(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(54)【発明の名称】AMDの処置のためのHTRA1調節
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20220517BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220517BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20220517BHJP
C12N 15/869 20060101ALI20220517BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20220517BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220517BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220517BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220517BHJP
A61K 31/7052 20060101ALI20220517BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220517BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20220517BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/09 110
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12N15/864 100Z
C12N5/10
A61P27/02
A61K35/76
A61K31/7052
A61P43/00 121
A61K35/763
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559892
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(85)【翻訳文提出日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 US2020027802
(87)【国際公開番号】W WO2020210724
(87)【国際公開日】2020-10-15
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504260058
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ユタ リサーチ ファウンデイション
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,ブランディ
(72)【発明者】
【氏名】ハーグマン,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】リチャーズ,バート ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ユセフ,オサマ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
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4C084AA24
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4C087AA01
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4C087CA12
4C087NA14
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、眼の網膜色素上皮細胞におけるHTRA1発現を増加させるための遺伝子治療を含む、第10染色体誘発加齢性黄斑変性症の処置のための組成物および方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HTRA1プロモーター中またはHTRA1 2kb制御領域中の標的配列に対応する少なくとも10個の連続するヌクレオチドのガイド配列を含むガイドRNA(gRNA)。
【請求項2】
HTRA1プロモーターが配列番号5、7、8または13に記載される配列を有し、2kb制御領域が配列番号14に記載される配列を有する、請求項1に記載のgRNA。
【請求項3】
a)HTRA1プロモーター中またはHTRA1 2kb制御領域中の標的配列に対応する少なくとも10個の連続するヌクレオチドのガイド配列を含むガイドRNA(gRNA)、および
b)転写活性化因子ドメインに融合されたCRISPR関連タンパク質(Cas)ドメインを含む融合タンパク質、
を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体であって、
Casタンパク質ドメインがヌクレアーゼ活性を欠いており、
HTRA1プロモーターが配列番号5、7、8または13に記載される配列を有し、2kb制御領域が配列番号13に記載される配列を有する、
リボ核タンパク質(RNP)複合体。
【請求項4】
a)HTRA1 2kb制御領域中の標的配列に対応する少なくとも10個の連続するヌクレオチドのガイド配列を含むガイドRNA(gRNA)、および
ii)CRISPR関連(Cas)タンパク質、
を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体であって、
2kb制御領域が配列番号13に記載される配列を有する、リボ核タンパク質(RNP)複合体。
【請求項5】
ガイド配列が、標的配列に対応する少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含む、請求項1に記載のgRNAまたは請求項3もしくは請求項4に記載のRNP複合体。
【請求項6】
ガイド配列が、標的配列に対応する少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含む、請求項1に記載のgRNAまたは請求項3もしくは請求項4に記載のRNP複合体。
【請求項7】
ガイド配列が、標的配列に対応する15~25個の連続するヌクレオチドを含む、請求項1に記載のgRNAまたは請求項3もしくは請求項4に記載のRNP複合体。
【請求項8】
標的配列が、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)NGGに連続している、請求項1に記載のgRNAまたは請求項3もしくは請求項4に記載のRNP複合体。
【請求項9】
CasがdCas9またはdCas12aである、請求項3に記載のRNP複合体。
【請求項10】
CasがCas9、Cas12aまたはCas3である、請求項4に記載のRNP複合体。
【請求項11】
標的配列がプロモーター中にあり、転写活性化因子がVP16、VP64、VP160、MLL、E2A、HSF1、NF-IL6、NFAT1およびNF-kBから選択される、請求項3に記載のRNP複合体。
【請求項12】
標的配列が2kb制御領域中にあり、転写活性化因子がLHX2である、請求項3に記載のRNP複合体。
【請求項13】
ガイド配列が配列番号15~33のいずれか、または配列番号15~33のいずれかの少なくとも15個の連続する塩基を含むサブ配列を含む、請求項1から2もしくは4から7に記載のgRNAまたは請求項3に記載のRNP複合体。
【請求項14】
i)ガイド配列が配列番号36~49のいずれか1つを含み、
ii)標的配列が、rs10490924、rs144224550、rs36212731、rs36212732、rs36212733、rs3750848、rs3750847およびrs3750846のいずれか1つでのリスクから選択されるリスク対立遺伝子を含み、
iii)標的配列がrs10490924、rs144224550、rs36212731、rs36212732、rs36212733、rs3750848、rs3750847およびrs3750846のいずれか1つに隣接している、
請求項1から2もしくは4から7に記載のgRNAまたは請求項4に記載のRNP複合体。
【請求項15】
ポリヌクレオチドがDNAである、請求項1から2、5から8または13から14のいずれか1つに記載のgRNAをコードするポリヌクレオチド。
【請求項16】
gRNAをコードする配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む、請求項15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
請求項15または16に記載のポリヌクレオチドを含むウイルスベクター。
【請求項18】
HTRA1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターであって、ポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結されたHTRA1をコードするヒトコドン最適化配列を含む、ウイルスベクター。
【請求項19】
レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)である、請求項17または請求項18に記載のウイルスベクター。
【請求項20】
プロモーターがRPE特異的プロモーターである、請求項16に記載のポリヌクレオチドまたは請求項18から19に記載のウイルスベクター。
【請求項21】
a)請求項1、2、5から8または13から14のいずれかに記載のgRNAをコードするDNA配列を含むベクター、および
b)転写活性化因子ドメインに融合されたCasタンパク質ドメインを含む融合タンパク質をコードするDNA配列を含むベクターであって、Casタンパク質ドメインがヌクレアーゼ活性を欠いている、ベクター、
を含むHTRA1活性化システム。
【請求項22】
(a)におけるベクターと(b)におけるベクターが異なるベクターである、請求項21に記載のHTRA1活性化システム。
【請求項23】
(a)請求項1、2、5から8または13から14のいずれかのgRNAをコードする核酸を含むベクター、および
(b)Casタンパク質をコードする核酸を含むベクター
を含むHTRA1標的化システム。
【請求項24】
(c)鋳型修復配列をコードする核酸を含むベクターであって、前記鋳型修復配列が配列番号87~94の少なくとも1つまたは配列番号87~94の少なくとも1つの相補体を適宜含む、ベクター
をさらに含む、請求項23に記載のHTRA1標的化システム。
【請求項25】
(a)および(b)が同じベクターである、または(a)、(b)および(c)が同じベクターである、請求項24に記載のHTRA1標的化システム。
【請求項26】
請求項1または2に記載のgRNA、請求項3または4に記載のRNP複合体、請求項15、16もしくは20に記載のポリヌクレオチド、請求項17から19に記載のウイルスベクター、請求項21から22に記載の活性化システムまたは請求項23から25に記載の標的化システムを含む、単離された細胞。
【請求項27】
加齢性黄斑変性症(AMD)を処置するための医薬の調製のための、請求項1から2、4から7もしくは13から14のいずれかに記載のgRNA、請求項15に記載の単離されたポリヌクレオチド、請求項17から19に記載のベクター、請求項21から22に記載の活性化システム、請求項23から25に記載の標的化システムまたは請求項26に記載の単離された細胞の使用。
【請求項28】
加齢性黄斑変性症(AMD)を処置するための医薬の調製のための、請求項1から2、4から7もしくは13から14のいずれかに記載のガイドRNA、請求項15に記載の単離されたポリヌクレオチド、請求項17から19に記載のベクター、請求項21から22に記載の活性化システム、請求項23から25に記載の標的化システムまたは請求項26に記載の単離された細胞。
【請求項29】
処置される対象が、
a)Chr10 AMD臨床表現型を示す;
b)第10染色体リスク対立遺伝子を有する;
c)第10染色体リスク対立遺伝子についてホモ接合性である;または
d)第1染色体リスク対立遺伝子を有さない、
請求項27に記載の使用または請求項28に記載のガイドRNA。
【請求項30】
細胞において、請求項21から22に記載の活性化システムまたは請求項23から25に記載の標的化システムを発現させることを含む、細胞においてHTRA1発現を増加させるための方法。
【請求項31】
対象のRPE細胞または水平細胞におけるHTRA1発現を増加させる薬剤(複数可)を投与することを含む、対象においてChr10 AMDを処置する、その発症を予防する、その進行を遅らせる、元に戻すまたはその症状および徴候を軽快させる方法。
【請求項32】
対象がChr10 AMD臨床表現型を示す、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
対象が第10染色体リスク対立遺伝子を有する、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
対象が第10染色体リスク対立遺伝子についてホモ接合性である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
対象が第1染色体リスク対立遺伝子を有さない、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
内在性HTRA1遺伝子配列の転写が増加する、請求項31から35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
薬剤が、(a)酵素的に不活性なCasタンパク質ドメインおよび転写活性化因子ドメインの融合タンパク質、ならびに(b)ガイドRNAを含むリボ核タンパク質複合体である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
酵素的に不活性なCasタンパク質がdCas9である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
リボ核タンパク質複合体がHTRA1プロモーター領域に結合する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
リボ核タンパク質複合体がHTRA1エンハンサー領域に結合する、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
転写活性化因子ドメインが、LHX2結合モチーフに結合する、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
薬剤が、ガイドRNAおよびCasタンパク質を含むリボ核酸複合体である、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
対象がHTRA1遺伝子エンハンサーにリスク対立遺伝子を保有し、薬剤が、(a)ガイドRNAおよびCasタンパク質を含むリボ核酸複合体、ならびに(ii)リスク対立遺伝子に対応する非リスク対立遺伝子の配列を含む鋳型修復ポリヌクレオチドを含む合剤である、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加齢性黄斑変性症の処置のための方法および組成物に関し、生物学および医学の分野における応用を見出す。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。前記ASCIIコピーは、2020年4月9日に作成され、098846-1185529-000810PC_SL.txtと名付けられ、サイズ46,642バイトである。
【0003】
関連特許の相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国仮出願第62/832,182号、2019年4月10日出願の優先権を主張する。
【背景技術】
【0004】
加齢性黄斑変性症(AMD)は、先進国世界における不可逆的な視力喪失の主因であり[概説について、Zarbin, Eur. Ophthalmol. 8:199-206, (1998)を参照されたい、60歳以上の人のおよそ15%が発症する。人口動態で推定6億人がこの年齢にある。AMDの有病率は、年齢と共に増加し;軽度または初期の形態は、75歳以上である人口の30%近くに、進行した形態は約7%において生じる[Vingerling et al., Epidemiol. Rev. 17(2):347-360, 1995]。
【0005】
伝統的治療は、隔月または必要に応じた治療剤、例えば抗VEGF薬剤の硝子体内注射を一般に含む。これらの治療は、患者に著しい不快感および不自由を生じる度重なる侵襲性手術を必要とする。これらの治療に含まれる手順は、副作用のリスクを増加させる場合もある。さらに、多くの場合、治療剤は、脈絡膜新生血管(CNV)が発生した後、および黄斑に著しい損傷がある場合だけ投与される。初期AMDのためにまたはAMDの発症を予防するために現在承認されている治療はない。
【0006】
AMD患者の詳細な遺伝子型判定研究に基づいて、AMDが以下の2つの異なる生物学的疾患を含むことが現在理解されている:補体H因子調節不全を含む補体系の調節不全から生じる第1染色体依存性AMD(Chromosome 1-directed AMD)(または「Chr1 AMD」)、およびARMS2およびHTRA1遺伝子を保有する染色体領域10q26中の遺伝的変異体と関連する第10染色体依存性AMD(または「Chr10 AMD」)。参照により本明細書に組み込まれる、Keenan et al, 2015, "ASSESSMENT OF PROTEINS ASSOCIATED WITH COMPLEMENT ACTIVATION AND INFLAMMATION IN MACULAE OF HUMAN DONORS HOMOZYGOUS RISK AT CHROMOSOME 1 CFH-TO-F13B" Invest Ophthalmol Vis Sci. 56:487-79;Hageman,2015,“METHODS OF PREDICTING THE DEVELOPMENT OF AMD BASED ON CHROMOSOME 1 AND CHROMOSOME 10” 米国特許公開第2015/0211065号を参照されたい。第1および第10染色体上のこれらの遺伝子座は、合わせてコーカサス人種におけるすべてのAMDリスクの95%を構成しており、染色体領域10q26がAMDのリスクの増加と強く関連することが報告されている(Fisher et al., 2005;Rivera et.al. 2005)。リスク領域は、広範な連鎖不平衡(LD)(D’=0.99)を共有する遺伝子(ARMS2およびHTRA1を含む)を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示では、第10染色体誘発(Chromosome 10-driven)加齢性黄斑変性症(AMD)を処置する、その発症を予防する、その進行を遅らせる、元に戻すまたはその症状および徴候を軽快させる方法および組成物が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一部の態様では、本開示は、対象の細胞(例えば、RPE細胞、水平細胞または光受容細胞)におけるHTRA1発現を増加させる薬剤を投与することによって、対象においてChr10 AMDを処置する、その発症を予防する、その進行を遅らせる、元に戻すまたはその症状および徴候を軽快させる方法を提供する。一部の場合では、対象は、単一の第10染色体リスク対立遺伝子を有する。一部の場合では、対象は、第10染色体リスク対立遺伝子についてホモ接合性である。一部の場合では、対象は、Chr10 AMD臨床表現型を示す。一部の場合では、対象は、第1染色体リスク対立遺伝子(複数可)を保有していない。
【0009】
一部のアプローチでは、薬剤は、内在性HTRA1遺伝子配列の転写の上方制御を生じる。例えば薬剤は、HTRA1転写制御領域またはHTRA1プロモーター内の標的配列に結合する転写活性化因子である場合がある。一部の場合では、薬剤は、i)HTRA1転写制御領域内の標的配列を認識できるDNA標的化タンパク質と、ii)転写活性化因子との融合タンパク質である。一部の場合では、DNA標的化タンパク質は、HTRA1転写制御領域またはHTRA1プロモーター領域内の配列に相補的であるガイドRNAを通して標的配列を認識する。一部の場合では、DNA標的化タンパク質は、酵素的に不活性なCas9タンパク質(dCas9)である。一部の場合では、転写活性化因子はVP16である。一部の場合では、方法は、HTRA1転写制御領域内の配列に相補的であるsgRNAを投与することをさらに含む。
【0010】
一部の場合では、薬剤の投与は、対象の細胞(例えば、RPE細胞、水平細胞または光受容細胞が挙げられる)において外来性HTRA1タンパク質の発現を生じる。遺伝子治療アプローチでは、薬剤は、外来性HTRA1タンパク質、またはHTRA1タンパク質をコードする、好ましくはプロモーターに作動可能に連結した核酸配列をデリバリーするウイルスベクター(例えば、AAVまたはレンチウイルス)などのベクターであり得る。一部の場合では、プロモーターは、RPE特異的プロモーターである。
【0011】
一部の場合では、薬剤を使用して対象を処置することは、対象のRPE細胞においてゲノムDNAの改変を生じる。例えば、ゲノム編集法は、HTRA1遺伝子または転写制御領域中の配列を変化させ、1つまたは複数のリスク対立遺伝子を対応する非リスク対立遺伝子(複数可)に変換するために使用され得る。一部の場合では、薬剤は、DNAエンドヌクレアーゼベースシステムである。一部の場合では、DNAエンドヌクレアーゼは、Cas9エンドヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼまたはCreリコンビナーゼである。一部の場合では、薬剤は、ゲノムDNAを改変し、配列番号34を含むゲノムDNA配列を生じる。一部の場合では、薬剤は、ゲノムDNAを改変し、配列番号14を含むゲノムDNA配列を生じる。一部の場合では、rs36212733でのリスク対立遺伝子配列(c)は、非リスク対立遺伝子配列(t)に変更される。一部の場合では、薬剤は、網膜下注射によって投与される。一部の場合では、薬剤は、上脈絡膜注射によってデリバリーされる。一部の場合では、薬剤は、硝子体内注射によってデリバリーされる。一部の場合では、薬剤は、他の経路によってデリバリーされる。一部の場合では、1つまたは複数の薬剤は、Cas9および1つまたは複数のsgRNAを含み、ここで1つまたは複数のsgRNAは、cas9を1つまたは複数のリスク対立遺伝子を含むゲノム領域に方向付け、それによりゲノム領域を改変し、1つまたは複数のリスク対立遺伝子が対応する非リスク対立遺伝子を用いて置き換えられるようにする。
【0012】
一部の場合では、薬剤は、RPE細胞においてHTRA1発現または活性を増加させる小分子化合物、ペプチドまたは核酸である。
【0013】
一部の態様では、本開示は、(i)対象のRPE細胞においてHTRA1発現を増加させる薬剤、および(ii)薬学的に許容される担体を含む、Chr10 AMDを処置するための医薬組成物を提供する。
【0014】
一形態での本発明の組成物は、HTRA1プロモーター中またはHTRA1 2kb制御領域中の標的配列に対応する少なくとも10個の連続するヌクレオチドのガイド配列を含むガイドRNA(gRNA)を含む。一態様では、HTRA1プロモーターは配列番号5、7、8または13に記載される配列を有し、2kb制御領域は、配列番号14に記載される配列を有する。
【0015】
別の態様では、本発明は、(a)HTRA1プロモーター中またはHTRA1 2kb制御領域中の標的配列に対応する少なくとも10個の連続するヌクレオチドのガイド配列を含むガイドRNA(gRNA);および(b)転写活性化因子ドメインに融合されたCRISPR関連タンパク質(Cas)ドメインを含む融合タンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体であって、Casタンパク質ドメインがヌクレアーゼ活性を欠いており、HTRA1プロモーターが配列番号5、7、8または13に記載される配列を有し、2kb制御領域が配列番号14に記載される配列を有する、リボ核タンパク質(RNP)複合体を含む。一実施形態では、RNP複合体のCasは、dCas9またはdCas12aである。一態様では、RNP複合体の標的配列はプロモーター中にあり、転写活性化因子は、VP16、VP64、VP160、MLL、E2A、HSF1、NF-IL6、NFAT1およびNF-kBから選択される。別の態様では、RNP複合体の標的配列は、2kb制御領域中にあり、転写活性化因子はLHX2である。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、(a)HTRA1 2kb制御領域中の標的配列に対応する少なくとも10個の連続するヌクレオチドのガイド配列を含むガイドRNA(gRNA);および(b)CRISPR関連(Cas)タンパク質、を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体であって、2kb制御領域が配列番号14に記載される配列を有する、リボ核タンパク質(RNP)複合体を含む。一実施形態では、RNP複合体のCasは、Cas9、Cas12aまたはCas3である。
【0017】
一態様では、gRNAまたはRNP複合体のガイド配列は、標的配列に対応する少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含む。別の態様では、gRNAまたはRNP複合体のガイド配列は、標的配列に対応する少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含む。さらに別の態様では、gRNAまたはRNP複合体のガイド配列は、標的配列に対応する15~25個の連続するヌクレオチドを含む。一実施形態では、gRNAまたはRNP複合体の標的配列は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)NGGと連続している。
【0018】
一態様では、gRNAまたはRNP複合体のガイド配列は、配列番号15~33のいずれか、または配列番号15~33のいずれかの少なくとも15個の連続する塩基を含むサブ配列を含む。
【0019】
別の態様では、本発明は(i)ガイド配列が配列番号36~49のいずれかを含む;ならびに/または(ii)標的配列がrs10490924、rs144224550、rs36212731、rs36212732、rs36212733、rs3750848、rs3750847およびrs3750846でのリスクから選択されるリスク対立遺伝子を含むかもしくは隣接するgRNAまたはRNP複合体を含む。
【0020】
別の態様では、本発明は、gRNAをコードするポリヌクレオチドであって、DNAであるポリヌクレオチドを含む。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、gRNAをコードする配列に作動可能に連結したプロモーターを含む。
【0021】
さらに別の態様では、本発明は、ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む。
【0022】
