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  • 特表-変速機構 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-26
(54)【発明の名称】変速機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20220519BHJP
   F16H 59/40 20060101ALI20220519BHJP
   F16H 59/42 20060101ALI20220519BHJP
   F16H 59/68 20060101ALI20220519BHJP
   F16H 61/682 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H59/40
F16H59/42
F16H59/68
F16H61/682
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557171
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2020058179
(87)【国際公開番号】W WO2020193558
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】102019204296.1
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519453607
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ジャーマニー ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ライプニッツ
(72)【発明者】
【氏名】キアラシュ サブゼワリ
(72)【発明者】
【氏名】ローガー ポールマン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス リーデル
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552MA04
3J552NA05
3J552PA70
3J552RA02
3J552SA26
3J552SB02
3J552VA01W
3J552VA32W
3J552VA37W
(57)【要約】
本発明は、変速機構(GM)であって、互いに形状接続的に噛合い可能な少なくとも2つの歯車(Z1~Z8)を備え、歯車(Z1~Z8)のうちの1つの歯車は、空転歯車(Z3,Z5,Z7)として形成され、連結されていない位置で空転するように変速機軸(4)に配置されており、歯車(Z1~Z8)のうちの別の歯車は、固定歯車(Z2,Z4,Z6,Z8)として形成され、別の変速機軸(3)に相対回動不能に配置されており、空転歯車(Z3,Z5,Z7)は、連結ユニット(K1,K2)によって変速機軸(4)に相対回動不能に結合可能であり、連結ユニット(K1,K2)の連結歯列(KV)が、空転歯車(Z3,Z5,Z7)の歯列(VZL)に噛合い可能位置(ZLS)で形状接続的に噛み合うときに、少なくとも1つの変速ギヤ(G1~G4)がギヤ入れ可能であり、別の変速機軸(3)への入力回転数信号(nin)と、変速機軸(4)からの出力回転数信号(nout)とを検出することができるセンサ装置(6)が設けられている、変速機構(GM)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機(1)用の変速機構(GM)であって、互いに形状接続的に噛合い可能な少なくとも2つの歯車(Z1~Z8)を備え、
前記歯車(Z1~Z8)のうちの1つの歯車は、空転歯車(Z3,Z5,Z7)として形成され、連結されていない位置で空転するように変速機軸(4)に配置されており、
前記歯車(Z1~Z8)のうちの別の歯車は、固定歯車(Z2,Z4,Z6,Z8)として形成され、別の変速機軸(3)に相対回動不能に配置されており、
前記空転歯車(Z3,Z5,Z7)は、連結ユニット(K1,K2)によって前記変速機軸(4)に相対回動不能に結合可能であり、これによって、前記連結ユニット(K1,K2)の連結歯列(KV)が、前記空転歯車(Z3,Z5,Z7)の歯列(VZL)に噛合い可能位置(ZLS)で形状接続的に噛み合うときに、少なくとも1つの変速ギヤ(G1~G4)がギヤ入れ可能であり、
前記変速機軸(3)への入力回転数信号(nin)と、前記別の変速機軸(4)からの出力回転数信号(nout)とを検出することができるセンサ装置(6)が設けられており、
