(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-26
(54)【発明の名称】平坦または平坦に傾斜したルーフの断熱及び/または防音のための絶縁要素、及び絶縁要素を生成する方法
(51)【国際特許分類】
E04D 3/35 20060101AFI20220519BHJP
【FI】
E04D3/35 F
E04D3/35 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552255
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(85)【翻訳文提出日】2021-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2020059446
(87)【国際公開番号】W WO2020201449
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500068120
【氏名又は名称】ロックウール インターナショナル エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ジジェン,コー ジェイ.エム.
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン,ラース バウンガード
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108CC01
2E108CC11
2E108CV01
2E108CV02
2E108ER05
2E108FG01
2E108GG00
2E108GG01
2E108GG04
(57)【要約】
平坦なルーフ(1)の断熱及び/または防音のための絶縁要素(4)であって、鉱物ウールで作られた第1の層(5)と、少なくとも1つの生地で作られた第2の層(6)とを備え、第2の層(6)は、接着剤(9)によって第1の層(5)の主面(7)に固定され、第1の層(5)は、第2の層(6)の主面(8)に対して大部分が垂直方向の向きである繊維を有する少なくとも1つの薄層で作られ、第1の層(5)は、固化したバインダを包含し、接着剤(9)は、第2の層(8)に向けられた第1の層(5)における主面(7)近くの繊維間の領域(10)と、第1の層(5)に向けられた第2の層(8)の主面(8)近くの領域(11)とに部分的に配置され、それによって接着剤(9)は、第2の層(6)に対して垂直方向に向けられた力が、接着剤(9)及び/または第1の層(5)における繊維の歪みと組み合わされた第2の層(8)の引張強度によって補完され得るよう、第1の層(5)及び第2の層(6)を接続して、第1及び第2の層(5)における厚さの5%未満の最大変形を生じさせる、絶縁要素(4)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦または平坦に傾斜したルーフの断熱及び/または防音のための絶縁要素であって、鉱物ウール、特にストーンウールで作られた第1の層と、少なくとも1つの生地、特にフリースで作られた第2の層とを備え、前記第2の層は、接着剤によって前記第1の層の主面に固定され、
前記第1の層は、前記第2の層の主面に対して大部分が垂直方向の向きである繊維を有する、少なくとも1つの薄層で作られ、
前記絶縁要素は、
前記接着剤が、前記第2の層に向けられた前記第1の層の前記主面に近い繊維間の領域と、前記第1の層に向けられた前記第2の層の前記主面に近い領域とに、部分的に配置され、それによって前記接着剤は、前記第2の層に対して垂直方向に向けられた力が、前記接着剤及び/または前記第1の層における前記繊維の歪みと組み合わされた前記第2の層の引張強度によって補完することができるよう、前記第1の層と前記第2の層を接続して、前記第1及び前記第2の層の厚さの5%以下の最大変形を生じさせ、それによって前記接着剤は、前記第1の層及び前記第2の層の間に、60~400g/m
2、好ましくは100~250g/m
2、より好ましくは150g/m
2の量で提供されることを特徴とする、絶縁要素。
