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特表2022-526357レーザー放射線の振幅を変調する超高速変調器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(54)【発明の名称】レーザー放射線の振幅を変調する超高速変調器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/017 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
G02F1/017 504
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557521
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2020058841
(87)【国際公開番号】W WO2020193786
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】1903211
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(71)【出願人】
【識別番号】509003298
【氏名又は名称】ユニベルシテ・パリ-サクレー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コロンベリ,ラファエーレ
(72)【発明者】
【氏名】ピロッタ,ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】トラン,ゴック・リン
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA20
2K102AA35
2K102BA05
2K102BB01
2K102BC04
2K102CA18
2K102DA14
2K102DB01
2K102DD03
2K102EA02
(57)【要約】
波長λの入射レーザー放射線(1)の振幅を変調するデバイス(10、100)であって、
複数の量子井戸の積み重ねを含む半導体層(4)があり、構造化金属上層(2)がある金属下層(3)を含み、2つの金属層(2、3)は、入射レーザー放射線(1)を反射し、上層の構造化及びこれらの2つの金属層の間の距離Lは、少なくとも1つの共振モードを有する光学マイクロキャビティをデバイスが形成するのに十分小さく、
活性井戸と呼ばれる量子井戸の少なくとも一部は、中心波長λISB=hc/EISBでサブバンド間吸収を有し、この中心波長λISBにおけるこのサブバンド間遷移とマイクロキャビティのモードのうち1つのモードとの間の結合は、キャビティポラリトンの励起、及びエネルギーEISB±hΩRabi(但し、ΩRabiは、ラビ周波数である)におけるラビ分裂を駆動し、
このデバイスは、2つの金属層の間に2つの異なる電圧差V及びVを印加するように構成されている電気回路(5)を含み、デバイス(4)は、電圧差Vの場合に入射放射線(1)を吸収し、デバイスは、電圧差Vの場合に入射放射線を反射するか又は透過させることを特徴とする、デバイス(10、100)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長λを有する、デバイスへの入射レーザー放射線(1)の振幅を変調するデバイス(10、100)であって、
複数の量子井戸の積み重ねを含む半導体層(4)があり、構造化金属上層(2)がある金属下層(3)を含み、前記2つの金属層(2、3)は、前記入射レーザー放射線(1)を反射し、前記上層の構造化及び前記2つの金属層の間の距離Lは、少なくとも1つの共振モードを有する光学マイクロキャビティを前記デバイスが形成するのに十分小さく、
活性井戸と呼ばれる前記量子井戸の少なくとも一部は、中心波長λISB=hc/EISBでサブバンド間吸収を有し、前記中心波長λISBにおける前記サブバンド間遷移と前記マイクロキャビティの前記モードのうち1つのモードとの間の結合は、キャビティポラリトンの励起、及びエネルギー
【数1】
(但し、ΩRabiは、ラビ周波数である)におけるラビ分裂を駆動し、
前記デバイスは、前記2つの金属層の間に2つの異なる電圧差V及びVを印加するように構成されている電気回路(5)を含み、前記デバイス(4)は、前記電圧差Vの場合に前記入射放射線(1)を吸収し、前記デバイスは、前記電圧差Vの場合に前記入射放射線を反射するか又は透過させる
ことを特徴とする、デバイス(10、100)。
【請求項2】
前記金属下層は、不連続でなく、前記デバイスは、前記電圧差Vの場合に前記入射放射線を反射する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記金属上層は、距離aだけ離れて、幅s(但し、s+a<λ/2)の複数の金属ストリップによって形成されている、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記金属ストリップの前記幅sは、±30%までs=λ/2.n(但し、nは、前記半導体層の屈折率である)であるようになっている、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記金属ストリップの前記幅s=λ/2.nsは、±30%までs=3.λ/2.n(但し、nは、前記半導体層の屈折率である)であるようになっている、請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
前記半導体層と前記金属層との間の接触は、ショットキー接触によって、又は絶縁層の導入によって生成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記2つの金属層の間の前記距離Lは、±30%までλ/30に等しい、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記2つの金属層の間の前記距離Lは、前記デバイスが非分散形態で動作するようにデジタルシミュレーションによって選択されている、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記量子井戸、又は前記量子井戸を分離する障壁は、電子的にドープされており、前記2つの金属層の間に前記電気回路(5)によって印加されている第1の電圧差Vの場合、前記デバイスが、前記エネルギー
【数2】
に対して吸収を示し、前記キャビティの前記共振モードに等しい前記波長に対して吸収を示さないように、前記量子井戸は選択されており、及び第2の電圧差Vの場合、前記半導体層の前記全量子井戸の電荷が減少され、前記デバイスが、前記キャビティ共振モードに対して吸収を示し、前記エネルギー
【数3】
