(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(54)【発明の名称】スレッドフォーマ
(51)【国際特許分類】
B23G 7/02 20060101AFI20220518BHJP
B23G 5/06 20060101ALI20220518BHJP
B21H 3/08 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
B23G7/02
B23G5/06 B
B21H3/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559555
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(85)【翻訳文提出日】2021-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2020057679
(87)【国際公開番号】W WO2020207751
(87)【国際公開日】2020-10-15
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506297474
【氏名又は名称】ヴァルター アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ビルク, ユルゲン
(57)【要約】
本発明は、金属ワークピースにおいて内部スレッドを製造するためのスレッドフォーマ(1)に関する。スレッドフォーマ(1)は、共通中央回転軸(7)を有する形成セクション(6)を含む。形成セクション(6)は、回転軸(7)に並列して伸長する複数の潤滑溝(8)を含む。形成セクション(6)は、形成セクション(6)の外周に沿って伸長する複数のリッジセクション(9)を含む。複数のリッジセクション(9)は、金属ワークピースにおいて内部スレッドを形成するために配置されている。円周方向において、複数のリッジセクション(9)の各2つは、複数の潤滑溝(8)の1つにより分けられている。潤滑溝(8)の少なくとも1つは、回転軸(7)に鉛直する投影面に投影された際に、潤滑溝(8)の表面(11)に交差するいずれの半径(10)に関して非対称である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ワークピースにおいて内部スレッドを製造するためのスレッドフォーマ(1)であって、
第1の端(3)と第2の端(4)とを有するシャフト(2)と、
前記スレッドフォーマ(1)を加工ツールのスピンドルに載置するための、前記シャフト(2)の前記第1の端(3)に接続された載置セクション(5)と、
前記シャフト(2)の前記第2の端(4)に接続された形成セクション(6)と
を含み、
前記シャフト(2)と、前記載置セクション(5)と、前記形成セクション(6)とは、共通中央回転軸(7)を有し、前記回転軸(7)は、縦方向に伸長し、
前記形成セクション(6)は、前記回転軸(7)に並列して伸長する複数の潤滑溝(8)を含み、
前記形成セクション(6)は、前記形成セクション(6)の外周に沿って伸長する複数のリッジセクション(9)を含み、
前記複数のリッジセクション(9)は、前記金属ワークピースにおいて前記内部スレッドを形成するために配置されており、
円周方向において、前記複数のリッジセクション(9)の各2つは、前記複数の潤滑溝(8)の1つにより分けられているスレッドフォーマ(1)であって、
前記潤滑溝(8)の少なくとも前記1つは、前記回転軸(7)に鉛直する投影面に投影された際に、前記潤滑溝(8)の表面(11)に交差するいずれの半径(10)に関して非対称であることを特徴とするスレッドフォーマ(1)。
【請求項2】
前記いずれの半径は分割半径(rd)であり、前記分割半径(rd)は、1つの前記潤滑溝(8)を第1の部分(A)と第2の部分(B)とに分割し、前記分割半径(rd)は、1つの前記潤滑溝(8)の前記表面(18、19)に、前記回転軸(7)から最小の半径方向の距離を有するミニマムポイント(20)にて交差する、請求項1に記載のスレッドフォーマ(1)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記潤滑溝(8)は、いずれの半径に関して非対称であり、前記半径は、前記潤滑溝(8)の前記表面(18、19)に、前記形成セクション(6)における1つの前記潤滑溝(8)の全体の軸方向のエクステンションに沿って交差する、請求項1から請求項2のいずれか一項に記載のスレッドフォーマ(1)。
【請求項4】
前記投影面に投影された際に、
前記複数のリッジセクション(9)のそれぞれは、前記形成セクション(6)の前記外周に、リーディングエンドポイント(13)と、前記形成セクション(6)の前記外周に、トレーリングエンドポイント(14)と、を有し、
1つの前記潤滑溝(8)の前記表面(18、19)は、2つの前記リッジセクション(9)の第1のものの前記トレーリングエンドポイント(14)から、2つの前記リッジセクション(9)の第2のものの前記リーディングエンドポイント(13)まで伸長し、
1つの前記潤滑溝(8)の前記表面(18、19)はミニマムポイント(20)を有し、前記ミニマムポイント(20)は、前記回転軸(7)からの最小の半径方向の距離を有し、
1つの前記潤滑溝(8)は、2つの部分表面(18、19)を含み、
第1の部分表面(18)は、第1のリッジセクション(9)の前記トレーリングエンドポイント(14)から、前記ミニマムポイント(20)まで伸長し、
第2の部分表面(19)は、前記ミニマムポイント(20)から、第2のリッジセクション(9)の前記リーディングエンドポイント(13)まで伸長する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のスレッドフォーマ(1)。
【請求項5】