【請求項2】
前記第2の層はグラスフリースで作られ、450~900MPa、好ましくは500~800MPaの弾性係数、及び/または50~110N、好ましくは70~90Nの引張強度を、好ましくは有することを特徴とする、請求項1に記載の絶縁要素。
【請求項3】
前記第2の層は、トーチ工法によって瀝青膜に、または常温粘着によって膜に接続可能であることを特徴とする、請求項1に記載の絶縁要素。
【請求項4】
前記接着剤は、好ましくは2液型粘着物のメラミン尿素ホルムアルデヒド、水性アクリル系粘着物、フェノールホルムアルデヒド粉末バインダ、水性ネオプレン泡状粘着物、ポリアミド系粉末粘着物、好ましくは2液型粘着物のポリウレタン粘着物、ポリウレタン湿気固化粘着物、または、好ましくは1液型湿気固化粘着物のシラン系修復バインダ、から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の絶縁要素。
【請求項5】
乾式適用の接着剤、好ましくはフェノールホルムアルデヒド粉末バインダ、またはポリアミド系粉末粘着物が、前記第1の層と前記第2の層との間に、60~250g/m
2、好ましくは80~150g/m
2の量で配置されることを特徴とする、請求項1~4のうちいずれか一項に記載の絶縁要素。
【請求項6】
前記接着剤は、前記第1の層と前記第2の層との間の全面に提供されることを特徴とする、請求項1~5のうちいずれか一項に記載の絶縁要素。
【請求項7】
前記第1の層は鉱物繊維及びバインダで作られ、前記バインダは、好ましくは3~7重量%の量が存在し、80~120kg/m
3の容積密度を有し、かつ50~130kPaの圧縮強度を有することを特徴とする、請求項1~6のうちいずれか一項に記載の絶縁要素。
【請求項8】
請求項1~7のうちいずれか一項に記載の絶縁要素を、生成する方法であって、
主面に対して大部分が垂直方向の向きである繊維を有し、かつ固化したバインダを有する、少なくとも1つの薄層で作られた、第1の層は、接着剤によって第2の層に接続され、前記接着剤は、前記第2の層に向けられた前記第1の層における前記主面近くの繊維間の領域、及び前記第1の層に向けられた前記第2の層における主面近くの領域に、部分的に配置され、それによって前記接着剤は、前記第2の層に対して垂直方向に向けられた力が、前記接着剤及び/または前記第1の層における前記繊維の歪みと組み合わされた前記第2の層の引張強度によって補完され得るよう、前記第1の層及び前記第2の層を接続し、前記第1及び第2の層における厚さの5%以下の最大変形をもたらし、前記接着剤は、前記2つの層を接続して前記接着剤を固化させる前に適用され、前記接着剤は、前記第1の層と前記第2の層との間に、60~400g/m
2、好ましくは100~250g/m
2、より好ましくは150g/m
2の量を提供することを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記接着剤は、前記第2の層が前記第1の層に配置される前に、前記第1及び/または第2の層の前記主面に配置され、それによって前記接着剤を、前記第1及び/または第2の層における細孔の中に押圧し、前記層を接続した後に前記接着剤が固化することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平坦または平坦に傾斜したルーフの断熱及び/または防音のための絶縁要素に関する。この絶縁要素は、鉱物ウール、特にストーンウールで作られた第1の層と、少なくとも1つの生地、特にフリースで作られた第2の層とを備える。第2の層は、接着剤によって第1の層の主面に固定される。第1の層は、その主面に対して大部分が垂直方向の向きである繊維を有する、少なくとも1つの鉱物ウールの薄層要素で作られる。さらに、第1の層は固化したバインダを包含する。さらに本発明は、上述の絶縁要素を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平坦なルーフ及び平坦に傾斜したルーフは、先行技術において公知である。例えば膜ルーフシステムは、本体の断熱材が設置される位置によって、一般的に以下のタイプすなわち、ウォームルーフ、逆ウォームルーフ、ルーフガーデンまたはグリーンルーフ、及びコールドルーフ、に分割される。
