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特表2022-526846レーザビームの焦点位置を決定するための装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-26
(54)【発明の名称】レーザビームの焦点位置を決定するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/046 20140101AFI20220519BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20220519BHJP
【FI】
B23K26/046
B23K26/00 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560006
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(85)【翻訳文提出日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2020055416
(87)【国際公開番号】W WO2020207662
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】102019109795.9
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516234100
【氏名又は名称】プレシテック ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラスケス サンチェス ダビド
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168CA02
4E168CB13
4E168EA02
4E168EA11
4E168EA24
4E168KA17
(57)【要約】
本発明は、レーザビーム、特にレーザ加工ヘッド101の加工レーザビーム102の焦点位置12を決定するための装置81であって、レーザビーム102のビーム経路から部分ビーム51を分離するための光学分離素子814と、部分ビーム51の少なくとも1つのビームパラメータを検出するための検出器811と、調節可能な焦点距離を有し、光学分離素子814と検出器811との間の部分ビーム51のビーム経路の領域に配置された少なくとも1つの光学素子812とを備える装置81に関する。本発明はまた、このタイプの装置81を備えるレーザ加工ヘッド101、およびレーザビーム102の焦点位置12を決定するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工ヘッド(101)の加工レーザビーム(102)の焦点位置を決定するための装置(81)であって、
- 前記加工レーザビーム(102)のビーム経路から部分ビーム(51)を分離するための光学分離素子(814)と、
- 前記部分ビーム(51)の少なくとも1つのビームパラメータを検出するための検出器(811)と、
- 調節可能な焦点距離を有し、前記光学分離素子(814)と前記検出器(811)との間の前記分離された部分ビーム(51)のビーム経路に配置された少なくとも1つの光学素子(812)と
を備えることを特徴とする装置(81)。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(81)であって、前記光学素子(812)の異なる設定焦点距離と、前記部分ビーム(51)の前記少なくとも1つのビームパラメータの対応する値とに基づいて、前記加工レーザビーム(102)の焦点位置を決定するように構成されている評価ユニット(813)をさらに備えることを特徴とする装置(81)。
【請求項3】
請求項2に記載の装置(81)であって、
前記検出器(811)が、前記少なくとも1つの光学素子(812)の異なる設定焦点距離で前記少なくとも1つのビームパラメータの値を検出するように構成され、
前記評価ユニット(813)が、前記少なくとも1つのビームパラメータの極値に対応する前記光学素子(812)の設定焦点距離の値を決定するように構成されていることを特徴とする装置(81)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の装置(81)であって、前記部分ビーム(51)の前記少なくとも1つのビームパラメータが、前記部分ビーム(51)のレーザ強度および/またはビーム直径を含むことを特徴とする装置(81)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の装置(81)であって、調節可能な焦点距離を有する前記少なくとも1つの光学素子(812)が、変形可能な光学素子、変形可能なレンズ、変形可能なミラー、MEMSベースの変形可能なミラー、圧電的に変形可能なミラー、互いに対して回転可能な圧力ベースの変形可能なミラー、複数の光学素子、および/またはモアレレンズ対を含むことを特徴とする装置(81)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の装置(81)であって、調節可能な焦点距離を有する前記少なくとも1つの光学素子(812)が、前記部分ビーム(51)の伝搬方向に対して静止して配置されていることを特徴とする装置(81)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の装置(81)であって、前記光学素子(812)の異なる焦点距離を設定するように構成されている制御ユニットをさらに備えることを特徴とする装置(81)。
【請求項8】
請求項7に記載の装置(81)であって、
調節可能な焦点距離を有する前記少なくとも1つの光学素子(812)が、調節可能な焦点距離を有する第1の光学素子と、調節可能な焦点距離を有する第2の光学素子とを含み、
前記制御ユニットが、前記加工レーザビーム(102)の目標焦点位置に基づいて前記第1の光学素子の焦点距離を設定し、前記第2の光学素子の焦点距離を変化させるように構成されていることを特徴とする装置(81)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の装置(81)であって、
前記光学分離素子(814)が、部分反射によって前記加工レーザビーム(102)の前記ビーム経路から前記部分ビーム(51)を分離するように構成され、ならびに/または、
前記光学分離素子(814)が保護ガラスである、および/もしくはミラーを含むことを特徴とする装置(81)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の装置(81)であって、
前記検出器(811)が、非空間分解センサ、単一ピクセルセンサ、放射照度感知光検出器、フォトダイオードアレイ、もしくはCCDカメラを含み、および/または、
