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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(54)【発明の名称】神経障害性疼痛の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4985 20060101AFI20220518BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220518BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220518BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220518BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220518BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220518BHJP
   C07D 471/16 20060101ALN20220518BHJP
【FI】
A61K31/4985
A61P25/04
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/42
A61K47/36
C07D471/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559095
(86)(22)【出願日】2020-04-04
(85)【翻訳文提出日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 US2020026766
(87)【国際公開番号】W WO2020206391
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】62/829,417
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】スナイダー,グレッチェン
(72)【発明者】
【氏名】バノーバー,キンバリー
【テーマコード(参考)】
4C065
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA07
4C065AA18
4C065BB04
4C065CC06
4C065DD03
4C065EE03
4C065HH01
4C065HH09
4C065JJ01
4C065KK01
4C065LL04
4C065PP03
4C065PP12
4C065PP18
4C065PP19
4C076AA94
4C076CC01
4C076EE10M
4C076EE24M
4C076EE37M
4C076EE41M
4C076FF31
4C076FF32
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA12
4C086NA14
4C086ZA08
(57)【要約】
本発明は、神経障害性疼痛の治療方法に使用するための、本明細書に記載の、遊離形態、固体形態、薬学的に許容される塩形態および/または実質的に純粋な形態の、特定の置換ヘテロ環縮合γ-カルボリン、その医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性および/または神経障害性疼痛の治療方法であって、該治療を必要とする患者に、遊離形態または塩形態(例えば、薬学的に許容される塩形態)、例えば単離または精製された遊離形態または塩形態(例えば、薬学的に許容される塩形態)の、式I:
【化1】
[式中、
1は、H、C1-6アルキル、-C(O)-O-C(Ra)(Rb)(Rc)、-C(O)-O-CH2-O-C(Ra)(Rb)(Rc)または-C(R6)(R7)-O-C(O)-R8であり;
2およびR3は、独立して、H、D、C1-6アルキル(例えば、メチル)、C1-6アルコキシ(例えば、メトキシ)、ハロ(例えば、F)、シアノまたはヒドロキシから選択され;
Lは、C1-6アルキレン(例えば、エチレン、プロピレンまたはブチレン)、C1-6アルコキシ(例えば、プロポキシまたはブトキシ)、C2-3アルコキシC1-3アルキレン(例えば、-CH2CH2OCH2-)、C1-6アルキルアミノまたはN-C1-6アルキル C1-6アルキルアミノ(例えば、プロピルアミノまたはN-メチルプロピルアミノ)、C1-6アルキルチオ(例えば、-CH2CH2CH2S-)、C1-6アルキルスルホニル(例えば、-CH2CH2CH2S(O)2-)であり、これらはいずれも1個以上のR4部分で置換されていてもよく;
各R4は、独立して、C1-6アルキル(例えば、メチル)、C1-6アルコキシ(例えば、メトキシ)、ハロ(例えば、F)、シアノまたはヒドロキシから選択され;
Zは、アリール(例えば、フェニル)およびヘテロアリール(例えば、ピリジル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル)から選択され、ここで、該アリールまたはヘテロアリールは、1個以上のR4部分で置換されていてもよく;
8は、-C(Ra)(Rb)(Rc)、-O-C(Ra)(Rb)(Rc)、または-N(Rd)(Re)であり;
a、RbおよびRcは、各々独立して、HおよびC1-24アルキルから選択され;
dおよびReは、各々独立して、HおよびC1-24アルキルから選択され;
6およびR7は、各々独立して、H、C1-6アルキル、カルボキシおよびC1-6アルコキシカルボニルから選択される]
で示される化合物を投与することを含む方法であり;
該疼痛が、末梢神経障害(例えば、単神経障害、神経叢障害、神経根症、または多発性神経炎)によって引き起こされるか、または中枢神経障害(例えば、求心路遮断痛または交換神経維持性疼痛、例えば複合性局所疼痛症候群(CRPS))によって引き起こされる、
方法。
【請求項2】
1がHである、式Iで示される化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1がC1-6アルキル、例えばメチルである、式Iで示される化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
1が、-C(O)-O-C(Ra)(Rb)(Rc)、-C(O)-O-CH2-O-C(Ra)(Rb)(Rc)または-C(R6)(R7)-O-C(O)-R8である、式Iで示される化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
Lが非置換C1-6アルキレン(例えば、エチレン、プロピレン、またはブチレン)であるか、またはLが1個以上のR4部分で置換されているC1-6アルキレン(例えば、エチレン、プロピレン、またはブチレン)である、式Iで示される化合物を含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
Lが非置換C1-6アルコキシ(例えば、プロポキシまたはブトキシ)であるか、またはLが1個以上のR4部分で置換されているC1-6アルコキシ(例えば、プロポキシまたはブトキシ)である、式Iで示される化合物を含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
1、R2およびR3が各々Hである、式Iで示される化合物を含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
Zが1個以上のR4部分で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)である、式Iで示される化合物を含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
Zが、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)およびシアノから選択される1個のR4部分で置換されているフェニルである(例えば、Zが、4-フルオロフェニル、または4-クロロフェニル、または4-シアノフェニルである)、式Iで示される化合物を含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
Zが、1個のフルオロで置換されているフェニル(例えば、2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニルまたは4-フルオロフェニル)である、式Iで示される化合物を含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
Zが1個以上のR4部分で置換されていてもよいヘテロアリール(例えば、ピリジル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル)である、式Iで示される化合物を含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ヘテロアリールが、単環式5員または6員ヘテロアリール(例えば、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、チオフェニル、ピロリル、チオフェニル、フラニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル)である、式Iで示される化合物を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
ヘテロアリールが、二環式9員または10員ヘテロアリール(例えば、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、キナゾリニル、ベンゾジオキソリル、2-オキソ-テトラヒドロキノリニル)である、式Iで示される化合物を含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
ヘテロアリールが、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)およびシアノから選択される1個のR4部分で置換されている(例えば、ヘテロアリールが、6-フルオロ-3-インダゾリル、6-クロロ-3-インダゾリル、6-フルオロ-3-ベンゾイソオキサゾリル、または5-クロロ-3-ベンゾイソオキサゾリルである)、式Iで示される化合物を含む、請求項11記載の方法。
【請求項15】
化合物が、各々独立して遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化2】
からなる群から選択される、式Iで示される化合物を含む、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
化合物が、各々独立して遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化3】
からなる群から選択される、式Iで示される化合物を含む、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
化合物が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化4】
である、式Iで示される化合物を含む、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
塩形態、例えば薬学的に許容される塩形態の式Iで示される化合物を含む、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
式Iで示される化合物が、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合して式Iで示される化合物を含む医薬組成物の形態で投与される、請求項1~18いずれか1項記載の方法。
【請求項20】
医薬組成物が持続放出製剤または遅延放出製剤である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
医薬組成物が、ポリマーマトリックス中にある式Iで示される化合物を含む、請求項19または20記載の方法。
【請求項22】
疼痛が、神経障害性疼痛、例えば、慢性神経障害性疼痛である、請求項1~21いずれか1項記載の方法。
【請求項23】
疼痛が、単神経障害(例えば、単発性単神経障害)、例えば限局性単神経障害、圧迫性単神経障害、または絞扼性単神経障害(例えば、手根管症候群)によって引き起こされるか;または、多発性単神経障害または多発性神経炎、例えば、糖尿病性多発性神経炎によって引き起こされるか;または、薬物誘発性神経毒性(例えば、ドキソルビシン、エトポシド、ゲムシタビン、イホスファミド、インターフェロンアルファ、白金化学療法剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン)、またはビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、またはビンポセチン)、または抗レトロウイルスヌクレオシド(例えば、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン)による)によって引き起こされるか;または、帯状疱疹後神経痛(PHN)によって引き起こされる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
患者が、以前に別の疼痛緩和薬で治療を受けており、患者が、該薬物に十分に反応しなかった(例えば患者の痛みが十分に軽減されなかった)か、または患者が、継続的な治療を妨げる副作用に苦しんでいた、請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
慢性および/または神経障害性疼痛の治療用医薬の製造における、請求項1で定義されている、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式Iで示される化合物の使用であって、該疼痛が、末梢神経障害(例えば、単神経障害、神経叢障害、神経根症、または多発性神経炎)によって引き起こされるか、または中枢神経障害(例えば、求心路遮断痛または交換神経維持性疼痛、例えば複合性局所疼痛症候群(CRPS))によって引き起こされるか、または線維筋痛症によって引き起こされる、使用。
【請求項26】
慢性および/または神経障害性疼痛の治療に用いるための、請求項1で定義されている式Iで示される化合物であって、神経障害性疼痛が、末梢神経障害(例えば、単神経障害、神経叢障害、神経根症、または多発性神経炎)によって引き起こされるか、または中枢神経障害(例えば、求心路遮断痛または交換神経維持性疼痛、例えば複合性局所疼痛症候群(CRPS))によって引き起こされるか、または線維筋痛症によって引き起こされる、化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年4月4日出願の米国仮出願第62/829,417号(その内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に基づく優先権およびその利益を主張する国際出願である。
【0002】
発明の分野
本発明は、本明細書に記載の遊離形態または医薬的に許容される塩形態および/または実質的に純粋な形態の特定の置換複素環縮合γ-カルボリン、その医薬組成物の、神経障害性疼痛の治療および/または予防のための使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
置換複素環縮合γ-カルボリンは、中枢神経系障害の治療において5-HT2受容体、特に5-HT2A受容体のアゴニストまたはアンタゴニストであることが知られている。これらの化合物は、米国特許第6,548,493号;米国特許第7,238,690号;米国特許第6,552,017号;米国特許第6,713,471号;米国特許第7,183,282号;米国再発行特許発明第39680号、および米国再発行特許発明第39679号に、5-HT2A受容体調節に関連する障害、例えば肥満、不安、うつ病、精神病、統合失調症、睡眠障害、性障害、片頭痛、頭痛に関連する状態、社会恐怖症、胃腸管運動の機能不全のような胃腸障害、および肥満の治療に有用な新規化合物として開示されている。米国特許第8,309,722号および米国特許第7,081,455もまた、置換複素環縮合γ-カルボリンの製造方法、ならびに嗜癖行動および睡眠障害などの中枢神経系障害の制御および予防に有用なセロトニンアゴニストおよびアンタゴニストとしてのこれらγ-カルボリンの使用を開示している。
【0004】
また、米国特許第8,598,119号は、精神病とうつ病性障害の合併症、ならびに精神病またはパーキンソン病の患者における睡眠障害、うつ病性障害および/または気分障害の治療のための特定の置換複素環縮合γ-カルボリンの使用を開示している。精神病および/またはうつ病に関連する障害に加えて、この特許出願は、ドパミンD2受容体に影響を与えることなくまたは最小限の影響を与えることなく5-HT2A受容体に選択的に拮抗し、これにより高い占有率のドパミンD2経路に関連する副作用または慣用の催眠鎮静剤(例えば、ベンゾジアゼピン)に関連する他の経路(例えばGABAA受容体)の副作用(薬物依存、筋緊張低下、脱力、頭痛、かすみ目、回転性めまい、悪心、嘔吐、心窩部苦悶、下痢、関節痛および胸部痛の発症を含むがこれらに限定されない)を伴わずに睡眠障害の治療に有用な、これら化合物の低用量での使用を開示およびクレームしている。米国特許第8,648,077号もまた、これら置換複素環縮合γ-カルボリンのトルエンスルホン酸付加塩結晶の製造方法を開示している。
【0005】
また、理論に縛られることなく、最近の証拠は、上記置換縮合複素環γ-カルボリンのいくつかが、ケタミンと同様に、mTOR1シグナル伝達を介したNMDA受容体拮抗作用によって部分的に機能し得ることを示している。ケタミンは、選択的NMDA受容体アンタゴニストである。ケタミンは、一般的な心因性モノアミン(セロトニン、ノルエピネフリンおよびドパミン)と関連しないシステムによって作用し、これはその極めて迅速な効果の主な理由である。ケタミンは、シナプス外グルタミン酸作動性NMDA受容体に直接拮抗し、これはまた、AMPA型グルタミン酸受容体の活性化を間接的にもたらす。下流効果は、脳由来神経栄養因子(BDNF)およびmTORC1キナーゼ経路が関与している。ケタミンと同様に、最近の証拠は、本開示の化合物と関連する化合物が、D1受容体の活性化によりラット内側前頭前皮質錐体ニューロンのNMDA誘発電流およびAMPA誘発電流の両方を増加させること、およびこれがmTORC1シグナル伝達の増加に関連することを示唆する。国際出願PCT/US2018/043100(国際公開第2019/023062号、その内容は全体として出典明示により本明細書の一部とする)は、特定の置換縮合複素環γ-カルボリンに対するそのような効果、およびそれに関連する有用な治療適応症を開示している。
【0006】
米国特許第10,245260号は、さらなる新規縮合複素間γカルボリンを開示している。これらの新しい化合物は、セロトニン受容体阻害、SERT阻害およびドパミン受容体調節を示すことが分かった。しかしながら、これらの化合物は、また、予想外に、μ-オピエート受容体でも有意な活性を示すことが分かった。これらの新規化合物のアナログは、例えば、国際出願公開第2018/126140号、国際出願公開第2018/126143号、および国際公開第2019/23063号(その内容は全体として出典明示により本明細書の一部とする)にも開示されている。これらの刊行物に開示されている適応症の中には、一般に、疼痛、神経障害性疼痛、および慢性疼痛の治療がある。
【0007】
例えば、以下に示される式Aで示される化合物は、強力なセロトニン5-HT2A受容体アンタゴニストおよびμ-オピエート受容体部分バイアスアゴニストである。この化合物はまた、ドパミン受容体、特に、ドパミンD1受容体と相互作用する。
【化1】
式Aの化合物は、そのD1受容体活性を介して、mTOR経路を介したNMDA媒介シグナル伝達およびAMPA媒介シグナル伝達も増強し得るとも考えられる。したがって、式Aの化合物は、オピエート使用障害などのオピエート嗜癖を含む中枢神経系障害の治療または予防に有用である。
【0008】
痛みは、患者が医療を求める最も一般的な理由である。THE MERCK MANUAL OF DIAGNOSIS AND THERAPY 1965-85 (Merck Sharpe & Dohme 2018)を参照。通常、組織の損傷を伴う急性の痛みは、末梢の痛覚受容体とそれらの特異的なAδおよびC感覚神経線維の活性化によって引き起こされる。組織損傷が続くことで生じる慢性疼痛は、これらの同じ感覚経路の慢性的な刺激によって引き起こされると考えられている。しかしながら、神経障害性疼痛の場合は、末梢組織の損傷はなく、疼痛は、神経系自体(末梢神経または中枢神経系のいずれか)の損傷または機能障害によって引き起こされる。
【0009】
神経障害性疼痛は、根底にある末梢神経の損傷または機能障害に根ざしている可能性がある。これらとしては、手根管症候群および神経根症などの単神経障害、腫瘍または椎間板ヘルニアによって引き起こされる神経圧迫などの神経叢障害、ならびに多発性神経炎が挙げられる。神経障害性疼痛の背後にあるメカニズムはまだ十分に理解されていないが、場合によっては、再生中の神経のナトリウムチャネル密度の上昇が関与している可能性がある。
【0010】
神経障害性疼痛は、根底にある中枢神経障害性疼痛症候群にも根ざしている可能性がある。これらは、求心路遮断痛および交換神経維持性疼痛を含む中枢性体性感覚プロセシング経路の再編成が関与していると考えられている。求心路遮断痛は、帯状疱疹後神経痛、中枢神経系損傷後の疼痛、および幻肢痛(外傷性または非外傷性[外科的]切断後を参照)などにおけるような、末梢または中枢の求心性神経活動の部分的または完全な中断に起因する。交換神経維持性疼痛は、遠心性交換神経活動に依存する。複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、しばしば、交換神経維持性疼痛を伴う。メカニズムとしては、異常な交感神経-体性神経接続(エファブス)、局所的な炎症性変化、および/または、脊髄の変化を挙げることができる。