さらなる態様では、本発明は、HTRA1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターであって、ポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結したHTRA1をコードするヒトコドン最適化配列を含む、ウイルスベクターを提供する。一実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)である。
【0023】
一実施形態では、ポリヌクレオチドまたはウイルスベクターのプロモーターは、RPE特異的プロモーターである。
【0024】
別の態様では、本発明は、(a)gRNAをコードするDNA配列を含むベクター;および(b)転写活性化因子ドメインに融合されたCasタンパク質ドメインを含む融合タンパク質をコードするDNA配列を含むベクター、を含むHTRA1活性化システムであって、Casタンパク質ドメインがヌクレアーゼ活性を欠いているHTRA1活性化システムである。一実施形態では、(a)中のベクターおよび(b)中のベクターは、異なるベクターである。
【0025】
さらに別の態様では、本発明は、(a)本明細書において開示されるgRNAをコードする核酸を含むベクター;および(b)Casタンパク質をコードする核酸を含むベクター、を含むHTRA1標的化システムを含む。一態様では、HTRA1標的化システムは、(c)鋳型修復配列をコードする核酸を含むベクターをさらに含み、前記鋳型修復配列は、配列番号87~94の少なくとも1つまたは配列番号87~94の少なくとも1つの相補体を適宜含む。一実施形態では、(a)および(b)は同じベクターである、または(a)、(b)および(c)は同じベクターである。
【0026】
さらに別の態様では、本発明は、gRNA、RNP、ポリヌクレオチド、ウイルスベクター、活性化システムまたは標的化システムを含む単離された細胞を含む。
【0027】
一態様では、本発明は、加齢性黄斑変性症(AMD)を処置するための薬物の調製物のためのgRNA、単離されたポリヌクレオチド、ベクター、活性化システム、標的化システムまたは単離された細胞の使用を提供する。別の態様では、ガイドRNA、単離されたポリヌクレオチド、ベクター、活性化システム、標的化システムまたは単離された細胞は、加齢性黄斑変性症(AMD)を処置するための薬物の調製物のために使用される。一実施形態では、処置される対象は、(a)Chr10 AMD臨床表現型を示す;(b)第10染色体リスク対立遺伝子を有する;(c)第10染色体リスク対立遺伝子についてホモ接合性である;または(d)第1染色体リスク対立遺伝子を有さない。
【0028】
本発明は、細胞において活性化システムまたは標的化システムを発現させることを含む、細胞においてHTRA1発現を増加させるための方法をさらに含む。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は、対象のRPE細胞または水平細胞または光受容細胞におけるHTRA1発現を増加させる薬剤(複数可)を投与することを含む、対象におけるChr10 AMDを処置する、その発症を予防する、その進行を遅らせる、元に戻すまたはその症状および徴候を軽快させる方法を含む。一実施形態では、対象は、Chr10 AMD臨床表現型を示す。別の実施形態では、対象は、第10染色体リスク対立遺伝子を有する。さらに別の実施形態では、対象は、第10染色体リスク対立遺伝子についてホモ接合性である。さらに別の実施形態では、対象は、第1染色体リスク対立遺伝子を有さない。一態様では、内在性HTRA1遺伝子配列の転写は、増加する。一実施形態では、薬剤は、(a)酵素的に不活性なCasタンパク質ドメインと転写活性化因子ドメインとの融合タンパク質および(b)ガイドRNA、を含むリボ核タンパク質複合体である。本態様の一実施形態では、酵素的に不活性なCasタンパク質はdCas9である。一実施形態では、リボ核タンパク質複合体は、HTRA1プロモーター領域中に結合する。別の実施形態では、リボ核タンパク質複合体は、HTRA1エンハンサー領域中に結合する。一実施形態では、転写活性化因子ドメインは、LHX2結合モチーフに結合する。さらに別の実施形態では、薬剤は、ガイドRNAおよびCasタンパク質を含むリボ核酸複合体である。別の態様では、対象は、HTRA1遺伝子エンハンサー中にリスク対立遺伝子を保有し、薬剤は、(a)ガイドRNAおよびCasタンパク質を含むリボ核酸複合体、ならびに(ii)リスク対立遺伝子に対応する非リスク対立遺伝子の配列を含む鋳型修復ポリヌクレオチド、を含む合剤である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、ヒト網膜におけるHTRA1 mRNAのインサイツハイブリダイゼーションを示す。
【
図2】
図2は、NewmanデータセットにおけるHTRA1 mRNA発現のマイクロアレイ分析を示す。
【
図3】
図3Aおよび3Bは、DiaxonHit(A)およびNewman(B)データセット(ヒト眼球組織)におけるHTRA1 mRNA発現のqRT-PCR分析を示す。
【
図4】
図4Aおよび4Bは、ヒト眼球組織(RPE脈絡膜および神経網膜)ならびにRPE掻爬におけるHTRA1の対立遺伝子特異的発現をそれぞれ示す。rs1049331にリスク対立遺伝子を含むHTRA1 mRNAの量は、非リスク対立遺伝子を有するHTRA1 mRNAの量と比べて決定された。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、hTERT-RPE1および分化したヒト胎児RPE細胞におけるHTRA1タンパク質の極性発現を示す。
【
図6】
図6は、ヒト眼由来の種々の組織抽出物において検出されたHTRA1タンパク質の量を示す。
【
図7】
図7は、長い非コードRNA lncSCTM1(LOC105378525)の予測されたおよび観察されたアイソフォームを示す。
【
図8】
図8は、RPE脈絡膜および網膜におけるヒトHTRA1 mRNAおよびlncSCTM1 RNAの対立遺伝子特異的発現を示す。
【
図9】
図9は、LHX2タンパク質についてのコンセンサス結合モチーフおよびrs36212733多型部位でのリスク対立遺伝子によるモチーフの破壊を示す。
【
図10】
図10Aおよび10Bは、LHX2のrs36212733に非リスク(WT)配列を含有するChr10プローブへの結合、しかしリスク配列への弱い結合およびスクランブル配列に結合しないことを示す。
【
図11】
図11は、リスク配列と比べた非リスクChr10プローブ配列に対するLHX2の優先的結合親和性の結果を示す。
【
図12】
図12Aおよび12Bは、Chr10遺伝子型群によるヒト網膜におけるHTRA1タンパク質およびmRNAレベルを示す。
【
図13】
図13Aおよび13Bは、Chr10遺伝子型群によるRPE脈絡膜におけるHTRA1タンパク質およびmRNAレベルを示す。
【
図14-1】
図14は、HTRA1プロモーターを標的化するために使用されたsgRNA配列を示す。
【
図15】
図15は、CRISPRベースSAM構成成分を用いて72時間処置されたh1RPE7細胞から単離された総RNAを使用したHTRA1およびIL1B mRNAレベル(定量的RT-PCR)を示す。
【
図16】
図16は、72時間、モックトランスフェクトされたまたはLentiMPHプラスミド(MPH)、LentiSAMプラスミド(SAM)もしくは両方(MPH+SAM)をトランスフェクトされたh1RPE7細胞の総RNA中のHTRA1 mRNAレベル(定量的RT-PCR)を示す。
【
図17】
図17Aおよび17Bは、HTRA1(
図17A)およびIL1B(
図17B)のレベルを示す。LentiMPHプラスミド(MPH)を伴ってまたは伴わずに72時間、HTRA1標的化P7 sgRNA-LentiSAM(P7)またはP18 sgRNA(P18)またはIL1B標的化P2 sgRNA-LentiSAMをトランスフェクトされたh1RPE7細胞の総RNA中のmRNA(定量的RT-PCR)。
【
図18】
図18Aおよび18Bは、異なる量のP7 sgRNA-LentiSAMプラスミド(SAM)を72時間トランスフェクトされたh1RPE7細胞中の総RNAのHTRA1 mRNA(定量的RT-PCR)のレベルを示す。
【
図19】
図19Aおよび19Bは、HTRA1 ELISAの結果を示す、(A)HTRA1タンパク質の標準曲線;(B)異なる量(2.5、5.0および7.5μg)のCtrl sgRNA-またはP18 sgRNA-LentiSAMを3、4および5日間トランスフェクトされたh1RPE7の細胞培養上清におけるHTRA1タンパク質レベル。
【
図20】
図20Aおよび20Bは、異なる量(2.5、5.0および7.5μg)のCtrl sgRNA-LentiSAMまたはP18 sgRNAを3、4および5日間トランスフェクトされたh1RPE7細胞における標準化HTRA1タンパク質レベル(A)およびHTRA1 mRNAレベル(B)の結果を示す。
【
図21】
図21は、Ctrl-またはP18-LentiSAMウイルス粒子をMOI=20で用いて3、6および9日間形質導入されたh1RPE7の細胞培養上清におけるHTRA1タンパク質レベルを示す。データは、Ctrl-LentiSAMと比べた倍数増加としてプロットされている。
【
図22】
図22は、Ctrl-またはP18-LentiSAMレンチウイルス粒子をMOI=20で用いて3、6および9日間形質導入されたh1RPE7の細胞培養上清におけるENPP-2タンパク質レベル(ng/ml)を示す。
【
図23-1】
図23Aおよび23Bは、MOI 20のCtrl sgRNA-またはP18 sgRNA-LentiSAMを用いて3、6および9日間形質導入されたh1RPE7細胞における標準化HTRA1タンパク質レベル(A)およびHTRA1 mRNAレベル(B)の結果を示す。
【
図24】
図24は、対照pCTM259ベクターと比べて、リポフェクタミン3000、72時間を使用して、プロモーターを有さない(無)、BEST1、RPE65またはCMV-HTRA1プラスミドをトランスフェクトされたHTRA1ノックダウンRPE1細胞におけるHTRA1 mRNAレベルを示す。
【
図25】
図25は、対照pCTM259ベクターと比べて、リポフェクタミン3000、72時間を使用して、プロモーターを有さない(無)、BEST1、RPE65またはCMV-HTRA1プラスミドをトランスフェクトされたRPE1細胞におけるHTRA1 mRNAレベルを示す。
【
図26】
図26は、BEST1-、RPE65-またはCMV-由来プロモーターによって駆動されるAAV2-HTRA1プラスミドをトランスフェクトされたRPE1細胞(HTRA1 KD)におけるHTRA1 mRNA発現の経時変化動態を示す。
【
図27】
図27A~27Cは、BEST1-、RPE65-またはCMV-由来プロモーターによって駆動されるAAV2-HTRA1プラスミドをトランスフェクトされたRPE1細胞(HTRA1 KD)におけるHtrA1タンパク質発現の経時変化動態を示す。
【
図28】
図28は、ARMS2遺伝子を包含するChr10リスク遺伝子座内の領域の対立遺伝子特異的欠失の例を示す。
【
図29】
図29は、AMD第10染色体遺伝子座上の「原因」(制御)領域およびlncSCTM1を示す。Chr10制御領域は、およそ2~4kbである。新規lncRNA(lncSCTM1と称する)は、この制御領域と重複して同定された。新規lncRNAは、ARMS2 rs10490924を含有する。矢印は、lncSCTM1がHTRA1プロモーターからアンチセンス方向で転写され、HTRA1と分岐プロモーター(divergent promoter)を共有し得ることを示す。
【
図30-1】
図30は、Chr10非リスク(GG)ドナーをヘテロ接合性(GT)およびホモ接合性リスク(TT)ドナーと比較する、ヒト黄斑外RPE脈絡膜(
図30A)、黄斑外網膜(
図30B)、黄斑RPE脈絡膜(
図30C)および黄斑網膜(
図30D)におけるエクソン標的化プローブを用いたHTRA1 mRNA発現のマイクロアレイ分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
1.序論
本発明者らは、眼(例えば、網膜色素上皮)におけるHTRA1 mRNAおよび/またはタンパク質レベルを増加させることが、加齢性黄斑変性症(AMD)を有するまたはその発症リスクがある対象に利益を提供することを発見した。特に、HTRA1 mRNAおよび/またはタンパク質レベルを増加させることは、第10染色体依存性AMD(または「Chr10 AMD」)の所見を有する、または第10染色体依存性AMDを発症する遺伝的素因を有する患者に利益を提供する。
【0032】
本開示は、処置を必要とする対象の眼において、HTRA1発現またはレベルを増加させることによって、加齢性黄斑変性症(AMD)を処置する、その発症を予防する、その進行を遅らせる、元に戻すまたはその症状および徴候を軽快させる方法および試薬を提供する。
【0033】
Chr10 AMDを処置する、発症を予防する、その進行を遅らせる、元に戻すまたはその症状および徴候を軽快させる例示的方法が記載される。方法は、対象に薬剤を投与することを含み、ここで薬剤は、対象のRPE細胞、または代替的に水平細胞もしくは光受容細胞においてHTRA1 mRNAおよび/またはタンパク質レベルを増加させる。細胞においてHTRA1 mRNAおよび/またはタンパク質レベルを増加させるための例示的方法が下に記載される。1つのアプローチでは、HTRA1発現は、対象の網膜色素上皮(RPE)細胞において増加する。眼においてHTRA1 mRNAの量および/またはタンパク質レベルを増加させるアプローチは、CRISPRaを使用する内在性HTRA1の発現の上方制御、リスク領域でのCRISPR媒介修復、HTRA1タンパク質コード配列を細胞に導入する遺伝子治療、細胞内でのHTRA1の分解の低減および細胞療法が挙げられる、HTRA1の転写制御を含む。しかし、本発明は、具体的な方法に限定されず、任意の治療に有効なアプローチが使用され得る。本明細書において使用される場合、「HTRA1の発現を増加させる」は、内在性または外来性遺伝子からの転写、および遺伝子産物(mRNAまたはタンパク質)の産生を増加させることによってHTRA1タンパク質のレベルを増加させることを指す。したがって、文脈に応じて、HTRA1「発現」は、HTRA1 mRNAまたはHTRA1タンパク質の産生を指し得る。「発現を増加させる」は、細胞におけるHTRA1タンパク質またはmRNAの安定性を増加させる、HTRA1 mRNAの翻訳速度を増加させる、mRNAリクルートメントおよび細胞への外来性HTRA1タンパク質の直接導入などの転写以外の機構を通じてHTRA1タンパク質の量を増加させる方法も指し得る。「HTRA1発現を増加させる」が、HTRA1タンパク質の望ましい分子種の量を増加させることを指し得ることは読者によって認識される。例えば、リスク遺伝子型と関連する内在性HTRA1タンパク質を発現する細胞において、「HTRA1発現を増加させる」は、リスク遺伝子型と関連しない配列を有するHTRA1タンパク質の量を増加させることを指し得る。1つのアプローチでは、HTRA1セリンプロテアーゼ活性は、増加する。用語「上方制御」は、薬剤を用いて処置されていない対象細胞と比べて、転写(例えば、mRNA産生の量)における少なくとも10%または少なくとも20%または少なくとも30%または少なくとも50%の増加を指して使用され得る。
【0034】
HTRA1レベルの増加が、患者に利益を与えるという発見は予想外であった。AMD分野におけるコンセンサスは、HTRA1の過小発現ではなく過剰発現がAMDを発症するリスクの増加と関連しており、HTRA1レベルまたは活性はAMDを処置するために低減または抑制されるべきであるとのことであった。例えば、Dewan et al (2006)は、rs11200638でのHTRA1プロモーターSNPのリスク対立遺伝子(A)が培養RPE細胞におけるHTRA1転写の増強と関連すると報告した。Yang et al (2006)もリスク対立遺伝子についてホモ接合性(AA)の個体由来の循環リンパ球が、非リスク対立遺伝子についてホモ接合性(GG)の個体由来のリンパ球と比較して、高レベルのHTRA1 mRNAを発現することを報告した。Chan et al. (2007)は、AMDを有する患者の保存された眼においてmRNAレベルでHTRA1発現が上方制御されていることを報告し、HTRA1の発現の増強が滲出型AMDの黄斑病変における活発な血管新生の原因であると結論付けた。同様に、Vierkotten et al. (2011)は、HTRA1の過剰発現が、ブルッフ膜の弾性層における超微細構造変化と相関することを報告し、HTRA1がAMDの病態生理の一因となることを示唆した。Jones et al. (2011)は、マウス網膜色素上皮においてヒトHTRA1を過発現することが、脈絡膜の分枝血管網、ポリープ状病変、弾性板の重度の変性および脈絡膜血管の中膜を含む、ポリープ状脈絡膜血管症(「PCV」)の誘発される主要な特性と関連したことを報告した。DeAngelis(米国特許公開第2013/0122016号)は、HTRA1遺伝子の発現を低減すること、またはHTRA1遺伝子産物の生物学的活性を低減することによる、対象における加齢性黄斑変性症の進行の遅延を提唱した。Wu et al.(米国特許公開第2013/0129743号)は、AMDの処置のために、HTRA1に結合し、HTRA1酵素活性を阻害するモノクローナル抗体を使用することを提唱した。
【0035】
2.AMDに関連するHTRA1制御エレメント
本発明者らは、HTRA1のレベルを増加させることによってAMDを処置するための標的および方法を特定した。本発明者らの発見は、一部、実施例に記載される研究に基づいている。
【0036】
rs10490924でのAMDリスク対立遺伝子についてホモ接合性またはヘテロ接合性(GT、TT)のヒト対象および非リスクについてホモ接合性(GG)の対照対象由来のドナー眼を使用して、本発明者らは、AMDリスク対立遺伝子を有するドナーが、対照と比較して低いHTRA1 mRNA発現を有することを観察した。重要なことに、データは、リスク患者におけるHTRA1 mRNAレベルの低減が組織特異的であることを実証した。低減は、RPEにおいて検出されたが、神経網膜および脈絡膜では検出されなかった。さらに、Chr10遺伝子座にリスクを有するまたは有さないドナーにおいて年齢に応じたヒト黄斑外網膜およびRPE脈絡膜におけるHTRA1タンパク質およびmRNAレベルの比較は、網膜では、HtrA1レベルが、年齢では比較的変化せず、対象のChr10リスク状態と無関係だが、RPE脈絡膜では、Chr10リスクを有さないドナーのHtrA1 mRNAおよびタンパク質レベルに、リスク対立遺伝子を有するドナーと比較して、年齢に伴う顕著な増加があることを実証した。
【0037】
4kb AMDリスク領域
HTRA1対立遺伝子特異的発現アッセイは、AMDの原因である第10染色体の領域を狭めるために使用された。アッセイは、AMD関連ARMS2/HTRA1 LDブロック内に稀な組換え事象を有するヒトドナー眼由来のmRNAを使用した。本発明者らは、HTRA1 mRNAの減少に関連する領域を、HTRA1コード配列の上流のおよそ4kb制御領域(rs11200632とrs3750846とを含めてそれらの間にある)にマッピングした。4kb領域は、rs10490924(ARMS2 A69S)を含む。同じ遺伝的領域は、Grassmann et al. (Genetics 2017)による、事例/対照研究における組換えハプロタイプの彼らの分析においてAMD疾患のリスクの上昇と関連することが見出された。本発明者らがHTRA1の対立遺伝子特異的発現と関連するとして特定した4kb領域が、AMDリスクと関連する領域と合致するという発見は、HTRA1発現におけるリスク関連低減がAMD発生率の増加をもたらすことを意味する。この領域を、「4kb AMDリスク領域」、または同義であるが「4kbリスク領域」、「4kb制御領域」、「4kb原因領域」もしくは「4kb領域」と称する。
【0038】
2kb AMDリスク領域
転写活性化のエピジェネティックマーカーを記載するデータを使用して、本発明者らは、4kb領域と重複し、HTRA1転写を制御するおよそ2kbゲノム領域[Chr10:122454508-122456564(hg38)に対応する]を特定した。RPE細胞では、この領域は、H3K27アセチル化を含む転写活性化のマーカーによって特徴付けられるが、この領域は網膜組織においてまたは種々の非RPE細胞株を使用するENCODEからのデータにおいてはH3K27アセチル化を示さず、この領域におけるクロマチンがRPE組織では活性だが、他の細胞型ではそうでないことを示唆している。「2kb AMDリスク領域」(配列番号14)は、「2kbリスク領域」、「2kb制御領域」、「2kb原因領域」または「2kb領域」と同等に称される。2kb AMDリスク領域は、「HTRA1エンハンサー領域」とも称される。
【0039】
HTRA1プロモーター
HTRA1「プロモーター配列」は、CRISPRa(CRISPR活性化)標的配列および他の特性を含む。プロモーター領域配列は、次の配列中に提供される。他に示されるまたは文脈から明らかである場合を除いて、本明細書における「プロモーター」への言及は、配列のこれらの範囲それぞれを指すことが意図される。配列番号8(300bp)は、推定転写開始部位から5’300bpを含むHTRA1主要プロモーター配列を示している。配列番号5(469bp)は、追加的上流配列を含む伸長されたプロモーター配列を示す。配列番号7(400bp)は、主要プロモーター配列に加えて100bpの5’UTR配列を示す。「天然プロモーター領域」は、プロモーターおよびUTR配列の両方を含む配列番号13(853bp)である。
【0040】
3.転写活性化によるHTRA1発現の増加
一部のアプローチでは、遺伝子治療は、RPE細胞において内在性HTRA1の発現を増強するために使用される。一部のアプローチでは、遺伝子治療は、HTRA1の転写制御領域に結合し、HTRA1の転写を促進できる転写活性化因子をデリバリーすることを含む。1つのアプローチでは、HTRA1プロモーター領域に結合し、転写活性化因子をHTRA1プロモーター領域の近くに位置させる標的化成分(例えば、Casタンパク質ガイドRNA複合体)が使用される。関連アプローチでは、標的化成分はHTRA1エンハンサー領域に結合し、転写活性化因子を転写活性化因子結合モチーフ近くに位置させる。
【0041】
一部のアプローチでは、転写活性化因子活性は、転写活性化因子およびDNA標的化タンパク質の融合タンパク質によって提供される。本明細書において開示されるDNA標的化タンパク質は、HTRA1転写制御領域に結合するDNA標的化タンパク質であり得る。DNA標的化タンパク質を使用する種々のプラットホームは、下に考察されるとおり使用され得る。ある特定の実施形態では、「CRISPRa」(CRISPR活性化)法が使用される。一部の場合では、転写活性化因子は、ヌクレアーゼ欠損II型CRISPR関連タンパク質(Cas)がDNA標的化タンパク質である融合タンパク質として提供される。一般に、Casは、エンドヌクレアーゼ活性を欠くように改変される(すなわち、「ヌクレアーゼデッドCas」または「dCas」)。一部のアプローチでは、CasはdCas9である。一部のアプローチでは、CasはdCas12aである。一部のアプローチでは、Casはそれをヌクレアーゼ欠損にする改変を有する任意のCasタンパク質である。上および本明細書他所に記載されるとおり発明は、この活性化方法に限定されず、転写活性化因子をプロモーターまたはエンハンサー領域に方向付ける非Casタンパク質または成分は使用され得る。
【0042】
これにより、本発明の一部の態様では、dCas9は、CRISPR活性化(「CRISPRa」)システムにおいてHTRA1発現の上方制御を媒介するために使用される。II型CRISPR/Casシステムにおいて広く使用され、標的配列に方向付けられた場合にゲノムDNA中に2本鎖切断を生成するCas9とは対照的に、dCas9は、ヌクレアーゼ活性を欠いており、DNA中に2本鎖切断を生成しない。代わりに、dCas9は、転写活性化因子に連結され、正確でロバストなRNAガイド転写制御を達成するようにHTRA1プロモーター領域中の配列に特異的にハイブリダイズするガイドRNA(例えば、sgRNA)と複合体形成できる。dCas9媒介遺伝子活性化システムの使用は、十分周知であり、例えば、Dominquez et al., 2016, "Beyond editing: repurposing CRISPR-Cas9 for precision genome regulation and interrogation," Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 17: 5-15に記載されている。
【0043】
他のヌクレアーゼ欠乏Casタンパク質は、プロモーターまたはエンハンサー部位に転写活性化因子をリクルートするためにも使用され得る。例えば、dCas12aドメインは、本発明の方法における使用のために転写活性化因子ドメインに融合され得る(Sarstedt, "Spotlight on Cas12 A search for more type V Cas12 family members turns up unexpected functionality", Nature Methods, 2019, 16:213-219;Pickar-Oliver et al., "The next generation of CRISPR-Cas technologies and applications", Nature Reviews Molecular Cell Biology, 2019, 20:490-507;Kleinstiver et al., "Engineered CRISPR-Cas12a Variants with Increased Activities and Improved Targeting Ranges for Gene, Epigenetic And Base Editing", Nature Biotechnology, 2019, 37:276-282;Xu et al., 2018, "A CRISPR-dCas Toolbox for Genetic Engineering and Synthetic Biology", J. Mol. Biol. doi.org/10.1016/j.jmb.2018.06.037を参照されたい)。1つのアプローチでは、Cas12aは、アシダミノコッカス種(Acidaminococcus sp.)BV3L6(AsCas12a)である。
【0044】
したがって、一実施形態では、本明細書において開示される方法は、薬剤を患者に投与することを含み、ここで投与は、処置を必要とする患者の眼(例えば、RPE)へのdCas転写活性化因子融合タンパク質および1つまたは複数のsgRNAのデリバリーを生じる。融合タンパク質は、1つまたは複数の単一ガイドRNA(sgRNA)のガイダンス下でHTRA1制御領域に結合し、それによりHTRA1転写を上方制御する。1つのアプローチではdCas9は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来である(「Sa-dCas9」)。1つのアプローチではdCas9は、スタフィロコッカス・ピオゲネス(Staphylococcus pyogenes)由来である(「Sp-dCas9」)。dCas9転写活性化因子融合タンパク質は、Dominguez et al., Nat Rev Mol Cell Biol. Jan; 17(1): 5-15 (2016)において開示されるものなどの異なる立体配置を取り得る。一例では、融合タンパク質は、複数コピーの転写活性化因子および1コピーのdCas9からなり得る。
