(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-26
(54)【発明の名称】空中浮遊微生物中和システムおよび空中浮遊微生物を中和する方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/20 20060101AFI20220519BHJP
【FI】
A61L9/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556807
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(85)【翻訳文提出日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2020056448
(87)【国際公開番号】W WO2020193133
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509005513
【氏名又は名称】アルファ-ラヴァル・コーポレート・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・リーチ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ハーヴィー
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ベル
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180DD03
4C180DD20
4C180EA23Y
4C180EA24Y
4C180HH05
4C180HH17
4C180HH19
4C180JJ02
(57)【要約】
空中浮遊微生物を中和するためのシステムが、空気流を調整する調節部分であり、吸気口と、排気口と、該吸気口に対して下流に配置されている充填室と、該充填室に対して下流に配置されておりかつ充填室の上方に配置されている分配室であり、液体乾燥剤を、充填室に向かって分配室内へ噴霧する少なくとも1つの噴霧ノズルを含む、分配室と、充填室の下に配置されているサンプと、液体乾燥剤を該サンプから少なくとも1つの噴霧ノズルまで推進させるポンプと、液滴収集室を通って流動する空気流から液滴を除去するための、少なくとも1つの噴霧ノズルに対して下流に配置されている液滴収集室と、該液滴収集室に対して下流にかつ排気口に対して上流に配置されているUV消毒室とを含む、調節部分を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中浮遊微生物を中和するためのシステムであって、
空気流を調整する調節部分であり、
微生物を含む空気を受け入れる吸気口と、
微生物を含まない空気を供給する排気口と、
前記吸気口に対して下流に配置されている充填室であり、繊維状の充填材で満たされている、充填室と、
前記システムが通常の使用位置にある場合、前記充填室に対して下流に配置されておりかつ前記充填室の上方に配置されている分配室であり、液体乾燥剤を、前記充填室に向かって前記分配室内へ噴霧する少なくとも1つの噴霧ノズルを含む、分配室と、
重力により前記分配室から前記充填室に侵入した前記液体乾燥剤を受け入れるために、前記システムが前記通常の使用位置にある場合、前記充填室の下に配置されているサンプと、
前記液体乾燥剤を前記サンプから前記少なくとも1つの噴霧ノズルまで推進させるポンプと、
液滴収集室を通って流動する前記空気流から液滴を除去するために、前記少なくとも1つの噴霧ノズルに対して下流に配置されている前記液滴収集室と、
前記液滴収集室に対して下流にかつ前記排気口に対して上流に配置されているUV消毒室であり、前記空気流をUV照射に暴露するためのUVエネルギー源を含む、UV消毒室と、
を含む、調節部分
を含む、システム。
【請求項2】
前記液体乾燥剤は水と塩との混合物を含み、前記塩はCaCl
2またはLiClであり、前記混合物中の前記塩の濃度は10%と60%の間である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記混合物中の前記塩の前記濃度は20%と45%の間である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記UVエネルギー源はLEDまたは低圧UVランプである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記低圧UVランプは低圧水銀ランプである、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記UV消毒室内のUVCエネルギーの強度が少なくとも10W/m
2である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記UV消毒室内のUVCエネルギーの強度が少なくとも50W/m
