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特表2022-526521車両のための駆動ユニットおよび車両のための駆動ユニットを作動させる方法
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  • 特表-車両のための駆動ユニットおよび車両のための駆動ユニットを作動させる方法 図1
  • 特表-車両のための駆動ユニットおよび車両のための駆動ユニットを作動させる方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(54)【発明の名称】車両のための駆動ユニットおよび車両のための駆動ユニットを作動させる方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/547 20071001AFI20220518BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20220518BHJP
   B60K 6/36 20071001ALI20220518BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
B60K6/547
B60K6/442 ZHV
B60K6/36
B60K17/04 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557173
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2020058194
(87)【国際公開番号】W WO2020193564
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】102019204299.6
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519453607
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ジャーマニー ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローガー ポールマン
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ライプニッツ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ミュールバウアー
(72)【発明者】
【氏名】キアラシュ サブゼワリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス リーデル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル シェーネベルガー
【テーマコード(参考)】
3D039
3D202
【Fターム(参考)】
3D039AA04
3D039AB01
3D039AB04
3D039AB26
3D039AC38
3D039AC77
3D202AA02
3D202EE13
3D202FF08
(57)【要約】
本発明は、車両(F)のための駆動ユニット(1)であって、内燃機関(2)と、少なくとも1つの電気モータ(3)と、内燃機関(2)のための、および電気モータ(3)のためのそれぞれ1つの別個の入力軸(E1,E2)を有したトランスミッション(4)と、を備えており、電気モータ(3)は、トランスミッション(4)の被駆動ユニット(5)に固定的に連結されており、トランスミッション(4)がニュートラル位置(N)にあるとき、電気モータ(3)と被駆動ユニット(5)との間の動力伝達が遮断されない、駆動ユニット(1)に関する。本発明はさらに、このような駆動ユニット(1)を作動させる方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(F)のための駆動ユニット(1)であって、
内燃機関(2)と、
少なくとも1つの電気モータ(3)と、
前記内燃機関(2)のための、および前記電気モータ(3)のためのそれぞれ1つの個別の入力軸(E1,E2)を有したトランスミッション(4)と、
を備えており、
前記電気モータ(3)は、被駆動ユニット(5)に固定的に連結されており、前記トランスミッション(4)がニュートラル位置(N)にあるとき、前記電気モータ(3)と前記被駆動ユニット(5)との間の動力伝達が中断されない、駆動ユニット(1)。
【請求項2】
前記トランスミッション(4)は、前記車両(F)の各発進過程の際に、ニュートラル位置(N)にある、請求項1記載の駆動ユニット(1)。
【請求項3】
