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特表2022-526751植え込み可能な眼用薬剤送達装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-26
(54)【発明の名称】植え込み可能な眼用薬剤送達装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20220519BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220519BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220519BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220519BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220519BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20220519BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220519BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
A61F9/007 170
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/40
A61P27/02
A61K45/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556583
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(85)【翻訳文提出日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 US2020023919
(87)【国際公開番号】W WO2020191318
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】16/360,777
(32)【優先日】2019-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517229752
【氏名又は名称】マイクロオプティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・アーロン・コーエン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・チャールズ・ヴォス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076BB24
4C076CC50
4C076EE06
4C076EE07
4C076EE09
4C076EE10
4C076EE19
4C076EE20
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE25
4C076EE26
4C076EE27
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE36
4C076EE37
4C076EE38
4C076EE39
4C076EE41
4C076EE42
4C076EE43
4C076FF70
4C084AA16
4C084MA01
4C084MA58
4C084NA10
4C084ZA33
(57)【要約】
植え込み可能な眼用薬剤送達システムは、植え込み可能な装置を眼に挿入することを含み得、装置は、局所的または全身性の効果のために放出されることが意図された治療用物質を包含する。いくつかの植え込み可能な装置の実施形態では、装置は、眼内圧を低下させることが意図されたマイクロチャネルを含む。いくつかの植え込み可能な装置の実施形態では、装置は、ドライアイを治療することが意図されたマイクロチャネルを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植え込み可能な眼用薬剤送達システムであって、
強膜組織内部に植え込まれるように構成された外側ポリマー層であって、前記装置の少なくとも一部が前房内部にくる、外側ポリマー層と、
内側ポリマー層であって、前記内側ポリマー層によって少なくとも部分的に画定された内部空間内に配された少なくとも1つの治療用物質を包含する少なくとも1つの薬剤放出体で構成される、内側ポリマー層と、を含み、
前記内側ポリマー層は、前記外側ポリマー層によって画定された内部空間内に配される、植え込み可能な眼用薬剤送達システム。
【請求項2】
前記外側ポリマー層は、熱可塑性ポリウレタンで構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記外側ポリマー層は、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、ポリ(メチルメタクリレート)(「PMMA」)、ポリウレタン(「PU」)、ポリカーボネート(「PC」)、ポリ塩化ビニル(「PVC」)、ポリビニルアルコール(「PVA」)、ポリスチレン(「PS」)、熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)、ポリエチレン(「PE」)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(「PES」)、スルホン化ポリエーテルスルホン(「SPES」)、ポリブチレンテレフタレート(「PBT」)、ポリヒドロキシアルカノエート(「PHA」)、シリコーン、パリレン、ポリプロピレン(「PP」)、フルオロポリマー、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(「pHEMA」)、ポリエーテルケトンケトン(「PEKK」)、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)、ポリアリールエーテルケトン(「PAEK」)、ポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)(「PLGA」)、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)、フッ化ポリビニリデン(「PVDF」)、またはポリアクリル酸(「PAA」)で構成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記治療用物質は、眼疾患または眼症状を治療することが意図されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記治療用物質は、眼の外側の疾患または症状を治療することが意図されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記薬剤放出体は、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(無水物)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アミド)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリエステル、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(アジピン酸)、ポリ(セバシン酸)、ポリ(テレフタル酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(ホスフェート)、ポリ(ホスホネート)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(ウレタン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(アセタール)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ウレタン)、ポリ(アミドアミン)、ポリ(アミドエナミン)、ポリ(アクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(カルボフィル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エノールケトン)、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(エーテルエステル)、コラーゲン、アルブミン、ゼラチン、アルジネート、シクロデキストリン、キトサン、デキストラン、アガロース、ヒアルロン酸、デンプン、またはセルロースで構成された、ポリマーマトリックスを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記内側ポリマー層は、生物付着防止ポリマーで構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記内側ポリマー層は、ポリエチレングリコール(「PEG」)(例えば、ジメタクリル酸トリエチレングリコールなどのアクリレート-PEG-アクリレート)、重合双性イオン、N-(2-メタクリロイルオキシ)エチル-N,N-ジメチルアンモニオプロパンスルホネート(「SPE」)、N-(3-メタクリロイルイミノ)プロピル-N,N-ジメチルアンモニオプロパンスルホネート(「SPP」)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスファチジルコリン(「MPC」)、3-(2'-ビニル-ピリジニオ)プロパンスルホネート(「SPV」)、ポリ(2-オキサゾリン)(例えば、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン))、ポリ(ヒドロキシ官能性アクリレート)(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート);ポリ(グリセロール))、ポリ(ビニルピロリドン)、ペプチドまたはペプトイド(例えば、ポリ(アミノ酸)もしくはポリ(ペプトイド))で構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記薬剤放出体は、治療用物質と、放出エンハンサー、放出妨害剤、緩衝剤、プロドラッグ、薬剤保存料、希釈剤、および薬剤担体からなる群の1つまたは複数と、を包含する、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記薬剤放出体は、非生分解性である、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、約2mm~4mmの長さ、約0.5mm~2mmの幅、および約0.1mm~0.5mmの高さを有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
マイクロチャネルが、前記内側ポリマー層によって画定された内部空間内部に少なくとも部分的に配される、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記マイクロチャネルは、植え込み後の患者の眼内圧を低下させることが意図されている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記マイクロチャネルは、ドライアイを治療することが意図されている、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
植え込み可能な眼用薬剤送達装置であって、
遠位端部分および近位端部分を有する本体であって、前記本体は、前記本体が眼の強膜に植え込まれたときに、前記遠位端部分を前記眼の前房に位置付け、かつ前記近位端部分を前記眼の涙膜に位置付けるのに十分な長手方向長さを有し、
前記本体は、内部チャンバと、前記本体の外側表面を通る、前記内部チャンバへの入口と、を画定し、前記内部チャンバは、前記入口を介して前記本体の周囲の外部領域と連絡する、本体と、