2である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記UV消毒室内のUVCエネルギーの強度が少なくとも124W/m
2である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記調節部分および/または内部部品が非金属プラスチックで構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記液滴収集室は交換可能なパッドデミスタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記吸気口から前記排気口まで前記空気流を生成する送風機をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記空気流は3m/s未満の速度を確定する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記空気流は2.235m/s未満の速度を確定する、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記システムは、前記液体乾燥剤を冷却するために、前記サンプと前記少なくとも1つの噴霧ノズルとの間に熱交換器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
UV照射への前記暴露が、前記液滴収集室から下流で、移動する気流内で起こる、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記UV消毒室は、微生物不活性化のために、空気流における124W/m
2のUVCエネルギーおよび3m/s未満の速度を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記UV消毒室は配列状のUVエネルギー源を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記液体乾燥剤を再生する再生部分をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記再生部分は、乾燥した空気用の第2の吸気口と湿度の高い空気用の第2の排気口との間に延在しており、第2の流動方向を定め、
前記第2の吸気口に対して下流に配置されている第2の充填室であり、第2の高性能充填材で満たされている、第2の充填室と、
前記システムが通常の使用位置にある場合、前記第2の充填室に対して下流に配置されておりかつ前記第2の充填室の上方に配置されている第2の噴霧室であり、前記液体乾燥剤を、第2の充填部分に向かって前記第2の噴霧室内へ噴霧する少なくとも1つの第2の噴霧ノズルを含む、第2の噴霧室と、
重力により前記第2の充填室に侵入した、前記第2の噴霧室からの前記液体乾燥剤を受け入れるために、前記システムが前記通常の使用位置にある場合、前記第2の充填室の下に配置されている、第2のサンプと、
前記液体乾燥剤を前記第2のサンプから前記少なくとも1つの第2の噴霧ノズルまでポンプで送る、第2のポンプと、
前記液体乾燥剤を加熱するための、前記第2のサンプと前記少なくとも1つの第2の噴霧ノズルとの間の第2の熱交換器と
を含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
空中浮遊微生物を中和する方法であって、
吸気口と、
排気口と、
前記吸気口に対して下流に配置されている充填室であり、繊維状の充填材で満たされている、充填室と、
システムが通常の使用位置にある場合、前記充填室に対して下流に配置されておりかつ前記充填室の上方に配置されている分配室であり、少なくとも1つの噴霧ノズルを含む、分配室と、
前記システムが前記通常の使用位置にある場合、前記充填室の下に配置されているサンプと、
ポンプと、
前記噴霧ノズルに対して下流に配置されている液滴収集室と、
前記液滴収集室に対して下流にかつ前記排気口に対して上流に配置されているUV消毒室と、
を含む調節部分を設けるステップを含み、
ここで、前記方法は、
微生物を含む空気を前記吸気口内へ導入するステップと、
エンジニア噴霧システムを使用することにより、液体乾燥剤を、充填部分に向かって前記分配室内へ噴霧するステップと、
重力により前記分配室から前記充填室に侵入した前記液体乾燥剤を前記サンプ内へ受け入れるステップと、
前記液体乾燥剤を、前記サンプから前記少なくとも1つの噴霧ノズルまで推進させるステップと、
前記液滴収集室を通って流動する前記空気から液滴を除去するステップと、
前記UV消毒室内で前記空気をUV照射に暴露するステップと、