に対して吸収を示さないように、前記量子井戸は選択されている、請求項8に記載のデバイス(10)。
【請求項10】
前記半導体層の厚さLは、Vが、前記半導体層と前記金属層との間の前記接触によって支持されている最大電圧未満であるようになっている、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記半導体層の前記厚さLは、Vが10V未満であるように選択されている、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記2つの金属層の間の前記距離Lは、±30%までλ/10に等しい、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記半導体層は、貯留所と呼ばれる広い井戸から第1の障壁によって分離されている活性井戸と呼ばれる狭い非ドープ井戸で構成されている結合量子井戸の積み重ねを含み、前記結合量子井戸は、前記第1の障壁よりも広い第2の障壁から互いに別の側で分離されており、各結合量子井戸の前記第1の障壁又は前記貯留所は、電子的にドープされており、前記光学マイクロキャビティの共振モードに近い中心波長λISBでサブバンド間吸収を前記活性井戸が示すために、前記活性井戸は選択されており、
前記2つの金属層の間に前記電気回路(5)によって印加されている第1の電圧差Vの場合、ドーピングから発生する前記電荷が、トンネル効果によって前記狭い井戸に移動され、及び前記デバイスが、前記エネルギー
【数4】
に対して吸収を示し、前記キャビティの前記共振モードに等しい前記波長に対して吸収を示さないように、前記結合量子井戸は適合されており、第2の電圧差Vの場合、前記デバイスが、前記キャビティの前記共振モードに等しい前記波長に対して吸収を示し、前記エネルギー
【数5】
に対して吸収を示さないように、前記結合量子井戸は適合されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項14】
前記半導体層の前記厚さLは、Vが2V以下であるように選択されている、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記半導体層は、量子井戸の前記積み重ねが前記金属上層の前記金属ストリップの真下だけに設置されるように構造化されている、請求項2~12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記半導体層の前記量子井戸は、GaAs/AlGaAs、InGaAs/AlInAs、InAs/AlSb、Si/SiGe、GaN/AlGaNで生成されている、請求項1~15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記デバイスの特性寸法は、200μm未満である、請求項1~16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記金属下層は、不連続であり、前記デバイスが前記電圧差Vの場合に前記入射放射線を透過させるように構造化されており、前記デバイスは、前記金属下層の下に、前記金属下層と接触して、前記入射放射線に対して透過的である基板8を含む、請求項3~17のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学変調の分野、より詳細には、特に赤外線における電気光学変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
中間赤外線におけるレーザー放射線の振幅の超高速変調は、特に、光搬送波を用いた情報伝送用の電気通信の分野で、強い関心を引き出す研究の領域である。実際に、2つの大気窓(3~5μm及び8~12μm)のうち1つの大気窓内で波長を有する光搬送波を用いて、ミー理論は、大気擾乱(水蒸気、大気粒子など)に対して空中の情報伝送に強いロバスト性を示す。このロバスト性は、大気粒子の平均サイズが一般的に、搬送波の波長よりも非常に小さいという事実によるものである。
【0003】
搬送波の周波数に対して周波数に正確に位置決めされるサイドバンドを超高速変調が生成することができるので、関心の第2の領域は、計量学及び高分解能分光法である。
【0004】
現在、中間赤外線におけるレーザーは大部分、量子カスケードレーザーである。しかし、この波長範囲内で、高い周波数(サブGHz以上)で変調可能な市販の供給装置がない。科学文献で入手でき、提案されるまれな解決策は、まだ、複雑で高価な実証段階であり、使用及び用途が大幅に制限される。
【0005】
先行技術から、2つの結合量子井戸の間の電荷移動に頼る中間赤外線における超高速電気光学変調器を製造することが知られている(Nevou,L.,et al.(2007).Short-wavelength intersubband electroabsorption modulation based on electron tunneling between GaN/AlN coupled quantum wells.Applied Physics Letters,90(22),223511)。このデバイスにおいて、GaN量子井戸を、AlNで形成された極薄ポテンシャル障壁によって結合する。1つの井戸は、貯留所として機能し、別の活性井戸は、照明波長でサブバンド間(ISB)遷移を示すように設計されている。正電圧の印加の下で、電子を、トンネル効果によって貯留井戸から活性井戸に移動し、次に、変調器は、吸収状態になる。変調器は、電子を貯留井戸に戻す負電圧を印加することによって、再度透過状態になる。電荷移動機構は、速い(数ピコ秒)ので、デバイスは、優れた応答時間(数GHz)を得ることができる。しかし、デバイスは、低い変調度(λ=2.1μmで約30%)を可能にするだけである。
【0006】
更に、電場の作用下で量子井戸の増加/減少に頼る中間赤外線における超高速変調器を製造することが知られている(Machhadani,H.,et al.(2009).GaN/AlGaN intersubband optoelectronic devices.New Journal of Physics,11(12),125023)。3つのGaN/AlN量子井戸で構成された活性領域をAlGaNで形成された導波路に挿入することによって、±7Vの電圧を用いた13.5dBの1.55μmにおける変調度が実証されている。この種のデバイスにおいて、応答周波数は、量子井戸を空にすることができるゲート電圧を印加する電気回路のRC定数によってだけ制限される。実際に、応答時間を制限する他の現象は、(数ピコ秒のオーダーの)トンネル効果によって生成されるので、非常に速い、結合量子井戸の間の電荷移動である。しかし、このデバイスは、導波路に大幅な伝搬損失をもたらす。
【0007】
