IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テヒニシュ ウニヴェルズィテート ドレスデンの特許一覧

特表2022-526383タイヤ摩耗に起因する粉塵排出を低減するシステム
<>
  • 特表-タイヤ摩耗に起因する粉塵排出を低減するシステム 図1
  • 特表-タイヤ摩耗に起因する粉塵排出を低減するシステム 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(54)【発明の名称】タイヤ摩耗に起因する粉塵排出を低減するシステム
(51)【国際特許分類】
   B03C 1/00 20060101AFI20220517BHJP
   B03C 1/30 20060101ALI20220517BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20220517BHJP
   B60R 99/00 20090101ALI20220517BHJP
   B03C 1/02 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B03C1/00 K
B03C1/00 B
B03C1/00 C
B03C1/30 Z
B60C19/00 K
B60R99/00
B03C1/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558022
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(85)【翻訳文提出日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2020057265
(87)【国際公開番号】W WO2020200761
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】102019204743.2
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516386144
【氏名又は名称】テヒニシュ ウニヴェルズィテート ドレスデン
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ マティアス
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB02
3D131BB05
3D131BC07
3D131BC55
3D131LA40
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石(2)を備え、タイヤ(5)のトレッド(4)から間隔をおいて配置された捕捉ユニット(1)を含む、タイヤ摩耗に起因する粉塵排出を低減するシステムに関する。少なくとも、タイヤ(5)のトレッド(4)が形成される材料は、磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能であり、タイヤ(5)の使用時にトレッド(4)の摩耗により発生するタイヤ摩耗粒子(6)は、磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能である。少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石(2)は、磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能なタイヤ摩耗粒子(6)を磁化し、車両に配置された収集ポイント(3)でトレッド(4)の前記材料から分離された磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能なタイヤ摩耗粒子(6)を蓄積するように設計される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石(2)を有する捕捉ユニット(1)を備え、
前記捕捉ユニット(1)は、タイヤ(5)のトレッド(4)上に間隔をおいて配置されており、
前記タイヤ(5)の使用時に前記トレッド(4)の摩耗により発生するタイヤ摩耗粒子(6)が磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能であるように、少なくとも、前記タイヤ(5)の前記トレッド(4)が形成される材料は、磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能であり、
前記少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石(2)は、磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能な前記タイヤ摩耗粒子(6)を磁化し、車両に配置された収集ポイント(3)において前記トレッド(4)の前記材料から放出された磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能な前記タイヤ摩耗粒子(6)を蓄積するように構成される、
