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特表2022-526567内在性抗菌効果を備えたインプラント及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(54)【発明の名称】内在性抗菌効果を備えたインプラント及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/00 20060101AFI20220518BHJP
   A61L 27/14 20060101ALI20220518BHJP
   A61L 27/10 20060101ALI20220518BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
A61F2/00
A61L27/14
A61L27/10
A61L27/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558020
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(85)【翻訳文提出日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2020052068
(87)【国際公開番号】W WO2020200538
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】102019108327.3
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515121597
【氏名又は名称】カール ライビンガー メディツィンテヒニーク ゲーエムベーハー ウント コーカーゲー
【氏名又は名称原語表記】KARL LEIBINGER MEDIZINTECHNIK GMBH & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Kolbinger Strasse 10, 78570 Muehlheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】アクス,アデム
(72)【発明者】
【氏名】レイナウエル,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ウルフラム,トビアス
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AB01
4C081AB11
4C081CE01
4C081CF11
4C081CG07
4C081CG08
4C097AA15
4C097AA30
4C097BB01
4C097CC02
4C097DD01
4C097DD06
4C097DD07
4C097DD09
4C097EE02
4C097EE07
4C097EE09
4C097EE13
4C097FF05
4C097MM02
4C097MM03
4C097MM04
(57)【要約】
本発明は、生体適合性ポリマー及び/又はセラミック粒状材料の原料混合物から形成されたベース粒状材料(2)を有するインプラント混合物(IM)を含む、抗菌活性を有するインプラント(1)に関し、インプラント混合物(IM)は、イオンを放出するのに適した粒子形態の少なくとも1種類の金属(3)を含み、金属粒子(3)は、銀粒子及び/又は銅粒子の形態で存在する。金属粒子(3)は、インプラント(1)の体積中に分布している。本発明はまた、前記インプラント(1)を製造するための方法にも関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性ポリマー及び/又はセラミック粒状材料の原料混合物からなるベース粒状材料(2)を有するインプラント混合物(IM)を含む、抗菌活性を備えたインプラント(1)であって、
前記インプラント混合物(IM)は、イオンを放出するのに適した少なくとも1種類の金属粒子(3)をさらに含み、
前記金属粒子(3)は、銀粒子及び/又は銅粒子の形態で提供され、
前記金属粒子(3)は、該金属粒子(3)が構造的に固有の方法で前記インプラント(1)に提供されるように前記インプラント(1)の体積中に分布していることを特徴とする、インプラント(1)。
【請求項2】
前記インプラント混合物(IM)は、前記金属粒子(3)がマグネシウム粒子及び/又は鉄粒子の形態でさらに散在していることを特徴とする、請求項1に記載のインプラント(1)。
【請求項3】
前記金属粒子(3)は、高純度の元素で且つ生分解性金属であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のインプラント(1)。
【請求項4】
前記インプラント混合物(IM)中の前記金属粒子(3)の分布、密度、量及び/又は濃度は、前記インプラント(1)の抗菌活性が直接的な環境で強制的に発生するようなものであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のインプラント(1)。
【請求項5】
前記銀粒子は1~200μmの範囲の粒径を有し、前記銅粒子は1~100μmの範囲の粒径を有し、前記マグネシウム粒子及び前記鉄粒子は1~200μmの範囲の粒径を有することを特徴とする、請求項2~4のいずれか1項に記載のインプラント(1)。
【請求項6】
前記インプラント(1)の抗菌活性が細孔表面で強制的に発生するように多孔質であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のインプラント(1)。
【請求項7】
前記インプラント(1)の抗菌活性が該インプラント(1)表面で強制的に発生するように固形であるよう設計されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のインプラント(1)。
【請求項8】
患者固有の形状及び材料特性で製造されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のインプラント(1)。
【請求項9】
圧縮成形、粉砕、レーザ焼結又は射出成形によって製造されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のインプラント(1)。
【請求項10】
生体適合性ポリマー及び/又はセラミック粒状材料の原料混合物からなるベース粒状材料(2)を有するインプラント混合物(IM)から内在性抗菌活性を有するインプラント(1)を製造する方法であって、
