(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(54)【発明の名称】排出ガス浄化装置、当該排出ガス浄化装置を具備する内燃エンジン、及び排出ガスを規制するための方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20220518BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20220518BHJP
F01N 3/36 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
F01N3/20 K
F01N3/24 E
F01N3/24 P
F01N3/24 T
F01N3/24 L
F01N3/36 D
F01N3/36 N
F01N3/20 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557182
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(85)【翻訳文提出日】2021-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2020058261
(87)【国際公開番号】W WO2020193595
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】102019204298.8
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019218204.6
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500242786
【氏名又は名称】フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト・スツォラク
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ズスドルフ
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA04
3G091AA05
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3G091HA39
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3G091HA46
3G091HB03
3G091HB05
3G091HB06
3G091HB07
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの排出ガス配管(3)と、排出ガス配管(3)に接続されている少なくとも1つの粒子フィルタ(31)、及び/又は排出ガス配管(3)に接続されている少なくとも1つの排出ガス触媒コンバータ(32,33)と、粒子フィルタ(31)及び/又は排出ガス触媒コンバータ(32)の上流に配置されており、且つ、供給された燃料を排出ガスと反応させるように構成されている加熱式触媒(2)であって、加熱式触媒(2)が、入口(21)及び出口(22)を具備するハウジング(25)を有しており、ハウジング(25)が、排出ガス配管(3)を流れる排出ガスの部分流れが入口(21)を通じてハウジング(25)に供給され、ハウジング(25)から出口(22)を通じて入口(21)の下流の排出ガス配管(3)に排出されるように、排出ガス配管(3)に接続されている、加熱式触媒(2)と、を備えている排出ガス浄化装置に関する。本発明は、上述の排出ガス浄化装置を具備する内燃エンジンと、排出ガスを浄化するための方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの排出ガス配管(3)と、前記排出ガス配管(3)に接続されている少なくとも1つの粒子フィルタ(31)、及び/又は前記排出ガス配管(3)に接続されている少なくとも1つの排出ガス触媒コンバータ(32,33)と、を備えている排出ガス浄化装置(1)において、
加熱式触媒(2)が、前記粒子フィルタ(31)及び/又は前記排出ガス触媒コンバータ(32)の上流に配置されており、且つ、供給された燃料を排出ガスと反応させるように構成されており、前記加熱式触媒(2)が、入口(21)及び出口(22)を具備するハウジング(25)を有しており、前記ハウジング(25)が、前記排出ガス配管(3)を流れる排出ガスの部分流れが前記入口(21)を通じて前記ハウジング(25)に供給され、前記ハウジング(25)から前記出口(22)を通じて前記入口(21)の下流の前記排出ガス配管(3)に排出されるように、前記排出ガス配管(3)に接続されていることを特徴とする排出ガス浄化装置。
【請求項2】
前記排出ガス浄化装置(1)が、排気ガスを前記加熱式触媒(2)に供給するように構成されている多孔板(4)を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の排出ガス浄化装置。
【請求項3】
前記加熱式触媒(2)が、電気的に加熱可能な担体(5)を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の排出ガス浄化装置。
【請求項4】
燃料板(6)が、多孔板(4)の反対側に位置する前記加熱式触媒(2)の側に配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の排出ガス浄化装置。
【請求項5】
前記燃料板(6)が、毛管輸送装置を備えていることを特徴とする請求項4に記載の排出ガス浄化装置。
【請求項6】
前記加熱式触媒(2)が、空気供給装置を含んでいることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の排出ガス浄化装置。
【請求項7】
減圧装置(7)が、前記入口(21)と前記出口(22)との間において前記排出ガス配管(3)に設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の排出ガス浄化装置。
【請求項8】
前記減圧装置(7)が、絞り弁、混合器、又はターボ過給機(86)のタービン(861)とされることを特徴とする請求項7に記載の排出ガス浄化装置。
【請求項9】
前記加熱式触媒(2)の前記ハウジング(25)の全体が、前記排出ガス配管(3)の内側に配置されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の排出ガス浄化装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の排出ガス浄化装置(1)を有していることを特徴とする内燃エンジン(8)。
【請求項11】
排出ガスを浄化するための方法であって、排出ガスが、少なくとも1つの排出ガス配管(3)によって、少なくとも1つの粒子フィルタ(31)及び/又は少なくとも1つの排出ガス触媒コンバータ(32,33)に供給される、前記方法において、
加熱式触媒(2)が、前記粒子フィルタ(31)又は前記排出ガス触媒コンバータ(32,33)の上流に配置されており、少なくとも燃料及び排出ガスが、前記加熱式触媒に供給され、燃料の少なくとも一部分が、前記粒子フィルタ(31)又は前記排出ガス触媒コンバータ(32)を加熱するように、排出ガスと反応され、前記加熱式触媒(2)が、入口(21)及び出口(22)を具備するハウジング(25)を有しており、前記ハウジング(25)が、前記排出ガス配管(3)を流れる排出ガスの部分流れが前記入口(21)を通じて前記ハウジング(25)に供給され、前記ハウジング(25)から前記出口(22)を通じて前記入口(21)の下流の前記排出ガス配管(3)に排出されるように、前記排出ガス配管(3)に接続されていることを特徴とする方法。
【請求項12】
排出ガスが、少なくとも1つの多孔板(4)を介して前記加熱式触媒(2)に供給されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱式触媒(2)が、少なくとも一時的に電気的に加熱されることを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
燃料の大部分が、第1の動作状態において排出ガスで酸化され、第2の動作状態において改質油を生成するように反応されることを特徴とする請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
