(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-26
(54)【発明の名称】カシメルセンによる筋ジストロフィーの治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/712 20060101AFI20220519BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220519BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220519BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20220519BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220519BHJP
C12Q 1/68 20180101ALN20220519BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALN20220519BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALN20220519BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20220519BHJP
【FI】
A61K31/712 ZNA
A61P21/00
A61K9/08
C12N15/113 Z
C12N15/12
C12Q1/68
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556752
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(85)【翻訳文提出日】2021-09-21
(86)【国際出願番号】 US2020024550
(87)【国際公開番号】W WO2020198268
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501237039
【氏名又は名称】サレプタ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ケイ, エドワード エム.
【テーマコード(参考)】
4B063
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B063QQ03
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4C076AA11
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4C086ZA94
(57)【要約】
本開示は、とりわけ、筋ジストロフィーを治療するための改善された組成物および方法を提供する。例えば本開示は、有効量のカシメルセンを投与することによって、エクソン45スキッピングに適しているDMD遺伝子に変異を有するデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者を治療するための方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エクソン45スキッピングに適しているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)遺伝子の変異を有する患者であり、それを必要とする患者において、前記DMDを治療するための方法であって、前記患者に、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩の用量を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記用量が、前記患者の体重に対して約30mg/kgの投与量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記用量が単回投与として投与される、請求項1~2に記載の方法。
【請求項4】
前記用量が週に1回投与される、請求項1~3に記載の方法。
【請求項5】
前記患者が、エクソン7~42、12~42、18~42、44~46、44~47、44~48、44~49、44~51、44~53、44~55、44~57、または44~59、またはエクソン44からなる群から選択される前記DMD遺伝子の変異を有する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記患者が、カシメルセンを慢性的に投与される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記患者が、少なくとも48週間、カシメルセンを投与される、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記患者が、カシメルセンの投与の前に、少なくとも6カ月間安定用量のコルチコステロイド投与を受ける、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩が、医薬組成物として製剤化される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩が、約50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩が、約50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化され、約100mg/2mLの剤形で提示される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記剤形が、単回使用バイアル中に含有される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩が、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として製剤化される、請求項10~12に記載の方法。
【請求項14】
前記薬学的に許容される担体が、リン酸緩衝溶液である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
エクソン45スキッピングに適しているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)遺伝子の変異を有する前記DMDの患者であり、それを必要とする患者において、mRNAリーディングフレームを回復させてエクソンスキッピングを誘導する方法であって、前記患者に、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩の一定用量を投与することを含む、方法。
【請求項16】
前記用量が、前記患者の体重に対して約30mg/kgの投与量で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記用量が週に1回投与される、請求項15~16に記載の方法。
【請求項18】
前記患者が、少なくとも48週間、カシメルセンを投与される、請求項15~17に記載の方法。
【請求項19】
エクソン45スキッピングに適しているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)遺伝子の変異を有する前記DMDの患者であり、それを必要とする患者において、ジストロフィン産生を増加させる方法であって、前記患者に、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩の一定用量を投与することを含む、方法。
【請求項20】
前記用量が、前記患者の体重に対して約30mg/kgの投与量で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記用量が週に1回投与される、請求項19~20に記載の方法。
【請求項22】
前記患者が、少なくとも48週間、カシメルセンを投与される、請求項19~21に記載の方法。
【請求項23】
カシメルセンを投与する前に、前記患者が、エクソン45スキッピングに適している前記DMD遺伝子内の変異を有するかを確認することをさらに含む、請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
それを必要とする患者におけるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療に使用するための、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩であって、前記患者が、エクソン45スキッピングに適している前記DMD遺伝子の変異を有し、前記治療が、前記患者に約30mg/kgのカシメルセンの単回静注投与量を週に1回投与することを含む、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項25】
それを必要とする、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の患者において、mRNAリーディングフレームを回復させてエクソンスキッピングを誘導することに使用するための、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩であって、前記患者が、エクソン45スキッピングに適している前記DMD遺伝子の変異を有し、前記治療が、前記患者に約30mg/kgのカシメルセンの単回静注投与量を週に1回投与することを含む、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項26】
それを必要とするデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の患者において、ジストロフィン産生を増加させることに使用するための、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩であって、前記患者が、エクソン45スキッピングに適している前記DMD遺伝子の変異を有し、前記治療が、前記患者に約30mg/kgのカシメルセンの単回静注投与量を週に1回投与することを含む、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年3月28日に出願された米国仮出願第62/825,573号、および2019年9月19日に出願された米国仮出願第62/902,518号の利益を主張するものである。上記の出願の教示全体は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0002】
本発明は、患者における筋ジストロフィーを治療するための改善された方法に関する。また、ヒトジストロフィン遺伝子におけるエクソン45スキッピングの促進に適した組成物も提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
様々な遺伝性疾患において、遺伝子の最終的な発現に対する変異の効果は、スプライシングプロセス中の標的エクソンスキッピングプロセスを通して調節され得る。正常機能タンパク質が、その中の変異のために早期に終結される場合、アンチセンス技術によって一部の機能タンパク質産生を回復させるための手段は、スプライシングプロセス中の介入を通して可能であることが示されており、また、疾患を引き起こす変異に関連するエクソンが、一部の遺伝子から特異的に欠失され得る場合、同様の天然タンパク質の生物学的特性を有するか、またはエクソンに関連する変異によって引き起こされる疾患を改善するのに十分な生物学的活性を有する短縮型タンパク質産物が、時に産生され得ることが示されている(例えば、Sierakowska,Sambade et al.1996;Wilton,Lloyd et al.1999;van Deutekom,Bremmer-Bout et al.2001;Lu,Mann et al.2003;Aartsma-Rus,Janson et al.2004を参照)。
【0004】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、タンパク質ジストロフィンの発現の欠陥によって引き起こされる。ジストロフィンは、ロッド状の細胞質タンパク質であり、筋線維の細胞骨格を、細胞膜を通して周囲の細胞外マトリックスに連結するタンパク質複合体の重要な部分である。ジストロフィンは筋線維において重要な構造的役割を果たし、細胞外マトリックスと細胞骨格を連結する。N末端領域はアクチンを結合するのに対し、C末端は筋鞘に広がるジストロフィン糖タンパク質複合体(DGC)の一部である。mdxマウスのジストロフィン欠乏筋線維は、収縮誘発性筋鞘断裂に対する感受性の増加を呈することが示されている(Petrof et al.1993;Cirak et al.2012を参照されたい)。
【0005】
ジストロフィンタンパク質をコードする遺伝子は、DNAの200万を超えるヌクレオチドにわたって拡散された79個のエクソンを含有する。エクソンのリーディングフレームを変化させるか、または停止コドンを導入するか、または全アウトオブフレームエクソン(複数可)の除去もしくは一つ以上のエクソンの重複を特徴とする、任意のエクソンの変異は、機能性ジストロフィンの産生を妨げ、DMDをもたらす可能性がある。
【0006】
クレアチンキナーゼ値の上昇により出生時に疾患の発症が実証され得、また生後1年目に有意な運動障害が現れることがある。7歳または8歳までにDMD患者のほとんどが、歩行困難度が増していき、床から立ち上がり階段を上る能力を失っていき、10歳から14歳までにはほとんどが車椅子依存となる。DMDは一様に致死的であり、罹患した個人は典型的には、10代後半または20代前半に呼吸不全および/または心不全で死亡する。DMDの継続的な進行について、疾患の全ての段階における治療的介入が可能であるが、最近まで治療は糖質コルチコイドに限られていた。この糖質コルチコイドは体重増加、行動変化、思春期変化、骨粗しょう症、クッシング様顔貌、成長阻害、および白内障など、数多くの副作用に関連する。したがって、この疾患の根本原因を治療するためのより良い治療法の開発が不可欠である。
【0007】
変異、典型的には一つ以上のエクソンの欠失が、全ジストロフィン転写物に沿った正しいリーディングフレームをもたらし、これにより、mRNAのタンパク質への翻訳が早期に終結されない場合、より重症度の低い形態の筋ジストロフィーであるベッカー型筋ジストロフィー(BMD)が生じることが分かっている。変異したジストロフィンプレmRNAのプロセシングにおける上流および下流のエクソンの結合が、遺伝子の正しいリーディングフレームを維持する場合、結果は、ある程度の活性を保持する短い内部欠失を有するタンパク質をコードするmRNAであり、ベッカー表現型がもたらされる。
【0008】
長年にわたって、ジストロフィンタンパク質のリーディングフレームを変化させないエクソン(複数可)の欠失がBMD表現型を生じさせる一方で、フレームシフトを引き起こすエクソン欠失がDMDを生じさせることが知られている(Monaco,Bertelson et al.1988)。一般に、リーディングフレームを変化させ、したがって適切なタンパク質翻訳を中断する点変異およびエクソン欠失を含むジストロフィン変異は、DMDをもたらす。また、一部のBMDおよびDMD患者が、複数のエクソンに及ぶエクソン欠失を有することにも留意すべきである。
【0009】
DMD治療のためのスプライススイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)の安全性および有効性を試験する最近の臨床試験は、スプライセオソームの立体的遮断によるプレmRNAの代替スプライシングを誘導するためのSSO技術に基づく(Cirak et al.,2011;Goemans et al.,2011;Kinali et al.,2009;van Deutekom et al.,2007)。しかし、これらの成功にもかかわらず、DMDの治療に利用可能な薬理学的選択肢は限られている。
【0010】
したがって、患者において、ジストロフィンを産生し、DMDやBMDなどの筋ジストロフィーを治療するための改善された組成物および方法に対するニーズが依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、少なくとも部分的に、エクソン45スキッピングアンチセンスオリゴヌクレオチドであるカシメルセン(casimersen)を用いた治療が、患者におけるジストロフィンタンパク質を、ベースラインを超えて有意に増加させたことを示す臨床的証拠に基づく。さらに、エクソンスキッピングとデノボジストロフィンタンパク質との間に正の相関関係が観察された。
【0012】
したがって、いくつかの態様では、本開示は、エクソン45スキッピングに適しているDMD遺伝子の変異を有する患者であり、それを必要とする患者において、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を治療する方法であって、患者に、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩の一定用量を投与することを含む、方法を提供する。
【0013】
いくつかの態様では、本開示は、エクソン45スキッピングに適しているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)遺伝子の変異を有するDMDの患者であり、それを必要とする患者において、mRNAリーディングフレームを回復させてエクソンスキッピングを誘導する方法であって、患者に、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩の一定用量を投与することを含む、方法を提供する。
【0014】
いくつかの態様では、本開示は、エクソン45スキッピングに適しているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)遺伝子の変異を有するDMDの患者であり、それを必要とする患者において、ジストロフィン産生を増加させる方法であって、患者に、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩の一定用量を投与することを含む、方法を提供する。
【0015】
いくつかの態様では、用量は、患者の体重に対して約4mg/kg、約10mg/kg、約20mg/kg、約30mg/kg、約40mg/kg、または約50mg/kgの投与量で投与される。
【0016】
いくつかの態様では、用量は、単回投与として投与される。いくつかの態様では、用量は週に1回投与される。いくつかの態様では、用量は静脈内投与される。いくつかの態様では、用量は点滴により静脈内投与される。いくつかの態様では、用量は、35~60分間にわたり、点滴により静脈内投与される。いくつかの態様では、用量は皮下注射により静脈内投与される。
【0017】
いくつかの態様では、患者は、40歳まで、30歳まで、または21歳までである。いくつかの態様では、患者は1~21歳である。いくつかの態様では、患者は5~21歳である。いくつかの態様では、患者は7~13歳である。