【0045】
3.1 転写活性化のための融合タンパク質
HTRA1 mRNAまたはタンパク質発現を増加させるために有用な転写因子は、HTRA1プロモーターまたはエンハンサー領域に結合し、結合は対象の細胞、例えばRPE細胞、水平細胞または光受容細胞における転写の増加を生じる。用語「転写因子」は、トランス活性化ドメイン(「TAD」)を介して転写を活性化する因子を含むプロモーター領域に結合する因子、およびLIMエレメントなどスキャホールドを介して転写を活性化し、転写を開始するようにまたは他の機構を通じて追加的転写因子およびクロマチンリモデリングタンパク質をリクルートおよびアセンブルできる因子を含むエンハンサー領域に結合する因子を包含する。例えば、Hirai et al., Structure and functions of powerful transactivators: VP16, MyoD and FoxA Int. J. Dev. Biol. 2010; 54(11-12):1589-1596を参照されたい。転写因子の両方のクラスのメンバーは、転写因子を標的プロモーターまたはエンハンサーエレメント、およびエフェクタードメイン(例えば、TADもしくはスキャホールドなど)に方向付けるDNA結合ドメインを含む。
【0046】
一態様では、本発明は、ヌクレアーゼ欠損Cas/ガイドRNAシステムのDNA結合および認識特性を転写因子の転写エフェクター特性と組み合わせる融合タンパク質を利用する。本発明において使用される転写因子エフェクタードメインは、任意の供給源由来であってよいが、一般に、ヒトもしくはウイルス転写因子またはそれらの操作された誘導体由来である。HTRA1転写の上方制御のために有用な例示的転写因子として、VP16、VP64、VP160(VP16の2つ以上のコピーからなるVP64、およびVP16の10個のタンデムコピーからなるVP160);MLL(UniProt ID Q00613)、E2A(UniProt ID P15923)、HSF1(UniProt ID Q00613)、NF-IL6(UniProt ID P17676)、NFAT1(UniProt ID Q13469)、NFIX(UniProt ID Q14938)、NF-kB(UniProt ID Q04206);MEF2A[Potthoff & Olson (2007), "MEF2: a central regulator of diverse developmental programs," Development 2007; 134(23):4131-4140;UniProt ID Q02078];およびYY1[Weintraub et al. (2017), "YY1 Is a Structural Regulator of Enhancer-Promoter Loops", Cell 2017;171:1573-88;UniProt ID P25490]、LHX2(ZIBETTI et al., "Epigenomic profiling of retinal progenitors reveals LHX2 is required for developmental regulation of open chromatin", Communications Biology, April 25, 2019, Pages 1-13, 2、UniProt ID P50458)が挙げられる。
【0047】
ヒト転写因子(TF)または転写活性化因子は、十分周知であり、十分特徴付けられている。例えば、Lambertらは、ヒト転写因子の可能性があるものを1,600を超えて記載している(Lambert et al., 2018, "The Human Transcription Factors" Cell 172: 650-665)。同様に、Fulton et al. (2009), "TFCat: the curated catalog of mouse and human transcription factors", Genome Biol 2009; 10: R29、Vaquerizas et al. (2009), "A census of human transcription factors: function, expression and evolution", Nat. Rev. Genet. 2009; 10: 252-263、Wingender et al. (2015), "TFClass: a classification of human transcription factors and their rodent orthologs", Nucleic Acids Res. 2015; 43: D97-D102も参照されたい。転写因子結合モチーフは、周知であり、TRANSFAC[(Matys et al. (2006), "TRANSFAC and its module TRANSCompel: transcriptional gene regulation in eukaryotes", Nucleic Acids Res. 2006; 34: D108-D110]、JASPAR[Mathelier et al. (2016), "JASPAR 2016: a major expansion and update of the open-access database of transcription factor binding profiles", Nucleic Acids Res. 2016; 44: D110-D115]、HT-SELEX[Jolma et al. (2013), "DNA-binding specificities of human transcription factors", Cell 2013; 152: 327-339;Jolma et al. (2015), "DNA-dependent formation of transcription factor pairs alters their binding specificity", Nature 2015; 527: 384-388;Yin et al. (2017), "Impact of cytosine methylation on DNA binding specificities of human transcription factors", Science 2017; 356: eaaj2239]、UniPROBE[Hume et al.(2015), "UniPROBE,update 2015:new tools and content for the online database of protein-binding microarray data on protein-DNA interactions". Nucleic Acids Re. 2015; 43: D117-D122]およびCisBP[Weirauch et al. (2014), "Determination and inference of eukaryotic transcription factor sequence specificity", Cell 2014; 158: 1431-1443]などの集合で記載されている。
【0048】
転写因子エフェクタードメインがヌクレアーゼ欠損DNA結合ドメインと組み合わされている融合タンパク質も、例えば、TALENおよびZFNを含む、Casタンパク質以外のプログラム可能なヌクレアーゼを使用して作製され得る。
【0049】
3.2 ガイドRNA
一部のアプローチでは、標的化成分は、DNA標的に相補的な領域を有するRNAを含む。RNAは、ガイドRNA(gRNA)と称され、相補性の領域は、ガイド配列と称され得る。gRNAの「ガイド配列」は、標的特異性を付与する配列である。それは、標的配列の反対鎖(すなわち、その逆相補体である)にハイブリダイズする。天然では、多くのCRISPRシステムは、2つのRNA分子:Casエンドヌクレアーゼに結合するtracrRNA、およびDNA標的配列に結合するcrRNAを含む。一部のCRISPRシステム(例えば、CRISPR Cas12a/Cpf1)は、crRNAだけを必要とする。研究および生物医学的適用では、一般にRNaseIIIおよびcrRNAプロセシングに対する必要性を除き、Casおよび標的の両方に結合するcrRNA-tracrRNA融合物である、キメラ単一ガイドRNA(「sgRNA」)を使用することがより典型的である。文脈から明らかである場合を除いて、「sgRNA」への言及は、適切な結合特異性を有する任意の好適なガイドRNA(例えば、sgRNA、crRNAまたはガイド配列を含む他のRNA)を使用する任意の標的化法を包含することは理解される。
【0050】
最も一般的に使用されるsgRNAは、長さおよそ100塩基対である。プログラム可能な標的化配列は、sgRNAの5’末端のまたはその近くのおよそ20塩基を含む。この配列をプログラムすることによって、CRISPR Cas9システムまたは他のCasシステムは、その配列に相補的な任意のゲノム領域に向けて標的化され得る。
【0051】
特定のゲノム領域を標的化するsgRNAを設計するための方法は、当技術分野において十分周知である。Doench et al. Nature Biotechnology 34: 184-191, 2016;Horlbeck et al. eLife. 5e19760 (2016);Doench et al. , Nt.Biotechnol 34 (2): 184-191 (2016);Cui et al., "Review of CRISPR/Cas9 sgRNA Design Tools.Interdiscip.Sci. 2018, 10: 455-465;Jensen, 2018, Design principles for nuclease-deficient CRISPR-based transcriptional regulators" FEMS Yeast Research, 18: 4およびPCT公開第WO2018107028号を参照されたい。かかるsgRNAを設計するための方法およびツールは、例えば、Dharmacon、Inc.から商業的に入手可能であり、dharmacon. horizondiscovery.com/ applications/ crispra-transcriptional -activation-for-gene-overexpressionまたはbenchling.com/academic;およびBroad institute .org/gpp/public/ analysis-tools/sgrna-design-help-crisprai.などのウエブサイトにおいて公開されている。
【0052】
一態様では本発明は、HTRA1プロモーター中の標的配列に対応する少なくとも10個の連続するヌクレオチドを含むガイド配列を含むガイドRNA(gRNA)を提供する。一部の場合ではガイドRNAはsgRNAである。一部のアプローチではガイド配列は、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20または少なくとも25ヌクレオチドを含む。一部の場合ではガイド配列は、長さ20ヌクレオチドである。一部の実施形態では本発明は、ガイド配列を含むガイドRNAを提供し、ここでガイドRNAは、ヌクレアーゼ活性を欠いているCas(Cas9など)(例えば、dCas9)と複合体化される。一部の場合では本発明は、Cas DNA結合ドメインおよび転写活性化因子を含むCas融合タンパク質と複合体化されるsgRNAなどのガイドRNAを提供する。典型的にはCasは、ヌクレアーゼ欠損dCas(dCas9など)である。
【0053】
一部の場合ではDNA標的配列(例えば、HTRA1プロモーターまたはエンハンサー中)は、Casタンパク質によって認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に連続している。例えば、Cas9は、活性のために一般にPAMモチーフNGGを必要とする。したがって一部のシステムでは、ある特定の標的配列は(したがってある特定のガイド配列も)、PAMへの標的配列の近くにあることに基づいて好ましい。しかし、Cas9の変異体を含む一部のCasタンパク質は、弾力的なPAM要求性を有し(Karvekis et al., 2019, "PAM recognition by miniature CRISPR-Cas14 triggers programmable double-stranded DNA cleavage." bioRxiv. https://doi.org/10.1101/654897;Legut et al. ,2020, "High-Throughput Screens of PAM-Flexible Cas9" , Cell Reports 30:2859-2868;Jakimo et al., 2018 Cas9 with Complete PAM Recognition for Adenine Dinucleotides bioRxiv doi.org/10.1101/429654;Esvelt KM,Mali Pet al. (2013) Orthogonal Cas9 proteins for RNA-guided gene regulation and editing.Nature Methods, 10(11):1116-1121;Gleditzsch et al., 2019, PAM identification by CRISPR-Cas effector complexes: diversified mechanisms and structures. RNA Biol. 2019 Apr; 16(4): 504-517;Tang et al., 2019, Efficient cleavage resolves PAM preferences of CRISPR-Cas in human cells Cell Regeneration 8:44-50を参照されたい)、他のCasタンパク質はPAM非依存性である(例えば、Cas14a1)。例示的PAMとして、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)由来のSpCas9 NGG;化膿性連鎖球菌由来のSpCas9 NRG;ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)由来のStCas9 NNAGAAW;髄炎球菌(Neisseria meningitidis)由来のNmCas9 NNNNGATT;黄色ブドウ球菌由来のSaCas9 NNGRRT;SaCas9変異体(KKH SaCas9)NNNRRT;SpCas9 D1135E変異体NGG;SpCas9 VRER変異体NGCG;SpCas9 EQR変異体NGAG;SpCas9 VQR変異体NGANもしくはNGNG3’;アシダミノコッカス(Acidaminococcus)由来のAsCpf1、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)由来のLbCpf1 TTTN;フランシセラ・ノビシダ(Francisella novicida)U112株由来のFnCpf1 TTNならびに/またはCTA;4つの主な分類群:桿菌(Bacilli)、ベルコミクロビア(Verrucomicrobia)、プロテオバクテリア(proteobacteria)およびd-プロテオバクテリア(d-proteobacteria)由来のC2c1 TTN(N=A、T、CまたはG;R=AまたはG;W=AまたはT)が挙げられ、Zhao et al., 2017, CRISPR-offinder: a CRISPR guide RNA design and off-target searching tool for user-defined protospacer adjacent motif. Int J Biol Sci 2017; 13 (12): 1470-1478に記載されている。したがって、一般に使用されるCas9タンパク質は、標的配列および連続するNGG PAMを必要とするが、他の天然に存在するまたは操作されたCasタンパク質は、緩やかなPAM要求性を有するまたは要求性を有さない。結果として、CRISPR/Casシステムの賢明な選択を通じて、開業医は、転写活性化因子をリクルートするための標的として、HTRA1転写制御領域中のほとんどいずれのサブ配列も選択することができる。1つのアプローチでは、HTRA1プロモーター標的は、配列番号13に見出される。一部のアプローチでは、HTRA1プロモーター標的は、配列番号5に見出される。一部のアプローチでは、HTRA1プロモーター標的は、配列番号8に見出される。一部のアプローチでは、HTRA1プロモーター標的は、配列番号13に見出される。一部のアプローチでは、HTRA1プロモーター標的は、配列番号7に見出される。1つのアプローチでは、HTRA1エンハンサー標的は、配列番号14(2kb領域)に見出される。一部のアプローチでは、HTRA1標的は、配列番号14(2kb領域)または配列番号34(4kb領域)に見出される。
【0054】
本発明により、ガイド配列は、HTRA1プロモーター配列(配列番号5、配列番号7、配列番号8もしくは配列番号13)の、または配列番号5、配列番号7、配列番号8もしくは配列番号13の逆相補体の、またはHTRA1エンハンサー配列(配列番号14もしくは34)または配列番号14もしくは34の逆相補体の少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個または約20個の連続するヌクレオチドを含む標的配列にハイブリダイズする。
【0055】
一部の場合ではガイド配列は、上に示されるプロモーター配列の10個以上の連続する塩基を含む。配列番号13の10個の連続する塩基を含む配列の例として、GTCCCAACGG;TCCCAACGGA;CCCAACGGAT;CCAACGGATG;CAACGGATGCなどまたはこれらの逆相補体が挙げられる。配列番号13の10個以上の連続する塩基を含む配列は、配列番号13の塩基1から10をコードする、配列番号13の塩基2~11をコードする、配列番号13の塩基3~12をコードするなどの配列を含む。配列番号13の10以上の連続する塩基を含む配列は、ヌクレオチドが配列番号13の塩基Xである配列を含み、ここでXは1から300であり、10個の連続する塩基は配列番号13のX+Yに延長され、ここでYは、ガイド配列がしばしば長さ50塩基未満であるという条件で9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25以上である。15個または少なくとも20個の連続するヌクレオチドの配列は、同じ方法で記載され得る。例えば、一部の場合ではガイド配列は、配列番号13(GTCCCAACGGATGCA;TCCCAACGGATGCAC;CCCAACGGATGCACC;CCAACGGATGCACCA;CAACGGATGCACCAA)またはこれらの逆相補体の15個以上の連続する塩基を含む。
【0056】
10、15または20ヌクレオチド配列のそれぞれおよびその相補体は表に列挙され、個々の配列または配列の組合せが、セットに含めるためまたはセットから除外するためにかかる表から個々に選択され得ることは認識される。すなわちかかる表は、個々の配列および組合せを選択または除外するための根拠を記載および提供する。上の記載がかかる表の代わりを目的とし、同じ内容を有することは理解される。
【0057】
実施例9(14.9節)に記載されるとおり、本発明者らは、配列番号15~33と称する、配列番号13中の標的領域に対応するガイド配列を有するsgRNAを設計し、HTRA1プロモーターからの転写を活性化するそれらの能力を検査した。一部のアプローチでは、本方法において使用されるgRNAは、配列番号15~33の1つを含む配列を標的化する。
【0058】
一部の実施形態では、目的の遺伝子中の標的配列は、sgRNAのガイド領域に相補的であり得る。一般に、gRNAのガイド配列とその対応する標的配列との間に正確な相補性または同一性があり、100%未満である場合がある。一部の実施形態では、sgRNAのガイド領域とその対応する標的配列との間の相補性または同一性の程度は、100%同一性がオフターゲット効果を回避するために望ましいが、100%未満である場合がある。一部の実施形態では、sgRNAのガイド領域と目的の遺伝子の標的領域とは、少なくとも95%同一(例えば、20個の内1つミスマッチ)、少なくとも90%同一または少なくとも85%同一である場合がある。
【0059】
3.3 デリバリー
転写活性化因子タンパク質およびgRNAに融合されたCasタンパク質(例えば、Cas9およびdCas9)の細胞へのデリバリー方法は、周知である。融合タンパク質は、タンパク質形態で(例えば、微量注入を介して) デリバリーされ得る。さらに頻繁には、融合タンパク質は、DNA形態で、例えばRPEまたは脈絡膜細胞中に導入され得る好適なベクター中でデリバリーされる。一般に、gRNAをコードするDNAは、発現のためのプロモーター(例えば、U6プロモーター)の下流でベクターにクローニングされる。一部のアプローチでは、デリバリーは、Byrne et al., Methods Enzymol. 546, 119-38 (2014);Cong et al., Science (80). 339, 819-823;Hirsch et al., Mol. Ther. 18, 6-8 (2010)に記載されるとおり、ウイルス、例えば、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)による。一部のアプローチでは、デリバリーは、細胞由来ナノベシクルまたは他の方法による。下の7節も参照されたい。
【0060】
3.4 相乗的活性化メディエーター
一部のアプローチでは、相乗的活性化メディエーター(SAM)として周知のCRISPRaシステムはChr10 AMD患者においてHTRA1の発現を増加させるために使用される。SAMシステムは、複数の転写因子を使用し、Cas9媒介遺伝子活性化の強度をさらに改善できる。Konermann et al., Nature, January 29; 517(7536) 2015]を参照されたい、関連する開示は、本明細書に参照により組み込まれる。一部の場合では、このシステムは、2つのプラスミドを使用し、一方はsgRNAおよびdCas9-転写活性化因子、例えばdCas9VP64分子の両方をコードし、他方はMS2-TAD融合タンパク質をコードする。MS2-TADは、MS2ポリペプチドおよび少なくとも1つの転写活性化ドメインを含む。一部のアプローチではMS2-TAD融合タンパク質は、MS2ポリペプチド(配列番号56)ならびにp65およびHSF1のトランス活性化ドメインを含む(MS2-p65-HSF1)。SAMシステムにおいて使用されるsgRNAは、MS2-TAD融合タンパク質に結合できる1つまたは複数のMS2結合配列(例えば、配列番号55)を含む。一部の実施形態では、2つのMS2結合配列がgRNAに含まれている:1つはテトラループに、1つはgRNAのステムループに。MS2-TAD(例えば、MS2-p65-HSF1)をコードするプラスミドは、商業的に入手できる、例えば、LentiMPH plasmid(Addgene、Watertown、MA、USA)。sgRNAおよびdCas9-VP64融合タンパク質をコードするプラスミドは、好適なsgRNAコード配列を、dCas9-VP64コード配列を保有するプラスミドにクローニングすることによってコンストラクトされ得る。dCas9-VP64コード配列を保有するプラスミドも商業的に入手できる、例えばAddgene(Watertown、MA、USA)からのLentiSAM plasmid。sgRNAコード配列は、LentiSAMプラスミドにクローニングされたクローンであってよい。
【0061】
3.5 エンハンサー結合部位
一部のアプローチでは、内在性HTRA1遺伝子からの転写は、転写活性化因子のHTRA1 2kb(エンハンサー)領域中の部位への結合によって増加する。下に詳細に考察されるとおり、本発明者らは、rs36212733のリスク対立遺伝子に重複する転写活性化因子LHX2に対する結合モチーフを同定した。遺伝的および実験的証拠についてのいくつかのラインは、リスク対立遺伝子へのLHX2結合がない、または非リスク対立遺伝子への結合と比較して減少しており、これがHTRA1の発現の低減を生じさせていることを示唆している。1つのアプローチでは、Casタンパク質に融合されたLHX2 LIMドメインは、適切なガイドRNAと組み合わされ、リスク対立遺伝子を保有する患者においてLHX2リスク結合部位にリクルートされる。リスク対立遺伝子結合部位付近へのLHX2のデリバリーは、転写活性化因子のテザリングがLHX2の局所濃度を効果的に増加させ、結合でのリスク変動の負の影響を除外または軽減し、HTRA1の発現の増加を生じることから、遺伝子発現の増加を生じると考えられている。別のアプローチでは、LHX2転写活性化因子は、リスク対立遺伝子配列に効率的に結合するように改変され、それにより転写の増加を生じる。
【0062】
転写活性化因子結合部位と一致したリスク対立遺伝子が、転写活性化因子の結合を低減し得るまたは他に影響を与え得る、および低いHTRA1発現を生じる、ならびに対応する転写活性化因子を部位にリクルートすることがHTRA1発現を増加させることができるという発見に一部基づいて、2kb領域の考察が転写活性化因子結合モチーフと一致する他のリスク関連配列多様性を同定するために実施された。rs144224550、rs10490924、rs3750848およびrs6212733でのリスク対立遺伝子[すなわち、リスク関連変異体(variante)]の分析は、リスク関連SNPと一致するいくつかの結合モチーフを(LXH2モチーフに加えて)同定した。
rs144224550(10:122455084-122455085);Nkx2-5(var2);NFIX;
rs36212733(10:122455695);MEF2A;HOXB4;ALX3;HOXD3;LBX1;HOXD4;VAX1;LBX1;VSX1;VSX2、LHX9;MNX1;PDX1;EMX1;PRRX2;BARX2;
rs10490924(10:122454932)RHOXF;Myog;TCF12;ASCL1;Ascl2;NHLH1;BHLHA15 var2
rs3750848(10:122455799);YY1;BARX2;
【0063】
本発明の態様により、上に列挙される転写活性化因子由来のエフェクタードメイン、例えばLXH2由来のLIMドメインを、HTRA1発現を増加させるように対応する結合モチーフに位置させる(例えば、CRISPRaを使用する)。注目すべきことに、NFIX、MEF2AおよびYY1は、RNA配列データに基づいて1より大きなFPKMでRPEにおいて発現される。本発明の種々の態様では、HTRA1発現は、NFIX、MEF2AおよびYY1のいずれか1つのその対応する結合モチーフへの結合によって増加する。
【0064】
一般に、適切なガイドRNAのためのガイド配列は、リスク関連ヌクレオチドの末端20塩基以内、時に50塩基以内および時に100塩基以内の標的配列に結合する。
【0065】
3.6 他のプログラム可能なエンドヌクレアーゼ
