(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(54)【発明の名称】小電流を増幅する増幅装置
(51)【国際特許分類】
H03F 3/343 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
H03F3/343
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557746
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(85)【翻訳文提出日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2020056031
(87)【国際公開番号】W WO2020200644
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】102019108192.0
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500469855
【氏名又は名称】インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Inficon GmbH
【住所又は居所原語表記】Bonner Strasse 498, D-50968 Koeln, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ・ノルベルト
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA42
5J500AA51
5J500AC32
5J500AF11
5J500AF17
5J500AH19
5J500AH25
5J500AH29
5J500AH39
5J500AK01
5J500AK27
5J500AK42
5J500AM08
5J500AM09
5J500AM13
5J500AS15
5J500AT01
(57)【要約】
【課題】大電流の増幅への切替えについて改善された、小電流を増幅する増幅装置および方法を提供する。
【解決手段】電流を受け取る増幅装置は、100pA未満の小電流を計測する第1の電流経路と、前記第1の電流経路に含まれる入力増幅装置50と、最大電流が前記第1の電流経路で受け取る電流の10倍以上になる大電流を計測する第2の電流経路と、を備える。入力増幅装置50は、少なくとも1つの第1の増幅器1、出力部、反転入力部30、前記出力部を反転入力部30へ接続する第1のフィードバック経路41、および第1のフィードバック経路41に含まれるフィードバック素子2、を含む。第1の増幅器1は、少なくとも1つの保護素子18,19,20,21を有する。入力増幅装置50の保護素子18,19,20,21のうちの少なくとも一つは、前記第2の電流経路の一部である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
100pA未満の小電流を計測する第1の電流経路と、
前記第1の電流経路に含まれる入力増幅装置(50)であって、
少なくとも1つの第1の増幅器(1)、
出力部、
反転入力部(30)、
前記出力部を前記反転入力部(30)へ接続する第1のフィードバック経路(41)、
および
前記第1のフィードバック経路(41)に含まれるフィードバック素子(2)、
を含み、前記第1の増幅器(1)が少なくとも1つの保護素子(18,19,20,21)を有する、入力増幅装置(50)と、
最大電流が前記第1の電流経路で受け取る電流の10倍以上になる大電流を計測する第2の電流経路と、
を備える、電流を受け取る増幅装置において、
前記入力増幅装置(50)の前記保護素子(18,19,20,21)のうちの少なくとも一つが、前記第2の電流経路の一部であることを特徴とする、増幅装置。
【請求項2】
請求項1に記載の増幅装置において、前記第1の増幅器(1)の電源電圧が、前記保護素子(18,19,20,21)のうちの少なくとも一つに印加されることを特徴とする、増幅装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の増幅装置において、前記保護素子(18,19,20,21)のうちの少なくとも一つが、前記第1の増幅器(1)の2つの入力部(30,31)間に配置されて当該2つの入力部(30,31)に接続されていることを特徴とする、増幅装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の増幅装置において、前記第1のフィードバック経路(41)の前記フィードバック素子(2)が、電気抵抗であることを特徴とする、増幅装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の増幅装置において、前記第1のフィードバック経路(41)の前記フィードバック素子(2)が、コンデンサであることを特徴とする、増幅装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の増幅装置において、前記入力増幅装置(50)が、前記第1の増幅器(1)と共に制御ループを形成する少なくとも1つのさらなる増幅器(3)を含むことを特徴とする、増幅装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の増幅装置において、前記第1の増幅器(1)の2つの電源接続部(32,33)のうちの少なくとも一つが、電気抵抗(6a,6b)を介して当該第1の増幅器(1)の出力部に接続されていることを特徴とする、増幅装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の増幅装置において、前記第1のフィードバック経路(41)が、前記第1の増幅器(1)と少なくとも1つのさらなる増幅器(3)とで構成された入力増幅装置(50)の最後の増幅器の出力部を、前記入力増幅装置(50)の前記反転入力部(30)へ接続していることを特徴とする、増幅装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の増幅装置において、前記第1の増幅器(1)の負電源接続部(33)が第1のスイッチ(10)で負電源電圧(14)又はグランドへと選択的に接続可能であり、前記第1の増幅器(1)の正電源接続部(32)が第3の増幅器(7)の反転接続部(38)に導電接続されており、前記第3の増幅器(7)の非反転入力部(37)が第2のスイッチ(11)で正電源電圧(15)又はグランドへと選択的に接続可能であることを特徴とする、増幅装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の増幅装置において、前記第3の増幅器(7)が、電気抵抗(8)および当該抵抗(8)と並列に配置された電気ダイオード(9)を含む第2のフィードバック経路(43)を有し、前記電気ダイオード(9)が、前記第3の増幅器の出力部(17)から前記第1の増幅器(1)の正電源接続部(32)への方向には導通し反対方向には導通しないことを特徴とする、増幅装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の増幅装置において、前記第1のフィードバック経路(41)が、第3のスイッチ(12)により、前記フィードバック素子(2)に電流が流れないようにする電圧又は流れるようにする電圧へと当該スイッチの位置に応じて選択的に接続可能であることを特徴とする、増幅装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の増幅装置において、前記スイッチ(10,11)の接地電位および基準電圧(22)が、前記保護素子(18)の順方向電圧だけ調整されていることを特徴とする、増幅装置。
【請求項13】
請求項10に記載の増幅装置において、前記第2のフィードバック経路(43)が、前記スイッチ(11)との関係で導通する抵抗(39)を間に具備した2つのダイオード(9a,9b)を含むことを特徴とする、増幅装置。
【請求項14】
質量分析センサ又は全圧センサと、
請求項1から13のいずれか一項に記載の増幅装置と、
を備える、気体検出器。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の増幅装置を用いて電流を計測する方法において、前記第1の増幅器(1)の負電源接続部(33)をグランドに接続することにより、前記第1の電流経路から前記第2の電流経路への切替えを行うことを特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、反転入力部が前記第1の増幅器(1)の正電源接続部(32)に接続されている第3の増幅器(7)の非反転入力部も、電流経路の前記切替えのためにグランドに接続されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小電流を増幅する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分光計、真空測定装置などの多くの計測装置では、正電荷粒子又は負電荷粒子が電極に衝突することによって生じる電流に基づいて計測値が形成される。発生した測定対象イオン電流又は電子電流の強度のダイナミックレンジは、極めて広範になる。このダイナミックレンジは、しばしば、数百アトアンペア(aA)~数マイクロアンペア(μA)に亘り、つまり、数ディケード(dec)[Dekaden]に及ぶ。
【0003】
