(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(54)【発明の名称】食用固形物の調製方法、コンニャクのグルコマンナンを含む食用固形物、およびその利用法
(51)【国際特許分類】
A23L 29/244 20160101AFI20220518BHJP
A23L 33/21 20160101ALI20220518BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20220518BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20220518BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20220518BHJP
A23L 29/262 20160101ALI20220518BHJP
A23L 33/24 20160101ALI20220518BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220518BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20220518BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220518BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220518BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220518BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220518BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220518BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220518BHJP
A61K 31/736 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
A23L29/244
A23L33/21
A23L33/125
A23L29/238
A23L7/109 E
A23L29/262
A23L33/24
A61P3/04
A61P9/12
A61P3/10
A61P37/08
A61P25/28
A61P35/00
A61P3/00
A61P9/00
A61K31/736
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559518
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 EP2020056963
(87)【国際公開番号】W WO2020193238
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521438401
【氏名又は名称】サマン,ダニエル,フランソワ,ジャン,マリー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サマン,ダニエル,フランソワ,ジャン,マリー
【テーマコード(参考)】
4B018
4B041
4B046
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB02
4B018MD35
4B018MD37
4B018MD40
4B018ME01
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4C086AA01
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4C086ZB08
4C086ZB13
4C086ZB26
4C086ZC21
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明は、グルコマンナン類とガラクトマンナン類とからなる群から選択された少なくとも一種の多糖すなわちヘテロマンナンを含む所定量の粉末と、所定量の水性液体組成物と、の混合を行う食用固形物の調製方法であって、上記ヘテロマンナンの量は、上記混合における上記水性液体組成物の質量に対する上記混合における上記ヘテロマンナンの質量の比が5%~35%の範囲内となる量であり、上記混合は激しい撹拌により行われ、これにより、前記粉末が前記水性液体組成物内で略均一であり動粘度が100Pa・s未満である分散液、すなわち流動性分散液が形成され、前記流動性分散液はその後、自由水性液体組成物を実質的に含まず前記流動性分散液よりも動粘度が大きい水性凝集性固体へと自然に変化し、前記水性凝集性固体に熟成および硬化の工程を行って上記食用固形物を形成し、形成された上記食用固形物は非粘着性かつ非合体性であり、少なくとも一種のグルコマンナンを含む上記ヘテロマンナンには、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)や炭酸ナトリウムなどのアルカリ剤による処理を一切行わないことを特徴とする、食用固形物の調製方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコマンナン類とガラクトマンナン類とからなる群から選択された少なくとも一種の多糖すなわちヘテロマンナンを含む所定量の粉末と、所定量の水性液体組成物と、の混合を行う食用固形物の調製方法であって、
前記ヘテロマンナンの量は、前記混合における前記水性液体組成物の質量に対する前記混合における前記ヘテロマンナンの質量の比が5%~35%の範囲内となる量であり、
前記混合は激しい撹拌により行われ、これにより、前記粉末が前記水性液体組成物内で略均一であり動粘度が100Pa・s未満である分散液、すなわち流動性分散液が形成され、前記流動性分散液はその後、自由水性液体組成物を実質的に含まず前記流動性分散液よりも動粘度が大きい水性凝集性固体へと自然に変化し、
前記水性凝集性固体に熟成および硬化の工程を行って前記食用固形物を形成し、
形成された前記食用固形物は利用温度および大気圧のもとでの接触において非粘着性かつ非合体性であり、
少なくとも一種のグルコマンナンを含む前記ヘテロマンナンには、水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)や炭酸ナトリウムなどのアルカリ剤による処理を一切行わないことを特徴とする、食用固形物の調製方法。
【請求項2】
前記激しい撹拌による混合の際の前記水性液体組成物の温度は15℃未満であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粉末は、コンニャク(Amorphophallus konjac)の塊茎の粉末を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記粉末は、少なくとも一種の不溶性繊維を所定量含むことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記粉末は、不溶性繊維としてセルロースを含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記粉末の平均粒度は500μm未満であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記水性液体組成物は水であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
食用スパゲッティの成形口金を通過させる押出成形工程を前記食用固形物に行うことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1の食用固形物からなる外殻層と、前記第1の食用固形物とは異なる第2の食用固形物からなる内部芯とを有する食用固形物を、前記外殻層の前記第1の食用固形物と前記内部芯の前記第2の食用固形物とを同軸の2方向に共押出することにより調製することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記食用固形物の滅菌工程を含むことを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
