(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-26
(54)【発明の名称】イズロン酸2-スルファターゼを含むタンパク質分子の製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 38/46 20060101AFI20220519BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220519BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220519BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220519BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220519BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220519BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220519BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220519BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20220519BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220519BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220519BHJP
C12N 9/16 20060101ALN20220519BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20220519BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20220519BHJP
【FI】
A61K38/46 ZNA
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/20
A61K9/10
A61K9/19
A61P3/00
A61K47/68
C12N9/16
C07K19/00
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558657
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(85)【翻訳文提出日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 US2020026669
(87)【国際公開番号】W WO2020206320
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518086619
【氏名又は名称】デナリ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Denali Therapeutics Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アンダーセン, ダナ
(72)【発明者】
【氏名】キャザーマン, アダム
(72)【発明者】
【氏名】ジース, ティナ
(72)【発明者】
【氏名】カナン, グナセカラン
(72)【発明者】
【氏名】カリオリス, ミハリス
(72)【発明者】
【氏名】マホーン, カタル
(72)【発明者】
【氏名】パテル, アンキット
【テーマコード(参考)】
4B050
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC05
4B050DD11
4B050KK08
4B050KK12
4B050KK20
4B050LL01
4C076AA12
4C076AA16
4C076AA29
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC21
4C076DD23
4C076DD24
4C076DD26Z
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4C076FF63
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4C084DC22
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4C084ZC542
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
ある特定の実施形態は、ERT酵素-Fc融合ポリペプチド及び修飾Fcポリペプチドを含むタンパク質分子、緩衝液、等張剤、界面活性剤、及び安定剤を含む医薬組成物を提供し、医薬組成物のpHが約5.5~7.0であり、加えてその使用方法を提供する。ある特定の実施形態では、緩衝液は、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、アルギニン緩衝液、及びヒスチジン緩衝液からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液は、リン酸ナトリウム緩衝液またはリン酸カリウム緩衝液である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、
a.以下を含むタンパク質分子:
i.EU番号付けによる、380、384、386、387、388、389、390、413、415、416、及び421からなる群から選択される少なくとも9つのアミノ酸残基位置に置換を含む第1Fcポリペプチド、ならびに
ii.イズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)酵素に連結される第2Fcポリペプチドであって、IDSアミノ酸配列が、配列番号:1と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む前記第2Fcポリペプチド、
b.緩衝液、ならびに
c.塩
を含み、前記医薬組成物のpHが、約5.5~7.0である、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記緩衝液が、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、アルギニン緩衝液、及びヒスチジン緩衝液からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記リン酸緩衝液が、リン酸ナトリウム緩衝液またはリン酸カリウム緩衝液である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記塩がナトリウム塩である、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ナトリウム塩が、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物が界面活性剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物が、糖を含む安定剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記IDSアミノ酸配列が、配列番号:1、2及び3からなる群から選択される配列を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記第1Fcポリペプチドが、EU番号付けによる、アミノ酸残基384、386、387、388、389、413、415、416、及び421位に置換を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記IDSアミノ酸配列が、前記第2FcポリペプチドのN末端に連結される、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:4または5と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:4または5のアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:6と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:6と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記第1Fcポリペプチドが、
a.380位にTrp、Leu、またはGlu、
b.384位にTyr、
c.386位にThr、
d.387位にGlu、
e.388位にTrp、
f.389位にSerまたはAla、
g.390位にSerまたはAsn、
h.413位にThr、
i.415位にGlu、
j.416位にGlu、及び
k.421位にPhe
を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:6、7、25及び30のうちいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:4または5と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:6のアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:4または5の配列を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:7のアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:4または5の配列を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:25のアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:4または5の配列を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:30のアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:4または5の配列を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:41、42、44及び49のうちいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:39または40と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:41のアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:39または40の配列を含む、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:42のアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:39または40の配列を含む、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:44のアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:39または40の配列を含む、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:49のアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:39または40の配列を含む、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記タンパク質分子の濃度が約5~50mg/mLである、請求項1~25のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記タンパク質分子の濃度が約10~30mg/mLである、請求項1~26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記タンパク質分子の濃度が約10mg/mLである、請求項1~27のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記タンパク質分子の濃度が約20mg/mLである、請求項1~27のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記タンパク質分子の濃度が約30mg/mLである、請求項1~27のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記緩衝液の濃度が約5~50mMである、請求項1~30のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記緩衝液の濃度が約10~30mMである、請求項1~31のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記緩衝液の濃度が約20mMである、請求項1~32のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記塩の濃度が約30~150mMである、請求項1~33のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記塩の濃度が約50~137mMである、請求項1~34のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記塩の濃度が約50mMである、請求項1~35のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記塩の濃度が約137mMである、請求項1~35のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記界面活性剤の濃度が約0.1~1.0mg/mLである、請求項6~37のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記界面活性剤の濃度が約0.2~0.6mg/mLである、請求項6~38のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記界面活性剤の濃度が約0.4mg/mLである、請求項6~39のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記界面活性剤の濃度が約0.6mg/mLである、請求項6~39のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記界面活性剤がポリソルベートを含む、請求項6~41のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記界面活性剤が、ポリソルベート-20(PS-20)及びポリソルベート-80(PS-80)からなる群から選択される、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記界面活性剤がポリソルベート-20(PS-20)である、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記界面活性剤がポリソルベート-80(PS-80)である、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記安定剤が、スクロースまたはトレハロースから選択される糖を含む、請求項7~45のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記糖の濃度が約100~250mMである、請求項7~46のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記糖の濃度が約175mMである、請求項7~47のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記安定剤がスクロースを含む、請求項7~48のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項50】
前記組成物がメチオニンをさらに含む、請求項1~49のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記メチオニンの濃度が約5~20mMである、請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項52】
前記メチオニンの濃度が約10mMである、請求項50または51のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記医薬組成物の前記pHが約5.5~6.5である、請求項1~52のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項54】
前記医薬組成物の前記pHが約6.5±0.5である、請求項1~52のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項55】
前記タンパク質分子が、約5.5~7.0のpHでインタクトなままである、請求項1~54のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項56】
前記医薬組成物が、液体組成物として提供される、請求項1~55のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項57】
前記医薬組成物が、凍結乾燥組成物として提供される、請求項1~55のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項58】
ハンター症候群の処置を必要とする対象のハンター症候群の処置方法であって、請求項1~57のいずれか1項に記載の医薬組成物を提供し、それを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項59】
前記医薬組成物が静脈内投与される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
ハンター症候群の処置を必要とする対象のハンター症候群の処置に使用するための、請求項1~57のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項61】
ハンター症候群の処置を必要とする対象のハンター症候群を処置するための医薬の調製における、請求項1~57のいずれか1項に記載されるような医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月3日出願の米国仮特許出願第62/828,859号、及び2019年4月10日出願の米国仮特許出願第62/832,032号に対する優先権を主張する。上で参照される出願の内容全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
リソソーム蓄積障害(LSD)は、リソソーム機能の欠陥に起因する比較的稀な遺伝性代謝性疾患である。LSDは通常、リソソーム内の代謝産物の分解に関与する単一酵素の欠損によって引き起こされる。酵素活性の欠如に起因する生成物の蓄積は、様々な器官系に影響を及ぼし、重篤な症状及び早期死亡につながり得る。大多数のLSDが顕著な神経学的要素も有し、これは進行性神経変性及び重度の認知障害からてんかん、行動障害、及び精神障害にまでわたる。LSDにおいて欠損している酵素の組換え型が、障害の処置に使用され得るが、そのような療法は、血液脳関門(BBB)を越えて組換え酵素を送達することが困難なため、脳に対する効果はほとんど有しない可能性がある。したがって、これらの障害を処置するための新規組成物が必要である。特に、ハンター症候群を処置するための新規組成物が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
ある特定の実施形態は、
a.以下を含むタンパク質分子:
i.第1Fcポリペプチド、及び
ii.酵素補充療法(ERT)酵素、ERT酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結される第2Fcポリペプチド、
b.緩衝液、ならびに
c.塩
を含む医薬組成物を提供し、医薬組成物のpHが、約5.5~7.0である。
【0004】
ある特定の実施形態では、緩衝液は、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、アルギニン緩衝液、及びヒスチジン緩衝液からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液は、リン酸ナトリウム緩衝液またはリン酸カリウム緩衝液である。
【0005】
ある特定の実施形態では、塩はナトリウム塩である。ある特定の実施形態では、ナトリウム塩は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムからなる群から選択される。
【0006】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、界面活性剤をさらに含む。
【0007】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、糖を含む安定剤をさらに含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、メチオニンをさらに含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、ERT酵素は、イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)、または野生型IDS、例えば、野生型ヒトIDSの触媒活性バリアントもしくは断片である。
【0010】
いくつかの実施形態では、ERT酵素は、イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)、IDSバリアント、またはその触媒活性断片である。いくつかの実施形態では、ERT酵素は、配列番号:1、2、3、11及び23のうちいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ERT酵素は、配列番号:1、2、3、11及び23のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1または第2Fcポリペプチドは、EU番号付けによる、380、384、386、387、388、389、390、413、415、416、及び421からなる群から選択される少なくとも9つのアミノ酸残基位置に置換を含む。
【0012】
ある特定の実施形態はまた、
a.以下を含むタンパク質分子:
i.EU番号付けによる、380、384、386、387、388、389、390、413、415、416、及び421からなる群から選択される少なくとも9つのアミノ酸残基位置に置換を含む第1Fcポリペプチド、ならびに
ii.イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)アミノ酸配列に連結される第2Fcポリペプチドであって、そのIDSアミノ酸配列が、配列番号:1と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む第2Fcポリペプチド、
b.緩衝液、ならびに
c.塩
を含む医薬組成物を提供し、医薬組成物のpHが、約5.5~7.0である。
【0013】
ある特定の実施形態では、緩衝液は、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、アルギニン緩衝液、及びヒスチジン緩衝液からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液は、リン酸ナトリウム緩衝液またはリン酸カリウム緩衝液である。
【0014】
ある特定の実施形態では、塩はナトリウム塩である。ある特定の実施形態では、ナトリウム塩は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムからなる群から選択される。
【0015】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、界面活性剤をさらに含む。
【0016】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、糖を含む安定剤をさらに含む。
【0017】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、メチオニンをさらに含む。
【0018】
ある特定の実施形態では、IDSアミノ酸配列は、配列番号:1、2、及び3からなる群から選択される配列を含む。ある特定の実施形態では、IDSアミノ酸配列は、第2FcポリペプチドのN末端に連結される。ある特定の実施形態では、IDSアミノ酸配列に連結される第2Fcポリペプチドは、配列番号:4または5のアミノ酸配列を含む。
【0019】
ある特定の実施形態では、第1Fcポリペプチドは、EU番号付けによる、アミノ酸残基384、386、387、388、389、413、415、416、及び421位に置換を含む。ある特定の実施形態では、第1Fcポリペプチドは、配列番号:6と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。ある特定の実施形態では、第1Fcポリペプチドは、380位にTrp、Leu、またはGlu、384位にTyr、386位にThr、387位にGlu、388位にTrp、389位にSerまたはAla、390位にSerまたはAsn、413位にThr、415位にGlu、416位にGlu、及び421位にPheを含む。
【0020】
ある特定の実施形態では、第1Fcポリペプチド及び第2Fcポリペプチドは、二量体化する。
【0021】
ある特定の実施形態では、第1Fcポリペプチドは、配列番号:6と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、IDSアミノ酸配列に連結される第2Fcポリペプチドは、配列番号:4または5の配列を含む。
【0022】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は液体組成物である。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、凍結乾燥組成物である。
【0023】
ある特定の実施形態はまた、LSD(例えば、ハンター症候群)の処置を必要とする対象のLSDを処置する方法を提供し、本方法は、本明細書に記載される医薬組成物を提供し、それを対象に投与することを含む。
【0024】
ある特定の実施形態は、LSD(例えば、ハンター症候群)の処置を必要とする対象のLSDの処置に使用するための本明細書に記載される医薬組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ある特定の実施形態は、(a)ERT酵素-Fc融合ポリペプチド及びFcポリペプチド(例えば、修飾Fcポリペプチド)を含むタンパク質分子、(b)緩衝液、ならびに(c)塩などの等張剤を含む医薬組成物に加えて、そのような組成物の使用方法を提供する。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載される1つ以上の追加成分をさらに含む。例えば、ある特定の実施形態では、医薬組成物は、界面活性剤、及び/または1つ以上の安定剤をさらに含む。したがって、ある特定の実施形態は、(a)ERT酵素-Fc融合ポリペプチド及びFcポリペプチド(例えば、修飾Fcポリペプチド)を含むタンパク質分子、(b)緩衝液(例えば、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムを含む)、(c)等張剤(例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウム)、(d)界面活性剤、ならびに(e)1つ以上の安定剤(例えば、糖を含む安定剤)を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、メチオニンをさらに含む。ある特定の実施形態では、医薬組成物は複数のタンパク質分子を含み、これらは同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、それらが本明細書に記載されるタンパク質分子を安定化できるか、または代わりにそのタンパク質分子の劣化を遅延もしくは防止できるように製剤化されている。特に、製剤は、タンパク質分子が、保存時に、ならびにある特定のプロセス(凍結/解凍、機械的混合及び凍結乾燥など)(実施例を参照のこと)中でその物理的及び/または化学的整合性ならびに生物活性を保持するように開発されている。
【0026】
ERT酵素-Fc融合ポリペプチドを含むタンパク質分子
本明細書に記載されるように、ある特定の実施形態は、ERT酵素-Fc融合ポリペプチドを含むタンパク質分子を含む医薬組成物を提供する。ERT酵素は、LSDにおいて欠損している任意の酵素であってよい。融合タンパク質中に組み込まれるERT酵素は触媒活性がある、すなわち、それはLSDにおいて欠損している酵素活性を保持する。いくつかの実施形態では、ERT酵素はイズロン酸2-スルファターゼ(IDS)であり、これはハンター症候群において欠損している。
【0027】
Fcポリペプチドに連結されるERT酵素を含む融合タンパク質を含むタンパク質分子のある特定の実施形態が以下に記載され、これらの融合タンパク質は、LSDの処置として本明細書に記載されるある特定の方法に使用されてよい。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は二量体Fcポリペプチドを含み、Fcポリペプチドモノマーの少なくとも1つがERT酵素に連結されている。Fcポリペプチドは酵素半減期を増加させ得、いくつかの場合には、タンパク質に追加の機能特性を付与するように修飾され得る。血液脳関門(BBB)を越えるERT酵素の送達を容易にする融合タンパク質を含むタンパク質分子もまた、本明細書に記載される。これらのタンパク質分子は、二量体を形成するFcポリペプチド及び修飾Fcポリペプチド、ならびにFc領域及び/または修飾Fc領域に連結されるERT酵素を含む。修飾Fc領域は、トランスフェリン受容体(TfR)などのBBB受容体に特異的に結合し得る。いくつかの実施形態では、ERTアミノ酸配列は、全長ERT配列である。他の実施形態では、ERTアミノ酸配列は、野生型ERT、例えば、野生型ヒトIDSの触媒活性バリアントまたは断片である。これらのタンパク質分子に関するある特定の実施形態は、ERT酵素と組み合わせた酵素輸送ビヒクル(ETV)、例えば、ETV:IDSとして本明細書で言及される場合がある。
【0028】
いくつかの実施形態では、ERT酵素は、イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)、IDSバリアント、またはその触媒活性断片である。いくつかの実施形態では、IDS酵素は、配列番号:1、2、3、11及び23のうちいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の同一性、または少なくとも96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、IDS酵素は、配列番号:1、2、3、11、及び23のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、IDS酵素は、配列番号:1、2及び3のうちいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の同一性、または少なくとも96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、IDS酵素は、配列番号:1、2及び3のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、IDS酵素は、配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、IDS酵素は、配列番号:1のアミノ酸配列を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、IDS酵素は、配列番号:2のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、IDS酵素は、配列番号:2のアミノ酸配列を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、IDS酵素は、配列番号:3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、IDS酵素は、配列番号:3のアミノ酸配列を含む。
【0033】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、(i)修飾(例えば、ヘテロ二量体化を促進する1つ以上の修飾)を含有する場合があるか、または野生型Fcポリペプチドの場合があるFcポリペプチド、及びERT酵素アミノ酸配列、ならびに(ii)修飾(例えば、ヘテロ二量体化を促進する1つ以上の修飾)を含有する場合があるか、または野生型Fcポリペプチドの場合があるFcポリペプチド、及び場合により、ERT酵素アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、一方または両方のFcポリペプチドが、血液脳関門(BBB)受容体、例えば、TfRへの結合をもたらす修飾を含有してよい。ERT酵素は、LSDにおいて欠損している任意の酵素であってよい。融合タンパク質中に組み込まれるERT酵素は触媒活性がある、すなわち、それはLSDにおいて欠損している酵素活性を保持する。いくつかの実施形態では、ERT酵素はIDSであり、これはハンター症候群において欠損している。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、IDS酵素及び場合により、BBB受容体に結合する修飾Fcポリペプチド、例えば、野生型IDSの触媒活性断片またはバリアントを含むTfR結合Fcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、IDS酵素は、配列番号:1、2、3、11及び23のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDSタンパク質のバリアントまたは触媒活性断片である。いくつかの実施形態では、IDS酵素の触媒活性バリアントまたは断片は、野生型IDS酵素の活性の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、またはそれを超える活性を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質中に存在するERT酵素、例えば、IDS、またはその触媒活性バリアントもしくは断片は、FcポリペプチドまたはTfR結合Fcポリペプチドに連結されない場合の酵素の活性と比較して、その活性の少なくとも25%を保持する。いくつかの実施形態では、ERT酵素、またはその触媒活性バリアントもしくは断片は、FcポリペプチドまたはTfR結合Fcポリペプチドに連結されない場合の酵素の活性と比較して、その活性の少なくとも10%、または少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%を保持する。いくつかの実施形態では、ERT酵素、またはその触媒活性バリアントもしくは断片は、FcポリペプチドまたはTfR結合Fcポリペプチドに連結されない場合の酵素の活性と比較して、その活性の少なくとも80%、85%、90%、または95%を保持する。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドへの融合は、ERT酵素、またはその触媒活性バリアントもしくは断片の活性を減少させない。いくつかの実施形態では、TfR結合Fcポリペプチドへの融合は、ERT酵素の活性を減少させない。
【0036】
血液脳関門(BBB)受容体結合のためのFcポリペプチド修飾
いくつかの態様では、分子は、血液脳関門(BBB)を越えて輸送できる。そのようなタンパク質は、BBB受容体に結合する修飾Fcポリペプチドを含む。BBB受容体は、BBB内皮に加えて、他の細胞型及び組織型上で発現される。いくつかの実施形態では、BBB受容体は、トランスフェリン受容体(TfR)である。
【0037】
様々なFc修飾において指定されるアミノ酸残基は、BBB受容体、例えば、TfRに結合する修飾Fcポリペプチド中に導入されるものを含めて、本明細書ではEUインデックス番号付けを使用して番号付けされる。任意のFcポリペプチド、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fcポリペプチドは、本明細書に記載されるような1つ以上の位置に修飾、例えば、アミノ酸置換を有してよい。
【0038】
本明細書に記載されるタンパク質分子中に存在する修飾(例えば、ヘテロ二量体化及び/またはBBB受容体結合を増強させる)Fcポリペプチドは、天然Fc領域配列あるいはその断片、例えば、少なくとも50アミノ酸長もしくは少なくとも100アミノ酸長、またはそれを超えるアミノ酸長の断片と少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性を有し得る。いくつかの実施形態では、天然Fcアミノ酸配列は、配列番号:8のFc領域配列である。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:8のアミノ酸1~110と、または配列番号:8のアミノ酸111~217と、あるいはその断片、例えば、少なくとも50アミノ酸長もしくは少なくとも100アミノ酸長、またはそれを超えるアミノ酸長の断片と少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:8のアミノ酸1~216、あるいはその断片、例えば、少なくとも50アミノ酸長もしくは少なくとも100アミノ酸長、またはそれを超えるアミノ酸長の断片と少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、修飾(例えば、ヘテロ二量体化及び/またはBBB受容体結合を増強させる)Fcポリペプチドは、天然Fc領域アミノ酸配列に対応する、少なくとも50アミノ酸、または少なくとも60、65、70、75、80、85、90、もしくは95以上、または少なくとも100アミノ酸、あるいはそれを超えるアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、天然Fc領域アミノ酸配列、例えば、配列番号:8などに対応する、少なくとも25連続アミノ酸、または少なくとも30、35、40、もしくは45連続アミノ酸、または50連続アミノ酸、または少なくとも60、65、70、75、80、85、90、もしくは95以上の連続アミノ酸、または100以上の連続アミノ酸を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、BBB受容体結合活性のために修飾されるドメインは、ヒトIg CH3ドメイン、例えば、IgG1 CH3ドメインなどである。CH3ドメインは、任意のIgGサブタイプ、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のものであり得る。IgG1抗体との関連において、CH3ドメインは、EU番号付けスキームによって番号付けされるように341位付近~447位付近のアミノ酸のセグメントを指す。
【0041】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子中に存在する修飾(例えば、BBB受容体結合)Fcポリペプチドは、EU番号付けスキームによる、アミノ酸384、386、387、388、389、390、413、416、及び421位に少なくとも1つ、2つ、または3つの置換を含み、いくつかの実施形態では、少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、または9つの置換を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子中に存在する修飾(例えば、BBB受容体結合)Fcポリペプチドは、参照配列、例えば、配列番号:8中において、EU番号付けスキームによる、アミノ酸384、386、387、388、389、390、413、416、及び421位に少なくとも1つ、2つ、または3つの置換を含み、いくつかの実施形態では、少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、または9つの置換を含む。
【0042】
FcRn結合部位
ある特定の態様では、修飾(例えば、BBB受容体結合)Fcポリペプチド、またはBBB受容体に特異的に結合しない、本明細書に記載されるタンパク質分子中に存在するFcポリペプチドはまた、FcRn結合部位を含み得る。いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、Fcポリペプチドまたはその断片内に存在する。
【0043】
いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、天然FcRn結合部位を含む。いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、天然FcRn結合部位のアミノ酸配列と比較してアミノ酸変化を含まない。いくつかの実施形態では、天然FcRn結合部位は、IgG結合部位、例えば、ヒトIgG結合部位である。いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、FcRn結合を変化させる修飾を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、変異している、例えば、置換されている1つ以上のアミノ酸残基を有し、その変異(複数可)は、血清半減期を増加させるか、または血清半減期を実質的には減少させない(すなわち、変異した位置に野生型残基を有する対応する修飾Fcポリペプチドと比較して、同じ条件下でアッセイされる場合に血清半減期を25%以下で減少させる)。いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、EU番号付けスキームによる、250~256、307、380、428、及び433~436位で置換される1つ以上のアミノ酸残基を有する。
【0045】