【0003】
膜ルーフシステムは、平坦なルーフまたは平坦に傾斜したルーフを、それらの設計寿命の間に受けるであろう全ての天候条件から保護するために使用される。それらは、単層のルーフシステムとして、特により大きいルーフに構築されることが多い。またはそれらは、瀝青膜、詳細には補強された瀝青膜(RBM)で構築される。瀝青膜は一般的に、断熱及び/または防音要素の上に広げられた、2層以上のシート材料に適用される。一般的な膜ルーフシステムは、構造的支持部と、例えばスチールまたはコンクリート床など、連続的支持をもたらす床部と、(必要に応じて)蒸気制御層と、(必要に応じて)断熱材と、防水膜と、(機能及び/または美観の理由で必要に応じて)通行または荷重に対抗する仕上げ部と、を備える。
【0004】
本発明は、主要断熱材が、ルーフ被覆すなわち防水膜の直下に配置された、所謂ウォームルーフを主目的とする。単層ルーフシステムの装着のための3つの主な選択肢は、機械的締結、接着/熱接合/常温粘着、及びバラストであり、絶縁材及び膜は、それらによって装着され得るか、または異なる方法で装着され得る。好ましくは、単層の防水膜または防水ライニングが、好適な常温接着剤を使用した常温粘着によって、基体すなわち絶縁層に装着される。その一方で、補強瀝青膜(RBM)が、トーチ工法によって一般的に適用される。この方法において、特別に設計された瀝青膜が、瀝青のいくらかを液化させるために、瀝青膜の底側からガストーチを用いて加熱され、別個の接合瀝青材または粘着物を必要としない。トーチ工法は、特別な手段及び火に対する予防措置を要し、可燃材料の上または付近には不適である。
【0005】
平坦なルーフもしくは平坦に傾斜したルーフの、断熱及び/または防音のための鉱物ウール絶縁要素は、当技術分野で公知である。それぞれの製品及び全体的要件は、欧州規格EN13162:2012+A1:2015の「Thermal insulation products for buildingsーFactory made mineral wool(MW) products」に指定されている。
【0006】
これら鉱物ウールの絶縁要素、またはそれぞれの製品は、平坦または平坦に傾斜したルーフシステムに使用するよう、それぞれに機械的抵抗性をもたらすために、一般的に150kg/m3より大きく250kg/m3までの比較的高い密度の、重ねられるかまたは波形にされた製品を備える。それらの繊維の向きは、上記の要素の主面に対して大部分は層状であるか、または固化前の主要ウェブの長手方向における圧縮の結果、幾分曲折している。熱要件を増加させる点、したがって製品の厚さを増加させるという点で、ボード形状であるこのような鉱物ウールの絶縁要素は、かなり重くなる。したがって多くの例において、絶縁要素の2つの層が、熱性能に対するその地域の建築基準を満たすために必要とされる。2つの絶縁層による絶縁は、時間を浪費し、かつ大きい労力を要する。他方で、より高い容積密度を伴うボードは、1人で取り扱うために、より小さく及び/またはより薄くする必要がある。
【0007】
他の建物絶縁用途内で、詳細にはファサードの絶縁セグメント内、特に外部断熱の複合システムにおいて、所謂薄層製品が公知である。薄層製品は、ボードタイプの層状の半製品から製造される。この半製品では、得られる絶縁要素が、主面に対して大部分が垂直方向の向きである繊維を備えるよう、薄片が切断され、その後90°回転される。しかし上記の薄層製品は、それら大部分の繊維の向きに平行方向に加えられる力、すなわち圧縮力または荷重に対して敏感である。それは、薄層製品が、平坦または平坦に傾斜したルーフに使用するのに一般的ではない理由の1つである。薄層製品が、それぞれのルーフの絶縁に使用される場合、薄層製品を、例えば追加の高密度鉱物ウールカバーボード、または例えば木材ベースの建築ボードのような他のシート状材料などの、荷重分散層で覆う必要がある。カバーの追加絶縁、または荷重分散層は、時間を浪費し、かつ大きい労力を要する。
【0008】
