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特表2022-526346ヒトの眼の網膜に光ビームを投射するための装置、プロジェクタ装置、及び方法
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  • 特表-ヒトの眼の網膜に光ビームを投射するための装置、プロジェクタ装置、及び方法 図1
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  • 特表-ヒトの眼の網膜に光ビームを投射するための装置、プロジェクタ装置、及び方法 図3A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ヒトの眼の網膜に光ビームを投射するための装置、プロジェクタ装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/008 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
A61F9/008 120B
A61F9/008 120A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557210
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2020058874
(87)【国際公開番号】W WO2020193797
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/057966
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515328853
【氏名又は名称】ピクシウム ビジョン エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ドテール
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・ホーニグ
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル・シモン
(72)【発明者】
【氏名】エリック・アブハモン
(57)【要約】
本発明は、光ビーム(100)をヒトの眼(110)の網膜(114)に投射するためのプロジェクタ装置(1)であって、前記ヒトの眼(110)の外部から前記眼(110)の瞳孔(111)を通して、前記光ビーム(100)を投射するためのプロジェクタ(2)を含み、前記プロジェクタ(2)は、前記光ビーム(100)の射出瞳直径(102)が、前記眼の瞳孔直径(112)よりも小さく設定されるように構成されているプロジェクタ装置(1)、対応する方法、及び前記プロジェクタ装置を含む装置(40)に関する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビーム(100)をヒトの眼(110)の網膜(114)に投射するためのプロジェクタ装置(1)であって、
前記ヒトの眼(110)の外部から前記眼(110)の瞳孔(111)を通して、前記光ビーム(100)を投射するためのプロジェクタ(2)を含み、
前記プロジェクタ(2)は、前記光ビーム(100)の射出瞳直径(102)が、前記眼の瞳孔直径(112)よりも小さく設定されるように構成されていることを特徴とするプロジェクタ装置(1)。
【請求項2】
前記プロジェクタ(2)は、前記射出瞳直径(102)が、3mm以下、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下、特に好ましくは0.5mm以下であり、特に好ましくは、前記射出瞳直径(102)が、1mm、0.75mm、0.5mm、又は0.25mmに設定されるように構成される請求項1に記載のプロジェクタ装置(1)。
【請求項3】
前記光ビーム(100)が投射される前記眼(110)の前記瞳孔直径(112)をモニタするための、及び/又は周囲光強度をモニタするためのセンサユニットを更に含み、前記センサユニットは、好ましくは、カメラ及び/又は光検出器を含み、前記プロジェクタは、前記瞳孔直径(112)及び/又は前記周囲光強度のモニタ値に基づいて前記射出瞳直径(102)を調整するための調整ユニットを含む請求項1から2のいずれかに記載のプロジェクタ装置(1)。
【請求項4】
請求項1から3にいずれかに記載のプロジェクタ装置(1)において、
・ 前記プロジェクタ(2)が、前記プロジェクタ(2)によって照射される前記光ビーム(100)の射出瞳距離(103)が、5mm~50mm、好ましくは10mm~30mmの範囲で調整可能であるように構成される、及び/又は
・ 好ましくは、前記光ビーム(100)の射出瞳(101)によって画定される射出瞳面(104)が、前記瞳孔(111)によって画定される射出瞳面(113)に位置合わせされる、及び/又は
・ 好ましくは、前記射出瞳面(104)と前記瞳孔面(113)との間の最大距離(105)が、±2mm、好ましくは±1mm、より好ましくは±0.75、特に好ましくは±0.5mmであるプロジェクタ装置(1)。
【請求項5】
前記光ビーム(100)の放射照度を制御するように構成された請求項1から4のいずれかに記載のプロジェクタ装置(1)。
【請求項6】
前記光ビーム(100)の中心軸(107)を前記瞳孔(111)の中心(116)に位置合わせするための位置合わせ装置(4)を更に含み、好ましくは、前記光ビームの前記中心軸(107)と前記瞳孔の前記中心との間の最大偏差(106)が、1mm以下である請求項1から5のいずれかに記載のプロジェクタ装置(1)。
【請求項7】
前記位置合わせ装置(4)が、前記光ビーム(100)の前記中心軸(107)を、前記瞳孔の前記中心(116)と前記眼(110)のインプラントの中心とを通る軸として定義される視軸と位置合わせするように構成されており、好ましくは、前記光ビーム(100)の前記中心軸(107)と前記視軸との間の最大偏差が、1°以下である請求項1から6のいずれかに記載のプロジェクタ装置(1)。
【請求項8】
前記プロジェクタ装置(1)をフレーム(50)、好ましくは眼鏡フレームに固定するための固定部(5)を更に含み、前記位置合わせ装置(5)は、前記プロジェクタ(2)の位置及び/又は向きが、前記固定部(5)に対して調整できるように構成されている請求項6から7のいずれかに記載のプロジェクタ装置(1)。
【請求項9】
前記位置合わせ装置(4)は、前記プロジェクタ(2)が、複数の移動方向、特に好ましくは5つの移動方向に、前記固定部(5)に対して移動できるように形成される請求項8に記載のプロジェクタ装置(1)。
【請求項10】
前記位置合わせ装置(4)は、前記移動方向のうちの少なくとも1つが長手方向であり、好ましくは2つの移動方向が長手方向であり、特に好ましくは3つの移動方向が長手方向であるように形成され、
好ましくは、各長手方向は、少なくとも1つの他の長手方向に実質的に直交して方向付けられ、好ましくは、各長手方向は、他の全ての長手方向に直交して方向付けられ、
好ましくは、1つの移動方向が、ヒトの頭部の長手方向軸に対応し、及び/又は1つの移動方向が、ヒトの頭部の横軸に対応し、及び/又は1つの移動方向が、ヒトの頭部の矢状軸に対応する請求項9に記載のプロジェクタ装置(1)。
【請求項11】
前記位置合わせ装置(4)は、前記移動方向のうちの1つが回転方向であり、好ましくは2つの移動方向が回転方向であるように形成され、
好ましくは、前記眼(110)に対する前記プロジェクタ(2)のパントスコピック角(16)を調整できるように1つの回転方向が方向付けられ、及び/又は前記眼(110)に対する前記プロジェクタ(2)のラップ角(17)が調整できるように1つの回転方向が方向付けられる請求項9から10のいずれかに記載のプロジェクタ装置(1)。
【請求項12】
前記位置合わせ装置(4)が、少なくとも1つの運動学的対偶、好ましくは複数の運動学的対偶を含み、
