(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(54)【発明の名称】風力タービン
(51)【国際特許分類】
F03D 7/02 20060101AFI20220517BHJP
F03D 1/00 20060101ALI20220517BHJP
F03D 7/04 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
F03D7/02
F03D1/00
F03D7/04 K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556875
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(85)【翻訳文提出日】2021-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2020056201
(87)【国際公開番号】W WO2020193113
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519081710
【氏名又は名称】シーメンス ガメサ リニューアブル エナジー エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Siemens Gamesa Renewable Energy A/S
【住所又は居所原語表記】Borupvej 16, 7330 Brande, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】スティーン ダムゴー
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル エイチ. ホーキンズ
(72)【発明者】
【氏名】ルーネ ニルスン
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB01
3H178BB21
3H178BB35
3H178BB41
3H178DD42X
3H178DD51X
3H178DD52X
3H178DD54X
(57)【要約】
本発明は、風力タービン(2)に関しており、該風力タービン(2)は、安全な動作状況の間、風力タービン空力ローター(22)の風上配向(UW)を維持するように実現されたアクティブヨーシステム(1)であって、該アクティブヨーシステム(1)は、複数のヨー駆動ユニット(10)を含み、ここで、該ヨー駆動ユニット(10)は、ネガティブブレーキ(103)を含むアクティブヨーシステム(1)と、風力タービン(2)の通常動作の間、アクティブヨーシステム(1)に電力を供給するように構成された主電源(25)と、送電網遮断イベントにおいて、ネガティブブレーキ(103)に電力を供給するように構成されたネガティブブレーキ専用予備電源(11)とを含む。さらに本発明は、そのような風力タービンを動作させる方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン(2)であって、
-安全な動作状況の間、風力タービン空力ローター(22)の風上配向(UW)を維持するように実現されたアクティブヨーシステム(1)であって、前記アクティブヨーシステム(1)は、複数のヨー駆動ユニット(10)を含み、前記ヨー駆動ユニット(10)は、ネガティブブレーキ(103)を含んでいるアクティブヨーシステム(1)と、
-前記風力タービン(2)の通常動作の間、前記アクティブヨーシステム(1)に電力を供給するように構成された主電源(25)と、
-万一送電網が遮断された場合に、前記ネガティブブレーキ(103)に電力を供給するように構成されたネガティブブレーキ専用予備電源(11)とを含む、風力タービン。
【請求項2】
前記風力タービンは、前記ネガティブブレーキ(103)への電力の供給を調整するように構成された予備電源コントローラ(110)を含む、請求項1記載の風力タービン。
【請求項3】
前記予備電源(11)は、前記予備電源コントローラ(110)に電力を供給するように実現されている、請求項2記載の風力タービン。
【請求項4】
前記風力タービンは、風向きを決定するように構成された風向きセンサ(23)を含み、前記予備電源(11)は、風向きに基づいて前記ネガティブブレーキ(103)への電力を調整するように構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の風力タービン。
【請求項5】
前記予備電源(11)は、一定の風向き期間の間、前記ネガティブブレーキ(103)から電源を切るように構成されている、請求項4記載の風力タービン。
【請求項6】