前記排気口において、微生物を含まない空気を供給するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内環境、特に食品加工および飲料加工ならびに医療現場内の空中浮遊微生物を中和するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品飲料製造施設および医療施設内の、屋内環境内の病原微生物の制御および根絶への懸念が高まっている。適切なHVAC(Heating, Ventilation and Air Conditioning:加熱、換気、および空気調節)を用いることにより、屋内環境内の微生物の数は減少する可能性がある。これは、食品加工および飲料加工を生存空中浮遊汚染物質(viable airborne contaminant)から保護することを補助し、医療現場における患者の転帰を改善する。
【0003】
微生物を不活性化するかまたは殺す目的で、UVGI(Ultra Violet Germicidal Irradiation:紫外線照射による殺菌)を用いることが知られている(URL: https://en.wikipedia.org/wiki/Ultraviolet_germicidal_irradiation参照)。静止している空気と比較して暴露時間が減少するので、UVGIの使用は移動する空気にはそれほど効果的でない。UVGI照射の使用は、通常、空気中の微生物の1~4.5のLOG減少値を生じる。
【0004】
屋内空気を浄化するための、様々な背景技術のデバイスが存在する。例えば、特許文献1は、不純物除去液に接触することにより、周囲空気中に溶解されているかまたは分散されている不純物を除去するための不純物除去液を使用する屋内空気清浄装置に関する。該不純物除去液は、少なくともいくつかの揮発性有機化合物およびガス状汚染物質を、そのような汚染物質を含有する周囲空気から除去することができる非蒸発性液体を含む。微生物は抗菌剤の追加使用により殺される可能性がある。不純物除去液はUV光を照射されて、不純物除去液中に含有される光漂白剤の過酸化物により、有機汚染物質および生物学的汚染物質の破壊に触媒作用を及ぼし得る。
【0005】
特許文献2は、空調室用の熱回収換気装置に関する。吸気は、最初に、殺菌UV光を照射され、次いで、空気から水蒸気を吸収するために塩化リチウム溶液に暴露される。
【0006】
特許文献3は、全熱交換空気清浄器に関する。動作中、屋外の新鮮な空気は、最初に、除塵フィルタを通してフィルタにかけられ、ダスト不純物(dust impurity)をフィルタで除去する。該空気は、次いで、適切な温度および湿度の空気を放出する熱交換器に進入する。該空気は、次いで、紫外線殺菌灯により殺菌される。熱交換器は、優れた熱伝導性を有する金属材料で作製されている。超吸収材料が熱伝導シート間に挟まれている。該超吸収材料は、浸漬処理のために吸水性化学物質の塩化リチウムに晒される布、多孔質ナイロン、または発泡プラスチックシートである。
【0007】
既知の乾燥剤除湿システムは、周囲空気よりも低い蒸気圧をもたらす乾燥剤媒体を使用する。該システムは、URL: http://www.kathabar.com/およびhttp://www.iisgroupllc.com/wp-content/uploads/2013/04/Kathabar-Technical-Bulletin.pdfに示されている。システムは、屋内空気の温度および湿度を制御するために使用され得るが、それは、無菌空気のために空中浮遊微生物を中和する空気除去装置としての機能も果たす。カサバー(Kathabar)システムは、通常、空気中の微生物の1のLOG減少値を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,843,835号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/106812号
【特許文献3】中国実用新案第2152170号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
食品加工および飲料加工ならびに医療現場などの、非常にセンシティブな環境では、生存微生物(viable microbial matter)の100%に近い排除を行う必要がある。したがって、本発明による目的は、屋内環境内の、特に食品加工および飲料加工ならびに医療現場内の空中浮遊微生物を中和するためのシステムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様では、上記目的は、空気流を調整する調節部分であり、微生物を含む空気を受け入れる吸気口と、微生物を含まない空気を供給する排気口とを含み、
該吸気口に対して下流に配置されている充填室であり、繊維状の充填材で満たされている、充填室と、
システムがその通常の使用位置にある場合、該充填室に対して下流に配置されておりかつ充填室の上方に配置されている分配室であり、液体乾燥剤を、充填部分に向かって分配室内へ噴霧する少なくとも1つの噴霧ノズルを含む、分配室と、
重力により該分配室から充填室に侵入した液体乾燥剤を受け入れるために、システムがその通常の使用位置にある場合、充填室の下に配置されているサンプと、
該サンプから噴霧ノズルまで液体乾燥剤を推進させるポンプと、
液滴収集室を通って流動する空気流から液滴を除去するために、噴霧ノズルに対して下流に配置されている液滴収集室と、