前記トランスミッション(4)は、複数の伝動ギヤ段(G1~G4)を備えた、歯車伝動される、オートメーティッドマニュアルトランスミッションとして形成されている、請求項1または2記載の駆動ユニット(1)。
【請求項4】
前記トランスミッション(4)は、
前記内燃機関(2)に機能的に連結されるドライブシャフト(A)と、
前記ドライブシャフト(A)に対して平行に配置されていて、前記ドライブシャフトに係合可能なカウンタシャフト(V)であって、被駆動ユニット(5)を直接駆動することができる、歯車伝動される最終変速比を含むカウンタシャフト(V)と、
少なくとも1つの伝動ギヤ段(G1~G4)のシフトのための少なくとも1つの噛み合いクラッチ(K1,K2)と、
をさらに含む、請求項3記載の駆動ユニット(1)。
【請求項5】
前記電気モータ(3)は、前記カウンタシャフト(V)を介して前記被駆動ユニット(5)に連結されている、請求項4記載の駆動ユニット(1)。
【請求項6】
前記電気モータ(3)は、第1の伝動ギヤ段(G1)のための、前記少なくとも1つの噛み合いクラッチ(K2)によって相対回動不能に前記ドライブシャフト(A)に接続可能な歯車(Z3)を介して、前記カウンタシャフト(V)に接続されている、請求項4または5記載の駆動ユニット(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの噛み合いクラッチ(K2)が開放状態にあるとき、前記第1の伝動ギヤ段(G1)のための前記歯車(Z3)は、前記ドライブシャフト(A)に対して回転可能である、請求項6記載の駆動ユニット(1)。
【請求項8】
前記電気モータ(3)の回転数と、前記被駆動ユニット(5)の回転数との間の変速比の値は、1よりも大きい、請求項1から7までのいずれか1項記載の駆動ユニット(1)。
【請求項9】
前記ドライブシャフト(A)は、電気的なスタータジェネレータ(6)に連結されている、請求項4から8までのいずれか1項記載の駆動ユニット(1)。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の駆動ユニット(1)を作動させる方法であって、トランスミッション(4)がニュートラル位置(N)にあるとき、被駆動ユニット(5)を駆動するための力をもっぱら電気モータ(3)から伝達する、方法。
【請求項11】
各発進過程の際に、前記トランスミッション(4)をニュートラル位置(N)にもたらし、
ゼロよりも大きな予め規定された速度を超えてから、伝動ギヤ段(G1)を介して内燃機関(2)を連結し、前記被駆動ユニット(5)を駆動するための力を前記内燃機関(2)から伝達する、請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のための駆動ユニットに関する。本発明はさらに、このような駆動ユニットを作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術により、車両のための駆動ユニット、例えばハイブリッド駆動ユニットと、それを作動させる方法とが、一般的に知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の根底にある課題は、従来技術に対して改善された、特にコンパクトな、車両のための駆動ユニットを提供することである。本発明の根底にある課題はさらに、このような駆動ユニットを作動させる適切な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
駆動ユニットに関してこの課題は、本発明によれば、請求項1記載の特徴によって解決される。方法に関してこの課題は、本発明によれば、請求項10記載の特徴によって解決される。
【0005】
本発明の好適な構成は、従属請求項の対象である。
【0006】
本発明による、車両のための駆動ユニットは、内燃機関と、少なくとも1つの電気モータと、内燃機関のための、および電気モータのためのそれぞれ1つの個別の入力軸を有したトランスミッションと、を備える。この場合、電気モータは、トランスミッションの被駆動ユニットに固定的に連結されており、トランスミッションがニュートラル位置にあるとき、電気モータと被駆動ユニットとの間の動力伝達が遮断されない。
【0007】
駆動ユニットは、車両のためのハイブリッド駆動装置として形成されており、内燃機関がトランスミッションから機能的に分離されている場合に、車両の純粋に電気的な運転を可能とする。電気モータが被駆動ユニットに固定的に連結されていることにより、電気モータをトランスミッションに機能的に連結させるための連結エレメントが不要である。換言すると、電気モータは、分離ユニットなしに、直接、被駆動ユニットに減速比で連結されている。したがって、トランスミッションを簡単かつコンパクトに製作することができるので、駆動ユニットは従来の駆動ユニットよりも安価である。さらに、このトランスミッションの所要スペースは、従来のハイブリッド駆動装置のトランスミッションよりも小さい。
