(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(54)【発明の名称】電子部品及び電子部品の実装方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/028 20060101AFI20220517BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20220517BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H01S5/028
H01L23/28 D
H01L23/30 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559595
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(85)【翻訳文提出日】2021-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2020057681
(87)【国際公開番号】W WO2020207752
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】102019109586.7
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D-93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレーリッヒ アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】エーベルハルト イェンス
【テーマコード(参考)】
4M109
5F173
【Fターム(参考)】
4M109AA02
4M109BA04
4M109CA05
4M109CA10
4M109EA10
4M109EA20
4M109GA01
5F173MC05
5F173ME42
(57)【要約】
電子部品(1)は、半導体チップ(2)と、半導体チップ(2)を少なくとも部分的に取り囲むコーティング材料(3)と、コーティング材料(3)とは異なる材料で形成された保護層(4)とを有し、コーティング材料(3)の半導体チップ(2)とは反対側の面が、少なくとも部分的に保護層(4)によって覆われている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップ(2)と、
前記半導体チップ(2)を少なくとも部分的に取り囲むコーティング材料(3)と、
前記コーティング材料(3)とは異なる材料で形成された保護層(4)と
を有し、
前記コーティング材料(3)の前記半導体チップ(2)とは反対側の面が、少なくとも部分的に前記保護層(4)によって覆われている、
電子部品(1)。
【請求項2】
前記保護層(4)は、極性溶媒に可溶である、
請求項1に記載の電子部品(1)。
【請求項3】
前記保護層(4)は、水溶性ポリマーを含むか、または水溶性ポリマーからなる、
請求項1または2に記載の電子部品(1)。
【請求項4】
前記水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコールを含むか、またはポリビニルアルコールからなる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の電子部品(1)。
【請求項5】
前記コーティング材料(3)は、シリコーンを含むか、またはシリコーンからなる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電子部品(1)。
【請求項6】
前記保護層(4)は、前記コーティング材料(3)と直接接している、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電子部品(1)。
【請求項7】
前記コーティング材料(3)は、前記保護層(4)と化学結合を形成している、
請求項1~6のいずれか一項に記載の電子部品(1)。
【請求項8】
中間層(5)および/またはカバー層(6)は、前記保護層(4)の前記半導体チップ(2)とは反対側の面に配置されている、
請求項1~7のいずれか一項に記載の電子部品(1)。
【請求項9】
前記中間層(5)は、水溶性接着材料を含む、
請求項8に記載の電子部品(1)。
【請求項10】
前記電子部品(1)は、端面発光型半導体レーザ部品である、
請求項1~9のいずれか一項に記載の電子部品(1)。
【請求項11】