該液滴収集室に対して下流にかつ排気口に対して上流に配置されているUV消毒室であり、空気流をUV照射に暴露するためのUVエネルギー源を含む、UV消毒室と
をさらに含む、調節部分を含む、空中浮遊微生物を中和するためのシステムにより達成される。
【0011】
上記システムは液体乾燥剤技術を組み込んでいる。該システムは、生存微生物が調節部分を通過する時にそれを連続的に体系的に除去し無害にすることが、最も重要である。これは、有害な浸透圧ストレス、イオン電荷環境の変化、および/または金属の高濃度に因る毒性に暴露することにより達成される。結果として得られる空気は微生物汚染物質を含まないであろう。
【0012】
空中浮遊微生物が空気流中のエアロゾルすなわち液滴中に含有されているという共通認識がある。一般に、システムは細菌と胞子の両方を不活性化することができる。具体的には、システムは、院内感染および/または食品汚染(food compromising)に関連する下記の病原体:緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、クレブシエラ菌(Klebsiella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、クロストリジウムディフィシレ(Clostridium difficile)、大腸菌(E. coli)、リステリア菌(Listeria)、およびサルモネラ菌(Salmonella)、を不活性化することができる。
【0013】
第1の態様による本システムは、建造物の換気システム内の微生物を除去するために、主として食品産業、飲料産業、および医療産業において使用される換気システムのために使用される調節部分を含む。排気口は、建造物の内部に除湿されたまたは加湿された清浄な空気を供給するように配置されている。
【0014】
吸気口は、通常、建造物の外側に接続されているが、システムは、外気と還気の両方を調整することができ、完全な空気事前濾過部分を組み込むことができる。充填材は、ノズルから噴射される液体乾燥剤を受け入れることができる繊維材料である。空気が充填室を通過する時、気流中に含まれる微生物が該繊維状の充填材内に流入し、そこでそれらは液体乾燥剤と直接接触する。繊維状の充填材は液体乾燥剤に浸漬され、微生物を含有するエアロゾル液滴と液体乾燥剤との間に大接触面を可能にする。液体乾燥剤および該液体乾燥剤に結合される微生物は、重力によりサンプ内へ沈殿する。該サンプ内で、非生存粒子状物質は側流フィルタにより除去され、液体乾燥剤は噴霧ノズルへ戻るように推進される。
【0015】
充填材を通過すると、空気は、噴霧ノズルからのエアロゾル化された液体乾燥剤で溢れている分配室に進む。該噴霧ノズルは分配室内の分配ヘッダの一部を成す。空気は、それにより、空気中の微生物を含む液滴とエアロゾル化された液体乾燥剤との間の接触によりさらに不純物を除去される。噴霧ノズルは充填材の方へ方向付けられており、液体乾燥剤は気流の方向に向かって噴霧される。
【0016】
空気は、次いで、気流中のいかなるエアロゾル化された液体、主に液体乾燥剤の液滴も、UV消毒室へ進む乾燥した空気流から分離される液滴収集室を通過する。液体は収集され、下方に流動し、最終的にサンプに達する、より大きい液滴を形成する。サンプ内の液体は、ポンプを使用して、分配ヘッダへ再循環され、ノズルへ推進させられる。ポンプおよびノズルは、エアロゾル化された液体がノズルにより生成されるように寸法を合わせられるべきである。
【0017】
液体乾燥剤の不純物除去後に空気中に残存する生存微生物は、UV照射により不活性化され、永続的な不活性を引き起こす。
【0018】
4つの異なる室、すなわち充填室、分配室、液滴収集室、およびUV消毒室、を通って流動する空気の結果は、空気中の生存微生物の99.999%の最低限の不活性化、室の各々単独での有効性または任意の以前の同様のデバイスもしくは方法の有効性を実質的に超過する割合である。本発明は、空気中の微生物の少なくとも5.45+/-1.15の平均LOG減少値を生じることができ、それはUVGIシステムおよびカサバーシステム単独でよりもずっと高い。特に、微生物に応じて、本発明は、上記のLOG減少値よりもさらに高い結果を生じるように試験されてきた。例えば、ブドウ球菌(Staph)では、本発明は5.75+/-0.24のLOG減少値を得ている。また、大腸菌の平均LOG減少値は3.93+/-0.08であり、リステリア菌のLOG減少値は4.09+/-0.08であり、エンテロバクター属(Enterobacter)の平均LOG減少値は6.59+/-0.33であった。最後に、サルモネラ菌は6.09の正味LOG減少値より大きい価を示し、シュードモナス菌(Pseudomonas)は4.73の正味LOG減少値より大きい価を示し、クレブシエラ菌種は6.14の最小限の正味LOG減少値を示した。全体に、前述されているように、これらの試験結果は少なくとも5.45+/-1.15の平均LOG減少値を示した。