グルコマンナン類とガラクトマンナン類とからなる群から選択された少なくとも一種の多糖すなわちヘテロマンナンを含む所定量の粉末と、所定量の水性液体組成物と、を混合状態で含む食用固形物であって、
前記ヘテロマンナンの量は、前記食用固形物内の前記水性液体組成物の質量に対する前記食用固形物内の前記ヘテロマンナンの質量の比が5%~35%の範囲内となる量であり、
前記食用固形物が、
凝集性であり、
非粘着性であり、
前記食用固形物と水性液体とを接触させると前記水性液体を所定量吸収可能であり、
押出成形可能であるように適合されており、
少なくとも一種のグルコマンナンはコンニャクの塊茎のグルコマンナンであり、
前記食用固形物は、コンニャクの塊茎の天然グルコマンナンを少なくとも部分的に脱アセチル化したグルコマンナンに変換するアルカリ剤を一切含まないことを特徴とする、食用固形物。
【請求項12】
利用温度および大気圧のもとでの単なる相互接触において非合体性である線条の形状を有することを特徴とする、請求項11に記載の食用固形物。
【請求項13】
医薬品として利用されることを特徴とする、請求項11または12に記載の食用固形物。
【請求項14】
請求項11または12に記載の食用固形物の、食事における利用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的にデンプン質を含まない食用固形物の調整方法、そのような食用固形物、およびその利用法に関する。
【背景技術】
【0002】
OECD(経済協力開発機構)によれば、2017年時点で世界中の大人2人に1人、子供6人に1人が体重過多または肥満であった。フランスでは、2017年時点で肥満の人の割合が17%に達している。一部の国々では体重過多と肥満の対策が講じられているものの、体重過多または肥満の人の割合は増え続けており、OECDによる今後数年の予測でもこの増加傾向が続くとされている。
【0003】
体重過多と肥満は、心血管疾患や糖尿病などの慢性疾患、特に2型糖尿病すなわちインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)の発症の主要なリスク因子となる。体重過多と肥満の主な原因は、偏ったカロリー過多の食事と、身体活動の不足と、場合によっては、体重過多および/または肥満につながる遺伝的および/または心理的要因とが、組み合わさることである。このような偏ったカロリー過多の食事としては、血糖値の上昇、脂肪酸の合成とトリグリセリド類の貯蔵の活性化、脂肪分解阻害をもたらすデンプン製品(パン、パスタ、デンプン質の野菜)の多い食事、および/または砂糖入りの(スクロースの多い)食事が挙げられる。このようなカロリー過多の食事は、血糖値を大きく変動させて満腹感を持続させず、消費者は空腹感を感じ、持続的に食欲を満たすために頻繁に食事を摂らなければならなくなるという意味で偏っている。
【0004】
本発明は、カロリー過多の食事の代替となる食用固形物を提案することを目的とする。
【0005】
本発明は、消化時に体内で大量のグルコースを生成させない、そのような代替食用固形物を提案することを目的とする。
【0006】
さらに、高血糖はタンパク質の糖化と呼ばれる現象を引き起こして一部のタンパク質の性質を変化させ、この変化が細胞の機能障害、疾患、および/または炎症性および/または自己免疫反応の原因となりうる。このような疾患は高齢者においてより頻繁にみられ、慢性の高血糖(前糖尿病または糖尿病)を引き起こし、また、糖化生成物の分解の異化作用を遅らせる。
【0007】
本発明は、タンパク質の糖化を制限するための食用固形物を提案することを目的とする。
【0008】
また、レジスタントおよび/または砂糖入りのスターチに乏しい、消化時に急速に加水分解されるデンプン製品ばかりの食事は、バランスの取れた消化通過、ならびに腸内フローラ、特に結腸細菌叢によって形成される微生物叢の維持と生育に必要な所定量の水溶性繊維や緩やかな加水分解をもたらすことができない。
【0009】
このような実質的にデンプン質の、および/または砂糖入りの、水溶性および不溶性繊維に乏しい製品の摂取では、早期の空腹感の発生を回避できるような充分かつ充分に持続的な満腹感を得られない。
【0010】
本発明は、デンプン質の食品を代替する食用固形物の調製方法、およびそのような食用固形物を提案することを目的とする。
【0011】
これは通常、水溶性繊維の多い、胃および小腸においては非加水分解性または低加水分解性であるが結腸の微生物叢の微生物によって加水分解可能な食品の摂取によって解決される。
【0012】
日本では、水中に1~3g/L(0.1~0.3質量%)の濃度で含まれるコンニャク(Amorphophallus konjac)の塊茎の粉末(コンニャク粉末)を水酸化カルシウムで処理して作られるこんにゃくが知られている。こんにゃくは、麺状(しらたき)、米粒状、または舗石状にして用いられる。こんにゃくは凝集性の固形食品である。しらたきの細麺は非膨潤性である。
【0013】
特許文献1には、風味付けしたこんにゃく、およびそのような風味付けしたこんにゃくの調製方法が記載されている。上記調製方法では、精製されたコンニャク粉末と香料を20℃~30℃の範囲内の温度の所定量の水中で混合する。混合における精製コンニャク粉末の質量割合は2.3%~4.5%の範囲内である。その後、水酸化カルシウムを加えることで混合物がゲル化される。このようなこんにゃくは非膨潤性であり、風味付けした液状媒質を吸収できない。そのため、こんにゃくは、風味付けした液状料理に単に接触させることで即時に風味付けすることはできない。こんにゃくは料理の官能特性の向上には寄与しない。こういった種類の食品は、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5173321号
【特許文献2】欧州特許出願公開第3406143号
【特許文献3】国際公開第2008/111195号
【特許文献4】中国特許出願公開第108294259号
【特許文献5】韓国特許出願公開第20180057422号
【特許文献6】中国特許出願公開第107691965号
【特許文献7】国際公開第98/33395号
【特許文献8】欧州特許出願公開第0310703号
【0015】
しかしながら、こんにゃくおよびしらたきは消化時に体積が増加せず、満腹感を与えることができない。
【0016】
さらに、こんにゃくの一部の形態は、反応性塩水に浸かった状態で袋詰されており、西洋の消費者は袋を開封した際に、なじみのない強い匂いを感じ、腐敗した食品を連想することになる。消費者はこんにゃくを複数回すすぐ必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、このような形態のこんにゃくの不都合を解消することを目的とする。
【0018】
本発明は、食用固形物の調製方法、および胃を通過する際に膨潤する特性を有し、胃を満たす効果によって消費者に満腹感をもたらすことができる食用固形物を提案することを目的とする。
【0019】
本発明は、以下の利点のうち少なくとも1つをもたらすこのような食用固形物を提案することを特に目的とする:低カロリー、特にはカロリー0である。血糖症の原因とならない。腸内微生物叢の多様なフローラの生育のために好適な水溶性繊維の補給に寄与する。
【0020】
本発明は、血糖降下薬や、場合によってはインスリンの使用を回避することが可能な、グルコースを含まない食用固形物を提案することを目的とする。
【0021】
本発明は、食物繊維が豊富なこのような食用固形物を提案することを目的とする。特に、本発明は、摂取することで1日の食物繊維推奨量を満たすことができるこのような食用固形物を提案することを目的とする。
【0022】
本発明は、低糖質かつ高食物繊維の食事療法を指示されている代謝系疾患の患者によって利用されるこのような食用固形物を提案することを目的とする。
【0023】
本発明は、水溶性繊維と不溶性繊維のバランスが取れたこのような食用固形物を提案することを目的とする。
