(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(54)【発明の名称】人工的代謝を有する動的材料を生成するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20220518BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220518BHJP
C12Q 1/6888 20180101ALI20220518BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20220518BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
C12N15/10 Z ZNA
C12M1/00 A
C12Q1/6888 Z
C12Q1/6844 Z
C12P21/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559261
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(85)【翻訳文提出日】2021-11-16
(86)【国際出願番号】 US2020026680
(87)【国際公開番号】W WO2020206326
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508298488
【氏名又は名称】コーネル ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ダン・ルオ
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 省吾
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・ジーン・ヴァンシー
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B064
【Fターム(参考)】
4B029AA23
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
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4B063QS24
4B063QX01
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4B064CA21
(57)【要約】
本開示は、規則構造および人工的代謝を有する動的材料の生成に関する。本明細書で開示されるアプローチは、不可逆的合成(および場合により分解)および散逸的集合プロセスの両方を同時に結び付けることによって、構造的階層を有する材料の自律的かつ動的生成を、人工的な様式で可能にする。例示的な実施形態のように、階層的DNA集合・合成(または「DASH:DNA-based Assembly and Synthesis of Hierarchical」)素材が生成された。素材を生成するためのシステム、装置、試薬および方法、ならびに本方法論のさらなる適用が開示される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
規則構造および人工的代謝を有する材料を生成するためのシステムであって、
装置および生成ミックスを含み、
ここで該生成ミックスは、ポリマーを形成するための成分を含む試薬であり、
ここで該装置は、それを通過する溶液の有向の流れを可能にするよう設計されたメインチャンバーを含み、該メインチャンバーは、装置において合成されたポリマーの集合を開始および促進し、該材料を形成するように、生成ミックスを含む溶液の有向の流れにおける渦度を引き起こす障害物を含む、前記システム。
【請求項2】
メインチャンバーは、少なくとも1つの入口ポートを通ったメインチャンバーへの生成ミックスを含む溶液の注入、ならびに少なくとも1つの入口ポートからメインチャンバーを通って少なくとも1つの出口ポートへの流れを可能にする、少なくとも1つの入口ポートおよび少なくとも1つの出口ポートを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
ポリマーを脱重合するための試薬を含む分解ミックスをさらに含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
メインチャンバーは、生成ミックスを含む溶液および分解ミックスを含む溶液を別々に注入するための少なくとも2つの入口ポートを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
メインチャンバーは、3つの入口ポートを含み、ここで真ん中の入口ポートは生成ミックスを含む溶液を注入するためのものであり、ここで2つの外側の入口ポートは分解ミックスを含む溶液を注入するためのものである、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
装置は複数のメインチャンバーを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記材料は静的パターンを有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記材料は動的パターンを有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
パターンは移動挙動であるか、または2つの移動体の間の競争挙動である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
ポリマーはDNAである、請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
ポリマーはRNAである、請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
生成ミックスはdNTP、鋳型核酸、プライマー、およびDNAポリメラーゼを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
プライマーおよび鋳型核酸は、メインチャンバーに供給される前にアニーリングされる、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
鋳型核酸は環状DNAである、請求項12または13に記載のシステム。
【請求項15】
DNAポリメラーゼはPhi29 DNAポリメラーゼである、請求項12~14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
分解ミックスは1つまたはそれ以上のヌクレアーゼを含む、請求項10~15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
生成ミックスは検出可能な信号を生じる試薬を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
ポリマーはDNAであり、生成ミックスは(i)dNTP、鋳型核酸、およびDNAポリメラーゼ、(ii)dNTP、プライマー、およびDNAポリメラーゼ、または(iii)dNTP、鋳型DNA、プライマー、DNAポリメラーゼ、およびリガーゼを含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項19】
メインチャンバーは少なくとも実質的に平面形状を有する、請求項1~18のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
メインチャンバーは、有向の流れの方向に沿ってミクロンからミリメートルスケールの寸法を有する、請求項1~19のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
規則構造および人工的代謝を有する材料を生成するための方法であって、
装置および生成ミックスを提供する工程であって、
ここで該生成ミックスは、ポリマーを形成するための成分を含む試薬であり、ここで該装置は、それを通過する溶液の有向の流れを可能にするよう設計されたメインチャンバーを含み、該メインチャンバーは、溶液の有向の流れにおける渦度を引き起こす障害物を含む、工程;ならびに
生成ミックスを含む溶液をメインチャンバーに供給し、メインチャンバーを通った溶液の流れを方向づけ、それによってポリマーの合成および合成されたポリマーの集合を可能にして、該材料を形成する、工程
を含む、前記方法。
【請求項22】
メインチャンバーは、少なくとも1つの入口ポートおよび少なくとも1つの出口ポートを含み、ここで生成ミックスを含む溶液は、少なくとも1つの入口ポートを通ってメインチャンバーに注入され、少なくとも1つの入口ポートからメインチャンバーを通って少なくとも1つの出口ポートへ流れるよう方向づけられる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
規則構造および人工的代謝を有する材料を生成するための方法であって、
装置、生成ミックス、および分解ミックスを提供する工程であって、
ここで該生成ミックスは、ポリマーを形成するための成分を含む試薬であり、該分解ミックスはポリマーを脱重合するための成分を含み、
ここで該装置は、それを通過する溶液の有向の流れを可能にするよう設計されたメインチャンバーを含み、予め定められたパターンで間隔を保たれ、溶液の有向の流れにおける渦度の発生を可能にする形状およびサイズである障害物を有する、工程;ならびに
生成ミックスを含む溶液および分解ミックスを含む溶液を装置のメインチャンバーに供給し、メインチャンバーを通って溶液の流れを方向づけてポリマー合成および集合のプロセスならびにポリマー分解のプロセスが自律的に、かつ組み合わせで起こることを可能にし、それによって該材料を形成する、工程
を含む、前記方法。
【請求項24】
メインチャンバーは、生成ミックスを含む溶液および分解ミックスを含む溶液を別々に注入するための少なくとも2つの入口ポートを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
メインチャンバーは、3つの入口ポートを含み、ここで真ん中の入口ポートは生成ミックスを含む溶液を注入するためのものであり、ここで2つの外側の入口ポートは分解ミックスを含む溶液を注入するためのものである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
生成ミックスを含む溶液および分解ミックスを含む溶液は同時に、連続的に、または予め定められた順序でメインチャンバーに注入される、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
生成された材料のパターンを可視化する工程をさらに含む、請求項21~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
可視化は裸眼、カメラ、蛍光顕微鏡、光学顕微鏡、または電子顕微鏡によって達成される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記材料は静的パターンを有する、請求項21~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記材料は動的パターンを有する、請求項21~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
パターンは、移動挙動、または2つの移動体の間の競争挙動である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ポリマーはDNAである、請求項21~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
ポリマーはRNAである、請求項21~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
生成ミックスはdNTP、鋳型核酸、プライマー、およびDNAポリメラーゼを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
プライマーおよび鋳型核酸は、メインチャンバーに供給される前にアニーリングされ、ここで、場合により該鋳型核酸は環状DNAである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
DNAポリメラーゼはPhi29 DNAポリメラーゼである、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
分解ミックスは1つまたはそれ以上のヌクレアーゼを含む、請求項32~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
生成ミックスは検出可能な信号を生じる試薬を含む、請求項21~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
メインチャンバーは平面形状を有する、請求項21~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
メインチャンバーはミクロンからミリメートルスケールの寸法を有する、請求項21~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
請求項21~40のいずれか1項に記載の方法に従って製造される材料。
【請求項42】
病原体の核酸を検出するための方法であって、
装置、生成ミックス、および試料を提供する工程であって、
ここで該生成ミックスは、(i)プライマーなしで、dNTP、鋳型核酸、およびDNAポリメラーゼ;(ii)鋳型核酸なしで、dNTP、プライマー、およびDNAポリメラーゼ;または(iii)dNTP、鋳型DNA、プライマー、およびリガーゼを含む試薬であり、ここで該鋳型DNAは該病原体の核酸および該リガーゼの存在下で環状化し、
ここで該装置は、それを通過する溶液の有向の流れを可能にするよう設計されたメインチャンバーを含み、該メインチャンバーは、溶液の有向の流れにおける渦度を引き起こす障害物を含む、工程;ならびに
メインチャンバーに(i)生成ミックスおよび試料を含む溶液または(ii)生成ミックスを含む溶液を供給する工程であって、ここで鋳型DNAは試料およびリガーゼで処理され、試料中に該病原体の核酸が存在する場合に鋳型DNAの環状化を可能にする、工程;ならびに
メインチャンバーを通った溶液の流れを方向づけ、それによってポリマーの合成および合成されたポリマーの集合を可能にし、試料中に病原体の核酸が存在する場合に規則構造および人工的代謝を有するDASH素材を形成する、工程
を含む、前記方法。
【請求項43】
メインチャンバーは、少なくとも1つの入口ポートおよび少なくとも1つの出口ポートを含み、ここで生成ミックスを含む溶液は、少なくとも1つの入口ポートを通ってメインチャンバーに注入され、少なくとも1つの入口ポートからメインチャンバーを通って少なくとも1つの出口ポートへと流れるよう方向づけられる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
メインチャンバーはミクロンからミリメートルスケールの寸法を有し、平面形状を有する、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
病原体の核酸はDNAである、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
病原体の核酸はRNAである、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
病原体は細菌、菌類またはウイルスである、請求項42~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
DNAポリメラーゼはPhi29 DNAポリメラーゼである、請求項42~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
生成ミックスは検出可能な信号を生じる試薬を含む、請求項42~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
試薬はDNAに結合する蛍光化合物である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
ハイブリッド材料を製造する方法であって、
請求項21~40のいずれか1項に記載の方法に従って規則構造および人工的代謝を有する材料を生成する工程であって、ここでポリマーはDNAである、工程、ならびに
集合したDNAから形成される該材料に結合する試薬を含む溶液をメインチャンバーに注入し、それによってハイブリッド材料を形成し、ここで集合したDNAから形成された規則構造および人工的代謝を有する材料は該試薬と結合する、工程
を含む、前記方法。
【請求項52】
試薬はアビジンを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
酵素(HRPのような)または量子ドットと結合するビオチンを含む溶液をメインチャンバーにさらに注入する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
試薬は金ナノ粒子を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
無細胞タンパク質発現の方法であって:
請求項21~40のいずれか1項に記載の方法に従って規則構造および人工的代謝を有する材料を生成する工程であって、ここでポリマーはDNAである、工程、ならびに
無細胞タンパク質発現溶液をメインチャンバーに注入し、材料中のDNAによってコードされるタンパク質の生成を可能にする、工程
を含む、前記方法。
【請求項56】
規則構造および人工的代謝を有する材料を生成するための装置のメインチャンバーのための障害物を設計するための方法であって:
規則構造を有する材料を生成するためのメインチャンバーを定義する工程;
その中で生成される材料のパターンを定義する工程;ならびに
メインチャンバー内および隣接する障害物間の最短の経路に沿って溶液の流れを方向づけるのに必要な装置のメインチャンバー中の複数の障害物のサイズ、形状および位置を決定する工程
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全体が参照により本明細書に組み入れる、2019年4月5日に出願した米国仮出願第62/829,702号の優先権を主張するものである。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、米国科学財団(NSF:National Science Foundation)によって与えられた認可番号第EFRI-1331583号および第SNM-1530522号で政府援助を受けて実施された。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
配列表の参照による組み込み
2020年3月30日に作成され、EFS-Webを介して米国特許商標局に提出された、37255PCT_7787_02_PC_SequenceListing.txtという名称の6KBのASCIIテキストファイル中の配列表を、参照により本明細書に組み入れる。
【背景技術】
【0004】