【0019】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、液体乾燥剤は水と塩との混合物を含み、該塩はCaCl2またはLiClの1つであり、該混合物中の塩の濃度は10%と60%の間、好ましくは20%と45%の間である。正確な濃度は、システムから放出される空気の所望の湿度によって決まる。より多くの湿気が液体乾燥剤により吸収されるので、液体乾燥剤溶液中の塩のより高い濃度がより低い湿度の空気を生じさせる。制御システムが温度および湿度を所望のレベルの範囲内に保つために使用され得る。
【0020】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、UVエネルギー源はLED、または低圧UVランプ、好ましくは低圧水銀ランプなどのランプである。
【0021】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、UV消毒室内のUVCエネルギーの強度が少なくとも10W/m2、好ましくは少なくとも50W/m2、より好ましくは少なくとも124W/m2である。UV消毒デバイスは、空気流を照射して、生存微生物の不活性化を達成することができる適切なUVエネルギーを有さなければならない。
【0022】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、やはり非金属エンジニアプラスチックの内部部品を備えた非金属構成を利用して、調節器が作製される。このようにして、腐食が回避され得る。
【0023】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、液滴収集室は交換可能なパッドデミスタを含む。
【0024】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、システムは、吸気口から排気口まで空気流を生成する送風機をさらに含む。送風機は換気システムの一体的部分と考えられ得る。
【0025】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、空気流は、2.235m/sなどの3m/s未満の速度を確定する。上記速度は空気流の適正な消毒を達成するために適切である。
【0026】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、UV消毒室は配列状のUVエネルギー源を含む。このようにして、完成空気流を十分に照射することがより容易である。乾燥剤溶液接触と組み合わせた、液滴収集室と排気口との間でのUV照射への暴露は、微生物の不活性化の有効性を決定するものである。
【0027】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、システムは、液体乾燥剤の水分吸収特性を再生する再生部分をさらに含む。
【0028】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、再生部分は、乾燥した空気用の第2の吸気口と湿度の高い空気用の第2の排気口との間に延在しており、第2の流動方向を定め、
該吸気口に対して下流に配置されている第2の充填室であり、第2の繊維状の高性能充填材で満たされている、第2の充填室と、
システムがその通常の使用位置にある場合、該第2の充填室に対して下流に配置されておりかつ第2の充填室の上方に配置されている第2の噴霧室であり、液体乾燥剤を、第2の充填部分に向かって噴霧室内へ噴霧する少なくとも1つの第2の噴霧ノズルを含む、第2の噴霧室と、
重力により第2の充填室に侵入した、第2の噴霧室からの液体乾燥剤を受け入れるために、システムがその通常の使用位置にある場合、第2の充填室の下に配置されている、第2のサンプと、
液体乾燥剤を該第2のサンプから第2の噴霧ノズルまでポンプで送る第2のポンプと、
液体乾燥剤を加熱するための、第2のサンプと第2の噴霧ノズルとの間の第2の熱交換器と
を含む。
【0029】
再生部分は調節部分と同様に見え、動作するが、液体乾燥剤は、調節部分の場合のように冷却される代わりに、第2のノズルにより第2の充填部分に向かって噴霧される前に加熱される。第2の吸気口において外気を使用することにより、液体乾燥剤は通過する外気流へ水を放出する。液体乾燥剤は、次いで、冷却されて、調節部分へ戻される前に水分吸収特性を再構築する。
【0030】
本発明の第2の態様では、上記目的が、吸気口と排気口との間に延在する調節部分を設けるステップを含む、空中浮遊微生物を中和する方法により達成され、該調節部分は、
該吸気口に対して下流に配置されている充填室であり、繊維状の充填材で満たされている、充填室と、
システムがその通常の使用位置にある場合、充填室に対して下流に配置されておりかつ充填室の上方に配置されている分配室であり、少なくとも1つの噴霧ノズルを含む、分配室と、
システムがその通常の使用位置にある場合、充填室の下に配置されているサンプと、
ポンプと、
噴霧ノズルに対して下流に配置されている液滴収集室と、
該液滴収集室に対して下流にかつ排気口に対して上流に配置されているUV消毒室(該UV消毒室は微生物不活性化に適切なUVエネルギーを含む)と