最後に、マイクロキャビティに配置された量子井戸(量子井戸は、大幅な含有量子シュタルク効果を示すように構成されている)の積み重ねに基づく電気光学変調器を製造することが当業者に知られている(Lee,J.,et al.(2014).Ultrafast Electrically Tunable Polaritonic Metasurfaces.Advanced Optical Materials,2(11),1057-1063)。このデバイスにおいて、マイクロキャビティの2つの要素の間の電場の印加によって、及び含有量子シュタルク効果によってISB吸収ピークを移動させることができる量子井戸の積み重ねを介して、変調を行う。更にここで、このようなデバイスの応答時間は、電気回路のRC定数によってだけ制限される。しかし、変調度は、低いままである(λ=7.12μmに対して30%)。
【0008】
本発明の目的は、先行技術から特定の問題を緩和することにある。このために、本発明の1つの主題は、デバイスの優れた応答時間及び優れた変調度を得るために、強い結合形態を用いたマイクロキャビティに配置された量子井戸の積み重ねに基づく電気光学変調器である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Nevou,L.,et al.(2007).Short-wavelength intersubband electroabsorption modulation based on electron tunneling between GaN/AlN coupled quantum wells.Applied Physics Letters,90(22),223511
【非特許文献2】Machhadani,H.,et al.(2009).GaN/AlGaN intersubband optoelectronic devices.New Journal of Physics,11(12),125023
【非特許文献3】Lee,J.,et al.(2014).Ultrafast Electrically Tunable Polaritonic Metasurfaces.Advanced Optical Materials,2(11),1057-1063
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
このために、本発明の1つの主題は、波長λの入射レーザー放射線(1)の振幅を変調するデバイスであって、複数の量子井戸の積み重ねを含む半導体層(4)があり、構造化金属上層(2)がある金属下層(3)を含み、2つの金属層(2、3)は、入射レーザー放射線(1)を反射し、上層の構造化及びこれらの2つの金属層の間の距離Lは、少なくとも1つの共振モードを有する光学マイクロキャビティをデバイスが形成するのに十分小さく、活性井戸と呼ばれる量子井戸の少なくとも一部は、中心波長λISB=hc/EISBでサブバンド間吸収を有し、この中心波長λISBにおけるこのサブバンド間遷移とマイクロキャビティのモードのうち1つのモードとの間の結合は、キャビティポラリトンの励起、及びエネルギー
【数1】
(但し、ΩRabiは、ラビ周波数である)におけるラビ分裂を駆動し、このデバイスは、2つの金属層の間に2つの異なる電圧差V及びVを印加するように構成されている電気回路(5)を含み、デバイス(4)は、電圧差Vの場合に入射放射線(1)を吸収し、デバイスは、電圧差Vの場合に入射放射線を反射するか又は透過させることを特徴とする、デバイスである。
【0011】
本発明の特定の実施形態によれば、下記の通りである。
- 金属下層は、不連続でなく、デバイスは、電圧差Vの場合に入射放射線を反射する。
- 金属上層は、距離aだけ離れて、幅s(但し、s+a<λ/2)の複数の金属ストリップによって形成されている。
- 金属ストリップの幅sは、±30%までs=λ/2.n(但し、nは、この半導体層の屈折率である)であるようになっている。
- 金属ストリップの幅s=λ/2.nsは、±30%までs=3.λ/2.n(但し、nは、この半導体層の屈折率である)であるようになっている。
- 半導体層と金属層との間の接触は、ショットキー接触によって、又は絶縁層の導入によって生成されている。
- これらの2つの金属層の間の距離Lは、±30%までλ/30に等しい。
- 2つの金属層の間の距離Lは、このデバイスが非分散形態で動作するようにデジタルシミュレーションによって選択されている。
- 量子井戸、又は量子井戸を分離する障壁は、電子的にドープされており、これらの2つの金属層の間にこの電気回路(5)によって印加されている第1の電圧差Vの場合、デバイスが、エネルギー
【数2】
に対して吸収を示し、キャビティの共振モードに等しい波長に対して吸収を示さないように、量子井戸は選択されており、第2の電圧差Vの場合、半導体層の全量子井戸の電荷が減少され、デバイスが、キャビティ共振モードに対して吸収を示し、エネルギー
【数3】
に対して吸収を示さないように、量子井戸は選択されている。
- 半導体層の厚さLは、Vが、半導体層と金属層との間の接触によって支持されている最大電圧未満であるようになっている。
- 半導体層の厚さLは、Vが10V未満であるように選択されている。
- これらの2つの金属層の間の距離Lは、±30%までλ/10に等しい。
- 半導体層は、貯留所と呼ばれる広い井戸から第1の障壁によって分離されている活性井戸と呼ばれる狭い非ドープ井戸で構成されている結合量子井戸の積み重ねを含み、結合量子井戸は、この第1の障壁よりも広い第2の障壁から互いに別の側で分離されており、各結合量子井戸の第1の障壁又は貯留所は、電子的にドープされており、この光学マイクロキャビティの共振モードに近い中心波長λISBでサブバンド間吸収を活性井戸が示すために、活性井戸は選択されており、
これらの2つの金属層の間にこの電気回路(5)によって印加されている第1の電圧差Vの場合、ドーピングから発生する電荷が、トンネル効果によって狭い井戸に移動され、デバイスが、エネルギー
【数4】
に対して吸収を示し、キャビティの共振モードに等しい波長に対して吸収を示さないように、これらの結合量子井戸は適合されており、第2の電圧差Vの場合、デバイスが、キャビティの共振モードに等しい波長に対して吸収を示し、エネルギー
【数5】
に対して吸収を示さないように、これらの結合量子井戸は適合されている。
- 半導体層の厚さLは、Vが2V以下であるように選択されている。
- 半導体層は、量子井戸の積み重ねが金属上層の金属ストリップの真下だけに設置されるように構造化されている。
- 半導体層の量子井戸は、GaAs/AlGaAs、InGaAs/AlInAs、InAs/AlSb、Si/SiGe、GaN/AlGaNで生成されている。
- 特性寸法は、200μm未満である。