【0024】
本発明は、腸管通過を調整する効果のあるこのような食用固形物を提案することを目的とする。
【0025】
本発明は、リーキーガット症候群の予防および/または治療のために利用されるこのような食用固形物を提案することを目的とする。
【0026】
本発明はまた、水溶性繊維が豊富であり、微生物叢の微生物による水溶性繊維の加水分解が、上記水溶性繊維が結腸に滞留している全期間にわたって発生するよう充分に緩やかである、このような食用固形物を提案することを目的とする。
【0027】
本発明はまた、全粒穀物のように繊維もデンプンも豊富である食品、および/または、果物のように繊維も糖質も豊富である食品を代替する、このような食用固形物を提案することを目的とする。
【0028】
本発明はまた、一部のマメ科植物や、キクイモのような一部の塊茎植物のように、繊維が豊富であるが消化性に問題のある食品を代替する、このような食用固形物を提案することを目的とする。
【0029】
本発明は、グリセミック指数の低いこのような食用固形物を提案することを目的とする。
【0030】
本発明は、消費者の体重管理を可能にするこのような食用固形物を提案することを目的とする。
【0031】
本発明は、老化抑制剤として利用されるこのような食用固形物を提案することを目的とする。
【0032】
本発明は、ソース付き料理のソースの少なくとも一部を吸収可能なこのような食用固形物を提案することを目的とする。
【0033】
本発明は、口当たりの良いこのような食用固形物を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明は、グルコマンナン類とガラクトマンナン類とからなる群から選択された少なくとも一種の多糖すなわちヘテロマンナンを含む所定量の粉末と、所定量の水性液体組成物と、の混合を行う食用固形物の調製方法であって、上記ヘテロマンナンの量は、上記混合における上記水性液体組成物の質量に対する上記混合における上記ヘテロマンナンの質量の比が5%~35%の範囲内となる量であり、上記混合は激しい撹拌により行われ、これにより、上記粉末が上記水性液体組成物内で略均一であり動粘度が100Pa・s未満である分散液、すなわち流動性分散液が形成され、上記流動性分散液は上記ヘテロマンナンを含み、上記流動性分散液はその後、自由水性液体組成物を実質的に含まず上記流動性分散液よりも動粘度が大きい水性凝集性固体へと自然に変化し、上記水性凝集性固体に熟成および硬化の工程を行って上記食用固形物を形成し、形成された上記食用固形物は利用温度および大気圧のもとでの接触において非粘着性、特に接触において非粘着性、かつ非合体性であり、少なくとも一種のグルコマンナン、特に少なくとも一種のコンニャクの塊茎のグルコマンナン、を含む上記ヘテロマンナンには、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)や炭酸ナトリウムなどのアルカリ剤による処理を一切行わないことを特徴とする、食用固形物の調製方法を提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書において、用語「粉末」は、平均粒径が1mm未満、特には500μm未満、好ましくは50μm~400μmの範囲内、より好ましくは100μm~300μmの範囲内である粉を一般的に指す。
【0036】
以下、表現「略均一」とは、上記粉末の粒子が上記水性液体組成物内に分散されて形成される均一なマトリックスからなる上記流動性分散液において、上記マトリックスが、水性液体組成物の割合が上記マトリックスの水性液体組成物よりも低い上記粉末の粒子の塊を含み得て、このような塊の質量の流動性分散液の質量に対する比率が10%未満、特には5%未満、好ましくは1%未満であることを意味する。詳細には、この比率は4%未満、特には3%未満、好ましくは2%未満、より好ましくは0.5%未満である。上記流動性分散液中に上記粉末の粒子の塊がなくなるようにこの混合を行うことが更に好ましい。
【0037】
本明細書において、「非合体性」とは、本発明の食用固形物から形成した部分、粒子、欠片、破片が、利用温度および大気圧のもとでの単なる接触によって自然に融合しないというこの食用固形物の性質を指す。「利用温度」とは、この食用固形物の利用対象となる料理の温度である。
【0038】
本発明の方法において、上記量の粉末に接触する水性液体組成物の量は、上記量の粉末に完全に吸収されうる水性液体組成物の最大量以下である。
【0039】
本発明の方法において、上記粉末を素早く、特には即時に、水性液体組成物内で分散することで、粉末の粒子が分離状態で水性液体組成物内に分布した流動性分散液を形成し、上記水性の分散液の粉末の粒子は、利用可能な水性液体組成物の全量を吸収することで自然に変化して、動粘度が流動性分散液よりも高い水性凝集性固体を形成する。
【0040】
本発明の方法において、動粘度が100Pa・s未満の流動性分散液が得られたところで激しい撹拌を停止し、上記流動性分散液を自然に変化させて、動粘度が実質的に流動性分散液よりも高い水性凝集性固体を形成する。
【0041】
上記流動性分散液および/または水性凝集性固体の動粘度は、当業者に周知の方法、特に回転式粘度計または振動式粘度計を用いて測定する。
【0042】
本発明者は、激しい撹拌により粉末と水性液体組成物とを混合する工程は、粒子の水和に先立って、水性液体組成物における粉末の均一な分散を可能とするものであると想定する。限られた量の水性液体組成物によって行われるこの水和は、分散状態のこれらの粒子の疎水性ドメインと親水性ドメインの再構成を可能にし、水性凝集性固体を形成する。この水性凝集性固体の形成は、上記ヘテロマンナンの少なくとも一部の疎水性ドメインと少なくとも一部の親水性ドメインの拘束下での再構成、おそらく上記ヘテロマンナンの粒子の疎水性ドメインと親水性ドメインの再配向によって行われ、水性凝集性固体を準安定状態にするもので、上記流動性分散液に比べ凝集性が向上し、熟成、特に熱熟成によって、安定して、柔軟で、非粘着性で、非合体性で、押出成形、特に熱間押出成形が可能である、食用固形物へと変化しうる。この素早く強力な分散と、それに続く粉末の粒子の水和は、この分散と水和によって凝集性を生じながら親水性ドメインが粒子の内部に向かって再構成され疎水性ドメインが粒子の外部に向かって再構成された粒子、特に上記ヘテロマンナンの粒子を形成する。
【0043】
本発明者は、熟成の工程によって水性凝集性固体の外観が不透明から半透明になることを確認した。本発明者は、上述の物理的性質の変化に加えて起こるこの外観変化は、より大型の物品に有利となる、水和された粉末の粒子の消滅を表すものだと考えている。
【0044】
本発明の方法の一部の実施態様では、熟成の工程において、水性凝集性固体を数時間超、特には48時間超、の期間、常温で静置する。
【0045】
ただし、別の実施態様では、80℃超、特には80℃~120℃の範囲内、の温度で水性凝集性固体を加熱することによって熟成の工程を行って食用固形物を形成してもよい。食用固形物の形成に充分な期間にわたり水性凝集性固体を加熱して、熟成の工程を行う。本発明者は、熟成の工程は、上記粉末の粒子同士、特に上記ヘテロマンナンの粒子同士、の疎水性相互作用によって水性凝集性固体を安定化させ、硬化させると考えている。
【0046】
本発明の方法の一部の実施態様では、食用固形物の成形工程を行う。この成形工程は、押出成形によって行う。本発明の方法の特定の一部の実施態様では、特には80℃~120℃の範囲内の温度の熱間押出成形によってこの成形工程を行う。加熱工程で加熱された食用固形物に熱間押出成形を行うと有利である。ただし、これら2つの工程は分けてもよいし、常温の食用固形物に、加熱押出機によって熱間押出成形を行ってもよい。押出成形され、安定し、非粘着性で、非合体性の食用固形物が形成される。
【0047】
本発明の方法では、まず、柔軟すなわち変形可能で、引張および圧迫に対して略非弾性で、かつ非粘着性の、水性凝集性固体を形成する。この水性凝集性固体を熟成することにより、非粘着性で非流動性の硬化された凝集性の食用固形物、すなわち、食用固形物の内部拘束の効果により安定した食用固形物が形成される。凝集性、かつ、少なくとも一種のヘテロマンナンと水を含む食用固形物としては驚くべきことに、非粘着性、特には接触において略非粘着性、の食用固形物を形成する。