前記内部チャンバ内の薬物と、を含む、植え込み可能な眼用薬剤送達装置。
【請求項16】
前記本体は、前記遠位端部分と前記近位端部分との間に延びる内腔を画定し、前記内腔は、前記本体が前記眼の前記強膜に植え込まれたときに、前記前房と前記涙膜との間に流体連通を提供する、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記本体の材料は、前記内部チャンバ全体を前記内腔から分離する、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記本体は、1つまたは複数の窓を画定する、請求項15から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記内部チャンバの入口部分は、前記入口部分よりもさらに内部に位置する前記内部チャンバの残りの部分より小さな断面積を有する、請求項15から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記内部チャンバの入口部分は、前記入口部分よりもさらに内部に位置する前記内部チャンバの残りの部分より大きな断面積を有する、請求項15から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記本体は、前記内部チャンバへの1つまたは複数の追加の入口を画定する、請求項15から20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記本体は、1つまたは複数の追加の内部チャンバと、前記1つまたは複数の追加の内部チャンバへの、対応する入口と、を画定する、請求項15から21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記薬物は、第1の薬物であり、前記装置は、前記1つまたは複数の追加の内部チャンバの中に第2の薬物をさらに含み、前記第1および第2の薬物は、異なるタイプの薬物である、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記近位端部分は、前記遠位端部分より横方向に広い、請求項15から23のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月21日に出願された米国仮特許出願第16/360,777号の利益を主張するものである。先行出願の開示は、本出願の開示の一部とみなされる(また、参照により本出願の開示に組み込まれる)。
【0002】
1.技術分野
本文書は、薬剤送達のための装置に関する。例えば、本文書は、薬剤を眼の前房内に分配する、植え込み可能な眼用薬剤送達装置に関する。
【背景技術】
【0003】
2.背景情報
眼の疾患は、世界中で蔓延している。米国だけでも、4500万人を超える、40歳以上のアメリカ人が、白内障、緑内障、糖尿病網膜症、加齢性黄斑変性、ドライアイ、および重症感染症などの、一般的な眼疾患を患っている。失明および不可逆性視力喪失(irreversible vision loss)を引き起こす眼疾患には、米国では毎年500億ドル近くの費用がかかっている。眼合併症は、治療薬剤で治療されることが多く、100億ドル超の価値がある眼用薬剤送達テクノロジーの市場を創出している。しかしながら、現在の送達の選択肢は、しばしば効果的でなく、高い投薬頻度および濃度を必要とし、患者コンプライアンスが不十分となる。眼用薬剤の持続したバイオアベイラビリティをより良く実現するために、最近の研究は、投与部位での薬剤滞留時間を長くし、眼関門(ocular barriers)にわたる薬剤浸透を増大させ、放出を制御し、かつ標的組織への薬剤曝露を局在化することを含む、所望の特徴を達成するために、新規な眼用薬剤送達システムに目を向けている。
【0004】
角膜の表面への薬剤塗布は非常に一般的なアプローチであるが、眼表面の固有の解剖学的および生理学的特徴は、眼を異物の浸透から保護するバリアとして作用する。結果として、前房における外用薬のバイオアベイラビリティは、典型的には、親油性薬剤および親水性薬剤でそれぞれ5%および0.5%を下回る。眼の後区への硝子体内注射は、角強膜関門(corneoscleral barriers)を回避することによって硝子体におけるバイオアベイラビリティを増大させることができる。しかしながら、頻繁に注射すると、いくつかある合併症の中でも特に、網膜剥離または出血を引き起こすリスクがある。
【0005】
米国特許第9,192,511号では、眼の内部で完全に硝子体に植え込まれることが意図された、生分解性眼用インプラントおよび送達システムを論じている。
【0006】
米国特許第6,217,895号では、眼の後区に植え込まれる持続性コルチコステロイド放出装置を論じている。
【0007】
米国特許第8,529,492号では、薬剤送達装置を上脈絡膜腔に植え込むステップを含む、眼症状を治療する方法を論じている。
【0008】
米国特許第9,012,437号では、生体侵食性装置(bioerodable device)を眼の硝子体に植え込むことによって炎症媒介症状を治療する方法を論じている。
【0009】
前述した特許では、眼の症状を治療することが意図された、いくつかの眼用インプラントを実証しているが、それらの意図されたインプラント場所は、硝子体内または上脈絡膜腔内のいずれかである。これらの装置は、何らかの合併症が生じた場合に、取り外すのが本質的に困難であり、植え込み後に装置を検査する機会が臨床医に与えられない。容易に取り出され、かつ、角膜を通じて容易に観察される、眼用薬剤送達システムを提供することが、より安全であろう。
【0010】
米国特許第5,378,475号では、内部に包含された薬品に選択的透過性を有する、二重ポリマーコーティングされた内側コアを論じており、前記薬品は、哺乳類生命体に対して局所的または全身性の生理学的または薬理学的効果を引き起こすことが意図されたものである。
【0011】
米国特許第8,574,659号では、薬剤コアで満たされたチューブを含む、持続性薬剤送達システムを論じている。
【0012】
米国特許第7,708,711号では、治療用物質を包含するインプラントを設置することにより眼疾患を治療する方法を論じており、インプラントは、房水を前房から生理学的流出路内へと排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第9,192,511号
【特許文献2】米国特許第6,217,895号
【特許文献3】米国特許第8,529,492号
【特許文献4】米国特許第9,012,437号
【特許文献5】米国特許第5,378,475号
【特許文献6】米国特許第8,574,659号
【特許文献7】米国特許第7,708,711号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
現在の眼用薬剤投与技術に関連する非効率な点およびリスクを回避しようとして、植え込み可能な眼用薬剤送達装置を開発する方法が追求されてきた。これらのテクノロジーは、制御された様式で眼の内側での治療用物質の持効性放出を達成するように設計されている。少なくともいくつかの場合には、植え込み可能な眼用送達システムは、それらの意図された治療効果を得るのにさらに有効であり、意図されていない全身送達のリスクを減らし、さらに良好な患者コンプライアンスをもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される装置は、房水を涙膜に排出するか、またはそらし、失明が軽減または防止されるように、適切な圧力減少を提供するために、従来の生理学的流出路を回避する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様では、本開示は、植え込み可能な眼用薬剤送達装置を対象としている。このような植え込み可能な眼用薬剤送達装置は、遠位端部分および近位端部分を有する本体を含み得る。本体は、本体が眼の強膜に植え込まれたときに、遠位端部分を眼の前房に位置付け、かつ近位端部分を眼の涙膜に位置付けるのに十分な長手方向長さを有する。本体は、内部チャンバと、本体の外側表面を通る、内部チャンバへの入口と、を画定し得る。したがって、内部チャンバは、入口を介して本体の周囲の外部領域と連絡している。植え込み可能な眼用薬剤送達装置はまた、内部チャンバ内部に薬物を含み得る。
【0016】
このような植え込み可能な眼用薬剤送達装置は、任意選択的に、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。本体は、遠位端部分と近位端部分との間に延びる内腔を画定し得る。このような内腔は、本体が眼の強膜に植え込まれたときに、前房と涙膜との間に流体連通を確立し得る。いくつかの実施形態では、本体の材料は、内部チャンバ全体を内腔から分離する。本体は、組織の内部成長を可能にするように構成された1つまたは複数の窓を画定し得る。いくつかの実施形態では、内部チャンバの入口部分は、入口部分よりもさらに内部に位置する内部チャンバの残りの部分より小さな断面積を有する。あるいは、いくつかの実施形態では、内部チャンバの入口部分は、入口部分よりもさらに内部に位置する内部チャンバの残りの部分より大きな断面積を有する。本体は、内部チャンバへの1つまたは複数の追加の入口を画定し得る(すなわち、単一の内部チャンバへの複数の入口が存在し得る)。いくつかの実施形態では、本体は、1つまたは複数の追加の内部チャンバと、1つまたは複数の追加の内部チャンバへの、対応する入口と、を画定する。すなわち、本体は、それぞれの別個の入口を備えた、2つ以上の内部チャンバを画定し得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の内部チャンバはそれぞれ、同じ形状を有する。あるいは、いくつかの実施形態では、2つ以上の内部チャンバは、異なる形状を有し得る。
【0017】
薬物は、第1の薬物とすることができ、装置は、1つまたは複数の追加の内部チャンバの中に第2の薬物を含み得る。いくつかの実施形態では、第1および第2の薬物は、異なるタイプの薬物である。あるいは、いくつかの実施形態では、2つ以上の内部チャンバはそれぞれ、同じタイプの薬物を包含し得る。近位端部分は、いくつかの実施形態では、遠位端部分より横方向に広い。
【0018】
別の態様では、本開示は、哺乳類の患者を治療するために、本明細書に記載される植え込み可能な眼用薬剤送達装置を使用する方法を記載する。このような方法は、本明細書に記載される植え込み可能な眼用薬剤送達装置から、1つまたは複数の薬物を、患者の眼の前房内の房水に放出するステップを含む。
【0019】
特に定義のない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法および材料が、本発明を実施するために使用され得るが、適切な方法および材料が本明細書に記載されている。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照により全体として組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含む、本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例は、例示的なものにすぎず、限定することを意図していない。
【0020】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付図面、および本明細書の説明に示される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面から、そして特許請求の範囲から、明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1a】外側ポリマーハウジングの間で内側生体適合性ポリマー層内部に配された2つの先細の薬剤放出体(DRE)を利用する、例としての植え込み可能な眼用薬剤送達装置の上面図である。薬剤送達装置は、流体を前房から涙膜に導くためのマイクロチャネルと、装置を組織に固定するための窓と、を含む。
図1b図1aの眼用薬剤送達装置の側面図である。
