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  • 特表-締付力を決定するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-26
(54)【発明の名称】締付力を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20220519BHJP
   B23B 31/00 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
B23Q17/00 B
B23B31/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557155
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2020057587
(87)【国際公開番号】W WO2020193354
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】102019107711.7
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516049733
【氏名又は名称】レーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Heinrich-Roehm-Strasse 50, 89567 Sontheim an der Brenz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン シュタングル
【テーマコード(参考)】
3C029
3C032
【Fターム(参考)】
3C029EE06
3C032FF04
3C032GG34
(57)【要約】
本発明は、工作機械(1)の回転駆動可能な動力式クランプ装置(2)の締付力を決定するための方法に関し、この方法は、以下のステップ、対象物(5)を操作力Fで締め付けるステップと、工作機械(1)の制御ユニット(6)内で、操作力Fと、工作機械(1)の動作パラメータとに基づいて推定可能な締付力Fcalcをモデルベースで計算するステップと、クランプ装置(2)内の対象物(5)に作用する締付力Frealを測定間隔Iの時間間隔でクロック制御して測定するステップと、測定値Frealを工作機械(1)の制御ユニット(6)に無線伝送し、測定値Frealと、計算された締付力Fcalcとを比較するステップと、比較が、閾値に達する偏差を示す場合に、測定間隔を適合化するステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械(1)の回転駆動可能な動力式クランプ装置(2)の締付力を決定するための方法であって、
対象物(5)を操作力Fで締め付けるステップと、
前記工作機械(1)の制御ユニット(6)内で、前記操作力Fと前記工作機械(1)の動作パラメータとに基づいて推定可能な締付力Fcalcをモデルベースで計算するステップと、
前記クランプ装置(2)内で前記対象物(5)に作用する締付力Frealを測定間隔Iの時間間隔でクロック制御して測定するステップと、
前記測定値Frealを前記工作機械(1)の前記制御ユニット(6)に無線伝送し、前記測定値Frealと、前記計算された締付力Fcalcとを比較するステップと、
前記比較が、閾値に達する偏差を示す場合に、前記測定間隔を適合化するステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記閾値を下回る場合には前記測定間隔が延長され、かつ/または前記閾値を上回る場合には前記測定間隔が短縮される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記測定間隔の変化の大きさは、前記測定値Frealと前記閾値との間の間隔に比例する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記Frealが前記Fcalcより小さい偏差の閾値は、前記Frealが前記Fcalcより大きい偏差の閾値以下である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記Frealが前記Fcalcよりも大きい偏差の閾値を確定する場合に、締め付けるべき前記対象物(5)の変形しやすさが考慮される、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記閾値は、2%未満の偏差、特に1.5%の偏差、好適には0.5%の偏差である、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記操作力Fを検出するためのセンサが存在し、該センサの測定データが有線で前記制御ユニット(6)に伝送される、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記クランプ装置(2)は、クランプチャックによって形成され、前記締付力Frealを測定するためのセンサがクランプジョー(3)の1つに割り当てられている、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の回転駆動可能な動力式クランプ装置の締付力を決定するための方法によって形成され、この方法は、以下のステップ、