【0018】
いくつかの態様では、本開示は、前述のまたは関連する態様のいずれかによる方法を提供し、患者は、エクソン7~42、12~42、18~42、44~46、44~47、44~48、44~49、44~51、44~53、44~55、44~57、または44~59、またはエクソン44を含む群から選択されるDMD遺伝子の変異を有する。
【0019】
いくつかの態様では、本開示は、前述のまたは関連する態様のいずれかによる方法を提供し、患者は、カシメルセンを慢性的に投与される。いくつかの態様では、患者は、少なくとも48週間、カシメルセンを投与される。いくつかの態様では、患者は、1年を超えて、2年を超えて、3年を超えて、4年を超えて、5年を超えて、10年を超えて、20年を超えて、または30年を超えて、カシメルセンを投与される。
【0020】
いくつかの態様では、本開示は、前述のまたは関連する態様のいずれかによる方法を提供し、患者は、カシメルセンの投与の前に、少なくとも6カ月間安定用量のコルチコステロイド投与を受ける。いくつかの態様では、患者は、カシメルセンの投与前の少なくとも6カ月間、安定用量のコルチコステロイド投与を受けており、カシメルセンの投与中もコルチコステロイド投与を受け続ける。
【0021】
いくつかの態様では、本開示は、前述のまたは関連する態様のいずれかによる方法を提供し、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩は、医薬組成物として製剤化される。いくつかの態様では、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩は、50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化される。いくつかの態様では、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩は、50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化され、100mg/2mLの剤形で提示される。いくつかの態様では、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩は、50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化され、500mg/2mLの剤形で提示される。いくつかの態様では、剤形は、単回使用バイアル中に含有される。
【0022】
いくつかの態様では、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩は、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として製剤化される。いくつかの態様では、薬学的に許容される担体は、リン酸緩衝液である。
【0023】
いくつかの態様では、本開示は、前述のまたは関連する態様のいずれかによる方法を提供し、ここで、エクソンスキッピングは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって測定される。
【0024】
いくつかの態様では、本開示は、前述のまたは関連する態様のいずれかによる方法を提供し、方法は、患者におけるジストロフィン産生を増加させる。いくつかの態様では、ジストロフィン産生は、ウェスタンブロット分析によって測定される。いくつかの態様では、ジストロフィン産生は、免疫組織化学検査(IHC)によって測定される。
【0025】
いくつかの態様では、本開示は、前述のまたは関連する態様のいずれかによる方法であって、カシメルセンを投与する前に、患者がエクソン45スキッピングに適しているDMD遺伝子内の変異を有するかを確認することをさらに含む、方法を提供する。
【0026】
いくつかの態様では、本開示は、それを必要とする患者における、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療に使用するためのカシメルセンまたはその薬学的に許容される塩を提供し、患者は、エクソン45スキッピングに適しているDMD遺伝子の変異を有し、治療は、患者に約30mg/kgのカシメルセンの単回静注投与量を週に1回投与することを含む。
【0027】
いくつかの態様では、本開示は、それを必要とする、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の患者において、mRNAリーディングフレームを回復させてエクソンスキッピングを誘導することに使用するための、カシメルセンまたはその薬学的に許容される塩を提供し、患者は、エクソン45スキッピングに適しているDMD遺伝子の変異を有し、治療は、患者に約30mg/kgのカシメルセンの単回静注投与量を週に1回投与することを含む。
【0028】
いくつかの態様では、本開示は、それを必要とする、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の患者において、ジストロフィン産生を増加させることに使用するためのカシメルセンまたはその薬学的に許容される塩を提供し、患者は、エクソン45スキッピングに適しているDMD遺伝子の変異を有し、治療は、患者に約30mg/kgのカシメルセンの単回静注投与量を週に1回投与することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示の実施形態は、ヒトジストロフィン遺伝子内にエクソン45スキッピングを誘導するように特異的に設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチドである、カシメルセンを投与することによって、DMDなどの筋ジストロフィーを治療する方法に関する。ジストロフィンは筋機能において重要な役割を果たし、様々な筋肉関連疾患がこの遺伝子の変異型を特徴とする。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法は、DMDで見出される変異ジストロフィン遺伝子などのヒトジストロフィン遺伝子の変異型においてエクソン45スキッピングを誘導するために使用され得る。
【0030】
したがって、本開示は、患者においてエクソン45スキッピングを誘導することによって、DMDなどの筋ジストロフィーを治療する方法に関する。さらに、本開示は、DMD患者において、mRNAリーディングフレームを回復させてエクソンスキッピングを誘導する方法に関する。本開示はまた、DMD患者におけるジストロフィン産生を増加させる方法に関する。
【0031】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当該分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料が、本発明の実施または試験で使用され得るが、好ましい方法および材料が記載される。本発明の目的のために、以下の用語が以下に定義される。
【0032】
I.定義
「約」とは、基準の数量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量、または長さに対して30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%ほどまで変化する数量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量、または長さを意味する。
【0033】
「エクソン45スキッピングに適している」とは、対象または患者に関して本明細書で使用される場合、ジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピングがないことにより、リーディングフレームがアウトオブフレームとなり、それによりプレmRNAの翻訳が妨げられて、対象または患者がジストロフィンを産生することができなくなる、ジストロフィン遺伝子の一つ以上の変異を有する対象および患者を含むことが意図される。ジストロフィン遺伝子の下記のエクソンにおける変異の非限定的な例はエクソン45スキッピングに適しており、例えば、エクソン7~42、12~42、18~42、44~46、44~47、44~48、44~49、44~51、44~53、44~55、44~57、または44~59、またはエクソン44の欠失が挙げられる。患者がエクソンスキッピングに適しているジストロフィン遺伝子の変異を有するかどうかを決定することは、十分に当業者の理解の範囲内である(例えば、Aartsma-Rus et al.(2009)Hum Mutat.30:293-299,Gurvich et al.,Hum Mutat.2009;30(4) 633-640、およびFletcher et al.(2010)Molecular Therapy 18(6)1218-1223を参照)。
【0034】
用語「アンチセンスオリゴマー」および「アンチセンス化合物」および「アンチセンスオリゴヌクレオチド」および「オリゴマー」および「オリゴヌクレオチド」は、本開示では互換的に使用され、サブユニット間リンケージによって結合される環状サブユニットの配列を指し、各環状サブユニットは、(i)リボース糖またはその誘導体、および(ii)それに結合する塩基対部分からなり、それにより、塩基対部分の順序が、ワトソン-クリック塩基対による核酸(典型的にはRNA)の標的配列に対して相補的な塩基配列を形成し、標的配列内に核酸:オリゴマーヘテロ二本鎖を形成する。ある特定の実施形態では、オリゴマーは、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(「PMO」)である。他の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2’-O-メチルホスホロチオエートである。他の実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、または2’-O,4’-C-エチレン架橋核酸(ENA)などの架橋核酸(BNA)である。
【0035】
「相補的な」および「相補性」という用語は、ワトソン-クリック塩基対合則によって互いに関連する二つ以上のオリゴマー(すなわち、各々が核酸塩基配列を含む)を指す。例えば、核酸塩基配列「T-G-A(5’→3’)」は、核酸塩基配列「A-C-T(3’→5’)」に相補的である。相補性は、「部分的」であり得、所与の核酸塩基配列の全てには満たない核酸塩基が、塩基対合則に従って他の核酸塩基配列とマッチされる。例えば、いくつかの実施形態において、所与の核酸塩基配列と別の核酸塩基配列との間の相補性は、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%であり得る。あるいは、例を続けると、所与の核酸塩基配列と別の核酸塩基配列との間に「完全な(complete)」または「完全な(perfect)」(100%)相補性が存在し得る。核酸塩基配列間の相補性の程度は、配列間のハイブリダイゼーションの効率および強度に有意な影響を与える。
【0036】
「ジストロフィン」は、ロッド状の細胞質タンパク質であり、筋線維の細胞骨格を、細胞膜を通して周囲の細胞外マトリックスに連結するタンパク質複合体の重要な部分である。ジストロフィンは複数の機能ドメインを含有する。例えば、ジストロフィンは、約アミノ酸14~240にアクチン結合ドメイン、および約アミノ酸253~3040に中央ロッドドメインを含有する。この大きな中央ドメインは、α-アクチニンおよびスペクトリンと相同性を有する約109アミノ酸の24個のスペクトリン様三重らせん状要素によって形成される。リピートは、典型的には、ヒンジ領域とも呼ばれる四つのプロリンが豊富な非リピートセグメントによって中断される。リピート15および16は、ジストロフィンのタンパク質切断のための主要な部位を提供するように見える18アミノ酸の伸長によって分離される。ほとんどのリピート間の配列同一性は、10~25%の範囲である。一つのリピートは、三つのα-ヘリックス:1、2および3を含有する。α-ヘリックス1および3はそれぞれ、7つのヘリックスターンによって形成され、おそらく疎水性界面を介してコイルドコイルとして相互作用する。α-ヘリックス2は、より複雑な構造を有し、グリシンまたはプロリン残基によって分離される四つおよび三つのヘリックスターンのセグメントによって形成される。各リピートは二つのエクソンによってコードされ、典型的にはα-ヘリックス2の最初の部分におけるアミノ酸47と48の間のイントロンによって中断される。他のイントロンは、通常はヘリックス-3上に散乱されて、リピート中の異なる位置に見られる。ジストロフィンはまた、システインが豊富なセグメント(すなわち、280アミノ酸中15個のシステイン)を含んで、約アミノ酸3080~3360でシステインが豊富なドメインを含有し、粘菌(キイロタマホコリカビ)α-アクチニンのC末端ドメインと相同性を示す。カルボキシ末端ドメインは、約アミノ酸3361~3685にある。
【0037】
ジストロフィンのアミノ末端はF-アクチンに結合し、カルボキシ末端は筋鞘でジストロフィン結合タンパク質複合体(DAPC)に結合する。DAPCには、ジストログリカン、サルコグリカン、インテグリン、およびカベオリンが含まれ、これらの構成要素のいずれかにおける変異は、常染色体遺伝性筋ジストロフィーを引き起こす。DAPCは、ジストロフィンが存在しない場合に不安定化され、その結果、メンバータンパク質のレベルが減少し、よって進行性の線維損傷および膜漏出に至る。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)およびベッカー型筋ジストロフィー(BMD)などの筋ジストロフィーの様々な形態において、筋細胞は、主に不正確なスプライシングをもたらす遺伝子配列における変異に起因して、変化したおよび機能的に欠陥のあるジストロフィンの形態を産生するか、またはジストロフィンを全く産生しない。欠陥のあるジストロフィンタンパク質の優勢な発現、あるいはジストロフィンまたはジストロフィン様タンパク質の完全な欠乏は、上述のように、筋変性の急速な進行をもたらす。この点に関して、「欠陥がある」ジストロフィンタンパク質は、当技術分野で公知のように、DMDまたはBMDを有する特定の対象において産生されるジストロフィンの形態によって、または検出可能なジストロフィンが存在しないことによって、特徴付けられ得る。
【0038】
「エクソン」とは、タンパク質をコードする核酸の定められたセクション、あるいは前処理された(または前駆体)RNAのいずれかの部分がスプライシングによって除去された後でRNA分子の成熟形態で表される核酸配列を指す。成熟RNA分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)、またはrRNAもしくはtRNAなどの非コードRNAの機能的形態であり得る。ヒトジストロフィン遺伝子は、約79のエクソンを有する。
【0039】
「イントロン」は、タンパク質に翻訳されない核酸領域(遺伝子内)を指す。イントロンは、前駆体mRNA(プレmRNA)に転写され、その後成熟RNAの形成中にスプライシングにより除去される、非コードセクションである。
【0040】
「有効量」または「治療有効量」は、所望の治療効果を生じるのに有効な、単回投与として、または連続投与のうちの一部としてのどちらかで、哺乳動物対象に投与される、例えばカシメルセンを含む、アンチセンスオリゴマーなどの治療化合物の量を指す。アンチセンスオリゴマーについて、この効果は、選択された標的配列の翻訳もしくは天然のスプライスプロセシングを阻害することによって、またはジストロフィンの産生を増加させるためのエクソンスキッピングによってもたらされ得る。
【0041】
いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマー、またはアンチセンスオリゴマーを含む組成物の有効量は、対象を治療するための期間にわたって、少なくとも4mg/kg、少なくとも10mg/kg、または少なくとも20mg/kgである。いくつかの実施形態において、対象においてジストロフィン陽性線維の数を増加させるための、アンチセンスオリゴマー、またはアンチセンスオリゴマーを含む組成物の有効量は、少なくとも4mg/kg、少なくとも10mg/kg、または少なくとも20mg/kgである。様々な実施形態において、有効量は、少なくとも4mg/kg、少なくとも10mg/kg、約10mg/kg~約20mg/kg、約20mg/kg~約30mg/kg、約25mg/kg~約30mg/kg、または約30mg/kg~約50mg/kgである。いくつかの実施形態において、有効量は、約30mg/kg、または約50mg/kgである。
【0042】
様々な実施形態において、対象においてジストロフィンの産生を増加させるための、アンチセンスオリゴマー、またはアンチセンスオリゴマーを含む組成物の有効量は、少なくとも4mg/kg、少なくとも10mg/kg、または少なくとも20mg/kgである。様々な実施形態において、有効量は、少なくとも4mg/kg、少なくとも10mg/kg、約10mg/kg~約20mg/kg、約20mg/kg~約30mg/kg、約25mg/kg~約30mg/kg、または約30mg/kg~約50mg/kgである。いくつかの実施形態において、有効量は、約30mg/kg、または約50mg/kgである。
【0043】
ある特定の実施形態において、健康な同等者と比較して、患者が、例えば6MWTにおいて、20%の不足から歩行距離を安定化、維持、または改善するための、アンチセンスオリゴマー、またはアンチセンスオリゴマーを含む組成物の有効量は、少なくとも4mg/kg、少なくとも10mg/kg、または少なくとも20mg/kgである。様々な実施形態において、有効量は、少なくとも4mg/kg、少なくとも10mg/kg、約10mg/kg~約20mg/kg、約20mg/kg~約30mg/kg、約25mg/kg~約30mg/kg、または約30mg/kg~約50mg/kgである。いくつかの実施形態において、有効量は、約30mg/kg、または約50mg/kgである。
【0044】
ある特定の実施形態において、有効量は、対象においてジストロフィン陽性線維の数を増加させるために、少なくとも24週間、少なくとも36週間、または少なくとも48週間、少なくとも4mg/kg、少なくとも10mg/kg、約10mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、または約30mg/kg~約50mg/kgである。ある特定の実施形態において、対象におけるジストロフィン陽性線維の増加は、正常の少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%まである。いくつかの実施形態において、治療は、患者においてジストロフィン陽性線維の数を正常の20~60%または30~50%に増加させる。
【0045】