前記投影面に投影された際に、1つの前記潤滑溝(8)の前記第1の部分(A)は、第1の部分表面(18)により制限されており、1つの前記潤滑溝(8)の前記第2の部分(B)は、第2の部分表面(19)により制限されており、前記第1の部分(A)は、前記第2の部分(B)より小さい断面積を有する、請求項2及び請求項4に記載のスレッドフォーマ(1)。
【請求項6】
前記投影面に投影された際に、前記第2の部分表面(19)は、前記ミニマムポイント(20)から、前記第2のリッジセクション(9)の前記リーディングエンドポイント(13)まで、その全体のエクステンションに沿う凹曲度を有し、前記第1の部分表面(18)は、前記第2の部分表面(19)より短い、請求項4又は請求項5に記載のスレッドフォーマ(1)。
【請求項7】
前記投影面に投影された際に、前記第1の部分表面(18)の少なくとも一部は真っ直ぐである、請求項4から請求項6のいずれか一項に記載のスレッドフォーマ(1)。
【請求項8】
前記投影面に投影された際に、
前記第1の部分表面(18)は、第1のトップ角度(α1)を有し、前記第1のトップ角度(α1)は、前記第1のリッジセクション(9)の前記トレーリングエンドポイント(14)に交差する第1の半径(r1)と、前記第1の部分表面(18)上の第1のミッドポイント(23)に交差する第2の半径(r2)と、の間に形成されており、
前記第2の部分表面(19)は、第2のトップ角度(α2)を有し、前記第2のトップ角度(α2)は、前記第2のリッジセクション(9)の前記リーディングエンドポイント(14)に交差する第3の半径(r3)と、前記第2の部分表面(19)上の第2のミッドポイント(24)に交差する第4の半径(r4)と、の間に形成されており、
前記第1のミッドポイント(23)と前記第2のミッドポイント(24)とは、前記第1のリッジセクション(9)の最大の半径方向のエクステンションと、前記回転軸(7)からの、前記ミニマムポイント(20)の前記半径方向の距離と、の合計の半分に等しい、前記回転軸(7)からの半径方向の距離を有し、
前記第1のトップ角度(α1)は、前記第2のトップ角度(α2)より大きい、
請求項4から請求項7のいずれか一項に記載のスレッドフォーマ(1)。
【請求項9】
前記第1のトップ角度(α1)は、2.8から12.0度の範囲にある、請求項8に記載のスレッドフォーマ(1)。
【請求項10】
前記投影面に投影された際に、
前記第1の部分表面(18)は、第1のボトム角度(β1)を有し、前記第1のボトム角度(β1)は、前記ミニマムポイント(20)に交差する分割半径(rd)と、前記第1の部分表面(18)上の第1のミッドポイント(23)に交差する第2の半径(r2)と、の間に形成されており、
前記第2の部分表面(19)は、第2のボトム角度(β2)を有し、前記第2のボトム角度(β2)は、前記ミニマムポイント(20)に交差する前記分割半径(rd)と、前記第2の部分表面(19)上の第2のミッドポイント(24)に交差する第4の半径(r4)と、の間に形成されおり、
前記第1のミッドポイント(23)と前記第2のミッドポイント(24)とは、前記第1のリッジセクション(9)の最大の半径方向のエクステンションと、前記回転軸(7)からの、前記ミニマムポイント(20)の前記半径方向の距離と、の合計の半分に等しい、前記回転軸(7)からの半径方向の距離を有し、
前記第1のボトム角度(β1)は、前記第2のボトム角度(β2)より小さい、
請求項4から請求項9のいずれか一項に記載のスレッドフォーマ(1)。
【請求項11】
前記第1のボトム角度(β1)は、3.8から53.0度の範囲にある、請求項10に記載のスレッドフォーマ(1)。
【請求項12】
前記投影面に投影された際に、前記第1のリッジセクション(9)の前記トレーリングエンドポイント(14)と、前記第2のリッジセクション(9)の前記リーディングエンドポイント(13)と、前記ミニマムポイント(20)とが、二等辺三角形に広がる、請求項4から請求項11のいずれか一項に記載のスレッドフォーマ(1)。
【請求項13】
前記投影面に投影された際に、前記第1のリッジセクション(9)の前記トレーリングエンドポイント(14)と、前記第2のリッジセクション(9)の前記リーディングエンドポイント(13)と、前記ミニマムポイント(20)とが、不等辺三角形に広がる、請求項4から請求項11のいずれか一項に記載のスレッドフォーマ(1)。
【請求項14】
前記潤滑溝(8)の少なくとも前記1つは、前記形成セクション(6)と、前記シャフト(2)とに伸長する、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のスレッドフォーマ(1)。
【請求項15】
前記複数の潤滑溝(8)はすべて、前記投影面に投影された際に、同じ形状を有する、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のスレッドフォーマ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属ワークピースにおいて内部スレッドを製造するためのスレッドフォーマに関する。スレッドフォーマは、第1の端と第2の端とを有するシャフトと、スレッドフォーマを加工ツールのスピンドルに載置するための、シャフトの第1の端に接続された載置セクションと、シャフトの第2の端に接続された形成セクションと、を含む。シャフトと、載置セクションと、形成セクションと、は、共通中央回転軸を有する。回転軸は、縦方向に伸長する。形成セクションは、回転軸に並列して伸長する複数の潤滑溝を含む。形成セクションは、形成セクションの外周に沿って伸長する複数のリッジセクションを含む。複数のリッジセクションは、金属ワークピースにおいて内部スレッドを形成するために配置されている。円周方向において、複数のリッジセクションの各2つは、複数の潤滑溝の1つにより分けられている。
【背景技術】
【0002】