前記風力タービンは、風速を決定するように構成された風速センサ(24)を含み、前記予備電源(11)は、風速に基づいて前記ネガティブブレーキ(103)への電力を調整するように構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の風力タービン。
【請求項7】
前記予備電源(11)は、低風速区間の間、前記ネガティブブレーキ(103)から電源を切るように構成されている、請求項6記載の風力タービン。
【請求項8】
前記ネガティブブレーキ専用予備電源(11)は、風向きセンサ(23)および/または風速センサ(24)にも電力を供給するように構成されている、請求項4から7までのいずれか1項記載の風力タービン。
【請求項9】
前記ネガティブブレーキ専用予備電源(11)は、任意のバッテリー、燃料電池、ディーゼル発電機である、請求項1から8までのいずれか1項記載の風力タービン。
【請求項10】
前記ネガティブブレーキ専用予備電源(11)は、前記ネガティブブレーキ(103)に少なくとも6時間、より好適には少なくとも8時間の持続時間の間、電力を供給するように実現されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の風力タービン。
【請求項11】
前記風力タービンは、利用可能な予備電力を監視し、利用可能な予備電力が予め定められた閾値レベルまで減少した場合に、前記ネガティブブレーキ(103)に対する予備電力を制限する予備電力監視装置(111)を含む、請求項1から10までのいずれか1項記載の風力タービン。
【請求項12】
前記風力タービンは、前記ネガティブブレーキ専用予備電源(11)のための独立した監視装置を含み、かつ/または冗長的なネガティブブレーキ専用予備電源を含む、請求項1から11までのいずれか1項記載の風力タービン。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の風力タービン(2)を動作させる方法であって、該方法は、
-安全な動作状況の間、風力タービン空力ローター(22)の風上配向(UW)を維持するために、主電源からアクティブヨーシステム(1)を駆動するステップと、
-送電網が遮断された場合には、空力ローター(22)を風下配向(DW)に受動的に転向可能にするために、ネガティブブレーキ専用予備電源(11)からネガティブブレーキ(103)を作動させるステップとを含む、方法。
【請求項14】
前記方法は、前記空力ローター(22)が風下配向(DW)にある間、前記ネガティブブレーキ(103)から電源を切るステップを含む、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンおよび風力タービンを動作させる方法に関する。
【0002】
ハリケーン、サイクロン、台風などの強風の間、風力タービンは、典型的には、動作を停止し、アイドリングモードになる。支持構造体(タワー、基礎、下部構造体)およびローターブレードへの風からの負荷は、風向きに対する空力ローターの配向に大きく依存する。
【0003】
ほとんどの水平軸風力タービンは「風上配向」用に設計されており、すなわち、空力ローター(ハブおよびローターブレード)は、通常の動作中は風に向けられる。強風状況を乗り切るために風力タービンを停止しているときに風荷重を低減するためには、空力ローターを風上配向に維持するか、反対の風下配向に180°転向させることができる。
【0004】
極端な風の状況の間、風力タービンの空力ローターが風上配向にあると、風向きのごくわずかな変化でさえも空力ローターに大きな作用力を引き起こす可能性があり、さらには空力ローター(やナセル)に急速にかかる力が風との位置合わせをさらに外す場合もある。非常に強い風では、空力ローターを風上位置に戻すように動かす風力タービンのヨーシステムがこの位置合わせ不良を修正できない場合がある。空力ローターがもはや正しい風上配向にない場合、風力タービンの支持構造体やその他の構成部品にかかる力が大幅に増加する可能性がある。風力タービンがそのような極端な負荷に耐えるように設計されていない場合、支持構造体に損傷が発生し、さらには壊滅的な故障につながる可能性もある。
【0005】
これらの理由から、タービンのヨーシステムがローターの位置合わせ不良を修正できない場合、そのような悪天候状況の間は、風力タービンをそのヨー軸周りでスリップさせ、空力ローターを風下位置に転向させることを可能にすることが好ましい。風下位置は、空力ローターの風下配向と風向きとの間に何らかのわずかなずれがあっても、風が受動的に空力ローターを最適な風下配向の位置合わせに向かって押し戻すという利点がある。
【0006】
