(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(54)【発明の名称】ジェットポンプ
(51)【国際特許分類】
F04F 5/44 20060101AFI20220518BHJP
F04F 5/02 20060101ALI20220518BHJP
F04F 5/14 20060101ALI20220518BHJP
F04F 5/46 20060101ALI20220518BHJP
F04F 5/54 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
F04F5/44 B
F04F5/02
F04F5/14
F04F5/46 B
F04F5/54
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559445
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(85)【翻訳文提出日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2020058994
(87)【国際公開番号】W WO2020207847
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】102019109195.0
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591044393
【氏名又は名称】ノルマ ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル キンティー
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス ガブリーズ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン カール
(72)【発明者】
【氏名】ゲリット ヴォン ブライテンバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ミハル サジャック
【テーマコード(参考)】
3H079
【Fターム(参考)】
3H079AA18
3H079BB10
3H079CC03
3H079DD03
3H079DD13
3H079DD15
3H079DD16
3H079DD22
(57)【要約】
本発明は、推進剤を加速するためのジェットノズル(14)を備えたジェットポンプ(10)に関し、ジェットノズル(14)は、先細の入口部(28)と、先細の入口部(28)に接続された出口部(26)とを有し、出口部(26)は、開口角(16)で広がる内壁(38)を備える。ここで、本発明によれば、開口角(16)は、亜音速で出口部(26)を流れる推進剤が内壁(38)から離脱し、超音速で出口部(26)を流れる推進剤が内壁(38)に案内されるように設計されている。このように、本発明では、ジェットポンプ(10)を異なる圧力比に、自動的に、コスト効率よく、かつ簡単に切り替えることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進剤を加速するためのジェットノズル(14)を備えたジェットポンプであって、前記ジェットノズル(14)は、先細の入口部(28)と、該先細の入口部(28)に接続する出口部(26)とを有し、該出口部(26)は、内壁(38)によって囲まれ、開口角(16)で広がる内部空間(40)を備え、前記開口角(16)が、前記出口部(26)を亜音速で流れる推進剤が前記内壁(38)から離脱し、前記出口部(26)を超音速で流れる推進剤が前記内壁(38)によって案内されるように構成されているジェットポンプ。
【請求項2】
前記出口部(26)の前記内壁(38)は、超音速から亜音速への移行中に、前記出口部(26)を流れる推進剤が前記内壁(38)から離脱するように構成されている請求項1に記載のジェットポンプ。
【請求項3】
前記出口部(26)の前記内壁(38)は、亜音速から超音速への移行中に、前記出口部(26)を流れる推進剤が前記内壁(38)に接触し、該内壁(38)によって案内されるように構成されている請求項1または請求項2に記載のジェットポンプ。
【請求項4】
前記推進剤の推進剤圧力と前記出口部(26)下流の吸引圧力との間の圧力比が、1.05と5との間、好ましくは1.1と2.5との間である請求項1から請求項3のいずれかに記載のジェットポンプ。
【請求項5】