タイヤ摩耗に起因する粉塵排出を低減するシステム。
【請求項2】
前記システムは、前記システムに着脱可能に接続されたフィルタ、堆積チャンバ、又は容器(8)を備え、これらに又はこれらの中に前記収集ポイント(3)が配置され、磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能な前記タイヤ摩耗粒子(6)を蓄積することができることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
蓄積された前記タイヤ摩耗粒子(6)を、収集ポイント(3)から機械的及び空気圧的に放出することができ、及び/又は洗浄液によって放出することができる放出装置を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石(2)は、前記第1の電磁石及び/又は永久磁石(2)と前記タイヤ(5)の前記トレッド(4)との間の距離が最も小さい領域において、前記トレッド(4)の表面の面法線に対して0°以上90°以下、好ましくは0°以上60°以下の角度で整列する磁場を形成するように、前記捕捉ユニット(1)内に構成及び/又は配置されることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石(2)は、前記捕捉ユニット(1)内に構成及び/又は配置され、前記タイヤ(5)の使用時に前記タイヤ摩耗粒子(6)を前記タイヤ(5)のアウトフロー方向に遠ざけて前記収集ポイント(3)に供給する磁場を形成することを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムが、前記タイヤ(5)の使用時に、前記少なくとも1つの電磁石及び/又は永久磁石(2)、及び/又は収集ポイント(3)の方向に、磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能な前記タイヤ摩耗粒子(6)を運ぶように構成された吸引装置及び/又は流路を備える、請求項1~5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石(2)は、前記トレッド(4)において互いに部分的に逆に配向された磁場を形成するように構成及び/又は配置され、前記少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石(2)の磁気回路は、前記トレッド(4)よりも高い透磁率を有する前記トレッド(4)の非磁化性の下部構造を介して閉じていることを特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
少なくとも前記タイヤ(5)の前記トレッド(4)を形成する前記材料が、少なくとも1体積%、好ましくは少なくとも10体積%の軟磁性、強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能な粒子を含むゴム混合物を含むことを特徴とする、請求項1~7の何れか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記収集ポイント(3)に蓄積された前記タイヤ摩耗粒子(6)の量を検出するように構成された少なくとも1つのセンサ(9)を備えることを特徴とする、請求項1~8の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
タイヤ摩耗に起因する微細粉塵を低減する方法であって、
タイヤ(5)の使用時にトレッド(4)の摩耗により発生するタイヤ摩耗粒子(6)が磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能であるように、磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能な材料で形成された少なくとも1つの前記トレッド(4)を有する前記タイヤ(5)であって、
前記トレッド(4)の摩耗により発生する磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能な前記タイヤ摩耗粒子(6)を、少なくとも1つの第1の電磁及び/又は永久磁石(2)によって磁化し、
磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能な前記タイヤ摩耗粒子(6)は、前記少なくとも1つの第1の電磁及び/又は永久磁石(2)によって、車両に配置された収集ポイント(3)に蓄積される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気効果によってタイヤ摩耗を捕捉することができる、タイヤ摩耗に起因する粉塵排出を低減するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料燃焼による排気ガスに加えて、自動車のタイヤに起因するエラストマー粒子やプラスチック粒子の摩耗は、現在、自動車による環境汚染の最大の原因となっている。科学的推定によると、ドイツだけでもタイヤの摩耗量は年間12万トンに上る。その化学組成のため、タイヤ摩耗粒子は生物学的に分解されにくく、多数の生物に吸収され、蓄積して健康被害をもたらす。