重ねられるかまたは波形にされたルーフ製品に対して、最近の試みとして、防水層の装着に関して、それらの用途の範囲を広げることを始めた。例として欧州特許第2753770号明細書を参照すると、それは、鉱物繊維、特にストーンウール繊維で作られた第1の層と、少なくとも1つの生地、特に含浸されたフリースで作られた第2の層とを備えた、平坦なルーフまたは平坦に傾斜したルーフの、断熱及び/または防音のための絶縁要素に関する。第2の層は、接着剤によって第1の層の主面に固定され、第2の層は、特に石灰などの無機充填材で含浸される。それによって、充填材と組み合わせされた第2の層は透過性を有し、温風ガスが第2の層を貫通するのを可能にして、第1の層の方向に、粘着物または接着剤を貫入させるために、第2の層を閉鎖する。それぞれの製品は、防水膜の接着/常温粘着に好適であること、及び第2の層の無機含浸によって、例えば瀝青膜などのトーチ工法にも好適であることが、証明されている。しかし得られた製品は重く、それらの厚さ範囲が限定され、かつ第2の層のために特別なフリースが必要であるために、生産コストがかかる。
【0009】
使用中である、このような平坦なルーフまたは平坦に傾斜したルーフの主な態様の1つは、特に防水膜及び絶縁要素を損傷させることなく、ルーフの少なくとも一部の上に接近して歩く可能性である。したがって、絶縁要素からの防水膜の対応した支持、及びそれぞれの機械的抵抗が、このようなルーフ上を歩く人に、支持床の頂部の構成要素が曲がることなく、または潰れることがないという印象を与える必要がある。ルーフは、それらの接近可能性によって分類され得る。それに従い、保全目的で接近するために特別な装備を要するルーフは、保全目的のみのために接近可能なルーフ;ルーフ上に設置された装備の頻繁な保全のために接近可能なルーフ;歩行者の往来のために接近可能なルーフ;軽量車両のために接近可能なルーフ;重量車両のために接近可能なルーフ;及びルーフガーデン、とは異なる。本発明に関して、試験荷重40kPaから80kPaまでの圧縮性、及び80℃までの特定の温度に関わる機械的応力に曝される際の働きを有するルーフのみを網羅する。上記のルーフは、歩行者の往来のために接近可能で、装備の頻繁な保全が予想されるよう使用され得る。さらに、より大きい荷重で試験荷重を加えられるルーフは、軽量車両のために接近可能であり、防水被覆がコンクリート舗装などによって防護された場合のみ使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目標は、好ましくは分配された静荷重下における絶縁要素の安定性に対する、鉱物ウールの薄層絶縁要素の機械的特質を改善することである。特に、歩行者の往来のため、及び/または軽量車両のために接近可能なルーフ上の歩行性に関し、床の頂部における構成要素が連続的な支持を提供し、非常に小さい間隔でのみ曲がるか、または潰れるという点で、特にルーフ上を歩く人に安全な印象に関するものである。さらに、本発明の目標は、軽量であるが機械的に強く、取り扱いが容易で、迅速に適用でき、大きい厚さであっても1層のみである、鉱物ウールの薄層絶縁要素を提供することである。
【0012】
さらに目標は、このような絶縁要素を低コストで生成でき、特に歩行者の往来及び/または軽量車両のために接近可能なルーフにおける、歩行性能に関する機械的特質を改善することができる、絶縁要素を生成するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、鉱物ウールの絶縁要素に関するソリューションは、第2の層に向けられた第1の層の主面に近い繊維間の領域と、第1の層に向けられた第2の層の主面に近い領域とに、接着剤が部分的に配置され、それによってこの接着剤は、第2の層に対して垂直に向けられた力が、接着剤及び/または第1の層の繊維の歪みと組み合わされた第2の層の引張強度によって補完されるよう、第1の層と第2の層とを接続し、向上した歩行性をもたらす。それぞれ最大歪みは絶縁要素の厚さの5%以下である。そのため接着剤は、第1の層と第2の層との間に、60~400g/m2、好ましくは100~250g/m2、より好ましくは150g/m2の量で提供される。
【0014】