前記開口角(16)が7°よりも大きい請求項1から請求項4のいずれかに記載のジェットポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進剤を加速するためのジェットノズルを備えたジェットポンプに関するものであり、ジェットノズルが、先細の入口部と、先細の入口部に接続する出口部とを有し、出口部が、請求項1の前提部分により、内壁によって囲まれた内部空間を備え、開口角で広がっている。
【背景技術】
【0002】
ジェットポンプは、吸引媒体を引き込み、加速させるために、推進剤を含んだ流体噴流を使用する。吸引作用は、推進剤が吸引媒体を通過することによってもたらされ、推進剤の流速が十分に高い場合には、吸引媒体も推進剤によって運ばれる。推進剤を加速させるために、推進剤は圧力下でノズルを通して案内され、それによって推進剤が加速される。吸引圧力と推進剤の圧力が亜臨界圧力比である場合は、先細ノズルが、ジェットポンプ内で推進剤を加速するために使用される。超臨界圧力比の場合には、先細/末広ノズル、いわゆるラバルノズルが、ラバルノズルの先細部分において音速まで加速された推進剤をさらに加速するために使用される。ラバルノズルは、亜音速で流れる推進剤の場合、ラバルノズルの広がり部が推進剤のディフューザとして機能するため、流速の減速につながる。
【0003】
本発明の目的は、亜臨界および超臨界の圧力比において動作可能な改良されたジェットポンプを提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の主な特徴は、請求項1の特徴部分に記載されている。請求項2から請求項8は、実施形態に関連している。
【0005】
本発明は、推進剤を加速するためのジェットノズルを備えたジェットポンプに関するものであり、ジェットノズルは、先細の入口部と、先細の入口部に接続する出口部とを有し、出口部が、内壁に囲まれた内部空間を備え、開口角で広がり、本発明によれば、出口部を亜音速で流れる推進剤が内壁から離脱し、出口部を超音速で流れる推進剤が内壁によって案内されるように開口角が構成されている。
【0006】
本発明は、先細の入口部が、先細の入口部を流れる推進剤を加速させるジェットノズルを有するジェットポンプを提供するものであり、推進剤は、入口部を通過して流れる前には亜音速で流れる。入口部を流れ、加速された後も推進剤が亜音速で流れ続けるならば、出口部も亜音速で流れる。ジェットノズルの出口部は、この例では、広がる内壁を有しており、すなわち、出口部の断面は、先細の入口部から増大する。ジェットノズルは、この例では、特別に構築されたラバルノズルであってもよい。広がる内壁の開口角は、この例では、出口部を亜音速で流れる推進剤が出口部の内壁から離脱するほど大きい。そのため、ジェットノズルの出口部は、亜音速で流れる推進剤に対してディフューザとして機能せず、出口部を流れる際に推進剤の速度の減速がもたらされない。その代わりに、ジェットノズルの先細の入口部のみが亜音速で流れる推進剤に作用する。ジェットノズルは、先細ノズルとして亜音速で流れる推進剤に作用する。推進剤は、先細の入口部によって音速まで加速されると、出口部の広がる内部空間によってさらに加速される。この例では、推進剤は内壁から離脱されないので、出口部分の広がる内壁によって案内される。このとき、出口部は、超音速で流れる推進剤のノズルとして機能し、推進剤をさらに加速させる。その結果、ジェットノズルは、超音速で流れる推進剤のラバルノズルとして機能する。
【0007】
したがって、本発明は、亜臨界圧力条件、すなわち亜音速の推進剤が吸引作用をもたらす場合と、超臨界圧力条件、すなわち超音速の推進剤が吸引作用をもたらす場合の両方において、1つのジェットノズルで動作するジェットポンプを提供する。流れている推進剤に対する出口部の作用は、この例においては、内壁の開口角によって自動的に調整される。したがって、本発明の結果として、ジェットポンプを、異なる圧力比に、自動的に、コスト効率よく、かつ簡単に切り替えることができる。
【0008】
また、出口部の内壁は、超音速から亜音速への移行中に、出口部を流れる推進剤が内壁から離脱するように構成されていてもよい。言い換えれば、出口部の内壁は、超臨界圧力比から亜臨界圧力比への移行中に、出口部を流れる推進剤が内壁から離脱するように構成されていてもよい。
【0009】
これにより、ジェットポンプ作動中の圧力を超臨界圧力比から亜臨界圧力比に切り替えることができ、切替動作中の圧力衝撃を防止することができる。これにより、ジェットポンプの適用範囲がさらに広がる。
【0010】
さらに、出口部の内壁は、亜音速から超音速への移行中に出口部を流れる推進剤が内壁に接触し、内壁によって案内されるように構成されていてもよい。言い換えると、亜臨界圧力比から超臨界圧力比への移行中に出口部を流れる推進剤が、内壁に接触し、内壁によって案内されるように、出口部の内壁が構成されてもよい。