ダイアフラムが、前記検出器(811)と調節可能な焦点距離を有する前記光学素子(812)との間に配置されることを特徴とする装置(81)。
【請求項11】
加工レーザビーム(102)によってワークピースを加工するためのレーザ加工ヘッド(101)であって、
前記加工レーザビーム(102)の焦点位置を設定するための集束ユニット(20)と、
請求項1~10のいずれか1項に記載の装置(81)とを備え、
光学分離素子(814)が前記加工レーザビーム(102)のビーム経路に配置されていることを特徴とするレーザ加工ヘッド(101)。
【請求項12】
請求項11に記載のレーザ加工ヘッド(101)であって、前記装置(81)によって決定された焦点位置に基づいて、前記集束ユニット(20)を用いて、前記ワークピースに対して前記加工レーザビーム(102)の焦点位置を制御するように構成されている閉ループ制御ユニット(31)をさらに備えることを特徴とするレーザ加工ヘッド(101)。
【請求項13】
請求項11または12に記載のレーザ加工ヘッド(101)であって、前記光学分離素子(814)は、焦点に向かって収束する前記加工レーザビーム(102)の部分に、および/または、前記集束ユニット(20)と前記ワークピースとの間に、および/または、前記ワークピースの前の、前記加工レーザビーム(102)のビーム経路における最後の光学素子として、および/または、前記加工レーザビーム(102)の前記ビーム経路におけるすべての結像光学素子もしくはビーム整形光学素子の後に配置されていることを特徴とするレーザ加工ヘッド(101)。
【請求項14】
レーザ加工ヘッド(101)の加工レーザビーム(102)の焦点位置を決定するための方法であって、
- 前記加工レーザビーム(102)から部分ビーム(51)を分離するステップと、
- 調節可能な焦点距離を有し、前記分離された部分ビーム(51)のビーム経路に配置された少なくとも1つの光学素子(812)の焦点距離を設定するステップと、
- 調節可能な焦点距離を有する前記少なくとも1つの光学素子(812)を通過した後に、設定焦点距離に対応する前記部分ビーム(51)の少なくとも1つのビームパラメータを検出するステップと、
- 検出されたビームパラメータと設定焦点距離とに基づいて、前記加工レーザビーム(102)の焦点位置を決定するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
- 前記光学素子(812)の少なくとも1つのさらなる設定焦点距離を用いて、前記設定するステップと前記検出するステップとを繰り返すステップをさらに含み、設定焦点距離が互いに異なることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の方法であって、前記少なくとも1つのビームパラメータの値が、前記少なくとも1つの光学素子(812)の異なる設定焦点距離で検出され、前記少なくとも1つのビームパラメータの極値に対応する前記光学素子(812)の設定焦点距離の値が決定されて、前記値に基づいて焦点位置を決定することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビーム、特にレーザ加工ヘッドの加工レーザビームの焦点位置を決定するための装置、およびレーザビームの焦点位置を決定するための方法に関する。本発明はまた、このような装置を備えるレーザ加工ヘッドに関する。このような装置および方法を使用して、レーザ材料加工中にレーザ加工ヘッドの焦点位置を決定および制御することができる。
【背景技術】
【0002】
レーザ材料加工における課題は、特にマルチキロワット範囲のレーザ出力によるレーザビームを誘導し集束させるための光学素子の加熱と、光学ガラスの屈折率の温度依存性とに起因する、いわゆる「熱レンズ」(熱的に誘発される屈折力の変化)である。レーザ材料加工中、熱レンズは、ビーム伝搬方向に沿った焦点シフトを生じさせ、ワークピースを加工するときに悪影響を及ぼす。したがって、加工品質を保証するために、焦点位置を測定することによって監視することが望ましい。そのため、それぞれの焦点位置を検出し、焦点位置シフトを補償する、すなわち高速かつ正確な焦点位置制御を提供することが必要である。
【0003】
熱レンズは、光学部品の半径方向に沿った熱勾配によって生じる。半径方向のレーザ出力分布のため、温度およびしたがって屈折率の変化は、エッジよりも光学部品の中心でかなり大きい。レーザビームのごく一部しか測定されない場合、熱レンズに関する情報が失われ、熱レンズが焦点位置に与える影響を正確に判定することができない。熱レンズが非常に顕著である場合、球面収差が予想される。したがって、エッジ光線と近軸光線とは、光学部品のエッジと中央との温度が異なるため、同じ焦点で合致しない。加えて、周縁光線の出力のシェアは、近軸光線の出力のシェアよりも小さい。焦点位置が周縁光線からの情報のみによって決定される場合、低レベルの測定精度のみが予想される。熱レンズは、焦点シフトだけでなく、結像誤差によるビーム品質の低下も生じさせる。これにより、焦点直径を含む全体的なビームコースティックの変化が生じる。したがって、基準値との比較による焦点位置の決定は不正確である。
【0004】
レーザビームの焦点位置を決定するための様々な方法および装置が知られている。課題は、これらの方法および装置をレーザ加工ヘッドに組み込んで、レーザ材料加工プロセス中に、リアルタイムの正確な焦点位置測定を保証することである。
【0005】
非特許文献1は、レーザビームを測定するための方法、特にレーザビームパラメータの試験方法を定義している。特に、ビーム寸法、例えば、ビーム幅または直径、発散角、ビーム伝搬係数、回折率、およびビーム品質の測定方法が規定されている。焦点位置、すなわちビームの最小径の位置を決定するために、ビーム直径は、ビーム経路に沿って少なくとも10点で決定される。ビーム直径の変化が、ビーム伝搬方向に応じて、いわゆるビームコースティックにより数学的に記述される。測定されたビーム直径をビームコースティックに適合させることによって、焦点位置と他のすべてのレーザビームパラメータとを決定することができる。
【0006】
特許文献1によれば、焦点位置制御は、レーザ出力の関数として焦点シフトを記述する対応する特性マップを使用して、レーザ出力に基づいて実行される。
【0007】
実際の焦点位置を測定することなく焦点位置制御を可能にする方法および装置を使用すると、最小限の構成的努力で加工品質の向上を達成することができるが、焦点位置制御における高い精度、およびしたがって高い加工品質を達成することはできない。
【0008】
特許文献2は、レーザビームのエネルギーを監視するための装置を記載している。レーザビームの軸に対して窓を傾けることによって、レーザビームの一部が分離され、検出器上に向けられる。検出器は光学系の画像面に配置され、画像面は、レーザビームを基板上に結像し、基板の表面に対応する。
【0009】