【0011】
神経障害性疼痛の症状は様々であり得、異常感覚(dyesthesias)(しばしば重畳電撃要素(superimposed lancinating component)を伴う、自発性または誘発性灼熱痛)、感覚過敏、アロディニア(以前は有害ではなかった刺激による痛み)、および痛覚過敏(特に不快で誇張された痛みの反応)を挙げることができる。症状は長く続き、該症状が主因(急性損傷など)と結び付いている場合、該症状は主因の解決よりも長引く。
【0012】
神経障害性疼痛に対する現在の治療法は、非常に限られた成功しか収めていない。いくつかのクラスの薬剤はある程度の効果を示すが、完全なまたはほぼ完全な解消は可能性が低い。意外なことに、非オピオイド鎮痛薬(例えば、非ステロイド性抗炎症薬、NSAID)およびオピオイド鎮痛薬などの従来の鎮痛薬は、有意な効果がないため、および/または、中毒のリスクが高すぎるため(オピオイドの場合)、一般的に処方されていない。その代わりに、神経障害性疼痛に対して最も頻繁に処方される薬は、抗うつ薬と抗痙攣薬である。一般的に処方される抗うつ薬としては、アミトリプチリン、デシプラミンおよびデュロキセチンが挙げられる。一般的に処方される抗痙攣薬としては、カルバマゼピン、ガバペンチン、フェニトイン、プレガバリンおよびバルプロエートが挙げられる。これらの薬剤には、それぞれ異なる副作用と潜在的な乱用傾向が伴う。
【0013】
したがって、副作用傾向が減少した、神経障害性疼痛を治療する能力が向上した薬剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
本開示は、神経障害性疼痛の治療方法であって、該治療を必要とする患者に式Iで示される化合物またはその医薬組成物を投与することを含む方法であり、式Iで示される化合物が、遊離形態または塩形態(例えば、薬学的に許容される塩形態)、例えば単離または精製された遊離形態または塩形態(例えば、薬学的に許容される塩形態)の
【化2】
[式中、
1は、H、C1-6アルキル、-C(O)-O-C(Ra)(Rb)(Rc)、-C(O)-O-CH2-O-C(Ra)(Rb)(Rc)または-C(R6)(R7)-O-C(O)-R8であり;
2およびR3は、独立して、H、D、C1-6アルキル(例えば、メチル)、C1-6アルコキシ(例えば、メトキシ)、ハロ(例えば、F)、シアノまたはヒドロキシから選択され;
Lは、C1-6アルキレン(例えば、エチレン、プロピレンまたはブチレン)、C1-6アルコキシ(例えば、プロポキシまたはブトキシ)、C2-3アルコキシC1-3アルキレン(例えば、CH2CH2OCH2)、C1-6アルキルアミノまたはN-C1-6アルキル C1-6アルキルアミノ(例えば、プロピルアミノまたはN-メチルプロピルアミノ)、C1-6アルキルチオ(例えば、-CH2CH2CH2S-)、C1-6アルキルスルホニル(例えば、-CH2CH2CH2S(O)2-)であり、これらはいずれも1個以上のR4部分で置換されていてもよく;
各R4は、独立して、C1-6アルキル(例えば、メチル)、C1-6アルコキシ(例えば、メトキシ)、ハロ(例えば、F)、シアノまたはヒドロキシから選択され;
Zは、アリール(例えば、フェニル)およびヘテロアリール(例えば、ピリジル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル)から選択され、ここで、該アリールまたはヘテロアリールは、1個以上のR4部分で置換されていてもよく;
8は、-C(Ra)(Rb)(Rc)、-O-C(Ra)(Rb)(Rc)、または-N(Rd)(Re)であり;
a、RbおよびRcは、各々独立して、HまたはC1-24アルキルから選択され;
dおよびReは、各々独立して、HおよびC1-24アルキルから選択され;
6およびR7は、各々独立して、H、C1-6アルキル、カルボキシおよびC1-6アルコキシカルボニルから選択される]
である、方法を提供する。
【0015】
さらなる態様では、本開示は、さらに、神経障害性疼痛の治療のための医薬の製造における、本開示化合物、例えば式Iで示される化合物の使用を提供する。本開示は、さらに、神経障害性疼痛の治療に用いるための、本開示化合物、例えば式Iで示される化合物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
第1の態様では、本開示は、慢性および/または神経障害性疼痛の治療方法であって、該治療を必要とする患者に、式Iで示される化合物、または、式Iで示される化合物を含む医薬組成物I、I-A、I-B、I-C、もしくはP.1~P.7のいずれかを投与することを含む方法であり、式Iで示される化合物が、遊離形態または塩形態(例えば、薬学的に許容される塩形態)、例えば単離または精製された遊離形態または塩形態(例えば、薬学的に許容される塩形態)の、
【化3】
[式中、
1は、H、C1-6アルキル、-C(O)-O-C(Ra)(Rb)(Rc)、-C(O)-O-CH2-O-C(Ra)(Rb)(Rc)または-C(R6)(R7)-O-C(O)-R8であり;
2およびR3は、独立して、H、D、C1-6アルキル(例えば、メチル)、C1-6アルコキシ(例えば、メトキシ)、ハロ(例えば、F)、シアノまたはヒドロキシから選択され;
Lは、C1-6アルキレン(例えば、エチレン、プロピレンまたはブチレン)、C1-6アルコキシ(例えば、プロポキシまたはブトキシ)、C2-3アルコキシC1-3アルキレン(例えば、CH2CH2OCH2)、C1-6アルキルアミノまたはN-C1-6アルキル C1-6アルキルアミノ(例えば、プロピルアミノまたはN-メチルプロピルアミノ)、C1-6アルキルチオ(例えば、-CH2CH2CH2S-)、C1-6アルキルスルホニル(例えば、-CH2CH2CH2S(O)2-)であり、これらはいずれも1個以上のR4部分で置換されていてもよく;
各R4は、独立して、C1-6アルキル(例えば、メチル)、C1-6アルコキシ(例えば、メトキシ)、ハロ(例えば、F)、シアノまたはヒドロキシから選択され;
Zは、アリール(例えば、フェニル)およびヘテロアリール(例えば、ピリジル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル)から選択され、ここで、該アリールまたはヘテロアリールは、1個以上のR4部分で置換されていてもよく;
8は、-C(Ra)(Rb)(Rc)、-O-C(Ra)(Rb)(Rc)、または-N(Rd)(Re)であり;
a、RbおよびRcは、各々独立して、HまたはC1-24アルキルから選択され;
dおよびReは、各々独立して、HおよびC1-24アルキルから選択され;
6およびR7は、各々独立して、H、C1-6アルキル、カルボキシおよびC1-6アルコキシカルボニルから選択される]
であり;
該疼痛が、末梢神経障害(例えば、単神経障害、神経叢障害、神経根症、または多発性神経炎)によって引き起こされるか、または中枢神経障害(例えば、求心路遮断痛または交換神経維持性疼痛、例えば複合性局所疼痛症候群(CRPS))によって引き起こされる、
方法(方法1)を提供する。
【0017】
本開示は、さらなる例示的実施態様、下記のものを包含する方法1を提供する:
【0018】
1.1 R1がHである、式Iで示される化合物を含む、方法1;
【0019】
1.2 R1がC1-6アルキル、例えばメチルである、式Iで示される化合物を含む、方法1;
【0020】
1.3 R1が-C(O)-O-C(Ra)(Rb)(Rc)である、式Iで示される化合物を含む、方法1;
【0021】
1.4 RaがHであり、RbおよびRcが、各々独立して、C1-24アルキル、例えば、C1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキル、または、C11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルもしくはC16アルキルから選択される、式Iで示される化合物を含む、方法1.3;
【0022】
1.5 RaおよびRbがHであり、Rcが、C1-24アルキル、例えば、C1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキル、または、C11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルもしくはC16アルキルである、式Iで示される化合物を含む、方法1.3;
【0023】
1.6 Ra、RbおよびRcが、各々独立して、C1-24アルキル、例えば、C1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキル、または、C11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルもしくはC16アルキルから選択される、式Iで示される化合物を含む、方法1.3;
【0024】
1.7 Ra、RbおよびRcが各々Hである、式Iで示される化合物を含む、方法1.3;
【0025】
1.8 RaおよびRbがHであり、Rcが、C10-14アルキルである(例えば、Rcが、CH3(CH2)10またはCH3(CH2)14である)、式Iで示される化合物を含む、方法1.3;
【0026】
1.9 R1が、-C(O)-O-CH2-O-C(Ra)(Rb)(Rc)である、式Iで示される化合物を含む、方法1;
【0027】
1.10 RaがHであり、RbおよびRcが、各々独立して、C1-24アルキル、例えば、C1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキル、または、C11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルもしくはC16アルキルから選択される、式Iで示される化合物を含む、方法1.9;
【0028】
1.11 RaおよびRbがHであり、RcがC1-24アルキル、例えば、C1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキル、または、C11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルもしくはC16アルキルである、式Iで示される化合物を含む、方法1.9;
【0029】
1.12 Ra、RbおよびRcが、各々独立して、C1-24アルキル、例えば、C1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキル、または、C11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルもしくはC16アルキルから選択される、式Iで示される化合物を含む、方法1.9;
【0030】
1.13 Ra、RbおよびRcが各々Hである、式Iで示される化合物を含む、方法1.9;
【0031】
1.14 R1が-C(R6)(R7)-O-C(O)-R8であり、R8が-C(Ra)(Rb)(Rc)である、式Iで示される化合物を含む、方法1;
【0032】
1.15 R1が-C(R6)(R7)-O-C(O)-R8であり、R8が-O-C(Ra)(Rb)(Rc)である、式Iで示される化合物を含む、方法1;
【0033】
1.16 RaがHであり、RbおよびRcが、各々独立して、C1-24アルキル、例えば、C1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキル、または、C11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルもしくはC16アルキルから選択される、式Iで示される化合物を含む、方法1.14または1.15;
【0034】
1.17 RaおよびRbがHであり、Rcが、C1-24アルキル、例えば、C1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキル、または、C11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルもしくはC16アルキルである、式Iで示される化合物を含む、方法1.14または1.15;
【0035】
1.18 Ra、RbおよびRcが、各々独立して、C1-24アルキル、例えば、C1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキル、または、C11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルもしくはC16アルキルから選択される、式Iで示される化合物を含む、方法1.14または1.15;
【0036】
1.19 Ra、RbおよびRcが各々Hである、式Iで示される化合物を含む、方法1.14または1.15;
【0037】
1.20 R6がHであり、R7がC1-3アルキルであり(例えば、R7がメチルまたはイソプロピルであり)、R8がC10-14アルキルである(例えば、R8がCH3(CH2)10またはCH3(CH2)14である)、式Iで示される化合物を含む、方法1.14~1.19のいずれか;
【0038】
1.21 R1が-C(R6)(R7)-O-C(O)-R8であり、R8が-N(Rd)(Re)である、式Iで示される化合物を含む、方法1;
【0039】
1.22 RdがHであり、Reが、独立して、C1-24アルキル、例えば、C1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキル、または、C11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルもしくはC16アルキルから選択される、式Iで示される化合物を含む、方法1.21;
【0040】
1.23 RdおよびReが、各々独立して、C1-24アルキル、例えば、C1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキル、または、C11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルもしくはC16アルキルから選択される、式Iで示される化合物を含む、方法1.21;
【0041】
1.24 RdおよびReが各々Hである、式Iで示される化合物を含む、方法1.21;
【0042】
1.25 R6がHであり、R7がHである、式Iで示される化合物を含む、方法1.14~1.24のいずれか;
【0043】
1.26 R6がC1-6アルキルであり、R7がC1-6アルキルである、式Iで示される化合物を含む、方法1.14~1.24のいずれか;
【0044】
1.27 R6がHであり、R7がC1-6アルキルである、式Iで示される化合物を含む、方法1.14~1.24のいずれか;
【0045】
1.28 R6がHであり、R7がカルボキシである、式Iで示される化合物を含む、方法1.14~1.24のいずれか;
【0046】
1.29 R6がHであり、R7がC1-6アルコキシカルボニル、例えば、エトキシカルボニルまたはメトキシカルボニルである、式Iで示される化合物を含む、方法1.14~1.24のいずれか;
【0047】
1.30 R2およびR3がHである、式Iで示される化合物を含む、方法1または1.1~1.29のいずれか;
【0048】
1.31 R2がHであり、R3がDである、式Iで示される化合物を含む、方法1または1.1~1.29のいずれか;
【0049】
1.32 R2およびR3がDである、式Iで示される化合物を含む、方法1または1.1~1.29のいずれか;
【0050】
1.33 Lが、1個以上のR4部分で置換されていてもよい、C1-6アルキレン(例えば、エチレン、プロピレンまたはブチレン)、C1-6アルコキシ(例えば、プロポキシ)、C2-3アルコキシC1-3アルキレン(例えば、CH2CH2OCH2)、C1-6アルキルアミノ(例えば、プロピルアミノまたはN-メチルプロピルアミノ)、またはC1-6アルキルチオ(例えば、-CH2CH2CH2S-)である、式Iで示される化合物を含む、方法1または1.1~1.32のいずれか;
【0051】
1.34 Lが非置換C1-6アルキレン(例えば、エチレン、プロピレンまたはブチレン)である、式Iで示される化合物を含む、方法1.33;
【0052】
1.35 Lが、1個以上のR4部分で置換されている、C1-6アルキレン(例えば、エチレン、プロピレンまたはブチレン)である、式Iで示される化合物を含む、方法1.33;
【0053】
1.36 Lが、非置換C1-6アルコキシ(例えば、プロポキシまたはブトキシ)である、式Iで示される化合物を含む、方法1.33;
【0054】
1.37 Lが、1個以上のR4部分で置換されている、C1-6アルコキシ(例えば、プロポキシまたはブトキシ)である、式Iで示される化合物を含む、方法1.33;
【0055】
1.38 Lが非置換C2-3アルコキシC1-3アルキレン(例えば、CH2CH2OCH2)である、式Iで示される化合物を含む、方法1.33;
【0056】
1.39 Lが、1個以上のR4部分で置換されている、C2-3アルコキシC1-3アルキレン(例えば、CH2CH2OCH2)である、式Iで示される化合物を含む、方法1.33;
【0057】
1.40 R1、R2およびR3が各々Hである、式Iで示される化合物を含む、方法1または1.1~1.39のいずれか;
【0058】
1.41 Lが-(CH2)n-X-であり、ここで、nが、2、3および4から選択される整数であり、Xが、-O-、-S-、-NH-、-N(C1-6アルキル)-、およびCH2から選択される、式Iで示される化合物を含む、方法1または1.1~1.40のいずれか;
【0059】
1.42 Lが-(CH2)n-X-であり、ここで、nが、2、3および4から選択される整数であり、Xが-O-である、式Iで示される化合物を含む、方法1.41;
【0060】
1.43 Lが-(CH2)n-X-であり、ここで、nが3であり、Xが、-O-、-S-、-NH-および-N(C1-6アルキル)-(例えば、-N(CH3)-)から選択される、式Iで示される化合物を含む、方法1.41;
【0061】
1.44 Lが-(CH2)n-X-であり、ここで、nが3であり、XがCH2である、式Iで示される化合物を含む、方法1.41;
【0062】
1.45 Zが、1個以上のR4部分で置換されていてもよい、アリール(例えば、フェニル)である、式Iで示される化合物を含む、方法1または1.1~1.44のいずれか;
【0063】
1.46 Zが、1個以上のR4部分で置換されている、アリール(例えば、フェニル)である、式Iで示される化合物を含む、方法1.45;
【0064】
1.47 Zが、1個、2個、3個または4個のR4部分で置換されているフェニルである、式Iで示される化合物を含む、方法1.46;
【0065】
1.48 1個、2個、3個または4個のR4部分が、独立して、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)およびシアノから選択される、式Iで示される化合物を含む、方法1.46;
【0066】
1.49 Zが、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)およびシアノから選択される1個のR4部分で置換されているフェニルである(例えば、Zが4-フルオロフェニル、または4-クロロフェニル、または4-シアノフェニルである)、式Iで示される化合物を含む、方法1.46;
【0067】
1.50 Zが1個のフルオロで置換されているフェニル(例えば、2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニルまたは4-フルオロフェニル)である、式Iで示される化合物を含む、方法1.46;
【0068】
1.51 Zが4-フルオロフェニルである、式Iで示される化合物を含む、方法1.46;
【0069】
1.52 Zが、1個以上のR4部分で置換されていてもよい、ヘテロアリール(例えば、ピリジル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル)である、式Iで示される化合物を含む、方法Iまたは1.1~1.44のいずれか;
【0070】
1.53 該ヘテロアリールが、単環式5員または6員ヘテロアリール(例えば、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、チオフェニル、ピロリル、チオフェニル、フラニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル)である、式Iで示される化合物を含む、方法1.52;
【0071】
1.54 該ヘテロアリールが、ピリジル、ピリミジニルおよびピラジニルから選択される、式Iで示される化合物を含む、方法1.53;
【0072】
1.55 該ヘテロアリールが、二環式9員または10員ヘテロアリール(例えば、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、キナゾリニル、ベンゾジオキソリル、2-オキソ-テトラヒドロキノリニル)である、式Iで示される化合物を含む、方法1.52;
【0073】
1.56 該ヘテロアリールが、インダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、キノリニル、ベンゾジオキソリル、および2-オキソ-テトラヒドロキノリニルから選択される、式Iで示される化合物を含む、方法1.55;
【0074】
1.57 該ヘテロアリールが、インダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、およびキノリニルから選択される、式Iで示される化合物を含む、方法1.55;
【0075】
1.58 該ヘテロアリールが1個、2個、3個または4個のR4部分で置換されている、式Iで示される化合物を含む、方法1.52~1.57のいずれか;
【0076】
1.59 1個、2個、3個または4個のR4部分が、独立して、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、シアノ、ヒドロキシ、またはC1-6アルコキシ(例えば、メトキシ)から選択される、式Iで示される化合物を含む、方法1.58;