本発明の方法は、CRISPR/Casシステムの文脈内で一般に記載される。(a)核酸の配列特異的な(「プログラム可能な」)改変および(b)転写活性化因子のプロモーターおよびエンハンサー領域への配列特異的なリクルートメントのための他のシステムも使用され得る。そのようなシステムの例として、亜鉛フィンガーヌクレアーゼシステム、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)システム、ホーミングエンドヌクレアーゼシステム、メガヌクレアーゼシステムまたはCreリコンビナーゼシステム(例えば、潜在性loxP部位間のCre誘導組換え)が挙げられる。亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、TALEN、メガヌクレアーゼおよび配列または眼細胞における発現を改変するためのナトロノバクテリウム・グレゴリー(Natronobacterium gregoryi)アルゴノート(NgAgo)などのDNAガイドポリペプチドの使用は、Yanik et al., 2017, In vivo genome editing as a potential treatment strategy for inherited retinal dystrophies Progress in Retinal and Eye Research 56: 1-18に記載されている。同様にそれぞれ本明細書に参照により組み込まれる、Lloyd et al., Frontiers in Immunology, 4(221) , 1-7(2013);Urnov et al., 2010, "Genome editing with engineered zinc finger nucleases," Nat Rev Genet. 11(9): 636-46;Sun et al., 2013, "Transcription activator-like effector nucleases (TALENs): a highly efficient and versatile tool for genome editing," Biotechnol Bioeng. 110(7):1811-21;Sengupta et al., 2017, "Viral Cre-LoxP tools aid genome modification in mammalian cells" J. Biological Engineering 11:45、(Cre-Loxのためのレンチウイルスおよびアデノ随伴ウイルスデリバリーシステムを記載している)およびNagy 2, "Cre recombinase:the universal reagent for genome tailoring," Genesis, 26(2):99-109、も参照されたい。各ゲノム改変法では、特異的核酸配列は標的化され、続く改変が作製される。これらの改変は、相同組換え、非相同性末端連結、相同性指向修復、ヒストン改変、転写活性化、RNA編集、転写抑制によって編集される標的配列を含む。加えて、切断を伴わない操作の例は、Thakore et al. 2018によって"RNA-guided transcriptional silencing in vivo with S. aureus CRISPR-Cas9 repressors" Nat Commun .9(1):1674において、およびAmabile et al. 2016によって"Inheritable Silencing of Endogenous Genes by Hit-and-Run Targeted Epigenetic Editing" Cell 167(1): 219-232.e14.において記載されている。[0060]一部の実施形態では、DNA標的化分子は、1つまたは複数の亜鉛フィンガータンパク質(ZFP)、または配列特異的様式でDNAに結合し、ヌクレアーゼに融合されているそのドメインを含む。ZFPまたはそのドメインは、その構造が亜鉛イオンの配位を通じて安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である1つもしくは複数の亜鉛フィンガーを介して配列特異的様式でDNAに結合するタンパク質またはより大きなタンパク質内のドメインである。用語、亜鉛フィンガーDNA結合タンパク質は、しばしば亜鉛フィンガータンパク質またはZFPと省略される。
【0066】
ZFPの内で優れているのは、特異的DNA配列、典型的には9~18ヌクレオチド長を標的化し、個々のフィンガーのアセンブリによって生成される人工ZFPドメインである。ZFPは、単一のフィンガードメインが長さおよそ30アミノ酸であり、亜鉛を介して単一のベータターンの2つのシステインと配位された2つの不変異体インバリアントヒスチジン残基を含有するアルファヘリックスを含有し、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのフィンガーを有するものを含む。一般に、ZFPの配列特異性は、亜鉛フィンガー認識ヘリックス上の4つのヘリックス位置(-1、2、3および6)にアミノ酸置換を作製することによって変更され得る。したがって一部の実施形態では、ZFPまたはZFP含有分子は、天然に存在しない、例えば、選択された標的部位に結合するように操作されている。例えば、Beerli et al. (2002) Nature Biotechnol. 20:135-141;Pabo et al. (2001) Ann. Rev. Biochem. 70:313-340;Isalan et al. (2001) Nature Biotechnol. 19:656-660;Segal et al. (2001) Curr. Opin. Biotechnol. 12:632-637;Choo et al. (2) Curr. Opin. Struct. Biol. 10:411-416;米国特許第6,453,242号;第6,534,261号;第6,599,692号;第6,503,717号;第6,689,558号;第7,030,215号;第6,794,136号;第7,067,317号;第7,262,054号;第7,070,934号;第7,361,635号;第7,253,273号;および米国特許公開第2005/0064474号;第2007/0218528号;第2005/0267061号を参照されたい、すべてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
一部の実施形態では、DNA標的化分子は、亜鉛フィンガーDNA結合ドメイン、TALEN、または標的化ヌクレアーゼを形成するようにDNA切断ドメインに融合された他のDNA標的化タンパク質であるかまたは含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、少なくとも1つのIIS型制限酵素および1つまたは複数のDNA標的化タンパク質由来の切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)を含む。一部の実施形態では切断ドメインは、IIS型制限エンドヌクレアーゼFok I由来である。一般にFok Iは、一方の鎖上のその認識部位から9ヌクレオチドで、および他方の認識部位から13ヌクレオチドでDNAの2本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;第5,436,150号および第5,487,994号;ならびにLi et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4275-4279;Li et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2764-2768;Kim et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:883-887;Kim et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:31,978-31,982を参照されたい。
【0068】
用語「プログラム可能なヌクレアーゼ」は、CRISPRファミリーCasヌクレアーゼまたはその誘導体、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)またはその誘導体、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはその誘導体およびホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)またはその誘導体を指し得る。
【0069】
4.リスク形態を非リスク形態を用いて置き換えるための遺伝子編集
一部のアプローチでは、Chr10 AMDを処置する、発症を予防する、その進行を遅らせる、元に戻すまたはその症状および徴候を軽快させる方法は、1つまたは複数のリスク対立遺伝子を対応する非リスク対立遺伝子を用いて変換または置換することによって患者のRPE細胞のゲノムDNAを改変するための薬剤を投与することを含む。ある特定の実施形態では、対立遺伝子は、2.0kbリスク領域中にある(例えば、実施例5および
図13を参照されたい)。
【0070】
4.1 リスク対立遺伝子の修復
一部のアプローチでは、2kb領域中の1つまたは複数のリスク対立遺伝子を標的化するgRNAが使用される。これらのリスク対立遺伝子として、これだけに限らないが、rs10490924(リスク対立遺伝子はTである)、rs144224550(リスク対立遺伝子はGT挿入である)、rs36212731(リスク対立遺伝子はTである)、rs36212733(リスク対立遺伝子はCである)、rs3750848(リスク対立遺伝子はGである)、rs3750847(リスク対立遺伝子はTである)およびrs3750846(リスク対立遺伝子はCである)が挙げられる。これらのリスク対立遺伝子を標的化するために使用され得る例示的なsgRNAs/ガイド配列は、下の表1に示されている。太字のヌクレオチドは、リスク対立遺伝子中に見出される。
【0071】
【0072】
sgRNA、Casタンパク質および非リスク対立遺伝子の配列を含む鋳型修復ポリヌクレオチドは、1つまたは複数のウイルスベクター中でRPE細胞に導入され得る。鋳型修復配列は、切断部位の各側に一定量の重複(相同)を一般に必要とする。単一ヌクレオチドの修復のために、ドナー鋳型の「相同アーム」は、およそ200~500ヌクレオチドであるべきである。より長い修復(例えば、2kb領域全体)のために、各相同アームは、およそ500~800ヌクレオチドであるべきである。これは、リスク対立遺伝子が野生型対立遺伝子を用いて置き換えられることを生じ、それによりChr10 AMD患者におけるRPE細胞中のHTRA1発現は、正常レベルに回復される。例示的な修復配列は、表2に示される。
【0073】
【0074】
ガイド配列が標的SNPと直接重複する必要がないことは理解される。sgRNAがSNPに近いまたは隣接している場合、欠損SNPの相同性指向修復を可能にするために十分である。この文脈では、「に隣接する」は、ガイド配列ヌクレオチドにハイブリダイズする最も近いヌクレオチドが、SNPまたは他の修復部位から25ヌクレオチド以内、好ましくは20ヌクレオチド以内、および時に15または10ヌクレオチド以内であることを意味する。
【0075】
4.2 HTRA1転写制御領域中の広い領域の置換
一部のアプローチでは、gRNAの対は、Chr10 AMD患者由来のRPE細胞中の2kbリスク領域全体を除去するためにCRISPR/Cas9システムにおいて使用される。sgRNAの対は、2つのヌクレオチド位置、2kbリスク領域を包含する2つの位置によって定義される領域を標的化するように設計される。一部のアプローチでは、sgRNAは、配列番号50および列番号52である。一部のアプローチでは、sgRNA対は、配列番号51および配列番号52である。sgRNAの対およびCas9のRPE細胞への導入は、2kb領域を包含する領域の除去を生じる。欠失領域に対応する非リスク配列をコードし、5’切断部位の上流および3’切断部位の下流の500~800ntの追加的ゲノム配列を含有するプラスミドは、非リスク配列が相同性指向修復によって欠失領域に挿入され、2kbリスク領域が非リスク配列で置き換えられるように、RPE細胞に導入される。sgRNA対、Cas9および非リスク鋳型配列をコードするプラスミドは、同じまたは異なるウイルスベクターに導入されてよく、Chr10 AMD患者のRPE細胞におけるHTRA1発現を増加させるように同時にまたは逐次的に導入され得る。
【0076】
【0077】
5.CRISPR/Casシステム
一部のアプローチでは、CRISPR技術は、Chr10リスク対立遺伝子を保有する個体において1つまたは複数のヌクレオチド置換をRPEまたは脈絡膜細胞のゲノムDNAに導入するために使用され、それにより1つまたは複数のリスク対立遺伝子を対応する非リスク対立遺伝子を用いて置換する。「CRISPR/Cas」システムは、外来性核酸に対する防御のための細菌のシステムの広範なクラスを指す。CRISPR/Casシステムは、亜型、I、IIおよびIII型を含む。野生型II型CRISPR/Casシステムは、RNA媒介ヌクレアーゼ、例えばCas9を、外来性核酸を認識および切断するためにガイドおよび活性化RNAとの複合体で使用する。Casタンパク質の非限定的例として、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても周知)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、これらのホモログまたはこれらの改変バージョンが挙げられる。これらの酵素は、周知である。例えば化膿性連鎖球菌Cas9タンパク質のアミノ酸配列は、受入番号Q99ZW2でSwissProtデータベースにおいて見出すことができる。Cas9タンパク質中の突然変異の非限定的例は、当技術分野において周知であり(例えば、WO2015/161276を参照されたい)、そのいずれも、提供される方法と合致してCRISPR/Cas9システムに含まれ得る。Cas9ホモログは、これだけに限らないが、次の分類学的群の細菌を含む多種多様な真正細菌において見出される:アクチノバクテリア(Actinobacteria)、アクウィフェクス(Aquificae)、バクテロイデス・クロロビ(Bacteroidetes-Chlorobi)、クラミジア・ベルコミクロビア(Chlamydiae-Verrucomicrobia)、クロロフレキシ(Chlroflexi)、シアノバクテリア(Cyanobacteria)、ファーミキューテス(Firmicutes)、プロテオバクテリア(Proteobacteria)、スピロヘータ(Spirochaetes)およびテルモトガ(Thermotogae)。例示的なCas9タンパク質は、化膿性連鎖球菌Cas9タンパク質である。追加的なCas9タンパク質およびそのホモログは、例えば、Chylinksi, et al., RNA Biol. 2013 May 1; 10 (5):726-737;Nat. Rev. Microbiol. 2011 June; 9(6): 467-477;Hou, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Sep 24;110(39):15644-9;Sampson et al., Nature. 2013 May 9;497(7448):254-7;およびJinek, et al., Science. 2012 Aug 17;337(6096):816-21に記載されている。Cas9およびそのホモログは、目的のゲノム領域、例えば1つまたは複数のChr10リスク対立遺伝子を含むゲノム領域に特異的改変を導入するためにsgRNAと共に使用され得る。
【0078】
2kbリスク領域中のリスク対立遺伝子を変換するためにCRISPR/Casシステムにおいても使用され得る他のRNA媒介ヌクレアーゼとして、例えば、Cas12aおよびCascade/Cas3が挙げられる。その関連部分が本明細書に参照により組み込まれる、Pickar-Oliver and Gersbach, Nature, vol. 20, August 2019を参照されたい。Cas12aは、3’PAMの隣に位置するcrRNA(sgRNA)中のスペーサーに相補性を有する標的配列を認識する。標的認識は、ねじれ型DNA二重鎖切断の生成を生じる。Cascade/Cas3は、crRNAのスペーサー部分に相補性を有し、3’PAMの隣に位置しており、一鎖ニックを生成するDNAを標的化する多量体複合体である。
【0079】
したがって一部のアプローチでは、方法は、個々のCRISPRシステムをRPE細胞に導入することを含み、ここでシステムは、Cas9タンパク質、および標的配列にハイブリダイズするガイドRNA(例えば、sgRNA)を含み得る。sgRNAおよびCas9は、システムの同じまたは異なるベクターから発現され得る。加えて、切断部位に重複する非リスクヌクレオチド配列をコードするドナーベクターは、CRISPR-Cas9プラスミドと共にデリバリーされる。ガイドRNAは、リスク対立遺伝子を含むかまたはその近くの配列を標的化し、Cas9タンパク質はゲノムDNA分子を切断する。切断されたゲノムDNAは、ドナー配列プラスミドを使用して相同組換えによって修復され、リスク対立遺伝子から非リスク対立遺伝子へのゲノム配列における変化を生じる。上に記載されるいずれのリスク対立遺伝子も非リスク対立遺伝子に変換され得る。一部のアプローチでは、2.0kb領域全体(実施例5を参照されたい)または4kb AMDリスク領域全体(実施例3を参照されたい)は、Chr10リスク対立遺伝子を含まず、RPE細胞におけるHTRA1発現を回復するように変換される。
【0080】
5.1 Cas9ニッカーゼ
一部のアプローチでは、Cas9ニッカーゼベースCRISPR/Casシステムは、個々のリスク対立遺伝子を補正するために使用され得る。未改変Cas9タンパク質と比較して、cas9ニッカーゼタンパク質は、そのヌクレアーゼドメインの1つに突然変異を含有する。そのため、Cas9ニッカーゼタンパク質は、標的DNAに「ニックを入れる」、すなわち標的部位に、未改変Cas9を用いた二重鎖切断よりも単一鎖DNA切断を生じる。一例では、dCas9は、その2つのヌクレアーゼドメインのそれぞれに突然変異を含有する一方で、Cas9ニッカーゼは、そのヌクレアーゼドメインの1つにだけ突然変異を含有する。本明細書に記載される他のCRISPRアプローチにおいてと同様に、ガイドRNAは、Cas9ニッカーゼを特定のゲノム位置に標的化できる。cas9ニッカーゼタンパク質は、シトシン塩基をウラシル塩基(チミン塩基の塩基対合特性を有する)に変換するシチジンデアミナーゼ(例えば、APOBEC1、AID、APOBEC3GまたはCDA1)、およびアデノシン塩基をイノシン塩基(グアノシンの塩基対合特性を有する)に変換するアデニンデアミナーゼなどの塩基編集タンパク質と共に導入される。これらの変換は、C-G塩基対をT-A塩基対に(シチジンデアミナーゼ)またはA-T塩基対をG-C塩基対(アデニンデアミナーゼ)に変更する効果を有する。一部の場合では、CRISPR/Casシステムに基づくCas9ニッカーゼは、塩基編集効率を促進するために細胞性DNA修復応答の阻害物質も含む。例えば、ウラシルDNAグリコシラーゼ阻害剤は、DNAからウラシル塩基の除去を触媒することについて、細胞中のウラシルDNAグリコシラーゼ酵素を妨げるために使用され得る。ウラシルの除去は、編集されたウラシルをシトシンに戻す復帰突然変異をもたらし得る。Cas9ニッカーゼベース遺伝子編集システムは、十分周知であり、例えば、Komor et al., Nature, 533 (7603): 420-424 (2016)に記載されている。一例ではシステムは16アミノ酸残基XTENリンカーを用いてCas9ニッカーゼのN末端に融合されたシチジンデアミナーゼ(APOBEC1)、およびCas9ニッカーゼのC末端に融合されたウラシルDNAグリコシラーゼ阻害物質(UGI)を含む[例えば、Komor Et al., Nature, 533 (7603): 420-424 (2016)でのエディタBE3]。かかるシステムは、低率のインデル(すなわち、わずかな欠失または挿入)形成およびオフターゲット活性(すなわち、ガイドRNAによって標的化される遺伝子座以外のゲノム位置での編集またはインデル形成)を有して、C-G塩基対をT-A塩基対にインビボ(in vivo)で効率的に編集できる。一部の場合では、Cas9ニッカーゼに連結された編集タンパク質は、リンカー配列の長さに応じて複数の塩基を標的化できる。例えば、16残基XTENリンカーを用いてdCas9に融合されたAPOBEC1は、およそ5ヌクレオチドのウインドウ内の、典型的には、プロトスペーサー隣接モチーフに対して遠位末端側を1位として数えてプロトスペーサー配列内の4から8位のシトシン塩基を脱アミノ化できる[例えば、Komor et al., Nature, 533(7603): 420-424 (2016)を参照されたい]。一部のアプローチでは、ガイドRNA配列は、かかるウインドウ内の1つまたは複数の塩基を標的化するように設計され得る。
【0081】
一部のアプローチでは、Cas9ニッカーゼおよびガイドRNAを発現するベクター配列は、導入遺伝子として宿主細胞DNAに組み込まれる。例えば、上に記載されるAPOBEC1-XTEN-Cas9ニッカーゼ-UGI融合物をコードする遺伝子配列はガイドRNAと共に、プラスミドに組み込まれ、集団中の細胞にトランスフェクトされ得る。一部のアプローチでは、CRISPR塩基編集システム構成成分のデリバリーはウイルス、例えば、レンチウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)による。一部の場合では、CRISPR塩基編集システム構成成分をコードするDNA配列は、5キロ塩基未満のゲノムパッケージングサイズ制限を有するAAVでのパッケージングのためには大きすぎる。1つのアプローチでは、CRISPR塩基編集システム構成成分は、インテイン配列を使用する二重-AAV戦略(dual-AAV strategy)を使用してデリバリーされ得る。インテインは、それ自身を切り取ることができ、残りのタンパク質部分を合わせてスプライスできるタンパク質のセグメントである。前駆体タンパク質のインテインは、2つの遺伝子に由来する場合があり、その場合それらはスプリットインテインと称される。Levy et al., Nat. Biomed. Eng., 4(1): 97-110 (2020)に記載されるかかる二重-AAV戦略の一例では、上に記載されるBE3などのシトシン塩基エディターは、半分に分割されてよく、各半分はファスト-スプライシングスプリットインテイン(fast-splicing split intein)の半分に融合される。これらの産物をコードする配列は、2つの別々のAAVゲノムに、ガイドRNAをコードする配列と共に組み込まれ、細胞に同時形質導入され得る。両方の産物が細胞で発現される場合、それらは一緒にスプライスされ、BE3などの全長塩基エディターの再構成をもたらす。
【0082】
6.ポリヌクレオチドをコードする外来性HTRA1タンパク質を導入することによる遺伝子治療を使用するHTRA1発現の増加
一実施形態では、AMDを処置することは、RPE細胞におけるHTRA1発現を増強するための遺伝子治療を含む。遺伝子治療は、十分周知の技術であり、例えば、すべての目的についてそれぞれ参照により組み込まれる、Moore et al., 2017, "GENE THERAPY FOR AGE-RELATED MACULAR DEGENERATION" Expert Opinion on Biological Therapy 17:10: 1235-1244;Aponte-Ubillus et al., 2018, "MOLECULAR DESIGN FOR RECOMBINANT ADENO-ASSOCIATED VIRUS (RAAV) VECTOR PRODUCTION" Applied microbiology and biotechnology 102.3:1045-1054;Ochakovski et al., 2017, "RETINAL GENE THERAPY: SURGICAL VECTOR DELIVERY IN THE TRANSLATION TO CLINICAL TRIALS" Frontiers in Neuroscience 11;Schoen et al., 2015, "RETINAL GENE DELIVERY BY ADENO-ASSOCIATED VIRUS (AAV) VECTORS: STRATEGIES AND APPLICATIONS" European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 95:343-352;Naso et al., 2017, "ADENO-ASSOCIATED VIRUS (AAV) AS A VECTOR FOR GENE THERAPY" BioDrugs 31:317;Dunbar et al., 2018, "GENE THERAPY COMES OF AGE" Science 359:6372;Penaud-Budloo et al., 2018., "PHARMACOLOGY OF RECOMBINANT ADENO-ASSOCIATED VIRUS PRODUCTION" Molecular Therapy: Methods & Clinical Development 8:166-180;に記載されている。
【0083】
6.1 外来性HTRA1タンパク質の発現
一部のアプローチでは、遺伝子治療は、外来性HTRA1タンパク質をRPE細胞に導入するために実施される。一部のアプローチでは、導入される外来性HTRA1は、天然HTRA1タンパク質(配列番号2)と同一のアミノ酸配列を有する。一部のアプローチでは、外来性HTRA1タンパク質は、配列番号2と異なるが、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%アミノ酸配列同一性を配列番号2のアミノ酸配列と共有するアミノ酸配列を有する。一部のアプローチでは、外来性HTRA1タンパク質は、配列番号2とは異なる(すなわち、HTRA1変異体)が、HTRA1のセリンプロテアーゼ活性を維持している。HTRA1のセリンプロテアーゼ活性は、例えば、Grau et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. April 26, 102 (17) 6021-6026 (2005)に記載されるとおり、当技術分野において十分周知の方法を使用して測定され得る。本開示の目的のために、セリンプロテアーゼ活性を維持することは、天然HTRA1タンパク質(配列番号2)の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%のセリンプロテアーゼ活性を有する外来性HTRA1タンパク質を指す。
【0084】
一部のアプローチでは、遺伝子治療は、配列番号2の外来性HTRA1タンパク質、またはHTRA1のセリンプロテアーゼ活性を有する変異体などの上に記載される変異体をコードする核酸配列(「カーゴ」)を含むベクターを投与することを含む。一部のアプローチでは、核酸配列は配列番号1を含む。一部のアプローチでは、核酸配列は、顕著な配列同一性、例えば、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%核酸配列同一性を配列番号1と共有する。一部のアプローチでは、外来性HTRA1タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号2に顕著な、例えば、配列番号2に少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%配列同一性を有する。一部の場合では、HTRA1タンパク質をコードする核酸は、天然HTRA1核酸配列と比べて欠失、挿入または置換を含む配列を含み、セリンプロテアーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをいまだ生じる。
