(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(54)【発明の名称】血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 60/237 20210101AFI20220518BHJP
A61M 60/419 20210101ALI20220518BHJP
A61M 60/804 20210101ALI20220518BHJP
A61M 60/81 20210101ALI20220518BHJP
A61M 60/812 20210101ALI20220518BHJP
A61M 60/818 20210101ALI20220518BHJP
A61M 60/135 20210101ALI20220518BHJP
F04D 29/00 20060101ALI20220518BHJP
F04D 29/60 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
A61M60/237
A61M60/419
A61M60/804
A61M60/81
A61M60/812
A61M60/818
A61M60/135
F04D29/00 B
F04D29/60 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556705
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(85)【翻訳文提出日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2020057160
(87)【国際公開番号】W WO2020187862
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラウヴィンケル マリウス
(72)【発明者】
【氏名】ケルクホフス ヴォルフガング
【テーマコード(参考)】
3H130
4C077
【Fターム(参考)】
3H130AA05
3H130AB22
3H130AB42
3H130AB50
3H130AB52
3H130BA95H
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130DF00Z
3H130EA01A
3H130EA01G
3H130EA01H
3H130EC01H
3H130ED01G
3H130ED01H
4C077AA04
4C077DD10
4C077EE01
4C077FF04
4C077KK21
(57)【要約】
本発明は、患者の血管内への経皮挿入のための血管内血液ポンプ1に関する。血液ポンプは、血流入口21および血流出口22を有するポンプケーシング2と、回転軸10の周りに回転可能となるよう前述のポンプケーシング2内に配置されたインペラ3と、を備える。インペラ3は、血液を血流入口21から血流出口22へ運搬するためにサイズ設定および形状設定されたブレード31を有する。血液ポンプ1は、インペラ3を回転させるための駆動ユニット4を備え、駆動ユニット4は、回転軸10の周りに配置された複数の柱40、および該部分の後端部を接続するバックプレートを含み、柱40およびバックプレートは駆動ユニットの磁心を共に形成する。コイル巻線47が柱40の各々の周りに配設されている。コイル巻線82、83、86は、回転磁界を作り出すよう制御可能であり、インペラ3は、インペラ3の回転を生じさせるよう回転磁界と相互作用するように配置された磁石構造32を含む。磁心400またはそれの部分は、断面内で電気伝導率に関して不連続である不連続な軟磁性材料を含み、少なくとも1つの溶接部82、83、86が不連続な軟磁性材料の表面811に設けられている。溶接部82、83、86は、不連続な軟磁性材料内の電気伝導率に関する少なくとも1つの不連続を橋絡する。さらに、本発明は、磁心400を製作する方法、および血管内血液ポンプ1を製作する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管内への経皮挿入のための血管内血液ポンプ(1)であって、
血流入口(21)および血流出口(22)を有するポンプケーシング(2)と、
回転軸(10)の周りに回転可能となるよう前記ポンプケーシング(2)内に配置されたインペラ(3)であって、前記インペラ(3)が、血液を前記血流入口(21)から前記血流出口(22)へ運搬するためにサイズ設定および形状設定されたブレード(31)を有する、インペラ(3)と、
前記インペラ(3)を回転させるための駆動ユニット(4)であって、前記駆動ユニット(4)が、前記回転軸(10)の周りに配置された複数の柱(40)、および前記柱(40)の後端部(450)を接続するバックプレート(50)を含み、前記柱(40)および前記バックプレート(50)が前記駆動ユニット(4)の磁心(400)を形成する、駆動ユニット(4)と、
前記柱(40)の各々の周りに配設されたコイル巻線(44)であって、前記コイル巻線(44)が、回転磁界を作り出すよう制御可能である、コイル巻線(44)と、
を備え、
前記インペラ(3)が、前記インペラ(3)の回転を生じさせるよう前記回転磁界と相互作用するように配置された磁石構造(32)を含む、血管内血液ポンプ(1)において、
前記磁心(400)またはそれの部分が、断面内で電気伝導率に関して不連続である不連続な軟磁性材料を含み、またはそれから成り、少なくとも1つの溶接部(82、83、86)が前記不連続な軟磁性材料の表面(811)に設けられており、前記溶接部(82、83、86)が前記不連続な軟磁性材料内の電気伝導率に関する少なくとも1つの不連続を橋絡することを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記少なくとも1つの溶接部(82、83、86)のうちの少なくとも1つが前記柱の後端面(45)に配置されていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項3】
請求項1に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記少なくとも1つの溶接部(82、83、86)のうちの少なくとも1つが前記柱(40)のインペラ側端面に配置されていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項4】
請求項1に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記少なくとも1つの溶接部(82、83、86)のうちの少なくとも1つが前記柱(40)のインペラ側端面に配置されており、少なくとも1つのさらなる溶接部(82、83、86)が前記柱(40)の前記後端面(45)に配置されていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記少なくとも1つの溶接部(82、83、86)のうちの2つが、前記柱(40)の一方の端部に互いに離間されて配置されていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記少なくとも1つの溶接部(82、83、86)のうちの少なくとも1つが前記柱(40)の側面の上に延びており、好ましくは、前記柱(40)のうちの少なくとも1本を少なくとも部分的に包囲していることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記少なくとも1つの溶接部(82、83、86)のうちの1つを超えるものが前記柱(40)の同じ表面側に配置されていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプであって、前記少なくとも1つの溶接部(82、83、86)が、前記不連続な軟磁性材料内の電気伝導率に関する前記少なくとも1つの不連続を橋絡する溶接継ぎ目を含むことを特徴とする血管内血液ポンプ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記柱(40)のうちの少なくとも1本が、その長手方向軸(LA)と平行に配向された軟磁性シート(85)を有する軟磁性材料の積層物を含むことを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項10】