好ましくは、少なくとも1つの運動学的対偶が角柱状ジョイントであり、及び/又は好ましくは、少なくとも1つの運動学的対偶が回転ジョイントであり、及び/又は
前記位置合わせ装置が、少なくとも1つの移動方向をロックするための、少なくとも1つのロッキングユニット、好ましくはロッキングスクリュを含む請求項8から10のいずれかに記載のプロジェクタ装置(1)。
【請求項13】
前記位置合わせ装置(4)が、眼球観察モジュール(8)によってモニタされる眼の方向に、投射方向を合わせるように構成された電動ユニット、好ましくは、眼球追跡装置、好ましくは前記プロジェクタ装置に埋め込まれた前記眼球追跡装置を含む請求項6から11のいずれかに記載のプロジェクタ装置(1)。
【請求項14】
前記プロジェクタ装置(1)の前方の関心のあるパターンを捕捉するためのカメラ(6)を更に含み、前記光ビーム(100)のコンテンツは、捕捉された前記関心のあるパターンに基づき、
好ましくは、前記カメラ(6)の主軸(7)は、前記光ビーム(100)の主軸(3)と位置合わせされ、好ましくは同心円状に配列され、好ましくは、前記カメラ(6)及び前記プロジェクタ(2)が、前記プロジェクタ装置(1)の互いに対向する側に線状に配置されている請求項1から13のいずれかに記載のプロジェクタ装置(1)。
【請求項15】
前記プロジェクタ装置(1)が、マイクロミラーアレイ(20)、好ましくはマイクロミラー装置を含み、前記光ビーム(100)が、前記マイクロミラーアレイ(20)に向けられた入射光(21)、好ましくはレーザ、レーザダイオード、及び/又はLEDによって照射される光のパターニングに基づく請求項1から14のいずれかに記載のプロジェクタ装置(1)。
【請求項16】
コヒーレント光(21)の入射角(24)及び前記マイクロミラーアレイ(20)のマイクロミラー(27)のピッチ(23)は、出力ビーム(22)の隣接する回折次数(26,26’,26”)、好ましくは2つの最も強い回折次数の強度最大値間の射出瞳面(104)での距離が、7mm以上、好ましくは8mm以上、より好ましくは10mm以上であるように構成されている請求項1から15のいずれかに記載のプロジェクタ装置(1)。
【請求項17】
前記コヒーレント光(21)の前記入射角(24)及び前記マイクロミラーアレイ(20)の前記ピッチ(23)が、前記出力ビーム(22)の出力の大部分が一次回折(26)に向かうように構成されており、好ましくは、前記光の前記出力の70%~95%、より好ましくは80%~95%、より好ましくは90%が、前記回折次数に向けられる請求項1から16のいずれかに記載のプロジェクタ装置(1)。
【請求項18】
網膜(114)の少なくとも一部、好ましくは前記光ビーム(100)が標的とする網膜の一部を観察するための、及び/又は前記瞳孔の観察のための、好ましくは取り外し可能な眼球観察モジュール(8)を更に含み、好ましくは、前記眼球観察モジュール(8)及び前記光ビーム(100)は、一致した光軸を含む請求項1から17のいずれかに記載のプロジェクタ装置(1)。
【請求項19】
シェード付きレンズ(60)、好ましくは着色レンズ(60)を更に含む請求項1から18のいずれかに記載のプロジェクタ装置(1)。
【請求項20】
光ビームをヒトの眼に投射するための装置(40)であって、
フレーム(50)を含み、
請求項1から19のいずれかに記載のプロジェクタ装置(1)が、前記フレーム(50)に固定されていることを特徴とする装置(40)。
【請求項21】
前記フレーム(50)が眼鏡フレームである、及び/又は前記フレームがヘッドバンドを含む、及び/又は前記フレームがヘッドリングを含む、及び/又は前記フレームがイヤーストッパを含む請求項20に記載の装置(40)。
【請求項22】
ヒトの眼(110)の網膜(114)に画像を投射するための方法であって、
前記ヒトの眼(110)の外部から前記眼の前記瞳孔(111)に向かって光ビーム(100)を投射することを含み、
前記光ビーム(100)の射出瞳直径(102)が、前記眼(110)の瞳孔直径(112)よりも小さく設定されることを特徴とする方法。
【請求項23】
前記光ビーム(100)の中心軸(107)を前記瞳孔(111)の中心(116)に位置合わせすることを更に含み、好ましくは、前記光ビーム(100)の前記中心軸(107)と前記瞳孔(111)の前記中心(116)との間の最大偏差(106)が、1mm以下である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
好ましくは、前記光ビーム(100)の前記中心軸(107)が、前記瞳孔の前記中心(116)と前記眼(110)のインプラントの中心とを通る軸として定義される視軸と位置合わせされ、好ましくは、前記光ビーム(100)の前記中心軸(107)と前記視軸との間の最大偏差が、1°以下である請求項22から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記射出瞳直径(102)が、3mm以下、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下、特に好ましくは0.5mm以下であり、特に好ましくは、前記射出瞳直径(102)が、1mm、0.75mm、0.5mm、又は0.25mmに設定される請求項22及び24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記光ビーム(100)の射出瞳(101)によって画定される射出瞳面(104)が、前記瞳孔(111)によって画定される瞳孔面(113)に位置合わせされ、好ましくは、前記射出瞳面(104)と前記瞳孔面(113)との間の最大距離(105)が、5mm、好ましくは±3mm、より好ましくは±2mm、更により好ましくは±1mmである請求項22から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記光ビーム(100)の射出瞳距離(103)が、5mm~50mm、好ましくは10mm~30mmの範囲で調整可能であり、好ましくは、前記射出瞳距離(103)が、前記プロジェクタ(2)と前記射出瞳(111)との間の距離に調整される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記光ビーム(100)が投射される前記眼(110)の前記眼球瞳孔直径(112)をモニタすること、及び/又は
周囲光強度をモニタすること、及び
前記眼球瞳孔直径(112)及び/又は前記周囲光強度のモニタ値に基づいて、射出瞳直径(102)を調整することを更に含む請求項23から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記光ビーム(100)が、コヒーレント光(21)、好ましくは、マイクロミラーアレイ(20)に向けられたレーザ及び/又はレーザダイオードによって照射された光のパターニングに基づき、前記コヒーレント光の入射角(24)及び前記マイクロミラー(27)のピッチ(23)は、出力ビーム(22)の隣接する回折次数、好ましくは2つの最も強い回折次数の強度最大値間の射出瞳面での距離が、7mm以上、好ましくは8mm以上、より好ましくは10mm以上である請求項22から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記光ビーム(100)が、コヒーレント光(21)、好ましくは、マイクロミラーアレイ(20)に向けられたレーザ及び/又はレーザダイオードによって照射された光のパターニングに基づき、前記コヒーレント光(21)の前記入射角(24)及び前記マイクロミラーアレイ(20)の前記ピッチ(23)が、前記出力ビーム(22)の出力の大部分が一次回折(26)に向かうように構成されており、好ましくは、前記光の前記出力の80%~95%、より好ましくは90%が、前記回折次数に向けられる請求項23から28のいずれかに記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームをヒトの眼の網膜に投射するためのプロジェクタ装置、対応する方法、及び係るプロジェクタ装置を含むヒトの眼の網膜に光ビームを投射するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特に変性網膜疾患によって引き起こされる網膜の機能不全は、視覚障害又は失明の主因である。