【0003】
電気自動車はタイヤの摩耗も引き起こすため、電気自動車を導入してもこの問題を解決することはできない。これらの車両は、起動トルクが比較的高いためにタイヤ摩耗をより多く発生させるため、電気自動車の進歩に伴い、タイヤ摩耗に起因する粉塵汚染がさらに増加することが想定される。
【0004】
従来技術から、ろ過媒体によって雨水排管から摩耗粒子をろ過することが知られている。しかし、すべての道路排水管の総合的なフィルタリングは、非常に複雑及び/又は高価である。加えて、タイヤの摩耗による汚染から保護されるのは水環境だけであり、実際には、雨水排水管に流されないタイヤの摩耗は捕捉できないため、わずかである。
【0005】
別の解決方法は、車両の床又は道路脇の固定フィルタステーションのろ過媒体によって、空気中からタイヤ摩耗を濾過することを含む。しかし、これは、大量の空気を循環させなければならないので、非常に高いエネルギー消費と騒音の発生に関連する。さらに、ろ過力は天候に左右され、濡れや水分が多いとかなり低下する。
【0006】
さらに、特定のサイズ範囲の粒子のみを捕捉することができるだけである。大きな粒子は地面に急速に沈降し、車両の床や道路脇の吸引システムに捕捉されなくなる。一方、小さな粒子は、その重量が小さいため、タイヤの流れに合わせて非常に簡単に運ばれ、広い領域に放出されるため、車両の床や道路脇の吸引システムに吸い込まれない。これは、特に、非常に小さい粒子が気道を介して、気管支だけでなく、肺胞及び人体の血管にも浸透する可能性があり、健康上のリスクが高く、特に不利益がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の基本的な目的は、従来技術から知られている欠点を克服し、タイヤ摩耗に起因する粉塵排出を低減する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載のシステム及び請求項10に記載の方法によって、本発明に従って達成される。好適な実施形態及びさらなる発展が、従属クレームに記載されている。
【0009】
タイヤ摩耗に起因する粉塵排出を低減するためのシステムは、少なくとも1つの第1電磁石及び/又は永久磁石を有する捕捉ユニットを備える。前記捕捉ユニットは、タイヤのトレッドに間隔をおいて配置され、前記タイヤの使用時に前記トレッドの摩耗により発生するタイヤ摩耗粒子が磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能であるように、少なくとも前記タイヤの前記トレッドが形成される材料は、磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能である。さらに、前記捕捉ユニットの前記少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石は、磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能な前記タイヤ摩耗粒子を磁化し、車両に配置された収集ポイントにおいて前記トレッドの材料から放出された磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能な前記タイヤ摩耗粒子を蓄積するように構成される。前記タイヤの使用は、表面上での転がり運動による前記タイヤの移動を意味すると理解することができ、これには、加速及びブレーキングプロセスも含まれ得る。
【0010】
このシステムによって、タイヤ使用時に、発生源において直接に、タイヤ摩耗の環境への放出を直ちに防止することができる。タイヤ摩耗粒子は、タイヤに近接して配置された少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石の磁場によって特定の方法で方向付けられ、収集ポイントで収集及び濃縮され得る。システムは、この目的のために、陸上車両又は航空機のホイールアーチ又はホイールサスペンションに固定可能又は固定され得ることが好ましい。
【0011】
収集ポイントは、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石の磁場の領域に位置する表面を備えて構成されることが好ましく、その磁場強度及び/又は磁場強度の勾配は、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石の方向において最大又は少なくとも非常に高いことが好ましい。収集ポイントが形成される表面は、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石の磁場方向に垂直であることが好ましく、これにより、タイヤ摩耗粒子は、当該表面に向かって方向づけられ、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石の磁場との磁気相互作用により、この表面に保持又は蓄積される。