前記インプラント混合物(IM)は、イオンを放出するのに適した少なくとも1種類の金属粒子(3)をさらに含み、
前記金属粒子(3)は、銀粒子及び/又は銅粒子の形態で提供され、
好ましくは連続して、
a)前記原料を混合して前記ベース粒状材料(2)を製造するステップと、
b)前記ベース粒状材料(2)及び前記金属粒子(3)を所定の比率で混合又はブラストして前記インプラント混合物(IM)を形成するステップと、
c)前記インプラント混合物(IM)をプレスして塊に粉砕した材料ブロックを製造した後に、前記塊を最終的なインプラント形状に形成するステップとの順序で行うことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性ポリマー、例えば、UHMW-PE、ポリウレタン、HDPE又はLDPE、PPSU、PP、PEEK及び/又は炭酸カルシウム等のセラミック粒状材料の原料混合物で作られたベース粒状材料を有するインプラント混合物を含む、抗菌活性を備えたインプラントに関し、インプラント混合物はイオンを放出するのに適した少なくとも1種類の粒子状金属をさらに含み、金属粒子は銀粒子及び/又は銅粒子の形態で提供される。さらに、本発明は、そのようなインプラントを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプラントとは、体に異質な医療機器で、ヒトや動物の体内に特に一定期間存在するものと理解されている。
【0003】
抗菌活性/有効性/効果を備えたインプラントは、患者の炎症/疾患を抑制するために、微生物の増殖能力及び/若しくはそれらの感染性を低下させ、並びに/又は死滅させるか若しくは不活性化させる。このような微生物は、細菌、真菌、酵母及びウイルスに分類され得る。
【0004】
生体適合性インプラントは、ヒト/動物の体内の代謝に悪影響を及ぼさず、例えば、このインプラントに対して体の拒絶反応を引き起こさないインプラントである。従って、(部分的に)生体適合性インプラントは、長期間にわたって患者の体内に留まっていてもよい。
【0005】
しかしながら、生体適合性ポリマー等の材料でできた多孔質インプラントは、(患者の)体内に挿入されると、感染症やそれに伴う炎症反応を引き起こすことが従来から知られている。手術中に持ち込まれた細菌、又は以前の感染症により患者の組織内に既に存在していた細菌に対するその後に発生する免疫反応により、インプラントの機能が失われ、さらには患者に大きな障害が生じる。多くの場合、これらのインプラントは、インプラント上にバイオフィルムが形成され、インプラントには多孔質が存在するために細菌の付着に適した条件があり、抗生物質による治療が効果的でないため、取り除かなければならない。
【0006】
この細菌の付着を防ぐために、インプラントには抗菌作用のあるコーティングが施されていてもよい。しかし、これらのコーティングは安定しておらず、短期間しか効果がないことが多い。さらに、コーティングは、多孔性の高い又は低い、もしくは部分的な多孔性を有するインプラントに対して技術的な問題を提起する。多くの場合、コーティングは不完全に塗布されているか、又は活性が不十分で層の厚さが異なる。コーティングされたインプラントを製造するために、従来の抗生物質に加えて、抗菌性を有する様々なペプチドも使用される。また、銀イオンや銅イオン等の特定の金属イオンも、抗菌活性をもつコーティングの製造に使用されている。
【0007】
バイオポリマーを用いた既存のソリューションは、特に水性コーティングに関するものである。ここでは、例えばピートコーティングプロセスで、抗生物質を含む溶液又はペプチド溶液をインプラントの表面に塗布する。その後、抗菌物質は組織内で拡散して作用する。しかしながら、多くのコーティングは、物質自体が熱的に不安定であったり、この時間が経過するとこれらの物質のリザーバーが最大限に使い果たされてしまうため、活性期間が短い(6か月未満)という問題がある。
【0008】
インプラントを抗菌化する別の方法は、薬物送達が知られている/に使用されている。薬物送達とは、対応する抗菌物質を介して所望の治療効果を安全に達成するために、医薬成分を患者の体内に輸送するための方法及びシステムを指す。薬物送達では、再吸収性(キャリア)材料(生体が吸収し得る材料/物質)が、薬理物質(患者の体と相互作用する物質)を放出する。これらの物質は拡散によって分散され、インプラントには直接作用しない/インプラントの直接環境には作用しないが、遠位(患者)組織では特定の標的細胞にのみ作用する。
【0009】
例えば、欧州特許出願公開第2382960号明細書には、ヒトの体内に銀イオンを放出し、その結果、抗菌効果を有するコーティングが施されたインプラントが記載されている。コーティングの第1表面部分は、アノード材料によって形成されている。コーティングの第2表面部分は、カソード材料によって形成されている。カソード材料は、アノード材料よりも電気化学的な系列が高く、カソード材料とアノード材料とは、互いに電気的に接続されている。
【0010】
さらに、長期的な抗生物質効果を有するインプラントが、欧州特許第1513563号明細書で知られており、これは特に、本質的に非吸収性又はゆっくりとしか吸収されないポリマー材料でできたインプラントの形状を決定する基本構造及び再吸収性材料でできたコーティングを有する、血管プロテーゼである。ポリマー材料の上とコーティングの下には、金属銀の層がある。
【0011】
さらに、欧州特許第2204199号明細書には、チタンを含む又はチタンからなるインプラントに抗感染性コーティングを製造する方法が開示されている。この方法は、細孔内の導電性がガルバニック蒸着を可能にするように、アルカリ溶液中での陽極酸化による多孔質酸化物層の形成、抗感染性を有する金属のガルバニック蒸着及びブラストによる金属含有酸化物層の固化というステップを使用している。
【発明の概要】
【0012】
このような背景に対して、本発明の目的は、従来技術の問題点を解決するか、又は少なくとも軽減することであり、特に低コストで製造でき、微生物に対して確実且つ安全に作用するインプラントを提供することである。
【0013】
この目的は、インプラント/インプラント混合物の体積中に、金属粒子が好ましくは均一に分布しているという点で本発明によって解決される。これは、抗菌効果がインプラントの体積(全体)に分布し、従ってインプラントにおいて構造的に本質的な方法で提供されるため、抗菌活性がインプラント自体の特性であることを意味する。
【0014】
