(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ヒトの眼の網膜領域に関心のあるパターンを投射するためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
A61F9/007 190A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557209
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2020058873
(87)【国際公開番号】W WO2020193796
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/057965
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】515328853
【氏名又は名称】ピクシウム ビジョン エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・ビュク
(72)【発明者】
【氏名】グザヴィエ・ビョーク
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント・ビスマス
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ドテール
(57)【要約】
本発明は、関心のある光学パターンをヒトの眼の網膜領域に投射するためのシステム(80)であって、患者が装着するためのキャリングフレーム(50)と、画像を捕捉するためのカメラ(6)と、関心のあるパターン(44)を反射するパルス光ビーム(4)を、ヒトの眼に投射するためのプロジェクタ装置(1)と、前記カメラ(6)及び前記プロジェクタ装置(1)と通信するプロセッサ装置(60)とを含み、前記プロセッサ装置(1)は、前記カメラ(6)によって捕捉された、前記パルス光ビーム(4)の基礎となる画像を、前記関心のあるパターン(44)に変換するようにされており、前記プロジェクタ装置(1)及び前記カメラ(6)は、前記キャリングフレーム(50)に取り付けられているシステム(80)に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心のある光学パターンをヒトの眼の改変された網膜領域に投射するためのシステム(80)であって、
患者が装着するためのキャリングフレーム(50)と、
画像を捕捉するためのカメラ(6)と、
関心のあるパターン(44)を反射するパルス光ビーム(4)を、ヒトの眼に投射するためのプロジェクタ装置(1)と、
前記カメラ(6)及び前記プロジェクタ装置(1)と通信するプロセッサ装置(60)とを含み、
前記プロセッサ装置(1)は、前記カメラ(6)によって捕捉された、前記パルス光ビーム(4)の基礎となる画像を、前記関心のあるパターン(44)に変換するようにされており、
前記プロジェクタ装置(1)及び前記カメラ(6)は、前記キャリングフレーム(50)に取り付けられていることを特徴とするシステム(80)。
【請求項2】
前記プロセッサ装置(60)が、前記キャリングフレーム(50)と別に提供され、前記プロセッサ装置(60)と、前記カメラ(6)及び前記プロジェクタ装置(1)との通信のために、接続ケーブル(70)が提供される請求項1に記載のシステム(80)。
【請求項3】
更に、光源(22)を含み、前記光源(22)が、前記プロジェクタ装置(1)に配置されている、又は前記光源が、前記プロセッサ装置(60)に配置されており、好ましくは、前記光源は、レーザ、レーザダイオード、及び/又はLED、好ましくはLEDマトリックスを含み、好ましくは、前記光源は、赤外線場の波長を有する光、及び/又はコヒーレント光又はインコヒーレント光を照射するようにされている請求項1から2のいずれかに記載のシステム(80)。
【請求項4】
前記プロセッサ装置(60)が、光ビーム及び/又は光源のパルス持続時間及び/又は周波数及び/又は光強度を制御するようにされたプロセッサユニットを含む請求項1から3のいずれかに記載のシステム(80)。
【請求項5】
更に、前記光源によって照射されたパルス入力光ビーム(20)を変調及び分割し、変調されたパルスサブビーム(40)の変調された光パターンにするための変調マイクロミラーアレイ(3)、好ましくはデジタルマイクロミラー装置を含み、前記マイクロミラーアレイ(3)の各マイクロミラー(30)の向きが、前記関心のあるパターン(44)に基づくサブグループによって個別に制御可能である又は制御され、前記サブビームは、前記関心のあるパターン(44)を反射する前記パルス出力ビーム(4)を形成し、好ましくは、前記入力光ビーム(20)は、光学プリズム、好ましくは内部全反射プリズムによって前記変調マイクロミラーアレイ(3)に向けられる請求項3から4のいずれかに記載のシステム(80)。
【請求項6】
前記変調マイクロミラーアレイ(3)が、前記プロジェクタ装置(1)に配置されている、又は前記変調マイクロミラーアレイ(3)が、前記プロセッサ装置(60)に配置されている請求項5に記載のシステム(80)。
【請求項7】