【0085】
HTRA1核酸およびポリペプチドは、当業者に十分周知の方法を使用する化学的または酵素的変更を通じても修飾される場合がある。例えば配列は、脂質、糖、ペプチド、有機もしくは無機化合物の付加によって、修飾ヌクレオチドまたはアミノ酸などの含有によって修飾される場合がある。したがってHTRA1核酸およびタンパク質は、別の成分(例えば、レポータータンパク質)にコンジュゲートされる場合があり、その存在は検出を促進する、または他の目的に役立ち得る。
【0086】
6.2 遺伝子治療のためのベクター
HTRA1コード配列を導入するために好適なウイルスベクターとして、例示のために、限定ではなく、アデノウイルス、AAV2ウイルス、レンチウイルス、ウシパピローマウイルス(BPV-I)またはエプスタイン・バーウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)が挙げられる。微小粒子として製剤化されたネイキッドDNAなどの非ウイルスシステムも使用され得る。下の7節を参照されたい。
【0087】
6.3 遺伝子治療ベクターのためのプロモーター
一部のアプローチでは、デリバリーされる導入遺伝子(例えば、外来性HTRA1遺伝子、またはRPE細胞におけるその発現が内在性HTRA1遺伝子の発現を増加させ得る組換え核酸)は、プロモーター配列に作動可能に連結されたタンパク質コード配列を含む。一部のアプローチでは、プロモーターは、HTRA1ポリヌクレオチドに異種性である。一部のアプローチでは、プロモーターは、天然HTRA1プロモーターである(例えば、配列番号13)。一部のアプローチでは、プロモーターは誘導性プロモーターである。一部のアプローチでは、プロモーターは、構成的プロモーターである。プロモーターは、天然に存在するプロモーター、または1つより多いプロモーターのエレメントを組み合わせたハイブリッドプロモーターである場合がある。一部のアプローチでは、プロモーターは、組織特異的プロモーターである。一般にプロモーターは、ヒト内在性RPE特異的プロモーター配列の短縮バージョンである(例えば、RPE65-5022ヌクレオチドおよびBEST1-5479ヌクレオチド)。RPE特異的プロモーターの非限定的例として、国際特許公開第WO2020019002号に記載される、BEST1-EP-454;RPE65-EP-415;smCBA;CBA;RPE65-EP-419;sctmCBA;またはVMD2が挙げられる。他のプロモーターまたは改変プロモーター(天然および合成を含む)は、これだけに限らないがUBC、GUSB、NSE、シナプシン、MeCP2、GFAP、PAI1、ICAM、flt-1およびCFTRを含む本明細書において開示される治療用産生物の発現を調節するためにも使用され得る[それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、Papadakis et al 2004; PROMOTERS AND CONTROL ELEMENTS: DESIGNING EXPRESSION CASSETTES FOR GENE THERAPY in Current Gene Therapy, 2004, 4, 89-113;Gray & Samulski 2011; VECTOR DESIGN AND CONSIDERATIONS FOR CNS APPLICATIONS in Gene Vector Design and Application to Treat Nervous System Disorders, ed. J. Glorioso (Washington, DC: Society for Neuroscience), 1-9. ;Trapani et al 2014; VECTOR PLATFORMS FOR GENE THERAPY OF INHERITED RETINOPATHIES Progress in Retinal and Eye Research 43 (2014) 108e128; Powell and Gray 2015). VIRAL EXPRESSION CASSETTE ELEMENTS TO ENHANCE TRANSGENE TARGET SPECIFICITY AND EXPRESSION IN GENE THERAPY Discov. Med. 2015 January ; 19(102): 49-57、を参照されたい。使用され得る追加的プロモーターとして、SV40の初期および後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスまたはサイトメガロウイルス最初期プロモーター、RSVプロモーター、その発現がT7 RNAポリメラーゼによって方向付けられるT7プロモーター、ファージラムダのメジャーオペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の調節領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素のためのプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター、例えばPho5、酵母α接合因子のプロモーター、バキュロウイルス系の多面体プロモーターおよび原核生物もしくは真核生物細胞またはそれらのウイルスの遺伝子の発現を調節することが周知である他の配列、およびこれらの種々の組合せが挙げられる。
【0088】
外来性HTRA1遺伝子または導入遺伝子は、エンハンサーまたは活性化因子配列、リーダーまたはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始および終結配列、ならびにポリアデニル化配列などの他の制御配列の調節下にある場合もある。本発明のアプローチにおいて使用され得るエンハンサーとして、これだけに限らないが:SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー、伸長因子1(EF1)エンハンサー、酵母エンハンサー、ウイルス遺伝子エンハンサーなどが挙げられる。終結調節領域は、合成配列、合成ポリアデニル化シグナル、SV40後期ポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル、ウイルス終結配列などを含むかまたはこれら由来であり得る。
【0089】
例示的なプロモーターおよびエンハンサーヌクレオチド配列は、配列番号6、11、12および13(「プロモーター配列」)として提供される。制御(プロモーター/エンハンサー)配列が、制御特性を保持したままある程度の変動を許容できることは、当業者によって理解される。プロモーター/エンハンサーがコールアウトされる本明細書に記載のある特定のアプローチでは、実質的に同一の配列(例えば、プロモーター/エンハンサー配列全体にわたって少なくとも約90%同一性、好ましくは少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%ヌクレオチド同一性を有する配列)は、コールアウトされた配列についての好適な置換物として企図される。
【0090】
7.CRISPR、CRISPRa、エンドヌクレアーゼ、修復鋳型および他の構成成分のデリバリー
CRISPRエレメントを含むタンパク質および核酸をデリバリーするためのシステム(「デリバリーシステム」)は、当技術分野において十分周知である。これらのシステムは、Casタンパク質(ヌクレアーゼ活性を有するまたは有さない)、Casニッカーゼ、sgRNAまたは他のガイドRNA、Cas転写活性化因子融合タンパク質、HTRA1タンパク質コード配列、鋳型修復配列などを、細胞(例えば、RPE、光受容細胞および水平細胞)にデリバリーするために使用され得る。細胞にデリバリーされる物質は、時に「導入遺伝子」または「カーゴ」と本明細書において称される。Hageman、GおよびRichards、B.、国際特許公開第WO2020019002号、およびYanik et al., 2017, In vivo genome editing as a potential treatment strategy for inherited retinal dystrophies Progress in Retinal and Eye Research 56: 1-18は、本発明に適合され得る導入遺伝子発現、遺伝子修復、遺伝子活性化などのために目の細胞に構成成分をデリバリーするための方法を記載している。一部のアプローチでは、デリバリーは、Byrne et al., Methods Enzymol. 546, 119-38 (2014);Cong et al., Science (80). 339, 819-823;Hirsch et al., Mol. Ther. 18, 6-8 (2010)に記載されるとおり、ウイルス、例えば、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)による。
【0091】
一部のアプローチでは、カーゴ(例えば、HTRA1導入遺伝子)は、rAAV2発現ベクターを使用してデリバリーされる。1つのアプローチでは、導入遺伝子または他の構成成分(例えば、外来性HTRA1遺伝子、またはRPE細胞におけるその発現が内在性HTRA1の発現を増加させることができる組換え核酸)は、高効率でRPE細胞に形質導入できるrAAV2システムを使用してRPEにデリバリーされる。AAV2に加えて、他のアデノ随伴ウイルスベースベクターとして、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11およびシュードタイプAAVが挙げられる。レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、バキュロウイルスおよび他もその関連する開示は本明細書に参照により組み込まれる、Lau and Suh (2017) doi: 10.12688/f1research.11243.1に開示されるとおり、使用することができる。
【0092】
導入遺伝子をAAVベクターにパッケージングするために、ITRは、導入遺伝子として同じコンストラクト中にシスで必要な唯一のAAV構成成分である。capおよびrep遺伝子は、トランスで供給されてよい。したがって、DNAコンストラクトは、AAV ITRが抗病原体コンストラクト(またはそのサブユニット、または制御可能なプロモーターの一部である二量体化可能な(dimerizable)ドメインに融合されたそのサブユニット)についてのコード配列に隣接し、それにより増幅され、パッケージングされる領域を明らかにするように設計され得る-唯一の設計制約はパッケージングされるDNAのサイズの上限(およそ4.5kb)である。
【0093】
AAVベクターに加えて、使用され得る他のウイルスベクターとして、これだけに限らないが、レトロウイルス、アデノウイルス(AdV)、レンチウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルスおよびヘルペスウイルスが挙げられる。
【0094】
HTRA1導入遺伝子または他のカーゴを含む発現カセットを保有するウイルスベクター(例えば、rAAV2、レンチウイルスベクター)は、当技術分野において周知の方法(本明細書に引用する刊行物に記載されている方法を含む)を使用して、産生、回収および精製され得る。AAV方法について、参照により組み込まれる、Zolotukin et al., 2002, Production And Purification Of Serotype 1, 2, And 5 Recombinant Adeno-Associated Viral Vectors" Methods 28: 158-167、およびすべて参照により組み込まれ、上に引用される、Aponte-Ubillus et al., 2018;Naso et al., 2017;およびPenaud-Budloo et al., 2018を参照されたい。同様に、発現およびデリバリーシステムの記載を含む、遺伝子治療に関する一般的な概説について、すべての目的のために、それぞれ参照により組み込まれる、Moore et al., 2017, "Gene Therapy For Age-Related Macular Degeneration" Expert Opinion on Biological Therapy 17: 10: 1235-1244;Aponte-Ubillus et al., 2018, "Molecular Design For Recombinant Adeno-Associated Virus(Raav)Vector Production" Applied microbiology and biotechnology 102. 3: 1045-1054;Ochakovski et al., 2017, "Retinal Gene Therapy: Surgical Vector Delivery In The Translation To Clinical Trials" Frontiers in Neuroscience 11;Schon et al., 2015, "Retinal Gene Delivery By Adeno-Associated Virus (Aav) Vectors: Strategies And Appucations" European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 95: 343-352;Naso et al., 2017, "Adeno-Associated Virus (Aav) As A Vector For Gene Therapy" BioDrugs 31: 317;Dunbar et al., 2018, "Gene Therapy Comes Of Age" Science 359: 6372;Penaud-Budloo et al., 2018., "Pharmacology of Recombinant Adeno- Associated Virus Production" Molecular Therapy: Methods & Clinical Development 8: 166-180;を参照されたい。
【0095】
非ウイルスベクターまたは方法もカーゴをデリバリーするために使用され得る。これらとして、ウイルス様粒子(VLP)を使用するデリバリー、カチオン性リポソームを使用する投与、細胞由来ナノベシクル、直接核酸注入、水圧注射(hydrodynamic injection)、ペプチドおよび非ペプチドを凝集する核酸の使用、カチオン性リポソームおよびリポソームへの封入が挙げられる。1つのアプローチでは、ウイルス様粒子(VLP)は、カーゴをデリバリーするために使用される。VLPは、ウイルスベクターの操作されたバージョンを含み、ここで核酸または非核酸カーゴは、代替機構(例えば、mRNAリクルートメント、タンパク質融合、タンパク質-タンパク質結合)を通じてVLPにパッケージングされる。参照により組み込まれるItaka and Kataoka, 2009, "Recent development of nonviral gene delivery systems with virus-like structures and mechanisms," Eur J Pharma and Biopharma 71: 475-483およびKeeler et al., 2017, "Gene Therapy 2017: Progress and Future Directions" Clin. Transl. Sci. (2017) 10, 242-248を参照されたい。
【0096】
8.HTRA1発現または活性を増加させるための他の治療
8.1 細胞療法
1つのアプローチでは、幹細胞(例えば、iPSC)は、RPEへの移植のためにインビボおよびエクスビボ(ex vivo)で改変される(Peddle et al., "CRISPR Interference-Potential Application in Retinal Disease" , Int. J. Mol. Sci., 2020 21: 1-14を参照されたい。
【0097】
8.2 他の薬剤
一部のアプローチでは、方法は、HTRA1の発現を増加させることができる小分子化合物を用いて患者を処置することを含む。本明細書において開示される小分子化合物は、有機化合物、典型的には5,000ダルトン未満、1,000ダルトン未満、900ダルトン未満または800ダルトン未満の分子量を有するものを指す。Chr10 AMDを処置する、発症を予防する、その進行を遅らせる、元に戻すまたはその症状および徴候を軽快させる方法は、患者に小分子化合物を投与することを含み、ここで薬剤はHTRA1の発現を増加させる。例示的化合物として、HTRA1のmRNA発現を約2倍増加させることが示されたトリコスタチンA(TSA)、クラスIおよびクラスIIヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、が挙げられる。Wang et al., Plos|One 2012, https://doi.org/10.1371/journal.pone.0039446
【0098】
一部の場合では、好適な化合物は、定量的インビトロ(in vitro)転写アッセイを使用して化合物のライブラリーをスクリーニングすることによって同定され得る。インビトロ転写アッセイは、HTRA1および制御エレメントを含むプラスミドを含む細胞不含有システム中であってよい。一部のアプローチでは、HTRA1の発現を増加させることができる薬剤を同定することは、薬剤のライブラリーをHTRA1を発現する細胞と接触させること、およびHTRA1の発現レベルまたは活性を測定すること、およびHTRA1発現または活性を増加させる薬剤を選択することを含む。化合物のライブラリーは、スクリーニングされ、HTRA1の転写は当技術分野において十分周知の手段を使用して測定され得る。例えば、転写は、放射標識または蛍光標識されたヌクレオチドの存在下で実行されてよく、標識された転写物は、ゲルに沈殿され、電気泳動によって分離され、次に定量され得る。代替的に、HTRA1 mRNAは、定量的RT-PCRまたはデジタルPCRによって測定され得る。次に、HTRA1の転写を増加させる薬剤は、選択され、検査される。転写を活性化できる薬剤(化合物またはペプチドが挙げられる)を選択するための方法は、当技術分野において十分周知であり、例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,174,722号に記載されている。
【0099】
HTRA1転写を活性化できる薬剤をスクリーニングするために使用され得るライブラリーをコンストラクトするための方法も十分周知である。例えば、コンビナトリアルライブラリーは、ステップバイステップ様式で合成され得る多くの種類の化合物について作製され得る。化合物の大きなコンビナトリアルライブラリーは、WO95/12608、WO93/06121、WO94/08051、WO95/35503およびWO95/30642に記載されているコードされた合成ライブラリー(ESL)法によってコンストラクトされ得る。ペプチドライブラリーは、ファージディスプレイ法(例えば、Devlin、WO91/18980を参照されたい)によっても生成され得る。細菌性、真菌性、植物および動物抽出物の形態での天然化合物のライブラリーは、商業的供給源から得ることができる、またはフィールドで回収することができる。周知の薬理学的薬剤は、構造類似体を産生するようにアシル化、アルキル化、エステル化、アミド化(amidification)などの方向付けられたまたは無作為の化学修飾に供され得る。
【0100】
一部のアプローチでは、検査剤は、天然に存在するタンパク質またはそれらの断片であり得る。検査剤は、ペプチド、例えば約5から約30アミノ酸のペプチドであってもよく、約5から約20アミノ酸が好ましく、約7から約15が特に好ましい。ペプチドは、天然に存在するタンパク質の消化物、ランダムペプチド、または「偏った(biased)」ランダムペプチドであってよい。検査剤は、種々の長さおよび配列の核酸でもあってもよい。
【0101】
一部のアプローチでは、Chr10 AMDを処置する、その発症を予防する、その進行を遅らせる、元に戻すまたはその症状および徴候を軽快させるために使用され得る薬剤は、レポーター遺伝子に作動可能に連結されたHTRA1プロモーターに薬剤を接触させること、およびレポーター遺伝子の発現を促進するその能力に基づいて薬剤を選択することによって同定され得る。
【0102】
9.患者集団
9.1 患者集団
本発明の組成物および方法は、第10染色体AMDを有するまたは発症するリスクがある対象の処置のための特定の使用を見出す。上に述べたとおり、Chr10 AMDは、ARMS2およびHTRA1遺伝子を保有する染色体領域10q26中の遺伝的病変に関連することが周知である。参照により本明細書に組み込まれる、Hageman et al,2015,“METHODS OF PREDICTING THE DEVELOPMENT OF AMD BASED ON CHROMOSOME 1 AND CHROMOSOME 10”米国特許公開第2015/0211065号を参照されたい。Chr10 AMDを有する患者は、疾患所見に基づいて、および/または遺伝子型に基づいて同定され得る。1つのアプローチでは、処置についての候補は、Chr10 AMD臨床表現型を示す。それにより1つのアプローチでは、処置を受ける対象は、Chr10臨床表現型を示す。1つのアプローチでは、処置を受ける対象は、1つまたは2つの第10染色体リスク対立遺伝子を保有する。1つのアプローチでは、処置を受ける対象は、第10染色体リスク対立遺伝子の1つまたは2つのコピーに1つのリスク対立遺伝子を保有する。1つのアプローチでは、対象は、Chr10 AMD臨床表現型または遺伝子型を有し、いかなる第1染色体リスク対立遺伝子も有さない。AMDについての第1染色体リスク対立遺伝子として、rs529825、rs800292、rs3766404、rs1061147、rs203674、rs0161170、rs2274700、rs375046、rs9427661、rs9427662およびrs12097550が挙げられる。
【0103】
Chr10 AMD患者は、主に古典的な脈絡膜新生血管(CNV)、稀に潜在的なCNVおよび網膜の血管腫増殖(RAP)を示し、しばしば重度で急速な失明を生じる。典型的にはChr10 AMD患者は、Chr1 AMD患者よりもドルーゼン、網膜内液(シスト)、速い地図状萎縮(GA)成長速度および網膜/脈絡膜の菲薄化が少ない。Chr10 AMD患者は、網膜および脈絡膜(脈絡毛細管を含む)の血管密度も低減していた。
【0104】
一部の態様では、HTRA1発現を増強することは、遺伝子治療によって達成される。一部のアプローチでは、HTRA1を増強することは、内在性HTRA1遺伝子の転写を上方制御する薬剤、例えば、小分子化合物、ペプチドまたは核酸を投与することによって達成される。HTRA1の転写を上方制御するための遺伝子治療は、さまざまな方法で実施され得る。一部のアプローチでは、遺伝子治療は、内在性HTRA1発現(mRNAまたはタンパク質発現)を上方制御する。一部のアプローチでは、遺伝子治療は、RPE細胞において発現される外来性HTRA1遺伝子を導入する。一部のアプローチでは、遺伝子治療法は、下に記載されるとおり、細胞ゲノム中のCh10リスク対立遺伝子を対応する非リスク対立遺伝子に変換するために使用される。
【0105】
下に記載されるとおり、Chr10 AMDを有する個体は、疾患の発症に関連する1つまたは複数のリスク対立遺伝子(「Chr10リスク対立遺伝子」)をしばしば保有する。実施例1および3を参照されたい。本発明者らは、健康なまたは低いリスクの対照と比較してChr10 AMD患者は、RPEにおいて特異的にHTRA1 mRNA発現が減少していることを驚くべきことに発見した(
図2)。さらに、本発明者らは、AMDリスクの増加と関連する領域に対応する、HTRA1の減少の原因となるゲノム領域を同定した。
【0106】
リスク対立遺伝子についてホモ接合性の患者は、RPE細胞においてHTRA1タンパク質の減少を有すると示されており、RPEとブルッフ膜との間の(「RPE下腔」)境界面におけるHTRA1レベルにも影響を与える場合がある。HTRA1発現の減少、例えばRPE下腔中のHTRA1発現の減少は、Chr10 AMDの発症の一因となると考えられている。HTRA1はセリンプロテアーゼであり、RPE下腔において大きく富化されている細胞外マトリクス(ECM)タンパク質を分解できる。特定の理論または機構に束縛されることを意図せず、HTRA1発現における低減は、ECMタンパク質のプロセシング、維持および代謝回転を損ない、損傷した、ミスフォールドしたおよび/または凝集したタンパク質の蓄積を生じる。これらのタンパク質の蓄積は、次に、その基底膜への、および/またはブルッフ膜へのRPE組織の付着を破壊する場合があり、血液網膜関門の喪失をもたらし、AMDの発症の一因となる。表4は、Chr10リスクを有するある特定の表現型の関連についてのオッズ比およびP値を示している。脈絡膜(chroidal)線維症および基底膜沈着物(basal laminar deposit)(BLD)の両方が、第10染色体リスク対立遺伝子についてホモ接合性のドナー由来の眼において観察された。BLDは、RPE細胞膜と基底膜との間にある異常な細胞外物質であり、後期AMDと強く関連するとして以前示された。さらにECM構造タンパク質中の突然変異は、それらの誤制御を生じ、L-ORD(C1qTNF5)、ソースビー眼底変性症(TIMP3)、エーラス・ダンロス症候群VI型(PLOD1)またはドインの蜂巣状網膜ジストロフィー(EFEMP1)を含むAMD様疾患をもたらす。Hayward et al., Hum. Mol. Genet. 12: 2657-67 (2003);Weber et al., Nat. Genet 8 (4): 352-6およびMarmorstein et al., PNAS. 99 (20): 13067-72を参照されたい。これらのエビデンスは、ECMの変更および基底膜沈着物の形成が共通の原因を共有し、HTRA1の発現の減少が、損傷した、ミスフォールドした、凝集したタンパク質の蓄積およびAMDの発症をもたらすことを示唆している。
【0107】
【0108】
したがって、一部の態様では本開示は、Chr10 AMD発症を予防するまたは遅らせるためにRPE細胞におけるHTRA1発現を増加させる方法を提供する。HTRA1治療は、患者が遺伝的プロファイルに基づいてChr10 AMDを発症するリスクを有すると同定された後に、および一部の場合ではAMDのいずれかの臨床症状の出現前に、投与され得る。この早期介入は、AMDに伴う広範な組織損傷を回避できる。本明細書において開示される方法は、最小限、典型的には患者の生涯で1回または2回だけ、手術を必要とし、それにより従来の治療では必要とされる頻回の手術に伴う不快感および有害事象を最小化する。
【0109】
9.1.1 処置のための対象の選択
