(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(54)【発明の名称】液体組成物中の生モリクテス綱細菌の安定化
(51)【国際特許分類】
A61K 39/02 20060101AFI20220518BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220518BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220518BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220518BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220518BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220518BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20220518BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
A61K39/02
A61P31/04
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/22
A61K35/74 A
C12N1/20 E
C12N1/20 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557506
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2020058649
(87)【国際公開番号】W WO2020201048
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ピエスト,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ケツツ,エドウィン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーメイ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ハイネン,マリアン・アンナ・カタリーナ・ジョセフィーナ
(72)【発明者】
【氏名】ドーツェンバーグ,ノエル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
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4C087MA66
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4C087ZB35
(57)【要約】
本発明は、生モリクテス綱細菌及び安定剤の液体組成物であって、それにより安定剤が天然の深共晶溶媒(NADES)である液体組成物に関する。この液体組成物では、生モリクテス綱は、冷凍や凍結乾燥を必要とせずに安定化される。これにより、診断や医薬品、特にモリクテス綱細菌によって引き起こされる感染又は疾患に対して使用される液体ワクチンとして、ヒト又は非ヒトの動物に各種の有利な使用が可能になる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生モリクテス綱細菌及び安定剤を含む液体組成物であって、前記安定剤が天然の深共晶溶媒(NADES)である液体組成物。
【請求項2】
前記組成物が0.85以下の水分活性を有する、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
前記組成物が50重量%以下の含水量を有する、請求項1又は2に記載の液体組成物。
【請求項4】
前記NADESが有機塩及び多価アルコールを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項5】
前記NADESがいずれも多価アルコールである2以上の化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項6】
前記多価アルコールが糖又は糖アルコールである、請求項4又は5に記載の液体組成物。
【請求項7】
前記糖がショ糖及びトレハロースから選択される、又は、前記糖アルコールがエリスリトール、キシリトール及びソルビトールから選択される1以上である、請求項4~6のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項8】
前記有機塩が、ベタイン、プロリン、コリン、メチオニン及びアルギニンの塩から選択される1以上である、請求項4に記載の液体組成物。
【請求項9】
前記モリクテス綱細菌が、それらの病原性に関して弱毒化されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の液体組成物の製造方法であって、
-前記NADESを調製する段階、及び
-当該NADESを生モリクテス綱細菌と混合する段階
を含む方法。
【請求項11】
生モリクテス綱細菌を含む液体組成物中の安定剤としての、請求項1~9のいずれか1項に記載のNADESの使用。
【請求項12】
モリクテス綱細菌によって引き起こされる感染又は疾患に対するワクチンとして使用される、請求項1~9のいずれか1項に記載の、又は請求項10の方法によって得ることができる、液体組成物。
【請求項13】
モリクテス綱細菌によって引き起こされる感染又は疾患に対して使用される液体ワクチンであって、請求項1~9のいずれか1項に記載の、又は請求項10の方法によって得ることができる液体組成物を含むワクチン。
【請求項14】
請求項13に記載の液体ワクチンにおける薬学的に許容される担体としての、請求項1~9のいずれか1項に記載のNADESの使用。
【請求項15】
請求項13に記載の液体ワクチンの製造のための、請求項1~9のいずれか1項に記載のNADESの使用。
【請求項16】
少なくとも2つの容器、即ち、請求項13に記載の液体ワクチンを含む一つの容器、及び液体希釈剤を含む一つの容器、を含む部品のキット。
【請求項17】
前記液体ワクチンに含まれる病原型の生モリクテス綱細菌によって引き起こされる感染及び/又は疾患に対してヒト又は非ヒト動物標的を保護する方法で使用される、請求項13に記載の液体ワクチン。
【請求項18】
モリクテス綱細菌によって引き起こされる感染又は疾患に対するヒト又は非ヒト動物標的のワクチン接種方法であって、請求項13に記載の液体ワクチンの前記標的への投与を含む、又は請求項16に記載の部品のキットの使用を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明 は、細菌学及びワクチン学の分野に関する。具体的には、本発明は、生モリクテス綱細菌及び安定剤の液体組成物、前記液体組成物の製造、前記組成物中の安定剤としてのNADESの使用、及び前記組成物の各種医学的用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生存細菌は、多種多様な利用分野で使用されており、良く知られているものとしては、旧来又は現代のバイオテクノロジープロセス、診断及びワクチンがある。これら全ての利用分野において重要なものは、保管及び使用時にそのような細菌を安定化させ、その細菌の生存能力を維持する方途である。一般的な技術は、安定化のためにグリセロールや富栄養培地などの凍結防止剤を使用した、急速凍結状態での保管に頼るものである。或いは、生存細菌を凍結乾燥し、冷蔵又は凍結状態で凍結乾燥形態に維持することができる。しかしながら、これら全ての安定化方法には、多くの欠点がある。富栄養保管培地は、血清、加水分解物、及び抽出物など、品質が未確定及び可変である成分を導入することになる。このような未確定の成分は、安定性に対する予測できない影響を与え得る。さらに、冷凍製品は、保管及び配送のために骨の折れるコールドチェーンを必要とする。しかし、これらのプロセスによってさえ、凍結ステップ自体が生存細胞数の大幅な低下を誘発することから、生存細菌細胞の完全な生存は達成されない。また、凍結乾燥は非常に費用と時間がかかるプロセスである。従って、保管及び使用中に細菌の生存細胞数を効果的に安定化させる改善された方法が非常に望ましい。
【0003】
農業的及び医学的に重要な細菌の群は、モリクテス綱である。これらは、分類学的にテネリクテス門に分類されている(Ludwigら、2009,Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology,2nd edn,vol.3.Springer:New York,USA,pp1-13)。この門には、グラム陽性菌に由来するが細胞壁を失った細菌が含まれている。それらは典型的には、真核生物宿主の寄生虫又は片利共生生物である。
【0004】
一次病原体又は二次病原体としてのマイコプラズマ細菌による動物の感染は、呼吸器疾患及び/又は多様な他の症状を引き起こすことが多く、それらが一緒になって軽度ないし重度の疾患を引き起こし、影響された宿主に多くの不快感と経済的損害を引き起こす可能性がある。農業におけるマイコプラズマ感染の影響に関する参考資料は、″The Merck veterinary manual″(11th ed.,2016,ISBN-10:9780911910612)である。
【0005】
マイコプラズマ菌感染は特定の種類の抗生物質で治療的に処置できるが、一般的にワクチンが予防的に使用されている。そのようなワクチンは、弱毒化生菌株、又は不活化バクテリン(死滅させた細菌)に基づくものであることができる。M.ボビス(M.bovis)に対するバクテリンワクチンは、MpB Guard(商標名)(Agrilabs)である。最も使用されている市販のマイコプラズマワクチンは家禽用である。例えば、M.ガリセプチクム(M.gallisepticum)の弱毒生ワクチン:Vaxsafe(登録商標)MG(Bioproperties)(凍結)、及びNobilis MG 6/85(MSD Animal Health)(凍結乾燥、冷却);M.ガリセプチクム(M.gallisepticum)用のバクテリンワクチン:MG-Bac(登録商標)(Zoetis)及びNobilis(登録商標)MG inac(MSD Animal Health)、どちらもオイルアジュバントを含むエマルジョンである。M.シノビアエ(M.synoviae)の弱毒生ワクチンは、Vaxsafe(登録商標)MS(Bioproperties)(凍結)及びNobilis(登録商標)MS Live(MSD Animal Health)(凍結乾燥、冷却)である。他のいくつかの弱毒生マイコプラズマワクチンが知られており、より限定された規模で使用されている。例えば、Contavax(商標名)、反芻動物のM.ミコイデス(M.mycoides)に対する凍結乾燥ワクチンで、アフリカの一部の国で使用されている。また、中国では、弱毒化されたM.ヒオニューモニアエ(M.hyopneumoniae)の生ワクチンが豚に使用されている。マイコプラズマワクチン接種についての総覧は次の通りである。Whithear(1996,Rev.Sci.Tech.Off.Int.Epiz.,vol.15,p.1527-1553);Kleven(2008,Av.Dis.vol.52,p.367-374);及びPerez-Casalら、(2017,Vaccine,vol.35,p.2902-2907)。
【0006】
細胞膜との関連、さらには宿主細胞への侵入のために、モリクテス綱は、多様な真核細胞のイン・ビトロ細胞培養の公知の汚染物質である。従って、生モリクテス綱細菌のいくつかの種は、診断及び品質管理の目的に使用される。これは、欧州薬局方や米国9-CFRなどの政府規制下で、生物学的生産における形式要件でもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2009/120839
【特許文献2】US8,247,198
【特許文献3】WO2011/155829
【特許文献4】WO2014/131906
【特許文献5】WO2016/108083
【特許文献6】WO2016/162703
【特許文献7】WO2017/222377
【特許文献8】WO2015/121463
【特許文献9】WO2014/029702
【特許文献10】WO2014/140239
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Ludwigら、 2009,Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology,2nd edn,vol.3.Springer:New York,USA,pp1-13.
【非特許文献2】″The Merck veterinary manual″,11th ed.,2016,ISBN-10:9780911910612.
【非特許文献3】Whithear,1996,Rev.Sci.Tech.Off.Int.Epiz.,vol.15,p.1527-1553.
【非特許文献4】Kleven,2008,Av.Dis.vol.52,p.367-374.