図2a】外側ポリマーハウジングの間で内側生体適合性ポリマー層内部に配された、別々の放出プロファイルを有する2つのマルチゾーンDREを利用する、別の例としての植え込み可能な眼用薬剤送達装置の上面図である。薬剤送達装置は、流体を前房から涙膜に導くためのマイクロチャネルと、装置を組織に固定するための窓と、を含む。
図2b図2aの眼用薬剤送達装置の側面図である。
図3a】外側ポリマーハウジングの間で内側生体適合性ポリマー層内部に配された、2つの一定幅のDREを利用する、別の例としての植え込み可能な眼用薬剤送達システムの上面図である。薬剤送達装置は、流体を前房から涙膜に導くためのマイクロチャネルと、装置を組織に固定するための、外側表面上のかかりと、を含む。
図3b図3aの眼用薬剤送達装置の側面図である。
図4a】外側ポリマーハウジングの間で内側生体適合性ポリマー層内部に配された、2つのDREを利用する、別の例としての植え込み可能な眼用薬剤送達装置の上面図である。DREは、丸い末端部におけるいくつかのレーザー切断された窓を通じて房水との流体接触を維持する。薬剤送達装置は、流体を前房から涙膜に導くためのマイクロチャネルと、装置を組織に固定するための、外側表面上のかかりと、を含む。
図4b図4aの眼用薬剤送達装置の側面図である。
図5a】外側ポリマーハウジングの間で内側生体適合性ポリマー層内部に配された、8つの別々のDREを利用する、別の例としての植え込み可能な眼用薬剤送達装置の上面図である。薬剤送達装置は、流体を前房から涙膜に導くためのマイクロチャネルと、装置を組織に固定するための、外側表面上のかかりと、を含む。
図5b図5aの眼用薬剤送達装置の側面図である。
図6a】外側ポリマーハウジングの間で内側生体適合性ポリマー層内部に配された、3つの段階的な別々のDREを利用する、別の例としての植え込み可能な眼用薬剤送達装置の上面図である。薬剤送達装置は、流体を前房から涙膜に導くためのマイクロチャネルと、装置を組織に固定するための、外側表面上のかかりと、を含む。
図6b図6aの眼用薬剤送達装置の側面図である。
図7a】外側ポリマーハウジングの間で内側生体適合性ポリマー層内部に配された、単一のDREを利用する、別の例としての植え込み可能な眼用薬剤送達装置の上面図である。装置は、外側表面上のかかり、ならびに装置を組織に固定するための窓を包含している。
図7b図7aの眼用薬剤送達装置の側面図である。
図8】眼の解剖学的描写であり、前房内部に部分的に位置する強膜を通じた例としての装置の設置を示している。
図9】眼の解剖学的描写であり、結膜組織の層が装置のクロスバータブの上に位置した状態で強膜を通じた例としての装置の設置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
同様の参照符号は、全体を通じて対応する部分を表す。
【0023】
図1aは、第1の例としての実施形態の経強膜インプラント(または単に「装置1」)の上面図であり、インプラントの少なくとも一部は、装置1が眼に植え込まれたときに前房内部に存在する。この例としての実施形態は、房水シャント(aqueous shunt)と、非生分解性眼内薬剤送達インプラントの両方として作用し得る。図1bは、装置1の側面図を描く。内側ポリマー層106が、上部外側ポリマー層105と底部外側ポリマー層105との間に配されている。外側ポリマー層105は、熱可塑性ポリウレタンまたは同様の生体適合性ポリマーで構成され得る。この実施形態では、マイクロチャネル102が、内側ポリマー層106内部に配され、装置の長さにわたって延びて、房水を眼の前房から涙膜までそらし、患者の眼内圧を低下させる。いくつかの実施形態では、内側ポリマー層106およびチャネル壁107は、インプラントの寿命にわたってバイオフィルムの形成を防ぐために親水性の生物付着防止ポリマーで構成される。
【0024】
装置1は、(例えば、図8および/または図9に描かれるように)強膜組織801を通じて結膜802から前房805に植え込まれることが意図されている。刺切創が、装置1の本体の幅より約0.1mm大きな角膜切開刀のブレードを使用して強膜組織801を通じて角膜縁901から数ミリメートル以内に作られる。いくつかの実施形態では、刺切創は、角膜縁から約2mm以内の結膜組織802に作られる。好適な実施形態では、刺切創は、角膜縁から1mm以内の結膜組織802内部に作られる。角膜切開刀のブレードのサイズは、クロスバータブ101における装置1の最大幅より小さくなければならない。クロスバータブ101は、図8に示すように眼の外側表面に当接することが意図されている。あるいは、クロスバータブ101は、図9に示すように、クロスバータブ101の上に位置する結膜の層によって覆われ得、この場合、クロスバータブ101は強膜組織801に当接する。装置1はまた、少なくとも2つの細長い窓103を包含しており、強膜組織は、この窓を通じて成長し、装置を固定することが意図されている。装置1は丸い角111を有するものとしてクロスバータブ101を描いているが、クロスバータブ101の角が(例えば、図2図7に示すように)鋭いものであることが有利となり得、それは、眼の表面上に丸い角111があることで、インプラントが結膜の過成長を起こしやすくなり得るからである。いくつかの実施形態(マイクロチャネル102なしの実施形態など)では、丸い角111は、結膜の過成長を促進するために意図的に含まれる。
【0025】
装置の適切な設置は、角膜組織804を通る切開部が将来的な内皮細胞喪失を引き起こし得るため、重要である。逆に、角膜縁から離れて結膜組織802に作られた切開部は、結膜の過成長をさらに起こしやすく、装置1の丸い遠位先端部が前房に入るのを防ぎ得る。
【0026】
装置1のチャネル102の側面に位置し、また、内側ポリマー層106内部に配されているのは、内側ポリマー層106およびチャネル壁107を構成する同じポリマーによって囲まれた2つの薬剤放出体(DRE)104である。この実施形態では、各DRE104は、狭い入口109から始まるリザーバを含む。各DRE104は、狭い入口109を介して房水と直接接触している。チャネル102および2つのDREの入口109以外、インプラントの残部は、房水に対して不浸透性である。
【0027】
薬剤放出体(DRE)は、生分解性、非生分解性、固体、または半固体の形態とすることができる。生分解性DREは、物理的および/または化学的に架橋された生分解性ポリマーマトリックスの細孔内部に治療用物質が埋め込まれた、均質なポリマーマトリックスから構築され得;DREは、不均質な生分解性ポリマーマトリックスで構成された複数の層を有し、各層内部において、潜在的には異なる治療用物質または治療濃度を有することができ;DREは、経時的に分解する1つもしくは複数のポリマーマトリックス内部に埋め込まれた微粒子もしくはナノ粒子内部に存在するか、またはそれらに結合された、治療用物質を包含し得る。いくつかの実施形態では、生分解性マトリックスの分解産物は、周囲組織と生体適合性である。DREはまた、これらの構成の組み合わせを含み得る。
【0028】
非生分解性DREは、物理的および/または化学的に架橋された非生分解性ポリマーマトリックスの細孔内部に治療用物質が埋め込まれた、均質なポリマーマトリックスから構築され得;DREは、不均質な非生分解性ポリマーマトリックスで構成された複数の層を有し、各層内部において、潜在的には異なる治療用物質または治療濃度を有することができ;DREは、1つもしくは複数のポリマーマトリックス内部に埋め込まれた微粒子もしくはナノ粒子内部に存在するか、またはそれらに結合された、治療用物質を包含し得る。DREはまた、これらの構成の組み合わせを含み得る。非生分解性マトリックスは、入口109を通じた房水の流入に続いて、細孔の膨張が起こった後で、薬品を放出する。
【0029】
疾患または合併症の直接的または副次的影響を軽減することが意図された、任意の物質、分子、または治療用物質が、DREに組み込まれ得る。さらに、所望のプロセスまたは効果を刺激または支持するように指定された、任意の物質、分子、または治療用物質が、DREにおいて使用され得る。さらに、治療用物質は、ポリマーマトリックスの存在なしで、DRE内部に固体または半固体状態で存在し得る。DREはまた、これらの要点の組み合わせを含み得る。
【0030】
治療用物質は、認められた医薬品、天然に存在する巨大分子およびそれらのポリマー(例えば、細胞への取り込みおよびそれに続くタンパク質発現のための核酸ベクター)、合成タンパク質など、を含み得る。放出された治療用物質およびその賦形剤または担体は、眼内構造への局所的送達のため、または眼の外側の全身性送達のために、設計され得る。いずれの状況においても、眼疾患の治療、または眼の外側の合併症が意図され得る。
【0031】
例としての治療用物質は、以下を含み得るが、それらに限定されない:ステロイド性抗炎症薬:例えば、21-アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、エノキソロン、フルアザコート、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ハロメタゾン、酢酸ハロプレドン、ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、エタボン酸ロテプレドノール、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、フランカルボン酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25-ジエチルアミノアセテート(prednisolone 25-diethylamino-acetate)、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾン、プレドニバール、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンヘキサセトニド、マンノース-6-リン酸(6-mannose phosphate)、酢酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン21-リン酸(dexamethasone 21-phosphate)、プレドニゾロン21-リン酸(prednisolone 21-phosphate)、フルオロメトロン(fluoromethalone)、トリミノロン(triminolone)、または酢酸プレドニゾロン;代謝拮抗物質、例えば、葉酸類似体(例えば、デノプテリン、エダトレキサート、メトトレキサート、ピリトレキシム、プテロプテリン、Tomudex(登録商標)、トリメトレキサート)、プリン類似体(例えば、クラドリビン、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン)、およびピリミジン類似体(例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ドキシフルリジン、エミテフール、エノシタビン、フロクスウリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、テガフール);抗菌性抗生物質、例えば、アミノグリコシド(例えば、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、バンベルマイシン、ブチロシン、ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン、フォーチミシン、ゲンタマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、ミクロノマイシン、ネオマイシン、ウンデシレン酸ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、トロスペクトマイシン)、アンフェニコール(amphenicols)(例えば、アジダムフェニコール、フロルフェニコール、チアンフェニコール)、アンサマイシン(例えば、リファマイド、リファンピン、リファマイシンSV、リファペンチン、リファキシミン)、β-ラクタム(例えば、カルバセフェム(例えば、ロラカルベフ)、カルバペネム(例えば、ビアペネム、イミペネム、メロペネム、パニペネム)、セファロスポリン(例えば、セファクロール、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン、セファゾリン、セフカペンピボキシル、セフクリジン、セフジニル、セフジトレン、セフェピム、セフェタメット、セフィキシム、セフメノキシム、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォタキシム、セフォチアム、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド、セフピロム、セフポドキシムプロキセチル、セフプロジル、セフロキサジン、セフスロジン、セフタジジム、セフテラム、セフテゾール、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セフゾナム、セファセトリルナトリウム、セファレキシン、セファログリシン、セファロリジン、セファロスポリン、セファロチン、セファピリンナトリウム、セフラジン、ピブセファレキシン(pivcefalexin))、セファマイシン(例えば、セフブペラゾン、セフメタゾール、セフミノクス、セフォテタン、セフォキシチン)、モノバクタム(例えば、アズトレオナム、カルモナム、チゲモナム(tigemonam))、オキサセフェム、フロモ