請求項9に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記柱(40)のうちの前記少なくとも1本が、前記回転軸(10)を横切る方向に三角形断面(84)を有し、軟磁性材料の前記軟磁性シート(85)が、前記三角形断面(84)の二等分線(B)を通る平面内に、またはそれと平行に配向されていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項11】
血管内血液ポンプ(1)の、特に、請求項1から10のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)のための駆動ユニット(4)のための磁心(400)、または磁心(400)の部分を製作する方法であって、以下のステップ:
- 不連続な軟磁性材料の被加工物(8、81)を提供するステップであって、前記軟磁性材料が前記被加工物(8、81)の断面内で電気伝導率に関して不連続であり、前記被加工物(8、81)から前記磁心(400)、または磁心(400)の前記部分が製作されることになる、ステップと、
- 前記被加工物(8、81)の表面(811)における溶接部(82、83、86)を設けるステップであって、これにより、前記溶接部(82、83、86)が、前記被加工物(8、81)の前記不連続な軟磁性材料内の電気伝導率に関する少なくとも1つの不連続を橋絡する、ステップと、
を特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記溶接部を設けた後に、前記磁心(400)、または前記磁心(400)の前記部分が前記被加工物(8、81)から分離されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記磁心(400)、または前記磁心(400)の前記部分を前記被加工物(8、81)から分離した後に、前記溶接部(82、83、86)の少なくとも部分が前記磁心(400)、または前記磁心(400)の前記部分に残ることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の方法であって、前記磁心(400)、または前記磁心(400)の前記部分を前記被加工物(8、81)から分離する前記ステップが、放電加工によって前記柱(40)のうちの少なくとも1本を前記被加工物(8、81)から分離することを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか1項に記載の方法であって、前記少なくとも1つの溶接部(82、83、86)が、レーザ溶接によって、または溶接用レーザの二重適用、特に、二重レーザ溶接によって生成されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の血管内の血流を支援するための血液ポンプ、特に、患者の血管内への経皮挿入のための血管内血液ポンプに関する。血液ポンプは、改善された駆動ユニットを有する。
【背景技術】
【0002】
軸流血液ポンプ、遠心型(すなわち、半径方向)血液ポンプ、あるいは血流が軸方向力および半径方向力の両方によって引き起こされる、混合型血液ポンプなどの、異なる種類の血液ポンプが知られている。血管内血液ポンプは、カテーテルを用いて大動脈などの患者の血管内に挿入される。血液ポンプは、通例、通路によって接続された血流入口および血流出口を有するポンプケーシングを備える。血流入口から血流出口への通路に沿った血流を生じさせるために、インペラまたはロータがポンプケーシング内において回転可能に支持されており、インペラには、血液を運搬するためのブレードが設けられている。
【0003】
血液ポンプは、通例、電気モータであることができる、駆動ユニットによって駆動される。例えば、米国特許出願公開第2011/0238172(A1)号は、電気モータに磁気結合され得るインペラを有する体外血液ポンプを開示している。インペラは、電気モータ内の磁石に隣接して配設された磁石を含む。インペラ内およびモータ内の磁石の間の引力のゆえに、モータの回転がインペラに伝達される。回転部分の数を低減するために、米国特許出願公開第2011/0238172(A1)号から、回転磁界を利用することも知られており、駆動ユニットは、回転軸の周りに配置された複数の固定した柱を有し、各柱は線材コイル巻線を保持し、磁心の役割を果たす。制御ユニットが電圧をコイル巻線に順次に供給し、回転磁界を作り出す。十分に強い磁気結合を提供するには、磁力が十分に高くなければならず、これは、駆動ユニットに供給される十分に高い電流によって、または大きい磁石を提供することによって達成することができるが、これは血液ポンプの大きな全径につながる。
【0004】
欧州特許第3222301(B1)号は、駆動ユニットとインペラとの間の磁気結合を有する血液ポンプ、特に、血管内血液ポンプであって、血液ポンプが、コンパクトな設計を有し、特に、ポンプのサイズに対するポンプ能力の比が高く、これにより、血液ポンプが、経血管的に、経静脈的に、経動脈的に、または経弁的に挿入されることを可能にするために十分に小さい外寸法をもたらすか、あるいは操作および利便性の理由のためになおいっそう小さくなる、血液ポンプを開示している。
【0005】
より具体的には、欧州特許第3222301(B1)号における血液ポンプは、血流入口および血流出口を有するポンプケーシングと、インペラと、インペラを回転させるための駆動ユニットとを備える。回転軸の周りの、ポンプケーシングの内部におけるインペラの回転によって、血液はインペラのブレードによって血流入口から血流出口へ運搬され得る。駆動ユニットは、複数の好ましくは6本の柱、および柱の後端部を接続し、ヨークの役割を果たすバックプレートを含む。柱およびバックプレートは駆動ユニットの磁心を構成する。柱は、回転軸と垂直である平面内で見たときに、回転軸の周りに円状に配置されており、柱の各々は、好ましくは、前述の回転軸と平行である、長手方向軸を有する。柱は各々、柱の各々の周りに配設されたコイル巻線を有する。インペラを駆動するための回転磁界を発生するために、コイル巻線をコヒーレントな仕方で制御することができる。インペラは、回転磁界と相互作用し、これにより、インペラがその回転に追随するように配置された磁石の形態の磁石構造を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
未公開の欧州特許出願第171919400号において、渦電流による損失を低く保つために、不連続な軟磁性材料が、駆動ユニットの磁気的活性部分のため、特に、柱のために用いられ得ることが提案されている。不連続な材料は、例えば、軟磁性シートを含む積層材料であり得る。しかし、このような材料で作製された駆動ユニットの磁気的活性部分はシート間の層において崩壊して分解しがちである。放電加工によってこのような部分を製作する可能性に関しては別の問題が生じる。このような被加工物に放電加工のために特定の場所において接触した際に、材料の必ずしも全ての他の場所が、接触された場所と電気接触してはいない。これは放電加工を面倒にし得る。
【0007】
本発明は、血管内血液ポンプのための駆動ユニットの製作を促進することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の血液ポンプは、欧州特許第3222301(B1)号に記載されているように、上述の血液ポンプに対応する。したがって、それは、軸流血液ポンプ、あるいは部分的に軸方向に、および部分的に半径方向に圧送する、斜流血液ポンプであり得る(純粋な遠心型血液ポンプの直径は、通常、血管内の適用物にとって大きすぎる)。しかし、本発明の一態様によれば、磁心またはそれの部分、特に、柱のうちの少なくとも1本は、それぞれの柱の長手方向軸を横切る断面内で電気伝導率に関して不連続である不連続な軟磁性材料を含む、またはそれから成る。少なくとも1つの溶接部が不連続な軟磁性材料の表面に、特に、少なくとも1本の柱上に設けられる。溶接部は、不連続な軟磁性材料内の電気伝導率に関する不連続を橋絡する。