【非特許文献5】Perez-Casalら、2017,Vaccine,vol.35,p.2902-2907.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
モリクテス綱は、知られている最小の自己複製生物である。一部の種からの細菌は、直径がわずか0.2マイクロメートルであり、一部の種は、わずか580kbpのゲノムを有する。遺伝子が非常に少ないことで、モリクテス綱は環境からの資源に大きく依存するようになるため、イン・ビトロで培養する場合、典型的には非常に豊富な培地が必要となる。また、細胞壁がないため、細胞膜が物理的及び化学的環境の影響に曝露され、保管時及び使用時の安定性が低下する。
【0010】
従って、ワクチン産業における重要な問題は、最終製品の保管寿命の間、及び例えば、診断器具又は予防接種での使用時に、細菌ストックとしてそのような生モリクテス綱細菌の生存率をいかに保つかということである。一つの解決策は、非生バクテリンタイプワクチンを製造及び使用することである。しかしながら、そのようなワクチンは、比較的高用量、反復投与、及びアジュバント使用を必要とするために比較的高価である。
【0011】
生モリクテス綱細菌に基づくワクチンは、低温凍結又は凍結乾燥され、富栄養安定化培地で保存される。上記のように、そのような培地は、多くの理由であまり望ましくない。また、凍結プロセス自体から、やはり生細胞数の大幅な減少が発生し、それが原因で数日以内に最大103コロニー形成単位(CFU)の損失となる。結果的に、生モリクテス綱細菌の安定化を改善するための方法及び材料が非常に望ましい。
【0012】
深共晶溶媒(DES)は、多くの顕著な特性を組み合わせた公知の液体組成物である。一般に、これらは環境温度では液体であるが、水分含有量が少ない化合物の混合物である。また、存在する少量の水は緊密に結合しており、それが化学プロセス又は生物学的プロセスへの利用性を制限している。これは、非常に低い水分活性値によって表される。DESは、例えば、Abbottら、2003,Chem.Commun.,vol1,p.70-71、及びWO2009/120839に記載されている。
【0013】
DESはイオン性が高いが、同時に水分活性が非常に低いため、極性疎水性化合物用の溶媒として非常に効果的である。例としては、ガス、鉱物又は工業用バルク製品の抽出から、医薬品の可溶化にまで及ぶ。DESは、酵素やRNAなどの生体分子の抽出及び安定化にも使用されており、それぞれUS8,247,198及びWO2011/155829を参照する。
【0014】
2011年頃から、天然物質から構成される特殊な形のDESが検討されている。これらのいわゆる「ナチュラルDES」又はNADESは、例えばChoiら、2011,Plant Physiol.,vol.156,p.1701-1705;及びDaiら、2013,Anal.Chim.Acta,vol.766,p.61-68に記載されている。NADESは、現在、天然物の抽出に使用できる「グリーン」溶媒として、そして、例えば天然農薬で使用される溶媒として大きな関心を集めている。
【0015】
WO2011/155829には、NADESを使用した生体材料の抽出について記載がある。列記されている選択肢の一つが、サブユニットワクチンなどのタンパク質材料の抽出である。
【0016】
同様に、WO2014/131906には、特に、臨床診断のためのウィルスRNAの抽出及び安定化に特に焦点を当てた血液又は組織中のウィルスの固定剤について記載がある。その固定剤はDESであり、WO2014/131906には多数の可能なDES組成物が列記されており、実際に使用されるのは、プロトン受容体として尿素若しくはトリフルオロアセトアミド、プロトン供与体としてコリン若しくはベタインを含む組成物のみである。WO2014/131906においては、最も好ましいDESは、塩化コリンとトリフルオロアセトアミドからなり、よって、それはNADESではなく、そして、トリフルオロアセトアミドは許容される医薬賦形剤ではない。
【0017】
WO2016/108083には、殺菌活性のためにNADESを使用することが記載されている。いくつかのNADESは、グラム陽性菌及びグラム陰性菌、並びにカンジダの真菌細胞を効果的に殺すか不活化できることが認められている。
【0018】
WO2016/162703には、特に植物材料からの生体分子抽出するための、例えばベタイン及び有機酸又は多価アルコールからなるNADESの使用が記載されている。
【0019】
WO2017/222377には、熱下で乾燥しない水源を提供するために、動物飼料との混合物におけるNADESゲルの使用が記載されている。記載されている具体的な用途は、新たに孵化したひよこのためのものである。
【0020】
WO2015/121463には、5~40%の糖アルコール、及び0.15~0.75Mのアルギニン、グルタミン酸若しくはグリシンから選択されるアミノ酸の組成物中の、具体的には家禽ウィルスの液体安定家禽ワクチンが記載されている。しかしながら、最も重要なことに、WO2015/121463及びWO2014/029702やWO2014/140239などの同様の刊行物はNADESを開示しておらず、少なくとも60%(重量/体積)の水を含み、0.85を超える水活性(aw)を有する水溶液について記載している。実施例セクションでは、比較データが提供されている。
【0021】
グティエレスら(Gutierrezら、2010,Angew.Chem.Int.Ed.,vol.49,p.2158-2162)には、20%(重量/体積)の溶質で1:2モル比の塩化コリン及びグリセロールからなるNADES希釈液を使用したグラム陰性菌大腸菌(Escherichia coli)の冷凍保存が記載されている。NADESを形成するために、細菌とNADES希釈液の混合物を凍結乾燥している。
【0022】
チャオら(Qiaoら、(2018,Appl.Microbiol.Biotechnol.,vol.102,p.5695-5705)は、NADES由来の組成物を使用する乳酸菌安定化を調べた。これらの細菌はグラム陽性菌であり、細胞壁を含んでいる。ラクトバチルス属からの二種の生存率は安定していなかったか、冷凍保存でのNADESの使用しても損傷を受けていた。ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)は、1:3モル比のプロリン:グリセロールのNADESを使用して、凍結形態で安定化させることができた。しかし、NADESと細菌培養液の1+1体積混合を適用することにより、チャオら(Qiaoら)は、水素結合のネットワークが損なわれなくなるまでNADESを希釈した。これは、氷晶の融解と成長を示す示差走査熱量測定(DSC)プロファイル(Qiaoら、
図4)から明らかである。これらは水性組成物の特性であるが、無傷のNADESはガラス転移温度を示すものと考えられる。
【0023】
チャオら(Qiaoら)には、また、細胞壁を持つことで、細菌がNADES毒性の影響、即ち脱水や細胞膜の損傷に対して耐性を持つようになることも記載されている。
【0024】
本発明の目的は、先行技術の欠点を克服し、凍結乾燥せずに調製することができ、凍結状態を維持する必要がないが、0℃より高い温度での保管及び取り扱い時に十分な安定化を提供する、生モリクテス綱細菌を含む組成物を提供することによって、当該分野におけるニーズに応えることである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
驚くべきことに、冷凍や凍結乾燥を行うことなく生モリクテス綱菌を安定化することができる液体組成物を提供することによって、この目的を達成することができ、その結果、従来技術の1以上の欠点を克服できることが見出された。これは、安定剤としてNADESを採用することによって達成される。
【0026】
この発見により、多くの非常に好ましい利用分野が開拓される。今や、生モリクテス綱細菌は、冷凍や凍結乾燥せずに保存できる。また、そのようなプロセスは、手間がかかり、時間と費用を要するものである。さらに、本発明の液体組成物は、安定化のための加水分解物などの品質が不明確又は可変の成分を使用せず、逆に、天然起源で化学的に定義された化合物を使用する。さらに、液体形態であることで、診断、品質管理などの各種利用分野での使用が容易になるだけでなく、弱毒生ワクチンとしての使用も可能になる。これは、NADESが医薬品担体として許容されているからである。ここで、そのようなワクチンは、生モリクテス綱細菌を含む液体組成物を、直接又は希釈後に投与することができる。
【0027】
NADESが生モリクテス綱細菌を安定化できることは予想外であり:強力なイオン性溶媒として、NADESは、繊細で露出した細菌の細胞膜を溶解し、それの細胞質タンパク質と核酸を抽出することが予想された。実際、チャオら(Qiaoら、上記)は、細胞壁のない細菌はNADESの毒性に対して感受性であると警告している。また、WO2016/108083(上記)は、実際に細菌を殺すためにNADESを採用している。
【0028】
従って、本発明者らは、NADES製剤が、冷凍若しくは凍結乾燥することなく、生モリクテス綱細菌の生存能力の有意な安定化を提供できることを見出して驚いた。その安定化は、水系液体組成物で観察されたものより有意に優れていた。例えば、M.シノビアエ(M.synoviae)は、本発明による液体組成物中、4℃で最大24週間、3 Log10CFU未満の損失で維持でき、一部の組成物では、損失は1 Log10CFU未満でさえあった。室温であっても、最大8週間にわたって有意な安定化が見られ、わずか4Log10CFUの損失を示したが、リン酸緩衝生理食塩水中の培養は、その温度で1週間以内に完全に失われた。
【0029】
NADESが生モリクテス綱細菌にとってそのような効果的な安定剤である方法や理由は正確にはわかっていない。本発明者らは、これらの所見を説明し得ると考えられる理論やモデルに拘束されることを望むものではないが、NADES中の利用可能な水の量が少ないことが細菌の生存能力を維持するのに役立つと推測している。また、モリクテス綱細菌は、細胞壁を持つ細菌の場合とは異なる方法でNADESと相互作用するように見える。NADESにおけるモリクテス綱細菌の安定化に関する先行技術がないため、この効果は予測できるものではなかった。
【0030】
従って、1態様において、本発明は、安定剤が天然深共晶溶媒(NADES)であることを特徴とする、生モリクテス綱細菌及び安定剤を含む液体組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】プロリン、ソルビトール及び水のモル比1:1:2.5で形成されたNADESの示差走査熱量測定プロファイルである。
【
図2】異なるNADESを含む液体組成物におけるマイコプラズマ・シノビアエ(Myciplasma synoviae)の安定性の結果である。 パネルA:室温でインキュベート;パネルB:2~8℃でインキュベート。
【
図3】異なるNADESを含む液体組成物におけるマイコプラズマ・ガリセプチクム(Mycoplasma gallisepticum)の安定性の結果である。 パネルA:室温でインキュベート;パネルB:2~8℃でインキュベート。
【
図4】0.04M PBS中に30重量%ソルビトール及び0.6Mアルギニンを含む、従来技術からの水性安定剤のDSCプロファイルである。
【
図5】室温(A)及び2~8℃(B)でのNADES中のM.ボビス(M.bovis)の安定性データである。
【
図6】2~8℃でのNADES中のM.シノビアエ(M.synoviae)(A)及びM.ガリセプチクム(M.gallisepticum)(B)の長期安定性データである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
「液体」という用語は、それの一般的な意味で使用され、特定の温度及び特定の期間に流れることができる組成物を指す。液体特性を決定する一つの方法は、特定の温度の組成物が入った容器を傾斜させ、特定の時間後に組成物の形態の変化が検出されると、その組成物は液体であると分類される傾斜試験である。本発明の場合、組成物は、その容器が室温で90°傾斜されてから15分以内に形状が変化する場合、液体である。
【0033】