【0003】
患者の視覚機能を少なくとも部分的に回復させるために、網膜インプラント、換言すれば人工網膜を利用することによって網膜領域を改変することが知られている。これに関して、異なる動作原理に基づくいくつかの異なるタイプの網膜インプラントが知られている。
【0004】
網膜インプラントは、通常、患者の眼の網膜上又は網膜下に配置されるため、光受容体などの損傷した細胞に実質的に置き換わることができるという共通点を有する。これに関して、視覚的場面に関する情報は、カメラで捕捉され、網膜に埋め込まれた電極アレイに送信される。
【0005】
一般的な網膜インプラントのうち、皮膚貫通ワイヤを含むインプラントが知られている。これらのワイヤは、感染、瘢痕化、及び漏出のリスクを有する。したがって、より最近のインプラントは、例えば、誘導コイルを介して電力と視覚情報を送達することによって、様々な無線技術を使用している。更に、電力を誘導的に送達し且つ視覚情報を瞳孔を通して光学的に送達すること、又は視覚情報と電力の両方を光学的に送達することが知られている。
【0006】
網膜インプラントへの特に有益なタイプの無線情報伝達は、赤外光の刺激パターンを眼に投射することに基づいている。視線方向が、インプラントの一部がパターンの一部によって照射される方向である場合、インプラントは、信号の当該部分を電流に変換し、それに応じて網膜を刺激する。
【0007】
網膜インプラントは、刺激電極又は画素から構成されるアレイである。各画素は、ビジュアルプロセッサから送達された光を捕捉し、それを刺激用電流に変換する1以上のフォトダイオードを有する。
【0008】
いくつかのインプラントアレイは、網膜下腔、通常は、中心窩領域内又はその近傍に配置することができる。
【0009】
光又は光ビームをヒトの眼に投射するために、拡張現実ゴーグルなどのプロジェクタ装置を使用することが知られている。プロジェクタ装置のプロジェクタは、光ビームをヒトの眼に投射するが、光ビームは、ヒトの瞳孔よりも遥かに広い。この光ビームは、ヒトの瞳孔よりも意図的に広く設計されており、光ビームの一部を知覚しつつ、ヒトの眼に関するプロジェクタの配置の不正確さを許容し、更にある程度の眼の動きを許容する。即ち、瞳孔サイズが大きく変化し得るので、透過されるべき光ビームの一部のみが、その瞳孔を通って眼内に導かれ、未知の放射照度で網膜に向かう。
【0010】
事実、赤外光の投射に基づく網膜インプラントは、正しく動作するために特定の放射照度を必要とする。したがって、通常の拡張現実ゴーグルは、そのように設計された網膜インプラントと組み合わせるには不適当である。
【0011】
前述のプロジェクタ装置はまた、網膜の標的領域の光感受性を再活性化するなど、眼の標的網膜領域を改変又は改善するためのオプトジェネティクス用途で使用することもできる。オプトジェネティクスとは、生体組織の特定細胞内で明確に定義された事象を制御するための遺伝学と光学との組合せを意味する。オプトジェネティクスは、(i)細胞膜における外因性光反応性タンパク質の発現によってそれらを光に対して感受性にするために、標的細胞を遺伝子改変すること、及び(ii)前記光反応性タンパク質に光を提供することができる照明装置を提供することである。細胞膜の外因性光反応性タンパク質の活性化は、光の特定の放射照度を必要とする。
【0012】
網膜に到達する光ビームは未知の放射照度を含むので、放射照度を適切なレベルに調整することは困難である。したがって、放射照度が高過ぎる又は低過ぎるために、対象領域への損傷又は対象領域への不十分な効果が生じることがある。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、光ビームをヒトの眼の網膜に投射するための改良されたプロジェクタ装置を提供することと、光ビームをヒトの眼の網膜に投射するための対応する方法を提供することである。
【0014】
第1の態様によれば、光ビームをヒトの眼の網膜又は網膜領域、より具体的には、改変された網膜領域に投射するためのプロジェクタ装置が提案され、前記装置は、ヒトの眼の外部から瞳孔を通して光ビームを投射するためのプロジェクタを含む。プロジェクタ装置は、更に、光ビームの射出瞳直径が瞳孔の直径よりも小さく設定されるように構成される。好ましい実施形態によれば、プロジェクタ装置は、唯一の光ビームと、瞳孔の直径よりも小さく設定された前記光ビームの1つの射出瞳直径が存在するように構成される。
【0015】
本発明によれば、人工網膜の移植又はオプトジェネティクスによる改変によって感光挙動を回復するように改変されたヒトの眼の網膜領域を、「改変された網膜領域」とも称する。
【0016】
光ビームの射出瞳直径が瞳孔の直径よりも小さく設定されるプロジェクタ装置の構成によって、光ビームの全部が、瞳孔サイズの好適な範囲と視線方向に関し、常に、瞳孔を通って眼に入ることが可能である。したがって、改変された網膜領域(例えば、網膜インプラント)は、ヒトの眼の虹彩で放射力が失われないことが保証され得るので、所定の又は(事前に)指定された放射照度にて、光ビームを照射することができる。更に、網膜上、即ち、例えば網膜インプラント上の改変された網膜領域上で、輝度の変動を失くすことができる。
【0017】
別の好ましい実施形態によれば、プロジェクタは、射出瞳直径が3mm以下、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下、特に好ましくは0.5mm以下であるように構成され、特に好ましくは、射出瞳直径は、1mm、0.75mm、0.5mm、又は0.25mmに設定される。
【0018】
ヒトの瞳孔の直径は通常3mmより大きく、通常3mm~8mmの間であるので、射出瞳直径を3mm以下に設定することにより、光ビームの全部が、公称条件において瞳孔を通って入ることが達成され得る。したがって、光ビームの遮断された部分での電力損失による網膜上の照射変動がない。
【0019】
更に好ましい実施形態によれば、プロジェクタ装置は、光ビームが投射される瞳孔の直径をモニタする及び/又は周囲光強度をモニタするためのセンサユニットを含むことができ、センサユニットは、好ましくは、カメラ及び/又は光検出器を含み、プロジェクタは、瞳孔の直径及び/又は周囲光の強度のモニタ値に基づいて射出瞳直径を調整するための調整ユニットを含む。これにより、光ビームの射出瞳は、実質的に全部の光ビームが眼に入り、網膜、より具体的には、改変された網膜領域又は網膜インプラントに到達できるように、常に現在の瞳孔の直径以下に調整又は設定されることが保証され得る。
【0020】
代替的に又は追加的に、プロジェクタは、瞳孔の直径及び/又は周囲光の強度のモニタ値に基づいて、出力ビームの放射照度を調整するようにすることができる。
【0021】
更に好ましい例示的な実施形態によれば、調整ユニットは、好ましくは交換可能な視度補正ウェッジを含むことができる。
【0022】
更に好ましい実施形態によれば、プロジェクタは以下のように構成される。
・プロジェクタによって照射される光ビームの射出瞳距離が、5mm~50mm、好ましくは10mm~30mmの範囲で調整可能である、及び/又は
・好ましくは、光ビームの射出瞳によって画定される射出瞳面が、瞳孔によって画定される射出瞳面に位置合わせされる、及び/又は
・好ましくは、射出瞳面と瞳孔面との間の最大距離は、±5mm、好ましくは±3mm、より好ましくは±2mm、更により好ましくは±1mm、特に好ましくは0.5mmである。
【0023】