【0009】
柱の各々は長手方向軸を有する。好ましくは、各柱の長手方向軸は回転軸と平行である。柱は各々、それぞれの柱の長手方向軸を横切る、好ましくは、それと垂直な断面内で不連続である軟磁性材料を含む。換言すれば、柱の軟磁性材料は、柱内のそれぞれのコイル巻線によって生じた磁束の方向を横切る、好ましくは、それと垂直な断面内で不連続である。軟磁性材料を断面内で分割または分断することによって、柱内の渦電流を低減または回避することができ、これにより、発熱およびエネルギー消費を低減することができる。エネルギー消費を低減することは、血液ポンプが、患者に可動性を与えるために電池駆動式であることが望まれる、血液ポンプの長期間の適用物のために特に有用である。また、長期間の適用物において、血液ポンプは、パージを行わずに動作させることもでき、これは、発熱が低い場合にのみ可能である。
【0010】
本文書の意味における「不連続(discontinuous)」は、軟磁性材料の厳密に分離された区域、または分断されているが、異なる場所で接続されている区域を形成するために、軟磁性材料が、長手方向軸を横切る任意の断面内で見たときに、絶縁材料もしくは他の材料または間隙を用いて分断されている、分離されている、区切られている、または同様の様態になっていることを意味する。
【0011】
磁束の方向を横切る断面平面内で不連続な軟磁性材料を提供することは、以上において説明されたように、渦電流、ならびにそれゆえ、発熱およびエネルギー消費を低減する。連続的または完全な本体の(すなわち、中実の)軟磁性材料と比べて磁界を著しく弱めないためには、軟磁性材料の連続的な区域を最小化しつつ、軟磁性材料の総量を最大化するべきである。これは、例えば、電気鋼などの、軟磁性材料の複数のシートの形態の軟磁性材料を提供することによって達成され得る。特に、シートはシートの積層体を形成し得る。シートは、好ましくは、例えば、シートのうちの隣接するものの間に接着剤、ラッカ、焼付けエナメル、または同様のものを提供することによって、互いに電気的に絶縁される。このような構成は「溝付き(slotted)」と表すことができる。完全な本体の軟磁性材料と比べて、軟磁性材料の量はわずかに低減されるのみであり、絶縁材料の量は少量に維持され、これにより、溝付きの柱によって生じる磁界は、中実の柱によって生じる磁界と実質的に同じである。換言すれば、発熱およびエネルギー消費が大幅に低減され得る一方で、絶縁材料によって生じる磁界の損失はわずかである。
【0012】
シートは、好ましくは、それぞれの柱の長手方向軸と実質的に平行に広がっている。換言すれば、シートは、磁束の方向と実質的に平行に広がっていてもよく、これにより、柱は、磁束の方向を横切る、またはそれと垂直な断面内で不連続である。軟磁性材料が、長手方向軸を横切る断面内で不連続である限り、シートはそれぞれの柱の長手方向軸に対して傾斜して広がっていてもよいことは理解されるであろう。シートは、好ましくは、25μm~1mm、より好ましくは、50μm~450μmの範囲内、例えば200μmの厚さを有する。
【0013】
渦電流を回避または低減するために、電気鋼などの、溝付きの軟磁性材料を電気モータ内に提供することが一般的に知られている。しかし、この技術は、シートが、通常、約500μm以上の範囲内の厚さを有する、大型のデバイスのために適用されている。柱のうちの1本が、通常、前述のオーダーの大きさの直径を有し、電力入力が比較的低い(例えば、最大20ワット(W))、本発明の血液ポンプなどの小型の適用物においては、渦電流および関連する問題は予想されていなかった。驚くべきことに、柱の小さい直径にもかかわらず、溝付きの柱を提供することによって、渦電流、ひいては、発熱およびエネルギー消費を低減することができる。これは、最大50,000rpm(revolutions per minute(回転/分))の高速度で動作させられる場合がある、血液ポンプの動作のために有利である。
【0014】
不連続な軟磁性材料を柱内に提供するための上述の溝付きの構成以外の構成も可能であり得ることは理解されるであろう。例えば、複数のシートの代わりに、複数の線材、ファイバ、柱、または他の細長い要素を、駆動ユニットの柱の各々を形成するために提供することができる。線材または同様のものは、線材が、例えば、各線材を包囲するコーティング、または線材が埋め込まれる絶縁性母材を用いて、互いに電気的に絶縁された束の形態で提供されてもよく、円形、丸形、長方形、正方形、多角形等などの、様々な断面形状を有し得る。同様に、軟磁性材料の粒子、軟磁性材料のワイヤウールまたは他のスポンジ様もしくは多孔質構造を提供することができ、その内部で、軟磁性材料の区域の間の空間は、接着剤、ラッカ、ポリマー母材、または同様のものなどの、電気絶縁材料を含む。軟磁性材料の、多孔質、ひいては、不連続な構造はまた、焼結材料またはプレス材料によって形成されてもよい。このような構造では、空気への曝露による軟磁性材料の酸化の結果生じた酸化物層によって絶縁層が自動的に形成され得るため、追加の絶縁材料は省略されてもよい。
【0015】
軟磁性材料のシートまたは他の構造が均一に形成され得る一方で、すなわち、柱のうちの1本または全ての柱の内部のシートが同じ厚さを有し得るか、または線材が同じ直径を有し得る一方で、不均一な構成を提供することができる。例えば、シートは、変化する厚さを有し得、または線材は、変化する直径を有し得る。より具体的には、特に、シートの積層体に関しては、1枚以上の中心のシートはより大きい厚さを有し得、その一方で、積層体の端部の方の隣接するシートはより小さい厚さを有し得る。すなわち、シートの厚さは中心から積層体の端部に向かって、すなわち、積層体の最も外側のシートに向かって減少する。同様に、線材の束内の1本以上の中心の線材はより大きい直径を有し得、その一方で、柱の縁部における線材はより小さい直径を有し得る。すなわち、線材の直径は中心から束の縁部に向かって、すなわち、束の最も外側の線材に向かって減少し得る。柱の長手方向軸を横切る断面に対する柱の中心において軟磁性材料のより大きい連続区域を提供すること、すなわち、中心において比較的厚いシートまたは線材を提供することは有利になり得る。なぜなら、これは、各柱の長手方向軸に沿って中心を貫く磁束を増強し得、中心における渦電流は柱の側部における渦電流ほど重要ではないからである。換言すれば、柱の側部領域内の渦電流がより重大であり、側部領域内の薄いシートまたは線材によって低減され得るため、このような構成は有利になり得る。
【0016】
溶接部は不連続な軟磁性材料からの磁心またはそれの部分の容易な製作を可能にする。すなわち、磁心、または磁心のための柱を不連続な軟磁性材料のより大きい被加工物から分離する際に、不連続な軟磁性材料は、分離プロセスの間に被加工物に対して印加される加工力のゆえに、層間剥離するか、または他の様態でその完全性を失い得る。これは、磁心、および特に、その柱の非常に小さい寸法のゆえに特に重大であり、磁心、またはその柱を被加工物から分離するために、放電加工、特に、ワイヤカットによる放電加工が用いられるときにさえ生じ得る。分離ステップの前に被加工物上に適用される、溶接部を用いることで、不連続な材料の機械的安定性が改善される。磁心または柱を被加工物から切り出すために放電加工が用いられる場合には、また、切り出しの場所への電流の流れも改善される。溶接部または溶接部群は後に磁心または柱の部分を形成し得る。
【0017】
具体的には、回転軸を横切るように配向された柱のインペラ側端面は不連続な材料を露出させる。したがって、溶接部または溶接部群は柱のインペラ側表面上に配置され得る。代替的に、または加えて、溶接部または溶接部群は柱の後端面に配置されてもよく、あるいは、ヨークの役割を果たすバックプレートを含む磁心がモノブロックとして被加工物と一体になっている場合には、さらなる溶接部またはさらなる溶接部群がバックプレートの後端面に配置されてもよい。