【0012】
収集ポイントは、例えば、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石の表面によって形成され得る。あるいは、システムは、システムに着脱可能に接続されたフィルタ、堆積チャンバ、及び/又は容器を備えてもよい。収集ポイントは、当該フィルタ又は当該堆積チャンバ又は当該容器の中又はこれらに配置されてもよく、磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能なタイヤ摩耗粒子を蓄積することができる。これは、収集ポイントが少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石の表面から空間的に分離されているため、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石の表面に、汚染物が永久的に付着したり、タイヤ摩耗粒子が覆ったりすることを防ぐという利点を有する。
【0013】
さらに、収集ポイントに蓄積されたタイヤ摩耗粒子が空気流又は他の環境の影響によって意図せずにシステムから排出されることを、システムに着脱可能に接続されたフィルタ、堆積チャンバ、及び/又は容器、特にカートリッジによって防止することができる。また、蓄積されたタイヤ摩耗粒子は、着脱可能な又は交換可能なフィルタ及び/又は容器によって、システムから容易に除去され、環境にやさしい方法で処分され得る。
【0014】
フィルタは、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石の磁場によってタイヤ摩耗粒子が蓄積され得るフィルタ媒体で構成され得る。フィルタは、特に交換可能なフィルタ媒体を備えることができる。代替的又は追加的に、フィルタは、タイヤ摩耗粒子がさらに静電引力によってフィルタに付着するように、静電フィルタとして構成され得る。フィルタは、特に、フィルタとタイヤ摩耗粒子との間の磁気引力によってタイヤ摩耗粒子がフィルタに付着するように、磁気フィルタとして構成されることが好ましい。この目的のため、フィルタは、通電導体として構成されてもよく、又は、その表面にタイヤ摩耗粒子が蓄積することができる磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性材料で構成されてもよい。
【0015】
収集ポイントに蓄積されたタイヤ摩耗粒子を、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石の極性をオフ、シールド、若しくは反転させることによって、又は少なくとも1つの永久磁石を除去、その極性を反転、若しくはシールドすることによって、又は反対の極性の磁場を印加することによって、収集ポイントから排出することができる。この目的のため、収集ポイントは、特に、解放されたタイヤ摩耗粒子が重力によって収集ポイント又はシステムからリリース可能であるように、システム内に配置されてもよい。さらに、このシステムは、蓄積されたタイヤ摩耗粒子を、収集ポイントから機械的及び空気圧的に放出することができ、又は流体洗浄剤によって放出することができる放出装置を備えてもよい。したがって、被覆又は凝集したタイヤ摩耗粒子は迅速かつ完全に放出され得る。
【0016】
少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石とタイヤのトレッドとの間の距離は、典型的には20mmから200mmである。少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石は、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石とタイヤのトレッドとの間の距離が最も小さい領域において、タイヤのトレッドの表面の面法線に対して、0°以上90°以下、好ましくは0°以上60°以下の角度で整列する、タイヤ摩耗粒子の蓄積のための磁場を形成するように、捕捉ユニット内に、又は捕捉ユニットに配置されることが好ましい。
【0017】
少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石は、特に、タイヤの使用時にタイヤ摩耗粒子をタイヤのアウトフロー方向(an outflow direction of the tire)に遠ざけて収集ポイントに供給する磁場を形成するように、捕捉ユニットの内部又は位置に構成又は配置されることが好ましい。すなわち、タイヤ摩耗粒子は、タイヤの回転によって発生するタイヤの周囲の気流によって、収集ポイントまで運ばれる。タイヤ摩耗粒子と少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石との間の磁気引力に加えて、タイヤ摩耗粒子の運動エネルギーを、それらを収集ポイントに供給し、そこに蓄積するために使用してもよい。これにより、タイヤ摩耗粒子の捕捉率を向上させることができ、又は、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石とタイヤのトレッドとの間の距離を大きくすることができる。これとは別に、又はこれに加えて、システムは、タイヤの使用時に、磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性のタイヤ摩耗粒子を、少なくとも1つの第1電磁石及び/又は永久磁石の方向に、又は収集ポイントの方向に運ぶように構成された吸引装置又は流路を備えてもよい。
