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特表2022-526307樹脂組成物、ならびにそれを含むプリプレグ、積層板および印刷回路基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(54)【発明の名称】樹脂組成物、ならびにそれを含むプリプレグ、積層板および印刷回路基板
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20220517BHJP
   C08K 5/5397 20060101ALI20220517BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20220517BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220517BHJP
   C08L 79/04 20060101ALI20220517BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20220517BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
C08L63/00 A
C08K5/5397
C08L67/00
C08K3/013
C08L79/04 Z
C08G59/42
C08J5/24 CFC
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556577
(86)(22)【出願日】2019-04-08
(85)【翻訳文提出日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 CN2019081741
(87)【国際公開番号】W WO2020186571
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】201910206965.9
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517221424
【氏名又は名称】▲広▼▲東▼生益科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENGYI TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO. 5 WESTERN INDUSTRY ROAD, SONGSHAN LAKE NATIONAL HIGH‐TECH INDUSTRIAL DEVELOPMENT ZONE, DONGGUAN CITY, GUANGDONG 523808, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】何 烈相
(72)【発明者】
【氏名】祁 永年
(72)【発明者】
【氏名】▲曽▼ ▲憲▼平
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 中▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】潘 ▲華▼林
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AB09
4F072AB28
4F072AD27
4F072AD28
4F072AD32
4F072AE02
4F072AE06
4F072AE07
4F072AF06
4F072AG03
4F072AG17
4F072AG19
4F072AH02
4F072AH21
4F072AL13
4J002CD041
4J002CD051
4J002CF053
4J002CF152
4J002CM024
4J002DJ017
4J002EW146
4J002FD017
4J002FD133
4J002FD136
4J002FD147
4J002FD158
4J002GQ00
4J036AD07
4J036AD08
4J036DC32
4J036FA01
4J036FA05
4J036FB11
4J036JA08
4J036JA11
(57)【要約】
本開示は、樹脂組成物、ならびにそれを含むプリプレグ、積層板および印刷回路基板を提供する。該樹脂組成物は、100重量部のノンハロゲンエポキシ樹脂、11~37重量部の活性エステル樹脂、および40~66重量部の式(I)で表される化合物を含み、ただし、nは、2~15であり、Acは、アセチル基を表す。このような樹脂組成物により製造されたプリプレグ、積層板および印刷回路基板は、低い誘電損率、および良い難燃性を有しながら、高い層間粘着力および低いCTEを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