加えて、特にレーザ切断の場合、可能な限り最大のオートフォーカス範囲を有するレーザ加工ヘッドが好ましい。しかしながら、オートフォーカス範囲が大きくなるほど、簡単かつコンパクトな焦点位置測定を提供することは困難になる。言い換えると、オートフォーカス範囲が大きくなるほど、構造体積が大きくなる。例えば、50mmのオートフォーカス範囲を有するレーザ切断用のレーザ加工ヘッドには、この範囲内の一定の測定解像度を得る焦点位置測定装置が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許第102015106618B4号明細書
【特許文献2】独国特許第19630607C1号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】国際規格ISO 11146
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、最小限の構成的努力でコンパクトかつ簡単に実装することができ、またはレーザ加工ヘッドに組み込むことのできる、レーザビーム、特にレーザ加工ヘッドの加工レーザビームの焦点位置を、好ましくはリアルタイムで決定するための装置、およびこの装置を備えるレーザ加工ヘッドを提供することである。本発明の別の目的は、レーザビーム、特にレーザ加工ヘッドの加工レーザビームの焦点位置を、好ましくはリアルタイムで簡単かつ正確に決定するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1に記載の装置、請求項11に記載のレーザ加工ヘッド、および請求項14に記載の方法によって達成される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0014】
レーザビーム、特にレーザ加工ヘッドの加工レーザビームの焦点位置を決定するための本発明による装置は、実施形態によれば、レーザビームのビーム経路から部分ビームを分離するための光学分離素子と、部分ビームの少なくとも1つのビームパラメータを検出するための検出器と、調節可能な焦点距離を有し、光学分離素子と検出器との間の部分ビームのビーム経路に配置された少なくとも1つの光学素子とを備える。
【0015】
装置は、部分ビームの少なくとも1つの検出されたビームパラメータの複数の値と、光学素子の設定焦点距離の対応する関連値と値に基づいて、レーザビームの焦点位置を決定するように構成されている評価ユニットをさらに備えることが好ましい。
【0016】
部分ビームのビーム経路に調節可能なまたは可変の焦点距離を有する光学素子とその後に配置される検出器とを用いて、部分ビームの伝搬方向に沿って、または光学素子の焦点距離が異なって設定された部分ビームの光軸に沿って、ビームパラメータを検出することができる。例えば、部分ビームのビームパラメータの対応する値を、光学素子の設定焦点距離ごとに決定することができる。このようにして、例えば、部分ビームのビームコースティックをサンプリングまたは決定することができる。分離された部分ビームのビームコースティックはレーザビームのビームコースティックに対応するので、レーザビームの現在のまたは実際のビームコースティックを、分離された部分ビームのビームコースティックに基づいて決定することができる。
【0017】
評価ユニットは、少なくとも1つの検出されたビームパラメータが最大値または最小値となる光学素子の設定焦点距離を決定するように構成されていてもよい。検出されたビームパラメータおよび光学素子の対応する設定焦点距離に基づいて、レーザビーム、特に加工レーザビームの実際の焦点位置を決定することができる。焦点位置を決定するために、部分ビームのビームパラメータが極値となる、例えば、部分ビームのレーザ強度が最大値となる、および/または部分ビームのビーム直径が最小値となる、光学素子の設定焦点距離を決定することができると好ましい。この設定焦点距離の値に基づいて、レーザビームまたは加工レーザビームの焦点位置を最終的に決定することができる。
【0018】
一方、加工プロセス中に、レーザ加工ヘッドの加工レーザビームを用いて、レーザビームの焦点位置が変化したかどうかを判定することができる。このために、光学素子の焦点距離を一定に維持することができる、すなわち、固定して設定することができる。加工プロセスの開始時または開始前に、加工レーザビームの所望の焦点位置が、例えば加工されるワークピース上に設定され、部分ビームのビームパラメータの基準値が検出器によって決定される。ここで、調節可能な焦点距離を有する光学素子は、調節可能な焦点距離が無限大であるか、屈折力が確立されないように設定されていてよい。加工プロセス中、特に熱レンズの現象により、レーザ加工ヘッドの光学素子の屈折力が変化することがあり、これによってレーザビームの焦点位置が変化する。これにより、検出器によって検出される部分ビームのビームパラメータも変化する。この変化は、検出器によって連続的に検出されるビームパラメータを以前に測定された基準値と比較することによって決定することができ、部分ビームの焦点位置の変化の尺度となる。これにより、レーザビームの焦点位置の変化を決定することができる。さらに、現在の焦点位置とレーザビームの加工プロセスの開始時における焦点位置との差は、検出器によって連続的に検出されるビームパラメータを以前に決定された基準値と比較することによって決定することができる。
【0019】
評価ユニットは、以下の値、すなわち、光学分離素子の向き、光学分離素子から検出器までの距離、光学分離素子から集束ユニットまでの距離、光学分離素子から調節可能な焦点距離を有する光学素子までの距離、および調節可能な焦点距離を有する光学素子から検出器までの距離のうちの少なくとも1つに基づいて、レーザビームの焦点位置を決定するように構成されてもよく、ここでは、距離は、分離された部分ビームのビーム伝搬方向に沿った経路の長さを指す。
【0020】
レーザ強度を、表面出力密度または略して「出力密度」と呼ぶこともできる。表面出力密度は、例えば、単位「ワット毎平方メートル」を使用して指定することができる。
【0021】
焦点位置を好ましくはリアルタイムで正確に決定するための簡単かつ構造的にコンパクトな解決策を得るために、レーザ加工プロセス中、第1のステップにおいて、部分ビームがレーザビームから分離される。第2のステップにおいて、分離された部分ビームの焦点位置が、調節可能な焦点距離を有する光学素子および検出器を使用して決定される。
【0022】
調節可能な焦点距離を有する光学素子を、部分ビームのビーム経路に静止して、少なくとも部分ビームのビーム伝搬方向に静止して配置することができる。実施形態によれば、可変焦点距離を有する少なくとも1つの光学素子は、部分ビームの伝搬方向に対して静止して配置される。言い換えると、部分ビームの伝搬方向に沿った光学素子の位置を固定または設定することができる。検出器の位置を、部分ビームの伝搬方向に沿って固定または設定しても、静止させてもよい。検出器は、部分ビームが調節可能な焦点距離を有する光学素子を通った後に検出器に当たるように、部分ビームのビーム経路に配置されることが好ましい。言い換えると、検出器を、光学素子の後方で部分ビームのビーム経路に配置することができる。調節可能な焦点距離を有する光学素子は、オートフォーカス機能を有することができる。