いくつかの実施形態では、FcRn結合部位の、またはその近傍の1つ以上の残基は、修飾ポリペプチドの血清半減期を延長させるために、天然ヒトIgG配列と比較して変異している。いくつかの実施形態では、変異は、EU番号付けスキームによる、252、254、及び256位のうち1つ、2つ、または3つに導入される。いくつかの実施形態では、変異は、M252Y、S254T、及びT256Eである。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、変異M252Y、S254T、及びT256Eをさらに含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、EU番号付けスキームによる、T307、E380、及びN434位のうち1つ、2つ、または3つ全てに置換を含む。いくつかの実施形態では、変異は、T307Q及びN434Aである。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、変異T307A、E380A、及びN434Aを含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、EU番号付けスキームによる、T250及びM428位に置換を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、変異T250Q及び/またはM428Lを含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、EU番号付けスキームによる、M428及びN434位に置換を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、変異M428L及びN434Sを含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、N434SまたはN434A変異を含む。
【0046】
トランスフェリン受容体結合Fcポリペプチド
本節は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合し、血液脳関門(BBB)を越えて輸送できる、本明細書に記載される修飾Fcポリペプチドの生成について記載する。
【0047】
CH3ドメインに変異を含むTfR結合Fcポリペプチド
いくつかの実施形態では、TfRに特異的に結合する修飾Fcポリペプチドは、CH3ドメインに置換を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、TfR結合活性のために修飾されるヒトIg CH3ドメイン、例えば、IgG CH3ドメインなどを含む。CH3ドメインは、任意のIgGサブタイプ、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のものであり得る。IgG抗体との関連において、CH3ドメインは、EU番号付けスキームによって番号付けされるように341位付近~447位付近のアミノ酸のセグメントを指す。
【0048】
いくつかの実施形態では、TfRに特異的に結合する修飾Fcポリペプチドは、TfRのアピカルドメインに結合し、トランスフェリンとTfRとの結合をブロックする、またはさもなければ阻害することなくTfRに結合する可能性がある。いくつかの実施形態では、トランスフェリンとTfRとの結合は、実質的に阻害されない。いくつかの実施形態では、トランスフェリンとTfRとの結合は、約50%未満(例えば、約45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%未満)で阻害される。いくつかの実施形態では、トランスフェリンとTfRとの結合は、約20%未満(例えば、約19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%未満)で阻害される。
【0049】
いくつかの実施形態では、TfRに特異的に結合する修飾Fcポリペプチドは、EU番号付けスキームによる、384、386、387、388、389、390、413、416、及び421位に少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、または9つの置換を含む。いくつかの実施形態では、TfRに特異的に結合する修飾Fcポリペプチドは、参照配列、例えば、配列番号:8中において、EU番号付けスキームによる、384、386、387、388、389、390、413、416、及び421位に少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、または9つの置換を含む。いくつかの実施形態では、388及び/または421位のアミノ酸は、芳香族アミノ酸、例えば、Trp、Phe、またはTyrである。いくつかの実施形態では、388位のアミノ酸はTrpである。いくつかの実施形態では、421位の芳香族アミノ酸は、TrpまたはPheである。
【0050】
いくつかの実施形態では、以下のような少なくとも1つの位置が置換されている:384位のLeu、Tyr、Met、もしくはVal、386位のLeu、Thr、His、もしくはPro、387位のVal、Pro、もしくは酸性アミノ酸、388位の芳香族アミノ酸、例えば、Trp、389位のVal、Ser、もしくはAla、413位の酸性アミノ酸、Ala、Ser、Leu、Thr、もしくはPro、416位のThrもしくは酸性アミノ酸、または421位のTrp、Tyr、His、もしくはPhe。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、セット内の位置のうち1つ以上における特定のアミノ酸の保存的置換、例えば、同じ電荷分類、疎水性分類、側鎖環構造分類(例えば、芳香族アミノ酸)、もしくはサイズ分類、及び/または極性もしくは非極性分類中のアミノ酸を含んでよい。したがって、例えば、Ileは384位、386位、及び/または413位に存在する場合がある。いくつかの実施形態では、387、413、及び416位のうち1つ、2つ、または各々の位置における酸性アミノ酸は、Gluである。他の実施形態では、387、413、及び416位のうち1つ、2つまたは各々における酸性アミノ酸は、Aspである。いくつかの実施形態では、384、386、387、388、389、413、416、及び421位のうち2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つ全てが、本段落中で規定されるようなアミノ酸置換を有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、前2つの段落に記載されるように修飾されるFcポリペプチドは、390位に天然Asnを含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、390位にGly、His、Gln、Leu、Lys、Val、Phe、Ser、Ala、またはAspを含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、EU番号付けスキームによる、380、391、392、及び415を含む位置に1つ、2つ、3つ、または4つの置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、Trp、Tyr、Leu、またはGlnは、380位に存在する場合がある。いくつかの実施形態では、Ser、Thr、Gln、またはPheは、391位に存在する場合がある。いくつかの実施形態では、Gln、Phe、またはHisは、392位に存在する場合がある。いくつかの実施形態では、Gluは、415位に存在する場合がある。
【0052】
ある特定の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、EU番号付けによる、380、384、386、387、388、389、390、413、415、416、及び421からなる群から選択される位置に少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、または11の置換を含む。ある特定の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、EU番号付けによる、380、384、386、387、388、389、390、413、415、416、及び421からなる群から選択される位置に少なくとも8つの置換を含む。ある特定の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、EU番号付けによる、380、384、386、387、388、389、390、413、415、416、及び421からなる群から選択される位置に少なくとも9つの置換を含む。ある特定の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、EU番号付けによる、380、384、386、387、388、389、390、413、415、416、及び421からなる群から選択される位置に少なくとも10の置換を含む。ある特定の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、EU番号付けによる、380、384、386、387、388、389、390、413、415、416、及び421からなる群から選択される位置に11の置換を含む。ある特定の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、EU番号付けによる、384、386、387、388、389、413、415、416、及び421位に置換を含む。
【0053】
ある特定の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、以下:380位のTrp、Leu、もしくはGlu、384位のTyrもしくはPhe、386位のThr、387位のGlu、388位のTrp、389位のSer、Ala、Val、もしくはAsn、390位のSerもしくはAsn、413位のThrもしくはSer、415位のGluもしくはSer、416位のGlu、及び/または421位のPheから選択される2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、または11の位置を含み、位置はEU番号付けによるものである。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、380位にTrp、Leu、またはGlu、384位にTyrまたはPhe、386位にThr、387位にGlu、388位にTrp、389位にSer、Ala、Val、またはAsn、390位にSerまたはAsn、413位にThrまたはSer、415位にGluまたはSer、416位にGlu、及び421位にPheを含み、位置はEU番号付けによるものである。
【0054】
ある特定の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、以下:380位のTrp、Leu、もしくはGlu、384位のTyr、386位のThr、387位のGlu、388位のTrp、389位のSerもしくはAla、390位のSerもしくはAsn、413位のThr、415位のGlu、416位のGlu、及び/または421位のPheから選択される2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、または11の位置を含み、位置はEU番号付けによるものである。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、380位にTrp、Leu、またはGlu、384位にTyr、386位にThr、387位にGlu、388位にTrp、389位にSerまたはAla、390位にSerまたはAsn、413位にThr、415位にGlu、416位にGlu、及び421位にPheを含み、位置はEU番号付けによるものである。
【0055】
ある特定の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、以下:380位のTrp、384位のTyr、386位のThr、387位のGlu、388位のTrp、389位のSer、390位のSer、413位のThr、415位のGlu、416位のGlu、及び/または421位のPheから選択される2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、または11の位置を含み、位置はEU番号付けによるものである。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、380位にTrp、384位にTyr、386位にThr、387位にGlu、388位にTrp、389位にSer、390位にSer、413位にThr、415位にGlu、416位にGlu、及び421位にPheを含み、位置はEU番号付けによるものである。
【0056】
ある特定の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、以下:380位のLeu、384位のTyr、386位のThr、387位のGlu、388位のTrp、389位のAla、390位のSer、413位のThr、415位のGlu、416位のGlu、及び/または421位のPheから選択される2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、または11の位置を含み、位置はEU番号付けによるものである。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、380位にLeu、384位にTyr、386位にThr、387位にGlu、388位にTrp、389位にAla、390位にSer、413位にThr、415位にGlu、416位にGlu、及び421位にPheを含み、位置はEU番号付けによるものである。
【0057】
ある特定の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、以下:380位のGlu、384位のTyr、386位のThr、387位のGlu、388位のTrp、389位のAla、390位のAsn、413位のThr、415位のGlu、416位のGlu、及び/または421位のPheから選択される2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、または11の位置を含み、位置はEU番号付けによるものである。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、380位にGlu、384位にTyr、386位にThr、387位にGlu、388位にTrp、389位にAla、390位にAsn、413位にThr、415位にGlu、416位にGlu、及び421位にPheを含み、位置はEU番号付けによるものである。
【0058】
ある特定の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、以下:380位のLeu、384位のTyr、386位のThr、387位のGlu、388位のTrp、389位のSer、390位のSer、413位のThr、415位のGlu、416位のGlu、及び/または421位のPheから選択される2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、または11の位置を含み、位置はEU番号付けによるものである。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、380位にLeu、384位にTyr、386位にThr、387位にGlu、388位にTrp、389位にSer、390位にSer、413位にThr、415位にGlu、416位にGlu、及び421位にPheを含み、位置はEU番号付けによるものである。
【0059】
ある特定の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、384位にLeuもしくはMet、386位にLeu、His、もしくはPro、387位にVal、388位にTrp、389位にValもしくはAla、413位にPro、416位にThr、及び/または421位にTrpを含み、位置はEU番号付けによるものである。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、EU番号付けによる、391位にSer、Thr、Gln、またはPheをさらに含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、380位にTrp、Tyr、Leu、もしくはGln及び/または392位にGln、Phe、もしくはHisをさらに含み、位置はEU番号付けによるものである。いくつかの実施形態では、Trpが、EU番号付けによる380位に存在し、及び/またはGlnが392位に存在する。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、EU番号付けによる380位にTrpを有しない。
【0060】
他の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、384位にTyr、386位にThr、387位にGluもしくはVal、388位にTrp、389位にSer、413位にSerもしくはThr、416位にGlu、及び/または421位にPheを含み、位置はEU番号付けによるものである。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、EU番号付けによる390位に天然Asnを含む。ある特定の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、380位にTrp、Tyr、Leu、もしくはGln及び/または415位にGluをさらに含み、位置はEU番号付けによるものである。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、380位にTrp及び/または415位にGluをさらに含み、位置はEU番号付けによるものである。
【0061】
追加の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、EU番号付けスキームによる、414、424、及び426を含む位置に1つ、2つ、または3つの置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、414位はLys、Arg、Gly、もしくはProであり、424位はSer、Thr、Glu、もしくはLysであり、及び/または426位はSer、Trp、もしくはGlyである。
【0062】
いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、以下の置換:EU番号付けスキームによる、380位にTrp、386位にThr、388位にTrp、389位にVal、413位にThrもしくはSer、415位にGlu、及び/または421位にPheのうち1つ以上を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、追加の変異、例えば、以下に記載される変異などを含み、これらとしてはノブ変異(例えば、EU番号付けを参照して番号付けされるようなT366W)、ホール変異(例えば、EU番号付けを参照して番号付けされるようなT366S、L368A、及びY407V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、EU番号付けを参照して番号付けされるようなL234A、L235A、及び/またはP329G(例えば、L234A及びL235A))、及び/または血清安定性もしくは血清半減期を増加させる変異(例えば、(i)EU番号付けを参照して番号付けされるようなM252Y、S254T、及びT256E、もしくは(ii)EU番号付けスキームによって番号付けされるようなM428Lを伴う、もしくはそれを伴わないN434S)が挙げられるが、これらに限定されない。実例として、配列番号:6、7、25、28、29、30、41、42、44、47、48及び49は、これらの追加の変異のうち1つ以上を含む、CH3ドメイン中に変異を有する修飾Fcポリペプチドの非限定的な例を提供する。
【0064】
いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU番号付けを参照して番号付けされるようなT366W)を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU番号付けを参照して番号付けされるようなT366W)ならびにエフェクター機能を調節する変異(例えば、EU番号付けを参照して番号付けされるようなL234A、L235A、及び/またはP329G(例えば、L234A及びL235A))を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:6、7、25、28、29、30、41、42、44、47、48または49の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。ある特定の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:6、7、25、28、29または30の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。ある特定の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:41、42、44、47、48または49の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU番号付けを参照して番号付けされるようなT366W)ならびに血清安定性または血清半減期を増加させる変異(例えば、(i)EU番号付けを参照して番号付けされるようなM252Y、S254T、及びT256E、または(ii)EU番号付けスキームによって番号付けされるようなM428Lを伴う、もしくはそれを伴わないN434S)を含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU番号付けを参照して番号付けされるようなT366W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、EU番号付けを参照して番号付けされるようなL234A、L235A、及び/またはP329G(例えば、L234A及びL235A))、ならびに血清安定性または血清半減期を増加させる変異(例えば、(i)EU番号付けを参照して番号付けされるようなM252Y、S254T、及びT256E、または(ii)EU番号付けスキームによって番号付けされるようなM428Lを伴う、もしくはそれを伴わないN434S)を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU番号付けを参照して番号付けされるようなT366S、L368A、及びY407V)を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU番号付けを参照して番号付けされるようなT366S、L368A、及びY407V)ならびにエフェクター機能を調節する変異(例えば、EU番号付けを参照して番号付けされるようなL234A、L235A、及び/またはP329G(例えば、L234A及びL235A))を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU番号付けを参照して番号付けされるようなT366S、L368A、及びY407V)ならびに血清安定性または血清半減期を増加させる変異(例えば、(i)EU番号付けを参照して番号付けされるようなM252Y、S254T、及びT256E、または(ii)EU番号付けスキームによって番号付けされるようなM428Lを伴う、もしくはそれを伴わないN434S)を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU番号付けを参照して番号付けされるようなT366S、L368A、及びY407V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、EU番号付けを参照して番号付けされるようなL234A、L235A、及び/またはP329G(例えば、L234A及びL235A))、ならびに血清安定性または血清半減期を増加させる変異(例えば、(i)EU番号付けを参照して番号付けされるようなM252Y、S254T、及びT256E、または(ii)EU番号付けスキームによって番号付けされるようなM428Lを伴う、もしくはそれを伴わないN434S)を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、TfRに特異的に結合する修飾Fcポリペプチドは、EU番号付けスキームによる、345、346、347、349、437、438、439、及び440位に少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つの置換を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、437位にGly、438位にPhe、及び/または440位にAspを含む。いくつかの実施形態では、Gluは440位に存在する。ある特定の実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、以下のような位置:345位のPheもしくはIle、346位のAsp、Glu、Gly、Ala、もしくはLys、347位のTyr、Met、Leu、Ile、もしくはAsp、349位のThrもしくはAla、437位のGly、438位のPhe、439位のHis、Tyr、Ser、もしくはPhe、または440位のAspに少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、345、346、347、349、437、438、439、及び440位うち2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つ全てが、本段落中で規定されるような置換を有する。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、セット内の位置のうち1つ以上における特定のアミノ酸の保存的置換、例えば、同じ電荷分類、疎水性分類、側鎖環構造分類(例えば、芳香族アミノ酸)、もしくはサイズ分類、及び/または極性もしくは非極性分類中のアミノ酸を含んでよい。
【0072】
追加のFcポリペプチド変異
いくつかの態様では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、独立して選択される修飾を各々含む場合があるか、または野生型Fcポリペプチド、例えば、ヒトIgG1 Fcポリペプチドの場合がある2つのFcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、一方または両方のFcポリペプチドが、血液脳関門(BBB)受容体、例えば、トランスフェリン受容体(TfR)への結合を付与する1つ以上の修飾を含有する。一方または両方のFcポリペプチドに導入され得る他の変異の非限定的な例としては、例えば、Fcポリペプチドの血清安定性もしくは血清半減期を増加させる変異、エフェクター機能を調節する変異、グリコシル化に影響を与える変異、ヒトの免疫原性を減少させる変異、及び/またはノブ及びホールヘテロ二量体化をもたらす変異が挙げられる。
【0073】
いくつかの実施形態では、タンパク質分子中に存在するFcポリペプチドは独立して、対応する野生型Fcポリペプチド(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fcポリペプチド)と少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0074】
いくつかの実施形態では、タンパク質分子中に存在するFcポリペプチドはノブ及びホール変異を含み、これらはヘテロ二量体の形成を促進し、ホモ二量体の形成を妨害する。一般に、本修飾は、第1ポリペプチドの界面に突起(「ノブ」)を導入し、第2ポリペプチドの界面に対応する空洞(「ホール」)を導入することで、ヘテロ二量体の形成を促進し、それゆえホモ二量体の形成を妨害するように突起が空洞内に配置され得る。突起は、第1ポリペプチドの界面からの小さなアミノ酸側鎖を、より大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えることによって構築される。突起と同一または同様のサイズの補完的空洞は、大きなアミノ酸側鎖をより小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)で置き換えることによって第2ポリペプチドの界面に作製される。いくつかの実施形態では、そのような追加の変異は、ポリペプチドとBBB受容体、例えば、TfRとの結合に悪影響を及ぼさない、Fcポリペプチド中の位置に存在する。
【0075】
二量体化のためのノブ及びホールアプローチの例示的な一実施形態では、タンパク質分子中に存在するFcポリペプチドの一方の366位(EU番号付けスキームによって番号付けされる)が、天然スレオニンの代わりにトリプトファンを含む。二量体中の他方のFcポリペプチドは、天然チロシンの代わりに407位(EU番号付けスキームによって番号付けされる)にバリンを有する。他方のFcポリペプチドは、366位(EU番号付けスキームによって番号付けされる)の天然スレオニンがセリンで置換されている置換及び368位(EU番号付けスキームによって番号付けされる)の天然ロイシンがアラニンで置換されている置換をさらに含む場合がある。したがって、本明細書に記載されるタンパク質分子のFcポリペプチドの一方は、T366Wノブ変異を有し、他方のFcポリペプチドはY407V変異を有していて、これは通常、T366S及びL368Aホール変異を伴う。
【0076】
いくつかの実施形態では、血清半減期を増強するための修飾が導入されてよい。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子中に存在する一方または両方のFcポリペプチドは、EU番号付けスキームによって番号付けされるように、252位にチロシン、254位にスレオニン、及び256位にグルタミン酸を含んでよい。したがって、一方または両方のFcポリペプチドは、M252Y、S254T、及びT256E置換を有してよい。あるいは、一方または両方のFcポリペプチドは、EU番号付けスキームによって番号付けされるように、M428L及びN434S置換を有してよい。あるいは、一方または両方のFcポリペプチドは、N434SまたはN434A置換を有してよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子中に存在する一方または両方のFcポリペプチドは、エフェクター機能を減少させる修飾、すなわち、エフェクター機能を媒介するエフェクター細胞上に発現されるFc受容体に結合する際、ある特定の生物学的機能を誘導する能力が減少している修飾を含んでよい。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、ならびにB細胞活性化が挙げられるが、これらに限定されない。エフェクター機能は、抗体クラスによって変化する場合がある。例えば、天然ヒトIgG1及びIgG3抗体は、免疫系細胞上に存在する適切なFc受容体に結合するとADCC及びCDC活性を誘発し得、天然ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4は、免疫細胞上に存在する適切なFc受容体に結合するとADCP機能を誘発し得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子中に存在する一方または両方のFcポリペプチドはまた、ヘテロ二量体化を目的とした他の修飾、例えば、自然に帯電しているCH3-CH3界面内の接触残基の静電的操作または疎水性パッチ修飾を含有するように操作されてもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子中に存在する一方または両方のFcポリペプチドは、エフェクター機能を調節する追加の修飾を含んでよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子中に存在する一方または両方のFcポリペプチドは、エフェクター機能を減少させるか、または除去する修飾を含んでよい。エフェクター機能を減少させる例示的なFcポリペプチド変異としては、CH2ドメイン中の、例えば、EU番号付けスキームによる、234及び235位での置換が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、一方または両方のFcポリペプチドは、234及び235位にアラニン残基を含み得る。したがって、一方または両方のFcポリペプチドは、L234A及びL235A(LALA)置換を有してよい。
【0081】
エフェクター機能を調節する追加のFcポリペプチド変異としては、以下が挙げられるが、これに限定されない:329位に、プロリンがグリシンもしくはアルギニンで、またはFcのプロリン329とFcγRIIIのトリプトファン残基Trp87及びTrp110との間に形成されるFc/Fcγ受容体界面を破壊するのに十分な大きさのアミノ酸残基で置換されている変異を有する場合があること。追加の例示的な置換としては、EU番号付けスキームによる、S228P、E233P、L235E、N297A、N297D、及びP331Sが挙げられる。複数の置換、例えば、EU番号付けスキームによる、ヒトIgG1 Fc領域のL234A及びL235A、ヒトIgG1 Fc領域のL234A、L235A、及びP329G、ヒトIgG4 Fc領域のS228P及びL235E、ヒトIgG1 Fc領域のL234A及びG237A、ヒトIgG1 Fc領域のL234A、L235A、及びG237A、ヒトIgG2 Fc領域のV234A及びG237A、ヒトIgG4 Fc領域のL235A、G237A、及びE318A、ならびにヒトIgG4 Fc領域のS228P及びL236Eも存在する場合がある。いくつかの実施形態では、一方または両方のFcポリペプチドは、ADCCを調節する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、EU番号付けスキームによる298、333、及び/または334位での置換を有してよい。
【0082】
追加の変異を含む例示的なFcポリペプチド
非限定的な例として、本明細書に記載されるタンパク質分子中に存在する一方または両方のFcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU番号付けスキームによって番号付けされるようなT366W)、ホール変異(例えば、EU番号付けスキームによって番号付けされるようなT366S、L368A、及びY407V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、EU番号付けスキームによって番号付けされるようなL234A、L235A、及び/またはP329G(例えば、L234A及びL235A))、及び/または血清安定性もしくは血清半減期を増加させる変異(例えば、(i)EU番号付けを参照して番号付けされるようなM252Y、S254T、及びT256E、もしくは(ii)EU番号付けスキームによって番号付けされるようなM428Lを伴う、もしくはそれを伴わないN434S)を含む、追加の変異を含んでよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU番号付けスキームによって番号付けされるようなT366W)を有してよい(例えば、配列番号:8の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する)。
【0084】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU番号付けスキームによって番号付けされるようなT366W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、EU番号付けスキームによって番号付けされるようなL234A、L235A、及び/またはP329G(例えば、L234A及びL235A))を有してよい。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU番号付けスキームによって番号付けされるようなT366W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、EU番号付けスキームによって番号付けされるようなL234A、L235A、及び/またはP329G(例えば、L234A及びL235A))を有してよい(例えば、配列番号:8の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する)。
【0085】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU番号付けスキームによって番号付けされるようなT366W)、血清安定性または血清半減期を増加させる変異(例えば、(i)EU番号付けを参照して番号付けされるようなM252Y、S254T、及びT256E、または(ii)EU番号付けスキームによって番号付けされるようなM428Lを伴う、もしくはそれを伴わないN434S)を有してよい(例えば、配列番号:8の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する)。
【0086】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU番号付けスキームによって番号付けされるようなT366W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、EU番号付けスキームによって番号付けされるようなL234A、L235A、及び/またはP329G(例えば、L234A及びL235A))、血清安定性または血清半減期を増加させる変異(例えば、(i)EU番号付けを参照して番号付けされるようなM252Y、S254T、及びT256E、または(ii)EU番号付けスキームによって番号付けされるようなM428Lを伴う、もしくはそれを伴わないN434S)を有してよい(例えば、配列番号:8の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する)。
【0087】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU番号付けスキームによって番号付けされるようなT366S、L368A、及びY407V)を有してよい(例えば、配列番号:8の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する)。
【0088】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU番号付けスキームによって番号付けされるようなT366S、L368A、及びY407V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、EU番号付けスキームによって番号付けされるようなL234A、L235A、及び/またはP329G(例えば、L234A及びL235A))を有してよい(例えば、配列番号:8の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する)。
【0089】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU番号付けスキームによって番号付けされるようなT366S、L368A、及びY407V)、血清または血清半減期を増加させる変異(例えば、(i)EU番号付けを参照して番号付けされるようなM252Y、S254T、及びT256E、または(ii)EU番号付けスキームによって番号付けされるようなM428Lを伴う、もしくはそれを伴わないN434S)を有してよい(例えば、配列番号:8の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する)。
【0090】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU番号付けスキームによって番号付けされるようなT366S、L368A、及びY407V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、EU番号付けスキームによって番号付けされるようなL234A、L235A、及び/またはP329G(例えば、L234A及びL235A))、血清安定性または血清半減期を増加させる変異(例えば、(i)EU番号付けを参照して番号付けされるようなM252Y、S254T、及びT256E、または(ii)EU番号付けスキームによって番号付けされるようなM428Lを伴う、もしくはそれを伴わないN434S)を有してよい(例えば、配列番号:8の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する)。
【0091】
ERT酵素を含む例示的なタンパク質分子
いくつかの態様では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、第1Fcポリペプチド及び第2Fcポリペプチドを含み、いずれかがERT酵素、ERT酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結され、第1Fcポリペプチドは第2FcポリペプチドとFc二量体を形成する。いくつかの実施形態では、第1Fcポリペプチド及び/または第2Fcポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変領域配列あるいはその抗原結合部分を含まない。いくつかの実施形態では、第1Fcポリペプチドは修飾Fcポリペプチドであり、及び/または第2Fcポリペプチドは修飾Fcポリペプチドである。いくつかの実施形態では、第1Fcポリペプチドは修飾Fcポリペプチドである。いくつかの実施形態では、第2Fcポリペプチドは修飾Fcポリペプチドである。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、他方のFcポリペプチドとのそのヘテロ二量体化を促進する1つ以上の修飾を含有する。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、エフェクター機能を減少させる1つ以上の修飾を含有する。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、血清半減期を延長する1つ以上の修飾を含有する。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、血液脳関門(BBB)受容体、例えば、トランスフェリン受容体(TfR)への結合を付与する1つ以上の修飾を含有する。
【0092】
