(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(54)【発明の名称】エアロゾル発生フィルムを備えたエアロゾル発生物品
(51)【国際特許分類】
A24D 1/20 20200101AFI20220517BHJP
A24D 3/17 20200101ALI20220517BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20220517BHJP
A24F 40/40 20200101ALI20220517BHJP
A24F 40/46 20200101ALI20220517BHJP
【FI】
A24D1/20
A24D3/17
A24F40/20
A24F40/40
A24F40/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559541
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(85)【翻訳文提出日】2021-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2020057504
(87)【国際公開番号】W WO2020207732
(87)【国際公開日】2020-10-15
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】カペリ セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ダユオウル オヌル
(72)【発明者】
【氏名】フォルマー ジャン-イヴ
【テーマコード(参考)】
4B045
4B162
【Fターム(参考)】
4B045AA41
4B045AB16
4B045BC15
4B045BC23
4B162AA03
4B162AA22
4B162AB12
4B162AB22
4B162AC08
4B162AC12
4B162AC14
4B162AC22
(57)【要約】
エアロゾル発生物品(10)(70)は、長軸方向に延びる内部空洞(18)を画定する管状担体要素(12)と、エアロゾル発生フィルム(14)の外表面が管状担体要素(12)の内部空洞(18)に露出されるように、管状担体要素(12)の内表面の一部分に適用される、エアロゾル発生フィルム(14)の層と、を備え、エアロゾル発生フィルムは、少なくとも25重量パーセントの多価アルコールを含み、エアロゾル発生フィルムの層の厚さは、0.05ミリメートル~1.0ミリメートルである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生物品であって、
長軸方向に延びる内部空洞を画定する管状担体要素と、
エアロゾル発生フィルムの外表面が前記管状担体要素の前記内部空洞に露出されるように、前記管状担体要素の内表面の一部分に適用される、エアロゾル発生フィルムの層であって、前記エアロゾル発生フィルムが、少なくとも25重量パーセントの多価アルコールを含み、前記エアロゾル発生フィルムの前記層の厚さが、0.05ミリメートル~1.0ミリメートルである、エアロゾル発生フィルムの層と、を備える、エアロゾル発生物品。
【請求項2】
前記エアロゾル発生フィルムがさらに、少なくとも10重量パーセントのセルロース系フィルム形成剤を含む、請求項1に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項3】
前記エアロゾル発生フィルムが、前記管状担体要素の上流端から長軸方向に、前記管状担体要素の長さの約50パーセント未満に延びる、請求項1または2に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項4】
前記内部空洞に露出される前記エアロゾル発生フィルムの前記外表面の表面積が、少なくとも約1平方センチメートルである、請求項1~3のいずれかに記載のエアロゾル発生物品。
【請求項5】
前記エアロゾル発生フィルムが捲縮される、請求項1~4のいずれかに記載のエアロゾル発生物品。
【請求項6】
前記エアロゾル発生フィルムの下流に、前記管状担体要素の前記内部空洞内に流量制限要素をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項7】
前記流量制限要素が、少なくとも約80mmWGのRTDを有する前記エアロゾル発生物品を提供するように適合される、請求項6に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項8】
前記流量制限要素と前記フィルムの下流端との間の長軸方向の間隔が、前記管状担体要素の前記長さの少なくとも約10パーセントである、請求項6または7に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項9】
前記管状担体要素がさらに、アルミニウムを含む被覆層を含み、前記被覆層が、前記管状担体要素の前記内表面の少なくとも一部分の上に延び、前記エアロゾル発生フィルムの前記層が、前記被覆層の上に提供される、請求項1~8のいずれかに記載のエアロゾル発生物品。
【請求項10】
前記管状担体要素の少なくとも一つの端部が、シール要素によってシールされる、請求項1~9のいずれかに記載のエアロゾル発生物品。
【請求項11】
前記管状担体要素の前記上流端に、壊れやすいシール要素を備え、前記壊れやすいシール要素が、空気が前記空洞に流入および前記空洞から流出することを妨害するように適合される、請求項10に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項12】
エアロゾル発生物品で使用するためのエアロゾル発生基体であって、前記エアロゾル発生基体が、
長軸方向に延びる内部空洞を画定する管状担体要素と、
エアロゾル発生フィルムの外表面が、前記管状担体要素の前記内部空洞に露出されるように、前記管状担体要素の内表面の一部分に適用される、エアロゾル発生フィルムの層であって、前記エアロゾル発生フィルムが、少なくとも25重量パーセントのグリセリンを含み、前記エアロゾル発生フィルムの前記層の厚さが、0.05ミリメートル~1.0ミリメートルである、エアロゾル発生フィルムの層と、を備える、エアロゾル発生基体。
【請求項13】
エアロゾル発生物品の製造方法であって、前記方法が、
グリセリンを含む水性フィルム形成組成物を提供する工程と、
シート材料を提供する工程と、
前記水性フィルム形成組成物を前記シート材料の表面に適用して、フィルム層を形成する工程と、
前記フィルム層を乾燥して、少なくとも25重量パーセントのグリセリンを含むエアロゾル発生フィルムの層を形成する工程であって、前記エアロゾル発生フィルムの前記層の厚さが、0.05ミリメートル~1.0ミリメートルである、乾燥する工程と、
前記シート材料をロールして、長軸方向に延びる内部空洞を画定する管状担体要素を形成し、前記エアロゾル発生フィルムの前記層を前記管状担体要素の内表面の一部分に適用する工程と、を含む、方法。
【請求項14】
エアロゾル発生物品と、ヒーター、および前記エアロゾル発生物品が加熱チャンバー内で加熱されるように、前記エアロゾル発生物品を受容するように構成された細長い加熱チャンバー、を含む電気的に作動するエアロゾル発生装置と、を備え、前記エアロゾル発生物品が、
長軸方向に延びる内部空洞を画定する管状担体要素と、
エアロゾル発生フィルムの外表面が、前記管状担体要素の前記内部空洞に露出されるように、前記管状担体要素の内表面の一部分に適用される、エアロゾル発生フィルムの層であって、前記エアロゾル発生フィルムが、少なくとも25重量パーセントのグリセリンを含み、前記エアロゾル発生フィルムの前記層の厚さが、0.05ミリメートル~1.0ミリメートルである、エアロゾル発生フィルムの層と、を備える、エアロゾル発生システム。
【請求項15】
エアロゾルエアロゾル発生物品と、前記エアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体を加熱するように構成されたヒーター要素を含む電気的に作動するエアロゾル発生装置と、を備え、
前記エアロゾル発生物品が、長軸方向に延びる内部空洞を画定する管状担体要素と、エアロゾル発生フィルムの外表面が管状担体要素の内部空洞に露出されるように、前記管状担体要素の内表面の一部分に適用される、エアロゾル発生フィルムの層であって、前記フィルムが、少なくとも25重量パーセントの多価アルコールを含み、前記エアロゾル発生フィルムの前記層の厚さが、0.05ミリメートル~1.0ミリメートルである、エアロゾル発生フィルムの層と、を備えるエアロゾル発生基体を備え、
前記ヒーター要素が、ヒーターブレードまたはヒーターピンが前記エアロゾル発生フィルムの前記外表面に面するように、前記空洞の中に挿入されるように構成される、ヒーターブレードまたはヒーターピンである、エアロゾル発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル発生フィルムを備える加熱式エアロゾル発生物品、およびこうしたエアロゾル発生物品を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニコチン含有基体またはたばこ含有基体などのエアロゾル発生基体が燃焼されるのではなく加熱されるエアロゾル発生物品は、当業界で公知である。典型的に、こうした加熱式喫煙物品においてエアロゾルは、熱源からの熱を、物理的に分離されたエアロゾル発生基体または材料に伝達することによって発生され、このエアロゾル発生基体または材料は熱源と接触して、または熱源内に、または熱源の周囲に、または熱源の下流に位置してもよい。エアロゾル発生物品の使用中、揮発性化合物は、熱源からの熱伝達によってエアロゾル発生基体から放出され、エアロゾル発生物品を通して引き出された空気中に同伴される。放出された化合物は冷えるにつれて凝縮してエアロゾルを形成する。