生物の動的な自己生成等の生命の特徴的な性質は、代謝によって維持されている。物質およびエネルギーの流れを用いて、一連の生物学的反応によって成分から不可逆的に分子が合成され、次いでさらに動的に集合して高分子、さらにそれ以上になり、生命の材料の構造的階層が生じる。生体工学によって動的材料を設計する種々のアプローチが報告されているが、一から代謝を模倣することによる材料の構築は達成されていない。例えば、設計された生物材料は、生命による材料生成を可能にするが、報告されているアプローチは、材料を生成する細胞のような、外的な生物系に依存している。同様に、能動的な細胞骨格のような他の動的生体材料は、生命によって設計された既存の代謝を直接使用する。一般に、生命工学的アプローチは、洗練された能動的な挙動を備えた新しい動的生体材料を作り出す可能性を有するが、現在のアプローチは、生命の既存の代謝に基づき、そのため生命の既存の代謝に根本的に限定される。種々の化学的アプローチ、特に散逸的自己集合は、化学反応を使用したゼロからの動的材料の構築を可能にした。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、規則構造および人工的代謝を有する動的材料を生成するためのシステムおよび方法に関する。自然界で見られる代謝に類似して、本明細書で開示されるアプローチは、不可逆的合成(および場合により分解)ならびに散逸的集合プロセスの両方を同時に結び付けることによって、構造的階層を有する材料の自律的および動的生成を、人工的な様式で可能にする。人工的代謝は、集合と組み合わせた合成のボトムアップ設計によって、分子および反応、例えば、生命自体に制限されないが、生体分子および生体反応を使用して設計される。
【0006】
本システムおよび方法論を説明するために、ならびに例示的実施形態として、人工的代謝を使用して生体分子の構築用ブロックから動的材料を作り出すメソスケールのアプローチを使用して、階層的DNA集合・合成(または「DASH:DNA-based Assembly and Synthesis of Hierarchical」)素材が生成された(
図1A)。生体における材料と類似して、DASHによって生成された材料は、同化作用を介してプリコードされたパターンに合成および集合し得る。さらに、同化作用(生成)を異化作用(分解)と統合することによって、生来の時間空間的フィードバックに応答して規則正しく生成および分解の両方を組み合わせることによって、生成された材料を自律的に分解し、in situで周期的に再生させることもできる。様々なパターンを有するDASH素材が生成された。また、スライド金型に似た創発的(emergent)「移動」挙動を示すDASH素材が生成された。さらに、創発的な競争挙動を示す2つの移動体(locomotive body)を有するDASH素材もまた、生成された。本明細書で開示される動的材料は、ハイブリッド材料を形成するためのさらなる機能化のための足場として利用し得る。材料がDASH素材である実施形態において、材料は、(無細胞タンパク質発現のような)無細胞設定におけるDNAの機能を提供するためのプラットフォームとして働き得る。さらに、本明細書で開示される、動的材料を生成するための本システムおよび方法は、病原体検出に適用し得る。
【0007】
ある態様において、本開示は、規則構造および人工的代謝を有する材料を生成するためのシステムを提供する。システムは、装置および生成ミックス(generation mix)を含み、ここで該生成ミックスは、ポリマーを形成するための成分を含む試薬であり、ここで該装置は、装置において合成されたポリマーの集合を開始および促進し、それによって材料を形成するように、それを通る溶液の有向の流れを可能にし、予め定められたパターンで間隔を保たれ、生成ミックスを含む溶液の有向の流れにおける渦度の発生を可能にする形状およびサイズである障害物を有するよう設計されたメインチャンバーを含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、装置は、フローセルの形態であり、メインチャンバーは少なくとも1つの入口ポート、および少なくとも1つの出口ポートを含む。生成ミックスを含む溶液は、少なくとも1つの入口ポートから、メインチャンバーを通って、すなわち障害物の間の流路または空間を通って、少なくとも1つの出口ポートへ流れるよう方向づけられる。いくつかの実施形態において、メインチャンバーは、ミクロン範囲の寸法、例えばマイクロ流体チャンバー(microfluidic chamber)を有する。いくつかの実施形態において、メインチャンバーは、平面形状を有する。
【0009】
いくつかの実施形態において、システムは、生成ミックスおよび装置に加えて、分解ミックス(degeneration mix)をさらに含み、ここで該分解ミックスは、生成ミックスによって生成されたポリマーを脱重合する試薬を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、メインチャンバーは、生成ミックスを含む溶液および分解ミックスを含む溶液を受け取ること、ならびに有向の流れを可能にするよう設計される。いくつかの実施形態において、メインチャンバーは、生成ミックスを含む溶液および分解ミックスを含む溶液を別々に注入するための少なくとも2つの入口ポート、ならびに少なくとも1つの出口ポートを含み、ここでメインチャンバーを通った溶液の有向の流れの上で、ポリマー合成および集合のプロセスならびにポリマー分解のプロセスは自律的に、かつ組み合わせで起こり、規則構造および人工的代謝を有する材料の形成につながる。
【0011】
いくつかの実施形態において、本システムによって生成された材料は、任意の形状および形態をとり得る静的パターンを有する。いくつかの実施形態において、生成された材料は、例えば創発的移動挙動を示すか、または競争挙動を示す2つの移動体を有する、動的パターンを有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、装置は、生成し得る材料のパターンのタイプを拡張する、複数のメインチャンバーを含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、ポリマーはDNAであり、生成された材料はまた、DASH素材と呼ばれる。いくつかの実施形態において、生成ミックスは、デオキシヌクレオチド(dNTP)、鋳型核酸(DNAまたはRNA)、プライマー、およびDNAポリメラーゼを含む。いくつかの実施形態において、プライマーおよび鋳型は、メインチャンバーに注入される前にアニーリングし得る。いくつかの実施形態において、鋳型核酸は環状DNAである。いくつかの実施形態において、鋳型核酸は、プライマーおよびリガーゼの存在下で直鎖DNAから形成された環状DNAである。いくつかの実施形態において、分解ミックスは、例えばエキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、またはそれらの組み合わせを含む、デオキシヌクレアーゼを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、生成ミックスは、生成された材料を見るのを容易にする、検出可能な信号(例えば、蛍光)を生じる試薬を含む。
【0015】
さらなる態様において、本開示は、規則構造および人工的代謝を有する材料を生成するための方法を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態において、方法は、本明細書に記載される装置および生成ミックスを提供する工程、生成ミックスを含む溶液を装置のメインチャンバーに供給する工程、ならびにメインチャンバーを通る溶液の流れを方向づけ、それによってポリマーの合成および合成されたポリマーの集合を可能にして材料を形成する工程を含む。いくつかの実施形態において、方法は、フローセルの形態の装置を利用し、メインチャンバーは少なくとも1つの入口ポート、および少なくとも1つの出口ポートを含む。生成ミックスを含む溶液は、少なくとも1つの入口ポートからメインチャンバーを通って、すなわち障害物の間の流路または空間を通って、少なくとも1つの出口ポートへ流れるよう方向づけられることができる。
【0017】
いくつかの実施形態において、方法は、本明細書に記載される装置、生成ミックス、および分解ミックスを提供する工程、生成ミックスを含む溶液および分解ミックスを含む溶液を装置のメインチャンバーに供給する工程、ならびにメインチャンバーを通った溶液の流れを方向づけ、それによって材料を生成する工程を含む。いくつかの実施形態において、メインチャンバーは、生成ミックスを含む溶液および分解ミックスを含む溶液を別々に注入するための少なくとも2つの入口ポート、ならびに少なくとも1つの出口ポートを含み、ここでメインチャンバーを通る溶液の有向の流れの上で、ポリマー合成および集合のプロセスならびにポリマー分解のプロセスは自律的に、かつ組み合わせで起こり、規則構造および人工的代謝を有する材料の形成につながる。生成ミックスを含む溶液および分解ミックスを含む溶液は、同時に、連続的に、または予め定められた順序でメインチャンバーに注入し得る。
【0018】
生成された材料は、裸眼、カメラ、蛍光顕微鏡、光学顕微鏡、または電子顕微鏡によって可視化し得る。
【0019】
別の態様において、本開示は、病原体の核酸を検出するためのシステムおよび装置を提供する。この態様に従って、本明細書に記載される装置および生成ミックスが利用される。しかしながら、DNA合成およびDASH素材の生成は、試料中に標的病原体核酸が存在する場合にのみ生じる。いくつかの実施形態において、生成ミックスはdNTP、最初の直鎖形態の鋳型DNA、プライマー、およびDNAポリメラーゼを含み、ここで鋳型DNAは病原体の核酸、リガーゼの存在下で環状化し、環状化DNAは装置においてDNA合成のための鋳型として機能する(例えば、ローリングサークル増幅を介して)。これらの実施形態において、最初の直鎖状形態の鋳型DNAを、メインチャンバーに供給する前に、試験される試料およびリガーゼと接触させて、試料中に標的病原体核酸が存在する場合に鋳型DNAの環状化を可能にすることができる。あるいは、最初の直鎖状形態の鋳型DNAは、生成ミックス中の他の成分、リガーゼ、および試料とともに、メインチャンバーに供給され、環状化、ならびにポリマー合成および集合は、メインチャンバーにおいて起こる。他の実施形態において、鋳型核酸なしでdNTP、プライマー、およびDNAポリメラーゼを含む生成ミックスが利用される。病原体の標的核酸は、試料中に存在する場合、ポリマー合成のための鋳型として働く。さらに他の実施形態において、プライマーなしでdNTP、鋳型核酸、およびDNAポリメラーゼを含む生成ミックスが利用される。病原体の標的核酸は、試料中に存在する場合、ポリマー合成のためのプライマーとして働く。検出は、生成ミックス(および、いくつかの実施形態においては試料)を含む溶液を装置のメインチャンバーに供給すること、ならびにメインチャンバーを通る溶液の流れを方向づけることによって達成し得、それによって、試料中に病原体の核酸が存在する場合、DNAの、規則構造および人工的代謝を有する材料への生成および集合が可能になり、ここで材料の生成は病原体核酸の存在を示す。いくつかの実施形態において、病原体の核酸はDNAである。いくつかの実施形態において、病原体の核酸はRNAである。
【0020】
さらなる態様において、本明細書で生成される材料は、さらなる機能性材料を生成するための足場として使用される。いくつかの実施形態において、DASH素材を、DASH素材が形成された装置のメインチャンバーに供給されるDNA結合試薬と接触させる。いくつかの実施形態において、DNA結合試薬は、例えばアビジン、量子ドット、および金ナノ粒子であり得る。いくつかの実施形態において、DNA結合試薬と結合したDASH素材はさらに機能化し得、例えば、アビジンと結合したDASH素材は、ビオチン複合酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)と接触させ得る。
【0021】
別の態様において、DASH素材を使用して、無細胞タンパク質発現が提供される。
【0022】
さらに別の態様において、本開示は、本明細書に記載される材料を生成するための装置のメインチャンバーに配置される障害物を設計するための方法を提供する。方法は、規則構造を有する材料を生成するためのメインチャンバーを定義する工程、そこで生成される材料のパターンを定義する工程、ならびに、メインチャンバー内かつ隣接する障害物の間の最短経路に沿って溶液の流れを方向づけるのに必要な、装置のメインチャンバー中の複数の障害物のサイズ、形状および位置を決定する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1-1】
図1A~1Kは、DASHおよび生成された材料を示す図である。(A)人工的代謝の同化作用/異化作用経路を説明する。(B)~(C)DASHの実行。(B)RCAによる前駆体DNAの合成。(C)、マイクロ流体装置において障害物とともに流れを使用した散逸的集合によるDASHパターンの形成。(D)~(K)生成されたDASHパターン。(D)最大15μm幅の一次元の線。(E)、最小幅を有する一次元の線。(F)二次元の網目パターン。(G)二次元の図(二重らせんパターン)。(H)二次元の図(正方形)。(I)~(K)二次元の図(D、N、Aの文字の形状)。サブ図(subfigure)D~F中の点線は、障害物の境界を示す。設計のさらなる詳細については、
図28~42を参照のこと。スケールバー:(D)~(F)10μm、(G)100μm、(H)50μm、(I)~(K)100μm。全ての流速:0.1μL/分。
【
図2-1】
図2A~2Hは、DASHパターンの詳細な形態学的および流体力学的研究を示す図である。A~D DASHパターンの詳細な画像である。(A)柱およびDASHパターンの両方を示す、共焦点蛍光顕微鏡観察による明視野および緑色蛍光チャンネルのオーバーレイ。スケールバー=50μm。(B)再構成されたAの三次元画像。点線は柱の境界を示す。(C)DASHパターンのSEM観察。スケールバー=10μm。(D)(C)のクローズアップ画像。球状構造が埋め込まれた異方性のネットワークが観察された。スケールバー=1μm。(E)~(H)DASHパターン生成の流体力学的研究。(E)生成プロセスのタイムラプス録画からのスナップ写真(実験結果)。(F)~(H)CFDシミュレーション結果。(F)流速ベクトル地図。横のサブ図は、星印で示される、対応する位置の断片を示す。(G)流速ヒートマップ。(H)流速ヒートマップ。点線の矢印は、流れの方向を示す。全ての流速:0.1μL/分。
【
図3-1】
図3A~3Iは、人工的代謝によって駆動される機械としてのDASHパターンの動的挙動を示す図である。(A)~(C)静的位置での連続的な生成および分解挙動。(A)装置および流れの結線図。(B)FSAによる挙動の抽象的な表示。(C)タイムラプス録画からのスナップ写真(2、3、4、5時間)およびDASHパターンの位置での平均蛍光強度プロット。(D)~(F)創発的移動挙動。D、FSAおよびプログラム。FSAの設計は、変化した流れの信号の受信/発信によって拡張される。各FSAを単位として使用することによって、変化した流れの信号を介して連続的にそれらを連結させることで、挙動がプログラムされた。開始から成長への状態遷移までの異なる待ち時間(t
1<t
2<...<t
6)をパラメータとして使用する。解釈は、プログラムの同等な実験的実行を示す。(E)実験において使用されたトラックの最終的な設計の詳細。(F)狭いトラックにおける体の移動を示す、スナップ写真および質量中心プロット(原点からのx軸距離)(60分、75分、92.5分)。(G)~(I)2つの移動体の間の創発的競争挙動。(G)2つの移動挙動プログラム(D)を2つのトラックの間の信号と平行に配置することによって達成される挙動についての、対応するプログラム。(H)実際の実行についてのプログラムの解釈。(I)挙動のスナップ写真。両方のトラックによって体が生成され(75分)、次いで上流に向かって移動が開始された(107.5分)。一度対称が破れると、トラック番号2の体は競争を先導し(点線)、トラック番号1の体は、体を分解することによって速度を落とし始めた(127.5分)。ゴールに到達することによってトラック番号2の体が競争に勝利した後(135分)、トラック番号1の体は完全に分解された(約180分)。生成用および分解ミックスの両方について、適用された流速は:(C)0.1μL/分。(F)、(I)、0.15μL/分であった。
【
図4-1】
図4A~4Eは、DASH素材の他の適用を示す図である。(A)生成されたDASHパターンによる病原体DNA/RNA検出。500および50pMの陽性の試料が、生成されたパターンによって成功裏に検出された。2塩基対のミスマッチを有する非標的配列を使用した対照試料では、パターン生成がなかった。(B)~(D)ハイブリッド材料。(B)蛍光分子複合アビジン結合。3つの入口を有する装置(3-inlet device)を使用することによって、二色の勾配が達成された(中央の流れ:テキサスレッド(赤色)、横の流れ:FITC(緑色))。スケールバー=100μm。(C)アビジン結合によって媒介される、量子ドット付着。スケールバー=10μm。(D)暗視野顕微鏡観察によって観察された、DASHパターン上のDNA結合金ナノ粒子付着。スケールバー=10μm。(E)sfGFPに対するレポーター遺伝子を組み込むDASHパターンからの無細胞タンパク質発現。エラーバーは標準偏差を示す。DASHパターン生成の間に適用された全ての流速:0.1μL/分。
【
図5】生成の種(generation seed)の調製の結線図である。鋳型およびプライマーDNAを等モル比で混合し、次いで95℃から4℃までアニーリングした。ハイブリダイゼーションされた溶液にT4 DNAリガーゼを加え、4℃で一晩インキュベートしてライゲーションさせた。
【
図6】DASH装置の全体的な装置のレイアウトを示す図である。500μm幅のメインチャンバー;入口(正方形)/出口(家形)ポートに連結された50μm幅の流路。
【
図7】(A)~(H)DASHパターンの標準的な構造体要素を示す図である。DASHパターンは、連結図で記載される、「一直線(Straight)」、「分かれる(Divide)」、および「併合する(Merge)」のような3つの要素の組み合わせに単純化することができる。節点は柱または障害物に変換される;つながり(link)は実際のDASH構造に変換される。実際の障害物の表示は、層状の流れを変化させて特定の点で渦度を生じさせ得る、三角形、正方形、または他のタイプの形状であり得る。境界は、装置内の流れの対称性を考慮することによって排除し得る。
【
図8】DASH生成の実験の構成を示す図である。DASH装置は、配管およびシリンジに連結されていた。シリンジポンプが、一定の流速で生成ミックスを注入する。
【
図9】DASHデータ解析ソフトウエアの全体的なプロセスを示す図である。結線図は、ソフトウエアの全体的な流れを示す。
【
図10】3つのチャンバーを有する装置(3-chamber device)内の速度マッピングのCFDシミュレーションを示す図である。入口からの流速は、(A)0.1155μL/分;(B)0.231μL/分;(C)0.462μL/分として設定した。(C)は高い流量のために異なるスケールバーを有することに留意されたい。
【
図11】3つのチャンバーを有する装置内の渦度マッピングのCFDシミュレーションを示す図である。入口からの流速は、(A)0.1155μL/分;(B)0.231μL/分;(C)0.462μL/分として設定した。
【
図12】生成開始時間解析に使用した試料SNRデータを示す図である。凡例は、装置の特徴的な流速と対応する(紫(高)-水色(低);詳細については補充書面参照)。最初の高信号/信号の減少は、試料中の比較的低い雑音によるものであり(すなわち、DASHパターンがないだけでなく、雑音値が低かった)、そのため測定に関して無視した。信号比が増加し始め、第一のフレームが2.0のSNR値を超える時点(フレーム)(赤色の点線で示す)を、パターン生成開始時間として使用した。
【
図13】異なる柱の形状を有する2つの装置の流速ヒートマップである。(A)正方形の柱の装置(#3-1);(B)菱形の柱の装置(#3-2)。両方のヒートマップの全体的な流速分布は同等であった。
【
図14】異なる柱の形状を有する2つの装置の流速ヒートマップを示す図である。(A)正方形の柱の装置(#3-1);(B)菱形の柱の装置(#3-2)。柱の横の高い渦度は、正方形の柱の装置でのみ観察された。
【
図15】DASHパターン発生の柱の形状の比較を示す図である。赤色:正方形の柱の装置(#3-1);青色:菱形の柱の装置(#3-2)。S/Nの増加の時間差は、正方形の柱の装置(より高い渦度)が、菱形の柱の装置(より低い渦度)よりも速くパターンを生成し始めたことを表す。
【
図16】生成/分解プロセスの間のCFDシミュレーション(2つの入口からの粒子トレース)を示す図である。(A)制御された蓄積が起こる前に、層状の流れが2つの領域(赤色/黒色)を作り出す;(B)制御された蓄積が開始されて流れを変化させる;(C~D)中央の大きい蓄積が2つのタイプの溶液を混合する。