他の態様では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、BBB受容体、例えば、TfRに特異的に結合する修飾Fcポリペプチドを含む第1ポリペプチド鎖、及び修飾Fcポリペプチドと二量体化してFc二量体を形成するFcポリペプチドを含む第2ポリペプチド鎖を含む。ERT酵素は、第1または第2ポリペプチド鎖のいずれかに連結されてよい。いくつかの実施形態では、ERT酵素は、第2ポリペプチド鎖に連結されている。いくつかの実施形態では、タンパク質は2つのERT酵素を含み、各々がポリペプチド鎖の一方に連結されている。いくつかの実施形態では、第2ポリペプチド鎖のFcポリペプチドは、第1ポリペプチド鎖の修飾Fcポリペプチドと同じBBB受容体に特異的に結合する、BBB受容体結合ポリペプチドであってよい。いくつかの実施形態では、第2ポリペプチド鎖のFcポリペプチドは、BBB受容体に特異的に結合しない。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、TfRに特異的に結合する修飾Fcポリペプチドを含む第1ポリペプチド鎖及びFcポリペプチドを含む第2ポリペプチド鎖を含み、修飾Fcポリペプチド及びFcポリペプチドは、二量体化してFc二量体を形成する。いくつかの実施形態では、ERT酵素は、第1ポリペプチド鎖に連結されている。いくつかの実施形態では、ERT酵素は、第2ポリペプチド鎖に連結されている。いくつかの実施形態では、第2ポリペプチド鎖のFcポリペプチドは、BBB受容体、例えば、TfRに特異的に結合しない。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、TfRに結合し、T366W(ノブ)置換を含む修飾Fcポリペプチドを含む第1ポリペプチド鎖、ならびにEU番号付けスキームによって番号付けされるような、T366S、L368A、及びY407V(ホール)置換を含むFcポリペプチドを含む第2ポリペプチド鎖を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチド及び/またはFcポリペプチドは、EU番号付けスキームによって番号付けされるような、L234A及びL235A(LALA)置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチド及び/またはFcポリペプチドは、EU番号付けスキームによって番号付けされるような、M252Y、S254T、及びT256E(YTE)置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチド及び/またはFcポリペプチドは、EU番号付けスキームによって番号付けされるような、L234A及びL235A(LALA)置換ならびにM252Y、S254T、及びT256E(YTE)置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチド及び/またはFcポリペプチドは、EU番号付けスキームによって番号付けされるような、234、235、252、254、256、及び366位にヒトIgG1野生型残基を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:6、28、29、41、47及び48のうちいずれか1つに指定されるようなノブ及びLALA変異を含み、各々の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:6、28、29、41、47及び48のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:6、28及び29のうちいずれか1つに指定されるようなノブ及びLALA変異を含み、各々の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:6、28及び29のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:41、47及び48のうちいずれか1つに指定されるようなノブ及びLALA変異を含み、各々の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:41、47及び48のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、配列番号:14~17のうちいずれか1つに指定されるようなホール、LALA、及び/またはYTE変異を含み、各々の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:14~17のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、配列番号:54~57のうちいずれか1つに指定されるようなホール、LALA、及び/またはYTE変異を含み、各々の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:54~57のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:6、28、29、41、47及び48のうちいずれか1つを含み、Fcポリペプチドは、配列番号:14、15、16、17、54、55、56及び57のうちいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:6、28及び29のうちいずれか1つを含み、Fcポリペプチドは、配列番号:14~17のうちいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:41、47及び48のうちいずれか1つを含み、Fcポリペプチドは、配列番号:54、55、56及び57のうちいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチド及び/またはFcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号:22)を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:7、25、30、42、44及び49のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:7、25、30、42、44及び49のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:7、25及び30のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:7、25及び30のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:42、44及び49のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:42、44及び49のうちいずれか1つの配列を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、TfRに結合し、T366S、L368A、及びY407V(ホール)置換を含む修飾Fcポリペプチドを含む第1ポリペプチド鎖、ならびにEU番号付けスキームによって番号付けされるような、T366W(ノブ)置換を含むFcポリペプチドを含む第2ポリペプチド鎖を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチド及び/またはFcポリペプチドは、EU番号付けスキームによって番号付けされるような、L234A及びL235A(LALA)置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチド及び/またはFcポリペプチドは、EU番号付けスキームによって番号付けされるような、M252Y、S254T、及びT256E(YTE)置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチド及び/またはFcポリペプチドは、EU番号付けスキームによって番号付けされるような、L234A及びL235A(LALA)置換ならびにM252Y、S254T、及びT256E(YTE)置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチド及び/またはFcポリペプチドは、EU番号付けスキームによって番号付けされるような、234、235、252、254、256、及び366位にヒトIgG1野生型残基を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、ホール、LALA、及びYTE突然変異を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、配列番号:18~21のうちいずれか1つに指定されるようなノブ、LALA、及びYTE変異を含み、各々の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:18~21のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、配列番号:58~61のうちいずれか1つに指定されるようなノブ、LALA、及びYTE変異を含み、各々の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:58~61のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチド及び/またはFcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号:22)を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子中に存在するIDS酵素は、配列番号:14~17のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するFcポリペプチドを含むか、または配列番号:14~17のうちいずれか1つの配列を含むポリペプチド鎖に連結される(例えば、融合ポリペプチドとして)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子中に存在するIDS酵素は、配列番号:14~17及び配列番号:54~57のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するFcポリペプチドを含むか、または配列番号:14~17及び配列番号:54~57のうちいずれか1つの配列を含むポリペプチド鎖に連結される(例えば、融合ポリペプチドとして)。いくつかの実施形態では、IDS酵素は、FcポリペプチドのN末端に連結される。いくつかの実施形態では、IDS酵素は、柔軟なリンカーなどのリンカー、及び/またはヒンジ領域もしくはその一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号:22)によってFcポリペプチドに連結される。いくつかの実施形態では、IDS配列は、配列番号:1、2、3及び23のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:1、2、3及び23のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:4、5、24、26、31、33、39、40、43、45、50及び52のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:4、5、24、26、31、33、39、40、43、45、50及び52のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:4、5、24、26、31及び33のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:4、5、24、26、31及び33のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:39、40、43、45、50及び52のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:39、40、43、45、50及び52のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:6、28、29、41、47及び48のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する修飾Fcポリペプチドを含むか、または配列番号:6、28、29、41、47及び48のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:6、28及び29のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する修飾Fcポリペプチドを含むか、または配列番号:6、28及び29のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:41、47及び48のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する修飾Fcポリペプチドを含むか、または配列番号:41、47及び48のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチド及び/または修飾FcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号:22)を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:7、25、30、42、49及び50のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:7、25、30、42、49及び50のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:7、25及び30のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:7、25及び30のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:42、49及び50のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:42、49及び50のうちいずれか1つの配列を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子中に存在するIDS酵素は、配列番号:14~17のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するFcポリペプチドを含むか、または配列番号:14~17のうちいずれか1つの配列を含むポリペプチド鎖に連結される(例えば、融合ポリペプチドとして)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子中に存在するIDS酵素は、配列番号:54~57のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するFcポリペプチドを含むか、または配列番号:54~57のうちいずれか1つの配列を含むポリペプチド鎖に連結される(例えば、融合ポリペプチドとして)。いくつかの実施形態では、IDS酵素は、FcポリペプチドのN末端に連結される。いくつかの実施形態では、IDS酵素は、柔軟なリンカーなどのリンカー、及び/またはヒンジ領域もしくはその一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号:22)によってFcポリペプチドに連結される。いくつかの実施形態では、IDS配列は、配列番号:1、2及び3のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:1、2及び3のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:4、5、39及び40のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:4、5、39及び40のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:4及び5のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:4及び5のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:39及び40のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:39及び40のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:6と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する修飾Fcポリペプチドを含むか、または配列番号:6の配列を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:41と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する修飾Fcポリペプチドを含むか、または配列番号:41の配列を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチド及び/または修飾FcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号:22)を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:7と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:7の配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:42と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:42の配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:25と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:25の配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:44と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:44の配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:30と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:30の配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:49と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:49の配列を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:4及び5のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:4及び5のうちいずれか1つの配列を含み、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:6と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:6の配列を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:4及び5のうちいずれか1つの配列を含み、修飾Fcポリペプチドは配列番号:6の配列を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:39及び40のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:39及び40のうちいずれか1つの配列を含み、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:41と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:41の配列を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:39及び40のうちいずれか1つの配列を含み、修飾Fcポリペプチドは配列番号:41の配列を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:4及び5のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:4及び5のうちいずれか1つの配列を含み、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:7と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:7の配列を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:4及び5のうちいずれか1つの配列を含み、修飾Fcポリペプチドは配列番号:7の配列を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:39及び40のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:39及び40のうちいずれか1つの配列を含み、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:42と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:42の配列を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:39及び40のうちいずれか1つの配列を含み、修飾Fcポリペプチドは配列番号:42の配列を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:4及び5のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:4及び5のうちいずれか1つの配列を含み、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:25と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:25の配列を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:4及び5のうちいずれか1つの配列を含み、修飾Fcポリペプチドは配列番号:25の配列を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:39及び40のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:39及び40のうちいずれか1つの配列を含み、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:44と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:44の配列を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:39及び40のうちいずれか1つの配列を含み、修飾Fcポリペプチドは配列番号:44の配列を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:4及び5のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:4及び5のうちいずれか1つの配列を含み、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:30と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:30の配列を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:4及び5のうちいずれか1つの配列を含み、修飾Fcポリペプチドは配列番号:30の配列を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:39及び40のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:39及び40のうちいずれか1つの配列を含み、修飾Fcポリペプチドは、配列番号:49と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:49の配列を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:39及び40のうちいずれか1つの配列を含み、修飾Fcポリペプチドは配列番号:49の配列を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:24の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、ならびに配列番号:29及び30のうちいずれか1つの配列(例えば、配列番号:30)を含む修飾Fcポリペプチドを含む。他の実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:24の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、ならびに配列番号:7及び28のうちいずれか1つの配列(例えば、配列番号:7)を含む修飾Fcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:24の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、及び配列番号:6の配列を含む修飾Fcポリペプチドを含み、修飾FcポリペプチドのN末端が、場合によりIgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号:22)を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:24の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、及び配列番号:25の配列を含む修飾Fcポリペプチドを含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:43の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、ならびに配列番号:48及び49のうちいずれか1つの配列(例えば、配列番号:49)を含む修飾Fcポリペプチドを含む。他の実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:43の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、ならびに配列番号:42及び47のうちいずれか1つの配列(例えば、配列番号:42)を含む修飾Fcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:43の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、及び配列番号:41の配列を含む修飾Fcポリペプチドを含み、修飾FcポリペプチドのN末端が、場合によりIgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号:22)を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:43の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、及び配列番号:44の配列を含む修飾Fcポリペプチドを含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:4の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、ならびに配列番号:29及び30のうちいずれか1つの配列(例えば、配列番号:30)を含む修飾Fcポリペプチドを含む。他の実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:4の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、ならびに配列番号:7及び28のうちいずれか1つの配列(例えば、配列番号:7)を含む修飾Fcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:4の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、及び配列番号:6の配列を含む修飾Fcポリペプチドを含み、修飾FcポリペプチドのN末端が、場合によりIgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号:22)を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:4の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、及び配列番号:25の配列を含む修飾Fcポリペプチドを含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:39の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、ならびに配列番号:48及び49のうちいずれか1つの配列(例えば、配列番号:49)を含む修飾Fcポリペプチドを含む。他の実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:39の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、ならびに配列番号:42及び47のうちいずれか1つの配列(例えば、配列番号:42)を含む修飾Fcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:39の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、及び配列番号:41の配列を含む修飾Fcポリペプチドを含み、修飾FcポリペプチドのN末端が、場合によりIgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号:22)を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:39の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、及び配列番号:44の配列を含む修飾Fcポリペプチドを含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:5の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、ならびに配列番号:29及び30のうちいずれか1つの配列(例えば、配列番号:30)を含む修飾Fcポリペプチドを含む。他の実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:5の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、ならびに配列番号:7及び28のうちいずれか1つの配列(例えば、配列番号:7)を含む修飾Fcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:5の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、及び配列番号:6の配列を含む修飾Fcポリペプチドを含み、修飾FcポリペプチドのN末端が、場合によりIgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号:22)を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:5の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、及び配列番号:25の配列を含む修飾Fcポリペプチドを含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:40の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、ならびに配列番号:48及び49のうちいずれか1つの配列(例えば、配列番号:49)を含む修飾Fcポリペプチドを含む。他の実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:40の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、ならびに配列番号:42及び47のうちいずれか1つの配列(例えば、配列番号:42)を含む修飾Fcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:40の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、及び配列番号:41の配列を含む修飾Fcポリペプチドを含み、修飾FcポリペプチドのN末端が、場合によりIgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号:22)を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:40の配列を含むIDS-Fc融合ポリペプチド、及び配列番号:44の配列を含む修飾Fcポリペプチドを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子中に存在するIDS酵素は、配列番号:18~21のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するFcポリペプチドを含むか、または配列番号:18~21のうちいずれか1つの配列を含むポリペプチド鎖に連結される(例えば、融合ポリペプチドとして)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子中に存在するIDS酵素は、配列番号:58~61のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するFcポリペプチドを含むか、または配列番号:58~61のうちいずれか1つの配列を含むポリペプチド鎖に連結される(例えば、融合ポリペプチドとして)。いくつかの実施形態では、IDS酵素は、柔軟なリンカーなどのリンカー、及び/またはヒンジ領域もしくはその一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号:22)によってFcポリペプチドに連結される。いくつかの実施形態では、IDS酵素は、配列番号:2、3及び23のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する配列を含むか、または配列番号:2、3及び23のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:27、32、及び34のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:27、32、及び34のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されるIDS配列は、配列番号:46、51、及び53のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するか、または配列番号:46、51、及び53のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチド及び/または修飾FcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号:22)を含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子中に存在するIDS酵素は、配列番号:6、28及び29のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する修飾Fcポリペプチドを含むか、または配列番号:6、28及び29のうちいずれか1つの配列を含むポリペプチド鎖に連結される(例えば、融合ポリペプチドとして)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子中に存在するIDS酵素は、配列番号:41、47及び48のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する修飾Fcポリペプチドを含むか、または配列番号:41、47及び48のうちいずれか1つの配列を含むポリペプチド鎖に連結される(例えば、融合ポリペプチドとして)。いくつかの実施形態では、IDS酵素は、柔軟なリンカーなどのリンカー、及び/またはヒンジ領域もしくはその一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号:22)によって修飾Fcポリペプチドに連結される。いくつかの実施形態では、IDS酵素は、配列番号:2、3及び23のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するIDS配列を含むか、または配列番号:2、3及び23のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:14~17のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するFcポリペプチドを含むか、または配列番号:14~17のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、配列番号:54~57のうちいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するFcポリペプチドを含むか、または配列番号:54~57のうちいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾Fcポリペプチド及び/またはFcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号:22)を含む。
【0124】
Fcポリペプチドに連結されるERT酵素
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、本明細書に記載されるような2つのFcポリペプチドを含み、Fcポリペプチドの一方または両方が、部分的または完全なヒンジ領域をさらに含んでよい。ヒンジ領域は、任意の免疫グロブリンサブクラスまたはアイソタイプに由来し得る。例示的な免疫グロブリンヒンジはIgGヒンジ領域であり、例えば、IgG1ヒンジ領域、例えば、ヒトIgG1ヒンジのアミノ酸配列EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号:12)またはその一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号:22)などである。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、FcポリペプチドのN末端領域に存在する。
【0125】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、リンカー、例えば、ペプチドリンカーによってERT酵素に連結される。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、ペプチド結合によって、またはペプチドリンカーによってERT酵素に連結され、例えば、Fcポリペプチドは融合ポリペプチドである。ペプチドリンカーは、それが連結しているFcポリペプチドに対してERT酵素の回転を可能にするように構成されてよく、及び/またはプロテアーゼによる消化に耐性がある。ペプチドリンカーは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、またはそれらの組合せを含有してよい。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、例えば、アミノ酸、例えば、Gly、Asn、Ser、Thr、Alaなどを含有する柔軟なリンカーであってよい。そのようなリンカーは、既知のパラメータを使用して設計され、任意の長さのものであってよく、任意の数の、任意の長さの反復単位(例えば、Gly及びSer残基の反復単位)を含有する。例えば、リンカーは、反復、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくはそれを超えるGly4-Ser(配列番号:36)反復などまたは単一のGly4-Ser(配列番号:36)を有してよい。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、例えば、中枢神経系中に存在する酵素によって切断可能なプロテアーゼ切断部位を含んでよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、ERT酵素は、例えば、Gly4-Serリンカー(配列番号:36)または(Gly4-Ser)2リンカー(配列番号:37)によってFcポリペプチドのN末端に連結される。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、リンカーに連結されているか、またはERT酵素に直接連結されているヒンジ配列または部分的ヒンジ配列をN末端に含んでよい。
【0127】
いくつかの実施形態では、ERT酵素は、例えば、Gly4-Serリンカー(配列番号:36)または(Gly4-Ser)2リンカー(配列番号:37)によってFcポリペプチドのC末端に連結される。いくつかの実施形態では、FcポリペプチドのC末端は、ERT酵素に直接連結される。
【0128】
いくつかの実施形態では、ERT酵素は、化学架橋剤によってFcポリペプチドに連結される。そのような複合体は、周知の化学架橋試薬及びプロトコールを使用して生成され得る。例えば、当業者に既知であり、ポリペプチドを目的の作用物質と架橋させるのに有用な多数の化学架橋剤が存在する。例えば、架橋剤はヘテロ二官能性架橋剤であり、これは段階的な手法で分子を連結するために使用され得る。ヘテロ二官能性架橋剤は、タンパク質を複合化するより特異的なカップリング法を設計する能力を提供し、それによって、ホモタンパク質ポリマーなどの望ましくない副反応の発生を減少させる。多種多様なヘテロ二官能性架橋剤が当該技術分野において既知であり、それらとしては、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)またはその水溶性類似体のN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ-NHS)、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、スクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、4-スクシンイミジルオキシカルボニル-a-メチル-a-(2-ピリジルジチオ)-トルエン(SMPT)、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、及びスクシンイミジル6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート]ヘキサノエート(LC-SPDP)が挙げられる。N-ヒドロキシスクシンイミド部分を有するこれらの架橋剤は、一般により高い水溶性を有するN-ヒドロキシスルホスクシンイミド類似体として得られ得る。加えて、連結鎖内にジスルフィド架橋を有するこれらの架橋剤は、インビボでのリンカー切断の量を減少させるために、代わりにアルキル誘導体として合成され得る。ヘテロ二官能性架橋剤に加えて、ホモ二官能性及び光反応性架橋剤を含む、多数の他の架橋剤が存在する。スベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)、ビスマレイミドヘキサン(BMH)及びジメチルピメリミデート.2HCl(DMP)は、有用なホモ二官能性架橋剤の例であり、ビス-[B-(4-アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィド(BASED)及びN-スクシンイミジル-6(4’-アジド-2’-ニトロフェニルアミノ)ヘキサノエート(SANPAH)は、有用な光反応性架橋剤の例である。