- 金属下層は、不連続であり、このデバイスが電圧差Vの場合に入射放射線を透過させるように構造化されており、このデバイスは、金属下層の下に金属下層と接触して、入射放射線に対して透過的である基板8を含む。
【0012】
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、一例として与えられ、それぞれ示す添付図面を参照して与えられる説明を読めば、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態による入射レーザー放射線の振幅を変調する超高速変調デバイスの略図である。
図2】非分散形態におけるデバイスのバンド図である。
図3】分散形態におけるデバイスのバンド図である。
図4】本発明の第2の実施形態による入射レーザー放射線の振幅を変調する超高速変調デバイスの略図である。
図5】印加電圧有又は無の本発明のデバイスの反射率である。
図6】本発明の第3の実施形態による透過中の入射レーザー放射線の振幅を変調する超高速変調デバイスの略図である。
図7】本発明の実施形態による変調デバイスの金属上層である。
図8】本発明の実施形態による変調デバイスの例示である。
図9】本発明の実施形態による変調デバイスの例示である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
特に、本発明の主題は、外部電場をマイクロキャビティに印加することによって、入射レーザー放射線の振幅を変調することができるマイクロキャビティに挿入された半導体層で構成されているデバイスである。マイクロキャビティと半導体層との間の光学材料結合を、強い結合形態で生成する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態による入射レーザー放射線1の振幅を変調する超高速変調デバイス10の線図である。このデバイス10は、反射で動作し、90%を超える変調度で高速変調(10MHzを超える)を得ることができる。図1の実施形態において、振幅を変調することが望ましい入射レーザー放射線1は、波長λ(但し、λ∈[3~20μm])を有し、従って、変調レーザー放射線6を与える。
【0016】
図1の実施形態において、レーザー放射線1は、連続波放射線である。代わりに、レーザー放射線1は、パルス放射線であることができる。
【0017】
図1のデバイス10は、第1の金属下層3、中間半導体層4、及び金属上層2で構成されている。2つの金属層の厚さは、80nm~300nmの間で形成される。中間半導体層は、活性領域とも呼ばれる。
【0018】
金属下層は均一であり、不連続性を有しない。金属上層は、距離aだけ離れて、幅s(但し、s+a<λ/2)の複数の金属ストリップによって形成されている。デバイスが回折格子として機能しないようにする、従って、入射レーザー放射線の変調で追加の回折次数の出現を示さないようにすることができるので、この基準は重要である。
【0019】
図1の実施形態において、2つの金属層の間の距離、又は活性領域の最大厚さLは、入射レーザー放射線の波長よりも非常に小さい(L≦λ/10)。従って、2つの金属層によって形成されたキャビティは、波長λで単一共振モードを有するマイクロキャビティ又は光学微小共振器として機能する。以下、活性領域の厚さ、及び2つの金属層の間の距離は、等しく、値Lを有すると考えられる。
【0020】
図1のデバイスは、入射RF信号7から2つの金属層の間の電圧差を印加するように構成されている電気回路5を含む。半導体層に金属接触(例えば、チタン/金)を直接付着させることによるショットキー接触によって、又は半導体層を流れる非常に大きい電流を回避するために光電子デバイスの製造に適合する絶縁層(例えば、SiN又はSiO2又は任意の他の絶縁体)の導入によって、中間半導体層と金属層との間の接触を生成する。以下、2つの金属層の間の電圧差の印加又は非印加(従って、電場の生成)の影響について詳述する。ここで、所与の波長で半導体層の吸収の変化を引き起こすことができることを簡単に説明する。
【0021】
半導体層の厚さLに応じて、マイクロキャビティは、非分散又は分散モードで動作することができる。分散モードでは、マイクロキャビティの共振周波数又は複数の共振周波数は入射放射線の角度に左右される一方、非分散モードでは、共振周波数又は複数の共振周波数は入射放射線の入射角に左右されない。この非分散モードの場合、共振周波数は単に金属ストリップの幅sによって設定される。Lはデバイスの動作波長に影響を与えず、分散又は非分散動作形態だけに影響を与えることに留意すべきである。
【0022】
第1の実施形態において、半導体層の厚さLは、振幅を変調することが望ましい入射レーザー放射線の波長λで、非分散モードで動作するために、λ/30に略等しい。従って、金属上層に属する各金属ストリップは、金属下層と共に「単一」キャビティを形成する。なぜなら、電磁場は、各金属ストリップの下だけの各単一キャビティに位置するからである。従って、共振の強い横方向閉じ込めのために、単一キャビティの間の相互作用がない。この場合、デバイスの反射率は非常に高い。一般的に、活性領域の厚さが、±30%までλ/30に等しい場合、微小共振器は非分散形態で動作すると考えられる。好ましくは、非分散形態で動作するように、共振器のストリップ構造のデジタルシミュレーションによって活性領域の厚さLを選択する。
【0023】
非分散の実施形態において、ストリップの幅sは、振幅変調デバイス10の使用の波長を設定することができる。半導体層が入射レーザー放射線を吸収しない場合、デバイス10は、2つの異なる波長λ=2.n.s及びλ=2.n.s/3(但し、nは、半導体層の屈折率である)にそれぞれ対応する2つの共振モードTM00及びTM02で動作することができる。代わりに、別の実施形態によれば、デバイス10は、波長λ=2.n.s/(i+1)に各モードが対応する共振モードTM0i(但し、i∈N)で動作する。
【0024】
図2は、非分散動作の場合における共振モードを概略的に例示する。図2は、(中間半導体層が入射レーザー放射線を吸収しない場合)入射レーザー放射線の周波数及び角度に応じた図1のデバイスの反射率を表す。2つの水平ストリップ20及び21は、2つの共振モードTM00及びTM02にそれぞれ対応する。各共振モードは、特定の線幅δEを有する。上述のように、2つの金属層の間の短い距離を介して、キャビティ共振モードの周波数は、レーザー放射線の入射角と無関係である。例えば、図1の実施形態において、波長λcav=h.c/Ecav=9.5μmにおける共振モードTM00を使用することができる。半導体層は、屈折率n≒3.3を有するGaAsで形成された量子井戸の積み重ねで構成されている。次に、金属ストリップの幅は、s=1.44μmである。共振モードの線幅は、値δEcavを有する。
【0025】