前記接続ケーブル(70)が、前記プロセッサ装置(60)と前記プロジェクタ装置(1)との間でデータを伝達するようにされ、及び/又はカメラデータを伝達するようにされており、及び/又は前記接続ケーブル(70)が、前記プロセッサ装置から前記カメラ(6)及び/又は前記プロジェクタ装置(1)に電力を供給するようにされており、及び/又は前記接続ケーブル(70)が、前記プロセッサ装置(60)から前記プロジェクタ装置(1)に光を伝達するようにされており、好ましくは、前記接続ケーブル(70)が、電気ケーブル(71)及び/又は光ファイバ(72)又は光ケーブルを含む請求項2から6のいずれかに記載のシステム(80)。
【請求項8】
前記光源(22)が、前記プロセッサ装置(60)に配置され、前記接続ケーブル(70)が、前記電気ケーブル(71)及び前記光ファイバ(72)又は前記光ケーブルを含み、前記光ファイバ(72)又は前記光ケーブルが、前記光源(22)と前記プロジェクタ装置(1)とを接続する請求項3から7のいずれかに記載のシステム(80)。
【請求項9】
前記接続ケーブル(70)及び/又は前記プロジェクタ装置(1)が、光安全インターロックループ、好ましくはレーザ安全インターロックループを含む請求項8に記載のシステム(80)。
【請求項10】
前記プロジェクタ装置(1)が、ヒトの眼の外部から前記眼の瞳孔で前記光ビーム(4)を投射するための光学系(2)を含み、好ましくは、前記光学系(2)が、前記光ビームの射出瞳直径が前記眼の瞳孔直径よりも小さく設定されるように構成される請求項1から9のいずれかに記載のシステム(80)。
【請求項11】
前記プロジェクタ装置が、前記キャリングフレーム(50)に対する前記プロジェクタ装置(1)の位置及び/又は向きを調整するための位置合わせ装置(8)を含み、好ましくは、前記位置合わせ装置(8)は、前記プロジェクタ装置(1)が、前記キャリングフレーム(50)に対して複数の移動方向(10,11)、特に好ましくは5つの移動方向に移動できるように形成される請求項1から10のいずれかに記載のシステム(80)。
【請求項12】
前記キャリングフレーム(50)が眼鏡フレームを含み、及び/又は前記フレームがヘッドバンドを含み、及び/又は前記フレームがヘッドリング及び/又は可撓性バンドを含む請求項11に記載のシステム(80)。
【請求項13】
更に、眼の位置及び/又は角度をモニタする眼球追跡機構を含み、前記位置合わせ装置(8)が、前記プロジェクタ装置(1)を中央視軸に自動的に位置合わせするように構成されており、好ましくは、前記位置合わせ装置(8)が電動式であり、及び/又は前記位置合わせ装置(8)が、傾斜ミラー及び/又は圧電モータ、及び/又は前記プロジェクタ装置(1)を前記中央視軸に自動的に位置合わせするカップリングフィードバック機構を含む請求項11から12のいずれかに記載のシステム(80)。
【請求項14】
前記キャリングフレーム(50)がレンズ(54)を含み、好ましくは前記レンズ(54)にシェードが付けられ、好ましくは着色されている請求項1から13のいずれかに記載のシステム(80)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの眼の網膜に関心のあるパターンを投射するためのシステム、特に、ヒトの眼の網膜の領域に、関心のあるパターンを投射するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特に変性網膜疾患によって引き起こされる網膜の機能不全は、視覚障害又は失明の主因である。
【0003】
患者の視覚機能を少なくとも部分的に回復させるために、網膜インプラント、換言すれば網膜補綴を利用することによって網膜領域を改変することが知られている。これに関して、異なる動作原理に基づくいくつかの異なるタイプの網膜インプラントが知られている。
【0004】
網膜インプラントは、通常、患者の眼の脈絡膜上、網膜上、又は網膜下に配置されるため、損傷した光受容体に置き換わる、即ち、作用することができるという共通点を有する。これに関して、視覚的場面に関する情報は、カメラで捕捉され、網膜に埋め込まれた電極アレイに送信される。
【0005】
一般的な網膜インプラントのうち、皮膚貫通ワイヤを含むインプラントが知られている。これらのワイヤは、感染及び瘢痕化のリスクを有する。したがって、より最近のインプラントは、例えば、誘導コイルを介して電力と視覚情報を送達することによって、様々な無線技術を使用している。更に、電力を誘導的に送達し且つ視覚情報を瞳孔を通して光学的に送達すること、又は視覚情報と電力の両方を光学的に送達することが知られている。
【0006】
網膜インプラントへの特に有益なタイプの無線情報伝達は、赤外光の刺激パターンを眼に投射することに基づいている。視線方向が、インプラントの一部がパターンの一部によって照射される方向である場合、インプラントは、信号の当該部分を電流に変換し、それに応じて網膜を刺激する。
【0007】
網膜インプラントは、刺激電極又は画素から構成されるアレイである。各画素は、ビジュアルプロセッサから送達された光を捕捉し、それを刺激用電流に変換する1以上のフォトダイオードを有する。
【0008】
いくつかのインプラントアレイは、網膜下腔、通常は、中心窩領域内又はその近傍に配置することができる。
【0009】
光又は光ビームをそれぞれヒトの眼に投射するために、拡張現実ゴーグルなどのプロジェクタ装置を使用することが知られている。プロジェクタ装置のプロジェクタは、光ビームをヒトの眼に投射するが、光ビームは、ヒトの瞳孔よりも遥かに広い。即ち、透過されるべき光ビーム、即ち、画像放射の一部のみが、その瞳孔を通って眼内に導かれ、網膜に向かう。
【0010】