【0048】
本発明の方法の一部の実施態様では、上記少なくとも一種のヘテロマンナンはグルコマンナンである。ここでは、水和可能で、水性液体組成物を吸収して膨潤によって質量を増加可能な、膨潤性のグルコマンナンを用いる。
【0049】
本発明において、上記量の粉末と上記量の水性液体組成物の混合を激しい撹拌により行うが、3分以内、特には2分以内、好ましくは約1分以内の期間、撹拌を継続すると有利である。
【0050】
本発明の方法の特定の一の実施態様では、上記激しい撹拌による混合の際の上記水性液体組成物の温度は15℃未満である。上記量の粉末と上記量の水性液体組成物の、激しい、高速で、継続的な撹拌による混合を行う際、水性液体組成物は15℃未満の温度に保つ。この特定の実施態様において、水性液体組成物の温度は1℃~10℃の範囲内であり、好ましくは約4℃である。この特定の低温での混合の実施態様において、上記水性液体組成物の質量に対する上記ヘテロマンナンの質量の比率は、15%~35%の範囲内であってよい。しかしながら、上記水性液体組成物の質量に対する上記ヘテロマンナンの質量の比率は、5%~15%の範囲内であってもよい。
【0051】
驚くべきことに、また、想定外なことに、本発明者は、この低温での混合によって流動性分散液よりも動粘度が高く、略非粘着性、特には接触において非粘着性の水性凝集性固体、ひいては、硬化され、凝集性で、非流動性で、非粘着性、特には接触において非粘着性であり、非合体性かつ略非弾性の押出成形された食用固形物を形成するために押出成形可能な食用固形物が得られることを確認した。比較のために、充分に激しくない撹拌によって緩やかな混合を行うと、水和に先立って粒子を確実に分散させることができない。この場合には、水和度の高い粒子と水和度の低い粒子が含まれた、非常に不均一で光に対して不透明な混合物が得られる。この混合物は凝集性が低く、特に押出成形によって小さな破片に分かれるため、連続した線条に押出成形することができない。
【0052】
一部の有利な実施態様において、加熱により、水性凝集性固体の熟成および水性凝集性固体の硬化の工程を行う。一部の有利な実施態様において、閉鎖反応器内で自生圧力のもと水性凝集性固体を加熱することにより、水性凝集性固体の熟成および水性凝集性固体の硬化の工程を行う。一部の実施態様において、閉鎖オートクレーブ内で、約118℃の温度で水性凝集性固体の硬化に充分な期間にわたり水性凝集性固体を加熱する。一部の実施態様において、圧力下で3分未満の期間にわたり水性凝集性固体を加熱する。形成された食用固形物の硬度は水性凝集性固体よりも高い。この食用固形物は、安定しており、凝集性で、接触において略非粘着性であり、非合体性で、押出成形可能である。しかしながら、熟成の工程は、常温、大気圧で数時間、または数日間行ってもよい。
【0053】
一部の実施態様において、上記ヘテロマンナンの質量は、上記水性液体組成物の質量に対する上記ヘテロマンナンの質量の比が5%~30%、特には5%~25%、さらに特には7%~23%、好ましくは10%~20%の範囲内となる量である。
【0054】
一部の実施態様において、混合における粉末と水性液体組成物の量は質量であり、水性液体組成物の量に対する粉末の量の比は5%~60%、特には5%~45%の範囲内である。一部の実施態様において、水性液体組成物の量に対する粉末の量の比は5%~25%、特には10%~20%の範囲内である。これらの実施態様において、形成された食用固形物は冷たい料理の調製に有利に用いられる。このような食用固形物は利用温度において非合体性である。別の実施態様において、水性液体組成物の量に対する粉末の量の比は20%~60%、特には20%~40%の範囲内である。これら別の実施態様において、形成された食用固形物は温かいスープのような温かい料理の調製に有利に用いられる。このような食用固形物は利用温度、すなわち温かい状態において非合体性である。官能特性に応じて、水性液体組成物の量と粉末の量を調節する。
【0055】
本発明の方法の一部の有利な実施態様では、粉末はコンニャクの塊茎の粉末を含む。本発明の一部の有利な実施態様では、粉末はコンニャクの塊茎の粉末からなる。これらの実施態様において、上記ヘテロマンナンは、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)や炭酸ナトリウムなどのアルカリ剤による処理を一切行っていないグルコマンナンである。上記ヘテロマンナンは、水和される性質を有し、水性液体組成物と混合されると質量が増加する、少なくとも部分的にアセチル化されたグルコマンナンである。これらの実施態様において、水性凝集性固体は略半透明である。
【0056】
本発明の方法の一部の実施態様では、単独または組み合わせで、上記少なくとも一種のヘテロマンナンはガラクトマンナンである。ここでは、水和可能で、水性液体組成物を吸収して膨潤によって質量を増加可能な、膨潤性のガラクトマンナンを用いる。これらの実施態様において、上記ガラクトマンナンの質量は、上記水性液体組成物の質量に対する上記ヘテロマンナンの質量の比が7%~35%、特には7%~30%、さらに特には10%~30%、好ましくは10%~20%の範囲内となる量である。
【0057】
本発明の方法の一部の実施態様では、粉末は所定量の少なくとも一種の不溶性繊維を含む。「不溶性繊維」とは、ヒトの消化管で産生される消化酵素、特にはアミラーゼによって消化できない、また、消化器系および/または腸内微生物叢を構成する共生微生物によっても消化できないポリマーを一般的に指す。消化されなかったこのような不溶性繊維は、血糖症の原因とならず、カロリー値が低い。本発明の方法のこれらの実施態様において、特にセルロース、ヘミセルロース、キチン、小麦ふすま、燕麦ふすま、リグニン、タンニンからなる群から選ばれる少なくとも一種の不溶性繊維である。また、ヒドロキシアパタイトや粘土などの鉱物粒子を用いることもできる。コンニャクから作られた製品も、網状化によって化学修飾したポリマーと同様に、粉砕して不溶性繊維として用いることができる。本発明の一部の有利な実施態様では、少なくとも一種の不溶性繊維はセルロースであり、特には微結晶セルロースである。本発明の方法のこれらの実施態様において、不溶性繊維の量は質量であり、上記ヘテロマンナンの量に対するこの量の比は25%~75%の範囲内である。
【0058】
一部の実施態様において、粉末が、上記ヘテロマンナンとは異なる少なくとも一種の水溶性繊維を所定量で含んでいてもよい。「水溶性繊維」とは、ヒトの消化管で産生される消化酵素、特にはアミラーゼによって消化できないが、消化器系および/または腸内微生物叢を構成する共生微生物によって消化できるオリゴマーまたはポリマーを一般的に指す。消化管の最終部(結腸)で消化されたこのような水溶性繊維は、血糖症の原因とならず、カロリー値が低い。これは、小腸では消化できない、オリゴ糖、特にはミルクオリゴ糖であってよい。これは、乳糖不耐症向けの乳糖のような二糖類であってよい。これは、組み換えバクテリア、特には大腸菌によって産出される、またはオリゴ糖の化学修飾によって得られるオリゴ糖であってよい。これは、多くのデンプン製品中に自然に存在する、またはデンプンの部分的な酵素加水分解によって調製される難消化性デンプンであってよい。これは、酵母、またはケフィアもしくは好熱性乳酸菌で発酵した乳の発酵培地であってよい。これは、菌体外多糖、糖化タンパク質、または縮合コラーゲンであってよい。本発明の方法の一部の実施態様では、上記少なくとも一種の水溶性繊維は、イヌリン、ペクチン、カラギーナン、アルギン酸塩からなる群から選択される。これらの実施態様において、粉末は、少なくとも一種の水溶性繊維を、上記ヘテロマンナンの量に対するその量の比が25%~75%となるような質量で含む。
【0059】
本発明の方法の一部の実施態様では、粉末の平均粒径は500μm未満であり、特には100μm~300μmの範囲内である。
【0060】
