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特表2022-526550ロボットシステムのための拡張可能安全システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(54)【発明の名称】ロボットシステムのための拡張可能安全システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
B25J19/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557739
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(85)【翻訳文提出日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 DK2020050085
(87)【国際公開番号】W WO2020200386
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】PA201900407
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA201901542
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516266514
【氏名又は名称】ユニバーサル ロボッツ アクツイエセルスカプ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ベック、 アンダース ビレソ
(72)【発明者】
【氏名】ブラント、 ダビド
(72)【発明者】
【氏名】オルムホイ、 ヤコブ シュルツ
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707CT05
3C707CV08
3C707CW08
3C707HS27
3C707KS35
3C707KS37
3C707MS15
3C707MS28
(57)【要約】
ロボットアームと、ロボットアームを制御するためのロボットコントローラと、ロボットアームをモニタする安全システムと、を含み、安全システムは、安全システムによって評価される少なくとも1つの安全機能に基づいて、ロボットアームを安全モードにするように構成される、ロボットシステム。ロボットコントローラは、少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータ範囲を明示し、ユーザ設定安全パラメータ範囲を安全システムに提供し、少なくとも1つのユーザ設定安全機能に基づいて少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータを生成し、ユーザ設定安全パラメータを安全システムに提供するように構成され、安全システムは、少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータがユーザ設定安全範囲内にあるか否かを評価し、15.ユーザ設定安全パラメータがユーザ設定安全範囲の外にある場合に、ロボットアームを安全モードにするように構成された安全範囲安全モニタ機能を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットシステムであって、
・ロボット基部(105)及びロボットツールフランジ(107)に接続される複数のロボットジョイント(103a~103f)を含むロボットアーム(101)と、
・前記ロボットアームを制御するように構成されるロボットコントローラ(202)と、
・前記ロボットアームをモニタする安全システム(225、325)であって、前記安全システムによって評価された少なくとも1つの基本安全機能に基づいて前記ロボットアームを安全モードにするように構成される安全システムと、
を含み、
前記ロボットコントローラと前記安全システムとは異なるハードウェア上に提供され、前記ロボットコントローラは、
・少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータ範囲を明示し、
・前記ユーザ設定安全パラメータ範囲を前記安全システムに提供し、
・少なくとも1つのユーザ設定安全機能に基づいて少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータを生成し、
・前記ユーザ設定安全パラメータを前記安全システムに提供する
ように構成され、
前記安全システムは、
・前記少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータが前記ユーザ設定安全パラメータ範囲内にあるかを評価し、
・前記ユーザ設定安全パラメータが前記ユーザ設定安全パラメータ範囲の外にある場合に前記ロボットアームを安全モードにする
ことによって前記ロボットコントローラをモニタするように構成された安全範囲モニタ安全機能を含む、ロボットシステム。
【請求項2】
前記安全範囲モニタ機能は、前記ロボットコントローラに確認を提供するように構成され、
前記確認は、前記安全システムが前記ユーザ設定安全パラメータ範囲を受領したことを示す、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記安全範囲モニタ機能は、前記ユーザ設定安全パラメータの受領をモニタし、前記ユーザ設定安全パラメータがまだ受領されていない場合に、前記ロボットアームを安全モードにするように構成される、請求項1~2の何れか1項に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記安全システムは異なるハードウェアに提供された少なくとも2つの独立した安全コントローラを含み、
独立した安全コントローラの各々は前記安全範囲モニタ機能を含む、請求項1~3の何れか1項に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記ロボットコントローラは、
・前記ロボットアームの少なくとも一部の状態、
・少なくとも1つの外部装置の状態
の少なくとも一方を示す少なくとも1つのセンサ信号を受領するように構成され、
前記少なくとも1つのユーザ設定安全機能は、前記少なくとも1つのセンサ信号に基づいて前記少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータを生成するように構成される、
請求項1~4の何れか1項に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記ロボットシステムは、ユーザが前記ロボットシステムと通信できるようにするユーザインタフェースを含み、