事実、赤外光の投射に基づく網膜インプラントは、正しく動作するために特定の放射照度を必要とする。したがって、通常の拡張現実ゴーグルは、そのように設計された網膜インプラントと組み合わせるには不適当である。
【0011】
或いは、オプトジェネティクスとして知られるアプローチが提案されており、これは、遺伝子治療により残存網膜細胞を処置し、その感光性挙動を回復させる。オプトジェネティクスとは、生体組織の特定細胞内で明確に定義された事象を制御するための遺伝学と光学との組合せを意味する。オプトジェネティクスは、(i)細胞膜における外因性光反応性タンパク質の発現によってそれらを光に対して感受性にするために、標的細胞を遺伝子改変すること、及び(ii)前記光反応性タンパク質に光を提供することができる照明装置を提供することである。
【0012】
本特許の以下の段落において、ヒトの眼の網膜補綴の移植又はオプトジェネティクスによる改変によって感光性挙動を回復するように改変されたヒトの眼の網膜領域を、「改変された網膜領域」とも称する。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、ヒトの眼の網膜領域に関心のあるパターンを投射するためのシステムを提供することである。
【0014】
前記目的は、請求項1の特徴を含むヒトの眼の網膜に関心のあるパターンを投射するためのシステムによって解決される。更に好ましい実施形態は、従属請求項、明細書、及び図面に示される。
【0015】
したがって、関心のあるパターンをヒトの眼の網膜領域に投射するためのシステムが提案され、前記システムは、患者が装着するためのキャリングフレームと、画像を捕捉するためのカメラと、関心のあるパターンを反射するパルス光ビームをヒトの眼に投射するためのプロジェクタ装置と、前記カメラ及び前記プロジェクタ装置と通信するプロセッサ装置とを含み、前記プロセッサ装置は、前記カメラによって捕捉された、前記パルス光ビームの基礎となる前記画像を、関心のある光学パターンに変換するようにされており、前記プロジェクタ装置及び前記カメラは、前記キャリングフレームに取り付けられている。
【0016】
好ましい実施形態によれば、本発明は、ヒトの眼の前記網膜領域が改変された網膜領域(本明細書では、ヒトの眼の網膜の第1の領域とも呼ばれる)である前記システムに関する。
【0017】
それにより、視覚的場面、即ち、画像に関する情報を前記カメラで捕捉し、少なくとも1つのカメラ画像を利用して光学パターンを生成することができ、好ましくは、少なくとも1つの捕捉された画像が前記光学パターンに変換され、次いで、前記プロジェクタ装置によって照射されたパルス出力光ビームの形態で、前記光学パターンをヒトの眼の網膜の第1の領域に送信することができる。前記「光学パターン」は、以下では「第1の光信号」とも呼ばれる。
【0018】
1つの特定の実施形態によれば、「改変された網膜領域」又は「網膜の第1の領域」は、ヒトの眼の網膜に埋め込まれた感光性網膜インプラントの感光性電極アレイを意味する。
【0019】
それにより、視覚的場面、即ち、画像に関する情報を前記カメラで捕捉し、少なくとも1つのカメラ画像を利用して光学パターンを生成することができ、好ましくは、少なくとも1つの捕捉された画像が前記光学パターンに変換され、次いで、前記光学パターンを、前記網膜に埋め込まれた感光性網膜インプラントの感光性電極アレイに送信することができる。したがって、前記網膜インプラントは、対応する第1の網膜領域を刺激するために、関心のある光学パターンを電流に変換することができる。即ち、網膜インプラントの感光性画素が光を電流に変換することによって電力が供給されるため、網膜インプラント用電源の必要がない。網膜インプラントを有する患者は、係るシステムによる供給を受け、前記キャリングフレームを持ち運びさえすればよい。それにより、網膜インプラントは、現在捕捉された画像の変換に基づいて、関心のある光学パターンで連続的に及び/又は所定間隔内で照射され得ることが達成され得る。
【0020】
或いは、1つの光学パターンは、例えば、いくつかの画像のサブトラクションによって、いくつかの捕捉された画像に基づくことができる。
【0021】
別の好ましい実施形態によれば、キャリングフレームは、眼鏡の形態で提供され、眼鏡のレンズは、透明又は半透明である。これにより、プロジェクタ装置から照射された光が網膜に到達するだけでなく、眼鏡を着用している者も通常の視覚によって光入力、即ち、環境光信号とも呼ばれる環境からの光入力も知覚することができ得る。したがって、或る者が知覚する場面は、通常の視覚と光学パターンとの合成であり得る。
【0022】
前記好ましい実施形態によれば、本発明は、以下を行うことが可能であるシステムに関する。
・カメラによって、視覚的場面、即ち、画像に関する情報を捕捉し、少なくとも1つのカメラ画像を利用して第1の光信号(即ち、光学パターン)を生成し、次いで、前記第1の光信号をヒトの眼の網膜の第1の領域に送信すること、及び
・前記システムが、環境の第2の光信号(即ち、通常の視覚)が、ヒトの眼の網膜の第2の領域に送信されるようにされていること。
【0023】
好ましい実施形態によれば、前記網膜の第2の領域は、改変された網膜領域ではない。
【0024】
好ましい実施形態によれば、前記第1及び第2の光信号は、第1の領域と第2の領域との間の交差がないように配置される。
【0025】
別の実施形態によれば、前記第1及び第2の光信号は、第2の領域が第1の領域を取り囲むように配置される。
【0026】