燃料が、多孔板(4)の反対側に位置する前記加熱式触媒(2)の側に配置されている燃料板(6)に供給されることを特徴とする請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記部分流れが、減圧装置(7)の上流において前記加熱式触媒(2)に導入され、前記減圧装置(7)の下流において前記排出ガス配管(3)に排出されることを特徴とする請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
減圧装置(7)が、絞り弁、混合器、又はターボ過給機(86)のタービン(861)とされることを特徴とする請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの排出ガス配管と、排出ガス配管に接続されている少なくとも1つの粒子フィルタ、及び/又は排出ガス配管に接続されている少なくとも1つの排出ガス触媒コンバータと、を有している排出ガス浄化装置に関する。また、本発明は、このような排出ガス浄化装置を具備する内燃エンジン、及び排出ガスを浄化するための対応する方法に関する。上述のタイプの装置及び方法は、例えば乗用車、トラック、及び建設機械のような自動車両並びに船舶で利用可能とされる。さらに、当該装置及び方法は、例えばケーブルカー又は発電機を駆動するための、定置式で動作する内燃エンジンで利用可能とされる。
【0002】
内燃エンジンの汚染物質の排出を低減するために、一酸化炭素及び未燃焼炭化水素を酸化するための、並びに/又は窒素酸化物を低減するための排出ガス触媒コンバータを内燃エンジンの排出ガスケットで利用することが、実際に知られている。幾つかの場合において、排出ガス流から微視的に小さい煤粒子を除去するための粒子フィルタも利用されており、当該粒子フィルタは、当該粒子フィルタに負荷が作用した場合に、当該粒子フィルタを再生させることができる。
【0003】
当該排出ガス浄化装置及び方法のすべてが、効率的な動作のための予め決定可能な動作温度又は動作温度範囲を要求する点において共通している。例えば、SCRシステムは、90%より高い変換率を獲得するために200℃より高い温度を要求する。三元触媒は、約300℃より高い動作温度を要求する。また、粒子フィルタを動的に再生するためには、500℃より高い温度を設定する必要がある。上述の温度より低い温度では、当該粒子フィルタ及び/又は排出ガス触媒コンバータの効率は著しく低下する。しかしながら、現代の内燃エンジンの効率を向上させるためには、排出ガス温度を継続的に降下させることが必要とされる。多くの動作状態において、排出ガス温度を200℃より低くすることは、例外ではなく標準的なことである。さらに、内燃エンジンのコールドスタートの後に、排出ガス浄化を動作温度に急速に引き上げる必要がある。これにより、コールドスタート段階が短縮され、汚染物質の排出量が削減される。特に駆動系を部分的に電動化すると、内燃エンジンの補助無く走行しなければならない道路区間が必然的に発生するので、場合によっては1回の走行中に数度のコールドスタートを行なう必要がある。
【0004】
このような問題を解決するために、非特許文献1には、排出ガス触媒コンバータの上流において電気抵抗ヒータを排出ガスケットに配置することが開示されている。当該電気抵抗ヒータは、3kW~4kWの電気的な加熱力で加熱可能とされる。このようにして発生した熱は、効率的な排出ガス後処理を可能にするために、排出ガス触媒コンバータが急速に又は完全に当該排出ガス触媒コンバータの動作温度に到達するように、排出ガス流を介して排出ガス触媒コンバータに導入される。
【0005】
一方、このような公知の方法の欠点は、従来技術に基づく12ボルトの車載電源システムによっては高い電気的な加熱力が供給することができないことである。さらに、抵抗加熱器は、排出ガス配管の全開流量の中に配置されており、内燃エンジンの全負荷動作状態又は全負荷動作状態に近い動作状態において、増加した排出ガスの背圧を発生させる。当該排出ガス背圧は、内燃エンジンの出力を低下させ、及び/又は燃料消費を増加させる。
【0006】
従って、部分負荷運転時の低い排出ガス温度であっても確実に機能し、コールドスタート後の排出ガス後処理システムを急速に加熱すると同時に、内燃エンジンが全負荷で動作する場合の燃料消費量の望ましくない増加を回避する、排出ガスを浄化するための方法及び装置に対するニーズが変わらず存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Friedrich Graf, Stefan Lauer, Johannes Hofstetter, Mattia Perugini: Optimales Thermomanagement und Elektrifizierung in 48-V-Hybriden [Optimum thermal management and electrification in 48-V hybrids]; MTZ, 1 October 2018, 42-47
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
当該目的は、本発明において、請求項1に記載の装置、請求項10に記載の内燃エンジン、及び請求項11に記載の方法によって達成される。本発明の有利なさらなる発展形態については、従属請求項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の幾つかの実施例は、少なくとも1つの排出ガス配管を有している排出ガス浄化装置を提案するものである。少なくとも1つの粒子フィルタ及び/又は少なくとも1つの排出ガス触媒コンバータが、少なくとも1つの排出ガス配管に接続されている。従って、排出ガス配管は、排出ガスを、例えば内燃エンジンのような当該排出ガスの生成地点から排出ガス浄化装置に移動させ、最終的には排出ガス浄化装置から外部環境に移動させるように構成されている。従って、本発明の目的を達成させるために、排出ガス配管は、例えば排出ガス配管、排出ガスマニホールド、及び/又は排出ガス触媒コンバータ若しくは粒子フィルタのハウジングのような、排出ガス流を案内するための装置を意味することに留意すべきである。
【0010】
本発明の幾つかの実施例では、排出ガス浄化装置は、少なくとも1つの粒子フィルタを含んでいる。本発明の他の実施例では、少なくとも1つの排出ガス触媒コンバータが、代替的又は付加的に設けられている。排気ガス触媒コンバータは、酸化触媒、SCR触媒、三元触媒、又は貯蔵触媒とされる。従って、排出ガス触媒コンバータは、未燃焼炭化水素及び/又は一酸化炭素及び/又は一酸化窒素を酸化させるように構成されているので、排出ガスの質量流量に占めるこれらガスの割合を減少させ、CO2及びH2Oの割合を増加させることができる。代替的又は付加的には、排出ガス触媒コンバータが、例えばNH3との反応によって例えば尿素から窒素酸化物(NOx)の割合を減少させるために設けられている。本発明の幾つかの実施例では、別体の排出ガス触媒コンバータが、このために設けられている。本発明の他の実施例では、単一の排出ガス触媒コンバータによって、窒素酸化物の還元と、一酸化炭素及び炭化水素の酸化との両方が実施可能とされる。
【0011】
例えば、粒子フィルタ及び/又は排出ガス触媒コンバータの以下に示す組み合わせが、排出ガス配管に接続可能とされる。
第1の例示的な実施例:酸化触媒-SCR被覆煤粒子フィルタ-SCR触媒-アンモニア酸化触媒
第2の例示的な実施例:NOx貯蔵触媒-SCR被覆煤粒子フィルタ-SCR触媒-アンモニア酸化触媒
第3の例示的な実施例:酸化触媒-煤粒子フィルタ-SCR触媒
第4の例示的な実施例:三元触媒-煤粒子フィルタ
第5の例示的な実施例:三元触媒
第6の例示的な実施例:酸化触媒-煤粒子フィルタ-NOx貯蔵触媒
第7の例示的な実施例:酸化触媒-煤粒子フィルタ-SCR触媒
【0012】
粒子フィルタ及び/又は少なくとも1つの排出ガス触媒コンバータを、低負荷且つ低排出ガス温度の動作状態又はコールドスタート後の動作状態における動作温度にするために、本発明は、少なくとも1つの加熱式触媒を排出ガスケットの部分流れに配置させることを提案するものである。以下の説明及び特許請求の範囲を参照する差に、例えば“加熱式触媒”との記載において、その数量は不定であり、“一の(a)”を暗黙するものではない。このことは、複数の加熱式触媒の存在を排除することを意味する訳ではない。加熱式触媒は、燃料を排出ガスと反応させるために設けられている。このような反応としては、酸化反応、改質反応、及びクラッキング反応が挙げられる。このために、加熱式触媒における燃料の事前に決定可能な好ましい反応を発生させる排出ガスの組成を実現するように、内燃エンジンは制御可能とされる。さらに、供給される燃料量が、動作状態それぞれにおいて望ましい加熱式触媒と燃料との反応に影響を及ぼす。