100重量部のノンハロゲンエポキシ樹脂、
11~37重量部の活性エステル樹脂、および
40~66重量部の式(I)で表される化合物を含む、ことを特徴とする樹脂組成物。
【化1】
(ただし、nは、2~15であり、Acは、アセチル基を表す。)
【請求項2】
前記ノンハロゲンエポキシ樹脂は、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂、DCPD型フェノールエポキシ樹脂、アルキレンフェノールエポキシ樹脂、ビスフェノールA型フェノールエポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールTMC型エポキシ樹脂、およびそれらの組合せからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記活性エステル樹脂は、式(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【化2】
(Xは、フェニル基またはナフチル基を表し、jは、0または1であり、kは、0または1であり、nは、0.25~1.25である。)
【請求項4】
前記活性エステル樹脂の数平均分子量が800以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物は、シアネートエステルおよび/またはそのプレポリマーをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物は、硬化促進剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物は、難燃性塩類をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂組成物は、フィラーをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
補強材に請求項1に記載の樹脂組成物を浸漬または塗布して半硬化させることにより得られるプリプレグ。
【請求項10】
少なくとも1枚の請求項9に記載のプリプレグを含む積層板。
【請求項11】
少なくとも1枚の請求項9に記載のプリプレグ、または少なくとも1枚の請求項10に記載の積層板を含む印刷回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本開示は2019年3月18日に提出された中国専利出願番号201910206965.9の優先権を要求し、引用によってそのすべてを本開示に取り込む。
【0002】
本開示は、印刷回路基板の技術分野に属し、具体的には、樹脂組成物、ならびにそれを含むプリプレグ、積層板および印刷回路基板に関する。
【背景技術】
【0003】
通常、樹脂プリプレグは、印刷回路基板において基板材料として用いられている。難燃型印刷回路基板は、一般的に樹脂組成物にハロゲン難燃剤が用いられることにより、難燃の目的を達成するものである。しかしながら、ハロゲン難燃剤は、燃焼時に、発煙量が大きく匂いが悪いだけでなく、腐食性が強いハロゲン化水素ガス、およびダイオキシン、ジベンゾフランなどの発がん性物質を生成する恐れがある。そのため、ノンハロゲン難燃型印刷回路用積層板に用いられる樹脂組成物を開発する必要がある。
【0004】
現在、リン含有化合物でハロゲン難燃剤を代替して難燃剤とする樹脂組成物が開発されている。それを基に、印刷回路基板がより良い綜合性能、特に誘電性能を有するために、さらに、リン含有化合物を含む難燃型樹脂組成物を改良する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一態様において、本開示は、100重量部のノンハロゲンエポキシ樹脂、
11~37重量部の活性エステル樹脂、および
40~66重量部の式(I)で表される化合物、を含むことを特徴とする樹脂組成物を提供する。
【化3】
(ただし、nは、2~15であり、Acは、アセチル基を表す。)
【課題を解決するための手段】
【0006】
好ましくは、前記ノンハロゲンエポキシ樹脂は、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂、DCPD型フェノールエポキシ樹脂、アルキレンフェノールエポキシ樹脂、ビスフェノールA型フェノールエポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールTMC型エポキシ樹脂、およびそれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0007】
好ましくは、前記活性エステル樹脂は、式(II)で表される化合物である。