本発明によれば、前記システムは、環境の第2の光信号(即ち、通常の視覚)がヒトの眼の網膜の第2の領域に送信されるようにされている。より詳細には、第2の光信号は、第1の光信号に比べて可能な限り広い。したがって、プロジェクタ装置及びカメラは、環境の第2の光信号(即ち、通常の視覚)を可能な限り広げヒトの眼の網膜の第2の領域に送信されるように、キャリングフレーム、より詳細には眼鏡、更により詳細には眼鏡のレンズに取り付けられる。この目標は、プロジェクタ装置及び/又はキャリングフレームに取り付けられたカメラの特定の幅と高さを選択することによって達成できる。慣例により、幅は横方向に測定され、高さは第3の方向(垂直方向)に測定される。好ましい実施形態によれば、キャリングフレームに取り付けられたプロジェクタ装置及び/又はカメラの幅は、約70ミリメートル未満、好ましくは約50ミリメートル未満、更により好ましくは約30ミリメートル未満である。好ましい実施形態によれば、キャリングフレームに取り付けられたプロジェクタ装置及び/又はカメラの高さは、約20ミリメートル未満、好ましくは約15ミリメートル未満、更により好ましくは約10ミリメートル未満、最も好ましくは約5ミリメートル未満である。本明細書において、用語「約」は、20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。特定の場合、「約X」は「X」を意味する。
【0027】
特に好ましい実施形態によれば、キャリングフレームに取り付けられたプロジェクタ装置及び/又はカメラは、透明又は半透明、より詳細には可視光に対して透明又は半透明である材料で、その少なくとも一部が作製される。
【0028】
好ましい実施形態によれば、プロジェクタ装置のカメラ及び光学系(optics)は、キャリングフレーム上に一列に配置される。別の好ましい実施形態によれば、キャリングフレームは眼鏡の形態で提供され、カメラ及びプロジェクタ装置の光学系は、前記眼鏡の一方の両側に一列のビームとして(in line put beam)配置される。好ましい実施形態によれば、カメラは1つの主軸Z1を定義し、プロジェクタ装置の光学系は主軸Z2を定義し、主軸Z1及びZ2は長手方向に位置合わせされる。換言すれば、これは、カメラの主軸Z1が、プロジェクタ装置の光学系から出射する出力光ビームの中心に位置合わせされることを意味する。本発明によれば、用語「プロジェクタ装置の光学系」は、光学パターン(即ち、第1の光信号)に対応する出力光ビーム、好ましくはパルス光ビームを、ヒトの眼の改変された網膜領域に投射しているプロジェクタの光学要素を意味する。
【0029】
更に好ましい実施形態によれば、プロセッサ装置は、キャリングフレームと別に提供され、接続ケーブルが、プロセッサ装置と、カメラ及びプロジェクタ装置との通信のために提供される。それにより、プロセッサ装置を、例えば、キャリングフレームから離れた場所に、クリップ又はショルダーストラップによって患者に取り付けることができるので、プロジェクタ装置及びカメラを含むキャリングフレームの総重量を、比較的低減することができる。好ましくは、プロセッサ装置は、ポケット型プロセッサの形態で提供される。したがって、キャリングフレームを装着する者の着け心地を向上させることができる。更に、プロセッサ装置がキャリングフレームと別に提供されるという点で、プロセッサ装置のサイズ及び重量は、例えば、キャリングフレームの着け心地という要件に限定されない。
【0030】
或いは、プロセッサ装置は、キャリングフレームに配置され、好ましくは、プロセッサ装置は、プロジェクタ装置と一体化されている。そのように設計されたシステムは、比較的コンパクトな設計を含むことができる。
【0031】
システムは、好ましくは、関心のある光学パターンの形成の基となる、入力光ビーム、好ましくはパルス入力光ビームを提供するようにされた光源を更に含む。
【0032】
好ましい実施形態によれば、光源は、プロジェクタ装置に配置される。そのような設計のシステムでは、プロジェクタ装置と光源とを接続するための接続ケーブルをプロジェクタ装置に設けさえすればよい、及び/又は実質的に空であることができるので、比較的コンパクトであることができる。
【0033】
或いは、光源は、プロセッサ装置に配置することができる。これにより、キャリングフレームに光源を配置するシステムと比較して、キャリングフレームの総重量を更に低減することができる。
【0034】
光源が、レーザ、レーザダイオード、及び/又はLED、好ましくはLEDマトリックスを含み、好ましくは光源が、赤外線場の波長を有する光及び/又はコヒーレント光又はインコヒーレント光を照射するようにされていることが有益であることが分かっている。
【0035】
好ましくは、システムは、光源、プロセッサ装置、及び/又はプロジェクタ装置に電力を供給するための電池を含み、好ましくは、電池は、キャリングフレームと別に提供されることが好ましく、プロセッサ装置に配置されることが好ましい。したがって、電池は、フレームの重量を増加させない。更に、電池は、フレームと別に持ち運ぶことができるので、電池の体積及び/又は重量、即ち、電池の容量は、キャリングフレームに配置される電池よりも大きくなり得る。
【0036】