【
図17】静的位置での、繰り返されるDASHパターンの生成/分解を示す図である。生成および分解の2つのサイクルが観察された(およそ370~400分で第一のピーク、次いでおよそ680分で第二のピーク)。
【
図18】DASHによって駆動されるDNA/RNA検出を示す図である。検出プロセスは3つの工程:認識、増幅、および読み出しを有する。DASHパターン生成および認識は、ハイブリダイゼーションおよびライゲーションを使用した認識工程に続く、増幅(酵素的合成および流れに基づく集合(flow-based assembly)ならびに読み出し(メソスケールのパターン)の両方を達成する。
【
図19A】陽性CMV標的試料由来の、生成されたDASHパターンの信号対雑音(SNR:signal-to-noise)比を示す図である。(A)画像において生成されたDASHパターンの電力対電力比(power-to-power ratio)としてSNR値を得た(DASHパターンに対応する空間周波数由来の電力/他の空間周波数由来の総電力)。500pMおよび50pMの標的濃度由来の全ての試料はDASHパターンを生成することができ、これはこの定量的SNRの表示とよく対応した。観察において、5pMの試料はDASHパターンを生成することができなかった。各試料由来の最高のSNRの時点での対応する画像もまた示した(B)。
【
図19B】陽性CMV標的試料由来の、生成されたDASHパターンの信号対雑音(SNR:signal-to-noise)比を示す図である。(A)画像において生成されたDASHパターンの電力対電力比(power-to-power ratio)としてSNR値を得た(DASHパターンに対応する空間周波数由来の電力/他の空間周波数由来の総電力)。500pMおよび50pMの標的濃度由来の全ての試料はDASHパターンを生成することができ、これはこの定量的SNRの表示とよく対応した。観察において、5pMの試料はDASHパターンを生成することができなかった。各試料由来の最高のSNRの時点での対応する画像もまた示した(B)。
【
図20A】非標的試料由来の生成されたDASHパターンの信号対雑音(SNR)比を示す図である。(A)全ての試料は閾値より低く、これは我々の観察とよく対応した(DASHパターンを生成しなかった)。各試料由来の最高のSNRの時点での対応する画像もまた示した(B)。
【
図20B】非標的試料由来の生成されたDASHパターンの信号対雑音(SNR)比を示す図である。(A)全ての試料は閾値より低く、これは我々の観察とよく対応した(DASHパターンを生成しなかった)。各試料由来の最高のSNRの時点での対応する画像もまた示した(B)。
【
図21】陽性および陰性標的試料を用いたDASHパターンの平均強度対信号対雑音比(S/N)を示す図である。同様の平均蛍光強度にもかかわらず(緑色=500pM、シアン=50pM、青色=5pM;黒丸:パターンが検出された、白丸:パターンが検出されなかった)、500および50pMの陽性試料は、DASHを使用して成功裏に検出された(S/Nの任意の閾値=15、灰色の点線として示す)。2塩基対のミスマッチを有する非標的配列を使用した陰性対照試料(黒色=500pM、灰色=50pM、薄い灰色=5pM)は、同様の平均蛍光強度を生じたが、パターン生成はなかった。
【
図22】DASH-アビジン結合結果を示す図である。(A)SYBR Green I(DNA)を示す緑色蛍光チャンネル;(B)アビジン-テキサスレッドコンジュゲートを示す赤色蛍光チャンネル。画像は、アビジンがDASHパターンに成功裏に結合したことを示す。
【
図23】DASH-ストレプトアビジン結合結果を示す図である。(A)SYBR Green I(DNA)を示す緑色蛍光チャンネル;(B)ストレプトアビジン-テキサスレッドコンジュゲートを示す赤色蛍光チャンネル。画像は、ストレプトアビジンがDASHパターンに結合していないことを示す。
【
図24】DASH-量子ドット(Qdot)付着結果を示す図である。全ての画像は、フィルター(励起光420nm、発光605nm)を含む同じ捕捉条件および画像の正規化を使用して撮影された。(A)Qdot付着後、さらなる1時間の洗浄の前の陽性試料;(B)結合を確認するための、サブ図aの1時間の洗浄の後。全体的なバックグラウンドが減少しているが、DASHパターンへのQdot付着が残っていることに留意されたい;(C)アビジン結合のない陰性対照試料。いくつかのQdotは集合するようになったが、DASHパターンに付着していなかった(サブ図aと比較して、結合していないQdotによる高いバックグラウンドを参照);(D)(A)のクローズアップ画像。DASH構造へのQdotの均一な付着の成功が、この方法によって達成された。
【
図25】DASH-AuNPパターンを示す図である。DASHパターンの橙色/赤色濃淡は、構造へのAuNPの付着の成功を示す。
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図26】DASHパターン由来のCFPEの直接的観察を示す図である。a.CFPEの前のDASH装置の観察。Hoechst 33342色素で染色したために、DASHパターンは青色で示した。(A)(左)DASH生成のない装置。(右)DASH生成のある装置;(B)CFPEの後。(左)DASH生成がなく、CFPEの後の装置。(右)CFPEの後の、DASH生成のある装置。
【
図27】(A)~(H)DASH装置およびトラック設計カタログを示す図である。使用された、全部で15個の設計。(A)~(H)は、
図1D~1Kの明視野チャンネル画像を示す。
【
図28】(A)~(C)設計#3-1を示す図である。構成:一次元の線(最大15μm幅)。1つの入口/1つの出口。柱に基づく(pillar-based)(仮想境界)。ねじれ型の幾何学的形状を有する50μmの距離(流れの方向に沿って)。ねじれ型の柱の間の15μmの横方向距離。一致するin situ観察;典型的なチャンバーよりも短い全長。
【
図29】(A)~(C)設計#4-5を示す図である。構成:一次元の線(最小幅)。1つの入口/1つの出口。障害物に基づく(obstruction-based)(物理的境界)。三角形の障害物の頂点の間の50μmの距離(流れの方向に沿って)。三角形の障害物の頂点の間の0μmの横方向距離。横のバイパス流路;過成長による閉塞を減少させるための、チャンバーの入口および出口のさらなる柱。一致するin situ観察。
【
図30】(A)~(C)設計#9-1を示す図である。構成:ジグザグの線(二次元の網目パターンを作り出す)。1つの入口/1つの出口。柱に基づく(仮想境界)。一致するin situ観察
【
図31】(A)~(C)設計#18-3を示す図である。構成:「DNA二重らせん」パターンを有する二次元形状。それぞれが3つの流路に分かれた1つの入口/1つの出口。障害物に基づく(物理的境界)。三角形の障害物の頂点の間の、典型的には50μmの距離(流れの方向に沿って)。三角形の障害物の頂点の間の、典型的には0μmの横方向距離。一致するin situ観察。
【
図32-1】(A)~(C)設計#3-3を示す図である。構成:二次元の正方形(正方形の境界を有する一次元の線)。1つの入口/1つの出口。障害物に基づく(物理的境界)。三角形の障害物の頂点の間の50μmの距離(流れの方向に沿って)。三角形の障害物の頂点の間の0μmの横方向距離。縦に並んで配置された3つの正方形の装置(正方形の境界のチャンバー幅が異なる)。
【
図33】(A)~(C)設計#8-2を示す図である。構成:「文字D」パターンを有する二次元図。1つの入口/1つの出口。障害物に基づく(物理的境界)。三角形の障害物の頂点の間の、典型的には50μmの距離(流れの方向に沿って)。三角形の障害物の頂点の間の、典型的には0μmの横方向距離。一致するin situ観察。
【
図34】(A)~(C)設計#11-2を示す図である。構成:「文字N」パターンを有する二次元図。1つの入口/1つの出口。障害物に基づく(物理的境界)。三角形の障害物の頂点の間の、典型的には50μmの距離(流れの方向に沿って)。三角形の障害物の頂点の間の、典型的には0μmの横方向距離。一致するin situ観察
【
図35】(A)~(C)設計#5-1を示す図である。構成:「文字A」パターンを有する二次元図。1つの入口/1つの出口。障害物に基づく(物理的境界)。三角形の障害物の頂点の間の、典型的には50μmの距離(流れの方向に沿って)。三角形の障害物の頂点の間の、典型的には0μmの横方向距離。一致するin situ観察。
【
図36A】(A)~(B)設計#14-2を示す図である。構成:ジグザグの線(二次元の網目パターンを作り出す);9-1設計の別形(同一の柱設計)。3つの入口/1つの出口、入口2は2つの側に分かれている。柱に基づく(仮想境界)。一致するin situ観察。生成-分解実験のための最適化された設計。
【
図36B】(A)~(B)設計#14-2を示す図である。構成:ジグザグの線(二次元の網目パターンを作り出す);9-1設計の別形(同一の柱設計)。3つの入口/1つの出口、入口2は2つの側に分かれている。柱に基づく(仮想境界)。一致するin situ観察。生成-分解実験のための最適化された設計。
【
図37A】(A)~(B)設計#20-2を示す図である。構成:さらなるT字路モジュールと統合された、#14-2と同じ装置。再生実験のための、最適化された設計。
【
図37B】(A)~(B)設計#20-2を示す図である。構成:さらなるT字路モジュールと統合された、#14-2と同じ装置。再生実験のための、最適化された設計。
【
図38】(A)~(B)設計#12-1を示す図である。構成:一次元の線。同じ源から3つの個々のチャンバーに分かれている、1つの入口/1つの出口。3-1設計の別形(同一の柱設計)。一致するin situ観察。流速-DASH生成測定試験のための、最適化された設計。
【
図39】(A)~(C)設計#3-2を示す図である。構成:渦度比較のための、3-1の別形(正方形の代わりに、菱形の柱)[同等の流速を有するように、3-1と同じ柱の幅、同じ位置、同じ数]。一次元の線(菱形の柱)。1つの入口/1つの出口。柱に基づく(仮想境界)。ねじれ型の幾何学的形状を有する50μmの距離(流れの方向に沿って)。ねじれ型の柱の間の15μmの横方向距離。一致するin situ観察;典型的なチャンバーよりも短い全長。
【
図40】(A)~(B)設計#22-3を示す図である。構成:DASHによって駆動される移動のための、様々な横方向の柱の距離を有する#14-2の別形。一次元の線(広いトラック)。3つの入口/1つの出口、入口2は2つの側に分かれている。柱に基づく(仮想境界)。トラック幅:500μm;隣接する柱の間の、10、15、20、25、30、35umの横方向距離。一致するin situ観察。
【
図41】(A)~(B)設計#23-3を示す図である。構成:DASHによって駆動される移動のための、より単純な設計のための、狭い(150μm)トラック幅を有し、二層の層状の流れを有する#22-3の別形。一次元の線(狭いトラック)。2つの入口/1つの出口。柱に基づく(仮想境界)。トラック幅:150μm;隣接する柱の間の10、15、20、25、30、35umの横方向距離。一致するin situ観察。
【
図42】(A)~(B)設計#23-4を示す図である。構成:DASHによって駆動される移動のための、曲がった幾何学的形状を有する#22-3の別形。一次元の線(広いトラック、U字型の曲線)。3つの入口/1つの出口、入口2は2つの側に分かれている。柱に基づく(仮想境界)。トラック幅:500μm;隣接する柱の間の10、15、20、25、30、35umの横方向距離。一致するin situ観察。
【発明を実施するための形態】
【0024】
他に定義されない限りは、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるのと類似した、または同等な任意の方法および材料もまた、本発明の実施または試験において使用することができ、好ましい方法および材料を次に記載する。本明細書で言及される全ての刊行物は、参照により本明細書に組み入れられ、刊行物が引用されるものと関連した方法および/または材料を開示および記載する。
【0025】
材料
本開示は、規則構造および人工的代謝を有する材料の生成を対象とする。
【0026】
用語「人工的代謝」は、本明細書で、材料を生成するための本方法論の構成、および生成された材料の特性の両方を記載するよう使用される。自然界に見られる代謝に類似して、本明細書で開示される方法論は、不可逆的合成/分解および散逸的集合プロセスの両方を同時に結び付けることによって、構造的階層を有する材料の自律的かつ動的生成を、人工的な様式で可能にする。同化作用(生成)を異化作用(分解)と統合させることによって、本明細書で開示される方法論は、生来の時間空間的フィードバックに応答してin situで規則的に生成および分解の両方を組み合わせることによって、自律的に分解され、周期的に再生もされる材料の生成を可能にする。よって、生成された材料は、不可逆的合成および散逸的集合プロセスを同時に結び付けることによって、材料が、材料の基礎となる分子構造が自律的かつ動的に生成される(同化作用)という意味で「代謝」を有するので、「人工的代謝」を有すると言われており、分解がさらに含まれる実施形態においては、材料の基礎となる分子構造はまた、自律的に分解されている(異化作用);言い換えれば、材料の基礎となる分子構造は、in situで自律的および動的に生成され、分解され、周期的に再生もされる。関与するプロセスが人工的に作成されているので、上述の代謝は人工的代謝と言われている。
【0027】
用語「規則構造」は、本明細書で、本明細書で生成される材料の階層構造機構を記載するよう使用される。例えば、DASH材料は、一次元のミクロンスケールのDNA分子のネットワークの束で構成される繊維構造を有し得(散逸的集合の結果として)、次いでDNA分子は、ナノスケールのモノマーから形成されるポリマーである(ポリマー合成の結果として)。
【0028】
本明細書で生成される材料は、任意のパターンであり得る。本明細書で生成される材料に言及して、用語「パターン」は、形状および寸法の特性の両方、ならびに挙動特性を含む。例えば、
図1D~Kおよび
図42において説明されるように、周期的パターンの一次元の線から二次元の任意の形状に、多種多様なメソスケールのパターンおよび形状の材料が生成された。動的パターンを有する材料、例えば創発的移動挙動を示すDASH素材、競争挙動を示す2つの移動体を有するDASH素材が生成されている。本明細書で開示されるように、材料のパターンは、好ましくは計算流体力学(「CFD:Computational Fluid Dynamics」)シミュレーションの助けを用いて、予め決められたサイズおよび形状を有する障害物の位置に基づいて設計および達成し得る。
【0029】
規則構造および人工的代謝を有する材料は、様々なタイプの構築用ブロック、すなわちモノマー、ダイマー、トリマー、またはオリゴマーから生成し得、in situでポリマーを合成するのに使用し得、ここで合成されたポリマーはまた、in situで脱重合し得る。いくつかの実施形態において、ポリマーはDNAまたはRNAである。
【0030】
生成ミックス
in situのポリマー合成のプロセスは、ポリマーの合成に必要な成分を、本明細書に記載される材料を生成するために設計された装置に供給することによって達成される。用語「生成ミックス」は、本明細書で、ポリマー合成に必要な成分を含む試薬を記載するよう使用される。
【0031】
ポリマーがDNAである実施形態のいくつかにおいて、生成ミックスはDNA鋳型(二本鎖または一本鎖、直鎖状または環状)、プライマー、デオキシヌクレオチド(dNTP)、およびDNAポリメラーゼを含み得る。いくつかの実施形態において、DNA鋳型およびプライマーは使用の前に合わせてアニーリングし得る。いくつかの実施形態において、鋳型は、プライマーおよびリガーゼの存在下で環状化された環状DNAである。本明細書での使用に適したDNAポリメラーゼとしては、(大腸菌(E.coli)のような原核生物由来のDNA Pol I、II、およびIIIのような)原核生物由来または真核生物由来(例えば、DNA Pol α、β、γ、δ、およびε)のDNAポリメラーゼが挙げられるが、これらに限定されず、これらの多くは市販されている。いくつかの実施形態において、DNAポリメラーゼは、ローリングサークル増幅(RCA:Rolling Circle Amplification)によるDNA合成を達成し得るPhi29 DNAポリメラーゼである。ポリマーがDNAである実施形態のいくつかにおいて、生成ミックスはRNA鋳型、プライマー、デオキシヌクレオチド(dNTP)、および逆転写酵素を含み得る。
【0032】
ポリマーがRNAである実施形態のいくつかにおいて、生成ミックスは、DNA鋳型(二本鎖または一本鎖)、プライマー、ヌクレオチド(NTP)、RNAポリメラーゼ、および含めるのに適切な任意の転写因子を含み得る。本明細書での使用に適したRNAポリメラーゼとしては、原核生物または真核生物由来のRNAポリメラーゼが挙げられるが、これらに限定されず、これらの多くは市販されている。
【0033】
いくつかの実施形態において、生成ミックスは、in situでのポリマーの合成のための全ての必要な成分を含み得る。いくつかの実施形態において、生成ミックスは、ポリマーの合成のための必要な成分を含み得るが、合成は、試験される試料中に標的核酸が存在する場合にのみ起こる。例えば、本システムおよび方法論が病原体DNAまたはRNAを検出する目的で適用される実施形態において、生成ミックスは、in situでのDNA合成のための全ての必要な成分を含み得るが、鋳型DNAが直鎖状形態で提供され、試料中に標的病原体DNAまたはRNAが存在する場合にのみリガーゼによって環状化された後にのみ鋳型として機能する。他の実施形態において、生成ミックスは、ポリマー(DNAまたはRNA)の合成のための病原体成分が、試料中に存在する場合、次いで集合して可視化され得る予め決められたパターンを有する材料になる、DNA分子の合成を開始させるための鋳型として働き、病原体DNAまたはRNAが試料中にない場合にDNAの合成が起こらず、材料が形成されないように、核酸鋳型を除いて、ポリマーの合成のための成分を含み得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、生成ミックスは、生成された材料に結合して材料のパターンを見ることを可能にする化合物を含む。例えば、生成ミックスは、SYBR Green Iのような、DNAに結合する色素を含み得る。
【0035】
分解ミックス
ポリマー合成脱重合、または合成されたポリマーの分解のプロセスは、ポリマーの脱重合に必要な成分を、本明細書に記載される材料を生成するために設計された装置に供給することによって達成し得る。用語「分解ミックス」は、本明細書で、ポリマーの脱重合に必要な成分を含む試薬を記載するよう使用される。
【0036】
ポリマーがDNAである実施形態のいくつかにおいて、分解ミックスは、1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレアーゼ(DNアーゼ)を含み得、これはエキソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼ(制限酵素を含む)であり得、これらの多くは市販されている。いくつかの実施形態において、分解ミックスは、1つまたはそれ以上のエキソヌクレアーゼI、エキソヌクレアーゼIII、DNアーゼIおよびDNアーゼIIを含み得る。
【0037】
ポリマーがRNAである実施形態のいくつかにおいて、分解ミックスは、1つまたはそれ以上のリボヌクレアーゼ(RNアーゼ)を含み得る。いくつかの実施形態において、RNアーゼはエンドリボヌクレアーゼを含む。いくつかの実施形態において、RNアーゼはエキソリボヌクレアーゼを含む。いくつかの実施形態において、エンドリボヌクレアーゼは、RNアーゼA、RNアーゼH、RNアーゼIII、RNアーゼL、RNアーゼP、RNアーゼPhyM、RNアーゼT1、RNアーゼT2、RNアーゼU2、およびRNアーゼVからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、エキソリボヌクレアーゼは、ポリヌクレオチドホスホリラーゼ(PNPアーゼ)、RNアーゼPH、RNアーゼR、RNアーゼD、RNアーゼT、オリゴリボヌクレアーゼ、エキソリボヌクレアーゼI、およびエキソリボヌクレアーゼIIからなる群より選択される。