【0023】
可変焦点距離を有する光学素子により、調節可能な焦点距離を有する光学素子または検出器を部分ビームの伝搬方向に沿ってまたは軸方向に移動させることなく、レーザビームの焦点位置またはビームコースティックを決定することが可能になる。これにより、本発明による装置のコンパクトな設計が可能になる。また、これにより、アクチュエータまたはモータを用いて装置の素子を移動させる必要がないので、レーザビームの焦点位置をリアルタイムで決定することが可能になる。加えて、装置およびしたがって装置を備えるレーザ加工ヘッドも、例えば、素子の変位のためのガイド素子が不要であるので、より複雑でない簡単な方法で構成することができる。
【0024】
さらに、本発明による装置は、オートフォーカス機能を有するレーザ加工ヘッドまたはモジュラレーザ加工ヘッドにおいて使用することができる。例えば、本発明による装置は、大きい構造的または構成的努力および影響なしで、異なる焦点距離を有するレーザ加工ヘッドに使用することができる。例えば、本発明による装置は、焦点距離が150mmのレーザ加工ヘッドと、焦点距離が200mmのレーザ加工ヘッドとの両方に使用することができる。焦点距離の差は、調節可能なまたは可変の焦点距離を有する光学素子を用いて、例えば液体レンズを用いて補償することができる。
【0025】
検出器は、部分ビームのレーザ強度および/またはビーム直径を検出するように構成されてよい。実施形態によれば、検出器は、少なくとも1つの光学素子の異なる設定焦点距離で、部分ビームのレーザ強度および/またはビーム直径を検出するように構成される。評価ユニットは、部分ビームの最大レーザ強度に従っておよび/または部分ビームの最小ビーム直径に従って光学素子の焦点距離の設定値を決定するように構成されてよい。
【0026】
例えば、検出器は単一ピクセルセンサとして構成される。これにより、検出器によって生成される信号またはデータの評価が簡単になる。検出器は、非空間分解センサであってよい。この場合、検出器のセンサ表面は、最小ビーム直径に対応する部分ビームの断面よりも小さいことが好ましい。言い換えると、センサ表面の断面は、部分ビームのビーム直径よりも小さくてよい。検出器のセンサ表面は、部分ビームの断面内またはビーム直径内に配置されてよく、センサ表面が部分ビームの光軸上に配置されることが好ましい。
【0027】
装置は、調節可能な焦点距離を有する光学素子と検出器との間に配置されたダイアフラムをさらに含むことができる。ダイアフラムは、分離された部分ビームの光軸に同軸にまたは光軸上に配置されることが好ましい。ダイアフラム開口部の面積は、最小ビーム直径に対応する部分ビームの断面積以下であってよい。これによって、より大きい面積を有する空間分解検出器または単一ピクセルセンサを使用しなくても、検出器は、部分ビームの焦点位置またはレーザビームの焦点位置に依存する部分ビームのレーザ強度を常に決定することが保証され得る。
【0028】
別の例において、単一ピクセルセンサであり得る放射照度感知光検出器を、検出器として使用してもよい。このタイプの光検出器では、センサ出力は入射光子の総流量だけでなく、入射する表面の大きさにも依存する。これは、ビーム直径が変化するにつれて、センサ出力の信号が部分ビームのビーム伝搬に沿って変化することを意味する。これにより、放射照度を測定することができる。放射照度は、伝搬方向に沿って焦点が最大値に達する。したがって、レーザ強度は最大値に達し、ビーム直径は部分ビームの伝搬方向に沿って最小となる。
【0029】
放射照度感知性は、多くの薄膜太陽電池技術、例えばグレッツェル電池(電気化学色素増感太陽電池としても知られる)について一般的であるように、非線形感光性である。電気化学色素増感太陽電池は、光を吸収するために、半導体材料ではなく有機色素を使用する。他の半導体技術(シリコン、InGaAsなど)と比較して、これらの光検出器技術の電荷移動プロセスは、高度に局所化した電荷キャリアおよび電荷移動プロセスによる放射照度依存感知性をもたらす。
【0030】
検出器は、空間分解センサ、例えばマルチピクセルセンサまたはCCDカメラも含んでもよい。これにより、部分ビームのビーム直径を検出することができる。この場合、評価ユニットは、センサによって検出されたビーム直径に基づいて焦点位置を決定するように構成されてよい。検出器は、フォトダイオードアレイも含んでもよい。この場合、ピクセル数はCCDカメラの場合よりも少なくなり得る。これにより、検出器信号の評価を簡単にすることができる。
【0031】
少なくとも1つの光学素子は、連続的および/または任意に調節可能なもしくは可変の焦点距離を有することが好ましい。光学素子の焦点距離は、例えば-1m~+1mで変化し得る。
【0032】
調節可能な焦点距離を有する少なくとも1つの光学素子は、変形可能または形成可能な光学素子を含むことができる。例えば、可変焦点距離を有する光学素子は、変形可能なレンズを含むことができる。変形可能なレンズの例は液体レンズである。屈折性材料は液体であってよい。屈折性材料は変形可能なポリマーであってもよい。この場合、変形可能なレンズはポリマーレンズである。同様に、可変焦点距離を有する光学素子は、変形可能なミラーを含むことができる。変形可能なミラーは、例えば、圧電的に変形可能なミラーまたはMEMSベースの(「マイクロオプトエレクトロメカニカル適応」)ミラーであってよい。変形可能なミラーは、圧力下で半径変数を有するミラーであってもよい。したがって、本発明によれば、変形可能な反射光学素子および変形可能な透過光学素子が、調節可能な焦点距離を有する少なくとも1つの光学素子として使用されてよい。
【0033】
可変焦点距離を有する少なくとも1つの光学素子は、互いに対して回転させることのできる複数の光学素子を含むことができる。例えば、可変焦点距離を有する光学素子は、集束可能なモアレレンズまたはモアレレンズ対を含むことができる。これらのレンズは、回転により広範囲の焦点距離にわたって集束され得る。
【0034】
可変焦点距離を有する少なくとも1つの光学素子は、上記の素子のうちの1つ以上を含むことができ、または上記の素子のうちのいくつかの組合せを含むことができる。例えば、可変焦点距離を有する少なくとも1つの光学素子はレンズ群として構成されてよく、レンズ群のレンズのうちの1つが液体レンズである。
【0035】
装置は、調節可能な焦点距離を有する少なくとも1つの光学素子の焦点距離を調節するように構成されている制御ユニットをさらに備えることができる。
【0036】
言い換えると、制御ユニットは、光学素子の焦点距離を制御するように構成されてよい。制御ユニットは、光学素子の焦点距離を連続的または個々に設定するように構成されてよい。言い換えると、制御ユニットは、光学素子の焦点距離について異なる値を設定するように構成されてよい。これにより、部分ビームのビームコースティックを測定またはサンプリングすることが可能になる。