前記ユーザインタフェースは、前記ユーザ設定安全機能と前記少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータとの少なくとも一方を明示するユーザインタフェース手段を含む、請求項1~5の何れか1項に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記ユーザ設定安全機能と前記少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータとの少なくとも一方を明示する前記ユーザインタフェースは、ユーザ設定安全ソフトウェアコードを前記ロボットコントローラに提供する手段と、前記ユーザ設定安全ソフトウェアコードを前記ロボットコントローラにインストールする手段とを含む、請求項6に記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記ユーザ設定安全ソフトウェアコードは、
・前記少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータ範囲を明示し、
・前記ユーザ設定安全パラメータ範囲を前記安全システムに提供し、
・前記少なくとも1つのユーザ設定安全機能に基づいて前記少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータを生成し、
・前記ユーザ設定安全パラメータを前記安全システムに提供する
ように前記ロボットコントローラに命令する命令を含む、請求項7に記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記ロボットコントローラは非安全適合ロボット制御システムとして提供される、請求項1~8の何れか1項に記載のロボットシステム。
【請求項10】
前記安全システムは安全適合ロボット安全システムとして提供される、請求項1~9の何れか1項に記載のロボットシステム。
【請求項11】
前記ロボットコントローラと1つ又は複数の安全コントローラとの間に安全信号経路が確立され、
送信コントローラが、前記安全信号経路を介して安全信号を1つ又は複数の受信コントローラに送信するように構成される、請求項1~10の何れか1項に記載のロボットシステム。
【請求項12】
前記送信コントローラは前記ロボットコントローラであり、
前記1つ又は複数の受信コントローラは前記安全コントローラの少なくとも1つである、請求項11に記載のロボットシステム。
【請求項13】
前記受信コントローラは、前記安全信号が予想通りに受信されない場合に、前記ロボットアームを停止モードにするように構成される、請求項11~12の何れか1項に記載のロボットシステム。
【請求項14】
前記安全信号が予想通りに受信されるのは、前記安全が送信された時点からカウントされる所定の時間内に前記安全信号が受信された場合、又は前記安全信号が予想されたパターンで受信された場合である、請求項13に記載のロボットシステム。
【請求項15】
ロボットシステムをモニタする方法であって、
前記ロボットシステムは、
・ロボット基部(105)及びロボットツールフランジ(107)に接続される複数のロボットジョイント(103a~103f)を含むロボットアーム(101)と、
・前記ロボットアームを制御するように構成されるロボットコントローラ(202)と、
・前記ロボットアームをモニタする安全システム(225、325)であって、前記安全システムによって評価された少なくとも1つの基本安全機能に基づいて前記ロボットアームを安全モードにするように構成される安全システムと、
を含み、
前記ロボットコントローラと前記安全システムとは異なるハードウェア上に提供され、
前記方法は、
・少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータ範囲を明示するステップ(441)と、
・前記ユーザ設定安全パラメータ範囲を前記安全システムに提供するステップ(442)と、
・前記ロボットコントローラを使って少なくとも1つのユーザ設定安全機能に基づいて少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータを生成するステップ(444)と、
・前記ユーザ設定安全パラメータを前記安全システムに提供するステップ(445)と、
・前記安全システムに提供された安全範囲モニタ機能を使用することによって前記ロボットシステムをモニタするステップ(462)と
を含み、
前記ロボットシステムをモニタするステップは、
・前記少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータが前記ユーザ設定安全範囲内にあるかを評価するステップ(464)と、
・前記ユーザ設定安全パラメータが前記ユーザ設定安全範囲の外にある場合に、前記ロボットアームを安全モード(226)にするステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記ロボットシステムをモニタするステップは、前記ロボットコントローラに確認を提供するステップ(461)を含み、
前記確認は、前記安全システムが前記ユーザ設定安全パラメータ範囲を受領したことを示す、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記安全システムは、前記ユーザ設定安全パラメータの受領をモニタし、ユーザ設定安全パラメータがまだ受領されていない場合に、前記ロボットアームを安全モードにするように構成される、請求項15~16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
・前記ロボットアームの少なくとも一部の状態、
・少なくとも1つの外部装置の状態
の少なくとも一方を示す少なくとも1つのセンサ信号を受領するステップをさらに含み、
前記少なくとも1つのユーザ設定安全機能に基づいて少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータを生成するステップは、前記センサ信号に基づく、
請求項15~17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ユーザ設定安全機能と前記ユーザ設定安全パラメータとの少なくとも一方を明示するステップをさらに含む、請求項15~18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つのユーザ設定安全機能と前記ユーザ設定安全パラメータとを明示するステップは、ユーザ設定安全ソフトウェアコードを前記ロボットコントローラにインストールするステップを含み、
前記ユーザ設定安全ソフトウェアコードは、
・前記少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータ範囲を明示し、
・前記ユーザ設定安全パラメータ範囲を前記安全システムに提供し、
・前記少なくとも1つのユーザ設定安全機能に基づいて前記少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータを生成し、
・前記ユーザ設定安全パラメータを前記安全システムに提供する
ように前記ロボットコントローラに命令する命令を含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボットアームのための安全システムに関し、この安全システムは、ロボットアームの動作中、ロボットアームをモニタして、ロボットアームが安全でない動作モードとなった場合にロボットアームを安全な状態にするように構成される。