ある特定の実施形態において、健康な同等者と比較して、患者が、例えば6MWTにおいて、20%の不足から歩行距離を安定化または改善するため、有効量は、少なくとも24週間、少なくとも36週間、または少なくとも48週間、少なくとも4mg/kg、少なくとも10mg/kg、約10mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、または約30mg/kg~約50mg/kgである。
【0046】
様々な実施形態において、有効量は、患者においてジストロフィンの産生を増加させるために、少なくとも24週間、少なくとも36週間、または少なくとも48週間、少なくとも4mg/kg、少なくとも10mg/kg、約10mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、または約30mg/kg~約50mg/kgである。いくつかの実施形態では、増加されたジストロフィン産生は、健康な同等者と比較して、約0.1%、0.2%、0.3%、0.5%、0.7%、0.9%、1%、1.01%、1.5%、2%、2.01%、2.5%、3%、3.01%、3.5%、4%、4.01%、4.5%、5%、5.01%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%である。ある特定の実施形態では、ジストロフィン産生の増加分は、健康な同等者と比較して、約0.1%~0.5%、0.5%~0.9%、0.8%~1%、0.9%~1.2%、0.9%~1.0%、0.9%~1.01%、1%~1.01%、1%~1.5%、1.5%~2%、1.9%~2.0%、1.9%~2.01%、2%~2.01%、2%~2.5%、2.5%~3%、2.9%~3.0%、2.9%~3.01%、2%~3.01%、3%~3.5%、3.5%~4%、4%~4.5%、4.5%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%、9%~10%、1%~2%、1%~3%、1%~5%、2%~4%、2%~5%、4%~6%、5%、~8%、8%~10%、1%~5%、2%~6%、3%~7%、4%~8%、5%~10%、10%~12%、12%~15%、15%~20%、17%~20%、20%~22%、20%~25%、25%~30%、または30%~35%であり得る。
【0047】
「増強する」もしくは「増強すること」、または「増加させる」もしくは「増加させること」、または「刺激する」もしくは「刺激すること」は、概して、例えばカシメルセンを含む、一つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチド、またはその医薬組成物が、アンチセンスオリゴヌクレオチドなしか、または対照化合物のいずれかによって引き起こされる応答と比較して、細胞または対象においてより大きい生理学的応答(すなわち、下流効果)をもたらすまたは引き起こす能力を指す。測定可能な生理学的応答は、当該技術分野における理解および本明細書の記載から明らかな応答の中でも特に、機能的な形態のジストロフィンタンパク質の発現の(もしくは産生の)増加、または筋組織におけるジストロフィン関連生物学的活性の増加を含み得る。筋機能の増加も測定され得、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%までの筋機能の増加または改善を含む。機能性ジストロフィンを発現させる筋線維の割合も測定され得、筋線維の約1%、2%、5%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%のジストロフィン発現の増加を含む。例えば、25~30%の線維がジストロフィンを発現させる場合、約40%の筋機能の改善が起こり得ることが示されている(例えば、DelloRusso et al,Proc Natl Acad Sci USA 99:12979-12984,2002を参照)。いくつかの実施形態では、増加されたジストロフィン産生は、健康な同等者と比較して、約0.1%、0.2%、0.3%、0.5%、0.7%、0.9%、1%、1.01%、1.5%、2%、2.01%、2.5%、3%、3.01%、3.5%、4%、4.01%、4.5%、5%、5.01%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%である。ある特定の実施形態では、ジストロフィン産生の増加分は、健康な同等者と比較して、約0.1%~0.5%、0.5%~0.9%、0.8%~1%、0.9%~1.2%、0.9%~1.0%、0.9%~1.01%、1%~1.01%、1%~1.5%、1.5%~2%、1.9%~2.0%、1.9%~2.01%、2%~2.01%、2%~2.5%、2.5%~3%、2.9%~3.0%、2.9%~3.01%、2%~3.01%、3%~3.5%、3.5%~4%、4%~4.5%、4.5%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%、9%~10%、1%~2%、1%~3%、1%~5%、2%~4%、2%~5%、4%~6%、5%、~8%、8%~10%、1%~5%、2%~6%、3%~7%、4%~8%、5%~10%、10%~12%、12%~15%、15%~20%、17%~20%、20%~22%、20%~25%、25%~30%、または30%~35%であり得る。本明細書で使用される場合、「増加されたジストロフィン産生」、「ジストロフィン産生の増加」などは、対象におけるジストロフィン、ジストロフィン様タンパク質、または機能性ジストロフィンタンパク質のうちの少なくとも一つの産生の増加を指す。
【0048】
「増加した」または「増強された」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、アンチセンスオリゴヌクレオチドなし(薬剤の非存在)か、または対照化合物によって産生される量の1.1、1.2、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50倍以上(例えば、500、1000倍)(それらの間の、かつ1を超える全ての整数および小数点、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)である増加を含み得る。
【0049】
用語「低減する」または「阻害する」は、概して、診断技術における日常的な技術に従って測定されるように、本明細書に記載される疾患または状態の症状など、関連する生理学的または細胞応答を「減少させる」本発明の一つ以上のアンチセンス化合物の能力に関連し得る。関連の生理学的または細胞応答(in vivoまたはin vitro)は、当業者に明らかであり、筋ジストロフィーの症状または病理の減少、またはDMDまたはBMDを有する個人で発現されるジストロフィンの改変型などのジストロフィンの欠損型の発現の減少を含み得る。応答の「減少」は、アンチセンス化合物なしか、または対照組成物によって産生される応答と比較して、統計学的に有意であり得、間の全ての整数を含んで、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の減少を含み得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、「機能」および「機能性」などの用語は、生物学的、酵素的、または治療的機能を指す。
【0051】
「機能性」ジストロフィンタンパク質とは概して、DMDまたはBMDを有する特定の対象に存在するジストロフィンタンパク質の「改変」型または「欠損」型と比較した場合典型的に、別の様相で筋ジストロフィーの特徴である筋組織の進行性分解を低減するのに十分な生物学的活性を有するジストロフィンタンパク質を指す。ある特定の実施形態において、機能性ジストロフィンタンパク質は、当該技術分野の通常の技術に従って測定されるように、野生型ジストロフィンのin vitroまたはin vivoの生物学的活性の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%(それらの間の全ての整数を含む)を有し得る。一例として、in vitroでの筋培養におけるジストロフィン関連活性は、筋管サイズ、筋原線維の組織化(または崩壊)、収縮活性、およびアセチルコリン受容体の自発的クラスター化に従って測定され得る(例えば、Brown et al.,Journal of Cell Science.112:209-216,1999を参照)。また、動物モデルは、疾患の病因を研究するための貴重なリソースであり、ジストロフィン関連活性を試験するための手段を提供する。DMD研究に最も広く使用されている動物モデルのうちの二つは、mdxマウスおよびゴールデンレトリバー筋ジストロフィー(GRMD)イヌであり、それらの両方がジストロフィン陰性である(例えば、Collins & Morgan,Int J Exp Pathol 84:165-172,2003を参照)。これらおよび他の動物モデルを使用して、様々なジストロフィンタンパク質の機能活性を測定することができる。ジストロフィンの切断型、例えば、本開示の特定のエクソンスキッピングアンチセンスオリゴヌクレオチドにより産生されるそのような型が含まれる。
【0052】
「モルホリノ」、「モルホリノオリゴマー」、または「PMO」という用語は、以下の一般構造:
【化1】
の、かつSummerton,J.,et al.,Antisense & Nucleic Acid Drug Development,7:187-195(1997)の
図2に記載されるような、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーを指す。本明細書に記載されるモルホリノは、上記の一般構造の全ての立体異性体(およびそれらの混合物)および構造を含むことが意図されている。モルホリノオリゴマーの合成、構造、および結合特性は、米国特許第5,698,685号、同第5,217,866号、同第5,142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,521,063号、同第5,506,337号、同第8,076,476号、および同第8,299,206号に詳述されており、これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態において、モルホリノは、オリゴマーの5’または3’末端で「テール」部分とコンジュゲートされて、その安定性および/または溶解性を高める。例示的なテールとしては、以下が挙げられる:
【化2】
【0053】
そのコード名「SRP-4045」によっても知られている「カシメルセン」は、塩基配列5’-CAATGCCATCCTGGAGTTCCTG-3’(配列番号1)を有するPMOである。カシメルセンは、CAS登録番号1422959-91-8で登録されている。化学名としては、all-P-ambo-[P,2’,3’-トリデオキシ-P-(ジメチルアミノ)-2’,3’-イミノ-2’,3’-セコ](2’a→5’)(C-A-A-T-G-C-C-A-T-C-C-T-G-G-A-G-T-T-C-C-T-G)5’-[4-({2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}カルボニル)-N,N-ジメチルピペラジン-1-ホスホンアミダート](配列番号1)が挙げられる。
【0054】
カシメルセンは以下の構造を有する:
【化3】
また、以下の化学構造によっても表される:
【化4】
【0055】
明確にするために、本開示の構造、例えば上記のカシメルセンの構造は、5’から3’まで連続的であり、構造全体をコンパクトな形態で描写する利便性のために、「中断A」、および「中断B」と表示された様々な図の中断が含まれている。当業者によって理解されるように、例えば、「中断A」の各表示は、これらの点における構造の図の続きを示す。当業者は、上記の構造における「中断B」の各場合について、同じことが当てはまることを理解する。しかしながら、図の中断のいずれも、上記の構造の実際の不連続を示すことを意図しておらず、当業者もそれらがそのように意味するものと理解しないであろう。
【0056】
本明細書で使用される場合、構造式内で使用される一組の括弧は、括弧間の構造特徴が繰り返されることを示す。いくつかの実施形態において、使用される括弧は、「[」および「]」であり得、ある特定の実施形態において、繰り返す構造特徴を示すために使用される括弧は、「(」および「)」であり得る。いくつかの実施形態において、括弧間の構造特徴の繰り返し反復数は、括弧の外側に示される数、例えば、2、3、4、5、6、7などである。様々な実施形態において、括弧間の構造特徴の繰り返し反復数は、「Z」などの括弧の外側に示される変数によって示される。
【0057】
本明細書で使用される場合、直鎖結合または曲がりくねった(squiggly)結合構造式内のキラル炭素またはリン原子に引き寄せられた結合は、キラル炭素またはリンの立体化学が未定義であり、キラル中心の全ての形態を含むことが意図されていることを示す。そのような図の例が以下に示される。
【化5】
【0058】
本明細書で使用される場合、「非経口投与」および「非経口的に投与される」という語句は、通常は注射による、腸内および局所投与以外の投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、および胸骨内の注射および注入を含むが、これらに限定されない。
【0059】
「薬学的に許容される」という語句は、物質または組成物が、製剤を含む他の成分および/またはそれを用いて治療される対象と、化学的および/または毒性学的に適合性がなければならないことを意味する。
【0060】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という語句は、非毒性、不活性固体、半固体もしくは液体充填剤、希釈剤、封入材料、または任意の種類の製剤補助剤を意味する。薬学的に許容される担体として役立ち得る材料のいくつかの例としては、糖類、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルナトリウムセルロース、エチルセルロース、および酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、カカオ脂および坐剤ワックス;油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、および大豆油;グリコール;そのようなプロピレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギニン酸;発熱性物質除去蒸留水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコールであり、リン酸緩衝液、ならびに他の非毒性適合性潤滑剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、および芳香剤、防腐剤、および酸化防止剤もまた、製剤者の判断に従って、組成物内に存在し得る。
【0061】
ジストロフィン合成または産生の「回復」という用語は、概して、本明細書に記載されるアンチセンスオリゴマーを用いた治療後の筋ジストロフィー患者における、切断型ジストロフィンを含むジストロフィンタンパク質の産生を指す。いくつかの実施形態において、治療は、患者におけるジストロフィン産生の1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%(それらの間の全ての整数を含む)の増加をもたらす。いくつかの実施形態において、治療は、対象においてジストロフィン陽性線維の数を正常の少なくとも20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%~100%に増加させる。他の実施形態において、治療は、対象においてジストロフィン陽性線維の数を正常の約20%~約60%または約30%~約50%に増加させる。治療後の患者のジストロフィン陽性線維の割合は、既知の技術を使用して筋生検によって決定され得る。例えば、筋生検は、患者の上腕二頭筋などの好適な筋肉から採取され得る。
【0062】
陽性ジストロフィン線維の割合の分析は、治療前および/もしくは治療後、または治療過程全体を通した時点において実施され得る。いくつかの実施形態において、治療後の生検は、治療前の生検と対側の筋肉から採取される。治療前および治療後のジストロフィン発現研究は、ジストロフィンのための任意の好適なアッセイを使用して実施され得る。いくつかの実施形態において、免疫組織化学的検出は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体などのジストロフィンのためのマーカーである抗体を使用して、筋生検からの組織切片上で実施される。例えば、ジストロフィンのための高感度マーカーであるMANDYS106抗体が使用され得る。任意の好適な二次抗体が使用され得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、ジストロフィン陽性線維の割合は、陽性線維数を、カウントした総線維数で割ることによって計算される。正常な筋肉試料は、100%のジストロフィン陽性線維を有する。したがって、ジストロフィン陽性線維の割合は、正常の割合として表され得る。治療前の筋肉ならびに復帰突然変異線維におけるジストロフィンの微量レベルの存在を制御するために、治療後の筋肉におけるジストロフィン陽性線維をカウントする場合、ベースラインは、各患者からの治療前の筋肉切片を使用して設定され得る。これは、その患者の治療後の筋肉切片におけるジストロフィン陽性線維をカウントするための閾値として使用され得る。他の実施形態において、抗体で染色された組織切片は、Bioquant画像分析ソフトウェア(Bioquant Image Analysis Corporation,Nashville,TN)を使用したジストロフィン定量化にも使用され得る。総ジストロフィン蛍光シグナル強度は、正常の割合として報告され得る。さらに、モノクローナルまたはポリクローナル抗ジストロフィン抗体を用いたウェスタンブロット分析を使用して、ジストロフィン陽性線維の割合を決定することができる。例えば、Novacastraからの抗ジストロフィン抗体NCL-Dys1が使用され得る。また、ジストロフィン陽性線維の割合は、サルコグリカン複合体(β、γ)および/または神経NOSの構成成分の発現を決定することによっても分析され得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、本開示のアンチセンスオリゴマー、例えばカシメルセンを用いた治療は、治療なしで予想されるDMD患者における進行性呼吸筋機能障害および/または不全を遅らせるか、または低減する。いくつかの実施形態において、本開示のアンチセンスオリゴマーを用いた治療は、治療なしで予想される換気補助の必要性を低減または排除し得る。いくつかの実施形態において、疾患の経過を追跡するための呼吸機能の測定、ならびに可能性のある治療介入の評価には、最大吸気圧(MIP)、最大呼気圧(MEP)、および努力肺活量(FVC)が含まれる。MIPおよびMEPは、それぞれ、吸入中および呼気中に人が発生させることができる圧力レベルを測定し、かつ呼吸筋力の感度尺度である。MIPは、横隔膜の筋力低下の尺度である。
【0065】