【0011】
その結果、亜臨界圧力比から超臨界圧力比への移行を、摩擦なく行うことができる。これにより、ジェットポンプの適用範囲がさらに広がる。
【0012】
さらに、推進剤の推進剤圧力と出口部における吸引圧力との圧力比は、1.05と5の間、好ましくは1.1と2.5との間であってもよい。
【0013】
これにより、ジェットポンプを広い圧力範囲において動作させることができ、所望の吸引圧力と比較した圧力比を亜臨界または超臨界にすることができる。
【0014】
これにより、推進剤が亜音速で流れる低い圧力比および、推進剤が超音速で流れる高い圧力比の両方において、ジェットポンプを作動させるのに適切な吸引圧力を得ることができる。
【0015】
このように、ジェットポンプは、動作可能な亜臨界および超臨界の動作範囲を有する。その結果、ジェットポンプは、幅広い用途に使用することができる。
【0016】
有利には、開口角は7°よりも大きい。
【0017】
開口角が7°よりも大きいと、出口部を亜音速で流れる推進剤の内壁からの離脱がさらに促進される。その結果、亜音速で出口部を流れる推進剤が出口部の内壁に付着することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の他の特徴、詳細、および利点は、特許請求の範囲の文言、および図面を参照した以下の実施形態の説明から理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、ジェットポンプの模式的な断面図であり、ジェットポンプ全体は符号10によって指定されている。
【0020】
ジェットポンプ10は、推進剤タンク12と、ジェットノズル14と、吸引媒体タンク18と、混合室20と、ディフューザ22とを有する。
【0021】
推進剤は、推進剤タンク12内に供給されている。推進剤は、本実施形態では、圧縮性の推進剤であってもよい。推進剤は、推進剤タンク12内で圧力を作用させてもよいし、推進剤タンク12内に加圧されて貯蔵されていてもよい。圧力比は、例えば、1.05と5の間、好ましくは1.1と2.5の間とすることができる。この推進剤の圧力下において、推進剤は、ジェットポンプ10の動作中に推進剤タンク12からジェットノズル14へと流れる。これは、矢印30によって示されている。
【0022】
推進剤ノズル14は、この例では、先細の入口部28と、広がる内部空間40を有する出口部26とを有する。出口部26と先細の入口部28とは、互いに接続されている。先細の入口部28と出口部26との接続位置は、ジェットノズル14の最も小さい断面を有する。
【0023】
先細の入口部28は、先細りとなる断面を有している。推進剤は、最初に、先細の入口部28の大きな断面を有する領域に流入する。先細の入口部28の断面が先細りとなっている結果、先細の入口部28を流れる推進剤は加速される。
【0024】
推進剤の圧力に応じて、推進剤が先細の入口部28を流れるときに、推進剤は先細の入口部28によって亜音速または音速まで加速される。
【0025】
出口部26は、先細の入口部28の先細りの端部に隣接している。この例では、出口部26は、内部空間40を横方向に取り囲む内壁38を備えている。この場合、内壁38は、一実施形態では、
図3aに図示されているように、円錐形の覆い面の形で内部空間40を取り囲んでいてもよい。別の実施形態では、内壁38は、
図3bに図示されているように、ベル状の形状を有する覆い面の形で内部空間40を取り囲んでもよい。
【0026】
内部空間40は、この例では、先細の入口部28の出口開口部に接続される入口開口部を有する。さらに、内部空間40は、内部空間40の入口開口部よりも大きい出口開口部を有している。内壁38は、内部空間40の入口開口部と出口開口部との間に延びている。内部空間40は、この例では発散的に構成されており、開口角16で広がっている。内壁38は、内部空間40の入口開口部における最も狭い断面に応じて、直接、開口角16を規定している。内壁38の開口角16は、この例では、入口開口からの間隔の増加に伴って変化してもよい。
【0027】
開口角16は、この例では、亜音速で出口部26を流れる推進剤が内壁38から離脱し、超音速で出口部26を流れる推進剤が内壁38に案内されるように選択される。つまり、内壁38は、亜音速で出口部26を流れる推進剤に影響を与えない。代わりに、亜音速で流れる推進剤は、内壁38から離脱し、先細の入口部28の出口開口から出口部26を通り、ジェットノズル14から噴流として流出する。
【0028】
開口角16は、さらに、超音速で出口部26を流れる推進剤が内壁38によって案内されるように選択される。出口部26を流れる推進剤の流れ方向に対して垂直に行われる膨張は、この例では、内壁38によって制限される。したがって、推進剤の流れの外側の領域は、内壁38に沿って流れる。