【0077】
1.60 該ヘテロアリールが、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)およびシアノから選択される1個のR4部分で置換されているものである(例えば、該ヘテロアリールが、6-フルオロ-3-インダゾリル、6-クロロ-3-インダゾリル、6-フルオロ-3-ベンゾイソオキサゾリル、または5-クロロ-3-ベンゾイソオキサゾリルである)、式Iで示される化合物を含む、方法1.58または1.59;
【0078】
1.61 化合物が、各々独立して遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化4】
からなる群から選択される、式Iで示される化合物を含む、方法1または1.1~1.60のいずれか;
【0079】
1.62 化合物が、各々独立して遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化5】
からなる群から選択される、式Iで示される化合物を含む、方法1または1.1~1.60のいずれか;
【0080】
1.63 化合物が、各々独立して遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化6】
からなる群から選択される、式Iで示される化合物を含む、方法1または1.1~1.60のいずれか;
【0081】
1.64 化合物が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化7】
である、式Iで示される化合物を含む、方法1または1.1~1.61のいずれか;
【0082】
1.65 遊離形態の式Iで示される化合物を含む、方法1または1.1~1.64のいずれか;
【0083】
1.66 塩形態、例えば薬学的に許容される塩形態の式Iで示される化合物を含む、方法1または1.1~1.64のいずれか;
【0084】
1.67 化合物が酸付加塩形態であり、例えば、該酸が塩酸、トルエンスルホン酸、グルタミン酸、酒石酸、リンゴ酸またはアスコルビン酸である、式Iで示される化合物を含む、方法1または1.1~1.64のいずれか;
【0085】
1.68 実質的に純粋なジアステレオマー形態の(すなわち、他のジアステレオマーを実質的に含まない)式Iで示される化合物を含む、方法1または1.1~1.67のいずれか;
【0086】
1.69 ジアステレオマー過剰率が70%を超え、好ましくは80%を超え、より好ましくは90%を超え、最も好ましくは95%を超える式Iで示される化合物を含む、方法1または1.1~1.67のいずれか;
【0087】
1.70 固体形態、例えば結晶形態である式Iで示される化合物を含む、方法1または1.1~1.69のいずれか;
【0088】
1.71 単離または精製された形態(例えば、少なくとも90%純粋な形態、または少なくとも95%純粋な形態または少なくとも98%純粋な形態または少なくとも99%純粋な形態)である式Iで示される化合物を含む、方法1または1.1~1.70のいずれか;
【0089】
1.72 式Iで示される化合物が、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合して式Iで示される化合物を含む医薬組成物の形態で投与される、方法1または1.1~1.71のいずれか;
【0090】
1.73 式Iで示される化合物が、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合して薬学的に許容される塩形態である、方法1.72;
【0091】
1.74 医薬組成物が、例えば本明細書に記載の医薬組成物1-Aに従って、持続放出製剤または遅延放出製剤である、方法1.72または1.73;
【0092】
1.75 医薬組成物が、例えば本明細書に記載の医薬組成物1-Bに従って、ポリマーマトリックス中にある式Iで示される化合物を含む、方法1.72、1.73または1.74;
【0093】
1.76 医薬組成物が、例えば本明細書に記載の医薬組成物1-CまたはP.1~P.7のいずれかに従って、浸透圧放出制御経口送達システムとして製剤化されている、方法1.72~1.75のいずれか;
【0094】
1.77 医薬組成物が錠剤またはカプセル剤の剤形である、方法1.72~1.76のいずれか;
【0095】
1.78 医薬組成物が、経口投与、舌下投与または頬側投与用に製剤化されている、方法1.72~1.77のいずれか;
【0096】
1.79 医薬組成物が速溶性経口錠剤(例えば、速溶性舌下錠)である、方法1.72~1.78のいずれか;
【0097】
1.80 医薬組成物が、鼻腔内投与または肺内投与用に(例えば、吸入用の、エアゾール剤、ミスト剤または散剤として)製剤化される、方法1.72~1.76のいずれか;
【0098】
1.81 医薬組成物が、注射による投与のために、例えば滅菌水溶液として、製剤化される、方法1.72~1.75のいずれか;
【0099】
1.82 医薬組成物が、静脈内注射、くも膜下腔内注射、筋肉注射、皮下注射または腹腔内注射用に製剤化されている、方法1.81。
【0100】
本明細書で使用する場合、用語「本開示化合物」とは、方法1に記載の化合物のいずれか、または方法1.1~1.71の実施態様のいずれかに記載の化合物をいう。
【0101】
いくつかの実施態様では、方法1は、持続放出製剤または遅延放出製剤(医薬組成物1-A)、例えばデポ製剤の剤形での本開示化合物の投与を含む。いくつかの実施態様では、式Iで示される化合物または方法1.1~1.71に記載の化合物は、好ましくは遊離形態または薬学的に許容される塩形態で、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合して、該化合物の持続放出または遅延放出を提供する注射用デポの剤形で、提供される。
【0102】
特定の実施態様では、医薬組成物1-Aは、結晶形態であってもよい、遊離塩基形態または薬学的に許容される塩形態の、式Iで示される化合物、またはいずれかの本開示化合物を含み、該化合物は、マイクロ粒子径またはナノ粒子径、例えば、0.5~100ミクロン、例えば、5~30ミクロン、10~20ミクロン、20~100ミクロン、20~50ミクロンまたは30~50ミクロンの従量式粒子径(例えば、直径またはDv50)を有する粒子または結晶に粉砕されているか結晶化されている。このような粒子または結晶は、適切な薬学的に許容される希釈剤または担体、例えば水と組み合わせて、注射用デポ製剤を形成することができる。例えば、デポ製剤は、4~6週間の治療に適した用量の薬物を用いて筋肉注射または皮下注射に製剤化され得る。いくつかの実施態様では、粒子または結晶は、表面積が0.1~5m2/g、例えば、0.5~3.3m2/g、または0.8~1.2m2/gである。
【0103】
別の実施態様では、本開示は、式Iで示される化合物(または本開示化合物)がポリマーマトリックス中にある医薬組成物Iである、医薬組成物I-Bを提供する。一の実施態様では、本開示の化合物は、ポリマーマトリックス内に分散または溶解されている。さらなる実施態様では、ポリマーマトリックスは、デポ製剤に用いられる標準的なポリマー、例えば、ヒドロキシ脂肪酸のポリエステルまたはその誘導体から選択されるポリマー、またはアルキルα-シアノアクリレートのポリマー、ポリアルキレンオキサレート、ポリオルトエステル、ポリカーボネート、ポリオルト-カーボネート、ポリアミノ酸、ヒアルロン酸エステル、およびこれらの混合物を含む。さらなる実施態様では、ポリマーは、ポリラクチド、ポリd,l-ラクチド、ポリグリコリド、または、乳酸単位対グリコール酸単位比50:50~90:10(例えば、50:50~75:25)のいずれかのPLGA(PLGA50:50ポリマー、PLGA85:15ポリマーおよびPLGA90:10ポリマーなど)を含むPLGAからなる群より選択される。別の実施態様では、ポリマーは、ポリ(グリコール酸)、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-乳酸、前記の共重合体、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ無水物、および天然ポリマー、例えばアルブミン、カゼイン、およびワックス、例えばグリセロールモノおよびジステアレートなどから選択される。好ましい実施態様では、ポリマーマトリックスは、ポリ(d,l-ラクチド-コ-グリコリド)を含む。
【0104】
医薬組成物I-Bは、持続放出または遅延放出に特に有用であり、ここで、本開示の化合物は、ポリマーマトリックスの分解時に放出される。これらの組成物は、最大180日間、例えば約14日間~約30日間~約180日間にわたる本開示の化合物の制御放出および/または持続放出のために(例えばデポ組成物として)製剤化され得る。例えば、ポリマーマトリックスは、約30日間、約60日間または約90日間にわたって本開示の化合物を分解および放出し得る。別の例では、ポリマーマトリックスは、約120日間または約180日間にわたって本開示の化合物を分解および放出し得る。
【0105】
さらに別の実施態様では、医薬組成物IまたはI-AまたはI-Bは、例えば滅菌水溶液として、注射による投与のために製剤化され得る。
【0106】
別の実施態様では、本開示は、米国特許出願公開第2001/0036472号および米国特許出願公開第2009/0202631号(これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に記載されている浸透圧放出制御経口送達システム(OROS)において上記式Iで示される化合物(またはいずれかの本開示化合物)を含む医薬組成物(医薬組成物I-C)を提供する。したがって、一の実施態様では、本開示は、(a)薬学的に許容される希釈剤または担体と混合していてもよい、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式Iのいずれかで示される化合物を含有するゼラチンカプセル;(b)カプセルから外側へ向かう順序で、(i)バリア層、(ii)膨張層および(iii)半透過層を含む、ゼラチンカプセル上に重ねられた多層壁;および(c)および該壁を通って形成されているかまたは形成可能なオリフィスを含む、医薬組成物またはデバイス(医薬組成物P.1)を提供する。
【0107】
別の実施態様では、本発明は、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合していてもよい、液体、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の式Iで示される化合物(またはいずれかの本開示化合物)を含有するゼラチンカプセルを含む医薬組成物であって、該ゼラチンカプセルが、ゼラチンカプセルの外表面に接触しているバリア層、バリア層に接触している膨張層、膨張層を包含する半透過層、および壁に形成されているかまたは形成可能な出口オリフィスを含む複合壁によって囲まれている、医薬組成物(医薬組成物P.2)を提供する。
【0108】
さらに別の実施態様では、本発明は、液体、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合していてもよい、液体、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の式Iで示される化合物(またはいずれかの本開示化合物)を含有するゼラチンカプセルを含む医薬組成物であって、該ゼラチンカプセルが、ゼラチンカプセルの外表面に接触しているバリア層、バリア層に接触している膨張層、膨張層を包含する半透過層、および壁に形成されているかまたは形成可能な出口オリフィスを含む複合壁によって囲まれており、該バリア層が膨張層と出口オリフィスでの環境との間にシールを形成する、医薬組成物(医薬組成物P.3)を提供する。
【0109】
さらに別の実施態様では、本発明は、液体、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合していてもよい、液体、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の式Iで示される化合物(またはいずれかの本開示化合物)を含有するゼラチンカプセルを含む医薬組成物であって、該ゼラチンカプセルが、ゼラチンカプセルの外表面に接触しているバリア層、バリア層の一部に接触している膨張層、少なくとも膨張層を包含する半透過層、およびゼラチンカプセルの外表面から使用環境まで延びている投与剤形に形成されているかまたは形成可能な出口オリフィスによって囲まれている、医薬組成物(医薬組成物P.4)を提供する。膨張層は、1つ以上の個別のセクション、例えばゼラチンカプセルの対向する側部または端部に位置する2つのセクションに形成され得る。
【0110】
特定の実施態様では、浸透圧放出制御経口送達システム(すなわち、組成物P.1~P.4)中の本開示の化合物は液体製剤中にあり、ここで、該製剤は、純粋な液体活性剤、または、溶液、懸濁液、エマルションもしくは自己乳化組成物中の液体活性剤、または同類のものであり得る。
【0111】
ゼラチンカプセル、バリア層、膨張層、半透過層;およびオリフィスの特徴を含む浸透圧放出制御経口送達システム組成物の更なる情報は、米国特許出願公開第2001/0036472号(その内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に見ることができる。
【0112】
式Iで示される化合物(またはいずれかの本開示化合物)または本開示の医薬組成物のための他の浸透圧放出制御経口送達システムは、米国特許出願公開第2009/0202631号(その内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に見ることができる。したがって、別の実施態様では、本発明は、(a)第1層および第2層を含む2つ以上の層であって、該第1層が、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合していてもよい、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の式I以降の化合物を含み、該第2層がポリマーを含む、2つ以上の層;(b)この2つ以上の層を囲む外壁;および(c)該外壁におけるオリフィスを含む、組成物またはデバイス(医薬組成物P.5)を提供する。
【0113】
医薬組成物P.5は、好ましくは、三層コアを囲む半透膜を利用し;これらの実施態様では、第1層は、第1薬物層と称され、少量の薬物(例えば、式I以降の化合物)および塩などの浸透圧調整剤を含有し、第2薬物層と称される中間層は、多量の薬物および賦形剤を含有し、塩を含有せず、プッシュ層と称される第3層は、浸透圧調整剤を含有し、薬物を含有しない(医薬組成物P.6)。少なくとも1つのオリフィスは、カプセル型錠剤の第1薬物層端部の膜を通して穿孔される。
【0114】
医薬組成物P.5またはP.6は、区画を画定する膜であって、該膜が内部保護サブコート、そこに形成されているかまたは形成可能な少なくとも1つの出口オリフィスおよび半透過性の膜の少なくとも一部を囲む膜;出口オリフィス遠く離れた区画内に位置する膨張層であって、膜の半透過性部分と流体連結している膨張層;出口オリフィスと隣接して位置する第1薬物層;および第1薬物層と膨張層との間にある区画内に位置する第2薬物層を含み得、これらの薬物層が遊離またはその薬学的に許容される塩の本開示化合物を含むものである(医薬組成物P.7)。第1薬物層および第2薬物層の相対粘度に応じて、異なる放出プロファイルが得られる。各層の最適な粘度を同定するのは必須である。本発明において、粘度は、塩、塩化ナトリウムの添加によって調節される。コアからの送達プロファイルは、各薬物層の重量、処方、厚さに依存する。
【0115】
特定の実施態様では、本発明は、第1薬物層が塩を含み、第2薬物層が塩を含まない、医薬組成物P.7を提供する。医薬組成物P.5~P.7は、所望により、膜と薬物層との間に流動促進層を含み得る。
【0116】
医薬組成物P.1~P.7は、一般的に、浸透圧放出制御経口送達システム組成物と称される。
【0117】
第1の態様のさらなる実施態様では、本開示は、下記のとおり、方法1のさらなる実施態様を提供する:
【0118】
1.83 疼痛が慢性疼痛である、方法1または方法1.1~1.82のいずれか;
【0119】
1.84 疼痛が神経障害性疼痛である、方法1または方法1.1~1.82のいずれか;
【0120】
1.85 慢疼痛が性神経障害性疼痛である、方法1.83または1.84;
【0121】
1.86 疼痛が、単神経障害(例えば、単発性単神経障害)、例えば限局性単神経障害、圧迫性単神経障害、または絞扼性単神経障害(例えば、手根管症候群)によって引き起こされる、方法1または方法1.1~1.85のいずれか;
【0122】
1.87 疼痛が、神経根症によって引き起こされ、例えば椎間板ヘルニアによって引き起こされ、または糖尿病性虚血によって引き起こされる、方法1または方法1.1~1.85のいずれか;
【0123】
1.88 疼痛が、神経叢障害(例えば、神経圧迫(例えば、神経腫、腫瘍または椎間板ヘルニアによる神経圧迫)によって引き起こされる神経叢障害)によって引き起こされる、方法1または方法1.1~1.85のいずれか;
【0124】
1.89 疼痛が、多発性単神経障害または多発性神経炎(例えば、糖尿病性多発性神経炎)によって引き起こされる、方法1または方法1.1~1.85のいずれか;
【0125】
1.90 疼痛が、中枢神経障害性疼痛症候群(例えば、求心路遮断痛または複合性局所疼痛症候群(CRPS))または線維筋痛症によって引き起こされる、方法1または方法1.1~1.85のいずれか;
【0126】
1.91 疼痛が、帯状疱疹後神経痛(PHN)または線維筋痛症によって引き起こされる、方法1または方法1.1~1.85のいずれか;
【0127】
1.92 疼痛が、薬物誘発性神経毒性(例えば、ドキソルビシン、エトポシド、ゲムシタビン、イホスファミド、インターフェロンアルファ、白金化学療法剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン)、またはビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、またはビンポセチン)、または抗レトロウイルスヌクレオシド(例えば、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン)による)によって引き起こされる、方法1または方法1.1~1.85のいずれか;
【0128】
1.93 神経障害が軸索型神経障害(すなわち、軸索障害)である、方法1.83~1.92のいずれか;
【0129】
1.94 患者が、線維筋痛症、糖尿病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染または後天性免疫不全症候群(AIDS)、または癌を有する、方法1または方法1.1~1.93のいずれか;
【0130】
1.95 患者が、抗レトロウイルスヌクレオシド、白金系抗悪性腫瘍薬またはビンカアルカロイド抗悪性腫瘍薬との併用治療を受けているか、または抗レトロウイルスヌクレオシド、白金系抗悪性腫瘍薬またはビンカアルカロイド抗悪性腫瘍薬による過去の治療歴を有している、方法1または方法1.1~1.93のいずれか;
【0131】
1.96 疼痛が、アロディニアおよび/または痛覚過敏に関連している、方法1または方法1.1~1.95のいずれか;
【0132】
1.97 患者が、不安(全般性不安、社会不安、およびパニック症が挙げられる)、うつ病(例えば、難治性うつ病およびMDD)、精神病(認知症に関連する精神病、例えば進行性パーキンソン病における幻覚、または偏執性妄想が挙げられる)、統合失調症、片頭痛、物質乱用障害、物質使用障害、オピエート使用障害、または他の薬物依存症、例えば覚醒剤依存症(stimulant dependency)および/もしくはアルコール依存症にも罹患している、方法1または方法1.1~1.96のいずれか;
【0133】
1.98 患者が、物質使用障害または物質乱用障害、例えばオピエート使用障害(OUD)と診断されている、方法1または1.1~1.97のいずれか;
【0134】
1.99 患者が、オピエートまたはオピオイド薬、例えばモルヒネ、コデイン、テバイン、オリパビン、ジプロピオン酸モルヒネ、ジニコチン酸モルヒネ、ジヒドロコデイン、ブプレノルフィン、エトルフィン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、オキシコドン、オキシモルフォン、フェンタニル、α-メチルフェンタニル、アルフェンタニル、トレファンチニル、ブリフェンタニル、レミフェンタニル、オクトフェンタニル、スフェンタニル、カルフェンタニル、メペリジン、プロジン、プロメドール、プロポキシフェン、デキストロプロポキシフェン、メサドン、ジフェノキシレート、デゾシン、ペンタゾシン、フェナゾシン、ブトルファノール、ナルブフィン、レボルファノール、レボメトルファン、トラマドール、タペンタドールおよびアニレリジン、またはそれらの組み合わせによる以前の物質使用または物質乱用の病歴を有している、方法1または方法1.1~1.98のいずれか;
【0135】
1.100 患者が、オピエート依存症、コカイン依存症、アンフェタミン依存症および/もしくはアルコール依存症と診断されるかまたは診断されているか、または薬物依存症もしくはアルコール依存症(例えば、オピエート依存症、コカイン依存症またはアンフェタミン依存症)からの離脱に罹患している、方法1または1.1~1.99のいずれか;
【0136】
1.101 患者が、以前にオピエート過剰摂取に罹患していた、方法1または1.1~1.100のいずれか;
【0137】
1.102 方法が、患者に式Iで示される化合物の有効量を投与することを含む、方法1または1.1~1.100のいずれか;
【0138】
1.103 有効量が、1mg~1000mg、例えば2.5mg~50mgであるか、または、長時間作用性製剤については、25mg~1500mg、例えば50mg~500mg、または250mg~1000mg、または250mg~750mg、または75mg~300mgである、方法1.98;
【0139】