更に好ましい実施形態によれば、プロセッサ装置は、パルス持続時間を制御するようにされ、及び/又は周波数を制御するようにされ、及び/又は光ビーム(第1の光信号に対応)の光強度を制御するようにされたプロセッサユニットを含む。それにより、光ビームは、システムの信頼性が高い安全な動作の要件に一致するように調整及び/又は変調することができる。特に、光ビームは、患者の眼に埋め込まれたそれぞれの網膜インプラントの信頼性のある動作のために調整することができる。更に、網膜の残りの健康な光受容体の過剰刺激は、光ビーム、特に網膜に当たる光ビームの総放射照度及び/又は照射時間、並びに改変された網膜領域の過剰刺激を制御することによって回避できる。
【0037】
更に別の好ましい実施形態によれば、プロセッサユニットは、パルス持続時間を制御するようにされ、及び/又は周波数を制御するようにされ、及び/又は光源の光強度を制御するようにされている。それにより、入力光ビームもまた、制御、調整、及び/又は一致され得る。
【0038】
システムは、好ましくは、変調マイクロミラーアレイ、好ましくは、デジタルマイクロミラー装置を含み、これらは、好ましくは、光源によって照射されたパルス入力光ビームを変調及び分割して、変調されたパルスサブビームの変調された光パターンにするようにされており、マイクロミラーアレイの各マイクロミラーの方向は、サブビームが、関心のあるパターンを反射するパルス出力ビームを形成するように、プロセッサ装置によって提供される関心のあるパターンに基づいて個別に制御可能である。換言すれば、アクティブな状態のマイクロミラーだけが、出力光ビームの形成に寄与する。
【0039】
好ましくは、入力光ビームは、光学プリズム、好ましくは内部全反射(TIR)プリズムによって変調マイクロミラーアレイに向けられる。
【0040】
別の好ましい実施形態によれば、変調マイクロミラーアレイは、プロジェクタ装置に配置される。これにより、反射パターンを提供するための堅牢で信頼性の高い設計を提供することができる。
【0041】
好ましい代替例によれば、変調マイクロミラーアレイは、プロセッサ装置に配置される。これにより、プロジェクタ装置、延いては、プロジェクタ装置とカメラとを含むキャリングフレームの総重量を更に低減することができる。マイクロミラーアレイによって生成された出力ビームは、好ましくは、光ファイバ又は光ケーブルに向けられ、光ファイバ又は光ケーブルは、変調マイクロミラーアレイによって照射された出力光ビームを、関心のある光学パターンをヒトの眼に向かって投射するためのプロジェクタ装置に導く。
【0042】
接続ケーブルは、好ましくは、プロセッサ装置とプロジェクタ装置との間でデータを伝達するようにされ、及び/又は好ましくは、接続ケーブルは、プロセッサ装置からカメラ及び/又はプロジェクタ装置に電力を供給するようにされ、及び/又は好ましくは、接続ケーブルは、プロセッサ装置からプロジェクタ装置に光を伝達するようにされており、好ましくは、接続ケーブルは、電気ケーブル及び/又は光ファイバ又は光ケーブルを含む。接続ケーブルは、好ましくは、カメラ画像データ及び/又はパターニングデータ及び/又はマイクロミラーアレイの制御に関連するデータを伝達するようにされている。
【0043】
変調マイクロミラーアレイは、好ましくは、プリズム、好ましくは内部全反射(TIR)プリズムに隣接して配置され、入力光ビームは、プリズムによって変調マイクロミラーアレイに向けられ、及び/又は出力光ビームは、プロジェクタ装置、好ましくはプロジェクタ装置のレンズユニットに向けられる。
【0044】
更に別の好ましい実施形態によれば、光源は、プロセッサ装置に配置され、接続ケーブルは、電気ケーブルと光ファイバ又は光ケーブルとを含み、光ファイバ又は光ケーブルは、光源とプロジェクタ装置との接続を提供する。したがって、入力光ビームと、位置合わせ装置及び/又は変調マイクロミラーアレイを制御するための制御コマンドとの両方をプロセッサユニットで作成することができ、これらは、接続ケーブルを介してプロジェクタ装置に導かれる。
【0045】
好ましくは、プロジェクタ装置は、システムの電気コンポーネントに電力を供給するための電池又はアキュムレータを含む。これにより、固定電源への追加接続の必要なしに、或る者は、システムを持ち運ぶことができる。
【0046】
接続ケーブル及び/又はプロジェクタ装置が、任意の光安全インターロックループ、好ましくはレーザ安全インターロックループを含む場合、システムの安全性を更に高めることができる。その理由は、光安全インターロックループを介して、危険なレーザに対する偶発的な或る者の曝露を防ぐことができるからである。好ましくは、光安全インターロックループは、例えば、光源による発光を伝導する光ファイバ又は光ケーブルなどの光伝導要素の破損又は欠陥によってループが開いている場合、光源から照射された光、接続ケーブルを介した光伝導、及び/又はプロジェクタ装置による光投射を無効にするようにされたスイッチを含む又はそれに接続される。
【0047】
最大の安全性及び効率のために、光安全インターロックループは、好ましくは、不具合が検出された場合に、光ビームを自動的に遮断するように構成され得る。
【0048】
プロジェクタ装置は、ヒトの眼の外部から瞳孔で光学パターン(即ち、第1の光信号)に対応する光ビームを投射するための任意の光学要素を更に含むことができ、好ましくは、これらの光学要素は、光ビームの射出瞳直径が、眼の瞳孔直径よりも小さく設定され、後者は、射出瞳直径を、3mm以下、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下、特に好ましくは0.5mm以下に設定することによって達成され、特に好ましくは、射出瞳直径は、1mm、0.75mm、0.5mm、又は0.25mmに設定されるように、及び/又は光学系が、任意のセンサユニットを介して検出された瞳孔径及び/又は周囲光強度のモニタ値に基づいて射出瞳孔直径を調整するための調整ユニットを含むように構成される。