いくつかの実施形態において、MEPは、MIPおよびFVCを含む他の肺機能検査における変化の前に低下し得る。ある特定の実施形態において、MEPは、呼吸機能障害の早期指標であり得る。ある特定の実施形態において、FVCは、最大吸気後の努力呼気中に排出される空気の総体積を測定するために使用され得る。DMD患者において、FVCは、10代前半まで身体的成長と同時に増加する。しかしながら、成長が疾患の進行によって遅くなるまたは不良になり、筋力低下が進行すると、肺活量は下降期に入り、10~12歳の後、年間約8~8.5パーセントの平均速度で低下する。ある特定の実施形態において、予測MIPパーセント(MIPは体重で調整)、予測MEPパーセント(MEPは年齢で調整)、および予測FVCパーセント(FVCは年齢および身長で調整)は、支持的分析である。
【0066】
本明細書で使用される場合、「対象」または「患者」は、DMDもしくはBMD、またはこれらの状態に関連する症状のいずれか(例えば、筋線維の消失)を有する、またはそのリスクがある対象など、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて治療され得る症状を示す、または症状を示すリスクがある任意の動物を含む。好適な対象(患者)には、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、またはモルモットなど)、家畜、および家庭用動物またはペット(ネコまたはイヌなど)が含まれる。非ヒト霊長類、および好ましくはヒト患者が含まれる。また、エクソン45スキッピングに適しているジストロフィン遺伝子の変異を有する対象においてジストロフィンを産生する方法も含まれる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「小児患者」は、その数字を含んで1歳から21歳までの患者である。
【0068】
本明細書で使用される場合、「全身投与」、「全身に投与される」、「末梢投与」、および「末梢に投与される」という語句は、中枢神経系への直接の投与以外の、化合物、薬物、または他の材料の投与を意味し、これにより患者の系内に入り、ひいては代謝および他の類似のプロセス、例えば、皮下投与などの対象となる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「慢性投与」は、連続的な、定期的な、長期の治療投与、すなわち、実質的な中断のない定期的な投与を指す。例えば、患者の筋ジストロフィーを治療する目的で、少なくとも数週間または数か月または数年の期間での毎日。例えば患者の筋ジストロフィーを治療する目的で、少なくとも数か月または数年の期間で毎週(例えば、少なくとも6週間にわたり毎週、少なくとも12週間にわたり毎週、少なくとも24週間にわたり毎週、少なくとも48週間にわたり毎週、少なくとも72週間にわたり毎週、少なくとも96週間にわたり毎週、少なくとも120週間にわたり毎週、少なくとも144週間にわたり毎週、少なくとも168週間にわたり毎週、少なくとも180週間にわたり毎週、少なくとも192週間にわたり毎週、少なくとも216週間にわたり毎週、または少なくとも240週間にわたり毎週)。
【0070】
本明細書で使用される場合、「定期的な投与」は、用量間に間隔を有する投与を指す。例えば、定期的な投与は、反復され得る固定された間隔(例えば、毎週、毎月)での投与を含む。
【0071】
本明細書で使用される場合、「プラセボ」は、治療効果を有さず、対照として使用され得る物質を指す。
【0072】
本明細書で使用される場合、「プラセボ対照」とは、併用療法、アンチセンスオリゴヌクレオチド、非ステロイド性抗炎症化合物、および/または別の医薬組成物ではなく、プラセボを受ける対象または患者を指す。プラセボ対照は、対象または患者と同じ変異状態を有する場合があり、同年齢であり、歩行能力が類似しており、かつ同じ併用薬(ステロイドなどを含む)を受けている場合がある。
【0073】
「標的化配列」、「塩基配列」、または「核酸塩基配列」という語句は、標的プレmRNA中のヌクレオチドの配列に相補的であるオリゴマーの核酸塩基の配列を指す。本開示のいくつかの実施形態において、標的プレmRNA中のヌクレオチドの配列は、H45A(-03+19)として指定されるジストロフィンプレmRNA中のエクソン45アニーリング部位である。
【0074】
対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)または細胞の「治療」は、対象または細胞の自然経過を変化させる試みにおいて使用される任意の種類の介入である。治療は、限定するものではないが、オリゴマーまたはその医薬組成物の投与を含み、予防的に、または病理学的事象の開始もしくは病原体との接触の後のいずれかに実施され得る。治療は、ある特定の形態の筋ジストロフィーにおけるような、ジストロフィンタンパク質に関連した疾患または状態の症状または病理に対する任意の望ましい効果を含み、例えば、治療されている疾患または状態の、一つ以上の測定可能なマーカーの最小限の変化または改善を含み得る。また、治療されている疾患もしくは状態の進行速度を低下させること、その疾患もしくは状態の発症を遅延させること、またはその発症の重症度を低減することを対象とし得る、「予防的」治療も含まれる。「治療」または「予防」は、必ずしも疾患もしくは状態またはその随伴症状の完全な根絶、治癒、または予防を示すものではない。
【0075】
いくつかの実施形態において、本開示のアンチセンスオリゴマーを用いた治療は、治療なしで予想され得る、または治療なしで予想され得る、ジストロフィン産生を増加させ、疾患進行を遅延させ、歩行能力の喪失を遅らせるかもしくは低減し、筋肉の炎症を低減し、筋肉損傷を低減し、筋機能を改善し、肺機能の喪失を低減し、かつ/または筋肉再生を増強する。いくつかの実施形態において、治療は、疾患進行を維持するか、遅延させるか、または遅らせる。いくつかの実施形態において、治療は、歩行を維持するか、または歩行不能を低減する。いくつかの実施形態において、治療は、肺機能を維持するか、または肺機能の喪失を低減する。いくつかの実施形態において、治療は、例えば、6分間歩行試験(6MWT)によって測定されるように、患者の安定した歩行距離を維持するか、または増加させる。いくつかの実施形態において、治療は、10メートルを歩行/走行する時間(すなわち、10メートル歩行/走行試験)を維持するか、または減少させる。いくつかの実施形態において、治療は、仰臥位から立ち上がるまでの時間(すなわち、起立時間試験)を維持するか、または低減する。いくつかの実施形態において、治療は、四つの標準階段を上る時間(すなわち、4階段上昇試験)を維持するか、または低減する。いくつかの実施形態において、治療は、例えば、MRI(例えば、脚筋のMRI)によって測定されるように、患者の筋肉の炎症を維持するか、または低減する。いくつかの実施形態において、MRIは、T2および/または脂肪画分を測定して、筋変性を特定する。MRIは、炎症、浮腫、筋肉損傷、および脂肪浸潤によって引き起こされる筋肉の構造および組成の変化を特定することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴマーを用いた治療は、ジストロフィン産生を増加させる。いくつかの実施形態では、増加されたジストロフィン産生は、健康な同等者と比較して、約0.1%、0.2%、0.3%、0.5%、0.7%、0.9%、1%、1.01%、1.5%、2%、2.01%、2.5%、3%、3.01%、3.5%、4%、4.01%、4.5%、5%、5.01%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%である。ある特定の実施形態では、ジストロフィン産生の増加分は、健康な同等者と比較して、約0.1%~0.5%、0.5%~0.9%、0.8%~1%、0.9%~1.2%、0.9%~1.0%、0.9%~1.01%、1%~1.01%、1%~1.5%、1.5%~2%、1.9%~2.0%、1.9%~2.01%、2%~2.01%、2%~2.5%、2.5%~3%、2.9%~3.0%、2.9%~3.01%、2%~3.01%、3%~3.5%、3.5%~4%、4%~4.5%、4.5%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%、9%~10%、1%~2%、1%~3%、1%~5%、2%~4%、2%~5%、4%~6%、5%、~8%、8%~10%、1%~5%、2%~6%、3%~7%、4%~8%、5%~10%、10%~12%、12%~15%、15%~20%、17%~20%、20%~22%、20%~25%、25%~30%、または30%~35%であり得る。
【0077】
ある特定の実施形態において、本開示のアンチセンスオリゴマーを用いた治療は、ジストロフィン産生を増加させ、治療なしで予測される歩行不能を遅らせるか、または低減する。例えば、治療は、対象の歩行能力(例えば、歩行の安定化)を安定化するか、維持するか、改善するか、または増加させ得る。いくつかの実施形態において、治療は、例えば、McDonald,et al.(Muscle Nerve,2010;42:966-74、参照により本明細書に組み込まれる)によって記載される6分間歩行試験(6MWT)によって測定されるように、患者の安定した歩行距離を維持するか、または増加させる。6分間歩行距離(6MWD)の変化は、絶対値、変化率、または%予測値の変化として表され得る。いくつかの実施形態において、治療は、健康な同等者と比較して、対象における20%の不足から6MWTで安定した歩行距離を維持または改善する。健康な同等者の典型的なパフォーマンスと比較した6MWTにおけるDMD患者のパフォーマンスは、%予測値を計算することによって決定され得る。例えば、%予測6MWDは、男性の場合、以下の方程式を使用して計算され得る:196.72+(39.81×年齢)-(1.36×年齢2)+(132.28×身長(メートル))。女性の場合、%予測6MWDは、以下の方程式を使用して計算され得る:188.61+(51.50×年齢)-(1.86×年齢2)+(86.10×身長(メートル))(Henricson et al.PLoS Curr.,2012,version 2、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0078】
いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーを用いた治療は、患者における安定した歩行距離を、ベースラインから3、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、または50メートル超まで増加させる(それらの間の全ての整数を含む)。いくつかの実施形態では、増加されたジストロフィン産生は、健康な同等者と比較して、約0.1%、0.2%、0.3%、0.5%、0.7%、0.9%、1%、1.01%、1.5%、2%、2.01%、2.5%、3%、3.01%、3.5%、4%、4.01%、4.5%、5%、5.01%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%である。ある特定の実施形態では、ジストロフィン産生の増加分は、健康な同等者と比較して、約0.1%~0.5%、0.5%~0.9%、0.8%~1%、0.9%~1.2%、0.9%~1.0%、0.9%~1.01%、1%~1.01%、1%~1.5%、1.5%~2%、1.9%~2.0%、1.9%~2.01%、2%~2.01%、2%~2.5%、2.5%~3%、2.9%~3.0%、2.9%~3.01%、2%~3.01%、3%~3.5%、3.5%~4%、4%~4.5%、4.5%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%、9%~10%、1%~2%、1%~3%、1%~5%、2%~4%、2%~5%、4%~6%、5%、~8%、8%~10%、1%~5%、2%~6%、3%~7%、4%~8%、5%~10%、10%~12%、12%~15%、15%~20%、17%~20%、20%~22%、20%~25%、25%~30%、または30%~35%であり得る。
【0079】
DMD患者の筋機能の喪失は、正常な小児の成長および発達の背景に反して起こり得る。実際に、DMDを有する小児は、進行性筋肉障害にもかかわらず、約1年の過程にわたって6MWT中の歩行距離の増加を示し得る。いくつかの実施形態において、DMD患者からの6MWDは、定型発達の対照対象、ならびに年齢および性別が一致した対象からの既存の標準データと比較される。いくつかの実施形態において、正常な成長および発達は、標準データにフィッティングされた年齢および身長に基づく方程式を使用して説明され得る。そのような方程式を使用して、DMDを有する対象における6MWDをパーセント予測(%予測)値に変換することができる。ある特定の実施形態において、%予測6MWDデータの分析は、正常な成長および発達を説明する方法を表し、若年齢(例えば、7歳以下)における機能の増加が、DMD患者における能力の改善というよりむしろ安定を表すことを示し得る(Henricson et al.PLoS Curr.,2012,version 2、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0080】
異なるアンチセンス分子を区別するために、アンチセンス分子の命名法システムが提案および公開された(Mann et al.,(2002)J Gen Med 4,644-654を参照)。この命名法は、以下に示されるように、全てが同じ標的領域に向けられたいくつかのわずかに異なるアンチセンス分子を試験する場合に、特に適切なものとなった。
H#A/D(x:y)
【0081】
最初の文字は、種を示す(例えば、H:ヒト、M:マウス、C:イヌ)。「#」は、標的ジストロフィンエクソン番号を示す。「A/D」は、それぞれエクソンの始点および終点におけるアクセプターまたはドナースプライス部位を示す。(x y)は、アニーリング座標を表し、「-」または「+」は、それぞれイントロンまたはエクソン配列を示す。例えば、A(-6+18)は、標的エクソンの前にあるイントロンの最後の6塩基、および標的エクソンの最初の18塩基を示す。最も近いスプライス部位がアクセプターになるため、これらの座標の前に「A」が付く。ドナースプライス部位におけるアニーリング座標の記載は、D(+2-18)であり得、最後の2エクソン塩基および最初の18イントロン塩基が、アンチセンス分子のアニーリング部位に対応する。エクソンアニーリング座標全体は、A(+65+85)、つまり、そのエクソンの始点から65番目~85番目のヌクレオチドの部位によって表される。
【0082】
II.アンチセンスオリゴヌクレオチド
エクソン45のスキッピングをもたらすジストロフィン遺伝子のプレmRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドが、本開示の方法に従って使用される。
【0083】
そのようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNAの翻訳を遮断または阻害するように、または天然プレmRNAスプライシングプロセシングを阻害するように設計することができ、これがハイブリダイズする標的配列を「対象とする」または「標的化する」と言うことができる。標的配列は、典型的には、mRNAのAUG開始コドン、翻訳抑制オリゴマー、または前処理されたmRNA(pre-processed mRNA)のスプライシング部位、スプライシング抑制オリゴマー(SSO)を含む領域である。スプライシング部位の標的配列は、前処理されたmRNAの通常のスプライシング受容体接合部の下流に、その5’末端1~約25塩基対を有するmRNA配列を含み得る。いくつかの実施形態では、標的配列は、スプライシング部位を含むか、または完全にエクソンコード配列内に含まれるか、またはスプライシング受容体またはドナー部位にわたる、前処理されたmRNAの任意の領域であり得る。オリゴマーは、上述の方法で標的の核酸を標的化する場合、より一般的に、タンパク質、ウイルス、または細菌などの生物関連標的を「標的化する」と言われる。
【0084】
ある特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ジストロフィンプレmRNAのエクソン45標的領域に特異的にハイブリダイズし、エクソン45スキッピングを誘導する。ある特定の実施形態では、ジストロフィンプレmRNAのエクソン45標的領域にハイブリダイズし、エクソン45スキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)である。
【0085】
ある特定の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドはカシメルセンである。
【0086】
カシメルセンは、天然核酸構造の再設計である、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)と呼ばれる新規の合成アンチセンスRNA治療薬の明確なクラスに属する。カシメルセンは、ジストロフィンプレmRNAのエクソン45標的領域にハイブリダイズし、エクソン45スキッピングを誘導するPMOである。カシメルセンは、上記に引用した参考文献、およびさらに、その全体が参照により本明細書に明示的に援用される国際特許出願番号PCT/US2017/040017で詳述される方法を用いて、段階的固相合成によって調製することができる。
【0087】
PMOは、in vivoの非臨床観察に基づく潜在的な臨床的利点を提供する。PMOは、in vivoでの安定性を確保するために、ヌクレアーゼによる酵素分解からRNAを保護する修飾をRNAの糖環に組み込む。PMOは、部分的には、RNA、DNA、および他の多くの合成アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドに見られる5員リボフラーノシル環を置き換える6員合成モルホリノ環の使用によって、天然核酸および他のアンチセンスオリゴヌクレオチドクラスとは区別される。
【0088】
PMOに特異的な非荷電ホスホロジアミデート結合は、潜在的にタンパク質への低減されたオフ標的結合をもたらすと考えられる。PMOは、他の臨床段階の合成アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドに使用される負に荷電されたホスホロチオエート結合の代わりに、各モルホリノ環を連結する非荷電ホスホロジアミデート結合を有する。
【0089】
DMD遺伝子のアウトオブフレーム変異によって引き起こされるDMDの治療に対する潜在的な治療アプローチは、インフレーム変異によって引き起こされるBMDとして既知である、より軽度な形態のジストロフィン異常症によって示唆される。アウトオブフレーム変異をインフレーム変異に変換する能力は、仮定では、mRNAリーディングフレームを保持し、内部的に短縮されたがなお機能的なジストロフィンタンパク質を産生する。カシメルセンは、このことを達成するよう設計された。
【0090】