【0129】
タンパク質分子の濃度
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物(例えば、水性、凍結乾燥前、凍結乾燥または再構成形態の)におけるタンパク質分子の濃度は、約5~50mg/mL、5~45mg/mL、5~40mg/mL、5~35mg/mL、5~30mg/mL、10~40mg/mLまたは10~30mg/mLである。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される水性/液体医薬組成物中におけるタンパク質分子の濃度は、約5~50mg/mL、5~45mg/mL、5~40mg/mL、5~35mg/mL、5~30mg/mL、10~40mg/mLまたは10~30mg/mLである。
【0130】
ある特定の実施形態では、タンパク質分子濃度は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、または50mg/mL±2mg/mLである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子濃度は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、または50mg/mLである。
【0131】
ある特定の実施形態では、タンパク質分子濃度は、約10mg/mL±2mg/mLである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子濃度は、約15mg/mL±2mg/mLである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子濃度は、約20mg/mL±2mg/mLである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子濃度は、約25mg/mL±2mg/mLである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子濃度は、約30mg/mL±2mg/mLである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子濃度は、約35mg/mL±2mg/mLである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子濃度は、約40mg/mL±2mg/mLである。
【0132】
ある特定の実施形態では、タンパク質分子濃度は、約10mg/mLである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子濃度は、約15mg/mLである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子濃度は、約20mg/mLである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子濃度は、約25mg/mLである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子濃度は、約30mg/mLである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子濃度は、約35mg/mLである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子濃度は、約40mg/mLである。
【0133】
緩衝液
医薬組成物のpHは、水性製剤中、または凍結乾燥前もしくは再構成製剤中の治療剤(例えば、酵素またはタンパク質)の溶解度を変えることができる。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、1つ以上の緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、組成物の最適pHを約5.0~7.5の間に維持するのに十分な量の緩衝液を含む。
【0134】
したがって、ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物のpHは、約5.0~7.5、または約5.0~7.0、または約5.5~7.0である。
【0135】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物のpHは、約5.0、5.5、6.0、6.5、または7.0±0.5である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物のpHは、約5.5、6.0、6.5、または7.0±0.3である。
【0136】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物のpHは、約5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9または7.0±0.2である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物のpHは、約5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9または7.0である。
【0137】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物のpHは、約5.5±0.5、5.8±0.5、6.0±0.5、6.2±0.5、6.5±0.5、または6.8±0.5.である。
【0138】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物のpHは、約5.5±0.3、5.8±0.3、6.0±0.3、6.2±0.3、6.5±0.3、または6.8±0.3.である。
【0139】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物のpHは、約5.5±0.2、5.8±0.2、6.0±0.2、6.2±0.2、6.5±0.2、または6.8±0.2.である。
【0140】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物のpHは、約5.0である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物のpHは、約5.5である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物のpHは、約5.8である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物のpHは、約6.0である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物のpHは、約6.2である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物のpHは、約6.5である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物のpHは、約6.8である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物のpHは、約7.0である。
【0141】
好適な緩衝液としては、例えば、酢酸、アルギニン、クエン酸、ヒスチジン、リン酸、コハク酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(「Tris」)及び他の有機酸が挙げられる。ある特定の実施形態では、緩衝液は、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、アルギニン緩衝液及びヒスチジン緩衝液からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、約1mM~約150mM、または約10mM~約50mM、または約5mM~約50mM、または約15mM~約50mM、または約20mM~約50mM、または約25mM~約50mM、または約10mM~約30mMの範囲の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、好適な緩衝剤は、およそ1mM、5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、75mM、100mM、125mMまたは150mMの濃度で存在する。
【0142】
リン酸ナトリウム及び他のリン酸ベースの緩衝液、例えば、リン酸カリウム緩衝液などは、IDS酵素を可逆的な不活性状態に維持することによって、適切な保存条件下で(例えば、本明細書に開示されるようなpH範囲で、2℃~25℃の範囲の温度で)酵素の安定性を保持するのに有用であり得る。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、リン酸を含む緩衝液(すなわち、リン酸緩衝液)を含む。
【0143】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、リン酸ナトリウムを含む緩衝液を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物中におけるリン酸ナトリウム緩衝液の濃度は、約5~50mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約10~50mM、5~45mM、5~40mM、5~35mM、5~30mM、10~40mM、10~30mM、10~25mMまたは15~25mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約10~50mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約10~40mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約10~30mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約15~25mMである。
【0144】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物中におけるリン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、または50mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、または50mMである。
【0145】
ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約5mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約10mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約15mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約20mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約25mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約30mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約35mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約40mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約45mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約50mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約5mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約10mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約15mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約20mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約25mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約30mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約35mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約40mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約45mMである。ある特定の実施形態では、リン酸ナトリウム緩衝液濃度は、約50mMである。
【0146】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、リン酸カリウムを含む緩衝液を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物中におけるリン酸カリウム緩衝液の濃度は、約5~50mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約10~50mM、5~45mM、5~40mM、5~35mM、5~30mM、10~40mM、10~30mM、10~25mMまたは15~25mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約10~50mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約10~40mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約10~30mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約15~25mMである。
【0147】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物中におけるリン酸カリウム緩衝液濃度は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、または50mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、または50mMである。
【0148】
ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約5mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約10mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約15mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約20mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約25mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約30mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約35mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約40mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約45mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約50mM±3mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約5mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約10mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約15mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約20mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約25mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約30mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約35mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約40mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約45mMである。ある特定の実施形態では、リン酸カリウム緩衝液濃度は、約50mMである。
【0149】
等張剤
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、水性、凍結乾燥前、凍結乾燥または再構成形態のいずれかで、組成物を等張に維持するために1つ以上の等張剤を含む。典型的には、「等張」とは、目的の製剤がヒト血液と本質的に同じ浸透圧を有することを意味する。等張製剤は一般に、約240mOsm/kg~約350mOsm/kgの浸透圧を有することになる。等張性は、例えば、蒸気圧または凝固点型浸透圧計を使用して測定され得る。例示的な等張剤としては、グリシン、ソルビトール、マンニトール、塩化ナトリウム及びアルギニンが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、好適な等張剤は、約0.01~5重量%(例えば、0.05、0.1、0.15、0.2、0.3、0.4、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、2.0、2.5、3.0、4.0または5.0重量%)の濃度で水性及び/または凍結乾燥前製剤中に存在してよい。いくつかの実施形態では、凍結乾燥用の製剤は、凍結乾燥前製剤または再構成製剤を等張に維持するために等張剤を含有する。
【0150】
リン酸ナトリウム及び他のリン酸ベースの緩衝液と同様に、ある特定の塩は、IDS酵素を可逆的な不活性状態に維持することによって、適切な保存条件下で(例えば、本明細書に開示されるようなpH範囲で、2℃~25℃の範囲の温度で)酵素の安定性を保持するのに有用であり得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、ナトリウム塩などの塩を含む。ある特定の実施形態では、塩(例えば、ナトリウム塩)の濃度は、約20~175mM、20~170mM、20~165mM、20~160mM、20~155mM、25~150mM、30~150mM、30~145mM、30~140mM、30~135mM、30~130mM、30~125mM、30~120mM、30~115mM、30~110mM、30~105mM、30~100mM、30~95mM、30~90mM、30~85mM、30~80mM、30~75mM、30~70mM、30~65mM、30~60mMまたは40~60mMである。ある特定の実施形態では、塩(例えば、ナトリウム塩)濃度は、約40~150mM、40~145mM、40~140mM、40~135mM、40~130mM、40~125mM、40~120mM、40~115mM、40~110mM、40~105mM、40~100mM、40~95mM、40~90mM、40~85mM、40~80mM、40~75mM、40~70mMまたは40~65mMである。ある特定の実施形態では、塩(例えば、ナトリウム塩)濃度は、約30~150mMである。ある特定の実施形態では、塩(例えば、ナトリウム塩)濃度は、約40~140mMである。ある特定の実施形態では、塩(例えば、ナトリウム塩)濃度は、約50~137mMである。ある特定の実施形態では、塩(例えば、ナトリウム塩)濃度は、約40~100mMである。ある特定の実施形態では、塩(例えば、ナトリウム塩)濃度は、約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139または140mM±2mMである。ある特定の実施形態では、塩(例えば、ナトリウム塩)濃度は、約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139または140mMである。
【0151】
ある特定の実施形態では、塩は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、及び酢酸第二銅からなる群から選択される塩であってよい。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、ナトリウム塩、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウムなどを含む。
【0152】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、塩化ナトリウムを含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物中における塩化ナトリウム濃度は、約20~175mM、20~170mM、20~165mM、20~160mM、20~155mM、25~150mM、30~150mM、30~145mM、30~140mM、30~135mM、30~130mM、30~125mM、30~120mM、30~115mM、30~110mM、30~105mM、30~100mM、30~95mM、30~90mM、30~85mM、30~80mM、30~75mM、30~70mM、30~65mM、30~60mMまたは40~60mMである。
【0153】
ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約40~150mM、40~145mM、40~140mM、40~135mM、40~130mM、40~125mM、40~120mM、40~115mM、40~110mM、40~105mM、40~100mM、40~95mM、40~90mM、40~85mM、40~80mM、40~75mM、40~70mMまたは40~65mMである。
【0154】
ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約30~150mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約40~140mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約50~137mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約40~100mMである。
【0155】
ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139または140mM±2mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139または140mMである。
【0156】
ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約40mM±2mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約45mM±2mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約50mM±2mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約55mM±2mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約40mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約45mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約50mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約55mMである。
【0157】
ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約130mM±2mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約135mM±2mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約137mM±2mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約140mM±2mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約145mM±2mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約130mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約135mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約137mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約140mMである。ある特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約145mMである。
【0158】
界面活性剤
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、1つ以上の界面活性剤を含む。例示的な界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80及びそれらの組合せ)、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)、Tritonなど、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム、オクチルグリコシドナトリウム、ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、またはステアリル-スルホベタイン、ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-またはステアリル-サルコシン、リノレイル-、ミリスチル-、またはセチル-ベタイン、ラウロアミドプロピル-、コカミドプロピル-、リノールアミドプロピル-、ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアラミドプロピル-ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル)、ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン、ココイルメチルタウリンナトリウム、またはオレイルメチルタウリン二ナトリウム、ならびにMONAQUAT(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.,Paterson,N.J.)、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、ならびにエチレン及びプロピレングリコールのコポリマー(例えば、Pluronics、PF68など)が挙げられる。
【0159】
ある特定の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベートを含む。ある特定の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート-20(PS-20)及びポリソルベート-80(PS-80)からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート-20(PS-20)である。ある特定の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート-80(PS-80)である。
【0160】
ある特定の実施形態では、界面活性剤は、ポロキサマーを含む。
【0161】
典型的には、添加される界面活性剤の量は、それがタンパク質の凝集を減少させ、微粒子または発泡の形成を最小限に抑えるような量である。例えば、界面活性剤は、約0.01~5mg/mL(例えば、約0.05~0.5mg/mL、または約0.05~0.1mg/mL)の濃度で医薬組成物中に存在してよい。特に、界面活性剤は、およそ0.05mg/mL、0.1mg/mL、0.2mg/mL、1.0mg/mL、2.0mg/mL、3.0mg/mL、4mg/mL、または5.0mg/mLなどの濃度で医薬組成物中に存在してよい。あるいは、または加えて、界面活性剤は、凍結乾燥製剤、凍結乾燥前製剤及び/または再構成製剤に添加されてよい。
【0162】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物中における界面活性剤濃度は、約0.1~1.0mg/mL、0.1~0.9mg/mL、0.1~0.8mg/mL、0.1~0.7mg/mL、0.1~0.6mg/mL、0.1~0.5mg/mL、0.2~1.0mg/mL、0.2~0.9mg/mL、0.2~0.8mg/mL、0.2~0.7mg/mL、0.2~0.6mg/mL、0.3~0.8mg/mL、0.3~0.7mg/mL、0.3~0.6mg/mL、0.3~0.5mg/mL、0.4~0.8mg/mL、0.4~0.7mg/mL、0.5~0.8mg/mLまたは0.5~0.7mg/mLである。
【0163】
ある特定の実施形態では、界面活性剤濃度は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0mg/mL±0.1mg/mLである。ある特定の実施形態では、界面活性剤濃度は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0mg/mLである。
【0164】
ある特定の実施形態では、界面活性剤濃度は、約0.2mg/mL±0.1mg/mLである。ある特定の実施形態では、界面活性剤濃度は、約0.3mg/mL±0.1mg/mLである。ある特定の実施形態では、界面活性剤濃度は、約0.4mg/mL±0.1mg/mLである。ある特定の実施形態では、界面活性剤濃度は、約0.5mg/mL±0.1mg/mLである。ある特定の実施形態では、界面活性剤濃度は、約0.6mg/mL±0.1mg/mLである。ある特定の実施形態では、界面活性剤濃度は、約0.7mg/mL±0.1mg/mLである。
【0165】
ある特定の実施形態では、界面活性剤濃度は、約0.2mg/mLである。ある特定の実施形態では、界面活性剤濃度は、約0.3mg/mLである。ある特定の実施形態では、界面活性剤濃度は、約0.4mg/mLである。ある特定の実施形態では、界面活性剤濃度は、約0.5mg/mLである。ある特定の実施形態では、界面活性剤濃度は、約0.6mg/mLである。ある特定の実施形態では、界面活性剤濃度は、約0.7mg/mLである。
【0166】
ある特定の実施形態では、界面活性剤はポリソルベート界面活性剤であり、本明細書に記載される医薬組成物中におけるポリソルベート界面活性剤の濃度は、約0.4~0.7mg/mLである。ある特定の実施形態では、ポリソルベート界面活性剤濃度は、約0.4mg/mLである。ある特定の実施形態では、ポリソルベート界面活性剤濃度は、約0.5mg/mLである。ある特定の実施形態では、ポリソルベート界面活性剤濃度は、約0.6mg/mLである。ある特定の実施形態では、ポリソルベート界面活性剤濃度は、約0.7mg/mLである。
【0167】
安定剤
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、タンパク質を保護するために、1つ以上の安定化剤、凍結保護剤、もしくは凍結乾燥保護剤、またはそれらの組合せを含有してよい。典型的には、好適な安定化剤は糖、非還元糖及び/またはアミノ酸である。例示的な糖としては、デキストラン、ラクトース、マンニトール、マンノース、ソルビトール、ラフィノース、スクロース及びトレハロースが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアミノ酸としては、アルギニン、グリシン及びメチオニンが挙げられるが、これらに限定されない。追加の安定化剤としては、塩化ナトリウム、ヒドロキシエチルデンプン及びポリビニルピロリドンを挙げてもよい。
【0168】
いくつかの実施形態では、液体製剤は非晶質材料を含有する。いくつかの実施形態では、液体製剤は、相当量の非晶質材料を含有する(例えば、スクロースベースの製剤)。いくつかの実施形態では、液体製剤は、部分的に結晶性/部分的に非晶質材料を含有する。
【0169】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、塩化ナトリウムを含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物中における塩化ナトリウム濃度は、上に開示される通りである。例えば、塩化ナトリウム濃度は、約20~175mM、20~170mM、20~165mM、20~160mM、20~155mM、25~150mM、30~150mM、30~145mM、30~140mM、30~135mM、30~130mM、30~125mM、30~120mM、30~115mM、30~110mM、30~105mM、30~100mM、30~95mM、30~90mM、30~85mM、30~80mM、30~75mM、30~70mM、30~65mM、30~60mM、40~60mM、または本明細書に開示されるような任意の他の範囲もしくは濃度であり得る。
【0170】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は糖を含む。ある特定の実施形態では、糖は、スクロースまたはトレハロースである。ある特定の実施形態では、糖はスクロースである。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、メチオニンを含む。
【0171】
凍結乾燥製剤中の安定化剤の量は一般に、製剤が等張となるような量である。しかしながら、高張再構成製剤も好適な場合がある。加えて、安定化剤の量は、許容できない量の治療剤の分解/凝集が生じるほど少ない量であるべきではない。製剤中における例示的な安定化剤濃度は、約1mM~約400mM(例えば、約30mM~約300mM、及び約50mM~約100mM)、または代わりに、0.1重量%~15重量%(例えば、1重量%~10重量%、5重量%~15重量%、5重量%~10重量%)の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、安定化剤及び治療剤の質量比は、約1:1である。他の実施形態では、安定化剤及び治療剤の質量比は、約0.1:1、0.2:1、0.25:1、0.4:1、0.5:1、1:1、2:1、2.6:1、3:1、4:1、5:1、10:1、または20:1であり得る。いくつかの実施形態では、凍結乾燥に好適な安定化剤は、凍結乾燥保護剤でもある。
【0172】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、糖(例えば、スクロースまたはトレハロース)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物中における糖濃度は、約30~300mM、50~300mM、75~300mM、100~300mM、100~275mM、100~250mM、125~250mM、150~250mM、150~225mMまたは150~200mMである。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物中における糖濃度は、約100~250mMである。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物中における糖濃度は、約150~200mMである。
【0173】
ある特定の実施形態では、糖濃度は、約170±2mMである。ある特定の実施形態では、糖濃度は、約175±2mMである。ある特定の実施形態では、糖濃度は、約180±2mMである。ある特定の実施形態では、糖濃度は、約170mMである。ある特定の実施形態では、糖濃度は、約175mMである。ある特定の実施形態では、糖濃度は、約180mMである。
【0174】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、スクロースを含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物中におけるスクロース濃度は、約30~300mM、50~300mM、75~300mM、100~300mM、100~275mM、100~250mM、125~250mM、150~250mM、150~225mMまたは150~200mMである。
【0175】
ある特定の実施形態では、スクロース濃度は、約150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199または200mM±2mMである。ある特定の実施形態では、スクロース濃度は、約150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199または200mMである。ある特定の実施形態では、スクロース濃度は、約170±2mMである。ある特定の実施形態では、スクロース濃度は、約175±2mMである。ある特定の実施形態では、スクロース濃度は、約180±2mMである。ある特定の実施形態では、スクロース濃度は、約170mMである。ある特定の実施形態では、スクロース濃度は、約175mMである。ある特定の実施形態では、スクロース濃度は、約180mMである。
【0176】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、メチオニンを含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物中におけるメチオニン濃度は、約2~50mMである。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物中におけるメチオニン濃度は、約5~50mM、5~45mM、5~40mM、5~35mM、5~30mM、5~25mM、5~20mMまたは5~15mMである。
【0177】
ある特定の実施形態では、メチオニン濃度は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15mM±2mMである。ある特定の実施形態では、メチオニン濃度は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15mMである。
【0178】
ある特定の実施形態では、メチオニン濃度は、約8mM±2mMである。ある特定の実施形態では、メチオニン濃度は、約9mM±2mMである。ある特定の実施形態では、メチオニン濃度は、約10mM±2mMである。ある特定の実施形態では、メチオニン濃度は、約11mM±2mMである。ある特定の実施形態では、メチオニン濃度は、約12mM±2mMである。ある特定の実施形態では、メチオニン濃度は、約8mMである。ある特定の実施形態では、メチオニン濃度は、約9mMである。ある特定の実施形態では、メチオニン濃度は、約10mMである。ある特定の実施形態では、メチオニン濃度は、約11mMである。ある特定の実施形態では、メチオニン濃度は、約12mMである。
【0179】
増量剤
いくつかの実施形態では、凍結乾燥に好適な製剤は、1つ以上の増量剤をさらに含んでよい。「増量剤」は、凍結乾燥混合物に質量を追加し、凍結乾燥ケーキの物理的構造に寄与する化合物である。例えば、増量剤は、凍結乾燥ケーキの外観を改善する場合がある(例えば、本質的に均一の凍結乾燥ケーキ)。好適な増量剤としては、塩化ナトリウム、ラクトース、マンニトール、グリシン、スクロース、トレハロース、ヒドロキシエチルデンプンが挙げられるが、これらに限定されない。増量剤の例示的な濃度は、約1%~約10%(例えば、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、及び10.0%)である。
【0180】
追加の薬剤
他の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に記載されているものなどは、本明細書に記載される医薬組成物(及び/または凍結乾燥製剤及び/または再構成製剤)中に含まれてよいが、ただし、それらが組成物の所望の特性に悪影響を与えないことを条件とする。許容される担体、賦形剤または安定剤は、用いられる投与量及び濃度ではレシピエントにとって非毒性であり、それらとしては、追加の緩衝剤、防腐剤、共溶媒、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤、EDTAなどのキレート剤、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)、ポリエステルなどの生分解性ポリマー、及び/またはナトリウムなどの塩形成対イオンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
液体及び凍結乾燥製剤
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、液体製剤である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、凍結乾燥した乾燥粉末として製剤化される。
【0182】
凍結乾燥
典型的には、凍結乾燥前製剤は、目的の化合物が凍結乾燥及び保管中に劣化(例えば、タンパク質凝集、脱アミド、及び/または酸化)するのを防ぐために、賦形剤または他の成分、例えば、安定剤、緩衝剤、増量剤、及び界面活性剤などの適切な選択肢をさらに含有する。凍結乾燥用の製剤は、1つ以上の追加成分、例えば、凍結乾燥保護剤または安定化剤、緩衝液、増量剤、等張剤及び界面活性剤を含むものを含み得る。
【0183】