【0013】
本発明の幾つかの実施例では、内燃エンジン自体が当該内燃エンジンの負荷要求それぞれに最適に対応するように動作している際には、供給される燃料量のみが、動作状態それぞれにおいて望ましい加熱式触媒と燃料との反応に影響を及ぼす。例えば、内燃エンジンは、結果として生じる排出ガスの組成を考慮する必要なく、最適な燃料消費量、最適な出力、最適な点検間隔、又は最適なトルクで動作可能である。従来技術による要件とは異なるので、排出ガス後処理の要件に起因して必ずしも内燃エンジンの動作制御が損なわれないので、その結果として、消費量の増加、オイルの希釈、熱問題、又は出力の低下を招くことを回避することができる。
【0014】
例えば、改質油は、第1の動作状態において、比較的長鎖の炭化水素を含有するガソリン又はディーゼル燃料から、加熱式触媒で生成される。本明細書を理解するためには、改質油は、主に短鎖のアルケン及び/又は一酸化炭素及び/又は水素の混合物を意味することに留意すべきである。加熱式触媒で生成された改質油は、排出ガス触媒コンバータ及び/又は粒子フィルタにおいて既に低温で発熱反応されているので、これら成分を加熱するために直接利用可能とされる。第1の動作状態では、加熱式触媒は、空気率l<<1を条件として動作する。
【0015】
さらに、第2の動作状態においては、ガソリン又はディーゼル燃料の大部分又はすべてが酸化されることによって、発熱反応により排気ガスが加熱され、排出ガス触媒コンバータ及び/又は粒子フィルタを加熱するために利用可能とされる。第2の動作状態では、加熱式触媒は、空気率l>=1を条件として動作する。第2の動作状態は、排出ガス触媒コンバータを着火温度まで上昇させるために、コールドスタートの直後に選択される。その後に、第1の動作状態に切替可能となる。これにより、例えば粒子フィルタ又はSCR触媒のような下流の構成要素も加熱するために、より高い出力を供給することができる。第2の動作状態は、コールドスタート後に、且つ、第1の動作状態に切り替わる前に、約20秒~約120秒の間維持される。このことは、排出ガス後処理システムの酸化触媒が、約150℃より高い温度、約160℃より高い温度、約180℃より高い温度、又は約200℃より高い温度に到達した場合に実施される。
【0016】
第3の動作状態では、混合動作が可能であり、燃料と加熱式触媒との発熱反応によって熱が発生されると共に、燃料の一部分が改質油を生成するために反応される。
【0017】
さらに、いずれの動作状態であっても、燃料の一部分が、化学反応させることなく、加熱式触媒で単に気化させることができる。また、この燃料蒸気は、排出ガス触媒コンバータ及び/又は粒子フィルタで発熱反応されるので、これら成分を加熱するために直接利用可能とされる。
【0018】
本発明の幾つかの実施例では、排出ガスは、酸素及び/又は窒素及び/又は窒素酸化物及び/又は水素及び/又は水及び/又は一酸化炭素及び/又は二酸化炭素及び/又は炭化水素を含むか、又は酸素及び/又は窒素及び/又は窒素酸化物及び/又は水素及び/又は水及び/又は一酸化炭素及び/又は二酸化炭素及び/又は炭化水素から成る。本発明の幾つかの実施例では、排出ガスは、約14%~約17%又は約10%~約14%の酸素含有量を有している。本発明における加熱式触媒では、上述の成分の一部又はすべてが、供給された燃料と反応可能である。
【0019】
本発明の幾つかの実施例は、少なくとも幾つかの動作状態において、加熱式触媒が、入口及び出口を具備するハウジングを有しており、ハウジングが、排出ガス配管を流れる排出ガスの部分流れが入口を通じてハウジングに供給され、ハウジングから出口を通じて入口の下流の排出ガス配管に排出されるように、排出ガス配管に接続されていることを提案するものである。従って、既知のシステムとは異なり、排出ガス流の部分流れではなく、そのすべてが加熱式触媒を通過する。このことは、排出ガス後処理システムを加熱するのに十分であると同時に、全負荷動作状態又は全負荷動作状態に近い動作状態において排出ガスの背圧を小さくすることができる。加熱式触媒が必要とされない場合には、排出ガス配管の大部分の断面又は全断面が、排出ガスを排出するために継続的に利用可能であるからである。従って、本発明は、特に全負荷領域において排出ガスの低い背圧、ひいては内燃エンジンの燃料効率に優れた動作を実現する一方、コールドスタート後又は低部分負荷領域において低い一般的な排出ガス温度の排出ガス後処理システムの急速加熱を実現することができる。
【0020】
本発明の幾つかの実施例は、少なくとも1つの排出ガス配管と、排出ガス配管に接続されている少なくとも1つの粒子フィルタ、及び/又は排出ガス配管に接続されている少なくとも1つの排出ガス触媒コンバータと、を備えている排出ガス浄化装置であって、加熱式触媒が、粒子フィルタ及び/又は排出ガス触媒コンバータの上流に配置されており、且つ、供給された燃料を排出ガスと反応させるように構成されており、加熱式触媒が、入口及び出口を具備するハウジングを有しており、ハウジングが、排出ガス配管を流れる排出ガスの部分流れが入口を通じてハウジングに供給され、ハウジングから出口を通じて入口の下流の排出ガス配管に排出されるように、排出ガス配管に接続されており、加熱式触媒のハウジングの全体が、排出ガス配管の内部に配置されていることを特徴とする排出ガス浄化装置に関する。
【0021】
本発明の幾つかの実施例では、燃料の反応に影響を与えるために、幾つかの動作状態において、排出ガスに加えて周囲空気が、加熱式触媒に供給される。周囲空気は、排出ガス配管又は別体の空気供給装置を介して、加熱式触媒に供給される。空気供給装置は、開ループ方式又は閉ループ方式で供給される周囲空気の量を制御するように構成されている。このために、空気供給装置は、制御弁及び/又は絞り弁を含んでいる。
【0022】
本発明の幾つかの実施例では、加熱式触媒を通過する部分流れは、約10%~約90%の割合、約15%~約50%の割合、約10%~約20%の割合、又は約15%~約30%の割合とされる。本発明の幾つかの実施例では、加熱式触媒を通過する部分流れは、幾つかの動作状態において、約10%未満、又は約5%未満、又は約1%未満、又は約0%とされる。すなわち、排出ガスのさらなる加熱又は排出ガス浄化装置が望ましくない場合には、排出ガスは加熱式触媒を通じて流れない。
【0023】
本発明の幾つかの実施例では、排出ガス浄化装置は、排出ガスを加熱式触媒に供給するように構成されている多孔板を含んでいる。多孔板は、金属又は合金から作られており、実際の触媒材料又は触媒担体を少なくとも部分的に又は完全に覆っている。本発明の幾つかの実施例では、多孔板は平坦とされる。本発明の他の実施例では、多孔板は、例えば球状の縁無し帽又は円筒形ジャケットの表面の形状を有するように、少なくとも1つの空間方向に湾曲している。
【0024】
多孔板は、排出ガスが加熱式触媒に接触するように流れる際に通過する複数の穴、孔、又は開口部を含んでいる。穴、孔、又は開口部は、規則的なパターン又は不規則なパターンで配置されている。本発明の幾つかの実施例では、穴又は開口部は、約0.5mm~約1.5mm、約0.3mm~約1.0mm、又は約1.0mm~約3.5mmの直径を有している。穴、孔、又は開口部の断面は、多角形状、円形状、又は不規則な形状であっても良い。穴又は開口部の数、間隔、大きさ、及び配置は、触媒担体及び/若しくは加熱式触媒に対する排出ガスのアクセスを均一化するように、並びに/又は所望の加熱力を得るように、並びに/又は排出ガスの分岐した部分流れの事前決定可能な大きさ及び/若しくは許容圧力損失を実現するように、コンピュータシミュレーションによって決定される。これにより、燃料と排気ガスとの反応がほとんど若しくは全く関与しないホットスポット又は空間領域を加熱式触媒に発生させることなく、加熱式触媒全体を効率的に利用することができる。本発明の幾つかの実施例では、多孔板は、例えば焼結体、発泡体、織布、編組、又はニットウェアのような多孔質材料を含んでいるか、又はそのような多孔質材料から構成されている。
【0025】
