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特表2022-526349電気機器の操作装置のための検査ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(54)【発明の名称】電気機器の操作装置のための検査ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/22 20060101AFI20220517BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B60T17/22 C
B60T13/74 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557468
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(85)【翻訳文提出日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2020053111
(87)【国際公開番号】W WO2020200554
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】102019204758.0
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ツィールレ ダニエル
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
【Fターム(参考)】
3D048CC49
3D048HH18
3D048HH68
3D048HH71
3D048HH79
3D048RR17
3D048RR35
3D049CC07
3D049HH47
3D049HH48
3D049HH51
3D049HH54
3D049RR08
3D049RR13
(57)【要約】
電気機器の操作装置のための検査ユニットは、ASICとして構成されていて、電圧テストシーケンスを生成するためのテスト回路と、応答パターンを記憶するためのメモリと、基準パターンと比較するための評価ユニットとを含有している。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器、特に電気的に制御可能なパーキングブレーキの操作装置のための検査ユニットであって、前記検査ユニット(26)が、前記操作装置(25)の信号ライン(IN_0乃至IN_5)に接続可能なASICとして構成されており、前記ASICが、前記操作装置(25)の少なくとも1つの信号ライン(IN_0乃至IN_5)に印加しようとする電圧テストシーケンスを生成するためのテスト回路(28)と、前記信号ライン(IN_0乃至IN_5)内の応答パターンを記憶するためのメモリ(29)と、前記応答パターンを、前記電圧テストシーケンスにおける前記操作装置(25)の正しい機能形式に相当する基準パターンと比較するための評価ユニット(30)とを有している、電気機器の操作装置のための検査ユニット。
【請求項2】
2つ乃至6つの前記信号ライン(IN_0乃至IN_5)が設けられており、これらの信号ラインに、テスト段階でそれぞれ1つの電圧テストシーケンスが割り当てられていることを特徴とする、請求項1記載の検査ユニット。
【請求項3】
前記テスト回路(28)が内部の機能検査装置を備えていることを特徴とする、請求項1または2記載の検査ユニット。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の検査ユニットを操作するための方法において、前記テスト回路(28)内で生成される電圧テストシーケンスが、時間的に連続する複数の電圧変化を含有しており、これらの電圧変化が前記操作装置(25)のそれぞれ1つの信号ライン(IN_0乃至IN_5)に印加され、応答パターンが基準パターンと相違している場合にエラー信号が生成される、検査ユニットを操作するための方法。
【請求項5】
前記各信号ライン(IN_0乃至IN_5)内で前記電圧テストシーケンスを実現するために、電圧レベルを時間的に交互に高いレベルから低いレベルに、特にゼロに設定することを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
それぞれの電圧変化後に、全ての信号ライン(IN_0乃至IN_5)内の前記応答パターンを表す実際の電圧状態を、前記評価ユニット(30)で割り当てられた前記基準パターンと比較することを特徴とする、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載のASICとして構成された検査ユニット(26)および電気機器を操作するための操作装置(25)を有する操作兼コントロールシステムにおいて、前記操作装置(25)の信号ライン(IN_0乃至IN_5)が前記検査ユニット(26)に接続されており、前記検査ユニット(26)とは別個に構成されていて前記検査ユニット(26)に接続されているマイクロコントローラ(27)を有している、操作兼コントロールシステム。