【0008】
一実施例によれば、トランスミッションは、車両の各発進過程の際にニュートラル位置にある。したがって、各発進過程の際、車両は必然的に電気駆動される。これには、車両の発進の際に、内燃機関の機能的な連結のために用いられるいわゆる発進クラッチが不要であるという利点がある。これによりさらに、トランスミッションのコンパクトな設計が改善される。さらには、所定の速度の超過後に、車両が内燃機関によって駆動されるときには、内燃機関によって生じるトルクに、電気モータによって生じるトルクを加えることができる。換言すると、電気モータによって生じるトルクを、走行運転中、内燃機関を増強するために、すなわち支援するために使用することができる。
【0009】
トランスミッションは特に、複数の伝動ギヤ段を備えた、歯車伝動される、オートメーティッドマニュアルトランスミッションとして形成されている。オートメーティッドマニュアルトランスミッションは、比較的単純な機械的構造および良好な効率の点で優れている。さらに、伝動ギヤ段数を従来技術に対して減らすことができる。このように形成された駆動ユニットのためには、例えば、4つの伝動ギヤ段数で十分であり、この場合、走行快適性は、従来の駆動ユニットに対して遜色ない。2つ、または3つの伝動ギヤ段数も考えられる。
【0010】
トランスミッションはさらに、内燃機関に機能的に連結された、特に共に動くように連結されたドライブシャフトを含む。このドライブシャフトに、係合可能なカウンタシャフトが、特に歯車を介して、このドライブシャフトに対して平行に配置されている。平行に配置されたカウンタシャフトによって、トランスミッションの動力伝達時のドライブシャフトの回転数を減らすことができ、トルクを高めることができる。カウンタシャフトはこの場合、被駆動ユニットを直接駆動することができる、歯車伝動される最終変速比を含む。この被駆動ユニットは、車両の駆動輪用の、例えば前輪駆動輪用の車軸ドライブシャフトを駆動する、ディファレンシャルトランスミッションである。
【0011】
さらに、トランスミッションは、少なくとも1つの伝動ギヤ段のシフトのために、少なくとも1つの噛み合いクラッチを含む。噛み合いクラッチは、簡単に、ひいては安価に製作可能であり、駆動ユニットのトランスミッションの簡単かつコンパクトな構造を促進する。
【0012】
さらに、電気モータは、カウンタシャフトを介して被駆動ユニットに連結されている。これにより、電気モータは、内燃機関に連結されたドライブシャフトとは独立して、被駆動ユニットを駆動することができる。
【0013】
さらなる実施形態によれば、電気モータは、第1の伝動ギヤ段のための、少なくとも1つの噛み合いクラッチによって相対回動不能にドライブシャフトに接続可能な歯車を介して、カウンタシャフトに接続されている。これにより電気モータは、内燃機関のために既に使用されているトランスミッション構成要素によって、カウンタシャフトに連結される。1つのトランスミッション構成要素のこのような多重利用により、トランスミッションの所要構成スペースはさらに減少する。
【0014】
少なくとも1つの噛み合いクラッチが開放状態にあるとき、第1の伝動ギヤ段のための歯車は、ドライブシャフトに対して回転可能である。特に、噛み合いクラッチが開放されていて、内燃機関がトランスミッションから機能的に分離されている場合には、第1の伝動ギヤ段のための歯車からドライブシャフトには力は伝達されない。これにより、第1の伝動ギヤ段のための歯車は、トランスミッションへの内燃機関の連結のためにも、トランスミッションへの電気モータのみの連結のためにも利用することができる。したがって、電気モータは、噛み合いクラッチが一時的に開かれているシフトプロセス中に、駆動アッセンブリとしての機能も行うことができる。これにより、コストのかかるシンクロユニットを省きながら、牽引力を損なうことなくシフトが可能である。
【0015】
電気モータと被駆動ユニットとの連結はさらに、トランスミッションにおける動力伝達の方向で回転数が減少するが伝達トルクは増大する、いわゆる減速比により行われる。このために、電気モータの回転数と、被駆動ユニットの回転数との間の変速比の値は、1よりも大きい。これにより、電気モータの回転数を、良好な発進作動のために必要なタイヤの回転数に変換することができる。さらには、ギヤ段変更の際のトルクの低下を、遮断することなく電気モータにより補償することができる。
【0016】