本発明の幾つかの実施例では、加熱式触媒は、電気的に加熱可能な支持体を備えている。本発明の他の実施例では、代替的又は付加的に、ハウジング及び/又はハウジング部品及び/又は燃料板及び/又は多孔板が、電気的に加熱可能とされるか、又は少なくとも一時的に電気的に加熱される。その結果として、加熱式触媒は、車載電源システムからの付加的な電気エネルギによって予熱可能とされる。排出ガス後処理システムの他の構成要素は、加熱式触媒が最初に動作温度に到達した後に、加熱式触媒を利用した化学的及び電気的エネルギによって加熱される。従って、本発明では、排出ガス後処理システム全体を動作温度に至るまで電気的に加熱する必要が無い。逆に、加熱式触媒のみが電気的に加熱可能とされる。加熱式触媒は、内燃エンジンの近傍に据え付けることによって気流から保護することができ、排出ガス触媒コンバータ又は粒子フィルタより小型であるので、必要な電気加熱エネルギを低減することができる。
【0026】
本発明の幾つかの実施例では、加熱式触媒は、直流電流の抵抗熱によって加熱することができる導電性の担体を含んでいる。本発明の他の実施例では、電熱線が、担体並びに/又は加熱式触媒のハウジング及び/若しくは他の部分に埋設されている。付加的又は代替的には、加熱式触媒の担体が、壁面加熱器に熱的に接続されている。
【0027】
本発明の幾つかの実施例では、加熱式触媒は、約500W~約1500W、又は約700W~約1300W、又は約800W~約1200W、又は約500W~約4000W、又は約700W~約3000W、又は約800W~約2000Wの電力で予熱される。加熱式触媒は、その寸法が比較的小さいことに起因して、排出ガス触媒コンバータと比較して低い熱容量を有しているので、当該加熱式触媒は、短時間でその動作温度に到達することができる。本発明の幾つかの実施例では、電気加熱は、約5秒~約60秒の間、又は約10秒~約30秒の間、又は約5秒~約20秒の間で実施される。本発明の幾つかの実施例では、電気加熱は、加熱式触媒が約200℃~約700℃の温度、約300℃~約500℃の温度、又は約250℃~約350℃の温度に達するまで実施される。
【0028】
本発明の幾つかの実施例では、燃料板が、多孔板の反対側に位置する加熱式触媒の側に配置されている。燃料板は、燃料が加熱式触媒又は触媒担体と均一に接触するように、燃料を均一に分布させることができる。このために、燃料は、ポンプによって燃料板に供給され、薄膜を形成するように当該燃料板上を流れる。対流及び放射によって熱が燃料板に伝達されるので、燃料膜の温度が上昇するに従って、燃料膜が蒸発して加熱式触媒の触媒担体に浸透する。上述のように、燃料が排出ガスと共に反応されるので、加熱された排出ガス、改質油、及び/又は燃料蒸気が排出ガス配管に向かって放出される。燃料板を均一に加熱するために、燃料板は、例えばアルミニウムや銅のような良好な熱伝導性を有する金属又は合金から作られている。
【0029】
本発明の幾つかの実施例では、燃料板は、毛細管輸送装置を備えている。このような毛細管輸送装置は、フライス加工、エッチング、又は積層造形されたチャネルの形状とされる。このようなチャネルの形状、数、及び大きさは、燃料が燃料板に均一に分布されるように、コンピュータシミュレーションで最適化される。本発明の他の実施例では、不織布、織布、ニットウェア、発泡体、及び/又はウィックが燃料板に配置されている。その結果として、毛細管力に起因して、燃料板によって形成された平面において燃料が輸送可能となる。
【0030】
本発明の幾つかの実施例では、加熱式触媒のハウジングは、約55mm~約120mm又は約65mm~約100mmの直径又は円周を有している。このようなハウジングの高さは、約20mm~約50mmとされる。その結果として、加熱式触媒の設置スペースは非常に小さく、且つ、加熱式触媒の熱質量は小さいので、加熱式触媒の急速な反応を実現することができる。それにも関わらず、加熱式触媒によって提供される化学的及び電気的な加熱力は、一般的な排出ガス後処理システムを動作温度に至るまで急速に加熱するのに十分な大きい。言うまでもなく、より大きな加熱式触媒であれば、例えばトラック、船舶、若しくは建設機械で利用する大型エンジンのために、又は、定置運転のためにも利用可能である。
【0031】
本発明の幾つかの実施例では、減圧装置が、入口と出口との間において排出ガス配管の内部に設けられている。当該減圧装置は、差圧を発生させることができるので、排出ガスの部分流れが入口を通じて加熱式触媒のハウジングに流入し、出口を介して再び加熱式触媒から出るように、加熱式触媒の入口における排出ガスの圧力を加熱式触媒の出口における圧力より大きくすることができるという効果を有している。本発明の幾つかの実施例では、減圧装置によって発生される圧力差は、約5mbar~約50mbarの間、又は約8mbar~約30mbarの間とすることができる。減圧装置によって発生される圧力差は、流体が加熱式触媒を通じて流れる場合に発生される圧力損失より大きい。これにより、加熱式触媒を通過する排出ガスの部分流れを十分に大きくすることができる。
【0032】
本発明の幾つかの実施例では、減圧装置は、第1の動作状態において、より大きい排出ガスの背圧を発生させるように、第2の動作状態において、より低い排出ガスの背圧を発生させるように切り替え可能である。従って、加熱式触媒の動作を必要とする動作状態では、加熱式触媒の入口における排出ガスの背圧は、排出ガスの相当の部分流れが加熱式触媒を通過するように大きくすることができる。加熱式触媒が必要とされない場合には、減圧装置の排出ガスの背圧は、全負荷時における内燃エンジンのガス交換をほとんど損なわないように低減させることができる。
【0033】
本発明の幾つかの実施例では、減圧装置は、加熱式触媒を通過する部分流れが所定の目標値に制御されるように制御可能とされる。
【0034】
本発明の幾つかの実施例では、減圧装置は、絞り弁、混合器、又はターボ過給機のタービンとされる。後者の場合、加熱式触媒の入口は、ターボ過給機のタービンの入口側に位置しており、加熱式触媒の出口は、ターボ過給機の出口側に位置している。従って、いずれにせよ、タービンによって発生される圧力損失が、加熱式触媒を通じた流れを可能にするために同時に利用される。
【0035】
本発明の幾つかの実施例では、遮断弁が、加熱式触媒の入口に設けられている。遮断弁は、電磁弁であるか、電磁弁を含んでいるか、又はアクチュエータによって移動可能とされる。このようにして、加熱式触媒が必要とされない場合には、部分流れが加熱式触媒を通じて流れることなく、完全な排出ガスの流れが排出ガス配管を通じて流れる。従って、排出ガス流からの堆積物が加熱式触媒に付着することを回避することができるので、耐用年数が増大する。
【0036】
本発明の幾つかの実施例では、加熱式触媒のハウジングの全体が、排出ガス配管の内部に配置されている。これにより、小型で機械的体制を有する構成を実現することができるので、動作の信頼性を高めることができる。この目的のために、本発明の幾つかの実施例では、排出ガス配管の断面を、加熱式触媒が配置されている縦断面において拡大することができる。
【0037】
本発明について、本発明の基本的な発明概念を制限することなく、実施例及び図面を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明における加熱式触媒の第1の実施例を表わす。
【
図2】第1の実施例における加熱式触媒の横断面図である。
【
図3】第1の実施例における加熱式触媒の分解図である。
【
図4】内燃エンジンを利用した本発明における排出ガス浄化装置を表わす。
【
図5】本発明における加熱式触媒の異なる設置例を表わす。
【
図6】本発明における加熱式触媒の第2の実施例の縦断面である。
【
図7】本発明における加熱式触媒の第2の実施例の横断面図である。
【
図8】本発明における加熱式触媒の第3の実施例の縦断面である。
【
図9】本発明における加熱式触媒の第3の実施例の横断面図である。
【
図10】加熱式触媒に供給される質量流量と、加熱式触媒で生成される改質油の組成とを示す。
【
図11】コールドスタート後における酸化触媒及び粒子フィルタの温度対時間の関係を示す。
【
図12】排出ガス全体の質量流量、排出ガス後処理システムに供給される熱出力、及びその結果としてのSCR温度の時間変化を示す。
【
図13】WHTCに準拠した測定サイクルの最初の480秒間における、排出ガス後処理システムに供給される熱出力及びその結果としてのSCR温度対時間の関係を示す。
【