スレッドフォーマには様々なタイプがあり、それらは時に、スレッド形成ツールとも呼ばれる。スレッドフォーマは、金属ワークピースにおいて、切削又は切り屑除去加工などのいずれの材料除去アクションなく、内部スレッドを作り出す。1つのタイプのスレッドフォーマは、複数のリッジセクションが提供された形成セクションを有する。複数のリッジセクションは、形成セクションの外周に配置されており、内部スレッドを形成する。換言すると、スレッドフォーマの形成セクションにおける複数のリッジセクションは、円周方向のらせんの形態にて配置されている。いくつかのスレッドフォーマは、回転軸に並列して伸長する複数の潤滑溝を含む。円周方向において、複数のリッジセクションの各2つは、複数の潤滑溝の1つにより分けられている。そのようなスレッドフォーマを使用して、金属ワークピースにおいて内部スレッドを形成するプロセスは、スレッドフォーマを、その中央回転軸を中心に回転させながら、そして、ツールを軸方向に前方に移動させながら、すでに存在するボアにスレッドフォーマを挿入することを含む。通常は、形成セクションの、回転軸に関して測定される、最大の半径方向のエクステンションは、存在するボアの半径より大きい。リッジセクションは、ワークピースの表面に押され、存在するボアの円筒状の壁の再形成又は変形を引き起こし、内部スクリュスレッドが形成されるようにする。
【0003】
ワークピースのこの再形成により、ワークピースを切削することなく作業するスレッドフォーマは、大きなストレスと、高い摩耗の程度と、同様に、高い温度と、にさらされる。スレッドフォーマには時に、形成セクションのリッジセクションにクラックが形成される。
【発明の概要】
【0004】
本開示の目的は、ツール寿命の長いスレッドフォーマを提供することである。さらなる目的は、耐摩耗性が改善されたスレッドフォーマを提供することである。
【0005】
上述する目的の少なくとも1つは、添付の特許請求の範囲に画定される本発明により達成される。
【0006】
本開示の1つの態様によると、上述する目的の少なくとも1つは、金属ワークピースにおいて内部スレッドを製造するためのスレッドフォーマにより対処される。スレッドフォーマは、第1の端と第2の端とを有するシャフトと、スレッドフォーマを加工ツールのスピンドルに載置するための、シャフトの第1の端に接続された載置セクションと、シャフトの第2の端に接続された形成セクションと、を含む。シャフトと、載置セクションと、形成セクションと、は、共通中央回転軸を有する。回転軸は、縦方向に伸長する。形成セクションは、回転軸に並列して伸長する複数の潤滑溝を含む。形成セクションは、形成セクションの外周に沿って伸長する複数のリッジセクションを含む。複数のリッジセクションは、金属ワークピースにおいて内部スレッドを形成するために配置されている。さらに、円周方向において、複数のリッジセクションの各2つは、複数の潤滑溝の1つにより分けられている。潤滑溝の少なくとも1つは、回転軸に鉛直する投影面に投影された際に、潤滑溝の表面に交差するいずれの半径に関して非対称である。
【0007】
本開示に係るスレッドフォーマの基本的なコンセプトは、複数の潤滑溝の少なくとも1つに、非対称性を提供することである。この非対称性は、複数の潤滑溝の1つにより分けられた、複数のリッジセクションの2つが、回転軸に鉛直する面、つまり、投影面に投影された際に見ることができる。この投影図の外側の輪郭は、スレッドフォーマの、形成セクションのある先端上の軸方向図において、観察者により見ることができる、スレッドフォーマの外側の輪郭によく対応する。
【0008】
本開示によると、潤滑溝に隣接するリッジセクションのフランクは異なって設計されており、非対称の潤滑溝をもたらす。したがって、リッジセクションは、それらの側面の1つにて、より強い、及び/又は、より安定したフランクを有する。したがって、潤滑溝の少なくとも1つの非対称性により、ツール寿命の長い、より強い、及び/又は、より安定したツールを達成することができる。
【0009】
本開示の実施形態のそれぞれによると、1つの潤滑溝に隣接する2つのリッジセクションの1つは、向上した強度を提供するよう設計することができ、1つの潤滑溝に隣接する2つのリッジセクションの他の1つは、1つの潤滑溝の自由断面積の過度の減少が回避されるよう、冷却及び潤滑液のための追加的空間を提供するよう設計することができる。したがって、リッジセクションは強化され、同時に、効率的に冷却/潤滑される。
【0010】
したがって、そのフランクの1つにて高い強度を持つリッジセクションと、冷却及び/又は潤滑液が効率的に供給される潤滑溝と、を有するスレッドフォーマが達成される。したがって、ツール寿命が長く、摩耗しにくいスレッドフォーマが提供される。
【0011】
複数のリッジセクションは、金属ワークピースにおいて内部スレッドを形成するために配置されている。換言すると、複数のリッジセクションは、共通回転軸を中心にらせん状に形成された進路に沿って配置されている。複数のリッジセクションのそれぞれは、製造する内部スレッドにおける溝の断面形状にほぼ対応する断面を有する。
【0012】
回転軸に関するらせん角度にて伸長する、らせん状に形成された潤滑溝を持つスレッドフォーマがある。しかし、本開示は、回転軸に関する傾斜のない、回転軸に並列して伸長する複数の潤滑溝を有するスレッドフォーマに関する。
【0013】
本開示に係るスレッドフォーマは、金属ワークピースにおいて、所望する左右像を持つ内側スレッドを製造できるよう、回転方向を有するよう設計されている。その結果として、複数のリッジセクションのそれぞれは、その周囲にリーディングエンドポイントを有する。リーディングエンドポイントは、スレッドフォーマを回転方向に回す際の、リッジセクションのリーディングポイントである。さらに、複数のリッジセクションのそれぞれは、その周囲にトレーリングエンドポイントを有する。トレーリングエンドポイントは、スレッドフォーマを回転方向に回す際の、リッジセクションのトレーリングポイントである。
【0014】