【化4】
(Xは、フェニル基またはナフチル基を表し、jは、0または1であり、kは、0または1であり、nは、0.25~1.25である。)
【0008】
好ましくは、前記活性エステル樹脂の数平均分子量が800以下である。
【0009】
好ましくは、前記活性エステル樹脂の量が24~37重量部である。好ましくは、前記式(I)で表される化合物の量が40~53重量部である。
【0010】
好ましくは、前記樹脂組成物は、シアネートエステルおよび/またはそのプレポリマーをさらに含む。好ましくは、前記シアネートエステルは、ビスフェノールA型シアネートエステルなどの分子中に少なくとも2つのシアノオキシ基を含有するシアネートエステル化合物および/またはそのプレポリマーであってもよい。好ましくは、ノンハロゲンエポキシ樹脂、活性エステル樹脂および式(I)で表される化合物の合計を100重量部として、前記シアネートエステルおよび/またはそのプレポリマーの量が10~20重量部である。
【0011】
好ましくは、前記樹脂組成物は、硬化促進剤をさらに含む。好ましくは、ノンハロゲンエポキシ樹脂、活性エステル樹脂および式(I)で表される化合物の合計を100重量部として、前記硬化促進剤の量が0.05~1重量部である。好ましくは、前記硬化促進剤は、4-ジメチルアミノピリジン、2-メチルイミダゾール、2-メチル-4-エチルイミダゾールまたは2-フェニルイミダゾール、イソオクタン酸亜鉛、およびそれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0012】
好ましくは、前記樹脂組成物は、難燃性塩類をさらに含む。好ましくは、前記難燃性塩類は、リン酸塩化合物である。好ましくは、ノンハロゲンエポキシ樹脂、活性エステル樹脂および式(I)で表される化合物の合計を100重量部として、前記難燃性塩類の量が50重量部以下である。
【0013】
好ましくは、前記樹脂組成物は、フィラーをさらに含む。好ましくは、前記フィラーは、有機および/または無機フィラーである。好ましくは、ノンハロゲンエポキシ樹脂、活性エステル樹脂および式(I)で表される化合物の合計を100重量部として、前記フィラーの量が100重量部以下である。
【0014】
他の態様において、本開示は、補強材に上述した樹脂組成物を浸漬または塗布して半硬化させることにより得られるプリプレグを提供する。
【0015】
他の態様において、本開示は、少なくとも1枚の上述したようなプリプレグを含む積層板を提供する。
【0016】
他の態様において、本開示は、少なくとも1枚の上述したようなプリプレグまたは積層板を含む印刷回路基板を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、樹脂組成物を提供することを目的とする。該樹脂組成物は、プリプレグを製造して積層板および印刷回路基板を製造するために用いられる。該組成物により製造されたプリプレグ、積層板および印刷回路基板は、低い誘電損率、および良い難燃性を有しながら、高い層間粘着力および低いCTEを有する。
【0018】
本開示の発明者は、驚くべきことに、式(I)で表される化合物、および活性エステルおよびエポキシ樹脂からなる本開示に係る樹脂組成物を用いる場合、製造された製品が非常に優れている誘電性能を有することを発見した。
【0019】
本開示は、100重量部のノンハロゲンエポキシ樹脂、
11~37重量部の活性エステル樹脂、および
40~66重量部の式(I)で表される化合物を含む樹脂組成物を提供する。
【化5】
(ただし、nは、2~15であり、Acは、アセチル基を表す。)
【0020】
本開示では、エポキシ樹脂を基材として、硬化物に対して素敵な硬化架橋密度を提供することができる。上述したハロゲン含有型印刷回路基板の欠陥を回避するために、本開示は、ハロゲンを含有しないノンハロゲンエポキシ樹脂が用いられる。
【0021】
本開示では、活性エステル樹脂を硬化剤として用いることにより、硬化物の架橋硬化作用を効果的に向上させる。
【0022】
本開示では、式(I)で表される特定の化合物を用いることにより、硬化物の誘電性能を改善する作用を果たすことができる。
【0023】
本開示は、上述した3種の必要な成分同士の相互組合せおよび相互協力の促進作用により、上述したような樹脂組成物を得る。該樹脂組成物により製造されたプリプレグ、積層板および印刷回路基板は、低い誘電損率、および良い難燃性を有しながら、高い層間粘着力および低いCTEを有する。
【0024】
ノンハロゲンエポキシ樹脂は、成分にハロゲンを含有しないエポキシ樹脂である。本開示は、ノンハロゲンエポキシ樹脂の種類を特に限定するものではない。
【0025】