【背景技術】
【0002】
複数のロボットジョイントとロボットリンクを含むロボットアームがロボット工学の分野において知られており、この場合、アクチュエータがロボットアームの一部を相互に関して回転又は並進移動させることができる。ロボットアームは、回転ジョイントを含むことができ、アクチュエータは、ロボットアームの一部、及び/又は直動ジョイントを回転させるように構成され、アクチュエータはロボットアームの一部を並進移動させるように構成される。典型的に、ロボットアームは、ロボットアームの取付土台としての役割を果たすロボット基部と、各種のツールに取り付けることができるロボットツールフランジとを含み、複数のロボットジョイント及びロボットリンクがロボット基部とロボットツールフランジに接続される。ロボットコントローラは、ロボットツールフランジを基部に関して移動させるためにロボットジョイントを制御するように構成される。例えば、ロボットアームに複数の動作命令を実行するように命令するために。
【0003】
典型的に、ロボットコントローラは、ロボットジョイントをロボットアームの動的模型に基づいて制御するように構成され、動的模型はロボットアームに作用する力とその結果として生じるロボットアームの加速度との間の関係を規定する。多くの場合、動的模型はロボットアームの運動模型、ロボットアームの慣性に関する知識、及びロボットアームの運動に影響を与えるその他のパラメータを含む。運動モデルは、ロボットアームの異なる部分間の関係を規定し、ジョイント及びリンクの長さ、大きさ等のロボットアームの情報を含んでいてよく、例えばデナビット・ハーテンバーグパラメータ又はその他によって記述できる。動的モデルによって、コントローラは、ロボットジョイントを、例えば特定の速度、加速度で移動させるために、又はロボットアームを静止姿勢に保持するために、ジョイントモータがどの程度のトルクを提供すべきかを特定することが可能となる。
【0004】
典型的に、ロボットツールフランジには各種のエンドエフェクタを取り付けることができ、これは、例えばグリッパ、真空グリッパ、磁気グリッパ、ねじ切り盤、溶接機器、分配装置、視覚システム、フォース/トルクセンサ等であり、これらはロボットアームと共に使用して様々なタスクを実行できる。ロボットアームは、ユーザ又は、所定の移動パターン等のロボットアームのための各種の命令及び把持、待機、釈放、検査、ねじ止め命令等の作業命令を規定するロボットインテグレータによってプログラムされる必要がある。ロボット制御ソフトウェアへのソフトウェア拡張が、ロボットアームに取り付けられるエンドエフェクタをプログラムできるようにするために提供されてよく、エンドエフェクタ提供企業はこのようなソフトウェア拡張をエンドエフェクタと共に提供してよい。例えば、ロボットアームは、参照によって本明細書に援用される国際公開第2017/005272号パンフレットにおいて開示されているように、サードパーティ製品を用いて産業用ロボットのエンドユーザプログラミングを拡張する方法を実行するように構成されていてよい。
【0005】
それに加えて、命令は各種のセンサ又は入力信号に基づくことができ、これは典型的にある命令を停止又は開始させるために使用されるトリガ信号を提供する。トリガ信号は、安全カーテン、ビジョンシステム、位置インディケータ等の様々な指示手段により提供できる。
【0006】
ロボットアームは人体に沿って、及びその付近でますます使用されており、ロボットが人を助けることのできる作業プロセスをさらに多様化するために、ロボットの安全性、価格、及びフレキシビリティにより重きを置くことが求められている。それゆえ、ロボットアームには、ロボットアームの動作をモニタし、もしかしたら人が負傷する可能性のある危険な状況でロボットアームを安全停止状態にするように構成された安全システムが設けられる。この安全システムは、ロボットコントローラとは異なるハードウェア上に提供され、ロボットアームに関係する各種のセンサ信号をモニタし、ロボットアームの複数の基本的安全機能を実行するように構成され(例えば、参照によって本明細書に援用される国際公開第2015/131904号パンフレットに記載されている)、それに基づいて、安全でない状態が登録されると安全システムがロボットを安全状態にする。既知の安全システムは、ロボットアームの動作を最終的なエンドエフェクタとは関係なくモニタし、その結果、安全システムは、例えばエンドエフェクタが安全でない状態にあってもロボットアームを安全状態にすることができない。それに加えて、安全機能はロボットアームの製造会社により提供され、それによって安全機能はロボットアームの製造会社により提供されるものに限定される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、先行技術の上述の限界又は先行技術のその他の問題に対処することである。それは、特許請求の範囲の独立項に記載のロボット及び方法により達成され、ロボットコントローラは、
・少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータ範囲を明示し、
・ユーザ設定安全パラメータ範囲を安全システムに提供し、
・少なくとも1つのユーザ設定安全機能に基づいて少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータを生成し、
・ユーザ設定安全パラメータを安全システムに提供する
ように構成され、
安全システムは、
・少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータがユーザ設定安全パラメータ範囲内にあるか否かを評価し、
・ユーザ設定安全パラメータがユーザ設定安全パラメータ範囲の外にある場合にロボットアームを安全状態にする
ことによって前記ロボットコントローラをモニタするように構成された安全範囲モニタ安全機能を含む。
【0008】
これによって、ロボットコントローラ等の非安全適合システムにより実行可能なユーザ設定安全機能をセットアップすることが可能となり、安全適合安全システムはユーザ設定安全機能の結果をモニタし、ユーザ設定安全パラメータがユーザ設定安全パラメータ範囲に適合しない場合にロボットアームを安全状態にするように構成できる。その結果、安全適合安全システムを改変することを必要とせずにロボットシステムの安全機能を拡張することができ、その結果、安全適合安全システムを再認証する必要がない。それに加えて、これによってサードパーティプロバイダが独自の安全機能、例えばエンドエフェクタ又はその他の安全コンポーネント等の外部のコンポーネントに関連付けられるユーザ設定安全機能を提供することが可能となる。例えば、ユーザ設定安全機能は非安全適合ロボットコントローラで実行される安全適合ユーザ設定安全機能として提供されてよいが、安全適合安全システムによるユーザ設定安全パラメータのモニタにより、ロボットシステムの全体的な安全適合性を改善できる。特許請求の範囲の従属項は、本発明によるロボット及び方法の考え得る実施形態を説明する。本発明の利点と利益は、本発明の詳細な説明の中に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明によるロボットシステムを示す。