前記半導体チップ(2)は、動作中に赤外領域の波長範囲の電磁放射線を放出する、
請求項1~10のいずれか一項に記載の電子部品(1)。
【請求項12】
前記電子部品(1)は、前記保護層(4)によって部分的または完全に覆われた放射線出射面(10)を含む、
請求項1~11のいずれか一項に記載の電子部品(1)。
【請求項13】
A)請求項1~12の少なくとも一項に記載の電子部品(1)を準備する工程、
B)前記電子部品(1)をキャリア(7)上に配置する工程、および
C)前記保護層(4)を除去する工程、
を含む、
電子部品(1)の実装方法。
【請求項14】
前記電子部品(1)を準備する工程は、
前記半導体チップ(2)を準備する工程、
前記半導体チップ(2)を、少なくとも部分的に前記コーティング材料(3)で囲む工程、および
前記保護層(4)を、少なくとも部分的に前記コーティング材料(3)上に付与する工程を含む、
請求項13に記載の電子部品(1)の実装方法。
【請求項15】
前記キャリア(7)は、プリント基板を含む、
請求項13または14に記載の電子部品(1)の実装方法。
【請求項16】
前記保護層(4)の除去は、溶媒浴中で行われる、
請求項13~15のいずれか一項に記載の電子部品(1)の実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を規定する。さらに、電子部品を実装する方法を規定する。
【0002】
解決すべき課題の1つは、改良された電子部品を提供することである。解決すべきもう一つの課題は、電子部品を実装する方法を提供することである。
【背景技術】
【0003】
電子部品を規定する。
【0004】
例えば、電子部品は、集積回路、トランジスタ、メモリ素子、抵抗器、または光電子部品であってもよい。例えば、光電子部品は、半導体レーザ部品、発光ダイオード、光増幅器、またはフォトダイオードである。
【0005】
半導体レーザ部品は、例えば、いわゆるTO設計(TO:transistor outline)で実現することができる。この場合、コンパクトなTO金属パッケージが一般的である。コンパクトなTO金属パッケージは、基本的にスチール製(鋼製)または銅製である。
【発明の概要】
【0006】
少なくとも1つの実施形態によれば、電子部品は、半導体チップを含む。半導体チップは、例えば電子半導体チップである。半導体チップは、例えば光電子半導体チップである。発光ダイオードチップ、フォトダイオードチップ、および/またはレーザダイオードチップなどの光電子半導体チップは、電磁放射線を検出または生成するように適合された活性領域を有する、エピタキシャル成長した半導体層列を有する。動作中、光電子半導体チップは、例えば、UV放射の波長範囲、青色光、および/または赤外線範囲の電磁放射線を放出および/または受容することができる。
【0007】
少なくとも1つの実施形態によれば、電子部品は、半導体チップを少なくとも部分的に取り囲むコーティング材料を含む。すなわち、半導体チップは、コーティング材料によって少なくとも部分的に取り囲まれており、外部の機械的または化学的影響から保護される。代替的にまたは追加的に、コーティング材料は、変換層を形成するためのリン光材料のマトリクス材料として機能しうる。次いで、リン光材料は、放出された半導体チップの電磁放射線を吸収し、別の電磁放射線に変換するために提供される。次いで、放出された半導体チップの電磁放射は、さらに放出されたリン光材料の電磁放射とは異なる。
【0008】
コーティング材料は、好ましくは電磁放射線、例えば可視光に対して半透明または透明である。コーティング材料は、好ましくはポリマーから形成される。例えば、コーティング材料は、エポキシ樹脂またはシリコーンを含んでもよく、またはエポキシ樹脂またはシリコーンからなってもよい。
【0009】
少なくとも1つの実施形態によれば、電子部品は、コーティング材料とは異なる材料で形成された保護層を含む。好ましくは、保護層がコーティング材料のポリマーとは異なるポリマーを材料として含む。保護層の材料は、コーティング材料と比較して、異なる化学的および物理的特性を有する。例えば、保護層の材料とコーティング材料は、異なる溶媒中で異なる溶解度を示し、および/または、異なる温度安定性を示す。保護層は、好ましくは、汚染物質および粒子のような環境の影響からコーティング材料を保護することを目的とする。
【0010】
好ましくは、保護層は、いかなる残留物も残さずにコーティング材料から除去されうる。これは、例えば、保護層が除去されるとき、除去前に保護層が付与されていた表面上に残留物を残すことなく、保護層が完全に除去され得ることを意味し得る。
