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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(54)【発明の名称】水性バインダー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20220518BHJP
   D06M 13/192 20060101ALI20220518BHJP
   D06M 13/148 20060101ALI20220518BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20220518BHJP
   C08K 5/092 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
C08L29/04 S
D06M13/192
D06M13/148
C08K5/053
C08K5/092
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559770
(86)(22)【出願日】2020-04-07
(85)【翻訳文提出日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 US2020026994
(87)【国際公開番号】W WO2020210188
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】62/831,222
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507220187
【氏名又は名称】オウェンス コーニング インテレクチュアル キャピタル リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100212509
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 知子
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー ガート
(72)【発明者】
【氏名】ジャン シュージュアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン リアン
(72)【発明者】
【氏名】メンデス-アンディーノ ホセ
【テーマコード(参考)】
4J002
4L033
【Fターム(参考)】
4J002BE021
4J002EC046
4J002EC056
4J002EF067
4J002EF077
4J002EF107
4J002EF117
4J002FD147
4J002FD206
4J002GK00
4L033AB07
4L033AC11
4L033BA12
4L033BA18
4L033BA46
(57)【要約】
少なくとも2個のヒドロキシル基および少なくとも2,000ダルトンの数平均分子量を有する少なくとも1種の長鎖ポリオール;少なくとも2個のカルボン酸基を含む一次架橋剤;ならびに少なくとも2個のヒドロキシル基および2,000ダルトン未満の数平均分子量を有する短鎖ポリオールを含む二次架橋剤を含む水性バインダー組成物が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性バインダー組成物であって、
前記水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して少なくとも35質量%の、少なくとも2個のカルボン酸基を含む架橋剤;および前記水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して0.1~50.0質量%の、少なくとも2個のヒドロキシル基および少なくとも2,000ダルトンの数平均分子量を有する少なくとも1種の長鎖ポリオールを含み;
少なくとも2個のヒドロキシル基および2,000ダルトン未満の数平均分子量を有する少なくとも1種の短鎖ポリオールを含んでもよく;
硬化すると、6.0質量%以下の水溶性物質を含む、水性バインダー組成物。
【請求項2】
前記短鎖ポリオールが、前記水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して1.0~50質量%の量で存在する、請求項1に記載の水性バインダー組成物。
【請求項3】
前記短鎖ポリオールが、前記水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して10.0~25質量%の量で存在する、請求項1に記載の水性バインダー組成物。
【請求項4】
前記短鎖ポリオールが、糖アルコール、2,2-ビス(メチロール)プロピオン酸、トリ(メチロール)プロパン、ペンタエリトリトールおよびアルカノールアミンのうちの1以上を含む、請求項1に記載の水性バインダー組成物。
【請求項5】
前記短鎖ポリオールが、グリセロール、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、イジトール、イソマルチトール、ラクチトール、セロビトール、パラチニトール、マルトトリトール、それらのシロップおよびそれらの混合物からなる群から選択される糖アルコールを含む、請求項4に記載の水性バインダー組成物。
【請求項6】
前記アルカノールアミンがトリエタノールアミンを含む、請求項4に記載の水性バインダー組成物。
【請求項7】
長鎖ポリオールと短鎖ポリオールの比が1/50から20/1の間である、請求項1に記載の水性バインダー組成物。
【請求項8】
長鎖ポリオールと短鎖ポリオールの比が1/20から10/1の間である、請求項1に記載の水性バインダー組成物。
【請求項9】
硬化すると、5.0質量%以下の水溶性物質を含む、請求項1に記載の水性バインダー組成物。
【請求項10】
硬化すると、4.0質量%以下の水溶性物質を含む、請求項1に記載の水性バインダー組成物。
【請求項11】
30%以下の固形分で175cPの粘度を有する、請求項1に記載の水性バインダー組成物。
【請求項12】
硬化すると、5から9.0の間のpHを有する、請求項1に記載の水性バインダー組成物。
【請求項13】
水性バインダー組成物であって、
前記水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して0.1~50.0質量%の、少なくとも2個のヒドロキシル基および少なくとも2,000ダルトンの数平均分子量を有する少なくとも1種の長鎖ポリオール;
前記水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して少なくとも35質量%の、少なくとも2個のカルボン酸基を含む架橋剤;ならびに
1.0~50質量%の、少なくとも2個のヒドロキシル基および2,000ダルトン未満の数平均分子量を有する少なくとも1種の短鎖ポリオールを含み、カルボン酸基、無水物基またはそれらの塩のモル当量とヒドロキシル基のモル当量の比が、1/0.05~1/20であり、長鎖ポリオールと短鎖ポリオールの比が1/50から20/1の間である水性バインダー組成物。
【請求項14】
前記長鎖ポリオールが、前記水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して1.0~45質量%の量で存在する、請求項13に記載の水性バインダー組成物。
【請求項15】
前記短鎖ポリオールが、前記水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して10.0~25質量%の量で存在する、請求項13に記載の水性バインダー組成物。
【請求項16】
前記短鎖ポリオールが、糖アルコール、2,2-ビス(メチロール)プロピオン酸、トリ(メチロール)プロパンおよびアルカノールアミンのうちの1以上を含む、請求項13に記載の水性バインダー組成物。
【請求項17】
前記短鎖ポリオールが、グリセロール、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、イジトール、イソマルチトール、ラクチトール、セロビトール、パラチニトール、マルトトリトール、それらのシロップおよびそれらの混合物からなる群から選択される糖アルコールを含む、請求項16に記載の水性バインダー組成物。
【請求項18】
前記アルカノールアミンがトリエタノールアミンを含む、請求項16に記載の水性バインダー組成物。
【請求項19】
長鎖ポリオールと短鎖ポリオールの比が1/50から20/1の間である、請求項13に記載の水性バインダー組成物。
【請求項20】
長鎖ポリオールと短鎖ポリオールの比が1/20から10/1の間である、請求項13に記載の水性バインダー組成物。
【請求項21】
硬化すると、6.0質量%以下の水溶性物質を含む、請求項13に記載の水性バインダー組成物。
【請求項22】
硬化すると、4.0質量%以下の水溶性物質を含む、請求項13に記載の水性バインダー組成物。
【請求項23】
繊維質製品であって、
複数のランダムに配向した繊維;および