これにより、プロジェクタ装置がヒトの眼の前方に正しく位置されたときに、射出瞳距離をアイレリーフ、即ち、プロジェクタと眼との間の距離、特に、瞳孔によって画定される面に調整することができることが保証され得る。好ましくは、射出瞳距離の調整は、プロジェクタ装置の調整ユニット又はプロジェクタそれ自体によって行われる。
【0024】
特に、別の好ましい実施形態によれば、光ビームの射出瞳直径及び射出瞳距離の両方が、それぞれ、眼瞳孔直径及びアイレリーフに調整されるとき、射出瞳面での光ビームの直径を射出瞳直径よりも確実に小さくできる。延いては、それによって、常に、眼に入る光ビームの全部が網膜、より具体的には、改変された網膜領域、及び潜在的に網膜インプラントに到達することが達成され得る。
【0025】
更に別の好ましい実施形態によれば、プロジェクタ装置は、光ビームの放射照度を制御するように構成される。これにより、網膜、より詳細には、改変された網膜領域、特に、網膜インプラントが、常に正しい放射照度で照射されることが保証され得る。
【0026】
別の好ましい実施形態によれば、プロジェクタ装置は、光ビームの中心軸を瞳孔の中心と位置合わせするための位置合わせ装置を含み、好ましくは、光ビームの中心軸と瞳孔の中心との間の最大偏差が、1mm以下である。したがって、位置合わせ装置によって、瞳孔に対する光ビームの位置合わせ不良による虹彩での電力損失を回避できる。
【0027】
好ましくは、位置合わせ装置は、光ビームの中心軸を視軸と位置合わせするように構成され、視軸は、瞳孔の中心と眼のインプラントの中心とを通る軸として定義され、好ましくは、光ビームの中心軸と視軸との間の最大偏差は1°以下である。したがって、位置合わせ装置によって、虹彩、特に網膜、より詳細には、改変された網膜領域、具体的には、網膜インプラントでの、瞳孔に対する光ビームの位置合わせ不良による電力損失を回避できる。
【0028】
換言すれば、同時に、特に好ましい実施形態によれば、光ビームの射出瞳直径が、前記したように、眼の瞳孔直径よりも小さく設定され、光ビームの射出瞳によって画定される射出瞳面が、前記したように瞳孔によって画定される瞳孔面に位置合わせされ、光ビームの中心軸は、瞳孔の中心、好ましくは視軸に位置合わせされると、全部の光ビームが瞳孔に入り、網膜、より詳細には、改変された網膜領域、特に、網膜インプラントに到達することが保証される。したがって、この例示的な実施形態によれば、網膜、より詳細には、改変された網膜領域、具体的には、網膜インプラントへの放射照度を、常に知ることができる、及び/又は事前に決めることができる。
【0029】
別の好ましい実施形態によれば、位置合わせ装置は、電動式で動的であり、眼球観察モジュール、好ましくは眼球位置センサに結合され、投射方向を眼球方向に沿わせる。その実施形態では、眼の位置及び角度をモニタする眼球追跡装置であることができる眼球観察モジュールは、位置合わせ要件を位置合わせ装置に提供し、位置合わせ装置は、例えば、マイクロミラー又は圧電マイクロモータで、投射ビームの位置及び角度を自動的に調整し、自動的且つ定期的に正しい位置合わせが行われるようにする。換言すれば、位置合わせ装置は、眼球観察モジュール、好ましくは眼球追跡装置によってモニタされるように、投射方向を眼球方向に合わせるように構成された電動ユニットを含むことができ、眼球観察モジュールは、好ましくは、投射装置に埋め込まれる。
【0030】
更に好ましい実施形態では、プロジェクタ装置は、プロジェクタ装置をフレーム、好ましくは眼鏡フレームに固定するための固定部を含み、位置合わせ装置は、プロジェクタの位置及び/又は向きが、固定部に対して調整することができるように構成される。したがって、瞳孔に対する光ビームの位置合わせは、固定部に対するプロジェクタの位置を調整することによって容易に達成することができる。
【0031】
前記調整能を提供するために、更に好ましい実施形態によれば、位置合わせ装置は、プロジェクタが固定部に対して複数の移動方向、特に好ましくは、5つの移動方向に移動できるように形成される。
【0032】
好ましくは、位置合わせ装置は、移動方向の少なくとも1つが長手方向であるように形成され、好ましくは2つの移動方向が長手方向であり、特に好ましくは3つの移動方向が長手方向である。
【0033】
これに関して、好ましくは、各長手方向は、少なくとも1つの他の長手方向に実質的に直交して方向付けられ、好ましくは、各長手方向は、他の全ての長手方向に直交して方向付けられる。
【0034】
好ましい実施形態によれば、1つの移動方向がヒトの頭部の長手方向軸に対応し、及び/又は1つの移動方向がヒトの頭部の横軸に対応し、及び/又は1つの移動方向がヒトの頭部の矢状軸に対応する場合に、前記した調整は、特に有益な方法で達成できることが示されている。
【0035】
したがって、移動方向がヒトの頭部の長手方向軸に対応し、別の移動方向がヒトの頭部の横軸に対応する場合、光ビームの方向は、光ビームの中心軸が瞳孔の中心に投射されるように調整することができる。
【0036】
更に、移動方向がヒトの頭部の矢状軸に対応する場合、アイレリーフ、即ち、プロジェクタ又はプロジェクタの眼に面する表面と瞳孔との間の距離を調整することができる。
【0037】
別の好ましい実施形態によれば、位置合わせ装置は、移動方向の少なくとも1つが回転方向であり、好ましくは2つの移動方向が回転方向であるように形成される。それにより、瞳孔と網膜、より詳細には、改変された網膜領域、特に、網膜インプラントとによって画定される軸に対する光ビームの位置合わせ不良を補償することができる。
【0038】
それにより、好ましくは、眼に対するプロジェクタのパントスコピック角を調整できるように1つの回転方向が方向付けられ、及び/又は眼に対するプロジェクタのラップ角を調整できるように1つの回転方向が方向付けられる。
【0039】
更に別の好ましい実施形態によれば、位置合わせ装置は、少なくとも1つの運動学的対偶、好ましくは複数の運動学的対偶を含み、好ましくは少なくとも1つの運動学的対偶は角柱状ジョイントであり、及び/又は好ましくは少なくとも1つの運動学的対偶は回転ジョイントであり、及び/又は位置合わせ装置は、固定部に対するプロジェクタ及び/又は光ビームの少なくとも1つの移動方向のロッキング、調整及び/又は位置合わせのための少なくとも1つのロッキングユニット、好ましくはロッキングスクリュを含み、及び/又はヒトの瞳孔は、堅牢で簡単な方法で提供することができる。
【0040】
更に別の好ましい実施形態によれば、プロジェクタ装置は、プロジェクタ装置の前方にある関心のあるパターンを捕捉するためのカメラを更に含み、光ビームのコンテンツは、捕捉された関心のあるパターンに基づき、好ましくはカメラの主軸が、光ビームの主軸と位置合わせされ、好ましくは同心円状に配列され、好ましくはカメラとプロジェクタは、装置の互いに対向する側に線状に配列される。
【0041】
これにより、プロジェクタ装置を装着した人が真っ直ぐ前を見ているときに、その人が自身の真正面にあるものを正確に見ることができることが保証され得る。換言すれば、それによって、人が、関心のある点に焦点を合わせ、更に、空中に向く(orient in space)ことがより容易になり得る。
【0042】
更に別の好ましい実施形態によれば、プロジェクタ装置は、マイクロミラーアレイ、好ましくはそれ自体公知のデジタルマイクロミラー装置を含み、光ビームは、マイクロミラーアレイに向けられた光、好ましくはレーザ、レーザダイオード、及び/又はLED、好ましくはLEDマトリックスによって照射された光のパターニングに基づく。換言すれば、マイクロミラーアレイのマイクロミラーはそれぞれ、入射光ビームの一部を反射し、それによって、反射され、パターン化された出射光ビームを生成する。
【0043】
好ましくは、光、好ましくは近赤外場の波長を含む光は、内部全反射(TIR)プリズムに導かれ、光は、次いで、マイクロミラーアレイのアクティブ領域に当たり、そこでマイクロミラーは、マイクロミラーアレイディスクのどの部分が、眼に向かって反射されるかを選択してパターンを作成し、パターン化された光は、再度、TIRプリズムを通り、パターン化された光は、最終レンズを通ってプロジェクタを出る。