このように設計されたインプラントの利点は、インプラントの抗菌特性を生み出す、体積全体に分布された金属粒子をもつインプラントが、抗菌コーティングを施したインプラントよりも大幅に長く、より確実な抗菌効果を有することである。さらに、本発明によるインプラントの抗菌効果は、その直接の環境下で行われるため、インプラント内に存在する微生物が患者の体内で拡散し得ない。
【0015】
有利な実施形態は、従属請求項の主題であり、以下でより詳細に説明される。
【0016】
インプラントの好ましい実施形態では、インプラント混合物に、好ましくは銀粒子及び/又は銅粒子を加えて、さらにマグネシウム粒子及び/又は鉄粒子の形態で金属粒子が散在している。これらのマグネシウム粒子及び/又は鉄粒子は、銀粒子及び/又は銅粒子と同様に抗菌効果を有し、従ってインプラントの抗菌活性を高める。銀粒子及び/又は銅粒子をマグネシウム粒子及び/又は鉄粒子と混合することで、患者の体内での組織の内部成長挙動が改善される。
【0017】
さらに、インプラントは、金属粒子が高純度な元素であり、且つ生分解性金属であるように提供され得る。このような生分解性金属とは、化学的又は生物学的に分解可能な金属であり、完全に分解された後はインプラント内や患者の体内に存在しなくなるものである。
【0018】
さらに、インプラント混合物中の金属粒子の分布、密度、量及び/又は濃度は、インプラントの抗菌活性がその直接的な環境で、すなわち、インプラントの表面に直接、インプラント自体に、及びインプラント表面から1~2μmの距離の環境で最大に、強制的に発生/作用するようになることが考えられる。抗菌活性がインプラントに直接作用する場合、インプラントを起点とした微生物が患者の周囲の組織に広がり、その結果、患者の体に炎症/病気を引き起こし得ることを防止する。
【0019】
有利には、銀粒子が1~200μm、特に20~50μmの範囲の粒径を有し、銅粒子が1~100μm、特に10~30μmの範囲の粒径を有し、マグネシウム粒子及び鉄粒子が1~200μmの範囲の粒径を有するようにインプラントが設計され得る。このサイズ範囲では、粒子をインプラント混合物に導入することが特に容易である。
【0020】
インプラントが多孔質であることも考えられ、好ましくは、多孔質インプラントの抗菌活性が細孔表面に作用する/強制的に発生するように、インプラント混合物中の金属粒子の分布、密度、量及び/又は濃度が選択される。細孔表面は、インプラント内のすべての細孔の表面として定義され、従ってインプラント表面よりも大きい。
【0021】
さらに、インプラントが固体であるように設計され得、好ましくは固体インプラントの抗菌活性がインプラント表面に作用する/強制的に発生するように、インプラント混合物中の金属粒子の分布、密度、量及び/又は濃度が選択される。インプラントが固体の場合、抗菌活性はインプラント表面にのみ作用し、従ってインプラントが多孔質の場合よりも小さい表面に作用することになる。
【0022】
また、インプラントが患者固有の形状及び材料特性で製造されている場合有利である。患者固有のインプラントとは、患者の個々の解剖学的構造に適合/調整されたインプラントのことである。
【0023】
また、インプラントは、圧縮成形、切削加工、レーザ焼結又は射出成形等によって製造されることも考えられる。これらは、インプラントを製造する上で、特に有効な製造方法である。
【0024】
さらに、本発明の目的は、内在性抗菌活性を有するインプラントを製造する方法によって解決される。このインプラントは、上記で定義したインプラント混合物を有する。
【0025】
インプラントを製造する方法が以下のステップを含むと便利であり、これらのステップは好ましくは連続して、以下のステップの順序で行われる。a)原料を混合してベース粒状材料を製造し、(その後)、b)ベース粒状材料を銀粒子及び/又は銅粒子と、任意にマグネシウム粒子及び/又は鉄粒子と組み合わせて所定の比で混合又はブラストし、インプラント混合物を形成し、(その後)c)インプラント混合物をプレスして材料ブロックを生成し、この材料ブロックを後続のステップで、例えば機械加工や切削によって塊に粉砕し、これらの塊を(所望の)最終的なインプラント形状に成形する。
【0026】
言い換えると、本発明は、異なる多孔性及び部分的吸収性を備えた異なる寸法のインプラントを製造するための出発材料として、抗菌性粒状材料を製造する方法に関する。出発材料(UHMW-PE、HDPE、PP、ポリウレタン、LDPE、マグネシウム粒子、PPSU)は、粒状材料又は粉末として提供されてもよい。
【0027】
さらに、言い換えると、本発明は、多孔性と多孔性及び/又は細孔の幾何学的設計に依存しない内在性抗菌効果を備えたインプラント(永久インプラント又は部分的吸収性インプラント)に関するものである。抗菌性物質は、コーティングとしてインプラントに塗布されるのではなく、インプラントの粒子状ベース材料の一部である。
【0028】
抗菌効果のある固体、多孔質、高多孔質又は幾何学的に複雑なインプラントの製造は、時間の経過とともにイオンを放出する銀粒子又は銅粒子の添加に基づいている。高純度で微多孔質の銀は、炎症性合併症の治療に使用されている。また、インプラントの抗菌活性は、インプラント部品の吸収時に部分的に発生し得る。
【0029】
ポリマー若しくはセラミック粒子からなるベース粒状材料及び/又はこれらのベース材料の混合物の熱粒子に、マグネシウム又は鉄合金の生分解性金属粒子を、銀粒子又は銅粒子とともに添加して混合することで、より優れた組織の内部成長挙動が得られる。ここで、完全に/部分的に多孔質で三次元のインプラントは、表面が最初にアクセス可能な状態(開いた細孔)であるか、否か(閉じた細孔)に関わらず抗菌活性を示す。
【0030】
インプラントの原料は、無溶媒で製造及び混合される。ベース粒状材料/粉末は、銀材料又は銅粒子と所定の比で混合することで活性化される。あるいは、ベース粒状材料/粉末は、ブラストによって銀又は銅と組み合わされ得る。マグネシウム粒子又は鉄粒子と、銀粒子又は銅粒子を、ポリマー又はセラミックのバックグラウンドマトリックス(ベース粒状材料)に組み合わせることは、熱的又は機械的製造プロセスに依存する。インプラント混合物は、その後プレスされ、続いて粉砕/研削されて粒状材料になる。
【0031】
従って、高純度な元素の銀粒子及び/又は銅粒子を添加(好ましくはナノ粒子化)することにより、抗菌効果を有する生体適合性ポリマー又はセラミック粒状材料からなる圧縮成形、粉砕、レーザ焼結又は射出成形されたインプラントが得られる。多孔質インプラントの抗菌活性は、細孔表面(外部及び内部)の影響に限定される。一方、固体インプラントの抗菌活性は、インプラント表面でのみ有効である。技術的なインプラント設計により、金属粒子の濃度がインプラントのすぐ近くでのみ作用するため、抗菌活性は細胞適合性があり、細胞生理学的にも無害である。高多孔質インプラントは、細孔を塞ぐことなく抗菌活性を維持する。