図2】本発明によるロボットシステムの簡略構造図を示す。
図3】本発明によるロボットシステムの他の実施形態の簡略構造図を示す。
図4】本発明によるロボットシステムのモニタ方法のフロー図を示す。
図5図2のロボットシステムを安全信号経路と共に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の原理を図解するためだけにすぎない例示的な実施形態を参照しながら本発明を説明する。当業者であれば、特許請求の範囲内で幾つかの実施形態を提供することができるであろう。説明文の全体を通じて、同様の効果を提供する同様の要素の参照番号は、少なくとも最後の2桁が同じである。さらに、ある実施形態が同じ特徴を複数含んでいる場合、その特徴の幾つかのみに参照番号が付されているかもしれないと理解されたい。
【0011】
図1は、ロボット基部105及びロボットツールフランジ107に接続される複数のロボットジョイント103a、103b、103c、103d、103e、103fを含むロボットアーム101を示している。基部ジョイント103aは、ロボットアームを基部軸111a(一点鎖線で示される)の周囲で回転矢印113aに示されるように回転させるように構成され、肩部ジョイント103bは、ロボットアームを肩部軸111b(この軸を示す十字として示される)の周囲で回転矢印113bにより示されるように回転させるように構成され、肘部ジョイント103cは、ロボットアームを肘部軸111c(この軸を示す十字として示される)の周囲で回転矢印113cにより示されるように回転させるように構成され、第一の手首ジョイント103dは、第一の手首軸111d(この軸を示す十字として示される)の周囲で回転矢印113dにより示されるように回転させるように構成され、第二の手首ジョイント103eは、ロボットアームを第二の手首軸111e(一点鎖線で示される)の周囲で回転矢印113eにより示されるように回転させるように構成される。ロボットジョイント103fは、ロボットツールフランジ107を含むツールジョイントであり、これはツール軸111f(一転鎖線で示される)の周囲で回転矢印113fにより示されるように回転可能である。図のロボットアームはそれゆえ、6軸ロボットアームであり、6自由度を有するが、本発明はより少ない、又はそれより多いロボットジョイントを含むロボットアームにおいても提供できる点に留意されたく、さらに、ロボットジョイントはまた、直動ジョイント又は、回転ジョイントと直動ジョイントの両方の組合せを含んでいてもよいと理解されたい。
【0012】
図の実施形態において、ジョイントはロボットジョイント本体に関して回転可能な出力フランジを含み、出力フランジは当技術分野で知られているように、隣接するロボットジョイントに直接、又はアーム部分を介して接続される。ロボットジョイントはジョイントモータを含み、これは出力フランジを、例えば伝導装置を介して回転させるように構成されるか、又はモータシャフトに直接接続される。直動ジョイントを有する実施形態においては、出力フランジはロボットジョイント本体及び、ロボット出力フランジをロボットジョイント本体に関して並進移動させるように構成されたジョイントモータに関して並進移動する。それに加えて、ロボットジョイントは少なくとも1つのジョイントセンサを含み、これは以下のパラメータの少なくとも1つを示すセンサ信号を提供する:出力フランジの角度位置、ジョイントモータのモータシャフトの角度位置、ジョイントモータのモータ電流、又は出力フランジ若しくはモータシャフトを回転させようとする外的力。例えば、出力フランジの角度位置は、ロボットジョイントに関する出力フランジの角度位置を示すことのできる光学エンコーダ、磁気エンコーダ等の出力エンコーダにより示すことができる。同様に、ジョイントモータシャフトの角度位置は、ロボットジョイントに関するモータシャフトの角度位置を示すことのできる光学エンコーダ、磁気エンコーダ等の入力エンコーダにより提供できる。出力フランジの角度位置を示す出力エンコーダとモータシャフトの角度位置を示す入力エンコーダの両方を提供できることに留意されたく、それにより、伝導装置が提供されている実施形態において、伝導装置の入力及び出力側間の関係を特定することが可能となる。ジョイントセンサはまた、ジョイントモータを通る電流を示す電流センサとしても提供でき、それゆえ、モータにより提供されるトルクを得るために使用できる。例えば多相モータに関して、多相モータの各相を通じた電流を取得するために複数の電流センサを提供できる。
【0013】
ロボットアームは少なくとも1つのロボットコントローラを含み、これは、ロボット制御ボックス109内に配置され、ジョイントモータに提供されるモータトルクをロボットアームの動的モデル、重量作用方向112、及びジョイントセンサ信号に基づいて制御することによってロボットジョイントを制御するように構成される。ロボットコントローラは、ユーザがロボットと通信して、例えばロボットアームを制御し、プログラムすることができるようにするインタフェース装置104を含むコンピュータとして提供できる。コントローラは、例えば図1に示されるようにロボット制御ボックス109内に配置された外部装置として、ロボットアームに内蔵された装置として、又はそれらの組合せとして提供できる。インタフェース装置は、例えば、産業ロボットの分野で知られているティーチペンダントとして提供でき、これはロボットコントローラと有線又は無線通信プロトコルを介して通信できる。インタフェース装置は、例えば、ディスプレイ106と、ボタン、スライダ、タッチパッド、ジョイスティック、トラックボール、姿勢認識装置、キーボード等の複数の入力装置108とを含むことができる。ディスプレイは、ディスプレイ及び入力装置の両方として機能するタッチスクリーンとして提供されてもよい。
【0014】
図2は、図1に示されるロボットアームの簡略構造図を示す。ロボットジョイント103a、103b、及び103fは構造的形態で示されており、ロボットジョイント103c、103d、103eは図を簡素化するために省略されている。さらに、ロボットジョイントは別々の要素として示されているが、これらは図1に示されるように相互接続されていると理解されたい。ロボットジョイントは出力フランジ216a、216b、216f及びジョイントモータ217a、217b、217fを含み、出力フランジ216a、216b、216fはロボットジョイント本体に関して回転可能であり、ジョイントモータ217a、217b、217fは、出力アクスル218a、218b、218fを介して出力フランジを回転させるように構成される。この実施形態において、ツールジョイント103fの出力フランジ216fはツールフランジ107を含む。それぞれのジョイントの少なくとも1つのジョイントセンサパラメータJsensor,a、Jsensor,b、Jsensor,fを示すセンサ信号222a、222b、222fを提供する少なくとも1つのジョイントセンサ219a、219b、219f。ジョイントセンサパラメータは少なくとも、例えばロボットジョイントに関する出力フランジの位置と方位、出力フランジの角度位置、ジョイントモータのシャフトの角度位置、ジョイントモータのモータ電流を示す姿勢パラメータの少なくとも1つを示す。例えば、出力フランジの角度位置は、ロボットジョイントに関する出力フランジの角度位置を示すことのできる光学エンコーダ、磁気エンコーダ等の出力エンコーダによって示すことができる。同様に、ジョイントモータシャフトの角度位置は、ロボットジョイント本体に関するモータシャフトの角度位置を示すことのできる光学エンコーダ、磁気エンコーダ等の入力エンコーダによって提供できる。