【0029】
この例では、開口角16は、少なくとも7°であってもよい。開口角16の上限は、例えば、8°と45°との間であってもよい。
【0030】
流れ方向に対して垂直に行われ、内壁38によって制限される膨張の結果、推進剤はさらに加速され、出口部26から増加した超音速で流れる。
【0031】
出口部26を出た後、推進剤は、吸引媒体タンク18の開口部を通過して流れ、吸引圧力をもたらす。
【0032】
また、吸引媒体は、吸引媒体タンク18を通過して流れる推進剤によって運ばれ、加速される。これにより、推進剤と吸引媒体は混合室20に到達する。推進剤と吸引媒体が混合室20を流れる間に、推進剤と吸引媒体が混合される。
【0033】
混合室20には、推進剤とそれに混合される吸引媒体とが減速されるディフューザ22が隣接している。ディフューザ22は、出口開口部24を備えている。推進剤および吸引媒体は、出口開口部24を介してジェットポンプから流出することができる。
【0034】
図2aおよび
図2bは、ジェットノズル14の概略的な縦断面図であり、ジェットノズル14を通る推進剤の流れが、流線32,34によって示されている。
【0035】
この例では、
図2aの推進剤は、先細の入口部28によって音速まで加速される。先細の入口部28においては、これは集合する流線32によって示される。先細の入口部28から、音速まで加速された推進剤は、出口部26に流入する。出口部26においては、流線32が互いに発散している。外側の流線32は、この例では、内壁38に沿って延びており、それによって、推進剤が内壁38に沿って内部空間40を通って案内されることが示されている。推進剤はこの例では膨張し、その結果、速度は超音速までさらに増大する。
【0036】
図2bにおいて、推進剤は先細の入口部28によっても加速されるが、推進剤の速度は音速以下のままである。そのため、推進剤は亜音速で先細の入口部28から流出する。流線34は、先細の入口部28において圧縮されている。
【0037】
広がる内壁38の開口角16は、亜音速で流れる推進剤が広がる内壁38から離脱するように選択されているので、推進剤は出口部26で膨張せず、代わりに出口部26を自由噴流として流れる。これは、互いに実質的に平行に延びる、出口部26の流線34によって示されている。自由噴流は、出口部26において、ほぼ一定の幅36を有する。
【0038】
出口部26における推進剤の亜音速流の幅36は、したがって、内壁38によって横方向に画定されている内部空間40の明確な幅よりも小さく、明確な幅は、内壁38が広がっているために増加する。
【0039】
その結果、内壁38は、亜音速で流れる推進剤のディフューザとして機能することが防止され、推進剤は出口部26によって制動される。
【0040】
先細の入口部28内の推進剤の圧力は、動作中に増加または減少させることができる。出口部26の内壁38は、この例では、超臨界圧力比から亜臨界圧力比への移行中に出口部26を流れる推進剤が内壁38から離脱するように構成されている。逆に、亜臨界圧力比から超臨界圧力比への移行中に出口部26を流れる推進剤は、内壁38に接触し、内壁38によって案内されることになる。
【0041】
これにより、出口部26における推進剤の速度は、ジェットポンプ10の動作に支障をきたすことなく、超音速と亜音速との間で変化することができる。その結果、ジェットポンプ10は、超臨界圧力比でも亜臨界圧力比でも動作させることができる。
【0042】
この例では、吸引圧力が0.98バール、推進剤の圧力が1.1バールにおいて、推進剤が亜音速で出口部26を流れる亜臨界圧力比を調整することができ、流動する推進剤は内壁38から離脱する。
【0043】
吸引圧力が0.98バール、推進剤の圧力が2.5バールにおいて、結果的に推進剤が出口部26を超音速で流れる超臨界圧力比を調整することができ、流動する推進剤は内壁38によって案内される。
【0044】
本発明は、上述した実施形態の1つに限定されるものではなく、代わりに様々な方法で修正することができる。
【0045】
構造的な詳細、空間的な配置、および方法のステップを含む、特許請求の範囲、説明、および図面から得られるすべての特徴および利点は、個別にも、極めて多様な組み合わせでも、発明的に重要である。
【符号の説明】
【0046】
10 ジェットポンプ
12 推進剤タンク
14 ジェットノズル
16 開口角
18 吸引媒体タンク
20 混合室
22 ディフューザ
24 出口開口部
26 出口部
28 先細の入口部
30 流れの方向
32 超音速流線
34 亜音速流線
36 自由噴流の幅
38 内壁
40 内部空間
【国際調査報告】