キセフ、モキサラクタム)、ペニシリン(例えば、アムジノシリン、アムジノシリンピボキシル、アモキシシリン、アンピシリン、アパルシリン、アスポキシシリン、アジドシリン、アズロシリン、バカンピシリン、ベンジルペニシリン酸、ベンジルペニシリンナトリウム、カルベニシリン、カリンダシリン、クロメトシリン、クロキサシリン、シクラシリン、ジクロキサシリン、エピシリン、フェンベニシリン、フロキサシリン、ヘタシリン、レナンピシリン、メタンピシリン、メチシリンナトリウム、メズロシリン、ナフシリンナトリウム、オキサシリン、ペナメシリン、ペネタマートヨウ化水素酸塩(penethamate hydriodide)、ペニシリンGベネタミン、ペニシリンGベンザチン、ペニシリンGベンズヒドリルアミン、ペニシリンGカルシウム、ペニシリンGヒドラバミン、ペニシリンGカリウム、ペニシリンGプロカイン、ペニシリンN、ペニシリンO、ペニシリンV、ペニシリンVベンザチン、ペニシリンVヒドラバミン、ペニメピサイクリン、フェネチシリンカリウム、ピペラシリン、ピバンピシリン、プロピシリン、キナシリン、スルベニシリン、スルタミシリン、タランピシリン、テモシリン、チカルシリン)、他のもの(例えば、リチペネム)、リンコサミド(例えば、クリンダマイシン、リンコマイシン)、マクロライド(例えば、アジスロマイシン、カルボマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、エリスロマイシンアシストラート、エリスロマイシンエストレート、エリスロマイシングルコヘプトナート(erythromycin glucoheptonate)、エリスロマイシンラクトビオン酸塩、エリスロマイシンプロピオナート、ステアリン酸エリスロマイシン、ジョサマイシン、ロイコマイシン、ミデカマイシン、ミオカマイシン、オレアンドマイシン、プリマイシン、ロキタマイシン、ロサラマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、トロレアンドマイシン)、ポリペプチド(例えば、アンホマイシン、バシトラシン、カプレオマイシン、コリスチン、エンデュラシジン(enduracidin)、エンビオマイシン、フサファンギン、グラミシジンS、グラミシジン、ミカマイシン、ポリミキシン、プリスチナマイシン、リストセチン、テイコプラニン、チオストレプトン、ツベラクチノマイシン、チロシジ
ン、チロスリシン、バンコマイシン、バイオマイシン、ヴァージニアマイシン、亜鉛バシトラシン)、テトラサイクリン(例えば、アピサイクリン(apicycline)、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、グアメサイクリン(guamecycline)、リメサイクリン、メクロサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、ペニメピサイクリン、ピパサイクリン(pipacycline)、ロリテトラサイクリン、サンサイクリン、テトラサイクリン)、および他のもの(例えば、サイクロセリン、ムピロシン、ツベリン)、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ニトロフラゾン;合成抗菌物質、例えば、2,4-ジアミノピリミジン(例えば、ブロジモプリム、テトロキソプリム、トリメトプリム)、ニトロフラン(例えば、フラルタドン、塩化フラゾリウム、ニフラデン、ニフラテル、ニフルホリン、ニフルピリノール、ニフルプラジン、ニフルトイノール、ニトロフラントイン)、キノロンおよび類似体(例えば、シノキサシン、シプロフロキサシン、クリナフロキサシン、ジフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、フルメキン、グレパフロキサシン、ロメフロキサシン、ミロキサシン、ナジフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、オキソリン酸、パズフロキサシン、ペフロキサシン、ピペミド酸、ピロミド酸、ロソキサシン、ルフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、トロバフロキサシン)、スルホンアミド(例えば、アセチルスルファメトキシピラジン(acetyl sulfamethoxypyrazine)、ベンジルスルファミド(benzylsulfamide)、クロラミンB、クロラミンT、ジクロラミンT、n2-ホルミルスルフィソミジン(n2-formylsulfisomidine)、n4-β-d-グルコシルスルファニルアミド(n4-β-d-glucosylsulfanilamide)、マフェニド、4'-(メチルスルファモイル)スルファニルアニリド(4'-(methylsulfamoyl)sulfanilanilide)、ノプリルスルファミド(noprylsulfamide)、フタリルスルファセタミド、フタリルスルファチアゾール、サラゾスルファジミジン、サクシニルスルファチアゾール、スルファベンザミド、スルファセタミド、スルファクロルピリダジン、スルファクリソイジン(sulfachrysoidine)、スルファシチン、スルファジアジン、スルファジクラミド、スルファジメトキシン、スルファドキシン、スルファエチドール、スルファグアニジン、スルファグアノール(sulfaguanol)、スルファレン、スルファロクス酸、スルファメラジン、スルファメータ、スルファメタジン、スルファメチゾール、スルファメトミジン、スルファメトキサゾール、スルファメトキシピリダジン、スルファメトロール、スルファミドクリソイジン、スルファモキソール、スルファニルアミド、4-スルファニルアミドサリチル酸(4-sulfanilamidosalicylic acid)、n4-スルファニリルスルファニルアミド(n4-sulfanilylsulfanilamide)、スルファニリル尿素、n-スルファニリル-3,4-キシラミド、スルファニトラン、スルファペリン(sulfaperine)、スルファフェナゾール、スルファプロキシリン、スルファピラジン、スルファピリジン、スルファソミゾール、スルファシマジン、スルファチアゾール、スルファチオ尿素、スルファトラミド、スルフイソミジン、スルフイソキサゾール);スルホン(例えば、アセダプソン、アセジアスルホン(acediasulfone)、アセトスルホンナトリウム、ダプソーン、ジアチモスルホン、グルコスルホンナトリウム、ソラスルホン、スクシスルホン、スルファニル酸、p-スルファニリルベンジルアミン(p-sulfanilylbenzylamine)、スルホキソンナトリウム、チアゾスルホン)、および他のもの(例えば、クロホクトール、ヘキセジン、メテナミン、メテナミンアンヒドロメチレン-シトレート(methenamine anhydromethylene-citrate)、ヒプル酸メテナミン、マンデル酸メテナミン、スルホサリチル酸メテナミン、ニトロキソリン、タウロリジン、キシボルノール);抗真菌性抗生物質、例えば、ポリエン(例えば、アンフォテリシンB、カンジシジン、デルモスタチン、フィリピン、ファンジクロミン(fungichromin)、ハチマイシン、ハマイシン、ルセンソマイシン、メパルトリシン、ナタマイシン、ナイスタチン、ペチロシン、ペリマイシン)、他のもの(例えば、アザセリン、グリセオフルビン、オリゴマイシン、ウンデシレン酸ネオマイシン、ピロールニトリン、シッカニン、ツベルシジン、ビリジン);合成抗真菌薬、例えば、アリルアミン(例えば、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン)、イミダゾール(例えば、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロルダントイン、クロルミダゾール、クロコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、エニルコナゾール、フェンチコナゾール、フルトリマゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、硝酸オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール)、チオカルバメート(例えば、トルシクラート、トリンダート、トルナフタート)、トリアゾール(例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール、サペルコナゾール、テルコナゾール);他のもの(例えば、アクリゾルシン、アモロルフィン、ビフェナミン、ブロモサリチルクロラニリド(bromosalicylchloranilide)、ブクロサミド、プロピオン酸カルシウム、クロルフェネシン、シクロピロクス、クロキシキン(cloxyquin)、コパラフィネート、ジアムタゾールジヒドロクロライド、エキサラミド、フルシトシン、ハレタゾール、ヘキセチジン、ロフルカルバン、ニフラテル、ヨウ化カリウム、プロピオン酸、ピリチオン、サリチルアニリド、プロピオン酸ナトリウム、スルベンチン、テノニトロゾール、トリアセチン、ウジョチオン(ujothion)、ウンデシレン酸、プロピオン酸亜鉛);抗新生物薬、例えば、抗生物質および類似体(例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシンF1、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、メノガリル、マイトマイシン、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン(olivomycines)、ペプロマイシン、ピラルビシン、プリカマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ジノスタチン、ゾルビシン)、代謝拮抗物質(例えば、葉酸類似体(例えば、デノ