【0015】
ロボットコントローラ202は、プロセッサ220とメモリ221を含み、モータ制御信号223a、223b、223fをジョイントモータに提供することによってロボットジョイントのジョイントモータを制御するように構成される。モータ制御信号223a、223b、223fは、各ジョイントモータが出力フランジに提供すべきモータトルクTmotor,a、Tmotor,b、及びTmotor,fを示し、ロボットコントローラは先行技術で知られているように、ロボットアームの動的模型に基づいてモータトルクを特定するように構成される。動的模型により、コントローラはジョイントモータがロボットアームに所望の運動を行わせるためにジョイントモータの各々に提供すべきトルクを計算することが可能となる。ロボットアームの動的模型はメモリ221に記憶でき、ジョイントセンサパラメータJsensor,a、Jsensor,b、Jsensor,fに基づいて調整できる。例えば、ジョイントモータは多相電気モータとして提供でき、ロボットコントローラは、モータ調整技術において知られているように、多相モータの相を通じた電流を調整することによって、ジョイントモータにより提供されるモータトルクに調整するように構成できる。
【0016】
ロボットシステムは、ロボットアームをモニタする安全システム225を含み、安全プロセッサ227と安全メモリ228を含む。安全システムは、安全システムにより評価される少なくとも1つの基本安全機能に基づいてロボットアームを安全状態226にするように構成される。安全状態はSTOP記号により示され、これは、1つの安全モードが、例えばロボットアームの可動部品を制動するように構成されたブレーキシステムを作動させることによって、ロボットアームの電源をオフにすることによって等、ロボットアームが停止させられるモードとし得ることを示す。しかしながら、安全モードは、ロボットアームが人に関して安全と考えられる何れの動作モードとすることもできると理解すべきであり、例えば、ロボットは、より低速で移動し、エラーが発生したことを人に警告する表示信号(視覚的、聴覚的、触覚的等、又はそれらの組合せ)を提供するように命令されてよい。基本的安全機能は、安全コントローラに提供される安全機能であり、これはプログラムされて安全メモリ上に記憶され、エンドユーザはこれを編集又は改変できない。典型的に、基本的安全機能は、ロボット安全システムの提供業者によってコード化される。幾つかの実施形態において、ユーザはロボットシステムの導入時に基本的安全機能が適用する安全限界を提供し、改変してよい。
【0017】
ロボットコントローラ202と安全システム225は異なるハードウェア上に、例えば異なるコンピュータマザボード、マイクロコントローラ、プロセッサ、コンピュータサーバ及び/又は集積回路の形態で提供される。
【0018】
ロボットコントローラは、少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータ範囲を提供するように構成され、ユーザ設定安全パラメータ範囲は、ロボットアームの動作中に満たす必要のある値又はパラメータを規定する。ユーザ設定安全パラメータ範囲は、例えば:
・ロボットアームが動作の安全モードであるためにユーザ設定安全パラメータがその中に含まれなければならない値の間隔、
・ユーザ設定安全パラメータが超えてはならない閾値、
・ロボットアームが動作の安全モードであるために満たす必要のあるチェックサム、
・ロボットアームが安全モードであるためにユーザ設定安全パラメータがそれ以内に又はそれ以外で提供されなければならない時間間隔
によって規定できる。
【0019】
ユーザ設定安全パラメータ範囲は、例えば、ロボットコントローラプロセッサによって実行されるように構成されたユーザ設定安全ソフトウェアコード229によって提供でき、ユーザ設定安全ソフトウェアコードは、ロボットコントローラソフトウェアにインストールできる。ロボットコントローラは、ユーザ設定安全パラメータ範囲をユーザ設定安全パラメータ範囲信号230を介して安全システムに提供するように構成される。1つの実施形態において、安全システムは任意選択により、確認信号231を提供するように構成でき、これは安全システムがユーザ設定安全パラメータ範囲を受け取り、構成したことを確認する。ユーザ設定安全パラメータ範囲は、安全システムに安全システムがモニタする必要のあるパラメータの性質について知らせることによって安全システムを構成する役割を果たし、安全システムはそれが適正に構成され、ユーザ設定安全パラメータを受け取り、モニタする準備ができたとの確認をロボットコントローラに提供できる。
【0020】
ロボットコントローラは、少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータを提供するように構成され、ユーザ設定安全パラメータは、ユーザ設定安全機能に基づいて提供される。ユーザ設定安全機能は、ロボットアーム又はロボットアームと協働する外部装置の安全状態を示す値、例えばロボットアームが安全モードで動作しているか否かを示す値又はパラメータを提供することのできる何れの機能とすることもできる。ユーザ設定安全パラメータは、例えば、ロボットアーム又は環境、エンドエフェクタ、及び/若しくはロボットシステムに接続された他の何れかの外部装置の各種の特性を示す複数のセンサ値に基づいて提供される値とすることができる。ユーザ設定安全パラメータはまた、ロボットアームの動作状態を示すトリガ/パルス信号としても提供できる。ユーザ設定安全パラメータ範囲は、例えば、ロボットコントローラプロセッサにより実行されるように構成されたユーザ設定安全ソフトウェアコード229により提供でき、ユーザ設定安全ソフトウェアコードは、ロボットコントローラソフトウェアにインストールできる。ロボットコントローラは、ユーザ設定安全パラメータをユーザ設定安全パラメータ信号232を介して安全システムに提供するように構成される。1つの実施形態において、安全システムは任意選択により、確認信号233を提供するように構成でき、これは安全システムによるユーザ設定安全パラメータの受領と構成を確認する。
【0021】
安全システムは安全範囲モニタ安全機能を含み、これは、少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータがユーザ設定安全範囲内にあるか否かを評価することによってロボットコントローラをモニタするように構成される。これは、ユーザ設定安全パラメータをユーザ設定安全パラメータ範囲と比較する複数の論理テストを通じて実現できる。ユーザ設定安全パラメータがユーザ設定安全パラメータ範囲の外にある場合、安全システムはロボットアームを安全モードにし、このことは段落[0015]に記載されている。