・対象物を操作力Fで締め付けるステップと、
・工作機械の制御ユニット内で、操作力Fと工作機械の動作パラメータとに基づいて推定可能な締付力Fcalcをモデルベースで計算するステップと、
・クランプ装置内で対象物に作用する締付力Frealを測定間隔Iの時間間隔でクロック制御して測定するステップと、
・測定値Frealを工作機械の制御ユニットに無線伝送し、測定値Frealと、計算された締付力Fcalcとを比較するステップと、
・比較が、閾値に達する偏差を示す場合に、測定間隔を適合化するステップと、を含む。
【0002】
工作機械に割り当てられるクランプ装置を備えた工作機械の安全な動作のためには、ワークまたはツールをクランプ装置内で締め付ける締付力が既知である必要がある。この認識が、機械類に関する欧州議会・理事会指令(以下単に機械指令とも称する)2006/42/ECを生み出す結果となり、これによって、動作に関する機能的安全性の所定の安全性レベルが要求される。この場合、安全性にかかわる一部の信号は、冗長的に提供される必要がある。
【0003】
その際、クランプ装置の締付力は、直接測定することが望ましく、この場合、工作機械にクランプ装置を使用することは、このクランプ装置が通常はクランプジョー(Spannbacken)を有するクランプチャックによって形成されていることを意味し、このクランプ装置では、クランプジョーで測定された締付力が、回転するシステムから工作機械に伝達されなければならない。この目的のために無線データ伝送が提供されるが、ただし、このことは、回転するシステム内で測定値の検出や測定値の無線伝送のためのエネルギーを提供する必要があることを意味する。
【0004】
独国特許第102011081122号明細書には、少なくとも1つのクランプ要素を有するチャック本体と、クランプ要素からワーククランプ装置内で締め付けられるワークに加えられる締付力を検出するための測定装置とを備えたクランプ装置が記載されており、ここでは、評価ユニットも有する測定装置が上置きジョーに設けられている。ワーククランプ装置内で締め付けられたワークに所望の締付力を加えるための操作装置も存在している。評価ユニット内では、確定された所要の目標締付力と、測定装置によって検出された締付力との比較が行われる。
【0005】
本発明が基礎とする課題は、所要の安全性レベルの保証のもとに、回転駆動可能なクランプ装置内で必要とされる所要エネルギーの低減を図ることである。
【0006】
この課題は、冒頭に述べた方法によって解決される。この方法では、所与の締付力が2つのやり方で、つまり、一方では操作力と工作機械の動作パラメータとに基づいて推定可能な締付力のモデルベースの計算により、他方では締付力の直接測定により決定される。ここでは、締付力の直接測定は継続的に行われるのではなく、むしろ測定間隔の時間間隔でクロック制御されて行われる。ただしこの場合、測定間隔の持続時間は一定に設定されるのではなく、むしろ計算された推定可能な締付力と、実際に測定された締付力との間の良好な一致を得るために、測定値の検出に関するエネルギーを節約するように拡大させることができる。他方では、モデルベースの締付力の計算が過度に大きな値となり、それに伴う個々の動作パラメータの決定が不十分で補正が必要とされる場合には、所要の安全性レベルを保証するために測定間隔の短縮を行うこともできる。この種の動作パラメータは、機械的伝達比を介して締付力に変換される操作力の生成を用いた応力伝達連鎖から生じる。機械的伝達比は、主にクランプ機構の角度比またはてこ比に依存する。さらなる動作パラメータは、結果として生じる遠心力を伴うクランプ装置の回転数、ならびに摩耗または潤滑状態などの摩擦効果によって影響を受ける伝達系の機能面での摩擦係数である。
【0007】
この方法によって提供されるように、単独では機械指令の機能的安全性の要件を満たすことのできない無線データ伝送が、推定可能な締付力のモデルベースの計算によって確実なものとなり、推定可能な締付力の信頼性に基づいてエネルギー消費を最適化するために測定間隔を適合化することが可能になる。
【0008】
ここではこの方法のために、安全性を向上させる目的で、閾値を下回る場合には測定間隔が延長され、かつ/または閾値を上回る場合には測定間隔が短縮されることが想定される。したがって、エネルギー消費に関する最適化を用いることで、所要の安全性レベルを保証するために、推定可能な締付力のモデルベースの計算が、実際に与えられる締付力を十分正確に再現することが保証される。
【0009】