本開示の1つの実施形態では、スレッドフォーマの形成セクションは、投影面に投影された際に、多角形状を有する。具体的には、形成セクションは、この投影図に見られるように、リッジの周囲に沿って、全体的に多角形状を有する。この多角形の隅のそれぞれは、複数のリッジセクションの最大の半径方向のエクステンションのポイントにより形成されている。
【0015】
1つの実施形態では、1つの潤滑溝に隣接する複数のリッジセクションの2つのエンドポイントは、回転軸からの、異なる半径方向の距離を有する。本開示によると、潤滑溝が、隣接する形成リッジの2つのエンドポイントのより短い半径方向の距離に等しい、回転軸からの半径方向の距離まで非対称であれば、その潤滑溝は、非対称とみなされる。
【0016】
本開示の1つの実施形態では、潤滑溝の非対称性はまた、回転軸に鉛直し、複数のリッジセクションの2つと、複数の潤滑溝の1つと、を通って伸長する断面においても見ることができる。複数のリッジセクションのらせん配置により、潤滑溝のリーディングフランクとトレーリングフランクとは、回転軸からの、異なる半径方向の距離にあるエンドポイントを有してよい。そのような場合では、及び、本開示の意味において、1つの潤滑溝の形状は、それらのエンドポイントの半径方向の距離の、より短い1つに等しい、回転軸からの半径方向の距離までのみが評価される。
【0017】
本開示の1つの実施形態では、複数の潤滑溝のそれぞれは、回転軸に鉛直する投影面に投影された際に、それぞれの潤滑溝の表面に交差するいずれの半径に関して非対称である。したがって、複数の潤滑溝のそれぞれは、少なくとも1つの非対称な潤滑溝の利点を提供する。さらに、本開示の1つの実施形態では、複数の潤滑溝のそれぞれは、投影面に投影された際に、同じ形状を有する。したがって、複数の潤滑溝のそれぞれは、同じ単一のツール又は複数のツールを用いて製造できる。
【0018】
本開示の1つの実施形態では、潤滑溝の少なくとも1つは、スレッドフォーマの形成セクションのみにおいて伸長する。本開示の1つの実施形態では、複数の潤滑溝のそれぞれは、スレッドフォーマの形成セクションのみにおいて伸長する。本開示のさらなる実施形態では、潤滑溝の少なくとも1つは、スレッドフォーマの形成セクションとシャフトとにおいて伸長する。1つの実施形態では、複数の潤滑溝のそれぞれは、スレッドフォーマの形成セクションとシャフトとにおいて伸長する。シャフトにおける少なくとも1つの潤滑溝のエクステンションは、形成セクションが、その全体の軸方向のエクステンションにわたってボア内に螺入された後であっても、内部スレッドの形成中の、ボアへの潤滑液の効率的な移送を可能にする。
【0019】
本開示の1つの実施形態では、いずれの半径は、分割半径である。分割半径は、複数の潤滑溝の1つを、第1の部分と第2の部分とに分割する。分割半径は、回転軸からの最小の半径方向の距離を有するミニマムポイントにて、複数の潤滑溝の1つの表面に交差する。この特徴は、リッジセクションの、1つの潤滑溝に隣接する1つの側面の十分なサポートと、1つの潤滑溝における潤滑液の効率的な移送と、を両立させる。
【0020】
本開示の1つの実施形態では、少なくとも1つの潤滑溝は、形成セクションにおいて、及び、任意的に、シャフトにおいて、潤滑溝のその全体の長手方向のエクステンションに沿って非対称である。全体の軸方向のエクステンションに沿う非対称性により、軸方向のエクステンションに沿うすべてのリッジセクションに、サポート機能が提供される。さらに、1つの実施形態では、1つの潤滑溝は、単一の研削ツールを用いて、形成セクションにおいて、及び、任意的に、シャフトにおいて、その全体の軸方向のエクステンションに沿って製造される。
【0021】
本開示に係るスレッドフォーマの1つの実施形態では、1つの潤滑溝の表面は、2つのリッジセクションの第1のもののトレーリングエンドポイントから、2つのリッジセクションの第2のもののリーディングエンドポイントまで伸長する。1つの潤滑溝の表面は、ミニマムポイントを有する。ミニマムポイントは、回転軸からの最小の半径方向の距離を有する。さらに、1つの潤滑溝は、2つの部分表面を含む。第1の部分表面は、第1のリッジセクションのトレーリングエンドポイントから、ミニマムポイントまで伸長し、第2の部分表面は、ミニマムポイントから、第2のリッジセクションのリーディングエンドポイントまで伸長する。
【0022】
これを考慮して、特許請求の範囲に係る、1つの潤滑溝の非対称性について、2つの識別可能な設計がある。第1の実施形態では、1つの潤滑溝の非対称性は、第1のリッジセクションのトレーリングエンドに対するサポートを提供する。第2の実施形態では、1つの潤滑溝の非対称性は、第2のリッジセクションのリーディングエンドに対するサポートを提供する。
【0023】
1つの実施形態では、いずれの半径は分割半径である。分割半径は、1つの潤滑溝を、第1の部分と第2の部分とに分割する。分割半径は、回転軸からの最小の半径方向の距離を有するミニマムポイントにて、1つの潤滑溝の表面に交差する。投影面に投影された際に、第1の部分は、第1の部分表面により制限されており、第2の部分は、第2の部分表面により制限されている。第1の実施形態では、1つの潤滑溝の第1の部分は、第2の部分より小さい断面積を有する。この第1の実施形態では、潤滑溝の非対称性は、第1のリッジセクションのトレーリングエンドの強度と安定性とをサポートする。第2の実施形態では、1つの潤滑溝の第1の部分は、第2の部分より広い断面積を有する。この第2の実施形態では、潤滑溝の非対称性は、第2のリッジセクションのリーディングエンドの強度と安定性とをサポートする。2つの実施形態では、潤滑溝の第2の部分のより広い面積を設計することができ、第1の部分のより狭い面積を補償し、潤滑液の十分な流れを確保することができるようにする。
【0024】