好ましくは、前記ノンハロゲンエポキシ樹脂は、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂、DCPDフェノールエポキシ樹脂、アルキレンフェノールエポキシ樹脂、ビスフェノールA型フェノールエポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールTMC型エポキシ樹脂、およびそれらの組合せからなる群から選ばれる。それらのノンハロゲンエポキシ樹脂の利点は、低い熱膨張係数および誘電性能を有することにある。
【0026】
本開示における他の必要な成分は、活性エステル樹脂である。活性エステル樹脂とは、分子中に1つ以上の活性エステル基を含有する化合物である。
【0027】
前記活性エステル樹脂の量が11~37重量部であり、たとえば11重量部、15重量部、25重量部、30重量部または37重量部であってもよく、24~37重量部であることが好ましい。この範囲である場合、利点は、より良い誘電損率を有することにある。
【0028】
好ましくは、前記活性エステル樹脂は、式(II)で表される化合物である。
【化6】
(Xは、フェニル基またはナフチル基を表し、jは、0または1であり、kは、0または1であり、nは、0.25~1.25である。)
【0029】
該活性エステルの特殊な構造により、その中のベンゼン環、ナフタレン環、シクロペンタジエンなどの剛性構造が該活性エステルに対して高い耐熱性を付与することができる。それと同時に、その構造の規則性、およびエポキシ樹脂との反応過程で二級ヒドロキシ基を生成しないため、よい電気性能および低い吸水性を付与することができる。
【0030】
本開示の発明者は、さらに驚くべきことに、本開示に係る樹脂組成物において、該活性エステルの数平均分子量を800以下に制御すると、樹脂組成物の誘電性能をさらに向上させることができることを発見した。
【0031】
好ましくは、活性エステル樹脂の数平均分子量が800以下である。活性エステル樹脂の数平均分子量が800以下である場合、誘電性能がより良い。いかなる理論に拘泥するものでもないが、数平均分子量が800未満の活性エステル樹脂が樹脂組成物に対してより良い濡れ性を提供する可能となるからである。そのため、積層板および印刷回路基板製品に対してより良い誘電性能を提供することができる。
【0032】
本開示の樹脂組成物は、式(I)で表される化合物の量が40~66重量部であり、たとえば40重量部、50重量部、55重量部、60重量部または66重量部であってもよく、40~53重量部であることが好ましい。この範囲である場合、利点は、より良い誘電損率を有することにある。
【0033】
式(I)で表される化合物の重合度nが2~15である。nは、たとえば、3、7、11または15であってもよい。本発明では、組成物のうちの式(I)で表される化合物のnが整数ではなくてもよく、式(I)で表される化合物の平均重合度を表す。たとえば、組成物のうちの式(I)で表される化合物の半数が3つの繰り返し単位を有し、且つ他の半数が4つの繰り返し単位を有する場合、n=3.5と考えることができる。平均重合度が2未満の場合、組成物の硬化後の熱的性能が悪い。式(I)で表される化合物は重合体であり、分子量の非常に大きい成分が一部ある。分子量の大きい成分は、エポキシ樹脂および活性エステル樹脂系において樹脂組成物の濡れ性に影響を与えることになり、積層板または印刷回路基板の基材次見掛けにドライパターンまたは白い模様が現れるように表れる。本開示の発明者は、本開示の体系で分子量800以下の活性エステル樹脂が用いられることにより、式(I)で表される化合物のうちの高い分子量の部分が濡れ性に対する悪い影響を効果的に平衡し、濡れ性を向上させ、よりよい誘電性能を提供することができることを驚くべきことに発見した。ただし、平均重合度が15超えである場合、活性エステル樹脂により濡れ性を回復するのに十分ではなく、且つ組成物により製造されたプリプレグなどの誘電性能があまりよくない。式(I)で表される化合物の数平均分子量が対応して約1300~7800である。
【0034】
好ましくは、樹脂組成物は、シアネートエステルまたはそのプレポリマーをさらに含んでもよい。それは、組成物のガラス転移温度を向上しながら、式(I)で表される化合物とともにN-P共同難燃を実現し、難燃効率を向上させることができる。
【0035】
さらに好ましくは、前記シアネートエステルは、ビスフェノールA型シアネートエステルなどの分子中に少なくとも2つのシアノオキシ基を含有するシアネートエステル化合物および/またはそのプレポリマーであってもよく、組成物のガラス転移温度をよりよく向上させることができる。
【0036】
ノンハロゲンエポキシ樹脂、活性エステル樹脂および式(I)で表される化合物の合計を100重量部として、前記シアネートエステルおよび/またはそのプレポリマーの量が10~20重量部、たとえば10重量部、12重量部、14重量部、16重量部、18重量部または20重量部である。