プテリン、エダトレキサート、メトトレキサート、ピリトレキシム、プテロプテリン、Tomudex(登録商標)、トリメトレキサート)、プリン類似体(例えば、クラドリビン、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン)、ピリミジン類似体(例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ドキシフルリジン、エミテフール、エノシタビン、フロクスウリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、テガフール);緑内障治療用物質、例えば:βブロッカー(例えば、チモロール、ベタキソロール、アテノロール、プロスタグランジン(例えば、アラキドン酸の代謝産物誘導体)、脂質受容体作動薬(lipid-receptor agonists)またはプロスタグランジン類似体(例えば、ビマトプロスト、トラボプロスト、ラタノプロスト、ウノプロストンなど)、αアドレナリン作動薬、ブリモニジンまたはジピベフリン、炭酸脱水酵素阻害剤(例えば、アセタゾラミド、メタゾラミド、ジクロフェナミド、ダイアモックス、エトキシゾラミド)、および、神経保護薬(例えば、ニモジピンおよび関連する化合物)、アプラクロニジン;抗ウイルス剤、例えば:トリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビル、DDI、AZT、ホスカメット(foscamet)、ビダラビン、トリフルオロウリジン、イドクスウリジン、リバビリン、プロテアーゼ阻害剤および抗サイトメガロウイルス薬、抗アレルギー剤(例えば、メタピリレン;クロルフェニラミン、ピリラミン、プロフェンピリダミン、トリナトリウムホスホノホルメート(trisodium phosphomonoformate))、非ステロイド性抗炎症薬、例えば:シクロオキシゲナーゼ-1(COX-1)阻害剤(例えば、アセチルサリチル酸(例えば、ドイツのレーヴァクーゼン所在のBayer AGからのASPIRIN)、イブプロフェン(例えば、ペンシルベニア州カレッジビル所在のWyethからのADVIL、インドメタシン、メフェナム酸)、COX-2阻害剤(例えば、ニュージャージー州ピーパック所在のPharmacia Corp.からのCELEBREX);COX-1阻害剤(例えば、NEPAFENAC)、非ステロイド性グルココルチコイド拮抗薬;免疫抑制剤、例えば:シロリムス(ペンシルベニア州カレッジビル所在のWyethからのRAPAMUNE)、またはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤(例えば、テトラサイクリンおよびテトラサイクリン誘導体);抗凝固剤、例えば:ヘパリン、抗フィブリノゲン(antifibrinogen)、フィブリノリジン、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)など;抗糖尿病薬、例えば:アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリピジド、グリブリド、トラザミド、トルブタミド、インスリン、アルドースレダクターゼ阻害剤;抗癌剤、例えば:5-フルオロウラシル、アドリアマイシン、アスパラギナーゼ、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブチル、シスプラチン、シクロホスファミド、シクロスポリン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エストラムスチン、エトポシド、エトレチナート、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、ロイプロリド、レバミソール、ロムスチン、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトテン、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、プロカルバジン、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タモキシフェン、タキソール、テニポシド、チオグアニン、ウラシルマスタード、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビンデシン;抗アレルギー薬、例えば:アンタゾリン、メタピリレン、クロルフェニラミン、ピリラミンおよびプロフェンピリダミン;免疫調節薬、例えば:腫瘍壊死因子阻害剤(例えば、サリドマイド);ならびに、他の潜在的な治療薬、例えば:ACE阻害剤、内因性サイトカイン、サイトカイン、基底膜に影響を与える薬品、アドレナリン作動薬またはアドレナリン遮断薬、コリン作動薬またはコリン作動性遮断薬、アルドースレダクターゼ阻害剤、鎮痛薬、麻酔薬、抗アレルギー性物質、抗ウイルス物質、抗原虫薬、抗感染症薬、抗腫瘍薬、抗血管新生薬(例えば、抗VEGF薬)、小分子薬剤、タンパク質、核酸、多糖類、生物製剤、脂質、ホルモン、ステロイド、糖脂質、糖タンパク質、および他の巨大分子。例としては以下が含まれる:内分泌ホルモン、例えば、下
垂体剤、インスリン、インスリン関連成長因子、甲状腺剤、成長ホルモン;熱ショックタンパク質;免疫反応調節剤、例えば、ムラミルジペプチド、シクロスポリン、インターフェロン(α、β、およびγインターフェロンを含む)、インターロイキン-2、サイトカイン、FK506(タクロリムスとしても知られる、エポキシ-ピリド-オキサアザシクロトリコシン-テトロン(epoxy-pyrido-oxaazcyclotricosine-tetrone))、腫瘍壊死因子、ペントスタチン、チモペンチン、形質転換因子β2、エリスロポエチン;抗新生タンパク質(antineogenesis proteins)(例えば、抗VEGF、インターフェロン)、脳神経成長因子(BNGF)、毛様体神経成長因子(CNGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、および、このような成長因子に対するモノクローナル抗体、ワクチン、細胞の成長を阻害するか、または細胞死を促進する治療用物質で、細胞の成長を阻害するか、または細胞死を促進するように活性化され得るもの、成長因子、タンパク質、ペプチドまたはペプチド模倣薬、生物活性剤、光感作薬、放射性核種、トキシン、シグナリングモジュレーター(signaling modulators)、抗癌抗生物質、抗癌抗体、血管新生阻害剤、放射線治療、化学療法化合物、眼内圧低下剤、細胞輸送/移動性切迫剤(cell transport/mobility impending agents)、例えば、コルヒチン、ビンクリスチン、サイトカラシンBおよび関連する化合物、充血緩和剤(例えば、フェニレフリン、ナファゾリン、およびテトラヒドロゾリン)、縮瞳薬、ムスカリン作用薬、抗コリンエステラーゼ薬(例えば、ピロカルピン、カルバコール、ジイソプロピルフルオロホスフェート、フォスフォリンアイオダイド、臭化デメカリウム)、散瞳薬(例えば、硫酸アトロピン、シクロペントラート、ホマトロピン、スコポラミン、トロピカミド、ユーカトロピン)、交感神経興奮剤(例えば、エピネフリン、血管収縮薬、血管拡張剤)、鎮痛剤(例えば、リドカインおよび関連する化合物、ベンゾジアゼパム(benzodiazepam)および関連する化合物)。
【0032】
このような化合物の任意の薬学的に許容可能な形態(例えば、遊離塩基またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステル)が使用され得る。薬学的に許容可能な塩は、例えば、硫酸塩、乳酸塩、酢酸塩、ステアリン酸塩、塩酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩などを含む。
【0033】
活性のある治療用物質に加え、DREは、放出エンハンサー(例えば、膨張剤)、放出妨害剤(例えば、可溶性減少剤)、緩衝剤、プロドラッグ、薬剤保存料、希釈剤、薬剤担体(例えば、膜浸透エンハンサー)、界面活性剤、および同様のものの他の賦形剤を包含して、治療用物質を、より適合性があり、安定し、可溶性(もしくは不溶性)であるものにするか、好適な速度で放出させるか、または所望の解剖学的目的地に到達させることができる。
【0034】
装置1の例としての実施形態では、水性液体の流入物は、2つの入口109を横切って拡散し、DRE104に入る。房水は次に、DRE104と相互作用し、膨張、分解、溶解などによってDRE104の物理的特徴を変化させる。このリモデリングは、DRE104から水性環境内への治療用物質の拡散に基づく流出を引き起こし、次に、水性環境内で、治療用物質はその標的の解剖学的場所まで輸送され得る。このプロセスは、所望の期間にわたり、選択的な速度(preferential rate)で行われる。インプラントは、十分な長さの時間にわたり前房に存在した後で、取り出され、十分に満たされたインプラントと交換され得る。
【0035】
放出される治療用物質の量は、房水が狭い入口109を通って拡散するが、リザーバ110のより大きな部分にはまだ到達していないときには、比較的少ない。いったん房水がリザーバ110のより大きな部分に到達すると、さらに著しいバースト放出が起こり得る。これに、一定(ほぼ0次)の放出の期間が続き得、それから、治療用物質の残りが、漸減する速度でインプラントから流出する。これらの3つの薬物動態フェーズの持続時間は、DREを画定するキャビティの外形に加えて、インプラント内部に包含される入口の数、形状、およびサイズに左右される。治療用物質の、より大きな放出半減期が望ましい場合、例えば、入口の合計表面積が減少され得る。
【0036】
したがって、本明細書に記載される植え込み可能な装置、ならびに本明細書に記載されるDREの幾何学的デザインおよび寸法は、変更されて、さまざまな治療用物質、ならびにさまざまな人間および人間以外の眼の解剖学的構造に適応することができる。さらに、マルチゾーンまたは段階的な放出パターンは、入口開口部202に対して多様な外形を提供することによって、装置2(図2aおよび図2b)に見られるように、達成され得る。装置のフットプリントは、減少されて、イヌ、ネコ、ウサギなどといった、より小さな種でのより良いバイオインテグレーションを可能にすることができる。同様に、フットプリントは、増大されて、ウマ、ウシ、クマなどといった、より大きな種でのより良いバイオインテグレーションを可能にすることができる。本明細書に記載される例としての実施形態に描かれている装置は、ヒトまたはイヌの解剖学的構造に適しており、約1mm~10mmの全長、約0.2mm~3mmの幅、および約0.05mm~1mmの高さを有する。好適な実施形態は、約2mm~4mmの全長、約0.5mm~2mmの幅、および約0.1mm~0.5mmの高さを有する。
【0037】
図2aおよび図2bに描かれる例としての実施形態(または単に「装置2」)は、その薬物動態およびクロスバータブ201の形状を除いて装置1と同一である。この実施形態のDREの外形は、狭い入口部分202の幅およびプロファイルによって画定される2つの別個の領域を包含する。房水が狭い入口部分202を通って拡散するのに必要な時間は、装置1に比べて長くなり、植え込みの長さの関数として、2つの異なる薬物動態学的放出パターンをもたらす。初期のバースト放出およびそれに続く0次放出動態が最初に得られるが、いったん房水がリザーバ203のより大きな部分に到達すると、さらに著しいバースト放出が生じ、その後に一定(ほぼ0次)の放出の第2の期間が続き得、それから、治療用物質の残りが、漸減する速度でインプラントから流出する。装置1と同様に、装置2は、流体を前房805から涙膜809(図8および図9)に導くのに役立つ外側ポリマー層105の間に配されたマイクロチャネル102を包含する。このように、装置2は、薬剤送達装置および眼内圧低下シャントの両方として作用し得る。装置2は、植え込み後に装置を強膜組織801内部に固定することが意図された窓103も包含する。
【0038】
図3aおよび図3bに描かれた例としての実施形態(または単に「装置3」)は、外側ポリマー層105の間で内側ポリマー層106内部に配された2つのDRE301を包含する。装置3内に描かれたDRE301は、装置3の長さに沿って一定の幅を維持する。この実施形態は、薬物動態学的放出パターンがインプラントの寿命にわたり一定速度(ほぼ0次)であることが意図される点で、装置1および2とは異なる。このデザインでは、著しいバースト放出が、ほぼ植え込み時に生じる。これに、一定速度(ほぼ0次)の放出の期間が続き得、それから、治療用物質の残りが、漸減する速度でインプラントから流出する。装置3の外側エッジは、かかり302を包含し、これは、周囲の強膜組織801によって固定される組織接触表面積を増大させる。かかり302はまた、いったん植え込まれると、装置3の移動および除去を防ぐ。装置3は、結膜の過成長を制限することが意図されたクロスバータブ201上の鋭い角を保持する。
【0039】
マイクロチャネル102を包含する、いくつかの実施形態では、マイクロチャネル102は、上昇した眼内圧を治療および防止することが意図される。マイクロチャネル102の幅、高さ、および長さは、低眼圧を防止するために適切な流体抵抗を提供するが、また、上昇した眼内圧と関連付けられる失明の進行を防止するために十分な機能も提供するように、調整される。理想的には、マイクロチャネル102は、適切な水圧耐性を提供し、そのため、患者の眼内圧は、植え込み後に8~12mmHgで正常化し、患者は、眼用薬剤、例えば、トラボプロスト、ラタノプロストなどの投与を中止する。
