(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ロボットグリッパ、およびロボットグリッパの操作方法
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557478
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2020057544
(87)【国際公開番号】W WO2020193340
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】102019107851.2
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521181769
【氏名又は名称】フランカ エーミカ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】FRANKA EMIKA GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】スペニンガー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ローカール,ティム
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707ES03
3C707ET08
3C707HS27
3C707KS33
3C707KT01
3C707KT04
3C707KW03
3C707KX07
3C707MS15
3C707MS27
(57)【要約】
本発明は、ロボットグリッパ(100)、およびかかるロボットグリッパ(100)の操作方法に関する。ロボットグリッパ(100)は、N個の能動素子WE
n(103)を有するパワートレインAS(102)を駆動するための少なくとも1の駆動ユニットAE(101)であって、各能動素子WE
n(103)はロボットグリッパに対して本体が固定された形で配された作業領域AB
nを有し、作業領域において能動素子WE
nが運動可能であり、これが作業領域に到達する、少なくとも1の駆動ユニットAE(101)と、少なくとも1の駆動ユニットAE(101)を制御するための制御ユニット(104)と、制御ユニット(104)に接続され、各能動素子WE
n(103)に外部から与えられる、n=1,2,…,NおよびN≧1であるフォース/モーメントF
ext,WEn(t)を確定するためのセンサーシステム(105)とを備える。制御ユニット(104)は、能動素子WE
n(103)の衝突監視が行われるよう構成され、能動素子WE
n(103)の衝突イベントが検知された場合には、指定の操作に従って駆動ユニットAE(101)が動作されるよう構成される。この操作は、都度、能動素子WE
nのそれぞれの作業領域AB
nに定義領域B
nを設け(201)、各能動素子WE
n(103)が割当領域Bの外部に位置するときのみ能動素子WE
n(103)の衝突監視を行い、各能動素子WE
nが少なくとも部分的に割当領域B
n内に位置するときは能動素子WE
nの衝突監視を停止する(202)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットグリッパの操作方法であって、
前記ロボットグリッパ(100)は、
・N個の能動素子WE
n(103)を有するパワートレインAS(102)を駆動するための少なくとも1の駆動ユニットAE(101)であって、各能動素子WE
n(103)は前記ロボットグリッパに対して本体が固定された形で配された作業領域AB
nを有し、前記作業領域において前記能動素子WE
nが運動可能であり、これが前記作業領域に到達する、少なくとも1の駆動ユニットAE(101)と、
・前記少なくとも1の駆動ユニットAE(101)を制御するための制御ユニット(104)と、
・前記制御ユニット(104)に接続され、前記各能動素子WE
n(103)に外部から与えられる、n=1,2,…,NおよびN≧1であるフォース/モーメントF
ext,WEn(t)を確定するためのセンサーシステム(105)とを備え、
前記制御ユニット(104)は、
前記能動素子WE
n(103)の衝突監視が行われるよう構成され、能動素子WE
n(103)の衝突イベントが検知された場合には、指定の操作に従って前記駆動ユニットAE(101)が動作されるよう構成され、
前記操作は、
・都度、前記能動素子WE
nのそれぞれの作業領域AB
nに定義領域B
nを設け(201)、
・前記各能動素子WE
n(103)が前記割当領域B