金属ストリップの幅sを設定することによって使用の波長を設定した後、金属ストリップの間の間隔aを、臨界光結合のできるだけ近くに設置されるようにシミュレーションによって選択する。この状態で、(共振モードの線幅を与える)共振器の損失は、入射放射線の全エネルギーを吸収することを意味する、入射放射線から発生する光子の結合比に等しい。実際に、aは、金属ストリップ密度を設定する。具体的には、入射放射線の波長に応じて反射率の最良コントラストを得るように設定されたsを用いて、aを最適化する。間隔aの最適化をシミュレーションによって行い、最適値は、半導体活性領域によって異なることができる。図1の実施形態において、a=1.1μmである。
【0026】
代わりに、デバイス10は、分散形態で動作することができる。この動作形態で、半導体層の厚さLを、λ/10に略等しくなるように選択する。実際に、このような厚さに対して、電磁場は、分散挙動を引き起こす、結合される単一キャビティにおいて上層の金属ストリップの下だけにもはや位置しない。活性領域の厚さLがλ/10以上である場合、微小共振器は分散形態で動作すると考えられる。この動作形態で、光学モードの周波数は、入射角に依存する。
【0027】
図3は、デバイス10が分散形態で動作する場合、即ち、活性領域の厚さLがλ/10を超える場合のデバイス10の2つの光学共振モードを例示する。図2と同様に、図3は、中間半導体層が入射レーザー放射線を吸収しない場合、入射放射線の周波数に応じたデバイス10の反射率を表す。上述のように、波長に応じた2つの共振モード40及び41の周波数の依存性が観測される。2つの分岐の間の距離は、比s/aによって設定される。具体的には、図3の実施形態の分散形態におけるデバイス10は、入射角に応じて同調可能な最適動作周波数を有する。しかし、以下において、活性領域の厚さは図1のデバイス10が非分散形態で動作するようになっていると考えられる。
【0028】
図4に例示の別の実施形態において、デバイス100は、(単一キャビティに)金属ストリップの下だけに含まれる半導体層4を有する。単一キャビティの間に(金属上層の金属ストリップの間に)半導体層はない。換言すれば、金属によって覆われていない活性領域の部分で活性領域をエッチングする。これにより、単一キャビティの間の空気/半導体界面を生成することができ、従って、単一キャビティにおいて電磁モードのより良い閉じ込めを得ることができる。従って、キャビティにおける入射レーザー放射線のより良い結合が得られる。この実施形態において、非分散形態で動作するように、活性領域の厚さLを選択する。従って、半導体層の厚さは、λ/30に略等しい。図4の実施形態において、分散動作形態を得るのは実際には困難であることに留意すべきである。
【0029】
図1の実施形態において、半導体層は、幅LQW=9.5nmのGaAsで形成された7つの同じ量子井戸、及び幅20nmのAl0.3Ga0.7Asで形成された障壁で構成されている。量子井戸は、デルタドーピングの形でAl0.3Ga0.7As障壁に導入された6.1011cmの(n型の)電子ドーピングを有する。代わりに、ドーピングを井戸に導入することができる。次に、量子井戸は、線幅
【数6】
を有する
【数7】
で中間サブバンド(ISB)を有し、吸収レベルは、量子井戸に導入されたドーピングに比例する。この吸収線は、後で詳述される強い光学材料結合を引き起こすマイクロキャビティのモードTM00と共振関係にある。別の実施形態において、線幅δEcavのエネルギーマイクロキャビティEcavの共振モードに近い線幅δEISBのサブバンド間エネルギー遷移EISB=h.c/λISBを量子井戸が示すように、量子井戸及び障壁の構造、ドーピング及び材料を選択する。近いとは、|EISB-Ecav|<δEcav+δEISBであることを意味すると理解されたい。
【0030】
図4の例示の第2の実施形態において、デバイス100は、複数の対の結合量子井戸の積み重ねで構成されている半導体層を含む。この実施形態において、結合量子井戸は、第1の薄い障壁によって分離された、活性井戸と呼ばれる狭い非ドープ井戸、及び貯留所と呼ばれる広い電子的ドープ井戸によって形成されている。各対の結合量子井戸を、第1の障壁よりも広い第2の障壁によって分離する。代わりに、電子ドーピングを、活性井戸から広い井戸を分離する第1の薄い障壁に導入することができる。
【0031】
例えば、下記の構造体(6.1011cm-2又は1.2.1012cm-2のドーピングを有するGaAsの広い14.5nmの井戸からAl0.3Ga0.7Asで形成された薄い4nmの障壁によって分離された幅LQW=7.5nmのGaAsで形成された活性井戸)の5つの積み重ねで、半導体層を構成することができる。結合井戸を、Al0.3Ga0.7Asの18nmの障壁によって互いに分離する。
【0032】
この実施形態において、活性井戸は、線幅δEISBのλISB=9.5μmでISB遷移を示す。しかし、ドーピングから発生する電荷が、貯留井戸にあり、そのまま活性井戸にないので、デバイス100の半導体層は、9.5μmで吸収しない。
【0033】
代わりに、図4の実施形態の活性領域の構造は、図1のデバイス10で使用される構造と同一であることができ、図1の実施形態の活性領域の構造は、図4のデバイス100で使用される構造と同一であることができる。
【0034】
上述のように、量子井戸を共振キャビティに形成すると、ISBプラズモンと以下呼ばれる、光子とサブバンド間励起との間の相互作用が変更される。実際に、半導体マイクロキャビティは、キャビティの電磁場の単一モードを単一ISBプラズモンモードに選択的に結合することができる。図1の実施形態において、単一モードは、9.5μmでISB遷移に結合されるモードTM00である。この光学材料結合の行列の要素は、ラビ周波数と呼ばれる量Ωrabiによって表される。量Ωrabiが高ければ高いほど、結合は強い。
【0035】
下記のように定義する。
【数8】
【0036】
但し、LQW,totは、構造体における活性量子井戸だけの井戸の全長であり、Lは、半導体層の全長であり、LQWは、活性量子井戸の長さであり、f12は、(デジタル計算によって決まる)活性量子井戸のISB遷移の振動子力であり、εは、真空の誘電率であり、εslabは、活性領域の誘電率であり、mは、活性量子井戸における電子の有効質量である。最後に、nは、デルタドーピングの場合の各量子井戸又は障壁に導入された表面電子ドーピングである。
【0037】
図1の実施形態において、nは、Al0.3Ga0.7Asの障壁に導入されたドーピングに対応し、第2の実施形態(図4)において、nは、貯留井戸又は障壁に導入されたドーピングに対応する。この実施形態において、LQW,tot=Lである。
【0038】