目的の物質及び任意の追加成分が共に混合された後、製剤は凍結乾燥される。凍結乾燥は一般に、主に3つの段階:凍結、一次乾燥及び二次乾燥を含む。水を氷に、または一部の非晶質製剤成分を結晶形に変換するには、凍結が必要である。一次乾燥は、低圧及び低温での直接昇華によって凍結生成物から氷が除去されるプロセスステップである。二次乾燥は、蒸発表面への残留水の拡散を利用して、結合した水が生成物マトリックスから除去されるプロセスステップである。二次乾燥中の生成物温度は通常、一次乾燥中よりも高い。Tang X.et al.(2004)“Design of freeze-drying processes for pharmaceuticals:Practical advice,”Pharm.Res.,21:191-200、Nail S.L.et al.(2002)“Fundamentals of freeze-drying,”in Development and manufacture of protein pharmaceuticals.Nail S.L.editor New York:Kluwer Academic/Plenum Publishers,pp281-353、Wang et al.(2000)“Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals,”Int.J.Pharm.,203:1-60、Williams N.A.et al.(1984)“The lyophilization of pharmaceuticals;A literature review.” J Parenteral Sci.Technol.,38:48-59を参照のこと。
【0184】
いくつかの実施形態では、アニーリングステップは、生成物の最初の凍結中に導入されてよい。アニーリングステップによって、全体的なサイクル時間が短縮される場合がある。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、アニーリングステップは、過冷却中に形成される小さな結晶の再結晶化によって、賦形剤の結晶化及びより大きな氷晶の形成を促進するのに役立ち、それにより、再構成が改善され得ると企図される。典型的には、アニーリングステップは、凍結中に温度の間隔または変動を含む。例えば、凍結温度は-40℃であってよく、アニーリングステップによって、温度が例えば、-10℃に上昇し、この温度が設定された期間維持されることになる。アニーリングステップ時間は、0.5時間~8時間(例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3、4、6、及び8時間)の範囲であってよい。アニーリング温度は、凍結温度と0℃との間であってよい。
【0185】
凍結乾燥は、容器、例えば、チューブ、バッグ、ボトル、トレイ、バイアル(例えば、ガラスバイアル)、シリンジまたは任意の他の好適な容器などで実施されてよい。容器は使い捨てであってよい。凍結乾燥はまた、大規模または小規模で実施されてもよい。いくつかの場合では、移し替えステップを回避するために、タンパク質の再構成が行われる容器内でタンパク質製剤を凍結乾燥することが望ましい場合がある。この場合の容器は、例えば、3、4、5、10、20、50または100ccのバイアルであってよい。
【0186】
この目的のために、多くの異なる凍結乾燥機が利用可能であり、例えば、Hullパイロットスケール乾燥機(SP Industries,USA)、Genesis(SP Industries)実験室用凍結乾燥機、または所与の凍結乾燥プロセスパラメータを制御できる任意の凍結乾燥機などである。凍結乾燥は、製剤を凍結し、続いて一次乾燥に適した温度で凍結内容物から氷を昇華させることによって達成される。最初の凍結によって、製剤が、通常は約4時間以内(例えば、約3時間以内、約2.5時間以内、約2時間以内)に約-20℃未満(例えば、-50℃、-45℃、-40℃、-35℃、-30℃、-25℃など)の温度になる。この条件下では、生成物温度は通常、製剤の共晶点または崩壊温度を下回る。典型的には、一次乾燥のための棚温度は、通常は約20~250mTorrの範囲である好適な圧力で、約-30~25℃の範囲であることになる(生成物が一次乾燥中に融点未満のままであることを条件として)。製剤、試料を保持する容器(例えば、ガラスバイアル)のサイズ及び種類ならびに液体の量によって、主に乾燥に必要な時間が決定されることになり、これは数時間から数日間の範囲であり得る。二次乾燥段階は、主に容器の種類及びサイズならびに用いられる治療用タンパク質の種類に応じて、約0~60℃で実施される。ここでも、液体の量によって主に乾燥に必要な時間が決定されることになり、これは数時間から数日間の範囲であり得る。
【0187】
一般的な提案として、凍結乾燥は、その含水量が約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、及び約0.5%未満である凍結乾燥製剤をもたらすことになる。
【0188】
再構成
本明細書に記載される医薬組成物は一般に、対象への投与時に水性形態であるが、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は凍結乾燥されている。そのような組成物は、対象に投与する前に、組成物に1つ以上の希釈剤を添加することによって再構成されなければならない。所望の段階で、典型的には患者に投与する前の適切な時間に、凍結乾燥製剤は、再構成製剤中のタンパク質濃度が望ましくなるように希釈剤で再構成されてよい。
【0189】
様々な希釈剤が、本明細書に記載されるように使用されてよい。いくつかの実施形態では、再構成に好適な希釈剤は水である。希釈剤として使用される水は、逆浸透、蒸留、脱イオン、濾過(例えば、活性炭、精密濾過、ナノ濾過)及びこれらの処理方法の組合せを含む、様々な方法で処理され得る。一般に、水は注射に適しているべきであり、これとしては注射用滅菌水または静菌水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0190】
追加の例示的な希釈剤としては、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、エリオット溶液、リンゲル液またはデキストロース溶液が挙げられる。好適な希釈剤は、場合により防腐剤を含有してよい。例示的な防腐剤としては、芳香族アルコール、例えば、ベンジルまたはフェノールアルコールなどが挙げられる。用いられる防腐剤の量は、タンパク質との適合性について異なる防腐剤濃度を評価し、防腐剤の有効性を試験することによって決定される。例えば、防腐剤が芳香族アルコール(ベンジルアルコールなど)である場合、それは約0.1~2.0%、約0.5~1.5%、または約1.0~1.2%の量で存在し得る。
【0191】
好適な希釈剤としては、様々な添加剤、例えば、pH緩衝剤(例えば、Tris、ヒスチジン)、塩(例えば、塩化ナトリウム)及び上に記載されるもの(例えば、安定化剤、等張剤)を含む他の添加剤(例えば、スクロース)を含むが、これらに限定されない添加剤が挙げられてよい。
【0192】
本明細書に記載されるように、凍結乾燥物質(例えば、タンパク質)は、例えば、少なくとも5mg/ml(例えば、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/ml、少なくとも20mg/ml、少なくとも25mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml、少なくとも100mg/ml)の濃度及びその中間の任意の範囲における濃度に再構成され得る。いくつかの実施形態では、凍結乾燥物質(例えば、タンパク質)は、約1mg/ml~100mg/ml(例えば、約1mg/ml~50mg/ml、1mg/ml~100mg/ml、約1mg/ml~約5mg/ml、約1mg/ml~約10mg/ml、約1mg/ml~約25mg/ml、約1mg/ml~約75mg/ml、約10mg/ml~約30mg/ml、約10mg/ml~約50mg/ml、約10mg/ml~約75mg/ml、約10mg/ml~約100mg/ml、約25mg/ml~約50mg/ml、約25mg/ml~約75mg/ml、約25mg/ml~約100mg/ml、約50mg/ml~約75mg/ml、約50mg/ml~約100mg/ml)の範囲の濃度に再構成されてよい。いくつかの実施形態では、再構成製剤中におけるタンパク質の濃度は、凍結乾燥前製剤中の濃度よりも高い場合がある。いくつかの実施形態では、再構成製剤中におけるタンパク質濃度は、凍結乾燥前製剤の約2~50倍(例えば、約2~20倍、約2~10倍、または約2~5倍)であってよい。いくつかの実施形態では、再構成製剤中におけるタンパク質濃度は、凍結乾燥前製剤の少なくとも約2倍(例えば、少なくとも約3、4、5、10、20、40倍)であってよい。
【0193】
再構成は、任意の容器内で実施されてよい。例示的な容器としては、チューブ、バイアル、シリンジ(例えば、シングルチャンバーまたはデュアルチャンバー)、バッグ、ボトル、及びトレイなどが挙げられるが、これらに限定されない。好適な容器は、任意の材料、例えば、ガラス、プラスチック、金属などで作製されてよい。容器は、使い捨てまたは再利用可能であってよい。再構成はまた、大規模または小規模で実施されてもよい。
【0194】
いくつかの場合では、移し替えステップを回避するために、タンパク質の再構成が行われる容器内でタンパク質製剤を凍結乾燥することが望ましい場合がある。この場合の容器は、例えば、3、4、5、10、20、50または100ccのバイアルであってよい。いくつかの実施形態では、凍結乾燥及び再構成に好適な容器は、デュアルチャンバーシリンジ(例えば、Lyo-Ject(登録商標)(Vetter)シリンジ)である。例えば、デュアルチャンバーシリンジは、凍結乾燥物質及び希釈剤の両方を、それぞれ別個のチャンバー中に、栓によって分離された状態で含有してよい。再構成するために、プランジャーが希釈剤側の栓に取り付けられ、押されることで希釈剤を生成物チャンバーに移動させ得、その結果、希釈剤が凍結乾燥物質と接触でき、本明細書に記載されるように再構成が行われる可能性がある。
【0195】
安定性
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、それらが、共に製剤化される治療剤(すなわち、本明細書に記載されるタンパク質分子)を安定化できるか、または代わりにその劣化を遅延もしくは防止できるように製剤化されている。本明細書で使用される場合、「安定した」という用語は、本明細書に記載されるタンパク質分子が、その治療有効性(例えば、その意図される生物活性及び/または生理化学的整合性の全てまたは大部分)を長期間にわたって維持する能力を指す。治療剤の安定性、及びそのような治療剤の安定性を維持するための医薬組成物の能力は、長期間にわたって(例えば、少なくとも1、3、6、12、18、24、30、36か月以上の間)評価されてよい。製剤との関連において、安定した製剤は、その中の治療剤が、保存時に、ならびにプロセス(凍結/解凍、機械的混合及び凍結乾燥など)中にその物理的及び/または化学的整合性ならびに生物活性を本質的に保持する製剤である。タンパク質安定性については、例えば、高分子量(HMW)凝集体の形成、酵素活性の喪失、ペプチド断片の生成及び電荷プロファイルのシフトによって測定され得る。ある特定の実施形態では、医薬組成物の安定性は、本明細書に記載されるアッセイまたは一連の条件を使用して評価される(例えば、実施例を参照のこと)。
【0196】
治療剤の安定性は、長期間にわたる治療剤の生物活性または生理化学的整合性と比較してさらに評価されてよい。例えば、所与の時点での安定性が、より早い時点(例えば、製剤化0日目)での安定性と、または製剤化されていない治療剤と比較され、この比較の結果はパーセンテージで表されてよい。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、長期間にわたる(例えば、少なくとも約6~12か月にわたって室温で、または短期保存条件下で測定されるような)治療剤の生物活性または生理化学的整合性の少なくとも100%、少なくとも99%、少なくとも98%、少なくとも97%少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%または少なくとも50%を維持する。
【0197】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、様々な条件(例えば、通常の保存条件またはストレス条件)下で安定している。例えば、医薬組成物の安定性は、経時的に、ある範囲の温度で、または凍結/解凍サイクル中に、様々な要因、例えば、本明細書に記載されるタンパク質分子のpH、濁度または切断/クリッピングなどを検査することによって評価されてよい。さらに、組成物は、製品の品質分析、再構成時間(凍結乾燥される場合)、再構成の品質(凍結乾燥される場合)、高分子量の含有量(分子凝集を表す)、低分子量の含有量(分子安定性を表す)水分、及びガラス転移温度に基づいて評価され得る。典型的には、タンパク質品質及び生成物分析は生成物劣化速度分析を含み、サイズ排除HPLC(SE-HPLC)、陽イオン交換HPLC(CEX-HPLC)、X線回折(XRD)、変調示差走査熱量測定(mDSC)、逆相HPLC(RP-HPLC)、多角度光散乱法(MALS)、蛍光、紫外線吸収、比濁法、キャピラリー電気泳動(CE)、SDS-PAGE、及びそれらの組合せを含むが、これらに限定されない方法を使用する。いくつかの実施形態では、生成物の評価は、外観(液体またはケーキ外観のいずれか)を評価するステップを含んでよい。
【0198】
ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、一定期間(例えば、約1か月、3か月、6か月、12か月など)の間、約2~8℃(例えば、2、3、4、5、6、7または8℃)の温度範囲で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、一定期間(例えば、約1か月、3か月、6か月、12か月など)の間、約2~8℃(例えば、2、3、4、5、6、7または8℃)の温度範囲で安定したままである。
【0199】
ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、一定期間(例えば、約1週間、2週間、3週間、4週間など)の間、約20~40℃の温度範囲で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、約25~40℃の温度範囲で安定したままである。
【0200】
ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、約25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40℃の温度で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、約1週間、約25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40℃の温度で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、約2週間、約25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40℃の温度で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、約3週間、約25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40℃の温度で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、約4週間、約25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40℃の温度で安定したままである。
【0201】
ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、約25℃の温度で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、約30℃の温度で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、約35℃の温度で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、約40℃の温度で安定したままである。
【0202】
ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、約1週間、約25℃の温度で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、約1週間、約30℃の温度で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、約1週間、約35℃の温度で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、約1週間、約40℃の温度で安定したままである。
【0203】
ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、約2週間、約25℃の温度で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、約2週間、約30℃の温度で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、約2週間、約35℃の温度で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物のpHは、約2週間、約40℃の温度で安定したままである。
【0204】
ある特定の実施形態では、医薬組成物の濁度は、例えば、経時的に、及び/または様々な温度で安定したままである。濁度を評価する方法は、当該技術分野において既知であり、本明細書に記載されている(例えば、実施例を参照のこと)。
【0205】
ある特定の実施形態では、医薬組成物の濁度は、約2~40℃の温度範囲で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物の濁度は、一定期間(例えば、約1週間、2週間、3週間、4週間など)の間、約2~40℃の温度範囲で安定したままである。
【0206】
ある特定の実施形態では、医薬組成物の濁度は、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40℃の温度で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物の濁度は、約1週間、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40℃の温度で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物の濁度は、約2週間、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40℃の温度で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物の濁度は、約3週間、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40℃の温度で安定したままである。ある特定の実施形態では、医薬組成物の濁度は、約4週間、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40℃の温度で安定したままである。
【0207】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、例えば、経時的に、温度の範囲にわたって、pH値の範囲にわたって、及び/または凍結-解凍サイクル中にインタクトなままである(すなわち、切断または「クリップ」されない)。タンパク質切断またはクリッピングを評価する方法は、当該技術分野において既知であり、本明細書に記載されている(例えば、実施例を参照のこと)。
【0208】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、約2~40℃の温度範囲にわたってインタクトなままである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、一定期間(例えば、約1週間、2週間、3週間、4週間など)の間、約2~40℃の温度範囲にわたってインタクトなままである。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、約2~8℃の温度範囲にわたってインタクトなままである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、一定期間(例えば、約1か月、3か月、6か月、12か月など)の間、約2~8℃の温度範囲にわたってインタクトなままである。
【0209】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40℃の温度でインタクトなままである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約1週間、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40℃の温度でインタクトなままである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約2週間、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40℃の温度でインタクトなままである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約3週間、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40℃の温度でインタクトなままである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約4週間、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40℃の温度でインタクトなままである。
【0210】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、凍結-解凍サイクル中にインタクトなままである。例えば、ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20回以上の凍結-解凍サイクル中にインタクトなままである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、5回以上の凍結-解凍サイクル中にインタクトなままである。
【0211】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、pH値の範囲にわたってインタクトなままである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約5.0~約7.5のpH範囲にわたってインタクトなままである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約5.0~7.0のpH範囲にわたってインタクトなままである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約5.5~7.0のpH範囲にわたってインタクトなままである。
【0212】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、約5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9または7.0±0.2のpHにわたってインタクトなままである。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9または7.0のpHにわたってインタクトなままである。
【0213】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、pH値の範囲にわたってコロイド的に安定している。コロイド安定性を測定する方法は、当該技術分野において既知であり、本明細書に記載されている(例えば、実施例を参照のこと)。
【0214】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、約5.5~約7.5のpH範囲にわたってコロイド的に安定している。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約5.5~7.0のpH範囲にわたってコロイド的に安定している。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約6.0~7.0のpH範囲にわたってコロイド的に安定している。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約6.5~7.0のpH範囲にわたってコロイド的に安定している。
【0215】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9または7.0±0.2のpHにわたってコロイド的に安定している。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9または7.0のpHにわたってコロイド的に安定している。
【0216】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、pH値の範囲にわたって立体構造的に安定している。立体構造安定性を測定する方法は、当該技術分野において既知であり、本明細書に記載されている(例えば、実施例を参照のこと)。
【0217】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、約5.5~約7.5のpH範囲にわたって立体構造的に安定している。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約5.5~7.0のpH範囲にわたって立体構造的に安定している。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約6.0~7.0のpH範囲にわたって立体構造的に安定している。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約6.5~7.0のpH範囲にわたって立体構造的に安定している。
【0218】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9または7.0±0.2のpHにわたって立体構造的に安定している。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9または7.0のpHにわたって立体構造的に安定している。
【0219】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、pH値の範囲にわたって凝集しないか、または限定的な凝集を有する(例えば、対照タンパク質もしくは参照値と比較して)。凝集を測定する方法は、当該技術分野において既知であり、本明細書に記載されている(例えば、実施例を参照のこと)。
【0220】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、約5.5~約7.5のpH範囲にわたって凝集しないか、または限定的な凝集を有する。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約5.5~7.0のpH範囲にわたって凝集しないか、または限定的な凝集を有する。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約6.0~7.0のpH範囲にわたって凝集しないか、または限定的な凝集を有する。
【0221】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9または7.0±0.2のpHにわたって凝集しないか、または限定的な凝集を有する。ある特定の実施形態では、タンパク質分子は、約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9または7.0のpHにわたって凝集しないか、または限定的な凝集を有する。
【0222】
処置の方法
LSDは、未消化または部分的に消化された巨大分子の蓄積を特徴とする遺伝性代謝性疾患であり、これは最終的に細胞機能障害及び臨床的異常をもたらす。古典的には、LSDは、蓄積した基質によって一般に分類されるリソソーム機能の欠損として定義されていて、これらとしては、スフィンゴリピドーシス、オリゴ糖症(oligosaccharidoses)、ムコリピドーシス、ムコ多糖症、リポタンパク質蓄積障害、神経セロイドリポフスチン症などが挙げられる。これらの障害の分類は、最近では、巨大分子の蓄積をもたらす他のタンパク質、例えば、リソソーム酵素の正常な翻訳後修飾に必要なタンパク質、または適切なリソソーム輸送に重要なタンパク質などの欠損または欠陥を含むものにまで広がっている。
【0223】
本明細書に記載される医薬組成物は、LSDに罹患している、またはLSDに罹患しやすい個体を処置するために使用されてよい。したがって、ある特定の実施形態は、LSDの処置を必要とする対象のLSDを処置する方法を提供し、本方法は、本明細書に記載される医薬組成物を対象に投与することを含む。ある特定の実施形態はまた、LSDの処置を必要とする対象のLSDを処置する方法を提供し、本方法は、本明細書に記載される医薬組成物を提供し、それを対象に投与することを含む。
【0224】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、液体組成物として提供される。
【0225】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、凍結乾燥組成物として提供される。そのような実施形態では、医薬組成物は、投与前に再構成される。
【0226】
ある特定の実施形態では、本方法は、第2治療剤の投与をさらに含む。
【0227】
ある特定の実施形態はまた、LSDの処置を必要とする対象のLSDを処置するための本明細書に記載される医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態は、LSDの処置を必要とする対象のLSDを処置するための医薬の調製における、本明細書に記載される医薬組成物の使用を提供する。
【0228】
ある特定の実施形態では、LSDはハンター症候群である。
【0229】
「処置する」または「処置」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患と関連する1つ以上の症状を改善すること、疾患に関する1つ以上の症状の発症を予防もしくは遅延させること、及び/または疾患に関する1つ以上の症状の重症度もしくは頻度を低下させることを含む。
【0230】
いくつかの実施形態では、処置は、LSDを有する患者の神経障害の部分的または完全な緩和、改善、軽減、阻害、発症の遅延、重症度及び/または発生率の減少を指す。本明細書で使用される場合、「神経障害」という用語は、中枢神経系(例えば、脳及び脊髄)の障害と関連する様々な症状を含む。神経障害の症状としては、例えば、例えば、とりわけ、認知障害、白質病変、脳実質、神経節、脳梁、及び/または脳幹の拡大血管周囲腔、萎縮、及び/または脳室拡大が挙げられてよい。
【0231】
いくつかの実施形態では、処置は、様々な組織中におけるリソソーム蓄積の(例えば、GAGの)減少を指す。いくつかの実施形態では、処置は、脳標的組織、脊髄ニューロン、及び/または末梢標的組織中におけるリソソーム蓄積の減少を指す。ある特定の実施形態では、リソソーム蓄積は、対照と比較した場合に約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%またはそれを超えて減少する。いくつかの実施形態では、リソソーム蓄積は、対照と比較した場合に少なくとも1分の1、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1または10分の1に減少する。いくつかの実施形態では、リソソーム蓄積は、リソソーム蓄積顆粒(例えば、ゼブラストライプ形態)の存在によって測定される。リソソーム蓄積顆粒の存在は、当該技術分野において既知の様々な手段によって、例えば、組織学的分析などによって測定され得る。
【0232】
いくつかの実施形態では、処置は、ニューロン(例えば、プルキンエ細胞を含有するニューロン)における空胞化の減少を指す。ある特定の実施形態では、ニューロンの空胞化は、対照と比較した場合に約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%またはそれを超えて減少する。いくつかの実施形態では、空胞化は、対照と比較した場合に少なくとも1分の1、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1または10分の1に減少する。空胞化の存在及びその減少は、当該技術分野において既知の様々な手段によって、例えば、組織学的分析などによって測定され得る。
【0233】
いくつかの実施形態では、処置は、様々な組織中におけるERT酵素活性の増加を指す。いくつかの実施形態では、ERT酵素活性は、対照と比較した場合に約5%~約100%、または約10%~約100%、または約20%~約100%、または約30%~約100%、または約40%~約100%、または約50%~約100%、または約60%~約100%、または約70%~約100%、または約80%~約100%増加する。いくつかの実施形態では、ERT酵素活性は、対照と比較した場合に約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%またはそれを超えて増加する。いくつかの実施形態では、ERT酵素活性は、対照と比較した場合に少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍または10倍増加する。いくつかの実施形態では、増加したERT酵素活性は、少なくともおよそ10nmol/時間/mg、20nmol/時間/mg、40nmol/時間/mg、50nmol/時間/mg、60nmol/時間/mg、70nmol/時間/mg、80nmol/時間/mg、90nmol/時間/mg、100nmol/時間/mg、150nmol/時間/mg、200nmol/時間/mg、250nmol/時間/mg、300nmol/時間/mg、350nmol/時間/mg、400nmol/時間/mg、450nmol/時間/mg、500nmol/時間/mg、550nmol/時間/mg、600nmol/時間/mgまたはそれを超える。
【0234】
いくつかの実施形態では、処置は、認知能力喪失の進行の減少を指す。ある特定の実施形態では、認知能力喪失の進行は、対照(例えば、未処置の対象)と比較した場合に約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%またはそれを超えて減少する。いくつかの実施形態では、処置は、発達遅延の減少を指す。ある特定の実施形態では、発達遅延は、対照(例えば、未処置の対象)と比較した場合に約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%またはそれを超えて減少する。
【0235】
いくつかの実施形態では、処置は、生存(例えば、生存期間)の増加を指す。例えば、処置は、患者の余命の増加をもたらし得る。いくつかの実施形態では、本発明による処置は、同様の疾患を有するが、処置を行わない1以上の対照個体の平均余命と比較した場合に、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約105%、約110%、約115%、約120%、約125%、約130%、約135%、約140%、約145%、約150%、約155%、約160%、約165%、約170%、約175%、約180%、約185%、約190%、約195%、約200%超、またはそれを超える患者の余命の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本発明による処置は、同様の疾患を有するが、処置を行わない1以上の対照個体の平均余命と比較した場合に、約6か月、約7か月、約8か月、約9か月、約10か月、約11か月、約12か月、約2年、約3年、約4年、約5年、約6年、約7年、約8年、約9年、約10年超、またはそれを超えて患者の余命の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本発明による処置は、患者の長期生存をもたらす。本明細書で使用される場合、「長期生存」という用語は、約40年、45年、50年、55年、60年超、またはそれよりも長い生存期間または余命を指す。
【0236】
「改善する」、「増加する」または「減少する」という用語は、本明細書で使用される場合、対照と比較した値を示す。いくつかの実施形態では、好適な対照は、ベースライン測定値、例えば、本明細書に記載される処置の開始前における同じ個体での測定値、または本明細書に記載される処置を行わない場合の対照個体(もしくは複数の対照個体)での測定値などである。「対照個体」は、LSD(例えば、ハンター症候群)に罹患している個体であり、その個体は(処置される個体及び対照個体(複数可)の疾患段階が同等であることを確実にするために)処置されている個体とほぼ同じ年齢及び/または性別である。
【0237】
投与
本明細書に記載される医薬組成物は、治療有効量または用量で対象に投与されてよい。例示的な投与量としては、約0.01mg/kg~約500mg/kg、または約0.1mg/kg~約200mg/kg、または約1mg/kg~約100mg/kg、または約10mg/kg~約50mg/kgの1日用量範囲が挙げられ、これらが使用され得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.01mg/kg~約500mg/kg、または約0.1mg/kg~約200mg/kg、または約1mg/kg~約100mg/kg、または約10mg/kg~約50mg/kgの1週用量範囲で投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子は、少なくとも約500単位(U)/mg、約1,000U/mg、または少なくとも約1,500、2,000、2,500、3,000、3,500、4,000、4,500、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、もしくは10,000U/mgの酵素活性を有する。いくつかの実施形態では、酵素活性は、少なくとも約11,000U/mg、または少なくとも約12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、45000、もしくは50,000U/mg、あるいは約500U/mg~約50,000U/mgの範囲のいずれかの箇所である。しかしながら、投与量は、いくつかの要因、例えば、選択した投与経路、組成物の製剤、患者応答、状態の重症度、対象の体重、対象の年齢、対象の頭の大きさ及び/または頭の大きさ対身長の比、ならびに処方医の判断を含む要因によって変動してよい。投与量は、個々の患者の必要に応じて、経時的に増加または減少させることができる。いくつかの実施形態では、患者には最初に低用量が投与され、次いで患者が忍容できる有効な投与量まで増加させる。有効量の決定は、当業者の能力の範囲内で十分に行われる。
【0238】
様々な実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質分子(例えば、本明細書に記載される医薬組成物中に存在する)は、非経口投与される。いくつかの実施形態では、タンパク質分子(例えば、本明細書に記載される医薬組成物中に存在する)は、静脈内投与される。静脈内投与は、例えば、約10~約30分間にわたる注入、または少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、もしくは10時間にわたる注入によるものであり得る。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、約20分~6時間、または約30分~4時間にわたって静脈内投与される。いくつかの実施形態では、タンパク質分子は、静脈内ボーラスとして投与される。注入及びボーラス投与の組合せも使用されてよい。
【0239】
いくつかの非経口的な実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、腹腔内、皮下、皮内、または筋肉内投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、皮内または筋肉内投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、硬膜外投与などによる髄腔内投与、または脳室内投与される。
【0240】
キット及びパッケージ
本明細書に記載されるような医薬組成物を含む、LSD(例えば、ハンター症候群)の処置に使用するためのキットもまた提供される。本明細書に記載されるような医薬組成物を含む、LSD(例えば、ハンター症候群)の処置に使用するためのパッケージもまた提供される。
【0241】
ある特定の実施形態では、キット/パッケージは、本明細書に記載される医薬組成物を保持する容器(例えば、アンプルまたはバイアル、例えば、6Rガラスバイアルなど)を含む。典型的には、医薬組成物は溶液として、または無水形態のいずれかで提供される。
【0242】
ある特定の実施形態では、キット/パッケージ内に含まれる医薬組成物は液体形態で提供され、タンパク質分子は、本明細書に記載される濃度、例えば、30mg/mlなどで存在する。ある特定の実施形態では、0.5ml、1.0ml、1.5ml、2.0ml、2.5ml、3.0ml、3.5ml、4.0ml、4.5ml、5.0ml、5.5ml、6.0ml、6.5ml、7.0ml、7.5ml、8.0ml、8.5ml、9.0ml、9.5ml、10ml、15ml、20ml、25ml、30ml、35ml、40ml、45ml、50mlの、またはそれを超える医薬組成物が提供される。ある特定の実施形態では、5mlの本明細書に記載される医薬組成物が提供される(例えば、5mlの液体中に150mgのタンパク質分子を含む)。
【0243】
いくつかの実施形態では、キット/パッケージは、1つ以上の追加の治療剤をさらに含む。例えば、いくつかの実施形態では、キット/パッケージは、本明細書に記載されるような医薬組成物を含み、LSD(例えば、ハンター症候群)の神経症状の処置に使用するための1つ以上の追加の治療剤をさらに含む。ある特定の実施形態では、1つ以上の追加の治療剤は、別個の容器で提供される。
【0244】
いくつかの実施形態では、キット/パッケージは、本明細書に記載される方法を実施するための指示(すなわち、プロトコール)を含有する説明資料(例えば、本明細書に記載される組成物を投与するためにキット/パッケージを使用するための説明書)をさらに含む。ある特定の実施形態では、説明書は、医薬組成物が凍結乾燥されている場合の再水和の指示を含む。さらに、ある特定の実施形態では、説明書は、投与前に医薬組成物を適切な投与量に希釈するための指示を含む。例えば、医薬組成物は、生理食塩水(例えば、100mlの生理食塩水)中で希釈されてよい。説明資料は通常、書面または印刷物を含むが、それらはそのようなものに限定されない。そのような説明書を保管し、それらをエンドユーザーに伝達できる任意の媒体が、本開示により企図される。そのような媒体としては、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD-ROM)などが挙げられるが、これらに限定されない。そのような媒体は、そのような説明資料を提供するインターネットサイトへのアドレスを含んでよい。