具体的に述べると、低圧域において、または真空測定装置や漏洩検知器では、小電流が測定対象となる。この目的には、質量分析計がしばしば用いられる。10フェムトアンペア(fA)未満の超小電流に対し、大電流も同時に計測可能な増幅器を構成しようとすると、小電流の計測から大電流の計測へのレンジ切替えが必要となるので、回路の困難性が生じる。抵抗を用いた電流増幅器であれば、抵抗値を高くするほど抵抗の電流ノイズが低くなることから、超小電流用として高インピーダンスの抵抗を含める必要がある。しかし、例えば10ピコアンペア(pA)を超える電流に対しては、抵抗での電圧降下が過大になるため、高インピーダンスの抵抗を使用することができない。コンデンサを基準素子に使っても、抵抗と同様の困難性が生じる。従来技術の増幅器では、小電流を計測する動作状態から大電流を計測する動作状態への切替えを可能にするのに、半導体スイッチやリレーを使って抵抗や電流経路を切り替える。いずれにせよ、上記の目的には、どれほど小さな電流が流れても当該電流が計測されるようにするための追加の素子を検出入力ノードに接続しなければならなくなる。
【0004】
このような粒子電流を計測するのに、計測可能な計測電位を当該粒子電流(すなわち、イオン電流や電子電流)から生成する計測装置が用いられる。この目的のために、当該計測装置は、通常、電流増幅器(典型的には、演算増幅器を用いた電流増幅器)を備えている。計測用電気抵抗(例えば、演算増幅器のフィードバック経路に配置された計測用電気抵抗)を用いることにより、計測可能な電位が増幅後の電流から生成される。
【0005】
従来の増幅器であっても本発明に係る増幅器であっても、発生した粒子電流のダイナミックレンジ全体を同じ計測回路でカバーするには、100ピコアンペア(pA)未満(例えば、1ピコアンペア(pA))の小電流を計測する精密動作と1ピコアンペア(pA)以上(例えば、100ピコアンペア(pA))の大電流を計測する動作との間で切替えを行うことになる。例えばセクターフィールド質量分析計等の従来の電流増幅器では、切替えがリレーを用いて行われる。広範な電流レンジをカバーする抵抗ベースの電流増幅器の場合、小電流用には高インピーダンスの抵抗しか考えられない一方で、大電流については低インピーダンスの素子でしか大電流を伝搬できないことから、レンジ切替えは欠かすことができないものとなっている。小電流では、抵抗ノイズが原因となるため有用範囲が狭まる。
【0006】
EP 0 615 669 B1(特許文献1)には、電流信号がダイオードを介して伝搬される増幅器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、大電流の増幅への上記切替えについて改善された、小電流を増幅する増幅装置、およびこれに対応する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る増幅装置は、独立請求項1に規定されている。
【0010】
本発明に係る増幅装置は、小電流を増幅する第1の電流経路を備える。当該第1の電流経路は、少なくとも1つの第1の増幅器を有する入力増幅装置を含む。当該第1の増幅器は、保護ダイオードなどの少なくとも1つの保護素子を有する。前記入力増幅装置の出力部を反転入力部へ接続するフィードバック経路には、フィードバック素子が含まれる。大電流の計測用に、前記第1の電流経路と少なくとも部分的に異なる第2の電流経路が設けられて形成されている。前記第1の増幅器の前記保護素子のうちの少なくとも一つが、前記第2の電流経路に含まれる。
【0011】
つまり、本発明に係る増幅装置では、最小電流を計測するための素子(つまり、電流入力部、前記フィードバック素子の形態の計測用抵抗、および少なくとも前記第1の増幅器を含む前記入力増幅装置)のほかに、大電流を計測するための追加の素子を入力部に設ける必要がない。従来使われている入力増幅器は、入力レンジの保護素子(例えば、保護ダイオード)を既に具備している。当該保護素子は、集積回路中で入力回路を保護するために必要なものである。本発明では、当該保護素子を用いてレンジ切替えを行う。これにより、回路の最小電流を計測する最精密レンジは、それが電流量を計測する唯一のレンジであるかの如く安定化する。当該精密レンジから大電流を測定するレンジへとレンジを切り替えると、入力電流が前記保護素子のうちの少なくとも一つに流れる。これにより、当該入力電流が遥かに大電流になったとしても、入力レンジが低インピーダンス化する。前記第1の増幅器の集積回路中には保護素子が存在していなければならないので、全ての増幅器モジュールを使用できるわけではない。電源電圧(供給電圧)に対する保護素子を具備した増幅器モジュールや入力線間に保護素子を具備した増幅器モジュールであれば、いずれも使用可能である。
【0012】
前記入力増幅装置の増幅器の数nは、n≧1であり得る。最も単純なn=1の場合には、前記入力増幅装置が前記第1の増幅器のみを含む。n≧2の場合には、前記入力増幅装置が、増幅器群を形成する2つ以上の増幅器で構成されることになり得る。
【0013】