【0044】
好ましくは、光ビームは、回折効果又は干渉パターンを無視することができるように、インコヒーレント光に基づく。
【0045】
別の好ましい実施形態によれば、光ビームは、コヒーレント光に基づく。これにより、マイクロミラーアレイが、光ビームの回折又は干渉パターンを引き起こすことができる。
【0046】
更に別の好ましい実施形態によれば、プロジェクタ装置は、コヒーレント光の入射角及びマイクロミラーアレイのマイクロミラーのピッチが、出力ビームの隣接する回折次数、好ましくは2つの最も強い回折次数の強度最大値間の距離が、7mm以上、好ましくは8mm以上、より好ましくは10mm以上であるように構成されるようにされている。これにより、通常は、直径3~7mmの瞳孔に唯一の強度最大値が入射することが保証される。したがって、内部インプラントの放射照度を、高い信頼性で(事前に)決めることができる。
【0047】
或いは、プロジェクタ装置は、コヒーレント光の入射角及びマイクロミラーアレイのマイクロミラーのピッチが、光ビームの出力の大部分が一次回折に入るように構成されるようにされている。好ましくは、光の70%~95%、より好ましくは80%~95%、より好ましくは90%の光が一次回折に向けられる。したがって、他の次数は、出力の観点から無視できるようになり得、したがって、これらの次数も瞳孔に入るかどうかは重要ではない。その理由は、網膜、より詳細には、改変された網膜領域、具体的には、網膜インプラントの放射照度に大きな影響を与えないからである。
【0048】
更に別の好ましい実施形態によれば、プロジェクタ装置は、網膜の少なくとも一部、好ましくは光ビームが標的とする網膜の一部(例えば、改変された網膜領域、具体的には、網膜インプラント)の観察及び/又は瞳孔の観察のために、好ましくは取り外し可能な眼球観察モジュールを含む(好ましくは、眼球観察モジュール及び光ビームは、一致した光軸を含む)場合、患者が前記実施形態の1つに係るプロジェクタ装置を含む装置を装着しているときに、眼球観察モジュールは、プロジェクタ装置によって投射された光ビームを、患者の瞳孔及び網膜、より詳細には、改変された網膜領域、具体的には、患者の網膜インプラントに調整する、位置合わせする、及び/又はセンタリングするためにプロジェクタ装置に取り付けることができる。好ましくは、光ビームの調整は、訓練された医療スタッフによって行われる。調整後、眼球観察モジュールは必要なくなるため、取り外すことができる。追加的に又は代替的に、眼球観察モジュールは、瞳孔を観察するため、及び/又は網膜上に投射されたパターンを観察するために使用することができる。
【0049】
別の好ましい実施形態によれば、眼球観察モジュールは、網膜に埋め込まれた網膜インプラントを観察するようにされている。これにより、網膜インプラントに関してプロジェクタ装置によって投射される光ビームを更に調整することができる。
【0050】
好ましくは、プロジェクタ装置は、アイレリーフ、即ち、プロジェクタ装置と瞳孔との間の距離、を決定するための距離センサを更に含む。
【0051】
別の好ましい実施形態によれば、プロジェクタ装置は、プロジェクタ装置によって照射されるビームと瞳孔及び/又は網膜インプラントとの位置合わせを調整するために使用することができる1以上の試験パターンを送信するようにされている。
【0052】
別の態様によれば、光ビームをヒトの眼に投射するための装置が提案され、前記装置は、フレームと、前述の実施形態のいずれかに記載のプロジェクタ装置とを含み、前記プロジェクタ装置は、前記フレームに、好ましくは、その固定部によって固定されている。
【0053】
プロジェクタ装置に関して記載した効果及び利点は、光ビームをヒトの眼に投射するための装置によって同様に達成され得る。
【0054】
好ましい実施形態によれば、フレームは眼鏡フレームであり、及び/又はフレームはヘッドバンドを含み、及び/又はフレームはヘディング(heading)を含み、及び/又はフレームはイヤーストッパを含む。
【0055】
別の好ましい実施形態によれば、装置は、フレームによって保持されるレンズを含み、好ましくは、レンズは、装置が装着されたときに眼を覆うようにフレームに配置される。レンズは、好ましくはシェードが付けられ、好ましくは着色されている。シェードレンズを設けることにより、瞳孔に入る周囲光が少なくなるため、瞳孔の直径を自然に拡大させることができる。したがって、中心軸を、中心又は視軸に位置合わせすることが容易になり得る。
【0056】
別の好ましい実施形態によれば、フレームは、前記位置合わせの少なくともいくつかを可能にするようにされており、好ましくは、フレームは、フロントフレームとフレームのテンプルとの間に配置されたヒンジを含む。ヒンジにより、テンプルは、フロントフレームに対してピボット運動可能である。
【0057】
代替的に又は追加的に、少なくとも1つのテンプル上に、テンプルに沿って変位させることができる変位可能なイヤーパッドを配置することができる。
【0058】
患者の鼻部にフロントフレームを支持するために、好ましくは、1以上の調整可能なノーズパッドを設けることができる。
【0059】
前述したパーツによって、少なくとも瞳孔に対する光ビームの調整をサポートする前に、フレームを患者個々の頭部形状に調整することができる。特に、イヤーパッドは、フレーム、延いてはプロジェクタの前面のラップ角を調整するために、互いに相対的にテンプル上で前後方向に移動させることができる。
【0060】
本発明の更に別の態様によれば、ヒトの眼の網膜、より詳細には、改変された網膜領域、具体的には、網膜インプラントに画像を投射するための方法、又は画像を投射するための本明細書に記載のプロジェクタ装置を操作するための方法が提案され、前記方法は、ヒトの眼の外部から瞳孔に向かって光ビームを投射することを含み、前記光ビームの射出瞳直径は、瞳孔直径よりも小さく設定される。
【0061】
プロジェクタ装置に関して記載した効果及び利点は、前記方法でも同様に達成され得る。
【0062】
別の好ましい実施形態によれば、前記方法は、更に、光ビームの中心軸を瞳孔の中心に位置合わせする工程を含み、好ましくは、光ビームの中心軸と瞳孔の中心との間の最大偏差は、1mm以下であり、好ましくは、光ビームの中心軸は、瞳孔の中心と眼のインプラントの中心とを通る軸として定義される視軸と位置合わせされており、好ましくは、光ビームの中心軸と視軸との間の最大偏差は、1°以下である。
【0063】
別のより好ましい実施形態によれば、射出瞳直径は、3mm以下、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下、特に好ましくは0.5mm以下に設定され、特に好ましくは、射出瞳直径は、1mm、0.75mm、0.5mm、又は0.25mmに設定される。
【0064】
更に別の好ましい実施形態によれば、光ビームの射出瞳によって画定される射出瞳面は、瞳孔によって画定される瞳孔面に位置合わせされ、好ましくは、射出瞳面と瞳孔面との間の最大距離は、±5mm、好ましくは±3mm、より好ましくは±2、更により好ましくは±1、特に好ましくは0.5mmである。
【0065】
更に別の好ましい実施形態によれば、光ビームの射出瞳距離は、5mm~50mm、好ましくは10mm~30mmの範囲で調整可能である。
【0066】
別の好ましい実施形態によれば、射出瞳距離は、プロジェクタと瞳孔との間の距離に調整される。
【0067】
別の好ましい実施形態によれば、前記方法は、光ビームが投射される眼の瞳孔直径をモニタする、及び/又は周囲光強度をモニタする、並びに瞳孔直径及び/又は周囲光強度のモニタ値に基づいて射出瞳直径を調整する工程を更に含む。
【0068】
更に別の好ましい実施形態によれば、光ビームは、コヒーレント光、好ましくは、マイクロミラーアレイに向けられた、レーザ、レーザダイオードによって照射された光のパターニングに基づき、コヒーレント光の入射角及びマイクロミラーのピッチが、出力ビームの隣接する回折次数、好ましくは2つの最も強い回折次数の強度最大値間の距離が、7mm以上、好ましくは8mm以上、より好ましくは10mm以上であるように構成されるようにされている。