【0049】
別の好ましい実施形態によれば、システムは、キャリングフレームに対するプロジェクタ装置の位置及び/又は向きを調整するための位置合わせ装置を含み、好ましくは、位置合わせ装置は、キャリングフレームに対してプロジェクタ装置が、複数の移動方向、特に好ましくは5つの移動方向に移動できるように形成される。
【0050】
更に好ましい実施形態によれば、システムは、眼の位置及び/又は角度をモニタする眼球追跡機構を含み、位置合わせ装置は、プロジェクタ装置(即ち、主軸Z2)を視軸に自動的に位置合わせするように構成され、好ましくは、位置合わせ装置は電動式であり、及び/又は位置合わせ装置は、傾斜ミラー及び/又は圧電モータ、及び/又はプロジェクタ装置を視軸に自動的に位置合わせするカップリングフィードバック機構を含む。
【0051】
特定の実施形態によれば、カメラはプロジェクタ装置と一体化され、好ましくは、カメラとプロジェクタ装置の出力ビームとは互いに位置合わせされる。
【0052】
キャリングフレームが眼鏡フレームを含む場合、及び/又はフレームがヘッドバンドを含む場合、及び/又はフレームがヘッドリング及び/又は可撓性バンドを含む場合、有益であることが分かっている。
【0053】
更に別の好ましい実施形態によれば、プロセッサ装置は、1以上の電子ボード、接続ケーブル、好ましくはプラグ又はソケットへの取り外し可能な接続のためのポート、及び/又は好ましくは、知覚対環境の制約、例えば、オン/オフボタン、及び/又は画像処理モード、明るさ、ズーム、及び/又はオーディオボリュームレベル、及び/又はLEDを患者が変更することを可能にするボタンを含むユーザインターフェースを含むことができる。
【0054】
更に、プロセッサ装置は、外部装置、例えば、PCへの接続を可能にするための任意のポート、例えば、USBポートを含むことができる、及び/又はプロセッサ装置は、好ましくはWiFi、WLAN、Bluetooth、又はZigBeeを介した通信用に構成された無線通信ユニットを含み、好ましくは、無線通信ユニットは、安全な通信用に構成され、好ましくは、暗号化及び/又はセキュリティプロトコルを含む。
【0055】
更に、プロセッサ装置は、好ましくは、プロセッサ装置の他のコンポーネントの少なくとも一部を収容するためのハウジングを含むことができる。好ましくは、ハウジングは、少なくとも埃及び水からの保護を提供し、好ましくは少なくともIP22にしたがう。
【0056】
代替的に又は追加的に、プロセッサ装置は、好ましくは、プロセッサ装置の他のコンポーネントの少なくとも一部を収容するためのハウジングを含むことができる。好ましくは、ハウジングは、少なくとも埃及び水からの保護を提供し、好ましくは少なくともIP22にしたがう。
【0057】
更に別の好ましい実施形態によれば、プロジェクタ装置は、接続ケーブルへの取り外し可能な接続のためのポートを含む。
【0058】
別の実施形態によれば、キャリングフレームはレンズを含み、好ましくは、レンズは、或る者がフレームを装着したときに眼を覆うようにフレームに配置される。レンズは、好ましくはシェードが付けられ、好ましくは着色されている。シェードレンズを設けることにって、瞳孔に当たる周囲光が少なくなるため、瞳孔直径を自然に拡大することができる。したがって、位置合わせ装置による位置合わせが容易になり得る。
【0059】
本開示は、以下の添付の図面に関連して検討される場合、以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る、関心のある光学パターンをヒトの眼に投射するためのシステムの概略斜視側面図である。
【
図2】
図2は、ヒトの眼の感光性網膜インプラントに、関心のある光学パターンを投射するための概略的な動作原理を示す。
【
図3】
図3は、別の好ましい実施形態に係る、関心のある光学パターンをヒトの眼に投射するためのシステムを概略的に示す。
【
図4】
図4は、別の好ましい実施形態に係る、キャリングフレームの詳細の斜視側面図を概略的に示す。
【0061】
好ましい実施形態の詳細な説明
以下、添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。図面では、同一の要素には同一の参照符号が付され、冗長な記載を避けるために、その繰り返し記載を省略することがある。
【0062】
図1は、好ましい実施形態に係る、関心のある光学パターンをヒトの眼の網膜に投射するためのシステム80の概略斜視側面図である。システム80は、眼鏡フレームの形態を実質的に含み、感光性網膜インプラントが眼に移植された又は遺伝子改変された網膜領域を有する患者が装着することができるキャリングフレーム50を含む。システム80は、更に、関心のある光学パターンを反射するパルス出力光ビームをヒトの眼に投射するようにされたプロジェクタ装置1と、画像を捕捉するためのカメラ6とを含む。この好ましい実施形態によれば、カメラ6は、プロジェクタ装置1と一体化及び/又は位置合わせされている。以下において、用語「プロジェクタ装置」は、プロジェクタ装置と、システムに存在するカメラとの組合せを示すことができることに留意すべきである。プロジェクタ装置1は、固定部5を介してキャリングフレーム50に取り付けられている。