【0011】
例えば、保護層は、0.01mm以上0.1mm以下の厚さを有する。好ましくは、保護層は、0.015mm以上0.08mm以下の厚さを有する。保護層が薄すぎると、汚染のような環境の影響に対するコーティング材料の保護が不十分となり、厚すぎると、保護層の除去性が不十分となる。
【0012】
少なくとも1つのさらなる実施形態によれば、電子部品は、半導体チップとは反対側のコーティング材料の面(a side of the coating material facing away from the semiconductor chip)を有し、当該面は、少なくとも部分的に保護層によって覆われている。保護層は、半導体チップとは反対側のコーティング材料の面を、完全にまたは局所的に覆うことができる。保護層は、層として、および/または箔として付与されてもよい。さらに、保護層は、好ましくはコーティング材料に直接付与されてもよい。あるいは、水溶性ポリマー材料が、接着層として、保護層とコーティング材料との間に配置されてもよく、例えば、ポリビニルアルコールを含んでもよい。接着層のポリマー材料は、特に保護層とは異なる。
【0013】
電子部品の少なくとも1つの実施形態によれば、電子部品は、半導体チップと、半導体チップを少なくとも部分的に取り囲むコーティング材料と、コーティング材料とは異なる材料で形成された保護層とを備え、コーティング材料の半導体チップとは反対側の面は、少なくとも部分的に保護層によって少なくとも部分的に覆われている。
【0014】
本発明の電子部品の1つのアイデアは、コーティング材料の表面を環境の影響から、好ましくは汚染物質および粒子から保護するために、コーティング材料上に保護層を付与することである。好ましくは、保護層が、電子部品の実装中、付与されていることが望ましい。特に好ましくは、保護層には、損傷を受けることなく実装手順に耐え、さらには特に容易に、特に残留物を残すことなく除去できる材料が選択される。保護層が、実装プロセス中に損傷を受けず、特に剥がれないことは、実装プロセス中、コーティング材料が保護されたままであることを意味する。
【0015】
少なくとも1つの実施形態によれば、保護層は、極性溶媒に可溶である。極性溶媒は、好ましくは分子中の水素原子をプロトンとして分離しうる官能基を含む。例えば、保護層は、アルコール、水、カルボン酸および/または鉱酸などの極性溶媒に可溶である。
【0016】
少なくとも1つの実施形態によれば、保護層は、水溶性ポリマーである(is)か、または水溶性ポリマーからなる。このことは、保護層が、好ましくは水にほぼ完全に溶解することを意味する。
【0017】
水溶性ポリマーは、好ましくは十分な数の親水性基を有し、わずかしか架橋しない。親水性基は、非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性イオン性基であり得る。以下のリストは、水溶性ポリマーの構成単位(building blocks)として機能しうる親水性基、すなわち水溶性基を示す。
【化1】
【0018】
水溶性ポリマーは、特に上記の構成単位から得られる。ここで、例えば、水溶性ポリマーは、同じ構成単位を有してもよいし、または異なる構成単位を有していてもよい。水溶性ポリマーが異なる構成単位を有する場合、これは、水溶性コポリマーとも称され得る。水溶性コポリマーは、2以上の異なる種類の構成単位で構成されるポリマーである。水溶性コポリマーの化学的および物理的特性は、異なるモノマー単位の組成によって特に良好に調整することができる。
【0019】
少なくとも1つの好ましい実施形態によれば、水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコールを含むか、またはポリビニルアルコールからなる。ポリビニルアルコールは、親水性OH基に起因して、水に特に容易に溶解し、いかなる残留物も残さずに、プロセスにおいて特に良好にコーティング材料から除去することができる。さらに、ポリビニルアルコールは、熱可塑性ポリマーを形成する。熱可塑性ポリマーは、炭素鎖の分岐度が低いことを特徴とし、炭素鎖は、弱い物理的結合によって結合している。したがって、ポリビニルアルコールは、その高い可撓性と良好な水溶性により、保護材料として特によく適している。
【0020】