【請求項8】
請求項7記載の操作兼コントロールシステムを操作するための方法において、前記マイクロコントローラ(27)内で前記検査ユニット(26)内のテスト回路を制御する、操作兼コントロールシステムを操作するための方法。
【請求項9】
前記マイクロコントローラ(27)に、応答パターンと基準パターンとの比較結果を伝送する、請求項7または8記載の操作兼コントロールシステムを操作するための方法。
【請求項10】
車両を停止状態で固定するためのパーキングブレーキにおいて、ブレーキピストン(16)をブレーキディスク(20)に向かう方向に位置調節する電気式のブレーキモータ(13)を備えた電気機械式のブレーキ装置と、前記パーキングブレーキの調節可能な構成要素を制御するためのコントロールユニット(11)と、前記パーキングブレーキをスイッチオンおよびスイッチオフし、かつ前記操作装置(25)を検査するための、請求項7記載の操作兼コントロールシステム(24)とを有する、車両を停止状態で固定するためのパーキングブレーキ。
【請求項11】
前記操作兼コントロールシステム(24)の前記マイクロコントローラ(27)が前記コントロールユニット(11)の部分であることを特徴とする、請求項10記載のパーキングブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器、例えば電気的に制御可能なパーキングブレーキの操作装置のための検査ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パーキングブレーキ力を生ぜしめるための電気ブレーキモータを備えた電気機械式のブレーキ装置として構成された、車両のためのパーキングブレーキについて記載されている。ブレーキモータを操作するとブレーキピストンがブレーキディスクに向かう方向に位置調節される。
【0003】
パーキングブレーキを操作するために、一般的な形式で、手動でスイッチオン位置とスイッチオフ位置との間で位置調節可能な操作スイッチが作動される。スイッチオン時に、相応の信号が、電気式のブレーキモータに対応配設されたコントロールユニットに転送される。信号伝送は操作スイッチから出発して複数の信号ラインを介して行われる。操作スイッチの正しい機能形式において、スイッチオンおよびスイッチオフのための相応の信号は信号ラインを介してコントロールユニットに転送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許発明第10261042号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明による検査ユニットは、現切換状態を検査し、かつ電気機器を介してスイッチオン可能な、電気機器に対応配設された操作装置内のエラーを検知するために用いられる。操作装置は、特に手動で調節可能な操作装置、例えば車両内の操作スイッチであって、この操作スイッチを介して車両内の電気機器がスイッチオンされ、場合によっては再びスイッチオフされる。例えば電気式に操作可能なパーキングブレーキを使用する場合、電気式のブレーキモータによって車両の停止状態で制動力が生ぜしめられ、また場合によっては制動力が車両の走行中に生ぜしめられる、という問題がある。
【0006】
操作装置を介して好適な形式で、電気機器が再びスイッチオフ可能でもあり、若しくは逆方向に操作することもできる。選択的に、電気機器のスイッチオフまたは逆方向の操作を自動的に行うこともできる。例えば、電気的に操作可能なパーキングブレーキの場合、電気ブレーキモータは所定の制動力に達すると自動的にスイッチオフされる。電気ブレーキモータのスイッチオフされた状態は操作装置に再び伝送され、直ちに電気ブレーキモータは場合によっては自動的にスイッチオフされた状態に置かされる。
【0007】
検査ユニットは、操作装置の信号ラインに接続可能なASIC(application specific integrated circuit-特定用途向け集積回路若しくは統合スイッチ)として構成されている。このASICは、テストの目的で操作装置の少なくとも1つの信号ラインに印加される電圧テストシーケンスを生ぜしめるためのテスト回路を含有している。さらにASICは、信号ライン内に電圧テストシーケンスに対する応答として発生する応答パターンを記憶するためのメモリと、応答パターンを基準パターンと比較するための評価ユニットとを含有している。基準パターンは、電圧テストシーケンスに対する反応としての操作装置の正しい機能形式に相当する。