本発明による駆動ユニットを作動させる方法では、トランスミッションがニュートラル位置にあるとき、被駆動ユニットを駆動するための力をもっぱら電気モータから伝達する。したがって、内燃機関がトランスミッションに機能的に連結されていない場合は、純粋に電気的な車両の駆動が可能である。トランスミッションからの内燃機関の機能的な分離、ひいては、駆動アッセンブリとしてもっぱら電気モータのみを連結することは、この場合、電気モータが、分離ユニットを用いずに被駆動ユニットに、減速比を介して直接連結されていることにより、簡単に可能である。
【0017】
方法の一実施形態によれば、各発進過程の際に、トランスミッションをニュートラル位置にもたらし、ゼロよりも大きな予め規定された速度を超えてからは、被駆動ユニットを駆動するための力を内燃機関によって伝達する。したがって、車両の各発進過程は電気的に駆動されるので、内燃機関をトランスミッションに機能的に連結するための発進クラッチを省くことができる。これにより、従来技術に対して減少した所要構成スペースで、トランスミッションのコンパクトかつ簡単な設計が可能となり、したがってより安価な駆動ユニットが可能となる。
【0018】
発進過程後のより高い速度のために、内燃機関が駆動アッセンブリとして使用される。この場合、ゼロよりも大きな予め規定された速度を超えてからは、内燃機関が伝動ギヤ段を介してカウンタシャフトに連結されるので、被駆動ユニットを駆動するための力は、付加的にまたはもっぱら内燃機関によって伝達される。さらに、シフトプロセス中は、電気モータが駆動アッセンブリとしての機能を行うことができるので、シフト中のトルクの低下はほぼ回避可能である。
【0019】
本発明の実施例を、以下に図面に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】駆動ユニットを備えた車両を概略的に示す図である。
図2】車両のための駆動ユニットを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
互いに対応する部分には、全図において同じ符号が付与されている。
【0022】
図1は、駆動ユニット1を備えた車両Fを、著しく簡略化した図で示している。図2は、車両Fの駆動ユニット1を、内燃機関2、電気モータ3、トランスミッション4、および被駆動ユニット5と共に概略的に示している。
【0023】
駆動ユニット1は、車両Fのための、特に自動車のためのハイブリッド駆動装置を形成しており、例えば、横方向または長手方向で組み込まれたフロント駆動アッセンブリを備えたフロントドライブとして、またはリヤドライブとして使用することができる。車両Fは、例えば乗用車、オフロード車、商用車、またはオートバイである。
【0024】
駆動アッセンブリとして、駆動ユニット1は、図示した実施例では、内燃機関2と電気モータ3とを有している。内燃機関2と電気モータ3とはそれぞれ、固有の入力軸E1,E2によって、トランスミッション4に連結されている。電気モータ3は、被駆動ユニット5に固定的に連結されており、トランスミッション4がニュートラル位置Nにあるとき、電気モータ3と被駆動ユニット5との間の動力伝達は遮断されない。
【0025】
さらに、内燃機関2のための入力軸E1に連結されていてこの入力軸に対して同軸に延びる、トランスミッション4のドライブシャフトAは、電気的なスタータジェネレータ6に連結されており、このスタータジェネレータは、内燃機関2を始動させ、シンクロ化を支援し、車両Fの運転時にはジェネレータとして使用される。この場合、駆動ユニット1は、例えば、いわゆる、P1配列およびP3配列からなる組み合わせを含む並列式のハイブリッド駆動装置を形成する。
【0026】
配列の呼称は、駆動ユニット1内の電気モータ3の組込み場所に依存する。図示した実施例では、電気モータ3が直接、トランスミッション4の被駆動部に連結されているので(より詳しい後述参照)、P3配列となっている。P1配列との組み合わせは、ドライブシャフトAに固定的に接続されている付加的な電気的なスタータジェネレータ6の結果として生じる。
【0027】
以下に詳しく記載するトランスミッション4は、従来技術により公知のオートメーティッドマニュアルトランスミッション、特に形状接続的な切替エレメントを備えた多経路式スパーギヤトランスミッションに基づく。
【0028】
図示したトランスミッション4では、ドライブシャフトAに対して平行に延在するように、いわゆるカウンタシャフトVが配置されており、このカウンタシャフトは同時にトランスミッション4の出力軸を成しており、2つの歯車Z1,Z2からなる最終変速比を介して直接被駆動ユニット5を駆動している。この被駆動ユニット5は例えば、自動車の駆動輪用の、例えば前輪駆動輪用の車軸ドライブシャフトを駆動する、ディファレンシャルトランスミッションである。