一部のアプローチでは、患者は、臨床表現型または処置についての遺伝的要因に基づいて処置のために選択される。一部のアプローチでは、彼らは、疾患の個々の遺伝的(例えば、上に開示されるChr10リスク対立遺伝子の存在を評価することによって)および関連するリスクを決定するために遺伝子型判定によって評価される。付加的に、彼らは、これだけに限らないが次が挙げられる臨床検査を介して評価され得る:画像および形態学的評価(例えば、これだけに限らないが、カラー眼底写真、SD-OCT、OCT-A、インドシアニングリーン血管造影、フルオレセイン血管造影、および近赤外リフレクタンス(NIR)、青色光自己蛍光、緑色光自己蛍光を含む共焦点走査レーザー眼底検査(例えば、Heidelberg Spectralis system)が挙げられる;ならびに機能検査(例えば、これだけに限らないが視力、最高矯正視力(ETDRSチャートを使用するBCVA)、低輝度BCVA(LLVA、ETDRSチャートと共にニュートラルデンシティーフィルムを使用)、読取り速度(単眼/両眼)、固視安定性、暗順応した微小視野測定(S-MAIA)、暗順応および薄明視微小視野測定感度を含む微小視野測定(MAIA)、視覚誘発電位(VEP)評価ならびに多焦点ERGが挙げられる。
【0110】
追加的指標として、形態学的および機能的情報(視力、読取り速度、弱光視力(low light vision)、固視、網膜電図など)の組合せが挙げられる。
【0111】
追加的に患者は、多数の表現型およびバイオマーカーに基づいて評価され得る。本明細書に開示される治療を投与することは、HTRA1発現を増加させ、眼の解剖所見および外観における変化、または非限定的に:ドルーゼンがほとんどない(ドルーゼンが小さく硬い)、網膜内液(シスト)、速いGA成長速度および網膜/脈絡膜の菲薄化を含むある種のバイオマーカーのレベルにおける変化によって定義される特定の表現型ウインドウ(phenotypic window)に投与される場合に、患者に利益も提供する。
【0112】
一態様では、本明細書において開示される治療剤のChr10 AMDの進行の超早期での投与は、優れた治療利益を提供できる。例えば、Chr10 AMDの徴候または症状の出現に先立つ(例えば、次の症状のいずれも存在しない:ドルーゼン、網膜内液(シスト)、速いGA成長速度および網膜/脈絡膜の菲薄化)患者、特に1つまたは複数のChr10リスク対立遺伝子を有することによる高い遺伝的リスクにある患者の処置。したがって、Chr10 AMDの発症を予防する、およびChr10 AMDの進行を遅らせる、元に戻すまたはその症状および徴候を軽快させるための方法および組成物が本明細書において提供される。一部のアプローチでは、患者は、AMDの症状を有さない(すなわち、無症候性)。一部のアプローチでは、治療剤の最初の投与時に患者は、Chr10 AMDのいかなる臨床表現型も示さない。
【0113】
一部のアプローチでは、患者は、Chr1およびChr10の両方の組合せ、Chr1および他のマイナーなAMD関連遺伝子(C3、CFB、C2など)、またはすべての組合せを有し、患者は、Chr10 AMDの症状および徴候を処置する、予防する、その進行を遅らせるために本発明の治療を用いて、およびChr1 AMDを処置する、予防するまたは進行を遅らせるために第2の薬剤を用いて処置される。
【0114】
9.2 HTRA1発現の低減およびChr10 AMDに関連する遺伝的因子
9.2.1 Chr10リスク対立遺伝子
臨床表現型に加えて、個体は、Chr10 AMDを発症することのリスクが上昇することから、遺伝的要因だけに基づいても同定され得る
【0115】
したがって、本明細書において開示される方法および組成物は、これらのリスク対立遺伝子を有する患者を対象のRPE細胞におけるHTRA1発現を増加させ、それによりChr10 AMDを処置する、発症を予防する、進行を遅らせる、元に戻すまたはその症状および徴候を軽快させる薬剤を用いて処置するため使用されてよい。
【0116】
実施例において記載されるとおり、HTRA1 mRNAの減少に関連する領域は、rs11200632とrs3750846とを含めてそれらの間にある、HTRA1の上流制御領域に位置し得る(「4kb AMDリスク領域」)。例示的なChr10リスク対立遺伝子は、rs11200632(リスク対立遺伝子はG)、rs11200633(リスク対立遺伝子はT)、rs61871746(リスク対立遺伝子はC)、rs61871747(リスク対立遺伝子はT)、rs10490924(リスク対立遺伝子はT)、rs36212731(リスク対立遺伝子はT)、rs36212732(リスク対立遺伝子はG)、rs36212733(リスク対立遺伝子はC)、rs3750848(リスク対立遺伝子はG)、rs3750847(リスク対立遺伝子はT)およびrs3750846(リスク対立遺伝子はC)に位置する。表5は、これらの多型部位でのリスク対立遺伝子(上)および非リスク対立遺伝子(下)を示す。4kbリスク領域内にあるrs10490924を含む完全なLD(r2=1)または非常に高いLDでのSNPの完全なリストは、表5に示されている。本明細書において開示される方法および組成物は、これらのリスク対立遺伝子の1つまたは複数を有する患者を処置するために使用され得る。
【0117】
【0118】
一部のアプローチでは、本明細書において開示される治療から利益を得ることができる個体は、1つまたは複数の転写活性化因子への結合を減少させ、HTRA1遺伝子の転写を減少させる1つまたは複数のリスク対立遺伝子を保有している可能性がある。実施例において示されるとおり、本発明者らは、Chr10:122454508-Chr10:122456564(「2kbリスク領域」)に位置する2kb領域を発見し、これは、RPE細胞において転写的に活性であり、HTRA1転写を活性化できる転写活性化因子への結合の原因であると考えられている。この2kb領域は、H3K4モノメチル化およびH3K27アセチル化を含む、活性転写エンハンサーエレメントのエピジェネティックマーカーを含む。例えば、LHX2は、ヌクレオチド配列TTGCCATAGTATATATAATTAGACAAAT(rs36212733に非リスク対立遺伝子T、下線付きを含む)を有するこの領域内の配列モチーフに結合する。LHX2は、TTGCCGTAGTATATATAACTAGACAAAT(rs36212733にリスク対立遺伝子C、下線付きを含む)にあまり結合しない。
図9(
図10および11)を参照されたい。したがって、一部のアプローチでは、本明細書において開示される方法は、この2.0kb領域におけるそのゲノムDNAがHTRA1に対する転写活性化因子への結合親和性が低減している患者に薬剤を投与することを含み、薬剤の投与は、RPE細胞におけるHTRA1発現を増加させる。一部のアプローチでは、患者は、LHX2への結合の低減または完全な喪失を示した。一部のアプローチでは、患者は、rs36212733、(すなわち、TTGCCATAGTATATATAACTAGACAAAT)にLHX2への結合の喪失を生じるCのリスク対立遺伝子を有する場合がある。一部のアプローチでは、処置方法は、薬剤を患者に投与することを含み、ここで薬剤は、HTRA1の転写制御領域への転写活性化因子(例えば、LHX2)の結合を促進することによって、患者のRPE細胞においてHTRA1発現を増加させる。
【0119】
9.2.2 lncSCTM1発現は、HTRA1発現に逆に関連する。
一部のアプローチでは、本明細書において開示される治療から利益を得ることができる個体は、対照と比較して、非コードRNA、lncSCTM1(LOC105378525とも称される)またはそのアイソフォームの対立遺伝子特異的発現の増加を示した。lncSCTM1は、HTRA1と同じLDブロックを共有するDNA配列から転写される。
図7および実施例に示されるとおり、lncSCTM1は、HTRA1と分岐プロモーターを共有し、HTRA1プロモーターからアンチセンス方向で転写される。lncSCTM1の対立遺伝子特異的発現は、HTRA1の対立遺伝子特異的発現と逆に関連している。ヘテロ接合性患者では、lncSCTM1のリスク対立遺伝子(例えば、rs11200638)のmRNAレベルは、lncSCTM1の非リスク対立遺伝子のmRNAより高いレベルである。対照的に、HTRA1のリスク対立遺伝子のmRNAレベルは、非リスク対立遺伝子のmRNAレベルより低い(
図8)。
【0120】
一部のアプローチでは、本明細書において開示される治療から利益を得ることができる患者は、HTRA1の発現の減少に相関する1つまたは複数のスプライス形態のlncSCTM1を保有している。実施例に示されるとおり、lncSCTM1は、さまざまなスプライス変異体として存在し(
図7)、さまざまな眼組織において発現される(
図14)。
【0121】
一部のアプローチでは、本明細書において開示される方法および組成物は、Chr10 AMDの1つまたは複数の臨床表現型を有する、例えばわずかなドルーゼン、網膜内液(シスト)有する、速いGA成長速度、網膜/脈絡膜菲薄化を示す、個体においてChr10 AMDを処置するために使用され得る。一部のアプローチでは、患者は、上に開示される1つまたは複数のChr10リスク対立遺伝子を有する。一部のアプローチでは、患者は、Chr10 AMDの1つまたは複数の臨床表現型および1つまたは複数のChr10リスク対立遺伝子の両方を有する。
【0122】
一部の場合では、Chr10 AMD臨床表現型を有する、および/またはChr10リスク対立遺伝子を有することに加えて、患者は、Chr1リスク対立遺伝子および/またはChr1誘発AMD臨床表現型も有する。Chr1リスク対立遺伝子/ハプロタイプ。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,867,727号を参照されたい。一部の場合では、患者は、AMDについてChr1リスク対立遺伝子/ハプロタイプを有さない。
【0123】
10.投与方法および用量
上に記載のとおり、本発明の態様は、処置を必要とする対象においてリスク対立遺伝子を非リスク対立遺伝子に変換するために、HTRA1発現を増加させる、またはゲノム領域を編集する、のいずれかのための薬剤を投与する方法を含む。このため本発明の態様は、1つまたは複数の治療剤、例えば、ウイルスベクター、化合物、ペプチドまたはこれらの組合せに対象を、上に記載のとおり、対象への薬剤のデリバリーが対象の健康の1つまたは複数の態様において有益な効果をもたらすような条件下で、接触させることを含む。本発明は、投与の具体的な部位または方法に限定されない。例えば、例示のために限定ではなく、薬剤は、全身投与(例えば、静脈内注射もしくは注入)、局所注射または注入(例えば、網膜下、上脈絡膜、硝子体内、経強膜もしくは他に眼球に)によって、浸透圧ポンプの使用によって、電気穿孔法によって、適用によって(例えば、点眼剤)および他の手段によって投与され得る。本発明の導入遺伝子が、桿体、錐状体、RPE、および神経節細胞、毛様体上皮、強膜、脈絡膜および他の眼球の細胞などの神経網膜細胞型を含む種々の細胞型に導入されてよく、発現され得ることは企図される。
【0124】
本明細書において開示される治療剤は、ヒトへの投与のために生理学的に適合性の担体中に懸濁されてよい。投与は、眼球または眼球ではない(例えば、硝子体内、血管内、眼球外への投与)経路によってであってよい。好適な担体は、デリバリーの経路を考慮して当業者によって容易に選択され得る。例えば、1つの好適な担体として、種々の緩衝液と製剤化され得る生理食塩水が挙げられる(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)。
【0125】
10.1 眼球投与
10.1.1 網膜下および他の注射
RPE脈絡膜境界面のレベル近くへの治療剤の導入は、Chr10 AMDの初期段階でのHTRA1制御のより良い調節をもたらし、後期地図状萎縮および脈絡膜新生血管に伴う失明を予防する。1つのアプローチでは、薬剤は、疾患による影響を受けた網膜の領域に直接ウイルスベクターをデリバリーするために、網膜下にブレブまたは水疱を作ることによる網膜下注射を介して投与される。1つまたは複数のブレブは、治療剤の十分な分布を確実にするために眼の四分円の1つにまたは複数の四分円に作られてよい。Xue et al., "TECHNIQUE OF RETINAL GENE THERAPY: DELIVERY OF VIRAL VECTOR INTO THE SUBRETINAL SPACE" Eye 31:1308-1316, 2017を参照されたい。同様に、Moore et al. 2017、Ochakovski et al. 2017、Schoen et al. 2015、上記、も参照されたい。
【0126】
別のアプローチでは、薬剤は、上脈絡膜注射を介して投与され、それによりRPEの基底面に到達する。Ding et al., "AAV8-vectored suprachoroidal gene transfer produces widespread ocular transgene expression", J Clin Invest 129(11): 4901-4911, 2019を参照されたい。同様に、Emami-and Yiu, Medical and Sugical Applications for the Suprachoroidal Space, Int Ophthalmol Clin 59(1): 195-207, 2019も参照されたい。別のアプローチでは、薬剤は、硝子体に注射され得る。このアプローチは、地図状萎縮またはCNVを有するChr10 AMD患者のRPEに薬剤を入れるために特に有用であり得る。この技術は、当業者に十分周知である。Kansar et al., "Suprachoroidal Delivery of Viral and Nonviral Gene Therapy for Retinal Disease", J Ocular Pharmacol Ther DOI: 10. 1089/jop. 2019. 0126.2020を参照されたい。
【0127】
用量
投与量の値が、産生物の性質および状態の重症度により変動する場合があることは、記載される。任意の具体的な対象について、特定の投与レジメンが個体の必要性および組成物を投与するまたは投与を監督する者の専門家としての判断により経時的に調整されてよく、本明細書に記載される投与範囲が例示的なだけであり、特許請求される組成物の範囲および実行を制限する意図ではないことはさらに理解される。
【0128】
投与される薬剤の量は、望ましい結果を達成するために、必要な投与量および期間について「有効量」または「治療有効量」、すなわち有効である量である。望ましい結果は、標的細胞(例えば、RPE細胞)におけるHTRA1発現もしくは活性の改善、または非限定的に、AMD症状もしくは徴候における改善、好ましくは統計的に有意な改善が挙げられるHTRA1発現の低減に関連する症状における検出可能な改善を含む。代替的に医薬組成物が予防的に使用される場合、望ましい結果は、非限定的に、AMDの症状もしくは徴候を含む、Chr10 AMDの1つまたは複数の症状の実証可能な予防、好ましくは統計的に有意な予防を含む。かかる組成物の治療有効量は、個体の疾患段階、年齢、性別および体重または個体において望ましい応答を誘発するウイルスベクターの能力などの要因に応じて変動する場合がある。投与レジメンは、最適な応答を提供するように調整され得る。治療有効量は、治療的に有益な作用が、薬剤、例えばウイルスベクターのいかなる毒性または有害な影響も上回るものでもある。組成物中のウイルスベクターの量は、個体の疾患段階、年齢、性別および体重などの要因に応じて変動する場合がある。
【0129】
投与レジメンは、最適な治療反応を提供するために調整され得る。例えば、単一ボーラスが投与されてよく、いくつかに分割された用量が経時的に投与されてもよく、または用量は治療状況が緊迫しているために必要とされる場合、比例的に低減または増加されることがある。治療剤がAAV粒子である場合、好ましいヒト投与量は、網膜下ブレブあたり100~300μlの容量で、注射1回あたりAAVゲノム108から1012個であってよい。1つより多いブレブが1つの眼に作られてもよい。任意の所与の個体において生涯に複数回の処置が必要である場合がある。
【0130】
11.処置結果
AMDを発症するリスクがある、または疾患の初期段階にある個体の処置を含む、好適な患者におけるHTRA1遺伝子治療は、患者におけるAMDの症状または徴候を安定化する、軽快させるまたは元に戻すことができる。例えば、非限定的に、外来性HTRA1タンパク質を提供すること、Chr10リスク対立遺伝子についてヘテロ接合性またはホモ接合性である患者に転写活性化因子を導入することは、種々の眼球のバイオマーカーによって実証されるとおり、疾患を安定化させる、および/またはその進行を遅らせるもしくは元に戻すことができる。1つのアプローチでは、HTRA1関連治療を用いて処置された患者における主な望ましい処置結果は、Chr10 AMDに伴う症状すなわち、ドルーゼンを有する、網膜内液(シスト)、速いGA成長速度および網膜/脈絡膜菲薄化、網膜および脈絡膜血管密度の低減、黄斑領域における脈絡膜毛細管ゴースト(OCT-Aで流れがない)、黄斑領域での脈絡膜線維症、黄斑外領域での脈絡膜線維症、黄斑領域でのブルッフの基底膜沈着物(BLD)、黄斑領域でのBLD、黄斑領域でのブルッフ膜の肥厚、黄斑外領域でのBLD、の1つまたは複数における検出可能な改善である。
【0131】
HTRA1関連治療を用いて処置される患者における望ましい処置結果も、非限定的に:視力(早期処置糖尿病性網膜症研究、またはETDRS);最高矯正視力(またはBCVA);微小視野測定(黄斑完全性評価、またはMAIA);暗順応;読取り速度;視覚誘発電位(VEP);および多局所網膜電図(mfERG)が挙げられる機能的測定の1つまたは複数における検出可能な改善であり得ることが企図される。AMD進行の安定化、遅延または元に戻すこと示す他のバイオマーカーとして、非限定的に:BCVA変化;GA変化の面積(平方根変換または別法);固視;読取り速度;GAの新規面積の%;光受容細胞長;個々のドルーゼ特徴が挙げられる。
【0132】
12.医薬組成物
本発明の別の態様は、本発明のベクターの医薬組成物に関する。一実施形態では、組成物は、薬剤の有効量および薬学的に許容される担体を含む。一部のアプローチでは、滅菌注射可能な溶液は、ベクター、例えば、ウイルスベクターを必要な量で、適宜ヒト患者への注射のために好適な希釈剤または賦形剤と共に組み込むことによって調製され得る。例えば患者への単一投与のために十分なAAV粒子または化合物を有する、単一使用、予め充填されたシリンジまたは他の注射用またはデバイスなどの単位投与形態が提供される。本発明のいずれの医薬調製物も調製物およびAMDを処置するためのその使用についての情報を含むかたちで、または伴って包装され得る。
【0133】
13.定義および慣習
本発明が詳細に記載される前に、記載される具体的なアプローチに、当然のことながら変動することから、本発明が限定されないことは理解される。本明細書において使用される用語は、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることから、具体的なアプローチを記載するためだけであって、限定することを意図しないことも理解される。
【0134】
本明細書において使用される場合、用語「導入遺伝子」は、「外来性遺伝子」と互換的に使用され、遺伝子治療ベクターを使用して発現を生じるように細胞に導入される組換えポリヌクレオチドコンストラクトを指す。
【0135】
本明細書において使用される場合、用語「天然のプロモーター」は、天然でおよび/または本来は細胞に存在し、典型的には特定の遺伝子の発現のために指定されるプロモーターを指す。例えば、配列番号13は、天然HTRA1プロモーターである。遺伝子の非天然プロモーターは、天然では遺伝子と関連しないものである。例えば、VMD2プロモーター(配列番号6)は、天然HTRA1プロモーターではない。
【0136】
本明細書において使用される場合、用語「天然の転写活性化因子」は、天然でおよび/または本来は細胞に存在し、典型的には特定の遺伝子の転写を制御するために指定される転写活性化因子を指す。例えば、LHX2はHTRA1プロモーターのための天然の転写活性化因子である一方で、VP16はHTRA1のための天然の転写活性化因子ではない。
【0137】
本明細書において使用される場合、「遺伝子治療ベクター」は、細胞に導入遺伝子を導入するために使用されるウイルス由来配列エレメントを指す。
【0138】
本明細書において使用される場合、「ウイルスベクター」は、細胞に導入遺伝子をデリバリーするために使用される、カプシドタンパク質を含む遺伝子治療ベクターを指す。
【0139】
本明細書において使用される場合、用語「プロモーター」は、コード配列または機能性RNAの発現を調節(例えば、増加)できるDNA配列を指す。プロモーターは、ミニマルプロモーター(TATAボックスおよび転写開始の部位を特定するために働く他の配列からなる短いDNA配列)を含み得る。エンハンサー配列(例えば、上流エンハンサー配列)は、コード配列または機能性RNAの発現を調節(例えば、増加)するためにプロモーターと相互作用できる制御エレメントである。本明細書において使用される場合、「プロモーター」への言及は、エンハンサー配列を含み得る。
【0140】
プロモーターおよび他の制御配列は、それらが導入遺伝子または導入遺伝子産生物(例えば、mRNAまたはタンパク質)の発現または安定性に影響を与える場合に、導入遺伝子に「作動可能に連結」されている。
【0141】
本明細書において使用される場合、用語「導入する」または「導入した」は、遺伝子治療の文脈では、例えば、HTRA1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNA)、HTRA1の発現を増加させることができる転写活性化因子またはDNAエンドヌクレアーゼを含む組成物を、ポリヌクレオチドが細胞に進入し、タンパク質を産生するように細胞において発現される条件下で投与することを指す。ポリヌクレオチドは、ウイルス(例えば、AAV2)ベクターを使用して、非ウイルスベクターシステムを使用して、または他の方法によってネイキッドDNAとして導入され得る。
【0142】
用語「に対応する」および文法的等価物は、正確な位置が類似性または相同が測定される分子と同一または異なっているかにかかわらず、同様のまたは相同性のタンパク質またはヌクレオチド配列中の位置を指して本明細書において使用される。例えば、長さ100残基の第1のタンパク質、およびアミノ末端での5アミノ酸の欠失を除いて第1のタンパク質と同一である第2のタンパク質の場合に、第1のタンパク質の12位は、第2のタンパク質の7位「に対応する」。
【0143】
「アデノ随伴ウイルス2(AAV2)」および「組換えアデノ随伴ウイルス2(rAAV2)は、同等に使用される。例示的AAV2ベクターは、アデノ随伴ウイルス2ゲノム由来であり、科学文献に広範に記載されている。例えば、参照により本明細書に組み込まれるSrivastava, et al, 1983, J. Virol. 45: 555-564および本明細書以下で引用される他の参考文献を参照されたい。
【0144】
本明細書において使用される場合「レンチウイルス」は、細胞に導入遺伝子を導入するために使用され得る遺伝子治療ベクター(レンチウイルスベクター)を指す。例えば、参照により本明細書に組み込まれるKeeker et al., 2017, Clin Transl Sci. 10: 242-248および本明細書以下で引用される他の参考文献を参照されたい。
【0145】
用語「同一」またはパーセント「同一性」は、2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈では、同じ(「同一」)である、または同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチドの特定の百分率[すなわち、比較ウインドウまたは指定の領域にわたって最大の一致について比較およびアラインされた場合に、手作業でのアライメントおよび目視検査またはBLASTもしくはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを下に記載される初期設定パラメーターで(例えば、NCBIウエブサイト、ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/などを参照されたい)使用することによって測定して、特定の領域の全配列にわたって少なくとも約70%同一性、少なくとも約75%同一性、少なくとも80%同一性、少なくとも約90%同一性、好ましくは少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはより高い同一性]を有する、2つ以上の配列またはサブ配列を指す。そのような配列は、その結果「実質的に同一である」と呼ばれる。
【0146】
用語「対象」または「患者」は、予防的または治療的処置のいずれかを受けるヒトまたは動物(特に、哺乳動物)および他の生物を指す。例えば、対象は、非ヒト霊長類であってよい。
【0147】
下に記載されるとおり、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを考慮に入れることができる。好ましくは、同一性は、長さ少なくとも約25アミノ酸もしくはヌクレオチドである領域にわたって、またはより好ましくは長さ50~100以上のアミノ酸もしくはヌクレオチドである領域にわたって存在する。配列比較のために、典型的には1つの配列は、参照配列として機能し、それに検査配列が比較される。一部のアプローチでは、同一性百分率は、配列番号1(HTRA1のヌクレオチド配列)または配列番号2(HTRA1のアミノ酸配列)から選択される参照配列の全長への関係で決定される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、検査および参照配列は、コンピューターに入力され、サブ配列座標が指定され、必要に応じて、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。好ましくは、初期設定プログラムパラメーターは使用され得る、または代替パラメーターが指定され得る。これにより、配列比較アルゴリズムは、参照配列と比べた検査配列のパーセント配列同一性を、プログラムパラメーターに基づいて算出する。本明細書において使用される場合、「比較ウインドウ」は、2つの配列が最適にアラインされた後に配列が同じ数の連続する位置の参照配列と比較され得る、20から600、通常約50から約200、さらに通常では約100から約150からなる群から選択される連続する位置の数のいずれか1つのセグメントへの言及を含む。比較のための配列のアライメントの方法は、当技術分野において十分周知である。比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2: 482 (1981)の局所相同アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 443 (1970)の相同アライメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85: 2444 (1988)の類似性についての検索の法によって、これらのアルゴリズム(the Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)のコンピューター化された実行によって、または手作業でのアライメントおよび目視検査[例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds. 1995 supplement)を参照されたい]によって、実行され得る。パーセント配列同一性および配列類似性を決定するために好適であるアルゴリズムは、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、Altschul et al., Nuc. Acids Res.25: 3389-3402 (1977)およびAltschul et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990)にそれぞれ記載されている。BLASTおよびBLAST2.0は、本発明の核酸およびタンパク質についてのパーセント配列同一性を決定するために、本明細書に記載されるパラメーターを用いて使用される。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、the National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードとアラインした場合に、一定の正値の閾値スコアTに合致するまたは満たす、クエリー配列中の長さの短いワードを同定することによって高スコア配列対(HSP)を最初に同定することを含む。Tは、近隣ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)と称される(Altschul et al.、上記)。これらの初期の近隣ワードヒットは、それらを含む長いHSPを見出すための検索を開始するためのシードの役割を果たす。ワードヒットは、累積アライメントスコアが増加できる限り、各配列の両方に沿って延長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列について、パラメーターM(合致する残基の対についての報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基についてのペナルティスコア;常に<0)を使用して算出される。アミノ酸配列について、スコア化マトリクスは、累積スコアを算出するために使用される。各方向へのワードヒットの延長は、累積アライメントスコアが最大達成値から量Xより下がる場合;1つもしくは複数の負スコアの残基アライメントの蓄積のために累積スコアがゼロ以下になる場合;または配列のいずれかの端に達した場合に停止される。BLASTアルゴリズムパラメーター、W、TおよびXは、アライメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、初期設定として、ワード長(W)11、予測(E)10、M=5、N=-4および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、初期設定として、ワード長3および予測(E)10、およびBLOSUM62スコア化マトリクス[Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. SciUSA 89: 10915 (1989)を参照されたい]アライメント(B)50、予測(E)10、M=5、N=-4および両鎖の比較を使用する。