本明細書で使用される「含む(comprising)」(及び「含む(comprise)」、「含む(comprises」、及び「含む(comprised)」などの変形形態)という用語は、要素又は組み合わせが明示的に記載されていない場合であってもその用語が用いられている文面、段落、請求項などによって網羅される又はそれに含まれる、全ての要素、及び本発明において考えられるあらゆる可能な組み合わせを指すものであり、そのような要素又は組み合わせのいずれかを除外するものではない。
【0034】
従って、そのような文面、段落、請求項などは、「含む(copmprising)」(又はその変形)という用語が「からなる(consist of)」、「からなる(consisting of)」、又は「本質的にからなる(consist essentially of)」などの用語に置き換えられる1以上の実施形態に関するものであることもできる。
【0035】
「生」という用語は、ここでは、細菌に関して一般的な意味で使用され、適切な条件下で増殖、移動、栄養素の取り込み及び発酵、及び/又は複製する能力を指す。細菌が死んでいるか生きているかを決定する方法は、当技術分野では公知である。これはイン・ビボで決定できるが、より簡便には、イン・ビトロで、例えば好適な培地で培養し、培養物の光学密度の増加を検出するか、好適な寒天プレートに蒔きCFUをカウントすることで決定することができる。別の方法は、生/死の選択的染色とカウントを用いるものである。
【0036】
「モリクテス」という用語は、形態学的、ゲノム的、及び生化学的特徴などの分類学的分類の特徴的な特徴、並びに生理学的、免疫学的若しくは病理的挙動などの生物学的特徴を有する細菌を指す。同じことが、細菌の目、科、属、又は個々の細菌種の名称についての言及にも当てはまる。
【0037】
モリクテス綱は、アコレプラズマ目、アナエロプラズマ目、エントモプラズマ目、及びマイコプラズマ目を含む。アコレプラズマ目には、(カンジダツス(Candidatus))ファイトプラズマ属の公知のモリクテス植物病害生物が含まれる。エントモプラズマ目は、スピロプラズマ属の昆虫共生生物及び植物病原体を含む。
【0038】
最もよく知られているのはマイコプラズマ目であり、それは、マイコプラズマ属の公知のヒト若しくは動物の病原性細菌、例えばそれぞれ(主に)、ヒト、反芻動物、ブタ、七面鳥、及び鶏に感染するM.ニューモニアエ(M.pneumoniae)、M.ボビス(M.bovis)、M.ヒオニューモニアエ(M.hyopneumoniae)、M.メレアグリジス(M.meleagridis)、及びM.ガリセプチクム(M.gallisepticum)を含むからである。
【0039】
この分野で知られているように、特定の分類学的グループにおける微生物の分類は、そのような特徴の組み合わせに基づくものである。従って、本発明はまた、モリクテス綱に分類される目、科、属、及び種からのモリクテス綱細菌の種を含む。同様に、これは、例えば、亜種、株、分離株、遺伝子型、変異体、亜型又は下位群など、何らかの方法でそこから細分類される細菌を指す。
【0040】
さらに、本発明におけるモリクテス綱細菌の特定の目、科、属又は種が現在そのグループに割り当てられ得るが、新しい見識が得られて新たな又は異なる分類学的グループへの再分類に至る可能性があることから、それは時が経過すると変更される可能性のある分類学的分類であることは、本発明の分野の当業者には明らかなことであろう。しかしながら、これは細菌自体又はそれの抗原レパートリーを変えるものではなく、それの学名や分類のみを変えるものであることから、そのような再分類された細菌は本発明の範囲内にとどまるものである。例えば、グプタら(Guptaら、2018,Antonie van Leeuwenhoek,vol.111,p.1583-1630)は、最新のゲノムデータに基づいて、テネリクテス門の新しいフレームワークを提案している。
【0041】
本発明で使用するためのモリクテス綱細菌のサンプルは、様々な供給源から入手することができ、例えばヒトから、又は野生若しくは農場の非ヒト動物から、又は、各種の研究所、(保管)機関若しくは(獣医)大学からの野生分離株としてである。
【0042】
本発明における「安定剤」は、取り扱い又は使用に起因する、及び/又は特定の期間にわたる特定の温度での保管に起因する、本発明のモリクテス綱細菌の生細胞数の損失を低減することができる組成物である。
【0043】
本発明における「安定化」は、例えば特定の温度で特定の期間のインキュベーションからの生モリクテス綱細菌を含む組成物の特定の処理の前後のCFUの差に対する効果として表される。それにより、本発明による異なる液体組成物における生存率を、標準的なPBS緩衝液(pH7.4の水中の10mM Na2PO4、1.8mM KH2PO4、2.7mM KCl、及び137mM NaCl)における生存と比較する。次に、同様の保管条件下でPBSで観察されたものを超える生存率は、本発明による液体組成物によって提供される生存効果とみなされる。
【0044】
「深共晶溶媒」(DES)は、共晶混合物を形成するモル比で少なくとも二つの化合物の混合物を含むイオン性液体として当技術分野で公知であり、それによって、その混合物の共晶点は、個々の化合物の融点よりかなり低い。
【0045】
混合物のこの融点の低下は、化合物の相互作用によって引き起こされ、一方は水素結合供与体として機能し、他方は水素結合受容体として機能し、それは安定した水素結合のネットワークを提供する。そのネットワークには少量の水が組み込まれているが、これは凍結時に結晶化することはできない。これにより、当該混合物は、構成成分の融点よりかなり低い温度で液体形態となることができる。一般的に、「共晶」とは溶けやすいことを意味する。
【0046】
本発明で使用するためのNADESは、無傷(intact)の水素結合ネットワークを有する。これは、DSCを使用した相転移プロファイルの熱分析によって簡単に確認できる。結果的に、本発明で使用するためのNADESは、ガラス転移温度を示すDSCプロファイルを有する。
【0047】
DSCプロファイルの決定は公知であり、標準的な装置を使用して行うことができる。プロファイルの例を
図1に示している。
【0048】
水素結合ネットワークにより、限られたレベルの希釈が可能である。しかしながら、希釈しすぎると、「DES」は通常の水溶液に変わる。その場合、DSCプロファイルは、チャオ(Qiaoら、前出)、
図4でのように、溶融エンタルピーと結晶化エンタルピーを表示するものである。
【0049】
本発明のNADESを形成するために使用される個々の化合物(水を除く)は、約80℃を超える融点を有し、得られたNADESは、約40℃未満の融点を有する。例えば、ベタイン及びソルビトールの融点はそれぞれ310℃及び95℃であるが、ベタイン、ソルビトール及び水のモル比が1:1:2.5で形成されたNADESはガラス転移温度-50℃を有し、それのDSCプロファイルにおいて氷の結晶化及び/又は氷の融点を示さなかった。
【0050】
「天然」という用語は、本発明における天然DES(NADES)を形成するのに使用される化合物が、通常の条件下で微量より十分に高い量で、植物又は動物などの生物源からの材料中に認められ得る有機化合物であることを示すのに役立つものである。典型的には、そのような天然化合物は、植物若しくは動物起源の特定の材料中に存在する一次代謝物であるか、それに由来する。当業者が理解するように、天然という用語は、本明細書では、本発明におけるNADESで使用される化合物の最初の起源を特徴付けるためにのみ使用され、本発明に使用されるべき化合物の実際の供給源を特徴付けるものではない。従って、天然化合物は、(半)合成製造によって誘導される場合にも本発明に使用することもできる。
【0051】
本発明におけるNADESを形成するのに使用することができる天然化合物の例は、有機酸、アミン、糖、糖アルコール、アミノ酸、及び、コリン誘導体などの四級アンモニウム塩である。
【0052】
本発明について本明細書に開示される実施形態内に、細菌の安定性に関して他の組み合わせより好ましい特定の種類のNADES及びある種類のモリクテス網細菌の組み合わせが存在するであろうことは、本発明の分野の当業者には明らかであろう。それにもかかわらず、当業者は、本明細書に開示の情報を用いて日常的な方法及び材料のみを使用して、本発明による組み合わせ及び組成物を容易に選択、最適化及び微調整することができるであろう。
【0053】
好ましい実施形態及び本発明のさらなる態様のさらなる詳細を以下に説明する。
【0054】
本発明で使用されるNADESに存在する水は、NADES水素結合ネットワーク構造にしっかりと結合しており、モリクテス綱細菌の安定性に影響を与える可能性のある化学的又は生物学的プロセスに対する水の利用可能性を強力に低下させる。この特徴は、一般的には、総水量と自由水の量を示すことによって表される。その水(自由水)の利用性は、記号awによって示される水分活性の値によって示される。水分活性は、純水の上限1.0と下限0の間で変動する。水分活性は、一般的には、被験組成物の蒸気圧を純水の蒸気圧及び多くの水分活性既知の飽和塩溶液と(同じ温度で)比較することによって測定される。これは、例えば、FAO農業サービス速報No.149(Canovasら、FAO,Rome,2003、ISBN 92-5-104861-4)中の果実及び野菜の保存に関する各種のハンドブック、総覧及びマニュアルに記載されており、総覧は”Fundamentals of water activity”, Decagon Devices Inc.,Washington,2015(http://pdf.directindustry.com/pdf/decagon-devices-inc/fundamentals-water-activity/64142-634433.html)である。
【0055】
水分活性が約0.8未満では、ほとんどのバクテリアの増殖が停止し、0.7未満では、ほとんどの酵母及びカビの増殖が停止し、水分活性が0.4未満では、ほとんどの酵素活性が効果的に停止する。
【0056】
水分活性を測定するための機器及び手順は公知であり、例えばヘッドスペース圧分析を用いることによって利用できる。
【0057】
本発明による液体組成物中のモリクテス綱細菌の効果的な安定化は、組成物が約0.85未満の水分活性を有する場合に達成できることが見出された。
【0058】
従って、本発明による液体組成物の1実施形態では、組成物は、0.85以下の水分活性を有する。
【0059】
本発明の場合、示された水分活性は、例えば、商業生産者によって提供されるような最終製品の形態での本発明による液体組成物の水分活性を指し、その形態で、それは長期保管可能である。この組成物を使用すると、それを希釈又は他の成分と混合することができ、これにより水分活性値が変化し得る。
【0060】
本発明による液体組成物の1実施形態では、組成物の水分活性は約0.8未満であり、より好ましくは、約0.7未満、約0.6、約0.5、約0.4、約0.3、又はさらには約0.2未満であり、この順で好ましさが上がる。
【0061】
好ましくは、本発明による液体組成物の水分活性は、0.8~0.1である。より好ましくは、この優先順位で、0.7~0.1、0.6~0.1、0.5~0.1、0.4~0.1、0.3~0.1、又はさらには0.2~0.1であり、その順で好ましさが高くなる。
【0062】
本発明の場合、範囲の表示は、記載された端の値を含むことを意図している。
【0063】
本発明の場合、「約」は、数値がその示された値の周りで±10%の間で変動し得ることを示す。好ましくは、「約」は、その値の周りの±9%を意味し、より好ましくは、「約」は、その値の周りの±8、7、6、5、4、3、2、1、又はさらには0%を意味し、その順で好ましさが高くなる。
【0064】
本発明による液体組成物に使用される水は、好ましくは、(多重)蒸留水又は逆浸透水などの品質及び純度の高い水である。より好ましくは、水は医薬品質級であり、非経口注射に適しており:そのような水の性質は典型的には無菌であり、本質的に発熱物質を含まず:例えば、注射用水(WFI)である。
【0065】