十分な安全性レベルの保証に関しても、測定間隔の変化の大きさは、測定値Frealと閾値との間の間隔に比例する、つまり、閾値との間の間隔が大きい場合には、それに応じて測定間隔の大幅な変更が行われることが想定されている。その際、FrealがFcalcよりも小さい偏差の閾値は、FrealがFcalcよりも大きい偏差の閾値以下である可能性も生じる。つまり、所要の安全性の尺度に関して異なる閾値が使用され、実際の締付力が、計算された締付力よりも小さい場合には、より正確な監視がなされる。なぜなら、このことは、より大きな潜在的リスクを示すからである。
【0010】
ただし、FrealがFcalcよりも大きい偏差の閾値を確定する場合に、締め付けるべき対象物の変形しやすさが考慮されることも考慮に入れることができる。つまり、例えば薄肉スリーブなどの変形しやすいワークが、実際に過度に大きな締付力によって破損されることからも保護される。
【0011】
閾値が2%以下の偏差、特に1.5%の偏差、好適には0.5%の偏差である場合、合目的的であることがわかっている。
【0012】
さらに、好適には、操作力を検出するためのセンサが存在し、該センサの測定データが有線で制御ユニットに伝送可能である。この方法では、応力伝達連鎖の異なる箇所において作用する応力を検出し、冗長的伝達経路に関する2つのセンサーデータの融合を介して安全性の大幅な向上を示す2つの別個のセンサが使用される。
【0013】
クランプ装置がクランプチャックによって形成されている場合、締付力Frealを測定するためのセンサは、好適には、クランプジョーの1つに割り当てられる。
【0014】
以下では、本発明を図面に示された実施例においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】所要の安全性レベルを有する締付力を決定するための過程の概略図
【0016】
図1には、クランプ装置としてクランプチャック、詳細には、図示の実施例では、周全体にわたって均等に配置されかつチャック軸線に対して径方向に調整可能である3つのクランプジョー3を有する3爪クランプチャックが割り当てられている工作機械1が示されている。これらのクランプジョー3の調整は、図示の実施例では電気式の駆動部4を介して行われ、この駆動部4により操作力Fが提供される。この操作力は、応力伝達連鎖における機械的変換を介して締付力に変換され、この締付力は、クランプジョー3からワーク5に、図示の実施例では、外部張力下で保持されたスリーブに加えられる。操作力Fから生じる締付力は、さらに、クランプ装置の回転操作中の遠心力、クランプジョー3の機能面の設計および品質、ならびに機能面の摩耗および潤滑状態によって影響を受ける。次に、操作力Fからは、操作力Fおよび工作機械1の動作パラメータに基づいて推定可能な締付力Fcalcのモデルベースの計算が、工作機械1の制御ユニット6内で行われる。その上さらに、クランプ装置内で対象物に作用する締付力Frealを測定間隔の時間間隔でクロック制御して測定することと、工作機械1の制御ユニット6へ測定値Frealを無線伝送することとが行われる。この制御ユニット6では、測定値Frealと、計算された締付力Fcalcとの比較が行われる。
【0017】
比較が、閾値に達する偏差を示す場合に、測定間隔の適合化が行われ、その際、閾値を下回る場合には測定間隔が延長され、閾値を上回る場合には測定間隔が短縮される。これによって、測定値Frealの無線伝送のための無線信号は、良好な一致がある場合、頻度を大幅に減らして伝送すればよいことになる。これにより、所要の電気エネルギーを提供するためのクランプジョー3に組み込まれた蓄電池の寿命が大幅に延びる。測定値Frealの伝送の間の送信休止期間では、締付力は、モデル7に従って、操作力Fと付加的な測定変数、例えば機械スピンドルの回転数8、ジョーの質量10、累積されたサイクル数11、および摩耗や潤滑状態などのさらなる重要なパラメータ9に基づいて計算される。
【0018】
realがFcalcより小さい偏差の閾値は、FrealがFcalcより大きい偏差の閾値と同じである必要はなく、特に、より小さく選択されてもよいことを指摘しておく。閾値を確定する場合に、締め付けるべきワークもしくは締め付けられるワーク5の変形しやすさも考慮に入れることができる。最後に、操作力Fは、生成された操作力から導出できるだけでなく、むしろセンサを用いて制御することもでき、該センサの測定データは、有線で制御ユニット6に伝送されることを指摘しておく。したがって、締付状態の冗長的制御のために、異なるパスでそれらの測定データを制御ユニット6に伝送する2つの異なるセンサが使用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 工作機械
2 クランプチャック
3 クランプジョー
4 駆動部
5 ワーク
6 制御ユニット
7 モデル
8 回転数
9 さらなるパラメータ
10 ジョーの質量
11 サイクル数
F 操作力
calc 推定可能な締付力
real 測定された締付力
図1
【国際調査報告】