nの外部に位置するときのみ前記能動素子WE
n(103)の衝突監視を行い、前記各能動素子WE
nが少なくとも部分的に前記割当領域B
n内に位置するときは前記能動素子WE
nの衝突監視を停止する(202)、
ロボットグリッパの操作方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記ロボットグリッパ(100)は、2つの能動素子WE
n=1,2(103)を有する平行グリッパであり、
・前記2つの能動素子WE
n=1,2(103)の共通作業領域ABと、共通領域Bとは、前記能動素子WE
n=1,2(103)のお互いからのスペーシングAを示すそれぞれのスペーシングレンジによって規定され、
・前記作業領域ABは、前記能動素子WE
n=1,2が互いに対してとることのできる前記能動素子WE
n=1,2(103)の最小スペーシングA
MINから最大スペーシングA
MAXのすべてのスペーシングAを含み、
・前記領域Bは、前記能動素子WE
n=1,2(103)のA
MINから指定のスペーシングA
BのすべてのスペーシングAを含み、ここでA
MIN≦A<A
B、またはA
MIN≦A≦A
B、およびA
B<A
MAXであり、
・前記能動素子WE
n=1,2(103)においてスペーシングA>または≧A
Bのときのみ前記能動素子WE
n=1,2(103)の衝突監視が行われる、方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法であって、
前記衝突監視が、前記ロボットグリッパ(100)の指定された動的モデルに基づいて行われる、方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法であって、
前記衝突監視が、外乱変数オブザーバを用いて行われ、特にパフォーマンスオブザーバ、またはパルスオブザーバ、または速度オブザーバ、または加速度オブザーバによって行われる、方法。
【請求項5】
【請求項6】
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法であって、
前記操作は、
・前記駆動ユニットAE(101)を停止する、
・重力補正のために前記駆動ユニットAE(101)を作動させる、
・前記駆動ユニットAE(101)-パワートレインAS(102)システムにおける摩擦補償のために前記駆動ユニットAE(101)を作動させる、
・前記能動素子WE
nから離れる制御された連続動作が行われるように、前記駆動ユニットAE(101)を作動させる、
・前記能動素子WE
nから離れる反射的な動作が行われるように、前記駆動ユニットAE(101)を作動させる、
操作から選択される、方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法であって、
前記作業領域AB
nにおける前記領域B
nの前記定義(201)は、前記ロボットグリッパに対する手動または自動のティーチインプロセスによって行われ、
前記ティーチインプロセスは、
・前記能動素子WE
n(103)のそれぞれがオブジェクトに機械的に接触するようにオブジェクトを把持し、この過程で前記能動素子WE
n(103)に包囲された領域が領域AG
nを定義し、
・領域B
nであって、前記領域AG
nが指定のデルタ領域ΔB
nによって外向きに広がる領域B
nを、B
n=AG
n+ΔB
nとなるように確定し、
・B
nを保存する、
ステップを含む、方法。
【請求項9】
ロボットグリッパ(100)であって、
・N個の能動素子WE
n(103)を有するパワートレインAS(102)を駆動するための少なくとも1の駆動ユニットAE(101)であって、前記能動素子WE
n(103)のそれぞれは、前記ロボットグリッパ(100)に対して本体が固定された形で配され、前記能動素子WE
n(103)が運動可能であり、これらが達する作業領域AB
nを有する、少なくとも1の駆動ユニットAE(101)と、
・前記少なくとも1の駆動ユニットAE(101)のクローズドループおよびオープンループ制御のための制御ユニット(104)と、
・前記制御ユニット(104)に接続され、前記各能動素子WE
n(103)に外部から与えられる、n=1,2,…,NおよびN≧1であるフォース/モーメントF
ext,WEn(t)確定するためのセンサーシステム(105)とを備え、
前記制御ユニット(104)は、
・前記能動素子WE
n(103)の衝突監視を行うことができるよう構成され、
・前記各能動素子WE
n(103)が前記作業領域AB
n内に位置する指定された割当領域B
nの外部に位置するときのみ、前記能動素子WE