したがって本発明による絶縁要素は、鉱物繊維及び固化したバインダから成る鉱物ウールの薄層要素の形態である第1の層から構成される。固化したバインダにおいて、特にフリースである生地で作られた第2の層が、接着剤によって、薄層の主面に固定される。接着剤は、薄層及び/または生地の表面に適用され得る。接着剤は薄層及び/またはフリースの中に作用し得る。それによって、第2の層に対して垂直に向けられた力が、接着剤及び/または第1の層における繊維の歪みと組み合わせられた第2の層の引張強度によって補完されるよう、接着剤が薄層の繊維間、及び生地の部分間に配置され、非常に限定された変形をもたらし、かつ絶縁要素のポイント荷重の仕事量を増加させる。これは、それぞれ絶縁要素の厚さの5%以下の最大変形で、向上した歩行性をもたらす。この最大変形は、一方では繊維の向き及び好適な接着材を使用した結果であり、他方では、特に第2の層を使用した結果である。上記の第2の層は、接着剤の使用によって薄層に接続された、少なくとも1つの生地で作られる。この接着剤は、薄層面の多孔質構造のほとんどが接着剤によって閉鎖された領域を形成する薄層面の繊維間で、アノテートされる。それによって、この領域における細孔容積の90%までを、接着剤で充填することができる。その結果接着剤は、薄層繊維の向きに対して垂直方向の長手方向の力に抵抗できるこの領域にも、閉じられた層を構築する。他方では、接着剤は、生地の表面近くにおける多孔質構造の中にも貫入し、薄層の上部領域と同じ特質を有する生地内に、ほとんど閉じられた層を構築する。
【0015】
本発明による接着剤の量は、絶縁要素の十分な強度、特に接着剤の十分な引張強度を構築することが判っている。そのため、より厚い絶縁要素が、ルーフにおける絶縁特質の全ての要件を満たすために使用される必要がある量において、絶縁特質、特に断熱特質は低下しない。
【0016】
したがって、好ましくは接着剤は、繊維を互いに接続し、同様に生地の構成要素に接続する、ほとんど閉じられた層を構築する。接着剤の層は、十分な引張強度を有し、それは第1の層の繊維及び生地の構成要素に接続することによって支持される。それによって、例えばルーフ上を歩く人によって、絶縁要素の表面に対して垂直に加えられる力は、接着剤によって少なくとも部分的に取り囲まれた第1の層における繊維の歪みと組み合わせされた、接着剤及び/または第2の層の引張強度によって、少なくとも部分的に補完される。
【0017】
好ましくは、これらの絶縁要素が、多くの異なるルーフ絶縁に対して有用であるよう、第2の層は、トーチ工法によって瀝青膜に接続可能であるか、または常温粘着によって膜に接続可能である。
【0018】
本発明の別の態様によると、接着剤は、好ましくは2液型粘着物としてのメラミン尿素ホルムアルデヒド、水性アクリル系粘着物、フェノールホルムアルデヒド粉末バインダ、水性ネオプレン泡状粘着物、ポリアミド系粉末粘着物、好ましくは2液型粘着物としてのポリウレタン粘着物、ポリウレタン湿気固化粘着物、または、好ましくは1液型湿気固化粘着物としての封止修復バインダ、から選択される。これら全ての接着剤は、鉱物繊維への良好な接続を構築し、薄層領域ならびに生地領域において、ほとんど閉じられた層を構築することができ、それによって薄層の大きい面に対して平行方向の絶縁要素を強化する。
【0019】
接着剤は、第1の層と第2の層との間において、60~400g/m2、好ましくは100~250g/m2、より好ましくは150g/m2の量で提供される。
【0020】
上記で定めたように、第1及び第2の層の間に提供される接着剤の量は、選択した接着剤のタイプによって、湿式適用または乾式適用のいずれかであることを、理解されたい。例として、2つの異なる基準が、以下で言及される。
【0021】
例えば水性アクリル系粘着物など、湿式適用の粘着物の場合、接着剤は概ね150g/m2で適用され、これは乾燥量(乾燥/固化後)の概ね90g/m2に相当する。そのため、一般的に知られている湿式適用法によって適用するための、このような接着剤の希釈は、通常約60%の乾燥物が液体に希釈される。これは、類似の方法において、上記で列挙した水性ネオプレン泡状粘着物に相当するが、希釈範囲は異なる場合がある。