本発明の方法の一部の実施態様では、上記水性液体組成物は水である。これは純水であってよい。これは上記水性液体組成物のpHおよび/または塩分を調整するのに適した緩衝食塩水であってもよい。いずれの場合にも、水性液体組成物と食用固形物は、グルコマンナンの酢酸基を遊離させるアルカリ剤、特には水酸化カルシウム(Ca(OH)2)および/または炭酸ナトリウム、を一切含まない。本発明の方法の一部の実施態様によれば、少なくとも一種のタンパク質、発酵マスト、特にはタンパク質を含む発酵マスト、少なくとも一種の食用酵母、特には出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、または少なくとも一種の食事療法用酵母を上記水性液体組成物に加えてもよい。また、本発明の方法の一部の実施態様によれば、所定量のセルロースを上記水性液体組成物に加えたり、または、水性液体組成物として工業生産された任意の水性セルロース調合液を用いたりしてもよい。これにより、水性セルロース調合液を脱水するためのエネルギーを消費する工程を省略できる。
【0061】
本発明の方法の一部の有利な実施態様では、食用固形物に押出成形工程、特には熱間押出成形、さらに特には熱間加圧押出成形を行う。食用固形物の押出は、食用パスタ(スパゲッティ)の成形口金を通過させて行うと有利である。食用固形物は、麺、米、ラザニア、またはラップサンド皮の形状に押出してもよい。押出は二軸押出機で行うと有利である。しかしながら、押出は、ミンチ機のような家庭用および調理用器具で行ってもよい。
【0062】
本発明の方法の一部の有利な実施態様では、押出成形の工程は、第1の食用固形物からなる外殻層と、上記第1の食用固形物とは異なる第2の食用固形物からなる基部芯とを同時に形成する、食用固形物の共押出の工程である。本発明の方法の一部の有利な実施態様では、第1の食用固形物はコンニャクのグルコマンナン類が豊富な食用固形物であり、第2の食用固形物はグアーのガラクトマンナン類が豊富な食用固形物である。本発明の方法の一部の有利な実施態様では、第1の食用固形物はコンニャク粉末で作られた食用固形物であり、第2の食用固形物はグアー粉末で作られた食用固形物である。
【0063】
一部の有利な実施態様では、本発明の方法は、食用固形物の滅菌工程を含む。このような滅菌工程は、無菌で、当初の官能特性を実質的に維持しながら保存可能な食用固形物を調製するのに適した任意の手段によって行う。このような滅菌工程は、微生物や流体、特にはガスに対して密閉された容器に入れた食用固形物を加熱滅菌することによって行う。
【0064】
一部の有利な実施態様では、水性で液状の料理に入れられた食用固形物が水和して、料理の官能特性に最もよく適合するよう選択された乾物率を、特には適度な時間で達成するように、水性液体組成物の量に対して粉末の量を増やして食用固形物を調製する。
【0065】
本発明は、本発明の方法で得られる食用固形物にも関する。
【0066】
本発明は、グルコマンナン類とガラクトマンナン類とからなる群から選択された少なくとも一種の多糖すなわちヘテロマンナンを含む所定量の粉末と、所定量の水性液体組成物と、を混合状態で含む食用固形物であって、上記ヘテロマンナンの量は、上記食用固形物内の上記水性液体組成物の質量に対する上記食用固形物内の上記ヘテロマンナンの質量の比が5%~35%の範囲内となる量であり、上記食用固形物が、凝集性であり、非粘着性、特には接触において非粘着性であり、上記食用固形物と水性液体とを接触させると上記水性液体を所定量吸収可能であり、押出成形可能であるように適合されており、少なくとも一種のグルコマンナンはコンニャクの塊茎のグルコマンナンであり、上記食用固形物は、コンニャクの塊茎の天然グルコマンナンを少なくとも部分的に脱アセチル化したグルコマンナンに変換するアルカリ剤、特には水酸化カルシウム(Ca(OH)2)および/または炭酸ナトリウムを一切含まないことを特徴とする、食用固形物に関する。
【0067】
初期量の食用固形物を20℃の所定の体積の水性液体に浸漬して食用固形物が吸収した水性液体の量を計量により評価する。浸漬の後、取り出して水を切り、水和した食用固形物の総重量を計量する。食用固形物の重量増加、および食用固形物の水分吸収を評価する。
【0068】
本発明において、食用固形物は略非弾性であると有利である。食用固形物は、ゴム状ではない固形の官能特性を有する。
【0069】
本発明において、食用固形物は、利用温度および大気圧のもとでの上記食用固形物の各部分同士の接触において非粘着性で非合体性であると有利である。
【0070】
一部の実施態様において、食用固形物は押出成形可能であるよう適合されている。
【0071】
一部の実施態様において、本発明の食用固形物は、特にはその大部分として、少なくとも一種のグルコマンナン、特には少なくとも一種のコンニャク粉末のグルコマンナン、および/または少なくとも一種のガラクトマンナン、特にはグアーのガラクトマンナンを含む。
【0072】
一部の実施態様において、本発明の食用固形物は、少なくとも一種の不溶性繊維、特にはセルロースを含む。
【0073】
一部の実施態様において、少なくとも一種のグルコマンナンはコンニャクの塊茎のグルコマンナンであり、上記食用固形物は、コンニャクの塊茎の天然グルコマンナンを少なくとも部分的に脱アセチル化したグルコマンナンに変換するアルカリ剤、特には水酸化カルシウム(Ca(OH)2)および/または炭酸ナトリウムを一切含まない。
【0074】
一部の実施態様において、食用固形物は、特に利用温度および大気圧のもとでの、単なる相互接触において非合体性である線条の形状である。食用固形物は分割された状態であり、各部分は長尺であり略同一形状の横断面を有し(スパゲッティ)、各部分は相互接触において非合体性である。
【0075】
一部の実施態様において、本発明の食用固形物は無菌である。
【0076】
一部の実施態様において、本発明の食用固形物は、微生物や流体、特にはガスに対して密閉された容器内に無菌状態で包装される。押出された食用固形物は、特に高圧湿熱滅菌の際に、非合体性である。
【0077】
本発明の食用固形物は、アルカリ剤、特には水酸化カルシウム(Ca(OH)2)および/または炭酸ナトリウムを一切含まない。
【0078】
本発明はまた、医薬品として利用されるこのような食用固形物に関する。本発明はまた、健康食品として利用されるこのような食用固形物に関する。本発明はさらに、ヒトおよび/または動物の食事、特にはペットの食事におけるこのような食用固形物の利用法に関する。
【0079】
本発明は、以下の疾患の少なくとも1つの予防または治療に利用されるこのような食用固形物に関する:虫歯、歯周病、にきび、体重過多、肥満、高血圧、睡眠時無呼吸症候群、性機能障害、糖尿病、骨関節炎、神経障害、細小血管障害、大血管障害、心筋梗塞、脳卒中、自己免疫疾患、アレルギー、神経変性疾患、うつ病、自閉症、結腸症、便秘、癌、乾癬。
【0080】
本発明は特に、代謝系疾患、肥満、糖尿病、高血圧、心血管疾患、自己免疫疾患、アレルギー、神経変性疾患、癌、からなる群から選択される少なくとも1つの疾患の予防または治療において医薬品として利用されるこのような食用固形物に関する。
【0081】
本発明はまた、消化器疾患および代謝系疾患の治療において医薬品として利用されるこのような食用固形物に関する。本発明はまた、糖尿病、および/または体重過多、および/または消化障害の治療において医薬品として利用されるこのような食用固形物に関する。
【0082】
本発明はまた、食事、特にはヒトおよび/または動物の食事で利用されるこのような食用固形物に関する。本発明はまた、サプリメント、および/またはデンプン質の食事を代替する食品として利用されるこのような食用固形物に関する。
【0083】
一部の実施態様において、冷たい状態、特には25℃未満の温度で食べることを想定した料理の製造工程で、本発明の食用固形物を利用する。本発明はまた、本発明の食用固形物を含む冷たい状態で食べる料理に関する。これは、本発明の食用固形物を含む、低温、特には1℃~10℃の範囲内の温度で食べるスムージーであってよい。この食用固形物は1℃~10℃の範囲内であるその利用温度において非合体性である。これは、約15℃~30℃の温度のサラダで食べる本発明の食用固形物であってよい。この食用固形物は15℃~30℃の範囲内であるその利用温度において非合体性である。
【0084】