【0018】
好ましくは、柱のうちの少なくとも1本、および好ましくは、柱の全ての後端面は柱のうちの少なくとも1本の長手方向軸と実質的に垂直に配置されている。柱のうちの少なくとも1本、および好ましくは、柱の全ては、柱の長手方向軸の周りに配設され、該長手方向軸に沿って延びる周/周囲面をさらに含み得、後端面は該周面の後部長手方向端部に設けられ、後端面は、インペラから遠ざかる方向に面している。好ましくは、後端面は周面と実質的に垂直である。
【0019】
好ましくは、磁心の、またはその柱の表面全体が、表面に存在する不連続な材料のシートなどの、全ての軟磁性構成要素を橋絡するために溶接部で覆われていてもよい。最も好ましくは、不連続な材料の全ての構成要素が橋絡される。不連続な材料のできるだけ多くの軟磁性構成要素を橋絡することによって、最適な製作を達成することができる。
【0020】
好ましくは、2つの溶接部が、少なくとも1本の柱の一方の端部に互いに離間されて配置されている。これらの溶接部は、好ましくは、溶接継ぎ目である。このような溶接継ぎ目は、好ましくは、互いに平行に配置されている。具体的には、溶接後に柱が切り出される予定の原材料または被加工物の表面上に、離間された継ぎ目を溶接することができる。
【0021】
代替的に、または加えて、溶接部または溶接部群は柱の側面の上に延びていてもよい。柱の端面を溶接することと比べて、溶接面が磁束を横切らないため、この代替策はより少量の渦電流を生じさせ得る。
【0022】
少なくとも1つの溶接部のうちの1つを超えるものは、表面が側面であれ、または端面であれ、またはその両方であれ、柱のうちの少なくとも1本の同じ表面側に配置され得る。さらに、代替策では、溶接部が柱の側面を少なくとも部分的に包囲していてもよい。
【0023】
好ましくは、溶接部または溶接部群は溶接継ぎ目として設けられる。継ぎ目は、表面全体を覆う溶接部と比べて小さい断面を有し得、これにより、継ぎ目はより少量のさらなる渦電流を生じさせ得る。
【0024】
柱と同様に、バックプレートは不連続な軟磁性材料を含み得る。バックプレート内の磁束は、回転軸を実質的に横切る、またはそれと垂直であるため、バックプレートの軟磁性材料は、好ましくは、回転軸と平行な断面内で不連続である。例外は、柱およびバックプレートがモノブロックとして製作される場合であり得る。それを除いて、以上において柱の不連続な材料に関して述べられた実質的に全ての特徴および説明はバックプレートにも当てはまる。例えば、柱と同様に、バックプレートは溝付きになっていてもよく、すなわち、複数の積み重ねられたシートで形成されていてもよく、バックプレートのシートは、好ましくは、互いに電気的に絶縁されている。バックプレートのシートは柱のシートと実質的に垂直に広がっていてもよい。上述のことの中で説明されたように、渦電流、ひいては、発熱および電力消費が低減され得る。しかし、バックプレートは、代替的に、連続的、すなわち、中実の軟磁性材料で形成されてもよい。
【0025】
バックプレートは、柱と同様に、好ましくは、電気鋼(磁性鋼)、または磁束回路を閉じるのに適した他の材料、好ましくは、コバルト鋼などの、軟磁性材料で作製されている。バックプレートの直径は、3mm~9mm、例えば、5mmまたは6mm~7mmなどの範囲内にあり得る。バックプレートの厚さは、0.5mm~2.5mm、例えば、1.5mmなどの範囲内にあり得る。血液ポンプの外径は4mm~10mmの範囲内にあり得、好ましくは7mmであり得る。複数の柱の構成の外径は、3mm~8mm、例えば、4mm~7.5mmなどの範囲内にあり得、好ましくは、6.5mmであり得る。
【0026】
上述されたように、柱は電気鋼(磁性鋼)などの軟磁性材料で作製されている。柱およびバックプレートは同じ材料で作製され得る。好ましくは、柱およびバックプレートを含む、駆動ユニットはコバルト鋼で作製されている。コバルト鋼の使用は、ポンプサイズ、特に、直径の低減に寄与する。全ての磁性鋼の中で最も高い透磁率および最も高い飽和磁束密度を有するため、コバルト鋼は同量の使用材料に対して最大量の磁束を生成する。
【0027】
柱の寸法、特に、長さおよび断面積は変化し、様々な因子に依存し得る。血液ポンプの適用物に依存する、血液ポンプの寸法、例えば、外径とは対照的に、柱の寸法は、駆動ユニットの所望の性能を達成するように調整される、電磁特性によって決定される。因子のうちの1つは、柱の最小の断面積を貫いて達成されるべき磁束密度である。断面積が小さいほど、所望の磁束を達成するために必要な電流は高くなる。しかし、電流が高いほど、電気抵抗のゆえにコイルの線材内に多くの熱を発生する。それは、全体サイズを低減するには「細い」柱が好ましいが、これは高い電流を必要とし、それゆえ、望ましくない熱を生じさせるであろうことを意味する。線材内に発生される熱はまた、コイル巻線のために用いられる線材の長さおよび直径にも依存する。巻線損失(通常の場合のように、銅線材が用いられる場合には、「銅損」または「銅電力損」と称される)を最小限に抑えるには、短い線材長および大きい線材径が好ましい。換言すれば、線材径が小さい場合には、同じ電流においてより太い線材と比べてより多くの熱が発生される。好ましい線材径は0.05mm~0.2mm、例えば、0.1mmなどである。柱の寸法および駆動ユニットの性能に影響を及ぼすさらなる因子は、コイルの巻線数、および巻線、すなわち、巻線を含む柱の外径である。各柱の周りに多数の巻線が1つを超える層状に配置され得、例えば、2つまたは3つの層が提供され得る。しかし、層数が多いほど、より大きい巻線径を有する外層内の線材の増大した長さのゆえにより多くの熱が発生されることになる。線材の増大した長さは、より短いものと比べて、長い線材のより高い抵抗のゆえにより多くの熱を発生し得る。それゆえ、小さい巻線径を有する巻線の単一の層が好ましいであろう。柱の長さに次に依存する、典型的な巻線数は、約50~約150、例えば、56または132であり得る。巻線数とは関係なく、コイル巻線は、電気伝導性材料、特に、銅または銀などの、金属で作製される。銀は、銅の電気抵抗よりも約5%小さい電気抵抗を有するため、銀が銅よりも好ましくなり得る。
【0028】
好ましくは、柱は、回転軸を横切る三角形断面を有し、軟磁性材料の軟磁性シートは、好ましくは、三角形断面の二等分線を通る平面内に、またはそれと平行に配向されている。この配向は、最も長い軟磁性シートが柱の中央に配置されるという利点を有する。柱の装着状態では、二等分線は、三角形断面の半径方向に最も内側の角部を通って、および好ましくは、さらに回転軸を通って延び得る。
【0029】
本発明のさらなる態様では、血管内血液ポンプの駆動ユニットのための磁心、または磁心の部分を製作する方法が提案される。それは以下のステップを順に含む:不連続な軟磁性材料を含む、またはそれから成る被加工物を提供するステップであって、軟磁性材料が被加工物の断面内で電気伝導率に関して不連続であり、被加工物から磁心またはそれの部分が製作されることになる、ステップ、被加工物の表面における溶接部を設けるステップであって、これにより、溶接部が、被加工物の不連続な軟磁性材料内の電気伝導率に関する少なくとも1つの不連続を橋絡する、ステップ、および溶接部を設けた後に、磁心、または磁心の部分を被加工物から分離するステップ。
【0030】
溶接部の少なくとも部分は、磁心、または磁心の部分を被加工物から分離した後に柱に残り得る。その後、例えば、積層された軟磁性材料のシートは溶接部によってしっかりと一体に保持され得る。
【0031】