図14】WHTCに準拠したサイクルでSCR触媒を加熱した場合における電気加熱装置の加熱力と本発明における加熱式触媒の加熱力との積算値、並びに加熱に利用した燃料量を示す。
【
図15】本発明における加熱式触媒を試験するための試験台を表わす。
【
図16】全体の排出ガス質量流量、本発明における加熱式触媒に供給される排出ガス質量流量、及びこれらに含まれる酸素濃度対時間の関係を示す。
【
図17】加熱式触媒から供給される電力、供給された排気ガス質量流量に含まれる酸素濃度、及び加熱式触媒の温度の時間変化を示す。
【
図18】供給される排出ガスの質量流量及び酸素濃度を変化させた場合における、加熱式触媒の温度の時間変化を示す。
【
図19】本発明における加熱式触媒の第4の実施例を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1、
図2、及び
図3は、本発明における加熱式触媒の第1の実施例を表わすここで、
図1及び
図2は、排出ガス配管3の一部分を表わす。排出ガス配管3は、例えば内燃エンジンから発生する排出ガス流35を受容するように構成されている。
【0040】
図1及び
図2からも明らかなように、排出ガス流35は、排出ガス配管3を略直線的に通過する。部分流れ351のみが、入口21を介して、加熱式触媒2のハウジング25の内部に進行する。このようにして分岐した部分流れ351は、排出ガス配管3の内部を流れる排出ガス流全体のうち約10%~約50%、又は約15%~約30%を占めている。
【0041】
特に
図2に表わすように、入口21を通じて流入する排出ガス流351は、多孔板4を介して触媒担体5に供給される。多孔板4は、セラミック材料、金属、又は合金を含有するか、又はセラミック材料、金属、又は合金から成る。さらに、多孔板4は、排出ガスが流入する際に通過する複数の孔41を有している。孔41の数、大きさ、及び分布は、排出ガスを触媒担体5の内部に可能な限り均一に分配するように、コンピュータシミュレーションで決定される。
【0042】
それ自体が既知である方法では、触媒担体5は、例えば、焼結体、ハニカム体、発泡体、又は、排出ガスに透過可能とされる他の多孔質成形体とされる。このために、触媒担体5は、金属、合金、又はセラミック材料から作られている。触媒担体5は、触媒担体5が約500W~約1500Wの加熱力で加熱されるように、電気加熱装置を備えている。このために、電気接続部51が利用される。電気加熱エネルギは、電気接続部51を介して触媒担体5に導かれる。触媒担体5の温度は、温度センサ50によって、開ループ方式又は閉ループ方式で検出及び制御可能とされる。
【0043】
最後に、燃料板6が、多孔板と反対側の触媒担体5の側面に配置されている。燃料板6は、金属又は合金を含有しているか、又は金属又は合金から構成されており、任意に毛管輸送装置を備えている。輸送装置として、例えば、チャネルを燃料板6の表面に導入することによって、燃料が触媒担体5に面している燃料板6の表面に亘って可能な限り一様に薄膜状で分布するように、燃料を毛管輸送することができる。燃料の供給は、ポンプ65によって、開ループ方式又は閉ループ方式で制御可能とされる。本発明の幾つかの実施例では、燃料板6に利用される燃料は、内燃エンジンの主タンクから取り出される。例えば、燃料は、ガソリン又はディーゼル燃料又は天然ガス又はLPGとされる。本発明の他の実施例では、具体的には排出ガス後処理システムを加熱するために供給される燃料、例えばアルコールや揮発油が燃料板6に利用可能とされる。
【0044】
触媒担体5を通じて排出ガスによって、熱が、対流及び輻射を介して燃料板6に導入される。これにより、燃料が気化する。その後に、燃料蒸気は、上昇し触媒担体5の内部に到達する。触媒担体5の内部において、燃料上記は排出ガスと発熱反応する。結果として生じる熱は、排出ガスに部分的に供給されるので、出口22から排出ガス配管3に流れる排出ガス流352は、流入する排出ガス流351に対して相対的に加熱される。さらに、排出ガス配管3に導入された排出ガス流352は、触媒担体5で反応した燃料の成分、例えば改質油を含有している。
【0045】
本発明の幾つかの実施例では、コールドスタート後に、燃料の大部分が排出ガスで酸化される第1の動作状態を最初に選択することができる。これにより、主に、排出ガス後処理システムを加熱するために利用される熱が発生する。当該第1の動作状態では、任意であるが少なくとも時々、触媒担体5が電気的に加熱される。加熱式触媒の空気率lは、約0.7~約1とされるが、幾つかの実施例では1より大きい場合がある。
【0046】
加熱式触媒の第2の動作状態では、燃料の大部分が、主に短鎖アルケン及び/若しくは一酸化炭素及び/若しくは水素から成る、混合物を含有する又は当該混合物から成る改質油に反応する。その後に、当該改質油は、粒子フィルタや排出ガス触媒コンバータで酸化され、結果として生じる熱がこれら成分に直接導入される。この目的のために、加熱式触媒は不足当量的に機能する。すなわち、加熱式触媒の空気率lは、約0.05~約0.7、又は約0.1~約0.4とされる。
【0047】
第1の動作状態と第2の動作状態との切替は、燃料の供給量を調整することによって、及び/又は排出ガスの組成を調整することによって、及び/又は周囲空気を供給することによって行なうことができる。排出ガスの組成は、とりわけ、燃料の噴射量、ブースト圧,絞り弁の位置、噴射回数及び噴射それぞれの持続時間、噴射タイミング若しくは点火タイミング、吸気弁及び排気弁の開弁時間、開弁行程、並びに/又は排出ガス再循環弁の位置の選択によって影響を受ける。必須ではないが好ましくは、第1の動作状態と第2の動作状態との切替は、燃料の供給量を調整することによって行われる。燃料の供給量は、当該切替が実現されるように、排出ガスの組成に基づいて選択される。排出ガスの組成は、例えばラムダプローブによって少なくとも部分的に測定される。代替的又は付加的には、排出ガスの組成は、内燃エンジンの特性マップから外挿することができるので、その結果として、加熱式触媒への燃料供給量は、内燃エンジンの動作状態それぞれについての特性マップ又は特性マップの範囲から決定可能とされる。
【0048】
本発明の幾つかの実施例では、第1の動作状態と第2の動作状態との切替は、熱の入力と改質油の生成との間に複数の変化が存在するように周期的に実施可能とされる。
【0049】
本発明の幾つかの実施例では、第1の動作状態と第2の動作状態との同時適用も可能なように、複数の加熱式触媒が設けられている。
【0050】
本発明の幾つかの実施例では、燃料板6の温度は、任意の温度センサ60によって検出されるポンプ65の流量を制御するために利用される。
【0051】
また、
図2は、減圧装置7を表わす。図示の例では、当該減圧装置は、絞り弁を含んでおり、当該絞り弁の迎え角は、アクチュエータ70に影響される。従って、排出ガス流35の部分流れ351が加熱式触媒2のハウジング25を通じて流れるのに十分に大きい圧力差が入口21と出口22との間に確立されるように、コールドスタートの後に減圧装置は閉じられる。また、減圧装置7は、乱流の伴流渦が減圧装置の下流に形成されるという効果を有しており、これにより、加熱式触媒2のハウジング25から流出する部分流れ352と排出ガス配管3を流れる主流れとの効率的な混合が確実になる。排出ガス浄化装置のさらなる加熱が必要とされない程度に排出ガスの温度が高い場合には、絞り弁7を完全に開くことができる。その結果として、入口21及び出口22における排出ガスの圧力が略同一となるので、排出ガスは加熱式触媒2を通じて全く流れないか、又は排出ガスが加熱式触媒2を通じてほとんど流れない。従って、本発明における装置は、加熱式触媒を具備しない既知の排出ガスシステムと比較して、顕著に高い排出ガス背圧を有しないので、その結果として、全負荷動作状態又は略全負荷動作状態下の出力及び/又は消費について、優位性を獲得することができる。
【0052】
最後に、
図2は、減圧装置7の上流及び下流における排出ガス温度を決定する温度センサ88を表わす。これにより、加熱式触媒2を破壊する恐れがある過度に高温の排出ガスが触媒担体5に導入されなくなる。さらに、排出ガスの流れが事前決定可能な最大温度を超えるほど多くのエネルギが加熱式触媒に供給されなくなる。
【0053】
減圧装置7、ポンプ65を介した燃料供給、及び触媒担体5の電気加熱エネルギは、加熱式触媒が動作状態に基づいて開ループ方式又は閉ループ方式で最適に制御されるように、開ループ制御装置又は閉ループ制御装置87を介して制御される。