【0063】
プロジェクタ装置1は、接続ケーブル70によってプロセッサ装置60と通信する。プロセッサ装置60は、キャリングフレーム50及びプロジェクタ装置1と別に配置される。
【0064】
本実施形態によれば、プロジェクタ装置1は、近赤外場、この例示的な実施形態では、880nmの波長のコヒーレントレーザ光を照射する一体化された光源(この図には図示せず)を含む。或いは、光は、それぞれの感光性網膜インプラント又は遺伝子改変網膜細胞との相互作用に適した任意の他の波長を含むことができる。
【0065】
別の好ましい実施形態によれば、光源は、好ましくは近赤外場における、インコヒーレント光を照射するLEDの形態で提供される。
【0066】
プロジェクタ装置1は、更に、デジタルマイクロミラー装置の形態で提供される、この好ましい実施形態に係る、変調マイクロミラーアレイ3(
図2を参照)を含む。変調マイクロミラーアレイ3は、
図2に関してより詳細に説明されるように、光源によって照射されたパルス入力光ビームを変調し、変調されたパルスサブビームからなる変調された光パターンに分割するようにされている。
【0067】
プロセッサ装置60は、ケーブル70を介してカメラ6及びプロジェクタ装置1と通信する。プロセッサ装置60は、更に、カメラ6によって捕捉され、プロジェクタ装置1によって照射されるパルス出力光ビームの基礎として機能する画像を、関心のあるパターンに変換するようにされている(本明細書では、光学パターンとも呼ばれる)。
【0068】
したがって、光源を介して、コリメートされた高出力入力光ビームが生成され、TIRプリズムによって指向され、変調マイクロミラーアレイ3のアクティブ領域に当たる(
図2)。ここで、アクティブ領域は、マイクロミラーアレイ3のマイクロミラーのうち、パターンを形成する変調されたサブビームがTIRプリズムによって再度指向され、最終レンズを通るように方向付けられるマイクロミラーで構成され、プロジェクタ装置1を眼に向かって入る出力ビームの形態にする。
【0069】
換言すれば、プロセッサ装置60は、カメラ6によって撮像された画像を使用して、関心のある光学パターンを形成する。プロセッサ装置60は、マイクロミラーアレイ3のマイクロミラーを関心のあるパターンの1以上の画素に割り当て、出力ビームを構成する反射サブビームが、関心のある光学パターンを反射するように、各マイクロミラーの向きを制御する。
【0070】
図2は、前記したように、関心のある光学パターン44を、ヒトの眼の感光性網膜インプラント90に投射するための概略的な動作原理を示す。光源22は、マイクロミラー30のそれぞれの向きを個別に調整できるように、プロセッサ装置60によって個別に制御することができる複数のマイクロミラー30を含む変調マイクロミラーアレイ3に向けられるパルス入力光ビーム20を提供する。或いは、マイクロミラー30は、サブグループで制御及び/又は調整され得る。
【0071】
前記したように、マイクロミラーアレイ3によって、入力光ビーム20が変調され、それによって、光学パターンに対応する第1の光信号又は出力ビーム4を形成する。マイクロミラー30の向きは、網膜インプラント90に投射される関心のある光学パターン44が複数のサブビーム40によって反射され得るように、プロセッサ装置60からの制御コマンドによって個別に調整される。
【0072】
これに関して、関心のある光学パターン44は、プロセッサ装置60によって画素のデジタルパターンに処理された、カメラ6によって捕捉されたコンテンツ又は画像に基づく。
【0073】
したがって、第1の光信号又は出力ビーム4は、関心のある光学パターン44を実質的に反射する。出力ビーム4が網膜インプラント90に当たると、網膜インプラント90の該当部分のみが、出力ビーム4又は特にサブビーム40によって照射される。サブビーム40は、網膜インプラント90で関心のある光学パターン44を反射する。その結果、網膜インプラント90の該当する感光性ダイオードのみが、光を電流に変換する。これらは、関心のある投射光学パターン44に配置される。したがって、網膜インプラント90を有する者は、関心のある光学パターン44を知覚することができる。
【0074】
キャリングフレーム50は、任意のイヤーパッド52を含み、これらは、キャリングフレーム50が、或る者の頭部のサイズ及び/又は耳の位置及び形状などの他の形態学的特性に調整できるように、フレーム50のテンプル53に沿って変位可能である。任意のイヤーパッド52は、フレーム50を装着している者の耳に対してフレーム50が動くのを防ぐように構成することができる。したがって、イヤーパッド52は、イヤーストップとして機能することができる。
【0075】
プロジェクタ装置1は、キャリングフレーム50を装着している患者の左眼に光が投射されるように、キャリングフレーム50の左側に配置されている。カウンターウェイト51は、キャリングフレーム50の横方向の重量分布が釣り合うように、フレーム50の、プロジェクタ装置1が配置されている側と反対側に配置されている。
【0076】
代替的に又は追加的に、プロジェクタ装置1は、キャリングフレーム50を装着している患者の右眼に光が投射されるように、キャリングフレーム50の右側に配置することができる。好ましくは、プロジェクタ装置1は、左右両方の構成で同一であり、好ましくは、第1のプロジェクタ装置1は、第2のプロジェクタ装置1に対して180°の回転差で取り付けられている。
【0077】