前記入力増幅装置は、反転入力部および出力部を含む。当該出力部は、フィードバック経路を介して前記入力増幅装置のその反転入力部へ接続されている。当該フィードバック経路には、フィードバック素子が含まれている。
【0014】
前記増幅器は演算増幅器であり、かつ/あるいは、前記保護素子が保護ダイオードである。
【0015】
以下では、図面を参照しながら、本発明の例示的な実施形態について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】例示的な第1の実施形態の、第1の動作状態を示す図である。
【
図3】例示的な同実施形態の、第2の動作状態を示す図である。
【
図4】例示的な第2の実施形態における、
図1又は
図3の細部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図示の例示的な実施形態の増幅装置は、反転入力部30、非反転入力部31、出力部34、正電源接続部32および負電源接続部33を有する第1の演算増幅器1を備えている。
【0018】
前記演算増幅器は、反転入力部30と非反転入力部31との間及び2つの電源接続部32,33間にブリッジ整流回路の様式で配置されてこれらを相互接続する、保護素子18,19,20,21(本実施形態では、ダイオード)を有している。ダイオード18,19,20,21は、負電源接続部33から正電源接続部32へは導通して反対方向には導通しないように配置されている。
【0019】
「ブリッジ整流回路の様式」という表現は、ブリッジ分岐路が演算増幅器1の2つの入力部30,31を含んでいるということを意味する。これは、理想的な演算増幅器の2つの入力部30,31間では電圧降下がゼロになるという思想に基づいたものである。ブリッジ分岐路の一端は反転入力部30に接続されており、他端は非反転入力部31に接続されている。つまり、これら2つの入力部間に生じ、理想的な演算増幅器ではゼロとなる差動電圧が、ブリッジ分岐路の一部をなす。
【0020】
第1の演算増幅器1の出力部34は、第2の演算増幅器3の非反転入力部35に接続されており、第2の演算増幅器3の出力部は、フィードバック分岐路または第1のフィードバック経路41を介して第1の演算増幅器1の反転入力部30へ接続されている。フィードバック経路41は、2つの抵抗2,4を含んでいる。フィードバック経路41は、抵抗2,4間において、例えば保護素子18の順方向電圧だけ調整可能な約0.5ボルトのダイオード順方向電圧が印加されている基準電圧の入力部22へと第3のスイッチ12で接続される。
【0021】
第2の演算増幅器3の出力部16は、さらに、制御素子5を介してグランド(GND)へ接続されている。制御素子5は、抵抗5a、コンデンサ5bおよびさらなる抵抗5cで構成されている。第2の演算増幅器3の反転入力部36は、コンデンサ5bとさらなる抵抗5cとの間から電気的にフィードバック接続されている。
【0022】
第1の演算増幅器1の出力部34は、第1の抵抗6aを介して当該第1の演算増幅器1の正電源接続部32へ、第2の抵抗6bを介して負電源接続部33へ接続されている。負電源接続部33は、第1のスイッチ10により、電圧源14に印加された-5ボルトの電源電圧又はグランドへと択一的に接続可能である。
【0023】
第1の演算増幅器1の正電源接続部32は、第3の演算増幅器7の反転入力部38に電気的に接続されており、第3の演算増幅器7の出力部17は、抵抗8を介して第2のフィードバック経路43でフィードバックを行う。抵抗8には、第3の演算増幅器7の出力部17から第1の演算増幅器1の正電源接続部32への方向には導通して反対方向には導通しないダイオード9が並列接続されている(uberbrucken)。
【0024】
第1の増幅器1と、さらなる増幅器の第2の増幅器3とで、入力増幅装置50を形成している。増幅器1,3が共同で、増幅器群を形成している。フィードバック経路41は、入力増幅器群50の出力部を入力増幅器群50の反転入力部30へ接続している。
【0025】
第3の演算増幅器7の非反転入力部37は、第2の電気スイッチ11で電圧源15(本実施形態では、5ボルト)又はグランドへと選択的に接続可能である。
【0026】
本発明に係る増幅装置の図示の例示的な実施形態では、第1の演算増幅器1が入力増幅器として用いられる。第1の演算増幅器1の保護素子18,19,20,21が、電源電圧に対する入力保護ダイオードとして設けられている。前記増幅装置が最精密レンジの例えば100ピコアンペア(pA)未満の小電流を計測するように動作する場合、入力電流信号が入力部13から第1の演算増幅器1に到達する。第1の演算増幅器1は、
図1に示すスイッチ位置の第1のスイッチ10を介して電圧源14から負電源電圧(本実施形態では、-5ボルト)を受け取る。演算増幅器1は、第3の演算増幅器7の非反転入力部37にある
図1に示すスイッチ位置の第2のスイッチ11を介して電圧源15(本実施形態では、+5ボルトに達する)から正電源電圧を受け取る。