【0022】
例えば、ある実施形態において、ユーザ設定安全パラメータ範囲は、ロボットアームが安全モードであるためにユーザ設定安全パラメータがその中になければならない値の間隔を規定することができ、論理テストは、ユーザ設定安全パラメータがその値の間隔内にあるかをテストして、ロボットが安全モードで動作中か否かの表示を提供することができる。安全システムはすると、論理テストがロボットアームは安全モードで動作していないことを示していれば、ロボットアームを安全状態にすることができる。
【0023】
他の実施形態において、ユーザ設定安全パラメータ範囲は、ロボットアームが安全モードであるためにユーザ設定安全パラメータがそれ以内に、又はそれ以外で安全システムに送信されなければならない時間間隔を規定でき、論理テストは、ユーザ設定安全パラメータが所定の時間間隔内に受け取られたかをテストして、ロボットが安全モードで動作しているか否かの表示を提供することができる。安全システムはすると、論理テストがロボットアームは安全モードで動作していないことを示していれば、ロボットアームを安全状態にすることができる。
【0024】
他の実施形態において、ユーザ設定安全パラメータ範囲は、ロボットアームが安全モードであるためにユーザ設定安全パラメータが満たす必要のあるチェックサムを規定でき、論理テストは、ユーザ設定安全パラメータがこのチェックサムを満たしているかをテストして、ロボットアームが安全モードで動作しているか否かの表示を提供することができる。安全システムはすると、論理テストがロボットアームは安全モードで動作していないことを示していれば、ロボットアームを安全状態にすることができる。
【0025】
1つの実施形態において、安全システムは確認をロボットコントローラに提供するように構成され、確認は、安全システムがユーザ設定安全パラメータ範囲を受け取ったことを示す。これによって、ロボットコントローラの一部としての制御機能を提供することが可能であり、これによってユーザ設定安全パラメータ範囲が安全システムによって適正に構成されたことが確実となる。例えば、ロボットコントローラは、ユーザ設定安全機能が正しく機能していないとの表示をユーザに提供することができる。
【0026】
1つの実施形態において、安全システムはユーザ設定安全パラメータの受領をモニタし、ユーザ設定安全パラメータが受け取られていなければ、ロボットアームを安全モードにするように構成される。これによって、ユーザ設定安全パラメータがロボットコントローラによって提供されていない場合、安全システムがロボットアームを安全動作モードにすることを確実にできる。これはさらに安全性を高める。
【0027】
1つの実施形態において、ロボットコントローラは、
・ロボットアームの少なくとも一部の状態
・少なくとも1つの外部装置の状態
のちの少なくとも一方を示す少なくとも1つのセンサ信号を受信するように構成され、ロボットコントローラは、センサ信号に基づいて少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータを生成するように構成される。これによって、例えばロボットアームの内蔵センサ又はロボットアームに提供された1つ又は複数の外部センサに基づくセンサ信号に基づいて、ユーザ設定安全機能をロボットアームに提供することが可能となる。これによって、多くのユーザ設定安全機能をロボットシステムに提供することが可能となり、これは様々なセンサ信号に基づくものとすることができる。例えば、外部安全装置の提供業者はユーザ設定安全機能を提供でき、するとこれはロボットコントローラにインストールされ、ロボットシステムの安全システムによりモニタされることが可能である。
【0028】
1つの実施形態において、ロボットシステムはユーザがロボットシステムと通信できるようにするユーザインタフェースを含み、ユーザインタフェースは、ユーザ設定安全機能及び/又はユーザ設定安全パラメータの少なくとも1つを明示するためのユーザインタフェースを含む。ユーザインタフェースは、例えば、グラフィカルユーザインタフェースとして提供でき、そこでユーザはユーザ設定安全機能を入力してプログラムし、ユーザ設定安全パラメータ範囲を規定することができる。
【0029】
1つの実施形態において、ユーザ設定安全機能とユーザ設定安全パラメータ範囲の少なくとも1つを明示するためのユーザインタフェースは、ユーザ設定安全ソフトウェアコードをロボットコントローラに提供するための手段と、ロボットコントローラにユーザ設定安全ソフトウェアコードをインストールするための手段とを含み、ユーザ設定安全ソフトウェアコードはロボットコントローラに:
・少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータ範囲を明示し、
・ユーザ設定安全パラメータ範囲を安全システムに提供し、
・少なくとも1つのユーザ設定安全パラメータを少なくとも1つのユーザ設定安全機能に基づいて生成し、
・ユーザ設定安全パラメータを安全システムに提供する
ことを命令する命令を含む。
これによって、ユーザ設定安全機能をソフトウェアを介して提供することが可能となり、これはソフトウェアコードを含むメモリ装置に提供でき、ユーザはすると、ユーザ設定ソフトウェアコードをインストールできる。
【0030】
例えば、ユーザ設定安全ソフトウェアコードは、ロボットアームのためのプロセス制御ソフトウェア又は基本制御ソフトウェアの一部として提供されてもよい。基本制御ソフトウェアは、ロボットコントローラがロボットアームの、すなわち個々のジョイントの、したがってロボットフランジ及びそれに取り付けられたあらゆるロボットツールの動きを制御するために使用するソフトウェアとして理解すべきである。基本制御ソフトウェアは典型的に、ロボットアームの数学的模型に基づいて開発され、ロボットアームと共に引き渡される。そのため、ロボットアームのユーザは特別なプログラミング技能がまったくなくてもロボットアームを動かすことができる。プロセス制御ソフトウェアは、その上でこのようなプロセス制御ソフトウェアが記憶され、又は開発されるデータ処理ユニット、サーバ、コンピュータ、又はタブレット等の外部ソースからロボットシステムに提供されるソフトウェアとして理解すべきである。プロセス制御ソフトウェアはまた、ロボットシステム上で、例えばユーザインタフェース装置を使用して直接プログラムすることもできる。プロセス制御ソフトウェアは、ロボットアームの運動のウェイポイントを規定する3次元デカルト座標系の単純な座標、ロボットフランジに取り付けられるロボットツールの動作を規定するプログラムコード、デカルト座標系内の点を特定する高等数学とすることができ、例えば運動、センサシステム等における正確さを最適化することができる。したがって、ロボットコントローラは、ロボットアーム及びツールの運動をプロセス及び基本制御ソフトウェアの組合せに基づいて制御し、プロセス制御ソフトウェアはユーザ設定安全パラメータ及び/又はユーザ設定安全パラメータ範囲を規定する少なくとも1つのユーザ設定安全機能を提供する。
【0031】