本発明による液体組成物で使用するためのNADESは、限られた量の水で調製される。液体組成物の含水量を変化させることにより、それの特性は、例えば、液体組成物の粘度に関して調整及び最適化することができる。粘度がほとんどない効果的なNADES含有組成物は、最大50重量%の総含水量で作ることができる(Daiら、2015,vol.187,p.14-19)。比較的多量の水は、NADESの水素結合のネットワークを乱す可能性がある。
【0066】
従って、本発明による液体組成物の1実施形態では、組成物は、50重量%以下の含水量を有する。
【0067】
本発明による液体組成物の含水量は、重量あたりの重量「w/w(重量基準)」のパーセントとして表され、これは、液体組成物の重量の一部としての本発明による液体組成物中の水の総量の重量である。水分含有量は、例えば当技術分野で公知のカール・フィッシャー滴定により、各種手順を用いて測定することができる。
【0068】
水分活性に関しては、この文脈での液体組成物は、混合又は希釈を行う前の最終生成物の形態での組成物である。
【0069】
好ましくは、本発明による液体組成物は、40重量%以下、より好ましくは30、25、20、15、10、8、7、6、又は5重量%以下の含水量を有し、その順で好ましさが高くなる。
【0070】
本発明による液体組成物中の水分含有量の下限は、例えば、NADESを形成する化合物の可溶化に十分な水がどれだけ少ないか、さらには、NADESの許容レベルの粘度に到達して、簡便に処理又は使用できるようにするために必要な水の量などの実際的な要素によって決定される。
【0071】
従って、本発明による液体組成物の1実施形態では、液体組成物中の水分含有量は、50~0.5重量%;40~1重量%;30~1.5重量%;20~2重量%;又はさらには、10~3重量%であり、この順で好ましさが高くなる。
【0072】
さらに、NADESを生モリクテス綱細菌のサンプルと混合することによって、ある量の水を混合物に導入して、本発明による液体組成物を調製する。しかしながら、本発明の液体組成物は、過度に希釈されるべきではない。
【0073】
従って、本発明による液体組成物の1実施形態では、組み合わされる細菌サンプルの体積に対するNADESの体積の比は、好ましくは、少なくとも3:1体積比NADES:細菌サンプルであり;より好ましくは、少なくとも5:1体積比NADES:細菌サンプルであり;又はさらには、少なくとも10:1体積比NADES:細菌サンプルであり、この順で好ましさが高くなる。注意:比率10:1は、9部のNADESと1部の細菌サンプルの組み合わせを意味する。例えば、モル比1:1:2.5のプロリン、ソルビトール及び水のNADESは、13.1重量%水総量を有する。9部のNADES+1部の細菌の比率で、本発明のマイコプラズマ細菌のサンプルと混合した後、得られた本発明による液体組成物の水の総量は、21.8重量%である。
【0074】
本発明のNADESを水性組成物に過度に希釈することを制限するために、組み合わせる細菌サンプルは、濃縮する必要があり得る。
【0075】
本発明による液体組成物において、生モリクテス綱細菌の安定剤として有効なNADESは、有機塩及び/又は多価アルコールの各種の組み合わせ及び比率から形成されるか、いくつかの多価アルコールから形成されることが見出された。
【0076】
従って、本発明による液体組成物の1実施形態では、NADESは、有機塩及び多価アルコールを含む。
【0077】
本発明による液体組成物の別の実施形態では、NADESは、全て多価アルコールである2以上の化合物を含む。
【0078】
これらの実施形態の一部では、水素結合のネットワークは、水素結合供与体として作用するイオン種としての有機塩、及び水素結合受容体としての多価アルコールによって形成される。或いは、NADESが多価アルコールのみを含む場合、ネットワークはこれらの分子間の水素結合によって形成される。
【0079】
本発明において、「多価アルコール」は、2以上のヒドロキシル基を含む有機化合物である。しかしながら、セルロースなどの多価アルコールの定義下にある非常に大きなポリマーは、本明細書で定義のNADESを形成するのにあまり効果的ではないので、好ましくは本発明で使用されるべきではない。結果として、本発明で使用される多価アルコールは、好ましくは、約10,000グラム/モル未満の分子量を有する。
【0080】
さらに好ましい実施形態では、本発明で使用される多価アルコールは、分子量が5000/モル未満、又はさらには1000グラム/モル未満である。
【0081】
本発明で使用されるNADESで使用するための化合物は、様々な商業的供給者から異なる純度及び品質で容易に入手可能である。好ましくは、当該化合物は、医薬級品質で使用される。そのような賦形剤は、例えば、欧州薬局方や米国9 CFRなどの政府規制、及びThe Handbook of Pharmaceutical Excipients(R.Roweら、Pharmaceutical press 2012,ISBN 0857110276);Remington:the science and practice of pharmacy(2000,Lippincot,USA,ISBN:683306472)、及び″Veterinary vaccinology″(P.Pastoretら、ed.,1997,Elsevier,Amsterdam,ISBN 0444819681)などのハンドブックに記載されている。
【0082】
本発明で使用するのに好ましい多価アルコールは、糖又は糖アルコールであり、これらは、本発明で使用される各種の有効なNADEEの生成を可能にする多用途の成分であることが実証されているからである。
【0083】
好ましい実施形態では、糖は非還元糖である。
【0084】
本発明による液体組成物で使用される非還元糖の1実施形態では、非還元糖は、スクロース及びトレハロースから選択される。
【0085】
好ましくは、非還元糖はトレハロースである。トレハロースは好ましくは、CAS番号6138-23-4である。
【0086】
本発明において、「糖アルコール」は、3以上の炭素原子を含む水素化糖であり、単糖、二糖又は多糖に基づくものであることができる。
【0087】
本発明による液体組成物で使用される糖アルコールの1実施形態では、糖アルコールは、エリスリトール、キシリトール及びソルビトールから選択される1以上である。
【0088】
エリスリトールは好ましくはCAS番号149-32-6である。キシリトールは好ましくはCAS番号87-99-0である。ソルビトールは、好ましくはD-ソルビトール、CAS番号50-70-4である。
【0089】
本発明による液体組成物で使用される糖アルコールの1実施形態では、糖アルコールは、キシリトール及びソルビトールから選択される1以上である。
【0090】
より好ましい実施形態では、糖アルコールはソルビトールである。
【0091】
本発明による液体組成物で使用される多価アルコールは、異なる塩、異性体、水和物又は無水形態などとして使用することができる。当業者であれば、本発明で使用される好適な形態の多価アルコールを選択及び試験することが完全に可能である。
【0092】
本発明において、「有機塩」は、本明細書で上記に提示される天然化合物であるという定義の範囲内であり、本明細書に記載の発明のための深共晶溶媒を形成する能力を有する、両性イオンを含む任意の有機酸又は塩基の塩である。当業者は、本発明のための有機塩を選択し、それを適用してNADESを形成することが完全に可能である。
【0093】
本発明による液体組成物の1実施形態では、有機塩は、ベタイン、プロリン、コリン、メチオニン及びアルギニンの塩から選択される1以上である。
【0094】
本発明において、「ベタイン」は、好ましくは、化合物N,N,N-トリメチルグリシン、CAS番号107-43-7であり、それはグリシンベタインとしても知られている。プロリンは好ましくはCAS番号609-36-9である。コリンは好ましくはCAS番号62-49-7である。メチオニンは好ましくはL-メチオニン、CAS番号63-68-3である。
【0095】
好ましい実施形態では、コリンは、塩化コリン、CAS番号67-48-1である。
【0096】
上記の多価アルコールに関しては、有機塩は、異なる異性体形態、水和物若しくは無水形態などで使用することができる。当業者は、本発明で使用するのに適した形態の有機塩を完全に選択及び試験することができる。
【0097】
本発明による液体組成物の1実施形態において、有機塩がアルギニンである場合、そのアルギニンは、L-アルギニン(CAS番号74-79-3)及びL-アルギニン-HCl(CAS番号1119-34-2)の混合物として使用され、それにより、L-アルギニン-HClが混合物の大部分を占める。
【0098】
アルギニン化合物のそのような混合物は、例えばワクチンとして使用する前に組成物を希釈する場合、又はカウントのために沈着させる場合に、本発明による液体組成物のpH値を生理学的値に近づけるのに役立つ。
【0099】
好ましくは、L-アルギニン:L-アルギニン-HClのモル比は、1:1~1:100であり;より好ましくは、L-アルギニン:L-アルギニン塩酸塩のモル比は1:1~1:50であり、より好ましくは、そのモル比は約1:19である。
【0100】
本発明による液体組成物の1実施形態では、NADESは三つの多価アルコールを含む。
【0101】
好ましい実施形態では、その三つの多価アルコールは、ソルビトール、キシリトール及びトレハロースである。
【0102】
本発明による液体組成物で使用されるNADESの1実施形態では、有機塩は、ベタイン、プロリン、コリン及びアルギニンの塩から選択され、多価アルコールは、キシリトール及びソルビトールから選択される。
【0103】
本発明において、有機塩と多価アルコール、又は複数の多価アルコールを互いに異なるモル比で適用して、異なる特性を有するNADESを提供することができる。これらを、当業者が最適化して、本発明による液体組成物中の生モリクテス綱細菌の最適な安定化に到達させることができる。
【0104】
従って、本発明による液体組成物の1実施形態では、有機塩と多価アルコールとの間のモル比は、全て本明細書で定義されるように、1:5~5:1である。
【0105】
本発明による液体組成物の好ましい実施形態では、有機塩と多価アルコールとの間のモル比は、全て本明細書で定義されるように、1:4~4:1、1:3~3:1、又はさらには1:2~2:1であり、この順で好ましさが高くなる。
【0106】
本発明による液体組成物の1実施形態において、三つの多価アルコールであるキシリトール、トレハロース及びソルビトールのいずれかとの間のモル比は、全て本明細書で定義されるように、1~5倍であり得る。結果的に、ソルビトール:キシリトール:トレハロースのモル比は、1:1:1及び1:1:5、1:5:1、5:1:1、1:5:5、5:1:5、5:5:1及び5:5:5のうちの一つである。
【0107】
本発明による液体組成物の有利な使用の一つのタイプは、ワクチンとしての使用である。このような用途では、モリクテス綱細菌は、生細菌ワクチンの有効成分として使用され、標的動物に許容できないワクチン接種反応を引き起こさないように、弱毒化された性質のものである必要がある。
【0108】
従って、本発明による液体組成物の1実施形態において、モリクテス綱細菌は、それらの病原性に関して弱毒化されている。
【0109】
本発明における「弱毒化された」という用語は、その一般的な意味で使用され、そのようなモリクテス綱細菌の未改変、非弱毒化又は「野生型」と比較して、宿主における感染及び/又は複製の速度が低下することにより、より低いレベルの病原性効果を引き起こす細菌を指す。そのような弱毒化生菌は、「改変生菌」とも呼ばれる。
【0110】
モリクテス綱細菌の弱毒化は、各種方法で得ることができ、例えば、いずれも当業界で公知のように、野生型細菌を実験動物や細胞培養で継代すること、変異原物質を使用すること、又は組換えDNA技術を介して行うことができる。
【0111】
本発明による液体組成物は、モリクテス綱からの各種細菌の生存能力を安定化するのに効果的である。
【0112】
従って、1実施形態では、モリクテス綱細菌は、細菌目:アコレプラズマ目、アナエロプラズマ目、エントモプラズマ目及びマイコプラズマ目から選択される1以上である。
【0113】
1実施形態では、本発明のモリクテス綱細菌は、アコレプラズマ科、アナエロプラズマ科、エントモプラズマ科、スピロプラズマ科及びマイコプラズマ科の細菌科から選択される1以上である。