【0022】
例えばフェノールホルムアルデヒド粉末バインダ、またはポリアミド系粉末粘着物などのような、乾式適用の接着剤に関して、適用する量は、その後の乾燥または固化の際に実質的に変化しない乾燥物を定めることを意味する。したがって、それらの量は通常、上記で定めた範囲のうち下方範囲、すなわち60~250g/m2、好ましくは80~150g/m2の量とされる。
【0023】
接着剤は、第1の層と第2の層との間で全面に提供され、層間に非常に強い接続を与え、接着剤で満たされた第1の層及び第2の層の、2つの領域内で、2つのほぼ完璧な層を構築する。この実施形態の利点は、接着剤が領域内で薄い層でしか提供されなくても、これらの層の引張強度は、ルーフ上を歩く80kgの標準的体重の人によって荷重をかけられるか、または歩行者の往来及び/または軽量車両によって生じる力による、絶縁要素の最大変形を制限するのに十分である、ということである。
【0024】
層間の強い接合のための評価基準として、及び十分な接合を保証するために、第2の層の剥ぎ取り強度は、それぞれ絶縁要素を生成しながら、詳しく考察すべき重要な特徴である。所謂、剥離強度または剥ぎ取り強度は、絶縁要素と、例えばガラスフリースなど第2の層との間の接続における強度のための、重要な評価基準である。換言すると、鉱物ウールボード、特にルーフボード上の、それぞれのガラスフリースの接着は重要である。設定された状態にある、このようなルーフボードは、風の衝撃に耐えなければならない。剥離強度または剥ぎ取り強度は、内部計測によって試験され、防水性の被覆部またはライニング要素に接合されるときに、製品が受ける剥離強度を示す。剥離強度を試験することによって、上層としての第2の層は、絶縁要素から取り除かれる。接着接続の断面領域が、サンプル領域の1/3に選択される。剥離強度は、絶縁要素の長さでガラスフリースに接合された絶縁要素の表面に対して垂直に計測され、追加で適用された自己接着のライニング要素の助けを伴い、加えられた力に耐えないグラスフリースの荷重を移動させる。まず、瀝青膜を鉛直方向に剥ぎ取ることができるよう、試験片はガイドレールに位置付けられるか、または固定される。すなわち絶縁要素は、言及したガイドレールによって、鉛直方向に所定の位置に保持される。このガイドレールは、例えば市販のツビックローエル(ZwickRoell)の材料試験機における、下部の横移動部に位置付けられる。しかし、このガイドレールは、試験体が水平方向に移動できることを保証し、試験の間に追加のせん断力が導入されないことを保証する。それぞれの瀝青膜における一方の端部は、上部の横移動部の装着具に締め付けられ、ロードセルを備える。所与の長さに対する剥離強度が決定される。試験体の寸法は、絶縁要素として350mmの長さ及び150mmの幅が選択され、ライニング要素として450mmの長さ及び50mmの幅が選択される。2.5±0.25Nの予荷重が加えられ、ガラスフリースを伴うライニング要素は、絶縁要素から、100±5mm/minの試験スピードで引き がされる。それによって(N/50mm)で計測された剥離強度を得る。好ましくは、平坦または平坦に傾斜したルーフの絶縁内に使用する、断熱及び/または防音要素は、少なくとも7.5(N/50mm)、好ましくは少なくとも10(N/50mm)の、絶縁要素の主面に対する垂直方向の剥ぎ取り強度をもたらす。
【0025】
本発明の別の実施形態によると、鉱物繊維及びバインダで作られた層、好ましくは3~7重量%の量の層は、欧州規格EN826:2013に従って計測すると、80~120kg/m3の容量密度、及び50~130kPaの圧縮強度を有する。
【0026】
本発明による絶縁要素の別の改善は、第2の層がグラスフリースで作られることで実現される。このフリースは、欧州規格EN ISO1924-2:2009に従い、450~900MPa、好ましくは500~800MPaの弾性係数、及び/または50~110N、好ましくは70~90Nの引張強度を好ましくは有する。このような絶縁要素は、平坦なルーフまたは平坦に傾斜したルーフに使用することができ、限定された歪み及び良好な歩行性を伴ってルーフ上を人が歩くことで荷重を加えることができ、またはさらには、絶縁要素の厚さの5%を超える量で表面が歪むことなく、小型車両による荷重を加えることができる。