【0037】
実施形態によれば、調節可能な焦点距離を有する少なくとも1つの光学素子は、調節可能な焦点距離を有する第1の光学素子と、調節可能な焦点距離を有する第2の光学素子とを含むことができる。制御ユニットは、第2の光学素子の焦点距離とは無関係に第1の光学素子の焦点距離を設定するように構成されてよい。制御ユニットは、レーザ加工システムのレーザビームの目標焦点位置に基づいて第1の光学素子の焦点距離を設定するように構成されてもよい。第1の光学素子の焦点距離のこの値を、その後、一定に維持することができる。第2の光学素子の焦点距離を、例えば連続的に変化させて、少なくとも1つのビームパラメータについて異なる値を検出することができる。
【0038】
言い換えると、制御ユニットは、第1の光学素子の焦点距離を設定することによって、装置の検出器におけるレーザ加工ヘッドの光ファイバの端部の結像を可能にするように構成されてよい。その結果、本発明による装置を、レーザビームの設定焦点位置、すなわち加工レーザビームの焦点位置の目標値に合わせて調節することができる。これは、レーザビームの設定焦点位置または目標焦点位置に従って、本発明による装置を予め設定することに対応する。制御ユニットは、第2の光学素子の焦点距離を、例えば連続的に変化させるようにさらに構成されて、上述したように、レーザビームの実際のまたは現在の焦点位置、すなわち焦点位置の実際値が、例えば、ビーム伝搬方向に沿ったレーザ強度の最大値から決定され得るようになっていてよい。
【0039】
制御ユニットの機能を、評価ユニットによって実行してもよい。
【0040】
実施形態によれば、光学分離素子は、部分反射によってレーザビームのビーム経路から部分ビームを分離するように構成される。光学分離素子は、レーザビームに対して半透明に構成されてよい。分離された部分ビームは、入射レーザビームの反射部分または透過部分であってよい。光学分離素子は、ビームスプリッタとして構成されてもよく、ビームスプリッタを含んでもよい。
【0041】
光学分離素子は、光学分離素子を通過した後のレーザビームのビーム伝搬方向に関して、0°超~180°未満、好ましくは90°以上180°未満、または45°~135°の角度を形成するビーム伝搬方向を有する部分ビームを分離するように構成されてもよい。光学分離素子は、レーザビームの伝搬方向に対して傾斜して配置されてもよい。言い換えると、光学分離素子は、加工レーザビームのビーム経路において斜めに配置されてもよく、または光学分離素子は、光軸に対して斜めに、傾いて、もしくは傾斜して配置されてもよい。
【0042】
光学分離素子は、レーザビームの断面積全体にわたって部分ビームが分離されるように構成されることが好ましい。その結果、レーザビームのエッジ光線に加えて、レーザビームの中心光線も分離され、検出器によって測定される。
【0043】
光学分離素子は、保護ガラスおよび/またはミラーを含むことができる。
【0044】
例えば、光学分離素子は、加工レーザビームの伝搬方向において加工されるワークピースの前にあるまたは位置する、レーザ加工ヘッドの最後の透明光学面または最後の透過光学面のうちの1つを含む。例えば、レーザ加工ヘッドの最後の保護ガラスは、レーザ加工ヘッドの光軸または加工レーザビームの伝搬方向に対して斜めにまたは傾斜して配置される。
【0045】
例えば保護ガラスを用いて部分ビームを分離するとき、分離素子の異なる表面で反射することによって、複数の部分ビームが分離されてもよい。ここで、部分ビームを後方反射と呼ぶこともできる。本発明によれば、少なくとも1つのビームパラメータを検出するために、1つの分離された部分ビームのみを使用することが必要であり、または望ましい。複数の部分ビームが分離されることを防ぐ、または望ましくない分離された部分ビームが検出器に到達することを防ぐために、所定の厚さまたは増加した厚さを有する分離素子、例えば保護ガラスを使用して、保護ガラスの両面からの後方反射を確実かつ簡単に空間的に切り離すことができるようにしてもよい。追加の後方反射を切り離すための代替措置として、その後、光学分離素子または保護ガラスの表面に、異なるコーティングを光軸に沿って配置することができ、またはくさび状の保護ガラスを分離素子として使用してもよく、または分離された部分ビームのビーム経路にくさびをさらに配置してもよい。
【0046】
保護ガラスを使用して部分ビームを分離する代替案は、半透明ミラーを使用して加工レーザビームを偏向させ、検出器をミラーの後方に配置することである。したがって、分離素子は半透明ミラーを含むことができ、検出器は、ミラーに入射する前の加工レーザビームの光軸の延長線上で、ビーム伝搬方向においてミラーの後方に配置される。この場合、部分ビームはミラーに入射したレーザ光の透過部分に対応し、ミラーに入射したレーザ光の反射部分は材料加工のための加工レーザビームとして使用される。
【0047】
評価ユニットは、検出器および制御ユニットに接続されてもよい。評価ユニットは、検出器によって検出された部分ビームのレーザ強度の値および/または部分ビームのビーム直径の検出された値を受信することができる。評価ユニットは、光学素子の焦点距離について制御ユニットにより設定された値を受信することができる。検出器および制御ユニットから得られた値に基づいて、評価ユニットは、部分ビームのビームコースティックを決定することができ、ならびに/または、部分ビームの最大レーザ強度および/もしくは部分ビームの最小ビーム直径を決定することができる。評価ユニットは、最大レーザ強度または最小ビーム直径に従って、部分ビームの伝搬方向または光学素子の設定焦点距離における最大レーザ強度および/または最小ビーム直径の位置を決定することもできる。
【0048】
本発明はまた、本発明による装置を備えるレーザ加工ヘッドに関する。実施形態によれば、レーザ加工ヘッドは、ワークピースのレーザ材料加工のためのレーザビームまたは加工レーザビームを発生させるように構成される。本発明によれば、光学分離素子は、レーザビームまたは加工レーザビームのビーム経路に配置される。
【0049】
レーザ加工ヘッドは、例えば加工するワークピースに対してレーザビームの焦点位置を調節するための集束ユニットをさらに備えることができる。集束ユニットは、例えば、コリメーション光学部品もしくはコリメーションレンズもしくはコリメーションレンズ群および/または集束光学部品もしくは集束レンズもしくは集束レンズ群などの1つ以上の光学素子を含むことができる。集束ユニットまたは集束ユニットの少なくとも1つ以上の素子または部分が、レーザビームの伝搬方向に沿って変位可能であってよい。レーザ加工ヘッドは、閉ループ制御ユニットをさらに備えることができる。閉ループ制御ユニットは、装置によって決定される焦点位置に基づいて集束ユニットを調節するまたは移動させるように構成されてよい。例えば、閉ループ制御ユニットは、装置によって決定される実際の焦点位置、言い換えると、焦点位置の実際値を、焦点位置の目標値と比較することができ、集束ユニットを調節することによって、この比較に基づいて焦点位置を調節することができる。言い換えると、閉ループ制御ユニットは、集束ユニット使用して、装置によって決定される実際のまたは現在の焦点位置に基づいて焦点位置を制御するように構成される。このようにして、例えば、熱レンズの現象によるレーザビームの焦点シフトまたは望ましくない焦点位置の変化を補償することができる。