【0069】
或いは、光ビームは、干渉の影響を実質的に回避するために、インコヒーレント光、好ましくはLEDによって照射される光のパターニングに基づくことができる。
【0070】
本開示は、以下の添付の図面に関連して説明され、以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】第1の実施形態に係る、光ビームをヒトの眼の網膜に投射するためのプロジェクタ装置の概略側面図である。
図2】第2の実施形態に係る、光ビームをヒトの眼の網膜に投射するためのプロジェクタ装置の概略側面図である。
図3A図3Aは、光ビームの位置がずれているプロジェクタ装置の概略側面図である。
図3B図3Bは、光ビームの位置がずれているプロジェクタ装置の概略側面図である。
図4A図4Aは、好ましい実施形態に係る、光ビームをヒトの眼の網膜に投射するためのプロジェクタ装置の概略側面図である。
図4B図4Bは、好ましい実施形態に係る、光ビームをヒトの眼の網膜に投射するためのプロジェクタ装置の概略側面図である。
図5図5は、例示的な実施形態に係る、光ビームをヒトの眼の網膜に投射するための装置の概略側面図を示す。
図6図6は、眼の前方に配置された、ヒトの眼の網膜に光ビームを投射するためのプロジェクタ装置を有するヒトの頭部の概略正面図である。
図7図7は、図6のヒトの頭部の概略側面図である。
図8図8は、図6のヒトの頭部の概略上面図である。
図9図9は、図5に係る装置を装着したヒトの頭部の概略側面図である。
図10図10は、図9の頭部の概略上面図である。
図11図11は、好ましい実施形態に係るマイクロミラーアレイの概略側面図である。
図12図12は、傾斜したマイクロミラーを有する、図11に係るマイクロミラーアレイの概略側面図である。
図13図13は、別の好ましい実施形態に係るマイクロミラーアレイの概略側面図である。
【0072】
好ましい実施形態の詳細な説明
以下、添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。図面では、同一の要素には同一の参照符号が付され、冗長な記載を避けるために、その繰り返し記載を省略することがある。
【0073】
図1は、第1の実施形態に係る、光ビーム100をヒトの眼110の網膜114に投射するためのプロジェクタ装置1の概略側面図である。この例示的な実施形態では、光ビーム100は、近赤外場(NIR)の波長を含む。
【0074】
プロジェクタ装置1は、光ビーム100をヒトの眼110の外部から眼110の瞳孔111を通して投射するためのプロジェクタ2を含む。プロジェクタ2は、光ビーム100の射出瞳101の射出瞳直径102が、眼の瞳孔直径112よりも小さく設定されるように構成されている。
【0075】
それにより、光ビーム100の実質的に全部のエネルギーが瞳孔111を通って眼110に入ることが保証される。したがって、網膜114に埋め込まれた網膜インプラント30は、光ビーム100の実質的に全放射照度で照射される。換言すれば、網膜インプラント30の放射照度は既知である。また、網膜インプラント30上の放射照度の変動を回避することができる。したがって、プロジェクタ装置1で光ビーム100の放射照度を制御することによって、網膜の標的領域での放射照度が既知となり、制御が可能となる。したがって、網膜インプラント30の適切な動作及び/又はオプトジェネティクス用途の適切な機能が保証され得る。
【0076】
網膜インプラント30上の放射照度は、網膜インプラント30の機能にとって重要である。
【0077】
瞳孔111よりも小さく設定された射出瞳直径102を有する光ビーム100全体が瞳孔111に入るのを確実にするために、光ビーム100の中心軸107は、瞳孔111の中心116と位置合わせされる。これに関して、中心軸107と中心116との間の最大偏差が1mm以下であると、適切な精度を提供することが示されている。
【0078】
更に、光ビーム100の射出瞳101によって画定される射出瞳面104は、瞳孔111によって画定される射出瞳面113に位置合わせされる。これにより、光ビーム100の直径が、射出瞳面113で瞳孔直径112よりも小さくなることが保証され得る。そうするために、プロジェクタ射出面108と射出瞳面104との間に延びる射出瞳距離103は、プロジェクタ108と瞳孔111との間の距離、即ち、アイレリーフに調整される。
【0079】
射出瞳面104の瞳孔面113への位置合わせが、±5mm、好ましくは±3mm、より好ましくは±2、更により好ましくは±1、特に好ましくは0.5mmの最大距離を有する公差内にある場合、適切な位置合わせが達成されることが示されている。
【0080】
中心軸107及び中心116、並びに射出瞳面104及び瞳孔面113の前記位置合わせは、以下で詳細に記載されるプロジェクタ装置1の位置合わせ装置(図1には図示せず)によってもたらされる。
【0081】
射出瞳直径102を瞳孔直径112よりも小さく設定することは、射出瞳直径102を推定最小瞳孔直径112よりも小さい一定値に設定することによってもたらすことができる。射出瞳直径102が3mm以下、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下、特に好ましくは0.5mm以下の値に設定されると、瞳孔直径112が常に射出瞳直径102よりも大きいことが保証され得る。射出瞳直径102の有利な値は、1mm、0.75mm、0.5mm、又は0.25mmである。
【0082】
代替的に又は追加的に、プロジェクタ2は、瞳孔直径及び/又はプロジェクタ装置1を取り巻く周囲光強度のモニタ値に基づいて射出瞳直径102を調整するための調整ユニット(図示せず)を含むことができる。
【0083】
これに関して、プロジェクタ装置1は、瞳孔直径112をモニタするように構成されたセンサユニットを含むことができる。したがって、調整ユニットは、射出瞳直径102を、測定された瞳孔直径112よりも小さく設定することができる。これに関して、センサユニットが瞳孔111をモニタするためのカメラを含む場合、有利であることが示されている。
【0084】
代替的に又は追加的に、センサユニットは、周囲光強度をモニタするように構成することができる。瞳孔直径112は実質的に周囲光強度に依存する、換言すれば、瞳孔直径112は周囲光強度の関数であるので、センサユニットは、例えば、測定された光強度の値をルックアップテーブルに記憶されている値と比較することによって、測定された光強度に基づいて瞳孔直径112を決定することができる。これに関して、センサユニットが光検出器を含む場合、有利であることが示されている。
【0085】
プロジェクタ2、延いてはプロジェクタ射出面108と瞳孔111との間のアイレリーフが、5~50mm、好ましくは10mm~30mmの距離に配置される場合、プロジェクタ装置1を装着する人にとって特に快適であり得る。したがって、プロジェクタ2は、任意に、プロジェクタ2によって照射される光ビーム100の射出瞳距離103が、5mm~50mm、好ましくは10mm~30mmの範囲で、好ましくは調整ユニットによって調整可能であるように構成される。
【0086】
位置合わせ装置4は、任意に、光ビーム100の中心軸107を、瞳孔の中心116と眼110のインプラントの中心とを通る軸として定義される視軸に位置合わせするように構成され、好ましくは、光ビーム100の中心軸107と視軸との間の最大偏差は、1°以下である。
【0087】
図2は、第2の実施形態に係る、光ビーム100をヒトの眼110の網膜に投射するためのプロジェクタ装置1の概略側面図である。この実施形態は、図1に示される実施形態に実質的に対応する。再度言及するが、瞳孔位置での射出瞳直径102に対応して見られる、本明細書に開示される出力ビーム直径109は、瞳孔直径112よりも小さく設定される。したがって、光ビーム100の実質的に全部の光エネルギーが、網膜インプラント30に到達する。即ち、この場合も、網膜インプラント30での放射照射は既知であり、プロジェクタ装置1で制御することができる。