カシメルセンは、ジストロフィンプレmRNAを標的化し、エクソン45のスキッピングを誘導するため、成熟したスプライシングされたmRNA転写物から除外またはスキッピングされる。エクソン45をスキッピングすることによって、破壊されたリーディングフレームは、インフレーム変異に修復される。DMDは様々な遺伝的サブタイプからなるが、カシメルセンは、ジストロフィンプレmRNAのエクソン45をスキッピングするように特異的に設計された。
【0091】
カシメルセンの22個の核酸塩基の配列は、ジストロフィンプレmRNAの特定のアニーリング部位に対して相補的であるように設計され、処理中にエクソン45のスキッピングを誘導する。カシメルセン中の各モルホリノ環は、DNAに見られる四つの複素環式核酸塩基(アデニン、シトシン、グアニン、およびチミン)のうちの一つに連結される。
【0092】
カシメルセンの標的プレmRNA配列とのハイブリダイゼーションは、プレmRNAスプライシング複合体の形成を妨げ、成熟mRNAからエクソン45を欠失させる。カシメルセンの構造および立体構造により、相補的配列に対する配列特異的塩基対合が可能となる。例えば、ジストロフィンプレmRNAのエクソン51をスキップするよう設計されたPMOであるエテプリルセンは、ジストロフィンプレmRNAのエクソン51に含有される相補的配列に対する配列特異的塩基対合を可能にする。
【0093】
エクソンスキッピングを使用したジストロフィンリーディングフレームの回復
全ての79個のエクソンを含有する正常なジストロフィンmRNAは、正常なジストロフィンタンパク質を産生する。
【0094】
ジストロフィン遺伝子からエクソン全体を失っているジストロフィンmRNAは、典型的には、DMDをもたらす。
【0095】
別のエクソンスキッピングPMOである、エテプリルセンは、エクソン51をスキップして、mRNAリーディングフレームを回復させる。エクソン49が完全なコドンで終了し、エクソン52がコドンの第一のヌクレオチドで始まるため、エクソンスキッピングによるエクソン51の欠失は、リーディングフレームを回復させ、無傷のジストログリカン結合部位を有する内部で短縮されたジストロフィンタンパク質の産生をもたらす。
【0096】
ジストロフィンmRNAオープンリーディングフレームを回復させるためにエクソンスキッピングを使用してDMD表現型を改善する実現可能性は、非臨床試験で裏付けられている。DMDのジストロフィー動物モデルにおける多くの研究は、エクソンスキッピングによるジストロフィンの回復が、筋力と筋機能の確実な改善をもたらすことを示している(Sharp 2011、Yokota 2009、Wu 2008、Wu 2011、Barton-Davis 1999、Goyenvalle 2004、Gregorevic 2006、Yue 2006、Welch 2007、Kawano 2008、Reay 2008、van Putten 2012)。この説得力のある例は、エクソンスキッピング(PMO使用)療法後のジストロフィンレベルを同じ組織の筋機能と比較した研究から得られるものである。ジストロフィーmdxマウスでは、マウスに特異的なPMOで処置した前脛骨筋(TA)筋が、ストレス誘導性収縮後にその最大許容力の約75%を維持したのに対し、未処置の対側TA筋は、その最大許容力の約25%しか維持しなかった(p<0.05)(Sharp2011)。別の研究では、3匹のジストロフィーCXMDイヌ(2~5ヵ月齢)が、週1回で5~7週間または隔週で22週間、その遺伝子変異に対するPMO特異性を使用したエクソンスキッピング療法を受けた。エクソンスキッピング療法後、3匹のイヌ全てが、骨格筋におけるジストロフィンの広範囲の全身に及ぶ発現、ならびにベースラインと比較した歩行(15mのランニング試験)の維持または改善を示した。対照的に、未処置の同齢のCXMDイヌは、研究にわたって歩行の著しい低下を示した(Yokota 2009)。
【0097】
mdxマウス、およびヒトDMD転写物全体を発現させるヒト化DMD(hDMD)マウスモデルの両方において、PMOは、ホスホロチオエートよりも等モル濃度で多くのエクソンスキッピング活性を有することが示された(Heemskirk 2009)。
【0098】
ジストロフィンプレmRNAのエクソン45標的領域に特異的にハイブリダイズし、エクソン45スキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチドの効果を分析するための臨床転帰は、ジストロフィン陽性線維の割合(PDPF)、6分間歩行試験(6MWT)、歩行不能(LOA)、ノーススター歩行評価(NSAA)、肺機能検査(PFT)、外部の支持なしで(仰臥位から)立ち上がる能力、de novoジストロフィン産生、および他の機能的尺度のベースラインからの増加を含む。
【0099】
III.製剤および投与様式
ある特定の実施形態において、本開示は、本明細書に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの治療送達に好適な製剤または医薬組成物を提供する。したがって、ある特定の実施形態において、本開示は、一つ以上の薬学的に許容される担体(添加剤)および/または希釈剤と共に製剤化した、治療有効量の本明細書に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドのうちの一つ以上を含む、薬学的に許容される組成物を提供する。本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドを単独で投与することは可能であるが、化合物を医薬製剤(組成物)として投与することが好ましい。
【0100】
核酸分子の送達のための方法は、例えば、Akhtar et al.,1992,Trends Cell Bio.,2:139;およびDelivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics,ed.Akhtar;Sullivan et al.,PCT WO 94/02595に記載されている。これらおよび他のプロトコルは、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、実質的に任意の核酸分子の送達に利用され得る。
【0101】
下に詳細に記すように、本開示の医薬組成物は、固体または液体形態での投与のために特別に製剤化され得、以下:(1)経口投与、例えば、浸漬液(水性または非水性の溶液または懸濁液)、錠剤、例えば口腔、舌下、または全身吸収を標的とした錠剤、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌に適用するためのペースト、(2)例えば、滅菌溶液もしくは懸濁液または徐放性製剤としての、例えば、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射、または硬膜外注射による非経口投与、(3)例えば、皮膚に適用するためのクリーム、軟膏、または制御放出性パッチもしくは噴霧剤としての局所適用、(4)例えば、ペッサリー、クリーム、もしくは発泡体としての膣内投与または直腸内投与、(5)舌下投与、(6)眼内投与、(7)経皮投与、あるいは(8)経鼻投与に適合されたものを含む。
【0102】
薬学的に許容される担体として役立ち得る材料のいくつかの例としては、(1)糖類、例えば、ラクトース、グルコース、およびスクロース、(2)デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン、(3)セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース、(4)粉末トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)賦形剤、例えば、カカオ脂および坐剤ワックス、(9)油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、および大豆油、(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール、(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール、(12)エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル、(13)寒天、(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム、(15)アルギニン酸、(16)発熱性物質除去蒸留水、(17)等張生理食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)pH緩衝液、(21)ポリエステル、ポリカーボネート、および/またはポリ無水物、ならびに(22)医薬製剤に用いられる他の非毒性適合性物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた製剤に好適な薬剤の追加の非限定的な例としては、PEGコンジュゲート核酸、リン脂質コンジュゲート核酸、親油性部分を含有する核酸、ホスホロチオエート、様々な組織への薬物の侵入を増強することができるP糖タンパク質阻害剤(Pluronic P85など);生分解性ポリマー、例えば、埋め込み後の徐放性送達のためのポリ(DL-ラクチド-コグリコリド)ミクロスフェア(Emerich,D F et al.,1999,Cell Transplant,8,47-58)Alkermes,Inc.Cambridge,Mass.;および負荷ナノ粒子、例えば、血液脳関門にわたって薬物を送達することができ、神経取込み機構を変化させることができる、ポリブチルシアノアクリレートからなるもの(Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry,23,941-949,1999)が挙げられる。
【0104】
本開示はまた、ポリ(エチレングリコール)脂質(PEG修飾、分岐、および非分岐、もしくはそれらの組み合わせ、または長期循環型リポソームもしくはステルスリポソーム)を含有する、表面修飾リポソームを含む組成物の使用を特徴とする。本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、様々な分子量の共有結合PEG分子も含むことができる。これらの製剤は、標的組織における薬物の蓄積を増加させるための方法を提供する。このクラスの薬物担体は、単核細胞貪食系(MPSまたはRES)によるオプソニン化および排除に抵抗し、それにより、封入薬物の血液循環時間の延長および組織曝露の増強を可能にする(Lasic et al.Chem.Rev.1995,95,2601-2627、Ishiwata et al.,Chem.Pharm.Bull.1995,43,1005-1011)。そのようなリポソームは、おそらく溢血および血管新生標的組織における捕捉によって、腫瘍に選択的に蓄積することが示されている(Lasic et al.,Science 1995,267,1275-1276、Oku et al.,1995,Biochim.Biophys.Acta,1238,86-90)。長期循環型リポソームは、特にMPSの組織に蓄積することが知られている従来的なカチオン性リポソームと比較して、DNAおよびRNAの薬物動態および薬力学を増強する(Liu et al.,J.Biol.Chem.1995,42,24864-24870、Choi et al.,国際PCT公開第WO96/10391号、Ansell et al.,国際PCT公開第WO96/10390号、Holland et al.,国際PCT公開第WO96/10392号)。また、長期循環型リポソームは、肝臓や脾臓などの代謝的に攻撃的なMPS組織において蓄積を回避するそれらの能力に基づいて、カチオン性リポソームと比較して、より大きい程度まで薬物をヌクレアーゼ分解から保護する可能性が高い。
【0105】
さらなる実施形態において、本開示は、米国特許第6,692,911号、同第7,163,695号、および同第7,070,807号に記載されるような、送達のために調製されたアンチセンスオリゴヌクレオチド医薬組成物を含む。この点に関して、一実施形態において、本開示は、単独で、あるいはPEG(例えば、分岐もしくは非分岐PEG、または両方の混合物)と組み合わせて、PEGと標的化部分もしくは架橋剤と組み合わせた上記のいずれかと組み合わせて、リシンおよびヒスチジン(HK)のコポリマーを含む組成物中の本開示のオリゴマー(米国特許第7,163,695号、同第7,070,807号、および6,692,911号に記載)を提供する。ある特定の実施形態において、本開示は、グルコン酸修飾ポリヒスチジンまたはグルコニル化ポリヒスチジン/トランスフェリン-ポリリシンを含む医薬組成物中のアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。当業者であれば、HisおよびLysに類似した特性を有するアミノ酸が組成物内で置換され得ることも認識するであろう。
【0106】
本明細書に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドのある特定の実施形態は、アミノまたはアルキルアミノなどの塩基性官能基を含有し得、ひいては薬学的に許容される酸と薬学的に許容される塩を形成することができる。この点における「薬学的に許容される塩」という用語は、本開示の化合物の比較的非毒性の無機酸および有機酸付加塩を指す。これらの塩は、投与ビヒクルまたは剤形製造プロセスにおいて原位置で調製され得るか、または本開示の精製された化合物を、その遊離塩基形態で、好適な有機酸もしくは無機酸と別々に反応させ、その後の精製中にそのようにして形成された塩を単離することによって調製され得る。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩などが挙げられる。(例えば、Berge et al.(1977)「Pharmaceutical Salts」,J.Pharm.Sci.66:1-19を参照)。
【0107】
主題のアンチセンスオリゴヌクレオチドの薬学的に許容される塩は、例えば、非毒性の有機酸または無機酸からの化合物の従来的な非毒性塩または第四級アンモニウム塩を含む。例えば、そのような従来的な非毒性塩としては、無機酸に由来するもの、例えば、塩酸塩、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸など;ならびに有機酸から調製された塩、例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸(salicyclic)、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸(isothionic)などが挙げられる。
【0108】
ある特定の実施形態において、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、一つ以上の酸性官能基を含有し得、ひいては薬学的に許容される塩基と薬学的に許容される塩を形成することができる。これらの事例において、「薬学的に許容される塩」という用語は、本開示の化合物の比較的非毒性の無機塩基および有機塩基付加塩を指す。これらの塩は同様に、投与ビヒクルまたは剤形製造プロセスにおいて原位置で調製され得るか、または精製された化合物を、その遊離酸形態で、好適な塩基、例えば、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、もしくは重炭酸塩と、アンモニアと、または薬学的に許容される有機第一級アミン、第二級アミン、もしくは第三級アミンと別々に反応させることによって調製され得る。代表的なアルカリまたはアルカリ土類塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウム塩などが挙げられる。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが挙げられる。(例えば、上記のBergeらを参照)。
【0109】
湿潤剤、乳化剤、および潤滑剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、および芳香剤、防腐剤、および酸化防止剤も組成物中に存在し得る。
【0110】
薬学的に許容される酸化防止剤の例としては、(1)水溶性酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど、(2)油溶性酸化防止剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど、および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。
【0111】
本開示の製剤としては、経口、経鼻、局所(口腔および舌下を含む)、直腸、膣、および/または非経口投与に好適な製剤が挙げられる。製剤は、便利に単位剤形で提示され得、薬学の技術分野で周知の任意の方法によって調製され得る。単一剤形を生成するために担体材料と組み合わされ得る有効成分の量は、治療される宿主、特定の投与様式に応じて異なる。単一剤形を生成するために担体材料と組み合わされ得る有効成分の量は、概して、治療効果をもたらす化合物の量である。概して、100パーセントのうち、この量は、有効成分の約0.1パーセント~約99パーセント、好ましくは約5パーセント~約70パーセント、最も好ましくは約10パーセント~約30パーセントの範囲である。
【0112】
ある特定の実施形態において、本開示の製剤は、シクロデキストリン、セルロース、リポソーム、ミセル形成剤、例えば、胆汁酸、およびポリマー担体、例えば、ポリエステルおよびポリ無水物から選択される賦形剤と、本開示のオリゴマーと、を含む。ある特定の実施形態において、上記の製剤は、本開示のオリゴマーを経口的にバイオアベイラビリティにする。
【0113】
これらの製剤または医薬組成物を調製する方法は、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、担体、および任意に一つ以上の副成分と会合させるステップを含む。概して、製剤は、本開示の化合物を、液体担体、もしくは微粉化固体担体、またはその両方と均一かつ密接に会合させ、次いで、必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0114】
経口投与に好適な本開示の製剤は、カプセル、カシェ、丸剤、錠剤、トローチ(風味付けした基剤、通常はスクロースおよびアカシアもしくはトラガカントを使用)、散剤、顆粒剤、または水性もしく非水性液体の溶液もしくは懸濁液として、または水中油もしくは油中水の液体エマルションとして、またはエリキシル剤もしくはシロップとして、または香錠(不活性塩基、例えば、ゼラチンおよびグリセリン、もしくはスクロースおよびアカシアを使用)として、および/または口内洗浄液として、などの形態であり得、各々が、有効成分として、所定量の本開示の化合物を含有する。本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、ボーラス、舐剤、またはペーストとして投与され得る。
【0115】