前記繊維を少なくとも部分的に被覆する水性バインダー組成物を含み、前記バインダー組成物は、
前記水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して少なくとも35質量%の、少なくとも2個のカルボン酸基を含む架橋剤;および
前記水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して0.1~50.0質量%の、少なくとも2個のヒドロキシル基および少なくとも2,000ダルトンの数平均分子量を有する少なくとも1種の長鎖ポリオールを含み;
少なくとも2個のヒドロキシル基および2,000ダルトン未満の数平均分子量を有する少なくとも1種の短鎖ポリオールを含んでもよく;
硬化すると、6.0質量%以下の水溶性物質を含む、繊維質製品。
【請求項24】
断熱材製品、不織布マット、パーティクルボード、天井ボードおよびダクトボードのうちのいずれかを含む、請求項23に記載の繊維質製品。
【請求項25】
前記短鎖ポリオールが、前記水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して1.0~45質量%の量で存在する、請求項23に記載の繊維質製品。
【請求項26】
前記短鎖ポリオールが、前記水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して10.0~25質量%の量で存在する、請求項23に記載の繊維質製品。
【請求項27】
前記短鎖ポリオールが、糖アルコール、2,2-ビス(メチロール)プロピオン酸、トリ(メチロール)プロパンおよびアルカノールアミンのうちの1以上を含む、請求項23に記載の繊維質製品。
【請求項28】
前記短鎖ポリオールが、グリセロール、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、イジトール、イソマルチトール、ラクチトール、セロビトール、パラチニトール、マルトトリトール、それらのシロップおよびそれらの混合物からなる群から選択される糖アルコールを含む、請求項23に記載の繊維質製品。
【請求項29】
前記アルカノールアミンがトリエタノールアミンを含む、請求項28に記載の繊維質製品。
【請求項30】
長鎖ポリオールと短鎖ポリオールの比が1/50から20/1の間である、請求項23に記載の繊維質製品。
【請求項31】
長鎖ポリオールと短鎖ポリオールの比が1/20から10/1の間である、請求項23に記載の繊維質製品。
【請求項32】
硬化すると、バインダー組成物が5.0質量%以下の水溶性物質を含む、請求項23に記載の繊維質製品。
【請求項33】
硬化すると、バインダー組成物が4.0質量%以下の水溶性物質を含む、請求項23に記載の繊維質製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年4月9日に出願された米国特許仮出願第62/831,222号の優先権および利益を主張し、その全内容は、参照によって本明細書において組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
水性バインダー組成物は、伝統的に、織布および不織布繊維質製品、例えば断熱材製品、複合製品、木質繊維板などの形成に利用されている。断熱材製品、例えば繊維ガラスおよびミネラルウール断熱材製品は、典型的に、ポリマー、ガラス、または他の鉱物の溶融組成物を繊維化し、微細繊維を繊維化装置、例えば回転式スピナーから紡ぐことによって製造される。断熱材製品を形成するためには、回転式スピナーによって製作された繊維が、ブロアによってスピナーからコンベヤへと下方に延伸される。繊維が下方に移動する際に、バインダー材が繊維に噴霧され、繊維はコンベヤ上の嵩高い連続ブランケットへと収集される。バインダー材は、断熱材製品にパッケージング後の回復のための弾性を付与し、必要に応じて建築物の断熱材空洞において断熱材製品を取り扱い適用することができるように剛性および取り扱い性を与える。バインダー組成物はまた、繊維をフィラメント間の摩耗から保護し、個々の繊維間の適合性を促進する。次いで、バインダー被覆繊維を含むブランケットは硬化オーブンに通され、バインダーは硬化しブランケットは所望の厚さに設定される。
バインダーが硬化すると、繊維断熱材をある長さに切断し個々の断熱材製品を形成することができ、断熱材製品を包装し顧客の場所へ運送することができる。
【0003】
このようにして調製された繊維ガラス断熱材製品は、様々な用途における使用のためのバット、ブランケットおよびボード(加熱圧縮されたバット)を含む様々な形態で提供することができる。バインダー被覆繊維のバットは、形成チャンバから出る際に、ガラス繊維の弾性のために膨張しやすい。典型的には、膨張したバットは次いで硬化オーブンに運ばれそこを通過し、そこで加熱空気が断熱材製品を通ることでバインダーが硬化する。バインダーの硬化に加え、硬化オーブン内では、断熱材製品がフライトまたはローラーで圧縮され、得られるブランケット、バットまたはボード製品が所望の寸法になり、所望の表面仕上げを得ることができる。
フェノール-ホルムアルデヒド(PF)バインダー組成物ならびに尿素で増量されたPF樹脂(PUF樹脂)が、繊維ガラス断熱材製品の製造に伝統的に使用されてきた。「高密度」製品としても公知の断熱材ボード、例えば天井ボード、ダクトラップ、ダクトライナーなどでは、安価で許容できる物理的および機械的性質を有する高密度製品を製造するために、フェノール-ホルムアルデヒドバインダー技術が利用されてきた。しかし、ホルムアルデヒドバインダーは、繊維ガラス断熱材の製造中に望ましくない放出物を放出する。
ホルムアルデヒドベースバインダーの代替物として、ある種のホルムアルデヒド不含配合物が、繊維ガラス断熱材製品におけるバインダーとして使用するために開発されている。しかし、適切な代替物を開発する難問の1つは、望ましくない性質、例えば変色を回避しつつ、同等の機械的および物理的性質を有する配合物を特定することである。そのような性質の難問としては、高温/高湿性能、剛性、接着強度、加工性(粘度、切断、研磨、エッジ塗装)、および黄変を伴わずに明るい色を得ることが挙げられる。
したがって、物理的および機械的性質を損なうことなく断熱材製品を製造するために使用される、環境に優しくホルムアルデヒド不含のバインダー組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
発明の概念の様々な例示の態様は、水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して少なくとも35質量%の、少なくとも2個のカルボン酸基を含む架橋剤、水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して0.1~50.0質量%の、少なくとも2個のヒドロキシル基および少なくとも2,000ダルトンの数平均分子量を有する少なくとも1種の長鎖ポリオール;ならびに任意に、少なくとも2個のヒドロキシル基および2,000ダルトン未満の数平均分子量を有する少なくとも1種の短鎖ポリオールを含む水性バインダー組成物を対象とする。バインダー組成物は、硬化すると、6.0質量%以下の水溶性物質を含む。
【0005】
幾つかの例示の実施形態において、架橋剤は、ポリマー性ポリカルボン酸、例えばアクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーである。架橋剤は、水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して50質量%~85質量%の量でバインダー組成物中に存在してもよい。幾つかの例示の実施形態において、架橋剤は、水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して65質量%~80質量%の量でバインダー組成物中に存在する。
様々な例示の実施形態において、短鎖ポリオールは、水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して、1.0質量%~50質量%の量でバインダー組成物中に存在する。様々な例示の実施形態において、短鎖ポリオールは、糖アルコール、2,2-ビス(メチロール)プロピオン酸、トリ(メチロール)プロパン、および短鎖アルカノールアミンのうちの1以上を含む。短鎖ポリオールが糖アルコールを含む場合、糖アルコールは、グリセロール、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、イジトール、イソマルチトール、ラクチトール、セロビトール、パラチニトール、マルトトリトール、それらのシロップおよびそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0006】
幾つかの例示の実施形態において、長鎖ポリオールは、部分的にまたは完全に加水分解されたポリビニルアルコールおよびポリ酢酸ビニルからなる群から選択される。長鎖ポリオールは、水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して1質量%~30質量%の量でバインダー組成物中に存在してもよい。