風力タービンは、アクティブヨーシステム、すなわちナセルおよび空力ローターを所期の配向に転向させるために電力供給されるヨーモーターのセットを実装することができる。アクティブヨーシステムは、風の状況が好ましくない間に空力ローターを風下配向に転向するために使用されてもよい。しかしながら、厳しい嵐の状況では、送電網の遮断が発生する可能性があり、したがって、そのようなアクティブヨーシステムは、必要な位置合わせ調整を行うことができない無電力状態に置かれる可能性がある。
【0007】
アクティブヨーシステムは、ネガティブブレーキを実装することができる。ネガティブブレーキ装置では、デフォルトの状態は「閉じた」状態であり、ブレーキを解除または「開く」ためには外力が必要である。この外力は、油圧、電磁石などによって供給されてもよい。従来技術の「風上配向」型風力タービンでは、風力タービンの通常動作中に所期の風上配向の維持を支援するためにネガティブブレーキを使用するのが一般的である。ネガティブブレーキの使用は、動作中にアクティブヨーシステムへの送電網電力の欠如または他のタイプの停電が発生した場合に、ヨーブレーキが係合し、危険を伴う空力ローターの急速な位置合わせ不良を防ぐことができる。
【0008】
悪天候状況は、送電網電力の欠如を伴う場合がある。このような場合であっても、負荷を最小限にするためには、風上配向か風下配向を維持することが望ましい。この理由から、従来技術では、アクティブヨーシステム(すなわち、ヨー駆動モーターおよびコントローラ)ならびにネガティブブレーキに完全に電力を供給する能力を有する予備電源を提供することが公知である。
【0009】
そのような予備電源は、延長された停電の間、アクティブヨーシステムおよびネガティブブレーキの安全な機能を保証するために、非常に大きなエネルギーを供給しなければならず、したがって、風力タービンの全体的なコストも大幅に増加する。また、そのような複雑なシステムは故障しやすく、必要なときの利用可能性も低下する。
【0010】
したがって、本発明の課題は、厳しい風の状況の間、風力タービンを損傷から保護する、より信頼性の高い方法を提供することである。
【0011】
この課題は、請求項1記載の風力タービン、ならびに請求項13記載の風力タービンを動作させる方法によって解決される。
【0012】
本発明の風力タービンは、安全な動作状況の間、風力タービン空力ローターの風上配向を維持するように実現されたアクティブヨーシステムであって、該アクティブヨーシステムは、複数のヨー駆動ユニットを含み、ここで、該ヨー駆動ユニットは、ネガティブブレーキを含むアクティブヨーシステムと、風力タービンの通常動作の間、アクティブヨーシステムに電力を供給するように構成された主電源と、送電網遮断イベントにおいて、ネガティブブレーキに電力を供給するように構成されたネガティブブレーキ専用予備電源とを含む。
【0013】
本発明の文脈において、「ネガティブブレーキ専用予備電源」という用語は、予備電源としてのその目的が専らアクティブヨーシステムのネガティブブレーキに電力を供給することにあることを理解されたい。本発明の風力タービンの利点は、大容量のアクティブヨーシステムの予備電源が不要なことである。また、本発明の文脈では、「主電源」という用語は、発電機または送電網に由来する一次電源または主電源として理解されたい。風力タービンが動作している限り、すなわち出力電力を生成している限り、この主電源は、ヨーモーターを駆動するアクティブヨーシステムへの電力供給に利用可能であり、またネガティブブレーキへの電力供給のためにも利用可能である。
【0014】
本発明の風力タービンの利点は、送電網の遮断の間、ネガティブブレーキ専用予備電源が、ネガティブブレーキを開いたままにすることができるので、空力ローターが受動的に風の外に転向することである。このことは、何らかの能動的なヨーイングの必要性なしで、風自体が空力ローターを風下配向に転向させることを意味する。
【0015】
本発明によれば、そのような風力タービンを動作させる方法は、安全な動作状況の間、風力タービン空力ローターの風上配向を維持するために、主電源からアクティブヨーシステムを駆動するステップと、送電網が遮断された場合には、空力ローターを風下配向に受動的に転向可能にするために、ネガティブブレーキ専用予備電源を使用してネガティブブレーキを作動させる(すなわち、制動トルクを解除する)ステップとを含む。
【0016】
本発明の特に好適な実施形態および特徴は、以下の説明で明らかにされるように、従属請求項によって与えられる。カテゴリの異なる請求項の特徴は、本明細書に記載されていないさらなる実施形態を与えるために、適切に組み合わせてもよい。
【0017】