少なくとも1つの実施形態によれば、コーティング材料は、シリコーンを含むか、またはシリコーンからなる。シリコーンは、好ましくは光学的品質を有し、エポキシ樹脂と比較して特に良好なエージング安定性を示す。コーティング材料としてのシリコーンは、透明で、弾性のある熱硬化性材料である。さらなる利点は、シリコーンが動作中にほとんど黄変せず、耐熱性およびUV安定性を有することである。例えば、コーティング材料の電磁放射線に対する透過率は、少なくとも90%、特に少なくとも95%である。シリコーンは、分子鎖の動きやすさ/長さ、ならびに側鎖基などの分子特性により、いくらかの接着性を示す。したがって、汚染物質および粒子が、コーティング材料に付着する。
【0021】
少なくとも1つの実施形態によれば、保護層は、コーティング材料と直接接している。このことは、好ましくは保護層とコーティング材料との間に追加の層が配置されていないことを意味する。例えば、保護層は、コーティング材料の表面の粘着性によって、コーティング材料に直接結着することができる。コーティング材料と直接接していることにより、保護層は、汚染物質および粒子から保護する役割を果たす。
【0022】
少なくとも1つの実施形態によれば、コーティング材料は、保護層と化学結合を形成する。すなわち、保護層は、コーティング材料と化学的に結合している。例えば、ポリビニルアルコールのOH基は、シリコーンのケイ素原子と結合している。例えば、化学結合は、配位結合または共有結合であってもよい。保護層とコーティング材料との間の化学結合は、強力な結合ではないことが好ましい。それは、化学結合が強すぎる場合、プロセスにおいて、保護層をコーティング材料から剥離する際に、保護層をコーティング材料から分離することが困難になるからである。一方、化学結合が弱すぎる場合、これは、例えば部品の実装時に、コーティング材料の保護不良および保護材料の意図しない剥離をもたらす。
【0023】
シリコーンを含むコーティング材料と、極性溶媒に可溶である保護層との組み合わせは、有利なことに、保護層のコーティング材料への良好な接着と、極性溶媒中でのコーティング材料からの保護層の残留物を含まない剥離とをもたらす化学結合をもたらす。
【0024】
少なくとも1つの実施形態によれば、保護層の半導体チップとは反対側の面には、中間層および/またはカバー層が配置されている。例えば、中間層は、保護層と直接接していてもよい。さらに、カバー層は、中間層と直接接していてもよい。保護層に追加の層を適用する利点は、この方法によれば、層を除去するときに、中間層およびカバー層によって、これらの層が溶媒表面に浮遊するため、溶媒浴から容易に除去できることである。好ましくは、溶媒浴は、極性溶媒(例えば、水)で満たされる。さらに、中間層および/またはカバー層は、保護層、ひいてはコーティング材料の追加の保護として機能する。
【0025】
例えば、保護層が電子部品に付与される前、または保護層が電子部品に付与された後に、カバー層を除去することができる。
【0026】
少なくとも1つの実施形態によれば、中間層は、水溶性接着材料を含む。中間層の厚さは、好ましくは0.01mm以上0.1mm以下である。好ましくは、中間層の厚さは、0.015mm以上0.08mm以下である。さらに、中間層は、2つ以上の副層を含んでもよい。例えば、中間層の厚さは、保護層の厚さよりも薄い。
【0027】
例えば、保護層は、(コーティング材料の)半導体チップとは反対側の面で、コーティング材料と直接接している。中間層は、(保護層の)コーティング材料とは反対側の面で、保護層と直接接している。カバー層は、(中間層の)保護層とは反対側の面で、中間層と直接接している。好ましくは、保護層は、0.030mm以上0.035mm以下の厚さ、例えば0.033mmの厚さを有する。好ましくは、中間層は、0.017mm以上0.023mm以下の厚さ、例えば0.020mmの厚さを有する。
【0028】
少なくとも1つの実施形態によれば、電子部品は、放射線を発する部品であり、特に端面発光型半導体レーザ部品である。
【0029】
端面発光型半導体レーザ部品は、レーザ放射線を放射するように設定された半導体チップを含む。すなわち、動作中、半導体チップは、例えばIRからUV放射線までの波長範囲の電磁放射線を放出する。
【0030】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体チップは、動作中、赤外線範囲の波長範囲の電磁放射を放出する。赤外線範囲の波長範囲は、780nm以上1mm以下である。好ましくは、波長範囲が780nm以上1000nm以下であり、特に好ましくは850nm以上950nm以下である。
【0031】
赤外線半導体レーザ部品は、とりわけ、LIDAR(Light Detection and Ranging;光による検出と測距)センサー技術において使用される。
【0032】