【0037】
好ましくは、樹脂組成物は、硬化促進剤をさらに含み、樹脂を硬化させ、樹脂の硬化速度を加速させることができる。
【0038】
好ましくは、ノンハロゲンエポキシ樹脂、活性エステル樹脂および式(I)で表される化合物の合計を100重量部として、前記硬化促進剤の量が0.05~1重量部、たとえば0.08重量部、0.1重量部、0.15重量部、0.2重量部、0.25重量部、0.3重量部、0.35重量部、0.4重量部、0.45重量部、0.5重量部、0.55重量部、0.60重量部、0.65重量部、0.7重量部、0.75重量部、0.8重量部、0.85重量部、0.9重量部または0.95重量部である。
【0039】
好ましくは、前記硬化促進剤は、4-ジメチルアミノピリジン、2-メチルイミダゾール、2-メチル-4-エチルイミダゾールまたは2-フェニルイミダゾール、イソオクタン酸亜鉛、およびそれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0040】
好ましくは、樹脂組成物の難燃特性をさらに向上させるために、前記樹脂組成物は、難燃性塩類、たとえばリン酸塩化合物をさらに含んでもよいが、それに限定されない。リン酸塩化合物は、窒素含有リン酸塩化合物を含む。
【0041】
好ましくは、ノンハロゲンエポキシ樹脂、活性エステル樹脂および式(I)で表される化合物の合計を100重量部として、前記難燃性塩類の量が50重量部以下、たとえば5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、25重量部、30重量部、35重量部、40重量部、45重量部または50重量部である。
【0042】
好ましくは、前記樹脂組成物は、フィラーをさらに含む。前記フィラーは、有機および/または無機フィラーであり、主に、組成物のある物性効果を調整し、たとえば、熱膨張係数(CTE)を低下させ、吸水率を低下させ、熱伝導率を向上させるなどに用いられる。
【0043】
好ましくは、ノンハロゲンエポキシ樹脂、活性エステル樹脂および式(I)で表される化合物の合計を100重量部として、前記フィラーの量が100重量部以下であり、50重量部以下であることが好ましい。前記フィラーの量が、たとえば0.5重量部、1重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、25重量部、30重量部、35重量部、40重量部、45重量部、50重量部、55重量部、60重量部、65重量部、70重量部、75重量部、80重量部、85重量部、90重量部または95重量部である。
【0044】
好ましくは、前記無機フィラーは、熔融シリカ、結晶型シリカ、球状シリカ、中空シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、タルク、窒化アルミニウム、窒化硼素、炭化珪素、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、マイカまたはガラス繊維粉から選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の混合物である。前記混合物は、たとえば熔融シリカおよび結晶型シリカの混合物、球状シリカおよび中空シリカの混合物、水酸化アルミニウムおよび酸化アルミニウムの混合物、タルクおよび窒化アルミニウムの混合物、窒化硼素および炭化珪素の混合物、硫酸バリウムおよびチタン酸バリウムの混合物、チタン酸ストロンチウムおよび炭酸カルシウムの混合物、珪酸カルシウム、マイカおよびガラス繊維粉の混合物、熔融シリカ、結晶型シリカおよび球状シリカの混合物、中空シリカ、水酸化アルミニウムおよび酸化アルミニウムの混合物、タルク、窒化アルミニウムおよび窒化硼素の混合物、炭化珪素、硫酸バリウム及びチタン酸バリウムの混合物、チタン酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、マイカおよびガラス繊維粉の混合物である。
【0045】
好ましくは、前記有機フィラーは、ポリ四弗化エチレン粉末、ポリフェニレンサルファイドまたはポリエーテルスルホン粉末から選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の混合物である。前記混合物は、たとえばポリ四弗化エチレン粉末およびポリフェニレンサルファイドの混合物、ポリエーテルスルホン粉末およびポリ四弗化エチレン粉末の混合物、ポリフェニレンサルファイドおよびポリエーテルスルホン粉末の混合物、ポリ四弗化エチレン粉末、ポリフェニレンサルファイドおよびポリエーテルスルホン粉末の混合物である。
【0046】