【0032】
抗菌活性を有するインプラントを含む可能性のある他の材料として、PEEK、ヒドロキシアパタイト(HA)、炭酸カルシウム(CaCO)、ストロンチウム(Sr)、α-又はβ-リン酸三カルシウム(α-又はβ-TCP)等の添加剤を含むPPSU、バイオガラス粒子/生物活性ガラスの粒子、PDLLA、PLGA、PLA、PGA等のポリエステル材料、キトサン繊維又はキトサン粒子等を含む。多孔質インプラントは、非多孔質/固体インプラントと比較して、多孔質によるインプラントの抗菌効果を制限する/失うことなく、患者の体内へのより優れた内部成長挙動を達成する。本発明によるインプラントの強度は、ブラスト、噴霧、混合、造粒又はプレスによって増加し得る。
【0033】
以下は、添付の図面を参照しながら、本発明によるインプラントの実施形態及びその製造方法を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】インプラントの模式的な断面図を示す。
図2】インプラントの製造に係るステップを説明するフローチャートを示す。
図3A】バイオ顆粒の考えられる粒子形状を示す。
図3B】円形の粒状材料粒子を有するインプラント1の走査型電子顕微鏡画像を示す。
図3C】ジャガイモ形の粒状材料粒子を有するインプラント1の走査型電子顕微鏡画像を示す。
図4A】走査型電子顕微鏡を使用したインプラント1の縦断面図を示す。
図4B図4Aの断面IVを示す。
図5A】六角形の粒状材料粒子及び1種類の金属粒子を有するμm範囲のインプラント1の概略図を示す。
図5B】五角形の粒状材料粒子と2種類の金属粒子を有するμm範囲のインプラント1の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図面は本質的に概略的なものに過ぎず、本発明を理解する目的にのみ役立つ。また、構成例は純粋に例示的なものである。
【0036】
図1は、ベース粒状材料2及び金属粒子3を含むインプラント1を示している。ベース粒状材料2及び金属粒子3が一緒に混合され、インプラント1の体積全体にわたって存在していることが分かる。
【0037】
図2は、本発明による方法のステップを説明するフローチャートを示している。まず、第1ステップS1では、第1原料RM1として例えば生体適合性ポリマー(LDPE)と、第2原料RM2としてセラミック粒状材料(例えば炭酸カルシウム)をそれぞれ混合する。これら2つの原料を混合することで、ベース粒状材料2が得られる。第2ステップS2では、第1種類の金属粒子MP1、例えば銀粒子と、第2種類の金属粒子MP2、例えば銅粒子とがベース粒状材料2に添加されるか、又はブラストによってベース粒状材料2と一緒にされる。ステップS2の後、インプラント混合物IMが得られる。この方法の第3ステップS3では、このインプラント混合物IMがプレスされる。これにより、例えば機械加工又は研削によって材料ブロックが塊に粉砕され、その後、最終的なインプラント形状に成形される。従って、ステップS3の後、患者の体内に配置/挿入し得る完成したインプラント1が得られる。
【0038】
図3Aは、一例として、バイオ顆粒2の粒子が形成される9つの異なる種類/形状/バージョンを示しているが、これに限定はされない。ここでは、バイオ顆粒2として炭酸カルシウムを有し、金属粒子3として例えば銀粒子やマグネシウム粒子等を有するインプラント1を想定している。バイオ顆粒中の粒子の種類/粒子形状は、記号「V1」~「V9」で連続的に特徴付けられる。粒子の基本的な形状は、V1によれば円形、V2によればジャガイモ形、V3によれば楕円形、V4によれば四角形、V5によれば八角形、V6によれば平行多角形、V7によれば半円形、V8によれば五角形及びV9によれば六角形である。
【0039】
図3Bは、バイオ顆粒2に円形(V1)の粒状材料粒子を有するインプラント1の走査型電子顕微鏡画像を示している。ここでは、バイオ顆粒2としてUHMW-PE粒状材料を一例として選択している。また、個々の粒状材料粒子/バイオ顆粒2の表面全体に付着している金属粒子3は、ここでは銀粒子である。
【0040】
図3Cは、図3Bと同様にインプラント1の走査型電子顕微鏡画像を示しており、ここではジャガイモ形(V2)の粒状材料粒子を有する。図3Cのインプラント1は、図3Bに示すインプラントと同じ材料で構成されており、粒状材料粒子2の形状のみが後者と異なる。
【0041】
図4Aは、走査型電子顕微鏡を使用したインプラント1の縦断面図を示している。これは、炭酸カルシウム粒子に、マグネシウム粒子や銀粒子等が混合されたUHMW-PEインプラントの一例である。この場合、インプラント1は多孔質である。粒状材料2の各粒子は、その表面全体に分布した金属粒子3の層を有しており、ここでは、粒状材料2に対して鮮やかに際立っている。従って、細孔空間(粒状材料の個々の粒子間の空間)は、少なくとも部分的に金属粒子3で満たされている。
【0042】
図4Bは、図4Aの断面IVであり、従って図4Aのインプラント1を拡大して示したものである。
【0043】
図5Aは、μm範囲でのインプラント1の概略図であり、ここでは、バイオ顆粒2の例示的な六角形/六面体の粒子を示しており、バイオ顆粒2としてUHMW-PEが一例として選択されている。点状/円状の要素は、金属粒子3(金属タイプ、例えばMP1)を象徴しており、ここでは、銀、銅又は亜鉛であってもよい。矢印A1は、インプラント1の多孔質表面の方向を示している。「*」記号は、粒状材料粒子2の間の領域、すなわち、本質的に抗菌活性のある細孔構造によって特に特徴づけられた細孔(細孔空間)内の領域を示している。
【0044】
図5Aと同様に、図5Bもμm範囲でのインプラント1の概略図を示している。インプラント1の2つの図(図5A及び図5B)は、図5Bの粒状材料粒子2が五角形/五面体である点で異なっており、ここではタイプMP1の金属粒子3に加えて、抗菌活性をもつ他の粒子MP2もこれらの粒状材料粒子2、例えば、セラミック成分に付着しており、ここでは多角形(正十角形)で示されている。
【符号の説明】
【0045】
1 インプラント
2 ベース粒状材料
3 金属粒子
IM インプラント混合物
RM1 原料1
RM2 原料2
MP1 金属粒子1
MP2 金属粒子2
S1 第1ステップ
S2 第2ステップ