1.104 有効量が、1日につき1mg~100mg、例えば1日につき2.5mg~60mg、または1日につき2.5mg~45mg、または1日につき5mg~25mgである、方法1.103;
【0140】
1.105 方法が、さらに、例えば同時に、別々に、または逐次的に投与される、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)の併用投与を含む、いずれかの上記方法;
【0141】
1.106 SSRIが、シタロプラム、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチンおよびセルトラリンから選択される、方法1.105;
【0142】
1.107 方法が、さらに、例えば同時に、別々に、または逐次的に投与される、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)の併用投与を含む、いずれかの上記方法;
【0143】
1.108 SNRIが、ベンラフェキシン、シブトラミン、デュロキセチン、アトモキセチン、デスベンラファキシン、ミルナシプランおよびレボミルナシプランから選択される、方法1.107;
【0144】
1.109 方法が、さらに、例えば同時に、別々に、または逐次的に投与される、抗精神病薬の併用投与を含む、いずれかの上記方法;
【0145】
1.110 抗精神病薬が、クロミプラミン、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、プロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフロペラジン、ブレクスピペラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンから選択される、方法1.109;
【0146】
1.111 方法が、さらに、例えば同時に、別々に、または逐次的に投与される、NMDA受容体アンタゴニストの併用投与を含む、いずれかの上記方法;
【0147】
1.112 NMDA受容体アンタゴニストが、ケタミン(例えば、S-ケタミンおよび/またはR-ケタミン)、ヒドロキシノルケタミン、メマンチン、デキストロメトルファン、デキストロアロルファン、デキストロルファン、アマンタジンおよびアグマチン、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法1.111;
【0148】
1.113 該方法が、さらに、例えば同時に、別々に、または逐次的に投与される、GABA活性を調節する(例えば、活性を増強し、GABA伝達を促進する)化合物の併用投与を含む、いずれかの上記方法;
【0149】
1.114 GABA調節化合物が、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、インディプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ゼレプロン、ゾルピデム、ガボキサドール、ビガバトリン、チアギャビン、EVT201(Evotec Pharmaceuticals)およびエスタゾラムの1つ以上からなる群から選択される、方法1.113;
【0150】
1.115 方法が、さらに、例えば同時に、別々に、または逐次的に投与される、5-HT2A受容体アンタゴニストの併用投与を含む、いずれかの上記方法;
【0151】
1.116 さらなる5-HT2A受容体アンタゴニストが、ピマバンセリン、ケタンセリン、リスペリドン、エプリバンセリン、ボリナンセリン(Sanofi-Aventis, France)、プルバンセリン、MDL100907(Sanofi-Aventis, France)、HY10275(Eli Lilly)、APD125(Arena Pharmaceuticals, San Diego, CA)およびAVE8488(Sanofi-Aventis, France)の1つ以上から選択される、方法1.115;
【0152】
1.117 方法が、さらに、例えば同時に、別々に、または逐次的に投与される、セロトニン受容体アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)の併用投与を含む、いずれかの上記方法;
【0153】
1.118 セロトニン受容体アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)が、1種類以上のリタンセリン、ネファゾドン、サーゾーンおよびトラゾドンからなる群から選択される、方法1.117;
【0154】
1.119 方法が、さらに、例えば同時に、別々に、または逐次的に投与される、抗うつ薬の併用投与を含む、いずれかの上記方法;
【0155】
1.120 抗うつ薬が、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、硫酸フェネルジン、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミンおよびベンラフェキシンから選択される、方法1.119;
【0156】
1.121 方法が、さらに、例えば同時に、別々に、または逐次的に投与される、オピエートアゴニストまたは部分オピエートアゴニストの併用投与を含む、いずれかの上記方法;
【0157】
1.122 オピエートアゴニストまたは部分オピエートアゴニストが、μアゴニストもしくは部分アゴニスト、またはκアゴニストもしくは部分アゴニスト、例えば混合アゴニスト/アンタゴニスト(例えば、部分μアゴニスト活性とκアンタゴニスト活性を有する薬物)である、方法1.121;
【0158】
1.123 オピエートアゴニストまたは部分オピエートアゴニストが、ブプレノルフィンであり、場合によっては該方法が、抗不安薬、例えばGABA化合物またはベンゾジアゼピンとの併用治療を含まない、方法1.122;
【0159】
1.124 方法が、さらに、例えば同時に、別々に、または逐次的に投与される、オピエート受容体アンタゴニストまたはインバースアゴニストの併用投与を含む、いずれかの上記方法;
【0160】
1.125 オピエート受容体アンタゴニストまたはインバースアゴニストが、完全オピエートアンタゴニストであり、例えばナロキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、メサドン、ナロルフィン、レバロルファン、サミドルファン、ナロデイン、シプロジムまたはノルビナルトルフィミンから選択される、方法1.124;
【0161】
1.126 患者が、以前に別の疼痛緩和薬で治療を受けており、患者が、該薬に十分に反応しなかった(例えば患者の痛みが十分に軽減されなかった)か、または患者が、継続的な治療を妨げる副作用に苦しんでいた、方法1または1.1~1.125のいずれか;
【0162】
1.127 患者が、他の疼痛緩和薬への依存症を発症したかまたは発症するリスクがあるようになった、方法1.126;
【0163】
1.128 他の疼痛緩和薬が、非オピエート鎮痛薬(例えば非ステロイド性抗炎症薬、例えばイブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、オキサプロジン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、ケトロラク、ジクロフェナク、スリンダク、エトドラク、トルメチン、ナブメトン、ピロキシカム、アセトアミノフェン、アスピリン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、フィロコキシブ)、オピエート鎮痛薬(例えば、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、オキシモルフォン、ブプレノルフィン、フェンタニル、レボルファノール、メペリジン、ナルブフィン、ペンタゾシン、トラマドール、メタドン)、および局所麻酔薬(例えば、ベンゾカイン、リドカイン、プロカイン、ブピバカイン、テトラカイン)または他の薬物(例えば、三環系抗うつ薬または抗痙攣薬、例えばアミトリプチリン、デシプラミン、デュロキセチン、プレガバリン、ガバペンチン、バルプロエート、カルバマゼピン、フェニトイン)から選択される、方法1.126または1.127。
【0164】
別の実施態様では、本開示は、本開示化合物またはそれを含む医薬組成物が、約14日、約30日~約180日、好ましくは約30日、約60日または約90日の期間にわたり、該化合物の制御放出および/または持続放出のために投与される、方法1.1~1.128のいずれかを提供する。制御放出および/または持続放出は、特にノンコンプライアンスまたはノンアドヒアランス一般的ン発生する抗精神病薬治療について、治療の早期中止を回避するために有効である。
【0165】
いくつかの実施態様では、疼痛は、帯状疱疹後神経痛によって引き起こされる。帯状疱疹後神経痛(PHN)は、水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化によって引き起こされる末梢神経の損傷に起因して発生する神経障害性疼痛である。
【0166】
いくつかの実施態様では、疼痛は、線維筋痛症によって引き起こされ、例えば、疼痛は、線維筋痛症の一症状である。線維筋痛症は、原因または由来が不確定の複合性症候群である。それは、疼痛処理の障害、特に、中枢神経系内の疼痛シグナルの処理の障害に分類される。このように、それは、中枢神経障害性疼痛症候群のようなものであり、しばしば、「中枢性感作」の一例とみなされる。線維筋痛症は、しばしばアロディニアを含む、慢性の広範囲にわたる疼痛によって特徴づけられる。米国では、プレガバリンおよびデュロキセチンのみが線維筋痛症の管理のために承認されており、既存の鎮痛薬は一般的に効果がなかった。
【0167】
オピオイド鎮痛薬またはその他の乱用リスクの高い薬物で治療される可能性のある神経障害に罹患している患者は、物質使用障害または物質乱用障害に罹患している場合、または、オピオイド嗜癖、オピオイド離脱もしくはオピオイド過剰摂取の以前の事例または物質乱用もしくはアルコール乱用の以前の事例を有している場合、そのような治療が禁忌となる。したがって、特にそのような患者では、本明細書に記載の方法など、代替の非嗜癖性治療方法が必要とされている。
【0168】
物質使用障害および物質誘発障害は、DSMの第5版(精神障害の診断と統計マニュアル、またはDSM-5)により定義される物質関連障害の2つのカテゴリーである。物質使用障害は、個人が結果として問題を経験するにもかかわらず摂取を継続する物質の使用により生じる症状のパターンである。物質誘発障害は、物質の使用により誘発される障害である。物質誘発障害としては、中毒、離脱、物質誘発精神障害、例えば物質誘発精神病、物質誘発双極性および関連障害、物質誘発うつ病性障害、物質誘発不安障害、物質誘発強迫性および関連障害、物質誘発睡眠障害、物質誘発性機能不全、物質誘発せん妄および物質誘発神経認知障害が挙げられる。
【0169】
DSM-5は、物質使用障害を軽度、中等度または重度に分類する基準を含む。本明細書に記載の方法のいくつかの実施態様では、物質使用障害は、軽度物質使用障害、中等度物質使用障害または重度物質使用障害から選択される。いくつかの実施態様では、物質使用障害は、軽度物質使用障害である。いくつかの実施態様では、物質使用障害は、中等度物質使用障害である。いくつかの実施態様では、物質使用障害は、重度物質使用障害である。
【0170】
不安およびうつ病は、物質使用または物質乱用の治療を受けている患者において極めて一般的な併存障害である。物質乱用障害の一般的治療は、部分オピオイドアゴニストであるブプレノルフィンとオピオイドアンタゴニストであるナロキソンとの組合せであるが、これらの薬物はいずれも、不安またはうつ病に対して有意な効果がなく、それ故に、ベンゾジアゼピン系抗不安薬またはSSRI抗うつ薬などの第3の薬物も処方されなければならないという共通の結果をもたらす。これは、治療レジメンおよび患者コンプライアンスをより困難にする。対照的に、本開示化合物は、セロトニン拮抗作用およびドパミン調節と共にオピエート拮抗作用を提供する。これにより、不安および/またはうつ病と併存して物質使用または乱用障害を有する患者の治療が顕著に増強され得る。
【0171】
本開示の化合物は、併存不安に罹患している患者の抗不安薬での治療の必要性を軽減する抗不安特性を有し得る。したがって、いくつかの実施態様では、本開示は、患者が不安もしくは不安の症状に罹患しているかまたは併存障害または残遺障害として不安と診断されており、該方法が、ベンゾジアゼピンおよび本明細書に記載の他のものなどの抗不安薬の更なる投与を含まない、方法1以降による方法を提供する。
【0172】
本開示化合物が1種類以上の第2の治療剤とともに投与される、方法1以降の実施態様のいずれかでは、該1種類以上の第2の治療剤は、本開示化合物を含む医薬組成物の一部分として投与され得る。別法として、該1種類以上の第2の治療剤は、本開示化合物の投与と同時に、逐次的に、または別々に投与される別々の医薬組成物(例えば、丸剤、錠剤、カプセル剤および注射剤)で投与され得る。
【0173】
第2の態様では、本開示は、方法1または方法1.1~1.128のいずれかによる使用のための医薬の製造における、本開示化合物、例えば、式Iで示される化合物、または方法1.1~1.71の実施態様のいずれかに記載の化合物のいずれかの使用を提供する。
【0174】
第3の態様では、本開示は、方法1または方法1.1~1.128のいずれかによる使用のための、本開示化合物、例えば、式Iで示される化合物、または方法1.1~1.71の実施態様のいずれかに記載の化合物のいずれかを提供する。
【0175】
理論に縛られることなく、式Aの化合物などの本開示化合物は、中等度のD2およびSERT調節(例えば、拮抗作用)も提供する強力な5-HT2A、D1およびμオピエート調節剤(例えば、アンタゴニスト)であると考えられる。さらにまた、このような化合物が「バイアス」μオピエートリガンドとして機能し得ることを予想外にも見出した。これは、該化合物がμオピエート受容体と結合すると、Gタンパク質共役シグナル伝達により部分μアゴニストとして機能し得るが、βアレスチンシグナル伝達によりμアンタゴニストとして機能し得ることを意味する。これは、Gタンパク質シグナル伝達およびβアレスチンシグナル伝達の両方を強く活性化する傾向がある従来のオピエートアゴニスト、例えばモルヒネおよびフェンタニルと対照的である。このような薬物によるβアレスチンシグナル伝達の活性化は、典型的にオピエート薬が介在する胃腸機能不全および呼吸器抑制を介在すると考えられる。したがって、結果として、本開示の化合物、例えば式Iで示される化合物は、重度の胃腸および呼吸器副作用が既存のオピエート鎮痛薬より少ない疼痛寛解をもたらすと考えられる。この効果は、バイアスμアゴニストであるオリセリジンの前臨床試験ならびに第II相および第III相臨床試験において示されている。オリセリジンは、モルヒネと比較してβアレスチンシグナル伝達が低下したGタンパク質共役シグナル伝達によりバイアスμアゴニズムをもたらすことを示しており、これは、モルヒネと比較して呼吸器副作用が低下した鎮痛を生じるその能力に関連している。さらに、これらの化合物はβアレスチン経路に拮抗するため、なおも疼痛緩和を提供しながら最も重度のオピエート副作用を阻害するので、オピエート過剰摂取の治療に有用であると考えられる。さらにまた、これらの化合物はまた、そのセロトニン作動活性に起因して睡眠維持効果も有する。慢性疼痛に罹患している多くの人々は、疼痛により睡眠が困難であるため、これらの化合物は、セロトニン作動活性とオピエート受容体活性の相乗効果によりこのような患者が一晩中眠ることを助け得る。
【0176】
したがって、本開示の化合物は、単独でまたはオピエートアンタゴニストまたはインバースアゴニスト(例えばナロキソンまたはナルトレキソン)と組み合わせて、オピエート使用障害(OUD)、オピエート過剰摂取またはオピエート離脱を有する患者において神経障害性疼痛を治療または予防するのに有用である。本開示の化合物は、強力な鎮痛を提供するが、他のオピオイド治療(例えば、オキシコドン、メタドンまたはブプレノルフィン)で見られる有害作用(例えば、GI効果および肺機能低下)および乱用の可能性を示さないと予想される。これらの化合物の独特な薬理学的プロファイルはまた、有害な薬物間相互作用(例えばアルコール)のリスクを緩和する。したがって、これらの化合物は、オピオイドまたはオピエート剤を投与できない患者における疼痛の長期的治療および維持療法に特に適している。
【0177】
本開示のいくつかの実施態様では、式Iの化合物は、化合物の範囲内に位置する1つ以上の生物学的に不安定な官能基を有していて、天然の代謝活性が不安定な官能基を除去する結果として別の式Iの化合物をもたらす。例えば、基R1がC(O)-O-C(Ra)(Rb)(Rc)、-C(O)-O-CH2-O-C(Ra)(Rb)(Rc)または-C(R6)(R7)-O-C(O)-R8である場合、生物学的条件下で、この置換は、加水分解を受けてR1がHである同化合物を生成し、したがって、元の化合物を、R1がHである化合物のプロドラッグにする。そのようなプロドラッグ化合物の中には、生物学的活性がほとんどないか、中程度しかないものもあるが、R1がHである化合物に加水分解されると、その化合物は強い生物学的活性を持つようになる。このように、選択された化合物に応じて、それを必要とする患者への本開示の化合物の投与は、即時的な生物学的および治療的効果、または即時的および遅延的な生物学的および治療的効果、または遅延的な生物学的および治療的効果のみをもたらし得る。したがって、このようなプロドラッグ化合物は、R1がHである式Iの薬理学的に活性な化合物のリザーバーとして機能する。このようにして、本開示のいくつかの化合物は、長時間作用型注射剤(LAI)または「デポ」医薬組成物としての処方に特に適している。理論に拘束されることなく、本開示の化合物を含む注入された「デポ」は、該化合物を体内組織中に徐々に放出し、その組織において該化合物は徐々に代謝されて、R1がHである式Iの化合物を生成する。そのようなデポ製剤は、本開示の化合物の溶出および放出の速度を制御するための適切な成分の選択によってさらに調整することができる。式Iの化合物に関連するそのようなプロドラッグ形態の化合物は、以前に、例えば国際公開第2019/23063において、開示されている。
【0178】
本明細書で用いられる「アルキル」は、他に明記されない限り、例えば炭素原子1~21個の長さの、飽和または不飽和炭化水素部分である;このようなアルキルは、他に明記されない限り、直鎖または分岐鎖(例えばn-ブチルまたはtert-ブチル)であり得、好ましくは直鎖である。例えば、「C1-21アルキル」は、1~21個の炭素原子を有するアルキルを意味する。一の実施態様では、アルキルは、1つ以上のヒドロキシまたはC1-22アルコキシ(例えばエトキシ)基で置換されていてもよい。別の実施態様では、アルキルは、1~21個の炭素原子を含み、好ましくは直鎖であり、所望により飽和または不飽和であり、例えば、R1が、1~21個の炭素原子、好ましくは6~15個の炭素原子、16~21個の炭素原子を含むアルキル鎖であるいくつかの実施態様では、例えばそれが結合している-C(O)-と一緒になって、例えば式Iの化合物から切断されたとき、天然または非天然の飽和または不飽和脂肪酸の残基を形成する。
【0179】
用語「薬学的に許容される希釈剤または担体」は、医薬製剤において有用であり、アレルゲン性、発熱性または病原性である物質および病気を潜在的に引き起こすかもしくは促進することが知られている物質を含まない希釈剤および担体を意味することが意図される。したがって、薬学的に許容される希釈剤または担体は、体液、例えば血液、尿、髄液、唾液など、ならびにその構成成分、例えば血液細胞および循環タンパク質を含まない。適切な薬学的に許容される希釈剤および担体は、医薬製剤に関するいくつかの周知の論文のいずれか、例えば、Goodman and Gilman, eds., The Pharmacological Basis of Therapeutics, Tenth Edition, McGraw Hill, 2001;Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th Ed., Lippincott Williams & Wilkins., 2000;およびMartindale, The Extra Pharmacopoeia, Thirty-Second Edition (The Pharmaceutical Press, London, 1999)に見ることができる(これらすべては、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)。
【0180】
化合物についての「精製された」、「精製された形態の」または「単離および精製された形態の」なる用語は、合成プロセスから(例えば反応混合物から)または天然源またはそれらの組合せから単離された後の該化合物の物理的状態をいう。したがって、化合物についての「精製された」、「精製された形態の」または「単離および精製された形態の」なる用語は、本明細書に記載のまたは当業者に周知の標準的な分析技術により特徴付けるのに十分な純度で、本明細書に記載もしくは当業者に周知の精製プロセス(例えばクロマトグラフィー、再結晶、LC-MSおよびLC-MS/MS技術など)から得られた後の該化合物の物理的状態をいう。
【0181】
他に明記されない限り、本開示の化合物は、遊離塩基形態で、または塩形態で、例えば薬学的に許容される塩形態で、例えば酸付加塩として存在し得る。十分に塩基性である本開示の化合物の酸付加塩、例えば無機酸または有機酸との、例えば塩酸またはトルエンスルホン酸との酸付加塩。さらに、十分に酸性である本開示の化合物の塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウム塩またはカリウム塩、または生理学的に許容される陽イオンを提供する有機塩基との塩である。特定の実施態様では、本開示の化合物の塩はトルエンスルホン酸付加塩である。
【0182】
本開示の化合物は、医薬品としての使用が意図され、したがって、薬学的に許容される塩が好ましい。医薬用途に適さない塩は、例えば本開示の遊離化合物の単離または精製に有用であり得、したがって、それもまた本開示の化合物の範囲に含まれる。