【0018】
捕捉ユニットは、1つ以上の第1の電磁石及び/又は永久磁石で構成することができる。少なくとも1つの電磁石及び/又は永久磁石は、特に、トレッド上において互いに部分的に逆方向に配向された磁場方向を有する磁場を形成するように構成又は配置され得る。少なくとも1つの電磁石及び/又は永久磁石の磁気回路は、非磁性スチールベルトのようなトレッドよりも高い透磁率を有する、タイヤのトレッドの非強磁性又は非フェリ磁性又は非反強磁性に磁化可能な下部構造を介して閉じることができ、磁束のタイヤ内へのより深い浸透を回避し、タイヤのリムにおける不要な誘導効果を回避する。
【0019】
代替的又は追加的に、システムは、複数の捕捉ユニットで構成され得る。これは、タイヤ摩耗粒子をタイヤのトレッドの広い領域から蓄積することができ、システムを特定のタイヤ、ホイールアーチ又はホイールサスペンションの寸法又は空気力学に適合させることができるという点で好ましい。
【0020】
捕捉ユニットは、少なくとも1つの第1の永久磁石で構成されることが好ましい。このように、永久磁石又は磁石による磁場形成のためのエネルギーを必要としないので、システムは、非常に省エネルギーかつメンテナンス性の低い方法で動作することができる。少なくとも1つの第1の永久磁石は、特に、収集ポイントにおける磁場強度が、収集ポイントに対する少なくとも1つの永久磁石の距離又は向きによって制御され得るように、可動、すなわち、並進移動可能、旋回可能、及び/又は回転可能な永久磁石として構成され得る。
【0021】
捕捉ユニットの少なくとも1つの第1の永久磁石は、複数の永久磁石のアレイ、特にハルバッハ配列(a Halbach arrangement)のアレイとして構成されることが特に好ましい。複数の永久磁石は、それらの磁場が重畳されて得られた磁場の磁束密度がタイヤ摩耗粒子の蓄積のための収集ポイントの方向に増幅され、アレイの収集ポイントから離れたアレイ側の磁束密度を弱めるように、捕捉ユニットの中又はその位置に整列又は配置されてもよい。
【0022】
複数の永久磁石を有するアレイの使用は、捕捉ユニットが曲面で構成され、永久磁石がそこに配置される場合に特に有利である。これにより、システムを非常に省スペースに構成することができ、既存の自動車に後付けするために、既存の設置スペース及び/またはタイヤの気流プロファイルに柔軟に適合させることができる。さらに、収集ポイントに向けられていないアレイの表面では、環境からの磁場のシールドはほとんど又は全く必要ではない。
【0023】
少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石に加えて、システムは、タイヤ摩耗粒子の摩耗の前にタイヤのトレッドを磁化するようにシステム内に構成及び/又は配置された少なくとも1つの第2の電磁及び/又は永久磁石を備えてもよい。少なくとも1つの第2の電磁磁石及び/又は永久磁石は、好ましくは、タイヤ摩耗粒子の摩耗前にタイヤのトレッドを所定の磁化方向に、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石の磁化方向と反対の極性で磁化するように構成される。
【0024】
タイヤのトレッドを形成する材料は、磁性若しくは強磁性又はフェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能な磁性粒子を少なくとも1体積%、特に好ましくは少なくとも10体積%含むゴム混合物を含むことが好ましい。ここで、材料は、特に、トレッドのコーティング中に含まれてもよく、コーティングは、タイヤのトレッド深さよりも大きい厚さで形成されることが好ましい。
【0025】
ゴム混合物の磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能な粒子は、典型的には、微細に分布したナノ粒子又は微粒子としてゴム混合物中に存在し、すなわち、磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能な粒子は、5nm~500pmの範囲の直径を有し、粒子は、また、凝集体として存在し得る。粒子は、ゴム混合物とより良好にクロスリンク可能であり及び/又は酸化に対して保護されるように、コーティングをさらに有していてもよい。
【0026】