あるいは、半導体チップは、動作中において、緑色のスペクトル領域の波長範囲の電磁放射線を放射してもよい。
【0033】
半導体チップは、特にレーザ放射が半導体チップの端面、すなわちファセットに出現する端面発光型半導体レーザチップである。すなわち、半導体チップの放射線通過面、すなわち、動作中に発生したレーザ放射線が半導体チップから出現する放射線通過面は、第1の端面に位置している。
【0034】
さらに、端面発光型半導体レーザ部品は、半導体チップを少なくとも部分的に取り囲むコーティング材料を含む。コーティング材料は、例えば半導体チップの放射通過面を完全に取り囲むことが好ましい。端面発光型半導体レーザ部品の電磁放射線が出射する領域は、本明細書では、放射線出射面と呼ばれる。電子部品の放射線出射面は、半導体チップの放射線通過面と平行である。
【0035】
少なくとも1つの実施形態によれば、放射線出射面は、コーティング材料の半導体チップとは反対側の面に位置している。半導体チップの電磁放射線は、コーティング材料を通過し、放射線出射面を通過する。放射線出射面には、保護層が続いている。すなわち、保護層は、半導体チップから横方向に離間してコーティング材料上に配置されている。保護層は、特に半導体チップの底面に対して横方向または垂直方向に延びている。
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体チップの底面は、放射線通過面および放射線出射面に対してそれぞれ垂直である。
【0036】
加えて、端面発光型半導体レーザ部品は、少なくとも部分的にコーティング材料を取り囲む保護層を含む。特に、保護層は、放射線出射面でコーティング材料を覆っている。特に好ましくは、保護層は、放射線出射面でコーティング材料を完全に覆っている。
【0037】
少なくとも1つの実施形態によれば、電子部品は、保護層によって部分的にまたは完全に覆われた放射線出射面を備える。すなわち、別の層が、保護層と放射線出射面との間に配置されていてもよい。好ましくは、保護層は、放射線出射面上に配置されている。
【0038】
端面発光型電子半導体レーザ部品において、放射線出射面は、電子半導体レーザ部品の端面に位置している。さらに、放射線出射面は、保護層によって完全に覆われていることが好ましい。保護層は、コーティング材料の表面上の起こり得る引っ掻き傷および/または粒子などの汚染物質から、放射線出射面を保護する。有利には、保護層は、電子部品の放射線出射面からの光の取り出しを改善するが、これは、この方法によれば、保護層の除去によって、好ましい清浄な放射線出射面がもたらされるからである。
【0039】
電子部品を実装する方法がさらに規定されている。好ましくは、本明細書に記載の方法が本明細書に記載の電子部品を実装するために使用することができる。すなわち、電子部品について開示されている全ての特徴は、電子部品を実装する方法についても開示されており、その逆も同様である。
【0040】
電子部品の実装方法の少なくとも1つの実施形態によれば、本明細書に記載の電子部品を準備する。電子部品は、キャリア上に配置される。その後、保護層は、除去される。
【0041】
少なくとも1つの実施形態によれば、電子部品を準備する工程は、
半導体チップを準備する工程、
半導体チップを少なくとも部分的にコーティング材料で囲む工程、および
保護層を少なくとも部分的にコーティング材料上に付与する工程
を含む。
【0042】
第1の工程では、半導体チップを準備する。そして、半導体チップは、少なくとも部分的にコーティング材で囲まれる。例えば、半導体チップは、半導体チップの1~5面において、コーティング材料で囲まれる。特に、底面に対応する半導体チップの第6の面は、コーティング材料で囲まれないことが好ましい。底面は、好ましくは支持面上に配置される。あるいは、コーティング材料は、複数の半導体チップを同時に封止してもよい。すなわち、複数の半導体チップは、共通のコーティング材料によって封止される。
【0043】
保護層は、例えばスピンコーティングプロセスの手段によって塗布される。スピンコーティングプロセスは、コーティング材料に、薄く均一な層またはフィルムを塗布する方法である。この方法では、コーティング材料によって少なくとも部分的に囲まれた半導体チップを、ターンテーブルに固定する。少なくとも部分的にコーティング材料で取り囲まれている半導体チップの中心の上方に、所望量の保護層が、計量装置によって溶解液として付与される。加速度、最終速度および時間をスピンコーターに設定し、保護層をコーティング材料の表面上の所望の位置に均一に分配し、乾燥させる。最終的な乾燥は、必要に応じて、例えばオーブン中で熱的に補助されて行うことができる。この場合、複数の半導体チップを包む共通のコーティング材料上に、共通の保護層を塗布することが好ましい。