前記センサ装置(6)は、制御ユニット(7)に接続されており、該制御ユニット(7)によって、各々の前記回転数信号(nin,nout)中のそれぞれ1つの検出されたエッジに対して1つのタイムスタンプが特定可能かつ格納可能であり、前記制御ユニット(7)によって、前記少なくとも1つの変速ギヤ(G1~G4)を最初にギヤ入れした後、前記変速機軸(4)に対する前記空転歯車(Z3,Z5,Z7)の前記歯列(VZL)の角度位置(WP)が特定可能であると共に前記タイムスタンプに割当て可能であり、
前記タイムスタンプと、該タイムスタンプに割り当てられた前記角度位置(WP)とに基づき、前記空転歯車(Z3,Z5,Z7)の歯列(VZL)と前記連結歯列(KV)との間の絶対的な角度関係(WB)が特定可能である、
変速機構(GM)。
【請求項2】
前記制御ユニット(7)は、前記連結ユニット(K1,K2)を、特定された前記絶対的な角度関係(WB)に応じて制御する、請求項1記載の変速機構(GM)。
【請求項3】
前記絶対的な角度関係(WB)に基づき、前記空転歯車(Z3,Z5,Z7)の前記歯列(VZL)と前記連結歯列(KV)との間の噛合い可能位置(ZLS)が特定可能である、請求項2記載の変速機構(GM)。
【請求項4】
前記噛合い可能位置(ZLS)の特定は、継続的にまたは事象制御もしくは時間制御されて行われる、請求項3記載の変速機構(GM)。
【請求項5】
前記センサ装置(6)は、少なくとも2つの回転数センサ(6.1,6.2)を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の変速機構(GM)。
【請求項6】
1つの回転数センサ(6.1)が、変速機入力軸(2)に接してまたは変速機入力軸(2)上に配置されており、
別の回転数センサ(6.2)が、変速機出力軸(5)に接してまたは変速機出力軸(5)上に配置されている、
請求項5記載の変速機構(GM)。
【請求項7】
前記回転数センサ(6.1,6.2)は、それぞれホールセンサとして形成されている、請求項5または6記載の変速機構(GM)。
【請求項8】
前記連結ユニット(K1,K2)は、噛合いクラッチとして形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の変速機構(GM)。
【請求項9】
前記連結ユニット(K1,K2)は、2つの部材から形成され、第1の噛合い要素(K1.1,K2.1)と第2の噛合い要素(K1.2,K2.2)とを有し、
前記第1の噛合い要素(K1.1,K2.1)は、前記変速機軸(4)に相対回動不能に結合されており、
前記第2の噛合い要素(K1.2,K2.2)は、前記空転歯車(Z1,Z3,Z5,Z7)と一体に形成されている、
請求項8記載の変速機構(GM)。
【請求項10】
前記変速機(1)は車両用変速機である、請求項1から9までのいずれか1項記載の変速機構(GM)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機構に関する。
【背景技術】
【0002】
変速機は、運動量を変換するための機械要素として一般的に知られている。このために、変速機は、駆動ユニットの運動量が伝達される駆動側と、作業機械に連結されている被駆動側とを有している。変速機構は、駆動ユニットからの入力運動量を規定の変速比でもって作業機械に伝達する。
【0003】
変速機として、例えば、いわゆる歯車式変速機が知られている。この歯車式変速機は、最も単純な事例では、互いに形状接続的に噛合い可能な2つの歯車を有している。両方の歯車は複数の歯を有している。これらの歯は、歯車の全周にわたって均一に分配され、溝によって互いに分離されている。
【0004】
このような歯車式変速機は、例えば車両用変速機に使用される。この車両用変速機によって、原動機、例えば内燃機関の回転数が、車両の走行運転のために必要となるホイール回転数に変換される。特に原動機からの入力トルクが、複数の歯車対が配置された変速機入力軸に伝達される。1つの歯車対が、1つの変速段に対する変速比を形成する。トルクは、相応の変速比でもって、被駆動装置に連結された変速機出力軸に伝達される。車両用変速機は、例えばマニュアルトランスミッション、オートメーティッドマニュアルトランスミッションまたはオートマチックトランスミッションとして形成されていてよい。
【0005】