以下では、風力タービンは、水平軸が風上に面している風力タービン、すなわち、空力ローターが常に風に面するようにヨー角を継続的に調整できる風力タービンであることが想定されてもよい。発電機が風からできるだけ多くのエネルギーを抽出できるようにヨーエラー(風向きと空力ローター軸との間のズレ)を最小化することは重要である。風力タービンのアクティブヨーシステムは、複数のヨー駆動ユニット、例えば6つのヨー駆動ユニットを含むことが想定されてもよい。各ヨー駆動ユニットは、歯付きヨーリングと係合するピニオンと、ピニオンを転向させるモーターユニット(ギアボックス付き)とを含むことが理解され得る。ヨー駆動ユニットのネガティブブレーキは、ピニオンの望ましくない回転を防ぐ役割、すなわち、ピニオンの動きはないがヨーリングとの係合は維持する役割を果たしている。ピニオンの回転(および風力タービンのヨーイング)は、ネガティブブレーキが解除または開放されたときにのみ可能となる。
【0018】
好適には、風力タービンは、ネガティブブレーキへの電力供給を調整するように、すなわち、ネガティブブレーキへの電力供給を必要に応じて接続/遮断するように構成された予備電力供給コントローラも含む。このコントローラは、好適には、送電網が遮断された場合でも適正に動作できるように、ネガティブブレーキ専用予備電源によって電力を供給される。
【0019】
空力ローターが風下配向にもたらされると、安全に風上配向に戻るように転向するまではこの位置を維持すべきである。風向きは変わる可能性があるため、空力ローターの配向を修正する必要がある。ネガティブブレーキを開いたままに維持することにより、空力ローターを常に風によって風下配向に受動的に動かすことができる。ただし、風向きは、延長された期間の間実質的に一定のままである可能性がある。したがって、本発明の好適な実施形態では、ネガティブブレーキ専用予備電源のコントローラは、ネガティブブレーキへの電力を相対的な風向きに基づいて調整するように、好適には一定の風向き期間の間、ネガティブブレーキから電源を切るように構成されている。相対的な風向きは、風力タービンの外部の適切な場所に取り付けられた風向きセンサを使用して通常の方法で確立することができる。一定の風向き期間とは、風向きが実質的に一定のままである特定の最小持続時間の期間と見なされてもよく、例えば、少なくとも30秒間にわたった平均で±8°を超える変化のない風向きである。そのような期間の間は、風向きが変わったとしても空力ローターを固定位置に維持することが安全だと見なされている。監視された風向きがこの範囲を逸脱するとただちに、ネガティブブレーキ専用予備電源のコントローラは、その解除のためにネガティブブレーキに電力を供給するように構成されており、それによって、空力ローターは自身を風下配向に受動的に修正することができる。
【0020】
上記のように、風力タービンの構成要素への損傷を防ぐために、過度の風荷重を回避する必要がある。例えば、ビューフォート風力階級で風速4もしくは5までの弱い風速では、風荷重は通常、アイドリング状態または停止状態の風力タービンにとって危機的ではない。それゆえこれらの条件では、送電網から遮断されている間、空力ローターの風下配向を維持する必要はない。したがって、本発明のさらに好適な実施形態では、ネガティブブレーキ専用予備電源のコントローラは、風速に基づいてネガティブブレーキへの電力を調整するように、好適には弱い風速期間の間にネガティブブレーキから電源を切るように構成されている。弱い風速期間は、特定の期間にわたって観測された平均風速が最小風速閾値未満の場合に想定されてもよい。例えば、弱い風速期間は、30秒にわたる平均風速が15m/s未満の場合に想定されてもよい。風速は、風力タービンの外部の適切な場所に取り付けられた風速センサを使用して通常の方法で確立することができる。電力は、好適には、弱い風速期間が始まるとブレーキから除去される(これによりブレーキはロックされる)。電力は、風速が最小風速閾値を超えて増加したときに、ブレーキに再供給される。
【0021】
このような最小風速閾値を下回ると、風向きが大幅に変化した場合でさえも、空力ローターを固定位置に維持することが安全だと見なされている。監視されている風速がこの最小風速閾値を超えるとただちにネガティブブレーキ専用予備電源のコントローラは、その解除のためにネガティブブレーキに電力を供給するように構成されており、それによって、空力ローターは自身を風下配向に受動的に修正することができる。
【0022】
風向きセンサおよび風速センサは、別個の構成要素であってもよいし、単一の構成要素として実現されてもよい。風向きの読み取り値と風速の読み取り値とを得るために、そのようなセンサは、一般に評価モジュールと、それを電源に接続する手段とを含む。上記で示したように、送電網電力の欠如の際には、空力ローターを風下配向に転向させることが推奨される。一次電源のみによって電力が供給されている任意のセンサは、送電網の遮断期間の間は、読み取り値を提供することができない。したがって、本発明のさらに好適な実施形態では、ネガティブブレーキ専用予備電源は、風向きセンサおよび/または風速センサに電力を供給するようにも構成されている。これらの構成要素は一般に多くの電力を消費しないため、ネガティブブレーキ専用予備電源は、送電網が遮断された場合でも快適に電力を供給することができる。