S3 第3ステップ
V1~V9 (9つの異なる)粒状材料の形状のバリエーション
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
【手続補正書】
【提出日】2020-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性ポリマー及び/又はセラミック粒状材料の原料混合物からなるベース粒状材料(2)を有するインプラント混合物(IM)を含む、抗菌活性を備えたインプラント(1)であって、
前記インプラント混合物(IM)は、イオンを放出するのに適した少なくとも1種類の金属粒子(3)をさらに含み、
前記金属粒子(3)は、銀粒子及び/又は銅粒子の形態で提供され、
前記金属粒子(3)は、該金属粒子(3)が構造的に固有の方法で前記インプラント(1)に提供されるように前記インプラント(1)の体積中に分布しており、
前記インプラント混合物は、高純度の元素で且つ生分解性金属である前記金属粒子がマグネシウム粒子及び/又は鉄粒子の形態でさらに散在していることを特徴とする、インプラント(1)。
【請求項2】
前記インプラント混合物(IM)中の前記金属粒子(3)の分布、密度、量及び/又は濃度は、前記インプラント(1)の抗菌活性が直接的な環境で強制的に発生するようなものであることを特徴とする、請求項に記載のインプラント(1)。
【請求項3】
前記銀粒子は1~200μmの範囲の粒径を有し、前記銅粒子は1~100μmの範囲の粒径を有し、前記マグネシウム粒子及び前記鉄粒子は1~200μmの範囲の粒径を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のインプラント(1)。
【請求項4】
前記インプラント(1)の抗菌活性が細孔表面で強制的に発生するように多孔質であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のインプラント(1)。
【請求項5】
前記インプラント(1)の抗菌活性が該インプラント(1)表面で強制的に発生するように固形であるよう設計されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のインプラント(1)。
【請求項6】
患者固有の形状及び材料特性で製造されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のインプラント(1)。
【請求項7】
圧縮成形、粉砕、レーザ焼結又は射出成形によって製造されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のインプラント(1)。
【請求項8】
請求項1に記載のインプラント(1)を製造する方法であって、
ましくは連続して、
a)前記原料を混合して前記ベース粒状材料(2)を製造するステップと、
b)前記ベース粒状材料(2)及び前記金属粒子(3)を所定の比率で混合又はブラストして前記インプラント混合物(IM)を形成するステップと、
c)前記インプラント混合物(IM)をプレスして塊に粉砕した材料ブロックを製造した後に、前記塊を最終的なインプラント形状に形成するステップとの順序で行うことを特徴とする、方法。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性ポリマー、例えば、UHMW-PE、ポリウレタン、HDPE又はLDPE、PPSU、PP、PEEK及び/又は炭酸カルシウム等のセラミック粒状材料の原料混合物で作られたベース粒状材料を有するインプラント混合物を含む、抗菌活性を備えたインプラントに関し、インプラント混合物はイオンを放出するのに適した少なくとも1種類の粒子状金属をさらに含み、金属粒子は銀粒子及び/又は銅粒子の形態で提供される。さらに、本発明は、そのようなインプラントを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプラントとは、体に異質な医療機器で、ヒトや動物の体内に特に一定期間存在するものと理解されている。
【0003】
抗菌活性/有効性/効果を備えたインプラントは、患者の炎症/疾患を抑制するために、微生物の増殖能力及び/若しくはそれらの感染性を低下させ、並びに/又は死滅させるか若しくは不活性化させる。このような微生物は、細菌、真菌、酵母及びウイルスに分類され得る。
【0004】
生体適合性インプラントは、ヒト/動物の体内の代謝に悪影響を及ぼさず、例えば、このインプラントに対して体の拒絶反応を引き起こさないインプラントである。従って、(部分的に)生体適合性インプラントは、長期間にわたって患者の体内に留まっていてもよい。
【0005】
しかしながら、生体適合性ポリマー等の材料でできた多孔質インプラントは、(患者の)体内に挿入されると、感染症やそれに伴う炎症反応を引き起こすことが従来から知られている。手術中に持ち込まれた細菌、又は以前の感染症により患者の組織内に既に存在していた細菌に対するその後に発生する免疫反応により、インプラントの機能が失われ、さらには患者に大きな障害が生じる。多くの場合、これらのインプラントは、インプラント上にバイオフィルムが形成され、インプラントには多孔質が存在するために細菌の付着に適した条件があり、抗生物質による治療が効果的でないため、取り除かなければならない。
【0006】
この細菌の付着を防ぐために、インプラントには抗菌作用のあるコーティングが施されていてもよい。しかし、これらのコーティングは安定しておらず、短期間しか効果がないことが多い。さらに、コーティングは、多孔性の高い又は低い、もしくは部分的な多孔性を有するインプラントに対して技術的な問題を提起する。多くの場合、コーティングは不完全に塗布されているか、又は活性が不十分で層の厚さが異なる。コーティングされたインプラントを製造するために、従来の抗生物質に加えて、抗菌性を有する様々なペプチドも使用される。また、銀イオンや銅イオン等の特定の金属イオンも、抗菌活性をもつコーティングの製造に使用されている。
【0007】
バイオポリマーを用いた既存のソリューションは、特に水性コーティングに関するものである。ここでは、例えばピートコーティングプロセスで、抗生物質を含む溶液又はペプチド溶液をインプラントの表面に塗布する。その後、抗菌物質は組織内で拡散して作用する。しかしながら、多くのコーティングは、物質自体が熱的に不安定であったり、この時間が経過するとこれらの物質のリザーバーが最大限に使い果たされてしまうため、活性期間が短い(6か月未満)という問題がある。
【0008】