本開示の1つの実施形態では、潤滑溝の第1及び第2の部分の面積は、投影面に投影された際に、第1の部分表面と第2の部分表面とのそれぞれと、分割面と、第1のリッジセクションのトレーリングエンドと第2のリッジセクションのリーディングエンドとを接続する直線と、の間の面積として測定される。
【0025】
本開示に係るスレッドフォーマの1つの実施形態では、投影面に投影された際に、第2の部分表面は、ミニマムポイントから、第2のリッジセクションのリーディングエンドポイントまで、その全体のエクステンションに沿う凹曲度を有し、第1の部分表面は、第2の部分表面より短い。この実施形態では、実質的により多くの材料が、第1のリッジセクションのトレーリングエンドに残り、第1のリッジセクションのトレーリングエンドに、改善された安定性を提供する。同時に、第2の部分表面の凹形状は、1つの潤滑溝を通しての潤滑液の十分な流れを提供する。
【0026】
本開示に係るスレッドフォーマの1つの実施形態では、投影面に投影された際に、第1の部分表面の少なくとも一部は、真っ直ぐである。真っ直ぐな部分表面は、例えば、研削により加工しやすく、ピーク荷重の回避により、高い安定性を提供する。
【0027】
本開示に係るスレッドフォーマの1つの実施形態では、投影面に投影された際に、第1の部分表面は、第1のトップ角度を有する。第1のトップ角度は、第1のリッジセクションのトレーリングエンドポイントに交差する第1の半径と、第1の部分表面上の第1のミッドポイントに交差する第2の半径と、の間に形成されている。第2の部分表面は、第2のトップ角度を有する。第2のトップ角度は、第2のリッジセクションのリーディングエンドポイントに交差する第3の半径と、第2の部分表面上の第2のミッドポイントに交差する第4の半径と、の間に形成されている。第1のミッドポイントと第2のミッドポイントとは、回転軸からの等しい半径方向の距離を有する。半径方向の距離は、第1のリッジセクションの最大の半径方向のエクステンションと、回転軸からの、ミニマムポイントの半径方向の距離と、の合計の半分に等しい。この実施形態では、第1のトップ角度は、第2のトップ角度より大きい。したがって、第2のリッジセクションのリーディングフランクと比較して、第1のリッジセクションのトレーリングフランクの安定性が増す。
【0028】
本開示に係るスレッドフォーマの1つの実施形態では、第1のトップ角度は、2.8°から12.0°の範囲にある。より小さい角度は、いくつかの実施形態では、リッジセクションの強度に十分に寄与しないであろう。12°より大きな角度は、いくつかの実施形態では、すでに達成する12°の角度より高い強度を加えないであろう。十分に良好な強度に好ましい角度は、5°から10°の範囲にある。
【0029】
第1のリッジセクションのトレーリングフランクと第2のリッジセクションのリーディングフランクとのそれらのプロパティはまた、トップフランク角度と呼ぶことによっても表現できる。一般的に、1つの潤滑溝の第1の部分表面(これは、1つの潤滑溝のリーディングフランクとも呼ぶことができる)の間の第1のトップフランク角度を大きくすることは、第1のリッジセクションの安定性を上げる。この第1のトップフランク角度は、第1のリッジセクションの外周と、1つの潤滑溝のリーディングフランクと、の間に形成されている。第2のトップフランク角度は、第2のリッジセクションの外周と、潤滑溝の第2の部分表面(これは、1つの潤滑溝のトレーリングフランクとも呼ぶことができる)と、の間に形成されている。本開示の意味において、第1のトップ角度と第2のトップ角度とは、第1及び第2のトップフランク角度と比較可能な尺度を提供し、したがって、双方は、本開示に係る安定した非対称性を説明する。第1及び第2のミッドポイントは、それぞれ、第1及び第2のトップ角度に対する尺度を提供するために、第1及び第2の部分表面上に画定されたポイントである。
【0030】
本開示に係るトレッドフォーマの1つの実施形態では、投影面に投影された際に、第1の部分表面は、第1のボトム角度を有する。第1のボトム角度は、ミニマムポイントに交差する分割半径と、第1の部分表面上の第1のミッドポイントに交差する第2の半径と、の間に形成されている。第2の部分表面は、第2のボトム角度を有する。第2のボトム角度は、ミニマムポイントに交差する分割半径と、第2の部分表面上の第2のミッドポイントに交差する第4の半径と、の間に形成されている。第1のボトム角度は、第2のボトム角度より小さい。
【0031】
一般的に、第1のボトム角度を大きくすることは、第1のリッジセクションのトレーリングフランクの強度を上げる。いくつかの実施形態では、第2のボトム角度を大きくすることは、潤滑溝の断面積を広げ、より小さい第1のボトム角度により、リッジの安定性が確保される。したがって、1つの潤滑溝を通して、潤滑液の十分な流れを達成することができる。
【0032】
第1のリッジセクションのトレーリングフランクと第2のリッジセクションのリーディングフランクとのプロパティはまた、ボトムフランク角度と呼ぶことによっても表現できる。第1のそのようなボトムフランク角度は、1つの潤滑溝の第1の部分表面と、ミニマムポイントにおける、分割半径に鉛直に交差する線と、の間に形成されている。第2のボトムフランク角度は、1つの潤滑溝の第2の部分表面と、ミニマムポイントにおける、分割半径に鉛直に交差する線と、の間に形成されている。この画定によると、ボトムフランク角度を小さくすることは、関連するフランクの強度と安定性との向上を達成する。いくつかの実施形態によると、小さい第2のボトムフランク角度は、改善されたクーラントの流れを提供することができる。
【0033】
本開示の意味において、第1のボトム角度と第2のボトム角度とは、第1及び第2のボトムフランク角度と比較可能な尺度を提供し、したがって、双方は、本開示に係る安定した非対称性を説明する。
【0034】
本開示に係るスレッドフォーマの1つの実施形態では、第1のボトム角度は、3.8°から53.0°の範囲にある。より小さい角度は、いくつかの実施形態では、リッジセクションの安定性に十分に寄与しないであろう。53°より大きな角度は、いくつかの実施形態では、すでに達成する53°の角度より高い安定性を加えないであろう。十分に良好な安定性に好ましい角度は、5°から40°の範囲にある。