様々な例示の実施形態において、長鎖ポリオールと短鎖ポリオールの比は1/50~20/1の間である。
様々な例示の実施形態において、バインダー組成物は、硬化後に5.0質量%以下の水溶性物質含有率を有する。
【0007】
発明の概念の他の例示の態様は、水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して、0.1~50質量%の、少なくとも2個のヒドロキシル基および少なくとも2,000ダルトンの数平均分子量を有する少なくとも1種の長鎖ポリオール;水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して少なくとも35質量%の、少なくとも2個のカルボン酸基を含む架橋剤;ならびに少なくとも2個のヒドロキシル基および2,000ダルトン未満の数平均分子量を有する、1.0~50質量%の少なくとも1種の短鎖ポリオールを含む水性バインダー組成物を対象とする。バインダー組成物は、カルボン酸基、無水物基またはそれらの塩のモル当量とヒドロキシル基のモル当量の比、1/0.05~1/20、および長鎖ポリオールと短鎖ポリオールの1/50から20/1の間の比を含む。
【0008】
発明の概念の他の例示の態様は、複数のランダムに配向した繊維、および繊維を少なくとも部分的に被覆する水性バインダー組成物を含む繊維質製品を対象とする。バインダー組成物は、水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して少なくとも35質量%の、少なくとも2個のカルボン酸基を含む架橋剤、水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して0.1~50.0質量%の、少なくとも2個のヒドロキシル基および少なくとも2,000ダルトンの数平均分子量を有する少なくとも1種の長鎖ポリオール;ならびに任意に、少なくとも2個のヒドロキシル基および2,000ダルトン未満の数平均分子量を有する少なくとも1種の短鎖ポリオールを含んでもよい。バインダー組成物は、硬化すると、6.0質量%以下の水溶性物質を含む。
【0009】
断熱材製品の繊維は、鉱物繊維、天然繊維および合成繊維のうちの1以上を含んでもよく、幾つかの実施形態では、繊維はガラス繊維を含む。
幾つかの例示の実施形態において、繊維質製品は、断熱材製品、不織布マット、パーティクルボード、天井ボード、ダクトボードなどのうちのいずれかを含む。
一般的な本発明の概念の多数の他の態様、利点および/または特色が、以下の例示の実施形態の詳細な説明、および本明細書とともに提出される添付の図面からより容易に明らかになるであろう。
本発明の一般的な概念ならびにその例証の実施形態および利点が、例として、図面を参照して以下に詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】例示の硬化バインダー組成物を用いて作製された繊維ガラス断熱材についてモル当量カルボン酸基/ヒドロキシル基および長鎖ポリオール/短鎖ポリオールの比が変化する、屈曲応力/質量/LOIを示すグラフである。
図2】カルボン酸基/ヒドロキシル基のモル当量の比が1/0.1であり、長鎖ポリオール/短鎖ポリオール比が変化する、例示のバインダー組成物で作製された繊維ガラスの引張力/LOIを示すグラフである。
図3】カルボン酸基/ヒドロキシル基のモル当量の比が1/0.1であり、長鎖ポリオール/短鎖ポリオール比が変化する、例示のバインダー組成物の、硬化後水溶性物質%を示すグラフである。
図4】カルボン酸基/ヒドロキシル基のモル当量の比が1/1.5であり、長鎖ポリオール/短鎖ポリオール比が変化する、例示の硬化バインダー組成物の引張力/LOIを示すグラフである。
図5】カルボン酸基/ヒドロキシル基のモル当量の比が1/1.5であり、長鎖ポリオール/短鎖ポリオール比が変化する、例示のバインダー組成物の硬化後水溶性物質%を示すグラフである。
図6】カルボン酸基/ヒドロキシル基のモル当量の比が1/0.5であり、長鎖ポリオール/短鎖ポリオール比が変化する、例示の硬化バインダー組成物の引張力/LOIを示すグラフである。
図7】カルボン酸基/ヒドロキシル基のモル当量の比が1/0.5であり、長鎖ポリオール/短鎖ポリオール比が変化する、例示のバインダー組成物の硬化後水溶性物質%を示すグラフである。
図8】カルボン酸基/ヒドロキシル基のモル当量の比が1/0.1であり、長鎖ポリオール/短鎖ポリオール比が変化する、例示の硬化バインダー組成物の引張力/LOIを示すグラフである。
図9】カルボン酸基/ヒドロキシル基のモル当量の比が1/1であり、長鎖ポリオール/短鎖ポリオール比が変化する、例示のバインダー組成物の硬化後水溶性物質%を示すグラフである。
図10】カルボン酸基/ヒドロキシル基のモル当量比が変化する、例示の硬化バインダー組成物の引張力/LOIを示すグラフである。
図11】従来のデンプンハイブリッドバインダー組成物およびフェノール尿素ホルムアルデヒドベースバインダー組成物と比較した、本出願による様々なバインダー組成物を使用して形成された、プラント実験ボードの曲げ弾性率を示すグラフである。
図12】高温/多湿条件下で、従来のデンプンハイブリッドバインダー組成物およびフェノール尿素ホルムアルデヒドベースバインダー組成物と比較した、本出願による様々なバインダー組成物を使用して形成された、4’×4’繊維ガラス断熱材天井ボードタイルのサグを示すグラフである。
図13】従来のデンプンハイブリッドバインダー組成物およびフェノール尿素ホルムアルデヒドベースバインダー組成物と比較した、本出願による様々なバインダー組成物を使用して形成された、プラント実験ボード製品の圧縮強度を示すグラフである。
図14】従来のデンプンハイブリッドバインダー組成物およびフェノール尿素ホルムアルデヒドベースバインダー組成物と比較した、本出願による様々なバインダー組成物を使用して形成されたプラント実験ボード製品の破断時接着強度を示すグラフである。
図15】ポリアクリル酸およびポリビニルアルコールを含み低レベルのソルビトール濃度が変化する、例示のバインダー組成物で作製された繊維ガラス断熱材の引張力/LOIを示すグラフである。
図16】ポリアクリル酸およびソルビトールまたはトリエタノールアミンを有し、ポリビニルアルコール濃度に対して短鎖ポリオールが変化する、例示のバインダー組成物で作製された繊維ガラス断熱材の引張力/LOIを示すグラフである。
図17】ポリアクリル酸を含み、トリエタノールアミンおよびポリビニルアルコールの量が変化する、例示のバインダー組成物の粘度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術科学用語は、例示の実施形態が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書の記載で使用される用語は例示の実施形態を説明するためのみのものであり、例示の実施形態を限定することは意図しない。したがって、本発明の一般的な概念は、本明細書に例証される具体的な実施形態に限定されることは意図しない。本明細書に記載されるものと同様または等価の他の方法および材料が本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料は本明細書に記載される。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」「an」および「the」は、文脈が明らかに別途指示しない限り、複数形も含むことを意図する。
【0012】
別途指示されない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される原料、化学的および分子の性質、反応条件などの量を表すすべての数は、すべての場合において「約」という用語で修飾されていることを理解されたい。したがって、別途指示されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に示される数値パラメーターは、本発明の例示の実施形態によって得ようとする所望の性質によって変化し得る近似値である。各数値パラメーターは、最低限、有効数字の数および通常の丸め手法に照らして解釈されるべきである。
例示の実施形態の広範な範囲を示す数値範囲およびパラメーターが近似値であるにもかかわらず、具体的な例に示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、いずれの数値も、それぞれの試験測定値に見いだされる標準偏差から必然的に生じるある種の誤差を本質的に含む。本明細書および特許請求の範囲を通して与えられるすべての数値範囲は、より狭い数値範囲がすべて本明細書に明示的に記されているかのように、そのような広範な数値範囲に入るすべてのそのようなより狭い数値範囲を含む。
【0013】