インプラントを抗菌化する別の方法は、薬物送達が知られている/に使用されている。薬物送達とは、対応する抗菌物質を介して所望の治療効果を安全に達成するために、医薬成分を患者の体内に輸送するための方法及びシステムを指す。薬物送達では、再吸収性(キャリア)材料(生体が吸収し得る材料/物質)が、薬理物質(患者の体と相互作用する物質)を放出する。これらの物質は拡散によって分散され、インプラントには直接作用しない/インプラントの直接環境には作用しないが、遠位(患者)組織では特定の標的細胞にのみ作用する。
【0009】
例えば、欧州特許出願公開第2382960号明細書には、ヒトの体内に銀イオンを放出し、その結果、抗菌効果を有するコーティングが施されたインプラントが記載されている。コーティングの第1表面部分は、アノード材料によって形成されている。コーティングの第2表面部分は、カソード材料によって形成されている。カソード材料は、アノード材料よりも電気化学的な系列が高く、カソード材料とアノード材料とは、互いに電気的に接続されている。
【0010】
さらに、長期的な抗生物質効果を有するインプラントが、欧州特許第1513563号明細書で知られており、これは特に、本質的に非吸収性又はゆっくりとしか吸収されないポリマー材料でできたインプラントの形状を決定する基本構造及び再吸収性材料でできたコーティングを有する、血管プロテーゼである。ポリマー材料の上とコーティングの下には、金属銀の層がある。
【0011】
さらに、欧州特許第2204199号明細書には、チタンを含む又はチタンからなるインプラントに抗感染性コーティングを製造する方法が開示されている。この方法は、細孔内の導電性がガルバニック蒸着を可能にするように、アルカリ溶液中での陽極酸化による多孔質酸化物層の形成、抗感染性を有する金属のガルバニック蒸着及びブラストによる金属含有酸化物層の固化というステップを使用している。
【0012】
また、欧州特許出願公開第3424877号明細書には、銀粒子をリン酸カルシウム粒子(バイオセラミック)に組み込み、リン酸カルシウム粒子を溶融した後、銀粒子がインプラントの体積全体に広がるように焼成することによって生成された、抗菌特性を有するインプラントが開示されている。インプラントを製造するために、リン酸カルシウム粒子と銀粒子を混合している。遠心分離及び乾燥を経て、乾燥した混合粒子が得られ、これを加熱下でプレスする。
【0013】
国際公開第95/20878号には、医療用途を背景に、金属粒子を用いて抗菌性プラスチックを製造する方法が開示されており、これらの金属粒子は、個別の粒子形態でプラスチックに埋め込まれている。この目的のために、顆粒状のプラスチック粒子を金属粒子でコーティングした後、粉砕/溶融して所望の形状にしている。
【0014】
また、国際公開第02/17984号には、金属粒子がポリマーであるマトリックス材料中に微細に分布した構造をもつ、骨に移植するための抗菌材料が記載されている。
【発明の概要】
【0015】
このような背景に対して、本発明の目的は、従来技術の問題点を解決するか、又は少なくとも軽減することであり、特に低コストで製造でき、微生物に対して確実且つ安全に作用するインプラントを提供することである。
【0016】
この目的は、インプラント/インプラント混合物の体積中に、金属粒子が好ましくは均一に分布しているという点で本発明によって解決される。これは、抗菌効果がインプラントの体積(全体)に分布し、従ってインプラントにおいて構造的に本質的な方法で提供されるため、抗菌活性がインプラント自体の特性であることを意味する。この目的のために、インプラント混合物は、銀粒子及び/又は銅粒子に加えて、高純度な元素で且つ生分解性金属である金属粒子がマグネシウム粒子及び/又は鉄粒子の形態でさらに散在している。
【0017】
このように設計されたインプラントの利点は、インプラントの抗菌特性を生み出す、体積全体に分布された金属粒子をもつインプラントが、抗菌コーティングを施したインプラントよりも大幅に長く、より確実な抗菌効果を有することである。さらに、本発明によるインプラントの抗菌効果は、その直接の環境下で行われるため、インプラント内に存在する微生物が患者の体内で拡散し得ない。
【0018】
有利な実施形態は、従属請求項の主題であり、以下でより詳細に説明される。
【0019】
本発明に係るインプラントでは、インプラント混合物に、好ましくは銀粒子及び/又は銅粒子を加えて、さらにマグネシウム粒子及び/又は鉄粒子の形態で金属粒子が散在している。これらのマグネシウム粒子及び/又は鉄粒子は、銀粒子及び/又は銅粒子と同様に抗菌効果を有し、従ってインプラントの抗菌活性を高める。銀粒子及び/又は銅粒子をマグネシウム粒子及び/又は鉄粒子と混合することで、患者の体内での組織の内部成長挙動が改善される。
【0020】
さらに、インプラントは、金属粒子が高純度な元素であり、且つ生分解性金属であるように提供される。このような生分解性金属とは、化学的又は生物学的に分解可能な金属であり、完全に分解された後はインプラント内や患者の体内に存在しなくなるものである。
【0021】
さらに、インプラント混合物中の金属粒子の分布、密度、量及び/又は濃度は、インプラントの抗菌活性がその直接的な環境で、すなわち、インプラントの表面に直接、インプラント自体に、及びインプラント表面から1~2μmの距離の環境で最大に、強制的に発生/作用するようになることが考えられる。抗菌活性がインプラントに直接作用する場合、インプラントを起点とした微生物が患者の周囲の組織に広がり、その結果、患者の体に炎症/病気を引き起こし得ることを防止する。
【0022】
有利には、銀粒子が1~200μm、特に20~50μmの範囲の粒径を有し、銅粒子が1~100μm、特に10~30μmの範囲の粒径を有し、マグネシウム粒子及び鉄粒子が1~200μmの範囲の粒径を有するようにインプラントが設計され得る。このサイズ範囲では、粒子をインプラント混合物に導入することが特に容易である。
【0023】
インプラントが多孔質であることも考えられ、好ましくは、多孔質インプラントの抗菌活性が細孔表面に作用する/強制的に発生するように、インプラント混合物中の金属粒子の分布、密度、量及び/又は濃度が選択される。細孔表面は、インプラント内のすべての細孔の表面として定義され、従ってインプラント表面よりも大きい。
【0024】
さらに、インプラントが固体であるように設計され得、好ましくは固体インプラントの抗菌活性がインプラント表面に作用する/強制的に発生するように、インプラント混合物中の金属粒子の分布、密度、量及び/又は濃度が選択される。インプラントが固体の場合、抗菌活性はインプラント表面にのみ作用し、従ってインプラントが多孔質の場合よりも小さい表面に作用することになる。