【0029】
ドライブシャフトA上には複数の歯車Z3~Z6が配置されており、これらの歯車は、カウンタシャフトV上に配置されている歯車Z7~Z10と対になって常に噛み合っており、ひいては様々なギヤ段のための様々な変速比を提供する。図示した実施例では、トランスミッション4は、4つの伝動ギヤ段G1~G4を有している。代替的に、トランスミッション4は、4つよりも少ない伝動ギヤ段G1~G4を、例えば2つのまたは3つの伝動ギヤ段G1~G4を有していてもよい。4つの伝動ギヤ段G1~G4よりも多いことも考えられる。
【0030】
歯車対ごとに、歯車Z3~Z10のうちのそれぞれ一方が、相応の軸、すなわちドライブシャフトAまたはカウンタシャフトV上に相対回動不能に配置されていて、歯車Z3~Z10のうちのそれぞれ他方が自由回転するようにかつ軸方向で位置固定されて相応の軸上に配置されている。
【0031】
図示した実施例では、第4の伝動ギヤ段G4のための歯車対は、ドライブシャフトA上に固定的に配置された歯車Z6(固定歯車とも呼ばれる)と、カウンタシャフトV上に可動に配置された歯車Z10(空転歯車とも呼ばれる)とを含む。ドライブシャフトA上に固定的に配置された歯車Z6はさらに、スタータジェネレータ6の入力軸E3に接続されている歯車Z11に常に噛み合っている。可動に配置された歯車Z10は特に、カウンタシャフトVの、例えば中空軸として形成されたシャフト区分V1上に配置されていて、このシャフト区分は、カウンタシャフトV上に相対回動不能にかつ軸方向摺動可能に取り付けられている第1の噛み合いクラッチK1を含んでいる。
【0032】
第3の伝動ギヤ段G3のための歯車対は、ドライブシャフトA上に固定的に配置された歯車Z5と、カウンタシャフトV上に可動に配置された歯車Z9とを含む。可動に配置された歯車Z9も、カウンタシャフトVの、第1の噛み合いクラッチK1を含む別のシャフト区分V2上に配置されている。
【0033】
第2の伝動ギヤ段G2のための歯車対は、ドライブシャフトA上に可動に配置された歯車Z4を含み、この歯車は、ドライブシャフトAの、例えば中空軸として形成されたドライブシャフト区分A1上に配置されている。このドライブシャフト区分A1は、第2の噛み合いクラッチK2を含む。第2の伝動ギヤ段G2のための歯車対はさらに、カウンタシャフトV上に固定的に配置された歯車Z8を含む。
【0034】
第1の伝動ギヤ段G1のための歯車対は、ドライブシャフトA上に可動に配置されていて、同じくドライブシャフトAの、第2の噛み合いクラッチK2を含むさらなるドライブシャフト区分A2上に配置された歯車Z3と、カウンタシャフトV上に固定的に配置された歯車Z7とを含む。
【0035】
噛み合いクラッチK1,K2は、伝動ギヤ段G1~G4のシフトのために用いられる。この場合、噛み合いクラッチK1,K2は、ドライブシャフトA上にまたはカウンタシャフトV上に相対回動不能に配置されているそれぞれ1つの第1の噛み合いエレメントK1.1,K2.1を有している。特に、第1の噛み合いエレメントK1.1,K2.1は、これらがドライブシャフトAまたはカウンタシャフトVと一緒に回転するように、しかしながらドライブシャフトAまたはカウンタシャフトVに対して軸方向では摺動可能であるように配置されている。
【0036】
噛み合いクラッチK1,K2はさらに、それぞれ2つの第2の噛み合いエレメントK1.2,K2.2を有しており、これらの第2の噛み合いエレメントはそれぞれ、第1の噛み合いエレメントK1.1,K2.1と同軸に対向して、ドライブシャフトA上にまたはカウンタシャフトV上に配置されている。さらに、第2の噛み合いエレメントK1.2およびK2.2は、歯車Z9,Z10またはZ3,Z4と一体に形成されている。すなわち、例えば、一方の噛み合いクラッチK2の一方の第2の噛み合いエレメントK2.2は、第1の伝動ギヤ段G1の歯車Z3と一体に形成されている。この噛み合いクラッチK2の他方の第2の噛み合いエレメントK2.2は、第2の伝動ギヤ段G2の歯車Z4と一体に形成されており、他方の噛み合いクラッチK1の一方の第2の噛み合いエレメントK1.2は、第3の伝動ギヤ段G3の歯車Z9と一体に形成されている。他方の噛み合いクラッチK1の他方の第2の噛み合いエレメントK1.2は、第4の伝動ギヤ段G4の歯車Z10と一体に形成されている。
【0037】
第1の噛み合いエレメントK2.1の、歯車Z3,Z4に面した表面はそれぞれ、詳しくは図示されていない複数の噛み合い歯列を有している。同様に、第2の噛み合いエレメントK2.2の、それぞれ第1の噛み合いエレメントK2.1に面した表面には、対応する複数の噛み合い歯列が形成されており、これにより噛み合い歯列は互いに噛み合うことができる。
【0038】