粒子又は材料は、外部磁場の非存在下で、永久的に強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能な、特に0.5Tより大きい残留磁化及び1kA/mより大きい保磁力を有することができる磁性と呼ばれる。強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能な粒子は、好ましくは軟磁性粒子、すなわち0.5T未満の小さな残留磁化及び1kA/m未満の小さな保磁力を有する粒子である。粒子は、鉄、例えばカルボニル鉄、又は、軟磁性鉄化合物若しくは合金、例えばフェライト、硫化鉄、又は鉄アルミニウム及び/又は鉄ケイ素の合金からなるか、又はこれらを含んでもよい。軟磁性粒子は、特に好ましくは生体適合性材料、すなわち無毒で環境に有害でない材料を含む。粒子は、特にマグネタイト又はマグヘマイトからなるか、又はこれらを含むことができる。
【0027】
このシステムはさらに、収集ポイントに蓄積されたタイヤ摩耗粒子の量、特に収集サイトに蓄積されたタイヤ摩耗粒子の質量又は層厚を検出するように構成された少なくとも1つのセンサを備えてもよい。センサは、例えば、音響センサ、光学センサ、又は誘導センサとして構成することができる。センサはさらに、収集ポイントからのタイヤ摩耗粒子の自動クリーニングをトリガすることができるか、又はクリーニングの必要性又はシステムの何らかの外乱の指示をオペレータに与えることができる車両の制御システムに接続することができる。
【0028】
タイヤ摩耗に起因する粉塵を低減する方法であって、タイヤの使用時にトレッドの摩耗によって生じるタイヤ摩耗粒子が磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能である材料で形成された少なくとも1つのトレッドを有するタイヤを提供する。トレッドの摩耗により発生する、磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能なタイヤ摩耗粒子は、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石によって磁化され、車両に配置された収集ポイントに蓄積される。
【0029】
これにより、タイヤ摩耗の環境中への放出を汚染発生源において直接的に防止することができる。記載された方法は、記載された装置を用いて実施することができ、すなわち、記載された装置は、記載された方法を実施するように構成される。
【0030】
本発明の実施形態を図面に示し、図1図2を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、タイヤ摩耗に起因する粉塵排出を低減するためのシステムの一実施形態を示している。
図2図2は、タイヤ摩耗に起因する粉塵排出を低減するためのシステムのさらなる実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
タイヤ摩耗に起因する粉塵排出を低減するためのシステムの一実施形態が、図1の概略図に示されている。少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石2を有する捕捉ユニット1を有する。捕捉ユニット1は、タイヤ5のトレッド4に間隔をおいて配置されており、タイヤ5のトレッド4が形成される材料は、少なくとも、タイヤ5の使用時にトレッド4の摩耗により発生するタイヤ摩耗粒子6が磁性若しくは強磁性、強磁性、又は反強磁性に磁化可能であるように、磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能なものである。少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石2は、これらの磁性若しくは強磁性、フェリ磁性、又は反強磁性に磁化可能なタイヤ摩耗粒子6を磁化し、それらを収集サイト3に蓄積又は堆積するように構成される。これにより、タイヤ5の使用時に、発生源、すなわちタイヤ5に近い場所において、直接に、タイヤ5の摩耗に起因する粉塵の環境への排出を低減することができる。ここで、タイヤ5の使用は、加速及びブレーキングプロセスも含む表面U上の転がり運動によるタイヤ5の移動として理解される。タイヤ5の表面U上での移動方向及び転がり運動は、図1の白抜きの矢印又は実線の矢印で示されている。
【0033】
図示の例では、システムは、車両のホイールアーチ内に固定又は統合されている。タイヤ5のトレッド4は、カルボニル鉄粒子との最適化されたゴム混合物を含む材料で形成されている。軟磁性に磁化可能なタイヤ摩耗粒子6は、図1において、黒い点として示されているが、寸法は図示の通りではない。図中、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石2の磁場の向きは、負の磁極を表すN及び正の磁極を表すSで示されているが、磁場の方向は図示の方向と逆であってもよい。
【0034】
上記少なくとも1つの第1の電磁及び/又は永久磁石2の磁場は、当該少なくとも1つの第1の電磁及び/又は永久磁石2と上記トレッド4との間の距離が最も小さい領域において当該トレッド4に対して略垂直に整列した状態で、上記タイヤ5のトレッド4の法線に対して0°以上90°以下の角度で形成される。
【0035】