n(103)の衝突監視が行われるよう構成され、
・前記各能動素子WE
n(103)が少なくとも部分的に前記割当領域B
n内に位置するときは、前記能動素子WE
n(103)の衝突監視が停止されるよう構成され、
・能動素子WE
n(103)の衝突イベントが検知された場合には、指定の操作に従って前記駆動ユニット(101)が動作されるよう構成される、
ロボットグリッパ(100)。
【請求項10】
【請求項11】
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれか一項に記載のロボットグリッパ(100)を備えるロボットまたは人型ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットグリッパ、およびロボットグリッパの操作方法に関する。
【発明の概要】
【0002】
ロボットグリッパ(「グリッパ」または「グリップシステム」または「エフェクタ」または「エンドエフェクタ」とも呼ぶ)は、先行技術において知られている。ロボットグリッパは、通常、ロボットマニピュレータの遠位端に配置されて、オブジェクト/ツールを把持および/または保持するタスクを行う。
【0003】
ロボットグリッパは、通常、駆動ユニットと、能動素子を動かすパワートレイン(運動学的システムとも呼ぶ)と、例えばロボットマニピュレータへのロボットグリッパの取り外し可能な固定接続のための機械的インターフェースと、ロボットグリッパの操作に必要なエネルギーを供給するためのエネルギーインターフェースと、(例えば中央ロボット制御装置から)制御信号を供給するための制御信号インターフェースとを備える。
【0004】
能動素子は、ロボットグリッパの要素であり、オブジェクトを把持および保持する際にオブジェクトに直接接触して、その過程でオブジェクトに対して把持力を与える。ロボットグリッパがどのようにオブジェクトを保持可能であるかについては様々な可能性がある。ここでは、例えば、フォースメイティング、形状メイティング、物質メイティングなどの、異なるアクティブメイティングを区別する。また能動素子自体についても、例えば、(平行ジョーグリッパの)グリッパジョーまたは(人工ハンドの)多部材フィンガーというような様々な形で存在する。
【0005】
駆動ユニットは、把持または保持プロセスに必要な動力学的エネルギーを生成する。駆動ユニットは、パワートレインを駆動し、対応する能動素子の動作を生成する。これによって、ロボットグリッパによる開閉およびオブジェクトの保持が可能となる。
【0006】
パワートレインは、駆動ユニットによって生成された動力学的エネルギーの能動素子への伝達に用いられ、これによって、駆動ユニットの運動を、ロボットグリッパの駆動動作、すなわち対応する能動素子の動作へと変換する。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、安全性の向上した操作を可能とするロボットグリッパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、独立請求項の特徴に由来する。好都合な発展形および実施形態は、従属請求項の主題である。本発明のさらなる特徴、適用可能性、および利点は、以下の説明および本発明の実施形態の説明に由来するものであり、これらは図面に示されている。
【0009】
本発明の第一の局面は、ロボットグリッパの操作方法に関し、前記ロボットグリッパは、N個の能動素子WEnを有するパワートレインASを駆動するための少なくとも1の駆動ユニットAEであって、各能動素子WEnは前記ロボットグリッパに対して本体が固定された形で配された作業領域ABnを有し、前記作業領域において当該能動素子WEnが運動可能であり、これらが前記作業領域に到達する、少なくとも1の駆動ユニットAEと、前記少なくとも1の駆動ユニットAEを制御するための制御ユニットと、前記制御ユニットに接続され、前記各能動素子WEnに外部から与えられる、n=1,2,…,NおよびN≧1であるフォース/モーメントFext,WEn(t)を確定するためのセンサーシステムとを備え、前記制御ユニットは、前記能動素子WEnの衝突監視が行われるよう構成され、能動素子WEnの衝突イベントが検知された場合には、指定の操作に従って前記駆動ユニットAEが動作されるよう構成され、前記操作は、都度、前記能動素子WEnのそれぞれの作業領域ABnに定義領域Bnを設け、前記各能動素子WEnが前記割当領域Bnの外部に位置するときのみ前記能動素子WEnの前記衝突監視を行い、前記各能動素子WEnが少なくとも部分的に前記割当領域Bn内に位置するときは上記能動素子WEnの前記衝突監視を停止する。