経口投与のための本開示の固形剤形(カプセル、錠剤、丸剤、糖剤、散剤、顆粒剤、トローチなど)において、有効成分は、一つ以上の薬学的に許容される担体、例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、および/または以下:(1)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸、(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシア、(3)保湿剤、例えば、グリセロール、(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム、(5)溶解遅延剤、例えば、パラフィン、(6)吸収促進剤、例えば、第四級アンモニウム化合物および界面活性剤、例えば、ポロキサマーおよびラウリル硫酸ナトリウム、(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセロール、および非イオン性界面活性剤、(8)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土、(9)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、およびそれらの混合物、(10)着色剤、ならびに(11)放出制御剤、例えば、クロスポビドンまたはエチルセルロースのうちのいずれかと混合され得る。カプセル、錠剤、および丸剤の場合、医薬組成物はまた、緩衝剤を含み得る。類似の種類の固体医薬組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用した、軟質および硬質シェルのゼラチンカプセル中の充填剤としても用いられ得る。
【0116】
錠剤は、任意に一つ以上の副成分との圧縮または成型によって作製され得る。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散剤を使用して調製され得る。成型錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を好適な機械で成型することによって作製され得る。
【0117】
本開示の医薬組成物の錠剤および他の固体剤形、例えば、糖剤、カプセル、丸剤、および顆粒剤は、任意に、コーティングおよびシェル、例えば、腸溶性コーティング、および医薬品製剤技術で周知の他のコーティングを用いて獲得または調製され得る。また、それらは、所望の放出プロファイル、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを提供するために、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを様々な割合で使用して、その中の有効成分の徐放または制御放出を提供するように製剤化され得る。それらは、例えば、凍結乾燥など、迅速放出のために製剤化され得る。それらは、例えば、細菌保持フィルタを通した濾過によって、または使用直前に滅菌水中もしくはいくつかの他の滅菌注射用培地中に溶解され得る滅菌固体医薬組成物の形態の滅菌剤を組み込むことによって滅菌され得る。これらの医薬組成物はまた、任意に不透明化剤を含有し得、消化管のある特定の部分においてのみ、または消化管のある特定の部分において優先的に、任意に遅延した様式で、有効成分(複数可)を放出する組成物であり得る。使用され得る埋め込み組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。有効成分はまた、適切な場合、上記の賦形剤のうちの一つ以上を有するマイクロカプセルの形態でもあり得る。
【0118】
本開示の化合物の経口投与のための液体剤形としては、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤が挙げられる。有効成分に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ソルビタンのポリエチレングリコールおよび脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物など、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含有し得る。
【0119】
不活性希釈剤に加えて、経口医薬組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤、ならびに防腐剤などのアジュバントも含むことができる。
【0120】
活性化合物に加えて、懸濁液は、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物などの懸濁剤を含有し得る。
【0121】
直腸投与または膣投与のための製剤は、坐剤として提示され得、これは、本開示の一つ以上の化合物を、例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコール、坐剤ワックス、またはサリチル酸塩を含む一つ以上の好適な非刺激性賦形剤または担体と混合することによって調製され得、これは室温では固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸または膣腔で溶解し、活性化合物を放出する。
【0122】
本明細書に提供されるオリゴマーの局所投与または経皮投与のための製剤または剤形としては、散剤、噴霧剤、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、および吸入剤が挙げられる。活性アンチセンスオリゴヌクレオチドは、滅菌条件下で、薬学的に許容される担体と、および必要とされ得る任意の防腐剤、緩衝液、または噴射剤と混合され得る。軟膏、ペースト、クリーム、およびゲルは、本開示の活性化合物に加えて、動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、および酸化亜鉛、またはそれらの混合物などの賦形剤を含有し得る。
【0123】
散剤および噴霧剤は、本開示のオリゴマーに加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有することができる。噴霧剤はさらに、クロロフルオロ炭化水素などの通例の噴射剤、ならびにブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素を含有することができる。
【0124】
経皮パッチは、本開示のオリゴマーの体内への制御送達を提供するというさらなる利点を有する。そのような剤形は、オリゴマーを適切な培地中に溶解するか、または培地中に分散させることによって作製され得る。吸収促進剤もまた、皮膚にわたる薬剤の流れを増加させるために使用され得る。そのような流れの速度は、当該技術分野で公知の方法の中でも特に、速度制御膜を提供すること、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中に薬剤を分散させることのいずれかによって制御され得る。
【0125】
非経口投与に好適な医薬組成物は、一つ以上の薬学的に許容される滅菌等張水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルション、または使用直前に滅菌注射用溶液もしくは分散液に再構成され得る滅菌粉末と組み合わせて、本開示の一つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含み得、これらは、糖、アルコール、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤、製剤を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含有し得る。本開示の医薬組成物で用いられ得る好適な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液の場合に必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0126】
また、これらの医薬組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などのアジュバントを含有してもよい。主題のアンチセンスオリゴヌクレオチドに対する微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含むことによって確保され得る。また、糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含むことが望ましい場合もある。さらに、注射用剤形の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの、吸収を遅延させる薬剤を含むことによってもたらされ得る。
【0127】
場合によっては、薬物の効果を延長するために、皮下注射または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましい。これは、当該技術分野で既知の方法の中でも特に、水溶性が乏しい結晶性または非晶質材料の液体懸濁液の使用によって達成され得る。次いで、薬物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、溶解速度は、順に、結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経口的に投与された薬物形態の吸収の遅延は、薬物を油ビヒクルに溶解または懸濁することによって達成される。
【0128】
注射用デポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で主題のアンチセンスオリゴヌクレオチドのマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製され得る。ポリマーに対するオリゴマーの比率および用いられる特定のポリマーの性質に応じて、オリゴマー放出の速度が制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用製剤はまた、体内組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルションに薬物を封入することによっても調製され得る。
【0129】
本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドが、ヒトおよび動物に医薬品として投与される場合、それらは、それ自体で、または例えば、薬学的に許容される担体と組み合わせた有効成分の0.1~99%(より好ましくは10~30%)を含有する医薬組成物として投与することができる。
【0130】
上述のように、本開示の製剤または調製物は、経口的、非経口的、局所的、または直腸に投与され得る。これらは、典型的には、各投与経路に好適な形態で投与される。例えば、それらは、錠剤もしくはカプセルの形態で、注射、吸入、目薬、軟膏、坐剤他によって、注射、点滴、もしくは吸入による投与によって、ローションもしくは軟膏による局所的な投与によって、および坐剤による直腸への投与によって、投与される。
【0131】
選択される投与経路にかかわらず、好適な水和形態で使用され得る本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチド、および/または本開示の医薬組成物は、当業者に既知の従来的な方法によって薬学的に許容される剤形に製剤化され得る。本開示の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者に対して許容できないほど毒性であることなく、特定の患者、組成物、および投与様式に対して望ましい治療応答を達成するために有効である有効成分の量を得るために変動し得る。
【0132】
選択される投与量レベルは、用いられる本開示の特定のオリゴマー、またはそのエステル、塩、もしくはアミドの活性、投与経路、投与時刻、用いられる特定のオリゴマーの排泄速度または代謝速度、吸収の速度および程度、治療期間、用いられる特定のオリゴマーと組み合わせて使用される他の薬物、化合物、および/または材料、治療中の患者の年齢、性別、体重、条件、全般的な健康状態、および既往歴、ならびに医学技術で周知の同様の要因を含む、様々な要因に依存する。
【0133】
当該技術分野における通常の技術を有する医師または獣医であれば、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定および処方することができる。例えば、医師または獣医は、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルで、医薬組成物に用いられる本開示の化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることができる。概して、本開示の化合物の好適な1日用量は、治療効果をもたらすのに有効な最低用量である化合物の量である。そのような有効量は、概して、上に記載される要因に依存する。概して、患者のための本開示の化合物の経口、静脈内、脳室内、および皮下用量は、示された効果のために使用される場合、1日当たり体重1キログラム当たり約0.0001~約100mgの範囲である。
【0134】
いくつかの実施形態において、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、概して、約4~100mg/kg、約10~100mg/kg、または20~100mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、例えば静脈内投与なとの非経口的な用量は、約0.5mg~100mg/kgである。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドが、間の全ての整数を含んで、約4mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、17mg/kg、20mg/kg、21mg/kg、25mg/kg、26mg/kg、27mg/kg、28mg/kg、29mg/kg、30mg/kg、31mg/kg、32mg/kg、33mg/kg、34mg/kg、35mg/kg、36mg/kg、37mg/kg、38mg/kg、39mg/kg、40mg/kg、41mg/kg、42mg/kg、43mg/kg、44mg/kg、45mg/kg、46mg/kg、47mg/kg、48mg/kg、49mg/kg、50mg/kg、51mg/kg、52mg/kg、53mg/kg、54mg/kg、55mg/kg、56mg/kg、57mg/kg、58mg/kg、59mg/kg、60mg/kg、65mg/kg、70mg/kg、75mg/kg、80mg/kg、85mg/kg、90mg/kg、95mg/kg、または100mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、オリゴマーは、約4mg/kgで投与される。いくつかの実施形態において、オリゴマーは、約10mg/kgで投与される。いくつかの実施形態において、オリゴマーは、約20mg/kgで投与される。いくつかの実施形態において、オリゴマーは、約30mg/kgで投与される。いくつかの実施形態において、オリゴマーは、約40mg/kgで投与される。いくつかの実施形態において、オリゴマーは、約50mg/kgで投与される。
【0135】
必要に応じて、活性化合物の有効な1日用量は、1日を通して適切な間隔で、任意に単位剤形で別々に投与される、2、3、4、5、6回、またはそれ以上の部分用量として投与されてもよい。ある特定の状況において、投与量は1日1回の投与である。ある特定の実施形態において、投与量は、機能性ジストロフィンタンパク質の所望の発現を維持するために、必要に応じて、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日毎、あるいは1または2週毎に1回以上の投与である。ある特定の実施形態において、投与は、毎週1回の投与である。ある特定の実施形態において、投与量は、2週間に1回の、1回以上の投与である。いくつかの実施形態において、投与量は、2週間に1回の、1回投与である。
【0136】
様々な実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約4mg/kgで毎週投与される。様々な実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約10mg/kgで毎週投与される。様々な実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約20mg/kgで毎週投与される。様々な実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約30mg/kgで毎週投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約40mg/kgで毎週投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約50mg/kgで毎週投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約60mg/kgで毎週投与される。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、80mg/kgで毎週投与される。本明細書で使用される場合、毎週は、1週間毎の当該技術分野で一般に認められた意味を有すると理解される。
【0137】
様々な実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約4mg/kgで隔週で投与される。様々な実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約10mg/kgで隔週で投与される。様々な実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約20mg/kgで隔週で投与される。様々な実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約30mg/kgで隔週で投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約40mg/kgで隔週で投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約50mg/kgで隔週で投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約60mg/kgで隔週で投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約80mg/kgで隔週で投与される。本明細書で使用される場合、隔週は、2週間毎の当該技術分野で一般に認められた意味を有すると理解される。
【0138】