【0023】
ネガティブブレーキ専用予備電源は、例えば、バッテリー、燃料電池、小型ディーゼル発電機などを使用するための任意の適切なモジュールとして実現することができる。好適には、ネガティブブレーキ専用予備電源は、冗長的なシステムとして、例えば、2つのバッテリーを含むように構成され、それによって、一方は、他方が故障した場合には引き継ぐことができる。
【0024】
好適には、ネガティブブレーキ専用予備電源は、少なくとも6時間、より好適には少なくとも8時間の持続時間の間、ネガティブブレーキに電力を供給するように実現されている。
【0025】
風力タービンは、一次電源によるネガティブブレーキへの電力供給ができないときはいつでもネガティブブレーキに電力を供給することを唯一の目的とする専用予備電源を有するように設計されてもよい。代替的に、送電網が遮断された場合に、予備電源が、を使用して、除湿機、ナビゲーション用および航空用照明、および衛星通信機器などの構成要素に電力を供給するために使用されてもよい。ただし、これらの構成要素への電力の供給は、風力タービンの通常運転が再開できる前に予備電力レベルの枯渇を引き起こす可能性がある。したがって、本発明の特に好適な実施形態では、風力タービンはまた、利用可能な予備電力を監視し、利用可能な予備電力が予め定められた閾値レベルに達したときに、予備電力をネガティブブレーキのみに制限するように実現される監視装置を含む。フェイルセーフ手段として、風力タービンは、予備電源のための付加的な独立した監視装置を含むことができる。
【0026】
本発明の他の課題および特徴は、添付の図面と併せて考察される以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、これらの図面は、本発明の限定の定義としてではなく、例示目的のためだけに設計されていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の風力タービンの一実施形態におけるヨーシステムを示した図である。
【
図2】本発明の風力タービンのさらなる実施形態におけるヨーシステムを示した図である。
【
図3】風上配向における本発明の風力タービンを示した図である。
【
図4】風下配向における本発明の風力タービンを示した図である。
【
図5】従来技術の風力タービンにおけるヨーシステムを示した図である。
【0028】
図面では、同様の番号は、明細書全体を通して同様の対象を指す。図中の対象は、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。
【0029】
図1は、本発明の風力タービンの一実施形態におけるヨーシステム1を示している。この図は、風力タービンタワー21の上部にあるヨーリング20を示す。ナセル、発電機、空力ローターなどの他の風力タービン構成要素の存在が想定されてもよいが、ここでは明確化のために示されていない。図面では、2つのヨー駆動ユニット10しか示されていないが、ヨーシステム1は、風力タービンタワー21に対してナセルを転向させるように配置された6つ以上のヨー駆動ユニット10を含み得ることを理解されたい。各ヨー駆動ユニット10は、歯付きヨーリング20と係合する歯付きピニオン102を転向させるように構成されたモーターユニット101を含む。ヨー駆動ユニット10は、通常、空力ローターを所期のように位置合わせするためにナセルをひとまとめに転向させるようにすべて同期的に動作する。モーターユニット101は、風力タービンの通常動作中、すなわち、風力タービンが送電網に接続されている限り、送電網(一次電源25として示されている)から電力を供給される。所期の位置合わせを維持するために、各ヨー駆動ユニット10は、閉じているときにピニオン102の回転を防止するネガティブブレーキ103を含む。このネガティブブレーキ103を解除または開くためには、ネガティブブレーキ103に電力を供給する必要がある。風力タービンの通常動作中、これらのネガティブブレーキ103は、送電網または一次電源25からも電力を供給される。送電網が遮断された場合、ネガティブブレーキ103は、ネガティブブレーキ専用予備電源11によって電力を供給される。ネガティブブレーキ専用予備電源11の容量は、特定の最小時間長さ、例えば6時間までの間、ネガティブブレーキ103に電力を供給するのに十分な量だけを必要とする。
【0030】
図2は、本発明の風力タービンのさらなる実施形態におけるヨーシステムを示している。明確化のために、