図3は、別の好ましい実施形態に係る、関心のある光学パターンをヒトの眼の網膜に投射するためのシステム80を示す。システム80は、
図1に示されるシステムに実質的に対応し、この実施形態では、光源は、プロセッサ装置60内に配置される。したがって、接続ケーブル70は、電力及び制御コマンドをプロジェクタ装置1及びカメラ6に提供するための電気ケーブル71と、カメラ6からプロセッサ装置60へのカメラストリーム(camera stream)と、光源によって照射された光をプロセッサ装置60からプロジェクタ装置1に伝達する光ファイバ72とを含む。換言すれば、接続ケーブル70は、電気伝導と光伝導の両方を提供するハイブリッドケーブルである。換言すれば、電気的情報と光学的情報の両方が、接続ケーブル70を介して伝達される。
【0078】
更に、接続ケーブル70は、レーザ安全インターロックループ(図示せず)を含む。レーザ安全インターロックループにより、接続ケーブル70の損傷を検出することができる。例えば、光ファイバ72の損傷のためにレーザ安全インターロックループが開いている場合、プロセッサ装置60に配置されたスイッチ(図示せず)が、プロセッサ装置60に配置された光源と接続ケーブル70との間の接続を遮断する。
【0079】
図4は、別の好ましい実施形態に係るキャリングフレーム50の詳細の斜視側面図を概略的に示す。プロジェクタ装置1は、位置合わせ装置8を含み、それによって、出力光ビーム4の位置及び向きを、キャリングフレーム50、即ち、キャリングフレーム50を装着している患者のヒトの眼に対して調整することができる。
【0080】
位置合わせ装置8は、光ビーム4が、それを通ってプロジェクタ装置1を出射する光学系2が固定部5に対して5つの移動方向10,11に移動できるように形成されている。
【0081】
3つの移動方向は、長手方向10,10’,10”であり、任意に、各長手方向は、他の長手方向に実質的に直交するように方向付けられる。この例示的な実施形態では、第1の長手移動方向10は、ヒトの頭部の長手方向軸に対応し、第2の長手移動方向10’’は、ヒトの頭部の横軸に対応し、第3の長手移動方向10’は、ヒトの頭部の矢状軸に対応する。残りの2つの移動方向は、回転方向11,11’である。
【0082】
この例示的な実施形態では、第1の回転方向11’は、眼に対する光学系2のパントスコピック角を調整できるように方向付けられ、第2の回転方向11は、眼に対する光学系2のラップ角を調整できるように方向付けられる。
【0083】
移動方向10,10’,10”,11,及び11’を提供するために、位置合わせ装置8は、運動学的対偶がそれ自体公知であるので、一般的な形態で示される複数の運動学的対偶を含む。長手方向の移動方向10,10’、10”は、角柱状ジョイントによって設けられる。詳細には、角柱状ジョイントの1つが固定部5に近接して配置される。この角柱状ジョイントは、長手方向の移動方向10で線形運動を提供する。第2の角柱状ジョイントは、第1の角柱状ジョイントに隣接して配置され、長手方向の移動方向10’に沿った移動を提供する。それに隣接して、第1の回転ジョイントが配置され、これは、回転方向11の回転を提供する。更に、長手方向の移動方向10”での移動を可能にするために、更なる角柱状ジョイントが設けられる。更に、回転11’方向の回転をもたらすために、更なる回転ジョイントが設けられる。
【0084】
更に、位置合わせ装置8は、複数のロッキングユニットを含み、ロッキングユニット(図示せず)のそれぞれは、それぞれの移動方向の動きをロック又は解放するために、それぞれの運動学的対偶に割り当てられる。ロッキングユニットはそれ自体公知であり、例えば、ロッキングスクリュ又は高摩擦係数を含む表面の形態で実装することができる。
【0085】
好ましくは、キャリングフレームは、堅牢な位置決めを確実にする剛性のある設計を含む。或いは、キャリングフレームは、眼の前方の堅牢で再現性のある配置を確実にする堅牢な部分を少なくとも含み、一方、フレームの他の部分、例えば、テンプルは、堅牢な位置決めを維持しながら、様々な患者の頭部サイズやその他の形態学的調整に対応するために、より可撓性とすることができる。
【0086】
図4に見られるように、カメラ6の主軸Z
1は、光学系2の主軸Z
2と位置合わせされ、即ち、出力光ビーム4の中心42と位置合わせされる。この例示的な実施形態によれば、主軸Z
2は、主軸Z
1は同心円状に配置されている。換言すれば、カメラ6及び光学系2は、プロジェクタ装置1の互いに対向する側に線状に配置されている。
【0087】
フレーム50は、更に、この実施形態によれば、シェードが付けられ、ここでは着色された任意のレンズ54を含む。着色レンズ54を設けることにより、瞳孔に入る周囲光が少なくなるので、瞳孔直径が自然に拡大し、位置合わせ装置による位置合わせが容易になる。
【符号の説明】
【0088】
1 プロジェクタ装置
2 光学系
Z2 光学系の主軸
5 固定部
6 カメラ
Z1 カメラの主軸
8 位置合わせ装置
10 長手移動方向
11 回転方向
20 入力光ビーム
22 光源
3 マイクロミラーアレイ
30 マイクロミラー
4 出力ビーム
40 サブビーム
42 光ビームの中心
44 関心のあるパターン
50 フレーム
51 カウンターウェイト
52 イヤーパッド
53 テンプル
54 レンズ
60 プロセッサ装置
70 接続ケーブル
71 電気ケーブル
72 光ファイバ
80 システム
90 網膜インプラント
【国際調査報告】