【0003】
数多くの先行技術文書は、エアロゾル発生物品を消費するためのエアロゾル発生装置を開示している。こうした装置としては、例えばエアロゾル発生装置の一つ以上の電気ヒーター要素から加熱式エアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体への熱伝達によってエアロゾルが発生される、電気加熱式エアロゾル発生装置が挙げられる。
【0004】
加熱式エアロゾル発生物品用の基体はこれまでしばしば、たばこ材料の無作為な向きにされた断片、ストランド、または細片を使用して生産されてきた。代替として、たばこ材料のシートの集合体から形成された、加熱式エアロゾル発生物品用のロッドは、一例として、国際特許出願第WO-A-2012/164009号に開示されている。
【0005】
国際特許出願WO-A-2011/101164は、均質化したたばこ材料のストランドから形成された、加熱式エアロゾル発生物品のための代替的なロッドを開示していて、これは粒子状たばこおよび少なくとも一つのエアロゾル形成体を含む混合物の鋳造、圧延、カレンダ成形、または押し出しによって形成されて、均質化したたばこ材料シートを形成しうる。代替的な実施形態では、国際特許出願第WO-A-2011/101164号のロッドは、粒子状たばこおよび少なくとも一つのエアロゾル形成体を含む混合物を押出成形することによって得られた均質化したたばこ材料のストランドから形成されて、均質化したたばこ材料の連続的な長さを形成し得る。
【0006】
ニコチンを含む基体の代替的な形態も開示されている。一例として、しばしばeリキッドと呼ばれる液体ニコチン組成物が提案されてきた。これらの液体組成物は、例えば、エアロゾル発生装置のコイル状の電気抵抗性のあるフィラメントによって加熱され得る。
【0007】
このタイプの基体は、液体組成物を保持する容器の製造において、望ましくない漏れを防止するために特に注意を必要とする場合がある。この問題に対処し、製造プロセス全体を簡略化するために、加熱時にニコチン含有エアロゾルを発生するニコチンを含むゲル組成物を提供することも提案されている。一例として、国際特許出願第WO-A-2018/019543号は、熱可逆性ゲル組成物、すなわち、溶融温度に加熱したときに流体となり、ゲル化温度で再びゲルに固定されるゲルを開示する。ゲルは、カートリッジのハウジング内に提供され、カートリッジは、ゲルが消費された時に廃棄および交換されてもよい。
【0008】
改善された安定性を有する新規なエアロゾル発生フィルムを有するエアロゾル発生物品を提供することが望ましい。さらに、こうしたエアロゾル発生物品に、エアロゾル発生基体として首尾よく使用され得るように、高いエアロゾル形成体含有量を有するエアロゾル発生フィルムを提供することが望ましい。特に、使用後の廃棄がより簡単な、または環境への影響が低減された、こうしたエアロゾル発生物品を提供することが望ましい。使用中にヒーター要素を物品の中に挿入することを容易にするこうしたエアロゾル発生物品を提供することがさらに望ましい。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、長軸方向に延びる内部空洞を画定する管状担体要素と、エアロゾル発生フィルムとを備える、エアロゾル発生物品に関する。エアロゾル発生フィルムは、管状担体要素の内表面の一部分の上に提供されてもよい。エアロゾル発生フィルムの外表面は、管状担体要素の内部空洞に露出されてもよい。エアロゾル発生フィルムは、少なくとも25重量パーセントの多価アルコールを含み得る。エアロゾル発生フィルムの厚さは、約0.05ミリメートル~約1.0ミリメートルであり得る。
【0010】
本発明の第一の態様によれば、エアロゾル発生物品であって、長軸方向に延びる内部空洞を画定する管状担体要素と、エアロゾル発生フィルムの外表面が管状担体要素の内部空洞に露出されるように、管状担体要素の内表面の一部分の上に提供される、エアロゾル発生フィルムとを備え、フィルムは、少なくとも25重量パーセントの多価アルコールを含み、フィルムの厚さは、約0.05ミリメートル~約1.0ミリメートルである、エアロゾル発生物品が提供される。
【0011】
本発明の第二の態様によれば、エアロゾル発生物品で使用するためのエアロゾル発生基体であって、長軸方向に延びる内部空洞を画定する管状担体要素と、エアロゾル発生フィルムの外表面が管状担体要素の内部空洞に露出されるように、管状担体要素の内表面の一部分の上に提供される、エアロゾル発生フィルムとを備え、フィルムは、少なくとも25重量パーセントのグリセリンを含み、フィルムの厚さは、約0.05ミリメートル~約1.0ミリメートルである、エアロゾル発生基体が提供される。
【0012】
本発明の第三の態様によれば、エアロゾル発生物品の製造方法であって、グリセリンを含む水性フィルム形成組成物を提供する工程と、シート材料を提供する工程と、水性フィルム形成組成物をシート材料の表面上に適用して、フィルム層を形成する工程と、フィルム層を乾燥して、少なくとも25重量パーセントのグリセリンを含むエアロゾル発生フィルムを形成する工程であって、エアロゾル発生フィルムの厚さは、0.05ミリメートル~1.0ミリメートルである、乾燥する工程と、シート材料をロールして、長軸方向に延びる内部空洞を画定する管状担体要素を形成し、エアロゾル発生フィルムを管状担体要素の内表面の一部分に適用する工程とを含む、製造方法が提供される。
【0013】
本発明の第四の態様によれば、エアロゾル発生システムであって、エアロゾル発生物品と、電気的に作動するエアロゾル発生装置とを備え、電気的に作動するエアロゾル発生装置が、ヒーター、およびエアロゾル発生物品が加熱チャンバー内で加熱されるように、エアロゾル発生物品を受容するように構成された細長い加熱チャンバーを含む、エアロゾル発生システムが提供される。エアロゾル発生物品は、長軸方向に延びる内部空洞を画定する管状担体要素と、エアロゾル発生フィルムの外表面が管状担体要素の内部空洞に露出されるように、管状担体要素の内表面の一部分の上に提供される、エアロゾル発生フィルムとを備え、フィルムは、少なくとも25重量パーセントのグリセリンを含み、フィルムの厚さは、約0.05ミリメートル~約1.0ミリメートルである。
【0014】
本発明の第五の態様によれば、エアロゾル発生システムであって、エアロゾルエアロゾル発生物品と、電気的に作動するエアロゾル発生装置とを備え、電気的に作動するエアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体を加熱するように構成されたヒーター要素を含む、エアロゾル発生システムが提供される。エアロゾル発生物品は、長軸方向に延びる内部空洞を画定する管状担体要素と、エアロゾル発生フィルムの外表面が管状担体要素の内部空洞に露出されるように、管状担体要素の内表面の一部分の上に提供される、エアロゾル発生フィルムと、を備えるエアロゾル発生基体を備え、フィルムは、少なくとも25重量パーセントの多価アルコールを含み、フィルムの厚さは、約0.05ミリメートル~約1.0ミリメートルである。ヒーター要素は、ヒーターブレードまたはヒーターピンがエアロゾル発生フィルムの外表面に面するように、空洞の中に挿入されるように構成されたヒーターブレードまたはヒーターピンである。
【0015】
本発明によるエアロゾル発生物品の特徴に対する本明細書の言及は、別段の記載がない限り、本発明のすべての態様に適用されるものと想定される。
【0016】
本明細書で使用される「エアロゾル発生物品」という用語は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出するために、燃焼ではなく加熱されることが意図されるエアロゾル発生基体を含むエアロゾルの生成のためのエアロゾル発生物品を指す。
【0017】
本明細書で使用される「エアロゾル発生基体」という用語は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を加熱時に放出する能力を有する基体を指す。本明細書に記載のエアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体から発生したエアロゾルは、可視または不可視であってもよく、またベイパー(蒸気)(例えば、室温では通常、液体または固体である物質の、気体状態にある物質の微粒子)ならびに気体および凝縮されたベイパーの液滴を含んでもよい。
【0018】
加熱式エアロゾル発生物品用の基体は典型的に、「エアロゾル形成体」、すなわち使用時にエアロゾルの形成を容易にする、および好ましくはエアロゾル発生物品の使用温度で熱分解に対して実質的に耐性がある化合物または化合物の混合物を含む。適切なエアロゾル形成体の例には、多価アルコール(プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、グリセリンなど)、多価アルコールのエステル(グリセロールモノアセテート、ジアセテートまたはトリアセテートなど)、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸またはポリカルボン酸の脂肪族エステル(ドデカン二酸ジメチル、テトラデカン二酸ジメチルなど)が挙げられる。