例えば、オートメーティッドマニュアルトランスミッションでは、変速機入力軸と変速機出力軸(メインシャフトとも呼ばれる)とが互いに同軸に延在している。両軸は、軸線平行なカウンタシャフトに連結されている。メインシャフトとカウンタシャフトとは、例えば、それぞれ、カウンタシャフトに相対回動不能に配置された固定歯車と、メインシャフトに回転可能に支承された空転歯車(Losrad)とを備えた、それぞれ異なる変速比を有する複数の歯車対を介して、連結ユニットの外力操作可能な噛合いによって互いに選択的に係合可能である。この場合、連結ユニットは、例えば、該当する空転歯車とメインシャフトとの間に配置されていて、歯列を備えた連結要素を有している。この連結要素は、歯列によって、対応する空転歯車に形状接続的に噛合い可能となる。その結果、この空転歯車をメインシャフトに相対回動不能に結合することができる。空転歯車と連結ユニットとの間の形状接続的な噛合いのためには、空転歯車の歯列と連結歯列との間に噛合い可能位置(Zahn-auf-Zahnluecke-Stellung)が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の根底にある課題は、先行技術に比べて改善された変速機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載した特徴によって解決される。
【0008】
変速機用の本発明に係る変速機構であって、互いに形状接続的に噛合い可能な少なくとも2つの歯車を備えた変速機構では、歯車のうちの1つの歯車が、空転歯車として形成され、連結されていない位置で空転するように変速機軸に配置されている。別の歯車は、固定歯車として形成され、別の変速機軸に相対回動不能に配置されている。空転歯車は、連結ユニットによって変速機軸に相対回動不能に結合可能であり、これによって、連結歯列が、空転歯車の歯列に噛合い可能位置で形状接続的に噛み合うときに、少なくとも1つの変速ギヤがギヤ入れ可能となる。なお、連結歯列とは、連結ユニットの歯列、特に歯形を意味している。さらに、別の変速機軸への入力回転数信号と、変速機軸からの出力回転数信号とを検出することができるセンサ装置が設けられており、このセンサ装置は、制御ユニットに接続されており、この制御ユニットによって、各々の回転数信号中のそれぞれ1つの検出されたエッジに対して1つのタイムスタンプが特定可能かつ格納可能であり、制御ユニットによって、少なくとも1つの変速ギヤを最初にギヤ入れした後、変速機軸に対する空転歯車の歯列の角度位置が特定可能となると共にタイムスタンプに割当て可能となる。次いで、タイムスタンプと、このタイムスタンプに割り当てられた角度位置とに基づき、空転歯車の歯列と連結歯列との間の絶対的な角度関係を特定することができる。
【0009】
変速機構によって、空転歯車と連結ユニットとの間で確実、簡単かつ迅速な形状接続が可能となる。変速機が車両用変速機である場合には、噛合い可能位置が確実に認識されるかまたは認識された場合に初めて形状接続が行われることにより、変速機構によって、1つの変速ギヤのギヤ入れが短縮され、その際に生じる騒音が減じられる。したがって、空転歯車と連結ユニットとの間の引っ掛かりおよび/または形状接続の遅れを回避することができる。その結果として、トルク損失を減らして、迅速かつ快適な、特に低騒音のシフト動作が行われる。
【0010】
一実施例によれば、制御ユニットが、連結ユニットを絶対的な角度関係に応じて制御する。
【0011】
制御ユニットは、空転歯車と連結ユニットとの間の連結領域を、特に継続的にまたは例えば事象制御または時間制御して監視することができる。特に制御ユニットは、絶対的な角度関係に基づき、空転歯車の歯列と連結歯列との間の噛合い可能位置を特定することができる。連結ユニットは、この連結ユニットと空転歯車とが、検出された位置にとどめられるように制御される。これに対して、制御ユニットが噛合い不可位置(Zahn-vor-Zahn-Stellung)を特定すると、連結ユニットが空転歯車に対して移動され、特に噛合い可能位置へと歩進的に回動される。
【0012】
制御ユニットは、例えば自動車の変速機制御装置である。
【0013】
別の実施例によれば、センサ装置が、少なくとも2つの回転数センサを有している。この場合、1つの回転数センサが、別の変速機軸への入力回転数信号を検出し、別の回転数センサが、変速機軸からの出力回転数信号を検出する。
【0014】
回転数センサによって、変速機入口および変速機出口における瞬時の回転数を検出することができる。このために、1つの回転数センサが、変速機入力軸に接してまたは変速機入力軸上に配置されており、別の回転数センサが、変速機出力軸に接してまたは変速機出力軸上に配置されている。制御ユニットは、回転数センサにより検出された回転数信号に基づき、少なくとも1つの変速ギヤが最初にギヤ入れされた後、空転歯車の歯列と連結歯列ひいては該当する変速機軸との間の絶対的な角度関係、特に角度位置を特定することができる。また、絶対的な角度関係は、少なくとも1つの変速ギヤをギヤ抜きした後にも継続的に特定することができる。