【0010】
この場合、駆動ユニットAEは、ロボットグリッパから与えられたエネルギー(例えば、空気エネルギー、油圧エネルギー、または電気エネルギー)を機械的エネルギー、すなわち、運動に変換する。この運動は、好都合には、並進および/または回転運動である。好都合には、駆動ユニットは、与えられた電気エネルギー(電位U、電流I)を機械的回転に変換する電気モーターである。用途によっては、当然ながらその他の駆動ユニット、例えば、パワートレインを駆動する油圧モーターまたは空気モーターなどが適切である。好都合には、駆動ユニットは、複数の能動素子WEn、特に、2つの能動素子WEn=1,2を駆動する。好都合には、ロボットグリッパは、それぞれ1つ以上の能動素子WEnを駆動する複数の駆動ユニットを有する。駆動ユニットAEは、特に、回転運動を減速または加速するトランスミッションを備えてもよい。
【0011】
パワートレインAS(運動学的システムとも呼ぶ)は、駆動ユニットAEによって生じた機械的運動を、これに応じて動くように1つ以上の能動素子WEnへ伝達する。パワートレインASをロボットグリッパへ機械的に実装するための複数の実装方法が、先行技術において知られている。特に好都合には、パワートレインASは、ベルト、特に歯付きベルトを備えている。
【0012】
能動素子WEnの作業領域ABnは、それぞれ、ロボットグリッパに本体が固定された形で設けられ、能動素子WEnが運動可能かつこれらが到達可能な領域を示している。よって、作業領域ABnは、特に能動素子WEnが最大限に開いているときの能動素子WEn同士の間に広がる領域によって定義される。作業領域ABnがロボットグリッパに対して本体が固定された形で定義されるため、作業領域ABnは、ロボットグリッパの位置および方向にかかわらず、常に同一のままである。
【0013】
本発明によれば、ロボットグリッパは、各能動素子WEnに外部から与えられ、n=1,2,…,NおよびN≧1であるフォース/モーメントFext,WEn(t)を確定するためのセンサーシステムを備える。従って、ロボットグリッパの他の部分、例えばロボットグリッパの筐体に与えられるフォース/モーメントは、このセンサーシステムによって取得されない。
【0014】
【0015】
好都合には、能動素子WEnにセンサーが設けられていない。そのため、能動素子WEnの各センサーに対するケーブル接続が省略される。好都合には、能動素子WEnは交換可能である。よって、好都合には、例えば、フォースメイティング、形状メイティング、物質メイティングなどの異なるアクティブメイティングを把持または保持の間可能とするために、異なるタイプの能動素子WEnをパワートレインASに接続することができる。
【0016】
作業領域ABnにおける領域Bnの配置は、例えば、制御ユニットへの対応する入力、制御ユニットの対応するデータメモリの読み込み、ロボットグリッパのデータインターフェースを介した制御ユニットへのデータ伝送、ロボットグリッパに対する手動または自動の「ティーチイン」プロセスによって行われ、その後、制御ユニットのデータメモリに保存される。
【0017】
本発明によれば、制御ユニットは、能動素子WEnが割当領域Bnの外部に位置するときのみ能動素子WEnの衝突監視が行われるよう構成され、能動素子WEnが少なくとも部分的に割当領域Bn内に位置するときにのみ能動素子WEnの衝突監視を停止するよう構成される。
【0018】
領域Bnは、好都合には、把持対象のオブジェクトの外部形状AGに応じて定義される。ここで、外部形状AGは、例えば球形のオブジェクトの場合には、オブジェクトの直径によって定義可能である。ここで、領域Bnは、好都合には、領域Bnが把持対象のオブジェクトの外部形状AG(オブジェクトの端部/表面)およびその外部に隣接する差分領域ΔBnを含むように選択/定義され、Bn=AG+ΔBnである。ここで、差分領域ΔBnの大きさは、課題の定義、適用される安全規格(例えば、ジャミング防止)、および/または把持対象のオブジェクトの繊細さ/破断強度に応じて選択される。
【0019】
オブジェクトの把持を目的とする本方法を実行する際には、領域Bn、すなわち把持に最適なように位置づけられたオブジェクト周囲のゾーン(差分領域ΔBn)の外部でのみ、衝突監視/衝突検出が適切に行われる。この例において、当該ゾーン内では衝突監視/衝突検出が停止される。
【0020】
好都合には、各作業領域ABnは、三次元または二次元または一次元の領域である。好都合には、各領域Bnは、三次元または二次元または一次元の領域である。
【0021】