【0019】
本発明のエアロゾル発生物品のエアロゾル発生フィルム中の多価アルコールはまた、上記に記載される意味内のエアロゾル形成体である。
【0020】
本明細書で使用される「フィルム」という用語は、その幅または長さ未満の厚さを有する固体の層状要素を表す。
【0021】
フィルムは、自己支持型であってもよい。言い換えれば、フィルムは、支持面上にフィルム形成製剤をキャストすることによって得られた場合であっても、フィルムを支持面から分離することができるような、結合特性および機械的特性を有し得る。
【0022】
別の方法として、フィルムは、支持体上に配置されてもよく、または他の材料の間に挟まれてもよい。これは、フィルムの機械的安定性を強化し得る。
【0023】
本発明によるエアロゾル発生物品のエアロゾル発生フィルムの「厚さ」は、フィルムの対向する実質的に平行な表面の間で測定される最小距離に対応する。
【0024】
エアロゾル発生フィルムの厚さは、水の喪失にもかかわらず、乾燥中にキャストまたは押出成形フィルム形成組成物が実質的に収縮しないため、対応するフィルム形成組成物がキャストまたは押出成形される厚さに実質的に対応し得る。
【0025】
本発明によるエアロゾル発生物品のエアロゾル発生フィルムの「重量」は、一般に、対応するフィルム形成組成物の成分の重量から、乾燥工程中に蒸発した水の重量を引いたものに相当する。フィルムが自己支持型である場合、フィルムはそれ自体を秤量することができる。フィルムが支持体上に配置される場合、フィルムおよび支持体が秤量され、フィルムの配置前に測定された支持体の重量が、フィルムおよび支持体の合計重量から減算される。
【0026】
別途記載のない限り、本明細書で列挙されたエアロゾル発生フィルムの成分の重量割合は、エアロゾル発生フィルムの総重量に基づく。
【0027】
本明細書で使用される場合、「長軸方向」という用語は、エアロゾル発生物品の上流端と下流端との間に延びる、エアロゾル発生物品の長軸方向主軸に対応する方向を指す。使用中、空気は長軸方向でエアロゾル発生物品を通して引き出される。「横断方向」という用語は、長軸方向軸に対して直角を成す方向を指す。
【0028】
エアロゾル発生物品またはエアロゾル発生物品の構成要素の「断面」への任意の言及は、別途記載のない限り、横断断面を指す。本明細書で使用される「長さ」という用語は、長軸方向における構成要素の寸法を指し、また「幅」という用語は、横断方向における構成要素の寸法を指す。
【0029】
本明細書で使用される「上流」および「下流」という用語は、使用中にエアロゾル発生物品を通してエアロゾルが搬送される方向に関してエアロゾル発生物品の要素(または要素の部分)の相対的な位置を説明する。
【0030】
上述のように、本発明は、エアロゾル発生基体の新規な配設を有するエアロゾル発生物品を提供する。本発明によれば、エアロゾル発生基体は、管状担体要素の内表面上に提供されるエアロゾル発生フィルムの形態である。具体的には、エアロゾル発生フィルムの層は、管状担体要素の内表面の少なくとも一部分に適用される。エアロゾル発生フィルムの外表面は、管状担体要素によって画定される長軸方向の内部チャネル内に露出される。加熱時に、エアロゾルがエアロゾル発生フィルムから発生され、エアロゾルは、内部チャネルの中に放出され、エアロゾル発生物品を通して消費者の口の中へと引き出され得る。エアロゾル発生フィルムは、エアロゾル発生物品内の任意の他のエアロゾル発生基体の代わりに、または追加的に提供され得る。
【0031】
管状担体要素は、エアロゾル発生フィルムの薄膜のための支持面を提供する。エアロゾル発生フィルムは、管状担体要素の内表面上に支持され、使用中に定位置に留まるようそこに固定される。したがって、管状担体要素の使用は、エアロゾル発生フィルムをエアロゾル発生物品に組み込むのに好都合な方法を提供する。エアロゾル発生フィルムが適用された管状担体要素は、大幅な修正の必要なく、エアロゾル発生物品の既存の構造に容易に組み込むことができ、したがって、本発明によるエアロゾル発生物品は、既存の製造装置および方法を使用して高速で製造され得る。以下により詳細に説明するように、 エアロゾル発生フィルムは、管状担体要素の外部から外部的に、または、管状担体要素の内部チャネルの中に挿入される発熱体によって内部的に、のいずれかで容易に加熱され得る。管状担体要素の内表面上にエアロゾル発生フィルムを提供することによって、管状担体要素の内部チャネルが遮られないままとなり、これにより、ヒーター要素をエアロゾル発生物品の中に挿入することが容易になり得る。
【0032】
エアロゾル発生フィルムの組成物は、エアロゾル発生物品の使用中、加熱時にフィルムの成分の大部分が蒸発し、最小限の残留物が中空管状担体要素内に残るように選択され得る。有利なことに、これは廃棄が容易であり、環境への影響が低減されたエアロゾル発生物品を提供し得る。
【0033】
エアロゾル発生フィルムの特性および組成物は、フィルムの加熱時に発生される結果として得られたエアロゾルを制御するために容易に適合され得る。エアロゾル発生フィルムの使用はまた、高度に一貫したエアロゾルを消費者に提供することを可能にする。
【0034】
本発明によるエアロゾル発生物品のエアロゾル発生フィルムは、約0.05ミリメートル~約1.0ミリメートルの厚さを有する。管状担体要素の使用により、エアロゾル発生フィルムの比較的薄い層を提供することが可能になる。したがって、エアロゾル発生フィルムの量を最小化することができる一方で、フィルムの露出表面積が最大化する。これは、エアロゾル発生フィルムからのエアロゾルの放出効率を最適化する。また、エアロゾル発生フィルムの廃棄も低減され得る。
【0035】
本発明によるエアロゾル発生物品は、以下により詳細に説明するように、エアロゾル発生基体を加熱するための内部ヒーター要素を有する電気加熱式のエアロゾル発生装置を備える、エアロゾル発生システムでの使用に特に好適である。例えば、本発明によるエアロゾル発生物品は、エアロゾル発生基体に近接してエアロゾル発生物品の中に挿入されるように適合される内部ヒーターブレードを有する電気加熱式のエアロゾル発生装置を備える、エアロゾル発生システムにおいて特定の用途がある。このタイプのエアロゾル発生物品は、先行技術、例えば欧州特許第EP-A-0 822 670号に記載されている。
【0036】
本明細書に記載のエアロゾル発生フィルムは、エアロゾル発生物品内で内部から加熱されるのに特に好適である。内部ヒーター要素によって加熱されると、管状担体要素の内表面上のエアロゾル発生フィルムは収縮し得、これは有利なことに、エアロゾル発生フィルムをヒーター要素の表面に近づけ、それによってエアロゾル発生フィルムの加熱を最適化し得る。
【0037】
本明細書で使用される「エアロゾル発生装置」という用語は、エアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体と相互作用してエアロゾルを発生するヒーター要素を備える装置を指す。
【0038】
本発明によるエアロゾル発生物品は、使用中にエアロゾル発生基体を加熱するための可燃性炭素熱源を備えてもよい。このタイプのエアロゾル発生物品は、先行技術、例えば国際特許出願第WO-A-2009/022232号に記載されている。
【0039】
上述のように、管状担体要素は、エアロゾル発生フィルムの支持面として作用するように提供される。管状担体要素は、管状担体要素を通って長軸方向に延びる円筒形内部チャネルを提供することが好ましい、中空の円筒形管であることが好ましい。内部チャネルは、実質的に円形の横断断面を有することが好ましい。
【0040】
管状担体要素は、約0.05ミリメートル~約0.5ミリメートルの壁厚を有することが好ましく、約0.15ミリメートル~約0.3ミリメートルの壁厚を有することがより好ましい。壁厚は、所望のレベルの剛性が提供され得るように、使用される材料に応じて選択され得る。
【0041】
管状担体要素の外径は、エアロゾル発生物品の外径とほぼ等しいことが好ましい。これは、管状担体要素をエアロゾル発生物品の中に組み込むことを容易にする。管状担体要素の外径は、少なくとも約5ミリメートルであることが好ましく、少なくとも6ミリメートルであることがより好ましい。管状担体要素の外径は、約10ミリメートル以下であることが好ましく、約8ミリメートル以下であることがより好ましい。好ましい一実施形態において、管状担体要素の外径は、約7ミリメートルである。
【0042】
管状担体要素は、任意の適切な材料で形成され得る。管状担体要素は、紙または厚紙などのセルロースシート材料で形成される中空管であることが好ましい。本発明の一部の実施形態では、管状担体要素は、紙または厚紙の外層およびアルミニウムなどの金属の内層を含むラミネートシート材料で形成される。こうした実施形態では、エアロゾル発生フィルムは、金属層の上に提供される。金属層の包含は、有利なことに、使用中のエアロゾル発生フィルムの加熱を最適化し得る。
【0043】