【0038】
装置
ポリマー合成および集合のプロセス、ならびに脱重合のプロセスは、特定のプリコードされたパターンを有する材料を生成するために設計された装置を使用して達成し得る。
【0039】
装置は、ポリマー合成および集合のプロセス、ならびに場合により、所望により脱重合のプロセスが起こる、メインチャンバーを含む。一般的に言って、メインチャンバーは、チャンバーが生成ミックスを含む溶液の供給、および所望により分解ミックスを含む溶液の供給を可能にし、供給された溶液がチャンバーを通った有向の流れ(例えば、入口ポートを有するチャンバーの一端から出口ポートを有する別の端への流れ)を有して予め設計されたパターンの材料を生成することを可能にする限りは、いかなる特定の形状または寸法にも限定されない。いくつかの実施形態において、装置はマイクロ流体装置であり、ここでメインチャンバーは、例えば
図1B~1Cに示されるように、ミクロン範囲の寸法を有し、実質的に平面形状をとる。
【0040】
規則構造および特定のパターンを有する材料の生成のために、メインチャンバーは、意図した材料産物のパターンに基づいて予め決められた様式で間隔を保たれた(すなわち、配置された)複数の障害物を含み、障害物はメインチャンバーを通って方向づけられた溶液の流れに渦度を引き起こす形状およびサイズに形づくられている。いくつかの例において、複数の障害物は均一である。いくつかの例において、複数の障害物は少なくとも1つの第一の障害物および少なくとも1つの第二の障害物を含み、少なくとも1つの第一の障害物は、少なくとも1つの第二の障害物と異なるサイズおよび/または異なる形状を有する。いくつかの例において、複数の障害物の間隔は均一である。いくつかの例において、複数の障害物の少なくともいくつかの間の間隔は、複数の障害物の他のものの間の間隔と異なる。いくつかの実施形態において、メインチャンバーは、実質的に平面形状をとらない。
【0041】
特定のパターンを有する規則構造を有する材料を生成するための形状、サイズおよび位置を含む障害物の設計は、本明細書に記載される実験からの観察に基づいて本発明者らによって開発されたガイドラインに従うことによって達成し得る。具体的には、本発明者らは、最終産物の集合の背後の機構が、in situで合成されたポリマーの新しいネットワークの渦励起の動的形成と、予め形成されたネットワークの流れによって方向づけられた再分布の組み合わせであることを見出した。より具体的には、本発明者らは、DNAネットワーク形成が、チャンバーの真ん中(すなわち、z軸の中央)の柱の側端から開始され、次いでさらなる生成とともに、これらのDNAネットワークが柱の間の1つの連続的繊維構造へと連結され始めることを観察した。さらに、本発明者らは、柱の側面が高い渦度の領域に一致すること(例えば、
図2Hにおいて説明されているように)、およびより高い渦度を生じる柱の形状を有する装置が、より速くDASHパターンを生成すること(例えば、
図13~15において説明されるように)を見出した。これらの観察から、流れ、特に渦度が、局所的かつ動的に柱の側面でのネットワークへのDNAの物理的もつれを誘発することによる形成プロセスにおいて重要であることが示される。柱の横でのより大きい渦度は、より早い生成開始時間につながる。形成されたネットワークは、次いで最も速度の高い領域において、流れの方向に沿って再分布し、流れの方向に沿って、連続的で繊維状の異方性の構造を形成する(
図2F、2G)。構造の厚さは、その後、最終的にはDNAネットワークで満たされる柱の間のギャップとともに増大する。
【0042】
最終産物の集合が、in situで合成されたポリマーの新しいネットワークの渦励起の動的形成と、予め形成されたネットワークの流れによって方向づけられた再分布の組み合わせであるという認識に基づき、計算流体力学(CFD)シミュレーションを用いて、本発明者らは、材料の所望のパターンを考慮すると、チャンバーにおける障害物のパターン(すなわち、形状、サイズおよび位置)が2つの単純なガイドラインに基づいて設計され得ることを確証した:パターンは、いずれも流れの方向に従って、チャンバー内で最短の経路をとること、および隣接する柱(障害物)を連結させることによって予測し得る。説明のように、7つのタイプの構造単位を使用した単純な組み合わせのルールによって、マイクロ流体装置が設計された(
図7)。単位の組み合わせによって、両方のガイドラインを満たすように装置における流れの経路に沿って柱の位置がコードされ、DASHパターンの一般的な設計戦略が可能になる。
図27は、材料の多数のパターン、およびかかる材料のパターンを有する材料を生成するための、障害物の基礎となるパターン(形状、サイズおよび位置)を説明する。一般的に言って、障害物は、つながりによって連結された複数の節点として認識され得、「節点」は渦度の高い領域であり、幾何学に関しては障害物の横の「先端または端」に対応する領域であり(例えば、
図7A~7G中で言及される点p、q、r、s、正方形の柱の側端等)、「つながり」は、流れの方向に沿った、これらの点の間の最短の連結である。
【0043】
いくつかの実施形態において、一度可視化された材料のパターンは、静的、すなわち動的でない外見を有する。例えば、DASH素材は、例えば周期的なパターンを有する一次元の線から二次元の任意の形状まで、多種多様なパターンで生成されている(
図1D~Kおよび
図27)。
【0044】
いくつかの実施形態において、材料のパターンは動的である(すなわち、動く)。
【0045】
いくつかの実施形態における、創発的移動挙動を示す材料。説明のように、本発明者らは、創発的移動挙動を示すDASH素材の生成を実証した。材料の全体的な挙動は、自律的かつ周期的状態遷移を伴う開始、成長、および崩壊の3つの状態を有する有限状態オートマトン(「FSA:finite-state automaton」)を使用することによって記載される(
図3B)。不連続状態および状態遷移を有するこの抽象概念は、機械的ロボットにおいて使用される方法と同様に、機械としての材料の全体的な挙動の解釈を可能にし、そのため挙動のさらなるプログラミングを可能にした。特に、成長と崩壊との間の状態遷移は、時間空間的フィードバックによって切り替わった。3つの入口ポートおよび1つの出口ポートを有するマイクロ流体装置を使用して、この実施形態を説明した(
図16)。真ん中の入口ポートを通って生成ミックスを装置に注入したが、分解ミックスを外側の他の2つの入口ポートを通って装置に注入した。最初に、装置に流入する3つ全ての溶液は層状のままであった(「開始」状態)。よって、分解ミックスは生成ミックスから分離されたままで、同化作用のプロセスが装置の中央で開始した(「成長」状態)。次第に、再分布したDNAネットワークによる集合が、柱の間のギャップを満たし始め、実質的に流れの動態を変化させた。この時間空間的フィードバックによって、生成用および分解用溶液(generation and degeneration solution)の両方を混合し、そのため状態遷移を誘発することが可能になった。次に異化作用プロセスが優位を占め始め、最終的に材料が分解される(「崩壊」状態)。実験によって、トラックに沿って領域別に小さい(下流)から大きい(上流)ように調整された隣接する柱の間のギャップを有する予め定義されたトラックとして(
図3E)生成用および分解ミックスを含む入口流路を準備した。各領域は、各FSAに対応する(開始、成長、および崩壊)。渦度の大きさを定義するギャップのサイズは、開始から成長への状態遷移を誘発するように、各単位におけるパラメータ(待ち時間)を示す。プログラムされたように、この渦度の勾配は、トラックの下流領域から開始して、開始から成長状態への遷移の時間空間的な遅れを誘発した。要するに、移動の方向は、一定の流速下での渦度の大きさの勾配であると、実験によって解釈された。移動の方向は、全ての例において流れの方向に逆らうように計画的にプログラムされた。下流領域で開始した自律的生成およびDASHパターンによって構築された体が成長し始めた後、生成されたパターンによる空間的フィードバックは、同様に下流から開始した崩壊状態への遷移を誘発した。崩壊状態への遷移もまた、異化作用がこれらの領域において優位を示すと仮定して、流れによって下流領域に伝播する。同時に、開始から成長状態への遷移は、上流領域に向かって続いた(すなわち、渦度の勾配を下る)。結果として、流れの方向に逆らったトラックに沿った体の全体的移動挙動は、一連のFSAによってプログラムされたように現れた。
【0046】
いくつかの実施形態において、材料は、2つの競争する体の創発的競争挙動を示す。これらの実施形態を説明するために、本発明者らは、2つの連続したFSAをプログラムすることによって、創発的競争挙動を示す2つの移動体を有するDASH素材の生成を実証した(
図3G)。創発的移動挙動の例と同様に各連続を設計した;また、2つの移動体の間に単純な干渉を追加した。具体的には、成長から崩壊への状態遷移信号はまた、トラックの間で干渉し得る;より速い運動体は、別のトラックの状態に影響を与えて崩壊に変化させ得、そのため生成を誘発することによって他方のトラックで体の移動を「減速」させ得る。実験によって、単純に流れのタイプを逆にすることによって、設計が実行された(外側の流路上の生成ミックス、および内側の流路上の分解ミックス)。2つのトラックの間に境界がなく、そのため1つのトラックの変化した流れはまた、他方のトラックの状態に影響を及ぼし得る。結果から、トラック番号2が勝者となる、2つの体の間の競争が説明される(
図3I)。プログラムされたように、おそらく流れおよび体のランダム性によって一度2つの体の間の対称性が崩れると、トラック番号2で先導する体によって引き起こされた崩壊状態はトラック番号1の体に影響を与え、体の分解を生じる。トラック番号2の体がゴールに到達した後、最後に挙動はトラック番号1の体の完全な分解で終わった。
【0047】
方法および装置構成
材料を生成するために、生成ミックスを含む溶液を装置のメインチャンバーに供給し、障害物の間の流路(すなわち、空間)に沿って装置のメインチャンバーを通って流れるよう方向づけられる。いくつかの実施形態において、生成ミックスを含む溶液を、入口ポートを通って出口ポートに向かってメインチャンバーに注入する。流れの速度は、種々の手段によって、例えば入口または出口ポートに連結したポンプを介して制御し得る。一度溶液がメインチャンバーに供給されると、ポリマーの合成および集合の同時のプロセスが起こり、自律的に継続する。
【0048】
いくつかの実施形態において、生成ミックスを含む溶液および分解ミックスを含む溶液が、ともに装置のメインチャンバーに供給され、メインチャンバーを通って流れるよう方向づけられる。2つの溶液を同時に、連続的に、または予め定められた順序でメインチャンバーに供給し、種々のパターンの生成を可能にし得る。いくつかの実施形態において、2つの溶液は、種々の様式で配置された別々の入口ポートを通って、例えば真ん中のポートが生成ミックスに使用され、外側のポートが分解ミックスに使用される3つの入口ポートを通って;またはその逆で、注入される。一度溶液がメインチャンバーに供給されると、ポリマーの合成/分解および集合の同時のプロセスが起こり、自律的に継続する。
【0049】
生成された材料は、例えば裸眼、カメラ、蛍光顕微鏡(ポリマーが、例えば蛍光化合物と結合している)、光学顕微鏡、または電子顕微鏡を含む種々の手段によって可視化し得る。
【0050】
DASH素材のさらなる適用
さらなる態様において、DASH素材を生成するための本方法論が病原体検出に適用された。開示の本態様に従って、生成ミックスを調製して、試料中に標的病原体DNAまたはRNA配列が存在する場合にのみ、DASH素材の選択的増幅および生成を提供し得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、生成ミックスは、dNTP、最初の直鎖状形態の鋳型DNA、プライマー、およびDNAポリメラーゼを含み、ここで該鋳型DNAは、病原体の核酸およびリガーゼの存在下で環状化し、装置において、環状化したDNAはDNA合成のための鋳型として働く(例えば、ローリングサークル増幅を介して)。これらの実施形態において、最初の直鎖状形態の鋳型DNAは、メインチャンバーに供給される前に、試験される試料およびリガーゼと接触させて、試料中に標的病原体核酸が存在する場合に鋳型DNAの環状化を可能にし得る。あるいは、生成ミックス中の他の成分とともに、最初の直鎖状形態の鋳型DNA、リガーゼ、および試料がメインチャンバーに供給され、環状化、ならびにポリマー合成および集合がメインチャンバー中で起こる。いくつかの実施形態において、生成ミックスは、DNA合成を開始するのに必要なプライマーなしに、鋳型DNA、dNTPおよびDNAポリメラーゼを含み得る;標的病原体DNAは、試料中に存在する場合、生成ミックスと組み合わされると、DNA合成を開始するのに必要なプライマーとして働く。いくつかの実施形態において、生成ミックスは、DNA合成を開始するのに必要な鋳型なしに、プライマー、dNTP、およびRNA依存性DNAポリメラーゼ(または逆転写酵素)を含み得る;標的病原体RNAは、試料中に存在する場合、生成ミックスと組み合わされると、DNA合成を開始するのに必要な鋳型として働く。
【0052】
生成ミックスおよび試料を含む溶液は、本明細書で上述した装置のメインチャンバーに注入され、試料中に標的病原体DNAまたはRNAが存在する場合にのみDASH素材が形成される。生成ミックスおよび標的病原体DNAまたはRNAを含む溶液が装置に供給される対照試験を、並行して実施し得る。
【0053】
開示の本態様を使用して、例えば細菌、菌類、またはウイルスを含む任意の病原体のDNAまたはRNAを検出し得る。使用に適した試料としては、環境試料(例えば、土、水)、農産物または食品生産物(例えば、果物、野菜、および家禽)、ヒトまたは非ヒト動物から得られた試料(例えば、口または鼻のスワッブ試料、血液試料、尿または糞便試料等)を含む、疑いのある病原体を含む任意の試料が挙げられる。試料は、例えば、装置に注入される前に、元の試料を遠心分離、細胞溶解、分画、または標的病原体DNAまたはRNAの遊離、精製、および/もしくは濃縮を容易にし得る任意の他の手順に供することによって、加工された試料であり得る。
【0054】
開示の本態様を説明するために、本発明者らは、モデル病原体として、キュウリモザイクウイルス(CMV:Cucumber Mosaic Virus)から採取された標的配列を選択し、自己生成されたDASHパターンを認識することによって、500および50pMの濃度で標的の検出の成功を実証した(
図4Aおよび19~21)。対照的に、2塩基対のみのミスマッチを有する陰性対照標的配列はパターンを生成せず、検出方法の特異性が実証された。
【0055】
さらに別の態様において、生成される材料は、さらなる機能性材料を生成するための足場として使用される。例えば、DASH素材は、DNAを越えた多様な範囲の機能性ナノ材料を生成するための、多用途のメソスケールの足場として働き得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、一度形成されたDASH素材を、DNAに結合する試薬と接触させる。試薬は、DASH素材が形成された装置のメインチャンバーに注入し得、アビジン、量子ドット、および金ナノ粒子のような無機ナノ粒子を含む材料の範囲であり得る。これらの試薬のいずれかと結合したDASH素材は、さらに機能化させ得る。例えば、アビジンと結合したDASH素材は、ビオチン複合酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)と接触させ得る。
【0057】
いくつかの実施形態において、DASH素材内のDNA分子を使用して、無細胞様式で、かつ時間空間的に制御された様式で、DNA分子によってコードされたタンパク質を生成する。これは、無細胞タンパク質発現系を含む溶液を、DASH素材が形成された装置に供給することによって達成され得る。無細胞タンパク質発現系は当該分野で公知であり、また、市販されている。いくつかの実施形態において、無細胞タンパク質発現系は、タンパク質合成に必要な成分を含む溶解物を含む。いくつかの実施形態において、タンパク質合成に必要な成分はtRNA、リボソーム、アミノ酸、開始、伸長および終結因子を含む。いくつかの実施形態において、無細胞タンパク質発現系は、大腸菌溶解物を含む。いくつかの実施形態において、無細胞タンパク質発現系は、小麦胚芽溶解物を含む。いくつかの実施形態において、無細胞タンパク質発現系は、ウサギ網状赤血球溶解物を含む。いくつかの実施形態において、無細胞タンパク質発現系は、HeLaに基づく溶解物を含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、無細胞タンパク質発現系はまた、DASH素材のDNA中のプロモーターに結合し、これを活性化するよう設計されたプライマーを含み、それによって所望のタンパク質をコードする遺伝子の転写、およびそれに続くタンパク生成を開始させる。
【0059】
以下に列挙される特定の実施例は単なる例であって、決して限定ではない。
【実施例1】
【0060】
DASHの同化作用経路は、人工的代謝の概念を表す2つの重要な同時かつ自律的プロセスからなる:1)in situでの酵素反応によって達成される、材料の前駆体としてのDNA分子の生化学的合成、ならびに2)流れによって、プリコードされたパターンおよび形状を有する材料を形成する、前駆体の散逸的集合。具体的には、前駆体合成のプロセスにおいて、in situのDNA合成は、種(プライマーを伴うDNA鋳型)および構築用ブロックも含む生成ミックスにおいて、Phi29 DNAポリメラーゼを使用したローリングサークル増幅(RCA)によって達成された(
図1Bおよび
図5)。散逸的集合のプロセスの間に、マイクロ流体装置において流れを使用して、前駆体DNAから特定のパターンを直接集合させた。具体的には、生成ミックスを、正確に間隔を保たれた障害物を有するマイクロ流体装置に連続的に注入して、前駆体DNAをプリコードされた特定のパターンに集合させた(
図1C、
図6、および
図8)。DASHはこのようにして、スケールを渡って:全て同時のプロセスを介して、ナノスケールの構築用ブロックから開始し、ポリマー前駆体、ミクロンスケールのネットワーク(ハイドロゲル)、最終的にメソスケールのパターンおよび形状へと、構造的階層を有する材料を自律的に生成することによって、前述の同化作用経路を達成した。
【0061】
実験によって、周期的なパターンを有する一次元の線から二次元の任意の形状まで、多種多様なメソスケールのパターンおよび形状が生成され、材料の同化作用経路が実証された(
図1D~Kおよび
図27A~27H)。経路は、一次元の、ミクロンの厚さの繊維状のDNAネットワークを組織することによって、パターンを有する材料の自律的生成を可能にした。計算流体力学(CFD)シミュレーションを用いて、これらのDASHパターンは2つの単純なガイドラインに基づいて決定論的に設計し得ることが見出された:パターンは、流路内で最短の経路をとること、および隣接する柱(障害物)を連結させることによって予測され、これらはともに流れの方向に従う。プロセスを単純化するために、7つのタイプの構造単位を使用した単純な組み合わせのルールによって、マイクロ流体装置が設計された(
図7A~7G)。単位の組み合わせによって、両方のガイドラインを満たすように装置における流れの経路に沿って柱の位置がコードされ、DASHパターンの一般的な設計戦略が可能になる。
【0062】
共焦点蛍光顕微鏡観察および走査型電子顕微鏡観察(SEM:scanning electron microscopy)によって、生成された材料の詳細な形態が明らかになった。二次元の網目パターンの共焦点顕微鏡観察によって、繊維状の形態を有して、マイクロ流体チャンバーの真ん中(チャンバーの上端および下端から離れている)で材料が形成されたことが示された(
図2Aおよび2B)。SEM観察によって、より詳細な形態が明らかになった(