【0245】
ある特定の実施形態
実施形態1.医薬組成物であって、
a.以下を含むタンパク質分子:
i.第1Fcポリペプチド、及び
ii.酵素補充療法(ERT)酵素、ERT酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結される第2Fcポリペプチド、
b.緩衝液、ならびに
c.塩
を含み、前記医薬組成物のpHが、約5.5~7.0である、前記医薬組成物。
【0246】
実施形態2.前記緩衝液が、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、アルギニン緩衝液、及びヒスチジン緩衝液からなる群から選択される、実施形態1に記載の医薬組成物。
【0247】
実施形態3.前記リン酸緩衝液が、リン酸ナトリウム緩衝液またはリン酸カリウム緩衝液である、実施形態2に記載の医薬組成物。
【0248】
実施形態4.前記塩がナトリウム塩である、実施形態1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0249】
実施形態5.前記ナトリウム塩が、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムからなる群から選択される、実施形態4に記載の医薬組成物。
【0250】
実施形態6.前記医薬組成物が界面活性剤をさらに含む、実施形態1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0251】
実施形態7.前記医薬組成物が、糖を含む安定剤をさらに含む、実施形態1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0252】
実施形態8.前記医薬組成物がメチオニンをさらに含む、実施形態1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0253】
実施形態9.医薬組成物であって、
a.以下を含むタンパク質分子:
i.第1Fcポリペプチド、及び
ii.酵素補充療法(ERT)酵素、ERT酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結される第2Fcポリペプチド、
b.リン酸ナトリウムを含む緩衝液、
c.塩化ナトリウム、
d.界面活性剤、ならびに
e.糖を含む安定剤
を含み、前記医薬組成物のpHが、約5.5~7.0である、前記医薬組成物。
【0254】
実施形態10.医薬組成物であって、
a.以下を含むタンパク質分子:
i.第1Fcポリペプチド、及び
ii.酵素補充療法(ERT)酵素、ERT酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結される第2Fcポリペプチド、
b.リン酸ナトリウムを含む緩衝液、
c.塩化ナトリウム、
d.界面活性剤、
e.糖を含む安定剤、ならびに
f.メチオニン
を含み、前記医薬組成物のpHが、約5.5~7.0である、前記医薬組成物。
【0255】
実施形態11.前記ERT酵素が、イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)、及びIDSバリアント、またはその触媒活性断片である、実施形態1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0256】
実施形態12.前記ERT酵素がIDSアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列が、配列番号:1と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、実施形態1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0257】
実施形態13.前記IDSアミノ酸配列が、配列番号:1、2及び3からなる群から選択される配列を含む、実施形態12に記載の医薬組成物。
【0258】
実施形態14.前記第1Fcポリペプチドまたは前記第2Fcポリペプチドが、EU番号付けによる、380、384、386、387、388、389、390、413、415、416、及び421からなる群から選択される少なくとも9つのアミノ酸残基位置に置換を含む、実施形態1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0259】
実施形態15.前記第1Fcポリペプチドが、EU番号付けによる、380、384、386、387、388、389、390、413、415、416、及び421からなる群から選択される少なくとも9つのアミノ酸残基位置に置換を含む、実施形態14に記載の医薬組成物。
【0260】
実施形態16.医薬組成物であって、
a.以下を含むタンパク質分子:
i.EU番号付けによる、380、384、386、387、388、389、390、413、415、416、及び421からなる群から選択される少なくとも9つのアミノ酸残基位置に置換を含む第1Fcポリペプチド、ならびに
ii.イズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)酵素に連結される第2Fcポリペプチドであって、IDSアミノ酸配列が、配列番号:1と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む前記第2Fcポリペプチド、
b.緩衝液、ならびに
c.塩
を含み、前記医薬組成物のpHが、約5.5~7.0である、前記医薬組成物。
【0261】
実施形態17.前記緩衝液が、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、アルギニン緩衝液、及びヒスチジン緩衝液からなる群から選択される、実施形態16に記載の医薬組成物。
【0262】
実施形態18.前記リン酸緩衝液が、リン酸ナトリウム緩衝液またはリン酸カリウム緩衝液である、実施形態17に記載の医薬組成物。
【0263】
実施形態19.前記塩がナトリウム塩である、実施形態16~18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0264】
実施形態20.前記ナトリウム塩が、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムからなる群から選択される、実施形態19に記載の医薬組成物。
【0265】
実施形態21.前記医薬組成物が界面活性剤をさらに含む、実施形態16~20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0266】
実施形態22.前記医薬組成物が、糖を含む安定剤をさらに含む、実施形態16~21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0267】
実施形態23.前記医薬組成物がメチオニンをさらに含む、実施形態16~22のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0268】
実施形態24.医薬組成物であって、
a.以下を含むタンパク質分子:
i.EU番号付けによる、380、384、386、387、388、389、390、413、415、416、及び421からなる群から選択される少なくとも9つのアミノ酸残基位置に置換を含む第1Fcポリペプチド、ならびに
ii.イズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)酵素に連結される第2Fcポリペプチドであって、IDSアミノ酸配列が、配列番号:1と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む前記第2Fcポリペプチド、
b.リン酸ナトリウムを含む緩衝液、
c.塩化ナトリウム、
d.界面活性剤、ならびに
e.糖を含む安定剤
を含み、前記医薬組成物のpHが、約5.5~7.0である、前記医薬組成物。
【0269】
実施形態25.メチオニンをさらに含む、実施形態24に記載の医薬組成物。
【0270】
実施形態26.前記第1Fcポリペプチドが、EU番号付けによる、アミノ酸残基384、386、387、388、389、413、415、416、及び421位に置換を含む、実施形態15~25のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0271】
実施形態27.前記IDSアミノ酸配列が、前記第2FcポリペプチドのN末端に連結される、実施形態11~26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0272】
実施形態28.前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:4、5、39または40と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態11~27のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0273】
実施形態29.前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:4、5、39または40のアミノ酸配列を含む、実施形態11~28のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0274】
実施形態30.前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:4または5の前記アミノ酸配列を含む、実施形態11~29のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0275】
実施形態31.前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:39または40の前記アミノ酸配列を含む、実施形態11~29のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0276】
実施形態32.前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:6または41と少なくとも90%の同一性(例えば、95%の同一性)を有する配列を含む、実施形態1~31のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0277】
実施形態33.前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:6と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、実施形態1~32のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0278】
実施形態34.前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:41と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、実施形態1~32のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0279】
実施形態35.前記第1Fcポリペプチドが、
a.380位にTrp、Leu、またはGlu、
b.384位にTyr、
c.386位にThr、
d.387位にGlu、
e.388位にTrp、
f.389位にSerまたはAla、
g.390位にSerまたはAsn、
h.413位にThr、
i.415位にGlu、
j.416位にGlu、及び
k.421位にPhe
を含む、実施形態1~34のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0280】
実施形態36.前記第1Fcポリペプチド及び前記第2Fcポリペプチドが二量体化する、実施形態1~35のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0281】
実施形態37.前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:6、7、25及び30のうちいずれか1つと少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:4または5と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態11~36のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0282】
実施形態38.前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:6のアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:4または5の配列を含む、実施形態37に記載の医薬組成物。
【0283】
実施形態39.前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:7のアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:4または5の配列を含む、実施形態37に記載の医薬組成物。
【0284】
実施形態40.前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:25のアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:4または5の配列を含む、実施形態37に記載の医薬組成物。
【0285】
実施形態41.前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:30のアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:4または5の配列を含む、実施形態37に記載の医薬組成物。
【0286】
実施形態42.前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:41、42、44及び49のうちいずれか1つと少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:39または40と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態11~36のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0287】
実施形態43.前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:41のアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:39または40の配列を含む、実施形態42に記載の医薬組成物。
【0288】
実施形態44.前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:42のアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:39または40の配列を含む、実施形態42に記載の医薬組成物。
【0289】
実施形態45.前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:44のアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:39または40の配列を含む、実施形態42に記載の医薬組成物。
【0290】
実施形態46.前記第1Fcポリペプチドが、配列番号:49のアミノ酸配列を含み、前記IDSアミノ酸配列に連結される前記第2Fcポリペプチドが、配列番号:39または40の配列を含む、実施形態42に記載の医薬組成物。
【0291】
実施形態47.前記タンパク質分子の濃度が約5~50mg/mLである、実施形態1~46のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0292】
実施形態48.前記タンパク質分子の濃度が約10~40mg/mLである、実施形態1~47のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0293】
実施形態49.前記タンパク質分子の濃度が約10~30mg/mLである、実施形態1~48のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0294】
実施形態50.前記タンパク質分子の濃度が約10mg/mLである、実施形態1~49のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0295】
実施形態51.前記タンパク質分子の濃度が約20mg/mLである、実施形態1~49のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0296】
実施形態52.前記タンパク質分子の濃度が約30mg/mLである、実施形態1~49のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0297】
実施形態53.緩衝液の濃度が約5~50mMである、実施形態1~52のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0298】
実施形態54.前記緩衝液の濃度が約10~50mMである、実施形態1~53のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0299】
実施形態55.前記緩衝液の濃度が約10~40mMである、実施形態1~54のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0300】
実施形態56.前記緩衝液の濃度が約10~30mMである、実施形態1~55のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0301】
実施形態57.前記緩衝液の濃度が約15~25mMである、実施形態1~56のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0302】
実施形態58.前記緩衝液の濃度が約20mMである、実施形態1~57のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0303】
実施形態59.前記緩衝液が、約5~50mMの濃度を有するリン酸ナトリウム緩衝液である、実施形態1~52のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0304】
実施形態60.前記緩衝液が、約10~50mMの濃度を有するリン酸ナトリウム緩衝液である、実施形態1~52及び59のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0305】
実施形態61.前記緩衝液が、約10~40mMの濃度を有するリン酸ナトリウム緩衝液である、実施形態1~52及び59~60のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0306】
実施形態62.前記緩衝液が、約10~30mMの濃度を有するリン酸ナトリウム緩衝液である、実施形態1~52及び59~61のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0307】
実施形態63.前記緩衝液が、約15~25mMの濃度を有するリン酸ナトリウム緩衝液である、実施形態1~52及び59~62のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0308】
実施形態64.前記緩衝液が、約20mMの濃度を有するリン酸ナトリウム緩衝液である、実施形態1~52及び59~63のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0309】
実施形態65.前記塩(例えば、ナトリウム塩)の濃度が約30~150mMである、実施形態1~64のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0310】
実施形態66.前記塩(例えば、ナトリウム塩)の濃度が約40~140mMである、実施形態1~65のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0311】
実施形態67.前記塩(例えば、ナトリウム塩)の濃度が約50~137mMである、実施形態1~66のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0312】
実施形態68.前記塩(例えば、ナトリウム塩)の濃度が約40~100mMである、実施形態1~66のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0313】
実施形態69.前記塩(例えば、ナトリウム塩)の濃度が約50mMである、実施形態1~68のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0314】
実施形態70.前記塩(例えば、ナトリウム塩)の濃度が約137mMである、実施形態1~67のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0315】
実施形態71.前記塩が、約30~150mMの濃度を有する塩化ナトリウムである、実施形態1~64のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0316】
実施形態72.前記塩が、約40~140mMの濃度を有する塩化ナトリウムである、実施形態1~64及び71のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0317】
実施形態73.前記塩が、約50~137mMの濃度を有する塩化ナトリウムである、実施形態1~64及び71~72のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0318】
実施形態74.前記塩が、約40~100mMの濃度を有する塩化ナトリウムである、実施形態1~64及び71~72のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0319】
実施形態75.前記塩が、約50mMの濃度を有する塩化ナトリウムである、実施形態1~64及び71~74のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0320】
実施形態76.前記塩が、約137mMの濃度を有する塩化ナトリウムである、実施形態1~64及び71~73のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0321】
実施形態77.前記界面活性剤の濃度が約0.1~1.0mg/mLである、実施形態6~15及び21~76のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0322】
実施形態78.前記界面活性剤の濃度が約0.2~0.8mg/mLである、実施形態6~15及び21~77のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0323】
実施形態79.前記界面活性剤の濃度が約0.2~0.6mg/mLである、実施形態6~15及び21~78のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0324】
実施形態80.前記界面活性剤の濃度が約0.2mg/mLである、実施形態6~15及び21~79のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0325】
実施形態81.前記界面活性剤の濃度が約0.4mg/mLである、実施形態6~15及び21~79のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0326】
実施形態82.前記界面活性剤の濃度が約0.5mg/mLである、実施形態6~15及び21~79のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0327】
実施形態83.前記界面活性剤の濃度が約0.6mg/mLである、実施形態6~15及び21~79のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0328】
実施形態84.前記界面活性剤がポリソルベートを含む、実施形態6~15及び21~83のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0329】
実施形態85.前記界面活性剤が、ポリソルベート-20(PS-20)及びポリソルベート-80(PS-80)からなる群から選択される、実施形態84に記載の医薬組成物。
【0330】
実施形態86.前記界面活性剤がポリソルベート-20(PS-20)である、実施形態85に記載の医薬組成物。
【0331】
実施形態87.前記界面活性剤がポリソルベート-80(PS-80)である、実施形態85に記載の医薬組成物。
【0332】
実施形態88.前記界面活性剤がポロキサマーを含む、実施形態6~15及び21~83のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0333】
実施形態89.前記安定剤が、スクロースまたはトレハロースから選択される糖を含む、実施形態7~15及び22~88のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0334】
実施形態90.前記糖の濃度が約50~300mMである、実施形態7~15及び22~89のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0335】
実施形態91.前記糖の濃度が約100~250mMである、実施形態7~15及び22~90のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0336】
実施形態92.前記糖の濃度が約150~200mMである、実施形態7~15及び22~91のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0337】
実施形態93.前記糖の濃度が約175mMである、実施形態7~15及び22~92のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0338】
実施形態94.前記安定剤がスクロースを含む、実施形態7~15及び22~93のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0339】
実施形態95.前記メチオニンの濃度が約5~25mMである、実施形態8~15、23及び25~94のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0340】
実施形態96.前記メチオニンの濃度が約5~20mMである、実施形態8~15、23及び25~95のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0341】
実施形態97.前記メチオニンの濃度が約5~15mMである、実施形態8~15、23及び25~96のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0342】
実施形態98.前記メチオニンの濃度が約10mMである、実施形態8~15、23及び25~97のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0343】
実施形態99.前記医薬組成物の前記pHが約5.5~6.5である、実施形態1~98のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0344】
実施形態100.前記医薬組成物の前記pHが約5.5±0.5である、実施形態1~99のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0345】
実施形態101.前記医薬組成物の前記pHが約5.5である、実施形態100に記載の医薬組成物。
【0346】
実施形態102.前記医薬組成物の前記pHが約6.0±0.5である、実施形態1~99のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0347】
実施形態103.前記医薬組成物の前記pHが約6.0である、実施形態102に記載の医薬組成物。
【0348】
実施形態104.前記医薬組成物の前記pHが約6.5±0.5である、実施形態1~99のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0349】
実施形態105.前記医薬組成物の前記pHが約6.5である、実施形態104に記載の医薬組成物。
【0350】
実施形態106.医薬組成物であって、
a.以下を含むタンパク質分子:
i.配列番号:6、7、25及び30のうちいずれか1つと少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、ならびに
ii.配列番号:4または5と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド、
b.約10~30mMのリン酸ナトリウム緩衝液、
c.約30~100mMの塩化ナトリウム、
d.約0.4~0.7mg/mLのポリソルベート界面活性剤、ならびに
e.約150~200mMのスクロース
を含み、前記医薬組成物のpHが、約6.5±0.5である、前記医薬組成物。
【0351】
実施形態107.前記タンパク質分子が、
i.配列番号:6のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び
ii.配列番号:4または5のアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド
を含む、実施形態106に記載の医薬組成物。
【0352】
実施形態108.前記タンパク質分子が、
i.配列番号:7のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び
ii.配列番号:4または5のアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド
を含む、実施形態106に記載の医薬組成物。
【0353】
実施形態109.前記タンパク質分子が、
i.配列番号:25のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び
ii.配列番号:4または5のアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド
を含む、実施形態106に記載の医薬組成物。
【0354】
実施形態110.前記タンパク質分子が、
i.配列番号:30のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び
ii.配列番号:4または5のアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド
を含む、実施形態106に記載の医薬組成物。
【0355】
実施形態111.医薬組成物であって、
a.以下を含むタンパク質分子:
i.配列番号:41、42、44及び49のうちいずれか1つと少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、ならびに
ii.配列番号:39または40と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド、
b.約10~30mMのリン酸ナトリウム緩衝液、
c.約30~100mMの塩化ナトリウム、
d.約0.4~0.7mg/mLのポリソルベート界面活性剤、ならびに
e.約150~200mMのスクロース
を含み、前記医薬組成物のpHが、約6.5±0.5である、前記医薬組成物。
【0356】
実施形態112.前記タンパク質分子が、
i.配列番号:41のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び
ii.配列番号:39または40のアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド
を含む、実施形態111に記載の医薬組成物。
【0357】
実施形態113.前記タンパク質分子が、
i.配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び
ii.配列番号:39または40のアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド
を含む、実施形態111に記載の医薬組成物。
【0358】
実施形態114.前記タンパク質分子が、
i.配列番号:44のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び
ii.配列番号:39または40のアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド
を含む、実施形態111に記載の医薬組成物。
【0359】
実施形態115.前記タンパク質分子が、
i.配列番号:49のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び
ii.配列番号:39または40のアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド
を含む、実施形態111に記載の医薬組成物。
【0360】
実施形態116.医薬組成物であって、
a.以下を含むタンパク質分子:
i.配列番号:6、7、25及び30のうちいずれか1つと少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、ならびに
ii.配列番号:4または5と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド、
b.約10~30mMのリン酸ナトリウム緩衝液、
c.約30~100mMの塩化ナトリウム、
d.約0.4~0.7mg/mLのポリソルベート界面活性剤、
e.約150~200mMのスクロース、ならびに
f.約5~25mMのメチオニン
を含み、前記医薬組成物のpHが、約6.5±0.5である、前記医薬組成物。
【0361】
実施形態117.前記タンパク質分子が、
i.配列番号:6のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び
ii.配列番号:4または5のアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド
を含む、実施形態116に記載の医薬組成物。
【0362】
実施形態118.前記タンパク質分子が、
i.配列番号:7のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び
ii.配列番号:4または5のアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド
を含む、実施形態116に記載の医薬組成物。
【0363】
実施形態119.前記タンパク質分子が、
i.配列番号:25のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び
ii.配列番号:4または5のアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド
を含む、実施形態116に記載の医薬組成物。
【0364】
実施形態120.前記タンパク質分子が、
i.配列番号:30のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び
ii.配列番号:4または5のアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド
を含む、実施形態116に記載の医薬組成物。
【0365】
実施形態121.医薬組成物であって、
a.以下を含むタンパク質分子:
i.配列番号:41、42、44及び49のうちいずれか1つと少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、ならびに
ii.配列番号:39または40と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド、
b.約10~30mMのリン酸ナトリウム緩衝液、
c.約30~100mMの塩化ナトリウム、
d.約0.4~0.7mg/mLのポリソルベート界面活性剤、
e.約150~200mMのスクロース、ならびに
f.約5~25mMのメチオニン
を含み、前記医薬組成物のpHが、約6.5±0.5である、前記医薬組成物。
【0366】
実施形態122.前記タンパク質分子が、
i.配列番号:41のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び
ii.配列番号:39または40のアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド
を含む、実施形態121に記載の医薬組成物。
【0367】
実施形態123.前記タンパク質分子が、
i.配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び
ii.配列番号:39または40のアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド
を含む、実施形態121に記載の医薬組成物。
【0368】
実施形態124.前記タンパク質分子が、
i.配列番号:44のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び
ii.配列番号:39または40のアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド
を含む、実施形態121に記載の医薬組成物。
【0369】
実施形態125.前記タンパク質分子が、
i.配列番号:49のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び
ii.配列番号:39または40のアミノ酸配列を含むイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を含む融合ポリペプチド
を含む、実施形態121に記載の医薬組成物。
【0370】
実施形態126.前記医薬組成物の前記pHが約6.5±0.2である、実施形態106~125のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0371】
実施形態127.前記タンパク質分子が、約5~50mg/mLで前記組成物中に存在する、実施形態106~126のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0372】
実施形態128.前記タンパク質分子が、約10~40mg/mLで前記組成物中に存在する、実施形態106~127のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0373】
実施形態129.前記タンパク質分子が、約10~30mg/mLで前記組成物中に存在する、実施形態106~128のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0374】
実施形態130.前記リン酸ナトリウム緩衝液の濃度が約15~25mMである、実施形態106~129のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0375】
実施形態131.前記リン酸ナトリウム緩衝液の濃度が約20mMである、実施形態106~130のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0376】
実施形態132.前記塩化ナトリウムの濃度が約40~100mMである、実施形態106~131のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0377】
実施形態133.前記塩化ナトリウムの濃度が約50mMである、実施形態106~132のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0378】
実施形態134.前記ポリソルベート界面活性剤の濃度が約0.4mg/mLである、実施形態106~133のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0379】
実施形態135.前記ポリソルベート界面活性剤の濃度が約0.5mg/mLである、実施形態106~133のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0380】
実施形態136.前記ポリソルベート界面活性剤の濃度が約0.6mg/mLである、実施形態106~133のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0381】
実施形態137.前記ポリソルベート界面活性剤が、ポリソルベート-20(PS-20)及びポリソルベート-80(PS-80)からなる群から選択される、実施形態106~136のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0382】
実施形態138.前記ポリソルベート界面活性剤がポリソルベート-20(PS-20)である、実施形態137に記載の医薬組成物。
【0383】
実施形態139.前記ポリソルベート界面活性剤がポリソルベート-80(PS-80)である、実施形態137に記載の医薬組成物。
【0384】
実施形態140.前記スクロースの濃度が約175mMである、実施形態106~139のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0385】
実施形態141.前記メチオニンの濃度が約5~20mMである、実施形態116~140のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0386】
実施形態142.前記メチオニンの濃度が約5~15mMである、実施形態116~141のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0387】
実施形態143.前記メチオニンの濃度が約10mMである、実施形態116~142のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0388】
実施形態144.