本発明の一部の実施形態では、管状担体要素は、エアロゾル発生フィルムを支持する目的のためにのみ提供されてもよい。したがって、管状担体要素は、エアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体の構成要素を提供し、これは、一つ以上の追加的な構成要素と組み合わせられてエアロゾル発生物品を形成し得る。こうした実施形態では、管状担体要素は、エアロゾル発生フィルムおよび管状担体要素の長さがエアロゾル発生物品の長さよりも小さい限り、エアロゾル発生物品に沿ってのみ延び得る。例えば、こうした実施形態では、管状担体要素の長さは、約7ミリメートル~約15ミリメートルであり得る。
【0044】
管状担体要素は、エアロゾル発生物品の全長に沿って延び、管状担体要素の上流部分のみが内表面に適用されたエアロゾル発生フィルムを有することがより好ましい。こうした実施形態では、エアロゾル発生基体を構成する管状担体要素の上流部分は、エアロゾル発生物品の残りの部分と一体的である。エアロゾル発生フィルムの下流にある管状担体要素の一部分は、有利なことに、以下でより詳細に説明するように、エアロゾル発生物品のその他の所望の構成要素を提供するように適合され得る。単一の一体型の管を使用してエアロゾル発生物品を提供することにより、エアロゾル発生物品の組立が容易になり得る。こうした実施形態では、管状担体要素の長さは、約30ミリメートル~約50ミリメートルであることが好ましい。
【0045】
上述のように、本発明によるエアロゾル発生物品では、エアロゾル発生フィルムは、管状担体要素の内表面の少なくとも一部分に適用される。エアロゾル発生フィルムは、エアロゾル発生物品の上流端に提供されることが好ましく、エアロゾル発生物品の上流端は通常、エアロゾル発生物品がエアロゾル発生装置の中に挿入される時に加熱される端部である。
【0046】
エアロゾル発生フィルムは、管状担体要素の内表面の少なくとも上流部分に適用されることが好ましい。上述のように、管状担体要素がエアロゾル発生基体を提供し、その他の構成要素が下流に別個に提供される実施形態では、エアロゾル発生フィルムは、管状担体要素の内表面の実質的に全体に適用され得る。上述のように、管状担体要素がエアロゾル発生物品の全長に延びる代替的な実施形態では、エアロゾル発生フィルムは、管状担体要素の内表面の上流部分にのみ適用されることが好ましい。例えば、このような実施形態では、エアロゾル発生フィルムは、管状担体要素の上流端から長軸方向に、管状担体要素の長さの約50パーセント未満、または管状担体要素の長さの約35パーセント未満に延びてもよい。
【0047】
エアロゾル発生フィルムは、管状担体要素の長さに沿って少なくとも約6ミリメートル延びることが好ましく、管状担体要素に沿って長軸方向に少なくとも約8ミリメートル延びることがより好ましい。エアロゾル発生フィルムは、管状担体要素に沿って長軸方向に約15ミリメートル以下延びることが好ましく、管状担体要素に沿って長軸方向に約12ミリメートル以下延びることがより好ましい。エアロゾル発生フィルムは、管状担体要素の上流端から延びることが好ましいが、一部の実施形態では、エアロゾル発生フィルムの上流端は、管状担体要素の上流端からある距離に提供されてもよい。
【0048】
エアロゾル発生フィルムは、管状担体要素の内表面の周り全体に円周方向に延びることが好ましい。
【0049】
管状担体要素の内表面上にエアロゾル発生フィルムを配設することは、エアロゾル発生フィルムの外表面が管状担体要素の内部空洞に露出されることを意味する。これにより、エアロゾル発生フィルムを加熱することができ、エアロゾル発生フィルムの加熱時に発生される揮発性成分を内部空洞内に放出することが可能になる。エアロゾル発生フィルムの露出表面積は、使用中の所望のレベルのエアロゾル送達に応じて適合され得る。内部空洞に露出されるエアロゾル発生フィルムの外表面の表面積は、少なくとも約0.5平方センチメートルであることが好ましく、少なくとも1平方センチメートルであることがより好ましい。内部空洞に露出されるエアロゾル発生フィルムの外表面の表面積は、約2.5平方センチメートル未満であることが好ましく、約2平方センチメートル未満であることがより好ましい。例えば、内部空洞に露出されるエアロゾル発生フィルムの外表面の表面積は、約0.5平方センチメートル~約2.5平方センチメートル、または約1平方センチメートル~約2平方センチメートルであってもよい。
【0050】
本発明によるエアロゾル発生物品のエアロゾル発生フィルムの厚さは、少なくとも約0.05ミリメートルであり、少なくとも約0.1ミリメートルであることが好ましく、少なくとも約0.15ミリメートルであることがより好ましい。エアロゾル発生フィルムの厚さは、約1.0ミリメートル以下であり、約0.5ミリメートル以下であることが好ましく、約0.3ミリメートル以下であることがより好ましい。例えば、フィルムの厚さは、約0.05ミリメートル~約1.0ミリメートル、または約0.1ミリメートル~約0.5ミリメートル、または約0.15ミリメートル~約0.3ミリメートルであってもよい。したがって、本発明は、フィルムの重量に対する表面積の比率が最大化され得るように、比較的薄いエアロゾル発生フィルムの層を提供する。これにより、加熱時のエアロゾル発生フィルムからの揮発性成分の放出効率が改善される。比較的薄いエアロゾル発生フィルムの層の使用はまた、フィルムの重量を低く維持する一方で、十分な表面積を保持することを可能にする。これは有利なことに、エアロゾル発生フィルムの熱慣性を減少させ、エアロゾル発生の効率をさらに改善する。
【0051】
管状要素のエアロゾル発生フィルムの重量はまた、使用中の所望のレベルのエアロゾル送達に応じて適合され得る。エアロゾル発生フィルムの重量は、無駄を最小化し、管状担体要素の分解性を最大化するために、エアロゾル発生フィルムの揮発性成分の実質的にすべてがエアロゾル発生物品の典型的な加熱サイクル中に放出されるように、選択されることが好ましい。
【0052】
管状担体要素は、少なくとも約20ミリグラムのエアロゾル発生フィルムを提供することが好ましく、少なくとも約50ミリグラムのエアロゾル発生フィルムを提供することがより好ましく、少なくとも約100ミリグラムのエアロゾル発生フィルムを提供することがより好ましい。管状担体要素は、約300ミリグラム以下のエアロゾル発生フィルムを提供することが好ましく、約200ミリグラム以下のエアロゾル発生フィルムを提供することがより好ましい。例えば、管状担体要素は、約20ミリグラム~約300ミリグラムのエアロゾル発生フィルム、または約50ミリグラム~約200ミリグラムのエアロゾル発生フィルム、または約100ミリグラム~約200ミリグラムのエアロゾル発生フィルムを提供し得る。
【0053】
エアロゾル発生フィルムは、少なくとも約100グラム/平方メートルの坪量を有することが好ましく、少なくとも約120グラム/平方メートルの坪量を有することがより好ましく、少なくとも約140グラム/平方メートルの坪量を有することが最も好ましい。エアロゾル発生フィルムは、300グラム/平方メートル以下の坪量を有することが好ましく、280グラム/平方メートル以下の坪量を有することがより好ましく、260グラム/平方メートル以下の坪量を有することが最も好ましい。例えば、エアロゾル発生フィルムは、約100グラム/平方メートル~約300グラム/平方メートル、または約120グラム/平方メートル~約280グラム/平方メートル、または約140グラム/平方メートル~約260グラム/平方メートルの坪量を有してもよい。
【0054】
本発明の特定の実施形態では、エアロゾル発生フィルムは、その表面の少なくとも一部にわたってテクスチャ加工されてもよい。本明細書で使用される「テクスチャ加工された」という用語は、捲縮、型押し、デボス加工、穿孔、または他の方法での変形が施されたフィルムを指す。例えば、エアロゾル発生フィルムは、複数の間隙を介したへこみ、突起、穿孔またはそれらの組み合わせを含み得る。テクスチャは、エアロゾル発生フィルムの一方の面上、またはエアロゾル発生フィルムの両面上に提供されてもよい。テクスチャの提供により、有利なことに、エアロゾル発生フィルムの露出表面積が増大し、加熱時のエアロゾル発生フィルムの揮発性成分の放出効率が改善し得る。
【0055】
特に好ましい実施形態では、エアロゾル発生フィルムは捲縮される。本明細書で使用される「捲縮」という用語は、複数の実質的に平行な隆起または波形を有するフィルムを意味する。
【0056】
本発明によるエアロゾル発生物品のエアロゾル発生フィルムは、少なくとも約25重量パーセントの多価アルコール、より好ましくは少なくとも約30重量パーセントの多価アルコール、より好ましくは少なくとも約35重量パーセントの多価アルコール、より好ましくは少なくとも約40重量パーセントの多価アルコールを含む組成物を有する。
【0057】
好ましくは、エアロゾル発生フィルムは、好ましくは、約90重量パーセント未満の多価アルコール、より好ましくは約80重量パーセント未満の多価アルコール、より好ましくは約70重量パーセント未満の多価アルコール、より好ましくは約60重量パーセント未満の多価アルコールを含む。
【0058】
例えば、エアロゾル発生フィルムは、約25重パーセント~約90重量パーセントの多価アルコール、または約30重量パーセント~約80重量パーセントの多価アルコール、または約35重量パーセント~約70重量パーセントの多価アルコール、または約40重量パーセント~約60重量パーセントの多価アルコールを含み得る。
【0059】