好ましくは、前記フィラーは、シリカであり、フィラーのメジアン径が1~15μmであり、フィラーのメジアン径が1~10μmであることが好ましい。
【0047】
本開示に記載される「含む」とは、前記成分以外、他の成分を含んでもよい。これらの他の成分は、前記熱硬化性樹脂組成物に対して異なる特性を付与する。それ以外、本開示に記載される「含む」は、クローズドの「である」または「…からなる」に差し替えられてもよい。
【0048】
たとえば、前記樹脂組成物は、各種の添加剤をさらに含んでもよい。具体例として、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤または潤滑剤などが挙げられてもよい。それらの各種の添加剤は、独立して用いられてもよいし、2種または2種以上で組み合わせて用いられてもよい。
【0049】
本開示に係る樹脂組成物の一般的な製造方法は以下の通りである。容器を取り、まず固形分を投入した後、液体溶剤を添加し、完全に溶解させるまで撹拌した後、液体樹脂、フィラー、難燃剤および硬化促進剤を添加し、均一に撹拌し続けばよい。最後、溶剤を用いて、液体固形分を60%~80%になるまで調整してグルー溶液を製造する。
【0050】
本開示は、補強材、および含浸し乾燥してその上に付着された上述したような樹脂組成物を含むプリプレグを提供することを目的の二とする。
【0051】
不織布および/または他の織物などの例示的な補強材は、たとえば天然繊維、有機合成繊維および無機繊維であってもよい。
【0052】
該グルー溶液を用いて、補強材、たとえばガラス布などの織物または有機織物を含浸し、含浸した補強材を155~170℃のオーブンで5~10分間加熱し乾燥してプリプレグを得る。
【0053】
本開示は、少なくとも1枚の上述したようなプリプレグを含む積層板を提供することを目的の三とする。
【0054】
本開示は、少なくとも1枚の上述したようなプリプレグまたは積層板を含む印刷回路基板を提供することを目的の四とする。
【0055】
本開示に係る樹脂組成物により製造されたプリプレグ、積層板および印刷回路基板は、低い誘電損率、および良い難燃性を有しながら、高い層間粘着力および低いCTEを有する。
【0056】
以下、具体的な実施例により、本開示の技術案をさらに説明する。
【0057】
製造した上記樹脂組成物により製造された金属箔張積層板について、層間粘着力、CTE、および誘電損率をテストする。下記実施例について詳しく説明し記載するように、有機樹脂の質量部が有機固形物質量部である。
【0058】
本開示の実施例に用いられる材料は、以下のとおりである。
【0059】
NC-3000H:ビフェニルノボラックエポキシ樹脂(日本化薬製)。
HPC-7200HHH:DCPD型フェノールエポキシ樹脂(日本DIC製)。
HPC-8000-65T:活性エステル樹脂、式(II)で表される化合物、数平均分子量800以上(日本DIC製)。
HPC-8000L-65MT:活性エステル樹脂、式(II)で表される化合物、数平均分子量800以下(日本DIC製)。
E15-152T:式(I)で表される化合物(ICL製)、ただし、nは、約3.0である。
リン含有化合物1:反応性リン含有難燃剤、CN108976705Aにおける製造例1を参照して製造された。
リン含有化合物2:反応性リン含有難燃剤、CN108976705Aにおける製造例2を参照して製造された。
リン含有化合物3:リン含有フェノールエポキシ樹脂、CN105778413Aにおける製造例を参照して製造された。
CE01PS:ビスフェノールA型シアネートエステル(揚州天啓化学製)。
FB-3Y:シリカフィラー(DENKA製)。
BYK-W903:フィラー分散剤(BYK製)。
DMAP:硬化促進剤、4-ジメチルアミノピリジン(広栄化学製)。
イソオクタン酸亜鉛:硬化促進剤(Alfa Aesar製)。
【0060】
各種の性能のテスト方法は、以下のとおりである。
【0061】
(1)層間粘着力(斧刃分離法):ナイフで銅張積層板試料(幅3mm、長さ150mm)の一端に対し約20mmの2層の粘着シートを隔離した。試料をテストジグに挟持し、上下両端を固定し、試料を垂直状態に維持した。テストストリップから一端を剥離して斧形テストヘッド刃を越え、分離面および斧刃により試料を同一軸線に保持した。剥離強度試験機を起動し、50mm/minの速度で垂直方向において引張力を加え、斧刃で試料を少なくとも50mm分離した。層間粘着力が試料の平均分離力/試料の幅となった。
【0062】
(2)熱膨張係数(CTE):熱機械分析法(TMA)に基づき、IPC-TM-6502.4.24に規定されるTMA方法によりテストを行った。
【0063】
(3)誘電損率:IEC 61189-2-721(SPDR)に規定される方法によりテストを行い、テスト周波数が10GHzである。
【0064】