【0027】
最後に、本発明の別の実施形態によると、接着剤は無機充填材を伴って提供される。石灰に代表され得る、このような無機充填材は、絶縁要素の耐火性が向上され、かつこのような充填材は、ガラス繊維フリースの存在及び荷重分散特性により、ポイント荷重特質をさらに改善するという、利点を有する。
【0028】
本発明による絶縁要素は、表面を横断する1つの組織の層のみを有する同等のパネルと比較して、優れた機械的特質、特に改善された歩行性を与える。
【0029】
本明細書による絶縁要素を生成する方法に関して、目標は、主面に対して大部分が垂直方向の向きである繊維を有し、少なくとも1つの鉱物ウール薄層で作られ、かつ鉱物繊維及び固化したバインダから成る、第1の層が、接着剤によって第2の層に接続されることで、解決される。第2の層に向けられた第1の層の主面に近い繊維間の領域と、第1の層に向けられた第2の層の主面に近い領域とに、上記の接着剤が部分的に配置され、それによってこの接着剤は、第2の層に対して垂直に向けられた力が、接着剤及び/または第1の層における繊維の歪みと組み合わされた第2の層の引張強度によって補完されるよう、第1の層と第2の層とを接続し、向上した歩行性をもたらし、それぞれ最大変形は絶縁要素の厚さの5%以下である。接着剤は、2つの層を接続する前に、第1の層及び/または第2の層に適用される。2つの層を接続するとき、接着剤は第1及び/または第2の層における細孔の中に貫入し、層を接続した後、そこで接着剤は固化する。この貫入は、2つの層を互いに押圧するか、または2つの層を接続する前に、接着剤に機械的力を加えるかによって、促進させることができる。
【0030】
絶縁要素の、最大変形、及び特定の温度において機械的応力に曝された際の挙動を評価するための試験は、300×300mmの、代表的な数の絶縁要素のサンプルで実施される。この試験は、試験体を例えば80℃に維持すること、及び40kPaまたは80kPaの試験荷重を所定の箇所に保持しながら、制御された雰囲気における変形を計測すること、から成る。まず、試験体の当初の厚さが、23℃の温度、かつ全体領域にわたって分配された1kPaの圧力下で判定され、その後、試験荷重が加えられる。試験荷重は、7日間、80℃の昇温状態で維持される。サンプルの厚さをそれぞれ頻繁に計測すると、変形が試験期間に発生し得る。完全に7日後、サンプルの安定した厚さが最終的に計測され、最終的な平均変形が、当初及び最終厚さに基づいて計算される。最大の相対変形は、絶縁要素の当初厚さの5%以下とされる。
【0031】
本発明は、添付の図において例示される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】絶縁要素の第1の実施形態における、ポイント荷重を示す図表である。
【
図3】
図2による本発明の第1の実施形態における、ポイント荷重の仕事量を示す図表である。
【
図4】絶縁要素の第2の実施形態における、ポイント荷重を示す図表である。
【
図5】
図4による本発明の第2の実施形態における、ポイント荷重の仕事量を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、構造支持部2、蒸気制御層3、及び絶縁要素4を備える、平坦なルーフ1の一部を示す。絶縁要素4は、ストーンウール繊維及びバインダを備えた第1の層5と、ガラスフリースの生地で作られた、573MPaの弾性係数を有する第2の層6と、を備える。ガラスフリースの引張強度は71Nである。
【0034】
第1の層5は、第2の層6の主面7に対して大部分が垂直方向に向いた繊維を有する、1つまたは複数の薄層によって表わされる。薄層、したがって第1の層5は、110kg/m3の密度、及び150mmの一般的厚さを有する。鉱物繊維は、第2の層6が接着剤9を介して第1の層5の表面8に固定される前に、硬化オーブンで固化されたバインダを介して、共に接合される。
【0035】