エアロゾル発生フィルムでの使用に適した多価アルコールには、限定されるものではないが、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、およびグリセリンが含まれる。本発明によるエアロゾル発生フィルムにおいて、多価アルコールは、グリセリン、プロピレングリコール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。特に好ましい実施形態では、多価アルコールはグリセリンである。
【0060】
したがって、本発明は、有利なことに、ゲル様のテクスチャを有する組成物から出発して、容易にキャストまたは押出成形および固化され得る、有意な多価アルコール含有量を有するフィルムを提供する。有意な割合の多価アルコール、特にグリセリンがフィルム形態で提供され得ると同時に、フィルムの形状を細かく制御することができるため、本発明は、有利なことに、加熱されてエアロゾルを放出するように設計されたエアロゾル発生物品におけるエアロゾル発生基体の使用に特に好適なフィルムを提供する。
【0061】
エアロゾル発生フィルムはさらに、少なくとも約3重量パーセントのセルロース系フィルム形成剤を含むことが好ましく、少なくとも約6重量パーセントのセルロース系フィルム形成剤を含むことがより好ましく、少なくとも約10重量パーセントのセルロース系フィルム形成剤を含むことがより好ましく、少なくとも約14重量パーセントのセルロース系フィルム形成剤を含むことがより好ましく、少なくとも約16重量パーセントのセルロース系フィルム形成剤を含むことがより好ましく、少なくとも約18重量パーセントのセルロース系フィルム形成剤を含むことがより好ましい。
【0062】
エアロゾル発生フィルムは、最大約70重量パーセントのセルロース系フィルム形成剤を含み得る。エアロゾル発生フィルムは、約26重量パーセント以下のセルロース系フィルム形成剤を含むことが好ましく、約24重量パーセント以下のセルロース系フィルム形成剤を含むことがより好ましく、約22重量パーセント以下のセルロース系フィルム形成剤を含むことがより好ましい。
【0063】
例えば エアロゾル発生フィルムは、約3重量パーセント~約70重量パーセントのセルロース系フィルム形成剤、または約6重量パーセント~約26重量パーセントのセルロース系フィルム形成剤、または約10重量パーセント~約24重量パーセントのセルロース系フィルム形成剤、または約14重量パーセント~約24重量パーセントのセルロース系フィルム形成剤、または約16重量パーセント~約22重量パーセントのセルロース系フィルム形成剤、または約18重量パーセント~約22重量パーセントのセルロース系フィルム形成剤を含み得る。
【0064】
本発明の文脈において、「セルロース系フィルム形成剤」という用語は、それ自体、または補助増粘剤の存在下で連続フィルムを形成することができるセルロースポリマーを記述するために使用される。
【0065】
セルロース系フィルム形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。特に好ましい実施形態では、セルロース系フィルム形成剤は、HPMCである。
【0066】
エアロゾル発生フィルムにおいて、セルロース系フィルム形成剤の重量と多価アルコールの重量との比は、少なくとも約0.1、より好ましくは少なくとも約0.2、さらにより好ましくは約0.3であることが好ましい。加えて、または代替として、エアロゾル発生フィルムにおいて、セルロース系フィルム形成剤の重量と多価アルコールの重量との比は、約1以下であることが好ましい。
【0067】
好ましい実施形態では、エアロゾル発生フィルムにおいて、セルロース系フィルム形成剤の重量と多価アルコールの重量との比は、約0.1~約1である。
【0068】
発明者らは驚くべきことに、少なくとも6重量パーセントのセルロース系フィルム形成剤、および好ましくはHPMCを含むエアロゾル発生フィルムが、特に安定していることを見出した。したがって、それらは、10パーセント~60パーセントの相対湿度の変化などの様々な環境条件に曝される際に、実質的にその形状を維持する。したがって、上述のエアロゾル発生フィルムは、有利なことに、保管または輸送中に液相を放出しない。
【0069】
エアロゾル発生フィルムはさらに、少なくとも約1重量パーセントの非セルロース系増粘剤を含むことが好ましく、少なくとも約2重量パーセントの非セルロース系増粘剤を含むことがより好ましく、少なくとも約3重量パーセントの非セルロース系増粘剤を含むことがより好ましい。エアロゾル発生フィルムは約10重量パーセント以下の非セルロース系増粘剤を含むことが好ましく、約8重量パーセント以下の非セルロース系増粘剤を含むことがより好ましく、約6重量パーセント以下の非セルロース系増粘剤を含むことがより好ましい。例えば、エアロゾル発生フィルムは、約1重量パーセント~約10重量パーセントの非セルロース系増粘剤、または約2重量パーセント~約8重量パーセントの非セルロース系増粘剤、または約3重量パーセント~約6重量パーセントの非セルロース系増粘剤を含んでもよい。
【0070】
本発明に関連して本明細書で使用される場合、「非セルロース系増粘剤」という用語は、水性または非水性の液体組成物に添加したときに、他のその特性を実質的に修正することなく、液体組成物の粘度を増大させる非セルロース物質を記述するために使用される。増粘剤は、安定性を増大させ、液体組成物中の成分の懸濁を改善し得る。増粘剤はまた、「増粘剤(thickener)」または「レオロジー調節剤」とも呼ばれ得る。
【0071】
本発明によるエアロゾル発生フィルムにおいて、非セルロース系増粘剤は、寒天、キサンタンガム、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ペクチン、カラギーナン、デンプン、アルギネート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。好ましい実施形態では、非セルロース系増粘剤は寒天である。
【0072】
エアロゾル発生フィルムにおいて、非セルロース系増粘剤の重量と多価アルコールの重量との比は、少なくとも約0.05であることが好ましく、少なくとも0.1であることがより好ましく、少なくとも0.2であることがさらにより好ましい。加えて、または代替として、エアロゾル発生フィルムにおいて、非セルロース系増粘剤の重量と多価アルコールの重量との比は、約0.5以下であることが好ましい。
【0073】
好ましい実施形態では、エアロゾル発生フィルムにおいて、非セルロース系増粘剤の重量と多価アルコールの重量との比は、約0.1~約0.5である。
【0074】
発明者らは驚くべきことに、セルロース系フィルム形成剤と非セルロース系増粘剤との組合せを、多価アルコールと共にフィルムに組み込むことにより、高い精度および再現性で製造され得る、安定性が改善されたフィルムを提供し得ることを見出した。
【0075】
エアロゾル発生フィルムは、約30重量パーセント未満の水を含むことが好ましい。エアロゾル発生フィルムは、約10重量パーセント~約20重量パーセントの水を含むことがより好ましい。
【0076】
一部の実施形態では、エアロゾル発生フィルムは、アルカロイド化合物もしくはカンナビノイド化合物、またはその両方をさらに含む。
【0077】
本発明に関連して本明細書で使用される「アルカロイド化合物」という用語は、一つ以上の塩基性窒素原子を含む自然発生的有機化合物の任意の一つのクラスを意味する。一般的に、アルカロイドは、アミン型構造に少なくとも一つの窒素原子を含有する。アルカロイド化合物の分子におけるこの窒素原子または別の窒素原子は、酸塩基反応の塩基として活性であり得る。ほとんどのアルカロイド化合物は、例えば複素環リングなどの環状系の一部として、その窒素原子の一つまたは複数を有する。自然界では、アルカロイド化合物は主に植物に見られ、特に特定の科の顕花植物において一般的である。しかしながら、一部のアルカロイド化合物は、動物種および菌類に見られる。本発明の文脈において、「アルカロイド化合物」という用語は、天然由来のアルカロイド化合物および合成的に製造されたアルカロイド化合物の両方を記述するために使用される。
【0078】
アルカロイドは、ニコチン、アナタビン、およびその組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。
【0079】
本発明に関して本明細書で使用される場合、「カンナビノイド化合物」という用語は、カンナビス植物、すなわち、カンナビス・サティバ (Cannabis sativa)、カンナビス・インディカ(Cannabis indica)、およびカンナビス・ルデラリス(Cannabis ruderalis)の一部に見られる天然の化合物の任意の一つの種類を説明する。カンナビノイド化合物は雌の頭状花で特に濃縮される。カンナビス植物における天然のカンナビノイド化合物は、テトラヒドロカンナビノール(THC)およびカンナビジオール(CBD)を含む。本発明の文脈において、「カンナビノイド化合物」という用語は、天然由来のカンナビノイド化合物および合成的に製造されたカンナビノイド化合物の両方を説明するために使用される。
【0080】
エアロゾル発生フィルムは、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビノール(CBN)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロールモノメチルエーテル(CBGM)、カンナビバリン(CBV)、カンナビジバリン(CBDV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビシクロル(CBL)、カンナビクロムバリン(CBCV)、カンナビゲロバリン(CBGV)、カンナビエルソイン(CBE)、カンナビシトラン(CBT)、およびその組み合わせからなる群から選択されるカンナビノイド化合物を含むことが好ましい。