【0050】
閉ループ制御ユニットは、装置によって決定される焦点位置の値、すなわち、装置からの加工レーザビームの焦点位置の実際値を受信することができ、焦点位置の決定値を加工レーザビームの焦点位置の目標値と比較することができる。この比較に基づいて、制御ユニットは、加工レーザビームの焦点位置を調節または制御することができる。
【0051】
本発明によるレーザ加工ヘッドにより、加工レーザビームの焦点位置の自動制御または追跡が可能になる。本発明によるレーザ加工ヘッドにより、加工レーザビームの焦点位置の連続的な測定および制御が可能になる。言い換えると、焦点位置をリアルタイムで測定および制御することができる。
【0052】
レーザ加工ヘッドは、モジュラレーザ加工ヘッドまたはオートフォーカス機能を有するレーザ加工ヘッド、特に、約50mm以上の広いオートフォーカス範囲を有するレーザ加工ヘッドであってよい。
【0053】
光学分離素子は、焦点に向かって収束するレーザビームの部分に配置されることが好ましい。言い換えると、光学分離素子は、レーザビームのビーム経路の収束領域で、レーザビームの伝搬方向において集束ユニットの後方に配置されてよい。
【0054】
本発明による装置の評価ユニットは、装置の制御ユニット、装置の検出器、またはレーザ加工ヘッドの閉ループ制御ユニットに配置され、または組み込まれてよい。装置の評価ユニットの上記の機能は、装置の制御ユニット、装置の検出器、またはレーザ加工ヘッドの閉ループ制御ユニットによって実行されてよい。例えば、レーザ加工ヘッドの閉ループ制御ユニットは、対応する信号を受信するために、可変焦点距離を有する光学素子の制御ユニットおよび検出器に直接接続されてよい。評価ユニットの機能は、複数のこれらの素子によって共同で実行されてもよい。
【0055】
本発明はさらに、レーザビーム、特にレーザ加工ヘッドの加工レーザビームの焦点位置を決定するための方法に関する。方法は、レーザビームから部分ビームを分離するステップと、調節可能な焦点距離を有する少なくとも1つの光学素子の焦点距離を設定し、少なくとも1つの光学素子を通して部分ビームを誘導するステップと、設定焦点距離に従って部分ビームの少なくとも1つのビームパラメータを検出するステップと、検出されたビームパラメータおよび設定焦点距離に基づいてレーザビームの焦点位置を決定するステップとを含む。焦点位置は、検出されたビームパラメータの極値、すなわち最小値または最大値に基づいて決定されることが好ましい。
【0056】
方法は、光学素子の少なくとも1つのさらなる設定焦点距離を用いて、設定するステップと検出するステップとを繰り返すステップをさらに含むことができ、第2の設定焦点距離は第1の設定焦点距離とは異なる。
【0057】
本発明による装置を、上述したレーザビームの焦点位置を決定するための方法において使用してもよい。
【0058】
以下で、図面を参照しながら、本発明について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1A】加工レーザビームの異なる焦点位置における、本発明の実施形態による、レーザ加工ヘッドの加工レーザビームの焦点位置を決定するための装置を備えるレーザ加工ヘッドの概略図である。
図1B】加工レーザビームの異なる焦点位置における、本発明の実施形態による、レーザ加工ヘッドの加工レーザビームの焦点位置を決定するための装置を備えるレーザ加工ヘッドの概略図である。
図2】本発明の別の実施形態による、レーザ加工ヘッドの加工レーザビームの焦点位置を決定するための装置を備えるレーザ加工ヘッドの概略図である。
図3A】本発明の実施形態による、焦点位置を決定するための装置の部分概略図である。
図3B】本発明の実施形態による、焦点位置を決定するための装置の部分概略図である。
図4A】本発明のさらなる実施形態による、レーザ加工ヘッドの加工レーザビームの焦点位置を決定するための装置を備えるレーザ加工ヘッドの概略図である。
図4B】本発明のさらなる実施形態による、レーザ加工ヘッドの加工レーザビームの焦点位置を決定するための装置を備えるレーザ加工ヘッドの概略図である。
図5A】本発明の実施形態による、焦点位置を決定するための装置によって決定されたビームコースティックを示す図である。
図5B】本発明の実施形態による、レーザビームの焦点位置を決定するための装置によって決定されたレーザ強度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下で、特に記載のない限り、同等であって同等の効果を有する要素については同じ参照符号を使用する。
【0061】
図1Aは、本発明の実施形態による、レーザ加工ヘッドの加工レーザビームの焦点位置を決定するための装置およびレーザ加工ヘッドの概略図である。
【0062】
レーザ加工ヘッド101は、加工レーザビーム102を発生させるように構成される。加工レーザ102は、ワークピース(図示せず)に放射されてワークピースを加工する。加工レーザビーム102は伝搬方向11を有する。伝搬方向11は、加工するワークピースの表面に対して略垂直であってよい。
【0063】
レーザ加工ヘッド101は、集束ユニット20を備える。集束ユニット20は、加工レーザ102の焦点位置を設定するように構成される。図1Aに示すように、加工レーザ102は第1の焦点位置12を有する。集束ユニット20は、伝搬方向11に沿って変位可能な素子21、例えばコリメーション光学部品と、伝搬方向11に沿って静止した素子22、例えば集束光学部品とを含む。光学素子21、22はレンズであってよい。変位可能な素子21を伝搬方向11に沿って移動させることにより、レーザビーム102の焦点の位置、すなわちその焦点位置が設定または変更される。
【0064】
レーザ加工ヘッド101は、閉ループ制御ユニット31をさらに備える。閉ループ制御ユニットは、加工レーザビーム102の焦点位置を設定または制御するように構成される。このために、閉ループ制御ユニット31は、集束ユニット20に接続されてよい。閉ループ制御ユニット31は、集束ユニット20の変位可能な素子21に接続されて、変位可能な素子21の位置を加工レーザビーム102の伝搬方向11に沿って調節することができる。言い換えると、閉ループ制御ユニット31は、集束ユニット20を調節して、加工レーザ102の焦点位置を調節することができる。したがって、集束ユニット20、特に変位可能な素子21を、アクチュエータとみなすことができる。
【0065】