【0114】
1実施形態では、本発明のモリクテス綱細菌は、アコレプラズマ、ファイトプラズマ、アナエロプラズマ、アステロールプラズマ、エントモプラズマ、メソプラズマ、スピロプラズマ、ヘパトプラズマ、マリノプラズマ、モエニプラズマ、マイコプラズマ及びウレアプラズマの細菌属から選択される1以上である。
【0115】
好ましくは、本発明におけるモリクテス綱細菌は、アコレプラズマ、スピロプラズマ及びマイコプラズマの細菌属から選択される1以上である。
【0116】
より好ましくは、本発明におけるモリクテス綱細菌は、マイコプラズマ属の細菌に由来する。
【0117】
本発明による液体組成物の1実施形態において、モリクテス綱細菌は、M.ニューモニアエ(M.pneumoniae)、M.ボビス(M.bovis)、M.ヒオプニューモニアエ(M.hyopneumoniae)、M.メレアグリディス(M.meleagridis)、M.ガリセプチカム(M.gallisepticum)、及びM.シノビアエ(M.synoviae)から選択される1以上である。
【0118】
好ましい実施形態では、モリクテス綱細菌は、M.ガリセプチカム(M.gallisepticum)及び/又はM.シノビアエ(M.synoviae)である。
【0119】
本発明による液体組成物の実施形態において、モリクテス綱細菌は、M.ガリセプチカム(M.gallisepticum)及びM.シノビアエ(M.synoviae)である。
【0120】
実験により、M.ガリセプチカム(M.gallisepticum)及びM.シノビアエ(M.synoviae)は、本発明による液体組成物で組み合わせて保管でき、2~8℃で最長23週間試験した場合、一方から他方の安定性への有意な影響を検出できなかったことが示された。このような混合物では、同じ混合サンプルを二つの異なる種類の寒天プレート(NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を含むプレートとNADを含まないプレート)にプレーティングし、コロニー数を比較すると、2種類の細菌が検出及びカウントできた。文献(Olson&Kish Meadows,1972,Avian Dis.,vol.16,p.387-396)に記載されているように、M.シノビアエ(M.synoviae)はそれの増殖にNADを必要とするため、NADのないプレートでは、観察された全てのコロニーはM.ガリセプチカム(M.gallisepticum)からのものである。
【0121】
好ましい実施形態において、本発明による液体組成物は、生モリクテス綱細菌の安定化を提供することができ、それにより、モリクテス綱のCFUの数は、4℃で12週間のインキュベーション後に3Log10を超えて減少しない。さらにより好ましいのは、モリクテス綱のCFUの数が、室温で8週間のインキュベーション後に、7Log10を超えて減少しないことである。
【0122】
室温は、20±5℃の温度であり、4℃は2~8℃である。
【0123】
本発明による液体組成物の実施形態では、以下からなる群から選択される1以上、又は全ての条件が適用される。
【0124】
-液体組成物の水分活性は、0.85以下である。
【0125】
-液体組成物の水分活性は、約0.8未満;より好ましくは、約0.7未満、約0.6、約0.5、約0.4、約0.3、又はさらには約0.2未満であり、この順で好ましさが高くなる。
【0126】
-液体組成物の水分活性は、0.8~0.1;より好ましくは、0.7~0.1、0.6~0.1、0.5~0.1、0.4~0.1、0.3~0.1、又はさらには0.2~0.1であり、この順で好ましさが高くなる。
【0127】
-液体組成物の水分含有量は、50重量%以下である。
【0128】
-液体組成物は、40重量%以下、より好ましくは、30、25、20、15、10、8、7、6、又は5重量%以下(この順で好ましさが高くなる)の水分含有量を有する。
【0129】
-液体組成物中の水分含有量は、50~0.5重量%;40~1重量%;30~1.5重量%;20~2重量%;又はさらには10~3重量%であり、この順で好ましさが高くなる。
【0130】
-結合される細菌サンプルの体積に対するNADESの体積の比率は、好ましくは、少なくとも3:1(体積比)NADES:細菌サンプル;より好ましくは、少なくとも5:1(体積比)NADES:細菌サンプル;又は少なくとも10:1(体積比)NADES:細菌サンプルであり、この順で好ましさが高くなる。
【0131】
-NADESは、有機塩と多価アルコールを含む。
【0132】
-NADESは、全て多価アルコールである2以上の化合物を含む。
【0133】
-本発明で使用される多価アルコールは、分子量が5000g未満/モル、又はさらには1000g未満/モルである。
【0134】
-多価アルコールは、糖又は糖アルコールである。
【0135】
-糖が非還元糖である。
【0136】
-非還元糖は、ショ糖とトレハロースから選択され;好ましくは、非還元糖はトレハロースであり;トレハロースは、好ましくはCAS番号6138-23-4である。
【0137】
-糖アルコールは、エリスリトール、キシリトール及びソルビトールから選択される1以上である。
【0138】
-エリスリトールは、好ましくはCAS番号149-32-6であり;キシリトールは、好ましくはCAS番号87-99-0であり;ソルビトールは、好ましくはD-ソルビトール、CAS番号50-70-4である。
【0139】
-糖アルコールは、キシリトール及びソルビトールのグループから選択される1以上であり;より好ましい実施形態では、糖アルコールはソルビトールである。
【0140】
-有機塩は、ベタイン、プロリン、コリン、メチオニン及びアルギニンの塩から選択される1以上である。
【0141】
-ベタインは、好ましくは、化合物N、N、N-トリメチルグリシン、CAS番号107-43-7であり、これはグリシンベタインとしても知られている。プロリンは、好ましくはCAS番号609-36-9であり;コリンは、好ましくはCAS番号62-49-7であり;メチオニンは、好ましくはL-メチオニン、CAS番号63-68-3であり;アルギニンは、好ましくはL-アルギニン、CAS番号74-79-3である。
【0142】
-コリンは、塩化コリン、CAS番号67-48-1である。
【0143】
-有機塩がアルギニンの場合、アルギニンは、L-アルギニン(CAS番号74-79-3)とL-アルギニン塩酸塩(CAS番号1119-34-2)の混合物として使用される。
【0144】
-L-アルギニンとL-アルギニン-HClのモル比は、1:1~1:100;より好ましくは、L-アルギニン:L-アルギニン-塩酸塩のモル比は、1:1~1:50であり、より好ましくは、そのモル比が約1:19である。
【0145】
-有機塩は、ベタイン、プロリン、コリン及びアルギニンの塩から選択され;多価アルコールは、キシリトール及びソルビトールから選択される。
【0146】
-有機塩と多価アルコールのモル比は、1:5~5:1である。
【0147】
-有機塩と多価アルコールのモル比は、1:4~4:1、1:3~3:1、さらには1:2~2:1であり、この順で好ましさが高くなる。
【0148】
-NADESが三つの多価アルコールを含み;好ましい実施形態では、三つの多価アルコールは、ソルビトール、キシリトール及びトレハロースである。
【0149】
-ソルビトール:キシリトール:トレハロースのモル比は、1:1:1と1:1:5、1:5:1、5:1:1、1:5:5、5:1:5、5:5:1、及び5:5:5のいずれかである。
【0150】
-モリクテス綱細菌は、その病原性に関して弱毒化されている。
【0151】
-モリクテス綱細菌は、アコレプラズマ目、アナエロプラズマ目、エントモプラズマ目及びマイコプラズマ目の細菌目から選択される1以上である。
【0152】
-モリクテス綱細菌は、アコレプラズマ科、アナエロプラズマ科、エントモプラズマ科、スピロプラズマ科及びマイコプラズマ科の細菌科から選択される1以上である。
【0153】
-モリクテス綱細菌は、アコレプラズマ、ファイトプラズマ、アナエロプラズマ、アステロールプラズマ、エントモプラズマ、メソプラズマ、スピロプラズマ、ヘパトプラズマ、マリノプラズマ、モエニプラズマ、マイコプラズマ及びウレアプラズマの細菌属から選択される1以上である。
【0154】
-モリクテス綱細菌は、アコレプラズマ、スピロプラズマ、マイコプラズマの細菌属から選択される1つ以上である。
【0155】
-モリクテス綱細菌は、マイコプラズマ属の細菌である。
【0156】
-モリクテス綱細菌は、M.ニューモニアエ(M.pneumoniae)、M.ボビス(M.bovis)、M.ヒオプニューモニアエ(M.hyopneumoniae)、M.メレアグリディス(M.meleagridis)、M.ガリセプチカム(M.gallisepticum)及びM.シノビアエ(M.synoviae)から選択される1以上である。
【0157】
-モリクテス綱細菌は、M.ガリセプチカム(M.gallisepticum)及び/又はM.シノビアエ(M.synoviae)である。
【0158】
-モリクテス綱細菌は、M.ガリセプチカム(M.gallisepticum)及びM.シノビアエ(M.synoviae)である。
【0159】
本発明による液体組成物の1実施形態では、液体組成物は、0.85以下の水分活性、及び50重量%以下の含水量を有し;NADESは、有機塩及び多価アルコールを含み、ここで、多価アルコールは、キシリトール又はソルビトールであり、有機塩は、ベタイン、プロリン、コリン及びアルギニンから選択され;モリクテス綱細菌は、その病原性に関して弱毒化されており、モリクテス綱細菌は、M.ニューモニアエ(M.pneumoniae)、M.ボビス(M.bovis)、M.ヒオプニューモニアエ(M.hyopneumoniae)、M.メレアグリディス(M.meleagridis)、M.ガリセプチカム(M.gallisepticum)、及びM.シノビアエ(M.synoviae)から選択される1以上である。
【0160】
好ましい実施形態では、モリクテス綱細菌は、M.ガリセプチカム(M.gallisepticum)及び/又はM.シノビアエ(M.synoviae)であり、NADESはベタイン及びソルビトールを含む。
【0161】
本発明による液体組成物の1実施形態では、液体組成物は、0.85以下の水分活性、及び50重量%以下の含水量を有し;NADESは、ソルビトール、キシリトール及びトレハロースの三つの多価アルコールを含み;モリクテス綱細菌は、その病原性に関して弱毒化されており、モリクテス綱細菌は、M.ニューモニアエ(M.pneumoniae)、M.ボビス(M.bovis)、M.ヒオプニューモニアエ(M.hyopneumoniae)、M.メレアグリディス(M.meleagridis)、M.ガリセプチカム(M.gallisepticum)、及びM.シノビアエ(M.synoviae)から選択される1以上である。
【0162】
説明したように、本発明による液体組成物は、一般的な技術及び材料を使用して製造することができる。本発明による液体組成物を調製するためのそのような方法、使用、又はプロセスの詳細及び例が本明細書に記載され、そのような手順は、日常的な材料及び方法を使用して当業者によって容易に利用可能である。
【0163】
例えば、本発明におけるNADESは、工業規模で製造することができ、次いで、生モリクテス綱細菌の調製物と混合することによって、本発明による液体組成物に製剤される。次に、その混合物を適切な大きさの容器に充填する。製造プロセスの各種段階は、十分な試験、例えば細菌の質及び量の生化学的又は免疫学的試験によってモニタリングすることができる。
【0164】
従って、さらなる態様において、本発明は、本発明による液体組成物の製造方法であって、
a.NADESを調製する段階、及び
b.当該NADESを生モリクテス綱細菌と混合する段階
を含む方法を提供する。
【0165】
簡便には、本発明による方法のその二つの段階は、時間的に及び/又は場所的に分離されて行うことができ、保管、輸送、又はさらに更なる段階を介在させることができる。これにより、計画及び物流における運用に柔軟性がもたらされる。
【0166】