【0015】
一実施例によれば、回転数センサがそれぞれホールセンサとして形成されている。例えば、このために、少なくとも1つの空転歯車(または変速機入力軸に配置された別の歯車)に磁石が取り付けられている。この磁石によって、空転歯車が、例えば磁気双極子を備えた、いわゆる磁極歯車として形成される。空転歯車が回転すると、歯と歯溝とにより大きさが変化する回転磁場が形成される。これは、変速機内の別の箇所、例えば制御ユニット内に配置することができるホールセンサによって検出することができる。代替的に、回転数信号を相応の歯車で直接検出する、いわゆるバックバイアスホールセンサが使用されてもよい。さらに、回転数センサは、誘導式のセンサとして形成されていてもよい。
【0016】
別の実施例では、連結ユニットが噛合いクラッチとして形成されている。特に連結ユニットは、2つの部材から形成され、第1の噛合い要素と第2の噛合い要素とを有しており、第1の噛合い要素は、変速機軸に相対回動不能に結合されており、第2の噛合い要素は、空転歯車と一体に形成されている。特に第1の噛合い要素は、この噛合い要素が変速機軸と一緒に回転するものの、この変速機軸に対して軸方向に移動可能であるように配置されている。第1の噛合い要素が変速機軸に相対回動不能に結合されていることによって、変速機軸に対して連結歯列の位置が変化することはない。これによって、回転数センサの評価に基づき、空転歯車の歯列の位置、特に角度位置を検出しかつ/または特定することができる。空転歯車は、例えば第2の噛合い要素に一体に結合されており、これによって、空転歯車の歯列が第1の噛合い要素の歯列に対応する。
【0017】
別の実施例によれば、変速機が車両用変速機である。これによって、変速機構を自動車において走行快適性を向上させるために使用することができる。
【0018】
以下に、本発明の実施例を図面に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】変速機構を備えた変速機を概略的に示す図である。
図2】変速機の空転歯車と噛合い要素との間の形状接続部の平面図の一部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
全ての図面において、互いに対応する部材には同一の符号が付してある。
【0021】
図1には、変速機構GMを備えた変速機1が概略的に示してある。
【0022】
変速機1は、駆動ユニット(図示せず)、例えば内燃機関に連結された変速機入力軸2を有している。この変速機入力軸2は、変速機1の駆動軸ひいては駆動側を形成している。
【0023】
図示の実施例によれば、変速機1は車両用変速機であり、オートメーティッドマニュアルトランスミッションをベースとしている。このオートメーティッドマニュアルトランスミッションでは、第1の変速機軸3に対して平行に延在する第2の変速機軸4が配置されている。第1の変速機軸3はカウンタシャフトとも呼ばれ、変速機入力軸2に対して同軸に配置されている。変速機入力軸2と第1の変速機軸3とは、図示の実施例では一体に形成されている。代替的には、両軸が別個に形成され、互いに結合されていてもよい。第2の変速機軸4は、変速機1の被駆動軸を形成しており、変速機出力軸5に対して同軸に配置されている。第2の変速機軸4と変速機出力軸5とは、同じく一体に形成されている。代替的には、両軸が別個に形成され、互いに結合されていてもよい。
【0024】
変速機入力軸2と第2の変速機軸4とは、歯車Z1,Z2を有する第1の歯車対ZP1によって互いに機械的に連結されている。図示の実施例では、変速機1は、全部で4つの歯車対ZP1~ZP4ひいては変速段または速度段とも呼ばれるギヤ入れ可能な4つの変速ギヤG1~G4を有している。代替的に、変速機1は、ギヤ入れ可能な4つよりも少ないまたは4つよりも多い変速ギヤG1~G4を有していてもよい。
【0025】
第1の変速機軸3も第2の変速機軸4に同じく機械的に連結されている。このために、この第2の変速機軸4には、複数の別の歯車Z3,Z5,Z7が配置されている。これらの歯車Z3,Z5,Z7は、第1の変速機軸3に配置された複数の別の歯車Z4,Z6,Z8に対を成して常に噛み合っており、ひいては、変速ギヤG1~G4にそれぞれ異なる変速比を提供している。
【0026】