【0044】
保護層を塗布するための別の方法は、ニードルドージングなどの適切な付与方法(dosing method)によって、所望の位置、例えば放射線出射面に、少量の保護コーティング溶液を局所的に塗布する方法である。
【0045】
少なくとも1つの実施形態によれば、キャリアは、プリント基板を含む。プリント基板は、回路基板であることが好ましい。特に好ましくは、プリント基板は、センサー基板である。
【0046】
少なくとも1つの実施形態によれば、保護層は、溶媒浴中で除去され、当該溶媒浴は、好ましくは極性溶媒、例えば水で満たされている。これは、電子部品がキャリアに実装された後に、溶媒浴中で保護層が除去されることを意味する。水は、保護層とコーティング材料との間の化学結合を解く。この保護層の除去方法は、水圧および洗浄剤を使用するなどの従来の方法と比較して穏やかであり、コーティング材料に損傷を与えない。この方法は、保護層の溶解を促進するために、熱的に、すなわち4~100℃、特に好ましくは25~60℃の温度によって支持することができる。好ましくは保護層、および場合により中間層およびカバー層は、溶媒浴中に残存する。これらは、適切な方法を用いて、溶媒浴から除去することができる。
【0047】
本発明の電子部品の1つのアイデアは、電子部品のコーティング材料の放射線出射面を、汚染物質および粒子などの環境の影響から保護することである。
【0048】
エポキシ樹脂コーティング材料を有する従来の電子部品、またはTO金属ハウジングを有する電子部品の場合、汚染物質および粒子は、水圧および洗浄剤を使用して除去することができる。経年安定性の高い弾性シリコーンコート材料を有する電子部品を使用する場合、弾性コーティング材料が損傷するため、従来のクリーニングプロセスでは、これを行うことはできない。
【0049】
この水溶性保護層は、コーティング材料の表面を汚染物質、例えば粒子から保護する。さらに、コーティング材料への保護層の付与は、エンドユーザーにとって非常に有益である。
まず、電子部品をキャリア上に実装し、その後の保護層の除去を、例えば溶媒浴中で容易に行う。これにより、電子部品が、有害な環境影響や汚染から最後まで保護されるため、エンドユーザーによる取り扱い性が大幅に向上する。したがって、散乱光がなく、汚染物質/粒子によるレーザ放射の吸収による絶対出力の低下もないため、光の取り出しが改善される。一方、電子部品の汚染や、場合によっては実装後の故障の可能性が、大幅に低減される。
【0050】
電子部品のさらなる有利な実施形態およびさらなる実施形態、ならびに電子部の実装方法は、図面に関連して、以下に記載される例示的な実施形態から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は、例示的な一実施形態に係る電子部品の概略断面図である。
【
図2】
図2は、例示的な一実施形態に係る電子部品の概略断面図である。
【
図3】
図3は、例示的な一実施形態に係る電子部品の概略断面図である。
【
図4】
図4は、例示的な一実施形態に係る電子部品の概略断面図である。
【
図5】
図5は、例示的な一実施形態に係る電子部品の実装方法の種々の方法段階の概略断面図である。
【
図6】
図6は、例示的な一実施形態に係る電子部品の実装方法の種々の方法段階の概略断面図である。
【
図7】
図7は、例示的な一実施形態に係る電子部品の実装方法の種々の方法段階の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図面において、同一、類似または同一の効果を有する要素には、同一の参照符号を付す。図面および図面に示される要素の比率は、正確な縮尺であると見なされるべきではない。むしろ、個々の要素、特に層の厚さは、より良好な表現性および/または理解のために誇張して大きく示されている。
【0053】
図1の例示的な実施形態に係る電子部品1は、半導体チップ2と、コーティング材料3と、保護層4とを有している。半導体チップ2は、動作中に赤外線範囲の波長範囲の電磁放射線を放出する。赤外線範囲の波長範囲は、780nm以上1000nm以下の範囲、好ましくは850nm以上950nm以下の範囲である。コーティング材料3は、ここでは、半導体チップ2を少なくとも部分的に取り囲んでいる。
【0054】