レーザ加工ヘッド101の加工レーザビーム102の焦点位置を決定するための装置81は、光学分離素子814を備える。光学分離素子814は、加工レーザビーム102から部分ビーム51を分離するように構成される。図1に示す実施形態によれば、光学分離素子814は半透明の光学素子である。この例において、光学分離素子814に入射したレーザ光の一部が、部分ビーム51として分離される。
【0066】
図1Aに示す実施形態によれば、光学分離素子814は、加工レーザビーム102が加工されるワークピースに入射する前の、加工レーザビーム102の伝搬方向11に沿った1つまたは最後の透明光学素子である。光学分離素子814は、例えば、レーザ加工ヘッド101の保護ガラスであってよい。光学分離素子814は、伝搬方向11に沿って集束ユニット20の後方に、すなわち、加工レーザビーム102のビーム経路の集束領域に配置されることが好ましい。
【0067】
図示するように、光学分離素子814は、加工レーザビーム102の伝搬方向11または光軸に対して傾斜して配置されて、加工レーザビーム102のビーム経路から部分ビーム51を分離する。これは、加工レーザビーム102が90度に等しくない角度で光学分離素子814の表面に入射することを意味する。
【0068】
図1Aに示す実施形態によれば、分離された部分ビーム51は、偏向素子815によって偏向され、または折り曲げられる。これは、部分ビーム51の空間的にコンパクトなビーム誘導が可能になる、または、部分ビーム51の空間的にコンパクトなビーム経路が形成されて、装置81を空間的にコンパクトにすることができるという利点を有する。偏向素子815は、例えばミラーとして構成されてよい。しかしながら、偏向素子815は必要ではない。
【0069】
装置81は、調節可能なまたは可変の焦点距離を有する光学素子812をさらに備える。光学素子812は、部分ビーム51のビーム経路に配置される。言い換えると、部分ビーム51は、光学素子812によって屈折または集束される。したがって、光学素子812は、調節可能な焦点距離によって、部分ビーム51の焦点位置を変化させることができる。図1に示す実施形態によれば、光学素子812は、連続的に調節可能な焦点距離を有し、変形可能なレンズ、例えば液体またはポリマーレンズとして構成される。焦点距離は、光学素子812を変形させることによって調節され得る。しかしながら、光学素子812は、いくつかのモアレレンズを含むこともでき、そのうちの少なくとも1つが回転可能に取り付けられる。ここでは、光学素子812の焦点距離は、レンズを互いに対して回転させることによって調節される。
【0070】
したがって、部分ビーム51は、レーザビーム102から分離された後、場合により偏向ユニット815によって偏向され、その後、調節可能な焦点距離を有する光学素子812を通して誘導される、または光学素子812を通過する。その後、部分ビーム51は、部分ビーム51の伝搬方向に沿って光学素子812の後方に配置された検出器811に入射する。
【0071】
装置81は、光学素子812の焦点距離が無限大に設定されているとき(すなわち、光学素子812が部分ビーム51を屈折させないとき)に、集束ユニット20(例えば、集束ユニット20の静止素子22)と加工レーザビームの目標焦点位置との間の加工レーザビームの光路長が、集束ユニット20(例えば、集束ユニット20の静止素子22)と検出器811との間の部分ビーム51の光路長に等しくなるように構成されてよい。この場合、検出器は部分ビーム51の焦点に配置される。目標焦点位置からの加工レーザビームのずれは、検出器811によって検出されたビームパラメータの対応する変化によって識別され得る。
【0072】
図1Aに示す実施形態によれば、検出器811は、入射した部分ビーム51のレーザ強度またはレーザ出力密度を検出するように構成されている検出器である。例えば、検出器811は、フォトダイオードとしてまたは放射照度感知光検出器として構成される。検出器811は、入射した部分ビーム51の直径を検出するように構成されてもよい。この場合、検出器811は、空間分解検出器として、例えばCCDカメラとしてまたはフォトダイオードアレイとして構成されてよい。
【0073】
可変焦点距離を有する光学素子812と検出器811との両方が、部分ビーム51の伝搬方向に対して静止しているように構成される。これにより、部分ビーム51の伝搬方向に沿って移動または変位可能な素子が不要になるので、装置81のコンパクトな設計が可能になる。
【0074】
装置81は、評価ユニット813をさらに備える。評価ユニット813は、光学素子812および検出器811に接続される。
【0075】
評価ユニット813は、光学素子812の異なる焦点距離を設定するように構成される。この機能は、別個の制御ユニット(図示せず)によって実行されてもよい。さらに、評価ユニット813は、光学素子812の設定焦点距離ごとに、検出器811によって測定されたレーザ強度または部分ビーム51の測定されたビーム直径を評価するように構成される。特に、評価ユニット813は、光学素子812の様々な設定焦点距離と、検出器812によって検出された部分ビーム51のレーザ強度またはビーム直径の対応する値とに基づいて、光学素子812の設定焦点距離について、レーザ強度が最大値となるか、または部分ビーム51のビーム直径が最小値となる値を決定するように構成されてよい。さらに、評価ユニット813は、部分ビーム51のビームコースティックを決定することができる。評価ユニット813は、レーザ加工ヘッド101の加工レーザビーム102によるレーザ材料加工中に、レーザ強度の最大値または部分ビーム51のビーム直径の最小値に従って、光学素子812の設定焦点距離の値の上述した決定を連続的におよび/またはリアルタイムで実行するように構成される。
【0076】
評価ユニット813は、レーザ強度が最大値となる、または部分ビーム51のビーム直径が最小値となる設定焦点距離の値を使用して、部分ビーム51のビーム伝搬方向に沿った光学分離素子814と検出器811との間の距離に基づいて、加工レーザビーム102の現在の焦点位置をリアルタイムでまたは連続的に決定する。部分ビーム51のビーム伝搬方向に沿った光学分離素子814と検出器811との間の距離は、部分ビーム51の光路であるとみなすことができる。
【0077】
これにより、加工レーザビーム102の焦点位置の実際値を常にリアルタイムで決定または確立することが可能になる。したがって、加工レーザビーム102の焦点位置をリアルタイムで正確に制御することができる。
【0078】
このために、評価ユニット813は、制御ユニット31に接続されてよい。閉ループ制御ユニット31は、評価ユニット813から加工レーザビーム102の実際の焦点位置の実際値または決定値を受信し、受信した実際値を焦点位置の設定値または目標値と比較する。比較により、例えば熱レンズによる焦点位置のシフトのために、設定された目標値が実際値からずれていることがわかった場合、閉ループ制御ユニット31は集束ユニット20を制御して、加工レーザビーム102の焦点または焦点位置が更新されるか、またはずれが補償されるようにする。