【0183】
本開示の化合物は、1つ以上のキラル炭素原子を含み得る。したがって、該化合物は、個々の異性体形態、例えばエナンチオマー形態またはジアステレオマー形態で、または個々の形態の混合物、例えばラセミ/ジアステレオマー混合物として存在する。不斉中心が(R)-、(S)-、または(R,S)-配置にあるあらゆる異性体が存在し得る。本発明は、両方の光学活性異性体の個々およびその混合物(例えばラセミ/ジアステレオマー混合物)を包含すると理解されるべきである。したがって、本開示の化合物は、ラセミ混合物であってもよいか、または、主に、例えば、純粋なまたは実質的に純粋な異性体形態、例えば70%超のエナンチオマー/ジアステレオマー過剰率(「ee」)、好ましくは80%超のee、より好ましくは90%超のee、最も好ましくは95%超のeeであってもよい。該異性体の精製および該異性体混合物の分離は、当該技術分野で知られている標準的な技術(例えば、カラムクロマトグラフィー、分取TLC、分取HPLC、擬似移動床および同類のもの)によって行うことができる。
【0184】
二重結合または環についての置換基の性質による幾何異性体は、シス(Z)またはトランス(E)体であり得て、両方の異性体が本発明の範囲に包含される。
【0185】
本開示の化合物は、安定または不安定な同位体を包含することも意図される。安定同位体は、同種の豊富な核種(すなわち元素)と比較して1つの追加の中性子を含有する非放射性同位体である。このような同位体を含む化合物の活性は保持され、このような化合物はまた非同位体類似体の薬物動態の測定に関して有用性を有すると考えられる。例えば、本開示の化合物の特定位置における水素原子は、重水素(非放射性の安定同位体)で置き換えられ得る。公知の安定同位体の例としては、重水素(2HまたはD)、13C、15N、18Oが挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、同種の豊富な核種(すなわち元素)と比較して複数の追加の中性子を含有する放射性同位体である不安定同位体、例えば、123I、131I、125I、11C、18Fは、I、CおよびFの対応する豊富な種に置き換わり得る。本開示の化合物の有用な同位体の別の例は、11C同位体である。これらの放射性同位体は、本開示の化合物の放射性イメージングおよび/または薬物動態試験に有用である。また、天然の同位体分布を持つ原子の、より重い同位体による置換は、代謝に関与する部位でこれらの置換が行われた場合には、薬物動態速度の望ましい変化を引き起こし得る。例えば、水素の代わりに重水素(2H)の組込みは、水素の位置が酵素または代謝活性の部位である場合には、代謝分解を遅くし得る。
【0186】
本開示の化合物は、例えば上記のポリマーマトリックス中に本開示の化合物を分散、溶解、懸濁または封入することにより、デポ製剤である医薬組成物の形態で投与することができて、化合物は、ポリマーが経時的に分解されることで継続的に放出される。ポリマーマトリックスからの本開示の化合物の放出は、例えば医薬デポ組成物から、その医薬デポが投与される対象体、例えば温血動物、例えばヒトへの、化合物の制御放出および/または遅延放出および/または持続放出を提供する。したがって、医薬デポは、本開示の化合物を対象体へ特定の疾患または病状の治療に効果的な濃度で、長期間、例えば14日間~180日間、好ましくは約30日間、約60日間または約90日間にわたって送達する。
【0187】
本開示の組成物(例えば本開示のデポ組成物)におけるポリマーマトリックスに有用なポリマーは、ヒドロキシ脂肪酸のポリエステルおよびその誘導体、または他の薬剤、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリクエン酸、ポリリンゴ酸、ポリ-β-ヒドロキシ酪酸、ε-カプロラクトン開環重合体、乳酸-グリコール酸共重合体、2-ヒドロキシ酪酸-グリコール酸共重合体、ポリ乳酸-ポリエチレングリコール共重合体またはポリグリコール酸-ポリエチレングリコー共重合体)、アルキルα-シアノアクリレート(例えばポリ(ブチル2-シアノアクリレート))、ポリアルキレンオキサレート(例えばポリトリメチレンオキサレートまたはポリテトラメチレンオキサレート)、ポリオルトエステル、ポリカーボネート(例えばポリエチレンカーボネートまたはポリエチレンプロピレンカーボネート)、ポリオルト-カーボネート、ポリアミノ酸(例えばポリ-γ-L-アラニン、ポリ-γ-ベンジル-L-グルタミン酸またはポリ-y-メチル-L-グルタミン酸)、ヒアルロン酸エステル、および同類のものなどのポリマーを含み得、これらポリマーの1つ以上を用いることができる。
【0188】
ポリマーが共重合体である場合、それは、ランダム、ブロックおよび/またはグラフト共重合体のいずれかであり得る。上記α-ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸およびヒドロキシトリカルボン酸が、その分子中に光学活性を有する場合、D-異性体、L-異性体および/またはDL-異性体のいずれか1つが用いられ得る。とりわけ、α-ヒドロキシカルボン酸ポリマー(好ましくは、乳酸-グリコール酸ポリマー)、そのエステル、ポリ-α-シアノアクリル酸エステルなどを用いることができ、乳酸-グリコール酸共重合体(ポリ(ラクチド-α-グリコリド)またはポリ(乳酸-コ-グリコール酸)とも称され、以下PLGAと称する)が好ましい。したがって、一の態様では、ポリマーマトリックスに有用なポリマーはPLGAである。本明細書で用いられる、用語PLGAは、乳酸のポリマー(ポリラクチド、ポリ(乳酸)またはPLAとも称される)を含む。最も好ましくは、該ポリマーは、生分解性ポリ(d,l-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーである。
【0189】
好ましい実施態様では、本開示のポリマーマトリックスは、生体適合性および生分解性高分子物質である。用語「生体適合性」は、毒性がなく、発癌性がなく、そして体組織において著しく炎症を誘導しない高分子物質と定義される。マトリックス物質は、生分解性であるべきであり、ここで、高分子物質は、体内プロセスによって身体で容易に排泄可能な生成物に分解されるべきであり、体内に蓄積されるべきでない。生体分解の生成物はまた、ポリマーマトリックスが身体と生体適合性であるという点で身体と生体適合性であるべきである。ポリマーマトリックス物質の特定の有用な例としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-乳酸、前記の共重合体、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ無水物、および天然ポリマー、例えばアルブミン、カゼイン、およびワックス、例えばグリセロールモノおよびジステアレートなどが挙げられる。本発明の実施に使用するのに好ましいポリマーは、dl(ポリラクチド-コ-グリコリド)である。このような共重合体におけるラクチド対グリコリドのモル比は、約75:25~50:50の範囲であることが好ましい。
【0190】
有用なPLGAポリマーの重量平均分子量は、約5,000~500,000ダルトン、好ましくは約150,000ダルトンであり得る。達成すべき分解速度に依存して、種々の分子量のポリマーを用い得る。薬物放出の拡散メカニズムについて、ポリマーは、すべての薬物がポリマーマトリックスから放出されるまで無傷のままで、その後分解すべきである。薬物はまた、ポリマー賦形剤が生体侵食する(bioerode)場合、ポリマーマトリックスから放出され得る。
【0191】
PLGAは、いずれかの慣用方法により製造されてもよいか、または商業的に入手してもよい。例えば、PLGAは、環状ラクチド、グリコリドなどから適切な触媒での開環重合により製造され得る(欧州特許第0058481号B2;Effects of polymerization variables on PLGA properties: molecular weight, composition and chain structureを参照)。
【0192】
PLGAは、生物学的条件下で(例えば、ヒトなどの温血動物の組織に見ることができる水および生物学的酵素の存在下で)加水分解可能で酵素的に切断可能なエステル結合の分解により固体ポリマー組成物全体が分解して乳酸およびグリコール酸を形成することによって生分解性であると考えられる。乳酸およびグリコール酸はどちらも、水溶性で、通常の代謝の非毒性生成物であり、これは、さらに分解されて、二酸化炭素と水を形成することができる。言い換えれば、PLGAは、水の存在下で、例えばヒトなどの温血動物の体内で、そのエステル基の加水分解によって分解されて、乳酸およびグリコール酸を生じ、酸性の微小環境を作ると考えられる。乳酸およびグリコール酸は、通常の生理学的条件下のヒトなどの温血動物の体内における様々な代謝経路の副産物であり、したがって、良好な忍容性を示し、全身毒性は最小となる。
【0193】
別の実施態様では、ポリマーマトリックスは、ポリエステルの構造が星形であるスターポリマーを含み得る。これらのポリエステルは、酸残基鎖により囲まれる中心部分として単一のポリオール残基を有する。ポリオール部分は、例えばグルコース、または、例えばマンニトールであり得る。これらのエステルは、公知であり、英国特許出願公開第2,145,422号および米国特許第5,538,739号(これら各出願の内容は、出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0194】
スターポリマーは、開始剤として、ポリヒドロキシ化合物、例えばポリオール、例えばグルコースまたはマンニトールを用いて製造され得る。ポリオールは、少なくとも3つのヒドロキシ基を含有し、最大約20,000ダルトンの分子量を有し、ポリオールのヒドロキシ基のうち少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、例えば平均3つがエステル基の形態であり、これらはポリラクチドまたはコ-ポリラクチド鎖を含有する。分岐ポリエステル、例えばポリ(d,l-ラクチド-コ-グリコリド)は、複数のポリラクチド直鎖を有する中心グルコース部分を有する。
【0195】
上記のポリマーマトリックスにおける本開示のデポ組成物(例えば医薬組成物I-AまたはI-B)は、本開示の化合物が分散または封入されているマイクロ粒子もしくはナノ粒子の形態または液体形態のポリマーを含み得る。「マイクロ粒子」は、粒子のマトリックスとして作用するポリマー内に本開示の化合物が分散または溶解されている溶液または固体形態のいずれかで本発明の化合物を含有する固形粒子を意味する。ポリマー物質の適切な選択により、得られたマイクロ粒子が拡散放出性および生分解放出性の両方を示すマイクロ粒子製剤が作られ得る。
【0196】
ポリマーがマイクロ粒子形態であるとき、マイクロ粒子は、適切な方法を用いて、例えば溶媒蒸発法または溶媒抽出法により製造され得る。例えば、溶媒蒸発法では、本開示の化合物およびポリマーを、揮発性有機溶媒(例えば、アセトンなどのケトン、クロロホルムまたは塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、ハロゲン化芳香族性炭化水素、ジオキサンなどの環状エーテル、酢酸エチルなどのエステル、アセトニトリルなどのニトリル、またはエタノールなどのアルコール)に溶解させ、適切なエマルション安定化剤(例えばポリビニルアルコール、PVA)を含有する水相に分散させ得る。その後、有機溶媒を蒸発させて、本開示の化合物が封入されているマイクロ粒子が得られる。溶媒抽出法において、本開示の化合物およびポリマーを、極性溶媒(例えばアセトニトリル、ジクロロメタン、メタノール、酢酸エチルまたはギ酸メチル)に溶解させ、その後、水相(例えば水/PVA溶液)に分散させ得る。エマルションを調製して、本開示の化合物が封入されているマイクロ粒子を提供する。スプレードライは、マイクロ粒子を製造するための別の製造技術である。
【0197】
本開示のマイクロ粒子を製造する別の方法はまた、米国特許第4,389,330号および米国特許第4,530,840号のどちらにも記載されている。
【0198】
本開示のマイクロ粒子は、注射用組成物における使用に許容されるサイズ範囲のマイクロ粒子を製造できる方法によって製造され得る。一の好ましい製造方法は、米国特許第4,389,330号に記載されているものである。この方法において、活性薬剤を適切な溶媒に溶解または分散させる。活性薬剤含有媒体に、所望の活性剤負荷を有する生成物を提供する活性成分と相対的な量のポリマーマトリックス物質を加える。所望により、マイクロ粒子生成物の成分すべてを溶媒媒体中で一緒にブレンドし得る。
【0199】
本開示の化合物および本発明の実施に使用することができるポリマーマトリックス物質の溶媒としては、有機溶媒、例えばアセトン;ハロゲン化炭化水素、例えばクロロホルム、塩化メチレンなど;芳香族炭化水素化合物;ハロゲン化芳香族炭化水素化合物;環状エーテル;アルコール、例えばベンジルアルコール;酢酸エチルなどが挙げられる。一の実施態様では、本発明の実施に使用するための溶媒は、ベンジルアルコールと酢酸エチルの混合物であり得る。本発明に有用なマイクロ粒子の製造に関するさらなる情報は、米国特許出願公開第2008/0069885号(該出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に見ることができる。
【0200】
マイクロ粒子に組み込まれる本開示の化合物の量は、通常、約1重量%~約90重量%、好ましくは30~50重量%、より好ましくは35~40重量%の範囲である。重量%は、マイクロ粒子の総重量当たりの本開示の化合物の部分を意味する。
【0201】
医薬デポ組成物は、薬学的に許容される希釈剤または担体、例えば水混和性の希釈剤または担体を含み得る。
【0202】
浸透圧放出制御経口送達システム組成物の詳細は、欧州特許出願公開第1539115号(米国特許出願公開第2009/0202631号)および国際公開第2000/35419号(米国特許出願公開第2001/0036472号)(これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に見ることができる。
【0203】
「有効量」とは、疾患または障害に罹患している対象体に投与されるとき、治療に予定している期間にわたって疾患または障害の軽減、寛解または退行を生じるのに有効な(例えば医薬組成物または投与剤形に含有されるような)本開示の化合物の量である「治療有効量」を意味する。
【0204】
本発明の実施に用いられる投与量は、例えば治療されるべき特定の疾患または状態、用いられる特定の本開示の化合物、投与様式、および所望の療法に応じて当然変化する。他に明記されない限り、(遊離塩基または塩形態として投与される)投与のための本開示の化合物の量は、遊離塩基形態の本開示の化合物の量をいうかまたはそれに基づいている(すなわち、該量の算出は遊離塩基量に基づいている)。
【0205】
本開示の化合物は、経口、非経腸(静脈内、筋肉内または皮下)または経皮を含む満足のいく経路によって投与され得る。特定の実施態様では、例えばデポ製剤中の、本開示の化合物は、好ましくは非経口で、例えば注射、例えば筋肉注射または静脈注射により、投与される。
【0206】
一般に、上記の方法1以降についての満足のいく結果は、好ましくは経口投与により、1日1回約1mg~100mg程度、好ましくは、1日1回、2.5mg~50mg、例えば2.5mg、5mg、10mg、20mg、30mg、40mgまたは50mgの投与量で経口投与することで得られることが示されている。
【0207】
デポ組成物がより長期間の作用を達成するために用いられる本明細書に記載の障害の治療のために、投与量は、短期間作用組成物と比較して高く、例えば1~100mgより高く、例えば25mg、50mg、100mg、500mg、1000mg、または1000mg超である。本開示の化合物の作用持続時間は、ポリマー組成、すなわちポリマー:薬物の比率およびマイクロ粒子径の操作により制御され得る。本開示の組成物がデポ組成物である場合、注射による投与が好ましい。
【0208】
本開示の化合物の薬学的に許容される塩は、慣用の化学方法により塩基性または酸性部分を含有する親化合物から合成され得る。一般に、このような塩は、水もしくは有機溶媒またはその2つの混合物中で、これら化合物の遊離塩基形態を化学量論量の適切な酸と反応させることにより製造することができ;一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。これら塩、例えばアモルファス形態または結晶形態のトルエンスルホン酸塩の製造についてのさらなる詳細については、米国特許出願公開第2011/112105号に見ることができる。
【0209】
本開示の化合物を含む医薬組成物は、従来の希釈剤または賦形剤(例としてゴマ油が挙げられるがこれに限定されない)およびガレヌス技術分野で公知の技術を用いて製造され得る。したがって、経口剤形としては、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤などが挙げられ得る。
【0210】
治療上の使用に言及する場合の用語「併用して(concurrently)」は、2つ以上の活性薬剤が同一もしくは異なる時に与えられるかを問わず、または同一もしくは異なる投与経路により与えられるかを問わず、疾患または障害の治療計画の一部として2つ以上の活性成分を患者に投与することを意味する。2つ以上の活性成分の併用投与は、同じ日の異なる時に、または異なる日に、または異なる頻度であり得る。
【0211】
治療上の使用に言及する場合の用語「同時に(simultaneously)」は、同一投与経路による同時またはほぼ同時の2つ以上の活性成分の投与を意味する。
【0212】
治療上の使用に言及する場合の用語「別々に(separately)」は、異なる投与経路による同時またはほぼ同時の2つ以上の活性成分の投与を意味する。
【0213】
本開示化合物の製造方法:
式Aの化合物、および、下記の合成スキームで使用される中間体の合成を含むその合成方法は、例えば、米国特許第8,309,722号、および特許出願公開第2017/319580号に開示されている。類似の縮合γ-カルボリンの合成は、例えば、米国特許第8,309,722号、米国特許第8,993,572号、米国特許出願公開第2017/0183350号、国際公開第2018/126140号および国際公開第2018/126143号(各々の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に開示されている。本開示の化合物は類似の方法を使用して製造することができる。
【0214】
1がC(O)-O-C(Ra)(Rb)(Rc)、-C(O)-O-CH2-O-C(Ra)(Rb)(Rc)または-C(R6)(R7)-O-C(O)-R8である式の化合物は、国際出願PCT/US2018/043102に記載されている手順に従って製造することができる。
【0215】
他の本開示の化合物は、当業者に知られている類似の手順によって製造することができる。
【0216】
本開示の化合物のジアステレオマーの単離または精製は、当該技術分野で知られている慣用方法、例えば、カラム精製法、分取薄層クロマトグラフィー、分取HPLC、結晶化、トリチュレーション、擬似移動床法などによって行うことができる。
【0217】
本開示の化合物の塩は、米国特許第6,548,493号;米国特許第7,238,690号;米国特許第6,552,017号;米国特許第6,713,471号;米国特許第7,183,282号;米国特許第8,648,077号;米国特許第9,199,995号;米国特許第9,586,860号;米国再発行特許発明第39680号;および米国再発行特許発明第39679号(各々の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に開示されているものと同様に製造することができる。
【0218】
製造された化合物のジアステレオマーは、例えば室温でCHIRALPAK(登録商標)AY-H、5μ、30×250mmを使用し、10%エタノール/90%ヘキサン/0.1%ジメチルエチルアミンで溶離するHPLCにより、分離することができる。ピークは、98~99.9%eeのジアステレオマーを製造するために230nmで検出することができる。
【実施例
【0219】
実施例1: (6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化8】
【0220】
(6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(100mg、0.436mmol)、1-(3-クロロプロキシ)-4-フルオロベンゼン(100μL、0.65mmol)およびヨウ化カリウム(KI)(144mg、0.87mmol)のジメチルホルムアミド(DMF)(2mL)中混合物をアルゴンで3分間脱気し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(150μL、0.87mmol)を添加する。得られた混合物を78℃に加熱し、この温度で2時間撹拌する。該混合物を室温に冷却し、次いで、濾過する。濾過ケーキを、溶離液としてメタノール/メタノール中7N NH3(1:0.1 v/v)混合物中0~100%酢酸エチル勾配液を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して部分精製生成物を得、さらに、16分間にわたって0.1%ギ酸含有水中0~60%アセトニトリル勾配液を使用して半分取HPLCシステムで精製して、固体として標記生成物を得る(50mg、収率30%)。MS (ESI) m/z 406.2 [M+1] +1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.3 (s, 1H), 7.2 - 7.1 (m, 2H), 7.0 - 6.9 (m, 2H), 6.8 (dd, J = 1.03, 7.25 Hz, 1H), 6.6 (t, J = 7.55 Hz, 1H), 6.6 (dd, J = 1.07, 7.79 Hz, 1H), 4.0 (t, J = 6.35 Hz, 2H), 3.8 (d, J = 14.74 Hz, 1H), 3.3 - 3.2 (m, 3H), 2.9 (dd, J = 6.35, 11.13 Hz, 1H), 2.7 - 2.6 (m, 1H), 2.5 - 2.3 (m, 2H), 2.1 (t, J = 11.66 Hz, 1H), 2.0 (d, J = 14.50 Hz, 1H), 1.9 - 1.8 (m, 3H), 1.7 (t, J = 11.04 Hz, 1H)。