例えば、半導体チップ2の5つの面は、コーティング材料3によって囲まれている。底面8に対応する半導体チップ2の第6の面は、コーティング材料3がないままである。半導体チップ2とは反対側の面は、少なくとも部分的に保護層4によって覆われている。コーティング材料3は、シリコーンを含むか、またはシリコーンからなる。また、保護層4は、極性溶媒に可溶である。保護層4は、水溶性ポリマーを含むか、または水溶性ポリマーからなる。水溶性ポリマーは、例えばポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールは、OH基を有し、コーティング材料3と結合する。したがって、保護層4は、コーティング材料3とは異なる材料を有する。保護層4の材料は、保護層4が損傷を受けずに実装プロセスに耐え、その後、特に容易に、特に残留物なく除去することができるように選択される。
【0055】
図1において、電子部品は、端面発光型半導体レーザ部品である。半導体チップ2は、電磁放射線を放射し、半導体チップ2の端面、すなわち放射線通過面9で放射する。電子部品1の側面は、放射線出射面10に対応している。電子部品1の放射線出射面10は、半導体チップ2の放射線通過面9と平行である。保護層4は、コーティング材料3の表面を保護するために、放射線出射面10に付与される。これにより、電子部品1が汚染物質や粒子から保護される。保護層4は、ここではコーティング材料3と直接接しているが、追加の接着層の助けを借りて付与することもできる。接着層は、例えば保護層4と鎖長の異なるポリビニルアルコールを有する。保護層4は、層としておよび/または箔として付与することができる。
【0056】
図2に示す例示的な実施形態は、半導体チップ2に対向する電子部品1の上面11上に保護層4が追加的に配置されている点で、
図1の電子部品1と異なる電子部品1を示す。
ここで、半導体チップ2は、例えば全方向に電磁放射線を放射することができる。さらに、例えば、上面11上に配置された保護層4は、放射線出射面10上に配置された保護層4のより良好な接着に役立つことができる。
【0057】
図3に示す例示的な実施形態によれば、保護層4の半導体チップ2とは反対側の面に、保護層4に隣接して、付加的な中間層5およびカバー層6が配置されている。中間層5は、好ましくは保護層4と直接接しており、カバー層6は、中間層5と直接接している。保護層4は、少なくとも0.01mm以上0.1mm以下の厚さを有する。特に、保護層4は、0.030mm以上0.035mm以下の厚さを有する。保護層4の厚さは、例えば0.033mmである。好ましくは、中間層5は、0.01mm以上0.1mm以下の厚さを有する。特に、中間層5は、0.017mm以上0.023mm以下の厚さを有する。例えば、中間層5の厚さは、0.020mmである。
【0058】
ここでの利点は、層列が溶媒浴、例えば水浴中で剥離される場合、層列は、好ましくは剥離後に水の表面上に浮遊することによって除去され得ることである。中間層5は、水溶性接着材料、好ましくは水溶性ポリマー材料を有しており、例えば、保護層4とは異なる鎖長のポリビニルアルコールを有していてもよい。
【0059】
図4に示される例示的な実施形態は、中間層5上にカバー層6が配置されていない点で
図3の電子部品1とは異なる電子部品1を示している。保護層4および中間層5が電子部品1に付与される前に、カバー層6は除去されている。
【0060】
図5~7の例示的な実施形態に係る電子部品1の実装方法において、電子部品1は、第1の工程(
図5)において提供される。
【0061】
電子部品1は、まず半導体チップ2の底面8を支持面上に配置し、次いで、半導体チップ2を、少なくとも部分的にコーティング材料3で取り囲むことによって提供される。この保護層4を、少なくとも部分的にコーティング材料3、例えばスピンコート法で塗布することにより、電子部品1が得られる。保護層4は、コーティング材料3の表面の所望の位置に、溶液として分配され、乾燥される。最終的な乾燥は、例えばオーブン中で熱的に補助されて行うことができる。電子部品1は、実装中にキャリア7上に配置される(
図6)。キャリア7は、例えばプリント基板である。例えば、キャリア7は、回路基板である。
【0062】
最後の工程では、保護層4および/または中間層5および/またはカバー層6は、コーティング材料3から除去される(
図7)。
【0063】
保護層4は、溶媒浴中で除去される。好ましくは、保護層4は、水浴中で除去される。したがって、有利には、保護層4は、コーティング材料3から容易かつ簡単に剥離することができ、コーティング材料3の表面は、汚染物質および粒子を全く含まない。これは、電子部品1の放射線出射面10からの好ましい光の取り出しにつながる。好ましくは、保護層4は、特にいかなる残留物も残さずに、コーティング材料3から剥離される。