【0081】
概して、エアロゾル発生フィルムは、最大約10重量パーセントのアルカロイド化合物もしくはカンナビノイド化合物、またはその両方を含み得る。フィルム中のアルカロイド化合物もしくはカンナビノイド化合物、またはその両方の含有量は、アルカロイド化合物もしくはカンナビノイド化合物、またはその両方の消費者へのエアロゾル形態の送達を最適化する観点から増量および調整されてもよい。植物材料の使用に基づく既存のエアロゾル発生基体と比較して、これは有利なことに、製造の観点から望ましい場合がある、基体(フィルム)の体積当たりまたは基体(フィルム)の重量当たりのアルカロイド化合物もしくはカンナビノイド化合物、またはその両方のより高い含有量を可能にし得る。
【0082】
エアロゾル発生フィルムは、少なくとも約0.5重量パーセントのアルカロイド化合物もしくはカンナビノイド化合物、またはその両方を含むことが好ましい。したがって、エアロゾル発生フィルムは、少なくとも約0.5重量パーセントのアルカロイド化合物、または少なくとも0.5重量パーセントのカンナビノイド化合物、または少なくとも約0.5重量パーセントのアルカロイド化合物とカンナビノイド化合物との組み合わせを含むことが好ましい。
【0083】
エアロゾル発生フィルムは、少なくとも約1重量パーセントのアルカロイド化合物もしくはカンナビノイド化合物、またはその両方を含むことがより好ましく、少なくとも約2重量パーセントのアルカロイド化合物もしくはカンナビノイド化合物、またはその両方を含むことがより好ましい。エアロゾル発生フィルムは、約6重量パーセント未満のアルカロイド化合物もしくはカンナビノイド化合物、またはその両方を含むことが好ましく、約5重量パーセント未満のアルカロイド化合物もしくはカンナビノイド化合物、またはその両方を含むことがより好ましく、約4重量パーセント未満のアルカロイド化合物もしくはカンナビノイド化合物、またはその両方を含むことがより好ましい。
【0084】
例えば、エアロゾル発生フィルムは、約0.5重量パーセント~約10重量パーセントのアルカロイド化合物もしくはカンナビノイド化合物、またはその両方、または約1重量パーセント~約6重量パーセントのアルカロイド化合物もしくはカンナビノイド化合物、またはその両方、または約2重量パーセント~約5重量パーセントのアルカロイド化合物もしくはカンナビノイド化合物、またはその両方を含み得る。
【0085】
一部の実施形態では、エアロゾル発生フィルムは、カンナビノイド、およびニコチンまたはアナタビンを含むアルカロイド化合物のうちの一つ以上を含む。一部の好ましい実施形態では、エアロゾル発生フィルムはニコチンを含む。
【0086】
本発明に関連して本明細書で使用される「ニコチン」という用語は、ニコチン、ニコチン塩基、またはニコチン塩を記述するために使用される。エアロゾル発生フィルムがニコチン塩基またはニコチン塩を含む実施形態において、本明細書に列挙したニコチンの量は、それぞれ遊離塩基ニコチンの量またはプロトン化されたニコチンの量である。
【0087】
エアロゾル発生フィルムは、天然ニコチンまたは合成ニコチンを含み得る。
【0088】
エアロゾル発生フィルムは、一つ以上の一塩基性ニコチン塩を含み得る。
【0089】
本発明に関連して本明細書で使用される「一塩基ニコチン塩」という用語は、一塩基酸のニコチン塩を記述するために使用される。
【0090】
エアロゾル発生フィルムは、少なくとも約0.5重量パーセントのニコチンを含むことが好ましい。エアロゾル発生フィルムは、少なくとも約1重量パーセントのニコチンを含むことがより好ましい。エアロゾル発生フィルムは、少なくとも約2重量パーセントのニコチンを含むことがさらにより好ましい。加えて、または代替として、エアロゾル発生フィルムは、約10重量パーセント未満のニコチンを含むことが好ましい。エアロゾル発生フィルムは、約6重量パーセント未満のニコチンを含むことがより好ましい。エアロゾル発生フィルムは、約5重量パーセント未満のニコチンを含むことがさらにより好ましい。例えば、エアロゾル発生フィルムは、約0.5重量パーセント~約10重量パーセントのニコチン、または約1重量パーセント~約6重量パーセントのニコチン、または約2重量パーセント~約5重量パーセントのニコチンを含んでもよい。
【0091】
一部の好ましい実施形態では、エアロゾル発生フィルムは、カンナビノイド化合物を含む。カンナビノイド化合物は、CBD及びTHCから選択されることが好ましい。カンナビノイド化合物はCBDであることがより好ましい。
【0092】
エアロゾル発生フィルムは、最大約10重量パーセントのCBDを含んでもよい。エアロゾル発生フィルムは、少なくとも約0.5重量パーセントのCBDを含むことが好ましく、少なくとも約1重量パーセントのCBDを含むことがより好ましく、少なくとも約2重量パーセントのCBDを含むことがより好ましい。エアロゾル発生フィルムは、好ましくは約6重量パーセント未満のCBDを含むことが好ましく、約5重量パーセント未満のCBDを含むことがより好ましく、約4重量パーセント未満のCBDを含むことがより好ましい。
【0093】
例えば、エアロゾル発生フィルムは、約0.5重量パーセント~約10重量パーセントのCBD、より好ましくは約1重量パーセント~約6重量パーセントのCBD、さらにより好ましくは約2重量パーセント~約5重量パーセントのCBDを含み得る。
【0094】
エアロゾル発生フィルムは、実質的にたばこを含まないエアロゾル発生フィルムであってもよい。
【0095】
本発明に関連して本明細書で使用される「実質的にたばこを含まないエアロゾル発生フィルム」という用語は、1重量パーセント未満のたばこ含有量を有するエアロゾル発生フィルムを記述する。例えば、エアロゾル発生フィルムは、約0.75重量パーセント未満、約0.5重量パーセント未満、または約0.25重量パーセント未満のたばこ含有量を有してもよい。
【0096】
エアロゾル発生フィルムは、たばこを含まないエアロゾル発生フィルムであってもよい。
【0097】
本発明に関連して本明細書で使用される「たばこを含まないエアロゾル発生フィルム」という用語は、0重量パーセントのたばこ含有量を有するエアロゾル発生フィルムを記述する。
【0098】
一部の実施形態では、エアロゾル発生フィルムは、たばこ材料または非たばこ植物材料または植物抽出物を含む。一例として、エアロゾル発生フィルムは、たばこラミナ粒子などのたばこ粒子、ならびにクローブおよびユーカリなどの他の植物性の粒子を含んでもよい。エアロゾル発生フィルムがたばこを含む場合、たばこ含有量は、約70重量パーセント以下であることが好ましく、約50重量パーセント以下であることがより好ましく、約30重量パーセント以下であることがより好ましく、約10重量パーセント以下であることが最も好ましい。
【0099】
好ましい実施形態では、エアロゾル発生フィルムは酸を含む。エアロゾル発生フィルムは、一つ以上の有機酸を含むことがより好ましい。エアロゾル発生フィルムは、一つ以上のカルボン酸を含むことがさらにより好ましい。特に好ましい実施形態では、酸は、乳酸またはレブリン酸である。
【0100】
酸の存在により、ニコチンおよびその他の植物抽出物などの、フィルム形成組成物中の溶存種を安定化させ得ることが観察されるため、酸の含有は、ニコチンを含むエアロゾル発生フィルムの実施形態で特に好ましい。理論に拘束されることを望むものではないが、酸は、特にニコチンが塩形態で提供されている場合にニコチン分子と相互作用し得、これは、乾燥動作中にニコチンが蒸発することを実質的に防止することが理解されよう。そのため、フィルムの製造中のニコチンの喪失を最小化することができ、有利なことに、消費者へのより高い、より良好に制御されたニコチン送達を確実にすることができる。
【0101】
エアロゾル発生フィルムは、少なくとも約0.25重量パーセントの酸を含むことが好ましい。エアロゾル発生フィルムは、少なくとも約0.5重量パーセントの酸を含むことがより好ましい。エアロゾル発生フィルムは、少なくとも約1重量パーセントの酸を含むことがさらにより好ましい。加えて、または代替として、エアロゾル発生フィルムは、約3.5重量パーセント未満の酸を含むことが好ましい。エアロゾル発生フィルムは、約3重量パーセント未満の酸を含むことがより好ましい。エアロゾル発生フィルムは、約2.5重量パーセント未満の酸を含むことがさらにより好ましい。
【0102】
例えば、エアロゾル発生フィルムは、約0.25重量パーセント~約3.5重量パーセントの酸、または約0.5重量パーセント~約3重量パーセントの酸、または約1重量パーセント~約2.5重量パーセントの酸を含んでもよい。
【0103】
エアロゾル発生フィルムは、随意で風味剤を含み得る。一部の実施形態では、エアロゾル発生フィルムは、最大約2重量パーセントの風味剤を含んでもよい。一例として、エアロゾル発生フィルムは、メントール、テルペン、テルペノイド、オイゲノール、またはユーカリプトールを含み得る。
【0104】