1つの実施形態において、ロボットコントローラは非安全適合ロボット制御システムとして提供され、これは、ロボットコントローラがロボットシステムに関する安全標準を満たしていないことを意味する。これは、ロボットコントローラソフトウェアが部分的オープンシステムとして提供でき、そこにユーザがユーザ設定ソフトウェアコンポーネントをインストールできるという利点を有する。
【0032】
1つの実施形態において、安全システムは安全適合ロボット安全システムとして提供され、これは、安全システムがロボットシステムに関する安全標準を満たしており、それゆえ、ロボットシステムを安全で信頼性の高い方法でモニタするためにこれを使用できることを意味する。
【0033】
図3は、本発明によるロボットシステムの他の実施形態を示す。ロボットシステムは図2に示されるロボットシステムと同様であり、同様の要素及び特徴には図2と同じ参照番号が付され、それ以上説明されない。この実施形態では、安全システム325は、安全プロセッサと安全メモリを含む独立した2つの安全コントローラを含む。
【0034】
第一の安全コントローラは、第一の安全プロセッサ327a及び第一の安全メモリ328aを含み、これは第一のユーザ設定安全範囲信号330a、ユーザ設定安全パラメータ範囲の受領を確認する第一の確認信号331a、第一のユーザ設定安全パラメータ信号332a、及びユーザ設定安全パラメータの受領を確認する第一の確認信号333aに基づいてロボットコントローラと通信し、これをモニタする。
【0035】
第二の安全コントローラは、第二の安全プロセッサ327b及び第二の安全メモリ328bを含み、これは第二のユーザ設定安全範囲信号330b、ユーザ設定安全パラメータ範囲の受領を確認する第二の確認信号331b、第二のユーザ設定安全パラメータ信号332b、及びユーザ設定安全パラメータの受領を確認する第二の確認信号333bに基づいてロボットコントローラと通信し、これをモニタする。
【0036】
安全コントローラは、例示的な実施形態において、認証された安全コントローラであり、これは、その安全レベルがロボットコントローラ220の安全レベルより高いことを意味する。安全レベルへの言及は、ハードウェアの、すなわちコントローラの故障の平均確率を指してよい。したがって、高レベルの安全コントローラはロボットコントローラより故障の平均確率が低い。ハードウェアとソフトウェアの両方を含んでいてよい高レベルの安全システムは、SIL(SIL;Safety Integrity Levels)レベル1~4にしたがって分類されてよく、4が最も高い。
【0037】
第一の安全コントローラと第二の安全コントローラはどちらも、図2において説明したようにロボットコントローラをモニタし、異なるハードウェアに提供される。これによって、独立した安全コントローラによるロボットコントローラの冗長モニタが確実となる。独立した2つの安全コントローラは、例えば、2つの独立したチームにより提供されてよく、それによって安全システムの安全機能の異なる実装が確実となる。それに加えて、2つの安全コントローラは、相互にモニタすることによって両方の安全コントローラが適正に動作していることを確実にするように構成されてよく、すなわち、安全コントローラの一方についてこれが当てはまらない場合、他方の安全コントローラがロボットアームを安全状態にする。
【0038】
図5は、本発明によるロボットシステムの他の実施形態を示す。ロボットシステムは図2に示されるロボットシステムと同様であり、同様の要素及び特徴には図2と同じ参照番号が付され、それ以上説明されない。この実施形態では、ユーザ設定安全パラメータ範囲は前述のように、ユーザ設定安全ソフトウェアコードの一部としてロボットコントローラに提供されてよい。それに加えて、ユーザ設定安全ソフトウェアコードにより、ロボットコントローラ220と安全コントローラ227との間の安全信号経路534の形態でのさらなる安全機構がさらに提供されてよい。安全信号経路はコントローラ間のワイヤ接続とすることができ、これはロボットコントローラと安全コントローラとの間の物理的接続を確実にする。この、及び本明細書に記載されているその他の例示的実施形態において、ユーザ設定安全ソフトウェアコードは、プロセス制御ソフトウェア又は基本制御ソフトウェアの一部として含められてよい。基本制御ソフトウェアは、ロボットコントローラによって、ロボットアームの、すなわち個々のジョイントの、それによってロボットフランジ及びそれに取り付けられたあらゆるロボットツールの動きを制御するために使用されるソフトウェアと理解すべきである。基本制御ソフトウェアは典型的に、ロボットアームの数学的模型に基づいて開発され、ロボットアームと共に引き渡される。そのため、ロボットアームのユーザは特別なプログラミング技能がなくてもロボットアームを動かすことができる。特筆すべき点として、基本制御ソフトウェアは異なる安全限界のためのデフォルト値を規定する。デフォルト値はまた、正常値とも呼ばれてよく、ロボットアームがオフにされた場合に所定の範囲内でしか変更できない。プロセス制御ソフトウェアは、その上でこのようなプロセス制御ソフトウェアが記憶され、又は開発されるデータ処理ユニット、サーバ、コンピュータ、又はタブレット等の外部ソースからロボットシステムに提供されるソフトウェアとして理解すべきである。プロセス制御ソフトウェアはまた、ロボットシステム上で、例えばユーザインタフェースを使用して直接プログラムすることもできる。プロセス制御ソフトウェアは、ロボットアームの運動のウェイポイントを規定する3次元デカルト座標系の単純な座標、ロボットフランジに取り付けられるロボットツールの動作を規定するプログラムコード、デカルト座標系内の点を特定する高等数学とすることができ、例えば運動、センサシステム等における正確さを最適化することができる。したがって、ロボットコントローラは、ロボットアーム及びツールの運動をプロセス及び基本制御ソフトウェアの組合せに基づいて制御し、プロセス制御ソフトウェアはユーザ設定安全パラメータ及び/又はユーザ設定安全パラメータ範囲を規定する少なくとも1つのユーザ設定安全機能を提供する。例示的な実施形態において、プロセス値はユーザ設定安全パラメータ範囲と呼ばれ、これはランタイム中に調整可能であり、すなわちユーザ設定安全パラメータ範囲の改変中にロボットアームの電源をオフにしない。
【0039】
ロボットコントローラ及び/又は安全コントローラの少なくとも1つは送信コントローラとして構成され、ロボットコントローラ及び/又は安全コントローラの少なくとも他の1つは受信コントローラとして構成される。送信コントローラは、安全信号を安全信号経路を介して1つ又は複数の受信コントローラに送信するために構成される。
【0040】
安全信号経路は、ロボットコントローラと複数の安全コントローラ(又は、1つしかない場合は1つの安全コントローラ)との間の安全信号の通信を容易にすることを目的として、プロセス又は基本制御ソフトウェアの一部として使用され、実装されてよい。安全信号は、その最も単純な形態では、ロボットコントローラから安全コントローラの各々に送信される信号であり、それが開始点から所定の時間内に受け取られないことによって、安全コントローラはロボットアームを停止モードにする。特筆すべき点として、同じ目的及び結果で、信号を安全コントローラからロボットコントローラへと送信することもできる。
【0041】