好ましい実施形態によれば、磁心、または磁心の部分を被加工物から分離するステップは、柱のうちの少なくとも1本を放電加工(electric discharge machining、EDM)、特に、ワイヤカットによる放電加工によって被加工物から分離することを含む。軟磁性材料の被加工物から柱を加工する前に、被加工物の1つの寸法が柱の長さに事前に切断され、これにより、事前に切断された被加工物が柱の長さと同一の外寸法を有するようにすることが好ましい。柱の長さを規定する端面において、柱を切り出す前に溶接部を設けることができる。例えば、1つ、または好ましくは、2つの溶接継ぎ目が、被加工物から切り出されるべき柱の断面端面を後に形成することになる事前に切断された被加工物の表面の各々を横切って離間されて配置され得る。好ましくは、切り出されるべき柱の不連続な軟磁性材料の全ての軟磁性構成要素が溶接部によって電気接続される。溶接継ぎ目は、被加工物から切り出されることになる1本を超える柱の断面の上に延び得る。具体的には、溶接継ぎ目は、好ましくは、事前に切断された被加工物の一方の端部から、事前に切断された被加工物の反対の端部へ延び、それはまた、切り出されるべき柱の少なくとも1つの断面も横切って延びる。1本を超える柱が、1つの事前に切断された被加工物から加工されてもよい。切り出されることになる柱の断面は、材料の高い割合を利用するために、事前に切断された材料内に適切に分布させられ得る。上述されたように、被加工物の不連続な軟磁性材料は、軟磁性シートの積層物を含む積層材料であり得る。例えば、被加工物から切り出されるべき2つの柱の三角形断面は、三角形断面の各々における角部の二等分線が軟磁性材料の積層平面とそろうように配向され得、二等分線は互いに対して距離を有し、二等分線を有する三角形断面の角部は反対方向に向いている。上述の方策は、柱を被加工物から効率的に生成することを助ける。
【0032】
好ましくは、三角形の柱に関して、溶接部または溶接部群は柱の三角形断面の1つの三角形の辺に沿って配置され得る。このとき、柱はこの辺から機械的に安定させられ得る。このように、軟磁性材料の積層されたシート、好ましくは、柱の全てのシートが溶接部によって電気接続され得る。
【0033】
好ましくは、少なくとも1つの溶接部はレーザ溶接によって生成される。また、溶接部の場所が少なくとももう1度溶接される二重レーザ溶接を適用することも可能である。これは、例えば、積層された軟磁性材料の2つの隣り合うシートの間の間隙を橋絡するために役立ち得る。
【0034】
切り出された磁心、または磁心の部分、特に、切り出された柱は、磁心、または磁心の部分を被加工物から分離した後に少なくとも1つの溶接部においてばりを取り除かれてもよい。ばりはことによると電気絶縁部に貫入し得る。
【0035】
上述の概要、および好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むことでより深く理解されるであろう。本開示を例示する目的のために、図面を参照する。しかし、本開示の範囲は、図面において開示される特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図2】駆動ユニット-インペラ構成の好ましい実施形態の断面図を示す。
【
図3A】
図2に係る駆動ユニット-インペラ構成のためのスペーサを斜視図で示す図である。
【
図4A】
図2に係る構成の駆動ユニットの柱のための開口部を有するバックプレートの第1の層の斜視図を示す。
【
図4B】
図2の構成の駆動ユニットの柱のための開口部を有しないバックプレートの第2の層の斜視図を示す。
【
図4C】
図4Aおよび
図4Bの第1および第2の層を含む組み立てられたバックプレートの断面図を示す。
【
図5A】
図2に係る構成の駆動ユニットのための柱のさらなる製作のための中間製品を製作する段階を示す図である。
【
図5B】
図2に係る構成の駆動ユニットのための柱のさらなる製作のための中間製品を製作する段階を示す図である。
【
図5C】
図2に係る構成の駆動ユニットのための柱のさらなる製作のための中間製品を製作する段階を示す図である。
【
図5D】
図2に係る構成の駆動ユニットのための柱のさらなる製作のための中間製品を製作する段階を示す図である。
【
図7】
図5A~
図6Cに従って準備されたとおりの中間製品から分離された柱の斜視図を示す。
【
図8】2つの溶接継ぎ目、および中間製品から切り出されることになる柱の2つの断面を有する、
図6Aの中間製品の平面上の正面図を示す。
【
図10】駆動ユニット-インペラ構成の第2の実施形態の断面図を示す。
【
図11A】
図10に係る駆動ユニットのための一体化磁心を製作するステップを示す図である。
【
図11B】
図10に係る駆動ユニットのための一体化磁心を製作するステップを示す図である。
【
図11C】
図10に係る駆動ユニットのための一体化磁心を製作するステップを示す図である。
【
図13A】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【
図13B】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【
図13C】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【
図13D】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【
図13E】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【
図13F】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【
図13G】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【
図13H】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【
図13I】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【
図13J】様々な実施形態に係る柱を通した断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1を参照すると、血液ポンプ1の断面図が示されている。血液ポンプ1は、血流入口21および血流出口22を有するポンプケーシング2を備える。血液ポンプ1は、カテーテルポンプとも呼ばれる、血管内ポンプとして設計され、カテーテル25を用いて患者の血管内へ展開される。血流入口21は、使用時、大動脈弁などの、心臓弁を貫いて配置され得る可撓性カニューレ23の端部にある。血流出口22はポンプケーシング2の側面内に位置し、大動脈などの、心臓血管内に配置され得る。血液ポンプ1は、以下においてより詳細に説明されるように、駆動ユニット4を用いてポンプ1を駆動するべく血液ポンプ1に電力を供給するためのカテーテル25を通って延びる電気線材26と電気接続されている。
【0038】
血液ポンプ1が、長期間の適用物内で用いられることを意図されている場合には、すなわち、血液ポンプ1が、数週間、またはさらに、数カ月間、患者に埋め込まれている状況では、電力は、好ましくは、電池を用いて供給される。患者がケーブルによって基地点に接続されないため、これは、患者が移動することを可能にする。電池は患者によって携行され得、電気エネルギーを、例えば、無線で、血液ポンプ1に供給し得る。
【0039】
血液は、血流入口21および血流出口22を接続する通路24に沿って運搬される(矢印によって血流が指示されている)。インペラ3が、血液を通路24に沿って運搬するために設けられており、第1の軸受11および第2の軸受12を用いてポンプケーシング2内で回転軸10の周りに回転可能になるように装着されている。回転軸10は、好ましくは、インペラ3の長手方向軸である。軸受11、12は両方とも本実施形態では接触型軸受である。しかし、軸受11、12のうちの少なくとも一方は、磁気または動圧流体軸受などの、非接触型軸受であることができるであろう。第1の軸受11は、回転運動およびある程度の枢転運動を可能にする球面軸受面を有するピボット軸受である。軸受面のうちの1つを形成するピン15が設けられている。第2の軸受12は、インペラ3の回転を安定させるための支持部材13内に配設されており、支持部材13は血流のための少なくとも1つの開口部14を有する。インペラ3が回転すると血液を運搬するためのブレード31がインペラ3上に設けられている。インペラ3の回転は、インペラ3の端部部分において磁石32に磁気結合された駆動ユニット4によって生じる。図示の血液ポンプ1は混合型血液ポンプであり、流れの主方向は軸方向である。血液ポンプ1はまた、インペラ3、特に、ブレード31の構成によっては、純粋に軸方向の血液ポンプにもなり得るであろうことは理解されるであろう。