エアロゾル発生フィルムは、フィルムの成分のフィルム形成組成物、好ましくは水性フィルム形成組成物を形成し、フィルム形成組成物を支持面上にキャストまたは押出成形し、フィルム形成組成物をゲル化させた後、フィルム形成組成物を乾燥してエアロゾル発生フィルムを得ることによって製造され得る。次いで、フィルムを支持面から取り外し、エアロゾル発生物品用のエアロゾル発生基体に組み込んでもよい。別の方法として、フィルムは、例えば、以下に説明するように、管状担体要素を形成するためにエアロゾル発生フィルムがシート材料上に直接適用される実施形態において、支持面と共にエアロゾル発生基体に組み込まれてもよい。
【0105】
加熱時に、エアロゾル発生フィルムの成分の大部分が蒸発することが見出された。実際に、存在する場合、典型的には、セルロース系フィルム形成剤の一部の残留物のみが使用後に残っていることが観察されている。そのため、上述のエアロゾル発生フィルムを含む基体を組み込むエアロゾル発生物品は、廃棄が容易であり、改善された環境への影響を有し得る。
【0106】
使用中、エアロゾル発生フィルムは、エアロゾルを発生するために、摂氏約180度~摂氏約250度の温度に加熱されてもよい。発明者らは驚くべきことに、エアロゾル発生フィルムがエアロゾル発生装置内で加熱されると、液相を実質的に放出することなく、多価アルコールを放出し得ることを見出した。
【0107】
本発明によるエアロゾル発生物品は、上述のように、管状担体要素を組み込む。既述のように、本発明の特定の好ましい実施形態では、管状担体要素は、エアロゾル発生物品の実質的に全長に延びる。こうした実施形態では、管状担体要素は、エアロゾル発生物品の一つ以上の追加的な構成要素を組み込むことが好ましい。エアロゾル発生物品はさらに、エアロゾル発生フィルムの下流に、流量制限要素を管状担体要素の内部空洞内に備えることが好ましい。流量制限要素は、摩擦嵌合によって管状担体要素の内部空洞内に保持されることが好ましい。
【0108】
流量制限要素は、有利なことに、許容可能なレベルの引き込み抵抗(RTD)を有するエアロゾル発生物品を提供するために組み込まれ得る。所望のレベルのRTDを提供するための適切な流量制限要素は、当業者に公知である。一部の実施形態では、流量制限要素は、内部空洞の直径よりも小さな直径を有する一つ以上の穴などの収縮部であってもよい。好ましい実施形態では、流量制限要素は、一つ以上のセルロースアセテートプラグなどの、一つ以上の繊維質濾過材料のプラグを含む。
【0109】
ヒーター要素の挿入後のエアロゾル発生物品の引き出し抵抗(RTD)は、約40mmWG~約140mmWGであることが好ましく、約80mmWG~約120mmWGであることがより好ましい。
【0110】
本明細書で使用される引き出し抵抗は、圧力の単位「mmWG」または「水柱ミリメートル」で表され、ISO 6565:2002に従って測定される。
【0111】
流量制限要素は、管状担体要素の下流端へ延びてもよい。別の方法として、流量制限要素は、中空空洞が流量制限要素の下流に提供されるように、管状担体要素の下流端の上流の位置へ延びてもよい。
【0112】
流量制限要素は、管状担体要素に沿って長軸方向に約15ミリメートル~約25ミリメートル延びることが好ましい。
【0113】
流量制限要素は、流量制限要素およびエアロゾル発生フィルムが管状担体要素の内部空洞内の中空空間によって分離されるように、エアロゾル発生フィルムから長軸方向に間隙を介していることが好ましい。管状担体要素内の構成要素のこの分離は、有利なことに、エアロゾル発生物品内のエアロゾルの形成のための空間を提供する。流量制限要素とエアロゾル発生フィルムとの間の長軸方向の間隔は、管状担体要素の長さの少なくとも約10パーセントであることが好ましく、管状担体要素の長さの少なくとも約20パーセントであることがより好ましい。エアロゾル発生フィルムと流量制限要素との間の空間の長さは、エアロゾル発生フィルムによって覆われる管状担体要素の一部分の長さの少なくとも50パーセントであることが好ましい。
【0114】
管状担体要素の少なくとも一つの端部がシールされていることが好ましい。管状担体要素の両端部がシールされていることが特に好ましい。管の端部のシールは、有利なことに、使用前に管状担体要素の内部空洞へ空気および水が進入することを防止する。これは、加熱時のエアロゾルの送達を最適化するために、保管中のエアロゾル発生フィルムの新鮮さを維持するのに役立つ。さらに、管状担体要素の端部のシールは、保管中のエアロゾル発生フィルムの揮発性成分の喪失を低減し、消費者へのこれらの成分の送達を最大化し得る。
【0115】
一つの端部または両端部での管状担体要素のシールは、任意の適切な手段によって実行され得る。管状担体要素の開放端の各々は、内部空洞の開口部を覆うために管状担体要素の端部に固定されるシール要素によって被覆されることが好ましい。シール要素は、管状担体要素の内部空洞の開口部を覆う材料のシートの形態であることが好ましい。材料のシートは実質的に不透過性であることが好ましい。シール要素は、紙、アルミニウム、ポリマー、またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、任意の適切なシート材料で形成されてもよい。
【0116】
壊れやすいシール要素が管状要素の上流端に提供され、壊れやすいシール要素は、空気が管状担体要素の内部空洞に流入および管状担体要素の内部空洞から流出することを妨害するように適合されることが好ましい。こうした実施形態では、シール要素は、エアロゾル発生装置の中へのエアロゾル発生物品の挿入時にヒーター要素または他の貫通手段によって貫通され得るように、壊れやすい。繊維質濾過材料のプラグなどの支持要素は、所望する場合、ヒーター要素または他の貫通手段による壊れやすいシール要素の貫通を容易にするために、壊れやすいシール要素のすぐ後ろに提供されてもよい。
【0117】
別の方法として、管状担体要素の上流端に提供されるシール要素は、ヒーター要素を受容し、加熱中にシートまたは膜がヒーター要素の周りに留まるようにヒーター要素が挿入される際に広がって延びるように適合される、折り畳まれたシートまたは膜を含み得る。これにより、ヒーター要素の汚染が防止される。こうした実施形態では、折り畳まれたシートまたは膜はアルミニウムシートで形成されることが好ましい。
【0118】
さらなる代替では、管状担体要素の上流端に提供されるシール要素は、管状担体要素の内部空洞内に長軸方向に後方に延び、使用中にヒーター要素を受容するように適合された陥凹部を有するシートまたは膜を含んでもよい。上述の実施形態と同様に、シートまたは膜は、使用中にヒーター要素の周りに留まり、ヒーター要素の汚染を防止する。こうした実施形態では、陥凹部を含むシートまたは膜は、アルミニウムシートで形成されることが好ましい。
【0119】
シール要素が管状担体要素の上流端に提供される場合、管状担体要素の下流端は開放されたままであってもよい。別の方法として、シール要素は、管状担体要素の下流端に追加的に提供されてもよく、これは上流端に提供されるシール要素と同じまたは異なる形態であってもよい。
【0120】
シール要素が下流端に提供される場合、下流シール要素は、使用前にエアロゾル発生物品から取り外され得るように取り外し可能であってもよい。
【0121】
管状担体要素の上流端へのシール要素の提供に代替的に、または追加的に、管状支持要素が管状担体要素の上流端に提供されてもよい。例えば、中空アセテート管が、管状担体要素の上流端でエアロゾル発生フィルムの上流に提供されてもよい。管状支持要素は、有利なことに、使用前にエアロゾル発生フィルムがエアロゾル発生物品から喪失するリスクを最小化し得る。さらに、管状支持要素は、エアロゾル発生装置におけるエアロゾル発生物品の使用中に、内部ヒーター要素を、エアロゾル発生物品の中に挿入することおよびエアロゾル発生物品から取り外すことを容易にし得る。さらに、管状支持要素は、エアロゾル発生物品を通して気流を方向付ける、または制御するために使用され得る。
【0122】
上記に定義する通り、本発明の第二の態様は、エアロゾル発生物品用のエアロゾル発生基体を提供し、エアロゾル発生基体は、内表面に適用されるエアロゾル発生フィルムを有する管状担体要素を含む。管状担体要素およびエアロゾル発生フィルムは、本発明の第一の態様に関連して上述した特徴または特性のいずれかを有し得る。しかしながら、本発明の第二の態様によれば、管状担体要素は、エアロゾル発生フィルムの支持体としてのみ作用し、エアロゾル発生物品内の他の構成要素と組み合わされるように適合される。
【0123】
上述する本発明によるエアロゾル発生物品は、上記で定義する通り、本発明の第三の態様による方法を使用して製造され得る。この方法は、多価アルコールを含む水性フィルム形成組成物を提供する第一の工程と、シート材料を提供する第二の工程とを含む。第三の工程では、水性フィルム形成組成物をシート材料の表面上に適用してフィルム層を形成し、第四の工程では、フィルム層を乾燥して、少なくとも25重量パーセントの多価アルコールを有し、約0.05ミリメートル~約1.0ミリメートルの厚さを有するエアロゾル発生フィルムを形成する。第五の工程では、シート材料をロールして、長軸方向に延びる内部空洞を画定する管状担体要素を形成し、エアロゾル発生フィルムを管状担体要素の内表面の一部分に適用する。
【0124】
こうした実施形態では、フィルム層は、シート材料に堆積または浸潤されてもよく、シート材料は、好ましくはセルロース系紙である。
【0125】
本発明による代替的な方法では、エアロゾル発生フィルムは、管状担体要素とは別個に形成され、その後管状担体要素の内表面に適用される。
【0126】