各歯車対ZP1~ZP4では、歯車Z2,Z4,Z6,Z8が、それぞれ第1の変速機軸3に相対回動不能に配置されているため、以下、これらを固定歯車Z2,Z4,Z6,Z8と呼ぶことにする。別の歯車Z1,Z3,Z5,Z7は、それぞれ第2の変速機軸4の、中空軸として形成された区分に、自由に回転可能ではあるものの軸方向には位置固定されて配置されているため、以下、これらを空転歯車(Losrad)Z1,Z3,Z5,Z7と呼ぶことにする。
【0027】
空転歯車Z1,Z3の間には、第1の連結ユニットK1が配置されている。さらに、空転歯車Z5,Z7の間には、第2の連結ユニットK2が配置されている。両方の連結ユニットK1,K2は、変速ギヤG1~G4をシフトする、特にギヤ入れする働きをし、それぞれ、いわゆる噛合いクラッチとして形成されている。
【0028】
連結ユニットK1,K2は、第2の変速機軸4に相対回動不能に配置されたそれぞれ1つの第1の噛合い要素K1.1,K2.1を有している。特にこの第1の噛合い要素K1.1,K2.1は、第2の変速機軸4と一緒に回転するものの、この第2の変速機軸4に対して軸方向に移動可能であるように配置されている。
【0029】
連結ユニットK1,K2は、さらに、それぞれ2つの第2の噛合い要素K1.2,K2.2を有している。これらの第2の噛合い要素K1.2,K2.2は、それぞれ第1の噛合い要素K1.1,K2.1と同軸で互いに反対側に位置して第2の変速機軸4に配置されている。さらに、第2の噛合い要素K1.2,K2.2は、空転歯車Z1,Z3,Z5,Z7と一体に形成されている。
【0030】
第1の噛合い要素K1.1,K2.1の、空転歯車Z1,Z3,Z5,Z7にそれぞれ割り当てられた表面は、図1には抽象的に示しかつ図2には部分的に示した連結歯列KVを有している。また、第2の噛合い要素K1.2,K2.2の、それぞれ第1の噛合い要素K1.1,K2.1に割り当てられた表面にも、対応する歯列VZLが形成されており、これによって、第1の噛合い要素K1.1,K2.1が、第2の噛合い要素K1.2,K2.2ひいては空転歯車Z1,Z3,Z5,Z7に形状接続的に噛合い可能となる。
【0031】
図示の実施例では、両方の連結ユニットK1,K2が、切り離された状態で示してある。つまり、変速機1はニュートラル位置にある。この場合には、空転歯車Z1,Z3,Z5,Z7のいずれも第2の変速機軸4に結合されていない。
【0032】
第1の変速ギヤG1をギヤ入れするために、第1の連結ユニットK1が、第1の変速ギヤG1用の空転歯車Z1の方向に移動される。その際、第1の噛合い要素K1.1に配置された連結歯列KVが、空転歯車Z1と一体に形成された第2の噛合い要素K1.2の歯列VZLに、噛合い可能位置(Zahn-auf-Zahnluecke-Stellung)ZLS(図2参照)で形状接続的に噛み合わされる。
【0033】
その結果、空転歯車Z1が第2の変速機軸4に相対回動不能に結合され、第2の変速機軸4が、第1の歯車対ZP1によって変速機入力軸2に機能的に連結される。したがって、この変速機入力軸2を出発点として第1の歯車対ZP1を介して第2の変速機軸4が駆動される。
【0034】
後続の変速ギヤG2~G4をシフトすることによって、第1の変速機軸3から第2の変速機軸4にトルクが伝達される。このトルクは、次いで、第2の変速機軸4に対して同軸に配置された変速機出力軸5を介して被駆動ユニット(図示せず)に伝達される。この被駆動ユニットは、例えば、車両の駆動輪、例えば前側駆動輪用のアクスル駆動軸を駆動するディファレンシャルギヤを有している。
【0035】
第2の噛合い要素K1.2,K2.2の歯列VZLと、第1の噛合い要素K1.1,K2.1に設けられた連結歯列KVとの間の形状接続は、例えば、連結歯列KVの1つの歯が歯列VZLの1つの歯溝に形状接続的に噛み合う、いわゆる噛合い可能位置ZLS(図2参照)で行われる。これに対して、2つの歯(歯列VZLのうちの1つの歯および連結歯列KVのうちの1つの歯)が互いに衝突すると、これによって、歯列VZLの引っ掛かりまたは形状接続の遅れが生じてしまう。このことには、走行運転中、シフト動作が長引き、激しい騒音を引き起こすことで気づくことができる。
【0036】
このような問題を減じるために、変速機構GMは、センサ装置6と、このセンサ装置6に接続された制御ユニット7とを設けている。この制御ユニット7によって、空転歯車Z3,Z5,Z7の歯列VZLと連結歯列KVとの間の絶対的な角度関係WBひいては歯列VZLと連結歯列KVとの間の連結位置、特に噛合い可能位置ZLSまたは噛合い不可位置(Zahn-auf-Zahn-Stellung)(図示せず)を特定することができる。特に、これによって、特に歯列VZLの歯と連結歯列KVの歯とが、互いに噛合い可能位置ZLSにあるのか、それとも、互いに噛合い不可位置(Zahn-vor-Zahn-Stellung)にあるのか、歯列VZLと連結歯列KVとの間の連結領域をその連結位置に関して監視することができる。特にセンサ装置6と制御ユニット7とによって、第1の噛合い要素K1.1,K2.1と第2の噛合い要素K1.2,K2.2とが互いに噛合い可能位置ZLSに位置決めされているか否かが検出されかつ/または特定される。