別の実施態様において、温かい状態、特には25℃超の温度で食べることを想定した料理の製造工程で、本発明の食用固形物を利用する。本発明はまた、本発明の食用固形物を含む温かい状態で食べる料理に関する。これは、40℃~60℃の範囲内の温度の温かい料理で食べる本発明の食用固形物であってよい。この食用固形物は40℃~60℃の範囲内であるその利用温度において非合体性である。これは、約60℃~100℃の温度の温かいスープに入れて食べる本発明の食用固形物であってよい。この食用固形物は60℃~100℃の範囲内であるその利用温度において非合体性である。
【0085】
本発明の方法の一部の実施態様では、第1の食用固形物からなる外殻層と、上記第1の食用固形物とは異なる第2の食用固形物からなる基部芯とを有する食用固形物を調製する。一部の実施態様では、第1の食用固形物からなる外殻層と、上記第1の食用固形物とは異なる第2の食用固形物からなる基部芯とを有する食用固形物を、上記外殻層の上記第1の食用固形物と上記基部芯の上記第2の食用固形物とを同軸の2方向に共押出することにより調製する。一部の実施態様では、外側の第1の食用固形物は主に少なくとも一種のグルコマンナンからなる。一部の実施態様では、外側の第1の食用固形物は主に少なくとも一種のグルコマンナン、特にはコンニャク粉末からなり、内側の第2の食用固形物は主に少なくとも一種のガラクトマンナン、特にはグアー粉末からなる。このようにして、非合体性、特には加熱滅菌の際に非合体性である食用固形物を形成する。このような食用固形物は、任意の手段によって、特には内側の第1の食用固形物と外側の第2の食用固形物との同軸の2方向への共押出によって、調製する。本発明の食用固形物を、外殻層の内側に設けられかつ上記外殻層に被包された基部芯を有する粒子状に調製してもよい。また、食用固形物が、基部芯、特には内部芯と、外殻層との間に、少なくとも一種のさらなる食用固形物の少なくとも1つの層を有してもよい。
【0086】
本発明の食用固形物は水性液体、特には水を吸収する性質、および調理での利用に適した膨潤する性質を有する。特に、本発明の食用固形物が、消化中にこのような緩慢で遅延性の膨潤をすることで、消費者に満腹感をもたらし、代謝に必要な食料量へと摂食量を限定することができる。不溶性繊維と水溶性繊維、特にヘテロマンナン系水溶性繊維とをバランスよく調整した組成と、低グリセミック指数により、消化通過、特に腸管通過、のレオロジーを調節し、消化中のグルコースの大量供給を制限し、多様で、消化代謝疾患から保護する微生物叢の微生物フローラの生育を促すことができる。
【0087】
本発明はまた、食用固形物の製造方法、食用固形物、医薬品として利用される食用固形物、ならびに本発明の食用固形物の利用に関し、組み合わせまたは単独で、上記または下記の性質の全てまたは一部を特徴とする。形式上の記載内容にかかわらず、別段の明示がない限り、上記または下記のさまざまな性質は狭義に、または互いに不可分に関連付けて解釈されるべきでなく、本発明は、構造的または機能的性質のうち一の性質のみ、構造的または機能的性質のうち一部のみ、構造的または機能的性質のうち一の性質の一部のみ、もしくは、構造的または機能的性質の全てまたは一部の群、組み合わせ、列挙に関連するものであってよい。
【0088】
以下の説明、ならびに本発明の考えうる一部の実施態様の非限定的例示において、本発明のその他の目的、特徴、利点が提示される。
【0089】
本発明の方法において、グルコマンナン類およびガラクトマンナン類から選択される多糖類を主に含む粉末と、水性液体組成物とから、本発明の方法によって、粘着性が強く押出成形に適さない固体を形成せずに食用固形物を得る。非粘着性の食用固形物は、コンニャク粉末を含む粉末から形成され、こんにゃくの製造で必要な、粉末と水との混合物の水酸化カルシウムによるアルカリ処理を必要としない。本発明の食用固形物は、西洋の消費者にとって不快なコンニャク特有の匂いを発生しない。本発明の食用固形物の調節可能な官能特性は、食品、調理、美食の観点からの意義をもたらす。また、本発明の食用固形物は、ずっと安定して膨潤しないこんにゃくにはほぼ無い、水中で膨潤する性質を有し、これにより、こんにゃくよりも高い満腹感付与能力を得る。さらに、本発明の食用固形物は、多糖類がアルカリ処理によって修飾され難消化性であるこんにゃくとは対照的に、微生物叢の微生物によって消化可能かつ微生物にとって有用な水溶性繊維で形成される。
【0090】
本発明の食用固形物の製造方法では、グルコマンナン類とガラクトマンナン類とからなる群から選択された少なくとも一種の多糖を含む粉末を選択または製造する。
【0091】
グルコマンナン類は、β-(I-4)結合によって結合されたD-グルコースとD-マンノースとからなる主鎖から、D-グルコースとD-マンノースの不規則な分布によって形成された高分子量の多糖類である。グルコマンナンのD-マンノースの量とD-グルコースの量の比率は、量をモルで表した場合、約1.6である。コンニャクのグルコマンナン類のD-マンノースの一部の水酸基は、C2、C3、またはC6位置にあるアセチル基を有する。グルコマンナン類のうち、コンニャクの塊茎のグルコマンナン類が好ましく用いられる。
【0092】
ガラクトマンナン類は、β-(I-4)結合によって結合されたガラクトースとマンノースとからなる主鎖から形成された多糖類である。ガラクトマンナン類のうち、ガラクトースのモル量に対するマンノースのモル量の比率が約1/1であるフェヌグリークガムのガラクトマンナン、ガラクトースのモル量に対するマンノースのモル量の比率が約2/1であるグアーガムのガラクトマンナン、ガラクトースのモル量に対するマンノースのモル量の比率が約3/1であるタラガムのガラクトマンナン、ガラクトースのモル量に対するマンノースのモル量の比率が約4/1であるキャロブガムのガラクトマンナン、またはガラクトースのモル量に対するマンノースのモル量の比率が約5/1であるカシアガムのガラクトマンナンからなる群から選択される少なくとも一種のガラクトマンナンを用いる。
【0093】
本発明の食用固形物の製造方法では、少なくとも一種のグアーのガラクトマンナンを含む粉末を選択または製造する。このようなガラクトマンナンは微生物叢を構成する微生物を確実に多様化させるガラクトースの補給を可能にする。
【0094】
一部の実施態様において、粉末はセルロース粉末、特に微結晶セルロース、とコンニャク粉末の混合物である。一部の実施態様において、セルロースの平均粒径は100μm~300μmの範囲内である。粉末は、イヌリン、リグニン、タンニン、ヘミセルロース、コラーゲン、ペクチンなどからなる群から選択された化合物を含んでもよい。
【0095】
本発明の食用固形物の製造方法では、特に低温での機械的拘束下で、グルコマンナン類およびガラクトマンナン類からなる群から選択される少なくとも一種の多糖を含む粉末を水性液体組成物内で混合することにより上記流動性分散液を得る。この混合工程は、激しく撹拌しながら所定量の低温の水性液体組成物内、特には水中に所定量の粉末を振り入れて素早く供給することによって行ってよい。この分散により動粘度が100Pa・s未満である流動性分散液を暫定的に形成し、これがその後、自由水性液体組成物を実質的に含まず上記流動性分散液よりも動粘度が大きい水性凝集性固体へと自然に変化した後、水性凝集性固体の熱による熟成と硬化を行い、食用固形物を形成する。
【0096】
加熱による熟成の工程の後、押出機の口金を通して高温高圧でパスタを押出し、麺、米、ラザニア、ラップサンド皮などのさまざまな形状および寸法を有する製品を得る。
【0097】
本発明の食用固形物は、摂食量における炭水化物(単糖類および多糖類)の割合を制限することができる。また、消化中に栄養素を徐放させることができる。繊維の供給と、これらの繊維の膨潤により満腹感をもたらすことができ、過剰な摂食欲求を予防する。
【0098】
本発明の食用固形物は、選択された食感と味の官能感覚、ならびに、水溶性繊維と不溶性繊維とをバランス良く供給することによる満腹感をもたらすことができる非デンプン質の食品を構成する。このような食用固形物は、年齢、性別、身体活動レベル、消化通過速度、全般的な健康状態、微生物叢の多様性と活動性、といった各消費者の消化特性を考慮することができる。
【実施例1】
【0099】
コンニャク粉末