【0054】
また、
図3は、加熱式触媒2のハウジング25の分解図である。触媒担体5の下側の燃料板6と、触媒担体5の上側の多孔質プレート4とが図示されている。電気加熱エネルギ及び燃料は、接続部62,51を介して供給される。略円筒状のハウジングの上側には、入口21及び出口22が配設されており、入口21及び出口22を介して、排出ガス流351がハウジング25に流入し、改質された排出ガス流352が加熱式触媒2のハウジングから流出する。
【0055】
加熱式触媒2は、小型に構成されており、約30kW/l~約60kW/lの高い出力密度を有している。さらに、熱出力は広範囲に亘って、例えば約1kW~約18kWの範囲で調整可能とされるので、調節範囲は、約1:16~約1:20となる。
【0056】
図4は、外部取付部品を具備する内燃エンジン8を表わす。図示の典型的な実施例では、内燃エンジン8は、4つのシリンダ815を有している。言うまでもなく、本発明の他の実施例では、シリンダの数は、4つより大きくても、4つより小さくても良い。本発明は、すべての既存の型式のエンジン、例えば直列エンジン、水平対向エンジン、又はV型エンジンに適合する。従って、図示の4気筒直列エンジンは、単なる一例にすぎないと理解される。さらに、内燃エンジンは、火花点火式内燃エンジンや自己点火式内燃エンジンであっても良い。
【0057】
燃料は、配管81を介して内燃エンジン8に供給される。配管81は、例えば、コモンレールシステムの一部であっても、任意の他の既知の混合気調整システムであっても良い。さらに、内燃エンジン8は、新鮮空気を内燃エンジン8に供給するための吸気セクション811を有している。また、排出ガスは、排気マニホールド812を介して集められ、排出ガス配管3に供給される。
【0058】
また、
図4は、任意選択の高圧排出ガス再循環システムを表わす。高圧排出ガス再循環システムは、再循環排出ガスの量を開ループ方式又は閉ループ方式で制御する排出ガス再循環弁835と、再循環排出ガスから熱エネルギを抽出することによって再循環排出ガスの温度を下げる排出ガスクーラー83とを含んでいる。高圧排出ガス再循環システムは、排出ガス配管3から排出ガスの部分流れを排出し、排出ガスの部分流れを冷却された状態で再び吸気セクション811に戻す。
【0059】
排出ガスの主流れは、任意選択のターボ過給機86のタービン861を介して、排出ガス配管3から渡される。言うまでもなく、本発明の他の実施例では、ターボ過給機86を設けない場合がある。排出ガスは、タービン861の内部で膨張されるので、シャフトを介して圧縮器862を駆動する。圧縮器862は、汚染粒子を除去するためのエアフィルタ855を通過した後に入口85を介して取り込まれる新鮮な空気を圧縮する。
【0060】
圧縮器862を出た圧縮空気が任意選択の給気冷却器82に到達した後に、圧縮及び冷却された吸気が吸気セクション811を介して内燃エンジン8に供給される。
【0061】
図示の典型的な実施形態では、タービン861を出た排出ガスは、3つのステージを有している排出ガス後処理システムに到達する。排出ガス後処理システムは、実質的にCO2及びH2Oが酸化触媒32から排出されるように、未燃焼燃料成分及び一酸化炭素を酸化させるための酸化触媒32を含んでいる。
【0062】
その後に、排出ガスは粒子フィルタ31に到達する。粒子フィルタ31は、例えば既知のディーゼル粒子フィルタ又はガソリン粒子フィルタとされる。内燃エンジン8のシリンダ815における不完全燃焼によって生じる煤粒子は、粒子フィルタ31に滞留する。粒子フィルタ31に十分な負荷が作用した場合に、煤粒子が酸化し、CO2を形成する。このためには、350℃~600℃の排出ガス温度が必要とされる。
【0063】
最後に、
図4は、排出ガス流からの窒素酸化物を尿素で還元する任意選択のSCR触媒33を表わす。窒素酸化物の反応には、200℃より高い、好ましくは250℃より高い温度が必要とされる。
【0064】
最後に、
図4は、任意選択の低圧排出ガス再循環システムも表わす。当該低圧排出ガス再循環システムは、粒子フィルタ31の下流において排出ガスを分岐し、任意選択の排出ガス冷却器84を介して排出ガスの温度を低下させ、冷却された排出ガスを圧縮器862の低圧側に供給する。また、別の排出ガス再循環弁845が、再循環質量流量を制御するために利用される場合がある。
【0065】
図4は、周辺機器を具備する最大構成を表わすことに留意すべきである。本発明の他の実施例では、個々の周辺機器が省略されている場合がある。例えば、ターボ過給機86、給気冷却器82、排出ガス再循環システム83,84、又は多段式排出ガス浄化装置31,32,33は、常時設ける必要は無い。また、個々の要素を省略しても良い。
【0066】
本発明の目的は、部分負荷運転時及び/又はコールドスタート後であっても、酸化触媒32及び/又は粒子フィルタ31及び/又はSCR触媒33を必要な動作温度に迅速に到達させることである。当該目的を達成させるために、本発明における加熱式触媒は、参照符号2で示す地点において利用可能とされる。従って、加熱式触媒は、ターボ過給機86のタービン861の上流又は下流において排出ガス配管3に挿入されている。本発明の他の実施例では、加熱式触媒2は、ターボ過給機86の上流又は下流において排出ガス配管3に組み込まれている。
【0067】
加熱式触媒2の様々な設置状況については、
図5を参照してより詳細に説明する。ここで、加熱式触媒の構成は、
図1~
図3、
図6及び
図7、並びに
図8及び
図9に表わす本発明の3つの異なる実施例に実質的に基づいている。
【0068】
図5aは,ターボ過給機86のタービン861に対して並列に配置された加熱式触媒2を表わす。この場合、タービン861で発生する圧力損失によって、加熱式触媒2の入口21における排出ガスの圧力が出口22における排出ガスの圧力より高くなる。その結果として、排出ガスの部分流れ351が加熱式触媒2を通じて輸送される。また、タービン861を出た後の排出ガスの流れの乱れによって、加熱式触媒2で生成された燃料蒸気又は改質油と、タービン861を流れる排出ガスの本流との十分に良好な混合が実現される。
【0069】
図5bは、排出ガス流の低圧側に、すなわちターボ過給機86のタービン861の下流に配置された加熱式触媒2の変形例を表わす。例えば、
図2に部分的に表わす且つ混合器を利用する本発明の実施形態は、当該目的を果たすのに適している。利点は、複数の車両タイプのいずれにも加熱式触媒が利用可能となることである。
【0070】
図5cは、排出ガスケットの高圧側に、すなわちターボ過給機86のタービン861の上流に配置された加熱式触媒2を表わす。このことは、ターボ過給機861のタービンによって、本流と加熱式触媒2から出てくる且つ燃料蒸気を含む部分流れとの良好な混合が実現されるという利点を有している。
【0071】
最後に、
図5dは、加熱される排出ガス後処理システムの直接上流の排出ガス配管に組み込まれた加熱式触媒2を表わす。このような組み込みを実現するためには、
図6~
図9に表わす実施例が特に適している。当該実施例では、加熱式触媒2の全体が排出ガス配管3の内部に配置されており、損傷から保護されているので、車両フロアに配置させることもできる。
【0072】
図6及び
図7は、本発明における加熱式触媒の第2の実施例を表わす。本発明の均等な構成要素には同一の参照符号を付したので、本質的な相違点についてのみ説明する。
図6は縦断面であり、
図7は横断面である。
【0073】
図面から明らかなように、加熱式触媒2は、再び略円筒状のハウジングに配置されている。当該ハウジングは、排出ガス配管3と略同心円状に配置されている。このために、加熱式触媒2の領域における排出ガス配管3の直径は、排出ガス配管3の他の縦断面の直径より大きい。ハウジング25の入口21及び出口22は、円筒状のハウジング25の互いに対して反対側に位置する端部それぞれに配置されている。従って、排出ガスは、ハウジング25の前側を通じてハウジング25に流入し、再びハウジング25の後側を通じて流出する。その結果として、内燃エンジンが動作している場合には、排出ガスは、常にハウジング25を通過して流れる。排出ガスの流れが略均一であることに起因して、これら実施形態では、多孔板4を省略することもできる。また、排出管の例として
図6及び
図7に表わすように、加熱式触媒は、排出ガス触媒コンバータのハウジング又は粒子フィルタに組み込まれている、
【0074】
図8及び