をさらに含み、
本方法は、
微生物を含む空気を吸気口内へ導入するステップと、
噴霧ノズルを使用することにより、液体乾燥剤を、充填部分に向かって分配室内へ噴霧するステップと、
重力により分配室から充填室に侵入した液体乾燥剤をサンプ内へ受け入れるステップと、
液体乾燥剤を、サンプから噴霧ノズルへ推進させるステップと、
液滴収集室を通って流動する空気から液滴を除去するステップと、
空気をUV消毒室内で適切なUV照射に暴露するステップと、
排気口において、実質的に微生物を含まない空気を供給するステップと
を含む。
【0031】
第2の態様による本方法は、第1の態様によるシステムと共に使用されることが好ましい。上記方法は液体乾燥剤技術を組み込んでいる。本方法は、生存微生物が調節部分を通過する時にそれを連続的に体系的に除去し無害にすることが、最も重要である。これは、有害な浸透圧ストレス、イオン電荷環境の変化、ならびに/または金属の高濃度に因る毒性およびUV照射に暴露することにより達成される。結果として得られる空気は微生物汚染物質を含まないであろう。
【0032】
本発明の適用性のさらなる範囲が、以下に与えられている詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、当然のことながら、該詳細な説明および特定の例は、本発明の趣旨および範囲内の様々な変更および修正がこの詳細な説明から当業者に明らかになるので、本発明の好適な実施形態を示すと同時に、実例として与えられているに過ぎない。
【0033】
本発明は、以下に与えられている詳細な説明および実例として与えられているに過ぎずかつしたがって本発明に関して制限的でない添付図面から、より完全に理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】調節部分と再生部分とを含む、空中浮遊微生物を中和するシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図が空中浮遊微生物を中和するシステム10を示す。該システムは、別個の調節部分12と再生部分12’とを含む。該調節部分12は、外側から空気を受け入れる吸気口14を含む。送風機40が、吸気口から排気口まで空気流を生成するために設けられ得る。また、送風機40は、空中浮遊微生物を中和するシステム10が設置される換気システムの一体的部分であってもよい。外気および/または還気は、屋内空気中に導入され得るエアロゾル中に含有されている有害な微生物を含み得る。食品/飲料産業および医療施設/産業などのセンシティブな環境では、これら微生物は病気を引き起こす可能性がある。微生物には、緑膿菌、クレブシエラ菌、アシネトバクター属、黄色ブドウ球菌、クロストリジウムディフィシレ、大腸菌、リステリア菌、およびサルモネラ菌が含まれ得る。
【0036】
調節部分12は、非金属エンジニアプラスチックの内部部品を備えた工業用繊維ガラス構造を組み込んでいる。吸気口14からの空気流は、矢印で示されているように180°の旋回で、サンプ領域16を通過して引っ張られる。該サンプ領域16は液体乾燥剤の溶液を含む。システム内の該液体乾燥剤はLiClまたはCaCl2の水溶液であることが好ましく、様々な濃度レベル(20%から45%まで)に調整されることが可能であり、対応する調節された空間に関して必要な温度および湿度のレベルを調整する。流動は、次いで、液体乾燥剤に対する空気の最大表面接触を可能にする、液体乾燥剤を含浸した高効率接触繊維状充填室18内へ進む。
【0037】
分配室20が、調節部分がその通常の使用位置にある場合、充填室18に対して下流にかつ充填室18の上方に配置される。該分配室20は液体乾燥剤噴霧分配ヘッダ22を含む。該噴霧分配ヘッダは、溶液を、充填室18に向かって分配室20内へ噴霧しかつ分配室20内で液体乾燥剤のエアロゾルを生成する1つまたは複数の噴霧ノズル22a~eを含む。該噴霧ノズル22a~eは、特定の粒子サイズおよび分配で、分配室20を液体乾燥剤で溢れさせることができる。分配ヘッダ22は流量調節が備えられている。
【0038】
液滴収集室24が、調節部分がその通常の使用位置にある場合、分配室20に対して下流にかつ分配室20の上方に配置されている。該液滴収集室24は、分配室20のすぐ下流に配置されているエンジニアミスト除去器を含む。液滴収集室24内では、空気流中のいかなる液滴も除去される。本例における液滴収集室24はZバー24aとデミスタパッド24bとを含む。あるいは、該Zバー24aは省かれ、代わりにより厚いデミスタパッド24bが使用されてもよい。
【0039】
その後、空気は、空気流を照射するために適切なUVエネルギーを有するUV消毒室26に進入する。処理された空気は排気口30を通して放出される。溶液処理とUV処理との組み合わせられた効果は、微生物の最低限99.999%の減少を達成する。本例におけるUV照射は配列状のUVランプ28a~cの使用により実施される。
【0040】