本発明による方法で使用されるNADESの製造は、日常的なツール及び方法を使用して行うことができる。一つの簡便な方法は、組み合わせた化合物を、例えばオートクレーブ処理でのようにそれらを混和及び可溶化させることができる温度まで加熱することである。しかしながら、本発明で使用されるNADESのいくつかの化合物又は組成物は、過度の高温に耐容できない場合があり;当業者は、そのようなプロセスを最適化及び微調整することができる。その加熱は、例えば、攪拌又は超音波処理と組み合わせて行うことができる。
【0167】
また、NADESを形成する成分の一つを、最初に、ある程度濃縮された形で水に溶解させることができ、その後、(a)さらなる成分と混合することができる。次に、余分な水を除去することでNADES構造を形成する。好ましくは、そのような除去は、凍結乾燥によっては行われない。別の方法は、例えば、減圧下に70℃の水浴中、数時間にわたりロータリーエバポレーションすることである。
【0168】
本発明による方法で使用される生モリクテス綱細菌を含む組成物は、イン・ビボでの培養から、しかし好ましくは適切な培地での細菌のイン・ビトロ培養から、各種方法で簡便に誘導することができる。このような細菌培養は、自動制御及びモニタリング技術を適用する大規模な工業用サイズの発酵槽で、最大数千リットルまでの所望の大きさ又は体積で行うことができる。
【0169】
次に、細菌の特性によって決まる方法で培養物から細菌を、上清、細胞ペレット、又は培養物全体として回収する。次に、細菌を、直接、又は最初に細菌を液体、例えば緩衝液若しくは培地と混合することによって間接的に、NADESと混合する。
【0170】
本発明の方法で使用される細菌組成物は、例えば限外濾過膜通過を用いる濃縮などのさらなるプロセス段階を使用して調製することができる。次に、細菌組成物を生存率及び量についてチェックする。これは全て、当業者には公知である。
【0171】
本発明による方法におけるNADESと細菌組成物との混合は、好ましくは無菌技術を使用して行う。
【0172】
NADESを細菌組成物に添加できたり又は他の形でもできるという点で、混合の順序及び方法は重要ではない。好ましくは、細菌への不必要な剪断力を防ぐために、使用される機械的混合は低速且つ低衝撃とする。さらに、混合及び/又は充填は、酸素曝露を低減するために、不活性ガス(例えば、窒素)の保護雰囲気中で行うことができる。
【0173】
比較的粘性の高い液体を混合及び充填するための簡便な装置は、プロセス装置の各種供給者から入手できる。
【0174】
さらなる態様において、本発明は、生モリクテス綱細菌を含む液体組成物中の安定剤として、本発明について記載されたNADESの使用を提供する。
【0175】
「安定剤」、「液体組成物」、「生モリクテス綱細菌」は全て、本発明について本明細書に記載されている実施形態のいずれか1以上で定義されている通りである。
【0176】
説明したように、本発明によって提供される有利な利用は、細菌ワクチンとしての、本発明による液体組成物の医学的使用におけるものである。
【0177】
従って、さらなる態様において、本発明は、モリクテス綱細菌によって引き起こされる感染症又は疾患に対するワクチンとして使用される、本発明による又は本発明による製造方法によって得られる液体組成物を提供する。
【0178】
同様に、さらなる態様において、本発明は、モリクテス綱細菌によって引き起こされる感染症又は疾患に対して使用される液体ワクチンを提供し、そのワクチンは、本発明による又は本発明による方法によって入手可能である液体組成物を含む。
【0179】
そして、さらなる態様において、本発明は、本発明による液体ワクチン中の薬学的に許容される担体としての、本発明について記載されたNADESの使用を提供する。
【0180】
「ワクチン」は、医学的効果を有する組成物であることが知られている。ワクチンは、免疫学的に活性な成分及び薬学的に許容される担体を含む。この場合の「免疫学的に活性な成分」は、生モリクテス綱細菌によって表される。ワクチンは、標的動物の免疫系によって認識され、それが防御免疫応答を誘発する。その応答は、標的の自然免疫系及び/又は獲得免疫系に由来し得るものであり、細胞性及び/又は体液性の種類であり得る。
【0181】
ワクチンは、一般に、例えば、存在する病原体の数を減らしたり、宿主動物での病原体の複製期間を短縮したりすることで、感染の重症度を低下させるのに有効である。
【0182】
さらに又は恐らくそれの結果として、ワクチンは、一般にそのような感染若しくは複製によって、又はその感染若しくは複製に対する標的の応答によって引き起こされ得る疾患の(臨床)症状を軽減又は改善する上で効果的である。
【0183】
本発明における「薬学的に許容される担体」は、高純度の液体であり、好ましくは無菌である。この場合、担体は、本明細書で定義のNADESである。担体は、安定剤、酸化防止剤又は保存剤のようなさらなる添加剤を含むことができる。
【0184】
「モリクテス綱細菌によって引き起こされる感染症又は疾患」に関する詳細は、当技術分野で公知であり、例えば、メルク獣医マニュアル(上記)、及びDiseases of Poultry,12th edition,2008,Wiley-Blackwell,ISBN:0813807182のようなハンドブックに記載されている。
【0185】
本発明による液体ワクチンは、免疫学的に有効な量の生モリクテス綱細菌を含む。
【0186】
本発明の分野の当業者は、例えばワクチン接種後の免疫応答をモニタリングすることによって、本発明による液体ワクチン中の生モリクテス綱細菌そのような免疫学的に有効な量を決定及び最適化することが十二分にできる。また、非ヒト動物の標的の場合、チャレンジ感染を与え、その後、標的の疾患の兆候、臨床評点、及び病原体の拡散と広がりをモニタリングし、これらの結果を、模擬ワクチン接種動物で見られるワクチン接種チャレンジ応答と比較することができる。
【0187】
ワクチン用量又は動物サンプル中の生細菌の量を決定する方法は当技術分野で公知であり、典型的には、細菌の培養及びカウンティングの技術を使用するものである。簡便には、そのような細菌の量は、数値として、例えばCFUで表すことができる。
【0188】
本発明による液体ワクチンの標的は、ワクチンに含まれる特定の生モリクテス綱細菌の病原性形態によって引き起こされる感染症又は疾患に対するワクチン接種を必要とするヒト又は非ヒト動物である。ワクチン接種される標的の年齢、体重、性別、免疫学的状態及び他のパラメータはあまり重要ではないが、健康で感染していない標的にワクチン接種し、圃場感染を防ぐためにできるだけ早くワクチン接種することが好ましい。
【0189】
本発明による液体ワクチンは、追加の抗原又は微生物、サイトカイン、又は非メチル化CpG、アジュバントなどを含む免疫刺激性核酸のような他の化合物をさらに含み得る。或いは、本発明による液体ワクチンは、それ自体がワクチンに加え得る。
【0190】
本発明による液体ワクチンは、有利には、1以上のさらなる抗原又は例えば意図されたヒト又は非ヒト動物の標的に病原性のある微生物に由来する微生物と組み合わせることができる。そのようなさらなる抗原は、それ自体が生存している、弱毒化された、又は不活化された感染性微生物であり得るか、サブユニット、抽出物又は画分などであり得る。さらなる抗原は、タンパク質、炭水化物、リポ多糖類、脂質又は核酸分子のような生体分子又は合成分子からなるものであることができる。
【0191】
本発明による液体ワクチンは、チメロサール、メルチオレート、フェノール化合物、及び/又はゲンタマイシンのような保存剤を含み得る。好ましくは、保存剤は使用しない。
【0192】
本発明による液体ワクチンは、安定剤を含み得るが、好ましくは、そのような安定剤は、本明細書に記載されるような可変又は未定義の化合物ではない。
【0193】
本発明による液体ワクチンは、アスコルビン酸、クエン酸塩、メチオニン又はトコフェロールのような抗酸化剤を含み得る。
【0194】
本発明による液体ワクチンは、予防的処置又は治療的処置、或いはその両方として使用することができる。
【0195】
本発明による液体ワクチンは、効果的なプライミングワクチン接種として機能することができ、その後、同じワクチン又は異なるワクチンを用いて、1以上のブースターワクチン接種を行うことができる。
【0196】
本発明による液体ワクチンは、本発明による液体組成物の製造方法を組み込んだ公知の技術を使用して調製することができる。
【0197】
従って、さらなる態様において、本発明は、本発明による液体ワクチンの製造のために、本発明について記載されたようなNADESの使用を提供する。
【0198】
このような製造には、不妊症及び外来物質の不在に関する微生物試験;並びに最終的には効力及び安全性を確認するためのワクチン接種試験が組み込まれる。品質、量、無菌性、安全性及び効力の試験が完了した後、ワクチン製品を発売することができる。
【0199】
これらは全て当業者に知られており、医薬品製造の公知の基準の下でのワクチン製造に適用される一般的な技術及び考慮事項は、例えば政府の指示及び規制(薬局方、9CFR)及び公知のハンドブック(Pastoret,Lippincot、両方とも上記)に記載されている。
【0200】
本発明による液体ワクチンは、例えば製薬会社によって供給される形態で、ヒト又は非ヒト動物に投与することができる。しかしながら、本発明による液体ワクチンの特定の実施形態の具体的な組成に応じて、液体ワクチンの希釈を行うことが好ましい場合がある。これは、例えば粘度を低下させることによって標的への実際の投与を容易にし得るか、又は標的のワクチン接種時の局所反応を軽減させ得る。
【0201】
そのような希釈のための希釈剤は、典型的には液体であり、本発明による液体ワクチン組成物とは別に提供され得る。好ましくは、希釈剤は、例えば部品のキットとして、本発明による液体ワクチンと一緒に提供される。
【0202】
従って、さらなる態様では、本発明は、少なくとも二つの容器(本発明による液体ワクチンを含む一つの容器、及び液体希釈剤を含む一つの容器)を含む部品のキットに関する。
【0203】
例えば本発明による部品のキットに含める、本発明による液体ワクチンを希釈するための「液体希釈剤」は、本発明による液体ワクチンを希釈するのに適した液体である。従って、液体希釈剤は、水又は緩衝液のような水系であることができる。しかしながら、本発明による液体ワクチンの含水量が低いことから、希釈剤はまた油性であり得るか、又は油と水の乳濁液、例えば水中油型乳濁液、油中水型乳濁液、又は二重乳濁液であり得る。
【0204】
1実施形態では、液体希釈剤は、それ自体が液体ワクチン、例えば、再生凍結乾燥生ワクチン又は乳濁液ワクチンであり得る。
【0205】
例えば本発明による部品のキットに含めるための、本発明による液体ワクチンを希釈するための液体希釈剤の選択は、希釈後のワクチンの所期の用途;それを含むモリクテス綱細菌;ワクチン接種の所期のヒト若しくは非ヒト動物標的のようないくつかの要因によって決まる。当業者は、そのような希釈剤を、選択、調製及び適用することが完全に可能である。
【0206】
本発明による部品のキットの1実施形態では、キットは、キット及び/又はその構成部品の使用説明書を含む。好ましい実施形態では、使用説明書は、例えばそのキットの製造者若しくは販売者から、キットの構成部品の1以上の上に、又はそれとともに提供され;又は、インターネットウェブサイトで表示又はダウンロードできる情報など、電子形式の説明書への参照によって提供される。
【0207】
1実施形態では、部品のキットは、少なくとも二つの容器を含み、箱上、箱とともに、又は箱内に入っている情報キャリア(例えば、カード又は小冊子)に表示される使用説明書を含む箱である。
【0208】
部品のキットの1実施形態では、キットはまた、本発明によるワクチン接種方法で使用するための、例えばインターネットウェブサイト上での(商業的販売に関連する)構成部品の提供でもあり得る。
【0209】
本発明による液体ワクチン、又は本発明による方法又は使用によって製造することができる液体ワクチン、又は例えば本発明による部品のキットを用いて調製することができる希釈形態の液体ワクチンは、そのようなワクチン接種を必要とするヒト又は非ヒト動物標的への投与を目的としている。ワクチン接種は、本発明の生モリクテス綱細菌の非弱毒化対応物による感染によって引き起こされ得る感染及び/又は疾患兆候を低減するために能動免疫を誘発する。次に、これは、標的のヒト又は非ヒト動物において、病変の数、強度又は重度、並びに細菌感染によって引き起こされる疾患の結果的臨床兆候の減少をもたらす。このようなワクチンは、口語的には、特定のモリクテス綱細菌「に対する」ワクチン、又は「モリクテスワクチン」と称させる。