本開示は、伝統的なホルムアルデヒドベースバインダー組成物を用いて製造された製品と比較して、同等のまたは改善された機械的および物理的性能を有する断熱材製品の製造において使用するための、ホルムアルデヒド不含水性バインダー組成物に関する。ホルムアルデヒド不含バインダー組成物は、硬化ホルムアルデヒド不含バインダーで作製された繊維断熱材製品および関連製品、例えば薄繊維補強マット(以下すべて総称して繊維補強製品と称する)およびガラス繊維またはミネラルウール製品、特に繊維ガラスまたはミネラルウール断熱材製品の製造に使用することができる。他の製品は、複合製品、木質繊維ボード製品、金属建築物の断熱材、パイプ断熱材、天井ボード、天井タイル、「高密度」製品、例えば天井ボード、ダクトラップ、ダクトライナー、さらに「低密度」製品を含み得る。さらなる繊維質製品は、不織布繊維マット、およびそこから製造されるパーティクルボード、および複合製品を含む。
【0014】
幾つかの例示の実施形態において、ホルムアルデヒド不含水性バインダー組成物は、少なくとも1種の一次架橋剤と、少なくとも1種の短鎖ポリオールを含む少なくとも1種の二次架橋剤と、少なくとも1種の長鎖ポリオールとを含む。
一次架橋剤は、ポリオールを架橋するために適切な任意の化合物であってよい。例示の実施形態において、一次架橋剤は、数平均分子量が、90ダルトンより多い、90ダルトン~10,000ダルトン、または190ダルトン~5,000ダルトンである。幾つかの例示の実施形態において、架橋剤は、数平均分子量が2,000ダルトン~5,000ダルトン、または4,000ダルトンである。適切な架橋剤の非限定的な例としては、1以上のカルボン酸基(-COOH)、例えばポリカルボン酸(およびその塩)、酸無水物、酸無水物を有するモノマー性およびポリマー性ポリカルボン酸(すなわち、混合酸無水物)、ならびにアクリル酸のホモポリマーまたはコポリマー、例えばポリアクリル酸(およびその塩)、ならびにポリアクリル酸ベース樹脂、例えば、いずれもThe Dow Chemical Companyから市販されているQR-1629SおよびAcumer 9932を有する材料が挙げられる。Acumer 9932は、4000の分子量および6~7質量%の次亜リン酸ナトリウム含有率を有するポリアクリル酸/次亜リン酸ナトリウム樹脂である。QR-1629Sはポリアクリル酸/グリセリン混合物である。
【0015】
幾つかの場合では、一次架橋剤は、中和剤で事前に中和されてもよい。そのような中和剤としては、有機および/または無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムおよびジエチルアミン、ならびに任意の種類の第一級、第二級または第三級アミン(アルカノールアミンを含む)が挙げられる。様々な例示の実施形態において、中和剤は、水酸化ナトリウムおよびトリエタノールアミンのうちの少なくとも1種を含んでもよい。
幾つかの例示の実施形態において、一次架橋剤は、水性バインダー組成物の総固形分含有量に対して、少なくとも50質量%、例えば、限定されずに、少なくとも55質量%、少なくとも60質量%、少なくとも63質量%、少なくとも65質量%、少なくとも70質量%、少なくとも73質量%、少なくとも75質量%、少なくとも78質量%、および少なくとも80質量%で水性バインダー組成物中に存在する。幾つかの例示の実施形態において、一次架橋剤は、水性バインダー組成物の総固形分含有量に対し、終点およびその間の部分的組み合わせをすべて含めて、50質量%~85質量%、例えば、限定されずに、60質量%~80質量%、62質量%~78質量%、および65質量%~75質量%の量で水性バインダー組成物中に存在する。
【0016】
幾つかの例示の実施形態において、長鎖ポリオールは、数平均分子量が少なくとも2,000ダルトン、例えば、分子量が3,000ダルトン~4,000ダルトンである少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリオールを含む。幾つかの例示の実施形態において、長鎖ポリオールは、ポリマー性ポリヒドロキシ化合物、例えばポリビニルアルコール、部分的または完全に加水分解されもよいポリ酢酸ビニル、またはそれらの混合物のうちの1以上を含む。例証として、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルがポリヒドロキシ成分として作用する場合、80%~89%加水分解されたポリ酢酸ビニル、例えば、いずれも85%(Poval(登録商標)385)および88%(Selvol(商標)502)加水分解された、Poval(登録商標)385(Kuraray America,Inc.)およびSevol(商標)502(Sekisui Specialty Chemicals America,LLC)などを利用することができる。
長鎖ポリオールは、最大50質量%の全固形分、例えば、限定することなく、最大40質量%、35質量%、30質量%、28質量%、25質量%、20質量%、18質量%、15質量%および13質量%の全固形分の量で水性バインダー組成物中に存在してもよい。幾つかの例示の実施形態において、長鎖ポリオールは、全固形分の0.1~50質量%、例えば、限定することなく、終点およびその間の部分的組み合わせをすべて含めて、全固形分の0.5質量%~30質量%、1質量%~20質量%、5質量%~18質量%および7質量%~15質量%の量で水性バインダー組成物中に存在する。
【0017】
水性バインダー組成物は、短鎖ポリオールなどの二次架橋剤を含んでもよい。短鎖ポリオールは、分子量が2,000ダルトン未満、例えば750ダルトン未満、500ダルトン未満であり、複数のヒドロキシル(-OH)基を有する水溶性化合物を含み得る。適切な短鎖ポリオール成分としては、糖アルコール、2,2-ビス(メチロール)プロピオン酸(ビス-MPA)、トリ(メチロール)プロパン(TMP)、ペンタエリトリトールおよび短鎖アルカノールアミン、例えばトリエタノールアミンが挙げられる。幾つかの例示の実施形態において、短鎖ポリオールは粘度降下剤として作用し、長鎖ポリオール分子(例えば、ポリビニルアルコール)間の分子内および分子間水素結合を破壊することで、組成物の粘度を低下させる。しかし、これらの短鎖ポリオール分子は長鎖ポリオールと同様の構造を有するため、同じように架橋剤と反応し得る。このため、バインダーおよび製品の性能に悪影響を及ぼさない。
糖アルコールは、糖のアルドまたはケト基が対応するヒドロキシ基に還元される(例えば、水素化によって)場合に得られる化合物を意味すると理解される。開始糖は、単糖、オリゴ糖および多糖、ならびにそれらの生成物の混合物、例えばシロップ、糖蜜およびデンプン加水分解物から選ぶことができる。また、開始糖は、糖の無水形態である場合もある。糖アルコールは、対応する開始糖に酷似しているが、糖ではない。したがって、例えば、糖アルコールは、還元能を有さず、還元糖に典型的なメイラード反応に関与し得ない。幾つかの例示の実施形態において、糖アルコールは、グリセロール、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、イジトール、イソマルチトール、ラクチトール、セロビトール、パラチニトール、マルトトリトール、それらのシロップ、およびそれらの混合物を含む。様々な例示の実施形態において、糖アルコールは、グリセロール、ソルビトール、キシリトールおよびそれらの混合物から選択される。幾つかの例示の実施形態において、二次架橋剤は糖アルコールのダイマーまたはオリゴマー縮合生成物である。様々な例示の実施形態において、糖アルコールの縮合生成物はイソソルビドである。幾つかの例示の実施形態において、糖アルコールはジオールまたはグリコールである。
【0018】
幾つかの例示の実施形態において、短鎖ポリオールは、全固形分の最大50質量%、例えば限定しないで、全固形分の最大40質量%、35質量%、30質量%、25質量%、20質量%、18質量%、15質量%、13質量%、11質量%および10質量%の量で水性バインダー組成物中に存在する。幾つかの例示の実施形態において、短鎖ポリオールは、終点およびその間の部分的組み合わせをすべて含めて、全固形分の0~50質量%の、例えば、限定しないが、全固形分の2質量%~45質量%、1質量%~35質量%、5質量%~30質量%、7質量%~27質量%および10質量%~25質量%の量で水性バインダー組成物中に存在する。
【0019】
様々な例示の実施形態において、長鎖ポリオール、架橋剤および短鎖ポリオールは、カルボン酸基、無水物基またはそれらの塩のモル当量数と、ヒドロキシル基のモル当量数の比が、1/0.3~1/10を含む、1/0.05~1/20、例えば1/0.1~1/5.0、1/0.3~1/3および1/0.4~1/2.5となるような量で存在する。しかし、驚くべきことに、この比の範囲内では、ヒドロキシル基のモル当量に基づく、長鎖ポリオールと短鎖ポリオールの比が、バインダー組成物の性能、例えば硬化後のバインダーの引張強度および水溶性に影響を及ぼすことが発見された。例えば、長鎖ポリオールと短鎖ポリオールの比が1/50~20/1の間、例えば1/20から10/1、または1/10から5/1-2/11/1の間であると、バランスのとれた望ましい機械的および物理的性質が得られることが発見された。様々な例示の実施形態において、長鎖ポリオールと短鎖ポリオールの比はおよそ1/30である。長鎖ポリオールと短鎖ポリオールの比は、特定の性質が最終用途の必要性に応じて最適化されるように、最適化されてもよい。例えば、長鎖ポリオール濃度を下げると、バインダー組成物を用いて形成される製品の引張強度を低下させることもある。しかし、長鎖ポリオールが減少すると、他の特性、例えば物理的性質に影響が及ぶ可能性がある。このようにして、予想外にも、様々な性質間のバランスが、本明細書に開示される比の範囲内で見いだされた。