【0221】
実施例2: (6bR,10aS)-8-(3-(6-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化9】
【0222】
工程1: BCl3・MeS(10.8g、60mmol)の0~5℃のトルエン中撹拌溶液に3-フルオロアニリン(5.6mL、58mmol)を添加し、次いで、4-クロロブチロニトリル(7.12g、68.73mmol)および塩化アルミニウム(AlCl3)(8.0g、60.01mmol)を添加する。該混合物を130℃で一夜撹拌し、50℃に冷却する。塩酸(3N、30mL)を注意深く添加し、得られた溶液を90℃で一夜撹拌する。得られた茶色の溶液を室温に冷却し、蒸発乾固する。残留物をジクロロメタン(DCM)(20mL)に溶解し、飽和Na2CO3でpH=7~8に塩基性する。有機相を分取し、Na2CO3で乾燥させ、次いで、濃縮する。残留物を、溶離液としてヘキサン中0~20%酢酸エチル勾配液を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、黄色固体として2'-アミノ-4-クロロ-4'-フルオロブチロフェノンを得る(3.5g、収率28%)。MS (ESI) m/z 216.1 [M+1] +
【0223】
工程2: 2'-アミノ-4-クロロ-4'-フルオロブチロフェノン(680mg、3.2mmol)の0~5℃の濃HCl(14mL)中懸濁液に水(3mL)中のNaNO2(248mg、3.5mmol)を添加する。得られた茶色の溶液を0~5℃で1時間撹拌し、次いで、濃HCl(3mL)中のSnCl2・2H2O(1.74g、7.7mmol)を添加する。該混合物を0~5℃でさらに1時間撹拌し、次いで、ジクロロメタン(30mL)を添加する。反応混合物を濾過し、濾液をK2CO3で乾燥し、蒸発乾固する。残留物を、溶離液としてヘキサン中0~35%酢酸エチル勾配液を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、白色固体として3-(3-クロロプロピル)-6-フルオロ-1H-インダゾールを得る(400mg、収率60%)。MS (ESI) m/z 213.1 [M+1] +
【0224】
工程3: (6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(100mg、0.436mmol)、3-(3-クロロプロピル)-6-フルオロ-1H-インダゾール(124mg、0.65mmol)およびKI(144mg、0.87mmol)の混合物をアルゴンで3分間脱気し、DIPEA(150μL、0.87mmol)を添加する。得られた混合物を78℃で2時間撹拌し、次いで、室温に冷却する。生じた沈殿物を濾過する。濾過ケーキを、16分間にわたって0.1%ギ酸含有水中0~60%アセトニトリル勾配液を使用して半分取HPLCシステムで精製して、オフホワイト色固体として(6bR,10aS)-8-(3-(6-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンを得る(50mg、収率28%)。MS (ESI) m/z 406.2 [M+1]+1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 12.7 (s, 1H), 10.3 (s, 1H), 7.8 (dd, J = 5.24, 8.76 Hz, 1H), 7.2 (dd, J = 2.19, 9.75 Hz, 1H), 6.9 (ddd, J = 2.22, 8.69, 9.41 Hz, 1H), 6.8 - 6.7 (m, 1H), 6.6 (t, J = 7.53 Hz, 1H), 6.6 (dd, J = 1.07, 7.83 Hz, 1H), 3.8 (d, J = 14.51 Hz, 1H), 3.3 - 3.2 (m, 1H), 3.2 (s, 2H), 2.9 (dt, J = 6.35, 14.79 Hz, 3H), 2.7 - 2.6 (m, 1H), 2.4 - 2.2 (m, 2H), 2.1 (t, J = 11.42 Hz, 1H), 2.0 - 1.8 (m, 3H), 1.8 - 1.7 (m, 1H), 1.7 (t, J = 10.89 Hz, 1H)。
【0225】
実施例3: (6bR,10aS)-8-(3-(6-フルオロベンゾ[d]イソオキサゾール-3-イル)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化10】
【0226】
(6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(148mg、0.65mmol)、3-(3-クロロプロピル)-6-フルオロベンゾ[d]イソオキサゾール(276mg、1.3mmol)およびKI(210mg、1.3mmol)の混合物をアルゴンで脱気し、次いで、DIPEA(220μL、1.3mmol)を添加する。得られた混合物を78℃で2時間撹拌し、次いで、室温に冷却する。該混合物を真空濃縮する。残留物をジクロロメタン(50mL)に懸濁し、次いで、水(20mL)で洗浄する。有機相をK2CO3で乾燥し、濾過し、次いで、真空濃縮する。粗生成物を、1%7N NH3含有酢酸エチル中0~10%メタノール勾配液を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、固体として標記生成物を得る(80mg、収率30%)。MS (ESI) m/z 407.2 [M+1]+1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.3 (s, 1H), 8.0 - 7.9 (m, 1H), 7.7 (dd, J = 2.15, 9.19 Hz, 1H), 7.3 (td, J = 2.20, 9.09 Hz, 1H), 6.8 (d, J = 7.22 Hz, 1H), 6.6 (t, J = 7.54 Hz, 1H), 6.6 (d, J = 7.75 Hz, 1H), 3.8 (d, J = 14.53 Hz, 1H), 3.3 (s, 1H), 3.2 (s, 1H), 3.2 - 3.1 (m, 1H), 3.0 (t, J = 7.45 Hz, 2H), 2.9 - 2.8 (m, 1H), 2.7 - 2.5 (m, 1H), 2.4 - 2.2 (m, 2H), 2.2 - 2.0 (m, 1H), 2.0 - 1.8 (m, 3H), 1.8 - 1.6 (m, 2H)。
【0227】
実施例4: 4-(3-((6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,7,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(9H)-イル)プロポキシ)ベンゾニトリルの合成
【化11】
【0228】
工程1: (4aS,9bR)-6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボン酸エチル(21.5g、66.2mmol)、クロロアセトアミド(9.3g、100mmol)およびKI(17.7g、107mmol)のジオキサン(60mL)中脱気懸濁液を104℃で48時間撹拌する。溶媒を除去し、残留物をジクロロメタン(200mL)に懸濁し、水(100mL)で抽出する。分取したジクロロメタン相を炭酸カリウム(K2CO3)で1時間乾燥させ、次いで、濾過する。濾液を蒸発させて、茶色の油として粗生成物を得る。該茶色の油に酢酸エチル(100mL)を添加し、該混合物を2分間超音波処理する。該混合物から黄色固体が徐々に沈殿し、室温でさらに2時間放置した後ゲルに戻る。さらなる酢酸エチル(10mL)を添加し、得られた固体を濾過する。濾過ケーキを酢酸エチル(2mL)ですすぎ、高真空下でさらに乾燥させて、オフホワイト色固体として(4aS,9bR)-5-(2-アミノ-2-オキソエチル)-6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボン酸エチルを得る(19g、収率75%)。この生成物をさらなる精製を行わずに直接次工程で使用する。MS (ESI) m/z 382.0 [M+H]+
【0229】
工程2: (4aS,9bR)-5-(2-アミノ-2-オキソエチル)-6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボン酸エチル(12.9g、33.7mmol)、KI(10.6g、63.8mmol)、CuI(1.34g、6.74mmol)のジオキサン(50mL)中混合物をアルゴンで5分間通気する。この混合物にN,N,N,N'-テトラメチルエチレンジアミン(3mL)を添加し、得られた懸濁液を100℃で48時間撹拌する。反応混合物を室温に冷却し、シリカゲルパッド上に注いで濾過する。濾過ケーキを酢酸エチル(1L×2)ですすぐ。合わせた濾液を濃縮乾固して、白色固体として生成物(6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボン酸エチルエステルを得る(8g、収率79%)。MS (ESI) m/z 302.1 [M+H] +。
【0230】
工程3: (6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボン酸エチルエステル(6.4g、21.2mmol)を室温でHBr/酢酸溶液(64mL、33%w/w)に懸濁する。該混合物を50℃で16時間加熱する。冷却および酢酸エチル(300mL)による処理の後、該混合物を濾過する。濾過ケーキを酢酸エチル(300mL)で洗浄し、次いで、真空乾燥する。次いで、得られたHBr塩をメタノール(200mL)に懸濁し、イソプロパノール中にてドライアイスで冷却する。激しく撹拌しながら、該懸濁液にアンモニア溶液(10mL、メタノール中7N)をゆっくりと添加して、混合物のpH を10に調整する。得られた混合物を、さらなる精製を行わずに真空乾燥して、粗(6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン(8.0g)を得、直接次工程で使用する。MS (ESI) m/z 230.2 [M+H]+
【0231】
工程4: (6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(100mg、0.436mmol)、4-(3-ブロモプロポキシ)ベンゾニトリル(99mg、0.40mmol)およびKI(97mg、0.44mmol)のDMF(2mL)中混合物をアルゴンで3分間通気し、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(80μL、0.44mmol)を添加する。得られた混合物を76℃に加熱し、この温度で2時間撹拌する。溶媒を除去し、残留物を、酢酸エチル中0~100%混合溶媒[酢酸エチル/メタノール/7N NH3(10:1:0.1 v/v)]勾配液を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、白色泡沫体として標記生成物を得る(35mg、収率45%)。MS (ESI) m/z 389.1 [M+1] +1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.3 (s, 1H), 7.8 (d, J = 8.80 Hz, 2H), 7.1 (d, J = 8.79 Hz, 2H), 6.8 (d, J = 7.39 Hz, 1H), 6.6 (t, J = 7.55 Hz, 1H), 6.6 (d, J = 6.78 Hz, 1H), 4.1 (t, J = 6.36 Hz, 2H), 3.8 (d, J = 14.53 Hz, 1H), 3.3 - 3.2 (m, 3H), 3.0 - 2.8 (m, 1H), 2.7 - 2.6 (m, 1H), 2.5 - 2.3 (m, 2H), 2.2 - 2.0 (m, 1H), 2.0 - 1.8 (m, 3H), 1.8 - 1.7 (m, 1H), 1.7 (t, J = 11.00 Hz, 1H)。
【0232】
実施例5: (6bR,10aS)-8-(3-(4-クロロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化12】
【0233】
(6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ-[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(110mg、0.48mmol)、1-(3-ブロモプロポキシ)-4-クロロベンゼン(122mg、0.49mmol)およびKI(120mg、0.72mmol)のDMF(2.5mL)中脱気混合物にDIPEA(100μL、0.57mmol)を添加する。得られた混合物を76℃に加熱し、この温度で2時間撹拌する。溶媒を除去し、残留物を、酢酸エチル中0~100%混合溶媒[酢酸エチル/メタノール/7N NH3(10:1:0.1 v/v)]勾配液を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製する。白色固体として標記生成物を得る(41mg、収率43%)。(ESI) m/z 398.1 [M+1]+1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.3 (s, 1H), 7.4 - 7.2 (m, 2H), 6.9 (d, J = 8.90 Hz, 2H), 6.8 - 6.7 (m, 1H), 6.6 (t, J = 7.53 Hz, 1H), 6.6 (dd, J = 1.04, 7.80 Hz, 1H), 4.0 (t, J = 6.37 Hz, 2H), 3.8 (d, J = 14.53 Hz, 1H), 3.3 - 3.2 (m, 3H), 2.9 - 2.8 (m, 1H), 2.7 - 2.6 (m, 1H), 2.4 (ddt, J = 6.30, 12.61, 19.24 Hz, 2H), 2.1 - 2.0 (m, 1H), 2.0 - 1.9 (m, 1H), 1.9 - 1.7 (m, 3H), 1.7 (t, J = 10.98 Hz, 1H)。
【0234】
実施例6: (6bR,10aS)-8-(3-(キノリン-8-イルオキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化13】
【0235】
(6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(120mg、0.52mmol)、8-(3-クロロプロポキシ)キノリン(110mg、0.50mmol)およびKI(120mg、0.72mmol)のDMF(2.5mL)中混合物をアルゴンで3分間通気し、DIPEA(100μL、0.57mmol)を添加する。得られた混合物を76℃に加熱し、この温度で2時間撹拌する。溶媒を除去し、残留物をジクロロメタン(30mL)に懸濁し、水(10mL)で洗浄する。ジクロロメタン相をK2CO3で乾燥する。分取した有機相を蒸発乾固する。残留物を、酢酸エチル中0~100%混合溶媒[酢酸エチル/メタノール/7N NH3(10:1:0.1 v/v)]勾配液を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、淡褐色(light brown)固体として標記生成物を得る(56mg、収率55%)。(ESI) m/z 415.2[M+1]+1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.1 (s, 1H), 8.9 (dd, J = 1.68, 4.25 Hz, 1H), 8.3 (dd, J = 1.71, 8.33 Hz, 1H), 7.7 - 7.5 (m, 3H), 7.3 (dd, J = 1.50, 7.44 Hz, 1H), 7.0 - 6.8 (m, 1H), 6.8 - 6.5 (m, 2H), 4.4 (t, J = 5.85 Hz, 2H), 3.9 (d, J = 14.55 Hz, 1H), 3.8 - 3.6 (m, 2H), 3.5 (s, 1H), 3.4 (d, J = 14.47 Hz, 1H), 2.9 (b, 1H), 2.3 (d, J = 23.61 Hz, 5H), 1.3 (d, J = 7.00 Hz, 3H)。
【0236】
実施例7: 受容体結合プロファイル
実施例1の化合物(式Aの化合物)および実施例2~6の化合物について受容体結合を決定する。下記の文献(各文献は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)の手順を使用する:5-HT2A:Bryant, H.U. et al. (1996), Life Sci., 15:1259-1268;D2:Hall, D.A. and Strange, P.G. (1997), Brit. J. Pharmacol., 121:731-736;D1:Zhou, Q.Y. et al. (1990), Nature, 347:76-80;SERT:ParkPark, Y.M. et al. (1999), Anal. Biochem., 269:94-104;μオピエート受容体:Wang, J.B. et al. (1994), FEBS Lett., 338:217-222。
【0237】
一般に、結果は、試験化合物の存在下で得られた、対照特異的結合のパーセント:
【数1】
として、また、対照特異的結合の阻害パーセント:
【数2】
として表される。
【0238】
IC50値(対照特異的結合の最大半量阻害を生じる濃度)およびヒル係数(nH)は、ヒル式カーブフィッティング:
【数3】
[式中、Y=特異的結合、A=曲線の左漸近線、D=曲線の右漸近線、C=化合物濃度、C50=IC50、およびnH=傾斜因子]
を用いて平均反復値を用いて作成した競合曲線の非線形回帰分析によって決定される。この分析は、自社ソフトウェアを用いて行われ、市販のソフトウェアSigmaPlot(登録商標)4.0 for Windows(登録商標)(SPSS Inc.による著作権1997)によって作成されたデータとの比較によって正当性が認められる。阻害定数(Ki)は、チェンプルソフ式:
【数4】
[式中、L=アッセイにおける放射性リガンドの濃度、およびKD=受容体に対する放射性リガンドの親和性]
を用いて算出された。KDを決定するためにスキャッチャードプロットが用いられる。
【0239】
以下の受容体親和性の結果が得られる:
【表1】
【0240】
実施例1~6に記載の手順と類似の手順によって式Iのさらなる化合物を製造する。これらの化合物の受容体親和性結果を下記の表に示す:
【表2】
【0241】
実施例8: マウスのDOI誘発性頭部攣縮モデル
R-(-)-2,5-ジメトキシ-4-ヨードアンフェタミン(DOI)は、セロトニン5-HT2受容体ファミリーのアゴニストである。それは、マウスに投与されると、高頻度の頭部攣縮と関連する行動プロファイルを生じる。所定の期間中のこれら頭部攣縮の頻度は、脳内の5-HT2受容体アゴニズムの推定値として取ることができる。逆に、この行動アッセイは、アンタゴニストを用いるかまたは用いずにDOIを投与し、アンタゴニストの投与後のDOI誘発性頭部攣縮の減少を記録することによって、脳内の5-HT2受容体拮抗作用を決定するために使用することができる。
【0242】
若干の改変を伴ってDarmani et al., Pharmacol Biochem Behav. (1990) 36:901-906(この内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)の方法が使用される。(±)-DOI HClを皮下注射し、該マウスをすぐに慣用のプラスチックケージに収容する。DOI投与の1分後から始めて6分間、頭部攣縮の回数をカウントする。DOI注射の0.5時間前に被験化合物を経口投与する。結果は、DOI誘発性頭部攣縮を減少させるためのEC50として算出される。結果は下記の表に示される:
【表3】
【0243】
結果は、実施例1の化合物がDOI頭部攣縮を強くブロックし、実施例7に示されるインビトロ5-HT2A結果と一致することを示している。
【0244】
実施例9: マウステールフリック(tail flick)アッセイ
マウステールフリックアッセイは、拘束されたマウスの疼痛反射閾値によって示される鎮痛作用の測定である。雄性CD-1マウスを、高強度赤外熱源の収束ビーム下にその尾がくるように配置し、尾が加熱される。動物は不快になるといつでも熱源から尾を引き抜くことができる。加熱装置をつけた時と熱源の経路の外側にマウスの尾をフリックした時との間の時間量(潜時(latency))を記録する。モルヒネの投与により、鎮痛作用がもたらされ、これにより、熱に対するマウスの反応の遅延が生じる(潜時の増大)。モルヒネ(MOR)アンタゴニスト、すなわち、ナロキソン(NAL)の前投与により、この効果は逆転し、正常な潜時となる。この試験は、μオピエート受容体のアンタゴニズムを計測するための機能アッセイとして使用される。
【0245】
実施例9a: 実施例1の化合物によるモルヒネ誘発性鎮痛作用のアンタゴニズム