【0027】
第3の演算増幅器7の出力部17の出力電圧は、ダイオード9のダイオード順方向電圧だけ増加した値に調整される。結果として、第1の演算増幅器1に到達する電圧は、第3の演算増幅器7の非反転入力部37の電圧と同程度になる。
【0028】
増幅器7は、入力増幅装置50の一部ではない。増幅器7は、入力増幅装置50の入力部13からの大電流を受け取る役割を果たす。この入力電流は、ダイオード18を介して増幅器1から増幅器7の入力部38へと直接流れる。他方、入力部13からの小電流は、入力増幅装置50で初期増幅を受ける。
【0029】
小電流の計測では、第3の電気スイッチ12が
図1に示すこの第1の動作状態のように開放される。フィードバック抵抗4,2が共同で、前記フィードバック素子(本実施形態では、電気抵抗の形態)を形成している。
【0030】
このとき、第1の演算増幅器1の反転入力部30につながる入力部13は実質的なゼロ点となる。これは、入力部13に電圧が全く存在しないことを意味する。
【0031】
第1の演算増幅器1の入力電流に比例した反転電圧が、第2の演算増幅器3の出力部16に印加される。このときの前記入力増幅器の各保護ダイオード18,19,20,21は、逆方向に駆動されているため電流を全く伝搬していない。
【0032】
第1の増幅演算器1と第2の演算増幅器3とからなる入力増幅装置50は、制御回路を形成している。制御素子5は、回路が安定に維持されるように使用素子5a,5b,5cの遮断周波数に応じて設定する(dimensioniert)必要があり、例えば電気抵抗5aは120kΩ、コンデンサ5bは1nF、電気抵抗5cは10kΩとされる。
【0033】
図1は第1の電流経路で小電流を計測する第1の動作状態の前記増幅装置の全体を示し、
図2は第1の演算増幅器1、第1の演算増幅器1内部に設けられた保護素子18,19,20,21、および保護素子18,19,20,21と第1の演算増幅器1の各接続部との電気的相互接続の様子を示す詳細図である。
【0034】
図3に、第2の電流経路で大電流を計測する第2の動作状態の前記増幅装置を示す。この目的のために、前記増幅装置は、第1の電気スイッチ10を接地電位またはグランド電位へと切り替えた拡張電流レンジで動作する。よって、前記入力増幅器の負電源接続部33には約0ボルトの電圧が印加される。入力保護素子20,21は引き続き非導通となる。
【0035】
第2のスイッチ11も、接地電位へと切り替えられる。第3の演算増幅器7がフィードバック抵抗8で調整されて、第3の演算増幅器7の反転入力部38と非反転入力部37との間には差動電圧が全くないことから、正電源接続部32における第1の演算増幅器1の正電源も0ボルトに近付く。このとき、入力電流が入力接続部13に印加されると、当該入力電流は保護ダイオード18を介して正電源接続部32へと流れる。
【0036】
この動作条件では、第3の電気スイッチ12が導通されている。これにより、接続部22に印加されている電圧(本実施形態では、0.5ボルト)がフィードバック抵抗2に印加されるが、保護ダイオード18のダイオード順方向電圧に従い、当該フィードバック抵抗2に流れる電流は最小限に抑えられる。
【0037】
このとき、入力部13に大電流が流れる場合の前記第2の電流経路は、保護ダイオード18を介して第3の演算増幅器7のフィードバック抵抗8へと導通する。入力電流に比例した反転電圧がフィードバック抵抗8に印加されて、第3の演算増幅器7の出力部17に至る(abgegriffen)。この場合、ダイオード9は非導通となる。よって、大電流計測用の前記第2の電流経路は、第1の演算増幅器1の反転入力部30から保護ダイオード18,19,20,21のうちの保護ダイオード18を介して第1の演算増幅器1の正電源接続部32へと至り、かつ、そこから第3の演算増幅器7のフィードバック抵抗8を介して当該第3の演算増幅器7の出力接続部17へと進む。
【0038】
本実施形態の回路配置構成では、大電流用の電流経路で動作する際に、入力電圧13が保護素子18の順方向電圧だけ増加することになる。この特性を避けるのであれば、スイッチ10,11の接地点のグランド電位を保護素子18の順方向電圧だけ下げることが可能である。この場合、入力部に220ボルトが印加されたとしても、フィードバック素子2には電流が流れない。
【0039】
図4のようにダイオード9を分割することにより、前記第2の電流経路がさらに改善される。前記第2の電流経路が駆動されると、負電圧が出力部17に印加される。ダイオードの逆方向電流により、計測値に誤りが生じる。回路を
図4のように補うことにより、ダイオード9bの負電圧が低下する。これにより、ダイオード9aの両側に印加されるのは約0ボルトになるので、逆方向電流が大幅に減少する。
【0040】
ここでは、正の入力電流用の回路について説明した。原則として、負の電流方向の回路例や両方の電流方向の回路例も可能である。
【国際調査報告】