【0040】
血液ポンプ1はインペラ3および駆動ユニット4を備える。駆動ユニット4は、6本の柱40などの、複数の柱40を含み、そのうちの2本のみが
図1の断面図において可視である。柱40は回転軸10と平行に配置されており、より具体的には、柱40の各々の長手方向軸は回転軸10と平行である。柱42の一方の端部はインペラに隣接して配設されている。コイル巻線44が柱40の周りに配置されている。コイル巻線44は制御によって、回転磁界を作り出すよう順次に制御される。制御ユニットの部分は、電気線材26に接続されたプリント配線板6である。インペラは、本実施形態では多ピース磁石として形成された、磁石32を有する。磁石32は、駆動ユニット4に面するインペラ3の端部に配設されている。磁石32は、回転軸10の周りのインペラ3の回転を生じさせるよう回転磁界と相互作用するように配置されている。
【0041】
磁束経路を閉じるために、バックプレート50が、柱のインペラ側と反対の柱40の端部に配置されている。柱40は磁心の役割を果たし、好適な材料、特に、鋼または好適な合金、特に、コバルト鋼などの、軟磁性材料で作製されている。同様に、バックプレート50は、コバルト鋼などの、好適な軟磁性材料で作製されている。バックプレート50は磁束を増強し、これは、血管内血液ポンプにとって重要である、血液ポンプ1の全径の低減を可能にする。同じ目的のために、ヨーク37、すなわち、追加のインペラバックプレートが、駆動ユニット4から遠ざかる方に面した磁石32の側でインペラ3内に設けられている。本実施形態におけるヨーク37は、血流をインペラ3に沿って案内するために円錐形状を有する。ヨーク37もコバルト鋼で作製され得る。中心軸受11に向かって延びる1つ以上のウォッシュアウト流路がヨーク37または磁石32内に形成され得る。
【0042】
図2は、
図1に係る血液ポンプのための駆動ユニット-インペラ構成の好ましい実施形態の断面図を示す。
図2において見ることができるように、柱40のインペラ側端部420は巻線44を越えて半径方向に広がっていない。むしろ、柱40の断面は柱40の長手方向軸LAの方向において一定である。かくして、柱40が互いに接近することが回避されている。なぜなら、これは、部分的な磁気短絡を生じさせ、その結果、血液ポンプの電気モータの動力の低減をもたらし得るからである。
【0043】
図2に係る駆動ユニットは、少なくとも2本、少なくとも3本、少なくとも4本、少なくとも5本、または好ましくは、6本の柱40を含み得る。9本または12本などの、より多数の柱40も可能であり得る。断面図のゆえに、2本の柱40のみが可視である。柱40およびバックプレート50は、10mm未満の直径を有し得る駆動ユニット4の磁心400を形成する。
【0044】
柱40は、図示のように、電気伝導率に関して不連続である不連続な軟磁性材料から成り得る。不連続な軟磁性材料は、強磁性材料で作製され、互いに積層された複数のシート85を含む。積層方向は柱40の長手方向軸LAの方向に配置されており、矢印DLによって標識されている。図示のように、柱40は回転軸10と平行に配置されている。
【0045】
スペーサ7が柱40の周りに配設されている。それは磁気的に不活性の材料で作製されており、柱40の、それらのインペラ側端部420における距離を一定に保つ目的を有する。スペーサ7は、
図3A~
図3Cに関してさらに詳細に説明されることになる。コイル巻線44のインペラ側端部424はスペーサ7まで広がっている。柱40の他方の端部にバックプレート50が設けられている。
図2に示される実施形態によれば、バックプレート50は、柱40を内部に受容するための凹部を有する。より具体的には、それは、柱40の後端部450のための開口部511を有する第1の層51を含む。バックプレート50は、
図4A~
図4Cに関してさらに詳細に説明されることになる。
【0046】
3つの上述の特徴:柱のインペラ側端部424が巻線44のインペラ側端部を越えて半径方向に広がっていないこと、柱40の間に磁気的に不活性のスペーサ7を提供すること、および柱40の後端部450を受容するための凹部を有するバックプレート50、の任意の組み合わせを有する血液ポンプ1の実施形態を実現することが想到可能である。
【0047】
図3A~
図3Cは、スペーサ7の斜視図、正面図、および側面図をそれぞれ示す。スペーサ7は、概して、中央に貫通孔75を有する円板または車輪の形態を有する。スペーサ7は柱の各々のための開口部71を含む。6本の柱40を有する実施形態については、図示のように、6つの開口部71が存在する。開口部71の間に、離間スポーク72が配置されている。柱40が開口部71内に挿入されているときに、離間スポーク72は柱40の間の距離を一定に保つ。さらに、スペーサ7は、隣り合う離間スポーク72を接続し、スペーサを安定させる外側リム73および内側リム74を含む。スペーサ7は、柱40のインペラ側端部420の間に配置されたときに磁気短絡を回避する常磁性材料であるチタンで作製されている。チタンは高い機械的強度をもたらし、これにより、それは小さい厚さのスペーサ7の製作を可能にする。これは構築空間の消費の点で有利である。
【0048】
図4Aはバックプレート50の第1の層51の斜視図を示す。第1の層51は、中心孔515を有する円板または車輪の全体的形状を有する。第1の層52は、柱40の後端部450が配置されることになる開口部511を含む。第1の層51は、開口部511の間に配置された離間スポーク512を含む。離間スポーク512の1つの目的は、柱40の後端部450の距離を互いに一定に保つことである。さらに、第1の層51は、それぞれ、開口部511の外側半径方向端部および内側半径方向端部において離間スポーク512を接続する外側リム513および内側リム514を含む。第1の層51は、電気伝導率に関して不連続である不連続な軟磁性材料で作製され得る。それは、いくつかの強磁性シート85、特に、
図4Aに示されるように、3枚のシートで構成され得る。シート85は電気的非伝導性材料を用いて互いに積層され、不連続な軟磁性材料を形成する。積層方向DLはシート85と概ね平行であり、シートの主たる広がりの方向が積層平面を規定する。バックプレート50内において、シート85は回転軸10と垂直である。第1の層51の中央において、孔515が配置されている。その目的は、第1の層51および第2の層52の組み立て、例えば、第1および第2の層51、52を中心合わせすることを容易にすることであり得る。
【0049】
図4Bに、バックプレート50の第2の層52の斜視図が示されている。第2の層52は、実質的に、第1の層51内の孔515に対応する中央における孔525を有する円板の形態を有する。第2の層52は柱40の後端部のための開口部を全く有しない。代わりに、第2の層52は、柱40の後端部450に面した接触平面526を有する。柱の後端部450は、駆動ユニットの組み立てられた状態において、バックプレート50の第2の層52の接触平面526と接触しており、柱40の後端部450とバックプレート50との間で磁束を伝達する。柱40の全ての後端部450が接触平面526と接触しているため、柱40の間で磁束を交換することができ、磁気的ゼロ点が第2の層52内に生じ得る。これを可能にするために、第2の層52は軟磁性材料で作製されている。軟磁性材料は、電気伝導率に関して不連続である不連続な軟磁性材料であり得、以上において第1の層51に関して説明されたとおりの構造と同様の、互いに積層されたシート85を含み得る。一例として、
図4Bに示されるとおりの3枚のシート85が第2の層52を構成し得る。第2の層52内において、積層方向Dは回転軸10と垂直である。シート85は強磁性かつ電気的に伝導性であり、それに対して、明示的に示されていない、シート85の間の中間層は非強磁性かつ電気的に非伝導性である。この種の不連続な軟磁性材料は、さもなければ磁束の変化によってより大量に発生されるであろう渦電流を低減する。第2の層52の中央における孔525は、第1の層51および第2の層52の組み立て、例えば、第1および第2の層51、52を中心合わせすることを容易にする目的を有し得る。