提案される方法の特に好適な発展形において、ロボットグリッパは、2つの能動素子WEn=1,2を有する平行グリッパとして構成されており、共通作業領域ABおよび共通領域Bは、能動素子WEn=1,2のスペーシングレンジによって規定される。好都合には、作業領域ABは、能動素子WEn=1,2が互いに対してとることのできる最小スペーシングAMINから最大スペーシングAMAXまでのスペーシングレンジとして定義される。課題の定義に応じて、これにしたがって本発展形の領域Bは、スペーシング最大値ABによって指定され、よってAMINからスペーシングABの全てのスペーシングAを網羅する。
【0022】
よって、領域Bは、能動素子WEn=1,2の互いに対するスペーシングAによって定義され、ここで、AMIN≦A<AB、またはAMIN≦A≦AB、およびAB<AMAXである。本発展形においては、能動素子WEn=1,2のスペーシングAがA>ABまたはA≧ABであるときのみ、能動素子WEn=1,2の衝突監視が行われる。特に好適には、平行グリッパの能動素子(グリッパジョー)にセンサーがない。
【0023】
本方法にかかる衝突監視の作動または停止は、能動素子WEnの現在位置に応じて、また定義領域Bnに応じて、原則として、オブジェクトがロボットグリッパに対してこのロボットグリッパによって把持可能なように配置されているかどうかとは無関係に行われる。すなわち、能動素子WEnの間にオブジェクトが配置されていない場合でも、各能動素子WEnが割当領域Bnの外部に配置されているときのみ能動素子WEnの衝突監視が行われ、各能動素子WEnが少なくとも部分的に割当領域Bn内に配置されているときは能動素子WEnの衝突監視が停止される。
【0024】
上記ロボットグリッパの好都合な発展形は、ロボットグリッパがセンサーを有し、このセンサーによってロボットグリッパの把持領域におけるオブジェクトの有無が取得されることに特徴づけられる。すなわち、当該センサーが、オブジェクトが現在ロボットグリッパによって把持可能なように配置されていることを取得することに特徴づけられる。このセンサーによって把持領域のオブジェクトが確定された場合、能動素子WEnの衝突監視は、これら能動素子WEnが少なくとも部分的に指定の領域Bn内にあるならば、停止される。このセンサーによって把持領域にオブジェクトがないことが確定された場合、好都合には、領域Bnにおける衝突監視は停止されない。この場合、ロボットグリッパの全作業領域において衝突監視が行われる。
【0025】
好都合には、ロボットグリッパの把持領域におけるオブジェクトを確定するセンサーは、例えば、カメラセンサー、超音波センサー、レーザーセンサー、赤外線センサー、容量センサー、誘導センサー、マイクロ波センサー、またはこれらの組み合わせである。
【0026】
提案される方法の好都合な発展形は、衝突監視がロボットグリッパの指定の動的モデルに基づいて行われることに特徴づけられる。この動的モデルは、ロボットグリッパの要素およびそれらの動的相互作用をシミュレーションすることができる数学モデルである。特に、駆動ユニットのクローズドループおよびオープンループ制御の制御ユニットは、この動的モデルに基づく。
【0027】
【0028】
【0029】
提案される方法の発展形によれば、この操作は、以下の非包括的なリストの可能性から選択される。
・駆動ユニットAEを停止する。
・重力補正のために駆動ユニットAEを作動させる。
・摩擦補償のために駆動ユニットAEを作動させる。
・能動素子WEnから離れる制御された連続動作が行われるように、駆動ユニットAEを作動させる。
・能動素子WEnから離れる反射的な動作が行われるように、駆動ユニットAEを作動させる。
【0030】
好都合には、作業領域ABnにおける領域Bnの定義は、ロボットグリッパに対する手動または自動のティーチインプロセスによって行われる。好都合には、ティーチインプロセスは、以下のステップを含む。
・各能動素子WEnがオブジェクトに機械的に接触するようにオブジェクトを把持し、この過程で能動素子WEnに包囲された領域が領域AGnを定義する。
・領域Bnであって、領域AGnが指定のデルタ領域ΔBnによって外向きに広がる領域Bnを、Bn=AGn+ΔBnとなるように確定する。
・Bnを保存する。
【0031】
好ましくは、Bnの保存は、ロボットグリッパのメモリユニットに対して行われる。
【0032】
領域Bnを適切に選択することにより、特に人間と共同で行われるグリッパの操作中、特にロボットグリッパの把持プロセスを自動で行う際の、ジャミングのリスクを予防または少なくとも大幅に低減することができる。
【0033】