図2に示した実施例では、両噛み合いクラッチK1,K2は開放状態で示されている。すなわち、トランスミッション4はニュートラル位置Nにあり、この場合、シフト可能な歯車Z3,Z4のいずれもドライブシャフトAに接続されておらず、シフト可能な歯車Z9,Z10のいずれもカウンタシャフトVに接続されていない。したがって、内燃機関2からドライブシャフトAには力は伝達されない。したがって、内燃機関2は機能的にトランスミッション4に連結されていない、またはトランスミッション4と共に動くようには連結されていない。
【0039】
第1の伝動ギヤ段G1のシフトのために、第2の噛み合いクラッチK2は、第1の伝動ギヤ段G1のための歯車Z3の方向に動かされる。これにより、第1の噛み合いエレメントK2.1の噛み合い歯列と、第1の伝動ギヤ段G1の歯車Z3と一体に形成された第2の噛み合いエレメントK2.2の噛み合い歯列とは互いに噛み合わせられる。その結果、第1の伝動ギヤ段G1のための歯車Z3が、第2の噛み合いクラッチK2を介して相対回動不能にドライブシャフトAに接続されるので、カウンタシャフトVは、第1の伝動ギヤ段G1のための歯車対によって、機能的に歯車Z1,Z2に接続され、したがって共に動くように連結させられる。トランスミッション4は今や、第1のギヤ位置にシフトされている。
【0040】
車両Fの走行中に、第2の伝動ギヤ段G2のシフトのために、例えば、第2の噛み合いクラッチK2の第1の噛み合いエレメントK2.1は、第2の伝動ギヤ段G2のための歯車Z4の方向に動かされ、第1の噛み合いエレメントK2.1の噛み合い歯列と、第2の伝動ギヤ段G2の歯車Z4と一体に形成された第2の噛み合いエレメントK2.2の噛み合い歯列とは、互いに噛み合わせられる。その結果、第2の伝動ギヤ段G2のための歯車Z4が、第2の噛み合いクラッチK2を介して相対回動不能にドライブシャフトAに接続されるので、カウンタシャフトVは、第2の伝動ギヤ段G2のための歯車対によって、機能的に、特に共に動くように歯車Z1,Z2に接続される。トランスミッション4は今や、第2のギヤ位置にシフトされている。
【0041】
第3の伝動ギヤ段G3および第4の伝動ギヤ段G4のシフトのために、第1の噛み合いクラッチK1と同様に、上述した工程形式が行われる。
【0042】
従来の駆動ユニット1では、シフトプロセスを穏やかに行うために、例えば、噛み合いクラッチK1,K2の側方に配置される同期化リングの形態のシンクロ機構が使用されている。このようなシンクロ機構は、ギヤ段が入れられる前に、相応の歯車Z1~Z13の回転数を、相応のシャフトの回転数に適合させる。本発明による駆動ユニット1では、このような形式のシンクロユニットを省くことができる。
【0043】
さらに、シフトプロセス中は、電気モータ3が駆動ユニット1に固定的に連結されていることに基づき、車両Fの駆動を行い、これにより、シフトプロセス中に通常生じるトルクの低下を補償することができる。このために、電気モータ3はカウンタシャフトVに直接、ひいてはトランスミッション4の最終変速比を含む、被駆動ユニット5を駆動制御する歯車Z1,Z2に直接、接続可能である。これについて、以下に詳しく説明する。
【0044】
電気モータ3は、例えば電気的な牽引機である。電気モータ3は、別個の入力軸E2を介してトランスミッション4に機械的に接続されている。このために、トランスミッション4は、歯車Z12,Z13を含む中間歯車対を有している。歯車Z13は、第1の伝動ギヤ段G1の、ドライブシャフトA上に配置された歯車Z3に常に噛み合っており、歯車Z3はさらに、第1の伝動ギヤ段G1の、カウンタシャフトV上に配置された歯車Z7に常に噛み合っている。
【0045】
第2の噛み合いクラッチK2が開放状態にある場合には、トランスミッション4はニュートラル位置Nにあり、内燃機関2はトランスミッション4に機能的に連結されていない。すなわち、力の伝達は、電気モータ3から直接、カウンタシャフトVへと行われ、カウンタシャフトVは、最終変速比を介して歯車Z1,Z2によって被駆動ユニット5を駆動する。換言すると、内燃機関2が、トランスミッション4に機能的に連結されていない限りは、電気モータ3は、被駆動ユニット5を直接駆動する。
【0046】
したがって、電気モータ3は固定的に、すなわち、固定された変速比でトランスミッション4に接続されており、電気モータ3のみが駆動アッセンブリとしてトランスミッション4に接続されている限りは、伝動ギヤ段G1~G4の切替は不可能である。
【0047】
変速比は、駆動アッセンブリ、この場合、電気モータ3の回転数と、被駆動ユニット5の回転数との商として定義される。変速比の値が1よりも大きい場合は、いわゆる減速比と呼ばれ、この場合、トランスミッション4における動力伝達の方向で回転数が減少するが伝達トルクは増大する。駆動ユニット1の図示した実施例では、電気モータ3は、減速比で被駆動ユニット5に連結されている。