【0040】
マイクロチャネル102を包含する、いくつかの実施形態では、マイクロチャネル102は、ドライアイなど、涙腺の涙の生成の欠如を特徴とする眼疾患を治療および防止することが意図される。マイクロチャネル102の幅および高さは、低眼圧を防止するために適切な抵抗を提供するが、眼を房水に浸すために十分な機能も提供するように、調整される。
【0041】
いくつかの実施形態では、外側ポリマー層105の外部表面の少なくとも一部が、点刻、クロスハッチング、ワッフル構造化(waffling)、粗化などによって、テクスチャを付けられ得る。いくつかの実施形態では、これは、非常に低いレーザーエネルギーを用いたレーザー彫刻によって達成され得る。いくつかの実施形態では、これは、(外部表面部分501を参照する)図5aおよび図5bに見られるように、空間的に定義されたプラズマ処理を通じて化学的手段によって達成され得る。そのような実施形態では、保護層が装置と整列され得、そのため、小さな窓が、テクスチャ付けを意図されたエリアの上に位置する。装置および保護層をプラズマ(酸素プラズマ、空気プラズマ、窒素プラズマなど)にさらすことで、装置の露出部分の表面粗さが増大し、潜在的には、露出表面の化学基を変化させる。このように、装置の空間的に定義されたエリアは、ナノテクスチャ501付きにされ、かつ/または化学的に変化されて、哺乳類の細胞が付着する能力を増大させることができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される装置の外側ポリマー層105は、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、ポリ(メチルメタクリレート)(「PMMA」)、ポリウレタン(「PU」)、ポリカーボネート(「PC」)、ポリ塩化ビニル(「PVC」)、ポリビニルアルコール(「PVA」)、ポリスチレン(「PS」)、熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)、ポリエチレン(「PE」)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(「PES」)、スルホン化ポリエーテルスルホン(「SPES」)、ポリブチレンテレフタレート(「PBT」)、ポリヒドロキシアルカノエート(「PHA」)、シリコーン、パリレン、ポリプロピレン(「PP」)、フルオロポリマー、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(「pHEMA」)、ポリエーテルケトンケトン(「PEKK」)、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)、ポリアリールエーテルケトン(「PAEK」)、ポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)(「PLGA」)、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)、フッ化ポリビニリデン(「PVDF」)、またはポリアクリル酸(「PAA」)などの材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、外側ポリマー層105は、2つ以上の材料の組み合わせで構成され得る。
【0043】
インプラント装置4の少なくとも一部が前房805(図8および図9)内部に位置付け可能である、図4aおよび図4bに描かれた例としての実施形態(または単に「装置4」)は、房水シャントと眼内薬剤送達システムの役割を果たし得る。マイクロチャネル102は、装置4の長さにわたって延び、房水を眼の前房805から涙膜809にそらし、患者の眼内圧を低下させる。いくつかの実施形態では、チャネル壁107は、親水性の生物付着防止ポリマーで構成される。
【0044】
チャネル102の側面に位置するのは、2つの生体適合性DRE401であり、これは、チャネル壁107を構成する同じポリマーによって囲まれ得る。この実施形態では、各DRE401は、インプラント装置4の上部表面403および底部表面404両方の上の複数の入口402によって水性環境に露出されたリザーバで構成される。これらの入口402は、好ましくは円形であり、直径が約1ミクロン~100ミクロン以上であるが、サイズがDRE401の幅より小さい限り、任意の幾何学的形状とすることができる。装置4が眼に植え込まれると、入口402は、前房805内部の、眼組織線(ocular tissue line)810(図8および図9)より下に位置する。入口402は、製造後に、開いたままで、環境に露出され得るか、または、植え込みの直前まで、もしくは植え込み中に一時的に封止され得る。入口402のサイズは、DRE401がレーザー処理、型抜きなどといった当技術分野で既知の分離方法を使用して作製された後で、制御され得る。このように、薬物動態は、製造中にDRE401のサイズを調節することなく、最終的な組み立てステップにおいて変更および制御され得る。
【0045】
これらの入口402は、半透膜として作用することもできる。少なくとも1つの実施形態では、入口402は、例えばエチレン酢酸ビニル(EVA)で構成された、房水に対する選択透過性膜で覆われる。少なくとも1つの実施形態では、入口402は、例えばポリビニルアルコールで構成された、治療用物質およびその賦形剤に対する選択透過性膜で覆われる。チャネル102および入口402以外、インプラント装置4の残部は、房水に不透過性である。
【0046】
図5aおよび図5bに描かれた例としての実施形態(または単に「装置5」)は、8つの別々のDRE503と、装置5の長さを延びる1つの親水性マイクロチャネル102と、2つのプラズマ処理された表面部分501と、を包含する。この実施形態では、表面部分501でのプラズマ処理は、より良いバイオインテグレーションと、治癒の改善、除去および移動の軽減、ならびに植え込み後の患者のより速い回復をもたらす、より一貫した細胞固定と、を助長するのに使用される。かかり302は、装置5の側面上に含まれて、細胞固定をさらに改善し、除去を防ぐ。装置5は、8つの独特なDRE503を包含し、これらはそれぞれ、別々の異なる治療用物質を包含し得る(または、2つ以上のDRE503は同じ治療用物質を包含し得る)。装置5は、同じインプラント内に多数の治療用物質を提供する能力を実証する。
【0047】
一般的に言えば、哺乳類の眼の前房に存在するものなど、タンパク質に富んだ溶液と接触する、生体外装置は、マイクロチャネルの機能性を部分的または全体的に損ない得る、非特異タンパク質吸収を受ける。本明細書に記載される植え込み可能な装置の実施形態のうちの少なくともいくつかにおいて、マイクロチャネル102は、注意深い材料選択によって、細菌、細胞、およびタンパク質吸収に耐えることができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、チャネル壁107を構成し、DREの幾何学的エリアを画定する内側ポリマー層106は、ポリエチレングリコール(「PEG」)(例えば、ジメタクリル酸トリエチレングリコールなどのアクリレート-PEG-アクリレート(acrylate-PEG-acrylate))、重合双性イオン、N-(2-メタクリロイルオキシ)エチル-N,N-ジメチルアンモニオプロパンスルホネート(「SPE」)、N-(3-メタクリロイルイミノ)プロピル-N,N-ジメチルアンモニオプロパンスルホネート(「SPP」)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスファチジルコリン(「MPC」)、3-(2'-ビニル-ピリジニオ)プロパンスルホネート(「SPV」)、ポリ(2-オキサゾリン)(例えば、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン))、ポリ(ヒドロキシ官能性アクリレート)(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート);ポリ(グリセロール))、ポリ(ビニルピロリドン)、ペプチドまたはペプトイド(例えば、ポリ(アミノ酸)もしくはポリ(ペプトイド))などの材料で構成され得る。いくつかの実施形態では、内側ポリマー層106は、材料の組み合わせで構成されてもよい。
【0049】
図6aおよび図6bに描かれた例としての実施形態(または単に「装置6」)は、(例えば、本明細書に記載されるいくつかの他の装置のマイクロチャネル102のような)マイクロチャネルを包含せず、したがって、薬剤送達システムとしてのみ機能する。3つの独特なDRE601、602、603が、さまざまな生分解性マトリックスで構成されて、装置6の末端部に位置している。この実施形態では、最も外側のDREマトリックス601は、生分解性マトリックスを含み、これは組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)を封入し、これは、植え込み後に前房805(図8および図9)におけるフィブリンの濃度を減少させることが分かっている。最も内側のDRE602、603は、ラタノプロストなど、緑内障を治療することが意図された治療用物質を包含する。装置6は、外側表面の中心体部分のそれぞれの側面から横方向に延びる、2つのかかり302を包含し、これらは、装置6を強膜組織801内部に固定するのを助ける。
【0050】
少なくとも1つの実施形態では、外側ポリマー層105の内側表面604は、内側ポリマー層106と外側ポリマー層105との間の結合強度を増大させるように化学的に変化される。これは、化学部分を外側ポリマー層105の内側表面604に付着させることによって、達成され得る。プラズマ処理は、特定の材料の表面上の化学基を変化させるために当技術分野で通常使用される。例えば、酸素プラズマ処理は、ポリマーの表面上においてヒドロキシル基の密度を増大させるために使用され得る。プラズマ処理の後、新たに形成されたヒドロキシル基は、シランカップリング剤などの化学部分のための良好な結合部位を提供する。内側ポリマー層106がポリエチレングリコールジアクリレートなどにより、アクリレートに基づくアプローチを使用して重合された場合、シランカップリング剤は、カップリング剤の一末端に活性シラン基を、カップリング剤の反対側の末端にアクリレート基を、包含し得る。このように、外側ポリマー層105の内側表面604は、共有結合され、よって、内側ポリマー層106と外側ポリマー層105との間に、より強力な結合を作り出すことができる。
【0051】
図7aおよび図7bに描かれた例としての実施形態(または単に「装置7」)は、(例えば、本明細書に記載されるいくつかの他の装置のマイクロチャネル102のような)マイクロチャネルを包含せず、したがって薬剤送達システムとしてのみ機能し得る。この例としての実施形態は、装置7の長さの大部分(例えば、装置7の長さの約70%~約90%、または約50%~約90%)に沿って延びる、単一のDRE701を包含する。いくつかの実施形態では、DRE701は、その遠位端部において半径方向に構成された入口を有し、内側ポリマー層106に合流するまで近位に延びる。すなわち、装置7の入口は、装置7の遠位端部分において本体の外側エッジ全体に(例えば、「U字形状」で)またがり得る。装置は、装置7のそれぞれの側面から横断方向に延びる4つのかかり302を包含し、窓103が4つのかかり302のすぐ内側に設置されている。かかり302および窓103は両方とも、細胞固定を増大させ、インプラント装置7の微動、移動、および除去を防ぐことが意図されている。
【0052】
この実施形態では、DRE701は、装置7の長さをジグザグに進む(traverses)につれて、幅が減少している。すなわち、DRE701は、装置7の遠位端部分の近くで最も広く、DREが装置7の近位端部に向かって延びるにつれて狭くなっている。結果として生じる薬物動態学的放出曲線は、時間が経過するにつれて治療濃度放出速度が減少することを実証する。これは、眼用薬剤の規定の漸減スケジュールなど、いくつかの理由で有益となり得る。そのような1つの状況では、患者は、経時的に特定の点眼薬の適用をゆっくりと、1日に5滴から1日に2滴に、減少させるよう指示され得、このDRE701の形状は、同じ目的を達成するのに十分となり得る。