【0035】
本開示に係るスレッドフォーマの1つの実施形態では、投影面に投影された際に、第1のリッジセクションのトレーリングエンドポイントと、第2のリッジセクションのリーディングエンドポイントと、ミニマムポイントと、は、二等辺三角形に広がる。本開示のこの実施形態では、二等辺三角形の等しい長さの第1及び第2のレッグは、ミニマムポイントとトレーリングエンドポイントとの間と、ミニマムポイントとリーディングエンドポイントとの間と、に、それぞれ提供される。潤滑溝のこの形状は、一方においては、安定性と、もう一方においては、潤滑液の十分な流れと、の間がトレードオフであり、これを提供する。
【0036】
1つの実施形態では、第1のリッジセクションのトレーリングエンドポイントと、第2のリッジセクションのリーディングエンドポイントと、ミニマムポイントと、は、不等辺三角形に広がる。この実施形態では、2つのリッジセクションの1つの安定性が、さらに向上する。潤滑溝のミニマムポイントは、二等辺三角形と比較して、第2のリッジセクションのリーディングエンドを安定させるために、回転方向、又は、第1のリッジセクションのトレーリングエンドを安定させるために、回転方向とは反対の方向、のいずれかにシフトされる場合がある。
【0037】
本開示のさらなる利点、特徴、及びアプリケーションが、実施形態のそれぞれ及び添付の図面の以下の説明により明らかとなるであろう。本開示の先の提示、同様に、本開示の実施形態のそれぞれの以下の詳細説明は、添付の図面と共に読む際に、より良好に理解されるであろう。ここに描く実施形態のそれぞれは、ここに示す詳細な配置及び手段に限定されないことが理解されるべきである。特に示されない限り、各図面の同様の参照番号は、同様の部分又は対応する部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、本開示の第1の実施形態に係るスレッドフォーマの等尺性の上面図である。
【
図3】
図3は、回転軸に鉛直する投影面上の、
図1及び
図2のスレッドフォーマの投影図である。
【
図5】
図5は、本開示の第2の実施形態に係るスレッドフォーマの等尺性の上面図である。
【
図7】
図7は、回転軸に鉛直する投影面上の、
図5及び
図6のスレッドフォーマの投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1から
図8は、本開示に係るスレッドフォーマ1の基本的なコンセプトを可視化する。スレッドフォーマ1は、いずれの切り屑を切削する動作、又は、切り屑を除去する動作なく、金属ワークピースにおいて存在するボアに内部スレッドを製造するために設計されている。スレッドは、金属ワークピースの材料に押される。スレッドフォーマ1は、第1の端3と第2の端4とを持つシャフト2を有する。載置セクション5は、シャフト2の第1の端3に接続されている。形成セクション6は、シャフト2の第2の端4に接続されている。形成作業中、載置セクション5は、加工ツールのスピンドルにクランプされる。加工ツールは、中央回転軸7を中心とするスレッドフォーマ1の回転を提供する。回転軸7は、シャフト2と、載置セクション5と、形成セクション6と、の共通中央回転軸である。回転軸7は、スレッドフォーマ1の縦方向に伸長する。
【0040】
スレッドフォーマ1の作業中、形成セクション6のみが、ワークピースとかみ合う。ボアの円筒状の内面の再形成を行うために、形成セクション6は、複数のリッジセクション9を含む。リッジセクション9は、形成セクション6の外周に位置する。リッジセクション9は、回転軸7を中心として、形成セクション6の外周に沿ってらせん状に形成された進路上に配置されている。したがって、リッジセクション9の各断面は、製造する内部スレッドにおける溝の断面形状にほぼ対応する。
【0041】
リッジセクション9により画定されたらせんは、ワークピースに形成される内部スレッドと同じ左右像を有する。その結果として、スレッドフォーマ1は、ワークピースにおけるボアに螺入できる、自然な回転方向12を有する。その結果として、形成セクション6の外周上の各要素は、リーディング部又はセクションと、トレーリング部又はセクションと、を有する。
【0042】
回転軸7に並列な軸方向を考えると、形成セクション6は、スクリュのターン数に対応する、複数の軸方向に間隔があけられたリッジセクション9を有する。リッジセクション9の回転軸7に関する最大の半径方向のエクステンションは、軸方向に、形成セクション6の前端13から後端14に増える。この増加により、形成作業中のスレッドフォーマ1上の荷重は、内部スレッドの最終的な深さに到達するまで、複数のターンにわたって拡散される。
【0043】
図1から
図8のいずれのスレッドフォーマ1に内部スレッドを製造する際には、スレッドフォーマ1、特に、形成セクション6は、形成セクション6の材料と金属ワークピースとの間の相互作用により、大きなストレスと、高い温度と、にさらされる。形成作業中、スレッドフォーマ1、特に、形成セクション6におけるリッジセクション9は、潤滑液により冷却され、及び/又は、潤滑される。ボアへの、したがって、リッジセクション9の各位置への潤滑液の効率的な移送のために、複数の潤滑溝8が提供されている。
図1から
図8の実施形態のそれぞれでは、スレッドフォーマ1はそれぞれ、形成セクション6の外周に沿って等しく配分された5つの潤滑溝8を有する。
【0044】
5つの潤滑溝8のそれぞれは、形成セクション6の全体の軸方向のエクステンションにわたってだけでなく、シャフト2にも伸長する。したがって、形成セクション6が、その全体の軸方向のエクステンションに沿ってボアに螺入されていても、潤滑液をシャフト2から潤滑溝8に移送することができる。
【0045】