例えば、直径5cm(AG=5cm)の球体を平行グリッパによって把持しようとする場合、2個のグリッパジョーについて、共通領域B=AG+ΔBは、好都合には、5.5cmのグリッパジョーのスペーシングによって定義される。これにより、球体がグリッパジョーの間の中央に配置される場合、グリッパジョーが互いに向かってさらに移動する際の衝突監視が停止される前に、球体の両側に2.5mm(=ΔB/2)が残ることになる。好都合には、球体の両側の2.5mmは、グリッパジョーと球体の間に人間の指が入らないように測定される。
【0034】
よって、提案される方法は、特に、ロボットグリッパと操作者の共同作業中における安全性を向上させる。
【0035】
ロボットグリッパは、ロボットのマニピュレータに接続されていれば、ロボットの中央制御装置からの制御コマンドを受信することができる。これらの制御コマンドは、ロボットグリッパの制御ユニットに伝達される。ロボットグリッパの制御ユニットは、これら制御コマンドを変換し、原則としてこれにしたがって駆動ユニットを作動させて、本発明にかかる衝突監視ならびに本発明にかかる衝突監視の作動および停止をロボットグリッパの制御ユニットでローカルに行う。好都合には、能動素子WEnについて検出された衝突が、ロボットグリッパの制御ユニットによってロボットの中央制御装置に伝達される。
【0036】
本発明のさらなる局面は、ロボットグリッパであって、N個の能動素子WEnを有するパワートレインASを駆動するための少なくとも1の駆動ユニットAEであって、前記能動素子WEnのそれぞれは、前記ロボットグリッパに対して本体が固定された形で配され、前記能動素子WEnが運動可能であり、これらが達する作業領域ABnを有する、少なくとも1の駆動ユニットAEと、上記少なくとも1の駆動ユニットAEのクローズドループおよびオープンループ制御のための制御ユニットと、上記制御ユニットに接続され、前記各能動素子WEnに外部から与えられる、n=1,2,…,NおよびN≧1であるフォース/モーメントFext,WEn(t)確定するためのセンサーシステムとを備え、前記制御ユニットは、前記能動素子WEnの衝突監視を行うことができるよう構成され、前記各能動素子WEnが前記作業領域ABn内の指定された割当領域Bnの外部に位置するときのみ、前記能動素子WEnの前記衝突監視が行われるよう構成され、能動素子WEnが少なくとも部分的に前記割当領域Bn内に位置するときは、前記能動素子WEnの前記衝突監視が停止されるよう構成され、能動素子WEnの衝突イベントが検知された場合には、指定の操作に従って前記駆動ユニットが動作されるよう構成される、ロボットグリッパに関する。
【0037】
上記駆動ユニットAEは、好都合には、電気モーター、または油圧アクチュエータ、または空気圧式アクチュエータである。また、駆動ユニットAEは、伝達ユニットを備えてもよい。
【0038】
好都合には、各駆動領域ABnは、三次元または二次元または一次元領域である。好都合には、各領域Bnは、三次元または二次元または一次元領域である。
【0039】
特に好適な発展形において、ロボットグリッパは、2つの能動素子WEn=1,2を有する平行グリッパとして構成され、共通作業領域ABおよび共通領域Bは能動素子WEn=1,2のスペーシングレンジにより定義される。作業領域ABは、好都合には、能動素子WEn=1,2が互いに対してとることのできる最小スペーシングAMINから最大スペーシングAMAXまでのスペーシングレンジとして定義される。課題の定義に応じて、本発展形の領域Bは、スペーシング最大値ABによって相応に指定され、よってAMINからスペーシングABまでのスペーシングAをすべて網羅する。
【0040】
よって、領域Bは、能動素子WEn=1,2の互いに対するスペーシングAによって定義され、ここで、AMIN≦A<AB、またはAMIN≦A≦AB、およびAB<AMAXである。本発展形において、能動素子WEn=1,2の衝突監視は、能動素子WEn=1,2のスペーシングAがA>ABまたはA≧ABであるときのみ行われる。特に好適には、平行グリッパの能動素子(グリッパジョー)はセンサーを有さない。
【0041】
【0042】
提案されるロボットグリッパの好都合な発展形において、制御ユニットは、ロボットグリッパの指定の動的モデルに基づいて衝突監視がおこなわれるよう構成される。
【0043】
好都合には、制御ユニットは、外乱変数オブザーバ、特にパフォーマンスオブザーバまたはパルスオブザーバまたは速度オブザーバまたは加速度オブザーバを用いて、衝突監視がおこなわれるよう構成される。
【0044】
【0045】
【0046】
好都合には、制御ユニットは、この操作が、以下の非包括的なリストの可能性から選択されるよう構成される。