デバイスの吸収状態と非吸収状態との間の最高変調コントラストを得るために、非吸収状態は、強い光子(ISBプラズモン)結合形態で動作する。実際に、特定の条件下で、この結合は、いわゆる強い結合になることができ、次に、キャビティポラリトンと呼ばれる、システムの新しい固有モードが現れる。結合キャビティ共振モード及びISB遷移の線幅を、δEcav及びδEISBと定義する。
【0039】
rabi<<δEcav、δEISBである場合、自然放出は不可逆的であり、放射再結合で放出される光子は、キャビティで「失われ」、Ωrabiに連結される(結合の)振動子力は、非常に弱いので、この光子を再度吸収することができる。これは、弱い結合形態である。逆に、Erabi>>δEcav、δEISBである場合、放出光子は、再吸収されるのに十分長く、キャビティにとどまる。これは、強い結合形態である。従って、量子井戸とキャビティ光子モードとの間のコヒーレントエネルギー交換がある。この現象は、可逆的である。これらは、ラビ振動である。この形態において、システムの固有状態は、ポラリトン(上ポラリトン及び下ポラリトン)と呼ばれる混合光子ISBプラズモン状態である。スペクトル範囲で、ラビ分裂と呼ばれるエネルギー分離2.Ωrabiによって、及び結合状態の間で観測される反交差によって、ラビ振動を示す。具体的には、ωISB=2πc/λISBで、任意の結合から分離される、単純なサブバンド間遷移の周波数±Ωrabiにおける分裂によって、この強い結合及びこのラビ分裂を反射する。逆に、キャビティの共振の拡大によってだけ、ISB遷移とキャビティ共振モードとの間の弱い結合形態を反射する。
【0040】
本発明の全実施形態において、δEcav、δEISB≒EISB/10を有するように、量子井戸及びマイクロキャビティをパラメータ化する。
【0041】
従って、ラビ分裂に影響を与える半導体層の構造の異なるパラメータ(LQW,tot、L、LQW、f12、εslab、n)を、ERabi>δEISB、δEcavに対して適切に選択する。従って、δEISB、δEcav<EISB/10の場合、Erabi>>EISB/10は望ましい([数式1]参照)。
【0042】
次に、電気回路5によって金属層の間に生成される電場無しで、図1のデバイス10は、周波数ωISB±±Ωrabiで入射レーザー放射線を吸収し、周波数ωcavのキャビティの共振モードに近い量子井戸のISB遷移に対応する周波数ωISBで吸収しないものと理解されたい。実際に、電子は、キャビティ内の量子井戸に存在し、強い結合は、キャビティポラリトン及びラビ分裂の形成を引き起こす。
【0043】
同様に、金属層の間に生成される電場無しで、図4のデバイス100は、キャビティの共振モードωcavに等しい周波数でレーザー放射線だけを吸収する。実際に、ドーピングから発生する電子は、貯留井戸に存在し、キャビティの共振モードωcavに近い周波数ωISBでISB遷移を示す活性量子井戸に存在しない。従って、半導体層は、周波数ωcavで入射レーザー放射線に対して透過的である。しかし、キャビティは、このような周波数で入射レーザー放射線の結合(従って、吸収)を可能にする。逆に、マイクロキャビティの共振モードと異なる周波数を有する入射放射線は、デバイス100によって反射される。
【0044】
電気回路5は、2つの金属層の間に電圧差を印加するように適合されている。
【0045】
図1及び図4の実施形態において、電気回路は、2つの金属層の間に電圧差V=F*L(但し、Fは、ドーピングから発生する電荷の量子井戸を「空にする」又は減少するのに必要な電場である)を印加するように構成されている。実際に、電気バイアスの印加により、量子井戸から金属層のうち1つへの電荷の高速移動が可能になる。
【0046】
上述の例示的なGaAs構造を有する図1の実施形態において、V=6Vである。従って、このような電圧差の印加により、半導体層を、エネルギー
【数9】
の入射レーザー放射線に対して透過的にすることができ、電子は、量子井戸にもはや存在せず、キャビティの共振モードにおける光子は、半導体層の量子井戸のISB遷移に強い形態で選択的にもはや結合されず、キャビティポラリトンを生成する。
【0047】
従って、2つの金属層の間に電圧差V=F*Lを印加した時に、デバイスは、「従来の」マイクロキャビティとして機能し、図1のデバイスは、エネルギー
【数10】
を有するレーザー放射線を反射する。実際に、これらの波長は、キャビティの共振モードに対応せず、その結果、レーザー放射線は、キャビティによって結合されない(従って、吸収されない)。逆に、図1のデバイスは、キャビティの共振モードに対応する波長を有する任意の入射レーザー放射線を吸収する。
【0048】
キャビティの共振モードに等しい波長λにおける入射レーザー放射線を基準としてとることによって、「吸収」状態は、2つの金属層の間に印加される電圧差V=F*Lに対応するデバイス10の状態を示すために使用され、「反射」状態は、2つの金属層の間のゼロ電圧差(V=0V)に対応する状態である。
【0049】
従って、強い結合形態及びラビ分裂を使用すると、図1のデバイスは、吸収状態と反射状態との間の非常に優れた変調度(>90%)を得ることができる。
【0050】
図5は、入射レーザー放射線の周波数に応じて、及び金属層の間に印加される電圧差に応じてデバイス10の反射率を概略的に例示する。曲線50(細線)は、吸収状態(2つの金属層の間の電圧差V=F*L)に対するデバイスの反射率を表す。上述のように、この特定の場合、電荷は量子井戸にはもはやなく、従ってラビ分裂がなく、デバイスは「従来の」マイクロキャビティとして機能する。即ち、入射レーザー放射線の波長がキャビティの共振モードに等しい場合、デバイスは、入射レーザー放射線を吸収する。
【0051】
曲線51(太線)は、反射状態(2つの金属層の間のゼロ電圧差)に対するデバイスの反射率を表す。この特定の場合、ドーピングはキャビティ内の量子井戸に存在し、キャビティポラリトンの形成、及びωcavにおけるキャビティの共振モードに近いωISBへの単純なISB遷移からの周波数ωISB±Ωにおけるラビ分裂を引き起こす。この分裂は、エネルギー
【数11】
における入射レーザー放射線のデバイス10による吸収、及び波長λISBにおける入射レーザー放射線の反射を引き起こす。
【0052】
図1の実施形態において、2つの金属層の間の距離L(従って、ここで、半導体層の最大厚さ)は、キャビティ非分散形態で動作したいという要望によって単に制限されないことに留意することが重要である。更に、半導体層の厚さは、半導体層と金属層との間のショットキー接触が耐えることができる最大ゲート電圧Vmaxによって制限される。これは、V=F*L<Vmax=F*Lmaxであることを意味し、L<Lmaxであるように、上限Lmaxを半導体層の厚さに与える。非ドープGaAs接触にTi/Auを使用することによって、±5VのオーダーのVmaxを得ることができる。絶縁層(SiN、SiO2、Al2O3、…)を使用することによって、この値を超えることができる。
【0053】