【0008】
このような構成は様々な利点を有している。ASICとしての検査ユニットの構成は、操作装置の機能正常性を検査するために必要なすべての構成要素を含有する。検査ユニットは、マイクロコントローラとして構成されているのではなく若しくはマイクロコントローラ内に組み込まれているのではなく、むしろマイクロコントローラから独立して構成されている。ASICとしての検査ユニットは、特に操作装置の機能正常性のテストを越える機能を引き受けることのない特化された構成ユニットである。検査ユニットは自動的にかつマイクロコントローラとは無関係に必要なテスト手順を実行することができる。
【0009】
検査中に、操作装置に接続可能な、検査ユニット内の少なくとも1つの信号ラインに電圧テストシーケンスが印加され、この場合、電圧テストシーケンスに対する反応として発生した応答パターンが全ての信号ラインにおいてメモリ内に記憶され、評価ユニット内で割り当てられた応答パターンと比較される。好適には、すべての信号ラインにテストのためにそれぞれ1つの電圧テストシーケンスが印加され、この場合、その結果得られたそれぞれの応答パターンが記憶され、割り当てられた基準パターンと比較される。例えば2つ乃至6つの信号ラインが設けられており、これらにそれぞれ1つの電圧テストシーケンスが印加される。この実施例では全部で6つの信号ラインによって6つの応答パターンが得られ、これらの応答パターンに相応に6つの基準パターンが比較のために相対している。各応答パターンは、各信号ライン内の反応に関する情報を含んでいる。
【0010】
正しい機能形式のために、応答パターンは割り当てられた基準パターンと合致しなければならない。相異がある場合、操作装置または信号ラインにエラーが存在しており、これがエラー信号を生ぜしめ、このエラー信号が記憶されかつ/または表示される。このエラー信号に基づいて、操作装置のエラー機能が検知され得る。
【0011】
エラーのない状態を得るために、複数の電圧テストシーケンスにおいて、すべての応答パターンが割り当てられた基準パターンと合致しなければならない。しかしながら場合によっては、部分的な合致だけで操作装置の部分機能性がなお維持されれば有利であり、これは場合によっては、操作員に限定的な機能性を示すために、表示され得る。
【0012】
印加された電圧テストシーケンスに対する反応として信号ライン内で発生する応答パターンは、信号ラインの接続回路若しくは場合によっては存在するエラーから得られる信号ラインの電圧パターンとして構成されている。実際に発生した電圧パターンから、基準パターンとの比較を介して、場合によっては存在するエラーを推定することが可能である。
【0013】
別の好適な実施例によれば、検査ユニットのテスト回路が内部の機能検査装置を備えている。テスト回路内の機能検査装置は、テスト回路の機能性に限定された機能検査を可能にする。好適な発展形態によれば、テスト回路が、所望の電圧テストシーケンスを生成する作動信号を生ぜしめる第1のジェネレータと、相応の作動信号パターンを生ぜしめる第2のジェネレータとを含有している。第1および第2のジェネレータの信号は、相互に比較され、この場合、合致が得られると機能正常性が前提とされ、これに対して相異している場合にエラーが存在する。合致している場合、テスト回路のメモリユニット内にファイルされる信頼ビットが生成され得る。
【0014】
場合によっては、テストのために、テスト回路内で妨害信号の関数を有するテストビットが生成され、第1のジェネレータの信号との比較のための第2のジェネレータの作動信号の代わりに援用される。この場合、正しい機能正常性が存在する限り、比較の際に非合致が検知されなければならない。該当する場合、同様に信頼ビットが生成され得る。
【0015】
本発明の別の態様は、前記形式で構成された検査ユニットを操作するための方法に関する。この方法では、検査ユニットのテスト回路内で生成される電圧テストシーケンスが、時間的に連続する複数の電圧変化を有しており、これらの電圧変化が操作装置のそれぞれ1つの信号ラインに印加される。応答パターンが基準パターンと相違している場合にエラー信号が生成される。好適な形式で、各信号ライン内で電圧テストシーケンスを実現するために、信号ライン内で時間的に交互に若しくは連続的に実施される電圧変化が生ぜしめられる。この場合、すべての信号ラインが様々な電圧テストシーケンスで交互に変化された電圧レベルで負荷されることが、特に好適である。しかしながら、基本的に、信号ラインの一部だけが時間的に交互の順序で電圧変化によって負荷されても十分である。電圧変化時に、特に信号ライン内の電圧が、高いレベルから低いレベルに、特にゼロに設定される。その反応として、信号ライン内で、前述のように基準パターンと比較される応答パターンが発生する。