こうした実施形態では、本発明による方法の第一の工程で、管状担体要素が提供され、管状担体要素は、長軸方向に延びる内部空洞を画定する。第二の工程では、多価アルコールを含む水性フィルム形成組成物が提供される。第三の工程では、水性フィルム形成組成物を平面上に適用して、フィルム層を形成する。第四の工程では、フィルム層を乾燥して、少なくとも25重量パーセントの多価アルコールを有し、0.05ミリメートル~1.0ミリメートルの厚さを有するエアロゾル発生フィルムを形成する。第五の工程では、エアロゾル発生フィルムの外表面が内部空洞に露出されるように、エアロゾル発生フィルムが、内部空洞内で管状担体要素の内表面の一部分に適用される。
【0127】
本発明はさらに、電気的に作動するエアロゾル発生装置と組み合わせて、上記で詳細に説明するような本発明によるエアロゾル発生物品を備えるエアロゾル発生システムであって、電気的に作動するエアロゾル発生装置が、エアロゾル発生物品を受容するように適合され、エアロゾルが発生されるように、エアロゾル発生物品の管状担体要素内に提供されるエアロゾル発生フィルムを加熱するように構成されたヒーター要素を有する、エアロゾル発生システムを提供する。
【0128】
ヒーター要素は、エアロゾル発生フィルムを摂氏約120度~摂氏約350度の温度に加熱するように構成されることが好ましく、摂氏約200度~摂氏約220度の温度に加熱するように構成されることがより好ましい。
【0129】
本発明の第四の態様によるエアロゾル発生システムでは、電気的に作動するエアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品を管状担体要素の外部から外部的に加熱するように構成される。エアロゾル発生物品を受容するように適合された細長い加熱チャンバーが提供され、ヒーター要素は、エアロゾル発生フィルムが加熱されるように、加熱チャンバーの周りに円周方向に提供されて、チャンバー内のエアロゾル発生物品を部分的または完全に囲む。
【0130】
本発明の第五の態様によるエアロゾル発生システムでは、電気的に作動するエアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品を管状担体要素の内部から内部的に加熱するように構成される。細長いヒーターブレードまたはピンの形態のヒーター要素が提供され、これは、エアロゾル発生フィルムを加熱するために、ヒーターブレードまたはピンがエアロゾル発生フィルムの露出した外表面に面するように、管状担体要素の内部空洞の中に挿入されるように適合される。
【0131】
本発明によるエアロゾル発生システムでは、ヒーター要素は、熱を伝導するのに適切な任意の形態であってもよい。エアロゾル発生システムは、誘導加熱装置を備えた電気的に作動するエアロゾル発生システムであってもよい。誘導加熱装置は一般に、サセプタに結合されるように構成された誘導源を備える。誘導源により交流電磁場が発生し、これがサセプタ内に磁化または渦電流を誘起する。サセプタは、ヒステリシス損失または誘起された渦電流の結果として加熱されてもよく、これはオーム加熱または抵抗加熱を通してサセプタを加熱する。
【0132】
誘導加熱装置を備える電気的に作動するエアロゾル発生システムはまた、エアロゾル発生フィルムおよびエアロゾル発生フィルムと熱的に近接したサセプタを有するエアロゾル発生物品も備える。サセプタは、ヒステリシス損失または誘起された渦電流を通して加熱され、これは次に、エアロゾル発生フィルムを加熱する。典型的には、サセプタはエアロゾル発生フィルムと直接接触し、熱はサセプタから主に伝導によってエアロゾル発生フィルムに伝達される。誘導加熱装置およびサセプタを有するエアロゾル発生物品を有する電気的に作動するエアロゾル発生システムの例は、WO-A1-95/27411およびWO-A1-2015/177255に記述されている。
【0133】
ここで、図を参照しながら本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【
図1】
図1は、本発明の第一の実施形態によるエアロゾル発生物品の概略的な長軸方向の断面図を示す。
【
図2】
図2は、エアロゾル発生装置の内部ヒーター要素と組み合わせた、
図1のエアロゾル発生物品の概略的な長軸方向の断面図を示す。
【
図3】
図3は、エアロゾル発生装置の外部ヒーター要素と組み合わせた、
図1のエアロゾル発生物品の概略的な長軸方向の断面図を示す。
【
図4】
図4は、エアロゾル発生装置の内部ヒーター要素と組み合わせた、本発明の第二の実施形態によるエアロゾル発生物品の概略的な長軸方向の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0135】
図1に示すエアロゾル発生物品10は、管状担体要素12、エアロゾル発生フィルム14、および流量制限要素16を備える。
【0136】
管状担体要素12は、およそ12ミリメートルの長さおよびおよそ7ミリメートルの外径を有する紙管の形態である。管状担体要素12は、円筒形の形状であり、管状担体要素12の上流端20から下流端22に延びる、長軸方向に延びる内部空洞18を画定する。
【0137】
エアロゾル発生フィルム14は、管状担体要素12の内表面上に単層として提供される。エアロゾル発生フィルム14は、およそ0.25ミリメートルの厚さを有し、管状担体要素12の上流端20から内部空洞18に沿って下流に、上流端20からおよそ10ミリメートルの距離に延びる。したがって、エアロゾル発生フィルム14は、管状担体要素12の内表面上のおよそ2平方センチメートルの領域を被覆する。
【0138】
エアロゾル発生フィルム14は、以下の組成物を有する:
【0139】
流量制限要素16は、下流端22に、管状担体要素12の内部空洞18内に提供されるセルロースアセテートトウの単一セグメントを含む。流量制限要素16は、およそ20ミリメートルの長さと、管状担体要素12の内部空洞18の直径に対応する外径とを有する。流量制限要素16は、エアロゾル発生フィルム14の下流にあり、管状担体要素12内に、エアロゾル発生フィルム14の下流端と流量制限要素16の上流端との間に空の空間が画定されるように、エアロゾル発生フィルム14から間隙を介している。
【0140】
管状担体要素12の上流端20は、管状担体要素12の端部の上に提供されて内部空洞18の上流端をシールするアルミニウムのシートを含む、上流シール要素24によってシールされる。
【0141】
管状担体要素12の下流端22は、管状担体要素12の下流端に、流量制限要素16の下流端の上に提供される紙のシートを含む、下流シール要素26によってシールされる。
【0142】
図1に示すエアロゾル発生物品10は、エアロゾル発生フィルム14を加熱するためのヒーターを備える、電気的に作動するエアロゾル発生装置で使用するために特に適切である。
【0143】
図2は、ヒーターブレード52を有するエアロゾル発生装置50内で加熱されているエアロゾル発生物品10の概略図を示す。エアロゾル発生物品10は、ヒーターブレード52が上流シール要素24を貫通して、管状担体要素12の内部空洞18の中に挿入されるように、エアロゾル発生装置50の中に挿入される。ヒーターブレード52は、管状担体要素12内でエアロゾル発生フィルム14の外表面に面する。
図2から分かるように、エアロゾル発生フィルム14は、管状担体要素12に沿ってヒーターブレード52とほぼ同じ距離に延びるように提供される。
【0144】
使用中に、ヒーターブレード52は、エアロゾル発生フィルム14を、エアロゾル発生フィルム14からエアロゾルを発生するのに十分な温度に加熱する。エアロゾルは、流量制限要素16を通って引き出され、管状担体要素の下流端22を通って流出する。
【0145】
図3は、代替的なエアロゾル発生装置60内で加熱されているエアロゾル発生物品10の概略図を示しており、エアロゾル発生装置60は、外部ヒーター要素64がエアロゾル発生フィルム14を組み込む管状担体要素12の上流部分を囲むように、エアロゾル発生物品の上流端が内部に挿入される加熱チャンバー62を有する。ヒーター要素64は、エアロゾル発生フィルム14を管状担体要素12の外側から円周方向に加熱する。
図3から分かるように、エアロゾル発生フィルム14は、管状担体要素12に沿ってヒーター要素64とほぼ同じ距離に延びる。
【0146】
エアロゾル発生装置60はさらに、エアロゾル発生物品10が加熱チャンバー62の中に挿入される際に上流シール要素24を貫通する貫通要素66を備える。
【0147】
図4は、本発明の第二の実施形態によるエアロゾル発生物品70を示し、これは
図1に示すエアロゾル発生物品10と構成が類似しているが、修正された上流シール要素74を備える。エアロゾル発生物品70は、
図2を参照して上述したように、ヒーターブレード52を有するエアロゾル発生装置50での使用に適合される。
【0148】
エアロゾル発生物品70の上流シール要素74は、蛇腹形の配設で予め折り畳まれたアルミニウム膜を含む。使用前に、アルミニウム膜は、膜が管状担体要素12の内部空洞内の折り畳みと実質的に平坦になるように、予め折り畳まれて集められる。エアロゾル発生物品70がエアロゾル発生装置50の中に挿入されると、ヒーターブレード52は、折り畳まれたアルミニウム膜に押し付けられ、折り畳まれたアルミニウム膜は、ヒーターブレード52が管状担体要素12内に内方に押し込まれるにつれて広がり延びる。アルミニウム膜は、ヒーターブレード52が使用中に被覆されたままとなるように、ヒーターブレード52を囲む。
【国際調査報告】