【0053】
特定のケースでは、治療用物質を前房805ではなく、眼組織に直接放出することが有益となり得る。少なくともいくつかの実施形態では、1つまたは複数のDREは、かかり302を取り囲む眼組織に当接し、これと直接連絡する、入口を有する。このように、かかりを取り囲む強膜組織からの間質液は、DREと相互作用して、経時的な薬剤放出を提供し得る。そのような1つの実施形態では、DREは、植え込み後の炎症を軽減するために抗炎症性治療用物質を包含し得る。
【0054】
薬剤放出体(追加情報)
本明細書に記載される装置の少なくともいくつかの実施形態では、以下の要件が、薬剤送達システムの薬物動態および投薬能力を制御するために変更され得る:DREの数、DREの外形、例えば高さもしくは容積、入口の数、入口の外形、および入口の場所、DREに組み込まれるポリマーの性質(例えば、透過性)、ならびに、治療用物質およびそれらのそれぞれの賦形剤の特徴(例えば、可溶性)。これらの要件は、治療される症状、インプラントを受ける患者、および治療用物質の所望の投与期間にも左右され得る。いくつかの実施形態では、生分解性DREは、次の3つの形態のうちの少なくとも1つによって説明され得る:1)均質な生分解性ポリマーマトリックス、2)少なくとも2つの不均質な生分解性ポリマーマトリックス、3)少なくとも1つの治療用物質が封入または結合により包含された、少なくとも1つのポリマーマトリックスに埋め込まれた微粒子またはナノ粒子の集合。
【0055】
これらの生分解性の形態はそれぞれ、植え込み後に次の3つの薬剤送達フェーズを有する:1)バースト放出期間、2)ほぼ0次の放出期間、および、3)最小量の少なくとも1つの治療用物質がDREから眼の前房に送達される、漸減放出時間。これらの3つの期間の持続時間は、DREキャビティ外形および入口の開放表面積、その実施形態で利用される生分解性DRE形態の性質、例えば、マトリックスに使用されるポリマーの種類、ポリマーの架橋密度、使用される微粒子またはナノ粒子のタイプ、および、組み込まれる治療用物質の性質に左右される。送達される治療用物質の量および/または各段階中の放出速度も、DRE内部に存在する治療用物質の濃度に加えて、生分解性DRE形態に左右される。
【0056】
均質な生分解性ポリマーマトリックスでは、治療用物質は、生分解性ポリマーマトリックスの細孔内部に埋め込まれる。ポリマーマトリックスは、天然または合成であり得る、1つのモノマーまたはポリマーで構成される。これらのモノマーは、化学的および/または物理的架橋により、マトリックスへと構築(または凝固)され得る。前者では、モノマーは、通常は、UV光への露出、加熱などといった刺激が加えられた後で、互いに共有結合される。後者では、ポリマーは、イオン結合、静電気引力などといった、非共有手段を通じて、互いに結合される。DREで使用されるポリマーは、いくつかの重合プロセスを介して作り出され得る。これらは、連鎖重合、例えばフリーラジカル重合、および縮合重合を含むが、これらに限定されない。均質なマトリックスの細孔径は、架橋密度に影響を及ぼすポリマーの特徴、例えばその鎖の長さ、に左右される。架橋密度は、放出速度に影響を及ぼし、好ましくは一定であるが、マトリックスにわたって異なっていてよい。
【0057】
治療用物質は、溶解した生分解性ポリマーまたはポリマーの成分(モノマー単位および可能な開始剤)を、溶解した少なくとも1つの治療用物質と混合し、その後、少なくとも1つの外部刺激を加えることを介して混合物をゲル化または凝固させることによって、マトリックスと組み合わせられ得る。あるいは、固体形態の治療用物質は、前述したポリマーマトリックスの細孔に組み込まれ得る。マトリックス内部の治療用物質の濃度分布は、好ましくはモノリシック、または一定である。しかしながら、濃度は、好ましい薬物動態学的曲線を達成するためにマトリックスにわたり勾配を有し得る。
【0058】
結果として得られるゲルまたは固体は、エンボス加工、マイクロ成形技術、例えば射出成形など、リソグラフィー技術、例えばフォトリソグラフィーなど、押出、同時押出、刻印、または熱圧縮などの方法を通じて、好ましい外形へと成形され得る。成形されたゲルまたは固体は、次に、装置の内部にあるDREキャビティに入れられ得る。あるいは、治療用物質/ポリマー混合物は、溶液形態でインプラントの内部にあるキャビティ内に送達され得、ポリマーは、その後、架橋、重合、または凝固される。
【0059】
装置の植え込み後、治療用物質の放出のバーストフェーズが起こる。このフェーズは、持続時間が比較的短く、前房からの房水(または、眼組織からの間質液など任意の他の液体)が、入口を通じてそのような液体にさらされる表面におけるマトリックスの細孔を貫通するときに、起こる。マトリックス-房水界面の近くでマトリックスに埋め込まれた治療分子(および任意の所望の複合体)が、DREから拡散し、前房(または、眼組織からの間質液などの任意の他の液体)内に比較的高速で放出される。バーストフェーズの後に、ポリマーマトリックスのコア内に房水(または、眼組織からの間質液などの任意の他の液体)が流入する、比較的長い期間が続く。ポリマーの架橋結合は、加水分解または酵素により、ランダムな場所で開裂され、より大きな細孔を作り出し、その結果、マトリックスのコアに埋め込まれた治療分子ならびに任意の所望の複合体が、ほぼ一定の速度であるが、バーストフェーズのものよりは低速で、流出する。第3の送達フェーズは、少なくとも先のものと同じ長さであり、ポリマーマトリックスの生分解を伴う。生分解は、物理的に不安定になる程度まで房水(または、眼組織からの間質液などの任意の他の液体)がマトリックス内に拡散することによる、ポリマーの切断の結果である。治療用物質の大半が、前房(または、眼組織からの間質液などの任意の他の液体)内に既に流出しており、そのため、マトリックス内への房水(または、眼組織からの間質液などの任意の他の液体)の浸透性流入の速度が低下する。その結果、治療用物質および任意の所望の複合体が、構造的に乱されたマトリックスから、漸減的に放出される。装置が取り出されるのは、好ましくはこの漸減放出段階中である。
【0060】
生分解性DREは、天然または合成材料で構成され得る。いくつかの実施形態では、生分解性DREは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(無水物)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アミド)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリエステル、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(グリコリド-co-ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ(アジピン酸)、ポリ(セバシン酸)、ポリ(テレフタル酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(ホスフェート)、ポリ(ホスホネート)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(ウレタン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(アセタール)、コラーゲン、アルブミン、ゼラチン、アルジネート、シクロデキストリン、キトサン、デキストラン、アガロース、ヒアルロン酸、デンプン、セルロースなどといった材料で構成され得る。いくつかの実施形態では、生分解性DREは、材料の組み合わせで構成され得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、生分解性DREは、少なくとも2つの不均質な生分解性ポリマーマトリックスからなり得る。そのような実施形態では、DREは、少なくとも2つの別個の層で作り上げられ;各層は、均質な生分解性ポリマーマトリックスを含む。各層内部に異なる治療用物質および/または治療濃度が存在し得る。さらに、各層内部の治療用物質は、2つ以上の全身性および/または眼症状を治療することが意図され得る。各層は、ポリマーのタイプ、立体異性体の組成、モノマー単位の配列(例えばブロックポリマー対交互ポリマー)、モノマー単位の向き(例えば、鎖状コポリマー対グラフトポリマー)、および特定のポリマーのモノマー比を含むがこれらに限定されない、それらのマトリックスを構成するポリマー特徴に関して、異なっていてよい。好ましくは、異なる特徴の少なくとも1つの他のマトリックスで囲まれるか、またはコーティングされたコアマトリックスが存在する。それぞれの連続する周囲のマトリックスは、装置の周辺部の近くに存在し、最終層は、少なくとも部分的に環境に露出される。そのような1つの実施形態では、コアマトリックスは、少なくとも部分的に環境に露出される第2のマトリックスによって囲まれ;両方の層は、PLGAマトリックスで構成され、内側マトリックスは、PLA:PGA比がより低く、薬物動態学的曲線を変化させるために治療用物質および任意の所望の複合体の濃度がより高い。
【0062】
いくつかの実施形態では、各それぞれの層のポリマーマトリックスは、前述した架橋方法を介して構築され得る。同様に、治療用物質は、先に述べた方法を使用して各マトリックスと組み合わせられ得る。各均質なマトリックスの細孔径は、架橋密度に影響を及ぼすポリマーの特徴、例えばその鎖の長さ、に左右される。架橋密度は、放出速度に影響を及ぼし、好ましくは一定であるが、マトリックスにわたって異なっていてよい。各層のマトリックス内部の少なくとも1つの治療用物質の濃度分布は、好ましくはモノリシック、または一定である。しかしながら、濃度は、好ましい薬物動態学的曲線を達成するために層のマトリックスにわたり勾配を有し得る。
【0063】
最後に分解することが望まれるマトリックスは、前述した方法を通じて、好ましい外形を有するゲルへと形成され、装置の内部にある、入口から最も離れたDREキャビティの部分に入れられ得る。次に分解することが望まれるマトリックスもまた、好ましい外形を有するゲルへと形成され、DREキャビティに、前のものに隣接して入口までの距離を近くして、入れられ得る。この段階的プロセスは、最初に分解することが望まれるマトリックスが、好ましい外形へと形成され、入口を介して房水(または、眼組織からの間質液などの任意の他の液体)に露出され得る、DREキャビティに入れられるまで、続けられる。
【0064】
治療用物質の3つの放出フェーズは、各層内の均質なポリマーマトリックスについて前述したような形で、起こる。好ましくは、入口により近いポリマーマトリックスは、隣接するマトリックスがそのバースト放出フェーズを始める前に、そのバースト放出フェーズおよび0次放出フェーズを経験している。しかしながら、1つのマトリックスの放出フェーズのうち任意の3つが、別のものの任意の放出フェーズと同時に起こることができる。言い換えれば、層は物理的に分離されるが、それらの治療用物質の放出段階は、分離されなくてもよい。各層の治療用物質放出の持続時間は、成形されたマトリックスおよび入口の外形に加えて、使用されるポリマーの性質に左右される。
【0065】
以下の動態は、DRE全体に、または、特定の均質な生分解性ポリマーマトリックス層に関係し得る:
【0066】
本明細書で言及される、生体内総薬剤放出期間(in vivo aggregate drug release period)は、詰め込まれた治療用物質が少なくとも1つの入口にわたって分配される時間間隔として定義される。言い換えれば、これは、周囲環境内への少なくとも1つの治療用物質の最初の放出で始まり、インプラントの取り出し、または組み込まれるすべての治療用物質の累積放出を介して終わる。この放出期間は、少なくとも1時間、最大で6年、またはそれより長く存続し得る。
【0067】