【0037】
センサ装置6は、図示の実施例では、変速機入力軸2に接続された第1の回転数センサ6.1と、変速機被駆動側を成す変速機出力軸5に接続された第2の回転数センサ6.2とを有している。両方の回転数センサ6.1,6.2は、例えば、それぞれホールセンサまたは誘導式のセンサであり、変速機入力軸2または変速機出力軸5の回転数を検出する。
【0038】
回転数センサ6.1,6.2は、さらに、例えば車両の変速機制御装置を成す制御ユニット7に接続されている。この制御ユニット7は、回転数センサ6.1,6.2により検出された信号、特に、変速機入力軸2の回転数を表す入力回転数信号ninと、変速機出力軸5の回転数を表す出力回転数信号noutとを評価する。
【0039】
両方の回転数信号nin,noutを評価する際には、信号中のそれぞれ1つのエッジに対して1つのタイムスタンプが格納される。言い換えると、各信号エッジが、1つの固定の時点に割当て可能となる。
【0040】
検出された回転数信号nin,noutを評価する際には、この回転数信号中の1つのエッジの格納される各タイムスタンプに対して、1つの位置、特に第2の変速機軸4に対して相対的な空転歯車Z3,Z5,Z7、特に第2の噛合い要素K1.2,K2.2の歯列VZLの角度位置WPが検出され、この角度位置WPがタイムスタンプに割り当てられる。連結歯列KVの1つの位置は、第1の噛合い要素K1.1,K2.1が第2の変速機軸4に相対回動不能に配置されていることに基づき、回転数センサ6.1,6.2の評価された回転数信号nin,noutから判るので、その結果、1つの変速ギヤG1~G4、例えば第1の変速ギヤG1を最初にギヤ入れした後、絶対的な角度関係WB、特に第2の噛合い要素K1.2,K2.2の歯列VZLと第1の噛合い要素K1.1,K2.1の連結歯列KVとの間の角度位置WPを特定することができる。
【0041】
制御ユニット7が、図2に示した噛合い可能位置ZLSを特定すると、対応する変速ギヤG1~G4をギヤ入れするために、制御ユニット7が連結ユニットK1,K2を制御し、これによって、第1の噛合い要素K1.1,K2.1が第2の噛合い要素K1.2,K2.2にほぼ妨害なしに形状接続的に噛み合う。これに対して、制御ユニット7が噛合い不可位置(Zahn-vor-Zahn-Stellung)(図示せず)を特定すると、連結ユニットK1,K2が空転歯車Z3,Z5,Z7に対して移動され、特に噛合い可能位置ZLSへと歩進的に回動される。
【0042】
制御ユニット7は、空転歯車Z3,Z5,Z7と連結ユニットK1,K2との間の連結領域を、特に継続的に、または例えば事象制御もしくは時間制御して監視する。特に制御ユニット7は、予め最初にギヤ入れされた変速ギヤG1~G4をギヤ抜きした後でも、絶対的な角度関係WBに基づき噛合い可能位置ZLSを特定することができる。
【0043】
図2には、歯列VZLと連結歯列KVとの間の噛合い可能位置ZLSの平面図の一部が概略的に示してある。例えば、第1の噛合い要素K1.1と第2の噛合い要素K1.2との間の噛合い可能位置ZLSが図示してある。同図では、歯列VZL,KVの歯面は垂直に示してある。付加的に、歯面はアンダカットを備えていてよく、これによって、歯面は実質的に鳩尾状に形成されている。
【0044】
したがって、前述した変速機構GMによって、連結ユニットK1,K2ひいては1つの変速ギヤG1~G4のギヤ入れを、第1の噛合い要素K1.1,K2.1の連結歯列KVに対する空転歯車Z1,Z3,Z5,Z7または第2の噛合い要素K1.2,K2.2の歯列VZLの位置に応じて制御することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 変速機
2 変速機入力軸
3 第1の変速機軸
4 第2の変速機軸
5 変速機出力軸
6 センサ装置
6.1,6.2 回転数センサ
7 制御ユニット
G1~G4 変速ギヤ
GM 変速機構
K1,K2 連結ユニット
K1.1,K2.1 第1の噛合い要素
K1.2,K2.2 第2の噛合い要素
KV 連結歯列
in 入力回転数信号
out 出力回転数信号
VZL 歯列
WP 角度位置
WB 角度関係
Z1~Z8 歯車
Z1,Z3,Z5,Z7 空転歯車
Z2,Z4,Z6,Z8 固定歯車
ZP1~ZP4 歯車対
ZLS 噛合い可能位置
図1
図2
【国際調査報告】