【0016】
本発明はさらに、電気機器を操作するための操作装置、および前述のようなASICとして構成された検査ユニットを有する操作兼コントロールシステムに関する。さらに操作兼コントロールシステムにマイクロコントローラが対応配設されており、このマイクロコントローラは、検査ユニットとは別個に構成されているが、検査ユニットに接続されている。マイクロコントローラは、検査ユニットと通信し、例えば検査ユニット内のテスト回路内で生成される電圧テストシーケンスを形成することができる。さらにマイクロコントローラは、検査ユニットの評価ユニットの結果を受信し、場合によってはさらに処理することができる。
【0017】
本発明の別の態様は、前記操作兼コントロールシステムを操作するための方法に関する。この方法において、マイクロコントローラが検査ユニット内のテスト回路を制御し、場合によっては、応答パターンと基準パターンとの比較の結果を受信する。
【0018】
本発明はさらに、車両を停止状態で固定するためのパーキングブレーキに関し、この場合、パーキングブレーキは、電気式のブレーキモータを備えた電気機械式のブレーキ装置を含有している。パーキングブレーキはさらに、パーキングブレーキの調節可能な構成要素を制御するためのコントロールユニット、並びにパーキングブレーキをスイッチオンおよびスイッチオフし、かつ操作装置を検査するための前記操作兼コントロールシステムを備えている。操作兼コントロールシステムのマイクロコントローラは、場合によってはパーキングブレーキのコントロールユニットの部分であってよい。
【0019】
検査ユニットは、場合によってはパーキングブレーキのコントロールユニット内に組み込まれていてよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ブレーキ倍力装置を備えた液圧式の車両ブレーキの概略図であって、この場合、車両ブレーキのホイールブレーキ装置が車両後車軸において追加的に電気ブレーキモータを備えた電気機械式のブレーキ装置を有している。
図2】電気ブレーキモータを備えた電気機械式のブレーキ装置の断面図である。
図3】電気機械式のブレーキ装置を操作するための操作装置と、この操作装置を制御するための検査ユニットと、操作兼コントロールシステムと通信するマイクロコントローラとを備えた操作兼コントロールシステムを有する回路図である。
図4】操作装置の機能正常性を検査する、電圧テストシーケンスを生ぜしめるためのテスト回路の回路図である。
図5】電圧テストシーケンスを生ぜしめるための制御の経時変化を有するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
その他の利点および好適な構成は、その他の請求項、図面の説明および図面から読み取られる。
【0022】
図面中、同じ構成要素には同じ符号が付けられている。
【0023】
図1に示された車両のための液圧式の車両ブレーキ1は、車両の各ホイールにおけるホイールブレーキ装置9に液圧下にあるブレーキ液を供給しかつこれらのホイールブレーキ装置9を制御するための、前車軸ブレーキ回路2および後車軸ブレーキ回路3を有している。2つのブレーキ回路2,3は、1つの共通のマスタブレーキシリンダ4に接続されており、このマスタブレーキシリンダ4にブレーキ液リザーバタンク5を介してブレーキ液が供給される。マスタブレーキシリンダ4内のマスタブレーキシリンダピストンは、運転者によってブレーキペダル6を介して操作され、運転者によって加えられたペダルストロークはペダルストロークセンサ7を介して測定される。ブレーキペダル6とマスタブレーキシリンダ4との間にブレーキ倍力装置10が配置されており、このブレーキ倍力装置10は例えば電動機を有していて、この電動機は、好適には伝動装置を介してマスタブレーキシリンダ4を操作する。
【0024】
ペダルストロークセンサ7によって測定されたブレーキペダル6の調節運動は、センサ信号として制御器若しくはコントロールユニット11に伝送され、この制御器若しくはコントロールユニット11で、ブレーキ倍力装置10を制御するための調節信号が生成される。ホイールブレーキ装置9へのブレーキ液の供給は、各ブレーキ回路2,3内で様々な切換バルブを介して行われ、これらの切換バルブは別の機器と共にブレーキ液圧装置8の部分である。さらにブレーキ液圧装置8に、エレクトロニック・スタビリティプログラム(ESP)の構成部分である液圧ポンプが所属する。
【0025】