電圧差の印加によって引き起こされる電荷の移動は、高速現象であるけれども、量子井戸から金属層のうち1つの金属層への電子の数十又は更に数百ナノメートルにわたる移動の時間によって制限される。更に、図1の実施形態において、デバイス10の応答周波数は、1GHz未満のままである。この実施形態の応答時間を向上させるために、半導体層の厚さを薄くすることができる。
【0054】
図1の実施形態のデバイス10の応答時間の本質的制限は、図4の実施形態に当てはまらない。実際に、デバイス100において、電気回路5は、ドーピング時に貯留井戸に導入された電子をトンネル効果によって活性井戸に移動させることができるバイアス又は電場を生成するように選択された電圧差を印加するように構成されている。この電荷移動は、電子ドーピングが、キャビティ内の活性量子井戸に存在することを意味し、その結果、キャビティポラリトンの形成及びラビ分裂を引き起こし、次に、構造体は、強い結合モードで動作する。従って、適切に選択された電圧差V≠0の場合、図4のデバイス100は、周波数ωISB±±Ωで入射レーザー放射線を吸収し、周波数ωcavのキャビティの共振モードに近い活性量子井戸のISB遷移に対応する周波数ωISBで吸収しない。デバイス10の基準と同じ基準を使用することによって、デバイスは、2つの金属層の間の電圧差V≠0の場合、反射状態にあり、V=0Vの場合、吸収状態にあることが提示されている。
【0055】
図5は、入射レーザー放射線の周波数に応じて、及び金属層の間に印加される電圧差に応じてデバイス100の反射率を概略的に例示することもできる。曲線50は、吸収状態(2つの金属層の間のゼロ電圧差)に対するデバイスの反射率を表す。上述のように、この特定の場合、電子は、貯留所にあり、従って、ラビ分裂がなく、デバイスは、「従来の」マイクロキャビティとして機能する。即ち、入射レーザー放射線の波長がキャビティの共振モードに等しい場合、デバイスは、入射レーザー放射線を吸収する。
【0056】
曲線51は、反射状態(2つの金属層の間の電圧差V≠0)に対するデバイスの反射率を表す。この特定の場合、ドーピングは、貯留所からキャビティ内の活性井戸に移動され、キャビティポラリトンの形成、及びωcavにおけるキャビティの共振モードに近いωISBにおける活性井戸の単純なISB遷移からの周波数ωISB±±Ωにおけるラビ分裂を引き起こす。この分裂は、エネルギー
【数12】
における入射レーザー放射線のデバイス100による吸収、及び波長λISBにおける入射レーザー放射線の反射を引き起こす。
【0057】
図1の活性領域と同様に、図3のデバイスにおいて、強い結合形態及びラビ分裂を使用すると、吸収状態と反射状態との間の非常に優れた変調度(>90%)を得ることができる。
【0058】
活性井戸と貯留所との間の障壁は、非常に薄い(数ナノメートル)ので、トンネル効果による移動は、非常に速い(ピコ秒のオーダー)。更に、図3のデバイスの応答周波数は、非常に高く(1GHzを超える)、電気回路のRC定数によって制限されるだけである。
【0059】
図3の実施形態の別の利点は、貯留所から活性井戸への電荷の移動、従って、吸収状態から反射状態への遷移を引き起こすのに必要な電圧差が、図1の実施形態の場合よりも低いことである。従って、デバイス100において、電圧V=2Vは、活性井戸への電荷移動を引き起こすのにλ=9μmで十分である。この値は、図1の実施形態(但し、V=6V)で量子井戸を空にするのに必要な値よりも非常に低く、V<Vmaxが確かに当てはまることを保証することができる。
【0060】
更に、図1又は図4の実施形態において、デバイス100の全幅dx-tot及び全長dy-totは、好ましくは、200μm未満である。これにより、デバイスのRC定数を減少することができる。用語「特性寸法」を使用して、全幅dx-totと全長dy-totとの間の最大距離を示す。
【0061】
同様に、全実施形態において、接触及び微小接合は、デバイスの応答時間を制限しないように適合されている。
【0062】
別の実施形態において、例えば、クライオスタット又はペルチェ素子を用いて、デバイスを、78Kまで冷却することができる。THz波を変調することが要望される場合、この冷却は、特に必要である。THzは、λ>30μmと定義される。
【0063】
別の実施形態において、非分散形態における動作の場合、s=3.λ/2.n(但し、λは、振幅を変調することが要望される入射レーザー放射線の波長である)を選択する。従って、電磁モードと半導体活性領域との間のオーバーレイ係数を増加する、ひいては、TM02モードの周波数に近い周波数の活性量子井戸のISB遷移のラビ分裂を増加するために、キャビティの共振モードTM02を使用する。これにより、吸収状態におけるキャビティモードTM03に対応する吸収線と活性量子井戸のこのISB遷移のラビ分裂に対応する2つの線との間のより良い周波数分離が可能になる。従って、より良い変調度が得られる。更に、金属ストリップのより大きい寸法によって、共振器の製造も単純化される。
【0064】
別の実施形態において、GaAs/AlGaAs、InGaAs/AlInAs、InAs/AlSb、Si/SiGe、GaN/AlGaN、又は3μmと200μmとの間に含まれるISB遷移で量子井戸を生成することができる任意の他の材料で、量子井戸を生成する。
【0065】
図6は、入射レーザー放射線の振幅を変調するデバイス1000の別の実施形態を示す。本発明の他の実施形態と違って、このデバイスは、透過モードで動作する。このために、金属下層3は、不連続であり、金属上層及び金属下層の金属ストリップが互いに面しているように金属上層2と同じ方法で構造化されている。従って、2つの金属層及び中間半導体層によって形成された組立体は、半導体層3が波長λに対して吸収しない場合、及びλがキャビティの共振モードに対応しない場合、波長λで入射放射線を透過させる微小共振器を構成する。逆に、入射放射線が、キャビティの共振モードに対応する波長λを有し、活性領域がこの波長で吸収しない場合、入射放射線は、キャビティによって結合される(従って、吸収される)。分散又は非分散形態で動作するように、活性領域3の厚さLを選択することができる。デバイスは、金属下層の下に金属下層と接触して、入射レーザー放射線に対して透過的な構成要素である基板8を含む。この基板を、CaF、ZnSe、BaF、又は中間赤外線に対して透過的である任意の他の材料で形成することができる。フッ素ベースの材料は、中間赤外スペクトル範囲で低屈折率(n<1.5)を有するので、フッ素ベースの材料(CaF、BaF)は、特に適している。一実施形態において、基板8を、この金属下層3に接着する。動作原理は、他の実施形態と同一のままである。即ち、電気回路5を用いた2つの金属層の間の電圧差の印加を介して、ドーピングによって活性領域に導入された電荷の移動を引き起こすことによって、「吸収状態」を「透過状態」に(又は、活性領域の構造によって逆に)変えることができる。