核酸分子は、当業者に既知の様々な方法によって細胞に投与され、このような方法としては、本明細書に記載され、かつ当該技術分野において既知であるような、リポソームへの封入、イオン導入、またはヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、および生体接着性ミクロスフェアなどの他のビヒクルへの組み込みが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、マイクロ乳化技術を利用して、親油性(非水溶性)医薬剤のバイオアベイラビリティを改善し得る。例としては、Trimetrine(Dordunoo,S.K.,et al.,Drug Development and Industrial Pharmacy,17(12),1685-1713,1991、およびREV 5901(Sheen,P.C.,et al.,J Pharm Sci 80(7),712-714,1991)が挙げられる。利点の中でも特に、マイクロ乳化は、循環系の代わりにリンパ系への吸収を優先的に誘導し、それにより肝臓を迂回し、肝胆道循環における化合物の破壊を防止することによって、増強されたバイオアベイラビリティを提供する。
【0139】
開示の一態様において、製剤は、本明細書に提供されるオリゴマーから形成されるミセルと、ミセルが約100nm未満の平均直径を有する少なくとも一つの両親媒性担体とを含有する。より好ましい実施形態は、約50nm未満の平均直径を有するミセルを提供し、さらに好ましい実施形態は、約30nm未満またはさらに約20nm未満の平均直径を有するミセルを提供する。
【0140】
全ての好適な両親媒性担体が企図されるが、現在好ましい担体は概して、一般的に安全と認められている(GRAS)状態を有し、かつ本開示の化合物を可溶化すること、および溶液が複雑な水相(ヒト胃腸管に見られるものなど)と接触する後の段階でマイクロ乳化することの両方ができる担体である。これらの要件を満たす両親媒性成分は、通常、HLB(親水性-親油性のバランス)値が2-20であり、それらの構造は、C-6からC-20の範囲の直鎖脂肪族ラジカルを含有する。例としては、ポリエチレングリコール化脂肪酸グリセリドおよびポリエチレングリコールがある。
【0141】
両親媒性担体の例としては、飽和および一不飽和ポリエチレングリコール化脂肪酸グリセリド、例えば、完全または部分的に水素化された様々な植物油から得られるものが挙げられる。そのような油は、有利に、トリ-、ジ-、およびモノ-脂肪酸グリセリド、ならびに対応する脂肪酸のジ-およびモノ-ポリエチレングリコールエステルからなり得、特に好ましい脂肪酸組成物としては、カプリン酸4~10、カプリン酸3~9、ラウリン酸40~50、ミリスチン酸14~24、パルミチン酸4~14、およびステアリン酸5~15%が挙げられる。別の有用なクラスの両親媒性担体としては、飽和もしくは一不飽和脂肪酸(SPAN(登録商標)シリーズ)または対応するエトキシ化類似体(TWEEN(登録商標)シリーズ)を有する、部分的にエステル化されたソルビタンおよび/またはソルビトールが挙げられる。
【0142】
Gelucireシリーズ、Labrafil、Labrasol、またはLauroglycol(全てGattefosse Corporation、サンプリエスト、フランスによって製造および流通)、PEG-モノ-オレイン酸、PEG-ジ-オレイン酸、PEG-モノ-ラウリン酸およびジ-ラウリン酸、レシチン、ポリソルベート80など(米国および世界中の多くの企業によって製造および流通)を含む市販の両親媒性担体が、特に有用であり得る。
【0143】
ある特定の実施形態において、送達は、本開示の医薬組成物を好適な宿主細胞に導入するために、リポソーム、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、小胞などを使用することによって起こり得る。特に、本開示の医薬組成物は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフェア、ナノ粒子、または同様のもののいずれかに封入されて、送達用に製剤化され得る。そのような送達ビヒクルの製剤化および使用は、既知かつ従来的な技術を使用して行われ得る。
【0144】
本開示での使用に好適な親水性ポリマーは、容易に水溶性であり、小胞形成脂質に共有結合することができ、かつ毒性作用なしにin vivoで耐容性がある(すなわち、生体適合性である)ものである。好適なポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(ポリラクチドとも呼ばれる)、ポリグリコール酸(ポリグリコリドとも呼ばれる)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー、およびポリビニルアルコールが挙げられる。ある特定の実施形態において、ポリマーは、約100もしくは120ダルトン~最大で約5,000もしくは10,000ダルトン、または約300ダルトン~約5,000ダルトンの分子量を有する。他の実施形態において、ポリマーは、約100~約5,000ダルトンの分子量を有する、または約300~約5,000ダルトンの分子量を有する、ポリエチレングリコールである。ある特定の実施形態では、ポリマーは、750ダルトンのポリエチレングリコールである(PEG(750))。ポリマーは、その中のモノマーの数によっても定義され得、本開示の好ましい実施形態は、少なくとも約三つのモノマーのポリマー、三つのモノマーからなるそのようなPEGポリマー(約150ダルトン)、を利用する。
【0145】
本開示での使用に適し得る他の親水性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリメトキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、および誘導体化セルロース、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。
【0146】
ある特定の実施形態において、本開示の製剤は、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、アクリルエステルおよびメタクリルエステルのポリマー、ポリビニルポリマー、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそのコポリマー、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、乳酸およびグリコール酸のポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルソ)エステル、ポリ(ブチック酸)(butic acid)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、多糖類、タンパク質、ポリヒアルロン酸、ポリシアノアクリレート、ならびにそれらのブレンド、混合物、またはコポリマーからなる群から選択される生体適合性ポリマーを含む。
【0147】
シクロデキストリンは、6、7、または8グルコース単位からなる環状オリゴ糖であり、それぞれギリシャ文字α、β、またはγによって示される。グルコース単位は、α-1,4-グルコシド結合によって連結される。糖単位の椅子型配座の結果として、全ての二次ヒドロキシル基(C-2、C-3における)が環の一方の側に位置する一方で、C-6における全ての一次ヒドロキシル基は、他方の側に位置する。結果として、外面は親水性であり、シクロデキストリンを水溶性にする。対照的に、シクロデキストリンの空洞は、それらが原子C-3およびC-5の水素によって、ならびにエーテル様酸素によって覆われているため、疎水性である。これらのマトリックスは、例えば、17α-エストラジオールなどのステロイド化合物を含む、様々な比較的疎水性の化合物との複合体形成を可能にする(例えば、van Uden et al.Plant Cell Tiss.Org.Cult.38:1-3-113(1994)を参照)。複合体形成は、ファンデルワールス相互作用および水素結合形成によって起こる。シクロデキストリンの化学的性質に関する一般的なレビューについては、Wenz,Agnew.Chem.Int.Ed.Engl.,33:803-822(1994)を参照されたい。
【0148】
シクロデキストリン誘導体の物理化学的性質は、置換の種類および程度に大きく依存する。例えば、それらの水溶性は、不溶性(例えば、トリアセチル-ベータ-シクロデキストリン)から147%可溶性(w/v)(G-2-ベータ-シクロデキストリン)の範囲である。さらに、それらは多くの有機溶媒に可溶性である。シクロデキストリンの特性は、それらの溶解性を増減させることによって、様々な製剤構成成分の溶解度の制御を可能にする。
【0149】
多数のシクロデキストリンおよびそれらの調製のための方法が記載されている。例えば、Parmeter(I)ら(米国特許第3,453,259号)およびGrameraら(米国特許第3,459,731号)は、電気的中性シクロデキストリンについて記載した。他の誘導体としては、カチオン特性を有するシクロデキストリン[Parmeter(II)、米国特許第3,453,257号]、不溶性架橋シクロデキストリン(Solms、米国特許第3,420,788号)、およびアニオン特性を有するシクロデキストリン[Parmeter(III)、米国特許第3,426,011号]が挙げられる。アニオン特性を有するシクロデキストリン誘導体のうち、カルボン酸、亜リン酸、亜ホスフィン酸、ホスホン酸、リン酸、チオホスホン酸、チオスルフィン酸、およびスルホン酸は、親シクロデキストリンに付加されている[Parmeter(III)、上記参照]。さらに、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体は、Stellaら(米国特許第5,134,127号)によって記載されている。
【0150】
リポソームは、水性内部区画を取り囲む少なくとも一つの脂質二重層膜からなる。リポソームは、膜の種類およびサイズによって特徴付けられ得る。小型単一ラメラ小胞(SUV)は、単一膜を有し、典型的には直径が0.02~0.05μmの範囲であり、大型単一ラメラ小胞(LUV)は、典型的には0.05μmよりも大きい。大型オリゴラメラ小胞および多重ラメラ小胞は、複数の、通常は同心性の膜層を有し、典型的には0.1μmよりも大きい。いくつかの非同心膜を有するリポソーム、すなわち、より大きい小胞内に含有されるいくつかのより小さい小胞は、多胞体小胞と呼ばれる。
【0151】
本開示の一態様は、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有するリポソームを含む製剤に関し、リポソーム膜は、増加した担持能力を有するリポソームを提供するように製剤化される。あるいは、または加えて、本開示の化合物は、リポソームのリポソーム二重層内に含有され得るか、またはその上に吸着され得る。本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、脂質界面活性剤と凝集され、リポソームの内部空間内に担持され得る。これらの場合、リポソーム膜は、活性薬剤-界面活性剤凝集体の崩壊効果に抵抗するように製剤化される。
【0152】
本開示の一実施形態によると、リポソームの脂質二重層は、ポリエチレングリコール(PEG)で誘導体化された脂質を含有し、これによりPEG鎖は、脂質二重層の内面から、リポソームによって封入された内部空間へと延在し、かつ脂質二重層の外部から周囲環境へと延在する。
【0153】
本開示のリポソーム内に含有される活性薬剤は、可溶化形態である。界面活性剤および活性薬剤の凝集体(対象の活性薬剤を含有するエマルションまたはミセルなど)は、本開示によるリポソームの内部空間内に閉じ込められ得る。界面活性剤は、活性薬剤を分散させ可溶化するように作用し、様々な鎖長(例えば、約C14~約C20)の生体適合性リゾホスファチジルコリン(LPG)を含むがこれに限定されない、任意の好適な脂肪族、脂環式、または芳香族界面活性剤から選択され得る。PEG-脂質などのポリマー誘導体化脂質は、ミセル/膜融合を阻害するように作用するため、また界面活性剤分子へのポリマーの添加が界面活性剤の臨界ミセル濃度(「CMC」)を減少させ、ミセル形成を助けるため、ミセル形成にも利用され得る。マイクロモル範囲のCMCを有する界面活性剤が好ましく、より高いCMC界面活性剤を利用して、本開示のリポソーム内に閉じ込められたミセルを調製し得る。
【0154】
本開示によるリポソームは、当該技術分野で既知の様々な技術のいずれかによって調製され得る。例えば、米国特許第4,235,871号、公開PCT出願第WO96/14057号、New RRC,Liposomes:A practical approach,IRL Press,Oxford(1990),pages 33-104;Lasic DD,Liposomes from physics to applications,Elsevier Science Publishers BV,Amsterdam,1993を参照されたい。例えば、本開示のリポソームは、リポソーム中で所望の誘導体化脂質の最終モルパーセントに相当する脂質濃度で、親水性ポリマーで誘導体化された脂質を予め形成されたリポソームに拡散することによって、例えば、予め形成されたリポソームを脂質グラフトポリマーから構成されるミセルに曝露することによって、調製され得る。親水性ポリマーを含有するリポソームはまた、当該技術分野で既知のように、均質化、脂質場水和、または押出技術によって形成され得る。
【0155】
別の例示的な製剤化手順において、活性薬剤はまず、疎水性分子を容易に可溶化するリゾホスファチジルコリンまたは他の低CMC界面活性剤(ポリマーグラフト脂質を含む)中での音波処理によって分散される。次いで、活性薬剤の得られたミセル懸濁液を使用して、好適なモルパーセントのポリマーグラフト脂質またはコレステロールを含有する乾燥脂質試料を再水和する。次いで、脂質および活性薬剤懸濁液は、当該技術分野で既知の押出技術を使用してリポソームに形成され、得られたリポソームは、標準的なカラム分離によって封入されていない溶液から分離される。
【0156】
本開示の一態様において、リポソームは、選択されたサイズ範囲において実質的に均一なサイズを有するように調製される。一つの効果的なサイズ決定方法は、選択された均一な孔径を有する一連のポリカーボネート膜を通してリポソームの水性懸濁液を押し出すことを伴い、膜の孔径は、その膜を通した押出によってもたらされるリポソームの最大サイズに概ね相当する。例えば、米国特許第4,737,323号(1988年4月12日)を参照されたい。ある特定の実施形態において、DharmaFECT(登録商標)およびLipofectamine(登録商標)などの試薬を利用して、ポリヌクレオチドまたはタンパク質を細胞に導入し得る。
【0157】
本開示の製剤の放出特性は、封入材料、封入薬物の濃度、および放出調節剤の存在に依存する。例えば、放出は、例えば、胃にあるような低pH、または腸にあるような高pHでのみ放出するpH感受性コーティングを使用して、pH依存性になるように操作され得る。腸溶性コーティングは、胃を通過した後まで放出が起こらないように使用され得る。異なる材料に封入されたシアナミドの複数のコーティングまたは混合物を使用して、胃内で初期放出を得て、続いて腸内で後の放出を得ることができる。放出はまた、塩または細孔形成剤を含むことによっても操作され得、これは、カプセルからの拡散による水取込みまたは薬物の放出を増加させることができる。薬物の溶解性を修正する賦形剤は、放出速度を制御するためにも使用され得る。マトリックスの分解またはマトリックスからの放出を増強する薬剤も組み込まれ得る。それらは、薬物に添加され得、別個の相として(すなわち、微粒子として)添加されるか、または化合物に応じてポリマー相に共溶解され得る。ほとんどの場合、量は、0.1~30パーセント(w/wポリマー)であるべきである。分解促進剤の種類としては、硫酸アンモニウムおよび塩化アンモニウムなどの無機塩、クエン酸、安息香酸、およびアスコルビン酸などの有機酸、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、および水酸化亜鉛などの無機塩基、ならびにプロタミン硫酸塩、スペルミン、コリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンなどの有機塩基、ならびにTween(登録商標)およびPluronic(登録商標)などの界面活性剤が挙げられる。マトリックスに微細構造を付加する細孔形成剤(すなわち、無機塩および糖類などの水溶性化合物)が、微粒子として添加される。範囲は、典型的には、1~30パーセント(w/wポリマー)である。
【0158】
また、取込みは、腸内の粒子の滞留時間を変化させることによっても操作され得る。これは、例えば、粒子を粘膜接着性ポリマーでコーティングするか、または封入材料として選択することによって達成され得る。例としては、遊離カルボキシル基を有するほとんどのポリマー、例えば、キトサン、セルロース、および特にポリアクリレート(本明細書で使用される場合、ポリアクリレートは、アクリレート基、ならびにシアノアクリレートおよびメタクリレートなどの修飾アクリレート基を含むポリマーを指す)が挙げられる。
【0159】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、外科用もしくは医療用のデバイスまたはインプラント内に含有されるように製剤化され得るか、またはそれによって放出されるように適合され得る。ある特定の態様において、インプラントは、アンチセンスオリゴヌクレオチドでコーティングされ得るか、または別の方法で処理され得る。例えば、ヒドロゲル、または生体適合性および/もしくは生分解性ポリマーなどの他のポリマーを使用して、本開示の医薬組成物でインプラントをコーティングし得る(すなわち、組成物は、ヒドロゲルまたは他のポリマーを使用することによって医療デバイスと共に使用するように適合され得る)。医療デバイスを薬剤でコーティングするためのポリマーおよびコポリマーは、当該技術分野で周知である。インプラントの例としては、ステント、薬剤溶出性ステント、縫合糸、人工器官、血管カテーテル、透析カテーテル、血管グラフト、人工心臓弁、心臓ペースメーカー、植込み型除細動器、IV針、接骨および骨形成用デバイス、例えば、ピン、スクリュー、プレート、および他のデバイス、ならびに創傷治癒のための人工組織マトリックスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0160】
本明細書に提供される方法に加えて、本開示による使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、他の医薬品から類推して、ヒトまたは獣医学で使用するための任意の便利な方法で投与するために製剤化され得る。アンチセンスアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびそれらの対応する製剤は、単独で、または筋芽細胞移植、幹細胞療法、アミノグリコシド系抗生物質の投与、プロテアソーム阻害剤、および上方制御療法(例えば、ジストロフィンの常染色体パラログであるユートロフィンの上方制御)などの筋ジストロフィーの治療における他の治療戦略と組み合わせて投与され得る。