図2には、車両の後車軸のホイールに配置されたホイールブレーキ装置9の詳細が示されている。ホイールブレーキ装置9は液圧式の車両ブレーキ1の部分であって、後車軸ブレーキ回路からブレーキ液22が供給される。ホイールブレーキ装置9はさらに、電気機械式のブレーキ装置を有しており、このブレーキ装置は好適には停止状態で車両を固定しておくためのパーキングブレーキとして使用されるが、車両の運動時においても、特に速度限界値を下回る低い車両速度においても車両を制動させるために使用され得る。
【0026】
電気機械式のブレーキ装置は、ブレーキディスク20を把持するキャリパ19を備えたブレーキキャリパ12を有している。アクチュエータとして、ブレーキ装置は直流電動機をブレーキモータ13として有しており、このブレーキモータ13の回転子軸がスピンドル14を回転駆動し、このスピンドル14にスピンドルナット15が相対回動不能に支承されている。スピンドル14の回転時にスピンドルナット15が軸方向で位置調節される。スピンドルナット15は、ブレーキピストン16内で移動し、ブレーキピストン16は、ブレーキライニング17の支持体であり、ブレーキライニング17はブレーキピストン16によってブレーキディスク20に向かって押し付けられる。ブレーキディスク20の反対側に、キャリパ19によって定置に保持されている別のブレーキライニング18が存在する。ブレーキピストン16は、その外側を把持する形のシールリング23を介して、ブレーキピストン16を受けるハウジングに対して気密にシールされている。
【0027】
ブレーキピストン16内で、スピンドルナット15はスピンドル14の回転運動時に軸方向で前方にブレーキディスク20に向かって移動することができ、若しくはスピンドル14の逆回転運動時に軸方向で後方にストッパ21に達するまで移動することができる。締付力を発生させるために、スピンドルナット15はブレーキピストン16の内側の端面側を負荷し、それによって、軸方向でしゅう動可能にブレーキ装置において支承されたブレーキピストン16がブレーキライニング17と共にブレーキディスク20の対面する端面に押し付けられる。
【0028】
液圧式のブレーキ力のために、ブレーキピストン16に、液圧式の車両ブレーキ1からのブレーキ液22の液圧が作用する。液圧は、車両停止状態においても電気機械式のブレーキ装置の操作時にサポート的に作用し得るので、全ブレーキ力は電動機により提供された部分と液圧式の部分とから構成されている。車両の走行中に制動力を生ぜしめるために、液圧式の車両ブレーキだけが作動するか、または液圧式の車両ブレーキもまた電気機械式のブレーキ装置も作動するか、または電気機械式のブレーキ装置だけが作動する。液圧式の車両ブレーキ1の調節可能な構成要素を制御するための調整信号も、また電気機械式のホイールブレーキ装置9を制御するための調整信号も、制御器若しくはコントロールユニット11内で生成される。
【0029】
図3は、スイッチとして構成された操作装置25および検査ユニット26を含む操作兼コントロールシステム24を含有する回路図を示す。検査ユニット26はマイクロコントローラ27と通信し、このマイクロコントローラ27は、場合によってはコントロールユニット11の構成部分であってよく、このコントロールユニット11を介してパーキングブレーキの電気式の制御モータが制御される。検査ユニット26も、コントロールユニット内に組み込まれているかまたはコントロールユニットに接続されていてよい。
【0030】
操作装置25はスイッチを形成し、運転者によってパーキングブレーキを操作するために作動され得る。操作装置25は、全部で6つの信号ラインIN_0乃至IN_5を介して検査ユニット26に接続されている。
【0031】
検査ユニット26は、操作装置25の機能正常性を検査するために用いられる。このために、検査ユニット26内では、信号ラインIN_0乃至IN_5を印加する電圧テストシーケンスが生成される。信号ライン内の応答パターン(電圧テストシーケンスに対する応答として調節される電圧値)のほかに、割り当てられた基準パターンとの比較によって、操作装置25が正常に機能するかどうかが確認され得る。
【0032】
操作装置26は様々な構成要素を含有していて、マイクロコントローラ27から独立して構成されたASICとして構成されている。操作装置25はテスト回路28を有しており、このテスト回路28内で、信号ラインIN_0乃至IN_5に印加される電圧テストシーケンスが生ぜしめられる。さらに、操作装置25は、信号ラインIN_0乃至IN_5内の応答パターンを記憶するためのメモリ29、並びにメモリ29内の応答パターンを、別のメモリユニット31内にファイルされかつ完全な機能正常性が存在する場合のための目標応答パターンに相当する基準パターンと比較するための評価ユニット30を含有する。
【0033】