さらに、少なくとも1つの第1電磁石及び/又は永久磁石2の磁場方向は、回動するタイヤ5のアウトフロー方向と略平行に配向される。アウトフロー方向は、図において破線で示され、すなわち、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石2の磁場が、タイヤ5の前進運動時に回動するタイヤ5のアウトフロー方向にタイヤ摩耗粒子6を遠ざけて収集ポイント3に供給するように、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石2がタイヤ5のトレッド4に対して配置されている。収集ポイント3は、図1に示す例では、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石2の表面によって形成される。
【0036】
あるいは、システムにおいてタイヤ5の周囲に複数の捕捉ユニット1を配置して、回動するタイヤの空気力学に関してシステムの構成を省略又は流線形化し、トレッド4のできるだけ広い領域からタイヤ摩耗粒子6を簡単に回収できるようにしてもよい。これは、タイヤを完全に覆うことにより、大面積を有するシステムの締結オプション又は設置オプションが提供されるため、ホイールアーチによってほぼ完全に覆われているタイヤ5にとって特に有利である。
【0037】
タイヤ摩耗に起因する粉塵排出を低減するためのシステムのさらなる実施形態が、図2の概略図に示されている。この図において、既に説明されている要素には同一の符号が付されている。
【0038】
捕捉ユニットは、2本のアームのヨーク磁石2で構成され、すなわち、永久磁石2の一方のアームは磁気的に正極性を有し、他方のアームは磁気的に負極性を有する。これにより、一方では、2つの極によって、タイヤ摩耗粒子が堆積可能な収集ポイント3により大きな面積を提供することができるという利点がある。一方、永久磁石2の磁気回路はヨークを介して閉じられている。これにより、捕捉ユニット1の周囲の磁場を低減することができ、捕捉ユニット1の磁気シールドの手間も低減することができる。トレッド4の下方に金属の下部構造を有するように構成されたタイヤ5によって、タイヤ5のトレッド4の下部構造を介して永久磁石2の磁束を閉じることができる。
【0039】
ヨーク磁石に代えて、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石2を、ハルバッハ配列の複数の永久磁石2のアレイとして構成することもできる。ここで、磁石2は、アレイの収集ポイント3に面する側に正の磁場を重畳してアレイの磁場を増幅するように配置され、一方、アレイの対向する側に配置された個々の永久磁石2の磁場は、ほぼ互いに打ち消し合うように配置されているため、アレイの収集ポイント3から離れた側において、捕捉ユニット1の磁場に対する散乱磁界及びシールドの手間を低減することができる。
【0040】
収集ポイント3は、図2の例では、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石2の表面から空間的に離れているが、タイヤ摩耗粒子6を蓄積するために少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石2の磁場内に配置される表面7として形成される。これにより、タイヤ5の使用中に、タイヤ摩耗粒子6をそのリリース部位で直接回収することができるが、少なくとも1つの第1の電磁石又は永久磁石2の表面は、タイヤ摩耗粒子6の永久付着による汚染から保護される。あるいは、収集ポイント3は、フィルタの表面、堆積チャンバの内面、又はシステム内で着脱可能に固定可能でありかつトレッド4の方向に開口する容器の内面として形成されてもよい。
【0041】
収集ポイント3にセンサ9をさらに配置して、収集ポイント3に蓄積されたタイヤ摩耗粒子6の量又は層厚を測定し、タイヤ摩耗粒子6の臨界量に達したときに収集ポイント3からのタイヤ摩耗粒子6の放出を開始できるようにする。図2に示す例では、センサ9は、捕捉ユニット1内に配置された超音波センサである。
【0042】
図示の図2の例では、少なくとも1つの第1の電磁石及び/又は永久磁石2は、可動又は移動可能な永久磁石2として構成され、図2の双方向の矢印によって示されるように、収集ポイント3から離れることができ、その結果、収集ポイント3からの距離が増大し、永久磁石2の磁場強度が収集ポイント3において低下し、蓄積されたタイヤ摩耗粒子6が収集ポイント3からリリース可能となる。また、集積されたタイヤ摩耗粒子6を収集ポイント3から機械的及び空気的に放出可能であるか、又は洗浄液によって放出可能である放出装置を収集ポイント3に設けることもできる。
【0043】
タイヤ摩耗粒子6は、図2の例に示すように、捕集容器8の方向に重力によって収集ポイント3から放出され、この捕集容器8内に捕集される。捕集容器8は、例えば、交換可能なカートリッジとして形成することができ、その結果、タイヤ摩耗粒子6をカートリッジと共にシステムから除去することができ、環境に対して責任のある廃棄を実現することができる。
【0044】
実施形態において開示された異なる実施形態の特徴のみが、互いに組み合わされ、それぞれの実施例とは独立して個別にクレームされ得る。
図1
図2
【国際調査報告】