【0079】
図1Bは、図1Aに示す実施形態による装置81およびレーザ加工ヘッド101を、加工レーザビーム102の第2の設定焦点位置13と共に示す。
【0080】
図2は、本発明の別の実施形態による、加工レーザビームの焦点位置を決定するための装置を備えるレーザ加工ヘッドの概略図である。図2に示す本発明の実施形態は、以下で説明する相違を除いて、図1Aおよび図1Bに示す実施形態に対応する。
【0081】
図2に示す実施形態の光学分離素子814は、光学分離素子がミラーを含む点で、図1Aおよび図1Bに示す実施形態の光学分離素子814とは異なる。ミラーは半透明または部分的に不透明である。ミラーは、入射レーザ光の一部を加工レーザビーム102として反射する。入射レーザ光の非反射部分は、部分ビーム51として分離される。言い換えると、分離された部分ビーム51は、ミラーに入射したレーザ光の透過部分であり、加工ビーム102は、ミラーによって反射され、加工されるワークピース上に向けられる。図2に示す実施形態によれば、装置81は偏向素子を含まない。しかしながら、図2に示す実施形態による装置において、図1Aおよび図1Bに示すように偏向素子815を設けることも可能である。
【0082】
図3Aおよび図3Bは各々、図1Aおよび図1Bの装置の部分概略図である。図3Aおよび図3Bは各々、偏向ユニット815、光学素子812、および検出器811を示し、これらは部分ビーム51のビーム経路に順々に配置されている。図3Aに示す状態で、光学素子812は、図3Bに示す状態とは異なる設定焦点距離を有する。光学素子812のそれぞれの設定焦点距離により、検出器において最小のビーム直径を有する部分ビーム51が生じる。したがって、部分ビーム51は、加工レーザビーム102の焦点位置に関係なく、調節可能な焦点距離を有する光学素子812を使用して検出器811に集束され得る。ここで、分離素子814と加工レーザビームの焦点位置12との間の距離と比較した、分離素子814と検出器811との間の(既知の)距離が、非常に重要である。検出器811によって検出される部分ビーム51のビーム直径または部分ビーム51のレーザ強度は、一方で、光学素子812の設定焦点距離に依存し、他方で、レーザ加工ヘッド101の集束ユニット20の設定と、例えば集束ユニット20において生じ得る熱レンズの現象とに依存する。したがって、図3Aおよび図3Bにおいて光学分離素子により分離された部分ビーム51も、異なるビーム直径を有する。しかしながら、焦点位置12は、最小ビーム直径または最大強度に基づいて決定される。
【0083】
図4Aおよび図4Bは、本発明のさらなる実施形態による加工レーザビームの焦点位置を決定するための装置を備えるレーザ加工ヘッドの概略図である。図4Aおよび図4Bに示す本発明のさらなる実施形態は、以下で説明する相違を除いて、図1Aおよび図1Bに示す実施形態に対応する。
【0084】
図1Aおよび図1Bに示す実施形態による調節可能な焦点距離を有する透過光学素子812とは対照的に、図4Aおよび図4Bに示す実施形態による調節可能な焦点距離を有する光学素子812は、変形可能なミラーなどの反射光学素子を含む。変形可能なミラーは、例えば、圧電的に変形可能なミラーまたはMEMSベースの(「マイクロオプトエレクトロメカニカル適応」)ミラーであってよい。変形可能なミラーは、圧力下で半径変数を有するミラーであってもよい。光学素子812の焦点距離は、光学素子812の変形によって調節され得る。
【0085】
図4Aは、第1の設定焦点位置12における装置81およびレーザ加工ヘッドを示す。図4Bは、第1の焦点位置12よりも長い第2の設定焦点位置13における、図4Aに示す実施形態による装置81およびレーザ加工ヘッド101を示す。
【0086】
図5Aは、本発明の実施形態による、焦点位置を決定するための装置81によって決定されたビームコースティックを示す図である。図5Bは、本発明の実施形態による、レーザビームの焦点位置を決定するための装置81によって決定された、ビーム伝搬方向に沿った部分ビーム51のレーザ強度のグラフである。
【0087】
ビーム直径の変化が、レーザビームまたは部分ビームの伝搬方向に応じて、いわゆるビームコースティックにより数学的に記述される。図5Aは、本発明の実施形態による、レーザビームの焦点位置を決定するための装置によって決定された、部分ビーム51のそのようなビームコースティックを示す図である。
【0088】
本発明によれば、部分ビーム51のビームコースティックは、光学素子812の設定焦点距離の異なる値における、装置81による部分ビーム51のビーム直径のそれぞれの値(図5Aの円に対応する)を、検出器811を用いて検出または測定することによっても得られる。決定されたビーム直径および数学的モデルを使用して、ビームコースティックを図5Aの包絡線として決定し、部分ビーム51を特徴付けることができる。しかしながら、ビームパラメータの極値に基づく評価は、より簡単かつ高速である。
【0089】
本発明によれば、図5Bに示すように、部分ビーム51のレーザ強度を、光学素子812の設定焦点距離の関数として、検出器811によってそれに応じて決定することができる。レーザ強度は、部分ビーム51の直径が最小である光学素子812の焦点距離について最大値に達する。
【0090】
本発明によれば、レーザビーム、特にレーザ加工ヘッドの加工レーザビームの焦点位置を決定するための装置は、レーザビームから分離された部分ビームの伝搬方向に順々に配置された、調節可能な焦点距離を有する光学素子と検出器とを使用する。検出器は、部分ビームのレーザ強度および/またはビーム直径などのビームパラメータを検出するように構成される。評価ユニットを設けて、レーザ強度が最大値となる、またはビーム直径が最小値となる光学素子の設定焦点距離を決定することもできる。光学素子の設定焦点距離に基づいて、レーザビームの焦点位置を決定してもよい。焦点位置を決定するために変位させければならない素子がないので、装置の簡単かつコンパクトな設計が可能になる。さらに、焦点位置の正確なリアルタイムの決定が可能になり、焦点位置の決定は、熱レンズの現象による、レーザビームまたは部分ビームのビームコースティック、特に焦点直径の変化によって生じる結像誤差とは無関係である。
【符号の説明】
【0091】
11 加工レーザビームの伝搬方向、 12 第1の焦点位置、 13 第2の焦点位置、 101 レーザ加工ヘッド、 102 加工レーザビーム、 20 集束ユニット、 21 変位可能な素子、 22 静止素子、 31 閉ループ制御ユニット、 51 分離された部分ビーム、 81 加工レーザビームの焦点位置を検出するための装置、 811 検出器、 812 調節可能な焦点距離を有する光学素子、 813 評価ユニット、 814 光学分離素子、 815 偏向素子
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
【国際調査報告】