図4には、テスト回路28の詳細が示されており、図5には、様々な電圧テストシーケンスを生ぜしめるための作動信号の経時変化が示されている。図4に示したテスト回路28は、第1のジェネレータ32を有しており、この第1のジェネレータ32内で図5に示された作動信号が生成される。この作動信号は、同期論理ユニット33内で様々な時点t_0乃至t_5と同期され、さらにユニット33内で、様々な電圧テストシーケンスの実施後のどの時点で評価時点が行われるかが決定される。同期論理ユニット33から、検査ユニット26の構成部分であるメモリユニット29への伝送が行われる。さらに、応答パターンと基準パターンとの間の比較が行われる開始時点が評価ユニット30に伝送される。
【0034】
さらに、テスト回路28は内部の機能検査装置を備えており、この機能検査装置を介してテスト回路28の機能正常性を検査することができる。内部の機能検査ユニットは、第2のジェネレータ35並びに比較ブロック36を有している。第2のジェネレータ35内で比較パターンが発生され、この比較パターンが比較ブロック36内で、第1のジェネレータ32の、基準パターンを表す作動信号と比較される。第1のジェネレータ32からのパターンと第2のジェネレータ35からのパターンとが合致すると、信頼ビットが生成され、この信頼ビットは、テスト回路28の内部メモリ37内にファイルされる。
【0035】
さらに、テストのために、第2のジェネレータ35の信号に代えて妨害信号の関数を有するテストビット38を、内部メモリ37からアップロードする可能性が存在する。比較ブロック36内での第1のジェネレータ32の作動信号との比較時に、通常の機能正常性において非合致性が確認される必要があり、これはやはり相応の信頼ビットを生ぜしめる。
【0036】
図5には、作動信号LS_0乃至LS_5の経時変化が示されている。時点t_0乃至t_5で、各信号波形LS_0乃至LS_5に、時間的に連続する形式でゼロより大きいそれぞれ1つの信号が存在する。ゼロより大きいこの信号は、時間長さtpulseを有している。ゼロとは異なるそれぞれ1つの信号だけが様々な作動信号LS_0乃至LS_5内で作動している。作動信号LS_0乃至LS_5は、各時点t_0乃至t_5でそれぞれ1つの電圧テストシーケンスを生成する。
【0037】
テストシーケンスの開始時に、第1の作動信号LS_0内だけでゼロより大きい信号が生成される。これに対して、別の作動信号内では信号値はゼロである。これにより、所属の低電位側スイッチがアースに接続されるようになるので、所属の信号ラインIN_0内で電圧レベルはゼロに設定される。これに対して、その他の信号ラインIN_1乃至IN_5は、操作装置を介して信号ラインIN_0に接続されていない限り、その電流源から得られる電圧レベルに維持され、この場合、その他の信号ラインIN_1乃至IN_5は、同様にゼロに設定される。各信号ラインIN_0乃至IN_5内の応答信号は、全体として、この時点でメモリ29内に記憶される応答パターンを表している。メモリ29内での読み取りのための開始時点は、同期論理ユニット33によって生ぜしめられる。このプロセスは、図5に示されているように、作動信号LS_1乃至LS_5の推移のために繰り返される。それに応じて、全部で6つの反復が得られ、従って応答パターンは全部で6×6=36の情報を含み、これらの情報がメモリ29内にファイルされる。
【0038】
時間間隔tbutton_monitoringの最後に実行された電圧テストシーケンスの完全な経過後に、検査ユニット26の評価ユニット30内で、メモリユニット31内にファイルされた基準パターンとの比較が行われる。メモリ29からの応答パターンが基準パターンに相当すれば、エラーは存在しないので、操作装置25の機能正常性が前提とされてよい。これに対して、応答パターンと基準パターンとの間に相異があると、エラーが存在し、これにより、相応のエラー信号が生ぜしめられ、このエラー信号がマイクロコントローラ27に供給される。
【0039】
さらに図5から読み取れるように、電圧テストシーケンスが生成される時間間隔tbutton_monitoringに、電圧テストシーケンスが生成されない別の時間間隔tbreakが続く。
【符号の説明】
【0040】
1 車両ブレーキ
2 前車軸ブレーキ回路
3 後車軸ブレーキ回路
4 マスタブレーキシリンダ
5 ブレーキ液リザーバタンク
6 ブレーキペダル
7 ペダルストロークセンサ
8 ブレーキ液圧装置
9 ホイールブレーキ装置
10 ブレーキ倍力装置
11 制御器若しくはコントロールユニット
12 ブレーキキャリパ
13 ブレーキモータ
14 スピンドル
15 スピンドルナット
16 ブレーキピストン
17 ブレーキライニング
18 ブレーキライニング
19 キャリパ
20 ブレーキディスク
21 ストッパ
22 ブレーキ液
24 操作兼コントロールシステム
25 操作装置
26 検査ユニット
27 マイクロコントローラ