【0161】
いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与の前に、それと同時に、またはその後に投与され得る。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ステロイドおよび/または抗生物質と組み合わせて投与され得る。ある特定の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、バックグラウンドステロイド理論(例えば、間欠的または長期/連続的バックグラウンドステロイド療法)を受けている患者に投与される。例えば、いくつかの実施形態において、患者は、アンチセンスオリゴマーの投与前にコルチコステロイドを用いて治療されており、ステロイド療法を受け続けている。いくつかの実施形態において、ステロイドは、糖質コルチコイドまたはプレドニゾンである。
【0162】
記載される投与経路は、当業者が任意の特定の動物および状態にとって最適な投与経路および任意の投与量を容易に決定することができるため、指針としてのみ意図される。in vitroおよびin vivoの両方で、機能的な新しい遺伝子材料を細胞に導入するための複数のアプローチが試みられている(Friedmann(1989)Science,244:1275-1280)。これらのアプローチとしては、発現する遺伝子の修飾レトロウイルスへの組み込み、(Friedmann(1989)、上記、Rosenberg(1991)Cancer Research 51(18),suppl.:5074S-5079S)、非レトロウイルスベクター(例えば、アデノ関連ウイルスベクター)への組み込み(Rosenfeld,et al.(1992)Cell,68:143-155、Rosenfeld,et al.(1991)Science,252:431-434)、またはリポソームを介した異種プロモーター-エンハンサーエレメントに連結された導入遺伝子の送達(Friedmann(1989)、上記、Brigham,et al.(1989)Am.J.Med.Sci.,298:278-281、Nabel,et al.(1990)Science,249:1285-1288、Hazinski,et al.(1991)Am.J.Resp.Cell Molec.Biol.,4:206-209、およびWang and Huang(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),84:7851-7855)、リガンド特異的、カチオン系輸送システムとの結合(Wu and Wu(1988)J.Biol.Chem.,263:14621-14624)、またはネイキッドDNA、発現ベクターの使用(Nabel et al.(1990)、上記)、Wolff et al.(1990) Science,247:1465-1468)が挙げられる。導入遺伝子の組織への直接注射は、局所発現のみをもたらす(Rosenfeld(1992)、上記、Rosenfeld et al.(1991)、上記、Brigham et al.(1989)、上記、Nabel(1990)、上記、およびHazinski et al.(1991)、上記)。Brighamらのグループ(Am.J.Med.Sci.(1989)298:278-281およびClinical Research(1991)39(要約))は、DNAリポソーム複合体の静脈内または気管内のいずれかの投与後のマウスの肺のin vivoトランスフェクションのみを報告している。ヒト遺伝子治療手順のレビュー文献の一例は、Anderson,Science(1992)256:808-813である。
【0163】
さらなる実施形態において、本開示の医薬組成物は、Han et al.,Nat.Comms.7,10981(2016)(この全体は、参照により本明細書に組み込まれる)に提供されるように、炭水化物を追加的に含み得る。いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、5%のヘキソース炭水化物を含み得る。例えば、本開示の医薬組成物は、5%のグルコース、5%のフルクトース、または5%のマンノースを含み得る。ある特定の実施形態において、本開示の医薬組成物は、2.5%のグルコースおよび2.5%のフルクトースを含み得る。いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、5体積%の量で存在するアラビノース、5体積%の量で存在するグルコース、5体積%の量で存在するソルビトール、5体積%の量で存在するガラクトース、5体積%の量で存在するフルクトース、5体積%の量で存在するキシリトール、5体積%の量で存在するマンノース、各々が2.5体積%の量で存在するグルコースとフルクトースの組み合わせ、ならびに5.7体積%の量で存在するグルコース、2.86体積%の量で存在するフルクトース、および1.4体積%の量で存在するキシリトールの組み合わせから選択される炭水化物を含んでもよい。
【0164】
IV.キット
本開示はまた、遺伝的疾患(例えばDMD)を有する患者の治療のためのキットを提供し、このキットは、好適な容器に包装された、少なくともアンチセンス分子(例えばカシメルセン)を、その使用についての説明書と共に備える。キットはまた、緩衝液、安定剤などの周辺試薬も含有し得る。当業者であれば、上記方法の用途が、多くの他の疾患の治療に使用するのに好適なアンチセンス分子を特定するために幅広い用途を有することを理解するべきである。
【実施例】
【0165】
実施例1:エッセンス
ClinicalTrials.govのID:NCT02500381
本試験の主な目的は、エクソン45およびエクソン53のそれぞれのスキッピングに適しているアウトオブフレーム欠失変異を有するデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者におけるカシメルセン(SRP-4045)およびゴロディルセン(SRP-4053)の有効性をプラセボと比較して評価することである。
【表1】
【0166】
材料および方法
カシメルセン(別名SRP-4045)は、本明細書に記載される化学構造のPMOであり、サレプタ・セラピューティクス(Sarepta Therapeutics),Inc.によって供給された。カシメルセン製剤は、単回使用バイアルで供給される滅菌、等張性、リン酸緩衝水溶液として50mg/mLの濃度で製剤化された。製剤を、臨床現場においてIV注入を介した投与の前に、生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム注射液)で希釈した。
【0167】
患者:適格性
適格患者は7~13歳で、エクソン45のスキッピングに適しているDMD遺伝子のアウトオブフレーム欠失を有した。
選択基準:
・ 遺伝子型で裏付けられ、DMDと診断されている。
・ 少なくとも24週間の経口コルチコステロイドの安定用量。
・ インタクトな左右の二頭筋または二つの代替的な上筋群。
・ 平均6MWTが300メートル以上、450メートル以下。
・ 安定した肺および心機能:予測された50%以上の努力肺活量(FVC)、50%超の左室駆出分画率(LVEF)。
除外基準:
・ 任意の時点でのSMT C1100(BMN-195)による過去の治療
・ 任意の時点での遺伝子治療による治療
・ 第1週目の前24週間以内のPRO045またはPRO053による過去の治療
・ 第1週目の前12週間以内の、任意の他の実験的治療(デフラザコート以外)による現在または過去の治療
・ 第1週目の前12週間以内の任意の他のDMD介入臨床試験への参加
・ 第1週目の前3か月以内の大手術
・ 他の臨床的に意義のある疾患の存在
・ 第1週目の前3ヵ月以内の理学療法レジメンの大幅な変更。
【0168】
治験デザイン
エクソン45スキッピングに適している患者は、二重盲検期間において、最大96週間、30mg/kgでカシメルセン(SRP-4045)静脈内(IV)注入を受けた。これに続く非盲検継続期間では、すべての患者が、非盲検期間(最大試験の第144週目まで)の48週間、カシメルセン(SRP-4045)を30mg/kg/週のIV注入での非盲検積極的治療を受ける。
主要評価項目:第96週目の6分歩行試験(6MWT)中の総歩行距離におけるベースラインからの変化[時間枠:ベースラインおよび第96週目]。
副次的評価項目:
・ 第144週目(非盲検期間の第48週目)の6分歩行試験(6MWT)中の総歩行距離におけるベースラインからの変化[時間枠:ベースライン、第144週目]。
・ 第48週目または第96週目でウェスタンブロットによって判定されたジストロフィンタンパク質レベルのベースラインからの変化[時間枠:ベースラインおよび第48週目または第96週目]。
・ 第48週目または第96週目で免疫組織化学検査(IHC)により判定されたジストロフィン強度レベルのベースラインからの変化[時間枠:ベースラインおよび第48週目または第96週目]。
・ 床から独力で立ち上がる能力[時間枠:第96週目、第144週目]。
・ 歩行能力喪失までの時間(LOA)[時間枠:ベースライン、第96週目、第144週目]。
・ 第96週目および第144週目におけるノーススター歩行評価(NSAA)総スコアのベースラインからの変化[時間枠:ベースライン、第96週目、第144週目]。NSAAは、特に歩行可能なデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の小児に使用するための、運動能力のハマースミススケール(Hammersmith Scale of Motor Ability)から考案された機能的尺度である。これは、0(実施不能)、1(修正を伴う実施)、2(通常の動作)に等級付けされた17の活動からなる。尺度は、機能的に歩行可能な状態を保つために必要な活動(例えば、床から立ち上がる)、疾患の初期でも困難であり得る活動(例えばかかとで立つ)、および経時的に進行性に悪化することが知られている活動(椅子から立ち上がる、歩く)を評価する。NSAA合計スコアは0~34点の範囲であり、34点は正常な機能を意味する。
・ 第96週目および第144週目で予測される努力肺活量パーセント(FVC%)のベースラインからの変化[時間枠:ベースライン、第96週目、第144週目]。
【0169】
中間解析
エクソン45スキッピングに適している患者は、96週間、カシメルセン30mg/kg(N=27)の、またはプラセボ(N=16)の静脈内(IV)注入を週に1回受けるように無作為化された。ベースラインおよび治療中の第48週目の二頭筋の生検からのデータについて、中間解析を実施した。
中間解析からの主な所見には、以下が含まれる。
・ 平均ジストロフィンタンパク質(ウェスタンブロットにより測定された正常ジストロフィンの%)は、平均ベースラインが正常の0.925%であったのに対し、正常の1.736%に増加した(p<0.001)。
・ ベースラインから第48週目までのジストロフィンタンパク質の平均変化における統計的有意差が、プラセボ群と比較して、カシメルセン投与群の間で観察された(p=0.009(感度分析)p=0.004(メインメソッド分析(main method analysis))。
・ 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用した開始時の解析で、エクソンスキッピングmRNAの増加について試験された、カシメルセンを投与された22人の患者のうち、全患者が、ベースラインレベルを越えてエクソン45のスキッピングの増加(p<0.001)を示し、100%の奏効率を示した。
・ 開始時の解析では、エクソン45スキッピングとジストロフィン産生の間に統計学的に有意な正の相関が観察された(スピアマンの順位相関=0.635、p<0.001)。
・ 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用してエクソンスキッピングmRNAの増加について試験された、カシメルセンを投与された27人の患者の解析において、全患者が、ベースラインレベルを越えてエクソン45のスキッピングの増加(p<0.001)を示し、100%の奏効率を示した。
・ 全27人の患者の解析では、エクソン45スキッピングとジストロフィン産生の間に統計学的に有意な正の相関が観察された(スピアマンの順位相関=0.627、p<0.001)。
本試験は継続中であり、追加の有効性および安全性データを収集するために盲検化されたままである。
【0170】
実施例2:
本試験の主な目的は、エクソン45スキッピングに適している変異が確認された、進行期DMD患者において、カシメルセンの安全性および忍容性を評価し、カシメルセンの薬物動態(PK)を評価することである。
方法
【0171】
多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、用量漸増法、第1/2相試験に、エクソン45スキッピングに適している変異が確認された進行期のDMD患者を登録した。
【0172】
二重盲検用量漸増法の期間中、患者は、約12週間にわたるカシメルセンまたはプラセボの投与に無作為化(2:1)された。カシメルセンに無作為化された患者は、用量レベル当たり2週間以上、週に1回、静脈内(IV)注入により、4段階(4、10、20、および30mg/kg)の漸増用量レベルを投与された。二重盲検用量漸増法の期間の後、週に1回のカシメルセン30mg/kgの安全性および有効性を、さらに最大132週間までの非盲検継続期間で評価した。
【0173】
患者:適格性
適格患者は、エクソン45スキッピングに適していることが確認された遺伝子変異を有する、DMDの臨床診断を受けた7~21歳の男性で、安定した心臓および肺機能を有し、試験開始前の24週間以上にわたって経口コルチコステロイドの安定用量か、または経口コルチコステロイドを投与されておらず、歩行不能であるか、または6分間歩行試験において300メートル以上の歩行が不可能であった。
【0174】
試験の評価
安全性評価には、治療下で発生した有害事象(TEAE)、臨床検査値異常、バイタルサインおよび身体検査における異常、ならびに心電図および心エコー図の臨床的に有意な悪化が含まれた。
【0175】
PK評価には、濃度-時間曲線下面積(AUC)、全身クリアランス(CL)、最高血中濃度(Cmax)、終末相半減期(t1/2)、最高血中濃度の時間(tmax)、および定常状態での分布容積(Vss)が含まれた。
【0176】
データは、要約統計量および記述統計量を使用して評価され、提示された。
【0177】
PK測定値を連続的に収集した場合のビジット(visit)の非コンパートメント解析を使用して、カシメルセンのPKパラメータを計算した。
【0178】
結果
登録された患者12名のうち、11名(91.7%)が試験を完了した。カシメルセン治療に無作為化された患者は、プラセボに無作為化された患者よりも、概してわずかに年齢が高く、より進行した疾患を有していた(表1)。
【表2】
aベースラインは、治験薬の初回投与前の最終値として定義された。
b歩行可能でない患者は、6MWTの距離が0メートルであると考えられた。
6MWT、6分間歩行試験;BMI、体格指数;SD、標準偏差。
【0179】
試験の平均(SD)総時間は、144.7(3.45)週間であった。組み合わせた試験期間中のカシメルセン治療の平均(SD)期間は、139.6(9.26)週間であった。
【0180】
安全性
すべての患者が、表2に記載される治療下で発生した有害事象(TEAE)を、一つ以上経験した。
【表3】
a二重盲検期間にカシメルセンで治療された患者について報告されたTEAEもまた、カシメルセン期間の概要に含まれる。
bTEAEが原因で、治験薬を中止したり、治験薬の投与量を減量したりした患者はおらず、試験中に死亡は発生しなかった。
【0181】
TEAEが原因で、治験薬を中止したり、治験薬の投与量を減量したりした患者はいなかった。大半のTEAEの重症度は、二重盲検投与期間(88.7%)および非盲検投与期間(90.9%)の両方において軽度であった。処置による疼痛および上咽頭炎は、それぞれ二重盲検および非盲検治療期間中に最も頻繁に報告されたTEAEであった(表3および表4)。
【表4】
a治験薬の初回投与の後、非盲検期間の初回投与までに発生日があるTEAEのみが含まれる。
【表5】
aカシメルセンの初回投与後の発生日を有するTEAEのみが含まれる。
【0182】
治療関連TEAEは、カシメルセンによる治療を受けた2人の患者のうちの中等度の鉄欠乏症の1例、および軽度の紅潮の1例、およびプラセボ投与された1人の患者で軽度の接触皮膚炎であった。カシメルセンに関連するTEAEは、試験期間中に回復した。プラセボに関連するTEAEは、試験終了時に継続していた。
【0183】
組み合わされた治療期間中に、カシメルセン30mg/kgを投与された患者に、5件の重篤なTEAE(1名に脛骨骨折、1名に菌血症、敗血症性塞栓、および大静脈血栓症、および1名に大腿骨骨折)が発生した。5件すべての事象は、治療に関連しないとみなされ、試験中に回復し、さらに投与しても再発しなかった。
【0184】
血液学検査、凝固異常、化学、または他の臨床検査測定機関パラメータにパターン、傾向、または異常は観察されなかった。心臓信号は、心エコー図による伝導時間または機能評価では見られなかった。一過性心室頻拍の1例が報告されたが、事象は、カシメルセン治療とは無関係と考えられ、心電図は後遺症なく正常化した。
【0185】
薬物動態
30mg/kg用量レベルについて、第7週目および第60週目では、平均血漿カシメルセン濃度対時間プロファイルは類似していた。すべてのPKパラメータは、30mg/kg用量レベルのカシメルセンについて、第7週目および第60週目で類似していた(表5)。
【表6】
値は、最高血中濃度到達時間および血中半減期を除くすべてのパラメータの幾何平均(変動率の幾何係数)として表され、最高血中濃度到達時間は中央値(最小-最大)として表され、血中半減期は平均値(標準偏差)として表される。
a第3週目で、AUC
∞、定常状態での分布容積、クリアランス、および血中半減期について、n=7。
AUC
∞、0時間から無限大時間まで外挿した濃度-時間曲線下面積。
【0186】
概要
この研究では、エクソン45スキッピングに適している変異が確認された、進行期DMD患者において、カシメルセン30mg/kgは忍容性良好であった。報告されたTEAEの大半は重症度が軽度であり、治療関連TEAEはほとんど報告されず、TEAEのために治験薬を中止したり、治験薬の投与量を減量した患者はいなかった。臨床的に意義がある臨床検査値異常も、心電図および心エコー図の悪化も認められなかった。カシメルセンのPK解析は、30mg/kgの週に1回投与後の蓄積がほとんどまたは全くないことを示唆する。
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【0187】
本明細書で引用される全ての出版物および特許出願は、各個々の出版物または特許出願が具体的かつ個々に参照によって組み込まれるように指示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】