【0210】
従って、さらなる態様において、本発明は、液体ワクチン中に含まれる病原型の生モリクテス綱細菌によって引き起こされる感染及び/又は疾患に対してヒト又は非ヒト動物標的を保護する方法で使用される、本発明による液体ワクチンを提供する。
【0211】
そのような「前記液体ワクチンに含まれる病原型の生モリクテス綱細菌」は、例えば、本発明のモリクテス綱細菌の弱毒化形態が生成された、弱毒化されていない親モリクテス綱細菌である。或いは、そのような病原型の細菌は、本明細書に記載のように、各種供給源から容易に誘導することができる。本発明の当業者は、例えば、本明細書に記載のイン・ビトロ又はイン・ビボでの比較試験によって、モリクテス綱が病原型であるか否かを完全に決定することができる。
【0212】
「保護方法」には、本発明による液体ワクチンを前記ヒト又は非ヒト動物標的に投与して、そのワクチンが、標的におけるそれの好ましい免疫学的効果を「取得」(即ち、保護感染を確立)し、それを示すことを含む。
【0213】
さらなる態様において、本発明は、モリクテス綱細菌によって引き起こされる感染症又は疾患に対するヒト又は非ヒト動物標的のワクチン接種方法を提供し、該方法は、本発明による液体ワクチンの前記標的への投与を含むか、本発明による部品のキットの使用を含む。
【0214】
本発明によるワクチン接種の方法において、本発明による液体ワクチンは、ヒト又は非ヒト動物標的への直接投与に使用され得る。或いは、本発明による液体ワクチンは、希釈形態でヒト又は非ヒト動物標的に投与することができる。本発明によるワクチン接種方法のこの後者の実施形態は、粘度が低下しているため、取り扱い及び注射による投与を容易にし得るものである。或いは又はさらに、希釈形態での投与は、例えば、接種部位での組織刺激に起因する、ヒト又は非ヒト動物標的における局所反応を低減し得る。
【0215】
本発明の方法によるワクチン接種は、非経口経路によって、即ち、皮膚を介して、例えば、筋肉、腹腔内、皮内、粘膜下又は皮下で実施することができる。本発明による液体ワクチン組成物の非経口投与の好ましい経路は、筋肉注射又は皮下注射によるものである。
【0216】
さらに、本発明による液体ワクチンは、経腸又は粘膜経路によって、即ち、点眼、点鼻、経口、経腸、点口鼻、噴霧、エアゾールを介して投与することができる。
【0217】
或いは、本発明による液体ワクチンは、飲料水、粗噴霧、霧化、給餌添加などを介した大量投与方法を介したような標的に投与することができる。さらなる代替形態は、卵内経路による胎鳥への投与である。
【0218】
言うまでもなく、本発明による液体ワクチンの最適な投与経路は、使用されるワクチンの詳細、及び標的の特定の特性によって決まる。熟練者は、そのような投与経路及び投与方法を完全に選択及び最適化することができる。
【0219】
本発明による液体ワクチンは、標的のヒト又は非ヒト動物に許容される容量で非経口経路によって投与することができ、例えば、約0.01mL~約10mLの量であることができる。好ましくは、1用量は、約0.05mL~約5mLの容量であり、より好ましくは、1用量は、0.1mL~3mLである。
【0220】
筋肉経路で投与する場合、1用量の容量は、好ましくは約0.5mL~約3mL、より好ましくは約1mL~約2mLである。
【0221】
皮内経路で投与する場合、1用量の容量は、好ましくは約0.1mL~約0.5mL、より好ましくは約0.2mLである。
【0222】
胚内で投与される場合、1用量の容量は、好ましくは約0.01mL~約0.5mLであり、より好ましくは約0.05mLである。
【0223】
本発明による液体ワクチンの投与の方法、タイミング及び容量は、好ましくは、標的へのストレスを低減し、人件費を削減するために、標的のヒト又は非ヒト動物が必要とし得る他のワクチンの既存のワクチン接種スケジュールに統合される。これらの他のワクチンは、同時、同時点、又は順次の形態で、それらの登録された使用に適合する方法で投与することができる。
【0224】
本発明による液体ワクチンをさらに最適化することは、当業者であれば実現可能なことである。一般に、それには、ワクチンの効力を微調整して、提供される免疫保護をさらに改善することを含む。これは、例えば、ワクチンの用量、容量、又は抗原含有量を調整することによって、又は異なる経路、方法若しくは投与法を介して適用することによって行うことができる。これらは全て、本発明の範囲内に含まれる。
【0225】
ここで、以下の非限定的な実施例によって、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0226】
実施例1:方法及び材料
1.1:NADES製剤の調製
NADESは、加熱及び/又は少量の水の添加によって加速できる所望の成分の混合によって調製することができる。本明細書において以下でさらに試験及び記述されるNADESのサンプルを、水浴での超音波処理を介して関連化合物を水に溶解することによって調製した。必要量の化合物をフラスコに加えた。フラスコを短時間振盪又は渦攪拌して、粉末を混合した。次に、必要量の水を加えた。この混合物を、NADESが形成されるまで、45℃に設定された超音波処理-水浴に入れ、最長数時間にわたり超音波処理した。超音波処理中、最高80℃の温度に達する可能性があった。
【0227】
1.2:水分活性の測定
サンプル
生物学的封じ込めの目的で、こうして生存細菌を含まないNADES調製物のサンプルの水分活性を測定した。しかしながら、本発明による液体ワクチン組成物を形成するためにNADESに添加される水性細菌組成物の量がわかれば、NADESと細菌組成物との組み合わせの結果的な水分活性は、Daiら(2015,Food Chem.,vol.187,p.14-19)に従って計算することができる。
【0228】
サンプル調製
ある量のNADESサンプルを10mLガラスバイアルに移して、バイアルの約1/4の充填高さに到達させた。各サンプルについて、符号を付したバイアルを二連で充填した。PTFEストッパー付きのアルミニウムクリンプキャップを使用してバイアルを閉じ、室温で12時間置くことで、サンプルとヘッドスペースの間の平衡に達するようにした。
【0229】
装置
サンプルのヘッドスペース内の水蒸気圧を、Lighthouse(商標名)FMS-1400水分/圧力分析装置を用いて測定した。サンプルをそのままサンプルチャンバーに挿入した。サンプル測定の前に、0~0.2awの範囲の較正ヘッドスペース圧力標準を用いて、系の較正を行った。また、飽和塩標準を用いて、0.2~1awの非線形範囲を較正及び再計算した。
【0230】
較正
aw 0~1の全範囲で機械を校正し、水分活性値の基準線を作成するために、いくつかの標準サンプルを測定した:純水の次に、特定の飽和塩溶液の5サンプルを使用し、6つの標準二連サンプルのそれぞれについて、3倍で測定した。純水の測定値を1.000に設定することにより、0.8511、0.7547、0.5438、0.3307、及び0.1131のawで他の標準値を求めた。また、一連の認定蒸気圧基準を測定した。
【0231】
aw測定の結果を表1に含めている。
【0232】
1.3:NADESのDSCプロファイルの試験
Thermal Analysisソフトウェアを用い、TA InstrumentsからのQ2000 DSC装置で、示差走査熱量測定(DSC)分析を行った。完全DSCプロファイルのため、サンプルは最初に40℃で平衡化させ、5℃/分で-90℃に冷却し、続いて-90℃で5分間平衡化させた後、サンプルを再度5℃/分で40℃まで加熱した。この冷却及び加熱のサイクルを同じサンプルで2回目繰り返して、位相ヒステリシスを調べた。ベースラインにおける段階的シフトの中点による加熱曲線からソフトウェアによってサンプルのTgを求め、これはガラス転移時の移動度増加による熱伝導率の変化を示している。
【0233】
プロリン、ソルビトール及び水のモル比が1:1:2.5で形成されたNADESについて、本発明におけるNADESの典型的なDSCプロファイルを
図1に示す。
【0234】
図1は、ここでは-41~-45℃の基底線の急激なシフトを示しており、これは、ガラス転移を示し、これは、本発明における有効なNADESの特性に対応している。このプロファイルは、チャオら(Qiaoら.)(上記)によって、彼らの
図4で、過度に希釈されて水系組成物になった、そして本質的に平坦な基底線を示し、水-氷結晶の形成及び融解:いわゆる「冷-結晶化」時の熱フローの上昇及び低下があるNADESの提示されたものとは本質的に異なる。
【0235】
1.4:NADESと細菌組成物の混合
NADES調製物を、層流キャビネット内で細菌組成物と9+1(体積比)で混合した。サンプルを、ローラーバンクを使用して優しく混合し;渦攪拌し;又はサンプルの大きさに応じて、滅菌白金耳を使用して短時間攪拌した。これらのサンプルから、小分けサンプル1mLを3mLガラスバイアルに充填し、ゴム栓と金属キャップで蓋をした。
【0236】
1.5:安定性アッセイ
各試験サンプルについて、固有のバイアルを、冷蔵条件(2~8℃)、冷凍条件(-20℃)、又は室温(20℃)で保管した。所定期間後、バイアルを開け、PBSでの10倍希釈液を10
-1~10
-10希釈まで調製した。少なくとも三つの希釈液について、二連で、特定の細菌の増殖を支援する寒天プレート上で、50μLサンプルを蒔いた。次に、コロニーがカウントするのに十分な大きさになるまで、プレートを37℃及び5%CO
2で5~8日間インキュベートした。これから、モリクテス綱細菌の力価を計算し、それによって30~300コロニーをカウントした。力価は、サンプル1mL当たりのコロニー形成単位(CFU/mL)として表した。異なる時点で調べた異なるバイアルのデータ点から、
図2及び3に示したような、安定性データのグラフを作成した。
【0237】
実施例2:本発明で使用されるNADESの組成物
本発明で使用するために、異なる化合物、異なるモル比及び異なる水分含有量で、多数の異なるNADES組成物を調製した。
【0238】
以下の表1に、多くの最も効果的なNADES製剤を挙げてあり;これらは、室温(約20℃)で流体である透明な液体溶液を生成した。それらの組成と水分含有量についての詳細が提供されている。準備されたサンプルのいくつかについて、水分活性を求め、その結果を含めている。
【0239】
表1:本発明の典型的な数のNADESの組成及び特性
【表1】
【0240】
実施例3:細菌安定性アッセイの結果
本発明による液体組成物に含まれるM.シノビアエ(M.synoviae)及びM.ガリセプチカム(M.gallisepticum)細菌について、安定性アッセイを、長期間にわたって2~8℃の温度及び室温(約20℃)で実施した。
【0241】
室温で8週間のインキュベーションは、4℃で1~2年間のインキュベーションの効果を示す迅速安定性試験として役立ち得る。従って、これは細菌の生存能力に対する非常に重大な攻撃であり、全てのサンプルがこれらの条件下で生き残ると予想されたわけではなかった。
【0242】
安定性結果からの結論
M.シノビアエ(M.synoviae)及びM.ガリセプチカム(M.gallisepticum)の両方の保管時の固有の低安定性が、標準のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中での1+9(体積比)混合物である対照によって実証された。例示的な詳細については、
図2及び3を参照する。この対照液体組成物では、すでに試験を行った最初の時点で、調べた希釈液のいずれにおいても、細菌コロニーはもはや検出できなかった。これは、2~8℃及び室温の両方の保管条件に当てはまった。
【0243】
これらの対照サンプルから、PBS中のM.シノビアエ(M.synoviae)又はM.ガリセプチカム(M.gallisepticum)のいずれの検出可能な生存もなかったと結論付けられた。
【0244】