【0020】
驚いたことに、長鎖ポリオール、例えばポリビニルアルコールは、一般にあらゆるバインダー原料の中で最も高い粘度を有するが、少量の長鎖ポリオールの添加によって実際に全体のバインダー粘度を減少させることが見いだされた。幾つかの例示の実施形態において、少量の長鎖ポリオール(0.1~20質量%未満)の添加によって、長鎖ポリオールを除いたバインダー組成物の粘度に対してバインダー溶液の粘度を最大50%減少させる。さらに、少量の長鎖ポリオールの添加によって、同時に周囲条件と高温多湿条件下両方で、長鎖ポリオールを除いたバインダー組成物の引張/LOI強度と比較して引張/LOI強度を最大40%高めることが見いだされた。
【0021】
水性バインダー組成物は、硬化促進剤としても公知のエステル化触媒を含んでもよい。触媒には、無機塩、ルイス酸(すなわち、塩化アルミニウムまたは三フッ化ホウ素)、ブレンステッド酸(すなわち、硫酸、p-トルエンスルホン酸およびホウ酸)有機金属錯体(すなわち、カルボン酸リチウム、カルボン酸ナトリウム)および/またはルイス塩基(すなわち、ポリエチレンイミン、ジエチルアミン、またはトリエチルアミン)が含まれ得る。さらに、触媒には、リン含有有機酸のアルカリ金属塩、特にリン酸、次亜リン酸、またはポリリン酸のアルカリ金属塩が含まれ得る。そのようなリン触媒の例としては、これらに限定されないが、次亜リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ピロリン酸二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、トリポリリン酸カリウム、トリメタリン酸ナトリウム、テトラメタリン酸ナトリウム、およびそれらの混合物が挙げられる。さらに、触媒または硬化促進剤は、フルオロボレート化合物、例えばフルオロホウ酸、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、テトラフルオロホウ酸カルシウム、テトラフルオロホウ酸マグネシウム、テトラフルオロホウ酸亜鉛、テトラフルオロホウ酸アンモニウムおよびそれらの混合物であってもよい。さらに、触媒は、リン化合物とフルオロボレート化合物の混合物であってもよい。他のナトリウム塩、例えば硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウムもまた、または代替的に、触媒として使用することができる。
【0022】
触媒は、バインダー組成物の全固形分の0質量%~10質量%の量、例えば、限定することなく、1質量%~5質量%、または2質量%~4.5質量%、または2.8質量%~4.0質量%、または3.0質量%~3.8質量%の量で水性バインダー組成物中に存在してもよい。
水性バインダー組成物は、少なくとも1種のカップリング剤を含んでもよい。少なくとも1つの例示の実施形態において、カップリング剤はシランカップリング剤である。カップリング剤は、バインダー組成物の全固形分の0.01質量%~5質量%、0.01質量%~2.5質量%、0.05質量%~1.5質量%、または0.1質量%~1.0質量%の量でバインダー組成物中に存在してもよい。
【0023】
バインダー組成物に使用することができるシランカップリング剤の非限定的な例は、官能基アルキル、アリール、アミノ、エポキシ、ビニル、メタクリルオキシ、ウレイド、イソシアネート、およびメルカプトを特徴とし得る。例示の実施形態において、シランカップリング剤には、1以上の官能基、例えばアミン(第一級、第二級、第三級および第四級)、アミノ、イミノ、アミド、イミド、ウレイド、またはイソシアネートを有する1以上の窒素原子を含むシランが含まれる。適切なシランカップリング剤の具体的な非限定的な例としては、これらに限定されないが、アミノシラン(例えば、トリエトキシアミノプロピルシラン、3-アミノプロピル-トリエトキシシランおよび3-アミノプロピル-トリヒドロキシシラン)、エポキシトリアルコキシシラン(例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)、メタクリル(methyacryl)トリアルコキシシラン(例えば、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランおよび3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、炭化水素トリアルコキシシラン、アミノトリヒドロキシシラン、エポキシトリヒドロキシシラン、メタクリルトリヒドロキシシランおよび/または炭化水素トリヒドロキシシランが挙げられる。1つまたは複数の例示の実施形態において、シランはアミノシラン、例えばγ-アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0024】
水性バインダー組成物は、加工助剤を含んでもよい。加工助剤は、繊維形成および配向処理を促進するように機能する限り、特に限定されない。加工助剤は、バインダーの塗布分布均一性を改善するため、バインダーの粘度を低減するため、形成後の勾配高さを増加させるため、縦方向の質量分布均一性を改善するため、および/または形成工程とオーブン硬化工程の両方でバインダーの脱水を加速させるために使用することができる。加工助剤は、バインダー組成物中の総固形分含有量に対して、0~10質量%、0.1質量%~5.0質量%、または0.3質量%~2.0質量%、または0.5質量%~1.0質量%の量でバインダー組成物中に存在してもよい。幾つかの例示の実施形態において、水性バインダー組成物は、加工助剤を本質的にまたは全く含まない。
加工助剤の例としては、消泡剤、例えば鉱物、パラフィン、もしくは植物油のエマルションおよび/または分散液、ポリジメチルシロキサン(PDMS)流体の分散液およびポリジメチルシロキサンまたは他の材料で疎水化されたシリカの分散液が挙げられる。さらなる加工助剤には、アミドワックス、例えばエチレンビス-ステアラミド(EBS)または疎水化シリカからなる粒子が含まれ得る。バインダー組成物に利用することができるさらなる加工助剤は、界面活性剤である。バインダーの霧化、濡れおよび界面接着を補助するために、1以上の界面活性剤がバインダー組成物に含まれてもよい。
【0025】
界面活性剤は特に限定されず、これらに限定されないが、イオン性界面活性剤(例えば、サルフェート、スルホネート、ホスフェートおよびカルボキシレート)、サルフェート(例えば、アルキルサルフェート、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、アルキルエーテルサルフェート、ラウレス硫酸ナトリウムおよびミレス硫酸ナトリウム)、両性界面活性剤(例えば、アルキルベタイン、例えばラウリル-ベタイン)、スルホネート(例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ペルフルオロオクタンスルホネート、ペルフルオロブタンスルホネートおよびアルキルベンゼンスルホネート)、ホスフェート(例えば、アルキルアリールエーテルホスフェートおよびアルキルエーテルホスフェート)、カルボキシレート(例えば、アルキルカルボキシレート、脂肪酸塩(石けん)、ステアリン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、カルボキシレートフッ素系界面活性剤、ペルフルオロナノエートおよびペルフルオロオクタノエート)、陽イオン性(例えば、アルキルアミン塩、例えばラウリルアミン酢酸塩)、pH依存性界面活性剤(第一級、第二級または第三級アミン)、恒久的に荷電した第四級アンモニウムカチオン(例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリドおよびベンゼトニウムクロリド)ならびに双性イオン性界面活性剤、第四級アンモニウム塩(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリドおよびアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド)ならびにポリオキシエチレンアルキルアミンなどの界面活性剤が含まれる。
【0026】