【0048】
図示した実施例によりさらにわかるように、トランスミッション4は発進クラッチを有していない。したがって、発進過程では車両Fの駆動は必然的に電気モータ3によって行われる。所定の走行速度を超えると、第1の伝動ギヤ段G1に入れることができるので、内燃機関2は機能的にトランスミッション4に接続される。電気モータ3は、トランスミッション4との固定的な接続により、どの時点でもトランスミッションに接続されているので、発進過程に加えて付加的に、シフトプロセス中に一時的に、車両Fのための駆動アッセンブリとして使用することもできる。さらに、車両Fの後退走行過程は電気モータ3によって駆動されるので、トランスミッション4ではバックギヤを省くこともできる。
【0049】
発進クラッチの省略、ならびに例えばシンクロ機構およびバックギヤのような、コストのかかるトランスミッション構成要素の省略により、駆動ユニット1の特にコンパクトな設計が可能となり、特に、トランスミッション4を従来技術よりも単純化することができ、ひいてはより安価に製造することができる。走行快適性は、電気モータ3を駆動アッセンブリとして一時的に使用することに基づき、ほとんどまたは全く制限されない。これは特に、電気モータ3が、車両Fの電気運転、快適に行うことができる発進過程、およびシフトを、ほぼトルクの低下なしに可能とすることにより達成される。
【0050】
電気モータ3が、第1の伝動ギヤ段G1のための歯車対を介して被駆動ユニット5に接続可能であることにより、コンパクトな設計がさらに促進される。特に、ドライブシャフトA上に可動に配置された歯車Z3は、トランスミッション4の切替エレメントとしても、被駆動ユニット5への電気モータ3の連結のための中間歯車としても使用される。したがって、これにより、内燃機関2のために既に設けられていたトランスミッション構成要素を、電気モータ3から被駆動ユニット5への動力伝達のために利用することができる。
【0051】
さらに、ドライブシャフトA上に可動に配置された歯車Z3,Z4および対向する被駆動ユニット5の配置により、車両Fのホイールセット幅を小さくすることができる。これによりさらに、電気モータ3用の中間歯車としての歯車Z3の利用が可能となる。
【0052】
第3の伝動ギヤ段G3および第4の伝動ギヤ段G4の、カウンタシャフトV上に可動に配置された歯車Z9,Z10の配置により、構成スペース上の理由から、ならびにトランスミッション4の必要な変速比を実現するために、スタータジェネレータ6の直接的な接続が可能となる。
【0053】
記載した駆動ユニット1は、代替的に、直列式のハイブリッド駆動装置としても使用することができる。この場合、内燃機関2が作動中の状態で、トランスミッション4がニュートラル位置Nにあり、内燃機関2が被駆動ユニット5と連結されておらず、車両Fのバッテリ(図示せず)がスタータジェネレータ6から充電される場合に、電気モータ3と被駆動ユニット5との間の動力伝達が遮断されない。代替的にまたは付加的に、スタータジェネレータ6は、電気モータ3のためのエネルギを直接提供することもできる。
【0054】
この場合、スタータジェネレータ6は、シフトプロセスにおいて内燃機関2の回転数同期化のためにも使用される。これにより、ここでも機械的なシンクロ機構要素を省くことができるので、構成スペースの削減、トランスミッション4のコスト削減、ならびにトランスミッション損失の低減が可能となる。
【0055】
さらに、スタータジェネレータ6によって、クランクシャフトスタータ、特に始動電動機、および従来のオルタネータを省くことができる。特に、スタータジェネレータ6が、内燃機関2のドライブシャフトAに、第4の伝動ギヤ段G4の、ドライブシャフトA上に固定的に配置された歯車Z6を介して接続されていることにより、必要な変速比および構成スペースを考慮しながら、最小限の追加部品数で、トランスミッション4にスタータジェネレータ6を統合することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 駆動ユニット
2 内燃機関
3 電気モータ
4 トランスミッション
5 被駆動ユニット
6 電気的なスタータジェネレータ
A ドライブシャフト
A1,A2 ドライブシャフト区分
E1,E2,E3 入力軸
F 車両
G1~G4 伝動ギヤ段
K1,K2 噛み合いクラッチ
K1.1,K2.1 第1の噛み合いエレメント
K2.1,K2.2 第2の噛み合いエレメント
N ニュートラル位置
V カウンタシャフト
V1,V2 シャフト区分
Z1~Z13 歯車
図1
図2
【国際調査報告】