所定の質量の粒度120meshのコンニャクの塊茎の粉末(フランス、Kalys Gastronomie社製)を、4℃の所定の質量の水に激しい撹拌を行いながら素早く加えて、本発明の食用固形物を調製する。通常は、4℃の水100mlに対し、相当する量の粉末を5秒未満、特には約3秒間で加える。粉末と水の量は以下の表1に示す。非粘着性の水性凝集性固体へと変化する流動性分散液を形成する。非粘着性の水性凝集性固体の熟成の工程は、オートクレーブまたは圧力釜の自生圧力下で、118℃で行われる。凝集性で非粘着性、かつ、水性凝集性固体よりも高い硬度の食用固形物を得る。硬化したこの食用固形物を、スパゲッティ形状の食用固形物とするように押出する。比率(粉末の質量/水の質量)が15%以上である食用固形物は、高温で押出するのが好ましい。比率(粉末の質量/水の質量)が15%未満である食用固形物は、低温で押出するのが好ましい。比率(粉末の質量/水の質量)が約5%である食用固形物は、約4℃で押出するのが好ましい。凝集性で非粘着性でスパゲッティ形状の、接触において略非合体性である食用固形物を得る。
【0100】
本発明の食用固形物の吸水速度を評価する。20℃の過剰量の水に、初期量の食用固形物を加える。上記量の食用固形物と上記量の水を混合した30分、60分、120分、および180分後に、食用固形物を引き上げて水を切り、食用固形物の総重量を計量する。このようにして、食用固形物の重量増加、および食用固形物の吸水速度を評価する。結果を以下の表1に示す。列Aは食用固形物を形成するために用いられた粉末の質量(単位:g)、列Bは食用固形物を形成するために用いられた水の質量(単位:g)、列Cは食用固形物の質量(単位:g)に対する食用固形物を形成するために用いられた粉末の質量(単位:g)の比率、列Dは20℃の過剰量の水中に30分間維持した食用固形物の質量の増加(単位:g)、列Eは20℃の過剰量の水中に60分間維持した食用固形物の質量の増加(単位:g)、列Fは20℃の過剰量の水中に120分間維持した食用固形物の質量の増加(単位:g)、列Gは20℃の過剰量の水中に180分間維持した食用固形物の質量の増加(単位:g)を示す。カッコ内の値は、食用固形物の質量変化と当初質量との関係(単位:%)を示す。
【0101】
【0102】
20℃の純水に浸漬した食用固形物の質量増加が観察される。この増加は本発明の食用固形物の膨潤性を表すものである。しかしながら、20℃の過剰量の水に浸漬した食用固形物の質量増加の動力学は緩慢で、食用固形物の構成材料が準安定状態であり、調理での利用に好適であることを表している。本発明の食用固形物による吸水のこの緩慢な動力学は、本発明の方法で処理されていないコンニャク粉末の水和の急激な動力学と対照的である。本発明の食用固形物の非粘着性と硬度の特性は、室温の水を加えて水和したコンニャク粉末の粘着性の特性と対照的である。本発明の食用固形物のこの非粘着性と硬度の特性は、食用固形物の例えば押出による成形と、高温での滅菌を可能にする。
【0103】
また、100℃の過剰量の水に所定量の本発明の食用固形物を投入し、同様の試験を行う。結果を以下の表2に示す。列Aは食用固形物を形成するために用いられた粉末の質量(単位:g)、列Bは食用固形物を形成するために用いられた水の質量(単位:g)、列Cは食用固形物の質量(単位:g)に対する食用固形物を形成するために用いられた粉末の質量(単位:g)の比率、列Hは100℃の過剰量の水中に30分間維持した食用固形物の質量の増加(単位:g)を示す。カッコ内の値は、食用固形物の質量変化と当初質量との関係(単位:%)を示す。
【0104】
【0105】
しかしながら、100℃の過剰量の水に浸漬した食用固形物の質量増加の動力学は緩慢で、食用固形物の構成材料が準安定状態であり、調理での利用に好適であることを表している。
【0106】
実施例1に記載の食用固形物は、その後の滅菌において安定である。食用固形物の質量(単位:g)に対する食用固形物を形成するために用いられた粉末の質量(単位:g)の比率が20%以上である場合、加熱滅菌の際にスパゲッティの合体性は観察されない。特に、スパゲッティは水に浸漬するだけで分離する。しかしながら、調理における利用において、食用固形物をその場で、特にスパゲッティ形状に調製してもよい。
【0107】
コンニャクの塊茎の粉末から形成した実施例1に記載の食用固形物は、主にグルコマンナン類を含む。口腔、咽頭、食道、胃、小腸からなるヒトの消化管上部はグルコマンナン類の消化に適した酵素組成を備えていないため、実施例1に記載の食用固形物は加水分解されたり、グルコースを放出したりすることなく結腸に達し、血糖症の有意な原因とならず、カロリー値はグルコマンナン1gあたり約2kcalである。これらの食用固形物は、加水分解に適した酵素を産生する結腸の微生物によって加水分解され、結腸の微生物がその代謝と多様性維持のために利用可能なグルコースとマンノースを産生する。
【0108】
なお、白パンや白米のような精製されたデンプン質の食品は、小腸に達する前に加水分解され再吸収され、微生物叢の微生物の維持と生育に寄与しない。このような精製されたデンプン質の食品ばかり摂取すると、これらの微生物の少なくとも一部が脆弱化し、微生物叢が衰える。
【実施例2】
【0109】
グアー粉末
実施例1に記載の方法で、所定の質量のグアー粉末(フランス、Kalys Gastronomie社製)を、4℃の所定の質量の水に激しい撹拌を行いながら素早く加えて、本発明の食用固形物を調製する。通常は、4℃の水100mlに対し、相当する量の粉末を5秒未満、特には約3秒間で加える。粉末と水の量は以下の表3に示す。列Iは食用固形物を形成するために用いられたグアー粉末の質量(単位:g)、列Jは食用固形物を形成するために用いられた水の質量(単位:g)、列Kは食用固形物の質量(単位:g)に対する食用固形物を形成するために用いられた粉末の質量(単位:g)の比率を示す。実施例1に記載の方法と合致した方法でグアー粉末から形成された食用固形物は、凝集性で非粘着性であり、かつ、4℃の混合物から形成した食用固形物よりも高い硬度である。硬化したこの食用固形物を、スパゲッティ形状の食用固形物とするように押出する。本発明の押出された食用固形物の吸水速度を実施例1に記載のとおり評価する。表3において、列L、M、Nは20℃の過剰量の水中にそれぞれ60分間、120分間、210分間維持した食用固形物の質量増加(単位:g)を示し、カッコ内の値は、食用固形物の質量変化と当初質量との関係(単位:%)を示す。
【0110】
【0111】
20℃の純水に浸漬した食用固形物の質量増加が観察される。この増加は本発明の食用固形物の膨潤性を表すものである。しかしながら、20℃の過剰量の水に浸漬した食用固形物の質量増加の動力学は緩慢で、食用固形物の構成材料が準安定状態であり、調理での利用に好適であることを表している。
【0112】
実施例2に記載の食用固形物は、その後の滅菌において安定である。食用固形物の質量(単位:g)に対する食用固形物を形成するために用いられた粉末の質量(単位:g)の比率が25%以上である場合、加熱滅菌および加熱滅菌状態での保存の際にスパゲッティの合体性は観察されない。
【0113】
しかしながら、調理における利用において、食用固形物はその場で、滅菌なしで、特にスパゲッティ形状に調製してもよい。冷間押出には、調理で一般的に用いられるポテトライサー型の装置を用いると有利である。また、その後の調理における利用のため、食用固形物を低温、特に冷凍温度、で保存してもよい。
【実施例3】
【0114】
コンニャクとグアーのミックス粉末
実施例1に記載の方法で、所定の質量のコンニャクの塊茎の粉末(フランス、Kalys Gastronomie社製)とグアー粉末(フランス、Kalys Gastronomie社製)との混合物を、4℃の所定の質量の水に激しい撹拌を行いながら素早く加えて、本発明の食用固形物を調製する。通常は、4℃の水100mlに対し、相当する量の粉末を5秒未満、特には約3秒間で加える。粉末と水の量は以下の表4に示す。列Nは食用固形物を形成するために用いられたコンニャク粉末の質量(単位:g)、列Oは食用固形物を形成するために用いられたグアー粉末の質量(単位:g)、列Pは食用固形物を形成するために用いられた水の質量(単位:g)、列Qは食用固形物の質量(単位:g)に対する食用固形物を形成するために用いられた粉末の質量(単位:g)の比率を示す。実施例1に記載の方法と合致した方法でコンニャクとグアーのミックス粉末から形成された食用固形物は、凝集性で非粘着性、かつ、4℃の混合物から形成した食用固形物よりも高い硬度である。硬化したこの食用固形物を、ポテトライサー装置を用いてスパゲッティ形状の食用固形物とするように押出する。