図9を参照して、本発明の第3の実施例について詳細に説明する。本発明の均等な構成要素には同一の参照符号を付したので、本質的な相違点についてのみ説明する。また、
図8は縦断面であり、
図9は横断面である。
【0075】
図示の如く、加熱式触媒2のハウジングは、排出ガス配管3の略中央に略同心円状に配置されている訳ではなく、平坦又は湾曲した仕切り251によって排出ガス配管3が排出ガス配管3の残りの自由断面から分離されている排出ガス配管3の縁部に配置されている。当該実施例は、電気加熱装置の接続接点51と燃料供給装置62とが高温の排出ガス領域を通過される必要が無いという利点を有している。このような場合であっても、特定の状況下においては多孔板4を省略することができる。触媒担体5が、既に均質な流れを有しているからである。排出ガス配管を例示する
図8及び
図9に表わすように、加熱式触媒は、排出ガス触媒コンバータのハウジング又は粒子フィルタに組み込まれている。
【0076】
図19は、本発明における加熱式触媒の第4の実施例を表わす。本発明の均等な構成要素には同一の参照符号を付したので、本質的な相違点についてのみ説明する。
【0077】
図19から明らかなように、加熱式触媒は、略円筒状のハウジング25を有しており、入口21及び出口22が、軸線方向に配置されている。また、
図19に表わすように、入口21を通じて入る排出ガス流351は、筒状ジャケット表面の形状をした多孔板4を介して、触媒担体5に供給される。多孔板4は、セラミック材料、金属、又は合金を含んでいるか、又はセラミック材料、金属、又は合金から構成されている。本発明の幾つかの実施例では、多孔板4は、入口21を形成している配管の縦断面によって形成されている。さらに、多孔板4は、排出ガスを通過させるための複数の穴又は開口部41を含んでいる。穴41の数、大きさ、及び分布は、排出ガスが触媒担体の内部に可能な限り均一に分布するように、任意選択のコンピュータシミュレーションで決定される。本発明の幾つかの実施例では、入口21を形成している配管の端部が、排出ガスが開口部41を通じてのみ排出されるように閉じられている。
【0078】
既知の方法では、触媒担体5は、例えば焼結体、ハニカム体、発泡体、又は排出ガスを透過可能な他の多孔質形状体とされる。このために、触媒担体5は、金属、合金、又はセラミック材料から構成されている。また、触媒担体5は、筒状ジャケット表面の形状を有しており、円柱状の多孔板4の周りに略同心状に配置されており、及び/又は、ハウジング25に対して略同心状に配置されている。
【0079】
最後に、触媒担体5の多孔板と反対側の面には、燃料供給部62を介して燃料が供給される同心状の燃料板が設けられている。
【0080】
本発明の幾つかの実施例では、燃料が触媒担体5に直接供給されることを条件として、燃料板を省略することもできる。燃料を触媒担体5に直接供給する場合には、ガス状の燃料を導入することができる。ガス状の燃料を導入するために、液体燃料が、蒸発器(図示しない)を介して加熱式触媒に導入される。これにより、燃料の気化のエンタルピーに起因する触媒担体5の望ましくない冷却を回避又は低減することができる。
【0081】
幾つかの実施例では、燃料供給部62は、燃料が円周及び/又は長手方向に沿った複数の位置に導入可能とされるように、複数回利用可能である。単一の燃料供給部62のみを示す単なる模式的な図解は、例示的なものとして理解すべきである。
【0082】
以下の比較例は、本発明を説明するものであるが、本発明が当該比較例に限定される訳ではないことに留意すべきである。以下の実施例では、排出ガス浄化装置が
図1~
図4で説明したように利用される。
【0083】
上述したように、本発明における加熱式触媒は、比較的長鎖の炭化水素を含む燃料が加熱式触媒において反応する第1の動作状態を有している。結果物である改質油は、例えば酸化触媒のような排出ガス後処理システムの構成要素において比較的低温で既に反応しているので、排出ガスケット又は排出ガス後処理システムにおいて熱を直接発生させることができる。さらに、本発明における加熱式触媒は、発熱反応によって熱を排出ガスに導入するために燃料の大部分又はすべてが酸化される第2の動作状態で動作可能とされる。
【0084】
図10は、第1の動作状態において加熱式触媒によって生成された改質油の組成を正の縦軸で表わす。負の縦軸は、加熱式触媒に供給される質量流量の組成を表わす。
【0085】
図10は、14%の酸素と84.7%の窒素とを混合することによって排出ガス流をシミュレートした試験運転の結果を表わす。当該シミュレートされた排出ガス流は、上述の方法で加熱式触媒に供給される。さらに、市販のディーゼル燃料が加熱式触媒に供給されるが、当該ディーゼル燃料は、アルカン、アルケン、芳香族、及び含酸素炭化水素の混合物から基本的に構成されている。室温では、アルカンは、炭素原子数1~5のガス状成分と、炭素原子数6以上の液状成分とから成る。
【0086】
加熱式触媒の内部において、ディーゼル燃料が排出ガスと反応する。これにより、熱と、例えば水素や一酸化炭素のような酸化生成物が生成される。さらに、燃料は、例えばプロパンやエチレンのような短鎖のアルケンに分解される。結果物である改質油は、常温で凝縮可能な液体アルカンをほとんど含んでいない。その結果として、排出ガス後処理システムの酸化触媒の着火温度が低下する。従って、熱は、改質油の酸化によって排出ガス後処理システムにおいて直接発生されるので、排出ガス後処理システムの下流に配置された構成要素、例えば粒子フィルタが加熱される。このようにして生成された加熱力は、約10kWより大きく、約15kWより大きく、約20kWより大きく、約25kWより大きく、又は約30kWより大きい。
【0087】
図11は、ディーゼルエンジンを搭載した乗用車の排出ガス後処理システムについての、曲線Bで示す粒子フィルタ31の温度と,曲線Aで示す酸化触媒32の温度を表わす。排出ガス流は、50kg/hの質量流量に設定し、140℃の一定温度とした。
図11は、時間対温度の曲線を表わす。約40秒後に、
図10に基づいて上述した改質油が排出ガスケットに導入される。その後に、酸化触媒の温度が、約35秒以内に200℃を超える値まで上昇する。さらに2分に亘って、酸化触媒は約450℃の温度に至るまで加熱を継続する。
【0088】
熱は、酸化触媒32から下流の粒子フィルタ31に放出される。
図11に表わすように、粒子フィルタは、コールドスタートから約3分後、且つ、改質油の添加から約140秒後には、既に200℃より高い温度に到達している。本発明における加熱式触媒によってこのように生成された加熱力は、約6kWである。
【0089】
図12は、曲線10で示す排出ガスの質量流量を表わす。また、図面の中央部は、排出ガス後処理システムに供給される加熱力を表わす。ここで、曲線Dは、本発明における加熱式触媒によって供給される加熱力を示している。比較例として、4kWの電気加熱の加熱力を曲線Eに示すと共に、8kWの電気加熱の加熱力を曲線Fに示す。最後に、
図12は、時間対SCR触媒の温度を表わす。曲線Hは、本発明における加熱式触媒による加熱についての温度曲線を表わし、曲線Gは、4kWの電気加熱についての温度曲線を表わし、曲線Iは、8kWの電気加熱についての温度曲線を表わし、曲線Jは、さらなる加熱手段を利用しない場合における温度曲線を表わす。いずれの場合も、WHTCに準拠した試験サイクルの際にコールドスタートした後の最初の30分間の時間曲線が示されている。
図13は、
図12に表わす試験サイクルの最初の480秒についての拡大図である。
【0090】
曲線Dから明らかなように、本発明における加熱式触媒は、第2の動作状態において、最初から約9kWの加熱力を供給する。数十秒後に、排出ガス後処理システムの酸化触媒は、加熱式触媒が第1の動作状態に切替可能となる程度に加熱される。第1の動作状態では、約36kWの加熱力が出力される。その後に、加熱力が2分以内に低減される。これにより、結果として、加熱式触媒に供給される排出ガスの質量流量の変動に起因して、変動が生じる場合がある。
【0091】
図Hから理解されるように、本発明における加熱式触媒の高い加熱力によって、僅か70秒後にSCR触媒の温度が200℃より高い温度に到達するので、排出ガス中の窒素酸化物を効率的に浄化することができる。
【0092】