・駆動ユニットAEを停止する。
・重力補正のために駆動ユニットAEを作動させる。
・摩擦補償のために駆動ユニットAEを作動させる。
・能動素子WEnから離れる制御された連続動作が行われるように、駆動ユニットAEを作動させる。
・能動素子WEnから離れる反射的な動作が行われるように、駆動ユニットAEを作動させる。
【0047】
好都合には、ロボットグリッパは筐体を有し、筐体内部で少なくとも駆動ユニットAEと制御ユニットとが統合される。好都合には、制御ユニットは、プロセッサと、メモリユニットと、例えばロボットグリッパが接続されるロボットを制御する中央コンピュータの目標制御変数を指定するインターフェースと、を備える。
【0048】
最後に、本発明は、上記のロボットグリッパを備えるロボットまたは人型ロボットに関する。
【0049】
さらなる利点、特徴、および詳細は、任意に図面を参照し、少なくとも1の実施形態が詳細に記載される以下の説明から得られる。同一、類似、および/または機能的に等価な要素には、同一の参照符号をつける。
【図面の簡単な説明】
【0050】
以下のとおり図に示す。
【0051】
【
図1】
図1は、高度に模式化された方法の手順である。
【
図2】
図2は、提案されるロボットグリッパの高度に模式化された上記構成である。
【0052】
図1は、ロボットグリッパの操作方法の手順を高度に模式化して示すものであり、ロボットグリッパは、N個の能動素子WE
nを有するパワートレインASを駆動するための少なくとも1の駆動ユニットAEであって、各能動素子WE
nはロボットグリッパに対して本体が固定された形で配された作業領域を有し、作業領域において当該能動素子WE
nが運動可能であり、これらが作業領域に到達する、少なくとも1の駆動ユニットAEと、駆動ユニットAEを制御するための制御ユニットと、センサーユニットに接続され、各能動素子WE
nに外部から与えられる、n=1,2,…,NおよびN≧1であるフォース/モーメントF
ext,WEn(t)を確定するためのセンサーシステムとを備える。
【0053】
制御ユニットは、能動素子WEnについて、衝突監視が自律的およびローカルに(すなわち、外部制御ユニット、および/または外部プロセッサの必要なく)行われ、能動素子WEnについて衝突が検出されたときは指定の操作にしたがって駆動ユニットが自律的およびローカルに作動されるよう構成される。
【0054】
本方法は、ロボットグリッパの操作中、特にロボットグリッパによってオブジェクトが把持されている間に行われる、以下のステップを含む。第1のステップ201において、能動素子WEnについて、それぞれ、割り当てられた作業領域ABn内への定義領域Bnの配置が行われる。
【0055】
把持タスクを行うためにロボットグリッパが作動されている間、例えば、ロボットグリッパが接続されたロボットの外部中央制御装置によって制御されている間、ステップ202において、ロボットグリッパの制御ユニットによる能動素子WEnの衝突監視の自律的な実行は、各能動素子WEnが領域Bの外部に位置するときに常に行われ、能動素子WEnの衝突監視はそれぞれの能動素子WEnが少なくとも部分的に領域Bの外に位置するときに常に停止される。
【0056】
好都合には、ロボットグリッパの制御ユニットは、能動素子WEnの一つについて衝突が検出されたとき、衝突信号を生成する。好都合には、ロボットグリッパの制御ユニットは、能動素子WEnの衝突監視が停止されたとき、停止信号を生成する。好都合には、ロボットグリッパは、これらの信号が外部制御ユニットに伝達されるように、インターフェースに衝突信号および/または停止信号を与える。
【0057】
提案される方法の一実施形態において、少なくとも1の能動素子WEnが少なくとも部分的に割当領域Bnの内部に位置するとき、全ての能動素子WEnについて衝突監視が停止される。
【0058】
図2は、平行グリッパとして実施される提案されたロボットグリッパ100の高度に模式化された構成を示す。ロボットグリッパ100は駆動ユニット101を備え、この場合、この駆動ユニットは、下流トランスミッション110を有する電気モーターとして構成され、N=2個の能動素子WE
n=1,2103(グリッパジョーとも呼ぶ)を有するパワートレイン102の駆動に用いられる。駆動ユニット101は、互いに向かってまたは互いから離れるように運動し、これに応じて能動素子WE
n=1,2103のスペーシングAが変化するようにパワートレイン102を介して能動素子WE
n=1,2103を駆動する。
【0059】
2つの能動素子WE