【0025】
また、インプラントが患者固有の形状及び材料特性で製造されている場合有利である。患者固有のインプラントとは、患者の個々の解剖学的構造に適合/調整されたインプラントのことである。
【0026】
また、インプラントは、圧縮成形、切削加工、レーザ焼結又は射出成形等によって製造されることも考えられる。これらは、インプラントを製造する上で、特に有効な製造方法である。
【0027】
さらに、本発明の目的は、内在性抗菌活性を有するインプラントを製造する方法によって解決される。このインプラントは、上記で定義した本発明に係るインプラント混合物を有する。
【0028】
インプラントを製造する方法が以下のステップを含むと便利であり、これらのステップは好ましくは連続して、以下のステップの順序で行われる。a)原料を混合してベース粒状材料を製造し、(その後)、b)ベース粒状材料を銀粒子及び/又は銅粒子と、任意にマグネシウム粒子及び/又は鉄粒子と組み合わせて所定の比で混合又はブラストし、インプラント混合物を形成し、(その後)c)インプラント混合物をプレスして材料ブロックを生成し、この材料ブロックを後続のステップで、例えば機械加工や切削によって塊に粉砕し、これらの塊を(所望の)最終的なインプラント形状に成形する。
【0029】
言い換えると、本発明は、異なる多孔性及び部分的吸収性を備えた異なる寸法のインプラントを製造するための出発材料として、抗菌性粒状材料を製造する方法に関する。出発材料(UHMW-PE、HDPE、PP、ポリウレタン、LDPE、マグネシウム粒子、PPSU)は、粒状材料又は粉末として提供されてもよい。
【0030】
さらに、言い換えると、本発明は、多孔性と多孔性及び/又は細孔の幾何学的設計に依存しない内在性抗菌効果を備えたインプラント(永久インプラント又は部分的吸収性インプラント)に関するものである。抗菌性物質は、コーティングとしてインプラントに塗布されるのではなく、インプラントの粒子状ベース材料の一部である。
【0031】
抗菌効果のある固体、多孔質、高多孔質又は幾何学的に複雑なインプラントの製造は、時間の経過とともにイオンを放出する銀粒子又は銅粒子の添加に基づいている。高純度で微多孔質の銀は、炎症性合併症の治療に使用されている。また、インプラントの抗菌活性は、インプラント部品の吸収時に部分的に発生し得る。
【0032】
ポリマー若しくはセラミック粒子からなるベース粒状材料及び/又はこれらのベース材料の混合物の熱粒子に、マグネシウム又は鉄合金の生分解性金属粒子を、銀粒子又は銅粒子とともに添加して混合することで、より優れた組織の内部成長挙動が得られる。ここで、完全に/部分的に多孔質で三次元のインプラントは、表面が最初にアクセス可能な状態(開いた細孔)であるか、否か(閉じた細孔)に関わらず抗菌活性を示す。
【0033】
インプラントの原料は、無溶媒で製造及び混合される。ベース粒状材料/粉末は、銀材料又は銅粒子と所定の比で混合することで活性化される。あるいは、ベース粒状材料/粉末は、ブラストによって銀又は銅と組み合わされ得る。マグネシウム粒子又は鉄粒子と、銀粒子又は銅粒子を、ポリマー又はセラミックのバックグラウンドマトリックス(ベース粒状材料)に組み合わせることは、熱的又は機械的製造プロセスに依存する。インプラント混合物は、その後プレスされ、続いて粉砕/研削されて粒状材料になる。
【0034】
従って、高純度な元素の銀粒子及び/又は銅粒子を添加(好ましくはナノ粒子化)することにより、抗菌効果を有する生体適合性ポリマー又はセラミック粒状材料からなる圧縮成形、粉砕、レーザ焼結又は射出成形されたインプラントが得られる。多孔質インプラントの抗菌活性は、細孔表面(外部及び内部)の影響に限定される。一方、固体インプラントの抗菌活性は、インプラント表面でのみ有効である。技術的なインプラント設計により、金属粒子の濃度がインプラントのすぐ近くでのみ作用するため、抗菌活性は細胞適合性があり、細胞生理学的にも無害である。高多孔質インプラントは、細孔を塞ぐことなく抗菌活性を維持する。
【0035】
抗菌活性を有するインプラントを含む可能性のある他の材料として、PEEK、ヒドロキシアパタイト(HA)、炭酸カルシウム(CaCO)、ストロンチウム(Sr)、α-又はβ-リン酸三カルシウム(α-又はβ-TCP)等の添加剤を含むPPSU、バイオガラス粒子/生物活性ガラスの粒子、PDLLA、PLGA、PLA、PGA等のポリエステル材料、キトサン繊維又はキトサン粒子等を含む。多孔質インプラントは、非多孔質/固体インプラントと比較して、多孔質によるインプラントの抗菌効果を制限する/失うことなく、患者の体内へのより優れた内部成長挙動を達成する。本発明によるインプラントの強度は、ブラスト、噴霧、混合、造粒又はプレスによって増加し得る。
【0036】
以下は、添付の図面を参照しながら、本発明によるインプラントの実施形態及びその製造方法を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】インプラントの模式的な断面図を示す。
図2】インプラントの製造に係るステップを説明するフローチャートを示す。
図3A】バイオ顆粒の考えられる粒子形状を示す。
図3B】円形の粒状材料粒子を有するインプラント1の走査型電子顕微鏡画像を示す。
図3C】ジャガイモ形の粒状材料粒子を有するインプラント1の走査型電子顕微鏡画像を示す。
図4A】走査型電子顕微鏡を使用したインプラント1の縦断面図を示す。
図4B図4Aの断面IVを示す。
図5A】六角形の粒状材料粒子及び1種類の金属粒子を有するμm範囲のインプラント1の概略図を示す。
図5B】五角形の粒状材料粒子と2種類の金属粒子を有するμm範囲のインプラント1の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図面は本質的に概略的なものに過ぎず、本発明を理解する目的にのみ役立つ。また、構成例は純粋に例示的なものである。
【0039】
図1は、ベース粒状材料2及び金属粒子3を含むインプラント1を示している。ベース粒状材料2及び金属粒子3が一緒に混合され、インプラント1の体積全体にわたって存在していることが分かる。
【0040】