接着剤9は、第2の層6に向けられた第1の層5の主面8に近い領域10と、第1の層5に向けられた第2の層6の主面7に近い領域11とに、部分的に配置され、それによって接着剤9は、第2の層6に対して垂直に向けられた力が、接着剤9及び/または第1の層5における繊維の歪みと組み合わされた第2の層6の引張強度によって補完することができるよう、第1の層5と第2の層6とを接続する。第2の層6に対して垂直方向に向けられた、例えば80kPaの力は、絶縁要素4(第1及び第2の層5、6)の5%未満の限定された変形、したがって第1の層5の150mmの厚さに対して7.5mm以下の変形を生じさせる。第2の層6の厚さは、概ね1mm以下であり、したがってこの計算では無視することができる。十分な量の接着剤9が、第1の層5の繊維間に配置され、それによって繊維を取り囲み、第1の層5に定着される接着剤9の層を構築する。
【0036】
接着剤9は、アクリル系粘着物として、2つの層5及び6の間に80g/m2の量で配置される。十分な量の接着剤9が、第1の層5及び第2の層6に拡散される。それによって接着剤9は、第1の層5及び第2の層6を接続する層を構成し、両層5、6に定着される。
【0037】
図2は、2つのグラフを伴う図表を示し、下方のグラフ(点線)は、先行技術で公知である薄層における、変形に対する荷重の関係である。上方のグラフは、本発明による絶縁要素4の、変形に対する荷重を示す。
【0038】
本発明による絶縁要素4における、鉱物ウールの薄層の密度は、110kg/m3である。第2の層6は、71Nの引張強度、及び573MPaの弾性係数を有する。両層5、6は、80g/m2の量のアクリル系粘着物を介して接続される。
【0039】
上方のグラフから確認できるように、絶縁要素4のポイント荷重強度は、接着剤9の層と組み合わせた第2の層6によって、大幅に向上している。0~1.5mmの小さい変形領域において、両要素(薄層及び本発明による絶縁要素)は弾性特性を示すが、本発明による絶縁要素は、より高い荷重を示し、この絶縁要素が、先行技術で公知の薄層と比較して、より高い弾性係数を有することを意味する。
【0040】
1.5~12mmの領域において、本発明による絶縁要素4は、先行技術で公知の薄層と比較して、さらに強い。ポイント荷重強度のこれらの向上、特に小さい変形における向上は、改善された歩行性としても認識することができる。
【0041】
図3は、上記で説明した絶縁要素4の第2の図表であり、変形に対するポイント荷重の仕事量[j]を示す。ここでも、上方のグラフは本発明の絶縁要素4に属し、下方のグラフ(点線)は先行技術による薄層に属する。
【0042】
本発明は、絶縁要素4の歩行性が、絶縁要素4の上を人が歩くときに生じる荷重と、変形との積に関連することを証明する。それぞれの荷重は、力及び変位量としての変形として説明することができる。
【0043】
ポイント荷重と変形との積は、下記の一般的な公式に基づく仕事量である。
仕事量=力×変位量
【0044】
より大きい仕事量は、より良好な歩行性を意味する。特に、0~10mmの範囲の変形、または800Nまでのポイント荷重について、これは重要である。
図3によるグラフ(点線)において、
図2における前のグラフと同じ薄層の仕事量が示される。
【0045】
本発明による絶縁要素4のグラフから確認できるように、仕事量は、5mmの変形後よりも約25%大きく、10mmの変形後よりも約80%大きい。これは、歩行性を大幅に向上させている。
【0046】
このような結果は、
図4及び5に示されるような、85kg/m
3の密度を伴う薄層を使用しても実現することができる。他の全てのパラメータは、
図2及び
図3のパラメートと等しい。
【0047】
ポイント荷重の計測は、欧州規格EN12430:2013の「Thermal insulating products for building applications-determination of behavior under point load」に従って実施される。
【符号の説明】
【0048】
1 ルーフ
2 支持部
3 蒸気制御層
4 絶縁要素
5 層
6 層
7 表面
8 表面
9 接着剤
10 領域
11 領域
【国際調査報告】