【0088】
図3A及び図3Bは、光ビーム100の位置がずれている、図1に係るプロジェクタ装置1の概略側面図である。
【0089】
これらの図から、瞳孔111に対する光ビーム、即ち、射出瞳101の位置合わせが非常に重要であることが分かる。
【0090】
図3Aでは、射出瞳面104は、前記公差よりも大きい距離105で、瞳孔面113に対して位置ずれしている。したがって、射出瞳直径102は、瞳孔直径112よりも小さく設定されているものの、光ビーム100は、虹彩115によって特に遮断される。
【0091】
次に、図3Bでは、光ビーム100の中心軸107は、前記最大偏差106よりも大きい偏差106だけ、瞳孔112の中心116に対して位置ずれしている。また、虹彩115によって部分的に遮断されていることも分かる。
【0092】
したがって、図1に関して前記位置合わせが行われる場合、即ち、射出瞳距離103が正しく設定又は調整され、光ビーム100の中心軸107に対応するプロジェクタ2の主軸3が正しく設定又は調整される場合のみ、射出瞳直径102よりも小さい射出瞳直径102を有する光ビーム100が全て、眼110に入ることが保証され得る。
【0093】
図4Aは、別の実施形態に係る、光ビームをヒトの眼の網膜に投射するためのプロジェクタ装置1の概略斜視側面図である。プロジェクタ装置1は、図1に関して記載したプロジェクタ装置1に実質的に対応する。図4Aに見られるように、この例示的な実施形態では、プロジェクタ装置1は、プロジェクタ装置1の前方の関心のあるパターンを捕捉するためのカメラ6を含む。カメラ6によって捕捉された関心のある捕捉されたパターンは、ヒトの眼110及び網膜インプラント30に投射される光線100のコンテンツの基礎を提供する。
【0094】
更に、プロジェクタ装置1は、網膜114及び/又は虹彩115の少なくとも一部、好ましくは光ビーム100が標的とする網膜114の一部を観察するための、任意の好ましくは取り外し可能な眼球観察モジュール8を含む。好ましくは、眼球観察モジュールによって捕捉されたコンテンツは、ビデオスクリーン(図示せず)に導かれ、好ましくは、ビデオスクリーンは、光ビーム100及びインプラント30と位置合わせされる。虹彩115が観察されるとき、更なる調整を行う必要があるかどうかをモニタするために、瞳孔111への出力ビームの位置合わせを観察することができる。
【0095】
それにより、好ましくは、眼球観察モジュール8は、眼110の背面にある網膜インプラント30及び網膜114に投射されたビーム100をモニタして、ビデオスクリーンに表示できるように構成される。
【0096】
更に好ましい実施形態では、眼球観察モジュール8は、例えば、誘電体ミラー及び/又はビームスプリッタを介する投射の光路と組み合わせることができる光路を含み、眼球観察カメラ6に投射されたビームの直接的視覚化を可能にする。好ましくは、カメラ6は、モジュールの側面の一方に位置し、好ましくはレンズ及び/又はミラー及び/又はビームスプリッタを介して、投射、即ち、出力ビーム22の光路に光学的に接続される。
【0097】
瞳孔111と光ビーム100との単純な位置合わせは、光ビーム100、即ち、ヒトの眼110に対するプロジェクタ装置1を調整するときに、達成及び/又は制御することができる。更に、前記は、プロジェクタ装置1を装着した患者のトレーニングに役立ち得る。
【0098】
図4Bは、別の実施形態に係る、光ビームをヒトの眼の網膜に投射するためのプロジェクタ装置1の概略斜視側面図を示す。プロジェクタ装置1は、図4Aに示されるプロジェクタ装置に実質的に対応し、眼球観察モジュール8は、プロジェクタ装置1で別の場所に配置されている。
【0099】
図5は、例示的な実施形態に係る、光ビームをヒトの眼の網膜に投射するための装置40の概略側面図である。
【0100】
装置40は、この実施形態では、眼鏡フレーム50の形態のフレーム50を含む。
【0101】
装置40は、図1及び図4に関して記載したプロジェクタ装置1に実質的に対応するプロジェクタ装置1を更に含む。
【0102】
プロジェクタ装置1は、固定部5を介してフレーム50に取り付けられている。前記したように、プロジェクタ装置1は、位置合わせ装置4を含む。位置合わせ装置4により、固定部5、即ち、フレーム50、そして、装置40を装着する患者の眼に対するプロジェクタ2の位置及び向きを調整することができる。
【0103】
位置合わせ装置4は、プロジェクタ2が固定部5に対して5つの移動方向10,11に移動できるように形成されている。
【0104】
3つの移動方向は、長手方向10,10’,10”であり、任意に、各長手方向は、他の長手方向に実質的に直交するように方向付けられる。
【0105】
この例示的な実施形態では、図6図8に関してより詳細に説明されるように、第1の長手移動方向10は、ヒトの頭部の長手方向軸に対応し、第2の長手移動方向10’’は、ヒトの頭部の横軸に対応し、第3の長手移動方向10’は、ヒトの頭部の矢状軸に対応する。
【0106】
残りの2つの移動方向は、回転方向11,11’である。
【0107】
この例示的な実施形態では、図6図8に関してより詳細に説明されるように、第1の回転方向11’は、眼110に対するプロジェクタ2のパントスコピック角を調整できるように方向付けられ、第2の回転方向11は、眼110に対するプロジェクタ2のラップ角が調整できるように方向付けられる。
【0108】
移動方向10,10’,10”,11,及び11’を提供するために、位置合わせ装置5は、運動学的対偶がそれ自体公知であるので、一般的な形態で示される複数の運動学的対偶を含む。
【0109】
長手方向の移動方向10,10’、10”は、角柱状ジョイントによって設けられる。詳細には、角柱状ジョイントの1つが固定部5に近接して配置される。この角柱状ジョイントは、長手方向の移動方向10で線形運動を提供する。第2の角柱状ジョイントは、第1の角柱状ジョイントに隣接して配置され、長手方向の移動方向10’に沿った移動を提供する。それに隣接して、第1の回転ジョイントが配置され、これは、回転方向11の回転を提供する。更に、長手方向の移動方向10”での移動を可能にするために、更なる角柱状ジョイントが設けられる。更に、回転11’方向の回転をもたらすために、更なる回転ジョイントが設けられる。
【0110】
更に、位置合わせ装置5は、複数のロッキングユニットを含み、ロッキングユニット(図示せず)のそれぞれは、それぞれの移動方向の動きをロック又は解放するために、それぞれの運動学的対偶に割り当てられる。ロッキングユニットはそれ自体公知であり、例えば、ロッキングスクリュ又は高摩擦係数を含む表面の形態で実装することができる。
【0111】
図5に見られるように、カメラ6の主軸7は、プロジェクタ2の主軸3と位置合わせされ、光ビーム100の中心軸107と位置合わせされる。この例示的な実施形態によれば、主軸3及び主軸7は、同心円状に配列されている。換言すれば、カメラ6とプロジェクタ2は、プロジェクタ装置2の互いに対向する側に線状に配置されている。
【0112】
更に、装置40は、フレーム50によって保持されたレンズ60を含む。この実施形態に係るレンズ60は、シェードが付けられており、ここでは着色されている。着色レンズ60を設けることにより、瞳孔111に入る周囲光が少なくなるので、瞳孔直径112が自然に拡大する。したがって、中心軸107を中心106又は視軸に位置合わせすることが容易になり得る。
【0113】
図6は、眼110の前方に配置された、ヒトの眼の網膜に光ビームを投射するためのプロジェクタ装置1を有するヒトの頭部15の概略正面図である。
【0114】
プロジェクタ装置1は、図1及び図5に関して説明したプロジェクタ装置1に対応する。より見やすくするために、プロジェクタ装置1を縮小して示し、装置40は省略している。
【0115】