【0064】
図面に関連して記載された特徴および例示的な実施形態は、全ての組み合わせが明示的に記載されていなくても、さらなる例示的な実施形態に従って互いに組み合わせることができる。さらに、図面に関連して記載された例示的な実施形態は、代替的にまたは追加的に、一般的な部分における説明によるさらなる特徴を有しうる。
【0065】
本発明は、例示的な実施形態に基づく説明によって、これらに限定されない。むしろ、本発明は、この特徴または組み合わせ自体が、特許請求の範囲または例示的な実施形態において明示的に述べられていない場合であっても、任意の新しい特徴および特徴の任意の組み合わせ(当該特徴の任意の組み合わせは、特に、特許請求の範囲における特徴の任意の組み合わせを含む)を包含する。
【0066】
本特許出願は、ドイツ特許出願DE 10 2019 109 586.7の優先権を主張し、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0067】
1 電子部品
2 半導体チップ
3 コーティング材料
4 保護層
5 中間層
6 カバー層
7 キャリア
8 底面
9 放射線通過面
10 放射線出射面
11 上面
【手続補正書】
【提出日】2021-10-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面発光型半導体レーザ部品である電子部品(1)であって、
半導体チップ(2)と、
前記半導体チップ(2)を少なくとも部分的に取り囲むコーティング材料(3)と、
放射線出射面(10)と、
前記コーティング材料(3)とは異なる材料で形成された保護層(4)と
を有し、
前記コーティング材料(3)の前記半導体チップ(2)とは反対側の面が、少なくとも部分的に前記保護層(4)によって覆われて
おり、かつ
前記保護層(4)は、前記放射線出射面(10)を部分的または完全に覆っている、
電子部品(1)。
【請求項2】
前記保護層(4)は、極性溶媒に可溶である、
請求項1に記載の電子部品(1)。
【請求項3】
前記保護層(4)は、水溶性ポリマーを含むか、または水溶性ポリマーからなる、
請求項1または2に記載の電子部品(1)。
【請求項4】
前記水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコールを含むか、またはポリビニルアルコールからなる、
請求項
3に記載の電子部品(1)。
【請求項5】
前記コーティング材料(3)は、シリコーンを含むか、またはシリコーンからなる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電子部品(1)。
【請求項6】
前記保護層(4)は、前記コーティング材料(3)と直接接している、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電子部品(1)。
【請求項7】
前記コーティング材料(3)は、前記保護層(4)と化学結合を形成している、
請求項1~6のいずれか一項に記載の電子部品(1)。
【請求項8】
中間層(5)および/またはカバー層(6)は、前記保護層(4)の前記半導体チップ(2)とは反対側の面に配置されている、
請求項1~7のいずれか一項に記載の電子部品(1)。
【請求項9】
前記中間層(5)は、水溶性接着材料を含む、
請求項8に記載の電子部品(1)。
【請求項10】
前記半導体チップ(2)は、動作中に赤外領域の波長範囲の電磁放射線を放出する、
請求項1~
9のいずれか一項に記載の電子部品(1)。
【請求項11】
A)請求項1~
10の少なくとも一項に記載の電子部品(1)を準備する工程、
B)前記電子部品(1)をキャリア(7)上に配置する工程、および
C)前記保護層(4)を除去する工程、
を含む、
電子部品(1)の実装方法。
【請求項12】
前記電子部品(1)を準備する工程は、
前記半導体チップ(2)を準備する工程、
前記半導体チップ(2)を、少なくとも部分的に前記コーティング材料(3)で囲む工程、および
前記保護層(4)を、少なくとも部分的に前記コーティング材料(3)上に付与する工程を含む、
請求項
11に記載の電子部品(1)の実装方法。
【請求項13】
前記キャリア(7)は、プリント基板を含む、
請求項
11または12に記載の電子部品(1)の実装方法。
【請求項14】
前記保護層(4)の除去は、溶媒浴中で行われる、
請求項
11~13のいずれか一項に記載の電子部品(1)の実装方法。
【国際調査報告】