28 テスト回路
29 メモリ
30 評価ユニット
31 メモリユニット
32 第1のジェネレータ
33 同期論理ユニット
35 第2のジェネレータ
36 比較ブロック
37 内部メモリ
IN_0~IN_5 信号ライン
LS_0~LS_5 作動信号、信号波形
t_0~t_5 時点
pulse 時間長さ
button_monitoring 時間間隔
break 電圧テストシーケンスが生成されない別の時間間隔
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2021-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器の操作装置のための検査ユニットであって、前記検査ユニット(26)が、前記操作装置(25)の信号ライン(IN_0乃至IN_5)に接続可能なASICとして構成されており、前記ASICが、前記操作装置(25)の少なくとも1つの信号ライン(IN_0乃至IN_5)に印加しようとする電圧テストシーケンスを生成するためのテスト回路(28)と、前記信号ライン(IN_0乃至IN_5)内の応答パターンを記憶するためのメモリ(29)と、前記応答パターンを、前記電圧テストシーケンスにおける前記操作装置(25)の正しい機能形式に相当する基準パターンと比較するための評価ユニット(30)とを有している、電気機器の操作装置のための検査ユニット。
【請求項2】
2つ乃至6つの前記信号ライン(IN_0乃至IN_5)が設けられており、これらの信号ラインに、テスト段階でそれぞれ1つの電圧テストシーケンスが割り当てられていることを特徴とする、請求項1記載の検査ユニット。
【請求項3】
前記テスト回路(28)が内部の機能検査装置を備えていることを特徴とする、請求項1または2記載の検査ユニット。
【請求項4】
前記電気機器は、電気的に制御可能なパーキングブレーキであることを特徴とする、請求項1記載の検査ユニット。
【請求項5】
請求項1からまでのいずれか1項記載の検査ユニットを操作するための方法において、前記テスト回路(28)内で生成される電圧テストシーケンスが、時間的に連続する複数の電圧変化を含有しており、これらの電圧変化が前記操作装置(25)のそれぞれ1つの信号ライン(IN_0乃至IN_5)に印加され、応答パターンが基準パターンと相違している場合にエラー信号が生成される、検査ユニットを操作するための方法。
【請求項6】
前記各信号ライン(IN_0乃至IN_5)内で前記電圧テストシーケンスを実現するために、電圧レベルを時間的に交互に高いレベルから低いレベルに、特にゼロに設定することを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項7】
それぞれの電圧変化後に、全ての信号ライン(IN_0乃至IN_5)内の前記応答パターンを表す実際の電圧状態を、前記評価ユニット(30)で割り当てられた前記基準パターンと比較することを特徴とする、請求項または記載の方法。
【請求項8】
請求項1からまでのいずれか1項記載のASICとして構成された検査ユニット(26)および電気機器を操作するための操作装置(25)を有する操作兼コントロールシステムにおいて、前記操作装置(25)の信号ライン(IN_0乃至IN_5)が前記検査ユニット(26)に接続されており、前記検査ユニット(26)とは別個に構成されていて前記検査ユニット(26)に接続されているマイクロコントローラ(27)を有している、操作兼コントロールシステム。
【請求項9】
請求項記載の操作兼コントロールシステムを操作するための方法において、前記マイクロコントローラ(27)内で前記検査ユニット(26)内のテスト回路を制御する、操作兼コントロールシステムを操作するための方法。
【請求項10】
前記マイクロコントローラ(27)に、応答パターンと基準パターンとの比較結果を伝送する、請求項記載の操作兼コントロールシステムを操作するための方法。
【請求項11】
車両を停止状態で固定するためのパーキングブレーキにおいて、ブレーキピストン(16)をブレーキディスク(20)に向かう方向に位置調節する電気式のブレーキモータ(13)を備えた電気機械式のブレーキ装置と、前記パーキングブレーキの調節可能な構成要素を制御するためのコントロールユニット(11)と、前記パーキングブレーキをスイッチオンおよびスイッチオフし、かつ前記操作装置(25)を検査するための、請求項記載の操作兼コントロールシステム(24)とを有する、車両を停止状態で固定するためのパーキングブレーキ。
【請求項12】
前記操作兼コントロールシステム(24)の前記マイクロコントローラ(27)が前記コントロールユニット(11)の部分であることを特徴とする、請求項11記載のパーキングブレーキ。
【国際調査報告】