5つの処置グループの各々に10匹の雄性CD-1マウス(約8週齢)が割り当てられる。グループは以下のとおり処置される:グループ(1)[陰性対照]:テールフリック試験の60分前に0.25%メチルセルロースビヒクルが経口投与され、テールフリック試験の30分前にセイラインビヒクルが投与される;グループ(2)[陽性対照]:該試験の60分前に0.25%メチルセルロースビヒクルが経口投与され、該試験の30分前にセイライン中モルヒネ5mg/kgが投与される;グループ(3)[陽性対照]:該試験の50分前にセイライン中ナロキソン3mg/kgが投与され、該試験の30分前にセイライン中モルヒネ5mg/kgが投与される;グループ(4)~(6):該試験の60分前に0.25%メチルセルロースビヒクル中被験化合物0.1mg/kg、0.3mg/kgまたは1mg/kgが経口投与され、該試験の30分前にモルヒネ5mg/kgが投与される。結果は、秒で測定した平均潜時として下記の表に示される:
【0246】
【表4】
【0247】
結果は、実施例1の化合物がモルヒネ誘発性μオピエート受容体活性の用量依存的遮断を発揮することを示している。
【0248】
実施例9b: ナロキソンによって阻害される、実施例1の化合物による鎮痛作用
上記のマウステールフリックアッセイを用いる第2の研究において、さらに、3mg/kg(腹腔内)のナロキソンによる前投与を行った場合および行わなかった場合で、実施例1の化合物を1.0mg/kg、3.0mg/kgおよび10mg/kgの投与量で、5mg/kgのモルヒネと比較する。前処置グループでは、テールフリック試験の20分前にナロキソンを投与する。非前処置対照では、テールフリック試験の20分前にセイラインを投与する。各グループにおいて、テールフリック試験の30分前に、ビヒクル、モルヒネまたは実施例1の化合物を投与する。結果を平均潜時(秒)として下記の表に示す:
【0249】
【表5】
【0250】
全ての投与量での実施例1の化合物の投与がテールフリックまでの潜時を有意に増加させること、およびこの効果がナロキソンによる前処置により弱まることが分かる。この結果は、実施例1の化合物によって生じる用量依存的鎮痛効果を示しており、さらに、この効果がμ-オピオイド受容体アゴニズムによって媒介されることを示唆している。
【0251】
実施例9c: 鎮痛作用の経時変化、実施例1の化合物
上記のテールフリックアッセイを繰返して、実施例1の化合物の投与により得られる鎮痛作用の経時変化を決定する。マウスに、(1)アッセイの30分前にビヒクルを、(2)アッセイの30分前に5mg/kgのモルヒネを、または(3)~(7)アッセイの30分前、2時間前、4時間前、8時間前または24時間前に1mg/kgの実施例3の化合物を、皮下投与する。結果を平均潜時(秒)として下記の表に示す:
【0252】
【表6】
【0253】
結果は、実施例1の化合物がテールフリックアッセイの30分前または2時間前に投与された場合に有効な鎮痛作用をもたらすことを示している(ANOVA、対ビヒクルP<0.001)。テールフリックアッセイの4時間前、8時間前または24時間前に投与した場合、1mg/kgの実施例1の化合物は、ビヒクル対照と有意に異なる鎮痛効果をもたらさない。したがって、実施例1の化合物は長期の鎮痛作用をもたらさず、これは、実施例1の化合物が、他のオピエート鎮痛薬と比較して、乱用の可能性が低く、かつ、薬物間相互作用のリスクが低いことを意味する。
【0254】
実施例9d: 実施例1の化合物の慢性投与による鎮痛作用
動物が14日間慢性処置レジメンを受け、次いで、テールフリックアッセイの30分前に急性処置を受ける試験モデルを用いて、上記のテールフリックアッセイを繰り返す。マウスを、それぞれマウス10匹を有する6つのサブグループをもつ3つの大きなグループに分ける。この3つのグループに、慢性処置として、(A)ビヒクル、(B)0.3mg/kgの実施例1の化合物、または(C)3.0mg/kgの実施例2の化合物のいずれかを投与する。さらに、各サブグループに、急性処置として、(1)ビヒクル、または(2)~(6)0.01、0.03、0.1、0.3または1.0mg/kgの実施例1の化合物のいずれかを投与する。全ての処置は皮下投与される。結果を、テールフリックに対する平均潜時(秒)として下記の表に示す:
【0255】
【表7】
【0256】
実施例1の化合物による0.1、0.3および1.0mg/kg急性処置が、ビヒクルによるグループ内急性処置と比較して統計的に有意な用量依存性鎮痛効果をもたらすことが分かる。これは、慢性グループ(A)、(B)および(C)の各々にあてはまる。ビヒクルによる前処置と比較して、0.3mg/kgまたは3.0mg/kgの実施例1の化合物による前処置は、同一急性処置サブグループを比較した場合、一般的にテールフリック潜時の統計的に有意な減少を示した。これらの結果は、14日間の慢性処置の後に実施例1の化合物の鎮痛効果に対するある程度の耐性が生じるが、得られた鎮痛作用は慢性前処置にもかかわらず有効なままであることを示している。
【0257】
実施例10: CNSリンタンパク質プロファイル
実施例1の化合物の中枢神経系(CNS)プロファイルを試験するために、包括的な分子リン酸化研究も行われる。マウスの側坐核において、選択された重要な中枢神経系タンパク質についてのタンパク質リン酸化の程度が測定される。被験タンパク質としてはERK1、ERK2、Glu1、NR2BおよびTH(チロシンヒドロキシラーゼ)が挙げられ、実施例1の化合物を抗精神病薬であるリスペリドンおよびハロペリドールと比較した。
【0258】
3mg/kgの実施例1の化合物、または2mg/kgのハロペリドールでマウスを処置した。マウスを、注射後30分~2時間で、収束したマイクロ波全脳照射によって屠殺し、死亡時に脳のリンタンパク質は存在しているのでそれを貯蔵する。次いで、各マウスの脳から側坐核を解体し、スライスし、液体窒素で凍結させた。Zhu H, et al., Brain Res. 2010 Jun 25; 1342:11-23に記載されるように、SDS-PAGE電気泳動に次いでリンタンパク質特異的イムノブロット法によるリンタンパク質分析のために、さらに試料を調製した。各部位でのリン酸化を定量化し、該タンパク質(非リン酸化)の全レベルに正規化し、ビヒクル処置した対照マウスにおけるリン酸のレベルのパーセントとして表した。
【0259】
結果は、THリン酸化において400%を超える増加を生じるハロペリドールおよび500%を超える増加を生じるリスペリドンとは対照的に、実施例1の化合物が、30分目および60分目に、Ser40でのチロシンヒドロキシラーゼリン酸化に対して有意な効果を有しないことを示している。これは、本発明の化合物がドパミン代謝を妨害しないことを示している。
【0260】
結果は、さらに、実施例1の化合物が、30~60分目にTyr1472でのNR2Bリン酸化に対して有意な効果を有しないことを示している。該化合物は、Ser845でGluR1リン酸化のわずかな増加を生じ、Thr183およびTyr185でERK2リン酸化のわずかな減少を生じる。特定のタンパク質の様々な部位でのタンパク質リン酸化は、タンパク質輸送、イオンチャネル活性、シナプスシグナル伝達の強度および遺伝子発現の変化などの細胞の様々な活動に関連していることが知られている。NMDAグルタミン酸受容体におけるTyr1472のリン酸化は、神経障害性疼痛の維持に不可欠であることが示されている。GluR1 AMPA型グルタミン酸受容体のSer845のリン酸化は、シナプス伝達の強化と受容体のシナプス局在の強化のいくつかの側面に関連しており、認知能力に関連する長期増強をサポートする。この残基のリン酸化により、チャネルが開く確率が高くなることも報告されている。MAPキナーゼカスケードのメンバーであるERK2キナーゼの残基T183およびY185でのリン酸化は、このキナーゼの完全な活性化に必要であり、ERK2は、細胞の増殖、生存、および転写の調節を含む細胞生理学の多くの側面に関与する。このキナーゼは、シナプス形成と認知機能において重要であると報告されている。
【0261】
実施例11: μオピエート受容体活性アッセイ
HTRFベースのcAMPアッセイキット(CisbioからのcAMP Dynamic2 Assay Kit、#62AM4PEB)を使用して、hOP3(ヒトμ-オピエート受容体μ1サブタイプ)を発現するCHO-K1細胞において実施例1の化合物を試験する。凍結細胞を37℃の水浴で解凍し、10%FBSを含有するHam F-12培地10mLに再懸濁する。遠心分離により細胞を回収し、アッセイバッファー(5nM KCl、1.25mM MgSO4、124mM NaCl、25mM HEPES、13.3mM グルコース、1.25mM KH2PO4、1.45mM CaCl2、0.5g/L プロテアーゼ不含BSA、1mM IBMX添加)に再懸濁する。μ-オピエート受容体部分アゴニストであるブプレノルフィン、およびμ-オピエート受容体アンタゴニストであるナロキソン、および合成オピオイドペプチド完全アゴニストであるDAMGOを対照として使用する。
【0262】
アゴニストアッセイのために、384ウェル白色プレートのウェル中にて、細胞懸濁液12μL(2500細胞/ウェル)をフォルスコリン6μL(最終アッセイ濃度10μM)と混合し、漸増濃度の試験化合物6μLを合わせ、該プレートを室温で30分間インキュベートする。溶解バッファーを添加し、さらに1時間インキュベートした後、キットの説明書に従ってcAMP濃度を測定する。全てのアッセイポイントは、3回測定される。XLfitソフトウエア(IDBS)を用いてカーブフィッティングを行い、4パラメータロジスティックスフィットを用いてEC50値を決定する。アゴニストアッセイは、フォルスコリン刺激cAMP蓄積を阻害する試験化合物の能力を測定する。
【0263】
アンタゴニストアッセイのために、細胞懸濁液12μL(2500細胞/ウェル)を漸増濃度の試験化合物6μLと混合し、384ウェル白色プレートのウェル中にて合わせ、該プレートを室温で10分間インキュベートする。DAMGO(D-Ala-N-MePhe-Gly-オール-エンケフェリン、最終アッセイ濃度10nM)とフォルスコリン(最終アッセイ濃度10μM)との混合物6μLを添加し、該プレートを室温で30分間インキュベートする。溶解バッファーを添加し、さらに1時間インキュベートした後、キットの説明書に従ってcAMP濃度を測定する。全てのアッセイポイントは、3回測定される。XLfitソフトウエア(IDBS)を用いてカーブフィッティングを行い、4パラメータロジスティックスフィットを用いてIC50値を測定する。改変Cheng-Prusoff式を用いて見かけの解離定数(KB)を算出する。アンタゴニストアッセイは、DAMGOによって引き起こされるフォルスコリン誘発cAMP蓄積の阻害を逆転させる試験化合物の能力を測定する。
【0264】
結果を下記の表に示す。結果は、実施例1の化合物が、ナロキソンと比較して非常に高いIC50を示す、μ受容体の弱いアンタゴニストであること、および、それが中程度に高い親和性であるが、DAMGOに比べて(DAMGOに比べて約79%のブプレノルフィンの活性と比較して)約22%のアゴニスト活性しか示さない、部分アゴニストであることを示している。実施例1の化合物はまた、中程度に強い部分アゴニスト活性を有することも示されている。
【0265】
【表8】
【0266】
ブプレノルフィンは、慢性疼痛処置およびオピエート離脱に使用される薬物であるが、その高い部分アゴニスト活性のために、使用者は中毒になり得るという問題を抱えている。これを相殺するために、ブプレノルフィンとナロキソンの市販の組合せが使用される(Suboxoneとして販売されている)。理論に拘束されるものではないが、ブプレノルフィンよりも弱い部分μアゴニストであり、ある程度の中程度のアンタゴニスト活性を有する本発明の化合物により、患者を、より低い中毒リスクをもって、疼痛および/またはオピエート離脱に対してより効果的に処置できると考えられる。
【0267】
組換えヒトMOP-βアレスチンシグナル伝達経路を使用する追加の関連研究では、実施例1の化合物が、10μMまでの濃度ではMOP受容体を介するβアレスチンシグナル伝達を刺激しないが、IC50が0.189μMであるアンタゴニストであることが見出されている。対照的に、完全オピオイドアゴニストであるMet-エンケファリンは、0.08μMのEC50でβアレスチンシグナル伝達を刺激する。
【0268】
実施例12: ラット耐性/依存性研究
実施例1の化合物を、雄性スプラーグドーリーラットへの反復(28日)毎日皮下投与中に評価して、投薬に対する薬物効果をモニターし、薬理学的耐性が生じるかどうかを判定する。さらに、化合物が離脱への身体的依存症を誘発するかどうかを判断するために、反復投与の突然の中止の後にラットの行動的、身体的および生理学的兆候をモニターする。また、耐性および依存性研究で使用される特定の用量での化合物の血漿薬物曝露レベルを決定するために、耐性および依存性研究と並行して薬理学的研究を行う。該モデルの有効性を確保するための陽性対照として、また、類似の薬理学的クラスからの参考対照薬として、モルヒネを使用する。
【0269】
実施例1の化合物を、1日4回皮下投与される2つの用量、0.3および3mg/kgで評価する。反復投与により、0.3mg/kgの投与では15~38ng/mL(平均、n=3)、また、3mg/kgの投与では70~90ng/mL(平均、n=3)のピーク血漿濃度が得られることが分かる。投与後30分~1.5時間でピーク濃度に達し、同等の結果が投与1日目、14日目および28日目に得られる。
【0270】
実施例1の化合物の両方の用量で、投与期間または離脱期のいずれかの間、動物の体重、食物および水の摂取、または体温に有意な影響がないことが分かる。0.3mg/kgでの反復投与により引き起こされる主な行動的および身体的影響は、投与期の間、猫背の姿勢(hunched posture)、ストラウブ挙尾(Straub tail)および立毛(piloerection)であることが分かる。高用量では、観察される主な行動的および身体的兆候は、猫背の姿勢、不活発な行動(subdued behavior)、ストラウブ挙尾、テールラトル(tail rattle)および立毛である。
【0271】
研究の28日目に化合物を突然に休止した後に行動的および身体的兆候の同様のプロファイルが観察される。0.3mg/kgでの投与期間中に立ち上がり(rearing)および身体の緊張の高まり(increased body tone)は観察されないが、離脱期の間は有意に増大することが分かる。高用量では、投与期間中に軽度の立ち上がりが観察されるが、離脱期の間は、立ち上がりがより顕著になり、身体の緊張の高まりが観察される。
【0272】
陽性対照として、モルヒネ30mg/kgを1日2回経口投与する。この投薬レジメンは、予想とおり、体重、食物および水の摂取、直腸温、ならびに耐性および離脱誘発性依存症の発症と一致する臨床的兆候の変化に関連していることが観察される。体重は、2日目および3日目に、ビヒクル処置対照グループと比較して有意に増加したが、5日目に有意に減少した。モルヒネは1~9日目に食物摂取を有意に減少させた。その後、食物摂取は、一般的に、対照グループよりも少ないことが観察されるが、9、13、14、16、18、21、22および25日目には対照と有意な差はなかった。体重および食物摂取に対するこれらの影響は、モルヒネの影響に対する耐性を示している。
【0273】
モルヒネ処置グループの水摂取もまた、投与期間の間、28日間のうち25日間で対照グループよりも有意に少ないことが分かる。体温もまた、一般的に、投与期間の間、対照グループよりも有意に低く、20日目、21日目および27日目に顕著である。投与期間中にモルヒネにより誘発される主な行動的影響が、ストラウブ挙尾、ジャンピング、ディギング(digging)、身体の緊張の高まり、自発運動活性の増大、爆発的動作(explosive movement)および眼球突出(exopthalmus)であることが観察される。
【0274】
さらにまた、28日目のモルヒネ投与の離脱は、食物摂取の初期のさらなる減少、その後の反跳性過食をもたらし、33日目に対照グループと比較して食物摂取が有意に増加することが観察される。食物摂取は35日目までに対照レベルに戻る。同様に、以前にモルヒネを投与されていたラットもまた、29日目に水摂取の初期の減少、その後の反跳性多渇症(rebound hyperdipsia)(水消費量は31日目までに対照レベルに戻る)が観察される。さらに、投与中に直腸体温の統計学的に有意な低下が観察されるが、離脱期の間、体温は対照レベルに戻る。
【0275】
さらにまた、モルヒネからの離脱期の間、新しい行動的および身体的兆候が観察され、これは、依存性の存在を示している。これらの兆候として、立毛、運動失調/千鳥足(rolling gait)、激しい震え(wet dog shakes)および腹部の縮こまり(pinched abdomen)が挙げられる。投与期間中に観察される他の異常な行動は、離脱期に徐々に消失する。35日目までに、立ち上がりが、以前にモルヒネを投与されたラットにおいて高い発生率で観察された唯一の行動または身体的兆候となった。
【0276】
したがって、モルヒネの反復投与は、体重、食物および水の摂取、直腸温、ならびに耐性および離脱誘発性依存症の発症と一致する臨床的兆候の変化とともに、この研究において耐性および依存症の明確な兆候を引き起こすことが示される。これは、投与中および投与休止中の生理学的変化の検出における該研究方法の妥当性を示している。
【0277】
対照的に、0.3および3mg/kgのどちらでも、実施例1の化合物の4回の反復投与は、28日間の皮下投与の間、耐性を引き起こさない。さらに、離脱時に、高用量では、行動的および身体的兆候の同様であるが減少するプロファイルが観察されるが、これは臨床的意義をもつとは考えられない。したがって、全体として、実施例1の化合物は、投与中止しても身体的依存症症候群を引き起こさないことが判明した。
【0278】
実施例13: マウスにおけるオキシコドン依存性離脱研究
オキシコドンを、雄性C57BL/6Jマウスに、1~2日目、3~4日目、5~6日目、および7~8日目にそれぞれ9、17.8、23.7、および33mg/kg b.i.d.(注射の間隔は7時間)の漸増用量レジメンで8日間投与する。9日目の朝に、マウスに0.3、1または3mg/kgのいずれかの実施例1の化合物を皮下投与する。30分後に、ビヒクルの注射または3mg/kgのナロキソンの注射を行う。別のコホートのマウスは陰性対照として機能し、これらのマウスには、オキシコドンの代わりに、1~8日目にセイラインを投与する。9日目に、これらのマウスにビヒクル(上記のように、ナロキソンが続く)または3mg/kg(s.c.)の実施例1の化合物(上記のように、ナロキソンが続く)のいずれかを投与する。
【0279】
9日目に、ナロキソン(またはビヒクル)の注射直後に、マウスを個別に透明なプラスチックケージに収容し、30分間連続して観察する。マウスを、ジャンピング、激しい震え、足振戦(paw tremor)、後退り(backing)、眼瞼下垂および下痢を包含するオピエート離脱の一般的な身体的兆候についてモニターする。そのような行動はすべて、少なくとも1秒間隔があいた場合または正常な行動によって中断された場合には新しい発生として記録される。ナロキソン(またはビヒクル)注射の直前および30分後の動物の体重もまた記録する。ANOVA、適切な場合には、次いで、多重比較のためのTukey検定によりデータを解析する。有意なレベルはp<0.05で確立される。
【0280】
結果を下記の表に示す:
【表9】
【0281】
兆候の総数には、足振戦、ジャンプ、および激しい震えが含まれる。オキシコドン処置マウスにおいて、ナロキソンがかなりの総数の兆候、足振戦、ジャンプおよび体重変化(それぞれについてp≦0.0001)を誘発することが分かる。実施例1の化合物は、試験した全ての用量で、兆候の総数および足振戦の有意な減少をもたらす。さらに、該化合物は、3.0mg/kgでは、ジャンプの有意な減少および体重減少の減衰(attenuated body weight loss)ももたらす。
【0282】
これらの結果は、実施例1の化合物が、オピエート依存性ラットにおいてオピエート投与の突然の休止後のオピエート離脱の兆候および症状を用量依存的に減少させることを示している。
【0283】
実施例14: ホルマリン足試験(Formalin Paw Test)(炎症性疼痛モデル)
ホルマリンなどの化学刺激の足底下投与は、マウスに即時の痛みと不快感を引き起こし、次いで、炎症を引き起こす。2.5%ホルマリン溶液(37wt%ホルムアルデヒド水溶液、セイラインで希釈した)を後足に皮下注射することにより、二相性反応:急性疼痛反応および遅延炎症反応が生じる。したがって、この動物モデルは、同一の動物において急性疼痛および亜急性/強直性疼痛のどちらに関する情報も提供する。
【0284】
C57マウスを観察チャンバー内で慣らす。ホルマリン投与の30分前に、ビヒクルを皮下注射により、5mg/kgのモルヒネ(セイライン中)を皮下注射により、または0.3、1.0もしくは3.0mg/kgの実施例1の化合物(45%w/vシクロデキストリン水溶液中)を皮下注射により、マウスに投与する。さらに、別のセットのマウスを対照ビヒクルまたは3.0mg/kgの実施例1の化合物で、皮下注射ではなく経口投与により処置する。
【0285】
次いで、マウスの左後ろ足の足底表面に2.5%ホルマリン溶液20μLを皮下注射する。次の40分間にわたって、処置した後足のリッキング(licking)またはバイティング(biting)に費やされた合計時間を記録する。最初の10分間は急性侵害受容反応を表し、後の30分間は遅延炎症反応を表す。1ミンター(minter)間隔で、0~4のスケールでスコア付けされる「平均行動評価(Mean Behavioral Rating)」を使用して各動物の行動を評価する:
0: 反応なし、動物は眠っている
1: 動物は処置した足で、例えばつま先で、軽快に歩いている
2: 動物は処置した足を上げている
3: 動物は処置した足を震わせている
4: 動物は処置した足をリッキングまたはバイティングしている
ANOVA、適切な場合には、次いで、Fisher検定を用いるポストホック比較によりデータを解析する。有意性はp<0.05で確立される。
【0286】
結果を下記の表に示す。
【表10】
【0287】