長手移動方向10”は、ヒトの頭部15の横軸13に実質的に平行に方向付けられていることが分かる。したがって、プロジェクタ2、及びヒトの眼110に対する光ビーム100の横断方向又は横方向の調整を行うことができる。
【0116】
長手移動方向10は、ヒトの頭部15の長手方向軸12に対応する。したがって、長手方向10によって、プロジェクタ2は、眼100に対して上下動することができる。
【0117】
図7は、図6のヒトの頭部15の概略側面図である。長手移動方向10’は、本質的に矢状軸14に対応することが分かる。したがって、長手移動方向10’によって、アイレリーフを、射出瞳距離103に対応するように調整することができる。
【0118】
更に、回転方向11’(図5を参照)を介して、プロジェクタ2のパントスコピック角16、即ち、ヒトの眼110、即ち、瞳孔111に対する光ビーム100を調整することができる。
【0119】
図8は、図6のヒトの頭部15の概略上面図である。この図に更に見られるように、回転方向11(図5を参照)によって、ヒトの眼110、即ち、瞳孔111に対して、プロジェクタ2のラップ角17、即ち、光ビーム100を調整することができる。
【0120】
即ち、前記5つの移動方向10,10’,10”,11,及び11’により、射出瞳面が瞳孔面と位置合わせされるように、光線100を瞳孔111の中心及びアイレリーフに関してセンタリングし、位置合わせすることができる。
【0121】
その結果、光ビーム100は、その全体が眼110に入り、更に、それが網膜インプラント30に向けられるように位置合わせされる。
【0122】
図9は、図5に係る装置40を装着したヒトの頭部15の概略側面図である。この例示的な実施形態に係る装置40は、更に、任意に、フロントフレーム55とフレーム50のテンプル53との間に配置されるヒンジ56を含む。ヒンジ56によって、テンプル53は、フロントフレーム55に対してピボット運動可能である。更に、各テンプル53上には、変位方向520で変位することができる変位可能イヤーパッド52が配置されている。患者の鼻部上にフロントフレーム55を支持するために、調節可能なノーズパッド54が設けられる。前述したパーツ52、54、及び56によって、フレーム50は、プロジェクタ2を調整する前に、即ち、前記したように患者の瞳孔111に対して光ビーム100を位置合わせする前に、患者個々の頭部形状に調整することができる。特に、イヤーパッド52は、テンプル53上で互いに相対的に前後方向に移動して、フロントフレーム55、即ち、プロジェクタ装置1のラップ角17を調整することができる。
【0123】
ヒンジ56と同様に、ヒンジ56の位置に更なるヒンジが存在することができ、ラップ角17の潜在的な調整のために、フロントフレーム55に対するテンプル53の角度を調節することができる。或いは、ヒンジ56は、少なくとも2つのピボット軸の周りのフロントフレーム55に対するテンプル53のピボット運動を提供するように配置される。
【0124】
図10は、図9のヘッド15の概略上面図である。この図では、任意のカウンターウェイト51及び51’が示されている。カウンターウェイト51は、装置40の横方向の重量分布が釣り合うように、プロジェクタ装置1が配置されている側とは反対側のフレーム50の側に配置されている。更に、任意のカウンターウェイト51’は、矢状軸14に沿った釣り合いのとれた分布に寄与する。これにより、装置40の装着快適性を高めることができる。
【0125】
図11及び図12は、好ましい例示的な実施形態に係る、プロジェクタ装置1の一部であり得るマイクロミラーアレイ20の概略側面図を示す。
【0126】
図11は、マイクロミラーアレイ20の概略側面図であり、光ビーム100は、マイクロミラーアレイ20に向けられたコヒーレント入射光21、この例示的な実施形態では、レーザダイオードによって照射されるNIR光のパターニングに基づく。
【0127】
マイクロミラー27のピッチ23のため、反射出力ビーム22のそれぞれの強度最大値26,26’,26”の、建設的干渉の光ビームに対応するいくつかの回折次数が、マイクロミラーアレイ20から現れる。エネルギーは、その大部分が、ゼロ次強度最大値26に分布している。したがって、入射角24は出射角25に等しい。ここで、光ビーム100の実質的に全部の光エネルギーは、ゼロ次強度26にのみ分布している。
【0128】
図12は、傾斜したマイクロミラー27を有するマイクロミラーアレイ20の概略側面図である。マイクロミラー27の傾斜により、コヒーレント光51の光エネルギーは、例えば、2次の最大値26’がエネルギーの大部分を得るように、強度最大値26,26’,26”の異なる次数で異なる分布をする。
【0129】
入射角24を僅かに小さくすると、エネルギーは1次と2次の26’と26”との間に分布される。したがって、入射角24を調整することにより、入射コヒーレント光21のエネルギーを、1つ又は2つの出力ビーム22に分布させることができる。
【0130】
更に、マイクロミラー27が2次元で傾斜している場合、入射光21のエネルギーは、4つの出力ビーム22に分割することができる。
【0131】
これに関して、コヒーレント入射光21の入射角24及びマイクロミラーアレイ20のマイクロミラー27のピッチ23は、出力ビーム22の隣接する回折次数、即ち、2つの最も強い回折次数の強度最大値26,26’,26”間の距離が、7mm以上、好ましくは8mm以上、より好ましくは10mm以上であるように構成されるようにされている。
【0132】
代替的に又は追加的に、コヒーレント入射光21の入射角24及びマイクロミラーアレイ20のマイクロミラー27のピッチ23は、この実施形態によれば、出力ビーム22の出力の大部分が強度最大値26の一次回折に向かうように構成されるように、プロジェクタ装置が適合される。好ましくは、光の出力の80%~95%、より好ましくは90%が、この回折次数に向けられる。
【0133】
図13は、別の好ましい例示的な実施形態に係るプロジェクタ装置1の一部であり得るマイクロミラーアレイ20の概略側面図であり、光ビーム100は、マイクロミラーアレイ20に向けられたインコヒーレント入射光21、この例示的な実施形態では、LEDによって照射されるNIR光のパターニングに基づく。
【0134】
光ビーム100のインコヒーレンスのため、出力ビーム22は、入射光21の反射及びマイクロミラーアレイ20の構造のみにしたがうパターニングに基づくことが分かる。実質的に回折は生じない。
【0135】
これらの実施形態及び項目は、複数の可能性の例を記述しているに過ぎないことは、当業者に明らかである。したがって、ここに示されている実施形態は、これらの特徴及び構成の限定を形成するものと理解されるべきではない。記載された特徴の任意の可能な組合せ及び構成を、本発明の範囲にしたがって選択することができる。
【符号の説明】
【0136】
1 プロジェクタ装置
2 プロジェクタ
3 主軸
4 位置合わせ装置
5 固定部
6 カメラ
7 主軸
8 眼球観察モジュール

10 長手移動方向
11 回転方向
12 長手方向軸
13 横軸
14 矢状軸
15 頭部
16 パントスコピック角
17 ラップ角

20 マイクロミラーアレイ
21 入射光
22 出力ビーム
23 ピッチ
24 入射角
25 出射角
26 強度最大値
27 マイクロミラー

30 網膜インプラント

40 ヒトの眼に光ビームを投射するための装置
50 フレーム
51 カウンターウェイト
52 イヤーパッド
520 変位方向
53 テンプル
54 ノーズパッド
55 フロントフレーム
56 ヒンジ
56 ピボット運動方向
60 レンズ

100 光ビーム
101 射出瞳
102 射出瞳直径
103 射出瞳距離
104 射出瞳面
105 距離
106 偏差
107 光ビームの中心軸
108 プロジェクタ射出面
109 出力ビーム直径

110 眼
111 瞳孔
112 瞳孔直径
113 瞳孔面
114 網膜
115 虹彩
116 瞳孔の中心

図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】