a.約5~50mg/mLの前記タンパク質分子、
b.約20mMのリン酸ナトリウム緩衝液、
c.約50mMの塩化ナトリウム、
d.約0.4~0.7mg/mL(例えば、0.6mg/mL)のポリソルベート-20(PS-20)、
e.約175mMのスクロース、及び
f.約10mMのメチオニン
を含み、前記医薬組成物の前記pHが、約6.5±0.2である、実施形態116~125のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0389】
実施形態145.前記pHが、25℃で2週間維持される、実施形態1~144のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0390】
実施形態146.前記pHが、40℃で2週間維持される、実施形態1~144のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0391】
実施形態147.前記pHが、約2~8℃の温度で約1か月間維持される、実施形態1~146のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0392】
実施形態148.濁度が、約2~40℃の温度で安定したままである、実施形態1~147のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0393】
実施形態149.濁度が、約2~8℃の温度で安定したままである、実施形態148に記載の医薬組成物。
【0394】
実施形態150.前記タンパク質分子が、約2~40℃の温度でインタクトなままである、実施形態1~149のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0395】
実施形態151.前記タンパク質分子が、約2~8℃の温度でインタクトなままである、実施形態150に記載の医薬組成物。
【0396】
実施形態152.前記タンパク質分子が、凍結-解凍サイクル中にインタクトなままである、実施形態1~151のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0397】
実施形態153.前記タンパク質分子が、約5.5~7.0のpHでインタクトなままである、実施形態1~152のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0398】
実施形態154.前記タンパク質分子が、約6.0~7.0のpHでコロイド的に、及び/または立体構造的に安定している、実施形態1~153のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0399】
実施形態155.前記医薬組成物が、液体組成物として提供される、実施形態1~154のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0400】
実施形態156.前記医薬組成物が、凍結乾燥組成物として提供される、実施形態1~154のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0401】
実施形態157.リソソーム蓄積障害(LSD)(例えば、ハンター症候群)の処置を必要とする対象のLSDの処置方法であって、実施形態1~156のいずれか1項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【0402】
実施形態158.リソソーム蓄積障害(LSD)(例えば、ハンター症候群)の処置を必要とする対象のLSDの処置方法であって、実施形態1~156のいずれか1項に記載の医薬組成物を提供し、それを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【0403】
実施形態159.前記医薬組成物が静脈内投与される、実施形態157または158に記載の方法。
【0404】
実施形態160.リソソーム蓄積障害(LSD)(例えば、ハンター症候群)の処置を必要とする対象のLSDの処置に使用するための、実施形態1~156のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0405】
実施形態161.リソソーム蓄積障害(LSD)(例えば、ハンター症候群)の処置を必要とする対象のLSDを処置するための医薬の調製における、実施形態1~156のいずれか1項に記載されるような医薬組成物の使用。
【0406】
実施形態162.前記LSDがハンター症候群である、実施形態157~161のいずれか1項に記載の方法、医薬組成物または使用。
【0407】
ある特定の定義
「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、本明細書で交換可能に使用される場合、哺乳動物、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、及びモルモット)、ウサギ、雌ウシ、ブタ、ウマ、ならびに他の哺乳動物種を含むが、これらに限定されない哺乳動物を指す。一実施形態では、患者はヒトである。
【0408】
「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、ヒトまたは動物での使用のために生物学的または薬理学的に適合した非医薬品有効成分を指し、例えば、緩衝液、担体、または防腐剤などであるが、これらに限定されない。
【0409】
「投与する」という用語は、薬剤(例えば、本明細書に記載されるタンパク質分子)、化合物、または組成物(例えば、医薬組成物)を、所望の生物学的作用部位に送達する方法を指す。これらの方法としては、経口、局所送達、非経口送達、静脈内送達、皮内送達、筋肉内送達、髄腔内送達、結腸送達、直腸送達、または腹腔内送達が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、静脈内投与される。
【0410】
「処置」、「処置する」などの用語は、一般に所望の薬理学的及び/または生理学的効果を得ることを意味するように本明細書で使用される。「処置すること」または「処置」は、リソソーム蓄積障害、例えば、ハンター症候群の処置または改善における成功の任意の徴候を指す場合があり、任意の客観的または主観的パラメータを含み、例えば、緩和、寛解、患者生存の改善、生存期間もしくは生存率の増加、症状の軽減もしくは障害に対する患者の忍容性を高めること、変性もしくは衰退の速度を遅くすること、または患者の身体的もしくは精神的健康を改善することなどである。症状の処置または改善は、客観的または主観的パラメータに基づき得る。処置の効果は、処置を受けていない個体もしくは個体のプールと、または処置前の、もしくは処置中の異なる時点での同じ患者と比較され得る。
【0411】
「有効量」という語句は、(i)特定の疾患、状態、もしくは障害を処置もしくは予防する、(ii)特定の疾患、状態、もしくは障害のうち1つ以上の症状を減弱させる、改善する、もしくは排除する、または(iii)本明細書に記載される特定の疾患、状態、もしくは障害のうち1つ以上の症状の発症を予防もしくは遅延させる本明細書に記載される化合物の量を意味する。
【0412】
本明細書に開示される物質/分子の「治療有効量」は、要因、例えば、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、ならびに個体中で所望の応答を誘発する物質/分子の能力などによって変動する場合がある。治療有効量は、物質/分子のあらゆる毒性または有害作用を、治療的に有益な効果が上回る量を包含する。「予防有効量」は、所望の予防結果を達成するために必要な投与量及び期間で有効な量を指す。必ずしもそうとは限らないが、通常、予防用量は疾患の前または疾患の初期段階で対象に使用されるため、予防有効量は、治療有効量よりも少ないことになる。
【0413】
「酵素補充療法酵素」または「ERT酵素」は、リソソーム蓄積障害において欠損している酵素を指す。「ERT酵素バリアント」は、野生型ERT酵素またはその断片の、対立遺伝子及びスプライスバリアントを含む機能的バリアントを指し、ERT酵素バリアントは、例えば、同一条件下でアッセイされる場合、対応する野生型ERT酵素またはその断片の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の活性を有する。ERT酵素の「触媒活性断片」は、全長ERT酵素またはそのバリアントの一部を指し、触媒活性断片は、例えば、同一条件下でアッセイされる場合、対応する全長ERT酵素またはそのバリアントの少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の活性を有する。
【0414】
「イズロン酸スルファターゼ」、「イズロン酸-2-スルファターゼ」、または「IDS」は、本明細書で使用される場合、イズロン酸2-スルファターゼ(EC 3.1.6.13)を指し、これはグリコサミノグリカンであるヘパラン硫酸及びデルマタン硫酸のリソソーム分解に関与する酵素である。IDSの欠損は、ハンター症候群としても知られているムコ多糖症II型と関連している。Fcポリペプチドを含むタンパク質の成分として本明細書で使用される場合の「IDS」という用語は、触媒的に活性であり、野生型IDSまたはその断片の、対立遺伝子及びスプライスバリアントを含む機能的バリアントを包含する。ヒトIDSアイソフォームIの配列は、カノニカル配列として表されるヒト配列であり、UniProtエントリーP22304において利用可能で、Xq28のヒトIDS遺伝子によってコードされる。全長配列は、配列番号:11として提供される。「成熟」IDS配列は、本明細書で使用される場合、天然に存在する全長ポリペプチド鎖のシグナル及びプロペプチド配列を欠いているポリペプチド鎖の形態を指す。成熟ヒトIDSポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号:1として提供され、これは全長ヒト配列のアミノ酸34~550に対応する。「切断型」IDS配列は、本明細書で使用される場合、天然に存在する全長ポリペプチド鎖の触媒活性断片を指す。例示的な切断型ヒトIDSポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号:23として提供され、これは全長ヒト配列のアミノ酸26~550に対応する。ヒトIDSの構造は、十分に特徴付けされている。例示的な構造は、PDBアクセッションコード5FQLにおいて利用可能である。構造は、Nat.Comm.8:15786 doi:10.1038/ncomms15786,2017にも記載されている。非ヒト霊長類IDS配列も記載されていて、チンパンジー(UniProtエントリーK7BKV4)及びアカゲザル(UniProtエントリーH9FTX2)を含む。マウスIDS配列は、UniprotエントリーQ08890において利用可能である。IDSバリアントは、例えば、同一条件下でアッセイされる場合、対応する野生型IDSまたはその断片の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の活性を有する。触媒活性IDS断片は、例えば、同一条件下でアッセイされる場合、対応する全長IDSまたはそのバリアントの少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の活性を有する。
【0415】
「トランスフェリン受容体」または「TfR」は、本明細書で使用される場合、トランスフェリン受容体タンパク質1を指す。ヒトトランスフェリン受容体1ポリペプチド配列は、配列番号:13に示されている。他の種に由来するトランスフェリン受容体タンパク質1配列も、知られている(例えば、チンパンジー、アクセッション番号XP_003310238.1、アカゲザル、NP_001244232.1、イヌ、NP_001003111.1、ウシ、NP_001193506.1、マウス、NP_035768.1、ラット、NP_073203.1、及びニワトリ、NP_990587.1)。「トランスフェリン受容体」という用語は、トランスフェリン受容体タンパク質1染色体座にある遺伝子によってコードされる例示的な参照配列、例えば、ヒト配列の対立遺伝子バリアントも包含する。全長トランスフェリン受容体タンパク質は、短いN末端細胞内領域、膜貫通領域、及び大きな細胞外ドメインを含む。細胞外ドメインは、3つのドメイン:プロテアーゼ様ドメイン、ヘリカルドメイン、及びアピカルドメインを特徴とする。ヒトトランスフェリン受容体1のアピカルドメイン配列は、配列番号:35に示されている。
【0416】
「[ERT酵素]-Fc融合タンパク質」、「ETV:[ERT酵素]タンパク質分子」、または「タンパク質分子」は、本明細書で使用される場合、第1Fcポリペプチド及び第2Fcポリペプチドを含む二量体タンパク質を指し、第2Fcポリペプチドは、ERT酵素、ERT酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結(例えば、融合)され(例えば、「IDS-Fc融合ポリペプチド」)、第1Fcポリペプチドは第2FcポリペプチドとFc二量体を形成する。第1Fcポリペプチドもまた、ERT酵素、ERT酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結(例えば、融合)されてもよい。第1Fcポリペプチド及び/または第2Fcポリペプチドは、ペプチド結合によって、またはポリペプチドリンカーによってERT酵素、ERT酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結されてよい。第1Fcポリペプチド及び/または第2Fcポリペプチドは、他方のFcポリペプチドとのそのヘテロ二量体化を促進する1つ以上の修飾を含有する修飾Fcポリペプチドであってよい。第1Fcポリペプチド及び/または第2Fcポリペプチドは、トランスフェリン受容体への結合を付与する1つ以上の修飾を含有する修飾Fcポリペプチドであってよい。第1Fcポリペプチド及び/または第2Fcポリペプチドは、エフェクター機能を減少させる1つ以上の修飾を含有する修飾Fcポリペプチドであってよい。第1Fcポリペプチド及び/または第2Fcポリペプチドは、血清半減期を延長する1つ以上の修飾を含有する修飾Fcポリペプチドであってよい。「[ERT酵素]-Fc融合タンパク質」、「ETV:[ERT酵素]タンパク質分子」、または「タンパク質分子」という用語は、単一のタンパク質分子または複数のタンパク質分子を指す場合がある。
【0417】
「融合ポリペプチド」または「[ERT酵素]-Fc融合ポリペプチド」は、本明細書で使用される場合、ERT酵素、ERT酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結(例えば、融合)されているFcポリペプチドを指す。Fcポリペプチドは、ペプチド結合によって、またはポリペプチドリンカーによってERT酵素、ERT酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結されてよい。Fcポリペプチドは、別のFcポリペプチドとのそのヘテロ二量体化を促進する1つ以上の修飾を含有する修飾Fcポリペプチドであってよい。Fcポリペプチドは、トランスフェリン受容体への結合を付与する1つ以上の修飾を含有する修飾Fcポリペプチドであってよい。Fcポリペプチドは、エフェクター機能を減少させる1つ以上の修飾を含有する修飾Fcポリペプチドであってよい。Fcポリペプチドは、血清半減期を延長する1つ以上の修飾を含有する修飾Fcポリペプチドであってよい。
【0418】
本明細書で使用される場合、「Fcポリペプチド」という用語は、構造ドメインとしてIgフォールドを特徴とする、天然に存在する免疫グロブリン重鎖ポリペプチドのC末端領域を指す。Fcポリペプチドは、少なくともCH2ドメイン及び/またはCH3ドメインを含む定常領域配列を含有し、少なくともヒンジ領域の一部を含有する場合がある。一般に、Fcポリペプチドは可変領域を含有しない。
【0419】
「修飾Fcポリペプチド」は、野生型免疫グロブリン重鎖Fcポリペプチド配列と比較した場合に、少なくとも1つの変異、例えば、置換、欠失または挿入を有するが、天然Fcポリペプチドの全体的なIgフォールドまたは構造を保持するFcポリペプチドを指す。
【0420】
「FcRn」という用語は、胎児性Fc受容体を指す。FcポリペプチドとFcRnとの結合によって、Fcポリペプチドのクリアランスが減少し、血清半減期が増加する。ヒトFcRnタンパク質は、主要組織適合(MHC)クラスIタンパク質に類似した約50kDaサイズのタンパク質及び約15kDaサイズのβ2-ミクログロブリンから構成されるヘテロ二量体である。
【0421】
本明細書で使用される場合、「FcRn結合部位」は、FcRnに結合するFcポリペプチドの領域を指す。ヒトIgGでは、FcRn結合部位は、EUインデックスを使用して番号付けされるように、T250、L251、M252、I253、S254、R255、T256、T307、E380、M428、H433、N434、H435、及びY436を含む。これらの位置は、配列番号:8の20~26、77、150、198、及び203~206位に対応する。
【0422】
本明細書で使用される場合、「天然FcRn結合部位」は、FcRnに結合し、FcRnに結合する天然に存在するFcポリペプチドの領域と同じアミノ酸配列を有するFcポリペプチドの領域を指す。
【0423】
「CH3ドメイン」及び「CH2ドメイン」という用語は、本明細書で使用される場合、免疫グロブリン定常領域ドメインポリペプチドを指す。本出願の目的のために、CH3ドメインポリペプチドは、EUによって番号付けされるような341位付近~447位付近のアミノ酸のセグメントを指し、CH2ドメインポリペプチドは、EU番号付けスキームによって番号付けされるような231位付近~340位付近のアミノ酸のセグメントを指し、ヒンジ領域配列を含まない。CH2及びCH3ドメインポリペプチドはまた、IMGT(ImMunoGeneTics)Scientificチャート番号付け(IMGTウェブサイト)によると、CH2ドメインの番号付けが1~110であり、CH3ドメインの番号付けが1~107であるIMGT番号付けスキームによって番号付けされてもよい。CH2及びCH3ドメインは、免疫グロブリンのFc領域の一部である。Fc領域は、EU番号付けスキームによって番号付けされるような231位付近~447位付近のアミノ酸のセグメントを指すが、本明細書で使用される場合、抗体のヒンジ領域の少なくとも一部を含み得る。例示的なヒンジ領域配列は、ヒトIgG1ヒンジ配列のEPKSCDKTHTCPPCP(配列番号:12)である。
【0424】
「天然に存在する」、「天然」または「野生型」は、人工的に生成されるものとは異なるものとして天然に見られ得る対象物について記載するために使用される。例えば、生物(ウイルスを含む)中に存在するヌクレオチド配列は、天然源から単離され得るが、実験室において意図的に改変されていないものであり、すなわち、天然に存在する。さらに、「野生型」は、正常遺伝子、または任意の既知の変異を含まない天然に見られる生物を指す。例えば、CH3またはCH2ドメインに関する「野生型」、「天然」、及び「天然に存在する」という用語は、天然に存在する配列を有するドメインを指すために本明細書で使用される。
【0425】
本明細書で使用される場合、変異体ポリペプチドまたは変異体ポリヌクレオチドに関する「変異体」という用語は、「バリアント」と交換可能に使用される。所与の野生型CH3またはCH2ドメイン参照配列に関するバリアントは、天然に存在する対立遺伝子バリアントを含み得る。天然に「存在しない」CH3またはCH2ドメインは、自然界で細胞中には存在せず、遺伝子改変によって、例えば、遺伝子工学技術または変異誘発技術を使用して作製される、天然CH3ドメインまたはCH2ドメインポリヌクレオチドまたはポリペプチドのバリアントまたは変異体ドメインを指す。「バリアント」は、野生型に対して少なくとも1つのアミノ酸変異を含む任意のドメインを含む。変異は、置換、挿入、及び欠失を含んでよい。
【0426】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸に加えて、天然に存在するアミノ酸に類似した方法で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体を指す。
【0427】
天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるようなものに加えて、後で修飾されるようなアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸及びO-ホスホセリンである。「アミノ酸類似体」は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合しているα炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのような類似体は、修飾R基を有する(例えば、ノルロイシン)か、または修飾ペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。「アミノ酸模倣体」は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸に類似した方法で機能する化学化合物を指す。
【0428】
天然に存在するα-アミノ酸としては、アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。天然に存在するα-アミノ酸の立体異性体としては、D-アラニン(D-Ala)、D-システイン(D-Cys)、D-アスパラギン酸(D-Asp)、D-グルタミン酸(D-Glu)、D-フェニルアラニン(D-Phe)、D-ヒスチジン(D-His)、D-イソロイシン(D-Ile)、D-アルギニン(D-Arg)、D-リジン(D-Lys)、D-ロイシン(D-Leu)、D-メチオニン(D-Met)、D-アスパラギン(D-Asn)、D-プロリン(D-Pro)、D-グルタミン(D-Gln)、D-セリン(D-Ser)、D-スレオニン(D-Thr)、D-バリン(D-Val)、D-トリプトファン(D-Trp)、D-チロシン(D-Tyr)、及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0429】
アミノ酸は、それらの一般に既知の3文字の記号によって、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される1文字の記号によるいずれかで本明細書において称される場合がある。
【0430】
「ポリペプチド」及び「ペプチド」という用語は、一本鎖のアミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書では交換可能に使用される。本用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の化学的人工模倣体であるアミノ酸ポリマーに加えて、天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。アミノ酸ポリマーは、全てがL-アミノ酸のもの、全てがD-アミノ酸のもの、またはLアミノ酸及びDアミノ酸の混合物を含んでよい。
【0431】
「タンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリペプチドまたは一本鎖ポリペプチドの二量体(すなわち、2つ)もしくは多量体(すなわち、3つ以上)のいずれかを指す。タンパク質の一本鎖ポリペプチドは、共有結合、例えば、ジスルフィド結合、または非共有結合性相互作用によって連結されてよい。
【0432】
「保存的置換」、「保存的変異」、または「保存的修飾バリアント」という用語は、アミノ酸と、類似した特徴を有すると分類され得る別のアミノ酸との置換をもたらす変化を指す。このようにして定義される保存的アミノ酸群の分類例としては、Glu(グルタミン酸またはE)、Asp(アスパラギン酸またはD)、Asn(アスパラギンまたはN)、Gln(グルタミンまたはQ)、Lys(リジンまたはK)、Arg(アルギニンまたはR)、及びHis(ヒスチジンまたはH)を含む「荷電/極性群」、Phe(フェニルアラニンまたはF)、Tyr(チロシンまたはY)、Trp(トリプトファンまたはW)、及びHis(ヒスチジンまたはH)を含む「芳香族群」、ならびにGly(グリシンまたはG)、Ala(アラニンまたはA)、Val(バリンまたはV)、Leu(ロイシンまたはL)、Ile(イソロイシンまたはI)、Met(メチオニンまたはM)、Ser(セリンまたはS)、Thr(スレオニンまたはT)、及びCys(システインまたはC)を含む「脂肪族群」が挙げられ得る。各群内では、サブグループも確認され得る。例えば、荷電または極性アミノ酸の群は、Lys、Arg及びHisを含む「正荷電サブグループ」、Glu及びAspを含む「負荷電サブグループ」、ならびにAsn及びGlnを含む「極性サブグループ」を含むサブグループに細分化され得る。別の例では、芳香族または環状群は、Pro、His及びTrpを含む「窒素環サブグループ」、ならびにPhe及びTyrを含む「フェニルサブグループ」を含むサブグループに細分化され得る。さらに別の例では、脂肪族群は、サブグループ、例えば、Val、Leu、Gly、及びAlaを含む「脂肪族非極性サブグループ」、ならびにMet、Ser、Thr、及びCysを含む「わずかに極性のある脂肪族サブグループ」に細分化され得る。保存的変異の分類例としては、上記サブグループ内のアミノ酸のアミノ酸置換、例えば、これらに限定されないが、正電荷が維持され得るように、ArgからLysへの置換または逆もまた同様、負電荷が維持され得るように、AspからGluへの置換または逆もまた同様、遊離-OHが維持され得るように、ThrからSerへの置換または逆もまた同様、及び遊離-NH2が維持され得るように、AsnからGlnへの置換または逆もまた同様などが挙げられる。いくつかの実施形態では、疎水性アミノ酸は、疎水性を維持するために、例えば、活性部位の天然に存在する疎水性アミノ酸と置換される。
【0433】
「同一の」または「同一性」パーセントという用語は、2つ以上のポリペプチド配列との関連において、配列比較アルゴリズムを使用して、または手動アラインメント及び目視検査によって測定される場合に同じか、または比較され、かつ比較ウィンドウ、もしくは指定の領域に対して最も対応するようにアラインメントされる場合に、特定の領域に対して同一であるアミノ酸残基の特定のパーセンテージ、例えば、少なくとも60%の同一性、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%以上を有する2つ以上の配列または部分配列を指す。
【0434】
ポリペプチドの配列比較については、典型的には、1つのアミノ酸配列が参照配列として機能し、それが候補配列と比較される。アラインメントは、当業者に利用可能な様々な方法、例えば、視覚的アラインメントを使用して、または既知のアルゴリズムを使用して最大アラインメントを達成する公的に入手可能なソフトウェアを使用して実施され得る。そのようなプログラムとしては、BLASTプログラム、ALIGN、ALIGN-2(Genentech、South San Francisco,Calif.)またはMegalign(DNASTAR)が挙げられる。最大アラインメントを達成するためにアラインメントに用いられるパラメータは、当業者によって決定され得る。本出願のためのポリペプチド配列の配列比較については、デフォルトパラメータを用いて2つのタンパク質配列をアラインメントするための、BLASTPアルゴリズムの標準タンパク質BLASTが使用される。
【0435】
ポリペプチド配列中における所与のアミノ酸残基の同定に関して使用される場合、「に対応する」、「を参照して決定される」、または「を参照して番号付けされる」という用語は、所与のアミノ酸配列が参照配列と最大限にアラインメントされ、それと比較される場合に特定の参照配列の残基の位置を指す。したがって、例えば、修飾Fcポリペプチド中のアミノ酸残基は、その残基が配列番号:8のアミノ酸とアラインメントする際に、配列番号:8に最適にアラインメントされる場合、配列番号:8のアミノ酸「に対応する」。参照配列にアラインメントされるポリペプチドは、参照配列と同じ長さである必要はない。
【0436】
「結合親和性」は、本明細書で使用される場合、2つの分子、例えば、ポリペプチド上の単一の結合部位と、それが結合する標的、例えば、トランスフェリン受容体との間の非共有結合性相互作用の強さを指す。したがって、例えば、本用語は、別段の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、ポリペプチドとその標的との間の1:1相互作用を指してよい。結合親和性は、平衡解離定数(KD)を測定することによって定量化されてよく、これは結合速度定数(ka、時間-1M-1)で除された解離速度定数(kd、時間-1)を指す。KDは、複合体形成及び解離の動態の測定、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)法、例えば、Biacore(商標)システム、KinExA(登録商標)などの結合平衡除外法、及びBioLayer干渉法(例えば、ForteBio(登録商標)Octet(登録商標)プラットフォームを使用する)を使用することによって決定され得る。本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、正式な結合親和性、例えば、ポリペプチドとその標的との間の1:1相互作用を反映するものなどだけでなく、強力な結合を反映する可能性のあるKDが算出される見かけの親和性も含む。
【0437】
本明細書で使用される場合、標的、例えば、TfRに「特異的に結合する」または「選択的に結合する」という用語は、本明細書に記載されるような操作されたTfR結合ポリペプチドまたはTfR結合ペプチドを指す場合、操作されたTfR結合ポリペプチドまたはTfR結合ペプチドは、それが構造的に異なる標的に結合するよりも、より高い親和性、より高いアビディティ、及び/またはより長い持続時間で標的に結合する結合反応を指す。典型的な実施形態では、操作されたTfR結合ポリペプチドまたはTfR結合ペプチドは、同じ親和性アッセイ条件下でアッセイされる場合に無関係な標的と比較して、特定の標的、例えば、TfRに対して少なくとも5倍、10倍、50倍、100倍、1,000倍、10,000倍の、またはそれを超える親和性を有する。特定の標的(例えば、TfR)「との特異的結合」、「に特異的に結合する」、または「に特異的である」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、分子が結合する標的に対して、例えば、10-4M以下、例えば、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12Mの平衡解離定数KDを有する分子によって示され得る。いくつかの実施形態では、操作されたTfR結合ポリペプチドまたはTfR結合ペプチドは、種間で保存された(例えば、種間で構造的に保存された)、例えば、非ヒト霊長類種とヒト種との間で保存された(例えば、非ヒト霊長類種とヒト種との間で構造的に保存された)TfR上のエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、操作されたTfR結合ポリペプチドまたはTfR結合ペプチドは、もっぱらヒトTfRに結合する可能性がある。
【0438】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、生殖細胞系可変(V)遺伝子、多様性(D)遺伝子、または結合(J)遺伝子に由来し(定常(Cμ及びCδ)遺伝子セグメントには由来せず)、かつ抗原への結合に対するその特異性を抗体に付与する抗体重鎖または軽鎖におけるドメインを指す。典型的には、抗体可変領域は、3つの超可変「相補性決定領域」が点在している4つの保存「フレームワーク」領域を含む。