バインダー組成物とともに使用することができる適切な非イオン性界面活性剤には、ポリエーテル(例えば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの縮合物、これには直鎖および分岐鎖アルキルおよびアルカリールポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールエーテルおよびチオエーテルが含まれる)、7~18個の炭素原子を含むアルキル基を有し、4~240個のエチレンオキシ単位を有するアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール(例えば、ヘプチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールおよびノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール)、ソルビタン、ソルビド、マンニタンおよびマンニドを含むヘキシトールのポリオキシアルキレン誘導体、部分長鎖脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエートおよびソルビタントリオレエートのポリオキシアルキレン誘導体)、エチレンオキシドと疎水性塩基の縮合物であって、塩基がプロピレンオキシドとプロピレングリコールを縮合することによって形成される縮合物、硫黄含有縮合物(例えば、エチレンオキシドと高級アルキルメルカプタン、例えばノニル、ドデシル、もしくはテトラデシルメルカプタンを、またはアルキルチオフェノールを縮合することによって調製される縮合物、ここでアルキル基は6~15個の炭素原子を含む)、長鎖カルボン酸(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびオレイン酸、例えばトール油脂肪酸)のエチレンオキシド誘導体、長鎖アルコール(例えば、オクチル、デシル、ラウリルまたはセチルアルコール)のエチレンオキシド誘導体、ならびにエチレンオキシド/プロピレンオキシドのコポリマーが含まれる。
【0027】
少なくとも1つの例示の実施形態において、界面活性剤は、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオールであるDynol 607、エトキシ化2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール界面活性剤であるSURFONYL(登録商標)420、SURFONYL(登録商標)440およびSURFONYL(登録商標)465(Evonik Corporation(Allentown、Pa.)から市販されている)、Stanfax(ラウリル硫酸ナトリウム)、Surfynol 465(エトキシ化2,4,7,9-テトラメチル5デシン-4,7-ジオール)、Triton(商標)GR-PG70(1,4-ビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム)、およびTriton(商標)CF-10(ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)、アルファ-(フェニルメチル)-オメガ-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノキシ)のうちの1以上を含む。
界面活性剤は、バインダー組成物中の総固形分含有量に対して0~10質量%、0.1%質量~5.0質量%、または0.3%質量~2.0質量%、または0.5%質量~1.0質量%の量でバインダー組成物中に存在してもよい。
【0028】
バインダー組成物はまた、pH調整剤として、pHを所望のレベルに調整するのに十分な量で、有機および/または無機酸ならびに塩基を含んでもよい。pHは、バインダー組成物の原料の適合性を促進する、または様々な種類の繊維に作用するように、所期の用途に基づいて調整され得る。幾つかの例示の実施形態において、pH調整剤を利用して、バインダー組成物のpHを酸性pHに調整する。適切な酸性pH調整剤の例としては、無機酸、例えば、これらに限定されないが、硫酸、リン酸およびホウ酸、さらに有機酸、例えばp-トルエンスルホン酸、モノまたはポリカルボン酸、例えば、これらに限定されないが、クエン酸、酢酸およびこれらの無水物、アジピン酸、シュウ酸、およびこれらの対応する塩が挙げられる。また、酸前駆体であり得る無機塩も含まれる。酸はpHを調整し、幾つかの場合では、上記で考察したように、架橋剤として作用する。他の例示の実施形態において、有機および/または無機塩基が、バインダー組成物のpHを上昇させるために含まれ得る。幾つかの例示の実施形態において、塩基は揮発性塩基であっても不揮発性塩基であってもよい。例示の揮発性塩基には、例えば、アンモニアおよびアルキル置換アミン、例えばメチルアミン、エチルアミンまたは1-アミノプロパン、ジメチルアミンおよびエチルメチルアミンが含まれる。例示の不揮発性塩基には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、およびt-ブチルアンモニウムヒドロキシドが含まれる。
【0029】
pH調整剤は、バインダー組成物中の総固形分含有量に対して、0~10質量%、0.1質量%~5.0質量%、または0.3質量%~2.0質量%、または0.5質量%~1.0質量%の量でバインダー組成物中に存在してもよい。幾つかの例示の実施形態において、水性バインダー組成物は、いかなるpH調整剤も実質上または全く含まない。
硬化前の状態では、バインダー組成物のpHは、その間のすべての量および範囲を含めて2~5に及び得る。幾つかの例示の実施形態において、バインダー組成物のpHは、硬化前の状態で2.2~4.0、例えば2.5~3.8および2.6~3.5である。硬化後、バインダー組成物のpHは少なくともpH6.0、例えば6.5~7.2、または6.8~7.2のレベルまで上昇し得る。
【0030】
バインダーは、その後の断熱材料の組立ておよび設置に悪影響を及ぼす可能性がある無機および/または有機粒子の存在を低減する、または排除するために、粉塵抑制剤を含んでもよい。粉塵抑制剤は、任意の従来の鉱物油、鉱物油エマルション、天然または合成油、バイオベース油、または潤滑油、例えば、これらに限定されないが、シリコーンおよびシリコーンエマルション、ポリエチレングリコール、ならびに、オーブン内の油の蒸発を最小限に抑えるように引火点が高い任意の石油系または非石油系油であってよい。
幾つかの例示の実施形態において、水性バインダー組成物は、最大で10質量%、例えば最大で8質量%、または最大で6質量%の粉塵抑制剤を含む。様々な例示の実施形態では、水性バインダー組成物は、0質量%~10質量%、例えば1.0質量%~7.0質量%、または1.5質量%~6.5質量%、または2.0質量%~6.0質量%、または2.5質量%~5.8質量%の粉塵抑制剤を含む。
【0031】
バインダーは、活性固形物を溶解または分散させて補強繊維に塗布するための水をさらに含む。水は、水性バインダー組成物を、補強繊維に塗布するために、さらに繊維での所望の固形分含有率を達成するのに適する粘度に希釈するのに十分な量で添加されてもよい。本発明のバインダー組成物は、従来のフェノール-尿素ホルムアルデヒドまたは炭水化物ベースバインダー組成物よりも低い固形分含有率を含み得ることが発見された。特に、バインダー組成物は、3質量%~35質量%のバインダー固形分、例えば、限定することなく、10質量%~30質量%、12質量%~20質量%、および15質量%~19質量%のバインダー固形分を含み得る。固形分のこのレベルから、本発明のバインダー組成物が伝統的なバインダー組成物よりも多く水を含み得ることが示される。しかし、バインダー組成物は硬化速度が速いため、バインダーは高い勾配水分レベル(3%~30%)で加工することができ、バインダー組成物は、伝統的なバインダー組成物より湿分除去に必要とする硬化滞留時間が短い。製品のバインダー含有率は、強熱減量(LOI)として測定することができる。ある種の実施形態において、断熱材製品を形成するガラス繊維についてのLOIは0.5%~50%、例えば、限定することなく、1%~25%、5%~19%、および4.5%~17%である。
幾つかの例示の実施形態において、バインダー組成物は、より低いLOIで従来のフェノールまたはデンプンハイブリッドバインダー組成物と同様のまたはそれよりも高い性能を達成することが可能である。
【0032】
幾つかの例示の実施形態において、水性バインダー組成物は、1以上の添加剤、例えばカップリング剤、増量剤、架橋密度向上剤、脱臭剤、酸化防止剤、粉塵抑制剤、殺生物剤、防湿剤またはこれらの組み合わせも含み得る。バインダーは、限定することなく、染料、顔料、さらなる充填剤、着色剤、UV安定化剤、熱安定化剤、発泡防止剤、乳化剤、保存剤(例えば、安息香酸ナトリウム)、腐食阻害剤、およびこれらの混合物を含み得る。工程および製品の性能を改善するために、他の添加剤がバインダー組成物に添加されてもよい。そのような添加剤には、潤滑剤、湿潤剤、帯電防止剤、および/または撥水剤が含まれる。添加剤は、微量(例えばバインダー組成物の0.1質量%未満)から、バインダー組成物の全固形分の10質量%まで、バインダー組成物中に存在してもよい。