図2Cおよび2D):繊維構造は、配向が流れの方向と一致する異方性のDNAネットワークの束でできている。ここで、観察のために遷移がより簡単であるため、一次元の線パターンを有する装置が選択された。材料のほとんどは、流れの方向に平行な柱の側端およびそれらの間の空間に局在し、識別できるDNAは、柱の周りに少ししか覆っていなかった。また、SEM観察によって、物理的にもつれたDNAハイドロゲルに関する先の報告(J.B.Leeら、Nature Nanotechnology.7、816~820頁(2012年))と同様に、ネットワークの内部に埋め込まれた、平均直径約0.3μmの球状構造が明らかになった。しかしながら、異方性ネットワークは、ここで、球状構造の間で明らかであったが、おそらく有向の流れのために、DNAハイドロゲルにおいては明らかでなかった。
【0063】
DASHによるパターン生成の背後の機構をより理解するために、タイムラプス動画を記録し、定量化した(
図2E)。流れの開始とパターン生成の始まりとの間の経過時間の存在によって、合成された前駆体DNAの最小分子量(例えば、5nMの生成ミックスを用いた二次元の網目パターンの場合、3.3×10
7の推定分子量)に依存したネットワーク形成が示唆された。興味深いことに、我々は、ネットワーク形成がチャンバーの真ん中(すなわち、z軸の中央)の柱の側端から開始し、次いでさらなる生成があり、これらのDNAネットワークが柱の間で1つの連続した繊維構造に連結され始めたことを観察した。優位な機構が柱の周りをDNAネットワークで覆っている場合、繊維状の形態は柱の側端の代わりに上流の端から開始したはずであり、全体的なパターン生成は装置の上流領域から開始したはずである。本明細書で開示される観察から、そうではないことが示された;柱の側端は、集合が開始する主要な場所であった。よって、本発明者らは、DASHパターンの集合の機構は、2つのプロセス:柱の側端で誘発されるDNAネットワークの形成、および予め形成されたネットワークの、流れの方向に沿った連続的で繊維状の異方性構造への再分布(in situおよび流れる溶液中の両方で)の組み合わせであると仮説を立てた。タイムラプス画像から、構造の厚さが後の段階で増大し、最終的にはDNAネットワークで柱の間のギャップが満たされることが説明された。この、さらに厚くなることによって、溶液中で形成された過剰なDNAネットワークの再分布が、より早い時点ではなく、パターン形成のプロセスのより後の時点で起こったことが強く示唆された。
【0064】
集合プロセスの基礎となる機構を調べるために、本発明者らは、まずCFDシミュレーションを行い、次いで実験によって、それらを2つの側面:新しいネットワークの形成、および予め形成されたネットワークの繊維状の形態への再分布から確かめた(
図2F~2H)。幾何学的な単純さにより、比較のために一次元の線を有するDASHパターンを選択した。形成については、柱の側面が渦度の高い領域に一致することが見出された(
図2H)。感度測定(
図10A~10C、
図11A~11C、および
図12)および柱の形状の比較実験(
図13A~13B、
図14A~14Bおよび
図15)とともに、これらの結果から、流れ、特に渦度が、局所的かつ動的に柱の側面でのネットワークへのDNAの物理的もつれを誘発することによる形成プロセスにおいて重要であることが示唆された。要するに、柱の側面でのより大きい渦度は、より早い生成開始時間につながる。同様の、バイオフィルムおよびタンパク質において観察される、渦度によって誘発された構造形成もまた、この仮説を支持した。再分布については、タイムラプス動画と流速のシミュレーションとのオーバーレイから、速度が最も高い領域で流れの方向に沿って繊維構造が実際に形成されたことが明らかに示され、これは再分布の機構と一致した(
図2F~2G)。したがって、集合の背後の機構は、新しいネットワークの渦励起の動的形成と、予め形成されたネットワークの、流れに誘導された再分布の組み合わせである可能性が最も高い。
【0065】
上述の同化作用の生成プロセスを、DNA加水分解酵素を介した異化作用の分解プロセスと統合することによって、人工的代謝の代謝経路をさらに拡張した。最初に、同化作用および異化作用の両方の経路を使用して、静的位置でのパターンの連続的な生成および分解を誘導した。ここで、DASHパターンは、酵素反応および流れの組み合わせによって、自律的に生成し、次いで同調的かつ自律的に分解された(
図3A~3C)。生成および分解の両方に必要な試薬を同時にマイクロ流体装置に流入させた。重要なことに、一度流れが開始すると、生成および分解の両方のプロセスは、いかなる外部操作もなしに実行された。3つの入口を有するマイクロ流体装置は、DNAポリメラーゼを有する生成ミックスを含む中央の入口とともに使用されたが、いずれの側の入口もDNA加水分解酵素、DNアーゼIを有する分解ミックスを含んでいた。材料の全体的な挙動は、自律的かつ周期的状態遷移を伴う開始、成長、および崩壊の3つの状態を有するFSAを使用することによって記載した(
図3B)。不連続状態および状態遷移を有するこの抽象概念は、機械的ロボットにおいて使用される方法と同様に、機械としての材料の全体的な挙動の解釈を可能にし、後述の挙動のさらなるプログラミングを可能にした。特に、成長と崩壊との間の状態遷移は、時間空間的フィードバックによって切り替わった。CFDシミュレーションから、プロセスの間の流体力学が説明された(
図16A~16D)。最初に、装置に流入する3つ全ての溶液は層状のままであった(開始)。よって、分解ミックスは生成ミックスから分離されたままで、同化作用のプロセスが装置の中央で開始した(成長)。次第に、再分布したDNAネットワークによる集合が、柱の間のギャップを満たし始め、実質的に流れの動態を変化させた。この時間空間的フィードバックによって、生成用および分解用溶液の両方を混合し、そのため状態遷移を誘発することが可能になった。次に異化作用プロセスが優位を占め始め、最終的に材料が分解された(崩壊)。さらなる実験試験から、生成および分解の連続的発生(周期的再生)が、DNA合成時間が一定である場合、少なくとも2回、自律的に繰り返され得ることが示され(
図17)、同化作用および異化作用の両方の経路が、外部からのいかなる干渉もなしに再生式に継ぎ目なく統合および調節され得ることが実証された。
【0066】
静的位置での材料の動的生成および分解挙動に基づいて、DASHを使用した人工的代謝によって駆動される移動挙動をプログラムした(
図3D~3F)。細胞性粘菌Dictyostelium discoideumの偽変形体(ナメクジ)の形状および移動挙動に示唆されて(J.T.Bonner、American Journal of Botany.31、175頁(1944年))、ナメクジ様体がDASHパターンの自律的成長によって最初に生成され、それに続いて一定の流れに逆らってトラックに沿った体の自律的移動が起こるよう挙動がプログラムされた。移動は、連続的で分極した再生に基づく創発的挙動として実現された:前端がその体を生成し、後端が自身を分解する。抽象的な設計レベルで、挙動は、連続的に連結された様式で(M
1~M
6)、上で紹介されたFSAを拡張することによってプログラムされ、各FSAは自律的なモジュール単位として見なされた(
図3D)。各単位(M
n)は、成長から崩壊への状態遷移を誘発する、隣接する単位(M
n+1)から「変化した流れ」の信号を受け入れ得、また、次(M
n-1)へと信号を伝播させ得る。移動挙動は、開始と成長の間の状態遷移が誘発されるまでの異なる待ち時間(t
1<t
2<...<t
6)を設定することによってプログラムされた。各FSAの成長は、待ち時間に従ってM
1から開始する。一度単位M
nがその内部フィードバックにより状態を崩壊に変化させると、変化した流れの信号は隣接する単位M
n-1およびその次へと伝播し、体の後端での状態遷移を確実にする。結果として、移動の方向は、成長およびそれに続く崩壊への遷移の時間空間的遅れとして表される。実験によって、挙動のための予め決定されたトラックとして生成用および分解ミックスを含む、同様の複数の入口を有する流路を準備した(
図3E)。ここで、隣接する柱の間のギャップは、トラックに沿って領域別に小さい(下流)から大きい(上流)ように調整された。各領域は、各FSAに対応する。渦度の大きさを定義するギャップのサイズは、開始から成長への状態遷移を誘発するように、各単位におけるパラメータ(待ち時間)を示す。プログラムされたように、この渦度の勾配は、トラックの下流領域から開始して、開始から成長状態への遷移の時間空間的な遅れを誘発した。要するに、移動の方向は、一定の流速下での渦度の大きさの勾配であると、実験によって解釈された。移動の方向は、全ての例において流れの方向に逆らうように計画的にプログラムされたことを、ここでも本発明者らは強調する。下流領域で開始した自律的生成およびDASHパターンによって構築された体が成長し始めた後、生成されたパターンによる空間的フィードバックは、同様に下流から開始した崩壊状態への遷移を誘発した。崩壊状態への遷移もまた、異化作用がこれらの領域において優位を示すと仮定して、流れ(M
n-1に送られた「変化した流れ」の信号として表される)によって下流領域に伝播する。同時に、開始から成長状態への遷移は、上流領域に向かって続いた(すなわち、渦度の勾配を下る)。結果として、流れの方向に逆らったトラックに沿った体の全体的移動挙動は、一連のFSAによってプログラムされたように現れた。挙動は、一直線(広い幅および狭い幅)および曲がったトラックの両方において、実験によって観察され、これによって軌道の設計柔軟性が説明された。移動速度は、狭いトラックで2.3mm/時間として測定された(
図3F)。
【0067】
機械としての材料の適用をさらに実証するために、抽象的なプログラミング方法の力を利用することによって、設計を拡張し、2つの連続したFSAによって2つの競争する体の創発的な競争挙動が達成された(
図3G)。先の創発的移動挙動と同様に各連続(M
11~M
61、M
12~M
62)を設計する;また、ここで、2つの移動体の間に単純な干渉をさらに追加した。具体的には、成長から崩壊への状態遷移信号はまた、トラックの間で干渉し得る(2つの連続したFSAの間の矢印によって示される);より速い運動体は、別のトラックの状態に影響を与えて崩壊に変化させ得、そのため分解を誘発することによって他方のトラックで体の移動を「減速」させ得る。このプログラムは、互いの間にいかなる物理的境界もなしに並んで配置された2つの連続したFSAを表す2つのトラックとして解釈し得る(
図3H)。実験によって、前項で紹介した幅広のトラックにおいて、単純に流れのタイプを逆にすることによって、設計が実行された(外側の生成ミックス、および内側の分解ミックス)。2つのトラックの間に境界がないので、1つのトラックの変化した流れはまた、他方のトラックの状態に影響を及ぼし得る。結果から、トラック番号2が勝者となる、2つの体の間の競争が成功裏に示された(
図3I)。プログラムされたように、おそらく流れおよび体のランダム性によって一度2つの体の間の対称性が崩れると、トラック番号2で先導する体によって引き起こされた崩壊状態はトラック番号1の体に影響を与え、体の分解を生じる(127.5分のスナップ写真参照)。トラック番号2の体がゴールに到達した後(135分)、最後に挙動はトラック番号1の体の完全な分解で終わった(180分)。
【0068】
最終的に、機械適用におけるDASH素材の使用に加えて、いくつかの他の適用を開発した。適用の一つは核酸検出であった(
図18)。この適用の目標は、材料の自己生成特性の利点を実証することであった。試料中に標的病原体DNA/RNA配列が存在する場合にのみ増幅可能な生成の種が調製された。材料の同化作用特性は、このようにして、標的化DNA/RNAについてのみの選択的増幅プロセスとして働くよう変換された。生成されたDASHパターンは、次いで裸眼の観察によって、またはフーリエ変換に基づくパターン認識アルゴリズムによって、読み取られ、二値の読み出し方法として機構を採用した(
図9)。実験によって、モデル病原体として、キュウリモザイクウイルス(CMV)から採取された標的配列を選択した。自己生成されたDASHパターンを認識することによって、500および50pMの濃度で標的が成功裏に検出された(
図4A、
図19A~19B、
図20A~20B、および
図21)。2塩基対のみのミスマッチを有する対照標的はパターンを生成せず、検出方法の特異性が実証された。次いで、自己生成された材料の潜在的な使用を説明するために、種々のハイブリッド機能性材料がDASHパターンから作り出された。DASH素材は、アビジン(
図4B、
図22A~22B、
図23A~23B)、量子ドット(
図4C、
図24A~24D)、およびDNA結合金ナノ粒子(
図4D、
図25)のような、タンパク質から無機ナノ粒子の範囲のDNAを越えた多様な範囲の機能性ナノ材料のための多用途のメソスケールの足場として働いた。生成されたパターンはまた、酵素と結合した場合に触媒活性によって機能的になった。DASHパターン内のDNA分子がDNAの遺伝的特性を保持すること、およびsfGFPに対するレポーター遺伝子を組み込むことによって無細胞的に材料自体が緑色蛍光タンパク質(GFP:Green Fluorescent Protein)を成功裏に生成されたことが示された(
図4E、
図26A~26B)。材料のタンパク質生成能力によって、時間空間的に制御された、酵素を含むタンパク質の、将来の無細胞生成の基礎が樹立された。
【0069】
結論として、本開示は、生化学的合成および散逸的集合の同時のプロセスを使用した人工的代謝によって駆動される動的材料を対象とする。DASHの概念の実行によって、材料の種々の適用が成功裏に実証された。特に、本発明者らは、一連のFSAとしてプログラムすることによって、創発的な再生、移動、および競争挙動を有するこの新規の動的生体材料からの機械の構築に成功した。生命の制限のない生体工学の基礎に基づくボトムアップ設計は、根本的にこれらの能動的でプログラム可能な挙動を可能にした。この材料は、生体分子の機械およびロボットにおける移動性要素として統合され得る。DASHパターンは、裸眼またはスマートフォンによって容易に認識され得、ポイントオブケア設定においてより実行可能な、より良い検出技術につながる。DASHはまた、他の材料のための鋳型として使用して、例えば、タンパク質発現またはナノ粒子集合の動的波を作り出し得る。
【実施例2】
【0070】
材料および方法
材料
Epicentre(Madison、WI)からRepliPHI(商標)Phi29 DNAポリメラーゼ、10x RepliPHI(商標)バッファー(400mM トリス-HCl(pH7.5)、500mM KCl、100mM MgCl2、50mM(NH4)2SO4、および40mM DTT)およびデオキシヌクレオチド(dNTP)を得た。New England Biolabs(Ipswich、MA)からT4 DNAリガーゼ、エキソヌクレアーゼI、およびエキソヌクレアーゼIIIを得た。Teknova(Hollister、CA)からアデノシン三リン酸(ATP:Adenosine Triphosphate)を得た。オリゴヌクレオチドを化学的に合成し、Integrated DNA Technologies(IDT)(Coralville、IA)による標準的な脱塩方法を使用して精製した。VWR(Radnor、PA)からGelRed(商標)核酸ゲル染色液およびヌクレアーゼフリー水を得た。Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA)からSYBR Green I、40%アクリルアミド/Bis(19:1)、過硫酸アンモニウム(APS:Ammonium Persulfate)、およびポリジメチルシロキサン(PDMS:Polydimethylsiloxane)シリコーンエラストマーキット(Sylgard 184、Dow Corning)を得た。Sigma-Aldrich(St.Louis、MO)からテトラメチルエチレンジアミン(TEMED:Tetramethylethylene Diamine)を得た。
【0071】
生成ミックス調製
プライマーDNAとともに鋳型DNAを環状化することによって、生成の種を調製した(
図5)。最初に、化学的に合成された鋳型およびプライマーDNAを、最終1x RepliPHI反応バッファー中で、最終1μMの等モル濃度で混合し、次いでサーマルサイクラーによって95℃から4℃までアニーリングした(-1℃/分)。200単位のT4 DNAリガーゼおよびATP(最終1.25mM)を加え、次いで反応のために4℃で一晩インキュベートした(合計20μLスケール、最終種濃度0.5μM)。終濃度5nM(またはその他の記載がある)でライゲーションされた生成の種溶液を、次いで氷上で、生成ミックスのために、最終1x RepliPHI反応バッファー中で、それぞれ最終1mMのdNTP、最終1x濃度のSYBR Green I、および5.7単位/μLのPhi29と混合した。
【0072】
マイクロ流体装置設計
3つの工程に従うことによって、装置を設計した。最初に、最終的なDASHパターンのレイアウトを概略的に決定した。次に、連結図に基づく抽象的な方法を使用したパターンに従うことによって、障害物を割り当てた。全部で7つのタイプの標準的構造単位を、設計のために使用した。最後に、メインチャンバー設計を入口/出口流路に連結させた。
【0073】
全ての装置は、LayoutEditor(Juspertor GmbH、Germany)およびKLayout(Klayoutウェブサイト)によって設計し、GDSIIフォーマットにエクスポートした。Cornell NanoScale Science and Technology Facility(CNF)(Ithaca、NY)での最初の試験を除いて、外部業者(Suzhou Mask-Fab Corp.、China)によって、Chromeフォトマスク加工を行った。CNFにおいて、マスク描画のためにHeidelberg DWL2000を使用した;現像および後処理のためのHamatech-Steag Mask Processor。
【0074】
ガラスウエハ(直径4インチ)を水で洗浄し、次いで5分間の超音波処理とともにアセトンに浸漬した。次いで、それらをさらに5分間、超音波処理とともにイソプロパノールに移した。その後、ウエハを脱イオン水で洗浄し、清浄な空気流中で乾燥させた。全てのガラスウエハは、フォトレジストコーティングの前にヘキサメチルジシラザンによって前処理した。AZ P4620フォトレジスト(MicroChemicals GmbH、Germany)をウエハ中央に浸し、スピンコータ上で1000r.p.mで2分間スピンさせて、およそ16μmの厚さを達成した。次いで、ウエハをホットプレート上で95℃で8分間焼き、次第に室温まで冷却した。コーティングされたウエハを、石英マスクを用いてMA/BA6マスク/ボンドアライナ(SUSS MicroTec、Germany)上で30秒間UV光に曝し、次いで1:3の比でaz 400Kおよび脱イオン水で構成される現像液に2分間入れた。現像されたウエハを脱イオン水ですすぎ、空気流によって乾燥させた。最後に、ウエハをホットプレート上で100℃で30分間焼き、フォトレジスト接着を向上させた。ガラスウエハをペトリ皿(Greiner Bio-One、Austria)に置き、造型プロセスのために端の四辺をテープで留めることによって固定した。10:1のBase Curing Agent比(Sylgard 184、Dow Corning、Corning、NY)でポリジメチルシロキサン(PDMS)シリコーンエラストマーでマイクロ流体装置の造型をした。70℃で1時間焼いた後、個々の装置をペトリ皿から切り出し、次いで入口および出口ポートを打ち抜いた。最後に、酸素プラズマ処理を介して、装置をPDMSコーティングされた顕微鏡スライドガラス(VWR、Radnor、PA)に共有結合させた。
【0075】
装置の設計プロセス
実験結果およびCFDシミュレーションに基づいて、2つの経験的ガイドラインを見出した:パターンは、1)装置の内部の流れの方向に従うことによって形成され、2)柱の間を連結する、流路の内部の最短の経路をとった。これらのガイドラインに基づいて、以下の決定論的方法に従って装置を設計した。
【0076】
装置レイアウト