図2は、本発明による方法のステップを説明するフローチャートを示している。まず、第1ステップS1では、第1原料RM1として例えば生体適合性ポリマー(LDPE)と、第2原料RM2としてセラミック粒状材料(例えば炭酸カルシウム)をそれぞれ混合する。これら2つの原料を混合することで、ベース粒状材料2が得られる。第2ステップS2では、第1種類の金属粒子MP1、例えば銀粒子と、第2種類の金属粒子MP2、例えば銅粒子とがベース粒状材料2に添加されるか、又はブラストによってベース粒状材料2と一緒にされる。ステップS2の後、インプラント混合物IMが得られる。この方法の第3ステップS3では、このインプラント混合物IMがプレスされる。これにより、例えば機械加工又は研削によって材料ブロックが塊に粉砕され、その後、最終的なインプラント形状に成形される。従って、ステップS3の後、患者の体内に配置/挿入し得る完成したインプラント1が得られる。
【0041】
図3Aは、一例として、バイオ顆粒2の粒子が形成される9つの異なる種類/形状/バージョンを示しているが、これに限定はされない。ここでは、バイオ顆粒2として炭酸カルシウムを有し、金属粒子3として例えば銀粒子やマグネシウム粒子等を有するインプラント1を想定している。バイオ顆粒中の粒子の種類/粒子形状は、記号「V1」~「V9」で連続的に特徴付けられる。粒子の基本的な形状は、V1によれば円形、V2によればジャガイモ形、V3によれば楕円形、V4によれば四角形、V5によれば八角形、V6によれば平行多角形、V7によれば半円形、V8によれば五角形及びV9によれば六角形である。
【0042】
図3Bは、バイオ顆粒2に円形(V1)の粒状材料粒子を有するインプラント1の走査型電子顕微鏡画像を示している。ここでは、バイオ顆粒2としてUHMW-PE粒状材料を一例として選択している。また、個々の粒状材料粒子/バイオ顆粒2の表面全体に付着している金属粒子3は、ここでは銀粒子である。
【0043】
図3Cは、図3Bと同様にインプラント1の走査型電子顕微鏡画像を示しており、ここではジャガイモ形(V2)の粒状材料粒子を有する。図3Cのインプラント1は、図3Bに示すインプラントと同じ材料で構成されており、粒状材料粒子2の形状のみが後者と異なる。
【0044】
図4Aは、走査型電子顕微鏡を使用したインプラント1の縦断面図を示している。これは、炭酸カルシウム粒子に、マグネシウム粒子や銀粒子等が混合されたUHMW-PEインプラントの一例である。この場合、インプラント1は多孔質である。粒状材料2の各粒子は、その表面全体に分布した金属粒子3の層を有しており、ここでは、粒状材料2に対して鮮やかに際立っている。従って、細孔空間(粒状材料の個々の粒子間の空間)は、少なくとも部分的に金属粒子3で満たされている。
【0045】
図4Bは、図4Aの断面IVであり、従って図4Aのインプラント1を拡大して示したものである。
【0046】
図5Aは、μm範囲でのインプラント1の概略図であり、ここでは、バイオ顆粒2の例示的な六角形/六面体の粒子を示しており、バイオ顆粒2としてUHMW-PEが一例として選択されている。点状/円状の要素は、金属粒子3(金属タイプ、例えばMP1)を象徴しており、ここでは、銀、銅又は亜鉛であってもよい。矢印A1は、インプラント1の多孔質表面の方向を示している。「*」記号は、粒状材料粒子2の間の領域、すなわち、本質的に抗菌活性のある細孔構造によって特に特徴づけられた細孔(細孔空間)内の領域を示している。
【0047】
図5Aと同様に、図5Bもμm範囲でのインプラント1の概略図を示している。インプラント1の2つの図(図5A及び図5B)は、図5Bの粒状材料粒子2が五角形/五面体である点で異なっており、ここではタイプMP1の金属粒子3に加えて、抗菌活性をもつ他の粒子MP2もこれらの粒状材料粒子2、例えば、セラミック成分に付着しており、ここでは多角形(正十角形)で示されている。
【符号の説明】
【0048】
1 インプラント
2 ベース粒状材料
3 金属粒子
IM インプラント混合物
RM1 原料1
RM2 原料2
MP1 金属粒子1
MP2 金属粒子2
S1 第1ステップ
S2 第2ステップ
S3 第3ステップ
V1~V9 (9つの異なる)粒状材料の形状のバリエーション
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性ポリマー及び/又はセラミック粒状材料の原料混合物からなるベース粒状材料を有するインプラント混合物を含む、抗菌活性を備えたインプラントであって、
前記インプラント混合物は、イオンを放出するのに適した少なくとも1種類の金属粒子をさらに含み、
前記金属粒子は、銀粒子及び/又は銅粒子の形態で提供され、
前記金属粒子は、該金属粒子が構造的に固有の方法で前記インプラントに提供されるように前記インプラントの体積中に分布しており、
前記インプラント混合物は、高純度の元素で且つ生分解性金属である前記金属粒子がマグネシウム粒子及び/又は鉄粒子の形態でさらに散在していることを特徴とする、インプラント。
【請求項2】
前記インプラント混合物中の前記金属粒子の分布、密度、量及び/又は濃度は、前記インプラントの抗菌活性が直接的な環境で強制的に発生するようなものであることを特徴とする、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記銀粒子は1~200μmの範囲の粒径を有し、前記銅粒子は1~100μmの範囲の粒径を有し、前記マグネシウム粒子及び前記鉄粒子は1~200μmの範囲の粒径を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記インプラントの抗菌活性が細孔表面で強制的に発生するように多孔質であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項5】
前記インプラントの抗菌活性が該インプラント表面で強制的に発生するように固形であるよう設計されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項6】
患者固有の形状及び材料特性で製造されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項7】
圧縮成形、粉砕、レーザ焼結又は射出成形によって製造されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項8】
請求項1に記載のインプラントを製造する方法であって
)前記原料を混合して前記ベース粒状材料を製造するステップと、
b)前記ベース粒状材料及び前記金属粒子を所定の比率で混合又はブラストして前記インプラント混合物を形成するステップと、
c)前記インプラント混合物をプレスして塊に粉砕した材料ブロックを製造した後に、前記塊を最終的なインプラント形状に形成するステップとを行うこと特徴とする、方法。
【国際調査報告】