面とは反対の上端面とを有する。下端面と内面とが揃っており、上端面と外面とが揃っている。この例において、カバープレート11と防爆素子とが組み合わせられた組立体は全体としてシート状を呈する。このような構造では、占める外部空間が小さく、エネルギー貯蔵装置の空間利用率が高い。
【0074】
一例において、圧力解放部12の幅が0.1mm~5mmであり、圧力解放部12の高さが0.2mm~5mmである。この範囲内では、防爆素子は、エネルギー貯蔵素子の防爆レベルの要求を満たす。
【0075】
一例において、
図4~6に示すように、中心部13は、キャビティに近接する第1端面と、第1端面と反対の第2端面とを有する。第1端面及び/又は第2端面は、延在部(例えば、第1延在部21及び第2延在部22)を形成するように、径方向に延在する。延在部は、圧力解放部12の少なくとも一部を覆う。
【0076】
中心部13の材質は、例えば、タンタル、ニオブ、モリブデン、タングステン、チタン、白金、銅、アルミニウム、炭素鋼、コバール合金、又はステンレス鋼である。上記の金属の硬度が高いため、防爆ケーシングの構造強度が高くなる。中心部13は、T字形構造又はエ字形構造をなす。延在部は、第1端面及び/又は第2端面の面積を効果的に増加させることができる。面積の増加により、中心部13と他の素子・デバイス(例えば、タブ又はPCM)との接続が容易になる。
【0077】
なお、一般的に、エネルギー変換素子23はタブを介して中心部13に接続される。第1延在部21又は第2延在部22により中心部13の端面の面積が増加したことによって、タブと中心部13がより大きな接触面積を有し、より大きな電流を流すことができ、エネルギー貯蔵装置の大電流充放電の使用要求を満たす。
【0078】
例えば、第1延在部21及び/又は第2延在部22は圧力解放部12の軸方向に沿う両端面を全体的に覆う。これにより、第1延在部21及び/又は第2延在部22は、圧力解放部12を保護する役割を果たすことができる。延在部は、圧力解放部12が外部の物体によって衝突されることを効果的に防止できる。
【0079】
一例において、筐体本体の表面(例えば、内面又は外面)が凹んで、ストライプ状の溝14を形成する。溝14は直線状、カーブ状、波線状、又は他の形状である。溝14の延長線が防爆素子を通過する。
【0080】
この例において、筐体本体は、溝14を軸として変形するので、筐体本体の変形がより容易になる。筐体本体の変形時に、溝14は破断せず、割れ目を生じず、筐体本体の変形を加速させることで、圧力解放部12におけるクラック及び圧力解放部12と筐体本体との間の隙間を速やかに形成させて、防爆素子の解放圧力を低減させ、小型エネルギー貯蔵装置の圧力解放の要求を満たす。
【0081】
一例において、
図2~3に示すように、溝14は複数であり、複数の溝14は、防爆素子の中心を中心に放射状をなす。複数の溝14を設けることで、防爆素子の解放圧力がより効果的に低減され得る。
【0082】
例えば、
図3に示すように、溝14は2つであり、防爆素子の中心を通過する。変形する際、溝14での構造強度が低い。筐体本体は2つの溝14で外へ突出する。筐体本体の溝14に垂直な部分と圧力解放部12との間の変形量が最も大きく、そこで圧力解放通路が形成されやすく、内部のガスが速やかに放出される。
【0083】
他の例において、溝14は3つ、4つ、5つ、6つ又はそれ以上である。
【0084】
一例において、中心部13の熱膨張係数は、圧力解放部12の熱膨張係数と等しい。これにより、中心部13と圧力解放部12との接合が強固で、耐温性が良好であることが保証される。防爆素子は環境温度の変化により大きく変形することがない。圧力解放部12は中心部13の膨張により破砕することがない。
【0085】
筐体本体の熱膨張係数は圧力解放部12の熱膨張係数以上である。熱膨張係数の選択により、筐体本体と圧力解放部12との間に良好な封着が形成されることが保証される。筐体本体と圧力解放部12との熱膨張係数が等しい場合、この爆発防止筐体の耐温性がより良好になる。
【0086】
筐体本体の熱膨張係数が圧力解放部12の熱膨張係数よりも大きい場合、爆発防止筐体の封着強度がより大きくなる。この形態は、解放圧力の高いエネルギー貯蔵装置により好適に適用される。例えば、筐体本体の材質は、4J28、4J29などの型番を含む鉄基膨張合金である。
【0087】
本開示の別の一実施形態によれば、エネルギー貯蔵装置が提供される。
図8に示すように、このエネルギー貯蔵装置は、エネルギー変換素子23と、上記の防爆ケーシングと、を備える。
【0088】
エネルギー貯蔵装置は、電池又はコンデンサである。電池は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケルクロム電池、アルカリ電池、フロー電池、鉛酸蓄電池などを含む。コンデンサは、有機誘電体コンデンサ、無機誘電体コンデンサ、電解コンデンサ、電気熱コンデンサ及び空気誘電体コンデンサなどを含む。このエネルギー貯蔵装置は安全性能に優れるという特徴を有する。
【0089】
本出願の幾つかの特定の実施形態について、例を挙げて詳細に説明したが、当業者は、上記の例が本出願の範囲を限定するためのものではなく、説明するためのものであることを理解すべきである。当業者は、本出願の範囲及び精神から逸脱することなく、上記の実施形態を変更できることを理解すべきである。本出願の範囲は、特許請求の範囲によって限定される。
【符号の説明】
【0090】
11 カバープレート、12 圧力解放部、13 中心部、14 溝、21 第1延在部、22 第2延在部、23 エネルギー変換素子、24 側壁、25 底部
【手続補正書】
【提出日】2021-12-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
幅が大きいほど、圧力解放部12に加えられた気圧が大きくなり、解放圧力(即ち、第1設定値及び第2設定値)が小さくなり、逆に、幅が小さいほど、解放圧力が大きくなる。高さが大きいほど、圧力解放部12の構造強度が高くなり、解放圧力が大きくなり、逆に、高さが小さいほど、解放圧力が小さくなる。この比例の範囲内で、解放圧力が適切になる。
【国際調査報告】