n=1,2103は、ロボットグリッパに対して本体が固定された形で設けられた共通作業領域ABを有し、能動素子WE
n=1,2103はこの領域内で移動可能またはこの領域をとることができる。この場合、作業領域ABは、
図2に示す、表示される位置A
MAX,n=1から中央(二点鎖線)に到達する、上部グリッパジョー103aの第1作業領域AB
n=1と、
図2に示す、表示される位置A
MAX,n=2から中央(二点鎖線)に到達する、下部グリッパジョー103bの第2作業領域AB
n=2とからなる。
【0060】
よって、この場合、平行グリッパの構成された作業領域ABは、能動素子WE
n=1,2103が互いに対してとることのできる、A=0(能動素子WE
n=1,2の最小スペーシング)から最大スペーシングA
MAX=|A
MAX,n=1-A
MAX,n=2|までの能動素子WE
n=1,2103のすべてのスペーシングAに相当する(
図2にABで示す)。
【0061】
また、平行グリッパは、駆動ユニット101を制御するための制御ユニット104と、制御ユニット104に接続され、各能動素子WEn=1,2に外部から与えられる、n=1,2,…,N、およびN≧1であるフォース/モーメントFext,WEn(t)を確定するためのセンサーシステム105とを有する。
【0062】
【0063】
また、平行グリッパ100は、電気エネルギーおよび外部制御ユニットからの制御信号用のインターフェース111を有する。インターフェース111は、少なくとも1の信号線112と少なくとも1の送電線113とによって制御ユニット104に接続されている。
【0064】
平行グリッパ100が、例えばエフェクタとしてロボットのマニピュレータに接続されている場合、例えば制御信号および平行グリッパ100のエネルギーが、インターフェース111を介してロボットの中央制御装置に与えられる。
【0065】
制御ユニット104は、能動素子WEn=1,2103の衝突監視が行われるよう構成され、能動素子WEn=1,2103の衝突監視は各能動素子WEn=1,2103が作業領域AB内に位置する指定の領域Bの外に位置する場合にのみ行われ、各能動素子WEn=1,2103が少なくとも部分的に領域Bの内部に位置するときは能動素子WEn=1,2103の衝突監視が停止され、能動素子WEn=1,2の衝突が検出された場合には指定の操作にしたがって駆動ユニット101が作動される。
【0066】
この衝突監視は、原則として、制御コマンド、例えば外部のロボットの誤動作とは無関係に行われる。
【0067】
領域B、すなわち本発明にかかる衝突監視が停止される領域は、この場合、課題の定義に応じて、スペーシング限界値ABによって指定され、領域BはここでA<ABまたはA≦ABおよびAB<AMAXである能動素子WEn=1,2のスペーシングAによって定義される。本発展形において、能動素子WEn=1,2の衝突監視は、能動素子WEn=1,2においてスペーシングが、>または≧ABである場合にのみ行われる。特に好適には、平行グリッパの能動素子(グリッパジョー)にはセンサーがない。
【0068】
図2において、上記の領域において、球体(断面)がグリッパジョー103a,103bの間の中心部に配置されている状態を示しており、グリッパジョー103a,103bは、それぞれ最大限に移動した位置にある、すなわち最大スペーシングをとっている。示されるグリッパジョーの最大スペーシングは、作業領域ABを定義する。作業領域AB内に位置する領域Bは、衝突監視が停止される領域を示す。この場合、球体の直径D=AGおよび球体の両側にあるセイフティゾーンΔB/2によって、領域Bが定義される。
【0069】
球体を把持している間、グリッパジョーが図に示す位置から互いに向かって移動するときに、外部フォース/モーメントがグリッパジョーに加えられると、グリッパジョーがそれぞれ領域Bの外に位置する場合には対応する衝突が検出される。検出された衝突が、指定の操作、特に駆動ユニットの停止の原因となる。また、衝突信号がインターフェース111に与えられて外部制御ユニットに伝達される。
【0070】
制御ユニット104における衝突監視は、平行グリッパ100の指定の動的モデルに基づいて行われる。また、制御ユニット104の衝突監視は、外乱変数オブザーバを用いて行われる。
【符号の説明】
【0071】
100:ロボットグリッパ
101:駆動ユニット
102:パワートレイン
103:能動素子WEn
104:制御ユニット
105:センサーシステム
110:トランスミッション
111:電気エネルギーおよび外部制御ユニットの制御信号用のインターフェース
112:制御信号線
113:電気エネルギー線
201,202:方法のステップ
【国際調査報告】