1つの実施形態において、送信コントローラはロボットコントローラであり、1つ又は複数の受信コントローラは安全コントローラの少なくとも1つである。これによって、安全コントローラは確実に、ロボットコントローラをモニタし、安全信号が安全信号経路を通じて受け取られていない場合、これはロボットコントローラの異常を示す可能性があるため、ロボットアームを安全モードにすることができる。
【0042】
例示的な実施形態において、安全信号が送信され、したがって所定のパターンで、又は所定の値として受信されると予想される。所定のパターンは、所定の時間間隔により分離される信号のシーケンスとして確定されてよい。予想通りに受信されないと、受信コントローラはロボットアームを停止モードにする。特筆すべき点として、安全信号の予想外の受信はまた、早すぎる受信も含んでいてよく、すなわち、安全信号の予想される受信は2つのエンドポイントにより明示される範囲内にあってよい。下限のエンドポイントはミリ秒で、例えば10msとして測定されてよく、上限は秒、例えば5秒、又はさらには分として測定されてよい。
【0043】
受信コントローラは、ロボットアームをどの停止モードにすべきかを特定してよい。例えば、ロボットアームだけが停止するが、電源はオンのままである防御的停止とロボットアームの電源もオフとなる限界超過停止である。後者の場合、再始動のためにコントローラをリセットする必要があり、これは前者の場合には当てはまらない。
【0044】
安全信号は、ハードウェア又はソフトウェアの何れの故障も検出でき、その後、ロボットアームを停止/安全モードにすることができるという点で、ロボット制御システムをさらに安全にする。
【0045】
図5に示され、段落[0036]~[0042]に記載されているような、ロボットコントローラ220と安全コントローラとの間の安全信号経路の形態でのさらなる安全機構をさらに提供するユーザ設定安全ソフトウェアコードはまた、安全システムが、例えば図3に示され、段落[0031]~[0035]に記載されているような2つの安全コントローラを含む場合の実施形態にも提供できることに留意されたい。このような実施形態において、第一の安全信号経路はロボットコントローラ220と第一の安全プロセッサ327aとの間に確立でき、第二の安全信号経路はロボットコントローラ220と第二の安全プロセッサ327bとの間に確立できる。
【0046】
図4は、本発明によるロボットシステムのモニタ方法のフロー図を示す。ロボットシステムは前述のロボットシステムとして提供されてよく、フロー図は、左側にロボットコントローラのフロー440、右側に安全システムのフロー460を示している。
【0047】
方法は、ユーザ設定安全パラメータ範囲を明示するステップ441と、ユーザ設定安全パラメータ範囲を安全システムに提供するステップ442を含む。すると、安全システムは安全範囲モニタ安全機能を構成し、ステップ461で確認をロボットコントローラに送信する。ロボットコントローラは、安全システムから確認が受け取られたか否かを評価する。サムアップアイコンで示される、確認が受け取られた場合、ロボットコントローラはフローを継続する。サムダウンアイコンで示されるように確認が受け取られていない場合、ロボットコントローラはフローを再開するか、又は方法を中止する。これによって、ロボットコントローラの安全範囲モニタ安全機能が適正に構成されることが確実となる。
【0048】
方法は、ユーザ設定安全パラメータを明示するステップ444と、ユーザ設定安全パラメータを安全システムに提供するステップ445を含む。ステップ444及び445は、ロボットコントローラにより実行されるユーザ設定安全機能により実行できる。安全システムはすると、ステップ462で安全範囲モニタ安全機能を開始して、ステップ463で、ユーザ設定安全パラメータを受け取ったとの確認をロボットコントローラに送信する。安全範囲モニタ安全機能は、ユーザ設定安全パラメータがユーザ設定安全パラメータ範囲内にあるかを評価する。評価が肯定(サムアップアイコンで示される)であると、これはロボットアームが安全モードで動作していることを意味し、ロボットアームの動作を継続でき、ロボットコントローラは、新しいユーザ設定安全パラメータを生成するステップ444を再開している。評価が否定(サムダウンアイコンで示される)であると、これはロボットアームが安全でないモードで動作していることを意味し、ロボットアームの動作が安全動作状態226にされる。
【0049】
それに加えて、ロボットコントローラは、安全システムから受け取ったユーザ設定安全パラメータの確認を受け取ったかどうかを評価する446。サムアップアイコンで示される、確認が受け取られた場合、ロボットコントローラはフローを再開する。サムダウンアイコンで示されているように確認が受け取られていない場合、ロボットコントローラはロボットアームを安全動作モード226にする。これによって、ユーザ設定安全パラメータの通信が行われていないか、又は安全システムが故障した場合に、ロボットアームが安全状態にされることが確実となる。
【符号の説明】
【0050】
101 ロボットシステム
202 ロボットコントローラ
103a~103f ロボットジョイント
104 インタフェース装置
105 ロボット基部
106 ディスプレイ
107 ロボットツールフランジ
108 入力装置
109 ロボット制御ボックス
111a~111f ロボットジョイントの軸
112 重力の方向
113a~113f ロボットジョイントの回転矢印
314 ロボットツールジョイントの出力側
216a;216b;216f 出力フランジ
217a;217b;217f ジョイントモータ
218a;218b、218f 出力アクスル
219a;219b;219f ジョイントセンサ
220 ブロセッサ
221 メモリ
222a;222b;222f ジョイントセンサ信号
223a、223b、223f モータ制御信号
225、325 安全システム
226 安全モード
227、327a、327b 安全プロセッサ
228、328a、328b 安全メモリ
229 ユーザ設定安全ソフトウェアコード
230、330a、330b ユーザ設定安全パラメータ範囲信号
231、331a、331b ユーザ設定安全パラメータ範囲の受領を確認する確認信号
232、332a、332b ユーザ設定安全パラメータ信号
233、333a、333b ユーザ設定安全パラメータの受領を確認する確認信号
534 安全信号経路
440 ロボットコントローラのフロー
441 ユーザ設定安全パラメータ範囲を明示するステップ
442 ユーザ設定安全パラメータ範囲を提供するステップ
443 安全システムの確認を評価する
444 ユーザ設定安全パラメータを生成するステップ
445 ユーザ設定安全パラメータ範囲を提供するステップ
446 安全システムによるユーザ設定安全パラメータの受領を評価する
460 安全システムのフロー
461 受領と構成を確認するステップ
462 ロボットコントローラをモニタするステップ
463 ユーザ設定安全パラメータの受領を確認するステップ
464 ユーザ設定安全パラメータのテスト
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】