【0115】
本発明の押出された食用固形物の吸水速度を実施例1に記載のとおり評価する。表4において、列R、Sは20℃の過剰量の水中にそれぞれ60分間と120分間維持した食用固形物の質量増加(単位:g)を示し、カッコ内の値は、食用固形物の質量変化と当初質量との関係(単位:%)を示す。
【0116】
【0117】
20℃の純水に浸漬した食用固形物の質量増加が観察される。この増加は本発明の食用固形物の膨潤性を表すものである。しかしながら、20℃の過剰量の水に浸漬した食用固形物の質量増加の動力学は緩慢で、食用固形物の構成材料が準安定状態であり、調理での利用に好適であることを表している。
【実施例4】
【0118】
コンニャクと不溶性繊維であるセルロースとのミックス粉末
実施例1に記載の方法で、所定の質量のコンニャクの塊茎の粉末(フランス、Kalys Gastronomie社製)とセルロースとの混合物を、4℃の所定の質量の水に激しい撹拌を行いながら素早く加えて、本発明の食用固形物を調製する。通常は、4℃の水100mlに対し、相当する量の粉末を5秒未満、特には約3秒間で加える。粉末と水の量は以下の表5に示す。列Tは食用固形物を形成するために用いられた粉末の中のコンニャク粉末の質量(単位:g)、列Uは食用固形物を形成するために用いられた粉末の中の微結晶セルロースの質量(単位:g)、列Vは食用固形物を形成するために用いられた水の質量(単位:g)、列Wは食用固形物の質量(単位:g)に対する食用固形物を形成するために用いられた粉末の質量(単位:g)の比率を示す。
【0119】
実施例1に記載の方法と合致した方法でコンニャクとセルロースのミックス粉末から形成された食用固形物は、凝集性で非粘着性、かつ、4℃の混合物から形成した食用固形物よりも高い硬度である。硬化したこの食用固形物を、ポテトライサー装置を用いてスパゲッティ形状の食用固形物とするように押出する。
【0120】
本発明の押出された食用固形物の吸水速度を実施例1に記載のとおり評価する。表5において、列X、Yは20℃の過剰量の水中にそれぞれ60分間と120分間維持した食用固形物の質量増加(単位:g)を示し、カッコ内の値は、食用固形物の質量変化と当初質量との関係(単位:%)を示す。
【0121】
【0122】
20℃の純水に浸漬した食用固形物の質量増加が観察される。この増加は本発明の食用固形物の膨潤性を表すものである。しかしながら、20℃の過剰量の水に浸漬した食用固形物の質量増加の動力学は緩慢で、食用固形物の構成材料が準安定状態であり、調理での利用に好適であることを表している。コンニャク粉末と微結晶セルロースを混合して作られた粉末を用いることで、コンニャク粉末単独で得た食用固形物に比べて安定性が向上した食用固形物が形成可能であることが確認された。また、コンニャク粉末を用いることで、特にセルロースの質量に対するコンニャク粉末の質量の比率が25%以上であり、食用固形物中のコンニャク粉末の割合が9%以上(食用固形物の質量に対するコンニャク粉末の質量の比率が10%以上)である場合、セルロースの不快な味を消すことが確認された。
【実施例5】
【0123】
コンニャク粉末とセルロースのミックス粉末から作られたミックス食用固形物
実施例1に記載の方法により、本発明の食用固形物を調製する。粉末は、質量比でコンニャク粉末50%とセルロース50%を含むミックス粉末である。4℃の水100mlの中で、上記ミックス粉末30gを激しい撹拌により素早く混合する。凝集性かつ非粘着性で、セルロースの不快な味が消された食用固形物を得る。
【実施例6】
【0124】
コンニャク粉末とセルロースのミックス粉末から作られたミックス食用固形物
実施例1に記載の方法により、本発明の食用固形物を調製する。ただし、粉末は、質量比でコンニャク粉末1/3とセルロース2/3を含むミックス粉末である。4℃の水100mlの中で、上記ミックス粉末30gを混合する。凝集性かつ非粘着性で、セルロースの不快な味が消された食用固形物を得る。
【実施例7】
【0125】
コンニャク粉末とセルロースのミックス粉末から作られたミックス食用固形物
実施例1に記載の方法により、本発明の食用固形物を調製する。ただし、粉末は、質量比でコンニャク粉末50%とセルロース50%を含むミックス粉末である。4℃の水100mlの中で、上記ミックス粉末40gを混合する。凝集性かつ非粘着性で、セルロースの不快な味が消された食用固形物を得る。
【実施例8】
【0126】
コンニャク粉末とセルロースのミックス粉末から作られたミックス食用固形物
実施例1に記載の方法により、本発明の食用固形物を調製する。ただし、粉末は、質量比でコンニャク粉末25%とセルロース75%を含むミックス粉末である。4℃の水100mlの中で、上記ミックス粉末40gを混合する。凝集性かつ非粘着性で、セルロースの不快な味が消された食用固形物を得る。
【実施例9】
【0127】
コンニャク粉末、セルロース、イヌリン、タラ、ペクチンのミックス粉末から作られたミックス食用固形物
実施例1に記載の方法により、本発明の食用固形物を調製する。ただし、粉末は、質量比でコンニャク粉末約33%、セルロース約33%、イヌリン粉末約11%、タラ粉末約11%、ペクチン粉末約11%を含むミックス粉末である。4℃の水100mlの中で、上記ミックス粉末45gを混合する。凝集性かつ非粘着性で、セルロースの不快な味が消された食用固形物を得る。
【実施例10】
【0128】
コンニャク粉末とセルロースのミックス粉末から作られたミックス食用固形物
実施例1に記載の方法により、本発明の食用固形物を調製する。ただし、粉末は、コンニャク粉末50%とセルロース50%を含むミックス粉末である。4℃の水100mlに食事療法用酵母15gを含む懸濁液中で、上記ミックス粉末30gを混合する。凝集性かつ非粘着性で、セルロースと食事療法用酵母の不適切かつ不快な味が消された食用固形物を得る。任意のその他の成分や調味料の味を消したこのような食用固形物を用いてもよい。
【0129】
実施例1~10に記載の押出された食用固形物は、調理での利用に好適な官能特性を有する。本発明の食用固形物はヘテロマンナン類、特にグルコマンナン類および/またはガラクトマンナン類が豊富であり、実質的にデンプン質の組成物の血糖への影響と比較して、これらの食用固形物の血糖への影響は少なくなっている。
【0130】
本発明の食用固形物は水溶性繊維と不溶性繊維のバランスが良い。剪断減粘性であり、レオロジー面で管理された消化通過を可能にする。消化により、微生物叢内の微生物の生育と維持に適した、粘性がある粘着性の親水性材料を形成する。
【実施例11】
【0131】
料理の調製
実施例1に記載の方法により、本発明の食用固形物を調製する。ただし、粉末はコンニャク粉末である。水性凝集性固体を口金を通して押出することで、凝集性で、線条すなわちスパゲッティ形状の、非粘着性で略非合体性の食用固形物を得る。押出された食用固形物を、トマトベースのソースと混合する。本発明者は、食用固形物の線条へトマトソースが浸透し、合体に抵抗する周辺外皮が形成されることを確認した。
【0132】
本発明は、さまざまな変形や、上述以外の用途に適用されてよい。具体的には、別段の明示がない限り、上記各実施態様のさまざまな構造的または機能的性質は組み合わせて、および/または狭義に、および/または互いに不可分に関連付けて解釈されるべきでなく、単なる列挙として解釈されるべきであることは当然である。さらに、上記さまざまな実施態様の構造的および/または機能的性質は、あらゆる列挙、もしくはあらゆる組み合わせの全体または一部に適用されてよい。
【0133】
食品分野におけるその他の用途も考えられる。これは、脂肪分、ゼラチン、ケーシング、食欲抑制剤中の水溶性非発酵性繊維、または水分活性の安定剤および抑制剤の代替としての利用であってよい。食用フィルム分野および化粧品分野における、水分活性の変更を目的としたその他の用途も考えられる。
【国際調査報告】