図1で説明した主電源25は省略されている。ここでは、ネガティブブレーキ専用予備電源11は、電源11をオンまたはオフに切り替えるために実現されるコントローラ110によって管理されている。本発明は、空力ローターが風下位置にあるとき、特定の条件下ではブレーキから電源を切るのが安全な場合があるという推察に基づいている。例えば、風が比較的安定している場合、および/または風速が比較的低い場合に、ブレーキ103を閉じるのが安全な場合もあり、それにより電力が節約される。この目的のために、コントローラ110は、風速センサ24から風速信号240を受信し、風向きセンサ23から風向き信号230を受信する。コントローラ110は、風速が十分に弱いかどうか、すなわち、風の状況が弱い風速期間として適格かどうかを決定するために、風速信号240を評価する。同様に、コントローラ110は、風向きが実質的に一定のままであるか、少なくとも許容範囲内で安定しているかどうかを決定するために、風向き信号230を評価する。両方の条件が当てはまる場合、コントローラ110は、電源11をスイッチオフにすることができ、それによって、ネガティブブレーキ103が閉じられる。空力ローターは、ここではその位置を維持する。コントローラ110は、風速信号240および風向き信号230の監視を継続する。風向き信号230が最小または予め定められた量だけ変化するとただちに、コントローラ110は、ブレーキを開くために電源11を再びスイッチオンする。風向きの変化は、空力ローター22がより最適な風下位置に戻るように受動的に動かされることにつながる。コントローラ110および風センサ23,24を用いることにより、ブレーキ103を閉じることができる条件のときには常に電力を節約することが可能である。これにより、ネガティブブレーキ専用予備電源11は、比較的低い容量を有すること(さらなる低コストに関連する)、および/または有利に長期間にわたって予備電力を提供することが可能になる。この図面は、利用可能な予備電力を監視できる任意付加的な監視装置111も示す。利用可能な予備電力が低レベルに達した場合、コントローラ110は、ネガティブブレーキ103に対する予備電力を制限することができる。
【0031】
ネガティブブレーキ専用予備電源11は、2つのバッテリーを含むことができ、それによって、一方のバッテリーは、他方が故障した場合に引き継ぐことができる。付加的なフェイルセーフ手段として、風力タービンは、予備電源11のための付加的監視装置を含むことができる。例えば、コントローラ110の監視装置111は、複製されてもよい。
【0032】
図3は、風上配向UWにおける本発明の風力タービン2の実施形態を示す。この図は、風に面した空力ローター22を示している。ヨー駆動ユニット10は、風力タービン2の通常動作中に送電網から電力を受け取る。
【0033】
図4は、
図3の風力タービン2が風下配向DWにある場合を示す。この位置は、風の状況が危険なとき(例えば、嵐、ハリケーンなどの間)、または風力タービンが送電網から遮断されているときには常に想定される。この図は、風の外に面した空力ローター22を示している。ヨー駆動ユニット10のネガティブブレーキ103は、ネガティブブレーキ専用予備電源11から電力を受け取る。ネガティブブレーキ専用予備電源11のコントローラ110は、
図2に記載されているように風向きセンサ23および風速センサ24によって提供される風速信号および風向き信号230,240の評価によって電力を節約することができる。
【0034】
図5は、従来技術の風力タービンにおけるヨーシステム5を示している。ここでも、各ヨー駆動ユニット10は、歯付きヨーリング20と係合する歯付きピニオン102を転向させるように構成されたモーターユニット101を含む。所期の位置合わせを維持するために、各ヨー駆動ユニット10は、閉じているときにピニオン102の回転を防止するネガティブブレーキ103を含む。ここでも、モーターユニット101およびネガティブブレーキ103は、風力タービンの通常の動作中に送電網(主電源55として示される)から電力を供給される。従来技術の風力タービンの安全な動作を保証するために、ヨーシステム5は、駆動ユニット101およびネガティブブレーキ103にも電力を供給するのに十分な容量を有する予備電源50を含む。予備電源50の容量は、送電網の停電中にこれらのユニットに電力を供給するのに十分な大きさでなければならないため、予備電源50のコストはそれに応じて高い。さらに、複雑さのレベルは、失敗の可能性も非常に高いほどのものである。
【0035】
本発明は、好適な実施形態ならびにそれらの変化形態の形態で開示されてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、複数の付加的な修正や変更を行うことができることを理解されたい。
【0036】
明確化のために、本出願全体を通して「a」や「an」などの不定冠詞の使用は、複数を除外するものではなく、「含む」は、他のステップまたは要素を除外しないことを理解されたい。
【国際調査報告】