【0050】
図4Cはバックプレート50の断面を示す。それは、最も大きい広がりを有するそれらの主表面において互いに接合された第1の層51および第2の層52で構成されている。バックプレート50の第1の層51と第2の層52との間の接合は第1および第2の層51、52のシート85の間と同じ仕方で確立され得る。第1の層51および第2の層52の貫通孔515および525は、第1および第2の層51、52を中心合わせするために互いに整列させられる。第1および第2の層51、52を積み重ねることによって、開口部511は第2の層52によって一方の端部において閉じられ、これにより、凹部501が柱40の後端部450の収容のために形成される。凹部501の基底部において、接触平面526が形成される。柱40が凹部501内に挿入されたときに、その後端部450は接触平面526と接触する。さらに、柱40の位置は、柱40の各々を共に包囲する、離間スポーク512によって、ならびに外側および内側リム513、514によって固定される。このように、接触平面526において第2の層52と柱40の後端面45との間で磁気的接続が確立され、加えて、柱40と第1の層51の上述の包囲する部分との間で第2の磁気的接続が確立される。しかし、磁束の主要部分は接触平面526を介して伝えられる。好ましくは、柱40の後端部450における表面は既定の平坦性を有し、接触平面526も既定の平坦性を有する。このように、柱40の後端部450における表面45と接触平面526との間の間隙は、好ましくは10μm未満の特定のサイズ未満に維持され得る。これは柱40とバックプレート50との間の磁束の伝達を改善する。好ましくは、柱40の後端部450における表面45と接触平面526との間に追加の材料は存在しない。本発明の本実施形態では、表面45およびバックプレート50を介した磁束の伝達は、柱40をバックプレート50に留める仕方とは無関係である。
【0051】
図5A~
図5Dは柱40の生成のための準備ステップを示す。
図5Aは、以下において被加工物とも称される、電気伝導率に関して不連続である不連続な軟磁性材料のプレート8の斜視図を示す。
【0052】
図5Aにおいて、プレート8に、被加工物棒材81をプレート8から切り取るための幅Wが標識されている。被加工物棒材81の幅Wは、被加工物棒材81から製作されることになる柱40の長さと同一である。
図5Bに、
図5Aにおいて長方形Rによって標識された部分の拡大図が示されている。ここでは、不連続な軟磁性材料の積み重ねられたシート85が視認できる。積層DLの方向はプレート8の主平面に沿って広がり、それゆえ、積層平面を形成する。
【0053】
図5Cは、プレート8から不連続な材料の個片として切り取られた被加工物棒材81を示す。
図5Dに、
図5Cにおいて長方形Rによって標識された部分の拡大図が示されている。被加工物棒材81のシート85がこの拡大において視認できる。
【0054】
図6Aは、棒材81からの柱40の切り出しに備えた溶接ステップのための基盤を形成する
図5Cおよび
図5Dの被加工物棒材81を示す。
図6Aにおいて左側に向いた棒材81の側面上に、棒材81から製作されるべき柱40の複数の断面84が示されている。柱40は、これらの断面84を棒材81から切り出すことによって製作される。棒材81の幅Wが柱40の長さに対応するため、棒材81の側面811および812は柱40のインペラ側端部420および後端部450における端面になる。
【0055】
図6Bは、柱40を切り出す前の次の準備ステップを示す。2つの溶接継ぎ目82および83が、棒材81の面811上に、互いに距離を置いて、および切り出されるべき柱40の断面84の各々を横切るように溶接される。溶接継ぎ目82および83はシート85の積層方向DLと垂直に延びている。このように、不連続な材料のシートが互いに接続される。2つの溶接継ぎ目の代わりに、単一の溶接継ぎ目が設けられてもよい。加えて、同様の溶接継ぎ目が棒材81の反対の側面812上に設けられてもよい。シート85は溶接継ぎ目82および83のゆえに互いに対してより良好な機械的接続を有し、さらに、電気接続される。後者は、電流が、柱40になる予定の不連続な軟磁性材料の任意の位置から、例えば、放電加工のために必要とされ得る棒材81の電気接続の各位置へ流れることができるという利点を有する。このように、放電加工が大幅に促進される。さらに、切り出された柱40が層間剥離によって分解し得ないため、より高いプロセスの信頼性が達成される。好ましくは、レーザ溶接が適用される。溶接パワーを同じ溶接部に2回、またはさらに多数回、印加することが有利であり得る。
図6Cに、長方形Rによって標識された棒材81の部分が拡大されて示されている。
【0056】
それゆえ、
図6Cは、棒材81から切り出されることになる柱40の複数の断面84を示す。断面84は実質的に三角形の形状を有する。図示のように、角部は丸みを有し得る。
図6Cにおける断面84の左側に示された三角形の凸状の辺842は凸状の形を有する。この種の断面84は、円筒形のポンプハウジング2の内部の利用可能な構築空間を十分に利用するために有利である。断面84の凸状の辺842と反対側にある断面84の角部841の二等分線は積層方向DLとそろっている。このように、シート85は断面84を貫いて対称に延びている。
【0057】
図7は、棒材81から切り出された柱40を示す。棒材81の後端部450における表面45において見ることができるように、溶接継ぎ目82および83はこの表面上に依然として存在する。柱40はその全長に沿って一定の断面84を有する。溶接継ぎ目82および83は、柱40を切り出した後にばりを取り除かれる。
【0058】
図8は被加工物棒材81の側面811上の2つの断面84の別の構成を示す。
図6A~
図6Cに示される被加工物棒材81とは対照的に、
図8の被加工物棒材81の側面811は、2つの断面84を積層方向DLと垂直な方向に互いに隣同士に配設することを可能にするサイズを有する。断面84は積層方向DLに対して、断面84の各々の、そのそれぞれの凸状の辺842と反対側の角部の二等分線Bが積層方向DLとそろうように配向されている。このように断面84を棒材81に沿って配設することにより、材料を節約することができる。生じる廃棄材料が少なくなる。棒材81の厚さおよび柱40の所要断面寸法によっては、柱40のさらにより多くの断面84を積層方向DLと垂直な方向に積み重ねることが想到可能である。溶接継ぎ目82および83は各々、断面84の各々を横切って延びている。溶接継ぎ目82、83はまた、積層方向DLと垂直な方向に棒材81の側面811全体を横切って延びている。このように、棒材81の不連続な軟磁性材料の全てのシート85が互いに接続されている。
【0059】
図9は、溶接された棒材81から切り出された柱40の一例、すなわち、柱40の端面のうちの一方の上の正面図を示す。
図9に示されるように、三角形断面84の高さの約3分の1超を覆い得る、相当な幅の単一の溶接継ぎ目86が断面84の凸状の辺842に沿って延びている。溶接継ぎ目86は積層方向DLと垂直に延び、その全てのシートを接続している。この場合も先と同様に、凸状の辺842と反対側の角部841の二等分線Bは積層方向DLとそろっている。
【0060】
図10は、
図1に係る血液ポンプ1のための駆動ユニット-インペラ構成の第2の実施形態を示す。
図2に示される第1の実施形態と同様に、柱40のインペラ側端部420は巻線44を越えて半径方向に広がっていない。むしろ、柱40の断面は柱40の長手方向軸LAの方向において一定である。かくして、柱40が互いに接近することが回避されている。なぜなら、これは、部分的な磁気短絡を生じさせ、その結果、血液ポンプの電気モータの動力の低減をもたらし得るからである。
【0061】
図10に係る駆動ユニットは、少なくとも2本、少なくとも3本、少なくとも4本、少なくとも5本、または好ましくは、6本の柱40を含み得る。8本、10本、または12本などの、より多数の柱40も可能であり得る。断面図のゆえに、2本の柱40のみが可視である。柱40およびバックプレート50は、10mm未満の直径を有し得る駆動ユニット4の磁心400を形成する。