【0148】
「ドルーゼン」は、脂質、液体、補体経路関連タンパク質を含む種々のタンパク質を含み、RPE基底膜とブルッフ膜との間に位置する限局性細胞外沈着物である。ドルーゼンは、白色/黄色ドットとして検眼鏡で見ることができ、Wu et al., 2015, "FUNDUS AUTOFLUORESCENCE CHARACTERISTICS OF NASCENT GEOGRAPHIC ATROPHY IN AGE-RELATED MACULAR DEGENERATION" Invest Ophthalmol Vis Sci. 56:1546-52および参考文献の参考文献1~8に記載されているものを含む、当技術分野において周知の種々の方法を使用して検出され得る。本明細書において使用される場合、用語「小さなドルーゼン」および「小さな硬いドルーゼン」は、約63μm未満の直径を有する別個のドルーゼンを指す。用語「大きなドルーゼン」、「柔らかいドルーゼン」および「大きくて柔らかいドルーゼン」は、約125μmより大きい直径を有し、しばしばクラスター化されるドルーゼンを指す。63から125μmの間の直径を有するドルーゼンは、「中間ドルーゼン」と称され得る。典型的には色素上皮剥離(PED)と称されるRPEの局所的剥離は、しばしばドルーゼンと呼ばれる。
【0149】
本明細書において使用される場合「ハプロタイプ」は、一緒に伝達される染色体上の種々の遺伝子座に存在するDNA配列またはDNA配列の組合せを指す;ハプロタイプは、所与のセットの遺伝子座間に生じた組換え事象の数に応じて、1つの遺伝子座、数個の遺伝子座、または染色体全体である場合がある。
【0150】
用語「多型」は、集団において1つまたは複数の遺伝的に決定された代替配列または対立遺伝子の出現を指す。「多型部位」は、配列の相違が生じた遺伝子座である。多型部位は、少なくとも1つの対立遺伝子を有する。二対立遺伝子(diallelic)多型は、2つの対立遺伝子を有する。三対立遺伝子(triallelic)多型は、3つの対立遺伝子を有する。二倍体生物は、対立遺伝子の形態についてホモ接合性またはヘテロ接合性である場合がある。多型部位は、1つの塩基対ほどに小さい場合がある。多型部位の例として:制限断片長多型(RFLP)、縦列反復配列多型(variable number of tandem repeats)(VNTR)、高頻度可変性領域、ミニサテライト、ジヌクレオチド反復、トリヌクレオチド反復、テトラヌクレオチド反復および単純反復配列が挙げられる。本明細書において使用される場合、「多型」への言及は、多型のセット(すなわち、ハプロタイプ)を包含する場合がある。
【0151】
「単一ヌクレオチド多型(SNP)」は、対立遺伝子の配列間の変動部位である、単一ヌクレオチドによって占められる多型部位で生じ得る。部位は、対立遺伝子の高度の保存された配列によって先行され、およびそれが続く場合がある。SNPは、多型部位での1つのヌクレオチドの別のものでの置換のために生じ得る。1つのプリンの別のプリンによる、または1つのピリミジンの別のピリミジンによる置換は、トランジションと呼ばれる。プリンのピリミジンによる、またはその逆は、トランスバージョンと呼ばれる。同義SNPは、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変更しない、コード領域における1つのヌクレオチドの別のものでの置換を指す。非同義SNPは、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変更する、コード領域における1つのヌクレオチドの別のものでの置換を指す。SNPは、参照対立遺伝子と比べて、1つまたは複数のヌクレオチドの欠失または挿入から生じる場合もある。
【0152】
本明細書において使用される場合、「連鎖不平衡」または「LD」は、必ずしも同じ染色体上ではない2つ以上の遺伝子座での対立遺伝子の非無作為関連である。それは、それらの間の限定的組換えを有する染色体上の2つ以上の遺伝子座の関連を述べる連鎖と同じではない。連鎖不平衡は、対立遺伝子または遺伝的マーカーの一部の組み合わせが、対立遺伝子からのハプロタイプの無作為形成からそれらの頻度に基づいて予測されるものよりも、集団においてより高い頻度でまたは少ない頻度で生じる状況を述べている。さまざまな遺伝子座での多型間の非無作為関連は、連鎖不平衡(LD)の程度によって測定される。連鎖不平衡のレベルは、遺伝連鎖、組換え比率、突然変異の比率、無作為ドリフト、非任意交配および集団構造が挙げられる多数の要因によって影響を受ける場合がある。したがって「連鎖不平衡」または「対立遺伝子の関連」は、集団中の任意の具体的な対立遺伝子の頻度について偶然から予測されるよりも高い頻度を有する、特定の対立遺伝子または遺伝的マーカーと別の特異的対立遺伝子または遺伝的マーカーとの、非無作為関連を意味する。情報価値のあるマーカーを含む連鎖不平衡におけるマーカー、本明細書に記載されるSNP、ハプロタイプまたはディプロタイプの1つなどは、Chr10誘発AMDへの易罹患性を検出するために有用であり得る。
【0153】
「ARMS2」は、AMD易罹患性2遺伝子を指す。ARMS2遺伝子は、2つのエクソンからなり、周知のタンパク質モチーフに相同を有さず、機能が不明である107アミノ酸タンパク質を理論上にはコードする。細胞内のARMS2タンパク質の発現および局在は、理解しにくいままであり、不十分に特徴付けられた抗体の使用は矛盾する報告を生じている(Fritsche et al., 2008;Kanda et al. , 2007;Kortvely et al, 2010;Wang et al., 2012)。さらに、RNA-Seq分析は、ARMS2 mRNAの発現が、精巣(TPMはおよそ6.9)および胎盤(qRT-PCR、データ未記載)を除く大部分の組織において例外的に低い(TPM<1.0)ことを示している(Lonsdale et al., 2013; The GTEx Consortium, 2015)。
【0154】
「HTRA1」は、HtrAセリンペプチダーゼ1を指し、そのmRNAおよびタンパク質は、Gene Bank受託番号NM_002775およびNP_002766によってそれぞれ表される。HTRA1は、検討されたほとんどすべての細胞および組織において遍在性に発現されており、網膜の光受容細胞および水平細胞、脈絡膜における網膜色素上皮(RPE)および種々の細胞型において豊富に発現されている(
図1)。HTRA1は、網膜およびRPEと比較して、ブルッフ膜および脈絡膜由来の抽出物において富化されている(
図6)。HTRA1は、分泌セリンプロテアーゼとして作用し、溶液中で主におよそ150kDa三量体として存在する。HTRA1は、アロステリック機構によって活性化され(Cabrera et al., 2017)、種々の細胞外マトリクスタンパク質、プロテオグリカン、ならびにTGFb、FGFおよびIGFBPなどの多数の増殖因子を切断する。HTRA1ノックアウトマウスモデルでは、HTRA1の喪失は、脳血管プロテオームにおいてTIMP3、クラスタリン、エラスチン、ビトロネクチンおよびフィビュリン3を含む多数のECMタンパク質の増加を生じる(Zellner et al., 2018)。HtrA1プロテアーゼ活性を損なう、またはmRNA発現を低減する機能喪失突然変異は、脳における加齢性の脈管構造欠損のためにCARASIL(皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体劣性脳動脈症)も生じる場合がある(Hara et al., 2009;Fukutake, 2011)。
【0155】
用語「処置」またはその任意の文法的変化形(例えば、処置する、処置すること、処置など)は、本明細書において使用される場合これだけに限らないが、疾患もしくは状態の症状を軽減する;ならびに/または疾患または状態の進行、重症度、および/もしくは範囲を低減する、抑制する、阻害する、和らげる、軽快させるもしくは影響を与えることを含む。
【0156】
本明細書において使用される場合、用語「転写制御領域」は、HTRA1プロモーターおよびHTRA1エンハンサーを指す。
【0157】
本明細書において使用される場合、用語「エンハンサー」は、HTRA1 2kb領域を指す。
【0158】
本明細書において使用される場合、用語「に対応する」は、配列の文脈では相補体(compliment)、UがTになど文脈から明らかである置換を除いてDNA配列と等価であるRNA配列を指す。
【0159】
本明細書において使用される場合「コドン最適化」は、当技術分野におけるその通常の意味を有する。コドン最適化は、最適化されていない配列を使用して産生された転写物と比較して、翻訳の速度を増加させる、または長い半減期またはより大きな発現効率などの望ましい特性を有する組換えRNA転写物を産生するために使用され得る。一部の実施形態では、本開示は、発現効率を最大化するように操作されたHTRA1コード配列を提供する。コドン最適化のための方法は、容易に利用可能である、例えば、optimizer、http://genomes.urv.es/OPTIMIZERおよびGeneGPS(登録商標)Expression Optimization Technology from DNA 2.0(Newark,California)において無料でアクセス可能である。具体的な実施形態では、コード配列は、GenScript(Piscataway、New Jersey)からのOptimumGeneTMアルゴリズムを使用してヒトでの発現のためにコドン最適化される。
【0160】
本明細書において使用される場合、「ヌクレアーゼ活性を欠いている」Casタンパク質は、野生型等価物と比べて活性が少なくとも50%低減、時に少なくとも80%低減、時に少なくとも95%低減および時に少なくとも99%低減している。
【0161】
本明細書において使用される場合、用語「水平細胞」は、当技術分野における通常の意味を有する。例えば、Poche et al., "Retinal horizontal cells: challenging paradigms of neural development and cancer biology", Development, 2009, 136, Pages 2141-2151、を参照されたい。「水平細胞」は、脊椎動物の眼の網膜の内顆粒層にその細胞体を有する、側方に相互接続しているニューロンである。それらは、複数の光受容細胞からの入力を統合し、制御している。
【0162】
本明細書において使用される場合、用語「光受容細胞」は、神経網膜の最外側層において見出される特定化された神経上皮細胞である。それらは、視覚の光伝達(visual phototransduction)を可能にし、2つの主な種類、暗所視を媒介する桿体および明所視を媒介する錐体がある。
【0163】
本明細書において使用される場合、「プログラム可能な」エンドヌクレアーゼは、関連分子(例えば、Casタンパク質についてのgRNA)の選択、融合したタンパク質配列、または他の手段によって特定のDNA配列に特異的に標的化され得るヌクレアーゼである。
【0164】
次の慣習が本明細書において使用される。DNA「標的配列」[A]は、第1のDNA鎖上のPAM[P]と連続している。標的配列の相補体[C]は、相補的DNA鎖に見出される。gRNAのガイド配列[G]は、標的の相補体にハイブリダイズし、相補的であり、DNAにおけるチミジンがRNAにおいてウラシルによって置き換えられていることを除いて標的[A]の配列を有する。gRNAのガイド配列は、[C]から転写によって産生され得る。
【0165】
他に示されない限り、ヌクレオチド配列は5’から3’に示される。
【0166】
他に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または等価の任意の方法および材料が本発明の実行または検査において使用され得るが、代表的で例示的な方法および材料がここに記載される。
【実施例】
【0167】
14.1 第10染色体リスク対立遺伝子を有するヒトドナーのRPEにおいてHTRA1の発現は、低減されている。
本実施例は、AMDリスク対立遺伝子を有する個体由来のヒトドナー眼が、対照と比較してmRNA HTRA1発現が低いことを示す。
【0168】
マイクロアレイベース遺伝子発現分析は、ヒトドナー眼組織の2つの独立したセット(それぞれ80個および200個のドナー試料を含む)を使用して実行した。結果は、HTRA1 mRNAレベルが、非リスク対立遺伝子についてホモ接合性の非リスクドナーと比較して、rs10490924でのリスク対立遺伝子についてホモ接合性またはヘテロ接合性のヒトドナーのRPE脈絡膜組織において減少していたことを示している(
図2および
図30)。RPE脈絡膜(choriod)組織におけるHTRA1 mRNAレベルの低減の結果は、qRT-PCR分析によって確認した(
図3Aおよび3B)。ヘテロ接合性ドナーRPE組織試料由来のmRNAを使用する対立遺伝子特異的発現分析も野生型対立遺伝子mRNAと比較してリスク対立遺伝子mRNAの顕著で再現性のある減少を示した。非リスク対立遺伝子対リスク対立遺伝子でのmRNAのコピー数をデジタルPCRおよびTaqman SNPアッセイを使用して決定した。対立遺伝子特異的mRNA変化は、同じドナー試料由来の脈絡膜または網膜において検出されなかった(
図4)。対立遺伝子特異的HTRA1発現アッセイから得られたこれらの結果は、AMD関連リスク対立遺伝子がHTRA1 mRNAの発現の低減をもたらしていることを強く支持している。
【0169】
結果は、HTRA1 mRNAの低減が組織特異的であり、RPEにおいてだけ検出され、網膜ではされなかったことも示している。
図2、
図3A、
図3Bおよび
図30は、HTRA1 mRNAレベルは、2つの野生型非リスク対立遺伝子を有する非リスクドナーと比較して、1つまたは2つのリスク対立遺伝子をrs10490924に有する患者のRPE脈絡膜組織において減少していたが、網膜でのHTRA1発現は変化しないままであったことを示している。
【0170】
14.2 ヒト非AMD試料由来の眼組織においてHTRA1発現は、ブルッフ膜および脈絡膜で富化されている。
本実施例は、HTRA1 mRNAが極性様式で分泌され、非AMD試料由来のヒト眼組織においてブルッフ膜および脈絡膜で富化されていることを示している。
【0171】
極性hTERT-RPE1細胞(ヒトRPE細胞株、Bodnar et al., 1998, Science 279: 349-52を参照されたい)およびヒト胎児RPE細胞の両方において、HTRA1タンパク質は、70%のHtrA1は頂端で分泌され、30%は基底で分泌されて極性様式で分泌された(
図5Aおよび5B)。HTRA1の基底分泌は、HTRA1三量体が、ブルッフ膜およびRPE基底膜の選択的透過性のために、脈絡毛細管からRPE下腔へ侵入することは期待されないことから、高齢者においてRPE下のHTRA1の排他的供給源である可能性がある(Moore, DJ et. al., 2001)。RPEとブルッフ膜との間の境界面は、細胞外マトリクス(ECM)タンパク質が大きく富化されており、HTRA1、種々のECMタンパク質を分解する能力が実証された分泌セリンプロテアーゼが、この腔において加齢に関連する必須の機能を有すると考えられる。網膜、RPEおよび脈絡膜と比べて、データは、HTRA1タンパク質が、AMDを有さない患者由来の試料中のブルッフ膜由来の抽出物において富化されていたことを示している(
図6)。特定の理論または機構に束縛されることを意図せず、これらの結果は、RPE下腔においてHTRA1タンパク質が減少しているホモ接合性リスク患者が、損傷した、ミスフォールドした、および/または凝集したタンパク質の蓄積を生じるECMタンパク質のプロセシング、維持または代謝回転の変化を有するとするモデルと一致している。これは、RPE組織のその基底膜への、および/またはブルッフ膜への付着を破壊でき、血液網膜関門の喪失を生じる。これを支持することには、本発明者らは、脈絡膜(chroidal)線維症および基底膜沈着物(BLD)(RPE細胞膜と基底膜との間にあり、後期AMDと強く関連するとして以前示された異常な細胞外材料)の両方が、第10染色体リスクについてホモ接合性のドナーにおいて生じることを実証した(表1、上記)。誤制御を生じるいくつかのECM構造タンパク質における突然変異は、L-ORD(C1qTNF5)、ソースビー眼底変性症(TIMP3)、エーラース・ダンロス症候群VI型(PLOD1)またはドインの蜂巣状網膜ジストロフィー(EFEMP1)を含むAMD様疾患をもたらす。Hayward et al., Hum. Mol. Genet. 12: 2657-67 (2003);Weber et al., Nat.Genet 8 (4): 352-6;およびMarmorstein et al., PNAS. 99 (20): 13067-72を参照されたい。これは、ECMおよびBLDの形成の変化が共通の原因を共有していると考えられると示唆している。
【0172】
14.3 ヒト眼球組織中のHtrA1タンパク質
AAV-HTRA1治療の目標は、機能を回復させるために治療量のHtrA1を眼にデリバリーすることである。この目標に向けて、ヒトおよびAGM眼球組織中のHtrA1濃度の理解が必要である。本発明者らは、種々の眼球組織の抽出物からELISAアッセイによってHtrA1の濃度を測定した。ヒト眼球組織における濃度を表6にまとめる。
【0173】
【0174】
Chr10遺伝子座でのリスクを有するまたは有さないドナーにおける年齢に応じた黄斑外網膜およびRPE脈絡膜におけるHtrA1タンパク質およびmRNAレベルの比較は、HtrA1レベルがChr10リスク状況と無関係に加齢で網膜において比較的変化しないが(
図12)、Chr10リスクを有さないドナーのRPE脈絡膜において加齢で顕著に増加することを実証した(
図13A)。対照的にChr10リスクを有するドナーは、非リスクドナーのRPE脈絡膜におけるHtrA1の年齢依存的増加に顕著な機能障害を示す。これは、非リスクドナーにおけるHTRA1 mRNAの同様の年齢依存的増加と一致するが、リスクを有するドナーでは一致しない(
図13B)。特定の理論または機構に束縛されることを意図せず、これらの結果は、年齢と共にHtrA1に対する要求の増加があり、HTRA1 mRNAの転写上方制御によって対処され、より多いHtrA1タンパク質の翻訳をもたらすが、リスクについてホモ接合性のドナーでは、mRNAおよびタンパク質レベルのいずれでもHTRA1を上方制御できないとするモデルと一致する。
【0175】
14.4 HTRA1 mRNA発現の減少を生じる制御エレメントを含有する4Kb領域は、AMDリスクとも関連する。
本実施例は、HTRA1の減少を生じる原因となるゲノム領域が、AMDを発症するリスクと関連する領域と合致することを示す。
【0176】
AMDの原因である第10染色体上の領域(リスク領域)を狭めるために、HTRA1対立遺伝子特異的発現アッセイを、AMD関連ARMS2/HTRA1 LDブロック内に稀な組換え事象を有するドナー由来のmRNAを使用して実施した。ドナーは、HTRA1エクソン1においてrs1049331 SNPでヘテロ接合性であったが、LDブロック内の上流SNPの一部においてリスクまたは非リスク対立遺伝子のいずれかについてホモ接合性であった。これらのドナーを、対立遺伝子特異的発現アッセイにおいて使用し、DNA配列決定を介して各ドナー中の組換え部位をマッピングし、HTRA1プロモーターSNPおよびARMS2挿入欠失(インデル)領域をHTRA1 mRNA発現の減少の原因となるドライバーとして除外した。代わりに、HTRA1 mRNAの減少に関連する領域をrs10490924(ARMS2 A69S)を含み、rs11200632とrs3750846 SNPとを含めてそれらの間にある上流制御領域にマッピングした(表8)。同じ遺伝的領域が、症例/対照研究における組換えハプロタイプの分析でGrassmann et al (Genetics 2017)によって、AMD疾患のリスクの上昇と関連することが見出された。HTRA1の対立遺伝子特異的発現と関連する領域が、AMDリスクと関連する同じ領域と合致するという発見は、HTRA1発現におけるリスク関連低減がAMD発生率の上昇をもたらすことを強く意味する。この領域を、4kb AMDリスク領域と称する。
【0177】
下の表7は、ARMS2領域の9個のハプロタイプを示し、それぞれ集団の2%より多くを構成する。ハプロタイプH1、H2、H3およびH6は、すべてChr10 AMDリスクの増加を示し、すべてSNP rs10490924にT対立遺伝子を含む。これは、rs10490924(A69S)でのリスク対立遺伝子の存在がChr10 AMDの発症と関連していることを示している。
【0178】
【0179】
【0180】
14.5 HTRA1とlncSCTM1 mRNA発現との間の逆相関
本実施例は、HTRA1とincSCTM1対立遺伝子特異的mRNA発現との間の逆相関を実証する。長い非コードRNA(LOC105378525)が、同定され、4kb AMDリスク領域と重複する領域にマッピングされた。本発明者らの分析は、XR_946382、XR_946383、XR_946384およびXR_9463を含むlncRNAの4つの予測される変異体があることを示した(
図7)。hTERT-RPE1細胞、網膜およびRPE組織において検出されたlncSCTM1の種々のアイソフォームを表9に示す。このlncRNAはHTRA1プロモーターからアンチセンス方向に転写され、HTRA1およびLOC105378525が重複する分岐プロモーターを共有する可能性があると考えられる。本発明者らは、このlncRNAをlncSCTM1と称した。網膜およびRPE由来のRNAのRACE(cDNA末端の迅速増幅)PCR分析は、XR_946382変異体1にマッピングされるエクソン3が報告されたよりもおよそ1kb伸長していることを示している。これは、リードが種々の組織でこの伸長された領域にマッピングされる、GTExコンソーシアムからのRNA-seqデータによって支持される。RACE PCRも、変異体4(XR_946385)にマッピングされる代替エクソン3が、hg38 Chr10:122,455,021(alt ex3a)またはChr10:122,454,857(Alt ex3b)のいずれかで開始し、Chr10:122,454,457にアンチセンス方向で伸長することを示している。配列分析は、alt ex3a変異体がrs10490924 SNPを含有し、そのリスク形態がAMDリスクの上昇と関連する一方で、alt ex3bは関連しないことを示している。さらに、代替的エクソン3の代わりにエクソン3を含む変異体は、4kb AMDリスク領域中にrs10490924および任意の他のSNPを含有しない。lncSCTM1代替的エクソン3は、ARMS2エクソン1とほとんど完全に重複している。
【0181】
【0182】
時にlncRNAが近くの遺伝子の発現を制御することから、HTRA1 mRNAおよびlncSCTM1 ncRNAのレベル間の関連を、HTRA1(rs1049331、エクソン1)およびlncSCTM1(rs11200638、エクソン1)についての対立遺伝子特異的発現アッセイを使用して検討した。ヘテロ接合性ドナー由来のmRNAをアッセイにおいて使用し、予測される50:50比からのいかなる偏差も、対立遺伝子特異的発現の指標であった。転写物が予測される鎖由来であることを確実にするための遺伝子特異的プライマーをcDNA合成のために使用した。HTRA1の対立遺伝子特異的発現が、lncSCTM1の対立遺伝子特異的発現と逆相関したことが観察された。結果は、lncSCTM1のリスク対立遺伝子由来のmRNAが非リスク対立遺伝子由来のものより高いレベルで発現された一方で、HTRA1のリスク対立遺伝子由来のmRNAが非リスク対立遺伝子のものと比較して減少していたことも示した(
図8)。
図8で分析されたリスク対立遺伝子は、rs10490924を含むAMDと関連するLDブロック中にあるrs11200638であった。rs11200638も、lncSCTM1のエクソン1にあり、lncSCTM1のすべてのアイソフォームに存在する。網膜およびRPEのRNA-seq分析は、HTRA1 mRNAが、lncSCTM1 mRNAよりも>400倍高いレベルで発現されたことを示している(データ未記載)。lncSCTM1がHTRA1発現を制御する場合、HTRA1をトランスで制御できるとは考えにくく、それよりもlncSCTM1がHTRA1転写へのシス効果を介してHTRA1の発現を制御すると考えられる。
【0183】
14.6 HTRA1 mRNA発現の減少をもたらす調節エレメントを含有する2kb AMDリスク領域
エピジェネティックマーカー
本実施例は、HTRA1転写およびそれに関連する転写活性化因子の制御を担う新たに同定された2kb領域を記載する。ヒト胎児RPE組織由来またはRPEに分化した人工多能性幹細胞(iPSC-RPE)由来の公的に入手可能なエピジェネティックデータ(ATAC-SeqおよびDNase-Seq)の検討は、4kb AMDリスク領域と重複するオープンクロマチンのおよそ2.0kb領域を示している。さらにこの同じ2kb領域は、H3K27アセチル化を含む活性転写のエピジェネティックマーカーを含む。この2kb領域は、lncSCTM1のARMS2エクソン1-イントロン1および代替エクソン3の両方(