【0439】
「抗原結合部分」及び「抗原結合断片」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、抗体の可変領域によって抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。抗原結合断片の例としては、Fab断片(VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価断片)、F(ab’)2断片(ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結される2つのFab断片を含む二価断片)、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、相補性決定領域(CDR)、VL(軽鎖可変領域)、ならびにVH(重鎖可変領域)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0440】
本明細書で使用される場合、「希釈剤」という用語は、再構成製剤の調製に有用な薬学的に許容される(例えば、ヒトへの投与に対して安全かつ非毒性の)希釈物質を指す。例示的な希釈剤としては、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンゲル液またはデキストロース溶液が挙げられる。
【0441】
本明細書で使用される場合、「凍結乾燥保護剤」という用語は、凍結乾燥及びその後の保管時にタンパク質または他の物質の化学的及び/または物理的不安定性を防止する、または減少させる分子を指す。例示的な凍結乾燥保護剤としては、糖、例えば、スクロースまたはトレハロースなど、アミノ酸、例えば、グルタミン酸モノナトリウムまたはヒスチジンなど、メチルアミン、例えば、ベタインなど、リオトロピック塩、例えば、硫酸マグネシウムなど、ポリオール、例えば、3価または高級糖アルコール、例えば、グリセリン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトールなど、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、Pluronics、ならびにこれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、凍結乾燥保護剤は、非還元糖、例えば、トレハロースまたはスクロースなどである。
【0442】
本明細書で使用される場合、「可溶性」という用語は、均一な溶液を形成する治療剤の能力を指す。いくつかの実施形態では、治療剤が投与され、それによって標的作用部位(例えば、脳の細胞及び組織)に輸送される溶液中の治療剤の溶解度は、治療有効量の治療剤を標的作用部位に送達することを可能にするのに十分である。いくつかの要因が治療剤の溶解度に影響を与え得る。例えば、タンパク質の溶解度に影響を与える可能性がある関連要因としては、イオン強度、アミノ酸配列及び他の共可溶化剤または塩(例えば、カルシウム塩)の存在が挙げられる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、カルシウム塩がそのような組成物から除外されるように製剤化される。いくつかの実施形態では、治療剤は、その対応する医薬組成物に可溶である。
【0443】
本明細書で使用される場合、「安定した」という用語は、治療剤(例えば、IDS-Fc融合ポリペプチドを含むETV:IDSタンパク質分子)が、その治療有効性(例えば、その意図される生物活性及び/または生理化学的整合性の全てまたは大部分)を長期間にわたって維持する能力を指す。治療剤の安定性、及びそのような治療剤の安定性を維持するための医薬組成物の能力は、長期間にわたって(例えば、少なくとも1、2、3もしくは4週間の間、または1、3、6、12、18、24、30、36か月以上の間)評価されてよい。一般に、本明細書に記載される医薬組成物は、それらが、共に製剤化される1つ以上の治療剤(例えば、組換えタンパク質)を安定化できるか、または代わりにその劣化を遅延もしくは防止できるように製剤化されている。製剤との関連において、安定した製剤は、その中の治療剤が、保存時に、ならびにプロセス(凍結/解凍、機械的混合及び凍結乾燥など)中にその物理的及び/または化学的整合性ならびに生物活性を本質的に保持する製剤である。タンパク質安定性については、例えば、高分子量(HMW)凝集体の形成、低分子量粒子の形成(クリッピングを表す)、酵素活性の喪失、ペプチド断片の生成、電荷プロファイルのシフトまたは実施例に記載される他の要因によって測定され得る。
【0444】
以下の実施例は、非限定的であることを意図する。
【0445】
実施例1:IDSを含む融合タンパク質の構築。
設計及びクローニング
IDS-Fc融合タンパク質を、(i)成熟したヒトIDS酵素を、Fc領域を含むヒトIgG1断片に融合した融合ポリペプチド(「IDS-Fc融合ポリペプチド」)、及び(ii)Fc領域中に、トランスフェリン受容体(TfR)結合を付与する変異を含有する修飾ヒトIgG1断片(「修飾Fcポリペプチド」)を含有するように設計した。特に、IDS断片をヒトIgG1 Fc領域のN末端またはC末端のいずれかに融合したIDS-Fc融合ポリペプチドを作製した。いくつかの場合には、IDS断片とIgG1断片との間にリンカーを配置し、2つの断片間のあらゆる立体障害を軽減した。全ての構築物で、カッパ鎖V-III、アミノ酸1~20のシグナルペプチド(UniProtKB ID-P01661)を、融合体の上流に挿入して分泌を促進し、IDSを切断してアミノ酸S26~P550(UniProtKB ID-P22304)で構成した。使用したヒトIgG1 Fc領域の断片は、UniProtKB ID P01857の配列のアミノ酸D104~K330(221~447位、EU番号付け、これはヒンジの10アミノ酸(221~230位)を含む)に対応する。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1残基D104~K330に由来するが、IDS融合を欠いている別のFcポリペプチドを、1つのIDS酵素(「モノザイム」)を有するヘテロ二量体融合タンパク質を生成するために、IDS-Fc融合ポリペプチドと共トランスフェクトした。一部の構築物では、IgG1断片が追加の変異を含有し、2つのFc領域のヘテロ二量体化を促進した。TfR結合を付与する変異を欠いている対照IDS-Fc融合タンパク質を同様に設計かつ構築したが、これらのタンパク質がTfR結合を付与する変異を欠いているという点で異なっていた。追加の対照として、C末端ヘキサヒスチジンタグ(配列番号:38)を有するIDSポリペプチド(アミノ酸S26~P550)を生成し、検出及び精製を容易にした。
【0446】
TfR結合タンパク質分子は、IDS-Fc融合ポリペプチド及びTfRに結合する修飾Fcポリペプチドによって形成される二量体である。IDS酵素がFc領域のN末端に連結される二量体の場合、IDS-Fc融合ポリペプチドは、配列番号:4、5及び24のうちいずれか1つの配列を有する場合がある。これらの配列では、IDS配列に下線が引かれ、配列は59位にホルミルグリシンに改変したシステイン(二重下線付き)を含有する。IDSを、GGGGSリンカー(配列番号:36)によってFcポリペプチドに連結した。IgG1ヒンジ領域の一部(DKTHTCPPCP、配列番号:22)を、FcポリペプチドのN末端に含んだ。CH2ドメイン配列は、配列番号:4、5及び24の541位から始まる。
【0447】
IDS-Fc融合タンパク質のETV:IDS 35.21は、配列番号:4、5及び24のうちいずれか1つの配列を有するIDS-Fc融合ポリペプチドならびに配列番号:25の配列を有する、TfRに結合する修飾Fcポリペプチドによって形成される二量体である。IDS-Fc融合タンパク質のETV:IDS 35.21を、IDS-Fc融合ポリペプチドが、配列番号:39、40及び43のうちいずれか1つの配列を有し、及び/またはTfRに結合する修飾Fcポリペプチドが、配列番号:44の配列を有するように、細胞培養作製中にさらに処理してもよい。したがって、本明細書で使用する場合、ETV:IDS 35.21という用語を、未処理の配列(すなわち、配列番号:4、5、24及び25)を有するタンパク質分子、1つ以上の処理配列(すなわち、配列番号:39、40、43及び44から選択される)を含むタンパク質分子、または処理及び未処理のタンパク質分子を含む混合物を指すために使用する場合がある。最初の10アミノ酸は、IgG1ヒンジ領域の一部である。CH2ドメイン配列は、それぞれ配列番号:25及び44の11位から始まる。
【0448】
IDS-Fc融合タンパク質のETV:IDS 35.21.17.2は、配列番号:4、5及び24のうちいずれか1つの配列を有するIDS-Fc融合ポリペプチドならびに配列番号:30の配列を有する、TfRに結合する修飾Fcポリペプチドによって形成される二量体である。IDS-Fc融合タンパク質のETV:IDS 35.21.17.2を、IDS-Fc融合ポリペプチドが、配列番号:39、40及び43のうちいずれか1つの配列を有し、及び/またはTfRに結合する修飾Fcポリペプチドが、配列番号:49の配列を有するように、細胞培養作製中にさらに処理してもよい。したがって、本明細書で使用する場合、ETV:IDS 35.21.17.2という用語を、未処理の配列(すなわち、配列番号:4、5、24及び30)を有するタンパク質分子、1つ以上の処理配列(すなわち、配列番号:39、40、43及び49から選択される)を含むタンパク質分子、または処理及び未処理のタンパク質分子を含む混合物を指すために使用する場合がある。最初の10アミノ酸は、IgG1ヒンジ領域の一部である。CH2ドメイン配列は、それぞれ配列番号:30及び49の11位から始まる。
【0449】
IDS-Fc融合タンパク質のETV:IDS 35.23.2は、配列番号:4、5及び24のうちいずれか1つの配列を有するIDS-Fc融合ポリペプチドならびに配列番号:7の配列を有する、TfRに結合する修飾Fcポリペプチドによって形成される二量体である。IDS-Fc融合タンパク質のETV:IDS 35.23.2を、IDS-Fc融合ポリペプチドが、配列番号:39、40及び43のうちいずれか1つの配列を有し、及び/またはTfRに結合する修飾Fcポリペプチドが、配列番号:42の配列を有するように、細胞培養作製中にさらに処理してもよい。したがって、本明細書で使用する場合、ETV:IDS 35.23.2という用語を、未処理の配列(すなわち、配列番号:4、5、24及び7)を有するタンパク質分子、1つ以上の処理配列(すなわち、配列番号:39、40、43及び42から選択される)を含むタンパク質分子、または処理及び未処理のタンパク質分子を含む混合物を指すために使用する場合がある。最初の10アミノ酸は、IgG1ヒンジ領域の一部である。CH2ドメイン配列は、それぞれ配列番号:7及び42の11位から始まる。
【0450】
IDS-Fc融合タンパク質のETV:IDS 35.21.17は、配列番号:4、5及び24のうちいずれか1つの配列を有するIDS-Fc融合ポリペプチドならびに配列番号:6の配列を有する、TfRに結合する修飾Fcポリペプチドによって形成される二量体である。IDS-Fc融合タンパク質のETV:IDS 35.21.17を、IDS-Fc融合ポリペプチドが、配列番号:39、40及び43のうちいずれか1つの配列を有し、及び/またはTfRに結合する修飾Fcポリペプチドが、配列番号:41の配列を有するように、細胞培養作製中にさらに処理してもよい。したがって、本明細書で使用する場合、ETV:IDS 35.21.17という用語を、未処理の配列(すなわち、配列番号:4、5、24及び6)を有するタンパク質分子、1つ以上の処理配列(すなわち、配列番号:39、40、43及び41から選択される)を含むタンパク質分子、または処理及び未処理のタンパク質分子を含む混合物を指すために使用する場合がある。修飾FcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、配列番号:22)を含む場合がある。
【0451】
タンパク質発現及び精製
Fc領域に融合した組換えIDS酵素を発現させるために、ExpiCHO細胞(Thermo Fisher Scientific)を、Expifectamine(商標)CHOトランスフェクションキットを製造業者の指示(Thermo Fisher Scientific)に従って使用し、関連するDNA構築物でトランスフェクトした。細胞を、オービタルシェーカー(Infors HT Multitron)内で、ExpiCHO(商標)Expression Medium中において37℃、6%CO2及び120rpmで増殖させた。簡潔に述べると、対数増殖するExpiCHO(商標)細胞を、1mLの培養液量あたり0.8μgのDNAプラスミドを用いて6×106細胞/ml密度でトランスフェクトした。トランスフェクション後、細胞を37℃に戻し、トランスフェクションの18~22時間後に示したようにトランスフェクトした培養液にフィード培地を補充した。トランスフェクトした細胞培養上清を、トランスフェクションの120時間後に3,500rpmで20分間、遠心分離することによって回収した。清澄した上清を濾過し(0.22μM膜)、4℃で保存した。エピトープタグ付きIDS酵素(対照として使用した)の発現を、わずかな変更を加えて上記の通りに実施した。簡潔に述べると、C末端ヘキサヒスチジンタグ(配列番号:38)を持つIDS酵素を、ExpiCHO細胞中で発現させた。
【0452】
TfR結合を付与する操作したFc領域を含む(または含まない)IDS-Fc融合タンパク質を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して細胞培養上清から精製した。上清を、HiTrap MabSelect SuReプロテインAアフィニティーカラム(GE Healthcare Life Sciences、Akta Pure Systemを使用する)上にロードした。次いで、カラムを>20カラム体積(CV)のPBSで洗浄した。結合したタンパク質を、150mM NaClを含有する100mMクエン酸/NaOH緩衝液(pH3.0)を使用して溶出した。溶出直後に画分を、1Mアルギニン-670mMコハク酸緩衝液(pH5.0)を(1:5希釈で)使用して中和した。溶出画分におけるIDS-Fc融合タンパク質の均一性を、還元及び非還元SDS-PAGEによって評価した。
【0453】
ヘキサヒスタジンタグ付き(配列番号:38)IDS酵素を精製するために、トランスフェクトした上清を、100mM NaClを含有する15Lの20mM HEPES(pH7.4)に対して一晩、徹底的に透析した。透析した上清を、HisTrapカラム(GE Healthcare Life Sciences、Akta Pure Systemを使用する)に結合させた。結合後、カラムを20CVのPBSで洗浄した。結合したタンパク質を、500mMイミダゾールを含有するPBSを使用して溶出した。溶出画分におけるIDS酵素の均一性を、還元及び非還元SDS-PAGEによって評価した。IDS酵素を含有するプールした画分を、50mM Tris(pH7.5)中で1:10に希釈し、Q Sepharose High Performance(GE Healthcare)を使用してさらに精製した。結合後、カラムを10CVの50mM Tris(pH7.5)で洗浄した。結合したタンパク質を、50mM Tris(pH7.5)及び0.5M NaClに対するリニアグラジエントを使用して溶出し、1CV画分に収集した。画分の純度を非還元SDS-PAGEによって評価した。精製によって、均一なIDS-Fc融合タンパク質及びヘキサヒスチジンタグ付き(配列番号:38)IDS酵素が生成された。
【0454】
組換えIDS-Fc融合タンパク質も、安定した細胞株プールによって生成した。簡潔に述べると、関連するDNA構築物によるCHOK1SV GS-KO(商標)細胞(Lonza Biologics PLC)のトランスフェクションによって生成した安定した細胞株を、10Lの攪拌槽型バイオリアクター内で増殖培地中において培養した。細胞培養培地を播種の2週間後に回収し、プロテインAクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、及び限外濾過/透析濾過を含む3ステッププロセスで精製してから2~8℃で保存した。
【0455】
実施例2:製剤開発及び評価。
以下の製剤及び条件を、以下に記載したように評価した。表2.1に示すように、市販の比較物であるElaprase(試験緩衝液番号1)の緩衝液を含む、様々な緩衝液成分を試験した。別段の指示がない限り、10mg/mLの代表的なETV:IDSタンパク質(ETV:IDS 35.23.2、実施例1)を使用して各試験緩衝液を評価した。
【表2-1A】
【表2-1B】
【0456】
以下に記載したように、以下の特性を評価した:1)動的光散乱(DLS)によって測定した、拡散相互作用パラメータkDによって示されるようなコロイド安定性、ならびに2)示差走査蛍光定量法(DSF)及び静的光散乱(SLS)によって測定した、Ton及びTaggによって示されるような立体構造安定性。
【0457】
試験緩衝液の評価
コロイド安定性(DLS)の測定
ETV:IDSタンパク質分子の希釈系列を、10mg/mLから開始して調製した(10、8、6、5、4、3、2mg/mL)。DLSシグナルを、Wyatt DynaPro Plate Reader IIを使用して測定した。kD値及び標準偏差を線形回帰後に算出した。正のkD値は、タンパク質分子間の反発力(すなわち、溶解度の増加)を示すのに対して、負のkD値は、引力(すなわち、凝集の増加)を示している。反発力はコロイド安定性の増加と相関するため、有利となる。表2.2に示すように、試験緩衝液番号3及び6のkD値が最も高く、これらの緩衝液がコロイド安定性に有利であることを示していた。
【表2-2】
【0458】
立体構造安定性の測定(DSF/SLS)
ETV:IDSタンパク質分子を、5mg/mL、9μlの試料体積で試験した。サーマルランプは15~95℃で、加熱速度は0.33℃/分であった。TmはDSFによって決定し、TaggはSLSによって決定した。
【0459】
以下の表2.3に示すように、試験緩衝液5(His-HCl、pH5.0)は、他の緩衝液よりも有意に低いTm1を示した。他の緩衝液は、同等の立体構造安定性挙動を示した。
【表2-3A】
【表2-3B】
【0460】
ETV:IDSタンパク質分子とTfRとの間の結合速度も、様々な試験緩衝液中で評価した。緩衝液条件全体で有意な変化は観察しなかった。
【0461】
要約すると、表2.2に示すように、ETV:IDSタンパク質分子のコロイド安定性は、より高いpHの緩衝液6.5及び7.0(わずかに正のkD値)で改善したことを見出した。タンパク質分子は一般に、良好な立体構造安定性を示したが、より低いpH(約pH5.0)では大幅に損なわれることを見出した(表2.3)。それ以外の場合、立体構造安定性は、pH6.0~7.0の低い範囲の緩衝液タイプから大きな影響を受けることはなかった。コロイド及び立体構造安定性挙動に基づいて、6.0~7.0のpH範囲がタンパク質分子に有利であると思われる。
【0462】
低pH及び高pH条件の評価
製剤開発にさらに情報を提供するために、ETV:IDSタンパク質分子を、強制劣化条件下で低pH及び高pHの様々な試験緩衝液中で評価した。各評価に使用した試料説明及び手法を、以下の表2.4にまとめる。
【表2-4A】
【表2-4B】
【0463】
SECアッセイ
タンパク質分子を、時間0、2日目及び5日目に様々なpH条件でSECによって評価した(表2.5を参照のこと)。対照は、20mMリン酸ナトリウム(pH6)のタンパク質を指す。
【0464】
表2.5に示すように、凝集体はストレスをかけた全ての試料においてpH依存的様式で増加し、pH4及びpH8で最高の凝集体レベルを観察した。しかしながら、pH7でもわずかな凝集の増加を観察した。以下の表では、HMWは高分子量含有量を示し、LMWは低分子量含有量を示している。
【表2-5A】
【表2-5B】
【0465】
RP-HPLCアッセイ
RP-HPLCを使用して、非還元試料中におけるETV:IDSタンパク質分子の強制クリッピング及び酸化を評価した。以下の表2.6にまとめたように、ストレスをかけた試料中で有意な断片化を観察したが、対照(20mMリン酸ナトリウム(pH6)中のタンパク質)は安定したままであった。クリッピングも、ストレスをかけた非還元試料中で観察し、これは酸化に関連している可能性がある。特に、pH4でのクリッピングのストレス条件は、メインピークの大幅な減少をもたらし、酸化ストレス条件では、メインピークの温度依存的減少を観察した。還元試料では、低pHでの大幅な断片化の知見を確認した(データは示さず)。
【表2-6A】
【表2-6B】
【0466】
Caliperアッセイ
Caliper試料を使用して、ETV:IDSタンパク質分子の強制クリッピングを評価した。非還元試料の結果は、タンパク質分子がストレス条件下(40℃)においてクリッピングに対して感度が高く、タンパク質は50mM酢酸(pH4)中で5日後に完全に分解されたことを示した(表2.7)。対照を、20mMリン酸ナトリウム(pH6)中のETV:IDSタンパク質で構成した。還元試料の結果は、分子の断片化が生じていたことを示した。
【表2-7】
【0467】
要約すると、タンパク質分子に関する強制劣化ストレスパネルは、1)低pHでのクリッピングにはリスクが高いこと、2)有意なpH依存的凝集、及び3)酸化しやすい可能性を示している。
【0468】
実施例3:保存条件の評価
pH/緩衝液スクリーニングを、pH範囲5.5~6.5の3つの緩衝系で実施した。代表的なETV:IDSタンパク質(ETV:IDS 35.23.2、実施例1)の濃度を10mg/mLで試験した。試験した緩衝液のマトリックス及び特定の製剤を、それぞれ表3.1及び3.2に示す。関連する保存条件を表3.3に示す。試料を以下の通りに評価した:1)透明度/乳光、2)pH、3)サイズ排除(SE)-HPLC、4)CE-SDS(Caliper)、及び5)RP-HPLC。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3A】
【表3-3B】
【0469】
pH評価
様々な製剤のpHに対する保存条件の影響を評価した。表3.4及び3.5に示すように、試験した条件下では、有意なpH偏差は観察しなかった。
【表3-4】
【表3-5】
【0470】
濁度分析
濁度に対する様々な保存条件の影響を、製剤の各々について評価した。試験したほとんどの系で濁度は低く、かつ安定していたが、しかしながら、40℃の保存条件ではpH5.5(表3.6)の緩衝系で濁度が増加した。
【表3-6】
【0471】
SE-HPLC分析
SE-HPLCを使用して、ETV:IDSタンパク質分子の強制クリッピングを評価した(表3.7)。ETV:IDSタンパク質分子自体を、2~8℃で製剤F1~F8と比較するためのベースラインとして使用した。
【0472】
F1及びF2の緩衝系を比較することによって示されるように、NaCl濃度の上昇による影響は観察しなかった。より高いLMW(クリッピング)を、25℃及び40℃(例えば、F2及びF3の緩衝系)の両方でリン酸緩衝系のpH6.5と比較してpH6で観察した。さらに、pH依存的クリッピング効果を、F4、F5、及びF6に対してHis-HCl緩衝系で観察した(試験したより高いpH値では、より低いクリッピングを観察した)。同様に、F8に対してF7を比較すると、Na-酢酸緩衝系ではより低いpHで高いLMWレベルを観察した。HMW種に対するわずかなpH依存性を、2週間にわたって40℃で観察するが、2~8℃及び25℃では2週間にわたって観察していない。全体として、より高いpH(6.5)はタンパク質分子にとってより良好な条件を提供し、F6及びF3緩衝系は最も良好な結果をもたらすと思われる。
【表3-7A】
【表3-7B】
【表3-7C】
【0473】
CE-SDS(Caliper)分析
CE-SDS(Caliper)を使用して、還元及び非還元試料中におけるETV:IDSタンパク質分子の安定性を評価した。
【0474】
非還元試料の場合、タンパク質分子はより高いpHでより安定していると思われ、F3及びF6緩衝系が最も良好な結果をもたらす(表3.8)。還元試料の場合、種IDS-Fc融合ポリペプチドのpH依存的劣化(A1%で示される)を観察した(表3.8)。
【表3-8A】
【表3-8B】
【0475】
RP-HPLCアッセイ
RP-HPLCを使用して、非還元及び還元試料中におけるETV:IDSタンパク質分子を評価した(表3.9)。種A1はIDS-Fc融合ポリペプチドを指し、A2は修飾Fcポリペプチドを指す。
【0476】
以下の表3.9に示すように、タンパク質は2~8℃の全ての緩衝系で安定している。メインピークのpH依存的減少及びプレピークの増加は、クリッピングが生じていることを示している。IDS-Fc融合ポリペプチド(A1)の減少を、より低いpHで観察する。F3及びF6緩衝系は、分子の安定性を維持するための最適な環境を示していると思われる。
【表3-9A】
【表3-9B】
【表3-9C】
【表3-9D】
【0477】
実施例4:界面活性剤スクリーニング
界面活性剤スクリーニングを、20mMリン酸ナトリウム、50mM NaCl、及びpH6.5を有する緩衝系を使用して実施した。代表的なETV:IDSタンパク質(ETV:IDS 35.23.2、実施例1)の濃度を30mg/mLで試験した。表4.1に示すように、試験した界面活性剤は、様々な濃度のポリソルベート20(PS-20)及びポリソルベート80(PS-80)であった。
【表4-1】
【0478】
これらの製剤を、振盪ストレス(2~8℃及び周囲温度、5日間、200RPMで水平振盪)ならびに凍結/解凍(25℃~≦-65℃の間で変動しながら5回の連続サイクル)に供した(それぞれ表4.2及び4.3)。試料を以下の通りに評価した:1)透明度/乳光、2)可視粒子、3)非可視粒子、4)SE-HPLC、5)CE-SDS(Caliper)、及び6)界面活性剤含有量。
【表4-2】
【表4-3】
【0479】
可視粒子及び濁度
製剤F1~F4を、ストレス後の粒子形成(可視及び非可視)ならびに濁度について評価した。表4.4に示すように、ストレスパネルでは可視粒子の形成を観察しなかった。加えて、表4.5に示すように、振盪試験または凍結-解凍試験のいずれにおいても、非可視粒子では有意差を観察しなかった。最後に、濁度はストレス後の試料で未変化のままであった(表4.6)。
【表4-4】
【表4-5A】
【表4-5B】
【表4-6】
【0480】
SE-HPLC分析
SE-HPLCを使用して、攪拌及び凍結解凍ストレス後のETV:IDSタンパク質分子の安定性を評価した。
【0481】
全ての製剤が、SECによって振盪ストレスで良好な安定性を示し、PS-80よりもPS-20でわずかに良好な安定化特性を観察した(表4.7)。
【表4-7A】
【表4-7B】
【0482】
CE-SDS(Caliper)分析
CE-SDS(Caliper)を使用して、還元及び非還元試料中におけるETV:IDSタンパク質分子の安定性を評価した。
【0483】
表4.8に示すように、タンパク質分子は全てのストレス試験で安定していると思われる。インタクトな(非還元)試料に加えて、断片の合計(A1=IDS-Fc融合ポリペプチド、A2=修飾Fcポリペプチド)の両方で安定した値を観察した。
【表4-8A】
【表4-8B】
【0484】
ある特定の実施形態では、界面活性剤の量は、製剤中のタンパク質の安定性に影響を与えることなく、最大で、例えば、1mg/mL(例えば、約0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mL、0.9mg/mL、1.0mg/mL)まで増加できる。
【0485】
実施例5:製剤開発及び凍結乾燥製剤の評価
さらなる製剤評価のために、表5.1に列挙した緩衝系を試験した。凍結乾燥形態も試験した。代表的なETV:IDSタンパク質(ETV:IDS 35.23.2、実施例1)の濃度を20mg/mLで試験した。これらの製剤を、振盪ストレス(室温、5日間、200RPMで水平振盪)及び凍結/解凍ストレス(25℃~≦-65℃の間で変動しながら5回の連続サイクル)に供した。試料を以下の通りに評価した:1)SE-HPLC、2)CE-SDS(Caliper)、及び3)界面活性剤含有量。
【表5-1】
【0486】
SE-HPLC分析
SE-HPLCを使用して、ストレス条件下におけるETV:IDSタンパク質分子の安定性を評価した。
【0487】
高温(40℃)の液体製剤F1~F3で、有意なHMW及びLMW含有量を観察したが、しかしながら、凍結乾燥製剤F4は、全ての保存温度で安定したままであった(表5.2)。全ての製剤で、より低い温度(≦25℃)で最大1か月間同様に実施した。
【表5-2A】
【表5-2B】
【0488】
RP-HPLCアッセイ
RP-HPLCを使用して、非還元及び還元試料中におけるETV:IDSタンパク質分子を評価した。A1はIDS-Fc融合ポリペプチドを指し、A2は修飾Fcポリペプチドを指す。
【0489】
以下の表5.3に示すように、温度を上げると、メインピークの減少に加えて、プレピーク及びポストピークの両方の増加を観察した。
【表5-3A】
【表5-3B】
【0490】
CE-SDS(Caliper)分析
CE-SDS(Caliper)を使用して、還元及び非還元試料中におけるETV:IDSタンパク質分子の安定性を評価した。
【0491】
表5.4に示すように、40℃の保存条件でインタクトな分子の有意な減少を観察した。A1はIDS-Fc融合ポリペプチドに対応し、A2は修飾Fcポリペプチドに対応する。
【表5-4】
【0492】
実施例6:安定性分析
製剤の安定性をさらに評価するために、以下を含有する製剤を、5℃及び40℃で安定性について試験した:ETV:IDSタンパク質濃度=30mg/mL、20mMリン酸ナトリウム、50mM NaCl、175mMスクロース、0.6mg/mLのポリソルベート-20(PS-20)、10mM L-メチオニン、及びpH6.5。この評価で試験したETV:IDSタンパク質をETV:IDS 35.23.2で表し、実施例1に記載している。試料をT=0、T=2週間、及びT=4週間で採取した。試料を以下の通りに評価した:1)可視粒子、2)非可視粒子(例えば、光遮蔽によって)、3)SE-HPLC、及び4)ポリソルベート含有量(FMA、ELSD)。
【0493】
表6.1に示すように、様々な温度/時点では可視粒子の形成を観察しなかった。非可視粒子を、条件全体にわたって一定の低レベルで観察した。サイズ排除クロマトグラフィーの場合、試料は5℃で安定し、HMW含有量の増加及びLMW含有量のわずかな増加を40℃で観察した。ポリソルベート含有量も全ての条件で安定していることを見出した。
【表6-1A】
【表6-1B】
【0494】
実施例7.製剤開発及び評価
ERT酵素-Fc融合ポリペプチド及び修飾Fcポリペプチドを含むタンパク質分子を、実施例2~6のいずれか1つに記載したような製剤に含む場合があり、IDSアミノ酸配列が代替ERTアミノ酸配列で置き換えられている。そのような製剤を、実施例2~6に記載したようなアッセイを使用して評価してよい。
【表A-1】
【表A-2】
【表A-3】
【表A-4】
【表A-5】
【表A-6】
【表A-7】
【表A-8】
【表A-9】
【表A-10】
【表A-11】
【表A-12】
【表A-13】
【表A-14】
【表A-15】
【表A-16】
【表A-17】
【表A-18】
【表A-19】
【表A-20】
【0495】
全ての刊行物、特許、及び特許文献は、参照によって個別に組み込まれたかのように、参照によって本明細書に組み込まれる。本開示は、様々な特定の、かつ好ましい実施形態及び技術に関連して記載されている。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲内に留まりながら、多くの変更及び修正が行われてよいと理解すべきである。
【配列表】
【国際調査報告】