幾つかの例示の実施形態において、水性バインダー組成物は、モノマー性カルボン酸成分を実質的に含まない。例示のモノマー性ポリカルボン酸成分には、アコニット酸、アジピン酸、アゼライン酸、ブタンテトラカルボン酸二水和物、ブタントリカルボン酸、クロレンド酸無水物、シトラコン酸、クエン酸、ジシクロペンタジエン-マレイン酸付加物、ジエチレントリアミンペンタ酢酸ペンタナトリウム塩、ジペンテンと無水マレイン酸の付加物、エンドメチレンヘキサクロロフタル酸無水物、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、完全マレエート化ロジン、マレエート化トール油脂肪酸、フマル酸、グルタル酸、イソフタル酸、イタコン酸、アルコールに次いでカルボン酸に過酸化カリウムで酸化不飽和化されるマレエート化ロジン、リンゴ酸、無水マレイン酸、メサコン酸、シュウ酸、無水フタル酸、ポリ乳酸、セバシン酸、コハク酸、酒石酸、テレフタル酸、テトラブロモフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、トリメリト酸無水物およびトリメシン酸が含まれる。
様々な例示の実施形態において、水性バインダー組成物は、長鎖ポリオール(例えば、完全または部分加水分解ポリビニルアルコール)、一次架橋剤(例えば、ポリマー性ポリカルボン酸)、および二次架橋剤(例えば、糖アルコール)を含む。ある種の例示の実施形態による、本発明のバインダー組成物に使用される成分の範囲を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
本開示の様々な例示の実施形態による水性バインダー組成物は、表2に示される触媒/促進剤(例えば、次亜リン酸ナトリウム)、界面活性剤、および/またはカップリング剤(例えば、シラン)をさらに含んでもよい。
【表2】

【0035】
幾つかの例示の実施形態において、バインダー組成物は、バインダー1グラムにつき1000gの脱イオン水を使用して、水溶性物質を脱イオン水で2時間室温で抽出することによって判定される、硬化後水溶性物質レベルが低減されるように配合される。硬化後の水溶性物質レベルが高いほど、硬化材料が水および/または高温/多湿環境に曝された場合/ときに、浸出する可能性が高くなる。幾つかの例示の実施形態において、バインダー組成物は、硬化後に6質量%以下の水溶性物質を有する。幾つかの例示の実施形態において、バインダー組成物は、硬化後に5.0質量%未満、例えば5.0質量%、4.0質量%、3.0質量%未満、2.5質量%未満、2.0質量%未満、1.5質量%未満、または1.0質量%未満の水溶性物質を有する。硬化後の水溶性物質レベルを6.0質量%以下まで低減させることによって、硬化後に6.0質量%より多い水溶性物質を有するが他の点では同様のバインダー組成物と比較して、バインダー組成物の引張強度が改善されることが発見された。
【0036】
硬化後にバインダー組成物に残存する水溶性物質の量は、バインダー中のカルボン酸基の量によって少なくとも部分的に判定され得る。特に、酸基が過剰になると水溶性含有率が増加し、硬化後の水溶性物質が増加する。下の表3に示されるように、比較例1および2は非常に酸性のCOOH/OH比を有し、結果として硬化後の水溶性物質のパーセンテージが許容されないほど高くなっている。対照的に、硬化後に残存する水溶性物質のパーセンテージは、1/0.1以下のCOOH/OH比で実質的に減少する。
【0037】
【表3】

【0038】
硬化後の水溶性物質レベルが許容される程度に低い(例えば、6質量%以下)バインダー組成物を製作するためには、全ポリオール含有率に少なくとも10質量%の1以上の短鎖ポリオールが含まれているべきであることが、さらに発見された。一般的に、ソルビトールなどの短鎖ポリオールは水溶性が高いため、これは特に驚くべきことである。したがって、ソルビトールレベルを上昇させると、バインダー組成物中の水溶性物質の量が、下がるのではなく増加することが予想されていた。
【0039】
幾つかの例示の実施形態において、バインダー組成物は固形分30%以下で400cP未満、例えば固形分30%以下で300cP、固形分30%以下で200cP、固形分30%以下で175cP、固形分30%以下で150cPの粘度を有する。様々な例示の実施形態において、バインダー組成物の粘度は固形分30%以下で250cP以下である。
【0040】
本開示の繊維製品は、ランダムに配向した複数の繊維を含む。ある種の例示の実施形態において、ランダムに配向した複数の繊維は、鉱物繊維、例えば、これらに限定されないが、ガラス繊維、ガラスウール繊維、ミネラルウール繊維、スラグウール繊維、ストーンウール繊維、セラミック繊維、金属繊維およびそれらの組み合わせである。
【0041】
他の補強繊維、例えば天然繊維および/または合成繊維、例えば炭素、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、アラミド、および/またはポリアラミド繊維が不織布繊維マットに使用されてもよい。「天然繊維」という用語は、本明細書で使用される場合、植物の任意の部分、例えば、これらに限定されないが、茎、種子、葉、根または師部から抽出された植物繊維を指す。補強繊維材料として使用するのに適する天然繊維の例としては、木質繊維、セルロース繊維、藁、木材チップ、木材ストランド、綿、ジュート、竹、ラミー、バガス、麻、コイア、リネン、ケナフ、サイザル、亜麻、ヘネケ麻およびこれらの混合物が挙げられる。繊維質断熱材製品は、完全に1種類の繊維で形成されてもよく、複数の種類の繊維の組み合わせで形成されてもよい。例えば、断熱材製品は、所望の用途に応じて、様々な種類のガラス繊維の組み合わせで形成されてもよく、異なる無機繊維および/または天然繊維の様々な組み合わせで形成されてもよい。ある種の例示の実施形態において、断熱材製品は完全にガラス繊維で形成される。
本発明を概括的に記載したが、例証の目的でのみ提供され、別途指定されない限りすべて包含するまたは限定的であることは意図されない、以下に示されるある種の具体的な例を参照することによって、さらに理解することができる。
【実施例
【0042】
(実施例1)
カルボン酸/ヒドロキシル比が変化し、かつポリビニルアルコール/ソルビトール比が変化するバインダー配合物を利用して、薄板(硬化温度425°Fおよび厚さ0.125インチ)を形成し、細片に切断した。これらの比を下の表4に示す。各板細片を3点曲げ試験に供し、この試験では各細片の中央に荷重を加え、板細片が破断するまで耐えることができた荷重の量を測定した。結果を図1に示す。
【0043】
【表4】

【0044】
図1に示されるように、各カルボン酸/ヒドロキシル基比内で、ポリビニルアルコール/ソルビトール比に応じて曲げ応力/質量/LOIが上昇または低下した。曲げ応力は、厚さ1/8’’の2’’×6’’板を利用する3点曲げ試験で測定する(すなわち、破断するまでの力)。全体で最も高い曲げ応力/LOIは、カルボン酸/ヒドロキシル基比が1/0.66のときに得られた。さらに、この比の範囲内で、ポリビニルアルコール/ソルビトール比が0.5/0.5であったとき曲げ応力/LOIはさらに上昇した。実際、カルボン酸/ヒドロキシル基比の各組内で、ポリビニルアルコール/ソルビトール比が0.5/0.5のとき最も高い曲げ応力が示された。
【0045】
(実施例2)
COOH/OH比および長鎖ポリオール/短鎖ポリオール比が変化するバインダー組成物を利用して、幅9.5mm、厚さ0.5mmおよび長さ97mmの不織布繊維ガラスバインダー含浸フィルター(BIF)シートを形成した。不織布繊維ガラスBIFシートを425°Fで3分30秒間硬化させた。各試料の引張強度、強熱減量(LOI)およびLOIで除した引張強度(引張強度/LOI)を、周囲条件および蒸気(「高温/多湿」)条件下で測定した。引張強度は、Instron(引張り速度2インチ/分)を使用して測定した。補強繊維のLOIは、バインダー組成物が燃焼するか、繊維から熱分解するのに十分な温度に繊維を加熱した後の繊維の質量減少である。LOIは、TAPPI T-1013 OM06,Loss on Ignition of Fiberglass Mats(2006)に示される手順に従って測定した。高温/多湿環境をつくるために、フィルターシートを240°F、圧力400から500psiの間で60分間オートクレーブに入れた。
図2に示されるように、引張/LOIは全体として、周囲条件と高温/多湿条件の両方で、(1/0.1のCOOH/OH比内で)組成物中の短鎖ポリオールの比が増加すると上昇するように思われた。この関係は、硬化後に組成物に残存する水溶性物質のレベルと一致するように思われる(図3)。図3は、短鎖ポリオールの比が増加するにつれ、硬化後の組成物中の水溶性物質のパーセンテージが減少することを示す。
【0046】
図4および図5に示されるように、この関係はCOOH/OH比が1/1.5に調整されたときも継続した。しかし、注目すべきことに、硬化後に組成物に残存する水溶性物質のパーセンテージは、このCOOH/OH範囲で実質的に低下した。例えば、短鎖ポリオールを含まない組成物であっても、水溶性物質のパーセンテージは8.0%未満であり、短鎖ポリオールをある程度添加すると、パーセンテージは5.0%未満に降下した。