最初に、入口/出口とメインチャンバーとの間の流路を含む全体的な装置のサイズを設計した。本書類において、配管に連結された時に蛍光顕微鏡(BX51、Olympus、Japan)の対物レンズでの干渉を避けるように、流路の長さを設定した;顕微鏡の画像サイズに基づいて、典型的なメインチャンバー長(2mm)を設定した。メインチャンバーと入口/出口との間の流路幅を50μmに固定した;典型的なメインチャンバー幅(文字「D、N、A」および「二重らせん」図のような複雑な幾何学的形状を除き、渦度制御実験のための3つのチャンバーを有する装置、および移動のための狭い一直線のトラック)は、一貫性のために設計全体を通して500μmに設定した(
図6)。個々の装置を切り出すためにさらなる余裕を含めることによって、および加工プロセスの間装置を密閉するために、ガラスウエハのサイズ(7cm平方)によって装置の全体的なサイズを制限する。
【0077】
メインチャンバー設計
3つの工程に従うことによって、メインチャンバーのレイアウトを設計した。最初に、最終的なDASHパターンのレイアウトを概略的に決定した。次に、最初の工程で描かれた線に従うことによって、障害物を割り当てた。最後に、障害物を流路およびメインチャンバー設計と併合させた。
【0078】
境界および/または柱の組み合わせに基づいて、障害物を設計した。全部で7つのタイプの標準的な構造体要素を設計に使用した(
図7A~7G)。構造体要素は、連結図の抽象的なパターンの形態学的特性によって、「一直線」、「分かれる」および「併合する」のような3つのクラスに分類された。つながりは、DASH構造の最終的な再分布形態を表し、節点はDASH構造が生成された点を表す。基本的な幾何学的形状は、三角形の障害物を有する固体境界に基づいた(
図7A、7B、7F、および7G)。固体境界(
図7中の灰色の領域)は、装置における全体的な層状の流れの方向を定義する(
図7中の青色の線)。DASH構造は、障害物の頂点(点p、q)の間の最短の一直線の経路をとるため、2つの点を結ぶ直線(
図7中の緑色の線)が生成された。典型的には、加工プロセスにおける制限のために、流路幅は20μmより広く設計された。「分かれる」および「併合する」レイアウトの場合、流れの方向は側流路の全体的な設計を定義する。流れが、生成されたDASH構造を流れの方向とともに再分布させるため、分岐の湾曲の内隅(点r、u)は、角が生成および定着の点となるように(すなわち、DASH構造は、正確な位置で併合する/分かれる)、常に鋭角になっている必要がある。隣接する生成点の間の角度(r-s、t-uの間)は、生成された分岐構造の角度を定義する。また、長方形の障害物もまた、三角形の障害物の代わりに使用し得る(
図7B)。さらに、物理的境界に加えて、装置内部の層状の流れの対称性を利用することによって、「仮想」境界にまでこの戦略を拡張し得る(
図7C、7D、および7E)。線対称な柱構造(青色の破線)を一度設計すると、層状の流れもまた軸対称になる(対称な流れを確認するためにCFDシミュレーションを必要とする);結果として、境界構造を基本的に排除し、柱によって障害物の設計を大いに単純化し得る。本書類において、仮想境界を有する3つのタイプの要素を使用した:柱の間の横方向距離ゼロ(c)、正の距離(+x)(d)、および負の距離(-x)、(e)。正の距離は、DASH構造の最大幅を定義する(
図1D);ゼロ(
図1E)および負の(
図1F)距離によって、最小幅を有するDASHの生成が可能になる。「文字D」のような軸対称設計の場合、幾何学的形状の上半分のほとんどを下半分に単純に複製することによって、設計プロセスが減少し得ることに留意されたい。
【0079】
最後に、障害物を流路およびメインチャンバー設計と併合させた。プロセス全体を繰り返して、実際のDASHパターン形成またはCFDシミュレーション結果を検査することによってパターンを改良した。繰り返しの後に、最終的な最適化された設計を決定し、実際のDASH生成実験で試験した。
【0080】
装置設計カタログ
記載された方法を使用することによって、パターンの生成のために様々なタイプのDASH装置およびトラックを設計した(
図27および
図28~42)。本書類において、全部で15個のタイプの設計を使用した。カタログは、柱/障害物の設計、装置/トラックの全体的な幾何学的形状、および構成を要約している。
【0081】
DASH装置の断面高さ測定
刃によって切断された実際のPDMS装置の試料採取によって、チャンバーの高さを確認した。全部で42個の断片を、分析のために測定した。結果から、1.1μmの標準偏差で17.4μmの平均高さが示され、これは16μmの理想的な厚さと比較して、妥当な範囲(およそ8%差)である。
【0082】
装置の実験構成
マイクロ流を使用した同時の合成および集合を、配管およびシリンジに連結されたマイクロ流体装置の組み合わせによって具体化した(
図8)。調製された生成ミックス溶液を、1mL BD Medical Tuberculin Syringe(Franklin Lakes、NJ)、および挿入先端としての短いMicrogroup皮下管留置(Medway、MA)に連結されたCole-Parmer Microbore Puri-Flex Autoanalysis Tubing(Vernon Hills、IL)に引き入れた。溶液を調製した直後に、次いでシリンジをHarvard Apparatus PHD-2000シリンジポンプ(Holliston、MA)に付け、注入した。実験の前に、DASH装置をヌクレアーゼフリー水で事前に満たした;入口および出口の両方もまた、水で覆った。一度生成ミックスが先端に現れると、次いで先端をDASH装置に直ちに挿入する。装置および先端はともに溶液で覆って、プロセスの間に確実に気泡が装置に入らないようにした。典型的には、生成ミックスは0.1μL/分でDASH装置に注入した。
【0083】
生成-分解実験のために、3つの入口を有する設計(
図36、#14-2)を設計した。中央の入口を生成用溶液(最終種濃度0.1nM)に連結させた。横の入口を分解用溶液(最終1x Phi29反応バッファー中のDNアーゼI(1単位/μL))に連結させた。生成用および分解用溶液の両方を0.1μL/分で注入した。創発的な移動実験のために、勾配渦度領域を有する2つおよび3つの入口を有するトラック(
図40、41、42、#22-3、23-3、23-4)を使用した。両方の溶液を0.15μL/分で注入した。創発的な競争実験のために、勾配渦度領域を有する3つの入口を有するトラック(
図41、#23-3)を使用した。両方の溶液を0.15μL/分で注入した。
【0084】
蛍光顕微鏡観察
形態学的研究および定量分析のために使用する蛍光顕微鏡観察画像を、Sutter Instrument Lambda LS Xenon光源(Novato、CA)を有するOlympus BX-61顕微鏡(Japan)によって撮影した。緑色蛍光(励起光484nm、発光520nm)、赤色蛍光(励起光555nm、発光605nm)、および赤色量子ドット(励起光420nm、発光605nm)フィルターをChroma Technology Corporation(Bellows Falls、VT)から購入した。オリンパス株式会社(Tokyo、Japan)による4xおよび10x対物レンズを使用した。明視野チャンネルの露出時間を100ミリ秒に設定した;全ての実験を通して、蛍光チャンネルを2000ミリ秒に設定した。150秒/フレームを使用して(Supplementary Movie S6における短い観察間隔動画(15秒/フレーム)を除いて)、4x対物レンズでタイムラプス動画を撮影した。Intelligent Imaging Innovations SlideBook(Denver、CO)によって、生のデータを含む画像を捕捉した。生のデータ(16ビットtiffファイル)をインポートし、詳細な観察について組織内のソフトウエアによって処理した。
【0085】
2つの共焦点レーザー走査顕微鏡(ZEISS LSM710(Germany)、Olympus IX-81(Japan))によって、共焦点レーザー顕微鏡観察(CLSM:confocal laser scanning microscopy)画像およびzスタック動画を撮影した。タイムラプス録画(Supplementary Movie S2)のために、最終5nMの生成ミックスとともに装置#9-1(
図30)を選択した。焦点距離により、観察のために10x対物レンズを選択した。緑色蛍光チャンネルのために、励起光488nm、発光520nmのフィルターを使用した。捕捉間隔を110秒に設定した;全部で30個のフレームを記録した。各スタックについて30枚のレイヤー(z軸)を撮影した。
【0086】
SEM
DASHパターンの生成の後に、4%パラホルムアルデヒド定着液(Electron Microscopy Science、Hatfield、PA)を装置に10分間流入させた(0.1μL/分)。4℃で24時間の固定の後、装置を開き、PDMS基板上でパターンを固定した。ヌクレアーゼフリー水ですすぐ際に、パターンを一連の段階的なエタノール(10%、25%、50%、75%、90%および100%)中で、および100%エタノールに浸漬して脱水した。その後、パターンを、Baltec(Leica)CPD 408(Germany)を使用した臨界点乾燥プロセスで乾燥させ、次いでLEO(Zeiss)1550 FESEM(Germany)で調査した。
【0087】
CFDシミュレーション
元のCAD設計(GDSII)から二次元CADファイルをDXFフォーマットにエクスポートし、次いでRhinoceros 3D(Robert McNeel & Associates、Seattle、WA)にインポートし、Autodesk Simulation CFD(San Rafael、CA)を使用してシミュレーションした。Rhinoceros 3D内で、元の二次元CADファイルを、実際のDASH装置に相当する高さを有する三次元容積に成形した。次いで、CFDソフトウエア内の作成ソフトウエアにインポートするために、モデルをSTEPファイルとしてエクスポートした。幾何学的形状を通って流れる流体について、単純化のために初期設定の水プロファイルを使用した。固体構造については、Silicone Rubberの既存の初期設定の材料と同様の特性を適用させた。次いで、最大500回の繰り返しについて、または結果が収束に到達するまで(Autodesk CFDソフトウエアによって自動的に検出および停止される)シミュレーションを実行した。シミュレーションの結果の可視化のために、3つの方法を使用した:ヒートマップ、ベクトル場、および粒子トレース。全ての結果の間でヒートマップおよびベクトル場を正規化し、均一性を維持し、容積の下から8μmに配置した(中点)。
【0088】
CFDシミュレーション(詳細なプロトコール)
導入
種々の幾何学的パターンを通る流れの小規模な傾向を見出すために、単純な計算流体力学(CFD)モデルを構築および実行した。このシミュレーションの狙いは、(多くの概括論とともに)単純なパイプラインを確立して、DASH装置の内部の流れの挙動を推定することである。次いで、この情報は新しいDASH装置の設計のため、および生成機構の推定のための補助として使用された。このシミュレーションの範囲はマイクロスケールであり、装置の内部の流れの全体的な挙動を観察することに留意されたい;もつれおよびネットワーク形成を含む流れおよびポリマーのナノスケールの挙動のような詳細な挙動のさらなる推定は、このシミュレーションにおいては考慮しなかった。
【0089】
幾何学的形状の調製
元のCAD設計(GDSII)から二次元CADファイルをDXFフォーマットにエクスポートし、次いでRhinoceros 3D(Robert McNeel & Associates、Seattle、WA)にインポートし、Autodesk Simulation CFD(San Rafael、CA)を使用してシミュレーションした。Rhinoceros 3D内で、元の二次元CADファイルを、実際のDASH装置に相当する高さを有する三次元容積に成形した。加工プロセスによって物理的にわずかに丸みを帯びたがモデルにおいては設計されたように正方形のままであった角を含み、実際の物理装置と比較して、この三次元モデルにおいていくつかの単純化を行った。同様に、装置加工プロセスによって起こった実際の物理的DASH装置における「柱状壁」での任意の丸み付けを直壁として設計した。モデルの入口/出口流路を物理装置の場合と同様だが低い程度で拡張した。これらの流路の拡張は、流れ挙動の変化の提供が非常に少なく、メッシュ数、したがって各繰り返しの計算時間が増大するだけである。
【0090】
ファイル転送および構成
次いで、CFDソフトウエア内の作成ソフトウエアにインポートするために、RhinoモデルをSTEPファイルとしてエクスポートした。CFD内で材料を適用した。幾何学的形状を通って流れる流体について、単純化のために初期設定の水プロファイルを使用した。固体構造については、Silicone Rubberの既存の初期設定の材料と同様の以下の特性を適用させた。これらの材料は実験と正確に同じ材料特性を有さないが、これらは目下の目的のための許容可能な概算であった。
【0091】
シミュレーション
次いで、最大500回の繰り返しについて、または結果が収束に到達するまで(Autodesk CFDソフトウエアによって自動的に検出および停止される)シミュレーションを実行した。シミュレーションの結果の可視化のために、3つの方法を使用した:ヒートマップ、ベクトル場、および粒子トレース。全ての結果の間でヒートマップおよびベクトル場を正規化し、均一性を維持し、容積の下から8μmに配置した(中点)。13.8μmの半径および1.34g/cm3の密度を有する粒子を使用して、粒子トレースを行った。これらの粒子を、幾何学的形状の入口面にまいた。
【0092】
DASHデータインポートおよび解析ソフトウエア
MATLAB(Natick、MA)を用いて、離散フーリエ変換に基づくDASHデータ解析ソフトウエアを開発した(
図9)。ソフトウエアは、蛍光顕微鏡観察によって捕捉される複数のチャンネル(DASHパターンを含む蛍光チャンネル、全体的な装置概要を含む明視野チャンネル)をインプットとして用いて生の強度画像または動画を使用し、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)によって画像に現れたDASHパターンの「強度」を定量的に変換および解析する。ソフトウエアは主に病原体検出のためのDASHパターンの「二値」検出(パターンの存在/非存在を区別する「裸眼」検出として知られている)の定量測定のために使用されたが、染色方法、生成ミックスのタイプ、および空間周波数にかかわらず、全体的なプロセスは一次元の線または周期的な二次元パターンを有するDASHパターンの一般的な定量分析方法として容易に適用し得ることに留意されたい。
【0093】
ここで、本書類中で使用されている全体的なプロセスを簡単に記載する。最初に、生の画像(動画)をインポートし、前処理した。元の生の画像中のランダムな角度のランダムな位置で装置を記録したので、蛍光チャンネルにおけるバックグラウンド値を引くことに加えて、装置の回転および位置を補正し、それに続いて画像をクロッピングすることによって、第一の工程はデータを標準化する必要がある。バックグラウンド強度を、画像中100ピクセルの平均強度(DASHパターンを含まないチャンバーの内部の領域から選ばれた)から引いた。動画中の全てのフレームについてプロセスを繰り返した。いくつかの場合において、PDMSに基づく装置の弾性特性のために、観察の間に装置自体がゆっくり移動した。これらの場合、前処理の前にさらなる画像安定化プロセスを適用して、全てのフレーム全体を通した一貫性を確実にした。書類全体を通して、インポートされた画像および動画を使用した。
【0094】
次に、フレームごとにFFTを画像に適用した。CMV病原体検出の場合、網目パターンを有するジグザグの幾何学的形状(
図30、#9-1)を実験に使用したので、二次元FFTを変換方法として選択した。試料画像から正方形の領域(310px×310px、元のサイズの500μm×500μmに相当)を選択し、周波数領域に変換した。動画における全てのフレーム全体を通して同じ位置を選択した。(一次元FFTの場合、列の各一片(1px×310px)を1つずつ変換した。)変換の後、DASHパターンと一致する空間周波数ピークを選択した。二次元のジグザグの幾何学的形状の場合、対応する角度を有するf=10(Hz)の基本周波数を選択した。このプロセスは、典型的なノッチフィルタリング(notch filtering)プロセスの「逆」のように解釈し得る。通常、ノッチフィルターは、スペクトルの周期雑音を排除するために、周波数領域画像中の特定のピークを除去する。しかしながら、このDASHパターンの場合、特定のスペクトルピークを有するこれらの周期的パターンは、雑音の代わりに信号である(およびその逆)。この方法の強みは、一度DASHパターンを設計すると、次いで調整のためのいかなる任意のパラメータもなしに空間周波数およびパターンの角度が決定論的に定義されたことである。この方法は、全体的な定量分析を大いに単純化し、正確性を確実にし得る。例えば、この二次元FFT法は特定の角度を有する特定の空間周波数を選択し得るので、柱への弱いDNA付着のような他のスペクトルおよび/または角度を有する雑音(同じまたは類似しているが異なる角度を有する周波数を含む)、ならびにランダムな高いバックグラウンドを、実際のDASHパターン(信号)から自動的に区別し、雑音として計数し得る。最後に、画像中のDASHパターンの信号の信号対雑音比(SNR)をフレームごとに計算し(より高いとDASHパターン生成がより強い)、生成されたパターンの定量的インジケーターとして使用した(
図33)。
【0095】
DASHに基づく病原体検出
標的のために、キュウリモザイクウイルス(CMV)から採取された配列を使用した。非標的のために、配列変化の合計2塩基対のミスマッチ(ライゲーション部位の両側に1塩基対)を作成した。実験の単純化のために、全標的配列長を33塩基長に短縮した;RNAの代わりに、化学的に合成された一本鎖DNAを使用した。最終1x RepliPHI Phi29バッファー中の鋳型およびプライマーDNAを含む溶液に標的DNAを加えることによって、認識を行った。アニーリング方法(-1℃/分で95℃から室温に)に従って、最終10単位/μLのT4 DNAリガーゼを1.19mM ATPとともに加え、反応を4℃で一晩放置した。次いで、対応する濃度のライゲーションされた鋳型-プライマー混合物を用いた標準的な方法に従うことによって、増幅のための生成ミックス(DASHパターン生成)を調製した;次いで、0.1μL/分で最大4時間、溶液を装置に注入した(
図30、#9-1)。プロセスの間、タイムラプス動画を記録した;次いで、組織内のソフトウエアを使用して、結果をインポートした。
【0096】
DASH-アビジン/ストレプトアビジンハイブリッド材料
ジグザグパターンの装置(
図30、#9-1)を用いた標準的なプロトコールを1時間~1時間20分にわたって使用して、DASHパターンを生成した。DASHパターンが正確に形成されたことを確かめるために、1x最終濃度のSYBR green Iを生成ミックスに含めた。DASH生成の直後に、1x RepliPHI反応バッファー中のテキサスレッド複合アビジンまたはテキサスレッド複合ストレプトアビジンのいずれかの50μg/mL溶液を、0.1μL/分で1時間、装置を通って流した。次いで、新鮮な1x RepliPHI反応バッファーを30分間、装置を通って流して、画像化の前に結合していない任意のタンパク質を除去した。
【0097】
DASHパターンが装置全体を通して確実に均等に形成されるために、二色のアビジン結合のために全ての入口を通ってDASH生成用溶液を同時にポンプで注入した(それぞれ0.1μL/分で)。FITC結合アビジンとのスペクトル重複を避けるために、SYBR Green Iは生成ミックスに含めなかった。DASH形成の後、50μg/mLのテキサスレッド複合アビジンおよび50μg/mLのFITC複合アビジンを同時に装置(1つの入口につき1つのアビジンコンジュゲート)に0.1μL/分でそれぞれ1時間ポンプで注入した。画像化の前に、装置を1x Phi29反応バッファーで15~30分間洗い流し、バックグラウンドを減少させた。
【0098】
DASH-量子ドットハイブリッド材料