【0066】
代わりに、デバイス1000において、半導体層4を、金属ストリップの下に単に含むことができる。その結果、金属によって覆われていない活性領域の部分に半導体層はない。例えば、エッチング工程を用いて、所望の半導体層の部分を除去することができる。この実施形態において、分散モードで動作するのは実際に困難であることに留意すべきである。
【0067】
図7に例示の別の実施形態において、金属上層2は、電気的に接続可能な二次元共振器(又はキャビティ)Rを形成するように、2つの方向x及びyに構造化されている。この実施形態において、デバイスは、非分散形態(L<λ/30)で動作する。層の構造化は、正方形、長方形、三角形又は他の形状の共振器を、金属層3及び半導体層4と共に形成するように適合されており、全共振器は、同一であり、波長λで共振モードを支援する。既知のように、これらの共振器の共振波長は、層2の構造化、より詳細には、キャビティの形状及び寸法に左右される。これらの共振モードを、デジタル的に、又は単純な形状に対して解析的に決めることができる。変調器のコントラストを最大化するために、臨界光結合のできるだけ近くに設置されるように、方向x及びyにおける共振器の間の間隔px及びpyを優先的に選択する。
【0068】
優先的に、図7に例示のように、電磁モードに対する擾乱を減らすために、各共振器を、共振器の寸法よりも非常に小さい幅の金属接続部Cによって方向xにおける隣接共振器に接続する。より詳細には、接続部の幅は、キャビティの特性寸法(長方形キャビティの場合に対角線、正方形キャビティの場合に辺、及び円形キャビティの場合に直径)の1/5~1/20の間の幅である。代わりに、別の実施形態によれば、各共振器を、方向x及び/又は方向yにおける接続部によって隣接共振器に接続する。
【0069】
活性領域4を、層2によって覆われていない領域で、エッチングする、又はエッチングしないことがある。
【0070】
この実施形態は、金属層2の表面の減少によってデバイスのRC定数の減少を可能にし、従って、変調速度の増加を可能にする。
【0071】
図8に例示の別の実施形態において、金属上層2は、広いスペクトル帯にわたって変調の動作を可能にするように構造化されている。この実施形態において、デバイスは、非分散形態(L<λ/30)で動作する。上層2は、サブセットの他の金属ストリップと異なる幅sの複数の金属ストリップを含む複数の同一サブセットSEで構成されるように構造化されている。各ストリップを、方向xに距離aだけ隣接ストリップから隔てる。サブセットを、方向xに周期性Pxで繰り返す。図8の例において、限定されない例として、各サブセットは、3つのストリップを含む。代わりに、別の実施形態によれば、各サブセットは、少なくとも2つのストリップを含む。サブセットの幅sの各金属ストリップは、他のストリップに関連付けられた周波数と異なる周波数
【数13】
としたバイアス有又は無で関連吸収がある層4及び層3と共に半導体キャビティを形成する。
【0072】
図8の上部は、印加電圧差の有無にかかわらず入射放射線の周波数に応じてデバイスの反射率を示す。ゼロバイアス(電圧差V=0V)の場合、サブセットSEのストリップに各々が関連付けられた曲線C1の合計に対応するデバイスの吸収は、半導体キャビティ単独の吸収に関連付けられた広いスペクトル帯δωにわたって最大である。パラメータa及びs、及び半導体層4の厚さLを変えることによって、吸収を、デジタルシミュレーションによって調整/最大化することができる。
【0073】
広いスペクトル帯δωの幅は、略|ωs-max-ωs-min|(但し、ωs-min及びωs-maxは、最大幅(smax)及び最小幅(smin)の金属ストリップにそれぞれ関連付けられた共振周波数である)である。
【0074】
同様に、正バイアス(電圧差V≠0V)の場合、上述のように、サブセットSEのストリップに各々が関連付けられた曲線C2の合計に対応するデバイスの吸収は、量子井戸の吸収及びポラリトンの励起に関連付けられた広いスペクトル帯δω’及びδω’’にわたって最大である。
【0075】
(ストリップの幅sに連結された)キャビティの共振周波数に応じたポラリトン励起周波数の依存性のために、δω’’<δω’<δωである。
【0076】
この実施形態は、変調デバイスでの広帯域動作を可能にする。なぜなら、変調デバイスは、ゼロ電圧差の場合に広い周波数範囲δωにわたって吸収性があり、正電圧差の場合に広い周波数範囲δω’’及びδω’にわたって吸収性があるからである。
【0077】
代わりに、別の実施形態において、金属上層2は、図8に例示の実施形態と同様な方法で、両方の方向x及びyに構造化されており、従って、二次元共振器(パッチキャビティ)を形成する。この実施形態において、各パッチキャビティは、パッチキャビティの形状及び寸法に左右される異なる周波数ωpatch_iで吸収し、従って、他のパッチキャビティと異なる。その結果、構造化を方向yだけに生成する図8に例示の実施形態のように、変調器は、広い周波数範囲にわたって動作する。
【0078】
別の実施形態において、半導体層4は、各周期iに対して異なる量子井戸の厚さLQW,iを有する複数の量子井戸の積み重ねを含み、従って、Ntot個の周期の積み重ねを構成する。図9の上部に例示の限定されない例として、3つの異なる厚さLQW,1、LQW,2及びLQW,3の量子井戸がある。従って、N+N+N=Ntot個の周期があり、Nは、各周期iに対して異なる周波数ωISB,iでサブバンド間吸収を引き起こすi周期の各々の量子井戸積み重ね周期の数である。この場合、単一厚さの量子井戸積み重ねで得られている周波数に等しいラビ周波数ΩRabiで吸収を得るために、量子井戸におけるドーピングに3を掛ける必要がある。代わりに、別の実施形態において、3つの異なる厚さ以外の数を使用することができる。図9の上部の実施形態において、単一量子井戸を、各周期に対して使用する。代わりに、別の実施形態において、各周期の量子井戸は、図4の実施形態のように結合井戸である。
【0079】
図9の下部は、印加電圧差の有又は無で、入射放射線の周波数に応じてデバイスの反射率を示す。
【0080】
ゼロバイアス(電圧差V=0V)の場合、デバイスの反射率(曲線C3)は、半導体キャビティ単独の吸収に関連付けられたキャビティの周波数ωcavで最大である。ここで、吸収のスペクトル幅δωISBを、共振モードの線幅δEcavに単に連結する。
【0081】
正バイアス(電圧差V≠0V)の場合、デバイスの反射率(曲線C4)は、各周期iに関連付けられた複数のサブバンド間吸収周波数ωISB,iのために、略ωcav±ΩRabiで幅δω’の2つの広い範囲にわたって最大である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】