植え込みの持続時間は、少なくとも生体内総薬剤放出期間の間は続く;しかしながら、インプラントは、いくつかある理由のうち特に、埋め込まれたチャネルにより房水を前房805から出すため、または患者の手術頻度を制限するために、その指定された眼の場所にとどまり得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、薬物動態学的曲線は、DREの特定の特性、例えば、化学構造、化学組成、マルチマー内のモノマーの分布、イオン基の存在、鎖欠陥の存在、粒子の形状、粒子径、粒子の可溶性、分子量分布、低分子量化合物の存在、ポリマー形態(非晶質/半晶質、ミクロ構造など)、治療用物質の形状、治療用物質のサイズ、治療用物質の可溶性、治療用物質の半減期、処理条件、アニーリング、滅菌プロセス、保管履歴、分子量、pH、形状、サイズ、入口の数などを調節することによって、変化する。
【0069】
いくつかの実施形態では、生分解性DREは、封入または結合により少なくとも1つの治療用物質を保持する少なくとも1つのポリマーマトリックスに埋め込まれた、少なくとも1つのタイプの微粒子またはナノ粒子からなり得る。粒子は、身体内の特定の場所への送達のため、もしくは治療の有効性を高めるために、生体適合性ポリマーもしくは生物学的リガンドでコーティングされるか、または表面が改質され得る。粒子は、溶解した治療用物質を封入することができ;これらは、マイクロカプセルもしくはナノカプセル、リポソーム、ミセル、マイクロエマルジョンもしくはナノエマルジョン、または同様のもののコロイド状の実施形態を含む。あるいは、粒子は、ミクロスフィアもしくはナノスフィアまたはマイクロスケールもしくはナノスケールの脂質担体のように、モノリシックであり、一定の様式で治療用物質を埋め込むことができる。あるいは、粒子は、治療用物質が付着したポリマーもしくは巨大分子担体または賦形剤であってよく;これらは、デンドリマーおよびマイクロ複合体またはナノ複合体を含む。これらの治療用物質包含粒子は、均質化技術、溶媒乳化/蒸発、W/O/W二重エマルジョン技術、噴霧乾燥、相分離、沈澱、または結合技術(例えばグラフティング)などの方法を使用して製造され得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、前述した粒子は、溶解した生分解性ポリマーまたはポリマーの成分(モノマー単位および可能な開始剤)を、溶解した少なくとも1種類の粒子と混合し、その後、温度などといった少なくとも1つの外部刺激を加えることを介して混合物をゲル化または凝固させることによって、均質な生分解性ポリマーマトリックスの細孔に埋め込まれる。あるいは、固体形態の少なくとも1つのタイプの粒子が、ポリマーマトリックスの細孔に組み込まれ得る。そのような1つの実施形態では、マトリックス内部の少なくとも1つのタイプの粒子の濃度分布は、モノリシック、または一定である。別のそのような実施形態では、濃度は、好ましい薬物動態学的曲線を達成するためにマトリックスにわたり勾配を有し得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックス内部に埋め込まれた粒子は、いったん外部刺激が閾値を超えたら、治療用物質を放出し得る。特定の刺激は、温度、pH、光強度、電界、および磁界を含み得るが、これらに限定されない。そのような1つの実施形態では、感熱性のポリ(N-イロプロピルアクリルアミド)から少なくとも部分的になる、埋め込まれた粒子は、眼の前房の内側においてその下限臨界溶解温度(LCST)を超えると少なくとも1つの治療用物質を放出する。別のそのような実施形態では、ポロキサマーから少なくとも部分的になる粒子は、いったん前房の内側に入ると特有のLCSTを超えたときに少なくとも1つの治療用物質を放出する。
【0072】
いくつかの実施形態では、マトリックスは、当技術分野で既知の方法を通じて好ましい外形を有するゲルへと形成され得る。成形されたゲルは、装置の内部にあるDREキャビティに入れられ得る。他の実施形態では、ナノ粒子/ポリマー混合物は、溶液形態でインプラントの内部のキャビティ内に送達され、ポリマーはその後、架橋または凝固され得る。
【0073】
治療用物質放出に関して前述した3つのフェーズは、ナノ粒子放出にも当てはまる。微粒子またはナノ粒子のサイズは、その放出動態を決定する上での付加的因子である。いったんマトリックスから放出されると、微粒子またはナノ粒子は、眼の前房内(または任意の他の眼組織内部)に存在し、治療用物質を放出する前に、眼の標的場所に輸送され得る。微粒子またはナノ粒子からの治療用物質の放出は、微粒子またはナノ粒子からの治療用物質の拡散、および、加水分解などの生化学反応による溶解を通じた微粒子またはナノ粒子の生分解を含むがこれらに限定されない、いくつかの異なる方法を介して起こり得る。治療用物質は、粒子からの放出部位で有効となり得るか、または、眼の内部もしくは眼の外部の意図される場所にさらに輸送され得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、薬剤送達の意図される標的は、眼に限定されたものではない。そのような実施形態では、送達される治療用物質は、全身性効果が意図されているか、または、眼の外側の場所を意図されている。
【0075】
いくつかの実施形態では、各タイプの粒子内に2種類以上の治療用物質が存在し得る。さらに、各層を構成する均質なポリマーマトリックス内部に2つ以上のタイプの粒子が存在し得る。さらに、前述したように、複数の、粒子を包含する不均質なマトリックスは、DREキャビティ内で互いと一緒にパターン化され得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、DREに当接する前房805(または、眼組織からの間質液などの液体を包含する任意の他の区画)と流体接触して設置された半透膜により、DREの内側に浸透圧が生成される。このタイプのDREは、前房への直接的な入口を包含しないが、半透膜を通して水をDREに選択的に入れることによって、圧力を高める。圧力は、治療用物質が半透膜を通ってDREから流出するにつれて、軽減される。この場合の流出速度は、半透膜/DRE界面のサイズによって制御され得る。
【符号の説明】
【0077】
1 装置
2 装置
3 装置
4 インプラント装置
5 装置
6 装置
7 装置
101 クロスバータブ
102 マイクロチャネル
103 窓
104 薬剤放出体(DRE)
105 上部外側ポリマー層
105 底部外側ポリマー層
106 内側ポリマー層
107 チャネル壁
109 入口
110 リザーバ
111 丸い角
201 クロスバータブ
202 入口開口部
202 入口部分
203 リザーバ
301 DRE
302 かかり
401 DRE
402 入口
403 上部表面
404 底部表面
501 外部表面部分
501 ナノテクスチャ
503 DRE
601 DRE
601 DREマトリックス
602 DRE
603 DRE
604 内側表面
701 DRE
801 強膜組織
802 結膜
802 結膜組織
804 角膜組織
805 前房
809 涙膜
810 眼組織線
901 角膜縁
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植え込み可能な眼用薬剤送達装置であって、
遠位端部分および近位端部分を有する本体であって、前記本体は、前記本体が眼の強膜に植え込まれたときに、前記遠位端部分を前記眼の前房に位置付け、かつ前記近位端部分を前記眼の涙膜に位置付けるのに十分な長手方向長さを有し、
前記本体は、内部チャンバと、前記本体の外側表面を通る、前記内部チャンバへの入口と、を画定し、前記内部チャンバは、前記入口を介して前記本体の周囲の外部領域と連絡する、本体と、
前記内部チャンバ内の薬物と、を含む、植え込み可能な眼用薬剤送達装置。
【請求項2】
前記本体は、前記遠位端部分と前記近位端部分との間に延びる内腔を画定し、前記内腔は、前記本体が前記眼の前記強膜に植え込まれたときに、前記前房と前記涙膜との間に流体連通を提供する、請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記本体の材料は、前記内部チャンバ全体を前記内腔から分離する、請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記本体は、1つまたは複数の窓を画定する、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記内部チャンバの入口部分は、前記入口部分よりもさらに内部に位置する前記内部チャンバの残りの部分より小さな断面積を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記内部チャンバの入口部分は、前記入口部分よりもさらに内部に位置する前記内部チャンバの残りの部分より大きな断面積を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記本体は、前記内部チャンバへの1つまたは複数の追加の入口を画定する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記本体は、1つまたは複数の追加の内部チャンバと、前記1つまたは複数の追加の内部チャンバへの、対応する入口と、を画定する、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記薬物は、第1の薬物であり、前記装置は、前記1つまたは複数の追加の内部チャンバの中に第2の薬物をさらに含み、前記第1および第2の薬物は、異なるタイプの薬物である、請求項に記載の装置。
【請求項10】
前記近位端部分は、前記遠位端部分より横方向に広い、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記近位端部分は、前記遠位端部分より横方向に広いクロスバータブを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記本体は、前記本体の中心体部分から横方向に延びる、少なくとも2つのかかりを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記薬物は、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(無水物)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アミド)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリエステル、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(アジピン酸)、ポリ(セバシン酸)、ポリ(テレフタル酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(ホスフェート)、ポリ(ホスホネート)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(ウレタン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(アセタール)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ウレタン)、ポリ(アミドアミン)、ポリ(アミドエナミン)、ポリ(アクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(カルボフィル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エノールケトン)、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(エーテルエステル)、コラーゲン、アルブミン、ゼラチン、アルジネート、シクロデキストリン、キトサン、デキストラン、アガロース、ヒアルロン酸、デンプン、またはセルロースを含む、ポリマーマトリックスを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記本体の外部表面の少なくとも一部は、レーザー彫刻またはプラズマ処理によって、テクスチャを付けられている、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記本体は、前記装置の長さにわたって延びるマイクロチャネルを画定しない、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【国際調査報告】