対して、8kWの電気的な加熱力の場合には、2分より長く加熱しなければ、同一の温度又は浄化効果が得られない。電気的な加熱力を12Vの車載電源の既に限界である4kWに低下させると、SCR触媒は、180秒経過しなければ200°の温度に到達しない。420秒経過して初めて250°の温度に到達する。対照的に、本発明における加熱式触媒は、約80秒後には既にSCR触媒の温度を250°より高くすることができる。従って、4kWの電気加熱と比較すると、本発明における加熱式触媒を使用した場合には、SCR触媒は、5分以上早く完全な機能を発揮させることができる。
【0093】
図12が曲線Jでさらに表わすように、SCR触媒は、加熱装置を利用しない場合には、30分間の走行後でないと、完全な動作温度である250℃には到達しない。言い換えれば、最初の30分間は排気ガス中の窒素酸化物の還元は、走行の最初の30分間、ひいては短距離の運転では不可能である。
【0094】
図14は、
図12及び
図13と互いに比較した3つの加熱装置の、WHTCに準拠した試験サイクル全体における総合的な加熱力を表わす。ここで、本発明における加熱式触媒は、SCR触媒が可能な限り迅速に動作温度に至るまで加熱されるように動作された。
図13の曲線Dで説明したように、SCR触媒の上流に配置された酸化触媒が約160℃の温度に達した後に第1の動作状態に切り替えるまで、加熱式触媒を第2の動作状態で動作させる動作制御の結果として、実現可能な最も速い加熱が可能となった。
【0095】
図14から理解されるように、本発明における加熱式触媒は、WHTCに準拠した試験サイクル全体で2.9kWの平均加熱力を発生させる。このような加熱力を発生させるためには、123gの燃料がさらに利用される。
【0096】
対して、4kWの公称出力を有する電気加熱装置は、1.8kWの平均熱出力を供給するように動作するために、WHTCに準拠した試験サイクル中に315gの燃料を必要とする。また,電気的な加熱力を2倍にして8kWの公称出力にすると、WHTCに準拠した試験サイクル全体において2.5kWの電気的な加熱力が発生するが、このためには447gの燃料量が必要とされる。従って,本発明における加熱式触媒を利用する場合には、電気ヒータと比較して、放出される加熱力は顕著に大きいが、排出ガス後処理システムを加熱するために必要とされる燃料量は70%以上又は60%以上低減される。これは、自動車両の電気的な加熱力が、比較的低い効率の駆動用エンジン及び発電機によって供給されなければならないという事実に起因する。
【0097】
SCR触媒に関して上述したように、本発明における加熱式触媒は、すべての動作状態において、特に負荷が低い動作状態においても、粒子フィルタの再生のために必要とされる加熱力を供給するために利用される。
【0098】
図15を参照して、例えば自動車両の実際の動作で発生するような極めて動的な動作状態下において本発明における加熱式触媒2を試験するための試験台について、より詳細に説明する。
【0099】
本発明の均等な構成要素には同一の参照符号を付したので、本質的な相違点についてのみ説明する。
【0100】
一方、内燃エンジンの排出ガスは、例えば実質的に不活性ガスとみなされるH2OやCO2のような燃焼ガスを含んでいる。シミュレートされた合成排出ガス中において、このような不活性ガスは窒素によって形成されている。さらに、排出ガス流れは、排出ガスケットの酸化のために利用可能とされる様々な割合の酸素を含んでいる。試験モードで排出ガス流をシミュレートするために、試験台は、窒素を含むリザーバ92aと、空気を含むリザーバ92bを有している。0%から21%の間で変化する酸素含有量を有するガス流が、加熱式触媒2の入口21において合成排出ガスとして利用可能とされるように、両方の成分が、質量流量制御装置93を介して計量可能とされる。
【0101】
当該ガス流は、加熱式触媒2を通じて流れ、出口22を介して加熱式触媒2から出る。さらに、加熱式触媒2には、定量ポンプ91によってタンク90から供給される市販のディーゼル燃料が、接続部62を介して供給される。
【0102】
上述のように、加熱式触媒2の動作状態に依存して、出口22で排出されるガス流は、高温の不活性ガス流又は改質油を基本的に含んでいる。
【0103】
改質油を分析するために、排出ガスの部分流れが、配管94を介して分析装置に供給される。当該分析装置は、図示の典型的な実施例では、フーリエ変換赤外分光計941とガスクロマトグラフ942とを含んでいる。残りの排出ガス流は、排出ガス冷却器95によって冷却され、排出ガス配管3を介して排出される。ここで、排出ガスの熱は、例えば冷却ガス流及び/又は液体冷却剤を含む冷却剤流96に少なくとも部分的に伝達される。排出ガス流及び冷却剤流の温度及び質量流量を測定することによって、加熱式触媒2によって供給される加熱力が決定される。
【0104】
図16、
図17、及び
図18は、本発明における加熱式触媒の特性評価の実験結果を示す。これら図面は、曲線Cで全排出ガス質量流量を表わし、曲線Sで制御されていない減圧装置7によって加熱式触媒に供給される部分流量を表わし、曲線Rで制御された減圧装置7によって加熱式触媒に供給される部分流量を表わし、曲線Oで排出ガスに占める酸素含有量を表わし、曲線HでSCR触媒の温度を表わし、曲線Kで加熱式触媒の温度を表わし、曲線Mで加熱式触媒の空気率lを表わし、曲線Dで加熱式触媒によって伝達される加熱力を表わす。ここで、
図16は、300秒に亘るこれら変数の進行を表わす。
図17は、最初の2分間の拡大図である。
図18は、3分~10分に亘る経過を表わす。
【0105】
図16及び特に
図17から理解されるように、加熱式触媒は、最初の80秒の間、第2の動作状態で動作する。第2の動作状態は、供給された燃料が大幅に過剰な空気によって完全に酸化され熱変換されることを特徴とする。曲線Dに示すように、この場合の加熱力は約12kWである。排出ガスの供給される部分流量は約40kg/hである。
【0106】
80秒経過した後に、供給された排出ガスの質量流量は、約14kg/hに減少する。その後、加熱式触媒は、加熱式触媒において比較的低い熱出力が直接生成される第1の動作状態に移行される。しかしながら、このような動作状態で加熱式触媒において生成された改質油が、排出ガス後処理システムの酸化触媒で反応した場合には、排出ガス後処理システムに供給される有効熱量が、36kWに増加する。約110秒経過した後に、SCR触媒が動作温度に到達するので、窒素酸化物の効率的な排出ガス浄化が可能となる。
【0107】
図17の曲線Kが表わすように、加熱式触媒2の出口22における出口温度は、動作状態の変化に対して非常に迅速に反応する。さらに、
図16、
図17、及び
図18に表わすように、本発明における加熱式触媒は、排出ガスの質量流量の変動及び酸素濃度の変動の影響を受けにくい。約30kg/h~約90kg/hの供給される質量流量Sと、7%~20.5%の酸素濃度の変動とは、排出ガス後処理システムに供給される加熱力に悪影響を及ぼさない。
【0108】
上述の応用例が示すように、本発明における加熱式触媒は、短期的に高い加熱力を提供可能であり、これにより、排出ガス後処理システムは、短時間で、例えば120秒未満、100秒未満、又は80秒未満で動作温度に到達することができる。排出ガス後処理システムを加熱するための燃料の必要量が、電気加熱装置と比較して低減される。
【0109】
言うまでも無く、本発明は、図示の実施例に限定される訳ではない。従って、上述の説明は、限定的ではなく説明的なものとみなすべきである。特許請求の範囲に記載の請求項は、述べた特徴が本発明の少なくとも1つの実施例に存在することに留意すべきである。このことは、さらなる特徴の存在を排除する訳ではない。特許請求の範囲及び上述の説明において、「第1」及び「第2」の実施例が定義されている場合には、この指定は、順位を決定することなく、2つの類似した実施形態を区別するために使用されている。
【符号の説明】
【0110】
2 加熱式触媒
3 排出ガス配管
4 多孔板
5 触媒担体
6 燃料板
7 減圧装置
8 内燃エンジン
21 入口
25 ハウジング
31 粒子フィルタ
32 酸化触媒
33 SCR触媒
35 排出ガス流
41 孔(穴、開口部)
50 温度センサ
51 電気接続部
62 燃料供給装置
65 ポンプ
82 吸気冷却器
83 排出ガス再循環システム
84 排出ガス再循環システム
86 ターボ過給機
92a (窒素を含む)リザーバ
92b (空気を含む)リザーバ
93 質量流量制御装置
94 配管
95 排出ガス冷却器
351 (排出ガス流35の)部分流れ
352 (排出ガス流35の)部分流れ
815 シリンダ
831 粒子フィルタ
832 圧縮器
861 タービン
941 フーリエ変換赤外分光計
942 ガスクロマトグラフ
【国際調査報告】