個別のリッジセクション9の設計と機能とを、
図3と
図7を参照して説明する。
図3と
図7との双方は、リッジセクション9により形成されたらせんの任意のターンの、回転軸7に鉛直する投影面への投影図を示す。リッジセクション9のそれぞれは、リーディングエンドポイント13とトレーリングエンドポイント14とを有する。リッジセクション9の外周は、増大側15と減少側16と、回転軸7からの最大の半径方向のエクステンションのポイント17と、を持つ対称ルーフの形状を有する。リッジセクション9の増大側15の半径方向の距離は、リーディングエンドポイント13から、最大の半径方向の距離のポイント17まで、長くなる。リッジセクション9の減少側16の半径方向の距離は、最大の半径方向のエクステンションのポイント17からトレーリングエンドポイント14まで、短くなる。リッジセクション9の増大及び減少側15、16は、等しい長さを有し、最大の半径方向のエクステンションのポイント17に関して対称に配置されている。
【0046】
複数のリッジセクション9の各2つは、複数の潤滑溝8の1つにより分けられている。その結果として、2つのリッジセクション9の第1のもののトレーリングエンドポイント14は、溝8のリーディングポイントを形成し、2つのリッジセクション9の第2のもののリーディングエンドポイント13は、潤滑溝8のトレーリングポイントを形成する。
【0047】
そのような対称リッジセクションを有するいくつかの従来技術のスレッドフォーマは、リッジセクションのトレーリング部の破損により、機能しなくなる傾向にある。このダメージの傾向は、形成作業において生じるストレスによるものであることがわかっており、複数のリッジセクション9の各2つの間に位置する潤滑溝8の非対称形状を通して、本開示により対処される。
【0048】
一方について、
図1から
図4を参照して、及び、もう一方について、
図5から
図8を参照して説明する2つの実施形態では、この非対称性は、潤滑溝8の第1の部分表面18が、より多くの材料を、2つのリッジセクション9の第1のもののトレーリングエンドに提供するよう構成されている。
図1から
図4の第1の実施形態では、溝8の非対称形状により、材料における増大は、潤滑溝8の自由断面積を減らさない。第2の部分表面19の形状は、潤滑溝8の第1の部分表面18にて、断面積が制限されているものの、十分な潤滑液が依然として、潤滑溝8を通して流れることができることを保証する。第1の部分表面18はまた、潤滑溝8のリーディングフランクとも呼ぶことができる。第2の部分表面18はまた、潤滑溝8のトレーリングフランクとも呼ぶことができる。
【0049】
しかし、リッジセクションの設計が、
図1から
図8を参照して描く設計とは異なってよい、他の実施形態がそれぞれあってよい。1つの実施形態では、潤滑溝8の第2の部分表面19は、より多くの材料を、第2のリッジセクション9のリーディングエンドにて残すことにより、2つのリッジセクション9の第2のもののリーディングエンドの向上したサポートを提供できる。換言すると、同じ回転方向12を有するそのような実施形態では、潤滑溝8のそれぞれの形状が、反転されるであろう。これは、リッジセクションの最大の半径方向のエクステンションのポイントが、リーディングエンドポイント13に向かってシフトされる設計において好適とすることができる。
【0050】
潤滑溝8の正確な形状と設計とを、
図4の拡大した切り欠き投影図を参照して、さらに詳細に説明する。
【0051】
図4は、
図3の拡大切り取り図である。ここに示す実施形態では、第1のリッジセクション9のトレーリングエンドポイント14と、第2のリッジセクション9のリーディングエンドポイント13と、潤滑溝8の表面上のミニマムポイント20であって、回転軸7からの最小の半径方向の距離を有するミニマムポイント20と、は共に、二等辺三角形に広がる。
【0052】
潤滑溝8は、ミニマムポイント20にて、潤滑溝8の表面18、19に交差する半径rdに関して非対称である。しかし、潤滑溝8はまた、そのいずれのポイントにて、潤滑溝8の表面18、19に交差するいずれの他の半径に関しても非対称である。半径rdは、本開示の意味において、分割半径であり、潤滑溝8を、2つの部分A及びBに分割する。
図4では、第1の部分Aは、分割半径rdの左にあり、第1の部分表面18を含み、これは、第1のリッジセクション9のトレーリングエンドポイント14から、ミニマムポイント20まで伸長する。第2の部分Bは、分割半径rdの右にあり、第2の部分表面19を含み、これは、ミニマムポイント20から、第2のリッジセクション9のリーディングエンドポイント13まで伸長する。
【0053】
図1から
図4の実施形態では、第2の部分表面19は、その全体のエクステンションに沿って、ミニマムポイント20からリーディングエンドポイント13まで、凹状に曲がっている。第1の部分表面18は、第2の部分表面19より短い。別の言い方をすると、
図4の投影図にて見た際に、第1の部分表面18は、部分表面19よりも短い長さを有する。したがって、第2のリッジセクション9のリーディングエンドよりも、より多くの材料が、第1のリッジセクション9のトレーリングエンドに残る。いくつかの従来技術のフォーマでは、潤滑溝の両面とも、凹形状を有する。対照的に、第1の部分表面18は、主な部分に沿って、ほぼ直線である。
【0054】
図1から
図8に示す実施形態の双方では、上部フランク角度γ1は、第1の部分表面18と、リッジセクション9のトレーリング側15と、の間に形成されおり、第2のトップフランク角度γ1は、第2の部分表面19と、第2のリッジセクション9のリーディング側16と、の間に形成されている。第1のリッジセクション9のトレーリングエンドを強化するために、第1の上部フランク角度γ1は、第2のフランク角度γ2より大きい。
【0055】