【0062】
本実施形態は、磁心の異なる構造によって、
図2に示される第1の実施形態とは異なる。ここでは、磁心400は、柱40およびバックプレート50である、駆動ユニット4の磁石構成要素を1つの単一部品またはモノブロックとして含む。モノブロックは不連続な軟磁性材料から成る。不連続な軟磁性材料は電気伝導率に関して不連続である。図示のように、それは、互いに積層され、
図11Cに示されるとおりのモノブロック9を形成する強磁性材料の複数のシート85を含む。積層方向DLは回転軸10と平行である。
【0063】
コイル巻線44は柱40のインペラ側端部420まで延びている。これは、起磁力が柱40全体に沿って発生され得るという利点を有する。磁心400は、柱40に対して半径方向に突出した柱40の後端部450における突出部401を含む。この突出部401は、バックプレート50に向かうコイル巻線44のためのストッパになることができる。一体化した磁心400はバックプレート50と柱40との間において高い剛性を有するため、柱のインペラ側端部420における柱40の間のスペーサが省略され得る。一体化した磁心400は、柱40とバックプレート50との間の最適の磁気的接続が達成され得るという利点をもたらす。磁心400は10mm未満の直径を有し得る。
【0064】
図11A~
図11Cは、
図10に示されるとおりの駆動ユニット-インペラ構成の駆動ユニット4のための磁心400を製作するステップを示す。
図11Aは、磁心400を製作するための被加工物を形成する立方体形状のモノブロック9を斜視図で示す。モノブロック9は、電気伝導率に関して不連続である不連続な軟磁性材料から成る。それは、シート85の主平面に沿って延びる積層方向DLに配向されたシート85を含む。シート85は各々、
図11A~
図11Cに明示的に示されていない、電気的非伝導性材料の接合層によってそれらのそれぞれの隣り合うシートに接合されている。
【0065】
図11Bは、磁心400を、それが立方体状のモノブロック9から実質的に円柱状の本体94に加工された、例えば、変化させられた、半製品状態で示す。この加工ステップにおいて、突出部401が製作される。磁心400の柱40の周囲面を形成する、本体94の低減した直径の区分404は、柱40の最も外側の凸状の側面842の外半径に対応する直径を有するように製作される。
【0066】
次に、本体94は、
図11Cに示されるとおりの磁心400を生成するようにさらに製作され得る。この生成ステップのために、放電加工を用いることができる。特に、柱40を互いに分離する溝穴49を生成するために、ワイヤカットによる放電加工を適用することができる。溝穴の内部に、コイル巻線44のための空間が提供される。溝穴49の基底部において、一体的バックプレート50の中間区域59が柱40の後端部の間に広がっている。中間区域は柱40およびバックプレート50と一体になっている。それゆえ、磁心全体がモノブロック9によって形成されている。
【0067】
磁心400内の積層方向DLは、それが回転軸10と平行であるようになっている。ベースプレート50内の積層方向DLがベースプレート50内の柱40の間の磁流に対して平行でないことは許容され得る。また、電気的に非伝導性の層によって分離されたコイル状の軟磁性シート材料から磁心400を製作することも可能である。このとき、ベースプレート50内の積層方向DLは常に、ベースプレート50内の磁束内の渦電流を回避するために有利である周方向になる。
【0068】
図12A~
図12Cは、
図11A~
図11Cに従って製作されるとおりの一体化磁心表面上に1つ以上の溶接部がどのように設けられ得るのかを示す。したがって、図示の実施形態では、3つの溶接継ぎ目82、83が立方体状のモノブロック9の一方の側の面上に設けられている。溶接継ぎ目82、83は、互いに距離を置いて、およびモノブロック9から切り出されるべき本体94の断面を横切って溶接される。溶接継ぎ目82、83はシート85の積層方向DLと垂直に延びている。このように、不連続な軟磁性材料のシートが互いに接続される。3つの溶接継ぎ目の代わりに、より多くの溶接継ぎ目または単一の幅の広い溶接部が設けられてもよい。加えて、同様の溶接継ぎ目がモノブロック9の反対側に設けられてもよい(図示せず)。反対側の面上の溶接部の代替として、またはそれらに加えて、1つ以上の溶接継ぎ目がバックプレート50のレベルにおいてモノブロック9の側面上に、バックプレート50を完全に、または少なくとも部分的に包囲するように設けられてもよい。シート85は溶接継ぎ目82、83のゆえに互いに対してより良好な機械的接続を有し、さらに、電気接続される。後者は、電流が、不連続な軟磁性材料の任意の位置から、例えば、放電加工のために必要とされ得る本体94の電気接続の各位置へ流れることができるという利点を有する。このように、放電加工が大幅に促進される。さらに、本体94から切り出されるバックプレート-柱ユニットが層間剥離によって分解し得ないため、より高いプロセスの信頼性が達成される。好ましくは、レーザ溶接が適用される。溶接パワーを同じ溶接部に2回、またはさらに多数回、印加することが有利であり得る。
【0069】
図13A~
図13Jは、断面で見た柱の様々な実施形態を示す。
図13A~
図13Dは、柱が溝付きになっている、すなわち、絶縁層172によって互いに絶縁された複数のシート171で形成されている実施形態を示す。絶縁層172は、接着剤、ラッカ、焼付けエナメル、または同様のものを含むことができる。
図13Aおよび
図13Bは、シート171の厚さが均一である実施形態を示す。厚さは25μm~450μmの範囲内にあり得る。
図13Aに示されるシート171は、
図13Bに示されるシート171よりも大きい厚さを有する。
図13Cにおけるシートは、変化する厚さを有し、中心のシートが最も大きい厚さを有し、最も外側のシートが最も小さい厚さを有する。柱の側部領域内の渦電流がより重大であり、薄いシートによって低減され得るため、これは有利になり得る。中心区域内の渦電流はそれほど重大でなく、比較的厚い中心のシートは磁束の改善を助け得る。断面内に示される軟磁性材料、すなわち、磁束の方向を横切る断面内の軟磁性材料が不連続である、または分断されている限り、シート171の配向は、
図13Dに例示的に示されるように異なってもよい。
【0070】
図13Eおよび
図13Fは、柱141が、絶縁材料182によって互いに絶縁された線材181の束によって形成されている実施形態を示す。絶縁材料182は線材181の各々のコーティングとして存在し得るか、または線材181が埋め込まれる母材であり得る。
図13Eの実施形態では、全ての線材が同じ直径を有し、それに対して、
図13Fの実施形態では、変化する厚さを有するシートを有する
図13Cに示される実施形態と同様に、中心の線材が最も大きい直径を有し、外側の線材がより小さい直径を有する。
図13Gに示されるように、異なる直径の線材181が混合されてもよく、これは、全ての線材が同じ直径を有する実施形態と比べて軟磁性材料の総断面積を増大させ得る。さらに代替的に、線材183の間の絶縁層184をさらに最小限に抑えるために、線材183は、長方形、正方形等などの、多角形断面積を有し得る。
【0071】
代替的に、柱141の不連続な断面は、
図13Iに示されるとおりのポリマー母材186内に埋め込まれた金属粒子185によって、または絶縁性母材を含浸させたスチールウールもしくは他の多孔質構造によって作り出されてもよい。軟磁性材料の、多孔質、ひいては、不連続な構造はまた、焼結プロセスまたは高圧成形プロセスによって生成されてもよく、この場合、空気への曝露による軟磁性材料の酸化によって絶縁層が自動的に形成されるため、絶縁性母材は省略されてもよい。さらに代替的に、柱141は軟磁性材料の丸めたシート187で形成されてもよく、この場合、丸めたシート187の層は、
図13Jに示されるとおりの絶縁層188によって分離される。これもまた、柱141または柱40内の渦電流を低減する本発明の意味で不連続な断面をもたらす。
【国際調査報告】