SYBR Green Iなしで、標準的なプロトコールを1時間30分にわたって使用して、DASHパターンを生成した。DASH生成の直後に、1x RepliPHI反応バッファー中のFITC複合アビジン(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)の250μg/mL溶液を、0.1μL/分で1時間、装置を通って流し、次いで1x RepliPHI反応バッファー中の最終0.2μMのビオチン標識Qdot605ナノ結晶(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)で10~30分間、装置を通って流した。FITC複合アビジン結合プロセスなしに、対照試料を試験した。
【0099】
DASH-AuNPハイブリッド材料
Ted Pella(Redding、CA)から、クエン酸被覆された40nmおよび5nm金ナノ粒子を購入した。使用されたオリゴヌクレオチドは、規則正しく、Integrated DNA Technologiesの5’チオール基と結合させ、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP:トリス(2-carboxyethyl)phosphine hydrochloride)を使用した脱保護による付着の前に活性化させた。1対5(DNA:TCEP)の比でオリゴヌクレオチドをインキュベートした。次いで、脱保護されたDNAを、5nm金ナノ粒子について80:1のDNA:AuNP比で、40nmについて4200:1の比で、AuNPに加え、最大表面被覆率を確実にし、次いで室温で500rpmで一晩振とうした。次いで、8時間の期間にわたって終濃度500mMまでNaClをゆっくり加え、DNA-DNA反発作用を減少させ、DNA被覆率をさらに増大させた。次いで、ヌクレアーゼフリー水中の5回の遠心分離によってナノ粒子から塩および過剰なDNAを除いて精製した。
【0100】
装置#9-1を使用した標準的なプロトコールを使用して、DASHパターンを生成した(
図30)。70分間の生成の後に、最終1x RepliPHIバッファーを有するDNA結合5nmまたは40nm AuNP溶液を装置の内部に45分間流した(0.1μL/分)。顕微鏡によってプロセスを常にモニタリングして、ナノ粒子の十分な付着を確実にした。
【0101】
無細胞タンパク質発現
最終1x RepliPHIバッファー中の8mM混合物のdNTP、4単位/μLのRepliPHI Phi29 DNAポリメラーゼ、および0.5μg/mLのHoechst 33342を用いた15nMの最終種濃度で標準的なプロトコールと同様のプロトコールに従うことによって、DASHパターン生成を行った。その後のタンパク質発現工程のためのsfGFPの緑色発光波長と重複しないように、SYBR Green Iの代わりに青色のHoechst色素を使用して、DASHパターン生成の確認のためにDNAを染色した。パターン生成が完了するまで、タイムラプス観察によって生成プロセスをモニタリングした。
【0102】
DASHパターン生成プロセスの後、タンパク質発現プライマーを0.1μL/分で60分間注入した。プライマー配列を、タンパク質発現を活性化するために、DASHパターンに存在するT7プロモーター領域に結合させるよう設計した。次いで、タンパク質発現のために、Promega(Madison、WI)のS30 T7 High-Yield Protein Expression Systemを使用した。ヌクレアーゼフリー水、S30 Premix PlusおよびS30 T7 Extract(ともにキットを供給されている)を2.4:4:3.6比で混合し、0.1μL/分で注入した。DASH装置におけるCFPEの直接的観察のために、ポンプが20分ごとに停止して滞留時間が増加するようにプログラムして、マイクロ流体装置における蛍光を直接観察した。定量測定のために(
図4E)、装置における合計2時間のCFPEから溶液を収集し、BioTek(Winooski、VT)のSynergy 4 Microplate Reader(励起光475nm、発光508nmのフィルターを有する)を使用して蛍光を測定した。
【0103】
配列
鋳型およびプライマーDNAの組み合わせによって、生成の種を設計した。この開示において、全ての生成および分解実験全体を通して、以下の配列を使用した(いくつかの対照実験、DASHに基づく検出、および無細胞タンパク質発現実験を除く)。
プライマー(T1c):GACCACCTTCGCGTCCAAAGC(配列番号:1)
鋳型(T2-Eco):CGAAGGTGGTCTTTTTTTTTATATAGAATTCTATATATTTTTTTTGCTTTGGACG(配列番号:2)
【0104】
記:配列は、5’->3’方向で書いた。5’および3’対は、相補配列を表す。ライゲーションプロセスのために、5’リン酸化で鋳型DNAを調製した。
プライマー(T1c-NCTRL):CAACCAAACACCCCAACCACC(配列番号:3)
鋳型(T2-NCTRL):GTGTTTGGTTGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTGGTGGTTGGG(配列番号:5)
【0105】
鋳型配列は、ポリT配列を使用したリンカーによって連結されたさらなる中央ドメインを有する、プライマー(青色および赤色)に対する相補配列の2つのセグメントで構成される。Eclipse(Winfreeグループ(Caltech Centrosome DNAdesignウェブサイト)によって、元のMATLABバージョンを開発した)上で実行される組織内のバージョンのDNADesign MATLABツールボックスによって配列を設計した。病原体検出およびタンパク質発現のような適用のために、特異的配列を有する異なる組の鋳型/プライマーを、生成の種のために設計した。
【0106】
生成の種の調製:ゲル電気泳動
ゲル電気泳動によって、反応の後に1xおよび2xサイズの環状鋳型が成功裏に形成されたことを確認した。この場合、結果によると、鋳型中の回文配列によって、2x環状鋳型もまた生成され、これが別の鋳型とのハイブリダイゼーションにつながり、二倍の長さで終わった。T2-NCTRLおよびT1c-NCTRLは、ライゲーションの後の1xサイズの環状鋳型形成のみを示した。
【0107】
装置の実験構成
マイクロ流を使用した同時の合成および集合を、配管およびシリンジに連結されたマイクロ流体装置の組み合わせによって具体化した(
図8)。調製された生成ミックス溶液を、1mL BD Medical Tuberculin Syringe(Franklin Lakes、NJ)、および挿入先端としての短いMicrogroup皮下管留置(Medway、MA)に連結されたCole-Parmer Microbore Puri-Flex Autoanalysis Tubing(Vernon Hills、IL)に引き入れた。溶液を調製した直後に、次いでシリンジをHarvard Apparatus PHD-2000シリンジポンプ(Holliston、MA)に付け、注入した。実験の前に、DASH装置をヌクレアーゼフリー水で事前に満たした;入口および出口の両方もまた、水で覆った。一度生成ミックスが先端に現れると、次いで先端をDASH装置に直ちに挿入する。装置および先端はともに溶液で覆って、プロセスの間に確実に気泡が装置に入らないようにしたことに留意されたい。典型的には、生成ミックスは0.1μL/分でDASH装置に注入した。
【0108】
生成-分解/移動/競争実験の構成に関するさらなる記録
生成-分解、移動、および競争実験
生成-分解実験のために、3つの入口を有する設計(
図36、#14-2)を設計した。中央の入口(1:#14-2カタログ中の赤色)を生成溶液(最終種濃度0.1nM)に連結させる。横の入口(2:青色、2つの入口に分かれる)を分解用溶液(最終1x Phi29反応バッファー中のDNアーゼI(1単位/μL))に連結させた。生成用および分解用溶液の両方を0.1μL/分で注入した。創発的な移動実験のために、勾配渦度領域を有する2つおよび3つの入口を有するトラック(
図40、41、42、#22-3、23-3、23-4)を使用した。両方の溶液を0.15μL/分で注入した。創発的な競争実験のために、勾配渦度領域を有する3つの入口を有するトラック(
図41、#23-3)を使用した。両方の溶液を0.15μL/分で注入した。
【0109】
繰り返される生成-分解実験
一定の合成反応時間を確実にするために、さらなるT字路モジュールを有する、3つの入口を有する装置(ID#20-2)を設計した。2時間の合成反応時間(0.1μL/分の流速下)に対応する長さの外部配管がT字路の出口と2つの入口を有する装置の入口1との間を連結した。Phi29酵素を含むがdNTPを含まない反応混合溶液を入口1-1に使用し;Phi29を含まないが最終2mM dNTPを含む溶液を入口1-2に使用した。1-1および1-2はともに0.05μL/分で注入した。T字路の中央の貯水器で溶液を混合した;外部配管を通って2時間流れている間に合成が起こった。入口2については、生成-分解実験で使用されたのと同じDNアーゼI溶液を使用した(0.1μL/分で注入した)。
【0110】
SEM観察のための転写方法
DASH-AuNPパターンを含む試料のSEM観察のために、粘着テープを基板として使用した「剥離可能な」PDMS装置構成によって、転写可能なDASH装置を調製した。全体的なプロセスを、SEM試料調製に加えて、このDASHプラットフォームの将来の適用のための一般的な転写技術として使用し得ることに留意されたい。スライドガラス上に逆さまに置くことによって(すなわち、粘着面を上にして)、3M Scotchテープ(Maplewood、MN)を基板として使用し、次いでPDMSチャンバー装置を優しく上に置き、封をした。前述の典型的な方法に従うことによるDASHパターン生成および金ナノ粒子付着の後、-80℃の冷凍庫で一晩、装置を直ちに冷凍した。次いで、チャンバーの内部の溶液が溶け始める前に、室温でPDMS装置を基板から剥離させた。結果として、除去プロセスの間、氷の内部に構造が残るので、DASHパターンが基板側に転写された。
【0111】
病原体検出に使用される配列
CMV標的:CTGAGTGTGACCTAGGCCGGCATCATTGGATGC(配列番号:5)。
非標的:CTGAGTGTGACCTAGGAAGGCATCATTGGATGC(配列番号:6)。
鋳型:GCCTAGGTCACACTCAGTTTTTTTTCGGTGCGAGTTTACGCTCTACTTTTTTTTGCATCCAATGATGCCG(配列番号:7)。
DASH生成プライマー:GTAGAGCGTAAACTCGCACCG(配列番号:8)。
【0112】
DASH-AuNPハイブリッド材料生成に使用される配列
【化1】
【0113】
リンカーDNAは、ポリTと、それに続く、T2-Eco鋳型由来の合成されたDNAの相補配列を有するセグメント(イタリック体で示す)を用いて設計した。上述のコンジュゲーションプロセスのために、5’側にチオール基修飾を加えた。
【0114】
DASH-酵素機能化方法
500pMの最終種濃度の標準的なプロトコールに従うことによって、DASHパターン生成を行った。蛍光顕微鏡によって、パターン生成が完了するまで最大4時間、生成プロセスをモニタリングした。パターン生成に従って、Bio-rad(Hercules、CA)のアビジン-HRP溶液を、最終1x SYBR Green Iを有する最終1x RepliPHIバッファー中10μg/mlまたは100μg/mlの濃度で調製し、0.1μL/分で1時間、装置に注入した。次いで、最終1x SYBR Green Iを有する最終1x RepliPHIバッファーの溶液を0.1μL/分で1時間注ぎ流すことによって、過剰なアビジン-HRPを洗浄した。DASHパターンに結合したHRP活性アッセイのために、Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA)の1-Step Ultra TMB-ELISA基質溶液を使用した。TMB基質溶液を、0.1μL/分で1時間、装置に注入した。DASHパターンからのHRP活性の局在の確認のために、Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA)のQuantaRed Enhanced Chemifluorescent HRP Substrate Kitを使用することによって、in situ HRP反応をモニタリングした。1ng/mLまたは1μg/mLのQuantaRed溶液を、0.1μL/分の流速で装置に注入し、蛍光顕微鏡によって、最大2時間連続的にモニタリングした。
【0115】
無細胞タンパク質発現に使用される、さらなる方法および配列
生成の種の調製
sfGFP(super-folded Green Fluorescent Protein)配列を含むプラスミドを使用することによって、DASH生成の種のための環状DNA鋳型を調製した。最初に、最終0.25単位/μLのNew England Biolabs(Ipswich、MA)のNb.BsmIニッキングエンドヌクレアーゼと混合されたNew England Biolabs(Ipswich、MA)の最終1x NEBufferの溶液中で100ngのプラスミドを調製した。溶液を65℃で5時間インキュベートし、その後80℃で20分間、次いで-1℃/分で室温まで冷却して、酵素不活性化工程を行った。次に、最終0.2単位/μLのエキソヌクレアーゼIおよび最終1単位/μLのエキソヌクレアーゼIIIを、次いで加え、反応物を37℃で5時間インキュベートした。次いで、エキソヌクレアーゼを80℃で20分間不活性化し、その後-1℃/分で室温までアニーリングプロセスを行った。ゲルバンドから、元の二本鎖プラスミドDNAからの、環状鋳型DNAの形成の成功が示された。次いで、EMD Millipore(Billerica、MA)の30k Amicon Ultra遠心式フィルターを反応溶液1μlあたり8μlのヌクレアーゼフリー水とともに使用すること、および10,000xgでの遠心分離によって、一本鎖環状鋳型を含む溶液をバッファー交換した。鋳型を収集する前に、水の添加、およびそれに続く遠心分離を2回繰り返した。次いで、95℃から室温まで-1℃/分で溶液をアニーリングすることによって、DASH生成プライマーを1:1モル比で鋳型にハイブリダイゼーションした。
配列
DASH生成プライマー:CAAAAAACCCCTCAAGACCC(配列番号:10)
タンパク質発現プライマー:TAATACGACTCACTATAGGG(配列番号:11)
緑色蛍光タンパク質発現鋳型(プラスミド)(配列番号:12)。
【実施例3】
【0116】
DASHパターン形成プロセスの対照実験
大きい(ゲル様)ネットワークの予備形成後の再分布
同時の合成および形成の代わりに、対照のために、予備形成されたDNAネットワークをDASH装置の内部に再分布させた。0.6mLチューブ内で生成ミックス(最終0.5nM)を室温で1、2、4時間インキュベートし、次いで90℃まで20分間加熱し、氷によって直ちにクエンチし、装置を通過して2時間流した(0.1μL/分)。試料を加熱して、集合(装置-流れ)プロセスの間に酵素反応を不活性化してさらなる合成を停止し、その後で直ちにクエンチしてネットワークの形成を促進したことに留意されたい。同等な条件(装置タイプ、流速、種濃度)で、DASH構造は、典型的には、反応の開始のおよそ2.5時間後に、繊維状のネットワーク構造を形成し始める。しかしながら、全ての試料は、この条件を有する装置全体を通して、ランダムなゲル様集合体を作り出した;DASHパターンは観察されなかった。この結果から、小さいネットワーク(およびin situのネットワーク形成)の再分布がDASH形成の背後の重要な機構の1つであり得ることが示唆される(すなわち、予備形成された大きい集合体は、一度それらが形成されると、再分布プロセスの間に繊維状パターンへと形態を容易に変化させ得ない)。
【0117】
大きいゲル様ネットワークの予備形成なしの再分布
DASH生成の間の形成プロセスを明らかにするために、別の対照実験を行った。最適なタイミング(2.5時間)で、しかしこの時はクエンチによってゲル様の大きい集合体の予備形成を促進することなく(すなわち、全てのプロセスは室温で行われた)、予め合成されたDNA(T2-NCTRL鋳型、最終5nM)の再分布を試験した。ここで、0.6mLチューブ内の2.5時間の成長の後、熱に基づく酵素反応の不活性化を使用する代わりに、New England BiolabsのプロテイナーゼK(最終0.02単位/μL)を混合した。次いで、溶液を0.1μL/分で4時間流した。
【0118】
結果から、この方法で(非自律的に、手動の操作に基づいて)、予め合成された長いDNAが再分布され得、DASHパターンを形成し得ることが示される。しかしながら、この場合、単純に、おそらくより小さい予備形成されたネットワークの形態で、合成された長いDNAの再分布により形成が起こるので、装置の内部に不均一なパターンが観察される(すなわち、上流側(画像の右半分)のみが繊維状パターンを含んでいた)。本文で言及されるように、連続的かつ自律的合成および流れ、特に渦度は、柱の側面でのネットワークの局所的形成を誘発するのに重要であり、そのため装置の内部のDASHパターンの均一な生成につながる。
【0119】
形成プロセスの間のDNAハイブリダイゼーションの寄与
最後に、上に示した実験と同様に再分布を使用して、ネットワーク形成の背後の機構をさらに調べる。最終5nM濃度のT2-NCTRL鋳型を、生成ミックスに使用した。ここで、チューブにおける2.5時間の合成の後、プロテイナーゼKを先の試験と同様に混合し、次いでホルムアミド(最終50%)もまた溶液に混合した。ホルムアミドを使用することは、DNAのin situハイブリダイゼーションのための周知の方法であり、基本的に、直鎖様式の二本鎖の融解温度を、ホルムアミドの各パーセントについておよそ0.65℃低下させる。
【0120】
三つ組の試験から、ホルムアミド処理の後の試料を使用して、DASHパターンが観察されなかったことが示された。前の節で示された、成功した再分布結果と比較して、結果から、長いDNAポリマーによる物理的なもつれに加えて、ハイブリダイゼーションがこの生成プロセスにおいて少なくとも一部の役割を果たすことが示唆される。
【実施例4】
【0121】
繊維状ネットワークにおけるDASHパターンおよび球状構造のSEM画像
測定
試料SEM画像から選ばれた、合計30個の点を使用して、DASHパターンに見られる球状構造の直径を測定した(補足
図S12)。0.26±0.10μmの平均を得た。
【0122】
DASH形成のための、ssDNAの推定される臨界分子量
製造業者によって提供された技術仕様書に従うことによって、反応によって合成された平均ssDNA長を、概略的に推定し得る。製造業者によると、1単位のRepliPHI Phi29は、30分の間に25pmolのdNTPを処理し得、すなわち、1時間の間に50pmolのdNTPをssDNAに組み込む。典型的な反応は、最終5nMの生成の種濃度で5.7単位/μLの酵素を含む。このパラメータに基づく1時間の合成の後のssDNAの平均長は:
【数1】
【0123】
例えば、5nMの生成の種濃度を用いた装置#9-1(
図30)に必要な典型的な最小生成時間は、およそ2時間であった。よって、この場合、N
(2時間)の平均長=1.1×10
5nt、すなわち、3.3×10
7の分子量である(1000万Daを超える分子質量)を、この条件下でのDASH形成のための臨界分子量の概略的推定として計算した。
【実施例5】
【0124】
渦度および流速の感度分析のための対照実験
柱の側面でのDASH生成と流れ(速度(rate)、速度(velocity)、渦度)の間の関係を概略的に理解するために、同じ柱の幾何学的形状を有する装置を使用した実際の実験およびCFDシミュレーションを使用して、いくつかのさらなる測定および比較を行った。
【0125】
3つのチャンバーを有する装置を使用した実験
3つのチャンバーを有する装置(