図10)、ならびにrs36212731、rs36212732、rs36212733およびrs3750848を含む4kb AMDリスク領域中の他のSNPと重複する。
【0184】
網膜およびRPE抽出物のChIP-Seq分析をモノメチル化ヒストンH3リジン4(H3K4me1)およびアセチル化ヒストンH3リジン27(H3K27Ac)を含む、エンハンサーエレメントと関連するヒストンマークを標的化する抗体を用いて実施した。RPE抽出物では、両マークは、オープンクロマチン領域と重複するピークに存在した一方で、H3K4me1マークだけは網膜に存在した。これらの結果は、ARMS2イントロン内のこのおよそ2kb領域が、組織特異的エンハンサーエレメントとして機能するという仮説を支持する。
【0185】
2kb領域に位置するSNP。
SNP 8個(rs10490924、rs144224550、rs36212731、rs36212732、rs36212733、rs3750848、rs3750847、rs3750846)は、Chr10 LDブロック内にある。
【0186】
14.7 2Kb領域は、野生型には存在するがリスク対立遺伝子には存在しないLHX2コンセンサス結合モチーフを含む。
本発明者らは、周知の転写因子結合モチーフについて、HOMER、JASPERおよびTRANSFACツールを使用して配列をスキャンし、各AMD関連SNPについて非リスクとリスク遺伝子型とを比較した。この分析は、ARMS2のイントロン中のrs36212733変異体をLHX2、POU6F1および/またはZNF33の予測された遺伝子型依存性差次的結合を有する転写因子結合部位として同定した。これらの内、LHX2mRNA発現は、RPEにおいて中程度(FPKM>20)である一方で、POU6F1およびZNF333発現は低い(FPKM<2)。スクリーニングしたこれらの内、LHX2だけが野生型内に位置するがリスク配列にはないコンセンサス結合モチーフを有し、ARMS2およびlncSCTM1のイントロン中にこの配列モチーフ(
図9)に対するほとんど完全なマッチがあった。LHX2も網膜および脈絡膜中の一部の細胞型において発現されることから、RPE特異的転写因子ではない。AMDのリスクに関連するrs36212733 SNPは、6位の「T」を「C」に変換することによって、このモチーフ内の重要な残基の1つを破壊する。LHX2部位は、転写因子のSoxEファミリーのメンバーのための2つの潜在的な結合部位によって囲まれているが、これらはChr10関連SNPと重複しない。
【0187】
特定の理論または機構に束縛されることを意図せず、これらのデータは、LHX2が、HTRA1の上流に位置する4kb AMDリスク領域でrs36212733と重複し、ARMS2およびlncSCTM1遺伝子の両方と重複するモチーフに結合するとするモデルと一致する。非リスクRPE細胞では、LHX2は、このモチーフにRPE特異的補助因子と共に結合し、HTRA1転写のエンハンサーとして作用し、それによりRPE特異的様式で基底レベルより上にHTRA1の発現を増加させる。RPE特異的補助因子がこの時点で何であるか、およびその発現が加齢性因子または他の外部シグナルによって影響を受けるかどうかは不明である。LHX2のこのエンハンサーへの結合が、lncSCTM1の転写を進めるRNAポリメラーゼの能力を妨害する場合、これはlncSCTM1遺伝子の発現の減少をもたらす。LHX2が非リスク対立遺伝子だけに結合すると予測されていることから、これは、ヘテロ接合性ドナーでのリスク対立遺伝子と比べた非リスク対立遺伝子のレベルの低減を含む対立遺伝子の不均衡をもたらす。この仮説は、RPE細胞におけるHTRA1およびlncSCTM1の対立遺伝子特異的発現の間に逆相関があるとの本発明者らの発見によって支持される(
図8)。最後に、非RPE細胞では、LHX2の非リスク配列への結合は、RPE特異的補助因子が存在しないためにHTRA1発現を増強しない。しかしそれでも、それは、lncSCTM1転写に干渉し、非リスク対立遺伝子の低いレベルの発現を生じる。それにより、非RPE組織では、HTRA1の対立遺伝子特異的発現はないが、細胞がLHX2を発現する限りlncSCTM1の対立遺伝子特異的発現は残る。
【0188】
14.8 LHX2は、リスク配列を含むプローブへよりも野生型プローブにさらに強く結合する。
LHX2がこのDNA配列に結合できるかどうかを検査するために、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)を、LHX2をコードするプラスミドまたは空ベクターをトランスフェクトしたHEK293細胞由来の核抽出物、ならびに非リスク(WT)配列、またはrs36212732およびrs36212733を包含するChr10領域のリスク配列(RISK)を含有するビオチン化オリゴプローブを使用して実施した。この領域のスクランブル配列(SCR、陰性対照)または以前報告されたLHX2結合部位(POS、陽性対照)を含有するプローブ(Muralidharan et al. (2017) J. Neurosci 37 (46): 11245-54)も使用した。結果は、LHX2は、野生型およびリスクプローブの両方ならびに陽性対照プローブに結合したが、スクランブルプローブに結合しなかったことを示している(
図10A)。抗LHX2抗体の反応への添加は、LHX2バンドのスーパーシフトを生じ、LHX2の同一性を確認し、未標識プローブの添加は、バンドの喪失を生じた(
図10B)。最終的に本発明者らは、反応に添加するプローブの量を増加させることによって、野生型対リスクプローブに対するLHX2の結合親和性を比較した。LHX2は、リスク配列を含有するプローブへよりも野生型プローブにさらに強く結合した(
図11)。総合的に、これらの結果は、LHX2がrs36212733を包含する配列に結合でき、リスク対立遺伝子の存在がLHX2のこの配列への結合を顕著に減少させることを示している。上に記載したエピジェネティックデータおよびrs36212733とHTRA1発現とのeQTL関連を組み合せて、本発明者らの結果は、この領域がRPE細胞においてHTRA1発現のためのエンハンサーとして機能し、LHX2がHTRA1発現に寄与し得るとの仮説を支持している。
【0189】
14.9 HTRA1 mRNA発現を上方制御するためのCRISPRaシステムの使用(レンチウイルスプラスミド)
ドナーRPE組織のマイクロアレイおよびqRT-PCR分析は、HTRA1 mRNAのレベルが、リスクを有さないドナーと比較してChr10にホモ接合性リスクを有するドナーにおいておよそ30%下方制御されたことを実証した。遺伝子発現へのいかなるオフターゲット作用も最小化する一方で、RPE組織におけるHTRA1の発現を非リスクドナーと同様のレベルに回復させるためにSAM CRISPRaシステムを選択した。SAMシステムは、2つのプラスミドからなる:sgRNAおよびdCas9-VP64融合タンパク質の両方をコードするLentiSAMプラスミド(SAM;Addgene#92062)、ならびにMS2親和性タグならびにp65およびHSF1転写因子からなる融合タンパク質をコードするLentiMPH(MPH;Addgene#92065)プラスミド。
【0190】
Benchlingソフトウェアを使用して、sgRNAをHTRA1のプロモーター領域を網羅するように設計した(
図14)。これらの配列を、公開されているsgRNA配列標的化IL1Bと共に、lentiSAM v2(Puro)プラスミド(Addgene)内のU6プロモーターに隣接するBsmBI部位にクローニングした。細胞にsgRNA-LentiSAMv2(Puro)プラスミドを、当モル量のAddgene(Neo)プラスミド(合計5μg)を伴ってまたはこれを伴わずに電気穿孔法によってトランスフェクトした。24~96時間後、総RNAを抽出し、RNeasy kit(Qiagen、カタログ番号74106)を使用して精製した。相補的DNAを1μgの総RNAおよびSuperScript IV VILO Master Mix kit(Invitrogen、カタログ番号11756050)を使用して生成した。定量的PCRを50ngのcDNAおよびTaqMan gene expression assays(Applied Biosystems)を使用して、HTRA1(Hs01016151_m1)、IL1B(Hs01555410_m1)およびGAPDH(hs03929097_g1)について標準的プロトコールに従って実施した。
【0191】
本発明者らは、表10に列挙するsgRNAのHTRA1発現を上方制御する能力をSAM CRISPRaシステムを使用して検査した[Konerman et al., Nature, 517 (7536) 015]。
【0192】
【0193】
図15は、大部分のsgRNAがHTRA1をある程度のレベル上方制御することを示している。P7およびP18 sgRNAは、HTRA1レベルの最も高い増加を示した(P7およびP18 sgRNAについてそれぞれおよそ3.6および3.2倍)。
【0194】
いずれかのプラスミドがmRNAレベルにオフターゲット効果を有したかどうかを評価するために、本発明者らは、SAM構成成分を、個々に(MPHもしくはSAM)または合わせて(MPH+SAM)h1RPE7細胞にトランスフェクトした。これらの実験では、SAMプラスミド中のsgRNAは、いかなる周知のヒト遺伝子も標的化しない(Ctrl sgRNA)。
図16に示すとおり、モックトランスフェクト細胞と比較して、MPHプラスミドは、HTRA1標的化sgRNAの非存在下でHTRA1のレベルをおよそ1.8倍増加させた。同様に、SAMプラスミド単独でトランスフェクトした細胞ではHTRA1においておよそ1.6倍の増加があり、これはMPH転写因子の存在によってさらには増加しなかった。これらのデータは、SAMシステム構成成分が転写における全般的な増加を促進できることを示している。
【0195】
次に、本発明者らは、MPHプラスミドがHTRA1の上方制御のために必要であったかどうかを決定するために実験を実施した。本発明者らは、本発明者らの最も強いHTRA1標的化sgRNA(P7およびP18、
図17)をMPHプラスミドの非存在および存在下で、h1RPE7細胞におけるHTRA1 発現へのそれらの効果を検査した。本発明者らは、MPHが含まれる場合のレベル(P7dについて7倍、P18について5倍)と比較して低減したレベルだが、MPHプラスミドの非存在下でさえも、HTRA1レベルがSAMプラスミドによって増加する(P7について5倍、およびP18について2.5倍)ことを見出した。それにより、HTRA1標的化sgRNAおよびdCas9-VP64トランス活性化因子をコードする単一のプラスミドは、HTRA1発現を上方制御するために十分であると考えらえる。追加的に、SAMシステムがHTRA1レベルに濃度依存性である場合、効果は、SAMプラスミドの量の減少と共に減少した(
図18)。
【0196】
14.10 HTRA1 mRNAの増加はHTRA1タンパク質レベルの増加と相関する。
予備実験を、上に記載されるHTRA1 mRNAにおける増加がHtrA1タンパク質レベルにおける増加と相関するかどうかを検査するために実施した。ELISAアッセイを使用して、本発明者らは、LentiSAMプラスミドをトランスフェクトしたh1RPE7細胞の細胞培養上清におけるHtrA1タンパク質濃度を測定した。本発明者らは、h1RPE7細胞にさまざまな量のP18 sgRNA-LentiSAMプラスミド(2.5、5.0および7.5μg)を、さまざまな時点(3、4および5日間)でトランスフェクトした。本発明者らはまた、対照として用いるために非標的化sgRNA(Ctrl)を細胞にトランスフェクトした。
図19は、HTRA1タンパク質レベルがP18 sgRNA-LentiSAMトランスフェクト細胞において、トランスフェクション3および4日後に特異的に増加したことを示している。タンパク質レベルは、5μgのLentiSAMプラスミドを用いてその最大に達した。
図20は、ENPP-2タンパク質への標準化後のHTRA1タンパク質レベルを示す。これらの初期結果データは、対照と比較して、HTRA1タンパク質レベルがP18 sgRNA-LentiSAMプラスミドをトランスフェクトした細胞においてトランスフェクション3および4日後に特異的に増加したことを示している。
【0197】
上のデータは、HTRA1 mRNAおよびタンパク質レベルが、P18 sgRNA-LentiSAMプラスミドを一過的にトランスフェクトしたh1RPE7細胞において用量依存的様式で上方制御されることを実証している。
【0198】
14.11 レンチウイルスデリバリー
表11に示すレンチウイルス粒子をコンストラクトした。これらの粒子は、P18-lentiSAMプラスミドを含む。
【0199】
【0200】
本発明者らは、CRISPRベースSAMシステムのレンチウイルスデリバリーがRPE細胞においてHTRA1発現を誘導できるかどうかを検査した。h1RPE7細胞をP18-LentiSAMプラスミドをコードするレンチウイルス粒子を用いてMOI、20で形質導入し、細胞培養上清を形質導入後3日ごとに回収した。対照として、細胞を非標的化sgRNAをコードするレンチウイルス粒子を用いて形質導入した(Ctrl-LentiSAM)。細胞をウイルスを含まないポリブレン含有培地を用いても処置した(モック)。形質導入3、6および9日後に回収した細胞培養上清におけるHTRA1タンパク質レベルをHTRA1 ELISAアッセイによって測定した。
図21に示すとおり、HTRA1タンパク質レベルは、Ctrl-LentiSAMウイルス粒子を用いて形質導入した細胞と比較して、P18-LentiSAMを用いて形質導入した細胞において形質導入6および9日後におよそ40%(Ctrl-LentiSAMと比べて1.4倍増加)増加した。
【0201】
それぞれ個々の試料の形質導入後の細胞数のあり得る差異を補償するために、HtrA1タンパク質レベルを、経時的にすべての試料において増加したが対照とP18-LentiSAM処置細胞との間に差異はなかった(データ未記載)ENPP2タンパク質のレベルに対して標準化した。
図23は、ENPP-2タンパク質への標準化後のHTRA1タンパク質レベルを示している。HtrA1のレベルは、P18 sgRNA-LentiSAMを用いた形質導入後、形質導入6および9日後に約30~40%増加を示している。HTRA1 mRNA発現とHTRA1分泌タンパク質レベルとの間の相関を検査するために、HTRA1のmRNAレベルを形質導入9日後に抽出した総RNA抽出物から測定した(
図23)。HTRA1 mRNAレベルは、Ctrl-LentiSAMを用いて処置した細胞と比べて、P18-LentiSAMを用いて処置した細胞においておよそ2倍増加していた。したがって、HTRA1 mRNAおよびタンパク質レベルの両方は、P18-LentiSAM処置に応答して増加した。これは、CRISPRベースSAMシステムのウイルスデリバリーは、HTRA1を良好に誘導できることを示している。HTRA1を上方制御するAAV2-HTRA1プラスミド
【0202】
本実施例における実験を、AMD患者のRPEにおいてHTRA1の野生型発現レベルを回復させるようにHTRA1遺伝子を好適なRPE特異的プロモーターの調節下に保有するAAV2ベースベクターを開発するために実行した。HTRA1遺伝子をpTR-HTRA1を生成するためにKpnIおよびSphI制限部位を使用して、pCTM16プラスミドからpCTM295にサブクローニングした(pCTM289)。BEST1およびRPE65プロモーターの断片を、Acc65I(フォワード)およびBamHI制限部位(リバース)を有するプライマーを使用してPCR増幅した。PCR産生物をAcc65IおよびBamHIを用いて消化し、BEST1およびRPE65由来プロモーター断片の調節下でHTRA1発現プラスミドを生成するようにこれらの部位でpCTM289にサブクローニングした。
【0203】
表12は、BEST1プロモーター(配列番号11)およびRPE65プロモーター断片(配列番号12)からそれぞれのプロモーター断片を調製するために使用したプライマーを示す。HTRA1 3-UTR-標的化shRNAプラスミドを安定に発現する(したがって、内在性HTRA1を低レベルで発現する)RPE1細胞に5μgの表示のプラスミドを、1ウエルあたり細胞10,000個を含む96ウエルプレートで100μl Neonチップを使用する電気穿孔法によって、または脂質トランスフェクションによってトランスフェクトした。0.15μlのリポフェクタミン3000、0.2μl P3000および100ng DNAを合わせて使用した。細胞培養上清およびRNAをトランスフェクション24~96時間後に回収した。本発明者らの標準的HTRA1 ELISAをタンパク質のレベルを測定するために実施した。総RNAをRNeasy kit(Qiagen、カタログ番号74106)を使用して細胞から抽出した。相補的DNAを500ngの総RNAおよびSuperScript IV VILO Master Mix kit(Invitrogen、カタログ番号11756050)を使用して生成した。定量的PCRを50ngのcDNAおよびTaqMan gene expression assays(Applied Biosystems)を使用してHTRA1 (Hs01016151_m1)およびGAPDH(hs03929097_g1)について実施した。
【0204】
【0205】
本発明者らは、これらのAAV-HTRA1プラスミドを、電気穿孔法を使用してHTRA1の安定なノックダウン(>90%)を有するRPE1クローン(7-6および7-7)のプールした集団におけるHTRA1過剰発現について検査した。HTRA1レベルがこれらの細胞において低いことから、信号対雑音比は改善し、アッセイの感度は上昇する。陰性対照として本発明者らは、本発明者らのプラスミドと同じAAVベクター骨格中にsmCBA駆動CFH遺伝子をコードするpCTM259を使用した。CFH過剰発現は、HTRA1発現に影響を与えなかった(データ未記載)。
図24は、BEST1-およびRPE65駆動HTRA1コンストラクトのすべてが、pCTM259をトランスフェクトした細胞と比較して、種々の程度にHTRA1を増加させたことを示している。
【0206】
本発明者らは、これらのプラスミドを親RPE1細胞においても検査した。
図25に示すとおり、HTRA1 mRNAは、陰性対照プラスミド(pCTM259)と比較して、BEST1-およびRPE65-HTRA1プラスミドをトランスフェクトした細胞において増加した。互いに比べたHTRA1発現のパターンは、両細胞株において同様である。
【0207】
BEST1_723、BEST_699、BEST1_418、BEST1_340、RPE65_316およびRPE65_146を含む6個のコンストラクトを、さらなる検査のために選択した。経時的分析を、本発明者らの最も強い候補プラスミドをトランスフェクトした細胞におけるHTRA1のmRNAおよびタンパク質レベルの両方を測定するために実施した。トランスフェクションを、毒性を低減する一方でトランスフェクション効率を最大化するためにエンドトキシン不含有maxi-prep kitを用いて調製したプラスミドDNAを使用して電気穿孔法によって実施した。対照プラスミド(pCTM259)と比べて、HTRA1 mRNAのレベルは、BEST1_723、BEST1_340およびRPE65_146プロモーターによって駆動される数個のAAV-HTRA1プラスミドによって強く増加した(
図26)。これらの各プラスミドでは、mRNAレベルは、24時間でピークになり、48および72時間時点で徐々に減少する。陽性対照CMV駆動プロモーターでもHTRA1レベルは24時間でピークになるが、48および72時間時点までに鋭く減少する。
【0208】
本発明者らは、HTRA1タンパク質発現の動態を検討し、HTRA1の過剰発現によって影響を受けないVEGFのレベルにそれを標準化した(pCTM259対照を他の試料それぞれと比較する、
図27B)。HTRA1のレベルは、pCTM259対照試料においてさえ経時的に増加する。しかし、HTRA1タンパク質における相対的増加は、BEST1_723、BEST1_340およびRPE65_146プロモーターによって駆動されるAAV-HTRA1プラスミドを用いて処置した細胞におけるバックグラウンドより顕著に大きい(
図27A)。VEGFへの標準化後、24時間でピークになり、徐々に減少する対照プラスミドと比べてHtrA1タンパク質発現において4から6倍増加した(
図27C)。
【0209】
合わせて、これらのデータは、mRNAおよびタンパク質レベルの両方でのHTRA1発現がBEST1-またはRPE65-ベースプロモーターによって駆動されるAAV2-HTRA1プラスミドの一過性形質移入によって上方制御できることを実証している。
【0210】
14.12 CRISPR媒介編集
本実施例は、HTRA1制御領域を包含するChr10上のDNAの領域を対立遺伝子特異的様式で選択的に欠失させるために実行された実験を示す。具体的には、CRISPR/Cas9システム、およびCRISPRガイドRNA対の組み合わせを、RPE1細胞におけるリスクまたは野生型対立遺伝子のいずれかから、rs10490924 SNP周辺のDNAの大きなセクションを特異的に除去するために使用した。
【0211】
トランスフェクションをIDT Alt-R CRISPRシステムを使用して実施した。個々のガイドRNAの配列を下の表13に列挙する。crRNAをTris-EDTA溶液中に最終濃度200μMで再懸濁した。各crRNAをnuclease-free duplex buffer(IDT カタログ番号11-01-03-01)中でtracrRNA(IDT カタログ番号1072532)と1:1の比で合わせ、2分間、95℃で加熱し徐々に冷却することによってアニールした。crRNA:tracrRNA複合体をnuclease-free duplex bufferを用いて希釈し、spCas9-3NLS(IDT カタログ番号1074181)を複合体に加えた。RNP形成を可能にするように試料を20分間、室温でインキュベートした。インキュベーション中に、RPE1細胞を採取し、電気穿孔法緩衝液「R」緩衝液に5x107個/mlの濃度で再懸濁した。細胞を1.8μMの3’および5’RNP複合体と1.8μMの担体ssDNAと共に混合した。各反応物について、最終溶液は、2μM spCas9-3NLS、1.8μM crRNA:tracrRNAおよび1.8μM担体ssDNAを含有した。細胞RNP混合物を10μl Neonピペットチップを1300ボルト、パルス幅20および2パルスで使用して電気穿孔し、6ウエルプレート中の培地3mlに移した。24時間後、トランスフェクトした細胞を細胞15個/mlの濃度まで系列希釈した。細胞およそ1.5個/ウエル)100μlを96ウエルプレート3枚に蒔いた。
【0212】
【0213】
ゲノムDNAをDNeasy Blood &Tissue Kit(QIAGEN、カタログ番号69504)を使用してクローン培養物から精製した。PCRを、200nMのT7E1-Reg8-F(5’CTT ACCACCCTCGCTACATC3’)およびINDEL-DEL-R1(5’CCAGGGTGGTGTAATCC ATC3’)プライマーを使用して、50ngゲノムDNA、200μM dNTP(Thermo Fisher、カタログ番号18427)およびQ5 Hot Start High-Fidelity DNA Polymerase(NEB、カタログ番号M0493)を含有するQ5 PCR緩衝液(NEB、カタログ番号B9027)中で実施した。PCR産生物をアガロースゲル電気泳動によって可視化した。
【0214】
RPE1細胞は、2コピーのrs10490924野生型対立遺伝子および単一コピーのリスク対立遺伝子を含有して染色体10q26について三倍体である。未処置RPE1細胞を使用するこの領域のPCR増幅は、野生型対立遺伝子についての3.5kbバンドおよびリスク対立遺伝子についての3.2kbバンドに対応する2つのPCR産生物を生じる。アガロースゲル電気泳動は、野生型対突然変異体対立遺伝子の密度において2:1バイアスを示す。細胞を野生型対立遺伝子に対して特異的なCRISPRガイド対を用いて処置する場合、生じ得る結果は3つある。単一野生型対立遺伝子は、1:1比の3.5kb/3.2kbバンド、および断片が除去された切断対立遺伝子から生成された600~800bpバンドによって示されるとおり欠失され得る。両方の野生型対立遺伝子が切断される場合、PCRは、突然変異体対立遺伝子由来の3.2kbバンドおよび切断野生型対立遺伝子由来の600~800バンドだけをもたらす。対照的に、突然変異体対立遺伝子に特異的なCRISPRガイド対を用いて処置した細胞は、密な3.5kb野生型バンドおよび切断突然変異体対立遺伝子に対応する600~800bpバンドだけを示すはずである。
【0215】
本発明者らは、crRNAガイドの標的化対が対立遺伝子依存性様式でrs10490924領域の大きなセクションを効果的に除去できることを決定した(表14および
図28)。この効果を、各CRISPRガイド対についてトランスフェクトしたRPE1細胞のバルク集団において実証した(データ未記載)。これらの結果に基づいて、本発明者らは、2kb領域を欠失させる本発明者らの能力を正確に評価するためにバルク集団の限定希釈によって、モノクローナル培養物を単離および確立した。モノクローナル培養物由来のゲノムDNAを、切断部位周辺のrs10490924領域のPCR増幅によってスクリーニングし、アガロースゲル電気泳動によって分析した。
図28は、A2-WT2 crRNAの組み合わせがChr10非リスク対立遺伝子(対立遺伝子A)の欠失を生じる一方で、A2-INDEL1 crRNAの組み合わせはChr10リスク対立遺伝子(対立遺伝子B)の欠失を生じる例を示している。crRNAの他の組み合わせは、予測される対立遺伝子特異的欠失を生成した(データ未記載)。これは、対立遺伝子特異的様式で染色体領域の除去を具体的に標的化できることを実証している。
【0216】
【0217】
【0218】
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【0219】
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【0220】
【0221】
前述の本発明は、明瞭な理解の目的のために例示および例の方法によってある程度詳細に記載されているが、当業者は、ある種の変更および改変が添付の特許請求の範囲内で実行され得ることを理解する。
【0222】
本発明は、本明細書に広範に記載され、本明細書下に特許請求される、その構造、方法または他の本質的な特徴から逸脱することなく他の特定の形態に具体化され得る。記載されるアプローチは、あらゆる点で限定ではなく例示としてだけ見なされる。したがって本発明の範囲は、前述の記載よりも、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の均等物の意味および範囲内にあるすべての変更は、その範囲内に受け入れられる。
【0223】
本明細書において引用されるすべての刊行物および特許は、それぞれ個々の刊行物および特許が具体的および個別に参照により組み込まれるとして示され、引用される刊行物と関連する方法および/または材料を開示および記載するように参照により本明細書に組み込まれるのと同様に、本明細書に参照により組み込まれる。すべての刊行物の引用は、出願日に先行するその開示についてであり、先行する発明のために先行するそのような刊行物に本発明が、先行する権利を有さないことの承認と解釈されるべきではない。さらに、示される公開日は、別々に確認される必要がある実際の公開日と異なる場合がある。
【配列表】
【国際調査報告】