液体乾燥剤は、ポンプ32により、サンプ16から分配ヘッダ22へ推進させられる。調節部分12は、ポンプ32と分配ヘッダ22との間に配置されている、外部取付け型の熱交換器34経由の液体乾燥剤の冷却も組み込んでいる。該熱交換器34は、調節部分12の調節された環境内の温度(+-2°)および湿度(+-1%)を制御する。湿度レベルは、温度、および噴霧ノズル22a~eから噴霧されている乾燥剤の濃度により制御される。
【0041】
液体乾燥剤は空気から水分を吸収するので、より多くの水分を吸収するその能力は減退する。したがって、システム10は、乾燥剤溶液の水分吸収特性を再生する再生部分12’も含む。該再生部分12’は調節部分12と類似しており、非金属エンジニアプラスチックの内部部品を備えた工業用繊維ガラス構造を組み込んでいる。
【0042】
再生は溶液の抗菌特性を維持することを必要とされないことが留意されるべきである。しかし、溶液の除湿特性を維持するために、溶液は再生器を通してポンプで送られなければならない。本例では、溶液は、調節部分12のサンプ16から再生部分12’へ推進させられる。本実施形態では、サンプ16から分配ヘッダ22へ推進させられる流動の一部が再生部分12’へ方向転換させられる。弁36が調節部分12から再生部分12’への溶液流を制御するために使用される。再生部分12’のサンプ16’からの再生された液体乾燥剤は、弁36’により制御される同様の方法で調節部分12へ戻される。熱交換器38が調節部分12と再生部分12’との間の対向する溶液流間の温度を同じにするのに使用される。
【0043】
再生部分12’内では、別個の空気流が吸気口14’から受け入れられ、矢印で示されているように180°の旋回で、サンプ領域16’を通過して引っ張られる。吸気口14’から排気口30’まで空気流を生成する送風機40’が設けられ得る。該サンプ領域16’は液体乾燥剤を含む。流動は、次いで、液体乾燥剤に対する空気の最大表面接触を可能にする、液体乾燥剤を含浸した高効率接触充填室18’内へ進む。分配室20’は、再生部分がその通常の使用位置にある場合、充填室18’に対して下流にかつ充填室18’の上方に、配置されている。該分配室20’は溶液噴霧分配ヘッダ22’を含む。該噴霧分配ヘッダは、滴受け、または液体乾燥剤を充填室18’に向かって分配室20’内へ噴霧する1つもしくは複数の噴霧ノズル22a~e’を含む。
【0044】
液滴収集室24’が、再生部分12’がその通常の使用位置にある場合、分配室20’に対して下流にかつ分配室20’の上方に配置されている。溶液が、ポンプ32’により、サンプ16’から分配ヘッダ22’まで推進させられる。再生部分12’は、ポンプ32’と分配ヘッダ22’との間に配置されている熱交換器34’経由の溶液加熱も組み込んでいる。液体乾燥剤を加熱することが、それが水分を空気流へ放出することを可能にし、該空気流は排気口30’経由で屋外へ放出される。
【0045】
システム10は、電気およびPLC(プログラマブル論理制御装置)制御パネルと、ヒューズ切断部(fused disconnect)と、モータスタータと、レベルセンサとを組み込んでいる。該PLC制御パネルは、リレー論理でプログラムされているカラータッチスクリーン、診断制御機能およびループ制御機能を組み込んでいる。除湿システムの図形が、調節部分のファン、ポンプ、および出口温度の状態を示すスクリーン上に表示され、再生部分のファン、ポンプ、溶液レベル、および設定点も表示される。調節部分12は、フランジ接続を有する温度計および圧力計とを組み込んでいる。再生部分12’は、蒸気または湯のどちらかに関する電気オペレータを備えた制御弁を組み込んでおり、フランジ接続を有する温度計および圧力計も組み込まれている。ハンドアイソレーション(hand isolation)を備えた溶液移動調節制御弁が調節部分と再生部分の両方に組み込まれている。水分補給(water makeup)オン/オフ制御弁も組み込まれている。
【0046】
以上、本発明を説明したが、本発明は多くの方法で変形可能性であることが明らかであろう。そのような変形形態は、本発明の趣旨および範囲からの逸脱と見なされるべきでなく、当業者には明らかであろうと考えられる全てのそのような修正が、下記の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0047】
10 システム
12 調節部分
12’ 再生部分
14 吸気口
14’ 吸気口
16 サンプ領域、サンプ
16’ サンプ領域、サンプ
18 高効率接触繊維状充填室、充填室
18’ 高効率接触充填室、充填室
20 分配室
20’ 分配室
22 液体乾燥剤噴霧分配ヘッダ、分配ヘッダ
22’ 溶液噴霧分配ヘッダ、分配ヘッダ
22a~e’ 噴霧ノズル
22a~e’ 噴霧ノズル
24 液滴収集室
24’ 液滴収集室
24a Zバー
24b デミスタパッド
26 UV消毒室
28a~c 配列状のUVランプ
30’ 排気口
30’ 排気口
32’ ポンプ
32’ ポンプ
34 熱交換器
34’ 熱交換器
36’ 弁
36’ 弁
38 熱交換器
40 送風機
40’ 送風機
【国際調査報告】