驚くべきことに、そしてPBS対照とは極めて対照的に、M.シノビアエ(M.synoviae)及びM.ガリセプチカム(M.gallisepticum)の両方が、本発明による液体組成物中でNADESと組み合わせた場合に顕著な生存を示した。1+9(体積比)で各種NADESと混合した場合、20℃で最長8週間保存すると、測定可能な力価が得られた。
【0245】
M.シノビアエ(M.synoviae)の場合、20℃での安定化効果は、NADESのベタイン:ソルビトール:WFIが1:1:2.5のモル比、ソルビトール:キシリトール:トレハロース:WFIが2:2:1:10のモル比で最も強かった。2~8℃で最長6か月間保管すると、顕著な生存力価が認められ、いくつかのNADESにおいて3Log10CFU/mL未満の損失があった。
【0246】
M.ガリセプチカム(M.gallisepticum)の場合、20℃での安定化効果は、NADESのアルギニン:ソルビトール:WFIが1:2:6のモル比、プロリン:ソルビトール:WFIが1:1:2.5のモル比で最も強かった。2~8℃で最長3か月間保管すると、顕著な生存力価が見られ、いくつかのNADESにおいて3Log10CFU/mL未満の損失があった。
【0247】
実施例4:実験動物へのNADESの投与
投与の容易さ及び標的動物における本発明で使用されるNADESの安全性を評価するために、NADESの実施例を実験動物及び死後の材料に投与した。
【0248】
この目的のために、プロリン:ソルビトールに基づくNADESの二つのバリアントを作成し、試験を行った:一つは高粘度物(NADES 3A)であり、もう一つは低粘度物(NADES 3B)である。これらは、粘度スペクトラムの2つの極値での本発明におけるNADESの投与特性を比較するのに役立った。NADES 3Aの特性を表1に示す。さらに、それらの粘度は、約80mLの標準的な計量カップ中、60rpmで30秒間、スピンドルタイプNo.62を使用し、Brookfield(商標名)DV-I+粘度計を用いて、約20℃での標準条件を使用して測定した。
【0249】
取り扱い
高粘度NADES 3Aを、サイズ21G以下の皮下注射針、即ち外径0.8mm以上の針に押し込むことができた。
【0250】
表3:動物への投与によって試験したNADES製剤
【表2】
【0251】
イン・ビボでの皮下投与
NADES製剤3B及び3Cを、イヌでの安全性試験で皮下注射によって投与した。局所又は全身での安定剤製剤投与後に起こり得るあらゆる副作用に対して、特別な注意を払った。
【0252】
前述のように、プロリン、ソルビトール及び注射用水を密閉バイアル中で加熱及び超音波処理することによって、透明かつ均一な液体とすることで、両方の製剤を調製した。さらに、それらをフィルター滅菌し、それらのバイオバーデン及びエンドトキシンレベルを求めた。両製剤とも、1ユニット/mLの最低希釈基準を下回り、滅菌製剤の一般的な許容基準を満たしていることが認められた。NADES 3C製剤を、1体積部のNADES 3Aを9体積部のWFIで希釈することによって、プロリン:ソルビトール:WFIを1:1:5の比率で含み、粘度289mPa・sの製剤とすることで調製した。NADES 3Bの粘度は、33.4mPa・sである。
【0253】
7ヶ月齢の健康なビーグル犬6頭を、イヌ3頭からなる2群に分けた。各群をNADES製剤に割り当て、皮下接種で1mL注射器及び21G 5/8針を使用して、2週間間隔で、割り当てられた製剤1mLを2用量投与した。群1のイヌには低粘度NADES 3Bを投与し、群2のイヌには高粘度NADES 3Cを投与した。全てのイヌは、接種部位での局所反応を含め、試験全体を通して毎日臨床的にモニタリングした。
【0254】
ワクチン接種は首筋で行った:最初のワクチン接種は左側で行い、2回目のワクチン接種は首の右側で行った。各投与の前にワクチン接種部位を剃毛し、注射部位をマーカーペンで囲んだ。いずれの注射時も不快感は認められなかった。注射4時間後、注射部位を触診し、注射部位で触診できる物質はほとんど又は全くなく、腫れも発赤も観察されなかった。
【0255】
各ワクチン接種前の-3、-2、-1日;ワクチン接種当日:ワクチン接種の直前及びワクチン接種の4時間後;並びに次にワクチン接種後7日間は毎日、直腸温度を測定した。
【0256】
試験全体を通して、どの犬でも体温に有意な上昇は観察されず、臨床的副作用も観察されなかった。
【0257】
結論:イヌへの皮下経路によるNADES製剤3C又は3Bの接種は、局所的にも全身的にも、有害な接種反応を誘発しなかった。
【0258】
鼻腔内投与
鼻腔内投与した場合の鼻の粘膜表面での広がりのパターンについて、二つのNADES製剤:3A及び3Bの試験を行った。両方のNADES製剤はそのまま、水を加えずに試験を行った。結果的に、NADES 3Aの粘度は5197mPa・sであり、NADES3Bの粘度は33.4mPa・sである。スパチュラ先端量の「パテントブルー」着色剤を各NADES製剤30mLに加えて、深青色を得た。対照として、着色剤を含むPBSを使用した。
【0259】
約2~4週齢の仔牛から、死後に仔牛頭部を得た。農場での経鼻投与時の仔牛の位置に似せ、鼻腔を若干上向きに傾けて、上向きの位置に頭部を保持しながら、投与を行った。
【0260】
次に、鼻腔内ワクチン接種の標準的な手順に従って液体を投与し、それにより、液体1.5mLが入った針のない2.5mL注射器を鼻孔に入れ、次に液体を一つの定常流で噴出させた。次に、頭部を2分割し、中隔を除去して、鼻腔内路での青色の存在を検査した。
【0261】
全てのサンプルで、青い液体が鼻道を通って簡単に移動していたことが観察された。PBSサンプルの粘度が低いことで注入が容易であったが、全ての液体が急速に通過した。気管の開始部を含む鼻腔全体に青色が観察された。
【0262】
非常に高い粘度のNADES 3Aの注入には、注射器から注射するのに少しの力がかかった。また、予想通り、青い液体が頭の下に現れるまでに相対的に長い時間がかかった。頭部を切開した後、この粘性液体も鼻腔内路に均一に広がり、厚い層を形成しているように見え、鼻腔により多くの物質が残っていることが観察された。これは、経鼻ワクチン接種時に生存仔牛に投与した場合、保持が改善され、上気道への進入が少なくなりそうであることを示している。
【0263】
低粘度のNADES 3B製剤の投与の効果は、液体が鼻腔を通り抜けるPBSサンプルの効果と非常に似ていた。
【0264】
結論:仔牛頭部への鼻腔内注射後、粘度の異なる着色製剤の分布をモニタリングすることができた。青色で判断した液体の分布は、二つのNADES製剤とPBSで同等であったが、投与のしやすさ及び残留物の量に関しては若干の違いがあり、NADES 3A製剤の方が排出が少し困難であったが、結果として鼻道内の残留物の層がより厚くなった。これは、そのような粘性のあるNADES製剤からの抗原の徐放が得られる可能性があることを示唆している。
【0265】
実施例5:水性安定剤の比較測定
0.04M PBS中の30重量%ソルビトール+0.6Mアルギニンを有する、WO2015/121463に記載されている水性安定剤組成物を調製した。この組成物について、水分活性及びDSCプロファイルなどの特性を調べて、それが、組成物を上記で定義及び概説されたNADESたらしめる特徴的な特性を持たないことを明らかにした。
【0266】
水分活性
awの測定を、WO2020/122329実施例1に記載の方法に従って、ヘッドスペース蒸気圧測定によって行った。水分活性の結果を二連で測定して、平均awは0.89であった。明らかに、この高レベルの利用可能な水は、この組成物がNADESではないことを示している。
【0267】
DSCプロファイル
先行技術の水性安定剤のDSCプロファイルの測定を、実施例1.3で本明細書に記載されている方法に従って行った。
【0268】
結果を
図4に示す。これによると、(ここでの
図1のように)グラフの上部の水平部分は、5℃/分での40℃から-90℃までの冷却期(右から左へ)を示しており、下部の水平部分は、5℃/分での-90℃から40℃までの加熱期(左から右)を示している。
【0269】
冷却中、約-27℃の温度で、自由水の氷への広範かつ突然の結晶化を観察することができる。次に、再加熱すると、典型的な氷晶融解プロファイルが、-5.5℃をピークにして観察された。
【0270】
さらに、
図4では、加熱期中、氷融解後の水平基底線が、それが融解する前と同レベルに戻っている。これは、そのサンプルの熱容量に変化がなかったことを意味しており、これは、ガラス転移の場合に典型的に観察される段階的な基底線シフトとは明らかに異なる。
【0271】
また、
図4における氷の融解が
図1のガラス転移(-45℃)よりはるかに高い温度(-5℃)で起こることも重要であり、これもやはり、
図4で調べたサンプルが深共晶混合物ではなかったことを示している。
【0272】
図4で、両方のピーク、高い融解温度及び基底線が以前のレベルに戻ったことは、全て氷晶の形成及び融解を示しており、従って、調べた組成物に多量の自由水が存在していること、従ってNADESではなかったことを示している。
【0273】
しかしながら、逆に、
図1のサンプル(本発明によるNADES)では、氷晶が形成も融解もせず、基底線の明確なガラス転移シフトが認められた。
【0274】
実施例6:追加の安定性結果:M.ボビス(M.bovis)
モリクテス綱細菌のさらなる種:マイコプラズマ・ボビス(Myciplasma bovis)について、本発明による液体組成物の安定化について試験した。実験は、本質的にM.シノビアエ(M.synoviae)及びM.ガリセプチクム(M.gallisepticum)について実施例1~3に記載の方法に従って実施した。
【0275】
本発明による異なる組成物、及び室温又は2~8℃のいずれかでの安定性アッセイの結果を
図5に示す。
【0276】
パネルA:室温、最長10週間;及び
パネルB:2~8℃、最長26週間のインキュベーション。
【0277】
初期力価は9.9Log10CFU/mLであった。PBS(陰性対照)で、室温と冷蔵した場合の両方で、2週間のインキュベーションである程度の生存が観察された。しかしながら、PBSでより長期間インキュベートしたサンプルでは、生細胞はもはや全く回収できなかった。
【0278】
室温では、いくつかのNADES組成物で、良好な初期安定性(2~4週間のインキュベーション)が得られた。しかしながら、アルギニン:ソルビトール:水(2:1:6)を使用すると最良の結果が得られ、それは、この細菌を室温で少なくとも10週間安定化させることができた。
【0279】
冷蔵インキュベーションでは、同様の画像が観察され、調べた組成物のうちのいくつかにおいて6~13週間の良好な初期安定化が観察された。最良の長期安定剤(26週間のインキュベーション)もアルギニン:ソルビトール:水(2:1:6)であったが、調べた異なる組成間で観察された相違は、室温でのインキュベーションほど大きくなかった。
【0280】
全体として、M.ボビス(M.bovis)は、本発明による液体組成物中で凍結乾燥せずに、凍結より高い各種保管温度で効果的に安定化することができた。
【0281】
実施例7:拡大安定性試験の結果
本発明による液体組成物中のM.シノビアエ(M.synoviae)及びM.ガリセプチクム(M.gallisepticum)の安定性試験結果は、2~8℃で1年までの継続的なインキュベーションから得られた。これらのデータは、実施例3に記載されているのと同じ一連のサンプルから得られ、本明細書の
図2B及び3Bに示されている結果を拡張したものである。
【0282】
【0283】
パネルA:M.シノビアエ(M.synoviae)、2~8℃、最長54週間;及び
パネルB:M.ガリセプチクム(M.gallisepticum)、2~8℃、最長52週間のインキュベーション。
【0284】
M.シノビアエ(M.synoviae)の場合、本発明に従って試験した液体組成物のうちの三つが、これらの細菌の生存能力を2~8℃で少なくとも1年間安定化させることができる;これにより、プロリン:ソルビトール:水(1:1:2.5)及びベタイン:ソルビトール:水(1:1:2.5)は同じ最終結果を示した。
【0285】
M.ガリセプチクム(M.gallisepticum)の場合、生菌は、ベタイン:ソルビトール:水(1:1:2.5)で、2~8℃で52週間のインキュベーションまでしか保持されなかった。
【国際調査報告】