図38、#12-1)を使用して、流速とDASH生成開始時間との間の関係を測定した。全部で3つのチャンバーは、同じ柱寸法を共有した(#3-1と同じ);メインチャンバーの幅(狭い:175μm、中位:385μm、広い:805μm)のみが異なった。顕微鏡の最大画像捕捉サイズに基づいて、幅を決定した。この設計によって、1つの試験において、同じ柱設計で3つの異なる流速での同時のDASH生成試験が可能になった。シミュレーションおよび実際の実験の両方において、3つの流速(遅い:0.1155μL/分、中位:0.231μL/分、速い:0.462μL/分)を選択した。真ん中のチャンバー(例えば、0.1μL/分の流速(およそ0.2~0.5mm/秒の間)での装置#3-1(500μm幅))での標準的な実験(1つの入口を有する装置(1-inlet device)で)の同等の流速を有するために、真ん中の流速を設定した。CFDシミュレーション結果から、意図した通り、チャンバーの幅および流速に対応する、装置の内部の流速および渦度の差が成功裏に示された(
図10A~10Cおよび
図11A~11C)。
【0126】
渦度/速度およびDASH生成開始時間との間の関係
実際の実験でかかったDASH生成の開始時間に対して、柱の側面の平均渦度を比較した。5nMの生成の種濃度で#12-1装置を使用し、上述の3つの異なる流速を設定することによって、実際の実験を試験した;蛍光顕微鏡によって各生成プロセスを測定した(150秒/フレーム)。一次元フーリエ変換に基づく、生成されたDASHパターンの信号対雑音比(SNR)計算を、行ごと、チャンバーごと、およびフレームごとに実行し、次いで各チャンバーにおいて6つの連続した行の試料(行番号213~218)を選択し、各条件のDASH生成プロセスを表す試料データとして平均値を使用する(
図12)。2.0のSNR値を、定量的に生成開始時点を決定する任意の閾値として設定した;各試料において閾値を上回る時点(フレーム番号)を、DASH生成の開始フレームとして記録した。装置の内部の「特徴的な」流速(μm/秒)がグラフ中の凡例として使用されたことに留意されたい;値は、チャンバーの断面サイズに基づいて単純に計算した(W×H(μm
2);W=チャンバー幅、H=17.4μmおよび流速(μL/分)。次いで、それぞれの条件下で各特徴的な流速を、CFDシミュレーションによって渦度に変換した。特徴的な流速と渦度との間のプロットから、2つの値の間の明らかな相関が示された。
【0127】
これらのデータに基づいて、渦度とDASH生成開始時間との間の比較をプロットした。グラフから、渦度と生成開始時間の逆関数との間の相関(1/フレーム)が概略的に示され、渦度およびDASH生成開始時間は逆相関(すなわち、より高い渦度は、より早い生成開始時間を生じる)を有することが示唆された。
【実施例6】
【0128】
異なる柱の形状の間の渦度比較
シミュレーション
材料および方法(実施例2)で言及されたプロトコールに基づいて、種々の装置の幾何学的形状のCFDシミュレーションを試験した。具体的には、正方形の柱(
図28、#3-1)および菱形の柱(
図39、#3-2)の装置は、装置の、同じ全体的な幾何学的形状を共有する(柱の間の同じ周期性、柱の数、および柱の同じ幅を含む)が、柱の形状が異なる。結果として、全体的な流速はほとんど同一になった(
図13A~13B)が、柱の側面での渦度の大きさは、正方形の柱と比較して、菱形の柱では、その流線型の形状のために大幅に減少した(
図14A~14B)。2つの幾何学的形状の間のこの差を、柱の側面の高い渦度の領域の程度およびサイズの差がDASH生成プロセスに影響を与えるか否かの比較のためのモデルケースとして使用し得る。
【0129】
生成時間比較実験
渦度の差による効果を調べるために、正方形および菱形の柱の装置の両方から生成されたDASHパターンの信号対雑音比(SNR)を、プロセスの間のタイムラプス観察によって実験的に測定した。値は、各フレームで観察された、生成されたDASHパターン(一次元の線パターン)の「強度」を定量的に表す(より高いS/Nは、より強いパターン生成を表す)。同じ実験条件で(0.5nMの生成の種濃度、0.1μL/分の流速)、三つ組(赤色:四角形の柱、青色:菱形の柱)で試験を実行した。
【0130】
結果(
図15)から、2つのタイプの柱の形状の間の差に明らかな傾向があることが示された;正方形の柱を有する装置は、流速および種濃度を含む他のパラメータが同じでも、菱形の柱の装置よりも速くDASHパターンを生成した。結果から、柱の側面での渦度の差が生成プロセスに影響を及ぼしたことが示唆される(より高い渦度は、より速い生成をもたらす)。
【実施例7】
【0131】
DASHパターンの生成-分解
FSA表示
ロボット工学、システムエンジニアリングおよびコンピュータサイエンスにおいて一般的に使用される数学的モデルである有限状態オートマトン(FSA)として、連続的生成および分解挙動を記載する(
図3B)。
M:Q={開始、成長、崩壊}
Σ={開始した生成、変化した流れ、完了した消化}
F={開始}
【0132】
ここで、Qは一組の状態(挙動)を表し、Σは一組の入力刺激(各挙動の解発因)、Fは最終状態である。モデルによって、開始、成長、および崩壊のような3つの異なる状態を使用して個別に全体的な挙動の概算が可能になる。開始は、いかなるDASH形成もない開始状態を表す;装置に流入する3つ全ての溶液は層状のままであった。DASHパターン生成は成長状態への状態遷移を誘発する。この状態の間、層状の流れにより、分解ミックスは生成ミックスと分離されたままであるため、同化作用プロセスが起こる。生成されたDASHパターンが柱の間のギャップを一度満たし始めると、流れはこの物理的フィードバックによって変化し、そのため状態遷移が起こり、崩壊状態に変化する。生成用および分解用溶液の混合により、異化作用プロセスが装置の内部で優位を占め、そのためパターンが分解する。消化が完了すると、状態は元の開始状態に戻り、DNA合成時間が一定に保たれている場合、ループを繰り返し得る。
【0133】
実験結果の詳細な説明
標準的なプロトコールを使用して、タイムラプス動画を記録した。列120~190の間の行837(DASHパターンの複数のセグメントと交差する)の平均強度を測定することによって、本文中の平均蛍光強度プロット(
図3C)をプロットした。複数の位置で同調的に生成/分解が起こったことをさらに示すために、例えば、3つの標本点からの蛍光強度をプロットした。3つ全ての標本点において、およそ200~250分に単一の強度ピークが観察され、これは上述の平均蛍光強度とよく一致する。DASHパターンの3つの異なるセグメントから点を選択した。また、長方形の領域(DASHパターンの2つのセグメントを含む)の平均強度もまた、計算して、挙動が特定の標本点の変則的な挙動によらないが全体的な生成/分解挙動によることをさらに示した。3つの異なるDASH装置からの三つ組の記録は、同様の傾向を成功裏に繰り返した。また、陰性対照試験(DNアーゼIなしの分解ミックス)は、崩壊挙動を示さなかった。結果から、DASHパターンが生成され(およそ250分まで)、次いでDNアーゼI活性のために同調的に完全に分解されたことが示される。
【0134】
CFDシミュレーション
ここで、我々は、制御された蓄積を伴うDASHパターンの展開に従って、DASH装置の内部の流れの挙動をシミュレーションした(補足
図S24);構成を単純化するために、我々は、固体領域として認識される、実験から蓄積した領域を追跡し、CFDシミュレーションを行った。粒子トレースモデル(粒子密度:1.34g/cm
3;粒子半径:13.8μm、反発係数:0.5)を適用した。中央の入口からの粒子(入口1;生成ミックス)を黒色で着色した;横からの粒子を赤色で着色した。
【0135】
最初に、黒色の粒子(生成ミックス)のある領域で生成プロセスの間に横からの分解用溶液の効果が最小に維持されるように、層状の流れが流路の内部で2つの個別の領域を作り出し(
図16A)、そのため実際の実験において、装置の中央の領域にDASHパターンが生成された。一度装置の中央で制御された蓄積が起こると(
図16B)、展開の間、この構造変化が溶液を変化させ始め、黒色および赤色の粒子の混合物をもたらす(すなわち、生成用および分解用溶液の混合物)(
図16Cおよび
図16D)。結果として、分解ミックスは、混合された領域では生成を越え、そのためDASHパターンは消化された。CFDシミュレーションから、成長から崩壊への状態の切り替えが、制御されたDASHパターンの蓄積によって誘発された時間空間的フィードバックによることが明らかに示された。
【0136】
繰り返される生成-分解
生成/分解実験と同様に、静的位置での、DASHパターンの繰り返される生成/分解を、装置#20-2を使用して試験した。ここで、装置の内部の不可逆的蓄積を最小化し、12時間の観察全体を通して反復可能な再分布プロセスを可能にするために、我々は合成時間を一定の2時間の反応に制御したことに留意されたい。他の実験と同じく、この実験はまた、人間の操作/介入なしに行われる;全ての生成/分解反応が自律的に実行された。
【0137】
最終0.1nMの生成ミックス溶液を用いて試験を試した。グラフ(
図17)は、列135~165の間の行822(DASHパターンの複数のセグメントと交差する)で平均をとることによる全体的な挙動を示す。また、異なる位置での同調的挙動を示すために、タイムラプス動画から3つの標本点を選択し、強度をプロットした。さらに、現象が特定の標本点の変則的挙動によらないことを示すために、DASHパターン(1つの繊維セグメント)を含む長方形の領域からの平均もまたプロットした。12時間の試験の間に2つのピークを示すことによって、全ての結果は、2サイクルの生成および分解に全体的な一貫性を示した。同様の結果はまた、異なる濃度の生成ミックス(0.5nM)を使用することによって繰り返された。
【実施例8】
【0138】
DASHによって駆動される創発的移動挙動
分析
本発明者らは、質量中心プロット(CoM)および境界線検出のような2つのパラメータによって、体の移動を定量的に分析した。CoMは、画像における質量の全体的な移動を表す;境界線は、実体の連続的な移動を示す。
【0139】
CoMプロット
2つのタイプの一直線のトラック(広い幅:
図40、#22-3および狭い幅:
図41、#23-3)を用いた移動の間のDASHパターンの質量中心(CoM)をプロットした(
図3D)。CoMとタイムラプス画像の左端との間のx軸距離を、移動の間プロットした。
【0140】
値の最初の減少(すなわち、下流側に向かったCoM移動)は、装置の最左端(下流)のパターンの最初の展開によるものである。(装置の内部でパターン生成が起こらなかったため、初期設定のCoMの位置は画像の中央である;最終的には、CoMは最下流領域での最初のパターン生成によって移動した。)一度パターンが流れの方向に逆らって上流に向かって移動すると、CoMはパターンの位置に対応し、移動を正確に表した。一度パターンが装置の右端(最上流領域)に到達すると、CoMは最終的な位置でほぼ「停止した」。移動の平均速度を、CoMの最初および最後の位置から1.2mm/時間(#22-3)および2.3mm/時間(#23-3)として計算した。
【0141】
境界線分析
流路中で最も広い連続した領域を占めるDASHパターンとして、体を定義した。この定義に基づき、MATLABを使用した以下のアルゴリズムに基づいて境界線分析を計算した。最初に、組織内のソフトウエアを使用して、蛍光顕微鏡からのタイムラプス画像をフレームごとに読み込み、次いで任意の閾値(0.015)を使用して二値(黒色および白色)画像に変換した。次いで、二値画像中の「穴」を埋め、体の領域を決定した。最後に、画像中で最も広い、占められた領域をフレームごとに選択し、次いで領域の境界線を、動画に示されるように表示した。
【実施例9】
【0142】
DASHに基づく検出の詳細
ハイブリダイゼーション/ライゲーションに基づく認識、DASHパターン生成に基づく増幅、およびDASHパターン認識に基づく読み出しの組み合わせを使用して、DASHに基づく検出を設計した(
図18)。認識プロセスは、標的DNAまたはRNAの相補配列を有する鋳型を使用する;例を単純化するために、この実証において、陰性対照は、鋳型のライゲーション部位に2塩基対のミスマッチを有する「不正確な」標的配列を使用する。正確な標的および鋳型の組み合わせのみ、鋳型のライゲーション(環状化)が成功に終わり、これによって、次の増幅工程のための酵素的合成プロセスが可能になる。DASHのメソスケールのパターン生成能力を利用することによって、増幅および読み出しの両方が同時かつ自律的に行われたことに留意されたい。
【0143】
結果
合計78個のフレームについて(150秒/フレーム)を使用して、タイムラプス記録を使用して、陽性および非標的(5pM~500pM)の両方由来の三つ組の試料を観察した。装置の内部のパターンの存在を定量的に表すために、組織内のFFTソフトウエアを使用して、生成結果を分析およびプロットした(
図19A~19Bおよび
図20A~20B)。生成されたDASHパターンの信号対雑音比(S/NまたはSNR)の最大値を1つの軸として使用し、チャンバーの内部の平均蛍光強度からの最大値(バックグラウンド強度を引いた後)をプロットすることによって別の軸を使用することによって、比較プロット(
図21)を生成した。ここで、SNR表示を使用して、パターンの存在/非存在を定量的に示した(すなわち、定量的に裸眼の読み出しをシミュレーションする);我々がSNRの任意の閾値=15を設定すると、
図4Aに示されるように、結果は我々の定性的観察結果とよく対応した。プロットはまた、我々のパターン認識に基づく検出が、平均強度値(両方の濃度で検出不可能であった)と比較して、標的濃度を用いて検出感度を10倍より高く(500pMおよび50pMで検出可能)向上させ得、陰性対照試料(2塩基対のミスマッチを有する標的配列)と比較して特異性を維持し得るという明らかな比較を示した。
【実施例10】
【0144】
DASH-アビジンハイブリッド材料
結果から、アビジンが成功裏にDASHに結合した(
図4Bおよび
図22A~22B)が対照実験としてのストレプトアビジンでは結合しなかった(
図23A~23B)ことが示される。アビジンおよびストレプトアビジンはともに、補酵素ビオチンに結合するそれらの能力が周知である。しかしながら、これらの関連のあるタンパク質の間には、DNAに対する親和性(DASHパターンを含む)における観察された差を説明する明確な生化学的差がある。最初に、アビジンは、およそ10の強塩基性の等電点を有し、RepliPHI反応バッファー(pH7.5)中でそれ自体正味の正電荷を有する。よって、アビジンは高度の負電荷を有するDNAに静電気的に引かれる。一方、ストレプトアビジンは、約5または6のpIを有し、そのためRepliPHI反応バッファー中でわずかに負の正味電荷を有する。静電引力を越えて、アビジンはグリコシル化されるが、ストレプトアビジンはアビジンと種々の基質との間の非特異的結合の増大に寄与していない。先の研究において、アビジンとDNAとの間の非特異的相互作用は詳細に特徴づけられており、全体的な正電荷およびタンパク質の独特の構造モチーフの両方のために親和性が高いことが示されている。
【0145】
このアビジンに基づく結合は、アビジン-ビオチン相互作用を使用した、アビジン-タンパク質コンジュゲートまたはビオチン結合分子を介したDASHパターンのための標準的な機能化方法として利用し得る。本発明者らはさらに、この方法に基づく、量子ドットおよびHRPによるDASHパターンの機能化を実証した。
【実施例11】
【0146】
DASH-量子ドットハイブリッド材料
DASHパターンへの蛍光-アビジンコンジュゲートの結合の成功裏の結果に基づいて、DASHパターンの多用途の機能化方法として、この技術を拡張させた。「サンドイッチ」結合方法を使用することによって、DASHパターンへの量子ドット(Qdot)付着(DASH-Qdot)を試験した。最初に、アビジンをDASHパターンに付着させ、次いでアビジン-ビオチン相互作用を使用することによって、ビオチン結合量子ドットを構造に付着させた。
【0147】
陽性および対照実験
陽性および対照試料の両方を三つ組を用いて試験して、結果の一貫性を確認した。陽性および対照試料からの代表的な結果を示した(
図4Cおよび
図24A~24D)。結果から、陽性試料(アビジンおよび次いでQdotを有する)のみが、1x RepliPHI反応バッファーで1時間のさらなる洗浄後でもDASHパターンへのQdotの結合に成功したことが明らかに示された。一方、対照試料では結合は観察されなかった(アビジン結合なし)。結果から、Qdotの機能化の成功が示され、また、Qdotの結合機構が実際にアビジン-ビオチン相互作用に基づくことが示唆される。この結果は、HRP結合での結果とともに、この「サンドイッチ」方法(アビジンを使用し、次いでビオチン結合標的分子を使用する)によるDASHの機能化を、有機(タンパク質)から無機(ナノ粒子)までの幅広い分子まで拡張し得ることを示唆する。
【実施例12】
【0148】
DASH-AuNPハイブリッド材料
暗視野顕微鏡
暗視野光学顕微鏡によって、強い光散乱による金ナノ粒子の明らかな特徴づけが可能になる。DASH-AuNPパターンの観察のために、暗視野構成のOlympus BH-2顕微鏡(Japan)を使用した(下記の結果のために、40nm AuNPを使用した)(
図4Dおよび
図25)。
【0149】
SEM
DASHパターンへのAuNP-DNA付着の成功をSEMによって確認した。試料調製のために、転写可能なDASH装置構成を使用した。金ナノ粒子は、DASH構造の繊維状の形態に沿って明らかに付着した;いくつかは「針金様の」規則的金ナノ粒子を示す。
【実施例13】
【0150】
アビジン-HRPによるDASHパターンの機能化
蛍光-アビジンコンジュゲートおよびビオチン結合分子の(「サンドイッチ」結合方法を介する)、DASHパターンへの結合実験の成功に基づいて、他のアビジン結合機能分子(この場合において酵素)を付着させることによって技術をさらに拡張し、酵素がDASHパターン上でその生化学的活性を維持しているか否かを試験した。ここで、モデル酵素としてアビジン結合ホースラディッシュペルオキシダーゼ(アビジン-HRP)を選択し、DASHパターンに付着させた;酵素活性を測定して、DASHパターンの機能化の成功を示した。
【0151】
Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA)の1-Step Ultra TMB-ELISA基質溶液を使用することによって、DASHパターンに結合したHRPの活性を最初に確かめた。キットは、TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)基質を青色の(中間)複合体(Amax=370nmおよび652nm)に変換することによって、HRP活性を検出する。TMBの青色の産物は、おそらく負電荷を有するDNAおよび正電荷を有するTMB産物の静電気的相互作用のために、DASHパターンを直接染色することが見出された。結果はまた、肉眼によっても観察し得る。
【0152】
次に、HRP活性がDASHパターンに局在化することをさらに確認するために、in situ HRP反応を、Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA)のQuantaRed Enhanced Chemifluorescent HRP基質キットを使用することによってモニタリングした。QuantaRed基質はADHP(アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン)化学蛍光反応を使用し、HRPと反応することによって、非蛍光化合物から、570/585nmの励起光/発行の蛍光化合物のレゾルフィンへ変換する。QuantaRed溶液を装置に注入し、蛍光顕微鏡によって連続的にモニタリングした。プロセスの間、産物は、おそらく反応の高い感度のために、装置全体を通して全体的な蛍光が飽和になるまで、DASHパターンの位置に対応して(かつ下流で)実際に展開し始めたことが観察された。
【0153】
DASHパターンからの無細胞タンパク質発現
発現されたタンパク質の定量測定に加えて(
図4E)、DASHパターンからのCFPEの直接的観察を行った(
図4Eおよび
図26A~26B)。観察は、蛍光顕微鏡を使用することによって、標準的なプロトコールに従った。結果から、sfGFP発現の成功がDASHパターンを有する装置からのみ起こったことが示される。
【配列表】
【国際調査報告】