(4)分子量:GB/T 21863-2008ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に基づき、テトラヒドロフランをリンス溶液として用いられることにより、テストを行った。
【0065】
(5)基材次見掛け:IPC-TM-650に規定される標準方法によりテストを行い、目視またはスライス方法で基材にドライパターン、白い模様などの欠陥が現われるか否かを判断した。
【0066】
実施例1
【0067】
容器を取り、100重量部のエポキシ樹脂HPC-7200-HHHおよび適量のメチルエチルケトン(MEK)を添加し、撹拌し溶解させた後、37重量部の活性エステル樹脂HPC-8000-65T、40重量部の式(I)で表される化合物E15-152T、76重量部のシリカフィラーFB-3Y、および0.76重量部のフィラー分散剤BYK-W903を添加し、撹拌した。適量の硬化促進剤DMAPを添加し、継続して均一に撹拌した。最後、溶剤を用いて液体固形分を70%に調整してグルー溶液を製造した。2116規格のガラス布で上記グルー溶液に浸漬し、適当な厚さに制御した。そして、オーブン乾燥し溶剤を除去してプリプレグを得た。6枚の製造したプリプレグを互いに重み合わせて、その両側にそれぞれ1枚の銅箔を被覆し、熱プレス機に投入し、硬化させて前記エポキシ樹脂銅張板積層板を製造した。物性データを表1に示す。
【0068】
実施例2~8
【0069】
製造プロセスが実施例1と同様であり、処方成分およびその物性指標が表1に示される。
【0070】
比較例1~6
【0071】
製造プロセスが実施例1と同様であり、処方成分およびその物性指標が表1に示される。
【0072】
【表1】
備考:表の中、いずれも固形分重量部である。
【0073】
表1における物性データから分かるように、比較例1~5の組成物に式(I)で表される化合物が用いられておらず、実施例1~7の誘電損率が明らかに比較例1~5よりも低い。フィラーの使用により、低い誘電損率を取得することに有利である。フィラーが用いられていない実施例8と比較例5とを比較すると、実施例8の誘電損率も明らかに式(I)で表される化合物が用いられていない比較例5よりも低い。実施例1~8は、ノンハロゲンエポキシ樹脂、活性エステル樹脂、式(I)で表される化合物および他の選択可能成分により共混合してなる組成物を用いることにより、低い誘電損率、および良い難燃性を有しながら、高い層間粘着力および低いCTEを有する。
【0074】
より具体的には、比較例1~4において、異なるリン含有化合物を難燃剤として用いられ、式(I)で表される化合物を代替した。その結果、製品の誘電損率が0.0083以上であり、いずれも実施例1~7よりも高い。また、式(I)で表される化合物およびエポキシ樹脂のみが用いられるが、活性エステル成分を含有しない比較例6において、製品の誘電損率が0.0081であるとともに、多くの白い模様があった。その結果、活性エステルおよび式(I)で表される化合物が共同作用を有し、優れている誘電性能を得ながら、よい層間粘着力を得ることができる。
【0075】
また、実施例7と実施例2とを比較すると、各性能の相違が相当であるが、その基材板内に少しの白い模様があり、且つDfがやや向上した。それは、活性エステル樹脂の数平均分子量を調節することにより、樹脂組成物の濡れ性および誘電性能に対してさらに最適化の作用を果たすことを示した。実施例2と実施例7との比較から分かるように、活性エステルの数平均分子量が製品の誘電性能に影響を与えた。また、比較例3と比較例4との比較から分かるように、他のリン含有化合物難燃剤と組み合わせる場合、「活性エステル樹脂の数平均分子量が低ければ低いほど製品の誘電性能がよい」という関連性が存在しない。それは、式(I)で表される化合物と組み合わせてエポキシ樹脂に用いられてこそ、活性エステル樹脂の数平均分子量が誘電性能に対して有利な影響を与えることを示した。いかなる理論に拘泥するものでもないが、発明者は、数平均分子量の低い活性エステルにより分子量の高い式(I)で表される化合物が濡れ性に対する不利な影響を効果的に解消することで、誘電性能をさらに向上させると認めた。
【0076】
上述したように、一般的な積層板と比べると、本開示に係るノンハロゲン回路基板は、該樹脂組成物により製造されたプリプレグ、積層板および印刷回路基板を有し、低い誘電損率、および良い難燃性を有しながら、高い層間粘着力および低いCTEを有する。
【0077】
明らかに、当業者であれば、本開示の構想及び範囲から逸脱せずに、本開示の実施例に対してあらゆる改良および変更を行うことができる。そのため、本開示のそれらの改良および変更が本開示の特許請求の範囲及び同等技術の範囲に属すれば、本開示もそれらの改良および変更を含むことを意図する。
【国際調査報告】