結果は、初期段階(0~10分)および後期段階(11~40分)のどちらの反応期間中でも有意な処置効果を示している。ポストホック比較は、ビヒクル処置と比較して、モルヒネまたは実施例1の化合物(3mg/kg)の皮下注射が、ホルマリン注射によって引き起こされる疼痛行動評価を有意に減衰させ、リッキング時間を有意に減少させることを示す。ポストホック比較はまた、モルヒネまたは実施例1の化合物(3mg/kg)の皮下注射、および実施例1の化合物(3mg/kg)の経口投与により、リッキングに費やされた時間を有意に減少させることも示す。1.0mg/kgの化合物の皮下使用、および3.0mg/kgの経口使用で平均疼痛行動評価も低下したが、これらの効果はこの研究では統計学的に有意ではなかった。1.0mg/kgの実施例1の化合物の皮下使用でリッキング時間も同様に減少したが、結果は、この研究では統計学的に有意ではなかった。体重の有意な変化を受けた研究のマウスはどの研究グループにもいなかったことが分かった。
【0288】
実施例15: ヘロイン維持ラットにおける自己投与
ヘロイン中毒ラットが実施例1の化合物を自己投与するかどうかを決定するために研究が行われ、それらがそうしないことが分かり、さらに、本開示の化合物の非中毒性の性質が強調される。
【0289】
研究は3段階で行われる。第1段階では、ラットは、まず食物のレバーを押すように訓練され、次に、静脈内頚静脈カテーテルが留置され、ヘロインを自己投与するように訓練される。合図(ケージ内のライトの点灯)に応答して、動物がレバーを3回押すことにより、カテーテルを介してヘロインが1回注射される。ヘロインは、初期用量0.05mg/kg/注射で提供され、その後、0.015mg/kg/注射に増加する。次いで、ヘロインの供給をセイラインに置き換えることにより、この訓練された反応を消失させる。第2段階では、セイライン溶液を、0.0003mg/kg/注射、0.001mg/kg/注射、0.003mg/kg/注射および0.010mg/kg/注射の4つのうちの1つの用量での実施例1の化合物の溶液に置き換える。個々のマウスに、1種類または2種類の用量の化合物を上昇する方法で投与する。次いで、この反応をセイライン注射で消失させ、その後、0.015mg/kg/注射でのヘロインの使用を繰り返す第3段階を行う。第3段階の目的は、研究の終わりに依然としてラットがヘロインへの嗜癖行動を示すことを実証することである。研究結果を下記の表に示す:
【0290】
【表11】
【0291】
結果は、ヘロインを投与している場合にラットがレバーを押す回数が統計学的に有意に増加するが、セイラインまたは実施例1の化合物を投与している場合には有意な差はなかったことを示している。したがって、結果は、ラットが実施例1の化合物の中毒にならないことを示唆している。
【0292】
この研究では、実施例1の化合物を自己投与することに興味を示さなかったラットが、ヘロインを入手可能にした場合にヘロインを自己投与することを示すために、「復活」という用語を使用していることに留意すべきである。このように、ここでいう「復活」とは、動物がヘロインを静脈内に自己投与する能力または訓練を保持していることを意味する。しかしながら、この研究結果は、このような状況下のラットは実施例1の化合物を自己投与することを選択しないことを示しており、ラットに心理的報酬を与えていない(すなわち、心理的嗜癖性がない)ことを示している。
【0293】
実施例16: 神経障害性疼痛のラットモデル
実施例1の化合物は、神経障害性疼痛のSTZ-ラットモデルでも試験される。簡単に言えば、成体雌性ラットを、特に膵臓のインスリン産生β細胞に毒性のあるアルキル化新生物剤であるストレプトゾトシン(STZ)で処理することにより糖尿病にする。結果として生じるラットのI型糖尿病は、3~6週間にわたって糖尿病性神経障害を発症させる。これは、軽いタッチに対するアロディニア、圧迫、冷熱および化学的刺激に対する痛覚過敏などの痛みを伴う神経障害の様々な指標を用いて証明することができる。糖尿病性神経障害が誘発されたら、ラットを治療して、化合物の鎮痛効果を調べることができる。
【0294】
足触覚応答閾値は、軽いタッチに対するアロディニアの臨床評価である。これは、手動フォンフレイフィラメント(manual von Frey filaments)(Otto et al., Pain, 101:187-92 (2003)に記載されているように)を用いて測定することができる。対数的に硬さを増していく一連のフォンフレイフィラメントを使用し、各フィラメントに対するラットの反応を観察する。その結果を用いて、50%引っ込め閾値(withdrawal threshold)(ラットの足の引っ込めの確率が50%になるようなフィラメントの剛性の量)を算出する。
【0295】
足機械的応答閾値はまた、軽いタッチに対するアロディニアの臨床的評価でもあるが、足に加えられた圧力(力)に対する観察された応答に依存している。
【0296】
足寒冷反応閾値は、寒冷疼痛知覚の臨床的評価である。熱電冷却システムを備えた硬質フィラメントを用いて、後足の足底面を5秒間刺激する。刺激は2~5分間隔で10回繰り返す。足の引っ込め応答の回数を記録し、反応頻度の数値(%)に換算する。この手順を様々な温度で繰り返す。糖尿病のラットでは、ある閾値温度未満で、寒さに対する増強された(痛覚過敏)反応が観察されることが分かる。20℃または15℃の刺激温度で、STZ処理ラットと対照ラットの間で、応答頻度は実質的に同じであることが分かる(約10~20%の応答)。対照的に、10℃以下の刺激温度では、頻度応答の実質的な発散がある。対照ラットでは、10℃の刺激温度は、約10%の応答頻度をもたらすのに対し、5℃では、これは約40%の応答頻度に増加する。対照的に、STZ処理ラットは、10℃で約60%、5℃で約80%の応答頻度を示す。これは、STZ処理ラットは10℃以下の温度で寒冷痛覚過敏に罹患していることを示している。安定した寒冷アロディニア反応は、糖尿病の誘発から4~12週間後に観察される。
【0297】
実施例16a: 実施例1の化合物は寒冷アロディニア反応を抑制する
実施例1の化合物(「化合物」)またはビヒクルの注射(皮下注射)から6時間にわたって、6つのグループのラットを比較する:(1)ビヒクルを注射した対照ラット、(2)化合物10mg/kgを注射した対照ラット、(3)ビヒクルを注射したSTZ糖尿病ラット、(4)化合物1mg/kgを注射したSTZ糖尿病ラット、(5)化合物3mg/kgを注射したSTZ糖尿病ラット、および(6)化合物10mg/kgを注射したSTZ糖尿病ラット。上記のように、10℃の刺激温度を用いて、0時間目、1時間目、2時間目、4時間目および6時間目に、寒冷アロディニア反応試験を行う。注射ビヒクルは、純粋なポリエチレングリコール-400(PEG400)である。
【0298】
結果は、対照グループラット(1)および(2)が、全ての時点で10~30%の応答頻度を示す(正常な寒冷応答)。グループ(3)の陽性ビヒクル対照ラットは、全ての時点で70~90%の応答頻度を示し、寒冷アロディニアを示した。グループ(4)~(6)の比較は、寒冷アロディニアの用量依存的な減少を示している。1mg/kg(グループ(4))では、化合物は1時間目には応答頻度をほぼ正常まで減少させ(~35%の応答)、これは4時間目には約70%にまで、6時間目には約75%にまで減衰する。3mg/kg(グループ(5))では、化合物は、1時間目には応答頻度を正常レベルに減少させ(約10%の応答)、4時間目には約65%、6時間目には約75%にまで減衰する。10mg/kg(グループ(6))では、化合物は、1時間目には応答頻度を正常範囲に減少させ(約15%)、2時間目および4時間目には正常範囲にとどまり(2時間目に約10%、4時間目に約20%)、6時間目には約40%までしか上昇していない。
【0299】
また、ラットを3mg/kgの用量でロータロッド(rotorod)運動協調モデルでも試験し、本化合物に起因する運動協調不能は見出されない。これはさらに、寒冷アロディニアの観察結果が、寒冷刺激に対する運動反応の遅延によるものではなく、疼痛抑制によるものであることを裏付けている。興味深いことに、本化合物の皮下注射の作用期間の時間枠は、マウステールフリックアッセイ(実施例9c)で得られた結果と一致している。
【0300】
実施例16b: 実施例1の化合物は、触覚刺激に対する痛覚過敏を抑制する
実施例16aに記載された観察結果と同様に、STZ処理糖尿病ラットは、糖尿病の誘発から4~12週間後に試験した場合、フォンフレイフィラメントの手動適用後に測定した場合、安定した触覚痛覚過敏を示す。
【0301】
ラットを実施例16aに記載したように6つのグループに分け、実施例1の化合物またはビヒクルの投与後6時間モニターする。この試験は、上記のフォンフレイフィラメントを用いて行う。
【0302】
結果は、グループ(1)およびグループ(2)の両方の対照動物は、正常範囲内である8~14グラムの50%引っ込め閾値を示している。対照的に、陽性ビヒクル対照グループ(3)の動物は、2~3グラムのはるかに低い50%引っ込め閾値を示している。グループ(4)~(6)の比較は、触覚刺激に対する50%引っ込め閾値の用量依存的な増加を示している。実施例16aの結果と一致して、1mg/kgの用量では、本化合物は閾値の中等度の増加をもたらす(4時間目に約4gのピーク閾値、6時間目に約3gまで低下)。3mg/kgの用量では、引っ込め閾値の増加は著しく大きく、1時間目には約6gに上昇し、2時間目には約8gでピークに達し、その後4時間目に約3gに低下する。10mg/kgの用量では、引っ込め閾値の増加ははるかに大きく、対照動物で観察された範囲に達する。本化合物10mg/kgにより、1時間目には約9gの閾値となり、2時間目には約10gでピークに達し、その後4時間目には約7g、6時間目には約3gにまで低下する。
【0303】
実施例16c: 実施例1の化合物は、機械的(圧力)刺激に応答して痛覚過敏を抑制する
ラットを実施例16aに記載したように6つのグループに分け、実施例1の化合物またはビヒクルの投与後6時間モニターする。この試験は、上述したように、足の移動のための静的印加力閾値(圧力)を測定することによって行われる。
【0304】
結果は、グループ(1)およびグループ(2)の両方の対照動物が、正常な範囲内である55~70グラムの引っ込め力閾値を示すことを示している。対照的に、陽性ビヒクル対照グループ(3)の動物は、20~30グラムのはるかに低い引っ込め力閾値を示している。グループ(4)~(6)の比較は、機械的刺激に対する引っ込め力閾値の用量依存的な増加を示している。実施例16aおよび16bの結果と一致して、1mg/kgの用量で、本化合物は、閾値の中等度増加をもたらす(4時間目に約40gのピーク閾値、6時間目に約35gに低下)。3mg/kgの用量では、引っ込め閾値の増加はより大きく、2時間目には約45gでピークに達したが、その後6時間目には約25gまで低下している。しかしながら、10mg/kgの用量では、引っ込め閾値の増加はより大きく、より持続的であり、対照動物で観察された範囲に達する。本化合物10mg/kgにより、1時間目には約60gの閾値となり、2時間目~4時間目には45~50gに低下し、その後6時間目には約35gに低下する。
【0305】
実施例17: 動物の薬物動態データ
標準的な手順を使用して、数匹の動物において実施例1の化合物の薬物動態プロファイルを研究する。
【0306】
実施例17a: ラットPK研究
第1の研究では、ラットに実施例1の化合物を、45%Trapposolビヒクル中1mg/kgで静脈内ボーラス(IV)投与するかまたは0.5%CMCビヒクル中10mg/kgで経口(PO)投与する(各グループ、N=3)。第2の研究では、ラットに実施例1の化合物を、それぞれ45%Trapposolビヒクル中、10mg/kgでPO投与するかまたは3mg/kgで皮下(SC)投与する(各グループについて、N=6)。投与後0~48時間の時点で薬物の血漿濃度を測定する。代表的な結果を下記の表に示す(*は、血漿濃度が測定可能な定量レベルを下回ることを示す):
【0307】
【表12】
【0308】
実施例17b: マウスPK研究
実施例1の化合物の10mg/kgPO投与を使用して、マウスにおける同様の研究を行い、以下の結果が得られる:Tmax=0.25時間;Cmax=279ng/mL;AUC(0~4h)=759ng・hr/mL;血液-血漿比(0.25~4h)は3.7~6.6にわたる。該研究は0.1mg/kgSCの用量でも行われる。代表的な結果を下記の表に示す:
【0309】
【表13】
【0310】
これらの結果は、総合して、実施例1の化合物が十分に吸収され、脳および組織に分布し、適度に長い半減期で保持されて、治療用量の1日1回投与を可能にすることを示している。
【0311】
実施例18: 神経障害性疼痛のズッカー脂肪性糖尿病(Zucker Fatty Diabetic)ラットモデル
インスリン抵抗性糖尿病は、ズッカー脂肪性糖尿病(ZFD)ラットにおいて自発的に生じる。これらのラットは、安定した高血糖と、数週間にわたって発症する痛みを伴う神経障害を示す。痛みを伴う神経障害は、足の触覚応答および圧力応答、熱(寒冷)閾値のアッセイを含むさまざまな試験を用いてラットで測定することができる。これらの試験は、開発中の治療法の潜在的な鎮痛効果を測定するために使用することができる。
【0312】
これらの実験では、ZFD糖尿病ラットの疼痛閾値に対する実施例1の化合物の効果を評価する。実施例1の化合物は、透明な溶液を形成するために1%Tween-80を添加した水中10%Trappsol(β-シクロデキストリン)で皮下(s.c.)または髄腔内(i.t.)投与用に製剤化される。
【0313】
これらの実験では、痩せた対照ラット10匹およびZFDラット30匹を含む、試験開始時の体重が225~275gの成体雄性スプラーグドーリーラット40匹を使用する。動物は、毎日12時間の明暗サイクルで蛍光灯による照明の下、65~85°Fの制御された室温および30~70%の相対湿度でビバリウム(vivarium)内に維持される。すべての動物は、ケージごとに2匹ずつ維持され、乾燥した餌と水を自由に摂取できる。
【0314】
雄性ZFDラットにインスリン抵抗性糖尿病を発症させる。低血糖が、4日後に尾部穿刺により得られた血液サンプルでストリップ操作の反射率計を用いて確認され、死亡時にも確認される。試験期間中、すべての動物を毎日観察する。試験終了時に体重および血漿グルコース濃度を測定する。
【0315】
足触覚応答閾値: この試験は、フォンフレイフィラメントを用いて検出されるような軽いタッチに対するアロディニアの臨床評価を再現しており、ZFD糖尿病ラットにおける糖尿病出現から2~4週間以内に発症するアロディニアの検出のための標準アッセイとして機能する。現在の方法は、Calcutt, NC, Modeling Diabetic Sensory Neuropathy in Rats, METHODS IN MOLECULAR MEDICINE 99: 55-65 (2004)に詳細に記載されている。
【0316】
足圧力応答閾値: この試験は、手動フォンフレイフィラメントよりも大きな力を足底後足に加えるものであり、起立および歩行時に糖尿病被験者によって説明されるような圧力誘発性疼痛と同等であり得る。この測定に対する痛覚過敏は、ZFDラットにおいて数週間かけて発現するため、この試験は、手動フォンフレイフィラメントで測定されたアロディニアとは異なる痛覚過敏および薬効の評価を与えることができる。この方法は、Lee-Kubil, Mixcoati-Zecuatl, Jolivalt, & Calcutt, Animal Models of Diabetes-Induced Neuropathic Pain, CURRENT TOPICS IN BEHAVIORAL NEUROSCIENCES 20: 147-170 (2014)に詳細に記載されている。
【0317】
足寒冷応答閾値: この試験は、寒冷痛覚閾値の臨床試験を再現したものである。ラットを、金網底の試験用ケージに移し、馴化させる。ペルチェ式熱電冷却システムに取り付けた硬質フィラメントを用いて、後足の足底表面を5秒間刺激する。刺激を2~5分間隔で10回繰り返し、足引っ込め反応の回数を記録し、応答頻度(%)に換算する。このパラダイムを様々な刺激温度で繰り返す。ZFD糖尿病ラットは、10℃以下の温度で寒冷痛覚過敏を起こすが、これよりも高い温度では正常な応答頻度であることから、これが加えられた圧力自体に対する過剰な反応を表していないことが確認される(下記の表18-1を参照)。
【0318】
足ホルマリン試験: この試験は、一次求心性入力(第1段階)と、脊髄の感作および一次求心性入力の増幅(第2段階)とに由来する疼痛を識別することができる。しかしながら、この試験に相当する臨床試験はない。ここで使用した方法は、前出のCalcutt (2004)に詳述されている。
【0319】
投与手順。 ズッカー脂肪性糖尿病ラットは、6~8週間にわたって高血糖を発症することが分かっている。高血糖の確認後、ベースライン測定で安定したアロディニア/痛覚過敏の発現が示されるまで(糖尿病3~6週目)、ラットを毎週検査する。痛みを伴う神経障害の存在が確認されると、ラットは、痛覚過敏の3つの尺度を試験する:寒冷アロディニア閾値、触覚痛覚過敏(フォンフレイフィラメント)、および機械式フォンフレイデバイスによって測定された圧力応答。すべてのラットは3つのアッセイすべてで試験され、すべてのラットは、水中10%Trappsolのビヒクルで皮下(s.c.)に投与される4つの前処理のそれぞれを受ける。すべてのラットは、次のとおり、同じ順序で処理を受ける:ビヒクル、実施例1の化合物1mg/kg、実施例1の化合物3mg/kg、および実施例1の化合物10mg/kg。ラットは試験開始の30分前に前処理を受ける。痛覚過敏/アロディニアの測定値は、ベースライン(0時間)、次いで処理から1時間後、2時間後、3時間後、4時間後および6時間後に各ラットから記録される。
【0320】
各アッセイ(寒冷応答、触覚応答および圧力応答)についてのすべての用量/条件ですべてのラットの試験の完了後、ラットに、ビヒクルまたは実施例1の化合物(1μg、3μgまたは10μg)を直接脊髄に髄腔内(i.t.)適用のためのカニューレを装着する。次いで、すべてのラットを、4つの前処理条件/用量のそれぞれでツリーアッセイ(the tree assays)のそれぞれで再試験する。
【0321】
統計分析。 s.c.投与を用いた寒冷アロディニア試験のデータは、各用量についてグループおよびベースラインによって実施された経時的な反復測定値についてMANOVAを用いて解析される。MANOVAはまた、ZFDラット+実施例1の化合物のグループ(0用量レベルではビヒクルなし)についての用量およびベースラインによって実施される。各時点でのZFDグループについての二元t検定、および各時点でのベースラインからの変化についてのZFDグループの二元t検定が行われる。手動フォンフレイ試験のデータは、応答者についてカイ二乗解析を用いて解析される。電気的フォンフレイ試験のデータについては、すべてのグループで一元配置ANOVAを行い、その後、各用量およびZFD+実施例1の化合物のグループ(0用量レベルについてはビヒクルなし)について、グループおよびベースラインによるMANOVA(反復測定~時間)分析を行う。各時点でのZFDグループの応答、およびZFDグループについて、各時点でのベースラインからの変化について、二元t検定を行った。
【0322】
寒冷アロディニア。 ZFDラットは、冷たい(10℃)プローブの足提示に対して強固な応答頻度を示す。10%Trappsolビヒクル(水中)中での実施例1の化合物のラットへのs.c.投与は、用量依存的に応答頻度(%)を減少させる(表18-1)[「対照」はスプラーグドーリー痩せ型対照ラットをいい、「ZFD」はズッカー脂肪性糖尿病ラットをいう]。実施例1の化合物3mg/kgおよび10mg/kgの用量は、処理後の応答頻度を有意に減少させる。これらのラットの実施例1の化合物によるi.t.処理はまた、1μgおよび3μgの用量で応答頻度(%)を有意に減少させる;1μgではビヒクルとの差は有意であるが、3μgでは1時間目、2時間目および4時間目の時点でビヒクルとの差は有意である(表18-2)。
【0323】
【表14】
【0324】
手動フォンフレイ(触覚)ZFDラットは、足引っ込め閾値の減少によって測定される、手動フォンフレイフィラメントの足提示の強い反応を示す。10%Trappsolビヒクル(水中)中での実施例1の化合物のラットへのs.c.投与は、用量依存的に足引っ込め閾値を減少させる(表18-3)。実施例1の化合物3mg/kgの用量は、処理後1時間目および2時間目に明らかな足引っ込め閾値の有意な正常化をもたらし;10mg/kgの用量は、1時間目、2時間目および4時間目の時点でビヒクルとの有意な差を誘発する。これらのラットの実施例1の化合物によるi.t.処理はまた、1μgの用量レベルで閾値を有意に正常化する(表18-4)。
【0325】
【表15】
【0326】
足圧力応答。 ZFDラットは、機械的フォンフライフィラメントの足提示に対して強い応答頻度を示す。10%Trappsolビヒクル(水中)中にてラットにs.c.投与された実施例1の化合物は、用量依存的に応答頻度(%)を減少させる(表18-5)。実施例1の化合物3mg/kg用量は、処理後1時間目および2時間目で応答頻度を有意に減少させ;10mg/kgは、1時間目、2時間目、4時間目および6時間目の時点で疼痛反応の有意な改善を誘発する。これらのラットへの実施例1の化合物のi.t.処理は、ビヒクルと比較して1μg(2時間目および4時間目)および3μg(1時間目、2時間目および4時間目)で応答頻度(%)を有意に減少させる(表18-6)。
【0327】
【表16】
【0328】
ホルマリン試験。 s.c.またはi.t.のいずれかで投与した実施例1の化合物は、試験終了時に投与した場合、ホルマリン試験の初期または後期のいずれの段階でも疼痛反応に影響を及ぼさない。
【0329】
ズッカー脂肪性糖尿病ラットは、数か月間持続する安定した強い痛みを伴う神経障害性疼痛反応を発症する。これらのラットは、寒冷アロディニアの顕著な増加、ならびに触覚および圧力痛覚過敏アッセイの試験における疼痛閾値の減少を示す。s.c.またはi.t.のいずれかで投与された実施例1の化合物(遊離塩基)は、3つの試験すべてにおいて痛みを伴う神経障害を有意に減弱させた。s.c.またはi.t.で同様の結果が得られることを示すことは、この効果が単に末梢的に媒介された効果ではないことを示している。該データは、実施例1の化合物がインスリン欠乏性糖尿病を持続しているラットにおける痛みを伴う神経障害性疼痛反応を減弱させるという結論を支持している。
【国際調査報告】