しかし、COOH/OH比を1/0.5、1/0.1、および1/1に調整すると、水溶性物質パーセントは両方とも短鎖ポリオールの比の増加に伴い同じように低下したが、周囲および高温/多湿引張強度は共に長鎖ポリオール/短鎖ポリオール比にかかわらず比較的一定のままであった。図6~9を参照のこと。しかし、最も高い周囲引張強度/LOIは、COOH/OH比が1/0.5のときに、0.5/0.5および0.3/0.7の長鎖ポリオール/短鎖ポリオール比で示されることに留意すべきである(それぞれ44および45の引張強度/LOI)。
【0047】
図10は、COOH/OH比が1/0.1~1/10に変化する、バインダー組成物含浸フィルターシートの引張/LOIの変化を示す。示されるように、周囲条件および高温/多湿条件下の両方での最適な引張/LOIは、COOH/OH比が低すぎず高すぎないときに見ることができる。高すぎるまたは低すぎるCOOH/OH比では、高温/多湿条件下での引張/LOIは悪化し、強度性が不十分になる。
【0048】
(実施例3)
比が変化するバインダー組成物を利用して繊維ガラス断熱材ボード(例えば、天井タイル)を形成した。本出願によるバインダー組成物で形成された断熱材ボード(様々な比のポリアクリル酸/ソルビトール/ポリビニルアルコールのPAA/S/PVOHと示す)を、従来の炭水化物ベースバインダー組成物(「デンプンハイブリッドバインダーボード」)およびフェノール尿素ホルムアルデヒドバインダー組成物(「PUFボード」)の両方を使用して形成されたボードと比較した。各試料の弾性率、圧縮強度(デルタb)、およびサグ(インチ)を周囲条件下で判定した。
図11に示されるように、従来の炭水化物ベースバインダー組成物とフェノール尿素ホルムアルデヒドベースバインダー組成物の両方と比較して、PAA/S/PVOH断熱材ボード試料はそれぞれ改善された曲げ弾性率を示した。PAA/S/PVOHが50:20:30およびPAA/S/PVOHが60:10:30のとき最高の改善が示され、曲げ弾性率レベルはそれぞれ70psiおよび68psiであった。対照的に、PUFボードは46psiの曲げ弾性率を示し、デンプンハイブリッドバインダーボードは31psiの弾性率を示した。幾つかの例示の実施形態において、本発明の概念による、厚さ1インチおよび密度6lbs/ft3の断熱材ボードは、少なくとも40psi、例えば少なくとも45psi、少なくとも50psi、および少なくとも55psiの弾性率を達成する。
【0049】
図12は、90F/90%rH(相対湿度)の高温/多湿環境で所定の日数放置した後の、様々な4’×4’断熱材ボードパネルで観察されたサグを示す。
図12に示されるように、PVOHレベルが低いPAA/S/PVOHバインダー組成物(すなわち、60:20:15のPAA/S/PVOHおよび75:10:15のPAA/S/PVOH)は、高温/多湿条件下で、PUFボードとデンプンハイブリッドバインダーボードの両方よりも少ないサグを示した。このことは、バインダー組成物中の長鎖ポリオールを減少させることで、非常に高い標準の高温多湿性能が求められる用途において、高温/多湿性能の改善が促進される可能性があることを示す。
【0050】
図13は、異なるバインダーおよびLOI%を有する繊維ガラスボード製品の、10%変形での圧縮強度を示す。ASTM法C-165に従い、厚さ1’’および密度6lb/ft2の6’’×6’’断熱材ボードに試験を行った。図13に示されるように、PAA/S/PVOHバインダーで形成された断熱材ボードの圧縮強度は、デンプンハイブリッドバインダーおよびPUFバインダーの両方で形成された断熱材ボードの圧縮強度を上回り、260lbs/ft2~500lbs/ft2超えの圧縮強度が示された。幾つかの例示の実施形態において、本発明の概念による、厚さ1インチの6’’×6’’断熱材ボードは、少なくとも200lbs/ft2、例えば少なくとも300lbs/ft2、少なくとも400lbs/ft2、および少なくとも500lbs/ft2の圧縮強度を達成する。
【0051】
図14は、異なるバインダーおよびLOI%を有する繊維ガラスボード製品の破断時接着強度を示す。試験では、厚さ1’’および密度6lb/ft2の6’’×6’’断熱材ボードのZ方向の強度を測定する。図14に示されるように、PAA/S/PVOHバインダーで形成された断熱材ボードの接着強度は、デンプンハイブリッドバインダーで形成された断熱材ボードの接着強度を上回った。さらに、PAA/S/PVOHバインダーで形成された断熱材ボードは、PUFバインダーで形成された断熱材ボードと同等の接着強度を示し、10lbs/ft2~15lbs/ft2を超える接着強度が示された。幾つかの例示の実施形態において、本発明の概念による、厚さ1インチの6’’×6’’断熱材ボードは、少なくとも7.5lbs./ft2/LOI、例えば少なくとも10lbs./ft2/LOI、少なくとも12.5lbs./ft2/LOI、および少なくとも15lbs./ft2/LOIの接着強度を達成する。
【0052】
(実施例4)
75質量%のポリアクリル酸を含み、ポリビニルアルコールおよびソルビトール(表5)またはトリエタノールアミン(表6)の量が変化するバインダー組成物を使用して、幅9.5mm、厚さ0.5mmおよび長さ97mmの不織布繊維ガラスバインダー含浸フィルター(BIF)シートを形成した。不織布繊維ガラスBIFシートを対流式オーブン中425°Fで3分30秒硬化した。各試料についてLOIで除した引張強度(引張強度/LOI)を、周囲条件および蒸気(「高温/多湿」)条件下で測定した。引張強度はInstron(2インチ/分の引張り速度)を使用して測定した。補強繊維のLOIは、バインダー組成物が燃焼するか、繊維から熱分解するのに十分な温度に繊維を加熱した後の繊維の質量減少である。LOIは、TAPPI T-1013 OM06,Loss on Ignition of Fiberglass Mats(2006)に述べられている手順に従って測定した。高温/多湿環境をつくるために、フィルターシートを227°F、圧力5psiで60分間オートクレーブに入れた。試験したバインダー組成物は、下の表5に詳述する。
【0053】
【表5】

【0054】
【表6】

【0055】
表5に示すように、ポリアクリル酸および25質量%のソルビトールを含むバインダー組成物で形成したフィルターシートは、少量(1.0質量%~20質量%)のポリビニルアルコールが含まれる場合、周囲条件および高温/多湿の引張強度/LOIの両方で増加を示す(参照、実施例1-4および比較例A)。同様に表6に示すように、ポリアクリル酸および25質量%のトリエタノールアミンを含むバインダー組成物で形成したフィルターシートは、少量(1.0質量%~20質量%)のポリビニルアルコールが含まれる場合、周囲条件および高温/多湿の引張強度/LOIの両方で増加を示す(参照、実施例10-13および比較例C)。この試験の結果は、実施例15に説明する。
【0056】
さらに、ポリアクリル酸および20質量%のポリビニルアルコールを含むバインダー組成物で形成したフィルターシートは、少量(1.0質量%~20質量%)のソルビトールまたはトリエタノールアミンのいずれかが含まれる場合、周囲条件の引張強度/LOIで増加を示す(参照、実施例5-8対比較例Bおよび実施例14-17対比較例D)。少量のソルビトールを含むバインダー組成物で形成したフィルターシートは、さらに、高温/多湿条件下で引張強度/LOIの増加を示した。この試験の結果は図16に説明する。さらに、20質量%のPVOHを含む組成物に少量のトリエタノールアミンを添加しても、高温/多湿条件下の引張強度/LOIに有意な影響を与えなかった。実施例14-17のそれぞれは、PVOHを除外したバインダー組成物を使用して形成されたシートと比較して、改善された引張/LOIを示した。
【0057】
さらに図17および図18で説明するように、驚いたことに、少量のPVOHを添加すると、バインダー組成物粘度が減少した。図17は、75質量%のポリアクリル酸を含み、トリエタノールアミンとポリビニルアルコールの濃度を変化させたバインダー組成物について粘度プロフィールを説明する。説明されるように、75質量%のポリアクリル酸および25質量%のトリエタノールアミンを含む組成物は、50F~90Fの温度範囲にわたって160~310cPの間の粘度プロフィールを示す。対照的に、1.0または2.5質量%という少量のPVOHの添加によって、同一の温度範囲にわたって30~75cPに粘度プロフィールが下がる。
【0058】
例証された製品および工程のより多くの詳細な態様の大部分が当技術分野で公知であり、このような態様は本発明の一般的な概念を正確に提示する目的で省略されていることが理解される。本発明を特定の手段、材料および実施形態を参照して説明したが、前述から、当業者であれば本開示の本質的な特性を容易に確認することができ、様々な変更および修正を行って、上記されたような、かつ添付の特許請求の範囲に示される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な使用および特性を適合させることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】