非対称の潤滑溝8は、別の言葉で表すことができる。つまり、第1の部分表面18は、第1のトップ角度α1を含む。第1のトップ角度α1は、第1のリッジセクション9のトレーリングエンドポイント14に交差する第1の半径r1と、第1の部分表面18上の第1のミッドポイント23に交差する第2の半径r2と、の間に形成されている。第2の部分表面19は、第2のトップ角度α2を有する。第2のトップ角度α2は、第2のリッジセクション9のリーディングエンドポイント13に交差する第3の半径r3と、第2の部分表面19上の第2のミッドポイント24に交差する第4の半径r4と、の間に形成されている。第1のミッドポイント23と第2のミッドポイント24とは、回転軸7からの、等しい半径方向の距離を有する。半径方向の距離は、第1のリッジセクションの最大の半径方向のエクステンション、つまり、回転軸7からの、ポイント17の半径方向の距離と、回転軸7からの、ミニマムポイント20の半径方向の距離と、の合計の半分に等しい。第1のトップフランク角度γ1は、第2のトップフランク角度γ2より大きいため、第1のトップ角度α1もまた、第2のトップ角度α2より大きい。
【0056】
第1のリッジセクション9のトレーリングエンドの半径方向に外側の部分を強化することに加えて、強化効果がまた、第1のリッジセクション9のトレーリングエンドの半径方向に内側の部分にも提供されている。
図1から
図8の実施形態のそれぞれでは、この追加的な強化は、小さい第1のボトムフランク角度δ1により提供されている。第1のボトムフランク角度δ1は、分割半径rdに鉛直して、ミニマムポイント20に交差する直線21と、第1の部分表面18と、の間に形成されている。
【0057】
第2のボトムフランク角度δ2は、分割半径rdに鉛直して、ミニマムポイント20に交差する直線21と、第2の部分表面19と、の間に形成されている。一般的に、ボトムフランク角度δ2も小さくすることは、関連するフランクの強度と安定性との向上を達成する。第1の実施形態では、小さい第2のボトムフランク角度δ2が、潤滑溝の断面積を広げ、クーラントの流れを改善する。
【0058】
第1の部分表面18と第2の部分表面19との間の関係は、代替的に、第1のボトム角度β1と第2のボトム角度β2とに関して説明できる。第1のボトム角度β1は、ミニマムポイント20に交差する分割半径rdと、第1の部分表面18上の第1のミッドポイント23に交差する第2の半径r2と、の間に形成されている。第2のボトム角度β2は、分割半径rdと、第1の部分表面19上の第2のミッドポイント24に交差する第3の半径r3と、の間に形成されている。第1のボトム角度β1は、第2のボトム角度β2より小さい。この画定によると、第1のボトム角度β1を大きくすることは、第1のリッジセクションのトレーリングフランクの強度を上げる。
図4に係る第1の実施形態では、第2のボトム角度β2を大きくすることは、潤滑溝の断面積を広げ、より小さい第1のボトム角度β1により、リッジの安定性が確保される。したがって、1つの潤滑溝を通して、潤滑液の十分な流れを達成することができる。
【0059】
スレッドフォーマ1の潤滑溝8のそれぞれは、投影面に投影された際に、
図4を参照して説明したものと同じ形状を有する。
【0060】
図5から
図8に係る第2の実施形態の潤滑溝8の設計を、
図8に示す拡大切り取り図を参照して説明する。
【0061】
図1から
図4の実施形態と比較して、
図5から
図8の実施形態は、二等辺三角形を含む潤滑溝8を含まない。第1のリッジセクション9のトレーリングエンドポイント14と、第2のリッジセクション9のリーディングエンドポイント13と、ミニマムポイント20と、により広がる三角形は、不等辺三角形である。第1の実施形態と比較して、ミニマムポイント20は、回転方向12とは反対の方向、つまり、潤滑溝8のトレーリング側に向かってシフトされている。したがって、第1のリッジセクション9のトレーリング部は、さらに強化されている。
【0062】
繰り返しになるが、第1のトップフランク角度γ1は、第2のトップフランク角度γ2より大きい。その結果として、第1のトップ角度α1と第2のトップ角度α2との間の関係もまた、
図1から
図4の実施形態を参照して説明したものと同じである。したがって、第1のトップ角度α1は、第2のトップα2より大きい。
図5から
図8の実施形態では、第1の部分表面18と、同様に、第2の部分表面19と、は、直線に近似できるセクションを有する。
【0063】
1つの実施形態に関連して説明した特徴はまた、当業者が容易に理解できるように、他の実施形態のそれぞれにも使用できることに留意されたい。
【0064】
添付の図面を参照して本開示を詳細に説明したが、本特許明細書は単なる例であり、特許請求の範囲に画定する保護の範囲を制限するものとみなされない。
【0065】
特許請求の範囲では、「含む(comprising)」という用語は、他の要素又はステップを排除しない。不定冠詞「a」は、複数を排除しない。いくつかの特徴が、異なる請求項において主張されているという単なる事実は、それらの組み合わせを排除しない。特許請求の範囲での参照番号は、保護の範囲を制限するものとみなされない。
【符号の説明】
【0066】
1 スレッドフォーマ
2 シャフト
3 第1の端
4 第2の端
5 載置セクション
6 形成セクション
7 回転軸
8 潤滑溝
9 リッジセクション
10 形成セクションの前端
11 形成セクションの後端
12 回転方向
13 リーディングエンドポイント
14 トレーリングエンドポイント
15 増大側
16 減少側
17 最大の半径方向のエクステンションのポイント
18 第1の部分表面
19 第2の部分表面
20 ミニマムポイント
21 ミニマムポイント20に鉛直して交差する直線
22 トレーリングエンドポイントとリーディングエンドポイントとを接続する直線
23 第1のミッドポイント
24 第2のミッドポイント
A 潤滑溝8の第1の部分
B 潤滑溝8の第2の部分
rd 分割半径
r1 第1の半径
r2 第2の半径
r3 第3の半径
r4 第4の半径
【国際調査報告】